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特開2024-153727冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
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  • 特開-冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153727
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20241022BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C09K5/04 E
F25B1/00 396Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117926
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2023179051の分割
【原出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2023031403
(32)【優先日】2023-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】吉村 崇
(72)【発明者】
【氏名】臼井 隆
(72)【発明者】
【氏名】仲上 翼
(72)【発明者】
【氏名】徳野 敏
(57)【要約】
【課題】新規な低GWP混合冷媒を提供することを課題とする。
【解決手段】解決手段として、冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び1,1-ジフルオロエタン(R152a)を、これら
の合計に対して、それぞれ22.6~57質量%及び77.4~43質量%含む、組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び1,1-ジフルオロエタン(R152a)を、これらの合計に対して、それぞれ22.6~57質量%及び77.4~43質量%含む、組成物。
【請求項2】
HFO-1132(E))及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ22.9~57質量%及び77.1~43質量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
HFO-1132(E))及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ28.3~57質量%及び71.7~43質量%含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
HFO-1132(E))及びR152aを、前記冷媒全体に対して、合計で99.5質量%以上含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、R152a、R32及びHFO-1132(E)を、合計で冷媒全体に対して99.5質量%以上
含み、かつ
HFO-1132(E)、R32及びR152aの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びz
とするとき、HFO-1132(E)、R32及びR152aの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点C (60.0, 40.0, 0.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点E’ (17.5, 5.0, 77.5)、
点F (0.0, 22.9, 77.1)、
点B (0.0, 32.0, 68.0)、及び
点A (55.7, 44.3, 0.0)
の6点をそれぞれ結ぶ直線CD’、D’E’、E’F、FB、BA及びACで囲まれる図形の範囲内及び前記線分CD’、D’E’、E’F及びBA上にある(ただし、点A、C、B、及びFを除く)、組成物。
【請求項6】
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点C’ (58.3, 17.7, 24.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点J’ (22.9, 5.0, 72.1)、及び
点K (19.3, 9.0, 71.7)
の4点をそれぞれ結ぶ直線C’D’、D’J’、J’K及びKC’で囲まれる図形の範囲内及び前記直線C’D’、D’J’、J’K及びKC’上にある、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点C’ (58.3, 17.7, 24.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点L’ (17.1, 5.0, 77.9)、及び
点M (14.0, 7.8, 78.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線C’D’、’D’L’、L’M及びMC’’で囲まれる図形の範囲内及び前記直線C’D’、D’L’、L’M及びMC’上にある、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
R410A代替用である、請求項2又は5に記載の組成物。
【請求項9】
R1234yf代替用である、請求項3又は6に記載の組成物。
【請求項10】
R1234yf代替用であり、かつ、電気自動車用空調機器の冷凍サイクル運転用組成物であ
る、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
R404A代替用である、請求項1又は7に記載の組成物。
【請求項12】
利用側冷媒を循環させる利用側熱搬送サイクルと、
熱源側冷媒を循環させる熱源側熱搬送サイクルと、
前記利用側冷媒と前記熱源側冷媒とを熱交換させるカスケード熱交換器とを備え、
前記熱源側冷媒が、請求項1~3及び5~7のいずれか一項に記載の組成物である、冷凍装置。
【請求項13】
請求項1~3及び5~7のいずれか1項に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
【請求項14】
請求項1~3及び5~7のいずれか1項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
R410Aに代替可能な熱サイクル用作動媒体として、トリフルオロエチレン(HFO-1123)
と1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)とを含む熱サイクル用作動媒体が提案されて
いる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/141678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新規な低GWP混合冷媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び1,1-ジフルオロエタン(R152a)を、これらの合計に対して、それぞれ22.6~57質量%及び77.4~43質量%含む、組成物。
項2.
HFO-1132(E))及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ22.9~57質量%及び77.1~43質量%含む、項1に記載の組成物。
項3.
HFO-1132(E))及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ28.3~57質量%及び71.7~43質量%含む、項1に記載の組成物。
項4.
