(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153686
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20241022BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20241022BHJP
C08G 63/06 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L67/02
C08G63/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112175
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2021524463の分割
【原出願日】2019-11-07
(31)【優先権主張番号】62/759,960
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19163927.7
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デワール, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデルヴェーケン, イヴ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】PET樹脂などの標準的なポリエステル樹脂と組み合わせて首尾よく使用できる、薄いPGAバリア層を有する瓶、フィルム、及びシートなどの多層製品を得るためのグリコール酸ポリマー組成物を提供する。
【解決手段】i)少なくとも1種のポリグリコール酸ポリマー[ポリマー(PGA)]と、ii)ポリマー(PGA)及びポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも0.10重量%且つ最大45重量%の量で存在する、少なくとも1種のアモルファスポリエステル[ポリマー(APES)]と、を含有するポリマー組成物[組成物(M)]である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも1種のポリグリコール酸ポリマー[ポリマー(PGA)]と、
ii)ポリマー(PGA)及びポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも0.10重量%且つ最大45重量%の量で組成物(M)中に存在する、少なくとも1種のアモルファスポリエステル[ポリマー(APES)]と、
を含有するポリマー組成物[組成物(M)]。
【請求項2】
ポリマー(PGA)が分岐ポリグリコール酸ポリマー[ポリマー(b-PGA)]である、請求項1に記載の組成物(M)。
【請求項3】
ポリマー(b-PGA)が:
(i)グリコール酸(GA)と、
(ii)1つのみのヒドロキシル基と1つのみのカルボン酸基とを有する、GAとは異なる任意選択的な少なくとも1種のヒドロキシル酸[ヒドロキシ酸(A)]であって、GAとヒドロキシ酸(A)の合計のモル数に対して有利には最大5モル%である[ヒドロキシ酸(A)]と、
(iii)グリコール酸と前記ヒドロキシ酸(A)(存在する場合)のヒドロキシル基の総数に対して、そのヒドロキシル基の数が有利には少なくとも0.050%、有利には最大0.750%であるような量の、少なくとも3つのヒドロキシル基を含み且つカルボン酸基を含まない少なくとも1種のポリオール[ポリオール(H)]と、
(iv)グリコール酸と前記ヒドロキシ酸(A)(存在する場合)のヒドロキシル基の総数に対して、そのカルボキシル基の数が有利には少なくとも0.050%、有利には最大0.750%であるような量の、少なくとも2つのカルボン酸基を含み且つヒドロキシル基を含まない任意選択的な少なくとも1種のポリ酸[ポリ酸(O)]と、
の重縮合に由来する単位を含む、請求項2に記載の組成物(M)。
【請求項4】
前記ポリマー(APES)が、アモルファステレフタレートベースのコポリエステル[ポリマー(ATBPE)]、アモルファスポリエチレンイソフタレート[ポリマー(APEI)]、アモルファスポリエチレンナフタレート[ポリマー(APEN)]、アモルファスポリエチレンフラノエート[ポリマー(APEF)]、及びアモルファスポリトリメチレンフランジカルボキシレート[ポリマー(APTF)]から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物(M)。
【請求項5】
前記ポリマー(APES)がポリマー(ATBPE)である、請求項4に記載の組成物(M)。
【請求項6】
ポリマー(ATBPE)が、アモルファスポリエチレンテレフタレート[ポリマー(APET)]、アモルファスポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート[ポリマー(APCT)]、アモルファスポリブチレンテレフタレート[ポリマー(APBT)]、及びアモルファスポリトリメチレンテレフタレート[ポリマー(APTT)]から選択される、請求項5に記載の組成物(M)。
【請求項7】
ポリマー(APES)が、ポリマー(PGA)とポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも0.50重量%且つ最大25重量%の量で組成物(M)中に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(M)。
【請求項8】
ポリマー(APES)が、ポリマー(PGA)とポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも1重量%且つ最大20重量%の量で組成物(M)中に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(M)。
【請求項9】
ポリマー(PGA)と、ポリマー(APES)と、任意選択的な追加の成分とを混合することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(M)の製造方法。
【請求項10】
前記方法が、ポリマー(PGA)と、ポリマー(APES)と、任意選択的な追加の成分とを溶融状態で混合する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(i)溶融物から加工することにより、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(M)の少なくとも1つの層と、ポリグリコール酸ポリマーとは異なる熱可塑性プラスチックの少なくとも1つの層とを含む多層樹脂ラミネートを形成すること;
(ii)前記多層樹脂ラミネートを延伸して多層延伸製品を製造すること;
を含む、多層延伸製品の製造方法。
【請求項12】
