(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153780
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】セレンテラジンの合成
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20241022BHJP
A61L 15/20 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C07D487/04 144
A61L15/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024122167
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2020568401の分割
【原出願日】2019-06-28
(31)【優先権主張番号】62/845,189
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/692,485
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/457,788
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504293447
【氏名又は名称】インターナショナル・ペーパー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ドゥヴルー,ラジャゴパラ・レディ
(72)【発明者】
【氏名】バット,ラマ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,アニル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】視覚的指示薬として、化学発光物質であるセレンテラジンを高い収率および良好な純度で容易に作製する方法、ならびにセレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体を含む物品を提供する。
【解決手段】(a)3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)をN-ブロモスクシンイミドと反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得ること、(b)3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続するステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得ること、ならびに(c)4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)をシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングさせて、セレンテラジンまたはその塩を得ることを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレンテラジンを作製する方法であって、
(a)3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)をN-ブロモスクシンイミドと反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得ること、
(b)3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続するステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得ること、ならびに
(c)4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)をシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングさせて、セレンテラジンまたはその塩を得ること
を含む、方法。
【請求項2】
(a)が、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)に対して60%から85%の収率、および少なくとも85%の純度で与える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)が、パラジウム触媒の存在下で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を4-メトキシフェニルボロン酸(4)と反応させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を得る第1のステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パラジウム触媒が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
パラジウム触媒が、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して5から10重量パーセントの量で存在する、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(b)の第1のステップが、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)と4-メトキシフェニルボロン酸(4)とを、1:1から1:1.3のモル当量で含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(b)の第1のステップが、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)と4-メトキシフェニルボロン酸(4)を120分間から300分間の間反応させることを含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(b)の第1のステップが、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)と4-メトキシフェニルボロン酸(4)を60から90℃の温度および1atmの圧力で反応させることを含む、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(b)の第1のステップが、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して60%から85%の収率および80%から95%の純度で与える、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(b)が、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を脱保護して、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得る第2のステップをさらに含む、請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の脱保護が
、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を塩化ピリジニウムにさらすことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の脱保護が、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)をN,N’-ジメチルホルムアミド中で、水素化ナトリウムおよびエタンチオールにさらすことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンが、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)が、
i.4-ヒドロキシベンズアルデヒド(8)をtert-ブチルジメチルシリルクロリドと反応させて、4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒドを得ること、
ii.4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒドを水素化ホウ素ナトリウムと反応させて、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタノールを得ること、
iii.(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタノールをメタンスルホニルクロリドと反応させて、tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)を得ること、
iv.tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)をマグネシウムと反応させて、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)マグネシウムクロリドを得ること、ならびに
v.(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)マグネシウムクロリドをエチル2,2-ジエトキシアセテートと反応させて、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)を得ること
によって合成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)が、トリエチルアミンを含む溶離液を用いたクロマトグラフィーによってさらに精製される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)が、トリエチルアミンを含む溶離液を用いたクロマトグラフィーによってさらに精製される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
(c)が、ジオキサン、水、およびHClを含む溶媒混合物中で、またはジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールを含む溶媒混合物中で、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせることをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(c)が、60から90℃の温度および1atmの圧力で、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を3-(4-((tert-ブチルジメチ
ルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせることをさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
(c)が、前記溶媒混合物がジオキサン、水、およびHClを含む場合は16時間から28時間の間、または前記溶媒混合物がジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールを含む場合は24時間から36時間の間、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせることをさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(c)が、前記溶媒混合物がジオキサン、水、およびHClを含む場合は16時間から28時間の間、または前記溶媒混合物がジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールを含む場合は24時間から36時間の間、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせた後、反応混合物を活性炭およびシリカと撹拌することをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記反応混合物を活性炭およびシリカと撹拌した後、ろ過、ろ液からの溶媒の除去、酢酸エチルを用いた粉砕、それに続くろ過によって、セレンテラジンまたはその塩が単離される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(c)が、セレンテラジンまたはその塩を、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)に対して50%から70%の収率および55%から70%の純度で与える、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法にしたがって作製される、セレンテラジンまたはその塩を吸収性物品に組み込むことを含む、吸収性物品を作製する方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法によって合成される、セレンテラジンまたはその塩を含む、吸収性物品。
【請求項25】
セレンテラジンを作製する方法であって、
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせて、セレンテラジンまたはその塩を得ることを含み、
3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)が、
i.4-ヒドロキシベンズアルデヒド(8)をtert-ブチルジメチルシリルクロリドと反応させて、4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒド(20a)を得ること、
ii.4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒド(20a)を水素化ホウ素ナトリウムと反応させて、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタノール(20b)を得ること、
iii.(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタノール(20b)をメタンスルホニルクロリドと反応させて、tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)を得ること、
iv.tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)をマグネシウムと反応させて、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベ
ンジル)マグネシウムクロリド(22)を得ること、ならびに
v.(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)マグネシウムクロリドをエチル2,2-ジエトキシアセテートと反応させて、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)を得ること
によって合成される、
方法。
【請求項26】
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)が、
(a)3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)をN-ブロモスクシンイミドと処理して、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得ること、ならびに
(b)3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続するステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得ること
によって調製される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(a)が、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)に対して60%から85%の収率および少なくとも85%の純度で与える、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(b)が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)触媒の存在下で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を4-メトキシフェニルボロン酸(4)と反応させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を得る第1のステップを含み、前記パラジウム触媒が、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して5から10重量パーセントの量で存在する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
(b)が、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を脱保護して、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得る第2のステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の脱保護が、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を塩化ピリジニウムにさらすことを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の脱保護が、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)をN,N’-ジメチルホルムアミド中で水素化ナトリウムおよびエタンチオールにさらすことを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシランを、トリエチルアミンを含む溶離液を用いたクロマトグラフィーによって精製する、請求項25から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)が、トリエチルアミンを含む溶離液を用いたクロマトグラフィーによって精製される、請求項25から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
(c)が、ジオキサン、水、およびHClを含む溶媒混合物中で、またはジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールを含む溶媒混合物中で、4-(5-アミノ-
6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせることをさらに含む、請求項25から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
(c)が、前記溶媒混合物がジオキサン、水、およびHClを含む場合は16時間から28時間の間、または前記溶媒混合物がジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールを含む場合は24時間から36時間の間、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせることをさらに含む、請求項25から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
(c)が、前記溶媒混合物がジオキサン、水、およびHClを含む場合は16時間から28時間の間、または前記溶媒混合物がジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールを含む場合は24時間から36時間の間、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせた後、反応混合物を活性炭およびシリカと撹拌することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記反応混合物を活性炭およびシリカと撹拌した後、ろ過、ろ液中の溶媒の除去、酢酸エチルを用いた粉砕、それに続くろ過によって、セレンテラジンまたはその塩が単離される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
セレンテラジンを作製する方法であって、
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングさせて、セレンテラジンまたはその塩を得ること
を含む、方法。
【請求項39】
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)が、(a)3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンを、亜鉛、ヨウ素、および第1のパラジウム触媒の存在下で反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)またはその塩を得ること、ならびに(b)3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続するステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得ることによって調製される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
第1のパラジウム触媒が、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
第1のパラジウム触媒が、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンに対して5から10モルパーセントの量で存在する、請求項39または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
(a)が、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンとを、1:2から1:3のモル当量で含む、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
(a)において、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)が、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンに対して55%から75%の収率および80%から95%の純度で得られる、請求項39から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
(a)が、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンを、18時間から30時間の間反応させることを含む、請求項39から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
(a)が、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンを、25から40℃の温度および1atmの圧力で反応させることを含む、請求項39から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
(b)が、第2のパラジウム触媒の存在下で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を(4-メトキシフェニル)ボロン酸と反応させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)(セレンテラミン)またはその塩を得る第1のことを含む、請求項39から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