HFO-1132(E))及びR152aを、前記冷媒全体に対して、合計で99.5質量%以上含む、項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
項5.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、R152a、R32及びHFO-1132(E)を、合計で冷媒全体に対して99.5質量%以上
含み、かつ
HFO-1132(E)、R32及びR152aの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びz
とするとき、HFO-1132(E)、R32及びR152aの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点C (60.0, 40.0, 0.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点E’ (17.5, 5.0, 77.5)、
点F (0.0, 22.9, 77.1)、
点B (0.0, 32.0, 68.0)、及び
点A (55.7, 44.3, 0.0)
の6点をそれぞれ結ぶ直線CD’、D’E’、E’F、FB、BA及びACで囲まれる図形の範囲内及び前記線分CD’、D’E’、E’F及びBA上にある(ただし、点A、C、B、及びFを除く)、組
成物。
項6.
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点C’ (58.3, 17.7, 24.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点J’ (22.9, 5.0, 72.1)、及び
点K (19.3, 9.0, 71.7)
の4点をそれぞれ結ぶ直線C’D’、D’J’、J’K及びKC’で囲まれる図形の範囲内及び前記直線C’D’、D’J’、J’K及びKC’上にある、項5に記載の組成物。
項7.
前記冷媒において、座標(x,y,z)が、
点C’ (58.3, 17.7, 24.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点L’ (17.1, 5.0, 77.9)、及び
点M (14.0, 7.8, 78.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線C’D’、’D’L’、L’M及びMC’’で囲まれる図形の範囲内及び前記直線C’D’、D’L’、L’M及びMC’上にある、項5に記載の組成物。
項8.
R410A代替用である、項2又は5に記載の組成物。
項9.
R1234yf代替用である、項3又は6に記載の組成物。
項10.
R1234yf代替用であり、かつ、電気自動車用空調機器の冷凍サイクル運転用組成物であ
る項9に記載の組成物。
項11.
R404A代替用である、項1又は7に記載の組成物。
項12.
利用側冷媒を循環させる利用側熱搬送サイクルと、
熱源側冷媒を循環させる熱源側熱搬送サイクルと、
前記利用側冷媒と前記熱源側冷媒とを熱交換させるカスケード熱交換器とを備え、
前記熱源側冷媒が、項1~7のいずれか一項に記載の組成物である、冷凍装置。
項13.
項1~7のいずれか1項に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
項14.
項1~7のいずれか1項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍装置。
【発明の効果】
【0006】
本開示の冷媒は、低GWPである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の冷媒の組成を示す三角図である
図2】本開示の冷媒の組成を示す三角図である。
図3】本開示の冷媒の組成を示す三角図である。
図4】本開示の冷媒の組成を示す三角図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、以下に説明する各種の混合冷媒が、上記特性を有することを見出した。
【0009】
本開示は、かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さ
らに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフル
オロカーボン(HFC)が含まれる。
【0010】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0011】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0012】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0013】
本明細書において用語「冷凍機」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0014】
本明細書において、「車載用空調機器」とは、ガソリン車、ハイブリッド自動車、電気自動車、水素自動車などの自動車で用いられる冷凍装置の一種である。車載用空調機器とは、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。
【0015】
本明細書において記載される圧力は、断りの無い場合は、単位を絶対圧とするものである。
【0016】
1.冷媒
本開示の冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及び1,1-ジ
フルオロエタン(R152a)を含む。本開示の冷媒は、さらに、ジフルオロメタン(R32)を含んでいてもよい。
【0017】
本開示の冷媒は、低GWP混合冷媒である。
【0018】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ22.6~57質量%及び77.4~43質量%含んでいてもよい。この冷媒は、R404Aに対する冷凍能力比が70%以上であり、かつ5MPa、150℃において不均化反応が起こらない。このため、この冷媒
は、R404A代替用冷媒として用いることができる。
【0019】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ44.7~57及び55.3~43質量%含んでいてもよい。この冷媒は、R404Aに対する冷凍能力比が90%以上であり、かつ5MPa、150℃において不均化反応が起こらない。このため、この冷媒は、R404A代替用冷媒として用いることができる。
