(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153777
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】固体ハイブリッド電解質、その作製方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20241022BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20241022BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241022BHJP
H01M 10/056 20100101ALI20241022BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241022BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20241022BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241022BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241022BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241022BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241022BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241022BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241022BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20241022BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01B1/08
H01M10/052
H01M10/056
H01M4/66 A
H01M10/054
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/485
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121911
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2023030805の分割
【原出願日】2018-03-29
(31)【優先権主張番号】62/478,396
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501073817
【氏名又は名称】ユニバシティ オブ メリーランド カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】フ,リャンビン
(72)【発明者】
【氏名】ワックスマン,エリック,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ボヤン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,ユンフイ
(72)【発明者】
【氏名】フ,クン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】望ましいイオン伝導性を有する固体ハイブリッド電解質およびこのような電解質と電極との間の安定的で良好に接続された界面を実現するポリマー層(たとえば、ポリマー膜)等の非限定的な層を備えた固体ハイブリッド電解質を提供する。
【解決手段】固体ハイブリッド電解質は、固体電解質(SSE)の外面の少なくとも一部または全部に配設された、ポリマー/共重合体層であってもよいし、ゲルポリマー/共重合体層であってもよいポリマー材料の層を有し、望ましい特性を示すイオン伝導性電池の電極との界面を形成する。SSEは、モノリシックSSE体、メソ多孔質SSE体、ファイバ又はストランドを有する無機SSEを含み、ストランドを有する固体電解質の場合、ストランドは、犠牲テンプレートを用いて形成可能であり、固体ハイブリッド電解質は、可撓性のイオン伝導性電池であってもよいイオン伝導性電池に使用可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機固体電解質(SSE)と、
前記固体電解質材料の外面の少なくとも一部または全部に配設されたポリマー材料と、
を含む、固体ハイブリッド電解質。
【請求項2】
前記SSE材料が、モノリシックSSE体またはメソ多孔質SSE体である、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項3】
前記SSE材料が、ディスク、シート、または多面体である、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項4】
前記ポリマー材料が、1つまたは複数の点において、10nm~10ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項5】
前記SSEが、複数のファイバまたはストランドを含む、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項6】
前記ファイバが、織編基板として存在する、請求項5に記載のハイブリッド電解質。
【請求項7】
前記ファイバが、ランダムに配置または配列された、請求項5に記載のハイブリッド電解質。
【請求項8】
前記無機SSE材料の前記ファイバまたはストランドが、相互接続3Dネットワークを形成する、請求項5に記載のハイブリッド電解質。
【請求項9】
前記SSE材料が、リチウムイオン伝導性SSE材料、ナトリウムイオン伝導性SSE材料、またはマグネシウムイオン伝導性SSE材料を含む、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項10】
前記リチウムイオン伝導性SSE材料が、リチウムペロブスカイト材料、Li3N、Li-β-アルミナ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)、Li2.88PO3.86N0.14(LiPON)、Li9AlSiO8、Li10GeP2S12、リチウムガーネット材料、ドープリチウムガーネット材料、リチウムガーネット複合材料、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項9に記載のハイブリッド電解質。
【請求項11】
前記リチウムガーネット材料が、カチオンドープLi5La3M1
2O12(ただし、M1はNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)、カチオンドープLi6La2BaTa2O12、カチオンドープLi7La3Zr2O12、およびカチオンドープLi6BaY2M1
2O12(ただし、M1はNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)であり、カチオンドーパントが、バリウム、イットリウム、亜鉛、またはこれらの組み合わせである、請求項10に記載のハイブリッド電解質。
【請求項12】
前記リチウムガーネット材料が、Li5La3Nb2O12、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6La2SrNb2O12、Li6La2BaNb2O12、Li6La2SrTa2O12、Li6La2BaTa2O12、Li7Y3Zr2O12、Li6.4Y3Zr1.4Ta0.6O12、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、Li6BaY2M1
2O12、Li7Y3Zr2O12、Li6.75BaLa2Nb1.75Zn0.25O12、Li6.75BaLa2Ta1.7
5Zn0.25O12、およびこれらの組み合わせである、請求項10に記載のハイブリッド電解質。
【請求項13】
前記ナトリウムイオン伝導性SSE材料が、β”-Al2O3、Na4Zr2Si2PO12(NASICON)、カチオンドープNASICON、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項9に記載のハイブリッド電解質。
【請求項14】
前記マグネシウムイオン伝導性SSE材料が、Mg1+x(Al,Ti)2(PO4)6(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項9に記載のハイブリッド電解質。
【請求項15】
前記無機SSEが、前記無機SSEの外面に露出した細孔を有し、前記ハイブリッド電解質が、前記細孔の少なくとも一部に配設された少なくとも1つのカソード材料および/または少なくとも1つのアノード材料をさらに含み、
少なくとも1つのカソード材料および少なくとも1つのアノード材料が前記細孔の少なくとも一部に配設される場合、前記少なくとも1つのカソード材料および少なくとも1つのアノード材料が、前記無機SSEの離散かつ電気的に分離された領域に配設される、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項16】
前記ポリマー材料が、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ[ビス(メトキシエトキシエトキシド)-ホスファゼン]、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ二フッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレン、スルホン酸塩(PSS)、ポリ塩化ビニル(PVC)群、ポリ(塩化ビニリデン)ポリプロピレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリイミド、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、PEO含有共重合体(たとえば、ポリスチレン(PS)-PEO共重合体およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEO共重合体)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体)、PVdF含有共重合体、PMMA共重合体、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む(たとえば、そのようなポリマーである)、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項17】
前記ポリマー材料が、ゲルである、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項18】
前記ゲルが、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメトキシエタン(DME)、ジオキソラン(DOL)、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される液体ならびに/またはLiPF6、LiTFSI、LiTFSI、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される塩を含む、請求項17に記載のハイブリッド電解質。
【請求項19】
前記ゲルの前記ポリマー材料が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP共重合体)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PEO、PMMA、PAN、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む(たとえば、そのようなポリマーである)、請求項17に記載のハイブリッド電解質。
【請求項20】
前記ポリマー材料が、金属塩を含む、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項21】
前記ポリマー材料が、セラミックフィラーを含む、請求項1に記載のハイブリッド電解質。
【請求項22】
前記セラミックフィラーが、導電性粒子、非導電性粒子、セラミックナノ材料から成る群から選択される、請求項21に記載のハイブリッド電解質。
【請求項23】
請求項1に記載のハイブリッド電解質を備えた、機器。
【請求項24】
前記ハイブリッド電解質と、
アノードと、
カソードと、
を備え、
前記ハイブリッド電解質が、前記カソードと前記アノードとの間に配設された、電池である、請求項23に記載の機器。
【請求項25】
前記電池が、前記カソードおよび/または前記アノードの少なくとも一部に配設された集電体をさらに備えた、請求項24に記載の機器。
【請求項26】
前記集電体が、導電性の金属または金属合金である、請求項25に記載の機器。
【請求項27】
前記電池が、リチウムイオン伝導性固体電池であり、前記ハイブリッド電解質が、リチウムイオン伝導性SSE材料である、請求項24に記載の機器。
【請求項28】
前記電池が、ナトリウムイオン伝導性固体電池であり、前記ハイブリッド電解質が、ナトリウムイオン伝導性SSE材料である、請求項24に記載の機器。
【請求項29】
前記電池が、マグネシウムイオン伝導性固体電池であり、前記ハイブリッド電解質が、マグネシウムイオン伝導性SSE材料である、請求項24に記載の機器。
【請求項30】
前記カソードおよび/または前記アノードが、導電性炭素材料を含み、前記カソード材料が任意選択として、有機またはゲルイオン導電性電解質をさらに含む、請求項24に記載の機器。
【請求項31】
前記カソードが、硫黄、硫黄複合材、および多硫化物材料から選択される材料を含むか、または、空気である、請求項24に記載の機器。
【請求項32】
前記カソードが、リチウム含有カソード材料から成る群から選択される材料を含む、請求項27に記載の機器。
【請求項33】
前記リチウム含有カソード材料が、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、LiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウムリン酸鉄(LFP)、LiMnPO4、LiCoPO4、およびLi2MMn3O8(ただし、MはFe、Co、およびこれらの組み合わせから選択される)から成る群から選択される、請求項32に記載の機器。
【請求項34】
前記カソードが、ナトリウム含有カソード材料から選択される材料を含む、請求項28に記載の機器。
【請求項35】
前記ナトリウム含有カソード材料が、Na2V2O5、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2O2、Na3V2(PO4)3、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO4、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2O2@グラフェン複合材から成る群から選択される、請求項27に記載の機器。
【請求項36】
前記カソードが、ドープマグネシウム酸化物から成る群から選択される材料を含む、請求項35に記載の機器。
【請求項37】
前記アノードが、シリコン含有材料、スズおよびその合金、スズ/炭素、ならびにリンから成る群から選択される材料を含む、請求項24に記載の機器。
【請求項38】
前記アノードが、リチウムイオン伝導性アノード材料から成る群から選択される材料を含む、請求項24に記載の機器。
【請求項39】
前記リチウムイオン伝導性アノード材料が、炭化リチウム、Li6C、およびチタン酸リチウム(LTO)から成る群から選択されるリチウム含有材料である、請求項38に記載の機器。
【請求項40】
前記アノードが、リチウム金属である、請求項38に記載の機器。
【請求項41】
前記アノードが、ナトリウムイオン伝導性アノード材料から選択される材料を含む、請求項24に記載の機器。
【請求項42】
前記ナトリウム含有アノード材料が、Na2C8H4O4およびNa0.66Li0.22Ti0.78O2から成る群から選択される、請求項41に記載の機器。
【請求項43】
前記アノードが、ナトリウム金属である、請求項41に記載の機器。
【請求項44】
前記アノードが、マグネシウム含有アノード材料である、請求項24に記載の機器。
【請求項45】
前記アノードが、マグネシウム金属である、請求項44に記載の機器。
【請求項46】
前記ハイブリッド電極、カソード、アノード、および任意選択としての前記集電体が、セルを形成し、前記電池が、複数の前記セルを備え、前記セルの各隣接対が、バイポーラ板により分離された、請求項24に記載の機器。
【請求項47】
液体電解質を備えた従来のイオン伝導性電池であり、前記電池が、無機SSEまたは固体ハイブリッド電解質および液体電解質を備え、前記液体電解質が、前記固体ハイブリッド電解質の一部として存在せず、
前記無機SSE材料または前記固体ハイブリッド電解質が、前記従来の電池のセパレータである、請求項23に記載の機器。
【請求項48】
前記無機SSEが、F/S SSEである、請求項47に記載の機器。
【請求項49】
固体ハイブリッド電解質を作製する方法であって、
テンプレートを1つまたは複数のSSE材料前駆体と接触させることと、
任意選択として、前記SSE材料前駆体を反応させることと、
前記テンプレートを前記固体無機材料で熱処理することであり、前記テンプレートが除去され、前記無機SSEが形成される、ことと、
前記焼成テンプレートをポリマー材料と接触させることと、
を含み、
固体ハイブリッド電解質が形成される、方法。
【請求項50】
前記SSE材料が、ゾルゲル前駆体または金属塩である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記テンプレートが、炭素テンプレートまたは生体材料テンプレートである、請求項47または48に記載の方法。
【請求項52】
前記炭素テンプレートが、繊維テンプレートである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記生体材料テンプレートが、木材テンプレートまたは植物テンプレートである、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/478,396号および2017年4月10日に出願された米国仮特許出願第62/483,816号の優先権を主張するものであり、それぞれの開示内容を本明細書に援用する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記述
