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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153606
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】MnBi系磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/047 20060101AFI20241022BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20241022BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20241022BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241022BHJP
   C22F 1/16 20060101ALN20241022BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
H01F1/047
C22C12/00
B22F9/08 M
B22F1/00 W
C22F1/16 A
C22F1/00 611
C22F1/00 621
C22F1/00 660D
C22F1/00 661Z
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066700
(22)【出願日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】10-2023-0050115
(32)【優先日】2023-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517099982
【氏名又は名称】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】ペ,ソク
(72)【発明者】
【氏名】森下 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】原嶋 庸介
(72)【発明者】
【氏名】重田 育照
(72)【発明者】
【氏名】松井 正冬
(72)【発明者】
【氏名】梅津 理恵
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5E040
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA10
4K017BB07
4K017DA04
4K017EE02
4K018AA40
4K018KA46
5E040AA19
5E040AA20
5E040NN01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ネオジム磁石を代替し、常温で高い磁気的特性を有し、別途の希土類元素を含まず、安価で磁石を使用することができるMnBi系磁石を提供する。
【解決手段】実施例に係るMnBi系磁石は、(MnBi)aMbの組成を有し、前記M元素は、(MnBi)aMbの全体原子at%を100at%としたとき、0at%超過ないし10at%含まれ、前記M元素は、クロム元素、ゲルマニウム元素またはテルル元素を含む。実施例に係るMnBi系磁石は、(MnBi)aMbの組成を有し、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素またはビスマス元素の原子半径より小さく、前記M元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の差は、0.15Åないし0.36Åである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(MnBi)aMbの組成の結晶粒を有するMnBi系磁石として、
前記M元素は、(MnBi)aMbの全体原子at%を100at%としたとき、0at%超過ないし10at%含まれ、
前記M元素は、クロム元素、ゲルマニウム元素またはテルル元素を含む、MnBi系磁石。
【請求項2】
前記MnBiの全体原子at%を100at%としたとき、
前記MnBiにおけるマンガン元素は、45at%ないし65at%含み、
前記MnBiにおけるビスマス元素は、35at%ないし55at%含み、
前記マンガン元素のat%は、前記ビスマス元素のat%より大きい、請求項1に記載のMnBi系磁石。
【請求項3】
前記MnBi系磁石は、40重量%ないし70重量%の低温相(Low Temperature Phase、LTP)を含む、請求項1に記載のMnBi系磁石。
【請求項4】
前記M元素は、クロム元素を含み、
前記クロム元素は、0at%超過ないし6at%以下含まれる、請求項1に記載のMnBi系磁石。
【請求項5】
前記MnBi系磁石は、低温相を100重量%に換算したときの飽和磁化が300Kの温度で70emu/gないし80emu/gである、請求項4に記載のMnBi系磁石。
【請求項6】
