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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153784
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241022BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20241022BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241022BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20241022BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20241022BHJP
【FI】
H01L29/78 613Z
H01L29/78 618B
H01L29/78 616T
H01L27/088 331E
H01L27/088 E
H01L27/06 102A
H01L21/28 301B
H01L29/44 S
H01L29/50 M
H01L29/78 371
H10B12/00 621Z
H10B12/00 671C
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
H10B41/70
H01L21/28 301R
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122273
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2023084126の分割
【原出願日】2012-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2011207429
(32)【優先日】2011-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】磯部 敦生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(57)【要約】
【課題】微細化しても高いオン電流を得ることができるトランジスタを用いた、半導体装
置。
【解決手段】トランジスタが、絶縁表面上の一対の第1導電膜と、一対の第1導電膜上の
半導体膜と、一対の第1導電膜にそれぞれ接続されている一対の第2導電膜と、半導体膜
上の絶縁膜と、絶縁膜上において、半導体膜と重なる位置に設けられた第3導電膜とを有
する。また、半導体膜上における第3導電膜の端部と、一対の第2導電膜が設けられた領
域とは、離隔している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン膜にチャネル形成領域を有する第1のトランジスタと、
酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有する第2のトランジスタと、
容量素子と、
を有し、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記容量素子の一方の電極は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続される半導体装置であって、
前記第1のトランジスタのゲートとしての機能を有し、かつ、前記シリコン膜上に配置された領域を有する第1の導電膜と、
前記シリコン膜の上方に配置された領域を有する絶縁膜と、
前記絶縁膜の上方に配置された領域を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の下方に配置された領域を有する第2の導電膜と、
前記第2のトランジスタのゲートとしての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第3の導電膜と、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方としての機能を有し、前記容量素子の一方の電極としての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第4の導電膜と、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの他方としての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第5の導電膜と、
前記容量素子の他方の電極としての機能を有し、かつ、前記第4の導電膜の上方に配置された領域を有する第6の導電膜と、
を有し、
前記第2の導電膜は、前記第3の導電膜と重なりを有し、
前記酸化物半導体膜は、前記第3の導電膜と重なる第1の領域と、前記第4の導電膜と重なる第2の領域と、前記第5の導電膜と重なる第3の領域と、を有し、
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域は、互いに離隔しており、
前記第2の導電膜は、前記第1の領域と前記第2の領域の間隙と重なりを有し、
前記第6の導電膜は、前記第1の導電膜と重なりを有する、
半導体装置。
【請求項2】
シリコン膜にチャネル形成領域を有する第1のトランジスタと、
酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有する第2のトランジスタと、
容量素子と、
を有し、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記容量素子の一方の電極は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続される半導体装置であって、
前記第1のトランジスタのゲートとしての機能を有し、かつ、前記シリコン膜上に配置された領域を有する第1の導電膜と、
前記シリコン膜の上方に配置された領域を有する絶縁膜と、
前記絶縁膜の上方に配置された領域を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の下方に配置された領域を有する第2の導電膜と、
前記第2のトランジスタのゲートとしての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第3の導電膜と、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方としての機能を有し、前記容量素子の一方の電極としての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第4の導電膜と、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの他方としての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第5の導電膜と、
前記容量素子の他方の電極としての機能を有し、かつ、前記第4の導電膜の上方に配置された領域を有する第6の導電膜と、
を有し、
前記第2の導電膜は、前記第3の導電膜と重なりを有し、
前記酸化物半導体膜は、前記第3の導電膜と重なる第1の領域と、前記第4の導電膜と重なる第2の領域と、前記第5の導電膜と重なる第3の領域と、を有し、
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域は、互いに離隔しており、
前記第2の導電膜は、前記第1の領域と前記第2の領域の間隙と重なりを有し、
前記第4の導電膜と前記第6の導電膜とが重なる領域は、前記第1の導電膜と重なりを有する、
半導体装置。
【請求項3】
シリコン膜にチャネル形成領域を有する第1のトランジスタと、
酸化物半導体膜にチャネル形成領域を有する第2のトランジスタと、
容量素子と、
を有し、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続され、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの他方は、前記第1のトランジスタのソースまたはドレインの一方と電気的に接続され、
前記容量素子の一方の電極は、前記第1のトランジスタのゲートと電気的に接続される半導体装置であって、
前記第1のトランジスタのゲートとしての機能を有し、かつ、前記シリコン膜上に配置された領域を有する第1の導電膜と、
前記シリコン膜の上方に配置された領域を有する絶縁膜と、
前記絶縁膜の上方に配置された領域を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の下方に配置された領域を有する第2の導電膜と、
前記第2のトランジスタのゲートとしての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第3の導電膜と、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの一方としての機能を有し、前記容量素子の一方の電極としての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第4の導電膜と、
前記第2のトランジスタのソースまたはドレインの他方としての機能を有し、かつ、前記酸化物半導体膜の上方に配置された領域を有する第5の導電膜と、
前記容量素子の他方の電極としての機能を有し、かつ、前記第4の導電膜の上方に配置された領域を有する第6の導電膜と、
を有し、
前記第2の導電膜は、前記第3の導電膜と重なりを有し、
前記酸化物半導体膜は、前記第3の導電膜と重なる第1の領域と、前記第4の導電膜と重なる第2の領域と、前記第5の導電膜と重なる第3の領域と、を有し、
前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域は、互いに離隔しており、
前記第2の導電膜は、前記第1の領域と前記第2の領域の間隙と重なりを有し、
前記第6の導電膜は、前記シリコン膜と重なりを有する、
半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、In、Ga及びZnを含む、
半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜が有する酸化物半導体は、酸化インジウムである、
半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第6の導電膜は、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr及びNbのいずれか一を含む、
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁ゲート型電界効果トランジスタを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリシリコンや微結晶シリコンによって得られる高い移動度と、アモルファスシリ
コンによって得られる均一な素子特性とを兼ね備えた新たな半導体材料として、酸化物半
導体と呼ばれる、半導体特性を示す金属酸化物に注目が集まっている。金属酸化物は様々
な用途に用いられており、例えば、よく知られた金属酸化物である酸化インジウムは、液
晶表示装置などで透明電極材料として用いられている。半導体特性を示す金属酸化物とし
ては、例えば、酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛などがあり、この
ような半導体特性を示す金属酸化物をチャネル形成領域に用いるトランジスタが、既に知
られている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-123861号公報
【特許文献2】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリコンを用いたトランジスタでは、半導体膜への微量の不純物の添加による
価電子制御が行われている。しかし、酸化物半導体を用いたトランジスタでは、シリコン
を用いたトランジスタとは異なり、不純物の添加による価電子制御の技術が確立されてい
ない。よって、酸化物半導体を用いたトランジスタは、ソース電極またはドレイン電極と
して機能する導電膜を、半導体膜のチャネル形成領域に直接接続させる構成を採る場合が
多い。そのため、酸化物半導体を用いたトランジスタでは、半導体膜とソース電極または
ドレイン電極の間における接触抵抗が大きく、それによりオン電流の向上が妨げられてい
る。
【0005】
また、シリコンを用いたトランジスタでは、ゲート電極やレジストをマスクとして用い、
半導体膜に不純物を添加することで、ソース領域及びドレイン領域を形成する。よって、
ゲート電極やレジストのサイズを調整することで、チャネル長を制御することができる。
一方、酸化物半導体を用いたトランジスタでは、チャネル長の制御は、ソース電極とドレ
イン電極の間隔を調整することにより行う。そのため、トランジスタを微細化するには、
ソース電極とドレイン電極の間隔を短くする必要があり、ゲート電極のサイズによっては
、ゲート電極とソース電極またはドレイン電極とが部分的に重なりうる。
【0006】
ゲート電極が半導体膜の上に位置するトップゲート型のトランジスタの場合、ソース電極
及びドレイン電極は半導体膜の下に設けることが望ましい。しかし、ソース電極及びドレ
イン電極の端部における、半導体膜の被覆性(ステップカバレッジ)を確保するためには
、ソース電極及びドレイン電極の膜厚を小さくすることが必要であるが、膜厚を小さくす
るとソース電極及びドレイン電極の抵抗が高まる。そのため、ステップカバレッジの確保
に努めると、トランジスタのオン電流を高めることが難しい。
【0007】
上述したような技術的背景のもと、本発明は、トランジスタのオン電流を高めることがで
きる半導体装置の提供を、課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る半導体装置では、トランジスタが、絶縁表面上の一対の第1導電膜
と、一対の第1導電膜上の半導体膜と、一対の第1導電膜にそれぞれ接続されている一対
の第2導電膜と、半導体膜上の絶縁膜と、絶縁膜上において、半導体膜と重なる位置に設
けられた第3導電膜とを有する。一対の第1導電膜及び一対の第2導電膜はソース電極ま
たはドレイン電極として機能させることができ、第3導電膜はゲート電極として機能させ
ることができる。
【0009】
本発明の一態様では、半導体膜内でキャリアが移動する方向、すなわちチャネル長方向に
おけるソース電極とドレイン電極の間隔を、一対の第1導電膜の間隔により定めることが
できる。そのため、一対の第2導電膜の間隔が、一対の第1導電膜の間隔よりも長くなる
ように、一対の第2導電膜の配置を定めることができる。よって、本発明の一態様では、
トランジスタの微細化によりソース電極とドレイン電極の間隔を短くする必要が生じた場
合、一対の第1導電膜の間隔を短くすれば良く、一対の第2導電膜と第3導電膜とを、半
導体膜上において重ならないように、一対の第2導電膜の間隔を長くすることができる。
具体的には、半導体膜上における第3導電膜を挟むように、かつ離間して、一対の第2導
電膜を設けることができる。したがって、トランジスタを微細化しても、第3導電膜から
半導体膜に与えられる電界が、一対の第2導電膜により妨げられにくいため、高いオン電
流を得ることができる。
【0010】
