IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153720
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】脳イメージング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241022BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 380
A61B10/00 H
A61B10/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117355
(22)【出願日】2024-07-22
(62)【分割の表示】P 2021554789の分割
【原出願日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】1820053.5
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1909180.0
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1909907.6
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【弁理士】
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】チャンス スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンソン マーク
(72)【発明者】
【氏名】トーソウ マリオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は概して医療イメージングに関し、特に、本開示は、認知障害の診断において有用であり得る脳の磁気共鳴(MR)イメージングの処理を実施するための方法及びシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、AngleRと軸方向拡散とに対する値を使用して軸方向コラム屈折(ACR)に対する値特定することを含む、対象者の脳の領域からの皮質拡散データを処理するための方法を含む。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の脳の領域の以前に取得された磁気共鳴画像から取得された皮質拡散データを処理するための、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)前記対象者の前記脳における灰白質領域における少なくとも1つの第1のボクセルにおける垂直拡散(Perp)に対する値を取得するステップと、
(b)前記灰白質領域に関連した、及び前記灰白質領域の基礎となる前記対象者の前記脳における白質領域における少なくとも1つの第2のボクセルにおける軸方向拡散に対する値を取得するステップと、
(c)前記Perpと前記軸方向拡散とに対する前記値を使用して、前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとの各々に対する垂直コラム屈折(PerpCR)に対する値を特定するステップと、
を含む、コンピュータにより実施される方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、
(a1)前記第1のボクセルにおける皮質拡散に対する測定結果を取得するステップと、
(a2)前記ボクセルにおける主拡散ベクトル(DPDD)を、前記ステップ(a1)において取得された前記皮質拡散に対する前記測定結果から特定するステップと、
(a3)前記ボクセルにおけるミニコラムのコラム方向(ColD)を特定するステップと、
(a4)前記ボクセルにおける前記ColDに直交した平面上に前記DPDDを射影することと、射影の大きさを特定することとにより、前記ボクセルに対する前記垂直拡散(前記Perp)に対する前記値を特定するステップと、
を含む、請求項に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項3】
a)前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとに対する垂直コラム屈折(PerpCR)の値を取得するステップを含み、
前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとに対する前記垂直コラム屈折(前記PerpCR)の前記値の大きさが、前記対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
請求項1又は請求項2に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項4】
a)前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとに対する垂直コラム屈折(PerpCR)の値を取得するステップを含み、
前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとに対する前記垂直コラム屈折(前記PerpCR)の前記値の大きさが、前記対象者の前記脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
請求項1又は請求項2に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項5】
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項6】
対象者におけるMSのレベルの標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
好ましくは、前記脳の前記領域が、皮質9野、41野、又はV1(一次視覚野)であり、
前記複数のボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記対象者における前記MSのレベルの前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項7】
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、好ましくは、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項8】
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記軸方向拡散の前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項9】
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、好ましくは、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記軸方向拡散の前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項10】
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)垂直拡散(Perp)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記Perpの前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項11】
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する、前記コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)垂直拡散(Perp)に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、好ましくは、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記Perpの前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項12】
AngleR、軸方向拡散、及び/又はPerpに対する値が、ニューロイメージング方法により取得される、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項13】
方向拡散、及び/又はPerpに対する前記値が、磁気共鳴イメージング(MRI)により取得される、
請求項12に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項14】
方向拡散、及び/又はPerpに対する前記値が、拡散MRIにより取得される、
請求項12又は請求項13に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項15】
AngleR、軸方向拡散、及び/又はPerpに対する値が、前記脳の皮質の1つ又は複数の領域から取得され、又は前記領域から導出される、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項16】
前記皮質の前記1つ又は複数の領域が、基礎となる(皮質下)白質を伴う灰白質を含む、
請求項15に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項17】
前記脳の前記領域が、海馬傍回(PHG)、紡錘状回(Fusi)、背外側前頭前皮質9野(dlPFC)、41野、ヘッシュル回(HG)、側頭平面(PT)、下頭頂小葉(IPL)、中側頭回(MTG)、一次視覚野(V1;17野)、及び嗅内皮質からなる群から選択される
請求項15又は請求項16に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項18】
前記皮質の前記1つ又は複数の領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質から選択される、
請求項17に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項19】
前記対象者が、アルツハイマー病(AD)、脳血管性認知症(CVD)、軽度認知障害(MCI)、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)、自閉症、多発性硬化症(MS)、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、統合失調症、双極性障害、失読症、ダウン症候群、ハンチントン病、プリオン病、うつ、強迫性障害、又は注意欠陥多動障害(ADHD)、主観的認知障害、preMCI、及び前駆AD、後部皮質萎縮(ADの部分集合)、行動異常型、意味性、又は進行性非流暢性失語症(FTDの部分集合)、脳障害、肝性脳症、脳卒中、虚血、虚血性低酸素症、神経炎症、外傷性脳損傷(TBI)、軽度TBI、慢性外傷性脳症、振盪、及び精神錯乱からなる群から選択された認知障害を患った者である、
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項20】
対象者の処置方法であって、
前記処置方法が、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法を含み、
前記対象者が特定の基準レベルを(上方に、又は下方に)越えた認知障害のレベルを伴うことが観測された場合、又は、前記対象者が特定の基準レベルより高いPerpCRに対する値を伴うことが観測された場合、認知障害処置薬が、前記対象者に投与される、
処置方法。
【請求項21】
対象者の処置方法であって、前記処置方法が、
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のPerpCRを特定する方法の結果を取得すること、又は受け取ることと、
記PerpCRの値が、基準レベルより高いことにより前記対象者における認知障害の存在の標示を提供している場合、前記認知障害を処置するための適切な処置を前記対象者に執行することとを含む、
処置方法。
【請求項22】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するように構成された少なくとも1つの処理手段を備える、
システム又は装置。
【請求項23】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するようにプロセッサを構成するための命令を含むソフトウェアを記憶した、
媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して医療イメージングに関し、特に、本開示は、認知障害の診断において有用であり得る脳の磁気共鳴(MR:magnetic resonance)イメージングの処理を実施するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
認知症の診断及び処置は、人口の高齢化に伴って、より大きい問題になってきている。現在、認知症は英国において830,000人を超える人々に影響を与えている。しかし、これらの障害の正確な診断の困難さを考慮すると、これらの障害による影響を受けた人の実際の比率は、はるかに大きいものであり得る。認識されている多くの形態の認知症が存在する。これらは、アルツハイマー病(AD:Alzheimer’s disease)、脳血管疾患(CVD:cerebrovascular disease)、前頭側頭型認知症(FTD:frontotemporal dementia)、レビー小体型認知症(DLB:dementia with Lewy Bodies)を包含する。軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は認知症の前兆と考えられる。
【0003】
現在の診断の方法は、通常、認知試験及び挙動症状の評価の形態をとる臨床スクリーニングツールに依存する。現在、多くの場合、海馬ボリュームの定性的な(すなわち視覚的に明らかな)低減、脳室の拡大、及び大脳皮質の拡大した溝の折り畳みの外観の証拠を探すために、標準的な構造的脳MRIが要求され得る。この評価は主観的であり、及び非特異的であり、したがって、更なる証拠を提供するが、それ自体は診断的ではない。CVDからのADの鑑別診断は、通常、疾患の経過の臨床評価に依存し、「段階的な」(急激な低下が相対的に安定した「プラトー」により中断する)ものとは対照的に、ADの場合、進行性の認知低下は漸進的である。明らかに、これも主観的であり解釈に依存する。
【0004】
現在の認知試験は、通常、MMSE(ミニメンタルステート試験、mini-mental state exam)であり、この場合において「健康である」とは多くの場合、スコア>24であり、MCIが21~24であり、及び認知症が20以下であると考えられる。しかし、これらの境界は変更可能であり、及び更に解釈に依存する。30未満のスコアがMCIに対応すると考える人もいる。更なる試験としてMoCA(モントリオール認知評価、Montreal cognitive assessment)が、MMSEにより見逃され得るCVDタイプの認知変化を検出することが最近見出されている。しかし、それは鑑別診断を提供しない。
【0005】
現在、アルツハイマー病及び他の形態の認知症は、死後組織検査により最終的に診断されるのみであり得る。厳密な生化学的プロセスは死後検査の正確な代替的な方法を提供するものだとは十分に理解されていない。更に、認知症における神経病理学のほとんどの既存の測定は、プラーク、もつれ、又は個々の細胞、及びシナプスの評価に依存しており、これらは顕微鏡レベルであるので、従来の非侵襲性脳イメージングを使用して検出されることができない。
【0006】
認知症において発生する神経病理学的な変化は、症状の出現より大幅に速く発生し始めると考えられるので、これらの症状の早期の診断は、疾患の進行を止める、又は遅くするための有効な臨床的介入のために特に重要である。
【0007】
この医療分野における更なる問題は、幾つかの共通のリスク因子にもかかわらず、例えばAD及びCVDといった異なる種類の認知症間において、臨床経過及び取り得る処置技法が異なることである。認知試験は、精神的機能の低下の指標を与えるが、現在利用可能なツールを使用して異なる種類の認知症を弁別することは困難である。したがって、適切な一連の行動及び処置が行われ得るように、異なる種類の認知症を区別することができることが臨床的な観点から特に重要である。
【0008】
現在、バイオマーカー検出は、
i)(患者に対するリスクを伴う)CSF又は血液に対する侵襲的方法、
ii)(多くの場合、患者が繰り返されることができないような、患者に対するリスクを伴う)脳内の分子マーカーをイメージングする侵襲的方法、又は、
iii)標準的なボリュメトリックMRI、又は構造的MRIのより最近のテクスチャ分析(例えば、T1又はT2など)を使用した母集団サンプルの統計的数値演算に基づく非侵襲性脳イメージング方法
に依存する。
【0009】
しかし、認知症を包含する認知障害の存在及び/又は重症度を評価する、より正確な非侵襲的方法が依然として必要とされる。
【0010】
