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特開2024-153605多糖-タンパク質結合体の吸着を改善する方法及びその方法により得られる多価ワクチン製剤
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  • 特開-多糖-タンパク質結合体の吸着を改善する方法及びその方法により得られる多価ワクチン製剤 図1
  • 特開-多糖-タンパク質結合体の吸着を改善する方法及びその方法により得られる多価ワクチン製剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153605
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】多糖-タンパク質結合体の吸着を改善する方法及びその方法により得られる多価ワクチン製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/09 20060101AFI20241022BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241022BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 39/05 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 39/08 20060101ALI20241022BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241022BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61K39/09
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/02
A61K39/05
A61K39/08
A61K47/10
A61P31/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024066671
(22)【出願日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】202323028039
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】513240205
【氏名又は名称】セルム・インスティテュート・オブ・インディア・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Serum Institute of IndiaPrivate Ltd.
【住所又は居所原語表記】212/2, Off Soli Poonawalla Road, Hadapsar, Maharashtra Pune 411 028, INDIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】プーナーウォラー・サイラス・ソリ
(72)【発明者】
【氏名】デレ・ラジーブ・マラサカント
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ・スワパン・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン・シータル・シャンティラール
(72)【発明者】
【氏名】マハジャン・アモール・ダッタトレヤ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ゴーラブ・シャンカール
(72)【発明者】
【氏名】マラビヤ・ヒテシュ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ジョーシー・チェタン・ビラス
(72)【発明者】
【氏名】ゴータム・マニシュ・マヘシュ
(72)【発明者】
【氏名】ケイル・プラタメッシュ・プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ガイローラ・スニール・ジャグディシュ・プラサード
(72)【発明者】
【氏名】マルヤ・アシャ・ディネーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ソニ・ディペン・ジャグディッシュバイ
(72)【発明者】
【氏名】パトニ・スシル・バルドマン
(72)【発明者】
【氏名】ガバード・ビナイ・ビジャイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC35
4C076DD09F
4C076DD23
4C076DD39
4C076DD42
4C076DD51
4C076EE23F
4C076FF36
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA10
4C085BA12
4C085BA14
4C085CC08
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定で免疫原性の多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物の製造方法、及びワクチン組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも3つの異なるキャリアタンパク質を有する、改善された、安定で免疫原性の多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物、そのワクチン組成物の調製及び肺炎球菌を有する対象の予防及び/又は治療のための方法に特に関する。これらの多価肺炎球菌組成物は、キャリアが誘導するエピトープ抑制を克服し、新しい血清型に対する免疫応答を増強し(既存の承認済みワクチンと比較)、非ワクチン血清型の出現に対処するのにも役立つ。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定で免疫原性の多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物の製造方法であって、前記方法は、
i. 1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される肺炎球菌の血清型に由来する肺炎球菌多糖をキャリアタンパク質に、1:0.5~1:1.5の比率、pH8.0~10で、個別に結合させて、多糖-キャリアタンパク質結合体を得る工程、ここで、前記肺炎球菌多糖は、シアニル化試薬を使用してキャリアタンパク質と結合させ、前記ワクチン組成物は少なくとも3つの異なるキャリアタンパク質を含む;
ii. 工程(i)で得た、4、6A、9V、15B、22F及び23Fからなる群から選択される肺炎球菌の血清型に由来する多糖を含む肺炎球菌多糖-タンパク質結合体の第1のセットを、塩、ヒスチジン及びコハク酸の存在下、18℃~30℃、pH5.0~7.0で、18時間~30時間かけて、アルミニウム塩アジュバントに吸着させる工程;
iii. 工程(i)で得た、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される肺炎球菌の血清型に由来する多糖を含む肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットを、塩、ヒスチジン及びコハク酸の存在下、18℃~30℃、pH5.0~7.0で、12時間~24時間かけて、アルミニウム塩アジュバントに吸着させる工程;並びに、
iv. 前記工程(ii)で得た第1のセットと、前記工程(iii)で得た第2のセットを、前記組成物0.5mlあたり80μg~150μgの界面活性剤の存在下、ラシュトンタービンフラットブレードインペラを使用して、4℃~12℃で50時間~80時間混合する工程;
を含み、
ここで、前記組成物は、i) アルミニウム塩アジュバントの総濃度が前記組成物0.5mlあたりAl3+20~375μgである、ii) 各多糖-キャリアタンパク質の吸着率が少なくとも30%である、iii) 前記多糖-キャリアタンパク質結合体が望ましい物理化学的特性及び免疫原性を維持する、並びに、iv) 前記組成物0.5mlあたり80μg~150μgの前記界面活性剤が、凝集及び粒子形成を最小限にし、前記ワクチン組成物の流動性を改善する、
ことを含む、方法。
【請求項2】
前記肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットが、
- 1、2、3、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F及び33F;
- 1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F及び33F;
- 1、2、3、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、24F及び33F;又は、
- 1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、24F及び33F;
からなる群から選択される血清型に由来する肺炎球菌多糖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(ii)及び工程(iii)のアルミニウム塩アジュバントが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム及び硫酸アルミニウムカリウム並びにそれらの混合物を含む群から選択され;並びに、前記アルミニウム塩アジュバントの総濃度が、前記ワクチン組成物0.5mlあたりAl3+170~200μgである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも3つの異なるキャリアタンパク質が、少なくとも1つの肺炎球菌多糖と結合した、CRM197、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、髄膜炎菌外膜複合体、破傷風トキソイドフラグメントC、8アミノ酸変異を伴う組換え全長破傷風毒素(8MTT)、百日咳トキソイド、インフルエンザ菌プロテインD、大腸菌LT、大腸菌ST、緑膿菌外毒素A、外膜複合体c(OMPC)、ポリン、fHbp、Por A、Por B、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、ジフテリア毒素フラグメントB(DTFB)、PhtA、PhtB、PhtE、肺炎球菌PhtD、肺炎球菌表面タンパク質BVH-3及びBVH-11、モラクセラ・カタラーリス(M. catarrhalis)uspA、炭疽菌の防御抗原(PA)並びに無毒化浮腫因子(EF)及び致死因子(LF)、オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、A群又はB群連鎖球菌C5aペプチダーゼ、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、精製ツベルクリン(PPD)、コレラ毒素サブユニットB、合成ペプチド、ヒートショックタンパク質、百日咳タンパク質、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、N19などのさまざまな病原体抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質、鉄取り込みタンパク質、クロストリディオイデス・ディフィシル(C. difficile)及びB群連鎖球菌の毒素A又はB、並びにそれらの等価物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
3、6A、9V、15B、19A及び22Fを含む群から選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を、キャリアタンパク質としての破傷風トキソイドと結合させ、血清型4及び24Fに由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を、キャリアタンパク質としてのジフテリアトキソイドと結合させ、並びに、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C,7D,7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記肺炎球菌多糖を、シアニル化反応によりキャリアタンパク質と結合させ、前記シアニル化試薬が、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)、1-シアノ-4-ピロリジノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CPPT)、1-シアノ-イミダゾール(1-CI)、1-シアノベンゾトリアゾール(1-CBT)、2-シアノピリダジン-3(2H)オン(2-CPO)、それらの機能的誘導体及び修飾体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記肺炎球菌多糖を、肺炎球菌多糖:1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)が1:0.3~1:2の重量比で混合したCDAPと、22℃~25℃で4分~10分間反応させ、このCDAP活性化多糖を、CDAP活性化肺炎球菌多糖:キャリアタンパク質が1:0.5~1:1.5の重量比で混合したキャリアタンパク質と接触させて、pH8.0~10で3時間~5時間反応を行い、続いてグリシンでクエンチして多糖-キャリアタンパク質結合体を得ることを含むシアニル化反応により、前記肺炎球菌多糖をキャリアタンパク質と結合させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
結合の前に、前記肺炎球菌多糖又はキャリアタンパク質を、カルボジイミド、還元的アミノ化又はシアニル化反応により、ヒドラジン、カルボヒドラジド、塩化ヒドラジン、ジヒドラジド、ε-アミノヘキサン酸、クロロヘキサノールジメチルアセタール、D-グルクロノラクトン、シスタミン及びp-ニトロフェニルエチルアミン、ヘキサンジアミン、エチレンジアミン、1,6-ジアミノオキシヘキサン又はβ-プロピアミド、ニトロフェニルエチルアミン、ハロアルキルハライド、6-アミノカプロン酸並びにそれらの組合せからなる群から選択されるヘテロ又はホモ二官能性リンカーで誘導体化する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
結合工程の前に、血清型6Aに由来する多糖以外の前記肺炎球菌多糖を、熱処理、音波処理、機械的手段、化学的加水分解、エンドライシス的酵素処理、物理的剪断、ガウリンホモジナイザー及び超音波処理の1つ以上を使用してサイジングし;サイジング後の血清型6Aに由来する多糖以外の前記肺炎球菌多糖の分子量が、50kDa~600kDa(SEC-HPLC)、好ましくは100kDa~200kDa(SEC-HPLC)であり;並びに、血清型6Aに由来する前記肺炎球菌多糖の分子量が、400kDa~900kDa(SEC-HPLC)、好ましくは700kDa~800kDa(SEC-HPLC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記サイジング後の血清型4に由来する多糖の分子量が、130kDa~170kDa(SEC-HPLC)、好ましくは130kDa~165kDa(SEC-HPLC);前記サイジング後の血清型24Fに由来する多糖の分子量が、100kDa~200kDa(SEC-HPLC)、好ましくは120kDa~170kDa(SEC-HPLC);前記サイジング後の血清型6Bに由来する多糖の分子量が、100kDa~200kDa(SEC-HPLC)、好ましくは110kDa~175kDa(SEC-HPLC);前記サイジング後の血清型9Vに由来する多糖の分子量が、120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、好ましくは130kDa~150kDa(SEC-HPLC);前記サイジング後の血清型15Bに由来する多糖の分子量が、120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、好ましくは130kDa~150kDa(SEC-HPLC);前記サイジング後の血清型19Aに由来する多糖の分子量が、120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、好ましくは130kDa~150kDa(SEC-HPLC);前記サイジング後の血清型22Fに由来する多糖の分子量が、100kDa~150kDa(SEC-HPLC)、好ましくは120kDa~140kDa(SEC-HPLC)又はこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(ii)及び工程(iii)の塩が、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム及びそれらの組合せを含む群から選択され、前記塩の濃度が、前記ワクチン組成物0.5mlあたり2mg~10mgであり;
工程(ii)及び工程(iii)のヒスチジンが、前記ワクチン組成物0.5mlあたり0.1mg~10mgであり;
工程(ii)及び工程(iii)のコハク酸が、前記ワクチン組成物0.5mlあたり0.1mg~10mgであり;並びに、
前記工程(iv)の界面活性剤が、ポリソルベート、ポリマーグリコール、ソルビタンエステル及びそれらの組合せを含む群から選択され、界面活性剤の濃度が、前記ワクチン組成物0.5mlあたり80μg~120μgである、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(iv)の界面活性剤がポリソルベート20であり、ポリソルベート20の濃度が、前記ワクチン組成物0.5mlあたり90μg~120μgである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(ii)及び工程(iii)の吸着を、2-フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム(フェメロール)、フェノール、m-クレゾール、チオメルサール、ホルムアルデヒド、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-クロロ-m-クレゾール、ベンジルアルコール及びそれらの組合せを含む群から選択される保存剤の存在下で行い、保存剤の濃度が前記ワクチン組成物0.5mlあたり1mg~8mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記保存剤が、濃度が前記ワクチン組成物0.5mlあたり2.5mg~5mgの2-フェノキシエタノールである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
安定で免疫原性の多価肺炎球菌多糖-タンパク質複合型ワクチン組成物であって、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって製造され、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48からなる群から選択される肺炎球菌の血清型に由来する多糖を有し;
CRM197、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、髄膜炎菌外膜複合体、破傷風トキソイドフラグメントC、8アミノ酸変異を伴う組換え全長破傷風毒素(8MTT)、百日咳トキソイド、インフルエンザ菌プロテインD、大腸菌LT、大腸菌ST、緑膿菌外毒素A、外膜複合体c(OMPC)、ポリン、fHbp、Por A、Por B、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、ジフテリア毒素フラグメントB(DTFB)、PhtA、PhtB、PhtE、肺炎球菌PhtD、肺炎球菌表面タンパク質BVH-3及びBVH-11、モラクセラ・カタラーリス(M. catarrhalis)uspA、炭疽菌の防御抗原(PA)並びに無毒化浮腫因子(EF)及び致死因子(LF)、オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、A群又はB群連鎖球菌C5aペプチダーゼ、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、精製ツベルクリン(PPD)、コレラ毒素サブユニットB、合成ペプチド、ヒートショックタンパク質、百日咳タンパク質、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、N19などのさまざまな病原体抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質、鉄取り込みタンパク質、クロストリディオイデス・ディフィシル(C. difficile)及びB群連鎖球菌の毒素A又はB、並びにそれらの等価物からなる群から選択される少なくとも3つの異なるキャリアタンパク質を含み;
各キャリアタンパク質が少なくとも1つの肺炎球菌多糖と結合しており;
必要に応じて、前記組成物の各用量が、肺炎球菌の各血清型の多糖を1.0μg~10μg含む;
ワクチン組成物。
【請求項16】
前記組成物が、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30価の肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合型組成物である、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
前記ワクチン組成物が、血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに由来する多糖を有する20の異なる肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
前記ワクチン組成物が、血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、24F及び33Fに由来する多糖を有する21の異なる肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記ワクチン組成物が、それぞれが少なくとも1つの肺炎球菌多糖と結合している、CRM197、ジフテリアトキソイド(DT)及び破傷風トキソイド(TT)から選択される3つの異なるキャリアタンパク質を含む、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
CRM197と結合した前記肺炎球菌多糖が、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C,7D,7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択され;
前記TTと結合した肺炎球菌多糖が、1、3、5、6A、9V、15B、19A及び22Fを含む群から選択され;並びに、
前記DTと結合した肺炎球菌多糖が、3、4、15B及び24Fを含む群から選択される、
請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
3、6A、9V、15B、19A及び22Fを含む群から選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖が、キャリアタンパク質としての破傷風トキソイドと結合し、血清型4及び24Fに由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖が、キャリアタンパク質としてのジフテリアトキソイドと結合し、並びに、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C,7D,7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖が、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合している、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記組成物が20価の組成物であり、前記組成物が、
- 20の異なる血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖;
- Al3+170μg~200μgを含有するアジュバントとしてのリン酸アルミニウム;
- 濃度1mg~2mgのヒスチジン;
- 濃度1mg~2mgのコハク酸塩;
- 濃度80μg~120μgのポリソルベート20;及び、
- 濃度2mg~10mgの塩化ナトリウム;
を含み、
- pH5~7、
の0.5ml用量として製剤化され、
