(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153802
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】人力駆動車用の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 25/08 20060101AFI20241022BHJP
B62M 9/122 20100101ALI20241022BHJP
B62M 9/123 20100101ALI20241022BHJP
B62M 9/132 20100101ALI20241022BHJP
B62M 9/133 20100101ALI20241022BHJP
B62M 11/16 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B62M25/08
B62M9/122
B62M9/123
B62M9/132
B62M9/133
B62M11/16 H
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024123048
(22)【出願日】2024-07-30
(62)【分割の表示】P 2023109777の分割
【原出願日】2019-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】北野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】上山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】笠井 義之
(57)【要約】
【課題】人力駆動車用のコンポーネントを好適に制御できる人力駆動車用の制御装置を提供する。
【解決手段】人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、変速動作を実行する変速機を含み、前記変速機の前記変速動作を制御可能に構成される制御部を備え、前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに応じて、前記変速機の変速段が予め定める範囲内になるように前記変速機の前記変速動作を制御可能に構成され、前記予め定める範囲を前記人力駆動車の姿勢に応じて変更可能に構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車用の制御装置であって、
前記人力駆動車は、変速動作を実行する変速機を含み、
前記変速機の前記変速動作を制御可能に構成される制御部を備え、
前記制御部は、
前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに応じて、前記変速機の変速段が予め定める範囲内になるように前記変速機の前記変速動作を制御可能に構成され、
前記予め定める範囲を前記人力駆動車の姿勢に応じて変更可能に構成される、制御装置。
【請求項2】
前記人力駆動車の姿勢は、前記人力駆動車の車体のピッチ角度を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ピッチ角度が第1ピッチ角度以下の場合、前記ピッチ角度に関わらず前記予め定める範囲の下限の前記変速段の段数および上限の前記変速段の段数が同じなるように前記変速機を制御するように構成される、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ピッチ角度が、前記第1ピッチ角度よりも大きい第2ピッチ角度以上の場合、前記ピッチ角度が前記第1ピッチ角度以下の場合よりも、前記予め定める範囲の下限の前記変速段の段数が小さく、かつ、上限の前記変速段の段数が小さくなるように前記変速機を制御するように構成される、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1ピッチ角度は、上り坂と対応する、請求項3または4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ピッチ角度が上り坂と対応する場合、下り坂と対応する場合よりも前記予め定める範囲の下限の前記変速段の段数および上限の前記変速段の段数が小さくなるように前記変速機を制御するように構成される、請求項2から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに関するパラメータが予め定めるパラメータ範囲を超える場合、前記変速機の前記変速動作を制御するように構成され、
前記変速機の前記変速段が前記予め定める範囲外にある場合、前記予め定めるパラメータ範囲を変更可能に構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記予め定めるパラメータ範囲は、第1閾値以上かつ第2閾値以下の範囲であり、
前記制御部は、前記変速機の前記変速段が前記予め定める範囲よりも小さい場合、前記第2閾値を小さくし、前記変速機の前記変速段が前記予め定める範囲よりも大きい場合、前記第1閾値を大きくする、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記変速機は、リア外装変速機である、請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つは、前記人力駆動車の姿勢を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つは、前記人力駆動車の加速度を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つは、前記人力駆動車のクランクの回転速度を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つは、前記人力駆動車に入力される人力駆動力を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つは、前記人力駆動車のライダの心拍数を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項15】
前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つは、前記人力駆動車の走行負荷を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項16】
前記人力駆動車は、第1回転体と、第2回転体と、前記第1回転体および前記第2回転体の間において駆動力を伝達する伝達部材と、を含み、
前記第1回転体および前記第2回転体の少なくとも1つは、複数の回転体を含み、
前記制御部は、前記人力駆動車が下り坂を走行している場合、および、前記複数の回転体が空転している場合の少なくとも1つの場合、第1所定期間において前記変速機が複数回の前記変速動作を実行可能に制御するように構成される、請求項1から15のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記人力駆動車が下り坂を走行していない場合、および、前記複数の回転体が空転してない場合の少なくとも1つの場合、第2所定期間において前記変速機が1回の前記変速動作を実行可能に制御するように構成される、請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記複数の回転体の位相に応じて前記変速機の前記変速動作を開始するように制御可能に構成される、請求項16または17に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車は、予め定める条件に応じて人力駆動車用のコンポーネントを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、人力駆動車用のコンポーネントを好適に制御する人力駆動車両用の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、第1回転体と、第2回転体と、前記第1回転体および前記第2回転体の間において駆動力を伝達する伝達部材と、人力駆動車用のコンポーネントと、を含み、前記第1回転体および前記第2回転体の少なくとも1つは、複数の回転体を含み、前記コンポーネントは、前記複数の回転体のうちの1つの回転体から他の回転体に前記伝達部材を移動させる変速動作を実行する変速機を含み、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに基づいて規定される制御条件に応じて前記変速機の前記変速動作を制御可能に構成される制御部を備え、前記制御部は、前記制御条件が成立しているか否かを判断する第1状態と、前記制御条件が成立しているか否かを判断しない第2状態と、を有し、前記制御部は、前記複数の回転体の回転状態に応じて、前記第1状態と前記第2状態とを切り替える。
上記第1側面の制御装置によれば、回転体の回転状態に応じて第1状態と第2状態とを切り替えることによって、回転体の回転状態に対して好適な制御を行える。このため、人力駆動車用のコンポーネントを好適に制御できる。第2状態では、制御条件が成立しているか否かを判断しないため、制御部の演算負荷を低減できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の制御装置において、前記人力駆動車は、前記人力駆動車の走行にともない発電する発電機をさらに備え、前記制御部は、前記発電機の発電状態に応じて、前記第1状態と前記第2状態とを切り替える。
