(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001537
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ころ軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 19/46 20060101AFI20231227BHJP
F16C 33/46 20060101ALI20231227BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F16C19/46
F16C33/46
F16C33/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100253
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和也
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】飯田 泰基
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA13
3J701AA14
3J701AA24
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA34
3J701BA44
3J701BA46
3J701CA14
3J701DA14
3J701EA36
3J701FA32
3J701FA38
3J701FA60
(57)【要約】
【課題】保持器の寸法精度が高められた針状ころ軸受を提供する。
【解決手段】針状ころ軸受は、周方向に沿って並んで配置される複数のころ5と、複数のころ5がそれぞれ配置される複数のポケットPが形成された本体部6aを有する保持器6と、を備える。本体部6aは、一対の環状部11と、一対の環状部11に接続されると共に周方向に沿って並んで配置された複数の柱部12と、を有する。隣り合う柱部12の間の空間によりポケットPが画定されている。本体部6aは、樹脂により形成されている。本体部6aは、隣り合うころ5の間の周方向における距離Lがころ5の直径Dの2.5倍以上となるように形成されている。柱部12は、ポケットPを画定するポケット画定部21と、ポケット画定部21よりも薄く形成された薄化部22と、を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に沿って並んで配置される複数のころと、
前記複数のころがそれぞれ配置される複数のポケットが形成された本体部を有する保持器と、を備え、
前記本体部は、一対の環状部と、前記一対の環状部に接続されると共に周方向に沿って並んで配置された複数の柱部と、を有し、
隣り合う前記柱部の間の空間により前記ポケットが画定されており、
前記本体部は、樹脂により形成されており、
前記本体部は、隣り合う前記ころの間の周方向における距離が前記ころの直径の2.5倍以上となるように形成されており、
前記柱部は、前記ポケットを画定するポケット画定部と、前記ポケット画定部よりも薄く形成された薄化部と、を有している、ころ軸受。
【請求項2】
前記薄化部は、軸方向に沿って延在する溝が前記柱部に設けられることによって形成されている、請求項1に記載のころ軸受。
【請求項3】
前記溝は、軸方向における前記柱部の全体にわたって延在している、請求項2に記載のころ軸受。
【請求項4】
前記溝は、径方向における前記柱部の内面に設けられている、請求項2又は3に記載のころ軸受。
【請求項5】
前記溝は、径方向における前記柱部の外面に設けられている、請求項2又は3に記載のころ軸受。
【請求項6】
前記溝は、一又は複数設けられており、
前記周方向における前記一又は複数の溝の合計幅は、前記溝の深さよりも大きい、請求項2又は3に記載のころ軸受。
【請求項7】
前記溝は、軸方向に垂直な断面において、滑らかに湾曲した表面を有している、請求項2又は3に記載のころ軸受。
【請求項8】
前記溝は、軸方向に垂直な断面において台形状に形成されている、請求項2又は3に記載のころ軸受。
【請求項9】
前記薄化部は、前記柱部に貫通孔が設けられることによって形成されている、請求項1に記載のころ軸受。
【請求項10】
前記複数のころの各々は、針状ころである、請求項1又は9に記載のころ軸受。
【請求項11】
前記本体部は、分割部において周方向における一方側と他方側とに分割され、分割部において結合及び分離可能に構成されている、請求項1又は9に記載のころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のころと、それらのころがそれぞれ配置される複数のポケットが形成された樹脂製の保持器と、を備えたころ軸受が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなころ軸受において、隣り合うころの間の距離が長く設定され、保持器における隣り合うポケット間の距離が長くなった場合、成形時に保持器が意図せず変形してしまい、寸法精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