IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ オクラホマの特許一覧

特開2024-153685アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬
<>
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図1
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図2
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図3
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図4
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図5
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図6
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図7
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図8
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図9
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図10
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図11
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図12
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図13
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図14
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図15
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図16
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図17
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図18
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図19
  • 特開-アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153685
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】アルツハイマー病および関連状態を処置するためのペプチド治療薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/50 20060101AFI20241022BHJP
   C12N 9/66 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C12N9/50
C12N9/66 ZNA
C12N9/66
C12N9/50 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112140
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2020568321の分割
【原出願日】2019-06-10
(31)【優先権主張番号】62/682,455
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】512213332
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ オクラホマ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145791
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 志麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】ケイサス-ヤコブ,アン
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ,エロイーズ,アン
(72)【発明者】
【氏名】ストック,アマンダ,ジェイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルツハイマー病、神経炎症、および脳アミロイド血管症を処置するためのペプチド化合物を提供する。
【解決手段】カテプシンG(CG)、好中球エラスターゼ、および37kDaのカチオン性抗微生物タンパク質(CAP37)に由来するペプチド化合物、ならびにアミロイドβペプチドのオリゴマーおよび/もしくは原線維への重合を阻害するおよび/もしくは逆転させること、および/もしくはアミロイドβ斑を脱凝集させることにおけるそれらの使用の方法、ならびに、例えば、アルツハイマー病、神経炎症、および脳アミロイド血管症の処置におけるペプチド化合物の使用の方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテプシンG、好中球エラスターゼ、または37kDaのカチオン性抗微生物タンパク
質(CAP37)のペプチドの誘導体であるアミノ酸配列を有するペプチドを含むペプチ
ド化合物であって、ただし、前記アミノ酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3
、配列番号4、配列番号5、および配列番号6から選択される野生型配列とは異なる少な
くとも1個のアミノ酸を含むことを条件とする、ペプチド化合物。
【請求項2】
前記ペプチドの前記アミノ酸配列が、X10
11121314151617181920212223
2526(配列番号7)であり、
配列中、
は、Gであり、
は、A、F、G、I、L、M、P、S、T、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、およびWから選択され

は、A、C、S、T、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、P、S、T、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
は、Gであり、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
10は、Gであり、
11は、A、C、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、お
よびYから選択され、
12は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
13は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
14は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
15は、H、K、およびRから選択され、
16は、C、H、K、N、Q、R、S、T、およびYから選択され、
17は、Gであり、
18は、C、N、Q、S、T、およびYから選択され、
19は、DおよびEから選択され、
20は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
21は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
22は、A、F、G、H、I、K、L、M、P、R、W、およびVから選択され、
23は、L、C、D、E、F、G、H、I、K、A、M、N、P、Q、R、S、T、V
、W、およびYから選択され、
24は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
25は、C、N、Q、S、T、およびYから選択され、ならびに
26は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択される、
請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項3】
前記ペプチドの前記アミノ酸配列が、X10
11121314151617181920212223
252627(配列番号8)であり、
配列中、
は、Gであり、
は、A、F、G、I、L、M、P、S、T、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、およびWから選択され

は、A、C、S、T、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、P、S、T、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
は、Gであり、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
10は、Gであり、
11は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
12は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
13は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
14は、H、K、およびRから選択され、
15は、C、H、K、N、Q、R、S、T、およびYから選択され、
16は、A、F、G、H、I、K、L、M、P、R、W、およびVから選択され、
17は、Gであり、
18は、D、A、E、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
19は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
20は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
21は、A、F、G、H、I、K、L、M、P、R、W、およびVから選択され、
22は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
23は、C、N、Q、S、T、およびYから選択され、ならびに
24は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V
、W、およびYから選択され、
25は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
26は、C、N、Q、S、T、およびYから選択され、ならびに
27は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択される、
請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項4】
前記ペプチドの前記アミノ酸配列が、X10
11121314151617181920212223
252627(配列番号9)であり、
配列中、
は、Gであり、
は、A、F、G、I、L、M、P、S、T、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、およびWから選択され

は、A、C、S、T、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
は、Gであり、
は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
10は、Gであり、
11は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
12は、W、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、およびYから選
択され、
13は、C、H、K、N、Q、R、S、T、およびYから選択され、
14は、C、H、K、N、Q、R、S、T、およびYから選択され、
15は、Gであり、
16は、A、F、G、I、L、M、P、S、T、W、およびVから選択され、
17は、D、A、E、F、G、I、K、L、M、P、R、S、T、V、W、およびYか
ら選択され、
18は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
19は、A、C、F、G、I、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、およびYから選
択され、
20は、A、F、G、H、I、K、L、M、P、R、W、およびVから選択され、
21は、A、F、G、I、L、M、P、V、W、およびYから選択され、
22は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V
、W、およびYから選択され、
23は、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V
、W、およびYから選択され、
24は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
25は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択され、
26は、C、N、Q、S、T、およびYから選択され、ならびに
27は、A、F、G、I、L、M、P、W、およびVから選択される、
請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項5】
前記ペプチドの前記アミノ酸配列が、X10
11121314151617181920212223
25262728(配列番号10)であり、
配列中、
は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
は、N、S、T、およびQから選択され、
は、N、S、T、およびQから選択され、
