(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153633
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】バイオベースのバリアコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 189/00 20060101AFI20241022BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20241022BHJP
D21H 17/14 20060101ALI20241022BHJP
D21H 17/22 20060101ALI20241022BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20241022BHJP
D21H 27/10 20060101ALI20241022BHJP
C09D 191/00 20060101ALI20241022BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C09D189/00
D21H19/10 B ZBP
D21H17/14
D21H17/22
D21H21/14 Z
D21H27/10
C09D191/00
B65D65/46
D21H19/10 B
C09D189/00 ZBP
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024106302
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2021539338の分割
【原出願日】2019-09-12
(31)【優先権主張番号】62/730,241
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.スタイロフォーム
(71)【出願人】
【識別番号】521105950
【氏名又は名称】グリーンテック・グローバル・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GREENTECH GLOBAL PTE, LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】スペンダー,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ビロドウ,マイケル・アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル,サミュエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セルロース系材料に対する耐油性および/または耐グリース性を高めるが、その生分解性を犠牲にすることのないバリアコーティングを提供する。
【解決手段】プロラミンと少なくとも1種のポリオール脂肪酸エステル(PFAE)とを含むバリアコーティングであって、前記ポリオールが、環式構造と1~2個の脂肪酸部分または3~5個の脂肪酸部分とを含み、脂肪酸が飽和脂肪酸である、バリアコーティングとする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロラミンと少なくとも1種のポリオール脂肪酸エステル(PFAE)とを含むバリア
コーティングであって、前記ポリオールが、環式構造と1~2個の脂肪酸部分または3~
5個の脂肪酸部分とを含み、脂肪酸が飽和脂肪酸である、バリアコーティング。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティングを含む物品であって、前記コーティングが、前記物品の
表面が油および/またはグリースの塗布に対して実質的に耐性になるのに十分な濃度で存
在する、物品。
【請求項3】
前記プロラミンが、ゼイン、ホルデイン、グリアジン、カフィリンおよびそれらの組合
せからなる群から選択される、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項4】
前記ポリオールが、炭水化物を含む、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項5】
前記ポリオールが、単糖、二糖または三糖を含む、請求項1に記載のバリアコーティン
グ。
【請求項6】
前記ポリオールが、スクロースまたはラクトースを含む、請求項1に記載のバリアコー
ティング。
【請求項7】
脂肪酸が、不飽和脂肪酸である、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項8】
ポリビニルアルコール(PvOH)、ポリ乳酸(PLA)、クレー、タルク、沈降炭酸
カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、天然および合成ラテックス、グリオキシル、ならびに
それらの組合せからなる群から選択される1種または複数の材料をさらに含む、請求項1
に記載のバリアコーティング。
【請求項9】
前記脂肪酸が、天然源から得られる、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項10】
前記脂肪酸が、油糧種子から得られる、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項11】
前記油糧種子が、ダイズ、ピーナッツ、アブラナ、大麦、カノーラ、ゴマ種子、綿種子
、パーム核、ブドウ種子、オリーブ、ベニバナ、ヒマワリ、コプラ、トウモロコシ、ココ
ナッツ、アマニ、ヘーゼルナッツ、小麦、コメ、ジャガイモ、カッサバ、豆果、カメリナ
種子、マスタード種子、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に
記載のバリアコーティング。
【請求項12】
前記ポリオールがスクロースを含み、脂肪酸が油糧種子から得られる、請求項1に記載
のバリアコーティング。
【請求項13】
紙、板紙、製紙用パルプ、食品貯蔵用カートン、食品貯蔵用袋、輸送用袋、コーヒーま
たは茶用容器、ティーバッグ、ベーコン用板紙、おむつ、雑草ブロック/バリアファブリ
ックまたはフィルム、マルチングフィルム、植木鉢、パッキングビーズ、バブルラップ、
吸油材料、ラミネート、封筒、ギフトカード、クレジットカード、手袋、レインコート、
OGR紙、買い物袋、堆肥バッグ、剥離紙、食器、ホットまたはコールド飲料を保持する
ための容器、カップ、紙タオル、プレート、炭酸入り液体貯蔵用ビン、絶縁材料、非炭酸
液体貯蔵用ビン、食品ラップ用フィルム、生ごみ処理容器、食品取扱い用具、カップ用の
蓋、ファブリック繊維、水の貯蔵および運搬用具、アルコールまたは非アルコール性飲料
の貯蔵および運搬用具、電子製品用の外部ケーシングまたはスクリーン、家具の内部また
は外部構成品、カーテン、室内装飾用品、フィルム、箱、シート、トレー、パイプ、導水
管、医薬品のパッケージング、衣類、医療機器、避妊具、キャンプ用具、成形されたセル
ロース系材料、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の物
品。
【請求項14】
生分解性および/または堆肥化可能である、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項15】
疎油耐性のためにセルロースベースの材料を調節可能に誘導体化する方法であって、前
記セルロースベースの材料を、プロラミンと少なくとも1種のポリオール脂肪酸エステル
(PFAE)とを含むバリアコーティングと接触させ、接触させた前記セルロースベース
の材料を熱、放射線、触媒またはそれらの組合せに、前記バリアコーティングを前記セル
ロースベースの材料に付着させるのに十分な時間曝露するステップを含む、方法。
【請求項16】
過剰なバリアコーティングを除去するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法
。
【請求項17】
前記バリアコーティングが、サイズプレスで塗布される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
プロラミンと少なくとも1種のポリオール脂肪酸エステル(PFAE)とから本質的に
なるバリアコーティングであって、前記ポリオールが、環式構造と1~2個の脂肪酸部分
または3~5個の脂肪酸部分とを含む、バリアコーティング。
【請求項19】
請求項18に記載のコーティングを含む物品であって、前記コーティングが、前記物品
の表面が第2の疎油性物質の非存在下で油および/またはグリースの塗布に対して実質的
に耐性になるのに十分な濃度で存在する、物品。
【請求項20】
クレー、タルク、沈降炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、TiO2、およびそれら
の組合せからなる群から選択される無機粒子をさらに含む、請求項18に記載のバリアコ
ーティング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、セルロース系化合物含有材料の処理する方法に関し、さらに詳細に
は、ポリオール脂肪酸エステルとプロラミンとを含有するバイオベースのバリアコーティ
ングおよび/または組成物を使用して、セルロースベースの材料の疎水性/疎油性を高め
る方法であって、そのポリオール脂肪酸エステルを、公知のプロラミン溶媒または可塑剤
の代わりに使用することができ、そのようなバリアコーティングまたは組成物および方法
が、紙、板紙および包装製品を含めてセルロースベースの材料の表面を改質する際に有用
である、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界は、フルオロカーボンが物品の表面エネルギーを低下させる能力のために、フル
オロカーボン化学に基づく化合物を長年利用して、油および/またはグリースの浸透に対
する耐性が改善された物品を製造してきた。過フッ素化炭化水素の使用について持ち上が
ってきている1つの問題は、環境における残留性である。EPAおよびFDAは、最近そ
れらの化合物の供給源、環境運命および毒性の再調査を始めた。最新の研究により、学童
から採取された血液試料中のペルフルオロオクタンスルホネートの出現率が非常に高い(
>90%)ことが報告された。それらの化合物の費用および可能性のある環境賠償責任に
より、製造業者は、油および/またはグリースの浸透に対する耐性を有する物品を製造す
る代替手段を探求せざるを得なかった。
【0003】
表面エネルギーを低下させると、物品の耐浸透性が改善されるが、いくつかの不利な点
もある。例えば、フルオロカーボンで処理したテキスタイルファブリックは良好な耐汚染
性を示すが、一度汚れると、清浄組成物が浸透し、ひいてはファブリックから汚れを取り
除く能力は影響される可能性があり、それによって、ファブリックが永久に汚れ、有効寿
命が低減されるおそれがある。別の例は、耐グリース紙であり、その後に印刷され、かつ
/または接着剤でコーティングされることになっている。その場合、必要な耐グリース性
はフルオロカーボンでの処理により達成されるが、紙の低表面エネルギーにより、ブロッ
キング、バックトラップモットル、不十分な接着および整合を含めて、印刷インキまたは
接着剤受理性に関連した問題が引き起こされることがある。接着剤を塗布した剥離紙とし
て耐グリース紙を使用しようとする場合、低表面エネルギーは、接着力を低減することが
ある。印刷適性、被覆性または接着を改善するために、低表面エネルギー物品をコロナ放
電、化学処理、火炎処理などの後成形プロセスにより処理することができる。しかし、そ
のようなプロセスは物品の製造コストを上げ、他の不利な点を有することがある。
【0004】
プロラミンは、穀物粒の貯蔵タンパク質として存在するタンパク質性化合物である。例
えば、ゼインは、トウモロコシ粉砕の副生物である、トウモロコシグルテンミール中に見
られるプロラミンである。ゼインは、プロリン含有量がより高く、水性脂肪族アルコール
可溶である。ゼイン特性は、いくつかの可塑剤を使用して改変することができる。トウモ
ロコシグルテンミールの主な用途は、典型的には低価格で販売される動物用飼料であるの
で、ゼインから付加価値製品を開発することに対する関心があった。しかし、溶媒および
可塑剤の多くは、食品工業での使用に適していない。
【0005】
ポリマー材料としてのゼインに対する新たな関心は、プラスチックの固体廃棄物処理へ
の悪影響によっても刺激された。ゼインは、フィルム、コーティングおよびプラスチック
用途の原料としてのいくつかの潜在的な利点をもたらす。ゼインは生分解性であり、毎年
再生可能である。トウモロコシの年間余剰が、実質的な原料資源となる。しかし、プラス
チック材料としてのゼインの使用について問題もある。ゼインは生物材料であり、大部分
の生物材料のように、水によって影響される。それらのタンパク質をよりよく活用するた
めに、需要のあるプロラミン特性を水の影響を受けにくくするように、ゼイン含有組成物
を配合するのが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、セルロース系材料を処理する方法であって、セルロース含有材料を、セルロ
ース系成分の生分解性/リサイクル性を維持しながら疎油性を高める組成物で処理するス
テップを含む、方法に関する。開示された方法は、プロラミンとポリオール、例えば、糖
、脂肪酸エステル(SFAEまたはPFAE)とを含むバリアコーティングをセルロース
に塗布するステップを含む。
【0007】
実施形態において、プロラミンとSFAEなど少なくとも1種のPFAEとを含むバリ
アコーティングであって、コーティングを曝露する物品の表面が油および/またはグリー
スの塗布に対して実質的に耐性になるのに十分な濃度で存在する、バリアコーティングが
開示される。関連した態様において、プロラミンとしては、ゼイン、ホルデイン、グリア
ジン、カフィリンおよびそれらの組合せが挙げられる。
【0008】
一態様において、少なくとも1種のPFAEは、環式化合物を含む。一実施形態におい
て、少なくとも1種のPFAEは、炭水化物を含む。一実施形態において、少なくとも1
種のPFAEは、オリゴ糖を含む。一実施形態において、少なくとも1種のPFAEは、
単糖、二糖または三糖を含む。実施形態において、少なくとも1種のPFAEは、二糖を
含む。実施形態において、少なくとも1種のPFAEは、スクロースまたはラクトースを
含む。一態様において、ポリオールは、1~2個の脂肪酸部分または3~5個の脂肪酸部
分を含む。一態様において、脂肪酸部分は、飽和脂肪酸、または飽和脂肪酸と不飽和脂肪
酸との組合せである。
【0009】
一態様において、コーティングは、ポリビニルアルコール(PvOH)、ポリ乳酸(P
LA)、クレー、沈降炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム(ground calcium carbonate
)、天然および/もしくは合成ラテックス、TiO2、タルク、グリオキシル(glyo
xyl)、ならびにそれらの組合せを含む、1種または複数の組成物を含む。
【0010】
一態様において、脂肪酸部分は、天然源から得られる。関連した態様において、天然源
は油糧種子であり、油糧種子としては、ダイズ、ピーナッツ、アブラナ、大麦、カノーラ
、ゴマ種子、綿種子、パーム核、ブドウ種子、オリーブ、ベニバナ、ヒマワリ、コプラ、
トウモロコシ、ココナッツ、アマニ、ヘーゼルナッツ、小麦、コメ、ジャガイモ、カッサ
バ、豆果、カメリナ種子、マスタード種子、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0011】
一態様において、PFAEは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエス
テル、ペンタエステル、またはそれらの混合物である。
【0012】
別の態様において、バリアコーティングは、生分解性および/または堆肥化可能である
。関連した態様において、物品は、紙、板紙、製紙用パルプ、食品貯蔵用カートン、食品
貯蔵用袋、輸送用袋、コーヒーまたは茶用容器、ティーバッグ、ベーコン用板紙、おむつ
、雑草ブロック/バリアファブリックまたはフィルム、マルチングフィルム、植木鉢、パ
ッキングビーズ、バブルラップ、吸油材料、ラミネート、封筒、ギフトカード、クレジッ
トカード、手袋、レインコート、耐油およびグリース(OGR)紙、買い物袋、堆肥バッ
グ、剥離紙、食器、ホットまたはコールド飲料を保持するための容器、カップ、紙タオル
、プレート、炭酸入り液体貯蔵用ビン、絶縁材料、非炭酸液体貯蔵用ビン、食品ラップ用
フィルム、生ごみ処理容器、食品取扱い用具、カップ用の蓋、ファブリック繊維、水の貯
蔵および運搬用具、アルコールまたは非アルコール性飲料の貯蔵および運搬用具、電子製
品用の外部ケーシングまたはスクリーン、家具の内部または外部構成品、カーテン、室内
装飾用品、フィルム、箱、シート、トレー、パイプ、導水管、医薬品のパッケージング、
衣類、医療機器、避妊具、キャンプ用具、成形されたセルロース系材料、ならびにそれら
の組合せである。
【0013】
一実施形態において、セルロースベースの材料を、プロラミンと糖脂肪酸エステル(S
FAE)など少なくとも1種のポリオール脂肪酸エステル(PFAE)とを含むバリアコ
ーティングと接触させ、接触させたセルロースベースの材料を、バリアコーティングがセ
ルロースベースの材料に付着するのに十分な時間、熱、放射線、触媒またはそれらの組合
せに曝露するステップを含む、疎油耐性のためにセルロースベースの材料を調節可能に誘
導体化する方法が開示されている。関連した態様において、方法は、過剰なバリアコーテ
ィングを除去するステップを含むことができる。別の関連した態様において、バリアコー
ティングは、サイズプレスで塗布される。
【0014】
一実施形態において、少なくとも1種の糖脂肪酸エステル(SFAE)とプロラミンと
を含むバリアコーティングが開示されている。関連した態様において、コーティングは、
物品の表面が第2の疎油性物質の非存在下で油および/またはグリースの塗布に対して実