前記M元素は、ゲルマニウム元素を含み、
前記ゲルマニウム元素は、0at%超過ないし4at%以下含まれる、請求項1に記載のMnBi系磁石。
【請求項7】
前記MnBi系磁石は、低温相を100重量%に換算したときの飽和磁化が300Kの温度で70emu/gないし80emu/gである、請求項6に記載のMnBi系磁石。
【請求項8】
前記M元素は、テルル元素を含み、
前記テルル元素は、0at%超過ないし3at%以下含まれる、請求項1に記載のMnBi系磁石。
【請求項9】
前記MnBi系磁石は、低温相を100重量%に換算したときの飽和磁化が300Kの温度で69emu/gないし80emu/gである、請求項8に記載のMnBi系磁石。
【請求項10】
(MnBi)aMbの組成の結晶粒を有するMnBi系磁石として、
前記M元素の原子半径は、前記ビスマス元素の原子半径より小さく、
前記M元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の差は、0.15Åないし0.36Åである、MnBi系磁石。
【請求項11】
前記M元素の原子半径と前記マンガン元素の原子半径の差は、0.07Åないし0.11Åである、請求項10に記載のMnBi系磁石。
【請求項12】
前記M元素は、前記ビスマス元素と置換される、請求項10に記載のMnBi系磁石。
【請求項13】
前記M元素は、クロム元素、ゲルマニウム元素またはテルル元素を含む、請求項10に記載のMnBi系磁石。
【請求項14】
前記MnBi系磁石は、40重量%ないし70重量%の低温相(Low Temperature Phase、LTP)を含む、請求項10に記載のMnBi系磁石。
【請求項15】
前記M元素は、(MnBi)aMbの全体原子at%を100at%としたとき、0at%超過ないし10at%含む、請求項10に記載のMnBi系磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施例は、MnBi系磁石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業的に使用されている磁石のうち最も強力な磁石はネオジム磁石(Nd-Fe-B)である。前記ネオジム磁石は、HDD、スピーカー、携帯電話、自動車またはロボットに適用されている。前記ネオジム磁石は、温度が上昇すると保磁力が減少する。これにより、前記ネオジム磁石にジスプロシウム(Dy)を添加して使用している。これにより、前記ネオジム磁石は、高温においても高い保磁力を維持することができる。しかし、前記ジスプロシウムは高価な物質である。これにより、前記ネオジム磁石を代替しながら、希土類元素の添加のない永久磁石材料が要求されている。
【0003】
MnBi系磁石は、60年以上前に発見された希土類元素を含まない永久磁石材料である。前記MnBi系磁石は、その当時永久磁石としての性能が不十分であるか耐食性に問題点があるため実用化に至っていなかった。
【0004】
詳しくは、永久磁石の磁気特性を表わす指標として最大エネルギー積(BH)maxがある。前記ネオジム磁石は、常温帯域で最大エネルギー積(BH)maxが40MGOe以上である。しかし、前記ネオジム磁石は、温度上昇により保磁力及び磁化が減少する。これにより、前記ネオジム磁石は、約150℃の温度で最大エネルギー積(BH)maxが50%以上減少する。
【0005】
反面、前記MnBi系磁石は、温度が上昇すると保磁力が増加する特異な性質を有する。理論的に、前記MnBi系磁石は、約150℃の温度で最大エネルギー積(BH)maxが前記ネオジム磁石より高い。前記MnBi系磁石は、希土類元素を含まないので、最近研究対象として再注目されている。
【0006】
しかし、理論的に、前記MnBi系磁石は、常温帯域における最大エネルギー積(BH)maxが17.7MGOeであり、前記ネオジム磁石の最大エネルギー積(BH)maxより非常に小さい。また、前記MnBi系磁石は、常温帯域における飽和磁化、残留磁化及び保磁力等の特性が前記ネオジム磁石の特性より小さい。
【0007】
よって、常温帯域においても向上した特性を有する前記MnBi系磁石が要求される。
【0008】
前記MnBi系磁石に関する先行技術として韓国登録特許(KR10-1585478)に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
実施例は、常温帯域で向上した磁気特性を有するMnBi系磁石を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施例に係るMnBi系磁石は、(MnBi)aMbの組成の結晶粒を有し、前記M元素は、(MnBi)aMbの全体原子at%を100at%としたとき、0at%超過ないし10at%含まれ、前記M元素は、クロム元素、ゲルマニウム元素またはテルル元素を含む。
【0011】
実施例に係るMnBi系磁石は、(MnBi)aMbの組成の結晶粒を有し、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素またはビスマス元素の原子半径より小さく、前記M元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の差は、0.15Åないし0.36Åである。
