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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153793
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】塵芥収集車
(51)【国際特許分類】
   B65F 3/00 20060101AFI20241022BHJP
【FI】
B65F3/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122529
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2020060548の分割
【原出願日】2020-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】清上 武伸
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆史
(57)【要約】
【課題】作業者等が巻き込まれそうな状態から脱出し易くできて、作業者等の安全をより早期に確保できる塵芥収集車を提供する。
【解決手段】塵芥収集車は、塵芥積込装置と、塵芥投入口及びその近傍の物体像を取得する物体像取得部と、塵芥積込装置の駆動を制御する制御装置とを備え、制御装置は、物体像取得部によって取得された物体像が人物であるか否かを認識すると共に、塵芥投入口及びその近傍の所定のエリアに人物が入っているか否かを判定する人物検出部と、人物検出部により人物が検出されたことを報知する報知部と、塵芥積込装置の駆動中に人物検出部により侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合に、塵芥積込装置を自動で停止させる緊急停止部と、緊急停止部と連動して塵芥積込装置を退避動作させる退避動作部とを有し、報知部を作動した状態で退避動作部を作動するよう構成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥投入箱の内部に配設された塵芥積込装置と、前記塵芥投入箱に開口された塵芥投入口及びその近傍の物体像を取得する物体像取得部と、前記塵芥積込装置の駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記物体像取得部によって取得された物体像が人物であるか否かを認識すると共に、前記塵芥投入口及びその近傍の所定のエリアに人物が入っているか否かを判定する人物検出部と、
前記人物検出部によって人物が検出されたことを報知する報知部と、
前記塵芥積込装置の駆動中に前記人物検出部により前記所定のエリアのうち侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合に、前記塵芥積込装置を自動で停止させる緊急停止部と、
前記緊急停止部と連動して前記塵芥積込装置を退避動作させる退避動作部とを有し、
前記報知部を作動した状態で前記退避動作部を作動するよう構成されていることを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
請求項1に記載の塵芥収集車において、
前記塵芥積込装置は、前記塵芥投入口に投入された塵芥を前記塵芥投入箱に積み込む積込板を備え、
前記制御装置は、前記積込板が巻き込み危険性のある位置で動作しているかどうかを判定する機能を有しており、
前記積込板が前記塵芥投入口近傍の巻き込み危険性の高い位置にあって、かつ、前記侵入禁止エリアに人物が入っていると前記制御装置が判定したことに基づいて、前記緊急停止部と前記退避動作部とが連動して作動することを特徴とする塵芥収集車。
【請求項3】
請求項1に記載の塵芥収集車において、
前記塵芥積込装置は、前記塵芥投入口に投入された塵芥を前記塵芥投入箱に積み込む積込板を備え、
前記制御装置は、前記積込板が巻き込み危険性のある位置で動作しているかどうかを判定する機能を有しており、
前記積込板が前記塵芥投入口近傍の巻き込み危険性の高い位置に無く、かつ、前記侵入禁止エリアに人物が入っていると前記制御装置が判定したことに基づいて、前記報知部が作動する一方で、前記退避動作部が作動しないことを特徴とする塵芥収集車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵芥収集車に関し、特に、作業者等が塵芥投入口近傍の侵入禁止エリアに入ったときに塵芥積込装置を緊急停止させる構成を有するものの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塵芥収集車においては、例えば特許文献1に開示されるように、塵芥投入箱に開口された塵芥投入口の近傍の物体像を取得する物体像取得部と、塵芥投入箱内の塵芥積込装置の駆動を制御する制御装置とを備えて、塵芥積込装置の駆動中に作業者等の人物が塵芥投入口近傍の侵入禁止エリアに入っていると物体像取得部が判定した場合には、塵芥積込装置を緊急停止させて、作業者等の安全を図る構成を採用したものが知られている。
【0003】
このような従来の塵芥収集車では、作業者等が侵入禁止エリア内で塵芥積込装置に巻き込まれそうになった際には、塵芥積込装置の駆動を自動で緊急停止させる構成であるので、作業者自身が例えば緊急停止スイッチを押して手動で塵芥積込装置の駆動を停止させる場合と比較して、より迅速な緊急停止が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-154464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の塵芥収集車では、作業者等の人物が侵入禁止エリアに入って巻き込まれそうになったと判定された際には、塵芥積込装置が、その判定された時点での状態のまま駆動を停止されるため、例えば作業者等の服が塵芥投入箱内のごみや塵芥積込装置に引っかかった状態で塵芥積込装置が停止した際には、その引っかかりを解除するのが困難な場合がある欠点があった。また、そのように引っ掛かりの解除に時間を要する場合には、塵芥積込装置の駆動を再開するまでに多くの時間がかかる欠点がある。
【0006】
本発明は、上述したような実情を考慮してなされたものであって、その目的は、塵芥積込装置が緊急停止する際には、作業者等が巻き込まれそうな状態から脱出し易くできて、作業者等の安全をより早期に確保できると共に、塵芥積込装置の駆動の再開を早めて、作業効率の良い塵芥収集車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明の塵芥収集車は、塵芥投入箱の内部に配設された塵芥積込装置と、前記塵芥投入箱に開口された塵芥投入口の近傍の物体像を取得する物体像取得部と、前記塵芥積込装置の駆動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記物体像取得部によって取得された物体像が人物であるか否かを認識すると共に、前記塵芥投入口近傍の侵入禁止エリアに人物が入っているか否かを判定する人物検出部と、前記塵芥積込装置の駆動中に前記人物検出部により前記侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合に、前記塵芥積込装置を退避動作させてから停止させる緊急退避停止部と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記構成では、塵芥積込装置の駆動中に人物検出部により侵入禁止エリアに作業者等の人物が入っていると判定された場合には、塵芥積込装置がその判定の時点で単に停止するのではなく、一旦退避動作をし、その後に、その退避した状態で塵芥積込装置を停止する構成である。この退避動作により、塵芥積込装置の可動先端部分と塵芥投入箱の内底部との隙間を広げることができ、その上で塵芥積込装置を停止させることができる。従って、作業者等の服が塵芥投入箱内のごみや塵芥積込装置に引っ掛かった状態でも、その引っ掛かりを解除するために作業者等の動作範囲を拡大させることができるので、塵芥積込装置の緊急停止後でも、作業者等は巻き込まれそうな状態から脱出し易くなって、作業者等の安全をより早期に確保することができる。また、そのような早期の脱出が可能であるので、塵芥積込装置の駆動の再開を早めることができ、より安全で作業効率の良い塵芥収集車にすることができる。
【0009】
より具体的な構成として、前記塵芥積込装置は、前記塵芥投入口に投入された塵芥を前記塵芥投入箱に積み込む積込板を備え、前記緊急退避停止部によって行われる前記退避動作は、前記積込板の塵芥積込動作を所定時間反転させるように構成されていることが好ましい。
【0010】
この構成では、塵芥積込装置の駆動中では、積込板は塵芥投入箱に塵芥を積み込む動作を行っており、この状態で作業者等の人物が侵入禁止エリアに入っていると判定されると、積込板は塵芥積込動作を反転する退避動作をし、この退避動作が所定時間継続して停止する。従って、例えば作業者等の服が塵芥積込動作中の積込板に引っ掛かった場合であっても、積込板の退避動作によって服の引っ掛かりが緩くなるので、作業者等は巻き込まれそうな状態から短時間に容易に脱出することが可能になる。
【0011】