【0020】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ22.9~57質量%及び77.1~43質量%含んでいてもよい。この冷媒は、R410Aに対する冷凍能力比が55%以上であり、かつ5MPa、150℃において不均化反応が起こらない。このため、この冷媒
は、R410A代替用冷媒として用いることができる。
【0021】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ41.4~57質量%及び59.6~43質量%含んでいてもよい。この冷媒は、R410Aに対する冷凍能力比が65%以上であり、かつ5MPa、150℃において不均化反応が起こらない。このため、この冷媒
は、R410A代替用冷媒として用いることができる。
【0022】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ28.3~57質量%及び71.7~43質量%含んでいてもよい。この冷媒は、沸点が-40℃以下であり、か
つ5MPa、150℃において不均化反応が起こらない。この冷媒は、R1234yf代替用冷媒として用いることができる。
【0023】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aを、これらの合計に対して、それぞれ44.1~57質量%及び55.9~43質量%含んでいてもよい。この冷媒は、R1234yfに対する冷凍能力比
が165%以上であり、5MPa、150℃において不均化反応が起こらない。この冷媒は、R1234yf代替用冷媒として用いることができる。
【0024】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aを、これらの合計に対して:
それぞれ22.6質量%及び77.4質量%含む冷媒;
それぞれ25.0質量%及び75.0質量%含む冷媒;
それぞれ28.3質量%及び71.7質量%含む冷媒;
それぞれ30.0質量%及び70.0質量%含む冷媒;
それぞれ35.0質量%及び65.0質量%含む冷媒;
それぞれ36.0質量%及び64.0質量%含む冷媒;
それぞれ38.0質量%及び62.0質量%含む冷媒;
それぞれ45.0質量%及び55.0質量% 含む冷媒;並びに
それぞれ55.0質量%及び45.0質量% 含む冷媒;
からなる群より選択される少なくとも一種の冷媒を除くものであってもよい。
【0025】
本開示の冷媒は、上記の態様において、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)及びR152aに加えて、さらに追加的な冷媒を含有していてもよい。この点で、ある態様においては、本開示の冷媒が、HFO-1132(E)及びR152aの合計を、冷媒全体に対して99
.5質量%以上含むことが好ましく、99.75質量%以上含むことがより好ましく、99.9質量%以上含むことがさらに好ましく、99.999質量%含むことがさらにより好ましく、99.9999質
量%以上含むことが最も好ましい。本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aのみから実質的になるものであってもよく、この場合、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152a及び不可避的不純物のみからなるものであってもよい
また、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びR152aのみからなるものであってもよい。
【0026】
追加的な冷媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。混合冷媒は、追加的な冷媒として、一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。追加的な冷媒としては、R32、アセチレン、メチルアミン、HFO-1132a、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、3,3,3-トリフルオロプロピン等が挙げられる。
【0027】
本開示の冷媒は、さらにR32を、上記の追加的な冷媒とは異なる含有割合で、具体的に
は冷媒全体に対して5質量%以上、含んでいてもよい。以下、冷媒が冷媒全体に対して5質量%以上のR32を含む態様について説明する。
【0028】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR152aの、これらの総和を基準とする質
量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR152aの総和が100質量%とな
る3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、5MPa、150℃におい
て不均化反応が起こらず、GWPが300以下となり、かつ対R410Aで冷凍能力比が55%以上となる。
<要件>
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点E’ (17.5, 5.0, 77.5)、
点F (0.0, 22.9, 77.1)、
点B (0.0, 32.0, 68.0)、及び
点A (55.7, 44.3, 0.0)
の6点をそれぞれ結ぶ直線CD’、D’E’、E’F、FB、BA及びACで囲まれる図形の範囲内及び前記線分CD’、D’E’、E’F及びBA上にある(ただし、点A、C、B、Fを除く)。
【0029】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR152aの、これらの総和を基準とする質
量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR152aの総和が100質量%とな
る3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、5MPa、150℃におい
て不均化反応が起こらず、GWPが150以下となり、かつ沸点が-40℃以下となる。
<要件>
点C’(58.3, 17.7, 24.0)、
点D’(57.4, 5.0, 37.6)、
点J’(22.9, 5.0, 72.1)、及び
点K (19.3, 9.0, 71.7)
の4点をそれぞれ結ぶ直線C’D’、D’J’、J’K及びKC’で囲まれる図形の範囲内及び前記直線C’D’、D’J’、J’K及びKC’上にある。
【0030】
本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR152aの、これらの総和を基準とする質
量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR152aの総和が100質量%とな
