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特開2024-153777固体ハイブリッド電解質、その作製方法、およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153777
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】固体ハイブリッド電解質、その作製方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20241022BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241022BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241022BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20241022BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01B1/08
H01M10/052
H01M10/056
H01M4/66 A
H01M10/054
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/485
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121911
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2023030805の分割
【原出願日】2018-03-29
(31)【優先権主張番号】62/478,396
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501073817
【氏名又は名称】ユニバシティ オブ メリーランド カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】フ,リャンビン
(72)【発明者】
【氏名】ワックスマン,エリック,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ボヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,ユンフイ
(72)【発明者】
【氏名】フ,クン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】望ましいイオン伝導性を有する固体ハイブリッド電解質およびこのような電解質と電極との間の安定的で良好に接続された界面を実現するポリマー層(たとえば、ポリマー膜)等の非限定的な層を備えた固体ハイブリッド電解質を提供する。
【解決手段】固体ハイブリッド電解質は、固体電解質(SSE)の外面の少なくとも一部または全部に配設された、ポリマー/共重合体層であってもよいし、ゲルポリマー/共重合体層であってもよいポリマー材料の層を有し、望ましい特性を示すイオン伝導性電池の電極との界面を形成する。SSEは、モノリシックSSE体、メソ多孔質SSE体、ファイバ又はストランドを有する無機SSEを含み、ストランドを有する固体電解質の場合、ストランドは、犠牲テンプレートを用いて形成可能であり、固体ハイブリッド電解質は、可撓性のイオン伝導性電池であってもよいイオン伝導性電池に使用可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機固体電解質(SSE)と、
前記固体電解質材料の外面の少なくとも一部または全部に配設されたポリマー材料と、
を含む、固体ハイブリッド電解質。
【請求項2】
前記SSE材料が、モノリシックSSE体またはメソ多孔質SSE体である、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項3】
前記SSE材料が、ディスク、シート、または多面体である、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項4】
前記ポリマー材料が、1つまたは複数の点において、10nm~10ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項5】
前記SSEが、複数のファイバまたはストランドを含む、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項6】
前記ファイバが、織編基板として存在する、請求項5に記載のハイブリッド電解質。
【請求項7】
前記ファイバが、ランダムに配置または配列された、請求項5に記載のハイブリッド電解質。
【請求項8】
前記無機SSE材料の前記ファイバまたはストランドが、相互接続3Dネットワークを形成する、請求項5に記載のハイブリッド電解質。
【請求項9】
前記SSE材料が、リチウムイオン伝導性SSE材料、ナトリウムイオン伝導性SSE材料、またはマグネシウムイオン伝導性SSE材料を含む、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項10】
前記リチウムイオン伝導性SSE材料が、リチウムペロブスカイト材料、LiN、Li-β-アルミナ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)、Li2.88PO3.860.14(LiPON)、LiAlSiO、Li10GeP12、リチウムガーネット材料、ドープリチウムガーネット材料、リチウムガーネット複合材料、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項9に記載のハイブリッド電解質。
【請求項11】
前記リチウムガーネット材料が、カチオンドープLiLa 12(ただし、MはNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)、カチオンドープLiLaBaTa12、カチオンドープLiLaZr12、およびカチオンドープLiBaY 12(ただし、MはNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)であり、カチオンドーパントが、バリウム、イットリウム、亜鉛、またはこれらの組み合わせである、請求項10に記載のハイブリッド電解質。
【請求項12】
前記リチウムガーネット材料が、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512、Li6.75BaLaTa1.7
Zn0.2512、およびこれらの組み合わせである、請求項10に記載のハイブリッド電解質。
【請求項13】
前記ナトリウムイオン伝導性SSE材料が、β”-Al、NaZrSiPO12(NASICON)、カチオンドープNASICON、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項9に記載のハイブリッド電解質。
【請求項14】
前記マグネシウムイオン伝導性SSE材料が、Mg1+x(Al,Ti)(PO(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項9に記載のハイブリッド電解質。
【請求項15】
前記無機SSEが、前記無機SSEの外面に露出した細孔を有し、前記ハイブリッド電解質が、前記細孔の少なくとも一部に配設された少なくとも1つのカソード材料および/または少なくとも1つのアノード材料をさらに含み、
少なくとも1つのカソード材料および少なくとも1つのアノード材料が前記細孔の少なくとも一部に配設される場合、前記少なくとも1つのカソード材料および少なくとも1つのアノード材料が、前記無機SSEの離散かつ電気的に分離された領域に配設される、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項16】
前記ポリマー材料が、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ[ビス(メトキシエトキシエトキシド)-ホスファゼン]、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ二フッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレン、スルホン酸塩(PSS)、ポリ塩化ビニル(PVC)群、ポリ(塩化ビニリデン)ポリプロピレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリイミド、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、PEO含有共重合体(たとえば、ポリスチレン(PS)-PEO共重合体およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEO共重合体)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体)、PVdF含有共重合体、PMMA共重合体、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む(たとえば、そのようなポリマーである)、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項17】
前記ポリマー材料が、ゲルである、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項18】
前記ゲルが、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメトキシエタン(DME)、ジオキソラン(DOL)、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される液体ならびに/またはLiPF、LiTFSI、LiTFSI、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される塩を含む、請求項17に記載のハイブリッド電解質。
【請求項19】
前記ゲルの前記ポリマー材料が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP共重合体)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PEO、PMMA、PAN、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む(たとえば、そのようなポリマーである)、請求項17に記載のハイブリッド電解質。
【請求項20】
前記ポリマー材料が、金属塩を含む、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項21】
前記ポリマー材料が、セラミックフィラーを含む、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項22】
前記セラミックフィラーが、導電性粒子、非導電性粒子、セラミックナノ材料から成る群から選択される、請求項21に記載のハイブリッド電解質。
【請求項23】
請求項1に記載のハイブリッド電解質を備えた、機器。
【請求項24】
前記ハイブリッド電解質と、
アノードと、
カソードと、
を備え、
前記ハイブリッド電解質が、前記カソードと前記アノードとの間に配設された、電池である、請求項23に記載の機器。
【請求項25】
前記電池が、前記カソードおよび/または前記アノードの少なくとも一部に配設された集電体をさらに備えた、請求項24に記載の機器。
【請求項26】
前記集電体が、導電性の金属または金属合金である、請求項25に記載の機器。
【請求項27】
前記電池が、リチウムイオン伝導性固体電池であり、前記ハイブリッド電解質が、リチウムイオン伝導性SSE材料である、請求項24に記載の機器。
【請求項28】
前記電池が、ナトリウムイオン伝導性固体電池であり、前記ハイブリッド電解質が、ナトリウムイオン伝導性SSE材料である、請求項24に記載の機器。
【請求項29】
前記電池が、マグネシウムイオン伝導性固体電池であり、前記ハイブリッド電解質が、マグネシウムイオン伝導性SSE材料である、請求項24に記載の機器。
【請求項30】
前記カソードおよび/または前記アノードが、導電性炭素材料を含み、前記カソード材料が任意選択として、有機またはゲルイオン導電性電解質をさらに含む、請求項24に記載の機器。
【請求項31】
前記カソードが、硫黄、硫黄複合材、および多硫化物材料から選択される材料を含むか、または、空気である、請求項24に記載の機器。
【請求項32】
前記カソードが、リチウム含有カソード材料から成る群から選択される材料を含む、請求項27に記載の機器。
【請求項33】
前記リチウム含有カソード材料が、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムリン酸鉄(LFP)、LiMnPO、LiCoPO、およびLiMMn(ただし、MはFe、Co、およびこれらの組み合わせから選択される)から成る群から選択される、請求項32に記載の機器。
【請求項34】
前記カソードが、ナトリウム含有カソード材料から選択される材料を含む、請求項28に記載の機器。
【請求項35】
前記ナトリウム含有カソード材料が、Na、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2、Na(PO、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2@グラフェン複合材から成る群から選択される、請求項27に記載の機器。
【請求項36】
前記カソードが、ドープマグネシウム酸化物から成る群から選択される材料を含む、請求項35に記載の機器。
【請求項37】
前記アノードが、シリコン含有材料、スズおよびその合金、スズ/炭素、ならびにリンから成る群から選択される材料を含む、請求項24に記載の機器。
【請求項38】
前記アノードが、リチウムイオン伝導性アノード材料から成る群から選択される材料を含む、請求項24に記載の機器。
【請求項39】
前記リチウムイオン伝導性アノード材料が、炭化リチウム、LiC、およびチタン酸リチウム(LTO)から成る群から選択されるリチウム含有材料である、請求項38に記載の機器。
【請求項40】
前記アノードが、リチウム金属である、請求項38に記載の機器。
【請求項41】
前記アノードが、ナトリウムイオン伝導性アノード材料から選択される材料を含む、請求項24に記載の機器。
【請求項42】
前記ナトリウム含有アノード材料が、NaおよびNa0.66Li0.22Ti0.78から成る群から選択される、請求項41に記載の機器。
【請求項43】
前記アノードが、ナトリウム金属である、請求項41に記載の機器。
【請求項44】
前記アノードが、マグネシウム含有アノード材料である、請求項24に記載の機器。
【請求項45】
前記アノードが、マグネシウム金属である、請求項44に記載の機器。
【請求項46】
前記ハイブリッド電極、カソード、アノード、および任意選択としての前記集電体が、セルを形成し、前記電池が、複数の前記セルを備え、前記セルの各隣接対が、バイポーラ板により分離された、請求項24に記載の機器。
【請求項47】
液体電解質を備えた従来のイオン伝導性電池であり、前記電池が、無機SSEまたは固体ハイブリッド電解質および液体電解質を備え、前記液体電解質が、前記固体ハイブリッド電解質の一部として存在せず、
前記無機SSE材料または前記固体ハイブリッド電解質が、前記従来の電池のセパレータである、請求項23に記載の機器。
【請求項48】
前記無機SSEが、F/S SSEである、請求項47に記載の機器。
【請求項49】
固体ハイブリッド電解質を作製する方法であって、
テンプレートを1つまたは複数のSSE材料前駆体と接触させることと、
任意選択として、前記SSE材料前駆体を反応させることと、
前記テンプレートを前記固体無機材料で熱処理することであり、前記テンプレートが除去され、前記無機SSEが形成される、ことと、
前記焼成テンプレートをポリマー材料と接触させることと、
を含み、
固体ハイブリッド電解質が形成される、方法。
【請求項50】
前記SSE材料が、ゾルゲル前駆体または金属塩である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記テンプレートが、炭素テンプレートまたは生体材料テンプレートである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項52】
前記炭素テンプレートが、繊維テンプレートである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記生体材料テンプレートが、木材テンプレートまたは植物テンプレートである、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/478,396号および2017年4月10日に出願された米国仮特許出願第62/483,816号の優先権を主張するものであり、それぞれの開示内容を本明細書に援用する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記述
本発明は、エネルギー省により認められた契約第DEEE0006860号および第DEEE0006860号の下、政府支援によりなされたものである。政府は、本発明の一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般的には固体ハイブリッド電解質に関する。より詳細に、本開示は一般的に、イオン伝導性電池に用いられる固体ハイブリッド電解質に関する。
【背景技術】
【0004】
過去20~30年間にわたって、リチウムイオン電池技術は大幅な進歩を遂げた。純粋なリチウム金属は、その他の如何なるリチウムイオンアノード材料との比較でも、最も高い比容量(3860mAh/g)および最も低い電気化学ポテンシャル(-3.04V対標準水素電極)を有する。リチウム金属アノードと関連する重要な課題として、ポリマーセパレータを貫通し、長期サイクル用途において安全性に対する懸念および性能の低下の両者をもたらし得る液体電解質系中の金属デンドライトの形成がある。固体電解質(SSE)は、強力な不可侵障壁として作用することによりLiデンドライトの形成を阻止する解決手段として認識されている。
【0005】
SSEは一般的に、広い電気化学的安定性電位窓およびLiデンドライトの貫通を防止する高い剛性率を有するとともに、通常は不燃性であることから、安全性が向上している。Li金属電池のSSEの主要な課題として、SSEとカソードまたはアノードとの間の高い界面抵抗がある。界面抵抗が高いと、過電圧が大きくなり、セルのサイクル時のクーロン効率が低下する。
【0006】
化学的/物理的短絡および電極の体積変化がリチウム電池のその他2つの主要な課題である。従来の電池において、ポリマーセパレータでは、化学的短絡も物理的短絡も効果的に防止できない。溶解した活物質が必然的にポリマー膜の細孔を通って移動し、高弾性のLiデンドライトが容易に膜を貫通するため、性能が低下するとともに安全性に対する懸念が生じることになる。リチオ化および脱リチオ化時の体積変化によって、界面における活物質の脱離およびセル全体の構造的不安定性等の別の懸念が生じる。硫黄カソードの場合は、多硫化リチウムの形成および液体有機電解質を横切る移動が、高エネルギー密度電池を実現する際の別の主要な制約となる。カソードホストの開発、セパレータの改良、またはLi金属の保護によって短絡を阻止するとともに体積変化に対応する広範囲の研究がなされているものの、これらの課題に同時に対処できる方法はほとんどない。
【0007】
液体有機電解質がリチウムイオン電池(LIB)の業界標準のイオン伝導体である。液体電解質は、高いイオン伝導性および良好な電極とのぬれ性を特徴とする。ただし、液体系は可燃性であり、必然的に活物質の溶解および拡散が生じる上、不要種のカソードからアノードへの移動によって、電極を劣化させるとともに新たなカソード性質の展開を制限する「化学的短絡」が生じるが、これは高電圧カソード、硫黄、および空気/Oに典型的なことである。高電圧LIBにおいては、LiNi0.5Mn1.4(LNMO)
スピネルカソードにおける遷移金属の溶解およびそれぞれのアノード表面への拡散によって、急速な容量低下につながる連続的な電解質分解によりLiが失われる。LIBのほか、Li金属電池においても、活物質の拡散がより支配的である。たとえば、Li-S電池においては、多硫化物の拡散によってLi金属アノードが腐食し、電極間の多硫化物の繰り返し可能なシャトリングによって、クーロン効率の低下および活物質の損失が生じる。同様に、Li-空気/O電池の移動性酸化還元メディエータによる短絡シャトルも回避すべきである。したがって、このような可溶成分の電池中の移動の最小化または阻止の観点から、化学的短絡を防止することが重要である。
【0008】
より高いエネルギー密度を有すると同時に突発故障の傾向の少ない新たな電池技術を開発する革新的な手法の必要性が急速に高まっている。不要な活物質の移動および金属デンドライトの貫通を阻止することによって、高いエネルギー密度を提供するとともに、可燃性および安全性の問題のほか、化学的および物理的短絡の課題に対処するための鍵となるのが固体電解質である。
【0009】
過去数十年において、導電性酸化物、リン酸塩、水素化物、ハロゲン化物、硫化物、およびポリマーベースの複合物等、多くの傑出した固体電解質材料が固体電池用に開発されてきた。0Dナノ粒子、1Dナノファイバ、2D薄膜、3Dネットワークおよびバルク成分を含む広範な材料集合にわたって、固体リチウムイオン伝導体の電池への組み込みが実証されている。これらのうち、3Dリチウムイオン伝導フレームワークの概念は、現在の固体電池の能力およびサイクル動態の欠陥に対する創造的な解決手段を表し、連続的なLiイオン移動経路および適正な機械的補強を提供する。
【0010】
Liデンドライトの貫通およびSEI形成に対処する方策として、リチウムデンドライトを機械的に抑制するとともにSEI形成を本質的に除去する固体電解質(SSE)の開発がある。さまざまな種類の固体電解質(無機酸化物/非酸化物およびLi塩含有ポリマー)の中で、固体ポリマー電解質が最も大規模に研究されている。PEOベースの複合材においては、粉末がホストPEOポリマーマトリクスに組み込まれ、PEOポリマー鎖の再結晶化動態に影響を及ぼして局所アモルファス領域を促進することにより、Li塩/ポリマー系のイオン伝導性を向上させる。また、粉末の追加によって、電気化学的安定性が向上するとともに、機械的強度が増す。ナノ構造フィラーの開発は、アモルファス領域の表面積の増大およびフィラーとポリマー間の界面の改善によってポリマー複合材電解質のイオン伝導性を高くする一手法である。1次元ナノワイヤフィラーによって、ポリマー複合材電解質のイオン伝導性が増すことが実証されている。これは、ポリマー電解質中のナノ粒子フィラーが孤立分散しているのに対して、ナノワイヤフィラーがポリマーマトリクス中に拡張イオン移動経路を与えるためである。ただし、セラミックフィラーの凝集が残存する可能性があり、ポリマーとの混合によって、均一な固体ポリマー電解質を大規模に作製する際の課題となる。この課題を解決するため、近年、ポリマー電解質中の高単分散のセラミックフィラー粒子のその場合成が報告されている。ナノサイズSiO粒子のPEO/Li塩ポリマーへのその場合成によって、報告されている固体ポリマー電解質は、30℃で4.4×10-5S/cmのイオン伝導度を示しているが、室温でより高いイオン伝導性を実現するには、さらなる改良が必要である。したがって、本発明者らの理解に基づき、複合材ハイブリッド電解質中の相互接続長距離イオン移動を伴う連続的なSSEネットワークの作製に関して満たされていない大きな要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、固体ハイブリッド電解質を提供する。また、本開示は、固体ハイブリッド電解質の作製方法およびその使用を提供する。
【0012】
一態様において、本開示は、固体ハイブリッド電解質を提供する。固体ハイブリッド電解質は、固体電解質(SSE)の外面の少なくとも一部または全部に配設されたポリマー材料の層を有する。種々例において、固体ハイブリッド電解質は、ポリマー材料/固体ハイブリッド電解質、ポリマー/固体ハイブリッド電解質、またはゲルポリマー/固体ハイブリッド電解質である。種々例において、SSEは、モノリシックもしくはメソ多孔質SSE体または複数のファイバもしくは複数のストランドを含むSSEである。
【0013】
一態様において、本開示は、無機ファイバまたはストランドを作製する方法を提供する。ファイバまたはストランドは、無機SSEを形成し得る。種々例において、これらの方法は、テンプレーティング法またはエレクトロスピニング法である。
【0014】
ストランドは、テンプレーティング法により形成可能である。テンプレートは、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を形成可能な無機材料のストランドの形成に使用し得る連続空隙を備える。空隙は、人工的に設計されたものでもよいし、生物材料(たとえば、木材、植物等)において自然に発生したものであってもよい。
【0015】
一態様において、本開示は、本開示の固体ハイブリッド電解質の使用を提供する。固体ハイブリッド電解質は、さまざまな機器において使用可能である。種々例において、機器は、本開示の1つまたは複数の固体ハイブリッド電解質を備える。機器の例としては、電解槽、電解セル、燃料電池、電池、および他の電気化学的機器(たとえば、センサ等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
機器は、電池であってもよい。電池は、イオン伝導性電池であってもよい。電池は、携帯用途、輸送用途、固定エネルギー貯蔵用途等の用途向けに構成されていてもよい。イオン伝導性電池の例としては、リチウムイオン伝導性電池、ナトリウムイオン伝導性電池、マグネシウムイオン伝導性電池等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本開示の作用および目的をさらに理解するため、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)ハイブリッドポリマー/ガーネット型SSE電解質を有する場合および(b)界面ゲルポリマー層を有さず、ガーネットSSEと電極との間の界面接触が不十分な場合の固体ゲルポリマー電池設計の模式図である(ゲルポリマー層によって、電極とSSEとの間の接触を改善可能である)。
図2】ハイブリッド電解質を備えた対称セルのインピーダンス解析であって、(a)LiFePOカソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルのEIS、(b)SS|ポリマー|SSE|ポリマー|SS対称セルのEIS、(c)カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルのEIS、(d)Li|ポリマー|Li対称セルのEISプロット、(e)Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルのEISプロット、(f)ゲルポリマー界面を有する場合および有さない場合のSSE|電極界面抵抗の比較を示した図である。
図3】ゲルポリマー界面層を有する場合および有さない場合の電極|SSE|電極対称セル構成要素のインピーダンスを示した図である。
図4】対称完成セルのポリマー|SSE|ポリマーハイブリッド電解質の電気化学的性能であって、(a)15時間にわたる一定電流でのLi|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セル中のLiストリッピングおよびプレーティングの電圧プロファイル、(b)サイクル前後のセルのEISプロット、(c)ゲルポリマー界面層を有するカソード|SSE|Liセルの充放電電圧プロファイル、(d)130サイクルにわたるセルの放電容量およびクーロン効率、(e)サイクル前、20サイクル後、および130サイクル後のセルのEISを示した図である。
図5】ゲルポリマー界面を有さない電極|SSE|電極対称セルのインピーダンスであって、(a)カソード|SSE|カソード対称セルのEIS、(b)Li|SSE|Li対称セルのEISを示した図である。
図6】二層固体電解質マトリクスに焦点を当てた従来の電池と固体ハイブリッド電解質との比較を示した図である。
図7】二層ガーネット固体電解質の特性評価であり、二層ガーネット構造の3D構造の模式図であって、(a)二層ガーネットSSEの写真画像、(b)多孔質層の上方視SEM画像(スケールバーは、200μmである)、(c)多孔質層の拡大図(スケールバーは、50μmである)、(d)多孔質層と高密度層との接続部のSEM(スケールバーは、10μmである)、(e)粒状高密度微細構造の拡大SEM画像(高密度構造が可溶活物質を阻止して、Liデンドライトの貫通を抑えることができる。スケールバーは、10μmである)、(f)二層ガーネット構造の断面(多孔質および高密度ガーネット構造の2つの異なる層をはっきりと観察できる(高密度層が約35μm、多孔質層が70μm))を示した図である。
図8-1】ポリスルフィド溶液、液体電解質、および溶融硫黄中のガーネットSSEの化学的安定性であって、(a)(b)表面へのArスパッタリング前後の高密度ガーネットペレットのS 2p XPSスペクトル(XPS解析の前、1週間にわたって、高密度ガーネットペレットをポリスルフィド溶液(DME/DOL中のLi)に十分に浸漬した)、(c)表面へのArスパッタリング前後の高密度ガーネットペレットのZr 3d XPSスペクトル、(d)(e)1週間にわたって液体電解質(DME/DOL中のLiTFSI)およびポリスルフィド溶液に浸した後のガーネット粉末のXRDパターンおよびラマンスペクトル(酸素および水分汚染を回避するため、サンプルをカプトンバッグに封入した)、(f)1週間にわたってポリスルフィド溶液に浸した後のガーネットナノ粉末のTEM画像、(g)1週間にわたって160℃の溶融硫黄に浸した後のガーネット粉末のXRDパターン、(h)ガーネット、LiS、およびLiの相互反応エネルギーΔED,mutualの計算を示した図である。