(b)が、塩酸塩としての3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の沈殿によって、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)(セレンテラミン)を単離することをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の単離が、クロマトグラフィー(例えば、液体クロマトグラフィー)を含まないか、再結晶化を含まないか、またはクロマトグラフィーおよび再結晶化を含まない、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
第2のパラジウム触媒が、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリドである、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
第2のパラジウム触媒が、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して5から10モルパーセントの量で存在する、請求項46から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
(b)の第1のステップが、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンをさらに含む、請求項46から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンが、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して5から10モルパーセントの量で存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
(b)の第1のステップが、トルエン、炭酸ナトリウム水溶液、およびエタノールをさらに含む、請求項46から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
(b)の第1のステップが、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を(4-メトキシフェニル)ボロン酸と、200分間から350分間の間反応させることを含む、請求項46から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
(b)の第1のステップが、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を(4-メトキシフェニル)ボロン酸と、80から110℃の温度および1atmの圧力で反応させることを含む、請求項46から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
(b)の第1のステップが、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-
2-アミン(5)を、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して65%から85%の収率で与える、請求項46から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
(b)が、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を脱保護して、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得る第2のステップをさらに含む、請求項46から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とのカップリングが、ジオキサン、水、およびHClを含む溶媒混合物中で、またはジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールを含む溶媒混合物中で実施される、請求項38から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とのカップリングが、60から90℃の温度および1atmの圧力で実施される、請求項38から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とのカップリングが、前記溶媒混合物がジオキサン、水、およびHClを含む場合は16時間から28時間の間、または前記溶媒混合物がジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールを含む場合は24時間から36時間の間実施される、請求項38から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とのカップリング反応が、逆相HPLCによってモニターされ、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の枯渇が停止したとき、またはセレンテラジンが分解し始めたとき、クエンチされる、請求項38から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングさせた後、反応混合物を粉砕することをさらに含む、請求項60または請求項61に記載の方法。
【請求項63】
セレンテラジンまたはその塩を、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)に対して60%から70%の収率および60%から75%の純度で含む、請求項38から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
セレンテラジンが塩として単離される、請求項38から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
セレンテラジン塩が塩酸塩である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
セレンテラジンを作製する方法であって、
(a)ピラジン-2-アミン(24)を塩化ベンジルと反応させて、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)を得ること、
(b)3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)をN-ブロモスクシンイミドと反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得ること、
(c)3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続するステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得ること、ならびに
(d)4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を、シリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン、またはシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングさせて、セレンテラジンまたはその塩を得ること
を含む、方法。
【請求項67】
(a)が、溶媒中のマグネシウム、ヨウ素、および臭化エチルの溶液を最初に用意し、その後ピラジン-2-アミン(24)を塩化ベンジルと反応させて、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)を得ることをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
(b)が、マグネシウムおよびパラジウム触媒の存在下で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)をシリル保護4-ブロモフェノールと反応させて、シリル保護4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノールを得る第1のステップを含む、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
パラジウム触媒が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
パラジウム触媒が、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して1から10重量パーセントの量で存在する、請求項68または請求項69に記載の方法。
【請求項71】
(b)が、シリル保護4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノールを脱保護して、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得る第2のステップをさらに含む、請求項66から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
シリル保護4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノールの脱保護が、シリル保護4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノールをHCl水溶液にさらすことを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
(d)が、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)をシリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングさせて、セレンテラジンまたはその塩を得ることを含む、請求項66から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
請求項38から73のいずれか一項に記載の方法にしたがって作製される、セレンテラジンまたはその塩を吸収性物品に組み込むことを含む、吸収性物品を作製する方法。
【請求項75】
請求項38から73のいずれか一項に記載の方法によって合成される、セレンテラジンまたはその塩を含む、吸収性物品。
【請求項76】
セレンテラジンを作製する方法であって、
(a)3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンを、亜鉛、ヨウ素、および第1のパラジウム触媒の存在下で反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得ること、
(b)3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を第1のステップで反応させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の塩
酸塩を得るステップと、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)塩酸塩を第2のステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得ること、ならびに
(c)4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングさせて、セレンテラジンまたはその塩を得ること
を含む、方法。
【請求項77】
セレンテラジンを作製する方法であって、
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)と16時間から28時間の間カップリングさせて、セレンテラジンまたはその塩を得ることを含み、
カップリング反応が、逆相HPLCによってモニターされ、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の枯渇が停止したとき、またはセレンテラジンが分解し始めたときクエンチされる、
方法。
【請求項78】
セレンテラジンを作製する方法であって、
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)と16時間から28時間の間反応させて、未精製セレンテラジンまたはその塩を得ること、
酢酸エチルを用いて未精製セレンテラジンを粉砕すること、ならびに
セレンテラジンまたはその塩を単離すること
を含む、方法。
【請求項79】
セレンテラジンまたはその塩が組成物中で単離され、前記組成物が、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)をさらに含む、請求項1から22、25から73、および76から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記組成物が、液体クロマトグラフィー-質量分析を使用して測定されるとき、セレンテラジン溶離液のピークおよび4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)溶離液のピークを含み、セレンテラジン溶離液のピークと4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)溶離液のピークとの積分ピーク比が、20:1以上および/または100:1以下である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
請求項79または請求項80に記載の方法にしたがって作製された前記組成物を含む、吸収性物品。
【請求項82】
セレンテラジンまたはその塩、および4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を含む、組成物。
【請求項83】
前記組成物が、液体クロマトグラフィー-質量分析を使用して測定されるとき、セレンテラジン溶離液のピークおよび4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)溶離液のピークを含み、セレンテラジン溶離液のピークと4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)溶離液のピークとの積分ピーク比が、20:1以上および/または100:1以下である、請求項82に記載の組成物。
【請求項84】
請求項82または請求項83に記載の組成物を含む、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月8日出願の米国特許仮出願第62/845189号、2018年6月29日出願の米国特許仮出願第62/692485号、および2019年6月28日出願の米国特許出願第16/457788号についての利益を請求し、それぞれの出願は、参照により本明細書にその全体が明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
幼児用おむつ、成人用失禁パッド、および女性用ケア製品などのパーソナルケア用吸収性製品は一般に、体液吸収性コアを含む。吸収性物品の多くは、表面シートと背面シートとの間に配置された体液吸収性コアを含む。表面シートは、液体排泄時などに、吸収性コアへの体液の移動を促進するのに適した体液透過性材料から形成されてもよく、通常、表面シートによる体液保持を最小限に抑えている。吸収性コアには、一般に、米国サザンパインのフラッフパルプが、一般には繊維性マトリックスの形態で使用されるが、繊維性マトリックス全体に分散された高吸水性樹脂(SAP)とともに使用される場合もある。このフラッフパルプは、フラッフパルプの長い繊維長、繊維の粗さ、および湿式抄造して乾燥させたパルプシートからエアレイドウェブへのその相対的な加工のしやすさなどの要因に基づき、吸収性製品用の好ましい繊維として世界的に認識されている。この種のセルロースフラッフパルプの原料は、サザンパイン(例えばテーダマツ、Pinus taeda L.)である。当該原料は再生可能であり、そのパルプは容易に生分解できる。SAPと比較して、これらの繊維は、質量あたりの基準では安価であるが、液体保持単位あたりの基準ではより高価となる傾向がある。これらのフラッフパルプ繊維は主に、繊維間の間隙に吸収する。このため、繊維性マトリックスは、圧力が加わると、捕捉された液体を容易に放出する。捕捉された液体を放出する傾向は、セルロース繊維のみから形成されたコアを含む吸収性製品の使用中に、皮膚に著しい濡れをもたらすことがある。そのような製品では、液体がそのような繊維状吸収性コアに効果的に保持されないため、捕捉された液体を漏出させる傾向もある。
【0003】
SAPは水膨潤性であり、一般に、体液吸収能の高い水不溶性の吸収性材料である。SAPは、体液を吸収して保持する、乳児用おむつまたは成人用失禁製品のような吸収性物品に使用される。SAPは、体液を吸収すると膨潤し、SAPの重量を上回るそうした体液を保持するゲルになる。一般に使用されるSAPは主に、アクリル酸に由来する。アクリル酸ベースのポリマーは、おむつおよび失禁パッドにおけるコスト構造の重要な部分も構成する。SAPは、(荷重下吸収度、すなわちAULが高いことによって実証されるように)高ゲル強度を有するように設計される。現在使用されているSAP粒子の(膨潤時の)高ゲル強度は、それらが粒子間に著しい空隙空間を保持するのに役立ち、このことは迅速に体液を取り込むのに役立つ。しかしながら、この高「空隙容積」は、同時に、飽和状態にある製品に、著しい間隙(粒子間)液をもたらす。間隙液が存在する場合、吸収性製品の「再濡れ」値、すなわち「濡れ感」が悪化する。
【0004】
おむつまたは成人用失禁パッドなどの一部の吸収性物品は、吸収性コアに体液排泄物からの体液を捕集して、均一かつ適時に分配するための捕捉・分配層(ADL)も含む。ADLは通常、表面シートと吸収性コアとの間に配置され、通常は複合布地の形態を取り、当該布地の上部3分の1は、比較的高い放出速度であっても、放出された体液を効果的に捕捉するために、低密度(より高デニール繊維)であり、比較的大きな空隙およびより大きな空隙容積を有する可能性が最も高い。複合布地であるADLの中央3分の1は、通常、空隙がより小さくより高密度(低デニール)の繊維で作られるのに対して、布地の下部
3分の1は、さらに高密度(より低くより小さいデニール)の繊維で作られ、その上、より微細な空隙を有する。複合材のより高密度な部分ほど、より多く細かい毛細管を有するがゆえに、より大きな毛細管圧を発現する。したがって、より大きな容積の体液を構造の外側領域に移動させて、体液の適切な導流と分配を均一に可能にする。それによって、吸収性コアが、限られた時間内ですべての液体排泄物を取り込むことを可能にし、吸収性コア内のSAPが、遅すぎず速すぎず、排泄物を保持し、ゲル化することを可能にする。ADLは、より迅速な液体の捕捉をもたらし(目標とする範囲での溢流を最小限に抑え)、吸収性コアへの体液のより迅速な移動および完全な分配を確実にする。
【0005】
上記のように、吸収性コアは体液を保持するのに適しており、それ自体が、体液を捕捉、分配、および/または貯蔵する層などの、1つまたは複数の層からなることがある。多くの場合、エアレイドパッドおよび/または不織ウェブの形態などのセルロース繊維マトリックスが、吸収性物品の吸収性コアに(または吸収性コアとして)使用される。場合によっては、種々の層は、架橋セルロース繊維などの、1種または複数の異なる種類のセルロース繊維からなることがある。吸収性コアは、通常は粒子として、繊維性マトリックス全体に分散される、1種または複数のSAPなどの1種または複数の体液保持剤も含むこともできる。SAP技術の進歩により、フラッフパルプが、コアの吸収能にそれほど寄与せず、SAPが安定して保持されるマトリックス構造をもたらすことにさらに寄与する吸収性コアの構成を設計することが可能になった。フラッフパルプ繊維は、体液をSAPに向けるための体液分配機能も備える。しかしながら、これらの構造的機能および体液分配機能は、一部の構成において、合成繊維によって付与することができ、フラッフパルプ繊維と合成繊維のどちらも含む吸収性コア、さらにはフラッフパルプ繊維を含まない「非綿状」吸収性コアの開発につながることが見出された。これらの構成は、吸収度を犠牲にすることなく、物理的なかさばりがより少ないという利点をもたらすことができる。
【0006】
背面シートは一般に、体液不透過性材料から形成されて、保持された体液が漏れ出るのを防ぐ障壁を形成する。
どのような構造であっても、吸収性物品が1回または複数回の液体排泄によって濡れている場合、次の体液が皮膚に接触する可能性が大幅に高まり、長時間取り替えず放置されると、幼児のおむつかぶれまたは成人の皮膚炎の問題を引き起こし、それによって皮膚の健康を害するおそれがある。しかしながら、一般には、おむつまたは失禁パッドが乾いているか、または濡れているかを知る唯一の方法は、それを物理的に点検することである。日中は、介護者がおむつまたは成人用失禁製品を所望の回数で確認することができるため、このことは重大な問題にはなり得ない。しかしながら、夜間の点検は、乳児ならびに成人にも不快感を与え、彼らの睡眠を妨げるおそれがある。さらに、例えば一晩に何回も、頻繁に夜間に点検することは、着用者の睡眠パターンを乱し、乳児ならびに成人患者の健康を害するおそれがある。
【0007】
さらに、ズボン、パジャマ、および/または下着などの衣類は、おむつまたは吸収性物品の上に着用されることが一般的である。したがって、種々の濡れおよび/または水分指示薬を組み込む吸収性物品でさえも、適時に排泄を発見することは困難となる。
【0008】
その結果、通常、排泄とその発見との間には時間差がある。この時間が延びると、おむつかぶれ、皮膚の過敏、および/または皮膚の剥離を発現する可能性がある。これらの症状は、罹患者にとって、非常に苦痛となるおそれがある。このことは特に、乳児および介護施設にいる成人に当てはまり、特に、吸収性物品を交換するまでの時間が長くなる可能性がある夜間の排泄に当てはまる。
【0009】
吸収性物品に組み込まれる従来の水分指示薬は、濡れ探知の視覚的表示として、色の変化を使用する。液体との接触に基づいて出現または消失するインクは、濡れ探知の一般的
な機構である。液体の存在下で蛍光を発する化合物を組み込むことなどによって、濡れ探知に蛍光も使用されてきた。そのような指示薬の機構は、一般に、3つの大きなカテゴリーに分類される:(1)吸収性物品の重層の1つに水分表示模様を刻印すること、(2)吸収性物品の層の間に組み込まれる別個の水分表示片または層、および(3)使用直前に吸収性物品の内部に固定される別個の(つまり、吸収性物品の構成の一部ではない)表示片。
【0010】
どのような機構であっても、これらの視覚的指示薬は、弱光(例えば、夜間)の状況下では不十分である。インクの出現または消失は、介護者が吸収性製品を見ることができるように、視覚的に直接探知されなければならない。弱光の状況下では、これには、光源(例えば、頭上の照明または懐中電灯)ならびに覆っている衣服(例えば、パジャマまたは下着)の取り外しのどちらも必要なことがある。蛍光指示薬は、蛍光化合物を励起するために外部光源を必要とするという点で、同様の問題を抱える。そのような励起は、一般に、指示薬を(着用者および介護者に健康上の懸念を与える)UV光に曝露することによって与えられ、蛍光化合物と光で直接連絡していなければならず、しかもそれには、覆っている衣服、毛布などを取り外す必要がある。したがって、吸収性衣類の濡れを探知するために従来から使用される視覚的指示薬の使用は、弱光の状況下において多くの欠点を抱えており、その表示機構の有用性を大きく低減させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
水分に曝露すると光を発生することができる化学発光物質であって、高い収率および良好な純度で容易に合成される化学発光物質が必要である。本開示は、これらの必要性を満たすことを目指し、さらなる利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本概要は、発明を実施するための形態において以下にさらに説明される概念の選択を、簡略化した形式で紹介するために提供される。本概要は、請求される主題の主要な特徴を特定することを意図しておらず、請求される主題の範囲を決定するために使用されることも意図していない。