上記第2側面の制御装置によれば、発電機の発電状態に応じて第1状態と第2状態とを切り替えることによって、発電機の発電状態に対して好適な制御を行える。
【0007】
本発明の第3側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、前記人力駆動車の走行にともない発電する発電機と、人力駆動車用のコンポーネントと、を含み、前記コンポーネントは、駆動部および報知部の少なくとも1つを含み、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに基づいて規定される制御条件に応じて前記コンポーネントを制御可能に構成される制御部を備え、前記制御部は、前記発電機の発電状態に応じて、前記コンポーネントを制御するか否かを決める。
上記第3側面の制御装置によれば、発電機の発電状態がコンポーネントの制御に好適ではない場合、コンポーネントを制御しないようにできる。このため、人力駆動車用のコンポーネントを好適に制御できる。
【0008】
前記第3側面に従う第4側面の制御装置において、前記制御部は、前記制御条件が成立しているか否かを判断する第1状態と、前記制御条件が成立しているか否かを判断しない第2状態と、を有し、前記制御部は、前記発電機の発電状態に応じて、前記第1状態と前記第2状態とを切り替える。
上記第4側面の制御装置によれば、発電機の発電状態に応じて第1状態と第2状態とを切り替えることによって、発電機の発電状態に対して好適な制御を行える。
【0009】
前記第3または第4側面に従う第5側面の制御装置において、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つを検出する検出部をさらに備え、前記制御部は、前記検出部から予め定める信号が入力される場合、前記制御条件に応じて前記コンポーネントを制御可能に構成される。
上記第5側面の制御装置によれば、検出部から予め定める信号が入力される場合、コンポーネントを制御できる。
【0010】
前記第3または第4側面に従う第6側面の制御装置において、前記人力駆動車は、第1回転体と、第2回転体と、前記第1回転体および前記第2回転体との間において駆動力を伝達する伝達部材と、をさらに備え、前記第1回転体および前記第2回転体の少なくとも1つは、複数の回転体を含み、前記発電機は、前記複数の回転体の回転に応じて発電し、前記コンポーネントは、前記複数の回転体のうちの1つの回転体から他の回転体に前記伝達部材を移動させる変速動作を実行する変速機を含み、前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに基づいて規定される制御条件に応じて前記変速機の前記変速動作を制御可能に構成され、前記制御部は、前記発電機の発電状態に応じて、前記変速機の前記変速動作をするか否かを決める。
上記第6側面の制御装置によれば、発電機の発電状態に応じて変速機を制御できる。
【0011】
前記第1、第2、および、第6側面のいずれか1つに従う第7側面の制御装置において、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つを検出する検出部をさらに備え、前記制御部は、前記検出部から予め定める信号が入力される場合、前記制御条件に応じて前記変速機を制御可能に構成される。
上記第7側面の制御装置によれば、検出部から予め定める信号が入力される場合、変速機を制御できる。
【0012】
前記第7側面に従う第8側面の制御装置において、前記検出部は、前記複数の回転体の回転速度を検出可能に構成される。
上記第8側面の制御装置によれば、複数の回転体の回転速度を検出する検出部の出力に応じて変速機を制御できる。
【0013】
前記第2または第6側面に従う第9側面の制御装置において、前記制御部は、第1電力状態と、前記第1電力状態よりも消費電力の小さい第2電力状態とを切り替え可能に構成され、前記第1電力状態において、前記複数の回転体の回転速度が予め定める第1速度以下の状態が予め定める第1期間以上継続した場合、前記第2電力状態に切り替え可能に構成される。
上記第9側面の制御装置によれば、第1電力状態において、複数の回転体の回転速度が予め定める第1速度以下の状態が予め定める第1期間以上継続した場合、第2電力状態に切り替えることによって、消費電力を小さくできる。
【0014】
前記第9側面に従う第10側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1電力状態と、前記第2電力状態と、前記第2電力状態よりも消費電力の小さい第3電力状態とを切り替え可能に構成され、前記第2電力状態において、前記複数の回転体の回転速度が予め定める第2速度以下の状態が予め定める第2期間以上継続した場合、前記第3電力状態に切り替え可能に構成される。
上記第10側面の制御装置によれば、第2電力状態において、複数の回転体の回転速度が予め定める第2速度以下の状態が予め定める第2期間以上継続した場合、第3電力状態に切り替えることによって、消費電力を小さくできる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の制御装置において、前記制御部は、前記第3電力状態において、前記複数の回転体の回転速度が予め定める第3速度以上になった場合、および、前記発電機の発電量が予め定める発電量以上になった場合の少なくとも1つの場合、前記第1電力状態または前記第2電力状態に切り替え可能に構成される。
上記第11側面の制御装置によれば、第3電力状態において、複数の回転体の回転速度が予め定める第3速度以上になった場合の少なくとも1つの場合、第1電力状態または第2電力状態に切り替えることによって、制御部が好適に動作できる。
【0016】
前記第10または第11側面に従う第12側面の制御装置において、前記制御部は、前記第1電力状態において前記変速機が前記変速動作を開始してから前記第2電力状態または前記第3電力状態に切り替えられるまでの期間において、前記複数の回転体の回転角度が予め定める角度未満の場合、前記第1電力状態に切り替えられた後、予め定める待機期間が経過するまで、前記変速動作を行わせないように前記変速機を制御可能に構成される。
上記第12側面の制御装置によれば、第1電力状態において変速機が変速動作を開始してから第2電力状態または第3電力状態に切り替えられるまでの期間において、複数の回転体の回転角度が予め定める角度未満の場合、第1電力状態に切り替えられた後、予め定める待機期間が経過するまで、変速動作を抑制できる。
【0017】
前記第12側面に従う第13側面の制御装置において、前記予め定める待機期間は、前記変速機が前記変速動作を開始してから前記複数の回転体の回転角度が予め定める角度以上になるまでの期間である。
上記第13側面の制御装置によれば、変速機が変速動作を開始してから複数の回転体の回転角度が予め定める角度以上になるまでの期間が経過するまで、変速動作を抑制できる。
【0018】
前記第12または第13側面に従う第14側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車が下り坂を走行している場合、および、前記複数の回転体が空転している場合の少なくとも1つの場合、前記第1電力状態において前記変速機が前記変速動作を開始してから前記第2電力状態または前記第3電力状態に切り替えられるまでの期間において、前記複数の回転体の回転角度が予め定める角度未満の場合、前記第1電力状態に切り替えられた後、予め定める待機期間が経過していなくても、前記変速機の前記変速動作を実行可能に制御するように構成される。
上記第14側面の制御装置によれば、人力駆動車が下り坂を走行している場合、および、複数の回転体が空転している場合の少なくとも1つの場合、変速機の変速動作が行われないことを抑制できる。
【0019】
前記第12から第14側面のいずれか1つに従う第15側面の制御装置において、前記予め定める角度は、前記変速機の変速段に応じて異なる。
上記第15側面の制御装置によれば、変速機の変速段ごとに好適な予め定める角度を設定できる。
【0020】
前記第10から第15側面のいずれか1つに従う第16側面の制御装置において、記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記第1電力状態から前記第2電力状態または前記第3電力状態に切り替えられる場合、前記変速機の前記変速動作に関する情報を前記記憶部に記憶させるように構成される。
上記第16側面の制御装置によれば、第2電力状態または第3電力状態においても変速機の変速動作に関する情報を保持できる。
【0021】
前記第1、第2、および、第6から第11側面のいずれか1つに従う第17側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車が下り坂を走行している場合、および、前記複数の回転体が空転している場合の少なくとも1つの場合、予め定める第3期間において前記変速機が複数回の前記変速動作を実行可能に制御するように構成される。
上記第17側面の制御装置によれば、人力駆動車が下り坂を走行している場合、および、複数の回転体が空転している場合の少なくとも1つの場合、変速機の変速動作が行われないことを抑制できる。
【0022】