【0012】
また、前記MnBiは、前記MnBiの全体原子at%を100at%としたとき、前記マンガン元素は、45at%ないし65at%含み、前記ビスマス元素は、35at%ないし55at%含み、前記マンガン元素のat%は、前記ビスマス元素のat%より大きい。
【0013】
また、前記MnBi系磁石は、40重量%ないし70重量%の低温相(Low Temperature Phase、LTP)を含む。
【0014】
また、前記M元素は、クロム元素を含み、前記クロム元素は、0at%超過ないし6at%以下含まれる。
【0015】
また、前記MnBi系磁石は、低温相を100重量%に換算したときの飽和磁化が300Kの温度で70emu/gないし80emu/gである。
【0016】
また、前記M元素は、ゲルマニウム元素を含み、前記ゲルマニウム元素は、0at%超過ないし4at%以下含まれる。
【0017】
また、前記MnBi系磁石は、低温相を100重量%に換算したときの飽和磁化が300Kの温度で70emu/gないし80emu/gである。
【0018】
また、前記M元素は、テルル元素を含み、前記テルル元素は、0at%超過ないし3at%以下含まれる。
【0019】
また、前記MnBi系磁石は、低温相を100重量%に換算したときの飽和磁化が300Kの温度で69emu/gないし80emu/gである。
【0020】
一方、実施例は、(MnBi)aMbの組成の結晶粒を有するMnBi系磁石として、前記M元素の原子半径は、前記ビスマス元素の原子半径より小さく、前記M元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の差は、0.15Åないし0.36Åである。
【0021】
また、前記M元素の原子半径と前記マンガン元素の原子半径の差は、0.07Åないし0.11Åである。
【0022】
また、前記M元素は、前記ビスマス元素と置換される。
【0023】
また、前記M元素は、クロム元素、ゲルマニウム元素またはテルル元素を含む。
【0024】
また、前記MnBi系磁石は、40重量%ないし70重量%の低温相(Low Temperature Phase、LTP)を含む。
【0025】
また、前記M元素は、(MnBi)aMbの全体原子at%を100at%としたとき、0at%超過ないし10at%含む。
【発明の効果】
【0026】
実施例に係るMnBi系磁石は、前記MnBi系磁石に添加またはMnBi系磁石と置換される元素を含む。即ち、前記MnBi系磁石は、M元素が添加または置換されて(MnBi)aMbに形成される。
【0027】
前記M元素の置換または添加により、前記MnBi系磁石の主成分であり、強磁性相を有する低温相(Low Temperature Phase、LTP)の単位格子の体積が減少する。これにより、前記MnBi系磁石の低温相の飽和磁化が増加する。
【0028】
詳しくは、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径または前記ビスマス元素の原子半径と類似する。また、前記M元素のat%は設定範囲で含まれる。
【0029】
よって、前記MnBi系磁石にM元素が添加されたMnBi系磁石または前記MnBi系磁石の前記マンガン元素または前記ビスマス元素が前記M元素で置換されたMnBi系磁石は、40重量%以上の低温相を有する。また、前記MnBi系磁石は、常温帯域でMnBi磁石より高い飽和磁化を有する。
【0030】
よって、実施例に係るMnBi系磁石は、常温で高い磁気的特性を有する。よって、実施例に係るMnBi系磁石により、別途の希土類元素を含まず、安価で磁石を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施例に係るMnBi系磁石の置換元素または添加元素を選択するための元素の原子半径を図示したグラフである。
図2図2は、実施例に係るMnBi系磁石の置換元素または添加元素を選択するためにDFT(Density Functional Theory)計算により測定されたMnBi系磁石の磁化特性を図示したグラフである。
図3図3は、実施例に係るMnBi系磁石の置換元素または添加元素を選択するためのMnBi系磁石の生成エネルギーを図示したグラフである。
図4図4は、MnBi系磁石にクロム元素、ゲルマニウム元素、テルル元素の添加量を変化させたときのX線回折パターンのグラフである。
図5図5は、MnBi系磁石にクロム元素、ゲルマニウム元素、テルル元素の添加量を変化させたときのX線回折パターンのグラフである。
図6図6は、MnBi系磁石にクロム元素、ゲルマニウム元素、テルル元素の添加量を変化させたときのX線回折パターンのグラフである。
図7図7は、MnBi系磁石にクロム元素、ゲルマニウム元素、テルル元素の添加量を変化させたときの磁気特性のグラフである。
図8図8は、MnBi系磁石にクロム元素、ゲルマニウム元素、テルル元素の添加量を変化させたときの磁気特性のグラフである。