理想的な生物学的マーカーは、年齢に関連した微細構造の変化に対して感受性をもち、例えばニューロイメージングといった非侵襲的方法によりアクセス可能である。AD、アミロイド、及びタウの典型的な生化学的マーカーの代わりとして、皮質細胞構造及び神経網における微小解剖学的変化が晩年における脳構造の衰えを追跡することに対して手つかずの要素である(Esiri及びChance、2006)。最近の研究では、大脳皮質にわたる基本的な構造的モチーフを構成するミニコラムと呼ばれる細胞微小回路が、健康な老化、軽度認知障害(MCI)、及びアルツハイマー病(AD)において段階的な手法により変えられることが見出されている(Chanceら、2011)。コラム状アーキテクチャのこの微視的な浸食は、認知低下と相関しており、AD病理、例えばプラーク負荷の従来のマーカーと相関している(Chanceら、2006)。それは皮質ボリュームから独立して検出可能であり、ミニコラムアーキテクチャの局所的に特異的な変化が異なる病理と関連し得るという示唆がある(Opris & Casanova、2014)。
【0011】
これらの変化は、拡散テンソルイメージング(DTI:diffusion tensor imaging)、Fine Structure Analysis(fineSA(商標)。www.acuitasmedical.com/technology.phpを参照されたい)、及び他のMRI獲得方法を包含するがこれらに限定されない異なるMRI方法を使用した、対象者の脳に適用されるMRIスキャニング及びイメージング方法から導出されたデータを使用して、非侵襲的に定量化され得る。これらのイメージング研究により導出されたデータは、次に、このような状態の確認済みの診断結果をもつ患者から特定された予測された変化パターンと比較され得る。したがって、関心のある対象者からの獲得されたデータと、確認済みの診断結果をもつ患者から導出されたモデル化されたデータとのこの比較が、早期段階の認知症を包含する、生きている対象者における異なる種類の認知症又は他の認知障害の評価及び診断に役立つ。
【0012】
神経病理学的状態に関連した脳の特定の領域内におけるミニコラム変化のシグネチャパターンが実際に存在し、認知能力及び衰えと相関すること、及び、拡散MRI測定、特にDTIが、脳内のミニコラム構造を評価するために使用され得ることが以前から見出されている(WO2016/162682)。
【0013】
DTIは白質微細構造物に対して感受性をもつが、皮質灰白質の微細構造物に対するインビボニューロイメージングのための典型的な方法の限られた用途しか存在しない。
【0014】
このような手段が、晩年の老化及び認知症における細胞構造の変化の進行を評価するために、生きている対象者において使用され得るという意図のもとで、新規な非侵襲性ニューロイメージングバイオマーカー、及び、大脳皮質の微細構造物の特定の要素とのその相関について研究するために組織検査及び死後MRIを使用することが、本発明の論理的根拠となった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、死後の確認済みの診断結果をもつ患者を使用した、皮質微細構造物における老化及び認知症に関連した変化に対して感受性をもつように本明細書に示されるMRIから導かれ得る新規な測定を提供する。本発明は、微細構造の脳変化を使用してアルツハイマー病及び他の認知症を診断する、又は段階分けする方法を提供することにおいて特に有用であり得る。本発明は、脳内における構造的変化が存在する他の認知障害又は神経学的症状にも適用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域からの皮質拡散データを処理する方法であって、方法が、
(a)対象者の脳における灰白質領域における第1のボクセルにおける主拡散方向(principal diffusion direction)とミニコラムのコラム方向(columnar direction)(ColD)との間のずれ角(angle of deviation)(AngleR)に対する値を取得することと、
(b)灰白質領域の基礎となる白質(the white matter underlying the region of grey matter)に存在する第2のボクセルにおける軸方向拡散(Axial Diffusivity)に対する値を取得することと、
及び、
(c)AngleRと軸方向拡散とに対する値を使用して、ボクセルに対する軸方向コラム屈折(ACR:Axial Columnar Refraction)に対する値を特定することと、
を含む、方法を提供する。
【0017】
好ましくは、ステップ(a)は、
(a1)対象者の脳における灰白質領域におけるボクセルにおける主拡散方向を特定することと、
(a2)ボクセルにおけるミニコラムのコラム方向(ColD)を特定することと、
(a3)主拡散方向とColDとの間のずれ角(AngleR)に対する値を取得することと、
を含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、本発明は、対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、方法が、
(a)対象者の脳の領域における複数のボクセルに対して、本発明の方法により、ACRの値を取得するステップ
を含み、
それらのボクセルに対するACRの値の大きさが、その対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
方法を提供する。
【0019】
他の実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレーク(microsegment break)の数の標示を取得する方法であって、方法が、
(a)対象者の脳の領域における複数のボクセルに対して、本発明の方法により、ACRの値を取得するステップ
を含み、
それらのボクセルに対するACRの値の大きさが、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
方法を提供する。
【0020】
本発明は、対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップであって、脳領域が、皮質9野(cortical area 9)又はPHG又は嗅内皮質である、取得するステップと、
を含み、
複数のボクセルからのAngleRの値の大きさが、その対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
方法を更に提供する。
【0021】
本発明は、対象者におけるMS(多発性硬化症、multiple sclerosis)のレベルの標示を取得する方法であって、方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ
を含み、
好ましくは、脳領域が、皮質9野、41野、又はV1(一次視覚野、primary visual cortex)であり、
複数のボクセルからのAngleRの値の大きさが、その対象者におけるMSのレベルの標示を提供する、
方法を更に提供する。
【0022】
本発明は、対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ
を含み、
複数のボクセルからのAngleRの値の大きさが、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
方法を更に提供する。
【0023】
好ましくは、脳領域は、皮質9野又はPHG又は嗅内皮質である。好ましくは、ステップ(a)は、
(a1)対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて主拡散方向を特定するステップと、
(a2)ボクセルにおけるミニコラムのコラム方向(ColD)を特定するステップと、
(a3)各ボクセルに対する主拡散方向とColDとの間のずれ角(AngleR)に対する値を特定するステップと、
を含む。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ
を含み、
脳領域が、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質であり、
複数のボクセルからの軸方向拡散の値の大きさが、その対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
方法を提供する。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
複数のボクセルからの軸方向拡散の値の大きさが、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
方法を提供する。
【0026】
好ましくは、脳領域は、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質である。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域からの皮質拡散データを処理する方法であって、方法が、
(a)対象者の脳における灰白質領域における第1のボクセルにおける垂直拡散(perpendicular diffusivity)(Perp)に対する値を取得することと、
(b)灰白質領域の基礎となる白質に存在する第2のボクセルにおける軸方向拡散に対する値を取得することと、
(c)Perpと軸方向拡散とに対する値を使用して、ボクセルに対する垂直コラム屈折(Perpendicular Columnar Refraction)(PerpCR)に対する値を特定することと、
を含む、方法を提供する。
【0028】
好ましくは、ステップ(a)は、
(a1)第1のボクセルにおける皮質拡散(cortical diffusion)に対する測定結果を取得するステップと、
(a2)ボクセルにおける主拡散ベクトル(principal diffusion vector)(DPDD)を、ステップ(a1)において取得された皮質拡散に対する測定結果から特定するステップと、
(a3)ボクセルにおけるミニコラムのコラム方向(ColD)を特定するステップと、
(a4)そのボクセルにおけるColDに直交した平面上にDPDDを射影することと、射影の大きさを特定することとにより、ボクセルに対する垂直拡散(Perp)に対する値を特定するステップと、
を含む。
【0029】
他の実施形態において、本発明は、対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、方法が、
(a)対象者の脳の領域における複数のボクセルに対して、本発明の方法により、垂直コラム屈折(PerpCR)の値を取得するステップ
を含み、
それらのボクセルに対する垂直コラム屈折(PerpCR)の値の大きさが、その対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
方法を提供する。
【0030】
他の実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、方法が、
(a)対象者の脳の領域における複数のボクセルに対して、本発明の方法により、垂直コラム屈折(PerpCR)の値を取得するステップ
を含み、
それらのボクセルに対する垂直コラム屈折(PerpCR)の値の大きさが、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
方法を提供する。
【0031】
他の実施形態において、本発明は、対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、方法が、
(a)垂直拡散(Perp)に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップであって、脳領域が、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質である、取得するステップ
を含み、
複数のボクセルからのPerpの値の大きさが、その対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
方法、を提供する。
【0032】
他の実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、方法が、
(a)垂直拡散(Perp)に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ
を含み、
複数のボクセルからのPerpの値の大きさが、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
方法を提供する。
【0033】
好ましくは、脳領域は、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質である。好ましくは、ステップ(a)は、各ボクセルに対して、
(a1)対象者の脳の領域におけるボクセルにおける皮質拡散に対する測定結果を取得するステップと、
(a2)ボクセルにおける主拡散ベクトル(DPDD)を、ステップ(a1)において取得された皮質拡散に対する測定結果から特定するステップと、
(a3)ボクセルにおけるミニコラムのコラム方向(ColD)を特定するステップと、
(a4)そのボクセルにおけるColDに直交した平面上にDPDDを射影することと、射影の大きさを特定することとにより、ボクセルに対する垂直拡散(Perp)に対する値を特定するステップと、
を含む。
【0034】
本発明の方法は、好ましくはコンピュータにより実施される方法である。本発明の方法のステップの各々は、コンピューティングデバイスにより実現されてもよい。好ましくは、拡散データは、磁気共鳴(MR)スキャナを含む医療イメージングデバイスの使用により取得される。本発明は生体外(ex vivo)方法である。
【0035】
一実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域からの皮質拡散データを処理する方法を提供する。皮質拡散データは、AngleR、軸方向拡散、Perp、及び任意選択的な他のパラメータのうちの1つ又は複数を含み得る。皮質拡散データは、好ましくは、ニューロイメージング方法により取得される。最も好ましくは、皮質拡散データは、磁気共鳴(MR)緩和時間測定法データである。拡散データは、対象者の脳のMRIスキャンから、又は、対象者の脳から以前に取得されたMRIデータから直接測定され得る。幾つかの実施形態において、皮質拡散データは、数式、アルゴリズム、データベース、及び/又は参照テーブルを使用して個々の脳MRI測定結果から導出された値であり得る。好ましい実施形態において、皮質拡散データは、脳から、又は脳の画像から取得されたMRI測定結果から導出される。
【0036】
本発明のすべての実施形態において、対象者の脳から取得された値、測定結果などは、本発明の方法の一部として対象者の脳から取得され得、又は、それらは、対象者の脳から以前に取得された値、測定結果などであり得る。
【0037】
本発明の幾つかの好ましい実施形態において、皮質拡散データは、拡散MRIにより取得される。本明細書において使用されるとき、「拡散MRI」という用語は、生体組織における分子、好ましくは水分子の拡散プロセスを測定する任意の磁気共鳴イメージング(MRI)方法を表す。拡散MRIは、拡散テンソルイメージング(DTI)又は拡散強調イメージングとも呼ばれ得る。
【0038】
皮質拡散データは、T1又はT2又はT2*マッピングと組み合わされ得、又は、MRI測定結果は、脳に限局されたT1、T2、又はT2*と組み合わされた分光測定結果であり得る。
【0039】
幾つかの実施形態において、1つ又は複数の測定結果は、WO2013/040086(同文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる)において説明されているイメージング方法、又は、Fine Structure Analysis(商標)(fineSA(商標);Acuitas Medical)、又は他のMRI獲得方法を使用して取得される。
【0040】
皮質拡散の測定は、少なくとも1つのボクセルにおいて行われる。ボクセルは、三次元空間を規定するボリュームのユニット(単位)である。この文脈において、ボクセルは、好ましくは、スキャン獲得に応じた、場合によっては幾つかの異なるパラメータに対する関連する値をもつMRIスキャンにおけるユニットである(例えば、ボクセルは、灰白質強度値と、それに関連した主拡散方向とを含み得る)。
【0041】
本発明の方法は、対象者の脳の1つ又は複数の領域に適用される。本発明の好ましい実施形態において、測定結果又は値は、脳の1つ又は複数の異なる領域、好ましくは、脳の2つ以上の、3つ以上の、4つ以上の、5つ以上の、6つ以上の、7つ以上の、又は8つ以上の異なる領域、最も好ましくは、脳の5つ以上の異なる領域から取得される。幾つかの実施形態において、対象者の脳の領域は脳全体である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、測定結果又は値は、脳の皮質の1つ又は複数の領域から取得され、又は導出される。好ましくは、対象者の脳の領域は、基礎となる(皮質下)白質を伴う灰白質を含む皮質の領域である。
【0043】
好ましい実施形態において、測定結果又は値は、皮質の1つ又は複数の特定の層から、好ましくは、皮質層3、皮質層5、又は皮質層3~6から取得される。上層1及び2も有用であり得る。より好ましい実施形態では、皮質層3~6はDTI信号分析に対して有用であり得る軸索束も含有するので、測定結果又は値は皮質層3~6から取得される。
【0044】
好ましくは、脳領域は、海馬傍回(PHG:parahippocampal gyrus)、紡錘状回(Fusi:fusiform gyrus)、背外側前頭前皮質9野(dlPFC:dorsolateral prefrontal cortex)、ヘッシュル回(HG:Heschl’s gyrus)、側頭平面(PT:planum temporale)、下頭頂小葉(IPL:inferior parietal lobule)、中側頭回(MTG:middle temporal gyrus)、一次視覚野(V1;17野)、及び嗅内皮質からなる群から選択される。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態において、脳領域は、好ましくは皮質灰白質である。幾つかの好ましい実施形態において、脳領域は、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質である。他の好ましい実施形態において、脳領域は、皮質9野、41野又は一次視覚野、V1である。