質的に耐性になるのに十分な濃度で物品上に存在する。別の関連した態様において、バリ
アコーティングは、クレー、タルク、沈降炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、TiO
2、およびそれらの組合せをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】未処理の中空隙率Whatman濾紙の走査電子顕微鏡写真(SEM)(倍率58倍)を示す図である。
【
図2】未処理の中空隙率Whatman濾紙のSEM(倍率1070倍)を示す図である。
【
図3】リサイクルパルプから作製された紙をミクロフィブリル化セルロース(MFC)でコーティングする前(左側)およびコーティングした後(右側)のSEM(倍率27倍)を突き合わせて比較した図である。
【
図4】リサイクルパルプから作製された紙をMFCでコーティングする前(左側)およびコーティングした後(右側)のSEM(倍率98倍)を突き合わせて比較した図である。
【
図5】ポリビニルアルコール(PvOH)、◇;SEFOSE(登録商標)+PvOH、1:1(v/v)、□;Ethylex(デンプン)、△;SEFOSE(登録商標)+PvOH、3:1(v/v)、×という様々なコーティング配合物で処理した紙における水の浸透を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本組成物、方法、および方法論を記載する前に、本発明は、記載された特定の組成物、
方法および実験条件が変わりうるので、そのような組成物、方法および条件に限定されな
いことを理解すべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲にのみ限定されるの
で、本明細書で用いられる用語論は、特定の実施形態を記載する目的にすぎず、限定する
ことを意図したものではないことも理解されるべきである。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」、「a
n」、および「the」は、文脈上からそうでないことがはっきりしていない限り、複数
の指示の指示内容を含む。したがって、例えば、「糖脂肪酸エステル」への言及には、本
開示などを読むと当業者に明らかになる本明細書に記載されるタイプの1種または複数の
糖脂肪酸エステルおよび/または組成物が含まれる。
【0018】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本発明が属す
る技術分野の当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。修正および変形形態が、
本開示の趣旨および範囲内に包含されることが理解されるように、本明細書に記載される
ものと同様または同等ないずれの方法および材料も、本発明の実施または試験において使
用することができる。
【0019】
本明細書で用いられるように、「約」、「およそ」、「実質的に」、および「大幅に」
は、当業者であれば理解し、用語が用いられている文脈に応じてある程度変わる。用語が
用いられている文脈を考慮して、当業者に明瞭でない用語の使用がある場合、「約」およ
び「およそ」は、特定の用語のプラスまたはマイナス<10%を意味し、「実質的に」お
よび「大幅に」は、特定の用語のプラスまたはマイナス>10%を意味する。「~を含む
」および「~から本質的になる」は、当技術分野において慣例の意味を有する。
【0020】
本開示は、安定な水性バリアコーティングおよび/または組成物を生成するステップを
含む、ゼインなどのプロラミンから付加価値製品を製造するための組成物および方法を提
供する。表面または基材に適用されると、組成物によって、耐油性および/または耐グリ
ース性を有する物品が製造される。組成物は、高表面エネルギーを有する物品を製造しな
がら、それらのバリア性を達成する。その結果、組成物は、物品の表面エネルギーを低下
させるバリア組成物の使用に関連している不利な点を回避する。
【0021】
実施形態において、本開示によるバリアコーティングまたは組成物は、1種または複数
のプロラミンを含む。プロラミンは、トウモロコシ、小麦、大麦、コメおよびモロコシな
どの穀物粒の貯蔵タンパク質として存在するタンパク質性化合物である。代表的なプロラ
ミンとしては、例えばゼイン、ホルデイン、グリアジンおよびカフィリンが挙げられる。
関連した態様において、プロラミンは、ゼインとすることができる。ゼインは、Glob
al Protein Products、Fairfield、MEを含めて様々な製
造業者から市販されている。
【0022】
実施形態において、バリアコーティングまたは組成物は、スクロース脂肪酸エステルを
含めて1種または複数のポリオールまたは糖の脂肪酸エステルも含む。関連した態様にお
いて、組成物は、ゼインおよびポリオール脂肪酸エステルを含む。
【0023】
一態様において、ポリオール脂肪酸エステルが、グリコール、スルホンアミド、アミド
、グリコール、ソルビトール、エチレングリコールなど公知の1次および2次可塑剤を含
めて公知のゼイン可塑剤に置き換わるために使用されることがある(例えば、全体として
引用することにより本明細書の一部をなすものとするLawton JW, Cerea
l Chem (2002) 79(1): 1-18の表IVを参照のこと)。
【0024】
実施形態において、本開示は、基材の表面をゼイン-ポリオール脂肪酸エステルの組合
せを含むバリア組成物で処理することによって、得られた表面が、耐油性および/または
耐グリース性をもつことを示す。ポリオール脂肪酸エステルおよびゼインは、例えば細菌
酵素によって除去されると消化され、したがって、基材の生分解性は、バリアコーティン
グによって影響されない。本明細書に開示されるバリア組成物はしたがって、高表面エネ
ルギーを有する物品を製造するようにセルロース基材の表面を誘導体化する理想的な解決
法である。さらに、ポリオール脂肪酸エステルは、湿気(水)のゼイン特異的特性(例え
ば、フィルム形成、引張強さなど)に対する効果を低減させる。
【0025】
実施形態において、1~2の低範囲置換度(DS)または3~5の中範囲DSを有する
、飽和脂肪酸部分を含有するポリオール脂肪酸エステルを直接プロラミンと使用すること
ができる。一態様において、1~5のDSを有するスクロース脂肪酸エステルを融点に加
熱すると、ゼインを直接にブレンドすることができる。関連した態様において、次いで、
そのような混合物を運動エネルギーの印加(混合)および水によって水性ゼイン分散体に
変換することができる。別の関連した態様において、そのような分散体は少なくとも何日
間か安定である。
【0026】
DSは、ポリオールに結合している脂肪酸部分の数に関する。実施形態において、DS
測定基準は、分子の集団の平均を表す。脂肪酸は、天然源、例えば動物源から得ることが
でき、したがって、1種だけの脂肪酸種の純粋な源ではなくいろいろな脂肪酸の集団を表
す。出発物質の脂肪酸は不均質でもあるので、PFAEなど複合体を形成すると、使用し
たポリオールにも応じて、生成物の混合集団が得られる可能性がある。したがって、生成
物は、単一のDSを有する集団ではなくある範囲のDSを含むことが多い。
【0027】
対照的に、>5のDS(すなわち、低HLB値)を有する不飽和脂肪酸部分を含有する
ポリオール脂肪酸エステルおよび>5のDSを有する飽和脂肪酸部分を含有するポリオー
ル脂肪酸エステルは、同じ条件下でプロラミンとの相溶性を示さない。理論に拘束される
ものではないが、それらのエステル(すなわち、高置換度、低HLB値)は疎水性が高す
ぎて、両親媒性/疎水性タンパク質を乳化することができないと考えられている。一態様
において、それらのポリオール脂肪酸エステルの中には単独で使用されるとき耐グリース
性をもたらすものもありうるので、本明細書に開示されるその相溶性は潜在的に、商業的
により有用である。本明細書に開示されるように、紙の表面で中範囲置換度のポリオール
エステルを単独で使用すると、高接触角および低キット値ももたらされる。関連した態様
において、接触角は、どちらのエステルおよびどちらの塗布された油が使用されるかに応
じて50°から100°まで変動することがある。本明細書に開示される条件下で、油は
、それらのエステルを使用して処理した表面に広がる代わりにビーズになるのが観察され
る。さらに、ゼインおよびエステルを、ゼインがフィルムを形成する程度まで組み合わせ
ると、エステルは容易に、油が小滴に加えられる圧力に応じて浸透することを可能にし、
対応するキット値の増加が観察される。
【0028】
プロラミンが高分子量であるために、タンパク質を完全に溶解するためには相当量の「
溶媒」が必要とされる。公知のプロラミン溶媒としては、アニリン、酢酸、エチレングリ
コール、エチレンジアミン、グリセロール、乳酸、メタノール、ピリジンなどが挙げられ
る。他の溶媒としては、水との混合物、例えばアセトンまたはエタノール;低級脂肪族ア
ルコールとの混合物、例えばアセトン、ベンゼンおよびフルフラールなどが挙げられる。
一態様において、溶媒の質量は、プロラミンの質量以上でなければならない。関連した態
様において、タンパク質を安定化するのに過剰のポリオールエステルが必要であり、水を
添加すると、安定な水性分散体が生成される。理論に拘束されるものではないが、ゼイン
は不溶性の高表面エネルギーフィルムの形成を介してグリースをはじくので、溶解または
分散したタンパク質が均等に分布され、したがって水が除去されると、適切なフィルム形
成が基材上で起こることが不可欠である。
【0029】
本明細書に開示される生成物および方法の利点には、コーティング組成物は、再生可能
な農業資源であるゼイン、ポリオールおよび植物油から作製され、生分解性であり、低毒
性プロファイルを有し、食品接触に適しており、紙/板紙表面の摩擦係数を高耐水性レベ
ルでさえ低減し(すなわち、紙を、下流処理または最終用途にとってすべり過ぎるものに
しない)、塗布された油および/またはグリースを考慮するように調節されることがあり
、特殊な乳化設備または乳化剤とともに使用しても、使用しなくてもよく、伝統的な紙再
生プログラムと適合性があり、すなわち、例えばポリエチレン、PLAまたはワックスコ
ート紙のように再生操作に悪影響を及ぼさないことが含まれる。
【0030】
追加の利点は、
a) 一部のポリオールエステルは、際だったキットを示し、処理された表面(すなわち
、高表面エネルギー)で第2の疎油性物質の非存在下で油のビーズ形成を示すこと、
b) ポリオールエステルは、カーボネートの添加量が限定されている場合でさえ、何ら
かのキットをもたらし、本明細書に開示されるバリアコーティングが、炭酸カルシウムお
よび耐グリース性に関連している(すなわち、何らかの形で炭酸カルシウムが存在すると
、通常、紙の耐グリース性がいずれも破壊される)問題を克服することを含めて、配合物
の節約を可能にすること、
c) ポリオールエステルを、公知のゼイン溶媒の代わりに使用できること(例えば、全
体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする上記のLawton(20
02)の表Iを参照のこと)、
d) バリアコーティングの材料の(水を除く)すべて(PFAE、ゼイン、炭酸カルシ
ウムなどの無機粒子/顔料、クレーなど)が別個の機能性をもたらすことがある配合物を
作製できること、
e) バリアコーティングのPFAEにより、ゼインが水の影響を受けにくくなること、
f) いくつかのPFAEまたはPFAEの組合せ(すなわち、低範囲DS~中範囲DS
を有するもの;それぞれ1~2個の脂肪酸部分および3~5個の脂肪酸部分)は、プロラ
ミンをブレンドするのに好都合であること
を含むが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で用いられるように、「付着する」は、例えば表面、基材または物質に密着す
ることを意味する。
【0032】
本明細書で用いられるように、「バリアコーティング」または「バリア組成物」は、望
ましくない要素と塗布された表面の1つまたは複数との接触を遮断または妨害し、したが
って油またはグリースなど前記望ましくない要素と前記基材の塗布された表面との接触を
停止または防止する、基材の1つの表面(または複数の表面)に塗布される材料を意味す
る。
【0033】
本明細書で用いられるように、「バイオベースの」は、生きている(またはかつては生
きていた)有機体に由来する物質から意図的に作製された材料を意味する。関連した態様
において、少なくとも約50%のそのような物質を含有する材料は、バイオベースとみな
される。
【0034】
本明細書で用いられるように、「結合する」はその文法上の変形を含めて、本質的に単
一の塊として密着するまたは密着させることを意味する。
【0035】
本明細書で用いられるように、「セルロース系」は、物体(例えば、袋、シート)また
はフィルムもしくはフィラメントに成形または押出することができ、そのような物体また
はフィルムもしくはフィラメントを作製するのに使用することができる天然、合成または
半合成材料を意味し、セルロースに構造的および機能的に似て、例えばコーティングおよ
び接着剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)である。別の例では、大部分の植物に
おける細胞壁の主成分を成す、グルコース単位から構成される複合糖質(C6H10O5
)nであるセルロースは、セルロース系である。
【0036】
本明細書で用いられるように、「コーティング重量」は、基材に塗布される材料(湿式
または乾式)の重量である。それは、指定された連当たりのポンド数または1平方メート
ル当たりのグラム数で表すことができる。
【0037】
本明細書で用いられるように、「堆肥化可能な」は、固体製品が土壌中に生分解可能で
あることを意味する。
【0038】
本明細書で用いられるように、「エッジウィッキング」は、紙構造において、繊維間に
おける細孔の毛管浸透、繊維および結合を通した拡散、ならびに繊維の表面拡散に限定さ
れないがこれらを含む1つまたは複数の機構による、前記構造の外側限界点での水の吸収
を意味する。関連した態様において、本明細書に記載されるポリオール脂肪酸エステルを
含有するコーティングにより、処理された製品におけるエッジウィッキングが防止される
。一態様において、紙または紙製品中に存在することがある折り目にグリース/油が入り
込む同様の問題が存在する。前記紙構造を折り畳み、プレスし、または押しつぶすことに
よって生み出される「グリースクリーシング(creasing)効果」は、紙構造におけるグリ
ースの吸収と定義することができる。
【0039】
本明細書で用いられるように、「効果」はその文法上の変形を含めて、具体的な特性を
特定の材料に付与することを意味する。
【0040】
本明細書で用いられるように、「疎水性物質」は、水を引き付けない物質を意味する。
例えば、ワックス、ロジン、樹脂、ポリオール脂肪酸エステル、ジケテン、シェラック、
ビニルアセテート、PLA、ポリエチレンイミン(PEI)、油、脂肪、脂質、他の撥水
化学薬品、またはそれらの組合せが疎水性物質である。
【0041】
本明細書で用いられるように、「疎水性」は、撥水性であり、水をはじき、吸収しない
傾向がある特性を意味する。
【0042】
本明細書で用いられるように、「高表面エネルギー」は、少なくとも約32ダイン/c
m、通常は少なくとも約36ダイン/cmの表面エネルギーを有する物品を意味する。そ
れを下回れば、「低表面エネルギー」とみなされる。表面エネルギーは、いずれか好適な
方法、例えば接触角測定およびYoungの式を用いた表面エネルギー間の関係によって
測定することができる。表面エネルギーが高くなるほど、異なる材料間の分子引力が強く
なることを反映する。
【0043】
本明細書で用いられるように、「耐脂質性」または「疎油性」は、撥脂質性であり、脂
質、グリース、脂肪などをはじき、吸収しない傾向がある特性を意味する。関連した態様
において、耐グリース性は、「3Mキット」試験またはTAPPI T559キット試験
によって測定することができる。別の関連した態様において、「第2の疎油性物質」があ
れば、例えばペルフルオロアルキルやポリフルオロアルキルなど耐脂質性を有する物質で
ある。
【0044】
本明細書で用いられるように、「セルロース含有材料」または「セルロースベースの材
料」は、セルロースから本質的になる組成物を意味する。例えば、そのような材料として
は、紙、紙シート、板紙、製紙用パルプ、食品貯蔵用カートン、羊皮紙、ケーキ用板紙、
包肉用紙、剥離紙/ライナー、食品貯蔵用袋、買い物袋、輸送用袋、ベーコン用板紙、絶
縁材料、ティーバッグ、コーヒーまたは茶用容器、堆肥バッグ、食器、ホットまたはコー
ルド飲料を保持するための容器、カップ、蓋、プレート、炭酸入り液体貯蔵用ビン、ギフ
トカード、非炭酸液体貯蔵用ビン、食品ラップ用フィルム、生ごみ処理容器、食品取扱い
用具、ファブリック繊維(例えば、綿または綿ブレンド)、水の貯蔵および運搬用具、ア
ルコールまたは非アルコール性飲料、電子製品用の外部ケーシングまたはスクリーン、家
具の内部または外部構成品、カーテン、ならびに室内装飾用品を挙げることができるが、
これらに限定されない。
【0045】
本明細書で用いられるように、「剥離紙」は、粘着性表面が接着剤またはマスチックに
早まって付着することを防止するために使用される紙シートを意味する。一態様において
、本明細書に開示されるコーティングは、ケイ素もしくは他のコーティングに代わりまた
はその使用を低減して、低表面エネルギーを有する材料を生成するために使用することが
できる。表面エネルギーの決定は、接触角の測定(例えば、Optical Tensi
ometer and/or High Pressure Chamber;Dyne
Testing、Staffordshire、United Kingdom)また
はSurface Energy Test Pens or Inksの使用(例えば
、Dyne Testing、Staffordshire、United Kingd
omを参照のこと)によって達成することができる。
【0046】
本明細書で用いられるように、PFAEに関連して「剥離可能な」は、PFAEコーテ
