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特開2024-153662プラズマ生成が制御される高周波ガイドワイヤ及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153662
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】プラズマ生成が制御される高周波ガイドワイヤ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108824
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2017543729の分割
【原出願日】2016-02-18
(31)【優先権主張番号】62/117,828
(32)【優先日】2015-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515233661
【氏名又は名称】レトロバスキュラー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】オガタ ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】グ シャン イアン
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プラズマ生成が制御される高周波ガイドワイヤ及びその使用方法を提供する。
【解決手段】高周波ガイドワイヤ10は、高周波発生器へ結合されるように構成されたコア・ワイヤ12を含む。コア・ワイヤは高周波発生器に対する近位端及び遠位端を含む。遠位チップ構造20は遠位端に近接してコア・ワイヤに結合される。チップ構造は一つ以上の端面を含む。一つ以上の端面はチップ構造上に曲率半径減少領域を提供する。曲率半径減少領域は、チップ構造上での高周波エネルギーの送達中、チップ構造の他の領域よりも高い電界を生成する。高周波ガイドワイヤを利用して閉塞部を焼灼することも出来る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波発生器へ結合されるように構成されたコア・ワイヤであって、前記高周波発生器に対する近位端及び遠位端を含む前記コア・ワイヤと、
前記遠位端に近接して前記コア・ワイヤに結合されたチップ構造であって、一つ以上の端面を含む前記チップ構造と
を含み、
前記一つ以上の端面が、前記チップ構造上に曲率半径減少領域を提供し、前記曲率半径減少領域が、高周波エネルギーの送達中、前記チップ構造の他の領域よりも高い電界を生成する、
高周波ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記チップ構造が、前記コア・ワイヤの反対側に位置する前記チップ構造の一端に位置する第一の端面を含む、請求項1に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記チップ構造が、第一の端面及び第二の端面を含み、前記第一及び第二の端面が、前記チップ構造の対向する外縁に位置する、請求項1に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記コア・ワイヤが、コア・ワイヤ・近位セクション及びコア・ワイヤ・遠位セクションを含み、前記コア・ワイヤ・遠位セクションが、前記コア・ワイヤ・近位セクションよりも小さな直径を含む、請求項1に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項5】
前記コア・ワイヤの全長の少なくとも一部分に沿って延在する外側絶縁層をさらに含む、請求項1に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項6】
前記外側絶縁層が誘電物質を含む、請求項5に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項7】
前記チップ構造に近接して位置するカラー構造をさらに含む、請求項5に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項8】
前記カラー構造が、前記チップ構造に絶縁を提供するように構成されている、請求項7に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項9】
前記カラー構造が、前記外側絶縁層よりも高い融解温度を有する物質を含む、請求項7に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項10】
前記カラー構造が、前記チップ構造を誘電体バリヤ内に密閉する、請求項7に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項11】
前記カラー構造が、前記チップ構造で発生する蒸気泡または衝撃波の、前記コア・ワイヤへ向かう伝播を妨げるように構成されている、請求項7に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項12】
前記カラー構造が、前記チップ構造に近接して位置する実質的に凹状の面を有する、請求項11に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項13】
前記コア・ワイヤを介して前記高周波発生器から送られる電流に対して並列回路を形成するように構成された一つ以上の抵抗素子をさらに含む、請求項5に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項14】
前記外側絶縁層の内面に沿って位置するコイル構造をさらに含む、請求項5に記載の高周波ガイドワイヤ。
【請求項15】
身体領域を処置するための方法であり、前記方法が、
前記身体領域へガイドワイヤを送達する工程であって、前記ガイドワイヤが、
高周波発生器へ結合されるように構成されたコア・ワイヤであって、前記高周波発生器に対する近位端及び遠位端を含む前記コア・ワイヤと、
前記遠位端に近接して前記コア・ワイヤに結合されたチップ構造であって、一つ以上の端面を含む前記チップ構造と
を含み、前記一つ以上の端面が、前記チップ構造上に曲率半径減少領域を提供する、工程、
前記チップ構造に近接して対向電極を配置する工程、
前記ガイドワイヤを介して前記高周波発生器から高周波エネルギーを送達する工程
を含み、
前記身体領域を処置するために前記一つ以上の端面でプラズマを生成するように、前記一つ以上の端面で最強電界となる電界が前記チップ構造に近接して生成される、前記方法。