前記熱可塑性プラスチックが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフラノエート、及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル酸又はメタクリル酸樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンスルフィドなどのスルフィド樹脂、並びにポリカーボネート樹脂からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多層樹脂ラミネートを形成する工程が共押出成形又は共射出成形によって行われる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記多層樹脂ラミネートが、工程(i)後且つ工程(ii)を受ける前に冷却及び固化される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多層樹脂ラミネートが、中間の冷却及び再加熱工程なしで工程(ii)を受ける、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国で2018年11月12日に出願された米国特許出願第62/759960号及び欧州で2019年3月20日に出願された欧州特許出願第19163927.7号に基づく優先権を主張し、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規なポリマー組成物、その製造方法、及びそれを使用した多層製品の製造方法に関する。
【0003】
食品や飲料の包装に有用な、瓶、フィルム、及びシートなどの熱可塑性包装用製品を提供することは当該技術分野で周知である。多くのそのような製品は、望まれるバリア特性を実現するために、多層の異なるプラスチックから製造される。
【0004】
食品及び飲料の包装の分野では、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルから主に製造された包装物品を提供することが広く知られている。しかしながら、PET樹脂はガスバリア性が不十分である一方で、包装された商品の保存寿命を確実に延ばすためには高いガスバリア性が必要とされる。この不十分な点を克服するために、最内層と最外層のそれぞれを形成するための樹脂としてPETを組み合わせ、ポリグリコール酸(PGA)バリア層を使用する多層製品が検討されてきた。
【0005】
しかしながら、そのようなPET/PGA/PETの構造は、美観のためのみならず、構造の完全性及びその機械的特性(耐衝撃性及び耐屈曲性など)を保持するためにも非常に望ましくない層間剥離を示す可能性があることが観察される。
【0006】
更に、使用されるポリマー組成物は、多層製品のリサイクル後の適合性を維持する必要がある。したがって、層間の化学的接着を回避する必要があり、反応性結合層は使用することができない。
【0007】
今回、出願人は、上述した要件を満たすことができ、その結果PET樹脂などの標準的なポリエステル樹脂と組み合わせて首尾よく使用できる、薄いPGAバリア層を有する瓶、フィルム、及びシートなどの多層製品を得るためのグリコール酸ポリマー組成物を見出した。
【0008】
そこで、本発明は、
i)少なくとも1種のポリグリコール酸ポリマー[ポリマー(PGA)]と、
ii)ポリマー(PGA)及びポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも0.10重量%且つ最大45重量%の量で組成物(M)中に存在する、少なくとも1種のアモルファスポリエステル[ポリマー(APES)]と、
を含有するポリマー組成物[組成物(M)]に関する。
【0009】
ポリグリコール酸ポリマー[ポリマー(PGA)]は、分岐ポリグリコール酸ポリマー[ポリマー(b-PGA)]、直鎖ポリグリコール酸ポリマー[ポリマー(l-PGA)]、又はポリマー(b-PGA)とポリマー(l-PGA)との混合物[混合物(M)]とすることができる。ポリマー(PGA)は、好ましくはポリマー(b-PGA)である。したがって、組成物(M)は、好ましくは少なくとも1種のポリマー(b-PGA)、より好ましくは1種のポリマー(b-PGA)を含有する。
【0010】
ポリマー(PGA)は、好ましくはISO 11357-3(欧州規格)又はASTM D3418(米国規格)に準拠した示差走査熱量測定(DSC)によって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定した場合に、有利には少なくとも210℃、好ましくは少なくとも220℃、より好ましくは少なくとも230℃のTmを示す。ポリマー(PGA)は、好ましくはISO 11357-3(欧州規格)又はASTM D3418(米国規格)に準拠したDSCによって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定した場合に、有利には最大250℃、好ましくは最大240℃のTmを示す。ポリマー(PGA)は、ISO 11357-3(欧州規格)又はASTM D3418(米国規格)に準拠したDSCによって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定した場合に、最も好ましくは236℃のTmを示す。
【0011】
ポリマー(PGA)は、好ましくはISO 11357-3(欧州規格)又はASTM D3418(米国規格)に準拠したDSCによって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定した場合に、有利には少なくとも30℃、好ましくは少なくとも35℃、より好ましくは少なくとも40℃のガラス転移温度(Tg)を示す。ポリマー(PGA)は、好ましくはISO 11357-3(欧州規格)又はASTM D3418(米国規格)に準拠したDSCによって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定した場合に、有利には最大60℃、好ましくは最大55℃、より好ましくは最大50℃のガラス転移温度(Tg)を示す。ポリマー(PGA)は、ISO 11357-3(欧州規格)又はASTM D3418(米国規格)に準拠したDSCによって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定した場合に、最も好ましくは45℃のガラス転移温度Tgを示す。
【0012】
ポリマー(b-PGA)は、好ましくは、
(i)グリコール酸(GA)と、
(ii)1つのみのヒドロキシル基と1つのみのカルボン酸基とを有する、GAとは異なる任意選択的な少なくとも1種のヒドロキシル酸[ヒドロキシ酸(A)]であって、GAとヒドロキシ酸(A)の合計のモル数に対して有利には最大5モル%である[ヒドロキシ酸(A)]と、
(iii)グリコール酸とヒドロキシ酸(A)(存在する場合)のヒドロキシル基の総数に対して、そのヒドロキシル基の数が有利には少なくとも0.050%、有利には最大0.750%であるような量の、少なくとも3つのヒドロキシル基を含み且つカルボン酸基を含まない少なくとも1種のポリオール[ポリオール(H)]と、
(iv)グリコール酸とヒドロキシ酸(A)(存在する場合)のヒドロキシル基の総数に対して、そのカルボキシル基の数が有利には少なくとも0.050%、有利には最大0.750%であるような量の、少なくとも2つのカルボン酸基を含み且つヒドロキシル基を含まない任意選択的な少なくとも1種のポリ酸[ポリ酸(O)]と、
の重縮合に由来する単位を含む。
【0013】
上記単位(i)~(iv)を補完するものとして、ポリマー(b-PGA)は、(v)グリコール酸とヒドロキシ酸(A)(存在する場合)のヒドロキシル基の総数に対して、そのカルボン酸基の数が有利には0.010%未満であるような量の、1つのカルボン酸基を有し且つヒドロキシル基を含まない少なくとも1種のカルボン酸[一酸(C)]、の重縮合に由来する単位も任意選択的に含んでいてもよい。