本発明は、エネルギー省により認められた契約第DEEE0006860号および第DEEE0006860号の下、政府支援によりなされたものである。政府は、本発明の一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、一般的には固体ハイブリッド電解質に関する。より詳細に、本開示は一般的に、イオン伝導性電池に用いられる固体ハイブリッド電解質に関する。
【背景技術】
【0004】
過去20~30年間にわたって、リチウムイオン電池技術は大幅な進歩を遂げた。純粋なリチウム金属は、その他の如何なるリチウムイオンアノード材料との比較でも、最も高い比容量(3860mAh/g)および最も低い電気化学ポテンシャル(-3.04V対標準水素電極)を有する。リチウム金属アノードと関連する重要な課題として、ポリマーセパレータを貫通し、長期サイクル用途において安全性に対する懸念および性能の低下の両者をもたらし得る液体電解質系中の金属デンドライトの形成がある。固体電解質(SSE)は、強力な不可侵障壁として作用することによりLiデンドライトの形成を阻止する解決手段として認識されている。
【0005】
SSEは一般的に、広い電気化学的安定性電位窓およびLiデンドライトの貫通を防止する高い剛性率を有するとともに、通常は不燃性であることから、安全性が向上している。Li金属電池のSSEの主要な課題として、SSEとカソードまたはアノードとの間の高い界面抵抗がある。界面抵抗が高いと、過電圧が大きくなり、セルのサイクル時のクーロン効率が低下する。
【0006】
化学的/物理的短絡および電極の体積変化がリチウム電池のその他2つの主要な課題である。従来の電池において、ポリマーセパレータでは、化学的短絡も物理的短絡も効果的に防止できない。溶解した活物質が必然的にポリマー膜の細孔を通って移動し、高弾性のLiデンドライトが容易に膜を貫通するため、性能が低下するとともに安全性に対する懸念が生じることになる。リチオ化および脱リチオ化時の体積変化によって、界面における活物質の脱離およびセル全体の構造的不安定性等の別の懸念が生じる。硫黄カソードの場合は、多硫化リチウムの形成および液体有機電解質を横切る移動が、高エネルギー密度電池を実現する際の別の主要な制約となる。カソードホストの開発、セパレータの改良、またはLi金属の保護によって短絡を阻止するとともに体積変化に対応する広範囲の研究がなされているものの、これらの課題に同時に対処できる方法はほとんどない。
【0007】
液体有機電解質がリチウムイオン電池(LIB)の業界標準のイオン伝導体である。液体電解質は、高いイオン伝導性および良好な電極とのぬれ性を特徴とする。ただし、液体系は可燃性であり、必然的に活物質の溶解および拡散が生じる上、不要種のカソードからアノードへの移動によって、電極を劣化させるとともに新たなカソード性質の展開を制限する「化学的短絡」が生じるが、これは高電圧カソード、硫黄、および空気/O2に典型的なことである。高電圧LIBにおいては、LiNi0.5Mn1.4O4(LNMO)
スピネルカソードにおける遷移金属の溶解およびそれぞれのアノード表面への拡散によって、急速な容量低下につながる連続的な電解質分解によりLi+が失われる。LIBのほか、Li金属電池においても、活物質の拡散がより支配的である。たとえば、Li-S電池においては、多硫化物の拡散によってLi金属アノードが腐食し、電極間の多硫化物の繰り返し可能なシャトリングによって、クーロン効率の低下および活物質の損失が生じる。同様に、Li-空気/O2電池の移動性酸化還元メディエータによる短絡シャトルも回避すべきである。したがって、このような可溶成分の電池中の移動の最小化または阻止の観点から、化学的短絡を防止することが重要である。
【0008】
より高いエネルギー密度を有すると同時に突発故障の傾向の少ない新たな電池技術を開発する革新的な手法の必要性が急速に高まっている。不要な活物質の移動および金属デンドライトの貫通を阻止することによって、高いエネルギー密度を提供するとともに、可燃性および安全性の問題のほか、化学的および物理的短絡の課題に対処するための鍵となるのが固体電解質である。
【0009】
過去数十年において、導電性酸化物、リン酸塩、水素化物、ハロゲン化物、硫化物、およびポリマーベースの複合物等、多くの傑出した固体電解質材料が固体電池用に開発されてきた。0Dナノ粒子、1Dナノファイバ、2D薄膜、3Dネットワークおよびバルク成分を含む広範な材料集合にわたって、固体リチウムイオン伝導体の電池への組み込みが実証されている。これらのうち、3Dリチウムイオン伝導フレームワークの概念は、現在の固体電池の能力およびサイクル動態の欠陥に対する創造的な解決手段を表し、連続的なLiイオン移動経路および適正な機械的補強を提供する。
【0010】
Liデンドライトの貫通およびSEI形成に対処する方策として、リチウムデンドライトを機械的に抑制するとともにSEI形成を本質的に除去する固体電解質(SSE)の開発がある。さまざまな種類の固体電解質(無機酸化物/非酸化物およびLi塩含有ポリマー)の中で、固体ポリマー電解質が最も大規模に研究されている。PEOベースの複合材においては、粉末がホストPEOポリマーマトリクスに組み込まれ、PEOポリマー鎖の再結晶化動態に影響を及ぼして局所アモルファス領域を促進することにより、Li塩/ポリマー系のイオン伝導性を向上させる。また、粉末の追加によって、電気化学的安定性が向上するとともに、機械的強度が増す。ナノ構造フィラーの開発は、アモルファス領域の表面積の増大およびフィラーとポリマー間の界面の改善によってポリマー複合材電解質のイオン伝導性を高くする一手法である。1次元ナノワイヤフィラーによって、ポリマー複合材電解質のイオン伝導性が増すことが実証されている。これは、ポリマー電解質中のナノ粒子フィラーが孤立分散しているのに対して、ナノワイヤフィラーがポリマーマトリクス中に拡張イオン移動経路を与えるためである。ただし、セラミックフィラーの凝集が残存する可能性があり、ポリマーとの混合によって、均一な固体ポリマー電解質を大規模に作製する際の課題となる。この課題を解決するため、近年、ポリマー電解質中の高単分散のセラミックフィラー粒子のその場合成が報告されている。ナノサイズSiO2粒子のPEO/Li塩ポリマーへのその場合成によって、報告されている固体ポリマー電解質は、30℃で4.4×10-5S/cmのイオン伝導度を示しているが、室温でより高いイオン伝導性を実現するには、さらなる改良が必要である。したがって、本発明者らの理解に基づき、複合材ハイブリッド電解質中の相互接続長距離イオン移動を伴う連続的なSSEネットワークの作製に関して満たされていない大きな要求が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、固体ハイブリッド電解質を提供する。また、本開示は、固体ハイブリッド電解質の作製方法およびその使用を提供する。
【0012】
一態様において、本開示は、固体ハイブリッド電解質を提供する。固体ハイブリッド電解質は、固体電解質(SSE)の外面の少なくとも一部または全部に配設されたポリマー材料の層を有する。種々例において、固体ハイブリッド電解質は、ポリマー材料/固体ハイブリッド電解質、ポリマー/固体ハイブリッド電解質、またはゲルポリマー/固体ハイブリッド電解質である。種々例において、SSEは、モノリシックもしくはメソ多孔質SSE体または複数のファイバもしくは複数のストランドを含むSSEである。
【0013】
一態様において、本開示は、無機ファイバまたはストランドを作製する方法を提供する。ファイバまたはストランドは、無機SSEを形成し得る。種々例において、これらの方法は、テンプレーティング法またはエレクトロスピニング法である。
【0014】
ストランドは、テンプレーティング法により形成可能である。テンプレートは、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を形成可能な無機材料のストランドの形成に使用し得る連続空隙を備える。空隙は、人工的に設計されたものでもよいし、生物材料(たとえば、木材、植物等)において自然に発生したものであってもよい。
【0015】
一態様において、本開示は、本開示の固体ハイブリッド電解質の使用を提供する。固体ハイブリッド電解質は、さまざまな機器において使用可能である。種々例において、機器は、本開示の1つまたは複数の固体ハイブリッド電解質を備える。機器の例としては、電解槽、電解セル、燃料電池、電池、および他の電気化学的機器(たとえば、センサ等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
機器は、電池であってもよい。電池は、イオン伝導性電池であってもよい。電池は、携帯用途、輸送用途、固定エネルギー貯蔵用途等の用途向けに構成されていてもよい。イオン伝導性電池の例としては、リチウムイオン伝導性電池、ナトリウムイオン伝導性電池、マグネシウムイオン伝導性電池等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本開示の作用および目的をさらに理解するため、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明を参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)ハイブリッドポリマー/ガーネット型SSE電解質を有する場合および(b)界面ゲルポリマー層を有さず、ガーネットSSEと電極との間の界面接触が不十分な場合の固体ゲルポリマー電池設計の模式図である(ゲルポリマー層によって、電極とSSEとの間の接触を改善可能である)。
【
図2】ハイブリッド電解質を備えた対称セルのインピーダンス解析であって、(a)LiFePO
4カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルのEIS、(b)SS|ポリマー|SSE|ポリマー|SS対称セルのEIS、(c)カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルのEIS、(d)Li|ポリマー|Li対称セルのEISプロット、(e)Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルのEISプロット、(f)ゲルポリマー界面を有する場合および有さない場合のSSE|電極界面抵抗の比較を示した図である。
【
図3】ゲルポリマー界面層を有する場合および有さない場合の電極|SSE|電極対称セル構成要素のインピーダンスを示した図である。
【
図4】対称完成セルのポリマー|SSE|ポリマーハイブリッド電解質の電気化学的性能であって、(a)15時間にわたる一定電流でのLi|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セル中のLiストリッピングおよびプレーティングの電圧プロファイル、(b)サイクル前後のセルのEISプロット、(c)ゲルポリマー界面層を有するカソード|SSE|Liセルの充放電電圧プロファイル、(d)130サイクルにわたるセルの放電容量およびクーロン効率、(e)サイクル前、20サイクル後、および130サイクル後のセルのEISを示した図である。
【
図5】ゲルポリマー界面を有さない電極|SSE|電極対称セルのインピーダンスであって、(a)カソード|SSE|カソード対称セルのEIS、(b)Li|SSE|Li対称セルのEISを示した図である。
【
図6】二層固体電解質マトリクスに焦点を当てた従来の電池と固体ハイブリッド電解質との比較を示した図である。
【
図7】二層ガーネット固体電解質の特性評価であり、二層ガーネット構造の3D構造の模式図であって、(a)二層ガーネットSSEの写真画像、(b)多孔質層の上方視SEM画像(スケールバーは、200μmである)、(c)多孔質層の拡大図(スケールバーは、50μmである)、(d)多孔質層と高密度層との接続部のSEM(スケールバーは、10μmである)、(e)粒状高密度微細構造の拡大SEM画像(高密度構造が可溶活物質を阻止して、Liデンドライトの貫通を抑えることができる。スケールバーは、10μmである)、(f)二層ガーネット構造の断面(多孔質および高密度ガーネット構造の2つの異なる層をはっきりと観察できる(高密度層が約35μm、多孔質層が70μm))を示した図である。
【
図8-1】ポリスルフィド溶液、液体電解質、および溶融硫黄中のガーネットSSEの化学的安定性であって、(a)(b)表面へのArスパッタリング前後の高密度ガーネットペレットのS 2p XPSスペクトル(XPS解析の前、1週間にわたって、高密度ガーネットペレットをポリスルフィド溶液(DME/DOL中のLi
2S
8)に十分に浸漬した)、(c)表面へのArスパッタリング前後の高密度ガーネットペレットのZr 3d XPSスペクトル、(d)(e)1週間にわたって液体電解質(DME/DOL中のLiTFSI)およびポリスルフィド溶液に浸した後のガーネット粉末のXRDパターンおよびラマンスペクトル(酸素および水分汚染を回避するため、サンプルをカプトンバッグに封入した)、(f)1週間にわたってポリスルフィド溶液に浸した後のガーネットナノ粉末のTEM画像、(g)1週間にわたって160℃の溶融硫黄に浸した後のガーネット粉末のXRDパターン、(h)ガーネット、Li
2S、およびLi
2S
8の相互反応エネルギーΔE
D,mutualの計算を示した図である。
【
図8-2】ポリスルフィド溶液、液体電解質、および溶融硫黄中のガーネットSSEの化学的安定性であって、(a)(b)表面へのArスパッタリング前後の高密度ガーネットペレットのS 2p XPSスペクトル(XPS解析の前、1週間にわたって、高密度ガーネットペレットをポリスルフィド溶液(DME/DOL中のLi
2S
8)に十分に浸漬した)、(c)表面へのArスパッタリング前後の高密度ガーネットペレットのZr 3d XPSスペクトル、(d)(e)1週間にわたって液体電解質(DME/DOL中のLiTFSI)およびポリスルフィド溶液に浸した後のガーネット粉末のXRDパターンおよびラマンスペクトル(酸素および水分汚染を回避するため、サンプルをカプトンバッグに封入した)、(f)1週間にわたってポリスルフィド溶液に浸した後のガーネットナノ粉末のTEM画像、(g)1週間にわたって160℃の溶融硫黄に浸した後のガーネット粉末のXRDパターン、(h)ガーネット、Li
2S、およびLi
2S
8の相互反応エネルギーΔE
D,mutualの計算を示した図である。
【
図9-1】液体-固体ハイブリッド電解質の電気化学的特性評価であって、(a)(b)露出した高密度ガーネット層表面の模式図およびSEM画像、(c)(d)ポリマー被覆高密度ガーネット層表面の模式図およびSEM、(e)ポリマー被膜を有する対称セルのEIS、(f)電流密度0.3mA/cm
2でのLiプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイル(赤線は、溶融Liをガーネット高密度層に直接取り付けて作製した形態Li/ガーネット/Liである。Li/ガーネット/Liは、高インピーダンスで高電圧の曲線を示す。黒線は、対称ハイブリッド電解質セルからである。差し込み図は、最初の数時間および140時間目におけるLiストリッピング/プレーティングの詳細な電圧プラトーを示す)、(g)(h)電流密度0.5および1.0mA/cm
2でのLiプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイルを示した図である。
【
図9-2】液体-固体ハイブリッド電解質の電気化学的特性評価であって、(a)(b)露出した高密度ガーネット層表面の模式図およびSEM画像、(c)(d)ポリマー被覆高密度ガーネット層表面の模式図およびSEM、(e)ポリマー被膜を有する対称セルのEIS、(f)電流密度0.3mA/cm
2でのLiプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイル(赤線は、溶融Liをガーネット高密度層に直接取り付けて作製した形態Li/ガーネット/Liである。Li/ガーネット/Liは、高インピーダンスで高電圧の曲線を示す。黒線は、対称ハイブリッド電解質セルからである。差し込み図は、最初の数時間および140時間目におけるLiストリッピング/プレーティングの詳細な電圧プラトーを示す)、(g)(h)電流密度0.5および1.0mA/cm
2でのLiプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイルを示した図である。
【
図10-1】固体ハイブリッドLi-S電池の電気化学的特性評価であって、(a)従来のLi-S電池および固体ハイブリッドLi-S電池の模式図(従来のLi-Sにおいて、ポリマー多孔質膜は、ポリスルフィドの阻止もLiデンドライトの貫通の防止も不可能である。固体ハイブリッドLi-S電池において、セラミック高密度膜は、液体電解質およびポリスルフィドの物理的な阻止のみならず、Liデンドライトのカソード側への成長を抑えることも可能である)、(b)従来およびハイブリッドLi-Sセルの電圧プロファイル(充電プラトーの延長プラトーは、従来のLi-Sにおけるポリスルフィドのシャトル効果を示す。ハイブリッドLi-Sセルではシャトル効果が起こらない)、(c)高電流密度でのハイブリッドLi-Sセルの電圧プロファイル(高密度ガーネット膜および質量担持が約1.2mg/cm
2のスラリーキャスト硫黄電極をハイブリッドセルとして組み付けた)、(d)ハイブリッドLi-Sセルのレート性能、(e)固体ハイブリッド二層Li-S電池の模式図(硫黄およびCNTを細孔中に封入した。機械的に安定した二層ガーネット構造は、硫黄の体積膨張に対応可能であるとともに、サイクル中の安定した電極構造を維持可能である)、(f)二層硫黄カソードの断面(元素マッピングは、多孔質層の内側の硫黄分布を示す)、(g)(h)0.2mA/cm
2で負荷が7.5mg/cm
2のハイブリッド二層Li-Sセルの電圧プロファイルおよびサイクル性能を示した図である。
【
図10-2】固体ハイブリッドLi-S電池の電気化学的特性評価であって、(a)従来のLi-S電池および固体ハイブリッドLi-S電池の模式図(従来のLi-Sにおいて、ポリマー多孔質膜は、ポリスルフィドの阻止もLiデンドライトの貫通の防止も不可能である。固体ハイブリッドLi-S電池において、セラミック高密度膜は、液体電解質およびポリスルフィドの物理的な阻止のみならず、Liデンドライトのカソード側への成長を抑えることも可能である)、(b)従来およびハイブリッドLi-Sセルの電圧プロファイル(充電プラトーの延長プラトーは、従来のLi-Sにおけるポリスルフィドのシャトル効果を示す。ハイブリッドLi-Sセルではシャトル効果が起こらない)、(c)高電流密度でのハイブリッドLi-Sセルの電圧プロファイル(高密度ガーネット膜および質量担持が約1.2mg/cm
