(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153617
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】膀胱がんの治療方法および診断方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241022BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20241022BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241022BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241022BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241022BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241022BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20241022BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K39/395 N
A61P13/02
A61P35/00
A61K45/00
A61P35/04
G01N33/53 D
G01N33/574 D
A61K39/395 U
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024099403
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2021513415の分割
【原出願日】2019-09-17
(31)【優先権主張番号】62/733,573
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マリアザサン, サンジーヴ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法を提供する。
【解決手段】治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を前記患者に投与することを含み、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ前記患者から得られた腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づき約10%以上の完全奏効(complete response:CR)を有する可能性のある抗がん療法に応答する可能性が高いと前記患者が特定されている、方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を前記患者に投与することを含み、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ前記患者から得られた腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づき約10%以上の完全奏効(complete response:CR)を有する可能性のある抗がん療法に応答する可能性が高いと前記患者が特定されている、方法。
【請求項2】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための方法であって、
(a)前記患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、前記腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、前記患者が、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置に応答する可能性があり、かつ約10%以上のCRを有する可能性を有することを示す、判定することと、
(b)前記腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量の前記アテゾリズマブを含む抗がん療法を前記患者へすることと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記患者から得られた前記腫瘍試料が、前記腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者が、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置に応答する可能性があるかどうかを判定するための方法であって、前記患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の前記発現レベルを判定することを含み、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、前記腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、前記患者が前記抗がん療法による処置に応答する可能性があり、かつ約10%以上のCRを有する可能性を有することを示す、方法。
【請求項5】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者のための療法を選択するための方法であって、
前記患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の前記発現レベルを判定することであって、前記患者が、前記尿路上皮がんについて事前に未処置である、判定することと、
前記腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、前記患者用のアテゾリズマブを含む抗がん療法を選択することであって、前記腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、前記患者が約10%以上のCRを有する可能性を有することを示す、選択することと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記患者から得られた前記腫瘍試料が、前記腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、約10%~約20%のCRを有する可能性を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、少なくとも約13%のCRを有する可能性を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が、約13%のCRを有する可能性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CRを有する可能性が、前記アテゾリズマブを含む抗がん療法による前記患者の処置開始の約17ヶ月以上後において約10%以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記CRを有する可能性が、前記アテゾリズマブを含む抗がん療法による前記患者の前記処置開始の約29ヶ月以上後において約10%以上である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記CRを有する可能性が、前記アテゾリズマブを含む抗がん療法による前記患者の前記処置開始の約36ヶ月以上後において約10%以上である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の前記発現レベルに基づいて、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を前記患者に投与することによって、前記患者を処置することを更に含む、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記処置が、4ヶ月の処置中に応答をもたらす、請求項1~3または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記処置が、4ヶ月の処置後に応答をもたらす、請求項1~3または13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、CRを有する、請求項1~3または13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記CRが、前記アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置開始の約17ヶ月以上後である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CRが、アテゾリズマブを含む前記抗がん療法による処置開始の約29ヶ月以上後である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記CRが、アテゾリズマブを含む前記抗がん療法による処置開始から約36ヶ月以上後である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記処置が、持続的奏効(durable response)をもたらす、請求項1~3または13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記持続的奏効が、約30ヶ月を超える応答である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を前記患者に投与することを含み、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、前記患者から得られた腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有するとして前記患者が特定されており、かつ前記処置が持続的奏効をもたらす、方法。
【請求項23】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための方法であって、
(a)前記患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、前記患者が、前記腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有する、判定することと、
(b)前記腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を前記患者へ投与することであって、前記処置が持続的奏効をもたらす、投与することと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記患者から得られた前記腫瘍試料が、前記腫瘍試料の約1%以上~5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者から得られた前記腫瘍試料が、前記腫瘍試料の1%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている、請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
前記処置が、4ヶ月の治療中に応答をもたらす、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記持続的奏効が、約20ヶ月を超える応答である、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記持続的奏効が、約30ヶ月間の応答である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記持続的奏効が、約30ヶ月を超える応答である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記アテゾリズマブが、約1000mg~約1400mgの用量で3週間ごとに投与される、請求項1~3または12~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記アテゾリズマブが、約1200mgの用量で3週間ごとに投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記アテゾリズマブが、単剤療法として投与される、請求項1~3または12~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記アテゾリズマブが、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内で投与される、請求項1~3または12~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記アテゾリズマブが、点滴によって静脈内投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
有効量の第2の治療剤を前記患者に投与することを更に含む、請求項1~3、12~31、33、または34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の治療剤が、細胞毒性剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、30mL/分超かつ60mL/分未満の糸球体濾過率、グレード2以上の末梢神経障害若しくは難聴、および/または米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Group)パフォーマンスステータス2を有する、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記尿路上皮がんが、局所進行性尿路上皮がんである、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記尿路上皮がんが、転移性尿路上皮がんである、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記腫瘍試料が、ホルマリン固定およびパラフィン包埋(formalin-fixed and paraffin-embedded:FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料である、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
PD-L1の前記発現レベルが、タンパク質発現レベルである、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
PD-L1の前記タンパク質発現レベルが、免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、およびウェスタンブロットからなる群から選択される方法を用いて判定される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
PD-L1の前記タンパク質発現レベルが、IHCを用いて判定される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
PD-L1の前記タンパク質発現レベルが、抗PD-L1抗体を用いて検出される、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記抗PD-L1抗体が、SP142である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者の処置で使用するためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ前記患者から得られた腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%超のCRを有する可能性のある前記医薬組成物に応答する可能性が高いと前記患者が特定されている、医薬組成物。
【請求項47】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための医薬品の製造におけるアテゾリズマブの使用であって、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ前記患者から得られた腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%超のCRを有する可能性のあるアテゾリズマブに応答する可能性が高いと前記患者が特定されている、使用。
【請求項48】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者の処置において使用するためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、前記患者から得られた腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内の検出可能な発現レベルのPD-L1を前記患者が有し、かつ前記処置が持続的奏効をもたらす、医薬組成物。
【請求項49】
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための医薬品の前記製造におけるアテゾリズマブの使用であって、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、前記患者から得られた腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内の検出可能な発現レベルのPD-L1を前記患者が有し、かつ前記処置が持続的奏効をもたらす、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2019年9月16日に作成された該ASCIIコピーであって、名前は50474-189WO2_Sequence_Listing_9.16.19_ST25で、サイズは23,559バイトである。
【0002】
がん(例えば、膀胱がん(例えば、尿路上皮膀胱がん))などの病態のための治療方法および診断方法、および組成物、ならびにPD-L1軸結合アンタゴニストを使用する方法が本明細書に提供される。具体的には、本明細書は、患者選択および診断のためのバイオマーカ、処置方法、製品、診断キット、および検出方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
がんは依然として、ヒトの健康を脅かす最も致命的な脅威の一つである。がんまたは悪性腫瘍は、制御されない様式で急速に転移および増殖し、時宜を得た検出および処置を極めて困難にする。米国において、がんは、毎年約130万人の新たな患者に影響を及ぼし、心疾患に続く第2の主な死亡原因であり、死亡のおよそ4件に1件を占める。固形腫瘍が、これらの死亡の大部分の原因である。膀胱がんは、世界で5番目に一般的な悪性腫瘍であり、1年当たり40万件近くの症例が新たに診断され、およそ15万件の関連死が報告されている。とりわけ、転移性尿路上皮膀胱がんは予後不良と関連付けられ、主要な対処されていない医療ニーズを代表し、現在まで有効な治療法がほとんどない。
【0004】
プログラム死リガンド1(Programmed death-ligand 1:PD-L1)は、慢性感染、妊娠、組織同種移植片、自己免疫疾患、およびがんにおける免疫系応答の抑制に関係があるとされているタンパク質である。PD-L1は、T細胞、B細胞、および単球の表面上に発現される、プログラム死1(PD-1)として知られる阻害受容体に結合することにより免疫応答を調節する。PD-L1は、別の受容体、B7-1との相互作用によっても、T細胞機能を負に制御する。PD-L1/PD-1およびPD-L1/B7-1複合体の形成は、T細胞受容体のシグナル伝達を負に制御し、その後、T細胞活性化の下方制御、および抗腫瘍免疫活性の抑制をもたらす。
【0005】
がん(例えば、膀胱がん(例えば、尿路上皮膀胱がん))の処置における著しい前進にかかわらず、改善された療法および診断方法が未だに求められている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、膀胱がん、例えば、シスプラチン不適な局所進行性または転移性の尿路上皮がんのための治療方法および診断方法ならびに組成物を提供する。
【0007】
一態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を該患者に投与することを含み、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ該患者から得られた腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%以上の完全奏効(complete response:CR)を有する可能性のある抗がん療法に応答する可能性が高いと該患者が特定されている、方法を特徴とする。
【0008】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための方法であって、以下:(a)該患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、該患者が、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置に応答する可能性があり、かつ約10%以上のCRを有する可能性を有することを示す、判定することと、(b)該腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量の該アテゾリズマブを含む抗がん療法を該患者へ投与することと、を含む、方法を特徴とする。
【0009】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0010】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者が、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置に応答する可能性があるかどうかを判定するための方法であって、該患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の該発現レベルを判定することを含み、該患者は該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該腫瘍試料の約5%以上を含む腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、該患者が該抗がん療法による処置に応答する可能性があり、かつ約10%以上のCRを有する可能性を有することを示す、方法を特徴とする。
【0011】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者用の療法を選択するための方法であって、該方法が、該患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の該発現レベルを判定することであって、該患者が、該尿路上皮がんについて事前に未処置である、判定することと、該腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、該患者用のアテゾリズマブを含む抗がん療法を選択することであって、該腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、該患者が約10%以上のCRを有する可能性を有することを示す、選択することと、を含む、方法を特徴とする。
【0012】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0013】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、約10%~約20%のCRを有する可能性がある。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも約13%のCRを有する可能性を有する。いくつかの実施形態では、患者は、約13%のCRを有する可能性を有する。
【0014】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、CRを有する可能性は、アテゾリズマブを含む抗がん療法による患者の処置開始の約17ヶ月以上後において約10%以上である。いくつかの実施形態では、CRを有する可能性は、該アテゾリズマブを含む抗がん療法による該患者の処置開始の約29ヶ月以上後において約10%以上である。いくつかの実施形態では、CRを有する可能性は、該アテゾリズマブを含む抗がん療法による該患者の処置開始の約36ヶ月以上後において約10%以上である。
【0015】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、該方法は、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルに基づいて、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を患者に投与することによって、患者を処置することを更に含む。
【0016】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、処置は、4ヶ月の治療中に応答をもたらす。前述の方法のいずれかの他の実施形態では、処置は、処置の4ヶ月後の応答をもたらす。
【0017】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、CRを有する。いくつかの実施形態では、CRは、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置開始の約17ヶ月以上後である。いくつかの実施形態では、CRは、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置開始の約29ヶ月以上後である。いくつかの実施形態では、CRは、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置開始の約36ヶ月以上後である。
【0018】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、処置は、持続的奏効をもたらす。いくつかの実施形態では、持続的奏効は、約30ヶ月を超える応答である。
【0019】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法であって、該方法は治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を該患者に投与することを含み、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該患者から得られた腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有するとして該患者が特定されており、かつ該処置が持続的奏効をもたらす、方法を特徴とする。
【0020】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための方法であって、以下:(a)該患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該患者が、該腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有する、判定することと、(b)該腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を該患者へ投与することと、を含み、該処置は持続的奏効をもたらす、方法を特徴とする。
【0021】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%以上~5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。前述の方法のいずれかの他の実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の1%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0022】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、処置は、4ヶ月の治療中に応答をもたらす。前述の方法のいずれかの他の実施形態では、処置は、処置の4ヶ月後の応答をもたらす。
【0023】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、持続的奏効は、約20ヶ月を超える応答である。いくつかの実施形態では、持続的奏効は、約30ヶ月間の応答である。いくつかの実施形態では、持続的奏効は、約30ヶ月を超える応答である。
【0024】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、約1000mg~約1400mgの用量で3週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、約1200mgの用量で3週間ごとに投与される。
【0025】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、単剤療法として投与される。
【0026】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内で投与される。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは、点滴によって静脈内投与される。
【0027】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0028】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、患者は、30mL/分超かつ60mL/分未満の糸球体濾過率、グレード2以上の末梢神経障害若しくは難聴、および/または米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Group)パフォーマンスステータス2を有する。
【0029】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、尿路上皮がんは、局所進行性尿路上皮がんである。前述の方法のいずれかの他の実施形態では、尿路上皮がんは、転移性尿路上皮がんである。
【0030】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、腫瘍試料は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋(formalin-fixed and paraffin-embedded:FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料である。
【0031】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、PD-L1の発現レベルは、タンパク質発現レベルである。いくつかの実施形態では、PD-L1のタンパク質発現レベルは、免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、およびウェスタンブロットからなる群から選択される方法を使用して判定される。いくつかの実施形態では、PD-L1のタンパク質発現レベルは、IHCを用いて判定される。いくつかの実施形態では、PD-L1のタンパク質発現レベルは、抗PD-L1抗体を用いて検出される。いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体は、SP142である。
【0032】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者の処置で使用するためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ該患者から得られた腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%超のCRを有する可能性のある医薬組成物に応答する可能性が高いと該患者が特定されている、医薬組成物を特徴とする。
【0033】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための医薬品の製造におけるアテゾリズマブの使用であって、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ該患者から得られた腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%超のCRを有する可能性のあるアテゾリズマブに応答する可能性が高いと該患者が特定されている、使用を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者の処置において使用するためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該患者から得られた腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルを該患者が有し、かつ該処置が持続的奏効をもたらす、医薬組成物を特徴とする。
【0035】
別の態様では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための医薬品の該製造におけるアテゾリズマブの使用であって、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該患者から得られた腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を該患者が有し、かつ該処置が持続的奏効をもたらす、使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】
図1Aは、UBCにおける、示されるICスコアでのPD-L1発現の有病率を示す表である。結果は、進行中の第Ia相臨床試験でプレスクリーニングされた患者からの保管用腫瘍組織の染色に基づく(実施例2を参照されたい)。
【
図1B】
図1Bは、ウサギモノクローナル抗PD-L1抗体を使用して免疫組織化学によって評価された、腫瘍浸潤免疫細胞(immune cells:IC)におけるPD-L1発現を示す画像である。PD-L1染色は濃褐色で示される。
【
図2】
図2は、ICにおけるPD-L1発現が、アテゾリズマブ(MPDL3280A)での処置に対するUBC患者の奏効に関連付けられることを示す表である。示されるICスコアを有する患者について、奏効率(objective response rate:ORR)、完全奏効(CR)、および部分奏効(partial response:PR)が示される。RECIST v1.1による、ベースラインで測定可能な疾患を有する有効性評価可能な患者。4人のIC2/3患者および7人のIC0/1患者は、紛失されたか、または評価不可能であった。
【
図3】
図3は、アテゾリズマブ(MPDL3280A)での処置に対するUBC患者の奏効を示すグラフである。患者のICスコアが示されている。SLD、標的病変の最長径。ベースライン後の腫瘍評価を有しない7人の患者は含まれなかった。アステリスクは、データ締切日までに全てが確認されなかった9人のCR患者を示し、そのうちの7人は、リンパ節標的病変に起因して100%未満の低減を有した。全てのリンパ節は、RECIST v1.1による通常の大きさに戻った。
a SLDの変化>100%。
【
図4】
図4は、アテゾリズマブ(MPDL3280A)で処置されたUBC患者における処置期間および奏効期間を示すグラフである。奏効状態中断のおよび進行中奏効状態についてのマーカは、タイミングを暗示するものではない。
【
図5A】
図5Aは、ICにおけるPD-L1発現と、アテゾリズマブ(MPDL3280A)で処置されたUBC患者における生存期間との関連性を示す表である。グラフは、アテゾリズマブ(MPDL3280A)で処置されたIC2/3およびIC0/1UBC患者について、中央値および1年無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)および全生存期間(overall survival:OS)を示す。
【
図5B】
図5Bは、アテゾリズマブ(MPDL3280A)で処置されたIC2/3およびIC0/1UBC患者について、OSを示すグラフである。
【
図6】
図6は、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)中の免疫ブロッカ遺伝子シグネチャ(CTLA4、BTLA、LAG3、HAVCR2、PD1)またはCTLA4の発現レベルと、アテゾリズマブでのUBC患者の処置中の奏効との間の関連性を示す一連のグラフである。C、サイクル;D、日数。
【
図7】
図7は、第II相試験の全体的な設計の概略図である。PD-L1試験において評価可能な腫瘍組織は、中央研究所によって予見評価された。患者および研究者には、PD-L1 IHC状態が伏せられた。
【
図8】
図8は、第II相試験に参加しているコホートの概要である。除外された群には、再スクリーニングされた患者が含まれる。処置群は311人の患者で構成され、有効性評価可能群は310人の患者で構成される。1人の患者は、その腫瘍試料が由来する部位が不詳であったため、処置群から除去された。
【
図9A】
図9Aは、アテゾリズマブ(MPDL3280A)への部分奏効または完全奏効を示すIC2/3患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。
【
図9B】
図9Bは、アテゾリズマブ(MPDL3280A)に対して不変であるIC2/3患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。
【
図9C】
図9Cは、アテゾリズマブ(MPDL3280A)に対して進行性であるIC2/3患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。
【
図9D】
図9Dは、IC0、IC1、およびIC2/3患者の全生存期間を示すグラフである。
【
図10A】
図10Aは、アテゾリズマブでの処置に応答するIC0患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。緑色の破線=PR/CR(n=8)。
【
図10B】
図10Bは、アテゾリズマブで処置される不変のIC0患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。青色の破線=SD(n=25)。
【
図10C】
図10Cは、アテゾリズマブで処置される進行性のIC0患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。赤色の線=PD(n=52)。
【
図10D】
図10Dは、アテゾリズマブでの処置に応答するIC1患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。緑色の破線=PR/CR(n=11)。
【
図10E】
図10Eは、アテゾリズマブで処置される不変のIC1患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。青色の破線=SD(n=18)。
【
図10F】
図10Fは、アテゾリズマブで処置される進行性のIC1患者における、ベースラインからの腫瘍の最長径の合計を示すグラフである。赤色の線=PD(n=61)。
【
図11A】
図11Aは、進行後にアテゾリズマブで処置されるIC0患者における最善の奏効による腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。中央の灰色の線=-30以下(n=2)、黒色の線=-30超、および20以下(n=8)、薄灰色の線=20超(n=17)。
【
図11B】
図11Bは、進行後にアテゾリズマブで処置されるIC1患者における最善の奏効による腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。中央の灰色の線=-30以下(n=8)、黒色の線=-30超、および20以下(n=10)、薄灰色の線=20超(n=14)。
【
図11C】
図11Cは、進行後にアテゾリズマブで処置されるIC2/3患者における最善の奏効による腫瘍の最長径の合計の経時的な変化を示すグラフである。中央の灰色の線=-30以下(n=10)、黒色の線=-30超、および20以下(n=15)、薄灰色の線=20超(n=11)。
【
図12A】
図12Aは、PD-L1免疫組織化学発現(例えば、ICスコア)と、CD8エフェクタセット(例えば、CXCL9およびCXCL10)における遺伝子との間の関連を示すグラフである。
【
図12B】
図12Bは、PD-L1免疫組織化学発現(例えば、ICスコア)と、CD8エフェクタセット(例えば、CXCL9およびCXCL10)における遺伝子との間の関連を示すグラフである。
【
図12C】
図12Cは、CD8浸潤と、PD-L1免疫組織化学発現(例えば、ICスコア)との間の関連を示すグラフである。
【
図12E】
図12Eは、腫瘍浸潤免疫細胞(IC)腫瘍サブタイプ上のPD-L1免疫組織化学発現間の関連性を示すグラフである。
【
図12F】
図12Fは、腫瘍サブタイプを有する腫瘍細胞(TC)上のPD-L1免疫組織化学発現間の関連性を示すグラフである。
【
図13A】
図13Aは、完全なCD8T-エフェクタ遺伝子セット(例えば、CD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、TBX21)とPD-L1免疫組織化学IC状態との関連を示すグラフである。
【
図13B】
図13Bは、完全なCD8T-エフェクタ遺伝子セット(例えば、CD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、TBX21)と患者奏効との関連を示すグラフである。
【
図14】
図14は、推定される分子サブタイプ、奏効、ICおよびTCスコア、ならびに2つの遺伝子セット(i)TCGAサブタイプを割り当てるために使用される遺伝子、および(ii)CD8 Tエフェクタ活性に一般に関連付けられる遺伝子の遺伝子発現の間の関係を示すヒートマップである。
【
図15】
図15は、奏効(CR/PR対SD/PD)を、1つ以上のバイオマーカ(PD-L1 IHC ICスコア(IC0/1対IC2/3)およびTCGA遺伝子発現サブタイプ)上に当てはめたロジスティック回帰の関係を示す図である。
【
図16】
図16は、第II相IMvigor210試験のコホート1の分析評価時期の概略図である(実施例6を参照)。
【
図17】
図17は、IMvigor210試験のコホート1における経時的な完全奏効率を示すグラフである。太字の日付は主要な分析を示す。
【
図18】
図18は、最新の分析におけるIMvigor210試験のコホート1におけるアテゾリズマブ療法の有効性を示すグラフである。IRF、独立審査機関。
a2017年7月12日のデータカットに基づく。
b最後の腫瘍評価は最終投与の20日前未満であった。
c進行中奏効とは、PDまたは死亡がないことを指す。進行中奏効記号はタイミングを意味するものではない。
d2017年7月12日のデータカットの通り。細いバーは最終投与後の治験期間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
I.序文
本発明は、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)のための処置方法および診断方法ならびに組成物を提供する。本発明は、患者から得られた試料における本発明のバイオマーカ、例えばPD-L1の発現レベルの判定が、膀胱がんを患う患者(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)の処置、膀胱がんを患う患者(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)の診断、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)を患う患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置に応答する可能性があるかどうかの判定、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法の治療効力の最適化、および/またはPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法のための患者選択において有用であるという発見に、少なくとも部分的に基づく。具体的な一例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む、例えば約10%以上の完全奏効(CR)を有する可能性がある抗がん療法による処置に応答する可能性がある患者を特定するための予測バイオマーカとして用いることができる。別の態様では、本発明は、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法で処置された患者が、腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有する患者を含め、持続的奏効を有するという発見に少なくとも部分的に基づく。本方法は、膀胱がんが事前に未処置である患者を含む、シスプラチン含有化学療法に適格ではない患者に使用することができる。言い換えると、本方法は、未処置の膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に対して、例えば患者のための第一選択治療を選択するために用いることができる。
【0038】
II.定義
本明細書に記載の本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「を含む」、「からなる」、および「から本質的になる」を含むことが理解されるべきである。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」とは、別途指示されない限り、複数の言及を含む。
【0039】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。例えば、「約X」について言及する記述は、「X」の記述を含む。
【0040】
「腫瘍サブタイプ」または「腫瘍試料サブタイプ」という用語は、腫瘍またはがんの固有の分子的特徴(例えば、DNA、RNA、および/またはタンパク質発現レベル(例えば、ゲノムプロファイル))を指す。腫瘍またはがんの特定のサブタイプ(例えば、尿路上皮の膀胱がん(UBC腫瘍))は、組織病理学的基準またはサブタイプ関連分子特徴(例えば、1つまたはバイオマーカ(例えば、特定の遺伝子、RNA(例えば、mRNA、マイクロRNA)、または該遺伝子によってコードされるタンパク質)の発現)によって決定され得る(例えば、「Cancer Genome Atlas Research Network Nature」第507巻第315~22頁(2014年);Jiangら、「Bioinformatics」第23巻第306~13頁(2007年);Dongら、「Nat.Med.」第8巻第793~800頁(2002年)を参照)。
【0041】
「PD-L1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するように、PD-L1軸結合パートナとその結合パートナのうちの1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能が復元または増強される分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストおよびPD-1結合アンタゴニスト、ならびにPD-L1とPD-1との間の相互作用を妨害する分子(例えば、PD-L2-Fc融合体)を含む。
【0042】
免疫機能障害との関連での「機能障害」という用語は、抗原刺激への免疫応答性が低減した状態を指す。この用語には、抗原認識は生じ得るが、後に続く免疫応答が感染または腫瘍成長の制御に無効である、「消耗」および/または「アネルギー」の両方の共通要素が含まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「機能障害性」という用語には、抗原認識に対する不応性または無応答性、具体的には、抗原認識を、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL-2)、および/または標的細胞死滅などの下流T細胞エフェクタ機能に翻訳する能力の障害も含まれる。
【0044】
「アネルギー」という用語は、T細胞受容体を介して送達される不完全または不充分なシグナル(例えば、Ras活性化の不在下での細胞内Ca2+の増加)に起因する抗原刺激に対する無応答の状態を指す。T細胞アネルギーは、共刺激の不在下における抗原での刺激に際しても生じ得、結果的に細胞は、共刺激との関連においても、抗原によるその後の活性化に不応性になる。無応答状態は、多くの場合、インターロイキン2の存在により覆され得る。アネルギーT細胞は、クローン増殖を経ず、かつ/またはエフェクタ機能を獲得しない。
【0045】
「消耗」という用語は、多くの慢性感染およびがん発症中に生じる持続的TCRシグナル伝達に起因するT細胞機能障害の状態としてのT細胞消耗を指す。これは、不完全なまたは不充分なシグナル伝達ではく、持続的シグナル伝達に起因するという点で、アネルギーとは区別される。これは、エフェクタ機能不良、阻害性受容体の持続的発現、および機能的エフェクタまたはメモリT細胞とは異なる転写状態によって定義される。消耗は、感染および腫瘍の最適な制御を妨げる。消耗は、外因性の負の制御性経路(例えば、免疫制御性サイトカイン)および細胞内因性の負の制御性(共刺激)経路(PD-1、B7-H3、およびB7-H4など)の両方に起因し得る。
【0046】
「T細胞機能を増強する」とは、持続した若しくは増幅された生物学的機能を有するようにT細胞を誘導するか、引き起こすか、若しくは刺激すること、または消耗された若しくは不活性のT細胞を更新若しくは再活性化することを意味する。T細胞機能の増強の例としては、介入前のレベルと比較した、CD8+T細胞からのγインターフェロンの分泌の増加、増殖の増加、抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体、または腫瘍のクリアランス)の上昇が挙げられる。一実施形態では、増強のレベルは、少なくとも50%、あるいは60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、または200%の増強である。この強化を測定する様式は当業者に知られている。
【0047】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識およびクリアランスを回避するプロセスを指す。したがって、治療的概念として、腫瘍免疫は、かかる回避が減弱し、腫瘍が免疫系によって認識かつ攻撃されるときに「処置される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮、および腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0048】
「免疫原性」とは、免疫応答を誘発する特定の物質の能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性の増強により、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスが支援される。腫瘍免疫原性の増強の例としては、PD-L1軸結合アンタゴニストでの処置が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「PD-L1結合アンタゴニスト」は、PD-L1と、PD-1および/またはB7-1などのその結合パートナのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のその結合パートナへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1および/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体およびその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-L1と、PD-1および/またはB7-1などのその結合パートナのうちの1つ以上との相互作用に起因するシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1またはPD-1を介してTリンパ球および他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能障害状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。特定の態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるアテゾリズマブ(MPDL3280A)である。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載のYW243.55.S70である。別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載のMDX-1105である。更に別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMEDI4736(ドルバルマブ(druvalumab))である。更に別の具体的な態様では、抗PD-L1抗体は、本明細書に記載されるMSB0010718C(アベルマブ)である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「PD-1結合アンタゴニスト」とは、PD-1と、PD-L1および/またはPD-L2などのその結合パートナのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する分子である。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のその結合パートナへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗-PD-1抗体およびその抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-1と、PD-L1および/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、抑止、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-L1またはPD-1を介してTリンパ球および他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能障害状態を軽減する。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。特定の態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のMDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のMK-3475(ペムブロリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMEDI-0680(AMP-514)である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のPDR001である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のREGN2810である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のBGB-108である。別の具体的な態様では、PD-1結合アンタゴニストは、本明細書に記載のAMP-224である。
【0051】
「プログラム死リガンド1」および「PD-L1」という用語は、本明細書において、天然配列PD-L1ポリペプチド、ポリペプチド変異型、ならびに天然配列ポリペプチドおよびポリペプチド変異型の断片(これらは、本明細書において更に定義される)を指す。本明細書に記載されるPD-L1ポリペプチドは、ヒト組織型から、若しくは別の源からなど、多様な供給源から単離されるか、または組換え法若しくは合成法によって調製されたものであり得る。
【0052】
「天然配列PD-L1ポリペプチド」とは、対応する、自然界に由来するPD-L1ポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0053】
「PD-L1ポリペプチド変異型」またはその変化形は、本明細書に定義されるPD-L1ポリペプチド、一般的には活性PD-L1ポリペプチドであって、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列のいずれかに対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有することを意味する。そのようなPD-L1ポリペプチド変異型には、例えば、天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に1つ以上のアミノ酸残基が付加または欠失されたPD-L1ポリペプチドが含まれる。通常、PD-L1ポリペプチド変異型は、本明細書に開示される天然配列PD-L1ポリペプチド配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。通常、PD-L1変異型ポリペプチドは、少なくとも約10アミノ酸長であり、あるいは少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、281、282、283、284、285、286、287、288、若しくは289アミノ酸長、またはそれ以上である。任意で、PD-L1変異型ポリペプチドは、天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して1つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは天然PD-L1ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下の保存的アミノ酸置換を有する。
