(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153758
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ガイドワイヤのためのディンプル付結合部
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
A61M25/09
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024120715
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2022525283の分割
【原出願日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】16/671,030
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507328645
【氏名又は名称】アボット カーディオバスキュラー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100227329
【弁理士】
【氏名又は名称】延原 愛
(72)【発明者】
【氏名】ヘーゼルデン,ロバート シー.
(72)【発明者】
【氏名】ギル,プニート カマル シン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】管腔内装置を体内腔の中で前進させるためのガイドワイヤの分野に関する。
【解決手段】血管内処置に使用するためのガイドワイヤは、その遠位端に半田もしくは溶接結合部を有する。慢性完全閉塞(CTO)を含む線維性物質への係合および貫通を高めるために、半田/溶接結合部の表面に複数のディンプルが形成されている。
【選択図】
図11B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤの遠位端に曲げを予め形成するためのツールであって、前記ツールは、
共通の縦軸を有する第1の部材と第2の部材を有し、前記第2の部材は前記第1の部材の中に摺動可能に含められている、成形ツールと、
前記第1の部材と前記第2の部材の間に配置され、前記共通の縦軸に沿って前記第2の部材から離れるように前記第1の部材をバネ付勢し、前記成形ツールに完全に封入されている、バネと、
開口端と閉鎖端を有し、前記第2の部材に位置し、前記第2部材が前記第1部材に対して摺動しバネ力に打ち勝つ際に、前記遠位端に曲げを形成するように前記ガイドワイヤの遠位端を受け入れるように構成された、少なくとも1つの空洞と
を備えるツール。
【請求項2】
前記少なくとも1つの空洞は前記第2の部材に位置し、前記少なくとも1つの空洞それぞれが異なる深さと角度の曲げを有する、請求項1に記載のツール。
【請求項3】
チャネルは前記第1の部材の壁を貫通して前記少なくとも1つの空洞それぞれに延在し、
前記ガイドワイヤの前記遠位端を受け入れる大きさである、請求項2に記載のツール。
【請求項4】
前記バネは前記第1の部材と前記第2の部材の間に配置され、前記ガイドワイヤの前記遠位端が前記チャネルを通って前記少なくとも1つの空洞に挿入されることができるように、前記成形ツールを開放位置に維持するようにバネ付勢されている、請求項3に記載のツール。
【請求項5】
前記少なくとも1つの空洞の深さは0.5mm~6.0mmの範囲である、請求項2に記載のツール。
【請求項6】
前記少なくとも1つの空洞の角度の曲げ範囲は5度~40度である、請求項2に記載のツール。
【請求項7】
前記第1の部材に前記第2の部材が挿入された後に、前記第1の部材に前記第2の部材が保持されるように第3の部材が前記第1の部材のスロットに取り付けられる、請求項1に記載のツール。
【請求項8】
前記第3の部材が接着剤、レーザー溶接、または留め具によって前記スロットに取り付けられている、請求項7に記載のツール。
【請求項9】
前記第3の部材が前記スロットに取り付けられた後、前記第2の部材が前記第1の部材に対して前記共通の縦軸に沿って軸方向に移動可能である、請求項8に記載のツール。
【請求項10】
前記成形ツールが前記開放位置と閉鎖位置を有する、請求項4に記載のツール。
【請求項11】
前記成形ツールが前記開放位置にあるときに前記バネが延び、前記成形ツールが閉鎖位置にあるときに前記バネが縮む、請求項10に記載のツール。
【請求項12】
前記成形ツールが前記閉鎖位置に移動することにより、前記複数の空洞の位置が前記それぞれのチャネルに対して移動し、それにより前記ガイドワイヤの前記遠位端に所定の曲げを付与する、請求項11に記載のツール。
【請求項13】
ユーザが前記第2の部材に対する圧力を解放し、前記ガイドワイヤを前記成形ツールから取り出すことができるように、前記バネが前記第2の部材に対して前記第1の部材を前記開放位置に移動させる、請求項12に記載のツール。
【請求項14】
前記成形ツールは前記開放位置に向けて前記成形ツールをバネ付勢する少なくとも1つのバネを有する、請求項1に記載のツール。
【請求項15】
前記空洞の前記深さは、前記ガイドワイヤの前記曲げの所定の長さを提供する、請求項2に記載のツール。
【請求項16】
ガイドワイヤの遠位端に曲げを形成する方法であって、前記方法は、
第1の部材と前記第1の部材の中に摺動可能に含められている第2の部材を有する成形ツールを提供する工程と、
前記第1の部材と前記第2の部材の間にバネを配置し、それによって、前記第2の部材から離れるように前記第1の部材をバネ付勢し、前記成形ツールに前記バネを完全に封入する工程と、
前記ガイドワイヤの前記遠位端を前記第2の部材に位置する空洞の開口端に挿入し、前記ガイドワイヤの前記遠位端が前記子空洞の閉鎖端に進む工程と、
共通の縦軸に沿って前記第1部材に対して前記第2部材を軸方向に移動し、バネ力に打ち勝つ力を付与し、それにより、前記空洞を移動し前記ガイドワイヤの前記遠位端に曲げを形成する工程と
を含む方法。
【請求項17】