前記第1、第2、第6から第11、および、第17側面のいずれか1つに従う第18側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車が下り坂を走行していない場合、および、前記複数の回転体が空転してない場合の少なくとも1つの場合、予め定める第4期間において前記変速機が1回の前記変速動作を実行可能に制御するように構成される。
上記第18側面の制御装置によれば、予め定める第4期間において変速機の複数回の変速動作の実行を抑制できる。
【0023】
前記第1、第2、および、第6から第18側面のいずれか1つに従う第19側面の制御装置において、前記制御部は、前記複数の回転体の位相に応じて前記変速機の前記変速動作を開始するように制御可能に構成される。
上記第19側面の制御装置によれば、複数の回転体の回転位相が変速機の変速動作の開始に適している状態において、変速動作を開始させられる。
【0024】
前記第1、第2、および、第6から第19側面のいずれか1つに従う第20側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに応じて、前記変速機の変速段が予め定める範囲内になるように前記変速機の前記変速動作を制御可能に構成され、前記予め定める範囲を前記人力駆動車の姿勢に応じて変更可能に構成される。
上記第20側面の制御装置によれば、人力駆動車の姿勢に好適な変速機の変速段の範囲になるように変速機を制御できる。
【0025】
前記第20側面に従う第21側面の制御装置において、前記人力駆動車の姿勢は、前記人力駆動車の車体のピッチ角度を含む。
上記第21側面の制御装置によれば、人力駆動車の車体のピッチ角度に好適な変速機の変速段の範囲になるように変速機を制御できる。
【0026】
前記第20または第21側面に従う第22側面の制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに関するパラメータが予め定めるパラメータ範囲を超える場合、前記変速機の変速動作を制御するように構成され、前記変速機の変速段が前記予め定める範囲外にある場合、前記予め定めるパラメータ範囲を変更可能に構成される。
上記第22側面の制御装置によれば、変速機の変速段が予め定める範囲外にある場合、予め定めるパラメータ範囲を変更することによって、変速機の変速段が好適な変速段になるように変速機を制御できる。
【0027】
前記第22側面に従う第23側面の制御装置において、前記予め定めるパラメータ範囲は、第1閾値以上かつ第2閾値以下の範囲であり、前記制御部は、前記変速機の変速段が前記予め定める範囲よりも小さい場合、前記第2閾値を小さくし、前記変速機の変速段が前記予め定める範囲よりも大きい場合、前記第1閾値を大きくする。
上記第23側面の制御装置によれば、変速機の変速段が予め定める範囲よりも小さい場合、第2閾値を小さくでき、変速段が予め定める範囲よりも大きい場合、第1閾値を小さくできる。
【0028】
前記第1、第2、および、第6から第23側面のいずれか1つに従う第24側面の制御装置において、前記変速機は、リア外装変速機である。
上記第24側面の制御装置によれば、リア外装変速機を好適に制御できる。
【0029】
前記第1から第24側面のいずれか1つに従う第25側面の制御装置において、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つは、前記人力駆動車の姿勢、加速度、クランクの回転速度、人力駆動力、車速、ライダの心拍数、および、走行負荷の少なくとも1つを含む。
上記第25側面の制御装置によれば、人力駆動車の姿勢、加速度、クランクの回転速度、人力駆動力、車速、ライダの心拍数、および、走行負荷の少なくとも1つに応じて変速機を好適に制御できる。
【0030】
本発明の第26側面に従う制御装置は、人力駆動車用の制御装置であって、前記人力駆動車は、第1回転体と、第2回転体と、前記第1回転体および前記第2回転体との間において駆動力を伝達する伝達部材と、人力駆動車用のコンポーネントと、を含み、前記第1回転体および前記第2回転体の少なくとも1つは、複数の回転体を含み、前記コンポーネントは、前記複数の回転体のうちの1つの回転体から他の回転体に前記伝達部材を移動させる変速動作を実行する変速機を含み、前記複数の回転体と一体的に回転し、前記複数の回転体に設けられる被検出部により、前記複数の回転体の回転速度を検出可能に構成される検出部を含み、前記人力駆動車の走行状態および前記人力駆動車のライダの状態の少なくとも1つに基づいて規定される制御条件に応じて前記変速機の前記変速動作を制御可能に構成される制御部を備え、前記制御部は、前記複数の回転体の回転状態に応じて、前記変速機の前記変速動作をするか否かを決める。
上記第26側面の制御装置によれば、複数の回転体の回転状態に応じて、変速機の変速動作をするか否かを決めることができるため、人力駆動車用のコンポーネントを好適に制御できる。
【0031】
本発明の27側面に従う変速システムは、人力駆動車用の変速システムであって、第2または第6側面に記載の制御装置と、前記変速機と前記発電機と、を備え、前記変速機は、前記発電機の発電した電力によって動作可能に構成される。
上記第27側面の変速システムによれば、発電機の発電した電力によって動作可能に構成される変速機を備える人力駆動車において、人力駆動車用のコンポーネントを好適に制御できる。
【発明の効果】
【0032】
本開示の人力駆動車用の制御装置は、人力駆動車用のコンポーネントを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施形態の人力駆動車用の制御装置を含む人力駆動車の側面図。
【
図2】実施形態の人力駆動車用の制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の制御部によって実行され、第1状態と第2状態とを切り替える処理のフローチャート。
【
図4】
図2の制御部によって実行され、変速機の変速動作を制御する処理のフローチャートの第1部分。
【
図5】
図2の制御部によって実行され、変速機の変速動作を制御する処理のフローチャートの第2部分。
【
図6】
図2の制御部によって実行され、パラメータ範囲を変更する処理のフローチャート。
【
図7】
図2の制御部によって実行され、電力状態を切り替える処理のフローチャート。
【
図8】
図2の制御部によって実行され、電力状態を切り替える場合に変速動作に関する情報を記憶部に記憶する処理のフローチャート。
【
図9】
図2の制御部によって実行され、第1電力状態に切り替えられる場合に変速指令を禁止する処理のフローチャート。
【
図10】第1変形例の制御部によって実行され、第1電力状態に切り替えられる場合に変速指令を禁止する処理のフローチャート。
【
図11】第2変形例の制御部によって実行され、第1状態と第2状態とを切り替える処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<実施形態>
図1から
図9を参照して、実施形態の人力駆動車用の変速システム50および人力駆動車用の制御装置60について説明する。人力駆動車10は、少なくとも人力駆動力によって駆動することができる車である。人力駆動車10は、車輪の数が限定されず、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する車も含む。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車、ならびに、電動自転車(E-bike)を含む。電動自転車は、電気モータによって車両の推進を補助する電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0035】
人力駆動車10は、第1回転体12と、第2回転体14と、第1回転体12および第2回転体14の間において駆動力を伝達する伝達部材16と、人力駆動車用のコンポーネント18と、を含む。第1回転体12および第2回転体14の少なくとも1つは、複数の回転体20を含む。人力駆動車10は、車体22と、車輪24と、クランク26と、を、さらに含む。車輪24は、後輪24Aと、前輪24Bと、を含む。車体22は、フレーム28を含む。クランク26は、フレーム28に対して回転可能なクランク軸26Aと、クランク軸26Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられるクランクアーム26Bとを含む。各クランクアーム26Bには、ペダル30がそれぞれ連結される。後輪24Aは、クランク26が回転することによって駆動される。後輪24Aは、フレーム28に支持される。クランク26と後輪24Aとは、駆動機構32によって連結される。駆動機構32は、第1回転体12、第2回転体14、および、伝達部材16を含む。クランク軸26Aと第1回転体12とは、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク26が前転した場合に、第1回転体12を前転させ、クランク26が後転した場合に、第1回転体12を後転させないように構成される。第1回転体12は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。伝達部材16は、第1回転体12の回転力を第2回転体14に伝達する。伝達部材16は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0036】