る3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、5MPa、150℃におい
て不均化反応が起こらず、GWPが150以下となり、かつ対R404Aで冷凍能力比が70%以上となる。
<要件>
点C’ (58.3, 17.7, 24.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点L’ (17.1, 5.0, 77.9)、及び
点M (14.0, 7.8, 78.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線C’D’、’D’L’、L’M及びMC’で囲まれる図形の範囲内及び前記直線C’D’、D’L’、L’M及びMC’上にある。
【0031】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びR152aを、これらの合計に対して:
それぞれ 5.0質量%、25.0質量%及び70.0質量%含む冷媒;
それぞれ 12.2質量%、34.7質量%及び53.1質量%含む冷媒;
それぞれ 14.0質量%、7.8質量%及び78.2質量%含む冷媒;
それぞれ 15.0質量%、15.0質量%及び70.0質量%含む冷媒;
それぞれ 15.0質量%、25.0質量%及び60.0質量%含む冷媒;
それぞれ 15.0質量%、35.0質量%及び50.0質量%含む冷媒;
それぞれ 19.3質量%、9.0質量%及び71.7質量%含む冷媒;
それぞれ 25.0質量%、5.0質量%及び70.0質量%含む冷媒;
それぞれ 25.0質量%、10.0質量%及び65.0質量%含む冷媒;
それぞれ 25.0質量%、15.0質量%及び60.0質量%含む冷媒;
それぞれ 25.0質量%、20.0質量%及び55.0質量%含む冷媒;
それぞれ 25.0質量%、30.0質量%及び45.0質量%含む冷媒;
それぞれ 26.5質量%、20.7質量%及び52.8質量%含む冷媒;
それぞれ 30.0質量%、10.0質量%及び60.0質量%含む冷媒;
それぞれ 30.0質量%、11.0質量%及び59.0質量%含む冷媒;
それぞれ 30.0質量%、15.0質量%及び55.0質量%含む冷媒;
それぞれ 35.0質量%、5.0質量%及び質60.0量%含む冷媒;
それぞれ 35.0質量%、10.0質量%及び55.0質量%含む冷媒;
それぞれ 35.0質量%、15.0質量%及び50.0質量%含む冷媒;
それぞれ 35.0質量%、20.0質量%及び450.質量%含む冷媒;
それぞれ 35.0質量%、30.0質量%及び35.0質量%含む冷媒;
それぞれ 35.0 質量%、40.0質量%及び25.0質量%含む冷媒;
それぞれ 40.0質量%、10.0質量%及び50.0質量%含む冷媒;
それぞれ 40.8質量%、8.1質量%及び51.1質量%含む冷媒;
それぞれ 43.0質量%、14.3質量%及び42.7質量%含む冷媒;
それぞれ 45.0質量%、10.0質量%及び45.0質量%含む冷媒;
それぞれ 45.0質量%、30.0質量%及び25.0質量%含む冷媒
それぞれ 45.0質量%、40.0質量%及び15.0質量%含む冷媒;
それぞれ 55.0質量%、10.0質量%及び35.0質量%含む冷媒;
それぞれ 55.0質量%、20.0質量%及び25.0質量%含む冷媒;
それぞれ 55.0質量%、30.0質量%及び質15.0量%含む冷媒;並びに
それぞれ 55.0質量%、40.0質量%及び5.0質量%含む冷媒;
からなる群より選択される少なくとも一種の冷媒を除くものであってもよい。
【0032】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びR152aの総和が100質量%となり、HFO-1132(E)が100質量%となる点を上の頂点とする3成分組成図において、座標(x,y,z)が上記直線CD
にあるか、又は直線CDよりも下側に位置するとき、5MPa、150℃において不均化反応が起
こらない。この場合、冷凍サイクルが、局所的に冷媒の圧力が5MPa、かつ冷媒の温度が150℃となっても、不均化反応を抑制することができる。
【0033】
また、本開示の冷媒は、沸点が-40.0℃以下である場合、ヒートポンプによる暖房にお
いて使用しやすいという利点がある。例えば、上記本開示の冷媒は、車載用空調機器の冷凍サイクルを運転するために用いることにより、電気ヒーターに比べて消費電力の少ない
ヒートポンプによる暖房が可能になるという利点がある。車載用空調機器としては、ガソリン車用、ハイブリッド自動車用、電気自動車用又は水素自動車用等が挙げられる。
【0034】
本開示の冷媒は、冷媒全体に対してHFO-1132(E)を、20質量%以上含んでいてもよく、30質量%以上含んでいてもよく、40質量%以上含んでいてもよく、50質量%以上含んでいても
よい。本開示の冷媒は、冷媒全体に対してR32を、5質量%以上含んでいてもよく、10質量%以上含んでいてもよく、20質量%以上含んでいてもよく、30質量%以上含んでいてもよく、40質量%以上含んでいてもよい。本開示の冷媒は、冷媒全体に対してR152aを、10質量%以
上含んでいてもよく、20質量%以上含んでいてもよく、30質量%以上含んでいてもよく、40質量%以上含んでいてもよく、50質量%以上含んでいてもよく、60質量%以上含んでいても
よく、70質量%以上含んでいてもよい。
【0035】
本開示の冷媒は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、HFO-1132(E)、R32及びR152aに加えて、さらに追加的な冷媒を含有していてもよい。この点で、ある態様においては
、本開示の冷媒が、HFO-1132(E)、R32及びR152aの合計を、冷媒全体に対して99.5質量%以上含むことが好ましく、99.75質量%以上含むことがより好ましく、99.9質量%以上含むこ
とがさらに好ましく、99.999質量%含むことがさらにより好ましく、99.9999質量%以上
含むことが最も好ましい。本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びR152aのみから実質的
になるものであってもよく、この場合、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びR152a及
び不可避的不純物のみからなるものであってもよい
また、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)、R32及びR152aのみからなるものであってもよい。
【0036】