は、P、F、Y、W、A、V、I、L、M、およびGから選択され、
は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
は、G、A、およびVから選択され、
は、N、S、T、およびQから選択され、
は、N、S、T、およびQから選択され、
は、R、H、およびKから選択され、
10は、C、S、およびTから選択され、
11は、G、A、およびVから選択され、
12は、G、A、およびVから選択され、
13は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
14は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
15は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
16は、R、H、およびKから選択され、
17は、E、およびDから選択され、
18は、E、およびDから選択され、
19は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
20は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
21は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
22は、N、S、T、およびQから選択され、
23は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
24は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
25は、R、H、およびKから選択され、
26は、C、S、およびTから選択され、
27は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、ならびに
28は、G、A、およびVから選択される、
請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項6】
前記ペプチドの前記アミノ酸配列が、X10
11121314151617181920212223
25(配列番号11)であり、
配列中、
は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
は、R、H、およびKから選択され、
は、G、A、およびVから選択され、
は、G、A、およびVから選択され、
は、R、H、およびKから選択され、
は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
は、C、S、およびTから選択され、
は、G、A、およびVから選択され、
は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
10は、N、S、T、およびQから選択され、
11は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
12は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
13は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
14は、P、F、Y、W、A、V、I、L、M、およびGから選択され、
15は、N、S、T、およびQから選択され、
16は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
17は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
18は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
19は、N、S、T、およびQから選択され、
20は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
21は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
22は、R、H、およびKから選択され、
23は、C、S、およびTから選択され、
24は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、ならびに
25は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択される、
請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項7】
前記ペプチドの前記アミノ酸配列が、X10
11121314151617181920212223
25(配列番号12)であり、
配列中、
は、N、S、T、およびQから選択され、
は、N、S、T、およびQから選択され、
は、G、A、およびVから選択され、
は、R、H、およびKから選択され、
は、R、H、およびKから選択され、
は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
は、C、S、およびTから選択され、
は、G、A、およびVから選択され、
は、G、A、およびVから選択され、
10は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
11は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
12は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
13は、R、H、およびKから選択され、
14は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
15は、R、H、およびKから選択され、
16は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
17は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
18は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
19は、N、S、T、およびQから選択され、
20は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
21は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、
22は、N、S、T、およびQから選択され、
23は、C、S、およびTから選択され、
24は、F、Y、W、A、V、I、L、およびMから選択され、ならびに
25は、N、S、T、およびQから選択される、
請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項8】
アミロイドβ(Aβ)ペプチドのAβオリゴマーおよび/もしくはAβ原線維への重合
を阻害するおよび/もしくは逆転させる、ならびに/またはAβ斑の脱凝集を引き起こす
のに有効である、請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項9】
前記Aβペプチドが、Aβ1-40およびAβ1-42の少なくとも1つである、請求
項8に記載のペプチド化合物。
【請求項10】
そのような治療を必要とする対象においてアミロイドβ(Aβ)オリゴマーおよび/ま
たはAβ原線維の生成を阻害する方法であって、アミロイドβ(Aβ)ペプチドのAβオ
リゴマーおよび/もしくはAβ原線維への重合を阻害するおよび/もしくは逆転させるの
に有効であり、ならびに/またはAβ斑の脱凝集を引き起こすのに有効である量のペプチ
ド化合物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項11】
前記ペプチド化合物が、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番
号11、および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを
含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
そのような治療を必要とする対象においてアミロイドβ(Aβ)ペプチドに関連した疾
患または状態を処置する方法であって、Aβペプチドの重合を阻害するおよび/または逆
転させるのに有効な量のペプチド化合物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記ペプチド化合物が、配列番号7および配列番号10から選択されるカテプシンG(
CG)の誘導体であるペプチドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチド化合物が、配列番号8および配列番号11から選択される好中球エラスタ
ーゼ(NE)の誘導体であるペプチドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチド化合物が、配列番号9および配列番号12から選択される37kDaのカ
チオン性抗微生物タンパク質(CAP37)の誘導体であるペプチドを含む、請求項12
に記載の方法。
【請求項16】
Aβペプチドの重合を阻害することが、Aβオリゴマーの形成を阻害することを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項17】
Aβペプチドの重合を阻害することが、Aβ原線維の形成を阻害することを含む、請求
項12に記載の方法。
【請求項18】
Aβペプチドの重合を逆転させることが、Aβオリゴマー、Aβ原線維、またはAβ斑
の脱凝集を引き起こすことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記Aβペプチドが、Aβ1-40およびAβ1-42の少なくとも1つである、請求
項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、全体として参照により本明細書に明確に組み込まれている、2018年6
月6日に出願された米国仮特許出願第62/682、455号の優先権を主張する。
【0002】
政府支援
この発明は、米国国立衛生研究所により授与された認可番号R21EY026229お
よびP20GM103640-06による政府支援でなされた。政府は本発明において一
定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、65歳以上の人々の中で認知症の最も多く見られる原因
であり、米国において6番目に多い死亡原因である。それは、現在、約5百万人が発症し
ており、その数は、次の20年間の間に二倍になると予想されている。現在、ADは、治
癒させることも、防止することも、遅らせることもできず、そのため、効率的な治療アプ
ローチの開発の重要な必要性が存在している。
【0004】
37kDaのカチオン性抗微生物タンパク質(cationic antimicrobial protein of 37
kDa)(CAP37)が、年齢適合対照と比較して、ADを有する患者においてニューロ
ンおよび海馬脈管構造で大幅に上方制御されていることが以前、示された。CAP37タ
ンパク質が、アミロイドベータ(アミロイドβ、またはAβ)(ADを有する患者の脳に
見出されるアミロイド斑の主要成分)を結合し、切断すること、およびCAP37タンパ
ク質が、終末糖化産物(RAGE)の炎症促進性受容体と相互作用することもまた、示さ
れた。Aβは、ADの進行中の初期に脳に蓄積し、AD病態の鍵となる顕著な特徴である
。その濃度が増加するにつれて、Aβは重合し、最初、可溶性オリゴマーおよび原線維を
形成し、それらは、その後、沈殿して、不溶性アミロイド斑を形成する。脳におけるAβ
蓄積は、(1)アミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断からの生成の増加、(2)
血液からの流入の増加、および/または(3)クリアランスの減少の結果であり得る。
【0005】
RAGEは、膜貫通受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、炎症促進性シ
グナルを媒介する。(モノマー、オリゴマー、および原線維の形の)Aβは、RAGEの
公知のリガンドである。RAGEの他の公知のリガンドには、終末糖化産物(AGE)、
S100/カルグラニュリン、および高移動度グループボックス1(HMGB1)タンパ
ク質が挙げられる。RAGEは、成人組織において低レベルで発現しており、RAGEリ
ガンドの濃度が増加すると、ポジティブフィードバックループにより上方制御される。R
AGE発現は、ADを有する患者の脳において上方制御されている。AD発症において、
RAGEは、ニューロンおよびミクログリア細胞においてAβオリゴマーおよび原線維の
毒性効果を媒介することに役割を果たすと考えられている。ニューロンにおいて、RAG
Eは、酸化ストレスの誘導およびタウの過剰リン酸化を媒介することができる。RAGE
はまた、ミクログリア細胞の活性化を媒介し、ADに関連した慢性の根底にある神経炎症
を永続化させる。血液脳関門において、RAGE活性化は、関門機能の崩壊、ADに関連
した別の病理学的特徴に関与すると考えられている。最後に、RAGEは、経細胞輸送機
構を通しての循環から脳へのAβの流入を媒介する。
【0006】
以前の所見は以下のことを確立している:(1)CAP37の発現は、同じ年齢である
が、ADと診断されていない患者よりももっと、アルツハイマー病(AD)を有する患者
のニューロンにおいて増加していること。これは、脳におけるCAP37の量と疾患との
間の正の相関を確立した。これは、2つの密接に関係したタンパク質、好中球エラスター
ゼ(NE)とカテプシンG(CG)には当てはまらなかった。(2)CAP37、NE、
およびCG発現の制御が、終末糖化産物(RAGE)の炎症促進性受容体についてのリガ
ンドとして役割を果たすタンパク質の制御と一般的に相関していること、(3)CAP3
7は、RAGEのすでに知られたリガンドであるAβペプチドと同様に、RAGEに結合
し、NEおよびCGもまたRAGEに結合すること、(4)CAP37-RAGEおよび
NE-RAGE相互作用が、特定のRAGE阻害剤によって阻害されること、(5)CA
P37、NE、およびCGがAβに結合すること、ならびに(6)CAP37、NE、お