第2回転体14は、後輪24Aに連結される。第2回転体14は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体14と後輪24Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体14が前転した場合に、後輪24Aを前転させ、第2回転体14が後転した場合に、後輪24Aを後転させないように構成される。人力駆動車10の後輪24Aはハブ40を有する。後輪24Aのハブ40は、ハブ軸42と、ハブ軸42に対して回転し後輪24Aと一体的に回転するハブ回転体と、ハブ軸42に対して回転し第2回転体14を支持するフリーホイールと、を有する。好ましくは、ハブ回転体とフリーホイールとの間には第2ワンウェイクラッチが設けられている。
【0037】
フレーム28には、フロントフォーク34を介して前輪24Bが取り付けられている。フロントフォーク34には、ハンドルバー36がステム38を介して連結されている。本実施形態では、後輪24Aが駆動機構32によってクランク26に連結されるが、後輪24Aおよび前輪24Bの少なくとも1つが、駆動機構32によってクランク26に連結されてもよい。
【0038】
コンポーネント18は、変速機52を含む。変速機52は、複数の回転体20のうちの1つの回転体20から他の回転体20に伝達部材16を移動させる変速動作を実行する。変速機52は、アクチュエータ54を備える。アクチュエータ54は、例えば、電気モータを備える。アクチュエータ54の駆動によって、変速機52は変速動作を実行する。好ましくは、変速機52は、外装変速機を含む。好ましくは、変速機52は、リア外装変速機である。変速機52がリア外装変速機である場合、第2回転体14が複数の回転体20と対応する。変速機52は、クランク26の回転速度に対する後輪24Aの回転速度を表す変速比Rを変速動作によって段階的に変更する。変速段は、大きな変速比Rと対応するほど大きな数によって示される。
【0039】
好ましくは、人力駆動車10は、人力駆動車10の走行にともない発電する発電機56をさらに備える。発電機56は、例えば、後輪24Aのハブ40に設けられる。発電機56は、例えば、ハブダイナモを含む。発電機56は、第2回転体14の回転にともなって後輪24Aが回転することによって発電する。好ましくは、発電機56の発電した電力は、バッテリ58に供給される。発電機56は、キャパシタを含み、キャパシタからコンポーネント18および制御装置60に電力を供給するようにしてもよい。
【0040】
好ましくは、人力駆動車10は、バッテリ58を含む。バッテリ58は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ58は、コンポーネント18および制御装置60に電力を供給する。バッテリ58は、好ましくは、制御装置60の制御部62と有線または無線によって通信可能に接続される。バッテリ58は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)によって制御部62と通信可能である。
【0041】
人力駆動車用の変速システム50は、制御装置60と、変速機52と、発電機56と、を備える。変速機52は、発電機56の発電した電力によって動作可能に構成される。好ましくは、変速システム50は、バッテリ58をさらに含む。
【0042】
制御装置60は、制御部62を備える。制御部62は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部62は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、記憶部64をさらに備える。記憶部64には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部64は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0043】
制御部62は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つに基づいて規定される制御条件に応じて変速機52の変速動作を制御可能に構成される。好ましくは、制御部62は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つに関するパラメータPが予め定めるパラメータ範囲WPを超える場合、変速機52の変速動作を制御するように構成される。制御条件は、例えば、パラメータPが予め定めるパラメータ範囲WPを超える場合に成立する。制御部62は、第1状態において、制御条件が成立すると、変速イベントを設定し、変速イベントに応じて変速機52に変速指令を行う。変速機52のアクチュエータ54は、変速指令に応じて駆動する。
【0044】
人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つは、人力駆動車10の姿勢、加速度、クランクの回転速度、人力駆動力、車速、ライダの心拍数、および、走行負荷の少なくとも1つを含む。
【0045】
一例では、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態は、クランク26の回転速度であり、パラメータPは、クランク26の回転速度である。例えば、制御部62は、クランク26の回転速度がパラメータ範囲WPの上限値を超える場合、変速比Rを大きくし、クランク26の回転速度がパラメータ範囲WPの下限値を超える場合、変速比Rを小さくする。人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態がクランク26の回転速度を含む場合、パラメータPはクランク26の回転速度を含み、好ましくは、制御装置60は、クランク回転センサを含む。
【0046】
別例では、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態は、ピッチ角度Dであり、パラメータPは、ピッチ角度Dである。例えば、制御部62は、ピッチ角度Dが、上り坂に対応する第1角度D1以上になると、変速比Rが予め定める変速比RX以下になる変速段になるように変速動作を実行する。人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態がピッチ角度Dを含む場合、パラメータPはピッチ角度Dを含み、好ましくは、制御装置60は、傾斜センサおよびGPS(global positioning system)受信機の少なくとも1つを含む。
【0047】
人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態は、クランク26の回転速度およびピッチ角度Dの少なくとも1つに代えてまたは加えて、人力駆動車10に入力される人力駆動力、走行負荷、および、ライダの心拍数の少なくとも1つを含んでいてもよい。人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態が人力駆動力を含む場合、パラメータPは人力駆動力のトルクまたは仕事率を含み、好ましくは、検出部66は、トルクセンサを含む。人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態が走行抵抗を含む場合、パラメータPは走行抵抗に関するパラメータを含み、好ましくは、検出部66は、トルクセンサ、風センサ、および、傾斜センサの少なくとも1つを含む。人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態がライダの心拍数を含む場合、パラメータPはライダの心拍数を含み、好ましくは、制御装置60は、心拍センサを含む。
【0048】
好ましくは、制御装置60は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つを検出する検出部66をさらに備える。好ましくは、検出部66は、複数の回転体20の回転速度Vを検出可能に構成される。好ましくは、検出部66は、複数の回転体20と一体的に回転し、複数の回転体20に設けられる被検出部により、複数の回転体20の回転速度Vを検出可能に構成される。被検出部は、例えば、磁石を含む。検出部66は、好ましくは、複数の回転体20が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、好ましくは、1である。検出部66は、複数の回転体20の回転速度Vに応じた信号を出力する。検出部66は、好ましくは、リードスイッチを構成する磁性リード、または、ホール素子を含む。検出部66は、人力駆動車10の後輪24Aのハブ40のハブ軸42に取り付けられ、複数の回転体20と一体的に回転するフリーホイールに取り付けられる磁石を検出する。本実施形態において、検出部66は、複数の回転体20が一回転した場合に、リードスイッチが磁石を1回検出するように構成される。複数の回転体20の回転速度Vとクランク26の回転速度とは変速比Rを用いて互いに変換が可能であるため、検出部66はクランク回転センサであってもよい。この場合、検出部66は、フリーホイールに設けられる磁石に代えて、クランク26に設けられる磁石を検出するように構成されてもよい。検出部66は、磁石を検出するごとに制御部62に検出信号を出力するように構成されてもよく、回転速度Vを演算して演算結果を含む検出信号を制御部62に出力するように構成されてもよい。検出部66は発電機56の発電に関する検出信号を出力するように構成されてもよい。検出部66は人力駆動車10の車速に関する検出信号を、発電機56の発電に関する検出信号として出力するように構成されてもよい。この場合、検出部66は、車輪24に設けられる磁石を検出するように構成されてもよい。