【0046】
幾つかの好ましい実施形態において、測定結果又は値は、上述の領域のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つから取得され、又は導出される。
【0047】
ADとCVDとの間で区別するために本方法が使用される本発明の好ましい実施形態において、測定結果又は値は、海馬傍回(PHG)、紡錘状回(Fusi)、背外側前頭前皮質(dlPFC)、ヘッシュル回(HG)、側頭平面(PT)からなる群から選択された1つ又は複数の領域から取得され、又は導出される。ADとCVDとの間で区別するために本方法が使用される本発明の幾つかの好ましい実施形態において、測定結果又は値は、これらの領域のすべてから取得される。本発明の方法におけるこれらの領域の5つすべてから取得された、又は導出されたパラメータの使用が、CVDからADを区別するために90%より高い予測精度を実現した。測定のための更なる領域は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、及び後頭葉を包含する。
【0048】
軽度認知障害(MCI)の存在の標示を取得するために本方法が使用される本発明の好ましい実施形態において、測定結果又は値は、脳の皮質の1つ又は複数の領域から、好ましくは、海馬傍回(PHG)、紡錘状回(Fusi)、背外側前頭前皮質(dlPFC)、ヘッシュル回(HG)、側頭平面(PT)、下頭頂小葉(IPL)、中側頭回(MTG)、及び一次視覚野(V1;)からなる群から選択された1つ又は複数の領域から取得され、又は導出される。方法が軽度認知障害の存在の標示を取得するために使用される本発明の幾つかの好ましい実施形態において、測定結果又は値はこれらの領域のすべてから取得される。
【0049】
他の認知症からFTDを区別するために本方法が使用される本発明の好ましい実施形態において、測定結果又は値は、脳の皮質の1つ又は複数の領域から、好ましくは、海馬傍回(PHG)、紡錘状回(Fusi)、背外側前頭前皮質(dlPFC)、ヘッシュル回(HG)、側頭平面(PT)、下頭頂小葉(IPL)、中側頭回(MTG)、尾側中央前頭皮質(caudal middle frontal cortex)、及びV1からなる群から選択された1つ又は複数の領域から取得され、又は導出される。他の認知症からFTDを区別するために本方法が使用される本発明の最も好ましい実施形態において、測定結果又は値は、これらの領域のすべてから取得される。
【0050】
本明細書において規定されている脳の領域は、好ましくは、ヒト皮質のブロードマンの細胞構造体系(ブロードマン、1909)に基づいて規定されたものである。同等なものは、Von Economo及びKoskinas(Von Economo C,Koskinas GN(1925)Die Cytoarchitektonik der Hirnrinde des Erwachsenen Menschen.Springer、Berlin(Germany)(Dr Lee Seldonによる翻訳))においても確認され得る。
【0051】
本発明の方法は、以下で規定される他の認知又は神経精神医学的障害を区別するために使用されてもよい。本発明の方法が以下に記載されている障害を区別するために使用される場合、分析される脳領域は、以下に記載されている対応する脳領域のうちの1つ又は複数、より好ましくはすべてを含まなければならない。
【0052】
自閉症:紡錘状皮質、上側頭溝、眼窩前頭皮質、dlPFC、下頭頂皮質、一次視覚野、一次聴覚皮質
【0053】
統合失調症:dlPFC、背内側PFC、帯状回、上側頭回、PHG
【0054】
双極性障害:PHG、subgenual PFC、dlPFC、帯状
【0055】
てんかん:嗅内皮質、PHG
【0056】
失読症:下頭頂皮質、上側頭回
【0057】
ダウン症候群:上側頭回、PHG、dlPFC
【0058】
パーキンソン病:嗅内皮質、帯状回
【0059】
筋萎縮性側索硬化症:運動皮質
【0060】
ハンチントン病:運動皮質、帯状回
【0061】
多発性硬化症:運動皮質、MRIスキャンにより識別されたMS病変を含む皮質領
【0062】
プリオン病:一次視覚野、認識可能な縮小を伴わない皮質野に比べてボリュメトリック縮小を示す皮質野
【0063】
うつ:dlPFC、背内側PFC、帯状回
【0064】
強迫性障害:帯状回、dlPFC、背内側PFC
【0065】
ADHD:眼窩前頭皮質、dlPFC、帯状
【0066】
本明細書において使用されるとき、「ミニコラム」という用語は、脳の皮質層を通る垂直コラムである。ミニコラムは、皮質ミニコラム、マイクロコラム、又は皮質マイクロコラムとも交換可能に呼ばれ得る。「ミニコラム」という用語は、細胞高密度コア(cell-dense core)とそれを囲む細胞スパース末梢神経網空間(cell-sparse peripheral neuropil space)との組み合わせ、又は、幾つかの状況において、単に(細胞体により規定された)細胞高密度コアであると理解され得る。典型的には、それは、コア及び末梢に関連している。
【0067】
マイクロセグメントは、構造物の不十分な連続性、より少ない数の細胞、又はより長い細胞間距離に基づいて、ミニコラムと分類されない、整列した細胞、接続樹状突起、又は軸索の破壊のある紐(disrupted string)から生じたコラム状微細構造組織の断片である。マイクロセグメントは、Chance S.A.ら、「Micro-anatomical correlates of cognitive ability and decline:normal ageing,MCI and Alzheimer’s disease」、Cerebral Cortex 21(8):1870-8(2011)において組織病理学的に説明されている。
【0068】
対象者は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくは人間であり得る。幾つかの実施形態において、対象者は、認知障害を患った者、好ましくは認知症を患った者であり得る。
【0069】
幾つかの実施形態において、対象者は、アルツハイマー病(AD)、脳血管性認知症(CVD)、軽度認知障害(MCI)、前頭側頭型認知症(FTD)、又はレビー小体型認知症(DLB)を患った者である。好ましくは、対象者は、アルツハイマー病、FTD、CVD又はMCIを患っている。
【0070】
他の実施形態において、対象者は、正常脳構造の変化に関連した神経障害を患った者であり得る。
【0071】
幾つかの実施形態において、対象者は、自閉症、多発性硬化症(MS)、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)、パーキンソン病、統合失調症、双極性障害、失読症、ダウン症候群、ハンチントン病、プリオン病、うつ、強迫性障害、又は注意欠陥多動障害(ADHD:attention deficit hyperactivity disorder)を患った者である。
【0072】
他の実施形態において、対象者は、主観的認知障害、preMCI、及び前駆AD、後部皮質萎縮(ADの部分集合)、行動異常型、意味性、進行性非流暢性失語症(FTDの部分集合)、脳障害、肝性脳症、脳卒中、虚血、虚血性低酸素症、神経炎症、外傷性脳損傷(TBI:traumatic brain injury)、軽度TBI、慢性外傷性脳症、振盪、及び精神錯乱からなる群から選択された症状を患った者である。
【0073】
幾つかの実施形態において、対象者は、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、又は90歳より年長である。他の実施形態において、対象者は、5~100、10~100、20~100、30~100、40~100、50~100、60~100、70~100、80~100、又は90~100歳である。他の実施形態において、対象者は、1~5、5~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、又は90~100歳である。
【0074】
幾つかの実施形態において、対象者は胎児ではない。
【0075】
本発明の幾つかの実施形態は、対象者の脳の領域におけるボクセルにおける皮質拡散に対する測定結果を取得するステップを含む。
【0076】
皮質拡散データは、新たに(de novo)、すなわち対象者から直接取得され得る。又は、皮質拡散データは、対象者から以前に取得されたものであり得る。後者の場合において、データは、グラフ、参照テーブル、データベース、又は数学的方程式などから取得され得る。
【0077】
本発明の幾つかの実施形態は、対象者の脳の領域におけるボクセルにおける主拡散方向又は主拡散ベクトル(DPDD)を特定するステップを含む。この文脈において、拡散は、(ミニコラムを含む)脳組織の微小構造物を通した水の拡散を表す。主拡散ベクトルは、DTIにおける標準的な測定結果であり、拡散テンソルの最大固有値に対応した固有ベクトルである。テンソルは、本質的には、ボクセル内における水分子のブラウン運動をモデル化した3Dガウシアン分布の共分散行列である。好ましくは、主拡散方向又はベクトル(DPDD)は、皮質拡散に対する測定結果から取得される。
【0078】
本発明の幾つかの実施形態は、ボクセルにおけるミニコラムのコラム方向(ColD)を特定するステップ、又は推定するステップを含む。本明細書において使用されるとき、「ColD」及び「CRadial」という用語は相互に置き換えて使用され得る。更に、「ラジアルコラム方向」、「ラジアル方向」、及び「コラム方向」という用語も交換可能に使用され得る。
【0079】
この特定又は推定は、皮質にわたって広がる皮質プロファイルに基づき得る。それは、組織構造に基づいて典型的な健康なミニコラム構造から導出されたミニコラム方向の数学的推定である。それは、解剖学的特徴に基づいて各領域及び各脳に対して推定される。ColDは、新たに(de novo)、すなわち対象者から直接取得され得、又は、ColDは、対象者から、又は他の対象者から以前に取得されたものであり得る。後者の場合において、データは、グラフ、参照テーブル、データベース、又は数学的方程式などから取得され得る。典型的なボクセル(例えば1mm)には多くのミニコラムが存在することになる。したがって、ボクセルに対するColDの値は平均値となる。
【0080】
本発明の幾つかの実施形態は、ボクセルに対するColDとDPDDの方向との間のコラムずれ角(AngleR)を特定するステップを含む。AngleRは、個々のボクセルレベルにおいて測定される。AngleRは、灰白質ボクセルにおいて特定される。それはラジアンを単位として測定される。
【0081】
本発明の幾つかの実施形態において、軸方向拡散に対する値は、第2のボクセルに対して取得される。第2のボクセルは脳の白質に存在する。
【0082】
本明細書において使用されるとき、「軸方向拡散」という用語は主拡散軸に沿った拡散を表す(λ)。軸方向拡散は、長手方向拡散としても知られる。軸方向拡散はmm/秒を単位として測定される。
【0083】
軸方向拡散に対する値は、(第1のボクセル又は第1のボクセル集合を含む)灰白質領域の基礎となる白質に存在する第2のボクセル(又は第2のボクセル集合)において取得される。
【0084】
AngleRを導出するために使用される灰白質におけるボクセルは、軸方向拡散を導出するために使用される皮質下白質における対応するボクセル集合におおむね重ならなければならない。第1のボクセル及び第2のボクセルは、同じ、又は接続された脳領域内になければならない。
【0085】
第1のボクセルは、規定の皮質領内において連続的な、又は半連続的な灰白質ボクセルの集合を形成しなければならない。第2のボクセルは、同じ全体的な脳領域、又は、皮質領に対する知られた接続を伴う脳領域内において連続的な、又は半連続的な白質ボクセルの集合を形成しなければならない。
【0086】
幾つかの実施形態において、第1のボクセル及び/又は第2のボクセルは、対象者の脳の皮質にわたって連続的な、又は不連続な弧を形成する連続的な、又は半連続的なボクセルの集合を形成するものである。
【0087】
第2のボクセルは、ラジアル方向において第1のボクセルの下方に位置する。境界領域は除外され得るので、それは近接していることを必要としない。第2のボクセル(又はボクセル集合)は、解剖学的知識情報に基づいて、又は、確率論的脳地図を使用した領域への自動割り当てに基づいて、通常、以前のデータベースに基づいて、第1のボクセル(又はボクセル集合)を含む灰白質と同じ脳領域の白質内に位置する。
【0088】
本発明の幾つかの実施形態は、AngleRとAxDとに対する値を使用して1つ又は複数のボクセルに対する軸方向コラム屈折(ACR)に対する値を特定するステップを含む。
【0089】
軸方向コラム屈折は、AngleRと軸方向拡散とに対する値から導出された値である。軸方向コラム屈折は、マイクロセグメントの数及び密度、及び、対象者の脳における異常皮質ミニコラム構造の程度、ひいては、対象者における認知低下の程度を表す値であり、及び、これらと直接的に(好ましくは正に)相関した値である。
【0090】
幾つかの実施形態において、ACRはAngleRと軸方向拡散との和又は加重和、すなわち(k1×AngleR)+(k2×軸方向拡散)であり、ここで、k1及びk2は独立した正の数であり、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。最も好ましくは、ACRは、AngleRと軸方向拡散との乗算結果(すなわちAngleR×軸方向拡散)、又はその倍数である。ACRは、第1のボクセル及び/又は第2のボクセルに割り当てられ得る。
【0091】
幾つかの実施形態において、灰白質ボクセルは、1つより多い白質ボクセルと「一致し」(すなわち組み合わされ)得る(又はその逆である)。この場合において、平均が計算される。
【0092】
幾つかの実施形態において、本方法は、複数のボクセルにおいてAngleRと軸方向拡散との両方に対する値を取得すること、又は特定することを含む。例えば、AngleRと軸方向拡散とに対する値は、1個~10,000個、好ましくは50個~6,000個、より好ましくは100個~500個のボクセルにおいて独立して取得され、又は特定され得る。全脳分析に対して、AngleRに対する値は、140,000個~180,000個、好ましくは約160,000個の灰白質ボクセルから取得され、同数の白質ボクセルに対する軸方向拡散に対する値と組み合わされ得る。
【0093】
任意選択的に、選択されたボクセルに対する軸方向コラム屈折(ACR)に対する平均値が、それらのボクセルの各々におけるAngleRと軸方向拡散とに対する平均値を使用して特定される。代替的に、ACRに対する値を提供するために、AngleR及び軸方向拡散の何らかの他の数学的関数(例えばAngleRと軸方向拡散との加重和)が選択され得る。
【0094】
幾つかの実施形態において、本発明は、対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、
(a)対象者の脳の領域における複数のボクセルに対して、本発明の方法により、ACRの値を取得するステップ
を含み、
それらのボクセルに対するACRの値の大きさが、その対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
方法を提供する。
【0095】
ACRの値は、健康なコントロールと、認知低下を患った対象者、例えばアルツハイマー病を患った者とを区別するために使用されてもよい。
【0096】
本明細書において使用されるとき、「認知障害」という用語は、学習、記憶、知覚、及び/又は問題解決に影響を与える任意の精神的健康障害を表す。本発明の好ましい実施形態において、認知障害は、任意の形態の認知症であり得る。
【0097】
好ましくは、認知障害は、アルツハイマー病(AD)、脳血管性認知症(CVD)、軽度認知障害(MCI)、前頭側頭型認知症(FTD)、及びレビー小体型認知症(DLB)からなる群から選択される。
【0098】
他の実施形態において、認知障害は、正常脳構造の変化に関連した神経障害であり、好ましくは、自閉症、多発性硬化症(MS)、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及びパーキンソン病からなる群から選択された神経障害であり得る。
【0099】
他の実施形態において、認知障害は、好ましくは、神経精神医学的障害であり、最も好ましくは、自閉症、統合失調症、双極性障害、てんかん、失読症、ダウン症候群、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、多発性硬化症、プリオン病、うつ、強迫性障害、及び注意欠陥多動障害(ADHD)からなる群から選択されたものである。
【0100】
他の実施形態において、認知障害は、主観的認知障害、preMCI、及び前駆AD;後部皮質萎縮(ADの部分集合);行動異常型、意味性、進行性非流暢性失語症(FTDの部分集合);脳障害、肝性脳症;脳卒中;虚血、虚血性低酸素症;神経炎症;外傷性脳損傷(TBI)、軽度TBI、慢性外傷性脳症、振盪;及び精神錯乱である。
【0101】
認知症のレベルは、ブラークステージを使用して定量化され得る(例えば、Braak H、Braak E.1991.Neuropathological staging of Alzheimer-related changes.Acta Neuropathol. 82:239-259)。
【0102】