よびCGが、Aβに対してプロテアーゼ活性を発揮し、それを、いくつかの同定された切
断部位で切断すること。
【0007】
このように、AβとRAGEは共に、AD発症における重要な薬理学的標的として同定
されており、本開示が対象とするのは、AβおよびRAGEをターゲティングし、したが
って、ADおよび/または神経炎症を有する患者を処置するために用いることができる、
薬物の同定である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】アミロイドβ1-42(Aβ1-42)の完全長CAP37、NE、およびCGタンパク質への結合を示す図である。結合は、CAP37およびCGに関してより強く、抗プロテアーゼ(フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)またはキモスタチン)の添加によって大幅には変化しない。Aβ1-42のNEへの結合はほとんど検出不可能であるが、NEによるAβ1-42の切断を阻害するPMSFの存在下で、大幅に増加する。
図2】野生型CAP37由来ペプチド20-44(20-44 CC、95-122、および120-146 QR)および変異体CAP37由来ペプチド(20-44 CS、20-44 SC、120-146 WR、120-146 QH、および120-146 WH)へのAβ1-42の結合のレベルを示す図である。Aβ1-42は、ペプチド95-122に結合しなかった。
図3図2の「5RMP」修飾型CAP37由来ペプチド(ペプチドのN末端に連結された2個のAEEAミニPEG分子および4個の連続したアルギニン、ならびにペプチドのC末端に連結された1個のアルギニン)へのAβ1-42結合のレベルを示す図である。
図4】示された濃度の完全長CAP37、NE、またはCGの存在下でのAβ1- 42の線維化(fibrillation)(凝集(aggregation))のレベルを示すグラフである。(タンパク質が添加されない場合の)Aβ1-42の完全な線維化の時間は、垂直点線によって示されている。
図5】タンパク質の様々な濃度における完全長CAP37、NE、またはCGの存在下でのAβ1-42の線維化(凝集)のレベルを示すグラフである。NEは、Aβ1- 42線維化に対して最も高い、続いてCG、次いでCAP37である阻害効果を有する。
図6】プロテアーゼ阻害剤PMSFが、CAP37のAβ1-42線維化に対する阻害効果を損なうことを示す図である。CAP37のIC50は、PMSFの存在下で3.5倍、増加している。これは、CAP37の線維化に対する阻害効果が、少なくとも部分的に、Aβ1-42の切断によることを示している。
図7】プロテアーゼ阻害剤PMSFが、NEのAβ1-42線維化に対する阻害効果を損なうことを示す図である。NEのIC50は、PMSFの存在下で36倍、増加している。これは、NEの線維化に対する阻害効果が、少なくとも部分的に、Aβ1-42の切断によることを示している。
図8】NEによるAβ1-42の切断と線維化の阻害の間の直接的相関を示す図である。この相関は、線維化のNEの阻害が主に、Aβの切断によって媒介されるという考えを裏付ける。この実験は、PMSFの非存在下で実施された。
図9】NEによるAβ1-42の切断と線維化の阻害の間の直接的相関を示す図である。この実験は、PMSFの存在下で実施された。
図10】プロテアーゼ阻害剤キモスタチンが、CGのAβ1-42線維化に対する阻害効果を損なうことを示す図である。CGのIC50は、キモスタチンの存在下で17倍、増加している。これは、CGの線維化に対する阻害効果が、少なくとも部分的に、Aβ1-42の切断によることを示している。
図11】CGによるAβ1-42の切断と線維化の阻害の間の直接的相関を示す図である。この相関は、線維化のCGの阻害が主に、Aβの切断によって媒介されるという考えを裏付ける。この実験は、キモスタチンの非存在下で実施された。
図12】CGによるAβ1-42の切断と線維化の阻害の間の直接的相関を示す図である。この実験は、キモスタチンの存在下で実施された。
図13】CAP37由来ペプチド120-146 WRおよび120-146 WR 5RMPが阻害することを示す図である。ペプチド95-122 5RMPは、線維化を阻害しない。
図14】Aβ1-42オリゴマーが、ニューロンに対する毒性が原線維よりも高いことを示す図である。Aβ1-42のモノマー型の毒性が最も低い。
図15】原線維形成に有利に働く条件下でインキュベートされた場合、NEおよびCGがAβ1-42の毒性を阻害するが、CAP37は阻害しないことを示す図である。
図16】様々な濃度のNEの存在下でのAβ1-42オリゴマーのニューロン細胞に対する効果を示す図である。NEは、用量依存性様式で、Aβ1-42オリゴマー毒性を大幅に阻害した。
図17】様々な濃度のCGの存在下でのAβ1-42オリゴマーのニューロン細胞に対する効果を示す図である。CGは、用量依存性様式で、Aβ1-42オリゴマー毒性を大幅に阻害した。
図18】様々な濃度のCAP37タンパク質の存在下でのAβ1-42オリゴマーのニューロン細胞に対する効果を示す図である。完全長CAP37は、Aβ1-42オリゴマー毒性を阻害しない。
図19】様々な濃度のCAP37由来ペプチド120-146 WRの存在下でのAβ1-42オリゴマーのニューロン細胞に対する効果を示す図である。修飾型CAP37ペプチドは、用量依存性様式で、Aβ1-42オリゴマー毒性を大幅に阻害した。
図20】様々な濃度のCAP37由来ペプチド120-146 WR-5RMPの存在下でのAβ1-42オリゴマーのニューロン細胞に対する効果を示す図である。5RMP修飾型CAP37ペプチドバリアントは、用量依存性様式で、Aβ1-42オリゴマー毒性を大幅に阻害した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
少なくともある特定の実施形態において、本開示は、3つの好中球顆粒タンパク質、カ
テプシンG(CG)、好中球エラスターゼ(NE)、および37kDaのカチオン性抗微
生物タンパク質(CAP37)から得られる、またはそれらに由来するペプチド配列を含
有するペプチド化合物、アミロイドベータ(Aβ)の原線維(fibril)形成(formation
)およびオリゴマー化を阻害することにおけるそれらの使用の方法、ならびに、例えば、
AD、脳アミロイド血管症、認知症、および/または神経炎症、および/またはそれらの
症状を含む、Aβに関連した疾患および状態を処置、緩和、および/または阻害するため
の治療薬としてのそれらの使用の方法を対象とする。CAP37、NE、およびCGは、
Aβ1-42(Aβの42アミノ酸の形)を異なる部位で、および異なる速度式で切断し
得ることが発見された。CAP37が、アルツハイマー病(AD)を有する患者の脳にお
いて上方制御されているが、NEもCGも上方制御されていないこともまた観察された。
CAP37が、RAGEのすでに知られたリガンドであるAβペプチドへの結合と同様に
、RAGEに結合することが見出されている。NEおよびCGもまたRAGEに結合する
。CAP37-RAGE相互作用およびNE-RAGE相互作用は、特定のRAGE阻害
剤によって阻害される。Aβ1-42の結合および切断が、毒性オリゴマーおよび原線維
を形成するその能力を阻害するだろうことが仮定され、したがって、本開示は、CAP3
7、NE、およびCG、ならびにそれらのペプチド誘導体がAβ凝集(原線維形成)を阻
害することができるかどうかに関する結果を記載する。Aβのオリゴマー型および重合型
が、モノマー型よりも毒性が高いと考えられている。したがって、そのような阻害が、A
βの毒性を減少させ、ADの進行を遅らせるだろう。
【0010】
理論に縛られるつもりはないが、本開示のペプチド化合物は、血液脳関門においてRA
GEに結合することができ、それにより、全身性に産生されたAβの結合を阻害し、した
がって、その脳への輸送を阻害すると考えられる。その後、Aβではなく、ペプチドが、
RAGE媒介性経細胞輸送により、血液脳関門を通って、脳へ輸送されるだろう。いった
ん脳内へ入ると、ペプチドは、Aβのオリゴマー化および/または重合を阻害し、凝集し
たAβの脱凝集を引き起こし(Aβオリゴマーおよび原線維を脱重合し)、それにより、
Aβの毒性効果およびアミロイド斑(amyloid plaque)における沈着を減少させる。さら
に、そのペプチドは、凝集したAβおよび他のアゴニストにより媒介される、ニューロン
およびミクログリア細胞上のRAGEおよびTLR4を結合し、それらの炎症促進性効果
をアンタゴナイズし、それにより、神経炎症を低下させる。
【0011】
本開示の組成物およびそれらの使用の方法の様々な実施形態のさらなる詳細な説明の前
に、本開示が、以下の説明に示されているような方法および組成物の詳細への適用におい
て限定されないことは理解されるべきである。本明細書に提供された説明は、例証のみを
目的として意図され、限定する意味で解釈されることを意図するものではない。本開示は
、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施されもしくは行われることができ
る。そのようなものとして、本明細書で用いられる言語は、最も広い可能な範囲および意
味を与えられることを意図され、実施形態は、例示であって、包括的ではないことを意図
される。また、本明細書で用いられる表現および専門用語は、説明を目的とし、他に指示
がない限り、そのようなものと限定するとみなされるべきではないことは理解されるべき
である。さらに、以下の詳細な説明において、多数の特定の詳細は、本開示のより完全な
理解を提供するために示されている。しかしながら、本開示の様々な実施形態が、これら
の特定の詳細なしに実施され得ることは当業者に明らかであろう。他の例では、当業者に
周知の特徴が、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、詳細には記載されていな
い。当業者に明らかな全ての代替物、置換物、改変物、および等価物は、本明細書に定義
された本開示の範囲内に含まれることが意図される。したがって、特定の実施形態を含む
、下記の例は、本開示の実施を例証する役割を果たし、示された明細が、例として、かつ
特定の実施形態のみの例証的考察を目的とするものであり、手順、ならびに発明概念の原
理および概念的側面の有用な、かつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供
するために提示されていることは理解されている。したがって、本開示の組成物および方
法は、特定の実施形態に関して記載されているが、本明細書に開示された発明概念の概念
、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された組成物および/または
方法に、ならびにその方法のステップまたは一連のステップにおいて、変型が適用され得
ることは当業者に明らかであろう。
【0012】
本明細書に言及された全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開
示が関係する当業者の技術レベルを示している。この出願の任意の箇所において参照され
た各特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、あたかも個々の特許、または公
開された特許出願、または非特許刊行物が、具体的にかつ個々に示されて、参照により組
み込まれているかのように同じ程度で全体として参照により本明細書に明確に組み込まれ
ている。特に、国際特許公開第2014/089088号パンフレットおよび第2014
/172747号パンフレット、ならびに米国特許第9096679号明細書、第960
3896号明細書、第9624283号明細書、および第9862748号明細書は、全
体として参照により本明細書に明確に組み込まれている。
【0013】
本明細書で他に定義されていない限り、本開示に関連して用いられる科学的および技術
的用語は、当業者により一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈
により別段求められない限り、単数形の用語は、複数形を含み、複数形の用語は、単数形
を含むものとする。
【0014】
本開示の方法および組成物に従って利用される場合、以下の用語は、他に指示がない限
り、以下の意味を有すると理解されるものとする:
【0015】
特許請求の範囲および/または明細書における用語「含むこと(comprising
)」と共に用いられる場合の語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「1つ(
one)」を意味し得るが、それはまた、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、お
よび「1つまたは1つよりも多い」の意味とも一致する。特許請求の範囲における用語「
または」の使用は、代替物のみを指すように明白には示されていない限り、または代替物
がお互いに排他的でない限り、たとえ本開示が代替物および「および/または」のみを指
す定義を支持しているとしても、「および/または」を意味するように用いられる。用語
「少なくとも1つ」の使用は、1つ、ならびに2、3、4、5、6、7、8、9、10、
15、20、30、40、50、100、またはそれらの中に含まれる任意の整数を含む
がそれらに限定されない、1つよりも多い任意の量を含むと理解される。用語「少なくと
も1つ」は、それが付着している用語に依存して、最大100または1000もしくはそ
れよりも多く拡大し得る;加えて、100/1000の量は、より高い限界もまた満足の
いく結果を生じる場合があるため、制限的にみなされるべきではない。加えて、用語「X
、Y、およびZの少なくとも1つ」の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびに
X、Y、およびZの任意の組合せを含むと理解される。
【0016】
この明細書および特許請求の範囲で用いられる場合、語「含むこと(comprisi
ng)」(および「含む(comprise)」および「含む(comprises)」
などの含むこと(comprising)の任意の形)、「有すること(having)
」(および「有する(have)」および「有する(has)」などの有すること(ha
ving)の任意の形)、「含むこと(including)」(「含む(includ
