(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153701
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】モノクローナル抗IL-1RAcP抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241022BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241022BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20241022BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241022BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241022BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241022BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N5/0781
A61K39/395 N
A61P29/00
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024115442
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2022077834の分割
【原出願日】2016-06-23
(31)【優先権主張番号】15174184.0
(32)【優先日】2015-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】15200772.0
(32)【優先日】2015-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブラント
(57)【要約】 (修正有)
【課題】IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害することを特徴とし、IL-1RAcP関連疾患の治療に有用であるモノクローナル抗IL-1RAcP抗体、その製造方法およびその使用方法を提供する。
【解決手段】IL-1RAcPに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、a)特異的配列を有するCDR1H、CDR2Hおよび/またはCDR3Hを含み、b)特異的配列を有するCDR1L、CDR2Lおよび/またはCDR3Lを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-1RAcPに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
a)CDR1H、CDR2Hおよび/またはCDR3Hを含み、
CDR1H領域が、配列番号155~配列番号231の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR2H領域が、配列番号232~配列番号308の群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ
CDR3H領域が、配列番号309~配列番号385の群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
b)CDR1L、CDR2Lおよび/またはCDR3Lを含み、
CDR1L領域が、配列番号386~配列番号462の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR2L領域が、配列番号463~配列番号539の群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ
CDR3L領域が、配列番号540~配列番号616の群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と
を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記重鎖可変(VH)領域は、配列番号1~配列番号77のVH領域からなる群から選択されるVH領域に対して少なくとも90%同一であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記軽鎖可変(VL)領域は、配列番号78~配列番号154のVL領域からなる群から選択されるVL領域に対して少なくとも90%同一であることを特徴とする、請求項1および2に記載の抗体。
【請求項4】
前記VH領域は、配列番号1+nのVH領域と少なくとも90%同一であり、かつ前記VL領域は、配列番号78+nのVL領域と少なくとも90%同一であり、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
前記VH領域は、配列番号1~配列番号77のVH領域からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
前記VL領域は、配列番号78~配列番号154のVL領域からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
前記VH領域は、配列番号1+nのVH領域からなる群から選択され、かつ前記VL領域は、配列番号78+nのVL領域からなる群から選択され、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体は、配列番号155+nのCDR1H領域、配列番号232+nのCDR2H領域、および配列番号309+nのCDR3H領域を含むVH領域の群から選択されるVH領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体は、配列番号386+nのCDR1L領域、配列番号463+nのCDR2L
領域、および配列番号540+nのCDR3L領域を含むVL領域の群から選択されるVL領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体は、配列番号155+nのCDR1H領域、配列番号232+nのCDR2H領域、および配列番号309+nのCDR3H領域を含むVH領域の群から選択されるVH領域を含み、かつ前記抗体は、配列番号386+nのCDR1L領域、配列番号463+nのCDR2L領域、および配列番号540+nのCDR3L領域を含むVL領域の群から選択されるVL領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
表3に列挙される抗体からなる群から選択される抗体のそれぞれのCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含むVH領域およびVL領域を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項12】
IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害し、かつ抗体P013.S.01.B.B03、P013.S.01.B.A05、P013.S.01.B.C04、P013.S.01.B.H01、P013.S.01.B.D03、P013.S.01.B.E02、P013.S.02.B.A04、P013.S.02.B.A05、P013.S.02.B.A02、P013.S.02.B.D03、P013.S.02.B.H01、P013.S.02.B.F01、P013.S.02.B.B04、P013.S.02.B.C02、P013.S.02.B.B05、P013.S.02.B.A03、P013.S.02.B.H03およびP013.S.02.B.G05の群から選択される抗体と同じエピトープに結合することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
抗体P013.S.01.B.B03、P013.S.01.B.A05、P013.S.01.B.C04、P013.S.01.B.H01、P013.S.01.B.D03、P013.S.01.B.E02、P013.S.02.B.A04、P013.S.02.B.A05、P013.S.02.B.A02、P013.S.02.B.D03、P013.S.02.B.H01、P013.S.02.B.F01、P013.S.02.B.B04、P013.S.02.B.C02、P013.S.02.B.B05、P013.S.02.B.A03、P013.S.02.B.H03およびP013.S.02.B.G05からなる群から選択される抗体のそれぞれのCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含むVH領域およびVL領域を含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項14】
IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項15】
マウスIL-1RAcPに誘導されるマウスNFκB活性を阻害することを特徴とする、請求項14のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項16】
IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36で刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする、請求項14から15までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項17】
IL-1αで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする、請求項16に記載の抗体。
【請求項18】
IL-1βで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする、請求項16に記載の抗体。
【請求項19】
IL-33で刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする、請求項16に記載の抗体。
【請求項20】
IL-36で刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする、請求項16に記載の抗体。
【請求項21】
IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-1α/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-33/ST2/IL-1RAcPおよび/またはIL-36/IL-36R/IL-1RAcPからなる群から選択される複合体によって刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする、請求項16に記載の抗体。
【請求項22】
5μg/mlの濃度(ウサギIgGアイソタイプは、150KDの分子量を有する)で、0.5μg/mlのヒトIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激された293T/17細胞溶解物(293T/17[HEK 293T/17](ATCC(登録商標)CRL-11268(商標)))において、NFκB活性を、本発明による前記抗体を用いない同様のアッセイに対して70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上も阻害することを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項23】
5μg/mlの濃度で、0.5μg/mlのマウスIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激されたそれぞれのマウス細胞株溶解物において、NFκB活性を、本発明による前記抗体を用いない同様のアッセイに対して70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上も阻害することを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項24】
IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36のそれぞれで刺激されたルシフェラーゼ活性を、293T/17細胞(NF-κBレポーター遺伝子の制御下にルシフェラーゼでトランスフェクションされた293T/17-FR細胞)において阻害することを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項25】
野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%まで低減されたADCCを示すことを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項26】
野生型のIgGのFc領域を含む本発明による抗体と比較して低減された、ヒトFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAおよび/またはFcγRIに対する親和性を示し、ここで、本発明による前記抗体によって誘導されるADCCは、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%まで低減されることを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項27】
ヒトIgG1のFc領域のL234AおよびL235AまたはヒトIgG4のFc領域のS228PおよびL235Eでのアミノ酸置換を少なくとも含むことを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項28】
ウサギ/ヒトのキメラ抗体またはヒト化抗体であることを特徴とする、請求項1から2
7までのいずれか1項に記載の抗体。
【請求項29】
本発明によるIL1βで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするヒトIL-1RAcPに対するモノクローナルウサギ抗体の製造方法であって、
i)前記ウサギをIL-1RAcPで免疫化した後に、前記ウサギから得られた多くの抗体産生単一細胞を単離するステップ、
ii)IL-1RAcPへの結合を、前記単一細胞の上清について個別に測定するステップ、
iii)その上清がヒトおよびマウスIL-1RAcPへの結合を示し、かつIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害する場合に、単一細胞を選択するステップ、
iv)ステップiii)の特性を有する抗体を、前記選択された細胞から単離するステップ
を特徴とする、製造方法。
【請求項30】
前記ウサギ抗体産生単一細胞が、ウサギハイブリドーマ単一B細胞であることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ウサギを前記抗原で免疫化した後に、ヒトIL-1RAcPへの結合と、IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性の阻害とが見出された場合に、抗体産生単一細胞を前記動物から単離するか、または前記ウサギから得られたウサギハイブリドーマ細胞を単離することを特徴とする、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から28までのいずれか1項に記載の抗体の、医薬組成物の製造のための使用。
【請求項33】
抗体産生ウサギ単一細胞の上清であって、ヒトIL-1RAcPへと結合し、かつIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする、上清。
【請求項34】
患者におけるIL-1媒介疾患の治療方法であって、患者に請求項1から28までのいずれか1項に記載の抗体の医薬的有効量を投与することを含む、治療方法。
【請求項35】
医薬品に許容可能な担体と、請求項1から28までのいずれか1項に記載の抗体の治療的有効量とを含む医薬組成物。
【請求項36】
患者におけるIL-1媒介疾患の治療方法であって、患者に請求項35に記載の医薬組成物を投与することを含む、治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノクローナル抗IL-1RAcP抗体、その製造方法およびその使用に関する。
【0002】
背景
ヒトIL-1RAcP(Q9NPH3(IL1AP_HUMAN、UniProtKB/Swiss-Prot))は、IL-1ファミリーの受容体を通じたシグナルの伝達に必要とされるアクセサリータンパク質である。インターロイキン-1受容体複合体は、IL-1R1とIL-1RAcPとのヘテロ二量体である。IL-1が結合すると、IL-1R1はIL-1RAcPと会合して、機能的なシグナル伝達受容体複合体を形成し、それがNFκB活性を刺激する。
【0003】
IL-33と、その受容体のST2と、IL-1RAcPとはまた、NFκB活性化に関してIL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP複合体と類似の活性を有する複合体(IL-33/ST2/IL-1RAcP)を形成する。IL-36(IL-36α(IL-1F6)、IL-36β(IL-1F8)およびIL-36γ(IL-1F9))と、それらの受容体のIL-36Rと、IL-1RAcPとはまた、NFκB活性化に関してIL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP複合体と類似の活性を有する複合体(IL-36/IL-36R/IL-1RAcP)を形成する。
【0004】
国際公開第199623067号(WO199623067)は、マウスIL-1受容体アクセサリータンパク質に特異的に結合するIL-1RAcP抗体に関する。実施例15および16は、IL-1の生物学的活性を中和する抗ヒトIL-1RAcP抗体の生成を試みることを記載している。しかしながら、そのような抗体は、国際公開第199623067号(WO199623067)および実施例16によって提供されておらず、IL-1誘導性IL-6アッセイの記載は仮説にすぎない。Do-Young Yoon D-YおよびCharles A.Dinarello CAは、J.Immunol.1998;160:3170-3179において、IL-1β活性を阻害するが結合はしないマウスIL-1RAcPのドメインIIおよびIIIに対するポリクローナル抗体を記載している。しかしながら、より高濃度のIL-1β(1000pg/ml)では、このポリクローナル抗血清は、D10S細胞の増殖を阻止しなかった(D10Sは、マイトジェンの不在下にフェムトモル濃度未満(アトモル濃度)のIL-1βまたはIL-1αまで増殖するマウスのD10.G4.1ヘルパーT細胞のサブクローンである、Orencole SF and Dinarello CA; Cytokine 1(1989)14-22を参照)。Jaras M.et al.,PNAS 107(2010)16280-16285は、ウサギポリクローナル抗IL1RAcP抗体KMT-1の、CML幹細胞の殺滅のための使用を記載している。この抗体は、ADCCをIL1RAcPに非依存的に誘導し、それはそのウサギFc部によって引き起こされる。Jarasらは「可能性を秘めた未来の治療用IL1RAPターゲティング抗体は、正常な造血細胞に対する低い毒性を示すと予想される」と予想している。また、マウスIL-1RAcPに対するポリクローナルウサギ抗体は、Do-Young Yoon and Charles A.Dinarello,Journal of Biochemistry and Molecular Biology,Vol.40,No.4,July 2007,pp.562-570でも述べられている。
【0005】
マウス、ラットおよびヒトのIL1RAcPに結合するウサギポリクローナル抗体(ab8110)は、Abcam社(米国、マサチューセッツ州、ケンブリッジ)から市販さ
れている。Abcam社製のab8109は、ヒトIL1RAcPのみに結合する。BALAGURUNATHAN Y.et al.,Mol.Cancer Ther.7(2008)3071-3080は、Abcam社製のポリクローナルウサギ抗IL1 RAP抗体を、膵臓腫瘍細胞の特定のために使用することを述べている。
【0006】