図8-2】ポリスルフィド溶液、液体電解質、および溶融硫黄中のガーネットSSEの化学的安定性であって、(a)(b)表面へのArスパッタリング前後の高密度ガーネットペレットのS 2p XPSスペクトル(XPS解析の前、1週間にわたって、高密度ガーネットペレットをポリスルフィド溶液(DME/DOL中のLi)に十分に浸漬した)、(c)表面へのArスパッタリング前後の高密度ガーネットペレットのZr 3d XPSスペクトル、(d)(e)1週間にわたって液体電解質(DME/DOL中のLiTFSI)およびポリスルフィド溶液に浸した後のガーネット粉末のXRDパターンおよびラマンスペクトル(酸素および水分汚染を回避するため、サンプルをカプトンバッグに封入した)、(f)1週間にわたってポリスルフィド溶液に浸した後のガーネットナノ粉末のTEM画像、(g)1週間にわたって160℃の溶融硫黄に浸した後のガーネット粉末のXRDパターン、(h)ガーネット、LiS、およびLiの相互反応エネルギーΔED,mutualの計算を示した図である。
図9-1】液体-固体ハイブリッド電解質の電気化学的特性評価であって、(a)(b)露出した高密度ガーネット層表面の模式図およびSEM画像、(c)(d)ポリマー被覆高密度ガーネット層表面の模式図およびSEM、(e)ポリマー被膜を有する対称セルのEIS、(f)電流密度0.3mA/cmでのLiプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイル(赤線は、溶融Liをガーネット高密度層に直接取り付けて作製した形態Li/ガーネット/Liである。Li/ガーネット/Liは、高インピーダンスで高電圧の曲線を示す。黒線は、対称ハイブリッド電解質セルからである。差し込み図は、最初の数時間および140時間目におけるLiストリッピング/プレーティングの詳細な電圧プラトーを示す)、(g)(h)電流密度0.5および1.0mA/cmでのLiプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイルを示した図である。
図9-2】液体-固体ハイブリッド電解質の電気化学的特性評価であって、(a)(b)露出した高密度ガーネット層表面の模式図およびSEM画像、(c)(d)ポリマー被覆高密度ガーネット層表面の模式図およびSEM、(e)ポリマー被膜を有する対称セルのEIS、(f)電流密度0.3mA/cmでのLiプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイル(赤線は、溶融Liをガーネット高密度層に直接取り付けて作製した形態Li/ガーネット/Liである。Li/ガーネット/Liは、高インピーダンスで高電圧の曲線を示す。黒線は、対称ハイブリッド電解質セルからである。差し込み図は、最初の数時間および140時間目におけるLiストリッピング/プレーティングの詳細な電圧プラトーを示す)、(g)(h)電流密度0.5および1.0mA/cmでのLiプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイルを示した図である。
図10-1】固体ハイブリッドLi-S電池の電気化学的特性評価であって、(a)従来のLi-S電池および固体ハイブリッドLi-S電池の模式図(従来のLi-Sにおいて、ポリマー多孔質膜は、ポリスルフィドの阻止もLiデンドライトの貫通の防止も不可能である。固体ハイブリッドLi-S電池において、セラミック高密度膜は、液体電解質およびポリスルフィドの物理的な阻止のみならず、Liデンドライトのカソード側への成長を抑えることも可能である)、(b)従来およびハイブリッドLi-Sセルの電圧プロファイル(充電プラトーの延長プラトーは、従来のLi-Sにおけるポリスルフィドのシャトル効果を示す。ハイブリッドLi-Sセルではシャトル効果が起こらない)、(c)高電流密度でのハイブリッドLi-Sセルの電圧プロファイル(高密度ガーネット膜および質量担持が約1.2mg/cmのスラリーキャスト硫黄電極をハイブリッドセルとして組み付けた)、(d)ハイブリッドLi-Sセルのレート性能、(e)固体ハイブリッド二層Li-S電池の模式図(硫黄およびCNTを細孔中に封入した。機械的に安定した二層ガーネット構造は、硫黄の体積膨張に対応可能であるとともに、サイクル中の安定した電極構造を維持可能である)、(f)二層硫黄カソードの断面(元素マッピングは、多孔質層の内側の硫黄分布を示す)、(g)(h)0.2mA/cmで負荷が7.5mg/cmのハイブリッド二層Li-Sセルの電圧プロファイルおよびサイクル性能を示した図である。
図10-2】固体ハイブリッドLi-S電池の電気化学的特性評価であって、(a)従来のLi-S電池および固体ハイブリッドLi-S電池の模式図(従来のLi-Sにおいて、ポリマー多孔質膜は、ポリスルフィドの阻止もLiデンドライトの貫通の防止も不可能である。固体ハイブリッドLi-S電池において、セラミック高密度膜は、液体電解質およびポリスルフィドの物理的な阻止のみならず、Liデンドライトのカソード側への成長を抑えることも可能である)、(b)従来およびハイブリッドLi-Sセルの電圧プロファイル(充電プラトーの延長プラトーは、従来のLi-Sにおけるポリスルフィドのシャトル効果を示す。ハイブリッドLi-Sセルではシャトル効果が起こらない)、(c)高電流密度でのハイブリッドLi-Sセルの電圧プロファイル(高密度ガーネット膜および質量担持が約1.2mg/cmのスラリーキャスト硫黄電極をハイブリッドセルとして組み付けた)、(d)ハイブリッドLi-Sセルのレート性能、(e)固体ハイブリッド二層Li-S電池の模式図(硫黄およびCNTを細孔中に封入した。機械的に安定した二層ガーネット構造は、硫黄の体積膨張に対応可能であるとともに、サイクル中の安定した電極構造を維持可能である)、(f)二層硫黄カソードの断面(元素マッピングは、多孔質層の内側の硫黄分布を示す)、(g)(h)0.2mA/cmで負荷が7.5mg/cmのハイブリッド二層Li-Sセルの電圧プロファイルおよびサイクル性能を示した図である。
図11】異なる温度(25、30、40、および50℃)での高密度ガーネットSSEペレットのナイキストプロットを示した図である(高密度ガーネットペレットの厚さは、約250μmである)。
図12】ガーネットSSEの伝導度のアレニウスプロットを示した図である(活性化エネルギーは、0.35eVである)。
図13】従来のLi-S電池であって(硫黄の質量担持は、約1.2mg/cmである)、(a)長時間充電プラトーを伴い、ポリスルフィドのシャトル効果を示す従来のLi-S電池の電圧プロファイル、(b)従来のLi-Sセルのサイクル性能(セルは、10サイクル後に高速で低下する)、(c)従来のLi-Sセルの低いクーロン効率を示した図である。
図14】電流が0.1mA/cmでの固体ハイブリッドLi-S電池のサイクル性能を示した図である(硫黄担持は1.2mg/cmであり、ハイブリッドセルは、1000mAh/gを上回る高容量を果たした)。
図15】CNT被覆ガーネット多孔質構造のSEM顕微鏡写真を示した図である(CNTをガーネット表面上に堆積させ、硫黄活物質の電子伝導ネットワークを提供した。(a)および(b)のスケールバーは、10μmおよび500nmである)。
図16】テストしたガーネット二層Li-S電池の比エネルギー密度の計算を示した図である。
図17】パラメータを最適化した二層ガーネット固体Li-S電池の推定エネルギー密度を示した図である。
図18】リチウム対称セルにポリマー電解質が組み込まれたマルチスケール整列メソ多孔質ガーネットLi6.4LaZrAl0.212(LLZO)膜の模式図である(ガーネット木材は、天然の木材に由来するマルチスケール整列メソ構造を有するため、ガーネット-ポリマー界面に沿ってガーネットおよびポリマー電解質を通るLiイオン移動が阻止されることがなくなる)。
図19】木材テンプレートの特性評価であって、圧縮およびスライスによる木材テンプレートの作製、(b)元の木材の上方視SEM画像、(c)(圧縮後に木材マイクロチャネルの直径が見かけ上小さくなった)圧縮木材の上方視SEM画像、(d)元の木材と(e)圧縮木材とを比較した断面SEM画像(チャネルは閉鎖されているが、高整列構造は維持されている)、(f)直径が10nm前後の整列ナノファイバのSEM画像を示した図である。
図20】木材によりテンプレーティングされた整列ガーネットの焼成であって、(a)マイクロスケールおよび(b)ナノスケールの両者でのチャネルの整列を示した断面SEM画像、(c)整列メソ多孔質ガーネットおよびPEOベースのポリマー電解質から成る可撓性ガーネット木材の写真、(d)JCPDS#90-0457に整合し、立方ガーネット構造を確認する整列ガーネットのXRDパターンを示した図である。
図21】ガーネット結晶構造のTEM特性評価であって、(a)(21 0)および(021)格子面を示す整列ガーネットから分かれたナノ粒子のHRTEM画像(差し込みグラフは、HRTEM画像のFFTパターンを示す)、(b)明瞭な多結晶構造を示すガーネットナノ粒子の縁部のTEM画像、(c)ROI、スペクトル画像、ならびにO、C、およびLaの相対組成マップをそれぞれ示すガーネット表面のEELSスペクトルを示した図である。
図22-1】整列メソ多孔質構造を有するガーネット木材の電気化学的特性評価であって、(a)整列ガーネット全体にわたるポリマー電解質の完全な均一浸潤を示すSEMおよびその対応するEDX画像(スケールバーは、100μmである)、(b)温度上昇に伴うガーネット木材膜のインピーダンスの低下を示したナイキストプロット(差し込み模式図は、テストセルの構造を示す)、(c)異なる温度におけるガーネット木材とPEベースのポリマー電解質とのイオン伝導度の比較(青色領域は、室温(RT)の範囲内で実行された測定結果を示す)、(d)低ねじれおよび高速リチウム移動経路を示すガーネット木材を伴うリチウム対称セルの模式図、(e)室温における電流密度が0.1mA/cmでのLi/ガーネット木材/Liの定電流サイクルを示した図である。
図22-2】整列メソ多孔質構造を有するガーネット木材の電気化学的特性評価であって、(a)整列ガーネット全体にわたるポリマー電解質の完全な均一浸潤を示すSEMおよびその対応するEDX画像(スケールバーは、100μmである)、(b)温度上昇に伴うガーネット木材膜のインピーダンスの低下を示したナイキストプロット(差し込み模式図は、テストセルの構造を示す)、(c)異なる温度におけるガーネット木材とPEベースのポリマー電解質とのイオン伝導度の比較(青色領域は、室温(RT)の範囲内で実行された測定結果を示す)、(d)低ねじれおよび高速リチウム移動経路を示すガーネット木材を伴うリチウム対称セルの模式図、(e)室温における電流密度が0.1mA/cmでのLi/ガーネット木材/Liの定電流サイクルを示した図である。
図23】焼結した整列メソ多孔質ガーネットの写真であって、焼結した整列メソ多孔質ガーネットの一部を示した図である(ガーネット膜は、木材テンプレートと同様の面積で白色かつ平坦であった)。
図24】ガーネット木材の断面SEM画像である(ガーネット木材の厚さは、木材テンプレートの厚さにより制御可能である。SEM画像は、低ねじれチャネルが高整列となり、ガーネット膜全体を貫通する、厚さが約30μmの薄いガーネット木材サンプルを示す)。
図25】整列ガーネット構造の断面SEM画像である(SEM画像は、厚さが18μmのガーネット木材サンプルの一部を示す。サンプルは、スライスおよび研磨により薄くしたテンプレートを焼結したものである)。
図26】ガーネット木材の断面SEM画像である(SEM画像は、ガーネット木材の断面および上面を示す。整列構造は、PEOベースのポリマー電解質で完全に満たされている)。
図27】前駆体浸潤時の木材テンプレートの重量変化を示した図である(木材テンプレートを前駆体溶液に浸して、重量が時間とともに増加した。重量変化は、木材テンプレートの高い吸収性を示す)。
図28】異なる温度でのPEO/SCN/Li-TFSIポリマー電解質の(a)EIS測定結果および(b)イオン伝導度を示した図である(ハイライト領域は、室温(RT)前後で実行された測定結果を示す。差し込み図は、PEO/LiTFSI/SCNポリマー電解質膜が2つのステンレス鋼電極により挟まれたことを示す。ポリマー電極膜の周りにポリエチレン(PE)セパレータリングを配置して、高温での厚さを固定するとともに短絡を回避した)。
図29】600時間超にわたる室温において、電流密度が0.1mA/cmのLi/ガーネット木材/Liの定電流サイクルを示した図である(電圧の変動は、セルの周囲温度の変化による。長期サイクルは、Li金属セル中のガーネット木材複合電解質の傑出した電気化学的および機械的安定性を示す)。
図30】可撓性のリチウムイオン伝導性セラミック繊維を示した図である(リチウムイオン伝導性セラミック繊維は、可撓性で、元のテンプレートの物理的特性を維持した。独自の繊維構造によって、連続したファイバおよび糸を介する長距離のリチウムイオン移動経路、固体イオン伝導体の高表面積/体積比、およびマルチレベル多孔性分布が可能となる)。
図31-1】ガーネット繊維の特性評価であって、(a)前処理した繊維テンプレートのSEM画像、(b)前駆体溶液を含浸させたテンプレートのSEM画像、(c)前駆体溶液含浸テンプレートから変換されたガーネット繊維のSEM画像、(d)3Dレーザスキャンにより生成されたガーネット繊維の平坦均一性の再構成モデル、(e)ガーネット繊維の可撓性、加工性、および溶媒耐性、(f)異なる温度で焼結した粉砕ガーネット繊維の粉末XRDパターン、(g)800℃で焼結した単一のガーネットファイバの元素分布マッピングを示した図である。
図31-2】ガーネット繊維の特性評価であって、(a)前処理した繊維テンプレートのSEM画像、(b)前駆体溶液を含浸させたテンプレートのSEM画像、(c)前駆体溶液含浸テンプレートから変換されたガーネット繊維のSEM画像、(d)3Dレーザスキャンにより生成されたガーネット繊維の平坦均一性の再構成モデル、(e)ガーネット繊維の可撓性、加工性、および溶媒耐性、(f)異なる温度で焼結した粉砕ガーネット繊維の粉末XRDパターン、(g)800℃で焼結した単一のガーネットファイバの元素分布マッピングを示した図である。
図32-1】ガーネット繊維で補強された可撓性の複合材ポリマー電解質の電気化学的特性評価であって、(a)可撓性および機械的強度を示す乾燥CPE、(b)ファイバガーネットが支配的なリチウムイオン移動メカニズム、(c)異なる温度におけるCPEのインピーダンススペクトル、(d)温度の関数としてのCPEのリチウムイオン伝導度のアレニウスプロット、(e)さまざまな電流密度および60℃でのLi/CPE/Li対称セルの定電流サイクル測定結果を示した図である。
図32-2】ガーネット繊維で補強された可撓性の複合材ポリマー電解質の電気化学的特性評価であって、(a)可撓性および機械的強度を示す乾燥CPE、(b)ファイバガーネットが支配的なリチウムイオン移動メカニズム、(c)異なる温度におけるCPEのインピーダンススペクトル、(d)温度の関数としてのCPEのリチウムイオン伝導度のアレニウスプロット、(e)さまざまな電流密度および60℃でのLi/CPE/Li対称セルの定電流サイクル測定結果を示した図である。
図33】硫黄担持が10.8mg/cmの固体Li-S電池のガーネット繊維3D電極構成の特性評価であって、(a)高密度支持電解質上で焼結したガーネット繊維の写真、(b)硫黄カソード浸潤ガーネット繊維電極構成のSEM画像、(c)硫黄/炭素混合物を担持した単一のガーネットファイバのEDX元素マッピング、(d)固体リチウム-硫黄電池の充電-放電プロファイルを示した図である。
図34】可撓性ガーネット繊維の特性評価であって、(a)ガーネット前駆体溶液含浸繊維テンプレートの熱重量解析、(b)前処理した繊維テンプレートの断面SEM画像、(c)前駆体溶液含浸繊維テンプレートの断面SEM画像、(d)テンプレートの熱分解および高温焼結後のガーネット繊維の断面SEM画像を示した図である。
図35】大寸法および異なる形状の可撓性ガーネット繊維を示した図である。
図36】Liイオン伝導性ガーネットおよび絶縁性Al繊維補強可撓性CPEの特性評価であって、(a)ガーネット繊維補強可撓性CPEの断面SEM画像、(b)同一のテンプレーティング法を用いて作製された絶縁性Al繊維、(c)異なる温度における制御CPEのインピーダンスプロットを示した図である。
図37】ガーネット繊維補強可撓性CPEの電気化学的特性評価であって、(a)60℃での500時間のサイクル前後のLi/CPE/Li対称セルのインピーダンスプロット、(b)0.05mA/cmでのLi/CPE/Li対称セルの室温定電流サイクル測定結果、(c)1mA/cmおよび60℃でのLi/CPE/Li対称セルの定電流サイクル測定結果を示した図である。
図38】固体Li-S電池のガーネット繊維構成で構築された硫黄浸潤3D電極の特性評価であって、(a)露出糸エリアから、ガーネット繊維で構築された3D硫黄カソードの高密度電解質表面への方向に沿ったEDX元素線形スキャン、(b)ガーネット繊維で構築された3D硫黄カソードの高倍率断面SEM画像および元素マッピングを示した図である。
図39】テープキャストおよび高温積層により作製されたガーネット電解質支持部の特性およびガーネット電解質のポリスルフィドカソード液および液体電解質との化学的互換性であって、(a)500μm厚の高密度ガーネット電解質支持部の断面SEM画像、(b)粉砕ガーネット電解質のXRDパターン、(c)25℃~100℃の温度範囲における高密度ガーネット電解質のリチウムイオン伝導度、(d)グローブボックス中で研磨された新しいガーネット電解質支持部の写真、(e)300時間にわたってポリスルフィドカソード液および液体電解質に浸したガーネット電解質の写真、(f)その後、DME/DOL溶媒で洗浄されたガーネット電解質の写真(明確な変色は観察されなかった)、(g)浸漬実験の前後のガーネット電解質のXRDパターン(化学的変化は観察されなかった)を示した図である。
図40】0.75mA/cmにおける硫黄担持が10.8mg/cmのガーネット繊維構成で構築された固体Li-S電池の放電および充電プロファイルを示した図である。
図41】0.15mA/cmにおける硫黄担持が18.6mg/cmと高いガーネット繊維構成で構築された固体Li-S電池の放電および充電プロファイルを示した図である。
図42】異なる電解質支持部の構造的構成における硫黄担持が18.6mg/cmの固体Li-S電池の相対重量およびエネルギー密度であって、(a)固体Li-S電池におけるガーネット、カソード、アノード、および集電体の相対的な重量分布ならびに対応するエネルギー密度、(1)500μm厚の電解質支持部および63%の電解質エリアの利用、(2)100μm厚の電解質支持部および100%の電解質エリアの利用、(3)薄い高密度電解質(20μm)および多孔質基板(70μm)から成る二層支持構造ならびに100%の電解質エリアの利用、(b)低重量二層支持構造の代表的なSEM画像を示した図である。
図43】固体Li-S電池の構成材料の密度を示した図である。
図44】異なる電解質支持部構成の構造パラメータを示した図である。
図45】カソード構成要素のパラメータを示した図である。
図46】アノード構成要素のパラメータを示した図である。
図47】固体ハイブリッド複合材電解質の模式図である(セラミックガーネットナノファイバが補強として機能し、リチウムイオン伝導性ポリマーがマトリクスとして機能する。相互接合ガーネットナノファイバネットワークは、電解質膜における連続したイオン伝導性経路を与える)。
図48】可撓性の固体ファイバ補強複合材(FRPC)電解質の作製であって、(a)エレクトロスピニングガーネット/PVPナノファイバの模式的セットアップ、(b)FRPC Liイオン伝導性膜を作製する模式的手順、(c)紡糸したナノファイバネットワークのSEM画像、(d)紡糸したナノファイバの直径分布、(e)ガーネットナノファイバネットワークのSEM画像、(f)ガーネットナノファイバの直径分布、(g)可撓性かつ屈曲性のFRPC Liイオン伝導性膜を示す写真画像を示した図である。
図49】ガーネットナノファイバ補強および固体FRPC電解質の形態学的特性評価であって、(a)相互接合ガーネットナノファイバを示すSEM画像、(b)多結晶ガーネットナノファイバのTEM画像(差し込み図は、平均粒径が直径20nmのガーネットナノファイバの拡大画像である)、(c)個々のガーネットナノファイバの高分解能TEM画像、(d)FRPC電解質膜表面のSEM画像、(e)膜の断面SEM画像、(f)断面形態の拡大SEM画像(ガーネット3D多孔質構造の空き空間は、ポリマーで満たされている)を示した図である。
図50】固体FRPC電解質の熱特性および可燃性テストであって、(a)紡糸したナノファイバのTGA曲線、(b)Li塩/PEOポリマーおよびFRPC電解質膜のTGA曲線、(c)ガーネットナノ粒子と混合されたLi塩/PEOポリマーの可燃性テスト、(d)FRPC電解質膜の可燃性テストを示した図である。
図51】ガーネットファイバの相構造および固体FRPC電解質の電気的特性であって、(a)ガーネットナノ粒子のXRDパターン、(b)異なる温度(25℃、40℃、および90℃)におけるFRPC電解質膜のEISプロファイル、(c)高温でのFRPC電解質膜のアレニウスプロット(20℃~90℃および10℃上昇ごとに記録)、(d)0~6Vの範囲の電気化学的安定性窓を示すFRPC電解質膜のLSV曲線を示した図である。
図52】Li|FRPC電解質|Li対称セルにおいて測定したFRPC電解質膜の電気化学的性能であって、(a)リチウムプレーティング/ストリッピング実験の対称セルの模式図、(b)15℃での電流密度が0.2mA/cmのリチウムプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイル、(c)25℃での電流密度が0.2mA/cmの続きのリチウムプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイル、(d)異なるサイクル時間(300時間、500時間、および700時間)で測定された対称セルのインピーダンススペクトル、(e)高周波領域における拡大EISスペクトル、(f)25℃での電流密度が0.5mA/cmの続きのリチウムプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイルを示した図である。
図53】平均粒径が直径20nmのガーネットナノファイバの拡大TEM画像を示した図である。
図54】テスト温度が25℃まで上昇し、図6cに示すように、高温でのイオン伝導性の改善によって電圧が0.3Vまで降下した場合を示した図である(後続の長期サイクルにおいては、サイクル時間が700時間まで経過するにつれて、電圧が0.2Vまで低下し続けた。電圧の変動は、周囲環境の温度変化が原因であった)。
図55】2つの異なるストリッピング/プレーティングプロセス時間における対称セルの2つの電圧プロファイルを比較した図である。
図56】本開示の電池の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特許請求の範囲に係る主題は、特定の実施形態に関して説明するが、本明細書に記載の利益および特徴をすべてもたらすわけではない実施形態を含む他の実施形態についても、本開示の範囲内である。本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな構造的、論理的、プロセスステップ的、および電子的変更が可能である。
【0020】
本明細書に示すすべての範囲は、別段の指定のない限り、小数第10位までの範囲内のすべての値を含む。
【0021】
本開示は、固体ハイブリッド電解質を提供する。また、本開示は、固体ハイブリッド電解質の作製方法およびその使用を提供する。
【0022】
一態様において、本開示は、固体ハイブリッド電解質を提供する。固体ハイブリッド電解質は、固体電解質(SSE)の外面の少なくとも一部または全部に配設されたポリマー材料の層を有する。種々例において、固体ハイブリッド電解質は、ポリマー材料/固体ハイブリッド電解質、ポリマー/固体ハイブリッド電解質、またはゲルポリマー/固体ハイブリッド電解質である。種々例において、SSEは、モノリシックもしくはメソ多孔質SSE体または複数のファイバもしくは複数のストランドを含むSSEである。
【0023】
種々例において、本開示は、たとえば異なる方法で形成され、たとえば望ましいイオン伝導性を有する固体ハイブリッド電解質およびこのような電解質と電極との間の安定的で良好に接続された界面を実現するポリマー層(たとえば、ポリマー膜)等の非限定的な層を備えた固体ハイブリッド電解質を提供する。本開示の固体ハイブリッド電解質は、たとえば電解質/リチウムイオンカソード界面において、248Ω×cm以下の界面抵抗を示し、電解質/リチウム金属アノード界面において、214Ω×cm以下の界面抵抗を示し得る。この層は、ゲルポリマー(ポリマーの内側に液体電解質を格納)、乾燥ポリマー(ポリマーの内側に液体がなく、たとえばポリマー内に伝導性Liイオンが塩とともに存在する)、または多種の伝導性薄膜で作製可能である。ポリマー界面を有する固体電解質は、たとえば炭素またはLi金属アノードおよびLi金属酸化物、硫黄、または空気とともに構築して、固体Li電池を作製可能である。本開示は、固体電解質と電極との間の界面抵抗の課題に対処するものであり、これによって、固体イオン伝導性(たとえば、リチウムイオン伝導性)電池のさらなる開発が促進される。
【0024】
種々例において、本開示は、可撓性無機SSEを備えた固体ハイブリッド電解質を提供する。可撓性無機SSEとしては、望ましい安全性を示す次世代のイオン伝導性電池(たとえば、Li金属電池)を可能にすると予想される低コストで薄い可撓性のイオン伝導性膜が可能である。たとえば、イオン伝導性3DネットワークのLiイオン導電性ポリマー等との浸潤によって、可撓性のイオン伝導性SSE膜を作製する。模式的な一例を図47に示す。種々例においては、3Dイオン伝導性ネットワークの生成に酸化物SSE材料が用いられており、LLZOガーネット、LLTOペロブスカイト、およびLATPガラス
が挙げられるが、これらに限定されない。3D構造は、たとえば長距離イオン移動経路および構造的補強の提供によって、ポリマーマトリクスを増強可能である。この膜は、高電圧(たとえば、6V超)に対する望ましい電気化学的安定性、高イオン伝導度(たとえば、10-4Scm-1超)、およびたとえばリチウムデンドライトを効果的に阻止するための高機械的安定性を示し得る。
【0025】
固体ハイブリッド電解質は、無機SSE(たとえば、無機(たとえば、セラミック)モノリシックもしくはメソ多孔質構造のSSE体または複数の無機ファイバもしくは複数の無機ストランドを含むSSE(F/S SSE))と、SSEの外面の少なくとも一部または全部に配設されたポリマー材料とを含んでいてもよい。
【0026】
無機SSE(たとえば、F/S SSEの無機SSE)は、1つまたは複数のノードが少なくとも2つのファイバまたはストランドにより形成された3次元ネットワーク構造を有していてもよい。無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)は、当該無機固体電解質の一方側から当該無機固体電解質の反対側まで連続したイオン伝導経路を有する。イオンSSEの3Dイオン伝導性ネットワークが補強として機能し、イオン伝導性(たとえば、リチウムイオン伝導性)ポリマーがマトリクスとして機能し得る。3Dネットワークは、電解質膜において連続したイオン伝導性経路を提供する。ストランドまたはファイバにより形成された固体ハイブリッド電解質の場合、無機固体材料は、固体ハイブリッド電解質の1つまたは複数の表面上に露出していてもよい。複数のストランドにより形成された固体ハイブリッド電解質の場合、無機SSEは、連続的かつ任意選択として整列したメソ多孔質構造であってもよい。
【0027】
固体ハイブリッド電解質の種々例においては、ポリマー材料が無機ファイバまたはテンプレーティング無機ストランドの空隙の少なくとも一部または全部を満たす。ポリマー材料がテンプレーティング無機固体電解質の空隙の一部を満たす固体ハイブリッド電解質の場合は、テンプレーティング無機固体電解質の外面に開口した空隙の少なくとも一部がカソード材料および/またはアノード材料で満たされて、一体化されたカソードおよび/または電極を構成していてもよい。
【0028】
無機SSEは、さまざまな無機材料により形成可能である。無機材料は、セラミック材料であってもよい。無機材料は、イオン伝導性(たとえば、リチウムイオン伝導性、ナトリウムイオン伝導性、マグネシウムイオン伝導性等)の材料である。無機SSEは、イオン伝導性電解質であってもよい。好適な無機材料の例が当技術分野において知られている。無機材料の非限定的な例としては、リチウムイオン伝導性無機材料、ナトリウムイオン伝導性無機材料、マグネシウムイオン伝導性無機材料等が挙げられる。当技術分野において知られている如何なる無機SSE電解質材料も使用可能である。無機SSE電解質材料を作製する方法が当技術分野において知られている。
【0029】
無機材料は、さまざまな構造(たとえば、2次構造)を有し得る。種々例において、無機材料は、アモルファス、結晶(たとえば、単結晶および多結晶)であるか、あるいは、さまざまなアモルファスおよび/または結晶性ドメインを有する。
【0030】
無機材料は、リチウム伝導性無機(たとえば、セラミック)材料であってもよい。リチウム伝導性無機材料は、リチウム含有材料であってもよい。
【0031】
リチウムイオン伝導性SSE材料の非限定的な例としては、リチウムペロブスカイト材料、LiN、Li-β-アルミナ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)、Li2.88PO3.860.14(LiPON)、LiAlSiO、Li10GeP12、リチウムガーネットSSE材料、ドープリチウムガーネットSSE材料、リチ
ウムガーネット複合材料等が挙げられる。種々例において、リチウムガーネットSSE材料は、カチオンドープLiLa 12(ただし、MはNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)、カチオンドープLiLaBaTa12、カチオンドープLiLaZr12、およびカチオンドープLiBaY 12であり、カチオンドーパントが、バリウム、イットリウム、亜鉛、またはこれらの組み合わせ等である。他の種々例において、リチウムガーネットSSE材料は、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512、Li6.75BaLaTa1.75Zn0.2512等である。
【0032】
無機材料は、ナトリウムイオン伝導性無機(たとえば、セラミック)材料であってもよい。ナトリウムイオン伝導性無機材料は、ナトリウム含有材料であってもよい。たとえば、ナトリウムイオン伝導性無機材料は、β”-Al、NaZrSiPO12(NASICON)、カチオンドープNASICON等である。
【0033】