、保持器の寸法精度が高められたころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のころ軸受は、[1]「周方向に沿って並んで配置される複数のころと、前記複数のころがそれぞれ配置される複数のポケットが形成された本体部を有する保持器と、を備え、前記本体部は、一対の環状部と、前記一対の環状部に接続されると共に周方向に沿って並んで配置された複数の柱部と、を有し、隣り合う前記柱部の間の空間により前記ポケットが画定されており、前記本体部は、樹脂により形成されており、前記本体部は、隣り合う前記ころの間の周方向における距離が前記ころの直径の2.5倍以上となるように形成されており、前記柱部は、前記ポケットを画定するポケット画定部と、前記ポケット画定部よりも薄く形成された薄化部と、を有している、ころ軸受」である。
【0007】
このころ軸受では、保持器の本体部が、隣り合うころの間の周方向における距離がころの直径の2.5倍以上となるように形成されている。このように隣り合うころ間の距離が長い場合(保持器における柱部の幅が広い場合、隣り合うポケット間の距離が長い場合)、例えば柱部を周方向に関して一様な厚さを有するように形成すると、成形工程において溶融樹脂を冷却して固化させる際に柱部が意図せず変形してしまい、寸法精度が低下するおそれがある。これに対し、このころ軸受では、柱部が、ポケットを画定するポケット画定部と、ポケット画定部よりも薄く形成された薄化部とを有している。これにより、ポケット画定部を厚く形成してポケット画定部の剛性を確保しつつ、薄化部を薄く形成して体積を小さくすることができ、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を抑制することができる。よって、このころ軸受では、保持器の寸法精度が高められている。また、薄化部を設けることにより形成された空間を潤滑剤の溜まりとして利用することができ、潤滑特性を向上することもできる。
【0008】
本発明のころ軸受は、[2]「前記薄化部は、軸方向に沿って延在する溝が前記柱部に設けられることによって形成されている、[1]に記載のころ軸受」であってもよい。この場合、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明のころ軸受は、[3]「前記溝は、軸方向における前記柱部の全体にわたって延在している、[2]に記載のころ軸受」であってもよい。この場合、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明のころ軸受は、[4]「前記溝は、径方向における前記柱部の内面に設けられている、[2]又は[3]に記載のころ軸受」であってもよい。この場合、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明のころ軸受は、[5]「前記溝は、径方向における前記柱部の外面に設けられている、[2]又は[3]に記載のころ軸受」であってもよい。この場合、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明のころ軸受は、[6]「前記溝は、一又は複数設けられており、前記周方向における前記一又は複数の溝の合計幅は、前記溝の深さよりも大きい、[2]から[5]のいずれかに記載のころ軸受」であってもよい。この場合、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明のころ軸受は、[7]「前記溝は、軸方向に垂直な断面において、滑らかに湾曲した表面を有している、[2]から[6]のいずれかに記載のころ軸受」であってもよい。この場合、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明のころ軸受は、[8]「溝は、軸方向に垂直な断面において台形状に形成されている、[2]から「7」のいずれかに記載のころ軸受」であってもよい。この場合、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明のころ軸受は、[9]「前記薄化部は、前記柱部に貫通孔が設けられることによって形成されている、[1]に記載のころ軸受」であってもよい。この場合、成形時に柱部が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。このように、薄化部はポケット画定部よりも薄く形成されていればよく、薄化部の厚さはゼロであってもよい。
【0016】
本発明のころ軸受は、[10]「前記複数のころの各々は、針状ころである、[1]から[9]のいずれかに記載のころ軸受」であってもよい。この場合にも、保持器の寸法精度を高めることができる。
【0017】
本発明のころ軸受は、[11]「前記本体部は、分割部において周方向における一方側と他方側とに分割され、分割部において結合及び分離可能に構成されている、[1]から「10」のいずれかに記載のころ軸受」であってもよい。この場合にも、保持器の寸法精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保持器の寸法精度が高められたころ軸受を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るころ軸受の使用形態の例を示す断面図である。