【0013】
一態様では、本開示は、
(a)3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)をN-ブロモスクシンイミドと反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得るステップと、
(b)3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続したステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得るステップと、
(c)4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)をシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングさせて、セレンテラジン、またはその塩を得るステップと
を含む、セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0014】
別の態様では、本開示は、
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)とカップリングさせて、セレンテラジン(16)、またはその塩を得るステップ
を含み、
3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)が、
i.4-ヒドロキシベンズアルデヒド(8)をtert-ブチルジメチルシリルクロリドと反応させて、4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒド(20a)を得るステップと、
ii.4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒドを水素化ホウ素ナトリウムと反応させて、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタノール(20b)を得るステップと、
iii.(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタノールをメタンスルホニルクロリドと反応させて、tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)を得るステップと、
iv.tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシランをマグネシウムと反応させて、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)マグネシウムクロリド(22)を得るステップと、
v.(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)マグネシウムクロリドをエチル2,2-ジエトキシアセテートと反応させて、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)を得るステップと
によって合成される、
セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0015】
さらに別の態様では、本開示は、
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングさせて、セレンテラジン、またはその塩を得るステップ
を含む、セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0016】
他のさらなる態様では、本開示は、
(a)3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンを、亜鉛、ヨウ素、および第1のパラジウム触媒の存在下で反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得るステップと、
(b)第1のステップで3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を反応させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の塩酸塩を得るステップと、第2のステップで3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の塩酸塩を反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得るステップと、
(c)4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングさせて、セレンテラジン(16)、またはその塩を得るステップと
を含む、セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0017】
さらなる別の態様では、本開示は、
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)と16時間から28時間の間カップリングさせて、セレンテラジン、またはその塩を得るステップ
を含み、
カップリング反応が、逆相HPLCによってモニターされ、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の枯渇が停止したとき、またはセレンテラジンが分解し始めたときクエンチされる、
セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0018】
さらに別の態様では、本開示は、
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)と16時間から28時間の間反応させて、未精製セレンテラジン、またはその塩を得るステップと、
酢酸エチルを用いて未精製セレンテラジンを粉砕するステップと、
セレンテラジン、またはその塩を単離するステップと
を含む、セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0019】
さらに別の態様では、本開示は、(a)ピラジン-2-アミン(24)を塩化ベンジルと反応させて、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)を得るステップ(例として、グリニャール条件下、例えば、ピラジン-2-アミン(24)を塩化ベンジルと反応させる前に、先に、溶媒にマグネシウム、ヨウ素、および臭化エチルを含む溶液を用意して、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)を得るステップによる)と、(b)3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)をN-ブロモスクシンイミドと反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得るステップと、(c)3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続したステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得るステップと、(d)4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)をシリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンまたはシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングさせて、セレンテラジン(16)、またはその塩を得るステップとを含む、セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0020】
別の態様では、本開示は、本開示の方法にしたがって作製されるセレンテラジンを吸収性物品に組み込むステップを含む、吸収性物品を作製する方法を特徴づける。
さらに別の態様では、本開示は、本開示の方法によって合成されるセレンテラジンを含む吸収性物品を特徴づける。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書では、高収率かつ好純度でセレンテラジンを作製する合成方法が開示される。セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体を含む物品も開示される。代表的な吸収性物品には、使い捨ておむつおよび成人用失禁製品がある。
【0022】
化学発光は、光を生成する化学反応の結果として生じ、したがって、弱光および/または光がない場合に衣服を通して見ることができる、発光水分表示をもたらす。さらに、化学発光は、フォトルミネセンス(例えば蛍光)指示薬で必要とされるような外部励起光を必要としない。したがって、開示される実施形態は、水性系(例えば尿)との接触時に光を発生させることによって、暗い条件下(例えば夜間)での排泄の発生を表示する吸収性物品の能力を大いに高める。さらに、衣服を通して見ることができる光を発生させることによって、介護者は、睡眠中などに、乳児または成人のそのような吸収性物品の着用者を動かしたり邪魔したりする必要なく、排泄の発生を確かめることができる。
【0023】
本明細書において提供される物品は、夜間に、かつ衣服を通して排泄を表示するという明確な利点をもたらすことができ、それにより、介護者が排泄を調べるために(例えば、衣服を下ろすことによって、かつ/または光を当てることによって)、吸収性物品を着用する者の睡眠を妨げる必要性を低減し、または排除することさえできる。さらに、光(例えば可視光)が、本明細書で開示される化学発光系によって生成されるため、排泄が起こったかどうかを判断するために、吸収性物品および/または着用者をUV光に曝露する必要がなく、UV照射に関連する健康上の懸念が回避されることを可能にする。化学発光物質を含む物品の例には、例えば、本明細書にその全体が組み込まれている開示である、米国特許出願第14/516,255号に記載される。
【0024】
本開示の物品は、排泄が容易に探知できるように改善され、必要とされる中断が低減するため、介護者が排泄をより頻繁に確認することを可能にする。より頻繁な確認により、排泄がより早く探知され、排泄の直後に吸収性物品が交換されることが可能になり得る。それによって、排泄物が着用者の皮膚に接触する時間を短縮し、同様に複数回の排泄による体液が着用者の皮膚に接触する可能性を低減することができる。体液が皮膚に接触している時間の長さが短縮されると、着用者の皮膚の健康および全般的な快適さが改善される。いくつかの実施形態では、成分の量/比率は、一連の各排泄後に発光のピークが生じてから弱くなる代わりに、一度吸収性物品中に十分な水が存在すれば、発光は比較的安定した強度に(例えば、発光は、約30%未満、約20%未満、約10%未満、30%未満、20%未満、または10%未満変動し得る)、ある期間にわたって(例えば、約24時間、約12時間、約6時間、約3時間、約2時間、約1時間、約30分間、約15分間、24時間、12時間、6時間、3時間、2時間、1時間、30分間、または15分間)維持できるように調整することができる。本明細書で使用される場合、量に関する「約」という単語は、記載された参照数のわずかに変動した範囲内で上方または下方の数を示す。例えば、「約」は、示された参照数の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の範囲内で上方または下方の数を指すことができる。いくつかの実施形態では、「約」は、示された参照数の5%の範囲内で上方または下方の数を指す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された参照数の10%の範囲内で上方または下方の数を指す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された参照数の1%の範囲内で上方または下方の数を指す。
セレンテラジンの合成
一態様では、本開示は、セレンテラミン、またはその塩を保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングさせるか、あるいはセレンテラミン、またはその塩を1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングさせて、セレンテラジン、またはその塩を得るステップを含む、セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0025】
別の態様では、本開示は、セレンテラミン、またはその塩を保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(例えば、シリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン)とカップリングさせて、セレンテラジン、またはその塩を得るステップを含む、セレンテラジンを作製する方法を特徴づける。
【0026】
セレンテラミンは、以下に概説されるように、様々な経路を介して作製することができる。これらの方法では、セレンテラジンを好収率かつ好純度で得ることができる。
セレンテラミンの合成
いくつかの実施形態では、セレンテラミンは、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)をN-ブロモスクシンイミドと反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)、もしくはその塩を得る第1のステップ(a1)によって、または3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンを、亜鉛、ヨウ素、およびパラジウム触媒の存在下で反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)、もしくはその塩を得るステップ(a2)によって作製される。ステップ(b)では、次いで、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続したステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得る。
【0027】
3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)のN-ブロモスクシンイミドとの反応(a1)は、CHCl3(クロロホルム)などの有機溶媒中で、室温(例えば、約22℃から23℃、22℃から23℃、または22℃)で、大気圧(すなわち、約1atm、または
1atm)で実施されてもよい。反応が完了した後、反応混合物を水で洗浄することができ、減圧下で有機溶媒を除去することによって、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を単離することができる。いくつかの実施形態では、(a1)では、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)に対して約60%から約85%(例えば、60%から85%)の収率で、かつ少なくとも約85%の純度(例えば、約85%から約95%の純度、約85%から約100%の純度、85%から95%の純度、または85%から100%の純度)で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得る。本明細書で使用される場合、%収率はモル%収率を指すと理解される。本明細書で使用される場合、所与の化合物の純度は(所与の化合物の%収率を伴う場合)、モル%収率に基づいて計算される純化合物の質量に対する重量パーセント純度を指す。
【0028】
いくつかの実施形態では、(a2)において、パラジウム触媒はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドである。パラジウム触媒は、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンに対して、約5から約10モルパーセント(例えば、5から10モルパーセント)の量で存在してよい。いくつかの実施形態では、(a2)は、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンとを、約1:2から約1:3のモル当量(例えば、1:2から1:3のモル当量)で含む。(a2)では、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンに対して約55%から約75%(例えば、55%から75%)の収率で、約80%から約95%(80%から95%)の純度で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得ることができる。いくつかの実施形態では、(a2)は、3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンを、約18時間から約30時間(例えば、18時間から30時間)の間反応させるステップを含む。3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンの反応は、約25から約40℃(例えば、25から40℃)の温度で、約1atm(例えば1atm)の圧力で起こり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、ステップ(b)は、パラジウム触媒の存在下で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を4-メトキシフェニルボロン酸(4)と反応させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)、またはその塩を得る第1のステップを含む。パラジウム触媒は、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム(0)触媒であってもよい。パラジウム触媒は、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して、約5から約10重量パーセント(例えば、5から10重量パーセント)の量で存在してもよい。(b)の第1のステップは、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)と4-メトキシフェニルボロン酸(4)とを、約1:1から約1:1.3のモル当量(例えば、1:1から1:1.3のモル当量)で含むことができる。いくつかの実施形態では、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)と4-メトキシフェニルボロン酸(4)は、約120分間から約300分間(例えば、120分間から300分間)の間、ともに反応する。3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)および4-メトキシフェニルボロン酸(4)は、約60℃から約90℃(例えば、60℃から90℃)の温度で、かつ大気圧(すなわち、約1atm、または1atmの圧力)で、ともに反応することができる。(b)の第1のステップでは、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)、またはその塩を、生成物の3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して約60%から約85%(例えば、60%から85%)の収率で、約80から約95%の純度(すなわち、純度80%~95%の生成物を60%から85%の収率)で得ることができる。本明細書で使用される場合、所与の純度の範囲での収率は、記載された純度の範囲を有する生成物の収率を指す。
【0030】
あるいは、いくつかの実施形態では、(b)は、パラジウム触媒(例えば、ビス(ベンゾトリル)パラジウム(II)ジクロリドなどのパラジウム(II)触媒)の存在下で、
3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を(4-メトキシフェニル)ボロン酸と反応させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)(セレンテラミン)、またはその塩を得る第1のステップを含む。パラジウム(II)触媒は、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して、約5から約10(例えば、5から10)モルパーセントの量で存在してもよい。反応混合物は、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタンを、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して、例えば、約5から約10(例えば、5から10)モルパーセントの量でさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、反応混合物は、トルエン、炭酸ナトリウム水溶液、およびエタノールをさらに含む。3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)は、(4-メトキシフェニル)ボロン酸と、約200分間から約350分間(例えば、200から350分間)の間、かつ/または約80から約110℃(例えば、80から100℃)の温度で、かつ約1atm(例えば1atm)の圧力で、反応することができる。パラジウム(II)触媒が使用される場合、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して約65%から約85%(例えば、65%から85%)の収率で、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)が得られてもよい。3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)は、反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出することによって単離することができる。酢酸エチル抽出物を減圧下で抽出物から除去して、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を得ることができる。
【0031】
3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)、またはその塩は、パラジウム(0)触媒と、またはパラジウム(II)触媒と得られたかに関係なく、塩酸塩としての3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の沈殿によって単離できる。沈殿は、難儀でコストと時間がかかり得るカラムクロマトグラフィーを除外できるため有利であり、かつ/またはカラムクロマトグラフィーと比較して収率を上げることもできる。いくつかの実施形態では、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を単離するステップは、クロマトグラフィー(例えば、液体クロマトグラフィー)を含まないか、再結晶化を含まないか、またはクロマトグラフィーおよび再結晶化を含まない。いくつかの実施形態では、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)の(4-メトキシフェニル)ボロン酸との反応から得られる反応混合物を、塩化ナトリウム水溶液(例えば、約20重量%(例えば20重量%)塩化ナトリウム溶液)で希釈し、酢酸エチルで抽出する。次いで、酢酸エチル抽出物を、HCl水溶液(例えば、約3N(例えば3N)HCl水溶液)で処理することができ、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン塩酸塩生成物(5)を、ろ過によって、約75%から約95%(例えば、75%から95%)の純度で単離することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、(b)は、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)、またはその塩を脱保護して、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得る第2のステップをさらに含む。脱保護は、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を塩化ピリジニウムにさらすステップを含むことができる。塩化ピリジニウムによる処理は、約180℃から約220℃(例えば、180から220℃、または200℃)に上昇させた温度で、大気圧で進行できる。いくつかの実施形態では、上昇させた温度では、反応混合物からの蒸発によって、塩化ピリジニウムを反応混合物から分離させることができる。あるいは、特定の実施形態では、脱保護は、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)を、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)中で水素化ナトリウムおよびエタンチオールにさらすステップを含むことができる。DMF中で水素化ナトリウムおよびエタンチオールによって処理される場合、反応混合物は、約90℃から約120℃(例えば、約100℃から110℃、90℃から120℃、