図9図9は、MnBi系磁石にクロム元素、ゲルマニウム元素、テルル元素の添加量を変化させたときの磁気特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付された図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。なお、本発明の技術思想は、説明される一部実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現することができ、本発明の技術思想の範囲内であれば、実施例間の構成要素のうちの1つ以上を選択的に結合、置換して用いることができる。
【0033】
また、本発明の実施例で用いられる用語(技術及び科学的用語を含む)は、明白に特定して記述されない限り、本発明が属する技術分野で通常の知識を有した者に一般的に理解できる意味と解釈され、辞書に定義された用語のように一般的に使用される用語は、かかわる技術の文脈上の意味を考慮してその意味を解釈できるだろう。
【0034】
以下、図面を参照して実施例に係るMnBi系磁石を説明する。
【0035】
<MnBi系磁石>
実施例に係るMnBi系磁石は、(MnBi)aMb(a及びbは正の数)を含む。詳しくは、前記MnBi系磁石は、MnBi磁石にM元素が置換または添加されて形成される。
【0036】
前記MnBi磁石は、マンガン元素を35at%ないし65at%含み、ビスマス元素を35at%ないし65at%含むことができる。詳しくは、前記MnBi磁石は、マンガン元素を45at%ないし65at%含み、ビスマス元素を35at%ないし55at%含むことができる。また、前記MnBi磁石は、マンガン元素のat%がビスマス元素のat%より大きくてもよい。前記マンガン元素及び前記ビスマス元素のat%は、MnBiの全体原子at%を100at%としたときを基準とする。
【0037】
前記MnBi系磁石は、設定範囲のM元素を含むことができる。詳しくは、(MnBi)aMbの組成の結晶粒を有する前記MnBi系磁石は、0at%超過ないし10at%以下のM元素を含むことができる。より詳しくは、前記MnBi系磁石は、0at%超過ないし8at%以下のM元素を含むことができる。より詳しくは、前記MnBi系磁石は、0at%超過ないし6at%以下のM元素を含むことができる。前記M元素のat%は、(MnBi)aMbの全体原子at%を100at%としたときを基準とする。
【0038】
前記MnBi系磁石は、設定された重量%範囲の低温相を有することができる。詳しくは、前記MnBi系磁石は、40重量%以上の低温相(Low Temperature Phase、LTP)を有することができる。より詳しくは、前記MnBi系磁石は、40重量%ないし70重量%の低温相を有することができる。より詳しくは、前記MnBi系磁石は、45重量%ないし68重量%の低温相を有することができる。ここで、低温相の重量%は、前記MnBi系磁石の全体相(phase)の重量%を100重量%としたときを基準とする。
【0039】
前記M元素の原子半径は、設定された大きさを有する。前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径及び前記ビスマス元素の原子半径に関連する。
【0040】
前記M元素の原子半径は、前記ビスマス元素の原子半径と異なる。詳しくは、前記M元素の原子半径は、前記ビスマスの原子半径より小さい。
【0041】
また、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径と異なる。詳しくは、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径より小さい。または、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径より大きい。
【0042】
よって、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径及び前記ビスマス元素の原子半径より小さい原子半径を有することができる。または、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の間の原子半径を有することができる。
【0043】
前記M元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の差は、0.1Å(オングストローム)以上であってもよい。詳しくは、前記M元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の差は、0.1Åないし0.5Åであってもよい。より詳しくは、前記M元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の差は、0.1Åないし0.4Åであってもよい。より詳しくは、前記M元素の原子半径と前記ビスマス元素の原子半径の差は、0.15Åないし0.36Åであってもよい。
【0044】