他の実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、方法が、
(a)対象者の脳の領域における複数のボクセルに対して、本発明の方法により、ACRの値を取得するステップ
を含み、
それらのボクセルに対するACRの値の大きさが、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
方法を提供する。
【0103】
ACRがその脳領域におけるマイクロセグメントブレークの数と正に相関することが本明細書に示されている。規定の脳領域におけるマイクロセグメントブレークの数は、その領域におけるマイクロセグメントブレークの密度の標示を与える。
【0104】
更に異なる更なる実施形態において、本発明は、対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップであって、脳領域が、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質である、取得するステップ
を含み、
複数のボクセルからのAngleRの値の大きさが、その対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
方法を提供する。
【0105】
AngleRがその脳領域におけるマイクロセグメントブレークの数と正に相関すること、及び、これが認知障害のレベルを表すことが本明細書に示されている。
【0106】
更に異なる更なる実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ
を含み、
複数のボクセルからのAngleRの値の大きさが、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
方法を提供する。
【0107】
好ましくは、脳領域は、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質である。AngleRが皮質9野及びPHGにおけるマイクロセグメントブレークの数と正に相関することが本明細書に示されている。
【0108】
更に異なる別の実施形態において、本発明は、対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップであって、脳領域が、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質である、取得するステップ
を含み、
複数のボクセルからの軸方向拡散の値の大きさが、その対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
方法を提供する。
【0109】
軸方向拡散が皮質9野又はPHGにおけるマイクロセグメントブレークの数と正に相関すること、及び、これが認知障害のレベルを表すことが本明細書に示されている。
【0110】
更に異なる別の実施形態において、本発明は、対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ
を含み、
複数のボクセルからの軸方向拡散の値の大きさが、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
方法を提供する。
【0111】
軸方向拡散がマイクロセグメントブレークの数と正に相関することが本明細書に示されている。好ましくは、脳領域は、皮質9野、又はPHG、又は嗅内皮質である。
【0112】
本発明の幾つかの実施形態は、軸方向拡散とPerpとに対する値を使用して、ボクセルに対する垂直コラム屈折(PerpCR)に対する値を特定するステップを含む。垂直コラム屈折(PerpCR)は、軸方向拡散とPerpとに対する値から導出された値である。垂直コラム屈折(PerpCR)は、マイクロセグメントの数及び密度、及び、対象者の脳における異常皮質ミニコラム構造の程度、ひいては、対象者における認知低下の程度を表す値であり、及び、これらと正に相関する値である。
【0113】
軸方向拡散は、個々のボクセルレベルにおいて測定される。軸方向拡散は白質ボクセルにおいて特定される。軸方向拡散は、mm/秒を単位として測定される。
【0114】
Perpは、個々のボクセルレベルにおいて測定される。Perpは、灰白質ボクセルにおいて特定される。Perpは、mm/秒を単位として測定される。幾つかの実施形態において、垂直コラム屈折(PerpCR)は、軸方向拡散とPerpとの和又は加重和、すなわち、(k1×軸方向拡散)+(k2×Perp)であり、ここで、K1及びK2は独立した正の数であり、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。最も好ましくは、垂直コラム屈折(PerpCR)は、軸方向拡散とPerpとの乗算結果(すなわち、軸方向拡散×Perp)、又はその倍数である。PerpCRは、第1のボクセル及び/又は第2のボクセルに割り当てられ得る。
【0115】
幾つかの実施形態において、灰白質ボクセルは、1つより多い白質ボクセルと「一致し」(すなわち、組み合わされ)得る(又はその逆である)。この場合において、平均が計算される。
【0116】
幾つかの実施形態において、本方法は、複数のボクセルにおける軸方向拡散とPerpとの両方に対する値を取得すること、又は特定することを含む。
【0117】
例えば、軸方向拡散とPerpとに対する値は、1個~10,000個、好ましくは50個~6,000個、より好ましくは100個~500個のボクセルにおいて取得され、又は特定され得る。全脳分析に対して、軸方向拡散に対する値は、140,000個~180,000個、好ましくは約160,000個の白質ボクセルから取得され、重なった灰白質ボクセルに対するPerpに対する値と組み合わされ得る。
【0118】
幾つかの実施形態において、第1のボクセル及び/又は第2のボクセルは、対象者の脳の皮質にわたって連続的な、又は不連続な弧を形成する連続的な、又は半連続的なボクセルの集合を形成するものである。
【0119】
第2のボクセルは、ラジアル方向において第1のボクセルの下方に位置する。境界領域は除外され得るので、それは近接していることを必要としない。第2のボクセル(又はボクセル集合)は、解剖学的知識情報に基づいて、又は、確率論的脳地図を使用した領域への自動割り当てに基づいて、通常、以前のデータベースに基づいて、第1のボクセル(又はボクセル集合)を含む灰白質と同じ脳領域の白質内に位置する。
【0120】
任意選択的に、選択されたボクセルに対する垂直コラム屈折(PerpCR)に対する平均値が、それらのボクセルの各々における軸方向拡散とPerpとに対する平均値を使用して特定される。代替的に、垂直コラム屈折(PerpCR)に対する値を提供するために、軸方向拡散及びPerpの何らかの他の数学的関数(例えば軸方向拡散とPerpとの加重和)が選択され得る。
【0121】
垂直拡散は、ColDに直交した主拡散方向に発生する拡散の成分である。これは、主固有ベクトル(V1)にそれの対応する固有値の値(L1)を乗じることと、次にその成分にこれを分解することとにより測定され得る。ColDに直交した成分の値は垂直拡散である。
【0122】
特に、ボクセルに対する垂直拡散(Perp)に対する値は、そのボクセルにおけるColDに直交した平面上にDPDDを射影することと、射影の大きさを特定することとにより取得され得る。Perpはこの大きさの値である。
【0123】
「PerpPD」という用語は更に、本明細書において「Perp」の代わりに交換可能に使用され得る。
【0124】
本明細書において使用されるとき、「その対象者における認知障害のレベルの標示を提供」するという表現は、問題となっている値(例えばAngleR、軸方向拡散、Perp、PerpCR、又はACR)と認知障害のレベルとの間に正の相関が存在することを意味する。結果として、(コントロールとしての健康な対象者からの値と比べたときの、又はその対象者からの以前の値と比べたときの)問題となっている値の増加は、対象者が認知障害又はより高いレベルの認知障害を患っていることの、より高い可能性又は統計的に有意な可能性(増加が大幅である)を意味する。必要な変更を加えた上で、同じことが値の減少に当てはまる。
【0125】
本明細書において使用されるとき、「その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する」という表現は、問題となっている値(例えばAngleR、軸方向拡散、Perp、PerpCR、又はACR)とその領域におけるマイクロセグメントブレークの数との間に正の相関が存在することを意味する。結果として、(コントロールとしての健康な対象者からの値と比べたときの、又は、その対象者からの以前の値と比べたときの)問題となっている値の増加は、対象者がその領域にマイクロセグメントブレークを含んでいること、又は、その領域におけるマイクロセグメントブレークの数の増加を伴っていることの、より高い可能性又は統計的に有意な可能性(増加が大幅である)を意味する。必要な変更を加えた上で、同じことが値の減少に当てはまる。
【0126】
幾つかの実施形態において、本方法は、MRスキャナに対象者を配置するステップと、対象者からMR拡散データを取得するステップとを更に含む。
【0127】
他の実施形態において、本発明は処置の方法に関し、本方法は、次のステップを更に含み、すなわち、対象者が特定の基準レベルを(上方に、又は下方に)越えた認知障害のレベルを伴うことが見出された場合、又は、特定の基準レベルより高いACR又はPerpCRに対する値をもつことが見出された場合、認知障害処置薬が対象者に投与される。
【0128】
他の実施形態において、本発明は処置の方法に関し、本方法は、本明細書において開示されているACR又はPerpCRを特定する方法の結果を取得すること、又は受け取ることと、ACR又はPerpCR値が基準レベルより高いことにより対象者における認知障害の存在の標示を提供している場合、認知障害を処置するための適切な処置を対象者に執行することとを含む。
【0129】
他の実施形態において、本発明は、対象者における疾患の持続期間の標示を取得する、コンピュータにより実施される方法に関し、疾患が、MSであり、方法が、
(a)対象者の脳の1つ又は複数の領域における、軸索線維束幅の測定結果又はそこから導出された値と、
(b)対象者における疾患の持続期間と
を相関させるステップであって、
軸索線維束幅の測定結果又はそこから導出された値が、対象者におけるMS疾患の持続期間と負に相関する、相関させるステップと、
以て、対象者におけるMS疾患の持続期間の標示を取得するステップと、
を含む。
【0130】
他の実施形態において、本発明は、対象者における疾患の持続期間の標示を取得する、コンピュータにより実施される方法に関し、疾患が、MSであり、方法が、
(i)対象者の脳の1つ又は複数の領域からの、軸索線維束幅の測定結果又はそこから導出された値を、
(ii)特定のMS疾患持続期間を伴うコントロール対象者の脳の対応する領域からの、軸索線維束幅の測定結果又はそこから導出された値の基準集合と
比較するステップであって、
軸索線維束幅の測定結果又はそこから導出された値が、MS疾患の持続期間と負に相関する、比較するステップと、
以て、対象者におけるMS疾患の持続期間の標示を取得するステップと、
を含む。
【0131】
他の実施形態において、本発明は、対象者における疾患の持続期間の標示を取得する、コンピュータにより実施される方法に関し、疾患が、MSであり、方法が、
(a)対象者の脳の1つ又は複数の領域から取得された軸索線維束幅の測定結果又はそこから導出された値から、対象者におけるMS疾患の持続期間の標示を特定するステップ
を含む。
【0132】
好ましくは、軸索線維束幅測定結果は、拡散MRIにより取得される、又は以前に取得されている。好ましくは、脳領域は、41野である。
【0133】
1つ又は複数の測定結果が取得される場合、測定結果の平均が本発明の方法において使用され得る。
【0134】
更なる一実施形態において、本発明は、本発明の方法のステップを実施するように構成された少なくとも1つの処理手段を備えるシステム又は装置を提供する。
【0135】
処理手段は、例えば、1つ又は複数のコンピューティングデバイス、及び、1つ又は複数のコンピューティングデバイスにおいて実行可能な少なくとも1つのアプリケーションであり得る。少なくとも1つのアプリケーションは、本発明の方法のステップを実施するためのロジックを含み得る。
【0136】
本発明は、本発明の方法のステップを実施するように構成された少なくとも1つの処理手段を備えるシステムの使用を更に提供する。
【0137】
更なる一実施形態において、本発明は、本発明の方法のステップを実施するようにプロセッサを構成するための命令を含むソフトウェアを記憶した媒体を提供する。
【0138】
本明細書に記載されている各参考文献の開示内容は、明示的にその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
図1A】導出された拡散ベースの尺度の図的なボクセル例である。AngleRは、皮質におけるコラムボクセル集合から平均化される。
図1B】1つの代表的な領域に対する皮質拡散データの例(右)であり、導出された拡散ベースの尺度の図的なボクセル例(左)を含む。DPDDに向いた矢印の付いた線はボクセルにおける主拡散ベクトルを示し、右では、方向のみが示されているのに対し、左では、PDDベクトル(DPDD)に沿った拡散テンソル成分が示されている。CRadialに向かう矢印の付いた線は、皮質に垂直なラジアル方向(CRadial)を示す。ボクセルにおけるラジアリティの角度AngleR(表記、θ)は、矢印の付いた線間の角度である。垂直拡散PerpPD(表記、D1,⊥)は、CRadialに直交した平面上にDPDDを射影することにより計算されている。平行拡散ParlPD(表記、D1,∥)は、CRadial上にDPDDを射影することにより計算されている。量は皮質層にわたるラジアル皮質プロファイルに沿って平均化されており、図1Cにおいて光の線によりボクセル集合に対して示されるように、ミニコラム状組織を反映している。
図1C】量は皮質層にわたるラジアル皮質プロファイルに沿って平均化されており、図1Cにおいて光の線によりボクセル集合に対して示されるように、ミニコラム状組織を反映している。
図2】死後DTIデータから導出されたAngleRと、AD重症度に対する神経病理学的な標準的な基準(ブラークステージング)との間の関連性である。コントロール(円、点線の線形回帰線)とAD患者の脳(正方形、破線の線形回帰線)とは、AngleRとブラークステージングとの間に同様の正の対応を示す。
図3A図3は、2つの異なる脳領域におけるAngleRとマイクロセグメント数との間の相関である。
図3B図3は、2つの異なる脳領域におけるAngleRとマイクロセグメント数との間の相関である。
図4A図4は、試行インビボデータ集合におけるコントロールとADとの間のAngleRの違いである(全脳及びサブ領域PHG)。
図4B図4は、試行インビボデータ集合におけるコントロールとADとの間のAngleRの違いである(全脳及びサブ領域PHG)。
図5A図5は、死後に確認されたアルツハイマー病及びコントロール脳における、組織学的マイクロセグメントと2つの脳領域における軸方向拡散及びAngleRの関数との間の相関である。図5Aは、前頭前野におけるものである(9野)。図5Bは、内側側頭葉(海馬傍回、PHG)におけるものである。
図5B図5は、死後に確認されたアルツハイマー病及びコントロール脳における、組織学的マイクロセグメントと2つの脳領域における軸方向拡散及びAngleRの関数との間の相関である。図5Aは、前頭前野におけるものである(9野)。図5Bは、内側側頭葉(海馬傍回、PHG)におけるものである。
図6A図6は、2つの脳領域における軸方向拡散とAngleRとの乗算結果における、死後に確認されたアルツハイマー病の脳とコントロール脳との間の違いを示す。図6Aは、前頭前野(9野)におけるものである。図6Bは、内側側頭葉(海馬傍回、PHG)におけるものである。
図6B図6は、2つの脳領域における軸方向拡散とAngleRとの乗算結果における、死後に確認されたアルツハイマー病の脳とコントロール脳との間の違いを示す。図6Aは、前頭前野(9野)におけるものである。図6Bは、内側側頭葉(海馬傍回、PHG)におけるものである。
図7】a)AngleR、b)ミニコラム幅、c)軸索束間隔、及びd)軸索束幅における領域差を示す。エラーバーは標準偏差を示す。
図8】MS脳における一次聴覚皮質における束幅と疾患持続期間との間の関連性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0140】
実施例
【0141】
本発明は以下の例により更に説明され、以下の例において、別段の記載がない限り、割合及びパーセンテージは重量比であり、度は摂氏である。これらの例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例示のためにのみ示されることが理解されなければならない。上記の説明及びこれらの例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を把握し得、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な使用及び状態に適応させるために本発明の様々な変形及び変更を行い得る。したがって、本明細書に示されるもの、及び説明されるものに加えて、本発明の様々な変形が上述の説明から当業者に明らかである。このような変更も添付の請求項の範囲に入ることを意図したものである。
【0142】
実施例1:実施例2のための材料及び方法
【0143】
生体外脳(Ex-vivo brains)
【0144】