【請求項16】
前記チップ構造が、前記コア・ワイヤの反対側に位置する前記チップ構造の一端に位置する第一の端面を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記チップ構造が第一の端面及び第二の端面を含み、前記第一及び第二の端面が前記チップ構造の対向する外縁に位置する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記コア・ワイヤが、コア・ワイヤ・近位セクション及びコア・ワイヤ・遠位セクションを含み、前記コア・ワイヤ・遠位セクションが、前記コア・ワイヤ・近位セクションよりも小さな直径を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ガイドワイヤが、前記コア・ワイヤの全長の少なくとも一部分に沿って延在する外側絶縁層をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記外側絶縁層が誘電物質を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ガイドワイヤが、前記チップ構造に近接して位置するカラー構造をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記カラー構造が、前記チップ構造に絶縁を提供するように構成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カラー構造が、前記外側絶縁層よりも高い融解温度を有する物質を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記カラー構造が、前記チップ構造を誘電体バリヤ内に密閉する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記カラー構造が、前記チップ構造で発生する蒸気泡または衝撃波の、前記コア・ワイヤへ向かう伝播を妨げるように構成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記カラー構造が、前記チップ構造に近接して位置する実質的に凹状の面を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記コア・ワイヤを介して前記高周波発生器から送られる電流に対して並列回路を形成するように構成された一つ以上の抵抗素子をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記外層の内面に沿って位置するコイル構造をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記対向電極が、前記ガイドワイヤと同じ方向で前記身体領域へ送達される第二のガイドワイヤである、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記対向電極が、前記ガイドワイヤと反対の方向で前記身体領域へ送達される第二のガイドワイヤである、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
前記対向電極が患者の皮膚の一領域上に位置する、請求項15に記載の方法。
【請求項32】
前記身体領域が血管内の閉塞部である、請求項15に記載の方法。
【請求項33】
前記一つ以上の端面の前記曲率半径減少領域が、前記閉塞部のタイプに基づいて選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記チップ構造上のプラズマ生成の位置を変えるために、前記高周波エネルギーの送達を調整する工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項35】
前記身体領域が導管である、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
前記身体領域が、前立腺、腫瘍、または心臓組織を含む組織である、請求項15に記載の方法。
【請求項37】
前記ガイドワイヤの前記遠位セクションにおける熱的条件を低下させるために、前記高周波発生器の全出力インピーダンスを増加させる工程をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年2月18日に出願された米国仮特許出願第62/117,828号の利益を主張するものであり、参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0002】
分野
この技術は、概して高周波ガイドワイヤ及び方法に関し、さらに詳細には、プラズマ生成が制御される高周波ガイドワイヤ及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
慢性完全閉塞(CTO)は、血管の完全な閉塞であり、時宜を得た方法で治療されないと、深刻な結果を招くことがある。閉塞は、アテローム性プラークまたは古い血栓が原因である場合がある。
【0004】
冠状動脈のCTOを治療するための一般的な手技の一つに、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)がある。PTCA手技の間、典型的に、鼠径部に小さな切り込みが形成される。ガイドワイヤを覆うガイディング・カテーテルが大腿動脈内へ導入され、閉塞部へと進められる。時に、丁寧で巧妙な操作を行うことにより、ガイドワイヤは閉塞部を横切ることができる。次いで、バルーンが先端に付いた血管形成カテーテルがガイドワイヤ上を閉塞部へと進められる。バルーンを膨らませて、アテロームを分離または破砕する。しばしば、その後または同時に、ステントが配置される。
【0005】
CTOに対するPTCA手技に関わる一般的なステップには、ほんの一例として、反対側血管内への造影剤の同時注入、ガイドワイヤに対するバックアップ力の確保もしくは安定化(カテーテルを操縦するための追加の人員を必要とすることもある)、プラークの穿刺、または高密度のプラークへガイドワイヤを押し通すための穿孔もしくはガイドワイヤの回転がある。高密度プラークからの強い抵抗が時々あるため、固いワイヤを使用せざるを得ない場合がある。時折、ワイヤが血管壁を刺すことがあり、修復策が必要となることもある。
【0006】