2のスラリーキャスト硫黄電極をハイブリッドセルとして組み付けた)、(d)ハイブリッドLi-Sセルのレート性能、(e)固体ハイブリッド二層Li-S電池の模式図(硫黄およびCNTを細孔中に封入した。機械的に安定した二層ガーネット構造は、硫黄の体積膨張に対応可能であるとともに、サイクル中の安定した電極構造を維持可能である)、(f)二層硫黄カソードの断面(元素マッピングは、多孔質層の内側の硫黄分布を示す)、(g)(h)0.2mA/cm
2で負荷が7.5mg/cm
2のハイブリッド二層Li-Sセルの電圧プロファイルおよびサイクル性能を示した図である。
【
図11】異なる温度(25、30、40、および50℃)での高密度ガーネットSSEペレットのナイキストプロットを示した図である(高密度ガーネットペレットの厚さは、約250μmである)。
【
図12】ガーネットSSEの伝導度のアレニウスプロットを示した図である(活性化エネルギーは、0.35eVである)。
【
図13】従来のLi-S電池であって(硫黄の質量担持は、約1.2mg/cm
2である)、(a)長時間充電プラトーを伴い、ポリスルフィドのシャトル効果を示す従来のLi-S電池の電圧プロファイル、(b)従来のLi-Sセルのサイクル性能(セルは、10サイクル後に高速で低下する)、(c)従来のLi-Sセルの低いクーロン効率を示した図である。
【
図14】電流が0.1mA/cm
2での固体ハイブリッドLi-S電池のサイクル性能を示した図である(硫黄担持は1.2mg/cm
2であり、ハイブリッドセルは、1000mAh/gを上回る高容量を果たした)。
【
図15】CNT被覆ガーネット多孔質構造のSEM顕微鏡写真を示した図である(CNTをガーネット表面上に堆積させ、硫黄活物質の電子伝導ネットワークを提供した。(a)および(b)のスケールバーは、10μmおよび500nmである)。
【
図16】テストしたガーネット二層Li-S電池の比エネルギー密度の計算を示した図である。
【
図17】パラメータを最適化した二層ガーネット固体Li-S電池の推定エネルギー密度を示した図である。
【
図18】リチウム対称セルにポリマー電解質が組み込まれたマルチスケール整列メソ多孔質ガーネットLi
6.4La
3Zr
2Al
0.2O
12(LLZO)膜の模式図である(ガーネット木材は、天然の木材に由来するマルチスケール整列メソ構造を有するため、ガーネット-ポリマー界面に沿ってガーネットおよびポリマー電解質を通るLiイオン移動が阻止されることがなくなる)。
【
図19】木材テンプレートの特性評価であって、圧縮およびスライスによる木材テンプレートの作製、(b)元の木材の上方視SEM画像、(c)(圧縮後に木材マイクロチャネルの直径が見かけ上小さくなった)圧縮木材の上方視SEM画像、(d)元の木材と(e)圧縮木材とを比較した断面SEM画像(チャネルは閉鎖されているが、高整列構造は維持されている)、(f)直径が10nm前後の整列ナノファイバのSEM画像を示した図である。
【
図20】木材によりテンプレーティングされた整列ガーネットの焼成であって、(a)マイクロスケールおよび(b)ナノスケールの両者でのチャネルの整列を示した断面SEM画像、(c)整列メソ多孔質ガーネットおよびPEOベースのポリマー電解質から成る可撓性ガーネット木材の写真、(d)JCPDS#90-0457に整合し、立方ガーネット構造を確認する整列ガーネットのXRDパターンを示した図である。
【
図21】ガーネット結晶構造のTEM特性評価であって、(a)(21 0)および(021)格子面を示す整列ガーネットから分かれたナノ粒子のHRTEM画像(差し込みグラフは、HRTEM画像のFFTパターンを示す)、(b)明瞭な多結晶構造を示すガーネットナノ粒子の縁部のTEM画像、(c)ROI、スペクトル画像、ならびにO、C、およびLaの相対組成マップをそれぞれ示すガーネット表面のEELSスペクトルを示した図である。
【
図22-1】整列メソ多孔質構造を有するガーネット木材の電気化学的特性評価であって、(a)整列ガーネット全体にわたるポリマー電解質の完全な均一浸潤を示すSEMおよびその対応するEDX画像(スケールバーは、100μmである)、(b)温度上昇に伴うガーネット木材膜のインピーダンスの低下を示したナイキストプロット(差し込み模式図は、テストセルの構造を示す)、(c)異なる温度におけるガーネット木材とPEベースのポリマー電解質とのイオン伝導度の比較(青色領域は、室温(RT)の範囲内で実行された測定結果を示す)、(d)低ねじれおよび高速リチウム移動経路を示すガーネット木材を伴うリチウム対称セルの模式図、(e)室温における電流密度が0.1mA/cm
2でのLi/ガーネット木材/Liの定電流サイクルを示した図である。
【
図22-2】整列メソ多孔質構造を有するガーネット木材の電気化学的特性評価であって、(a)整列ガーネット全体にわたるポリマー電解質の完全な均一浸潤を示すSEMおよびその対応するEDX画像(スケールバーは、100μmである)、(b)温度上昇に伴うガーネット木材膜のインピーダンスの低下を示したナイキストプロット(差し込み模式図は、テストセルの構造を示す)、(c)異なる温度におけるガーネット木材とPEベースのポリマー電解質とのイオン伝導度の比較(青色領域は、室温(RT)の範囲内で実行された測定結果を示す)、(d)低ねじれおよび高速リチウム移動経路を示すガーネット木材を伴うリチウム対称セルの模式図、(e)室温における電流密度が0.1mA/cm
2でのLi/ガーネット木材/Liの定電流サイクルを示した図である。
【
図23】焼結した整列メソ多孔質ガーネットの写真であって、焼結した整列メソ多孔質ガーネットの一部を示した図である(ガーネット膜は、木材テンプレートと同様の面積で白色かつ平坦であった)。
【
図24】ガーネット木材の断面SEM画像である(ガーネット木材の厚さは、木材テンプレートの厚さにより制御可能である。SEM画像は、低ねじれチャネルが高整列となり、ガーネット膜全体を貫通する、厚さが約30μmの薄いガーネット木材サンプルを示す)。
【
図25】整列ガーネット構造の断面SEM画像である(SEM画像は、厚さが18μmのガーネット木材サンプルの一部を示す。サンプルは、スライスおよび研磨により薄くしたテンプレートを焼結したものである)。
【
図26】ガーネット木材の断面SEM画像である(SEM画像は、ガーネット木材の断面および上面を示す。整列構造は、PEOベースのポリマー電解質で完全に満たされている)。
【
図27】前駆体浸潤時の木材テンプレートの重量変化を示した図である(木材テンプレートを前駆体溶液に浸して、重量が時間とともに増加した。重量変化は、木材テンプレートの高い吸収性を示す)。
【
図28】異なる温度でのPEO/SCN/Li-TFSIポリマー電解質の(a)EIS測定結果および(b)イオン伝導度を示した図である(ハイライト領域は、室温(RT)前後で実行された測定結果を示す。差し込み図は、PEO/LiTFSI/SCNポリマー電解質膜が2つのステンレス鋼電極により挟まれたことを示す。ポリマー電極膜の周りにポリエチレン(PE)セパレータリングを配置して、高温での厚さを固定するとともに短絡を回避した)。
【
図29】600時間超にわたる室温において、電流密度が0.1mA/cm
2のLi/ガーネット木材/Liの定電流サイクルを示した図である(電圧の変動は、セルの周囲温度の変化による。長期サイクルは、Li金属セル中のガーネット木材複合電解質の傑出した電気化学的および機械的安定性を示す)。
【
図30】可撓性のリチウムイオン伝導性セラミック繊維を示した図である(リチウムイオン伝導性セラミック繊維は、可撓性で、元のテンプレートの物理的特性を維持した。独自の繊維構造によって、連続したファイバおよび糸を介する長距離のリチウムイオン移動経路、固体イオン伝導体の高表面積/体積比、およびマルチレベル多孔性分布が可能となる)。
【
図31-1】ガーネット繊維の特性評価であって、(a)前処理した繊維テンプレートのSEM画像、(b)前駆体溶液を含浸させたテンプレートのSEM画像、(c)前駆体溶液含浸テンプレートから変換されたガーネット繊維のSEM画像、(d)3Dレーザスキャンにより生成されたガーネット繊維の平坦均一性の再構成モデル、(e)ガーネット繊維の可撓性、加工性、および溶媒耐性、(f)異なる温度で焼結した粉砕ガーネット繊維の粉末XRDパターン、(g)800℃で焼結した単一のガーネットファイバの元素分布マッピングを示した図である。
【
図31-2】ガーネット繊維の特性評価であって、(a)前処理した繊維テンプレートのSEM画像、(b)前駆体溶液を含浸させたテンプレートのSEM画像、(c)前駆体溶液含浸テンプレートから変換されたガーネット繊維のSEM画像、(d)3Dレーザスキャンにより生成されたガーネット繊維の平坦均一性の再構成モデル、(e)ガーネット繊維の可撓性、加工性、および溶媒耐性、(f)異なる温度で焼結した粉砕ガーネット繊維の粉末XRDパターン、(g)800℃で焼結した単一のガーネットファイバの元素分布マッピングを示した図である。
【
図32-1】ガーネット繊維で補強された可撓性の複合材ポリマー電解質の電気化学的特性評価であって、(a)可撓性および機械的強度を示す乾燥CPE、(b)ファイバガーネットが支配的なリチウムイオン移動メカニズム、(c)異なる温度におけるCPEのインピーダンススペクトル、(d)温度の関数としてのCPEのリチウムイオン伝導度のアレニウスプロット、(e)さまざまな電流密度および60℃でのLi/CPE/Li対称セルの定電流サイクル測定結果を示した図である。
【
図32-2】ガーネット繊維で補強された可撓性の複合材ポリマー電解質の電気化学的特性評価であって、(a)可撓性および機械的強度を示す乾燥CPE、(b)ファイバガーネットが支配的なリチウムイオン移動メカニズム、(c)異なる温度におけるCPEのインピーダンススペクトル、(d)温度の関数としてのCPEのリチウムイオン伝導度のアレニウスプロット、(e)さまざまな電流密度および60℃でのLi/CPE/Li対称セルの定電流サイクル測定結果を示した図である。
【
図33】硫黄担持が10.8mg/cm
2の固体Li-S電池のガーネット繊維3D電極構成の特性評価であって、(a)高密度支持電解質上で焼結したガーネット繊維の写真、(b)硫黄カソード浸潤ガーネット繊維電極構成のSEM画像、(c)硫黄/炭素混合物を担持した単一のガーネットファイバのEDX元素マッピング、(d)固体リチウム-硫黄電池の充電-放電プロファイルを示した図である。
【
図34】可撓性ガーネット繊維の特性評価であって、(a)ガーネット前駆体溶液含浸繊維テンプレートの熱重量解析、(b)前処理した繊維テンプレートの断面SEM画像、(c)前駆体溶液含浸繊維テンプレートの断面SEM画像、(d)テンプレートの熱分解および高温焼結後のガーネット繊維の断面SEM画像を示した図である。
【
図35】大寸法および異なる形状の可撓性ガーネット繊維を示した図である。
【
図36】Liイオン伝導性ガーネットおよび絶縁性Al
2O
3繊維補強可撓性CPEの特性評価であって、(a)ガーネット繊維補強可撓性CPEの断面SEM画像、(b)同一のテンプレーティング法を用いて作製された絶縁性Al
2O
3繊維、(c)異なる温度における制御CPEのインピーダンスプロットを示した図である。
【
図37】ガーネット繊維補強可撓性CPEの電気化学的特性評価であって、(a)60℃での500時間のサイクル前後のLi/CPE/Li対称セルのインピーダンスプロット、(b)0.05mA/cm
2でのLi/CPE/Li対称セルの室温定電流サイクル測定結果、(c)1mA/cm
2および60℃でのLi/CPE/Li対称セルの定電流サイクル測定結果を示した図である。
【
図38】固体Li-S電池のガーネット繊維構成で構築された硫黄浸潤3D電極の特性評価であって、(a)露出糸エリアから、ガーネット繊維で構築された3D硫黄カソードの高密度電解質表面への方向に沿ったEDX元素線形スキャン、(b)ガーネット繊維で構築された3D硫黄カソードの高倍率断面SEM画像および元素マッピングを示した図である。
【
図39】テープキャストおよび高温積層により作製されたガーネット電解質支持部の特性およびガーネット電解質のポリスルフィドカソード液および液体電解質との化学的互換性であって、(a)500μm厚の高密度ガーネット電解質支持部の断面SEM画像、(b)粉砕ガーネット電解質のXRDパターン、(c)25℃~100℃の温度範囲における高密度ガーネット電解質のリチウムイオン伝導度、(d)グローブボックス中で研磨された新しいガーネット電解質支持部の写真、(e)300時間にわたってポリスルフィドカソード液および液体電解質に浸したガーネット電解質の写真、(f)その後、DME/DOL溶媒で洗浄されたガーネット電解質の写真(明確な変色は観察されなかった)、(g)浸漬実験の前後のガーネット電解質のXRDパターン(化学的変化は観察されなかった)を示した図である。
【
図40】0.75mA/cm
2における硫黄担持が10.8mg/cm
2のガーネット繊維構成で構築された固体Li-S電池の放電および充電プロファイルを示した図である。
【
図41】0.15mA/cm
2における硫黄担持が18.6mg/cm
2と高いガーネット繊維構成で構築された固体Li-S電池の放電および充電プロファイルを示した図である。
【
図42】異なる電解質支持部の構造的構成における硫黄担持が18.6mg/cm
2の固体Li-S電池の相対重量およびエネルギー密度であって、(a)固体Li-S電池におけるガーネット、カソード、アノード、および集電体の相対的な重量分布ならびに対応するエネルギー密度、(1)500μm厚の電解質支持部および63%の電解質エリアの利用、(2)100μm厚の電解質支持部および100%の電解質エリアの利用、(3)薄い高密度電解質(20μm)および多孔質基板(70μm)から成る二層支持構造ならびに100%の電解質エリアの利用、(b)低重量二層支持構造の代表的なSEM画像を示した図である。
【
図43】固体Li-S電池の構成材料の密度を示した図である。
【
図44】異なる電解質支持部構成の構造パラメータを示した図である。
【
図45】カソード構成要素のパラメータを示した図である。
【
図46】アノード構成要素のパラメータを示した図である。
【
図47】固体ハイブリッド複合材電解質の模式図である(セラミックガーネットナノファイバが補強として機能し、リチウムイオン伝導性ポリマーがマトリクスとして機能する。相互接合ガーネットナノファイバネットワークは、電解質膜における連続したイオン伝導性経路を与える)。
【
図48】可撓性の固体ファイバ補強複合材(FRPC)電解質の作製であって、(a)エレクトロスピニングガーネット/PVPナノファイバの模式的セットアップ、(b)FRPC Liイオン伝導性膜を作製する模式的手順、(c)紡糸したナノファイバネットワークのSEM画像、(d)紡糸したナノファイバの直径分布、(e)ガーネットナノファイバネットワークのSEM画像、(f)ガーネットナノファイバの直径分布、(g)可撓性かつ屈曲性のFRPC Liイオン伝導性膜を示す写真画像を示した図である。
【
図49】ガーネットナノファイバ補強および固体FRPC電解質の形態学的特性評価であって、(a)相互接合ガーネットナノファイバを示すSEM画像、(b)多結晶ガーネットナノファイバのTEM画像(差し込み図は、平均粒径が直径20nmのガーネットナノファイバの拡大画像である)、(c)個々のガーネットナノファイバの高分解能TEM画像、(d)FRPC電解質膜表面のSEM画像、(e)膜の断面SEM画像、(f)断面形態の拡大SEM画像(ガーネット3D多孔質構造の空き空間は、ポリマーで満たされている)を示した図である。
【
図50】固体FRPC電解質の熱特性および可燃性テストであって、(a)紡糸したナノファイバのTGA曲線、(b)Li塩/PEOポリマーおよびFRPC電解質膜のTGA曲線、(c)ガーネットナノ粒子と混合されたLi塩/PEOポリマーの可燃性テスト、(d)FRPC電解質膜の可燃性テストを示した図である。
【
図51】ガーネットファイバの相構造および固体FRPC電解質の電気的特性であって、(a)ガーネットナノ粒子のXRDパターン、(b)異なる温度(25℃、40℃、および90℃)におけるFRPC電解質膜のEISプロファイル、(c)高温でのFRPC電解質膜のアレニウスプロット(20℃~90℃および10℃上昇ごとに記録)、(d)0~6Vの範囲の電気化学的安定性窓を示すFRPC電解質膜のLSV曲線を示した図である。
【
図52】Li|FRPC電解質|Li対称セルにおいて測定したFRPC電解質膜の電気化学的性能であって、(a)リチウムプレーティング/ストリッピング実験の対称セルの模式図、(b)15℃での電流密度が0.2mA/cm
2のリチウムプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイル、(c)25℃での電流密度が0.2mA/cm
2の続きのリチウムプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイル、(d)異なるサイクル時間(300時間、500時間、および700時間)で測定された対称セルのインピーダンススペクトル、(e)高周波領域における拡大EISスペクトル、(f)25℃での電流密度が0.5mA/cm
2の続きのリチウムプレーティング/ストリッピングサイクルの電圧プロファイルを示した図である。
【
図53】平均粒径が直径20nmのガーネットナノファイバの拡大TEM画像を示した図である。
【
図54】テスト温度が25℃まで上昇し、
図6cに示すように、高温でのイオン伝導性の改善によって電圧が0.3Vまで降下した場合を示した図である(後続の長期サイクルにおいては、サイクル時間が700時間まで経過するにつれて、電圧が0.2Vまで低下し続けた。電圧の変動は、周囲環境の温度変化が原因であった)。
【
図55】2つの異なるストリッピング/プレーティングプロセス時間における対称セルの2つの電圧プロファイルを比較した図である。
【
図56】本開示の電池の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特許請求の範囲に係る主題は、特定の実施形態に関して説明するが、本明細書に記載の利益および特徴をすべてもたらすわけではない実施形態を含む他の実施形態についても、本開示の範囲内である。本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな構造的、論理的、プロセスステップ的、および電子的変更が可能である。
【0020】
本明細書に示すすべての範囲は、別段の指定のない限り、小数第10位までの範囲内のすべての値を含む。
【0021】
本開示は、固体ハイブリッド電解質を提供する。また、本開示は、固体ハイブリッド電解質の作製方法およびその使用を提供する。
【0022】
一態様において、本開示は、固体ハイブリッド電解質を提供する。固体ハイブリッド電解質は、固体電解質(SSE)の外面の少なくとも一部または全部に配設されたポリマー材料の層を有する。種々例において、固体ハイブリッド電解質は、ポリマー材料/固体ハイブリッド電解質、ポリマー/固体ハイブリッド電解質、またはゲルポリマー/固体ハイブリッド電解質である。種々例において、SSEは、モノリシックもしくはメソ多孔質SSE体または複数のファイバもしくは複数のストランドを含むSSEである。
【0023】