無機材料は、マグネシウムイオン伝導性無機(たとえば、セラミック)材料であってもよい。マグネシウムイオン伝導性無機材料は、マグネシウム含有材料であってもよい。種々例において、マグネシウムイオン伝導性無機材料は、ドープマグネシウム酸化物材料から選択される。種々例において、マグネシウムイオン含有材料は、Mg1+x(Al,Ti)(PO(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料等である。
【0034】
モノリシックSSEまたはメソ多孔質SSE体は、さまざまなサイズ(すなわち、寸法)および/または形状を有し得る。好適なモノリシックSSEまたはメソ多孔質SSE体が当技術分野において知られている。モノリシックSSE体は、(たとえば、無機材料の高密度層のみを含む)高密度体であってもよいし、高密度焼結体であってもよい。
【0035】
メソ多孔質SSEの非限定的な例としては、多孔質(たとえば、メソ多孔質)材料の外部層を含む平面状SSE構造(たとえば、高密度層および少なくとも1つの多孔質(たとえば、メソ多孔質)層を含む多層SSE構造)を含む。多層SSE構造の非限定的な例としては、(高密度層上に配設された多孔質層を含む)二層構造および(高密度層の両側に配設された2つの多孔質層を含む)三層構造が挙げられ、当技術分野において知られている。多層構造の例は、2014年3月21日に出願され、2014年9月25日に米国特許出願公開第2014/0287305号として公開された米国特許出願第14/222,306号(発明の名称「Ion Conducting Batteries with Solid State Electrolyte Materials」)および2016年11月30日に出願され、2017年6月1日に米国特許出願公開第2017/0155169号として公開された米国特許出願第15/364,528号(発明の名称「Ceramic Ion Conducting Structures and Methods of Fabricating Same, and Uses of
Same」)に記載されており、それぞれの開示内容を本明細書に援用する。
【0036】
F/S SSEは、さまざまなサイズ(すなわち、寸法)および/または形状のファイバまたはストランドを含み得る。種々例において、ファイバまたはストランドは、円筒状または実質的に円筒状、多面体形状または実質的に多面体形状、不規則形状等である。ファイバまたはストランドは、使用する機器の1つまたは複数の寸法の倍数に対応する長さを有し得る。種々例において、ファイバまたはストランドは、1ミクロン~20メートル
の長さ(両者間のすべての整数ミクロン値および範囲を含む)および/または1nm~10ミクロンの最大断面寸法(たとえば、直径)(両者間のすべての整数nm値および範囲を含む)を有する。一例において、F/S SSEは、10以上の最大断面寸法(たとえば、直径)までの長さのファイバまたはストランドを含む。
【0037】
F/S SSEのファイバまたはストランドは、可撓性で、たとえば電池等の可撓性機器に使用する可撓性固体ハイブリッド電解質を提供し得る。F/S SSEおよびポリマー材料は、電解質を形成していてもよい。F/S SSEは、本明細書に記載の方法により作製可能である。
【0038】
さまざまなポリマー材料を使用可能である。2つ以上のポリマー材料(たとえば、2つ以上のポリマー)の混合物を使用可能である。ポリマー材料は、伝導性(たとえば、イオン伝導性および/または電子伝導性)、非伝導性、またはこれらの組み合わせとすることができる。ポリマー材料は、乾燥ポリマーまたはゲルであってもよい。
【0039】
モノリシックSSEまたはメソ多孔質体の場合は、ポリマー材料が伝導性(たとえば、イオン伝導性および/または電子伝導性)であるのが望ましいことがある。複数のファイバまたはストランドを含む無機SSEの場合は、複数のポリマー材料の混合物とすることができるポリマー材料がSSEに対して機械的強度を与えるのが望ましいことがある。
【0040】
モノリシックSSEまたはメソ多孔質SSE体を有する固体ハイブリッド電解質の場合は、ポリマー材料の薄層(たとえば、厚さが5nm~10ミクロン(両者間のすべての整数nm値および範囲を含む))を有するのが望ましい。
【0041】
ポリマー材料は、SSE(たとえば、無機SSE)の表面の少なくとも一部または全部に配設可能である。高密度SSE材料の場合、ポリマー材料は、少なくとも一部(たとえば、電極(たとえば、カソードおよび/またはアノード)が配設されるSSE材料の部分)に配設された層(たとえば、コンフォーマル層)である。多孔質SSE(モノリシックSSEもしくはメソ多孔質SSE体または複数のファイバまたはストランドを含むSSEの外部(たとえば、層)であってもよい)の場合、ポリマー材料は、細孔表面、非細孔表面、または両者に配設される。電極(たとえば、カソードおよび/またはアノード)が配設される多孔質SSE材料の部分にポリマー材料が配設されるのが望ましいことがある。一例において、ポリマー材料は、固体ハイブリッド電解質の1体積百分率以上、5体積百分率以上、10体積百分率以上、20体積百分率以上、30体積百分率以上、40体積百分率以上、50体積百分率以上、または60体積百分率以上で存在する。
【0042】
モノリシックSSEまたはメソ多孔質体を備えた固体ハイブリッド電解質の場合、ポリマー材料としては、層が可能である。この層は、当技術分野において知られているさまざまな方法により形成可能である。たとえば、ディップコート、スラリーキャスト、スプレーコート、またはスピンコート等によってポリマー材料層が形成される。
【0043】
F/S SSEを備えた固体ハイブリッド電解質の場合、ポリマー材料は、SSEの個々のファイバまたはストランドにより形成された空隙に配設される。空隙は、テンプレートの使用の結果としての細孔であってもよい。ポリマー材料は、当技術分野において知られている方法によって、F/S SSEに組み込まれていてもよい。たとえば、ポリマー材料は、F/S SSEの空隙(たとえば、細孔)に対して浸潤またはその場合成される。
【0044】
さまざまなポリマー材料を使用可能である。ポリマー材料は、1つまたは複数のポリマー、1つまたは複数の共重合体、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。ポリマ
ーおよび/または共重合体の分子量は、特に制限されない。たとえば、機器(たとえば、固体イオン伝導性電池)の性能(たとえば、イオン伝導性)要件に応じて、ポリマーおよび/または共重合体が広範な分子量を有し得る。ポリマーおよび/または共重合体が導電性であるのが望ましいことがある。ポリマー材料は、導電性ポリマーおよび/もしくは共重合体ならびに非導電性ポリマーおよび/もしくは共重合体の混合物を含んでいてもよい。
【0045】
ポリマーおよび/または共重合体は、さまざまな構造(たとえば、2次構造)を有し得る。種々例において、ポリマーおよび/または共重合体は、アモルファス、結晶、またはこれらの組み合わせである。ポリマーおよび/または共重合体は、結晶性が低いことが望ましいことがある。
【0046】
ポリマー材料としては、ポリマーおよび共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーおよび共重合体は、導電性であってもよいし、非導電性であってもよい。ポリマーおよび共重合体の非限定的な例としては、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ[ビス(メトキシエトキシエトキシド)-ホスファゼン]、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ二フッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレン、スルホン酸塩(PSS)、ポリ塩化ビニル(PVC)群、ポリ(塩化ビニリデン)ポリプロピレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(たとえば、テフロン(Teflon)(登録商標))、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリイミド、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、PEO含有共重合体(たとえば、ポリスチレン(PS)-PEO共重合体およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEO共重合体)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体)、PVdF含有共重合体(たとえば、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP共重合体))、PMMA共重合体(たとえば、ポリ(メチルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体))が挙げられる。これらの非限定的な例には、ポリマーおよび共重合体の誘導体も含む。種々例において、ポリマー材料は、2つ以上のこれらポリマーの組み合わせである。
【0047】
ポリマー材料は、ゲルであってもよい。ゲルは、ポリマー材料(たとえば、1つもしくは複数のポリマーならびに/または1つもしくは複数の共重合体)ならびに液体を含む。また、液体の組み合わせを使用可能である。種々例において、液体は、有機液体(たとえば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメトキシエタン(DME)、ジオキソラン(DOL)等)またはイオン液体(たとえば、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)等)である。
【0048】
液体は、液体電解質であってもよい。液体電解質は、金属塩(たとえば、1つまたは複数のリチウム塩、1つまたは複数のナトリウム塩、1つまたは複数のマグネシウム塩等)を含んでいてもよい。液体電解質の非限定的な一例は、水性液体電解質である。液体電解質の非限定的な例としては、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)中のLiPF(たとえば、1M)、ジメトキシエタン(DME)/ジオキソラン(DOL)中のLiTFSI(たとえば、1M)、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)イオン液体中のLiTFSI(たとえば、0.5M)等が挙げられる。
【0049】
ポリマー材料は、フィラーを含んでいてもよい。一例において、ポリマー材料は、1つ
または複数のセラミックフィラー(たとえば、ポリマー材料の総重量に基づいて、2~25wt%のセラミックフィラー)を含む。セラミックフィラーの非限定的な例としては、導電性粒子、非導電性粒子(たとえば、Al、SiO、TiOナノ粒子等)、セラミックナノ材料(たとえば、セラミックナノ粒子、セラミックナノファイバ等)が挙げられる。セラミックナノ材料は、本明細書に開示の無機材料の組成を有していてもよい。
【0050】
一態様において、本開示は、無機ファイバまたはストランドを作製する方法を提供する。ファイバまたはストランドは、無機SSEを形成し得る。種々例において、これらの方法は、テンプレーティング法またはエレクトロスピニング法である。
【0051】
ストランドは、テンプレーティング法により形成可能である。テンプレートは、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を形成可能な無機材料のストランドの形成に使用し得る連続空隙を備える。空隙は、人工的に設計されたものでもよいし、生物材料(たとえば、木材、植物等)において自然に発生したものであってもよい。
【0052】
テンプレーティング法は、必要な構造を生成する簡単ながら効果的な方法を提供する。繊維テンプレートを1つまたは複数の無機SSE材料前駆体に接触(たとえば、浸漬)させた後、任意選択としての加熱ステップにおいて前駆体を反応させるとともに、熱処理(たとえば、熱分解)において有機成分を取り除く。得られる繊維状無機材料は、可撓性または剛性の電池構成への統合を可能にする望ましい特性を示し得る。たとえば、無機材料のストランドまたはファイバネットワークによって、ポリマー材料内にリチウムイオン移動経路が構築され、ポリマー材料の機械的強度が向上した。あるいは、無機材料(たとえば、セラミック)繊維は、噛み合わせまたは同心構成での電極材料との組み合わせによって、電解質体積を最小限に抑えるとともに、電極の利用を最大化するため、充電/放電時の活性電解質エリア、リチウムイオン界面移動、および電極体積変化耐性の増大が可能である。
【0053】
テンプレーティング法は、複数のストランドを含む多孔質(たとえば、ナノ多孔質および/またはマイクロ多孔質)無機SSEを提供する。ストランドは、個々のストランドの構成に用いられるテンプレートの大略形状(たとえば、円筒状または実質的に円筒状、多面体形状または実質的に多面体形状、不規則形状等)を有していてもよい。たとえば、ストランドは、マイクロメートルからメートルの範囲の長さおよび/またはナノメートルからマイクロメートルの範囲の最大断面寸法(たとえば、直径)を有する。
【0054】
無機SSE電解質の細孔(たとえば、細孔サイズ、細孔サイズ分布、細孔形態等)は、方法(たとえば、使用するテンプレーティングまたはエレクトロスピニング)に応じて変化し得る。テンプレーティング法の場合、細孔は、テンプレート材料の除去により形成されるようになっていてもよい(たとえば、テンプレーティング材料に対応するサイズおよび/または形状を有していてもよい)。エレクトロスピニングの場合、細孔は、ファイバにより形成された空隙によって形成されるようになっていてもよい。たとえば、テンプレーティング法により形成された無機SSEの場合は、細孔の少なくとも一部または全部が1~100ミクロンのうちの少なくとも1つの寸法を有する。たとえば、エレクトロスピニングにより形成された無機SSEの場合は、細孔の少なくとも一部または全部が1nm~500ミクロンのうちの少なくとも1つの寸法を有する。
【0055】
種々例において、固体ハイブリッド電解質の細孔、固体ハイブリッド電解質のストランド(たとえば、ストランドの一部または全部)(存在する場合)、および/または固体ハイブリッド電解質の細孔は、整列していてもよいし、実質的に整列していてもよい。「整列」は、各ストランドの長手方向軸が隣接ストランドの長手方向軸に対して平行、平行の
30°未満、20°未満、15°未満、10°未満、または5°未満となるように、無機SSEのストランドおよび/または細孔が整列することを意味する。一例において、ストランドおよび/または細孔は、端と端とを接続するようには配置されない。実質的な整列は、ストランドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70、80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%が整列することを意味する。
【0056】
説明のための一例として、生体材料テンプレート(たとえば、木材テンプレート、植物テンプレート等)により形成された固体ハイブリッド電解質が平面状の離散電極とともに電池に用いられている場合、個々のストランドは、電極の一方または両方により規定された平面と大略垂直(たとえば、垂直)に整列しており、細孔も、電極の一方または両方により規定された平面と大略垂直(たとえば、垂直)に整列している。
【0057】
種々例において、無機SSEのストランド(たとえば、ストランドの一部または全部)は、生地(たとえば、織編生地、編組生地等)として配置される。無機SSEのストランドは、無機SSEの作製に用いられる繊維テンプレートの一般的構造を取っていてもよい。無機SSEの寸法は、繊維テンプレートの寸法より実質的に小さくてもよい。
【0058】
説明のための一例として、炭素テンプレート(たとえば、繊維テンプレート等)により形成された固体ハイブリッド電解質が平面状の離散電極とともに電池に用いられている場合、無機SSEの個々のストランドは、電極の一方または両方により規定された平面と大略平行(たとえば、平行)に整列しており、無機SSEの細孔は、電極の一方または両方により規定された平面と垂直に整列している。
【0059】
種々例において、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を構成するテンプレーティング法は、
テンプレートを1つまたは複数のSSE材料前駆体と接触させることと、
任意選択として、SSE材料前駆体を反応させて、(たとえば、少なくとも一部または全部が反応および/または分解したSSE材料前駆体を含む)固体無機材料を形成することと、
テンプレートを固体無機材料で熱処理することであり、テンプレートが(たとえば、二酸化炭素として)除去され、無機SSE(たとえば、モノリシックSSEまたはメソ多孔質体もしくはF/S SSE)が形成される、ことと、
焼成テンプレートをポリマー材料と接触させて、モノリシックSSEまたはメソ多孔質体の場合に、無機SSE材料上に層を形成する(および任意選択として、無機SSE材料の表面上に露出した細孔の少なくとも一部または全部を満たす)か、または、F/S SSEの場合に、ポリマー材料がF/S SSEの細孔(たとえば、テンプレートに対応する細孔)の少なくとも一部または全部を満たす、ことと、
を含む。
【0060】
種々例において、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を形成するテンプレーティング法は、
生体材料テンプレートを1つまたは複数のSSE材料前駆体(たとえば、1つまたは複数の無機SSE材料ゾルゲル前駆体)と接触(たとえば、浸潤)させることであり、生体材料テンプレート(たとえば、圧縮生体材料テンプレート)の整列チャネルのうちの1つ、複数、または全部が、SSE材料前駆体で少なくとも部分的または完全に満たされる、ことと、
任意選択として、(たとえば、加熱により)SSE材料前駆体充填テンプレートを反応させて、(たとえば、少なくとも一部または全部が反応および/または分解した無機SSE材料ゾルゲル前駆体を含む)固体無機材料を形成することと、
加熱したテンプレートを熱処理することであり、テンプレート材料の実質的にすべてま
たはすべてが除去され、無機SSE材料が形成される、ことと、
焼成テンプレートをポリマー材料と接触させることであり、ポリマー材料が無機SSEのナノ細孔および/またはマイクロ細孔を少なくとも部分的に満たす、ことと、
を含む。
【0061】
種々例において、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を構成するテンプレーティング法は、
炭素テンプレートを1つまたは複数の無機SSE材料前駆体(たとえば、1つまたは複数の金属塩)と接触させることと、
任意選択として、(たとえば、加熱により)炭素テンプレート接触炭素テンプレートを反応させて、固体無機材料(たとえば、無機材料の複数のナノ粒子)を形成することと、
テンプレートを熱処理することであり、テンプレート材料の実質的にすべてまたはすべてが除去され、無機SSE材料が形成される、ことと、
無機SSEをポリマー材料と接触(たとえば、浸潤)させることであり、ポリマー材料がテンプレートのナノ細孔および/またはマイクロ細孔を少なくとも部分的に満たす、ことと、
を含む。
【0062】
さまざまなテンプレートを使用可能である。テンプレートは、ポリマー(たとえば、生物学的に誘導されたポリマー(たとえば、セルロース、タンパク繊維等)、人工ポリマー(たとえば、PET、たとえばナイロン等のポリアミド、たとえばレーヨン等の再生セルロース、ポリエステル等))により形成される。テンプレートは、相互接続されたナノスケールおよび/またはマイクロスケールのボイドを含む階層型相互接続構造を有していてもよい。たとえば、テンプレートは、低ねじれテンプレート(たとえば、木材テンプレートにより形成された低ねじれテンプレート)である。テンプレートとしては、生物材料(たとえば、木材、植物等)または人工テンプレートが可能であり、これらは、たとえばテープキャスト、スクリーン印刷、押し出し、3D印刷、製織、編組、非織編法等の方法により形成可能である。これらの方法においては、テンプレートのすべてまたは実質的にすべてが除去される(すなわち、犠牲テンプレートである)。たとえば、テンプレートは、熱処理により除去される。
【0063】
さまざまな炭素テンプレートを使用可能である。炭素テンプレートの例としては、繊維テンプレート、紙テンプレート、発泡体テンプレート等が挙げられるが、これらに限定されない。炭素テンプレートは、繊維であってもよい。種々例において、繊維は、生地である。生地は、さまざまな織込、編組等を含んでいてもよいし、非織編であってもよい。織編生地の場合、当該織編生地は、如何なる織込パターンのものであってもよい。
【0064】
さまざまな生体材料テンプレートを使用可能である。生体材料テンプレートは、木材テンプレート、植物テンプレート等であってもよい。
【0065】
さまざまな木材および植物テンプレートを使用可能である。木材または植物テンプレートは、複数のナノチャネルおよび/またはマイクロチャネルを含む。複数のナノチャネルおよび/またはマイクロチャネルは、相互接続されて、少なくとも1つのノードを有する3次元ネットワークを形成する。木材テンプレートは、圧縮木材テンプレートであってもよい。通常、木材テンプレートは、F/S SSEの形成に適当なサイズおよび形状の木材からリグニンの少なくとも一部または全部を除去することにより形成される。リグニンの除去によって、複数の整列チャネル(たとえば、1nm~10ミクロン(両者間のすべての整数nm値および範囲を含む)の断面サイズ(たとえば、直径等の最長寸法)を有するチャネル)を備えたテンプレート(たとえば、整列した多孔質ナノ構造を備えたテンプレート)が形成される。カン中でテンプレートを圧縮することによって、ナノチャネルお
よび/またはマイクロチャネルの断面を小さくすることができる。リグニンは、化学的処理により除去可能である。好適な処理が当技術分野において知られている。たとえば、リグニンは、木材サンプルを塩基水溶液と接触させることにより除去される。木材テンプレートは、たとえばアメリカボダイ樹、バルサ材等のさまざまな木材により形成可能である。
【0066】
無機SSEのファイバは、エレクトロスピニングにより形成可能である。好適なエレクトロスピニング法が当技術分野において知られている。エレクトロスピニングは、当技術分野において知られている方法により実行可能である。
【0067】
無機SSE材料前駆体は、反応(たとえば、少なくとも部分的または全体的な反応および/または熱的な劣化)によって、たとえば前駆体のうちの1つまたは複数の固体無機材料(たとえば、炭素ベースの残留物等の残留物を含み得る)を形成するようにしてもよい。無機材料は、熱処理によって、無機SSE材料を提供するようにしてもよい。
【0068】
種々例において、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を形成するエレクトロスピニング法は、
エレクトロスピニングポリマーおよび1つまたは複数の無機SSE前駆体材料を含む前駆体溶液をエレクトロスピニングして、当該ポリマーおよび1つまたは複数の無機SSE前駆体材料を含むナノファイバを用意することと、
ナノファイバを熱処理することであり、ナノファイバのポリマーのすべてまたは実質的にすべてが除去され、無機SSE材料が形成される、ことと、
無機SSEをポリマー材料と接触させることであり、ポリマー材料が無機SSE材料の空隙を少なくとも部分的に満たす、ことと、
を含む。
【0069】
さまざまなエレクトロスピニングポリマーを使用可能である。好適なエレクトロスピニングポリマーが当技術分野において知られている。エレクトロスピニングポリマーの非限定的な例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、またはポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0070】
さまざまな無機SSE前駆体材料を使用可能である。無機SSE前駆体材料の非限定的な例としては、ゾルゲル前駆体、金属塩等が挙げられる。SSE材料前駆体は、反応(たとえば、加熱)に際して、所望の組成の無機SSEを提供する1つもしくは複数のゾルゲル前駆体または1つもしくは複数の金属塩であってもよい。好適なゾルゲル前駆体およびゾルゲル前駆体の組み合わせの例が当技術分野において知られている。好適な金属塩および金属塩の組み合わせの例が当技術分野において知られている。種々例において、熱処理には、無機SSE材料前駆体または反応した(たとえば、少なくとも一部または全部が反応した)無機SSE材料前駆体の焼結および/または焼成を含む。
【0071】
熱処理によって、テンプレート材料が除去(たとえば、熱分解)される。熱処理によって、テンプレートの少なくとも一部(たとえば、実質的に)または全部が除去されて、無機SSEが提供される。種々例において、熱処理は、空気雰囲気または酸素を含む雰囲気において700~1000℃で実行される。
【0072】
一態様において、本開示は、本開示の固体ハイブリッド電解質の使用を提供する。固体ハイブリッド電解質は、さまざまな機器において使用可能である。種々例において、機器は、本開示の1つまたは複数の固体ハイブリッド電解質を備える。機器の例としては、電解槽、電解セル、燃料電池、電池、および他の電気化学的機器(たとえば、センサ等)が
挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
機器は、電池であってもよい。電池は、イオン伝導性電池であってもよい。電池は、携帯用途、輸送用途、固定エネルギー貯蔵用途等の用途向けに構成されていてもよい。イオン伝導性電池の例としては、リチウムイオン伝導性電池、ナトリウムイオン伝導性電池、マグネシウムイオン伝導性電池等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
種々例において、電池(たとえば、固体イオン伝導性電池等のイオン伝導性電池)は、本開示の固体ハイブリッド電解質、アノード、およびカソードを備え、固体ハイブリッド電解質がアノードとカソードとの間に配設されている。一例において、固体ハイブリッド電解質のポリマー材料は、固体ハイブリッド電解質の無機SSE材料とアノードおよび/またはカソードとの間に配設されている。
【0075】
無機SSE材料は、従来のイオン伝導性電池に使用可能である(たとえば、イオン伝導性電池は、基本電解質としての電解質を含む)。従来のイオン伝導性電池は、非伝導性(たとえば、非イオン伝導性)のセパレータを備える。このため、一例において、電池は、本明細書に開示の無機SSE材料(たとえば、F/S SSEであって、テンプレーティング無機SSEもしくはエレクトロスピニング無機SSEであってもよい)または本明細書に開示の固体ハイブリッド電極(たとえば、F/S SSE)、および電解質を備える。電解質は、当技術分野において知られている従来のイオン伝導性(たとえば、リチウムイオン伝導性)電池に用いられる如何なる電解質であってもよい。従来の電池の電解質の非限定的な例としては、たとえば有機液体、ゲル、ポリマー等の液体が挙げられる。種々例において、液体電解質は、固体ハイブリッド電解質の一部(たとえば、固体ハイブリッド電解質のゲルポリマー等のポリマー材料の一部)ではない。この場合、無機SSE材料または固体ハイブリッド電極は、従来の電池のセパレータである。種々例において、無機SSE材料または固体ハイブリッド電極は、従来の電池のセパレータを置き換える。従来の電池に用いられる通常のセパレートと異なり、無機SSE材料または固体ハイブリッド電極はいずれも、カソードおよびアノードを分離するとともに、イオン伝導性である。種々例において、無機SSE材料または固体ハイブリッド電極は、従来の電池のイオン伝導性セパレータである。さまざまな電極(たとえば、カソードおよびアノード)を使用可能である。個々の電極(たとえば、カソードおよび/またはアノード)は、固体ハイブリッド電解質からの独立(たとえば、分離)も可能であるし(たとえば、平面状電極)、固体ハイブリッド電解質との一体化も可能である。一体化電極の場合、固体ハイブリッド電解質(たとえば、モノリシックSSEまたはメソ多孔質SSE体)は、当該固体ハイブリッド電解質の表面に露出した1つまたは複数の多孔質領域を有し、固体ハイブリッド電解質の離散多孔質領域の細孔に配設された電極材料(たとえば、カソード材料および/またはアノード材料)により電極が形成される。
【0076】
カソードおよびアノードは、さまざまな材料(たとえば、それぞれカソード材料またはアノード材料)により形成可能である。好適なカソード材料およびアノード材料の例が当技術分野において知られている。
【0077】
カソードは、固体ハイブリッド電解質と電気的に接触した1つまたは複数のカソード材料を含む。さまざまなカソード材料を使用可能である。カソード材料の組み合わせが用いられるようになっていてもよい。たとえば、カソード材料は、インターカレーション等のメカニズムによりイオンを格納するイオン伝導性材料またはイオンと反応して2次相(たとえば、空気または硫化物電極)を形成するイオン伝導性材料である。好適なカソード材料の例が当技術分野において知られている。
【0078】
一体化カソードの場合、カソード材料は、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域の表面
(たとえば、細孔のうちの1つの細孔表面)の少なくとも一部に配設される。カソード材料は、イオン伝導性固体電解質材料の多孔質領域または複数の多孔質領域のうちの1つの1つまたは複数の細孔(たとえば、細孔の大部分)を少なくとも部分的に満たしていてもよい。一例において、カソード材料は、イオン伝導性固体電解質材料の多孔質領域の細孔の少なくとも一部に浸潤している。
【0079】
一例において、カソード材料は、多孔質SSE材料の多孔質領域のカソード側の細孔表面の少なくとも一部に配設され、SSE材料の多孔質領域のカソード側は、アノード材料が配設される多孔質SSE材料の多孔質領域のアノード側と対向する。
【0080】
種々例において、カソードは、導電性炭素材料を含む。炭素材料の非限定的な例としては、グラファイト、硬質炭素、多孔質中空カーボン球およびチューブ等が挙げられる。カソード材料は、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含んでいてもよい。好適な有機またはゲルイオン伝導性電解質が当技術分野において知られている。
【0081】