また、前記M元素の原子半径と前記マンガン元素の原子半径の差は、0.2Å(オングストローム)以下であってもよい。詳しくは、前記M元素の原子半径と前記マンガン元素の原子半径の差は、0.05Åないし0.2Åであってもよい。より詳しくは、前記M元素の原子半径と前記マンガン元素の原子半径の差は、0.06Åないし0.15Åであってもよい。より詳しくは、前記M元素の原子半径と前記マンガン元素の原子半径の差は、0.07Åないし0.11Åであってもよい。
【0045】
よって、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素及び前記ビスマス元素のうち少なくとも1つの元素の原子半径と類似することができる。詳しくは、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径及び前記ビスマス元素の原子半径と類似することができる。
【0046】
前記MnBi系磁石は、強磁性を有する低温相が主成分として含まれる。前記低温相の結晶構造は、Mn:Bi=1:1の化学量論的組成の結晶粒を有するNiAs型の結晶構造を意味する。
【0047】
前記MnBi系磁石の低温相の磁化は、単位格子の体積あたりの磁気モーメントで計算される。よって、前記MnBi系磁石の低温相の結晶構造の単位格子の体積が小さくなると、前記MnBi系磁石の低温相の磁化が増加する。または、前記MnBi系磁石の低温相の磁気モーメントが大きくなると、前記MnBi系磁石の低温相の磁化が増加する。よって、前記MnBi系磁石の磁性特性が向上する。
【0048】
前記マンガン元素の原子半径より小さい原子半径を有するM元素が前記マンガン元素と置換される場合、前記MnBi系磁石の低温相の結晶構造の単位格子の体積が小さくなる。これにより、前記MnBi系磁石の低温相の磁化が増加することができる。
【0049】
または、前記ビスマス元素の原子半径より小さい原子半径を有するM元素が前記ビスマス元素と置換される場合、前記MnBi系磁石の低温相の結晶構造の単位格子の体積が小さくなる。これにより、前記MnBi系磁石の低温相の磁化が増加することができる。
【0050】
実施例に係るMnBi系磁石は、前記マンガン元素の原子半径より小さい原子半径を有するM元素が前記マンガン原子と置換される。これにより、前記MnBi系磁石の低温相の結晶構造の単位格子の体積が小さくなる。これにより、前記MnBi系磁石の低温相の磁化が増加することができる。
【0051】
または、実施例に係るMnBi系磁石は、前記ビスマス元素の原子半径より小さい原子半径を有するM元素が前記ビスマス原子と置換される。これにより、前記MnBi系磁石の低温相の単位結晶の単位格子の体積が小さくなる。これにより、前記MnBi系磁石の低温相の磁化が増加することができる。
【0052】
前記M元素は、以下で説明する置換元素または添加元素の決定方法によって選択される。例えば、前記M元素の原子半径は、前記マンガンの原子半径及び前記ビスマスの原子半径より小さい原子半径を有することができる。一例として、前記M元素は、クロム元素(Cr)及びゲルマニウム元素(Ge)を含む。
【0053】
または、前記M元素の原子半径は、前記マンガンの原子半径より大きく、前記ビスマスの原子半径より小さい原子半径を有することができる。一例として、前記M元素は、テルル元素(Te)を含む。
【0054】
前記クロム元素(Cr)、前記ゲルマニウム元素(Ge)及びテルル元素(Te)は、前記マンガン元素及び前記ビスマス元素のうち少なくとも1つの元素で代替することができる。
【0055】
よって、(MnBi)aMbの組成の結晶粒を有する前記MnBi系磁石は、添加されるM元素がマンガン元素またはビスマス元素を置換して低温相がMn1-xBiMxまたはMnBi1-xMxの組成の結晶粒を有することができる。また、a、b、xは正の数であり、a>bを満足する。また、前記M元素は、前記マンガン元素及び前記ビスマス元素のうち少なくとも1つの元素で置換することができる。前記M元素は、クロム元素(Cr)、ゲルマニウム元素(Ge)またはテルル元素(Te)を含む。
【0056】
<MnBi系磁石の置換元素または添加元素の決定>
前記MnBi系磁石の置換元素または添加元素であるM元素は、元素の原子半径、DFT(Density Functional Theory)計算により測定されたMnBi系磁石の磁化特性及びMnBi系磁石の生成エネルギーにより決定される。
【0057】
図1は、前記M元素を選択するための元素の原子半径グラフである。
【0058】
前記ビスマス元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径より大きい。
【0059】
よって、前記ビスマス元素の原子半径より原子半径が大きい元素は候補群から除外される。また、前記ビスマス元素及び前記マンガン元素と原子半径が類似する元素を候補群として選択する。詳しくは、前記ビスマス元素の原子半径と0.15Åないし0.36Åの差を有する元素を第1候補群元素として選択する。また、前記マンガン元素の原子半径と0.07Åないし0.11Åの差を有する元素を第1候補群元素として選択する。
【0060】