ADと診断された5人の患者と、Oxford Brain Bank(OBB)から選択された6人の正常に老いたコントロールとから、脳がMRIスキャンされた。調査された脳はドナーにより提供されたものであり、脳剖検、及び研究目的のための材料及び臨床情報の使用に対する書面によるインフォームドコンセントがこのドナーからOBBにより取得された。認知症脳は英国における認知症研究用脳ネットワーク(Brains for Dementia Research network in the UK)から入手された。脳は、10%中性緩衝ホルマリン内に固定された頭蓋及び浸漬から抽出された。死後インターバル(PMI:post-mortem interval)は49.2±25.6時間であり、スキャニング前の期間(スキャンインターバル)は59.1±39.9週間であった。したがって、脳は何年も固定されたものではないが、固定に関連した主な縮小が発生する4週間より長い期間にわたって固定された(Quester & Schroder、1997)。AD脳の診断は臨床神経病理学者により確認された。異なる脳領域からのサンプルが、Consortium to Establish a Registry for Alzheimer’s Disease(CERAD)の基準に従った診断の確認のために取得され、ブラークスコアを割り当てられた。クロイツフェルトヤコブ病、パーキンソン病、レビー小体病、ハンチントン病、及び脳血管疾患を包含する他の病理の大幅な兆候を示した脳は排除された。アルコール又は違法薬物の乱用の併存疾患は、我々のサンプルの記録では検出されなかった。このプロジェクトは、UK National Research Ethics Serviceの承認のもとで実行され、Oxford脳バンクに提供され、インフォームドコンセントは、すべての対象者及び/又は家族代理人から取得された。脳は、構造上の、及び拡散テンソルイメージングデータを導出するために、死後組織に適した修正された獲得手法を使用してスキャンされた。
【0145】
ミニコラム組織学的分析
【0146】
スキャン及び神経病理学的サンプリング後、脳は冠状にセクション分けされた。1つの脳当たり1つの半球からの3つの領域の各々に対して、25mm×25mm×10mmのサイズのブロックがサンプリングされた(半球の代表的なサンプル:左4、右6)脳バンクからの組織の入手可能性に対する制約に起因して、1つの認知症事例は詳細な組織学的サンプリングのためにアクセス不能であった。10個の残りの事例に対して、組織ブロック及び周辺の解剖学的構造が参照のためにOlympus C-5050デジタルカメラを使用して写真撮影された。背外側前頭前皮質(dlPFC、9野)ROIは、パラシンギュレートサルカス(paracingulate sulcus)及び下前頭溝において下方に境界を規定された中前頭回及び上前頭回を含んでいた。dlPFCブロックは、帯状回と同じ高さでサンプリングされた。下頭頂葉(40野)は、頭頂間溝により上方に境界を規定された、シルヴィウス裂溝により下方に境界を規定された、中心後溝により前方に境界を規定された、及びヤンセンサルカス(Jensen sulcus)により後方に境界を規定された縁上回として規定された。海馬傍回(PHG)は、海馬の最後部により後方に規定された、海馬が扁桃体と融合する点により前方に規定された範囲内においてサンプリングされ、及び上方境界は海馬と海馬台との間の融合体であった。PHG領域に対して、更に、ヒトの脳の研究のための内側側頭葉サンプルに対する高い需要に起因して、2つのコントロール事例が利用可能ではなかった。ROI選択は、Von Economo及びKoskinas(1925)に従って、細胞構造的に確認された。
【0147】
組織ブロックはパラフィンワックスに埋め込まれ、30μmにおいて連続的にセクション分けされた。2つのセクションは、組織ブロックの範囲に関連して系統的にランダムに選択され、これらはクレシルバイオレットニッスル染料を使用してミニコラム分析のために染色された(CV;ThermoFisher Scientific、Waltham、MA、USA)。
【0148】
細胞体に基づくミニコラム幅は、以前に詳細に説明されている半自動工程を使用して評価された(Buxhoevedenら、2001;Casanova及びSwitala、2005)。この工程は、細胞高密度コア領域に加えてそれを囲む関連する神経網空間からなるミニコラム幅に対する値を与える。マイクロセグメント数は、更に、Chanceら(2011)において説明されているように「不完全な」ミニコラムセグメントをカウントすることにより、ミニコラム組織に対する破壊(disruption)のインデックスとして測定された。各ROIに対して、可能な場合3つの写真が1つの顕微鏡スライドから撮影され、各々が約1mmの領域を含む。画像位置は、細胞分布に影響を与えることが示されている(Chanceら、2004)曲率の大きいエリアを除いて、ランダム数生成器を使用して選択された。ミニコラムはレイヤーIIIにおいて最も鮮明であるので、写真はそのレイヤーを中心として、Olympus BX40顕微鏡を使用して4倍対物レンズを通して取得された(更なる詳細は、Di Rosaら(2009)及びVan Veluwら(2012)に示され得る)。3つの写真から計算された値は、各領域に対して1つの値を与えるように平均化された。
【0149】
DTIを使用して皮質破壊(Cortical Disruption)を測定すること
【0150】
死後スキャン分析
【0151】
MRI拡散データの新規な分析が、神経変性の可能なバイオマーカーとして適用された。我々は、それが、ミニコラム構造に関連した大脳皮質の細胞構造体系に対して感受性をもつという仮説を立てた。シナプス及び神経突起の欠失、及び、その後の細胞死が、皮質ニューロンの正常組織に進行性の損傷をもたらし、変質した皮質微小形状を生成する。我々は、拡散MRIが、細胞欠失、ミニコラム薄化、及び軸索及び樹状突起束の破壊を通したミニコラム断片(マイクロセグメント)の生成を包含するこれらの影響に感受性をもち得ると推測した。死後脳に対する皮質拡散分析は、関心領域(ROI:region of interest)のマスキング、ROI内における拡散尺度(diffusion metrics)の計算、及び、組織構造測定結果との比較のための値の抽出という3つの段階から構成された。
【0152】
ミニコラム測定のために組織学的にサンプリングされたものに対応した皮質ROIは、構造的MRI画像に対して手動で作成されたマスクを使用して表された(9野、40野、及びPHGは上述のように標識を使用して識別された)。対応するニッスル染色されたスライドにおいてマーキングされた写真位置を使用して、注意深い比較が更に行われた。固定に起因した、死後脳におけるGM組織とWM組織との間のより低いコントラストを考慮して、灰白質ボクセルのみを含むために、及びWM又はCSFからの汚染を避けるために、構造的スキャンが、構造的空間において以前にコレジストレーションされたMDマップに重ね合わされた。
【0153】
各ROIに対する拡散尺度値を計算するために、皮質錯綜配列値(Cortical Disarray values)が、皮質プロファイル、すなわち、放射状グリアに沿った室周囲領域から移動した、及び、脳の皮質灰白質を形成するように互いに重なって白質から現れる、細胞のコラム状アレイをモデル化した皮質における線から生成されたデータであった。これらの皮質プロファイルは、皮質の下方の白質に始点をもち、皮質薄層の細胞構造を通って軟膜表面まで延びた、神経解剖学に基づいくコラム方向を計算することにより生成された。拡散テンソル由来の尺度に対する値が、皮質プロファイルに沿った平均化されて、各皮質プロファイルに対する平均値を生成した。
【0154】
次に、テンソル尺度に対する平均値が、ROIの端部(最初の、及び最後のスライス)を除いて、マスクされたROIの各々にわたって皮質プロファイルを平均化することにより生成された。FA、MD、及び、主拡散成分に関連した測定結果、すなわち、コラム方向と主拡散方向との間の角度(AngleR)に対して平均が計算された。これらの測定結果が、皮質細胞構造により提供される拡散に対するラジアルバリアの組織及び間隔における変動による影響を受けたという仮説が立てられた(皮質拡散評価は軸方向及びラジアル拡散と同じではないことに留意されなければならない。図1参照)。
【0155】
各拡散尺度に対する1つのROI平均値が、局所ノイズ/アーティファクトに対するロバスト性を実現し、及び、各ROIに対して1つの値を同様に計算した組織構造測定結果との整合性を更に実現した。これまでの取り組みは、細胞構造及び髄鞘構築の測定結果が皮質領内において比較的安定していることを見出しており(例えば、Von Economo及びKoskinas、1925)、このことは、それがその領域に対する平均値を導出するために有効であることを示している。
【0156】
診査のためのインビボデータ集合(Exploratory in vivo dataset)
【0157】
インビボデータは、15個のコントロール及び14個のADという、ADNIデータ集合から以前に収集されたスキャンの小さいパイロット部分集合に基づくものであった(Weinerら、2013)。コントロールのスキャンは5つの異なるセンターからのものであり、ADは8つの異なるセンターからのものであった。診断群に対する割り当ては、臨床診断、MMSE、及び臨床認知症レーティングスケール(CDR:Clinical Dementia Rating)スコアにより可能にされた。4未満のHachinskiスコアをもつ重度の脈管疾患を包含する他の症状は除外された。ADNIコンソーシアムガイドラインに従った倫理的承認を受けて、データが収集され、及び提供された。
【0158】
各対象者に対して、GM、WM、及びCSFボリュームが演算されたGM断片(GMf)を含むSPM8セグメント分けを使用して確立された。インビボ皮質拡散検証に対して、皮質拡散分析を適用するために、全脳皮質灰白質マスクが最初に使用された。次に、関心領域分析が、死後分析に対して使用されたものと同じROI、すなわちPHG、PFC、及び40野に適用された。
【0159】
統計分析
【0160】
すべてのデータは、Windows用のSPSS v22を使用して分析された。
【0161】
死後診断群における小さいサンプルサイズに起因して、死後データが組織構造と対象者内におけるDTI値との間の関連性を比較するために使用されるとともに、診断群の相違がインビボデータ集合において調査された。有意性閾値は、複数の比較に対して修正された。
【0162】
(モダリティ内関連性を含む)組織構造とDTI測定結果との間の関連性が、ピアソンの相関、又は小さい群に対するスピアマンの順位相関を使用した相関分析により調査された。神経病理学的評価に関して、タウ陽性神経原線維変化のブラークステージングのみが統計分析を受け、その理由は、それが群内及び群間の範囲を示したからである。
【0163】
実施例2:結果
【0164】
診断神経病理学
【0165】
ブラークステージングは、コントロールに比べてAD脳において高かった(Mann-Whitney U 0.5、p<0.01)(図2における値の分布を参照されたい)。他の分類手法が、明確な診断カテゴリ差を示した。CERAD分類は、すべてのコントロール脳に対して「正常」であったが、AD患者に対するCERAD分類は、「明確にADである」又は「ADの可能性がある」であった。BNETアミロイドBは、AD脳に対して中央値の5であり、及び、コントロール脳に対して1であった。
【0166】
DTIと神経病理学との間の相関
【0167】
ブラークステージは、コントロール脳(スピアマンのロー 0.85、p<0.05)におけるPHGにおけるAngleRと正に相関され、及び、AD(スピアマンのロー 0.82、p=0.09)ではトレンドレベルであった。最良にフィッティングした回帰線間の近い一致が与えられ(図2参照)、コントロール脳とAD脳との間の連続性が存在し得ることが見受けられ、このことは、ADとコントロールとの間のブラークステージングの重なりによっても示された。この連続性を考慮するために、コントロール及びADが一緒にグループ化され、すべての領域(PHG:スピアマンのロー 0.96、p<0.001;9野:スピアマンのロー 0.74、p=0.009;40野:スピアマンのロー 0.61、p=0.045)においてブラークステージングとAngleRの間の正の関連性が存在した。図3
【0168】
DTIと組織構造との間の相関
【0169】
新規な皮質拡散値は、水平間隔及び皮質灰白質におけるミニコラムの完全性、すなわち、推定されたミニコラム方向からのずれ角(AngleR)に関連していると仮説を立てられた。AngleR及び組織学的ミニコラムマイクロセグメント数及びミニコラム幅の間の関連性が相関試験により観察された。
【0170】
ADにおけるすべての脳領域において、特に、皮質9野及びPHG(両方に対してスピアマンのロー 1.0、p<0.01)において、AngleRとマイクロセグメント数との間に正の関連性が存在した。
【0171】
すべての対象者にわたって関連性が存在した(図3参照)が、コントロールでは関連性はより不明確であった。
【0172】
FA及びMDの測定結果は、組織学的測定結果と全体的に相関しなかった。
【0173】
人口統計学的相関
【0174】
概して、人口統計学的変数、年齢、死後インターバル、固定期間、及び脳重量は、測定された組織学的、又は皮質拡散変数との統計的に有意な相関を示さなかった。1つのトレンドのみが観測され、皮質9野における死亡時年齢とAngleRとの間の正の関連性の有意でない標示が存在した。
【0175】
CDR値は、すべてのコントロール対象者に対して0であり、1のレーティングを伴った1人を除くすべてのAD患者に対して3の値であった。
【0176】
インビボ皮質拡散測定結果
【0177】
全脳分析に対して、ANOVAは、年齢、対象者の動き、全脳灰白質断片、平均拡散、及び断片異方性が共変量として含まれたとき、コントロール(F 8.9、df 1,22、p<0.01)に比べるとADにおいてAngleRが大幅に高いことを見出した。共変量のいずれも統計的に有意ではなかった(AngleRに対して図4を参照されたい)。
【0178】
ROI分析に対して、反復測定として「脳領域」(PHG、PFC、40野)を使用したANOVAは、コントロール(F 6.4、df 1,22、p<0.02)に比べてADにおいて新規な皮質拡散値が大幅に高いことを見出した。効果は、測定結果x領域効果に対するトレンドに寄与する領域PHGにおけるAngleRに対して最も顕著であった(F 3.3、df 1,22、p=0.06)。年齢、対象者の動き、全脳灰白質断片、平均拡散、及び断片異方性が共変量として含まれた。
【0179】
実施例3:実施例4~5のための材料及び方法
【0180】
患者/サンプル
【0181】
9人の多発性硬化症患者から固定された全脳(表1)はUK MS組織バンク(UK MS Tissue Bank)(Imperial College、Hammersmith Hospital Campus、London)から取得された。脳は、スキャニングのためにペルフルオロカーボン溶液(Fomblin(登録商標)LC08;Solvay Inc.;Bollate、Italy)に移送される前に、10%のホルマリン内に貯蔵されており、このことは、MRI信号に寄与せず、組織との影響されやすさの整合を提供する(画像アーティファクトを減らす)。
【0182】
表1.研究のために提供された脳の特徴。多発性硬化症事例(MS)及び健康なコントロール(HC:healthy controls)
【表1】
データがすべての例に対して利用可能というわけではないMS臨床詳細
【0183】
MRIスキャン
【0184】
Oxford Brain Bankにおける既存のコホートからの9人の多発性硬化症患者及び6つのコントロール脳が、MRI比較のために使用された。スキャニングは、12チャンネルヘッドコイルを使用してSiemens Trio 3Tスキャナにおいて実行された。スキャニングは室温において実行され、各スキャンセッションは約24時間続いた。拡散強調データが、3Dセグメント分けEPIを伴う修正スピンエコーシーケンスを使用して獲得された(TE/TR=122/530ms、バンド幅=789Hz/ピクセル、マトリックスサイズ:168×192×120、分解能0.94×0.94×0.94mm)。拡散強調は、6つのb=0画像を伴って、54方向(b=4500s/mm2)に沿って等方的に分布された。このプロトコルは約6時間かかり、18時間総拡散イメージングにわたって3つの平均が獲得された。構造的スキャンは、3Dバランス定常自由歳差(BSSFP:balanced steady state free precession)シーケンス(TE/TR=3.7/7.4ms、バンド幅=302Hz/ピクセル、マトリックスサイズ:352×330×416、分解能0.5×0.5×0.5mm)を使用して獲得された。画像は、バンディングアーティファクトを避けるために、RF位相交番を伴って、及び、伴わずに獲得された。これは、信号対ノイズ比を高めるために、8回の繰り返しにわたって平均化された。更なる詳細については、Millerら(2011)を参照されたい。
【0185】
データは、FMRIBソフトウェアライブラリ(FSL:FMRIB software library)を使用して処理された(Smithら、2004;Woolrichら、2009)。断片異方性(FA:fractional anisotropy)、平均拡散(MD:mean diffusivity)、及び拡散テンソル成分のマップを生成するために、勾配誘起熱ドリフト及び渦電流ひずみを補償するために、インハウス処理パイプライン組み込んだ、FSL拡散ツールボックスが拡散強調データを処理するために使用された(Millerら、2011)。
【0186】
脳領域の選択
【0187】