ィングが一旦塗布されれば、セルロースベースの材料からの除去が可能であること(例え
ば、物理的特性を操作することによって除去可能)を意味する。本明細書で用いられるよ
うに、PFAEに関連して「剥離不可能な」は、PFAEコーティングが一旦塗布されれ
ば、セルロースベースの材料に実質的に不可逆的に結合すること(例えば、化学的手段に
より除去可能)を意味する。
【0047】
本明細書で用いられるように、「ふわふわした(fluffy)」は、原綿またはスタイロフ
ォームピーナッツの外観を有するふんわりとした(airy)固体材料を意味する。実施形態
において、ふわふわした材料は、ナノセルロース繊維(例えば、MFC)、セルロースナ
ノ結晶および/またはセルロースフィラメントとポリオール脂肪酸エステルから作製する
ことができ、得られた繊維またはフィラメントまたは結晶が疎水性(および分散性)であ
り、複合材料(例えば、コンクリート、プラスチックなど)において使用することができ
る。
【0048】
本明細書で用いられるように、「溶液状態の繊維」または「パルプ」は、セルロース繊
維を木材、繊維作物または紙くずから化学的または機械的分離することによって調製され
たリグノセルロース系繊維材料を意味する。本明細書に開示される方法によってセルロー
ス繊維が処理される関連した態様において、セルロース繊維自体は、結合しているポリオ
ール脂肪酸エステルを孤立した実体として含有し、結合しているセルロース繊維が遊離の
繊維とは別個の異なる特性を有する(例えば、パルプ、セルロース繊維、ナノセルロース
またはミクロフィブリル化セルロース-ポリオール脂肪酸エステル結合材料であれば、非
結合繊維ほど容易には繊維間で水素結合を形成しない)。
【0049】
本明細書で用いられるように、「再パルプ化可能な」は、紙または板紙製品を、紙また
は板紙の製造に再使用するための定形のない軟質の塊に押しつぶすのに適したものにする
ことを意味する。
【0050】
本明細書で用いられるように、「安定な水性組成物」は、閉容器に収容し、約0℃~約
60℃の範囲の温度で貯蔵するとき少なくとも8時間にわたって粘度変化、凝固および沈
降に実質的に耐性の水性組成物を意味する。組成物のいくつかの実施形態は、少なくとも
24時間にわたって、しばしば少なくとも6か月にわたって安定である。
【0051】
本明細書で用いられるように、「調節可能な」はその文法上の変形を含めて、特定の結
果を達成するように方法を調整または適応させることを意味する。例えば、特定のPFA
Eを、特定の油および/または特定のグリースに曝露される特定の基材と組み合わせて、
その処理された基材をその特定の油および/またはその特定のグリースに対して耐性にす
ることができる。
【0052】
本明細書で用いられるように、「水接触角」は、液体/蒸気の界面が固体表面と遭遇す
る、液体を通して測定される角度を意味する。それは、液体により固体表面の濡れ性を定
量化する。接触角は、液体および固体の分子が相互作用する強さを、それぞれが単独で相
互作用する強さと比較して反映したものである。多くの高親水性表面では、水滴は0°~
30°の接触角を示す。一般に、水接触角が90°より大きい場合、固体表面は疎水性で
あるとみなされる。水接触角は、光学式張力計(例えば、Dyne Testing、S
taffordshire、United Kingdomを参照のこと)を使用して容
易に得ることができる。
【0053】
本明細書で用いられるように、「透湿度」は、通気性、またはテキスタイルが湿気を移
動させる能力を意味する。異なる測定方法が少なくとも2つある。その1つであるISO
15496に準拠したMVTR(透湿速度)試験は、ファブリックの透湿性(WVP)
、したがって外気への汗輸送の程度を示す。測定により、1平方メートルのファブリック
を24時間で通過する湿気(水蒸気)のグラム数が決定される(レベルが高いほど、通気
性が高くなる)。
【0054】
MVTRを測定する他の試験方法としては、ASTM E96およびASTM F12
49が挙げられる。
【0055】
ASTM E96の変形は、耐湿性を測定するためにチャンバを採用する。チャンバは
、基材/バリア材料によって垂直に分けられている。一方のチャンバには、乾燥大気があ
り、他方のチャンバには、湿潤大気がある。基材/バリアを通って「湿潤」チャンバから
「乾燥」チャンバに抜ける湿気の量を調べるために24時間試験を実行する。ASTM
E96は、「湿潤」チャンバの温度および湿度の5つの組合せのうちのいずれか1つを指
定することができる。最も厳格な条件は、100°F/RH(相対湿度)95%である。
方法は多くの時間を要するおそれがあり、圧力の変化は実際の結果に影響することがある
。
【0056】
ASTM F1249は、赤外(IR)検出器を使用して、ASTM E96方法にお
いて使用されるチャンバと同様のチャンバ中でフィルムの乾燥側におけるRHの変化を測
定するMVTR測定方法である。水をチャンバの底部に置いて、RH100%の雰囲気を
生み出す。バリア材料を使用して、底部と上部を分ける。チャンバの上部側を乾燥空気で
換気し、RHの変化をIR検出器で測定する。その方法の不利な点は、RHに対する制御
を可能にする特殊な設備が使用されない限り、RHが100%に限定されていることであ
る。
【0057】
一態様において、TAPPI T 530 Herculesサイズ試験(すなわち、
耐インキ性による紙のサイズ試験)が、耐水性を決定するために使用されることがある。
Hercules法による耐インキ性は、浸透の程度の直接測定試験と分類されるのが最
善である。他によって、アッセイが浸透試験の速度と分類される。「サイジングを測定す
る」最善の試験は1つもない。試験選択は最終用途、およびミル制御の必要性に依存する
。Hercules法は、サイジングレベルの変化を検出するミル制御サイジング試験と
して適している。その試験は、再現性のある結果をもたらし、試験時間を短縮し、終点を
自動に決定しながら、インキフロート試験の感度を提供する。
【0058】
水性液体の紙を通した透過または水性液体の紙への吸収に対する耐性によって測定され
るサイジングは、多くの紙の重要な特徴である。それらの典型的なものは、袋、容器用板
紙、包肉用ラップ、筆記用およびいくつかの印刷グレードである。
【0059】
その方法が、特定の最終用途向けの紙または板紙の製造をモニターするために使用され
ることがある。ただし、試験値と紙の最終用途性能との間に許容される相関関係が確立さ
れていることを条件とする。試験および浸透物の性質のために、試験は、すべての最終用
途要件に適用可能であるのに十分なほど相互関係を示すとは限らない。その方法は、浸透
度によりサイジングを測定する。他の方法は、表面接触、表面浸透または吸収によりサイ
ジングを測定する。最終用途における水接触または吸収の手段をシミュレートする能力に
基づくサイズ試験が選択される。その方法は、サイズ化学薬品使用コストを最適化するた
めにも使用することができる。
【0060】
本明細書で用いられるように、「透酸素性」は、ポリマーがガスまたは流体の通過を可
能にする程度を意味する。材料の透酸素性(Dk)は、拡散率(D)(すなわち、酸素分
子が材料を横断する速さ)および溶解度(k)(または材料の1体積当たりの酸素分子の
吸収量)の関数である。透酸素性(Dk)の値は、典型的に10~150×10-11(
cm2 ml O2)/(s ml mmHg)の範囲内に入る。ヒドロゲル含水量と透
酸素性(単位:バーラー(Barrer)単位)との間に半対数関係が示された。国際標
準化機構(ISO)は、圧力にはSI単位のヘクトパスカル(hPa)を使用して透過性
を指定した。したがって、Dk=10-11(cm2 ml O2)/(s ml hP
a)。バーラー単位は、バーラー値に定数0.75を乗じてhPa単位に変換することが
できる。
【0061】
本明細書で用いられるように、「生分解性」はその文法上の変形を含めて、生物の作用
によって(例えば、微生物によって)、特に無害な生成物に分解されうることを意味する
。
【0062】
本明細書で用いられるように、「リサイクル可能な」はその文法上の変形を含めて、再
使用に適した前記材料を作製するように、処理可能であり、または(中古および/または
廃品について)加工することができる材料を意味する。
【0063】
本明細書で用いられるように、「ガーレー秒」または「ガーレー数」は、100立方セ
ンチメートル(デシリットル)の空気が1.0平方インチの所与の材料を水の圧力差4.
88インチ(0.176psi)で通過するのに必要とされる秒数を示す単位である(I
SO 5636-5:2003)(多孔度)。さらに、剛性について、「ガーレー数」は
、垂直に保持された材料を所与の量(1ミリグラムの力)撓ませるために必要とされる力
を測定する一部分の前記材料の単位である。そのような値は、Gurley Preci
sion Instrumentsの装置(Troy、New York)で測定するこ
とができる。
【0064】
HLBは、分子の親水性-親油性バランスと関係があり、分子の異なる領域の値を計算
することによって決定される部分が親水性または親油性である程度の尺度である。
【0065】
1954年に記載された、非イオン界面活性剤のグリフィンの方法は、
HLB=20*Mh/M
[式中、Mhは、分子の親水性部分の分子質量であり、Mは、分子全体の分子質量である
]であり、結果を0~20のスケールで示す。HLB値の0は、完全親油性/疎水性分子
に相当し、HLB値の20は、完全親水性/疎油性分子に相当する。
【0066】
HLB値を使用して、分子の界面活性特性を予測することができる。
<10:脂溶性(水不溶性)
>10:水溶性(不脂溶性)
1.5~3:消泡剤
3~6:W/O(油中水型)乳化剤
7~9:濡れ拡がり剤
13~15:洗浄剤
12~16:O/W(水中油型)乳化剤
15~18:可溶化剤またはヒドロトロープ
【0067】
実施形態において、本明細書に開示されるポリオール脂肪酸エステル(または前記エス
テルを含む組成物)のHLB値は、より低い範囲の1~3とすることができる。実施形態
において、本明細書に開示されるポリオール脂肪酸エステル(または前記エステルを含む
組成物)のHLB値は、中~より高い範囲とすることができる。一態様において、安定な
水性組成物を形成するためのPFAEとゼインの組合せは、HLB値が中範囲の4~10
を有するそのようなエステルの使用を伴う。
【0068】
本明細書で用いられるように、「SEFOSE(登録商標)」は、ダイズ油から作製さ
れた1種または複数の不飽和脂肪酸を含有するスクロース脂肪酸エステル(ダイズ油脂肪
酸エステル)の名称であり、Procter & Gamble Chemicals(
Cincinnati、OH)から販売名SEFOSE(登録商標) 1618Uで市販
されている(以下のポリダイズ油脂肪酸スクロースを参照のこと)。
【0069】
本明細書で用いられるように、「OLEAN(登録商標)」は、式Cn+12H2n+
22O13を有し、すべての脂肪酸が飽和脂肪酸であるスクロース脂肪酸エステルの名称
であり、Procter & Gamble Chemicalsから入手可能である。
【0070】
様々なHLB値およびいろいろな脂肪酸部分を有する他のPFAEは、三菱ケミカルフ
ーズ株式会社(東京、日本)から販売名RYOTO(商標)で得ることができる。
【0071】
本明細書で用いられるように、「ダイズ油脂肪酸エステル」は、ダイズ油由来の脂肪酸
の塩の混合物を意味する。
【0072】
本明細書で用いられるように、「油糧種子脂肪酸」は、ダイズ、ピーナッツ、アブラナ
、大麦、カノーラ、ゴマ種子、綿種子、パーム核、ブドウ種子、オリーブ、ベニバナ、ヒ
マワリ、コプラ、トウモロコシ、ココナッツ、アマニ、ヘーゼルナッツ、小麦、コメ、ジ
ャガイモ、カッサバ、豆果、カメリナ種子、マスタード種子、およびそれらの組合せに限
定されないがこれらを含む植物由来の脂肪酸を意味する。
【0073】
本明細書で用いられるように、「可塑剤」は、材料の可塑性を高めまたは粘度を低下さ
せる添加剤を意味する。それらは、物理的特性を変更するために添加される物質である。
それらは、低揮発性の液体であり、またはおそらく固体でさえある。可塑剤は、ポリマー
鎖間の引力を低下させて、柔軟性を助長する。
【0074】
実施形態において、「脂肪酸」は、分枝状でもよい脂肪族鎖を含むカルボン酸を含む。
脂肪族鎖は、飽和脂肪族鎖とすることができ、または1つもしくは複数の炭素:炭素二重
結合などの不飽和結合を含むことができ、cisでも、transでもよい。脂肪族鎖は
、5個以下の炭素の短鎖;6~12個の炭素の中鎖;13~21個の炭素の長鎖;または
22個以上の炭素原子のそれ以上の長鎖とすることができる。
【0075】
本明細書で用いられるように、「ポリオール」は、複数のヒドロキシル基を含有する有
機化合物を意味する。ポリオールは、生分解性であり、リサイクル可能である。実施形態
において、ポリオールは、フラン、ピラン、リボース、デオキシリボース、リボヌクレオ
シド、デオキシヌクレオシド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドなどの環構
造または環式構造を含む。実施形態において、ポリオールは炭水化物を含む。実施形態に
おいて、ポリオールは糖を含む。実施形態において、ポリオールは、単糖、二糖または三
糖を含む。実施形態において、ポリオールは、グリコサミノグリカン、ムコ多糖などを含
む。実施形態において、ポリオールは、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボ
ース、デオキシリボース、アラビノース、キシロース、マンノース、スクロース、ラクト
ースなどを含む。
【0076】
本明細書で用いられるように、「湿潤強さ」は、紙が湿潤状態であるとき、紙をまとめ
る繊維のウェブがいかにうまく破断の力に抵抗することができるかの尺度を意味する。湿
潤強さは、Thwing-Albert Instrument Company(We
st Berlin、NJ)のFinch Wet Strength Deviceを
使用して測定することができる。その場合、湿潤強さが、キメン、カチオングリオキシル
化樹脂、ポリアミドアミン-エピクロロヒドリン樹脂、エポキシド樹脂を含めてポリアミ
ン-エピクロロヒドリン樹脂などの添加剤によってもたらされる。実施形態において、本
明細書に開示されるPFAEでコーティングされたセルロースベースの材料は、そのよう
な添加剤の非存在下でそのような湿潤強さをもたらす。
【0077】
本明細書で用いられるように、「湿潤」は、水または別の液体で満たされ、または飽和
されていることを意味する。
【0078】
実施形態において、本明細書に開示される方法は、バリアコーティングをセルロース系
表面に付着させるステップ、またはセルロース系表面を、セルロース系表面に結合するこ
とができる前記バリアコーティングと接触させるステップを含み、前記方法は、セルロー
スベースの材料を、ポリオール脂肪酸エステルとプロラミンとを含むコーティングと接触
させ、接触させたセルロースベースの材料を熱、放射線、触媒、またはそれらの組合せに
、バリアコーティングをセルロースベースの材料に結合させるのに十分な時間曝露するス
テップを含む。関連した態様において、そのような放射線としては、UV、IR、可視光
、またはそれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。別の関連した
態様において、反応は、室温(すなわち、25℃)~約150℃、約50℃~約100℃
、約60℃~約80℃で実施することができる。
【0079】
一態様において、ポリオール脂肪酸エステル-プロラミンバリア組成物は、モノエステ
ル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステル、またはそれらの組合
せの混合物を含有することがある。別の態様において、バリアコーティングは、乳タンパ
ク質(例えば、カゼイン、乳清タンパク質など)、小麦グルテン、ゼラチン、ダイズタン
パク質分離物、デンプン、加工デンプン、アセチル化多糖、アルギネート、カラギナン、
キトサン、イヌリン、長鎖脂肪酸、ワックス、およびそれらの組合せに限定されないがこ
れらを含む他のタンパク質、多糖および脂質を含有することがある。
【0080】
実施形態において、コーティングは、さらにPvOHを含有することがある。
【0081】
実施形態において、開示されている方法を使用して、材料を増強することは企図されて
いないことを含めて、コーティングを物品表面に付着させるために、触媒も有機担体(例
えば、揮発性有機化合物)も必要とされない。関連した態様において、反応時間は実質的
に瞬間的である。さらに、得られた材料は低ブロッキング性を示す。
【0082】
本明細書に開示されるように、単糖、二糖および三糖を含めてすべてのポリオールの脂
肪酸エステルは、本発明における使用に適応可能である。関連した態様において、ポリオ
ール脂肪酸エステルは、脂肪酸部分が飽和でも、不飽和でも、それらの組合せでもよいこ
とを含めて、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステ
ル、およびそれらの組合せとすることができる。
【0083】
理論に拘束されるものではないが、ポリオール脂肪酸エステルとセルロースベースの材
料との間の相互作用は、イオン性、疎水性、水素、ファンデルワールス相互作用、共有結
合、またはそれらの組合せによるものとすることができる。関連した態様において、セル
ロースベースの材料に結合しているポリオール脂肪酸エステルは、(例えば、飽和脂肪酸
と不飽和脂肪酸の組合せを含むPFAEを使用して)実質的に不可逆的である。理論に拘
束されることを望むものではないが、不飽和脂肪酸は表面に共有結合する。
【0084】
さらに、十分な濃度におけるポリオール脂肪酸エステルの結合だけで、セルロースベー
スの材料を耐油性および/または耐グリース性にするのに十分である。すなわち、疎油性
は、PFAE結合だけで、セルロースベースの材料の強化、剛化、およびバルキングなど
他の特性が達成されることがあることを含めて、ワックス、ロジン、樹脂、ジケテン、シ
ェラック、ビニルアセテート、天然および/もしくは合成ラテックス、PLA、PEI、
油、他の撥油/グリース性化学薬品、またはそれらの組合せ(すなわち、第2の疎油性物