種々例において、本開示は、たとえば異なる方法で形成され、たとえば望ましいイオン伝導性を有する固体ハイブリッド電解質およびこのような電解質と電極との間の安定的で良好に接続された界面を実現するポリマー層(たとえば、ポリマー膜)等の非限定的な層を備えた固体ハイブリッド電解質を提供する。本開示の固体ハイブリッド電解質は、たとえば電解質/リチウムイオンカソード界面において、248Ω×cm2以下の界面抵抗を示し、電解質/リチウム金属アノード界面において、214Ω×cm2以下の界面抵抗を示し得る。この層は、ゲルポリマー(ポリマーの内側に液体電解質を格納)、乾燥ポリマー(ポリマーの内側に液体がなく、たとえばポリマー内に伝導性Liイオンが塩とともに存在する)、または多種の伝導性薄膜で作製可能である。ポリマー界面を有する固体電解質は、たとえば炭素またはLi金属アノードおよびLi金属酸化物、硫黄、または空気とともに構築して、固体Li電池を作製可能である。本開示は、固体電解質と電極との間の界面抵抗の課題に対処するものであり、これによって、固体イオン伝導性(たとえば、リチウムイオン伝導性)電池のさらなる開発が促進される。
【0024】
種々例において、本開示は、可撓性無機SSEを備えた固体ハイブリッド電解質を提供する。可撓性無機SSEとしては、望ましい安全性を示す次世代のイオン伝導性電池(たとえば、Li金属電池)を可能にすると予想される低コストで薄い可撓性のイオン伝導性膜が可能である。たとえば、イオン伝導性3DネットワークのLiイオン導電性ポリマー等との浸潤によって、可撓性のイオン伝導性SSE膜を作製する。模式的な一例を
図47に示す。種々例においては、3Dイオン伝導性ネットワークの生成に酸化物SSE材料が用いられており、LLZOガーネット、LLTOペロブスカイト、およびLATPガラス
が挙げられるが、これらに限定されない。3D構造は、たとえば長距離イオン移動経路および構造的補強の提供によって、ポリマーマトリクスを増強可能である。この膜は、高電圧(たとえば、6V超)に対する望ましい電気化学的安定性、高イオン伝導度(たとえば、10
-4Scm
-1超)、およびたとえばリチウムデンドライトを効果的に阻止するための高機械的安定性を示し得る。
【0025】
固体ハイブリッド電解質は、無機SSE(たとえば、無機(たとえば、セラミック)モノリシックもしくはメソ多孔質構造のSSE体または複数の無機ファイバもしくは複数の無機ストランドを含むSSE(F/S SSE))と、SSEの外面の少なくとも一部または全部に配設されたポリマー材料とを含んでいてもよい。
【0026】
無機SSE(たとえば、F/S SSEの無機SSE)は、1つまたは複数のノードが少なくとも2つのファイバまたはストランドにより形成された3次元ネットワーク構造を有していてもよい。無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)は、当該無機固体電解質の一方側から当該無機固体電解質の反対側まで連続したイオン伝導経路を有する。イオンSSEの3Dイオン伝導性ネットワークが補強として機能し、イオン伝導性(たとえば、リチウムイオン伝導性)ポリマーがマトリクスとして機能し得る。3Dネットワークは、電解質膜において連続したイオン伝導性経路を提供する。ストランドまたはファイバにより形成された固体ハイブリッド電解質の場合、無機固体材料は、固体ハイブリッド電解質の1つまたは複数の表面上に露出していてもよい。複数のストランドにより形成された固体ハイブリッド電解質の場合、無機SSEは、連続的かつ任意選択として整列したメソ多孔質構造であってもよい。
【0027】
固体ハイブリッド電解質の種々例においては、ポリマー材料が無機ファイバまたはテンプレーティング無機ストランドの空隙の少なくとも一部または全部を満たす。ポリマー材料がテンプレーティング無機固体電解質の空隙の一部を満たす固体ハイブリッド電解質の場合は、テンプレーティング無機固体電解質の外面に開口した空隙の少なくとも一部がカソード材料および/またはアノード材料で満たされて、一体化されたカソードおよび/または電極を構成していてもよい。
【0028】
無機SSEは、さまざまな無機材料により形成可能である。無機材料は、セラミック材料であってもよい。無機材料は、イオン伝導性(たとえば、リチウムイオン伝導性、ナトリウムイオン伝導性、マグネシウムイオン伝導性等)の材料である。無機SSEは、イオン伝導性電解質であってもよい。好適な無機材料の例が当技術分野において知られている。無機材料の非限定的な例としては、リチウムイオン伝導性無機材料、ナトリウムイオン伝導性無機材料、マグネシウムイオン伝導性無機材料等が挙げられる。当技術分野において知られている如何なる無機SSE電解質材料も使用可能である。無機SSE電解質材料を作製する方法が当技術分野において知られている。
【0029】
無機材料は、さまざまな構造(たとえば、2次構造)を有し得る。種々例において、無機材料は、アモルファス、結晶(たとえば、単結晶および多結晶)であるか、あるいは、さまざまなアモルファスおよび/または結晶性ドメインを有する。
【0030】
無機材料は、リチウム伝導性無機(たとえば、セラミック)材料であってもよい。リチウム伝導性無機材料は、リチウム含有材料であってもよい。
【0031】
リチウムイオン伝導性SSE材料の非限定的な例としては、リチウムペロブスカイト材料、Li3N、Li-β-アルミナ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)、Li2.88PO3.86N0.14(LiPON)、Li9AlSiO8、Li10GeP2S12、リチウムガーネットSSE材料、ドープリチウムガーネットSSE材料、リチ
ウムガーネット複合材料等が挙げられる。種々例において、リチウムガーネットSSE材料は、カチオンドープLi5La3M1
2O12(ただし、M1はNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)、カチオンドープLi6La2BaTa2O12、カチオンドープLi7La3Zr2O12、およびカチオンドープLi6BaY2M1
2O12であり、カチオンドーパントが、バリウム、イットリウム、亜鉛、またはこれらの組み合わせ等である。他の種々例において、リチウムガーネットSSE材料は、Li5La3Nb2O12、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6La2SrNb2O12、Li6La2BaNb2O12、Li6La2SrTa2O12、Li6La2BaTa2O12、Li7Y3Zr2O12、Li6.4Y3Zr1.4Ta0.6O12、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、Li6BaY2M1
2O12、Li7Y3Zr2O12、Li6.75BaLa2Nb1.75Zn0.25O12、Li6.75BaLa2Ta1.75Zn0.25O12等である。
【0032】
無機材料は、ナトリウムイオン伝導性無機(たとえば、セラミック)材料であってもよい。ナトリウムイオン伝導性無機材料は、ナトリウム含有材料であってもよい。たとえば、ナトリウムイオン伝導性無機材料は、β”-Al2O3、Na4Zr2Si2PO12(NASICON)、カチオンドープNASICON等である。
【0033】
無機材料は、マグネシウムイオン伝導性無機(たとえば、セラミック)材料であってもよい。マグネシウムイオン伝導性無機材料は、マグネシウム含有材料であってもよい。種々例において、マグネシウムイオン伝導性無機材料は、ドープマグネシウム酸化物材料から選択される。種々例において、マグネシウムイオン含有材料は、Mg1+x(Al,Ti)2(PO4)6(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料等である。
【0034】
モノリシックSSEまたはメソ多孔質SSE体は、さまざまなサイズ(すなわち、寸法)および/または形状を有し得る。好適なモノリシックSSEまたはメソ多孔質SSE体が当技術分野において知られている。モノリシックSSE体は、(たとえば、無機材料の高密度層のみを含む)高密度体であってもよいし、高密度焼結体であってもよい。
【0035】
メソ多孔質SSEの非限定的な例としては、多孔質(たとえば、メソ多孔質)材料の外部層を含む平面状SSE構造(たとえば、高密度層および少なくとも1つの多孔質(たとえば、メソ多孔質)層を含む多層SSE構造)を含む。多層SSE構造の非限定的な例としては、(高密度層上に配設された多孔質層を含む)二層構造および(高密度層の両側に配設された2つの多孔質層を含む)三層構造が挙げられ、当技術分野において知られている。多層構造の例は、2014年3月21日に出願され、2014年9月25日に米国特許出願公開第2014/0287305号として公開された米国特許出願第14/222,306号(発明の名称「Ion Conducting Batteries with Solid State Electrolyte Materials」)および2016年11月30日に出願され、2017年6月1日に米国特許出願公開第2017/0155169号として公開された米国特許出願第15/364,528号(発明の名称「Ceramic Ion Conducting Structures and Methods of Fabricating Same, and Uses of
Same」)に記載されており、それぞれの開示内容を本明細書に援用する。
【0036】
F/S SSEは、さまざまなサイズ(すなわち、寸法)および/または形状のファイバまたはストランドを含み得る。種々例において、ファイバまたはストランドは、円筒状または実質的に円筒状、多面体形状または実質的に多面体形状、不規則形状等である。ファイバまたはストランドは、使用する機器の1つまたは複数の寸法の倍数に対応する長さを有し得る。種々例において、ファイバまたはストランドは、1ミクロン~20メートル
の長さ(両者間のすべての整数ミクロン値および範囲を含む)および/または1nm~10ミクロンの最大断面寸法(たとえば、直径)(両者間のすべての整数nm値および範囲を含む)を有する。一例において、F/S SSEは、10以上の最大断面寸法(たとえば、直径)までの長さのファイバまたはストランドを含む。
【0037】
F/S SSEのファイバまたはストランドは、可撓性で、たとえば電池等の可撓性機器に使用する可撓性固体ハイブリッド電解質を提供し得る。F/S SSEおよびポリマー材料は、電解質を形成していてもよい。F/S SSEは、本明細書に記載の方法により作製可能である。
【0038】
さまざまなポリマー材料を使用可能である。2つ以上のポリマー材料(たとえば、2つ以上のポリマー)の混合物を使用可能である。ポリマー材料は、伝導性(たとえば、イオン伝導性および/または電子伝導性)、非伝導性、またはこれらの組み合わせとすることができる。ポリマー材料は、乾燥ポリマーまたはゲルであってもよい。
【0039】
モノリシックSSEまたはメソ多孔質体の場合は、ポリマー材料が伝導性(たとえば、イオン伝導性および/または電子伝導性)であるのが望ましいことがある。複数のファイバまたはストランドを含む無機SSEの場合は、複数のポリマー材料の混合物とすることができるポリマー材料がSSEに対して機械的強度を与えるのが望ましいことがある。
【0040】
モノリシックSSEまたはメソ多孔質SSE体を有する固体ハイブリッド電解質の場合は、ポリマー材料の薄層(たとえば、厚さが5nm~10ミクロン(両者間のすべての整数nm値および範囲を含む))を有するのが望ましい。
【0041】
ポリマー材料は、SSE(たとえば、無機SSE)の表面の少なくとも一部または全部に配設可能である。高密度SSE材料の場合、ポリマー材料は、少なくとも一部(たとえば、電極(たとえば、カソードおよび/またはアノード)が配設されるSSE材料の部分)に配設された層(たとえば、コンフォーマル層)である。多孔質SSE(モノリシックSSEもしくはメソ多孔質SSE体または複数のファイバまたはストランドを含むSSEの外部(たとえば、層)であってもよい)の場合、ポリマー材料は、細孔表面、非細孔表面、または両者に配設される。電極(たとえば、カソードおよび/またはアノード)が配設される多孔質SSE材料の部分にポリマー材料が配設されるのが望ましいことがある。一例において、ポリマー材料は、固体ハイブリッド電解質の1体積百分率以上、5体積百分率以上、10体積百分率以上、20体積百分率以上、30体積百分率以上、40体積百分率以上、50体積百分率以上、または60体積百分率以上で存在する。
【0042】
モノリシックSSEまたはメソ多孔質体を備えた固体ハイブリッド電解質の場合、ポリマー材料としては、層が可能である。この層は、当技術分野において知られているさまざまな方法により形成可能である。たとえば、ディップコート、スラリーキャスト、スプレーコート、またはスピンコート等によってポリマー材料層が形成される。
【0043】
F/S SSEを備えた固体ハイブリッド電解質の場合、ポリマー材料は、SSEの個々のファイバまたはストランドにより形成された空隙に配設される。空隙は、テンプレートの使用の結果としての細孔であってもよい。ポリマー材料は、当技術分野において知られている方法によって、F/S SSEに組み込まれていてもよい。たとえば、ポリマー材料は、F/S SSEの空隙(たとえば、細孔)に対して浸潤またはその場合成される。
【0044】
さまざまなポリマー材料を使用可能である。ポリマー材料は、1つまたは複数のポリマー、1つまたは複数の共重合体、またはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。ポリマ
ーおよび/または共重合体の分子量は、特に制限されない。たとえば、機器(たとえば、固体イオン伝導性電池)の性能(たとえば、イオン伝導性)要件に応じて、ポリマーおよび/または共重合体が広範な分子量を有し得る。ポリマーおよび/または共重合体が導電性であるのが望ましいことがある。ポリマー材料は、導電性ポリマーおよび/もしくは共重合体ならびに非導電性ポリマーおよび/もしくは共重合体の混合物を含んでいてもよい。
【0045】
ポリマーおよび/または共重合体は、さまざまな構造(たとえば、2次構造)を有し得る。種々例において、ポリマーおよび/または共重合体は、アモルファス、結晶、またはこれらの組み合わせである。ポリマーおよび/または共重合体は、結晶性が低いことが望ましいことがある。
【0046】
ポリマー材料としては、ポリマーおよび共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーおよび共重合体は、導電性であってもよいし、非導電性であってもよい。ポリマーおよび共重合体の非限定的な例としては、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ[ビス(メトキシエトキシエトキシド)-ホスファゼン]、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ二フッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレン、スルホン酸塩(PSS)、ポリ塩化ビニル(PVC)群、ポリ(塩化ビニリデン)ポリプロピレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(たとえば、テフロン(Teflon)(登録商標))、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリイミド、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、PEO含有共重合体(たとえば、ポリスチレン(PS)-PEO共重合体およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEO共重合体)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体)、PVdF含有共重合体(たとえば、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP共重合体))、PMMA共重合体(たとえば、ポリ(メチルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体))が挙げられる。これらの非限定的な例には、ポリマーおよび共重合体の誘導体も含む。種々例において、ポリマー材料は、2つ以上のこれらポリマーの組み合わせである。
【0047】
ポリマー材料は、ゲルであってもよい。ゲルは、ポリマー材料(たとえば、1つもしくは複数のポリマーならびに/または1つもしくは複数の共重合体)ならびに液体を含む。また、液体の組み合わせを使用可能である。種々例において、液体は、有機液体(たとえば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメトキシエタン(DME)、ジオキソラン(DOL)等)またはイオン液体(たとえば、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)等)である。
【0048】
液体は、液体電解質であってもよい。液体電解質は、金属塩(たとえば、1つまたは複数のリチウム塩、1つまたは複数のナトリウム塩、1つまたは複数のマグネシウム塩等)を含んでいてもよい。液体電解質の非限定的な一例は、水性液体電解質である。液体電解質の非限定的な例としては、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)中のLiPF6(たとえば、1M)、ジメトキシエタン(DME)/ジオキソラン(DOL)中のLiTFSI(たとえば、1M)、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)イオン液体中のLiTFSI(たとえば、0.5M)等が挙げられる。
【0049】
ポリマー材料は、フィラーを含んでいてもよい。一例において、ポリマー材料は、1つ
または複数のセラミックフィラー(たとえば、ポリマー材料の総重量に基づいて、2~25wt%のセラミックフィラー)を含む。セラミックフィラーの非限定的な例としては、導電性粒子、非導電性粒子(たとえば、Al2O3、SiO2、TiO2ナノ粒子等)、セラミックナノ材料(たとえば、セラミックナノ粒子、セラミックナノファイバ等)が挙げられる。セラミックナノ材料は、本明細書に開示の無機材料の組成を有していてもよい。
【0050】
一態様において、本開示は、無機ファイバまたはストランドを作製する方法を提供する。ファイバまたはストランドは、無機SSEを形成し得る。種々例において、これらの方法は、テンプレーティング法またはエレクトロスピニング法である。
【0051】
ストランドは、テンプレーティング法により形成可能である。テンプレートは、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を形成可能な無機材料のストランドの形成に使用し得る連続空隙を備える。空隙は、人工的に設計されたものでもよいし、生物材料(たとえば、木材、植物等)において自然に発生したものであってもよい。