もしくは100℃から110℃)の温度で、かつ/または約15分間から約5時間(例えば、約30分間から約2時間、約30分間から約1時間、30分間から2時間、30分間から1時間、もしくは30分間)の間であってもよい。反応が完了した後、混合物を約30℃から約50℃(例えば、約35℃から約45℃、約40℃、35℃から45℃、または40℃)に冷却し、水および有機溶媒(例えば、酢酸エチル)で抽出することができる。次いで、有機層を分離し、還流し、その後約5℃から20℃(例えば、約10℃から15℃、5℃から20℃、または10℃から15℃)に冷却することができ、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)をろ過によって単離することができる。両方の脱保護方法において、水酸化ナトリウム/ジオキサン水溶液で洗浄し、活性炭/シリカと撹拌し、ろ過し、続いてろ液を酸性化することによって沈殿させ、ろ過によって沈殿した生成物を単離することによって、セレンテラミンを任意に精製してよい。脱保護において、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)に対して約90%から約100%(例えば、90%から100%、少なくとも約95%、少なくとも95%、少なくとも約98%、少なくとも98%、少なくとも約99%、または少なくとも99%)の収率で、約85%から約100%(例えば、85%から100%、約90%、または90%)の純度で得ることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、セレンテラミンは、(a)3,5-ジブロモピラジン-2-アミンと(ブロモメチル)ベンゼンを、亜鉛、ヨウ素、および第1のパラジウム触媒の存在下で反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得るステップと、(b)第1のステップにおいて、パラジウム触媒の存在下で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を4-メトキシフェニルボロン酸(4)と反応させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の塩酸塩を得、第2のステップにおいて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の塩酸塩を脱保護して、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得るステップとによって合成される。
【0034】
いくつかの実施形態では、セレンテラミンは、ピラジン-2-アミンを塩化ベンジルと反応させて、3-ベンジルピラジン-2-アミンを得るステップと、3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)をN-ブロモスクシンイミドと反応させて、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を得るステップと、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)を2つの連続したステップで反応させて、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を得るステップとによって合成される。3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)からセレンテラミンを得るための2つの連続したステップは、マグネシウムおよびパラジウム触媒の存在下で、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)をシリル保護4-ブロモフェノールと反応させて、シリル保護4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノールを得る第1のステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、パラジウム触媒は、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)であり、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)に対して、重量で、1パーセント以上(例えば、2パーセント以上、3パーセント以上、4パーセント以上、5パーセント以上、6パーセント以上、7パーセント以上、8パーセント以上、もしくは9パーセント以上)の量で、かつ/または10パーセント以下(例えば、9パーセント以下、8パーセント以下、7パーセント以下、6パーセント以下、5パーセント以下、4パーセント以下、3パーセント以下、もしくは2パーセント以下)の量で存在することができる。例えば、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)100グラムごとに、パラジウム触媒1から10グラム(例えば、1グラム、2グラム、3グラム、または5グラム)を使用することができる。例として、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)1
00グラムごとに、パラジウム触媒1グラムを使用することができる。2つの連続したステップは、例えば、シリル保護4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノールをHCl水溶液にさらすことによって、シリル保護4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノールを脱保護して、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を得る第2のステップを含むことができる。この合成手順は、n-ブチルリチウムのトルエン中での反応を塩化ベンジルおよびTHF(テトラヒドロフラン)で置き換えることによって、合成の第1のステップにおけるn-ブチルリチウムの使用を低減または除外する。したがって、この合成は、反応化学を増大させる能力を示し、合成のコストを削減することができる。さらに、この変更は、反応性の高い物質をより安定した物質に置き換えることによって、化学反応の全体的な安全性を改善することができる。合成においてボロン酸化合物を省略することで、反応において高価なパラジウム触媒の量を大いに削減することができる。
保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンの合成
いくつかの実施形態では、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンは、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)である。3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)は、i)4-ヒドロキシベンズアルデヒド(8)をtert-ブチルジメチルシリルクロリドと反応させて、4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒド(20a)を得るステップと、ii)4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒドを水素化ホウ素ナトリウムと反応させて、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタノール(20b)を得るステップと、iii)塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下で、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタノールをメタンスルホニルクロリドと反応させて、tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)を得るステップと、iv)tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシランをマグネシウムと反応させて、(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)マグネシウムクロリド(22)を得るステップと、v)(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)マグネシウムクロリドをエチル2,2-ジエトキシアセテートと反応させて、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)を得るステップとによって合成できる。
【0035】
いくつかの実施形態では、tert-ブチルジメチルシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンは、酸性条件下で分解でき、塩基性環境下で安定化できる。したがって、反応混合物に、かつ/または精製の間に、塩基を加えることができる。例えば、tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)は、トリエチルアミンを含む溶離液を用いたクロマトグラフィーによって精製できる。いくつかの実施形態では、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)を、トリエチルアミンを含む溶離液を用いたクロマトグラフィーによってさらに精製する。
【0036】
3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)は、tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)に対して約20%から約40%(例えば、20%から40%、約20%から25%、または20%から25%)の収率で、約85%から約95%(例えば、85%から95%、約90%、または90%)の純度で得られてもよい。
1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)
1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)は、例えば、以下の反応スキームにしたがって作製されてもよい。
【0037】
【0038】
3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジメトキシプロパン-2-オンの合成
いくつかの実施形態では、4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)ベンジルクロリドは、上記のとおり合成でき、グリニャール反応において、メチル2,2-ジメトキシアセテートと反応させて、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジメトキシプロパン-2-オンを得ることができる。例えば、グリニャール開始剤としてMgおよびI2およびジブロモメタンを用いたグリニャール反応において、4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)ベンジルクロリドをメチル2,2-ジメトキシアセテートと反応させて、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジメトキシプロパン-2-オンを得ることができる。
セレンテラジン
いくつかの実施形態では、セレンテラジンは、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)をシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンまたはシリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングさせて、セレンテラジン、またはその塩を得るステップによって得られる。あるいは、いくつかの実施形態では、セレンテラジンは、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)を1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングさせて、セレンテラジン、またはその塩を得るステップによって得られる。カップリングステップは、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン、シリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンと、または1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とであっても、ジオキサン、水、およびHClの存在下(例えば、ジオキサンと水とHClとの比が、約90:5:5、または濃度が35%~38%のHCl(すなわち濃HCl)と水との比が、約10:約1(例えば、10:1)から約1:約1(例えば、1:1)であり、ジオキサン:(HCl+H2O)の比が約9:1)で実施されてもよく、かつ/または約60から約90℃(例えば、60から90℃)の温度で、かつ約1atm(例えば、1atm)の圧力で実施されてもよく、かつ/または約16時間から約28時間(例えば、16から28時間)の間進行することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)が、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン、シリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングされても、または1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングされても、カップリング反応は、ジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールの溶媒混合物中で実施されてもよい。メタノールおよびイソプロピルアルコールはそれぞれ独立に、体積で、3%以
上(例えば、5%以上、7%以上、もしくは9%以上)、かつ/または10%以下(例えば、9%以下、7%以下、もしくは5%以下)の濃度で溶媒混合物中に存在してもよい。特定の実施形態では、メタノールおよびイソプロピルアルコールは、それぞれ独立に、約5体積%(例えば5体積%)の濃度で、溶媒混合物中に存在する。いくつかの実施形態では、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)は、ジオキサン、メタノール、およびイソプロピルアルコールの溶媒混合物中で、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)などのシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンと反応する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、メタノールは、溶媒混合物中の4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の溶解度を増加させることによって、反応速度および収率に有利に働き、それによって、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン、シリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン、または1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)との反応に対するその利用度を高めることができると考えられる。いくつかの実施形態では、カップリング反応は、約60から約90℃(例えば、約70℃から85℃、約80℃、もしくは80℃)の温度で、かつ約1atm(例えば、1atm)の圧力で実施されてもよく、かつ/または約24時間から約36時間(例えば、24から36時間、もしくは36時間)の間進行することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)は、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(例えば、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23))、シリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンと、または1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)と、約1:1.3から約1:2のモル比でカップリングされる。特定の実施形態では、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)は、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(例えば、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23))と、約1:1.3から約1.2(例えば、約1:1.3、または1:1.3)のモル比でカップリングされる。
【0041】
特定の実施形態では、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)が、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン、シリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンとカップリングされても、または1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)とカップリングされても、カップリング反応は、逆相HPLCによってモニターされ、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の枯渇が停止したとき、またはセレンテラジンが分解し始めたとき、停止される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、セレンテラミンの枯渇停止後、セレンテラジンが分解または劣化し始める可能性があるため、逆相HPLCモニタリングは重要となり得ると考えられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、反応混合物を停止させるステップは、反応混合物を(例えば、室温に、約23℃に、または23℃に)冷却すること、ならびに任意に反応混合物を活性炭およびシリカと撹拌することを含む。次いで、反応混合物をろ過し(活性炭およびシリカが使用される場合)、溶媒の除去(例えば、減圧下)、酢酸エチルを用いた粉砕、それに続くろ過によって、セレンテラジンまたはその塩が単離されて、固体セレンテラジンを得ることができる。いくつかの実施形態では、セレンテラジンは、塩酸塩などの塩とし
て単離される。
【0043】
いくつかの実施形態では、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン、またはシリル保護1,1-ジメトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンが、カップリング反応の出発物質の1つとして使用される場合、セレンテラジンまたはその塩は、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)に対して約50%から約70%(例えば、50%から70%)の収率で、約55%から約70%(例えば、55%から70%)の純度で得られる。
【0044】
いくつかの実施形態では、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)が、カップリング反応の出発物質の1つとして使用される場合、セレンテラジンまたはその塩は、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)に対して約60%から約70%(例えば、60%から70%)の収率で、約60%から約75%(例えば、60%から75%)の純度で得られる。いくつかの実施形態では、セレンテラジン(またはその塩)は、単離された組成物において60%から65%の純度で得られる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、単離されたセレンテラジン、またはその塩は、ある量の4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)の存在によって安定化される(例えば、劣化から保護される)と考えられる。したがって、単離された組成物は、60重量%から65重量%の量のセレンテラジン(またはその塩)および4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物中に存在する不純物が、セレンテラジン、またはその塩の発光に実質的に寄与(例えば、10%を超えて、5%を超えて、または1%を超えて寄与)しないように、単離された組成物は、本質的に、60重量%から65重量%の量のセレンテラジン(またはその塩)および4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)からなる。
【0045】
単離された組成物中の、セレンテラジン(またはその塩)の4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)に対する相対量は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によって評価できる。例えば、1mg/mlの単離されたセレンテラジン組成物のメタノール溶液を、70:30の試薬水:アセトニトリル(v/v)からなり、それぞれに0.05%ギ酸を添加した注入溶媒で、10倍に希釈することができる。単離されたセレンテラジン組成物を含む希釈溶液を、グラジエント溶離を用いて、C-18逆相カラム上のLCによって分離する。いくつかの実施形態では、分離によって、約1.7分でセレンテラジン(またはその塩)に対する応答を得、約2.5分でセレンテラミン(7)に対する応答を得る。タンデムMSは、各化合物の(M+H)+親イオンをモニターするように構成され、続いてそれは、親イオンに特有の娘イオンにフラグメント化される。娘イオン強度は、各化合物のクロマトグラフィー信号を生成し、次いで統合されて、信号領域を生成する。セレンテラジンの親イオンは、424.1Daであり、娘イオンは302.2Daである。セレンテラミンの親イオンは、278.1Daであり、その娘イオンは132.0Daである。いくつかの実施形態では、単離された組成物中のセレンテラジン(またはその塩)とセレンテラミンとの比は、約20:1以上(例えば、約24:1以上、約30:1以上、約40:1以上、約50:1以上、約60:1以上、約70:1以上、約80:1以上、もしくは約90:1以上)であり、かつ/または約100:1以下(例えば、約90:1以下、約80:1以下、約70:1以下、約60:1以下、約50:1以下、約40:1以下、約30:1以下、もしくは約24:1以下)である。特定の実施形態では、単離された組成物中のセレンテラジン(またはその塩)とセレンテラミンとの比は、24:1以上および/または80:1以下である。単離された組成物は、以下に記載されるように、吸収性物品などの物品に組み込まれてもよい。