また、本発明の一態様では、半導体膜の下に一対の第1導電膜が存在し、半導体膜の上に
第3導電膜が存在する。そのため、トランジスタの微細化により、一対の第1導電膜の間
隔が短くなることで、ゲート電極として機能する第3導電膜と一対の第1導電膜とが重な
っても、第3導電膜から半導体膜に与えられる電界は、一対の第1導電膜により妨げられ
にくい。よって、トランジスタを微細化しても、高いオン電流を得ることができる。
【0011】
また、一対の第1導電膜の端部における、半導体膜のステップカバレッジを高めるために
、一対の第1導電膜の膜厚を小さく抑えたとしても、一対の第1導電膜と、一対の第2導
電膜とをそれぞれ接続させることで、一対の第1導電膜及び一対の第2導電膜で構成され
るソース電極またはドレイン電極の抵抗を、低く抑えることができる。
【0012】
或いは、本発明の一態様に係る半導体装置では、上記構成に加えて、一対の第2導電膜が
半導体膜上に位置していても良い。
【0013】
一対の第2導電膜が半導体膜上に位置している場合、一対の第2導電膜が半導体膜と離隔
している場合よりも、ソース電極またはドレイン電極として機能する一対の第1導電膜及
び一対の第2導電膜と、半導体膜とが接する面積を、大きく確保することができる。よっ
て、トランジスタが微細化されても、一対の第1導電膜及び一対の第2導電膜で構成され
るソース電極またはドレイン電極と、半導体膜との間の接触抵抗を小さく抑えることがで
きるので、高いオン電流を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様では、上記構成により、オン電流の高いトランジスタを用いた半導体装置
を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一態様に係る半導体装置が有する、トランジスタの構成を示す図。
図2】本発明の一態様に係る半導体装置が有する、トランジスタの構成を示す図。
図3】本発明の一態様に係る半導体装置が有する、トランジスタの構成を示す図。
図4】本発明の一態様に係る半導体装置が有する、トランジスタの構成を示す図。
図5】本発明の一態様に係る半導体装置が有する、トランジスタの構成を示す図。
図6】半導体装置の作製方法を示す図。
図7】半導体装置の作製方法を示す図。
図8】半導体装置の作製方法を示す図。
図9】メモリセルの構成を示す図。
図10】記憶装置の構成を示す図。
図11】インバータの構成を示す図。
図12】電子機器の図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び
詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明
は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
なお、本発明は、集積回路、RFタグ、半導体表示装置など、トランジスタを用いたあら
ゆる半導体装置を、その範疇に含む。なお、集積回路には、マイクロプロセッサ、画像処
理回路、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロコン
トローラを含むLSI(Large Scale Integrated Circui
t)、FPGA(Field Programmable Gate Array)やC
PLD(Complex PLD)などのプログラマブル論理回路(PLD:Progr
ammable Logic Device)が、その範疇に含まれる。また、半導体表
示装置には、液晶表示装置、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に
備えた発光装置、電子ペーパー、DMD(Digital Micromirror D
evice)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Fie
ld Emission Display)など、トランジスタを駆動回路に有している
半導体表示装置が、その範疇に含まれる。
【0018】
(実施の形態1)
図1に、本発明の一態様に係る半導体装置の、トランジスタの構造を例示する。図1(A
)は、当該トランジスタのチャネル長方向における断面図の一例である。
【0019】
図1(A)に示すトランジスタは、絶縁表面上に第1導電膜101及び第1導電膜102
と、第1導電膜101及び第1導電膜102上の半導体膜103と、第1導電膜101及
び第1導電膜102にそれぞれ接続されている第2導電膜104及び第2導電膜105と
、半導体膜103上の絶縁膜106と、絶縁膜106上であり、なおかつ第2導電膜10
4と第2導電膜105の間において、半導体膜103と重なる位置に設けられた第3導電
膜107とを有する。
【0020】
第1導電膜101及び第2導電膜104と、第1導電膜102及び第2導電膜105とは
、ソース電極またはドレイン電極として機能する。第3導電膜107はゲート電極として
機能する。
【0021】
半導体膜103は、完全に第1導電膜101及び第1導電膜102を覆ってはおらず、第
1導電膜101及び第1導電膜102をそれぞれ部分的に覆っている。そして、第1導電
膜101及び第1導電膜102のうち、半導体膜103によって覆われていない部分、す
なわち半導体膜103と重なっている部分とは異なる部分において、第1導電膜101及
び第1導電膜102と、第2導電膜104及び第2導電膜105とがそれぞれ接続されて
いる。
【0022】
なお、第1導電膜101及び第1導電膜102と、第2導電膜104及び第2導電膜10
5との接続は、必ずしも第1導電膜101と第2導電膜104とが、或いは第1導電膜1
02と第2導電膜105とが、直接接している状態を意味するものではない。例えば、電
気的な接続を確保できる程度に小さい膜厚を有する、自然酸化膜などの絶縁膜が、第1導
電膜101と第2導電膜104の間に、或いは第1導電膜102と第2導電膜105の間
に設けられていても良い。
【0023】
そして、本発明の一態様では、半導体膜103上における第3導電膜107の端部107
eを挟むように、かつ離間して、第2導電膜104及び第2導電膜105が設けられてい
る。すなわち、第2導電膜104及び第2導電膜105と、第3導電膜107とは、半導
体膜103上において重ならない。
【0024】
また、チャネル長方向において、第2導電膜104の端部104eと第2導電膜105の
端部105eの間に、半導体膜103の下に位置する第1導電膜101の端部101e、
及び第1導電膜102の端部102eとが位置している。なお、上記端部101eと端部
102eとは、チャネル長方向において、最も近い位置に存在する第1導電膜101の端
部と、第1導電膜102の端部とする。よって、チャネル長方向において、第2導電膜1
04の端部104eと第2導電膜105の端部105eの間隔Lsdは、第1導電膜10
1の端部101eと第1導電膜102の端部102eの間隔Lcよりも長い。
【0025】
本発明の一態様では、ソース電極またはドレイン電極として機能する第1導電膜101及
び第1導電膜102と、ゲート電極として機能する第3導電膜107の間に、半導体膜1
03及び絶縁膜106が位置している。そのため、第3導電膜107と半導体膜103の
間に第1導電膜101及び第1導電膜102が設けられている場合とは異なり、トランジ
スタの微細化により間隔Lcが短くなっても、第3導電膜107から半導体膜103に与
えられる電界が、第1導電膜101及び第1導電膜102により妨げられにくい。よって
、トランジスタを微細化しても、高いオン電流を得ることができる。
【0026】
また、第1導電膜101の端部101e及び第1導電膜102の端部102eにおける、
半導体膜103のステップカバレッジを高めるために、第1導電膜101及び第1導電膜
102の膜厚を小さく抑えたとしても、第1導電膜101及び第1導電膜102と、第2
導電膜104及び第2導電膜105とをそれぞれ接続させることで、第1導電膜101及
び第1導電膜102と、第2導電膜104及び第2導電膜105とで構成されるソース電
極またはドレイン電極の、抵抗を低く抑えることができる。
【0027】
次いで、図1(B)に、図1(A)に示した断面構造を有するトランジスタの、上面図の
一例を示す。ただし、図1(B)では、トランジスタのレイアウトを明確にするために、
絶縁膜106を省略した上面図を示す。また、図1(B)の一点鎖線A1-A2における
断面図が、図1(A)に相当する。
【0028】
図1(B)に示す上面図では、半導体膜103が開口部108及び開口部109を有して
いる。そして、開口部108において、第1導電膜101と第2導電膜104が接続され
ている。また、開口部109において、第1導電膜102と第2導電膜105が接続され
ている。
【0029】
次いで、図1(C)に、図1(A)に示した断面構造を有するトランジスタの、上面図の
別の一例を示す。ただし、図1(C)では、トランジスタのレイアウトを明確にするため
に、絶縁膜106を省略した上面図を示す。また、図1(C)の一点鎖線A1-A2にお
ける断面図が、図1(A)に相当する。
【0030】
図1(C)に示す上面図では、半導体膜103が三つに分離している。3つに分離してい
る半導体膜103間が、開口部108及び開口部109に相当する。そして、開口部10
8において、第1導電膜101と第2導電膜104が接続されている。また、開口部10
9において、第1導電膜102と第2導電膜105が接続されている。
【0031】
なお、図1に示すトランジスタでは、第2導電膜104または第2導電膜105が、第1
導電膜101の上部、または第1導電膜102の上部にのみ接続されている構成を有して
いる。しかし、本発明の一態様では、第2導電膜104または第2導電膜105が、第1
導電膜101の上部及び端部、または第1導電膜102の上部及び端部に接続されていて
も良い。
【0032】
図2に、本発明の一態様に係る半導体装置の、トランジスタの構造を例示する。図2(A
)は、当該トランジスタの断面図の一例である。また、図2(B)は、図2(A)に示し
た断面構造を有するトランジスタの、上面図の一例である。ただし、図2(B)では、ト
ランジスタのレイアウトを明確にするために、絶縁膜106を省略した上面図を示す。ま
た、図2(B)の一点鎖線B1-B2における断面図が、図2(A)に相当する。
【0033】
図2に示すトランジスタは、絶縁表面上に第1導電膜101及び第1導電膜102と、第
1導電膜101及び第1導電膜102上の半導体膜103と、第1導電膜101及び第1
導電膜102にそれぞれ接続されており、なおかつ半導体膜103上に位置する第2導電
膜104及び第2導電膜105と、半導体膜103上の絶縁膜106と、絶縁膜106上
において、半導体膜103と重なる位置に設けられた第3導電膜107とを有する。
【0034】
そして、図2に示すトランジスタは、第2導電膜104及び第2導電膜105が、第1導
電膜101の上部、または第1導電膜102の上部のみならず、第1導電膜101の端部
、または第1導電膜102の端部にも接続されている点において、図1に示すトランジス
タと構造が異なる。よって、絶縁表面において第1導電膜101及び第1導電膜102が
設けられている領域の面積(占有面積)が図1に示すトランジスタと図2に示すトランジ
スタとで同じであるならば、図2に示すトランジスタは、上記構成により、第1導電膜1
01と第2導電膜104が接続している部分の面積、または第1導電膜102と第2導電
膜105が接続している部分の面積を、図1に示すトランジスタよりも大きく確保するこ
とができる。よって、第1導電膜101と第2導電膜104の間の接触抵抗、或いは第1
導電膜102と第2導電膜105の間の接触抵抗を低減させることができる。
【0035】
なお、図1及び図2では、第2導電膜104及び第2導電膜105が、それぞれ半導体膜
103と接している場合を例示している。しかし、本発明の一態様では、第2導電膜10
4または第2導電膜105は、半導体膜103と離隔していても良い。
【0036】
図3に、本発明の一態様に係る半導体装置の、トランジスタの構造を例示する。図3(A
)は、当該トランジスタの断面図の一例である。また、図3(B)は、図3(A)に示し
た断面構造を有するトランジスタの、上面図の一例である。ただし、図3(B)では、ト
ランジスタのレイアウトを明確にするために、絶縁膜106を省略した上面図を示す。ま
た、図3(B)の一点鎖線C1-C2における断面図が、図3(A)に相当する。
【0037】
図3に示すトランジスタは、絶縁表面上に第1導電膜101及び第1導電膜102と、第
1導電膜101及び第1導電膜102上の半導体膜103と、第1導電膜101及び第1
導電膜102にそれぞれ接続されており、なおかつ半導体膜103と離隔している第2導
電膜104及び第2導電膜105と、半導体膜103上の絶縁膜106と、絶縁膜106
上において、半導体膜103と重なる位置に設けられた第3導電膜107とを有する。
【0038】
図3に示すトランジスタは、第2導電膜104または第2導電膜105が、半導体膜10
3と離隔している点において、図1に示すトランジスタ及び図2に示すトランジスタと構
造が異なる。
【0039】
なお、図1及び図2に示すように、第2導電膜104及び第2導電膜105が、それぞれ
半導体膜103と接している場合、図3に示すように、第2導電膜104及び第2導電膜
105が半導体膜103と離隔している場合よりも、ソース電極またはドレイン電極とし
て機能する第1導電膜101及び第2導電膜104と、第1導電膜102及び第2導電膜
105とが、半導体膜103と接する面積を、大きく確保することができる。よって、ト
ランジスタが微細化されても、第2導電膜104及び第2導電膜105が、それぞれ半導
体膜103と接している構成とすることで、第1導電膜101及び第2導電膜104と半
導体膜103の接触抵抗、或いは、第1導電膜102及び第2導電膜105と半導体膜1
03の接触抵抗を小さく抑え、高いオン電流を得ることができる。
【0040】
また、本発明の一態様に係る半導体装置のトランジスタは、第1導電膜101または第1
導電膜102の下層に、第4導電膜を有していても良い。図4(A)に、本発明の一態様
に係る半導体装置のトランジスタの、断面図の一例を示す。
【0041】
図4(A)に示すトランジスタは、図1(A)に示した断面構造を有するトランジスタに
、第4導電膜110及び第4導電膜111を付加した構成を有している。具体的に、図4
(A)に示すトランジスタは、第1導電膜101及び第1導電膜102と、第1導電膜1
01及び第1導電膜102上の半導体膜103と、第1導電膜101及び第1導電膜10
2にそれぞれ接続されている第2導電膜104及び第2導電膜105と、半導体膜103
上の第1絶縁膜106と、第1絶縁膜106上において、半導体膜103と重なる位置に
設けられた第3導電膜107と、を有する。さらに、上記トランジスタは、第1導電膜1
01及び第1導電膜102の下に、第1導電膜101及び第1導電膜102にそれぞれ接
続された第4導電膜110及び第4導電膜111と、第4導電膜110と第4導電膜11
1の間に設けられた第2絶縁膜120とを有する層を有する。上記層は、その上面を、化
学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishin
g)またはエッチングなどにより、平坦化させておくことが望ましい。
【0042】
第4導電膜110及び第4導電膜111は、第1導電膜101及び第1導電膜102と、
第2導電膜104及び第2導電膜105と共に、トランジスタのソース電極またはドレイ