【0014】
ヒドロキシ酸(A)の選択は、限定されず、重縮合できる全てのヒドロキシル酸、すなわち縮合(水の除去を伴うモノマーの鎖付加)により巨大分子を形成できる全てのヒドロキシル酸が使用できる。その例として、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸が挙げられる。一般に、第一級アルコールを有するヒドロキシ酸(A)は、より反応性が高いために好ましい。これらに関して、特に、ヒドロキシ酸(A)は、乳酸(LA)(ラセミ混合物において又は単一異性体としてのいずれかでのL-異性体又はD-異性体)である場合に良好な結果を得ることができる。
【0015】
本発明の一変形形態では、GAとヒドロキシ酸(A)との両方は、存在する場合、化石原材料とは対照的にバイオ起源であり、すなわち天然の再生可能な原材料に由来する。バイオ起源のPGAの使用及び該当する場合にはヒドロキシ酸(A)の使用は、「環境に優しい」ポリマー、すなわち再生可能な原材料から合成されるポリマーの合成を可能にする。
【0016】
存在する場合、ヒドロキシ酸(A)の量は、GAとヒドロキシ酸(A)とのモル数の合計に対して有利には最大5モル%、好ましくは最大4モル%、より好ましくは最大3モル%であり、及び/又は前記量は、0.1モル%程度の低量であり得る。ヒドロキシ酸(A)の量は、PGAに適切であるバリア性に悪影響をさほど与えることなく、場合により一定の利点をもたらすように調整されることになることが一般的に理解される。
【0017】
GAとの組み合わせで追加のヒドロキシ酸(A)を全く使用しない場合の実施形態は、本発明の範囲内であり、バリア性を最大にする観点から好ましいことがある。
【0018】
ポリオール(H)の選択は、特に限定されない。ポリオール(H)は、
- 具体的にはグリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,3-ジ(2’-ヒドロキシエチル)-シクロヘキサン-1-オール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、3-(2’-ヒドロキシエトキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-(2’-ヒドロキシプロポキシ)-プロパン-1,2-ジオール、2-(2’-ヒドロキシエトキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、6-(2’ヒドロキシプロポキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシエトキシ)-メチルエタン、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシプロポキシ)-メチル-プロパン、1,1,1-トリス-(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス-(ヒドロキシフェニル)-プロパン、1,1,5-トリス-(ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリメチロールプロパンプロポキシレート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択されるトリオール、
- 具体的にはジグリセロール、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、1,1,4-トリス-(ジヒドロキシフェニル)-ブタンからなる群から選択されるテトラオール、
- 5つのヒドロキシル基を含むポリオール、具体的にはトリグリセロール、
- 6つのヒドロキシル基を含むポリオール、特にジペンタエリスリトール、及び
- 8つのヒドロキシル基を含むポリオール、特にトリペンタエリスリトール
からなる群から選択され得る。
【0019】
好ましいポリオール(H)は、上に詳述されたようなトリオール(具体的にはトリメチロールプロパン)及びテトラオール(具体的にはペンタエリスリトール)、更に特にトリオールである。本発明の枠組み内で特に良好な結果を提供することを確認しているポリオール(H)は、トリメチロールプロパンである。
【0020】
ポリオール(H)は、そのヒドロキシル基の数が、グリコール酸とヒドロキシ酸(A)(存在する場合)とのヒドロキシル基の総数に対して有利には少なくとも0.050%、好ましくは少なくとも0.100%、より好ましくは少なくとも0.200%及び/又は最大0.750%、好ましくは最大0.650%、より好ましくは最大0.600%であるような量で使用される。
【0021】
そのヒドロキシル基の数が、グリコール酸とヒドロキシ酸(A)(存在する場合)とのヒドロキシル基の総数に対して0.300~0.550%であるようなポリオール(H)の量が、本発明の好ましい実施形態によると特に有用であると見出された。
【0022】
ポリ酸(O)は、2つのカルボン酸基、3つのカルボン酸基、又は3つより多いカルボン酸基、例えば4つのカルボン酸基を含むことができる。ポリ酸(O)は、脂肪族ポリカルボン酸、脂環式ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の中で選択することができる。
【0023】
2つのカルボン酸基を有するポリ酸(O)として、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸を使用することができる。
【0024】
特定の脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、及びドデカン酸、3,3-ジメチルペンタン二酸が挙げられる。
【0025】
特定の脂環式ジカルボン酸としては、例えば、ヘキサヒドロオルトフタル酸、ヘキサヒドロメタフタル酸、ヘキサヒドロパラフタル酸などのシクロヘキサンジカルボン酸、及びノルボルニルメタン骨格、シクロヘキシルメタン骨格、ジシクロヘキシルメタン骨格、ジシクロヘキシルプロパン骨格、ジ(メチルシクロヘキシル)若しくはジ(メチルシクロヘキシル)プロパン骨格に共有結合している-COOH基を有する二酸が挙げられる。
【0026】
芳香族ジカルボン酸、すなわち、芳香族部位の環状構造の一部である芳香族炭素原子に共有結合しており、且つ使用できるヒドロキシル基を含まない2つのカルボン酸基を含む芳香族二酸は、特にイソフタル酸(IA)やテレフタル酸(TA)などのフタル酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、2,6-ナフタレンジカルボン酸や2,7-ナフタレンジカルボン酸や1,4-ナフタレンジカルボン酸や2,3-ナフタレンジカルボン酸や1,8-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸である。
【0027】
3つ以上のカルボン酸基を含む脂肪族ポリカルボン酸の例は:
- プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(別名トリカルバリル酸);
- エタン-1,1,2,2テトラカルボン酸;
- ブタン-1,2,3,4テトラカルボン酸;
- ペンタン-1,2,4,5-テトラカルボン酸
である。
【0028】