代表的な合成
いくつかの実施形態では、本開示のセレンテラジンは、以下のスキームA、B、およびCにしたがって作製することができる。スキームAは、セレンテラミン(中間体I)の合成を説明するものであり、スキームBは、シリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(中間体II)の合成を説明するものであり、スキームCは、セレンテラミンとシリル保護1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オンのカップリングによるセレンテラジンの生成を説明するものである。
【0046】
スキームA 中間体Iの合成
【0047】
【0048】
スキームB 中間体IIの合成
【0049】
【0050】
スキームC セレンテラジンの合成
【0051】
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示のセレンテラジンは、以下のスキームD、E、およびFにしたがって作製することができる。スキームDは、セレンテラミンの合成を説明するものであり、スキームEは、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)の合成を説明するものであり、スキームFは、セレンテラミンと1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)のカップリングによるセレンテラジン(16)の生成を説明するものである。
【0053】
スキームD セレンテラミンの合成
【0054】
【0055】
スキームE 1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)の合成
【0056】
【0057】
スキームF セレンテラジンの合成
【0058】
【0059】
吸収性物品
本開示の方法にしたがって作製されるセレンテラジン、またはその塩は、吸収性物品に組み込んでもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示は、本開示の方法によって合成されるセレンテラジン、またはその塩を含む吸収性物品を特徴づける。
化学発光系の1種または複数の成分を含む吸収性物品の材料および構造的要素は、例えば、2018年6月29日出願の「Chemiluminescent Wetness
Indicator for Absorbent Products」と題した米国
特許仮出願第62/692,502号、2018年10月30日出願の「Chemiluminescent Wetness Indicator for Absorbent Products」と題した米国特許仮出願第62/753,024号、および2019年6月28日出願の「Chemiluminescent Wetness Indicator for Absorbent Products」と題した米国特許出願第16/457,732号に記載され、それぞれの全内容が参照により本明細書に組み込まれている。
化学発光系
化学発光系は、水性系と接触すると光を生成するように構成される。水性系は、光を生成すべく、化学発光反応を開始させる。本明細書で使用される場合、「水性系」という用語は、水または含水組成物を指す。本開示との関連において、そのような含水組成物は、一般に、尿、経血、糞便などの体液の形態である。本明細書では、体液の放出の発生(またはその体液自体)は、「排泄(物)(insult)」、または「液体排泄(物)」、または「体液排泄(物)」と呼ぶ。したがって、本開示の化学発光系は、当該系が組み込まれた物品への排泄時に光を生成する。
【0061】
水性系との接触時に光を生成するように構成される場合、化学発光系は、水性系と接触すると発光する少なくとも1種の化合物または物質を含む。一実施形態では、水が化学発光を開始させる。
【0062】
一実施形態では、化学発光系は、水性系と接触すると発光する2種以上の物質を含む。この実施形態では、水性系の存在なしではともに発光しない2種以上の物質が存在する。
2種以上の物質を含む代表的な化学発光系には、ルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む系などの生物発光系がある。
【0063】
生物発光は、特定の生物種の体内または分泌物中で起こる化学反応によって生成される光である。生物発光は、光生成反応において、ルシフェリンおよびルシフェラーゼという2種の物質の組み合わせを伴う。ルシフェリンは、光を実際に生成する化合物であり、例えば、ルシフェリンはセレンテラジンであってもよい。ルシフェラーゼは、その反応を触媒する酵素である。場合によっては、ルシフェラーゼは発光タンパク質として知られるタンパク質であり、光生成プロセスでは、反応を活性化するために、荷電イオン(例えば、カルシウムなどのカチオン)が必要である。発光タンパク質は、発光に必要な因子(ルシフェリンおよび酸素を含む)が、単一体としてともに結び付いたルシフェラーゼの変異型である。しばしば、生物発光プロセスでは、酸化反応を開始させるために、酸素またはアデノシン三リン酸(ATP)などの物質の存在を必要とする。ルシフェリンの反応速度は、ルシフェラーゼまたは発光タンパク質によって制御される。ルシフェリン-ルシフェラーゼ反応は、不活性オキシルシフェリンおよび水などの副産物も生成することがある。
【0064】
ルシフェリンおよびルシフェラーゼは、特定の物質ではなく一般名称である。例えば、ルシフェリンであるセレンテラジン(天然型)は、海洋性生物発光によく見られるが、変異型は化学的に合成でき、これらの様々な型を総称して、ルシフェリンと呼ぶ。別の例では、光合成を通して食物を得る渦鞭毛藻類(海洋性プランクトン)は、クロロフィル構造に類似したルシフェリンを使用する。
【0065】
化学反応による光生成の機構により、生物発光は、蛍光または燐光などの他の光学現象と区別される。
例えば、蛍光分子は、それ自体の光を放射しない。蛍光分子は、電子をより高エネルギー状態に励起するために、外部光子源を必要とする。高エネルギー状態から通常の基底状態への緩和時に、蛍光分子は、獲得したエネルギーを光源として放出するが、通常は波長がより長くなる。励起および緩和は同時に起こるため、蛍光は照射(励起)された場合に
しか見られない。
【0066】
燐光という用語は、技術的には、励起状態から基底状態への緩和が、蛍光とは異なり即時ではない光励起型発光の特殊な事例を指し、光子放出は最初の励起後に数秒から数分間持続する。
【0067】
生物発光と蛍光の技術的な相違は、実際の状況では不明瞭になることもあるが、技術的には、それらは2つの別個の現象である。ほとんどの場合、生物発光体は自己蛍光体であり得るが、その逆は蛍光体には当てはまらない。後者は、発光するために、励起のための光子を依然として必要とする。場合によっては、生物発光体の刺胞動物、または甲殻類、または魚類は、緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光タンパク質を含有することができ、生物発光体によって放射される光は、GFPを励起する光子として作用すると思われる。次に、緩和状態下のGFPは、それが光子として受け取った生物発光の光の波長とは異なる波長(最も可能性が高いのは、より長い波長)の光を放射すると思われる。この例では、GFPは、生物発光体によって放射される青色光(約470nm、または470nmの波長)によって励起し得るが、次に、その緩和状態下で緑色光(約510nmから約520nm、または510nmから520nmの波長)を放射すると思われる。
【0068】
生物発光系は、所望の化学発光を生成するいずれかの方法でフラッフパルプ組成物、繊維性マトリックス、または吸収性物品に組み込まれてもよい。
一実施形態では、フラッフパルプ組成物または吸収性製品は、セレンテラジン、渦鞭毛藻類ルシフェリン、バクテリアルシフェリン、真菌ルシフェリン、ホタルルシフェリン、およびヴァルグリンからなる群から選択されるルシフェリンを含む。セレンテラジンに関しては、多くの変異型が存在し、そのいずれもフラッフパルプ組成物に使用できる。
【0069】
本開示に合致するセレンテラジンの特定の実施形態は、天然型セレンテラジン、メチルセレンテラジン、セレンテラジン400a(2-2’(4-デヒドロキシ))セレンテラジン、セレンテラジンe、セレンテラジンf、セレンテラジンh、セレンテラジンi、セレンテラジンn、セレンテラジンcp、セレンテラジンip、セレンテラジンfcp、およびセレンテラジンhepのうち1種または複数を含む。さらなる例として、セレンテラジンは、天然型セレンテラジン、セレンテラジン400a、メチルセレンテラジン、セレンテラジンf、セレンテラジンcp、セレンテラジンfcp、およびセレンテラジンhepのうちの1種または複数であってもよい。他のさらなる例として、セレンテラジンは、セレンテラジン400a、メチルセレンテラジン、およびセレンテラジンfcpうちの1種または複数であってもよい。他のさらなる例として、セレンテラジンは、セレンテラジン400a、メチルセレンテラジン、およびセレンテラジンhepのうちの1種または複数であってもよい。さらに別の例として、セレンテラジンは、セレンテラジン400a、およびセレンテラジンhepのうちの1種または複数であってもよい。
【0070】
一実施形態では、ルシフェリンの濃度は、フラッフパルプの0.0005重量%から0.002重量%である。一実施形態では、ルシフェリンの濃度は、フラッフパルプの0.0005重量%から0.0015重量%である。一実施形態では、ルシフェリンの濃度は、フラッフパルプの0.0005重量%から0.001重量%である。
【0071】
一実施形態では、ルシフェリンは、吸収性物品のいずれかの成分に組み込まれてもよい。例えば、ルシフェリン(例えば、本開示のセレンテラジン、またはセレンテラジン塩)は、約0.01から約100mg(例えば、約0.01から約75mg、約0.01から約50mg、約0.01から約25mg、約0.01から約10mg、もしくは約0.01から約5mg)、または0.01から100mg(例えば、0.01から75mg、0.01から50mg、0.01から25mg、0.01から10mg、もしくは0.01
から5mg)の量で吸収性物品に組み込まれてもよい。
【0072】
一実施形態では、フラッフパルプ組成物または吸収性製品は、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)、Renillaルシフェラーゼ(RLuc)、渦鞭毛藻類ルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、真菌ルシフェラーゼ、バクテリアルシフェラーゼ、およびウミホタルルシフェラーゼからなる群から選択されるルシフェラーゼを含む。本開示に合致するルシフェラーゼの特定の実施形態は、Gaussiaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、渦鞭毛藻類ルシフェラーゼ、およびホタルルシフェラーゼのうち1種または複数を含む。さらなる例として、ルシフェラーゼは、Gaussiaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、渦鞭毛藻類ルシフェラーゼ、およびホタルルシフェラーゼのうちの1種または複数であってもよい。他のさらなる例として、ルシフェラーゼは、Gaussiaルシフェラーゼ、およびRenillaルシフェラーゼのうちの1種または複数であってもよい。
【0073】
一実施形態では、ルシフェラーゼの濃度は、フラッフパルプの約0.005重量%から約0.04重量%(例えば、0.005重量%から0.04重量%)である。一実施形態では、ルシフェラーゼの濃度は、フラッフパルプの約0.005重量%から約0.02重量%(例えば、0.005重量%から0.02重量%)である。一実施形態では、ルシフェラーゼの濃度は、フラッフパルプの約0.005重量%から約0.01重量%(例えば、0.005重量%から0.01重量%)である。
【0074】
いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、吸収性物品のいずれかの成分に組み込まれてもよい。例えば、ルシフェラーゼ(例えば、GLuc)は、約0.2mgから約40mg(例えば、約0.2mgから約30mg、約0.2mgから約20mg、約0.2mgから約15mg、約0.2mgから約10mg、約0.2mgから約5mg、もしくは約0.2から約2mg)、または0.2mgから40mg(例えば、0.2mgから30mg、0.2mgから20mg、0.2mgから15mg、0.2mgから10mg、0.2mgから5mg、もしくは0.2から2mg)の量で吸収性物品に組み込まれてもよい。
【0075】
一実施形態では、化学発光系は、ルシフェリンとしてのセレンテラジン、およびGaussiaまたはRenillaルシフェラーゼを含む。
代表的なルシフェリンには、セレンテラジンファミリーのルシフェリンがある。セレンテラジンは、その天然型ならびにその類似体において、それらの構造部分の多様性により、様々な発光特性を有する。セレンテラジンファミリーにおける構造の多様性を考慮すると、ある種のルシフェラーゼに良好な基質であるものもあれば、そうでないものもある。以下に、天然型セレンテラジンおよび代表的な類似体について簡単に説明する。
【0076】
セレンテラジン(天然型)は、Renilla(reniformis)ルシフェラーゼ(Rluc)の発光酵素基質である。Renillaルシフェラーゼ/セレンテラジンは、生物発光共鳴移動(BRET)研究において生物発光ドナーとしても使用されてきた。
【0077】
【0078】
セレンテラジン400aは、セレンテラジンの誘導体であり、Renillaルシフェラーゼの良好な基質であるが、Gaussiaルシフェラーゼ(Gluc)を用いる場合には十分に酸化されない。セレンテラジン400aは、BRET(生物発光共鳴エネルギー移動)の好ましい基質である。その理由は、その約400nm(例えば、400nm)の最大発光は、GFP発光との干渉が最小限であるからである。
【0079】
【0080】
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、BRET、共鳴エネルギー移動(RET)、および電子エネルギー移動(EET)は、2つの感光性分子(発色団)間のエネルギー移動を表す機構であり、発光化学物質が別の発光化学物質のエネルギー移動に干渉することを定義し得る。ドナー発色団は、まずその電子励起状態において、非放射の双極子-双極子カップリングを介して、アクセプター発色団にエネルギーを移動させ得る。このエネルギー移動の効率は、ドナーとアクセプター間の距離の6乗に反比例し、それによって、FRETは距離の小さな変化に対して極めて高感度になる。2つのフルオロフォアが、互いに特定の距離内にあるかどうかを判定するために、FRET効率の測定が使用されてもよい。
【0081】
このような測定は、生物学および化学を含む分野において研究ツールとして使用される。
セレンテラジン-イクオリン複合体中のセレンテラジンcpは、セレンテラジン(天然型)よりも約15倍(例えば、15倍)高い発光強度を発生させる。
【0082】
【0083】
セレンテラジンfは、発光強度が天然型セレンテラジンよりも約20倍(例えば、20倍)高い(セレンテラジン-アポイクオリン複合体)一方、その最大発光は、天然型のそれよりも約8nm(例えば、8nm)長い。
【0084】
【0085】
セレンテラジンfcpは、セレンテラジンf構造のセレンテラジン部分におけるa-ベンゼン構造が、環式ペンタンで置き換えられた(セレンテラジンcpと同様の)類似体である。セレンテラジンfcpは、発光強度がセレンテラジン(天然型)よりも約135倍(例えば、135倍)高い。
【0086】
【0087】
セレンテラジンfcpは、イクオリンと複合化して、セレンテラジンfcp-アポイクオリン複合体を形成し、イクオリンの基質として、相対発光強度が天然型セレンテラジンの約135倍(例えば、135倍)である。しかしながら、セレンテラジンfcpは、Renillaルシフェラーゼには好ましくない基質である。
【0088】
Renillaルシフェラーゼ酵素の基質として、セレンテラジンの他の代表的な類似体は、セレンテラジンe、h、およびnである。これらの3種の類似体は、Renillaルシフェラーゼの優良な基質として適している一方、アポイクオリンには好ましくない基質である。
【0089】
【0090】
セレンテラジン類似体の発光特性は様々である。例えば、特定の類似体は、(ルーメンとして測定される)より弱い光を発するが、より高い発光強度(ルーメン/ステラジアン)を有する。表Aは、Renillaルシフェラーゼによるセレンテラジン(天然型)およびその類似体の発光特性を収載するものである。発光強度を初期強度%として報告する。例えば、初期強度が900%である類似体は、初期強度が約45%(例えば、45%)である天然型セレンテラジンと比較して、約20倍(例えば、20倍)の強度である。
【0091】
【0092】
光は、化学発光系によって生成される。光は、暗闇の中で、かつ衣服を通して介護者によって視覚的に探知されることが可能であり、したがって光は、必要な表示をもたらすのに十分な波長、強度、および持続時間を有する。化学発光系のこれらのスペクトル特性は、化学発光性化合物に基づいて調節できる。例えば、生物発光系では、ルシフェリンおよびルシフェラーゼは、所望の光特性を生成するように選択されてもよい。使用される生物発光系に応じて、様々なスペクトル特性が生じることがある。スーパーオキシドアニオンおよび/またはペルオキシニトリル化合物の存在下で、セレンテラジンは、酵素(ルシフェラーゼ)酸化とは関係なく発光することもでき、これは自己発光として知られるプロセスである。
【0093】
化学発光系は、特定の色の光を生成するように調節できる。上記の表Aに記載されているように、セレンテラジンファミリーの中であっても、発光波長は約400nm(紫色、例えば400nm)から約475nm(緑がかった青色、例えば475nm)の範囲にわたることがある。
【0094】
持続時間に関して、発光の持続時間は、セレンテラジン(ルシフェリン)が天然型か類似体か、および酵素(ルシフェラーゼ)が、例えばGaussiaかRenillaかを選択することによって制御し得る。使用されるルシフェリンおよびルシフェラーゼの比率および濃度も、発光の持続時間を改変することができる。例示的かつ非限定的な例を挙げると、ルシフェリン類似体であるセレンテラジンeは、天然セレンテラジンを超える130%の総光量および900%の初期強度を有する。セレンテラジンeおよびRenillaルシフェラーゼの濃度を賢明に選択することによって、発光の持続時間は、約8から約10時間(例えば、8から10時間)も続くことがある。
【0095】
一実施形態では、光の持続時間は、約0.5から約6時間(例えば、0.5から6時間)である。別の実施形態では、光の持続時間は、約1から約4時間(例えば、1から4時間)である。別の実施形態では、光の持続時間は、約2から約3時間(例えば、2から3時間)である。
【0096】
強度に関して、化学発光の量子効率は、発光色の強度、濃さ、および色相に寄与する。
量子効率(QE)は、発光化学物質を励起して、それをより高エネルギー状態に高めるために使用される光子流束の割合である。量子効率は、検出器の品質を評価するために使用される最も重要なパラメーターの1つであり、その波長依存性を反映して「分光感度」としばしば呼ばれる。これは、入射光子1つあたりに生成される信号電子の数として定義される。場合によっては、それは100%を超えることがある(つまり、入射光子1つあたり複数の電子が生成される場合)。分光感度が100%を超えると、発光色の強度および濃さが鮮明になるが、1次電子の励起状態の状況に応じて、発光の持続時間が決まることになる(つまり、励起状態が高いほど、基底(通常)状態に戻るのにより多くの時間がかかる)。
【0097】
分光応答度は同様の測定であるが、単位が異なり、測定基準はアンペアまたはワットである(つまり、所与のエネルギーおよび波長の入射光子1つあたりの装置から出る電流の量)。
【0098】
量子効率と分光応答度のどちらも、光子の波長の関数である。例えば、ルシフェリンであるセレンテラジンの場合、天然型とその類似体の1つであるセレンテラジンeの間では、後者は光強度が高いだけでなく、前者よりも30%多く光エネルギーを放出する。その理由は、後者は、入射光子における所与の量子(hν)による励起時に電子2個を発生させ、波長475における1次電子は、天然型セレンテラジンと同じ発光強度を有するが、
ルーメン強度は、天然型生成物のそれよりも約20倍(例えば20倍)高いからである。したがって、励起したセレンテラジン類似体による発光は、天然型よりも20倍明るいと思われるが、約130%(例えば、130%)の総光エネルギーによって、天然型よりも長持ちすることになる。
【0099】
波長は、発光色を決定する。
一実施形態では、フラッフパルプ組成物は、ルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む。そのようなフラッフパルプは、水性系との接触時に発光するのに必要な化学発光系の両方の要素を有する。しかしながら、別の実施形態では、フラッフパルプ組成物は、ルシフェリンおよびルシフェラーゼから選択される少なくとも一方の成分を含む。そのような実施形態では、フラッフパルプ組成物は、ルシフェリンおよびルシフェラーゼのうち一方のみを含むことができる。そのようなフラッフパルプ組成物は、ルシフェリンおよびルシフェラーゼのうち他方を吸収性物品の表面シートまたは他の層に配置し得るように吸収性物品に組み込まれ、2つの成分が、液体排泄物(例えば、表面シートを通過して、フラッフパルプ組成物中に入る水性系からの水)によって運搬される場合にのみ混ぜ合わされるようにしてもよい。一実施形態では、フラッフパルプ組成物はルシフェリンを含むが、ルシフェラーゼを含まない。一実施形態では、フラッフパルプ組成物はルシフェラーゼを含むが、ルシフェリンを含まない。
フラッフパルプ
フラッフパルプ組成物のフラッフパルプは、いずれかのパルプから形成されてもよい。一実施形態では、フラッフパルプは、リグノセルロース繊維に由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、木材から得られるリグノセルロース繊維に由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、化学的、機械的、化学機械的、または熱機械的手段によって木材から得られるリグノセルロース繊維に由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、化学蒸解によって木材から得られるセルロース繊維に由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、アルコール蒸解、オルガノソルブ蒸解、酸性サルファイト蒸解、アルカリ性サルファイト蒸解、中性サルファイト蒸解、アルカリ性過酸化物蒸解、クラフト蒸解、クラフト-AQ蒸解、ポリスルフィド蒸解、またはポリスルフィド-AQ蒸解のいずれかによって木材の化学蒸解から得られるセルロース繊維に由来する。
【0100】