続いて、DFT(Density Functional Theory)計算により測定されたMnBi系磁石の磁化特性及びMnBi系磁石の生成エネルギーにより前記第1候補群元素から最終候補群元素である第2候補群元素を選択する。
【0061】
図2は、前記MnBi系磁石を前記第1候補群で置換したとき、DFT(Density Functional Theory)計算により測定されたMnBi系磁石の磁化特性のグラフである。また、図3は、前記MnBi系磁石を前記第1候補群元素で置換したとき、前記MnBi系磁石の生成エネルギーのグラフである。
【0062】
図2及び図3で、〇は、前記第1候補群元素とマンガン元素を置換するときの磁化特性及び生成エネルギーである。また、図2及び図3で、□は、前記第1候補群元素とビスマス元素を置換するときの磁化特性及び生成エネルギーである。
【0063】
図2を参照すると、リチウム元素(Li)、マグネシウム元素(Mg)、ガリウム元素(Ga)、ゲルマニウム元素(Ge)、セレン元素(Se)、銀元素(Ag)、テルル元素(Te)をビスマス元素と置換したMnBi系磁石の磁化特性は、MnBi磁石の磁化特性より大きい。
【0064】
また、アルミニウム元素(Al)、インジウム元素(In)、スズ元素(Sn)をビスマス元素と置換したMnBi系磁石の磁化特性は、MnBi磁石の磁化特性より小さい。
【0065】
また、バナジウム元素(V)、クロム元素(Cr)、鉄元素(Fe)、コバルト元素(Co)、ガリウム元素(Ga)、モリブデン元素(Mo)、パラジウム元素(Pd)、銀元素(Ag)をマンガン元素と置換したMnBi系磁石の磁化特性は、MnBi磁石の磁化特性より小さい。
【0066】
図3を参照すると、リチウム元素(Li)、マグネシウム元素(Mg)、アルミニウム元素(Al)、ガリウム元素(Ga)、銀元素(Ag)、インジウム元素(In)をビスマス元素と置換したMnBi系磁石の生成エネルギーは、MnBi磁石の生成エネルギーより大きい。
【0067】
また、ゲルマニウム元素(Ge)、セレン元素(Se)、スズ元素(Sn)、テルル元素(Te)をビスマス元素と置換したMnBi系磁石の生成エネルギーは、MnBi磁石の生成エネルギーより小さい。
【0068】
また、バナジウム元素(V)、クロム元素(Cr)、鉄元素(Fe)、コバルト元素(Co)、ガリウム元素(Ga)、モリブデン元素(Mo)、銀元素(Ag)をマンガン元素と置換したMnBi系磁石の生成エネルギーは、MnBi磁石の生成エネルギーより大きい。
【0069】
また、パラジウム元素(Pd)をマンガン元素と置換したMnBi系磁石の生成エネルギーは、MnBi磁石の生成エネルギーより小さい。
【0070】
図1図3を参照して、ゲルマニウム元素(Ge)、テルル元素(Te)及びクロム元素(Cr)を最終候補群元素である第2候補群元素として選択する。
【0071】
前記ゲルマニウム元素(Ge)及び前記テルル元素(Te)は、ビスマス元素と置換したとき、MnBi系磁石の磁化特性が高く、生成エネルギーが小さいので、第2候補群元素として選択する。
【0072】
前記クロム元素(Cr)は、マンガン元素と置換したとき、MnBi系磁石の磁化特性が低く、生成エネルギーが大きい。しかし、前記クロム元素(Cr)の原子半径は、前記ゲルマニウム元素(Ge)の原子半径及び前記テルル元素(Te)の原子半径より小さいので、第2候補群元素として選択する。
【0073】
前記リチウム元素(Li)、前記ガリウム元素(Ga)及び前記銀元素(Ag)は、MnBi系磁石の生成エネルギーが大きいので、第2候補群元素から除外する。
【0074】
前記セレン元素(Se)は、毒性があるので、第2候補群元素から除外する。
【0075】
前記マグネシウム元素(Mg)は、生成エネルギーが高いので、第2候補群元素から除外する。
【0076】
<MnBi系磁石の実験例>
前記第2候補群元素として選択された元素とMnBi磁石を置換したMnBi系磁石の飽和磁化を計算した。
【0077】
<実験例1>
原料としてMn、Bi及びCrを使用して混合した。続いて、混合物をセラミックルツボに入れ、Ar雰囲気で、約1200℃の温度で加熱溶解した後、溶湯を金属製鋳型に移してインゴットを得た。前記インゴットを280℃ないし320℃の温度範囲で48時間アニーリング処理して均質化した。続いて、アニーリングしたインゴットを粉砕して粉末とした。
【0078】
前記粉末をX線回折装置(Rigaku社、Smart-lab)で測定した。図4は、クロム元素を添加した場合のX線回折パターンを示す。製作したMnBi系磁石は、強磁性を表わす低温相以外に、Bi相と少量のMn相が含まれることを、X線回折パターンから確認することができる。X線回折パターンをリートベルト(Rietveld)解析によって磁性相である低温相の重量割合を計算した。また、リートベルト分析から得た低温相の格子定数から低温相の格子体積を計算した。また、前記粉末をSQUID(Quantum Design社、Magnetic Property Measurement System)で磁化測定を実施した。図7は、クロム元素を添加したときの磁気測定結果を示す。このとき、磁場(5T)で磁化を飽和磁化の実測値として低温相の割合の差による飽和磁化の差を除去するために、飽和磁化実測値に対し低温相割合の逆数をかけて低温相100wt%換算で飽和磁化を計算した。