【0054】
本明細書で同義に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」とは、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくは塩基、および/若しくはそれらの類似体であっても、またはDNA若しくはRNAポリメラーゼによって若しくは合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であってもよい。したがって、例えば、本明細書で定義されるポリヌクレオチドとしては、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域を含むDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域を含むRNA、一本鎖若しくはより典型的には二本鎖を含むか、または一本鎖および二本鎖領域を含み得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、RNA若しくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。かかる領域内の鎖は、同じ分子由来であり得るか、または異なる分子由来であり得る。これらの領域は、これらの分子のうちの1つ以上の全てを含み得るが、より典型的には、これらの分子のうちのいくつかの領域のみを含む。三重らせん領域の分子のうちの1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。「ポリヌクレオチド」という用語は、具体的には、cDNAを含む。
【0055】
ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合には、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリの前に付与されても、または後に付与されてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって遮られ得る。ポリヌクレオチドは、標識との複合などによって、合成後に更に修飾されてもよい。修飾の他の種類としては、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上の類似体での置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホン酸塩、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)によるもの、および電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、懸垂部分、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リシンなど)などを含むもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラーレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾結合(例えば、アルファアノマー核酸など)によるもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾形態などが挙げられる。更に、糖内に通常存在するヒドロキシル基のうちのいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基により代置されるか、標準的な保護基により保護されるか、若しくは活性化されて追加のヌクレオチドへの追加の結合を準備してもよく、または固体若しくは半固体支持体にコンジュゲートされてもよい。5’および3’末端OHは、リン酸化され得るか、またはアミン若しくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換され得る。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル-、2’-フルオロ-、または2’-アジド-リボース、炭素環糖の類似体、α-アノマ-糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース、またはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、アクリル酸類似体、および脱塩基ヌクレオシド類似体、例えば、メチルリボシドを含む、当該技術分野で一般的に知られているリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態も含み得る。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替的な連結基によって代置されてもよい。これらの代替連結基には、限定されないが、リン酸塩が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、’’(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)に置き換えられる実施形態が含まれ、各RまたはR’は、独立してHであるか、または置換若しくは非置換アルキル(1-20C)(任意にエーテル(-O-)結合を含む)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルである。ポリヌクレオチドにおける結合全てが同一である必要があるわけではない。ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される1つ以上の異なる種類の修飾および/または同じ種類の複数の修飾を含有し得る。前述の説明は、RNAおよびDNAを含む本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0056】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」とは、一般に、約250ヌクレオチド長未満であるが、必ずしもそうではない短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよい。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、相互排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の説明は、オリゴヌクレオチドに等しく完全に適用可能である。
【0057】
「プライマ」という用語は、一般に、遊離3’-OH基を提供することによって、核酸にハイブリダイズを可能にし、相補的核酸の重合を可能にする、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
【0058】
「小分子」という用語は、約2000ダルトン以下、好ましくは約500ダルトン以下の分子量を有する任意の分子を指す。
【0059】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養」は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞、およびそのような細胞の子孫を含む細胞を指す。宿主細胞には「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これらの細胞には、一次形質転換細胞およびそれに由来する子孫が、継代数に関係なく含まれる。子孫は、親細胞と完全に同一の核酸含量でない場合があるが、突然変異を含んでもよい。元々の形質転換細胞についてスクリーニングされるか、または選択されるのと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が本明細書に含まれる。
【0060】
用語「ベクター」とは、本明細書で使用される場合、連結している別の核酸を増殖することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、およびそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターを含む。特定のベクターは、それらが作動可能に連結している核酸の発現を誘導し得る。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0061】
「単離された」核酸とは、核酸分子が自然環境の構成要素から分離されたものを指す。単離核酸には、通常核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子が、染色体外に存在するか、または本来の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する核酸分子が含まれる。
【0062】
用語「抗体」とは、本明細書では最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を含めた(これらに限定されない)、様々な抗体構造を包含する。
【0063】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から特定および分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の汚染成分は、抗体の研究的、診断的、および/または治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらには、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超の抗体になるまで、(2)例えば、スピニングカップシークエネータを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに充分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたはシルバー染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離抗体としては、組換え細胞内でインサイチュの抗体が挙げられるが、これは、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在していないためである。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0064】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から成る、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖および軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、その後いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し;その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0065】
任意の哺乳類種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの一方に割り当てられ得る。
【0066】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの他の部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、およびCH3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含む。
【0067】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖可変ドメインは「VH」と称され得る。軽鎖可変ドメインは「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0068】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で広く異なり、かつ各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(hypervariable region:HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(framework region:FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、ベータ-シート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに結び付いており、他方の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、National Institute of Health、メリーランド州ベセスダ(1991年)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与等の様々なエフェクタ機能を呈する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6個のHVRを含み、VHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)含む。天然抗体において、H3およびL3が6つのHVRの最も高い多様性を呈し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xuら、「Immunity」第13巻第37~45頁(2000年);JohnsonおよびWu、「Methods in Molecular Biology」中第248巻第1~25頁(Lo編、Human Press、Totowa、ニュージャージー州トトワ(2003年))を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Castermanら、「Nature」第363巻第446~448頁(1993年);Sheriffら、「Nature Struct.Biol.」第3巻第733~736頁(1996年)を参照されたい。
【0070】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(Complementarity Determining Region:CDR)は、配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ(1991年)。Chothiaは、そうではなく、構造的ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk、「J.Mol.Biol.」第196巻第901~917頁(1987年))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々由来の残基が以下に記載される。
ループ Kabat AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35b H26-H35b H26-H32 H30-H35b(Kabat番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0071】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、および89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおいて、26~35(H1)、50~65または49~65(H2)、および93~102、94~102、または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って番号付けされる。
【0072】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0073】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、およびそれらの変形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、および82c等)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0074】
Kabat番号付けシステムは、一般に、可変ドメイン(軽鎖の残基およそ1~107および重鎖の残基およそ1~113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabatら、「Sequences of Immunological Interest.」第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ(1991年))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabatら(上記参照)で報告されるEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0075】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0076】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。-いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0077】
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン処理は、F(ab’)2断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋し得る。
【0078】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0079】
Fab断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメインおよび第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含め、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が、遊離チオール基を持つFab’の本明細書での呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0080】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカを更に含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、Pluckthun、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」第113巻、RosenburgおよびMoore編(Springer-Verlag、ニューヨーク、1994年)第269~315頁を参照されたい。
【0081】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH-VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは二価または二重特異性であり得る。ダイアボディについては、例えば、以下で詳しく説明されている:欧州特許出願公開第EP404,097号;国際公開第WO1993/01161号;Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129~134頁(2003年);および、Hollingerら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第6444~6448頁(1993年)。三重特異性抗体および四重特異性抗体については、Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129~134頁(2003年)にもまた記載されている。
【0082】
抗体の「クラス」とは、抗体の重鎖が持つ定常ドメインや定常領域の種類を指す。抗体には大きく分けて5つのクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2へと更に分けることができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0083】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態では、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプール等の複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するように更に改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的には他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。
【0084】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein、「Nature」第256巻第495~97頁(1975年)、Hongoら、「Hybridoma」第14巻第3号第253~260頁(1995年)、Harlowら、「Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas」第563~681頁(Elsevier、ニューヨーク、1981年)中)、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、「Nature」第352巻第624~628頁(1991年);Marksら、「J.Mol.Biol.」第222巻第581~597頁(1992);Sidhuら、「J.Mol.Biol.」第338巻第2号第299~310頁(2004年);Leeら、「J.Mol.Biol.」第340巻第5号第1073~1093頁(2004年);Fellouse、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第101巻第34号第12467~12472頁(2004年);ならびに、Leeら、「J.Immunol.Methods」第284巻第1~2号第119~132頁(2004年))、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全部を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、国際公開第WO1998/24893号;同第WO1996/34096号;同第WO1996/33735号;同第WO 1991/10741号;Jakobovitsら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90号第2551頁(1993年);Jakobovitsら、「Nature」第362巻第255~258頁(1993年);Bruggemannら、「Year in Immunol.」第7巻第33頁(1993年);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;および同第5,661,016号;Marksら、「Bio/Technology」第10巻第779~783頁(1992年);Lonbergら、「Nature」第368巻第856~859頁(1994年);Morrison、「Nature」第368巻第812~813頁(1994年);Fishwildら、「Nature Biotechnol.」第14巻第845~851頁(1996年);Neuberger、「Nature Biotechnol.」第14巻第826頁(1996年);ならびに、Lonberg、「Intern.Rev.Immunol.」第13巻第65~93頁(1995年))を含む、様々な技術で作成することができる。
【0085】
本明細書のモノクローナル抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖の残りの部分が、他の種に由来する抗体または他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を含む「キメラ」抗体を含む(例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第81巻第6851~6855頁(1984年))。キメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することによって産生された抗体由来である。
【0086】
「ヒト抗体」とは、ヒトまたはヒト細胞が産生した抗体、またはヒト抗体レパートリなどのヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト由来の抗体に対応するアミノ酸配列を有するものを指す。このヒト抗体の定義では、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体は特に除外されている。
【0087】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基およびヒトフレームワーク領域(FR)由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むものであり、それにおいて、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のものに相当し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体の「ヒト化形態」とは、例えば非ヒト抗体のように、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0088】
用語「抗PD-L1抗体」および「PD-L1に結合する抗体」とは、PD-L1を標的とする診断および/または治療剤として有用であるような充分な親和性を有して、PD-L1に結合可能である抗体を指す。一実施形態では、抗PD-L1抗体の、無関係の非PD-L1タンパク質への結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay:RIA)により測定されたときに、抗体の、PD-L1への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、抗PD-L1抗体は、異なる種のPD-L1間で保存されているPD-L1のエピトープに結合する。
【0089】
用語「抗PD-1抗体」および「PD-1に結合する抗体」とは、PD-1を標的とする診断および/または治療剤として有用であるような充分な親和性を有して、PD-1に結合可能である抗体を指す。一実施形態では、抗PD-1抗体の、無関係の非PD-1タンパク質への結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)により測定されたときに、抗体の、PD-1への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、抗PD-1抗体は、異なる種のPD-1間で保存されているPD-1のエピトープに結合する。
【0090】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減するものである。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0091】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナ(例えば、抗原)との間の、合計の非共有性相互作用の強度を指す。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバ間の1:1相互作用を反映する特異的結合親和性を指す。分子XのそのパートナYに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表され得る。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的説明および例示的な実施形態が以下に記載される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「結合する」、「に特異的に結合する」、または「に特異的な」という用語は、生物学的分子を含む異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、またはそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、かつ/またはより長期間結合する抗体である。一実施形態では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0093】
「親和性成熟」抗体とは、改変などを有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の改変を有し、そのような改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0094】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、参照抗体がその抗原に結合するのを50%以上遮断する抗体、および逆に、競合アッセイにおいて、抗体がその抗原に結合するのを50%以上遮断する参照抗体を指す。
【0095】
「イムノコンジュゲート」とは、細胞毒性剤を含むがこれらに限定されない、1つ以上の異種分子に接合された抗体のことである。
【0096】
本明細書で使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクタ機能とを組み合わせた、抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識および結合部位以外である所望の結合特異性を有する(すなわち、「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は典型的には、少なくとも受容体またはリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1、IgG2(IgG2AおよびIgG2Bを含む)、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから得られてもよい。Ig融合物は好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の場所に、本明細書に記載されるポリペプチドまたは抗体のドメインの置換を含む。特に好ましい実施形態では、免疫グロブリン融合物は、IgG1分子のヒンジ、CH2、およびCH3、またはヒンジ、CH1、CH2およびCH3領域を含む。免疫グロブリン融合物の作製に関して、米国特許第5,428,130号も参照されたい。例えば、本明細書における療法に有用な医薬品としての有用なイムノアドヘシンとしては、免疫グロブリン配列の定常ドメインに融合される、PD-L1若しくはPD-L2の細胞外ドメイン(extracellular domain:ECD)若しくはPD-1結合部分、またはPD-1の細胞外若しくはPD-L1若しくはPD-L2結合部分(それぞれ、PD-L1 ECD-Fc、PD-L2 ECD-Fc、およびPD-1 ECD-Fcなど)を含むポリペプチドが挙げられる。細胞表面受容体のIg FcとECDとのイムノアドヘシンの組合せは、可溶性受容体と称されることがある。
【0097】
「融合タンパク質」および「融合ポリペプチド」とは、一緒に共有結合した2つの部分を有するポリペプチドを指し、これらの部分のそれぞれは、異なる特性を有するポリペプチドである。この特性は、インビトロまたはインビボでの活性などの生物学的特性であり得る。この特性はまた、標的分子への結合、反応の触媒作用などの単純な化学的または物理的特性であり得る。これらの2つの部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、またはペプチドリンカを通して連結され得るが、それらは、互いの読み枠内にある。
【0098】
本明細書で特定されるポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、最大の配列同一性パーセントが得られるように、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、いずれの保存的置換も配列同一性の一部とは見なさずに、候補配列内のアミノ酸残基が、比較されるポリペプチド内のアミノ酸残基と同一である割合として定義される。パーセントのアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当技術分野の熟練の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公知のコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較されている配列の完全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。しかし、本明細書の目的のために、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作成され、ソースコードは、米国著作権庁、ワシントンD.C.、20559にユーザードキュメントと共に提出され、ここでは、米国著作権登録番号TXU510087に基づいて登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaから公的に利用可能である。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム、好ましくはデジタルUNIX V4.0Dで使用するために編集されるべきである。全ての配列比較パラメータはALIGN-2プログラムによって設定され、変化しない。
【0099】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:
分率X/Y×100
式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBとのアラインメントにおいて完全な一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性(%)は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性(%)と等しくはならないことが理解されるだろう。特に別段明記されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性(%)の値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載されるように得られる。
【0100】
「検出」という用語は、直接または間接検出を含む、検出の任意の手段を含む。
【0101】
本明細書で使用される「バイオマーカ」という用語は、試料中で検出され得る指標、例えば、予測指標、診断指標、および/または予後指標、例えば、PD-L1、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-cadhherin、ERBB2、またはESR2を指す。バイオマーカは、ある特定の分子的、病理学的、組織学的、および/または臨床的特徴によって特徴付けられる疾患または障害(例えば、がん)の特定のサブタイプの指標としての機能を果たし得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカは、遺伝子である。バイオマーカとしては、ポリヌクレオチド(例えば、DNAおよび/またはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数の変化(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド、およびポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、ならびに/または糖脂質に基づく分子マーカが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
個体に対する臨床的利益の増加に関連するバイオマーカの「量」または「レベル」は、生物学的試料中で検出可能なレベルである。これらは、当業者に既知であり、かつ本明細書にも開示される方法によって測定され得る。評価されるバイオマーカの発現レベルまたは量を使用して、処置への応答を決定することができる。
【0103】
「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に、同義に使用され、一般に、生物学的試料中のバイオマーカの量を指す。「発現」は、概して、情報(例えば、遺伝子コードおよび/またはエピジェネティック情報)が、細胞中に存在し、機能する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、または更にポリヌクレオチドおよび/若しくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指す場合がある。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチドおよび/若しくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、それらが選択的スプライシングによって生成された転写物若しくは分解された転写物に由来するか、または例えばタンパク質分解によるポリペプチドの翻訳後プロセシングに由来するかどうかにかかわらず、発現されたものと見なされるべきである。「発現した遺伝子」とは、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、その後、ポリペプチドに翻訳されるもの、およびまたRNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されないもの(例えば、転移およびリボソームRNA)を含む。
【0104】
「増加した発現」、「増加した発現レベル」、「増加したレベル」、「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」、または「上昇したレベル」とは、疾患若しくは障害(例えば、がん)に罹患していない個体(複数可)または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカ)などの対照と比較した個体におけるバイオマーカの発現の増加またはそのレベルの増加を指す。
【0105】
「減少した発現」、「減少した発現レベル」、「減少したレベル」、「低減した発現」、「低減した発現レベル」、または「低減したレベル」とは、疾患若しくは障害(例えば、がん)に罹患していない個体(複数可)または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカ)などの対照と比較した個体におけるバイオマーカの低減した発現または低減したレベルを指す。いくつかの実施形態では、低減した発現とは、発現がほとんどまたは全くないことである。
【0106】
「ハウスキーピングバイオマーカ」という用語は、全ての細胞型中に典型的に同様に存在するバイオマーカまたはバイオマーカの群(例えば、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)を指す。いくつかの実施形態では、ハウスキーピングバイオマーカは、「ハウスキーピング遺伝子」である。「ハウスキーピング遺伝子」は、本明細書において、その活性が細胞機能の維持に必須であるタンパク質をコードし、典型的には全ての細胞型に同様に存在する遺伝子または遺伝子の群を指す。
【0107】
本明細書で使用される「増幅」とは、一般に、所望の配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は、鋳型配列に対する完全な配列相補性または同一性を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシン等のヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(鋳型にハイブリダイズ可能であるが相補的ではない配列を含むプライマによって導入される配列改変等)、および/または増幅中に生じる配列エラーを含み得る。
【0108】
「多重PCR」という用語は、単一の反応で2つ以上のDNA配列を増幅させる目的で、1超のプライマセットを使用して単一の源(例えば、個体)から得られた核酸上で行われる単一のPCR反応を指す。
【0109】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」技法は、本明細書で使用される場合、一般に、核酸、RNA、および/またはDNAの微量の特定の小片が、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されるように増幅される手順を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマが設計され得るように、目的とする領域の末端またはそれ以降からの配列情報が利用可能でなければならず、これらのプライマの配列は、増幅される鋳型の反対側の鎖と同一また同様である。2つのプライマの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の端部と一致し得る。PCRは、ゲノムDNA全体からの特定のRNA配列、特定のDNA配列、および細胞RNA配列、バクテリオファージ配列、またはプラスミド配列等の全体から転写されたcDNAを増幅させるために使用することができる。一般に、Mullisら、「Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.」第51巻第263頁(1987年)、およびErlich編、「PCR Technology」(Stockton Press、ニューヨーク、1989年)を参照されたい。本明細書で使用されるとき、PCRは、プライマとしての既知の核酸(DNAまたはRNA)の使用を含む、核酸試験試料を増幅する核酸ポリメラーゼ反応法の一例であると見なされるが、唯一の例ではなく、核酸の特定の小片を増幅若しくは生成するために、または特定の核酸に相補的な核酸の特定の小片を増幅若しくは生成するために、核酸ポリメラーゼを利用する。
【0110】
「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」または「qRT-PCR」とは、PCR産物の量がPCR反応の各工程で測定されるPCRの一形態を指す。この技術は例えば、Croninら、「Am.J.Pathol.」第164巻第1号第35~42頁(2004年)およびMaら、「Cancer Cell」第5巻第607~616頁(2004年)を含む、種々の出版物に記載されている。
【0111】
「マイクロアレイ」という用語は、基質上のハイブリダイズ可能なアレイ要素、好ましくはポリヌクレオチドプローブの規則的配置を指す。
【0112】
「診断」という用語は、分子的または病理学的状態、疾患、または病態(例えば、がん)の特定または分類を指すために本明細書で使用される。例えば、「診断」とは、特定のタイプのがんの特定を指し得る。「診断」とは、例えば病理組織的基準によるか、または分子特徴によるがんの特定のサブタイプの分類も指す場合がある(例えば、バイオマーカのうちの1つまたはその組合せの発現を特徴とするサブタイプ(例えば、特定の遺伝子、または該遺伝子によりコードされるタンパク質))。
【0113】
本明細書で使用される「診断を援助する」という用語は、疾患または障害(例えば、がん)の特定のタイプの症状または状態の存在または性質に関して臨床的判定を行う助けとなる方法を指すために本明細書で使用される。例えば、疾患または状態(例えば、がん)の診断を援助する方法は、個体由来の生物学的試料中のある特定のバイオマーカ(例えば、PD-L1)を測定することを含み得る。
【0114】
本明細書で使用される「試料」という用語は、例えば、物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特性に基づいて、特徴付けかつ/または特定される細胞および/または他の分子の実体を含有する、目的とする対象および/または個体から得られるか、またはそれ由来の組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句およびその変化形は、特性評価される細胞および/または分子実体を含有することが予期されるか、または含有することが既知である、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料には、組織試料、初代または培養細胞または細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊水、乳、全血、血液由来の細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、および組織培養培地、組織抽出物、例えば、均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
「組織試料」または「細胞試料」は、対象または個体の組織から得られた同様の細胞の集合を意味する。組織または細胞試料の供給源は、新鮮な、凍結した、および/または保存された器官、組織試料、生検、および/または吸引液からなどの固形組織;血漿などの血液または任意の血液構成物;脳脊髄液、羊水、腹水、または間質液などの体液;対象の妊娠または発育における任意の時期の細胞であってもよい。組織試料はまた、初代または培養細胞または細胞株であってもよい。任意で、組織または細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。例えば、「腫瘍試料」は、腫瘍または他のがん組織から得られた組織試料である。組織試料は、細胞型(例えば、腫瘍細胞および非腫瘍細胞、がん性細胞および非がん性細胞)の混合集団を含有し得る。組織試料は、保存剤、抗凝固剤、緩衝液、固定剤、栄養剤、または抗生物質などの天然の組織と天然では混合しない化合物を含有し得る。
【0116】
「腫瘍浸潤免疫細胞」とは、本明細書で使用される場合、腫瘍またはその試料中に存在する任意の免疫細胞を指す。腫瘍浸潤免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)、またはこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、例えばTリンパ球(CD8+Tリンパ球および/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(例えば、好中球、好酸球、および好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、互いに組み合う樹状細胞)、組織球、およびナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。
【0117】
「腫瘍細胞」とは、本明細書で使用される場合、腫瘍またはその試料中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当該技術分野で公知であり、かつ/または本明細書に記載される方法を使用して、腫瘍試料中に存在し得る他の細胞、例えば間質細胞および腫瘍浸潤免疫細胞と区別され得る。
【0118】
本明細書で使用される場合、「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」とは、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準物、またはレベルを指す。一実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健常なおよび/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、疾患細胞または組織に隣接する健康および/または非疾患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)であり得る。別の実施形態では、参照試料は、同じ対象または個体の身体の未処置な組織および/または細胞から得られる。更に別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の健常なおよび/または罹患していない部分(例えば、組織または細胞)から得られる。更に別の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない個体の身体の未処置な組織および/または細胞から得られる。
【0119】
本明細書における目的では、組織試料の「切片」は、組織試料の単一の部分または小片、例えば、組織試料(例えば、腫瘍試料)から切り取られた組織または細胞の薄切片を意味する。組織試料の複数の切片を、採取し、分析に供することができることが理解され、但し、組織試料の同じ切片を、形態学的レベルおよび分子レベルの両方で分析することができ、あるいはポリペプチド(例えば、免疫組織化学によって)および/またはポリヌクレオチド(例えば、原位置ハイブリダイゼーションによって)に関して分析することができることが理解されるものとする。
【0120】
「相関する」または「相関すること」とは、任意の方法で、第1の分析またはプロトコルの性能および/または結果を第2の分析またはプロトコルの性能および/または結果と比較することを意味する。例えば、第1の分析若しくはプロトコルの結果を、第2のプロトコルを行う際に使用してもよいし、および/または、第1の分析若しくはプロトコルの結果を使用して、第2の分析若しくはプロトコルを行うべきかどうかを決定してもよい。ポリペプチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを決定することができる。ポリヌクレオチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチド発現分析またはプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを決定することができる。
【0121】
「個体応答」または「応答」は、(1)減速若しくは完全抑止を含む、疾患進行(例えば、がん進行)のある程度の阻害、(2)腫瘍サイズの低減、(3)隣接する末梢器官および/または組織へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、低減、減速、若しくは完全停止)、(4)転移の阻害(すなわち、低減、減速、若しくは完全停止)、(5)疾患または障害(例えば、がん)に関連する1つ以上の症状のある程度の緩和、(6)全生存期間および無増悪生存率を含む生存期間の長さの増加若しくは延長、ならびに/または(7)処置後の所与の時間点における死亡率の低下を含むが、これらに限定されない、個体に対する利益を示す任意のエンドポイントを使用して、評価することができる。
【0122】
医薬品を用いた処置に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」および類似の単語は、がん等の疾患若しくは障害の危険性があるか、またはそれを患う患者に付与される臨床的または治療的有益性を指す。一実施形態では、このような利益は、生存期間(全生存期間および/または無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効若しくは部分奏効を含む)をもたらすこと、またはがんの徴候若しくは症状を改善することのうちの任意の1つ以上が含まれる。一実施形態では、バイオマーカ(例えば、腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現、例えば、IHCを使用して決定されるもの)は、そのバイオマーカを発現しない患者と比較して、ある医薬品での処置(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば、抗PD-L1抗体を含む処置)に応答性である可能性が増加していると予測される患者を特定するために使用される。一実施形態では、バイオマーカ(例えば、例えばIHCを使用して決定される腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現)を使用して、バイオマーカを同レベルで発現しない患者と比べて医薬品(例えば、抗PD-L1抗体)による処置に応答性である可能性が増加していると予測される患者を特定する。一実施形態では、バイオマーカの存在を使用して、バイオマーカの存在を有しない患者と比べて医薬品による処置に応答する可能性がより高い患者を特定する。別の実施形態では、バイオマーカの存在を使用して、患者が、バイオマーカの存在を有しない患者と比べて医薬品による処置から利益を受ける可能性が増加するであろうことを決定する。
【0123】
「客観的奏効」とは、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む測定可能な応答を指す。いくつかの実施形態では、「奏効率(ORR)」とは、完全奏効(CR)率および部分奏効(PR)率の合計を指す。
【0124】
「完全奏効」または「CR」とは、処置に応答したがんの全ての徴候の消滅(例えば、全ての標的病変の消滅)が意図される。これは、必ずしもがんが治癒されたことを意味しない。
【0125】
「持続的奏効」とは、処置の中止後の腫瘍成長の低減への持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、医薬品の投与期の開始時のサイズと比較して、同じままであっても、より小さくてもよい。いくつかの実施形態では、持続的奏効は、少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の処置の持続時間の長さまたはそれ以上である、処置の持続時間と少なくとも同じ持続時間を有する。
【0126】
「持続的奏効」とは、長続きする応答(例えば、長続きする客観的奏効、例えば、長続きするCR、または長続きするPR)を指す。例えば、持続的奏効は、6ヶ月以上続く持続的な応答(例えば、CRまたはPR)であってもよく、これは、いくつかの例では、処置の12ヶ月以内に開始し得る(例えば、Kaufmanら、「Journal of ImmunoTherapy for Cancer」第5巻第72頁、2017年を参照されたい)。他の実施形態では、持続的奏効は、1年超、2年超、またはそれ以上、例えば、抗がん療法(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法)による処置の開始から続く奏効であり得る。奏効期間(duration of response:DOR)は、適切なアプローチを用いて、例えばRECIST v1.1基準を使用して評価することができる(例えば、Eisenhauerら、「Eur.J.Cancer」第45巻第228~247頁、2009年を参照されたい)。
【0127】
本明細書で使用される場合、「がんの再発を低減または阻害すること」とは、腫瘍若しくはがんの再発、または腫瘍若しくはがんの進行を低減または阻害することを意味する。本明細書に開示されるように、がんの再発および/またはがんの進行には、がん転移が含まれるが、これに限定されない。
【0128】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」または「PR」とは、処置に応答した、1つ以上の腫瘍若しくは病変のサイズ、または身体内のがんの範囲の低下を指す。例えば、いくつかの実施形態では、PRは、標的病変の最長径の合計(sum of the longest diameters:SLD)の少なくとも30%の減少を指し、ベースラインSLDを参照と見なす。
【0129】
本明細書で使用される場合、「不変」または「SD」とは、処置開始以来の最小SLDを参照として、PRと言えるほどの充分な標的病変の収縮も、PDと言えるほどの充分な増大もないことを指す。
【0130】
本明細書で使用される場合、「進行性疾患」または「PD」とは、処置開始、または1つ以上の新たな病変の存在以来記録された最小SLDを参照として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増大を指す。
【0131】
「生存期間」という用語は、患者が生存していることを指し、全生存期間および無増悪生存期間を含む。
【0132】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」(PFS)は、治療中および治療後の時間の長さを指し、その間、治療されている疾患(例えば、がん)は悪化しない。無増悪生存期間は、患者が完全奏効または部分奏効を経験した時間量、ならびに患者が不変を経験した時間量を含んでもよい。
【0133】
本明細書で使用される場合、「全生存期間」(OS)は、特定の期間後に生きている可能性が高い、群における個体のパーセンテージを指す。
【0134】
「生存期間を延長すること」とは、未処置の患者と比較して(すなわち、医薬品で処置されていない患者と比較して)、または指定されたレベルでバイオマーカを発現しない患者と比較して、および/または抗腫瘍剤で処置された患者と比較して、処置される患者において全生存期間または無増悪生存期間が増加することを意味する。
【0135】
「実質的に同じ」という用語は、本明細書で使用される場合、当業者が、該値(例えば、Kd値または発現レベル)により測定される生物学的特質の文脈において、2つの値の間にある差異を生物学的および/または統計学的に重要性がほとんどないか、全くないと見なすような、2つの数値間の充分に程度の高い類似性を意味する。該2つの値の間の差異は、参照/比較値の関数として、例えば、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、および/または約10%未満である。