国際公開第2002064630号(WO2002064630)はまた、IL-1RAcPおよびその使用に関するが、IL-1RAcPに対する抗体は記載されていない。国際公開第2004022718号(WO2004022718)および国際公開第2009120903号(WO2009120903)は、CSF1R、IL13RA1、IL1RAP、IFNAR1、IL5R、INSR、IL1RL1、LTKおよびTACSTD1に対する抗体は、従来技術に従って生成できることを理論的に述べている。しかしながら、ここでもIL-1RAcPに対する抗体は記載されていない。国際公開第2011021014号(WO2011021014)および国際公開第2012098407号(WO2012098407)(米国特許出願公開第20140017167号明細書(US20140017167))は、ポリクローナルウサギ抗ヒトIL-1RAcP抗血清KMT-1(Jaras et al.2010を参照)およびその使用に関する。国際公開第2014100772号(WO2014100772)は、IL-1RAcPに結合する抗IL-1RAcP抗体に関する。しかしながら、NFκB活性を刺激する機能的なシグナル伝達受容体複合体(IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP等)の阻害に関する活性は一切記載されていない。米国特許第6280955号明細書(US6280955)はまた、IL-1RAcPおよびその使用に関するが、またしてもIL-1RAcPに対する抗体は記載されていない。米国特許第7390880号明細書(US7390880)は、IL1RAcPのN末端断片を述べているが、またもやIL-1RAcPに対する抗体は記載されていない。
【0007】
国際公開第2004100987号(WO2004100987)は、新生内膜過形成の治療のための薬剤の製造におけるインターロイキンI(IL-1)アンタゴニストの使用および新生内膜過形成の治療のためのIL-1アンタゴニストの使用に関する。そのようなアンタゴニストとして、抗IL-1RAcP抗体が示唆されているが、さらに記載はされていない。米国特許出願公開第2003026806号明細書(US2003026806)は、IL-1に結合する抗体に関する。国際公開第2002064630号(WO2002064630)はまた、IL-1RAcPタンパク質に対するIL-1アンタゴニストに関する。IL-1RAcPアンタゴニストのスクリーニングのためのIL-1RAcPの使用が述べられているが、そのような方法またはアンタゴニストは開示されていない。
【0008】
国際公開第2003014309号(WO2003014309)は、慢性骨髄性白血病の治療のためのIL-1RAcPタンパク質の使用に関する。国際公開第2013023015号(WO2013023015)は、AMLの予後の決定方法および初期幹細胞におけるIL-1RAcPの発現または活性を阻害する剤を投与することによるAMLの治療方法に関する。そのような剤として、IL-1RAcPのshRNAが挙げられている。
【0009】
ヒトNF-κBは、炎症、免疫応答およびアポトーシスに関与する幾つかの遺伝子の発現の重要な調節因子であり、したがってNFκBの機能障害は、自己免疫疾患、神経変性疾患、炎症および癌を含む様々な疾患の病理に関与している。例えば、NF-κB経路は、OAの治療における重要なターゲットであり、ヒトIL1βで刺激されるヒトNFκB活性の阻害は、例えば骨関節症の治療において重要となることがある。したがって、ヒトIL-1R1/IL-1RAcP複合体のシグナル伝達活性の阻害を介してヒトNFκB経路を調節するモノクローナル抗体は、人間の様々な疾患の治療において有用な治療剤と
なると考えられる。
【0010】
しかしながら、ヒトIL1RAcPに対する機能的なモノクローナル抗体を生成する約15年を超える試みは成功に至っておらず、したがって今日でもそのような必要性が存在する。
【0011】
発明の概要
本発明は、ヒトIL-1RAcPに対するモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、本発明による抗体は、マウスIL-1RAcPにさらに結合する。
【0012】
本発明は、ヒトIL-1RAcPに対するモノクローナル抗体であって、IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害することを特徴とするモノクローナル抗体を提供する。
【0013】
本発明は、ヒトIL-1RAcPに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、本発明による抗体は、マウスIL-1RAcPにさらに結合する。
【0014】
本発明は、ヒトIL-1RAcPに特異的に結合するモノクローナル抗体であって、IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害することを特徴とするモノクローナル抗体を提供する。好ましくは、本発明による抗体は、マウスIL-1RAcPに誘導されるマウスNFκB活性をさらに阻害する。
【0015】
本発明は、ヒトIL-1RAcPに対するモノクローナル抗体であって、IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするモノクローナル抗体を提供する。本発明は、ヒトIL-1RAcPに対するモノクローナル抗体であって、IL-1αで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするモノクローナル抗体を提供する。本発明は、ヒトIL-1RAcPに対するモノクローナル抗体であって、IL-1βで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするモノクローナル抗体を提供する。
【0016】
本発明は、ヒトIL-1RAcPに対するモノクローナル抗体であって、IL33で刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするモノクローナル抗体を提供する。本発明は、ヒトIL-1RAcPに対するモノクローナル抗体であって、IL36で刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするモノクローナル抗体を提供する。
【0017】
本発明は、ヒトIL-1RAcPに対するモノクローナル抗体であって、IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-1α/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-33/ST2/IL-1RAcPおよびIL-36/IL-36R/IL-1RAcPからなる群から選択される複合体によって刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするモノクローナル抗体を提供する。
【0018】
好ましくは、本発明による抗体は、マウスIL-1RAcPに結合し、かつマウスIL-1RAcPに誘導されるマウスNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0019】
好ましくは、本発明による抗体は、5μg/mlの濃度(ウサギIgGアイソタイプは、150KDの分子量を有する)で、0.5μg/mlのヒトIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激された293T/17細胞溶解物(293T/17[HEK
293T/17](ATCC(登録商標)CRL-11268(商標)))において、NFκB活性を、本発明による前記抗体を用いない同様のアッセイに対して70%以上、
好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上も阻害することを特徴とする。
【0020】
好ましくは、本発明による抗体は、5μg/mlの濃度で、0.5μg/mlのマウスIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激されたそれぞれのマウス細胞株溶解物において、NFκB活性を、本発明による前記抗体を用いない同様のアッセイに対して70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上も阻害することを特徴とする。
【0021】
好ましくは、本発明による抗体は、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%以下、好ましくは少なくとも10%以下まで低減されたADCCを示すことを特徴とする。
【0022】
好ましくは、本発明による抗体は、野生型のIgGのFc領域を含む本発明による抗体と比較して低減された、ヒトFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAおよび/またはFcγRIに対する親和性を示し、ここで、本発明による前記抗体によって誘導されるADCCは、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%まで低減されることを特徴とする。
【0023】
好ましくは、本発明による抗体は、ADCCおよび/またはC1q結合の低減のようなエフェクター機能の低減を示す。特に、本発明は、野生型のヒトIgGのFc領域のFc多様体を含む本発明による抗体を提供し、この前記Fc多様体は、位置Pro329に1つのアミノ酸置換と、少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を含むものであり、ここで、それらの残基が、KabatのEUインデックスに従ってナンバリングされており、また、前記本発明による抗体は、野生型のIgGのFc領域を含む本発明による抗体と比較して低減された、ヒトFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAおよび/またはFcγRIに対する親和性を示し、またここで、本発明による前記抗体によって誘導されるADCCは、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%まで低減される。
【0024】
特定の一実施形態においては、前記ポリペプチドにおける野生型のヒトFc領域のPro329は、グリシンもしくはアルギニンで、またはFcのプロリン329と、FcγRIIIのトリプトファン残基Trp87およびTrp110との間に形成されるFcγ受容体境界内のプロリンサンドウィッチを破壊するのに十分に大きいアミノ酸残基で置換される(Sondermann et al.:Nature 406,267-273(20 July 2000))。本発明のさらなる一態様においては、Fc多様体における少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297DまたはP331Sからなる群から選択され、さらにもう一つの実施形態においては、前記の少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1のFc領域のL234AおよびL235AまたはヒトIgG4のFc領域のS228PおよびL235Eである。
【0025】
本発明のもう一つの態様においては、提供される本発明による抗体は、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体と比較して、ヒト受容体FcγI、FcγIIAおよびC1qを含む群の少なくとも1つのさらなる受容体に対して低減された親和性を示す。本発明のさらにもう一つの態様においては、本発明による抗体は、ヒトIgG1またはIgG4のFc領域を含む。
【0026】
本発明のさらなる一態様は、野生型のヒトIgGのFc領域のFc多様体を含み、グリ
シンで置換されたヒトIgGのFc領域のPro329を有する抗体であって、ここで、前記残基がKabatのEUインデックスに従ってナンバリングされており、またヒトFcγRIIIAおよびFcγRIIAに対する低減された親和性を示す本発明による抗体の、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%までADCCを抑制的調節するための、および/またはADCCの抑制的調節をするための使用である。
【0027】
本発明のもう一つの態様は、野生型のヒトIgGのFc領域のFc多様体を含み、グリシンで置換されたヒトIgGのFc領域のPro329を有する抗体であって、ここで、前記Fc多様体が、ヒトIgG1のFc領域のL234AおよびL235AならびにヒトIgG4のFc領域のS228PおよびL235Eでの少なくとも2つのさらなるアミノ酸置換を含み、前記残基は、KabatのEUインデックスに従ってナンバリングされており、またヒトFcγRIIIAおよびFcγRIIAに対する低減された親和性を示す本発明による抗体の、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%までADCCを抑制的調節するための、および/またはADCCの抑制的調節をするための使用である。
【0028】
本発明のもう一つの態様においては、疾患を伴う個体を、グリシンで置換されたヒトIgGのFc領域のPro329を有する本発明による抗体で処理する該個体の治療方法であって、前記残基は、KabatのEUインデックスに従ってナンバリングされており、ここで、前記本発明による抗体が、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体と比較して大きく低減されたFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAの結合を特徴とする治療方法において、前記個体に、有効量の本発明による前記抗体を投与することを含む方法が提供される。
【0029】
本発明のさらにもう一つの態様においては、前記方法で使用される本発明による抗体は、ヒトIgG1のFc領域のL234AおよびL235AまたはヒトIgG4のFc領域のS228PおよびL235Eでの少なくとも2つのさらなるアミノ酸置換を含む。
【0030】
本発明は、好ましくは、ヒトIL-1RAcPに対する抗体であって、重鎖可変(VH)領域が、配列番号1~配列番号77のVH領域からなる群から選択されるVH領域に対して少なくとも90%同一である抗体を提供する。
【0031】
本発明は、好ましくは、ヒトIL-1RAcPに対する抗体であって、軽鎖可変(VL)領域が、配列番号78~配列番号154のVL領域からなる群から選択されるVL領域に対して少なくとも90%同一であることを特徴とする抗体を提供する。
【0032】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体であって、そのVH領域が配列番号1+nのVH領域と少なくとも90%同一であり、かつそのVL領域が配列番号78+nのVL領域と少なくとも90%同一であり、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする抗体を提供する。
【0033】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体であって、そのVH領域が配列番号1+nのVH領域からなる群から選択され、かつそのVL領域が配列番号78+nのVL領域からなる群から選択され、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする抗体を提供する。
【0034】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体であって、該抗体が、配列番号155+nのCDR1H領域、配列番号232+nのCDR2H領域、および配列番号309+nのCDR3H領域を含むVH領域の群から選択されるVH領域を含み、ここで、nは、0~7
6からなる群から選択される数であることを特徴とする抗体を提供する。
【0035】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体であって、該抗体が、配列番号386+nのCDR1L領域、配列番号463+nのCDR2L領域、および配列番号540+nのCDR3L領域を含むVL領域の群から選択されるVL領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする抗体を提供する。
【0036】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体であって、該抗体が、配列番号155+nのCDR1H領域、配列番号232+nのCDR2H領域、および配列番号309+nのCDR3H領域を含むVH領域の群から選択されるVH領域を含み、かつ前記抗体が、配列番号386+nのCDR1L領域、配列番号463+nのCDR2L領域、および配列番号540+nのCDR3L領域を含むVL領域の群から選択されるVL領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする抗体を提供する。
【0037】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体であって、抗体P013.S.01.B.B03、P013.S.01.B.A05、P013.S.01.B.C04、P013.S.01.B.H01、P013.S.01.B.D03、P013.S.01.B.E02、P013.S.02.B.A04、P013.S.02.B.A05、P013.S.02.B.A02、P013.S.02.B.D03、P013.S.02.B.H01、P013.S.02.B.F01、P013.S.02.B.B04、P013.S.02.B.C02、P013.S.02.B.B05、P013.S.02.B.A03、P013.S.02.B.H03およびP013.S.02.B.G05からなる群から選択される抗体のそれぞれのCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含むVH領域およびVL領域を含むことを特徴とする抗体を提供する。
【0038】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体であって、抗体P013.S.01.B.B03、P013.S.01.B.A05、P013.S.01.B.C04、P013.S.01.B.H01、P013.S.01.B.D03、P013.S.01.B.E02、P013.S.02.B.A04、P013.S.02.B.A05、P013.S.02.B.A02、P013.S.02.B.D03、P013.S.02.B.H01、P013.S.02.B.F01、P013.S.02.B.B04、P013.S.02.B.C02、P013.S.02.B.B05、P013.S.02.B.A03、P013.S.02.B.H03およびP013.S.02.B.G05からなる群から選択される抗体のそれぞれのCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含むVH領域およびVL領域を含むことを特徴とする抗体を提供する。
【0039】
本発明は、好ましくは、ヒトIL-1RAcPに特異的に結合する抗体であって、抗体P013.S.01.B.B03、P013.S.01.B.A05、P013.S.01.B.C04、P013.S.01.B.H01、P013.S.01.B.D03、P013.S.01.B.E02、P013.S.02.B.A04、P013.S.02.B.A05、P013.S.02.B.A02、P013.S.02.B.D03、P013.S.02.B.H01、P013.S.02.B.F01、P013.S.02.B.B04、P013.S.02.B.C02、P013.S.02.B.B05、P013.S.02.B.A03、P013.S.02.B.H03およびP013.S.02.B.G05の群から選択される抗体と同じエピトープに結合する、IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害することを特徴とする抗体を提供する。
【0040】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体であって、モノクローナルウサギ抗体、ウサギ/ヒトキメラ抗体またはヒト化ウサギ抗体であることを特徴とする抗体を提供する。
【0041】
本発明は、本発明によるIL1βで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするヒトIL-1RAcPに対するモノクローナルウサギ抗体の製造方法であって、
i)前記ウサギをIL-1RAcPで免疫化した後に、前記ウサギから得られた多くの抗体産生単一細胞を単離するステップ、