ン電極として機能する。よって、第4導電膜110及び第4導電膜111を設けることで
、ソース電極またはドレイン電極として機能する、第1導電膜101、第2導電膜104
、及び第4導電膜110全体の抵抗と、第1導電膜102、第2導電膜105、及び第4
導電膜111全体の抵抗とを、低く抑えることができる。
【0043】
なお、第4導電膜110または第4導電膜111と、第1導電膜101または第1導電膜
102の間に、それぞれ半導体膜を設けるようにしても良い。図4(B)に、本発明の一
態様に係る半導体装置のトランジスタの、断面図の一例を示す。
【0044】
図4(B)に示すトランジスタは、第1導電膜101及び第1導電膜102と、第4導電
膜110及び第4導電膜111の間に、半導体膜112及び半導体膜113をそれぞれ有
する点において、図4(A)に示すトランジスタと構造が異なる。
【0045】
なお、図4では、図1(A)に示す断面構造を有するトランジスタの下層に、第4導電膜
を設けた場合を例示したが、本発明の一態様はこの構成に限定されない。例えば、図2
A)または図3(A)に示す断面構造を有するトランジスタの下層に、第4導電膜を設け
ても良い。
【0046】
なお、図1乃至図4に示したトランジスタでは、第1導電膜101及び第1導電膜102
が、半導体膜103及び絶縁膜106を介して、第3導電膜107と重なっている。しか
し、本発明の一態様では、第1導電膜101及び第1導電膜102と、第3導電膜107
とが、半導体膜103及び絶縁膜106を介して、第3導電膜107と重なっていなくと
も良い。
【0047】
図5(A)に、図1(A)に示したトランジスタの断面構造を例に挙げて、第1導電膜1
01の端部101eと第1導電膜102の端部102eの間隔Lcと、チャネル長方向に
おける第3導電膜107の長さLgの関係を示す。図5(A)では、長さLgが間隔Lc
よりも長い。そして、図5(A)に示すトランジスタは、第3導電膜107が、半導体膜
103及び絶縁膜106を間に挟んで第1導電膜101と重なっているLov領域114
と、第3導電膜107が、半導体膜103及び絶縁膜106を間に挟んで第1導電膜10
2と重なっているLov領域115とを有する。
【0048】
Lov領域114またはLov領域115を設けることで、トランジスタのオン電流を高
めることができる。
【0049】
また、図5(B)に、図1(A)に示したトランジスタの断面構造を例に挙げて、第1導
電膜101の端部101eと第1導電膜102の端部102eの間隔Lcと、チャネル長
方向における第3導電膜107の長さLgの関係を示す。図5(B)では、長さLgが間
隔Lcよりも短い。そして、図5(B)に示すトランジスタは、第1導電膜101と第1
導電膜102の間において、第3導電膜107及び第1導電膜101が重なっていない領
域、すなわち、第3導電膜107及び第1導電膜101の設けられている領域とは異なる
領域に相当する、Loff領域116を有する。また、図5(B)に示すトランジスタは
、第1導電膜101と第1導電膜102の間において、第3導電膜107及び第1導電膜
102が重なっていない領域、すなわち、第3導電膜107及び第1導電膜102の設け
られている領域とは異なる領域に相当する、Loff領域117を有する。
【0050】
Loff領域116またはLoff領域117を設けることで、第1導電膜101及び第
1導電膜102と、第3導電膜107の間の寄生容量が小さく抑えられるので、トランジ
スタの動作速度を高めることができる。
【0051】
なお、本発明の一態様に係る半導体装置のトランジスタでは、半導体膜103に、酸化物
半導体などのワイドギャップ半導体を用いることができる。半導体膜103に、酸化物半
導体が用いられる場合、ドーパントを上記半導体膜103に添加して、ソース領域または
ドレイン領域として機能する不純物領域を形成しても良い。ドーパントの添加は、イオン
注入法を用いることができる。ドーパントは、例えばヘリウム、アルゴン、キセノンなど
の希ガスや、窒素、リン、ヒ素、アンチモンなどの15族原子などを用いることができる
。例えば、窒素をドーパントとして用いた場合、不純物領域中の窒素原子の濃度は、5×
1019/cm以上1×1022/cm以下であることが望ましい。
【0052】
なお、酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含
むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物を用いたトラ
ンジスタの電気的特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えて
ガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を
有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが
好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0053】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(
Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム
(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホル
ミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ル
テチウム(Lu)のいずれか一種または複数種を含んでいてもよい。
【0054】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化
物であるIn-Zn系酸化物、Sn-Zn系酸化物、Al-Zn系酸化物、Zn-Mg系
酸化物、Sn-Mg系酸化物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、三元系金属の
酸化物であるIn-Ga-Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In-Al-Zn系
酸化物、In-Sn-Zn系酸化物、Sn-Ga-Zn系酸化物、Al-Ga-Zn系酸
化物、Sn-Al-Zn系酸化物、In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化
物、In-Ce-Zn系酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物
、In-Sm-Zn系酸化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、
In-Tb-Zn系酸化物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、I
n-Er-Zn系酸化物、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In
-Lu-Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn系酸化物、I
n-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Al-
Zn系酸化物、In-Sn-Hf-Zn系酸化物、In-Hf-Al-Zn系酸化物を用
いることができる。また、上記酸化物半導体は、珪素を含んでいてもよい。
【0055】
なお、例えば、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを含む酸化物という意
味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素
を含んでいてもよい。In-Ga-Zn系酸化物は、無電界時の抵抗が十分に高くオフ電
流を十分に小さくすることが可能であり、また、移動度も高いため、半導体装置に用いる
半導体材料としては好適である。
【0056】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:G
a:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn-Ga-Zn系酸化
物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:
1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/
6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原
子比のIn-Sn-Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0057】
例えば、In-Sn-Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしなが
ら、In-Ga-Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上
げることができる。
【0058】
なお、電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物が低減され、なおかつ酸
素欠損が低減されることにより高純度化された酸化物半導体(purified Oxi
de Semiconductor)は、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い。
そのため、上記酸化物半導体を用いたトランジスタは、オフ電流が著しく低いという特性
を有する。また、酸化物半導体のバンドギャップは、2eV以上、好ましくは2.5eV
以上、より好ましくは3eV以上である。水分または水素などの不純物濃度が十分に低減
され、なおかつ酸素欠損が低減されることにより高純度化された酸化物半導体膜を用いる
ことにより、トランジスタのオフ電流を下げることができる。
【0059】
具体的に、高純度化された酸化物半導体を半導体膜に用いたトランジスタのオフ電流が低
いことは、いろいろな実験により証明できる。例えば、チャネル幅が1×10μmでチ
ャネル長が10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電
圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定
限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる。この場合、オ
フ電流をトランジスタのチャネル幅で除した数値に相当するオフ電流は、100zA/μ
m以下であることが分かる。また、容量素子とトランジスタとを接続して、容量素子に流
入または容量素子から流出する電荷を当該トランジスタで制御する回路を用いて、オフ電
流の測定を行った。当該測定では、上記トランジスタに高純度化された酸化物半導体膜を
チャネル形成領域に用い、容量素子の単位時間あたりの電荷量の推移から当該トランジス
タのオフ電流を測定した。その結果、トランジスタのソース電極とドレイン電極間の電圧
が3Vの場合に、数十yA/μmという、さらに低いオフ電流が得られることが分かった
。従って、高純度化された酸化物半導体膜をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、
オフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく低い。
【0060】
なお、特に断りがない限り、本明細書でオフ電流とは、nチャネル型トランジスタにおい
ては、ドレイン電極をソース電極とゲート電極よりも高い電位とした状態において、ソー
ス電極の電位を基準としたときのゲート電極の電位が0以下であるときに、ソース電極と
ドレイン電極の間に流れる電流のことを意味する。或いは、本明細書でオフ電流とは、p
チャネル型トランジスタにおいては、ドレイン電極をソース電極とゲート電極よりも低い
電位とした状態において、ソース電極の電位を基準としたときのゲート電極の電位が0以
上であるときに、ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流のことを意味する。
【0061】
なお、例えば、酸化物半導体膜は、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(
亜鉛)を含むターゲットを用いたスパッタ法により形成することができる。In-Ga-
Zn系酸化物半導体膜をスパッタリング法で成膜する場合、好ましくは、原子数比がIn
:Ga:Zn=1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:1:2、2:1:3、または
3:1:4で示されるIn-Ga-Zn系酸化物のターゲットを用いる。前述の原子数比
を有するIn-Ga-Zn系酸化物のターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜すること
で、多結晶またはCAAC(C Axis Aligned Crystal)が形成さ
れやすくなる。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの充填率は90%以上10
0%以下、好ましくは95%以上100%未満である。充填率の高いターゲットを用いる
ことにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0062】
なお、酸化物半導体としてIn-Zn系酸化物の材料を用いる場合、用いるターゲット中
の金属元素の原子数比は、In:Zn=50:1~1:2(モル数比に換算するとIn
:ZnO=25:1~1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1~1:1(モル数
比に換算するとIn:ZnO=10:1~1:2)、さらに好ましくはIn:Zn
=1.5:1~15:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=3:4~15:2
)とする。例えば、In-Zn系酸化物である酸化物半導体膜の形成に用いるターゲット
は、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。Znの比
率を上記範囲に収めることで、移動度の向上を実現することができる。
【0063】
酸化物半導体膜は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう。)または非晶質などの状
態をとる。
【0064】
好ましくは、酸化物半導体膜は、CAAC-OS(C Axis Aligned Cr
ystalline Oxide Semiconductor)膜とする。
【0065】
CAAC-OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC-OS膜
は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶-非晶質混相構造の酸化物半導体膜で
ある。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであること
が多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electro
n Microscope)による観察像では、CAAC-OS膜に含まれる非晶質部と