i. 血清型4に由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのDTと結合し;血清型15B、6A、9V、19A及び22Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのTTと結合し;並びに、血清型1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのCRM197と結合し;
ii. 血清型6B以外の各肺炎球菌多糖が、2.2μg~3.3μgであり;
iii. 血清型6Bの肺炎球菌多糖が、4.4μg~6.6μgであり;
iv. CRM197が、10μg~200μgであり;
v. 破傷風トキソイドが、5μg~70μgであり;並びに、
vi. ジフテリアトキソイドが、1μg~25μg;
である、請求項15~21のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記組成物が21価の組成物であり、前記組成物が、
- 21の異なる血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、24F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖;
- Al3+170μg~200μgを含有するアジュバントとしてのリン酸アルミニウム;
- 濃度1mg~2mgのヒスチジン;
- 濃度1mg~2mgのコハク酸塩;
- 濃度80μg~120μgのポリソルベート20;及び
- 濃度2mg~10mgの塩化ナトリウム;
を含み、
- pH5~7、
の0.5ml用量として製剤化され、
i. 血清型4及び24Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのDTと結合し;血清型15B、6A、9V、19A及び22Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのTTと結合し;並びに、血清型1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのCRM197と結合し;
ii. 血清型6B以外の各肺炎球菌多糖が、2.2μg~3.3μgであり;
iii. 血清型6Bの肺炎球菌多糖が、4.4μg~6.6μgであり;
iv. CRM197が、10μg~200μgであり;
v. 破傷風トキソイドが、5μg~70μgであり;並びに、
vi. ジフテリアトキソイドが、1μg~25μg;
である、請求項15~21のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
血清型15Bに由来する肺炎球菌多糖が、DT及びCRM197から選択されるキャリアタンパク質と結合している、請求項15~23のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
前記ワクチン組成物が、9A、9N及び9Lから選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を更に含む、請求項15~23のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
各肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の分子量が、1500kDa~30000kDa(SEC-MALS)である、請求項15~25のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
前記ワクチン組成物における6A-TT結合体の分子量が、7000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは8000kDa~9000kDa(SEC-MALS);
前記ワクチン組成物における4-DT結合体の分子量が、3000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは3000kDa~9000kDa(SEC-MALS);
前記ワクチン組成物における24F-DT結合体の分子量が、1500kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは2000kDa~6000kDa(SEC-MALS);
前記ワクチン組成物における6B-CRM197結合体の分子量が、4000kDa~15000kDa(SEC-MALS)、好ましくは5000kDa~12000kDa(SEC-MALS);
前記ワクチン組成物における9V-TT結合体の分子量が、15000kDa~30000kDa(SEC-MALS)、好ましくは20000kDa~30000kDa(SEC-MALS);
前記ワクチン組成物における15B-TT結合体の分子量が、6000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは7500kDa~9000kDa(SEC-MALS);
前記ワクチン組成物における19A-TT結合体の分子量が、5000kDa~8000kDa(SEC-MALS)、好ましくは6000kDa~7000kDa(SEC-MALS);
前記ワクチン組成物における22F-TT結合体の分子量が、9000kDa~18000kDa(SEC-MALS)、好ましくは10000kDa~17000kDa(SEC-MALS)又はそれらの組合せである、請求項26に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
前記組成物が、前記ワクチン組成物0.5mlあたり2.5mg~5mgの2-フェノキシエタノールを含む複数回投与用組成物である、請求項15~27のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
前記組成物が、2~8℃、25℃及び40℃で安定であり;必要に応じて前記肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体が、遊離の多糖が15%未満で、遊離のタンパク質が10%未満である、請求項15~28のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項30】
前記血清型6A、9V及び19Aに由来する肺炎球菌多糖が、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合した場合と比較して、キャリアタンパク質としての破傷風トキソイド(TT)と結合した場合に、IgG力価が上昇し;必要に応じて、血清型6A、9V、19A及び15Bが、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合した場合と比較して、キャリアタンパク質としてのTTに結合した場合に、総IgG力価及び機能的IgG力価が少なくとも2倍増加する、請求項15~29のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の参照
本出願は、インド特許法、1970、第54条に基づき出願された追加特許であり、2015年6月8日に出願された、インド特許出願第2185/MUM/2015号に対する優先権を主張する。
【0002】
分野
この開示は、ワクチン組成物を製造する方法及び当該方法によって得られるワクチン組成物に関する。特に、この開示は、ワクチン組成物、改善された製剤、新規の安定で免疫原性の多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造する方法、並びに肺炎球菌を有する対象の予防及び/又は治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書における全ての刊行物は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的にかつ個別に示された場合と同程度に、参照により組み込まれる。以下の説明は、本発明の理解に有用である可能性がある情報を含む。本明細書で提供される情報のいずれかが従来技術であること若しくは現在特許請求されている発明に関連すること又は具体的に若しくは暗示的に参照される任意の刊行物が従来技術であることを承認するものではない。
【0004】
肺炎球菌は、小児及び成人における、肺炎、髄膜炎及び胸水の主な原因である。今日まで確認されている肺炎球菌の異なる血清型は、100種を超える。肺炎球菌は、世界中で5歳未満の小児が毎年100万人を超えて死亡する原因となっており、侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)(例.菌血症、菌血症性肺炎及び髄膜炎)及び非侵襲性疾患(例.非菌血症性肺炎、中耳炎及び副鼻腔炎)の主因である。まとめて、これらの病状は、他の病原体によって引き起こされる疾患よりも高い世界的罹患率及び死亡率の原因となっている。5歳未満の小児、高齢者、及び(HIV感染症及び免疫不全に関連する他の病状のような)併存症の病状を有する成人は、肺炎球菌による疾患をより発症しやすい傾向にある。
【0005】
侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)のために、5歳未満の小児において、約4500万件の下気道感染症の発症と、300000件を超える死亡が毎年起きていると推定される。
【0006】
2つのクラスの肺炎球菌ワクチンが現在利用可能である:1つは多糖をベースとしたものであり、もう1つはキャリアタンパク質と結合した多糖をベースとしたものである。
【0007】
ニューモバックス(登録商標)23(Merck Sharp & Dohme Corp.)は、産業国において約90%の侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こす23種の血清型(1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、19A、20、22F、23F及び33F)からの精製莢膜多糖を含有する、多糖をベースとしたワクチンである。しかし、肺炎球菌多糖は、T細胞非依存性抗原であることから、2歳未満の乳幼児では免疫原性が低く、免疫記憶を誘導できない。したがって、乳幼児は、結合していない肺炎球菌多糖にあまり反応しない。
【0008】
世界の毎年の肺炎球菌による小児の死亡のおよそ50%が、アフリカ及びアジアの4つの国:インド(約68,700人が死亡);ナイジェリア(約49,000人);コンゴ民主共和国(約14,500人);及びパキスタン(約14,400人)で起きている。
【0009】
乳児及び小児における肺炎球菌多糖ワクチンに関連する免疫原性の低下という問題に対処するため、疫学的に最も重要な肺炎球菌の血清型をさまざまなタンパク質キャリアと結合させた、改善された多糖-タンパク質結合型ワクチンが開発されることが必要とされている。この手法は、免疫原性を高め、血清の抗体レベルを上昇させるために、多糖をタンパク質に共有結合的に連結することを含む。これらのタンパク質キャリアは、T細胞依存性抗原であり、ヘルパーT細胞応答を刺激し、ワクチン接種した個体を既往性又はブースター応答のために抗原刺激する。多糖抗原のタンパク質キャリアへの結合は、多糖をT細胞非依存性抗原から、幼児が免疫学的に反応できるT細胞依存性抗原に変換する。
【0010】
免疫原性タンパク質と結合した多糖からなる結合型ワクチンは、B細胞記憶及び長期免疫の構築とともに、T細胞依存性応答を誘発する。PCVの利点は、幼児におけるその活性と、その持続性の可能性があることを含む。WHOが事前に承認した、肺炎球菌に対する肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)は、当時、乳幼児において侵襲性肺炎球菌疾患を引き起こし最も頻繁に単離された7種の血清型(4、6B、9V、14、18C、19F、23F)を含有するプレベナー(登録商標)(Pfizer)を含み、これは2000年2月に米国で初めて認可された。その後、1、3、4、5、7F、9V、14、18C及び23Fに加えて血清型6A、6B、19A、19Fからの多糖の結合体を含有するプレベナー13(登録商標)(Pfizer)が承認された。シンフロリックス(登録商標)(GSK)は、別の承認された結合型ワクチンであり、1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F及び23Fに対する防御、並びに19A及び6Aに対する交差防御を提供する。PNEUMOSIL(登録商標)(Serum Institute of India Pvt Ltd(SIIPL))は、WHOが事前に承認した10価のワクチンであり、肺炎球菌の血清型1、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19F及び23Fに対する防御を与える(世界で最も負担の大きい地域-多くの中南米及びメキシコの国々を含むアフリカ及びアジアにおいて深刻な疾患を引き起こす可能性が最も高い10種の最も関連する血清型に対して防御する)。
【0011】
世界中の小児の予防接種プログラム(NIP)での肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)の使用は、肺炎球菌疾患に関連する死亡率及び罹患率を著しく減少させている。Serum InstituteのPNEUMOSIL(登録商標)は、少なくとも60の低所得の国々で導入され、2億2,500万人を超える小児がワクチン接種を受け、700,000人を超える死亡が阻止されている。また、2010~2019年に世界中で5歳未満の小児において、1億7,500万件の肺炎球菌疾患及び625,000人の死亡がPCV13によって阻止されたと推定される。肺炎球菌疾患に対する防御を幼児に与えるのに加えて、通例の小児の予防接種は、ワクチン血清型の鼻咽頭保菌の減少を通じて、ワクチン接種を受けていない集団にも間接的な防御を提供し、これにより疾患の伝播を減少させてきた。より多くの国でPCVの接種率が増加すれば、PCVワクチン接種は、地球全体で、5歳未満の小児において、肺炎球菌疾患による年間約5,460万人の発症及び399,000人の死亡を阻止する可能性がある。
【0012】
しかし、既存の肺炎球菌結合型ワクチンの通例使用に伴う懸念の1つは、血清型が置きかわることである。世界保健機関(WHO)は、非ワクチン血清型循環及び血清型の置きかわりが出現し、小児及び成人においてこれらの血清型の肺炎球菌疾患の割合の増加につながっていると報告している(WHO Position Paper-February 2019. Wkly. Epidemiol. Rec. 2019; 94:85-104及びWeinbergera M.Dら; Lancet. 2012; 378:1962-1973)。各ワクチンは、肺炎球菌の全ての血清型のうちのいくつかのみを標的とし、そのため、非ワクチン血清型(NVT)の流行が増加してNVT保菌及び関連する臨床症候群の増加につながると予想される。調査研究は、PCV-7の導入に引き続くNVTの保菌の増加及びNVT肺炎球菌疾患の増加を実証している。さらに、置きかわりの本当の量を過小評価する可能性がある疾患調査システムにおけるバイアスを考慮する価値がある。
【0013】
2010年の予防接種プログラムにおけるプレベナー13(登録商標)の導入は、小児においてIPDを予防するのに効果的な方策であった。肺炎球菌の疾患負担は、プレベナー13(登録商標)の適用以来、著しく減少している。プレベナー13(登録商標)は、IPDの全体の発生率を50%を超えて減少させている。しかし、肺炎球菌の血清型分布に明らかな変化が生じており、NVTの流行の増加は、PCV13の導入後のワクチン血清型の流行の減少という恩恵を相殺する可能性がある。したがって、血清型2、8、10A、11A、12F、15B、22F、24F及び33Fを含む肺炎球菌の最大の血清型に対して十分に防御できる高い価数のワクチンが必要とされている。
【0014】
さらに、個々の血清型の流行は、異なる地理的地域又は年齢層において経時的に変化する可能性がある。NVTの流行及び病原性の増加は、PCVワクチン接種の普及による恩恵であった肺炎球菌疾患の負担の軽減に新たな課題を投げかけている。NVTの中で、血清型24Fは、欧州及び西太平洋地域において、最も流行しているIPDの原因病原体の1つであると考えられる。(中東及び北アフリカ)さらに、血清型24F並びに8、12F及び33Fのような他のNVTは、PCVで免疫を付与された小児の中で侵襲性スペクトルの上端にあると考えられた。したがって、高い価数の肺炎球菌ワクチンを開発する際に、血清型分布の地理的なばらつき及び肺炎球菌の血清型の流行の発展が考慮されるべきである。
【0015】
近年、更に2つの多価肺炎球菌ワクチンが米国で使用のために承認された。バクニュバンス(登録商標)(Merck Sharp & Dohme Corp)は、15種の肺炎球菌の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに対する防御を提供する。別の承認された結合型ワクチンであるプレベナー20(登録商標)(Pfizer)は、肺炎球菌の血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに対する防御を提供する。
【0016】
Pfizer13価、Pfizer20価、Merckの15価、Pfizerの7価は全て、単一の種類のキャリアタンパク質、すなわちCRM197からなるワクチンである。結合型ワクチンの免疫原性に影響を与える可能性のある最も重要な要因の1つは、キャリアを介した抗体応答の抑制を回避するキャリアタンパク質の選択である。単一のキャリアタンパク質では、キャリアが誘導するエピトープ抑制がもたらされ、個々の血清型では、望ましい抗多糖抗体応答が達成されない場合がある。多糖及びペプチドのような化合物は、免疫原性が低く、単独では免疫応答を誘導できず、それらは、通常、キャリアに共有結合的に連結される必要があり、キャリアは通常、免疫原性が高い大きなタンパク質である。これらのキャリアタンパク質は、抗原提示細胞(APC)に結合し、ヘルパーT細胞への提示のためのMHCクラスIIを介してT細胞エピトープを提供し、免疫応答を高める。破傷風トキソイド(TT)、ジフテリアトキソイド(DT)、ジフテリア毒素の非毒性変異体(CRM197)のようなタンパク質が、免疫原性を増強するための効果的なキャリアとして使用される。しかし、これらのキャリアタンパク質には、抗ペプチド/多糖応答と競合する抗体応答を誘導する;対象が以前にそのキャリアに曝露されたことがある場合、悪化する可能性がある問題がある。この状況は、以前の接種で同じ種類のキャリアタンパク質を使用したワクチンでは、より悪化し、別のワクチンで同じキャリアタンパク質が再び使用されたとき、免疫応答の抑制がもたらされる。したがって、キャリアタンパク質の選択は、ワクチンの製造の間、重要な基準である。そのため、キャリアが誘導するエピトープ抑制の問題に対処する、複数の種類のキャリアタンパク質を有する代わりの多価結合型ワクチンが必要とされている。
【0017】
さらに、前述のPfizer/GSK/Merckのワクチンは、今のところ先進国でのみ利用可能であり、肺炎球菌疾患に対して最も脆弱な低及び中所得の国々が地球全体で利用でき、最も流行している、新興の病原性肺炎球菌の血清型に対する防御を付与できる、手頃な肺炎球菌ワクチンの緊急の必要性が未だに存在する。
【0018】
上述のとおり、多糖が、乳児において防御的となるのに十分な抗体を誘導するためには、免疫原としての多糖は、T細胞の助けを誘発しなければならない。したがって、多糖は、幼児において十分に免疫原性にするために、キャリアタンパク質と共有結合的に結合させる必要がある。多糖とキャリアタンパク質の単なる混合物は、乳児において多糖をより免疫原性にするものではない。したがって、結合型ワクチンは、T細胞エピトープ含有ポリペプチド、一般にはキャリアタンパク質と共有結合的に結合している細菌多糖、サイズが縮小された多糖又はそれ由来のオリゴ糖で一般に構成される。結合体に対する免疫応答は、タンパク質に対するそれとよく似ている。これは、結合した多糖に対する強力なIgG応答の亢進をもたらし、幼児において免疫学的記憶を生じさせる。
【0019】
多糖は、結合効率/結合体収率を改善し、反応基の数を増やして結合体の免疫原性を増強するために、結合工程の前に、断片化/サイジングすることもできる。多糖の断片化/サイジングは、熱加水分解、化学的加水分解(酸性、アルカリ性、オゾン分解及びフリーラジカル)、酵素的サイジング(リアーゼ及びヒドロラーゼ)、超音波処理及びホモジナイゼーションのような異なる方法によって、ランダムにサイズを縮小してもよく、これにより、試料の多分散性の増加がしばしばもたらされ、これに続いてサイジングされて(クロマトグラフィー又は限外ろ過の工程によって)、キャリアタンパク質結合のためのより明確な長さの多糖を生じることができる。サイズが縮小された多糖は、一般に末端還元糖を使用することによってキャリアタンパク質と結合される。そのような選択的な手法は、糖鎖への化学修飾を回避し、より明確な構造を生じ、それは一貫性をもって製造しやすい。酵素的サイジングは、単純であるが、酵素の商業的利用可能性、費用及び変性に対する感受性によって制限される。化学的加水分解(酸性及びアルカリ性処理又はフリーラジカル機構)は、大量の単糖及び副生成物の生成をもたらし、これはワクチンの大規模生産において、望ましくない。
【0020】
通常、精製された多糖が、化学的に活性化/修飾されてキャリアタンパク質と結合/連結できる反応基を生成する。糖の構造的完全性を変えることなく、効率的な結合を可能にするために、糖鎖の最適な活性化度を特定する必要がある。多糖活性化のために最も一般的に使用される方法の2つは、過ヨウ素酸酸化及びシアニル化である。過ヨウ素酸酸化では、酸化剤(過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム又は過ヨウ素酸のようなペルヨーデート)により多糖に存在する末端ヒドロキシル基がアルデヒドに酸化される。多糖の近接のヒドロキシル基が酸化剤によって切断され、その結果、反応性アルデヒド基が形成される。多糖を活性化するためのペルヨーデートの使用に伴い生じる可能性のある重要な問題は、重要なエピトープが喪失する多糖の物理的構造の変化である。低レベルの活性化でさえ、特定のエピトープを喪失させ、新しいエピトープを作り出す可能性があることが理解できる。特に、還元的アミノ化の前の過ヨウ素酸酸化工程は、糖の環構造を開くことができ、それは、血清型に応じて、開環結合体をもたらす可能性がある。そのような開環多糖は、いくつかの場合、結合方法の後に再び閉じ、多糖が更に新しい高次構造を形成し、新しいエピトープをもたらす可能性がある(Poolman J.らClin. Vaccine Immunol. 2011; 18:327-336)。
【0021】
選択する化学に応じて、多糖及び/又はタンパク質キャリアを、結合前に誘導体化する可能性がある。化学的誘導体化のレベルは、結合化学量論、B細胞及びT細胞のエピトープ維持への影響及び凝集形成を推進できる。化学的誘導体化のレベルは、多糖対タンパク質比、及び最終的には免疫原性に影響を与える。したがって、結合戦略の選択は、結合の効率、糖対タンパク質比、及び複合多糖の構造とサイズに影響し、結果として免疫原性に影響を及ぼす可能性がある。
【0022】
結合方法は、免疫原性、及び誘導された抗体の機能性に影響を与える可能性がある。還元的アミノ化結合方法は、認可されている肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)の大部分(Pfizer7価13価20価/Merck15価PCV)で使用されており、糖由来アルデヒドとタンパク質中のアミンとの間のシッフ塩基形成と、これに続く還元による糖-タンパク質結合からなる。第1の工程は、過ヨウ素酸ナトリウムを用いた部分的酸化による、多糖の鎖へのアルデヒド基の導入である。糖環のcis-ジオール及びシアル酸残基が、過ヨウ素酸酸化によってアルデヒドを生成する最も反応しやすい区画である。その後、キャリアタンパク質が反応に加えられる。糖のアルデヒドは、通常、キャリアタンパク質のリジン残基と反応する。この方法は、炭水化物中のカルボニル基とタンパク質中のアミノ基との間の、シッフ塩基による最初の結合の形成からなる。その後、シッフ塩基は、弱い還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウムで、より安定なアミンへと特異的に還元される。還元的アミノ化は、非プロトン性溶媒(DMSO)も利用する。しかし、還元的アミノ化には、低収率、低結合効率及び炭水化物構造の部分的分解のリスクを含む重要な欠点がある。さらに、DMSOは、沸点が著しく高く、多糖及びキャリアタンパク質にとって有害である可能性があるため、実用的ではない。DMSOは、有機溶媒であり、キャリアタンパク質を変性する可能性がある。また、DMSOの主な欠点の1つは、反応後の除去が難しいことである;その高い沸点(189℃)が、ロータリーエバポレーターによる除去を非常に困難にしている。
【0023】