【0136】
「実質的に異なる」という語句は、本明細書で使用される場合、当業者が、該値(例えば、Kd値または発現レベル)により測定される生物学的特質の文脈において、2つの値の間にある差異を統計学的に重要性があると見なすような、2つの数値間の充分に程度の高い差異を意味する。該2つの値の間の差異は、参照/比較分子に対する値の関数として、例えば、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、および/または約50%超である。
【0137】
「標識」という単語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドプローブなどの試薬または抗体に直接的または間接的にコンジュゲートまたは融合され、それがコンジュゲートまたは融合される試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能であり得る(例えば、放射性同位体標識若しくは蛍光標識)か、または酵素標識の場合、検出可能な基質化合物若しくは組成物の化学的改変を触媒し得る。この用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合すること(すなわち、物理的に連結すること)によるプローブまたは抗体の直接的標識化、ならびに直接的に標識化される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識化を包含することを意図する。間接的標識の例としては、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出され得るようなビオチンを有するDNAプローブの末端標識が挙げられる。
【0138】
「治療有効量」または「有効量」とは、哺乳動物における疾患または障害を処置または予防するための治療剤の量を指す。がんの場合、治療有効量の治療剤は、がん細胞の数を低減し、原発性腫瘍サイズを低減し、末梢臓器へのがん細胞浸潤を阻害し(すなわち、ある程度減速し、好ましくは停止する)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度減速し、好ましくは停止する)、腫瘍成長をある程度阻害し、および/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減することができる。薬物が既存のがん細胞の成長を予防し、かつ/またはそれらを死滅させることができる程度まで、この薬物は、細胞増殖抑制性および/または細胞毒性であり得る。がん療法に関して、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行の期間(time to disease progression:TTP)、応答速度(例えば、CRおよびPR)、応答期間、ならびに/または生活の質を評価することによって測定され得る。
【0139】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性および急性障害または疾患を含むが、これらに限定されない、処置から恩恵を受けることになる任意の状態である
【0140】
「がん」および「がん性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。この定義には、良性がんおよび悪性がんが含まれる。「早期がん」または「早期腫瘍」とは、浸潤性でも転移性でもない、または病期0期、1期、若しくは2期のがんとして分類される、がんを意味する。がんの例として、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫および網膜芽腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫および滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、および膵島細胞がんを含む)、中皮腫、シュワン腫(聴神経腫瘍を含む)、髄膜腫、腺がん、黒色腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかるがんのより具体的な例としては、膀胱がん(例えば、尿路上皮膀胱がん(例えば、移行上皮細胞または尿路上皮がん、筋層非浸潤性膀胱がん、筋層浸潤性膀胱がん、および転移性膀胱がん)および非尿路上皮膀胱がん)、扁平上皮細胞がん(例えば、上皮系扁平上皮細胞がん)、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺がん、および肺の扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がんを含む胃(gastric)がんまたは胃(stomach)がん、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、肝臓がん、乳がん(転移性乳がんを含む)、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎臓(kidney)がんまたは腎臓(renal)がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、メルケル細胞がん、菌状息肉腫、精巣がん、食道がん、胆管の腫瘍、ならびに頭頸部がんおよび多発性骨髄腫が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、局所的な再発または転移性疾患(局所再発疾患が治癒目的で切除を受けられない場合)を有する、任意に組織学的に確認されたトリプルネガティブ(ER-、PR-、HER2-)な乳房の腺がんを含むトリプルネガティブ転移性乳がんである。いくつかの実施形態では、がんは、膀胱がんである。具体的な実施形態では、膀胱がんは、尿路上皮膀胱がんである。
【0141】
「腫瘍」という用語は、本明細書で使用される場合、悪性であるか良性であるかにかかわらず、全ての腫瘍細胞の成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を指す。「がん」、「がん性」、および「腫瘍」という用語は、本明細書で言及されるように相互排他的ではない。
【0142】
用語「医薬品製剤」とは、そこに含まれる有効成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、かつ、製剤が投与されるであろう対象に許容できない毒性を有する追加成分を含まない製剤をいう。
【0143】
「薬学的に許容される担体」とは、有効成分以外の医薬品製剤中の成分であって、対象に無毒であるものを指す。製薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
本明細書で使用されるように、「処置」(および「処置する」または「処置すること」のようなその文法的なバリエーション)は、処置される個体の自然な経過を変化させる試みの臨床的介入を意味し、予防のために、または臨床病理学の経過中に実施することができる。処置の望ましい効果としては、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患の直接的または間接的な病理学的影響の軽減、転移の防止、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後の改善が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、抗体(例えば、抗PD-L1抗体および/または抗PD-1抗体)は、疾患の発達を遅らせるか、または疾患の進行を減速させるために使用される。
【0145】
「抗がん療法」という用語は、がんの治療に有用な療法を指す。抗がん処置剤の例としては、細胞毒性剤、化学療法剤、増殖阻害剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、およびがんを処置するための他の薬剤、例えば、抗CD20抗体、血小板由来増殖因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的物PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA受容体(複数可)、TRAIL/Apo2のうちの1つ以上に結合するアンタゴニスト(例えば、中和抗体)、他の生物活性および有機化学剤等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの組合せも本発明に含まれる。いくつかの実施形態では、抗がん療法は、シスプラチンを含まない。
【0146】
「シスプラチン含有化学療法に適格ではない」および「シスプラチン不適」という用語は、がん患者に関して本明細書中で交換可能に使用される場合、患者がシスプラチン処置に不適格であるか、さもなければシスプラチン処置の候補ではないことを意味する。患者は、当該技術分野で公知の1つ以上の標準化された基準に基づいて、または臨床医の判断に基づいて、シスプラチン不適であり得る。いくつかの場合では、患者は、腎機能障害(例えば、糸球体濾過率(GFR)またはクレアチニンクリアランス、例えば糸球体濾過量またはクレアチニンクリアランス(例えば、クレアチニンクリアランスの測定値または計算値)が、60mL/分未満、例えば糸球体濾過量またはクレアチニンクリアランスが、45mL/ml未満、50mL/分未満、55mL/分未満、60mL/分未満、または30mL/分未満および60mL/分未満により評価される場合);難聴(例えば、有害事象共通用語規準(CTCAE)グレード2以上の難聴);神経障害(例えば、CTCAEグレード2以上の神経障害);その他の合併症(例えば、心不全または単腎);年齢;ならびに/または米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス評価(例えば、Okenら、「Am.J.Clin.Oncol.」第5巻第649~655頁、1982年)、例えばECOGパフォーマンスステータス1以上、ECOGパフォーマンスステータス2、ECOGパフォーマンスステータス2以上(例えば、2、3、または4)のために、シスプラチン不適格とされることがあるいくつかの事例では、患者は、年齢、例えば70歳超、75歳超、80歳超、90歳超のためにシスプラチン不適格とされることがある。非限定的な一例では、シスプラチン不適な患者は、30mL/分超かつ60mL/分未満の糸球体濾過率、グレード2以上の末梢神経障害若しくは難聴、および/またはECOGパフォーマンスステータス2を有する。
【0147】
本明細書で使用される場合、「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害若しくは防止する、および/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビン、メルファラン、ミトマイシンC、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の介在剤、核分解酵素などの酵素およびその断片、抗生物質、および細菌、真菌、植物または動物由来の小分子毒素または酵素的に活性な毒素のような毒素(これらの断片および/または変異体を含む)、ならびに以下に開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤を含むように意図される。他の細胞毒性剤は、以下に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0148】
化学療法剤とは、がんの処置に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、およびウレドパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、および9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(とりわけクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ1Iおよびカリケアミシンω1Iなどの抗生物質(例えば、Nicolaouら、「Angew.Chem Intl.Ed.Engl」第33巻第183~186頁(1994年);ダイネミシンAを含むダイネミシン;ならびに、エスペラマイシン;ネオカルチノスタチン発色団および関連するクロモプロテインエンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベニジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;マイタンシンおよびアンサミトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖錯体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセルを含むタキサン(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE(商標)クレモホールを含有しない、アルブミン操作されたパクリタキセルのナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、およびTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhoene-Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル(chloranbucil);ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン(ELOXATIN(商標))、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、およびリポプラチン等の白金または白金系化学療法剤;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびにCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法の略語);およびFOLFOX(5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いた処置レジメンの略語)等の上記のうち2つ以上の組合せが挙げられる。更なる化学療法剤は、メイタンシノイド(例えばDM1)等の抗体薬物コンジュゲートと有用な細胞毒性剤、ならびに例えば、MMAEおよびMMAF等のオーリスタチンを含む。
【0149】
「化学療法剤」には、がんの成長を促進し得るホルモン作用を制御、低減、遮断、または阻害するために作用する「抗ホルモン薬剤」または「内分泌治療剤」も含まれ、しばしば全身性または体全体の処置の形態にある。これらはそれ自体がホルモンであってもよい。例としては、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびFARESTON(登録商標)トレミフェン;抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御因子(ERD);卵巣を抑制するかまたは活動停止するように機能する薬剤、例えば、LUPRON(登録商標)およびELIGARD(登録商標)ロイプロリド酢酸塩、ゴセレリン酢酸塩、ブセレリン酢酸塩、およびトリプテレリン等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;フルタミド、ニルタミド、およびビカルタミド等の他の抗アンドロゲン薬;ならびに副腎におけるエストロゲン生産を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、およびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールを含む、抗エストロゲンおよび選択的なエストロゲン受容体調節因子(SERM)が挙げられる。加えて、化学療法剤のかかる定義には、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロネート、NE-58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート、またはACTONEL(登録商標)リセドロネートなどのビスホスホネート;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras、および表皮成長因子受容体(EGFR)などの異所(abherant)細胞増殖に関係があるとされるシグナル伝達系路における遺伝子の発現を阻害するもの;THERATOPE(登録商標)ワクチンおよび遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチンなどのワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ジトシル酸ラパチニブ(別名、GW572016、ErbB-2およびEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれる。
【0150】
化学療法剤には、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)などの抗体も含み、パニツムズマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、および抗体医薬コンジュゲートであるゲムツズマブオゾガミシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も含む。本発明の化合物と組み合わせた薬剤としての治療可能性を有する追加のヒト化モノクローナル抗体には、以下のものが含まれる:アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピヌズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セロリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ。エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マッツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクセリズマブ、ペクセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レスリビズマブ、ロベリズマブ、ルピズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソントゥズマブ、タカタツズマブテトラキセタン、タドキシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブセルモレウキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、およびインターロイキン-12 p40タンパク質を認識するように遺伝子組換えされた、ヒト配列のみの完全長IgG1λ抗体である抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、ワイスリサーチ、アボットラボラトリーズ)。
【0151】
化学療法剤はまた、「EGFR阻害剤」を含み、これは、EGFRに結合するか、またはそうでなければEGFRと直接相互作用し、EGFRのシグナル伝達活性を阻害または低減する化合物を指し、「EGFRアンタゴニスト」と代替的に呼ばれる。このような薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体や小分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、以下のものが挙げられる:MAb579(ATCC CRL HB 8506)、MAb455(ATCC CRL HB8507)、MAb225(ATCC CRL 8508)、MAb528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4,943,533号、Mendelsohnら、を参照されたい)およびその変種、例えばキメラ化された225(C225またはセツキシマブ;ERBUTIX(登録商標))およびリシェイプされたヒト225(H225)(国際公開第WO96/40210号(Imclone Systems Inc.)参照);IMC-11F8、完全ヒト型EGFR標的抗体(イムクローン);II型変異型EGFRを結合する抗体(米国特許第5,212,290号);米国特許第5,891,996号に記載されているようなEGFRを結合するヒト化抗体およびキメラ抗体;およびABX-EGFまたはパニツムマブ(国際公開第WO98/50433号、Abgenix/Amgenを参照されたい)などのEGFRを結合するヒト抗体;EMD 55900(Stragliottoら、「Eur.J.Cancer」第32A巻第636~640頁(1996年)を参照);EMD7200(マツズマブ)(EGFとTGF-αの両方のEGFR結合を競合させるEGFRに対するヒト化EGFR抗体(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3およびE7.6.3として知られ、米国特許第6,235,883号に記載の完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc);およびmAb806またはヒト化mAb806(Johnsら、「J.Biol.Chem.」第279巻第29号第30375~30384頁(2004年)).抗EGFR抗体は、細胞毒性剤にコンジュゲートされてよく、それによりイムノコンジュゲートを生成することができる(例えば、欧州特許出願公開第EP659,439A2号(Merck Patent GmbH)を参照されたい)。EGFRアンタゴニストとしては、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、および同第5,747,498号、ならびに以下のPCT公報:国際公開第WO98/14451号、同第WO98/50038号、同第WO99/09016号、および同第WO99/24037号に記載される化合物などの小分子が含まれる。特定の小分子EGFRアンタゴニストとしては、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals);PD 183805(CI 1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.);ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca);BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール);(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キナゾリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブチンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU 5271、Pfizer);および二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN-[3-クロロ-4-[(3-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が挙げられる。
【0152】
化学療法剤としては、「チロシンキナーゼ阻害剤」、例えば、前段落に記載のEGFR標的薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724,714(PfizerおよびOSI);二重HER阻害剤、例えば、EGFRに優先的に結合するが、HER2およびEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能);ラパチニブ(GSK572016、Glaxo-SmithKlineから入手可能);経口HER2およびEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);pan-HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI-1033、Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えば、Raf-1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS-5132;非HER標的TK阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えば、PD 153035,4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えば、CGP 59326、CGP 60261、およびCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン;クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの);キノキサリン(米国特許第5,804,396号);トリホスチン(tryphostin)(米国特許第5,804,396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);pan-HER阻害剤、例えば、CI-1033(Pfizer);Affinitac(ISIS 3521;Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標);または以下の特許公報:米国特許第5,804,396号、国際公開第WO1999/09016号(American Cyanamid)、同第WO1998/43960号(American Cyanamid)、同第WO1997/38983号(Warner Lambert)、同第WO1999/06378号(Warner Lambert)、同第WO1999/06396号(Warner Lambert)、同第WO1996/30347号(Pfizer,Inc)、同第WO1996/33978号(Zeneca)、同第WO1996/3397号(Zeneca)、および同第WO1996/33980号(Zeneca)のいずれかに記載されるものが挙げられる。
【0153】
化学療法剤としては、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバシズマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、およびゾレドロン酸、ならびにそれらの製薬学的に許容される塩も挙げられる。
【0154】
化学療法剤としては、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバリン酸チクソコルトール、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、ヒドロコルチゾン-17-バレレート、プロピオン酸アクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチレート、クロベタゾン-17-プロピオネート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロンおよび酢酸フルプレドニデン;免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAIDs)、例えばフェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)およびそのD体形態(feG)(IMULAN BioTherapeutics,LLC);抗リウマチ薬、例えばアザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミドミノシクリン、スルファサラジン、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断剤、例えばエタネルセプト(ENBREL(登録商標)インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、セトリズマブペゴール(CIMZIA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、インターロイキン1(IL-1)遮断剤、例えばアナキンラ(KINERET(登録商標))、T細胞共刺激遮断剤、例えばアバタセプト(ORENCIA(登録商標))、インターロイキン6(IL-6)遮断剤、トシリズマブ(ACTEMERA(登録商標));インターロイキン13(IL-13)遮断剤、例えばレブリキズマブ;インターフェロンアルファ(IFN)遮断剤、例えばロンタリズマブ;ベータ7インテグリン遮断剤、例えばrhuMAb Beta7;IgE経路遮断剤、例えば抗M1プライム;分泌ホモ三量体LTa3および膜結合ヘテロ三量体LTa1/β2遮断剤、例えば抗リンホトキシンアルファ(LTa);種々の調査剤、例えばチオプラチン、PS-341、フェニルブチレート、ET-18-OCH3、およびファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832);ポリフェノール、例えばケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸およびその誘導体;オートファジー阻害剤、例えばクロロキン;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルチシン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9-アミノカンプトテシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標));ならびに上皮成長因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン;ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341);CCI-779;チピファニブ(R11577);オラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えば、オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファルニブ(SCH 6636、SARASAR(商標));ならびに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびに上記のうち2つ以上の組合せが挙げられる。
【0155】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞毒性が低く、酵素によってより活性な親形態へと活性化または変換され得る、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体形態を指す。例えば、Wilman,「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」、「Biochemical Society Transactions」第14巻第375~382頁、615th Meeting Belfast(1986年)およびStellaら「Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」、「Directed Drug Delivery」、Borchardtら(編)、第247~267頁、Humana Press(1985年)を参照されたい。本発明のプロドラッグには、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、スルフェート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、Dアミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、必要に応じて置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは必要に応じて置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシンおよび他の5-フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるがこれらに限定されず、これらは、より活性な細胞毒性遊離薬物へと変換され得る。本発明で使用するためのプロドラッグ形態に誘導体化され得る細胞毒性薬物の例としては、上述の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
「増殖阻害剤」とは、本明細書で使用されるとき、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞(例えば、その成長がPD-L1発現に依存する細胞)の成長および/または増殖を阻害する化合物または組成物を指す。したがって、増殖阻害剤は、S期における細胞の割合を著しく低減するものであり得る。増殖阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止およびM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。古典的なM期遮断剤としては、ビンカ類(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、およびトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、アントラサイクリン抗生物質ドキソルビシン((8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンが挙げられる。G1期を停止させる薬物、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-CなどのDNAアルキル化剤はまた、S期停止にも波及する。更なる情報は「The Molecular Basis of Cancer」、MendelsohnおよびIsrael編、第1章、題「Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs」、村上らによる(WB Saunders:Philadelphia、1995年)、特に第13頁で確認することができる。タキサン類(パクリタキセルとドセタキセル)は、いずれもイチイの木に由来する抗がん剤である。ヨーロッパイチイ由来のドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセルとドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の集合を促進し、脱重合を防ぐことで微小管を安定化させ、その結果、細胞の有糸分裂を阻害する。
【0157】
「放射線療法」とは、細胞の正常な機能を制限したり、細胞を完全に破壊したりする能力を制限するために、細胞に充分な損傷を誘発するために、指向性ガンマ線またはベータ線を使用すること指す。処置の投与量および期間を決定するために、当技術分野で知られている多くの方法が存在することが理解されるであろう。代表的な処置法は1回投与で、代表的な投与量は1日10~200単位(グレイ)の範囲である。
【0158】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」という用語は、交換可能に使用され、処置が所望される任意の単一の動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、および非ヒト霊長類などの非ヒト動物を含む)を指す。具体的な実施形態では、本明細書の患者は、ヒトである。
【0159】
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、対象(例えば、患者)への化合物(例えば、アンタゴニスト)または医薬組成物(例えば、アンタゴニストを含む医薬組成物)の投薬量の供与方法を意味する。投与は、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与、ならびに局所処置で所望される場合、病変内投与を含む、任意の好適な手段によるものであり得る。非経口注入は、例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与を含む。投薬は、投与が短期または長期であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内または皮下注射等の注射によるものであり得る。本明細書では、様々な時点での単回または複数回の投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投与スケジュールが企図されている。
【0160】
「同時に」という用語は、本明細書において、投与の時間が少なくとも部分的に重複している、2つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。したがって、同時投与としては、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与を中止した後で継続する投薬レジメンが含まれる。
【0161】
「低減するまたは阻害する」とは、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上の全体的な減少をもたらす能力を意味する。低減または阻害とは、例えば、処置されている障害の症状、転移の存在若しくはサイズ、または原発性腫瘍のサイズに対して言及する場合がある。
【0162】
「パッケージ添付文書」という用語は、治療製品の市販パッケージに通常含まれる指示を指すために用いられ、そのような治療製品に関する適応症、使用、投薬量、投与、併用療法、禁忌および/または警告に関する情報を含む。
【0163】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または全ての生存微生物およびそれらの胞子を含まない。
【0164】
「製品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患若しくは障害(例えば、がん)の処置のための医薬品、または本明細書に記載のバイオマーカ(例えば、PD-L1)を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製造物(例えば、パッケージ若しくは容器)またはキットである。ある特定の実施形態では、製造物またはキットは、本明細書に記載される方法を実施するための単位として販売促進、配給、または販売される。
【0165】
「に基づく」という語句は、本明細書で使用される場合、1つ以上のバイオマーカについての情報が、例えば、処置決定、添付文書に提供される情報、またはマーケティング/宣伝指針などを伝えるために使用されることを意味する。
【0166】
III.方法
A.PD-L1の発現レベルに基づく診断方法
本明細書では、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者が、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法が提供される。本明細書ではまた、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に対する応答性を予測する方法も提供される。本明細書では、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者のための療法を選択する方法が更に提供される。前述の方法のいずれも、本明細書に提供されるバイオマーカの発現レベル、例えば、腫瘍試料中、例えば、腫瘍浸潤免疫細胞中のPD-L1発現に基づいてもよい。いずれの方法においても、患者は白金剤含有化学療法、例えばシスプラチン含有化学療法に不適格であり得る。いずれの方法においても、患者は膀胱がんについて事前に未処置であってもよい。言い換えれば、患者は処置を受けていない可能性がある。方法はいずれも、腫瘍試料サブタイプの判定に更に基づいてもよい。本方法はいずれも、患者にPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、以下のD項に記載されるもの)を患者(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)に投与することを更に含み得る。方法はいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含んでもよい。
【0167】
例えば、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者が、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置に応答する可能性があるかどうかを判定する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、患者は膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を含む腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者が抗がん療法による処置に応答する可能性があることを示す、方法が提供される。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。
【0168】
本発明は更に、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に対するシスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者の応答性を予測する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、患者は膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を含む腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性があることを示す、方法を提供する。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に応答する可能性が高いことを示す。
【0169】
本発明は更にまた、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者用の療法を選択する方法であって、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む治療に応答する可能性があるかどうかを判定する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が膀胱がんについて事前に未処置である、判定することと、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を含む腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む療法を選択することと、を含む方法提供する。
【0170】
例えば、いくつかの事例では、該方法は、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することを含む。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、該方法は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することを含む。
【0171】
本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者が、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置に応答する可能性があるかどうかを判定する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、患者は尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者が抗がん療法による処置に応答する可能性があることを示す、方法を更に提供する。いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0172】
本発明は、アテゾリズマブを含む抗がん療法と併用する処置に対するシスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者の応答性を予測する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、患者は局所進行性または転移性の尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者が抗がん療法による処置に応答する可能性があることを示す、方法を更に提供する。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がアテゾリズマブを含む抗がん療法での処置に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がアテゾリズマブを含む抗がん療法での処置に応答する可能性が高いことを示す。
【0173】
本発明はまた、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者用の療法を選択する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が尿路上皮がんについて事前に未処置である、判定することと、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づくアテゾリズマブを含む抗がん療法を選択することと、を含む方法を、提供する。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0174】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者には参照患者と比較して完全奏効(CR)を有する改善された可能性があることを示す。いくつかの実施形態では、参照患者は、参照患者から得られた腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有する患者である。いくつかの実施形態では、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者には約5%を超える(例えば、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%を超える)CRを有する可能性があることを示す。
【0175】
例えば、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者が、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置に応答する可能性があるかどうかを判定する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、患者は膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者に抗がん療法による処置に反応する可能性があり、かつ約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)の完全奏効(CR)を示す可能性があることを示す、方法が提供される。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。
【0176】
本発明は、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に対するシスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者応答性を予測する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、患者は膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者にPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に反応する可能性があり、かつ約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)の完全奏効(CR)を示す可能性があることを示す、方法を更に提供する。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に応答する可能性が高いことを示す。
【0177】
本発明は更にまた、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者用の療法を選択する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が膀胱がんについて事前に未処置である、判定することと、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づく患者用のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む療法を選択することであって、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、患者には約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上のCRを有する可能性があることを示す、選択することと、を含む方法も、提供される。
【0178】
例えば、いくつかの事例では、該方法は、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することを含む。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、該方法は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む療法を選択することを含む。
【0179】
本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者が、アテゾリズマブを含む抗がん療法による処置に応答する可能性があるかどうかを判定する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、患者は尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者に抗がん療法による処置に反応する可能性があり、かつ約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)の完全奏効(CR)を示す可能性があることを示す、方法を更に提供する。いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0180】
本発明は、アテゾリズマブを含む抗がん療法と併用する処置に対するシスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者の応答性を予測する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することを含み、患者は局所進行性または転移性の尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者に抗がん療法による処置に反応する可能性があり、かつ約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)の完全奏効(CR)を示す可能性があることを示す、方法を更に提供する。いくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がアテゾリズマブを含む抗がん療法での処置に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がアテゾリズマブを含む抗がん療法での処置に応答する可能性が高いことを示す。
【0181】
本発明はまた、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者用の療法を選択する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が尿路上皮がんについて事前に未処置である、判定することと、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づく患者用のアテゾリズマブを含む抗がん療法を選択することであって、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、患者には約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)のCRを有する可能性を有することを示す、選択することと、を含む方法も、提供される。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞は、患者から得られた腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、または約90%以上)を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約5%以上を網羅し得る。他の事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約10%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約15%以上を網羅し得る。更に他の事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約20%以上を網羅し得る。更なる事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約25%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約30%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約35%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約40%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約50%以上を網羅し得る。
【0182】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の約5%(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上)は、PD-L1の検出可能な発現レベルを発現し得る。
【0183】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者には参照患者と比較して奏効、例えば完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を有する、改善された可能性があることを示す。いくつかの事例では、参照患者は、参照患者から得られた腫瘍試料の5%未満(例えば、4%、3%、2%、1%以下)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有する患者である。
【0184】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を含む腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者が約5%を超えるCR(例えば、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を有する可能性を有することを示す。いくつかの事例では、患者は、約5%~約40%(例、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、または約40%)の奏効(例えば、CR)を有する可能性がある。いくつかの事例では、患者は、約5%~約20%(例えば、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%)のCRを有する可能性がある。いくつかの事例では、患者は、少なくとも約13%の奏効(例えば、CR)を有する可能性がある。いくつかの事例では、患者は、約13%の奏効(例えば、CR)を有する可能性がある。
【0185】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、奏効(例えば、CR)を有する可能性は、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による患者の処置の開始後約12ヶ月以上、例えば、約12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月、36ヶ月、37ヶ月、38ヶ月、39ヶ月、40ヶ月、42ヶ月、44ヶ月、46ヶ月、48ヶ月、50ヶ月、またはそれ以上において約10%以上である。例えば、前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、奏効(例えば、CR)を有する可能性は、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による患者の処置開始の約17ヶ月以上後において約10%以上である。いくつかの実施形態では、奏効(例えば、CR)を有する可能性は、該アテゾリズマブを含む抗がん療法による該患者の処置開始の約29ヶ月以上後において約10%以上である。いくつかの実施形態では、奏効(例えば、CR)を有する可能性は、該アテゾリズマブを含む抗がん療法による該患者の処置開始の約36ヶ月以上後において約10%以上である。