結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC-OS膜には粒界(グレ
インバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC-OS膜は、粒界に
起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0066】
CAAC-OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC-OS膜の被形成面の法線ベクト
ルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角
形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または
金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸お
よびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、8
5°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、-5
°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0067】
なお、CAAC-OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAA
C-OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形
成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶
質化することもある。
【0068】
CAAC-OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面の法線ベクト
ルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC-OS膜の形状(被形成
面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。な
お、結晶部のc軸の方向は、CAAC-OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクト
ルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、また
は成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0069】
CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気的特性の変
動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0070】
CAAC-OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを
用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが
衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈開し、a
-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離する
ことがある。この場合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基
板に到達することで、CAAC-OS膜を成膜することができる。
【0071】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0072】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制でき
る。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0073】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグ
レーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましく
は200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平
板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、
スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0074】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージ
を軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体
積%とする。
【0075】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In-Ga-Zn-O化合物ターゲットにつ
いて以下に示す。
【0076】
InO粉末、GaO粉末およびZnO粉末を所定のmol数で混合し、加圧処理後
、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-Ga
-Zn-O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで
、所定のmol数比は、例えば、InO粉末、GaO粉末およびZnO粉末が、2
:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。
なお、粉末の種類、およびその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲ
ットによって適宜変更すればよい。
【0077】
(実施の形態2)
本発明の一態様に係る半導体装置は、トランジスタが積層された構成を有していても良い
。特に、図4(A)に示した構成を有するトランジスタを用い、第4の導電膜110また
は第4の導電膜111を、下層のトランジスタのゲート電極、ソース電極、またはドレイ
ン電極として、機能させることで、コンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制して
半導体装置の微細化を実現する、或いはトランジスタの作製工程数の削減を実現すること
ができる。
【0078】
本実施の形態では、半導体装置の一つである記憶装置を例に挙げて、図4(A)に示した
構造を有するトランジスタの下層に、別のトランジスタが設けられている構成の、本発明
の一態様に係る半導体装置の作製方法について説明する。
【0079】
まず、作製方法の説明を行う前に、記憶装置が有するメモリセルの構成について説明する
【0080】
図9(A)に、メモリセルの回路図を示す。図9(A)に示すメモリセルは、トランジス
タ201、トランジスタ202、及び容量素子203を有する。トランジスタ202のゲ
ート電極は、第1ワード線WLaに接続されている。また、トランジスタ202は、ソー
ス電極及びドレイン電極の一方がデータ線DLに接続されており、他方がトランジスタ2
01のゲート電極に接続されている。トランジスタ201は、ソース電極及びドレイン電
極の一方が、データ線DLに接続されており、他方が、所定の電位の与えられているノー
ドに接続されている。容量素子203が有する一対の電極は、一方がトランジスタ201
のゲート電極に接続され、他方が第2ワード線WLbに接続されている。
【0081】
図9(A)に示すメモリセルでは、データの書き込み時にトランジスタ202がオンにな
り、データ線DLからデータを含む信号の電位が、トランジスタ202を介してトランジ
スタ201のゲート電極に与えられる。そして、上記信号の電位に従って、トランジスタ
201のゲート容量、及び容量素子203に蓄積される電荷量が制御されることで、トラ
ンジスタ201及び容量素子203へのデータの書き込みが行われる。
【0082】
そして、データの保持時には、トランジスタ202がオフになり、トランジスタ201の
ゲート容量、及び容量素子203に蓄積された電荷が保持される。トランジスタ202の
半導体膜に酸化物半導体を用いる場合、トランジスタ202のオフ電流を極めて小さくす
ることができる。そのため、蓄積された上記電荷はリークしづらく、トランジスタ202
にシリコンなどの半導体材料を用いた場合に比べ、長い期間に渡ってデータの保持を行う
ことができる。
【0083】
データの読み出し時には、第2ワード線WLbの電位を変化させる。容量素子203が有
する一対の電極の電位差は、電荷保存則により維持されたままなので、第2ワード線WL
bの電位の変化は、トランジスタ201のゲート電極に与えられる。トランジスタ201
は、そのゲート容量に蓄積されている電荷量によって閾値電圧が変化している。よって、
トランジスタ201のゲート電極の電位が変化することで得られるトランジスタ201の
ドレイン電流の大きさから、蓄積されている電荷量の違いを読み取ることにより、データ
を読み出すことができる。
【0084】
なお、トランジスタ201は、その半導体膜に酸化物半導体が用いられていても良い。或
いは、トランジスタ201は、その半導体膜にシリコンまたはゲルマニウムなどの半導体
が用いられていても良い。メモリセル内の全てのトランジスタの半導体膜に、酸化物半導
体膜を用いることで、プロセスを簡略化することができる。また、トランジスタ201の
半導体膜に、例えば、多結晶または単結晶のシリコンなどのように、酸化物半導体よりも
高い移動度が得られる半導体を用いることで、メモリセルからのデータの読み出しを高速
で行うことができる。
【0085】
本実施の形態では、下層のトランジスタ201の半導体膜にシリコンを用い、上層のトラ
ンジスタ202の半導体膜に酸化物半導体を用いる場合を例に挙げて、半導体装置の作製
方法について説明する。ただし、下層のトランジスタ201は、上述したように、シリコ
ンの他、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、単結晶炭化シリコンなどの半導体材料を
用いていても良い。また、例えば、シリコンを用いたトランジスタは、シリコンウェハな
どの単結晶半導体基板、SOI法により作製されたシリコン薄膜、気相成長法により作製
されたシリコン薄膜などを用いて形成することができる。或いは、下層のトランジスタ2
01が上層のトランジスタと同様に、酸化物半導体を用いていても良い。
【0086】
本実施の形態では、まず、図6(A)に示すように、基板700上に絶縁膜701と、単
結晶の半導体基板から分離された半導体膜702とを形成する。
【0087】
基板700として使用することができる素材に大きな制限はないが、少なくとも、後の加
熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板700には
、フュージョン法やフロート法で作製されるガラス基板、石英基板、半導体基板、セラミ
ック基板等を用いることができる。ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合
には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。
【0088】
また、本実施の形態では、半導体膜702が単結晶のシリコンである場合を例に挙げて、
以下、トランジスタ201の作製方法について説明する。なお、具体的な単結晶の半導体
膜702の作製方法の一例について、簡単に説明する。まず、単結晶の半導体基板である
ボンド基板に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを注入し、ボンド基板の表面
から一定の深さの領域に、結晶構造が乱されることで局所的に脆弱化された脆化層を形成
する。脆化層が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビーム
の入射角によって調節することができる。そして、ボンド基板と、絶縁膜701が形成さ
れた基板700とを、間に当該絶縁膜701が挟まるように貼り合わせる。貼り合わせは
、ボンド基板と基板700とを重ね合わせた後、ボンド基板と基板700の一部に、1N
/cm以上500N/cm以下、好ましくは11N/cm以上20N/cm以下
程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からボンド基板と絶縁膜701とが接合
を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。次いで、加熱処理を行うことで、
脆化層に存在する微小ボイドの体積が増大し、微小ボイドどうしが結合する。その結果、
脆化層においてボンド基板の一部である単結晶半導体膜が、ボンド基板から分離する。上
記加熱処理の温度は、基板700の歪み点を越えない温度とする。そして、上記単結晶半
導体膜をエッチング等により所望の形状に加工することで、半導体膜702を形成するこ
とができる。
【0089】
半導体膜702には、閾値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどの
p型の導電性を付与する不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型の導電性を付与する
不純物元素を添加しても良い。閾値電圧を制御するための不純物元素の添加は、パターニ
ングする前の半導体膜に対して行っても良いし、パターニング後に形成された半導体膜7
02に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物元素の添加を、ボン
ド基板に対して行っても良い。若しくは、不純物元素の添加を、閾値電圧を大まかに調整
するためにボンド基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、パターニング
前の半導体膜に対して、又はパターニングにより形成された半導体膜702に対して行っ
ても良い。
【0090】
なお、本実施の形態では、単結晶の半導体膜を用いる例について説明しているが、本発明
はこの構成に限定されない。例えば、絶縁膜701上に気相成長法を用いて形成された多
結晶、微結晶、非晶質の半導体膜を用いても良いし、上記半導体膜を公知の技術により結
晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元
素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組
み合わせて用いることもできる。また、石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場
合、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法、触媒元素
を用いる結晶化法、950℃程度の高温アニール法を用いる結晶化法を、用いても良い。
【0091】
次に、図6(B)に示すように、半導体膜702上にゲート絶縁膜703を形成した後、
ゲート絶縁膜703上にマスク705を形成し、導電性を付与する不純物元素を半導体膜
702の一部に添加することで、不純物領域704を形成する。
【0092】
ゲート絶縁膜703は、高密度プラズマ処理、熱処理などを行うことにより半導体膜70