前記ガイドワイヤの前記遠位端が前記第1の部材の壁のチャネルを通して前記空洞に挿入される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の部材が前記第1の部材に対して軸方向に移動する際に、前記空洞が前記チャネルに対して移動し、それにより前記ガイドワイヤの前記遠位端に前記曲げを付与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の部材に対して前記第2の部材を軸方向に移動する力を取り除くことにより、前記チャネルを通してガイドワイヤを取り出すことができるように、前記チャネルに対して前記空洞を移動する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ガイドワイヤの前記遠位端が前記チャネルを通って前記空洞に挿入されるように、開放位置に前記成形ツールをバネ付勢するために、前記バネにバネ力を付与する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の部材に対して前記第2の部材を軸方向に移動させるための前記バネ力に打ち勝つ力を前記第2の部材に付与することにより、前記チャネルに対して前記空洞が移動し、前記ガイドワイヤの前記遠位端に前記曲げを付与する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント送達カテーテル、バルーン拡張カテーテルおよび粥腫切除カテーテルなどの管腔内装置を体内腔の中で前進させるためのガイドワイヤの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な冠動脈手術では、予め形成された遠位先端を有するガイディングカテーテルを従来のセルディンガー法を用いて患者の末梢動脈、例えば大腿もしくは上腕動脈の中に経皮的に導入し、ガイディングカテーテルの遠位先端が所望の冠動脈口に位置するまでその中を前進させる。ガイドワイヤを患者の冠動脈の解剖学的構造内の所望の位置の中まで前進させるための2つの基本的な技術が存在し、1つ目は主にオーバ・ザ・ワイヤ(OTW)装置のために使用されるプレロード技法であり、2つ目は主にラピッドエクスチェンジ型システムのために使用されるベアワイヤ技法である。プレロード技法を用いる場合、ガイドワイヤの遠位先端がカテーテルの遠位先端のちょうど近位にある状態でガイドワイヤを拡張カテーテルまたはステント送達カテーテルなどのOTW装置の内腔の中に位置決めし、次いでその両方をガイディングカテーテルを介してその遠位端まで前進させる。ガイドワイヤを最初に、ガイドワイヤの遠位端が介入処置が行われる予定の動脈位置、例えば拡張される病変部またはステントが展開される予定の拡張された領域を通過するまでガイディングカテーテルの遠位端から出して患者の冠動脈の脈管構造の中に前進させる。血管内装置の手術部分、例えば拡張カテーテルのバルーンまたはステント送達カテーテルが動脈位置を跨って適切に位置決めされるまで、ガイドワイヤに摺動可能に装着されたカテーテルをガイディングカテーテルから出して先に導入したガイドワイヤの上を通して患者の冠動脈の解剖学的構造の中に前進させる。手術手段が所望の動脈位置内に位置した状態でカテーテルを適所に配置したら、介入処置を行う。次いでカテーテルをガイドワイヤの上を通して患者から取り出すことができる。通常は、ガイドワイヤはその処置が完了した後のある期間にわたって適所に残して、動脈位置への再アクセスを確保する。例えば切開された内皮の虚脱により動脈閉塞が生じた場合に、バルーンを膨らませて動脈の通路を開き、かつ切開部分が自然治癒により動脈壁に再付着するまで血液をカテーテルの遠位部を通して遠位位置に灌流するのを可能にするように、ラピッドエクスチェンジ型灌流バルーンカテーテルを適所にあるガイドワイヤの上を通して前進させることができる。
【0003】
ベアワイヤ技法を用いる場合、ガイドワイヤの遠位先端が処置が行われる予定の動脈位置を超えて延在するまで、最初にガイドワイヤのみをガイディングカテーテルを通して前進させる。次いでラピッドエクスチェンジ(RX)型カテーテルを、患者の体外にあるガイディングカテーテルの近位端から延在するガイドワイヤの近位部に装着する。RX型カテーテル上の手術手段が処置が行われるべき動脈位置内に配置されるまで、ガイドワイヤの位置が固定されている間にカテーテルをガイドワイヤの上を通して前進させる。処置後に、血管内装置をガイドワイヤの上を通して患者から取り出してもよく、あるいはガイドワイヤをさらなる処置のために冠動脈の解剖学的構造内でさらに前進させてもよい。
【0004】
血管形成、ステント送達、粥腫切除および他の血管処置のための従来のガイドワイヤは通常、その遠位端の近くに1つ以上のテーパー部を有する細長い芯部材と、芯部材の遠位部の周りに配置された螺旋コイルなどの可撓体またはポリマー材料製の管状体とを備える。芯部材の遠位端または芯部材の遠位端に固定されている別個の成形リボンであってもよい成形可能な部材は、可撓体を通って延在しており、かつ丸い遠位先端を形成する可撓体の遠位端に半田付け、ろう付けまたは溶接によって固定されている。患者の血管系を通って前進させている間にガイドワイヤを回転させ、かつそれによりそれを操縦するために、トルク印加手段が芯部材の近位端に設けられている。
【0005】
難しい起始部(take-off)、例えば羊飼いの杖形状部分、蛇行した部分または高度な角形成部分の周りでステントを送達する場合などの特定の処置の場合、通常のガイドワイヤが提供することができるものよりも実質的により多くのガイドワイヤからの支持および/または血管の直線化が必要とされることが非常に多い。従来のガイドワイヤよりも向上した遠位支持を提供するガイドワイヤはそのような処置のために商業的に導入されているが、そのようなガイドワイヤはあまり操縦性が良くなく、場合によっては非常に硬いために、そこを通して前進させた場合に血管内皮を損傷させる恐れがある。必要とされてきたがこれまで入手不可能であったものは、許容される操縦性を有しながらも、患者の脈管構造を通して前進させた場合に損傷のリスクが少ない高レベルの遠位支持を提供するガイドワイヤである。
【0006】
また、上で考察されているようにテーパー状遠位芯部を使用する従来のガイドワイヤは、ガイドワイヤの長さに沿って、特にテーパー部が開始および終了する場所に急激な剛性変化を有するので、多くの臨床状況では使用するのが難しいことがある。剛性の急激な変化を伴う芯を有するガイドワイヤが患者の蛇行した脈管構造を通って移動する際に、ガイドワイヤを動かしている医師は、剛性変化が患者の脈管構造の曲率によって逸れた際に急激な抵抗を感じることがある。医師によって感じられる抵抗の急激な変化は、脈管構造を通してガイドワイヤを安全かつ制御可能に前進させる医師の能力を妨げることがある。必要とされているものは、遠位部の特に脈管構造およびガイディングカテーテル内で曲げられる部分において剛性の急激な変化を有しないガイドワイヤである。本発明は、遠位先端の完全性、耐キンク性、向上したトルク応答、向上した遠位先端放射線不透過性および滑らかな遷移領域を提供することにより、これらおよび他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態では、ガイドワイヤは放射線不透過性の内側コイルと実質的に非放射線不透過性の外側コイルとを有する。内側コイルおよび外側コイルはガイドワイヤの遠位端に取り付けられており、外側コイルは内側コイルを覆い、かつ内側コイルの近位端の近位のガイドワイヤに沿って近位に延在している。医師が処置中に蛍光透視法によりガイドワイヤの遠位端の位置を容易に検出することができるように、内側コイルは放射線不透過性材料から形成されている。内側コイルおよび外側コイルはどちらも1本のワイヤまたは複数本のワイヤから形成されていてもよい。