イオン伝導性カソード材料の一部として、導電性材料を使用するのが望ましいことがある。また、一例において、イオン伝導性カソード材料は、導電性炭素材料(たとえば、グラフェンまたはカーボンブラック)を含み、任意選択として、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含む。導電性材料は、イオン伝導性カソード材料と別個であってもよい。たとえば、導電性材料(たとえば、グラフェン、カーボンナノチューブ等)は、イオン伝導性SSE電解質材料の多孔質領域の表面(たとえば、細孔表面)の少なくとも一部に配設され、イオン伝導性カソード材料は、導電性材料(たとえば、グラフェン、カーボンナノチューブ等)の少なくとも一部に配設される。
【0082】
他の種々例において、カソードは、硫黄含有材料を含む。一例において、カソード材料は、有機硫化物または多硫化物である。有機硫化物の例としては、カルビンポリスルフィドおよび共重合硫黄が挙げられる。硫黄含有材料の非限定的な例としては、硫黄、硫黄複合材料(たとえば、カルビンポリスルフィド、共重合硫黄等)、および多硫化物材料等が挙げられる。
【0083】
一例において、カソードは、空気電極である。空気電極に適した材料の例としては、たとえば大表面積の炭素粒子(たとえば、導電性カーボンブラックであるSuper P)およびメッシュ(たとえば、PVDFバインダ等のポリマーバインダ)に結合された触媒粒子(たとえば、α-MnOナノロッド)等、空気カソードを備えたリチウムイオン電池等のイオン伝導性電池に用いられる材料が挙げられる。
【0084】
カソード材料は、リチウムイオン伝導性材料であってもよい。リチウムイオン伝導性カソード材料の非限定的な例としては、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(たとえば、NMC、LiNiMnCo(ただし、x+y+z=1であり、たとえばLi(NiMnCo)1/3等))、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、リチウムマンガン酸化物(LMO)(たとえば、LiMnおよびLiNi0.5Mn1.5)、リチウムリン酸鉄(LFP)(たとえば、LiFePO)、LiMnPO、LiCoPO、およびLiMMn(ただし、MはFe、Co等から選択される)が挙げられる。
【0085】
カソード材料は、ナトリウムイオン伝導性材料であってもよい。ナトリウムイオン伝導性カソード材料の非限定的な例としては、Na、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2、Na(PO、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2@グラフェン複合材等の複合材料(たとえば、カーボンブラックを含む複合材)が挙げられる。
【0086】
カソード材料は、マグネシウムイオン伝導性材料であってもよい。マグネシウムイオン伝導性カソード材料の非限定的な例としては、ドープマンガン酸化物(たとえば、MgMnOO)、Mg1+x(Al,Ti)(PO(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料等が挙げられる。
【0087】
アノードは、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域と電気的に接触した1つまたは複数のアノード材料を含む。たとえば、アノード材料は、固体電解質中を伝導するイオンの金属形態(たとえば、リチウムイオン電池の金属リチウム)または伝導イオンを挿入する化合物(たとえば、リチウムイオン電池の炭化リチウム、LiC)である。好適なアノード材料の例が当技術分野において知られている。
【0088】
一体化アノードの場合、アノード材料は、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域の表面(たとえば、細孔のうちの1つの細孔表面)の少なくとも一部に配設される。アノード材料は、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域の1つまたは複数の細孔(たとえば、細孔の大部分)を少なくとも部分的に満たしていてもよい。一例において、アノード材料は、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域の細孔の少なくとも一部に浸潤している。
【0089】
一例において、アノード材料は、固体ハイブリッド電解質のアノード側多孔質領域の細孔表面の少なくとも一部に配設され、固体ハイブリッド電解質のアノード側は、カソード材料が配設される固体ハイブリッド電解質のカソード側と対向する。
【0090】
種々例において、アノードは、導電性炭素材料を含む(または、導電性炭素材料から成る)。炭素材料の非限定的な例としては、グラファイト、硬質炭素、多孔質中空カーボン球およびチューブ等が挙げられる。アノード材料は、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含んでいてもよい。好適な有機またはゲルイオン伝導性電解質が当技術分野において知られている。
【0091】
アノード材料は、導電性材料であってもよい。導電性材料の非限定的な例としては、導電性炭素材料、スズおよびその合金、スズ/炭素、スズ/コバルト合金、シリコン/炭素材料等が挙げられる。導電性炭素材料の非限定的な例としては、グラファイト、硬質炭素、多孔質中空カーボン球およびチューブ(たとえば、カーボンナノチューブ)等が挙げられる。
【0092】
アノードは、金属であってもよい。金属の非限定的な例としては、リチウム金属、ナトリウム金属、マグネシウム金属等が挙げられる。
【0093】
アノード材料は、リチウム含有材料であってもよい。リチウム含有材料の非限定的な例としては、リチウム金属、炭化リチウム、LiC、およびチタン酸リチウム(LTO)(たとえば、LiTi12等)が挙げられる。
【0094】
アノード材料は、ナトリウム含有材料であってもよい。アノード材料の非限定的な例としては、ナトリウム金属、NaおよびNa0.66Li0.22Ti0.78等のイオン伝導性ナトリウム含有アノード材料が挙げられる。
【0095】
アノード材料は、マグネシウム含有材料であってもよい。一例において、アノード材料は、マグネシウム金属である。
【0096】
電池は、集電体を備えていてもよい。たとえば、電池は、固体ハイブリッド電解質のカソード側に配設されたカソード側(第1)の集電体と、固体ハイブリッド電解質のアノー
ド側に配設されたアノード側(第2)の集電体とを備える。集電体はそれぞれ、金属(たとえば、アルミニウム、銅、もしくはチタン)または金属合金(アルミニウム合金、銅合金、もしくはチタン合金)で独立して作製される。
【0097】
電池は、種々付加的な構造要素(たとえば、バイポーラ板、外部パッケージ、ワイヤを接続する電気接点/リード等)を備えていてもよい。一例において、電池は、バイポーラ板をさらに備える。種々例において、電池は、バイポーラ板および外部パッケージ、ならびにワイヤを接続する電気接点/リードをさらに備える。一例において、繰り返しの電池セルユニットは、バイポーラ板により分離されている。
【0098】
固体ハイブリッド電解質、カソード、アノード、カソード側(第1)の集電体(存在する場合)、およびアノード側(第2)の集電体(存在する場合)がセルを形成していてもよい。電池は、1つまたは複数のバイポーラ板により分離された複数のセルを備えていてもよい。電池中のセルの数は、電池の性能要件(たとえば、電圧出力)によって決まり、作製上の制約事項による制限のみを受ける。たとえば、固体イオン伝導性電池は、1~500個のセル(両者間のすべての整数セル数および範囲を含む)を備える。
【0099】
本明細書に開示の種々実施形態および例に記載の方法のステップは、本開示の方法を実行するのに十分である。これにより、一例において、方法は本質的に、本明細書に開示の方法のステップの組み合わせから成る。別の例において、方法は、このようなステップから成る。
【0100】
以下のステートメントは、本開示の固体ハイブリッド電解質およびその使用の例を提供する。
ステートメント1.本明細書に開示の(または、本明細書に開示の無機SSE材料を含む)SSE(たとえば、無機(たとえば、セラミック)SSE)と、
固体電解質(たとえば、固体電解質材料)の外面の少なくとも一部または全部に配設された本明細書に開示のポリマー材料と、
を含む、ハイブリッド電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)。
ステートメント2.SSE材料が、本明細書に開示のモノリシック(たとえば、多孔質モノリシック、高密度モノリシック)SSE体またはメソ多孔質SSE体である、ステートメント1に記載のハイブリッド電解質(メソ多孔質SSE体材料の例としては、高密度SSE材料層上に配設された1つまたは複数の多孔質SSE材料層を含む二層および三層材料が挙げられる)。
ステートメント3.SSE材料が、ディスク、シート、または多面体である(たとえば、多面体形状を有する)、ステートメント1または2に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント4.ポリマー材料が、1つまたは複数の点において、10nm~10ミクロン(たとえば、5~10ミクロン)の厚さを有する、ステートメント1~3のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント5.SSEが、複数のファイバまたはストランド(たとえば、複数の非織編ストランドまたは複数の織編ストランド)を含む、ステートメント1~4のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント6.ファイバが、織編基板として存在する、ステートメント5に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント7.ファイバが、ランダムに配置または配列された、ステートメント5または6に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント8.ポリマー材料のファイバまたはストランドが、相互接続3Dネットワークを形成する、ステートメント5~7のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント9.SSE材料が、リチウムイオン伝導性(たとえば、リチウムイオン含有)SSE材料、ナトリウムイオン伝導性(たとえば、ナトリウムイオン含有)SSE
材料、またはマグネシウムイオン伝導性(たとえば、マグネシウムイオン含有)SSE材料を含む、ステートメント1~8のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント10.リチウムイオン伝導性SSE材料が、リチウムペロブスカイト材料、LiN、Li-β-アルミナ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)、Li2.88PO3.860.14(LiPON)、LiAlSiO、Li10GeP12、リチウムガーネット材料、ドープリチウムガーネット材料、リチウムガーネット複合材料、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、ステートメント9に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント11.リチウムガーネット材料が、カチオンドープLiLa 12(ただし、MはNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)、カチオンドープLiLaBaTa12、カチオンドープLiLaZr12、およびカチオンドープLiBaY 12(ただし、MはNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)であり、カチオンドーパントが、バリウム、イットリウム、亜鉛、またはこれらの組み合わせである、ステートメント10に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント12.リチウムガーネット材料が、LiLaNb12、LiLaTa12、LiLaZr12、LiLaSrNb12、LiLaBaNb12、LiLaSrTa12、LiLaBaTa12、LiZr12、Li6.4Zr1.4Ta0.612、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、LiBaY 12、LiZr12、Li6.75BaLaNb1.75Zn0.2512、Li6.75BaLaTa1.75Zn0.2512、およびこれらの組み合わせである、ステートメント10に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント13.ナトリウムイオン伝導性SSE材料が、β”-Al、NaZrSiPO12(NASICON)、カチオンドープNASICON、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、ステートメント9に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント14.マグネシウムイオン伝導性SSE材料が、Mg1+x(Al,Ti)(PO(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、ステートメント9に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント15.無機SSEが、当該無機SSEの外面に露出した細孔を有し、当該ハイブリッド電解質が、細孔の少なくとも一部に配設された少なくとも1つのカソード材料および/または少なくとも1つのアノード材料をさらに含み、少なくとも1つのカソード材料および少なくとも1つのアノード材料が細孔の少なくとも一部に配設される場合、少なくとも1つのカソード材料および少なくとも1つのアノード材料が、無機SSEの離散かつ電気的に分離された領域に配設される、ステートメント1~14のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント16.ポリマー材料が、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ[ビス(メトキシエトキシエトキシド)-ホスファゼン]、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ二フッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレン、スルホン酸塩(PSS)、ポリ塩化ビニル(PVC)群、ポリ(塩化ビニリデン)ポリプロピレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(たとえば、テフロン(登録商標))、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリイミド、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、PEO含有共重合体(たとえば、ポリスチレン(PS)-PEO共重合体およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEO共重合体)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体)、PVdF含有共重合体(たとえば、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプ
ロピレン共重合体(PVdF-HFP共重合体))、PMMA共重合体(たとえば、ポリ(メチルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体))、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む(たとえば、そのようなポリマーである)、ステートメント1~15のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント17.ポリマー材料が、ゲル(たとえば、ポリマー材料の総重量に基づいて、60~80wt%の液体を含むゲル)である、ステートメント1~16のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント18.液体が、液体電解質(たとえば、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)中のLiPF(たとえば、1M)、ジメトキシエタン(DME)/ジオキソラン(DOL)中のLiTFSI(たとえば、1M)、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)イオン液体中のLiTFSI(たとえば、0.5M)等の非水液体電解質)である、ステートメント1~17のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント19.ゲルのポリマー材料が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP共重合体)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PEO、PMMA、PAN、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む(たとえば、そのようなポリマーである)、ステートメント17または18に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント20.ポリマー材料が、金属塩(たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等から成る群から選択される金属塩)を含む、ステートメント1~19のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント21.ポリマー材料が、セラミックフィラー(たとえば、ポリマー材料の総重量に基づいて、2~25wt%)を含む、ステートメント1~20のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント22.セラミックフィラーが、導電性粒子、非導電性粒子(たとえば、Al、SiO、TiOナノ粒子等)、セラミックナノ材料(たとえば、セラミックナノ粒子、セラミックナノファイバ)から成る群から選択される、ステートメント21に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント23.本開示の1つまたは複数のハイブリッド電解質(たとえば、ステートメント1~22のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質)を備えた、機器。
ステートメント24.本開示のハイブリッド電解質(たとえば、ステートメント1~22のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質)と、
アノードと、
カソードと、
を備え、
ハイブリッド電解質が、カソードとアノードとの間に配設された(たとえば、ハイブリッド電解質のポリマー材料が、ハイブリッド電解質のSSE材料とアノードおよび/またはカソードとの間に配設された(たとえば、ハイブリッド電解質のSSE材料とアノードおよび/またはカソードとの間の空隙を実質的にすべて満たす))、電池(たとえば、固体イオン伝導性電池等のイオン伝導性電池)である、ステートメント23に記載の機器。
ステートメント25.電池が、カソードおよび/またはアノードの少なくとも一部に配設された集電体をさらに備えた、ステートメント24に記載の機器。
ステートメント26.集電体が、導電性の金属または金属合金である、ステートメント25に記載の機器。
ステートメント27.電池が、リチウムイオン伝導性固体電池であり、ハイブリッド電解質が、リチウムイオン伝導性(たとえば、リチウム含有)SSE材料(たとえば、ステートメント11~13のいずれか一項に記載のリチウム伝導性(たとえば、リチウム含有)SSE材料)である、ステートメント24~26のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント28.電池が、ナトリウムイオン伝導性固体電池であり、ハイブリッド
電解質が、ナトリウムイオン伝導性(たとえば、ナトリウム含有)SSE材料(たとえば、ステートメント14に記載のナトリウムイオン伝導性(たとえば、ナトリウム含有)SSE材料)である、ステートメント24~26のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント29.電池が、マグネシウムイオン伝導性固体電池であり、ハイブリッド電解質が、マグネシウムイオン伝導性(たとえば、マグネシウム含有)SSE材料(たとえば、ステートメント15に記載のマグネシウムイオン伝導性(たとえば、マグネシウム含有)SSE材料)である、ステートメント24~26のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント30.カソードおよび/またはアノードが、導電性炭素材料(たとえば、グラファイト、硬質炭素、多孔質中空カーボン球およびチューブ等)を含み、カソード材料が任意選択として、有機またはゲルイオン導電性電解質をさらに含む、ステートメント24~29のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント31.カソードが、硫黄、硫黄複合材料(たとえば、カルビンポリスルフィド、共重合硫黄等)、および多硫化物材料から選択される材料を含むか、または、空気である、ステートメント24~29のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント32.カソード(たとえば、リチウムイオン伝導性、リチウム含有カソード)が、リチウム含有材料から成る群から選択される材料を含む、ステートメント27に記載の機器。
ステートメント33.リチウム含有カソード材料が、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(たとえば、NMC、LiNiMnCo(ただし、x+y+z=1であり、たとえばLi(NiMnCo)1/3等))、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、リチウムマンガン酸化物(LMO)(たとえば、LiMnおよびLiNi0.5Mn1.5)、リチウムリン酸鉄(LFP)(たとえば、LiFePO)、LiMnPO、LiCoPO、およびLiMMn(ただし、MはFe、Co、およびこれらの組み合わせから選択される)から成る群から選択される、ステートメント32に記載の機器。
ステートメント34.カソード(たとえば、ナトリウムイオン伝導性、ナトリウム含有カソード)が、ナトリウム含有カソード材料から成る群から選択される材料を含む、ステートメント28に記載の機器。
ステートメント35.ナトリウム含有カソード材料が、Na、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2、Na(PO、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2@グラフェン複合材から成る群から選択される、ステートメント34に記載の機器。
ステートメント36.カソード(たとえば、マグネシウムイオン伝導性、マグネシウム含有カソード)が、ドープマグネシウム酸化物(たとえば、Mg1+x(Al,Ti)(PO(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料等)から成る群から選択される材料を含む、ステートメント29に記載の機器。
ステートメント37.アノードが、シリコン含有材料(たとえば、シリコン、シリコン/炭素等)、スズおよびその合金(たとえば、スズ/コバルト合金等)、スズ/炭素、ならびにリンから成る群から選択される材料を含む、ステートメント24~36のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント38.アノード(たとえば、リチウムイオン伝導性アノードおよびリチウム含有アノード)が、リチウムイオン伝導性アノード材料から成る群から選択される材料を含む、ステートメント24~27および31~33のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント39.リチウムイオン伝導性アノード材料が、炭化リチウム、LiC、およびチタン酸リチウム(LTO)(たとえば、LiTi1512等)から成る群から選択されるリチウム含有材料である、ステートメント38に記載の機器。
ステートメント40.アノードが、リチウム金属である、ステートメント38に記載の機器。
ステートメント41.アノード(たとえば、ナトリウム含有およびナトリウムイオン伝導性アノード)が、ナトリウムイオン伝導性アノード材料から成る群から選択される材料
を含む、ステートメント24~26、28、34、および35のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント42.ナトリウム含有アノード材料が、NaおよびNa0.66Li0.22Ti0.78から成る群から選択される、ステートメント41に記載の機器。
ステートメント43.アノードが、ナトリウム金属である、ステートメント41に記載の機器。
ステートメント44.アノードが、マグネシウム含有アノード材料である、ステートメント24~26、29、および36のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント45.アノードが、マグネシウム金属である、ステートメント44に記載の機器。
ステートメント46.ハイブリッド電極、カソード、アノード、および任意選択としての集電体が、セルを形成し、電池が、複数のセルを備え、セルの各隣接対が、バイポーラ板により分離された、ステートメント24~45のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント47.(たとえば、基本電解質として)液体電解質を備えた従来のイオン伝導性電池であり、電池が、本明細書に開示の無機SSEまたは本明細書に開示の固体ハイブリッド電解質および液体電解質(たとえば、従来の電池に用いられる液体電解質)を備え、液体電解質が、固体ハイブリッド電解質の構成要素として存在せず、無機SSE材料または固体ハイブリッド電解質が、従来の電池のセパレータである、ステートメント23~46のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント48.無機SSEが、本明細書に開示のF/S SSE(たとえば、テンプレーティング無機SSEまたはエレクトロスピニング無機SSE)である、ステートメント47に記載の機器。
ステートメント49.ハイブリッド電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)(たとえば、ステートメント1~22のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質)を作製する方法であって、
テンプレートを1つまたは複数のSSE材料前駆体と接触させることと、
(たとえば、加熱により)SSE材料前駆体を反応させて、(たとえば、少なくとも一部または全部が反応および/または分解したSSE材料前駆体を含む)固体無機材料を形成することと、
テンプレートを固体無機材料で熱処理(たとえば、焼結および/または焼成)することであり、テンプレートが(たとえば、燃焼により二酸化炭素として)除去され、無機SSE(たとえば、モノリシックSSEまたはメソ多孔質体もしくはF/S SSE)が形成される、ことと、
焼成テンプレートをポリマー材料と接触(たとえば、浸潤)させることと、
を含み、
モノリシックSSEまたはメソ多孔質体の場合に、無機SSE材料上に層を形成する(および任意選択として、無機SSE材料の表面上に露出した細孔の少なくとも一部または全部を満たす)か、または、F/S SSEの場合に、ポリマー材料がF/S SSEの細孔(たとえば、テンプレートに対応する細孔)の少なくとも一部または全部を満たす、方法。
ステートメント50.SSE材料前駆体が、ゾルゲル前駆体または金属塩である、ステートメント49に記載の方法。
ステートメント51.テンプレートが、炭素テンプレート(たとえば、繊維テンプレート)または生体材料テンプレート(たとえば、木材または植物テンプレート)である、ステートメント49または50に記載の方法。
【0101】
以下の例は、本開示の説明として提示する。これらは、何ら制限する意図のものではない。
【実施例0102】
本例は、本開示の固体ハイブリッド電解質の説明を与える。また、本例は、このような電解質の作製および特性評価の例を与える。
【0103】
リチウム金属電池のハイブリッドポリマー/ガーネット型電解質系の界面抵抗の低減
ガーネット型固体電解質は、その高いイオン伝導性(10-4S/cm~10-3S/cm)および広い電気化学的安定窓(0~6V対Li/Li)によって、Li金属電池に対する有望な結果を明らかにしている。ガーネット型固体電解質の主要な課題の1つとして、電解質と電極との間の高い界面抵抗がある。本例は、リチウム金属対称セルの界面抵抗を低減するとともにデンドライト貫通に対する保護を図る2つのゲルポリマー電解質層間の固体LiLa2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.2512(LLCZN)ガーネット型電解質を含むハイブリッド電解質を説明する。ゲルポリマー電解質層は、ガーネット固体電解質(SSE)と電極との間に、低界面抵抗および長期電気化学的安定の有利な界面を形成する。ハイブリッドゲルポリマーおよびLLCZN電解質は、SSE/カソード界面で248Ω×cm前後、SSE/Li金属界面で214Ω×cm前後の低い界面電荷移動抵抗を実現する。この設計の異なる利点として、ハイブリッド電解質は、高密度LLCZNガーネット層により、リチウムデンドライトの形成を防止することができる。本発明者らの結果は、ハイブリッド対称セルが長期間のサイクルにわたって、安定したストリッピングおよびプレーティングプロファイルで動作し得ることを示している。また、このハイブリッド電解質は、過電圧が小さく、デンドライト短絡に対する信頼性が高いLi金属電池に使用可能である。ゲルポリマー界面層を備えたハイブリッド電解質設計は、ガーネット固体界面抵抗に有効で、高性能の安全なLi金属電池を実証する興味深い表面工学ソリューションである。
【0104】