CTOに対する最も一般的な、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の失敗の仕方は、遠位血管の真腔内へ、病変を横切ってガイドワイヤをうまく通過させることができないことである。現時点で、従来のガイドワイヤでの試みが失敗した後にCTOを治療する最良の方法についてのコンセンサスはない。サイド・ブランチ技術、平行ワイヤ技術、及びIVUSガイド技術を含む、CTOに対するいくつかの異なる戦略が開発されている。固く石灰化した閉塞部にガイドワイヤを通過させるために、機械式切断または振動、及びレーザまたは超音波または高周波(RF)エネルギー焼灼などの、機械式デバイス、及びエネルギーに基づくデバイスも提案されている。これらのデバイスは、チャンネルを形成するように、及び可能ならば遠位真腔へ挿入されるように、ガイドワイヤまたはカテーテル・デバイスのチップで局所的に(典型的には熱の形態で)エネルギーを適用することによって機能する。
【0007】
RFエネルギーは、組織を凝固、切断または焼灼するために広く用いられている。単極式及び二極式モダリティの両方において、導電電極は、処置すべき組織に接触する。単極モードにおける活性電極は、処置すべき組織に接触して配置され、大きな表面積を有する戻り電極は、活性電極から離れた位置で、患者に接して配置される。二極モードにおける活性電極及び戻り電極は、処置すべき組織を挟んで、相互にごく接近して置かれる。時々、RF電磁場の浸透の深さに対してより優れた制御を提供するため、したがって組織を加熱する温度に対する制御を提供するために、電極のアレイが使用される。
【0008】
単極式及び二極式モダリティの両方には、多くの欠点がある。例えば、単極構成では、電極間に大きな物理的分離があるため、電極部位での局所的火傷が頻繁に報告される。電極の一つが血管内部に存在する場合、これは全く望ましいことではない。他の深刻な問題は、血餅を形成する可能性である。電極に接触している組織は、凝固または焼灼できる。電極が血管内に存在するケースでは、危険な血餅の形成は、明らかに望ましくない。
【0009】
プラズマに基づく組織焼灼も、電気外科的応用で広く用いられている。レーザまたはRFパルスは、分子をイオン化し、周辺部への熱移動を最小限にしながら組織を焼灼する小さなサイズのプラズマを形成できるため、周囲組織への副次的な熱損傷が非常に限定される。従来のアプローチは、組織を取り除くために、連続的ジュール加熱から生じる熱効果を利用する。対照的に、パルス型プラズマ媒介RF組織焼灼では、強い電界が、(食塩水及び/または血液などの)媒質及び組織と相互作用し、電解質及び分子を励起する。閾値へ到達すると、分子がイオン化されて断片化され、高い電子エネルギーを組織除去のために有効に変換するイオン化プラズマ場を生じる。プラズマ媒介RF焼灼は、顕著な利点を有する。例えば、RFエネルギー適用のパルス持続時間が非常に短いために、通常、熱影響はほんの僅かである。さらに、プラズマ媒介RF焼灼は、硬組織を含む広範な組織を取り除くことができるが、従来の熱焼灼は、電導性が低いために高インピーダンス組織を焼灼するには有効性が低いことがある。しかしながら、プラズマ焼灼の制御は、限定されることがある。
【0010】
上記説明の問題を解決する試みとして、双極電極アセンブリ内の単一カテーテル上の、病変を横切って閉塞部に接触するカテーテルの遠位チップ構造にRF電極を採用するために、種々のデバイス及び電極構成が開発されている。RFエネルギーの適用は、閉塞部を焼灼して、閉塞部をガイドワイヤが貫通しやすいようにする。この方法は、閉塞部ではなく健康な組織を介して電流が短絡される可能性が高いため、血管壁または健康な組織への外傷を回避するのに、閉塞部及び焼灼プロセスの慎重な追跡が必要であるという欠点を有する。この課題を解決するために、多電極アレイが提案されている。しかしながら、そのようなデバイスは、閉塞部を通るチャンネルが予め形成され、このチャンネルを横切るガイドワイヤを介してデバイスが通過可能であることを必要とし、これは、必ずしも容易なことではない。誘導システムの必要性、健康な組織が焼灼される可能性、及びデバイスの複雑さ(それゆえのコスト)が、高周波エネルギーを利用することの欠点である。
【0011】
既存のデバイスに関わる一つの主要な課題は、エネルギー送達部材の配向及び位置を追跡するメカニズムを欠くために、焼灼エネルギーが血管壁に損傷を与える可能性である。戻り電極が外部に身体に接触されて配置される単極構成において、または戻り電極が中央ワイヤ電極を囲むリングである二極式構成において、チップでRFエネルギーを送達する焼灼デバイスを方向付けるための磁気的操縦及び誘導システム等の、エネルギー送達要素の追跡及び操縦の問題に対処するいくつかのデバイスが開発されている。そのような誘導システムは、複雑で高コストである。
【0012】
しかしながら、これらの代替戦略のいずれも、CTOの最も難しい問題に対して、満足な結果を提供していない。固く石灰化した閉塞部のケースでは、血管再生手技は、面倒で時間がかかる可能性がある。したがって、現行技術の欠点がない、特に閉塞部位へ高周波エネルギーを向けるのが困難でない、安全で有効で速い、高周波エネルギーを用いて閉塞物質を焼灼または破壊する改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【0013】
概要
高周波ガイドワイヤは、高周波発生器へ結合されるように構成されたコア・ワイヤを含む。コア・ワイヤは、高周波発生器に対する近位端及び遠位端を含む。チップ構造は、遠位端に近接してコア・ワイヤに結合される。チップ構造は、一つ以上の端面を含む。一つ以上の端面は、チップ構造上に曲率半径減少領域を提供する。曲率半径減少領域は、チップ構造上での高周波エネルギーの送達中に、チップ構造の他の領域よりも高い電界を生成する。
【0014】
閉塞部の焼灼方法は、閉塞部へガイドワイヤを送達する工程を含む。ガイドワイヤは、高周波発生器へ結合されるように構成されたコア・ワイヤを含む。コア・ワイヤは、高周波発生器に対する近位端及び遠位端を含む。チップ構造は、遠位端に近接してコア・ワイヤに結合される。チップ構造は、チップ構造上に曲率半径減少領域を提供する一つ以上の端面を含む。対向電極は、チップ構造に近接して配置される。高周波エネルギーは、高周波発生器からガイドワイヤを介して送達される。閉塞部を焼灼するために一つ以上の端面でプラズマを生成するように、一つ以上の端面で最強電界となる電界がチップ構造に近接して生成される。
【0015】
本技術の高周波ガイドワイヤ及び方法は、プラズマ生成がより制御されるように、閉塞部へ高周波エネルギーを有利に送達する。これは、閉塞部を消散するための高周波エネルギーの有効性の増強、ならびに、より低い電圧レベル及びより低いエネルギーレベルの使用を含む安全性の向上を提供する。加えて、絶縁材から離れるエネルギーの方向が、より細くより柔軟な材料の使用を可能にし、閉塞部へのより優れたアクセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例示的な高周波ガイドワイヤの部分垂直断面図である。