また、前記塵芥積込装置は、前後方向に回動する押込板と、前記押込板の下方に配置された基端を中心として回転可能な前記積込板とを備え、前記積込板が前記押込板の後方回動動作と干渉しない位置にまで回転する回避回転工程と、前記押込板が後方に回動する戻り工程と、前記積込板が塵芥を掻き上げるように回転する掻上回転工程と、前記押込板が前方に回動する押込工程とを含む1サイクルの積込動作を行うように構成され、前記退避動作は、前記掻上回転工程中に前記侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合に、前記積込板のみを所定時間逆転方向へ回転させるものであることが好ましい。
【0012】
この構成では、積込板が回転する回転板式の塵芥収集車において、押込板と積込板とが行う1サイクルの積込動作のうち、積込板が塵芥を掻き上げるように回転する掻上回転工程、特に積込板が塵芥投入箱の内底部に向かって動作している際に、侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合には、塵芥を掻き上げる回転動作を行っていた積込板のみが所定時間逆転方向へ回転する退避動作が行われる。従って、掻上回転工程中の積込板に作業者等の服が引っ掛かってしまった場合であっても、その積込板と塵芥投入箱の内底部との隙間が広がって、作業者等は積込板から服の引っ掛かりを外し易くなる。また、この緊急停止時に行う退避動作は、服の引っ掛かった作業者等にとっては意図しない動きであるが、この退避動作が大きいと、作業者にとって意図しない動きの範囲が大きくなって二次災害が生じる可能性がある。しかし、この退避動作を、積込板のみが逆転する必要最小限に留めることができるので、二次災害の可能性を小さく抑制することができる。更に、侵入禁止エリアに人物が入っているとの人物検出部の判断が誤りで、誤認識で塵芥積込装置が緊急停止してしまった場合であっても、退避動作が小さいので、積込板を元の位置に短時間で復帰させることができ、塵芥積込動作の作業時間のロスを最小限に抑制することが可能である。
【0013】
更に、前記塵芥積込装置は、昇降自在な摺動板と、前記摺動板の下端に前後に回動可能に連結される前記積込板とを備え、前記積込板を後方に回動させる反転工程と、前記積込板と共に前記摺動板を下降させる下降工程と、前記積込板を前方に回動させる圧縮工程と、前記積込板と共に前記摺動板を上昇させる上昇工程とを含む1サイクルの積込動作を行うように構成され、前記退避動作は、前記下降工程と前記圧縮工程の何れか一方又はその両方の工程において行うように構成されていることが好ましい。
【0014】
この構成では、積込板により塵芥を圧縮するプレス式の塵芥収集車において、摺動板と積込板とが行う1サイクルの積込動作のうち、下降工程若しくは圧縮工程、又は、下降工程及び圧縮工程の両方の工程、すなわち、積込板が塵芥投入箱の内底部に向かって動作している状況において、侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合に退避動作を行うので、積込板と塵芥投入箱の内底部との隙間が広がって、作業者等は積込板から服の引っ掛かりを外し易くなる。
【0015】
加えて、前記下降工程中の退避動作は、前記人物検出部により前記侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合に、前記積込板と共に前記摺動板を所定時間上昇させるものであり、前記圧縮工程中の退避動作は、前記人物検出部により前記侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合に、前記積込板のみを所定時間後方へ回動させるものであることが好ましい。
【0016】
この構成では、前記プレス式の塵芥収集車において、下降工程中に侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合には、下降動作していた摺動板と積込板との両方が所定時間上昇する退避動作が行われ、圧縮工程中に侵入禁止エリアに人物が入っていると判定された場合には、前方に回動していた積込板のみが反転(後方に回動)する退避動作が行われれる。従って、下降工程中での退避動作及び圧縮工程中での退避動作を必要最小限に留めることができるので、二次災害の可能性を小さく抑制することができると共に、たとえ人物検出部の誤判断で塵芥積込装置が緊急停止してしまった場合であっても、摺動板や積込板を元の位置に短時間で復帰させることができて、塵芥積込動作の作業時間のロスを最小限に抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る塵芥収集車を示す側面図である。
図2図1の塵芥収集車の後面図である。
図3】塵芥収集車に装備された塵芥積込装置の作動の説明図である。
図4図3のX1線矢視図である。
図5】塵芥収集車の塵芥積込装置の油圧回路図である。
図6】塵芥収集車の本体制御部及び画像処理ユニットとそれらの入出力状態を示す概略図である。
図7】ごみ袋を塵芥投入口に積み込む作業者を側方から見た説明図である。
図8】カメラによって撮影された画像の一例であって、第1、第2の検知エリアを示す図である。
図9】画像処理ユニットが実行する人物認識処理の一例を示すフローチャート図である。
図10】本体制御部による塵芥積込装置の塵芥積込動作の緊急退避停止処理の一例を示すフローチャート図である。
図11】回転板の退避動作の一例を示す図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る塵芥収集車の要部を示す側面図である。
図13】プレス式の塵芥積込装置の塵芥積込動作の緊急退避停止処理の一例を示すフローチャート図である。
図14】プレス式の塵芥積込装置の下降工程での緊急退避停止動作の一例を示す側面図である。
図15】プレス式の塵芥積込装置の圧縮工程での緊急退避停止動作の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
-第1実施形態-
本発明を回転板式の塵芥収集車に適用した第1実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の説明においては、便宜上、塵芥収集車の前後左右を単に「前後左右」と言うこともある。
【0019】
図1図2には、本発明の第1実施形態に係る塵芥収集車100を示している。塵芥収集車100では、車台1上に塵芥収容箱2と塵芥投入箱3とが設けられており、塵芥収容箱2の後方の開口部と塵芥投入箱3の前面の開口部とが連通されている。また、塵芥投入箱3は、その上部に設けられた左右方向の枢軸3aによって塵芥収容箱2に対して軸支されており、左右一対の傾動シリンダ(図示省略)によって傾動されるようになっている。
【0020】
また、塵芥投入箱3の背面における下寄りの部位には、塵芥G(図8参照)を投入するための略矩形状の塵芥投入口4が開口され、昇降可能なテールゲート5によって、塵芥投入口4が開閉されるようになっている。塵芥投入口4の左側方には、塵芥積込装置(後述)8の駆動等の操作のためのスイッチボックス6が設けられている。また、塵芥投入口4の上方には、塵芥投入口4及びその近傍のエリアを撮影するようにカメラユニット7が配設されている。カメラユニット7は、塵芥投入口4より上方に配設された塵芥投入箱3の傾斜後面部(湾曲状の後面部)3bから後方に突出する支持部材80を介して、塵芥投入箱3の上部に固定されている。
【0021】
より具体的に説明すると、図2図4に示すように、支持部材80は、傾斜後面部3bの左右両端部に基端部を有する枠状となっている。カメラユニット7は、支持部材80において塵芥投入箱3の左右中央部となる位置に固定されている。カメラユニット7は物体像取得部としてのカメラ71と、報知部としての検出ランプ73と、第2の報知部としての作動中ランプ72とを有している。カメラ71としては、例えば従来からバックアイカメラとして実績のある単眼カメラが用いられている。
【0022】
カメラ71は、カメラユニット7の左右中央部に設けられた凹部74の中に取付ブラケット75を介して取り付けられている。カメラ71は、撮像レンズ71aを有しており、この撮像レンズ71aが斜め下方に向くようにしてカメラユニット7の取付ブラケット75に対し水平軸回りに上下回動調整可能に取り付けられている。カメラユニット7の凹部74の左右両側には、水平面に対して後方上傾状の(車両後方に向かうにつれて上方に傾斜する)固定面7aが設けられている。左側の固定面7aには作動中ランプ72が下向きに取り付けられている。また、右側の固定面7aには、検出ランプ73が下向きに取り付けられている。つまり、作動中ランプ72と検出ランプ73は、カメラ71の撮像レンズ71aの近傍となるカメラ71の左右両側に設けられている。
【0023】
次に、図3に示すように、塵芥投入箱3の内部には、投入された塵芥Gを塵芥収容箱2に積み込む塵芥積込装置8が装備されている。この塵芥積込装置8によって、塵芥投入箱3に投入された塵芥Gを、塵芥投入箱3の前方に連設された塵芥収容箱2へ押し込むようになっている。塵芥収容箱2には、収容された塵芥Gを排出する図示省略の塵芥排出装置が設けられている。この塵芥排出装置としては、例えば塵芥収容箱2を、車台1と塵芥収容箱2との間に介設されたダンプシリンダによって傾動させて塵芥Gを排出したり、塵芥収容箱2の内部に設けた排出板を排出シリンダにより塵芥収容箱2の後方に移動させて塵芥Gを排出したりするものが考えられる。