LLCZNガーネットSSEとの間の界面層としてゲルポリマー電解質を備えたハイブリッド電解質の提案によって、界面抵抗を低減するとともに、室温で動作し得るLi金属完成セルを実証する。図1aは、ポリマー/ガーネット型SSEハイブリッド電解質を用いた固体ポリマー-Li金属電池設計の模式図である。この電池においては、ガーネット型SSEと電極との間の界面層としてゲルポリマーを使用することにより、界面抵抗を低減している。ゲルポリマー電解質は、ガーネット型SSEと電極との間の接触の増大によって、カソードおよびLi金属に対するガーネット型SSE界面抵抗を低減するのに役立ち得る(図1b)。本研究において使用するゲルポリマー電解質は、多孔質PVdF-HFPポリマーマトリクスと、ポリマーの内側に格納された制限量の液体電解質との組み合わせである。既知の技術により作製したゲルポリマーは、良好なイオン伝導性(5×10-4S/cm)を有し、0~4.5V対Li/Liの電圧範囲で電気化学的に安定であるため、商業的に最も使用されているカソード材料に適している。ガーネット型SSEと活性電極との間の界面にゲルポリマー電解質を備えたハイブリッド設計のため、界面抵抗は、カソード界面に対して248Ω×cm、Li金属アノード界面に対して214Ω×cmという低さとなる。本発明者らの結果は、ハイブリッド対称セルが最大15時間にわたる安定したストリッピングおよびプレーティングプロファイルと、低い過電圧で動作し得ることを示しており、これは、ガーネット型SSEと金属Liアノードとの間の安定した界面を示す。ゲルポリマー中間層には最少量の液体電解質が格納されるため、ハイブリッド電解質は、従来の液体電解質ベースの電池のような漏れが発生しない。ゲルポリマー界面層を備えたハイブリッド電解質設計は、電気化学セル内のカソードおよびLi金属アノードの両者を含む電極に対する全体的な界面抵抗を低減するとともに、高性能の安全なLi金属電池を実証する重要な表面工学方策と考えられる。
【0105】
結果と考察
ハイブリッド電解質の特性評価
ガーネット型SSEおよびゲルポリマー電解質の特性評価を本明細書に記載する。ガー
ネット型LLCZNパレットの断面走査電子顕微鏡(SEM)画像を取得したが、これは、およそ450μmの合計厚を示しており、これらの試行のサンプル間で一貫性を保っている。ガーネットパレットの表面は、滑らかではないため、電極層に対する接触が不十分となる。合成プロセス中の12時間の高温焼結の結果として微小粒を有するガーネット型LLCZNパレットの拡大断面SEM画像を調べた。ガーネット型SSEの高密度構造は、サイクル中にリチウム金属デンドライトが電解質を貫通することを防止する。PVdF-HFPポリマーマトリクスのSEM画像を取得した。マトリクスの多孔質構造は、付加的な液体電解質を十分に吸収して含有する。ガーネット型LLCZNパレットに対して、X線回折(XRD)を実行した。これは、立方相ガーネット型LiLaNb12の標準的なXRDプロットとよく整合しており、LLCZNパレットが正方ガーネット相と比較してLiイオン伝導度が高い立方ガーネット相を有することを示す。厚さが1000μmおよび150μmの2つのLLCZNパレットにより電気化学的インピーダンス分光法(EIS)を実行し、両側に金を堆積させた対称セル中でテストした。インピーダンス分光曲線の高周波部の半円は、LLCZNのバルク抵抗および粒界抵抗を表す。厚さが異なるLLCZNパレットは、2×10-4S/cm前後の同じバルク伝導度を有する。式σ=R-1LS-1を用いて伝導度を計算した(ただし、Rは抵抗、LはLLCZNパレットの厚さ、Sは電極の面積である)。450μm厚のLLCZNパレットのバルク面比抵抗(ASR)は、225Ω×cmであり、電池の許容範囲である。これは、ガーネット型SSEの内部抵抗が比較的小さく、SSEと電極との間の界面が主として固体電池の抵抗に寄与することを意味する。したがって、界面抵抗を内部抵抗と同レベルまで低減可能である限り、固体電解質は、電池使用に対して十分に小さい抵抗を有し得る。Li|ポリマー|Ti系によって、サイクリックボルタンメトリ(CV)を実行した。-0.3Vおよび0.3Vにおける急峻なピークは、リチウムのプレーティングおよびストリッピングに対応しており、それより高い電圧範囲にピークは存在しない。0.5V~4.5Vの電圧範囲のCV曲線の平坦さは、ゲルポリマー電解質が4.5Vまで電気化学的に安定であることを示す。また、ガーネット型LLZOが0~6V対Li/Liで電気化学的に安定であることから、ハイブリッド電解質設計は、0~4.5V対Li/Liの電圧範囲で安定である。この安定な電圧範囲により、ハイブリッド電解質は、多くのカソード材料を有するリチウム金属設計に適する。厚さ40μmのゲルポリマーの面比抵抗およびイオン伝導度はそれぞれ、ステンレス鋼プレートを備えた単純な対称セルのEISプロットから、8Ω×cmおよび5×10-4S/cmである。この柔軟でイオン伝導性が高いゲルポリマーにより、SSEと電極との間の接触が改善して、界面抵抗が低くなり得る。
【0106】
ハイブリッド電解質の界面インピーダンスの解析
ガーネットポリマーハイブリッド電解質を備えた対称セルのインピーダンス解析を図2に示す。図2aは、カソード|ポリマー|カソード対称セルのインピーダンスプロファイルを示している。このセルのバルク抵抗は、ゲルポリマー層が薄くて導電性を有するため、小さい。中間周波数部の半円は、各側に対しておよそ107Ω×cmの電荷移動抵抗(Rct)に対応する。この値は、等価回路シミュレーションにより計算される。Rctは、カソード材料とゲルポリマーとの間の電荷移動の動的障害を表し、Rctが小さいことは、ゲルポリマーおよびカソードが良好に界面接触していることを意味する。低周波部のロングテールは、カソード中の拡散インピーダンスに対応する。図2bは、ステンレス鋼(SS)|ポリマー|SSE|ポリマー|SS対称セルのインピーダンスプロファイルを示しており、高周波におけるガーネット型SSEのバルクおよび粒界インピーダンス、中間周波数範囲の界面Rct、および低周波数における拡散インピーダンスという3つの部分を組み合わせたものである。ゲルポリマーのインピーダンスプロットから、ゲルポリマーとSSとの間のRctは、インピーダンスプロットにおいて対応する半円が現れないことから、ほぼゼロである。したがって、SS|ポリマー|SSE|ポリマー|SS対称セルのRctはすべて、ポリマー|SSE界面に由来する。ポリマー|SSE界面のR
は、図5bにおける対応するフィッティング結果による計算から、各側に対しておよそ155Ω×cmである。この抵抗は、カソード|ポリマー界面のRctに近く、ポリマー|SSE界面とカソード|ポリマー界面とが同様の接触性能を有することを意味する。図2cは、カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルのEISプロットである。インピーダンス曲線は、3つの部分を組み合わせたものである。高周波部は、ガーネット型SSE自体のバルクおよび粒界インピーダンスである。中間周波数部は、ゲルポリマー層自体の抵抗が相対的にかなり小さいことから、ポリマー|SSE界面およびカソード|ポリマー界面のRctを含めて、ガーネット型SSEとカソードとの間の界面Rctに対応する2つの半円の組み合わせである。低周波数部は直線であり、カソードの拡散インピーダンスに対応する。カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルの合計界面Rctは、各側に対して248Ω×cmである。この値は、等価回路フィッティングにより得られたものである。カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルの界面Rctは、ポリマー|カソード界面Rctおよびポリマー|SSE界面Rctの合計に略等しく、3種類の全界面のインピーダンスが中間周波数範囲に現れる。これは、カソード|ポリマー|SSE界面のインピーダンスがポリマー|カソードおよびポリマー|SSE界面インピーダンスの合計であることを意味する。ゲルポリマー界面層を有する場合および有さない場合の対称セルの比較として、図5aは、界面修飾を一切行っていないカソード|SSE|カソード対称セルのEISプロットである。対称セルは、ガーネット型SSE表面上のカソードスラリーの直接ブラッシングおよびその後の乾燥によって構成した。これは、ポリマー界面層を持たないカソード|SSE|カソード対称セルの合計Rctがおよそ1×10Ω×cmであること示す。この大きな抵抗がSSEとLiFePOカソード材料との間の不十分な接触の証拠である。この問題は、ガーネット型SSEとカソードとの間のハイブリッド設計のゲルポリマー層によって解決可能である。
【0107】
図2dは、Li|ポリマー|Li対称セルのインピーダンス曲線を示している。インピーダンス曲線とZ’軸との交点は6.4Ω×cmであり、これは、ゲルポリマーのバルク抵抗である。半円の直径は180Ω×cmであり、これは、対称セルの両側の2つのポリマー|Li界面のRctである。したがって、1つのポリマー|Li界面の界面抵抗は90Ω×cmであり、ポリマー|カソード界面抵抗に近い。これは、ゲルポリマーとLi金属との間の接触がゲルポリマーとカソードとの間の接触と同じぐらい良好であり、Li金属電極の表面もゲルポリマーによって十分にぬれていることを意味する。図2eは、Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルのEISプロットを示しており、4つの部分を含む。高周波部は、ガーネット型SSEのバルク抵抗および粒界抵抗である。中間周波数部は、ゲルポリマー層自体のインピーダンスがかなり小さいことから、主としてポリマー|SSE界面およびポリマー|Li界面のインピーダンスに由来するガーネット型SSEとLi金属との間の界面Rctに対応する2つの半円である。本明細書の対応する等価回路フィッティング結果から、Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルの1つの界面上の合計界面Rctは、214Ω×cmである。図5bは、界面修飾を行っていないLi|SSE|Li対称セルの合計抵抗が一方側に対しておよそ1400Ω×cmであることを示している。金属リチウムが溶融され、ガーネット型SSEの両側を被覆する。図5aのカソード|SSE|カソード対称セルと比較して抵抗が小さい理由は、リチウム金属の溶融により、固体カソード粉末およびバインダと比較して、表面接触が改善したことである。ただし、1400Ω×cmの界面抵抗は、電池使用には依然として大き過ぎる。これは、ゲルポリマー界面層によって低減可能である。結論として、ゲル界面層は、多くのカソード材料およびLi金属アノードを含めて、LLCZN固体電解質と電極との間の界面Rctを大幅に低減可能である。図2fは、ゲルポリマー界面を有する場合および有さない場合のLi|SSE|Liおよびカソード|SSE|カソード対称セルの界面抵抗を比較したものである。これは、ゲル界面が界面抵抗を許容範囲まで低減し得ることを明確に示している。ゲルポリマー界面の適用後、カソードとガーネット型
SSEとの間の界面抵抗は、6×10Ω×cmから248Ω×cmまで低下した。ゲルポリマー界面の適用後、Li金属アノードとガーネット型SSEとの間の界面抵抗は、1400Ω×cmから214Ω×cmまで低下した。
【0108】
図3は、ゲルポリマー界面を有する場合および有さない場合の対称セル中の界面ごとに識別されたインピーダンスを解析したものである。カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルのインピーダンスの解析は、図2a~図2cに由来し、ゲルポリマー界面のないカソード|SSE|カソード対称セルのインピーダンスの解析は、図5aに示す。対応する等価回路を本明細書に記載する。各等価回路においては、1つの界面のインピーダンスに対して、抵抗とキャパシタ/定位相要素(CPE)との間の並列接続が1つ存在する。キャパシタ/CPEは、界面上の二重層キャパシタンスに対するものであり、抵抗は、界面上の電荷移動抵抗に対するものである。カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルの合計界面Rctは、496Ω×cmであって、ゲルポリマー界面のないカソード|SSE|カソード対称セルの界面Rct(1.3×10Ω×cm)よりもはるかに小さい。この抵抗の低下は、ゲルポリマー界面がカソードとSSEとの間の接触性能を大幅に向上可能であることを意味する。Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルのインピーダンスの解析は、図2b、図2d、および図2eの解析に由来し、ゲルポリマー界面のないLi|SSE|Li対称セルのインピーダンスの解析は、図5bに由来する。これは、ゲルポリマー界面を有する場合および有さない場合のLi|SSE|Li対称セルのインピーダンスを比較したものである。対応する等価回路を本明細書に記載する。Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルの合計界面Rctは、428Ω×cmであって、界面修飾を行っていないLi|SSE|Li対称セルの界面Rct(2800Ω×cm)よりもはるかに小さい。この抵抗の低下は、ゲルポリマー界面がLiとSSEとの間の接触性能を大幅に向上可能であることを意味する。
【0109】
ハイブリッド固体ポリマー電解質の電気化学的性能
ポリマー/ガーネット型SSEハイブリッド電解質を備えたリチウム対称セルおよび完成セルの電気化学的性能を図4に示す。図4aは、定電流サイクルの下、ゲルポリマー界面層を備えたLi|SSE|Li対称セルのDCサイクル電圧プロファイルを示している。対称セルの合計DC ASRは1400Ω×cmであり、これは、電圧値180mVを面電流密度125μA/cmで除したものである。図4aの差し込み図は、DC抵抗が1サイクルにおいて一定に保たれることを示している。このDC抵抗は、SSEのバルクおよび粒界抵抗ならびにSSE|ポリマー|Li界面の抵抗に由来するため、界面抵抗が1サイクルにおいて一定に保たれる。リチウムのストリッピングおよびプレーティングによってリチウムとゲルポリマー電解質との間の界面接触が改善されるため、電圧は、最初の5時間に180mVから160mVまで低下する。5時間後、電圧は一定に保たれ、界面抵抗も一定に保たれ、界面は安定している。図4bは、15時間にわたるサイクル前後のセルのEISプロットを示している。サイクル中、界面ASRは、ほぼ一定で、1000Ω×cmから1100Ω×cmに変化する。これは、ゲルポリマー界面が安定しており、長時間にわたって小さな抵抗を保っていたことを意味する。
【0110】
図4c~図4eは、ポリマー/ガーネット型SSEハイブリッド電解質を備えた完成セルのサイクル性能を示している。セルは、130サイクルにわたって、65μA/cmの面電流密度および1Cレート(170mA/g)で充放電させた。図4cは、1回目、10回目、50回目、100回目、および130回目のサイクルの充放電プロファイルである。充放電曲線は安定した電圧プラトーを示しており、サイクルの過電圧は一貫している。これは、130回の充放電サイクルの間、界面抵抗が一定であることを意味する。図4dは、各サイクルの放電容量およびクーロン効率を示しており、クーロン効率は、2回目以降の各サイクルでおよそ95%である。1回目のサイクルのクーロン効率が低いのは、この1回目のサイクルにおいて、電極とゲルとの間にSEI層が形成されたためである
。放電容量は、130回のサイクルにわたって、50~55mAh/gで安定している。安定した放電容量は、長時間のサイクルにわたって界面層が安定していることを示す。比容量が小さい理由として、液体電解質の大部分がゲルの内側にあり、カソード材料の内側にはわずかしか存在しないため、カソード材料のすべてがゲルでぬれているわけではなく、すべてが反応において活性化するわけではないことが考えられる。ただし、界面層が化学的に安定していることから、電池の放電容量は、長期にわたって良好な安定性を有する。図4eは、サイクル前、20サイクル後、および130サイクル後の電池のEISプロットである。中間周波数範囲の半円の直径として示すRctは、およそ500Ω×cmでほぼ一定であり、これは、ゲルポリマー電解質のインピーダンスが非常に安定しており、130回のサイクルにわたって小さな電荷移動抵抗を維持可能であることを意味する。結論として、ハイブリッドポリマー/ガーネット電解質は、過電圧が小さくて安定性が良好なLi金属完成セルに使用可能である。
【0111】
本例は、純粋なSSEの代わりに、ポリマー/ガーネットハイブリッド電解質を良好な固体ポリマー電池設計に使用して、ガーネット型SSEと電極との間の界面抵抗を低減可能であることを実証している。ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性が高く、電気化学的安定電位窓が広い。したがって、LLZCNガーネットSSEと電極との間の界面層として使用することにより、電気化学的に安定なイオン伝導性の界面を提供することができる。ゲルポリマー界面層を備えたSSEと電極との間のRctは、対称セルおよび完成セルのインピーダンス分光法による測定により、カソードに対して248Ω×cm、Li金属アノードに対して214Ω×cmである。この界面抵抗は、市販のリチウム金属セルの生産の許容範囲である。ポリマー/ガーネット型SSEハイブリッド電解質を備えたLi金属対称セルの実証により、安定した電圧プロファイルで15時間以上にわたってサイクルした。これにより、Li金属アノードとガーネット型SSEとの間のゲルポリマー界面が電気化学的に安定であることが示された。電池の実現により、Li金属アノード、LiFePOカソード、およびポリマー/ガーネットハイブリッド電解質を用いて、室温で130回サイクルした。サイクル中、完成セルの界面Rctは一定であったが、これは、ゲルポリマー電解質がLLCZNガーネット電解質とリチウムリン酸鉄電極との間に安定した界面を形成可能であることを意味する。全体として、本研究では、純粋な固体電解質の両側に2つのゲルポリマー層を被覆した組み合わせの新たなハイブリッドガーネットポリマー電解質を実証した。ゲルポリマー層のない不利な性能および6×10Ω×cmの合計界面抵抗と比較して、ゲルポリマー界面の適用後は、室温での合計界面抵抗が低くなる(約500Ω×cm)。
【0112】
実験
LLCZNパレットの合成
ガーネット型LiLa2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.2512粉末をゾルゲル法により合成した。前駆体LiNO(99%、Alfa Aesar製)、La(NO・6HO(99%、Alfa Aesar製)、Ca(NO・4HO(99.9%、Sigma Aldrich製)、NbCl(99%、Alfa
Aesar製)、およびジルコニウム(IV)プロポキシド(1-プロパノール中70wt%、Sigma Aldrich製)を化学量論量で10wt%の過剰LiNOを含むエタノールに溶かし、透明になるまで溶液を撹拌した後、溶液に対する体積比1:4で純粋な酢酸を添加した。エタノール溶媒を100℃で蒸発させ、ゲル前駆体を得た。ゲルを350℃で加熱して乾燥前駆体粉末を得た後、800℃で10時間加熱してガーネット粉末を得た。粉末を48時間ボールミリングした後、円筒状パレットとなるように押圧した。パレットの面積は、0.5cmである。その後、パレットを1150℃で12時間にわたり焼結した。合成したパレットをサンドペーパーで研磨して、400μm~450μmまで薄くするとともに、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した。
【0113】
PVDF-HFPベースのゲルポリマー電解質の合成
以下の方法によりPVDF-HFPベースのゲルポリマー電解質を作製した。第1に、1時間にわたる機械的撹拌の下、4.5gのアセトンおよび0.25gのエタノールの混合物に0.25gのPVDF-HFP(Sigma Aldrich製)を溶かして均一溶液を得た。そして、溶液を平坦なアルミ箔上にキャストし、湿度80%、温度25℃の定湿度チャンバにおいて溶媒を蒸発させた。サンプルを60℃の真空下で5時間にわたり乾燥させた。その後、均一な自立膜を得た。PVDF-HFP膜の厚さは、40μm前後である。第2に、作製した多孔質PVDF-HFP膜を面積が0.2cmの小さな円形フィルムへと裁断し、1:1のエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)液体電解質中の1M LiPFに1分間浸漬して、電解質に完全に浸るようにした。そして、膜の表面上の余分な液体をワイパーで取り去った。
【0114】
材料の特性評価
40kVおよび40mAで動作するCuKα放射源を用いて、D8 Advanced
with LynxEye and SolX(Bruker AXS、WI、USA)上でX線回折(XRD)により、LLCZNガーネットパレットの相解析を実行した。電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、JEOL 2100F)によって、作製したLLCZNガーネットパレットおよびPVDF-HFP膜の微細構造の形態を調べた。
【0115】
電池作製の電気化学的テスト
Li|SSE界面およびLiFePOカソード|SSE界面の両者について、界面インピーダンスを測定した。Liベルト(Sigma Aldrich製)から、面積が0.2cmで厚さが0.5mmの円形ディスクとなるように、リチウム金属電極をプレス型抜きした。カソードを作製するため、LiFePO、カーボンブラック、およびポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)を質量比3:2:1でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶かし、混合してスラリーとした。スラリーをアルミ箔に被覆した後、100℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥後、カソードを面積が0.2cmの円形ディスクへと裁断し、テスト前の1:1のエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)液体電解質中の1M LiPFに浸漬して、余分な液体電解質を取り去った。アルゴン充填グローブボックスにおいて、電池の組み立ておよび電気化学的テストを行った。電圧範囲-0.3V~4.5V、走査速度1mV/sでLi|ゲルポリマー|Tiセルのサイクリックボルタンメトリ(CV)をテストした。また、EISテスト用の対称セルを作製した。各テストのセルの模式図は、対応するEISプロット中に示す。1つのステンレス鋼パレットをセルの各側に載せた状態で、クリップにより、電極、ゲル膜、およびガーネットパレットを一体的に順次押圧した。Bio-Logicテスタによって、セルの電気化学的性能をテストした。対称セルのEISテストでは、電圧振幅を10mV、周波数範囲を0.1Hz~1MHzとした。ゲル界面層を備えたLi|SSE|Liの定電流サイクルは、EISテストと同じ組み立て法を使用して、電流密度0.125mA/cmで10分間にわたり実施した。15時間にわたるサイクル前後のセルのEISを測定して比較した。ガーネット、ゲル、および電解質層を一体的に押圧して、ゲルポリマー界面を備えたLi|SSE|LiFePO完成セルをCR2016コインセル中に作製し、エポキシで封止した。このセルを2V~4.5Vの電圧範囲において50μA/cmの定電流でサイクルし、サイクル前後のセルのEISを測定した。
【0116】
リチウム金属電池の系を調べた。40μm厚のゲルポリマー層のバルク抵抗は、7Ω×cmである。図5は、ゲルポリマー界面を有さない電極|SSE|電極対称セルのインピーダンスであって、(a)カソード|SSE|カソード対称セルのEIS、(b)Li|SSE|Li対称セルのEISを示している。
【実施例0117】
本例は、本開示の固体ハイブリッド電解質の説明を与える。また、本例は、このような電解質の構成および特性評価の例を与える。
【0118】
Li金属電池の化学的および物理的短絡を防止する固体イオン伝導性フレームワーク
化学的および物理的短絡は、可溶材料の移動およびLiデンドライトの貫通と関連して、電池サイクル寿命の制限および熱暴走につながるLi金属電池の2つの重要な課題である。これらの課題に対処するため、本例においては、構造的なガーネット型固体電解質(SSE)および液体電解質から成る固体ハイブリッド電解質系を説明する。ハイブリッド電解質は、通常の液体電解質を利用して、電極中の高イオン移動動態を維持するとともに、SSEを採用して、電極および液体電解質を分離するのみならず、不要種の拡散およびLiデンドライトを阻止する。本例は、ガーネットSSEの化学的性質ならびに硫黄、多硫化物、および液体電解質中の電気化学的安定性の調査と、高硫黄担持カソードの多孔質層における連続したLi/電子経路ならびに多硫化物の拡散およびデンドライトの貫通を阻止する高密度層を備えたハイブリッドLi-S電池用の二層ガーネットSSEフレームワークの開発とを説明する。本研究は、完成セルレベルに基づいて、統合硫黄担持が7mg/cmを超え、エネルギー密度が280Wh/kgを超え得ることを示した。初期のクーロン効率は99.8%と高く、ハイブリッド系には化学的短絡も物理的短絡も観察されなかった。この二層ハイブリッド構成は、Li-S電池を改善することが予想され、この設計は、高電圧カソード(LNMO)および空気/Oカソード等の他のカソード材料にも拡大して、従来の電池から全固体電池への移行の道を開くことが予想される。
【0119】
ガーネットSSEの化学的性質ならびに硫黄、多硫化物、および液体電解質中の電気化学的安定性を調査するとともに、高硫黄担持カソードの多孔質層における連続したLi/電子経路ならびに多硫化物の拡散およびデンドライトの形成を阻止する高密度層を備えたハイブリッドLi-S電池用の二層ガーネットSSEフレームワークを開発した。従来の電池構成と比較して、固体ハイブリッド電池は、化学的および物理的短絡を防止するのみならず、カソード質量担持の増大、液体電解質の捕捉、およびカソード体積変化の解放が可能である。二層ハイブリッドLi-S電池の模式図を図6に示す。二層SSEにおいては、多孔質ガーネット層がより厚いため、支持される高密度層が数マイクロメートルまで薄くなって、小さな電解質インピーダンスに寄与し得る。二層SSEが活物質を細孔中に直接封入するため、これらの細孔は、活物質の体積変化に対応するように調節されて、サイクル中の電池構造を安定に保つことができる。統合硫黄カソード担持が7mg/cmを超え、提案のハイブリッドLi-S電池は、後続サイクルごとに高い初期クーロン効率(99.8%超)および高いクーロン効率(99%超)を示し、ハイブリッド系においては化学的短絡も物理的短絡も観察されなかった。この二層SSEは、Li-S電池に革命をもたらす有望な方策を表す。また、カソード用の高い表面反応部位およびLiアノード用の阻止層を備えたこの構造的ハイブリッド電解質設計は、高電圧カソード(LNMO)および空気/Oカソード等の他のカソード材料を使用して、従来の電池から全固体電池への移行の道を開くことが予想され得る。
【0120】
ガーネット固体電解質の特性評価
犠牲細孔形成体としてLLCZN粉末スラリー含有ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)球をテープに用いたテープキャスト法によって、多孔質構造を作製した。多孔質テープを高密度テープに積層した後、共焼結によって有機ポリマーを除去することにより、二層ガーネットSSEを作製した。作製の詳細については、本明細書を参照可能である。図7aは、二層ガーネットSSEの写真画像を示している。手による取り扱いおよび直列に一体積層して高電圧セルを得るのに適正な機械的強度を有する。空気および水分の影響を受けやすい硫化物型の超イオン伝導体と異なり、ガーネットSSEは、乾燥空気中で化学的にはるかに安定しており、乾燥室環境において取り扱い可能である。二層ガーネットSSE構造の模式図を図7に示す。多孔質構造は、高密度層上に載置したため、極薄高
密度層の機械的強度を向上可能である。これらの細孔によるカソード材料のさらなる封入によって、カソードおよび電解質の一体構造がもたらされる。図7bは、多孔質層の走査電子顕微鏡(SEM)画像の上面図である。微小サイズの細孔が一様に分布しており、電極スラリーが容易に内部構造へと達し得る。二層ガーネットSSEの断面を図7c~図7eに示す。ガーネット粉末を約70%の孔隙率で3Dネットワークとなるように焼結した。図7dは、多孔質層および高密度層の接続部を示しており、多孔質層および高密度層が十分に焼結して剥離が観察されないことを示している。図7eの高密度ガーネット層は、大きなガーネット結晶粒が高密度微細構造を構成し、この高密度層によって、可溶活物質および液体電解質が固体電解質を通過しないように阻止可能であることを示している。図7fは、35μmの高密度部および70μmの多孔質部を含む合計厚105μmの二層ガーネットの断面である。
【0121】
X線回折(XRD)によって、焼結ガーネットSSEの相を確認した。LiLa2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.2512(LLCZNO)に基づく合成したガーネットSSEは、立方構造を示した。すべてのピークが標準的な立方ガーネットLiLaNb12(PDF80-0457)とよく整合している。ラマンスペクトルにおいては、広範かつ部分的に重畳した帯域によって、LLCZNOガーネットの立方相が確認されるが、これは、他の場所で報告されたガーネットスペクトルに一致する。阻止セルのセットアップを用いた電気化学的インピーダンス分光法(EIS)によって、イオン伝導度を測定した。対称なAu/ガーネットSSE/Au阻止セルの構成には、高密度ガーネットペレットを使用した。25℃~50℃の温度範囲でガーネットSSEのEISを測定した(図11)。高周波における実軸の切片は、ガーネットSSEのバルク抵抗に割り当てられ、窪んだ半円は、ガーネットSSEの粒界と関連付けられる。Au電極の容量性挙動に対応する低周波の切片を用いて、バルクおよび粒界の寄与を含む合計抵抗を計算した。σ=L/(Z×A)を用いてイオン伝導度を計算した(ただし、Zはナイキストプロット中の実軸のインピーダンス、Lはガーネットセラミックディスク長、Aは表面積である)。温度の逆数に対するガーネットSSEの対数イオン伝導度を図12にプロットする。アレニウスの式を用いることにより、温度の関数として、伝導度から0.35eVの活性化エネルギーを計算した。
【0122】
液体-固体ハイブリッド電解質系の化学的安定性