背外側前頭前皮質(9野)及び一次視覚野(V1)における皮質厚さの測定結果、及び、接続された白質路(connected white matter tract)の拡散測定結果(FA及びMD)は、我々の以前の研究(Kolasinskiら、2012)における組織学的ミエリン形成測定結果と相関し、及び、多発性硬化症は脱髄障害であるので、これらのエリアが本研究における更なる調査のために選択された。加えて、これらのエリアが適切に特性取得をされ、及び、ある範囲の皮質細胞構造構成体を表すことが知られた(すなわち、9野における、より幅の広いミニコラム、及びV1における、より狭いミニコラム)。更なる比較領域-ヘッシュル回(41野)内における一次聴覚皮質-が含められ、その理由は、そのコラム状アーキテクチャは適切に特性取得をされるが、健康な対象者におけるそのPDDに関する以前の報告において不一致が存在したからである(Kangら、2012;McNabら、2013)。複数の皮質領の調査が、局所的な区別に対する拡散尺度の感度を調査することを可能にし、これは、神経障害の将来の調査の関心対象となるものである。
【0188】
神経組織学的サンプリング
【0189】
脳は冠状にセクション分けされ、多発性硬化症の診断が臨床神経病理学者により確認された。1つの脳当たり1つの半球からの3つの領域の各々(半球の代表的なランダムサンプル:左7、右8)に対して、25mm×25mm×10mmのサイズのブロックがサンプリングされた。ブロック及び周辺組織は、参照のためにOlympus C-5050デジタルカメラを使用して写真撮影された。9野は、パラシンギュレートサルカス及び下前頭溝において下方から境界を規定された中前頭回及び上前頭回を含んだ。9野ブロックは、帯状回の前方限界と同じ高さでサンプリングされた。41野ブロックはヘッシュル回を含み、島皮質により内側に境界を規定され、及び側頭平面により側方に境界を規定された。V1ブロックは、ミディアムトランスバース後頭回(medium transverse occipital gyrus)と同じ高さで鳥距裂に沿ってサンプリングされた。関心領域(ROI)の選択は、Von Economo及びKoskinas(1925)に従って細胞構造的に確認された。
【0190】
組織ブロックはパラフィンワックスに埋め込まれ、ミニコラム分析及びミエリンレベルの定量化のために10μmにおいて、及び束測定のために30μmにおいて連続的にセクション分けされた。セクションは、ミニコラム分析のためにクレシルバイオレット(CV;ThermoFisher Scientific、Waltham、MA、USA)により染色され、光透過率ミエリン定量化のために抗プロテオリピドタンパク質染色(AbD AbSerotec、Oxford、UK)(抗PLP)により染色され、及び、軸索束の測定のためにスーダンブラック、ミエリン感受性親油性染料により染色された。
【0191】
皮質拡散分析
【0192】
これは関心領域アプローチであった。組織学的にサンプリングされたものに対応した皮質ROIは、構造的死後画像に対して手動で作成されたマスクを使用して表された。組織ブロックが除去された前及び後における物理的に切られた冠状脳スライスの写真画像、及び、対応するニッスル染色されたスライドに対する注意深い参照により、構造的MRIスキャンの最も近く整合する冠状スライスが識別された。皮質ROIは、白質又はCSFからの汚染を避けるために灰白質ボクセルのみを含むように注意を払って、このスライスを中心としたMRI画像の15個の冠状スライスにわたってマスクされた。マスクされたエリアが組織学的にサンプリングされたエリアと整合されることを確実なものとするために、写真画像及び対応するニッスル染色されたスライドとの注意深い比較により皮質ROIの限界が特定された。新規なソフトウェアスクリプト(Mark Jenkinson、University of Oxford、2018;WO2016/162682A1;米国特許出願第15/564344号)が、MRIスキャン、すなわち、ラジアル方向における皮質にまたがる線に対して皮質プロファイルを生成するために使用されて、皮質内のコラム状組織を再現した。拡散テンソル由来の尺度に対する値が、ROIの前端部及び後端部における末端スライスを除いて、マスクされたROIの全体にわたって皮質プロファイルに沿って平均化された。計算された尺度は、MD、FA、及び、主拡散成分に関連した3つの尺度(WO2016162682(A1);米国特許出願第15/564344号を更に参照されたい)、すなわち、皮質層にまたがるラジアル方向と主拡散方向との間のずれ角(AngleR、θ)、皮質にまたがるラジアル方向に直交した平面上に射影された主拡散成分(したがって、垂直拡散、すなわちPerpPD、D1,⊥(×10-3mm2/秒)として説明される)、及び、皮質にまたがってラジアル方向に射影された主拡散成分(したがって、ラジアル方向に平行である、すなわちParlPD、D1,∥(×10-3mm2/秒)として説明される)であった。
【0193】
平均値は、DTIデータにおけるノイズの影響を減らし、データを効果的に平滑化し、何らかの局所コヒーレンスを伴う指向性のみが支配的となることを確実なものとし、ラジアル方向からのランダムなずれの影響から保護した。平均化は、各皮質領に対して1つの値を同様に計算した組織学的測定結果との一貫性を更に提供した。これまでの取り組みは、細胞構造及び髄鞘構築の測定結果が皮質サブ領域内において比較的安定していることを見出しており(例えばVon Economo及びKoskinas(1925))、このことは、それがその領域に対する平均値を導出するために有効であることを示している。
【0194】
ミニコラム分析
【0195】
細胞体に基づくミニコラム幅が、以前から詳細に説明されている(Buxhoevedenら、2001;Casanova及びSwitala、2005)半自動工程を使用して組織学的組織セクションにおいて評価された。この工程は、細胞高密度コア領域にそれを囲む関連する神経網空間を加えたものからなるミニコラム幅に対する値を与える。神経網間隔は近接したミニコラムのコア間の細胞スパースな神経網領域の幅であるとともに、コアはミニコラムの中心における細胞高密度領域の幅を表す。マイクロセグメント数は完全なミニコラムを形成しない細胞の紐の数であり、その理由は、それが断面から外に出ることに起因して、又は、病理の結果としてのミニコラム断片化に起因して、それらがミニコラムの残りの部分と不連続であるからである。細胞密度は、評価されたデジタル顕微鏡写真の各々の視野内における自動化組織構造分析プログラムにより認識された細胞の密度を表す(マイクロセグメント及び細胞密度の更なる説明についてはChanceら、2011を参照されたい)。各ROIに対して、可能な場合、1つのスライドから3つのデジタル顕微鏡写真が撮影され、各々が約1mmの領域を含んだ。画像位置は、細胞分布に影響を与えることが示されている曲率の大きいエリアを除いて(Chanceら、2004)、ランダム数生成器を使用して選択された。ミニコラムはレイヤーIIIにおいて最も鮮明であり、写真はそのレイヤーを中心として、Olympus BX40顕微鏡を使用して4倍対物レンズを通して取得された(更なる詳細は、Di Rosaら(2009)及びChanceら(2004)において確認され得る)。3つの写真から計算された値が、各領域に対して1つの値を与えるように平均化された。
【0196】
ミエリンレベルの定量化
【0197】
皮質ミエリン含有量が抗PLP染色組織セクションにおけるミエリン染色の強さを定量化するために、光透過率を使用して評価された。データは、10倍対物レンズを使用したBX40顕微鏡(Olympus、日本)に搭載されたAxiocam MRc(Carl-Zeiss、Jena、Germany)から信号を受信するPCにおいてAxiovision v4.7.2ソフトウェアを使用して収集された。設定は、標準的なスライド/カバースリップ準備物及び光フィルタ(6%、25%及び100%の透過率)を使用して、固定のホワイトバランス及び入射光のもとでRGBモードにおいて校正された。各ROIに対して、抗PLP染色セクションにおいて58,240μm仮想フレームを使用して、レイヤーIIIからVにわたる異なる位置において、透過率(T)の3つの測定結果が取得され、結果として得られる値が平均化された。
【0198】
軸索束分析
【0199】
軸索束はレイヤーVにおいて最も鮮明であるのでレイヤーVを中心として、Olympus BX40顕微鏡を使用して、10倍対物レンズ(分解能1.10μm)を通して、各領域に対して3つの写真が取得された。ミニコラム測定に対して行われたのと同様に、可能な場合、極端な曲率のエリアは避けられた。
【0200】
軸索束中心間隔、及び束自体の幅の測定は、内蔵測定ツールを使用してAxiovisionにおいて手動で行われた。分析された画像のデジタル分解能は、0.67μm/ピクセルであった。標準的な長さ(590μm;画像ビューのサイズにより特定された)のサンプル線が、測定される束を識別するために束方向に直交して写真の中心を通って引かれた。この線に交差する束のみが測定され、線の上方又は下方においてセクション分けの平面から外に出るものは含まれなかった。線に交差する1つの軸索、又は軸索のペアは、この分析を目的とした軸索束を構成するとは考えられなかった。
【0201】
束(2つより多い軸索)が識別され、それらの中心がマーキングされた。次に、この手法によりマーキングされた各束の中心から近接した束の中心まで束間隔測定が行われた。各軸索束の幅が更に測定された。幅測定のために、束の縁部は、それらが線に交差した点においてマーキングされ、束幅が、これらの2つの点間の距離として特定された。軸索束の縁部は、背景からの染色の強さの変化により区別され、これが、より暗く染色された軸索束の開始を識別した。パイロットデータは、この方法の高い信頼性を明らかにし、2つの異なる状況において撮影された写真の測定結果間の高い相関(r=0.737、p<0.001)を導出した。次に、3つの写真からの値が平均化されて、束間隔に対する1つの値、及び各ROIに対する束幅に対する1つの値を与えた。
【0202】
これは、各対象者に対して、それぞれ9野、41野、及びV1に対してサンプリングされた28(±5)、22(±5)、及び44(±5)の束の平均をもたらした。我々のDTI分析と直接比較することができる手法により皮質内の軸索束の配向を評価することはできず、その理由は、顕微鏡スライドにおけるz方向圧縮と組み合わされて限られた深さをもつ組織学的セクションにおいて、このような三次元推定ができないからである。しかし、三次元の幾何学的な縦が組織学的セクションからの二次元推定に合理的に近いことが仮定され得る、皮質の比較的湾曲していないセクションを伴う事例の部分集合を取り上げると、我々は、これに対して軸索束の配向を測定することができた。これは、軸索束が、平均で3.50(±2.68)度ぶん、皮質にまたがるラジアル方向からずれることを示した。
【0203】
統計分析
【0204】
すべてのデータは、Windows用のSPSS v22、及びR統計パッケージ(バージョン3.3.3)(R Core Team、2013)を使用して分析された。
【0205】
組織構造とDTIとの間の関連性-データ集合全体にわたる微小解剖学的構造とMRI拡散尺度との間の関連性が、スピアマンの相関係数を使用した相関分析により調査された。我々は、5つの拡散尺度(FA、MD、Angle_R、PerpPD、ParlPD)、及び、6つの組織構造測定結果(ミニコラム幅、コア幅、神経網間隔、マイクロセグメント数、軸索束幅、束間隔)を含む、3つの関心領域(9野、41野、及びV1)の各々に対する相関分析を実行した。すべてのp値が、フォールスディスカバリーレート修正を使用して調節され(FDR<0.05)(Benjamini及びYekutieli.、2001)、有意な結果に対するp及びPFDRを提供することによりPreziosaら(2019)のアプローチを使用して報告された。
【0206】
平均領域差-群内の組織構造とDTI尺度との両方における領域差が、反復測定ANOVAを使用して評価され、及び、有意な主な効果が事後t検定を使用してフォローアップされた。群間のDTIにおける領域差が、反復測定ANOVAを使用して評価された。
【0207】
組織構造測定結果-6つの組織構造測定結果(ミニコラム幅、コア幅、神経網間隔、マイクロセグメント数、軸索束幅、束間隔)間の関連性がスピアマンの相関係数を使用して調査され、FDR修正により調節された(FDR<0.05)。
【0208】
多発性硬化症臨床相関-我々の以前の研究は、9野及びV1における白質の変化の程度と細胞組織との間の関連を示している(Kolasinskiら、2012)。疾患持続期間がすべての対象者に対して利用可能な唯一の臨床測定結果であったので(表1)、本研究は、これらの皮質領(9野及びV1)におけるDTI由来の尺度と疾患持続期間との間の有意な相関が存在したか否か、及び、相関が比較領域(41野)におけるものと異なっていたか否かを調査した。年齢は疾患持続期間と相関すると想定されたので、これは、適切な場合は、標準的なSPSS反復アルゴリズムを使用して、部分相関を使用することに対して制御された。
【0209】
実施例4:群及び脳領域の間のDTI差
【0210】
我々は、6つのコントロールの既存のコホートを使用して、群間の拡散測定結果を調査した。反復測定ANOVAが、拡散尺度における診断の有意な主な効果を明らかにした(表2、表3)。すなわち、AngleR(F1,13=15.575、p=0.002)、MD(F1,13=20.468、p=0.002)、PerpPD(F1,13=39.177、p=0.000)、及び、ParlPD(F1,13=16.905、p=0.001)値が、すべての領域において、コントロールに比べて多発性硬化症事例において、より高いとともに、FAは群間で異なっていなかった(F1,13=0.928、p=0.353)。他の領域(F2,26=5.512、p=0.026)に比べて、V1における、より高いAngleR値に起因して、対象者内の領域の効果(図7)が更に存在した(領域差はコントロールにおいてわずかに高かったが、領域x診断相互関係は存在しなかった)。FA、MD、PerpPD、又はParlPDに対して、対象者内において、領域間に有意な違いは発見されなかった。
【0211】
(ParlPDは皮質にまたがるラジアルミニコラム方向と平行な主拡散ベクトルの成分である。)
【0212】
表2.MS脳における各領域に対する組織学的変数に対する平均値。標準偏差が括弧内に示されている。
【表2】
【0213】
表3.MS脳及びコントロールにおける各領域に対する拡散測定結果に対する平均値。標準偏差が括弧内に示されている。
【表3】
*=群間比較においてHCより大幅に大きい値;#=群内比較において他の領域より大幅に大きい値
【0214】
実施例5:脳領域間の組織構造差
【0215】
反復測定ANOVAが、すべての組織学的測定結果において領域の有意な主な効果を明らかにした(表2、表3;図7)。一次視覚野は最も狭いミニコラム及び最も狭い軸索束を含み、41野は最も広い軸索束間隔及び最も広い束を含んだ。
【0216】
実施例6:臨床変数との関連性
【0217】
疾患持続期間と年齢との間の強い相関の存在に起因して(r=0.883、p=0.002)、年齢に対する部分相関制御が疾患持続期間との関連性を調査するために使用された。41野(r=-0.867、p=0.011)(図8)において束幅と疾患持続期間との間の大幅な負の相関が観測されたが、9野(r=-0.438、p=0.278)、又は、V1(r=-0.077、p=0.856)では観測されなかった。
【0218】
参考文献
【0219】
Esiri, M. M.; Chance, S. A. Vulnerability to Alzheimer's pathology in neocortex: The roles of plasticity and columnar organization. Journal of Alzheimer’s Disease 9(Suppl 3): 79-89 (2006)
【0220】
Chance, Steven A.; Clover, Linda; Cousijn, Helena; et al. Microanatomical Correlates of Cognitive Ability and Decline: Normal Ageing, MCI, and Alzheimer's Disease. Cerebral Cortex 21(8) Pages: 1870-1878 (2011)
【0221】
Chance S.A.; Casanova M.F.; Switala A.E.; Crow T.J.; Esiri M.M. Minicolumn thinning in temporal lobe association cortex but not primary auditory cortex in normal human ageing. Acta Neuropathologica 111(5):459-64 (2006)
【0222】
Ioan Opris Manuel F. Casanova. Prefrontal cortical minicolumn: from executive control to disrupted cognitive processing. Brain, Volume 137, Issue 7, 1 July 2014, Pages 1863-1875 (2014)
【0223】
Quester R, Schroder R. The shrinkage of the human brain stem during formalin fixation and embedding in paraffin. J Neurosci Methods 75:81-89. (1997)
【0224】
Von Economo C, Koskinas GN. Die Cytoarchitektonik der Hirnrinde des Erwachsenen Menschen. Springer, Berlin (Germany); 1925.