質)を添加することなく達成される。
【0085】
開示されている本発明の利点は、複数の脂肪酸鎖がセルロース、ならびに構造または基
材の骨格中のポリオールおよび環式分子、例えば開示されているスクロース脂肪酸エステ
ルと反応し、堅い架橋網目が得られ、紙、板紙、エアレイドおよび湿式不織布、ならびに
テキスタイルなど繊維ウェブの強度が改善されることである。それは、通常他のサイジン
グ化学的性質では見られない。実施形態において、上記のバリアコーティングを使用して
物品を製造する方法であって、高表面エネルギーならびに油および/またはグリースの浸
透に対する耐性を有する物品を製造する、方法が開示される。
【0086】
本発明はまた、基材に塗布された上記組成物を含む物品にも関する。物品は、高表面エ
ネルギー、ならびに油および/またはグリースの浸透に対する耐性を有する。関連した態
様において、サイズプレスで、本明細書に開示されるバリアコーティングは塗布すること
ができるが、他のプロラミン含有コーティングは塗布することができない。
【0087】
別の利点は、開示されているポリオール脂肪酸エステルが繊維を軟化させ、繊維間の空
間を増大し、したがって、重量を実質的に増加させることなく嵩が増大することである。
さらに、本明細書に開示されるように修飾された繊維およびセルロースベースの材料を再
パルプ化することがある。さらに、例えば油および/またはグリースが、バリアを容易に
「押し分けて」通って、記載のバリアコーティングで処理したシートに入り込むことはあ
り得ない。
【0088】
飽和PFAEは、典型的に公称の加工温度で溶融可能な固体であり、不飽和PFAEは
、典型的に液体である。それによって、水性コーティング中で飽和PFAEの均一で安定
な分散体を、他のコーティング成分との著しい相互作用または不相溶性なしに形成するこ
とが可能になる。さらに、そのような分散体によって、コーティングのレオロジー、均一
なコーティング塗布またはコーティング性能特性、したがって本明細書に記載されるコー
ティングのためのサイズプレスを使用する能力に悪影響を及ぼすことなく、高濃度の飽和
PFAEを調製することが可能になる。コーティング層の加熱、乾燥および複合化時にプ
ロラミンおよび飽和PFAEの粒子が溶融し、拡がるとき、コーティング表面は疎油性に
なる。実施形態において、コーティングに含有されているプロラミンが前記エステルで遮
蔽されるので、水に曝露されたときでさえ強度を保持する嵩高い繊維構造を製造する方法
が開示される。開示されている方法を使用して作製される成形繊維製品としては、軽量で
、強く、油、グリース、水および他の液体への曝露に対して耐性である、紙皿、ドリンク
ホルダー(例えば、カップ)、蓋、食品トレーおよびパッケージングを挙げることができ
る。
【0089】
実施形態において、ポリオール脂肪酸エステルをプロラミンと混合して、耐油性および
/またはグリース性コーティング用のサイジング剤を生成する。本明細書に開示されるよ
うに、ポリオール脂肪酸エステルとプロラミンとの相乗関係が明らかになってきた。当技
術分野において、プロラミンが塗膜形成剤であることは公知であるが、プロラミンは感水
性を示す。態様において、ポリオール脂肪酸エステルの使用は、プロラミンを乳化して、
水性コーティングにする助けとなる。
【0090】
実施形態において、ポリオール脂肪酸エステルは、スクロースなどの糖、脂肪酸のエス
テルを含む、またはそれらから本質的になる。多くの方法が、本発明のポリオール脂肪酸
エステルを作製またはその他の方法で提供することで知られ、利用可能であり、そのよう
な方法はすべて、本発明の範囲内の使用に利用可能である。例えば、実施形態において、
脂肪酸エステルは、ポリオールを、ダイズ油、ヒマワリ油、オリーブ油、カノーラ油、落
花生油、またはそれらの混合物に限定されないがこれらを含む油糧種子から得られる1種
または複数の脂肪酸部分でエステル化することによって合成される。
【0091】
実施形態において、環式ポリオール脂肪酸エステルは、スクロース部分などの二糖部分
に限定されないがこれを含む糖部分を含み、1個または複数のヒドロキシル水素がエステ
ル部分によって置換されている。一実施形態において、二糖エステルは式I
【0092】
【化1】
[式中、「A」は、水素または以下の構造I
【化2】
(式中、「R」は、約8~約40個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、または環式の飽
和または不飽和脂肪族または芳香族部分である)
であり、少なくとも1つの「A」は、式Iの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくと
も3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、またはす
べての8つの「A」部分が構造Iに一致している]
の構造を有する。一態様において、本明細書に記載される二糖脂肪酸エステルは、モノエ
ステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステル、およびそれらの
組合せとすることができ、R基は、飽和の基でも、飽和および不飽和の基でもよい。
【0093】
好適な「R」基としては、1つまたは複数の置換基を含有するものを含めていずれの形
の脂肪族部分も挙げられ、それらの置換基は部分中のいずれの炭素上に出現してもよい。
脂肪族部分内に官能基、例えばエーテル、エステル、チオ、アミノ、ホスホなどを含む脂
肪族部分も含まれる。オリゴマーおよびポリマー脂肪族部分、例えばソルビタン、ポリソ
ルビタンおよびポリアルコール部分も含まれる。「R」基を含む脂肪族(または芳香族)
部分に加えることができる官能基の例としては、ハロゲン、アルコキシ、ヒドロキシ、ア
ミノ、エーテルおよびエステル官能基が挙げられるが、これらに限定されない。一態様に
おいて、前記部分は、架橋性官能基を有することがある。別の態様において、PFAE(
例えば、活性化クレー/顔料粒子)を表面に架橋することがある。別の態様において、P
FAE上に存在する二重結合が、表面に対するおよび表面との反応を促進するために使用
されることがある。
【0094】
実施形態において、ポリオールは炭水化物を含む。実施形態において、ポリオールは糖
を含む。実施形態において、ポリオールは二糖を含む。好適な糖およびオリゴ糖としては
、ラフィノース、マルトデキストロース、ガラクトース、スクロース、グルコースの組合
せ、フルクトースの組合せ、マルトース、ラクトース、マンノースの組合せ、エリトロー
スの組合せ、イソマルトース、イソマルツロース、トレハロース、トレハルロース、セロ
ビオース、ラミナリビオース、キトビオース、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0095】
実施形態において、脂肪酸を添加するためのポリオール基材または骨格としては、デン
プン、ヘミセルロース、リグニン、またはそれらの組合せを挙げることができる。
【0096】
実施形態において、組成物は、デンプン脂肪酸エステルを含み、デンプンは、デントコ
ーンデンプン、ワキシーコーンデンプン、バレイショデンプン、小麦デンプン、コメデン
プン、サゴデンプン、タピオカデンプン、モロコシデンプン、サツマイモデンプン、およ
びそれらの混合物などいずれか好適な源に由来することがある。
【0097】
実施形態において、デンプンは、未加工デンプン、または化学的修飾、物理的加工もし
くは酵素変性によって加工されたデンプンとすることができる。
【0098】
化学的修飾には、加工デンプン(例えば、プラスターチ材料)を生じる、化学薬品によ
るデンプンの任意処理が含まれる。化学的修飾の範囲内には、デンプンの解重合、デンプ
ンの酸化、デンプンの還元、デンプンのエーテル化、デンプンのエステル化、デンプンの
硝化、デンプンの脱脂、デンプンの疎水化などが含まれるが、これらに限定されない。化
学加工デンプンは、化学処理のいずれかの組合せを使用することによっても調製すること
ができる。化学加工デンプンの例としては、アルケニルコハク酸無水物、特にオクテニル
コハク酸無水物をデンプンと反応させて、疎水性エステル化デンプンを生成する反応;2
,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドをデンプンと反応させて、カチ
オン性デンプンを生成する反応;エチレンオキシドをデンプンと反応させて、ヒドロキシ
エチルデンプンを生成する反応;ヒポクロリットをデンプンと反応させて、酸化デンプン
を生成する反応;酸をデンプンと反応させて、酸解重合デンプンを生成する反応;デンプ
ンをメタノール、エタノール、プロパノール、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素
など溶媒で脱脂して、脱脂デンプンを生成する反応が挙げられる。
【0099】
物理加工デンプンは、物理加工デンプンを提供する形で物理的に処理されたデンプンで
ある。物理的加工の範囲内には、水の存在下におけるデンプンの熱処理、水の非存在下に
おけるデンプンの熱処理、いずれか機械的手段によるデンプン顆粒の破砕化、デンプンを
加圧処理して、デンプン顆粒を溶融する処理などが含まれるが、これらに限定されない。
物理加工デンプンは、いずれか物理的処理の組合せを使用することによっても調製するこ
とができる。物理加工デンプンの例としては、デンプン顆粒を顆粒破断なしに膨潤させる
ための、水性環境におけるデンプンの熱処理、ポリマー転位を引き起こすための無水デン
プン顆粒の熱処理、機械的分解によるデンプン顆粒の断片化、およびデンプン顆粒の溶融
を引き起こすための、押出機によるデンプン顆粒の加圧処理が挙げられる。
【0100】
酵素変性デンプンは、酵素変性デンプンを提供する任意の形で酵素により処理された任
意のデンプンである。酵素変性の範囲内に、α-アミラーゼとデンプンの反応、プロテア
ーゼとデンプンの反応、リパーゼとデンプンの反応、ホスホリラーゼとデンプンの反応、
オキシダーゼとデンプンの反応などが含まれるが、これらに限定されない。酵素変性デン
プンは、酵素処理のいずれかの組合せを使用することによって調製することができる。デ
ンプンの酵素変性の例としては、α-アミラーゼ酵素をデンプンと反応させて、解重合デ
ンプンを生成する反応;α-アミラーゼ枝切り酵素をデンプンと反応させて、枝切りデン
プンを生成する反応;プロテアーゼ酵素をデンプンと反応させて、タンパク質含有量が低
減されたデンプンを生成する反応;リパーゼ酵素をデンプンと反応させて、脂質含有量が
低減されたデンプンを生成する反応;ホスホリラーゼ酵素をデンプンと反応させて、酵素
変性リン酸エステル化デンプンを生成する反応;およびオキシダーゼ酵素をデンプンと反
応させて、酵素的酸化デンプンを生成する反応が挙げられる。
【0101】
二糖脂肪酸エステルは、式I[式中、「R」基は、脂肪族であり、直鎖状または分枝状
であり、飽和または飽和と不飽和の両方であり、約8~約40個の炭素原子を有する]に
よるスクロース脂肪酸エステルとすることができる。
【0102】
本明細書で用いられるように、「ポリオール脂肪酸エステル」、「ポリオール脂肪酸エ
ステル」、および「スクロース脂肪酸エステル」という用語は、異なる純度を有する組成
物、および任意の純度レベルの化合物の混合物を含む。例えば、糖脂肪酸エステル化合物
は、実質的に純粋な材料とすることができ、すなわち、構造I部分の1種のみによって置
換されている「A」基を所定数の有する(すなわち、すべての「R」基は同じであり、ポ
リオール部分のすべては同等な程度に置換されている)化合物を含むことができる。これ
らの用語は、置換度が異なるが、置換基のすべては同じ「R」基構造を有する2種以上の
ポリオール脂肪酸エステル化合物のブレンドを含む組成物も含む。用語は、「A」基の置
換度が異なり、「R」基の置換基部分が独立して、構造Iの2つ以上の「R」基から選択
される化合物の混合物である組成物も含む。関連した態様において、組成物中の前記ポリ
オール脂肪酸エステルが同じでも、異なってもよいこと(すなわち、異なるポリオール脂
肪酸エステルの混合物)を含めて、「R」基は同じでも、異なってもよい。
【0103】
本発明の組成物では、組成物は、より低いDSを有するポリオール脂肪酸エステル化合
物から構成されうる。実施形態において、ポリオール脂肪酸エステルは、ポリダイズ油脂
肪酸スクロースである。
【0104】
【化3】
ポリダイズ油脂肪酸スクロース(SEFOSE(登録商標) 1618U)
【0105】
ポリオール脂肪酸エステルは、ポリオールと、例えば天然源、例えば油糧種子から抽出
された油、例えばダイズ油に見られるものに由来する脂肪酸グリセリドの形をした脂肪酸
エステルとを使用したエステル交換など公知のエステル化方法で、実質的に純粋な脂肪酸
を用いたエステル化により作製することができる。脂肪酸グリセリドを使用してポリオー
ル脂肪酸エステルを提供するエステル交換反応が、例えば米国特許第3,963,699
号;同第4,517,360号、同第4,518,772号、同第4,611,055号
、同第5,767,257号、同第6,504,003号、同第6,121,440号、
同第6,995,232号、および国際公開第1992004361号に記載されており
、それぞれ、全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0106】
エステル交換を介して疎水性ポリオールエステルを作製することに加えて、酸塩化物を
、環構造を含むポリオールと直接反応させることによって、セルロース系線維物品におい
て同様の疎水性を達成することができる。
【0107】
上述のように、ポリオール脂肪酸エステルは、天然源に由来するグリセリドから調整さ
れたメチルエステル供給原料からポリオールのエステル交換により調製することができる
(例えば、全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第6
,995,232号を参照のこと)。脂肪酸の源の結果として、ポリオール脂肪酸エステ
ルを調製するために使用される供給原料は、12~40個の炭素原子を含む脂肪酸部分を
有する様々な飽和および不飽和脂肪酸メチルエステルを含有する。それは、そのような源
から作製された生成物であるポリオール脂肪酸エステルに反映されるが、その理由は、生
成物を含むポリオール部分が、エステル部分置換基の混合物を含有するためであり、上記
の構造Iを参照して、「R」基は、ポリオールエステルを調製するために使用された供給
原料を反映する比で12~26個の炭素原子を有する混合物である。さらにその点を説明
するように、ダイズ油に由来するポリオールエステルは、ダイズ油が26重量%のオレイ
ン酸(H3C-CH2]7-CH=CH-[CH2]7-C(O)OH)のトリグリセリ
ド、49重量%のリノール酸(H3C-[CH2]3-[-CH2-CH=CH]2-[
-CH2-]7-C(O)OH)のトリグリセリド、11重量%のリノレン酸(H3C-
[-CH2-CH=CH-]3-[-CH2-]7-C(O)OH)のトリグリセリド、
および14重量%の、全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとするS
eventh Ed. Of the Merck Indexに記載されている様々な
飽和脂肪酸トリグリセリドを含むことを反映する「R」基構造を有する種の混合物である
。それらの脂肪酸部分のすべては、目的とする生成物であるポリオール脂肪酸エステルの
置換基の「R」基において代表的なものである。したがって、天然源、例えばダイズ油脂
肪酸スクロースに由来する脂肪酸供給原料を採用する反応の生成物として本明細書でポリ
オール脂肪酸エステルを参照するとき、天然源供給原料は、ポリオール脂肪酸エステルが
調製される源の結果として典型的に見られる様々な構成要素のすべてを含むことを意図す
る。関連した態様において、開示されているポリオール脂肪酸エステルは、低粘度(例え
ば、室温または標準気圧下で約10~2000センチポアズ)を示すことがある。別の態
様において、不飽和脂肪酸は、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の二重結合を有すること
がある。
【0108】
本発明の実施形態において、ポリオール脂肪酸エステル、態様において二糖エステルは
、平均して約6個より多い炭素原子、約8~16個の炭素原子、約8~約18個の炭素原
子、約14~約18個の炭素原子、約16~約18個の炭素原子、約16~約20個の炭
素原子、約20~約40個の炭素原子を有する脂肪酸から形成される。
【0109】
実施形態において、バリアコーティング中のポリオール脂肪酸エステルとプロラミンの
比は、セルロースベースの材料の形、材料を曝露する油および/またはグリースなどに応
じて疎油性を達成するように調節(変更)することができる。一態様において、PFAE
とプロラミンの比は、重量対重量(wt/wt)ベースで1:1、2:1、3:1、4:
1または5:1とすることができる。関連した態様において、ポリオール脂肪酸エステル
およびプロラミンをセルロースベースの材料上のコーティングとして混合するとき、セル
ロースベースの材料の表面に対して少なくとも約0.1g/m2~約1.0g/m2、約
1.0g/m2~約2.0g/m2、約2g/m2~約3g/m2のコーティング重量を
使用することができる。関連した態様において、コーティング混合物は、約3g/m2~
約4g/m2、約4g/m2~約5g/m2、約5g/m2~約10g/m2、約10g
/m2~約20g/m2存在することができる。別の態様において、セルロースベースの
材料がセルロース繊維を含有する溶液であるとき、コーティングは、存在している全繊維
の少なくとも約0.025%(wt/wt)の濃度で存在することができる。関連した態
様において、コーティング組成物は、存在している全繊維の約0.05%(wt/wt)
~約0.1%(wt/wt)、約0.1%(wt/wt)~約0.5%(wt/wt)、
約0.5%(wt/wt)~約1.0%(wt/wt)、約1.0%(wt/wt)~約
2.0%(wt/wt)、約2.0%(wt/wt)~約3.0%(wt/wt)、約3
.0%(wt/wt)~約4.0%(wt/wt)、約4.0%(wt/wt)~約5.