【
図4】(a)は、第1変形例のころ軸受の断面図であり、(b)は、第2変形例のころ軸受の断面図である。
【
図5】(a)は、第3変形例のころ軸受の断面図であり、(b)は、第4変形例のころ軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0021】
図1に示されるように、実施形態に係るころ軸受1(以下、「軸受1」とも記す)は、例えば、シャフト2とギヤ3との間に配置されて用いられる。この例では、軸受1は、ギヤ3の内側に配置されており、回転するシャフト2を支持している。
【0022】
図2及び
図3に示されるように、軸受1は、複数のころ5と、保持器6と、を備えている。複数のころ5は、保持器6により転動自在に保持されており、周方向に沿って所定の間隔を空けて並んで配置されている。軸受1の使用時には、各ころ5は、径方向の力を受けながら、軸方向Aに平行な軸線を中心として回転する。この例では、ころ5は、針状ころ(ニードルころ)であり、円筒状に形成されている。針状ころでは、直径が6mm以下で、直径に対する軸方向の長さの比が3以上10以下である。
【0023】
保持器6は、樹脂材料により円筒状に形成された本体部6aを有している。この例では本体部6aにより保持器6の全体が構成されているため、以下、本体部6aを単に保持器6とも記す。保持器6を構成する樹脂材料は、加熱により溶融する熱可塑性樹脂であり、例えばポリアミド46(PA46)又はポリアミド66(PA66)等である。保持器6には、複数のころ5がそれぞれ配置される複数のポケットPが形成されている。ポケットPは、ころ5を収容するための空間であり、径方向に沿って保持器6を貫通しており、径方向の両側に開口している。ころ5が組み込まれた保持器6は、ケージアンドローラとも呼ばれる。
【0024】
保持器6は、一対の環状部11と、複数の柱部12と、を有している。各環状部11は、軸方向Aに平行な軸線を有する円環状に形成されている。一対の環状部11は、軸方向Aにおいて向かい合っている。各柱部12は、一対の環状部11の間を軸方向Aに沿って延在しており、一端において一方の環状部11に接続され、他端において他方の環状部11に接続されている。複数の柱部12は、周方向に沿って所定の間隔を空けて並んで配置されている。隣り合う柱部12の間の空間により、上述したポケットPが画定されている。軸方向Aにおいては、ポケットPは、一対の環状部11により画定されている。すなわち、ポケットPは、一対の環状部11及び隣り合う柱部12により画定されている。環状部11及び柱部12は、例えば樹脂材料を用いた射出成形により一括して成形され、互いに一体に形成されている。
【0025】
図3に示されるように、各柱部12は、一対のポケット画定部21と、薄化部22と、を有している。ポケット画定部21は、上述したポケットPを画定する部分である。ポケット画定部21には、ポケットPに配置されたころ5からの荷重が作用する。すなわち、ポケット画定部21は、ころ5を支持する針状ころ支持部でもある。一対のポケット画定部21は、周方向において薄化部22を挟むように、周方向における薄化部22の両側に位置している。ポケット画定部21は、周方向における柱部12の縁部を構成している。ポケット画定部21は、ポケット画定面21aを有している。ポケット画定面21aは、周方向における柱部12の端面を構成している。一の柱部12のポケット画定面21aは、当該一の柱部12と隣り合う柱部12のポケット画定面21aと周方向において向かい合い、互いの間にポケットPを画定している。
【0026】
薄化部22は、周方向における柱部12の中央部を構成している。薄化部22は、ポケット画定部21よりも薄く形成されている。すなわち、薄化部22の厚さ(径方向における長さ)は、ポケット画定部21の厚さ(径方向における長さ)よりも薄い。この例では、薄化部22は、軸方向Aに沿って延在する溝23が柱部12に設けられることによって形成されている。溝23は、径方向における柱部12の外面12aに設けられている。溝23は、軸方向Aにおける柱部12の全体にわたって延在しており、一対の環状部11に至っている。溝23は、軸方向Aに垂直な断面(例えば
図3に示される断面)において、滑らかに湾曲した表面(内面)23aを有している。表面23aは、周方向における溝23の全体にわたって一様に湾曲しており、一対のポケット画定部21に連なっている。溝23(薄化部22)が設けられていることにより、周方向における柱部12の外側には、溝23に対応した形状の空間SPが形成されている。この例では、溝23の幅(周方向における長さ)は、溝23の深さ(径方向における長さ)よりも大きくなっている。
【0027】
軸受1では、保持器6は、隣り合うころ5の間の周方向における距離Lがころ5の直径Dの2.5倍以上となるように形成されている。距離Lは、隣り合うポケットPの中心C間の周方向に沿っての距離でもある。距離Lが増加するほど、柱部12の幅(周方向における長さ)が増加し、軸受1に備えられるころ5の数が少なくなる。距離Lは、直径Dの3倍以上であってもよいし、4倍以上であってもよい。