【0225】
Buxhoeveden DP, Switala AE, Litaker M, Roy E, Casanova MF.Lateralization of minicolumns in human planum temporale isabsent in nonhuman primate cortex. Brain Behav Evol 2001; 57:349-58
【0226】
Casanova MF, Switala AE. Minicolumnar Morphometry:Computerized Image Analysis. In: Casanova MF, editor.Neocortical Modularity and the Cell Minicolumn. New York:Nova Biomedical; 2005. p. 161-80.
【0227】
Chance, SA; Tzotzoli, PM; Vitelli, A; Esiri, MM; Crow, TJ. The cytoarchitecture of sulcal folding in Heschl's sulcus and the temporal cortex in the normal brain and schizophrenia: lamina thickness and cell density. Neuroscience Letters 367 (3): 384-388 (2004)
【0228】
Di Rosa E, Crow TJ, Walker MA, Black G, Chance SA (2009) Reduced neuron density, enlarged minicolumn spacing and altered ageing effects in fusiform cortex in schizophrenia. Psychiatry Res 166:102-115
【0229】
van Veluw, SJ; Sawyer, EK; Clover, L; Cousijn, H; De Jager, C; Esiri, MM Esiri; Chance, SA. Prefrontal cortex cytoarchitecture in normal aging and Alzheimer's disease: a relationship with IQ. Brain Structure & Function 217(4): 797-808 (2012)
【0230】
【0231】
更なる参考文献
【0232】
Andersson JLR, Graham MS, Zsoldos E, Sotiropoulos SN. (2016). Incorporating outlier detection and replacement into a non-parametric framework for movement and distortion correction of diffusion MR images. Neuroimage, 141, 556-572.
【0233】
Anwander, A., Pampel, A., & Knosche, T. R. (2010). In vivo measurement of cortical anisotropy by diffusion-weighted imaging correlates with cortex type. In Proc. Int. Soc. Magn. Reson. Med (Vol. 18, p. 109).
【0234】
Benjamini, Y., & Yekutieli, D. (2001). The control of the false discovery rate in multiple testing under dependency. Annals of statistics, 1165-1188.
【0235】
Barazany, D., & Assaf, Y. (2011). Visualization of cortical lamination patterns with magnetic resonance imaging. Cerebral Cortex, 22(9), 2016-2023.
【0236】
Beaulieu, C. (2002). The basis of anisotropic water diffusion in the nervous system-a technical review. NMR in Biomedicine, 15(7‐8), 435-455.
【0237】
Buxhoeveden, D. P., & Casanova, M. F. (2002). The minicolumn hypothesis in neuroscience. Brain, 125(5), 935-951.
【0238】
Buxhoeveden, D. P., Switala, A. E., Litaker, M., Roy, E., & Casanova, M. F. (2001). Lateralization of minicolumns in human planum temporale is absent in nonhuman primate cortex. Brain, Behavior and Evolution, 57(6), 349-358.
【0239】
Casanova, M. F., Buxhoeveden, D. P., Switala, A. E., & Roy, E. (2002). Minicolumnar pathology in autism. Neurology, 58(3), 428-432.
【0240】
Casanova, M. F., Konkachbaev, A. I., Switala, A. E., & Elmaghraby, A. S. (2008). Recursive trace line method for detecting myelinated bundles: a comparison study with pyramidal cell arrays. Journal of neuroscience methods, 168(2), 367-372.
【0241】
Casanova, M. F., & Switala, A. E. (2005). Minicolumnar morphometry: computerized image analysis. Neocortical modularity and the cell minicolumn. Nova Biomedical, New York, 161-180.
【0242】
Chance, S. A., Casanova, M. F., Switala, A. E., Crow, T. J., & Esiri, M. M. (2006). Minicolumn thinning in temporal lobe association cortex but not primary auditory cortex in normal human ageing. Acta neuropathologica, 111(5), 459-464.
【0243】
Chance, S. A., Sawyer, E. K., Clover, L. M., Wicinski, B., Hof, P. R., & Crow, T. J. (2013). Hemispheric asymmetry in the fusiform gyrus distinguishes Homo sapiens from chimpanzees. Brain Structure and Function, 218(6), 1391-1405.
【0244】
Chance, S. A., Casanova, M. F., Switala, A. E., & Crow, T. J. (2008). Auditory cortex asymmetry, altered minicolumn spacing and absence of ageing effects in schizophrenia. Brain, 131(12), 3178-3192.
【0245】
Chance, S. A., Clover, L., Cousijn, H., Currah, L., Pettingill, R., & Esiri, M. M. (2011). Microanatomical correlates of cognitive ability and decline: normal ageing, MCI, and Alzheimer’s disease. Cerebral Cortex, 21(8), 1870-1878.
【0246】
Chance, S. A., Tzotzoli, P. M., Vitelli, A., Esiri, M. M., & Crow, T. J. (2004). The cytoarchitecture of sulcal folding in Heschl’s sulcus and the temporal cortex in the normal brain and schizophrenia: lamina thickness and cell density. Neuroscience letters, 367(3), 384-388.
【0247】
Cohen-Adad, J., Polimeni, J. R., Helmer, K. G., Benner, T., McNab, J. A., Wald, L. L., ... & Mainero, C. (2012). T2* mapping and B0 orientation-dependence at 7 T reveal cyto-and myeloarchitecture organization of the human cortex. Neuroimage, 60(2), 1006-1014.
【0248】
D’arceuil, H., & de Crespigny, A. (2007). The effects of brain tissue decomposition on diffusion tensor imaging and tractography. Neuroimage, 36(1), 64-68.
【0249】
Di Rosa, E., Crow, T. J., Walker, M. A., Black, G., & Chance, S. A. (2009). Reduced neuron density, enlarged minicolumn spacing and altered ageing effects in fusiform cortex in schizophrenia. Psychiatry research, 166(2-3), 102-115.
【0250】
Dumoulin, S. O., Fracasso, A., van der Zwaag, W., Siero, J. C., & Petridou, N. (2018). Ultra-high field MRI: advancing systems neuroscience towards mesoscopic human brain function. Neuroimage, 168, 345-357.
【0251】
Fatterpekar, G. M., Naidich, T. P., Delman, B. N., Aguinaldo, J. G., Gultekin, S. H., Sherwood, C. C., ... & Fayad, Z. A. (2002). Cytoarchitecture of the human cerebral cortex: MR microscopy of excised specimens at 9.4 Tesla. American journal of neuroradiology, 23(8), 1313-1321.
【0252】
Fisher, E., Rudick, R. A., Simon, J. H., Cutter, G., Baier, M., Lee, J. C., ... & Simonian, N. A. (2002). Eight-year follow-up study of brain atrophy in patients with MS. Neurology, 59(9), 1412-1420.
【0253】
Harasty, J., Seldon, H. L., Chan, P., Halliday, G., & Harding, A. (2003). The left human speech-processing cortex is thinner but longer than the right. Laterality: Asymmetries of Body, Brain and Cognition, 8(3), 247-260.
【0254】
Hasan, K. M., Sankar, A., Halphen, C., Kramer, L. A., Brandt, M. E., Juranek, J., ... & Ewing-Cobbs, L. (2007). Development and organization of the human brain tissue compartments across the lifespan using diffusion tensor imaging. Neuroreport, 18(16), 1735-1739.
【0255】
【0256】
【0257】
Huang, H., Jeon, T., Sedmak, G., Pletikos, M., Vasung, L., Xu, X., ... & Mori, S. (2012). Coupling diffusion imaging with histological and gene expression analysis to examine the dynamics of cortical areas across the fetal period of human brain development. Cerebral cortex, 23(11), 2620-2631.
【0258】
Jeon, T., Mishra, V., Uh, J., Weiner, M., Hatanpaa, K. J., White III, C. L., ... & Huang, H. (2012). Regional changes of cortical mean diffusivities with aging after correction of partial volume effects. Neuroimage, 62(3), 1705-1716.
【0259】
Jespersen, S. N., Leigland, L. A., Cornea, A., & Kroenke, C. D. (2012). Determination of axonal and dendritic orientation distributions within the developing cerebral cortex by diffusion tensor imaging. IEEE transactions on medical imaging, 31(1), 16-32.
【0260】
Jones, S. E., Buchbinder, B. R., & Aharon, I. (2000). Three‐dimensional mapping of cortical thickness using Laplace's Equation. Human brain mapping, 11(1), 12-32.
【0261】
Kang, X., Herron, T. J., Turken, U., & Woods, D. L. (2012). Diffusion properties of cortical and pericortical tissue: regional variations, reliability and methodological issues. Magnetic Resonance Imaging, 30(8), 1111-1122.
【0262】
Kim, T. H., Zollinger, L., Shi, X. F., Rose, J., & Jeong, E. K. (2009). Diffusion tensor imaging of ex vivo cervical spinal cord specimens: the immediate and long‐term effects of fixation on diffusivity. The Anatomical Record: Advances in Integrative Anatomy and Evolutionary Biology: Advances in Integrative Anatomy and Evolutionary Biology, 292(2), 234-241.
【0263】
【0264】
Kolasinski, J., Stagg, C. J., Chance, S. A., DeLuca, G. C., Esiri, M. M., Chang, E. H., ... & Johansen-Berg, H. (2012). A combined post-mortem magnetic resonance imaging and quantitative histological study of multiple sclerosis pathology. Brain, 135(10), 2938-2951.
【0265】
Kutzelnigg, A., & Lassmann, H. (2006). Cortical demyelination in multiple sclerosis: a substrate for cognitive deficits?. Journal of the neurological sciences, 245(1-2), 123-126.
【0266】
Leuze, C. W., Dhital, B., Anwander, A., Pampel, A., Heidemann, R., Geyer, S., ... & Turner, R. (2011). Visualization of the orientational structure of the human stria of Gennari with high-resolution DWI. In Proc Intl Soc Mag Reson Med (Vol. 19, p. 2371).
【0267】
【0268】
McNab, J. A., Jbabdi, S., Deoni, S. C., Douaud, G., Behrens, T. E., & Miller, K. L. (2009). High resolution diffusion-weighted imaging in fixed human brain using diffusion-weighted steady state free precession. Neuroimage, 46(3), 775-785.
【0269】
McNab, J. A., Polimeni, J. R., Wang, R., Augustinack, J. C., Fujimoto, K., Stevens, A., ... & Wald, L. L. (2013). Surface based analysis of diffusion orientation for identifying architectonic domains in the in vivo human cortex. Neuroimage, 69, 87-100.
【0270】
Miller, K. L., McNab, J. A., Jbabdi, S., & Douaud, G. (2012). Diffusion tractography of post-mortem human brains: optimization and comparison of spin echo and steady-state free precession techniques. Neuroimage, 59(3), 2284-2297.
【0271】
Miller, K. L., Stagg, C. J., Douaud, G., Jbabdi, S., Smith, S. M., Behrens, T. E., ... & Jenkinson, N. (2011). Diffusion imaging of whole, post-mortem human brains on a clinical MRI scanner. Neuroimage, 57(1), 167-181.
【0272】
Mori, S., & Zhang, J. (2006). Principles of diffusion tensor imaging and its applications to basic neuroscience research. Neuron, 51(5), 527-539.
【0273】
Mountcastle, V. B. (1997). The columnar organization of the neocortex. Brain: a journal of neurology, 120(4), 701-722.
【0274】
Peters, A., Sethares, C., & Killiany, R. J. (2001). Effects of age on the thickness of myelin sheaths in monkey primary visual cortex. Journal of Comparative Neurology, 435(2), 241-248.
【0275】
【0276】
Team, R. C. (2013). R: A language and environment for statistical computing.
【0277】
Sarlls, J. E., & Pierpaoli, C. (2009). In vivo diffusion tensor imaging of the human optic chiasm at sub-millimeter resolution. Neuroimage, 47(4), 1244-1251.
【0278】
Schmierer, K., Wheeler‐Kingshott, C. A., Tozer, D. J., Boulby, P. A., Parkes, H. G., Yousry, T. A., ... & Miller, D. H. (2008). Quantitative magnetic resonance of postmortem multiple sclerosis brain before and after fixation. Magnetic Resonance in Medicine: An Official Journal of the International Society for Magnetic Resonance in Medicine, 59(2), 268-277.
【0279】
Seldon, H. L. (1981). Structure of human auditory cortex. II. Axon distributions and morphological correlates of speech perception. Brain Research, 229(2), 295-310.
【0280】
Setsompop, K., Fan, Q., Stockmann, J., Bilgic, B., Huang, S., Cauley, S. F., ... & Wald, L. L. (2018). High‐resolution in vivo diffusion imaging of the human brain with generalized slice dithered enhanced resolution: Simultaneous multislice (g S lider‐SMS). Magnetic resonance in medicine, 79(1), 141-151.
【0281】
Shepherd TM, Thelwall PE, Stanisz GJ, Blackband SJ. (2009) Aldehyde fixative solutions alter the water relaxation and diffusion properties of nervous tissue. Magn Reson Med. 62(1):26-34. doi: 10.1002/mrm.21977.
【0282】
Sigalovsky, I. S., Fischl, B., & Melcher, J. R. (2006). Mapping an intrinsic MR property of gray matter in auditory cortex of living humans: a possible marker for primary cortex and hemispheric differences. Neuroimage, 32(4), 1524-1537.
【0283】
Smith, S. M., Jenkinson, M., Woolrich, M. W., Beckmann, C. F., Behrens, T. E., Johansen-Berg, H., ... & Niazy, R. K. (2004). Advances in functional and structural MR image analysis and implementation as FSL. Neuroimage, 23, S208-S219.
【0284】
Song SK, Sun SW, Ramsbottom MJ, Chang C, Russell J, Cross AH. (2002) Dysmyelination revealed through MRI as increased radial (but unchanged axial) diffusion of water. Neuroimage, 17(3):1429-36.
【0285】
Sotiropoulos S.N., Jbabdi S., Xu J., Andersson J.L., Moeller S., Auerbach E.J., Glasser M.F., Hernandez M., Sapiro G., Jenkinson M., Feinberg D.A., Yacoub E., Lenglet C., Van Essen D.C., Ugurbil K., Behrens T.E.; WU-Minn HCP Consortium. (2013). Advances in diffusion MRI acquisition and processing in the Human Connectome Project. Neuroimage, 80, 125-143.
【0286】
Tommerdahl, M., Tannan, V., Holden, J. K., & Baranek, G. T. (2008). Absence of stimulus-driven synchronization effects on sensory perception in autism: Evidence for local underconnectivity?. Behavioral and Brain Functions, 4(1), 19.
【0287】
【0288】
van Veluw, S. J., Sawyer, E. K., Clover, L., Cousijn, H., De Jager, C., Esiri, M. M., & Chance, S. A. (2012). Prefrontal cortex cytoarchitecture in normal aging and Alzheimer’s disease: a relationship with IQ. Brain structure and function, 217(4), 797-808.