【0024】
次に、本実施形態の塵芥積込装置8について具体的に説明する。本実施形態の塵芥積込装置8は、積込板としての回転板10の回転によって塵芥Gを掻き上げると共に、押込板20によって塵芥収容箱2内へと押し込む、いわゆる回転板式の塵芥積込装置として構成されている。塵芥投入箱3内には、前記押込板20の下方において塵芥投入箱3の幅方向に延びるように配置された回転軸11が架設され、この回転軸11に回転板(積込板)10の基端側が固定されていて、回転板10はその基端(回転軸11)を中心として回転可能である。
【0025】
図示の例では、回転軸11の端部に減速機構12を介して正逆回転可能な油圧モータ13が連結されている。この油圧モータ13の回転が減速機構12によりトルクアップされて回転軸11に伝達され、この回転軸11と一体に回転板10が回転されることで、その先端部は、断面略半円弧状に形成された塵芥投入箱3の内底部3cに沿って前後方向に移動するようになる。
【0026】
一方、押込板20は、回転板10の上方において塵芥投入箱3の幅方向全体に亘って設けられ、その上部に設けられた左右方向の回動軸21の周りに前後方向に回動自在に支持されている。また、押込板20には、回動軸21よりも上方に延びる延設部22が設けられ、この延設部22とその前方の支持ピン23との間に押込シリンダ24が架設されており、その伸縮作動によって押込板20を前後方向に回動させるようになっている。
【0027】
具体的には、図3に実線で示すように、押込板20が塵芥収容箱2の側に最も回動した位置(前進限界位置)にあるときは、この押込板20との干渉を回避しながら回転板(積込板)10が後方に回転する回避回転工程を行う。そして、この回転板10の後方回転に遅れて押込板20が塵芥投入口4側へ回動し、この塵芥投入口4側に最も回動した図3に仮想線で示す位置(後退限界位置)で停止する戻り工程を行う。その後、回転板10が前記回避回転工程に続いて下方側に回転した後、前方側に回転して塵芥投入箱3の内底部3cに沿って塵芥Gを塵芥収容箱2側に掻き上げるように回転し、更に、上方側に回転して図3に実線で示すように、前方の塵芥収容箱2側に延びる設定停止位置に一旦停止する掻上回転工程を行う。その後は、押込板20が前方の塵芥収容箱2側に回動して、回転板10上の塵芥Gを塵芥収容箱2に押し込んで行き、再び前進限界位置に達する押込工程を行う。
【0028】
このようにして、回転板(積込板)10及び押込板20は、回避回転工程、戻り工程、掻上回転工程及び押込工程の4工程を1サイクルとして、回転板10の回転と押込板20の回動とを互いに同期しながら繰り返すことによって、塵芥投入箱3に投入された塵芥Gが連続的に塵芥収容箱2に積み込まれる塵芥積込動作が行われる。このように回転板10及び押込板20を動作させるための油圧回路及び制御系の構成については後述する。
【0029】
塵芥投入箱3の内部には、回転板10及び押込板20の位置を検出するためのスイッチLS1~LS4が設けられている。具体的には、図3に示すように、押込板20が前進限界位置又は後退限界位置にあるときにそれぞれオンになるスイッチLS1,LS2と、回転板10が設定停止位置にあるときにオンになるスイッチLS3と、その設定停止位置から回転板10が正の向き(図3の時計回り)に所定角度回転したときにオンになり、更に所定角度回転したときにオフになるスイッチLS4とが設けられている。
【0030】
尚、スイッチLS1,LS2は、押込板20の回動軸21の端部に設けられたドグ(図示省略)を検出するようになっており、スイッチLS3~LS4は、回転板10の回転軸11の端部に設けられたドグ(図示省略)を検出するようになっている。また、これらのスイッチLS1~LS4としては、例えばリミットスイッチ、光電スイッチ、近接スイッチ等を用いることができる。更に、スイッチLS4は、図3にハッチングで示すように、回転板10が塵芥投入口4の前縁部(上縁部)4aの真下から、その後方へ回転しつつ下降して塵芥投入口4の後縁部(下縁部)4bに最も近接するまでの角度範囲Zを検出するもので、回転板10が塵芥投入口4の近傍にて動作していることを検出するためのセンサである。
【0031】
更に、図1図3に示すように、塵芥投入口4の近傍には、塵芥積込装置8の駆動を停止させるための緊急停止ボタン60,61や、緊急停止プレート62等が配設されている。図1に示すように、塵芥投入口4の左側に設けられたスイッチボックス6の側面に緊急停止ボタン60(図6のスイッチSW1に対応)が配設され、また、図3に破線で示すように、塵芥投入口4の右側に緊急停止ボタン61(図6のスイッチSW3に対応)が配設されている。緊急停止プレート62は、塵芥投入口4の下方においてスイッチSW2をオンオフするように配設されている。更に、図2に示すように、スイッチボックス6の後面には、停止解除スイッチ63が配設されている。この停止解除スイッチ63は例えばモーメンタリのスイッチSW4をオンオフするように配設されている。停止解除スイッチ63は、後述する塵芥積込装置8の塵芥積込動作の緊急退避停止を解除する際に操作される。
【0032】
-塵芥積込装置8の制御系-
次に、図5図6を参照して、塵芥積込装置8を動作させるための制御系について説明する。この制御系は、塵芥積込装置8の油圧モータ13や、押込シリンダ24等に供給する油圧を制御する油圧回路と、この油圧回路に設けられた電磁制御弁V1,V2に制御信号を出力する本体制御部PLC(プログラマブル ロジック コントローラ)と、カメラ71からの画像データに基づいて人物認識処理を行う人物検出部としての画像処理ユニット9とを備えている。前記本体制御部PLCは、塵芥積込装置8の塵芥積込動作を緊急に退避及び停止させる緊急退避停止部として機能する。尚、本体制御部PLCは、塵芥積込装置8の駆動だけでなく塵芥排出装置の駆動も制御するようになっている。
【0033】
先ず、図5を参照して油圧回路について説明する。この油圧回路は、油圧ポンプPと、オイルリザーバTと、押込シリンダ24を制御するための電磁制御弁V1と、油圧モータ13を制御するための電磁制御弁V2とを備えている。尚、油圧ポンプPには、車両走行駆動源としてのエンジン(図示省略)の動力を取り出すPTO(パワー テイク オフ)によって駆動力が伝達されるようになっている。
【0034】
一例として、電磁制御弁V1,V2は、何れも6ポート3位置の電磁式の方向切替弁からなる。電磁制御弁V1は、本体制御部PLCによりソレノイドSOLaが励磁されると第1連通位置(図5の上位置)に切り替わって、油圧ポンプPからの作動油を一対の押込シリンダ24のロッド側油室に供給する。一方、電磁制御弁V1は、本体制御部PLCによりソレノイドSOLbが励磁されると第2連通位置(図5の下位置)に切り替わって、作動油をヘッド側油室に供給する。
【0035】
そして、電磁制御弁V1から作動油がヘッド側油室に供給されると、一対の押込シリンダ24が伸長動作して押込板20を前方に回動させる。一方、作動油がロッド側油室に供給されると、一対の押込シリンダ24は収縮動作して、押込板20を後方に回動させる。また、何れのソレノイドSOLa,SOLbも励磁されていないときに、電磁制御弁V1は中立位置(図5の中央位置)に復帰するようになる。
【0036】
電磁制御弁V2は、ソレノイドSOLcが励磁されると第1連通位置(図5の下位置)に切り替わって、作動油を油圧モータ13の正転側油室に供給し、当該油圧モータ13を正転作動させるほか、押込シリンダ24も伸縮作動させることができる。一方、ソレノイドSOLdが励磁されると電磁制御弁V2は第2連通位置(図5の上位置)に切り替わって、作動油を油圧モータ13の逆転側油室に供給し、当該油圧モータ13を逆転作動させる。
【0037】
また、何れのソレノイドSOLc,SOLdも励磁されていないときに、電磁制御弁V2は中立位置(図5の中央位置)に復帰するようになる。電磁制御弁V1,V2の両方が中立位置にあるとき、作動油はオイルリザーバTへ還流するようになる。尚、図示の油圧回路において、符号V3はチェック弁であり、また、符号V4は、油圧ポンプPの吐出圧の上限を設定するためのリリーフ弁である。
【0038】
次に、図6を参照して本体制御部PLC及び画像処理ユニット9の信号の入出力状態について説明する。先ず、本体制御部PLCへの電力供給はバッテリBTによって行われる。このバッテリBTの正極から図6の右側に延びてグランドラインK1に至る通電ラインK2には、塵芥収集車100のイグニッションスイッチSWK、PTOスイッチSWP、リレーコイルR1等が介設されている。
【0039】
また、イグニッションスイッチSWK及びバッテリBTの中間において通電ラインK2から分岐するように、通電ラインK3の上流端が接続されており、その上流側(バッテリBTに近い側)にはリレーコイルR1の接点(リレースイッチ)r1が介設されている。この通電ラインK3には電源ランプLが介設されており、リレーコイルR1が励磁されて接点r1が閉じられると、通電ラインK3に通電することによって電源ランプLが点灯する。
【0040】
また、リレーコイルR1の接点r1及び電源ランプLの中間において通電ラインK3から分岐するように、通電ラインK4の上流端が接続されており、これにより本体制御部PLCの信号用電力供給部(図示省略)に電力が供給されるようになっている。つまり、接点r1が閉じられると、通電ラインK3,K4を介して本体制御部PLCに電力が供給される。