【0052】
テンプレーティング法は、必要な構造を生成する簡単ながら効果的な方法を提供する。繊維テンプレートを1つまたは複数の無機SSE材料前駆体に接触(たとえば、浸漬)させた後、任意選択としての加熱ステップにおいて前駆体を反応させるとともに、熱処理(たとえば、熱分解)において有機成分を取り除く。得られる繊維状無機材料は、可撓性または剛性の電池構成への統合を可能にする望ましい特性を示し得る。たとえば、無機材料のストランドまたはファイバネットワークによって、ポリマー材料内にリチウムイオン移動経路が構築され、ポリマー材料の機械的強度が向上した。あるいは、無機材料(たとえば、セラミック)繊維は、噛み合わせまたは同心構成での電極材料との組み合わせによって、電解質体積を最小限に抑えるとともに、電極の利用を最大化するため、充電/放電時の活性電解質エリア、リチウムイオン界面移動、および電極体積変化耐性の増大が可能である。
【0053】
テンプレーティング法は、複数のストランドを含む多孔質(たとえば、ナノ多孔質および/またはマイクロ多孔質)無機SSEを提供する。ストランドは、個々のストランドの構成に用いられるテンプレートの大略形状(たとえば、円筒状または実質的に円筒状、多面体形状または実質的に多面体形状、不規則形状等)を有していてもよい。たとえば、ストランドは、マイクロメートルからメートルの範囲の長さおよび/またはナノメートルからマイクロメートルの範囲の最大断面寸法(たとえば、直径)を有する。
【0054】
無機SSE電解質の細孔(たとえば、細孔サイズ、細孔サイズ分布、細孔形態等)は、方法(たとえば、使用するテンプレーティングまたはエレクトロスピニング)に応じて変化し得る。テンプレーティング法の場合、細孔は、テンプレート材料の除去により形成されるようになっていてもよい(たとえば、テンプレーティング材料に対応するサイズおよび/または形状を有していてもよい)。エレクトロスピニングの場合、細孔は、ファイバにより形成された空隙によって形成されるようになっていてもよい。たとえば、テンプレーティング法により形成された無機SSEの場合は、細孔の少なくとも一部または全部が1~100ミクロンのうちの少なくとも1つの寸法を有する。たとえば、エレクトロスピニングにより形成された無機SSEの場合は、細孔の少なくとも一部または全部が1nm~500ミクロンのうちの少なくとも1つの寸法を有する。
【0055】
種々例において、固体ハイブリッド電解質の細孔、固体ハイブリッド電解質のストランド(たとえば、ストランドの一部または全部)(存在する場合)、および/または固体ハイブリッド電解質の細孔は、整列していてもよいし、実質的に整列していてもよい。「整列」は、各ストランドの長手方向軸が隣接ストランドの長手方向軸に対して平行、平行の
30°未満、20°未満、15°未満、10°未満、または5°未満となるように、無機SSEのストランドおよび/または細孔が整列することを意味する。一例において、ストランドおよび/または細孔は、端と端とを接続するようには配置されない。実質的な整列は、ストランドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70、80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%が整列することを意味する。
【0056】
説明のための一例として、生体材料テンプレート(たとえば、木材テンプレート、植物テンプレート等)により形成された固体ハイブリッド電解質が平面状の離散電極とともに電池に用いられている場合、個々のストランドは、電極の一方または両方により規定された平面と大略垂直(たとえば、垂直)に整列しており、細孔も、電極の一方または両方により規定された平面と大略垂直(たとえば、垂直)に整列している。
【0057】
種々例において、無機SSEのストランド(たとえば、ストランドの一部または全部)は、生地(たとえば、織編生地、編組生地等)として配置される。無機SSEのストランドは、無機SSEの作製に用いられる繊維テンプレートの一般的構造を取っていてもよい。無機SSEの寸法は、繊維テンプレートの寸法より実質的に小さくてもよい。
【0058】
説明のための一例として、炭素テンプレート(たとえば、繊維テンプレート等)により形成された固体ハイブリッド電解質が平面状の離散電極とともに電池に用いられている場合、無機SSEの個々のストランドは、電極の一方または両方により規定された平面と大略平行(たとえば、平行)に整列しており、無機SSEの細孔は、電極の一方または両方により規定された平面と垂直に整列している。
【0059】
種々例において、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を構成するテンプレーティング法は、
テンプレートを1つまたは複数のSSE材料前駆体と接触させることと、
任意選択として、SSE材料前駆体を反応させて、(たとえば、少なくとも一部または全部が反応および/または分解したSSE材料前駆体を含む)固体無機材料を形成することと、
テンプレートを固体無機材料で熱処理することであり、テンプレートが(たとえば、二酸化炭素として)除去され、無機SSE(たとえば、モノリシックSSEまたはメソ多孔質体もしくはF/S SSE)が形成される、ことと、
焼成テンプレートをポリマー材料と接触させて、モノリシックSSEまたはメソ多孔質体の場合に、無機SSE材料上に層を形成する(および任意選択として、無機SSE材料の表面上に露出した細孔の少なくとも一部または全部を満たす)か、または、F/S SSEの場合に、ポリマー材料がF/S SSEの細孔(たとえば、テンプレートに対応する細孔)の少なくとも一部または全部を満たす、ことと、
を含む。
【0060】
種々例において、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を形成するテンプレーティング法は、
生体材料テンプレートを1つまたは複数のSSE材料前駆体(たとえば、1つまたは複数の無機SSE材料ゾルゲル前駆体)と接触(たとえば、浸潤)させることであり、生体材料テンプレート(たとえば、圧縮生体材料テンプレート)の整列チャネルのうちの1つ、複数、または全部が、SSE材料前駆体で少なくとも部分的または完全に満たされる、ことと、
任意選択として、(たとえば、加熱により)SSE材料前駆体充填テンプレートを反応させて、(たとえば、少なくとも一部または全部が反応および/または分解した無機SSE材料ゾルゲル前駆体を含む)固体無機材料を形成することと、
加熱したテンプレートを熱処理することであり、テンプレート材料の実質的にすべてま
たはすべてが除去され、無機SSE材料が形成される、ことと、
焼成テンプレートをポリマー材料と接触させることであり、ポリマー材料が無機SSEのナノ細孔および/またはマイクロ細孔を少なくとも部分的に満たす、ことと、
を含む。
【0061】
種々例において、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を構成するテンプレーティング法は、
炭素テンプレートを1つまたは複数の無機SSE材料前駆体(たとえば、1つまたは複数の金属塩)と接触させることと、
任意選択として、(たとえば、加熱により)炭素テンプレート接触炭素テンプレートを反応させて、固体無機材料(たとえば、無機材料の複数のナノ粒子)を形成することと、
テンプレートを熱処理することであり、テンプレート材料の実質的にすべてまたはすべてが除去され、無機SSE材料が形成される、ことと、
無機SSEをポリマー材料と接触(たとえば、浸潤)させることであり、ポリマー材料がテンプレートのナノ細孔および/またはマイクロ細孔を少なくとも部分的に満たす、ことと、
を含む。
【0062】
さまざまなテンプレートを使用可能である。テンプレートは、ポリマー(たとえば、生物学的に誘導されたポリマー(たとえば、セルロース、タンパク繊維等)、人工ポリマー(たとえば、PET、たとえばナイロン等のポリアミド、たとえばレーヨン等の再生セルロース、ポリエステル等))により形成される。テンプレートは、相互接続されたナノスケールおよび/またはマイクロスケールのボイドを含む階層型相互接続構造を有していてもよい。たとえば、テンプレートは、低ねじれテンプレート(たとえば、木材テンプレートにより形成された低ねじれテンプレート)である。テンプレートとしては、生物材料(たとえば、木材、植物等)または人工テンプレートが可能であり、これらは、たとえばテープキャスト、スクリーン印刷、押し出し、3D印刷、製織、編組、非織編法等の方法により形成可能である。これらの方法においては、テンプレートのすべてまたは実質的にすべてが除去される(すなわち、犠牲テンプレートである)。たとえば、テンプレートは、熱処理により除去される。
【0063】
さまざまな炭素テンプレートを使用可能である。炭素テンプレートの例としては、繊維テンプレート、紙テンプレート、発泡体テンプレート等が挙げられるが、これらに限定されない。炭素テンプレートは、繊維であってもよい。種々例において、繊維は、生地である。生地は、さまざまな織込、編組等を含んでいてもよいし、非織編であってもよい。織編生地の場合、当該織編生地は、如何なる織込パターンのものであってもよい。
【0064】
さまざまな生体材料テンプレートを使用可能である。生体材料テンプレートは、木材テンプレート、植物テンプレート等であってもよい。
【0065】
さまざまな木材および植物テンプレートを使用可能である。木材または植物テンプレートは、複数のナノチャネルおよび/またはマイクロチャネルを含む。複数のナノチャネルおよび/またはマイクロチャネルは、相互接続されて、少なくとも1つのノードを有する3次元ネットワークを形成する。木材テンプレートは、圧縮木材テンプレートであってもよい。通常、木材テンプレートは、F/S SSEの形成に適当なサイズおよび形状の木材からリグニンの少なくとも一部または全部を除去することにより形成される。リグニンの除去によって、複数の整列チャネル(たとえば、1nm~10ミクロン(両者間のすべての整数nm値および範囲を含む)の断面サイズ(たとえば、直径等の最長寸法)を有するチャネル)を備えたテンプレート(たとえば、整列した多孔質ナノ構造を備えたテンプレート)が形成される。カン中でテンプレートを圧縮することによって、ナノチャネルお
よび/またはマイクロチャネルの断面を小さくすることができる。リグニンは、化学的処理により除去可能である。好適な処理が当技術分野において知られている。たとえば、リグニンは、木材サンプルを塩基水溶液と接触させることにより除去される。木材テンプレートは、たとえばアメリカボダイ樹、バルサ材等のさまざまな木材により形成可能である。
【0066】
無機SSEのファイバは、エレクトロスピニングにより形成可能である。好適なエレクトロスピニング法が当技術分野において知られている。エレクトロスピニングは、当技術分野において知られている方法により実行可能である。
【0067】
無機SSE材料前駆体は、反応(たとえば、少なくとも部分的または全体的な反応および/または熱的な劣化)によって、たとえば前駆体のうちの1つまたは複数の固体無機材料(たとえば、炭素ベースの残留物等の残留物を含み得る)を形成するようにしてもよい。無機材料は、熱処理によって、無機SSE材料を提供するようにしてもよい。
【0068】
種々例において、無機固体電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)を形成するエレクトロスピニング法は、
エレクトロスピニングポリマーおよび1つまたは複数の無機SSE前駆体材料を含む前駆体溶液をエレクトロスピニングして、当該ポリマーおよび1つまたは複数の無機SSE前駆体材料を含むナノファイバを用意することと、
ナノファイバを熱処理することであり、ナノファイバのポリマーのすべてまたは実質的にすべてが除去され、無機SSE材料が形成される、ことと、
無機SSEをポリマー材料と接触させることであり、ポリマー材料が無機SSE材料の空隙を少なくとも部分的に満たす、ことと、
を含む。
【0069】
さまざまなエレクトロスピニングポリマーを使用可能である。好適なエレクトロスピニングポリマーが当技術分野において知られている。エレクトロスピニングポリマーの非限定的な例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、またはポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0070】
さまざまな無機SSE前駆体材料を使用可能である。無機SSE前駆体材料の非限定的な例としては、ゾルゲル前駆体、金属塩等が挙げられる。SSE材料前駆体は、反応(たとえば、加熱)に際して、所望の組成の無機SSEを提供する1つもしくは複数のゾルゲル前駆体または1つもしくは複数の金属塩であってもよい。好適なゾルゲル前駆体およびゾルゲル前駆体の組み合わせの例が当技術分野において知られている。好適な金属塩および金属塩の組み合わせの例が当技術分野において知られている。種々例において、熱処理には、無機SSE材料前駆体または反応した(たとえば、少なくとも一部または全部が反応した)無機SSE材料前駆体の焼結および/または焼成を含む。
【0071】
熱処理によって、テンプレート材料が除去(たとえば、熱分解)される。熱処理によって、テンプレートの少なくとも一部(たとえば、実質的に)または全部が除去されて、無機SSEが提供される。種々例において、熱処理は、空気雰囲気または酸素を含む雰囲気において700~1000℃で実行される。
【0072】
一態様において、本開示は、本開示の固体ハイブリッド電解質の使用を提供する。固体ハイブリッド電解質は、さまざまな機器において使用可能である。種々例において、機器は、本開示の1つまたは複数の固体ハイブリッド電解質を備える。機器の例としては、電解槽、電解セル、燃料電池、電池、および他の電気化学的機器(たとえば、センサ等)が
挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
機器は、電池であってもよい。電池は、イオン伝導性電池であってもよい。電池は、携帯用途、輸送用途、固定エネルギー貯蔵用途等の用途向けに構成されていてもよい。イオン伝導性電池の例としては、リチウムイオン伝導性電池、ナトリウムイオン伝導性電池、マグネシウムイオン伝導性電池等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
種々例において、電池(たとえば、固体イオン伝導性電池等のイオン伝導性電池)は、本開示の固体ハイブリッド電解質、アノード、およびカソードを備え、固体ハイブリッド電解質がアノードとカソードとの間に配設されている。一例において、固体ハイブリッド電解質のポリマー材料は、固体ハイブリッド電解質の無機SSE材料とアノードおよび/またはカソードとの間に配設されている。
【0075】
無機SSE材料は、従来のイオン伝導性電池に使用可能である(たとえば、イオン伝導性電池は、基本電解質としての電解質を含む)。従来のイオン伝導性電池は、非伝導性(たとえば、非イオン伝導性)のセパレータを備える。このため、一例において、電池は、本明細書に開示の無機SSE材料(たとえば、F/S SSEであって、テンプレーティング無機SSEもしくはエレクトロスピニング無機SSEであってもよい)または本明細書に開示の固体ハイブリッド電極(たとえば、F/S SSE)、および電解質を備える。電解質は、当技術分野において知られている従来のイオン伝導性(たとえば、リチウムイオン伝導性)電池に用いられる如何なる電解質であってもよい。従来の電池の電解質の非限定的な例としては、たとえば有機液体、ゲル、ポリマー等の液体が挙げられる。種々例において、液体電解質は、固体ハイブリッド電解質の一部(たとえば、固体ハイブリッド電解質のゲルポリマー等のポリマー材料の一部)ではない。この場合、無機SSE材料または固体ハイブリッド電極は、従来の電池のセパレータである。種々例において、無機SSE材料または固体ハイブリッド電極は、従来の電池のセパレータを置き換える。従来の電池に用いられる通常のセパレートと異なり、無機SSE材料または固体ハイブリッド電極はいずれも、カソードおよびアノードを分離するとともに、イオン伝導性である。種々例において、無機SSE材料または固体ハイブリッド電極は、従来の電池のイオン伝導性セパレータである。さまざまな電極(たとえば、カソードおよびアノード)を使用可能である。個々の電極(たとえば、カソードおよび/またはアノード)は、固体ハイブリッド電解質からの独立(たとえば、分離)も可能であるし(たとえば、平面状電極)、固体ハイブリッド電解質との一体化も可能である。一体化電極の場合、固体ハイブリッド電解質(たとえば、モノリシックSSEまたはメソ多孔質SSE体)は、当該固体ハイブリッド電解質の表面に露出した1つまたは複数の多孔質領域を有し、固体ハイブリッド電解質の離散多孔質領域の細孔に配設された電極材料(たとえば、カソード材料および/またはアノード材料)により電極が形成される。
【0076】
カソードおよびアノードは、さまざまな材料(たとえば、それぞれカソード材料またはアノード材料)により形成可能である。好適なカソード材料およびアノード材料の例が当技術分野において知られている。
【0077】
カソードは、固体ハイブリッド電解質と電気的に接触した1つまたは複数のカソード材料を含む。さまざまなカソード材料を使用可能である。カソード材料の組み合わせが用いられるようになっていてもよい。たとえば、カソード材料は、インターカレーション等のメカニズムによりイオンを格納するイオン伝導性材料またはイオンと反応して2次相(たとえば、空気または硫化物電極)を形成するイオン伝導性材料である。好適なカソード材料の例が当技術分野において知られている。
【0078】
一体化カソードの場合、カソード材料は、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域の表面
(たとえば、細孔のうちの1つの細孔表面)の少なくとも一部に配設される。カソード材料は、イオン伝導性固体電解質材料の多孔質領域または複数の多孔質領域のうちの1つの1つまたは複数の細孔(たとえば、細孔の大部分)を少なくとも部分的に満たしていてもよい。一例において、カソード材料は、イオン伝導性固体電解質材料の多孔質領域の細孔の少なくとも一部に浸潤している。
【0079】
一例において、カソード材料は、多孔質SSE材料の多孔質領域のカソード側の細孔表面の少なくとも一部に配設され、SSE材料の多孔質領域のカソード側は、アノード材料が配設される多孔質SSE材料の多孔質領域のアノード側と対向する。
【0080】
種々例において、カソードは、導電性炭素材料を含む。炭素材料の非限定的な例としては、グラファイト、硬質炭素、多孔質中空カーボン球およびチューブ等が挙げられる。カソード材料は、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含んでいてもよい。好適な有機またはゲルイオン伝導性電解質が当技術分野において知られている。