ii)IL-1RAcPへの結合を、前記単一細胞の上清について個別に測定するステップ、
iii)その上清がヒトおよびマウスIL-1RAcPへの結合を示し、かつIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害する場合に、単一細胞を選択するステップ、
iv)ステップiii)の特性を有する抗体を、前記選択された細胞から単離するステップ
を特徴とする製造方法を提供する。
【0042】
好ましくは、ウサギ抗体産生単一細胞は、ウサギハイブリドーマ単一B細胞である。
【0043】
本発明は、ヒトIL-1RAcPに結合し、かつIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害するモノクローナルウサギ抗体の製造方法を提供する。
【0044】
本発明は、本発明によるモノクローナルウサギ抗体の製造方法であって、前記ウサギを前記抗原で免疫化した後に、ヒトIL-1RAcPへの結合と、IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性の阻害とが、本発明により見出される場合に、抗体産生単一細胞、好ましくはB細胞由来の細胞を前記動物から単離するか、または前記ウサギから得られたウサギハイブリドーマ細胞を単離することを特徴とする方法を提供する。
【0045】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体の、医薬組成物の製造のための使用を提供する。
【0046】
本発明は、抗体産生ウサギ単一細胞、好ましくは単一B細胞またはウサギハイブリドーマ細胞の上清であって、ヒトIL-1RAcPへと結合し、かつ本発明によるIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする上清を提供する。
【0047】
本発明は、好ましくは、本発明による抗体産生ウサギ単一細胞、好ましくは単一B細胞またはウサギハイブリドーマ細胞の上清であって、ヒトIL-1RAcPへと結合し、かつ本発明によるIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36により刺激されるNFκB活性を阻害し、ヒトIL-1RAcPへの結合、およびIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36により刺激されるNFκB活性の阻害は、前記細胞の上清について測定され、かつ前記抗体は、本発明による特性を示す場合に前記細胞から単離されることを特徴とする上清を提供する。
【0048】
本発明は、本発明によるモノクローナルウサギ抗体の製造方法であって、
i)前記ウサギを前記ターゲット抗原で免疫化した後に、前記ウサギから得られた多くの抗体産生単一細胞を単離するステップと、
ii)IL-1RAcPへの結合を、前記単一細胞の上清について個別に測定するステップと、
iii)その上清がヒトおよびマウスIL-1RAcPへの結合を示し、かつ本発明によるIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激される
NFκB活性を阻害する場合に、単一細胞を選択するステップと、
iv)抗体がステップiii)による特性を示す場合に、前記選択された細胞から抗体を単離するステップと
を特徴とする製造方法を提供する。
【0049】
好ましくは、免疫化のために使用される抗原(IL-1RAcP)は、前記抗原およびヒトFcポリペプチドからなる融合ポリペプチドである。好ましくは、ステップi)においてCFAがアジュバントとして使用される。好ましくは、ステップi)においてCFAおよびIFAが一緒にアジュバントとして使用される。
【0050】
好ましくは、ステップii)においてB細胞はウサギの血液から単離される。B細胞は、好ましくはPBMCとして単離され、マクロファージが除去される。ステップiv)においてB細胞の単離のために使用される抗原は、ターゲットタンパク質IL-1RAcPまたはその機能的断片、好ましくはその細胞外ドメインまたはその部分、その表面上に抗原を提示する細胞等である。
【0051】
好ましくはステップiii)において、免疫グロブリン、好ましくはIgGを分泌する単一B細胞は、好ましくはFACSによって分離される。好ましくは、単一B細胞を次いで、ステップiv)の実施前にフィーダー細胞で処理する。
【0052】
好ましくはステップiii)において、ヒトIL-1RAcPに特異的に結合し、かつIL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。好ましくはステップiii)において、ヒトおよびマウスのIL-1RAcPに特異的に結合し、かつマウスIL-1RAcPに誘導されるマウスNFκB活性をさらに阻害する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。
【0053】
好ましくはステップiii)において、IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするヒトIL-1RAcPに対する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。好ましくはステップiii)において、IL1αで刺激されるNFκB活性を阻害するヒトIL-1RAcPに対する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。好ましくはステップiii)において、IL1βで刺激されるNFκB活性を阻害するヒトIL-1RAcPに対する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。
【0054】
好ましくはステップiii)において、IL33で刺激されるNFκB活性を阻害するヒトIL-1RAcPに対する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。好ましくはステップiii)において、IL36で刺激されるNFκB活性を阻害するヒトIL-1RAcPに対する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。
【0055】
好ましくはステップiii)において、かつIL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-1α/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-33/ST2/IL-1RAcPおよびIL-36/IL-36R/IL-1RAcPからなる群から選択される複合体によって刺激されるNFκB活性を阻害するヒトIL-1RAcPに対する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。
【0056】
好ましくはステップiii)において、マウスIL-1RAcPに結合し、かつマウスIL-1RAcPに誘導されるマウスNFκB活性を阻害する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。
【0057】
好ましくはステップiii)において、5μg/mlの濃度(ウサギIgGアイソタイプは、150KDの分子量を有する)で、0.5μg/mlのヒトIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激された293T/17細胞溶解物(293T/17[HEK 293T/17](ATCC(登録商標)CRL-11268(商標)))において、NFκB活性を、本発明による前記抗体を用いない同様のアッセイに対して70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上も阻害する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。
【0058】
好ましくはステップiii)においては、5μg/mlの濃度で、0.5μg/mlのマウスIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激されたそれぞれのマウス細胞株溶解物において、NFκB活性を、本発明による前記抗体を用いない同様のアッセイに対して70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上も阻害する抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。
【0059】
好ましくはステップiii)において、NF-κBレポーター遺伝子の制御下にルシフェラーゼでトランスフェクションされた293T/17細胞において、mol/lのIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36、例えば抗体XXまたはそれより多くで刺激されて抗体を分泌することを特徴とする単一B細胞が分離される。
【0060】
好ましくは本発明による方法は、ステップiii)において、ヒトIL-1RAcPに特異的に結合する抗体のVH領域をコードするmRNAを含む単一B細胞を分離することを特徴とする。
【0061】
好ましくは、抗体は、ウサギモノクローナル抗体である。
【0062】
好ましくは、単一B細胞によって産生された抗体は、好ましくはELISAによって、それがそれぞれの抗原に特異的に結合するか否かについて試験される。
【0063】
好ましくは、該抗体は、それがIL-1RAcPに特異的に結合するか否かについて試験され、結合する場合に選択される。好ましくは、前記抗体は、組換え的にその核酸および/またはポリペプチド配列に基づいて製造される。
【0064】
好ましくはステップiii)において、配列番号1+nのVH領域と少なくとも90%同一である、
図2に規定されるIL-1RAcP特異的抗体のVH領域をコードするmRNAを含み、かつ配列番号78+nのVL領域と少なくとも90%同一である、IL-1RAcPに特異的に結合する抗体のVL領域をコードするmRNAを含む単一B細胞が選択され、ここで、nは、0~76の群から選択される数である。
【0065】
本発明による「nは、0~76の群から選択される数である」とは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30,31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75および76の群から選択される数を意味する。本発明による数「n」は、同じ抗体、その重鎖および軽鎖、その可変領域およびCDR領域については同一であることを意味する。
【0066】
本発明は、本明細書に記載されるアミノ酸配列に特異的に結合することを特徴とするモノクローナル抗体を含む。
【0067】
IL-1RAcP特異的抗体の重鎖可変(VH)領域は、好ましくは前記VH領域が、配列番号1~配列番号77のVH領域からなる群から選択されるVH領域に対して少なくとも90%同一であることを特徴とする。HER特異的抗体の軽鎖可変(VL)領域は、好ましくは前記VL領域が、配列番号78~配列番号154のVL領域からなる群から選択されるVL領域に対して少なくとも90%同一であることを特徴とする。本発明による抗体は、好ましくは、そのVH領域が配列番号1+nのVH領域と少なくとも90%同一であり、かつそのVL領域が配列番号78+nのVL領域と少なくとも90%同一であり、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。本発明による抗体は、好ましくは、そのVH領域が配列番号1+nのVH領域からなる群から選択され、かつそのVL領域が配列番号78+nのVL領域からなる群から選択され、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。本発明による抗体は、好ましくは、
図2に列挙される抗体からなる群から選択される抗体のそれぞれのCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含むVH領域およびVL領域を含むことを特徴とする。本発明による抗体は、好ましくは、該抗体が、配列番号155+nのCDR1H領域、配列番号232+nのCDR2H領域、および配列番号309+nのCDR3H領域を含むVH領域の群から選択されるVH領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。
【0068】
本発明による抗体は、好ましくは、該抗体が、配列番号386+nのCDR1L領域、配列番号463+nのCDR2L領域、および配列番号540+nのCDR3L領域を含むVL領域の群から選択されるVL領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。
【0069】
本発明による抗体は、好ましくは、該抗体が、配列番号155+nのCDR1H領域、配列番号232+nのCDR2H領域、および配列番号309+nのCDR3H領域を含むVH領域の群から選択されるVH領域を含み、かつ前記抗体が、配列番号386+nのCDR1L領域、配列番号463+nのCDR2L領域、および配列番号540+nのCDR3L領域を含むVL領域の群から選択されるVL領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。
【0070】
本発明はまた、組成物、B細胞、本発明による抗体の使用方法および産生方法を提供する。
【0071】
本発明による抗体は、好ましくは、前記抗体のヒト化型またはキメラ化型であることを特徴とする。好ましくは、本発明による抗体は、非相同の非ヒト配列、ヒト配列、またはヒト化された配列(例えば、フレームワーク配列および/または定常ドメイン配列)にグラフトされたウサギドナー由来の抗原結合配列を含む抗体である。好ましくは、本発明の抗体は、ウサギV領域またはウサギCDR領域およびヒトC領域および/またはフレームワークを有する。好ましくは、ウサギ軽鎖CDRを含むウサギVL領域またはヒトフレームワーク領域は、ヒトκ軽鎖定常領域に融合される。好ましくは、ウサギ重鎖CDRを含むウサギVH領域またはヒトフレームワーク領域は、ヒト定常領域、好ましくはIgG1に融合される。好ましくは、本発明は、キメラまたはヒト化されたウサギ抗体であって、可変軽鎖VL中のアミノ酸75~85の間の位置にあるシステインの代わりにセリンを含むことを特徴とする抗体に関する。
【0072】
本発明はまた、本発明による抗体を含むことを特徴とする医薬組成物を提供する。本発明はまた、本発明による抗体の、医薬組成物の製造のための使用を提供する。本発明はま
た、治療を必要とする、好ましくは癌の治療における治療を必要とする患者の治療のための本発明による抗体を提供する。本発明はまた、乳癌、結腸癌、肺癌または膵臓癌の治療のための本発明による抗体を提供する。本発明はまた、本発明による抗体の、治療を必要とする、好ましくは癌の治療における治療を必要とする患者の治療のための薬剤の製造のための使用を提供する。本発明はまた、本発明による抗体の、乳癌、結腸癌、肺癌または膵臓癌の治療のための薬剤の製造のための使用を提供する。本発明はまた、治療を必要とする、好ましくは癌の治療における、好ましくは乳癌、結腸癌、肺癌または膵臓癌の治療における治療を必要とする患者の治療において使用するための本発明による抗体を提供する。
【0073】
本発明はまた、本発明による抗体をコードする核酸を提供する。本発明はまた、原核性宿主細胞または真核性宿主細胞における本発明による抗体の発現のための本発明による核酸を含むことを特徴とする発現ベクターを提供する。本発明はまた、本発明による核酸を含む原核性宿主細胞または真核性宿主細胞を提供する。本発明はまた、本発明による抗体の製造方法であって、本発明による核酸を原核性宿主細胞または真核性宿主細胞において発現させ、そして前記細胞または細胞培養上清から前記抗体を回収することを特徴とする方法を提供する。
【0074】
好ましくは、本発明の抗体は、アンタゴニスト抗体である。
【0075】
前記VHおよび/またはVL領域または前記CDR領域を含む前記抗体の配列は、
図2に示されている。
【0076】
発明の詳細な説明
本発明による用語「ウサギ」は、分類学上のウサギ目に属する動物、科(ノウサギおよびアナウサギ)ならびにナキウサギ科(ナキウサギ)、好ましくはアナウサギ属の動物を意味する。
【0077】
用語「抗体」は、様々な抗体構造の形態、例えば制限されるものではないが、それが本発明による特性を示す限りは、全抗体および抗体フラグメントを包含する。本発明による抗体は、ウサギB細胞によって産生されたその一次形態であり、それはIL-1RAcPに結合する。したがって、本発明による抗体は、その抗原結合部、好ましくは3つのVHのCDRを含むそのVH領域および/または3つのVLのCDRを含むそのVL領域に基づきIL-1RAcPに特異的に結合する。
【0078】
本発明による用語「ウサギモノクローナル抗体」は、ウサギを免疫化することによって産生され、前記抗原産生ウサギ細胞から単離されるモノクローナル抗体だけでなく、本発明による特徴的な特性が維持される限りは、さらに改変されたそのような抗体、好ましくはヒト化抗体、キメラ抗体、そのフラグメントまたはさらに遺伝子操作されて組換え的に製造された抗体を意味する。好ましくは、抗体は、前記ウサギB細胞またはウサギのハイブリドーマ細胞に由来する。
【0079】
本発明による用語「抗体産生細胞」は、抗体産生ウサギB細胞、好ましくはB細胞またはウサギハイブリドーマ細胞を意味する。
【0080】
「ネイティブ抗体」は、通常は、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は、重鎖へと1つの共有ジスルフィド結合によって結合されるが、ジスルフィド結合の数は、種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖につき様々である。それぞれの重鎖および軽鎖はまた、規則的な間隔が置かれた鎖内ジスルフィド架橋を有する。それぞれの重鎖は、一方の端部に、多
数の定常ドメインに続く可変ドメイン(VH)を有する。それぞれの軽鎖は、一方の端部に可変ドメイン(VL)を有し、かつもう一方の端部に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一の定常ドメインと並んでおり、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの間の境界を形成すると考えられる。
【0081】
用語「VL(またはVH)領域」は、VL(またはVH)ドメインと同じ意味を有する。本発明による抗体は、その一次形態において、単純な生殖系列抗体とは異なってよい成熟抗体である。理論によって縛れるものではないが、抗原の生殖系列抗体への結合は、大きな構造的再構成をもたらすことがあり、その一方で、成熟抗体の未結合状態は、その結合状態により近づき得る。したがって、抗体の成熟形は、おそらく生殖系列の形態よりも強固な構造を有する。したがって、生殖系列抗体は、よりコンホメーション的に柔軟であり得、こうしてより遅い結合速度がもたらされる(例えば、Wedemayer GJ et al.,Science.1997 Jun 13;276(5319):1665-9; Structural insights into the evolution of an antibody combining siteを参照)。成熟抗体のより柔軟性が低いと思われる構造は、例えば可溶性または凝集の低さから改善された治療特性がもたらされるため、本発明による抗体の物理化学的特性を改善し得る。ウサギB細胞から同定される本発明による抗体は、天然由来の可変領域を有する抗体である。「天然由来」は、本発明によれば、そのような抗体が、ウサギにおいて天然に存在する可変領域の配列とそのアミノ酸配列において同一である可変領域を有することを意味する。本発明による抗体は、さらに改変されていてよく、好ましくは、ウサギ抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、それらのフラグメント、または本発明による特徴的な特性が維持される限りは、さらに遺伝子操作されて組換え的に製造された抗体である。該抗体は、さらなる剤、例えば免疫結合体である剤に結合され得る。好ましくは、本発明による抗体は、ウサギ抗体である。
【0082】
好ましくは、抗体のその一次形態は、ヒトIL-1RAcPおよびマウスIL-1RAcPに特異的に結合する。
【0083】
本発明による用語「単一細胞の上清」は、抗体産生ウサギ単一細胞、好ましくはB細胞またはウサギハイブリドーマ細胞の培養の上清を意味する。そのような上清は、本発明によるモノクローナル抗体を含む。したがって、Fc部/定常部は、天然に存在するグリコシル化状態にある。