ガーネットSSEを多硫化リチウム溶液(DME/DOLに溶解したLi)および液体電解質(DME/DOL中のLiTFSI)に浸漬してそれぞれの表面組成および相構造を調べることにより、液体Li-S化学構造とのガーネットSSEの互換性を理解する実験を行った。サンドペーパーによりガーネットペレットの表面を清浄してLiCOを除去した後、液体電解質または多硫化リチウム溶液に1週間浸漬した。溶液に浸した後、DME/DOL溶媒によりガーネットSSEを洗浄し、乾燥させて別途特性評価を行った。サンプルの移動は、酸素および水分汚染を回避するため、保護環境において行った。ガーネットペレットをLi/DME/DOLに1週間浸漬した後、X線光電子分光法解析(XPS)によって、ガーネット表面上の
【数1】
および
【数2】
を検出した(図9a)。30分間のArイオンスパッタリングで表面を清浄して、急峻なピークおよび高い強度によりS-2信号を検出した(図9b)。
【数3】
およびS-2のピークは、多硫化リチウムLiの分解であるLiおよびLiSに由来すると考えられる。図9cのイオンスパッタリングを伴う場合および伴わない場合のガーネットのZr 3dスペクトルは、スパッタリング前にはガーネット表面にZr 3dが検出されないものの、スパッタリング後にはLLCZNOガーネットの指標であるZr 3dが検出され、ガーネット表面上に固体相間が形成されていることと、固体相間がガーネット上で有限の厚さを有することとを示している。本発明者らの結果は、固体電解質が液体電解質中に溶ける傾向にあり、接触領域においては、いわゆる固体-液体電解質相間(SLEI)が観察され、固体電解質および有機電解質の両者からの分解生成物が含まれることを報告した近年の研究により確認可能である。図9dのX線回折パターン(XRD)は、ガーネット粉末が立方相構造を維持し、多硫化リチウムおよび液体電解質に浸した後には相変化が観察されないことを示している。XPSの結果は、液体電解質およびガーネット固体電解質がある程度まで多硫化物溶液中で分解したことを示すものの、Li/SSE/Li対称セルおよびLi-S完成セルの安定した立方相および電気化学的性能から、液体電解質および硫黄還元種の環境においてガーネット固体電解質がうまく機能し得ることが十分に示されている。同じ条件下で処理されたガーネットのラマンスペクトルから、ガーネット立方構造が安定を維持していることが確認される(図8e)。高分解能透過電子顕微鏡法(TEM)は、厚さが約4nmのアモルファス層がガーネットナノ粉末表面に形成されたことを示しており、ガーネットがわずかに分解したものと考えられる(図8f)。また、ガーネットナノ粉末を硫黄と混合して160℃で24時間にわたって加熱することにより、ガーネットおよび硫黄の化学的安定性を調べた。サンプルを二硫化炭素(CS)で洗浄して硫黄を除去した後、XRDにおいてガーネットの構造を特性評価した。図8fのXRDパターンからも、標準的なガーネットLLZOのXRDパターンと同じ立方構造が確認される。硫黄還元種を伴うガーネット固体電解質の安定性を理解するため、コンピュータ解析の実行によって、ガーネットおよび多硫化物の化学的安定性をシミュレーションした。コンピュータ解析の結果は、LiSの形成により界面で自己抑制効果が生じ、ガーネットと多硫化物との間の反応がそれ以上進まなくなることを示している。
【0123】
ハイブリッド液体-固体電解質の電気化学的特性評価
SSEと電極との間の界面の構造および化学的性質が固体電解質の主要な課題である。近年の研究は、界面での不十分な接触がLiに対するガーネットSSEの大きな界面抵抗につながる主要因であることを示している。固体電解質と電極との間に液体電解質中間層を用いて液相を導入することは、それぞれの界面抵抗を抑える効果的な方法となるはずである。この研究の一環として、Li金属に対するガーネットSSEの界面修飾に焦点が当てられている。図9aは、ガーネットSSE高密度表面の模式図である。個々の細孔がガーネット表面に分布し、これらの空洞によって、ガーネットはLi金属との表面積が制限される(図9b)。また、起伏のある堅固なガーネット表面は、Li金属とのコンフォーマル接触が不十分で、界面抵抗が高くなる。図9cにおいては、ポリマーゲル状層がガーネットSSE表面をコンフォーマルに被覆するように設計されている。この層が液体電解質を吸収可能であるのみならず、弾性中間層がガーネットSSEとリチウム金属との間の密接触を保証可能である。図9dは、ポリマー被覆ガーネットSSEの断面を示している。ガーネットSSE表面には、スピンコートによってポリエチレンオキシド(PEO)ポリマーを堆積させた。PEOは、2μmの厚さを有し、ガーネットSSEをコンフォーマルに被覆している(図8e)。この弾性ポリマー層は、ガーネットおよびLi金属の起伏を補償するとともに、界面を通る均一なLiイオン束を保証可能である。電気化学的インピーダンス分光法(EIS)測定のナイキストプロットは、合計インピーダンスが約900Ω・cmであったことを示している(図9e)。
【0124】
定電流の印加による対称セル中のLiイオンの定電流プレーティングおよびストリッピングによって現実のリチウム金属電池の作動条件を模倣することにより、界面の安定性を特性評価した。図8fは、0.3mA/cmの電流下でのLi/ハイブリッドSSE/Liセルの時間に応じた電圧プロファイルを示している。正の電圧がLiストリッピングを示し、負の電圧がLiプレーティングである。セルは、サイクルごとに0.5時間動作させた。セルは、最初は±0.3Vの電圧を示したが、10時間のサイクル後は、電圧が±0.2Vまで徐々に低下した。比較として、Li/ガーネット/Li対称セルも作製してテストした。ハイブリッドセルの場合は、160時間を超えてサイクルを保ち、ストリッピング/プレーティング電圧は比較的安定したままであった。差し込み図は、2種類のセルの初期サイクルおよびハイブリッドセルの140時間目のサイクルを示している。高いインピーダンスおよび大きな分極が観察された。滑らかではない電圧プラトーがLiとガーネットとの間の大きな界面抵抗を示唆している。ハイブリッドセルは、滑らかな電圧曲線を示した。電圧を電流で除して抵抗が計算されるオームの法則に従って対称の合計抵抗が求められるため、初期抵抗が約1000Ω・cmであり、その後はセル抵抗が約660Ω・cmに維持されたが、これは、図9のEISと整合する。これらの直流(DC)抵抗は、EISにより測定した交流(AC)抵抗よりもわずかに高い。抵抗の低下は、Liのストリッピングおよびプレーティングの繰り返しにおいて、ガーネットとLi金属との間の抵抗がゲル電解質中間層によって改善されたことを示している。電圧プロファイルの周期的な変動は、固体ハイブリッド電解質の温度依存性を示している。図8gおよび図8hの0.5および1.0mA/cmの電流下でのLi/ハイブリッドSSE/Liセルの電圧プロファイルは、ハイブリッド電解質の高電流容量を実証している。
【0125】
ハイブリッドLi-S電池の電気化学的評価
Li-S電池の固体ハイブリッド電解質の電気化学的特性評価を図10に示す。図10aにおいては、従来の電解質および固体ハイブリッド電解質を備えたLi-S電池の模式図を比較している。可溶多硫化物は、多孔質ポリマーセパレータを通じて拡散し、Li金属アノードに移動し得るが、高密度セラミックイオン伝導体を貫通できないため、多硫化物のシャトル効果、Li上の副反応、およびLi金属の腐食を回避できる。図10bに示すように、多硫化物のシャトリング挙動は充電プロセスにおいて発生する。充電電圧プラトーの延長は、典型的な多硫化物のシャトル効果であり、上側カットオフ電圧に至る前の長時間充電の原因となる。従来のLi-Sにおける急速な容量低下および低いクーロン効率(図13)から、固体ハイブリッド構成の使用が急務となっている。ハイブリッドセルにおいては、充電曲線がプラトーの延長を示しておらず、容量値が放電容量に近くてクーロン効率が100%に近く、安定したサイクル性能をもたらしており(図14)、固体ハイブリッド電解質系には多硫化物のシャトリングが存在しないことが実証されている。
【0126】
図10cは、異なる電流密度でのハイブリッドセルの充放電曲線を示している。高密度ガーネットSSEおよびスラリーキャスト硫黄カソードを用いてハイブリッドセルを作製した。硫黄の質量担持は、約1.2mg/cmである。通常の液体電解質(DME/DOL中のLiTFSI)を液体電解質として使用する。なお、液体電解質にLiNOは添加しなかった。電流密度200mA/gにおいて、硫黄カソードは、約100%のクーロン効率で約1000mAh/gの比容量をもたらした。電流密度800mA/g(1mA/cmに対応)においては、比容量が550mAh/gであり、セルは依然として、100%に近い高クーロン効率を維持していた。レート性能を図10dに示す。ハイブリッドセルは、高い電流密度で良好なサイクル安定性を示すとともに、小さな電流で良好な容量保持を示した。
【0127】
図10eは、固体ハイブリッド二層Li-S電池の模式図である。硫黄を厚い多孔質層に封入しており、硫黄およびその可溶多硫化物の体積変化は、固体ガーネットマトリクス
により対応可能である。160℃で硫黄粉末を多孔質マトリクスに直接溶融させることによって、硫黄を担持させた。硫黄の溶融前に、カーボンナノチューブ(CNT)を多孔質ガーネットの微細構造に浸潤させて、内側に電子伝導性ネットワークを構成した(図15)。二層Li-Sカソードの断面および元素マッピング(Laが赤色、Sが緑色)を図10fに示す。元素マッピング画像は、ガーネットの細孔中の硫黄分を明らかに示している。硫黄とガーネットとの間の空隙によって、液体電解質が内部チャネルへと容易に入り込み、硫黄を洗浄する。図10gは、電流密度0.2mA/cmにおけるS質量担持が約7.5mg/cmのハイブリッド二層Li-Sセルの充放電電圧プロファイルを示している。最初のサイクルの放電容量は約645mAh/gであり、クーロン効率は99.8%であるが、これは例外的に高い値である。長く平坦な電圧プラトーは、充放電曲線間の相容れない分極を示している。これは、表面積が大きくて硫黄との反応部位が増え、電圧分極の低下および良好な容量を可能にする多孔質ガーネットSSEが寄与しているはずである。サイクル性能を図10hに示す。最初の数サイクルに急激な容量の伸びは発生しておらず、このように硫黄の質量担持が高いハイブリッドセルでは、多硫化物が失われないことを示している。クーロン効率が99%超を維持しており、ハイブリッド設計においてシャトル効果が発生していないことが確認される。質量担持が7.5mg/cmのハイブリッド二層Li-Sセルは、カソード、Liアノード、および電解質に基づくエネルギー密度が280Wh/kgである。サイクル性能がわずかに低下しているが、これは、充電生成物LiSおよびLiが後続サイクルで再活性化されず、硫黄の高い質量担持がバルク硫黄負荷の内側でのさらなる反応を妨げたことによると考えられる。電子伝導性ネットワークおよび硫黄分布の増大が非常に望ましい。本例においては、モデル材料としての固体硫黄を用いてハイブリッド電解質およびハイブリッドセルを調べたほか、液体多硫化物を有するカソード液の使用がガーネットSSEの二層多孔質高密度設計にも当てはまる別の方法となり得ることが予想される。
【0128】
以上のように、ガーネットSSEの化学的性質ならびに硫黄、多硫化物、および液体電解質中の電気化学的安定性を開示するとともに、高硫黄担持カソードの多孔質層における連続したLi/電子経路ならびに多硫化物の拡散およびデンドライトの貫通を阻止する高密度層を備えたハイブリッドLi-S電池用の二層ガーネットSSEフレームワークを開発した。従来の電池構成と比較して、固体ハイブリッド電池は、化学的および物理的短絡を防止するのみならず、カソード質量担持の増大、液体電解質の捕獲、およびカソード体積変化の解放が可能である。二層SSEが活物質を細孔中に直接封入するため、これらの細孔は、活物質の体積変化に対応するように調節されて、サイクル中の電池構造を安定に保つことができる。本発明者らの研究が示すこととして、統合硫黄カソード担持が7mg/cmを超え、提案のハイブリッドLi-S電池は、後続サイクルごとに高い初期クーロン効率(99.8%超)および高いクーロン効率(99%超)を示し、ハイブリッド系においては化学的短絡も物理的短絡も観察されなかった。この構造的ハイブリッド電解質は、Li-S電池の改良と考えられる。また、この設計は、高電圧カソード(LNMO)および空気/Oカソード等、高性能電池の他のカソード材料にも拡大して、従来の電池から全固体電池への移行の道を開くことが予想される。
【0129】
改良ゾルゲル法によってLLCZN粉末を合成した。出発原料は、LiNO(99%、Alfa Aesar製)、La(NO(99.9%、Alfa Aesar製)、Ca(NO(99.9%、Sigma Aldrich製)、ZrO(NO(99.9%、Alfa Aesar製)、およびNbCl(99.99%、Alfa Aesar製)とした。これらの化学物質の化学量論量を脱イオン水に溶かし、10%の過剰LiNOを添加して、高温ペレット作製時のリチウム揮発を補償した。クエン酸およびエチレングリコール(1:1モル比)を溶液に添加した。溶液を120℃で12時間にわたり蒸発させて前駆体ゲルを生成した後、400℃および800℃に5時間焼成して、ガーネット粉末を合成した。そして、ガーネット粉末を一軸押圧してペレットに
した後、同種の粉末で覆って1050℃で12時間にわたり焼結した。
【0130】
材料の特性評価
40kVおよび40mAで動作するCuKα放射源を用いて、D8 Advanced
with LynxEye and SolX(Bruker AXS、WI、USA)上で粉末X線回折(XRD)により、相解析を実行した。電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、JEOL 2100F)によって、サンプルの形態を調べた。
【0131】
電気化学的特性評価
アルゴン充填グローブボックスにおいてLi|固体電解質|Li対称セルを作製し、組み立てた。ガーネット固体電解質のイオン伝導度を測定するため、高密度セラミックディスクの両側をAuペーストで被覆し、阻止電極として作用させた。金電極を700℃で焼結して、セラミックペレットとの良好な接触を形成した。そして、高導電性炭素スポンジを備えた2032コインセルとしてセルを組み立てた。炭素スポンジは、緩衝体として作用し、ガーネットセラミックディスクの損傷を防止した。電池テストクリップを用いて、コインセルとの良好な接触を保持・提供した。セルの縁部は、エポキシ樹脂で封止した。50mVの摂動振幅で1MHz~100mHzの周波数範囲のEISを実行した。σ=L/(Z×A)を用いて伝導度を計算した(ただし、Zはナイキストプロット中の実軸のインピーダンス、Lはガーネットセラミックディスク長、Aは表面積である)。アレニウスの式を用いることにより、温度の関数として、伝導度から活性化エネルギーを求めた。
【0132】
第1原理計算
過去の研究において規定されたのと同じ手法を用いて、界面は、LiS/LiおよびガーネットSSEの擬2元系と考えられる。考え得る熱力学的に有利な反応を識別するように相図を構築した。本発明者らの研究に使用した材料のエネルギーは、Materials Project(MP)データベースから取得し、また、pymatgenパッケージを使って組成相図を構築した。本発明者らの過去の研究において規定されたのと同じ手法を用いて、擬2元系の相互反応エネルギーを計算した。
【0133】
固体ハイブリッド電池の作製と評価
セルはすべて、アルゴン充填グローブボックスにおいて組み立てた。固体ハイブリッドセルを2032コインセルとして組み立てた。硫黄電極は、70%の元素硫黄粉末(Sigma製)、20%のカーボンブラック、および10%の水中ポリビニルピロリドン(PVP、Sigma製、M=360,000)バインダから成る。60℃で24時間にわたり、真空中で電極を乾燥させた。固体ハイブリッドLi-S電池の電解質として、ジメトキシエタン(DME)および1,3-ジオキソラン(DOL)(体積比1:1)の混合物中の1M ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI、Sigma製)を使用した。LiNOは添加しなかった。電解質/硫黄質量比は、カソード側で約10ml/gである。セルは、2032コインセルにおいてテストした。1~3.5Vのカットオフ電圧窓を用いて、定電流充放電テストを測定した。二層カソードを作製するため、多孔質ガーネット上に元素硫黄粉末を一様に分散させ、160℃で加熱して硫黄を溶融させた。硫黄の溶融前に、ジメチルホルムアミド(DMF)中の10wt%カーボンナノチューブ(CNT)インクを作製し、二層ガーネットSSEの多孔質層に滴入して、100℃の真空中で12時間乾燥させた。
【0134】
図11図15は、本例に記載の二層ガーネット構造の特性評価を表す。
【実施例0135】
本例は、本開示の固体ハイブリッド電解質の説明を与える。また、本例は、このような電解質の構成および特性評価の例を与える。
【0136】
3次元二層ガーネット固体電解質ベースの高エネルギー密度リチウム金属-硫黄電池
本例は、3次元(3D)固体電解質フレームワークおよび多種多様なカソード化学構造を利用可能なリチウム金属アノードを用いた安全で高エネルギー密度の固体ハイブリッド電池の新たな設計を説明する。この固体電解質フレームワークは、次世代の高エネルギー密度Li金属電池の新たな研究の方向性を開ける可能性がある。
【0137】
化学的/物理的短絡および電極の体積変化という課題に同時に対処するため、本発明者らは、先進のLi金属電池に向けての3次元(3D)二層ガーネット固体電解質フレームワークを示した。高密度層の厚さを数ミクロンまで小さくしつつ、良好な機械的安定性を保つことによって、Li金属アノードの安全な使用を可能にする。厚い多孔質層は、高負荷のカソード材料のホストおよび連続的なイオン移動の経路提供の両者として機能する薄い高密度層の機械的支持部として作用する。結果が示すこととして、統合硫黄カソード担持が7mg/cmを超える一方、提案のハイブリッドLi-S電池は、後続サイクルにおいて、高い初期クーロン効率(99.8%超)および高い平均クーロン効率(99%超)を示す。この電解質フレームワークは、全固体電池への移行によってLi金属電池を改善することが予想され、また、他のカソード材料にも拡張可能である。
【0138】
ハイブリッド電池において、化学的および物理的短絡は、溶解したカソード材料を物理的に阻止するとともにLiデンドライトの貫通を抑える高密度固体電解質によって防止可能である。活物質の体積変化は、多孔質固体電解質の互換ホスト構造を設計することによって対応可能である。この目標を実現するため、本発明者らは、高密度・多孔質二層構造を有する3D固体電解質フレームワークを示す。3D二層固体電解質フレームワークには、(a)薄い高密度最下層が高弾性率の剛性障壁であり、電極と液体電解質とを効率的に分離可能であるとともに、Liデンドライトの貫通を防止可能である、(b)厚い最上多孔質層が薄い高密度層を機械的に支持する、(c)高密度層と多孔質層との間の界面が良好な機械的完全性および連続的なイオン移動を伴って十分に焼結される、(d)固体フレームワークが封入されたカソード材料に対して電子およびイオン伝導性の経路を提供し得る、(e)固体フレームワークがカソード材料を局所的に閉じ込めて、固体硫黄および多硫化物カソード液等による体積変化に対応し得る、といった複数の独自の利点がある。本発明者らによる結果が示すこととして、統合硫黄カソード担持が7mg/cmを超える一方、提案のハイブリッドLi-S電池は、後続サイクルごとに、高い初期クーロン効率(99.8%超)および高い平均クーロン効率(99%超)を示す。この電解質フレームワークは、高電圧(LNMO)および空気/Oカソード等、全固体電池への移行によってLi金属電池を改善することが予想され、また、他のカソード材料にも拡張可能である。
【0139】
ガーネット二層フレームワークの作製
高密度多孔質テープを二層テープとして積層した後、共焼結によって有機バインダおよびポリマーを除去することにより、二層フレームワークを作製した。孔隙率70%の犠牲細孔形成体としてガーネット粉末スラリー含有ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)球を用いたスケーラブルなテープキャストによって、多孔質ガーネット構造を作製した。作製プロセスの別途詳細については、実験項に示す。空気および水分の影響を受けやすい硫化物型の超イオン伝導体と異なり、ガーネットは、乾燥空気中での処理に対して化学的に安定しており、取り扱いのための十分な機械的強度を有する。このため、低コストのガーネット固体電解質フレームワークの作製に対して、テープキャスト法を容易にスケーリング可能である。焼結時には、有機フィラーが分解され、ガーネット粉末との一体的な焼結によって、多孔質層が形成された。多孔質層および高密度層の厚さは、テープ厚により制御される。
【0140】
ガーネット二層フレームワークの特性評価
観察し得る剥離なく十分に焼結された多孔質高密度層の界面は、当該界面において良好な接触を示す。この界面は、多孔質から高密度固体電解質への良好なイオン移動を可能にし得る。ガーネット結晶粒の大きな高密度ガーネット層は、活性電極間の化学的および物理的短絡を阻止することができる。二層ガーネットの断面は、35μmの高密度層および70μmの多孔質支持部を含む105μmの合計厚を有する。
【0141】
X線回折(XRD)によって、焼結LiLa2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.2512(LLCZNO)ガーネットの標準的な立方相を確認したところ、立方LiLaNb12(PDF80-0457)と十分に整合する。また、ラマンスペクトルの広範かつ部分的に重畳した帯域によって、LLCZNOガーネットの立方相が確認される。Au/ガーネット/Au対称阻止セルにおける電気化学的インピーダンス分光法(EIS)によって、高密度ガーネットペレットのイオン伝導度を測定した。25℃~50℃の温度範囲でEISを実施した。Au電極の容量性挙動に対応する低周波の切片を用いて、バルクおよび粒界の寄与を含む合計抵抗を計算した。σ=L/(Z×A)を用いてイオン伝導度を計算した(ただし、Zはナイキストプロット中の実軸のインピーダンス、Lはガーネットセラミックディスク長、Aは表面積である)。これは、22℃で2.2×10-4S/cmに対応する。温度の逆数に対するガーネット電解質の対数イオン伝導度をプロットした。アレニウスの式を用いることにより、温度の関数として、伝導度から0.35eVの活性化エネルギーを計算した。
【0142】
ガーネット固体電解質/Li金属の電気化学的特性評価
ガーネットと電極との界面の構造および化学的性質が固体電解質を適用する場合の主要な課題原因である。近年の研究は、界面での不十分な接触が固体電解質および電極の高い界面インピーダンスにつながる主要因であることを示している。たとえば、薄い(約5nm)原子層堆積(ALD)界面層によって、Li金属/ガーネットの界面抵抗は大幅に低下し得る。報告された真空ベースのプロセスと比較して、電池製造に向けては、固体電解質と電極との間の人工的な中間層としてのゲル電解質がよりスケーラブルとなり得る。この場合、ぬれ性が良好なゲル電解質は、界面において一様に分布したLiイオン束を与えるのみならず、Li金属との接触後の固体電解質の潜在的な減少を防止し得る。個々の細孔がガーネット表面に分布し、この空洞によってLi金属との接触の表面積が小さくなるため、Liイオン移動が不均一になり、界面抵抗が高くなる。ガーネット表面をコンフォーマルに被覆するように、ポリマーゲル層を実装した。液体充填中間層は、ガーネットとリチウム金属との間の密接触を保証する。厚さ2μmのポリエチレンオキシド(PEO)ポリマーがガーネットをコンフォーマルに被覆する。このポリマー層は、界面の起伏を補償するとともに、界面を通る均一なLiイオン束を可能にする。
【0143】
定電流の印加による対称ハイブリッドセル(Li/ポリマー/ガーネット/ポリマー/Li)中のLi金属の定電流プレーティングおよびストリッピングによって、界面の安定性を評価した。0.3mA/cmの電流密度下でのLi/ハイブリッド電解質/Liセルの時間に応じた電圧プロファイルを決定した。正の電圧がLiストリッピングを示し、負の電圧がLiプレーティングである。セルは、サイクルごとに0.5時間動作させた。セルは、最初は±0.3Vの電圧を示したが、10時間のサイクル後は、電圧が±0.2Vまで徐々に低下した。160時間を超えてハイブリッドセルをサイクルさせたが、ストリッピング/プレーティング電圧は比較的安定したままであった。比較として、ポリマー界面のないLi/ガーネット/Li対称セルも作製してテストした。差し込み図は、2種類のセルの初期サイクルおよびハイブリッドセルの140時間目のサイクルを示している。Li/ガーネット/Liセルの場合は、高いインピーダンスおよび大きな分極が観察され、滑らかではない電圧プラトーがLiとガーネットとの間の大きな界面抵抗を示唆している。これに対して、ハイブリッドセルは、滑らかな電圧曲線を示す。電圧プロファイル
の周期的な変動は、固体ハイブリッド電解質性能の温度依存性を示している。0.5および1.0mA/cmの負荷下でのLi/ハイブリッド電解質/Liセルの電圧プロファイルは、ハイブリッド電解質の高印加電流能力を実証している。
【0144】
二層ガーネットフレームワークを備えた概念実証Li-S電池
二層固体ガーネットハイブリッド電解質を用いたLi-S電池の電気化学的性能を決定した。CNTを多孔質ガーネットの微細構造に浸潤させて、改良された電子伝導性ネットワークを構成した。CNT浸潤二層ガーネットフレームワークの写真およびSEM画像は、多孔質構造の内側がCNT被覆されていることを示す。硫黄およびその可溶多硫化物の体積膨張は、固体ガーネットフレームワークにより対応可能である。160℃で硫黄粉末を多孔質マトリクスに溶融させることによって、硫黄を直接担持させた。Li-Sカソードの断面および元素マッピングを実行した。元素マッピング画像は、二層ガーネットの細孔中の硫黄分布を明らかに示す。硫黄とガーネットとの間の付加的な細孔によって、液体電解質が内部チャネルへと入り込み、硫黄を被覆する。
【0145】
硫黄の質量担持が約7.5mg/cmと高いハイブリッド二層セルを作製した。電流密度0.2mA/cmにおいて、ハイブリッドLi-Sセルの充放電電圧プロファイルを構成した。最初のサイクルの放電容量は645mAh/g前後であり、クーロン効率は99.8%であるが、これは例外的に高い値である。長く平坦な電圧プラトーは、充放電曲線間の相容れない分極を示している。これは、表面積が大きくて硫黄との反応部位数が増え、電圧分極の低下および良好な容量を可能にする薄い高密度層および多孔質ガーネット層が寄与し得る。サイクル性能をプロットした。最初の数サイクルに急激な容量の伸びは発生しておらず、このように硫黄の質量担持が高いハイブリッドセルでは、多硫化物が失われないことを示している。後続サイクルにおいては、クーロン効率が99%超を維持しており、ハイブリッド設計においてシャトル効果が発生していないことが確認される。さらに、質量担持が7.5mg/cmのハイブリッド二層Li-Sセルは、今日利用可能な如何なる固体電池もはるかに超えて、カソード、Liアノード、および電解質の合計質量を考慮したセル全体のエネルギー密度(図16において計算)が248.2Wh/kgである。サイクル性能がわずかに低下しているが、これは、充電生成物LiSおよびLiが後続サイクルで再活性化されないことによると考えられる。硫黄の高い質量担持によって、バルク硫黄カソードの内側でのさらなる反応が妨げられる。
【0146】
本研究は、ハイブリッド電池において二層固体電解質フレームワークを使用することの実現可能性を初めて実証している。これをさらに発展させて、炭素-硫黄複合材をハイブリッドセルに組み込むことによる活性硫黄の量および担持量の増大に焦点が当てられることになる。たとえば、高密度層を薄くするとともに厚い多孔質層中の活物質を増やすことによって二層フレームワークがさらに最適化された場合は、900Wh/kgを超えるエネルギー密度が推定される(図17)。
【0147】
本例は、Li金属電池における化学的および物理的短絡の両問題に対処する3D二層固体電解質フレームワークを説明する。固体電解質のインピーダンスを最小限に抑えるため、バッテリ組み立てのための適切な機械的強度を維持しつつ、高密度ガーネット膜の厚さを数ミクロンまで小さくした。電極材料および液体電解質をホストしつつ、薄い高密度層を機械的に支持する厚い多孔質層を用いて、二層固体電解質フレームワークを設計した。厚い多孔質層は、硫黄カソードをホストする連続したLi/電子経路を有する。また、薄い高密度層は、多硫化物の拡散を阻止するとともに、Liデンドライトの形成を妨げる。二層ガーネット固体電解質フレームワークをLi-S電池に適用して、その実現可能性のほか、高エネルギー密度および優れた性能を実証した。実証したハイブリッドLi-S電池は、7mg/cmを超える高い硫黄担持、後続サイクルの高い初期クーロン効率(99.8%超)および高い平均クーロン効率(99%超)を示す。この電解質フレームワ
ークは、Li金属電池を改善することが予想され、このフレームワークに支えられた電池設計は、高電圧(LNMO)および空気/Oカソード等、商業的に実現可能で本質的に安全なLi金属電池用の他のカソード材料にも拡張可能である。
【0148】
方法
ガーネット固体電解質の作製
改良ゾルゲル法によってLLCZN粉末を合成した。出発原料は、LiNO(99%、Alfa Aesar製)、La(NO(99.9%、Alfa Aesar製)、Ca(NO(99.9%、Sigma Aldrich製)、ZrO(NO(99.9%、Alfa Aesar製)、およびNbCl(99.99%、Alfa Aesar製)とした。これらの化学物質の化学量論量を脱イオン水に溶かし、10%の過剰LiNOを添加して、高温ペレット作製時のリチウム揮発を補償した。クエン酸およびエチレングリコール(1:1モル比)を溶液に添加した。溶液を120℃で12時間にわたり蒸発させて前駆体ゲルを生成した後、400℃および800℃に5時間焼成して、ガーネット粉末を合成した。そして、ガーネット粉末を一軸押圧してペレットにした後、伝導性および安定性の実験のために同種の粉末で覆って1050℃で12時間にわたり焼結した。
【0149】