【0008】
別の実施形態では、ガイドワイヤの遠位端に半田遠位先端または半田結合部を形成するために型を使用する。半田遠位先端はガイドワイヤの遠位端および内側コイルの遠位端および外側コイルの遠位端(存在する場合)を一緒に取り付ける。半田遠位先端は1本のガイドワイヤから次のガイドワイヤまで一様であり、かつ構造的形成において繰り返し可能であることが重要である。割り型を含む型は、ガイドワイヤの遠位端に弾丸形状の半田先端またはマイクロJ形状の先端を提供して、内側および外側コイルをガイドワイヤに取り付ける。円錐形状、切頭円錐形状およびざらざらした表面を有する半田結合部などの他の形状の半田先端が考えられる。
【0009】
別の実施形態では、レーザーを使用して、ガイドワイヤの遠位端を接続する半田結合部の表面にディンプルを形成する。そのディンプルがゴルフボールの表面のディンプルに似ており、かつ特定の間隔およびパターンを有し得るように、レーザーを使用して半田結合部の遠位端にディンプルを形成する。レーザーは、互いに離間されており、かつユーザの要求に応じて特定の直径および深さを有するディンプルを提供するようにプログラムすることができる。
【0010】
別の実施形態では、本発明のガイドワイヤは、異なる断面形状のコイルを使用することにより、ガイドワイヤの曲げ剛性および機能性に悪影響を与えることなくガイドワイヤのトルク性を高める。例えばコイルの異なる断面形状としてはIビーム形、垂直矩形、垂直楕円形、正方形、ピーナッツ形、垂直六角形、水平六角形および水平楕円形の断面を挙げることができる。製造、寸法および公差による制約を考慮して、ガイドワイヤの曲げ剛性に悪影響を与えることなくトルク性を高めるために、Iビーム形、ピーナッツ形、垂直矩形および垂直楕円形の断面が従来の丸い断面のコイルよりも好ましい。異なる断面形状のコイルを使用して、単条コイルまたは多条コイルを形成することができる。
【0011】
別の実施形態では、ガイドワイヤ先端成形ツールによりガイドワイヤの遠位先端にマイクロJ形状を形成する。成形ツールは、医師が成形ツールを用いてガイドワイヤの遠位端における曲げ量を選択することができるように、ガイドワイヤと共に医師に提供される。従来より医師はガイドワイヤの遠位端を自身の手で曲げるが、これは曲げ角および曲げ形状の制御を欠いていた。成形ツールは、医師がガイドワイヤの遠位先端における曲げ長さおよび曲げ角を選択することができるように、異なる角度の向きおよび深さを有する多くの空洞を含む。ガイドワイヤの遠位端を空洞の中に挿入することができるように、成形ツールは開放位置に向かってバネ付勢されている。ガイドワイヤを空洞の中に挿入したら、医師は成形ツールの端部を穏やかに押し込んでバネ力に打ち勝ち、空洞を有する内側管を外側管に対して移動させてガイドワイヤの遠位先端に曲げを形成する。所定の角度および長さの空洞は、医師が使用するための一貫したマイクロJ形状を提供する。
【0012】
本発明の別の実施形態では、ガイドワイヤの遠位部は、蛇行した血管をナビゲートする際により柔軟であるために断面が減少されている。本実施形態では、ガイドワイヤの放物線状遠位部は、連続的なテーパーを形成するように研削されている遠位部のかなりの部分を含む。連続的なテーパーは、ガイドワイヤの遠位部に沿った放物線状の研削によって形成されている。放物線状の研削は、非常に柔軟でありながらも剛性の線形変化を維持するガイドワイヤの遠位部に沿った滑らかな曲線状の遷移を提供し、それにより蛇行した解剖学的構造を通ってガイドワイヤを前進させる場合に医師に優れたトルクおよび触覚フィードバックを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ガイドワイヤの遠位端にあるコイルを示す先行技術ガイドワイヤの立面図である。
【
図2】ガイドワイヤの遠位端にある内側コイルおよび外側コイルを示す本発明のガイドワイヤの立面図である。
【
図3】ガイドワイヤ上の内側コイルまたは外側コイルとして使用するための多条ガイドワイヤの立面図である。
【
図4A】ガイドワイヤの遠位端上の内側もしくは外側コイルとして使用するための8条コイルの立面図である。
【
図5】異なる条数のコイルを有する本発明のガイドワイヤのトルク解析を示すチャートである。
【
図6】
図5に示されているガイドワイヤを示し、かつコイルを備えたガイドワイヤの遠位部の放射線不透過性を示すグラフである。
【
図7A】ガイドワイヤの遠位端に半田結合部を形成するための型の立面図である。
【
図8A】ガイドワイヤの遠位端に半田結合部を形成するための型の立面図である。
【
図9A】ガイドワイヤの遠位端に半田結合部を形成するために使用される型の断面図であり、溶融金属を受け入れるための空洞を示す。
【
図9B】
図9Aの型によって形成された半田結合部の上面図である。
【
図9C】
図9Aの型によって形成された半田結合部の立面図である。
【
図10A】マイクロJ形状を有する半田結合部を形成するための型の立面図である。
【
図10B】マイクロJ形状を有する半田結合部を形成するための型の立面図である。
【
図11A】レーザーによって形成された一連のディンプルを示す結合部の上面図である。
【
図12A】レーザーによって形成された一連のディンプルを示す結合部の上面図である。
【
図12D】
図12Cに示されている結合部に形成されている1つのディンプルを示す側面図である。
【
図12E】市販されているガイドワイヤと比較したレーザーディンプル付ガイドワイヤの病変部を通過する時間を比較する試験データを示すチャートである。
【
図13】円形すなわち丸い断面のワイヤを有する先行技術のコイルの立面図である。
【
図14】304Vステンレス鋼の弾性率、降伏強度および極限強度を示すチャートである。
【
図26】ガイドワイヤの遠位先端におけるマイクロJ形状の曲げの角度形状を示す治具の中に挿入されているガイドワイヤの遠位端の立面図である。
【
図27A】ガイドワイヤの遠位端にマイクロJ形状の曲げを形成するための成形ツールの分解斜視図である。
【
図27B】ガイドワイヤの遠位端にマイクロJ形状の曲げを形成するための成形ツールの立面斜視図である。
【
図28A】ガイドワイヤの遠位端にマイクロJ形状の曲げを形成するための開放位置にある成形ツールの立面図である。
【
図28B】ガイドワイヤの遠位端にマイクロJ形状の曲げを形成する閉鎖位置にある成形ツールの立面図である。