【0041】
更に、通電ラインK4から分岐する通電ラインK5によって、塵芥積込装置8の塵芥積込動作中には必ず本体制御部PLCに通電されるようになっている。つまり、通電ラインK5は、いわゆる積込継続信号を入力するラインであり、ここには、上述した緊急停止ボタン60,61及び緊急停止プレート62の操作に対応して開閉されるスイッチSW1~SW3等が介設されている。これらのスイッチSW1~SW3によって通電(つまり、積込継続信号の入力)が遮断されると、本体制御部PLCは、電磁制御弁V1,V2のソレノイドSOLa~SOLdを励磁させるための制御信号の出力をオフするようになっている。これにより、電磁制御弁V1,V2が中立位置に復帰するようになり、塵芥積込装置8の駆動が停止されるようになっている。
【0042】
また、通電ラインK4にはその途中から分岐する複数の分岐ラインが接続されており、これらの分岐ラインのそれぞれに、上述したスイッチLS1~LS4が介設されている。スイッチLS1~LS4からの信号は本体制御部PLCに入力されるようになっており、これらの信号に基づいて塵芥積込装置8の回転板10及び押込板20の位置、言い換えれば動作状況が検出される。
【0043】
更に、スイッチLS1~LS4の他にも本体制御部PLCへの入力側には、塵芥積込装置8をサイクル作動させるための積込スイッチ(積込ボタン)SW5、塵芥積込装置8の塵芥積込動作又は塵芥排出装置の塵芥排出動作を切り替えるための切替スイッチSW6、塵芥投入箱3を傾動させて開放するためのスイッチSW7、塵芥積込動作の単動又は連続の選択スイッチ(図示省略)、回転板10や押込板20を単独で作動させるスイッチ(図示省略)等も電気的に接続されている。切替スイッチSW6は、通電ラインK4から通電ラインK5が分岐する分岐位置に設けられており、通電ラインK5は、切替スイッチSW6の積込側に接続されている。
【0044】
上述のように各種スイッチが入力側に接続されている一方、本体制御部PLCの出力側には、上述した電磁制御弁V1,V2のソレノイドSOLa~SOLd等が接続されている。そして、本体制御部PLCは、スイッチSW1~SW3,LS1~LS4等から入力する信号に基づいて、予め設定された手順に従い、油圧モータ13や押込シリンダ24等を作動させるべく、対応するソレノイドSOLa~SOLdに出力するようにプログラムされている。
【0045】
具体的には、塵芥積込装置8が塵芥積込動作するときには、通電ラインK2上のイグニッションスイッチSWK及びPTOスイッチSWPが何れもオンになると、リレーコイルR1が励磁される。これにより、リレーコイルR1の接点r1が閉じられるので、通電ラインK3及びK4によって本体制御部PLCに電力供給されることにより、本体制御部PLCが動作可能な状態になって適宜、ソレノイドSOLa~SOLdに制御信号を出力するようになる。
【0046】
この制御信号を受けてソレノイドSOLa~SOLdが励磁され、電磁制御弁V1,V2の位置が適宜、切り替えられることで、油圧モータ13や押込シリンダ24等に作動油圧が供給される。これにより、油圧モータ13や押込シリンダ24等がそれぞれ作動し、上述したように、回転板10の回転及び押込板20の回動が互いに同期して繰り返されることになる。
【0047】
詳細には、先ず図3に実線で示すように押込板20が前進限界位置にあって、スイッチLS1からオン信号が出力されると共に、回転板10が設定停止位置にあって、スイッチLS3からもオン信号が出力されるときに、積込スイッチSW5の信号を受けた本体制御部PLCから制御信号が出力され、電磁制御弁V2が第1連通位置に切り替えられて、油圧モータ13が正転作動を開始する。これにより、回転板10は後方に回転し始め、回避回転工程が開始される。この回避回転工程は、設定停止位置から塵芥投入口4の前縁部(上縁部)4aの真下(角度範囲Zの始まり)まで、回転板10を正の向きに回転させる工程である。
【0048】
回避回転工程が開始されて所定の期間が経過すると、本体制御部PLCから電磁制御弁V1のソレノイドSOLaへ制御信号が出力されて、電磁制御弁V1が第1連通位置に切り替えられ、押込シリンダ24が収縮作動を開始する。これにより、押込板20は後方の塵芥投入口4側へ回動し始めて戻り工程が開始され、この押込板20が後退限界位置に達すると、スイッチLS2からオン信号が出力される。これを受けて、本体制御部PLCがソレノイドSOLaへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V1が中立位置に復帰し、押込板20の回動が停止し、戻り工程が終了する。
【0049】
また、そうして押込板20が回動している戻り工程中も回転板10の回転は継続しており、回転板10が後方への回転から下方への回転に移行すると、前記回避回転工程から続いて回転板10の掻上回転工程が開始される。この掻上回転工程は、塵芥投入口4の前縁部(上縁部)4aの真下(角度範囲Zの始まり)から設定停止位置まで、回転板10を正の向きに回転させる工程である。
【0050】
掻上回転工程が開始されると、回転板10は、角度範囲Zを通過して、塵芥Gを塵芥収容箱2側に掻き込んで行く。こうして回転する回転板10が設定停止位置に至ると、スイッチLS3からオン信号が出力される。これを受けて本体制御部PLCが、電磁制御弁V2のソレノイドSOLcへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V2が中立位置に復帰し、油圧モータ13の回動が停止して、回転板10の回転が停止し、掻上回転工程が終了する。
【0051】
また、前記掻上回転工程が終了すると、本体制御部PLCは、電磁制御弁V1のソレノイドSOLbへ制御信号を出力し、電磁制御弁V1が第2連通位置に切り替えられて、押込シリンダ24が伸長作動を開始することで、押込板20が後退限界位置から前方へ回動し始め、押込工程が開始される。
【0052】
こうして、前方の塵芥収容箱2側に回動する押込板20が、回転板10上の塵芥Gを塵芥収容箱2に押し込んで行き、前進限界位置に達すれば、スイッチLS1からオン信号が出力される。これを受けて本体制御部PLCがソレノイドSOLbへの制御信号の出力を停止することで、電磁制御弁V1が中立位置に復帰し、押込シリンダ24の伸長作動、つまり、押込板20の前方への回動が停止し、押込工程が終了して、1サイクルの動作が終了する。
【0053】
また、図6に示すように、イグニッションスイッチSWK及びPTOスイッチSWPの中間において、通電ラインK6の上流端が接続されており、この通電ラインK6には、画像処理ユニット9が接続されている。イグニッションスイッチSWKがオンになると、この通電ラインK6を介して、画像処理ユニット9に電力が供給される。画像処理ユニット9は、通電ラインK7を介してカメラユニット7のカメラ71に接続されている。また、画像処理ユニット9には、通電ラインK8を介して、車両の運転操作に基づく後退信号が入力されるようになっている。
【0054】
画像処理ユニット9は、本発明における人物検出部の機能を有するものである。また、画像処理ユニット9は、本体制御部PLCと合わせて本発明における制御装置を構成する。
【0055】
具体的に説明すると、画像処理ユニット9には、所定のプログラムを実行して各種の制御を行う中央処理部CPU、カメラ71からの画像データを取得し画像処理を行う画像処理部DSP、中央処理部CPUや画像処理部DSPにおいて使用されるデータを記憶する記憶部としてのメモリM、中央処理部CPUの指令を受けて監視用のモニタ93(図1参照)に画像処理の結果等を表示させる画像出力部VOP、データログの時刻を計時する計時部C、カメラ71の制御を行うカメラ制御部(図示省略)等が設けられている。画像処理部DSPは、画像処理ロジックを高速で行う集積回路であり、例えば図9のフローチャートに示すような人物認識処理のルーチンを実行する。尚、リレーコイルR1の接点r1よりも上流側において通電ラインK3から分岐するように、通電ラインK9の上流端が接続されており、この通電ラインK9を介して計時部Cへの電力供給が行われる。このため、イグニッションスイッチSWKがオフの場合にも、計時部Cへの通電が常時行われるようになっている。
【0056】
また、画像処理ユニット9には、通電ラインK5から分岐する通電ラインK10が接続されている。この通電ラインK10は、画像処理ユニット9による人物認識処理について、塵芥積込装置8の塵芥排出動作の際は機能せず、塵芥積込装置8の塵芥積込動作の際に機能するための積込信号ラインになっている。通電ラインK10は、切替スイッチSW6の積込側に接続されており、PTOスイッチSWPがオンであって、切替スイッチSW6が積込側に切り替えられている場合に、画像処理ユニット9に積込ライン信号が入力されるようになっている。
【0057】
画像処理ユニット9と、本体制御部PLCとの間には、作動スイッチSWSが介在されている。画像処理ユニット9には、人物安全信号の出力ポートが設けられており、この出力ポートと作動スイッチSWSとが通電ラインK16により接続されている。また、画像処理ユニット9には、データログ開始信号の入力ポートが設けられており、この入力ポートと作動スイッチSWSとが通電ラインK17により接続されている。また、作動スイッチSWSには、通電ラインK10から分岐された通電ラインK15が接続されている。
【0058】