【0049】
制御部62は、制御条件が成立しているか否かを判断する第1状態と、制御条件が成立しているか否かを判断しない第2状態と、を有する。制御部62は、複数の回転体20の回転状態に応じて、第1状態と第2状態とを切り替える。
【0050】
好ましくは、制御部62は、検出部66から予め定める信号が入力される場合、制御条件に応じてコンポーネント18を制御可能に構成される。予め定める信号は、例えば、複数の回転体20の回転速度Vが速度VA以上の場合に検出部66から制御部62に入力される信号を含む。検出部66が磁石を検出するごとに制御部62に検出信号を出力するように構成される場合、予め定める信号は、複数の回転体20の回転速度Vが速度VA以上と対応する間隔の検出信号と対応する。検出部66が回転速度Vを演算して演算結果を含む検出信号を制御部62に出力するように構成される場合、予め定める信号は、複数の回転体20の回転速度Vが速度VA以上と対応する演算結果を含む信号と対応する。速度VAは、例えば、発電機56が予め定める発電量以上の電力を発電可能な状態に対応する回転速度Vを含む。
【0051】
制御部62は、人力駆動車10が下り坂を走行している場合、および、複数の回転体20が空転している場合の少なくとも1つの場合、予め定める第3期間T3において変速機52が複数回の変速動作を実行可能に制御するように構成される。予め定める第3期間T3は、変速機52の変速動作が開始されてから完了するまでの期間に対応する。予め定める第3期間T3は、複数の回転体20の回転角度Aによって規定されてもよく、時間によって規定されてもよい。予め定める第3期間T3は、変速機52の変速段ごとに設定されていてもよい。予め定める第3期間T3は、変速機52の変速段かつ変速方向ごとに設定されていてもよい。制御部62は、例えば、複数の回転体20の回転速度Vよりも後輪24Aの回転速度が大きく、かつ、複数の回転体20の回転速度Vと後輪24Aの回転速度との差が予め定める差以上の場合、複数の回転体20が空転していると判定する。複数の回転体20が空転している場合、複数の回転体20の回転速度Vはゼロであってもよい。制御部62は、例えば、人力駆動車10の姿勢を検出する姿勢検出部68の出力に応じて人力駆動車10が下り坂を走行していると判定する。
【0052】
制御部62は、人力駆動車10が下り坂を走行していない場合、および、複数の回転体20が空転してない場合の少なくとも1つの場合、予め定める第4期間T4において変速機52が1回の変速動作を実行可能に制御するように構成される。予め定める第4期間T4は、変速機52の変速動作が開始されてから完了するまでの期間に対応する。予め定める第4期間T4は、複数の回転体20の回転角度Aによって規定されてもよく、時間によって規定されてもよい。予め定める第4期間T4は、変速機52の変速段ごとに設定されていてもよい。好ましくは、予め定める第3期間T3と、予め定める第4期間T4とは等しい。予め定める第3期間T3と、予め定める第4期間T4とは異なっていてもよい。予め定める第4期間T4は、変速機52の変速段かつ変速方向ごとに設定されていてもよい。
【0053】
複数の回転体20にかかるトルクが予め定めるトルク以上の場合、予め定める第4期間T4内において複数回の変速動作が行われると、ライダの違和感が大きい。複数の回転体20にかかるトルクが予め定めるトルク未満の場合、予め定める第3期間T3内において複数回の変速動作が行われたとしても、ライダの違和感が小さい。人力駆動車10が下り坂を走行している場合、および、複数の回転体20が空転している場合、複数の回転体20にかかるトルクが予め定めるトルク未満になるため、変速動作を優先できる。
【0054】
制御部62は、複数の回転体20の位相に応じて変速機52の変速動作を開始するように制御可能に構成される。制御部62は、複数の回転体20の位相が予め定める位相にある場合、変速機52の変速動作を開始するように制御可能に構成される。予め定める位相は、複数の回転体20の位相が変速動作に好適な位相を含む。予め定める位相は、例えば、複数の回転体20に設けられる伝達部材16を係合させるための構造の位相に応じて設定される。
【0055】
図3を参照して、第1状態と第2状態とを切り替える処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部62は、
図3のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0056】
制御部62は、ステップS11において、予め定める信号が入力されたか否かを判定する。制御部62は、予め定める信号が入力された場合、ステップS12に移行する。制御部62は、ステップS12において第1状態を設定する。制御部62は、第2状態が設定されている場合、第1状態に切り替える。制御部62は、第1状態が設定されている場合、第1状態を維持する。
【0057】
制御部62は、ステップS11において、予め定める信号が入力されていない場合、ステップS13に移行する。制御部62は、ステップS13において、第2状態を設定する。制御部62は、第1状態が設定されている場合、第2状態に切り替える。制御部62は、第2状態が設定されている場合、第2状態を維持する。
【0058】
図4および
図5を参照して、変速機52の変速動作を制御する処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図4に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部62は、
図4および
図5のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0059】
制御部62は、ステップS21において、パラメータ範囲WPを取得し、ステップS22に移行する。制御部62は、ステップS22において、第1状態か否かを判定する。制御部62は、第1状態ではない場合、処理を終了する。制御部62は、第1状態の場合、ステップS23に移行する。制御部62は、ステップS23において、制御条件が成立しているか否かを判定する。制御部62は、例えば、クランク26の回転速度がステップS21において取得したパラメータ範囲WP以外の場合、制御条件が成立していると判定する。制御部62は、制御条件が成立している場合、ステップS24に移行する。
【0060】
制御部62は、ステップS24において、変速イベントを設定し、ステップS25に移行する。制御部62は、例えば、変速比Rが大きくなるように変速段を変更する条件が成立している場合、変速比Rを大きくするためのフラグを設定し、変速比Rが小さくなるように変速段を変更する条件が成立している場合、変速比Rを小さくするためのフラグを設定する。
【0061】
制御部62は、ステップS25において、既に変速イベントが設定されているか否かを判定する。制御部62は、例えば、制御条件とは異なる他の条件に応じて変速イベントが設定されている場合、および、以前の制御周期におけるステップS24において変速イベントが設定されている場合、ステップS26に移行する。制御部62は、ステップS26において、既に設定されている変速イベントと、ステップS24において設定した変速イベントとが逆の変速方向か否かを判定する。制御部62は、例えば、既に設定されている変速イベントにおいて変速比Rを大きくするためのフラグが設定され、ステップS24において設定した変速イベントにおいて変速比Rを小さくするためのフラグが設定されている場合、既に設定されている変速イベントと、ステップS24において設定した変速イベントとが逆の変速方向であると判定する。制御部62は、例えば、既に設定されている変速イベントにおいて変速比Rを小さくするためのフラグが設定され、ステップS24において設定した変速イベントにおいて変速比Rを大きくするためのフラグが設定されている場合、既に設定されている変速イベントと、ステップS24において設定した変速イベントとが逆の変速方向であると判定する。制御部62は、既に設定されている変速イベントと、ステップS24において設定した変速イベントとが逆の変速方向と判定した場合、ステップS27に移行する。
【0062】
制御部62は、ステップS27において変速イベントをリセットして処理を終了する。好ましくは、制御部62は、既に設定されている変速イベントと、ステップS24において設定した変速イベントの両方をリセットする。制御部62は、既に設定されている変速イベントと、ステップS24において設定した変速イベントとのうちの一方のみをリセットするようにしてもよい。具体的には、制御部62は、既に設定されている変速イベントをリセットするようにしてもよく、ステップS24において設定した変速イベントをリセットするようにしてもよい。
【0063】
制御部62は、ステップS23において、制御条件が成立していない場合、ステップS28に移行する。制御部62は、ステップS28において、既に変速イベントが設定されているか否かを判定する。制御部62は、例えば、制御条件とは異なる他の条件に応じて変速イベントが設定されている場合、および、以前の制御周期におけるステップS24において変速イベントが設定されている場合、ステップS29に移行する。
【0064】