【0186】
別の態様では、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者のための療法を選択するための方法であって、該患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の該発現レベルを判定することであって、該患者が該膀胱がんについて事前に未処置である、判定することと、該腫瘍試料の約5%(例えば、約0%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、または約4%)未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、該患者のためのPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法を選択することであって、該抗がん療法が処置の開始後から持続的奏効をもたらす可能性がある、選択することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%以上~5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。前述の方法のいずれかの他の実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の1%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0187】
例えば、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者用の療法を選択する方法であって、患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が尿路上皮がんについて事前に未処置である、判定することと、
【0188】
腫瘍試料の約5%未満(例えば、約0%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、または約4%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、患者用のアテゾリズマブを含む抗がん療法の選択(抗がん療法は処置の開始から持続的奏効をもたらす可能性がある)と、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%以上~5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。前述の方法のいずれかの他の実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の1%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0189】
前述の方法のいずれにおいても、患者は、30mL/分超かつ60mL/分未満の糸球体濾過率、グレード2以上の末梢神経障害若しくは難聴、および/または米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Group)パフォーマンスステータス2を有し得る。
【0190】
前述の方法のいずれにおいても、該方法は、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルに基づいて、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することによる患者の処置を更に含み得る。PD-L1軸結合アンタゴニストは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書、例えば以下のD項に記載されるいずれのPD-L1軸結合アンタゴニストであってもよい。
【0191】
例えば、いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、およびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のそのリガンド結合パートナのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害する。更に他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1およびB7-1両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、アテゾリズマブ、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、およびMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの事例では、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの事例では、抗体は、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0192】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、アテゾリズマブである。前述の方法のいずれにおいても、アテゾリズマブは、約1000mg~約1400mg(例えば、約1200mg)の用量で3週間ごとに投与され得る。
【0193】
前述の方法のいずれにおいても、アテゾリズマブは、単剤療法として投与され得る。
【0194】
前述の方法のいずれにおいても、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、アテゾリズマブ)は、静脈内(例えば、点滴または注射による静脈内)、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内で投与され得る。
【0195】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2への結合を阻害する。更に他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1およびPD-L2両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、以下からなる群から選択される:MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、およびBGB-108。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例では、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。
【0196】
いくつかの事例では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの事例では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0197】
前述の方法のいずれにおいても、処置は、処置の4ヶ月以内、例えば、1週間以内、2週間以内、3週間以内、1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、または3.5ヶ月以内に奏効をもたらし得る。他の実施形態では、処置は、処置の4か月後、例えば、例えば、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、約12ヶ月後、約13ヶ月後、約14ヶ月後、約15ヶ月後、約16ヶ月後、またはそれ以降に奏効をもたらし得る。
【0198】
前述の方法のいずれにおいても、患者は、CRを得ていてもよい。CRは、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置の開始の約6ヶ月後、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置の開始の、例えば約6ヶ月、約8ヶ月、約10ヶ月、約12ヶ月、約14ヶ月、約16ヶ月、約18ヶ月、約20ヶ月、約22ヶ月、約24ヶ月、約26ヶ月、約28ヶ月、約30ヶ月、約32ヶ月、約34ヶ月、約36ヶ月、約38ヶ月、約40ヶ月、約42ヶ月、約44ヶ月、約46ヶ月、約48ヶ月、約50ヶ月、または約52ヶ月後に生じ得る。いくつかの実施形態では、CRは、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置開始の約17ヶ月以上後である。いくつかの実施形態では、CRは、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置開始の約29ヶ月以上後である。いくつかの実施形態では、CRは、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置開始の約36ヶ月以上後である。
【0199】
前述の方法のいずれにおいても、処置は、持続的奏効をもたらし得る。いくつかの事例では、持続的奏効は、約6ヶ月超、例えば、約6ヶ月超、約8ヶ月超、約10ヶ月超、約12ヶ月超、約14ヶ月超、約16ヶ月超、約18ヶ月超、約20ヶ月超、約22ヶ月超、約24ヶ月超、約24ヶ月超、約26ヶ月超、約28ヶ月超、または約30ヶ月超の奏効である。例えば、前述の方法のいずれにおいても、持続的奏効は、約6ヶ月~約30ヶ月、約6ヶ月~約28ヶ月、約6ヶ月~約26ヶ月、約6ヶ月~約24ヶ月、約6ヶ月~約22ヶ月、約6ヶ月~約20ヶ月、約6ヶ月~約18ヶ月、約6ヶ月~約16ヶ月、約6ヶ月~約14ヶ月、約6ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約10ヶ月、約6ヶ月~約8ヶ月、約8ヶ月~約30ヶ月、約8ヶ月~約28ヶ月、約8ヶ月~約26ヶ月、約8ヶ月~約24ヶ月、約8ヶ月~約22ヶ月、約8ヶ月~約20ヶ月、約8ヶ月~約18ヶ月、約8ヶ月~約16ヶ月、約8ヶ月~約14ヶ月、約8ヶ月~約12ヶ月、約8ヶ月~約10ヶ月、約10ヶ月~約30ヶ月、約10ヶ月~約28ヶ月、約10ヶ月~約26ヶ月、約10ヶ月~約24ヶ月、約10ヶ月~約22ヶ月、約10ヶ月~約20ヶ月、約10ヶ月~約18ヶ月、約10ヶ月~約16ヶ月、約10ヶ月~約14ヶ月、約10ヶ月~約12ヶ月、約12ヶ月~約30ヶ月、約12ヶ月~約28ヶ月、約12ヶ月~約26ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約22ヶ月、約12ヶ月~約20ヶ月、約12ヶ月~約18ヶ月、約12ヶ月~約16ヶ月、約12ヶ月~約14ヶ月、約14ヶ月~約30ヶ月、約14ヶ月~約28ヶ月、約14ヶ月~約26ヶ月、約14ヶ月~約24ヶ月、約14ヶ月~約22ヶ月、約14ヶ月~約20ヶ月、約14ヶ月~約18ヶ月、約14ヶ月~約16ヶ月、約16ヶ月~約30ヶ月、約16ヶ月~約28ヶ月、約16ヶ月~約26ヶ月、約16ヶ月~約24ヶ月、約16ヶ月~約22ヶ月、約16ヶ月~約20ヶ月、約16ヶ月~約18ヶ月、約18ヶ月~約30ヶ月、約18ヶ月~約28ヶ月、約18ヶ月~約26ヶ月、約18ヶ月~約24ヶ月、約18ヶ月~約22ヶ月、約18ヶ月~約20ヶ月、約20ヶ月~約30ヶ月、約20ヶ月~約28ヶ月、約20ヶ月~約26ヶ月、約20ヶ月~約24ヶ月、約20ヶ月~約22ヶ月、約22ヶ月~約30ヶ月、約22ヶ月~約28ヶ月、約22ヶ月~約26ヶ月、約22ヶ月~約24ヶ月、約24ヶ月~約30ヶ月、約24ヶ月~約28ヶ月、約24ヶ月~約26ヶ月、約26ヶ月~約30ヶ月、約26ヶ月~約28ヶ月、または約28ヶ月~約30ヶ月の奏効であり得る。
【0200】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、持続的奏効は、約30ヶ月、例えば、約30.1ヶ月超、約30.2ヶ月超、約30.3ヶ月超、約30.4ヶ月超、約30.5ヶ月超、約31ヶ月超、約32ヶ月超、約33ヶ月超、約34ヶ月超、約35ヶ月超、約36ヶ月超、約37ヶ月超、約38ヶ月超、約39ヶ月超、約40ヶ月超、約41ヶ月超、約42ヶ月超、約43ヶ月超、約44ヶ月超、約45ヶ月超、約46ヶ月超、約47ヶ月超、約48ヶ月超、約49ヶ月超、約50ヶ月超、約51ヶ月超、約52ヶ月超、約53ヶ月超、約54ヶ月超、約55ヶ月超、約56ヶ月超、約57ヶ月超、約58ヶ月超、約59ヶ月超、約60ヶ月超、またはこれらより長期間の奏効である。
【0201】
例えば、前述の方法のいずれにおいても、持続的奏効は、約24ヶ月~約60ヶ月、約24ヶ月~約58ヶ月、約24ヶ月~約56ヶ月、約24ヶ月~約54ヶ月、約24ヶ月~約52ヶ月、約24ヶ月~約50ヶ月、約24ヶ月~約48ヶ月、約24ヶ月~約46ヶ月、約24ヶ月~約44ヶ月、約24ヶ月~約42ヶ月、約24ヶ月~約40ヶ月、約24ヶ月~約38ヶ月、約24ヶ月~約36ヶ月、約24ヶ月~約34ヶ月、約24ヶ月~約32ヶ月、約24ヶ月~約30ヶ月、約24ヶ月~約28ヶ月、約24ヶ月~約26ヶ月、約26ヶ月~約60ヶ月、約26ヶ月~約58ヶ月、約26ヶ月~約56ヶ月、約26ヶ月~約54ヶ月、約26ヶ月~約52ヶ月、約26ヶ月~約50ヶ月、約26ヶ月~約48ヶ月、約26ヶ月~約46ヶ月、約26ヶ月~約44ヶ月、約26ヶ月~約42ヶ月、約26ヶ月~約40ヶ月、約26ヶ月~約38ヶ月、約26ヶ月~約36ヶ月、約26ヶ月~約34ヶ月、約26ヶ月~約32ヶ月、約26ヶ月~約30ヶ月、約26ヶ月~約28ヶ月、約28ヶ月~約60ヶ月、約28ヶ月~約58ヶ月、約28ヶ月~約56ヶ月、約28ヶ月~約54ヶ月、約28ヶ月~約52ヶ月、約28ヶ月~約50ヶ月、約28ヶ月~約48ヶ月、約28ヶ月~約46ヶ月、約28ヶ月~約44ヶ月、約28ヶ月~約42ヶ月、約28ヶ月~約40ヶ月、約28ヶ月~約38ヶ月、約28ヶ月~約36ヶ月、約28ヶ月~約34ヶ月、約28ヶ月~約32ヶ月、約28ヶ月~約30ヶ月、約30ヶ月~約60ヶ月、約30ヶ月~約58ヶ月、約30ヶ月~約56ヶ月、約30ヶ月~約54ヶ月、約30ヶ月~約52ヶ月、約30ヶ月~約50ヶ月、約30ヶ月~約48ヶ月、約30ヶ月~約46ヶ月、約30ヶ月~約44ヶ月、約30ヶ月~約42ヶ月、約30ヶ月~約40ヶ月、約30ヶ月~約38ヶ月、約30ヶ月~約36ヶ月、約30ヶ月~約34ヶ月、約30ヶ月~約32ヶ月、約32ヶ月~約60ヶ月、約32ヶ月~約58ヶ月、約32ヶ月~約56ヶ月、約32ヶ月~約54ヶ月、約32ヶ月~約52ヶ月、約32ヶ月~約50ヶ月、約32ヶ月~約48ヶ月、約32ヶ月~約46ヶ月、約32ヶ月~約44ヶ月、約32ヶ月~約42ヶ月、約32ヶ月~約40ヶ月、約32ヶ月~約38ヶ月、約32ヶ月~約36ヶ月、約32ヶ月~約34ヶ月、約34ヶ月~約60ヶ月、約34ヶ月~約58ヶ月、約34ヶ月~約56ヶ月、約34ヶ月~約54ヶ月、約34ヶ月~約52ヶ月、約34ヶ月~約50ヶ月、約34ヶ月~約48ヶ月、約34ヶ月~約46ヶ月、約34ヶ月~約44ヶ月、約34ヶ月~約42ヶ月、約34ヶ月~約40ヶ月、約34ヶ月~約38ヶ月、約34ヶ月~約36ヶ月、約36ヶ月~約60ヶ月、約36ヶ月~約58ヶ月、約36ヶ月~約56ヶ月、約36ヶ月~約54ヶ月、約36ヶ月~約52ヶ月、約36ヶ月~約50ヶ月、約36ヶ月~約48ヶ月、約36ヶ月~約46ヶ月、約36ヶ月~約44ヶ月、約36ヶ月~約42ヶ月、約36ヶ月~約40ヶ月、約36ヶ月~約38ヶ月、約38ヶ月~約60ヶ月、約38ヶ月~約58ヶ月、約38ヶ月~約56ヶ月、約38ヶ月~約54ヶ月、約38ヶ月~約52ヶ月、約38ヶ月~約50ヶ月、約38ヶ月~約48ヶ月、約38ヶ月~約46ヶ月、約38ヶ月~約44ヶ月、約38ヶ月~約42ヶ月、約38ヶ月~約40ヶ月、約40ヶ月~約60ヶ月、約40ヶ月~約58ヶ月、約40ヶ月~約56ヶ月、約40ヶ月~約54ヶ月、約40ヶ月~約52ヶ月、約40ヶ月~約50ヶ月、約40ヶ月~約48ヶ月、約40ヶ月~約46ヶ月、約40ヶ月~約44ヶ月、約40ヶ月~約42ヶ月、約42ヶ月~約60ヶ月、約42ヶ月~約58ヶ月、約42ヶ月~約56ヶ月、約42ヶ月~約54ヶ月、約42ヶ月~約52ヶ月、約42ヶ月~約50ヶ月、約42ヶ月~約48ヶ月、約42ヶ月~約46ヶ月、約42ヶ月~約44ヶ月、約44ヶ月~約60ヶ月、約44ヶ月~約58ヶ月、約44ヶ月~約56ヶ月、約44ヶ月~約54ヶ月、約44ヶ月~約52ヶ月、約44ヶ月~約50ヶ月、約44ヶ月~約48ヶ月、約44ヶ月~約46ヶ月、約46ヶ月~約60ヶ月、約46ヶ月~約58ヶ月、約46ヶ月~約56ヶ月、約46ヶ月~約54ヶ月、約46ヶ月~約52ヶ月、約46ヶ月~約50ヶ月、約46ヶ月~約48ヶ月、約48ヶ月~約60ヶ月、約48ヶ月~約58ヶ月、約48ヶ月~約56ヶ月、約48ヶ月~約54ヶ月、約48ヶ月~約52ヶ月、約48ヶ月~約50ヶ月、約50ヶ月~約60ヶ月、約50ヶ月~約58ヶ月、約50ヶ月~約56ヶ月、約50ヶ月~約54ヶ月、約50ヶ月~約52ヶ月、約52ヶ月~約60ヶ月、約52ヶ月~約58ヶ月、約52ヶ月~約56ヶ月、約52ヶ月~約54ヶ月、約54ヶ月~約60ヶ月、約54ヶ月~約58ヶ月、約54ヶ月~約56ヶ月、約56ヶ月~約60ヶ月、約56ヶ月~約58ヶ月、または約58ヶ月~約60ヶ月の奏効であり得る。
【0202】
前述の事例のいずれにおいても、膀胱がんは、尿路上皮膀胱がんであり得、これには筋層非浸潤性尿路上皮膀胱がん、筋層浸潤性尿路上皮膀胱がん、または転移性尿路上皮膀胱がんが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの事例では、尿路上皮膀胱がんは、転移性尿路上皮膀胱がんである。いくつかの事例では、膀胱がんは、局所進行性または転移性の尿路上皮がんであり得る。
【0203】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、膀胱がんは、局所進行性尿路上皮がんである。
【0204】
前述の方法のいずれかの他の事例では、膀胱がんは、転移性尿路上皮がんである。
【0205】
バイオマーカ(例えば、PD-L1)の存在および/または発現レベル/量は、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片および/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の適切な基準に基づいて、定性的および/または定量的に判定することができる。
【0206】
前述の方法のいずれにおいても、患者から得られた試料は、組織、全血、血漿、血清、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの事例では、試料は、組織試料である。いくつかの事例では、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例では、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組合せを含む。前述の事例のいずれにおいても、腫瘍試料は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料であり得る。
【0207】
前述の方法のいずれにおいても、該方法は、追加のバイオマーカの存在および/または発現レベルを判定することを含み得る。いくつかの事例では、追加のバイオマーカは、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO2014/151006号に記載されるバイオマーカである。いくつかの事例では、追加のバイオマーカは、循環Ki-67+CD8+T細胞、インターフェロンガンマ、MCP-1または骨髄細胞関連遺伝子から選択される。いくつかの事例では、骨髄細胞関連遺伝子は、IL18、CCL2、およびIL1Bから選択される。
【0208】
試料中の本明細書に記載される様々なバイオマーカの存在および/または発現レベル/量は、多くの手法によって分析され得、これらの多くは、当該技術分野で既知であり、当業者によって理解されており、免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞分類(「fluorescence activated cell sorting:FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、原位置ハイブリダイゼーション、蛍光原位置ハイブリダイゼーション(fluorescence in situ hybridization:FISH)、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)および他の増幅型検出方法、例えば、分枝DNA、SISBA、TMA等を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RNA-Seq、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、および/または遺伝子発現の連続分析(「serial analysis of gene expression:SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子、および/または組織アレイ分析によって行われ得る多種多様のアッセイのうちのいずれか1つが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子および遺伝子生成物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubelら編(1995年)「Current Protocols In Molecular Biology」、第2部(ノーザンブロット法)、第4部(サザンブロット法)、第15部(免疫ブロット法)、および第18部(PCR分析)において見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手可能なアッセイ等の多重化免疫アッセイも使用され得る。
【0209】
前述の方法のいずれにおいても、バイオマーカ(例えば、PD-L1)の存在および/または発現レベル/量が、バイオマーカのタンパク質発現レベルを判定することによって測定される。特定の事例では、該方法は、バイオマーカの結合を許容する条件下で、生体試料を、本明細書に記載されるバイオマーカに特異的に結合する抗体(例えば、抗PD-L1抗体)と接触させることと、抗体とバイオマーカとの間で複合体が形成されるかどうかを検出することとを含む。このような方法は、インビトロ法またはインビボ法であってもよい。いくつかの事例では、抗体を使用して、PD-L1軸結合アンタゴニストでの治療に適格な対象、例えば個体の選択のためのバイオマーカを選択する。タンパク質発現レベルを測定する、当該技術分野で公知であるか、または本明細書に記載される任意の方法を使用してもよい。例えば、いくつかの事例では、バイオマーカ(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、フローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS(商標)))、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着測定法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)、免疫沈降、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光法、ラジオイムノアッセイ、ドットブロッティング、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光、質量分析法、およびHPLCからなる群から選択される方法を使用して判定される。いくつかの事例では、バイオマーカ(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞中で判定される。いくつかの事例では、バイオマーカ(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍細胞中で判定される。いくつかの事例では、バイオマーカ(例えば、PD-L1)のタンパク質発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞および/または腫瘍細胞中で判定される。
【0210】
特定の事例では、試料中のバイオマーカタンパク質(例えば、PD-L1)の存在および/または発現レベル/量が、IHCを使用し、プロトコルを染色して試験される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を判定または検出する信頼できる方法であることが示されてきた。これらの方法、アッセイ、および/またはキットのいずれかのいくつかの事例では、バイオマーカは、PD-L1である。1つの事例では、バイオマーカの発現レベルは、(a)抗体によって試料(患者から得られる腫瘍試料など)のIHC分析を実行することと;(b)試料中のバイオマーカの発現レベルを判定することと、を包含する方法を用いて判定される。いくつかの事例では、IHC染色強度は、参照と比較して判定される。いくつかの事例では、参照は、参照値である。いくつかの事例では、参照は、参照試料(例えば、対照細胞株染色試料、非がん患者由来の組織試料、またはPD-L1陰性腫瘍試料)である。
【0211】
IHCは、形態的染色および/または原位置ハイブリダイゼーション(例えば、FISH)などの追加の技術と組み合わせて実行され得る。2つの一般的なIHC方法、直接アッセイおよび間接アッセイが利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の標的抗原への結合は、直接判定される。この直接アッセイは、更なる抗体相互作用なしで可視化され得る蛍光タグまたは酵素標識一次抗体等の標識試薬を使用する。典型的な間接アッセイでは、コンジュゲートしていない一次抗体が抗原に結合し、その後、標識二次抗体がその一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートする場合、発色基質または蛍光発生基質が添加されて、抗原の可視化をもたらす。シグナル増幅は、いくつかの二次抗体が一次抗体の異なるエピトープと反応し得るために発生する。
【0212】
IHCに使用される一次抗体および/または二次抗体は、典型的には、検出可能な部分で標識される。多数の標識が利用可能であり、これらは、一般に、以下のカテゴリに群分けされ得る:(a)35S、14C、1251、3H、および131Iなどの放射性同位体、(b)コロイド金粒子、(c)希土類キレート(ユウロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン、フィコシアニン、若しくは市販のフルオロフォア(SPECTRUM ORANGE7およびSPECTRUM GREEN7など)、ならびに/または上記のいずれか1つ以上の誘導体を含むが、これらに限定されない、蛍光標識に群分けされ得、(d)様々な酵素-基質標識が利用可能であり、米国特許第4,275,149号がこれらのいくつかについての概説を提供する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;例えば、米国特許第4,737,456号を参照)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase:HRPO)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸脱水素酵素)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが挙げられる。
【0213】
酵素-基質の組合せの例としては、例えば基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸塩を有するアルカリホスファターゼ(AP)、および発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルアンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が挙げられる。これらの総説については、例えば、米国特許第4,275,149号および同第4,318,980号を参照されたい。
【0214】
検体は、例えば手動で、または自動化染色装置(例えば、VentanaベンチマークXTまたはベンチマークULTRA装置)を使用して調製され得る(例えば、以下の実施例1を参照のこと)。このようにして調製された検体は、載置かつカバースリップされ得る。その後、例えば、顕微鏡を使用して、スライド評価が決定され、当該技術分野で日常的に使用される染色強度基準が用いられ得る。1つの事例では、腫瘍からの細胞および/または組織を、IHCを使用して試験するとき、染色は概して、(試料中に存在し得る間質または周辺組織と対照的に)腫瘍細胞(複数可)および/または組織において判定または評価されることを理解されたい。いくつかの事例では、腫瘍からの細胞および/または組織を、IHCを使用して試験するとき、染色は、腫瘍内免疫細胞または腫瘍周囲免疫細胞を含む腫瘍浸潤免疫細胞において判定または評価することを含むことが理解される。いくつかの事例では、バイオマーカの存在(例えば、PD-L1)は、0%超の試料中で、少なくとも1%の試料中で、少なくとも5%の試料中で、少なくとも10%の試料中で、少なくとも15%の試料中で、少なくとも15%の試料中で、少なくとも20%の試料中で、少なくとも25%の試料中で、少なくとも30%の試料中で、少なくとも35%の試料中で、少なくとも40%の試料中で、少なくとも45%の試料中で、少なくとも50%の試料中で、少なくとも55%の試料中で、少なくとも60%の試料中で、少なくとも65%の試料中で、少なくとも70%の試料中で、少なくとも75%の試料中で、少なくとも80%の試料中で、少なくとも85%の試料中で、少なくとも90%の試料中で、少なくとも95%の試料中で、またはそれ以上で、IHCによって検出される。試料は、例えば病理学者または自動化画像分析によって、本明細書に記載された基準(例えば、表2参照)のいずれかを用いてスコアリングされ得る。
【0215】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかのいくつかの事例では、PD-L1は、抗PD-L1診断用抗体(すなわち、一次抗体)を使用した免疫組織化学によって検出される。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ヒトPD-L1に特異的に結合する。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、非ヒト抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ラット、マウス、またはウサギ抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、ウサギ抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの事例では、PD-L1診断用抗体は、直接標識される。他の事例では、PD-L1診断用抗体は、間接的に標識される。
【0216】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、PD-L1の発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、またはこれらの組合せにおいてIHCを使用して検出される。腫瘍浸潤免疫細胞としては、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周辺免疫細胞、またはこれらの任意の組合せ、および他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球および/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、互いに組み合う樹状細胞)、組織球、およびナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの事例では、PD-L1に対する染色は、膜染色、細胞質染色、およびこれらの組合せとして検出される。他の事例では、PD-L1の不在は、試料において不在または染色がないこととして検出される。
【0217】
前述の方法のいずれにおいても、バイオマーカ(例えば、PD-L1)の発現レベルは、核酸発現レベルであってもよい。いくつかの事例では、核酸発現レベルは、qPCR、rtPCR、RNA-Seq、多重qPCR若しくはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技法、または原位置ハイブリダイゼーション(例えば、FISH)を用いて判定される。いくつかの事例では、バイオマーカ(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍細胞、腫瘍浸潤性免疫細胞、間質細胞、またはそれらの組合せにおいて判定される。いくつかの事例では、バイオマーカ(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍浸潤免疫細胞中で判定される。いくつかの事例では、バイオマーカ(例えば、PD-L1)の発現レベルは、腫瘍細胞中で判定される。
【0218】
細胞中のmRNAの評価方法が周知であり、該方法として、例えば、相補的DNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(1つ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用した原位置ハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、および関連技法等)、ならびに様々な核酸増幅アッセイ(遺伝子のうちの1つ以上に特異的な相補的プライマを使用したRT-PCR、および他の増幅型検出方法、例えば、分岐状DNA、SISBA、TMA等)が挙げられる。加えて、かかる方法は、生物学的試料中の標的mRNAのレベルを決定する(例えば、アクチンファミリメンバなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較対照mRNA配列のレベルを同時に試験することによって)ことを可能にする1つ以上の工程を含み得る。任意に、増幅標的cDNAの配列が決定され得る。任意の方法は、マイクロアレイ技術によって組織または細胞試料中の標的mRNA等のmRNAを試験または検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを使用して、試験および対照組織試料からの試験および対照mRNA試料を逆転写し、標識して、cDNAプローブを生成する。その後、プローブを、固体支持体に固定した核酸のアレイにハイブリダイズする。アレイは、アレイの各メンバの配列および位置が分かるように構成する。例えば、その発現がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置の臨床的利益の増加または低下と相関する様々な遺伝子の選択が、固体支持体上にアレイされ得る。特定のアレイメンバとの標識されたプローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。
【0219】
ある特定の事例では、第1の試料中のバイオマーカの存在および/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在/不在および/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。ある特定の事例では、第1の試料中のバイオマーカの存在/不在および/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在および/または発現レベル/量と比較して減少または低減する。ある特定の事例では、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/不在および/または発現レベル/量を決定するための更なる開示が本明細書に記載されている。
【0220】
ある特定の事例では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ対象または個体由来の単一の試料または複数の試料の組合せである。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ対象または個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、参照試料ががんの初期診断中に得られる場合、かつがんが転移性がんになったときに試験試料が得られる場合に有用であり得る。
【0221】
ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1つ以上の健常な個体由来の複数の試料の組合せである。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体由来の複数の試料の組合せである。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織とは、正常組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない1体以上の個体由来のプールされた血漿若しくは血清試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織とは、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない、疾患若しくは障害(例えば、がん)を有する1体以上の個体由来のプールされた血漿若しくは血清試料である。
【0222】
本方法のいずれかのいくつかの実施形態では、上昇または増加した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載されるものなどの標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカ(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な増加を示す。ある特定の実施形態では、上昇した発現とは、試料中のバイオマーカの発現レベル/量の増加を指し、この増加は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカの発現レベル/量の少なくとも約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、または100倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍を超える全体的な増加を指す。
【0223】
本方法のいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法等の標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカ(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。ある特定の実施形態では、低減した発現とは、試料中のバイオマーカの発現レベル/量の減少を指し、この減少は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである。
【0224】
B.腫瘍サブタイプの評価を含む診断法
上記のA項で提示される前述の方法のうちのいずれかと組み合わせて使用され得る、腫瘍サブタイプの評価に基づいて、がん(例えば、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん))に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法が本明細書に提供される。例えば、本明細書に記載される方法のいずれか(例えば、上記のA項)は更に、患者から得られた腫瘍の試料から腫瘍のサブタイプを判定することを含んでもよく、ルミナルサブタイプ腫瘍は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む処置に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、腫瘍試料がルミナルサブタイプII腫瘍であるという判定は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、腫瘍サブタイプの判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、ルミナルサブタイプ腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、ルミナルサブタイプII腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いかどうかの判定に使用することができる。具体的な事例では、例えば、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルと組み合わせて、バイオマーカの参照レベルに対して表1に列挙したバイオマーカのレベル1以上(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または16個)の増加および/または減少は、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いかどうかを判定するために使用することができる。これらの方法はいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、以下のD項に記載されるもの)を患者に投与することを更に含んでもよい。これらの方法はいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することも更に含んでもよい。
【0225】
腫瘍サブタイプの評価に基づいて、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置への応答性を予測する方法は、上記のA項に提示される前述の方法のいずれかと組み合わせて使用され得る。いくつかの事例では、該方法は、患者から得られた腫瘍の試料から、腫瘍のサブタイプを判定することを含み、腫瘍がルミナルサブタイプ腫瘍であるという判定に基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストが選択される。いくつかの事例では、腫瘍試料がルミナルサブタイプII腫瘍であるという判定は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、腫瘍サブタイプの判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、ルミナルサブタイプ腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、ルミナルサブタイプII腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いかどうかの判定に使用することができる。他の事例では、例えば、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルと組み合わせて、バイオマーカの参照レベルに対して表1に列挙したバイオマーカのレベル1以上(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または16個)の増加および/または減少により、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いかどうかを予測することができる。方法はいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、以下のD項に記載されるもの)を患者に投与することを更に含んでもよい。方法はいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含んでもよい。
【0226】
腫瘍サブタイプの評価に基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストの選択を含む膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん))に罹患している患者用の療法を選択する方法は、上記のA項に提示される前述の方法のいずれかと組み合わせて使用され得る。いくつかの事例では、該方法は、患者から得られた腫瘍の試料から、腫瘍のサブタイプを判定することを含み、腫瘍がルミナルサブタイプ腫瘍であるという判定に基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストが選択される。いくつかの事例では、腫瘍がルミナルサブタイプII腫瘍であるという判定に基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストが選択される。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、腫瘍サブタイプの判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、ルミナルサブタイプ腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、ルミナルサブタイプII腫瘍の判定に使用することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルに対して、表1に列挙したバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルを、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者に適した療法としてPD-L1軸結合アンタゴニストを選択する際に使用することができる。他の事例では、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルと組み合わせて、バイオマーカの参照レベルに対して表1に列挙したバイオマーカのレベル1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または16)の増加および/または減少による、がん(例えば、膀胱がん(例えば、UBC))に罹患している患者用のPD-L1軸結合アンタゴニストを選択することができる。方法はいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、以下のD項に記載されるもの)を患者に投与することを更に含んでもよい。方法はいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含んでもよい。
【0227】
前述の方法のいずれにおいても、表1に記載されるバイオマーカは、表1に記載されるバイオマーカの参照レベルと比べて、約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、または約90%以上)増加および/または減少していると判定されている。例えば、いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約1%以上増加および/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約5%以上増加および/または減少していると判定された。他の事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約10%以上増加および/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約15%以上増加および/または減少していると判定された。更に他の事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約20%以上増加および/または減少していると判定された。更なる事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約25%以上増加および/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約30%以上増加および/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約35%以上増加および/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約40%以上増加および/または減少していると判定された。いくつかの事例では、1つ以上のバイオマーカのレベルは、約50%以上増加および/または減少していると判定された。
【0228】
前述の事例のいずれにおいても、患者から得られた腫瘍試料は、ルミナルサブタイプ腫瘍(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がんルミナルサブタイプ腫瘍)であると判定されている。いくつかの事例では、腫瘍は、ルミナルサブタイプII腫瘍であると判定されている。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、および表1のグループB群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、および表1のグループC群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)のバイオマーカ(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、および表1のグループD群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2)のバイオマーカ(例えば、ERBB2、ESR2)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、表1のグループC群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)のバイオマーカ(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)、およびおよび表1のグループD群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2)のバイオマーカ(例えば、ERBB2、ESR2)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、表1のグループC群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)のバイオマーカ(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)、表1のグループB群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR)、および表1のグループD群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2)のバイオマーカ(例えば、ERBB2、ESR2)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。前述の事例のいずれにおいても、バイオマーカのレベルは、mRNAレベル、タンパク質レベル、および/またはマイクロRNA(例えば、miRNA)レベルである。
【0229】
いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とKRT5、KRT6A、KRT14、およびEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルの減少を組み合わせて、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とGATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、およびE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加を組み合わせて、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とERBB2および/若しくはESR2のレベルの増加を組み合わせて、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、および/またはFGFR3の発現レベルの減少;GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、およびE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加;ならびにERBB2および/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。
【0230】
いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、および/またはFGFR3の発現レベルの減少;KRT5、KRT6A、KRT14、およびEGFRのうちの少なくとも1つのレベルの減少;ならびにERBB2および/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、および/またはFGFR3の発現レベルの減少;KRT5、KRT6A、KRT14、およびEGFRのうちの少なくとも1つのレベルの減少;GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、およびE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加;ならびにERBB2および/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。前述の事例のいずれにおいても、バイオマーカのレベルは、mRNAレベル、タンパク質レベル、および/またはマイクロRNA(例えば、miRNA)レベルである。
【0231】
いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、ERBB2、FGFR3、KRT5、KRT14、EGFR、CD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、およびTBX21のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)変化したと判定されている。
【0232】
いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、およびERBB2のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定され、かつ/または患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、およびEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)減少したと判定されている。
【0233】
いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、およびERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定され、かつ/または患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、およびEGFRの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)減少したと判定されている。
【0234】
いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCDKN2A、GATA3、FOXA1、およびERBB2の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定され、かつ/または患者から得られた腫瘍試料中のFGFR3、KRT5、KRT14、およびEGFRの発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)減少したと判定されている。
【0235】
他の事例では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、該miRNAの参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)変化したと判定されている。他の事例では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、miRNAの参照レベルと比べて増加したと判定されている。他の事例では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pまたはmiR100-5pの発現レベルは、miRNAの参照レベルと比べて増加したと判定されている。いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中のmiR-99a-5pおよびmiR100-5pの発現レベルは、miRNAの参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定されている。
【0236】
更に他の事例では、患者から得られた腫瘍試料中のCD8A、GZMA、GZMB、IFNG、CXCL9、CXCL10、PRF1、およびTBX21のうちの少なくとも1つの発現レベルは、該少なくとも1つの遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定されている。いくつかの事例では、患者から得られた腫瘍試料中の少なくともCXCL9およびCXCL10の発現レベルは、該遺伝子の参照レベルと比べて約1%以上(例えば、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)増加したと判定されている。他の事例では、ルミナルサブタイプ腫瘍は、ルミナルクラスタIIサブタイプ腫瘍である。
【0237】