es)」および「含む(include)」などの含むこと(including)の任
意の形)、または「含有すること(containing)」(および「含有する(co
ntains)」および「含有する(contain)」などの含有すること(cont
aining)の任意の形)は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、列挙され
ていない要素または方法ステップを排除しない。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「またはそれらの組合せ」は、用語に先行する列挙さ
れた項目の全ての順列および組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組合
せ」は、以下の少なくとも1つを含むことを意図される:A、B、C、AB、AC、BC
、またはABC、およびまた、特定の文脈において順序が重要である場合、BA、CA、
CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCAB。この例を続けると、BB、AA
A、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの、1つまた
は複数の項目または用語の繰り返しを含有する組合せが明確に含まれる。典型的には、文
脈から別段明らかではない限り、任意の組合せにおける項目または用語の数に制限はない
ことを、当業者は理解しているだろう。
【0018】
この出願を通して、用語「約」または「およそ」は、値が、組成物、組成物を投与する
ために用いられる方法についての誤差の固有変動、または研究対象の間に存在する変動を
含むことを示すために用いられる。本明細書で用いられる場合、修飾語句「約」または「
およそ」は、正確な値、量、程度、配向、または他の認定された特性もしくは値を含むこ
とを意図されるだけでなく、例えば、計測誤差、製造上の公差、観測者誤差、およびそれ
らの組合せによるいくつかのわずかな変動を含むことも意図される。量、時間的持続期間
などの測定可能な値に言及する場合に本明細書で用いられる場合の用語「約」または「お
よそ」は、そのような変動が、開示された方法を実施するのに妥当であるように、かつ当
業者により理解されているように、例えば、特定された値から±20%または±10%ま
たは±5%または±1%または±0.1%の変動を包含することを意図される。本明細書
で用いられる場合、用語「実質的に」は、その後に記載された事象もしくは状況が、完全
に生じていること、またはその後に記載された事象もしくは状況が、大きな範囲もしくは
程度で生じていることを意味する。例えば、用語「実質的に」は、その後に記載された事
象または状況が、少なくとも80%の割合で、少なくとも90%の割合で、少なくとも9
1%の割合で、少なくとも92%の割合で、少なくとも93%の割合で、少なくとも94
%の割合で、少なくとも95%の割合で、少なくとも96%の割合で、少なくとも97%
の割合で、少なくとも98%の割合で、または少なくとも99%の割合で、生じているこ
とを意味する。
【0019】
本明細書で用いられる場合、「1つの実施形態(one embodiment)」ま
たは「ある実施形態(an embodiment)」への任意の言及は、実施形態に関
連して記載された特定の要素、特徴、組成物、構造、または特性が、少なくとも1つの実
施形態に含まれることを意味する。本明細書における様々な箇所での句「1つの実施形態
において」の出現は、必ずしも全て、同じ実施形態を指すわけではない。
【0020】
本明細書で用いられる場合、用語「AEEA」、「AEEEA」、「AEEP」、およ
び「AEEEP」は、ある特定の実施形態において、本明細書に開示された化合物の一部
分を構成し、以下の特定の意味を有する、短いポリエチレングリコール分子(「ミニPE
G」)を指す。
【0021】
AEEAという用語は、[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-酢酸(8-ア
ミノ-3、6-ジオキサオクタン酸としても公知)に由来するNまたはC末端基である、
-NH(CHCHO)CHCO-またはNH(CHCHO)CHCO
-を表す。
【0022】
AEEEAという用語は、{2-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-エト
キシ}-酢酸(11-アミノ-3、6、9-トリオキサウンデカン酸としても公知)に由
来するNまたはC末端基である、-NH(CHCHO)CHCO-またはNH
(CHCHO)CHCO-を表す。
【0023】
AEEPという用語は、[3-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-プロパン酸(
9-アミノ-4、7-ジオキサノナン酸としても公知)に由来するNまたはC末端基であ
る、-NH(CHCHO)CHCHCO-またはNH(CHCHO)
CHCHCO-を表す。
【0024】
AEEEPという用語は、[3-[2-(2-アミノ-エトキシ)-エトキシ]-エト
キシ]-プロパン酸(12-アミノ-4、7、10-トリオキサドデカン酸としても公知
)に由来するNまたはC末端基である、-NH(CHCHO)CHCHCO-
またはNH(CHCHO)CHCHCO-を表す。
【0025】
以下は、本明細書で用いられる他の略語、ならびにそれらにより表される全体の単語ま
たは句のリストである:
AGE:終末糖化産物
Aβ:アミノロイドベータまたはアミロイドβ
ANOVA:分散分析
APP:アミロイド前駆体タンパク質
CAP37:分子量37KDaのカチオン性抗微生物タンパク質
CG:カテプシンG
BCA:ビシンコニン酸
BSA:ウシ血清アルブミン
DAB:ジアミノベンジジン四塩酸塩
BPI:殺菌性透過性増強
DAG:ジアシルグリセロール
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
EGF:上皮増殖因子
EGFR:上皮増殖因子受容体
ERK:細胞外シグナル制御キナーゼ
FBS:ウシ胎仔血清
5RMP:5アルギニン-ミニPEG
GCSF:顆粒球コロニー刺激因子
GM-CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
GPCR:Gタンパク質共役型受容体
HB-EGF:ヘパリン結合性上皮増殖因子
HBSS:ハンクス平衡塩溶液
HCEC:ヒト角膜上皮細胞
H&E:ヘマトキシリンおよびエオシン
HGF:肝細胞増殖因子
HBD-1:ヒトベータ-デフェンシン-1
HMGB1:高移動度グループボックス1
IL-6:インターロイキン-6
IL-8:インターロイキン-8
IP-10:インターフェロン誘導タンパク質-10
KC:ケラチノサイト由来ケモカイン
KSFM:ケラチノサイト無血清培地
LPS:リポ多糖
MCP-1:単球走化性タンパク質-1
NADP:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
NE:好中球エラスターゼ
PBS:リン酸緩衝食塩水
PDGF-BB:血小板由来増殖因子-BB
PKC:プロテインキナーゼC
PMA:ホルボール12-ミリステート13-アセテート
PMSF:フッ化フェニルメチルスルホニル
RAGE:終末糖化産物受容体
RIPA:放射性免疫沈降法
ROS:活性酸素種
SDS-PAGE:ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
SFM:無血清培地
TBS:Tris緩衝食塩水
TBST:Tris緩衝食塩水TWEEN(登録商標)20(Thermo Fishe
r Scientific、Pittsburg、PA)
TGF-β:トランスフォーミング増殖因子ベータ
TNF-α:腫瘍壊死因子アルファ
CG119-144:カテプシンGタンパク質のアミノ酸119~144
NE119-145:好中球エラスターゼのアミノ酸119~145
CAP37120-146:CAP37タンパク質のアミノ酸120~146
CG20-47:カテプシンGタンパク質のアミノ酸20~47
NE20-44:好中球エラスターゼのアミノ酸20~44
CAP3720-44:CAP37タンパク質のアミノ酸20~44
【0026】
以下の標準的なアミノ酸略語が本明細書で用いられる:
アラニン:ala:A、システイン:cys:C、アスパラギン酸:asp:D、グルタ
ミン酸:glu:E、フェニルアラニン:phe:F、グリシン:gly:G、ヒスチジ
ン:his:H、イソロイシン:ile:I、リジン:lys:K、ロイシン:leu:
L、メチオニン:met:M、アスパラギン:asn:N、グルタミン:gln:Q、プ
ロリン:pro:P、アルギニン:arg:R、セリン:ser:S、スレオニン:th
r:T、バリン:val:V、トリプトファン:trp:W、およびチロシン:tyr:
T。
【0027】
用語「変異体」または「バリアント」は、タンパク質、ペプチド、核酸、または生物体
の野生型バージョンとは異なる少なくとも1個のアミノ酸またはヌクレオチドを有するタ
ンパク質、ペプチド、核酸、または生物体を指すことを意図され、点置換、複数の連続し
たもしくは連続していない置換、挿入、キメラ、または融合タンパク質、およびそれらを
コードする核酸が挙げられるが、それらに限定されない。保存的アミノ酸置換の例には、
塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リジン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸(例えば、
グルタミン酸およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(例えば、グルタミンおよびアスパ
ラギン)、疎水性アミノ酸(例えば、ロイシン、イソロイシン、およびバリン)、芳香族
アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)、および小型アミノ
酸(例えば、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン)の群内などの同じ
群内で生じた置換が挙げられるが、それらに限定されない。可能な置換の他の例は下に記
載されている。
【0028】
本明細書で用いられる場合、用語「ペプチド」、「ペプチド類似体」、「ペプチド誘導
体」、または「ペプチド化合物」は、アミノ酸だけを含む分子を指す場合もあるし、また
はアミノ酸および1個もしくは複数の非アミノ酸構造(例えば、PEGユニット)を含む
分子を指す場合もある。用語「ペプチド」、「ペプチド類似体」、「ペプチド誘導体」、
または「ペプチド化合物」は、「野生型」ペプチドのバリアント(「変異体」)、または
アミノ酸および1個もしくは複数の非アミノ酸構造(例えば、PEGユニット)を含む分
子を指し得る。
【0029】
用語「アミロイドベータ」(Aβ)は、他に特定的に指定されない限り、1~40個も
しくは1~42個のいずれかのアミノ酸を含むAβペプチド、または他の形を指す。
【0030】
用語「薬学的に許容される」は、合理的な便益/リスク比に見合った、毒性、刺激作用
、および/またはアレルギー応答などの過度の有害な副作用なしの、ヒトおよび/または
動物への投与に適している、化合物および組成物を指す。
【0031】
「生物活性がある」とは、活性薬剤(active agent)がどのようにその生理的効果を生
じるかに関係なく、生物体の生理系を改変する能力を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「純粋な」または「実質的に純粋な」は、目的種が、存在
する支配的な種であり(すなわち、モル基準において、それが、その組成物においていか
なる他の目的種よりも豊富である)、特に、実質的に精製された画分が、存在する全高分
子種の少なくとも約50パーセント(モル基準において)を目的種が構成する組成物であ
ることを意味する。一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全高分子種
の約80%よりも多く、より特に、約85%よりも多く、約90%よりも多く、約95%
よりも多く、または約99%よりも多くを構成する。用語「純粋な」または「実質的に純
粋な」はまた、目的種(例えば、ペプチド化合物)が少なくとも60%(w/w)純粋、
または少なくとも70%(w/w)純粋、または少なくとも75%(w/w)純粋、また
は少なくとも80%(w/w)純粋、または少なくとも85%(w/w)純粋、または少
なくとも90%(w/w)純粋、または少なくとも92%(w/w)純粋、または少なく
とも95%(w/w)純粋、または少なくとも96%(w/w)純粋、または少なくとも
97%(w/w)純粋、または少なくとも98%(w/w)純粋、または少なくとも99
%(w/w)純粋、または100%(w/w)純粋である調製物を指す。
【0033】
用語「対象」および「患者」は、本明細書で交換可能に用いられ、温血動物、特に哺乳
動物を指すと理解される。この用語の範囲および意味内の動物の非限定的例には、イヌ、
ネコ、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、チンチラ、ハムスター、フェレット、ウマ
、ブタ、ヤギ、ウシ、ヒツジ、動物園の動物、ラクダ、ラマ;旧世界および新世界サルな
らびに非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、チンパンジー、アカゲザル、オランウータ
ン、およびヒヒ)を含む非ヒト霊長類;ならびにヒトが挙げられる。
【0034】
本明細書で用いられる場合、用語「活性薬剤」は、本明細書に記載されているような生
物活性を有する化合物または組成物を指す。
【0035】
「処置」は、治療的処置を指す。「防止」は、予防的または防止的処置手段を指す。用
語「処置すること」は、治療を目的として患者へ組成物を投与することを指す。
【0036】
用語「治療用組成物」および「医薬組成物」は、当技術分野で公知の任意の方法により
または本明細書で企図された別の方法で対象に投与され得る活性薬剤含有組成物を指し、
組成物の投与が、本明細書における他の箇所に記載されているような治療効果を引き起こ
す。加えて、本開示の組成物は、当技術分野で周知の製剤技術を用いて、遅延性、制御性
、延長性、および/または持続性放出をもたらすように設計され得る。