2の表面を酸化又は窒化することで形成することができる。高密度プラズマ処理は、例え
ばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素など
の混合ガスとを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うこ
とで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラ
ズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NH
ラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化又は窒化することにより、
1~20nm、望ましくは5~10nmの絶縁膜が半導体膜に接するように形成できる。
例えば、亜酸化窒素(NO)をArで1~3倍(流量比)に希釈して、10Pa~30
Paの圧力にて3kW~5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して半導体膜
702の表面を酸化若しくは窒化させる。この処理により1nm~10nm(好ましくは
2nm~6nm)の絶縁膜を形成する。更に亜酸化窒素(NO)とシラン(SiH
を導入し、10Pa~30Paの圧力にて3kW~5kWのマイクロ波(2.45GHz
)電力を印加して気相成長法により酸化窒化珪素膜を形成してゲート絶縁膜を形成する。
固相反応と気相成長法による反応を組み合わせることにより界面準位密度が低く絶縁耐圧
の優れたゲート絶縁膜を形成することができる。
【0093】
上述した高密度プラズマ処理による半導体膜の酸化又は窒化は固相反応で進むため、ゲー
ト絶縁膜703と半導体膜702との界面準位密度を極めて低くすることができる。また
高密度プラズマ処理により半導体膜702を直接酸化又は窒化することで、形成される絶
縁膜の厚さのばらつきを抑えることができる。また半導体膜が結晶性を有する場合、高密
度プラズマ処理を用いて半導体膜の表面を固相反応で酸化させることにより、結晶粒界に
おいてのみ酸化が速く進んでしまうのを抑え、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート
絶縁膜を形成することができる。高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜を、ゲート
絶縁膜の一部又は全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを抑えること
ができる。
【0094】
また、プラズマCVD法又はスパッタリング法などを用い、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸
化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム又は酸化タンタル、酸化イッ
トリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加さ
れたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハ
フニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む膜を、単層で、又
は積層させることで、ゲート絶縁膜703を形成しても良い。
【0095】
なお、本明細書において酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多
い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い
物質を意味する。
【0096】
ゲート絶縁膜703の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm
以上50nm以下とすることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、
酸化珪素を含む単層の絶縁膜を、ゲート絶縁膜703として用いる。
【0097】
次いで、マスク705を除去した後、図6(C)に示すように、ゲート絶縁膜703の一
部を除去して、不純物領域704と重畳する領域にエッチング等により開口部706を形
成した後、導電膜707及び導電膜708を形成する。導電膜707は、トランジスタ2
01のゲート電極、及びトランジスタ202のソース電極またはドレイン電極として機能
する。また、導電膜708は、トランジスタ201のソース電極またはドレイン電極、及
びトランジスタ202のソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0098】
導電膜707及び導電膜708は、開口部706を覆うように導電膜を形成した後、該導
電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、形成することができる。導電膜7
08は、開口部706において不純物領域704と接している。上記導電膜の形成にはC
VD法、スパッタリング法、蒸着法、スピンコート法等を用いることができる。また、導
電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)
、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いること
ができる。上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用い
ても良い。又は、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多
結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
【0099】
なお、本実施の形態では導電膜707及び導電膜708を単層の導電膜で形成しているが
、本実施の形態はこの構成に限定されない。導電膜707及び導電膜708は積層された
複数の導電膜で形成されていても良い。
【0100】
2つの導電膜の組み合わせとして、1層目に窒化タンタル又はタンタルを、2層目にタン
グステンを用いることができる。上記例の他に、窒化タングステンとタングステン、窒化
モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられ
る。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工
程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の
組み合わせとして、例えば、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素
とニッケルシリサイド、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とタ
ングステンシリサイド等も用いることができる。
【0101】
3つの導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン
膜の積層構造を採用するとよい。
【0102】
また、導電膜707及び導電膜708に酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ混合物
、酸化インジウム酸化亜鉛混合物、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸化窒化亜鉛アル
ミニウム、又は酸化亜鉛ガリウム等の透光性を有する酸化物導電膜を用いることもできる
【0103】
なお、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に導電膜707及び導電膜708を
形成しても良い。液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出又は噴出する
ことで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含ま
れる。
【0104】
また、導電膜707及び導電膜708は、導電膜を形成後、ICP(Inductive
ly Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッ
チング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量
、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するように
エッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を
制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素も
しくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄もしくは弗化窒素などのフッ
素系ガス又は酸素を適宜用いることができる。
【0105】
次に、図6(D)に示すように、導電膜707及び導電膜708をマスクとして一導電性
を付与する不純物元素を半導体膜702に添加することで、導電膜707と重なるチャネ
ル形成領域710と、チャネル形成領域710を間に挟む一対の不純物領域709と、不
純物領域704の一部に更に不純物元素が添加された不純物領域711とが、半導体膜7
02に形成される。
【0106】
本実施の形態では、半導体膜702にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加
する場合を例に挙げる。
【0107】
次いで、図7(A)に示すように、ゲート絶縁膜703、導電膜707、導電膜708を
覆うように、絶縁膜712、絶縁膜713を形成する。具体的に、絶縁膜712、絶縁膜
713は、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化
酸化アルミニウムなどの無機の絶縁膜を用いることができる。特に、絶縁膜712、絶縁
膜713に誘電率の低い(low-k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに
起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁膜712、絶
縁膜713に、上記材料を用いた多孔性の絶縁膜を適用しても良い。多孔性の絶縁膜では
、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する寄生容量を
更に低減することが可能である。
【0108】
本実施の形態では、絶縁膜712として酸化窒化珪素、絶縁膜713として窒化酸化珪素
を用いる場合を例に挙げる。また、本実施の形態では、導電膜707及び導電膜708上
に絶縁膜712、絶縁膜713を形成している場合を例示しているが、本発明は導電膜7
07及び導電膜708上に絶縁膜を1層だけ形成していても良いし、3層以上の複数の絶
縁膜を積層するように形成していても良い。
【0109】
次いで、図7(B)に示すように、絶縁膜712及び絶縁膜713にCMP、またはエッ
チングなどを行うことにより、導電膜707及び導電膜708の表面を露出させる。なお
、後に形成されるトランジスタ202の特性を向上させるために、絶縁膜712、絶縁膜
713の表面は可能な限り平坦にしておくことが好ましい。
【0110】
以上の工程により、トランジスタ201を形成することができる。
【0111】
次いで、トランジスタ202の作製方法について説明する。まず、図7(C)に示すよう
に、導電膜707または導電膜708上に導電膜714及び導電膜715を形成する。導
電膜714及び導電膜715は、トランジスタ202のソース電極またはドレイン電極と
して機能する。
【0112】
具体的に、導電膜714及び導電膜715は、導電膜707及び導電膜708と、絶縁膜
712及び絶縁膜713とを覆うようにスパッタ法や蒸着法で導電膜を形成した後、該導
電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、形成することができる。また、導
電膜714及び導電膜715は、後に導電膜714及び導電膜715上に形成される酸化
物半導体膜716の良好なステップカバレッジを確保するために、その端部がテーパー形
状を有すること、その膜厚が小さいことが望ましい。具体的に、導電膜714及び導電膜
715の端部におけるテーパー角は、20度以上80度以下、より好ましくは30度以上
60度以下であることが望ましい。また、具体的に、導電膜714及び導電膜715の膜
厚は、10nm以上300nm以下、より好ましくは100nm以上200nm以下であ
ることが望ましい。
【0113】
導電膜714及び導電膜715となる導電膜は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、
チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、又は上述した元素を成分とする合
金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、アルミニウム、銅など
の金属膜の下側もしくは上側にクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンな
どの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、アルミニウム又は銅は、耐熱性
や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点
金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、
スカンジウム、イットリウム等を用いることができる。
【0114】
また、導電膜714及び導電膜715となる導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構
造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上
にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を
積層し、更にその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Cu-Mg
-Al合金、Cu-Mg-O混合酸化物、Cu-Ca-O混合酸化物、Cu-Mg-Al
-O混合酸化物、Mo-Ti合金、Ti、Moは、酸化膜との密着性が高い。よって、下
層にCu-Mg-Al合金、Cu-Mg-O混合酸化物、Cu-Ca-O混合酸化物、C
u-Mg-Al-O混合酸化物、Mo-Ti合金、Ti、或いはMoで構成される導電膜
、上層に抵抗値の低いCuで構成される導電膜を積層し、上記積層された導電膜を導電膜
714及び導電膜715に用いることで、絶縁膜712または絶縁膜713が酸化膜であ
る場合、絶縁膜712または絶縁膜713と、導電膜714及び導電膜715との密着性
を高めることができ、なおかつ導電膜714及び導電膜715の抵抗値を小さく抑えるこ
とができる。
【0115】
また、導電膜714及び導電膜715となる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成
しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化イ
ンジウム酸化スズ混合物、酸化インジウム酸化亜鉛混合物又は前記金属酸化物材料にシリ
コン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0116】
次いで、図8(A)に示すように導電膜714及び導電膜715上に、酸化物半導体膜7
16を形成する。酸化物半導体膜716は、導電膜714上において開口部717を有し
、また導電膜715上おいて開口部718を有する。酸化物半導体膜716は、絶縁膜7
12及び絶縁膜713と、導電膜714及び導電膜715の上に形成した酸化物半導体膜
を上記形状に加工することで、形成することができる。
【0117】
上記酸化物半導体膜の膜厚は、2nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上50n
m以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とする。酸化物半導体膜は、酸化物半導
体をターゲットとして用い、スパッタ法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガ
ス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)及び酸素
混合雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。
【0118】
酸化物半導体膜には、上述したような、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金
属の酸化物であるIn-Zn系酸化物、Sn-Zn系酸化物、Al-Zn系酸化物、Zn
-Mg系酸化物、Sn-Mg系酸化物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、三元
系金属の酸化物であるIn-Ga-Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In-Al
-Zn系酸化物、In-Sn-Zn系酸化物、Sn-Ga-Zn系酸化物、Al-Ga-
Zn系酸化物、Sn-Al-Zn系酸化物、In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Z
n系酸化物、In-Ce-Zn系酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn
系酸化物、In-Sm-Zn系酸化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系
酸化物、In-Tb-Zn系酸化物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸
化物、In-Er-Zn系酸化物、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化
物、In-Lu-Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn系酸
化物、In-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物、In-Sn
-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Hf-Zn系酸化物、In-Hf-Al-Zn系酸
化物を用いることができる。また、上記酸化物半導体は、珪素を含んでいてもよい。
【0119】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を含むタ
ーゲットを用いたスパッタ法により得られる膜厚30nmのIn-Ga-Zn系酸化物半
導体の薄膜を、酸化物半導体膜として用いる。ターゲットとしては、例えば、組成として
、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]の酸化物ターゲットを用
いる。また、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol数比]の酸化物ター
ゲットを用いてもよい。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの充填率は90%
以上100%以下、好ましくは95%以上100%未満である。充填率の高いターゲット
を用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0120】
また、酸化物半導体としてIn-Zn系酸化物を用いる場合、用いるターゲット中の金属
元素の原子数は、In:Zn=50:1~1:2(mol数比に換算するとIn
ZnO=25:1~1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1~1:1(mol数比に
換算するとIn:ZnO=10:1~1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=1
5:1~1.5:1(mol数比に換算するとIn:ZnO=15:2~3:4)
とする。例えば、In-Zn系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がI
n:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0121】
また、In-Sn-Zn系酸化物に用いるターゲットは、ターゲット中の金属元素の原子
数比が、In:Sn:Zn=1:2:2、2:1:3、1:1:1、または20:45:
35などとなる酸化物ターゲットを用いる。
【0122】
本実施の形態では、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分
を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて
酸化物半導体膜を成膜する。成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましく
は200℃以上400℃以下としても良い。基板を加熱しながら成膜することにより、成
膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリ
ングによる損傷が軽減される。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポ
ンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメ
ーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコー
ルドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると
、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子
を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる
不純物の濃度を低減できる。
【0123】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa
、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用さ
れる。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜
厚分布も均一となるために好ましい。
【0124】
なお、酸化物半導体膜716を形成するためのエッチングは、ドライエッチングでもウェ
ットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。ドライエッチングに用いるエッチングガ
スとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl
)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。また、フ
ッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、
三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、
酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加
したガス、などを用いることができる。
【0125】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etch
ing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導
結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるよ
うに、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される
電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0126】
ウェットエッチングに用いるエッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、クエ
ン酸やシュウ酸などの有機酸を用いることができる。本実施の形態では、ITO-07N
(関東化学社製)を用いる。
【0127】
酸化物半導体膜716を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成しても
よい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、
製造コストを低減できる。
【0128】
なお、スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物としての水分又は水素(水
酸基を含む)が多量に含まれていることがある。水分又は水素はドナー準位を形成しやす
いため、酸化物半導体にとっては不純物である。そこで、本発明の一態様では、酸化物半
導体膜中の水分又は水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化
物半導体膜716に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸
素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)
方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で-55℃)以下、
好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で、酸化物半導体
膜716に加熱処理を施す。
【0129】
酸化物半導体膜716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体膜716中の水分又は水素
を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400
℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上
6分間以下程度で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化又は脱水
素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0130】
本実施の形態では、加熱処理装置の一つである電気炉を用いる。なお、加熱処理装置は電
気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導又は熱輻射によって、被処理物を
加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Therm
al Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Ann
eal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いるこ
とができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアーク
ランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプか
ら発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、
高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、又は
窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0131】
加熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分又は水
素などが含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム
、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7
N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1p
pm以下)とすることが好ましい。
【0132】
なお、酸化物半導体は不純物に対して鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれ
ていても問題がなく、ナトリウムのようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石
灰ガラスも使えると指摘されている(神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の
物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、pp.62
1-633.)。しかし、このような指摘は適切でない。アルカリ金属は酸化物半導体を
構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成す
る元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちNaは、酸化物
半導体膜に接する絶縁膜が酸化物である場合、当該絶縁膜中に拡散してNaとなる。ま
た、Naは、酸化物半導体膜内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分
断する、或いは、その結合中に割り込む。その結果、例えば、閾値電圧がマイナス方向に
シフトすることによるノーマリオン化、移動度の低下等の、トランジスタの特性の劣化が
起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタ
の特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体膜中の水素濃度が十分に低い場合にお
いて顕著に現れる。従って、酸化物半導体膜中の水素濃度が1×1018/cm以下、
特に1×1017/cm以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ま