0%(wt/wt)、約5.0%(wt/wt)~約10%(wt/wt)、約10%(
wt/wt)~約50%(wt/wt)で存在することができる。
【0110】
実施形態において、コーティングは、コーティングの重量に対して約0.9%~約1.
0%(wt/wt)、約1.0%~約5.0%(wt/wt)、約5.0~約10%(w
t/wt)、約10%~約20%(wt/wt)、約20%~約30%(wt/wt)、
約40%~約50%(wt/wt)またはそれ以上のポリオール脂肪酸エステルを含むこ
とができる。関連した態様において、コーティングは、コーティングの重量に対して約2
5%~約35%(wt/wt)のポリオール脂肪酸エステルを含有することができる。
【0111】
実施形態において、セルロースベースの材料としては、紙、板紙、紙シート、製紙用パ
ルプ、カップ、箱、トレー、蓋、剥離紙/ライナー、堆肥バッグ、買い物袋、輸送用袋、
ベーコン用板紙、ティーバッグ、絶縁材料、コーヒーまたは茶用容器、パイプおよび導水
管、食品等級の使い捨てカトラリー、皿およびビン、テレビおよび携帯機器用のスクリー
ン、衣類(例えば、綿または綿ブレンド)、包帯、感圧ラベル、感圧テープ、女性用製品
、ならびに避妊具などの身体上または体内で使用される医療機器、薬物送達装置、医薬品
材料(例えば、丸剤、錠剤、坐剤、ゲル剤など)の容器などが挙げられるが、これらに限
定されない。また、開示されているコーティング技術を、家具および室内装飾用品、野外
キャンプ用具などにも使用することができる。
【0112】
一態様において、本明細書に記載されるコーティングは、約3~約9の範囲のpHに対
して耐性である。関連した態様において、pHは、約3~約4、約4~約5、約5~約7
、約7~約9とすることができる。
【0113】
実施形態において、セルロース含有(またはセルロース系)材料の表面を処理する方法
であって、式(II)または(III)
R-CO-X 式(II)
X-CO-R-CO-X1 式(III)
[式中、Rは、6~50個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、または環式の脂肪族炭化水
素基であり、XおよびX1は独立して、Cl、Br、R-CO-O-R、またはO(CO
)ORである]
を有するアルカン酸誘導体を含有する組成物を表面に塗布するステップを含む、方法が開
示される。アルカン酸誘導体が式(III)を含む場合にはXまたはX1は同じでありま
たは異なり、ここに開示されるPFAEは担体であり、方法は有機塩基、気体の塩酸(H
Cl)、揮発性有機化合物(VOC)または触媒を必要としない。
【0114】
実施形態において、アルカン酸誘導体をポリオール脂肪酸エステルと混合して、乳濁液
を形成し、その乳濁液を使用して、セルロースベースの材料を処理する。
【0115】
実施形態において、ポリオール脂肪酸エステルは乳化剤とすることができ、1種または
複数のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルおよびペンタエステル
の混合物を含むことがある。一態様において、ポリオール脂肪酸エステルは乳化剤とする
ことができ、1種もしくは複数のトリエステル、テトラエステルおよびペンタエステルの
混合物、または1種もしくは両方のモノエステルおよびジエステルの混合物を含むことが
ある。別の態様において、ポリオール脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、飽和の基、または
飽和と不飽和の脂肪酸の組合せを含むことがある。一態様において、ポリオール脂肪酸エ
ステル含有乳濁液は、乳タンパク質(例えば、カゼイン、乳清タンパク質など)、ゼラチ
ン、ダイズタンパク質分離物、デンプン、アセチル化多糖、アルギネート、カラギナン、
キトサン、イヌリン、長鎖脂肪酸、ワックス、およびそれらの組合せに限定されないがこ
れらを含む他のタンパク質、多糖および/または脂質を含有することがある。
【0116】
実施形態において、本明細書に開示されるポリオール脂肪酸エステル乳化剤が、コーテ
ィング、またはアガライト、エステル、ジエステル、エーテル、ケトン、アミド、ニトリ
ル、芳香族化合物(例えば、キシレン、トルエン)、酸ハロゲン化物、無水物、タルク、
アルキルケテン2量体(AKD)、雪花セッコウ、アルガニック酸(alganic a
cid)、ミョウバン、アルバリン、にかわ、炭酸バリウム、硫酸バリウム、沈降炭酸カ
ルシウム、粉砕炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、ドロマイト、ジエチレントリア
ミンペンタアセテート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、酵素、ホルムアミジン硫
酸、グアーガム、セッコウ、ライム、重硫酸マグネシウム、石灰乳、マグネシア乳、Pv
OH、ロジン、ロジン石けん、サテン、石けん/脂肪酸、重硫酸ナトリウム、ソーダ灰、
チタニア、界面活性剤、デンプン、加工デンプン、炭化水素樹脂、ポリマー、ワックス、
多糖、タンパク質、およびそれらの組合せに限定されないがこれらを含む、製紙に使用さ
れる他の化学薬品を運搬するために使用されうる。
【0117】
実施形態において、本明細書に開示される方法によってもたらされたセルロース含有材
料は、処理されていないそのセルロース含有材料に比べて高い疎水性または耐水性を示す
。関連した態様において、処理されたセルロース含有材料は、処理されていないセルロー
ス含有材料に比べて高い疎油性または耐グリース性を示す。別の関連した態様において、
処理されたセルロース含有材料は、生分解性、堆肥化可能、および/またはリサイクル可
能でありうる。一態様において、処理されたセルロース含有材料は、疎水性(耐水性)お
よび疎油性(耐グリース性)である。
【0118】
実施形態において、処理されたセルロース含有材料は、未処理のその同じ材料と比べて
改善された機械的特性を有することがある。例えば、本明細書に開示される方法で処理さ
れた紙袋は、増加した破裂強度、ガーレー数、引張強さおよび/または最大負荷エネルギ
ーを示す。一態様において、破裂強度は、約0.5~1.0倍、約1.0~1.1倍、約
1.1~1.3倍、約1.3~1.5倍増加している。別の態様において、ガーレー数は
、約3~4倍、約4~5倍、約5~6倍、および約6~7倍増加した。別の態様において
、引張歪または強さは、約0.5~1.0倍、約1.0~1.1倍、約1.1~1.2倍
、および約1.2~1.3倍増加した。別の態様において、最大負荷エネルギーは、約1
.0~1.1倍、約1.1~1.2倍、約1.2~1.3倍、および約1.3~1.4倍
増加した。
【0119】
実施形態において、セルロース含有材料は、例えば米国特許出願公開第2015/01
67243号(全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載
されているミクロフィブリル化セルロース(MFC)またはセルロースナノファイバー(
CNF)を含む原紙であり、MFCまたはCNFを、成形プロセスおよび製紙プロセス時
に添加し、かつ/またはコーティングもしくは2次層として前成形層に添加して、前記原
紙の多孔度を低下させる。関連した態様において、原紙を上記のポリオール脂肪酸エステ
ルと接触させる。別の関連した態様において、接触させた原紙をさらにPvOHと接触さ
せる。実施形態において、得られた接触させた原紙は、調節可能に耐水性および耐脂質性
である。関連した態様において、得られた原紙は、少なくとも約10~15(すなわち、
ガーレー透気抵抗度(秒/100cc、20オンスシリンダー))、または少なくとも約
100、少なくとも約200~約350のガーレー値を示すことがある。一態様において
、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティングは、1層もしくは複数層の積層体
とすることができ、または1層もしくは複数層を積層体として形成することができ、また
は1層もしくは複数層のコーティングの量を低減して、同じ性能効果(例えば、耐水性、
耐グリース性など)を達成することができる。関連した態様において、積層体は、生分解
性および/または堆肥化可能なヒートシールまたは接着剤を含むことがある。
【0120】
実施形態において、ポリオール脂肪酸エステルを乳濁液として配合することがあり、乳
化剤および使用量の選択は、組成物の性質および乳化剤がポリオール脂肪酸エステルの分
散を促進する能力によって指示される。一態様において、乳化剤としては、水、緩衝剤、
PvOH、カルボキシメチルセルロース(CMC)、乳タンパク質、小麦グルテン、ゼラ
チン、ダイズタンパク質分離物、デンプン、アセチル化多糖、アルギネート、カラギナン
、キトサン、イヌリン、長鎖脂肪酸、ワックス、寒天、アルギネート、グリセロール、ガ
ム、レシチン、ポロキサマー、モノグリセロール、ジグリセロール、リン酸モノナトリウ
ム、モノステアレート、プロピレングリコール、洗浄剤、セチルアルコール、およびそれ
らの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。一態様において、ポリオー
ルエステル:乳化剤の比は、約0.1:99.9、約1:99、約10:90、約20:
80、約35:65、約40:60または約50:50とすることができる。最終製品に
望ましい特性に応じて比を変えてもよいことは、当業者にとって明らかであろう。
【0121】
実施形態において、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティングは、顔料(例
えば、クレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、プラスチック顔料)、結合剤(例えば、
デンプン、ダイズタンパク質、ポリマー乳濁液、PvOH)、および添加剤(例えば、グ
リオキサール、グリオキサール化樹脂、ジルコニウム塩、ステアリン酸カルシウム、炭酸
カルシウム、レシチンオレエート、ポリエチレン乳濁液、カルボキシメチルセルロース、
アクリル系ポリマー、アルギネート、ポリアクリレートガム、ポリアクリレート、殺微生
物剤、油ベースの消泡剤、シリコーンベースの消泡剤、スチルベン、直接染料および酸性
染料)に限定されないがこれらを含む、内部および表面サイジングのための1種または複
数の成分(単独または組合せ)と組み合わせることができる。関連した態様において、そ
のような成分は、微多孔性構造を建てる、光散乱表面を提供する、インキ受理性を改善す
る、光沢性を改善する、顔料粒子を結合する、コーティングを紙、ベースシート補強材に
結合させる、顔料構造の細孔を埋める、感水性を低減する、オフセット印刷におけるウエ
ットピックに抵抗する、ブレードスクラッチングを防止する、スーパーカレンダリングに
おける光沢性を改善する、発塵を低減する、コーティング粘度を調整する、保水を実現す
る、顔料を分散する、コーティング分散を維持する、コーティング/コーティング色剤の
劣化を防止する、発泡を制御する、同伴空気およびコーティングクレーターを低減する、
白さおよび明るさを増大させる、色および色合いを制御することに限定されないがこれら
を含む1つまたは複数の特性をもたらすことができる。最終製品に望ましい特性に応じて
組合せを変えてもよいことは、当業者にとって明らかであろう。
【0122】
実施形態において、前記プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルを採用する方法が、1
次/2次コーティング(例えば、シリコーンベースの層、デンプンベースの層、クレーベ
ースの層、PLA層、PEI層など)を塗布するコストを下げるために使用されることが
あり、必要な特性(例えば、耐油性および/またはグリース性、耐水性、低表面エネルギ
ー、高表面エネルギーなど)を示す材料の層を設け、それによってその同じ特性を達成す
るのに必要な1次/2次層の量が低減される。一態様において、材料(例えば、ヒートシ
ール可能な作用剤)を、PFAE層の上にコーティングすることができる。実施形態にお
いて、組成物は、フルオロカーボンフリーおよびシリコーンフリーである。
【0123】
実施形態において、組成物は、処理された生成物の機械的および熱的安定性の両方を高
める。一態様において、表面処理は、約-100℃~約300℃の温度で熱安定性である
。一態様において、セルロースベースの材料の表面は、約60°~約120°の水接触角
を示す。一態様において、表面処理は、約200℃~約300℃の温度で化学的に安定で
ある。
【0124】
プロラミン/PFAE組成物が添加された基材は、塗布前に(例えば、約80~150
℃で)乾燥させることがあるが、改質組成物を用いて、例えば浸漬し、表面を組成物に1
秒未満曝露できることによって処理することができる。基材を加熱して、表面を乾燥する
ことができ、その後、改質された材料はすぐに使用できる状態である。一態様において、
本明細書に開示される方法に従って、基材を、典型的に製紙工場で実施されるいずれか好
適なコーティング/サイジング方法で処理することがある(例えば、全体として引用する
ことにより本明細書の一部をなすものとするSmook, G.,“Surface T
reatments”,“Handbook for Pulp & Paper Te
chnologists” (2016), 4th Ed., Chap. 18,
pp. 293-309, TAPPI Press, Peachtree Corn
ers, GA USAを参照のこと)。
【0125】
一部の用途では、材料を処理前に乾燥することがあるが、本発明を実施する際に材料の
特別な調製は必要でない。実施形態において、開示されている方法を、フィルム、剛性容
器、繊維、パルプ、ファブリックなどに限定されないがこれらを含むいずれかのセルロー
スベースの表面に使用することができる。一態様において、プロラミン/ポリオール脂肪
酸エステルまたはコーティング剤を、通常のサイズプレス(垂直、傾斜、水平)、ゲート
ロールサイズプレス、計量サイズプレス、カレンダーサイズ塗布、チューブサイジング、
オンマシン、オフマシン、片面コーター、両面コーター、ショートドエル、同時両面コー
ター、ブレードまたはロッドコーター、グラビアコーター、グラビア印刷、フレキソ印刷
、インキジェット印刷、レーザー印刷、スーパーカレンダリング、およびそれらの組合せ
によって塗布することができる。
【0126】
供給源に応じて、セルロースは、紙、板紙、パルプ、軟材繊維、硬材繊維またはそれら