前述の方法のいずれにおいても、該方法は、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルに基づいて、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを更に含む。PD-L1軸結合アンタゴニストは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書、例えば以下のD項に記載されるいずれのPD-L1軸結合アンタゴニストであってもよい。
【0238】
例えば、いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、およびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のそのリガンド結合パートナのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害する。更に他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1およびB7-1両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、アテゾリズマブ、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、およびMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの事例では、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの事例では、抗体は、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0239】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2への結合を阻害する。更に他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1およびPD-L2両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、以下からなる群から選択される:MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブMEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、およびBGB-108。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例では、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。
【0240】
いくつかの事例では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの事例では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0241】
前述の事例のいずれにおいても、膀胱がんは、尿路上皮膀胱がん(urothelial bladder cancer:UBC)であり得、これには筋層非浸潤性尿路上皮膀胱がん、筋層浸潤性尿路上皮膀胱がん、または転移性尿路上皮膀胱がんが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの事例では、尿路上皮膀胱がんは、転移性尿路上皮膀胱がんである。いくつかの実施形態では、膀胱がんは、局所進行性または転移性の尿路上皮がんであり得る。
【0242】
バイオマーカ(例えば、PD-L1)の存在および/または発現レベル/量は、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片および/または遺伝子コピー数を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の適切な基準に基づいて、定性的および/または定量的に判定することができる。上記のA項に記載されたアプローチのいずれかを使用することができる。
【0243】
前述の方法のいずれにおいても、患者から得られた試料は、組織、全血、血漿、血清、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの事例では、試料は、組織試料である。いくつかの事例では、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例では、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組合せを含む。前述の事例のいずれにおいても、腫瘍試料は、ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料であり得る。
【0244】
ある特定の事例では、第1の試料中のバイオマーカの存在および/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在/不在および/または発現レベル/量と比較して増加または上昇する。ある特定の事例では、第1の試料中のバイオマーカの存在/不在および/または発現レベル/量が、第2の試料中の存在および/または発現レベル/量と比較して減少または低減する。ある特定の事例では、第2の試料は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織である。遺伝子の存在/不在および/または発現レベル/量を決定するための更なる開示が本明細書に記載されている。
【0245】
ある特定の事例では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られたときとは異なる1つ以上の時点で得られる同じ対象または個体由来の単一の試料または複数の試料の組合せである。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、試験試料が得られるよりも早い時点で同じ対象または個体から得られる。かかる参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、参照試料ががんの初期診断中に得られる場合、かつがんが転移性がんになったときに試験試料が得られる場合に有用であり得る。
【0246】
ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、患者ではない1つ以上の健常な個体由来の複数の試料の組合せである。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、対象または個体ではない、疾患または障害(例えば、がん)を有する1つ以上の個体由来の複数の試料の組合せである。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織とは、正常組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない1体以上の個体由来のプールされた血漿若しくは血清試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織とは、腫瘍組織由来のプールされたRNA試料、または患者ではない、疾患若しくは障害(例えば、がん)を有する1体以上の個体由来のプールされた血漿若しくは血清試料である。
【0247】
本方法のいずれかのいくつかの実施形態では、上昇または増加した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載されるものなどの標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカ(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な増加を示す。ある特定の実施形態では、上昇した発現とは、試料中のバイオマーカの発現レベル/量の増加を指し、この増加は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカの発現レベル/量の少なくとも約1.5倍、1.75倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、25倍、50倍、75倍、または100倍のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、上昇した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、対照組織、または内部対照(例えば、ハウスキーピング遺伝子)と比較して、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍、または約3.25倍を超える全体的な増加を指す。
【0248】
本方法のいずれかのいくつかの実施形態では、低減した発現とは、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織と比較した、本明細書に記載の方法等の標準の当該技術分野で既知の方法によって検出される、バイオマーカ(例えば、タンパク質または核酸(例えば、遺伝子またはmRNA))のレベルの約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上のうちのいずれかの全体的な低減を指す。ある特定の実施形態では、低減した発現とは、試料中のバイオマーカの発現レベル/量の減少を指し、この減少は、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織中のそれぞれのバイオマーカの発現レベル/量の少なくとも約0.9倍、0.8倍、0.7倍、0.6倍、0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.2倍、0.1倍、0.05倍、または0.01倍のうちのいずれかである。
【0249】
C.治療法
本発明は、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん))に罹患している患者を処置する方法を提供する。いずれの方法においても、患者は白金剤含有化学療法、例えばシスプラチン含有化学療法に不適格であり得る。いずれの方法においても、患者は膀胱がんについて事前に未処置であってもよい。いくつかの事例では、本発明の方法は、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法剤を患者に投与することを含む。本明細書に記載される(例えば、以下のD項を参照されたい)か、当該技術分野で既知であるPD-L1軸結合アンタゴニストのいずれも、該方法に使用され得る。いくつかの事例では、該方法は、患者から得られた試料中(例えば、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞中)のPD-L1の存在および/または発現レベルを判定することと、例えば、本明細書に記載される(例えば、A項、B項、または以下の実施例に記載されるもの)か、または当該技術分野で既知の方法を使用して、試料中のPD-L1の存在および/または発現レベルに基づいて抗がん療法剤を患者に投与することとを伴う。
【0250】
本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を患者に投与することを含み、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている、方法を提供する。
【0251】
本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を患者に投与することを含み、患者は、患者から得られた腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1に基づいて、抗がん療法に応答する可能性があると特定されている、方法を提供する。
【0252】
本発明はまた、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置するための方法であって、以下:(a)患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置に応答する可能性があることを示す、判定することと、(b)腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量の抗がん療法を患者に投与することと、を含む方法も提供する。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0253】
本発明は、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を患者に投与することを含み、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている患者から得られた腫瘍試料は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す、方法を提供する。例えば、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。
【0254】
例えば、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を患者に投与することを含み、患者は尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ患者は、患者から得られた腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1に基づいて、抗がん療法に応答する可能性があると特定されている、方法が提供される。
【0255】
別の事例では、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための方法であって、以下:(a)患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がアテゾリズマブを含む抗がん療法による処置に応答する可能性があることを示す、判定することと、(b)腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を患者に投与することと、を含む方法が提供される。
【0256】
更なる例では、本発明は、医薬品の製造または調製におけるPD-L1軸結合アンタゴニストの使用を提供する。1つの事例では、医薬品は、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)の処置のための医薬品である。更なる事例では、医薬品は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者に、有効量の該医薬品を投与することを含む、がんの処置方法における使用のための医薬品である。そのような一例では、該方法は、有効量の少なくとも1つの更なる治療剤、例えば、以下に記載されるものを個体に投与することを更に含む。
【0257】
例えば、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置するための医薬品の製造におけるPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)の使用であって、患者は膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ該患者は、患者から得られた腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1に基づいて、PD-L1軸結合アンタゴニストに応答する可能性があると特定されている、方法を提供する。
【0258】
具体的な事例では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための医薬品の製造におけるアテゾリズマブの使用であって、患者は尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ該患者は、患者から得られた腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1に基づいて、アテゾリズマブに応答する可能性があると特定されている、方法を提供する。
【0259】
更に別の事例では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者の処置において使用するためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、患者は膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ該患者は、患者から得られた腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1に基づいて、医薬組成物に応答する可能性があると特定されている、医薬組成物を提供する。
【0260】
別の具体的な実例では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者の処置において使用するためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、患者は尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ該患者は、患者から得られた腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1に基づいて、医薬組成物に応答する可能性があると特定されている、医薬組成物を提供する。
【0261】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者には参照患者と比較して完全奏効(CR)を有する改善された可能性があることを示す。いくつかの実施形態では、参照患者は、参照患者から得られた腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有する患者である。いくつかの実施形態では、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者には約5%を超える(例えば、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%を超える)CRを有する可能性があることを示す。
【0262】
例えば、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を患者に投与することを含み、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有すると判定されており、約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)のCRを有する可能性がある、方法を提供する。
【0263】
本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を患者に投与することを含み、患者が、患者から得られた腫瘍試料の5%位以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)の完全奏効(CR)を有する可能性がある抗がん療法に応答する可能性を持つとして、特定されている、方法を提供する。
【0264】
本発明はまた、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置するための方法であって、以下:(a)患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を含む腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、患者がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置に応答する可能性が高く、約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)のCRを有する可能性があることを示す、判定することと、(b)腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量の抗がん療法を患者に投与することと、を含む、方法も提供する。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0265】
本発明は、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を患者に投与することを含み、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている患者から得られた腫瘍試料は、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性があり、かつ約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)のCRを有する可能性があることを示す、方法を提供する。例えば、腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。他の事例では、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者がPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いことを示す。
【0266】
例えば、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を患者に投与することを含み、患者は尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ患者は、患者から得られた腫瘍試料の5%位以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)の完全奏効(CR)を有する可能性がある抗がん療法に応答する可能性を持つとして、特定されている、方法が提供される。
【0267】
別の事例では、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための方法であって、以下:(a)患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、患者が路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を含む腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルが、患者がアテゾリズマブを含む抗がん療法による処置に応答する可能性が高く、約10%以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)のCRを有する可能性があることを示す、判定することと、(b)腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を患者に投与すること、を含む方法も提供される。
【0268】
別の事例では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置する医薬品の製造におけるPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)の使用であって、患者は膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ患者は、患者から得られた腫瘍試料の5%位以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)の完全奏効(CR)を有する可能性があるPD-L1軸結合アンタゴニストに応答する可能性を持つとして、特定されている、使用を提供する。
【0269】
具体的な事例では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する医薬品の製造におけるアテゾリズマブの使用であって、患者は尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ患者は、患者から得られた腫瘍試料の5%位以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)の完全奏効(CR)を有する可能性があるアテゾリズマブに応答する可能性を持つとして、特定されている、使用を提供する。
【0270】
更に別の事例では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者の処置において使用するためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、患者は膀胱がんについて事前に未処置であり、かつ患者は、患者から得られた腫瘍試料の5%位以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)の完全奏効(CR)を有する可能性がある医薬組成物に応答する可能性を持つとして、特定されている、医薬組成物を提供する。
【0271】
別の具体的な実例では、本発明は、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者の処置において使用するためのアテゾリズマブを含む医薬組成物であって、患者は尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ患者は、患者から得られた腫瘍試料の5%位以上(例えば、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、または約40%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、約10%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)の完全奏効(CR)を有する可能性がある医薬組成物に応答する可能性を持つとして、特定されている、医薬組成物を提供する。
【0272】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍浸潤免疫細胞は、患者から得られた腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を網羅し得る。例えば、いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約5%以上を網羅し得る。他の事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約10%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約15%以上を網羅し得る。更に他の事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約20%以上を網羅し得る。更なる事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約25%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約30%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約35%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約40%以上を網羅し得る。いくつかの事例では、腫瘍浸潤免疫細胞は、腫瘍試料の切片中の腫瘍面積の約50%以上を網羅し得る。
【0273】
前述の方法のいずれにおいても、腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞の約5%(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上)は、PD-L1の検出可能な発現レベルを発現し得る。
【0274】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、表1に列挙されたバイオマーカの1以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のレベルにおける変化を、腫瘍サブタイプの判定を補助するために使用することができる。いくつかの事例では、腫瘍試料(例えば、UBC腫瘍試料)は、ルミナルサブタイプ腫瘍(例えば、ルミナルサブタイプII腫瘍)である。いくつかの事例では、腫瘍は、ルミナルサブタイプII腫瘍であると判定されている。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、および表1のグループB群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、および表1のグループC群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)のバイオマーカ(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、および表1のグループD群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2)のバイオマーカ(例えば、ERBB2、ESR2)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、表1のグループC群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)のバイオマーカ(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)、および表1のグループD群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2)のバイオマーカ(例えば、ERBB2、ESR2)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。いくつかの事例では、表1のグループAから選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、FGFR3、miR-99a-5p、miR-100-5p、CDKN2A)、表1のグループC群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6)のバイオマーカ(例えば、GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、E-カドヘリン)、表1のグループB群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1、2、3、または4)のバイオマーカ(例えば、KRT5、KRT6A、KRT14、EGFR)、および表1のグループD群から選択される少なくとも1つ以上(例えば、1または2)のバイオマーカ(例えば、ERBB2、ESR2)の発現レベルを、ルミナルサブタイプII分類の判定に使用することができる。前述の事例のいずれにおいても、バイオマーカのレベルは、mRNAレベル、タンパク質レベル、および/またはマイクロRNA(例えば、miRNA)レベルである。
【0275】
いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とKRT5、KRT6A、KRT14、およびEGFRのうちの少なくとも1つの発現レベルの減少を組み合わせて、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とGATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、およびE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加を組み合わせて、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、ならびに/またはFGFR3の発現レベルの減少とERBB2および/若しくはESR2のレベルの増加を組み合わせて、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、および/またはFGFR3の発現レベルの減少;GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、およびE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加;ならびにERBB2および/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。
【0276】
いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、および/またはFGFR3の発現レベルの減少;KRT5、KRT6A、KRT14、およびEGFRのうちの少なくとも1つのレベルの減少;ならびにERBB2および/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。いくつかの事例では、バイオマーカの参照レベルと比較した、miR-99a-5p、miR-100-5p、およびCDKN2Aのうちの少なくとも1つの発現レベルの増加、および/またはFGFR3の発現レベルの減少;KRT5、KRT6A、KRT14、およびEGFRのうちの少なくとも1つのレベルの減少;GATA3、FOXA1、UPK3A、miR-200a-3p、miR-200b-3p、およびE-カドヘリンのうちの少なくとも1つのレベルの増加;ならびにERBB2および/またはESR2のレベルの増加を使用して、ルミナルサブタイプII分類を判定することができる。前述の事例のいずれにおいても、バイオマーカのレベルは、mRNAレベル、タンパク質レベル、および/またはmiRNAレベルである。
【0277】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者には参照患者と比較して奏効、例えば完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を有する、改善された可能性があることを示す。いくつかの事例では、参照患者は、参照患者から得られた腫瘍試料の5%未満(例えば、4%、3%、2%、1%以下)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有する患者である。
【0278】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、腫瘍試料の約5%以上(例えば、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を含む腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルは、患者が約5%を超えるCR(例えば、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上)を有する可能性を有することを示す。いくつかの事例では、患者は、約5%~約40%(例、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、または約40%)の奏効(例えば、CR)を有する可能性がある。いくつかの事例では、患者は、約5%~約20%(例えば、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、または約20%)のCRを有する可能性がある。いくつかの事例では、患者は、少なくとも約13%の奏効(例えば、CR)を有する可能性がある。いくつかの事例では、患者は、約13%の奏効(例えば、CR)を有する可能性がある。
【0279】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、奏効(例えば、CR)を有する可能性は、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による患者の処置の開始後約12ヶ月以上、例えば、約12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月、36ヶ月、37ヶ月、38ヶ月、39ヶ月、40ヶ月、42ヶ月、44ヶ月、46ヶ月、48ヶ月、50ヶ月、またはそれ以上において約10%以上である。例えば、前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、奏効(例えば、CR)を有する可能性は、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による患者の処置開始の約17ヶ月以上後において約10%以上である。いくつかの実施形態では、奏効(例えば、CR)を有する可能性は、該アテゾリズマブを含む抗がん療法による該患者の処置開始の約29ヶ月以上後において約10%以上である。いくつかの実施形態では、奏効(例えば、CR)を有する可能性は、該アテゾリズマブを含む抗がん療法による該患者の処置開始の約36ヶ月以上後において約10%以上である。
【0280】
別の態様では、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法を該患者に投与することを含み、該患者が膀胱がんについて事前に未処置であり、該患者から得られた腫瘍試料の5%未満(例えば、約0%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、または約4%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有するとして該患者が特定されており、かつ該処置が持続的奏効をもたらす、方法が提供される。
【0281】
別の事例では、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための方法であって、以下:(a)該患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該患者が、該腫瘍試料の5%未満(例えば、約0%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、または約4%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルを有する、判定することと、(b)該腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を該患者へ投与することであって、該処置が持続的奏効をもたらす、投与することと、を含む、方法が提供される。
【0282】
例えば、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を該患者に投与することを含み、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該患者から得られた腫瘍試料の5%未満(例えば、約0%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、または約4%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有するとして該患者が特定されており、かつ該処置が持続的奏効をもたらす、方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%~5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。他の実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の1%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0283】
更に別の事例では、本明細書では、シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置するための方法であって、以下:(a)該患者から得られた腫瘍試料中の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の発現レベルを判定することであって、該患者が該尿路上皮がんについて事前に未処置であり、該患者が、該腫瘍試料の5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルを有する、判定することと、(b)該腫瘍試料の5%未満(例えば、約0%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、または約4%)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づいて、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を該患者へ投与することであって、該処置が持続的奏効をもたらす、投与することと、を含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の約1%~5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。他の実施形態では、患者から得られた腫瘍試料は、腫瘍試料の1%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内に検出可能な発現レベルのPD-L1を有すると判定されている。
【0284】
前述の方法のいずれにおいても、患者は、30mL/分超かつ60mL/分未満の糸球体濾過率、グレード2以上の末梢神経障害若しくは難聴、および/または米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Group)パフォーマンスステータス2を有し得る。
【0285】
前述の方法のいずれにおいても、PD-L1軸結合アンタゴニストは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書、例えば以下のD項に記載される任意のPD-L1軸結合アンタゴニストであり得る。
【0286】
例えば、いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、およびPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のそのリガンド結合パートナのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1への結合を阻害する。更に他の事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のB7-1への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1のPD-1およびB7-1両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、アテゾリズマブ、YW243.55.S70、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、およびMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。いくつかの事例では、抗体は、配列番号19のHVR-H1配列、配列番号20のHVR-H2配列、および配列番号21のHVR-H3配列を含む重鎖と、配列番号22のHVR-L1配列、配列番号23のHVR-L2配列、および配列番号24のHVR-L3配列を含む軽鎖とを含む。いくつかの事例では、抗体は、配列番号25のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0287】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L2への結合を阻害する。更に他の事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のPD-L1およびPD-L2両方への結合を阻害する。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例では、抗体は、以下からなる群から選択される:MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、およびBGB-108。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例では、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。
【0288】
いくつかの事例では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの事例では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの事例では、第2の治療剤は、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストである。いくつかの事例では、第2の治療剤は、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストである。
【0289】
前述の方法のいずれにおいても、処置は、処置の4ヶ月以内、例えば、1週間以内、2週間以内、3週間以内、1ヶ月以内、2ヶ月以内、3ヶ月以内、または3.5ヶ月以内に奏効をもたらし得る。他の実施形態では、処置は、処置の4か月後、例えば、例えば、約4ヶ月後、約5ヶ月後、約6ヶ月後、約7ヶ月後、約8ヶ月後、約9ヶ月後、約10ヶ月後、約11ヶ月後、約12ヶ月後、約13ヶ月後、約14ヶ月後、約15ヶ月後、約16ヶ月後、またはそれ以降に奏効をもたらし得る。
【0290】
前述の方法のいずれにおいても、患者は、CRを得ていてもよい。CRは、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置の開始の約6ヶ月後、例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置の開始の、例えば約6ヶ月、約8ヶ月、約10ヶ月、約12ヶ月、約14ヶ月、約16ヶ月、約18ヶ月、約20ヶ月、約22ヶ月、約24ヶ月、約26ヶ月、約28ヶ月、約30ヶ月、約32ヶ月、約34ヶ月、約36ヶ月、約38ヶ月、約40ヶ月、約42ヶ月、約44ヶ月、約46ヶ月、約48ヶ月、約50ヶ月、または約52ヶ月後に生じ得る。いくつかの実施形態では、CRは、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置開始の約17ヶ月以上後である。いくつかの実施形態では、CRは、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置開始の約29ヶ月以上後である。いくつかの実施形態では、CRは、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む抗がん療法による処置開始の約36ヶ月以上後である。
【0291】
前述の方法のいずれにおいても、処置は、持続的奏効をもたらし得る。いくつかの事例では、持続的奏効は、約6ヶ月超、例えば、約6ヶ月超、約8ヶ月超、約10ヶ月超、約12ヶ月超、約14ヶ月超、約16ヶ月超、約18ヶ月超、約20ヶ月超、約22ヶ月超、約24ヶ月超、約24ヶ月超、約26ヶ月超、約28ヶ月超、または約30ヶ月超の奏効である。例えば、前述の方法のいずれにおいても、持続的奏効は、約6ヶ月~約30ヶ月、約6ヶ月~約28ヶ月、約6ヶ月~約26ヶ月、約6ヶ月~約24ヶ月、約6ヶ月~約22ヶ月、約6ヶ月~約20ヶ月、約6ヶ月~約18ヶ月、約6ヶ月~約16ヶ月、約6ヶ月~約14ヶ月、約6ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約10ヶ月、約6ヶ月~約8ヶ月、約8ヶ月~約30ヶ月、約8ヶ月~約28ヶ月、約8ヶ月~約26ヶ月、約8ヶ月~約24ヶ月、約8ヶ月~約22ヶ月、約8ヶ月~約20ヶ月、約8ヶ月~約18ヶ月、約8ヶ月~約16ヶ月、約8ヶ月~約14ヶ月、約8ヶ月~約12ヶ月、約8ヶ月~約10ヶ月、約10ヶ月~約30ヶ月、約10ヶ月~約28ヶ月、約10ヶ月~約26ヶ月、約10ヶ月~約24ヶ月、約10ヶ月~約22ヶ月、約10ヶ月~約20ヶ月、約10ヶ月~約18ヶ月、約10ヶ月~約16ヶ月、約10ヶ月~約14ヶ月、約10ヶ月~約12ヶ月、約12ヶ月~約30ヶ月、約12ヶ月~約28ヶ月、約12ヶ月~約26ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約22ヶ月、約12ヶ月~約20ヶ月、約12ヶ月~約18ヶ月、約12ヶ月~約16ヶ月、約12ヶ月~約14ヶ月、約14ヶ月~約30ヶ月、約14ヶ月~約28ヶ月、約14ヶ月~約26ヶ月、約14ヶ月~約24ヶ月、約14ヶ月~約22ヶ月、約14ヶ月~約20ヶ月、約14ヶ月~約18ヶ月、約14ヶ月~約16ヶ月、約16ヶ月~約30ヶ月、約16ヶ月~約28ヶ月、約16ヶ月~約26ヶ月、約16ヶ月~約24ヶ月、約16ヶ月~約22ヶ月、約16ヶ月~約20ヶ月、約16ヶ月~約18ヶ月、約18ヶ月~約30ヶ月、約18ヶ月~約28ヶ月、約18ヶ月~約26ヶ月、約18ヶ月~約24ヶ月、約18ヶ月~約22ヶ月、約18ヶ月~約20ヶ月、約20ヶ月~約30ヶ月、約20ヶ月~約28ヶ月、約20ヶ月~約26ヶ月、約20ヶ月~約24ヶ月、約20ヶ月~約22ヶ月、約22ヶ月~約30ヶ月、約22ヶ月~約28ヶ月、約22ヶ月~約26ヶ月、約22ヶ月~約24ヶ月、約24ヶ月~約30ヶ月、約24ヶ月~約28ヶ月、約24ヶ月~約26ヶ月、約26ヶ月~約30ヶ月、約26ヶ月~約28ヶ月、または約28ヶ月~約30ヶ月の奏効であり得る。
【0292】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、持続的奏効は、約30ヶ月、例えば、約30.1ヶ月超、約30.2ヶ月超、約30.3ヶ月超、約30.4ヶ月超、約30.5ヶ月超、約31ヶ月超、約32ヶ月超、約33ヶ月超、約34ヶ月超、約35ヶ月超、約36ヶ月超、約37ヶ月超、約38ヶ月超、約39ヶ月超、約40ヶ月超、約41ヶ月超、約42ヶ月超、約43ヶ月超、約44ヶ月超、約45ヶ月超、約46ヶ月超、約47ヶ月超、約48ヶ月超、約49ヶ月超、約50ヶ月超、約51ヶ月超、約52ヶ月超、約53ヶ月超、約54ヶ月超、約55ヶ月超、約56ヶ月超、約57ヶ月超、約58ヶ月超、約59ヶ月超、約60ヶ月超、またはこれらより長期間の奏効である。
【0293】
例えば、前述の方法のいずれにおいても、持続的奏効は、約24ヶ月~約60ヶ月、約24ヶ月~約58ヶ月、約24ヶ月~約56ヶ月、約24ヶ月~約54ヶ月、約24ヶ月~約52ヶ月、約24ヶ月~約50ヶ月、約24ヶ月~約48ヶ月、約24ヶ月~約46ヶ月、約24ヶ月~約44ヶ月、約24ヶ月~約42ヶ月、約24ヶ月~約40ヶ月、約24ヶ月~約38ヶ月、約24ヶ月~約36ヶ月、約24ヶ月~約34ヶ月、約24ヶ月~約32ヶ月、約24ヶ月~約30ヶ月、約24ヶ月~約28ヶ月、約24ヶ月~約26ヶ月、約26ヶ月~約60ヶ月、約26ヶ月~約58ヶ月、約26ヶ月~約56ヶ月、約26ヶ月~約54ヶ月、約26ヶ月~約52ヶ月、約26ヶ月~約50ヶ月、約26ヶ月~約48ヶ月、約26ヶ月~約46ヶ月、約26ヶ月~約44ヶ月、約26ヶ月~約42ヶ月、約26ヶ月~約40ヶ月、約26ヶ月~約38ヶ月、約26ヶ月~約36ヶ月、約26ヶ月~約34ヶ月、約26ヶ月~約32ヶ月、約26ヶ月~約30ヶ月、約26ヶ月~約28ヶ月、約28ヶ月~約60ヶ月、約28ヶ月~約58ヶ月、約28ヶ月~約56ヶ月、約28ヶ月~約54ヶ月、約28ヶ月~約52ヶ月、約28ヶ月~約50ヶ月、約28ヶ月~約48ヶ月、約28ヶ月~約46ヶ月、約28ヶ月~約44ヶ月、約28ヶ月~約42ヶ月、約28ヶ月~約40ヶ月、約28ヶ月~約38ヶ月、約28ヶ月~約36ヶ月、約28ヶ月~約34ヶ月、約28ヶ月~約32ヶ月、約28ヶ月~約30ヶ月、約30ヶ月~約60ヶ月、約30ヶ月~約58ヶ月、約30ヶ月~約56ヶ月、約30ヶ月~約54ヶ月、約30ヶ月~約52ヶ月、約30ヶ月~約50ヶ月、約30ヶ月~約48ヶ月、約30ヶ月~約46ヶ月、約30ヶ月~約44ヶ月、約30ヶ月~約42ヶ月、約30ヶ月~約40ヶ月、約30ヶ月~約38ヶ月、約30ヶ月~約36ヶ月、約30ヶ月~約34ヶ月、約30ヶ月~約32ヶ月、約32ヶ月~約60ヶ月、約32ヶ月~約58ヶ月、約32ヶ月~約56ヶ月、約32ヶ月~約54ヶ月、約32ヶ月~約52ヶ月、約32ヶ月~約50ヶ月、約32ヶ月~約48ヶ月、約32ヶ月~約46ヶ月、約32ヶ月~約44ヶ月、約32ヶ月~約42ヶ月、約32ヶ月~約40ヶ月、約32ヶ月~約38ヶ月、約32ヶ月~約36ヶ月、約32ヶ月~約34ヶ月、約34ヶ月~約60ヶ月、約34ヶ月~約58ヶ月、約34ヶ月~約56ヶ月、約34ヶ月~約54ヶ月、約34ヶ月~約52ヶ月、約34ヶ月~約50ヶ月、約34ヶ月~約48ヶ月、約34ヶ月~約46ヶ月、約34ヶ月~約44ヶ月、約34ヶ月~約42ヶ月、約34ヶ月~約40ヶ月、約34ヶ月~約38ヶ月、約34ヶ月~約36ヶ月、約36ヶ月~約60ヶ月、約36ヶ月~約58ヶ月、約36ヶ月~約56ヶ月、約36ヶ月~約54ヶ月、約36ヶ月~約52ヶ月、約36ヶ月~約50ヶ月、約36ヶ月~約48ヶ月、約36ヶ月~約46ヶ月、約36ヶ月~約44ヶ月、約36ヶ月~約42ヶ月、約36ヶ月~約40ヶ月、約36ヶ月~約38ヶ月、約38ヶ月~約60ヶ月、約38ヶ月~約58ヶ月、約38ヶ月~約56ヶ月、約38ヶ月~約54ヶ月、約38ヶ月~約52ヶ月、約38ヶ月~約50ヶ月、約38ヶ月~約48ヶ月、約38ヶ月~約46ヶ月、約38ヶ月~約44ヶ月、約38ヶ月~約42ヶ月、約38ヶ月~約40ヶ月、約40ヶ月~約60ヶ月、約40ヶ月~約58ヶ月、約40ヶ月~約56ヶ月、約40ヶ月~約54ヶ月、約40ヶ月~約52ヶ月、約40ヶ月~約50ヶ月、約40ヶ月~約48ヶ月、約40ヶ月~約46ヶ月、約40ヶ月~約44ヶ月、約40ヶ月~約42ヶ月、約42ヶ月~約60ヶ月、約42ヶ月~約58ヶ月、約42ヶ月~約56ヶ月、約42ヶ月~約54ヶ月、約42ヶ月~約52ヶ月、約42ヶ月~約50ヶ月、約42ヶ月~約48ヶ月、約42ヶ月~約46ヶ月、約42ヶ月~約44ヶ月、約44ヶ月~約60ヶ月、約44ヶ月~約58ヶ月、約44ヶ月~約56ヶ月、約44ヶ月~約54ヶ月、約44ヶ月~約52ヶ月、約44ヶ月~約50ヶ月、約44ヶ月~約48ヶ月、約44ヶ月~約46ヶ月、約46ヶ月~約60ヶ月、約46ヶ月~約58ヶ月、約46ヶ月~約56ヶ月、約46ヶ月~約54ヶ月、約46ヶ月~約52ヶ月、約46ヶ月~約50ヶ月、約46ヶ月~約48ヶ月、約48ヶ月~約60ヶ月、約48ヶ月~約58ヶ月、約48ヶ月~約56ヶ月、約48ヶ月~約54ヶ月、約48ヶ月~約52ヶ月、約48ヶ月~約50ヶ月、約50ヶ月~約60ヶ月、約50ヶ月~約58ヶ月、約50ヶ月~約56ヶ月、約50ヶ月~約54ヶ月、約50ヶ月~約52ヶ月、約52ヶ月~約60ヶ月、約52ヶ月~約58ヶ月、約52ヶ月~約56ヶ月、約52ヶ月~約54ヶ月、約54ヶ月~約60ヶ月、約54ヶ月~約58ヶ月、約54ヶ月~約56ヶ月、約56ヶ月~約60ヶ月、約56ヶ月~約58ヶ月、または約58ヶ月~約60ヶ月の奏効であり得る。
【0294】
前述の事例のいずれにおいても、膀胱がんは、尿路上皮膀胱がんであり得、これには筋層非浸潤性尿路上皮膀胱がん、筋層浸潤性尿路上皮膀胱がん、または転移性尿路上皮膀胱がんが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの事例では、尿路上皮膀胱がんは、転移性尿路上皮膀胱がんである。いくつかの事例では、膀胱がんは、局所進行性または転移性の尿路上皮がんであり得る。
【0295】
前述の方法のいずれかのいくつかの事例では、膀胱がんは、局所進行性尿路上皮がんである。
【0296】
前述の方法のいずれかの他の事例では、膀胱がんは、転移性尿路上皮がんである。
【0297】
本明細書に記載される方法で利用される組成物(例えばPD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブ)は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経皮内、動脈内、腹腔内、傷害内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、髄腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、腹膜内、結膜下、膀胱内(intravesicularly)、粘膜内、心膜内、臍帯血内(intraumbilically)、眼内、眼窩内、経口、局所、経皮、硝子体内(例えば、硝子体内注射による)、点眼、吸入、注射、移植、点滴、持続点滴、局所灌流浴下の標的細胞により直接、カテーテル、洗浄、灌流、クリーム剤、または脂質組成物によって投与することができる、または脂質組成物を含む任意の好適な方法によって投与することができる。本明細書に記載の方法で利用される組成物はまた、全身に投与されてもよいし、または局所投与されてもよい。組成物は、例えば、点滴または注射によって投与することができる。投与方法は、様々な要因(例えば、投与される化合物または組成物、および処置される状態、疾患または障害の重症度)に依存して変化し得る。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内で投与される。投薬は、投与が短期または長期であるかに部分的に応じて、任意の好適な経路、例えば、静脈内または皮下注射等の注射によるものであり得る。本明細書では、様々な時点での単回または複数回の投与、ボーラス投与、およびパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投与スケジュールが企図されている。
【0298】