作動スイッチSWSがオン側に切り替えられている場合、通電ラインK16と通電ラインK12とを介して、画像処理ユニット9の人物安全信号の出力ポートと本体制御部PLCとが接続される。
【0059】
ここで、画像処理ユニット9から出力される人物安全信号は、通電ラインK16と通電ラインK12とを通って本体制御部PLCに入力されるようになっている。しかし、塵芥積込装置8の塵芥積込動作の際に人物が侵入禁止エリア(後述の第2の検知エリアY12)に入ると、画像処理ユニット9から人物安全信号が出力されず、本体制御部PLCに人物安全信号が入力されない。本体制御部PLCは、人物安全信号の入力がないことを条件の1つとして、塵芥積込装置8の塵芥積込動作の緊急退避停止を行うようになっている。
【0060】
また、作動スイッチSWSがオン側に切り替えられている場合、通電ラインK6から分岐された通電ラインK11が通電ラインK17と接続される。この場合、イグニッションスイッチSWKがオンになると、通電ラインK6に通電が行われることにより、通電ラインK11と通電ラインK17を通じて、データログ開始信号が画像処理ユニット9に送られる。そして、それをトリガとしてデータログが実行される。
【0061】
一方、作動スイッチSWSがオフ側に切り替えられている場合、通電ラインK15と通電ラインK12とを介して、通電ラインK10と本体制御部PLCとが接続される。この場合、画像処理ユニット9に積込ライン信号が入力されているときに、通電ラインK10からの電圧が、人物安全信号の代わりに本体制御部PLCに入力される。このため、画像処理ユニット9が侵入禁止エリアで人物を認識したか否かにかかわらず、本体制御部PLCは、人物安全信号の入力が常時あると認識するようになっている。
【0062】
尚、作動スイッチSWSがオフ側に切り替えられている場合、通電ラインK17への通電は行われず、データログは開始されないようになっている。
【0063】
また、画像処理ユニット9と、本体制御部PLCとの間には、停止解除スイッチ63に対応するスイッチSW4が介在されている。スイッチSW4は、通電ラインK10から分岐された通電ラインK13に介設されている。停止解除スイッチ63がオン操作されていない場合には、スイッチSW4がオフ状態になっており、本体制御部PLCには、信号が入力されないようになっている。一方、停止解除スイッチ63がオン操作された場合には、スイッチSW4がオン状態になり、画像処理ユニット9に積込ライン信号が入力されているときに、通電ラインK10からの電圧が、停止解除のオン信号として本体制御部PLCに入力されるようになっている。尚、塵芥積込装置8の塵芥排出動作の際には、画像処理ユニット9に積込ライン信号が入力されないため、停止解除スイッチ63の機能が無効になる。
【0064】
本体制御部PLCは、停止解除スイッチ63のオン信号を認識した場合、画像処理ユニット9からの人物安全信号の入力がなくなったとしてもそれを条件として塵芥積込装置8の塵芥積込動作の緊急退避停止を行わないようになっている。
【0065】
画像処理ユニット9には、運転席周辺に配設されているパイロットランプ(図示省略)、塵芥投入口4の近傍に配設されている報知部としての作動中ランプ72及び検出ランプ73が電気的に接続されており、それらの点灯制御が中央処理部CPUにより行われる。また、画像処理ユニット9には、後退警告音を出力するブザー91が接続されており、この制御についても中央処理部CPUにより行われる。作動中ランプ72、検出ランプ73及びブザー91の低電位側は、通電ラインK14を介してグランドラインK1に接続されている。
【0066】
また、図1図3図7に示すように、塵芥投入箱3の背面の上部、言い換えれば、塵芥投入口4の上方にはカメラ71が配設され、その撮像レンズ71aが後方の斜め下に向けられている。図7図8には、塵芥投入口4の近傍に立った人物(作業者等)Hが両腕を前方に伸ばして、塵芥G(図7図8では、ごみ袋)を積み込む様子が示されている。カメラ71は、図7図8に一例を示すように塵芥投入口4及びその後方の所定範囲を撮影する。
【0067】
カメラ71の撮像レンズ71aの光軸は、図3のX1線に沿う方向に延びており、塵芥投入口4の後方を撮影するために、鉛直下向きから後方に振り向けられて、塵芥投入口4の近傍の人物H及び塵芥Gを上方から撮影するようになっている。そして、カメラ71によって撮影(取得)され、画像処理ユニット9に入力された画像のデータに基づいて、画像処理ユニット9は、作業者等の人物Hが塵芥投入口4及びその後方の人物検出用エリア(図8において破線で囲まれたエリアと実線で囲まれたエリア)にいるか否かを判定するようにしている。また、画像処理ユニット9が人物検出用エリアのうち第2の検知エリアY12に人物Hがいると判定すれば、本体制御部PLCは、塵芥積込装置8の塵芥積込動作を緊急に退避及び停止させるか否かを判定するようにしている。
【0068】
具体的に説明すると、積込用の人物検出用エリアは、第1の検知エリアY11(図8に破線で示す)と第2の検知エリアY12(図8に実線で示す)とに分かれている。第2の検知エリアY12は、第1の検知エリアY11よりも塵芥投入口4の近傍に設けられ、侵入禁止エリアとしての機能を有している。画像処理ユニット9は、第1の検知エリアY11又は第2の検知エリアY12に人物Hがいるか否かを判定し、侵入禁止エリアとしての第2の検知エリアY12に人物Hがいると判定すれば退避停止信号を本体制御部PLCに送り、本体制御部PLCが塵芥積込装置8の塵芥積込動作を退避停止させるようにしている。例えば、第1の検知エリアY11は、作業者が塵芥積込作業を行う際の通常エリアであり、塵芥投入口4の近傍の矩形のエリアに設定される。第2の検知エリアY12は、塵芥投入口4の前縁部4aと後縁部4b近傍との間の矩形のエリアに設定される。この第2の検知エリアY12は、少なくとも塵芥投入口4の前縁部(上縁部)4a、後縁部(下縁部)4b、左縁部4c、及び右縁部4dで囲まれた領域の一部を含むように設定される。
【0069】
これに加え、車両の後退時、人物Hが塵芥投入口4の後方の第3の検知エリアY2(図7図8に1点鎖線で示す)にいるか否かが画像処理ユニット9により判定される。そして、第3の検知エリアY2に人物Hがいると判定すれば、画像処理ユニット9が運転者に報知して注意を喚起するようにしている。第3の検知エリアY2は、第2の検知エリアY12、第1の検知エリアY11、及びその後方のエリアを含む矩形のエリアに設定される。尚、モニタ93上には、カメラ71の画像と共に、第1の検知エリアY11の外縁に対応するライン(図8に破線で示す)、第2の検知エリア(侵入禁止エリア)Y12の外縁に対応するライン(図8に実線で示す)、第3の検知エリアY2の外縁に対応するライン(図8に1点鎖線で示す)が表示されている。
【0070】
-人物認識処理のルーチン-
次に、図9のフローチャートを参照して、塵芥収集車100で行われる人物認識処理のルーチンについて説明する。この人物認識処理は、塵芥収集車100において、積込スイッチSW5がオンになっており、塵芥積込装置8の塵芥積込動作が行われている場合に、画像処理ユニット9によって実行される。
【0071】
図9に示す人物認識処理を行うにあたって、画像処理ユニット9の中央処理部CPUは、人物認識処理に用いる特徴データ(辞書データ)を積込用特徴データに設定し、また、人物検出判定に用いる検知エリアを積込用の人物検出用エリアに設定する。積込用特徴データは、人物認識処理の際に参照されるものであって、画像処理ユニット9のメモリMに格納されている。積込用特徴データは、予め多くの人物の頭部の画像を撮影して、その大きさや形状等の特徴を抽出したものである。積込用特徴データとして抽出される特徴については、人物を上方から見たときの頭部形状を主体としている。積込用の人物検出用エリアは、人物検出判定の際に用いられるものであって、画像処理ユニット9のメモリMに格納されている。上述したように、積込用の人物検出用エリアは、作業者が塵芥積込作業を行う際の通常エリアとして設定された第1の検知エリアY11と、侵入禁止エリアとしての第2の検知エリアY12とに分かれており、それぞれのエリアがメモリMに格納されている。
【0072】
ステップS1において、画像処理ユニット9の画像処理部DSPによって、人物検出処理が実行される。この人物検出処理では、先ず、カメラ71によって撮影され、画像処理ユニット9に入力される画像のデータ(入力画像データ)に対する二値化処理が、画像処理部DSPによって行われる。この二値化処理は、例えば、入力画像データについて各画素の輝度値が予め設定された閾値以上である場合に最大輝度値とし、閾値未満であれば最小輝度値とする処理である。生成される二値化画像データは、ノイズや光量変化の影響の多くが除去されたものとなる。
【0073】
次に、二値化画像データに対するラベリング処理が、画像処理部DSPによって行われる。このラベリング処理は、二値化画像データにおいて互いに近接する各画素を領域化するものであり、例えば同じ輝度値に属すると共に、所定距離内で密接する複数の画素について1つの領域とみなす処理である。ラベリング処理は画像平面全体について行われ、これにより1つの領域とされたものが、それぞれ物体像として抽出される。
【0074】