の組合せ、ナノセルロース、セルロースナノ繊維、ウィスカーまたはミクロフィブリル、
ミクロフィブリル化綿または綿ブレンド、セルロースナノ結晶、またはナノフィブリル化
セルロースとすることができる。
【0127】
実施形態において、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティングの塗布量は、
セルロース含有材料の少なくとも1つの表面を完全に被覆するのに十分な量である。例え
ば、実施形態において、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティングは、容器の
完全な外側表面、容器の完全な内部表面、もしくはそれらの組合せ、または原紙の片側も
しくは両側に塗布されることがある。実施形態において、フィルムの完全な上部表面は、
プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティングで被覆されることがあり、またはフ
ィルムの完全な下側表面は、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティングで被覆
されることがあり、または両側が被覆される。実施形態において、機器/計器の穴は、コ
ーティングによって被覆されることがあり、または機器/計器の外面は、プロラミン-ポ
リオール脂肪酸エステルコーティングによって被覆されることがあり、または外側および
内側の両表面が被覆される。実施形態において、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステル
コーティングの塗布量は、セルロース含有材料の少なくとも1つの表面を部分被覆するの
に十分な量である。例えば、周囲雰囲気、または標的最終用途における製品、組成物、化
合物もしくは材料に曝露される表面のみ、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーテ
ィングによって被覆され、あるいは周囲雰囲気に曝露されない表面のみ、プロラミン-ポ
リオール脂肪酸エステルコーティング(例えば、マスキング)によって被覆される。当業
者に明らかであるように、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティングの塗布量
は、被覆される材料の使用に依存することがある。一態様において、一方の表面は、プロ
ラミン-ポリオール脂肪酸エステル(プロラミン-PFAE)でコーティングされること
があり、反対側の表面は、タンパク質、小麦グルテン、ゼラチン、ダイズタンパク質分離
物、デンプン、加工デンプン、アセチル化多糖、アルギネート、カラギナン、キトサン、
イヌリン、長鎖脂肪酸、ワックス、およびそれらの組合せに限定されないがこれらを含む
作用剤でコーティングされることがある。一態様において、プロラミン-PFAEを完成
紙料に添加することができ、ウェブ上の得られた材料には、PFAEまたはプロラミン-
PFAEの追加のコーティングが設けられていることがある。
【0128】
いずれか好適なコーティング方法は、方法のその態様を実施する過程において塗布され
る様々なプロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティングおよび/または乳濁液のい
ずれかを送達するために使用されることがある。実施形態において、プロラミン-ポリオ
ール脂肪酸エステルコーティング方法は、浸漬、吹付け、塗装、印刷、およびこれらの方
法のうちのいずれかの任意の組合せを単独で、または開示されている方法を実施するのに
適応する他のコーティング方法とともに含む。
【0129】
例えば、ポリオール脂肪酸エステルの濃度を上げることによって、本明細書に開示され
るプロラミンは、より容易に溶解し、より均一なフィルムを形成する。一態様において、
様々な触媒によって、コーティングのより急速な「硬化」が、特定の用途を満たすように
プロラミン:ポリオール脂肪酸エステルの性質(組成)または量を正確に調節できる可能
性がある。
【0130】
処理されるセルロースの選択、プロラミン-ポリオール脂肪酸エステルコーティング、
反応温度および曝露時間が、最終製品のいずれか特定の用途に適するようにルーチンの実
験法で最適化されるパラメータであることは、当業者にとって明らかであろう。
【0131】
実施形態において、プロラミンはゼインである。ゼインは、商業的に購入し(上記を参
照のこと)、またはLawton JW, Cereal Chem (2002) 7
9(1): 1-18, at pages 1-4(全体として引用することにより本
明細書の一部をなすものとする)に記載されている方法によって作製することができる。
【0132】
誘導体化された材料は、当技術分野において公知である適切な試験を使用して画定およ
び測定することができる変更された物理的特性を有する。疎水性については、分析プロト
コルとしては、接触角測定および吸湿量を挙げることができるが、これらに限定されない
。他の特性としては、剛性、透湿速度(WVTR)、多孔度、引張強さ、基材分解の欠如
、破裂および引裂特性が挙げられる。従うべき特定の標準化プロトコルは、米国材料試験
協会によって定義されている(プロトコルASTM D7334-08)。
【0133】
表面の水蒸気や酸素などの様々なガスに対する透過性は、材料のバリア機能が増強され
るようにポリオール脂肪酸エステルコーティング方法でも変更されることがある。透過性
を測定する標準ユニットは、バーラーであり、それらのパラメータを測定するプロトコル
は、パブリックドメインでも入手可能である(水蒸気にはASTM規格F2476-05
、酸素にはASTM規格F2622-8)。
【0134】
実施形態において、本開示の手順に従って処理された生分解性材料は、微生物の攻撃下
の環境における分解によって測定して、完全な生分解性を示す。
【0135】
フラスコ振盪法(ASTM E1279-89(2008))およびZahn-Wel
lens試験(OECD TG 302 B)を含めて様々な方法が、生分解性を画定お
よび試験するのに利用可能である。
【0136】
ASTM D6400に限定されないがこれを含む様々な方法が、堆肥化可能性を画定
および試験するのに利用可能である。
【0137】
実施形態において、本明細書に開示されるバリアコーティング組成物は、基材または表
面に塗布されると、油および/またはグリースの浸透に対する耐性を有する物品をもたら
す。油および/またはグリースの浸透に対する耐性としては、様々な油、グリース、ワッ
クス、他の油性物質、およびトルエンやヘプタンなど驚くほどに高い浸透性溶媒による浸
透に対する耐性が挙げられる。油および/またはグリースの浸透に対する耐性は、3Mキ
ット試験によって測定することができる。一態様において、組成物は、少なくとも3、少
なくとも5、少なくとも7、少なくとも9のキット数を有する。
【0138】
実施形態において、物品を製造する方法であって、バリアコーティング組成物を基材に
塗布して、高表面エネルギーならびに油および/またはグリースの浸透に対する耐性を有
する物品を製造するステップを含む、方法が開示されている。関連した態様において、バ
リア組成物を基材の1つまたは複数の表面と密接に接触させて、それらの表面に対する浸
透耐性をもたらす。一態様において、バリアコーティングは、コーティングとして1つも
しくは複数の表面に塗布されることがあり、または用途において、コーティングが基材の
内部に吸収され、より多くの表面と接触するように塗布されることがある。
【0139】
実施形態において、バリア組成物は、コーティングとして基材に塗布される。基材は、
いずれか好適な方法、例えば圧延、展延、吹付け、刷毛塗りもしくは流し込み方法によっ
て組成物でコーティングすることができ、次に乾燥し、バリア組成物を他の材料とともに
、予備成形した基材に共押出し、または予備成形した基材を溶融/押出コーティングする
。一態様において、コーティングは、サイズプレスで塗布されることがある。一態様にお
いて、基材は、片側、両側またはすべての側面がバリア組成物でコーティングされること
がある。一態様において、ローラーにそって移動し、バリア組成物の基材への均一な展延
を可能にする「ドクターブレード」などのコーティングナイフが使用されることがある。
一態様において、バリアコーティングは、展延コーティング機を連続操作することによっ
てテキスタイル、不織、箔、紙、板紙および他のシート材料に塗布されることがある。
【0140】
本明細書に開示されるバリア組成物は、油および/またはグリースの浸透に対する耐性
を有する多種多様な異なる物品を製造するために使用されることがある。物品としては、
紙、板紙、厚紙、容器用板紙、セッコウボード、木材、木材複合体、家具、メーソンリー
、皮革、自動車仕上剤、家具艶出剤、プラスチック、焦げつかない料理用具および発泡体
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0141】
実施形態において、本明細書に開示されるバリア組成物は、ファーストフード包装を含
めて食品包装紙および板紙において使用されることがある。食品包装用途の具体例として
は、ファーストフード包装材、食品袋、スナック袋、食料雑貨店用袋、カップ、トレー、
カートン、箱、ビン、枠箱、食品包装フィルム、ブリスターパック包装材、電子レンジ対
応ポップコーン用袋、剥離紙、ペットフード用容器、飲料容器、OGR紙などが挙げられ
る。実施形態において、天然テキスタイル繊維または合成テキスタイル繊維などのテキス
タイル物品を製造しうる。関連した態様において、テキスタイル繊維は、衣類、リネン、
じゅうたん、掛け布、壁紙、室内装飾用品などにさらに加工されることがある。
【0142】
実施形態において、基材は、目的とするバリア組成物を塗布する前または後に物品に形
成されることがある。一態様において、容器は、平坦なコート板紙から、プレス成形、真
空成形によって、または板紙を所望の最終形状に折り畳み、接着させることによって製造
することができる。平坦なコート板紙ストックは、例えば(全体として引用することによ
り本明細書の一部をなすものとする)米国特許第4,900,594号に開示されたよう
に熱および圧力を加えることによってトレーに形成され、または(全体として引用するこ
とにより本明細書の一部をなすものとする)米国特許第5,294,483号に開示され
たように食品および飲料用の容器に真空成形されることがある。
【0143】
本発明の方法による処理に適した材料としては、反応/結合に利用可能な表面をかなり
の割合で有する、綿繊維、亜麻などの植物繊維、木質繊維、再生セルロース(レーヨンお
よびセロファン)、部分アルキル化セルロース(セルロースエーテル)、部分エステル化
セルロース(アセテートレーヨン)、および他の改質セルロース材料など様々な形のセル
ロースが挙げられる。以上に述べたように、「セルロース」という用語は、それらの材料
、ならびに同様のポリオール構造および同様の特性を有する他のものをすべて含む。それ
らのうち、比較的新しい材料のミクロフィブリル化セルロース(セルロースナノファイバ
ー)(例えば、それぞれ全体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする
米国特許第4,374,702号、米国特許出願公開第2015/0167243号およ
び同第2009/0221812号を参照のこと)が、目的の主題の実施に特に適してい
る。実施形態において、セルロースとしては、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロー
ス、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース(硝酸セルロ
ース)、硫酸セルロース、セルロイド、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメ
チルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロ
ースナノ結晶、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの
組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0144】
セルロースを本明細書に開示されるバリアコーティングで改質すると、油および/また
はグリースに対する耐性が高まること以外に、引張強さ、柔軟性および剛性も高まり、そ
れによって使用の範囲もさらに拡がることがある。本明細書に開示される改質セルロース
からまたはそれを使用することによって作製された生分解性および部分生分解性製品はリ
サイクル可能および堆肥化可能な製品を含めてすべて、本開示の範囲内である。
【0145】
コーティング技術の利用可能な用途のうち、そのような品目としては、あらゆる目的の
ための容器、などの、紙、板紙、製紙用パルプ、カップ、蓋、箱、トレー、剥離紙/ライ
ナー、堆肥バッグ、買い物袋、パイプおよび導水管、食品用使い捨てカトラリー、皿およ
びビン、テレビおよび携帯機器用のスクリーン、衣類(例えば、綿または綿ブレンド)、
包帯、感圧ラベル、感圧テープ、女性用製品、ならびに避妊具などの医療機器、薬物送達
装置などが挙げられるが、これらに限定されない。また、本明細書に開示されるコーティ
ング技術を、家具および室内装飾用品、野外キャンプ用具などにも使用することができる
。
【0146】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、限定するものではないことを
意図する。
【実施例0147】
[実施例1]
糖脂肪酸エステル配合物
SEFOSE(登録商標)は室温で液体であり、ベンチトップ型引落装置を使用して、
その材料を含有するすべてのコーティング/乳濁液を室温で塗布した。様々なコート重量
を生み出すように、ロッドのタイプおよびサイズを変更した。
【0148】
配合物1
50mlのSEFOSE(登録商標)を、195mlの水および5グラムのカルボキシ
メチルセルロース(FINNFIX(登録商標) 10;CP Kelco、Atlan
ta、GA)を含有する溶液に添加した。5000rpmにセットしたSilverso
nホモジナイザーを使用して、配合物を1分間混合した。乳濁液を、漂白硬材パルプで作
製された50グラムのベースシート、および無漂白軟材から構成された80グラムのシー
トにコーティングした。両紙をオーブン(105℃)に15分間入れ、乾燥した。オーブ
ンから取り出した後、シートを実験台に置き、各シートにピペットで水(室温)を10滴