制御部62は、ステップS25において、既に変速イベントが設定されていない場合、ステップS29に移行する。制御部62は、ステップS26において、既に設定されている変速イベントと、ステップS24において設定した変速イベントとが逆の変速方向ではない場合、ステップS29に移行する。
【0065】
制御部62は、ステップS29において、人力駆動車10が下り坂を走行、または、複数の回転体20が空転しているか否かを判定する。制御部62は、人力駆動車10が下り坂を走行しておらず、かつ、複数の回転体20が空転していない場合、ステップS30に移行する。制御部62は、人力駆動車10が下り坂を走行、または、複数の回転体20が空転している場合、ステップS32に移行する。
【0066】
制御部62は、ステップS30において、前回の変速動作から予め定める第4期間T4が経過したか否かを判定する。制御部62は、前回の変速動作から予め定める第4期間T4が経過していない場合、処理を終了する。制御部62は、前回の変速動作から予め定める第4期間T4が経過している場合、ステップS31に移行する。
【0067】
制御部62は、ステップS31において、複数の回転体20の回転を検出してからの経過時間Sが予め定める時間SX以内か否かを判定する。予め定める時間SXは、複数の回転体20の回転が停止しているかを判定可能な時間が設定される。制御部62は、経過時間Sが予め定める時間SX以内ではない場合、処理を終了する。即ち、制御部62は、複数の回転体20の回転が停止していると判定した場合、処理を終了する。制御部62は、経過時間Sが予め定める時間SX以内の場合、ステップS32に移行する。即ち、制御部62は、複数の回転体20の回転が停止していないと判定した場合、ステップS32に移行する。
【0068】
制御部62は、ステップS32において、複数の回転体20の位相が予め定める位相か否かを判定する。制御部62は、複数の回転体20の位相が予め定める位相になるまでステップS32の判定処理を繰り返す。制御部62は、複数の回転体20の位相が予め定める位相になると、ステップS33に移行する。制御部62は、ステップS33において変速指令を実行し、ステップS34に移行する。制御部62は、変速指令において、例えば、変速機52のアクチュエータ54を駆動させるための信号を出力する。制御部62は、ステップS34において変速イベントをリセットし、処理を終了する。
【0069】
好ましくは、制御部62は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つに応じて、変速機52の変速段が予め定める範囲WR内になるように変速機52の変速動作を制御可能に構成される。制御部62は、予め定める範囲WRを人力駆動車10の姿勢に応じて変更可能に構成される。一例では、人力駆動車10の姿勢は、人力駆動車10の車体22のピッチ角度Dを含む。
【0070】
好ましくは、制御装置60は、人力駆動車10の姿勢を検出する姿勢検出部68を含む。姿勢検出部68は、好ましくは、傾斜センサおよびGPS受信機の少なくとも1つを含む。傾斜センサは、例えば、ジャイロセンサおよび加速度センサの少なくとも1つを含む。姿勢検出部68がGPS受信機を含む場合、制御部62は、記憶部64に道路勾配に関する情報を含む地図情報を予め記憶する。制御部62は、人力駆動車10の現在地の道路勾配をピッチ角度Dとして取得する。
【0071】
表1は、ピッチ角度Dと、ピッチ角度Dと対応する道路勾配と、変速段の予め定める範囲WRの上限の段数R1および下限の段数R2との関係の一例を示す。表1の変速機52は、10段階の変速段を備える。表1の場合、制御部62は、第5角度範囲D5以下のピッチ角度Dにおいては、ピッチ角度Dに関わらず変速段の予め定める範囲WRの下限の段数R1および上限の段数R2が同じなるように変速機52を制御するように構成される。表1の場合、制御部62は、第6角度範囲D6以上のピッチ角度Dにおいては、第5角度範囲D5以下のピッチ角度D変速段の予め定める範囲WRの下限の段数R1が小さく、上限の段数R2が小さくなるように変速機52を制御するように構成される。表1の場合、制御部62は、ピッチ角度Dが上り坂と対応する場合、下り坂と対応する場合よりも変速段の予め定める範囲WRの下限の段数R1および上限の段数R2が小さくなるように変速機52を制御するように構成される。
【0072】
【0073】
好ましくは、制御部62は、変速機52の変速段が予め定める範囲WR外にある場合、予め定めるパラメータ範囲WPを変更可能に構成される。好ましくは、予め定めるパラメータ範囲WPは、第1閾値P1以上かつ第2閾値P2以下の範囲である。制御部62は、変速機52の変速段が予め定める範囲WRよりも小さい場合、第2閾値P2を小さくし、変速機52の変速段が予め定める範囲WRよりも大きい場合、第1閾値P1を大きくする。例えば、制御部62は、人力駆動車10の姿勢が変化することによって変速機52の変速段が予め定める範囲WR外になった場合、予め定めるパラメータ範囲WPを変更可能に構成される。例えば、パラメータPがクランク26の回転速度を含む場合、変速段が予め定める範囲WRよりも小さい変速比Rと対応する変速段になった場合、パラメータ範囲WPの第2閾値P2を小さくする。この場合、変速比Rが大きい変速段に変化しやすくなるため、変速段が予め定める範囲WR内に戻りやすくなる。例えば、パラメータPがクランク26の回転速度を含む場合、変速段が予め定める範囲WRよりも大きい変速比Rと対応する変速段になった場合、パラメータ範囲WPの第1閾値P1を大きくする。この場合、変速比Rが小さくなりやすくなるため、変速比Rが予め定める範囲WR内に戻りやすくなる。
【0074】
図6を参照して、パラメータ範囲WPを変更する処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図6に示すフローチャートのステップS41に移行する。制御部62は、
図6のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS41からの処理を繰り返す。
【0075】
制御部62は、ステップS41において、人力駆動車10の姿勢に応じて予め定める範囲WRを設定し、ステップS42に移行する。制御部62は、例えば、表1に従ってピッチ角度Dに応じて予め定める範囲WRの変速段の下限の段数R1と上限の段数R2とを設定する。
【0076】
制御部62は、ステップS42において、変速機52の変速段が予め定める範囲WR外か否かを判定する。制御部62は、変速機52の変速段が予め定める範囲WR外ではない場合、処理を終了する。制御部62は、変速機52の変速段が予め定める範囲WR外の場合、ステップS43に移行する。制御部62は、ステップS43において、パラメータ範囲WPを変更し、処理を終了する。好ましくは、制御部62は、変更したパラメータ範囲WPを記憶部64に記憶する。制御部62は、
図4および
図5のフローチャートのステップS21において、記憶部64に記憶した変更されたパラメータ範囲WPを取得する。
【0077】
好ましくは、制御部62は、第1電力状態と、第1電力状態よりも消費電力の小さい第2電力状態とを切り替え可能に構成される。好ましくは、制御部62は、第1電力状態において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第1速度V1以下の状態が予め定める第1期間T1以上継続した場合、第2電力状態に切り替え可能に構成される。
【0078】
好ましくは、制御部62は、第1電力状態と、第2電力状態と、第2電力状態よりも消費電力の小さい第3電力状態とを切り替え可能に構成される。好ましくは、制御部62は、第2電力状態において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第2速度V2以下の状態が予め定める第2期間T2以上継続した場合、第3電力状態に切り替え可能に構成される。
【0079】
好ましくは、制御部62は、第3電力状態において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第3速度V3以上になった場合、および、発電機56の発電量が予め定める発電量以上になった場合の少なくとも1つの場合、第1電力状態または第2電力状態に切り替え可能に構成される。好ましくは、制御部62は、第3電力状態において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第3速度V3以上になった場合、および、発電機56の発電量が予め定める発電量以上になった場合の少なくとも1つの場合、第1電力状態に切り替え可能に構成される。予め定める第3速度V3は、発電機56の発電量が変速機52の変速動作を行うための発電量を発電できる速度VAに対応する。制御部62は、第3電力状態から第1電力状態または第2電力状態に切り替えることができるため、電源投入のための操作部を省略できる。
【0080】
制御部62は、第1電力状態、第2電力状態、および、第3電力状態において、例えば、検出部66による複数の回転体20の回転速度Vの検出頻度を異ならせることによって、消費電力を異ならせてもよい。
【0081】
好ましくは、制御部62は、第2電力状態において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第4速度V4以上になった場合、第1電力状態に切り替え可能に構成される。予め定める第4速度V4は、発電機56の発電量が変速機52の変速動作を行うための発電量を発電できる速度VAに対応する。予め定める第4速度V4は、予め定める第3速度V3と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0082】