シアニル化化学では、当初は、CNBrを利用して多糖に反応性シアノエステル基を生成し、John Robbins博士が1980年に報告した最初のHib結合体で使用された。CNBrを用いたシアニル化は、タンパク質-多糖結合型ワクチンを製造するために一般的に使用されている方法である。しかし、CNBrによって調製された結合体の効率は低く、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)のような反応性リンカーの使用を必要とした。活性化収率はわずか0.5~2%であり、健康上のリスクを伴いながら、大量のCNBrを使用することになる。CNBrは低コストの試薬であるが、高い毒性があり、その使用には特別な注意が必要とされる。さらに、影響を受けやすい多糖は、CNBr活性化に必要な高いpH条件によって損傷を受ける可能性がある。これらの方法の別の不利な点は、活性化多糖が、異なる割合でシアン酸エステルとイミドカーボネート構造の両者を含有するということである。シアン酸エステル基は、高いpHで加水分解されるが、イミドカーボネートは、より酸性のpHでの加水分解で不活性なカーボネートを形成する。(Victor Moraisら; Bioengineering (Basel). 2022 Dec; 9(12): 774)。
【0024】
あるいは、CDAPは、タンパク質-多糖結合型ワクチン(シンフロリックス、PNEUMOSIL(登録商標))で利用されており、可溶性多糖の活性化のためにシアニル化剤として使用されている。CDAPは、CNBrと比較して使用しやすく、多糖をCNBrよりも低いpHで、より少ない副反応で活性化できるという利点を有する。CNBrとは異なり、CDAPで活性化した多糖は、タンパク質と直接結合でき、より単純な方法となる。さらに、CDAPで活性化した多糖は、ジアミン又はジヒドラジドで官能化してアミノ又はヒドラジドで誘導体化した多糖を作ることができる。
【0025】
ワクチン製剤は、長期保存の必要性と複数回用量容器の使用に適応するために、一般に安定で、均一な一貫性でなくてはならない。多糖-タンパク質結合体を含むタンパク質をベースとしたワクチンは、タンパク質凝集及び沈殿を受け、その結果、沈殿したタンパク質生成物が利用できないためにワクチンの有効総濃度が低くなる可能性がある。多糖-タンパク質結合型ワクチンは、特に、キャリアタンパク質単独よりも凝集する傾向が強いように思われる(Bertiら, 2004, Biophys J 86:3-9を参照されたい)。多糖-タンパク質結合体の製造の間、製剤は、多糖-多糖型、タンパク質-タンパク質型又は多糖-タンパク質型の凝集体を含む可能性がある。そのような凝集体は、最終製品でも観察され、多糖-タンパク質結合型ワクチンの充填されたバイアルの4%~10%が不合格となり、そのため結合型ワクチンの安定性及び有効性に影響する。
【0026】
さらに、結合時及び保存中の結合していない又は「遊離の」糖のレベルは、多糖-キャリアタンパク質ワクチンにとって決定的な安定性の属性であると考えられ、ワクチンの有効性に大きな影響を及ぼす。結合していない/遊離の多糖は、結合体の不完全な精製又は最終生成物の不安定性のために生じる場合がある。遊離の多糖、遊離のキャリアタンパク質、多糖のO-アセチル化率及び多糖の分子サイズは、安定性を示す重要なパラメーターであり、ワクチンの質及び免疫原性に影響を及ぼし、最適化されるべきである。
【0027】
肺炎球菌の血清型の全てが等しく流行しているわけではないため、効果的な肺炎球菌結合型ワクチンは、肺炎球菌疾患に最も一般的に関連する血清型を含有する必要がある。血清型の置きかわり株の中での抗生物質抵抗性の増加及び結合型ワクチンの実施後の保菌と感染分離株の両者における血清型の置きかわりの発生は、肺炎球菌に対する適用範囲のより広い肺炎球菌ワクチンの必要性を与えている。
【0028】
各血清型は個別にキャリアタンパク質と結合しなければならないため、ワクチン血清型の数は一般に制限され、キャリアが誘導する耐性を制御するためにキャリアタンパク質の総用量を制限することへの懸念がある。これは、キャリアタンパク質に対する免疫応答を高める場合があり、それが全身性の過負荷を引き起こし、特定の血清型に対する免疫応答を低下させる可能性がある。他の制限には、より多くの結合した多糖が含まれる場合に、投与に必要なワクチン用量の容量が含まれる場合があり、それはワクチンの購入のしやすさにも影響を及ぼす可能性がある。したがって、多価ワクチンの開発の間、既存及び追加の血清型に対する免疫刺激を拡大し、従来の確立された結合方法に関与する全ての要因に取り組むことが重要である。血清型の数の増加に対する好適な防御を提供するのに加えて、血清型の数の増加にもかかわらず、キャリアタンパク質抗体を減少させる方法を開発する必要もある。
【0029】
出願人は、安定で免疫原性の多糖-タンパク質結合体を調製することが難題であることをこの明細書で強調する。多価結合型ワクチンは、再現可能に作り、特性を明らかにすることが非常に難しく、それが使用できる前に多くのリリース試験を必要とする。多糖抗原の物理化学的特性、多糖の断片化/サイジングの方法、サイジング後の多糖の回収、多糖の長さ/分子量、キャリアタンパク質に対する多糖比と使用する結合化学の種類、結合効率、各血清型に対する最適化吸着(ともに吸着される血清型の特定の組合せ)、凝集体を含まない製剤(賦形剤の種類、ポリソルベートの種類/濃度、アラムアジュバントの種類/濃度)、保存時の安定性(結合体重量、遊離の多糖の割合、遊離のタンパク質の割合)、これら全てが各多糖-キャリアタンパク質結合型ワクチンの構造と免疫応答の両者に影響を及ぼし、その上、各多糖-タンパク質結合体の製造方法と安定性は異なり、ある結合体から別の結合体を推定できないことを、出願人は見いだした。多糖抗原が結合する部位もワクチンの免疫原性に影響を及ぼす可能性がある。さらに、多価結合型ワクチンにおいて、単一の製剤中の異なる結合体の動的相互作用が、わずかな血清型の免疫応答をマスキング又は増強する可能性がある。免疫原性エピトープを確実に維持するために、精製、サイジング、結合及び調合段階にわたる多糖構造の完全性の維持も必須条件である。
【0030】
したがって、最適製造方法及び製剤を利用することによって製造され、最大数の肺炎球菌の血清型に対する防御が可能で、キャリアタンパク質が誘導する免疫抑制が低減された、高度に安定な、免疫原性が改善された、地球全体で入手/流通するのに手頃でもある、多価肺炎球菌結合型ワクチンに対する緊急の満たされていないニーズが未だに存在する。
【0031】
目的
本明細書における少なくとも一つの態様が満たすこの開示の目的のいくつかは、以下のとおりである。
【0032】
この開示の目的は、従来技術の1つ以上の問題を改善すること又は少なくとも有用な代替物を提供することである。
【0033】
この開示の別の目的は、多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造する方法を提供することである。
【0034】
この開示の更に別の目的は、吸着が改善された多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造する方法を提供することである。
【0035】
この開示の更に別の目的は、CDAPを利用することによって調製された、3種類のキャリアタンパク質(DT、TT、CRM197)を含む結合体を有する多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物(好ましくは20価又は21価)を製造する方法であって、ここで、血清型4及び24Fからの多糖は個別にDTと結合され;血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fからの多糖は個別にTTと結合され;血清型1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F、33Fからの多糖は個別にCRM197と結合する方法を提供することである。
【0036】
この開示の更に別の目的は、多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造する方法であって、ここで、全てのCRM197及びDTをベースとした結合体は、シアニル化化学を利用した直接結合の手法を使用して、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)で活性化することによって調製される方法を提供することである。
【0037】
この開示の別の目的は、多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造する方法であって、ここで、全てのTTをベースとした結合体は、最初にADHで誘導体化したTT(EDACの存在下)を調製し続いてそれをCDAPで活性化した多糖と結合することによって得られる方法を提供することである。
【0038】
この開示の更に別の目的は、高い結合効率を有する多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造する方法を提供することである。
【0039】
この開示の別の目的は、高い多糖回収率を有する多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造する方法を提供することである。
【0040】
この開示の更に別の目的は、多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造する方法であって、ここで、多糖の構造的完全性は、(化学的サイジングに対して)高圧ホモジナイゼーションを利用することによって維持される方法を提供することである。
【0041】
この開示の更に別の目的は、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0042】
この開示の別の目的は、2つ以上のキャリアタンパク質が結合した肺炎球菌多糖を含む多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0043】
この開示の更に別の目的は、最も流行している肺炎球菌の血清型に対する防御を誘発する多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0044】
この開示の更なる目的は、改善された免疫原性を有する多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0045】
この開示の更に別の目的は、肺炎球菌の血清型の交差反応性を誘発する多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0046】
この開示の更に別の目的は、凝集体がなく、広い温度範囲で長期間安定な多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0047】
この開示の別の目的は、アラムゲルの量を増加させ、最適な吸着をもたらし、それによりB細胞を介したIgG抗体応答が高まる、多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0048】
この開示の更に別の目的は、凝集体を含まない組成物及び流動性を改善する多くのポリソルベート20(Tween(登録商標)20)を有する多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0049】
この開示の別の目的は、血清型4(100~200kDa)、血清型24F(100~200kDa)、血清型3(100~200kDa)、血清型6A(400~900kDa)、血清型6B(100~200kDa)、血清型9V(100~200kDa)、血清型15B(100~200kDa)、血清型19A(100~200kDa)、血清型22F(100~200kDa)のサイジング後の多糖の分子量が最適であり、それらによるそれぞれの多糖-タンパク質結合体が(これらの多糖がCRM197と結合した場合と比較して)改善された免疫原性を確実にする、多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0050】
この開示の更に別の目的は、遊離の多糖の含有量が最小限である多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を提供することである。
【0051】
この開示の他の目的及び利点は、以下の説明からより明らかであり、それは、この開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【発明の概要】
【0052】
出願人は、1)アラムへの吸着が低いことは、ワクチン製剤が保存されているときにそれぞれの結合抗原が経時的に分解するリスクにあることが予想され、したがって、肺炎球菌の血清型4、6B、7F、14、15B、18C、19F、22Fでは、アラムゲルの量を1用量あたり125μgから187.5μgに増加すると、吸着の改善をもたらし(全ての血清型で少なくとも30%)(血清型1、2、3、5、7F、8、9V、10A、12F、14、18C、19A、19F、23F、33Fでは少なくとも80%)、それによりB細胞を介したIgG抗体応答が高まること(少なくとも2倍高いIgG);2)多価肺炎球菌結合型ワクチンにおける多くのポリソルベート20は、凝集体を含まない製剤、改善された流動性をもたらすこと(特に、添加される抗原の数が多くなりゲル含有量が増加した場合);3)CDAPを利用することによって調製された、3種類のキャリアタンパク質(DT、TT、CRM197)を含む結合体を有する、新規の改善された、安定で免疫原性の多価多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物(好ましくは20価又は21価)であって、ここで、血清型4及び24Fは個別にDTと結合され;血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fは個別にTTと結合され、血清型(1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F、33F)からの残りの多糖は個別にCRM197と結合される、ワクチン組成物;4)全てのCRM197及びDTをベースとした結合体が、シアニル化化学を利用した直接結合の手法を使用して、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)で活性化することによって調製され、一方で全てのTTをベースとした結合体が、最初にADHで誘導体化したTT(EDACの存在下)を調製し続いてそれをCDAPで活性化した多糖と結合することによって得られること;5)血清型4のサイジング後の多糖の最適な分子量は130kDa~170kDa(SEC-HPLC)、血清型24Fは100kDa~200kDa(SEC-HPLC)、血清型3は140kDa~180kDa(SEC-HPLC)、血清型6Aは400kDa~900kDa(SEC-HPLC)、血清型6Bは100kDa~200kDa(SEC-HPLC)、血清型9Vは120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、血清型15Bは120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、血清型19Aは120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、22Fは100kDa~150kDa(SEC-HPLC))であり、血清型4の多糖-タンパク質結合体の最適な分子量が3000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型24Fが1500kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型3が3000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型6Aが7000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型6Bが4000kDa~15000kDa(SEC-MALS)、血清型9Vが15000kDa~30000kDa(SEC-MALS)、血清型15Bが6000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型19Aが5000kDa~8000kDa(SEC-MALS)、血清型22Fが9000kDa~18000kDa(SEC-MALS)であり、それらにより改善された免疫原性を確実にすること(これらの多糖をCRM197と結合したときと比較して);6)高い結合効率(血清型4及び24Fでは40%~45%、血清型3では30%~35%、血清型6Aでは40%~45%、血清型9Vでは25%~30%、血清型15Bでは45%~55%、血清型19Aでは30%~35%、血清型22Fでは40%~45%);7)結合体の最適な吸着(少なくとも30%);8)全ての結合体で遊離の多糖の含有量15%未満及び遊離のタンパク質(10%未満);及び9)高い多糖回収率と、(化学的サイジングに対して)高圧ホモジナイゼーションを利用することによって維持される構造的完全性を見いだした。
【0053】
さらに、ワクチン組成物は、2ブレンド法を使用して製造されており、ここで、血清型のいくつかは第1のセットとして個別に吸着され、残りの血清型は第2のセットとしてともに吸着され、続いて両者のセットを混合してワクチン組成物が得られる。
【0054】
次に、この開示を図面を使用して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、この開示の態様による肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を製造するフローを示す。
図2図2は、この開示の態様によるワクチン組成物を調合する方法の流れを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
詳細な説明
この開示は、異なる態様に影響されやすい可能性があるが、この開示が、この開示の原理の例示と考えることができ、開示の範囲を、本明細書に例証され開示されるものに限定することを意図するものではないという理解とともに、いくつかの態様が図面及び以下の詳細な議論に示される。
【0057】
態様は、この開示の範囲を当業者に徹底的にかつ十分に伝えるように提供される。この開示の態様の完全な理解を提供するために、具体的な成分及び方法に関連する、数多くの詳細が記載される。態様で提供される詳細は、この開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことは、当業者には明らかであろう。いくつかの態様では、周知の組成物、周知の方法、及び周知の技術は、詳細には説明されない。
【0058】
この開示における使用される専門用語は、特定の態様を説明する目的のためだけであり、そのような専門用語は、この開示の範囲を限定するものと考えない。この明細書では、「a」、「an」、及び「the」という形式は、文脈がそうでないことを明らかに示唆しない限り、複数形も同様に含むことが意図されてもよい。
【0059】
「含む、含有する(comprise、comprising、including)」及び「有する」は、オープンエンドの移行句であり、したがって、述べられた特徴、整数、工程、操作、要素、モジュール、単位及び/又は成分の存在を明記するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの群の存在又は追加を禁じない。この開示の方法において開示される工程の特定の順番は、必ずしも記載又は例証されるとおりにそれらが実行される必要があると解釈されない。追加の又は代わりの工程を利用してもよいことも理解されたい。
【0060】
第1、第2、第3などの用語は、前述の用語が、1つの要素、成分、領域、層又は区画を別の成分、領域、層又は区画と区別するためにのみ使用してもよいため、この開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。第1、第2、第3などのような用語は、この明細書では、この開示によって明らかに示唆されない限り、具体的な順序又は順番を暗示しない。
【0061】
本明細書に記載される各特徴若しくは態様、又は組合せは、本発明の任意の側面の非限定的な説明的な例であり、そのようなものとして、本明細書に記載される任意の他の特徴若しくは態様、又は組合せと、組み合わせることができることを意味することが理解される。例えば、特徴が「一つの態様」、「いくつかの態様」、「ある態様」、「別の態様」、「具体的な代表的な態様」及び/又は「別の態様」のような言語によって説明される場合、これらの種類の態様のそれぞれは、本明細書に記載される任意の他の特徴又は特徴の組合せと組み合わせることが意図される特徴の非限定的な例であり、全ての可能な組合せを列挙する必要はない。そのような特徴又は特徴の組合せは、本発明の任意の側面に適用される。
【0062】
定義
この開示がより容易に理解されるために、いくつかの用語が初めに下記に定義される。以下の用語及び他の用語に関する追加の定義は、本明細書を通して記載されてもよい。
【0063】
本明細書では、この開示を通して述べられる「血清型」は、別段に指示されない限り、肺炎球菌の血清型を指す。
【0064】
本明細書では、「多糖」は、肺炎球菌の血清型:1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48の細胞壁の外側にあるが隣接している多糖/糖類/糖/炭水化物を指す。
【0065】
本明細書では、「キャリアタンパク質」は、通常、免疫系による抗原の検出を増強又は促進する目的のために多糖と結合されたタンパク質を指す。この開示の組成物は、2つ以上の肺炎球菌多糖結合体を含み、各結合体は、肺炎球菌の異なる血清型の多糖と結合したキャリアタンパク質を含む。
【0066】
本明細書では、「結合体」又は「多糖-キャリアタンパク質結合体」は、CDAP結合化学を使用したキャリアタンパク質と結合した肺炎球菌多糖を指す。
【0067】
本明細書では、「分子量」は、重量平均分子量を指し、これはHPLC-RI又はHPLC-UV/RI又はHPSEC-UV/RI/MALSのいずれかによって推定される多糖の分子サイズの尺度である。肺炎球菌多糖の場合、分子量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって計算される。SEC-HP-RI及びSEC-HPLCという用語は、本明細書を通して互換的に使用される。肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の場合、「分子量」又は「分子サイズ」は、多角度レーザー光散乱(MALS)と組み合わせた高速サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって計算される。
【0068】
本明細書では、「ワクチン組成物」は、少なくとも1種の肺炎球菌の血清型に対する活性な獲得免疫を提供する生物学的製剤を指し、「ワクチン」という用語と互換的に使用できる。
【0069】
本明細書では、この開示に記載される「有効量」は、組成物が投与される対象において免疫応答を誘発するのに必要とされる量を指す。免疫応答は、続く負荷の間に肺炎球菌の感染の可能性又は重症度を著しく減少させる、1つ以上の肺炎球菌抗原特異的抗体の宿主における存在によって特徴付けられる。
【0070】
本明細書では、「用量」は、この開示のワクチン組成物の1回/単回投与を指し、特に言及しない限り、通常0.5mlである。
【0071】
本明細書では、「対象」は、マウス、ウサギ及びヒトを含む哺乳動物を指す。いくつかの態様では、対象は、成人、青少年又は乳児である。いくつかの態様では、「個体」又は「患者」という用語が使用され、「対象」と互換的であることが意図される。
【0072】
本明細書では、「ポリソルベート20」及び「tween(登録商標)20」という用語は、本明細書を通して互換的に使用されている。
【0073】
この開示は、2ブレンド法を使用したワクチン組成物を製造するための方法を想定している。肺炎球菌多糖は、個別にキャリアタンパク質と結合され、シアニル化結合化学を使用して製造されてワクチン組成物に最適な免疫原性及び安定性を提供する。2種類以上のキャリアタンパク質がワクチン組成物に使用される。この開示は、肺炎球菌疾患を予防及び/又は治療することが可能な肺炎球菌多糖を含むワクチン組成物を更に想定している。
【0074】
この開示の側面では、安定で免疫原性の多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を製造するための方法が提供される。この方法は、肺炎球菌多糖を特定のキャリアタンパク質と個別に結合することを含む。得られた肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体は、ヒスチジン及びNaClと混合され、続いて特定の得られた肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む2つの別々のブレンドとしてコハク酸塩の存在下アルミニウム塩アジュバントに吸着させる。2つのブレンドはその後混合されてこの開示のワクチン組成物を得る。この方法は、以下の段落で詳細に説明される。