これらの中でも、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸及びブタン-1,2,3,4テトラカルボン酸が好ましい。
【0029】
3つ以上のカルボン酸基を含む脂環式ポリカルボン酸の例は:
- 1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸;
- 2,2,6,6-テトラ-(カルボキシエチル)シクロヘキサノン;
- (+)-(18-クラウン-6)-2,3,11,12-テトラカルボン酸;
- シクロペンタン-1,2,3,4テトラカルボン酸;
- シクロヘキサン-1,2,4,5テトラカルボン酸;
- シクロヘキサン-2,3,5,6テトラカルボン酸;
- 3-エチルシクロヘキサン-1,2,4,5テトラカルボン酸;
- 1-メチル-3-エチルシクロヘキサン-3-(1,2)5,6テトラカルボン酸;
- 1-エチルシクロヘキサン-1-(1,2),3,4テトラカルボン酸;
- 1-プロピルシクロヘキサン-1-(2,3),3,4テトラカルボン酸;
- 1,3-ジプロピルシクロヘキサン-1-(2,3),3-(2,3)テトラカルボン酸;
- ジシクロヘキシル-3,4,3’,4’テトラカルボン酸
である。
【0030】
3つ以上のカルボン酸基を含む芳香族ポリカルボン酸の例は:
- ピロメリット酸(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸);
- トリメシン酸(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸);
- トリメリット酸(1,3,4-ベンゼントリカルボン酸);
- ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸;
- テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸;
- 4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸;
- 4,4’-オキシジフタル酸無水物;
- 4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸);
- 3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸;
- 2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸;
- 2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸;
- 1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸;
- 2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸;
- ペリレン-3,4,9,10テトラカルボン酸;
- プロパン 2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)酸;
- エタン 1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)酸;
- エタン 1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)酸;
- フェナントレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸;
- テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸;
- 3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸;
- 2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸;
- 2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸;
- 3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸;
- 2,2’-ビス(3,4-ビカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸;
- 2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸;
- 4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸;
- 3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸;
- エチレングリコールビストリメリット酸;
- ヒドロキノンジフタル酸;
- ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸;
- チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸
である。
【0031】
本発明の枠内で優れた結果をもたらすことが見出されたポリ酸(O)は芳香族ジカルボン酸である。フタル酸が一般的に好ましい。特に良好な結果を提供することが示された芳香族ジカルボン酸はイソフタル酸であり、したがってそれが特に好ましい。
【0032】
存在する場合、ポリ酸(O)は、そのカルボキシル基の数が、GAとヒドロキシ酸(A)(存在する場合)とのヒドロキシル基の総数に対して有利には少なくとも0.050%、好ましくは少なくとも0.075%、より好ましくは少なくとも0.100%、及び/又は有利には最大0.750%、好ましくは最大0.650%、より好ましくは最大0.600%であるような量で使用される。
【0033】
そのカルボキシル基の数が、GAとヒドロキシ酸(A)(存在する場合)とのヒドロキシル基の総数に対して0.100~0.550%であるようなポリ酸(O)の量は、本発明の好ましい実施形態によると特に有用であると見出された。
【0034】
一酸(C)の選択は、特には限定されない。より良好な結果は、長鎖酸、すなわち炭素原子の総数が有利には少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも6つである一酸(C)で得られることが一般に理解される。一般に、一酸(C)は、4~36個の炭素原子、好ましくは6~24個の炭素原子を有する。
【0035】
一酸(C)は、その炭化水素鎖に不飽和二重結合を含んでいてもよいものの、一酸(C)は、好ましくは脂肪族酸、すなわち以下の式の酸である:
RHm-COOH (式C-1)
(式中、RHmは、1つ以上の炭素原子、特には3つ以上の炭素原子を有する一価の脂肪族基である)。
【0036】
本発明の方法に有利に使用することができる一酸タイプの一酸(C)の中でも、とりわけカプリル酸[CH3(CH2)6COOH]、カプリン酸[CH3(CH2)8COOH]、ウンデカン酸[H3C-(CH2)9-COOH]、ドデカン酸又はラウリン酸[H3C-(CH2)10-COOH]、トリデカン酸[H3C-(CH2)11-COOH]、テトラデカン酸又はミリスチン酸[H3C-(CH2)12-COOH]、ペンタデカン酸[H3C-(CH2)13-COOH]、ヘキサデカン酸又はパルミチン酸[H3C-(CH2)14-COOH]、オクタデカン酸又はステアリン酸[H3C-(CH2)16-COOH]、アラキジン酸[H3C-(CH2)18-COOH]、及びベヘン酸[H3C-(CH2)20-COOH]を挙げることができる。