【0084】
本発明による用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合するヒト受容体を指す。FcRは、IgG抗体に結合し、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIのサブクラスの受容体、例えばアレル多様体およびこれらの受容体の選択的スプライシングされた形態を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインにおいて免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインにおいて免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)を含む(Daeron,M.,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)のレビューを参照)。FcRIIIA(CD16a)は、ADCCに影響する。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)、Capel et
al,Immunomethods 4:25-34(1994)、およびde Haas et al,J.Lab.CHn.Med.126:330-41(1995)においてレビューされている。これらの全てのその他のFcRは、本明細書における用語「
FcR」によって包含される。その用語はまた、母親のIgGを胎児に伝える役割がある新生児受容体FcRnを含み(Guyer et al,J.Immunol.117:587(1976)およびKim et al,J.Immunol.24:249(1994))、より遅い異化に影響し、こうして半減期がより長くなる。
【0085】
「定常ドメイン(定常部)」は、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、例えばエフェクター機能も示す。ヒトIgG1に相当する重鎖定常領域は、γ1鎖と呼ばれる。ヒトIgG3に相当する重鎖定常領域は、γ3鎖と呼ばれる。ヒト定常γ重鎖は、Kabat,E.A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)およびBrueggemann,M.,et al.,J.Exp.Med.166(1987)1351-1361;Love,T.W.,et al.,Methods Enzymol.178(1989)515-527によって詳細に記載されている。IgG1またはIgG3タイプの定常ドメインは、Asn297でグリコシル化されている。本発明による「Asn297」は、Fc領域中の位置297付近にあるアミノ酸アスパラギンを意味し、抗体の僅かな配列変動に基づき、Asn297は、幾つかのアミノ酸だけ上流または下流に(通常は、+3アミノ酸以下)にあることもある。
【0086】
ヒトIgG1またはIgG3のグリコシル化は、2つまでのGal(ガラクトース)残基を終端とするコアフコシル化された二分岐複合体オリゴ糖のグリコシル化としてAsn297に存在する。これらの構造は、末端Gal残基の量に応じてG0、G1(α1,6もしくはα1,3)またはG2グリカン残基と呼ばれる(Raju,T.S.,BioProcess International 1(2003)44-53)。抗体Fc部のCHOタイプのグリコシル化は、例えばRoutier,F.H.,Glycoconjugate J.14(1997)201-207によって記載される。本発明による抗体のADCCのような細胞媒介型エフェクター機能は、Umana,P.,et al,Nature Biotechnol.17(1999)176-180,Naoko
Yamane-Ohnuki and Mitsuo Satoh,MAbs.2009;1(3):230-236および米国特許第6,602,684号明細書(US6,602,684)、国際公開第2005/044859号(WO2005/044859)、国際公開第2004/065540号(WO2004/065540)、国際公開第2007/031875号(WO2007/031875)に記載されるように、抗体のFc領域に結合されたオリゴ糖の操作(脱フコシル化)によってさらに増強され得る。そのような方法は、例えば、低減された固有α-1,6フコシル化能を有する宿主細胞、例えばLec13、つまりGMD機能が部分的に欠損したCHO細胞の多様体、またはYB2/0、つまり本来から低減されたFUT8活性を有するラット-ラットハイブリドーマ細胞の使用、α-1,6フコシル化関連遺伝子に対する低分子干渉RNA(siRNA)の導入、β-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTIII)およびゴルジα-マンノシダーゼII(ManII)の同時導入、58,83,84およびα-1,6-フコシル化の役割のあるゲノム遺伝子座の破壊である。
【0087】
本明細書で使用される用語「抗体エフェクター機能」または「エフェクター機能」は、IgGのFcエフェクタードメイン(例えば、免疫グロブリンのFc領域)によって与えられる機能を指す。そのような機能は、例えばFcエフェクタードメインが食細胞活性または細胞溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体に結合することによって、またはFcエフェクタードメインが補体系の成分に結合することによって発揮され得る。典型的なエフェクター機能は、ADCC、ADCPおよびCDCである。「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクト
な抗体とは異なる分子を指す。抗体フラグメントの例には、制限されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディー、一本鎖抗体、単鎖抗体分子(例えばscFv)、および抗体フラグメントから形成される多重特異的抗体が含まれる。
【0088】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、参照抗体のその抗原への結合を、競合アッセイにおいて50%以上だけ遮断する抗体を指し、それに対して、参照抗体は、抗体のその抗原への結合を競合アッセイにおいて50%以上だけ遮断する抗体を指す。例示的な競合アッセイは、本明細書に規定される。
【0089】
「抗体依存性細胞介在性細胞障害」および「ADCC」は、FcRを発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、ターゲット細胞に結合された抗体を認識し、その後にそのターゲット細胞の溶解を引き起こす細胞介在性反応を指す。ADCCを介在する一次細胞、つまりNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFCγRIIIを発現する。造血細胞でのFCR発現は、Ravetch,and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9(1991)457-492の第464頁の表3にまとめられている。用語「抗体依存性細胞貪食」および「ADCP」は、抗体で覆われた細胞が、全体または部分的のいずれかにおいて、免疫グロブリンFc領域に結合する食細胞性免疫細胞(例えばマクロファージ、好中球および樹状細胞)によって取り込まれる過程を指す。
【0090】
C1qは、免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドである。C1qは、2つのセリンプロテアーゼC1rおよびC1sと一緒に複合体C1、つまり補体依存性細胞障害(CDC)経路の最初の成分を形成する。ヒトC1qは、例えばQuidel(カリフォルニア州、サンディエゴ)から商業的に購入することができる。
【0091】
抗体の「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプを指す。5つの主要な抗体のクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらの幾つかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けることができる。種々のクラスの免疫グロブリンに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれa、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0092】
「エフェクター機能」は、抗体のアイソタイプで様々な、抗体のFc領域を原因とするこれらの生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、Clq結合および補体依存性細胞障害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC)、貪食(ADCP)、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下向き調節ならびにB細胞活性化が含まれる。本明細書で使用される「低減されたエフェクター機能」は、特定のエフェクター機能、例えばADCCまたはCDCのような機能が、対照(野生型Fc領域を有するポリペプチド)と比較して、少なくとも20%だけ低減されることを指し、そして本明細書で使用される「大幅に低減されたエフェクター機能」は、特定のエフェクター機能、例えばADCCまたはCDCのような機能が、対照と比較して、少なくとも50%だけ低減されることを指す。
【0093】
剤、例えば医薬製剤の「有効量」は、必要な投与量で必要な時間にわたり、所望の治療成果または予防成果に達するために有効な量を指す。
【0094】
本明細書における用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。その用語は、ネイティブな配列のFc領域および多様体のFc領域を含む。一実施形態においては、ヒトIgG重鎖のFc領域
は、Cys226から、またはPro230から重鎖のカルボキシル末端までにおよぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても存在しなくてもよい。本明細書で特に記載がない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of
Health,Bethesda,MD(1991)に記載されるEUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)によるものである。「多様体のFc領域」は、本明細書で定義される少なくとも1つの「アミノ酸改変」により、「ネイティブ」または「野生型」配列のFc領域のそれとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、多様体のFc領域は、ネイティブ配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えばネイティブ配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域において、約1から約10までのアミノ酸置換を有し、好ましくは約1から約5までのアミノ酸置換を有する。本明細書における多様体のFc領域は、好ましくは、ネイティブ配列のFc領域と、および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%のホモロジーを有し、最も好ましくはそれと少なくとも約90%のホモロジーを有し、より好ましくはそれと少なくとも約95%のホモロジーを有するものとする。
【0095】
本明細書で使用される用語「Fc多様体」は、Fcドメインに改変を含むポリペプチドを指す。本発明のFc多様体は、それらを構成するアミノ酸改変により定義される。このように、例えば、P329Gは、親Fcポリペプチドに対して位置329でプロリンがグリシンで置換されたFc多様体であり、ここで、ナンバリングは、EUインデックスによるものである。野生型アミノ酸の同一性は、未特定であってよく、その場合に上述の多様体は、P329Gと呼ばれる。本発明で論じられる全ての位置について、ナンバリングは、EUインデックスによるものである。EUインデックスまたはKabatもしくはEUナンバリングスキームでのEUインデックスは、EU抗体のナンバリングを指す(Edelman,et al.,Proc Natl Acad Sci USA 63(1969)78-85、参照によりその全体が本明細書で援用される)。改変は、付加、欠失または置換であってよい。置換は、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸を含んでよい。多様体は、非天然アミノ酸を含んでよい。例としては、米国特許第6,586,207号明細書(U.S.Pat.No.6,586,207)、国際公開第98/48032号(WO98/48032)、国際公開第03/073238号(WO03/073238)、米国特許出願公開第2004/0214988号明細書(US2004/0214988A1)、国際公開第05/35727号(WO05/35727A2)、国際公開第05/74524号(WO05/74524A2)、Chin,J.W.,et al.,Journal of the American Chemical Society 124(2002)9026-9027、Chin,J.W.,and Schultz,P.G.,ChemBioChem 11(2002)1135-1137、Chin,J.W.,et al.,PICAS United States of America 99(2002)11020-11024、ならびにWang,L.,and Schultz,P.G.,Chem.(2002)1-10が含まれ、それら全ては参照により本明細書で援用される。
【0096】
用語「Fc領域含有ポリペプチド」は、Fc領域を含むポリペプチド、例えば抗体またはイムノアドヘシン(定義は以下を参照)を指す。
【0097】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために使用される。好ましいFcRは、ネイティブ配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体を結合する受容体(γ受容体)であり、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIのサブクラスの受容体、例えばアレル多様体およびこれらの
受容体の選択的スプライシングされた形を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインにおいて免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインにおいて免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)を含む(Daeron,M,Annu.Rev.Immunol.15(1997)203-234におけるレビューを参照)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9(1991)457-492、Capel,et al,Immunomethods
4(1994)25-34、およびde Haas,et al,J.Lab.Clin.Med.126(1995)330-41においてレビューされている。その他のFcR、例えば将来的に特定されるFcRは、本発明における用語「FcR」によって包含される。その用語はまた、母親のIgGを胎児に伝える役割がある新生児受容体FcRnを含む(Guyer,et al,J.Immunol.117(1976)587およびKim,et al,J.Immunol.24(1994)249)。
【0098】
本明細書で使用される「IgGのFcリガンド」とは、IgG抗体のFc領域に結合して、Fc/Fcリガンド複合体を形成する任意の生物由来の分子、好ましくはポリペプチドを意味する。Fcリガンドには、それらに制限されるものではないが、FcγR、FcγR、FcγR、FcRn、C1q、C3、マンナン結合性レクチン、マンノース受容体、スタフィロコッカスプロテインA、ストレプトコッカスプロテインGおよびウイルス性FcγRが含まれる。Fcリガンドには、FcγRに相同であるFc受容体のファミリーであるFc受容体ホモログ(FcRH)も含まれる(Davis,et al.,Immunological Reviews 190(2002)123-136、参照によりその全体が本明細書で援用される)。Fcリガンドには、Fcを結合する未発見の分子も含まれ得る。具体的なIgGのFcリガンドは、FcRnおよびFcγ受容体である。本明細書で使用される「Fcリガンド」とは、抗体のFc領域に結合してFc/Fcリガンド複合体を形成する任意の生物由来の分子、好ましくはポリペプチドを意味する。
【0099】
本明細書で使用される「Fcγ受容体」、「FcγR」または「FcガンマR」とは、IgG抗体のFc領域に結合し、FcγR遺伝子によってコードされるタンパク質のファミリーの任意のメンバーを意味する。ヒトにおいて、このファミリーには、制限されるものではないが、FcγRI(CD64)、例えばアイソフォームFcγRIA、FcγRIBおよびFcγRIC、FcγRII(CD32)、例えばアイソフォームFcγRIIA(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIB(FcγRIIB-1およびFcγRIIB-2を含む)、およびFcγRIIc、およびFcγRIII(CD16)、例えばアイソフォームFcγRIIIA(アロタイプVI58およびF158を含む)、およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIB-NA1およびFcγRIIB-NA2を含む)(Jefferis,et al.,Immunol Lett 82(2002)57-65、参照によりその全体が本明細書で援用される)、ならびに任意の未発見のヒトFcγRまたはFcγRアイソフォームもしくはアロタイプが含まれる。FcγRは、制限されるものではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含む任意の生物由来であってよい。マウスFcγRには、制限されるものではないが、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFγRIII-2(CD16-2)ならびに任意の未発見のマウスFcγRまたはFcγRアイソフォームもしくはアロタイプが含まれる。
【0100】
本明細書で使用される「FcRn受容体」または「新生児Fc受容体」とは、IgG抗体のFc領域に結合し、FcRn遺伝子によって少なくとも部分的にコードされるタンパク質を意味する。FcRnは、制限されるものではないが、ヒト、マウス、ラット、ウサ
ギおよびサルを含む任意の生物由来であってよい。当該技術分野で公知のように、機能的FcRnタンパク質は、しばしば重鎖および軽鎖と呼ばれる2つのポリペプチドを含む。軽鎖は、β-2-マイクログロブリンであり、かつ重鎖は、FcRn遺伝子によってコードされる。本明細書で特に記載がない限り、FcRnまたはFcRnタンパク質は、FcRn重鎖とβ-2-マイクログロブリンとの複合体を指す。
【0101】
本明細書で使用される用語「IL-1RAcP特異的抗体」は、ヒトIL-1RAcPに特異的な抗体を指す。「IL-1RAcP特異的抗体」は、実施例1に規定されるVH配列、VL配列およびCDR配列に関連して、
図2に示される特異性を有する抗体を示す。したがって例えば、「そのVH領域が、配列番号1+nのVH領域からなる群から選択され、かつそのVL領域が、配列番号37+nのVL領域からなる群から選択され、ここで、nは0から3までの数であることを特徴とするIL-1RAcP特異的抗体」は、IL-1RAcP特異的抗体からなる群から選択される抗体であって、配列番号1のVH領域および配列番号37のVL領域、配列番号2のVH領域および配列番号38のVL領域、配列番号4のVH領域および配列番号40のVL領域を特徴とする抗体、ならびにIL-1RAcP特異的抗体であって、配列番号3のVH領域および配列番号39のVL領域を特徴とする抗体を意味する。
【0102】
「免疫結合体」は、1つ以上の細胞毒性剤、例えば化学療法剤、薬物、増殖抑制剤、トキシン、別の抗体または放射性同位体に結合された抗体を意味する。