【0081】
イオン伝導性カソード材料の一部として、導電性材料を使用するのが望ましいことがある。また、一例において、イオン伝導性カソード材料は、導電性炭素材料(たとえば、グラフェンまたはカーボンブラック)を含み、任意選択として、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含む。導電性材料は、イオン伝導性カソード材料と別個であってもよい。たとえば、導電性材料(たとえば、グラフェン、カーボンナノチューブ等)は、イオン伝導性SSE電解質材料の多孔質領域の表面(たとえば、細孔表面)の少なくとも一部に配設され、イオン伝導性カソード材料は、導電性材料(たとえば、グラフェン、カーボンナノチューブ等)の少なくとも一部に配設される。
【0082】
他の種々例において、カソードは、硫黄含有材料を含む。一例において、カソード材料は、有機硫化物または多硫化物である。有機硫化物の例としては、カルビンポリスルフィドおよび共重合硫黄が挙げられる。硫黄含有材料の非限定的な例としては、硫黄、硫黄複合材料(たとえば、カルビンポリスルフィド、共重合硫黄等)、および多硫化物材料等が挙げられる。
【0083】
一例において、カソードは、空気電極である。空気電極に適した材料の例としては、たとえば大表面積の炭素粒子(たとえば、導電性カーボンブラックであるSuper P)およびメッシュ(たとえば、PVDFバインダ等のポリマーバインダ)に結合された触媒粒子(たとえば、α-MnO2ナノロッド)等、空気カソードを備えたリチウムイオン電池等のイオン伝導性電池に用いられる材料が挙げられる。
【0084】
カソード材料は、リチウムイオン伝導性材料であってもよい。リチウムイオン伝導性カソード材料の非限定的な例としては、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(たとえば、NMC、LiNixMnyCozO2(ただし、x+y+z=1であり、たとえばLi(NiMnCo)1/3O2等))、LiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、リチウムマンガン酸化物(LMO)(たとえば、LiMn2O4およびLiNi0.5Mn1.5O4)、リチウムリン酸鉄(LFP)(たとえば、LiFePO4)、LiMnPO4、LiCoPO4、およびLi2MMn3O8(ただし、MはFe、Co等から選択される)が挙げられる。
【0085】
カソード材料は、ナトリウムイオン伝導性材料であってもよい。ナトリウムイオン伝導性カソード材料の非限定的な例としては、Na2V2O5、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2O2、Na3V2(PO4)3、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO4、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2O2@グラフェン複合材等の複合材料(たとえば、カーボンブラックを含む複合材)が挙げられる。
【0086】
カソード材料は、マグネシウムイオン伝導性材料であってもよい。マグネシウムイオン伝導性カソード材料の非限定的な例としては、ドープマンガン酸化物(たとえば、MgxMnO2・yH2O)、Mg1+x(Al,Ti)2(PO4)6(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料等が挙げられる。
【0087】
アノードは、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域と電気的に接触した1つまたは複数のアノード材料を含む。たとえば、アノード材料は、固体電解質中を伝導するイオンの金属形態(たとえば、リチウムイオン電池の金属リチウム)または伝導イオンを挿入する化合物(たとえば、リチウムイオン電池の炭化リチウム、Li6C)である。好適なアノード材料の例が当技術分野において知られている。
【0088】
一体化アノードの場合、アノード材料は、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域の表面(たとえば、細孔のうちの1つの細孔表面)の少なくとも一部に配設される。アノード材料は、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域の1つまたは複数の細孔(たとえば、細孔の大部分)を少なくとも部分的に満たしていてもよい。一例において、アノード材料は、固体ハイブリッド電解質の多孔質領域の細孔の少なくとも一部に浸潤している。
【0089】
一例において、アノード材料は、固体ハイブリッド電解質のアノード側多孔質領域の細孔表面の少なくとも一部に配設され、固体ハイブリッド電解質のアノード側は、カソード材料が配設される固体ハイブリッド電解質のカソード側と対向する。
【0090】
種々例において、アノードは、導電性炭素材料を含む(または、導電性炭素材料から成る)。炭素材料の非限定的な例としては、グラファイト、硬質炭素、多孔質中空カーボン球およびチューブ等が挙げられる。アノード材料は、有機またはゲルイオン伝導性電解質をさらに含んでいてもよい。好適な有機またはゲルイオン伝導性電解質が当技術分野において知られている。
【0091】
アノード材料は、導電性材料であってもよい。導電性材料の非限定的な例としては、導電性炭素材料、スズおよびその合金、スズ/炭素、スズ/コバルト合金、シリコン/炭素材料等が挙げられる。導電性炭素材料の非限定的な例としては、グラファイト、硬質炭素、多孔質中空カーボン球およびチューブ(たとえば、カーボンナノチューブ)等が挙げられる。
【0092】
アノードは、金属であってもよい。金属の非限定的な例としては、リチウム金属、ナトリウム金属、マグネシウム金属等が挙げられる。
【0093】
アノード材料は、リチウム含有材料であってもよい。リチウム含有材料の非限定的な例としては、リチウム金属、炭化リチウム、Li6C、およびチタン酸リチウム(LTO)(たとえば、Li4Ti5O12等)が挙げられる。
【0094】
アノード材料は、ナトリウム含有材料であってもよい。アノード材料の非限定的な例としては、ナトリウム金属、Na2C8H4O4およびNa0.66Li0.22Ti0.78O2等のイオン伝導性ナトリウム含有アノード材料が挙げられる。
【0095】
アノード材料は、マグネシウム含有材料であってもよい。一例において、アノード材料は、マグネシウム金属である。
【0096】
電池は、集電体を備えていてもよい。たとえば、電池は、固体ハイブリッド電解質のカソード側に配設されたカソード側(第1)の集電体と、固体ハイブリッド電解質のアノー
ド側に配設されたアノード側(第2)の集電体とを備える。集電体はそれぞれ、金属(たとえば、アルミニウム、銅、もしくはチタン)または金属合金(アルミニウム合金、銅合金、もしくはチタン合金)で独立して作製される。
【0097】
電池は、種々付加的な構造要素(たとえば、バイポーラ板、外部パッケージ、ワイヤを接続する電気接点/リード等)を備えていてもよい。一例において、電池は、バイポーラ板をさらに備える。種々例において、電池は、バイポーラ板および外部パッケージ、ならびにワイヤを接続する電気接点/リードをさらに備える。一例において、繰り返しの電池セルユニットは、バイポーラ板により分離されている。
【0098】
固体ハイブリッド電解質、カソード、アノード、カソード側(第1)の集電体(存在する場合)、およびアノード側(第2)の集電体(存在する場合)がセルを形成していてもよい。電池は、1つまたは複数のバイポーラ板により分離された複数のセルを備えていてもよい。電池中のセルの数は、電池の性能要件(たとえば、電圧出力)によって決まり、作製上の制約事項による制限のみを受ける。たとえば、固体イオン伝導性電池は、1~500個のセル(両者間のすべての整数セル数および範囲を含む)を備える。
【0099】
本明細書に開示の種々実施形態および例に記載の方法のステップは、本開示の方法を実行するのに十分である。これにより、一例において、方法は本質的に、本明細書に開示の方法のステップの組み合わせから成る。別の例において、方法は、このようなステップから成る。
【0100】
以下のステートメントは、本開示の固体ハイブリッド電解質およびその使用の例を提供する。
ステートメント1.本明細書に開示の(または、本明細書に開示の無機SSE材料を含む)SSE(たとえば、無機(たとえば、セラミック)SSE)と、
固体電解質(たとえば、固体電解質材料)の外面の少なくとも一部または全部に配設された本明細書に開示のポリマー材料と、
を含む、ハイブリッド電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)。
ステートメント2.SSE材料が、本明細書に開示のモノリシック(たとえば、多孔質モノリシック、高密度モノリシック)SSE体またはメソ多孔質SSE体である、ステートメント1に記載のハイブリッド電解質(メソ多孔質SSE体材料の例としては、高密度SSE材料層上に配設された1つまたは複数の多孔質SSE材料層を含む二層および三層材料が挙げられる)。
ステートメント3.SSE材料が、ディスク、シート、または多面体である(たとえば、多面体形状を有する)、ステートメント1または2に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント4.ポリマー材料が、1つまたは複数の点において、10nm~10ミクロン(たとえば、5~10ミクロン)の厚さを有する、ステートメント1~3のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント5.SSEが、複数のファイバまたはストランド(たとえば、複数の非織編ストランドまたは複数の織編ストランド)を含む、ステートメント1~4のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント6.ファイバが、織編基板として存在する、ステートメント5に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント7.ファイバが、ランダムに配置または配列された、ステートメント5または6に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント8.ポリマー材料のファイバまたはストランドが、相互接続3Dネットワークを形成する、ステートメント5~7のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント9.SSE材料が、リチウムイオン伝導性(たとえば、リチウムイオン含有)SSE材料、ナトリウムイオン伝導性(たとえば、ナトリウムイオン含有)SSE
材料、またはマグネシウムイオン伝導性(たとえば、マグネシウムイオン含有)SSE材料を含む、ステートメント1~8のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント10.リチウムイオン伝導性SSE材料が、リチウムペロブスカイト材料、Li3N、Li-β-アルミナ、リチウム超イオン伝導体(LISICON)、Li2.88PO3.86N0.14(LiPON)、Li9AlSiO8、Li10GeP2S12、リチウムガーネット材料、ドープリチウムガーネット材料、リチウムガーネット複合材料、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、ステートメント9に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント11.リチウムガーネット材料が、カチオンドープLi5La3M1
2O12(ただし、M1はNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)、カチオンドープLi6La2BaTa2O12、カチオンドープLi7La3Zr2O12、およびカチオンドープLi6BaY2M1
2O12(ただし、M1はNb、Zr、Ta、またはこれらの組み合わせ)であり、カチオンドーパントが、バリウム、イットリウム、亜鉛、またはこれらの組み合わせである、ステートメント10に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント12.リチウムガーネット材料が、Li5La3Nb2O12、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6La2SrNb2O12、Li6La2BaNb2O12、Li6La2SrTa2O12、Li6La2BaTa2O12、Li7Y3Zr2O12、Li6.4Y3Zr1.4Ta0.6O12、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、Li6BaY2M1
2O12、Li7Y3Zr2O12、Li6.75BaLa2Nb1.75Zn0.25O12、Li6.75BaLa2Ta1.75Zn0.25O12、およびこれらの組み合わせである、ステートメント10に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント13.ナトリウムイオン伝導性SSE材料が、β”-Al2O3、Na4Zr2Si2PO12(NASICON)、カチオンドープNASICON、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、ステートメント9に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント14.マグネシウムイオン伝導性SSE材料が、Mg1+x(Al,Ti)2(PO4)6(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、ステートメント9に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント15.無機SSEが、当該無機SSEの外面に露出した細孔を有し、当該ハイブリッド電解質が、細孔の少なくとも一部に配設された少なくとも1つのカソード材料および/または少なくとも1つのアノード材料をさらに含み、少なくとも1つのカソード材料および少なくとも1つのアノード材料が細孔の少なくとも一部に配設される場合、少なくとも1つのカソード材料および少なくとも1つのアノード材料が、無機SSEの離散かつ電気的に分離された領域に配設される、ステートメント1~14のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント16.ポリマー材料が、ポリ(エチレン)(PE)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレン)(PP)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ[ビス(メトキシエトキシエトキシド)-ホスファゼン]、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ二フッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスチレン、スルホン酸塩(PSS)、ポリ塩化ビニル(PVC)群、ポリ(塩化ビニリデン)ポリプロピレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(たとえば、テフロン(登録商標))、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリイミド、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、PEO含有共重合体(たとえば、ポリスチレン(PS)-PEO共重合体およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)-PEO共重合体)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合体)、PVdF含有共重合体(たとえば、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプ
ロピレン共重合体(PVdF-HFP共重合体))、PMMA共重合体(たとえば、ポリ(メチルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体))、これらの誘導体、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む(たとえば、そのようなポリマーである)、ステートメント1~15のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント17.ポリマー材料が、ゲル(たとえば、ポリマー材料の総重量に基づいて、60~80wt%の液体を含むゲル)である、ステートメント1~16のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント18.液体が、液体電解質(たとえば、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)中のLiPF6(たとえば、1M)、ジメトキシエタン(DME)/ジオキソラン(DOL)中のLiTFSI(たとえば、1M)、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)イオン液体中のLiTFSI(たとえば、0.5M)等の非水液体電解質)である、ステートメント1~17のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント19.ゲルのポリマー材料が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP共重合体)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PEO、PMMA、PAN、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、およびこれらの組み合わせから成る群から選択されるポリマーを含む(たとえば、そのようなポリマーである)、ステートメント17または18に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント20.ポリマー材料が、金属塩(たとえば、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等から成る群から選択される金属塩)を含む、ステートメント1~19のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント21.ポリマー材料が、セラミックフィラー(たとえば、ポリマー材料の総重量に基づいて、2~25wt%)を含む、ステートメント1~20のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント22.セラミックフィラーが、導電性粒子、非導電性粒子(たとえば、Al2O3、SiO2、TiO2ナノ粒子等)、セラミックナノ材料(たとえば、セラミックナノ粒子、セラミックナノファイバ)から成る群から選択される、ステートメント21に記載のハイブリッド電解質。