図7を参照して、電力状態を変更する処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図7に示すフローチャートのステップS51に移行する。制御部62は、
図7のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS51からの処理を繰り返す。
【0083】
制御部62は、ステップS51において、第3電力状態か否かを判定する。制御部62は、第3電力状態の場合、ステップS52に移行する。制御部62は、ステップS52において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第3速度V3以上か否かを判定する。制御部62は、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第3速度V3以上ではない場合、処理を終了する。制御部62は、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第3速度V3以上の場合、ステップS53に移行する。制御部62は、ステップS53において、第1電力状態に切り替え、処理を終了する。
【0084】
制御部62は、ステップS51において、第3電力状態ではない場合、ステップS54に移行する。制御部62は、ステップS54において、第2電力状態か否かを判定する。制御部62は、第2電力状態の場合、ステップS55に移行する。制御部62は、ステップS55において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第2速度V2以下の状態が第2期間T2以上継続しているか否かを判定する。制御部62は、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第2速度V2以下の状態が第2期間T2以上継続していない場合、ステップS57に移行する。制御部62は、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第2速度V2以下の状態が第2期間T2以上継続している場合、ステップS56に移行する。制御部62は、ステップS56において、第3電力状態に切り替え、処理を終了する。
【0085】
制御部62は、ステップS57において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第4速度V4以上か否かを判定する。制御部62は、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第4速度V4以上の場合、ステップS58に移行する。制御部62は、ステップS58において、第1電力状態に切り替え、処理を終了する。
【0086】
制御部62は、ステップS54において、第2電力状態ではない場合、ステップS59に移行する。制御部62は、ステップS59において、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第1速度V1以下の状態が第1期間T1以上継続しているか否かを判定する。制御部62は、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第1速度V1以下の状態が第1期間T1以上継続していない場合、処理を終了する。制御部62は、複数の回転体20の回転速度Vが予め定める第1速度V1以下の状態が第1期間T1以上継続している場合、ステップS60に移行する。制御部62は、ステップS60において、第2電力状態に切り替え、処理を終了する。
【0087】
制御部62は、第1電力状態において変速機52が変速動作を開始してから第2電力状態または第3電力状態に切り替えられるまでの期間において、複数の回転体20の回転角度Aが予め定める角度AX未満の場合、第1電力状態に切り替えられた後、予め定める待機期間TAが経過するまで、変速動作を行わせないように変速機52を制御可能に構成される。好ましくは、予め定める待機期間TAは、変速機52が変速動作を開始してから複数の回転体20の回転角度Aが予め定める角度AX以上になるまでの期間である。好ましくは、予め定める角度AXは、変速機52の変速段に応じて異なる。予め定める角度AXは、複数の回転体20に設けられる伝達部材16を係合させるための構造の位相に応じて設定される。好ましくは、変速機52が変速動作を開始することは、ステップS33において制御部62が変速指令を実行することを含んでいる。
【0088】
制御部62は、第1電力状態から第2電力状態または第3電力状態に切り替えられる場合、変速機52の変速動作に関する情報を記憶部64に記憶させるように構成される。制御部62は、第1電力状態から第2電力状態または第3電力状態に切り替える場合にのみ変速機52の変速動作に関する情報を記憶部64に記憶させてもよく、変速機52の変速動作が開始された場合、予め定める制御周期ごとに変速機52の変速動作に関する情報を記憶部64に記憶させてもよい。変速機52の変速動作に関する情報は、例えば、変速動作が開始されてからの複数の回転体20の回転角度Aを含む。
【0089】
図8を参照して、変速機52の変速動作に関する情報を記憶部64に記憶させる処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図8に示すフローチャートのステップS61に移行する。制御部62は、
図8のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS61からの処理を繰り返す。
【0090】
制御部62は、ステップS61において、第1電力状態から第2電力状態または第3電力状態に切り替えるか否かを判定する。制御部62は、第1電力状態から第2電力状態または第3電力状態に切り替えない場合、処理を終了する。制御部62は、第1電力状態から第2電力状態または第3電力状態に切り替える場合、ステップS62に移行する。
【0091】
制御部62は、ステップS62において、変速動作に関する情報を記憶部64に記憶させ、処理を終了する。
【0092】
図9を参照して、第1電力状態に切り替えられた場合の変速動作に関する処理について説明する。制御部62は、制御部62に電力が供給されると、処理を開始して
図9に示すフローチャートのステップS63に移行する。制御部62は、
図9のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS63からの処理を繰り返す。
【0093】
制御部62は、ステップS63において、第2電力状態または第3電力状態から第1電力状態に切り替えるか否かを判定する。制御部62は、第2電力状態または第3電力状態から第1電力状態に切り替えない場合、処理を終了する。制御部62は、第2電力状態または第3電力状態から第1電力状態に切り替える場合、ステップS64に移行する。
【0094】
制御部62は、ステップS64において、変速動作が完了したか否かを判定する。制御部62は、例えば、
図8のステップS62において記憶部64に記憶される変速動作に関する情報を取得し、変速動作が開始されてからの複数の回転体20の回転角度Aが予め定める角度AX以上の場合、変速動作が完了したと判定する。制御部62は、ステップS64において変速動作が完了している場合、ステップS65に移行する。制御部62は、ステップS65において、変速指令の禁止フラグを解除し、処理を終了する。
【0095】
制御部62は、ステップS64において変速動作が完了していない場合、ステップS66に移行する。制御部62は、ステップS66において、変速指令の禁止フラグを設定し、ステップS64に戻る。制御部62は、ステップS64において、第1電力状態から第2電力状態または第3電力状態に切り替えられる場合に記憶部64に記憶された複数の回転体20の回転角度Aと、第1電力状態に切り替えられてからの回転角度Aとの累積が予め定める角度AX以上になった場合、ステップS65に移行する。この場合、予め定める待機期間TAは、複数の回転体20の回転角度Aが、予め定める角度AXから第1電力状態から第2電力状態または第3電力状態に切り替えられる場合に記憶部64に記憶された複数の回転体20の回転角度Aを減じた回転角度A以上になるまでの期間である。制御部62は、変速指令の禁止フラグが設定されている期間において、制御条件が成立しても、変速機52に変速指令を行わない。
【0096】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車用の制御装置および人力駆動車用の変速システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う人力駆動車用の制御装置および人力駆動車用の変速システムは、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0097】
・制御部62は、人力駆動車10が下り坂を走行している場合、および、複数の回転体20が空転している場合の少なくとも1つの場合、第1電力状態において変速機52が変速動作を開始してから第2電力状態または第3電力状態に切り替えられるまでの期間TXにおいて、複数の回転体20の回転角度Aが予め定める角度AX未満の場合、第1電力状態に切り替えられた後、予め定める待機期間TAが経過していなくても、変速機52の変速動作を実行可能に制御するように構成されてもよい。例えば、