一実施形態では、フラッフパルプは、吸収性物品(フラッフパルプ)の調製のために、アルコール蒸解、オルガノソルブ蒸解、酸性サルファイト蒸解、アルカリ性サルファイト蒸解、中性サルファイト蒸解、アルカリ性過酸化物蒸解、クラフト蒸解、クラフト-AQ蒸解、ポリスルフィド蒸解、またはポリスルフィド-AQ蒸解のいずれかによって、前記パルプからリグニンをさらに除去することにより木材の化学蒸解から得られるセルロース繊維に由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、クラフト蒸解から得られるセルロースフラッフパルプに由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、クラフト蒸解から得られる漂白セルロースフラッフパルプに由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、軟木のクラフト蒸解から得られる漂白セルロースフラッフパルプに由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、南部軟木のクラフト蒸解から得られる漂白セルロースフラッフパルプに由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、サザンパインのクラフト蒸解から得られる漂白セルロースフラッフパルプに由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、南部軟木に由来する。一実施形態では、フラッフパルプは、サザンパインに由来する。
【0101】
フラッフパルプ組成物は、乾燥させて、約6%から約11%(例えば、6%から11%)の範囲の含水量を実現する湿式抄造シートなどの、いずれかの形態のパルプから生産されてもよい。
【0102】
別の態様では、フラッフパルプ組成物を調製する方法が提供される。フラッフパルプ組
成物は、化学発光系の少なくとも1種の成分をフラッフパルプに組み込むことによって調製される。
【0103】
このことは、化学発光系の1種または複数の成分でフラッフパルプが処理されることを可能にする様々な方法を使用して実現し得る。フラッフパルプの化学処理における1つの課題は、例えば、後に液体排泄物にさらされる吸収性物品に、処理されたフラッフパルプが組み込まれる前に、意図された化学発光反応が早まって引き起こされることのない状態で化学物質を維持することである。化学物質は一般に、ウェットエンドを適用するためには、水と混ぜ合わせてともに付着させることはできない。したがって実例では、湿式抄造プロセスの間に、ルシフェラーゼまたはルシフェリンのどちらかをマイクロカプセル化して導入し、非カプセル化成分を、吸収性物品製造中のエアレイド作業の前に、塗装、浸漬、吹付け、または印刷(またはそれらの組み合わせ)などの標準的な方法によって、非水性環境下でシートに付着させることができる。別の実例では、さらに吸収性物品製造中のエアレイド作業の前に、一方にルシフェラーゼを含み、他方にルシフェリンを含む2シート系を作製し、加工してもよい。さらに他の例では、化学物質のうちの一方を湿式抄造プロセスの間に添加し、他方をそれに続くパルプ加工の間に添加することができる。または、綿状形態のパルプに、各成分の一方または両方の非水溶液によるすすぎおよび/もしくはその吹付けを行うことなどによって、パルプに2成分をエアレイドプロセスの間もしくは前に添加することができる。
吸収性物品
一実施形態では、フラッフパルプ組成物;セレンテラジン、もしくはその塩を含む単離された組成物;および/またはセレンテラジン、もしくはその塩は、吸収性物品に組み込まれてもよい。代表的な吸収性物品には、子ども用おむつ、成人用おむつ、成人用失禁製品、女性用衛生製品、吸収性アンダーパッド、および創傷治療用手当製品がある。例えば、フラッフパルプ組成物および/またはセレンテラジン、もしくはその塩は、吸収性物品の1つもしくは複数の吸収層または部分に組み込まれてもよい。
【0104】
別の態様では、吸収性物品が提供される。一実施形態では、吸収性物品は、液体透過性である表面シート、液体不透過性である背面シート、表面シートと背面シートの間に配置されたフラッフパルプおよび/または表面シートと背面シートの間に配置された非綿状もしくはほぼ非綿状の不織布マトリックス、ならびに水性系と接触すると光を生成するように構成された化学発光系を含む。
【0105】
吸収性物品の化学発光系(例えば、本開示のセレンテラジン、またはその塩などのルシフェリン、およびルシフェラーゼ)は、本明細書に記載されているとおりである。しかしながら、化学発光系は、全体的または部分的に、フラッフパルプ内に配置される必要はない。上記で論じたように、いくつかの構成において、合成繊維によって、構造的機能および体液分配機能を付与することができ、フラッフパルプ繊維および合成繊維の両方を含む吸収性コア、さらにはフラッフパルプ繊維を含まない「非綿状」吸収性コアの開発につながる。いくつかの実施形態では、化学発光系、または化学発光系の一部は、液体透過性表面シート、液体不透過性背面シート、SAP、または吸収性物品中の別の構造に独立に統合することができる。
【0106】
一実施形態では、化学発光系は、ルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む。一実施形態では、ルシフェリンおよびルシフェラーゼは、どちらもフラッフパルプ内に配置される。別の実施形態では、ルシフェリンおよびルシフェラーゼのうち一方は、フラッフパルプ内に配置され、他方は、吸収性製品の別の層(例えば、表面シートまたはADL)に配置され、その結果、2種の成分は、2種の成分のうち少なくとも一方が(例えば、表面シートまたはADLを通過して、フラッフパルプ組成物に入る)液体排泄物によって運搬される場合にのみ混ぜ合わされるようにする。一実施形態では、フラッフパルプはルシフェリ
ンを含むが、ルシフェラーゼを含まない。一実施形態では、フラッフパルプはルシフェラーゼを含むが、ルシフェリンを含まない。
【0107】
さらに別の実施形態では、化学発光系の少なくとも1種の成分は、背面シートの内面に配置(例えば、印刷)される。
一実施形態では、ルシフェリンおよびルシフェラーゼの一方は、フラッフパルプ内に配置されるが、他方は、物品内の表面シートまたは別の構造に結び付き、液体排泄物に曝露されるとフラッフパルプ内に移動するように構成される。
【0108】
一実施形態では、吸収性物品は、本明細書に開示されるように、pH緩衝剤をさらに含む。一実施形態では、pH緩衝剤は、フラッフパルプ内に配置される。上記で論じたように、いくつかの構成において、合成繊維によって、構造的機能および体液分配機能を付与することができ、フラッフパルプ繊維および合成繊維の両方を含む吸収性コア、さらにはフラッフパルプ繊維を含まない「非綿状」吸収性コアの開発につながる。いくつかの実施形態では、化学発光系、または化学発光系の一部は、液体透過性表面シート、液体不透過性背面シート、SAP、または吸収性物品中の別の構造に独立に統合することができる。
【0109】
一実施形態では、吸収性物品は、本明細書に開示されるように、フォトルミネセンス化合物をさらに含む。一実施形態では、フォトルミネセンス化合物は、フラッフパルプ内に配置される。
【0110】
一実施形態では、吸収性物品は、本明細書に開示されるように、フォトルミネセンス化合物およびpH緩衝剤をさらに含む。一実施形態では、フォトルミネセンス化合物およびpH緩衝剤は、フラッフパルプ内に配置される。
【0111】
一実施形態では、pH緩衝剤、フォトルミネセンス化合物、ルシフェリン、およびルシフェラーゼは、フラッフパルプ内に配置される。
一実施形態では、pH緩衝剤、フォトルミネセンス化合物、ルシフェリン、およびルシフェラーゼのうち少なくとも1つは、フラッフパルプ内に配置されない。いくつかの実施形態では、pH緩衝剤、フォトルミネセンス化合物、ルシフェリン、およびルシフェラーゼのうち少なくとも1つは、吸収性物品の液体透過性表面シート、液体不透過性背面シート、および/またはSAP中の合成繊維、フラッフパルプ繊維を含まない「非綿状」吸収性コアに独立して組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、pH緩衝剤、フォトルミネセンス化合物、ルシフェリン、および/またはルシフェラーゼは、吸収性コアに物品の別の構造から移動できる。いくつかの実施形態では、pH緩衝剤、フォトルミネセンス化合物、ルシフェリン、および/またはルシフェラーゼは、吸収性コアから物品の別の構造に移動できる。
【0112】
一実施形態では、吸収性物品は、吸収性コアに組み込まれるような高吸水性樹脂(SAP)をさらに含む。そのような実施形態では、排泄物からの体液が吸収性コアに移動する際に化学発光が発生するように、化学発光系の少なくとも1種の成分は、SAPの中に配置されてもよい。
【0113】
一実施形態では、化学発光系は、完全に吸収性物品の吸収性コア内に含まれる。吸収性コアはほとんどの場合、多成分系であるため、吸収性コアに化学発光系を組み込むための手法は複数存在する。例えば、フラッフパルプ繊維は、化学発光系の担体であってもよいであろう。あるいは、化学発光系は、吸収性物品に組み込まれる高吸水性粒子内に含まれてもよいであろう。いくつかの実施形態では、吸収性コアは、セルロース繊維、セルロース繊維誘導体(レーヨン、リヨセルなど)、不織セルロース繊維、および/もしくはセルロース繊維誘導体、非セルロース繊維、またはそれらのいずれかの組み合わせを含むこと
ができる。
【0114】
さらに、SAP粒子または繊維の一部のみが、化学発光系の化学物質を含むのであれば、美的に快い模様など、所望の模様が実現し得る。
化学発光系は、吸収性物品の製造時、または最終製品の組み立てから完全に分離された上流プロセスの間に、フラッフパルプ繊維に添加されてもよい。上記のように、例えば、ハンマーミリングに先立って、化学発光系はフラッフパルプシートに吹付けられるか、そうでなければその中に組み込まれてもよい。
【0115】
別の態様では、吸収性物品を製造する方法も提供される。
吸収性物品は、吸収性物品に組み込まれる化学発光系を、本明細書に開示される方法で組み込むことを可能にする、当業者に既知の一般的な技術にしたがって製造される。
【0116】
以下の実施例は、例示を意図するものであり、限定を意図するものではない。実施例1は、1Kgスケールでのセレンテラジンの合成を説明するものである。実施例2は、25グラムスケールでのセレンテラジンの合成を説明するものである。実施例3は、100グラムスケールでのセレンテラジンの合成を説明するものである。実施例4は、数キログラムスケールでのセレンテラジンの合成を説明するものである。
【実施例0117】
実施例1.セレンテラジン(1キログラム)の合成
3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)の合成
【0118】
【0119】
100Lの丸底フラスコに、トルエン10Lを入れ、続いてテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)10Lを入れた。氷水を用いて混合物を0~5℃で冷却した。この撹拌混合物に、n-ブチルリチウム溶液20L(n-ヘキサン中2.5M)を、窒素下で1~1時間半かけて、0℃から8℃で滴下して加えた。添加完了後、反応混合物を室温(22℃)に戻した。室温で20分後、混合物をゆっくりと60℃まで加熱した。(この間にブタンガスが放出された)。反応混合物を60℃±1℃で30分間維持し、次いで室温に放冷した。
【0120】
その間に、別の30Lフラスコに、テトラヒドロフラン(THF)(15L)およびピラジン-2-アミン(24)(2-アミノピラジン(24)とも呼ばれる)(1Kg)を入れた。混合物を25~35℃で20分間撹拌した。この溶液を、1~1.5時間かけて、添加フラスコを用いて、上記のベンジルリチウム溶液に加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。温度を20~25℃の間に維持しながら、水(16L)を20℃の反応混合物に滴下して加えた。混合物を室温で30分間撹拌し、次いで、有機層を分離し、過剰な溶媒を留去した。残渣をトルエン(8L)および水(3L)で処理し、10分間撹拌した。有機層を分離し、溶媒を減圧下で留去して、所望の3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)を60%~65%の収率で得た。純度は94%~95%であった。
3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)の合成
【0121】
【0122】
20Lの丸底フラスコに、クロロホルム(6L)および3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)(2-アミノ-3-ベンジルピラジン、(25)とも命名される)(1Kg)を入れ、混合物を室温(22℃)で撹拌した。N-ブロモスクシンイミド(NBS)(800グラム)を1から1.5時間かけてゆっくりと加えた。添加完了後、混合物を30分間撹拌した。水(2L)を加え、10分間撹拌した。有機層を分離し、水(2×1L)で洗浄した。クロロホルム層を減圧下で濃縮し、油性の残渣を真空下で乾燥させた。収率は77%~85%であった。純度は93%~95%であった。
3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)の合成
【0123】
【0124】
50Lのフラスコに、室温で1,4-ジオキサン(30L)および3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)(1Kg)を入れた。炭酸カリウム(1.6Kg)を加え、続いて水(5L)を加えた。反応混合物を10分間撹拌した。4-メトキシフェニルボロン酸(4)(600グラム)を加え、続いてパラジウム触媒(300グラム)を加えた。反応混合物を82℃までゆっくりと加熱し、80~82℃で5時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、100Lの丸底フラスコに移し、室温で酢酸エチル(15L)および水(15L)を入れ、20分間撹拌した。有機層を分離し、減圧下で濃縮して、所望の生成物を得た。収率は85%~90%であった。純度は92%~95%であった。
4-(5-アミノ-6-ベンジル-ピラジン-2-イル)フェノール(7)の合成
【0125】
【0126】
30Lの丸底フラスコに、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(5)(1Kg)およびピリジン塩酸塩(6)(6.5Kg)を入れた。反応混合物を油浴中で200℃にゆっくりと加熱した。反応温度を200~210℃で30分間維持した。混合物を40度に冷却し、35~40℃で水(13L)および酢酸エチル(15L)を入れた。反応混合物を20分間撹拌した。酢酸エチル層を分離し、水性層を酢酸エチル(3L×2)で再抽出した。混合酢酸エチル抽出物を、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチル2Lに溶解させ、還流した。溶液を10~15℃にゆっくりと冷却し、形成された固体をろ過して、所望の生成物を得た。収率は90%~95%であった。純度は90%であった。
【0127】
あるいは、塩化ピリジニウムを使用する代わりに、30Lの丸底フラスコに、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン(1Kg)、NaH(1Kg)、DMF(20L)、およびエタンチオール(2Kg)を入れた。反応混合物を油浴中で100℃にゆっくりと加熱した。反応温度を、100~110℃で30分間維持した。混合物を40℃に冷却し、35~40℃で水(13L)および酢酸エチル(15L)を入れた。反応混合物を20分間撹拌した。酢酸エチル層を分離し、水性層を酢酸エチル(3L×2)で再抽出した。混合酢酸エチル抽出物を、減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチル2Lに溶解させ、還流した。溶液を10~15℃にゆっくりと冷却し、形成された固体をろ過して、所望の生成物を得た。収率は90%~95%であった。純度は90%であった。
【0128】
どちらの筋書きにおいても、室温で生成物1Kgおよび1,4-ジオキサン5Lを10Lの丸底フラスコに入れ、水酸化ナトリウム水溶液(水1L中に水酸化ナトリウム250g)を溶液に加え、フラスコに炭100gおよびシリカゲル100gを室温で入れ、混合物を室温で20分間撹拌し、ろ過し、固体を1,4-ジオキサン250mlで洗浄することによって、任意で、生成物を精製することができる。次いで、ろ液を別の20.0Lの丸底フラスコに移し、HCl200mlを反応混合物にゆっくりと加えて、室温でpHを7から7.5に調整し、その間に固体沈殿物が認められた。次に、反応混合物を室温で30分間撹拌し、ろ過し、1,4-ジオキサン200mlで洗浄した。単離された固体生成物を真空下で、かつ50~55℃の乾燥機で4時間乾燥させた。収率は90%~95%であった。純度は90%であった。
(4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)ベンジルアルコール(20b)の合成
【0129】
【0130】
20Lの丸底フラスコに、ジクロロメタン(10L)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(8)(1Kg)、N,N’-ジメチルアミノピリジン(50グラム)、およびイミダゾール(1.33Kg)を入れた。反応混合物を20℃に冷却し、撹拌した。この撹拌混合物に、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-Cl、500グラム×3)を少量ずつ加えた。1時間後、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮して、油性の生成物(20a)を得た。
【0131】
【0132】
上記の生成物(20a)を10Lの丸底フラスコに取り、メタノール(6L)に溶解させた。反応混合物を10~15℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(100グラム)を撹拌しながら加えた。30分後、酢酸を用いて反応pHを7.0に調整した。20分間撹拌した後、メタノールを留去して、所望の4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)ベンジルアルコール(20b)を得た。収率は85%~90%であり、純度は80%~85%であった。
4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)ベンジルクロリド(21)の合成
【0133】
【0134】
10Lの丸底フラスコに、4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)ベンジルアルコール(20b)(1Kg)およびジクロロメタン(6L)を入れ、続いてトリエチルアミン(1.4L)を入れた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。メタンスルホニルクロリド(600mL)を約1~1.5時間のうちに30~35℃でゆっくりと加えた。反応完了後、30%重炭酸ナトリウム水溶液(400ml)を加え、20分間撹拌した。ジクロロメタン層を分離し、塩化ナトリウム水溶液(2×500ml)で洗浄した。ジクロロメタンを減圧下で除去した。残渣をさらに精製することなく、次のステップに使用した。3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)の合成
【0135】
【0136】
50Lの丸底フラスコに、切削片状マグネシウム(1Kg)および無水テトラヒドロフラン(3L)を入れ、続いてヨウ素(10グラム)およびジブロモエタン(50ml)を入れた。tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)(1.6Kg)無水テトラヒドロフラン(12L)溶液を、4時間かけて40~45℃で滴下して加えた。反応混合物を35℃に冷却した。別の50L丸底フラスコに、エチル2,2-ジエトキシアセテート(12)(2Kg)および無水テトラヒドロフラン(10L)を入れ、-35℃に冷却した。上記で調製したグリニャール反応混合物を、-35℃で1~1.5時間かけてこの溶液に加えた。反応完了後、反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(水7L中に1.2Kg)でクエンチした。有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。油性残渣を、トリエチルアミンを含む溶離液を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)(0.48Kg)を得た。収率は20%~25%であり、純度は90%であった。
セレンテラジン 8-ベンジル-2-(4-ヒドロキシベンジル)-6-(4-ヒドロキシフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オンの合成
【0137】
【0138】
30Lの丸底フラスコに、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(0.9Kg)および3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オ
キシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)(1.4Kg)を入れ、続いて1,4-ジオキサン(14L)を入れた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。濃塩酸(0.75L)および水(0.75L)を加え、反応混合物を80~85℃に15時間加熱した。反応混合物を40℃に冷却し、次いで活性炭(100g)および活性シリカゲル(100g)を加え、ろ過した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を脱気した酢酸エチル(2L)と撹拌することによって沈殿させた。収率は60%~65%であり、純度は60%~63%であった。
【0139】
実施例2.セレンテラジン(16)の合成
3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)
【0140】
【0141】
乾燥した1Lの2つ口丸底フラスコに、Znダストおよび30メッシュの顆粒亜鉛(1:1、16.05/16.05g、491.2mmol、3.5当量)ならびにI2(6.23g、5%molのZn)をアルゴン雰囲気下で加えた。N,N-ジメチルアセトアミド(125ml、CaH2で新たに蒸留)を加えた。I2の褐色が消失するまで、混合物を室温で撹拌した。臭化ベンジル(61.04g、356.9mmol、2.5当量)を滴下して加え、混合物を80℃で4時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、3,5-ジブロモ-2-アミノピラジン(1)(36.0g、140.3mmol、1当量)およびPdCl2(PPh3)2(5.04g、0.712mmol、5%のピラジン)のN,N-ジメチルアセトアミド(150mL)懸濁液を加えた。混合物をアルゴン雰囲気下で1日間絶えず撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)(30%酢酸エチル/ヘキサン)は、反応が完了したことを示した。反応混合物を短いセライト床を通してろ過した。ろ液を氷冷水(1L)にゆっくりと注ぎ、EtOAc(3×200mL)を用いて抽出した。混合有機層を水(200mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。有機層をろ過し、減圧下でロータリーエバポレーターにおいて濃縮した。2:1のヘキサン/EtOAcで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで褐色残渣を精製して、褐色で粘性のある油として、3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)28.0gを74%の収率で得た。1H NMR (CDCl3): δ 8.05 (s, 1 H), 7.22-7.35 (m, 5 H), 4.41(s, 2 H), 4.11 (s, 2 H), 4.08 (s, 2H).