【0037】
用語「有効量」は、発明概念の様式で用いられる場合、合理的な便益/リスク比と見合
った、過剰な有害副作用(例えば、毒性、刺激作用、およびアレルギー応答)なしの、検
出可能な治療効果を示すのに十分である、活性薬剤の量を指す。患者についての有効量は
、患者のタイプ、患者のサイズおよび健康、処置されるべき状態の性質および重症度、投
与方法、処置の持続期間、(もしあれば)併用療法の性質、用いられる特定の製剤などに
依存する。したがって、前もって正確な有効量を特定化することは可能ではない。しかし
ながら、所与の状況についての有効量は、本明細書に提供された情報に基づいた日常的実
験を用いて、当業者により決定され得る。
【0038】
用語「寛解させる」は、対象の状態、疾患、またはその症状における検出可能または測
定可能な改善を意味する。検出可能または測定可能な改善には、状態もしくは疾患の発生
率、頻度、重症度、進行、もしくは持続期間の主観的もしくは客観的な減少、低下、阻害
、抑制、制限、もしくは制御、または疾患の症状もしくは根底にある原因もしくは結果の
改善、または疾患の好転が挙げられる。成功した処置結果は、疾患もしくは状態、または
対象における疾患もしくは状態の予後の、発生率、頻度、重症度、進行、または持続期間
を寛解させる、減少させる、低下させる、阻害する、抑制する、制限する、制御する、ま
たは防止するという「治療効果」または「便益」をもたらし得る。
【0039】
状態または疾患を安定化させるなどの悪化の減少または低下もまた、成功した処置結果
である。したがって、治療便益は、疾患もしくは状態、または疾患もしくは状態に関連し
た任意の1つの、大部分の、もしくは全部の有害な症状、合併症、予後、もしくは根底に
ある原因の完全な消失または好転を必要とするわけではない。したがって、満足なエンド
ポイントは、状態もしくは疾患の発生率、頻度、重症度、進行、もしくは持続期間におけ
る部分的な減少、低下、阻害、抑制、制限、制御、もしくは防止、または状態もしくは疾
患の短いもしくは長い持続期間(時間、日、週、月など)にわたる阻害もしくは好転(例
えば、安定化)などの漸進的な改善がある場合、達成され得る。状態または疾患の潜在的
な治療便益または改善をもたらす処置などの方法または使用の有効性は、様々な方法およ
び試験アッセイにより確かめることができる。
【0040】
用語「ペプチド」または「ペプチド配列」は、典型的にはアミノ酸配列を形成する隣接
したアミノ酸のアルファ-アミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって、一方
から他方へ接続された一連のアミノ酸残基を呼ぶために本明細書で用いられる。ある特定
の実施形態において、ペプチドは、長さが、5個から15個まで、25個まで、40個ま
で、60個まで、75個までまたはそれよりも多いアミノ酸、例えば、5個、6個、7個
、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、1
8個、19個、20個、21個、22個、23個、23個、24個、25個、26個、2
7個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、3
7個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、4
7個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、5
7個、58個、59個、もしくは60~75個またはそれよりも多いアミノ酸の範囲であ
り得る。用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、長さが単一ペプチドより長い、
典型的には隣接したアミノ酸のアルファ-アミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合
によって、一方から他方へ接続された一連のアミノ酸残基を呼ぶために本明細書で用いら
れる。「融合タンパク質」または「融合ポリペプチド」は、ペプチドを連続的な立体配置
で組み合わせるように、組換えまたは合成方法により作製されているタンパク質またはポ
リペプチドを指す(および交換可能に用いられ得る)。ある特定の実施形態において、本
明細書の他の箇所に記載されたCAP37、NE、およびCGペプチド誘導体は、生じた
バリアントペプチドが、Aβのオリゴマー化および/もしくは重合の阻害ならびに/また
はAβの脱凝集に関連した本明細書に記載された生物活性を保持する限り、例えば、一端
または両端において1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸、短縮され得る。他
の実施形態において、バリアントペプチドは、1個、2個、または3個のアミノ酸の挿入
を含み得る。
【0041】
本開示のペプチド、およびそれらをコードする核酸には、天然のアミノ酸または塩基の
置換(保存的または非保存的)を含むペプチドおよび核酸のバリアントが挙げられる。例
えば、ペプチドバリアントには、本明細書に開示された配列とは正確には同じではないが
、本明細書に列挙された様々な配列について明確に記載された置換に加えて、本明細書に
記載されたバリアントの活性または性質を実質的に損なわない、アミノ酸残基(保存的ま
たは非保存的)の追加の置換を有するバリアントが挙げられるが、それらに限定されない
。そのような保存的アミノ酸置換の例には、alaからgly、ser、またはthrへ
;argからgln、his、またはlysへ;asnからasp、gln、his、l
ys、ser、またはthrへ;aspからasnまたはgluへ;cysからserへ
;glnからarg、asn、glu、his、lys、またはmetへ;gluからa
sp、gln、またはlysへ;glyからproまたはalaへ;hisからarg、
asn、gln、またはtyrへ;ileからleu、met、またはvalへ;leu
からile、met、phe、またはvalへ;lysからarg、asn、gln、ま
たはgluへ;metからgln、ile、leu、またはvalへ;pheからleu
、met、trp、またはtyrへ;serからala、asn、met、またはthr
へ;thrからala、asn、ser、またはmetへ;trpからpheまたはty
rへ;tyrからhis、pheまたはtrpへ;およびvalからile、leu、ま
たはmetへ、が挙げられ得るが、それらに限定されない。
【0042】
当業者は、そのようなバリアントを作製する、同定する、選択する、または非バリアン
トペプチドによってターゲティングされる同じ受容体に対する結合活性について試験する
方法を容易に知るだろう。保存的アミノ酸置換の特定の例には、gly:ala置換;v
al:ile:leu置換;asn:glu:his置換;asp:glu置換;ser
:thr:met置換;lys:arg:his置換;およびphe:tyr:trp置
換が挙げられるが、それらに限定されない。機能性バリアントペプチドを生じる他の型の
置換、変型、付加、欠失、および誘導体もまた、本開示によって包含され、当業者は、そ
のようなバリアントまたは誘導体を作製、同定、または選択する方法、およびそれらのバ
リアントの受容体結合活性について試験する方法を容易に知るだろう。
【0043】
ある特定の実施形態において、本開示は、以下のアミノ酸配列の1つまたは複数で全体
的にまたは部分的に作り上げられているペプチド化合物を対象とする:
CG119-144:GTLCTVAGWGRVSMRRGTDTLREVQL(配列番
号1)、
NE119-145:GVQCLAMGWGLLGRNRGIASVLQELNV(配列
番号2)、
CAP37120-46:GTRCQVAGWGSQRSGGRLSRFPRFVNV(
配列番号3)、
CG20-47:IQSPAGQSRCGGFLVREDFVLTAAHCWG(配列番
号4)、
NE20-44:LRGGHFCGATLIAPNFVMSAAHCVA(配列番号5)
、および
CAP3720-44:NQGRHFCGGALIHARFVMTAASCFQ(配列番
号6)。
【0044】
より特に、本開示には、下記のような特定の置換を含むペプチドバリアントが挙げられ
るが、それらに限定されない。
【0045】
ある特定の非限定的実施形態において、以下の置換を含むCG119-144(配列番
号1)のバリアントは、本明細書で用いられるペプチド化合物を形成するために用いるこ
とができる:4個の塩基性アルギニン残基(11、15、16、22位)の1個または複
数は、リジンまたはヒスチジンへ変更することができる。19位における酸性残基アスパ
ラギン酸は、グルタミン酸へ変更することができ、および/または23位におけるグルタ
ミン酸は、アスパラギン酸へ変更することができる。2、5、18、および20位におけ
るスレオニン残基の1個または複数は、別の親水性残基(アスパラギン、グルタミン、セ
リン、チロシン)へ、または別の小型残基(セリン、アラニン、グリシン、バリン、プロ
リン)へ変更することができる。2個の他の親水性残基、13位におけるセリンおよび2
5位におけるグルタミンの1個または複数は、同様に、別の親水性残基(アスパラギン、
グルタミン、セリン、スレオニン、またはチロシン)へ変更することができる。(疎水性
である)この配列における他の残基の1個または複数は、別の疎水性残基(アラニン、グ
リシン、システイン、バリン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニ
ルアラニン、トリプトファン)へ置換することできる。
【0046】
他の非限定的実施形態において、以下の置換を含むNE119-145(配列番号2)
のバリアントは、本明細書に用いられるペプチド化合物を形成するために用いることがで
きる:9位における芳香族トリプトファン残基は、別の芳香族残基(チロシンまたはフェ
ニルアラニン)へ変更することができる。24位における酸性残基グルタミン酸は、アス
パラギン酸へ変更することができる。14および16位における2個の塩基性アルギニン
残基の1個または複数は、別の塩基性アミノ酸(リジンまたはヒスチジン)へ変更するこ
とができる。極性残基グルタミン(3および23位)、アスパラギン(15位)、および
セリン(20位)の1個または複数は、任意の他の極性残基(アスパラギン、グルタミン
、セリン、スレオニン、またはチロシン)へ変更することができる。20位におけるセリ
ンはまた、別の小型残基(スレオニン、アラニン、グリシン、バリン、プロリン)へ変更
することができる。(疎水性である)この配列における他の残基の1個または複数は、別
の疎水性残基(アラニン、グリシン、システイン、バリン、プロリン、ロイシン、イソロ
イシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン)へ置換することができる。
【0047】
他の非限定的実施形態において、以下の置換を含むCAP37120-146(配列番
号3)のバリアントは、本明細書に用いられるペプチド化合物を形成するために用いるこ
とができる:このペプチドの1、8、10、15、16位における小型の疎水性グリシン
残基の1個または複数は、別の疎水性アミノ酸(アラニン、システイン、バリン、プロリ
ン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、またはトリプトファン)
、または別の小型アミノ酸(アラニン、セリン、スレオニン、バリン、またはプロリン)
へ変更することができる。同様に、3、13、17、20、23位における正荷電アルギ
ニン残基の1個、2個、3個、4個、または全部は、別の塩基性アミノ酸(リジンまたは
ヒスチジン)へ変更することができる。この配列についての他の例は、親水性アミノ酸、
2位におけるスレオニン、5および12位におけるグルタミン、ならびに14および19
位におけるセリンの1個または複数を異なる親水性残基へ変更することであり、例えば、
スレオニンは、アスパラギン、グルタミン、セリン、またはチロシンへ変更することでき
る;グルタミンは、アスパラギン、セリン、スレオニン、またはチロシンへ変更すること
できる;およびセリンは、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、またはチロシンへ変
更することできる。(疎水性である)この配列における他の残基の1個または複数は、別
の疎水性残基(アラニン、グリシン、システイン、バリン、プロリン、ロイシン、イソロ
イシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン)へ置換することができる。
【0048】
他の非限定的実施形態において、以下の置換を含むCG20-47(配列番号4)の代
替バリアント(alternative variant)は、本明細書に用いられるペプチド化合物を形成
するために用いることができる:この配列において、2個の負荷電残基、グルタミン酸お
よびアスパラギン酸(それぞれ、17および18位)は、2個のグルタミン酸もしくは2
個のアスパラギン酸へ変更することができるか、またはそれぞれ、アスパラギン酸および
グルタミン酸へと逆にすることができる。このペプチドの9および16位における2個の
正荷電アルギニン残基の1個または複数は、リジンまたはヒスチジンへ保存的に変更する
ことができ、25位におけるヒスチジン残基は、アルギニンまたはリジンへ変更すること
ができる。2および7位における極性グルタミン残基の1個または複数は、アスパラギン
、セリン、スレオニン、またはチロシンへ変更することできる;ならびに3および8位に
おける極性セリン残基の1個または複数は、アスパラギン、グルタミン、スレオニン、ま
たはチロシンへ変更することできる。(疎水性である)この配列における他の残基の1個
または複数は、別の疎水性残基(アラニン、グリシン、システイン、バリン、プロリン、
ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン)へ置換する
ことができる。芳香族残基フェニルアラニン13および19、ならびにトリプトファン2
7の1個または複数は、別の芳香族残基(フェニルアラニン、トリプトファン、またはチ
ロシン)へ変更することができる。
【0049】
他の非限定的実施形態において、以下の置換を含むNE20-44(配列番号5)の代
替バリアントは、本明細書に用いられるペプチド化合物を形成するために用いることがで