【0037】
特に良好な結果を提供することが示されている一酸(C)は、ステアリン酸であり、したがってそれが特に好ましい。
【0038】
存在する場合、一酸(C)の量は、そのカルボン酸基の数が、グリコール酸とヒドロキシ酸(A)(存在する場合)とのヒドロキシル基の総数に対して有利には0.010%未満であるような量である。好ましくは、前記量は、前記一酸(C)のカルボン酸基の数が、グリコール酸とヒドロキシ酸(A)(存在する場合)とのヒドロキシル基の総数に対して有利には少なくとも0.0001、好ましくは少なくとも0.0005%、より好ましくは少なくとも0.001%、及び/又はグリコール酸とヒドロキシ酸(A)(存在する場合)とのヒドロキシル基の総数に対して有利には最大0.010%、好ましくは最大0.008%、より好ましくは最大0.007%、最も好ましくは最大0.006%であるような量である。
【0039】
ポリマー(b-PGA)は、通常重縮合の方法によって製造され、これは、典型的にはプレポリマーを形成するための溶融状態での重合の第1の工程と、プレポリマーの分子量を増加させて目的のポリマー(b-PGA)を得るための固相重合(SSP)の第2の工程とを含む。
【0040】
ポリマー(b-PGA)は、有利には、ASTM D4440-08に準拠して260℃の温度で平行板を使用して10秒-1のせん断速度(10rad/秒の振動速度)で測定した場合に、100~2000Pa×秒の範囲の溶融粘度を有する。ポリマー(b-PGA)は、有利には最大2000Pa×秒、好ましくは最大1500Pa×秒、より好ましくは最大1200Pa×秒、最も好ましくは最大1000Pa×秒の溶融粘度を有するものである。ポリマー(b-PGA)は、有利には少なくとも100Pa×秒、好ましくは少なくとも150Pa×秒、より好ましくは少なくとも200Pa×秒、最も好ましくは少なくとも350Pa×秒の溶融粘度を有するものである。
【0041】
特に有利な特性を有することが見出されたポリマー(b-PGA)は、ASTM D4440-08に準拠して260℃の温度で平行板を使用して10秒-1のせん断速度(10rad/秒の振動速度)で測定した場合に、350~1000Pa×秒の範囲の溶融粘度を有するものである。
【0042】
直鎖ポリグリコール酸ポリマー[ポリマー(l-PGA)]は、有利には、グリコリドの開環重合に由来する繰り返し単位から本質的になる。末端基、欠陥、又は他の不純物が存在する可能性があるものの、ポリマー(l-PGA)は、GAのヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基と重縮合することが可能な3つ以上の官能基を有する多官能性モノマーに由来する単位を実質的に含まないと理解される。
【0043】
ポリマー(l-PGA)は、有効量の触媒(カチオン性触媒など、例えば有機カルボン酸スズ、ハロゲン化スズ、又はハロゲン化アンチモン)の存在下で、グリコリドを開環重合させるのに十分な高温にグリコリド(すなわち1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)を加熱することを含む任意の方法によって行うことができる。前記開環重合は、好ましくは、塊状重合プロセス又は溶液重合プロセスによって行われる。
【0044】
ポリマー(l-PGA)は、ASTM D4440-08に準拠して260℃の温度で平行板を使用して10秒-1のせん断速度(10rad/秒の振動速度)で測定した場合に、通常150~1000Pa×秒の範囲の溶融粘度を有する。好ましいポリマー(l-PGA)は、最大950Pa×秒の溶融粘度を有するものであり、より好ましいものは、最大900Pa×秒の溶融粘度を有するものである。好ましいポリマー(l-PGA)は、少なくとも200Pa×秒の溶融粘度を有するものであり、より好ましいものは、少なくとも250Pa×秒の溶融粘度を有するものである。
【0045】
特に有利な特性を有することが見出されたポリマー(l-PGA)は、ASTM D4440-08に準拠して260℃の温度で平行板を使用して10秒-1のせん断速度(10rad/秒の振動速度)で測定した場合に、300~850Pa×秒の範囲の溶融粘度を有するものである。
【0046】
特に好ましいポリマー(l-PGA)は、グリコリドを開環重縮合することによって製造された、260℃で測定した場合の溶融粘度η10sec-1が682Pa×秒であり、tanδ10sec-1が9である、KurehaからKUREDUX(登録商標)の商品名で市販されている直鎖PGAである。
【0047】
ポリマー(b-PGA)とポリマー(l-PGA)との混合物(M)は、ポリマー(b-PGA)とポリマー(l-PGA)の合計重量に対して、有利には少なくとも20重量%且つ有利には最大40重量%の量のポリマー(l-PGA)を含有する。
【0048】
混合物(M)は、ポリマー(b-PGA)とポリマー(l-PGA)の合計重量に対して、好ましくは少なくとも22重量%、より好ましくは少なくとも23重量%、最も好ましくは少なくとも24重量%の量のポリマー(l-PGA)を含有する。混合物(M)は、ポリマー(b-PGA)とポリマー(l-PGA)の合計重量に対して、好ましくは最大38重量%、より好ましくは最大37重量%の量のポリマー(l-PGA)を含有する。
【0049】
組成物(M)は、少なくとも1種のアモルファスポリエステル[ポリマー(APES)]を含有する。
【0050】
本発明の目的に関して、「アモルファス」という用語は、「ポリマー(APES)」に関連して使用される場合、単独で取り出した際に実質的に非晶質である、即ちASTM D3418(米国規格)又はISO 11357-3(欧州規格)に従って測定される、2.0J/g未満、好ましくは1.5J/g未満、より好ましくは1.0J/g未満の融解熱を有するポリマーを意味することを意図する。融解熱は、好ましくはASTM D3418(米国規格)又はISO 11357-3(欧州規格)に準拠したDSCによって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃まで行われる1回目の加熱中に測定される。
【0051】
有利には、好ましくはISO 11358-1に準拠した示差熱重量分析(DTGA)によって決定された場合、より好ましくはASTM D3418に準拠したDSCによって20mgのサンプルで30ml/分の窒素下で10℃/分で25℃から400℃までの1回目の加熱中に測定された場合、より好ましくは10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定された場合、ポリマー(APES)は、有利には少なくとも25℃、好ましくは少なくとも35℃、より好ましくは少なくとも45℃、最も好ましくは少なくとも50℃のガラス転移温度(Tg)を示すが、1回目の加熱中に溶融温度(Tm)を示さない。
【0052】
これとは対照的に、好ましくはISO 11358-1に準拠したDTGAによって決定された場合、より好ましくはASTM D3418に準拠したDSCによって20mgのサンプルで30ml/分の窒素下で10℃/分で25℃から400℃までの1回目の加熱中に測定された場合、より好ましくは10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定された場合、結晶性ポリエステル[ポリマー(CPES)]は有利には1回目の加熱中に溶融温度(Tm)を示し、上で規定した通りに決定されたガラス転移温度(Tg)を補完する。