しい。具体的に、二次イオン質量分析法によるNa濃度の測定値は、5×1016/cm
以下、好ましくは1×1016/cm以下、更に好ましくは1×1015/cm
下とするとよい。同様に、Li濃度の測定値は、5×1015/cm以下、好ましくは
1×1015/cm以下とするとよい。同様に、K濃度の測定値は、5×1015/c
以下、好ましくは1×1015/cm以下とするとよい。
【0133】
以上の工程により、酸化物半導体膜716中の水素の濃度を低減し、高純度化することが
できる。それにより酸化物半導体膜の安定化を図ることができる。また、ガラス転移温度
以下の加熱処理で、キャリア密度が極端に少なく、バンドギャップの広い酸化物半導体膜
を形成することができる。このため、大面積基板を用いてトランジスタを作製することが
でき、量産性を高めることができる。また、当該水素濃度が低減され高純度化された酸化
物半導体膜を用いることで、耐圧性が高く、オフ電流の著しく低いトランジスタを作製す
ることができる。
【0134】
なお、酸化物半導体膜は非晶質であっても良いが、結晶性を有していても良い。結晶性を
有する酸化物半導体膜としては、c軸配向を有した結晶(CAAC:C Axis Al
igned Crystal)を含む酸化物半導体であっても、トランジスタの信頼性を
高めるという効果を得ることができるので、好ましい。
【0135】
CAACで構成された酸化物半導体膜は、スパッタリング法によっても作製することがで
きる。スパッタリング法によってCAACを得るには酸化物半導体膜の堆積初期段階にお
いて六方晶の結晶が形成されるようにすることと、当該結晶を種として結晶が成長される
ようにすることが肝要である。そのためには、ターゲットと基板の距離を広くとり(例え
ば、150mm~200mm程度)、基板加熱温度を100℃~500℃、好適には20
0℃~400℃、さらに好適には250℃~300℃にすると好ましい。また、これに加
えて、成膜時の基板加熱温度よりも高い温度で、堆積された酸化物半導体膜を熱処理する
ことで膜中に含まれるミクロな欠陥や、積層界面の欠陥を修復することができる。
【0136】
CAAC-OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide
Semiconductor)は、非晶質の酸化物半導体と比較して、金属と酸素の結
合が秩序化している。すなわち、酸化物半導体が非晶質の場合は、個々の金属原子によっ
て配位数が異なることも有り得るが、CAAC-OSでは金属原子の配位数はほぼ一定と
なる。そのため、微視的な酸素の欠損が減少し、水素原子(水素イオンを含む)やアルカ
リ金属原子の放出や結合による電荷の移動や不安定性を減少させる効果がある。
【0137】
従って、CAAC-OSで構成された酸化物半導体膜を用いてトランジスタを作製するこ
とで、トランジスタへの光照射またはバイアス-熱ストレス(BT)の付加を行った後に
生じる、トランジスタのしきい値電圧の変化量を、低減することができる。よって、安定
した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0138】
次いで、図8(B)に示すように、導電膜714及び酸化物半導体膜716と接する導電
膜719と、導電膜715及び酸化物半導体膜716と接する導電膜720とを形成する
。導電膜719及び導電膜720は、導電膜714及び導電膜715と同様の材料、同様
の積層構造、同様の作製方法を用いて、形成することが可能である。
【0139】
なお、導電膜719及び導電膜720を形成する際のエッチングにおいて、酸化物半導体
膜716がなるべく除去されないように、それぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節
する。エッチング条件によっては、酸化物半導体膜716の露出した部分が一部エッチン
グされることで、溝部(凹部)が形成されることもある。
【0140】
本実施の形態では、導電膜719及び導電膜720にチタン膜を用いる。そのため、アン
モニアと過酸化水素水を含む溶液(アンモニア過水)を用いて、選択的に導電膜719及
び導電膜720をウェットエッチングすることができる。具体的には、31重量%の過酸
化水素水と、28重量%のアンモニア水と水とを、体積比5:2:2で混合したアンモニ
ア過水を用いる。或いは、塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)などを含むガスを用い
て、導電膜をドライエッチングしても良い。
【0141】
また、酸化物半導体膜716と、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電膜71
9及び導電膜720との間に、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸化窒化亜鉛アルミニ
ウム、酸化亜鉛ガリウムなどの導電性を有する金属酸化物膜を設けるようにしても良い。
例えば、金属酸化物膜を形成する場合、金属酸化物膜を形成するためのパターニングと、
導電膜719及び導電膜720を形成するためのパターニングとを一括で行うようにして
も良い。上記金属酸化物膜を設けることで、酸化物半導体膜716と導電膜719及び導
電膜720の間の抵抗を下げることができるので、トランジスタの高速動作を実現させる
ことができる。また、金属酸化物膜を設けることで、トランジスタの耐圧を高めることが
できる。
【0142】
次いで、NO、N、又はArなどのガスを用いたプラズマ処理を行うようにしても良
い。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体膜の表面に付着した水などを除
去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0143】
なお、プラズマ処理を行った後、図8(C)に示すように、導電膜719及び導電膜72
0と、酸化物半導体膜716とを覆うように、ゲート絶縁膜721を形成する。そして、
ゲート絶縁膜721上において、酸化物半導体膜716と重なる位置に導電膜722を形
成し、導電膜719と重なる位置に導電膜723を形成する。導電膜722は、トランジ
スタ202のゲート電極として機能する。
【0144】
ゲート絶縁膜721は、ゲート絶縁膜703と同様の材料、同様の積層構造を用いて形成
することが可能である。なお、ゲート絶縁膜721は、水分や、水素などの不純物を極力
含まないことが望ましく、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構
成されていても良い。ゲート絶縁膜721に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体
膜716へ侵入し、又は水素が酸化物半導体膜716中の酸素を引き抜き、酸化物半導体
膜716が低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よ
って、ゲート絶縁膜721はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素
を用いないことが重要である。上記ゲート絶縁膜721には、バリア性の高い材料を用い
るのが望ましい。例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、
窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積
層された絶縁膜を用いる場合、窒素の含有比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの
絶縁膜を、上記バリア性の高い絶縁膜よりも、酸化物半導体膜716に近い側に形成する
。そして、窒素の含有比率が低い絶縁膜を間に挟んで、導電膜719及び導電膜720及
び酸化物半導体膜716と重なるように、バリア性の高い絶縁膜を形成する。バリア性の
高い絶縁膜を用いることで、酸化物半導体膜716内、ゲート絶縁膜721内、或いは、
酸化物半導体膜716と他の絶縁膜の界面とその近傍に、水分又は水素などの不純物が入
り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体膜716に接するように窒素の比率が
低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を
用いた絶縁膜が直接酸化物半導体膜716に接するのを防ぐことができる。
【0145】
本実施の形態では、スパッタ法で形成された膜厚200nmの酸化珪素膜上に、スパッタ
法で形成された膜厚100nmの窒化珪素膜を積層させた構造を有する、ゲート絶縁膜7
21を形成する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形
態では100℃とする。
【0146】
なお、ゲート絶縁膜721を形成した後に、加熱処理を施しても良い。加熱処理は、窒素
、超乾燥空気、又は希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下において、好ましくは
200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下で行う。上記ガスは、水の
含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下であ
ることが望ましい。本実施の形態では、例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱
処理を行う。或いは、導電膜719及び導電膜720を形成する前に、水分又は水素を低
減させるための酸化物半導体膜に対して行った先の加熱処理と同様に、高温短時間のRT
A処理を行っても良い。酸素を含むゲート絶縁膜721が設けられた後に、加熱処理が施
されることによって、酸化物半導体膜716に対して行った先の加熱処理により、酸化物
半導体膜716に酸素欠損が発生していたとしても、ゲート絶縁膜721から酸化物半導
体膜716に酸素が供与される。そして、酸化物半導体膜716に酸素が供与されること
で、酸化物半導体膜716において、ドナーとなる酸素欠損を低減し、化学量論的組成を
満たすことが可能である。酸化物半導体膜716には、化学量論的組成を超える量の酸素
が含まれていることが好ましい。その結果、酸化物半導体膜716をi型に近づけること
ができ、酸素欠損によるトランジスタの電気的特性のばらつきを軽減し、電気的特性の向
上を実現することができる。この加熱処理を行うタイミングは、ゲート絶縁膜721の形
成後であれば特に限定されず、他の工程、例えば樹脂膜形成時の加熱処理や、透明導電膜
を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで、工程数を増やすことなく、酸化物半導
体膜716をi型に近づけることができる。
【0147】
また、酸素雰囲気下で酸化物半導体膜716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体に酸
素を添加し、酸化物半導体膜716中においてドナーとなる酸素欠損を低減させても良い
。加熱処理の温度は、例えば100℃以上350℃未満、好ましくは150℃以上250
℃未満で行う。上記酸素雰囲気下の加熱処理に用いられる酸素ガスには、水、水素などが
含まれないことが好ましい。又は、加熱処理装置に導入する酸素ガスの純度を、6N(9
9.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素中の不
純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0148】
或いは、イオン注入法又はイオンドーピング法などを用いて、酸化物半導体膜716に酸
素を添加することで、ドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。例えば、2.45GH
zのマイクロ波でプラズマ化した酸素を酸化物半導体膜716に添加すれば良い。
【0149】
また、導電膜722及び導電膜723は、ゲート絶縁膜721上に導電膜を形成した後、
該導電膜をパターニングすることで形成することができる。導電膜722及び導電膜72
3は、導電膜707及び導電膜708、或いは導電膜714及び導電膜715と同様の材
料を用いて形成することが可能である。
【0150】
導電膜722及び導電膜723の膜厚は、10nm~400nm、好ましくは100nm
~200nmとする。本実施の形態では、タングステンターゲットを用いたスパッタ法に
より150nmのゲート電極用の導電膜を形成した後、該導電膜をエッチングにより所望
の形状に加工(パターニング)することで、導電膜722及び導電膜723を形成する。
なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジ
ェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0151】
以上の工程により、トランジスタ202が形成される。
【0152】
なお、ゲート絶縁膜721を間に挟んで導電膜719と導電膜723とが重なる部分が、
容量素子203に相当する。
【0153】
また、トランジスタ202はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必
要に応じて、電気的に接続された複数のゲート電極を有することで、チャネル形成領域を
複数有する、マルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0154】
なお、酸化物半導体膜716に接する絶縁膜(本実施の形態においては、ゲート絶縁膜7
21が該当する。)は、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い
。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は
酸化物半導体との相性が良く、これを酸化物半導体膜に接する絶縁膜に用いることで、酸
化物半導体膜との界面の状態を良好に保つことができる。
【0155】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意
味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウ
ム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化ア
ルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子
%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)が
アルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0156】
また、酸化物半導体膜716に接する絶縁膜は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドー
プなどにより、絶縁材料を化学量論的組成より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸
素ドープは、イオン注入法又はイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0157】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成より酸素が多い領域を有する絶縁膜を
形成することができる。このような領域を備える絶縁膜と酸化物半導体膜が接することに
より、絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体膜に供給され、酸化物半導体膜中、又は酸化
物半導体膜と絶縁膜の界面における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体膜をi型化又はi型
に限りなく近くすることができる。
【0158】
また、図9(B)に、本発明の一態様に係る半導体装置が有するメモリセルの、別の回路
図を示す。
【0159】
図9(B)に示すメモリセルは、トランジスタ204と、容量素子205とを有する。ト
ランジスタ204のゲート電極は、ワード線WLに接続されている。また、トランジスタ
204は、ソース電極及びドレイン電極の一方がデータ線DLに接続されており、他方が
容量素子205の一方の電極に接続されている。容量素子205の他方の電極は、接地電
位などの固定電位が与えられているノードに、接続されている。
【0160】
図9(B)に示すメモリセルでは、データの書き込み時にトランジスタ204がオンにな
り、データ線DLからデータを含む信号の電位が、トランジスタ204を介して容量素子
205の一方の電極に与えられる。そして、上記信号の電位に従って、容量素子205に
蓄積されている電荷量が制御されることで、容量素子205へのデータの書き込みが行わ
れる。
【0161】
次いで、データの保持時には、トランジスタ204がオフになり、容量素子205におい
て電荷が保持される。トランジスタ204はオフ電流が極めて小さいという特性を有して
いる。そのため、容量素子205に蓄積された電荷はリークしづらく、トランジスタ20
4にシリコンなどの半導体材料を用いた場合に比べ、長い期間に渡ってデータの保持を行
うことができる。
【0162】
データの読み出し時には、トランジスタ204がオンになり、データ線DLを介して容量
素子205に蓄積された電荷が取り出される。そして、上記電荷量の違いを読み取ること
により、データを読み出すことができる。
【0163】
図10(A)に、図9(B)に示すメモリセルの断面図の一例を示す。トランジスタ20
4は、絶縁表面を有する基板750上に導電膜751及び導電膜752と、導電膜751
及び導電膜752上の半導体膜753と、導電膜751及び導電膜752にそれぞれ接続
されている導電膜754及び導電膜755と、半導体膜753上の絶縁膜756と、絶縁
膜756上において、半導体膜753と重なる位置に設けられた導電膜757とを有する
【0164】
また、容量素子205は、絶縁表面を有する基板750上の導電膜755と、導電膜75
5上の絶縁膜756と、絶縁膜756上において導電膜755と重なる位置に形成された
導電膜758とを有する。
【0165】
なお、本発明の一態様に係る半導体装置は、メモリセルの下層に、メモリセルの駆動を制
御する駆動回路が設けられていても良い。図10(B)に、メモリセルと駆動回路とが積
層された記憶装置の、断面図の一例を示す。
【0166】
図10(B)に示す記憶装置では、駆動回路を構成するトランジスタ206が、絶縁表面
を有する基板760上に、半導体膜761と、半導体膜761上の絶縁膜762と、絶縁
膜762上において半導体膜761と重なる位置に設けられた導電膜763と、半導体膜
761に接続されている導電膜764及び導電膜765とを有している。なお、半導体膜
761、絶縁膜762、及び導電膜763は絶縁膜766に覆われており、絶縁膜762
、及び絶縁膜766に設けられた開口部を介して、半導体膜761が導電膜764及び導
電膜765と接続されている。
【0167】
また、トランジスタ204は、導電膜764及び絶縁膜766上に、導電膜780、導電
膜781、及び導電膜780と導電膜781の間に設けられた絶縁膜782を有する。導
電膜764は導電膜781に接続されている。さらに、トランジスタ204は、導電膜7
80、導電膜781、及び絶縁膜782で構成される層上において、導電膜780及び導
電膜781にそれぞれ接続された導電膜771及び導電膜772と、導電膜771及び導
電膜772上の半導体膜773と、導電膜771及び導電膜772にそれぞれ接続されて
いる導電膜774及び導電膜775と、半導体膜773、導電膜774及び導電膜775
上の絶縁膜776と、絶縁膜776上において、半導体膜773と重なる位置に設けられ
た導電膜777と、を有する。
【0168】
容量素子205は、導電膜775と、導電膜775上の絶縁膜776と、絶縁膜776上
において導電膜775上に位置する導電膜783とを有する。
【0169】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0170】
(実施の形態3)
本発明の一態様に係る半導体装置の一つである、インバータの構成例について説明する。
【0171】
図11に、本発明の一態様に係るインバータの一例を示す。図11に示すインバータ50
0は、トランジスタ501乃至トランジスタ505と、容量素子506とを有する。
【0172】
トランジスタ501は、そのゲート電極が配線508に接続され、そのソース電極がトラ
ンジスタ502のドレイン電極に接続され、そのドレイン電極が配線507に接続されて
いる。トランジスタ502は、そのゲート電極が配線509に接続され、そのソース電極
が配線510に接続され、そのドレイン電極がトランジスタ501のソース電極に接続さ
れている。トランジスタ503は、そのゲート電極が配線507に接続され、そのソース
電極及びドレイン電極の一方がトランジスタ501のソース電極及びトランジスタ502
のドレイン電極に接続され、その他方がトランジスタ504のゲート電極に接続されてい
る。トランジスタ504は、そのソース電極がトランジスタ505のドレイン電極及び配
線511に接続され、そのドレイン電極が配線507に接続されている。トランジスタ5
05は、そのゲート電極が配線509に接続され、そのソース電極が配線510に接続さ
れ、そのドレイン電極がトランジスタ504のソース電極及び配線511に接続されてい
る。
【0173】
容量素子506は、その一方の電極がトランジスタ504のゲート電極に接続され、その
他方の電極が配線511に接続されている。
【0174】
トランジスタ502及びトランジスタ505がnチャネル型である場合、具体的に、配線
507にはハイレベルの電位VDDが与えられ、配線510にはローレベルの電位VSS
が与えられる。また、配線508にはクロック信号の電位CLが与えられ、配線509に
は電位Vinが与えられる。そして、配線511からは、電位Vinの極性を反転させる
ことで得られる電位Vinbが、出力される。
【0175】
本発明の一態様に係る半導体装置では、トランジスタを微細化しても、ソース電極または
ドレイン電極として機能する導電膜の抵抗を低く抑え、高いオン電流を確保することがで
きる。よって、本発明の構成をインバータ500に適用させることで、インバータ500
を微細化しても、高い動作速度を確保し、電流の供給能力を高めることができる。
【0176】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0177】
(実施の形態4)
本発明の一態様に係る半導体装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備
えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc
等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いること
ができる。その他に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることができる電子機器と
して、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジ
タルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲー
ションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、
複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(AT
M)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図12に示す。
【0178】
図12(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体5001、筐体5002、表示部5003、
表示部5004、マイクロホン5005、スピーカー5006、操作キー5007、スタ
イラス5008等を有する。携帯型ゲーム機の駆動回路に、本発明の一態様に係る半導体
装置を用いることで、動作速度の速い携帯型ゲーム機を提供することができる。或いは、
本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、携帯型ゲーム機の小型化を実現するこ
とができる。なお、図12(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部5003と表
示部5004とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定され
ない。
【0179】
図12(B)は表示機器であり、筐体5201、表示部5202、支持台5203等を有
する。表示機器の駆動回路に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、動作速
度の速い表示機器を提供することができる。或いは、本発明の一態様に係る半導体装置を
用いることで、表示機器の小型化を実現することができる。なお、表示機器には、パーソ
ナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示機器が含
まれる。
【0180】
図12(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体5401、表示部5402
、キーボード5403、ポインティングデバイス5404等を有する。ノート型パーソナ
ルコンピュータの駆動回路に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、動作速
度の速いノート型パーソナルコンピュータを提供することができる。或いは、本発明の一
態様に係る半導体装置を用いることで、ノート型パーソナルコンピュータの小型化を実現
することができる。
【0181】
図12(D)は携帯情報端末であり、第1筐体5601、第2筐体5602、第1表示部
5603、第2表示部5604、接続部5605、操作キー5606等を有する。第1表
示部5603は第1筐体5601に設けられており、第2表示部5604は第2筐体56
02に設けられている。そして、第1筐体5601と第2筐体5602とは、接続部56
05により接続されており、第1筐体5601と第2筐体5602の間の角度は、接続部
5605により変更が可能である。第1表示部5603における映像の切り替えを、接続
部5605における第1筐体5601と第2筐体5602との間の角度に従って、切り替
える構成としても良い。また、第1表示部5603及び第2表示部5604の少なくとも
一方に、位置入力装置としての機能が付加された半導体表示装置を用いるようにしても良
い。なお、位置入力装置としての機能は、半導体表示装置にタッチパネルを設けることで
付加することができる。或いは、位置入力装置としての機能は、フォトセンサとも呼ばれ
る光電変換素子を半導体表示装置の画素部に設けることでも、付加することができる。携
帯情報端末の駆動回路に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、動作速度の
速い携帯情報端末を提供することができる。或いは、本発明の一態様に係る半導体装置を
用いることで、携帯情報端末の小型化を実現することができる。
【0182】
図12(E)は携帯電話であり、筐体5801、表示部5802、音声入力部5803、
音声出力部5804、操作キー5805、受光部5806等を有する。受光部5806に
おいて受信した光を電気信号に変換することで、外部の画像を取り込むことができる。携
帯電話の駆動回路に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることで、動作速度の速い
携帯電話を提供することができる。或いは、本発明の一態様に係る半導体装置を用いるこ
とで、携帯電話の小型化を実現することができる。
【0183】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0184】
101 導電膜
101e 端部
102 導電膜
102e 端部
103 半導体膜
104 導電膜
104e 端部
105 導電膜
105e 端部
106 絶縁膜
107 導電膜
107e 端部
108 開口部
109 開口部
110 導電膜
111 導電膜
112 半導体膜
113 半導体膜
114 Lov領域
115 Lov領域
116 Loff領域
117 Loff領域
120 絶縁膜
201 トランジスタ
202 トランジスタ
203 容量素子
204 トランジスタ
205 容量素子
206 トランジスタ
500 インバータ
501 トランジスタ
502 トランジスタ
503 トランジスタ
504 トランジスタ
505 トランジスタ
506 容量素子
507 配線
508 配線
509 配線
510 配線
511 配線
700 基板
701 絶縁膜
702 半導体膜
703 ゲート絶縁膜
704 不純物領域
705 マスク
706 開口部
707 導電膜
708 導電膜
709 不純物領域
710 チャネル形成領域
711 不純物領域
712 絶縁膜
713 絶縁膜
714 導電膜
715 導電膜
716 酸化物半導体膜
717 開口部
718 開口部
719 導電膜
720 導電膜
721 ゲート絶縁膜
722 導電膜
723 導電膜
750 基板
751 導電膜
752 導電膜
753 半導体膜
754 導電膜
755 導電膜
756 絶縁膜
757 導電膜
758 導電膜
760 基板
761 半導体膜
762 絶縁膜
763 導電膜
764 導電膜
765 導電膜
766 絶縁膜
771 導電膜
772 導電膜
773 半導体膜
774 導電膜
775 導電膜
776 絶縁膜
777 導電膜
780 導電膜
781 導電膜
782 絶縁膜
783 導電膜
5001 筐体
5002 筐体
5003 表示部
5004 表示部
5005 マイクロホン
5006 スピーカー
5007 操作キー
5008 スタイラス
5201 筐体
5202 表示部
5203 支持台
5401 筐体
5402 表示部
5403 キーボード
5404 ポインティングデバイス
5601 筐体
5602 筐体
5603 表示部
5604 表示部
5605 接続部
5606 操作キー
5801 筐体
5802 表示部
5803 音声入力部
5804 音声出力部
5805 操作キー
5806 受光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12