【0103】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部、好ましくはその可変領域またはその少なくとも抗原結合部位を含む。抗体フラグメントの例には、ダイアボディー、Fabフラグメント、および単鎖抗体分子が含まれる。scFv抗体は、例えばHuston,J.S.,Methods in Enzymol.203(1991)46-88に記載されている。
【0104】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一のアミノ酸組成の抗体分子の調製物を指す。用語「キメラ抗体」は、ウサギ由来の可変領域、すなわち結合領域と、異なる起源または種から得られた定常領域の少なくとも一部とを含み、通常は組換えDNA技術によって製造されたモノクローナル抗体を指す。本発明によれば、ウサギの可変領域およびヒトの定常領域を含むキメラ抗体ならびにヒト化されたウサギ抗体が特に好ましい。本発明によって包含される「キメラ抗体」のその他の形態は、クラスまたはサブクラスが本来の抗体のそれから変更または変化されている抗体である。そのような「キメラ」抗体は、「クラススイッチ抗体」とも呼ばれる。キメラ抗体の製造方法は、当該技術分野で目下良く知られている従来の組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション技術を含む(例えばMorrison,S.L.,et
al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(1984)6851-6855、米国特許第5,202,238号明細書(US5,202,238)および米国特許第5,204,244号明細書(US5,204,244)を参照)。
【0105】
用語「ヒト化抗体」または「抗体のヒト化型」は、ヒト可変領域が本発明による抗体のCDRを含むように改変された抗体を指す。好ましい一実施形態においては、VHおよびVLのCDRをヒト抗体のフレームワーク領域中にグラフトさせることで、「ヒト化抗体」が製造される(例えばRiechmann,L.,et al,Nature 332(1988)323-327、およびNeuberger,M.S.,et al,Nature 314(1985)268-270を参照)。重鎖および軽鎖の可変フレームワーク領域は、同じまたは異なるヒト抗体配列から得ることができる。ヒト抗体配列は、天然に存在するヒト抗体の配列であってよい。ヒトの重鎖および軽鎖の可変フレームワーク領域は、例えばLefranc,M.-P.,Current Protocols
in Immunology(2000) - Appendix IP A.1P.1-A.1P.37に列挙されており、IMGT,the international ImMunoGeneTics information system(登録商標)(http://imgt.cines.fr)またはhttp://vbase.mrc-cpe.cam.ac.ukを介して利用可能である。
【0106】
好ましくは、本発明は、キメラまたはヒト化されたウサギ抗体であって、可変軽鎖VL中のアミノ酸75~85の間の位置にあるシステインの代わりにセリンを含むことを特徴とする抗体に関する。
【0107】
本明細書で使用される用語「組換え抗体」は、組換え的手段によって製造される本発明による全ての抗体、宿主細胞にトランスフェクションされた組換え発現ベクターを使用して、例えばNS0またはCHO細胞のような宿主細胞から製造された抗体を含むと解釈される。そのような組換えヒト抗体は、再構成された形で可変領域および定常領域を有する。
【0108】
本明細書で使用される用語「ターゲットまたは抗ターゲット抗体に対して特異的に結合する」は、それぞれの抗原(ターゲット)への抗体の結合であって、ELISAによって測定される結合を指す。その際、前記ELISAは、好ましくは、それぞれの抗原を固体担体に被覆し、前記抗体を、それぞれの抗原またはタンパク質との免疫複合体を形成可能な条件下で添加し、前記免疫複合体を、本発明による抗体に結合する二次抗体を使用し、かつペルオキシダーゼを媒介する発色を使用して光学密度値(OD)を測定することによって検出することを含む。本発明による用語「抗原」は、免疫化のために使用される抗原または前記抗原をそのタンパク質配列の部分として含むタンパク質を指す。例えば、免疫化のためには、タンパク質の細胞外ドメインの断片(例えば、最初の20アミノ酸)を使用することができ、そして検出/アッセイ等のためには、タンパク質の細胞外ドメインまたは全長タンパク質を使用することができる。
【0109】
本明細書における用語「特異的に結合する」または「特異的に認識される」は、抗体が、抗原に対してはっきりと認められる親和性を示し、好ましくは大きな交差反応性を示さないことを意味する。「はっきりと認められる」結合親和性には、少なくとも107M-1
の、特に少なくとも108M-1の、より具体的には少なくとも109M-1の、またはなおもさらにより具体的には少なくとも1010M-1の親和性を有する結合が含まれる。「大きな交差反応性を示さない」抗体は、不所望なその他のタンパク質に、はっきりと認められる結合を示さない抗体である。本発明によるエピトープに特異的な抗体は、例えばIL-1RAcP上のその他のエピトープと大きな交差反応性を示さない。特異的な結合は、そのような結合の測定のために当該技術分野で認められる任意の手段に従って測定することができる。幾つかの実施形態においては、特異的な結合は、競合結合アッセイ(例えばELISA)によって測定される。
【0110】
本明細書で使用される用語「IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害する」は、ルシフェラーゼレポーター実験においてNFκB活性を阻害することを指す。NF-κB-REホタルルシフェラーゼレポーターを発現する293T/17[HEK 293T/17](ATCC(登録商標)CRL-11268(商標))細胞は、ポリ-D-リジン-細胞培養プレートに播種される。IL-1RAcPの刺激後に、細胞溶解物を、活性化されたNF-κBについてSteady-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイキット(Promega Corp.米国、マディソン)を使用して試験する。機能的抗体を含む上清は、IL-1RAcPに結合し、NF-κB活性化を阻害し、それは低いシグナルで示される。Steady-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイキットは、https://www.promega.de/resources/proto
cols/technical-manuals/0/steady-glo-luciferase-assay-system-protocol、およびAlam,J.and Cook,J.L.(1990)Anal.Biochem.188,245-54、Wood,K.V.(1991) In:Bioluminescence and
Chemiluminescence:Current Status,Stanley,P.,and Kricka,L.,eds.,John Wiley and Sons,Chichester,NY,543、Ow,D.W.et al.(1986).Science 234,856-9、De Wet,J.R.et al.(1987)Mol.Cell.Biol.7,725-37、Wood,K.V.(1990)PromegaNotes 28,1-3、Wood,K.V.(1991) In:Bioluminescence and Chemiluminescence:Current Status,Stanley,P.and Kricka,L.,eds.,John Wiley and Sons,Chichester,NY,11、ならびに米国特許第5283179号明細書(US5283179)、米国特許第5641641号明細書(US5641641)、米国特許第5650289号明細書(US5650289)に記載されている。
【0111】
本発明による抗体は、VH領域およびVL領域またはそれらの部分を含み、それらは、2つが一緒になってそれぞれの抗原に特異的に結合するために十分である。
【0112】
本明細書で使用される全てのタンパク質という用語は、ヒトのタンパク質を指す。別の種由来のタンパク質を意味する場合に、このことは明確に述べられる。
【0113】
本明細書で使用される用語「IL-1RAcP」は、IL-36シグナル伝達系におけるIL1RL2についての補助受容体(類似性による)であるヒトIL-1RAcP(UniProtKB Q9NPH3)を指す。IL-1シグナル伝達系において、IL1R1に関する補助受容体は、IL1R1と会合してIL1Bに結合され、NF-κBのインターロイキン-1依存性活性化およびその他の経路に影響する高親和性インターロイキン-1受容体複合体を形成する(UniProtKB)。本明細書で使用される用語「マウスIL-1RAcP」は、マウスIL-1RAcP(UniProtKB Q61730)を指す。
【0114】
本明細書で使用される用語「IL-1α」は、ヒトIL-1(UniProtKB P01583)を指す。本明細書で使用される用語「IL-1β」は、ヒトIL-1β(UniProtKB P01584)を指す。IL-1は、IL-2放出、B細胞成熟および増殖、ならびに線維芽細胞成長因子活性を誘導することによって胸腺細胞増殖を刺激する。IL-1タンパク質は、炎症応答に関与し、内因性発熱物質として特定されている(UniProtKB)。
【0115】
本明細書で使用される用語「IL-33」は、ヒトIL-33(UniProtKB O95760)、つまりIL1RL1/ST2受容体に結合し、それを通じてシグナルを伝達し、そのシグナルがまたターゲット細胞におけるNF-κBおよびMAPKシグナル伝達経路を活性化するサイトカインを指す。
【0116】
本明細書で使用される用語「IL-36」は、ヒトIL-36α(UniProtKB
Q9UHA7)、IL-36β(UniProtKB Q9NZH7)および/またはIL-36γ(UniProtKB Q9NZH8)を指す。IL-36は、IL1RL2/IL-36R受容体に結合し、それを通じてシグナルを伝達し、そのシグナルがまたターゲット細胞におけるNF-κBおよびMAPKシグナル伝達経路を活性化して、炎症性応答につながるサイトカインである。IL-36シグナル伝達系の部分は、補助受容体
IL1RAPを共用するIL-1系と同様に、上皮バリアに存在し、局所的炎症応答に関与すると考えられている。IL-36は、角化細胞、樹状細胞に作用し、そしてT細胞に間接的に作用して、組織浸潤、細胞成熟および細胞増殖を駆動することによって、皮膚炎症応答に関与すると考えられている(UniProtKB)。
【0117】
本明細書で使用される用語「NFκB」は、ヒト核因子NF-κBを指し、それは、p105サブユニット(P19838)およびp100サブユニット(Q00653)からなる。「NFκBの阻害」は、本発明によれば、ヒト細胞におけるNFκB依存性ルシフェラーゼ遺伝子発現の阻害として測定される。そのような方法は、例えばWindheim M.et al.,Mol.Cell.Biol.28(2008)1783-1791、Huang J.et al.PNAS USA 94(1997)12829-12832、Xiaoxia L.et al.,Mol.Cell,Biol.19(1999)4643-4652に記載されている。293T/17細胞におけるIL1βに誘導されるNFκB発現の阻害として本発明により使用される方法は、本特許出願の実施例部に記載されている。マウスNFκBを意味する場合に、本明細書ではそれは明確に述べられる。
【0118】
本明細書で使用される「本発明による抗体の可変領域(またはドメイン)」(軽鎖の可変領域(VL)、重鎖の可変領域(VH))は、抗体の抗原に対する結合に直接的に関与する軽鎖領域および重鎖領域のそれぞれの組を示す。可変軽鎖領域および可変重鎖領域は、同じ一般構造を有し、それぞれの領域は、3つの相補性決定領域(CDR)によって連結されている、配列が大幅に保存された4つのフレームワーク(FR)領域を含む。用語「抗体の抗原結合部」は、本明細書で使用される場合に、抗原結合の役割を担う抗体のアミノ酸残基を指す。抗体の抗原結合部は、好ましくは、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基を含む。CDR配列は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National
Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)により定義される。このナンバリングシステムを使用して、事実上線状のアミノ酸配列は、可変領域のFRまたはCDRの短縮またはそこへの挿入に相当するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含んでよい。例えば、重鎖可変領域は、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)を含んでよく、かつ重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばKabatによる残基82a、82bおよび82c等)を含んでよい。残基のKabatナンバリングは、所定の抗体について、該抗体の配列と「標準の」Kabatナンバリングされた配列とのホモロジーの領域でのアライメントによって決定することができる。本発明による抗体の重鎖の可変ドメインは、単一の免疫グロブリンドメインから構成されており、約110~120アミノ酸長である。本発明による抗体の軽鎖の可変ドメインは、単一の免疫グロブリンドメインから構成されており、約110~120アミノ酸長である。
【0119】
一実施形態においては、本発明による抗体は、ヒト起源から得られるFc部または定常重鎖部および軽鎖部を含み、好ましくはヒト定常領域の全ての部分を含んでいる。本明細書で使用される場合に、用語「ヒト起源から得られるFc部」は、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のヒト抗体のFc部、例えばヒトIgG1サブクラス由来のFc部、ヒトIgG1サブクラス由来の変異したFc部(好ましくはL234A+L235Aに変異を有する)、ヒトIgG4サブクラス由来のFc部またはヒトIgG4サブクラス由来の変異したFc部(好ましくはS228Pに変異を有する)のいずれかであるFc部を示す。一実施形態においては、本発明による抗体は、ヒトIgG1サブクラスの抗体である。ヒト定常鎖は、従来技術において良く知られており、例えばKabat,E.A.(例えばJohnson,G.and Wu,T.T.,Nucleic A
cids Res.28(2000)214-218を参照)に記載されている。
【0120】
一実施形態においては、本発明による抗体は、本発明によるVH配列の群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%>、93%>、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)配列を含む。特定の実施形態においては、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば保存的置換)、挿入または欠失を含み、それによっても、該抗体は、本発明によりそれぞれの抗原に特異的に結合する能力を保持する。特定の実施形態においては、全部で1個~10個のアミノ酸が、前記VH配列のそれぞれにおいて置換、挿入および/または欠失されている。特定の実施形態においては、置換、挿入または欠失は、CDR外部の領域に(すなわちFRにおいて)存在する。
【0121】
一実施形態においては、本発明による抗体は、本発明によるVL配列のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、nは、0から5までの数である。特定の実施形態においては、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば保存的置換)、挿入または欠失を含み、それによっても、該抗体は、それぞれの抗原に特異的に結合する能力を保持する。特定の実施形態においては、全部で1個~10個のアミノ酸が、前記VL配列において置換、挿入および/または欠失されている。特定の実施形態においては、置換、挿入または欠失は、CDR外部の領域に(すなわちFRにおいて)存在する。本発明はまた、当該技術分野で公知の方法により製造することができる親和性成熟抗体を含む。Marks et al.Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載している。CDRおよび/またはフレームワーク残部のランダム変異誘導は、Barbas et al.,Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809-3813(1994)、Schier et al.,Gene 169:147-155(1995)、Yelton et al.,J.Immunol.1 55:1994-2004(1995)、Jackson et al.,J.Immunol.1 54(7):3310-9(1995)、およびHawkins et al.,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)ならびに国際公開第2010108127号(WO2010108127)によって記載されている。ペプチド配列またはポリペプチド配列に対する「パーセント(%)のアミノ酸配列同一性」は、配列のアライメントを行い、ギャップを導入し、必要であれば、最大パーセントの配列同一性を達成した後に、保存的置換を配列同一性の部分として一切考慮せずに、特定のペプチドまたはポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントのアミノ酸配列同一性を測定するためのアライメントは、当該技術分野における技能の範囲内である様々な方式で、例えば公共利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成することができる。
【0122】
本発明による抗体は、好ましくは組換え的手段によって生成される。そのような方法は、従来技術において広く知られており、原核細胞および真核細胞におけるタンパク質発現に引き続き、抗体ポリペプチドを単離し、通常は医薬品に許容可能な純度にまで精製することを含む。タンパク質発現のために、本発明による抗体またはそのフラグメントの軽鎖および重鎖をコードする核酸は、標準的方法によって発現ベクター中に挿入される。発現は、適切な原核性宿主細胞または真核性宿主細胞、例えばCHO細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、酵母またはE.コリ細胞において行われ、
かつ抗体は、該細胞から(上清からまたは細胞溶解後に)回収される。抗体の組換え的製造は、従来技術においてよく知られており、例えばMakrides,S.C.,Protein Expr.Purif.17(1999)183-202、Geisse,S.,et al,Protein Expr.Purif.8(1996)271-282、Kaufman,R.J.,Mol.Biotechnol.16(2000)151-161、Werner,R.G.,Drug Res.48(1998)870-880のレビュー論文において記載されている。抗体は、全細胞中に、細胞溶解物中に、または部分的に精製された形で、もしくは純粋な形で存在してよい。精製は、その他の細胞成分またはその他の夾雑物、例えばその他の細胞性核酸またはタンパク質を、標準的な技術によって、例えばカラムクロマトグラフィーおよび当該技術分野で良く知られるその他の技術(Ausubel,F.,et al,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing
and Wiley Interscience,New York(1987)を参照)によって排除するために行われる。NSO細胞における発現は、例えばBarnes,L.M.,et al,Cytotechnology 32(2000)109-123、Barnes,L.M.,et al,Biotech.Bioeng.73(2001)261-270によって記載される。一過性発現は、例えばDurocher,Y.,et al,Nucl.Acids.Res.30(2002)E9によって記載される。可変ドメインのクローニングは、Orlandi,R.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)3833-3837、Carter,P.,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992)4285-4289、Norderhaug,L.,et al,J.Immunol.Methods 204(1997)77-87によって記載される。好ましい一過性発現系(HEK 293)は、Schlaeger,E.-J.およびChristensen,K.によってCytotechnology 30(1999)71-83において記載され、かつSchlaeger,E.-J.によってJ.Immunol.Methods 194(1996)191-199において記載される。モノクローナル抗体は、慣用の免疫グロブリン精製手順、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーまたは親和性クロマトグラフィーによって培養培地から適宜分離される。
【0123】
モノクローナル抗体をコードするDNAおよびRNAは、慣用の手順を使用してシーケンシングされる。RT PCRを使用することが好ましい。
【0124】
前記細胞株から得られる抗体は、本発明の好ましい実施形態である。抗体のアミノ酸配列多様体は、該抗体をコードするDNA中にヌクレオチド変化を導入するか、またはペプチド合成によって製造される。抗体の適切なコンホメーションを維持することに関与しない全てのシステイン残基は、分子の酸化的安定性を改善し、異常な架橋を抑えるために、一般的にセリンで置換されてもよい。その反対に、1つ以上のシステイン結合を、その安定性を改善するために抗体に付加してよい(特に、抗体がFvフラグメントのような抗体フラグメントである場合)。
【0125】
本発明による重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、プロモーター、翻訳開始領域、定常領域、3’非翻訳領域、ポリアデニル化および転写終結の配列と組み合わされることで、発現ベクター構築物を形成する。重鎖および軽鎖の発現構築物は、単一のベクター中で組み合わされ、宿主細胞中に、同時トランスフェクションされ、連続トランスフェクションされ、または別々にトランスフェクションされ、次いで融合されて、両方の鎖を発現する単一の宿主細胞が形成され得る。
【0126】
本発明の一態様は、本発明による抗体を含む医薬組成物である。本発明のもう一つの態
様は、本発明による抗体の、医薬組成物の製造のための使用である。本発明のさらなる一態様は、本発明による抗体を含む医薬組成物の製造方法である。もう一つの態様においては、本発明は、本発明による抗体を含有し、医薬品担体と一緒に製剤化された組成物、例えば医薬組成物を提供する。
【0127】
さらに、本発明による抗体は、ターゲットの調節障害が根底にある理由である疾患の治療のために特に有用である。本発明の一態様は、癌の治療のための医薬組成物である。
【0128】
本発明のもう一つの態様は、癌の治療のための本発明による抗体である。このために、本発明による抗体は、それぞれのマウス腫瘍モデルにおいて、例えばKrupke DM;Begley DA;Sundberg JP;Bult CJ;Eppig JT,The Mouse Tumor Biology database.,Nat Rev Cancer 2008 Jun;8(6):459-65に従って調査され得る。したがって、本発明の一態様は、癌の治療のための医薬組成物である。
【0129】
本発明のもう一つの態様は、癌の治療のための本発明による抗体である。
【0130】
本発明のもう一つの態様は、本発明による抗体の、癌の治療のための薬剤の製造のための使用である。
【0131】
本発明のもう一つの態様は、癌を患う患者の治療方法であって、本発明による抗体をそのような治療を必要とする前記患者に投与することにより行う治療方法である。
【0132】
本明細書で使用される場合に、「医薬用担体」には、生理学的に適合性の任意の全ての溶剤、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、該担体は、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与または表皮投与(例えば注射または注入による)のために適している。
【0133】
本発明の組成物は、当該技術分野で公知の様々な方法によって投与することができる。当業者に明らかであるように、投与の経路および/または方式は、所望の成果に応じて様々であるものとする。特定の投与経路により本発明の化合物を投与するために、該化合物を、その不活性化を抑制する材料で被覆するか、または該化合物を前記材料と一緒に同時投与する必要がある場合がある。例えば、前記化合物は、被験体に適切な担体、例えばリポソームまたは希釈剤中で投与することができる。医薬品に許容可能な希釈剤には、生理食塩水および水性緩衝液が含まれる。医薬用担体には、滅菌水溶液または滅菌水性分散液ならびに滅菌の注射可能な溶液または分散液の即時調合調製物の滅菌粉末が含まれる。医薬品作用物質用のそのような媒体および剤の使用は、当該技術分野で公知である。
【0134】
本明細書で使用される文言「非経口投与」および「非経口投与される」は、腸内投与および局所投与とは異なる投与方式を意味し、通常は注射による投与方式を意味し、それには、制限されるものではないが、静脈内、筋内、動脈内、髄内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内の注射および注入が含まれる。
【0135】
本明細書で使用される用語「癌」は、例えば、肺癌、非小細胞肺(NSCL)癌、細気管支肺胞上皮細胞肺癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頚部癌、皮膚または眼内の黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、輸卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、頚部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の悪性腫瘍、ホジキン病、食道癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟部組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、前立腺癌、膀胱の癌、腎臓または尿管の癌、腎細胞癌腫、腎盂
の癌腫、中皮腫、肝細胞癌、胆管癌、中枢神経系(CNS)の腫瘍、脊髄軸癌、脳幹膠腫、多形性膠芽腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ球性白血病、例えば前記癌のいずれかの難治型、または前記癌の1つ以上の組み合わせであってよい。好ましくは、そのような癌は、乳癌、結腸癌、肺癌または膵臓癌である。
【0136】
これらの組成物は、補助剤、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含有してもよい。微生物の存在の抑制は、上記の滅菌手順と、様々な抗細菌剤および抗菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含めることの両者によって保証することができる。また、等張剤、例えば糖類、塩化ナトリウム等を該組成物中に含めることが望ましいこともある。さらに、注射可能な医薬品形の持続吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによって惹起することができる。選択された投与経路にかかわらず、適切な水和形で使用することができる本発明の化合物および/または本発明の医薬組成物は、当業者に公知の慣用の方法によって医薬品に許容可能な剤形に製剤化される。本発明の医薬組成物中の有効成分の事実上の用量レベルは、特定の患者、組成物、および投与方式のために望ましい治療応答を達成するために有効であるが、患者に毒性でない有効成分の量が得られるように様々であってよい。選択された用量レベルは、様々な薬物動態学的要因、例えば使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用されるその他の薬物、化合物および/または材料、年齢、性別、体重、容態、治療される患者の一般的な健康履歴および過去の病歴ならびに医学分野で良く知られる同様の要因に依存することとなる。
【0137】
本発明による方法は、まとめると、免疫化のステップ、B細胞単離のステップ、B細胞の濃縮のステップ、単一B細胞の単離のステップ、好ましくはフィーダー細胞との同時培養のステップ、それぞれのmRNAを含む単一B細胞の選択のステップ、および本発明による抗体の製造のステップを含む。そのような方法は、単一特異的抗体の製造について、例えば国際公開第2011147903号(WO2011147903)、国際公開第2007003041号(WO2007003041)、国際公開第2008045140号(WO2008045140)、国際公開第2004106377号(WO2004106377)、欧州特許出願公開第1255780号明細書(EP1255780)および欧州特許出願公開第1633787号明細書(EP1633787)で述べられている。
【0138】
免疫化
免疫化は、従来技術から公知の方法に従って、例えばターゲット抗原またはその断片、完全なタンパク質抗原またはその断片、抗原発現細胞のDNAを使用することによって実施することができる。好ましくは、IL-1RAcP抗原は、前記抗原およびヒトFcポリペプチドからなる融合ポリペプチドである。好ましくは、ステップi)における免疫化は、少なくとも3回、適宜6回まで90日間の間に繰り返される(本発明による抗体が、例えば4回目の免疫後に既に特定されている場合に、さらなる免疫化は必要ない)。好ましくは、完全フロイントアジュバント(CFA)またはCFAおよび不完全フロイントアジュバント(IFA)がアジュバントとして使用される。
【0139】
B細胞の単離
B細胞は、ウサギから、好ましくはウサギの血液から単離される。B細胞は、3回目ないし6回目の免疫化の後、8日目までに、好ましくは5日目~7日目に単離される。好ましくは、PBMCを単離し、マクロファージが除去され(例えば欧州特許第0488470号明細書(EP0488470)を参照)、そしてB細胞として使用される。B細胞の単離は、例えばまた、非B細胞を非B細胞マーカー、例えば抗CD2抗体、抗CD14抗
体、抗CD16抗体、抗CD36抗体、抗CD43抗体および抗CD235a抗体で標識し、そして標識された非B細胞を標識されていないB細胞から分離することによって実施することもできる。
【0140】
B細胞の濃縮
抗体を産生しかつ抗原特異的なB細胞は、好ましくは、B細胞を、免疫化に使用されるIL-1RAcP抗原またはそれぞれの抗原を発現する細胞で処理することによって単離(濃縮)される。好ましくは、該抗原および該抗原を発現する細胞は、固定化された方式で使用されるため、その抗原特異的B細胞は、簡単に分離することができる。そのような方法は、例えばKodituwakko AP et al.,Immunol.Cell Biol.(2003)81,163-170および欧州特許第0488470号明細書(EP0488470)に記載されている。
【0141】
単一B細胞の単離
ウサギ単一B細胞の単離は、好ましくはFACSによって行われる。好ましくは、FACS選択のために、抗ウサギIgGが使用される。そのような選択された単一B細胞は、抗体産生B細胞である。
【0142】
フィーダー細胞との同時培養
好ましくは、抗原産生B細胞は、選択ステップ(以下参照)が実施される前にフィーダー細胞と同時培養される。そのようなフィーダー細胞は、好ましくは、胸腺腫細胞株、例えばマウスEL4胸腺腫細胞株であって、好ましくは変異誘導されている細胞株であり、好ましくは、胸腺腫細胞株は、ブロモデオキシウリジン耐性変異体へと変異誘導されている(例えば、EL4-B5細胞、Wen L.et al.,Eur.J.Immunol.17(1987)887-92)。これは、細胞上清中の抗体量を増加させ(例えばZubler,R.H.,et al.,Eur.J.Immunol.14(1984)357-63、Wen L.et al.,Eur.J.Immunol.17(1987)887-92、Hoffmann P et al.,J Immunol.Methods 1996;196(1):85-91、Roy A.et al.,J Hematother.Stem Cell Res.2001;10(6):873-80、Dlu A.et al.,Proc.Nati.Acad.Sci.USA Vol.84,pp.9140-9144,1987、および欧州特許第0488470号明細書(EP0488470)を参照)、そして分泌されたウサギ抗体の分析および選択を容易にする。
【0143】
mRNAを含む単一B細胞の選択
本発明による抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコードするmRNAを含む単一B細胞の選択は、好ましくはフィーダー細胞と同時培養した後に、免疫化のために使用されたIL-1RAcP抗原に特異的に結合する分泌されたウサギ抗体について細胞上清を分析することによって実施することができる。分析は、好ましくはELISAによって行われる。次いで、免疫グロブリン配列を、選択された単一ヒトB細胞から、例えばde Wildt RM,Hoet RM.Methods Mol.Biol.2002;178:121-31に従って回収し、そして例えばRT PCRによって分析することができる。
【0144】
単一B細胞によって発現される本発明による抗体の製造は、組換え的手段によって行うことができる。
【0145】
本明細書に記載されるまたは参照される技術および手順は、例えば、Sambrook
et al.,Molecular Cloning:A Laboratory M
anual 3rd.edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubel,et al.eds.,(2003));the series METHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney,ed.(1987))に記載される広く用いられる方法である。
【0146】
本発明により適切なチャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞または細胞株は、チャイニーズハムスター(モンゴルキヌゲネズミ)の卵巣組織から確立された細胞株である任意の細胞である。例としては、Journal of Experimental
Medicine,108,945(1958)、Proc.Nat Acad.Sci.USA,60,1275(1968)、Genetics,55,513(1968)、Chromosoma,41,129(1973)、Methods in Cell Science,18,115(1996)、Radiation Research,148,260(1997)、Proc.Nat Acad.Sci.USA,77,4216(1980)、Proc.Nat Acad.Sci.,60,1275(1968)、Cell,6,121(1975)、Molecular Cell Genetics,Appendix I,II(pp.883-900)等のような文献に記載されるCHO細胞が含まれる。さらに、ATCC(アメリカ合衆国培養細胞株保存機関)に登録されたCHO-K1(ATCC CCL-61)、DUXB1 1(ATCC CCL-9096)およびPro-5(ATCC CCL-1781)ならびにCHO-S(Life Technologies,カタログ番号11619)または該細胞株を様々な培地を使用して適合させることによって得られた亜細胞株を、本発明において使用してもよい。
【0147】
以下に、本発明の具体的な実施形態を列挙する。
【0148】
本発明は、ヒトIL-1RAcPに特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。
【0149】
そのモノクローナル抗体は、好ましくは、マウスIL-1RAcPにさらに結合することを特徴とする。
【0150】
そのモノクローナル抗体は、さらに好ましくは、IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0151】
そのモノクローナル抗体は、さらに好ましくは、マウスIL-1RAcPに誘導されるマウスNFκB活性をさらに阻害することを特徴とする。
【0152】
そのモノクローナル抗体は、さらに好ましくは、IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36で刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0153】
前記抗体は、IL-1αで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0154】
前記抗体は、さらにIL-1βで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0155】
前記抗体はまた、IL-33で刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0156】
前記抗体は、さらにIL-36で刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0157】
その抗体は、IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-1α/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-33/ST2/IL-1RAcPおよびIL-36/IL-36R/IL-1RAcPからなる群から選択される複合体によって刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0158】
前記抗体は、5μg/mlの濃度(ウサギIgGアイソタイプは、150KDの分子量を有する)で、0.5μg/mlのヒトIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激された293T/17細胞溶解物(293T/17[HEK 293T/17](ATCC(登録商標)CRL-11268(商標)))において、NFκB活性を、本発明による前記抗体を用いない同様のアッセイに対して70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上も阻害することを特徴とする。
【0159】
好ましくは、前記抗体は、5μg/mlの濃度で、0.5μg/mlのマウスIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激されたそれぞれのマウス細胞株溶解物において、NFκB活性を、本発明による前記抗体を用いない同様のアッセイに対して70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上も阻害することを特徴とする。
【0160】
その抗体は、IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36のそれぞれで刺激されたルシフェラーゼ活性を、293T/17細胞(NF-κBレポーター遺伝子の制御下にルシフェラーゼでトランスフェクションされた293T/17-FR細胞)において阻害する。
【0161】
その抗体はまた、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%まで低減されたADCCを示すことを特徴とする。
【0162】
好ましくは、その抗体は、野生型のIgGのFc領域を含む本発明による抗体と比較して低減された、ヒトFcγRIIIAおよび/またはFcγRIIAおよび/またはFcγRIに対する親和性を示し、ここで、本発明による前記抗体によって誘導されるADCCは、野生型のヒトIgGのFc領域を含む本発明による抗体によって誘導されるADCCの少なくとも20%まで低減されることを特徴とする。
【0163】
前記抗体は、ヒトIgG1のFc領域のL234AおよびL235AまたはヒトIgG4のFc領域のS228PおよびL235Eでのアミノ酸置換を少なくとも含むことを特徴とする。
【0164】
前記抗体は、さらに、重鎖可変(VH)領域が、配列番号1~配列番号77のVH領域からなる群から選択されるVH領域に対して少なくとも90%同一であることを特徴とする。
【0165】
前記抗体は、好ましくは、軽鎖可変(VL)領域が、配列番号78~配列番号154のVL領域からなる群から選択されるVL領域に対して少なくとも90%同一であることを