テープキャストによって二層フレームワークを作製し、高密度層および多孔質層をそれぞれ作製した後、二層テープとして積層した。個々の各層の厚さは、十分に制御した。所望の相で十分に焼成したLLZCNを用いて、スラリーを作製した。分散剤として魚油を含むLLZCN粉末をトルエン、イソプロパノール(IPA)に添加した。24時間のミリングの後、ポリビニルブチラール(PVB)およびフタル酸ブチルベンジル(BBP)をバインダおよび可塑剤として添加した後、さらに24時間にわたってボールミリングを行った。気泡を取り除くため、真空チャンバでの2時間の撹拌によってスラリーを脱気した。脱気プロセスの直後、スラリーが薄膜としてマイラーシート上に引き出されるスロットを有する吊り下げ式チャンバにスラリーを注ぎ込んだ。その後、得られたテープを120℃で1時間乾燥させた。多孔質テープを作製するため、脱気の1時間前に、十分に混ぜたスラリーに対して、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)球を混ぜ込んだ。多孔質層の細孔サイズは、ポリマーベースの細孔形成体のサイズおよびその含有量によって制御可能である。テープを積層し、80℃で2時間にわたって加熱プレスすることにより、多孔質層および高密度層がそれぞれの界面で溶融し、それぞれの界面で良好な接続を構成できるようにした。サンプルを700℃で4時間にわたって予備焼結することにより有機成分を除去した後、1100℃で焼結して最終段階の焼結を行った。焼結プロセスの十分な制御によって、焼結中にサンプルが平坦に保たれるようにしたが、これは、Li/S浸潤およびLi-S電気化学的性能テストに重要である。
【0150】
材料の特性評価
40kVおよび40mAで動作するCuKα放射源を用いて、D8 Advanced
with LynxEye and SolX(Bruker AXS、WI、USA)上で粉末X線回折(XRD)により、相解析を実行した。電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、JEOL 2100F)によって、サンプルの形態を調べた。
【0151】
電気化学的特性評価
アルゴン充填グローブボックスにおいてLi|固体電解質|Li対称セルを作製し、組み立てた。ガーネット固体電解質のイオン伝導度を測定するため、高密度セラミックディスクの両側をAuペーストで被覆し、阻止電極として作用させた。金電極を700℃で焼結して、セラミックペレットとの良好な接触を形成した。そして、高導電性炭素スポンジを備えた2032コインセルとしてセルを組み立てた。炭素スポンジは、緩衝体として作用し、ガーネットセラミックディスクの損傷を防止した。電池テストクリップを用いて、
コインセルとの良好な接触を保持・提供した。セルの縁部は、エポキシ樹脂で封止した。50mVの摂動振幅で1MHz~100mHzの周波数範囲のEISを実行した。σ=L/(Z×A)を用いて伝導度を計算した(ただし、Zはナイキストプロット中の実軸のインピーダンス、Lはガーネットセラミックディスク長、Aは表面積である)。アレニウスの式を用いることにより、温度の関数として、伝導度から活性化エネルギーを求めた。
【0152】
ガーネット固体ベースLi-S電池の作製と特性評価
セルはすべて、アルゴン充填グローブボックスにおいて組み立てた。固体ハイブリッドセルを2032コインセルとして組み立てた。固体ハイブリッドLi-S電池の電解質として、ジメトキシエタン(DME)および1,3-ジオキソラン(DOL)(体積比1:1)の混合物中の1M ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI、Sigma製)を使用した。1~3.5Vのカットオフ電圧窓を用いて、定電流充放電テストを測定した。二層カソードの作製においては、ジメチルホルムアミド(DMF)中の10wt%カーボンナノチューブ(CNT)インクを作製し、数滴のCNTインクを二層ガーネットフレームワークの多孔質層に添加して、100℃の真空中で12時間乾燥させた後、多孔質ガーネット上に元素硫黄粉末を一様に分布させ、160℃で加熱して硫黄を溶融させた。二層ガーネットフレームワークは、約17mgであったが、これは約20mg/cmに対応する。二層ガーネットフレームワークに浸潤した実際の硫黄は、約2.5mgであったが、これは約7.5mg/cmの質量担持に対応する。完成セルは、Ar充填グローブボックスにおいて組み立てた。液体電解質を添加して硫黄カソードを洗浄した。同量の液体電解質を使用した。油圧プレスにおいてLi粒(Sigma製)を薄化することによりLiアノードを作製した。セルを2032コインセルとしてパッケージングし、エポキシ樹脂を用いて封止することにより縁部での空気漏れを防止した。比エネルギー密度の計算(テストしたガーネット二層Li-S電池の比エネルギー密度の計算)を図16に示す。
【0153】
Li金属およびSカソードの厚さおよび質量担持のさらなる最適化によって、900Wh/kgを超えるセルエネルギー密度を実現可能である。
【0154】
図17は、パラメータを最適化した二層ガーネット固体Li-S電池の推定エネルギー密度を示している。
【実施例0155】
本例は、本開示の固体ハイブリッド電解質の説明を与える。また、本例は、このような電解質の構成および特性評価の例を与える。
【0156】
自然に着想した整列ガーネットナノ構造
固体電解質(SSE)を備えた固体Li電池(SSLiB)は、Liデンドライトの貫通を潜在的に阻止して、金属リチウムアノードの適用による安全性の向上した高エネルギー密度を実現可能である。Liイオン電池中のイオン移動の挙動およびイオン伝導性は、電極および電解質材料のねじれの影響を大きく受ける。イオン経路が真っ直ぐの低ねじれ構造が非常に望ましいものの、固体イオン伝導体において実現するのはかなり困難である。本発明者らは、スケーラブルなトップダウン手法によって、マルチスケール整列メソ構造を有する高伝導性ガーネットフレームワークを開発した。イオン伝導性ポリエチレンオキシド(PEO)をメソ多孔質の木材テンプレーティング整列ガーネットナノ構造に組み入れて、ガーネット木材と称する混合ハイブリッドイオン伝導体を得た。柔軟で機械的に堅牢なポリマーとの整列ガーネットの相乗的な統合によって、高イオン伝導性(室温で1.8×10-4S/cm)および良好な機械的可撓性の両者を得た。本研究は、自然に着想した低ねじれの高速イオン伝導体の開発の新たな方向を与える。
【0157】
天然の木材の整列構造に着想を得て、テンプレーティング合成により十分に整列したメソ構造を有する高イオン伝導性ガーネットネットワークを開示する。犠牲テンプレートとして木材を採用することにより、ガーネットメソ構造のマルチスケール整列多孔質、低ねじれ、および高い比表面積を得た。イオン伝導性が高く、Liアノードとの化学的安定性が良好で、電気化学的窓が広いことから、低ねじれの整列固体電解質を作製するモデル系として、ガーネット型LLZOを選択した。木材によりテンプレーティングした整列ガーネット(ガーネット木材と称する)にPEOポリマー電解質を組み入れることにより、複合材電解質を開発した。ポリマー電解質は、付加的な移動経路を提供するとともに、複合材構造の機械的強度を補う。Liイオンは、ガーネット、ポリマーを通り、ガーネット-ポリマー界面に沿って効果的に移動可能である。結果として、ガーネット木材膜は、室温で1.8×10-4S/cmという傑出したイオン伝導性をもたらす。この概念に基づいて、整列ガーネット木材電解質の設計原理および作製プロセスを多種の固体電解質にも拡張可能である。
【0158】
成長速度が高く、低コストで、孔隙率が高いことから、整列ガーネット固体電解質フレームワークを開発するテンプレートとしてアメリカボダイ樹を選定した。化学的処理によって天然のアメリカボダイ樹からリグニンを部分的に除去した後、木材の長手方向(自然成長方向)と垂直に圧縮してスライスすることにより、木材テンプレートを得た(図19a)。機械的プレスによって、木材を高密度にした。高密度化時の隣接セルロースファイバ間に形成された付加的な水素結合によって、フレームワークの高密度構造が維持される。複数の試料の走査電子顕微鏡法(SEM)測定によって、機械的圧縮による形態変化を調べた。圧縮前、木材中のマイクロチャネルは、平均直径が10~50μmの近位円筒形状を有する(図19bおよび図19d)。圧縮後、過去に観察したマイクロチャネルのほとんどは、押しつぶされて亀裂状の間隙となっており、また、隣接チャネルの一部がつながっていた(図19cおよび図19e)。これらの開放チャネルは、圧縮によって激しく変形していたが、それぞれの高整列マルチスケール細孔構造は不変であり(図19f)、前駆体溶液に浸漬した場合に優れた吸収性を示した。たとえば、48時間にわたって浸し、70℃の真空で4時間にわたって乾燥させた後、木材テンプレートの質量は、2.7mgから3.45mgへと27.8%増えていた(図25)。前駆体溶液の高い吸収性、テンプレート細孔の柔軟性、および手順のスケーラビリティは、整列メソ構造でSSEを作製する費用効果の高い生産的な方法を示す。
【0159】
ガーネット前駆体を浸潤させた木材を800℃の酸素中で4時間にわたって焼成することにより、LLZO膜を得た。チャネルが整列した木材テンプレートには、2つの独自機能がある。第1に、木材テンプレート中の自由チャネルは、前駆体溶液をテンプレート燃焼反応に供給する貯留層を与える。第2に、木材テンプレート中の直径2~10nmの整列ナノファイバは、ガーネット膜中の付加的な整列孔隙率のための犠牲細孔形成体として機能する。焼成後の形態変化をSEMによって特性評価した。木材テンプレートによる整列細孔構造は、マイクロスケール(図20a)およびナノスケール(図20b)の両者において、得られるガーネットフレームワークにも継承されていた。木材から直接継承された高整列ガーネット膜は、PEOベースのポリマー電解質との浸潤によって可撓性となる(図20c)。X線回折(XRD)によって、ガーネット膜の結晶相を識別した。木材テンプレートを用いて合成した整列メソ多孔質ガーネットのXRDパターン(図20d)は、アルミニウム(Al)ドーピングおよびLi濃度の変化に起因する高角度でのわずかなピークシフトにも関わらず、立方相ガーネットLiLaNb12(JCPDS#80-0457)とよく整合していた。高速リチウムイオン伝導性ガーネットの代表的な構造として、伝導性ガーネット相を非伝導性ガーネット相から区別する基準としてLiLa(M=Nb、Ta)が広く使用されている。JCPDS#80-0457との整列メソ多孔質ガーネットの良好なXRDパターン整合によって、木材テンプレーティングガーネットが伝導性立方相であることが確認される。
【0160】
得られた整列ガーネットの高分解能透過電子顕微鏡法(HRTEM)によって、ガーネットの明確かつ十分に結晶化された格子構造が明らかである(図22a)。対応する高速フーリエ変換(FFT)パターンによりミラー指数を計算した(図22aの差し込み図)。HRTEMおよびFFTにより導出した格子定数は、12.982Åであり、過去に報告された値と一致する。構造から離脱したより大きなガーネット粒子のHRTEM画像においては、配向がさまざまな結晶粒をはっきりと区別することができる(図21b)。TEMの結果は、整列メソ多孔質ガーネットが高度に結晶化され、十分に接続された多結晶構造を有することを示している。電子エネルギー損失分光法(EELS)によって、ガーネット膜の組成を解析した。図21は、縁取った関心領域(ROI)でのEELSスペクトルを示している。EELSマッピングは、酸素、炭素、およびランタンの相対組成および分布を示している。酸素kエッジ信号およびランタンnエッジ信号の重畳領域は、LLZOの場所を識別する。炭素kエッジ信号はサンプル全体で珍しいが、酸素kエッジ信号および炭素kエッジ信号の小さな重畳領域は識別された。これは、酸素中の焼成によるLiCO不純物が最小であることを示す。
【0161】
PEOポリマー電解質を整列ガーネットに浸潤させてガーネット木材を作製した。図22aは、エネルギー分散X線分光法(EDX)によってポリマーの浸潤を特性評価している。上下から整列ガーネットチャネルまで一様に分布した炭素信号は、ポリマー電解質の完全かつ均一な浸潤を示しており、十分なLiイオン移動経路の構築に不可欠である。本明細書において示唆する通り、3つのLiイオン移動経路が考えられる。第1の経路は、整列PEOポリマー電解質であって、そのバルクイオン伝導度(フィラーなし)は通例、室温で10-7S/cmと低い。第2の経路は、整列ガーネット-ポリマー界面である。界面において、整列メソ多孔質ガーネットは、ポリマーの部分的動態の変化を誘発してリチウムイオン移動に影響を及ぼし得るセラミックフィラーのように振る舞う。ポリマー電解質のイオン伝導性に対してフィラーが及ぼす影響に関する集中的な研究によって、ルイス酸特性を有するセラミックフィラーがアニオン結合および有利な伝導経路の提供によりリチウムイオン移動を促進し得ることが示唆される。第3の経路は、高体積百分率(約68%)の整列ガーネットナノ構造を通る移動である。近年の研究は、ガーネット-ポリマー複合材電解質系における3つの移動経路のうち、ガーネット相を通る伝導が最も好ましく、核磁気共鳴(NMR)を用いて同位体標識されたLiイオンの移動を追跡することにより明らかであることを指摘している。なお、同じ組成を用いて本発明者らの実験室で実現された高密度LLZOの典型的なバルクイオン伝導度は、室温で最大2.2×10-4S/cmである。ただし、このバルクイオン伝導度は、ランダムな細孔および多数の細孔間隙における不十分な固体-固体界面接触による高ねじれ移動経路に起因して、従来のメソ多孔質構造では実現が難しい。これに対して、整列メソ多孔質ガーネット構造の低ねじれによれば、可撓性ガーネット木材の法線方向に沿ったLiイオン移動が阻止されず、イオン伝導性が効果的に促進され得る。
【0162】
電気化学的インピーダンス分光法(EIS)によって、ガーネット木材のイオン伝導性を特性評価した。阻止電極としてステンレス鋼を備えた対称セルとなるようにガーネット木材膜(面積0.1cm、厚さ0.4μm)を組み立て、1MHzから100mHzまで走査した。図22bは、室温(25℃)からPEOの溶融温度(65℃)までテストした電解質膜のナイキストプロットを示している。電解質膜の厚さおよび面積を用いて実験的なイオン伝導度を計算し、その結果を図22cに示す。ガーネット木材膜は、室温で1.8×10-4S/cmというイオン伝導度を実現した。複合材の理論的なイオン伝導度は、各相の総合寄与を体積分率で加重したものである。1.03×10-6S/cmというPEOポリマー電解質の伝導度および2.2×10-4S/cmというガーネットの伝導度を所与として、ガーネット木材の理論的な伝導度は、室温で1.5×10-4S/cmである。各相において連続した伝導経路を有するこの低ねじれ構造において、二相界面
での伝導度の向上がなければ、理論的な伝導度は保持されるはずである。したがって、本発明者らは、合計イオン伝導度に対する界面寄与の増大によって、理論的な伝導度と実験的な伝導度との差が生じ得ると考える。
【0163】
動作温度が高くなると、半円の実インピーダンス軸との交点が下がるが、これは、温度上昇によってイオン伝導性が向上したことを示す(図22b)。95℃において、イオン伝導度は1.1×10-3S/cmまで高くなっているが、これは、室温性能を上回る6.3倍の改善である。ガーネット木材のイオン伝導性の温度依存性は、アレニウスの式によって、
【数4】
と表現可能である。
【0164】
ただし、σはガーネット木材の合計イオン伝導度、Aは頻度因子、Tは絶対温度、Eはガーネット木材の活性化エネルギー、kはボルツマン定数である。ガーネット木材の計算した活性化エネルギーは0.38eVであるが、これは、ポリマー電解質の割合を調整することによってさらに低くすることができる。この効果は、アモルファス伝導相の体積分率の向上および長距離ポリマー鎖可動性の改善等、さまざまな向上効果に起因する。
【0165】
概念実証として、Li金属/ガーネット木材/Li金属対称セルを作製し、Liストリッピング/プレーティングテストを室温で実行した(図22d)。図22eは、各方向30分にわたる電流密度0.1mA/cmでの特徴的な180時間のサイクルを示している。対称セルの電圧応答は、わずかな変動を伴って50mVで安定していた。対称セルは、小さな分極で600時間超にわたって良好にサイクルした(図27)。この長期サイクル性能は、整列メソ多孔質ガーネットによって増強されたガーネット木材膜により、高速で安定したイオン移動が可能になり得ることを示している。また、ポリマー電解質によって、整列ガーネットの機械的可撓性が大幅に向上するため、Li金属電池に使用可能となる。
【0166】
以上、マルチスケール整列メソ多孔質構造を有するガーネット木材複合材電解質を説明した。スケーラブルな圧縮木材テンプレートによって、電気化学的性能および機械的安定性の向上に重要な独自の低ねじれおよび大表面積のメソ構造が得られる。イオン伝導性ポリマーは、整列メソ多孔質ガーネット膜の機械的強度を補うとともに、アモルファス伝導相およびガーネット-ポリマー界面を通る付加的なイオン移動経路を与えるマトリクスとして機能する。整列メソ多孔質ガーネットの本質的な高イオン伝導性および低ねじれと組み合わせたこれらの構造的長所の利益を受け、ガーネット木材複合材電解質は、室温で1.8×10-4S/cm、95℃で1.1×10-3S/cmという高いLiイオン伝導度を実現する。これは、ガーネット自体のバルク伝導度に近く、さらに、ガーネット/ポリマー界面による寄与の増大を示している。ガーネット木材は、高伝導性SSEのための低ねじれ構造として優れた可能性を示すとともに、固体CPEの設計および最適化のモデル研究を提供する。
【0167】
実験項
材料の作製
磁気撹拌によって、化学量論のLiNO(99.0%以上、Aldrich製)、La(NO(99.9%以上、Aldrich製)、Al(NO・9HO(98.0%以上、Aldrich製)、ZrO(NO・xHO(99.9%、Aldrich製)、および酢酸(99.7%超、Aldrich製)を室温でエタノール
(99.8%超、Aldrich製)に溶かすことにより、ガーネット前駆体溶液を作製した。前駆体溶液の総カチオン濃度は、2mol/Lであった。15%の過剰硝酸リチウムを添加して、高焼成温度におけるリチウム損失を補償した。
【0168】
木材テンプレートを前述の溶液に48時間浸して、ガーネット前駆体を含浸させた。木材テンプレートから余分な溶液を取り除き、サンプルを70℃で4時間乾燥させた。次の熱処理を800℃の酸素中で4時間にわたって実行することにより、木材テンプレートを焼き尽くすとともに分散前駆体を焼結した。焼結プロセスの慎重な制御によって、木材テンプレートの微細構造を維持した。ガーネット膜の研削およびイソプロパノール(IPA)中での超音波分解によって、TEM調査用のガーネットナノ粒子およびナノファイバを得た。
【0169】
室温のアルゴン充填グローブボックスにおいて、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI、99.85%以上、Aldrich製、EO:Li=8:1)を含むPEO(Mv=600,000、Aldrich製)を磁気撹拌によりアセトニトリル(無水、99.8%、Aldrich製)に溶かして、PEOベースのポリマー電解質を作製した。15wt%のコハク酸ニトリル(SCN、99%、Aldrich製)を溶液に添加し、SCNが完全に溶解するまで混合物を磁気撹拌した。電気化学的テストに先立ち、整列メソ多孔質ガーネット(ガーネット木材)中のドロップキャストポリマー電解質を室温の真空中で1時間にわたって完全に乾燥させた。
【0170】
材料の特性評価
Cu K放射によって、Bruker D8 Advance上でXRDを実行した。エネルギー分散X線分光計を搭載したHitachi SU-70電界放射型SEMを用いて、SEM画像およびそれぞれの対応するEDX画像を取得した。EELS調査用の電子エネルギー損失分光計を搭載したJEM2100電界放射銃TEMを用いて、TEM画像を取得した。Gatan顕微鏡法セットを用いて、高分解能TEM画像からFFT画像を計算した。阻止電極としてのステンレス鋼プレート間のガーネット木材から成る対称セルに対して、Solartron-1260インピーダンスゲインフェーズアナライザを用いたEIS測定を実行した。各EISテスト前に、熱平衡に達するため所定温度の環境チャンバにおいてセルを30分間放置した後、1MHzから100mHzまで走査して、さまざまな温度におけるインピーダンス曲線を取得した。電極としてのLi金属箔間のガーネット木材から成る対称セルに対して、Bio-Logic VMP3マルチチャネル定電位電解装置を用いたLiストリッピング/プレーティングテストを実行した。アルゴン充填グローブボックスにおいて、各方向に室温で30分間にわたって、0.1mA/cmの電流密度でセルをサイクルさせた。
【0171】
図23図29は、本例の固体電解質の作製およびその特性評価を表す。
【実施例0172】
本例は、本開示の固体ハイブリッド電解質の説明を与える。また、本例は、このような電解質の構成および特性評価の例を与える。
【0173】
リチウムイオン伝導性セラミック繊維:可撓性固体リチウム金属電池の新たな構成
固体リチウム金属電池の設計には、高速リチウムイオン伝導体、良好な電気化学的安定性、および機器統合のためのスケーラブルな処理手法が必要である。本例は、固体電池に使用する上記特徴を備えた可撓性リチウムイオン伝導性セラミック繊維の独自設計を示す。セラミック繊維は、ガーネット型伝導体LiLaZr12を基準とし、リチウムイオン伝導性立方構造、低密度、マルチスケール孔隙率、大表面積/体積率、および良好な可撓性等、多様な望ましい化学的および構造的特性を示した。固体ガーネット繊維に
よって、固体ポリマー電解質が補強され、高リチウムイオン伝導性および500時間超にわたって故障のない安定した長期Liサイクルを実現可能となった。また、この繊維によって、高性能Li金属電池用の超高カソード担持(10.8g/cm硫黄)を実現する3D電極を設計する場合の電解質フレームワークがもたらされた。
【0174】
細かく分布したイオン伝導性相を実現するため、電池中で起こるイオン伝導および電気化学的反応の理想的な構成となるのは、大面積/体積比の繊維構造である。テンプレーティング法は、必要な構造を生成する簡単ながら効果的な方法を提供する。繊維テンプレートをセラミック前駆体溶液に浸した後、熱分解によって有機成分を取り除く。得られる繊維状セラミックは、可撓性または剛性の電池構成への統合を可能にする望ましい特性を特徴とする。たとえば、セラミックファイバネットワークの使用により、ポリマー電解質内にリチウムイオン移動経路が構築され、ポリマーの機械的強度が向上する。あるいは、セラミック繊維は、噛み合わせまたは同心構成での電極材料との組み合わせによって、電解質体積を最小限に抑えるとともに、電極の利用を最大化するため、充電/放電時の活性電解質エリア、リチウムイオン界面移動、および電極体積変化耐性の増大が可能である。
【0175】
本例は、テンプレートに由来するガーネットベースのリチウムイオン伝導性セラミック繊維の作製を実証したものであって、固体バッテリに組み込む優れた特性を有する繊維が生成された。ガーネット繊維の使用により、500時間超の安定したLiサイクルのためのポリマー電解質および3D電極構造を同時に補強して高性能Li金属電池用の10.8g/cmという超高硫黄担持を実現する固体リチウムイオン伝導性フレームワークを提供した。テンプレーティング法の簡便さは、組成および構造が調節されたセラミックの作製に有用であり、低コストで耐久性のある固体電池の構築の可能性を開く。
【0176】
材料と方法
ガーネット繊維の合成
立方相ガーネットを効果的に安定させるとともに室温で高いリチウムイオン伝導性を得るためのさまざまな異価カチオンが提案されている。15vol%の酢酸を含む30mlのエタノールに対して、化学量論量の2.31g LiNO(99%、Alfa Aesar製)、0.48g Al(NO・9HO(98%、Alfa Aesar製)、6.94g La(NO・6HO(99.9%、Alfa Aesar製)、および5.0g ジルコニウムプロポキシド溶液(70wt%、Sigma Aldrich製)を溶かすことにより、Li6.28Al0.24LaZr11.98という化学組成のAlドープLLZOを作製した。過剰LiNO(15wt%)を添加して、後続の焼成手順におけるリチウム損失を補償した。270℃の空気中で10時間アニーリングしてセルロース繊維テンプレートを作製した後、エタノール(Sigma Aldrich製)で洗浄して、100℃で12時間乾燥させた。前処理後、テンプレートを24時間にわたって、2.5mol/LのLLZO前駆体溶液に浸した。多孔質テンプレート中に存在するマルチスケール多孔性によって、LLZO前駆体の均一な含浸が可能であった。熱重量解析(TGA、STAR System製)によって、LLZO前駆体浸潤繊維テンプレートの熱的挙動を解析した。前駆体含浸テンプレートの焼成を異なる温度の酸素中で実行して、ガーネット繊維を得た。波長655nmのLK-H082半導体レーザモデル(Keyence製)を用いてガーネット繊維の3D形態を走査した。40kVおよび40mAで動作するCuKα放射源を用いて、D8 Advanced with LynxEye and SolX(XRD、Bruker AXS製)上で粉末X線回折により、LLZOの結晶相を解析した。エネルギー分散分光計(EDS、Oxford Instruments製)を搭載した分析走査電子顕微鏡(SEM、Hitachi SU-70)によって、微細構造および元素分布を調べた。
【0177】
ガーネット繊維補強複合材ポリマー電解質の作製
本発明者らが先の研究で説明したようなアセトニトリルにLiTFSI(Sigma Aldrich製)およびPEO(約600,000、Sigma Aldrich製)を溶かして、ポリマーマトリクスを作製した。テフロンブロックに載せたガーネット繊維にリチウム塩/ポリマー混合物を繰り返し浸潤させた。複合材ポリマー電解質を最初にアルゴン充填グローブボックスで乾燥させた後、真空オーブンで乾燥させて、残留溶媒を取り除いた後、形態学的および電気化学的性能を特性評価した。比較として、同一のテンプレーティング法により作製された絶縁Al繊維を作製し、対照用複合材電解質としてポリマーマトリクスに組み込んだ。Solartron-1260インピーダンスアナライザを用いて、ステンレス鋼/複合材ポリマー電解質/ステンレス鋼サンドイッチ構成において、複合材ポリマー電解質の電気化学的インピーダンスを測定した。テフロンスペーサを具備して厚さを固定した。25℃から100℃まで、1Hz~1MHzの周波数範囲において20mVのAC振幅でインピーダンステストを実行した。Li/複合材ポリマー電解質/Li封止対称セルを用いて、複合材ポリマー電解質の長期リチウムサイクル安定性および互換性を評価した。環境チャンバ(Tenney製)において、Arbin BT-2000により対称セルの充放電サイクルをモニタリングした。
【0178】
固体Li-S電池用ガーネット繊維電極構成の作製
本発明者らの先の研究と同じプロセスに従って、LiLa2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.2512という組成のガーネット粉末を合成した。スケーラブルなテープキャストおよび高温積層法によって、高密度電解質支持部を作製した。酸素雰囲気下のチューブ炉において、積層したグリーンテープを1050℃で焼結した。酸素中のガーネット電解質支持部上にガーネット繊維を焼結して、カソード浸潤のフレームワークを構成した。OおよびHOレベルがともに0.1ppmを下回るアルゴン充填グローブボックスにおいてセルを組み立てた。極薄アモルファスSi層で被覆した高密度ガーネット電解質支持部上にリチウム金属を溶融させて、適正な界面接触を実現した。
【0179】
N-メチルピロリドン(Sigma Aldrich製)において、質量比8:1:1の硫黄粉末(Sigma Aldrich製)、カーボンナノチューブ(Carbon Solutions製)、およびPVP(約40,000、Sigma Aldrich製)を混合することにより、硫黄スラリーを作製して、約10mg/mLの濃度を実現した。5時間の超音波分解で低濃度の均一懸濁液を得た後、硫黄スラリーの液滴を繰り返しガーネット繊維に適用して、開口細孔の浸潤および乾燥を行った。完成電池の総重量からカソードスラリー浸潤前の未完成のセルの重量を減じた後、カソード混合物中の硫黄の重量比を乗じることによって、最終的な硫黄担持を計算した。微量のDME/DOL中1M
LiTFSIをカソードに導入して、炭素フェルトがスペーサおよび集電体としてカソード側に載置される前の硫黄/ガーネット接触を促進した。エポキシにより電池をコイン型セルとして封止し、Arbin BT-2000に接続して、充放電測定を行った。
【0180】
結果と考察
テンプレートに前駆体溶液を含浸させた後、熱分解変換することによって、リチウムイオン伝導性セラミック繊維を作製した。図30に示すように、可撓性のセラミック繊維は、従来の焼結多孔質セラミック圧粉における離散粒子の剛性ネットワークと大きく異なる元の繊維テンプレートの構造的特性を保持していた。この繊維構造は、リチウムイオン伝導性材料および開口細孔の空間分布に影響を及ぼす製織による連続した交錯ファイバおよび交差糸のネットワークで構成されていた。リチウムイオンの移動は、繊維パターン全体にわたり、多結晶ファイバの内部および表面に沿って発生し得る。微小な多分散相互接続細孔が個々のファイバ間に存在する一方、比較的均一なサイズおよび形状の大きな離散細孔は、隣接糸間に見られた。
【0181】
可撓性ガーネット繊維の特性評価
繊維状セラミック繊維は、さまざまな技術分野における市販製品である。セラミックファイバおよび繊維の生産は、直接スピニングプロセスおよび間接テンプレーティングプロセスに分類され得る。テンプレーティングプロセスの一般的な手順は、図31a~図31cの代表画像により説明される。すなわち、(1)テンプレートを前処理し、(2)テンプレートに前駆体溶液を含浸し、(3)高温でのテンプレートの熱分解および残存構造の焼結によって、前駆体をナノサイズのセラミック酸化物に変換する(図34aの熱重量解析)。ガーネット繊維は、大部分が互いに平行かつ捩れて配置された直径約10μmの連続した個々のマイクロファイバで構成された元のテンプレートの特徴的な物理的特性を本質的に保持していた。断面SEM画像については、図34b~図34dを参照可能である。ファイバは、互いに交差する直径およそ200μmの糸として一体的に束ねられ、周期的に並んだ織編パターンを構成していた。熱処理によって、直径10~20μmの範囲のファイバ間細孔および糸間の大きな細孔を形成した。
【0182】
品質管理および検査を目的として、非破壊3Dレーザ走査の適用により、ガーネット繊維の形状の大面積をマッピングした。図31dの再構成デジタル構造は、典型的な上下1本ずつの平織り繊維パターンを示す。このトポロジの高さプロファイルは、パターン中の交差糸分岐の最も高い位置と接地する最も低い位置との間の距離を示す。分岐エリアが一般的に200μm前後の高さである一方、縁部エリアの一部は、わずかに大きな値を示した。縁部の上方巻き上がりは、適正な焼結を保証する厳密なプロセス制御によって取り除くことができる。図31eは、ガーネット繊維の顕著な物理的特徴を示している。通常の焼結セラミックの剛性な見掛けと異なり、ガーネット繊維は、一定の曲げ強度、幾何学的調節、および有機溶媒浸食への耐性に関して、テンプレートと同様であった。テンプレーティング法の簡潔さ、迅速性、およびコスト削減の特性によって、小規模作製から大規模製造への円滑な移行も可能となる。図35は、大寸法の特定形状に対してガーネット繊維を調節可能な方法を示している。