【0053】
アモルファスポリエステル[ポリマー(APES)]は、好ましくは、アモルファステレフタレートベースのコポリエステル[ポリマー(ATBPE)]、アモルファスポリエチレンイソフタレート[ポリマー(APEI)]、アモルファスポリエチレンナフタレート[ポリマー(APEN)]、アモルファスポリエチレンフラノエート[ポリマー(APEF)]、及びアモルファスポリトリメチレンフランジカルボキシレート[ポリマー(APTF)]から選択され、より好ましくはアモルファステレフタレートベースのコポリエステル[ポリマー(ATBPE)]である。
【0054】
アモルファスポリマー(ATBPE)は、有利には、アモルファスポリエチレンテレフタレート[ポリマー(APET)]、アモルファスポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート[ポリマー(APCT)]、アモルファスポリブチレンテレフタレート[ポリマー(APBT)]、及びアモルファスポリトリメチレンテレフタレート[ポリマー(APTT)]から選択される。アモルファスポリマー(ATBPE)は、好ましくはアモルファスポリマー(APET)である。
【0055】
組成物(M)は、好ましくはアモルファスポリマー(ATBPE)、アモルファスポリマー(APEI)、アモルファスポリマー(APEN)、アモルファスポリエチレンフラノエート[ポリマー(APEF)]、及びアモルファスポリトリメチレンフランジカルボキシレート[ポリマー(APTF)]から選択される少なくとも1種のアモルファスポリマー(APES)を含有する。より好ましくは、組成物(M)は、1種のそのようなアモルファスポリマー(APES)、最も好ましくは1種のアモルファスポリマー(ATBPE)、特に最も好ましくは1種のアモルファスポリマー(APET)を含有する。
【0056】
アモルファスポリマー(ATBPE)は、有利には、ジオールの一部の代わりに少なくとも1種の他のコモノマーの存在下で、又は有利にはテレフタル酸の一部の代わりにイソフタル酸の存在下で、有利にはテレフタル酸とジオールとの共重合により得られる。
【0057】
アモルファスポリマー(APET)は、任意選択的には少なくとも1種の他のコモノマーの存在下で、有利にはジエチレングリコールの一部の代わりに好ましくはシクロヘキサンジメタノールの存在下で;又は有利にはテレフタル酸の一部の代わりにイソフタル酸の存在下で、有利にはテレフタル酸とジエチレングリコールとの共重合によって、又はテレフタル酸とエチレングリコールとの共重合によって得られる。
【0058】
アモルファスポリマー(APES)は、有利には最大1、好ましくは最大0.85、より好ましくは最大0.80、最も好ましくは最大0.78、特に最も好ましくは最大0.76の、好ましくはASTM D4603に準拠して測定される固有粘度によって特徴付けられる。ポリマー(APES)は、有利には少なくとも0.40、好ましくは少なくとも0.50、より好ましくは少なくとも0.52、最も好ましくは少なくとも0.54の固有粘度によって特徴付けられる。
【0059】
組成物(M)は、ポリマー(PGA)及びポリマー(APES)を含有し、前記ポリマー(APES)は、組成物(M)中に、ポリマー(PGA)とポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも0.10重量%且つ最大45重量%の量で存在する。
【0060】
ポリマー(APES)の含有量が特許請求の範囲に記載の境界値を超えると、組成物(M)の性能が悪影響を受け、その結果ガス透過性が増加し、ガスバリアが大幅に失われる。他方で、ポリマー(APES)の含有量が特許請求の範囲に記載の境界を下回る場合、その存在は、接着性を改善するために必要とされる結晶化傾向の低減に有効ではない。
【0061】
組成物(M)は、ポリマー(PGA)とポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも0.10重量%、好ましくは少なくとも0.25重量%、より好ましくは少なくとも0.50重量%、最も好ましくは少なくとも1重量%の量のポリマー(APES)を含有する。組成物(M)は、ポリマー(PGA)とポリマー(APES)の合計重量に対して最大45重量%、好ましくは最大30重量%、より好ましくは最大25重量%、最も好ましくは最大20重量%、特に最も好ましくは最大15重量%の量のポリマー(APES)を含有する。
【0062】
ポリマー(PGA)とポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも0.50重量%且つ最大25重量%の量で前記ポリマー(APES)が組成物(M)中に存在する、ポリマー(PGA)とポリマー(APES)とを含有する組成物(M)が特に好ましい。
【0063】
ポリマー(PGA)とポリマー(APES)の合計重量に対して少なくとも1重量%且つ最大20重量%の量で前記ポリマー(APES)が組成物(M)中に存在する、ポリマー(PGA)とポリマー(APES)とを含有する組成物(M)がより特に好ましい。
【0064】
組成物(M)は、少なくとも1種のポリマー(APES)を含有し、好ましくは1種のポリマー(APES)(のみ)を含有する。
【0065】
組成物(M)は、無機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、加水分解からの保護のための添加剤、緩衝液、UV安定剤、光安定剤、顔料、可塑剤、潤滑剤(合成又は天然のワックスなど)、加工助剤、及び造核剤から特に選択され得る追加の成分を更に含有していてもよい。
【0066】
無機充填剤の例としては、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化鉄、酸化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、粘土、カオリン、タルク、マイカ、フェライト、炭素、ケイ素、窒化ケイ素、二硫化モリブデン、ガラス、チタン酸カリウムなどの粉末、ウィスカー、及び繊維が挙げられる。
【0067】
可塑剤の例としては、フタル酸ジ(メトキシエチル)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、及びフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート及びエチレングリコールジベンゾエートなどの安息香酸エステル;アジピン酸ジオクチルやセバシン酸ジオクチルなどの脂肪族二塩基エステル;アセチルクエン酸トリブチルなどの脂肪族三塩基酸エステル;リン酸ジオクチル及びリン酸トリクレジルなどのリン酸エステル;エポキシ化大豆油などのエポキシ可塑剤;並びにポリエチレングリコールジセバケート及びポリプロピレングリコールジラウレートなどのポリアルキレングリコールの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0068】
組成物(M)に、スチレン、アクリレート、及び/又はメタクリレートに基づいており且つエポキシ基を含むコポリマーを添加することも可能である。
【0069】