p-メトキシフェニルボロン酸(4)の3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)とのパラジウムカップリング反応
【0142】
【0143】
アルゴン雰囲気下で、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(2.71g、6.34mmol)を、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)(2.03g、5.29mmol)トルエン(210ml)懸濁液に室温で加え、30分間撹拌した。3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)(28.0g、106.0mmol)トルエン(180mL)溶液をこの混合物に加え、続いて4-メトキシフェニルボロン酸(20.94g、137.8mmol)、エタノール(42mL)、および1.0MのNa2CO3水溶液(108mL)を、室温で撹拌しながら順次加えた。得られた混合物を4時間加熱還流し、次いで室温に放冷した。混合物を20%NaCl水溶液(400mL)で希釈し、酢酸エチル(EtOAc、3×300mL)で抽出した。混合有機層を水(200mL)、ブライン(200mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。有機層をろ過し、酢酸エチル溶液を2NのHCl(200mL)で処理して、生成物をその塩酸塩として沈殿させた。黄色の沈殿物が直ちに形成された。沈殿した固体をろ過により単離し、真空下で乾燥させた。乾燥固体を酢酸エチル(2×100mL)で洗浄して、非極性不純物を除去し、続いて真空下で乾燥させて、3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン塩酸塩(5)24gを78%の収率で得た。1H NMR (CDCl3): δ 8.05 (s, 1 H), 7.22-7.35 (m, 5 H), 4.41(s, 2 H), 4.11 (s, 2 H), 4.08 (s, 2H).LCMS分析は、生成物がおおよそ99%の純度であることを示した。
ピリジニウム塩酸塩を用いたメチルエーテル塩酸塩のフェノールへの脱メトキシ化
【0144】
【0145】
3-ベンジル-5-(4-メトキシフェニル)ピラジン-2-アミン塩酸塩(5)(20.0g、61.0mmol)およびピリジニウム塩酸塩(6)(70.5g、0.61mol)の混合物を、200℃で2時間、アルゴン雰囲気下で加熱した。暗褐色の混合物を室温に冷却し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(750mL)を固体にゆっくりと加え、続いて酢酸エチル(750mL)を加えた。有機層を分離し、水性層をEtOAc(3×200mL)で抽出した。混合酢酸エチル抽出物を水(2×300mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させた。溶液をろ過し、減圧下でロータリーエバポレーターにおいて濃縮した。ヘキサン-EtOAc(3:7)で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで褐色残渣を精製して、淡黄色の固体として、4-(5-アミノ-6-ベンジル-ピラジン-2-イル)フェノール(7)14gを82%の収率で得た。固体を酢酸エチル/1%
メタノールから再結晶化して、淡黄色の粉末を得た。1H NMR (DMSO-D6) δ 9.36 (s,1 H), 8.17 (s, 1H), 7.60 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.13-7.22 (m, 5H), 6.68 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.09 (s, 2H), 3.94 (s, 2H).生成物のLCMS分析は、生成物がおおよそ99%の純度であることを示した。
4-ベンジルオキシベンズアルデヒド(9)
【0146】
【0147】
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、1L)中の4-ヒドロキシベンズアルデヒド(8)(122.1g、1.0mol)、塩化ベンジル(132.9g、1.05mol)、および無水炭酸カリウム(165.6g、1.2mol)の混合物を、激しく撹拌しながら、70~80℃で3日間加熱した。反応の進行をTLC(20%酢酸エチル/ヘキサン)によってモニターした。混合物を氷冷水(4L)に注いだ。得られた固体をろ過によって収集し、水(2×500ml)で洗浄し、乾燥させて、白色の固体として所望の生成物を得た。重量=210g、収率は96.3%であった。
4-ベンジルオキシベンジルアルコール(10)
【0148】
【0149】
水素化ホウ素ナトリウム(40.0g、1.08mol)を、4-(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒド(9)(218.0g、1.02mmol)の酢酸エチル/メタノール(1:1、1L)混合物溶液に、0~5℃で1時間かけて、少量ずつゆっくりと加えた。水素化ホウ素ナトリウムの添加完了後、反応混合物を室温にゆっくりと温め、2時間撹拌した。反応の進行をTLC(20%酢酸エチル/ヘキサン)によってモニターした。混合物を減圧下で濃縮し、残渣を酢酸エチル(750ml)と水(500ml)とに分配した。有機層を分離した。水性層を酢酸エチル(2×200ml)で抽出した。混合エチル抽出物を水(500ml)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。残渣を20%酢酸エチル/ヘキサンで再結晶化して、所望の生成物を得た。重量=180.5g、収率は82.7%であった。
4-ベンジルオキシベンジルクロリド(11)
a)塩化チオニルの使用
【0150】
【0151】
塩化チオニル(101.2g、0.86mol)を、(4-(ベンジルオキシ)フェニル)メタノール(10)(167.0g、0.78mol)酢酸エチル(600ml)冷却溶液に0℃で1時間かけて滴下して加えた。添加後、反応混合物を室温に温め、撹拌した。4時間の反応が完了した後、反応の進行をTLCによってモニターした。反応混合物を減圧下で濃縮した(<50℃)。得られた残渣をヘキサンで2回再結晶化して、白色固体として所望の生成物を得た。重量=180g、収率は77%であった。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 4.57 (s, 2 H), 5.08 (s, 2 H), 6.96(d, J = 8.7 Hz, 2 H), 7.32 (d,
J = 8.7 Hz, 2 H), 7.43-7.37 (m, 5 H).
b)シアヌル酸クロリドの使用:
アルゴン雰囲気下で、シアヌル酸クロリド(1.0g)を無水N,N’-ジメチルホルムアミド(5ml)に室温で加え、30分間撹拌した。白色の懸濁液が形成された。(4-(ベンジルオキシ)フェニル)メタノール(1.0g)ジクロロメタン(30ml)溶液を加え、一晩撹拌した。沈殿した固体をろ過により除去した。ろ液をヘキサン(50ml)で希釈し、水、ブライン溶液(各20ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去した。生成物を5%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製して、重量650mg、収率59.5%の生成物を得た。
【0152】
c)メタンスルホニルクロリドの使用:
メタンスルホニルクロリド(13.74g、0.12mol)を(4-(ベンジルオキシ)フェニル)メタノール(21.8g、0.10mol)およびトリエチルアミン(15.15g、0.15mol)のジクロロメタン(250ml)溶液に0℃で滴下して加えた。添加後、反応混合物を室温に温め、12時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。残渣を酢酸エチル(200ml)と水(200ml)とに分配した。酢酸エチル層を分離し、水、ブライン溶液(各75ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を除去した後に得られた未精製生成物をヘキサンから再結晶化して、生成物18グラムを得た。重量=18グラム(収率70%)であった。
3-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(13)
【0153】
【0154】
切削片状Mg(10.57g、0.435モル、1.5当量)を、アルゴンを流した500mLの2つ口丸底フラスコ中の乾留THF(100mL)に懸濁させた。(11)(68.14g、0.29モル)のTHF(600ml)溶液を調製し、溶液25mlを一度に加え、グリニャール反応が開始されるまで、絶えず撹拌しながらフラスコを40~50℃に温めた。その開始後、反応熱のために反応混合物が触れると温かいような速度で、残りの溶液をゆっくりと加えた。添加後、混合物を室温で30分間撹拌し、次いで1時間還流して、反応を完了させた。淡黄色のグリニャール試薬を室温に放冷し、次いで氷浴に保持した。アルゴン雰囲気下で、別の1リットル丸底フラスコにエチルジエトキシアセテート(12)(51g、0.29モル)のTHF(200mL)溶液を入れ、-78℃に冷却した。グリニャール試薬を滴下漏斗に移し、冷却したフラスコに45分かけて滴下して加えた。次いで、混合物を-78℃で6時間撹拌し、-20℃に温め、2時間撹拌した。反応を飽和塩化アンモニウム溶液(200mL)でクエンチした。反応混合物を酢酸エチル(500mL)で抽出した。酢酸エチル層をH2O(3×200mL)で洗浄し、続いて飽和ブライン溶液(2×200mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(無水硫酸マグネシウム)、溶媒をロータリーエバポレーターによって減圧下で除去した。生成物を減圧下で150℃に加熱して、不純物および未反応の出発物質を除去した。生成物のNMRは、次の反応を実施するのに十分に純度が高いことを示した。重量=66.58g、収率(70%)であった。
【0155】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.25 (t, J = 7.3 Hz, 6 H), 3.57 (m,2 H), 3.69 (m, 2 H), 3.84 (s, 2 H), 4.64 (s, 1 H), 5.05 (s, 2 H), 6.94(d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 7.43-7.35 (m, 5 H).
1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)
【0156】
【0157】
圧力反応器を用いず、10%パラジウム炭素を使用して、水素雰囲気下で脱ベンジル化する最初の試みは成功しなかった。
化合物(13)(66g、20.4モル)のエタノール(400mL)溶液を、Par
rの水素化フラスコに静置し、10%Pd/C(7g)を加えた。水素雰囲気下で、混合物を24時間、60Psiで水素化した。黒色の懸濁液をろ過し、溶媒をロータリーエバポレーター使用して除去した。シリカゲルの小さなパッドを通過させることによって、生成物を精製して、50%酢酸エチル/ヘキサンで溶出したいかなる懸濁炭素粒子も除去した。所望の生成物を、30%酢酸エチル/ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムで、無色の油21.7gとして単離した。
【0158】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 1.25 (t, J = 7.0 Hz, 6 H), 3.55 (m,2 H), 3.71 (m, 2 H), 3.82 (s, 2 H), 4.64 (s, 1 H), 5.11 (br s, 1 H), 6.77(d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.07 (d, J = 8.6 Hz, 2 H).