【
図29】ガイドワイヤの遠位端を受け入れるためのチャネルおよび空洞を示す線29-29に沿った拡大円形図である。
【
図30】ガイドワイヤがチャネルを通して空洞の中に挿入され、かつマイクロJ形状に曲げられている、
図29の空洞の拡大円形図である。
【
図31】複数のテーパー部を有する遠位部を示す先行技術のガイドワイヤの立面図である。
【
図32】放物線状研削輪郭を有する遠位部を示すガイドワイヤの立面図である。
【
図33】
図31および
図32に示されているガイドワイヤの遠位部に沿った曲げ剛性を示すグラフである。
【
図34】分岐血管において折れ曲がっている先行技術のガイドワイヤのテーパー状遠位部を示す概略図である。
【
図35】放物線状研削輪郭を有する遠位部を示す0.014インチの直径のガイドワイヤのグラフである。
【
図36】放物線状研削輪郭を有する遠位部を示す0.014インチの直径のガイドワイヤのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先行技術のガイドワイヤ
先行技術のガイドワイヤは典型的に、可撓性非外傷性遠位端を有する細長い芯線を備える。先行技術のガイドワイヤは
図1に示されており、近位芯部12、遠位芯部13および遠位芯部に固定されている可撓体部材14を有する細長い芯部材11を備える。遠位芯部13はテーパー状セグメント15、テーパー状セグメント15に遠位に隣接している可撓性セグメント16、遠位端13aおよび近位端13bを有する。遠位部13は、実質的に丸い横断面を有する典型的な遠位に減少するテーパーを有する2つ以上のテーパー状セグメント15も有する。
【0015】
芯部材11はステンレス鋼、NiTi合金またはそれらの組み合わせから形成されていてもよい。芯部材11は任意に、近位芯部の長さに延在するフルオロポリマー、例えばDuPont社から入手可能なテフロン(登録商標)などの潤滑性コーティングでコーティングされている。また親水性コーティングを用いてもよい。先行技術のガイドワイヤ10の長さおよび直径は、それが使用される予定の特定の処置およびそれを構築している材料に合わせて変えてもよい。ガイドワイヤ10の長さは一般に、冠動脈の解剖学的構造のために約65cm~約320cm、より典型的には約160cm~約200cm、好ましくは約175cm~約190cmの範囲である。ガイドワイヤの直径は一般に、冠動脈の解剖学的構造のために約0.008インチ~約0.035インチ(0.203~0.889mm)、より典型的には約0.012インチ~約0.018インチ(0.305~0.547mm)の範囲、好ましくは約0.014インチ(0.336mm)である。
【0016】
可撓性セグメント16は遠位端18で終端している。可撓体部材14、好ましくはコイルは、可撓体部材14の遠位端19が半田体20によって可撓性セグメント16の遠位端18に固定されている状態で細長い芯の遠位部の一部13を取り囲んでいる。可撓体部材14の近位端22は同様に、半田体23によって遠位芯部13に接合または固定されている。半田以外の材料および構造を使用して可撓体14を遠位芯部13に接合してもよく、「半田体」という用語は、ろう、エポキシ、シアノアクリレートなどを含むポリマー接着剤などの他の材料を含む。
【0017】
可撓体14を作製するワイヤは一般に、約0.001~約0.004インチ、好ましくは約0.002~約0.003インチ(0.05mm)の横径を有する。このコイルの遠位部の複数の巻数を増やしてさらなる柔軟性を与えてもよい。このコイルは近位芯部12とほぼ同じ直径すなわち横断寸法を有していてもよい。可撓体部材14は約2~約40cm以上の長さ、好ましくは約2~約10cmの長さを有していてもよい。コイルの形態の可撓体部材14は、白金またはその合金などの好適な放射線不透過性材料から形成されていてもよく、あるいはステンレス鋼などの他の材料で形成されて金などの放射線不透過性材料でコーティングされていてもよい。
【0018】
可撓性セグメント16は典型的には約1~約12cm、好ましくは約2~約10cmの範囲の長さを有するが、より長いセグメントを使用してもよい。可撓性セグメント16のテーパーの形態は、制御された長手方向の変形および芯セグメントの柔軟性(すなわち剛性の程度)の遷移を提供する。可撓性セグメントは芯部材11に隣接しており、成形可能な部材として機能するために遠位部13上の遠位に配置されている。
【0019】
放射線不透過性の内側コイルを有するガイドワイヤ
本発明を踏まえて、
図2~
図6に示されている一実施形態では、ガイドワイヤ30は、近位芯部34および遠位芯部36を有する細長い芯部材32を有する。遠位芯部36は好ましくはテーパー状であり、ガイドワイヤの近位端40からガイドワイヤの遠位端42に向かってより小さい直径に先細りになっているテーパー状セグメント38を有する。細長い芯部材32は好ましくはステンレス鋼から形成されているが、それは当該技術分野で知られている他の金属または金属合金から形成されていてもよい。
【0020】
放射線不透過性を向上させるために、
図2~
図6に示されているガイドワイヤ30は、その遠位端42において細長い芯部材の上に位置決めされた放射線不透過性の内側コイル44を備える。内側コイル44は3cmの長さであってもよく、細長い芯部材32の遠位端42と境を接する遠位端46を有していてもよい。3cmは放射線不透過性の内側コイル44のために好ましい長さであるが、内側コイル44の長さは医師の必要性を満たすために必要に応じて0.5cm~15cmの範囲であってもよい。放射線不透過性の内側コイル44は、近位端48から遠位端46まで延在しているワイヤからなる複数のコイル50を有する近位端48を有する。放射線不透過性の内側コイル44は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、レニウム(Re)および金(Au)を含む放射線不透過性金属の群から選択される放射線不透過性材料で作られている。
図2に示されている一実施形態では、放射線不透過性の内側コイル44は単条コイル50から形成されており、その直径は放射線不透過性、柔軟性、トルク性および耐キンク性(耐久性)のバランスのために必要に応じて変えることができる。
図3に示されている別の実施形態では、放射線不透過性の内側コイル44は4条コイル52から形成されている。ワイヤからなる4条コイル52は、先行技術で知られているDFT(Drawn Filled Tubing)を用いて作製することができる(放射線不透過性材料が充填されているかそれらによって挟まれているチューブ)。内側コイル44は、
図4Aおよび
図4Bに示されている8条コイルなどの任意の条数を用いて形成されていてもよい。一実施形態では、
図4Aおよび