【0075】
この開示の態様では、ワクチン組成物を製造するための方法は、
i. 1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される肺炎球菌の血清型に由来する肺炎球菌多糖をキャリアタンパク質に、1:0.5~1:1.5の比率、pH8.0~10で、個別に結合させて、多糖-キャリアタンパク質結合体を得る工程;
ii. 工程(i)で得た、4、6A、9V、15B、22F及び23Fからなる群から選択される肺炎球菌の血清型に由来する多糖を含む肺炎球菌多糖-タンパク質結合体の第1のセットを、塩、ヒスチジン及びコハク酸の存在下、18℃~30℃、pH5.0~7.0で、18時間~30時間かけて、アルミニウム塩アジュバントに吸着させる工程;
iii. 工程(i)で得た、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48、6A、9V、15B、22F及び23Fを含む群から選択される肺炎球菌の血清型に由来する多糖を含む肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットを、塩、ヒスチジン及びコハク酸の存在下、18℃~30℃、pH5.0~7.0で、12時間~24時間かけて、アルミニウム塩アジュバントに吸着させる工程;並びに、
iv. 工程(ii)で得た第1のセットと、工程(iii)で得た第2のセットを、組成物0.5mlあたり80μg~150μgの界面活性剤の存在下、ラシュトンタービンフラットブレードインペラを使用して、4℃~12℃で50時間~80時間混合する工程を含む。
【0076】
この開示の態様では、肺炎球菌多糖は、シアニル化反応によりキャリアタンパク質と結合させ、ワクチン組成物は少なくとも3つの異なるキャリアタンパク質を含む。
【0077】
この開示の態様によれば、ワクチン組成物は、i) アルミニウム塩アジュバントの総濃度が組成物0.5mlあたりAl3+20~375μgである、ii) 各多糖-キャリアタンパク質の吸着率が少なくとも30%である、iii) 多糖-キャリアタンパク質結合体が望ましい物理化学的特性及び免疫原性を維持する、並びに、iv) 組成物0.5mlあたり80μg~150μgの界面活性剤が、凝集及び粒子形成を最小限にし、ワクチン組成物の流動性を改善する、ことを含む。
【0078】
別の態様では、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットは、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される血清型に由来する肺炎球菌多糖を含む。
【0079】
好ましい態様では、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットは、1、2、3、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、24F及び33Fからなる群から選択される血清型に由来する肺炎球菌多糖を含む。
【0080】
ある態様では、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットは、1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F及び33Fからなる群から選択される血清型に由来する肺炎球菌多糖を含む。
【0081】
ある態様では、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットは、1、2、3、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、24F及び33Fからなる群から選択される血清型に由来する肺炎球菌多糖を含む。
【0082】
ある態様では、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットは、1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19A、19F、24F及び33Fからなる群から選択される血清型に由来する肺炎球菌多糖を含む。
【0083】
別の態様では、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットは、血清型9A、9N及び9Lに由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を含む。
【0084】
更に別の態様では、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の第2のセットは、血清型3に由来する肺炎球菌多糖を含まない。
【0085】
この開示のワクチン組成物の肺炎球菌多糖は、既知の方法を使用して肺炎球菌から抽出される。肺炎球菌の血清型の発酵、精製、サイジングは、786/MUM/2007、1075/MUM/2009、282/MUM/2012、国際公開第2012/127485号、国際公開第2013/088448号、2889/MUM/2014、IN201623002962、国際公開第2016/199003号、IN201921036006又は国際公開第2021/229604号に開示されている方法のとおりに行ってもよい。簡潔に説明すると、肺炎球菌多糖は、個々の肺炎球菌の血清型を0~0.5vvmの空気流量で50~150RPMで撹拌しながら、pH7~8、35~38℃の培地中で増殖させることによって得られる。得られた回収物を濃縮し、透析ろ過し、通常、続いて酵素処理及び化学処理を行って多糖を抽出する。続いて遠心分離及び不純物の除去のための1つ以上のクロマトグラフィー工程が行われ、更に透析ろ過して精製された天然の多糖を得る。
【0086】
ある態様では、上記で得られた肺炎球菌の血清型の清澄化された発酵ブロスを濃縮し、透析ろ過する(100KDaのMWCO膜;中性pHの25mMリン酸ナトリウム緩衝液に続く、注入用水(WFI)を用いた透析ろ過)。多糖を含有する濃縮し透析ろ過したブロスを撹拌しながら37℃で10±2時間酵素処理(ヌクレアーゼ)する。酵素処理した多糖溶液を硫酸アンモニウムのような化学薬品で処理し、遠心分離し、続いて透析ろ過する。多糖を含有する透析ろ過した溶液を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムにかけ、続いて濃縮し、透析ろ過する。続いてイオン交換クロマトグラフィーカラムを必要とする別のクロマトグラフィー工程が行われる。カラム上の多糖を塩(NaCl)を使用して溶出する(さまざまな多糖を異なるイオン強度の塩で溶出した)。その後、多糖溶液を濃縮し、透析ろ過する。透析ろ過した多糖溶液を更にろ過し、更に使用するまで凍結保存する。
【0087】
ある態様では、この開示の方法は、多糖の精製の間、マルチモーダルクロマトグラフィー工程がない。
【0088】
別の態様では、この開示の方法は、多糖の精製の間、綿状沈殿工程(アルミニウム、鉄、カルシウム及びマグネシウムからなる群から選択される多価カチオン)がない。
【0089】
多糖を調製するために使用される細菌株は、Centers for Disease Control and Prevention(CDC), Atlanta, USA;CBER/FDA、USA;ATCC、USA;NIH、USA;NIAID、USA;PHE、UKなどのような、確立された培養収集センター(culture collection center)から入手してもよい。同様に、この開示で使用するキャリアタンパク質は、確立された供給源から調達してもよい。
【0090】
この開示の態様によれば、(i)肺炎球菌の血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fは、Centers for Disease Control and Prevention(CDC), Atlanta, USAから入手し;(ii)肺炎球菌の血清型24Fは、Kempegowda Institute of Medical Sciences(KIMS), Bangalore, Indiaから入手し;(iii)蛍光菌(CRM197に関する)は、Pfenex Inc, USAから入手し;(iv)ジフテリアトキソイド(DT)に関するジフテリア菌(CN2000株)は、National Control Authority Central Research Institute(C.R.I.)Kasauli, HP, IndiaがWellcome Research Laboratory, London, UKから入手し、この菌株は1973年にSerum Institute of India Private Limitedが提供し;(v)破傷風菌(Harvard49205)は、National Control Authority Central Research Institute(C.R.I.), Kasauli, HP, IndiaがNetherlands Vaccine Institute (NVI)から入手し、この菌株は1973年にSerum Institute of India Private Limitedが提供した。
【0091】
この開示の態様によれば、精製された多糖中の総窒素含有量(%)は、既知の方法を使用して決定/測定される。総窒素含有量は、TOC TNM技術、ケルダール法、CHNS法、NMR、HPAEC-PAD又は任意の他の方法を使用して決定/測定してもよい。好ましい態様では、総窒素含有量は、TOC TNM技術を使用して決定/測定してもよい。
【0092】
ある態様では、抽出及び精製された肺炎球菌多糖は、天然の形態で使用される。
【0093】
別の態様では、抽出及び精製された肺炎球菌多糖は、肺炎球菌多糖の1以上部を得るためにサイジングされる。サイジング後の多糖の分子量は、抽出及び精製された天然の形態の肺炎球菌多糖の分子量未満である。
【0094】
この開示の態様によれば、肺炎球菌多糖は、それぞれのキャリアタンパク質との結合の前に、熱処理、音波処理、機械的手段、化学的加水分解、エンドライシス的酵素処理、物理的剪断、ガウリンホモジナイザー及び超音波処理の1つ以上を使用してサイジングされ、分子量が、50kDa~600kDa(SEC-HPLC)である、サイジング後の肺炎球菌多糖を得る。好ましい態様では、サイジング後の肺炎球菌多糖の分子量は、100kDa~200kDa(SEC-HPLC)である。ある態様では、サイジングは、FeCl、H、メタ過ヨウ素酸ナトリウム及び酢酸ナトリウム処理の1つ以上を使用した化学的加水分解を使用して行う。
【0095】
部分的にサイズが縮小された多糖から調製された結合体の結合効率/結合体収率、免疫原性は、全長(天然)の多糖から調製された結合体と比較して高いことが理解できる。また、多糖のサイズ縮小は、溶液の粘度を減少させ、反応性末端基の数を増加させ、共有結合形成の頻度の増加に寄与する。
【0096】
ある態様では、サイジングは、高圧ホモジナイザーを使用した機械的手段を使用して行う。ある態様では、サイジングは、20~30KPSI(キロポンド/平方インチ)、好ましくは24~30KPSIで、少なくとも1回のパスで行う。別の態様では、望ましい分子量のサイジング後の多糖を得るために、1~3回のパスが使用される。更に別の態様では、望ましい分子量のサイジング後の多糖を得るために、3回を超えるパスも使用してもよい。KPSIは、多糖が由来する肺炎球菌の血清型に応じて変動してもよい。この開示の態様によれば、高圧ホモジナイゼーションが多糖のサイジングに使用されるとき、化学的サイジング法が多糖のサイジングに使用されるときと比較して、高い多糖回収率及び多糖の構造的完全性の維持が観察される。
【0097】
別の態様では、肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質との結合の前にサイジングされない。ある態様では、血清型6Aに由来する多糖は、キャリアタンパク質との結合の前にサイジングされない。ある態様では、血清型6Aに由来する多糖は、天然の形態で使用され、分子量が400kDa~900kDa(SEC-HPLC)、好ましくは700kDa~800kDa(SEC-HPLC)である。
【0098】
ある態様では、サイジング後の血清型4に由来する多糖の分子量は130kDa~170kDa(SEC-HPLC)、好ましくは130kDa~165kDa(SEC-HPLC)である。
【0099】
ある態様では、サイジング後の血清型3に由来する多糖の分子量は140kDa~180kDa(SEC-HPLC)、好ましくは150kDa~170kDa(SEC-HPLC)である。
【0100】
ある態様では、サイジング後の血清型24Fに由来する多糖の分子量は100kDa~200kDa(SEC-HPLC)、好ましくは120kDa~170kDa(SEC-HPLC)、より好ましくは130kDa~160kDa(SEC-HPLC)である。
【0101】
ある態様では、サイジング後の血清型6Bに由来する多糖の分子量は100kDa~200kDa(SEC-HPLC)、好ましくは110kDa~175kDa(SEC-HPLC)、より好ましくは130kDa~160kDaである。
【0102】
ある態様では、サイジング後の血清型9Vに由来する多糖の分子量は120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、好ましくは130kDa~150kDa(SEC-HPLC)である。
【0103】
ある態様では、サイジング後の血清型15Bに由来する多糖の分子量は120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、好ましくは130kDa~150kDa(SEC-HPLC)である。
【0104】
ある態様では、サイジング後の血清型19Aに由来する多糖の分子量は120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、好ましくは130kDa~150kDa(SEC-HPLC)である。
【0105】
ある態様では、サイジング後の血清型22Fに由来する多糖の分子量は100kDa~150kDa(SEC-HPLC)、好ましくは120kDa~140kDa(SEC-HPLC)である。
【0106】
別の態様では、肺炎球菌の血清型24Fに由来する多糖は、高圧ホモジナイザーを使用してサイジングされる。ある態様では、肺炎球菌の血清型24Fに由来する多糖は、酸加水分解(酢酸、HCl、リン酸、クエン酸又は混合物)を使用してサイジングされない。
【0107】
別の態様では、肺炎球菌の血清型6Bに由来する天然の多糖の分子量は、200kDa超(SEC-HPLC)であり、ホモジナイザーを使用してサイズ縮小した後は200kDa未満(SEC-HPLC)である。更に別の態様では、この開示のワクチン組成物は、分子量が500~1800kDa(SEC-HPLC)である肺炎球菌の血清型6Bに由来する多糖を含まない。
【0108】
この開示の態様では、肺炎球菌の血清型に由来する多糖は、トリフルオロ酢酸(TFA)を使用してサイジングされ、分子量が100kDa~200kDa(SEC-HPLC)であるサイジング後の多糖を得る。
【0109】
ある態様では、肺炎球菌の血清型18Cに由来する多糖のO-アセチル化は80%を超える。
【0110】
この開示の態様によれば、工程(ii)及び工程(iii)の塩は、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム及びそれらの組合せを含む群から選択され、ワクチン組成物における塩の濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり2mg~10mgである。ある態様では、塩は、塩化ナトリウムである。好ましい態様では、ワクチン組成物における塩の濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり4.5mgである。
【0111】
別の態様では、工程(ii)及び工程(iii)のヒスチジンは、ワクチン組成物0.5mlあたり0.1mg~10mgである。更に別の態様では、工程(ii)及び工程(iii)のコハク酸は、ワクチン組成物0.5mlあたり0.1mg~10mgである。好ましくは、多価結合型ワクチンの最終製剤のコハク酸の濃度は、20mM(2.36mg/mL)である。
【0112】
通常、工程(iv)の界面活性剤は、ポリソルベート、ポリマーグリコール、ソルビタンエステル及びそれらの組合せを含む群から選択され、界面活性剤の濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり90μg~120μgである。好ましい態様では、工程(iv)の界面活性剤は、ポリソルベート20であり、ポリソルベート20の濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり80μg~120μgである。
【0113】
ある態様では、肺炎球菌多糖は、カルボジイミド、還元的アミノ化又はシアニル化結合反応によりキャリアタンパク質と個別に結合される。
【0114】
多糖は、異なる手法を使用してそれぞれのキャリアタンパク質と結合できる。多糖との化学的連結に最も適したアミノ酸残基は、キャリアタンパク質表面に露出し、その側鎖がリジンの第1級アミノ基及びグルタミン酸又はアスパラギン酸残基のカルボン酸基のような反応性官能基を有するものである。キャリアタンパク質のカルボキシル基は、カルボジイミドを介した縮合によって多糖のアミノ又はヒドラジド誘導体と結合でき;リジンアミノ基は、スクシンイミドエステル若しくはシアノエステル、スクアレートのような活性基を含有するそれらの誘導体との反応によって、又は直接的な還元的アミノ化によって多糖と結合できる。
【0115】
この開示の態様によれば、肺炎球菌多糖は、CRM197、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、髄膜炎菌外膜複合体、破傷風トキソイドフラグメントC、8アミノ酸変異を伴う組換え全長破傷風毒素(8MTT)、ジフテリア毒素フラグメントB(DTFB)、百日咳トキソイド、インフルエンザ菌プロテインD、大腸菌LT、大腸菌ST、緑膿菌外毒素A、外膜複合体c(OMPC)、ポリン、fHbp、Por A、Por B、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、PhtA、PhtB、PhtE、肺炎球菌PhtD、肺炎球菌表面タンパク質BVH-3及びBVH-11、モラクセラ・カタラーリス(M. catarrhalis)uspA、炭疽菌の防御抗原(PA)並びに無毒化浮腫因子(EF)、及び致死因子(LF)、オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、A群又はB群連鎖球菌C5aペプチダーゼ、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、精製ツベルクリン(PPD)、コレラ毒素サブユニットB、合成ペプチド、ヒートショックタンパク質、百日咳タンパク質、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、N19などのさまざまな病原体抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質、鉄取り込みタンパク質、クロストリディオイデス・ディフィシル(C. difficile)及びB群連鎖球菌の毒素A又はB、並びにそれらの等価物を含む群から選択される1つ以上のキャリアタンパク質と結合している。
【0116】
キャリアタンパク質は、選択された結合方法の標的となる十分な数の露出したアミノ酸を含有するべきであり、結合反応が起きる緩衝液及び濃度で安定で溶解性が良好であるべきである。
【0117】
ある態様では、この開示の方法は、3種類のキャリアタンパク質、すなわち、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)及びCRM197を使用する。肺炎球菌多糖を、個別にそれぞれのキャリアタンパク質と結合させる。
【0118】
この開示の好ましい態様では、3、6A、9V、15B、19A及び22Fを含む群から選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を、キャリアタンパク質としての破傷風トキソイドと結合させ、血清型4及び24Fに由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を、キャリアタンパク質としてのジフテリアトキソイドと結合させ、並びに、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合させる。
【0119】
この開示の態様では、血清型19A及び19Fに由来する肺炎球菌多糖を、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド及びCRM197から選択される同じ種類のキャリアタンパク質と個別に結合させる。
【0120】
この開示の態様では、血清型19A及び19Fに由来する肺炎球菌多糖を、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド及びCRM197から選択される異なる種類のキャリアタンパク質と個別に結合させる。
【0121】
免疫原性多糖-キャリアタンパク質結合体を生じるために一般に使用される2つの結合方法がある:(1)多糖とキャリアタンパク質の直接的な結合、及び(2)二官能性リンカー又はスペーサー試薬を介した多糖とキャリアタンパク質の非直接的な結合である。通常、直接的な結合方法と非直接的な結合方法の両者が、キャリアタンパク質との結合の前に炭水化物部分の化学的活性化を必要とする。
【0122】
通常、精製された多糖が、化学的に活性化/修飾されてキャリアタンパク質と結合/連結できる反応基を生成する。多糖活性化のために最も一般的に使用される方法の2つは、過ヨウ素酸酸化及びシアニル化である。過ヨウ素酸酸化では、酸化剤(過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム又は過ヨウ素酸のようなペルヨーデート)を使用して多糖に存在する末端ヒドロキシル基がアルデヒドに酸化される。多糖の近接のヒドロキシル基が酸化剤によって切断され、その結果反応性アルデヒド基が形成される。
【0123】
多糖を活性化するためのペルヨーデートの使用に伴う起こる可能性のある重要な問題は、重要なエピトープが喪失する多糖の物理的構造の変化である。低レベルの活性化さえ、特定のエピトープを喪失させ、新しいエピトープを作り出す可能性があることが理解できる。
【0124】
シアニル化化学は、反応性シアノエステル基を多糖に作り出すことを含む。臭化シアン(CNBr)がシアニル化剤として当初は使用されていたが、シアニル化剤として1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)にほとんど置きかえられている。シアニル化化学は、John Robbins博士によって1980年に報告された最初のHib結合体で使用された多糖に反応性シアノエステル基を作り出すために、当初はCNBrを利用した。
【0125】
この開示の態様によれば、肺炎球菌多糖は、シアニル化化学、カルボジイミド化学、CNBr化学、及び還元的アミノ化化学からなる群から選択される結合反応/化学によりキャリアタンパク質と結合してもよい。
【0126】
この開示の態様では、好ましい結合反応は、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)、CDAP-green、1-シアノ-4-ピロリジノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CPPT)、1-シアノ-イミダゾール(1-CI)、1-シアノベンゾトリアゾール(1-CBT)、2-シアノピリダジン-3(2H)オン(2-CPO)、それらの機能的誘導体及び修飾体からなる群から選択されるシアニル化試薬を使用して行う。
【0127】
この開示の態様によれば、肺炎球菌多糖を、シアニル化反応によりキャリアタンパク質と結合させる。肺炎球菌多糖を、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)と反応させ、肺炎球菌多糖:CDAPが1:0.3~1:2の重量比で、22℃~25℃で4分~10分間混合し、このCDAP活性化多糖を、CDAP活性化肺炎球菌多糖:キャリアタンパク質が1:0.5~1:1.5の重量比で混合したキャリアタンパク質と接触させて、pH8.0~10で3時間~5時間反応を行い、続いてグリシンでクエンチして多糖-キャリアタンパク質結合体を得る。
【0128】