特徴とする。
【0166】
前記抗体はまた、好ましくは、そのVH領域が配列番号1+nのVH領域と少なくとも90%同一であり、かつそのVL領域が配列番号78+nのVL領域と少なくとも90%同一であり、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。
【0167】
本発明による抗体であって、該抗体が、配列番号214、配列番号216、配列番号219、配列番号220、配列番号221、配列番号228、配列番号156、配列番号159、配列番号183、配列番号164、配列番号163、配列番号161、配列番号157、配列番号155、配列番号174、配列番号166、配列番号173、配列番号177、配列番号158から選択される重鎖CDRH1配列、配列番号291、配列番号293、配列番号296、配列番号297、配列番号298、配列番号305、配列番号233、配列番号236、配列番号260、配列番号241、配列番号240、配列番号238、配列番号234、配列番号232、配列番号251、配列番号243、配列番号250、配列番号254、配列番号235の群から選択されるCDRH2配列および配列番号368、配列番号370、配列番号373、配列番号374、配列番号375、配列番号382、配列番号310、配列番号313、配列番号337、配列番号318、配列番号317、配列番号315、配列番号311、配列番号309、配列番号328、配列番号320、配列番号327、配列番号331、配列番号312の群から選択されるCDRH3配列のそれぞれを含むVH領域を含むことを特徴とする抗体が好ましい。
【0168】
また、配列番号445、配列番号447、配列番号450、配列番号451、配列番号452、配列番号459、配列番号387、配列番号390、配列番号414、配列番号395、配列番号394、配列番号392、配列番号388、配列番号386、配列番号405、配列番号397、配列番号404、配列番号408、配列番号389の群から選択される軽鎖CDRL1配列、配列番号522、配列番号524、配列番号527、配列番号528、配列番号529、配列番号536、配列番号464、配列番号467、配列番号491、配列番号472、配列番号471、配列番号469、配列番号465、配列番号463、配列番号482、配列番号474、配列番号481、配列番号485、配列番号466の群から選択されるCDRL2配列、および配列番号599、配列番号601、配列番号604、配列番号605、配列番号606、配列番号613、配列番号541、配列番号544、配列番号568、配列番号549、配列番号548、配列番号546、配列番号542、配列番号540、配列番号559、配列番号551、配列番号558、配列番号562、配列番号543の群から選択されるCDRL3配列のそれぞれを含むVL領域を含むことを特徴とする抗体も好ましい。
【0169】
さらなる一実施形態においては、前記抗体は、そのVH領域が、配列番号1~配列番号77のVH領域からなる群から選択されることを特徴とする。
【0170】
また、前記抗体は、そのVL領域が、配列番号78~配列番号154のVL領域からなる群から選択されることを特徴とする。
【0171】
VH領域が配列番号60、配列番号62、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号74、配列番号2、配列番号5、配列番号29、配列番号10、配列番号9、配列番号7、配列番号3、配列番号1、配列番号20、配列番号12、配列番号19、配列番号23、配列番号4のVH領域からなる群から選択されることを特徴とする抗体がさらに好ましい。
【0172】
好ましくは、重鎖可変領域(VH)配列は、配列番号60、あるいは配列番号62、ま
たは配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号74、配列番号2、配列番号5、配列番号29、配列番号10、配列番号9、配列番号7、配列番号3、配列番号1、配列番号20、配列番号12、配列番号19、配列番号23、あるいは配列番号4である。
【0173】
VL領域が配列番号137、配列番号139、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号151、配列番号79、配列番号82、配列番号106、配列番号87、配列番号86、配列番号84、配列番号80、配列番号78、配列番号97、配列番号89、配列番号96、配列番号100、配列番号81のVL領域からなる群から選択されることを特徴とする抗体がさらに好ましい。
【0174】
好ましくは、軽鎖可変領域(VL)配列は、配列番号137、あるいは配列番号139、または配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号151、配列番号79、配列番号82、配列番号106、配列番号87、配列番号86、配列番号84、配列番号80、配列番号78、配列番号97、配列番号89、配列番号96、配列番号100、あるいは配列番号81である。
【0175】
そのVH領域が、配列番号60、配列番号62、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号74、配列番号2、配列番号5、配列番号29、配列番号10、配列番号9、配列番号7、配列番号3、配列番号1、配列番号20、配列番号12、配列番号19、配列番号23、配列番号4のVH領域からなる群から選択され、かつそのVL領域が配列番号137、配列番号139、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号151、配列番号79、配列番号82、配列番号106、配列番号87、配列番号86、配列番号84、配列番号80、配列番号78、配列番号97、配列番号89、配列番号96、配列番号100、配列番号81のVL領域からなる群から選択されることを特徴とする抗体が最も好ましい。
【0176】
一実施形態においては、本発明による抗体は、配列番号137および配列番号60または配列番号139および配列番号62を含む。本発明による抗体はまた、配列番号142および配列番号65、または配列番号143および配列番号66、または配列番号144および配列番号67、配列番号151および配列番号74、または配列番号79および配列番号2、または配列番号82および配列番号5、または配列番号106および配列番号29、または配列番号87および配列番号10、または配列番号86および配列番号9、または配列番号84および配列番号7、または配列番号80および配列番号3、または配列番号78および配列番号1を含み得る。あるいは本発明による抗体は、配列番号97および配列番号20、または配列番号89および配列番号12、または配列番号96および配列番号19、または配列番号100および配列番号23、または配列番号81および配列番号4を含む。
【0177】
配列番号79および配列番号2、または配列番号81および配列番号4、または配列番号139および配列番号62、または配列番号80および配列番号3、または配列番号78および配列番号1を含む本発明による抗体が特に好ましい。
【0178】
前記抗体は、好ましくは、そのVH領域が配列番号1+nのVH領域からなる群から選択され、かつそのVL領域が配列番号78+nのVL領域からなる群から選択され、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。
【0179】
さらなる一実施形態においては、前記抗体は、該抗体が、配列番号155+nのCDR1H領域、配列番号232+nのCDR2H領域、および配列番号309+nのCDR3H領域を含むVH領域の群から選択されるVH領域を含み、ここで、nは、0~76から
なる群から選択される数であることを特徴とする。
【0180】
前記抗体は、好ましくは、該抗体が、配列番号386+nのCDR1L領域、配列番号463+nのCDR2L領域、および配列番号540+nのCDR3L領域を含むVL領域の群から選択されるVL領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。
【0181】
前記抗体は、好ましくは、該抗体が、配列番号155+nのCDR1H領域、配列番号232+nのCDR2H領域、および配列番号309+nのCDR3H領域を含むVH領域の群から選択されるVH領域を含み、かつ前記抗体が、配列番号386+nのCDR1L領域、配列番号463+nのCDR2L領域、および配列番号540+nのCDR3L領域を含むVL領域の群から選択されるVL領域を含み、ここで、nは、0~76からなる群から選択される数であることを特徴とする。
【0182】
前記抗体は、
図2に列挙される抗体からなる群から選択される抗体のそれぞれのCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含むVH領域およびVL領域を含むことを特徴とし得る。
【0183】
好ましくは、前記抗体は、抗体P013.S.01.B.B03、P013.S.01.B.A05、P013.S.01.B.C04、P013.S.01.B.H01、P013.S.01.B.D03、P013.S.01.B.E02、P013.S.02.B.A04、P013.S.02.B.A05、P013.S.02.B.A02、P013.S.02.B.D03、P013.S.02.B.H01、P013.S.02.B.F01、P013.S.02.B.B04、P013.S.02.B.C02、P013.S.02.B.B05、P013.S.02.B.A03、P013.S.02.B.H03およびP013.S.02.B.G05からなる群から選択される抗体と同じエピトープに結合する、IL-1RAcPに誘導されるNFκB活性を阻害することを特徴とする。
【0184】
一実施形態においては、前記抗体は、ウサギ/ヒトのキメラ抗体またはヒト化抗体であることを特徴とする。
【0185】
本発明はまた、本発明によるIL1βで刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とするヒトIL-1RAcPに対するモノクローナルウサギ抗体の製造方法であって、
i)前記ウサギをIL-1RAcPで免疫化した後に、前記ウサギから得られた多くの抗体産生単一細胞を単離するステップ、
ii)IL-1RAcPへの結合を、前記単一細胞の上清について個別に測定するステップ、
iii)その上清がヒトおよびマウスIL-1RAcPへの結合を示し、かつIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害する場合に、単一細胞を選択するステップ、
iv)ステップiii)の特性を有する抗体を、前記選択された細胞から単離するステップ
を特徴とする製造方法に関する。
【0186】
好ましくは、前記方法は、ウサギ抗体産生単一細胞が、ウサギハイブリドーマ単一B細胞であることを特徴とする。
【0187】
前記方法はまた、前記ウサギを前記抗原で免疫化した後に、ヒトIL-1RAcPへの結合と、IL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激さ
れるNFκB活性の阻害とが見出された場合に、抗体産生単一細胞を前記動物から単離するか、または前記ウサギから得られたウサギハイブリドーマ細胞を単離することを特徴とする。
【0188】
本発明は、前記抗体の、医薬組成物の製造のための使用に関する。
【0189】
本発明は、抗体産生ウサギ単一細胞の上清であって、ヒトIL-1RAcPへと結合し、かつIL-1α、IL-1β、IL-33および/またはIL-36によって刺激されるNFκB活性を阻害することを特徴とする上清に関する。
【0190】
本発明は、患者におけるIL-1媒介疾患の治療方法であって、患者に医薬的有効量の抗体を投与することを含む治療方法に関する。
【0191】
本発明は、医薬品に許容可能な担体と、実施形態のいずれか1つによる抗体の治療的有効量とを含む医薬組成物に関する。
【0192】
本発明はまた、患者におけるIL-1媒介疾患の治療方法であって、患者に本発明の医薬組成物を投与することを含む治療方法に関する。
【0193】
【0194】
実施例2:ウサギの免疫化
ウサギを、hu-IL-1RAcP-Fcで繰り返し免疫化した。これらの動物の血液を回収し、そのBリンパ球を単離した。単一B細胞をマイクロタイタープレートのウェル中にソーティングし、増殖させた。これらのB細胞によって前処理された上清を、hu-IL-1RAcP ELISAにおいて分析した。409種のモノクローナル抗体(=全ての試験された上清の4.7%)が、hu-IL-1RAcPに結合すると特定された。23種のモノクローナル抗体は、マウスIL-1RAcPにも結合し、IL1βに誘導されるヒトまたはマウスのNF-κB活性を阻害することが判明した。
【0195】
a)ウサギの免疫化(スキーム1)
組換え型のヒトFcキメラタンパク質に融合されたヒトIL-1RAcP(IL-1RAcP-Fc)を免疫原として使用した。2つの異なる免疫化スキーム、つまりスキーム1およびスキーム2を調査した。スキーム1による免疫化のために、3匹のニュージーランドホワイト(NZW)種のウサギを、1mlの免疫原をそれぞれの動物に0日目、7日目、14日目、28日目、42日目および56日目に注射することによって免疫化した。タンパク質をPBS中で希釈し、等モル量でプールし、そして使用前に完全フロイントアジュバント(CFA)と1:1(容量/容量)で混合した。400μgの免疫原の最終濃度を動物当たりに1回目の免疫化のために使用し、2回目、3回目、4回目、5回目および6回目の免疫化のためには、200μgの免疫原を動物当たりに使用した。血液試料を、EDTAで覆われたチューブに、3回目、4回目、5回目および6回目の免疫化の後に、免疫化の5日後、6日後および7日後に回収した。本発明による抗IL-1RAcP抗体を、3回目の免疫化の後に採取された血液試料から単離した。本発明による抗体を、3回目、4回目、5回目および6回目の免疫化の後に採取された血液試料から単離した。
【0196】
b)ウサギの免疫化(スキーム2)
スキーム2による免疫化のために、6匹のNZW種のウサギのそれぞれを、1mlの免疫原で皮下的に0日目、7日目、14日目、28日目、42日目、56日目、70日目および84日目に免疫化した。1回目の注射のために、タンパク質をPBS中で希釈し、等モル量でプールし、そして使用前にCFAと1:1(容量/容量)で混合した。200μgの最終濃度の免疫原を、動物あたりに1回目の免疫化のために使用した。2回目、3回目、4回目、5回目および6回目の免疫化のために、タンパク質をPBS中で希釈し、等モル量でプールし、そして使用前に不完全フロイントアジュバント(IFA)と1:1(容量/容量)で混合した。100μgの免疫原を動物当たりに使用した。血液試料を、EDTAで覆われたチューブに、2週間の間隔の3回目、4回目、5回目および6回目の免疫化の後に、免疫化の5日後、6日後および7日後に回収した。
【0197】
実施例3
免疫原被覆/細胞調製
免疫化のために使用される融合タンパク質を、細胞培養6ウェルプレートの表面上にPBS中8μg/10cm2の濃度で被覆し、インキュベートした。あるいはプレートのそ
のセル表面上に、細胞株BT-474(DSMZ ACC 64)を播種した。使用する1日前に、細胞をDMEM+5%FCS中で、24時間後に約90%のコンフルエンスとなる密度で播種した。
【0198】
ウサギからの末梢血単核細胞の単離
PBMCを、免疫化されたウサギの全血から単離した。その血液を、PBSで1:1希釈し、Lympholyte(登録商標)上に製造元の指示(Cedarlane、CL5120)に従って成層した。末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配遠心分離(800×g、20分、室温)によって赤血球から分離した。細胞を界面から取り出し、PBS(800×g、10分)で2回洗浄し、PRMI 1640ベースの細胞培養培地中に懸濁した。
【0199】
単球の除去
PBMCを、プラスチック上で細胞培養培地中でインキュベートした。結合されなかったリンパ球を、インキュベート時間後に回収した。
【0200】
抗原特異的細胞の濃縮
抗原特異的リンパ球を、免疫原で被覆されたプレート上で、またはBT-474細胞上で直接的に濃縮した。リンパ球をPBSで2回洗浄することで、非特異的な細胞を除去し
、引き続き10cm2の培養表面積当たりに750μlのトリプシンと一緒に7分間~1
0分間にわたりインキュベートした。引き離された細胞を、さらなるステップのために細胞培養培地中に回収した。
【0201】
免疫グロブリンGを分泌するリンパ球の単一細胞ソーティング
PBMC/リンパ球を、FITC(フルオレセインイソチオシアネート異性体1)と結合されたヤギ抗ウサギIgG抗体(Abd Serotec、STAR121F)で染色した。フローサイトメトリー分析および単一細胞ソーティングを、FACSサイトメーターを用いて実施した。単一の陽性のリンパ球を、3.0×106個の照射されたEL-4
B5フィーダー細胞を覆っている200μlの細胞培養培地に直接ソーティングした。前記の細胞培養培地に、ウサギ由来の活性化されたT細胞マクロファージ上清を5%補填した(MicroCoat)。同時培養培地に、2×10-6g/mlのSAC(スタフィロコッカス・アウレウス・コワン)溶液を供給した。B細胞とフィーダー細胞の7日間の同時培養後に、上清を抗体検出に移し、100μlのRNA単離バッファー(Qiagen、RLT)中で細胞を採取した。
【0202】
酵素結合免疫吸着アッセイを介した免疫グロブリンのスクリーニング
分泌されたウサギ抗体の検出は、上清をビオチニル化された捕捉抗体(ヤギにおいて産生された抗ウサギIgG抗体)を介して、ストレプトアビジンマイクロタイタープレート上に覆われた1μg/mlのPBS+0.5%BSA+0.05%Tween(登録商標)20の最終濃度で、そして1:7500の最終濃度のセイヨウワサビペルオキシダーゼに結合された抗ウサギIgG検出抗体を介して分析することによって行った。洗浄ステップは、PBS+0.1%Tween(登録商標)20を使用することによって実施した。3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を基質として使用し、HClを酵素反応の停止のために使用した。
【0203】
B細胞上清におけるIL-1RAcP特異的抗体の測定
マイクロタイタープレートを、IL-1RAcPおよび/またはIL12Rβ1タンパク質(ヒトIL-1RAcPまたはIL12Rβ1の組換えFcキメラ結合体)で被覆した。ブロッキング過程後に、B細胞上清からの特異的抗体は、ターゲットに結合し、次いでPOD標識された抗ウサギIgG抗体によって検出される。IL12Rβ1結合は、カウンタースクリーニングとして使用した。IL-1RAcPタンパク質に、IL12Rβ1タンパク質と同様に、リンカーのhuFcおよびHisをタグ付けした。そのタグに結合する抗体は、両方のアッセイにおいて陽性であるが、抗原特異的抗体は、IL-1RAcPにのみ結合して、IL12Rβ1に結合しなかった。
【0204】
PBS中0.5μg/mLのIL-1RAcPタンパク質12.5μLをマイクロタイタープレートに移し、インキュベートし、洗浄バッファーで3回洗浄した。90μLのブロッキングバッファーをそれぞれのウェルに添加し、インキュベートし、洗浄した。12.5μlの標準抗体(IL-1RAcPに対するウサギモノクローナル抗体、抗IL12Rβ1抗体:IL-12Rβ1抗体;GeneTex;カタログ番号GTX103917)または試料をELISAバッファー中で希釈したものを添加し、インキュベートし、そして洗浄した。1:5000のPOD抗体(ELISAバッファー中)(抗ウサギIgG、ペルオキシダーゼに結合された種特異的Fab2フラグメント(ロバ由来)(ECL);アッセイ希釈:1:5000)12.5μlを添加し、インキュベートし、そして洗浄した。15μlのTMBを添加し、15μlのHClを十分な進展後に添加した。吸光度(光学密度O.D.)は、450nm/620nmで読み取った。結果を
図1に示す。
ELISAバッファー:PBS、0.5%BSA、0.05%Tween(登録商標)20
洗浄バッファー:PBS、0.1%Tween(登録商標)20
ブロッキングバッファー:PBS、2%BSA、0.05%Tween(登録商標)20。
【0205】
実施例4:ヒトIL-1RAcPに結合する抗体
アッセイの原理:
NUNC Maxisorp(登録商標)384ウェルマイクロタイタープレートを、P013_03で被覆する。ブロッキング過程後に、B細胞上清からの特異的抗体は、抗原のヒト(P013-03)またはマウスIL-1RAcP(P013-04)に結合し、次いでPOD標識された抗体によって検出される。試料は、1:2希釈で試験される。