図4Bの8条コイルは31cmの長さであり、0.0135±0.0005インチの外側直径、0.0095インチの内側直径、0.193インチのピッチ、0.002インチのワイヤ直径、およびワイヤ直径の25%の8本のワイヤのセグメント間の間隔を有する。これらの寸法は代表的なものであり、異なる必要性に応じて変えることができる。重要なことに、様々なコイル形状の全ては、放射線不透過性の内側コイル44が放射線不透過性であり、かつ蛍光透視法により医師が容易に確認することができるように、本明細書中に列挙されている放射線不透過性金属から形成されていてもよい。
【0021】
図2~
図6中の実施形態は、放射線不透過性の内側コイル44の外側直径60よりも大きく、かつ細長い芯部材32の外側直径よりも大きい内側直径58を有する非放射線不透過性の外側コイル56も含む。非放射線不透過性の外側コイル56は、ステンレス鋼(SS)、コバルト-クロム(CoCr)およびニッケル-チタン(NiTi)合金を含む非放射線不透過性材料から形成されている。非放射線不透過性の外側コイルは、遠位端62から近位端64までの長さが10cm~60cmの範囲であってもよい。一実施形態では、非放射線不透過性の外側コイル56は30cmの長さである。
【0022】
図2に最もはっきりと示されているように、放射線不透過性の内側コイル44の遠位端46、ガイドワイヤ30の遠位端42および非放射線不透過性の外側コイル56の遠位端62は全て、半田、接着剤、溶接またはろう付けによって一緒に接続されている。好ましくは半田ボール66は、放射線不透過性の内側コイル44を非放射線不透過性の外側コイル56およびガイドワイヤの遠位端42に接続するための公知の方法でガイドワイヤ30の遠位端42に形成されている。放射線不透過性の内側コイル44の遠位端46は好ましくは非放射線不透過性の外側コイル56の遠位端62に接触しておらず、それらは半田ボール66によって一緒に接続されているが、半田ボール66が形成された後に、互いに直接接続し得ることを強調することが重要である。放射線不透過性の内側コイル44の遠位端46は細長い芯部材32の遠位端42に接触していない。放射線不透過性の内側コイル44の近位端48は公知の方法で第1の半田結合部70、溶接、接着剤またはろう付けによって細長い芯部材32に接続されている。放射線不透過性の内側コイル44の近位端48は非放射線不透過性の外側コイル56に取り付けられていない。非放射線不透過性の外側コイル56の近位端64は公知の方法で第2の半田結合部72、溶接、接着剤またはろう付けによって細長い芯部材32に取り付けられている。第1の半田結合部70は、半田ボール66の近位であって第2の半田結合部72の遠位にある。非放射線不透過性の外側コイル56の近位端64は放射線不透過性の内側コイル44のどの部分にも接続されておらず、それにより剛性問題を生じさせる放射線不透過性の内側コイルとの半田結合部が存在しない、非放射線不透過性の外側コイル56に沿った継ぎ目のない外面68を提供する。好ましくは
図2に示すように、細長い芯部材32と内側コイル44と外側コイル56との間の間隙および内側コイル44と外側コイル56との間の間隙は存在しない。放射線不透過性の内側コイル44のように、非放射線不透過性の外側コイル56は単条コイル50、4条コイル56(
図3)または
図4Aおよび
図4Bに示されている8条コイルなどの任意の条数のコイルから形成されていてもよい。
【0023】
図5のグラフに示されているように、トルクに対する多条コイルの効果を決定するために実験を行った。
図5では、1条のみの内側および外側コイルを有するガイドワイヤ、4条、6条、8条の内側および外側コイルを有するガイドワイヤ、ならびに垂直な矩形の形態でレーザー切断された内側および外側コイルについてストレートトルクを測定した。
図5に見られるように、本発明の単条コイルおよび多条コイルを好ましくはトルク性能において比較する。
【0024】
図6に見られるように、本発明のガイドワイヤに対して放射線不透過性を測定するための試験も行った。グループ1~6のガイドワイヤは、
図2に開示されている放射線不透過性の内側コイルおよび非放射線不透過性の外側コイルを有する。放射線不透過性の内側コイルの放射線不透過性は、好ましくは蛍光透視法によりAbbott Cardiovascular Systems社(カリフォルニア州サンタクララ)によって販売されている市販のWHISPER(登録商標)ガイドワイヤと比較した場合、それに匹敵している。
【0025】
図2に示されている一実施形態では、ガイドワイヤ30の近位部74はシリコーン系疎水性コーティングおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティングを有する。遠位部76はポリビニルピロリドン(PVP)ハイドロコート(hydrocoat)コーティングを有する。典型的には、ガイドワイヤ30の遠位端42はコーティングされていない。
【0026】
半田遠位先端を形成するための型
ガイドワイヤは、全てが特定の臨床症例要求のために医師によって選択される先端負荷、支持輪郭および構築材料を含む多くの異なる構成で入手可能である。特定の状況のために、特定の幾何学形状を有するガイドワイヤ遠位先端が蛇行した経路または閉塞したセグメントをナビゲートする際に医師に機械的利点を提供することが認められている。本実施形態では、溶融した半田フローの特性は、溶融した半田フローを所定の形状の中に含めるために克服されている。現在のところ、半田結合部は細長い芯線を外側コイルに取り付けるガイドワイヤの遠位先端に形成されている。この半田結合部は、半田を加熱して芯線の上に流し、かつそれが凝固した際に当該コイルを芯線に固定するために従来の半田ごてを利用して形成されている。本発明は異なる手段によって半田づけされた先端を作製し、かつ溶融した半田を所定の形状に鋳造することにより特定の形状を達成するのを可能にする。
【0027】
図7A~
図10Bに示すように、型80を使用してコストおよび製造性の両方における多くの障害を克服する半田づけされた先端を鋳造する。所定の半田づけされた形状を形成するために型80を使用することで、半田結合部の意図した幾何学形状を得るだけでなく、ガイドワイヤの細長い芯線を外側コイルに取り付ける必要な半田接合を行う(例えば
図2~
図6を参照)。この型は弾丸形状の先端82と同じ位に簡単に機械加工することができるか、あるいはマイクロJ形状の先端84と呼ばれるものに小さい角度特徴を含めるために機械加工することができる。この半田先端作業を行うために型80を利用することにより、作製中の製品の要求に合わせるように構成を変更する能力を技術チームに与える。
【0028】