セレンテラジン
[8-ベンジル-6-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン(16)
【0159】
【0160】
セレンテラジンの最終的な縮合、転位、および環化反応に対する乾燥塩酸、有機酸および塩酸水溶液の効果を対比して評価した。以下の実験は、エタノール中または1,4-ジオキサン中のどちらかで実施された。結果を以下の表1にまとめる。
【0161】
【0162】
上記の実験結果(表1)は、セレンテラジンの最終的な縮合、転位、および環化反応には塩酸水溶液が必要であることを示し、所望の溶媒は1,4-ジオキサンであり、エタノールよりも優れていると立証された。
【0163】
適切な溶媒および酸を発見した後、様々な量の出発物質(14)を用いて実験を実施した。出発物質(15)を1当量に一定に保ち、出発物質(14)の量を増加させた。未反応の過剰な試薬(出発物質14)を、有機溶媒で洗浄することにより、除去することができた。さらに、酸性反応条件下では、アセタール(14)由来ではなく、ピラジンアミン出発物質(15)由来の生成物のみが、塩を形成することになる。最適な反応条件に必要な試薬の正しい量についての見識を得るために、以下の実験を実施した。結果を以下の表2にまとめる。
【0164】
【0165】
セレンテラジン、8-ベンジル-6-(4-ヒドロキシベンジル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン(16)
【0166】
【0167】
25ml丸底フラスコに取った1,4-ジオキサン(2.3mL)、水(225μL)、および濃HCl(225μL)を脱気し、アルゴンを充填した。4-(5-アミノ-6-ベンジル-ピラジン-2-イル)フェノール((7)、441mg、1.59mmol)をこの混合物に加えた。1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-
プロパン-2-オン((14)、493mg、2.06mmol、1.3当量)1,4-ジオキサン(2mL)溶液をこの混合物に加えた。得られた混合物を脱気し、78~82℃で14時間、アルゴン雰囲気下で撹拌した。暗褐色溶液を室温に冷却し、一定分量を逆相HPLCによって分析した。HPLC分析は、反応混合物が出発物質をほとんど含まないことを示した。反応物を脱気し、加熱をさらに6時間(合計20時間)続けた。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。暗褐色の残渣を高真空下で一晩乾燥させた。酢酸エチル(40mL)を残渣に加え、粉砕した。固体を沈殿させてデカントし、真空下で乾燥させて、褐色の乾燥粉末を得た。1%メタノールを含む脱気した酢酸エチル(40mL)を褐色固体に加え、65℃で粉砕した。固体を沈殿させて、デカントし、ポンプで乾燥させて、定量的収率で720mgの褐色の乾燥粉末を得た。プロトンNMRのデータは、報告値のそれと一致する。逆相HPLCでは、それは標準品と共溶出した。固体を、1%メタノールを含む脱気した酢酸エチル40mlに再懸濁させ、15分間撹拌し、デカントした。試料をポンプで乾燥させて、褐色固体を得た。
【0168】
【0169】
セレンテラジン、[8-ベンジル-6-(4-ヒドロキシベンジル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン(16):25gスケールの合成
【0170】
【0171】
300ml丸底フラスコに取った1,4-ジオキサン(80.0mL)、水(9.1mL)、および濃HCl(9.1ml)を脱気し、アルゴンを充填した。4-(5-アミノ-6-ベンジル-ピラジン-2-イル)フェノール(7、15.94g、59.93mmol)をこの混合物に加え、撹拌した。脱気した1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロパン-2-オン(14、16.4g、68.82mmol、1.2当量)1,4-ジオキサン(71mL)溶液をこの懸濁液に加えた。得られた混合物を脱気し、78~84℃で34時間、アルゴン雰囲気下で撹拌した(反応の進行を逆相H
PLCによってモニターした)。反応物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。暗褐色の残渣を高真空下で一晩乾燥させた。脱気した酢酸エチル(250mL)をこの褐色残渣に加え、粉砕した。固体を沈殿させ、デカントした。このプロセスを2回繰り返し、固体を24時間ポンプで乾燥させて、定量的収率で25.8gの褐色の乾燥粉末を得た。
【0172】
実施例3.セレンテラジンHCl塩の合成、100gスケール
出発物質の合成:
出発物質4-(5-アミノ-6-ベンジル-ピラジン-2-イル)フェノール(7)(53.0g)および1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン(14)(57.0g)を、実施例2で前述した手順にしたがって合成した。
8-ベンジル-6-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-7H-イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン(3)
【0173】
【0174】
撹拌棒を備えた1Lの丸底フラスコに、4-(5-アミノ-6-ベンジル-ピラジン-2-イル)フェノール(7)(53.0g、191.25mmol)を入れ、続いて1,4-ジオキサン(275mL)を入れた。得られた混合物を脱気し、アルゴンを充填した。この撹拌混合物に、脱気した1:1の水/濃HCl(62.0mL)を加えた。得られた混合物を再度脱気し、アルゴンを充填し、室温で15分間撹拌した。この撹拌懸濁液に、1,1-ジエトキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロパン-2-オン(14)(57.0g、239.21mmol、1.25当量)1,4-ジオキサン(224mL)脱気溶液を加えた。得られた混合物を脱気し、80~85℃で38時間、アルゴン雰囲気下で撹拌した(反応の進行を逆相HPLCによってモニターした)。
【0175】
反応物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。得られた暗褐色の残渣を高真空下で一晩乾燥させた。これに、脱気した酢酸エチル(250mL)を加え、粉砕した。固体を沈殿させ、デカントした。このプロセスをもう1回繰り返した。次いで、1%メタノールを含む脱気した酢酸エチル(200mL)を、褐色固体に加え、粉砕した。固体を沈殿させ、デカントした。残渣の暗褐色固体を、40℃で36時間、高真空下で乾燥させ、アルゴン雰囲気下で保存し、101.8gを得た。逆相HPLCでは、それは標準品と共溶出した。プロトンNMRスペクトルデータは、報告値と一致した。
【0176】
実施例4.セレンテラジンの合成(数キログラム)
3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)の合成
【0177】
【0178】
100Lの丸底フラスコに、THF7.5L、マグネシウム金属2.5kg、ヨウ素10g、および臭化エチル200mlを入れた。反応塊が開始した。開始後、塩化ベンジルTHF溶液(THF45Lに溶解させた塩化ベンジル10L)を20~25℃で4から4.5時間かけてゆっくりと加え、その後、30~35℃で1時間維持した。次いで、(30~35℃で1から1.5時間のうちに、2-アミノピラジン2.5kgをTHF25Lに溶解させた)2-アミノピラジン溶液をゆっくりと加え、反応塊を30~35℃で5~6時間維持した。TLCで確認を行い、承諾後に水10Lをゆっくりと加え、反応塊を20分間撹拌した。次いで反応塊を30分間沈殿させた。THF層を分離し、70℃未満の真空下で完全に留去した。留去完了後、次いで反応塊を室温に冷却し、トルエン20Lおよび水5Lを入れ、10分間撹拌した。反応塊を20分間沈殿させて、トルエン層を分離した。次いでトルエン層にHCl3Lを入れ、10分間沈殿させた。次いで、トルエン層を分離し、脇に置いた。次に、酸性HCl層を、ソーダ灰3kgでpH約8~9に調整し、30分間維持した。次いで、有機層を分離して、所望のモノアルキル化生成物を40%~45%の収率、94%~95%の純度で得た。
【0179】
本改変は、実施例1の合成の第1のステップにおけるn-ブチルリチウムの使用を低減または除外し、ここでは、トルエン中のn-ブチルリチウム反応は、塩化ベンジルとTHF(テトラヒドロフラン)との反応によって置き換えられた。したがって、本実施例により、反応化学を増大させる能力が改善され、合成のコストを削減する。さらに、この変更は、反応性の高い物質をより安定した物質に置き換えることによって、化学反応の全体的な安全性を改善する。
3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)の合成
【0180】
【0181】
3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミンの合成は、上記の実施例1のとおりである。具体的には、20Lの丸底フラスコに、クロロホルム(6L)および3-ベンジルピラジン-2-アミン(25)(2-アミノ-3-ベンジルピラジン、(25)とも呼ばれる)(1Kg)を入れ、混合物を室温(22℃)で撹拌した。N-ブロモスクシンイミド(NBS)(800グラム)を1から1.5時間かけてゆっくりと加えた。添加完了後、混合物を30分間撹拌した。水(2L)を加え、10分間撹拌した。有機層を分離し、水(2×1L)で洗浄した。クロロホルム層を減圧下で濃縮し、油性の残渣を真空下で乾
燥させた。収率は77%~85%、純度は93%~95%であった。
4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)の合成
【0182】
【0183】
3-ベンジル-5-ブロモピラジン-2-アミン(2)2kgをTHF10Lおよびパラジウム触媒20g(実施例1から著しく減少させた、実施例1のパラジウム触媒300gの1/15)に溶解させ、室温で30分間撹拌した。この溶液をパラブロモ-フェノール3kg、TBDMS塩化物(t-ブチルジメチルシリルクロリド)4kg、およびMg金属2.5kgを使用して調製したグリニャール試薬に加えた。反応混合物を50℃に24時間加熱した。(26)を得る反応の完了後、Mg金属をろ過し、希HCl3Lを反応混合物に加え、70℃に8時間加熱した。(26)を含むこの反応混合物に水2Lを加え、生成物を酢酸エチル2Lで抽出し、これを3回繰り返した。混合酢酸エチル層を水1.5Lで2回洗浄した。酢酸エチルを蒸留して、重量約2.5kgの濃厚な液体として生成物(7)を得る。収率は70%~75%であり、純度は84%~88%であった。
【0184】
したがって、本実施例は、合成におけるボロン酸化合物の使用を省略し、反応において高価なパラジウム触媒の量を大幅に削減する。
4-((tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシランの合成
【0185】
【0186】
20Lの丸底フラスコに、ジクロロメタン(10L)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(8)(1Kg)、N,N’-ジメチルアミノピリジン(50グラム)、およびイミダゾール(1.33Kg)を入れた。反応混合物を20℃に冷却し、撹拌した。この撹拌混合物に、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-Cl、500グラム×3)を少量ずつ加えた。1時間後、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮して、油性の生成物(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンズアルデヒド、(20a))を得た。
【0187】
10Lの丸底フラスコに、上記の生成物(20a)を取り、メタノール(6L)に溶解した。反応混合物を10~15℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(100グラム)を撹拌しながら加えた。30分後、酢酸を用いて反応pHを7.0に調整した。20分間撹拌した後、メタノールを留去して、所望の生成物(20b)を得た。収率は85%~90%であり、純度は80%~85%であった。
【0188】
【0189】
10Lの丸底フラスコに、4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)ベンジルアルコール(20b)(1Kg)およびジクロロメタン(6L)を入れ、続いてトリエチルアミン(1.4L)を入れた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。メタンスルホニルクロリド(600mL)を30~35℃で約1~1.5時間のうちにゆっくりと加えた。反応完了後、30%重炭酸ナトリウム水溶液(400ml)を加え、20分間撹拌した。ジクロロメタン層を分離し、塩化ナトリウム水溶液(2×500ml)で洗浄した。ジクロロメタンを減圧下で除去した。tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)を含む残渣を、さらに精製することなく、次のステップに使用した。3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジメトキシプロパン-2-オン(27)の合成
【0190】
【0191】
50Lの丸底フラスコに、切削片状マグネシウム(1Kg)および無水テトラヒドロフラン(3L)を入れ、続いてヨウ素(10g)およびジブロモメタン(50mL)を入れた。tert-ブチル(4-(クロロメチル)フェノキシ)ジメチルシラン(21)(1.6kg)無水テトラヒドロフラン(12L)溶液を4時間かけて40~45℃で滴下して加えた。反応混合物を35℃に冷却した。別の50Lの丸底フラスコに、メチル2,2-ジメトキシアセテート(1.2kg)および無水テトラヒドロフラン(10L)を入れ、30~35℃に冷却した。この溶液に、上記で調製したグリニャール反応混合物を1~
1.5時間かけて-10℃で加えた。反応完了後、反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(水7L中に1.2Kg))でクエンチした。有機層を分離し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、溶媒を減圧下で除去した。油性の残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジメトキシプロパン-2-オン(27)(0.48Kg)を得た。収率は40%~45%であり、純度は90%であった。
セレンテラジン、8-ベンジル-2-(4-ヒドロキシベンジル)-6-(4-ヒドロキシフェニル)イミダゾ[1,2-a]ピラジン-3(7H)-オン(16)の合成
【0192】
【0193】
30Lの丸底フラスコに、4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(0.9Kg)および3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジメトキシプロパン-2-オン(27)(1.4Kg)を入れ、続いて、1,4-ジオキサン(14L)を入れた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。濃塩酸(0.75L)および水(0.75L)を加え、反応混合物を80~85℃に15時間加熱した。反応混合物を40℃に冷却し、次いで活性炭(100g)および活性シリカゲル(100g)を加え、ろ過した。溶媒を減圧下で除去し、残渣(16)を脱気した酢酸エチル(2L)と撹拌することによって、沈殿させた。収率は60%~65%であり、純度は60%~63%であった。
【0194】
実施例5.単離されたセレンテラジン組成物のLC-MS特性評価
実施例1~3でのセレンテラジンを形成する最終カップリング反応から得られる最終単離組成物における、セレンテラジンの4-(5-アミノ-6-ベンジルピラジン-2-イル)フェノール(7)(セレンテラミン)に対する相対量は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によって評価できる。
【0195】
4-(5-アミノ-6-ベンジル-ピラジン-2-イル)フェノール(7)と3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)-1,1-ジエトキシプロパン-2-オン(23)のカップリング反応から得られる1mg/mlの単離されたセレンテラジン組成物のメタノール溶液を、例えば上記の実施例1に記載されているように、70:30の試薬水:アセトニトリル(v/v)からなり、それぞれに0.05%ギ酸を添加した注入溶媒で、10倍に希釈した。単離されたセレンテラジン組成物を含む希釈溶液を、グラジエント溶離を用いて、C-18逆相カラム上のLCによって分離した。分離によって、約1.7分でセレンテラジンに対する応答を得、約2.5分でセレンテラミン(7)に対する応答を得た。タンデムMSは、各化合物の(M+H)+親イオンをモニターするように構成され、続いてそれは、親イオンに特有の娘イオンにフラグメント化された。娘イオン強度は、各化合物のクロマトグラフィー信号を生成し、次いでそれが統合されて信号領域を生成した。セレンテラジンの親イオンは424.1Daであり、娘イオンは302.2Daである。セレンテラミンの親イオンは278.1Daであり、その娘イオンは132.0Daである。以下の表4では、単離された組成物中のセレンテラジンとセレンテラミンとの比は、約24:1から80:1の間であった。
【0196】
【0197】
例示的実施形態を例示および説明してきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、その中で様々な変更が行われ得ることを理解されたい。
排他的財産または特権が請求される本開示の実施形態は、以下のように定義される。