ステートメント23.本開示の1つまたは複数のハイブリッド電解質(たとえば、ステートメント1~22のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質)を備えた、機器。
ステートメント24.本開示のハイブリッド電解質(たとえば、ステートメント1~22のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質)と、
アノードと、
カソードと、
を備え、
ハイブリッド電解質が、カソードとアノードとの間に配設された(たとえば、ハイブリッド電解質のポリマー材料が、ハイブリッド電解質のSSE材料とアノードおよび/またはカソードとの間に配設された(たとえば、ハイブリッド電解質のSSE材料とアノードおよび/またはカソードとの間の空隙を実質的にすべて満たす))、電池(たとえば、固体イオン伝導性電池等のイオン伝導性電池)である、ステートメント23に記載の機器。
ステートメント25.電池が、カソードおよび/またはアノードの少なくとも一部に配設された集電体をさらに備えた、ステートメント24に記載の機器。
ステートメント26.集電体が、導電性の金属または金属合金である、ステートメント25に記載の機器。
ステートメント27.電池が、リチウムイオン伝導性固体電池であり、ハイブリッド電解質が、リチウムイオン伝導性(たとえば、リチウム含有)SSE材料(たとえば、ステートメント11~13のいずれか一項に記載のリチウム伝導性(たとえば、リチウム含有)SSE材料)である、ステートメント24~26のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント28.電池が、ナトリウムイオン伝導性固体電池であり、ハイブリッド
電解質が、ナトリウムイオン伝導性(たとえば、ナトリウム含有)SSE材料(たとえば、ステートメント14に記載のナトリウムイオン伝導性(たとえば、ナトリウム含有)SSE材料)である、ステートメント24~26のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント29.電池が、マグネシウムイオン伝導性固体電池であり、ハイブリッド電解質が、マグネシウムイオン伝導性(たとえば、マグネシウム含有)SSE材料(たとえば、ステートメント15に記載のマグネシウムイオン伝導性(たとえば、マグネシウム含有)SSE材料)である、ステートメント24~26のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント30.カソードおよび/またはアノードが、導電性炭素材料(たとえば、グラファイト、硬質炭素、多孔質中空カーボン球およびチューブ等)を含み、カソード材料が任意選択として、有機またはゲルイオン導電性電解質をさらに含む、ステートメント24~29のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント31.カソードが、硫黄、硫黄複合材料(たとえば、カルビンポリスルフィド、共重合硫黄等)、および多硫化物材料から選択される材料を含むか、または、空気である、ステートメント24~29のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント32.カソード(たとえば、リチウムイオン伝導性、リチウム含有カソード)が、リチウム含有材料から成る群から選択される材料を含む、ステートメント27に記載の機器。
ステートメント33.リチウム含有カソード材料が、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(たとえば、NMC、LiNixMnyCozO2(ただし、x+y+z=1であり、たとえばLi(NiMnCo)1/3O2等))、LiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、リチウムマンガン酸化物(LMO)(たとえば、LiMn2O4およびLiNi0.5Mn1.5O4)、リチウムリン酸鉄(LFP)(たとえば、LiFePO4)、LiMnPO4、LiCoPO4、およびLi2MMn3O8(ただし、MはFe、Co、およびこれらの組み合わせから選択される)から成る群から選択される、ステートメント32に記載の機器。
ステートメント34.カソード(たとえば、ナトリウムイオン伝導性、ナトリウム含有カソード)が、ナトリウム含有カソード材料から成る群から選択される材料を含む、ステートメント28に記載の機器。
ステートメント35.ナトリウム含有カソード材料が、Na2V2O5、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2O2、Na3V2(PO4)3、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO4、およびNa2/3Fe1/2Mn1/2O2@グラフェン複合材から成る群から選択される、ステートメント34に記載の機器。
ステートメント36.カソード(たとえば、マグネシウムイオン伝導性、マグネシウム含有カソード)が、ドープマグネシウム酸化物(たとえば、Mg1+x(Al,Ti)2(PO4)6(ただし、xは4または5)、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料等)から成る群から選択される材料を含む、ステートメント29に記載の機器。
ステートメント37.アノードが、シリコン含有材料(たとえば、シリコン、シリコン/炭素等)、スズおよびその合金(たとえば、スズ/コバルト合金等)、スズ/炭素、ならびにリンから成る群から選択される材料を含む、ステートメント24~36のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント38.アノード(たとえば、リチウムイオン伝導性アノードおよびリチウム含有アノード)が、リチウムイオン伝導性アノード材料から成る群から選択される材料を含む、ステートメント24~27および31~33のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント39.リチウムイオン伝導性アノード材料が、炭化リチウム、Li6C、およびチタン酸リチウム(LTO)(たとえば、Li4Ti15O12等)から成る群から選択されるリチウム含有材料である、ステートメント38に記載の機器。
ステートメント40.アノードが、リチウム金属である、ステートメント38に記載の機器。
ステートメント41.アノード(たとえば、ナトリウム含有およびナトリウムイオン伝導性アノード)が、ナトリウムイオン伝導性アノード材料から成る群から選択される材料
を含む、ステートメント24~26、28、34、および35のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント42.ナトリウム含有アノード材料が、Na2C8H4O4およびNa0.66Li0.22Ti0.78O4から成る群から選択される、ステートメント41に記載の機器。
ステートメント43.アノードが、ナトリウム金属である、ステートメント41に記載の機器。
ステートメント44.アノードが、マグネシウム含有アノード材料である、ステートメント24~26、29、および36のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント45.アノードが、マグネシウム金属である、ステートメント44に記載の機器。
ステートメント46.ハイブリッド電極、カソード、アノード、および任意選択としての集電体が、セルを形成し、電池が、複数のセルを備え、セルの各隣接対が、バイポーラ板により分離された、ステートメント24~45のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント47.(たとえば、基本電解質として)液体電解質を備えた従来のイオン伝導性電池であり、電池が、本明細書に開示の無機SSEまたは本明細書に開示の固体ハイブリッド電解質および液体電解質(たとえば、従来の電池に用いられる液体電解質)を備え、液体電解質が、固体ハイブリッド電解質の構成要素として存在せず、無機SSE材料または固体ハイブリッド電解質が、従来の電池のセパレータである、ステートメント23~46のいずれか一項に記載の機器。
ステートメント48.無機SSEが、本明細書に開示のF/S SSE(たとえば、テンプレーティング無機SSEまたはエレクトロスピニング無機SSE)である、ステートメント47に記載の機器。
ステートメント49.ハイブリッド電解質(たとえば、固体ハイブリッド電解質)(たとえば、ステートメント1~22のいずれか一項に記載のハイブリッド電解質)を作製する方法であって、
テンプレートを1つまたは複数のSSE材料前駆体と接触させることと、
(たとえば、加熱により)SSE材料前駆体を反応させて、(たとえば、少なくとも一部または全部が反応および/または分解したSSE材料前駆体を含む)固体無機材料を形成することと、
テンプレートを固体無機材料で熱処理(たとえば、焼結および/または焼成)することであり、テンプレートが(たとえば、燃焼により二酸化炭素として)除去され、無機SSE(たとえば、モノリシックSSEまたはメソ多孔質体もしくはF/S SSE)が形成される、ことと、
焼成テンプレートをポリマー材料と接触(たとえば、浸潤)させることと、
を含み、
モノリシックSSEまたはメソ多孔質体の場合に、無機SSE材料上に層を形成する(および任意選択として、無機SSE材料の表面上に露出した細孔の少なくとも一部または全部を満たす)か、または、F/S SSEの場合に、ポリマー材料がF/S SSEの細孔(たとえば、テンプレートに対応する細孔)の少なくとも一部または全部を満たす、方法。
ステートメント50.SSE材料前駆体が、ゾルゲル前駆体または金属塩である、ステートメント49に記載の方法。
ステートメント51.テンプレートが、炭素テンプレート(たとえば、繊維テンプレート)または生体材料テンプレート(たとえば、木材または植物テンプレート)である、ステートメント49または50に記載の方法。
【0101】
以下の例は、本開示の説明として提示する。これらは、何ら制限する意図のものではない。
【実施例0102】
本例は、本開示の固体ハイブリッド電解質の説明を与える。また、本例は、このような電解質の作製および特性評価の例を与える。
【0103】
リチウム金属電池のハイブリッドポリマー/ガーネット型電解質系の界面抵抗の低減
ガーネット型固体電解質は、その高いイオン伝導性(10-4S/cm~10-3S/cm)および広い電気化学的安定窓(0~6V対Li+/Li)によって、Li金属電池に対する有望な結果を明らかにしている。ガーネット型固体電解質の主要な課題の1つとして、電解質と電極との間の高い界面抵抗がある。本例は、リチウム金属対称セルの界面抵抗を低減するとともにデンドライト貫通に対する保護を図る2つのゲルポリマー電解質層間の固体Li7La2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.25O12(LLCZN)ガーネット型電解質を含むハイブリッド電解質を説明する。ゲルポリマー電解質層は、ガーネット固体電解質(SSE)と電極との間に、低界面抵抗および長期電気化学的安定の有利な界面を形成する。ハイブリッドゲルポリマーおよびLLCZN電解質は、SSE/カソード界面で248Ω×cm2前後、SSE/Li金属界面で214Ω×cm2前後の低い界面電荷移動抵抗を実現する。この設計の異なる利点として、ハイブリッド電解質は、高密度LLCZNガーネット層により、リチウムデンドライトの形成を防止することができる。本発明者らの結果は、ハイブリッド対称セルが長期間のサイクルにわたって、安定したストリッピングおよびプレーティングプロファイルで動作し得ることを示している。また、このハイブリッド電解質は、過電圧が小さく、デンドライト短絡に対する信頼性が高いLi金属電池に使用可能である。ゲルポリマー界面層を備えたハイブリッド電解質設計は、ガーネット固体界面抵抗に有効で、高性能の安全なLi金属電池を実証する興味深い表面工学ソリューションである。
【0104】
LLCZNガーネットSSEとの間の界面層としてゲルポリマー電解質を備えたハイブリッド電解質の提案によって、界面抵抗を低減するとともに、室温で動作し得るLi金属完成セルを実証する。
図1aは、ポリマー/ガーネット型SSEハイブリッド電解質を用いた固体ポリマー-Li金属電池設計の模式図である。この電池においては、ガーネット型SSEと電極との間の界面層としてゲルポリマーを使用することにより、界面抵抗を低減している。ゲルポリマー電解質は、ガーネット型SSEと電極との間の接触の増大によって、カソードおよびLi金属に対するガーネット型SSE界面抵抗を低減するのに役立ち得る(
図1b)。本研究において使用するゲルポリマー電解質は、多孔質PVdF-HFPポリマーマトリクスと、ポリマーの内側に格納された制限量の液体電解質との組み合わせである。既知の技術により作製したゲルポリマーは、良好なイオン伝導性(5×10
-4S/cm)を有し、0~4.5V対Li
+/Liの電圧範囲で電気化学的に安定であるため、商業的に最も使用されているカソード材料に適している。ガーネット型SSEと活性電極との間の界面にゲルポリマー電解質を備えたハイブリッド設計のため、界面抵抗は、カソード界面に対して248Ω×cm
2、Li金属アノード界面に対して214Ω×cm
2という低さとなる。本発明者らの結果は、ハイブリッド対称セルが最大15時間にわたる安定したストリッピングおよびプレーティングプロファイルと、低い過電圧で動作し得ることを示しており、これは、ガーネット型SSEと金属Liアノードとの間の安定した界面を示す。ゲルポリマー中間層には最少量の液体電解質が格納されるため、ハイブリッド電解質は、従来の液体電解質ベースの電池のような漏れが発生しない。ゲルポリマー界面層を備えたハイブリッド電解質設計は、電気化学セル内のカソードおよびLi金属アノードの両者を含む電極に対する全体的な界面抵抗を低減するとともに、高性能の安全なLi金属電池を実証する重要な表面工学方策と考えられる。
【0105】
結果と考察
ハイブリッド電解質の特性評価
ガーネット型SSEおよびゲルポリマー電解質の特性評価を本明細書に記載する。ガー
ネット型LLCZNパレットの断面走査電子顕微鏡(SEM)画像を取得したが、これは、およそ450μmの合計厚を示しており、これらの試行のサンプル間で一貫性を保っている。ガーネットパレットの表面は、滑らかではないため、電極層に対する接触が不十分となる。合成プロセス中の12時間の高温焼結の結果として微小粒を有するガーネット型LLCZNパレットの拡大断面SEM画像を調べた。ガーネット型SSEの高密度構造は、サイクル中にリチウム金属デンドライトが電解質を貫通することを防止する。PVdF-HFPポリマーマトリクスのSEM画像を取得した。マトリクスの多孔質構造は、付加的な液体電解質を十分に吸収して含有する。ガーネット型LLCZNパレットに対して、X線回折(XRD)を実行した。これは、立方相ガーネット型Li5La3Nb2O12の標準的なXRDプロットとよく整合しており、LLCZNパレットが正方ガーネット相と比較してLiイオン伝導度が高い立方ガーネット相を有することを示す。厚さが1000μmおよび150μmの2つのLLCZNパレットにより電気化学的インピーダンス分光法(EIS)を実行し、両側に金を堆積させた対称セル中でテストした。インピーダンス分光曲線の高周波部の半円は、LLCZNのバルク抵抗および粒界抵抗を表す。厚さが異なるLLCZNパレットは、2×10-4S/cm前後の同じバルク伝導度を有する。式σ=R-1LS-1を用いて伝導度を計算した(ただし、Rは抵抗、LはLLCZNパレットの厚さ、Sは電極の面積である)。450μm厚のLLCZNパレットのバルク面比抵抗(ASR)は、225Ω×cm2であり、電池の許容範囲である。これは、ガーネット型SSEの内部抵抗が比較的小さく、SSEと電極との間の界面が主として固体電池の抵抗に寄与することを意味する。したがって、界面抵抗を内部抵抗と同レベルまで低減可能である限り、固体電解質は、電池使用に対して十分に小さい抵抗を有し得る。Li|ポリマー|Ti系によって、サイクリックボルタンメトリ(CV)を実行した。-0.3Vおよび0.3Vにおける急峻なピークは、リチウムのプレーティングおよびストリッピングに対応しており、それより高い電圧範囲にピークは存在しない。0.5V~4.5Vの電圧範囲のCV曲線の平坦さは、ゲルポリマー電解質が4.5Vまで電気化学的に安定であることを示す。また、ガーネット型LLZOが0~6V対Li+/Liで電気化学的に安定であることから、ハイブリッド電解質設計は、0~4.5V対Li+/Liの電圧範囲で安定である。この安定な電圧範囲により、ハイブリッド電解質は、多くのカソード材料を有するリチウム金属設計に適する。厚さ40μmのゲルポリマーの面比抵抗およびイオン伝導度はそれぞれ、ステンレス鋼プレートを備えた単純な対称セルのEISプロットから、8Ω×cm2および5×10-4S/cmである。この柔軟でイオン伝導性が高いゲルポリマーにより、SSEと電極との間の接触が改善して、界面抵抗が低くなり得る。
【0106】
ハイブリッド電解質の界面インピーダンスの解析
ガーネットポリマーハイブリッド電解質を備えた対称セルのインピーダンス解析を
図2に示す。
図2aは、カソード|ポリマー|カソード対称セルのインピーダンスプロファイルを示している。このセルのバルク抵抗は、ゲルポリマー層が薄くて導電性を有するため、小さい。中間周波数部の半円は、各側に対しておよそ107Ω×cm
2の電荷移動抵抗(R
ct)に対応する。この値は、等価回路シミュレーションにより計算される。R
ctは、カソード材料とゲルポリマーとの間の電荷移動の動的障害を表し、R
ctが小さいことは、ゲルポリマーおよびカソードが良好に界面接触していることを意味する。低周波部のロングテールは、カソード中の拡散インピーダンスに対応する。
図2bは、ステンレス鋼(SS)|ポリマー|SSE|ポリマー|SS対称セルのインピーダンスプロファイルを示しており、高周波におけるガーネット型SSEのバルクおよび粒界インピーダンス、中間周波数範囲の界面R
ct、および低周波数における拡散インピーダンスという3つの部分を組み合わせたものである。ゲルポリマーのインピーダンスプロットから、ゲルポリマーとSSとの間のR
ctは、インピーダンスプロットにおいて対応する半円が現れないことから、ほぼゼロである。したがって、SS|ポリマー|SSE|ポリマー|SS対称セルのR
ctはすべて、ポリマー|SSE界面に由来する。ポリマー|SSE界面のR
c
tは、