本発明は、更に、ポリマー(PGA)と、ポリマー(APES)と、任意選択的な追加の成分とを混合することを含む、上で詳述した組成物(M)の製造方法に関する。
【0070】
好ましい実施形態によれば、組成物(M)の製造方法は、ポリマー(PGA)と、ポリマー(APES)と、任意選択的な追加の成分とを溶融状態で混合する工程を含む。
【0071】
溶融状態での混合は、ニーダー又は押出機、好ましくは単軸又は二軸押出機、より好ましくは二軸押出機を使用することを含む、標準的な溶融混錬技術を使用して行うことができる。そのような実施形態では、ポリマー(PGA)とポリマー(APES)と任意選択的な追加の成分は、全て一緒に予備混合されてから単一のホッパーを介して押出機に供給されてもよく、或いは分離されたフィーダーを介して押出機に供給されてもよい。
【0072】
ポリマー(PGA)、ポリマー(APES)、及び任意選択的な追加の成分のマスターバッチを調製してから押出機の中でポリマー(PGA)へと希釈することもできる。
【0073】
別の実施形態によれば、ポリマー(PGA)が、プレポリマーを形成するための溶融状態での重合の第1の工程と、プレポリマーの分子量を増加させて目的のポリマー(PGA)を得るための固相重合(SSP)の第2の工程とを含む重縮合方法によって製造される場合、ポリマー(APES)は、ポリマー(APES)と分岐ポリグリコール酸プレポリマーとの混合物を形成するために第1の工程が完了した後に溶融状態で混合することによって添加することができ、固相重合を行うことで組成物(M)を得ることができる。
【0074】
本発明は、更に多層延伸製品の製造方法に関し、前記方法は、
(i)溶融物から加工することにより、上で詳述した組成物(M)の少なくとも1つの層と、ポリグリコール酸ポリマーとは異なる熱可塑性プラスチックの少なくとも1つの層とを含む多層樹脂ラミネートを形成すること;
(ii)多層樹脂ラミネートを延伸して多層延伸製品を製造すること;
を含む。
【0075】
熱可塑性プラスチックの選択は、それが組成物(M)から製造された層とラミネート可能であることを条件として、特に限定されない。
【0076】
そのような熱可塑性プラスチックの好ましい例としては、PET、ポリエチレンフラノエート、及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル酸又はメタクリル酸樹脂、ナイロン樹脂、ポリフェニレンスルフィドなどのスルフィド樹脂、並びにポリカーボネート樹脂を挙げることができる。これらのうち、ポリエステル樹脂、特にジオール成分及びジカルボン酸成分からなる芳香族ポリエステル樹脂を使用することが好ましく、その少なくとも1つ、特にジカルボン酸成分は、その使用に応じて組み合わせた透明性及びガスバリア性を満たす多層製品を提供するために芳香族成分である。PETが特に好ましい。
【0077】
熱可塑性プラスチックは、上述した熱可塑性プラスチック、好ましくはポリエステル樹脂、特に好ましくはPETと、上で定義したポリマー(APES)又は上で定義した本発明による組成物(M)との混合物とすることもできる。そのような場合、熱可塑性プラスチックは、有利には、熱可塑性プラスチックとポリマー(APES)又は組成物(M)との合計重量に対して、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.2重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%のポリマー(APES)又は本発明による組成物(M)を含有する。そのような場合、熱可塑性プラスチックは、有利には、熱可塑性プラスチックとポリマー(APES)又は組成物(M)との合計重量に対して、最大45重量%、好ましくは最大10重量%、より好ましくは最大5重量%のポリマー(APES)又は本発明による組成物(M)を含有する。
【0078】
多層樹脂ラミネートは、いかなる形状又は形態でもあり得、それは、とりわけ管状ラミネート、例えばパリソン、平板ラミネート又は成形容器の形態であり得る。
【0079】
多層樹脂ラミネートの好ましい例は、ねじ込型及び閉端型の円柱状物体を含むボトルプリフォームである。
【0080】
前記樹脂ラミネートを形成する工程は、これらが溶融状態にある間に、組成物(M)及び熱可塑性プラスチックを加工することを含む任意の技術によって行うことができる。
【0081】
適切な好ましい技法は、共押出成形及び共射出成形である。
【0082】
共押出成形技法によると、組成物(M)及び熱可塑性プラスチックの溶融流は、専用スクリュー押出機内で生成され、多層樹脂ラミネートを提供するために複数のスロットダイに供給される。
【0083】
射出成形技術では、組成物(M)と熱可塑性プラスチックの溶融ショットがマルチショットノズルを介して同じモールド内に射出される。
【0084】
工程(ii)では、多層樹脂ラミネートは、一般的には組成物(M)の塑性変形を可能にする温度、一般的には融点を超える温度で延伸される。
【0085】
特定の実施形態によると、多層樹脂ラミネートは、工程(i)後且つ工程(ii)を受ける前に冷却及び固化される。この場合、工程(ii)は、有利には、多層ラミネートを、組成物(M)のポリマー(PGA)及びポリマー(APES)のガラス転移温度よりも上、且つ熱可塑性プラスチックのガラス転移温度より上の温度まで再加熱する工程を含み、多層ラミネートは加熱されながら延伸される。延伸は、加圧ガス、典型的には空気を吹き込むことにより実現でき、延伸工程は、金型内で実施して、多層延伸製品を正しく定めた形状に接合し得る。
【0086】
別の実施形態によれば、多層樹脂ラミネートは、中間の冷却及び再加熱工程なしで工程(ii)を受け、そのため、有利には組成物(M)は工程(ii)の間溶融状態に維持される。
【0087】
この変形形態の特定の実施形態によれば、例えばパリソンの形態の押出された多層樹脂ラミネートは、ダイから押出される際に、直接溶融相にある間に圧縮空気を使用して吹き込むことができる。
【0088】
この変形形態の特定の実施形態によれば、例えばフィルムの形態の押出された多層樹脂ラミネートは、延伸することができ、例えば縦方向及び/又は横方向に動作する好適な延伸手段を用いて一軸又は二軸延伸することができる。
【0089】
これらの実施形態によれば、多層延伸製品は、特に、多層インフレーションフィルム(中間の冷却/固化工程なしで溶融相から延伸される)、多層キャストフィルム(通常一軸延伸)、又はダブルバブルプロセス又は二軸延伸(Tender or Linear Motor Simultaneous Stretching(LISIM))プロセスによって製造される多層収縮フィルムとすることができる。
【0090】
参照により本明細書中に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と対立する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例0091】
本発明は、ここで、その目的が例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例に関連してより詳細に説明される。
【0092】
原料