[作用及び効果]
【0028】
軸受1では、保持器6(本体部6a)が、隣り合うころ5の間の周方向における距離Lがころ5の直径の2.5倍以上となるように形成されている。このように隣り合うころ5間の距離Lが長い場合(保持器6における柱部12の幅が広い場合、隣り合うポケットP間の距離が長い場合)、軸受1に備えられるころ5の数が少なくなる。ころ5の数を少なくすることができると、要求される耐荷重が小さい場合において製品コストを低減することができる点において有利である。一方、隣り合うころ5間の距離Lが長い場合において、例えば柱部12を周方向に関して一様な厚さを有するように(薄化部22を有さないように)形成すると、成形工程において溶融樹脂を冷却して固化させる際に柱部12が意図せず変形してしまい、寸法精度が低下するおそれがある。より具体的には、保持器6にはポケットPが形成されていることから、溶融樹脂が冷却固化する際に、ポケットPから遠い周方向における柱部12の中央部の収縮量が、ポケットPに近い周方向における柱部12の両縁部の収縮量よりも大きくなる。この収縮量の差(体積差)により、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう(例えばヒケが発生して内径側に変形してしまう)おそれがある。これに対し、軸受1では、柱部12が、ポケットPを画定するポケット画定部21と、ポケット画定部21よりも薄く形成された薄化部22とを有している。これにより、ポケット画定部21を厚く形成してポケット画定部21の剛性を確保しつつ、薄化部22を薄く形成して体積を小さくすることができ、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を抑制することができる。よって、軸受1では、保持器6の寸法精度が高められている。また、薄化部22を設けることにより形成された空間SPを潤滑剤(潤滑油)の溜まりとして利用することができ、潤滑特性を向上することもできる。更に、薄化部22を設けることで保持器6の質量を低減することができ、軸受1を軽量化することができる。軸受1の軽量化は、例えば軸受1が車両に搭載された場合に車両の燃費を向上することができる点で有利である。また、軸受1の軽量化は、使用時のトルク抵抗を減少させて伝達効率を向上することができる点でも有利である。また、軸受1では、溝23の内面に識別情報を表す表示が付されていてもよい。識別情報は、例えばメーカ名、名番(型番)、製造国、製造日等である。軸受1では、成形時に、溝23の内面に識別情報を表す表示を比較的大きな文字又は記号等により付すことができる。
【0029】
薄化部22が、軸方向Aに沿って延在する溝23が柱部12に設けられることによって形成されている。これにより、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができると共に、潤滑特性を効果的に向上することができる。
【0030】
溝23が、軸方向Aにおける柱部12の全体にわたって延在している。これにより、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができると共に、潤滑特性を効果的に向上することができる。
【0031】
溝23が、径方向における柱部12の外面12aに設けられている。これにより、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができると共に、潤滑特性を効果的に向上することができる。このような構成は、軸受1に対して径方向の外側から潤滑剤を供給する場合に有効である。
【0032】
周方向における溝23の幅(合計幅)が、溝23の深さよりも大きくなっている。これにより、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができると共に、潤滑特性を効果的に向上することができる。
【0033】
溝23が、軸方向Aに垂直な断面において、滑らかに湾曲した表面23aを有している。これにより、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができる。
[変形例]
【0034】
図4(a)に示される第1変形例では、柱部12は、一対のポケット画定部21と、2つの薄化部22と、2つの薄化部22の間に位置する中間部25と、を有している。第1変形例では、薄化部22を構成する溝23が、軸方向Aに垂直な断面において略台形状に形成されている。溝23の幅は、径方向の内側に向かうほど狭くなっている。また、溝23が、上記実施形態の場合よりも深く形成されている(縦溝として形成されている)。具体的には、上記実施形態では溝23の深さが溝23の幅よりも小さいのに対し、第1変形例では溝23の深さが溝23の幅よりも大きくなっている。中間部25は、ポケット画定部21と同一の厚さを有しており、薄化されていない。このような第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、保持器6の寸法精度を高めることができる。なお、