【0206】
材料:
プレート: 384ウェルのNUNC Maxisorp(登録商標)プレート;カタログ番号464718
タンパク質:
P013-03(濃度1.5mg/ml;アッセイ濃度0.5μg/ml)ヒト
P013-04(濃度1.3mg/ml;アッセイ濃度0.5μg/ml)マウス
標準抗体: P013-02(濃度1mg/ml;開始アッセイ濃度2μg/ml)
検出抗体: 抗ウサギIgG、ペルオキシダーゼに結合された種特異的全抗体(ロバ由来)(ECL);GE;カタログ番号NA9340;アッセイ希釈:1:5000
PBS: Buffers in a Box、プレミックスされたPBSバッファー、10×;Roche Applied Sciences;カタログ番号11666789001
BSA: ウシ血清からのウシ血清アルブミンフラクションV;Roche Applied Sciences;カタログ番号10735086001
Tween(登録商標)20: Tween(登録商標)20;Carl Roth;カタログ番号9127.2
TMB: TMB溶液;Life Technologies;カタログ番号SB02
HCl: 1MのTitripur(登録商標)塩酸;Merck;カタログ番号1090571000
ELISAバッファー:PBS、0.5%BSA、0.05%Tween(登録商標)
洗浄バッファー:PBS、0.1%Tween(登録商標)
ブロッキングバッファー:PBS、2%BSA、0.05%Tween(登録商標)
試料:ELISAバッファー中1:2希釈。
【0207】
手順:
1. 12.5μLのPBS中P013-03(0.5μg/ml)を384ウェルのNUNC Maxisorp(登録商標)プレートに添加し、室温で1時間にわたりインキュベートする。
2. 90μlの洗浄バッファーで3回洗浄する。
3. 90μLのブロッキングバッファーを各ウェルに添加し、室温で1時間にわたりインキュベートする。
4. 洗浄バッファーで3回洗浄する。
5. 12.5μLの標準抗体(ELISAバッファー中1:2希釈)または試料(ELISAバッファー中1:2希釈)を添加し、室温で1時間にわたりインキュベートする。6. 洗浄バッファーで3回洗浄する。
7. 1:5000のPOD抗体(ELISAバッファー中)12.5μLを添加し、室温で1時間にわたりインキュベートする。
8. 洗浄バッファーで6回洗浄する。
9. 15μLのTMBを添加する。
10. 十分な進展後に15μLのHClを添加する。
11. 450nm/620nmで吸光度を読み取る。
【0208】
実施例5:マウスIL-1RAcPに結合する抗体
アッセイの原理:
NUNC Maxisorp(登録商標)384ウェルマイクロタイタープレートを、P013_04で被覆する。ブロッキング過程後に、B細胞上清からの特異的抗体は、抗原に結合し、次いでPOD標識された抗体によって検出される。試料は、1:2希釈で試験される。
【0209】
材料:
プレート: 384ウェルのNUNC Maxisorp(登録商標)プレート;カタログ番号464718
タンパク質: P013-04(濃度1.3mg/ml;アッセイ濃度0.5μg/ml)
標準抗体: P013-02(濃度1mg/ml;開始アッセイ濃度2μg/ml)
検出抗体: 抗ウサギIgG、ペルオキシダーゼに結合された種特異的全抗体(ロバ由来)(ECL);GE;カタログ番号NA9340;アッセイ希釈:1:5000
PBS: Buffers in a Box、プレミックスされたPBSバッファー、10×;Roche Applied Sciences;カタログ番号11666789001
BSA: ウシ血清からのウシ血清アルブミンフラクションV;Roche Applied Sciences;カタログ番号10735086001
Tween 20: Tween(登録商標)20;Carl Roth;カタログ番号9127.2
TMB: TMB溶液;Life Technologies;カタログ番号SB02
HCl: 1MのTitripur(登録商標)塩酸;Merck;カタログ番号1090571000
ELISAバッファー:PBS、0.5%BSA、0.05%Tween(登録商標)
洗浄バッファー:PBS、0.1%Tween(登録商標)
ブロッキングバッファー:PBS、2%BSA、0.05%Tween(登録商標)
試料:ELISAバッファー中1:2希釈。
【0210】
手順:
1. 12.5μLのPBS中P013-04(0.5μg/ml)を384ウェルのNUNC Maxisorp(登録商標)プレートに添加し、室温で1時間にわたりインキュベートする。
2. 90μlの洗浄バッファーで3回洗浄する。
3. 90μLのブロッキングバッファーを各ウェルに添加し、室温で1時間にわたりインキュベートする。
4. 洗浄バッファーで3回洗浄する。
5. 12.5μLの標準抗体(ELISAバッファー中1:2希釈)または試料(ELISAバッファー中1:2希釈)を添加し、室温で1時間にわたりインキュベートする。6. 洗浄バッファーで3回洗浄する。
7. 1:5000のPOD抗体(ELISAバッファー中)12.5μLを添加し、室温で1時間にわたりインキュベートする。
8. 洗浄バッファーで6回洗浄する。
9. 15μLのTMBを添加する。
10. 十分な進展後に15μLのHClを添加する。
11. 450nm/620nmで吸光度を読み取る。
【0211】
実施例6:ELISAにおけるEC50の測定
本発明による抗体のヒトIL-1RAcPへの結合を、ELISAで分析した:EC50値を、従来技術に従って計算した。
【0212】
実施例7:ルシフェラーゼベースの遺伝子レポーターアッセイにおけるIL-1RAcPに対する抗体のNF-κB中和活性
アッセイの原理:
NF-κB-REホタルルシフェラーゼレポーターを発現する293T/17-FR細胞を、ポリ-D-リジン-細胞培養プレートに播種する。P013の刺激後に、293T/17-FR溶解物を、活性化されたNF-κBについてSteady-Gloルシフェラーゼアッセイキットを使用して試験する。機能的抗体を含む上清は、P013に結合し、NF-κB活性化を阻害し、それは低いシグナルで示される。試料は、P013溶液中1:2希釈で試験される。
【0213】
材料:
プレート: セルプレート:384ウェルのPDL Costar細胞培養プレート;カタログ番号3844
アッセイプレート: 384ウェルのLumitrac(登録商標)白色プレート;Corning;カタログ番号3572
細胞: 293T/17-FR;アッセイ濃度250000細胞/ml
タンパク質:
P013_05(濃度0.03mg/ml;アッセイ濃度115pg/ml;作業濃度230pg/ml)
IL-1α、IL-33およびIL-36
標準抗体: P013_06(濃度0.2mg/ml;開始作業濃度6μg/ml)
キット: Steady-Gloルシフェラーゼアッセイシステム;Promega;カタログ番号E2510
細胞培地: DMEM培地;PAN Biotech;カタログ番号P04-04510
FCS: ウシ胎児血清、HyClone;Thermo;カタログ番号St30070.03
293T/17-FR培地: DMEM培地、10%FCS(+20μg/mlのハイグロマイシンB、培養の場合のみ)
前処理されたB細胞培地(MAB Discovery)
試料: DMEM培地+10%FCS中のP013_05で1:2希釈。
【0214】
手順:
1. コンフルエントな293T/17-FR細胞を、毎月曜日(採取種細胞:5×106細胞/T175フラスコ)および毎金曜日(採取種細胞:3×106細胞/T175フラスコ)にトリプシン/EDTAを用いて継代培養する(室温でちょうど30秒間にわたりインキュベートする)。
2. 25μlのDMEM+10%FCS中の細胞(0.25×106細胞/ml)を、
384ウェルのPDLプレート(Corning カタログ番号3844)に播種し、37℃および5%CO2で一晩インキュベートする。
3. 培地を吸引し、試料またはP013_06を、前処理された培地または前処理されたばかりの培地中で1:3希釈した希釈物12.5μlを添加し、37℃および5%CO2で30分間にわたりインキュベートする(プログラム:3 Aspiration a
nd Sample transfer)。
4. DMEM+10%FCS中のP013_05を12.5μl添加し、37℃および5%CO2で5時間にわたりインキュベートする(プログラム:4_Add P013_
05)。
5. 培養細胞を室温で10分間にわたり平衡化する。
6. 25μlのSteady-Glo(登録商標)試薬を添加し、ピペットで数回混合する(プログラム:6_Steady Glo(登録商標))。
7. 5分間待機した後に、45μlの上清を384ウェルのLumitrac(登録商標)白色プレート(Corning カタログ番号3572)に移す(プログラム:7_Transfer 45ul)。
8. ルミネッセンスをTecan社製のリーダー(Tecan Group Mannedorf、スイス)において測定する:積分時間:0.5秒。
【0215】
実施例8:IL-1α中和アッセイ
材料:
細胞: ホタルルシフェラーゼNF-κBレポーターおよびウミシイタケルシフェラーゼ(正規化対照のため)を安定的に発現するHEK-293T細胞。IL1RAcPおよびIL1R1は、内因的に発現される
培地: DMEM(ATCC カタログ番号30-2002)+10%熱不活化FBS
試薬:
IL-1α(R&D 番号200-LA);10μg/mlのPBS+0.1%のBSA
抗IL1RAcPポジティブコントロール抗体(R&D 番号AF676);200μg/ml
MAB Discovery抗体:
プレート1の抗体は、750μg/ml
プレート2の抗体は、250μg/ml
ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega 番号E1500)。
【0216】
手順:
1. 細胞を50000個/ウェルで96ウェルプレート中に100μlのDMEM+10%FBS中でプレーティングし、37℃、5%CO2でインキュベートする。
2. 4倍希釈の抗体をDMEM+10%FBS中で2×最終濃度で調製する。
3. 細胞を吸引分離し、抗体を60μlのDMEM+10%FBS中の2×最終濃度で添加し、細胞を37℃、5%CO2で30分間インキュベートする。
4. IL-1αを175pg/mlの最終濃度で60μlの完全培地において添加し(175pg/mlはEC50である)、37℃、5%CO2で4時間インキュベートする。
5. 細胞を150μlのPBSで洗浄する。
6. 細胞を50μlの1×細胞培養溶解試薬(ルシフェラーゼアッセイシステムによる)中で振とう器において周囲温度で15分間にわたり溶解する。
7. ピペットで出し入れを行い、20μlの溶解物をlumitrac-200プレートに移し、100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬を添加し、ルミネッセンスを、液体インジェクタまたはその他の適切な光度計を備えたWallac Victor2を用いて読み取る。
【0217】
実施例9:IL-1β中和アッセイ
材料:
細胞: ホタルルシフェラーゼNF-κBレポーターおよびウミシイタケルシフェラーゼ(正規化対照のため)を安定的に発現するHEK-293T細胞。IL1RAcPおよびIL1R1は、内因的に発現される
培地: DMEM(ATCC カタログ番号30-2002)+10%熱不活化FBS
試薬:
IL-1β(R&D 番号201-LB);25μg/mlのPBS+0.1%のBS
A
抗IL1RAcPポジティブコントロール抗体(R&D 番号AF676);200μg/ml
抗IL1RAcPウサギpAbポジティブコントロール抗体(ONCO ロットAP14)/200μg/ml(PBS)
正常ウサギIgG(JL 番号011-000-003);200μg/ml(PBS)
MAB Discovery抗体
プレート1の抗体は、750μg/ml
プレート2の抗体は、250μg/ml
ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega 番号E1500)。
【0218】
手順:
1. 細胞を50000個/ウェルで96ウェルプレート中に100μlのDMEM+10%FBS中でプレーティングし、37℃、5%CO2で一晩インキュベートする。
2. 4倍希釈の抗体をDMEM+10%FBS中で2×最終濃度で調製する。
3. 細胞を吸引分離し、抗体を60μlのDMEM+10%FBS中の2×最終濃度で添加し、細胞を37℃、5%CO2で30分間インキュベートする。
4. IL-1βを175pg/mlの最終濃度で60μlの完全培地において添加し(175pg/mlはEC50である)、37℃、5%CO2で4時間インキュベートする。
5. 細胞を150μlのPBSで洗浄する。
6. 細胞を50μlの1×細胞培養溶解試薬(ルシフェラーゼアッセイシステムによる)中で振とう器において周囲温度で15分間にわたり溶解する。
7. ピペットで出し入れを行い、20μlの溶解物をlumitrac-200プレートに移し、100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬を添加し、ルミネッセンスを、液体インジェクタまたはその他の適切な光度計を備えたWallac Victor2を用いて読み取る。
【0219】
実施例10:IL-33中和アッセイ
材料:
細胞: CMVプロモーターによって駆動されるホタルルシフェラーゼNF-κBレポーター、ウミシイタケルシフェラーゼ(正規化対照のため)およびIL-33Rで一過性トランスフェクションされたHEK-293T細胞。IL1RAcPは、内因的に発現される
培地: DMEM(ATCC カタログ番号30-2002)+10%熱不活化FBS
試薬:
IL-33(R&D 番号3625-IL);10μg/mlのPBS+0.1%のBSA
抗IL1RAcPポジティブコントロール抗体(R&D 番号AF676);200μg/ml
MAB Discovery抗体
プレート1の抗体は、750μg/ml
プレート2の抗体は、250μg/ml
ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega 番号E1500)。
【0220】
手順:
1. 細胞を、ルシフェラーゼレポーターおよびIL-33Rで25000細胞/ウェルにおいて、アッセイ前に約24時間にわたりトランスフェクションさせる。
2. 4倍希釈の抗体をDMEM+10%FBS中で2×最終濃度で調製する。
3. 細胞を吸引分離し、抗体を60μlのDMEM+10%FBS中の2×最終濃度で
添加し、細胞を37℃、5%CO2で30分間インキュベートする。
4. IL-33を250pg/mlの最終濃度で60μlの完全培地において添加し、37℃、5%CO2で4時間インキュベートする。
5. 細胞を150μlのPBSで洗浄する。
6. 細胞を50μlの1×細胞培養溶解試薬(ルシフェラーゼアッセイシステムによる)中で振とう器において周囲温度で15分間にわたり溶解する。
7. ピペットで出し入れを行い、20μlの溶解物をlumitrac-200プレートに移し、100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬を添加し、ルミネッセンスを、液体インジェクタまたはその他の適切な光度計を備えたWallac Victor2を用いて読み取る。
【0221】
実施例11:IL-36β(IL1F8)中和アッセイ
材料:
細胞: CMVプロモーターによって駆動されるホタルルシフェラーゼNF-κBレポーター、ウミシイタケルシフェラーゼ(正規化対照のため)およびIL-36Rで安定的にトランスフェクションされたHEK-293T細胞。IL1RAcPは、内因的に発現される
培地: DMEM(ATCC カタログ番号30-2002)+10%熱不活化FBS
試薬:
IL-36β(R&D 番号6834-IL);100μg/mlのPBS+0.1%のBSA
抗IL1RAcPポジティブコントロール抗体(R&D 番号AF676);200μg/ml
MAB Discovery抗体
プレート1の抗体は、750μg/ml
プレート2の抗体は、250μg/ml
ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega 番号E1500)。
【0222】
手順:
1. 細胞を50000個/ウェルで96ウェルプレート中に100μlのDMEM+10%FBS中でプレーティングし、37℃、5%CO2で一晩インキュベートする。
2. 4倍希釈の抗体をDMEM+10%FBS中で2×最終濃度で調製する。
3. 細胞を吸引分離し、抗体を60μlのDMEM+10%FBS中の2×最終濃度で添加し、細胞を37℃、5%CO2で30分間インキュベートする。
4. IL-36βを15ng/mlの最終濃度で60μlの完全培地において添加し(15ng/mlはEC50である)、37℃、5%CO2で4時間インキュベートする。
5. 細胞を150μlのPBSで洗浄する。
6. 細胞を50μlの1×細胞培養溶解試薬(ルシフェラーゼアッセイシステムによる)中で振とう器において周囲温度で15分間にわたり溶解する。
7. ピペットで出し入れを行い、20μlの溶解物をlumitrac-200プレートに移し、100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬を添加し、ルミネッセンスを、液体インジェクタまたはその他の適切な光度計を備えたWallac Victor2を用いて読み取る。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【
図1】ヒトおよびマウスIL-1RAcPに結合する抗体。実施例3~6に記載される実験の結果。
【
図2】配列(一文字記号のアミノ酸)。D、A、S、K、L、A、Sは、DASKLASを意味する。
図2の全てのその他についても同じことが言える。CDRH1:配列番号155~配列番号231、CDRH2:配列番号232~配列番号308、CDRH3:配列番号309~配列番号385、CDRL1:配列番号386~配列番号462、CDRL2:配列番号463~配列番号539、CDRL3:配列番号540~配列番号616。
【
図3】リガンドに誘導されるシグナル伝達の阻害。最も見込みのある18種の抗体についてのシグナル伝達阻害の結果の要約表が示されている。実験手順は、実施例8~11に詳説されている。
【
図4】リガンドに誘導されるシグナル伝達の選択された抗体による阻害。実施例8~11に記載される実験結果の例示的グラフ。各図の表題に示される種々のリガンドのシグナル伝達によるNFκB刺激のパーセントが示されている。種々の色は、種々の抗体に対応する。試験された抗体の選択物だけが示されている。
【
図5】IL-1RAcPに対する選択された抗体のNF-κB中和活性。実施例7に記載される実験の結果。ルシフェラーゼベースの遺伝子レポーターアッセイにおけるIL-1RAcPに対する抗体のNF-κB中和活性が示されている。
【
図6】好ましい配列を有する抗体のリガンドに誘導されるシグナル伝達の阻害。19種の好ましい抗体についてのシグナル伝達実験の結果が示されている。実験手順は、実施例8~11に詳説されている。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-1RAcPに特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
a)CDR1H、CDR2Hおよび/またはCDR3Hを含み、
CDR1H領域が、配列番号155~配列番号231の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR2H領域が、配列番号232~配列番号308の群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ
CDR3H領域が、配列番号309~配列番号385の群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
b)CDR1L、CDR2Lおよび/またはCDR3Lを含み、
CDR1L領域が、配列番号386~配列番号462の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR2L領域が、配列番号463~配列番号539の群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ
CDR3L領域が、配列番号540~配列番号616の群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と
を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【外国語明細書】