そして、画像処理部DSPによって、上述した第1の検知エリアY11又は第2の検知エリアY12内で検知されたそれぞれの物体像についての人物識別処理が行われる。本実施形態では、塵芥投入口4の上方にカメラ71を配設し、下方の塵芥投入口4近傍をほぼ真上から撮影するようにしている。このため、その画像には、図8に一例を示すように人物の頭部が大きく表示されると共に、上方から見た顔の一部も表示されることになる。そこで、予め設定されている積込用特徴データを参照し、この積込用特徴データの条件を満たすような物体像を、人物の頭部であると判定する。
【0075】
次に、ステップS2では、画像処理ユニット9の中央処理部CPUがステップS1の判定結果に基づいて処理の流れを決める。具体的には、ステップS1でカメラ71によって撮影された画像のデータに、人物の頭部であると判定された物体像が含まれるという判定結果が出た場合には、ステップS3へ進む。一方、ステップS1で当該物体像が含まれないという判定結果が出た場合には、ステップS1へ戻る。
【0076】
ステップS3において、画像処理ユニット9の中央処理部CPUによって、人物が第2の検知エリア(侵入禁止エリア)Y12(以下、侵入禁止エリアY12と略す場合がある)に存在するか否かが判定される。人物が侵入禁止エリアY12に存在すると判定された場合には、ステップS4へ進む。一方、人物が第2の検知エリアY12に存在すると判定されなかった場合、言い換えれば、人物が第1の検知エリア(通常エリア)Y11に存在すると判定された場合には、ステップS5へ進む。
【0077】
ステップS4において、画像処理ユニット9の中央処理部CPUは、検出ランプ73のオン信号を出力して検出ランプ73を点灯させ、人物の検出中であることを報知する。また、塵芥積込装置8の塵芥積込動作の緊急退避停止処理を行うよう人物安全信号の出力をオフにする。これにより、本体制御部PLCは、人物安全信号の入力がないことを条件の1つとして、塵芥積込装置8の塵芥積込動作の緊急退避停止処理を行い、ルーチンを終了する(エンド)。この本体制御部PLC(緊急退避停止部)による塵芥積込装置8の塵芥積込動作の緊急退避停止処理は、図10に示すサブフローチャートに基づいて行われる。
【0078】
一方、ステップS5では、人物安全信号の出力はオフにならない(オン状態の)ため、塵芥積込装置8の塵芥積込動作の緊急退避停止処理は行われない。このステップS5において、画像処理ユニット9の中央処理部CPUは、検出ランプ73のオン信号を出力して検出ランプ73を点灯させ、人物の検出中であることを報知する。そして、ルーチンを終了する(エンド)。
【0079】
-塵芥積込動作の緊急退避停止処理のルーチン-
次に、図10に示すフローチャートを参照して、本体制御部PLCによる塵芥積込装置8の塵芥積込動作の緊急退避停止処理のルーチンについて説明する。本体制御部PLCは、画像処理ユニット9の中央処理部CPUから人物安全信号の出力がないことを条件として、緊急退避停止処理のルーチンを開始する。この本体制御部PLCが行う緊急退避停止処理は、回転板式の塵芥収集車100の回転板10が何れの工程にあるかによって、異なる緊急退避停止処理が行われる。
【0080】
具体的には、ステップE1において、本体制御部PLCは、回転板(積込板)10が掻上回転工程にあるか否かを判定する。この判定は、スイッチLS4からオン信号が出力されてからスイッチLS3がオン信号を出力するまでの期間、すなわち、回転板10が回避回転工程の終了時点の位置から下方に回転し始めた後、回転板10が設定停止位置に到達するまでの期間を掻上回転工程と判断することにより行われる。
【0081】
前記ステップE1での判定により、回転板10が掻上回転工程にある場合には、ステップE2に進む。ステップE2において、本体制御部PLCは、回転板10が角度範囲Z内にあるかどうかを判定する。具体的には、本体制御部PLCは、スイッチLS4からオン信号の入力がある間、角度範囲Z内にあると判定する。
【0082】
このステップE2での判定により、回転板10が角度範囲Z内にある場合には、ステップE3に進む。
【0083】
ステップE3では、本体制御部PLCが押込板20を戻り工程後に停止させた状態で回転中の回転板10のみを逆転方向へ回動させ、その逆転動作をタイマにより所定時間だけ継続する退避動作を行う。図11は、この回転板10の退避動作の一例を示している。同図の一例では、回転板10が塵芥投入口4の後縁部(下縁部)4bに最も近接した同図中実線で示す位置にある時に、画像処理ユニット9によって人物が侵入禁止エリアY12に存在すると判定された場合に、同図に符号Eで示すように回転板10が所定時間逆転方向(上方向)に回動した退避動作行い、同図中二点鎖線で示す回転板10の位置にて退避動作を終了している。そして、その所定時間の逆転動作(退避動作)が終了すると、その退避動作した回転板10の位置にて塵芥積込動作を停止して、ルーチンを終了する(エンド)。
【0084】
一方、ステップE1での判定により、回転板10が掻上回転工程にない場合、すなわち、押込板20が戻り工程や押込工程にある場合、及び回転板10が回避回転工程にある場合には、ステップE4に進む。また、ステップE2での判定により、回転板10が掻上回転工程中であるが角度範囲Z内にない場合にも、ステップ4に進む。
【0085】
ステップE4では、本体制御部PLCにより、緊急停止スイッチSW1~SW3(緊急停止ボタン60,61や、緊急停止プレート62)の何れかが操作されたかどうかが判定される。当該操作があったと判定された場合、ステップE5に進む。当該操作がなかったと判定された場合、ステップE6に進む。
【0086】
ステップE5では、本体制御部PLCが回転板10の逆転方向への回動動作(退避動作)を行わず、直ちに塵芥積込動作を停止させる。ステップE5では、回転板10が作業者の巻き込み危険性のない位置にあり、かつ、作業者が意志をもって塵芥積込装置8の積込
動作を一時停止させる場合である。そのため、退避動作なく直ちに塵芥積込動作を停止させることで、作業者にとって意図しない動きや作業時間のロスを抑制できる。
【0087】
ステップE5における塵芥積込動作の停止後は、ルーチンを終了する(エンド)。
【0088】
一方、ステップE6では、本体制御部PLCは、人物安全信号の入力がないにも拘わらず、1サイクルの途中で回転板10の塵芥積込動作を停止させることをしない。これにより、危険性がないにも拘わらず塵芥積込装置8の積込動作が自動的に停止されるという誤動作を抑制することができ、作業者の作業性を良くしている。ステップE6では、本体制御部PLCは、回転板10を設定停止位置まで回転させて、ルーチンを終了する(エンド)。
【0089】
上述したように、本実施形態では、回転板式の塵芥収集車100において、塵芥投入箱3の内部に配設された塵芥積込装置8と、前記塵芥投入箱3に開口された塵芥投入口4の近傍の物体像を取得する物体像取得部(カメラ71)と、前記塵芥積込装置8の駆動を制御する制御装置と(本体制御部PLC及び画像処理ユニット9)、を備え、前記制御装置は、前記物体像取得部によって取得された物体像が人物であるか否かを認識すると共に、前記塵芥投入口4近傍の侵入禁止エリアY12に人物が入っているか否かを判定する人物検出部と、前記塵芥積込装置8の駆動中に前記人物検出部により前記侵入禁止エリアY12に人物が入っていると判定された場合に、前記塵芥積込装置8を退避動作させてから停止させる緊急退避停止部(本体制御部PLC)と、を有している。
【0090】
本実施形態によれば、塵芥積込装置8の駆動中において、塵芥投入口4近傍の侵入禁止エリアY12に人物が入っていると人物検出部により判定された場合には、塵芥積込装置8を一旦退避動作させ、その後に、この退避した状態で塵芥積込装置8を停止させるように構成されている。従って、この退避動作によって、例えば塵芥積込装置8の可動先端部分と塵芥投入箱3の内底部3cとの隙間は、塵芥積込装置8が直ちに(すなわち、退避動作をせずに)停止した場合に比して、広がることになる。その結果、塵芥投入口4近傍の侵入禁止エリアY12に入った作業者等の人物の服が塵芥投入箱3内のごみや塵芥積込装置8に引っ掛かった状態となった場合であっても、その引っ掛かりを解除するための作業者等の動作範囲が拡大しているので、作業者等はその引っ掛かりを容易に解除できて、塵芥積込装置8に巻き込まれそうな状態から短時間で脱出し易くなる。よって、作業者等の安全をより早期に確保することができる。また、そのように短時間での脱出が可能であるので、塵芥積込装置8の駆動の再開を早めることができ、より安全で作業効率の良い塵芥収集車となる。
【0091】
本実施形態では、塵芥積込装置8は、塵芥投入口4に投入された塵芥Gを塵芥投入箱3に積み込む回転板(積込板)10を備え、前記緊急退避停止部によって行われる退避動作は、前記回転板10の塵芥積込動作を所定時間反転させるように構成されている。従って、塵芥積込装置8が駆動されて回転板10が塵芥積込動作を行っている際に、作業者等の人物が侵入禁止エリアY12に入っていると判定されると、回転板10は塵芥積込動作を所定時間反転する退避動作をするので、たとえ作業者等の服がその塵芥積込動作中の回転板10に引っ掛かってしまった場合であっても、退避動作した回転板10と服との引っ掛かりが緩くなって、その引っ掛かりを容易に外すことができる。よって、作業者等は回転板10に巻き込まれそうな状態から容易に脱出することが可能になる。
【0092】