この開示の好ましい態様では、肺炎球菌多糖の活性化は、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)を使用して行う。CDAPは、多糖と反応し、シアノ基を、多糖に豊富に見られるヒドロキシル水素と交換し、その結果シアノエステルを作り出す。このシアノエステルは反応性が高い。活性化は、通常pH9~10で行い、実際、CDAP PS活性化効率には強いpH依存性がある。その後、シアノエステルは、リジンのεアミンと反応し、安定なO-アルキル-イソ尿素連結を形成する。CDAP活性化は数分だけかかり、結合は数時間で完了する。その後、反応を、グリシンのようなアミノ含有試薬を使用してクエンチする。
【0129】
この開示の態様によれば、以下の血清型の多糖対CDAP(Ps:CDAP)比(wt/wt基準)は:血清型4-1:0.8;血清型24F-1:1±0.25;血清型3-1:0.3;血清型6A-1:1;血清型9V-1:1;血清型15B-1:1.2;血清型19A-1:1;及び血清型22F-1:1である。
【0130】
この開示の態様によれば、以下の血清型の多糖対キャリアタンパク質(Ps:Pr)比(wt/wt基準)は:血清型4-1:0.9;血清型24F-1:1±0.25;血清型3-1:1;血清型6A-1:1.2;血清型9V-1:1;血清型15B-1:1;血清型19A-1:1;及び血清型22F-1:1である。
【0131】
さらに、過ヨウ素酸ナトリウムは、ジオール(ヒドロキシル基を有する2つの隣接する炭素)をアルデヒド(RHC=O)へと酸化し、この過程でC-C結合を切断する。このように、多糖構造に応じて、ペルヨーデート活性化は、鎖内ジオールを含有する多糖を断片化(ダウンサイジング)又は単糖繰り返し単位の環構造を開くことができ、それにより高次構造が変化し、潜在的に多糖の免疫原性も変化する可能性がある。1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)を使用したシアニル化化学は、多糖抗原のタンパク質との直接的な結合(スペーサーを使用しない)を可能にする。CDAPは、多糖の遊離OH基と鎖切断を伴わずに反応し、タンパク質のアミノ基との反応性が高いシアノエステル基を作り出して共有結合的連結を形成する。これは、天然の多糖のエピトープのより良い維持も可能にし、ワクチン組成物の免疫原性に好影響を及ぼす。
【0132】
この開示は、結合前にCDAPをベースにした肺炎球菌多糖の活性化を使用し、したがって、還元的アミノ化及びCNBrをベースにした結合化学に関連する欠点を克服する。
【0133】
ある態様では、この開示の結合方法は、酢酸ナトリウムを使用した多糖の活性化、これに続く還元剤(シアノ水素化ホウ素ナトリウム)を使用したキャリアタンパク質との結合を含まない。ある態様では、血清型23Fに由来する多糖とキャリアタンパク質としてのCRM197は、酢酸ナトリウムを使用した多糖の活性化、これに続く還元剤(シアノ水素化ホウ素ナトリウム)を使用した結合に関与しない。
【0134】
ある態様では、この開示の方法は、多糖とキャリアタンパク質の結合のためのeTECスペーサーの使用を含まない。ある態様では、結合の前に、キャリアタンパク質を、ヒドラジン、カルボヒドラジド、塩化ヒドラジン、ジヒドラジド、ε-アミノヘキサン酸、クロロヘキサノールジメチルアセタール、D-グルクロノラクトン、シスタミン及びpニトロフェニルエチルアミン、ヘキサンジアミン、エチレンジアミン、1,6-ジアミノオキシヘキサン又はβ-プロピアミド、ニトロフェニルエチルアミン、ハロアルキルハライド、6-アミノカプロン酸並びにそれらの組合せからなる群から選択されるヘテロ又はホモ二官能性リンカーを介してアミノ及び/又はカルボキシル基を含むように誘導体化する。誘導体化は、カルボジイミド、還元的アミノ化又はシアニル化反応により行ってもよい。
【0135】
好ましい態様では、ヘテロ又はホモ二官能性リンカーは、ジヒドラジドである。代表的な態様では、ヘテロ又はホモ二官能性リンカーは、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)である。
【0136】
ヒドラジド基は、カルボジイミド、還元的アミノ化、シアニル化、反応、例えば、ヒドラジン、カルボヒドラジド、スクシニルジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、塩化ヒドラジン(例えば、ヒドラジン二塩酸塩)又は1-エチル-3(3ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のようなカルボジイミドの存在下で任意の他のジヒドラジドを用いた反応により、タンパク質のアスパラギン酸及びグルタミン酸残基のカルボキシル基を通してタンパク質に導入できる。EDCは、触媒として利用され、タンパク質反応物を、ヒドラジン又はジヒドラジドで活性化し、修飾する。
【0137】
ある態様では、肺炎球菌の血清型6A、9V、19A、22F、15Bに由来する多糖をキャリアタンパク質としてのTTと独立して結合させる。TTを、最初にADHを使用して(EDACの存在下で)誘導体化し、次いでCDAPを使用して活性化されたそれぞれの多糖と結合させる。
【0138】
別の態様では、肺炎球菌の血清型3に由来する多糖を、キャリアタンパク質としてのTTと独立して結合させる。
【0139】
ある態様では、肺炎球菌多糖をリンカーなしでキャリアタンパク質と結合させる。
【0140】
ある態様では、この開示のワクチン組成物の肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体は、還元的アミノ化化学により調製されない。さらに、この開示によればワクチン組成物を製造するための方法は、プロテアーゼ、プロテイナーゼ、二酸化ケイ素、酢酸、DMSO、酸化剤(ペルヨーデート、過ヨウ素酸ナトリウム又はメタペルヨーデート)及び水素化ホウ素ナトリウムのような試薬/化学薬品/酵素を使用しない。別の態様では、この開示の方法は、血清型1に由来する肺炎球菌に由来する多糖の精製のために重炭酸塩/炭酸塩緩衝液を使用しない。
【0141】
ある態様では、工程(ii)及び工程(iii)のアルミニウム塩アジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム及び硫酸アルミニウムカリウム並びにそれらの混合物を含む群から選択される。アルミニウム塩アジュバントの濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたりAl3+20~375μgである。好ましい態様では、アルミニウム塩アジュバントの総濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたりAl3+170~200μgである。
【0142】
この開示の態様によれば、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体は、遊離の多糖が15%未満で、遊離のタンパク質が10%未満である。
【0143】
ある態様では、工程(ii)及び工程(iii)の吸着は、保存剤の存在下で行う。保存剤の量はワクチン組成物0.5mlあたり1mg~8mgである。保存剤は、2-フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム(フェメロール)、フェノール、m-クレゾール、チオメルサール、ホルムアルデヒド、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-クロロ-m-クレゾール、ベンジルアルコール及びそれらの組合せを含む群から選択される。好ましい態様では、保存剤は、濃度がワクチン組成物0.5mlあたり2.5mg~5mgの2-フェノキシエタノールであり、好ましくは0.5mlあたり5mg以下である。この開示の代表的な態様では、2-フェノキシエタノールの濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり4mgである。
【0144】
この開示の別の側面では、少なくとも1つの肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む安定で免疫原性の多価肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物が提供される。
【0145】
この開示の態様によれば、肺炎球菌多糖は、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される肺炎球菌の血清型に由来する。
【0146】
この開示の態様によれば、組成物は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30価の肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合型組成物である。
【0147】
この開示の態様では、血清型6Aに由来する多糖以外の肺炎球菌多糖の分子量は、50kDa~600kDa(SEC-HPLC)、好ましくは100kDa~200kDa(SEC-HPLC)である。
【0148】
別の態様では、血清型6Aに由来する肺炎球菌多糖の分子量は、400kDa~900kDa(SEC-HPLC)である。
【0149】
この開示の別の態様では、ワクチン組成物に存在する各肺炎球菌多糖は、個別にキャリアタンパク質と結合している。
【0150】
この開示の態様によれば、肺炎球菌多糖は、CRM197、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、髄膜炎菌外膜複合体、破傷風トキソイドフラグメントC、8アミノ酸変異を伴う組換え全長破傷風毒素(8MTT)、ジフテリア毒素フラグメントB(DTFB)、百日咳トキソイド、インフルエンザ菌プロテインD、大腸菌LT、大腸菌ST、緑膿菌外毒素A、外膜複合体c(OMPC)、ポリン、fHbp、Por A、Por B、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面アドヘシンA(PsaA)、PhtA、PhtB、PhtE、肺炎球菌PhtD、肺炎球菌表面タンパク質BVH-3及びBVH-11、モラクセラ・カタラーリス(M. catarrhalis)uspA、炭疽菌の防御抗原(PA)並びに無毒化浮腫因子(EF)及び致死因子(LF)、オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、A群又はB群連鎖球菌C5aペプチダーゼ、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、精製ツベルクリン(PPD)、コレラ毒素サブユニットB、合成ペプチド、ヒートショックタンパク質、百日咳タンパク質、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、増殖因子、N19などのさまざまな病原体抗原に由来する複数のヒトCD4+T細胞エピトープを含む人工タンパク質、鉄取り込みタンパク質、クロストリディオイデス・ディフィシル(C. difficile)及びB群連鎖球菌の毒素A又はB、並びにそれらの等価物を含む群から選択される1つ以上のキャリアタンパク質と結合している。
【0151】
この開示の態様によれば、各肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の分子量は、1500kDa~30000kDa(SEC-MALS)である。
【0152】
ある態様では、ワクチン組成物における6A-TT結合体の分子量は、7000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは8000kDa~9000kDa(SEC-MALS)である。
【0153】
ある態様では、ワクチン組成物における4-DT結合体の分子量は、3000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは3000kDa~9000kDa(SEC-MALS)である。
【0154】
ある態様では、ワクチン組成物における3-TT結合体の分子量は、3000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは4000kDa~10000kDa(SEC-MALS)である。
【0155】
ある態様では、ワクチン組成物における24F-DT結合体の分子量は、1500kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは2000kDa~6000kDa(SEC-MALS)である。
【0156】
ある態様では、ワクチン組成物における6B-CRM197結合体の分子量は、4000kDa~15000kDa(SEC-MALS)、好ましくは5000kDa~12000kDa(SEC-MALS)である。
【0157】
ある態様では、ワクチン組成物における9V-TT結合体の分子量は、15000kDa~30000kDa(SEC-MALS)、好ましくは20000kDa~30000kDa(SEC-MALS)である。
【0158】
ある態様では、ワクチン組成物における15B-TT結合体の分子量は、6000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、好ましくは7500kDa~9000kDa(SEC-MALS)である。
【0159】
ある態様では、ワクチン組成物における19A-TT結合体の分子量は、5000kDa~8000kDa(SEC-MALS)、好ましくは6000kDa~7000kDa(SEC-MALS)である。
【0160】
通常、この開示のワクチン組成物における22F-TT結合体の分子量は、12500kDa超(SEC-MALS)である。ある態様では、ワクチン組成物における22F-TT結合体の分子量は、9000kDa~18000kDa(SEC-MALS)、好ましくは10000kDa~17000kDa(SEC-MALS)である。
【0161】
この開示のワクチン組成物は、特定の肺炎球菌多糖と個別に結合した2種類以上のキャリアタンパク質の使用を含む。
【0162】
同じキャリアタンパク質を含有する結合型ワクチンが、多糖に対する免疫応答の抑制に関連することが知られている。これは、(i)キャリアタンパク質上のエピトープに特異的な表面免疫グロブリンを有するB細胞と、多糖に特異的なB細胞との間の抗原捕捉及び提示の競合、(ii)遊離のタンパク質キャリアによる結合型ワクチンの多糖特異的B細胞への結合の阻止、及び(iii)B細胞との多糖の結合を阻止するキャリアタンパク質の以前の注入によって誘導されたキャリア特異的B細胞の数の増大による多糖に対する応答の抑制によるものである可能性がある。
【0163】
この開示のワクチン組成物は、複数のキャリアタンパク質を使用し、それにより結合型ワクチン組成物における単一の種類のキャリアタンパク質の使用に関連する本明細書の上述の欠点を克服する。
【0164】
この開示の態様では、肺炎球菌多糖は、3種類のキャリアタンパク質と結合している。この開示の代表的な態様では、3種類のキャリアタンパク質は、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)及びCRM197である。
【0165】
この開示の態様によれば、少なくとも1つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合し、血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fから選択される少なくとも1つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合し、少なくとも1つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのDTと結合している。
【0166】
この開示の態様によれば、少なくとも1つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合し、血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fから選択される少なくとも1つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合し、血清型4及び24Fから選択される少なくとも1つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのDTと結合している。
【0167】
この開示の態様によれば、少なくとも1つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合し、血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fから選択される少なくとも2つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合し、少なくとも1つの肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのDTと結合している。
【0168】
この開示の別の態様では、血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fから選択される少なくとも3つの肺炎球菌多糖は、TTと結合し、1つの肺炎球菌多糖は、DTと結合し、残りの肺炎球菌多糖は、CRM197と結合している。
【0169】
この開示の更に別の態様では、血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fから選択される少なくとも4つの肺炎球菌多糖は、TTと結合し、1つの肺炎球菌多糖は、DTと結合し、残りの肺炎球菌多糖は、CRM197と結合している。
【0170】
この開示の態様では、血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fから選択される少なくとも5つの肺炎球菌多糖は、TTと結合し、1つの肺炎球菌多糖は、DTと結合し、残りの肺炎球菌多糖は、CRM197と結合している。
【0171】
この開示の別の態様では、血清型3、6A、9V、15B、19A、22Fに由来する6つの肺炎球菌多糖は、TTと結合し、1つの肺炎球菌多糖は、DTと結合し、残りの肺炎球菌多糖は、CRM197と結合している。
【0172】
この開示の更に別の態様では、6つの肺炎球菌多糖は、TTと結合し、2つの肺炎球菌多糖は、DTと結合し、残りの肺炎球菌多糖は、CRM197と結合している。
【0173】
この開示の態様では、5つの肺炎球菌多糖は、TTと独立して結合し、2つの肺炎球菌多糖は、DTと独立して結合し、残りの肺炎球菌多糖は、CRM197と独立して結合している。
【0174】
この開示の態様によれば、CRM197と結合した肺炎球菌多糖は、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される。
【0175】
この開示の態様では、TTと結合した肺炎球菌多糖は、1、3、5、6A、9V、15B、19A及び22Fを含む群から選択される。
【0176】
この開示の別の態様では、DTと結合した肺炎球菌多糖は、3、4、15B及び24Fを含む群から選択される。
【0177】
ある態様では、血清型1に由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合している。
【0178】
ある態様では、血清型3に由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合している。
【0179】
ある態様では、血清型9Vに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合している。
【0180】
ある態様では、血清型9Aに由来する肺炎球菌多糖は、DT、TT及びCRM197から選択されるキャリアタンパク質と結合していてもよい。
【0181】
ある態様では、血清型9Lに由来する肺炎球菌多糖は、DT、TT及びCRM197から選択されるキャリアタンパク質と結合していてもよい。
【0182】
ある態様では、血清型9Nに由来する肺炎球菌多糖は、DT、TT及びCRM197から選択されるキャリアタンパク質と結合していてもよい。この開示の態様では、血清型4に由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのDTと結合している。ある態様では、血清型5に由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合している。
【0183】
別の態様では、血清型1及び5に由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と独立して結合し;血清型3に由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合している。
【0184】
更に別の態様では、ワクチン組成物は、キャリアタンパク質としてのCRM197と独立して結合した血清型1及び5に由来する肺炎球菌多糖を含み、血清型3に由来する肺炎球菌多糖を含まない。ある態様では、血清型6Aに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合している。ある態様では、血清型9Vに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合している。ある態様では、血清型15Bに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合している。ある態様では、血清型18Cに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合している。ある態様では、血清型19Aに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合している。ある態様では、血清型19Fに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合している。ある態様では、血清型24Fに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのDTと結合している。この開示の態様では、3、6A、9V、15B、19A及び22Fを含む群から選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖が、キャリアタンパク質としての破傷風トキソイドと結合し、血清型4及び24Fに由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖が、キャリアタンパク質としてのジフテリアトキソイドと結合し、並びに、1、2、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48を含む群から選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖が、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合している。
【0185】
この開示のワクチン組成物は、肺炎球菌多糖のためのキャリアタンパク質としてのプロテインD、PsaA、肺炎球菌表面タンパク質A及びジフテリア毒素フラグメントを含まない。
【0186】
この開示の態様では、ワクチン組成物は、血清型2に由来する肺炎球菌多糖を含み;残りの肺炎球菌多糖は、1、3、4、5、6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48からなる群から選択される血清型に由来する。
【0187】
この開示の態様では、ワクチン組成物は、血清型6A及び6Bに由来する肺炎球菌多糖を含み、残りの肺炎球菌多糖は、1、2、3、4、5、6、6C、6D、6E、6F、6G、6H、7A、7B、7C、7D、7F、8、9A、9L、9F、9N、9V、10A、10B、10C、10D、10F、11、11A、11B、11C、11D、11E、11F、12A、12B、12F、13、13F、14、15A、15B、15C、15F、16、16A、16F、17A、17F、18、18A、18B、18C、18F、19A、19B、19C、19F、20、20A、20B、21、22A、22F、23A、23B、23F、24A、24B、24F、25A、25F、27、28A、28F、29、31、32A、32F、33A、33B、33C、33D、33E、33F、34、35A、35B、35C、35D、35F、36、37、38、39、40、41A、41F、42、43、44、45、46、47A、47F及び48からなる群から選択される血清型に由来する。
【0188】
この開示の態様では、血清型6A及び6Bに由来する肺炎球菌多糖は、ともにキャリアタンパク質としてのCRM197と結合している。この開示の別の態様では、血清型6Aに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合し、血清型6Bに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合している。
【0189】