図9のフローチャートを
図10のように変更する。
図10のフローチャートでは、ステップS64においてNOの場合、制御部62は、ステップS71に移行する。制御部62は、ステップS71において、人力駆動車10が下り坂を走行、または、複数の回転体20が空転しているか否かを判定する。制御部62は、人力駆動車10が下り坂を走行、または、複数の回転体20が空転している場合、ステップS65に移行する。制御部62は、人力駆動車10が下り坂を走行していなく、かつ、複数の回転体20が空転していない場合、ステップS66に移行する。
【0098】
・予め定める信号は、検出部66から入力される全ての検出信号を含んでいてもよい。この場合、制御部62は、検出部66から検出信号が入力されるごとに、制御条件に応じてコンポーネント18を制御可能に構成される。検出部66からの検出信号の出力周期が短い場合、制御条件が成立しているか制御部62が判定する頻度を低下させられるため、制御部62の演算負荷を低減できる。
【0099】
・予め定める信号は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つが変更された場合に出力されてもよい。人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つは人力駆動車10の姿勢、加速度、クランク26の回転速度、人力駆動力、車速、ライダの心拍数、および、走行負荷を含む。この場合、制御部62は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つが変更される場合に限り、制御条件に応じてコンポーネント18を制御可能に構成される。制御条件が成立しているか制御部62が判定する頻度を低下させられるため、制御部62の演算負荷を低減できる。この変形例では、制御部62は、検出部66の出力に含まれる人力駆動車10の姿勢、加速度、クランク26の回転速度、人力駆動力、車速、ライダの心拍数、および、走行負荷の少なくとも1つに関する検出値が予め定める値になった場合、予め定める信号が入力されたと判定するように構成されてもよい。制御部62は、検出部66の出力に含まれる人力駆動車10の姿勢、加速度、クランク26の回転速度、人力駆動力、車速、ライダの心拍数、および、走行負荷の少なくとも1つに関する検出値の単位時間当たりの変化量が予め定める変化量以上になった場合、予め定める信号が入力されたと判定するように構成されてもよい。検出部66は、人力駆動車10の姿勢、加速度、クランク26の回転速度、人力駆動力、車速、ライダの心拍数、および、走行負荷の少なくとも1つに関する検出値が予め定める値を超えた場合、予め定める信号を制御部62に出力するように構成されてもよい。
【0100】
・制御部62は、
図5のステップS30、
図9ステップS64、および、
図10のステップS64の少なくとも1つの判定処理に変えて、伝達部材16が複数の回転体20に係合したか否か、または、伝達部材16が安定した状態になったか否かの判定処理を行うように構成されてもよい。制御部62は、例えば、複数の回転体20に設けられる伝達部材16を係合させるための構造の位相の位置を検出する検出部の出力に応じて、伝達部材16が複数の回転体20に係合したか否か、または、伝達部材16が安定した状態になったか否かを判定できる。
【0101】
・制御部62は、
図5のステップS29および
図10のステップS71の少なくとも1つの判定処理に変えて、人力駆動力Hが予め定める駆動力HX以下か否かの判定処理を行うように構成されてもよい。制御部62は、人力駆動力Hが予め定める駆動力HX以下の場合、YESに進み、人力駆動力Hが予め定める駆動力HX以下ではない場合、NOに進む。
【0102】
・制御部62は、発電機56の発電状態に応じて、第1状態と第2状態とを切り替え可能に構成されてもよい。例えば、
図3のフローチャートのステップS11を
図11のステップS81ように変更する。制御部62は、ステップS81において発電機56の発電状態が予め定める状態になったか否かを判定する。制御部62は、発電機56の発電状態が予め定める状態の場合、ステップS12に移行する。制御部62は、発電機56の発電状態が予め定める状態ではない場合、ステップS13に移行する。予め定める状態は、例えば、発電機56が予め定める発電量以上の電力を発電可能な状態を含む。制御部62は、例えば、発電機56が設けられるハブ回転体の回転速度が所定速度以上の場合に対応する検出信号が検出部66から制御部62に入力された場合、発電機56の発電状態が予め定める状態であると判定する。制御部62は、発電機56によって発生した電気の電流を検出する検出部の出力に応じて発電状態が予め定める発電状態か否かを判定してもよい。
【0103】
・制御部62は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つに基づいて規定される制御条件に応じてコンポーネントを制御可能に構成され、発電機56の発電状態に応じて、コンポーネント18を制御するか否かを変えてもよい。この変形例では、コンポーネント18は、変速機52に代えてまたは加えて、駆動部および報知部の少なくとも1つを含んでいてもよい。駆動部は、例えば、人力駆動車10の推進をアシストするモータを含む。報知部は、ライトおよび表示部の少なくとも1つを含む。表示部は、例えば、表示パネルを備える携帯型電子機器、ディスプレイ、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、および、サイクルコンピュータの少なくとも1つを含む。報知部は、スピーカを含んでいてもよい。制御部62は、例えば、発電機56の発電量が予め定める発電量以上になった場合、駆動部および報知部の少なくとも1つを動作可能に構成される。この変形例では、制御部62は、第1状態と第2状態とを備えていなくてもよい。
【0104】
・制御部62は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つに基づいて規定される制御条件に応じて変速機52の変速動作を制御可能に構成され、制御部62は、発電機56の発電状態に応じて、変速機52の変速動作をするか否かを変えてもよい。制御部62は、例えば、制御条件が成立し、かつ、発電機56の発電量が予め定める発電量以上の場合、変速機52の変速イベントを設定し、変速機52に変速指令を行う。この変形例では、制御部62は、第1状態と第2状態とを備えていなくてもよい。
【0105】
・制御部62は、人力駆動車10の走行状態および人力駆動車10のライダの状態の少なくとも1つに基づいて規定される制御条件に応じて変速機52の変速動作を制御可能に構成され、複数の回転体20の回転状態に応じて、変速機52の変速動作をするか否かを変えてもよい。制御部62は、例えば、制御条件が成立し、かつ、複数の回転体20の回転速度Vが速度VA以上の場合、変速機52の変速イベントを設定し、変速機52に変速指令を行う。この変形例では、制御部62は、第1状態と第2状態とを備えていなくてもよい。
【0106】
・制御部62は、
図8のステップS61とステップS62との間において、変速動作が完了したか否かを判定してもよい。この場合、制御部62は、変速動作が完了していない場合、ステップS62において、変速指令の禁止フラグを設定し、その旨を記憶部64に記憶させてもよい。この場合、制御部62は、
図9のステップS63においてYESの場合、ステップS62において変速指令の禁止フラグを設定されているか否かを判定する。制御部62は、ステップS62において変速指令の禁止フラグを設定されていない場合、処理を終了する。制御部62は、ステップS62において変速指令の禁止フラグを設定されている場合、ステップS64に移行し、ステップS64において、変速動作が完了したか否かを判定する。すなわち、ステップS62において変速指令の禁止フラグが設定されていない場合、制御部62は、ステップS64において、変速動作が完了したか否かを判定することなく、処理を終了する。制御部62はステップS64において、第2電力状態または第3電力状態から第1電力状態に切り替えてからの複数の回転体20の回転角度Aが予め定める角度AX以上の場合、変速動作が完了したと判定する。この場合、予め定める待機期間TAは、複数の回転体20の回転角度Aが、予め定める角度AX以上になるまでの期間である。
【0107】
・制御部62は、複数の回転体20の回転状態を検出する検出部66の出力に代えてまたは加えて、発電機56の発電状態を検出するセンサの出力に応じて、第1状態と前記第2状態とを切り替えるようにしてもよい。
【0108】
・発電機56は、例えば、前輪24Bのハブに設けられてもよい。
・変速システム50から発電機56を省略してもよい。
・変速機52は、フロント外装変速機であってもよい。この場合、第1回転体12が複数の回転体20を含む。
【0109】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0110】
10…人力駆動車、12…第1回転体、14…第2回転体、16…伝達部材、18…コンポーネント、20…複数の回転体、22…車体、26…クランク、50…変速システム、52…変速機、56…発電機、60…制御装置、62…制御部、64…記憶部、66…検出部。