【0289】
von Economo, C. F., & Koskinas, G. N. (1925). Die cytoarchitektonik der hirnrinde des erwachsenen menschen. J. Springer.
【0290】
Vrenken, H., Pouwels, P. J., Geurts, J. J., Knol, D. L., Polman, C. H., Barkhof, F., & Castelijns, J. A. (2006). Altered diffusion tensor in multiple sclerosis normal‐appearing brain tissue: cortical diffusion changes seem related to clinical deterioration. Journal of Magnetic Resonance Imaging: An Official Journal of the International Society for Magnetic Resonance in Medicine, 23(5), 628-636.
【0291】
Wegner, C., Esiri, M. M., Chance, S. A., Palace, J., & Matthews, P. M. (2006). Neocortical neuronal, synaptic, and glial loss in multiple sclerosis. Neurology, 67(6), 960-967.
【0292】
Woolrich, M. W., Jbabdi, S., Patenaude, B., Chappell, M., Makni, S., Behrens, T., ... & Smith, S. M. (2009). Bayesian analysis of neuroimaging data in FSL. Neuroimage, 45(1), S173-S186.
(付記項1)
対象者の脳の領域からの皮質拡散データを処理する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象者の前記脳における灰白質領域における第1のボクセルにおける主拡散方向とミニコラムのコラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を取得することと、
(b)前記灰白質領域の基礎となる白質に存在する第2のボクセルにおける軸方向拡散に対する値を取得することと、
(c)前記AngleRと前記軸方向拡散とに対する前記値を使用して、前記ボクセルに対する軸方向コラム屈折(ACR)に対する値を特定することと、
を含む、前記方法。
(付記項2)
前記ステップ(a)が、
(a1)前記対象者の前記脳における前記灰白質領域におけるボクセルにおける前記主拡散方向を特定することと、
(a2)前記ボクセルにおける前記ミニコラムのコラム方向(前記ColD)を特定することと、
(a3)前記主拡散方向と前記ColDとの間の前記ずれ角(前記AngleR)に対する前記値を取得することと、
を含む、
付記項1に記載の方法。
(付記項3)
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象者の脳の領域における複数のボクセルに対して、付記項1又は付記項2に記載の方法により、ACRの値を取得するステップ、
を含み、
前記ボクセルに対する前記ACRの前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
方法。
(付記項4)
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルに対して、付記項1又は付記項2に記載の方法により、ACRの値を取得するステップ、
を含み、
前記ボクセルに対する前記ACRの前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
方法。
(付記項5)
対象者の脳の領域からの皮質拡散データを処理する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象者の前記脳における灰白質領域における第1のボクセルにおける垂直拡散(Perp)に対する値を取得することと、
(b)前記灰白質領域の基礎となる白質に存在する第2のボクセルにおける軸方向拡散に対する値を取得することと、
(c)前記Perpと前記軸方向拡散とに対する前記値を使用して、ボクセルに対する垂直コラム屈折(PerpCR)に対する値を特定することと、
を含む、方法。
(付記項6)
前記ステップ(a)が、
(a1)前記第1のボクセルにおける皮質拡散に対する測定結果を取得するステップと、
(a2)前記ボクセルにおける主拡散ベクトル(DPDD)を、前記ステップ(a1)において取得された前記皮質拡散に対する前記測定結果から特定するステップと、
(a3)前記ボクセルにおけるミニコラムのコラム方向(ColD)を特定するステップと、
(a4)前記ボクセルにおける前記ColDに直交した平面上に前記DPDDを射影することと、前記射影の大きさを特定することとにより、前記ボクセルに対する前記垂直拡散(前記Perp)に対する前記値を特定するステップと、
付記項5に記載の方法。
(付記項7)
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象者の脳の領域における複数のボクセルに対して、付記項5又は付記項6に記載の方法により、垂直コラム屈折(PerpCR)の値を取得するステップ、
を含み、
前記ボクセルに対する前記垂直コラム屈折(前記PerpCR)の前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
方法。
(付記項8)
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルに対して、付記項5又は付記項6に記載の方法により、垂直コラム屈折(PerpCR)の値を取得するステップ、
を含み、
前記ボクセルに対する前記垂直コラム屈折(前記PerpCR)の前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
方法。
(付記項9)
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ、
を含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
複数の前記ボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
方法。
(付記項10)
対象者におけるMSのレベルの標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ、
を含み、好ましくは、
前記脳の前記領域が、皮質9野、41野、又はV1(一次視覚野)であり、
複数の前記ボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記対象者における前記MSのレベルの前記標示を提供する、
方法。
(付記項11)
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ、
を含み、
前記脳の前記領域が、好ましくは、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
複数の前記ボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
方法。
(付記項12)
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ、
を含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
複数の前記ボクセルからの前記軸方向拡散の前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
方法。
(付記項13)
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ、
を含み、
前記脳の前記領域が、好ましくは、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
複数の前記ボクセルからの前記軸方向拡散の前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
方法。
(付記項14)
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)垂直拡散(Perp)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ、
を含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
複数の前記ボクセルからの前記Perpの前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
方法。
(付記項15)
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する方法であって、前記方法が、
(a)垂直拡散(Perp)に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップ、
を含み、
前記脳の前記領域が、好ましくは、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
複数の前記ボクセルからの前記Perpの前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
方法。
(付記項16)
AngleR、軸方向拡散、及び/又はPerpに対する値が、ニューロイメージング方法により、好ましくは磁気共鳴イメージング(MRI)により、最も好ましくは拡散MRIにより、取得される、
付記項1から付記項15のいずれか一項に記載の方法。
(付記項17)
AngleR、軸方向拡散、及び/又はPerpに対する値が、前記脳の皮質の1つ又は複数の領域、好ましくは基礎となる(皮質下)白質を伴う灰白質を含む皮質の領域から取得され、又は前記領域から導出される、
付記項1から付記項16のいずれか一項に記載の方法。
(付記項18)
前記脳の前記領域が、海馬傍回(PHG)、紡錘状回(Fusi)、背外側前頭前皮質9野(dlPFC)、41野、ヘッシュル回(HG)、側頭平面(PT)、下頭頂小葉(IPL)、中側頭回(MTG)、一次視覚野(V1;17野)、及び嗅内皮質からなる群から選択され、好ましくは、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質から選択される、
付記項17に記載の方法。
(付記項19)
前記対象者が、アルツハイマー病(AD)、脳血管性認知症(CVD)、軽度認知障害(MCI)、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)、自閉症、多発性硬化症(MS)、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、統合失調症、双極性障害、失読症、ダウン症候群、ハンチントン病、プリオン病、うつ、強迫性障害、又は注意欠陥多動障害(ADHD)、主観的認知障害、preMCI、及び前駆AD、後部皮質萎縮(ADの部分集合)、行動異常型、意味性、又は進行性非流暢性失語症(FTDの部分集合)、脳障害、肝性脳症、脳卒中、虚血、虚血性低酸素症、神経炎症、外傷性脳損傷(TBI)、軽度TBI、慢性外傷性脳症、振盪、及び精神錯乱からなる群から選択された認知障害を患った者である、
付記項1から付記項18のいずれか一項に記載の方法。
(付記項20)
対象者の処置方法であって、前記処置方法が、付記項1から付記項3、付記項5から付記項7、付記項9、付記項12、又は付記項14のいずれか一項に記載の方法を含み、前記対象者が特定の基準レベルを(上方に、又は下方に)越えた認知障害のレベルを伴うことが観測された場合、又は、前記対象者が特定の基準レベルより高いACR又はPerpCRに対する値を伴うことが観測された場合、認知障害処置薬が、前記対象者に投与される、
処置方法。
(付記項21)
対象者の処置方法であって、前記処置方法が、付記項1から付記項3、付記項5から付記項7、付記項9、付記項12、又は付記項14のいずれか一項に記載のACR又はPerpCRを特定する方法の結果を取得すること、又は受け取ることと、前記ACR又は前記PerpCRの値が、基準レベルより高いことにより前記対象者における認知障害の存在の標示を提供している場合、前記認知障害を処置するための適切な処置を前記対象者に執行することとを含む、
処置方法。
(付記項22)
付記項1から付記項19のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するように構成された少なくとも1つの処理手段を備える、
システム又は装置。
(付記項23)
付記項1から付記項19のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するようにプロセッサを構成するための命令を含むソフトウェアを記憶した、
媒体。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の脳の領域の以前に取得された磁気共鳴画像から取得された皮質拡散データを処理するための、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)前記対象者の前記脳における灰白質領域における少なくとも1つの第1のボクセルにおける垂直拡散(Perp)に対する値を取得するステップと、
(b)前記灰白質領域に関連した、及び前記灰白質領域の基礎となる前記対象者の前記脳における白質領域における少なくとも1つの第2のボクセルにおける軸方向拡散に対する値を取得するステップと、
(c)前記Perpと前記軸方向拡散とに対する前記値を使用して、前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとの各々に対する垂直コラム屈折(PerpCR)に対する値を特定するステップと、
を含む、コンピュータにより実施される方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、
(a1)前記第1のボクセルにおける皮質拡散に対する測定結果を取得するステップと、
(a2)前記第1のボクセルにおける主拡散ベクトル(DPDD)を、前記ステップ(a1)において取得された前記皮質拡散に対する前記測定結果から特定するステップと、
(a3)前記第1のボクセルにおけるミニコラムのコラム方向(ColD)を特定するステップと、
(a4)前記第1のボクセルにおける前記ColDに直交した平面上に前記DPDDを射影することと、射影の大きさを特定することとにより、前記第1のボクセルに対する前記垂直拡散(前記Perp)に対する前記値を特定するステップと、
を含む、請求項1に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項3】
(a)前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとに対する垂直コラム屈折(PerpCR)の値を取得するステップを含み、
前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとに対する前記垂直コラム屈折(前記PerpCR)の前記値の大きさが、前記対象者における認知障害のレベルの標示を提供する、
請求項1又は請求項2に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項4】
(a)前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとに対する垂直コラム屈折(PerpCR)の値を取得するステップを含み、
前記少なくとも1つの第1のボクセルと前記少なくとも1つの第2のボクセルとに対する前記垂直コラム屈折(前記PerpCR)の前記値の大きさが、前記対象者の前記脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を提供する、
請求項1又は請求項2に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項5】
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項6】
対象者におけるMSのレベルの標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
記脳の前記領域が、皮質9野、41野、又はV1(一次視覚野)であり、
前記複数のボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記対象者における前記MSのレベルの前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項7】
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)主拡散方向とミニコラムの平均コラム方向(ColD)との間のずれ角(AngleR)に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記AngleRの前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項8】
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記軸方向拡散の前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項9】
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)軸方向拡散に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記軸方向拡散の前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項10】
対象者における認知障害のレベルの標示を取得する、コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)垂直拡散(Perp)に対する値を、前記対象者の脳の領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記Perpの前記値の大きさが、前記対象者における前記認知障害のレベルの前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項11】
対象者の脳の領域におけるマイクロセグメントブレークの数の標示を取得する、前記コンピュータにより実施される方法であって、前記方法が、
(a)垂直拡散(Perp)に対する値を、前記対象者の前記脳の前記領域における複数のボクセルにおいて取得するステップを含み、
前記脳の前記領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質であり、
前記複数のボクセルからの前記Perpの前記値の大きさが、前記領域における前記マイクロセグメントブレークの前記数の前記標示を提供する、
コンピュータにより実施される方法。
【請求項12】
AngleR、軸方向拡散、及び/又はPerpに対する値が、ニューロイメージング方法により取得される、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項13】
軸方向拡散、及び/又はPerpに対する前記値が、磁気共鳴イメージング(MRI)により取得される、
請求項12に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項14】
軸方向拡散、及び/又はPerpに対する前記値が、拡散MRIにより取得される、
請求項12又は請求項13に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項15】
AngleR、軸方向拡散、及び/又はPerpに対する値が、前記脳の皮質の1つ又は複数の領域から取得され、又は前記領域から導出される、
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項16】
前記皮質の前記1つ又は複数の領域が、基礎となる(皮質下)白質を伴う灰白質を含む、
請求項15に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項17】
前記脳の前記領域が、海馬傍回(PHG)、紡錘状回(Fusi)、背外側前頭前皮質9野(dlPFC)、41野、ヘッシュル回(HG)、側頭平面(PT)、下頭頂小葉(IPL)、中側頭回(MTG)、一次視覚野(V1;17野)、及び嗅内皮質からなる群から選択される、
請求項15又は請求項16に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項18】
前記皮質の前記1つ又は複数の領域が、皮質9野、PHG、又は嗅内皮質から選択される、
請求項17に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項19】
前記対象者が、アルツハイマー病(AD)、脳血管性認知症(CVD)、軽度認知障害(MCI)、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)、自閉症、多発性硬化症(MS)、てんかん、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、統合失調症、双極性障害、失読症、ダウン症候群、ハンチントン病、プリオン病、うつ、強迫性障害、又は注意欠陥多動障害(ADHD)、主観的認知障害、preMCI、及び前駆AD、後部皮質萎縮(ADの部分集合)、行動異常型、意味性、又は進行性非流暢性失語症(FTDの部分集合)、脳障害、肝性脳症、脳卒中、虚血、虚血性低酸素症、神経炎症、外傷性脳損傷(TBI)、軽度TBI、慢性外傷性脳症、振盪、及び精神錯乱からなる群から選択された認知障害を患った者である、
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のコンピュータにより実施される方法。
【請求項20】
対象者の処置方法であって、
前記処置方法が、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法を含み、
前記対象者が特定の基準レベルを(上方に、又は下方に)越えた認知障害のレベルを伴うことが観測された場合、又は、前記対象者が特定の基準レベルより高いPerpCRに対する値を伴うことが観測された場合、認知障害処置薬が、前記対象者に投与される、
処置方法。
【請求項21】
対象者の処置方法であって、前記処置方法が、
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のPerpCRを特定する方法の結果を取得すること、又は受け取ることと、
前記PerpCRの値が、基準レベルより高いことにより前記対象者における認知障害の存在の標示を提供している場合、前記認知障害を処置するための適切な処置を前記対象者に執行することとを含む、
処置方法。
【請求項22】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するように構成された少なくとも1つの処理手段を備える、
システム又は装置。
【請求項23】
請求項1から請求項19のいずれか一項に記載の方法のステップを実施するようにプロセッサを構成するための命令を含むソフトウェアを記憶した、
媒体。