図2】高周波ガイドワイヤの他の実施例の部分垂直断面図である。
図3A】遠位チップ構造に近接して配置された例示的な異なるカラー構造を有する高周波ガイドワイヤの追加の実施例の部分垂直断面図である。
図3B】遠位チップ構造に近接して配置された例示的な異なるカラー構造を有する高周波ガイドワイヤの追加の実施例の部分垂直断面図である。
図3C】遠位チップ構造に近接して配置された例示的な異なるカラー構造を有する高周波ガイドワイヤの追加の実施例の部分垂直断面図である。
図3D】遠位チップ構造に近接して配置された例示的な異なるカラー構造を有する高周波ガイドワイヤの追加の実施例の部分垂直断面図である。
図4A】本技術のガイドワイヤと共に利用してもよい例示的な遠位チップ構造の概略図である。
図4B】本技術のガイドワイヤと共に利用してもよい例示的な遠位チップ構造の概略図である。
図4C】本技術のガイドワイヤと共に利用してもよい例示的な遠位チップ構造の概略図である。
図4D】本技術のガイドワイヤと共に利用してもよい例示的な遠位チップ構造の概略図である。
図5図5A及び5Bは、高速度カメラを使って捉えた画像を示し、端面を有するテーパ付き遠位チップ構造(左)及びボール・チップ(右)を有する本発明のガイドワイヤに関するプラズマ生成を示す。
図6図6A及び6Bは、変動するプラズマ生成を生じさせるための、遠位チップ構造の改変例の図である。
図7図4Aに示す高周波ガイドワイヤを表す簡略電気接続図である。
図8】高周波発生器及び本技術の高周波ガイドワイヤを表す簡略電気接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本技術の例示的な高周波ガイドワイヤ10を図1に示す。高周波ガイドワイヤ10は、コア・ワイヤ12(1)、外層14、スプリングコイル16(1)、カラー18(1)、及び、少なくとも一つの端面22(1)を有する遠位チップ構造20(1)を含むが、高周波ガイドワイヤ10は、他の構成において、他のタイプ及び/または他の個数の他の構成部品または要素を含んでもよい。したがって、この例示的な技術は、遠位チップ構造の基部近くの傷つきやすい絶縁材へプラズマを曝すことを回避するために、対向電極の方向へ及び遠位チップ構造の外縁に沿ってプラズマ生成を方向付ける高周波ガイドワイヤを提供することを含む、いくつかの利点を提供する。さらに、プラズマ生成を外縁に方向付けることは、閉塞部内への、より広いチャンネルの形成を可能にする。遠位チップ構造上に小さな曲率半径があることにより、(ガイドワイヤ上の他の領域に対して)より強い電界を有する領域が形成されるため、その部位でのプラズマ形成が開始され、遠位チップ構造にプラズマが拘束される。
【0018】
図1をより具体的に参照すると、高周波ガイドワイヤ10は、高周波ガイドワイヤ10の軸方向長さに沿って延在するコア・ワイヤ12(1)を含む。コア・ワイヤ12(1)は、導電材料、例えばステンレス鋼、銅、ニチノール、エルジロイ、白金、MP35N銀、タンタル、チタン、タングステン、またはそれらの組み合わせから構築されるが、他の組み合わせの他の導電材料が利用されてもよい。コア・ワイヤ12(1)は、コア・ワイヤ12(1)を介して高周波エネルギーを提供するために、高周波発生器(図示せず)に結合される。
【0019】
この実施例において、コア・ワイヤ12(1)は、遠位チップ構造20(1)の近くに位置する遠位セクション24(1)、及び遠位セクション24(1)に結合された近位セクション26(1)を含む。この実施例において、遠位セクション24(1)は、コア・ワイヤ12(1)の近位セクション26(1)から先細の直径を有するが、コア・ワイヤ12(1)は、他の構成において他の個数のセクションを有してもよい。コア・ワイヤ12(1)の遠位セクション24(1)は、遠位端で0.004インチ未満の直径を有するが、遠位セクション24(1)に対して他のサイズを利用してもよい。近位セクション26(1)は、直径が約0.012インチであるが、近位セクション26(1)に対して他の直径を利用してもよい。
【0020】
ここで図2を参照すると、他の実施例において、高周波ガイドワイヤ10は、遠位セクション24(2)、近位セクション26(2)及び中央セクション28を有するコア・ワイヤ12(2)を含むが、コア・ワイヤ12(2)は、他の個数及び他のタイプのセクションを有してもよい。コア・ワイヤ12(2)は、近位セクション26(2)から中央セクション28へと直径が減少する。コア・ワイヤ12(2)は、中央セクション28から遠位セクション24(2)へと直径がさらに減少するが、他の構成を利用してもよい。あるいは、コア・ワイヤ12(1)または12(2)は、ハイポチューブ(hypotube)または延伸充填導管(drawn filled tubing)の形態であってもよい。
【0021】
再び図1を参照すると、外層14は、コア・ワイヤ12(1)に対して断熱及び電気絶縁の両方を提供するように、コア・ワイヤ12(1)の軸方向長さに沿って延在する。外層14は、ポリイミド、PTFE、パリレンまたはPFA等の、高絶縁耐力を有する絶縁材から構築されるが、他のタイプ及び/または他の個数の、高絶縁耐力を有する他の材料を利用してもよい。一つの実施例において、外層14は、約7200V/milの絶縁耐力を有するポリイミド材料であり、約0.005インチ~0.0005インチの肉厚を有するが、外層14は、他のパラメータを有してもよい。ポリイミドは、引張り強度が高いため、外層14に利用してもよく、これは、高周波ガイドワイヤ10(1)に対して強い軸方向の力を付与するのに役立つ。
【0022】
スプリングコイル16(1)は、高周波ガイドワイヤ10の遠位チップ構造20(1)の近くで使用される。スプリングコイル16(1)は、蛇行する解剖学的構造内での送達を可能にするために、高周波ガイドワイヤ10に柔軟性を加える。スプリングコイル16(1)は、また、高周波ガイドワイヤ10の遠位セクション24(1)における熱的条件を低下させるために、コア・ワイヤ12(1)を介してRF発生器から送られる電流に対する並列経路として機能する。スプリングコイル16(1)は、コア・ワイヤ12(1)に並列な抵抗器として本質的に機能し、電力、それゆえ熱の少なくとも一部を、コア・ワイヤ12(1)から奪う。
【0023】