更に、本実施形態では、塵芥収集車100は回転板式であって、塵芥積込装置8は、前後方向に回動する押込板20と、前記押込板20の下方に配置された基端(回転軸11)を中心として回転可能な前記回転板(積込板)10とを備えている。また、この押込板20と回転板10を備えた塵芥積込装置8では、前記回転板10が前記押込板20の後方回動動作と干渉しない位置にまで回転する回避回転工程と、前記押込板20が後方に回動する戻り工程と、前記回転板10が塵芥Gを掻き上げるように回転する掻上回転工程と、前記押込板20が前方に回動する押込工程とを含む1サイクルの積込動作を行うように構成されていて、前記退避動作は、前記掻上回転工程中に前記侵入禁止エリアY12に人物が入っていると判定された場合に、回転板10のみを所定時間逆転方向へ回転させるものである。
【0093】
従って、回転板式の塵芥収集車100において、回転板10の掻上回転工程、特に、回転板10が塵芥投入口4近傍の角度範囲Z(図3参照)内で前方に向かって(同図中の時計方向に)回転する状況では、塵芥投入口4近傍の侵入禁止エリアY12に人物が入っていると人物検出部により判定されると、その人物の服が回転板10に引っ掛かる可能性が高くなる。しかし、この回転板10のみが所定時間反転(半時計方向に逆回転)する退避動作をするので、たとえその人物の服が回転板10に引っ掛かったとしても、その引っ掛かりが回転板10の退避動作(所定時間の逆回転動作)によって外し易くなって、その人物は回転板10に巻き込まれそうな状態から容易に脱出することが可能になる。
【0094】
一方、回転板10が回避回転工程にある場合や、押込板20が戻り工程又は押込工程にある場合は、その押込板20及び回転板10は塵芥投入箱3の内底部3cよりも上方に十分高い位置にあったり、塵芥投入口4よりも前方に十分離れた位置にある。このため、塵芥投入口4近傍の侵入禁止エリアY12に人物(作業者)が入っていると判定された場合であっても、その人物の服が押込板20や回転板10と引っ掛かる可能性は高くない状況となっている。従って、これらの回避回転工程、戻り工程及び押込工程にあって、作業者により緊急停止ボタン60,61や、緊急停止プレート62の何れかが操作された場合には、回転板10又は押込板20の退避動作(反転動作)は行わず、直ちに回転板10又は押込板20を停止させるだけの動作で問題はない。
【0095】
尚、本実施形態では、回転板10の掻上回転工程における回転板10の退避動作は、タイマを用いて所定時間継続させたが、その他、例えば、予め設定した回転板10の退避位置を検出するスイッチを配置し、このスイッチのオン信号の出力により回転板10の退避動作を終了する構成を採用してもよい。また、回転板10の回転軸11に角度センサを取り付け、回転板10を所定角度だけ逆回転させる退避動作を行うようにしてもよい。
【0096】
-第2実施形態-
図12は、塵芥収集車の第2実施形態を示す。前記第1実施形態では回転板式の塵芥収集車100に本発明を適用した例を示したが、本実施形態では、プレス式の塵芥収集車に本発明を適用した例を示す。
【0097】
図12は塵芥収集車101の要部の側面図である。同図において、プレス式の塵芥収集車101において、塵芥投入箱3には摺動板30と、積込板31とが配置されている。積込板31は、摺動板30の下端に軸部31aにより前後方向に回動可能に連結されている。
【0098】
前記摺動板30は、その上端及び下端に設けた回転可能な案内ローラ32を備える。該案内ローラ32は、塵芥投入箱3の左右の側壁に設けた後斜め下向きに延びる案内溝部(図示省略)に摺動可能に係合されている。また、摺動板30の上部の側部には支持軸34が挿通されている。支持軸34には、油圧シリンダからなる摺動シリンダ(図示省略)が連結されていて、この摺動シリンダの伸縮動作により、摺動板30は案内溝部に沿って後斜め下方向に傾斜した角度で昇降自在に移動するようになっている。
【0099】
前記積込板31には、前記軸部31aよりも後方に設けた接続部31bにおいて、油圧シリンダからなる回動シリンダ(図示省略)が連結されている。この回動シリンダの伸縮動作により、積込板31は前後方向に回動するように構成されている。
【0100】
また、塵芥収容箱2には、前後に移動可能な排出板35が配置されている。該排出板35の前方には、油圧シリンダよりなる排出シリンダ36が前後方向に配置され、その後端は排出板35の下部に固定され、その前端は塵芥収容箱2の前壁に固定されている。
【0101】
前記プレス式の塵芥収集車101では、塵芥積込装置8’は塵芥積込動作の1サイクルを図12に示すように行う。具体的には、摺動板30が同図に示す上昇位置にあって積込板31の先端部が前端位置にあるときに積込板31を回動シリンダにより軸部31aを中心に後方に回動させる反転工程Aと、この反転工程Aから摺動板30を摺動シリンダにより積込板31と共に前記上昇位置から所定距離下降させて下降位置に位置付ける下降工程Bと、この下降位置から積込板31を回動シリンダにより軸部31aを中心に塵芥投入箱3の内底部3cに沿って前方に回動させる圧縮工程Cと、この圧縮工程Cから摺動板30を摺動シリンダにより積込板31と共に前記下降位置から前記所定距離上昇させて前記上昇位置に位置付ける上昇工程Dと、を1サイクルとして動作するようになっている。
【0102】
このようにして、塵芥積込装置8’は前記1サイクルを繰り返し行うことにより、塵芥投入箱3内に投入された塵芥Gを塵芥収容箱2内に送り込む。
【0103】
前記塵芥積込装置8’では、塵芥投入箱3内に、4個のスイッチLS5~LS8が配置されている。スイッチLS5とスイッチLS7は、積込板31を回動させる回動シリンダの動きを検知する。スイッチLS5は、積込板31の先端部が後端位置にあるときにオン信号を出力する。また、スイッチLS7は積込板31が前端位置にあるときにオン信号を出力する。スイッチLS6とスイッチLS8は、摺動板30を昇降させる摺動シリンダの動きを検知する。スイッチLS6は積込板31が下降位置にあるときにオン信号を出力する。また、スイッチLS8は積込板31が上昇位置にあるときにオン信号を出力する。
【0104】
前記4個のスイッチLS5~LS8のオン信号は、本体制御部(図6に示した本体制御部PLCと同様の制御部)に出力される。この本体制御部(緊急退避停止部)は、前記第1実施形態の図9に示した人物認識処理のルーチンを画像処理ユニット(人物検出部)が実行し、塵芥投入口4近傍の侵入禁止エリアY12に人物が入っていると判定した場合には、塵芥積込装置8’の退避動作を行った後、その退避動作後の位置にて塵芥積込装置8’を停止させる。本実施形態では、図9の人物認識処理のルーチンのうち、ステップS4で行われる本体制御部による塵芥積込動作の緊急退避停止処理の内容が異なる。
【0105】
図13は、前記本体制御部が行う塵芥積込装置8’の塵芥積込動作の緊急退避停止処理のルーチンを具体的に示したフローチャートである。同図では、ステップF1において、塵芥積込装置8’が下降工程Bにあるか否かを判定する。この下降工程Bにあるか否かの判定は、具体的には、スイッチLS5がオン信号を出力した状態でスイッチLS8がオフ信号を出力した時点からスイッチS6がオン信号を出力した時点までの期間の検出により行う。
【0106】
そして、下降工程Bにある場合には、ステップF2において、タイマにより所定期間を計測し、その所定期間の間だけ摺動板30のみを動かして摺動板30及び積込板31を上方に上昇させる退避動作を行い、その後に、その退避動作した位置にて摺動板30及び積込板31を停止させる。図14は、この下降工程Bでの退避動作及び停止の一例を示している。同図の一例では、摺動板30及び積込板31が同図に実線で示すように下降工程Bの途中にある時に、人物の手hが侵入禁止エリアY12に存在すると判定された場合に、同図に符号Fで示すように摺動板30及び積込板31が所定時間反転方向(斜め前上方向)に移動した退避動作を行い、同図中二点鎖線で示す摺動板30及び積込板31の位置にて退避動作を終了している。そして、その所定時間の退避動作が終了すると、その退避動作した摺動板30及び積込板31の位置にて塵芥積込動作を停止して、ルーチンを終了する(エンド)。
【0107】
一方、下降工程Bにない場合には、ステップF3において、塵芥積込装置8’が圧縮工程Cにあるか否かを判定する。この圧縮工程Cにあるか否かの判定は、具体的には、スイッチLS6がオン信号を出力した状態でスイッチLS5がオフ信号を出力した時点からスイッチLS7がオン信号を出力した時点までの期間の検出により行う。
【0108】
前記ステップF3での判定により圧縮工程Cにある場合には、積込板31のみを後方に回動させる退避動作を行い、この積込板31が圧縮工程Cの開始直前位置(すなわち、下降工程Bの終了位置)にまで回動するまでの所定時間の間、前記退避動作を継続し、その所定時間が経過した時点で退避動作を終了して、その退避動作した位置にて積込板31を停止させる。前記積込板31が圧縮工程Cの開始直前位置まで回動した時点の検出は、スイッチLS5がオン信号を出力したことにより行う。
【0109】
図15は、この圧縮工程Cでの積込板31の退避動作及び停止の一例を示している。同図の一例では、積込板31が同図に実線で示すように圧縮工程Cの開始から若干前方に回動した時に、人物の手hが侵入禁止エリアY12に存在すると判定された場合に、同図に符号Jで示すように積込板31のみが反転方向(斜め後上方向)に回動した退避動作を行い、同図中二点鎖線で示す圧縮工程Cの開始直前の積込板31の位置にて退避動作を終了している。そして、その所定時間の退避動作が終了すると、その退避動作した積込板31の位置にて塵芥積込動作を停止して、ルーチンを終了する(エンド)。