加えた。未処理のベースシートは水の小滴を直ちに吸収するが、様々な量のSEFOSE
(登録商標)でコーティングされたシートでは、コート重量が増加するにつれて耐水性の
レベルが上昇していくことが見られた(表1を参照のこと)。
【0149】
【0150】
耐水性は、重い方のシートではそれほど顕著ではなく、シートが乾燥していなければ耐
水性が達成されないことが観察された。
【0151】
配合物2
SEFOSE(登録商標)のカップストックへの添加:(MFC処理なしの単層ストッ
ク)(ユーカリパルプで作製された板紙110グラム)。50グラムのSEFOSE(登
録商標)を200グラムの5%加熱エチル化デンプン(Ethylex 2025)に添
加し、ベンチトップ型カディミルを使用して、30秒間撹拌した。紙試料をコーティング
し、オーブンに105℃で15分間入れた。試験小滴(10~15)を、板紙のコーティ
ングされた側面に置き、水ホールドアウト時間を測定し、下記の表に記録した。未処理の
板紙対照の水浸透は、瞬時であった(表2を参照のこと)。
【0152】
【0153】
配合物3
純粋なSEFOSE(登録商標)を45℃に温め、噴霧ビンに入れた。均一な噴霧を、
前の例の紙ストック、ならびに一片の繊維板およびある量の綿布に適用した。水滴を試料
に置くと、基材中への浸透が30秒以内に起こった。しかし、オーブン中、105℃で1
5分間乾燥した後、水滴が基材中に吸収される前に蒸発した。
【0154】
継続調査は、SEFOSE(登録商標)が耐油性および/またはグリース性コーティン
グに使用される化合物と相溶性がありうるかどうかに関係した。SEFOSE(登録商標
)は、耐水性および剛性改善にとって有用である。板紙ストック(240g)を剛性試験
に使用した。表3に、結果を示す。データは、単一のコート重量:5グラム/平方メート
ルで得られたものであり、5つの試料の平均が報告されている。結果は、V-5 Tab
er剛性試験機モデル150-Eを用いて記録されたTaber剛性単位である。
【0155】
【0156】
[実施例2]
糖エステルのセルロース系基材への結合
SEFOSE(登録商標)がセルロース系材料に可逆的に結合しているかどうかを決定
しようとして、純粋なSEFOSE(登録商標)を純粋なセルロースと50:50の比で
混合した。SEFOSE(登録商標)を300°Fで15分間反応させ、混合物を塩化メ
チレン(非極性溶媒)または蒸留水で抽出した。試料を6時間還流し、試料の重量分析を
行った。
【0157】
【0158】
[実施例3]
セルロース系表面の調査
MFCを含む原紙と含まない原紙の走査型電子顕微鏡像は、より細孔の少ないベースが
、表面に反応している防水剤がはるかに少なくて済む可能性をもつことを示す。
図1~2
は、未処理の中空隙率Whatman濾紙を示す。
図1および2は、誘導体化剤が反応す
ることができる曝露表面積が比較的広いことを示す。しかし、高多孔性シートには水が逃
げ込む場所が十分あることが明らかになる。
図3および4は、リサイクルパルプで作製さ
れた紙をMFCでコーティングする前およびコーティングした後を突き合わせて比較した
ものを示す。(同じ試料で2つの倍率があり、画像の左側はMCFを含まない)。試験に
より、はるかに細孔の少ないシートの誘導体化は、長期水/蒸気バリア性能に対してより
高い見込みを示すことがわかる。最後の2つの像は、対比および比較のための、1枚の濾
紙の平均「細孔」を撮影したクローズアップおよびCNFコート紙を同様の倍率で撮影し
たクローズアップである。
【0159】
上記のデータから、臨界点である、より多くの材料の添加によって、性能が対応して向
上することが明らかになる。理論に拘束されるものではないが、無漂白紙では反応がより
速いようであり、これは、リグニンの存在が反応を促進させる可能性があることを示唆し
ている。
【0160】
液体SEFOSE(登録商標)は容易に乳化することができる。したがって、そのよう
な液体を、製紙工場においてよく使用されるコーティング設備で機能するように適合させ
ることができる。
【0161】
[実施例4]
「Phluphi」
液体SEFOSE(登録商標)を漂白硬材繊維と混合および反応させて、防水性手漉き
シートを生み出す様々な形を生成した。スクロースエステルをシート形成前にパルプと混
合すると、PFAEの大部分は繊維とともに保持された。十分な加熱および乾燥を行うと
、脆くてふわふわしているが、疎水性の手漉きシートが形成された。その例では、0.2
5グラムのSEFOSE(登録商標)を、6リットルの水中で4.0グラムの漂白硬材繊
維と混合した。混合物を手動で撹拌し、水を標準の手漉きシート鋳型に注いだ。得られた
繊維マットを取り出し、325°Fで15分間乾燥した。生成したシートは、著しい疎水
性を示し、かつ繊維間の水素結合を大幅に低減させた。(100°より大きい水接触角が
観察された)。乳化剤を添加することができる。SEFOSE(登録商標)と繊維は、約
1:100~2:1とすることができる。
【0162】
その後の試験により、タルクは方法において唯一の傍観物であり、追加の試験から外し
たことがわかる。
【0163】
[実施例5]
SEFOSE(登録商標)コーティング特性に対する環境効果
スクロースエステルと繊維の反応機構をよりよく理解するために、湿潤強さ樹脂が添加
されているが、耐水性を有さない(サイジングを含まない)漂白クラフトシートに、低粘
度コーティングを塗布した。Brookfield粘度計を100rpmで使用して、コ
ーティング粘度を測定した。
【0164】
SEFOSE(登録商標)をEthylex 2025(エチル化デンプン)と乳化し
、グラビアロールを介して紙に塗布した。比較のために、SEFOSE(登録商標)をW
estcote 9050 PvOHとも乳化した。
図5に示すように、SEFOSE(
登録商標)の二重結合の酸化は、酸化的な化学的性質を増強する熱および追加の化学的環
境の存在によって増強される(表5も参照のこと)。
【0165】
【0166】
[実施例6]
不飽和脂肪酸鎖対飽和脂肪酸鎖の効果
SEFOSE(登録商標)を漂白軟材パルプと反応させ、乾燥して、シートを形成した
。その後、CH2Cl2、トルエンおよび水で抽出して、パルプとの反応の程度を決定し
た。Soxhlet抽出ガラス器具を使用して、少なくとも6時間抽出した。抽出の結果
を表6に示す。
【0167】
【0168】
データにより、SEFOSE(登録商標)の本質的にすべてがシートに残っていること
が示される。同じ手順をパルプ単独で実施し、結果から、パルプ10g当たり約0.01
gが得られたことがわかる。理論に拘束されるものではないが、それは、完全に除去され
ていなかった残留パルプ化化学薬品またはより可能性の高い抽出物として説明することが
できる。
【0169】
セルロースの純粋な繊維(例えば、Sigma Aldrich(St.Louis、
MO)のα-セルロース)を使用して、実験を繰り返した。SEFOSE(登録商標)の
負荷率レベルが繊維の質量の約20%未満のままである限り、SEFOSE(登録商標)
の質量の95%超が繊維とともに保持され、極性溶媒でも非極性溶媒でも抽出されなかっ
た。理論に拘束されるものではないが、焼付け時間および温度を最適化すると、繊維とと
もに残留するスクロースエステルがさらに増強されることがある。
【0170】
示されるように、データから、一般的には乾燥後に材料からSEFOSE(登録商標)
を抽出できないことが明らかになる。一方、PFAEの脂肪酸がすべて飽和脂肪酸鎖であ
ると、材料中のPFAEのほぼ100%である、Procter & Gamble C
hemicals(Cincinnati、OH)から入手可能なOLEAN(登録商標
)を、(70℃以上の)熱水を使用して抽出することができる。OLEAN(登録商標)
はSEFOSE(登録商標)と同一であるが、唯一の変更は、スクロースに不飽和脂肪酸
が結合している(SEFOSE(登録商標))代わりに、飽和脂肪酸が結合している(O
LEAN(登録商標))点である。
【0171】
別の注目すべき態様は、複数の脂肪酸鎖が、セルロース、および構造中の2つの糖分子
と反応性を示し、SEFOSE(登録商標)が堅い架橋網目を生じ、紙、板紙、エアレイ
ドおよび湿式不織布、ならびにテキスタイルなど繊維ウェブの強度改善が導かれることで
ある。
【0172】
[実施例7]
耐水性を達成するためのSEFOSE(登録商標)添加
硬材と軟材の両方のクラフトパルプを使用して、2グラムおよび3グラムの手漉きシー
トを作製した。SEFOSE(登録商標)を1%パルプスラリーに0.1%以上のレベル
で添加し、水を排出し、手漉きシートを形成すると、SEFOSE(登録商標)は繊維と
ともに保持され、耐水性を付与した。0.1%~0.4%SEFOSE(登録商標)の水
が、表面上で数秒以下玉のようになった。SEFOSE(登録商標)負荷が0.4%を超
えると、1.5%より高い負荷率レベルに向けて、耐水性の時間が何分間に、次いで何時
間に急速に増加した。
【0173】
[実施例8]
嵩高い繊維材料の製造
SEFOSE(登録商標)をパルプに添加すると、繊維を軟化させ、繊維間の空間を増
加させ、嵩高くなるように作用する。例えば、125g(乾燥状態)のパルプを含有する
硬材パルプの3%スラリーを水切りし、乾燥すると、18.2立方センチメートルの体積
を占めることがわかった。水切りおよび乾燥時に、12.5gのSEFOSE(登録商標
)を、等量の125gの乾燥繊維を含有する同じ3%硬材パルプスラリーに添加すると、
得られたマットは45.2立方センチメートルを占めた。
【0174】
30グラムの標準漂白硬材クラフトパルプ(Old Town Fuel and F
iber、LLC、Old Town、ME)を、60℃に温めておいたSEFOSE(
登録商標)とともに噴霧した。約4.3cm3を10,000rpmの砕解機に入れ、本
質的に再パルプ化した。混合物を、手漉きシート鋳型を通して注ぎ、105℃で乾燥した
。得られた疎水性パルプは、8.1cm3の体積を占めた。その材料を2インチ角に裁断
し、液圧プレスに入れ、圧力50トンを30秒間加えた。その四角の体積を大幅に低減し
たが、依然として圧力を加えない対照のために裁断された同じ2インチ角より50%高い
体積を占めた。
【0175】
嵩および軟らかさの増加が観察されるだけでなく、水切りをした後の強制再パルプ化マ
ットによって、疎水性のすべてが保持された繊維マットが得られたことも重要である。そ
の品質は、水が低表面エネルギーバリアを容易に「押し分けて」通って、シートに入り込
むことはあり得ないという知見に加えて、価値がある。疎水性の単一脂肪酸鎖の結合は、
その特性を示さない。
【0176】
理論に拘束されるものではないが、それは、SEFOSE(登録商標)がセルロースと
反応しており、セルロース繊維の表面のOH基がその後の水素結合に関与するのにもはや
利用不可能であるという追加の証拠を表す。他の疎水性材料が、初期の水素結合に干渉す
るが、再パルプ化時に、その影響は逆転され、セルロースのOH基は、再乾燥時に水素結
合に自由に関与する。
【0177】
[実施例9]
袋用紙試験データ
以下の表(表7)は、5~7g/m2でSEFOSE(登録商標)およびPvOHの混
合物を無漂白クラフト袋ストック(対照)にコーティングすることによって付与された特
性を示す。また、市販の袋も参照のために含まれる。
【0178】
【0179】
表7で見ることができるように、対照原紙をSEFOSE(登録商標)およびPvOH
でコーティングすると、引張および破裂は増加する。
【0180】
[実施例10]
湿潤/乾燥引張強さ
3グラムの手漉きシートを漂白パルプから作製した。以下のデータにより、SEFOS
E(登録商標)の異なる添加レベルで湿潤および乾燥の引張強さが比較される。それらの
手漉きシートでは、SEFOSE(登録商標)をいずれのコーティングにも乳化せず、単
にパルプに混ぜ込み、他の化学的性質を加えることなく水切りしたことに留意すること(
表8を参照のこと)。
【0181】
【0182】
5%の添加率により、対照の乾燥強さをさほど下回らない湿潤強さが得られたことにも
留意のこと。
【0183】
[実施例11]
8つ未満の飽和脂肪酸を含有するエステルの使用
8つ未満の脂肪酸がスクロース部分に結合して生成されたスクロースエステルを用いて
、いくつかの実験を行った。SP50、SP10、SP01およびF20Wの試料(Si
sterna、The Netherlands)は、それぞれ50%、10%、1%、
および本質的に0%のモノエステルを含有する。それらの市販の製品は、スクロースを飽
和脂肪酸と反応させることによって作製され、したがって化合物が、さらに架橋するのに
有用でなくなり、または同様の化学的性質にとって有用でなくなるが、化合物は、乳化お
よび撥水特性を調査する際に有用である。
【0184】
例えば、10gのSP01を、10%加熱PvOH溶液中で10gのグリオキサールと
混合した。混合物を200°Fで5分間「加熱」し、漂白硬材クラフトから作製された多
孔性原紙に引落しにより塗布した。結果は、良好な疎水性を示す、紙の表面上にある架橋
ワックス系コーティングであった。最低限の3g/m2を塗布した場合、得られた接触角
は100°より大きかった。グリオキサールは、OH基を有する化合物で使用される周知
の晶析装置であるので、その方法は、スクロース環の残りのアルコール基を基材または他
のコーティング材料において利用可能なアルコール基と結合させることによって、かなり
非反応性のスクロースエステルを表面に付着させるのに有望な手段である。
【0185】
[実施例12]
HSTデータおよび吸湿
SEFOSE(登録商標)単独で、防水特性が観察されることを明らかにするために、
多孔性Twins River(Matawaska、ME)原紙を様々な量のSEFO
SE(登録商標)(および乳化し、引落しにより塗布するPvOHまたは加工デンプン(
Ethylex 2025))で処理し、Herculesサイズ試験でアッセイした。
結果を表9に示す。
【0186】
【0187】
表9で見ることができるように、紙の表面に塗布されるSEFOSE(登録商標)の増
加によって、(HST(単位秒)の増加によって示されるように)耐水性が高まる。
【0188】
それは、飽和スクロースエステル生成物のコーティングを使用しても見ることができる
。F20W(Sisterna、The Netherlands)は、4~8置換範囲
の大部分の分子でモノエステル%が非常に低いと記載されている。F20W製品の含浸量
は、PvOHとともに、等量部のそれぞれを使用して、安定な乳濁液を作製して乳化させ
た全コーティングの50%に過ぎないことに留意すること。したがって、含浸量が「0.