きる:このペプチドの2位における正荷電アルギニン残基は、リジンまたはヒスチジンへ
保存的に変更することができ、5および22位における2個のヒスチジン残基の1個また
は複数は、アルギニンまたはリジンへ変更することができる。2個の極性残基アスパラギ
ン15およびセリン19の1個または複数は、任意の他の極性残基(アスパラギン、グル
タミン、セリン、スレオニン、またはチロシン)へ変更することができる。(疎水性であ
る)この配列における他の残基の1個または複数は、別の疎水性残基(アラニン、グリシ
ン、システイン、バリン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルア
ラニン、トリプトファン)へ置換することができる。6および16位におけるフェニルア
ラニンの1個または複数は、別の芳香族残基、トリプトファンかチロシンのいずれかへ変
更することができる。
【0050】
他の非限定的実施形態において、以下の置換を含むCAP3720-44(配列番号6
)の代替バリアントは、本明細書に用いられるペプチド化合物を形成するために用いるこ
とができる:このペプチドの4および15位における2個の正荷電アルギニン残基の1個
または複数は、リジンまたはヒスチジンへ保存的に変更することができ、5および13位
における2個のヒスチジン残基の1個または複数は、アルギニンまたはリジンへ変更する
ことができる。6、16、24位における3個の芳香族フェニルアラニン残基の1個また
は複数は、他の芳香族残基トリプトファンまたはチロシンへ変更することができる。極性
残基アスパラギン1、グルタミン2および25、スレオニン19、ならびにセリン22の
1個または複数は、任意の他の極性残基(アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニ
ン、またはチロシン)へ変更することができる。(疎水性である)この配列における他の
残基の1個または複数は、別の疎水性残基(アラニン、グリシン、システイン、バリン、
プロリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン)
へ置換することができる。
【0051】
さらに、ペプチド化合物は、下記の配列(ボールド体での残基は、野生型配列のアミノ
酸を示す)に示されているようなCG119-144ペプチド、NE119-145、C
AP37120-146、CG20-47、NE20-44、またはCAP3720-4
に由来するアミノ酸配列を有するペプチドを含み得る。
【0052】
少なくとも1つの実施形態において、ペプチド化合物は、以下のアミノ酸配列(配列番
号7)を有する、ペプチドCG119-144の誘導体を含む:
10111213141516
17181920212223242526
配列中、
【化1】
【0053】
代替の実施形態において、配列番号7のX17および/またはX18位は、下記の表1
に示されているような欠失、挿入、または置換によって変化し得る。
【0054】
【表1】
【0055】
少なくとも1つの実施形態において、ペプチド化合物は、以下のアミノ酸配列(配列番
号8)を有する、ペプチドNE119-145の誘導体を含む:
10111213141516
1718192021222324252627
配列中、
【化2】
【0056】
代替の実施形態において、配列番号8のX16および/またはX17位は、下記の表2
に示されているような欠失、挿入、または置換によって変化し得る。
【0057】
【表2】
【0058】
少なくとも1つの実施形態において、ペプチド化合物は、以下のアミノ酸配列(配列番
号9)を有する、ペプチドCAP37120-146の誘導体を含む:
10111213141516
1718192021222324252627
配列中、
【化3】
【0059】
代替の実施形態において、配列番号9のX15および/またはX16位は、下記の表3
に示されているような欠失、挿入、または置換によって変化し得る。
【0060】
【表3】
【0061】
少なくとも1つの実施形態において、ペプチド化合物は、以下のアミノ酸配列(配列番
号10)を有する、ペプチドCG20-47の誘導体を含む:
10111213141516
171819202122232425262728
配列中、
【化4】
【0062】
少なくとも1つの実施形態において、ペプチド化合物は、以下のアミノ酸配列(配列番
号11)を有する、ペプチドNE20-44の誘導体を含む:
10111213141516
171819202122232425
配列中、
【化5】
【0063】
少なくとも1つの実施形態において、ペプチド化合物は、以下のアミノ酸配列(配列番
号12)を有する、ペプチドCAP3720-44の誘導体を含む:
10111213141516
171819202122232425
配列中、
【化6】
【0064】
ある特定の非限定的実施形態において、本開示のペプチド化合物の有効量または治療投
薬量は、約0.001μg/kg~約100mg/kg(活性薬剤の重量/対象の体重)
を送達するのに十分な活性薬剤を含有する。例えば、組成物は、約0.01μg/kg~
約50mg/kg、より特に、約0.1μg/kg~約10mg/kg、より特に、約1
μg/kg~約1mg/kgを送達する。本開示の方法の実践は、活性薬剤の治療投薬量
を送達するのに有効な量で、任意の適切な全身性および/または局所性製剤におけるペプ
チド化合物の有効量を対象に投与することを含み得る。ある特定の実施形態において、有
効投薬量は、活性薬剤の約1μg/kg~約1mg/kgの範囲であり得る。
【0065】
本開示の方法の実践は、上記で列挙された投薬量を送達するのに有効な量で、任意の適
切な全身性および/または局所性製剤におけるペプチド化合物の治療有効量を対象に投与
することを含み得る。投薬量は、限定するつもりはないが、例えば、所望の治療効果に依
存して、1回限りで、投与されるか、または複数回(限定するつもりはないが、例えば、
1日あたり1~5回、または週に1回もしくは2回)、もしくは点滴静注によって連続的
に、投与され得る。本開示の治療方法の1つの非限定的例において、バリアントペプチド
化合物は、1日1回、約0.01mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲でIV注
入において供給される。
【0066】
医薬組成物に用いられる、または本開示の方法を実践するための、ペプチド化合物の投
与は、これらに限定されないが、経口で、吸入による、直腸に、局所的に、経鼻的に、ま
たは皮膚、皮下、腹腔内、腟、もしくは静脈内の注射によるなど、様々な従来の方法で行
うことができる。経口製剤は、ペプチド化合物が、放出される前に消化器系部分を通過す
るように、例えば、それが、小腸または結腸に達するまで放出され得ないように、製剤化
され得る。
【0067】
有効量のペプチド化合物が経口で投与される場合、それは、カプセル剤、丸剤、錠剤、
ロゼンジ剤、メルト剤(melt)、散剤、懸濁液剤、溶液剤、エリキシル剤、または乳剤な
どの固体または液体調製物の形であり得る。固体の単位剤形は、例えば界面活性剤、滑沢
剤、ならびにラクトース、スクロース、およびトウモロコシデンプンなどの不活性な充填
剤を含有する通常のゼラチン型のカプセル剤であり得、または剤形は、持続性放出調製物
であり得る。医薬組成物は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含有し得る。
錠剤、カプセル剤、および散剤は、乾燥重量で、活性物質化合物の約0.05%~約95
%を含有し得る。液体の形で投与される場合、水、石油、ピーナッツ油、鉱油、ダイズ油
、もしくはゴマ油などの動物もしくは植物起源の油、または合成油などの液体担体が添加
され得る。液体の形の医薬組成物は、生理的食塩水、デキストロースもしくは他の糖類溶
液、またはエチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコー
ルなどのグリコールをさらに含有し得る。液体の形で投与される場合、医薬組成物は、特
に、活性物質の重量で、約0.005%~約95%を含有する。例えば、1日1回または
2回の約10mg~約1000mgの用量が経口で投与され得る。
【0068】
別の実施形態において、本開示のペプチド化合物は、アカシアゴム、トウモロコシデン
プン、またはゼラチンなどの結合剤、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸などの崩壊剤
、およびステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と組み合わせた、ラ
クトース、スクロース、およびトウモロコシデンプンなどの従来の錠剤ベースで錠剤化す
ることができる。液体調製物は、当技術分野で公知のように、懸濁化剤、甘味剤、香味剤
、および保存剤も含有し得る水性または非水性の薬学的に許容される溶媒中にペプチド化
合物を溶解することにより調製される。
【0069】
非経口投与について、例えば、ペプチド化合物は、生理的に許容される薬学的担体中に
溶解され、溶液剤かまたは懸濁液剤かのいずれかとして投与され得る。適切な薬学的担体
の実例としては、水、食塩水、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノール、ま
たは動物、植物、もしくは合成起源の油である。薬学的担体はまた、当技術分野で公知の
ように、保存剤およびバッファーを含有し得る。
【0070】
有効量のペプチド化合物が、静脈内、皮膚、または皮下注射により投与される場合、化
合物は、特に、発熱物質を含まない、非経口的に許容される水性の溶液剤または懸濁液剤
の形である。pH、等張性、安定性などを考慮した、そのような非経口的に許容される溶
液剤の調製は、十分、当業者の技能範囲内である。静脈内、皮膚、または皮下注射のため
の特定の医薬組成物は、ペプチド化合物に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射
液、デキストロース注射液、デキストロースと塩化ナトリウムの注射液、乳酸加リンゲル
注射液、または当技術分野で公知のような他のビヒクルなどの等張性ビヒクルを含有し得
る。本開示の医薬組成物はまた、安定剤、保存剤、バッファー、抗酸化剤、または当業者
に公知の他の添加剤も含有し得る。
【0071】
述べたように、投与の特定の量および様式は、当業者によって決定され得る。製剤を調
製する当業者は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd ed
.に記載された、当技術分野で公知の製剤テクノロジーを用いて、選択されたペプチド化
合物の特定の特性、処置されるべき状態、状態のステージ、および他の関連した状況に依
存して、投与の適切な形および様式を容易に選択することができる。
【0072】
ペプチド化合物の作用の持続時間を制御するために、追加の薬学的方法が用いられ得る
。半減期の増加および/または徐放性調製物は、本明細書で以前に論じられているように
、ペプチド化合物をコンジュゲートし、それと複合体化し、および/またはそれを吸収す
るタンパク質またはポリマーの使用を通して達成され得る。送達制御および/または半減
期の増加は、放出を制御するための、適切な高分子(限定するわけではないが、例えば、
多糖、ポリエステル、ポリアミノ酸、ホモポリマー、ポリビニルピロリドン、エチレン酢
酸ビニル、メチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース、およびN-(2-ヒド
ロキシプロピル)メタクリルアミドなどのアクリルアミド)、および高分子の適切な濃度
、ならびに組込みの方法を選択することにより達成され得る。
【0073】
徐放性調製物および半減期によりペプチド化合物の作用の持続時間を制御することにお
いて有用な別の可能な方法は、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミノ酸、ハイドロゲル
、ポリ(乳酸)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(P
EG)とポリ(l-アスパルトアミド)のコポリマーミセルなどのポリマー材料の粒子へ
のペプチド化合物またはその機能性誘導体の組込みである。
【0074】
例えばコアセルベーション技術によりもしくは界面重合により調製された、マイクロカ
プセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセ
ル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)内に、コロイド薬物送達系
(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、
およびナノカプセル)内に、またはマクロエマルション内に、ペプチド化合物を捕捉する
こともまた可能である。そのような技術は、当業者に周知である。
【0075】
ペプチド化合物が注射用材料として用いられることになっている場合、それは、従来の
注射用担体中へ製剤化され得る。適切な担体には、特に等張性である、生体適合性で薬学
的に許容されるリン酸緩衝食塩水が挙げられる。
【0076】
本開示による凍結乾燥製造物の再構成について、生理的条件に近づけることが一般的に
認識された、および/または政府規制により求められる通りの材料を含有し得る、無菌希
釈剤を用い得る。この関連において、無菌希釈剤は、塩化ナトリウム、食塩水、リン酸緩
衝食塩水、ならびに/または生理的に許容される、および/もしくは使用について安全で
ある他の物質などの、生理的に許容されるpHを得られるように緩衝剤を含有し得る。一
般的に、ヒトにおける静脈内注射のための材料は、当業者に入手可能である、米国食品医
薬品局により確立された規制に従うべきである。医薬組成物はまた、凍結乾燥製造物の再
構成について上で記載されているのと同じ物質の多くを含有する水溶液の形であり得る。
【0077】
ペプチド化合物はまた、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、お
よびリン酸などの無機酸、ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピ
ルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸などの有機酸と
の反応により、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無
機塩基、ならびにモノ-、ジ-、トリ-アルキルおよびアリルアミン、および置換エタノ
ールアミンなどの有機塩基との反応により形成された、薬学的に許容される酸または塩基
付加塩としても投与することができる。
【0078】
ある特定の実施形態において、本開示は:担体分子と直接的にまたは間接的にカップリ
ングされた少なくとも1つのペプチド化合物であって、ペプチド化合物の少なくとも1つ
のペプチドが、20~50アミノ酸長である、ペプチド化合物を含むペプチド化合物組成
物を含む。
【0079】
少なくともある特定の実施形態において、本開示は、アルツハイマー病、脳アミロイド
血管症、およびAβと関連した他の神経炎症状態におけるAβの炎症促進性および神経毒
性効果の阻害のための、単独での、組合せでの、または非ペプチド部分(例えば、PEG
分子)を含むペプチド化合物のペプチド成分としての、完全長CAP37、NE、および
CGタンパク質および/もしくはそのペプチド断片、ならびに/またはそのようなペプチ
ドの誘導体の使用を対象とする。非限定的例において、本開示のペプチド化合物には、上
で開示されたアミノ酸配列、配列番号1~12を有するペプチドが挙げられる。
【0080】
本明細書の他の箇所に記載されたアミノ酸配列は、R、K、および/またはH部分の付
加(例えば、ペプチドのNおよび/またはC末端部分に連結された1~10個のアミノ酸
)ならびにタグ付きまたはタグなしのペプチド配列のNおよび/またはC末端部分に連結
された「ミニPEG」(AEEA、AEEEA、AEEP、およびAEEEP)部分によ
り修飾され得る。そのようなミニPEG部分の例は、例えば、国際公開第2014/08
9088号パンフレットおよび第2014/172747号パンフレット、ならびに米国
特許第9624283号明細書および第9862748号明細書に示されている。
【0081】
本開示のペプチド化合物の様々実施形態に用いることができる、CGベース、NEベー
ス、およびCAP37ベースのバリアントペプチドの例には、表4に示されたものが挙げ
られるが、それらに限定されない。
【0082】
【表4-1】
【0083】
【表4-2】
【0084】
ある特定の実施形態において、本開示のペプチド化合物は、式(I)によって表される

S-X-Pep-Y (I)
式中、Pepは、本明細書で開示または記載されたアミノ酸配列であり;XおよびY
は、それぞれ、独立して、0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9
個、または10個のR、K、またはH残基であり、例えば、X+Y=最大10個であ
る;ならびにSは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7、8個、9個、または10
個(すなわち、1~10個)の短いPEGサブユニット、例えば、本明細書の他の箇所で
定義されているような、AEEA、AEEP、AEEEA、およびAEEEPから、任意
の組合せで作り上げられた可溶化部分である。
【0085】
ペプチド(X-Pep-Y)に付着しているPEGサブユニット(S)の-O(C
CO-部分(「頭部基」)は、頭部基の(CH部分のいくつかの代替実施
形態を含むようにさらに修飾され得る。これらの代替実施形態、ならびに上で記載された
ものは、式(II)によって特徴付けられ得る:
-O(CRCO- (II)
式中、式IIのRおよびRは、C上の側鎖基であり(すなわち、「R-C-R
)、q=0~4であり、RおよびRは、H、CH、およびCHCHから選択さ
れる。q=1の場合、RおよびRの一方または両方は、H、CH、およびCH
.から選択され得る。q=2の場合、2つのR基の一方および2つのR基の一方
は、H、CH、およびCHCHから選択され得る。q=3の場合、3つのR基の
いずれかおよび3つのR基のいずれかは、H、CH、およびCHCHから選択さ
れ得る。q=4の場合、4つのR基のいずれかおよび4つのR基のいずれかは、H、
CH、およびCHCHから選択され得る。したがって、これらの非限定的実施形態
において、頭部基は、C=1~4の場合、炭素主鎖の炭素上のHに対して1つまたは複数
の置換を含み得る。
【0086】
式IIを有する頭部基の実施形態の例には、以下が挙げられるが、それらに限定されな
い:
1.-OCH CHCO-(例えば、AEEPにおいてのように)
2.-OCHCO-(例えば、AEEAにおいてのように)
3.-OCH CH CHCO-(q=3)
4.-OCH CH CH CHCO-(q=4、すなわち、ペンタン頭部基)
5.-OC(CHCO-(RおよびR=CH、かつq=1)
6.-OCHC(CHCO-(1番目の炭素上のRおよびR=H、かつ2番
目の炭素上のRおよびR=CH、かつq=2)
7.-OCH CH CHCH(CH)CO-(1つの炭素上のR=Hおよび
=CH、かつ他のあらゆる炭素上のRおよびR=H、かつq=4)
8.-OCH CH CHC(CHCO-(1つの炭素上のRおよびR
=CH、かつ他の全ての炭素上のRおよびR=H)
9.-OCH CH CHCH(CHCH)CO-(1つの炭素上のR=H
およびR=CHCH、かつ他の全ての炭素上のRおよびR=H)
10.-OCH(CH) CH CHCH(CHCH)CO-(1つの炭素上
のR=HおよびR=CH、1つの炭素上のR=HおよびR=CHCH、か
つ他の全ての炭素上のRおよびR=H)
【0087】
式IIについて記載された可溶化ユニットに基づいて形成されたペプチド化合物の全て
の立体異性体は、本開示に含まれることを意図される。
【実施例0088】
方法
結合アッセイ
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、AβのCAP37、CAP37由
来ペプチド、NE、CG、およびBSA(陰性対照として用いた)への結合を定量化した
。CAP37、NE、およびCGはヒト好中球から精製され、Athens Resea
rch and Technologyから購入した。BSAはSigma Aldri
ch製であった。CAP37由来ペプチドは、CS Bio Coにより、純度≧95%
で合成した。Sigma Aldrichから購入した1mM PMSF(CAP37、
NE、およびBSAに関する実験について)を含むもしくは含まない、またはSanta
Cruzから購入した±125μMキモスタチン(CGおよびBSAに関する実験につ
いて)のPBS中に5μg/mlで希釈した100μl好中球タンパク質、ペプチド、ま
たはBSAで、Nunc製のMaxisorpプレートをコーティングした。プレートコ
ーティングを、振盪させながら室温で2時間、次いで、4℃で一晩行った。プレートをP
BST(PBS+0.05%tween)中、3回洗浄し、次いで、PBST中3%BS
Aで、振盪させながら室温で1時間ブロッキングした。プレートをPBST中3回洗浄し
、150nM Aβ1-42(Bachemから購入し、1mM NaOH中に再構成し
た)を、PBST中0.1%BSAに添加し、37℃で70分間インキュベートした。次
いで、プレートをPBSTで4回洗浄し、Cell Signaling Techno
logyから購入したモノクローナルマウス抗アミロイド前駆体タンパク質/アミロイド
ベータ抗体を、PBST中1%BSAに1:500希釈率で添加し、振盪させながら室温
で1時間インキュベートした。プレートを、PBST中、4回洗浄し、Jackson
ImmunoResearch Laboratories製のロバ抗マウスHRPコン
ジュゲート型二次抗体を、PBST中1:10,000で添加し、振盪させながら室温で
1時間インキュベートし、次いで、PBST中で4回洗浄した。基質バッファー(49m
Mクエン酸、102mMリン酸ナトリウム、HClで5.0に調整したpH、Kodak
製の7.5mM基質o-フェニレンジアミンおよび0.024%最終Hを新たに添
加した)をプレートに添加し、暗所中、30分間インキュベートした。硫酸(5N)を各
ウェルに添加して、反応を停止させ、492nmにおける吸光度を、Biotek Sy
nergy IIプレートリーダーで読み取った。
【0089】
アミロイドベータ(Aβ)線維化アッセイ
アミロイドベータ(1-42)チオフラビンT凝集キットをAnaspecから購入し
、それを用いて、いくつかの改変を加えた製造会社の使用説明書に従って、Aβ1-42
ペプチド原線維の形成をモニターした。チオフラビンT色素を、線維化バッファーA中2
50μMに希釈し、使用まで、暗所で維持した。Aβ1-42ペプチドを、バッファーA
中250μg/ml(または55μM)で懸濁し、氷上で5分間インキュベートし、複数
回のチューブの反転により混合し、4℃でウォーターバスソニケーターにおいて5分間超
音波処理し、再び混合し、10,000x gで5分間遠心分離した。上清を新しいチュ
ーブに移し、使用まで4℃で保存した。凝集の阻害剤、CAP37、CAP37由来ペプ
チド、NE、CG、およびBSA(陰性対照として用いた)を、水中20×所望の最終濃
度へ希釈した。微光において、10μlチオフラビンT色素を、Corning製の低タ
ンパク質結合性黒色プレートに添加し、バッファーA中に調製された85μl Aβ1-
42、および5μlの水または試験する凝集阻害剤も添加した。好中球タンパク質を、プ
ロテアーゼ阻害剤の非存在および存在下で試験した。PMSFを100%エタノール中に
溶解し、CAP37およびNEに関する反応において1mM最終濃度で用いた。キモスタ
チンを、DMSO中に溶解し、CGに関する反応において125μM最終濃度で用いた。
混合を確実にするために、反応物を、ウェルにおいてマルチチャンネルピペットを用いて
ピペッティングで、2回、アップダウンさせ、蛍光(λEx=440nm、λEm=48
5nm)を、BioTek Synergy 2プレートリーダーにおいて、Gen 5
ソフトウェアを用いて、65に設定された感度で、5分間ごとに3時間読み取った。
【0090】
酵素活性アッセイ
ヘキサフルオロイソプロパノールで処理されたAβ1-42を、Bachemから購入
し、無水DMSO中、5mMで再構成した。反応を、酵素(CAP37、NE、またはC
G)の増加性濃度、およびPBS中10μM Aβ1-42基質で設定し、37℃で1時
間インキュベートした。アセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(TFA)の、それぞれ
、最終濃度が7.5%および0.5%になるような添加により、反応を停止させた。10
%酢酸中に溶解した内部標準(Bachem製のAβ40-1)を、最終濃度が8μg/
mlになるように添加した。この混合物の10μlアリコートを、Agilent Te
chnologies製のC18 OMIXチップで脱塩した。まず、C18樹脂を、1
0μlの50%メタノールで2回、次いで、10μlの平衡バッファー(5%アセトニト
リル 0.5%TFA)で2回すすぎ、次いで、試料を、樹脂を通して10回ピペッティ
ングすることにより樹脂へアプライし、次いでこれを平衡バッファーで2回洗浄し、75
%アセトニトリル 0.1%TFAで溶出した。
【0091】
脱塩した試料を、Bruker Ultraflex II装置およびFlex Co
ntrol Softwareを用いて、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時
間型質量分析(MARLDI-TOF)により分析した。30%アセトニトリル 0.1
%TFA中の1μlのα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸マトリックスと共に、試料を
スチールプレート上にスポットした。各試料を3連でスポットした。プレートを、真空デ
シケーターにおいて乾燥させた。各クロマトグラフは、リニアポジティブモードにおける
28%レーザーパワーでの5×200ショットの平均値であった。クロマトグラフをFl
ex分析ソフトウェアで分析した。クロマトグラフは、Aβ40-1内部標準に対応する
4,330m/z前後におけるピーク、およびAβ1-42基質に対応する4,515m
/z前後におけるピークを有した。内部標準ピーク強度で割ったAβ1-42ピーク強度
の比を、各スポットについて計算し、3連のスポットを平均して、各酵素反応における切
断されなかったAβの量を決定した。
【0092】
細胞培養および神経毒性アッセイ
ATCCからのマウス神経芽細胞腫細胞株Neuro-2aを、これらの実験に用いた
。細胞を増殖させ、完全培地(Gibco製の10%熱失活したウシ胎仔血清およびLo
nza製のペニシリン/ストレプトマイシンを加えた、Gibco製の、MEMα、ヌク
レオシド、フェノールレッドなし)中、ウェルあたり20,000個の細胞で96ウェル
プレートに播種した。播種後24時間において、細胞を、加温したMEMαで洗浄し、次
いで、90μl MEMα+N2サプリメント+20μl試験試料(下記のように調製さ
れたAβ1-42)中でインキュベートした。細胞を、37℃でさらに24時間インキュ
ベートし、次いで、ピペッティングで勢いよくアップダウンさせることにより、取り除い
た。10μlの細胞を、BioRad製の10μlトリパンブルー色素(0.4%溶液)
に添加し、混合し、BioRad TC20細胞カウンターでカウントした。生細胞およ
び死細胞のパーセントを、各ウェルについて記録した。水およびTriton X100
対照の場合、試験試料の代わりに、20μl MEMα+N2サプリメントを添加し、細
胞をカウントする直前に、20μlの培地を除去し、20μl 水または0.1%の最終
濃度でのTriton X100に取り換えた。
【0093】
Aβ、モノマー、原線維、およびオリゴマーの試験試料の調製
Bachem製のモノマーAβ1-42(ヘキサフルオロイソプロパノール処理された
Aβ1-42)を、無水DMSO中5mMで再構成した。CS Bio製の未処理のAβ
1-42もまた、これらの実験に用いた。それを、まず、Sigma Aldrich製
の1mMのヘキサフルオロイソプロパノールで処理し、室温で30分間インキュベートし
、ドラフトにおいて一晩、オープンのままにして、乾燥させた。その後、それを、室温で
1時間真空乾燥させた。Aβ1-42の乾燥フィルムを、それをモノマーの形で保持する
ために、使用まで-20℃で保存した。CS Bio製のAβ1-42もまた、使用前に