b-PGAは、メタンスルホン酸(GAlkgあたり1.350g)の存在下、GAと、トリメチロールプロパン(GA100モルに対して0.14モル)と、イソフタル酸(GA100モルに対して0.21モル)との混合物から得られる、国際公開第2018/115008号パンフレット(SOLVAY S.A.)の教示に従って製造される分岐PGAである。b-PGAは、ISO 11357-3(欧州規格)又はASTM D3418(米国規格)に準拠したDSCによって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に共に測定される、Tmについては236℃、Tgについては45℃の溶融温度(Tm)及びガラス転移温度(Tg)によって特徴付けられる。b-PGAは、ASTM D4440-08に準拠して260℃の温度で平行板を使用して10秒-1のせん断速度(10rad/秒の振動速度)で測定される527Pa×秒の溶融粘度によっても特徴付けられる。
【0093】
ATBPEは、EastmanからEASTOBONDTMコポリエステル19411の商品名で市販されているアモルファステレフタレート系のコポリエステルであり、これは51℃のTg(ASTM D3418に準拠して10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定)及び0.74の固有粘度(ASTM D4603に準拠して測定)を特徴とする。
【0094】
CPETは、EastmanからEASTAPAKTMポリマー9921の商品名で市販されている結晶性ポリエチレンテレフタレートであり、これは79℃のTg、236℃のTm、59kJ/kgの融解熱(3つとも全てASTM D3418に準拠して10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に共に測定)、及び0.80の固有粘度(ASTM D4603に準拠して測定)を特徴とする。
【0095】
PETは、Indorama ventureからRamapet R180の商品名で市販されているポリエチレンテレフタレートである。
【0096】
配合手順の概要
以下の実施例に記載の組成物を、表1に規定の温度プロファイルで運転される二軸押出機Clextral BC21(直径21mm、長さ43D、9バレルゾーン、ゾーン7で真空、窒素流下の2つの重量計量フィーダー及び1つのホッパー、2つのロンドホールを有するダイ、水浴及び空気乾燥機、ペレタイザー)を使用して混錬し、ペレットの形態でこれらの混合物を回収する。
【0097】
【0098】
結晶化のピーク温度(TC)及び融解熱(ΔH)の決定
結晶化のピーク温度(Tc)及び融解熱(ΔH)は、ISO 11357-3(欧州規格)又はASTM D3418(米国規格)に準拠した10°K/分でのDSCによって、10mgのサンプルで窒素下で10℃/分で20℃から270℃までの1回目の加熱中に測定した。
【0099】
耐加水分解性の決定
以下の実施例に記載されている組成物それぞれの10グラムのペレットを、栓をしたガラス瓶中の250mlの脱塩水の中に入れた。38℃のオーブン中でエージングした後、水の導電率の測定を24時間おきに行い、水の導電率の増加(グリコール酸の放出による)に必要な時間量を耐加水分解性として採用した。
【0100】
組成物(M)からのフィルムの製造
以下の実施例に記載の通りに組成物からフィルムを製造した。
【0101】
このために、5層フィルムA/B/C/B/A(A=PET、B=PET、C=各実施例に記載のb-PGA含有組成物)を、フィードブロック(265℃)及び幅300mmのフラットダイ(265℃)によって互いに接続された3つの押出機を使用した共押出によって製造した。仕上げカレンダーを使用して、フィルムを50℃で急冷し、厚さを調整して、フィルムを巻き取った。
【0102】
第1の押出機はブラベンダー押出機(直径30mm、長さ25D、3つの加熱ゾーン)であり、予め乾燥空気(露点-3℃)で170℃で8時間乾燥させたPETを供給した。
【0103】
第2及び第3の押出機はブラベンダー押出機(直径19mm、長さ25D、3つの加熱ゾーン)であった。第2のものは上で説明した通りに予め乾燥させたPETを供給し、第3のものは130℃で16時間予め乾燥した(露点-3℃)、実施例に記載の各組成物を供給した。
【0104】
各ゾーンの温度と3つの押出機のそれぞれのスクリュー速度を表2に示す。
【0105】
【0106】
フィルムの厚さは、層A/Bで18+/-3μm、層Cで10+/-3μm、層B/Aで18+/-3μmであった。
【0107】
酸素透過の測定(初期固有値及びバリア安定性)
酸素透過の測定は、ASTM D3985に従って行った。
【0108】
この方法の原理は、規定の温度及び相対湿度で、以下の実施例に記載の各組成物の、上で説明した通りに製造したフィルムを通過する酸素の単位時間及び単位面積あたりの量を決定することである。
【0109】
このために、フィルムがセルを2つに分割するような形で、セル内にフィルムを設置した。第1の部分には酸素を供給し、第2の部分は窒素でフラッシングした。フィルムを通過する酸素は、窒素によって電量計まで輸送された。こうして、電量計により単位時間あたりの酸素量が決定された。セルの表面積を知ってから、1日あたり及び1m2あたりのcm3単位での酸素の量を決定し、その後、10μmのb-PGA層(酸素透過の初期固有値)について表した。
【0110】
使用した機械は、38℃、相対湿度90%で調整されたOxtran2/21及び2/22(Mocon)機械であった。
【0111】
フィルムはアルミニウム袋に入れ、機械の様々な測定セルに入れる前に23℃及び50%の相対湿度で保管した。
【0112】
バリア安定性は、酸素透過の初期固有値の2倍に到達するのに必要な時間であった。
【0113】
耐剥離性
耐剥離性の測定は、上述した通りに製造したフィルム(サンプルのサイズ:25×200mm)に対するT剥離試験ASTM D1876に従って行った。フィルムサンプルの一端を65℃の苛性ソーダ溶液に浸して層Bを層Cから分離し、フィルムの2つの部分を引張ジョーでクランプ固定した。
【0114】
次いで、Hounsfield引張試験機(引張センサー5N-23℃-254mm/分)を用いた引張試験に従って、平均接着強度(N/cm)を測定した。
【0115】
実施例1(本発明)
上で詳述した配合手順に従って、90重量%のb-PGAと10重量%のATBPEとを含有する組成物を調製した。
【0116】
比較例2
上で詳述した配合手順に従って、90重量%のb-PGAと10重量%のCPETとを含有する組成物を調製した。
【0117】
比較例3
上で詳述した配合手順に従って、100重量%のb-PGAを含有する組成物を調製した。
【0118】
上述した方法に従って様々な実施例で測定した結晶化のピーク温度(TC)及び融解熱(ΔH)は下の表3に記載されている。
【0119】
上述した方法に従って様々な実施例で測定した耐加水分解性は下の表4に記載されている。
【0120】
上述した方法に従って様々な実施例で測定した酸素透過(初期固有値及びバリア安定性)は下の表5に記載されている。
【0121】
上述した方法に従って様々な実施例で測定した耐剥離性は下の表6に記載されている。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
上述した結果は、本発明による組成物が、比較例による組成物と比較して、より低いTC、より低いΔH、より優れた耐加水分解性を特徴とし、より高い平均接着強度を示すフィルムをもたらすことを示している。
【0127】
驚くべきことに、本発明による組成物で得られたフィルムは、非常に優れた酸素透過性及び長期のバリア安定性によって特徴付けられる。