この開示の態様によれば、本発明のワクチン組成物は、血清型6C、20B、15A、15C、16F、20A、20B、31、9A、9N、9L、35B、23A、23B、17F、29、34、39に由来する肺炎球菌多糖を更に含んでもよい。
【0190】
この開示の態様によれば、ワクチン組成物は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30価の肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合型組成物である。
【0191】
ある態様では、ワクチン組成物は、血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに由来する多糖を有する20の異なる肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む20価の組成物である。
【0192】
ある態様では、ワクチン組成物は、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに由来する多糖を有する20の異なる肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む20価の組成物である。
【0193】
ある態様では、ワクチン組成物は、血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに由来する多糖を有する20の異なる肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む20価の組成物である。
【0194】
ある態様では、ワクチン組成物は、血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、24F及び33Fに由来する多糖を有する21の異なる肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む21価の組成物である。
【0195】
ある態様では、ワクチン組成物は、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに由来する多糖を有する21の異なる肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む21価の組成物である。
【0196】
ある態様では、ワクチン組成物は、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、24F及び33Fに由来する多糖を有する22の異なる肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含む22価の組成物である。
【0197】
この開示の態様によれば、ワクチン組成物は、肺炎球菌の各血清型の多糖を1.0μg~10μg、好ましくは2.2μg~3.3μg含む。別の態様では、ワクチン組成物は、血清型6Bに由来する多糖を4.4μg~6.6μg含む。
【0198】
この開示のワクチン組成物は、界面活性剤、安定剤、緩衝剤、希釈剤、アジュバント、保存剤、塩及び溶媒から選択される薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0199】
ある態様では、アジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウムカリウムからなる群から選択されるアルミニウム塩アジュバントである。通常、アジュバントの濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり1.15mg以下である。ある態様では、アジュバントの濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり0.5mg~1mgである。この開示の態様によれば、アジュバントの濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり1.13mg以下である。好ましい態様では、アジュバントの濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり0.847mgである。
【0200】
別の態様では、アジュバントは、ワクチン組成物0.5mlあたりAl3+20~375μgを含む。
【0201】
ある態様では、アジュバントは、ワクチン組成物0.5mlあたりAl3+170~200μgを含有するリン酸アルミニウムである。
【0202】
好ましい態様では、アジュバントは、ワクチン組成物0.5mlあたりAl3+187.5μgを含む。
【0203】
緩衝剤は、ヒスチジン、コハク酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、トリス-酢酸-エチレンジアミン四酢酸(TAE)及び4-(2-ヒドロキシエチル)-1ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)を含む群から選択される。緩衝剤の濃度は、0.1mg~10mgである。
【0204】
ある態様では、ワクチン組成物は、緩衝剤としてのヒスチジンを含む。
【0205】
別の態様では、ワクチン組成物は、緩衝剤としてのコハク酸塩を含む。
【0206】
更に別の態様では、ワクチン組成物は、緩衝剤としてのヒスチジン0.1mg~10mg及びコハク酸塩0.1mg~10mgを含む。好ましい態様では、ワクチン組成物は、緩衝剤としてのヒスチジン1.55mg及びコハク酸塩1.18mgを含む。
【0207】
界面活性剤は、ポリソルベート、ポリマーグリコール、ソルビタンエステル及びそれらの組合せを含む群から選択され、ワクチン組成物における界面活性剤の濃度は、80μg~120μgである。この開示の態様では、界面活性剤は、ポリソルベート20である(ポリソルベート80ではない)。好ましい態様では、ワクチン組成物における界面活性剤の濃度は、100μgである。
【0208】
ポリソルベート20のHLB(親水性-親油性バランス)値は16.7であり、ポリソルベート80のHLB値は15である。ポリソルベート20は、より親水性な性質である。ポリソルベート20のHLB値16.7は、比較的強い親水性の性質を与える。これは、製剤における粒子の湿潤特性を改善することにより、水性懸濁液及びエマルジョン系の良好な乳化剤及び安定剤としてのその特性を確実にする。したがって、アラム懸濁液をベースとしたワクチン製剤、特に肺炎球菌ワクチンを安定化させるのにより適している可能性がある。この側面は、アラムゲル及びヒスチジンのような他の賦形剤が存在する製剤において22の1価の結合体が混合されるときに、より関連する。ポリソルベート20は、多価肺炎球菌ワクチン製剤(PCV20及びPCV21)にとってその安定性を確実にするのに有利であることが見いだされた。ポリソルベート20は、界面が誘導するストレスによって引き起こされる凝集からワクチン製剤を保護する。そのようなストレス(空気/液体又は液体から表面/容器)は、製造段階中に生じており、望ましくない吸着、凝集又は沈殿につながる可能性がある。
【0209】
ポリソルベート80は、ワクチン組成物において界面活性剤として使用されることが知られている。しかし、この開示のワクチン組成物は、界面活性剤としてポリソルベート20を使用し、これは、以下に示すように、ポリソルベート80とは異なる。
【0210】
(i) この開示で使用するポリソルベート20は、ポリソルベート80とは構造的に異なる。
【0211】
【化1】
【0212】
ポリソルベート20及び80の化学構造。w、x、y及びzは、各界面活性剤分子のオキシエチレンサブユニットの総数を指し、20を超えない。
【0213】
(ii) ポリソルベート20の脂肪酸含有量は、ポリソルベート80の脂肪酸含有量とは異なる。
【表A】
【0214】
さらに、ポリソルベート20は、ポリソルベート80と比較してより親水性である(PS-20のHLB値は16.71であり、一方でPS-80のHLB値は15である;界面活性剤HLB値が高いほど、より親水性である。界面活性剤HLB値が低いほど、より親油性である)。ポリソルベート20のモノラウレート画分は、混合物の40~60%のみを占める。一方で、ポリソルベート80のモノオレエート画分は、混合物の58%超を占める。ポリソルベート20の分子量は、1,225ダルトンである。ポリソルベート80の分子量は、1.31kDaである。ポリソルベート80は、ポリソルベート80中の不飽和アルキル側鎖の含有量が多い結果として、ポリソルベート20と比較して活性酸素種をより生成しがちである。
【0215】
この開示のワクチン組成物における界面活性剤(ポリソルベート20)の量が多いほど、組成物に含まれる抗原(肺炎球菌多糖)の数が多くなりアラムゲル含有量が増加した場合でも、流動性が改善された凝集体を含まない組成物を得るのに役立つ。
【0216】
塩は、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム及びそれらの組合せを含む群から選択され、ワクチン組成物における塩の濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり2mg~10mgである。ある態様では、塩は、塩化ナトリウムである。好ましい態様では、ワクチン組成物における塩の濃度は、ワクチン組成物0.5mlあたり4.5mgである。
【0217】
ある態様では、ワクチン組成物は、単回投与用組成物の形態であり、保存剤を含まない。
【0218】
別の態様では、ワクチン組成物は、複数回投与用組成物の形態であり、2-フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム(フェメロール)、フェノール、m-クレゾール、チオメルサール、ホルムアルデヒド、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-クロロ-m-クレゾール、ベンジルアルコール及びそれらの組合せを含む群から選択される保存剤を含む。
【0219】
ある態様では、保存剤の濃度はワクチン組成物0.5mlあたり1mg~8mgである。
【0220】
別の態様では、保存剤の濃度はワクチン組成物0.5mlあたり2.5mg~5mgである。
【0221】
更に別の態様では、保存剤は、ワクチン組成物0.5mlあたり2.5mg~5mgの濃度の2-フェノキシエタノールである。
【0222】
通常、ワクチン組成物のpHは5~7、好ましくは5~6である。
【0223】
ある態様では、ワクチン組成物は、20価の組成物であり、
a. 20の異なる血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖;
b. Al3+170μg~200μgを含有するアジュバントとしてのリン酸アルミニウム;
c. 濃度1mg~2mgのヒスチジン;
d. 濃度1mg~2mgのコハク酸塩;
e. 濃度80μg~120μgのポリソルベート20;及び、
f. 濃度2mg~10mgの塩化ナトリウム;を含み、
g. pH5~7、の0.5ml用量として製剤化され、
i. 血清型4に由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのDTと結合し;血清型15B、6A、9V、19A及び22Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのTTと結合し;並びに、血清型1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのCRM197と結合し;
ii. 血清型6B以外の各肺炎球菌多糖が、2.2μg~3.3μgであり;
iii. 血清型6Bの肺炎球菌多糖が、4.4μg~6.6μgであり;
iv. CRM197が、10μg~200μgであり;
v. 破傷風トキソイドが、5μg~70μgであり;並びに、
vi. ジフテリアトキソイドが、1μg~25μgである。
【0224】
ある態様では、ワクチン組成物は、21価の組成物であり、
a. 21の異なる血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖;
b. Al3+170~200を含有するアジュバントとしてのリン酸アルミニウム;
c. 濃度1~2mgのヒスチジン;
d. 濃度1~2mgのコハク酸塩;
e. 濃度80~120μgのポリソルベート20;及び、
f. 濃度2mg~10mgの塩化ナトリウム;を含み、
g. pH5~7、の0.5ml用量として製剤化され、
i. 血清型4に由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのDTと結合し;血清型6A、9V、15B,19A及び22Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのTTと結合し;並びに、残りの肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのCRM197と結合し;このワクチン組成物は、
ii. 血清型6B以外の各肺炎球菌多糖2.2~3.3μg;
iii. 血清型6Bの肺炎球菌多糖4.4~6.6μg;
iv. CRM197、10μg~200μg;
v. 破傷風トキソイド5μg~70μg;並びに、
vi. ジフテリアトキソイド1μg~25μg;を含む。
【0225】
ある態様では、ワクチン組成物は、21価の組成物であり、
a. 21の異なる血清型1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、24F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖;
a. Al3+170μg~200μgを含有するアジュバントとしてのリン酸アルミニウム;
b. 濃度1mg~2mgのヒスチジン;
c. 濃度1mg~2mgのコハク酸塩;
d. 濃度80μg~120μgのポリソルベート20;及び
e. 濃度2mg~10mgの塩化ナトリウム;を含み、
f. pH5~7、の0.5ml用量として製剤化され、
i. 血清型4及び24Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのDTと結合し;血清型15B、6A、9V、19A及び22Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのTTと結合し;並びに、血清型1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのCRM197と結合し;
ii. 血清型6B以外の各肺炎球菌多糖が、2.2μg~3.3μgであり;
iii. 血清型6Bの肺炎球菌多糖が、4.4μg~6.6μgであり;
iv. CRM197が、10μg~200μgであり;
v. 破傷風トキソイドが、5μg~70μgであり;並びに、
vi. ジフテリアトキソイドが、1μg~25μg;である。
【0226】
ある態様では、ワクチン組成物は、22価の組成物であり、
a. 22の異なる血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、24F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖;
a. Al3+170μg~200μgを含有するアジュバントとしてのリン酸アルミニウム;
b. 濃度1mg~2mgのヒスチジン;
c. 濃度1mg~2mgのコハク酸塩;
d. 濃度80μg~120μgのポリソルベート20;及び
e. 濃度2mg~10mgの塩化ナトリウム;を含み、
f. pH5~7、の0.5ml用量として製剤化され、
i. 血清型4及び24Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのDTと結合し;血清型3、15B、6A、9V、19A及び22Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのTTと結合し;並びに、血清型1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのCRM197と結合し;
ii. 血清型6B以外の各肺炎球菌多糖が、2.2μg~3.3μgであり;
iii. 血清型6Bの肺炎球菌多糖が、4.4μg~6.6μgであり;
iv. CRM197が、10μg~200μgであり;
v. 破傷風トキソイドが、5μg~70μgであり;並びに、
vi. ジフテリアトキソイドが、1μg~25μg;である。
【0227】
ある態様では、血清型15Bに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのDTと結合している。別の態様では、血清型15Bに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合していてもよい。
【0228】
ある態様では、ワクチン組成物は、9A、9N及び9Lから選択される血清型に由来する少なくとも1つの肺炎球菌多糖を含んでもよい。
【0229】
ある態様では、ワクチン組成物は、血清型3に由来する肺炎球菌多糖を含んでもよい。
【0230】
別の態様では、ワクチン組成物は、血清型3に由来する肺炎球菌多糖を含まない。
【0231】
別の態様では、21価のワクチン組成物は、組成物0.5mlあたり破傷風トキソイド8μg~45μgを含む。更に別の態様では、ワクチン組成物は、組成物0.5mlあたりジフテリアトキソイド1μg~15μgを含む。ある態様では、ワクチン組成物は、組成物0.5mlあたりジフテリアトキソイド1μg~8μgを含む。
【0232】
上述のこの開示のワクチン組成物は、複数回投与用組成物として製剤化されるとき、ワクチン組成物0.5mlあたり2.5mg~5mgの濃度の2-フェノキシエタノールを含む。
【0233】
この開示のワクチン組成物は、2~8℃、25℃及び40℃で安定である。この開示の態様によれば、ワクチン組成物は、2~8℃、及び25℃で少なくとも3カ月の期間安定である。
【0234】
この開示の態様によれば、ワクチン組成物肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体は、遊離の多糖が15%未満で、遊離のタンパク質が10%未満である。
【0235】
ある態様では、ワクチン組成物は、マンニトール、グリシン、ラクトース、トレハロース、スクロース、ラフィノース、ポリマー(カルボキシメチルセルロース、ポロキサマー、PEGなど)のような賦形剤を任意に含んでもよい。
【0236】
この開示のワクチン組成物は、予防のためにヒト対象に投与するために製剤化され、有効量のワクチン組成物の投与によって、肺炎球菌によって引き起こされる感染症の発症を低減又は予防する。
【0237】
この開示の態様によれば、ヒト対象は、乳児(1歳未満)、歩き始めの子(生後約12カ月~24カ月)、幼児(約2歳~5歳)、より年長の子(約5歳~13歳)、青少年(約13歳~18歳)、成人(約18歳~65歳)又は年配者(65歳超)から選択される。
【0238】
ある態様では、この開示のワクチン組成物の用量中の肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の量は、重大な有害作用なしに免疫保護応答を誘導するのに十分な量で存在する。各肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の量は、肺炎球菌の血清型に応じて変動してもよいが、ワクチン組成物の各用量は、各キャリアタンパク質と結合した各肺炎球菌多糖を1.0μg~10μg含む。
【0239】
ある態様では、免疫原性的有効量のこの開示のワクチン組成物を投与することによって、肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体に対する免疫応答をヒト対象において誘導するための方法が提供される。本明細書の上述のワクチン組成物は、経口経路、粘膜経路、鼻経路、鼻腔内経路及び針注入(筋肉内、皮内、皮下、静脈内など)を含むがこれらに限定されない、ワクチンの分野で使用されている従来の経路のいずれかによって、必要とする対象に投与されてもよい。
【0240】
本明細書では、この開示に記載される組成物の「有効量」は、ワクチン組成物が投与される対象において免疫応答を誘発するのに必要とされる量を指す。免疫応答は、続く負荷の間に肺炎球菌の感染の可能性又は重症度を著しく減少させる、1つ以上の肺炎球菌抗原特異的抗体の対象における存在によって特徴付けられる。
【0241】
この開示の態様では、血清型3、6A、9V、19A及び15Bが、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合した場合と比較して、キャリアタンパク質としてのTTに結合した場合に、総IgG力価及び機能的IgG力価は少なくとも2倍増加する。
【0242】
この開示の態様によれば、血清型3、6A、9V及び19Aに由来する肺炎球菌多糖が、キャリアタンパク質としてのCRM197と結合した場合と比較して、それらがキャリアタンパク質としての破傷風トキソイド(TT)と結合した場合に、IgG力価が上昇する。
【0243】
さらに、血清型6A、6B及び19A、19Fに由来する肺炎球菌多糖は、血清型4、24Fに由来する肺炎球菌多糖がキャリアタンパク質としてのDTと結合した場合に、交差反応性(おそらく、それぞれ6A及び19Aから)を誘発し;血清型3、15B、6A、9V、19A及び22Fに由来する肺炎球菌多糖は、キャリアタンパク質としてのTTと結合し;並びに、血清型1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F及び33Fに由来する肺炎球菌多糖はキャリアタンパク質としてのCRM197と結合する。
【0244】
この開示のワクチン組成物のマウス及びウサギにおける免疫原性研究は、血清型6Bに対する免疫応答の改善を示し、これは6A-TTからの交差反応性によるものである可能性がある。さらに、キャリアタンパク質としてのCRM197に代えて、キャリアタンパク質としてのTTと結合した血清型3、6A、9V、15B及び19Aを有するワクチン組成物は、より良い免疫応答(IgG力価)を誘発した。同様の傾向がオプソニン化アッセイ(OPA)応答でも観察される。
【0245】
(キャリアタンパク質としてのCRM197と比較して)キャリアタンパク質としてのDTと結合した血清型4を有するワクチン組成物は、より良い免疫応答(IgG力価)を誘発した。
【0246】
この開示のワクチン組成物が血清型3に由来する肺炎球菌多糖を含まない場合にも、同様の結果が予想される。
【0247】
この開示は、ワクチン組成物及びそれを製造するための方法を提供する。この開示のワクチン組成物は、1つ以上の肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体を含み、ここで、結合体のそれぞれは、キャリアタンパク質と結合した肺炎球菌の異なる血清型の多糖を含有する。ワクチン組成物は、2種類以上のキャリアタンパク質を含み、個別に異なる多糖と結合している。ワクチン組成物は、賦形剤として、最適な濃度の緩衝剤としてのヒスチジン及びコハク酸塩、アルミニウム塩アジュバント、ポリソルベート20及び塩化ナトリウムを更に含む。複数回投与用製剤の場合、保存剤が組成物に加えられる。さらに、ワクチン組成物は、2ブレンド法を使用して製造されており、ここで、血清型のいくつかは第1のセットとしてともに吸着され、残りの血清型は第2のセットとしてともに吸着され、続いて両者のセットを混合してワクチン組成物が得られる。この開示のワクチン組成物は、凝集体がなく;広い温度範囲で長期安定性を示し、そのため、複数の肺炎球菌結合体の望ましい特性を維持し、最も流行している肺炎球菌の血清型に対する防御を提供する。
【0248】