追加的な冷媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。混合冷媒は、追加的な冷媒として、一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。追加的な冷媒としては、アセチレン、メチルアミン、HFO-1132a、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113、3,3
,3-トリフルオロプロピン等が挙げられる。
【0037】
2. 冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本開示の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは1質量%以
下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0038】
2.1
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含むこ
とにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
【0039】
2.2 トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0040】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0041】
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
【0042】
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロ
ロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
【0043】
トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3
HFC-41(フルオロメタン、CH3F)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2
HFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CH2F)
HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン、CHF2CHF2
HFC-143a(1,1,1-トリフルオロエタン、CF3CH3
HFC-143(1,1,2-トリフルオロエタン、CHF2CH2F)
HFC-152(1,2-ジフルオロエタン、CH2FCH2F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2
HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3
HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2
HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)
HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
CFC-1113(クロロトリフルオロエチレン、CF2=CClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2
HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)
HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3
HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3
【0044】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万分率(ppm)以上含んでいてもよい。また、本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約1000ppm以下含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm以上、より好ましくは約50ppm以上含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約500ppm以下含んでいてもよく、約300ppm以下含んでいてもよい。
【0045】
2.3 紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種
以上を含有してもよい。
【0046】
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0047】
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
【0048】
2.4 安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0049】
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0050】
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
【0051】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0052】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0053】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0054】
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0055】
安定剤の含有割合は、冷媒全体に対して、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましい。安定剤の含有割合は、冷媒全体に対して、5質量
%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
【0056】
2.5 重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0057】
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0058】
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノ
ンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0059】