図5bにおける対応するフィッティング結果による計算から、各側に対しておよそ155Ω×cm
2である。この抵抗は、カソード|ポリマー界面のR
ctに近く、ポリマー|SSE界面とカソード|ポリマー界面とが同様の接触性能を有することを意味する。
図2cは、カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルのEISプロットである。インピーダンス曲線は、3つの部分を組み合わせたものである。高周波部は、ガーネット型SSE自体のバルクおよび粒界インピーダンスである。中間周波数部は、ゲルポリマー層自体の抵抗が相対的にかなり小さいことから、ポリマー|SSE界面およびカソード|ポリマー界面のR
ctを含めて、ガーネット型SSEとカソードとの間の界面R
ctに対応する2つの半円の組み合わせである。低周波数部は直線であり、カソードの拡散インピーダンスに対応する。カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルの合計界面R
ctは、各側に対して248Ω×cm
2である。この値は、等価回路フィッティングにより得られたものである。カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルの界面R
ctは、ポリマー|カソード界面R
ctおよびポリマー|SSE界面R
ctの合計に略等しく、3種類の全界面のインピーダンスが中間周波数範囲に現れる。これは、カソード|ポリマー|SSE界面のインピーダンスがポリマー|カソードおよびポリマー|SSE界面インピーダンスの合計であることを意味する。ゲルポリマー界面層を有する場合および有さない場合の対称セルの比較として、
図5aは、界面修飾を一切行っていないカソード|SSE|カソード対称セルのEISプロットである。対称セルは、ガーネット型SSE表面上のカソードスラリーの直接ブラッシングおよびその後の乾燥によって構成した。これは、ポリマー界面層を持たないカソード|SSE|カソード対称セルの合計R
ctがおよそ1×10
6Ω×cm
2であること示す。この大きな抵抗がSSEとLiFePO
4カソード材料との間の不十分な接触の証拠である。この問題は、ガーネット型SSEとカソードとの間のハイブリッド設計のゲルポリマー層によって解決可能である。
【0107】
図2dは、Li|ポリマー|Li対称セルのインピーダンス曲線を示している。インピーダンス曲線とZ’軸との交点は6.4Ω×cm
2であり、これは、ゲルポリマーのバルク抵抗である。半円の直径は180Ω×cm
2であり、これは、対称セルの両側の2つのポリマー|Li界面のR
ctである。したがって、1つのポリマー|Li界面の界面抵抗は90Ω×cm
2であり、ポリマー|カソード界面抵抗に近い。これは、ゲルポリマーとLi金属との間の接触がゲルポリマーとカソードとの間の接触と同じぐらい良好であり、Li金属電極の表面もゲルポリマーによって十分にぬれていることを意味する。
図2eは、Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルのEISプロットを示しており、4つの部分を含む。高周波部は、ガーネット型SSEのバルク抵抗および粒界抵抗である。中間周波数部は、ゲルポリマー層自体のインピーダンスがかなり小さいことから、主としてポリマー|SSE界面およびポリマー|Li界面のインピーダンスに由来するガーネット型SSEとLi金属との間の界面R
ctに対応する2つの半円である。本明細書の対応する等価回路フィッティング結果から、Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルの1つの界面上の合計界面R
ctは、214Ω×cm
2である。
図5bは、界面修飾を行っていないLi|SSE|Li対称セルの合計抵抗が一方側に対しておよそ1400Ω×cm
2であることを示している。金属リチウムが溶融され、ガーネット型SSEの両側を被覆する。
図5aのカソード|SSE|カソード対称セルと比較して抵抗が小さい理由は、リチウム金属の溶融により、固体カソード粉末およびバインダと比較して、表面接触が改善したことである。ただし、1400Ω×cm
2の界面抵抗は、電池使用には依然として大き過ぎる。これは、ゲルポリマー界面層によって低減可能である。結論として、ゲル界面層は、多くのカソード材料およびLi金属アノードを含めて、LLCZN固体電解質と電極との間の界面R
ctを大幅に低減可能である。
図2fは、ゲルポリマー界面を有する場合および有さない場合のLi|SSE|Liおよびカソード|SSE|カソード対称セルの界面抵抗を比較したものである。これは、ゲル界面が界面抵抗を許容範囲まで低減し得ることを明確に示している。ゲルポリマー界面の適用後、カソードとガーネット型
SSEとの間の界面抵抗は、6×10
4Ω×cm
2から248Ω×cm
2まで低下した。ゲルポリマー界面の適用後、Li金属アノードとガーネット型SSEとの間の界面抵抗は、1400Ω×cm
2から214Ω×cm
2まで低下した。
【0108】
図3は、ゲルポリマー界面を有する場合および有さない場合の対称セル中の界面ごとに識別されたインピーダンスを解析したものである。カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルのインピーダンスの解析は、
図2a~
図2cに由来し、ゲルポリマー界面のないカソード|SSE|カソード対称セルのインピーダンスの解析は、
図5aに示す。対応する等価回路を本明細書に記載する。各等価回路においては、1つの界面のインピーダンスに対して、抵抗とキャパシタ/定位相要素(CPE)との間の並列接続が1つ存在する。キャパシタ/CPEは、界面上の二重層キャパシタンスに対するものであり、抵抗は、界面上の電荷移動抵抗に対するものである。カソード|ポリマー|SSE|ポリマー|カソード対称セルの合計界面R
ctは、496Ω×cm
2であって、ゲルポリマー界面のないカソード|SSE|カソード対称セルの界面R
ct(1.3×10
5Ω×cm
2)よりもはるかに小さい。この抵抗の低下は、ゲルポリマー界面がカソードとSSEとの間の接触性能を大幅に向上可能であることを意味する。Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルのインピーダンスの解析は、
図2b、
図2d、および
図2eの解析に由来し、ゲルポリマー界面のないLi|SSE|Li対称セルのインピーダンスの解析は、
図5bに由来する。これは、ゲルポリマー界面を有する場合および有さない場合のLi|SSE|Li対称セルのインピーダンスを比較したものである。対応する等価回路を本明細書に記載する。Li|ポリマー|SSE|ポリマー|Li対称セルの合計界面R
ctは、428Ω×cm
2であって、界面修飾を行っていないLi|SSE|Li対称セルの界面R
ct(2800Ω×cm
2)よりもはるかに小さい。この抵抗の低下は、ゲルポリマー界面がLiとSSEとの間の接触性能を大幅に向上可能であることを意味する。
【0109】
ハイブリッド固体ポリマー電解質の電気化学的性能
ポリマー/ガーネット型SSEハイブリッド電解質を備えたリチウム対称セルおよび完成セルの電気化学的性能を
図4に示す。
図4aは、定電流サイクルの下、ゲルポリマー界面層を備えたLi|SSE|Li対称セルのDCサイクル電圧プロファイルを示している。対称セルの合計DC ASRは1400Ω×cm
2であり、これは、電圧値180mVを面電流密度125μA/cm
2で除したものである。
図4aの差し込み図は、DC抵抗が1サイクルにおいて一定に保たれることを示している。このDC抵抗は、SSEのバルクおよび粒界抵抗ならびにSSE|ポリマー|Li界面の抵抗に由来するため、界面抵抗が1サイクルにおいて一定に保たれる。リチウムのストリッピングおよびプレーティングによってリチウムとゲルポリマー電解質との間の界面接触が改善されるため、電圧は、最初の5時間に180mVから160mVまで低下する。5時間後、電圧は一定に保たれ、界面抵抗も一定に保たれ、界面は安定している。
図4bは、15時間にわたるサイクル前後のセルのEISプロットを示している。サイクル中、界面ASRは、ほぼ一定で、1000Ω×cm
2から1100Ω×cm
2に変化する。これは、ゲルポリマー界面が安定しており、長時間にわたって小さな抵抗を保っていたことを意味する。
【0110】
図4c~
図4eは、ポリマー/ガーネット型SSEハイブリッド電解質を備えた完成セルのサイクル性能を示している。セルは、130サイクルにわたって、65μA/cm
2の面電流密度および1Cレート(170mA/g)で充放電させた。
図4cは、1回目、10回目、50回目、100回目、および130回目のサイクルの充放電プロファイルである。充放電曲線は安定した電圧プラトーを示しており、サイクルの過電圧は一貫している。これは、130回の充放電サイクルの間、界面抵抗が一定であることを意味する。
図4dは、各サイクルの放電容量およびクーロン効率を示しており、クーロン効率は、2回目以降の各サイクルでおよそ95%である。1回目のサイクルのクーロン効率が低いのは、この1回目のサイクルにおいて、電極とゲルとの間にSEI層が形成されたためである
。放電容量は、130回のサイクルにわたって、50~55mAh/gで安定している。安定した放電容量は、長時間のサイクルにわたって界面層が安定していることを示す。比容量が小さい理由として、液体電解質の大部分がゲルの内側にあり、カソード材料の内側にはわずかしか存在しないため、カソード材料のすべてがゲルでぬれているわけではなく、すべてが反応において活性化するわけではないことが考えられる。ただし、界面層が化学的に安定していることから、電池の放電容量は、長期にわたって良好な安定性を有する。
図4eは、サイクル前、20サイクル後、および130サイクル後の電池のEISプロットである。中間周波数範囲の半円の直径として示すR
ctは、およそ500Ω×cm
2でほぼ一定であり、これは、ゲルポリマー電解質のインピーダンスが非常に安定しており、130回のサイクルにわたって小さな電荷移動抵抗を維持可能であることを意味する。結論として、ハイブリッドポリマー/ガーネット電解質は、過電圧が小さくて安定性が良好なLi金属完成セルに使用可能である。
【0111】
本例は、純粋なSSEの代わりに、ポリマー/ガーネットハイブリッド電解質を良好な固体ポリマー電池設計に使用して、ガーネット型SSEと電極との間の界面抵抗を低減可能であることを実証している。ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性が高く、電気化学的安定電位窓が広い。したがって、LLZCNガーネットSSEと電極との間の界面層として使用することにより、電気化学的に安定なイオン伝導性の界面を提供することができる。ゲルポリマー界面層を備えたSSEと電極との間のRctは、対称セルおよび完成セルのインピーダンス分光法による測定により、カソードに対して248Ω×cm2、Li金属アノードに対して214Ω×cm2である。この界面抵抗は、市販のリチウム金属セルの生産の許容範囲である。ポリマー/ガーネット型SSEハイブリッド電解質を備えたLi金属対称セルの実証により、安定した電圧プロファイルで15時間以上にわたってサイクルした。これにより、Li金属アノードとガーネット型SSEとの間のゲルポリマー界面が電気化学的に安定であることが示された。電池の実現により、Li金属アノード、LiFePO4カソード、およびポリマー/ガーネットハイブリッド電解質を用いて、室温で130回サイクルした。サイクル中、完成セルの界面Rctは一定であったが、これは、ゲルポリマー電解質がLLCZNガーネット電解質とリチウムリン酸鉄電極との間に安定した界面を形成可能であることを意味する。全体として、本研究では、純粋な固体電解質の両側に2つのゲルポリマー層を被覆した組み合わせの新たなハイブリッドガーネットポリマー電解質を実証した。ゲルポリマー層のない不利な性能および6×10Ω×cm2の合計界面抵抗と比較して、ゲルポリマー界面の適用後は、室温での合計界面抵抗が低くなる(約500Ω×cm2)。
【0112】
実験
LLCZNパレットの合成
ガーネット型Li7La2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.25O12粉末をゾルゲル法により合成した。前駆体LiNO3(99%、Alfa Aesar製)、La(NO3)3・6H2O(99%、Alfa Aesar製)、Ca(NO3)2・4H2O(99.9%、Sigma Aldrich製)、NbCl5(99%、Alfa
Aesar製)、およびジルコニウム(IV)プロポキシド(1-プロパノール中70wt%、Sigma Aldrich製)を化学量論量で10wt%の過剰LiNO3を含むエタノールに溶かし、透明になるまで溶液を撹拌した後、溶液に対する体積比1:4で純粋な酢酸を添加した。エタノール溶媒を100℃で蒸発させ、ゲル前駆体を得た。ゲルを350℃で加熱して乾燥前駆体粉末を得た後、800℃で10時間加熱してガーネット粉末を得た。粉末を48時間ボールミリングした後、円筒状パレットとなるように押圧した。パレットの面積は、0.5cm2である。その後、パレットを1150℃で12時間にわたり焼結した。合成したパレットをサンドペーパーで研磨して、400μm~450μmまで薄くするとともに、イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した。
【0113】
PVDF-HFPベースのゲルポリマー電解質の合成
以下の方法によりPVDF-HFPベースのゲルポリマー電解質を作製した。第1に、1時間にわたる機械的撹拌の下、4.5gのアセトンおよび0.25gのエタノールの混合物に0.25gのPVDF-HFP(Sigma Aldrich製)を溶かして均一溶液を得た。そして、溶液を平坦なアルミ箔上にキャストし、湿度80%、温度25℃の定湿度チャンバにおいて溶媒を蒸発させた。サンプルを60℃の真空下で5時間にわたり乾燥させた。その後、均一な自立膜を得た。PVDF-HFP膜の厚さは、40μm前後である。第2に、作製した多孔質PVDF-HFP膜を面積が0.2cm2の小さな円形フィルムへと裁断し、1:1のエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)液体電解質中の1M LiPF6に1分間浸漬して、電解質に完全に浸るようにした。そして、膜の表面上の余分な液体をワイパーで取り去った。
【0114】
材料の特性評価
40kVおよび40mAで動作するCuKα放射源を用いて、D8 Advanced
with LynxEye and SolX(Bruker AXS、WI、USA)上でX線回折(XRD)により、LLCZNガーネットパレットの相解析を実行した。電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、JEOL 2100F)によって、作製したLLCZNガーネットパレットおよびPVDF-HFP膜の微細構造の形態を調べた。
【0115】
電池作製の電気化学的テスト
Li|SSE界面およびLiFePO4カソード|SSE界面の両者について、界面インピーダンスを測定した。Liベルト(Sigma Aldrich製)から、面積が0.2cm2で厚さが0.5mmの円形ディスクとなるように、リチウム金属電極をプレス型抜きした。カソードを作製するため、LiFePO4、カーボンブラック、およびポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)を質量比3:2:1でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶かし、混合してスラリーとした。スラリーをアルミ箔に被覆した後、100℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥後、カソードを面積が0.2cm2の円形ディスクへと裁断し、テスト前の1:1のエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)液体電解質中の1M LiPF6に浸漬して、余分な液体電解質を取り去った。アルゴン充填グローブボックスにおいて、電池の組み立ておよび電気化学的テストを行った。電圧範囲-0.3V~4.5V、走査速度1mV/sでLi|ゲルポリマー|Tiセルのサイクリックボルタンメトリ(CV)をテストした。また、EISテスト用の対称セルを作製した。各テストのセルの模式図は、対応するEISプロット中に示す。1つのステンレス鋼パレットをセルの各側に載せた状態で、クリップにより、電極、ゲル膜、およびガーネットパレットを一体的に順次押圧した。Bio-Logicテスタによって、セルの電気化学的性能をテストした。対称セルのEISテストでは、電圧振幅を10mV、周波数範囲を0.1Hz~1MHzとした。ゲル界面層を備えたLi|SSE|Liの定電流サイクルは、EISテストと同じ組み立て法を使用して、電流密度0.125mA/cm2で10分間にわたり実施した。15時間にわたるサイクル前後のセルのEISを測定して比較した。ガーネット、ゲル、および電解質層を一体的に押圧して、ゲルポリマー界面を備えたLi|SSE|LiFePO4完成セルをCR2016コインセル中に作製し、エポキシで封止した。このセルを2V~4.5Vの電圧範囲において50μA/cm2の定電流でサイクルし、サイクル前後のセルのEISを測定した。
【0116】
リチウム金属電池の系を調べた。40μm厚のゲルポリマー層のバルク抵抗は、7Ω×cm
2である。
図5は、ゲルポリマー界面を有さない電極|SSE|電極対称セルのインピーダンスであって、(a)カソード|SSE|カソード対称セルのEIS、(b)Li|SSE|Li対称セルのEISを示している。
以上のように、ガーネットSSEの化学的性質ならびに硫黄、多硫化物、および液体電解質中の電気化学的安定性を開示するとともに、高硫黄担持カソードの多孔質層における連続したLi+/電子経路ならびに多硫化物の拡散およびデンドライトの貫通を阻止する高密度層を備えたハイブリッドLi-S電池用の二層ガーネットSSEフレームワークを開発した。従来の電池構成と比較して、固体ハイブリッド電池は、化学的および物理的短絡を防止するのみならず、カソード質量担持の増大、液体電解質の捕獲、およびカソード体積変化の解放が可能である。二層SSEが活物質を細孔中に直接封入するため、これらの細孔は、活物質の体積変化に対応するように調節されて、サイクル中の電池構造を安定に保つことができる。本発明者らの研究が示すこととして、統合硫黄カソード担持が7mg/cm2を超え、提案のハイブリッドLi-S電池は、後続サイクルごとに高い初期クーロン効率(99.8%超)および高いクーロン効率(99%超)を示し、ハイブリッド系においては化学的短絡も物理的短絡も観察されなかった。この構造的ハイブリッド電解質は、Li-S電池の改良と考えられる。また、この設計は、高電圧カソード(LNMO)および空気/O2カソード等、高性能電池の他のカソード材料にも拡大して、従来の電池から全固体電池への移行の道を開くことが予想される。