本明細書に記載されるPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗体、結合ポリペプチド、および/または小分子)(任意の追加の治療剤)は、良好な医療のための原則と一致する形で、製剤化、投薬、および投与され得る。本文脈で考慮する因子としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画、および医学専門家に既知の他の因子が挙げられる。PD-L1軸結合アンタゴニストは、その必要はないが、任意に、問題の障害を予防または処置するために現在使用される1つ以上の薬剤と共に製剤化され、かつ/またはそれらと同時に投与される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するPD-L1軸結合アンタゴニストの量、障害または処置の種類、および上で考察される他の要因に左右される。これらは、一般に、本明細書に記載されている投与量と同じ投与量で、または本明細書に記載されている投与量の約1~99%、または経験的/臨床的に適切であると判断される任意の投与量で、および任意の投与経路で使用される。
【0299】
膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)の予防または処置のため、本明細書に記載されるPD-L1軸結合アンタゴニストの適切な投薬量(単独で、または1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用されるとき)は、処置される疾患の種類、疾患の重症度および経過、PD-L1軸結合アンタゴニストが予防目的で投与されるのかまたは治療目的で投与されるのかどうか、以前の治療、患者の臨床歴およびPD-L1軸結合アンタゴニストへの応答、ならびに主治医の裁量に左右されることになる。PD-L1軸結合アンタゴニストは、一度に、または一連の処置にわたって患者に好適に投与される。1つの典型的な日用量は、上で言及した因子に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であってもよい。数日以上の繰り返し投与の場合、状態にもよるが、一般的には疾患症状の所望の抑制が起こるまで処置を継続することになる。かかる用量は、例えば、毎週または3週間毎に(例えば、患者が、PD-L1軸結合アンタゴニストの用量を、例えば約2回~約20回、または例えば約6回受けるように)断続的に投与されてもよい。最初の高負荷用量を投与し、その後、1つまたは複数の低負荷用量を投与してもよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。この療法の進行状況は、従来の技術やアッセイで簡単にモニターすることができる。
【0300】
例えば、一般的な提案として、ヒトに投与される治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニスト抗体は、1回またはそれ以上の投与によるかどうかにかかわらず、約0.01~約50mg/患者の体重kgの範囲であろう。いくつかの事例では、使用される抗体は、約0.01mg/kg~約45mg/kg、約0.01mg/kg~約40mg/kg、約0.01mg/kg~約35mg/kg、約0.01mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約25mg/kg、約0.01mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約15mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、または約0.01mg/kg~約1mg/kgであり、これらは例えば、毎日、毎週、2週間毎、3週間毎、または毎月に投与される。いくつかの事例では、抗体は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。1つの事例では、本明細書に記載される抗PD-L1抗体は、21日周期(3週間毎、q3w)の1日目に、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、または約1800mgの用量でヒトに投与される。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体アテゾリズマブは、3週間毎(q3w)に、静脈内に1200mgで投与される。投与は、単回投与でもよいし、輸液等の複数回投与(例えば、2または3回)でもよい。併用処置において投与される本抗体の用量は、単剤処置と比較して減少し得る。この療法の進展は、従来の技法によって容易に監視される。
【0301】
いくつかの事例では、該方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に伴う。いくつかの事例では、第2の治療剤は、細胞毒性剤、化学療法剤、増殖阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、化学療法または化学療法剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)は、放射線療法剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)は、標的療法または標的化治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)は、免疫療法または免疫療法剤、例えばモノクローナル抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、第2の治療剤は、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストである。いくつかの事例では、第2の治療剤は、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストである。
【0302】
上記のかかる併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じかまたは別個の製剤中に含まれる)およびPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)の投与が、追加の治療剤(複数可)の投与の前、それと同時、かつ/またはそれに続いて発生し得る、個別投与を包含する。1つの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)の投与および追加の治療剤の投与は、互いの約1ヶ月以内、または約1、2、若しくは3週間以内、または約1、2、3、4、5、若しくは6日以内に発生する。
【0303】
理論に拘束されることを望むものではないが、活性化する共刺激分子を促進することによるまたは陰性共刺激分子を阻害することによるT細胞刺激の増強が、腫瘍細胞死を促し、それによってがんの進行を処置若しくは遅延し得ると考えられる。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)は、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、活性化する共刺激分子は、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127を含み得る。いくつかの事例では、活性化する共刺激分子に対するアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)は、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、阻害性共刺激分子は、CTLA-4(別名、CD152)、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼを含み得る。いくつかの事例では、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストは、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0304】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CTLA-4(別名、CD152)に対して指向されるアンタゴニスト、例えば遮断抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、イピリムマブ(別名、MDX-010、MDX-101、またはYERVOY(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、トレメリムマブ(別名、チシリムマブまたはCP-675,206)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、B7-H3(別名、CD276)に対して指向されるアンタゴニスト、例えば遮断抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、MGA271と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、TGF-ベータに対して指向されるアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(別名、CAT-192)、フレソリムマブ(別名、GC1008)、またはLY2157299と併せて投与されてもよい。
【0305】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞毒性T細胞またはCTL)の養子移入を含む処置と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、例えばドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入を含む処置と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、HERCREEMプロトコル(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier NCT00889954を参照されたい)を含む処置と併せて投与されてもよい。
【0306】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CD137(別名、TNFRSF9、4-1BB、またはILA)に対して指向されるアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ウレルマブ(別名、BMS-663513)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CD40に対して指向されるアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CP-870893と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、OX40(別名、CD134)に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CD27に対して指向されるアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CDX-1127と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に対して指向されるアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、1-メチル-D-トリプトファン(別名、1-D-MT)は、IDOアンタゴニストを伴う。
【0307】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗体-薬物コンジュゲートと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、抗体-薬物コンジュゲートは、メルタンシンまたはモノメチルオーリスタチンE(MMAE)を含む。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗NaPi2b抗体-MMAEコンジュゲート(別名、DNIB0600AまたはRG7599)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、トラスツズマブエムタンシン(別名、T-DM1、アド-トラスツズマブエムタンシン、またはKADCYLA(登録商標)、Genentech)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、DMUC5754Aと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体-薬物コンジュゲート、例えばMMAEとコンジュゲートされたEDNBRに対して指向される抗体と併せて投与されてもよい。
【0308】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗血管新生剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、VEGF、例えばVEGF-Aに対して指向される抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ベバシズマブ(別名、AVASTIN(登録商標)、Genentech)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、アンジオポエチン2(別名、Ang2)に対して指向される抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、MEDI3617と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗腫瘍剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CSF-1R(別名、M-CSFRまたはCD115)を標的とする薬剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、抗CSF-1R(別名、IMC-CS4)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、インターフェロン、例えばインターフェロンαまたはインターフェロンγと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、Roferon-A(別名、組換えインターフェロンアルファ-2a)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GM-CSF(別名、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、またはLEUKINE(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-2(別名、アルデスロイキンまたはPROLEUKIN(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-12と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CD20を標的とする抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(別名、GA101またはGAZYVA(登録商標))またはリツキシマブである。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GITRを標的とする抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、GITRを標的とする抗体は、TRX518である。
【0309】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、がんワクチンと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、がんワクチンは、ペプチドがんワクチンであり、場合によっては、個別のペプチドワクチンである。場合によっては、ペプチドがんワクチンは、多価長ペプチドワクチン、マルチペプチドワクチン、ペプチドカクテルワクチン、ハイブリッドペプチドワクチン、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチンである(例えば、Yamadaら、「Cancer Sci」第104巻第14~21頁(2013年)を参照されたい)。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、アジュバントと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、TLRアゴニスト、例えば、Poly-ICLC(別名、HILTONOL(登録商標))、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む処置と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)アルファと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-1と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、HMGB1と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-10アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-4アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、IL-13アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、HVEMアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、例えば、ICOS-Lの投与によってICOSアゴニストと併せて、またはICOSに対して指向されるアゴニスト抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CX3CL1を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CXCL9を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CXCL10を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、CCL5を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、LFA-1またはICAM1アゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、セレクチンアゴニストと併せて投与されてもよい。
【0310】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、標的療法と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、B-Rafの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ベムラフェニブ(別名、ZELBORAF(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ダブラフェニブ(別名、TAFINLAR(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、エルロチニブ(別名、TARCEVA(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、MEK1(別名、MAP2K1)またはMEK2(別名、MAP2K2)などのMEKの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、コビメチニブ(別名、GDC-0973またはXL-518)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、トラメチニブ(別名、MEKINIST(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、K-Rasの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、c-Metの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、オナルツズマブ(別名、MetMAb)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、Alkの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、AF802(別名、CH5424802またはアレクチニブ)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、BKM120と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、イデラリシブ(別名、GS-1101またはCAL-101)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、ペリホシン(別名、KRX-0401)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、Aktの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、MK2206と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GSK690693と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GDC-0941と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、mTORの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、シロリムス(別名、ラパマイシン)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、テムシロリムス(別名、CCI-779またはTORISEL(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、エベロリムス(別名、RAD001)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、リダフォロリムス(別名、AP-23573、MK-8669、またはデフォロリムス)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、OSI-027と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、AZD8055と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、INK128と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、二重PI3K/mTOR阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、XL765と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GDC-0980と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、BEZ235(別名、NVP-BEZ235)と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、BGT226と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、GSK2126458と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PF-04691502と併せて投与されてもよい。いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PF-05212384(別名、PKI-587)と併せて投与されてもよい。
【0311】
前述の方法のいずれにおいても、PD-L1軸結合アンタゴニストは、アテゾリズマブであり得る。
【0312】
D.本発明の方法での使用のためのPD-L1軸結合アンタゴニスト
本明細書では、治療有効量のPD-L1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含む、患者における膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)を処置するか、またはその進行を遅らせる方法が提供される。本明細書では、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者が、PD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に応答する可能性が高いかどうかを判定する方法が提供される。本明細書では、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者のPD-L1軸結合アンタゴニストを含む処置に対する応答性を予測する方法が提供される。本明細書では、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)に罹患している患者のための療法を選択する方法が提供される。いずれの方法においても、患者は白金剤含有化学療法、例えばシスプラチン含有化学療法に不適格であり得る。いずれの方法においても、患者は膀胱がんについて事前に未処置であってもよい。前述の方法のいずれも、本明細書に提供されるバイオマーカの発現レベル、例えば、腫瘍試料中、例えば、腫瘍浸潤免疫細胞中のPD-L1発現に基づいてもよい。
【0313】
例えば、PD-L1軸結合アンタゴニストとしては、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、およびPD-L2結合アンタゴニストが挙げられる。PD-1(プログラム死1)は、本技術において、「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、および 「SLEB2」とも呼ばれる。例示的なヒトPD-1は、UniProtKB/Swiss-Prot Accession No.Q15116に示されている。PD-L1(プログラム死リガンド1)は、本技術において、「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、および「PDL1」とも呼ばれる。例示的なヒトPD-L1は、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示される。PD-L2(プログラム死リガンド2)は、当技術分野では、「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」、および 「PDL2」とも呼ばれている。例示的なヒトPD-L2は、UniProtKB/Swiss-Prot Accession No.Q9BQ51に示されている。いくつかの事例では、PD-1、PD-L1、およびPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1、およびPD-L2である。
【0314】
いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナへの結合を阻害する分子である。特定の態様において、PD-1リガンド結合パートナは、PD-L1および/またはPD-L2である。別の例では、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の結合リガンドへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1結合パートナは、PD-1および/またはB7-1である。別の事例では、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2の、そのリガンド結合パートナへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L2結合リガンドパートナは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであってもよい。
【0315】
いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、例えば以下で記載されるような抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの事例では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、およびBGB-108からなる群から選択される。MDX-1106、別名MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブは、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブまたはランブロリズマブとしても知られるMK-3475は、国際公開第WO2009/114335号に記載されている抗PD-1抗体である。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)にPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシンである。いくつかの事例では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。B7-DCIgとしても知られるAMP-224は、国際公開第WO2010/027827号および同第WO2011/066342号に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0316】
いくつかの事例では、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」の代替名には、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、およびニボルマブが挙げられる。いくつかの事例では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。なお更なる事例では、配列番号1からの重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号2からの軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離された抗PD-1抗体が提供される。なお更なる事例では、重鎖および/または軽鎖配列を含む単離された抗PD-1抗体が提供される:
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号1)、
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)。
【0317】
いくつかの事例では、PD-L1軸結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの事例では、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの事例では、PD-L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0318】
いくつかの事例では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、例えば、以下に記載されるものである。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1との間および/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、および(Fab’)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ)、MDX-1105、およびMEDI4736(デュルバルマブ)、およびMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、国際公開第WO2010/077634号に記載される抗PD-L1である。MDX-1105、別名、BMS-936559は、WO2007/005874に記載の抗PD-L1抗体である。MEDI4736(デュルバルマブ)は、WO2011/066389およびUS2013/034559に記載されている抗PD-L1モノクローナル抗体である。本発明の方法に有用な抗PD-L1抗体、およびそれを作製するための方法の例は、参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許出願公開第WO2010/077634号、同第WO2007/005874号、同第WO2011/066389号、米国特許第8,217,149号、および同第US2013/034559号に記載されている。
【0319】
国際公開第WO2010/077634A1号および米国特許第US8,217,149号に記載される抗PD-L1抗体は、本明細書に記載される方法において使用され得る。いくつかの事例では、抗PD-L1抗体は、配列番号3の重鎖可変領域配列および/または配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。なお更なる事例では、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供される:
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号3)、
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する:
【0320】
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)。
【0321】
1つの事例では、抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列を含む重鎖可変領域を含み、
(a)HVR-H1配列は、GFTFSX1SWIHである(配列番号5);
(b)HVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKGである(配列番号6);
(c)HVR-H3配列は、RHWPGGFDYである(配列番号7);
更に:X1はDまたはGである;X2はSまたはLである;X3はTまたはSである。特定の一態様では、X1はDである;X2はSである;X3はTである。別の態様では、ポリペプチドは、以下の式にかかるHVR間に並置された可変領域重鎖フレームワーク配列を更に含む:(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。更なる一態様では、フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである:
FR-H1は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASである(配列番号8)、
FR-H2は、WVRQAPGKGLEWVである(配列番号9)、
FR-H3は、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARである(配列番号10)、
FR-H4は、WGQGTLVTVSAである(配列番号11)。
【0322】
なお更なる一態様では、重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3を含む可変領域軽鎖と更に組み合わせられ、
(a)HVR-L1配列は、RASQX4X5X6TX7X8Aである(配列番号12);
(b)HVR-L2配列は、SASX9LX10Sである(配列番号13);
(c)HVR-L3配列は、QQX11X12X13X14PX15Tである(配列番号14);
X4はDまたはVである;X5はVまたはIである;X6はSまたはNである;X7はAまたはFである;X8はVまたはLである;X9はFまたはTである;X10はYまたはAである;X11は、Y、G、F、またはSである;X12は、L、Y、F、またはWである;X13は、Y、N、A、T、G、F、またはIである;X14は、H、V、P、T、またはIである;X15は、A、W、R、P、またはTである。なお更なる一態様では、X4はDである;X5はVである;X6はSである;X7はAである;X8はVである;X9はFである;X10はYである;X11はYである;X12はLである;X13はYである;X14はHである;X15はAである。
【0323】
なお更なる一態様では、軽鎖は、以下の式にかかるHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列を更に含む:(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)。なお更なる一態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なお更なる一態様では、フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下である:
FR-L1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCである(配列番号15)
FR-L2は、WYQQKPGKAPKLLIYである(配列番号16)
FR-L3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCである(配列番号17)
FR-L4は、FGQGTKVEIKRである(配列番号18)。
【0324】
別の事例では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体または抗原結合断片が提供され、
(a)重鎖は、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3を含み、更に、
(i)HVR-H1配列は、GFTFSX1SWIHである(配列番号5);
(ii)HVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKGである(配列番号6);
(iii)HVR-H3配列は、RHWPGGFDYである(配列番号7);
(b)軽鎖は、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3を含み、更に:
(i)HVR-L1配列は、RASQX4X5X6TX7X8Aである(配列番号12);
(ii)HVR-L2配列は、SASX9LX10Sである(配列番号13);ならびに
(iii)HVR-L3配列は、QQX11X12X13X14PX15Tである(配列番号14);
X1はDまたはGである;X2はSまたはLである;X3はTまたはSである;X4はDまたはVである;X5はVまたはIである;X6はSまたはNである;X7はAまたはFである;X8はVまたはLである;X9はFまたはTである;X10はYまたはAである;X11はY、G、F,またはSである;X12はL、Y、FまたはWである;X13はY、N、A、T、G、FまたはIである;X14はH、V、P、TまたはIである;X15はA、W、R、PまたはTである。特定の態様では、X1はDである;X2はSであり、およびX3はTである。別の態様では、X4はDである;X5はVである;X6はSである;X7はAである;X8はVである;X9はFである;X10はYである;X11はYである;X12はLである;X13はYである;X14はHである;X15はAである。更に別の態様では、X1はDである;X2はSであり、およびX3はTである、X4はDである;X5はVである;X6はSである;X7はAである;X8はVである;X9はFである;X10はYである;X11はYである;X12はLである;X13はYである;X14はHであり、X15はAである。
【0325】
更なる一態様では、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)。なお更なる一態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、および11として記載される。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIVサブグループ配列由来である。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、および18として記載される。
【0326】
なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。なお更なる一態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される。なお更なる具体的な一態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる一態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群から選択される。なお更なる一態様では、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、低減されたまたは最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる具体的な一態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なお更なる事例では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0327】
なお別の事例では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供され、
(a)重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、およびRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列を更に含むか、または
(b)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、およびQQYLYHPAT(配列番号24)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3配列を更に含む。
【0328】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0329】
別の態様では、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、および11として記載される。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIVサブグループ配列由来である。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、および18として記載される。
【0330】
なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。なお更なる一態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される。なお更なる具体的な一態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる一態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群から選択される。なお更なる一態様では、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、低減されたまたは最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる具体的な一態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なお更なる事例では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0331】
別の更なる事例では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供される:
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号25)、かつ/または
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)。
【0332】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。別の態様では、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、およびWGQGTLVTVSS(配列番号27)として記載される。
【0333】
なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIVサブグループ配列由来である。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、および18として記載される。
【0334】
なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。なお更なる一態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される。なお更なる具体的な一態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる一態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群から選択される。なお更なる一態様では、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、低減されたまたは最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる具体的な一態様では、最小のエフェクタ機能は、原核細胞内での産生に起因する。なお更なる具体的な一態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なお更なる事例では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0335】
更なる一態様では、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)。なお更なる一態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである:
FR-H1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号29)
FR-H2 WVRQAPGKGLEWVA(配列番号30)
FR-H3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)
FR-H4 WGQGTLVTVSS(配列番号27)。
【0336】
なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIVサブグループ配列由来である。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである。
FR-L1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)
FR-L2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)
FR-L3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)
FR-L4 FGQGTKVEIK(配列番号28)
【0337】
なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。なお更なる一態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される。なお更なる具体的な一態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる一態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群から選択される。なお更なる一態様では、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、低減されたまたは最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる具体的な一態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なお更なる事例では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0338】
なお別の事例では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む抗PD-L1抗体が提供される:
(c)重鎖はそれぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、およびRHWPGGFDY(配列番号21)と少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列を更に含む、かつ/または、
(d)軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、およびQQYLYHPAT(配列番号24)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3配列を更に含む。
【0339】
特定の態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0340】
別の態様では、重鎖可変領域は、(FR-H1)-(HVR-H1)-(FR-H2)-(HVR-H2)-(FR-H3)-(HVR-H3)-(FR-H4)のようにHVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(FR-L1)-(HVR-L1)-(FR-L2)-(HVR-L2)-(FR-L3)-(HVR-L3)-(FR-L4)。更に別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、またはIII配列由来である。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、およびWGQGTLVTVSSASTK(配列番号31)として記載される。
【0341】
なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIVサブグループ配列由来である。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。なお更なる一態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、および18として記載される。なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、ヒトまたはマウス定常領域を更に含む。なお更なる一態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択される。なお更なる具体的な一態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。なお更なる一態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3からなる群から選択される。なお更なる一態様では、IgG2Aにおけるマウス定常領域。なお更なる具体的な一態様では、本抗体は、低減されたまたは最小のエフェクタ機能を有する。なお更なる具体的な一態様では、最小のエフェクタ機能は、「エフェクタなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。なお更なる事例では、エフェクタなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0342】
なお更なる事例では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供される:
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号26)、または
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)。
【0343】
いくつかの事例では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖および軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖および/または軽鎖のN末端の1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基は、欠失、置換、または修飾され得る。
【0344】
なお更なる事例では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供される:
(a)重鎖配列は、以下の重鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有し:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号32)、かつ/または
(b)軽鎖配列は、以下の軽鎖配列と少なくとも85%の配列同一性を有する:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号33)。
【0345】
いくつかの事例では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの事例では、重鎖および軽鎖配列を含む単離された抗PD-L1抗体が提供され、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0346】
いくつかの事例では、単離された抗PD-L1抗体は、非グリコシル化されている。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型とは、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、糖類、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つのヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、(N結合型グリコシル化部位について)上述のトリペプチド配列のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはトレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニンまたは保存的置換)との置換によって行われ得る。
【0347】
本明細書の事例のいずれにおいても、単離された抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるようなヒトPD-L1、またはその変異型に結合することができる。
【0348】
なお更なる事例では、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかをコードする単離核酸が提供される。いくつかの事例では、核酸は、前述の抗PD-L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に好適なベクターを更に含む。なお更なる具体的な一態様では、ベクターは、核酸の発現に好適な宿主細胞内にある。なお更なる具体的な一態様では、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。なお更なる具体的な一態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスタ卵巣(Chinese hamster ovary:CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0349】
抗体またはその結合断片は、かかる抗体または断片を生成するのに好適な条件下で、当該技術分野で既知の方法を使用して、例えば、発現に好適な形態にある前述の抗PD-L1抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を含有する宿主細胞を培養することと、抗体または断片を回収することとを含むプロセスによって作製することができる。
【0350】
上記で列挙される事例のいずれかにおける使用のためのかかるPD-L1軸結合アンタゴニスト抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、および抗PD-L2抗体)または本明細書に記載される他の抗体(例えば、PD-L1発現レベルの検出のための抗PD-L1抗体)が、以下の1~7項に記載される特徴のうちのいずれかを、単独でまたは組み合わせて有し得ることが明白に企図される。
【0351】
1.抗体親和性
特定の事例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0352】