型80は、溶融した半田を受け入れるために必要とされる温度に耐えることができるセラミックまたは他の好適な材料で構築された固体の型として作られている。型80は、溶融した半田およびガイドワイヤの細長い芯線の遠位先端ならびに存在する場合にはコイルの遠位端を受け入れる空洞86を有する。空洞86の形状は、弾丸形状の先端82およびマイクロJ形状の先端84などの半田結合部の形状を決定する。
【0029】
より複雑な形状は、割り型90を利用することにより達成され、ここでは半田が溶融している間に第1のシェル92および第2のシェル94を一緒に保持し、次いで分離して半田先端88を型から外す。割り型90は、第1の面96に機械加工された半田先端88の構成および第2の面98に機械加工された鏡像を有する。割り型90は弾丸形状の先端82として、あるいはマイクロJ形状の先端84を形成するために小さい角度の特徴を含めるように機械加工することができる。円錐形状、切頭円錐形状およびざらざらした表面などの、様々な他の半田先端88形状を割り型90によって形成することができる。
【0030】
半田先端88を形成するための方法は、型を加熱装置の中に置く工程と、半田が溶融した状態になるのを可能にする工程とを含む。溶融したら、ガイドワイヤの細長い芯線の遠位先端を型の空洞86の中に浸して、半田が遠位先端および最初の数巻きの外側コイル(存在する場合)の上に流れるのを可能にする。型の空洞86の真上で伝熱体を外側コイルのセグメントの周りに配置して、半田が望ましくない場所に流れるのを防止し、かつ半田先端88の正確な配置を制御することができる。半田が指定された領域に流れたら、割り型90を急速冷却して半田を凝固させてガイドワイヤの遠位先端およびコイルを一緒に接合するのを可能にする。冷却したら、その部分を型80から取り出してもよく、あるいは第1および第2のシェル92、94を分離し、半田先端88を取り出してもよい。
【0031】
半田先端88を形成するために型80を利用することにより、作製中の製品のために構成を迅速に変える能力を技術チームに与える。
【0032】
さらに、第1の面96および第2の面98は、用途によって決定される特定の製品の必要性に応じていくつかの種類の特徴または質感を提供するように修正することができる。型80は指定されている製品要求のために必要に応じて特定の外面幾何学形状を可能にするために、いくつかの形態の質感を有するか、溝(隆起しているか凹んでいる)さえも有していてもよい。例えば
図9A~
図9Cに示すように、割り型90は、半田先端88が一致する角度のある溝102を有するように、当該型の空洞86に形成された角度のある溝100を有する。
【0033】
大多数のガイドワイヤは遠位先端に接合状態を形成するために半田を使用し、当該コイルを接続するが、いくつかのガイドワイヤは半田の代わりにエポキシまたは別の同様の材料を使用している場合がある。半田先端88に関する
図7A~
図10Bに関する上記説明は、他の好適な金属およびエポキシにも当てはまる。
【0034】
ディンプル付結合部を形成するためのレーザー
一般に大部分の市販されているガイドワイヤは、半田材料または溶接材料から作られたガイドワイヤ先端を有し、滑らかなドーム形状の表面を有する。そのようなガイドワイヤは、慢性完全閉塞(CTO)を治療するために石灰化組織および線維組織を通過するために使用される場合に困難に直面する。特定の市販されているガイドワイヤは、CTOを治療し、かつ複雑な病変部や狭窄した病変部を貫通するために、より高い先端負荷を有するように設計されている。最適なワイヤ強度、先端負荷および先端形状は、押し込み性および病変部を通したガイドワイヤの操作を助けるが、滑らかな先端表面を用いた場合は、おそらく石灰化組織および線維性組織に係合し、それにより先端が撓み、かつ病変部を貫通することができなくなるという難題を有する。
図11A~
図12Dに示されている一実施形態では、レーザー(図示せず)を使用して、ガイドワイヤ150の遠位先端にある半田/溶接結合部156にざらざらした表面すなわち粗面154を形成する。ファイバーレーザーなどの市販のレーザーは約0.0254ミリメートルの集束スポットを可能にし、かつ
図11Aおよび
図11Bに示されているランダムまたは密にステッチされたパターンを提供するか、あるいは
図12A~
図12Cに示されている互いに離間されたディンプル158を提供することができる。ディンプル158はゴルフボールの表面のディンプルに似ており、特定の間隔およびパターンを有することができる。一実施形態では、レーザーは0.0254ミリメートルの直径を有し、かつ互いに0.0254ミリメートル離間されている一連のディンプル158を形成する。別の実施形態では、ディンプル158は0.0127ミリメートル~0.127ミリメートルの範囲の直径を有し、かつ0.0127ミリメートル~0.127ミリメートルの範囲のディンプル158間の間隔を有する。別の実施形態では、レーザーは、ざらざらした表面154を形成する0.0254ミリメートルの直径を有し、かつ0.0127ミリメートル離間されているディンプル158を形成する。特定の臨床症例において機械的利点を提供するためにディンプル158間により大きい間隔を提供することも可能である。レーザーは、半田/溶接結合部156上に用途に応じて手を付けない(すなわち滑らかな)ままにする領域を提供するようにプログラムされていてもよい。除去されるパターン(ディンプル158)は、レーザー周波数、格子間隔(互いに離間されたディンプル158)を単に変えること、または最適な構成を達成するためにディンプルごとにプログラミングすることにより容易に修正される。
【0035】
ディンプル158は
図12Dに示されている深さ寸法160および直径162も有する。好ましくは、ディンプル158は0.5μ~1.5μの範囲、より好ましくは1.0μの深さ寸法160を有する。
【0036】
同様に、ディンプル158の半径寸法162は0.3μ~6.0μ、好ましくは2.0μ~4.0μの範囲、より好ましくは3.0μであってもよい。当該プロセスでは、ワイヤ先端が治具端部に置かれた状態で、市販されている繊維レーザーを利用してビームが向けられるガイドワイヤ先端の半田/溶接表面を選択的に軟化させてディンプルをつける。このプロセスは、ビームの標的となる場所にのみ集中的加熱を与えるレーザーの極めて速いパルス速度により、半田もしくは溶接材料の半田/溶接の構造的完全性を破壊することなく行われる。一実施形態では、レーザープロセスのためのサイクルタイムは50msであり、これは生産環境において許容される時間で修正された先端の質感を可能にする。より高いまたはより低いレーザーサイクルタイムは、半田/溶接の組成ならびにディンプルのサイズおよび深さに応じて許容可能である。
【0037】
市販されているレーザーを使用することに加えて、ディンプル158は半田/溶接結合部156の完全性が維持される限り、ビーズブラスト、化学エッチングまたは機械的衝撃などの他のプロセスによって形成することができる。