表1は、各組成の低温相重量割合、格子体積及び飽和磁化を示す。クロム元素を6at%まで添加した組成の飽和磁化がMnBiより向上することを確認することができる。また、クロム元素を6at%まで添加した組成の低温相の格子体積は、MnBiの低温相の格子体積より小さいことを確認することができる。マンガン、ビスマス、クロム元素の原子半径は、それぞれ1.35A、1.60A、1.25Aである。クロム元素をマンガン元素またはビスマス元素のうちいずれか1つの元素で置換した結果、格子体積が小さくなり、格子体積の縮小効果により飽和磁化が向上すると推測される。添加量が7at%以上になると、格子体積がMnBiより大きくなり、飽和磁化が減少に転換するので、クロム元素は6at%以下であることが好ましい。
【0079】
<実験例2>
原料としてMn、Bi及びGeを使用して混合したことを除いて、実験例1と同様に粉末を製造した。続いて、前記粉末の飽和磁化及び格子体積を計算した。図5及び図8は、ゲルマニウム元素を添加した場合のX線回折パターンと磁気測定の結果を示す。ゲルマニウム元素を4at%まで添加した組成の低温相の格子体積は、MnBiの低温相の格子体積より小さくなって飽和磁化が向上することを確認することができる。マンガン、ビスマス、ゲルマニウム元素の原子半径は、それぞれ1.35A、1.60A、1.24Aである。ゲルマニウム元素をマンガン元素またはビスマス元素のうちいずれか1つの元素で置換した結果、格子体積が小さくなり、格子体積の縮小効果により飽和磁化が向上すると推測される。添加量が5at%以上になると、格子体積がMnBiより大きくなり、飽和磁化が減少に転換するので、ゲルマニウム元素は、4at%以下であることが好ましい。
【0080】
<実験例3>
原料としてMn、Bi及びTeを使用して混合した点を除いて、実験例1と同様に粉末を製造した。続いて、前記粉末の飽和磁化及び格子体積を計算した。図6及び図9は、テルル元素を添加した場合のX線回折パターンと磁気測定の結果を示す。テルル元素を3at%まで添加した組成の低温相の格子体積は、MnBiの低温相の格子体積より小さくなり、飽和磁化が向上することを確認することができる。マンガン、ビスマス、テルル元素の原子半径は、それぞれ1.35A、1.60A、1.45Aである。テルル元素がビスマス元素を置換した結果、格子体積が小さくなり、格子体積の縮小効果により飽和磁化が向上すると推測される。添加量が4at%以上になると、格子体積がMnBiより大きくなり、飽和磁化が減少に転換するので、テルル元素は、3at%以下であることが好ましい。
【0081】
<実験例4>
原料としてMn及びBiを使用して混合した点を除いて、実験例1と同様に粉末を製造した。続いて、前記粉末の飽和磁化及び格子体積を計算した。
【0082】
【表1】
表1は、MnBi系磁石にクロム元素(Cr)、ゲルマニウム元素(Ge)及びテルル元素(Te)を添加したとき、置換元素または添加元素の原子%に応じたMnBi系磁石の低温相(Low Temperature Phase、LTP)の重量%の割合及び飽和磁化を測定した表である。
【0083】
表1を参照すると、前記MnBi系磁石にクロム元素(Cr)、ゲルマニウム元素(Ge)またはテルル元素(Te)が置換または添加されたとき、MnBi磁石に比べて向上した飽和磁化を有することがわかる。
【0084】
MnBi系磁石は、強磁性を示す低温相を主成分として含む。前記低温相は、Mn:Bi=1:1の化学量論的組成を有した結晶粒を意味することができる。例えば、これはNiAs型の結晶構造を有する。MnBi系磁石に異種元素を添加する場合、低温相結晶構造において、異種元素がマンガン元素またはビスマス元素を置換する場合や、または異種元素が結晶構造に侵入する場合が生じ得る。ここでは、添加元素Mの原子半径は、マンガン元素及びビスマス元素の原子半径と比較的近いので、添加元素Mは置換される可能性が高いと推測される。実施例においては、前記低温相を構成するマンガン元素またはビスマス元素が添加元素Mによって置換された可能性があり、格子体積に変化が生じたので、MnBi系磁石の低温相の飽和磁化が変化していると推測される。
【0085】
例えば、マンガン元素またはビスマス元素がクロム元素(Cr)で置換されてMn1-xBiCrx(xは任意の数)またはMnBi1-xCrx(xは任意の数)の組成を有するMnBi系磁石の低温相結晶構造が形成される。前記結晶構造を有する(MnBi)aCrb磁石の低温相は、MnBi磁石の低温相に比べて向上した飽和磁化を有する。詳しくは、前記(MnBi)aCrb磁石でクロム元素が0at%超過ないし6at%以下含まれると、前記(MnBi)aCrbは、40重量%以上の低温相を有し、MnBi磁石の低温相に比べて向上した飽和磁化を有する。詳しくは、前記(MnBi)aCrb磁石の低温相は、常温帯域(300K)で70emu/g以上の飽和磁化を有する。より詳しくは、前記(MnBi)aCrb磁石の低温相は、常温帯域(300K)で70emu/gないし80emu/gの飽和磁化を有する。ここで、クロム元素のat%は、(MnBi)aCrbの全体at%を100at%とするときを基準とする。