1つの事例では、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。1つの事例では、RIAは、目的の抗体およびその抗原のFabバージョンを用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、標識されていない抗原の滴定系列の存在下で、最小濃度の(125I)標識された抗原でFabを平衡化し、次いで、抗Fab抗体でコーティングされたプレートで結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chenら、「J.Mol.Biol.」第293巻第865~881頁(1999年)を参照されたい)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸塩(pH9.6)中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、続いて、室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンによってブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc#269620)中で、100pMまたは26pMの[125I]-抗原を、関心のあるFabの連続希釈物と混合する(例えば、Prestaら、「Cancer Res.」第57巻第4593~4599頁(1997年)における抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致する)。次いで、関心のあるFabを一晩インキュベートする;しかしながら、平衡に達することを達するために、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)継続してもよい。その後、混合物は、室温でのインキュベーションのためのキャプチャプレートに移される(例えば、1時間)。次に、溶液を除去し、プレートを、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標);Packard)を添加し、プレートを10分間TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)で計数する。競合結合アッセイでの使用のために、最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度が選択されている。
【0353】
別の事例によると、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用するアッセイは、約10の応答単位(response unit:RU)で固定化抗原CM5チップを用いて25℃で実施される。1つの事例では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)は、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で希釈し、5μL/分の流量で注入する前に5μg/mL(約0.2μM)に希釈して、結合タンパク質のおよそ10応答単位(RU)を達成する。抗原の注入に続いて、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンを注入する。動態測定のために、Fab(0.78nM~500nM)の2倍段階希釈物が、25℃で、およそ25μL/分の流速で、0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入される。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2版)を使用して、会合センサーグラムおよび解離センサーグラムを同時に適合することによって、計算する。平衡解離定数(Kd)は、kオフ/kオン比として算出される。例えば、Chenら、「J.Mol.Biol.」第293巻第865~881頁(1999年)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオンレートが106M-1s-1を超える場合、オンレートは、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗-抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定することができる。
【0354】
2.抗体断片
特定の事例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、抗体断片である。抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、およびscFv断片、および以下に記載する他の断片が挙げられるがこれらに限定されない。特定の抗体断片のレビューとしては、Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129~134頁(2003年)を参照されたい。scFv断片の参照には、例えばPluckthun、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」中、第113巻、RosenburgおよびMoore編(Springer-Verlag、ニューヨーク)、第269~315頁(1994年)を参照されたい;また、国際公開第WO93/16185号を参照されたい;および米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を構成し、かつインビボ半減期を増加させたFabおよびF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0355】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第WO1993/01161号、Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129~134頁(2003年)、およびHollingerら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第6444~6448頁(1993年)を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディはまた、Hudsonら、「Nat.Med.」第9巻第129~134頁(2003年)においても説明されている。
【0356】
シングルドメイン抗体とは、抗体の重鎖可変ドメインの全部または一部、または軽鎖可変ドメインの全部または一部を含む抗体断片である。特定の事例では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、マサチューセッツ州ウォルサム、例えば米国特許第6,248,516B1号を参照)。
【0357】
抗体断片は、本明細書に記載されているように、インタクトな抗体のタンパク質分解消化、および組換え宿主細胞(例えば、大腸菌またはファージ)による生産を含むがこれらに限定されない様々な技術によって作製することができる。
【0358】
3.キメラ抗体およびヒト化抗体
特定の事例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第81巻第6851~6855頁(1984年))に記載されている。一つの例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)とヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれから変更された「クラス切り替え」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0359】
特定の事例では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化される。通常、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来する1つ以上の可変ドメインを含み、FR(またはその一部)はヒト抗体配列に由来する。任意にヒト化抗体はまた、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの事例では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0360】
ヒト化抗体およびその作成方法は例えば、AlmagroおよびFransson、「Front.Biosci.」第13巻第1619~1633頁(2008年)で確認され、更に、例えばRiechmannら、「Nature」第332巻第323~329頁(1988年);Queenら、「Proc.Natl Acad.Sci.USA」第86巻第10029~10033頁(1989年);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号;Kashmiriら、「Methods」第36巻第25~34頁(2005年)(特異性決定領域(SDR)グラフトに関する記述);Padlan、「Mol Immunol.」第28巻第489~498頁(1991年)(「表面再構成」の記述);Dall’Acquaら、「Methods」第36巻第43~60頁(2005年)(「FR再構成」の記述);ならびにOsbournら、「Methods」第36巻第61~68頁(2005年)および、Klimkaら、「Br.J.Cancer」第83巻第252~260頁(2000年)(FR構築のための「誘導選択」アプローチの記述)に詳しく記載されている。
【0361】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない:「ベストフィット」法を用いて選択されたフレームワーク領域(例えば、Simsら、「J.Immunol.」第151巻第2296頁(1993年)参照);軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carterら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第89巻第4285頁(1992年);およびPrestaら、「J.Immunol.」第151巻第2623頁(1993年)参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞フレームワーク領域(例えば、AlmagroおよびFransson、「Front.Biosci.」第13巻第1619~1633頁(2008年)参照);ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Bacaら、「J.Biol.Chem.」第272巻第10678~10684頁(1997年)およびRosokら、「J.Biol.Chem.」第271巻第22611~22618頁(1996年)参照)。
【0362】
4.ヒト抗体
ある特定の事例では、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で知られている様々な技術を用いて作製することができる。ヒト抗体は通常、van Dijkおよびvan de Winkel、「Curr.Opin.Pharmacol.」、第5巻:第368~74頁(2001年)およびLonberg、「Curr.Opin.Immunol.」、第20巻:第450~459頁(2008年)に記載されている。
【0363】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含むか、または染色体外に存在するか、または動物の染色体にランダムに統合されている。このようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法のレビューについては、Lonberg、「Nat.Biotech.」第23巻第1117~1125頁(2005年)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載した米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術について記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術について記載した米国特許第7,041,870号;ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術について記載した米国特許出願公開第2007/0061900号もまた参照のこと。このような動物によって生成されたインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、更に改変されてもよい。
【0364】
また、ヒト抗体は、ハイブリドーマを用いた方法で作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor、「J.Immunol.」第133巻第3001頁(1984年);Brodeurら、「Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications」第51~63頁(Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク、1987年);およびBoernerら、「J.Immunol.」第147巻第86頁(1991年)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体もまた、Liら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第103巻第3557~3562頁(2006年)に記載されている。更なる方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、およびNi、「Xiandai Mianyixue」、第26巻第4号第265~268頁(2006年)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載する)を含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein、「Histology and Histopathology」、第20巻、第3号:第927~937頁(2005年)およびVollmers and Brandlein、「Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology」、第27巻、第3号:第185~91頁(2005年)にも記載されている。
【0365】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。その後、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が以下に記載されている。
【0366】
5.ライブラリ由来の抗体
本発明の抗体(例えば、抗PD-L1抗体および抗PD-1抗体)は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当技術分野で知られている。そのような方法については、例えば、Hoogenboomら、「Methods in Molecular Biology」第178巻第1~37頁(O’Brienら編、Human Press、ニュージャージー州トトワ、2001年)で概説し、更に下に記載されている:McCaffertyら、「Nature」第348巻第552~554頁;Clacksonら、「Nature」第352巻第624~628頁(1991年);Marksら、「J.Mol.Biol.」第222巻第581~597頁(1992年);MarksおよびBradbury、「Methods in Molecular Biology」第248巻第161~175頁(Loら、Human Press、ニュージャージー州トトワ、2003年);Sidhuら、「J.Mol.Biol.」第338巻第2号第299~310頁(2004年);Leeら、「J.Mol.Biol.」第340巻第5号第1073~1093頁(2004年);Fellouse、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第101巻第34号第12467~12472頁(2004年);およびLeeら、「J.Immunol.Methods」第284巻第1~2号第119~132頁(2004年)。
【0367】
特定のファージディスプレイ方法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリ中でランダムに再結合され、次いで、Winterら、「Ann.Rev.Immunol.」第12巻第433~455頁(1994年)に記載されているように抗原結合ファージのスクリーニングを行うことができる。ファージは、典型的には、抗体断片を一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとしてディスプレイする。免疫源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代替的に、ナイーブレパートリは、Griffithsら、「EMBO J」第12巻第725~734頁(1993年)によって記載されているように、免疫化を行わずに、広範囲の非自己抗原およびまた自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローン化することができる。最後に、ナイーブライブラリは、幹細胞から再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダムな配列を含むPCRプライマを使用して、非常に可変的なCDR3領域をコードし、HoogenboomおよびWinter、「J.Mol.Biol.」第227巻第381~388頁(1992年)に記載されているように、インビトロで再配列を達成することによって、合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、および同第2009/0002360号が挙げられる。
【0368】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
【0369】
6.多重特異性抗体
上記の態様のいずれか1つにおいて、本明細書に提供される抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の事例では、本明細書に提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。特定の事例では、結合特異性の一方は、PD-L1へのものであり、他方は、任意の他の抗原へのものである。特定の事例では、二重特異性抗体は、PD-L1の2つの異なるエピトープに結合し得る。二重特異性抗体を使用して、PD-L1を発現する細胞に細胞毒性剤を局在化することもできる。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0370】
多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(MilsteinおよびCuello、「Nature」第305巻第537頁(1983年)、国際公開第WO93/08829号、およびTrauneckerら、「EMBO J.」第10巻第3655頁(1991年)を参照されたい)、および「ノブ・イントゥ・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されるものではない。多特異性抗体はまた、以下の方法により製造することができる:抗体Fcヘテロ二量体分子を製造するための静電ステアリング効果をエンジニアリング的に利用する方法(国際公開第WO2009/089004A1号);2個以上の抗体または断片を架橋する方法(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennanら、「Science」第229巻第81頁(1985年)を参照);二重特異性抗体を製造するためにロイシンジッパを利用する方法(例えば、Kostelnyら、「J.Immunol.」第148巻第5号第1547~1553頁(1992年)を参照されたい);二重特異性抗体断片を製造するために「ダイアボディ」技術を利用する方法(例えば、Hollingerら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第90巻第6444~6448頁(1993年)を参照されたい);一本鎖Fv(sFv)二量体を利用する方法(例えば、Gruberら、「J.Immunol.」第152巻第5368頁(1994年)を参照);および、例えば、Tuttら、「J.Immunol.」第147巻第60頁(1991年)に記載されているように三重特異性抗体を調製する方法。
【0371】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能性抗原結合部位を有する設計された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第US2006/0025576A1号を参照されたい)。
【0372】
本明細書の抗体または断片には、PD-L1ならびに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用Fab」または「DAF」も含まれる。
【0373】
7.抗体変異体
特定の事例では、本発明の抗体(例えば、抗PD-L1抗体および抗PD-1抗体)のアミノ酸配列変異型が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を向上させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適正な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製されてもよい。このような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入、および/または置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組合せは、最終的な構築物が所望の特性、例えば抗原結合性を有することを条件として、最終的な構成体に到達するために行うことができる。
【0374】
I.置換、挿入、および欠失変異体
特定の事例では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異型が提供される。置換による変異誘発に関して目的とする部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換は、表2において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表2において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下に更に記載される通りである。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善された抗体依存性細胞媒介細胞毒性(ADCC)若しくは補体依存性細胞毒性(CDC)についてスクリーニングされ得る。
【0375】
アミノ酸は、一般的な側鎖の性質に従ってグループ化することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0376】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバを別のクラスと交換することを伴うことになる。
【0377】
ある種の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、更なる研究のために選択される得られた変異型(複数可)は、親抗体と比べて、特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加および/または免疫原性の低減)における変更(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換型変異型は、例えば、本明細書に記載の技術などのファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して簡便に生成され得る親和性成熟抗体である。要するに、1つ以上のHVR残基が変異され、変異型抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0378】
変更(例えば、置換)は、抗体親和性を改善するために、例えば、HVRにおいて行われてもよい。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、「Methods Mol.Biol.」第207巻第179~196頁(2008年)を参照のこと)、および/または抗原と接触する残基内で行われ得、結果として得られるバリアントVHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリからの構築および再選択による親和性成熟化は、例えば、Hoogenboomら、「Methods in Molecular Biology」第178巻第1~37頁(O’Brienら編、Human Press、ニュージャージー州トトワ(2001年)に記載されている。親和性成熟のいくつかの事例では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。その後、二次ライブラリが作成される。その後、ライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する抗体変異体を特定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニン走査突然変異誘発またはモデリングを使用して、具体的に特定されてもよい。特にCDR-H3とCDR-L3が標的とされることが多い。
【0379】
特定の事例では、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)が、HVR中で行われてもよい。そのような改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上述の変異型VHおよびVL配列の特定の事例では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、または3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0380】
突然変異誘発の標的となり得る抗体の残基または領域を特定するための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)「Science」第244巻第1081~1085頁に記載されているように「アラニン走査突然変異誘発」と呼ばれている。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基または標的残基群(例えば、荷電残基、例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGlu)が特定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換は、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入されてもよい。あるいは、または加えて、抗体と抗原との間の接点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、または除去されてもよい。変異体をスクリーニングして、それらが所望の性質を含有するかどうかを決定してもよい。
【0381】
アミノ酸配列挿入としては、1個の残基~100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲を融合するアミノ末端および/またはカルボキシル末端、ならびに1個または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体のN末端またはC末端と酵素(例えば、ADEPTの場合)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合が含まれる。
【0382】
II.グリコシル化変異体
特定の事例では、本発明の抗体を改変して、抗体がグリコシル化する程度を増加または減少させることができる。本発明の抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位を創出するかまたは除去するように、アミノ酸配列を改変することによって簡便に達成され得る。
【0383】
抗体がFc領域を構成する場合、抗体に付着している糖質を変化させてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN-連結によって一般的に結合された分岐したバイアンテナリーオリゴ糖を含む。例えば、Wrightら、「TIBTECH」、第15巻第26~32頁(1997年)を参照されたい。オリゴ糖は、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNac)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびにバイアンテナリーオリゴ糖構造の「ステム」のGlcNacに付着したフコースを含んでもよい。いくつかの事例では、特定の特性が改善された抗体変異型を作製するために、本発明の抗体中におけるオリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0384】
1つの事例では、Fc領域に結合した(直接的にまたは間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異型が提供される。このような抗体中のフコースの量は、例えば、1%以上80%以下、1%以上65%以下、5%以上65%以下、または20%以上40%以下であってもよい。フコースの量は、例えば、国際公開第WO2008/077546号に記載されるMALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、および高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって判定される。Asn297は、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEU番号付け);ただし、Asn297はまた、抗体のマイナーな配列変化のために、位置297の上流または下流、すなわち位置294と300の間の約±3個のアミノ酸に位置していてもよい。このようなフコシル化変異体は、ADCCの機能を改善している可能性がある。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号および同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠乏」抗体変異体に関する刊行物の例としては:米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazakiら、「J.Mol.Biol.」、第336巻:第1239~1249頁(2004年);Yamane-Ohnukiら、「Biotech.Bioeng.」、第87巻:第614頁(2004年)が挙げられる。脱フコシル化抗体を生成可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化で欠失したLec13 CHO細胞(Ripkaら、「Arch.Biochem.Biophys.」第249巻第533~545頁(1986年);米国特許出願公開第2003/0157108A1号;および国際公開第2004/056312A1号,Adamsら、特に実施例11)、ならびにα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnukiら、「Biotech.Bioeng.」第87巻第614頁(2004年);Kanda,Y.ら、「Biotechnol.Bioeng.」第94巻第4号第680~688頁(2006年);および国際公開第2003/085107号)が挙げられる。
【0385】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異型が更に提供される。そのような抗体変異体は、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有していてもよい。かかる抗体変異型の例は、例えば国際公開第WO2003/011878号;米国特許第6,602,684号;および米国特許出願公開第2005/0123546号に記載される。Fc領域に付着したオリゴ糖の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。このような抗体変異体は、CDCの機能を改善している可能性がある。かかる抗体変異型は、例えば、国際公開第WO1997/30087号、同第WO1998/58964号、および同第WO1999/22764号に記載されている。
【0386】
III.Fc領域変異体
特定の事例では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本発明の抗体のFc領域内に導入され得、それによりFc領域変異型を生成され得る。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0387】
特定の事例では、本発明は、全てではないが、いくつかのエフェクタ機能を有することにより、インビボでの抗体の半減期が重要ではあるが、特定のエフェクタ機能(補体およびADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異体を企図する。CDCおよび/またはADCC活性の低下/消失を確認するために、インビトロおよび/またはインビボの細胞毒性アッセイを実施することができる。例えば、Fc受容体(Fc receptor:FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(故にADCC活性を欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。ADCCの媒介のための主要な細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現については、Ravetch and Kinet、「Annu.Rev.Immunol.」第9巻第457~492頁(1991年)の464頁の表3にまとめてある。対象の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.ら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第83巻第7059~7063頁(1986年)参照)、およびHellstrom,Iら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第82巻第1499~1502頁(1985年);米国特許第5,821,337号(Bruggemann,M.ら、「J.Exp.Med.」第166巻第1351~1361頁(1987年)参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology、Inc.Mountain View,CA;およびCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照のこと))。このようなアッセイに有用なエフェクタ細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(Natural Killer:NK)細胞が含まれる。あるいは、または更に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynesら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第95巻第652~656頁(1998年)に開示されているように、動物モデルにおいてインビボで評価することができる。また、抗体がC1qに結合することができず、CDC活性を欠いていることを確認するために、C1q結合アッセイを実施してもよい。例えば、国際公開第WO2006/029879号および同第WO2005/100402号のC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoroら、「J.Immunol.Methods」、第202巻第163頁(1996年)、Craggら、「Blood」、第101巻第1045~1052頁(2003年)、およびCraggら、「Blood」、第103巻第2738~2743頁(2004年)を参照されたい)。FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期決定もまた、当技術分野において公知である方法を使用して実行し得る(例えば、Petkovaら、「Int’l.Immunol.」、第18巻第12号第1759~1769頁(2006年)を参照されたい)。
【0388】
エフェクタ機能が低下した抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329の1つ以上が置換されたものが含まれる(米国特許第6,737,056号および第8,219,149号)。そのようなFc変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297および327の2つ以上が置換されたFc変異体が挙げられ、残基265および297をアラニンに置換した、いわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号および同第8,219,149号)を含む。
【0389】
FcRへの結合が改善または減少した特定の抗体変異体が記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第WO2004/056312号,およびShieldsら、「J.Biol.Chem.」第9巻第2号第6591~6604頁(2001年)を参照されたい。)
【0390】
特定の事例では、抗体変異型は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。
【0391】
いくつかの事例では、例えば米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、およびIdusogieら、「J.Immunol.」第164巻第4178~4184頁(2000年)に記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の変化(すなわち向上または低下のいずれか)をもたらすFc領域内で変化が起こる。
【0392】
半減期が増大し、胎生Fc受容体(FcRn)への結合が向上した、母体IgGを胎児に移行する役割を果たす抗体(Guyerら、「J.Immunol.」、第117巻第587頁(1976年)およびKimら、「J.Immunol.」、第24巻第249頁(1994年))は、米国特許出願公開第2005/0014934A1号(Hintonら)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域とFcRnとの結合を改善する1つまたは複数の置換をそこに有するFc領域を含む。かかるFc変異体としては、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有する変異体を含む(米国特許第7,371,826号)。
【0393】
Fc領域の変異体の他の例に関して、DuncanおよびWinter、「Nature」第322巻第738~40頁(1988年);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;および国際公開第WO94/29351号も参照されたい。
【0394】
IV.システイン改変抗体変異体
特定の事例では、システイン改変抗体、例えば抗体の1つ以上の残基がシステイン残基により置換されている「thioMAb」を作製するのが望ましい場合がある。具体的な事例では、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書に更に記載されるように、抗体を薬物部位またはリンカ薬物部位などのような他の部位にコンジュゲートしてイムノコンジュゲートを作成するために使用することができる。特定の事例では、以下の残基のうちの任意の1つ以上を、システインで置換することができる:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0395】
V.抗体誘導体
特定の事例では、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾され得る。抗体の誘導体化に適した部位としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体。ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばg.、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性のため、製造上の利点があるかもしれない。ポリマーは、任意の分子量であってもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に接続するポリマーの数は、様々であってもよく、1つより多いポリマーが接続する場合、ポリマーは、同じ分子であってもよく、または異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/またはタイプは、改良される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下で治療に使用されるかどうかなどの考慮事項に基づいて決定することができるが、これらに限定されるものではない。
【0396】
別の事例では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体および非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。1つの事例では、非タンパク質性部分はカーボンナノチューブである(Kamら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第102巻第11600~11605頁(2005年))。放射線は、任意の波長であってもよく、通常の細胞に害を与えないが、抗体非保護性部位に近位の細胞が死滅する温度まで非保護性部位を加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
【0397】
VI.イムノコンジュゲート
本発明は、化学療法剤若しくは薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の酵素活性毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体などの1つ以上の細胞毒性剤とコンジュゲートされた、本明細書の抗体(例えば、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体)を含むイムノコンジュゲートも提供する。
【0398】
1つの事例では、イムノコンジュゲートは抗体-薬物コンジュゲート(ADC)であり、抗体が、これらに限定されるわけではないが、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、および欧州特許第0425235B1号を参照のこと);モノメチルオーリスタチン薬剤部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号、および同第7,498,298号を参照のこと);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号、および同第5,877,296号;Hinmanら、「Cancer Res.」第53巻第3336~3342頁(1993年);ならびにLodeら、「Cancer Res.」第58巻第2925~2928頁(1998年)を参照のこと);ダウノマイシンおよびドキソルビシン等のアントラサイクリン(例えばKratzら、「Current Med.Chem.」第13巻第477~523頁(2006年);Jeffreyら、「Bioorganic&Med.Chem.Letters」第16巻第358~362頁(2006年);Torgovら、「Bioconj.Chem.」第16巻第717~721頁(2005年);Nagyら、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第97巻第829~834頁(2000年);Dubowchikら、「Bioorg.&Med.Chem.Letters」第12巻第1529~1532頁(2002年);Kingら、「J.Med.Chem.」第45巻第4336~4343頁(2002年);および米国特許第6,630,579号を参照のこと);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセル等のタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065を含む1つ以上の薬剤に結合している。
【0399】
別の事例では、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンシンタンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセンを含むがこれらに限定されない酵素活性毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載される抗体を含む。
【0400】
別の事例では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にイムノコンジュゲートされ、放射性複合体を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。放射性物質の製造には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位元素が挙げられる。放射性物質が検出のために使用される場合、それは、シンチグラフィ研究のための放射性原子、例えばtc99mまたはI123、または核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)イメージング(別名、磁気共鳴イメージング、MRI)のためのスピンラベル、例えば再びヨウ素123、ヨウ素131、インジウム111、フッ素19、炭素13、窒素15、酸素17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含んでいてもよい。
【0401】
抗体と細胞毒性剤とのコンジュゲートは、例えば、各種の二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製することができる:N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、および二活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)。例えば、Vitettaら、「Science」第238巻第1098頁(1987年)に記載されているように、リシン免疫トキシンを調製することができる。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体にラジヌクレオチドを共役させるための例示的なキレート剤である。国際公開第WO94/11026号を参照されたい。リンカは、細胞内での細胞傷害性薬物の放出を促進する「開裂性リンカ」であってもよい。例えば、酸-ラビリンカ、ペプチダーゼ感受性リンカ、フォトラビリンカ、ジメチルリンカまたはジスルフィド含有リンカ(Chariら、「Cancer Res.」第52巻第127~131頁(1992年);米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
【0402】
本明細書におけるイムノコンジュゲートまたはADCは明確に、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホEMCS、スルホGMBS、スルホKMUS、スルホMBS、スルホSIAB、スルホSMCC、スルホSMPB、および市販の(例えばPierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)SVSB(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含む架橋試薬により調製したコンジュゲートを企図するが、これらに限定されない。
【0403】
V.医薬品製剤
本発明に従って使用されるPD-L1軸結合アンタゴニストの治療製剤(例えば、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ))は、所望の純度を有するアンタゴニストを、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態にある任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、保管のために調製される。製剤に関する一般的な情報については、例えば、Gilmanら(編)「The Pharmacological Bases of Therapeutics」第8版、Pergamon Press、1990年;A.Gennaro(編)、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第18版、Mack Publishing Co.、ペンシルバニア、1990年;Avisら(編)「Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications」、Dekker、ニューヨーク、1993年;Liebermanら(編)「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets」、第Dekker、ニューヨーク、1990年;Liebermanら(編)、「Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems」、Dekker、ニューヨーク、1990年;および、Walters(編)「Dermatological and Transdermal Formulations」(「Drugs and the Pharmaceutical Sciences」)第119巻、Marcel Dekker、2002年を参照のこと。
【0404】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、レシピエントに対し、使用される用量および濃度で非毒性であり、これらにはリン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0405】
本明細書の製剤は、1つ超の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものも含有し得る。かかる医薬品の型および有効量は、例えば製剤中に存在するアンタゴニストの量および型、ならびに対象の臨床的パラメータに依存する。
【0406】
活性成分はまた、例えばコアセルベーション技法または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタチレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、およびナノカプセル)中に、またはマクロ乳濁液中に取り込まれても良い。そのような技術が、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第16版、Osol,A.編(1980年)に開示されている。
【0407】
持続放出性製剤を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例としては、アンタゴニストを含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが挙げられ、このマトリクスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγ-L-グルタミン酸エチルとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0408】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過により容易に達成される。
【0409】
上記の製品のうちのいずれも、PD-L1軸結合アンタゴニストの代わりに、またはそれに加えて本明細書に記載されるイムノコンジュゲートを含み得ることを理解されたい。
【0410】
VI.診断用キットおよび製品
本明細書では、膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)である個体または患者、例えばシスプラチン含有治療に不適な患者、ならびに膀胱がんについて事前に未処置である患者からの試料におけるバイオマーカ(例えば、腫瘍浸潤免疫細胞における、例えばPD-L1発現レベル)の存在を判定するための1つ以上の試薬を含む、診断用キットが提供される。いくつかの事例では、試料中のバイオマーカの存在は、個体がPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)で処置された際の有効性のより高い可能性を示す。いくつかの事例では、試料中のバイオマーカの不在は、疾患を有する個体がPD-L1軸結合アンタゴニストが処置された際の有効性のより低い可能性を示す。任意で、キットには、個体が試料中のバイオマーカを発現した場合に、キットを使用して、疾患または障害を処置するための医薬品(例えば、PD-L1軸結合アンタゴニスト、例えば抗PD-L1抗体、例えばアテゾリズマブ)を選択するための指示書が更に含まれ得る。別の事例では、指示書は、個体が試料中のバイオマーカを発現しない場合に、キットを使用して、PD-L1軸結合アンタゴニスト以外の医薬品を選択するためのものである。
【0411】
本明細書ではまた、薬学的に許容される担体のPD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)と、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)が、バイオマーカの発現に基づいてシスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)である患者を処置するためのものであることを示す添付文書と、を一緒に梱包した製品も提供される。処置方法には、本明細書に開示される処置方法のいずれかが含まれる。本発明はまた、PD-L1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体、例としてアテゾリズマブ)を含む医薬組成物と、該医薬組成物が、バイオマーカ(例えば、腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現レベル)の発現に基づくシスプラチン含有化学療法に適格ではない膀胱がん(例えば、局所進行性または転移性の尿路上皮がん)患者を処置するためのものであることを示す添付文書とをパッケージ内に合わせて含む、製品の製造方法にも関する。
【0412】
製品は、例えば、容器、および容器上のまたは容器に関連するラベルまたは添付文書を含んでもよい。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、がんの医薬品を活性薬剤として含む組成物を保持または収容し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルであり得る)。
【0413】
製品は、注射用静菌水(bacteriostatic water for injection:BWFI)、リン酸干渉食塩水、リンガー溶液、および/またはデキストロース溶液などの薬学的に許容される希釈緩衝液を含む第2の容器を更に含んでもよい。製品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジを含む、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の材料を更に含んでもよい。
【0414】
本発明の製品はまた、例えば添付文書の形態で、組成物が、本明細書のバイオマーカ(複数可)の発現レベルに基づいてがんを処置するために使用されることを示す情報も含む。添付文書またはラベルは、紙面、または電子媒体上、例えば、磁気記録媒体(例えば、フロッピーディスク)、CD-ROM、汎用シリアルバス(Universal Serial Bus:USB)フラッシュドライブ、および同様のものなどの任意の形態をとってもよい。ラベルまたは添付文書はまた、キットまたは製品中の医薬組成物および投与剤形に関する他の情報も含み得る。
【実施例0415】
以下の実施例は、本明細書で特許請求される発明を例示するために提供されるのであって、限定するものではない。
【0416】
実施例1:腫瘍試料中のPD-L1発現の免疫組織化学的(IHC)分析
免疫組織化学(IHC):ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を脱パラフィン化した後に抗原を回収し、遮断し、一次抗PD-L1抗体(SP142、Ventana)と共にインキュベートした。二次抗体とのインキュベートおよび酵素発色後、切片を対比染色し、一連のアルコールおよびキシレンで脱水した後、カバースリップした。
【0417】
以下のプロトコルをIHCに使用した。Ventana Benchmark XTまたはBenchmark Ultraシステムを使用して、以下の試薬および材料を使用したPD-L1 IHC染色を行った。
一次抗体:抗PD-L1ウサギモノクローナル一次抗体
検体タイプ:腫瘍試料のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片
エピトープ回復条件:細胞条件付け、標準1(CC1、Ventana、カタログ番号950-124)