【0038】
ディンプル158は、半田/溶接結合部156をガイドワイヤ150の遠位先端152に形成した後にその結合部の表面に形成することができる。あるいは、半田/溶接結合部156を構成要素レベルで製造し、次いでディンプル158を結合部の表面に形成する。その後に、予め形成されたディンプル158を有する半田/溶接結合部156をガイドワイヤ150の遠位先端152に取り付けることができる。
【0039】
図12Eに示すように、レーザーディンプル付ガイドワイヤの病変部通過性能を市販されているガイドワイヤと比較する実験を行った。ガイドワイヤが病変部を通過する時間を決定するために、臨床的に関連する慢性完全閉塞(CTO)モデルに対して試験を行った。丸いドットは、ガイドワイヤが病変部を通過するために要する秒での時間を表し、三角形のドットは病変部を通過することができなかったガイドワイヤを表す。
図12Eから分かるように、レーザーディンプル付ガイドワイヤは、一貫してより良好な通過時間および病変部を通過する失敗のない試みに関して、市販されているガイドワイヤおよびディンプルを有しないワイヤよりも実質的に良好に機能した。
【0040】
異なる断面形状を有するコイル
一般にガイドワイヤの遠位端は、通過能力のために十分な程にそれを柔軟にするために小型の支持形状を有していなければならない。従って芯線の遠位端は研削され(テーパー状)、それを柔軟で非外傷性にするためにコイルで覆われている(例えば
図2~
図3を参照)。またコイルは、ガイドワイヤの外側直径を一貫した状態に維持するのを助ける。先行技術のコイルは円形の断面(
図13)を有するワイヤから形成されており、レーザーで切断される。
【0041】
次世代ガイドワイヤのために、ガイドワイヤの曲げ剛性に悪影響を与えることのない良好なトルク応答は重要な機能的属性である。
【0042】
本発明では、ガイドワイヤの機能性を向上させるために複数のワイヤ断面を設計した。これらのガイドワイヤ断面に対して有限要素解析(ABAQUS市販ソフトウェアを用いるFEA)を行って、トルク応答および曲げ剛性に対する異なる断面の効果を特定した。
【0043】
本発明は、異なる断面形状のコイルを用いてガイドワイヤの曲げ剛性および機能性に悪影響を与えることなくトルク性を高める。
図15A~
図23Bに示すように、異なる実施形態は、円形178(先行技術)、Iビーム形180、垂直矩形182、垂直楕円形183、正方形184、垂直六角形186、水平六角形188、平坦形190および水平楕円形192の断面を含む。FEAから、コイルワイヤの中立軸(N.A.)からより多くの材料が除去されていることにより、曲げ剛性を下げながらもトルク性を高めることが実証されている。異なる断面を有するコイルを作製し、コイルのワイヤの材料および体積などの他のパラメータを一定に維持しながらトルクを印加した。この研究のために、検討されるコイル材料は304Vステンレス鋼であった。
図14は304Vステンレス鋼の材料特性を示す。体積を一定に維持するために、ワイヤの断面積、長さ、名目上の直径およびピッチを一定に維持した。
【0044】
同じ長さ、ピッチ、平均直径および断面積(100まで拡大させた寸法)と共に異なる断面を有するコイルが
図15A~
図23Bに示されている。
図24は、提供される材料特性を用いてABAQUSによって解析した異なる断面を有する単条コイルのトルク応答を示す。Iビーム形の捩り剛性は最も高く、次いで矩形断面および垂直楕円形断面の順番である。ピーナッツ形状断面のワイヤも高い捩り剛性を示した(
図24)。
図25は、異なる断面を有するコイルの曲げ剛性を示す。従って、コイルのワイヤ断面を円形からIビーム形に変えることにより、曲げ剛性を50%低下させながらもトルク応答を250%増加させた。製造、寸法および公差による制約を考慮すると、用途または他の限界に応じたIビーム形、ピーナッツ形、垂直矩形および垂直楕円形の形状が従来の丸い断面コイルよりも好ましい。
【0045】
図15A~
図23Bにおいて、コイル178、180、182、183、184、186、188、190および192に関する形状およびサイズは例示のためのものであり、コイルワイヤの長さ、ピッチ、平均直径および断面積などのパラメータが試験目的のために一定であることを保証するためのものである。
【0046】
コイル180、182、183、184、186、188、190および192は
図2~
図6に示されているガイドワイヤ30と共に使用することができ、内側コイルまたは外側コイルのいずれかとして使用することができる。
【0047】
ガイドワイヤ先端成形ツール-マイクロJ
ガイドワイヤは、直線状または予め形成された「J」形状の構成のいずれかで販売されている。一般にガイドワイヤの遠位先端は、操縦性を助けるためにマイクロ「J」形状である。ワイヤは、ガイドワイヤと共に提供される成形ツールを用いて製造業者または医師によって成形することができる。製造業者による成形は、より繰り返し可能であり、かつワイヤの完全性を損なわない自動化プロセスである。ユーザの大多数は直線ワイヤを好み、その先端を自身で成形する。ガイドワイヤ製造品は、医師がワイヤ成形するのを助けるためのマンドレルおよびイントロデューサを提供する。
【0048】
ユーザがワイヤを成形する方法において良好な制御を有さず、ワイヤを容易に損傷し得ることが分かっている。試験から、ワイヤ性能をかなり助けることができる最適な角度(すなわち約20°~30°)および先端からの距離(2~3mm)が存在することが分かっている。医師はサイズにより曲げにおいて彼らが所望する仕様が何であるかを分かっていたとしても、医師の大部分は意図した最適な寸法に近い場所がどこか分からない。また医師が成形を行う場合に、ワイヤが完全性および機能性能を失うより高いリスクが存在する。
【0049】
図26~
図30に示されている実施形態では、マイクロ「J」成形ツールはガイドワイヤと共に出荷することができ、あるいは独立した付属品として販売することができる。この成形ツールは、マイクロJ形状の曲げを形成するために医師が角度ならびに先端からの距離を決定することができる場合には予め定められた既存のスロットを有する。このツールはユニバーサルデザインを有し、製造業者のガイドワイヤの全てに適合可能でもある。
【0050】
図27A~