コア・ワイヤ12(1)は、一例として、軸方向長さに沿う複数のテーパを有してもよく、これらは、コア・ワイヤ12(1)及びスプリングコイル16(1)の並列組み合わせに直列な追加の抵抗器として本質的に機能する。高周波ガイドワイヤ10に沿う特定の経路、例えばスプリングコイル16(1)の熱的条件を低下させることは、より薄い壁及びより柔軟な材料の利用を含む、外層14のためのより条件の厳しくない材料(より低い融解温度、より低い絶縁耐力など)の利用を可能にする。スプリングコイル16(1)は、約80mmの長さを有してもよいが、他の長さのスプリングコイルを利用してもよい。他の実施例では、図2に示すように、高周波ガイドワイヤ10の遠位端内へさらに延在するように、テーパ付きの構成を有するスプリングコイル16(2)を利用してもよいが、他の構成を有するスプリングコイルを利用してもよい。
【0024】
再び図1を参照すると、カラー18(1)は、遠位チップ構造20(1)の近くにさらなる断熱及び/または電気絶縁を提供するために、コア・ワイヤ12(1)の遠位端近くに位置する。カラー18(1)は、ほんの一例として、PTFE、PFA、ポリイミド、セラミックまたは種々の金属もしくは合金などの、高絶縁耐力材及び/または高融解温度を有する材料から構築されてもよい。
【0025】
ここで図2を参照すると、他の実施例では、カラー18(2)が利用されている。カラー18(2)は、ほんの一例として、第一のカラー・セクション30及び第二のカラー・セクション32を含む。この実施例において、第一のカラー・セクション30は、単一の材料から構築されており、約10mmの長さであり、高周波ガイドワイヤ10の外層14の幅を超えて延在する幅を有するが、第一のカラー・セクション30は、他の構成を有してもよい。第二のカラー・セクション32は、高周波ガイドワイヤ10の遠位端に位置する。この実施例において、第二のカラー・セクション32は、約0.25mmの長さで延在し、第一のカラー・セクション30よりも高い融解温度を有する材料から構築されるが、他の構成及び材料を利用してもよい。
【0026】
再び図1を参照すると、この実施例において、カラー18(1)は、外層14内に部分的に封入されて配置されている。カラー18(1)は、約0.25mm~0.50mmの長さを有するが、カラー18(1)は、他の寸法を有してもよい。他の実施例では、図3Aに示すように、高周波ガイドワイヤ10は、外層14内に完全に封入されたカラー18(3)を含む。カラー18(3)は、約0.25mm~0.50mmの長さを有するが、カラー18(3)は、他の寸法を有してもよい。さらに他の実施例では、図3Bに示すように、高周波ガイドワイヤ10は、外層14の外側に配置されたカラー18(4)を含む。カラー18(4)は、約0.25mm~0.50mmの長さを有するが、カラー18(4)は、他の寸法を有してもよい。
【0027】
あるいは、高周波ガイドワイヤ10は、一例として図3Cに示すように、遠位チップ構造20(1)がカラー18(5)内に嵌め込まれるように構成された凹面33を有するカラー18(5)を含む。プラズマ形成の初期段階の間、遠位チップ構造20(1)の周りには蒸気泡が形成される。カラー18(5)の凹面33は、蒸気泡(それに付随する衝撃波を含め)の後方伝播を妨げ、前方方向への、すなわち、この実施例におけるコア・ワイヤ12(2)から離れる方向へのプラズマ形成を促す。
【0028】
さらに他の実施例では、図3Dに示すように、高周波ガイドワイヤ10は、セラミック材料などの誘電体バリヤ内に遠位チップ構造20(1)を密閉するカラー18(6)を含むが、他の誘電材料を利用してもよい。この実施例においては、誘電体バリヤ放電が、カラー18(6)の面上及びカラー18(6)の面の周りにプラズマを生成する。
【0029】
再び図1を参照すると、遠位チップ構造20(1)は、高周波発生器(図示せず)の反対側の、コア・ワイヤ12(1)の遠位端に位置する。遠位チップ構造20(1)は、コア・ワイヤ12(1)と電気的に連通している。遠位チップ構造20(1)は、閉塞部位でプラズマを生成するために、コア・ワイヤ12(1)に結合された高周波発生器によって生成されたエネルギーを送達するための電極として機能する。遠位チップ20(1)は、ほんの一例として、ステンレス鋼、チタン、タンタルまたはタングステン等の、高融解温度を有する任意の適切な導電材料から構築される。
【0030】
遠位チップ構造20(1)は、高周波発生器から送達されるエネルギーに基づいて、その位置でプラズマを生成する最強電界点を提供するように構成された尖鋭な領域を設ける端面22(1)を含むが、遠位チップ構造20(1)上の他の位置に、他の個数の端面を利用してもよい。最強電界点は、概して遠位チップ構造20(1)の外縁に位置するが、高周波ガイドワイヤ10の全長に沿う、プラズマが所望されるいずれの場所にも位置させることが可能である。例えば、遠位チップ構造20(1)に近接した位置でプラズマを生成させたいなら、遠位チップ構造20(1)は、遠位チップ構造20(1)ではなくその近接位置でプラズマが形成させるように絶縁される。端面22(1)の鋭さまたは端面22(1)の端曲率半径は、用途に応じて構成されてもよい。例えば、端面22(1)は、高インピーダンスを有するより困難な病変内により強い電界を形成するために、より鋭い角度(またはより小さな端曲率半径)を有してもよい。あるいは、図4Aに示すような、尖鋭な端部のないボール・チップである遠位チップ構造20(2)を利用してもよい。遠位チップ構造20(2)は、遠位チップ構造20(2)の周りに、プラズマの均一な生成を提供する。
【0031】
ここで図4B~4Dを参照すると、本技術の高周波ガイドワイヤ10と共に利用可能な遠位チップ構造20(3)~20(5)の種々の実施例が示される。一つの実施例において、図4Bに示すように、遠位チップ構造20(3)は、丸い構成を有する基部34、及び基部34から延在するテーパ付きセクション36を含む。テーパ付きセクション36は、丸い基部34から約45度の角度で延在する尖鋭な外縁22(2)及び22(3)を含む。遠位チップ構造20(3)のテーパ付きセクション36は、また、遠位端に端面22(4)を有するが、他の端面が、プラズマ生成を方向付けるために、遠位チップ構造20(3)上の他の位置に配置されてもよい。この実施例においては、テーパ付きセクション36の長さに対する基部34の長さの比率は、絶縁カラーから離れてプラズマが生成されるように、50%よりも大きいが、他の構成を利用してもよい。
【0032】
他の実施例において、図4Cに示すように、外縁上に端面22(5)を形成する平坦な前縁を有する遠位チップ構造20(4)を利用してもよい。さらに他の実施例において、図4Dに示すように、外縁に端面22(6)を提供するように凹状前面37を有する遠位チップ構造20(5)を利用してもよい。これらの実施例は、外縁でプラズマを生成するように構成される。これらの図面におけるより鋭い角度は、より低い電圧及びエネルギー入力で、プラズマのより効率的な形成を可能にする。遠位チップ構造のいくつかの実施例を示しているが、遠位チップ構造上の端面は、用途に応じて、プラズマの生成を方向付けるために、すなわち最強電界領域を形成するように、遠位チップ構造に沿ういずれの場所に配置してもよい。