この開示は、1)1用量あたり125μgから187.5μgに量を増加したアラムゲルを使用し、その結果吸着が改善され(全ての血清型で少なくとも30%)(血清型1、2、3、5、7F、8、9V、10A、12F、14、18C、19A、19F、23F、33Fでは少なくとも80%)、それによりB細胞を介したIgG抗体応答が高まる(血清型1、10A、15B及び22Fでは少なくとも2倍高いIgG力価が得られた);2)多価肺炎球菌結合型ワクチンにおける多くのポリソルベート20は、凝集体を含まない製剤、改善された流動性をもたらす(特に、添加される抗原の数が多くなりゲル含有量が増加した場合);3)CDAPを利用することによって調製された、3種類のキャリアタンパク質(DT、TT、CRM197)を含む結合体を有する、新規の改善された、安定で免疫原性の多価多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物(好ましくは20価又は21価)であって、ここで、血清型4及び24Fは個別にDTと結合され;血清型6A、9V、15B、19A、22Fは個別にTTと結合され、血清型(1、2、5、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、18C、19F、23F、33F)からの残りの多糖は個別にCRM197と結合される、ワクチン組成物;4)全てのCRM197及びDTをベースとした結合体が、シアニル化化学を利用した直接結合の手法を使用して、1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロホウ酸(CDAP)で活性化することによって調製され、一方で全てのTTをベースとした結合体が、最初にADHで誘導体化したTT(EDACの存在下)を調製し続いてそれをCDAPで活性化した多糖と結合することによって得られる;5)血清型4のサイジング後の多糖の最適な分子量は130kDa~170kDa(SEC-HPLC)、血清型24Fは100kDa~200kDa(SEC-HPLC)、血清型3は140kDa~180kDa(SEC-HPLC)、血清型6Aは400kDa~900kDa(SEC-HPLC)、血清型6Bは100kDa~200kDa(SEC-HPLC)、血清型9Vは120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、血清型15Bは120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、血清型19Aは120kDa~160kDa(SEC-HPLC)、22Fは100kDa~150kDa(SEC-HPLC))であり、それぞれ、血清型4の多糖-タンパク質結合体の最適な分子量が3000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型24Fが1500kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型3が3000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型6Aが7000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型6Bが4000kDa~15000kDa(SEC-MALS)、血清型9Vが15000kDa~30000kDa(SEC-MALS)、血清型15Bが6000kDa~10000kDa(SEC-MALS)、血清型19Aが5000kDa~8000kDa(SEC-MALS)、血清型22Fが9000kDa~18000kDa(SEC-MALS)であり、それらにより改善された免疫原性を確実にする(これらの多糖をCRM197と結合したときと比較);6)高い結合効率(血清型4及び24Fでは40%~45%、血清型3では30%~35%、血清型6Aでは40%~45%、血清型9Vでは25%~30%、血清型15Bでは45%~55%、血清型19Aでは30%~35%、血清型22Fでは40%~45%);7)結合体の最適な吸着(少なくとも30%);8)全ての結合体で遊離の多糖の含有量15%未満及び遊離のタンパク質(10%未満);及び9)高い多糖回収率と、(化学的サイジングに対して)高圧ホモジナイゼーションを利用することによって維持される構造的完全性。
【0249】
さらに、ワクチン組成物は、2ブレンド法を使用して製造されており、ここで、血清型のいくつかは第1のセットとして個別に吸着され、残りの血清型は第2のセットとしてともに吸着され、続いて両者のセットを混合してワクチン組成物が得られる。
【0250】
さらに、本発明の製剤は、シリコン処理又は非シリコン処理容器に充填できる。
【実施例0251】
態様のこれまでの説明は、説明の目的のために提供されており、この開示の範囲を限定することを意図していない。特定の態様の個々の構成要素は、その特定の態様に一般には限定されず、互換的である。そのような多様性は、この開示からの逸脱とみなされるべきではなく、全てのそのような改変は、この開示の範囲内と考えられる。
【0252】
この開示は、説明目的のためにのみ記載し、開示の範囲を限定するために解釈されるものではない、以下の実施例に照らして更に説明される。
【0253】
この開示で使用する生物資源の供給源
肺炎球菌の血清型、すなわち、1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33Fは、Centers for Disease Control and Prevention(CDC), Atlanta, USAから供給された。肺炎球菌の血清型24Fは、Kempegowda Institute of Medical Sciences(KIMS), Bangalore, Indiaから入手した。
【0254】
キャリアタンパク質
ジフテリアトキソイド(DT):ジフテリア菌PW8 CN2000株は、National Control Authority Central Research Institute(C.R.I.)Kasauli, Himachal Pradesh, IndiaがWellcome Research Laboratory, London, United Kingdomから凍結乾燥形態で1973年に入手した。この株を復活させ、C.R.I. Kasauliのマスターシードロット-ジフテリア菌CN2000 A1のもとで更に凍結乾燥した。
【0255】
破傷風トキソイド(TT):破傷風菌Harvard株No.49205は、the National Control Authority C.R.I. KasauliがThe Rijks Institute Voor de Volksgezondheid(Netherlands)から凍結乾燥形態で入手した。
【0256】
CRM197:CRM197は、Pfenex USAから調達した蛍光菌の組換え株CS463-003(MB101)から入手する。
【0257】
実施例1 3種類のキャリアタンパク質を使用した多価ワクチン組成物の製造
(i) 発酵
肺炎球菌の血清型(21価のワクチン組成物の場合、以下の肺炎球菌の血清型を使用した:1、2、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F、24F及び33F)の接種菌液を0~0.5vvmの空気流量で40~100RPMで撹拌しながら、pH7.1±0.5、35~38℃で増殖させた。あらかじめ調整したpH(7.1)を維持するために、供給培地添加の速度はアルカリ混合物添加の速度と同等であった。粘度低下のために硫酸マンガンを使用した。(血清型3では、供給培地は使用しなかった)。
【0258】
(ii) 精製
上記の工程で得られた肺炎球菌の血清型の清澄化された発酵ブロスを100KDaのMWCO膜を使用して濃縮し、透析ろ過した。154mMのNaClを使用して透析ろ過を遂行し、続いて注入用水(WFI)を用いて透析ろ過した。
【0259】
多糖を含有する濃縮し透析ろ過したブロスを撹拌しながら37℃で10±2時間酵素(ヌクレアーゼ)処理した。
【0260】
硫酸アンモニウムをヌクレアーゼ処理済み多糖溶液に50%飽和まで加え、2~8℃で12±2時間インキュベートした(血清型5を除く)。混合物を深層ろ過して沈殿物を取り除き、廃棄した。溶液を、NaClを使用し、続いて冷WFIを使用して100kDa透析ろ過した。多糖と緩衝液を含有する高塩濃度のこの透析ろ過した溶液を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムに負荷した。
【0261】
疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム(300ml)をpH6.8のリン酸緩衝液中5MのNaClで平衡化し、次いで多糖溶液(500ml)をpH6~8、好ましくはpH6~7でカラムに負荷した。カラムをpH6.8のリン酸緩衝溶液中5MのNaClで更に洗浄した。これらの条件下で、カラムからのフロースルー及び平衡化洗浄で多糖を回収した。その後100KDaのMWCO膜を使用して多糖溶液を濃縮し、次いでNaCl及び注入用水(WFI)を用いて透析ろ過した。
【0262】
イオン交換クロマトグラフィーカラム(300ml)(強力アニオン交換体)を50mMリン酸ナトリウム緩衝液で平衡化し、次いで多糖溶液(500ml)をpH6~8、好ましくはpH6.5~7.5でカラムに負荷した。同じ緩衝液でカラムを更に洗浄した。吸着した多糖を1.0MのNaClを使用した段階的な勾配溶出で溶出した(さまざま多糖を異なるイオン強度のNaClで溶出した)。
【0263】
その後100KDaのMWCO膜を使用して多糖溶液を濃縮し、次いで注入用水(WFI)を用いて透析ろ過した。
【0264】
透析ろ過した多糖溶液を0.22μ膜フィルターを通してポリプロピレン瓶にろ過した。精製された多糖を凍結保存した。この工程を血清型1、6A、6B、7F、9V,14、19A、19F及び23Fについて行った。
【0265】
血清型2、4、8、10A、11A、12F、15B、18C、22F、24F及び33Fでは、HIC法のみを使用した。これらの血清型には、IECクロマトグラフィーは使用しなかった。全ての血清型について、硫酸アンモニウム沈殿に代えてpH沈殿を使用し、その後WFI法を用いた透析ろ過を使用した。血清型3をワクチン組成物に使用した場合、HIC法のみを使用した。
【0266】
これらの血清型のpH沈殿の工程条件は、pHが20%HClを使用して5.8±0.2、時間が6±2時間、温度が7±2℃である。
【0267】
(iii) サイジング
血清型6Aの多糖を除いて、活性化工程の前に高圧ホモジナイザー装置(Microfluidics Inc.、モデルM-110EH-30)を使用して多糖の分子量を減少させた。サイズ縮小は20~30KPSI(キロポンド/平方インチ)で行い、3~30回のパスを使用した。KPSI及びパスの数(表1)は、多糖が由来する血清型に応じて変化した。表-1に、この開示の組成物で使用する各血清型についての使用した圧力及びパスの数を示す。
【0268】
【表1】
【0269】
(iv) 結合
全ての血清型の一般の結合工程: この開示の態様による結合パラメーターを表-2に示し、一般の工程の流れを図1に示す。
【0270】
分子量が100kDa~200kDaである精製しホモジナイズした多糖(分子量が400kDa~900kDaである天然の形態で使用する精製した血清型6Aの多糖を除く)を結合に用いた。多糖の出発濃度は、濃縮前に調整した。表-2に示すように、異なる血清型には異なる多糖濃度が使用される。1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジンテトラフルオロホウ酸(CDAP)による多糖の活性化では、新たに調製したCDAP化学溶液(アセトニトリル中約100mg/ml)を、マグネチックスターラーによって混合しながら(22±3℃で110±25RPM)、表-1で述べた多糖:CDAP比のとおりに加えた。撹拌しながらCDAPを完全に混合した後、pHが9.0±0.3である血清型19Aを除いて、水酸化ナトリウム/酢酸を使用してpHを9.5±0.3に調整した。多糖の活性化のための時間は、血清型に応じて3~10分であり、活性化時間はpH調整から開始する。
【0271】
活性化が完了した後、同じ撹拌及び温度条件を使用して、各多糖に対して特定のキャリアタンパク質を活性化多糖に加えて(多糖:キャリアタンパク質=1:0.5~1:1.5)結合反応を開始した。キャリアタンパク質を特定の血清型に応じて3~10分の活性化後に加えた。pHが9.0±0.3であった血清型19Aを除いて、結合のためのpHを9.5±0.3に維持した。結合時間は、異なる血清型で変動し、結合反応を行う血清型に応じて、通常20分~9時間行った。血清型6Aでは、結合は、4±1.5時間まで継続した。結合が完了した後、pHを8.1±0.3に調整した2Mグリシンを10部以上使用し、反応をクエンチした。反応を22±3℃で1時間以上、続いて12±3℃で10~20時間、撹拌しながら継続する。
【0272】
結合体は、0.45μmろ過、続いてタンジェンシャルフローろ過(TFF)により精製した。望まれていない反応残基(遊離の多糖、タンパク質、CN-、ACN、DMAP)及び低分子量結合体を、主に0.9%NaCl溶液中20以上CVDを用いた300kDa(一次精製)膜のTFFによって除去し、続いて最終精製工程として、一次精製と同様の方法工程を使用して100kDa透析ろ過を行った。
【0273】
精製した個々の結合体の分子量は、1500kDa~30000kDa(SEC-MALS)であった。
【0274】
精製結合体は、その最終濃度を20mMのL-ヒスチジンにするために、0.9%w/v NaCl中200mMのL-ヒスチジンの原液を加えることによって希釈/安定化させた。最終的な0.22μろ過を行い、1価のバルク結合体(MBC)を得て、これは更に使用するまで2~8℃で保存した。
【0275】
【表2-1】
【0276】
【表2-2】
【0277】
表-3に、この開示のワクチン組成物に存在する肺炎球菌多糖及び肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体の特性を示す。
【0278】
【表3-1】
【0279】
【表3-2】
【0280】
遊離の多糖及び遊離のタンパク質の推定
1.遊離のタンパク質の推定
a. BBCIA/サンドイッチELISAによる遊離のTT/DT推定のプロトコル
2工程プロトコル
工程1:遊離のTT/DTの単離
それぞれの血清型に特異的なモノクローナル抗体をプロテインA樹脂とインキュベートする。プロテインA樹脂は、AbのFc領域に対して親和性を有し、AbのFab領域が特定の抗原と相互作用するのを可能にする。結合したPsは、Abでタグ付けされたプロテインA樹脂とインキュベートしたとき、結合したPs及び結合体に存在する遊離のPsと結合する。Abでタグ付けされた樹脂を結合体とともに遠心分離して、樹脂をペレット化する。遊離のTT/DTを含有する上清を別のチューブに回収する。遊離のTTは、ビーズベースの競合阻害アッセイ(BBCIA)を使用して推定する。遊離のDTは、サンドイッチELISAを使用して推定する。
【0281】
工程2:BBCIAによるTTの推定
マイクロスフェアビーズをBBCIAで使用するためにTTと結合させる。上清、すなわち、遊離のTTを有すると予想されるものは、マイクロタイタープレートで抗TTモノクローナル抗体を使用してあらかじめ中和する。あらかじめ中和した試料をTTと結合したマイクロスフェアビーズに移す。あらかじめ中和した工程の後に利用できる遊離のAbは、TT結合ビーズと相互作用する。Ab-Ag結合ビーズ反応は、抗マウスIgG(fc-特異的)-フィコエリトリン結合体を使用して検出する。プレートは、BioPlex -200タンパク質懸濁液アレイシステムを使用して読み取る。MFI(蛍光強度中央値)は、試料に存在する濃度に反比例する。
【0282】
工程2:サンドイッチELISAによるDTの推定
ELISAプレートを抗DTウマポリクローナル血清でコートする。上清、すなわち、遊離のDTを有すると予想されるものをウェルに加える。抗DTマウスモノクローナル抗体(自社製)をHRP結合キットを使用してHRPと結合する。DT抗原をDTに特異的なポリクローナル抗体と抗DTマウスモノクローナル抗体-HRP結合体の間に挟む。基質とともにTMBを加えて反応を検出する。反応を、1NのHCl溶液を使用してクエンチする。マイクロプレート分光光度計を使用して吸光度を450nmで測定する。吸光度は、試料に存在するDTの濃度に正比例する。
【0283】
b. CZEによる遊離のタンパク質推定のための代替方法
ミセル動電クロマトグラフィー(MECK)は、動電クロマトグラフィーの方法の1つであり、ランニングバッファー中でイオン性界面活性剤をその臨界ミセル濃度よりも十分に高い濃度で使用することに基づく。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、最も一般的な界面活性剤の1つであり、MEKCに広く使用されている。SDSミセルは、電気泳動によって陽極に向かって移動する。電気浸透流は陰極の方向であり、これは5を超えるpHでのSDSミセルの電気泳動の移動よりも強力である。したがって、SDSミセルは、電気浸透速度と電気泳動速度の差に等しい速度で陰極に向かって移動もする。中性の分析物は、ミセルから遊離しているときは電気浸透速度で、ミセルに取り込まれているときはミセルの速度でミセル溶液中を移動する。したがって、溶質の分離は、ミセル相(ミセル)及び水相における相対的分配係数の結果となる。
【0284】
遊離のCRM197は、ミセル動電クロマトグラフィー(MECK)モードのキャピラリー電気泳動によって結合体から分離する。200nmで吸光度を監視し、標準品を使用して、遊離のCRM197、DT又はTTを定量化する。遊離のタンパク質を推定するための、この開示による特定の多糖-キャリアタンパク質の組合せを、表-4に示す。
【0285】
【表4】
【0286】
2.遊離の多糖の推定
原理
デオキシコール酸ナトリウム(DOC)は、イオン性界面活性剤であり、複合溶液中のタンパク質の選択的沈殿に使用される。DOCのこの特性を、多糖結合体試料中の遊離の糖の推定のために本明細書で使用する。
【0287】
結合体試料では、DOCは、遊離のタンパク質も結合タンパク質も沈殿させる。沈殿物はろ過によって取り除くことができ、ろ液は糖含有量の推定に使用できる。
【0288】
実験手順
方法A:血清型1、3、6B、7F、8、10A、11A、12F、14、15B、18C、22F、23F、33Fの場合
ブランクの調製:試料に代えて20mMヒスチジン緩衝液600μLを用い、下記と同じ手順に従う。
試料600μLを各エッペンドルフチューブに2連でとる。
10%DOC溶液204μLを各試料に加え、穏やかにボルテックスする。
試料を室温で10分間インキュベートする。
1N塩酸77μLを各試料に加え、穏やかにボルテックスする。
試料を室温で10分間インキュベートする。
穏やかにボルテックスし、全体積を0.22μシリンジフィルターで新しいエッペンドルフチューブにろ過するか、スピンフィルターに移して5000RPMで2分間遠心分離する。
0.5M重炭酸ナトリウム30μLを含有する新しいエッペンドルフチューブにろ液500μLを速やかに移し、穏やかにボルテックスする。
【0289】
方法B:血清型2、4、6A、19A、19Fの場合
ブランクの調製:試料に代えて20mMヒスチジン緩衝液650μLを用い、下記と同じ手順に従う。
試料650μLを各エッペンドルフチューブに2連でとる。
10%DOC溶液221μLを各試料に加え、穏やかにボルテックスする。
試料を氷浴で2分間インキュベートする。
1N塩酸62μLを各試料に加える。
穏やかにボルテックスし、全体積を0.22μシリンジフィルターで新しいエッペンドルフチューブにろ過するか、スピンフィルターに移して5000RPMで2分間遠心分離する。
0.5M重炭酸ナトリウム20μLを含有する新しいエッペンドルフチューブにろ液500μLを速やかに移し、穏やかにボルテックスする。
【0290】
(v) 製剤
この開示による20/21価のワクチン組成物を製造するための一般方法を図2に提供する。
【0291】
ブレンドA: 肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体4-DT、6A-TT、9V-TT、15B-TT、22F-TT及び23F-CRM、ヒスチジン、NaCl及び2-PE(複数回投与用製剤の場合)を、リン酸アルミニウム;及びコハク酸塩と18℃~30℃で混合し、続いてpHを6±0.5に調整し(2時間以上後)、6.0±2時間後にポリソルベート20を加えた。
【0292】
ブレンドB: 肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体1-CRM、2-CRM、5-CRM、6B-CRM、7F-CRM、8-CRM、10A-CRM、11A-CRM,12F-CRM,14-CRM、18C-CRM,19A-TT、19F-CRM、33F-CRM(21価の組成物の場合24F-DTも)、ヒスチジン、NaCl及び2-PE(複数回投与用製剤の場合)を、リン酸アルミニウム及びコハク酸塩と18℃~30℃で混合し、続いてpHを6±0.5に調整し(2時間以上後)、6.0±2時間後にポリソルベート20を加えた。肺炎球菌多糖-キャリアタンパク質結合体3-TTを使用する場合は、ブレンド-Bに存在した。
【0293】
ブレンドA(24±6時間後)及びブレンドB(18±6時間後)を撹拌しながら4~12℃で72時間混合した。必要な場合、pHを6±0.5に調整し、最終体積を注入用水(WFI)で調整してワクチン組成物(PCV-20/21製剤バルク)を得た。必要に応じてこれを(ガラスバイアル、シリコン処理バイアル、プレフィルドシリンジのような)好適な容器に充填した。シリコン処理バイアルは、(i)Muller+Muller-Joh, Germany;(ii)Nuova Ompi, Italy;及び(iii)Schott Kaisha, Indiaから購入した。プレフィルドシリンジは、BD Medical Pharmaceuticalsから購入した。
【0294】
表-5に示すように、この開示の方法を使用してさまざまな製剤を製造した。
【0295】
【表5-1】
【0296】
破傷風トキソイド(TT)と結合した血清型の数が増えると、免疫抑制が生じる可能性があるため、それぞれ20価及び21価の組成物を含み、血清型3(キャリアタンパク質としてのTTと結合している血清型3)を含まない131c(表-5aを参照)及び135a(表-5bを参照)の製剤も研究した。
【0297】
【表5-2】
【0298】
【表5-3】
【0299】
表-6は、この開示に従って製造した20価の組成物(実験131c)の吸着率を示す。20価の組成物(実験131c)は、20種の肺炎球菌の血清型に由来する多糖と個別に結合した3種類のキャリアタンパク質を含む。
【0300】
【表6】
【0301】
この開示に従って製造した20価の組成物(実験131c)が全ての血清型で少なくとも20%の吸着率を有することが表-6から理解できる。さらに、血清型1、3、5、10A、12F、14、19A、19F、23F及び33Fでは90%以上の吸着がみられる。組成物が血清型3の結合体を含まない場合でも、同様の吸着が予想される。
【0302】
凝集体/白色粒子又はいかなる種類のフロキュールがいずれのPCV製剤においても観察されなかったことから、製剤が非常に安定で一貫していることを示している。凝集体が存在しないのは、100~200kDaのサイジング後の多糖の使用し、多糖対CDAP(シアニル化試薬)比を1:0.3~1.5としたための可能性がある。
【0303】
21価の組成物(実験135及び実験135a)は、結合体(24-DT)を更に含有し、残りの成分は実験131及び実験135cと同じである。表-6から理解できるように、TT/CRMと結合した多糖のほとんどは良好な吸着(50%超)を示し、同様に、DTと結合した血清型24は、21価の製剤に含まれる場合、良好な吸着を示すことが予想される。
【0304】
実施例2 精製した多糖の総窒素含有量の決定
血清型:2、3、4、8、10A、11A、12F、15B、18C、22F、24F及び33F
【0305】
【表7】
【0306】
この開示のワクチン組成物で使用する多糖の総窒素含有量が十分に規格範囲内にあることが表-7から理解できる。
【0307】
TNM法は、化学発光検出器を使用した総窒素の検出及び定量化に基づく。TNMが提供する検出は、ケルダール法のような既存の方法よりも以下の点で優れている:
a) ハイスループット。
b) ケルダールに基づく方法のように濃酸を使用しない。
c) ペプチド、アミノ酸、核酸、アミノ糖、ナイトレート及びナイトライトのような全ての種類の窒素連結を検出できる。ケルダールに基づく方法には、ナイトレート及びナイトライトのような窒素形態を決定できないという限界がある。
d) 非常に高感度である。ppbレベルまで窒素を検出でき、これはケルダールでは不可能である(ppm単位の感度)。
e) ケルダール又はCHNS法と比較して、必要な試料の量は最小限である。
【0308】
この開示で使用する窒素含有量を推定するためのTNM法は、表-8に記載するように、CHNS法に対して以下の利点を示す。
【0309】
【表8】
【0310】
実施例3 リン酸アルミニウムゲル及びポリソルベート20の最適化
リン酸アルミニウムゲル
アルミニウム塩は、一般にワクチンで使用されており、その安全性プロフィール、調製の容易さ、安定性及び強力な免疫刺激能力は十分に確立されている。
【0311】
この開示のワクチン組成物をさまざまな濃度のリン酸アルミニウムゲル(アラムゲル)で評価し、個々の血清型の吸着に及ぼす影響を研究した。組成物の詳細及び得られた結果を表-9に示す。
【0312】
【表9】
【0313】
アラムゲルを増加すると、21価のワクチン組成物の多くの血清型の吸着に好影響を及ぼすことが表-9から理解できる。アラムゲルを1用量あたり125μgから187.5μg(Al3+)に増加すると、多くの血清型の吸着を著しく改善した。アラム含有量を増加させると70%を超える血清型結合体の吸着が改善した。さらに、アラム含有量が多い製剤(1用量あたりAl3+187.5μg)では、血清型1、3、5、10A、12F、14、19A、19F、23F及び33Fで90%以上の吸着がみられる。この開示のワクチン組成物で肺炎球菌の血清型3の多糖を含まない場合にも、同様の結果が予想される。
【0314】