【0086】
または、マンガン元素またはビスマス元素がゲルマニウム元素(Ge)で置換されてMn1-xBiGex(xは任意の数)またはMnBi1-xGex(xは任意の数)の組成を有するMnBi系磁石の低温相結晶構造が形成される。前記結晶構造を有する(MnBi)aGeb磁石の低温相は、MnBi磁石の低温相に比べて向上した飽和磁化を有する。詳しくは、前記(MnBi)aGeb磁石でゲルマニウム元素が0at%超過ないし4at%以下含まれると、前記(MnBi)aGebは、60重量%以上の低温相を有し、MnBi磁石の低温相に比べて向上した飽和磁化を有する。詳しくは、前記(MnBi)aGeb磁石は、常温帯域(300K)で70emu/g以上の飽和磁化を有する。より詳しくは、前記(MnBi)aGeb磁石は、常温帯域(300K)で70emu/gないし80emu/gの飽和磁化を有する。ここで、ゲルマニウム元素のat%は、(MnBi)aGebの全体at%を100at%とするときを基準とする。
【0087】
または、ビスマス元素がテルル元素(Te)と置換されてMnBi1-xTex(xは任意の数)の組成を有するMnBi系磁石の低温相結晶構造が形成される。前記結晶構造を有する(MnBi)aTeb磁石の低温相は、MnBi磁石の低温相に比べて向上した飽和磁化を有する。詳しくは、前記(MnBi)aTeb磁石でテルル元素が0at%超過ないし3at%以下含まれると、前記(MnBi)aTebは、60重量%以上の低温相を有し、MnBi磁石の低温相に比べて向上した飽和磁化を有する。詳しくは、前記(MnBi)aTeb磁石は、常温帯域(300K)で69emu/g以上の飽和磁化を有する。より詳しくは、前記(MnBi)aTeb磁石は、常温帯域(300K)で69emu/gないし80emu/gの飽和磁化を有する。ここで、テルル元素のat%は、(MnBi)aTebの全体at%を100at%とするときを基準とする。
【0088】
実施例に係るMnBi系磁石は、MnBi磁石のマンガン元素またはビスマス元素と置換できる元素を含む。即ち、前記MnBi系磁石の低温相結晶構造は、M元素が置換されてMn1-xBiMx(xは任意の数)またはMnBi1-xMx(xは任意の数)の組成を有する低温相結晶構造を有する(MnBi)aMbに形成される。
【0089】
前記M元素の置換により、前記MnBi系磁石の低温相の単位格子の体積が減少する。これにより、前記MnBi系磁石の磁化が増加する。
【0090】
詳しくは、前記M元素の原子半径は、前記マンガン元素の原子半径または前記ビスマス元素の原子半径と類似する。また、前記M元素のat%は、設定範囲で含まれる。
【0091】
よって、前記マンガン元素または前記ビスマス元素が前記M元素で置換されるかまたは前記マンガン元素または前記ビスマス元素が添加された前記MnBi系磁石は、40重量%以上の低温相を有する。また、前記MnBi系磁石の低温相は、常温帯域でMnBi磁石の低温相より高い飽和磁化を有する。よって、前記MnBi系磁石は、常温で69emu/g以上の飽和磁化を有する。
【0092】
よって、実施例に係るMnBi系磁石は、常温で高い磁気的特性を有する。よって、実施例に係るMnBi系磁石により、別途の希土類元素を含まず、安価で磁石を使用することができる。
【0093】
よって、実施例に係るMnBi系磁石は、優れる磁気的特性により、冷蔵庫及びエアコンコンプレッサー用モータ、洗濯機駆動モータ、モバイルハンドセット振動モータ、スピーカー、ボイスコイルモータ、リニアモータでコンピュータ用ハードディスクヘッドの位置決定、カメラのズーム、絞り、シャッター、微細加工機のアクチュエータ、DCT(Dual Clutch Transmission)、ABS(Anti-lock Brake System)、EPS(Electric Power Steering)モータ及び燃料ポンプのような自動車電装部品等に適用することができる。
【0094】
上述した実施例で説明された特徴、構造、効果等は、本発明の少なくとも1つの実施例に含まれ、必ず1つの実施例に限定されるものではない。また、各実施例に例示された特徴、構造、効果等は、実施例が属する分野で通常の知識を有する者によって、他の実施例に対して組合せまたは変形して実施可能である。よって、そのような組合せと変形に係る内容は、本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
【0095】
また、以上では実施例を中心に説明したが、これは単なる例示であり、本発明を限定するものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有した者であれば、本実施例の本質的な特性を逸脱しない範囲内で、以上で例示されていない多様な変形と応用が可能である。例えば、実施例に具体的に提示された各構成要素は、変形して実施することができる。そして、そのような変形と応用に係る差異点は、添付される請求の範囲で規定する本発明の範囲に含まれると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9