【0033】
ここで図1~8を参照しながら、高周波ガイドワイヤ10の例示的な作動を説明する。上記説明の種々の構成を有する高周波ガイドワイヤ10の作動は、本明細書に図示し説明する箇所を除いて同じである。この実施例において、高周波ガイドワイヤ10は、作動中、処置すべき閉塞部に向けて導かれる。開示は、概して、血管内での高周波ガイドワイヤの使用に関するが、ほんの一例として、(腎臓導管、胆管など)種々の導管内などの、血管の外側の身体領域へ、及び、前立腺組織、腫瘍または心臓組織などの、身体の種々の組織または器官へ、同様に適用できる。そのようなケースでは、より大きな高周波カテーテルの使用が可能であることがある。
【0034】
一つの実施例においては、閉塞部への高周波エネルギーの送達のための反対極を提供するために、参照によってその開示全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,918,859号に記載される順行性及び逆行性アプローチを用いて、閉塞部の近くに二つの高周波ガイドワイヤ10が配置されてもよい。あるいは、本技術の単一の高周波ガイドワイヤ10を閉塞部位へ送達し、皮膚パッチの形態などの、患者の体内または体外の他の箇所に配置した第二の電極と共に利用してもよい。さらに他の実施形態においては、閉塞部の近くに、同方向から二つの高周波ガイドワイヤ10が入れられてもよいが、高周波ガイドワイヤ10は、順行性/逆行性アプローチを用いる他の用途において他のデバイスと共に利用されてもよいし、または同方向から送達されてもよい。
【0035】
従来の機械式ガイドワイヤは、典型的に、非外傷性遠位チップ構造を有し、主に軸方向の力に依存して閉塞部に押し通されて進む。これは、しばしば、閉塞部の組成によっては、その目的の進路から離れる非外傷性チップの撓みという結果に至る。従来のガイドワイヤとは異なり、本技術の高周波ガイドワイヤ10は、一例として、端面22(1)を有する比較的に尖鋭な遠位チップ構造20(1)を有してもよい。これは、二つの電極間に局所的に形成されるプラズマの助けによって、閉塞部を通るその通路を「エッチング」し、これによりその目的の進路から離れる遠位チップ構造20(1)の撓みに至る可能性のある軸方向の力を回避するためである。このアプローチは、閉塞部の組成に左右されることが少なく、また、必要とされる軸方向の力はより少ない。スプリングコイル16(1)は、蛇行する解剖学的構造を通して高周波ガイドワイヤ10を導くための、付加的な柔軟性を提供する。
【0036】
次に、高周波ガイドワイヤ10を介して、高周波発生器により高周波エネルギーが送達される。高周波エネルギーは、一つの電極からもう一つへ誘導される。生成される電界は、遠位チップ構造20(1)上に位置する端面22(1)で最も高いが、上記説明のように、他の端面が、遠位チップ構造の周りの他の領域で最も高い電界を生成するように利用されてもよい。したがって、プラズマ生成は、利用される遠位チップ構造20(1)の構成によってプラズマ生成が制御されるように、それらの領域に誘導される。
【0037】
一例として、遠位チップ構造20(3)の遠位端に位置する端面22(4)を有する、図4Bに示す遠位チップ構造20(3)等の遠位チップ構造を用いることは、一例として、その領域内にプラズマを生成するのに役立つ。あるいは、一例として、遠位チップ構造20(4)の外縁に位置する端面22(5)を有する、図4Cに示す遠位チップ構造20(4)等の遠位チップ構造は、それら外縁近くでのプラズマ生成を誘導することになる。
【0038】
図5A及び5Bを参照すると、少なくとも一つの端面を有する円錐形状遠位チップ構造を有する本技術の高周波ガイドワイヤ10を左に示し、図4Aに示すボール・チップ20(2)を有する高周波ガイドワイヤ10を右に示している。図5A及び5Bに示すように、テーパ付き遠位チップ構造20(3)は、(最強電界を有する)テーパ付き遠位チップ構造20(3)の外縁上でプラズマを開始し、より制御されたプラズマ生成のために、ボール・チップ20(2)の方へスパークを方向付ける。
【0039】
再び図1を参照すると、遠位チップ構造20(1)の構成を変更することによって、組織に基づき、カスタム化またはエネルギー送達を変化させることが可能である。一例として、カルシウム等の、インピーダンスのより高い物質は、インピーダンスのより低い物質とは異なる構成(例えば、より鋭い角度)を必要としてもよい。加えて、電極上の小さな端曲率半径は、より低いエネルギー入力の使用及びエネルギーのより効率的な送達を可能にし得る。
【0040】
他の実施形態では、図6A及び6Bに示すように、遠位チップ構造20(6)の構成が、変動するプラズマ生成を可能にするために、高周波発生器の作動中に動的に改変されてもよい。図6Aは、最遠位点に位置する端面22(7)を有する遠位チップ構造20(6)を示す。初期作動中、電界は、チップ上の頂部(端面22(7))で最高であるため、その領域内でプラズマ生成が起こる。スパッタリング、すなわち、チップの近くの粒子の付着及び除去の後、図6Bに示すように、今度は、最も尖鋭な端面22(8)が外縁に位置する。プラズマ生成は、このとき、外縁22(8)で発生することになる。プラズマ生成の一つの動的変化を説明したが、プラズマ生成は、他の方式で動的に改変されてもよい。
【0041】
図7は、図4Aに示すガイドワイヤの電気図である。R3は、コア・ワイヤ12(1)の近位セクション26(1)によって加えられる抵抗である(少なくとも部分的に皮膚の影響による)。R1は、コア・ワイヤ12(1)のテーパ付き遠位セクション24(1)によって加えられる抵抗であり、R2は、スプリングコイル16(1)によって加えられる抵抗である。コア・ワイヤ12(1)の遠位セクション24(1)の周りにスプリングコイル16(1)を配置することによって、これは、R1に並列に抵抗器(R2)を配置することと見なすことができ、この並列回路の組み合わせは、コア・ワイヤ12(1)の近位セクション26(1)R3に直列であると見なすことができる。したがって、R1の横にR2を加えると、並列組み合わせの抵抗値は、R1単独の抵抗値未満へ低下する。R2が小さくなるにつれ、並列組み合わせも小さくなり、R1の両端の電圧も小さくなる。R2及びR1を調整することによって、より大きな電力散逸及び結果的に熱に曝される並列経路を調整してもよい。
【0042】