【0183】
多用途のセラミック構造を作製できるほか、テンプレーティング法は、複合酸化物の合成に際して化学的柔軟性を提供する。公称組成がLiLaZr12のガーネット型伝導体は、立方および正方という2つの相で存在する。立方構造は、高イオン伝導性に有利であるが、高温でしか安定しない。図31fに示すように、多価カチオンのドーピングおよび前駆体溶液中のリチウム濃度の最適化による簡単な組成設計によって、800℃という低い焼結温度で立方相の安定化を実現可能である。リチウムの過剰な揮発およびジルコニウム酸ランタン(LZO)相の分離の原因となる過焼結を焼成プロセスが回避するように、注意を向ける必要がある。図31gにおいて、ガーネットファイバの構成化学元素の均一な分布をEDSにより確認した。元素アルミニウムは、その簡潔さおよび低コストにより、立方相を安定させるとともに焼結を促進するドーピングカチオンとして機能していた。
【0184】
ガーネット繊維補強可撓性複合材ポリマー電解質
図32に示すように、ガーネット繊維の構造的および化学的利点は、複合材ポリマー電解質(CPE)の機械的および電気化学的特性を補強するのに理想的となる。PEOおよびリチウム塩を含む溶液をガーネット繊維に真空浸潤させることによって、自立CPEを作製した。図32aの乾燥CPEの見掛けは柔軟かつ可撓性であり、これは、効率的なぬれおよび毛細管作用によって、流体をマルチレベル細孔にうまく引き込み、ガーネットファイバとポリマーマトリクスとの間の強力な物理的結合が可能になったことを示す。断面微細構造解析によって、図36aの目立つ細孔なく、CPEが十分に高密度化されたように見えることがさらに確認された。硬化CPEは、均一な固体に見えるものの、異なる界面により分離された物理的および化学的に独自のセラミックおよびポリマー相で構成されていた。したがって、両成分がCPE内のリチウムイオン移動動態に影響を及ぼしており、これは、図32bの模式図により説明される。ほとんどの連続セラミックファイバは、
PEOマトリクスを貫通する糸として束ねられる。糸は一般的に、CPE内のリチウムイオン移動の鉛直方向と垂直に配向する(太い矢印)。リチウムイオンは、(1)PEOを通ってガーネットファイバの「底部」に移動するとともに、PEOから高伝導性ファイバ中に移動し、(2)糸の「上部」に達するまでファイバの長さに沿って移動した後、PEOに戻る、という多段階プロセスにより、CPEを横切って移動する。このプロセスは、抵抗性のガーネット/ポリマー界面の関与またはポリマーバルクを通る拡散(点線矢印)を最小限に抑えるため、リチウムイオンの拡散がポリマーマトリクスの溶媒和リチウム含有物に依存しなくなる。
【0185】
図32cは、異なる温度で測定したCPEの典型的なインピーダンスプロットを示す。リチウムイオン移動プロセスは、CPE内のイオン伝導(高周波円弧)およびCPE/ステンレス鋼界面におけるイオン阻止(低周波傾斜テール)に分割した。円弧の高周波切片における実インピーダンス値を読むことにより、CPEの抵抗を求めた。図32dは、アレニウスプロットを用いてリチウムイオン伝導性の温度依存性を解析したものである。一般的に、リチウムイオン伝導性は、温度の上昇とともに非線形挙動を示した。温度が60℃を超えると、活性化エネルギーがわずかに低下したが、これは、PEOの相転移温度に対応する。PEO-LiX系が熱相転移する場合、伝導性は、活性化エネルギーが急峻に変化することが知られている。これに対して、結晶性ガーネットにおけるリチウムイオン伝導に対するエネルギー障壁は、テスト温度範囲全体で一定を維持すると予想される。したがって、CPEに観察される活性化エネルギーの滑らかな遷移から、ファイバ表面に沿った長距離ガーネット繊維状ネットワークおよび連続チャネルの形成によって、繊維状ガーネット相がCPE内のリチウムイオン伝導において優位となることが示唆される。Liイオン伝導性ガーネット繊維がCPEの電気化学的性能に及ぼす影響をさらに説明するため、同一のテンプレーティング法により作製された絶縁Al繊維を用いて、対照サンプルを構成した(図36b)。この対照サンプルのEISを温度の関数として測定した(図36c)。得られた高インピーダンスかつ対応する低室温の2.48×10-6S/cmという伝導度は、これが本質的に室温のポリマー伝導度であることから、Al相およびセラミック/ポリマー界面がCPE内のLiイオン伝導にほとんど寄与しないことを示しており、Liイオン伝導性ガーネット繊維相による支配的な寄与が確認される。
【0186】
ガーネットCPEの測定したリチウムイオン伝導度は、25℃で2.7×10-5S/cm、60℃で1.8×10-4S/cmであった。これらは、85vol%のCPEを含むPEO-LiXポリマー電解質系の伝導度(25℃で約10-6S/cm、60℃で約10-5S/cm)よりも1桁高い。これは、報告されたイオン伝導度が25℃で4×10-4S/cmである一方、体積分率で15vol%しかCPEを含まないAlドープガーネットに起因する。対応する25℃での理論的な体積分率正規化CPE伝導度は、6×10-5S/cmであり、これは測定したCPE伝導度と整合する。したがって、ガーネットセラミック繊維の高密度化プロセスの最適化によるガーネット相体積分率の増大によって、伝導性の大幅な向上も容易に実現可能となる。
【0187】
定電流ストリッピング(0.5時間)およびプレーティング(0.5時間)測定によって、CPEの長期リチウムサイクルの安定性および互換性を評価した。図36eにおいて、60℃でのテスト期間全体にわたり、電流密度の関数としての安定したDCサイクルを実現した。電流密度を0.05mA/cmおよび0.1mA/cmに設定した場合、対称セルはそれぞれ、15mVおよび27mVという低い過電圧を実現した。電流密度が0.2mA/cmに上昇すると、過電圧が急上昇して、47mVという最大値に達した。テスト期間の残りでは、過電圧が徐々に低下して、41mVで安定した。電圧対電流密度により得られる全体抵抗およびインピーダンス測定結果(図37a)は、電流密度および動作時間の増大とともに低下したが、これは、CPEにおける活性化拡散プロセスおよびリチウム/CPE界面の改善によると考えられる。また、低い動作温度(図37b)お
よび高い電流密度(図37c)において、CPEの安定した定電流サイクルを実現した。実際の用途の場合、過電圧のさらなる低下および動作寿命の延長には、マルチレベル細孔におけるガーネット相担持の増加および硫黄架橋ポリマーの採用が必要である。
【0188】
ガーネット繊維構造の3D電極構成
3D電極構成の構築にもガーネット繊維を利用可能であって、繊維を高密度電解質支持部上で焼結する(図33a)とともに、電極材料を繊維構造に浸潤させる。ここでは、硫黄カソードの高エネルギー密度および低材料コストによる概念実証として、Li-Sバッテリを示す。繊維状構造の十分に分布した細孔によって、繊維は容易に、高い硫黄担持に対応可能となった。図33bは、10.8mg/cmの硫黄を担持したガーネット繊維のSEM画像を示している。ガーネットファイバを一体的に結び付けるとともに、開口細孔を硫黄/炭素混合物で充填した。図38aにおいては、糸/電解質境界の領域を横切るEDX線形走査により、ガーネット糸および電解質の露出面上の硫黄/炭素が明らかである。図38bにおいては、断面解析によって、硫黄/炭素混合物が多孔質繊維を貫通して個々のファイバを被覆し、高密度電解質表面に達していることが示される。図33cにおいては、高倍率の下、EDXマッピングによって、ガーネットファイバに担持された硫黄/炭素の均一な元素分布ならびに連続したリチウムイオン伝導相、電子伝導相、および硫黄相間の密接触が確認される。
【0189】
固体Li-S電池を組み立てて、ガーネット繊維3D電極構成の電気化学的利点を実証した。微量の液体電解質を添加して、硫黄を活性化するとともに、望ましくないリチウムイオン障壁を生成することなく、ガーネットと硫黄との間の接触を改善した。このハイブリッド構成は、微量の液体電解質の添加にも関わらず、依然として大部分が固体であった。図39において、高密度ガーネット電解質支持部は、リチウムイオン伝導体、電子絶縁体、および多硫化リチウムシャトルシールドとして機能した。
【0190】
10.8mg/cmの硫黄を担持した固体Li-S電池を0.15mA/cmでサイクルさせた場合の充放電プロファイルを図33dに示す。硫黄カソードは、約2.1Vおよび約1.8Vに2つの放電プラトーを示したが、充電プロファイルでは、約2.38Vおよび約2.43Vに対応するプラトーが存在した。充放電間の相対的に大きな分極過電圧(約0.6V)は、相対的に厚いガーネット電解質およびガーネット電解質表面の不純物による分極寄与が原因と考えられるが、これらは、電解質を薄くするとともに防湿LiF相または別の液体電解質を追加することによって改善可能である。放電容量は、微量の液体電解質の追加による連続したぬれプロセスによって硫黄の利用が改善したことにより5回目のサイクルで1,250mAh/gという高い値に達した。また、3D Liイオン伝導性電極構造によって、0.75mA/cmの電流密度での固体Li-S電池のサイクルに成功した(図40)。繊維電極構成の体積利用を最大化するため、ほぼ2倍の硫黄含有量(約18.6mg/cm)を試行した。このように高い硫黄担持によって利用が低下するとともに、サイクルが早期に劣化した(図41)。ただし、800mAh/gという安定した可逆の高容量によって、ガーネット繊維で構築した電極フレームワークのエネルギー貯蔵容量が確認された。
【0191】
高密度の固体電解質を用いてリチウムと硫黄とを分離するLi-S電池の理論的なエネルギー密度は、セルレベルで500Wh/kgという高い値が推定された。比較として、図42aは、硫黄担持用のセラミック繊維およびリチウムとの界面の可変高密度電解質構造を利用した固体Li-S電池のエネルギー密度を示している。500μm厚の電解質支持部および電解質面積の63%の利用により、達成可能なエネルギー密度は、71Wh/kgであった。電解質支持部の厚さを100μmまで小さくするとともに電解質/電極面積の整合によってより多くの硫黄を担持することにより、281Wh/kgという高いエネルギー密度も可能となる。電解質支持部をさらに薄くするには、機械的強度を維持する
ための複雑な電解質構造の開発が必要である。図42bは、薄い高密度電解質(20μm)および多孔質基板(70μm)から成る必要な二層構造の代表的なSEM画像を示している。リチウム金蔵を細孔に注入して、十分なリチウム/ガーネット移動界面を生成するとともに、機械的強度をさらに増進することも可能である。ガーネット繊維および二層支持部を統合することによって、352Wh/kgというさらに高いエネルギー密度を実現可能となるが、これは、最先端のリチウムイオン電池の容量をはるかに超えている。
【0192】
本発明者らは、単純なテンプレーティング法により作製された可撓性リチウムイオン伝導性ガーネット繊維の実証に成功した。可撓性ファイバガーネット繊維独自の構成上の利点によって、連続したリチウムイオン伝導経路および高表面体積比を有する固体電解質フレームワークを生成可能となる。この繊維を固体ポリマー電解質に組み込むことにより、リチウムイオン伝導性の向上および500時間超の安定したLiサイクルが可能となる。また、調節されたガーネット繊維の使用により、3D多孔質電極を作製して、高硫黄担持(10.8mg/cm)に対応するとともに、得られた電池が1000mAh/gという高い容量をもたらした。現行の実験室スケールの作製手順は、手頃で確実な産業関連のスケールの生産に移転可能である。これまでの初期的な試みは、固体リチウム金属電池を対象としてきたが、本例に利用する新規な構造設計方策は、リチウムイオン技術を超えるエネルギー貯蔵および変換のための他の固体機器にも適用可能と予想される。
【0193】
図32図42は、本例の可撓性固体電解質およびこれら電解質の特性評価を表す。これらの図は、熱重量解析、付加的なSEM画像、大寸法のガーネット繊維の写真、複合材ポリマー電解質の特性評価、硫黄浸潤ガーネット繊維電極のSEM画像、ガーネットおよび硫黄の安定性の特性評価、高硫黄担持の固体電池の性能、ならびにエネルギー密度の計算を示す。
【実施例0194】
本例は、本開示の固体ハイブリッド電解質の説明を与える。また、本例は、このような電解質の構成および特性評価の例を与える。
【0195】
リチウム電池用の3Dガーネットナノファイバネットワークを備えた可撓性固体イオン伝導性膜
リチウムの最も高い比容量(3860mA/g)および最も低い負の電気化学ポテンシャル(約3.040V対標準的な水素電極)により、最先端のリチウムイオン電池(LIB)技術を超えて、金属リチウムアノードで従来のイオンインターカレーションアノード材料を置き換えるのが非常に望ましい。本例においては、PEOベースの複合材において連続したLi移動チャネルを提供するガーネット型Li6.4LaZrAl0.212(LLZO)リチウムイオン伝導体に基づく3次元(3D)Liイオン伝導性セラミックネットワークを説明する。この複合材構造は、ポリマーマトリクスの機械的特性を向上させる構造的補強をさらにもたらす。可撓性固体電解質複合材膜は、室温で2.5×10-4S/cmというイオン伝導度を示した。この膜は、500時間前後にわたる電流密度0.2mA/cmおよび300時間超にわたる電流密度0.5mA/cmでの室温におけるリチウムストリッピング/プレーティングの繰り返しにおいて、Li|電解質|Li対称セルのデンドライトを効果的の阻止可能である。これらの結果は、可撓性リチウムイオン電池およびリチウム-硫黄電池等の他の電気化学的エネルギー貯蔵系に適用可能な全固体イオン伝導性膜を提供する。
【0196】
本例は、リチウム電池用の3次元(3D)イオン伝導性ネットワークおよびポリマー電解質に基づく可撓性固体リチウムイオン伝導性膜を説明する。3Dイオン伝導性ネットワークは、室温での固体電解質膜のイオン伝導性および従来のポリマー電解質の機械的強度を向上するパーコレーションガーネット型Li6.4LaZrAl0.212(L
LZO)固体電解質ナノファイバに基づく。この膜は、リチウムデンドライトを効果的に阻止するため、高電圧および高機械的安定性に対する優れた電気化学的安定性を示している。本研究は、高性能のリチウム電池を可能にする大きなブレークスルーを表す。
【0197】
本例においては、リチウム電池用の全固体イオン伝導性膜として、PEOベースの複合材電解質において連続したLi移動チャネルを提供するガーネット型Li6.4LaZrAl0.212(LLZO)ナノファイバに基づく3次元(3D)セラミックネットワークの開発に成功した。(a)元素置換の最適化により室温で10-3S/cmに迫る高いイオン伝導度、(b)リチウム金属に対する良好な化学的安定性、ならびに(c)空気および水分に対する良好な化学的安定性といった複数の望ましい物理的および化学的特性から、ガーネット型リチウムイオン伝導性セラミックを無機成分として選択した。図47は、3D LLZO/ポリマー複合材膜の模式的構造を示している。LLZO多孔質構造は、ランダムに分布・相互接続したナノファイバから成り、連続したリチウムイオン伝導性ネットワークを構成する。そして、Li塩/PEOポリマーが多孔質3Dセラミックネットワークに充填され、3Dガーネット/ポリマー複合材膜が形成される。ポリマー電解質を作製する従来の方法と異なり、3Dガーネット/ポリマー複合材膜では、フィラーをポリマーと機械的に混ぜ合わせる必要がなく、代わりに本発明者らは、予め形成された3Dセラミック構造をLi塩/ポリマー溶液に直接浸して、所望のポリマー複合材電解質ハイブリッド構造を得ることができ、これによって、作製プロセスが簡素化されるとともにフィラーの凝集が回避される。
【0198】
結果と考察
図48は、可撓性固体ガーネットLLZOナノファイバ補強ポリマー複合材電解質を合成する手順を模式的に示している。図48aに示すように、関連するガーネットLLZO塩と混合したポリビニルピロリドン(PVP)ポリマーのエレクトロスピニングによってガーネットLLZOナノファイバを作製した後、800℃の空気中で2時間にわたって、作製したナノファイバを焼成した。エレクトロスピニングセットアップのドラム収集器上では、薄い不織生地を覆ってナノファイバを収集した。
【0199】
3D多孔質ガーネットナノファイバネットワークを用いたFRPC Liイオン伝導性膜の模式的な作製を図2bに示す。ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドリチウム塩(LiTFSI)等のLi塩とのPEOポリマー混合物を作製する。そして、Li塩/PEOポリマーを3Dナノファイバで補強して複合材電解質を構成するが、これは、ファイバ補強ポリマー複合材(FRPC)電解質膜と称し得る。フィラー含有ポリマー電解質と比較して、FRPC電解質膜は、3Dガーネットナノファイバネットワークのフレームワークを維持するとともに、ポリマー電解質の完全性を向上させる連続したナノファイバ構造のため、優れた機械的特性を有すると考えられる。
【0200】
図48cおよび図48eに示すように、走査電子顕微鏡法(SEM)によって、紡糸したPVP/ガーネット塩ナノファイバおよび焼成したガーネットナノファイバの形態を特性評価した。焼成前、PVP/ガーネット塩ナノファイバは滑らかな表面を有しており、直径は平均で256nmである。対応する直径分布を図48dに示す。800℃の空気中での焼成後、PVPポリマーを除去して、ガーネットLLZOナノファイバを得た。ナノファイバの平均直径は、138nmまで小さくなっていた。それぞれの直径分布を図48fに示す。アニーリング後、ガーネットナノファイバを互いに「相互接合」し、架橋3Dガーネットナノファイバネットワークを構成した。ナノファイバ間の大きな空間体積により、Li塩/ポリマー浸潤を促進して、複合材膜を構成可能である。膜の可撓性を図48gに示す。そして、屈曲性の電解質膜の採用により、可撓性固体リチウム電池を構成可能である。なお、可撓性3Dイオン伝導性ネットワークの設計は主として、セラミックガーネットナノファイバに依存するが、これに対しては、良好なイオン伝導性および電池作製
の実現可能性のため、薄くて機械的に安定した構造が望ましい。良好な機械的安定性を維持しつつ、より薄いポリマー複合材電解質を実現するため、いくつかの重要なパラメータを考慮する必要があり、エレクトロスピニングプロセス(たとえば、収集時間、ドラム回転速度、シリンジ移動速度等)、前駆体溶液の作製(たとえば、ガーネット塩濃度、ポリマー濃度、ポリマー分子量、溶媒選択等)、ならびに熱アニーリングの最適化(たとえば、加熱率、温度、時間、冷却率等)が挙げられる。
【0201】
図49は、ガーネットナノファイバおよびその結果としてのFRPC電解質の形態学的特性評価を示している。図49aに示すように、ガーネットナノファイバをそれぞれの交点で一体的に接合して、架橋ネットワークを構成した。これらの相互接続ガーネットナノファイバは、長距離リチウム移動チャネルの延長による連続したイオン伝導経路を提供するが、これは、通常のポリマーマトリクス中に分散した孤立粒子フィラーよりも優れているはずである。図49bおよび図49cは、ガーネットナノファイバの透過電子顕微鏡(TEM)画像を示している。ガーネットナノファイバは、長く連続したナノファイバを構成する相互接続した小さな結晶子から成る多結晶構造を有する(図49b)。図53は、平均粒径が直径20nmのガーネットナノファイバの拡大TEM画像を示している。図49cは、ガーネット粒の高結晶化構造を示している。
【0202】
FRPC電解質の形態をSEMにより調べた(図49d~図49f)。FRPC電解質は、PEO-LiTFSIポリマーに由来する滑らかな表面を示していた(図49d)。FRPC電解質の内側では、3D多孔質ガーネットナノファイバネットワークが複合材の主構造を支持し、PEO-LiTFSIポリマーが多孔質ガーネット膜に浸潤してガーネットナノファイバ間の空間を満たしていることが観察された。FRPC電解質の断面画像は、40~50μmの厚さを示していた(図49e)。ガーネットナノファイバとPEO-LiTFSIポリマーとの間の相間接触を改善するため、ポリマー溶融温度(T)をわずかに上回る60℃でFRPC電解質を熱処理して、溶融したPEO-LiTFSIポリマーが3D多孔質ガーネットナノファイバネットワークに十分に浸潤し得るようにした。図49fに示すように、熱処理の後、PEO-LiTFSIポリマーに十分なガーネットナノファイバを埋め込んだ。ガーネットナノファイバは、PEO-LiTFSIポリマー被覆によって、平均直径が500nmまで大きくなった。相互接続された細孔をポリマーで満たして、良好なリチウムイオン移動を維持した。FRPC電解質膜は、相互接合セラミックガーネットナノファイバネットワーク、連続ガーネットファイバ/ポリマー界面、およびLi塩含有ポリマーマトリクスという3つのイオン伝導経路を有することが提案されている。Li塩含有ポリマー電解質よりも高いガーネット型電解質のイオン伝導性により、本発明者らは、前者2つのイオン伝導経路が、電解質膜のイオン伝導性を向上させる支配的な因子であると考える。
【0203】
熱重量解析(TGA)によって、焼成プロセス中のガーネットナノファイバ形成を調べた。TGAは、10℃/分という急速な加熱率の空気流下で実行した。図50aは、PVPポリマーおよびガーネット前駆体を含む紡糸したナノファイバのTGAプロファイルを示している。この結果は、750℃超で重量が安定し、安定したガーネットナノファイバが形成されたことを示している。図50bは、PEO/LiTFSIおよびFRPC電解質のTGAプロファイルを比較したものである。両電解質とも、200℃前後までで熱的に安定した。急速加熱プロセスにおいて、ポリマーは、200℃超で分解し始め、400℃前後でほぼ完全に分解したことにより、大きな質量減少を示していた。400℃の傾斜は、LiTFSIの分解であった。FRPC電解質の場合、重量は500℃で安定し、その他は、空気中のガーネット材料の優れた安定性のため、ガーネットナノファイバ膜であった。ポリマー電解質の場合、重量は650℃で安定し、分解したLiTFSI塩が残っていた。
【0204】
固体電解質、特にポリマー電解質を使用する場合、熱的安定は重要な検討事項である。カーボネート電解質等の従来の液体電解質は、短絡、過充電、および高温という極限状態に電池があると、熱暴走を引き起こす傾向がある。ポリマー電解質は、その比較的高い熱的安定性により、液体電解質よりも安全な選択肢となる。従来のポリマー電解質は、それ自体のポリマー構造上に構築され、フィラーが電解質の十分な機械的支持部となり得ないため、高温、特にポリマー熱分解温度超では、必然的に溶融して収縮し、カソードとアノードとの間の直接接触をもたらす可能性があり、これは安全性に対する大きな懸念である。FRPC電解質がこの問題に対処し得るのは、ポリマー電解質中のガーネットナノファイバ膜が、ポリマーが失われた後でもカソードとアノードとの接触を物理的に阻止するセラミック障壁を提供するためである。
【0205】
図50cおよび図50dは、従来のポリマー電解質および本研究において開発した新規なFRPC電解質の燃焼テストを比較したものである。同じ方法でPEO-LiTFSIポリマーを作製する一方、フィラーとしてガーネットナノ粉末(対3Dガーネットネットワーク)を使用することにより、従来のポリマー電解質を作製した。ポリマーおよびフィラーの質量比は、4・1に制御した。図50cにおいて、ポリマー電解質は、点火装置に近づいた瞬間に発火し、急速に燃え尽きて灰になった。この高い可燃性は、ポリマー電解質の不十分な熱的安定性を示している。比較として、FRPC電解質は、ポリマー成分が失われた場合であっても傑出した熱的安定性を示し、ガーネットナノファイバ膜は依然としてその構造を保っていた(図50d)。FRPC電解質が提供し得るこの低い可燃性は、すべてのリチウム金属およびリチウムイオン電池の安全性を高める。
【0206】
800℃で2時間にわたって焼成したLLZOガーネットナノファイバの粉末X線回折(XRD)パターンを図51aに示す。ほぼすべての回折ピークが立方相ガーネットLiLaNb12(JCPBSカード80-0457)と非常によく整合する。LiLa(M=Nb、Ta)は、高速リチウムイオン伝導処理ガーネット状構造の第1の例であり、LLZO材料のガーネット構造を調べるモデルとして広く利用されている代表的な構造である。したがって、ここでは標準的なLiLaNb12 XRDプロファイルを使用して、合成したガーネットナノファイバ構造を識別した。微量のLaZrを識別したが、他の不純物は検出限界未満であった。TG結果によれば、前駆体の酸化物への分解は、約750℃で完了している。800℃までさらに加熱すると、酸化物が反応して、立方相LLZOガーネット構造が形成された。ただし、微量のLaZr相は、高温でのリチウム損失によっても形成される可能性がある。
【0207】
電気化学的インピーダンス分光法(EIS)によって、FRPC電解質の総合的なリチウムイオン伝導性を特性評価した。図51bは、1Hz~1MHzの周波数範囲におけるステンレス鋼阻止電極間に挟まれたFRPC電解質の典型的なナイキストプロットを示している。各インピーダンスプロファイルは、高周波での実軸切片、中間周波数での半円、および低周波での傾斜直線を示している。高周波および中間周波数領域における実軸上の延長半円および半円の切片は、FRPC電解質のバルク緩和を表す。低周波テールは、リチウムイオンの移動および阻止電極の表面の不均一性に起因する。図51cは、FRPC電解質のアレニウスプロットを示している。FRPC電解質の厚さおよびステンレス電極の直径に基づいて、リチウムイオン伝導度を計算した。立方相LLZOガーネットペレットのリチウムイオン伝導度が10-3S/cmと高くなる一方、リチウム塩充填PEOは一般的に、室温で10-6~10-9S/cmのオーダである。伝導性立方LLZOガーネットおよびリチウムPEOを組み合わせた本発明者らのFRPC電解質は、室温で2.5×10-4S/cmというかなり高いイオン伝導度を示し得る。
【0208】
高電圧リチウム電池のポリマー電解質適用を決定する別の主要因は、大きな電気化学的窓である。図51dは、リチウム金属を基準対電極として使用し、ステンレス鋼を作動電
極として使用するFRPC電解質の線形掃引ボルタンメトリ(LSV)プロファイルの結果を示している。FRPC電解質は、最大6.0V対Li/Liの安定した電位窓を示しており、この伝導性膜が高電圧リチウム電池のほとんどの要件を満たし得ることを示している。
【0209】
Li|FRPC電解質|Li対称セルを用いて、Liデンドライトに対するFRPC電解質膜の機械的安定性を評価した。定電流での充放電プロセスにおいて、リチウムイオンは、リチウム金属電極のプレーティング/ストリッピングによって、リチウム金属電池の充放電動作を模倣する。図52aは、対称セルセットアップの模式図を表す。FRPC電解質膜は、2つのリチウム金属箔で挟み、封止してコインセルとした。図52bは、0.2mA/cmの定電流密度および15℃の温度で230時間超にわたってサイクルさせたFRPC電解質膜を有するセルの時間に応じた電圧プロファイルを示している。対称セルは、0.5時間にわたって周期的に充放電させた。正の電圧がLiストリッピングであり、負の電圧値がLiプレーティングプロセスを表す。最初の70時間において、セルの電圧は0.3Vから0.4Vまでわずかに上昇した後、0.4Vで安定した。
【0210】
図52cに示すように、テスト温度が25℃まで上昇すると、高温でのイオン伝導性の向上により、電圧は0.3Vまで低下した。後続の長時間サイクルにおいては、サイクル時間が700時間まで経過するのに応じて、電圧は0.2Vまで下がり続けた(図54)。電圧の変動は、周囲環境の温度変化が原因であった。図55に示すように、2つの異なるストリッピング/プレーティングプロセス時間における対称セルの2つの電圧プロファイルを比較した。電圧のヒステリシスは、サイクル時間の経過に伴って明らかに少なくなった。この電圧の低下は、時間の経過とともに電圧が一般的に高くなる液体電解質系とは大きく異なり、主に、インピーダンスの増加をもたらす不均一なLiの堆積および激しい電解質の分解が原因である。近年のポリマー電解質の研究においても、同様の電圧低下が観察されているものの、サイクル時間の経過とともに電圧が下がり続ける原因は説明されていない。本発明者らの理解に基づいて、電圧の低下は、Liの繰り返し電着時の電解質膜とリチウム金属との間の界面の改善によると考えられ、300時間、500時間、および700時間に測定された対称セルのEISスペクトルによって確認される(図52d)。低周波での窪んだ半円は、サイクル中の電解質膜とリチウム金属との間の界面インピーダンスの低下を示す。高周波(図52e)においても、サイクル時間の経過とともに半円が小さくなっているが、これは、電解質膜のバルクインピーダンスの低下を示す。電流密度が0.5mA/cmまで上昇すると、電圧は0.3Vまで高くなり、1000時間までの時間の経過とともにセルも電圧がわずかに低下していたが(図52f)、これは、長いサイクル寿命による良好なサイクル安定性を示す。
【0211】
以上、リチウム電池用として、3Dガーネット/ポリマー複合材の全固体イオン伝導性膜を合成した。エレクトロスピニングおよび高温アニーリングによって、3Dガーネットナノファイバネットワークを作製した。ガーネットナノファイバは、長距離リチウムイオン移動経路を提供するとともに、構造的補強の提供によってポリマーマトリクスを増強する「相互接合」3D構造を構成した。この可撓性固体電解質複合材膜は、室温で2.5×10-4S/cmというイオン伝導度を示した。この膜は、500時間前後にわたる電流密度0.2mA/cmおよび300時間および300時間超にわたる電流密度0.5mA/cmでの室温におけるリチウムストリッピング/プレーティングの繰り返しにおいて|電解質|Li対称セルのデンドライトを効果的の阻止可能である。対称セルについて、サイクル時間の経過とともに電圧の低下が観察されるが、これは、リチウムの繰り返し電着時の界面の改善に起因すると考えられる。本例は、可撓性リチウムイオン電池およびリチウム-硫黄電池等の他の電気化学的エネルギー貯蔵系への適用が予想される固体電解質における3D Liイオン伝導性セラミック材料の開発について記載している。
【0212】
1つまたは複数の特定の実施形態および/または例に関して本開示を説明したが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態および/または例も可能であることが了解される。
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【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書又は図面に記載の発明。