、無水DMSO中5mMで再構成した。
【0094】
Aβ1-42モノマーの毒性を、新たに調製したAβ1-42(DMSO中5mM)を
MEMα+N2サプリメント中に18μMの最終濃度で希釈することにより試験した。こ
の混合物を用いて、播種後24時間の細胞において、完全増殖培地を取り換え、Aβ1-
42モノマーの毒性を、24時間のインキュベーション後、測定した。
【0095】
原線維およびオリゴマーの試験試料を調製するために、モノマーAβ1-42を、原線
維またはオリゴマーのいずれかの形成に有利に働く条件下に置いた。原線維を形成するた
めに、100μM Aβ1-42を、Anaspec線維化バッファーA±好中球タンパ
ク質に添加し、37℃で24時間インキュベートした後、細胞へ18μMの最終濃度で添
加した。好中球タンパク質を、線維化アッセイにおいて各タンパク質について以前に決定
された線維化の50%阻害(IC50)をもたらすAβ/タンパク質比で用いた。オリゴ
マーを形成するために、線維化バッファーA±増加性濃度の好中球タンパク質またはCA
P37由来ペプチドの代わりにMEMα+N2サプリメントを用いた。次いで、各混合物
を、DMSO中100μMの最終濃度での新たに調製したAβ1-42を含有するチュー
ブへ添加し、室温で15分間インキュベートした。次いで、これらの試験試料を、18μ
Mの最終濃度において、細胞上で試験した。
【0096】
結果
図1は、Aβ1-42の完全長CAP37、NE、およびCGタンパク質への結合を示
す。結合は、CAP37およびCGに関してより強く、抗プロテアーゼ(フッ化フェニル
メチルスルホニル(PMSF)またはキモスタチン)の添加によって大幅に変化されない
。Aβ1-42のNEへの結合は、ほとんど検出不可能であるが、NEによるAβ1-4
の切断を阻害するPMSFの存在下で、大幅に増加する。これらの結果は、CAP37
およびCGへのより強いAβ1-42の結合、ならびにNEへのより弱い結合を示してい
る。図2は、野生型CAP37由来ペプチド20-44(20-44 CC、95-12
2、および120-146 QR)および変異体CAP37由来ペプチド(20-44
CS、20-44 SC、120-146 WR、120-146 QH、および120
-146 WH)へのAβ1-42の結合のレベルを示す。Aβ1-42は、ペプチド9
5-122に結合しなかった。図3は、図2の「5RMP」修飾型CAP37由来ペプチ
ド(ペプチドのN末端に連結された2個のAEEAミニPEG分子および4個の連続した
アルギニン残基、ならびにペプチドのC末端に連結された1個のアルギニン)へのAβ
-42結合のレベルを示す。これらの結果は、Aβ1-42が、「5RMP」修飾の有無
に関わらず、野生型ならびに変異体CAP37由来ペプチド20-44および120-1
46に結合するが、「5RMP」修飾の有無に関わらず、ペプチド95-122に結合し
ないことを示している。
【0097】
図4~7、10、および13は、増加性濃度の3つの好中球顆粒タンパク質ならびに特
定の野生型および変異体CAP37由来ペプチドの非存在および存在下での、相対蛍光単
位(Rfu)として記録されたAβ1-42の線維化を示す。図4は、示された濃度の完
全長CAP37、NE、またはCGの存在下でのAβ1-42の線維化(凝集)のレベル
を示す。(タンパク質が添加されない場合の)Aβ1-42の完全な線維化の時間は、垂
直点線によって示されている。線維化は、これらのタンパク質の存在下で部分的かまたは
完全にかのいずれかで阻害されている。図5は、タンパク質の様々な濃度における完全長
CAP37、NE、またはCGの存在下でのAβ1-42の線維化(凝集)のレベルを示
す。NEは、Aβ1-42線維化に対して最も高い、続いてCG、次いでCAP37であ
る阻害効果を有する。図5は、各完全長タンパク質で実施した用量応答を示す。図5に示
されたパーセント線維化は、図4において点線により示されているようなAβ1-42
照の完全な線維化に対応する時点において計算した。これらの用量応答実験は、NEが、
Aβ1-42線維化へ最も高い(1/4,167のNE/Aβ1-42についてのモル比
に対応する2.4nMのIC50を有する)、続いてCG(3.8nMのIC50;1/
2,632のモル比)およびCAP37(876nMのIC50;1/11のモル比)で
ある阻害効果を有することを示している。
【0098】
図6は、プロテアーゼ阻害剤PMSFが、CAP37のAβ1-42線維化に対する阻
害効果を損なうことを示す。CAP37のIC50は、PMSFの存在下で3.5倍、増
加している。これは、CAP37の線維化に対する阻害効果が、少なくとも部分的に、A
β1-42の切断によることを示している。図7は、プロテアーゼ阻害剤PMSFが、N
EのAβ1-42線維化に対する阻害効果を損なうことを示す。NEのIC50は、PM
SFの存在下で36倍、増加している。これは、NEの線維化に対する阻害効果が、少な
くとも部分的に、Aβ1-42の切断によることを示している。3つの好中球顆粒タンパ
ク質は、Aβ1-42を切断することが以前に見出されており、それで、図6、7、およ
び10において、Aβ1-42の切断が線維化の阻害に必要であるかどうかを決定するた
めに、CAP37、NE、およびCGを、十分なプロテアーゼ阻害剤(CAP37および
NEについてPMSF、ならびにCGについてキモスタチン)の非存在および存在下で試
験した。全ての3つの実験において、Aβ1-42の酵素切断の阻害がまた、これらのタ
ンパク質の線維化に対する阻害効果を損なった。これは、線維化に対する阻害効果が、少
なくとも部分的に、Aβ1-42の切断によることを示唆している。図13は、増加性濃
度のCAP37由来ペプチド95-122 5RMP、120-146 WR 5RMP
、および120-146 WRで実施した用量応答を示す。ペプチド95-122 5R
MPは、Aβ1-42と相互作用せず(図3)、線維化を阻害しなかった。ペプチド12
0-146 WR 5RMPおよび120-146 WRはどちらも、Aβ1-42と相
互作用し(図2および3)、線維化を阻害することができた。これらのCAP37由来ペ
プチドの阻害効果は、ペプチドがAβ1-42に対する酵素活性を有さないにも関わらず
、完全長CAP37のそれと類似していた(約1000nMのIC50;約1/10のモ
ル比)。理論に縛られるつもりはないが、これは、Aβ1-42の切断が、Aβ1-42
線維化の阻害についての唯一の機構というわけではないことを示唆している。Aβ1-4
への直接的結合もまた、線維化の阻害において役割を果たしているように思われる。
【0099】
図8、9、11、および12は、プロテアーゼ阻害剤の非存在および存在下で増加性濃
度の完全長好中球顆粒タンパク質で実施した実験における、パーセント線維化、および右
y軸上での対応するAβ1-42のパーセント切断を示す。図8は、NEによるAβ1-
42の切断と線維化の阻害の間の直接的相関を示す。この相関は、線維化のNEの阻害が
主に、Aβの切断によって媒介されるという考えを裏付ける。この実験は、PMSFの非
存在下で実施した。図9は、NEによるAβ1-42の切断と線維化の阻害の間の直接的
相関を示す。この実験は、PMSFの存在下で実施した。図11は、CGによるAβ1-
42の切断と線維化の阻害の間の直接的相関を示す。この相関は、線維化のCGの阻害が
主に、Aβの切断によって媒介されるという考えを裏付ける。この実験は、キモスタチン
の非存在下で実施した。図12は、CGによるAβ1-42の切断と線維化の阻害の間の
直接的相関を示す。この実験は、キモスタチンの存在下で実施した。これらの結果は、切
断と線維化の阻害の間の直接的相関を確立し、Aβ1-42の切断が、完全長タンパク質
により媒介される線維化の阻害を説明する主要な機構であるという考えを裏付けている。
【0100】
図14は、ニューロンにおける様々な高次構造のAβ1-42の毒性を示す。Aβ1-
42のモノマー、オリゴマー、または原線維の高次構造に有利に働く条件を用いた。図1
4は、Aβ1-42オリゴマーが、ニューロンに対する毒性が原線維よりも高いことを示
している。Aβ1-42のモノマー型が、最も毒性が低い。これらの結果は、他のグルー
プにより以前発表された結果を確証しており、オリゴマーについて毒性が最も高く、続い
て、原線維、次いで、モノマーであることを示している。
【0101】
図15は、原線維形成に有利に働く条件下でインキュベートされた場合、NEおよびC
GはAβ1-42の毒性を阻害するが、CAP37は阻害しないことを示している。図1
5は、図5において各タンパク質について以前に決定された、線維化のおよそ50%を阻
害する濃度(IC50)で用いられた好中球顆粒タンパク質の非存在または存在下で形成
されたAβ1-42原線維の毒性を示す。この実験は、NEおよびCGによる原線維毒性
の大幅な阻害を示している。CAP37は、これらの条件下でAβ1-42の毒性に対す
る効果を有さないように思われる。原線維に関する実験において、全ての3つの好中球顆
粒タンパク質は、細胞への添加前に24時間、Aβ1-42とプレインキュベートされる
。この24時間の線維化ステップ中のAβ1-42のパーセント切断は、50%よりも高
い可能性が高い。NEおよびCGの場合、切断は、原線維毒性の阻害にとって重要である
。対照的に、CAP37によるAβ1-42の切断は、図6に決定されているように、線
維化の阻害に関与しているが、線維化条件下でプレインキュベートされた場合、Aβ1-
42の毒性を阻害することができない。これは、NEおよびCGが、Aβ1-42上に、
CAP37よりも多い切断部位を有し、より小さい生成物を生じるという事実によって説
明することができる。したがって、CAP37切断により生じたより大きい生成物が依然
として、線維化条件下で毒性凝集物を形成することができる可能性がある。
【0102】
図16~20は、増加性濃度の、3つの好中球顆粒タンパク質、および図13において
線維化を阻害することが見出された2つのCAP37由来ペプチドの非存在または存在下
で形成された、Aβ1-42オリゴマーの毒性を示す。図16は、様々な濃度のNEの存
在下でのAβ1-42オリゴマーのニューロン細胞に対する効果を示す。NEは、用量依
存性様式で、Aβ1-42オリゴマー毒性を大幅に阻害した。NEを、図5で決定された
IC50の0.5倍、1倍、2倍、および4倍で用いた。結果は、2×IC50から始ま
る、NEによるオリゴマー毒性の大幅な阻害を示す。
【0103】
図17は、様々な濃度のCGの存在下でのAβ1-42オリゴマーのニューロン細胞に
対する効果を示す。CGは、用量依存性様式で、Aβ1-42オリゴマー毒性を大幅に阻
害した。図16と同様の条件が、CGに関して図17において用いられ、0.5×IC5
0から始まる、CGによるオリゴマー毒性のより強い阻害を示している。
【0104】
図18は、様々な濃度のCAP37タンパク質の存在下でのAβ1-42オリゴマーの
ニューロン細胞に対する効果を示す。用いられた条件下で、完全長CAP37は、Aβ
-42オリゴマー毒性を阻害しない。注目すべきことには、オリゴマーに関するこれらの
実験において、全ての3つの好中球顆粒タンパク質は、細胞への添加前の15分間だけ、
Aβ1-42とプレインキュベートされている。15分間のオリゴマー化ステップ中のA
β1-42のパーセント切断は未知である。したがって、オリゴマー形成および毒性の阻
害のための切断の重要性は未知である。上で論じられているように、CAP37切断によ
り生じたより大きい生成物が依然として、オリゴマー化条件下で毒性凝集物を形成するこ
とができる可能性もある。
【0105】
図19は、様々な濃度のCAP37由来ペプチド120-146 WRの存在下でのA
β1-42オリゴマーのニューロン細胞に対する効果を示す。修飾型CAP37ペプチド
は、用量依存性様式で、Aβ1-42オリゴマー毒性を有意に阻害した。図20は、様々
な濃度のCAP37由来ペプチド120-146 WR-5RMPの存在下でのAβ1-
42オリゴマーのニューロン細胞に対する効果を示す。5RMP修飾型CAP37ペプチ
ドバリアントは、用量依存性様式で、Aβ1-42オリゴマー毒性を大幅に阻害した。図
19および20において、両方ともAβ1-42と相互作用し(図2および3)、線維化
を阻害する(図13)、ペプチド120-146 WRおよび120-146 WR 5
RMPはまた、オリゴマーの毒性を大幅に減少させることができた。ペプチドは、Aβ
-42に対する酵素活性を有さず、そのことは、Aβ1-42の切断が、Aβ1-42
リゴマー化および毒性の阻害についての唯一の機構というわけではないことを示唆してい
る。Aβ1-42への直接的結合は、オリゴマー化を阻害する可能性がある。
【0106】
本開示は、ある特定の実施形態に関連して、その態様がより完全に理解され、認識され
得るように記載されているが、本開示がこれらの特定の実施形態に限定されることは意図
されない。それどころか、全ての代替物、改変物、および等価物が、本開示の範囲内に含
まれることが意図される。したがって、特定の実施形態を含む上記の実施例は、本開示の
実践を例証する役割を果たし、示された詳細が、例として、かつ特定の実施形態のみの例
証的考察を目的とするものであり、手順、ならびに本開示の方法および組成物の原理およ
び概念的側面の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するため
に提示されていることは、理解されている。本明細書に記載された様々な組成物の製剤に
おいて、本明細書に記載された方法において、または本明細書に記載された方法のステッ
プもしくは一連のステップにおいて、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、変
更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
2024153685000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテプシンG、好中球エラスターゼ、または37kDaのカチオン性抗微生物タンパク質(CAP37)のペプチドの誘導体であるアミノ酸配列を有するペプチドを含むペプチド化合物であって、ただし、前記アミノ酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6から選択される野生型配列とは異なる少なくとも1個のアミノ酸を含むことを条件とする、ペプチド化合物。
【外国語明細書】