コア・ワイヤ12(1)は、その全長に沿って複数のテーパを有してもよく、それらは、並列組み合わせに直列な追加の抵抗器として本質的に機能する(各々がコア・ワイヤの直径の減少に対応する)。スプリングコイル16(1)の利用を開示したが、上記スプリングコイル16(1)に関して説明したような調整を提供するために、いずれの抵抗素子またはリアクタンス素子が利用されてもよいことを理解すべきである。スプリングコイル16(1)等の、高周波ガイドワイヤ10の一部として設計された抵抗及び/またはリアクタンス構成部品は、上記に例証したように高周波ガイドワイヤ10上での熱放散を操作するのに役立つばかりでなく、ガイドワイヤ・システム全体の電気性能を最適化する等の、他の目的を達成するのにも役立つ。例えば、スプリングコイル16(1)、または高周波ガイドワイヤ10上に設計された他の構成部品は、プラズマ放電などの、高周波焼灼プロセス内の架空の構成部品を相殺するように、特徴的に誘導性であってもよいため、それ自体がまたは部分的に、インピーダンス整合ネットワークとして機能する。インピーダンス整合の促進は、インピーダンス不整合が原因で負荷から高周波発生器側へ戻る反射電力を減少させるので、電力送達効率を有効に向上させることができる。
【0043】
再び図1を参照すると、他の実施例において、高周波発生器は、プラズマ及び熱伝導を制御するように調整されてもよい。ほんの一例として、初期により低いエネルギーレベルで高周波エネルギーを提供することによって、遠位チップ構造20(1)の一箇所で、プラズマ発生を開始してもよい。エネルギーレベルを上昇させることによって、プラズマは、維持されるか、遠位チップ構造20(1)上の他の位置へ移動されるかまたは増強されてもよい。ここで図8を参照すると、高周波発生器は、電源、及び、変圧器などの他の機能構成部品からなってもよく、発生器の出力端子によって見られる全出力インピーダンスをR0として示す。一例として、R0が主に、組織焼灼に役立つプラズマを形成するための、電源の低電圧出力を高電圧へ変換するように主に設計された変圧器のインピーダンスを表すと仮定すると、R0が、ガイドワイヤの遠位端の電力送達及び/または熱的条件を向上させる目的で操作可能なように、例えば、特定の状況において比較的に大きなR0を用いることによって、変圧器もシステムの電力散逸に参加させてもよい。この技術を用いて、R1上のより低い温度上昇を達成するために、抵抗器R1の両端の電圧及び電力をさらに減少させることが可能である。
【0044】
したがって、この技術により、プラズマ生成がより制御され、高周波エネルギーが閉塞部へ送達され得る。これは、閉塞部を焼灼するための高周波エネルギーの有効性の増強、ならびに、より低い電圧レベル及びより低いエネルギーレベルの使用を含む安全性の向上を提供する。加えて、絶縁材から離れるエネルギーの方向が、より細くより柔軟な材料の使用を可能にし、閉塞部へのより優れたアクセスを提供する。
【0045】
本発明の基本的概念を説明したが、当業者には、前述の詳細な開示が、単に例示の目的で提示されることを意図しており、限定するものではないことは明らかである。本明細書に明確には述べられていないが、種々の改変、改良及び変更が、可能であり、当業者に意図されている。これらの改変、改良及び変更は、本明細書に示唆されることが意図されており、本発明の概念及び範囲内にある。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によってのみ限定される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願の明細書に記載された発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本技術の高周波ガイドワイヤ及び方法は、プラズマ生成がより制御されるように、閉塞部へ高周波エネルギーを有利に送達する。これは、閉塞部を消散するための高周波エネルギーの有効性の増強、ならびに、より低い電圧レベル及びより低いエネルギーレベルの使用を含む安全性の向上を提供する。加えて、絶縁材から離れるエネルギーの方向が、より細くより柔軟な材料の使用を可能にし、閉塞部へのより優れたアクセスを提供する。
[本発明1001]
高周波発生器へ結合されるように構成されたコア・ワイヤであって、前記高周波発生器に対する近位端及び遠位端を含む前記コア・ワイヤと、
前記遠位端に近接して前記コア・ワイヤに結合されたチップ構造であって、一つ以上の端面を含む前記チップ構造と
を含み、
前記一つ以上の端面が、前記チップ構造上に曲率半径減少領域を提供し、前記曲率半径減少領域が、高周波エネルギーの送達中、前記チップ構造の他の領域よりも高い電界を生成する、
高周波ガイドワイヤ。
[本発明1002]
前記チップ構造が、前記コア・ワイヤの反対側に位置する前記チップ構造の一端に位置する第一の端面を含む、本発明1001の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1003]
前記チップ構造が、第一の端面及び第二の端面を含み、前記第一及び第二の端面が、前記チップ構造の対向する外縁に位置する、本発明1001の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1004]
前記コア・ワイヤが、コア・ワイヤ・近位セクション及びコア・ワイヤ・遠位セクションを含み、前記コア・ワイヤ・遠位セクションが、前記コア・ワイヤ・近位セクションよりも小さな直径を含む、本発明1001の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1005]
前記コア・ワイヤの全長の少なくとも一部分に沿って延在する外側絶縁層をさらに含む、本発明1001の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1006]
前記外側絶縁層が誘電物質を含む、本発明1005の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1007]
前記チップ構造に近接して位置するカラー構造をさらに含む、本発明1005の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1008]
前記カラー構造が、前記チップ構造に絶縁を提供するように構成されている、本発明1007の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1009]
前記カラー構造が、前記外側絶縁層よりも高い融解温度を有する物質を含む、本発明1007の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1010]
前記カラー構造が、前記チップ構造を誘電体バリヤ内に密閉する、本発明1007の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1011]