一次抗体の状態:1/100、6.5μg/mL、36℃で16分間
希釈剤:抗体希釈緩衝液(担体タンパク質およびBRIJ(商標)-35を含有するトリス緩衝生理食塩水)
陰性対照:6.5μg/mLのナイーブウサギIgG(Cell Signaling)または希釈剤のみ
検出:Optiviewまたはultraview Universal DAB検出キット(Ventana)、および増幅キット(該当する場合)を製造業者(Ventana)の指示に従って使用した。
対比染色:Ventana Hematoxylin II(カタログ番号790-2208)/Bluing試薬(カタログ番号760-2037)(それぞれ、4分間および4分間)
Ventanaベンチマークプロトコルは、以下の通りであった:
1.パラフィン(選択)
2.脱パラフィン(選択)
3.細胞条件付け(選択)
4.調節剤番号1(選択)
5.標準CC1(選択)
6.Abインキュベーション温度(選択)
7.36C Abインキュベーション(選択)
8.滴定(選択)
9.自動分注(一次抗体)、およびインキュベート(16分間)
10.対比染色(選択)
11.一滴の(ヘマトキシリンII)(対比染色)の適用、カバースリップの適用、インキュベート(4分間)
12.対比染色後(選択)
13.一滴の(ブルーイング試薬)(対比染色後)の適用、カバースリップの適用、インキュベート(4分間)
14.スライドを石鹸水で洗浄して油を除去する
15.スライドを水ですすぐ
16.スライドを95%エタノール、100%エタノール、更にキシレンで脱水する(Leica自動染色機プログラム番号9)
17.カバーガラス。
【0418】
実施例2:腫瘍浸潤免疫細胞(IC)におけるPD-L1発現とPD-L1軸結合アンタゴニストでの処置への応答との間の関連性
尿路上皮膀胱がん(UBC)腫瘍内の腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現と、PD-L1軸結合アンタゴニストでの処置からの利益との間の関連性を評価した。研究したUBC患者は、患者のコホートを含む進行中の第Ia相研究に参加していた(安全性評価可能なUBC集団=92)。主要な適格条件には、固形がん処置効果判定法(Response Evaulation Criteria In Solid Tumor:RECIST)v1.1に基づく測定可能な疾患、および0または1の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス(PS)が含まれた。UBCコホートは、元々、IC2/3のPD-L1 ICスコアを有する患者を登録したが、その後、全ての参加希望者を含むよう拡大され、主にPD-L1 IC0/1の患者を採用した。PD-L1 ICスコアは、表3に示されるようにスコア化された。アテゾリズマブ(MPDL3280A)を、3週間毎(q3w)に15mg/kgで、または1200mgの一定用量で静脈内(IV)に投与した。
【0419】
ウサギモノクローナル抗PD-L1一次抗体を使用してIHCを実施することによってUBC腫瘍微小環境中のPD-L1の発現レベルを評価した(実施例1を参照されたい)。このアッセイは、腫瘍浸潤免疫細胞および腫瘍細胞(TC)の両方におけるPD-L1発現レベルの検出のために最適化される。
図1Aは、第Ia相研究でプレスクリーニングされた患者からの保管用腫瘍組織における異なるICスコアカットオフでのPD-L1発現の有病率を示す。
図1Bは、PD-L1 IHCによって評価されたICにおけるPD-L1発現を示すUBC腫瘍切片の例を示す。IHCアッセイは、高感度であり、PD-L1発現に特異的であった。
【0420】
全てのPD-L1サブグループにおいてアテゾリズマブ(MPDL3280A)での処置への応答が認められ、より高い奏効率(ORR)は、ICにおけるより高いPD-L1発現と関連付けられた(
図2)。例えば、IC2/3およびIC0/1患者においてORRはそれぞれ、50%および17%であった(
図2)。IC2/3患者のうちの20%は完全奏効(CR)を有し、30%は部分奏効(PR)を有した(
図2)。応答者には、ベースラインで内臓転移を有した患者も含まれた:32人のIC2/3患者において38%のORR(95%信頼区間(CI)、21~56)、および36人のIC0/1患者において14%(95%CI、5~30)のORR。ベースライン後評価を行った患者80人中、44人(55%)は、腫瘍負荷の低減を経験した(
図3)。アテゾリズマブに応答する患者における循環性炎症マーカ(CRP)および腫瘍マーカ(CEA、CA-19-9)の減少も認められた。
【0421】
アテゾリズマブ(MPDL3280A)で処置されたUBC患者の処置期間および奏効期間が
図4に示される。奏効する時間の中央値は、62日間であった(IC2/3患者、1ヶ月以上~10ヶ月以上の範囲;IC0/1患者、1ヶ月以上~7ヶ月以上の範囲)。奏効した患者30人中、20人は、データカットオフの時点(2014年12月2日)で進行中奏効を有した。奏効期間(DOR)の中央値は、データカットオフ時には達成されなかった。
【0422】
ICにおけるPD-L1発現は、アテゾリズマブ処置からの利益に予測的であると思われた(
図5Aおよび
図5B)。無増悪生存期間(mPFS)および1年PFS率の中央値は、より高いPD-L1発現を有するアテゾリズマブで処置された患者においてより高かった(
図5A)。1年全生存(OS)率について同じ関連性が認められ、全生存期間(OS)の中央値は、データカットオフ時には達成されなかった(
図5Aおよび
図5B)。IC2/3およびIC0/1患者について、1年OS率はそれぞれ、57%および38%であった(
図5A)。
【0423】
要約すると、アテゾリズマブ(MPDL3280A)は、有望な生存期間および臨床的に有意な奏効と共に、重度に前処置された転移性UBCコホートにおいて見込みのある臨床活動を提示した。ICにおけるPD-L1発現は、抗PD-L1抗体アテゾリズマブ(MPDL3280A)などのPD-L1軸結合アンタゴニストへの応答のための予測バイオマーカであると思われた。
【0424】
実施例3:療法におけるイムノブロッカシグネチャおよびCTLA4発現レベルとUBC患者のアテゾリズマブへの応答との関連性を試験する第Ia相研究
アテゾリジマブ(atezolizimab)での処置への応答と、治療中の「イムノブロッカ」シグネチャ(遺伝子CTLA4、BTLA、LAG3、HAVCR2、およびPD1を含む)の発現との間の関連性を、UBC患者のコホートを含む第Ia相臨床研究の過程で評価した。
【0425】
図6に示されるように、処置の第3サイクル、第1日目までのT細胞によるイムノブロッカシグネチャならびにCTLA4のmRNA発現の増加(カスタムNanostringアッセイによって判定される)は、UBC患者におけるアテゾリズマブへの応答に関連付けられた。したがって、CTLA4、BTLA、LAG3、HAVCR2、およびPD1の発現レベルは、抗PD-L1抗体アテゾリズマブを含むPD-L1軸結合アンタゴニストでの処置に対するUBC患者の応答のための潜在的なバイオマーカを表す。
【0426】
実施例4:患者におけるアテゾリズマブおよびTCGAサブタイプと、局所進行性および転移性がん腫との関連性を試験する第II相研究の概要
研究監督および実施
この研究は、各参加現場での独立した審査委員会によって承認され、ヘルシンキ宣言の規定および臨床試験実施基準ガイドラインに完全に適合して実施された。最初の患者が参加した後、6ヶ月毎に、独立したデータ監視委員会が入手可能な安全性に関するデータを審査した。
【0427】
研究設計および処置
図7に概説されるように、これは、第2相の網羅的、多施設共同、シングルアームの2コホート試験であった。1つのコホートは、転移状況にある処置未経験の患者であり、シスプラチン不適格であると見なされる患者で構成された。第2のコホートは、手術不可能な局所進行性または転移性尿路上皮がんを有する患者であり、その疾患が、プラチナベースの化学療法経験後に進行し、21日周期の第1日目に投与される静脈内アテゾリズマブを1200mgの固定用量で受けた患者で構成された。投与の中断は認められたが、投与量の低減は認められなかった。患者は、同意プロセスの一環として、偽増悪の可能性を知らされており、研究医師と進行後の処置について検討するよう勧められた。型にはまらない応答の特定を可能にするため、患者は、臨床的利益のための予め指定された基準を満たした場合には、進行性疾患についてのRECIST v1.1基準の後にアテゾリズマブ処置を継続することが許容された。
【0428】
本試験の主要な有効性エンドポイントは、2つの異なる方法に基づいた奏効率(ORR)である:RECISTバージョン1.1での独立した審査機関(IRF)による評価、および免疫療法で認められる不規則な応答速度論をよりよく評価するための修正されたRECIST基準での研究者による評価(Eisehauerら、「Eur.J.Cancer.」第45巻第228~47頁(2009年);Nishinoら、「Eur.J.Radiol.」第84巻第1259~68頁(2015年)を参照されたい)。RECIST v1.1が、免疫療法剤からの応答の固有のパターンの利益を充分に捕捉するのに不適切であるという高まった認識に起因して、二重エンドポイントが選択された(Chiouら、「J.Clin.Oncol.」第33巻第3541~3、2015年)。副次的な有効性エンドポイントには、RECIST v1.1での独立した審査および修正されたRECISTでの研究者による評価の両方による奏効期間および無増悪生存期間、全生存期間、12ヶ月生存期間、ならびに安全性が含まれた。診査分析には、遺伝子発現プロファイリングおよびCD8+T細胞浸潤と臨床成績との間の関連性が含まれた。
【0429】
患者
患者は、組織学的または細胞学的に記録された局所進行性(T4b、任意のN;または任意のT、N2-3)または転移性(M1、IV期)の尿路上皮がん(腎盂、尿管、膀胱、尿道を含む)を有する場合、研究への参加に適格であった。適格な患者は、0または1の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス、RECIST v1.1によって定義される測定可能な疾患、適切な血液学的機能および終末器官機能を有し、かつ自己免疫疾患または有効感染を有しなかった。研究への参加前に充分な生存腫瘍量を有するホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍検体が必要とされた。
【0430】
研究評価
測定可能かつ評価可能な病変を、処置前に評価し、記録した。患者は、第1周期、第1日目に続く最初の12ヶ月間にわたり、9週間毎に腫瘍評価を経た。12ヶ月の後、12週間毎に腫瘍評価を行った。National Cancer Instituteの有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)、バージョン4.0に従って安全性評価を行った。診査用バイオマーカ評価のために保管用腫瘍組織の試料、ならびに血清および血漿試料を収集した。
【0431】
PD-L1免疫組織化学
患者の腫瘍試料を、診断用抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体SP142を使用して免疫組織化学によってPD-L1発現について予見的かつ中心的に評価した(Powlesら、「Nature」第515巻第558~62頁、2014年を参照されたい)。PD-L1腫瘍浸潤免疫細胞(IC)状態は、PD-L1陽性ICの割合によって定義された:IC0(1%未満)、IC1(1%以上、5%未満)、およびIC2/3(5%以上)。カルメット・ゲラン桿菌(Bacillus Calmette-Guerin:BCG)炎症反応は、PD-L1 IC状態の評価から除外した。免疫組織化学による腫瘍細胞およびCD8+浸潤に対するPD-L1発現の分析もまた実施した(Herbstら、「Nature」第515巻第563~7頁(2014年);Ferlay、「Int.J.Cancer」第136巻第E359~86頁(2012年)を参照されたい)。
【0432】
保管用パラフィン包埋組織からプレスクリーニング生検を収集した。患者は、研究への参加前に組織を中央研究所に送ることが求められた。試料はスクリーニングの際に処理された。ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織を、SP142を使用して免疫組織化学によってPD-L1のために予見的に染色した。マクロファージ、樹状細胞、およびリンパ球を含む腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1発現について試料をスコア化した。検体は、1%未満、1%以上5%未満、5%以上10%未満、または10%以上の腫瘍浸潤免疫細胞がPD-L1陽性であった場合にそれぞれ、免疫組織化学IC0、1、2、または3としてスコア化された。異なる時点または試料からの複数の検体を含む患者のPD-L1スコアは、最も高いスコアに基づいた。このアッセイは、IC1およびIC2カットオフでの臨床試験における試験的使用のために検証された。腫瘍細胞(TC)上のPD-L1発現の診査分析を実施した。検体は、1%未満、1%以上5%未満、5%以上50%未満、または50%以上の腫瘍細胞がPD-L1陽性であった場合にそれぞれ、免疫組織化学TC0、TC1、TC2、またはTC3としてスコア化された。
【0433】
診査用バイオマーカ分析
遺伝子発現レベルはIllumina TruSeq RNA Access RNA-seqによって定量化した(Wuら、「Bioinformatics」第26巻第873~81頁(2010年);Lawら、「Genome Biol.」第15巻第R29頁(2014年);Ritchieら、「Nucleic Acids Res.」第43巻第e47頁(2015年)を参照されたい)。分子サブタイプは、FFPE組織についてRNA Access RNA-seqプラットフォームの使用に適応するためのいくつかの改変と共に、TCGA(例えば、「Cancer Genome Atlas Research Network」、「Nature」第507巻第315~22頁(2014年)、およびJiangら、「Bioinformatics」第23巻第306~13頁(2007年)を参照されたく、これら各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の後に割り当てた。
【0434】
RNA-SEQライブラリ調製
RNAは、Torreら(2012年)「Cancer J Clin.」第65巻第87~108頁に記載されるように、FFPE腫瘍試料のスライドから単離された。Illumina TruSeq RNA Access Kitを使用してRNA-Seqを行った。製造業者のプロトコルに従って、ライブラリおよびハイブリッド捕捉を行った。簡潔には、RiboGreen(商標)によって定量化したおよそ100ngのRNAを入力として使用した。Bioanalyzer上の試料を泳動することによって品質を評価して、DV200(200bpより大きいRNA断片の%)値を判定した。ランダムプライマを使用して全RNAから第1鎖cDNA合成をプライミングし、続いてdUTPを用いた第2鎖cDNA合成によってストランド情報を保存した。二本鎖cDNAは、末端修復、Aテール付加、および試料バーコーディングのためのインデックス配列を含むIllumina特異アダプタのライゲーションを経た。得られたライブラリをPCR増幅し、定量化して、収率およびサイズ分布を判定した。全てのライブラリを正規化し、4つのライブラリを単一のハイブリダイゼーション/捕捉反応にプールした。プールされたライブラリを、ゲノムのコード領域に対応するビオチン化したオリゴのカクテルと共にインキュベートした。ストレプトアビジンをコンジュゲートしたビーズを使用してハイブリダイズされたビオチン化オリゴプローブを介して標的ライブラリ分子を捕捉した。2回のハイブリダイゼーション/捕捉反応の後、Illumina HiSeq上でのペアエンド2×50配列決定の前に、濃縮されたライブラリ分子を2回目のPCR増幅に供した。
【0435】
アラインメント、正規化、遺伝子発現定量化
品質のため、かつrRNA異物を除去するためにリードをフィルタリングし、次いで、以下のオプションを伴ってGSNAP(バージョン2013-10-10)を使用してゲノム(GRCh38)にアラインした:
-M2-n10-B2-i1-N1-w200000-E1--ペアマックス-rna=200000--クリップ重複(Moralesら、「J Urol.第116巻第180~3頁(1976年)を参照されたい)。試料毎に平均で5470万個の一致して、かつ独自にアラインしたリード対を得た。正規化の目的のため、DE Seqアルゴリズムを使用してサイズ係数を算出した(vo der Maaseら、「J Clin.Oncol.」第23巻第4602~8頁(2005年)を参照されたい)。次いで、voomアルゴリズムを使用してリードカウントを変換し、これは、視覚化に好適な対数変換された結果を提供する。カウントデータの変換に加えて、voomはまた、観察毎の重量を提供し、これにより、PD-L1 IHC ICまたは応答と比べて、差次的発現試験へのlimma経験的ベイズフレームワークの適用が可能となる(De Santisら、「J Clin.Oncol.」第30巻第191~9頁、2012年;Bellmuntら、「J.Clin.Oncol.」第27巻第4454~61頁、2009年を参照されたい)。
【0436】
サブタイプの割当て
分子サブタイプは、TCGAによって示され、Dongら、(2002年)「Nat Med.」第8巻第793~800頁に記載あれている膀胱の分子サブタイプに基づいた。遺伝子毎のシグナル動作における新鮮材料のための標準ポリ(A)RNA-seqとFFPE材料のためのRNA Access RNA-seqとの間の重大な差異に起因して、我々のデータにTCGA分類子を直接適用することはできなかった。代わりに、TCGAの
図3に対応する次の遺伝子:FGFR3、CDKN2A、KRT5、KRT14、EGFR、GATA3、FOXA1、およびERBB2の発現に従って試料をクラスタ化した(Dongら、「Nat.Med.」第8巻第793~800頁(2002年)参照)。miR-99a-5pおよびmiR-100-5pと同様に、TCGAはCDKN2AがFGFR3と反相関することを見出したため、TCGAのmiR-99a-5pおよびmiR-100-5pの代替としてCDKN2Aを使用した。Fig.1 in Dongら(2002年)「Nat Med.」第8巻第793~80頁の
図1のTCGAを参照のこと。次いで、各集団の遺伝子発現パターンをTCGAによって報告されるパターンと一致させることによって、患者の集団を簡便な様式でTCGA分子サブタイプに割り当てることができる。TCGA I、II、III、またはIVデータと一致しない混合した発現動作を有する1つの外集団(n=18)は、未分類のままとなり、下流分析から省略された。
【0437】
統計分析
有効性分析は処置意図(intent-to-treat:ITT)集団に基づいた。ベースラインのRECIST v1.1に基づく測定可能な疾患を有した処置意図患者として定義された客観的奏効評価可能集団において客観的奏効率を判定し、客観的奏効を達成した患者のサブセットにおいて奏効期間分析を行った。ある客観的奏効率の主要エンドポイントについては、階層的固定配列試験法を使用して、事前に設定された3集団(PD-L1IHCスコア[i]IC2/3、[ii]IC1/2/3、および[iii]全ての客観的奏効-評価可能な患者の客観的奏効-評価可能な患者)の処置群と既存対照群10%との客観的奏効率を比較した。これらの3つの集団における仮説試験を、最後の患者が参加してから最小24週間の追跡調査を誘因とする同じαレベルでの全体的なI型エラーを制御しながら、RECIST v1.1に従いIRF-によって評価された奏効率および修正されたRECIST基準に従い研究者によって評価された応答率に基づいて、0.05の特定の両側性αレベルで各試験を順次行った。任意の量の研究薬物を受けた参加患者として定義される全ての処置された患者に安全性分析を行った。PD-L1 IC後の追加のバイオマーカ分析は、診査用のみであり、予め指定されなかった。バイオマーカ評価可能集団は、利用可能な関連遺伝子発現データを有する客観的奏効評価可能集団に基づいた。
【0438】
実施例5:患者におけるアテゾリズマブおよびTCGAサブタイプと、局所進行性および転移性がん腫との関連性を試験する第II相研究の結果
患者特性
図7および
図8に示されるように、合計で486人の患者をスクリーニングし、315人の患者がコホート2における研究に参加した。310人の患者が、少なくとも1用量のアテゾリズマブを受け、有効性および安全性について評価可能であった。データカットオフの時点で、202人の患者(65%)が処置を中断(193人の患者が死亡し、患者による撤回に起因して8人、および他の理由に起因して1人)および9人の患者が研究を中止された)、最後に参加した患者から最小9.9ヶ月の追跡調査の後に118人の患者(35%)が研究に残った。
【0439】
表4は患者のベースラインの特徴を要約する。患者の41%は、転移性疾患のための2つ以上の全身レジメンを以前に受けてきた。多くの患者は、有害予後危険因子を有し、これには研究開始時の内臓および/または肝臓転移(それぞれ78%および31%)、ならびに10g/dL以下のベースラインヘモグロビン(22%)が含まれた。
【0440】
PD-L1免疫組織化学分析のための組織は、外科切除検体(n=215)、一次病変(n=23)または転移部位(n=41)からの生検、膀胱腫瘍試料の経尿道切除(TURBT)(n=29)、および不詳の病変からの生検(n=2)で構成された。PD-L1 IC2/3有病率は、一次病変または転移部位に対して、切除およびTURBT検体においてより高かった(それぞれ17%および8%に対して39%および34%)。患者は、PD-L1 IC群間で均等に分布された:IC0(33%)、IC1(35%)、およびIC2/3(32%)。ベースライン特徴は、IC2/3群、IC1/2/3群、および処置意図集団の間でバランスがとれていた(表4)。
【0441】
有効性
24週間の予め計画された一次分析は、アテゾリズマブでの処置が、10%の歴史的対照と比較して、予め指定されたIC群(IC2/3、27%(95%CI 19~37)、p<0.0001);IC1/2/3、18%(95%CI 13~24)、p=0.0004;および全ての患者、15%(95%CI、11~20)、p=0.0058)のそれぞれについて著しく改善されたRECIST v1.1奏効率(ORR)をもたらすことを示した(表5)。応答の持続性を評価するために、本明細書に記載される有効性の最新の分析を後に実施した(表6)。独立した放射線学的審査(RECIST v1.1)により、有効性の最新の分析は、IC2/3群において26%(95%CI、18~36)のORRを示し、これには完全奏効(CR)を達成した11%の患者が含まれる。IC1/2/3群において、ORRは18%(95%CI、13~24)であり、13人の患者(6%)においてCRが認められた。全ての評価可能な患者について、奏効率は15%(95%CI、11~19)であり、15人の患者(5%)において完全奏効が認められた。研究者により評価された奏効率(修正されたRECISTに基づく)は、RECIST v1.1の結果と同様であった(表6)。11.7ヶ月の追跡調査の中央値を伴って、奏効期間の中央値は、PD-L1免疫組織化学群のいずれにおいても未達成であった(範囲、2.0*、13.7*ヶ月、*打切り値)(IC2/3群のデータは、
図9A~
図9Cに示され、IC0およびIC1群は、
図10A~
図10Fに示される)。データカットオフの時点で、奏効患者45人中、38人(84%)において進行中奏効が認められた。奏効する時間の中央値は、2.1ヶ月であった(95%CI、2.0~2.2)。PD-L1 IC状態およびBellmunt危険スコアに関するORRの多変量ロジスティック回帰モデルから、Bellmunt危険スコアを制御した場合に、RECIST v1.1当たりのIRFによる確認レスポンダを有するオッズ比は、IC0群と比較してIC2/3群で4.12(95%CI:1.71、9.90)、IC0群と比較してIC1群で1.30(95%CI:0.49、3.47)であった。ロジスティック回帰結果はサブグループ分析と一致している。
【0442】
完全奏効を示す患者の臨床因子に関する診査サブセット分析は、ベースラインでの内臓転移(例えば、リンパ節のみの疾患)の不在が、最も高い完全奏効率(CRR)と関連付けられたことを示す(例えば、内臓転移の存在(あり/なし):あり(n=243)、1.2%(95%CI0.26~3.57)に対し、なし(n=67)について17.9%(95%CI、9.61~29.20。原発性腫瘍部位とCRRとの関連性の分析も実施した(例えば、膀胱(n=230)、6.5%(95CI、3.70~10.53);腎臓/骨盤(n=42)、0%(95%CI、0.00~8.41);尿管(n=23)、0%(95%CI、0.00~14.82);尿道(n=5)、0%(95%CI、0.00~52.18)、およびその他(n=10)、0%(95%CI、0.00、30.85))。加えて、パフォーマンスステータスとCRRとの関連を調べた(例えば、ECOG PSが0(n=117)、8.5%(95%CI、4.17~15.16)、ECOG PSが1(n=193)、2.6%(95%CI、0.85~5.94)と比較)。最後に、ICPD-L1状態とCRRとの関連を分析した(例えば、IC0(n=103)1.9%(95%CI、0.24~6.84)、IC1(n=107)1.9%(95%CI、0.23~6.59)と比較、IC2/3(n=100)11%(95%CI、5.62~18.83)と比較、全患者(n=310)4.8%(2.73-7.86)と比較)。
【0443】
転移性組織検体と比較した原発組織検体によるIRF RECIST v.1.1に基づくORRの分析は、解剖学的部位にかかわらず、PD-L1 IHC状態と臨床応答との関連性に支持的であった。一次分析における311人の患者のうち、233人が疾患の原発部位から得られた腫瘍検体に基づくPD-L1発現について評価された一方、78人は疾患の転移部位から得られた腫瘍検体におけるPD-L1発現について評価された。疾患の原発部位からの組織に基づいてPD-L1発現について評価された患者のうち、IRF RECIST v1.1に基づくORRは、IC2/3、IC1/2/3、および参加希望者集団についてそれぞれ、26%(95%CI16~37)、18%(95%CI12~25)、および16%(95%CI11~21)であった。疾患の転移部位からの組織に基づいてPD-L1発現について評価された患者のうち、IRF RECIST v1.1に基づくORRは、IC2/3、IC1/2/3、および参加希望者集団についてそれぞれ、32%(95%CI14~55)、20%(95%CI10~35)、および14%(95%CI7~24)であった。
【0444】
客観的奏効評価集団:全ての処置された患者は、研究者によって評価されたRECIST v1.1に基づいて、ベースラインで測定可能な疾患を有した。
【0445】
bP値は、H
o:ORR=10%対H
a:ORR≠10%であり、10%ORRは歴史的対照である、α=0.05。
【0446】
偽増悪の発生を説明するため、患者はIRF RECIST v1.1進行後の処置を認められた。121人の患者が、7.8週間の中央値にわたって進行後に処置され、これらのうち、21人(17%)が、
図11Bに示されるそれらのベースラインスキャンから少なくとも30%の標的病変の低減を後に経験した。RECIST進行後に処置された患者のおよそ27%が、疾患の安定を示した。
【0447】
認められた持続的奏効には、上気道疾患を有する患者および予後不良特性を有する患者が含まれた。患者における肝臓転移の存在が、肝臓転移を有しない患者と比較してより低い奏効率(19%と比較して5%、表7)をもたらした一方、これらの奏効は、データカットオフの時点で達成されなかった奏効期間にわたって持続性であった。内臓転移を有する患者(内臓転移を有しない患者について31%に対して10%)およびECOG PS 1の患者(ECOG PS 0の患者について25%に対して8%)において、同様の傾向が認められた。奏効期間の中央値は、分析されたサブグループのいずれにおいても未達成であった。
【0448】
およそ11.7ヶ月(範囲、0.2*~15.2、*は打切り値を意味する)の生存期間追跡調査中央値を有し、無増悪生存期間(PFS)(RECIST v1.1)の中央値は、全ての患者にわたって2.1ヶ月(95%CI、2.1~2.1)であり、全てのIC群にわたって同様であった。修正されたRECIST基準に従い研究者によって評価されたPFS中央値は、IC1/2/3群における2.9ヶ月(95%CI、2.1~4.1)および全ての患者における2.7ヶ月(95%CI、2.1~3.9)と比較して、IC2/3群において4.0ヶ月(95%CI、2.6~5.9)であった。
【0449】
全生存期間中央値は、IC2/3群について11.4ヶ月(95%CI、9.0~予測不可能)、IC1/2/3群において8.8ヶ月(95%CI、7.1~10.6)、および患者のコホート全体について7.9ヶ月(95%CI、6.6~9.3)であった(
図9D)。目印となる12ヶ月全生存率は、IC2/3群において48%(95%CI、38~58)、IC1/2/3群において39%(95%CI、32~46)、および処置意図集団において36%(95%CI、30~41)であった。転移状況で以前に1つのみの治療を受け、アジュバント/ネオアジュバント治療経験を有しない患者(n=124)において、全生存期間中央値は、IC2/3群について予測不可能であり(95%CI、9.3~予測不可能)、IC1/2/3群において10.3ヶ月(95%CI、7.5~12.7)、および二次治療集団全体について9.0ヶ月(95%CI、7.1~10.9)であった。
【0450】
安全性
処置期間中央値は、12週間であった(範囲、0~66)。全ての原因による任意のグレードの有害事象が、患者の97%において報告され、患者の55%は、グレード3~4の事象を経験した(表9を参照されたい)。患者の69%が任意のグレードの処置関連有害事象(AE)を有し、患者の16%がグレード3~4関連事象を有した。患者の11%において処置関連の重大な有害事象が認められた。処置関連死は研究において報告されなかった。処置関連有害事象の大多数は、それ自体は低度から中程度であり、疲労(30%)、悪心(14%)、食欲減退(12%)掻痒(10%)、発熱(9%)、下痢(8%)、発疹(7%)、および関節痛(7%)が最も一般的な任意のグレードの事象であった(表8;全ての原因による有害事象について表9を参照されたい)。グレード3~4の処置関連有害事象の発生率は低く、最も一般的には疲労が2%で生じた(表8)。発熱性好中球減少症の報告はなかった。
【0451】
患者の7%は、任意のグレードの免疫媒介性有害事象を有し、肺臓炎(2%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの増加(1%)、アラニンアミノトランスフェラーゼの増加(1%)、および発疹(1%)が最も一般的な有害事象であった。5%は、グレード3~4の免疫媒介性有害事象(全ての原因)を有した。免疫媒介性腎毒性は認められなかった。患者の30%は、用量中断につながる有害事象を有した。患者の4%は、処置撤回につながる有害事象を経験した。患者の22%(69/310)は、ステロイド使用を要する有害事象を有した。
【0452】
診査用バイオマーカ
腫瘍浸潤免疫細胞(IC)上のPD-L1免疫組織化学発現は、CD8 Tエフェクタセット(T
eff)における遺伝子の発現に関連付けられた(
図12A)。T
effセット内の遺伝子の中で、アテゾリズマブへの応答は、2つのインターフェロン-γ誘導性Tヘルパー1(T
H1)型ケモカインであるCXCL9(P=0.0057)およびCXCL10(P=0.0079)の高発現に最も密接に関連付けられた(
図12B)。より顕著ではないが同様の傾向は、セット内の他の遺伝子に関しても見られた(
図13A)。T細胞移動ケモカイン発現の増加と一貫して、腫瘍CD8+T細胞浸潤もPD-L1 IC(
図12C、P<0.001)およびアテゾリズマブへの応答(
図12D、P=0.027)の両方に関連付けられた。
【0453】
遺伝子発現分析(n=195)を使用して、TCGAによって定義されるルミナル(n=73)および基底(n=122)サブタイプに患者を分類した(
図14)。PD-L1 IC有病率は基底サブタイプ対ルミナルサブタイプ(60%対23%、P<0.001、
図12E)で高度に濃縮され、IC2/3発現は、乳頭様ルミナルクラスタIで15%、クラスタIIで34%、扁平上皮様基底クラスタIIIで68%、基底クラスタIVサブタイプで50%であった。対照的に、PD-L1腫瘍細胞TC2/3発現は、ほとんど排他的に基底サブタイプに見られ(ルミナルにおける4%に対して基底において39%、P<0.001、
図12F)、ORRと相関しなかった。PD-L1 IC2/3発現と一貫して、CD8 Tエフェクタ遺伝子発現は、ルミナルクラスタIIおよび基底クラスタIII/IVにおいて上昇し、ルミナルクラスタIにおいて上昇しなかった(
図14)。アテゾリズマブへの応答は、全てのTCGAサブタイプにおいて生じたが、予期せずルミナルクラスタIIサブタイプにおいて他のサブタイプにおけるよりも著しく高く、34%の奏効率を示した(P=0.0017、
図12G)。
【0454】
考察
30年前のメトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、およびシスプラチン化学療法での併用処置の開発以来、尿路上皮がんを有する患者のための処置成績における主要な改善はなかった(Sternbergら、「J.Urol.」第133巻第403~7頁、1985年を参照されたい)。この大規模なシングルアーム第2相研究の結果は、単剤療法アテゾリズマブが、進行性尿路上皮がんを有する患者であって、その腫瘍がプラチナベースの化学療法中またはその後に進行した患者における持続的な抗腫瘍応答を誘発したことを示す。この試験は、重度に前処置された患者を含み、とりわけ、奏効期間中央値は、11.7ヶ月の追跡調査中央値にかかわらず未達成であった。臨床的に関連する処置関連有害事象の低い発生率は、しばしば複数の併存症および/または腎機能障害を有するこの患者集団において、アテゾリズマブを広く適用可能にする。この持続的有効性および認容性は、現在利用可能な二次化学療法で認められる結果と比較して顕著である(see Bellmuntら、「J.Clin.Oncol.」第27巻第4454~61頁(2009年);Choueiriら、「J.Clin.Oncol.」第30巻第507~12頁(2012年);Bamburyら、「Oncologist」第20巻第508~15頁(2015年)を参照のこと)。
【0455】
三次または四次以降で処置された患者のおよそ42%を含んだコホート全体における12ヶ月OS率は、IC2/3群において48%(95%CI、38~58)、IC1/2/3群において39%(95%CI、32~46)、およびITT集団において36%(95%CI、30~41)であった。これらのOS結果は、二次化学療法または生物製剤を受けた646人の患者を評価した10の第2相試験のプールされた分析からの目印となる20%(95%CI、17~24)の12ヶ月生存率と比較して遜色ない(Agarwalら、「Clin.Genitourin.Cancer」第12巻第130~7頁、2014年を参照されたい)。
【0456】
アテゾリズマブへの応答は、従来のRECISTならびに不規則な応答速度論の両方に関連付けられ、追加的に進行後に処置された患者の17%は、RECIST v1.1進行後に標的病変の縮小を有した。無増悪生存期間中央値は、RECIST v1.1では、免疫組織化学サブセットにわたって同様であったが、がん免疫療法において認められ得る非古典的な応答を説明するために修正されたRECIST基準を利用した場合には増加した。この研究において、他の疾患における他の免疫チェックポイント剤と同様に、PFSとOSとの間の分離が認められ、これは、免疫療法での処置の利益をよりよく捕捉するためにRECIST v1.1の修正が必要とされることを更に示す。
【0457】
この研究では、SP142を使用した予見的PD-L1試験のためのスクリーニングの間に腫瘍検体を提出することが求められた。予め指定された分析において、免疫細胞上のPD-L1免疫組織化学発現のより高いレベルは、アテゾリズマブへのより高い奏効率およびより長い全生存期間に関連付けられた。対照的に、腫瘍細胞上のPD-L1発現の頻度は低く、客観的奏効との関連性は示さず、これは、免疫チェックポイント阻害剤に臨床的利益を付与するための適応免疫の重要性への更なる支持を与えた。
【0458】
同様に、免疫活性化遺伝子サブセット(例えば、CXCL9およびCD8A)および他の免疫チェックポイント遺伝子(PD-L1、CTLA-4、およびTIGIT、データは示されない)と、TCではなくICのPD-L1発現との関連性は、IC PD-L1発現が、尿路上皮がん腫瘍における適応免疫制御および既存(であるが抑制されている)の免疫応答の存在を表すことを示す(Herbstら、「Nature」第515巻第563~7頁(2014年)を参照されたい)。他の負の調節因子(例えば、TIGIT)の存在は、併用免疫療法アプローチが奏効を更に増強する可能性を更に示唆する。
【0459】
興味深いことに、TCGA分析によって識別された分子サブタイプは、アテゾリズマブへの応答にも関連付けられ、これは、PD-L1発現に加えて、根本的な免疫生物学においてサブタイプが異なることを示した。全てのTCGAサブタイプにわたって奏効が認められた一方で、活性Tエフェクタ細胞の存在に関連付けられる転写シグネチャを特徴とするルミナルクラスタIIサブタイプにおいて著しくより高い奏効率が認められた。対照的に、ルミナルクラスタIは、CD8+エフェクタ遺伝子の低い発現、より低いPD-L1 IC/TC発現、およびアテゾリズマブへのより低い応答に関連付けられ、これは、しばしば既存の免疫活性を欠く環境と一致する。基底クラスタIIIおよびIVも、PD-L1 IC発現およびCD8+エフェクタ遺伝子の増加に関連付けられた。しかしながら、ルミナルクラスタIIとは異なり、基底III/IVは、高いPD-L1 TC発現も呈した。ルミナルクラスタIIと比較した基底サブタイプにおける奏効率の低減は、PD-L1/PD-1経路の阻害によって有効なT細胞活性を妨げる他の免疫抑制因子が基底サブタイプ内に存在することを強く示す。ルミナル対基底サブタイプの免疫環境の差異は、更なる合理的な組合せまたは連続処置戦略を発展させるために根本的な免疫生物学を更に理解する必要性を強調する。
【0460】
PD-L1 IC状態はアテゾリズマブ応答に明白に関連付けられるが、PD-L1 IC染色に基づくモデルへのTCGA遺伝子発現サブタイプの組み込みは、応答との関連性を著しく向上させた(
図15)。したがって、疾患サブタイプは、免疫細胞におけるPD-L1発現によって既に提供される情報を単に繰り返すだけではなく、むしろ独立した相補的な情報を提供する。
【0461】
実施例6:シスプラチン不適な局所進行性または転移性の尿路上皮がん(UC)患者における第一選択治療としてのアテゾリズマブ:IMvigor210コホート1からのPD-L1状態別の有効性の推移
シスプラチンベースの化学療法は、現在、局所進行性または転移性の尿路上皮がん(mUC)患者に対する標準的な第一選択(1L)処置である。患者のおよそ50%はシスプラチン不適格である。IMvigor210は、局所進行性またはmUCにおけるアテゾリズマブ単剤療法の、世界的な単一群2コホート第II相試験である。本実施例で注目したコホート1では、未処置の局所進行性またはmUCのシスプラチン不適な患者(n=119)における第一選択(1L)としてアテゾリズマブが研究された。コホート2では、プラチナベースの化学療法で進行した患者(n=310)を対象にアテゾリズマブを研究した。コホート1では、アテゾリズマブの単剤療法により臨床的に意義のある有効性が得られ、忍容性も良好であった。この例では、PD-L1の状態による結果を含め、経時的な有効性を評価した。
【0462】
方法
IMvigor210コホート1(NCT02951767)の患者は、局所進行性またはmUCであり、かつmUCに対する処置を受けていない患者であった。以下の基準のいずれかによるシスプラチンの不適格性が必要とされた:糸球体濾過率30mL/分が超~60mL/分未満、グレード2以上の末梢神経障害若しくは難聴、または米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータスが2。PD-L1検査(VENTANA SP142 IHCアッセイ)により評価可能な腫瘍組織もまた必要であった。患者は、RECIST v1.1に基づく進行性疾患(PD)または忍容性のない毒性が認められるまで、アテゾリズマブ1200mgを3週間ごとに静脈内投与された。
【0463】
この分析では、独立して審査されたRECIST v1.1の客観的奏効率(ORR;主要エンドポイント)、奏効期間(DOR)、および全生存期間(OS;副次的エンドポイント)を、処置意図(ITT)患者で、および4つのデータカットにおけるPD-L1腫瘍浸潤免疫細胞(IC)の状態に基づくサブグループ(IC2/3、5%以上、IC0/1、5%未満)で、記述的に評価した(
図16)。
【0464】
結果
ORRの推移を表10および
図17に示す。注目すべきは、2015年9月と最新2017年のデータカットとの間に、PD-L1 IC2/3状態である患者の完全奏効(CR)率が3%から13%へと増加したことである。各データカットにおける進行中の奏効の割合を表11に示す。表11のデータは後続のPDまたは死亡を伴わないレスポンダを対象とし、奏効は独立した審査機関ごとのものである。PD-L1の状態にかかわらず、多くの患者で奏効が持続しており、2017年7月12日現在、ITT、IC2/3、およびIC0/1の集団でほとんどの奏効が依然として継続している。2017年7月12日時点でITTおよびIC2/3では奏効期間(DOR)の中央値が未到達であり、IC0/1のDOR中央値は30.4ヶ月であった)。
【0465】
経時的なOSデータを表12に示す(「mOS」はOS中央値、「NE」は推定不能、「mo」は月、「1-y」は1年を示す)。2017年のカットオフ時点で、以前のデータカットでは評価できなかった2年後のOSは、ITT集団で41%、IC2/3集団で39%、IC0/1集団で42%であった。PD-L1状態の機能に応じた、処置期間および奏効、ならびにOSを、
図18に示す。多くのレスポンダは長期奏効を経験した。遅発奏効(処置開始後4ヵ月超)を経験した患者は、依然として長期的な有益性を経験した。
【0466】
結論
IMvigor210コホート1では、更なる追跡調査(最長29ヶ月)により、ORR、CR率、およびOSの進展が見られた。IC2/3サブグループでは特に、CRへの転換の遅れが見られた。PD-L1の状態にかかわらず奏効は持続したと見られ、一次分析、OSの継続的な改善が認められた。比較有効性試験ではまた、コホート1の患者の潜在的かつ長期的な臨床効果が示唆されている。これらのデータは、例えば、IC2/3カットオフ(腫瘍細胞が占める腫瘍面積の5%以上10%未満をカバーする腫瘍浸潤免疫細胞、関連する腫瘍内間質、および隣接する腫瘍周囲線維形成性間質における、PD-L1の検出可能な発現)における腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現は、アテゾリズマブなどのPD-L1軸結合アンタゴニストを含む抗がん療法に応答する可能性が高い患者を特定するために、ならびに患者の選択および最適化処置のために使用することができることを実証する。
【0467】
他の実施形態
前述の本発明は、理解を明確にする目的で、図示および例示の方法によりある程度詳細に説明されてきたが、これらの説明および例示は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用された全ての特許文献および科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれている。
SEQUENCE LISTING
<110> Genentech, Inc.
<120> THERAPEUTIC AND DIAGNOSTIC METHODS FOR BLADDER CANCER
<130> 50474-189WO2
<150> US 62/733,573
<151> 2018-09-19
<160> 33
<170> PatentIn version 3.5
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<223> Synthetic Polypeptide
<400> 18
Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Arg
1 5 10
<210> 19
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 19
Gly Phe Thr Phe Ser Asp Ser Trp Ile His
1 5 10
<210> 20
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 20
Ala Trp Ile Ser Pro Tyr Gly Gly Ser Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser Val
1 5 10 15
Lys Gly
<210> 21
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 21
Arg His Trp Pro Gly Gly Phe Asp Tyr
1 5
<210> 22
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 22
Arg Ala Ser Gln Asp Val Ser Thr Ala Val Ala
1 5 10
<210> 23
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 23
Ser Ala Ser Phe Leu Tyr Ser
1 5
<210> 24
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 24
Gln Gln Tyr Leu Tyr His Pro Ala Thr
1 5
<210> 25
<211> 118
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 25
Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Asp Ser
20 25 30
Trp Ile His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Trp Ile Ser Pro Tyr Gly Gly Ser Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Ala Asp Thr Ser Lys Asn Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Arg His Trp Pro Gly Gly Phe Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr
100 105 110
Leu Val Thr Val Ser Ser
115
<210> 26
<211> 122
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 26
Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Asp Ser
20 25 30
Trp Ile His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Trp Ile Ser Pro Tyr Gly Gly Ser Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Ala Asp Thr Ser Lys Asn Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Arg His Trp Pro Gly Gly Phe Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr
100 105 110
Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys
115 120
<210> 27
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 27
Trp Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser
1 5 10
<210> 28
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 28
Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys
1 5 10
<210> 29
<211> 30
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 29
Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser
20 25 30
<210> 30
<211> 14
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 30
Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val Ala
1 5 10
<210> 31
<211> 15
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 31
Trp Gly Gln Gly Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys
1 5 10 15
<210> 32
<211> 447
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 32
Glu Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Gly Gly Leu Val Gln Pro Gly Gly
1 5 10 15
Ser Leu Arg Leu Ser Cys Ala Ala Ser Gly Phe Thr Phe Ser Asp Ser
20 25 30
Trp Ile His Trp Val Arg Gln Ala Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Val
35 40 45
Ala Trp Ile Ser Pro Tyr Gly Gly Ser Thr Tyr Tyr Ala Asp Ser Val
50 55 60
Lys Gly Arg Phe Thr Ile Ser Ala Asp Thr Ser Lys Asn Thr Ala Tyr
65 70 75 80
Leu Gln Met Asn Ser Leu Arg Ala Glu Asp Thr Ala Val Tyr Tyr Cys
85 90 95
Ala Arg Arg His Trp Pro Gly Gly Phe Asp Tyr Trp Gly Gln Gly Thr
100 105 110
Leu Val Thr Val Ser Ser Ala Ser Thr Lys Gly Pro Ser Val Phe Pro
115 120 125
Leu Ala Pro Ser Ser Lys Ser Thr Ser Gly Gly Thr Ala Ala Leu Gly
130 135 140
Cys Leu Val Lys Asp Tyr Phe Pro Glu Pro Val Thr Val Ser Trp Asn
145 150 155 160
Ser Gly Ala Leu Thr Ser Gly Val His Thr Phe Pro Ala Val Leu Gln
165 170 175
Ser Ser Gly Leu Tyr Ser Leu Ser Ser Val Val Thr Val Pro Ser Ser
180 185 190
Ser Leu Gly Thr Gln Thr Tyr Ile Cys Asn Val Asn His Lys Pro Ser
195 200 205
Asn Thr Lys Val Asp Lys Lys Val Glu Pro Lys Ser Cys Asp Lys Thr
210 215 220
His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly Pro Ser
225 230 235 240
Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser Arg
245 250 255
Thr Pro Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp Pro
260 265 270
Glu Val Lys Phe Asn Trp Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His Asn Ala
275 280 285
Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Ala Ser Thr Tyr Arg Val Val
290 295 300
Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys Glu Tyr
305 310 315 320
Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys Thr
325 330 335
Ile Ser Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr Leu
340 345 350
Pro Pro Ser Arg Glu Glu Met Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr Cys
355 360 365
Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile Ala Val Glu Trp Glu Ser
370 375 380
Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val Leu Asp
385 390 395 400
Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp Lys Ser
405 410 415
Arg Trp Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu Ala
420 425 430
Leu His Asn His Tyr Thr Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly
435 440 445
<210> 33
<211> 214
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic Polypeptide
<400> 33
Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly
1 5 10 15
Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Ala Ser Gln Asp Val Ser Thr Ala
20 25 30
Val Ala Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile
35 40 45
Tyr Ser Ala Ser Phe Leu Tyr Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro
65 70 75 80
Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Tyr Leu Tyr His Pro Ala
85 90 95
Thr Phe Gly Gln Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys Arg Thr Val Ala Ala
100 105 110
Pro Ser Val Phe Ile Phe Pro Pro Ser Asp Glu Gln Leu Lys Ser Gly
115 120 125
Thr Ala Ser Val Val Cys Leu Leu Asn Asn Phe Tyr Pro Arg Glu Ala
130 135 140
Lys Val Gln Trp Lys Val Asp Asn Ala Leu Gln Ser Gly Asn Ser Gln
145 150 155 160
Glu Ser Val Thr Glu Gln Asp Ser Lys Asp Ser Thr Tyr Ser Leu Ser
165 170 175
Ser Thr Leu Thr Leu Ser Lys Ala Asp Tyr Glu Lys His Lys Val Tyr
180 185 190
Ala Cys Glu Val Thr His Gln Gly Leu Ser Ser Pro Val Thr Lys Ser
195 200 205
Phe Asn Arg Gly Glu Cys
210
シスプラチン含有化学療法に適格ではない局所進行性または転移性の尿路上皮がんに罹患している患者を処置する方法であって、治療有効量のアテゾリズマブを含む抗がん療法を前記患者に投与することを含み、前記患者が前記尿路上皮がんについて事前に未処置であり、かつ前記患者から得られた腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1の検出可能な発現レベルに基づき約10%以上の完全奏効(complete response:CR)を有する可能性のある抗がん療法に応答する可能性が高いと前記患者が特定されている、方法。