重合禁止剤の含有割合は、冷媒全体に対して、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましい。重合禁止剤の含有割合は、冷媒全体に対して、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
【0060】
3. 冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少な
くとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10質量%以上含まれる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に50質量%以下含まれる。
【0061】
3.1 冷凍機油
本開示の組成物は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0062】
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性(miscibility)及び
前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0063】
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエ
ステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0064】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0065】
冷凍機油として、40℃における動粘度が5cSt以上であるものが、潤滑の点で好ましい。また、冷凍機油として、40℃における動粘度が400cSt以下であるものが、潤滑の点で好ましい。
【0066】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0067】
3.2 相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0068】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0069】
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0070】
4.冷凍機の運転方法
本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍機を運転する方法である。
【0071】
具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を冷凍機において循環させる工程を含む。
【0072】
5.不均化反応の抑制方法
本開示の不均化反応の抑制方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍サイクルを運転する工程
を含む、HFO-1132(E)の不均化反応の抑制方法である。
【0073】
本開示の不均化反応の抑制方法においては、特に、冷媒の圧力が5.0MPaのときに、かつ冷媒の温度が150℃となっても、HFO-1132(E)の不均化反応が起こらないという効果が
得られる。
【0074】
本開示の不均化反応の抑制方法により、特に不均化反応の抑制手段を設けていない冷凍機においても不均化反応を抑制して冷凍サイクルを運転することが可能となる。
【0075】
6.不均化反応の抑制のための使用
本開示の使用は、R32及び/又はR152aの、HFO-1132(E)の不均化反応を抑制するための
使用であって、前記不均化反応の抑制は、HFO-1132(E)と、R32及び/又はR152aとを、本
開示の冷媒の混合比率となるように混合することにより行われる。
【0076】
本開示の不均化反応の抑制のための使用においては、特に、冷媒の圧力が5.0MPaのときに、かつ冷媒の温度が150℃となっても、HFO-1132(E)の不均化反応が起こらないという効果が得られる。
【0077】
7.冷凍装置
本開示の冷凍装置は、
利用側冷媒を循環させる利用側熱搬送サイクルと、
熱源側冷媒を循環させる熱源側熱搬送サイクルと、
前記利用側冷媒と前記熱源側冷媒とを熱交換させるカスケード熱交換器とを備え、
前記熱源側冷媒が、上記1.の組成物である、冷凍装置である。
【0078】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0079】
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
HFO-1132(E)、R32及びR152aを、これらの総和を基準として、各表にそれぞれ示した質
量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0081】
これらの各混合冷媒について、次の試験方法及び試験条件において、不均化反応の有無を調べた。
試験方法
試験容器に、試験する冷媒組成物を移充填し、150℃まで加熱した後、容器内のPt線に
電圧を印可して溶断させることで、冷媒組成物に30Jのエネルギーを与えた。不均化反応
の有無は装置内の急激な圧力上昇及び温度上昇によって判定した。
試験条件
試験容器:38cc SUS製容器
試験温度:150℃
圧力:5 MPa
判定基準
「不爆」:Pt線溶断後の温度又は圧力が2倍未満であり、急激な不均化反応が起こって
いない。
「爆発」:Pt線溶断後の温度又は圧力が2倍以上に達し、急激な不均化反応が起こった

【表1】
【0082】
表1の結果から、本開示の冷媒は図1に示す三角図において示される領域内では、不均化が起こらないことが判る。
【0083】
さらに、上記の各混合冷媒について、以下の通りGWP、並びに表に記載の冷媒に対するCOP比及び冷凍能力比を評価した。HFO-1132(E)のGWPは1とし、R32、R152aのGWPは、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次報告書の値に基づいて、混合冷
媒のGWPを評価した。また、混合冷媒のCOP、冷凍能力、及び沸点は、National Institute
of Science and Technology(NIST)Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 10.0)を使い、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施することにより求めた。なお、冷凍サイクル理論計算に用いるHFO-1132(E)の
物性データは実測により求め、Refprop.10.0に追加した。
<対R410A比>
蒸発温度 5℃