前記カラー構造が、前記チップ構造で発生する蒸気泡または衝撃波の、前記コア・ワイヤへ向かう伝播を妨げるように構成されている、本発明1007の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1012]
前記カラー構造が、前記チップ構造に近接して位置する実質的に凹状の面を有する、本発明1011の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1013]
前記コア・ワイヤを介して前記高周波発生器から送られる電流に対して並列回路を形成するように構成された一つ以上の抵抗素子をさらに含む、本発明1005の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1014]
前記外側絶縁層の内面に沿って位置するコイル構造をさらに含む、本発明1005の高周波ガイドワイヤ。
[本発明1015]
身体領域を処置するための方法であり、前記方法が、
前記身体領域へガイドワイヤを送達する工程であって、前記ガイドワイヤが、
高周波発生器へ結合されるように構成されたコア・ワイヤであって、前記高周波発生器に対する近位端及び遠位端を含む前記コア・ワイヤと、
前記遠位端に近接して前記コア・ワイヤに結合されたチップ構造であって、一つ以上の端面を含む前記チップ構造と
を含み、前記一つ以上の端面が、前記チップ構造上に曲率半径減少領域を提供する、工程、
前記チップ構造に近接して対向電極を配置する工程、
前記ガイドワイヤを介して前記高周波発生器から高周波エネルギーを送達する工程
を含み、
前記身体領域を処置するために前記一つ以上の端面でプラズマを生成するように、前記一つ以上の端面で最強電界となる電界が前記チップ構造に近接して生成される、前記方法。
[本発明1016]
前記チップ構造が、前記コア・ワイヤの反対側に位置する前記チップ構造の一端に位置する第一の端面を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
前記チップ構造が第一の端面及び第二の端面を含み、前記第一及び第二の端面が前記チップ構造の対向する外縁に位置する、本発明1015の方法。
[本発明1018]
前記コア・ワイヤが、コア・ワイヤ・近位セクション及びコア・ワイヤ・遠位セクションを含み、前記コア・ワイヤ・遠位セクションが、前記コア・ワイヤ・近位セクションよりも小さな直径を含む、本発明1015の方法。
[本発明1019]
前記ガイドワイヤが、前記コア・ワイヤの全長の少なくとも一部分に沿って延在する外側絶縁層をさらに含む、本発明1015の方法。
[本発明1020]
前記外側絶縁層が誘電物質を含む、本発明1019の方法。
[本発明1021]
前記ガイドワイヤが、前記チップ構造に近接して位置するカラー構造をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1022]
前記カラー構造が、前記チップ構造に絶縁を提供するように構成されている、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記カラー構造が、前記外側絶縁層よりも高い融解温度を有する物質を含む、本発明1021の方法。
[本発明1024]
前記カラー構造が、前記チップ構造を誘電体バリヤ内に密閉する、本発明1021の方法。
[本発明1025]
前記カラー構造が、前記チップ構造で発生する蒸気泡または衝撃波の、前記コア・ワイヤへ向かう伝播を妨げるように構成されている、本発明1021の方法。
[本発明1026]
前記カラー構造が、前記チップ構造に近接して位置する実質的に凹状の面を有する、本発明1025の方法。
[本発明1027]
前記コア・ワイヤを介して前記高周波発生器から送られる電流に対して並列回路を形成するように構成された一つ以上の抵抗素子をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1028]
前記外層の内面に沿って位置するコイル構造をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1029]
前記対向電極が、前記ガイドワイヤと同じ方向で前記身体領域へ送達される第二のガイドワイヤである、本発明1015の方法。
[本発明1030]
前記対向電極が、前記ガイドワイヤと反対の方向で前記身体領域へ送達される第二のガイドワイヤである、本発明1015の方法。
[本発明1031]
前記対向電極が患者の皮膚の一領域上に位置する、本発明1015の方法。
[本発明1032]
前記身体領域が血管内の閉塞部である、本発明1015の方法。
[本発明1033]
前記一つ以上の端面の前記曲率半径減少領域が、前記閉塞部のタイプに基づいて選択される、本発明1032の方法。
[本発明1034]
前記チップ構造上のプラズマ生成の位置を変えるために、前記高周波エネルギーの送達を調整する工程をさらに含む、本発明1015の方法。
[本発明1035]
前記身体領域が導管である、本発明1015の方法。
[本発明1036]
前記身体領域が、前立腺、腫瘍、または心臓組織を含む組織である、本発明1015の方法。
[本発明1037]
前記ガイドワイヤの前記遠位セクションにおける熱的条件を低下させるために、前記高周波発生器の全出力インピーダンスを増加させる工程をさらに含む、本発明1015の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端を有し、前記近位端が高周波発生器に電気的に接続されるように構成されたコア・ワイヤと、
前記コア・ワイヤに接続されるとともに、前記コア・ワイヤを介して前記高周波発生器に電気的に接続される遠位チップと、
を備えた、プラズマ媒介RF組織焼灼用ガイドワイヤであって、
前記遠位チップは、
前記コア・ワイヤの遠位端に接続される半球形状の構成を有する近位部と、前記近位部から延在するテーパ付きの構成を有する遠位部と、を備えるとともに、
前記近位部と前記遠位部との間に形成される境界領域上に外縁を有する、
プラズマ媒介RF組織焼灼用ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記遠位部は最遠位に丸い構成を有する端面を備える、請求項1に記載のプラズマ媒介RF組織焼灼用ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記遠位部は最遠位に頂点を備える、請求項1に記載のプラズマ媒介RF組織焼灼用ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記遠位部は最遠位に平坦な端面を備える、請求項1に記載のプラズマ媒介RF組織焼灼用ガイドワイヤ。
【外国語明細書】