図4(a)では溝23が2つ形成されているが、溝23は3つ以上形成されていてもよい。また、第1変形例では、1つの溝23に関しては溝23の幅が溝23の深さよりも小さくなっているが、2つの溝23に関しては2つの溝23の合計幅が溝23の深さよりも大きくなっている。このように、複数の溝23が形成されている場合、複数の溝23の合計幅が溝23の深さよりも大きくなっていてもよい。この場合にも、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができると共に、潤滑特性を効果的に向上することができる。
【0035】
図4(b)に示される第2変形例では、薄化部22を構成する溝23が、軸方向Aに垂直な断面において略台形状に形成されている。溝23の幅(周方向における長さ)は、径方向の内側に向かうほど狭くなっている。このような第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、保持器6の寸法精度を高めることができる。
【0036】
図5(a)に示される第3変形例では、薄化部22を構成する溝23が、径方向における柱部12の内面12bに設けられている。溝23は、軸方向Aに垂直な断面において半円形状に形成されている。第3変形例においても、溝23は、軸方向Aに垂直な断面において滑らかに湾曲した表面23aを有しており、表面23aは、周方向における溝23の全体にわたって一様に湾曲している。溝23(薄化部22)が設けられていることにより、周方向における柱部12の内側に、溝23に対応した形状の空間SPが形成されている。このような第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、保持器6の寸法精度を高めることができる。また、第3変形例では、溝23が、径方向における柱部12の内面12bに設けられている。これにより、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができると共に、潤滑特性を効果的に向上することができる。このような構成は、軸受1に対して径方向の内側から潤滑剤を供給する場合に有効である。例えば、上述した
図1に示される使用形態では、保持器6がギヤ3により案内され(外径案内)、軸受1に対して径方向の内側から潤滑剤が供給される。なお、案内方式は外径案内に限定されず、内径案内又はころ案内であってもよい。
【0037】
図5(b)に示される第4変形例では、薄化部22が、柱部12に貫通孔15が設けられることによって形成されている。この例では、柱部12に複数(例えば2つ)の貫通孔15が設けられており、2つの薄化部22が設けられている。2つの薄化部22の間には中間部25が設けられている、貫通孔15は、径方向に沿って柱部12を貫通している。貫通孔15は、上記実施形態における溝23と同様に、軸方向Aに沿って軸方向Aにおける柱部12の全体にわたって延在し、一対の環状部11に至っていてもよい。或いは、貫通孔15は、一対の環状部11に至っていなくてもよいし、軸方向Aに沿って延在していなくてもよい。貫通孔15内の空間が、潤滑剤の溜まりとして利用可能な空間SPとなっている。このような第4変形例によっても、上記実施形態と同様に、保持器6の寸法精度を高めることができる。また、第4変形例では、薄化部22が、柱部12に貫通孔15が設けられることによって形成されている。これにより、成形時に柱部12が意図せず変形してしまう事態の発生を効果的に抑制することができると共に、潤滑特性を効果的に向上することができる。第4変形例に例示されるように、薄化部22はポケット画定部21よりも薄く形成されていればよく、薄化部22の厚さはゼロであってもよい。
【0038】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。薄化部22を構成する溝23は、一対の環状部11に至るように延在していなくてもよく、軸方向Aにおける柱部12の中間部のみに形成されていてもよい。保持器6は、本体部6a以外の部分を備えていてもよく、例えば金属により形成された部分を更に含んでいてもよい。保持器6は、分割保持器であってもよい。この場合、保持器6は、分割部において周方向における一方側と他方側とに分割され、分割部において結合及び分離可能に構成される。例えば、分割部において分割される一方側に凸部が設けられると共に他方側に凹部が設けられ、それらの凸部と凹部とが係合することにより、一方側と他方側とが結合される。また、凸部と凹部の係合が解除されることにより、一方側と他方側とが分離される。保持器6は、分割部を複数有していてもよい。
【0039】
ころ5は、針状ころに限られず、例えば棒状ころ又は円筒ころであってもよい。棒状ころでは、直径が6mmよりも大きく、直径に対する軸方向の長さの比が3以上10以下である。円筒ころでは、直径に対する軸方向の長さの比が3未満である。
【符号の説明】
【0040】
1…ころ軸受、5…ころ、6…保持器、6a…本体部、11…環状部、12…柱部、12a…外面、12b…内面、15…貫通孔、21…ポケット画定部、22…薄化部、23…溝、23a…表面、A…軸方向、D…直径、L…距離、P…ポケット。