凝縮温度 45℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
<対R1234yf比>
蒸発温度 -30℃
凝縮温度 30℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
<対R404A比>
蒸発温度 -40℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
【0084】
以下の表中、「COP比」及び「冷凍能力比」とは、R410A、R1234yf又はR404Aに対する割合(%)を示す。表中、「沸点(℃)」とは、混合冷媒の液相が大気圧(101.33kPa)となる温度を示す。
【0085】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP =(冷凍能力又は暖房能力)/消費電力量
【0086】
以下の表中、「動力の消費電力量(%)」とは、電気自動車が走行するために使用した
電気エネルギーを示し、冷媒をHFO-1234yfとしたとき消費電力量との比で表す。表中、「暖房の消費電力量(%)」とは、電気自動車が暖房を運転するために使用した電気エネルギーを示し、冷媒をHFO-1234yfとしたとき消費電力量との比で表す。
【0087】
以下の表中、「走行可能距離(あり)」とは、一定の電気容量の二次電池を搭載した電
気自動車において、暖房せずに(暖房の消費電力が0)走行した場合の走行可能距離(なし)を100%とした場合の暖房ありで走行した場合の走行可能距離を相対割合(%)で表し
たものである。
【0088】
暖房方法は、沸点が-40℃を超える冷媒では暖房に電気ヒーター方式を用い、沸点が-40℃以下の冷媒には暖房にヒートポンプ方式を用いた。
【0089】
暖房使用時の消費電力量は、次式により求めた。なお、暖房COPとは「暖房効率」を意
味する。
暖房使用時の消費電力量=暖房能力/暖房COP
【0090】
暖房効率について、電気ヒーターの場合は暖房COP=1であり、動力と同等の電極を暖房に消費する。つまり、暖房の消費電力はE=E/(1+COP)となる。
【0091】
走行可能距離は、次式により求めた。
走行可能距離=(電池容量)/(動力の消費電力量+暖房での消費電力量)
【0092】
評価結果を以下の表に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表1の結果から、HFO-1132(E))及びR152aのみからなる混合冷媒は、混合冷媒全体に対して、HFO-1132(E))及びR152aをそれぞれ57質量%以下及び43質量%以上含む場合、R410Aに対する冷凍能力比が55%以上となり、かつ5MPa、150℃において不均化反応が起こらな
いことが判る。
【0095】
【表3】
【0096】
表3の結果から、HFO-1132(E))及びR152aのみからなる混合冷媒は、混合冷媒全体に対して、HFO-1132(E))及びR152aをそれぞれ57質量%以下及32質量%以上含む場合、沸点が-40℃以下となり、かつ5MPa、150℃において不均化反応が起こらないことが判る。
【0097】
【表4】
【0098】
表4の結果から、HFO-1132(E))及びR152aのみからなる混合冷媒は、混合冷媒全体に対して、HFO-1132(E))及びR152aをそれぞれ57質量%以下及び43質量%以上含む場合、R404Aに対する冷凍能力比が70%以上となり、かつ5MPa、150℃において不均化反応が起こらな
いことが判る。
【0099】
【表5】
【0100】
これらの結果から、本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR152aの、これらの
総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR152aの
総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、5MPa、150℃において不均化反応が起こらず、GWPが300以下となり、かつ対R410Aで冷凍能力比が55%以上となることが判る(図2)。
<要件>
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点E’ (17.5, 5.0, 77.5)、
点F (0.0, 22.9, 77.1)、
点B (0.0, 32.0, 68.0)、及び
点A (55.7, 44.3, 0.0)
の6点をそれぞれ結ぶ直線CD’、D’E’、E’F、FB、BA及びACで囲まれる図形の範囲内及び前記線分CD’、D’E’、E’F及びBA上にある(ただし、点A、C、B、Fを除く)。
【0101】
【表6】
【0102】
また、表6の結果から、本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR152aの、これ
らの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR152aの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすと
き、5MPa、150℃において不均化反応が起こらず、GWPが150以下となり、かつ沸点 が-40
℃以下となることが判る(図3)。
<要件>
点C’ (58.3, 17.7, 24.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点J’ (22.9, 5.0, 72.1)、
点K (19.3, 9.0, 71.7)
の4点をそれぞれ結ぶ直線C’D’、D’J’、J’K及びKC’で囲まれる図形の範囲内及び前記直線C’D’、D’J’、J’K及びKC’上にある。
【0103】
【表7】
【0104】
さらに、表7の結果から、本開示の冷媒において、HFO-1132(E)、R32及びR152aの、こ
れらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びR152aの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たす
とき、5MPa、150℃において不均化反応が起こらず、GWPが150以下となり、かつ対R404Aで冷凍能力比が70%以上となることが判る(図4)。
<要件>
点C’ (58.3, 17.7, 24.0)、
点D’ (57.4, 5.0, 37.6)、
点L’ (17.1, 5.0, 77.9)、及び
点M (14.0, 7.8, 78.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線C’D’、’D’L’、L’M及びMC’で囲まれる図形の範囲内及び前記直線C’D’、D’L’、L’M及びMC’上にある。
図1
図2
図3
図4