【0110】
尚、圧縮工程Cでの積込板31の退避動作は、圧縮工程Cの開始直前位置に後退するまでの所定時間行ったが、タイマにより予め定めた所定時間を計測し、その所定時間だけ積込板31の退避動作を行うように構成してもよい。
【0111】
また、前記ステップF3において圧縮工程Cにないと判定された場合、すなわち、塵芥積込装置8’が上昇工程D又は反転工程Aにある場合には、ステップF5に進む。
【0112】
ステップF5では、本体制御部により、緊急停止スイッチの何れかが操作されたかどうかが判定される。当該操作があったと判定された場合、ステップF6に進む。当該操作がなかったと判定された場合、ステップF7に進む。
【0113】
ステップF6では、本体制御部が摺動板30や積込板31の退避動作を行わず、直ちに塵芥積込動作を停止させる。ステップF6では、積込板31が作業者の巻き込み危険性のない位置にあり、かつ、作業者が意志をもって塵芥積込装置8’の積込動作を一時停止させる場合である。そのため、退避動作なく直ちに塵芥積込動作を停止させることで、作業者にとって意図しない動きや作業時間のロスを抑制できる。
【0114】
ステップF6における塵芥積込動作の停止後はルーチンを終了する(エンド)。
【0115】
一方、ステップF7では、本体制御部は、人物安全信号の入力がないにも拘わらず、1サイクルの途中で摺動板30や積込板31の塵芥積込動作を停止させることをしない。これにより、危険性がないにも拘わらず塵芥積込装置8’の積込動作が自動的に停止されるという誤動作を抑制することができ、作業者の作業性を良くしている。
【0116】
ステップF7では、本体制御部は、上昇工程Dの終わり(摺動板30を上昇位置にすると共に積込板31を前端位置にした設定位置)で、ルーチンを終了する(エンド)。
【0117】
上述したように、本実施形態では、プレス式の塵芥収集車101において、塵芥積込装置8’は、昇降自在な摺動板30と、前記摺動板30の下端に前後回動可能に連結される積込板31とを備え、前記積込板31を後方に回動させる反転工程Aと、前記積込板31と共に摺動板30を下降させる下降工程Bと、前記積込板31を前方に回動させる圧縮工程Cと、前記積込板31と共に摺動板30を上昇させる上昇工程Dとを含む1サイクルの積込動作を行うように構成され、退避動作は、前記下降工程Bと前記圧縮工程Cの両方の工程において行うように構成されている。
【0118】
従って、本実施形態では、塵芥積込装置8’の1サイクルのうち、下降工程B及び圧縮工程Cの両方、すなわち、積込板31が塵芥投入箱3の内底部3cに向かって動作している状況では、塵芥投入口4近傍の侵入禁止エリアY12に人物が入っていると人物検出部により判定されると、その人物の服が積込板31に引っ掛かる可能性が高くなる。しかし、この下降工程B及び圧縮工程Cの両方で退避動作が行われるので、たとえ作業者等の服が積込板31に引っ掛かった場合であっても、退避動作によって、積込板31と塵芥投入箱3の内底部3cとの隙間が広がって、作業者等は積込板31から服の引っ掛かりを外し易くなる。よって、作業者等が積込板31に巻き込まれそうな状態から脱出し易くすることが可能になる。
【0119】
また、本実施形態では、人物検出部により侵入禁止エリアY12に人物が入っていると判定された場合において、塵芥積込動作の退避動作は、下降工程B中では積込板31と共に摺動板30を所定時間上昇させるものであり、圧縮工程C中では積込板31のみを所定時間後方へ回動させるものである。
【0120】
すなわち、本実施形態では、塵芥積込装置8’による塵芥積込動作において、下降工程B中に人物が侵入禁止エリアY12に入っていると判定された場合には、下降動作していた摺動板30と積込板31との両方が所定時間上昇する退避動作が行われ、圧縮工程C中に人物が侵入禁止エリアY12に入っていると判定された場合には、前方に回動していた積込板31のみが反転(後方に回動)する退避動作が行われれる。従って、たとえ作業者等の服が積込板31に引っ掛かった場合であっても、その退避動作によって、積込板31と塵芥投入箱3の内底部3cとの隙間が広がるので、作業者等は積込板31から服の引っ掛かりを外し易くなり、作業者等が積込板31に巻き込まれそうな状態から脱出し易くすることが可能になる。
【0121】
また、前記下降工程B中及び圧縮工程C中で行う退避動作は、服の引っ掛かった作業者等にとっては意図しない動きであるが、この退避動作が大きい場合には、作業者にとって意図しない動きの範囲が大きくなって、二次災害が生じる可能性が生じる。しかし、本実施形態では、この退避動作を必要最小限に留めることができるので、二次災害の可能性を小さく抑制することができる。更に、侵入禁止エリアY12に人物が入っているとの人物検出部の判断が誤りで、誤認識で摺動板30や積込板31が退避動作してしまった場合にも、その退避動作が小さいので、摺動板30や積込板31を退避動作前の元の位置に短時間で復帰させることができ、塵芥積込動作の作業時間のロスを最小限に抑制することが可能である。
【0122】
尚、本実施形態では、プレス式の塵芥収集車101において、塵芥積込装置8’の下降工程B中及び圧縮工程C中の両方で退避動作を行ったが、下降工程B中又は圧縮工程C中の何れか一方のみで退避動作を行った場合であっても、作業者等が積込板31に巻き込まれそうな状態から脱出し易くできる効果を生じさせることが可能である。
【0123】
-その他の実施形態-
今回、開示した第1及び第2実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0124】
上述した人物検出用エリア(第1の検知エリアY11、第2の検知エリアY12)は一例であって、前記以外のエリアを採用してもよい。例えば、塵芥投入口4の後縁部4bよりも前方側のエリア全体を第2の検知エリアY12(侵入禁止エリア)として設定してもよい。
【0125】
前記第1実施形態では、物体像取得部としてカメラ71を用いたが、物体像取得部はカメラ71以外であってもよく、例えば、距離画像センサや、ステレオカメラ、3D-LIDAR等のような画像の取得及び距離の計測が可能なものであってもよい。
【0126】
また、前記第1実施形態では、制御装置として塵芥収集車100に本体制御部PLC及び画像処理ユニット9を設けた場合について説明したが、塵芥収集車100に単一の制御装置のみを設ける構成としてもよい。例えば、本体制御部PLCに画像処理ユニット9の機能も備えさせ、本体制御部PLCに、図9のフローチャートを実行させるようにしてもよい。
【0127】
更に、前記第1実施形態では、角度範囲Zを、回転板10が塵芥投入口4の前縁部(上縁部)4aの真下から、その後方へ回転しつつ下降して塵芥投入口4の後縁部(下縁部)4bに最も近接するまでの角度範囲に設定したが、他の角度範囲であってもよい。例えば、回転板10の可動先端部分が塵芥投入箱3の内底部3cに入り込んだところまで広げて角度範囲を設定してもよい。
【0128】
加えて、前記第1実施形態では、掻上回転工程の一部となる回転板10の角度範囲Zにある間のみ、回転板10の退避動作と停止を行うように構成されてていたが、本発明はこれに限らず、掻上回転工程の全部において、回転板10の退避動作と停止を行うように構成してもよい。
【0129】
また、前記第1実施形態では、回転板式の塵芥収集車100において、塵芥積込装置8の塵芥積込動作の1サイクルのうち、回転板10の掻上回転工程に限って退避動作(反転動作)を行ってから停止させたが、その他、回避回転工程、戻り工程の場合にも、回転板10や押込板20の退避動作を行ってから停止させてもよい。
【0130】
また、前記第2実施形態では、プレス式の塵芥収集車101における退避動作は、下降工程Bと圧縮工程Cの両方の工程において行うように構成されており、圧縮工程C中では積込板31のみを所定時間後方へ回動させるものに構成した。本発明はこれに限らず、圧縮工程における退避動作について、積込板は回動させずに摺動板だけを所定時間上昇させるようにしてもよい。このように構成しても、作業者等の服が積込板に引っ掛かった場合に退避動作によって積込板と塵芥投入箱の内底部との隙間を広げることができる。これにより、作業者等は積込板から服の引っ掛かりを外し易くなり、作業者等が積込板に巻き込まれそうな状態から脱出し易くすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、塵芥投入箱の内部に配設された塵芥積込装置と、塵芥投入箱の背面に開口する塵芥投入口の近傍の物体像を取得する物体像取得部とを備えた塵芥収集車に利用可能である。
【符号の説明】
【0132】
2 塵芥収容箱
3 塵芥投入箱
3c 内底部
4 塵芥投入口
8、8’ 塵芥積込装置
9 画像処理ユニット(制御装置、人物検出部)
10 回転板(積込板)
20 押込板
30 摺動板
31 積込板
71 カメラ(物体像取得部)
100、101 塵芥収集車
Y11 第1の検知エリア
Y12 第2の検知エリア(侵入禁止エリア)
PLC 本体制御部(制御装置、緊急退避停止部)
A 反転工程
B 下降工程
C 圧縮工程
D 上昇工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15