図30に示されている実施形態では、成形ツール200は第1の部材202および第2の部材204と、異なる深さおよび形状を有する複数の空洞206とを備える。チャネル208は第1の部材202の壁210を貫通して延在しており、ガイドワイヤ214の遠位端212のためのアクセスを提供する。第2の部材204を第1の部材202の中に摺動可能に含め、第3の部材205を第1の部材202のスロット207の中に挿入して第2の部材204を第1の部材204の中に保持する。第3の部材205はスロット207内に接着またはレーザー溶接することができるが、第1の部材202と第2の部材204との間での長手方向移動または摺動を可能にする。一対のバネ216は間隔ツール200を開放位置218に維持するようにバネ付勢されている。開放位置218では、ガイドワイヤ214の遠位端212をチャネル208を通して挿入し、かつ空洞206のうちの1つの中に前進させることができる(
図27Bを参照)。マイクロJ先端を形成するために、ユーザは第2の部材204の端部を
図28Aおよび
図28Bの矢印の方向に押し込み、これによりバネ216のバネ力に打ち勝つ。
図28A~
図30に示すように、第2の部材204は第1の部材202に対して閉鎖位置220まで摺動する。閉鎖位置220では、ガイドワイヤの遠位端212が所定の角度で曲がり、かつその曲がりにより遠位端212の端部222からの所定の長さを設定するように、空洞206はチャネル208に対して移動している。ユーザが成形ツール200の端部に対する圧力を解放した場合、ガイドワイヤ214を空洞206から取り出すことができるようにバネ216は勢いよく開いて、第1の部材202を開放位置218まで移動させる。空洞206は25°および30°の角度の曲げを示しているが、5°~40°の角度の曲げ範囲が考えられる。同様に、遠位端220からガイドワイヤ214の曲げられていない部分までの曲げ長さは好ましくは1mmまたは2mmであるが、その長さは0.5mm~5mmの範囲であってもよい。
【0051】
放物線状研削輪郭
本発明の別の実施形態では、ガイドワイヤの遠位部は、冠状動脈などの蛇行した血管をナビゲートする場合により柔軟であるように断面が減少されている。ガイドワイヤの遠位部は柔軟であると共に押し込み可能でなければならず、すなわち当該遠位部は曲がり、蛇行した動脈を通って操縦可能であり、かつ曲がったり捻れたりすることなく動脈を通して押し込むか前進させることができるように、若干の剛性も有していなければならない。先行技術のガイドワイヤが
図31に示されており、テーパー部とテーパーを有しない芯部とからなる遠位部を有する。得られる曲げ剛性は
図33のグラフに示されており、ここでは曲げ剛性は各テーパーの位置で減少し、曲げ剛性はテーパー状ではない芯部に沿って一定なままである。
図31の先行技術のガイドワイヤのテーパー状遠位部は曲げ剛性における急激な変化を与え、これは蛇行した解剖学的構造を通ってガイドワイヤを前進させる場合に医師への触覚を低下させることがある。実際に、いくつかの先行技術のガイドワイヤでは、曲げ剛性における急激な変化によりガイドワイヤの遠位先端が捻じれたり、
図34に概略的に示されているように分岐血管の中に脱離したりする可能性がある。脱離は、動脈が損傷されたり穿刺されたりする恐れがあるという点で患者にとって危険なものとなり得る。重要なことに、芯部の外側直径を可能な限り遠位に維持してトルクを維持することが好ましい。各テーパー部は、蛇行した血管を通してガイドワイヤを前進させる際に重要なトルクを失っている。
【0052】
本発明を踏まえて、ガイドワイヤ230の放物線状遠位部232が
図32に示されており、ここでは連続的なテーパーを形成するために遠位部のかなりの部分が研削されている。より具体的には、連続的なテーパーはガイドワイヤ230の放物線状遠位部232に沿った放物線状の研削によって形成されている。放物線状の研削は、
図33のグラフに示されているように、非常に柔軟でありながらも剛性の線形変化を維持する部分232に沿って滑らかな曲線状の遷移を提供する。放物線状遠位部232は柔軟であるだけでなく、それは剛性の線形変化を有し、それにより蛇行した解剖学的構造を通してガイドワイヤを前進させる場合に優れたトルクおよび触覚フィードバックを医師に与える。曲線状ではないテーパー部234(放物線状の研削部分ではない)は、放物線状遠位部232の遠位にあるガイドワイヤ230上に位置しており、それは、
図33のグラフに示されているように曲げ剛性の低下および曲げ剛性の線形変化を提供する。
【0053】
曲げ剛性は様々な方法で測定することができる。曲げ剛性を測定する典型的な方法は、試験される試料が固定されたブロックに移動不可能に固定された状態でその試料の一部を固定されたブロックから伸ばし、かつ固定されたブロックから所定の距離だけ離れた試料の端部を撓ませるのに必要な力の量を測定することを含む。試料の長さに沿った2つの点を固定し、試料の真ん中を固定された量で撓ませるために必要とされる力を測定することにより、同様の手法を使用することができる。当業者であれば、試料の自由端に対する固定された量の力から生じる撓みの量を測定することなどを含む、これらの基本的な方法に対する多数の変形が存在することを理解するであろう。曲げ剛性を測定する他の方法は異なる全体的な大きさの異なる単位での値を生成してもよいが、曲げ剛性を測定するために使用される方法に関わらずグラフの全体的形状は同じままであると考えられる。
【0054】
0.014インチの直径のガイドワイヤの放物線状研削輪郭が
図35および
図36にそれぞれ示されている。
図35のガイドワイヤは11グラムの先端負荷を有し、
図36のガイドワイヤは14グラム先端負荷を有する。Y軸上の尺度の単位はインチであり、X軸はセンチメートルである。
図35および
図36の両方において、2つの放物線状研削輪郭は均一な直径の芯線セグメントによって分離されている。より具体的には、各グラフは、ガイドワイヤの遠位先端から約23.1cmで開始し、かつ遠位先端から約17.9cmで終了する第1の放物線状研削輪郭を示す。さらに各グラフは、遠位先端から約4.8cmで開始する第2の放物線状の研削を示す。均一な直径の芯線部分が放物線状の研削部分の間にあり、遠位先端から約1.2cmで開始する均一な直径の芯線部分が存在する。
図35および
図36に示されている放物線状研削輪郭は、剛性における線形変化を有し、柔軟であり、かつ蛇行した動脈および他の血管をナビゲートするためのガイドワイヤの遠位端に対する高い程度のトルクをなお維持するガイドワイヤを提供する。
【0055】
従来の材料および製造方法を使用して、本開示のガイドワイヤの放物線状研削輪郭を形成してもよい。当業者であれば、コンピュータ化された研削盤を使用して本明細書に開示されている放物線状研削輪郭を形成することができる。
【0056】
本発明をガイドワイヤとしてのその使用に関して本明細書に図示および説明してきたが、ガイドワイヤは体内の全ての血管に使用することができることは当業者に明らかであろう。本明細書に開示されている全ての寸法は単なる例としてのものである。本発明の範囲から逸脱することなく他の修正および改良をなすことができる。