5g/m2」と標識されている場合、同じ含浸量のPvOHも存在し、1.0g/m2の
全含浸量が得られる。結果を表10に示す。
【0189】
【0190】
やはり表10からわかるように、F20Wの増加により、多孔性シートの耐水性が高ま
る。したがって、塗布されたスクロース脂肪酸エステルは、紙を耐水性にしている。
【0191】
耐水性は、単にセルロースとエステル結合を形成する脂肪酸の存在によるものではない
ため、軟材手漉きシート(漂白軟材クラフト)にSEFOSE(登録商標)を負荷し、パ
ルプ中のセルロースとエステル結合を形成するオレイン酸をパルプに直接添加した。時間
0における質量は、105℃のオーブンから取り出された手漉きシートの「絶乾」質量を
表す。試料を、RH50%で維持した調湿室に入れた。質量の変化を経時的に記録する(
単位分)。結果を表11および12に示す。
【0192】
【0193】
【0194】
オレイン酸がパルプに直接添加され、エステル結合を形成する場合の違いは、吸湿を大
いに遅くすることに留意すること。対照的に、わずか2%SEFOSE(登録商標)は吸
湿を遅くし、より高い濃度では、30%SEFOSE(登録商標)は遅くしない。したが
って、理論に拘束されるものではないが、SEFOSE(登録商標)結合材料の構造は、
単純な脂肪酸エステルおよびセルロースによって形成された構造だけで説明できるはずが
ない。
【0195】
[実施例13]
飽和SFAE
飽和エステルは室温でワックス状固体であり、飽和しているため、試料マトリックスと
、または分子間で反応しにくい。高温(例えば、少なくとも40℃、試験したものすべて
、65℃超)を使用すると、材料は溶融し、液体として塗布することができ、次いで冷却
および固化し、疎水性コーティングを形成する。あるいは、材料を水性コーティングとし
て乳化および塗布して、疎水性の特徴を付与することができる。
【0196】
表13に示すデータは、様々な量の飽和SFAEでコーティングされた紙から得られた
HST(Herculesサイズ試験)読取値を表す。
【0197】
Turner Falls紙から得られた#45の漂白硬材クラフトシートを試験コー
ティングに使用した。ガーレー多孔度は、約300秒測定し、かなり緊密なベースシート
を表す。Mitsubishi Foods(日本)から得られたS-370(3~5の
DS)を、コーティングする前にキサンタンガム(飽和PFAE配合物の質量の最大1%
)と乳化した。
【0198】
飽和PFAE配合物のコート重量(1トン当たりポンド数)およびHST(1試料当た
り4回測定の平均)を表13に示す。
【0199】
【0200】
データにより、限定された量の飽和PFAEは、他の目的/用途に合わせて設計された
コーティングの耐水性を増強させることがあると裏付けられる。例えば、飽和PFAEを
EthylexデンプンおよびPvOHベースのコーティングとブレンドすると、耐水性
の増加がいずれの場合にも観察された。
【0201】
以下の実施例を、ガーレー多孔度が18秒である#50の漂白リササイクルベースにコ
ーティングした。
【0202】
100グラムの加工デンプン(Ethylex 2025)を固体10%(体積1リッ
トル)で加熱し、10グラムのS-370を熱いまま添加し、Silversonホモジ
ナイザーを使用して混合した。一般的なベンチトップ型引落し装置を使用して、得られた
コーティングを塗布し、紙を加熱ランプ下で乾燥した。
【0203】
300#/トンのコート重量で、デンプン単独は、平均HSTが480秒であった。同
じコート重量のデンプンおよび飽和PFAEの混合物では、HSTが710秒に増加した
。
【0204】
十分なPvOH(Selvol 205S)を熱水に溶解して、10%溶液を形成した
。溶液を上記の同じ#50紙にコーティングすると、150ポンド/トンのコート重量で
平均HSTが225であった。その同じ溶液を使用して、S-370を添加すると、乾燥
量基準で90%PVOH/10%S-370(すなわち、90mlの水、9グラムのPv
OH、1グラムのS-370)を含有する混合物が形成され、平均HSTは380秒に増
加した。
【0205】
デンプンなどいくつかの不溶性冷ポリマーは、プロラミン(ゼインなど;全体として引
用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第7,737,200号を参
照のこと)と相溶性がある。前記特許の主題の商業生産に対する主な障壁の1つは、配合
物が水溶性であることなので、飽和PFAEの添加は、そのような形で役に立つ。
【0206】
[実施例14]
他の飽和SFAE
飽和PFAEベースのコーティングのサイズプレス評価を、サイジングがなく、形成が
比較的不十分である漂白軽量シート(約35#)で行った。加熱して、飽和PFAEを乳
化したExceval HR 3010 PvOHを使用して、すべての評価を行った。
十分な飽和PFAEを添加して、全固体の20%を占めた。S-370対C-1800の
試料(Mitsubishi Foods(日本)から入手可能)を評価することに焦点
を当てた。これらのエステルの両方は、対照よりうまく行われた。重要なデータの一部を
表14に示す。
【0207】
【0208】
飽和化合物は、キットの増加をもたらすように見え、S-370とC-1800は両方
とも、HSTの増加が約100%であることに留意すること。
【0209】
[実施例15]
湿潤強さ添加剤
実験室試験により、ポリオールエステルの化学的性質を、湿潤強さ添加剤として使用す
ることを含めて様々な特性を達成するように調節できることがわかった。飽和基をスクロ
ース(または他のポリオール)の各アルコール官能基に結合させることによって、ポリオ
ールエステルが作製されると、結果は、水に対して低混和性/溶解性である疎水性ワック
ス状物質である。化合物をセルロース系材料に添加して、内部からまたはコーティングと
して耐水性を付与することができる。しかし、化合物は、相互でも、試料マトリックスの
いずれの部分とも化学的に反応しないので、溶媒、熱および圧力によって除去されやすい
。
【0210】
防水性およびより高いレベルの耐水性が望ましい場合、マトリックスにスクロースエス
テルを固定し、エステルに物理的手段による除去に耐性をもたせる助けとなる酸化および
/または架橋を達成することを目的として、不飽和官能基を含むポリオールエステルが作
製され、セルロース系材料に添加されることがある。スクロースエステルの不飽和基の数
およびサイズを調節することにより、強度を付与するために架橋する手段が得られ、さら
に耐水性を高めるように分子を改質することができる。
【0211】
表15のデータは、SEFOSE(登録商標)を漂白クラフトシートに様々なレベルで
添加し、湿潤引張データを得ることによって取り出される。表中に示す百分率は、処理さ
れた70#の漂白紙のスクロースエステル(%)を表す(表15を参照のこと)。
【0212】
【0213】
データは、負荷レベルが増加するにつれて湿潤強さが増加する傾向を示している。乾燥
引張は、シートの最大強度を基準点として示す。
【0214】
[実施例16]
酸塩化物を使用して、スクロースエステルを生成する方法
エステル交換を介して疎水性ポリオールエステルを作製することに加えて、酸塩化物を
、環構造を含むポリオールと直接反応させることによって、繊維物品において同様の疎水
性特性を達成することができる。
【0215】
例えば、200グラムの塩化パルミトイル(CAS 112-67-4)を50グラム
のスクロースと組み合わせ、室温で混合した。混合物を100°Fにし、その温度で終夜
維持した(周囲圧力)。得られた材料をアセトンおよび脱イオン水で洗浄して、いずれの
未反応または親水性の材料も除去した。C13 NMRを使用して、残っている材料を分
析すると、相当量の疎水性スクロースエステルが作製されたことがわかった。
【0216】
脂肪酸塩化物をセルロース系材料に添加すれば、疎水性を付与することができるが、こ
の反応は、副生物であるガス状HClが、周囲の材料の腐食を含めていくつかの問題点を
もたらし、労働者および周囲の環境に対して有害であるので望ましくない。塩酸の発生に
よりもたらされる1つの追加的な問題は、多く形成されるにつれて、すなわち多くのポリ
オール部位が反応するにつれて、繊維組成物が弱くなることである。例えば、塩化パルミ
トイルをセルロースや綿素材に増量して反応させると、疎水性が高まるにつれて、物品の
強度が低下した。
【0217】
トウモロコシデンプン、カバノキ由来のキシラン、カルボキシメチルセルロース、グル
コースおよび抽出ヘミセルロースを含めて、他の同様のポリオールのそれぞれ50グラム
と反応させた200グラムのR-CO-クロリドを使用して、上記の反応を数回繰り返し
、同様の結果を得た。
【0218】
[実施例17]
剥離試験
剥離試験は、再現性のある角度として紙の表面からテープを剥離するために必要とされ
る力を測定するために、引張試験機の2つの顎部間にあるホイールを利用する(ASTM
D1876;例えば、100 Series Modular Peel Teste
r、TestResources、Shakopee、MN)。
【0219】
Turners Falls紙(Turners Falls、MA)に由来して高ガ
ーレー(600秒)を有する漂白クラフト紙を使用した。#50ポンドのシートは、かな
り緊密であるが極めて吸収性の高いシートを表す。
【0220】
#50ポンド紙を対照として15%加工デンプン(Ethylexデンプン)でコーテ
ィングすると、必要とされる(5つの試料の)平均力は、0.55ポンド/インチであっ
た。Ethylexデンプンの25%の代わりにSEFOSE(登録商標)を使用した点
以外は同じコーティング(したがって、25%の含浸量がSEFOSE(登録商標)であ
り、75%がやはりEthylexである)で処理すると、平均力は、0.081ポンド
/インチに減少した。Ethylexの50%の代わりにSEFOSE(登録商標)を使
用すると、必要とされた力は、1インチ当たり0.03ポンド未満に減少した。
【0221】
その紙の調製は、紙の引張強さを決定するTAPPI標準方法404に従う。
【0222】
最後に、同じ紙を、1トン当たり750ポンドの負荷率でS-370とともに使用した
。これにより、シートの細孔をすべて効果的に埋め、完全な物理的バリアが形成する。そ
の紙は、平面でTAPPIキット12に合格する。飽和PFAE変種を使用して、耐グリ
ース性を得ることが可能である。
【0223】
[実施例18]
ゼイン-SFAE組成物
A. 中範囲DS
飽和脂肪酸部分を含み、約3~4つの飽和脂肪酸鎖がスクロース分子に結合しているス
クロース脂肪酸エステル(Fooding Group Ltd.,Shanghai、
CA)の100グラムをビーカーに秤量した。エステルが白色粉末から高粘性の溶融ワッ
クス状物質に変化するまで、熱を加えた。30グラムの純粋なゼイン(Freeman
Industries LLC、Tuckahoe、NY)をエステルに導入した。黄色
粉末がエステル中に溶融すると、熱を取り除いた。混合物を10分間放置した。ベンチト
ップ型ホモジナイザーを使用して、混合物を撹拌するとともに、温水を添加した。約60
0gの水を加えると、自由流動性の均質なゼイン-エステル混合物が得られ、少なくとも
100時間、目に見える固体も、沈殿物も、相分離もなかった。
【0224】
同じエステルを熱水ブレンドし、35#、18ガーレーの漂白原紙にコーティングした
。4g/m2のコート重量で、TAPPIキット4を達成した。コート重量を上げると、
PFAEを単独で使用したときキット値は増加しないようであったが、エステルによって
、グリースが紙の上で玉になった。炭酸カルシウムと混合したエステルを使用して、作業
を再現し、同じ紙に塗布した。4g/m2で、キット3を達成した。
【0225】
ゼイン-SFAEの組合せを、ベンチトップ型引落しコーターを介して、様々なベース
シートに塗布すると、TAPPIキット2~6範囲が観察された。そのキット値は、ベー
スシートの緊密さおよび塗布されたコート重量に依存した。例えば、250ガーレーの漂
白ベースシートを使用して、少なくとも4g/m2のコーティングを塗布したとき、キッ
ト6を達成した。他の添加剤を添加して、気泡を除去し、細菌を介した劣化を抑制し、タ
ンパク質確認、すなわち粒径を最適化するのを助けることができるものと予想される。
【0226】
約3のHLBおよび3~5のDSを有する、飽和脂肪酸部分を含むスクロース脂肪酸エ
ステル(三菱ケミカル株式会社(東京、日本)からのRYOTO(商標)S370および
B370)の100グラムを、2つのビーカーのそれぞれに秤量する。エステルが溶融す
るまで、試料に熱を加える。30グラムのゼイン(Freeman Industrie
s LLC、Tuckahoe、NY)を各ビーカーに導入する。黄色粉末がエステル中
に溶融すると、熱を取り除く。混合物を10分間放置する。ベンチトップ型ホモジナイザ
ーを使用して、混合物を撹拌するとともに、温水を各ビーカーに添加する。均質なゼイン
-エステル混合物が得られるまで、水を添加する。
【0227】
合わせたゼイン-PFAE混合物を、ベンチトップ型引落しコーターを介して様々なベ
ースシートに塗布すると、より高いキット値および撥油性を有する処理された紙が得られ
る。
【0228】
ゼインは、中~高レベルのキット値を達成するために必要である。理論に拘束されるも
のではないが、ゼイン-エステル相乗作用により、3~4の範囲の低キットを必要とし、
現場でコーターを利用する可能性がない人にとって配合する新しい形が可能になりうるこ
とは注目に値する。さらに、何らかのレベルの顔料でキットを達成することが可能になり
うる。
【0229】
B. 低範囲DS
飽和脂肪酸部分を含み、約1~2つの飽和脂肪酸鎖がスクロース分子に結合しているス
クロース脂肪酸エステルの100グラムをビーカーに秤量する。エステルが溶融するまで
、熱を加える。30グラムの純粋なゼインをエステルに添加する。ブレンドするとき、熱
を取り除く。混合物を放置する。ベンチトップ型ホモジナイザーを使用して、混合物を撹
拌するとともに、温水を添加すると、自由流動性のゼイン-SFAE混合物が生じる。
【0230】
合わせたゼイン-SFAEを、ベンチトップ型引落しコーターを介して様々なベースシ
ートに塗布すると、処理された紙が得られ、その紙では、グリースおよび油が玉になった
。
【0231】
16のHLBを有し、1~2つの飽和脂肪酸鎖がスクロース分子に結合していることを
示唆する、飽和脂肪酸部分を含むスクロース脂肪酸エステル(三菱ケミカル株式会社(東
京、日本)からのRYOTO(商標)L1695およびP1670)の100グラムを、
2つのビーカーのそれぞれに秤量する。エステルが溶融するまで、試料に熱を加える。3
0グラムのゼイン(Freeman Industries LLC、Tuckahoe
、NY)を各ビーカーに導入する。黄色粉末がエステル中に溶融すると、熱を取り除く。
混合物を10分間放置する。ベンチトップ型ホモジナイザーを使用して、混合物を撹拌す
るとともに、温水を各ビーカーに添加する。均質なゼイン-エステル混合物が得られるま
で、水を添加する。
【0232】
合わせたゼイン-PFAE混合物を、ベンチトップ型引落しコーターを介して様々なベ
ースシートに塗布すると、より高いキット値および明らかな撥油性を有する処理された紙
が得られる。
【0233】
[実施例19]
カップベースストックは、耐水性を高めるためにロジンで厳しく処理されていることが
わかった。しかし、その板紙のガーレーは50秒であることが判明した。これは、かなり
多孔性の高い厚紙であることを示唆している。その材料は再パルプ化可能であり、蒸気が
速やかに浸透し、材料を軟化させる。純粋なSEFOSE(登録商標)をその板紙に塗布
し、100℃のオーブン中で終夜乾燥した。得られた材料は、触るとプラスチックのよう
であり、完全に防水性であった。質量基準で、材料は50%(wt/wt)のセルロース
/50%(wt/wt)のSEFOSE(登録商標)であった。ガーレーは高すぎて、測
定できなかった。試料を水中に7日間浸しても、材料を著しく軟化することはなかった。
グリーンハウスデータにより、材料は約150日で生物分解することが明らかになった。
一般的なテープおよびにかわであれば、この複合材料に粘着しない。
【0234】
ゼインは紙に耐グリース性を付与することが示されたので、飽和PFAEおよびゼイン
を用いた実験が行われた。飽和PFAEが2~5%添加されたゼインの安定な水性分散体
(水中で最大25%)を生成した。観察によれば、飽和PFAEが、配合物に(耐グリー
ス性に加えて)耐水性を付与することによって、紙にゼインを「封鎖」することが明らか
になった。
【0235】
上記の実施例を参照しながら、本発明を説明してきたが、修正および変形が本発明の趣
旨および範囲内に包含されることが理解されよう。したがって、本発明は、以下の特許請
求の範囲によってのみ限定される。本明細書において開示されるすべての参考文献は、全
体として引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
プロラミンと少なくとも1種のポリオール脂肪酸エステル(PFAE)とを含むバリアコーティングであって、前記ポリオールが、環式構造と1~2個の脂肪酸部分または3~5個の脂肪酸部分とを含み、脂肪酸が飽和脂肪酸である、バリアコーティング。