キャリアタンパク質としてのDTを有する結合体血清型4は、アラムゲル125μg/用量(Al3+)で吸着は少なかった(54%)。アラムゲル含有量を187.5μg/用量(Al3+)に増加させると吸着はかなり改善された(79%)。同様の傾向が残りの血清型の大半でも観察される。出願人の10価の肺炎球菌ワクチン(PNEUMOSIL(登録商標))に存在しない追加の血清型は、アラムゲルの使用量が少ない場合、吸着が少ないことが観察された。しかし、1用量あたり多くのアラムゲル(187.5μg(Al3+))を使用した場合、吸着が大幅に改善した。
【0315】
この開示の多価ワクチン組成物の比較吸着データ
【0316】
【表10】
【0317】
【表11】
【0318】
6B、7F及び15Bを含む多くの血清型では低いアラム含有量で吸着が比較的低く、一方でアラム含有量を増加させるとより高い吸着が観察されたことが表-10及び表-11から理解できる。したがって、更なる研究ではAl3+187.5μg/0.5mlを使用した。
【0319】
血清型の吸着に与える製剤中のアルミニウム含有量の影響に関する比較研究
表-12は製剤の詳細並びに異なるアルミニウム含有量が吸着及び抗原含有量に与える影響を示す。
【0320】
【表12-1】
【0321】
表-12aは、IgG力価に与える多価組成物中のアルミニウム含有量の影響を示す。
【0322】
【表12-2】
【0323】
アラムゲルの量を更に増加してもワクチン組成物の抗原性に悪影響を及ぼさなかったことが理解できる。表-12aのほとんど全ての血清型のウサギ免疫原性研究データから明らかなように、免疫原性の製剤中のアラムゲルが多いと、B細胞を介したIgG抗体応答を高めるのにも有益であることが理解できる。全ての血清型について数値的優位性という点でIgG抗体応答が観察された。さらに、血清型1、10A、15B及び22Fでは、少なくとも2倍高いIgG力価が得られた。
【0324】
個々の結合体血清型の高い吸着は、ワクチン組成物にとってプラスの品質特性としてみなされ、安定性を示すパラメーターである。結合体の吸着の増加は、臨床材料及び商業材料の製造において、個々の抗原の安定性及び製剤バッチのロット間の一貫性を更に改善する。これは、少ない血清型、例えば4、6B、7F、15B、18Cでは、特により重要である。吸着が少ないと、ワクチン組成物の保存中に、抗原が経時的に分解する危険性があることが予想される。
【0325】
個々の吸着及び動物免疫原性データからは、この開示の多価ワクチン組成物において、アラムゲルを多く使用する利点を確認した。免疫応答が高いこれらの組成物は、より一貫している強力な結果を提供する可能性があり、大規模なワクチン製造において有用である。
【0326】
ポリソルベート20
この開示のワクチン組成物は、水性媒体に懸濁されたリン酸アルミニウム粒子を含み、非イオン性界面活性剤ポリソルベート20は安定剤として使用される。界面活性剤は、液体-空気、固体-液体の界面張力を減らし、懸濁液ベースの製剤の安定性及び流動性を改善することによって製剤を安定化させるのに重要な役割を果たす。
【0327】
出願人は、自社で販売した10価の肺炎球菌ワクチン組成物(PNEUMOSIL(登録商標))に50μgのポリソルベート20を以前使用していた。しかし、この開示のワクチン組成物で使用する抗原(肺炎球菌多糖)の数が増加し、アラムゲルの量が増加したため、ポリソルベート20の量を増加した(100μg)。本ワクチン組成物のポリソルベート20の量を増加させると、特に、添加する抗原(肺炎球菌多糖)の数が多くなりアラムゲル含有量が増加した場合、流動特性の改善を示す。さらに、製品の凝集体又はフロキュールは、2℃~8℃で保存した場合、ワクチン組成物のポリソルベート20濃度を増加させると観察されなかった。また、ポリソルベート20含有量を多くした場合、動物研究(マウス及びウサギ)で観察された結合体血清型の個々の吸着、個々の抗原含有量及び免疫応答に関して、有害作用は観察されなかった。
【0328】
この開示のワクチン組成物における界面活性剤(ポリソルベート20)の量が多いほど、組成物に含まれる抗原(肺炎球菌多糖)の数が多くなり、アラムゲル含有量が増加した場合でも、流動性が改善された凝集体を含まない組成物を得るのに役立つ。
【0329】
実施例4 免疫原性研究
(a) Serum Institute/SIIPLの多価肺炎球菌製剤、実験131、実験106及び実験119並びに市販の比較基準(プレベナー13)に関するNZWウサギの免疫原性データの比較。
研究目的: この研究の目的は、マルチプレックスビーズベースアッセイによって総IgG力価を評価し、OPA又はマルチプレックスオプソニン化貪食アッセイ(MOPA)のいずれかによって機能的IgG力価を評価することで、SIIPLが開発した多価肺炎球菌製剤である実験131の免疫原性を確認し、実験106、実験119及び市販の比較基準(プレベナー13)と比較することであった。
【0330】
研究詳細: 出願人の開発したPCV21製剤である実験131を、ニュージーランド白色ウサギ8匹(オス4匹、メス4匹)にリン酸アルミニウムアジュバントとともに注入し、続いて研究開始の日から0日目、14日目及び28日目に3回筋肉内接種を行った。研究の0日目、28日目及び42日目に回収した血液から血清を分離し、ビーズベースアッセイによって総IgGを、マルチプレックスオプソニン化貪食アッセイによって機能的IgGを確認した。
【0331】
42日目の力価を、プレベナー13及び以前試験したPCV21実験106、実験119の42日目のデータと比較した。この研究で使用した製剤の詳細を、表-13に記載し、結果を、表-14に示す。
【0332】
【表13】
【0333】
結果
【0334】
【表14】
【0335】
比較のための全体的推論
TTとの結合の影響 表-14に示すように、実験131において、TT結合体を使用する血清型3、6A、9V及び19Aでは、実験106のCRM結合体と比較して、総IgG(BBAによる)及び機能的IgG(MOPAによる)の両者の力価が著しく増加した。
【0336】
さらに、同様の血清型の交差反応性(すなわち6A-6B及び19A-19F)も、実験106と比較して実験131で観察される。抗体は、それを刺激した抗原以外の抗原と反応する。この現象は、交差反応又は交差反応性と呼ばれる。交差反応は、抗原上の共有エピトープ又はエピトープの立体構造的類似性によって生じる。本研究では、6A及び19Aの免疫応答が増加(キャリアタンパク質の変化による)し、6B及び19Fに対する免疫応答も、おそらく交差反応性によって増加したことが、データから判明した。
【0337】
実験131の力価(総IgG及び機能的IgGの両者)は、市販の比較基準(プレベナー13)で得られた力価と同等である。
【0338】
血清型3に由来する肺炎球菌多糖を含まないワクチン組成物の免疫原性研究は進行中であり、同様の結果が予想される。
【0339】
ビーズベースアッセイによる総IgG
Luminexフローベースシステムでのマルチプレックスビーズベースアッセイは、xMAP(多分析物プロファイリング)技術に基づいて設定される。Luminexアッセイの特有のマルチプレックスな能力(100プレックスまで)は、異なる強度の赤色及び赤外蛍光物質で内部を染色したマイクロスフェアの使用に基づく。各ビーズは、固有の番号、すなわち「ビーズ領域」が与えられ、1つのビーズと別のビーズを区別するのを可能にする。
【0340】
マルチプレックスビーズベースアッセイは、抗体応答を推定するために広く使用されているELISAの有効な代替手段であることを証明した。このアッセイは、より感度が高く、特異的で強いため、ELISAよりも多くの利点を有する。一度に単一の抗原に対する応答を評価するために、ELISA及びOPAなどのセルベースアッセイの能力では、多価ワクチンのデータを作成するのにより労力と時間がかかる。ハイスループットアプリケーションでのマルチプレックスビーズベースアッセイは、総IgG力価を推定するのに要する時間ははるかに短い。ビーズベースアッセイがより単純でどこでも再現しやすいのに対して、複雑なセルベースアッセイを実施するためのリソース及び装置を有する研究室はごくわずかである。多価ワクチン候補を試験する場合、ELISA及びOPAでは、血清試料の利用可能な体積が大きな問題であるが、ビーズベースアッセイでは比較的少ない体積の試料を必要とし、1価のアッセイと同様に精密で正確なデータを作成できる。血清希釈に肺炎球菌細胞壁多糖を使用することによって、抗体が交差反応して目的の抗原と結合するのを回避するように注意が払われている。マルチプレックスアッセイによって作成されたデータが従来のOPA力価とよく相関することをさまざまな報告及び発表論文が示している。
【0341】
このアッセイでは、自社で開発した結合法を使用して、個々のビーズセットを21価のワクチン群の各肺炎球菌莢膜多糖(PnPS)抗原と結合させる。血清試料のさまざまな連続希釈中の抗体を、ビーズに結合した多糖抗原と反応させ、蛍光色素(R-フィコエリトリン)タグ付け抗体結合体を使用して検出する。各抗原のビーズタイプ別に生じた蛍光をLuminexシステム(Bio-Plex200, Bio-Rad)で測定する。
【0342】
この結果を抗体価の形態で分析した。総IgG力価を計算するカットオフは、特定抗原のバックグラウンド値を差し引いた後、MFIが100以上の血清試料の最高希釈度の逆数として設定した。1:100希釈のブランクを引いたMFIが100未満である場合、2倍減/以前の希釈1:100、すなわち50を力価とみなす。同様に、ブランク値を差し引いた後、最終希釈度のMFIが200以上である場合、次のそれぞれの2倍の希釈度を力価とみなす。
【0343】
オプソニン化貪食アッセイ(OPA)又はマルチプレックスオプソニン化貪食アッセイ(MOPA)による抗体の機能推定
オプソニン化貪食殺傷アッセイ(OPA)及び酵素結合免疫測定法(EIA)は、ワクチンの有効性を評価する最も一般的な方法である。EIAは、肺炎球菌ワクチンのために産生された抗体数についての有用な情報を提供するが、免疫応答の間に産生された機能的IgGに関する情報を実際に提供することはない。肺炎球菌に対する宿主防御が、細菌のオプソニン化を引き起こす食細胞によって媒介されるため、オプソニン化貪食殺傷アッセイ(OPA)は、オプソニン化の過程に機能的に関与する抗肺炎球菌抗体の評価の好ましい生物分析アッセイであることを証明する。肺炎球菌ワクチンの有効性を評価するために標準化された血清免疫グロブリンG抗肺炎球菌莢膜多糖酵素免疫測定法を補助するものとして、細菌のオプソニン化貪食による殺傷を媒介する抗体及び補体を用いたin vitroオプソニン化貪食アッセイ(OPA)が計画され開発された。OPAは、肺炎球菌ワクチンの開発の間、基盤となる。ワクチン製剤の調節又は変更は、徹底的に評価し、その後のワクチン開発中の製剤の改善につなげることができるため、ワクチン認可の前にOPAを行うのは極めて重要である。
【0344】
MOPAはマルチプレックスOPAであり、4種の細菌に対するOPA力価を1つのウェルで分析できる。モノプレックスOPAは非常に時間と労力がかかるため、MOPAを行うことは、OPAに対し、ワクチン製剤に含まれる多くの血清型を試験するための血清体積が少なくて済むこと、及びアッセイのハイスループットの性質により迅速で正確な分析が可能なこと、といった複数の利点を有する。
【0345】
MOPAの株は、肺炎球菌免疫原性分析の研究室でもあるUAB(University of Alabama-Moon Nahm教授の研究室)から調達した。全ての主要な肺炎球菌ワクチン製造会社は、ワクチンの研究及び臨床評価に、UABが提供した同じMOPA手順及び株を現在使用している。
【0346】
MOPAは、特定の抗生物質に対する抗生物質抵抗性を有する、改変された肺炎球菌臨床株を使用し(抗生物質は、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、トリメトプリム及びオプトヒンを含む)、細菌のセット(1セットあたり4種の細菌)で使用される。血清試料のさまざまな希釈を分析し、補体対照ウェルと比較して50%以上の細菌を殺傷する血清の最高希釈度をMOPA力価とみなす。
【0347】
抗原含有量を推定するための改変アミン結合 Luminex xMAPは2種類の蛍光物質で内部をラベルしたカルボキシル化ビーズ(マイクロスフェア)を利用する新しい技術であり、各ビーズセットをビーズ領域と呼ばれる固有のIDで指定する。この工程は、所与の試料において複数(100まで)の異なる分析物を同時に評価するのに利用できるという重要な応用をこの方法に与える。このためには、分析物を、ビーズに存在するCOOH基を使用してビーズに結合させる必要がある。細菌多糖の結合には多くの方法が報告されており、ほとんどが2日間かかるプロトコルである。DMTMM-COOH、DMTMM-NH、PLLのように以前開発された方法をSIIPLの6B、9V及び19A型多糖の結合に適用したところ、得られた結合ビーズは、IgG滴定アッセイに適していたが、抗原含有量を推定するための競合阻害アッセイにおいて直線状の曲線が得られないことが明らかになった。ビーズのダイナミックレンジは非常に狭く、開発されたビーズベースの競合阻害アッセイ(BBCIA)に必要な全部で8点の標準点のうち、直線状の範囲に入ることができた標準濃度はほとんど4~6点であった。アッセイはSSIウサギ血清からの抗体を含むため、ポリクローナル血清中の交差反応抗体の程度が大きいことによりビーズが適さないことが何度も明らかになった。BBCIAはマルチプレックスアッセイ(10プレックス)であるため、各血清型に特異的な抗体は混合物で使用されている。SSI血清の交差反応パターンが可変であることから、各血清型に特異的な抗体の希釈を最適化することは困難であった。このため、多糖結合を高める、それにより抗体希釈の容易な最適化の機会を増やし、BBCIAの8種類の標準濃度で直線状の曲線を有することができる新しい結合方法を導入せざるを得なくなった。
【0348】
新しく開発した結合方法は、タンパク質分析物だけでなく多糖の結合に磁気ビーズを使用する場合、遠心分離の代わりにビーズ洗浄工程に磁気ELISA洗浄機を利用するという独自の方法で構築された。
【0349】
改変アミン結合のプロトコル
1. 1×スケールの結合反応では、適切に混合した単分散の100μl(およそ1.25×10)ビーズからのビーズペレットをビーズ活性化緩衝液に再懸濁する。ビーズを、新たに作製した50mg/mlのEDC及びS-NHS(pH6の100mMのMES緩衝液のビーズ活性化緩衝液中)各10μlで、暗所でロトスピン(商標)で30RPMで振とうしながら室温で20~30分間活性化させる。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でビーズを2回洗浄し、ビーズペレットを水に再懸濁する。
2. 結合する多糖を新たに調製した200mg/mlのEDCと混合することによって活性化し、混合物を活性化ビーズに加える。ビーズ-多糖-EDC混合物を、結合のために暗所でロトスピン(商標)で30RPMで、室温で2~3時間インキュベートし、次いで16500×gで5分間遠心分離することによってPBSで3回洗浄する。
3. 開いている活性基(アッセイ中に非特異的結合を引き起こす可能性がある)をマスクするために、ビーズを250mMグルコース及びグリシンで、それぞれ30~45分間、暗所でロトスピン(商標)で30RPMで、室温でブロッキングした。ビーズをPBSで再度洗浄し、最初のビーズ体積と同量の保存緩衝液中で保存する。
4. 磁気ビーズを結合に使用しながら、以下を変更して、ポリスチレンプレート及び磁気洗浄機を使用するという異なる手法に従った。
- ビーズを丸底96ウェルプレートに取った。遠心分離の代わりに、磁気ELISA洗浄機を使用して3サイクル、2回の洗浄サイクルの間に、ビーズを沈ませる/磁石によって底に維持するために1分間の間隔を置いて洗浄した(300μl緩衝液/ウェル;結合反応前、PBS及び結合反応後、0.2%BSA、0.1%tween(登録商標)20及び0.05%アジ化ナトリウムを添加したPBS)。
- ビーズの活性化、結合及びビーズのブロッキングでは、インキュベーションはオービタルシェーカーで行った。
【0350】
改変アミン結合の利点
これまで利用可能であった方法によって結合した6B、9V及び19A型SIIPL多糖ビーズは、感度の高い他の血清型と比較して、効率が低く一貫性がなかったため、アッセイ感度が制限された。これにより、PCV10の全ての多糖について同様の標準範囲で曲線を最適化するのが困難となり、これを回避するために、BBCIAの結合にはATCCから調達した多糖を使用した。
【0351】
改変アミン結合方法の利点は、上述の血清型について高効率のSIIPL多糖結合ビーズを製造でき、それは直線状の範囲の標準点の数が増加することによって間接的にアッセイの感度を高めるのに役立つことである。これらのビーズは、抗原含有量を推定するためにBBCIAでこれらのビーズを使用するための必要条件であった抗体希釈の容易な最適化(ビーズ適格性確認)も促進した。
【0352】
3つの異なる結合ロットでこれらの血清型に使用された改変アミン結合方法は、うまく適格であることが確認され、ビーズ結合の一貫性及びBBCIAでのそれらの適格性を示していることが明らかになった。
【0353】
上記の利点に加えて、改変アミン結合方法は、以下に述べるように、以前の方法に対していくつかの他の利点を有する。
- 結合に必要な多糖の量が少ない(通常、最大25μg)
- この方法はより労力がかからず、より時間がかからない
- ビーズの適格性確認及び抗体希釈の最適化のための時間/実験数の減少
- 結合反応にポリスチレン管を使用する場合、ビーズが管の内壁に結合する。これらの結合ビーズは、廃棄のために上清を回収する時に廃棄されるため、ビーズ数が少なくなる。ビーズの喪失を減らすために、多糖と磁気ビーズの結合にポリスチレン96ウェルプレートを使用し、ビーズ洗浄工程に磁気ELISA洗浄機を使用する方法でアッセイを開発した。
【0354】
改変アミン結合方法によって結合した6B、9V、及び19A型多糖ビーズは、以前の方法の1つによって結合した他の多糖のビーズと組み合わせて使用し、BBCIAに適していることが明らかになった。3種の多糖全てについて3つの異なるビーズロットがBBCIAに適格であることが確認され、最終ロットの抗原含有量の回収率は、表示の含有量の70~130%である設定規格以内であることが明らかになった。
【0355】
これらの多糖を60倍の結合スケールで結合しても、小規模の結合の3つのロットと同様の結果が得られ、結合スケールは更に増大できる。
【0356】
(b) 出願人の開発したPCV21製剤である実験121;実験119;実験131及び市販の比較基準(プレベナー13及びシンフロリックス)のマウス免疫原性比較データ
研究目的:この研究の目的は、SIIPLが開発したPCV21製剤である実験121、実験119、実験131が強い免疫応答を引き起こす可能性を評価し、市販の比較基準(プレベナー13及びシンフロリックス)の免疫原性と比較することであった。総IgG力価は、マルチプレックスビーズベースアッセイ(Luminex 200)によって評価した。
【0357】
研究詳細:SIIPLのPCV-21開発製剤である実験121、実験119及び実験131、並びに比較基準(プレベナー13及びシンフロリックス)を、マウス(Harlanマウス)の皮下に1/100希釈で注入した。マウスに0日目、14日目及び28日目に注入し、42日目にエンドポイント力価推定のために採血した。42日目(最終採血)に回収した血液から血清を分離し、ビーズベースマルチプレックスアッセイによって総IgG力価を確認した。
【0358】
IgG力価推定に使用した方法:総IgG力価をLuminex 200プラットフォームを使用したマルチプレックスビーズベースアッセイを使用して決定した。力価は、MFIが100以上(カットオフ値)である血清試料の最高希釈度を決定することによって計算した。
【0359】
この研究で使用した製剤の詳細を、表-15に示す。
【0360】
【表15】
【0361】
出願人の開発製剤について、42日目の力価を表-16に概説し、プレベナー13及びシンフロリックスと比較する。
【0362】
【表16-1】
【0363】
【表16-2】
【0364】
比較のための全体的推論
TTとの結合の影響- 総IgG力価は、実験119;実験131においてTT結合体が使用されている血清型3、6A、9V及び19Aで、実験121におけるCRM結合体製剤 実と比較して、著しく増加した。
【0365】
さらに、同様の血清型の交差反応性(すなわち6A-6B及び19A-19F)も、実験121と比較して実験131で観察される。
【0366】
血清型3に由来する肺炎球菌多糖を含まないワクチン組成物の免疫原性研究は進行中であり、同様の結果が予想される。
【0367】
抗体は、それを刺激した抗原以外の抗原と反応する。この現象は、交差反応又は交差反応性と呼ばれる。交差反応は、抗原上の共有エピトープ又はエピトープの立体構造的類似性によって起こる。本研究では、6A及び19Aの免疫応答が増加(キャリアタンパク質の変化による)し、6B及び19Fに対する免疫応答も、おそらく交差反応性によって増加したことが、データから判明した。
【0368】
技術的進歩
明細書に開示したワクチン組成物及びワクチン組成物の製造方法は、以下の点を含むがこれらには限定されない技術的利点を有する:
- 凝集体のないワクチン組成物は、広い温度範囲で長期安定性を示す
- TTをキャリアタンパク質として使用した場合、CRM197をキャリアタンパク質として使用した場合と比較して、血清型6A、9V、19Aに対する免疫応答が改善される
- 高い免疫応答を確実にする、最適な分子量のサイジング後の多糖及び結合体
- 多糖断片化に関して、高い多糖回収率と、(化学的サイジングに対して)高圧ホモジナイゼーションを利用することによって維持される構造的完全性
- 安定した製剤(低遊離多糖、低遊離タンパク質含有量)
- 最も流行している肺炎球菌の血清型に対する防御を提供する
- 多くのアルミニウム塩アジュバントの使用が肺炎球菌多糖の吸着の改善を可能にする
- 多くのポリソルベート20の使用が凝集体/フロキュールの形成を回避する
- 6A-TTとの交差反応性による血清型6Bに対する免疫応答の増強
- 多糖のCDAP活性化の使用により、多糖エピトープのより良い維持とともにより速い結合反応がもたらされる
- 複数のキャリアタンパク質の使用が、単一の種類のキャリアタンパク質を使用した結果としての免疫抑制を回避する。
【0369】
特定の態様の前述の説明は、本明細書の態様の一般的性質を十分に明らかにするものであり、他者は、現在の知識を適用することにより、包括的な概念から逸脱することなく、このような特定の態様をさまざまな応用のために容易に改変及び/又は適合させることができ、したがって、このような適合及び改変は、開示される態様の意味及び等価物の範囲内で理解されるべきであり、理解されることが意図される。本明細書で利用される言い回し又は専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定のためのものではないことを理解されたい。したがって、本明細書の態様は、好ましい態様の観点から説明されており、当業者であれば、本明細書の態様は、本明細書に記載される態様の趣旨及び範囲内で改変を加えて実施できることを認識するであろう。
【0370】
この明細書を通して、「含む(comprise)」という用語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」のような変形は、述べられた要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を包含することを意味するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を除外することを意味しないと理解される。
【0371】
「少なくとも」又は「少なくとも1つ」という表現の使用は、望ましい目的又は結果の1つ以上を達成するために本開示の態様で使用されてもよい、1つ以上の要素又は成分又は量の使用を示唆する。
【0372】
この明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品などのいずれの考察も、本開示の文脈を提供する目的のみのためである。これらの事項のいずれか又は全てが、従来技術の基盤の一部を形成していること、又は、本出願の優先日以前のどこかで存在した、本開示に関連する分野における一般的な一般知識であったことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0373】
さまざまな物理的パラメーター、寸法又は量について言及された数値は、近似値に過ぎず、本明細書において具体的に反対の記述がない限り、パラメーター、寸法又は量に割り当てられた数値よりも10%高い/低い数値が本開示の範囲内にあることが想定される。
【0374】
本明細書では、好ましい態様の構成要素及び構成要素部分にかなりの重点が置かれているが、本開示の原理から逸脱することなく、多くの態様を作ることができ、好ましい態様に多くの変更を加えることができることが理解されよう。好ましい態様におけるこれら及び他の変更並びに本開示の別の態様が本明細書の開示から当業者には明らかであり、これにより、前述の説明的事項が単に本開示の説明として解釈され、限定として解釈されないことがはっきりと理解される。
図1
図2
【外国語明細書】