(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153803
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】CD38を特異的に結合する抗体による免疫調節及び固形腫瘍の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241022BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241022BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241022BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241022BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241022BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00 ZNA
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P35/00
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024123110
(22)【出願日】2024-07-30
(62)【分割の表示】P 2022015442の分割
【原出願日】2016-06-24
(31)【優先権主張番号】62/184,018
(32)【優先日】2015-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/249,546
(32)【優先日】2015-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/250,566
(32)【優先日】2015-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/263,307
(32)【優先日】2015-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/331,489
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】アフマディ,タハムタン
(72)【発明者】
【氏名】カズナフ,タイネク
(72)【発明者】
【氏名】ロクホースト,ヘンク エム.
(72)【発明者】
【氏名】マティス,ツナ
(72)【発明者】
【氏名】サセール,エイミー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CD38を特異的に結合する抗体による免疫調節、及び固形腫瘍を有する患者の治療方法を提供する。
【解決手段】固形腫瘍を有する患者を治療する方法であって、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与することを含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍を有する患者を治療する方法であって、治療的に有効な量のCD38を特異的
に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、前記患者における免疫応答を誘発する、請求
項1に記載の方法。
【請求項3】
前記免疫応答がエフェクターT細胞(Teff)応答である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記Teff応答が、CD4+T細胞又はCD8+T細胞によって媒介される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記Teff応答が、前記CD8+T細胞によって媒介される、請求項4に記載の方法
。
【請求項6】
前記Teff応答が、前記CD8+T細胞数の増加、CD8+T細胞増殖の増加、T細
胞クローン増殖の増加、CD8+メモリー細胞形成の増加、抗原依存性抗体産生の増加、
サイトカイン産生の増加、ケモカイン産生の増加、又はインターロイキン産生の増加(細
胞による)である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、免疫サプレッサー細胞の機能を阻害する、請
求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫サプレッサー細胞が制御性T細胞(Treg)である、請求項7に記載の方法
。
【請求項9】
前記Tregが、CD3+CD4+CD25+CD127dim T細胞である、請求
項8に記載の方法。
【請求項10】
前記TregがCD38を発現する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記Tregの機能が前記Tregを殺傷することによって阻害される、請求項10に
記載の方法。
【請求項12】
前記Tregを殺傷することが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって媒介される
、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫サプレッサー細胞が骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である、請求項7
に記載の方法。
【請求項14】
前記MDSCが、CD11b+HLADR-CD14-CD33+CD15+細胞であ
る、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記CD11b+HLADR-CD14-CD33+CD15+細胞がCD38を発現
する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記MDSCの機能が前記MDSCを殺傷することによって阻害される、請求項15に
記載の方法。
【請求項17】
MDSCの殺傷が、ADCCによって媒介される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫サプレッサー細胞が制御性B細胞(Breg)である、請求項7に記載の方法
。
【請求項19】
前記Bregが、CD19+CD24+CD38+細胞である、請求項18に記載の方
法。
【請求項20】
前記Bregの機能が前記Bregを殺傷することによって阻害される、請求項19に
記載の方法。
【請求項21】
前記Bregを殺傷することが、ADCCによって媒介される、請求項20に記載の方
法。
【請求項22】
前記免疫サプレッサー細胞が、骨髄又は末梢血中に存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
前記固形腫瘍が、黒色腫、肺癌、扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、非扁平上皮N
SCLC、結腸直腸癌、前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、胃癌(stomach cancer)、卵巣
癌、胃癌(gastric cancer)、肝癌、膵臓癌、甲状腺癌、頭頸部の扁平上皮癌、食道又は
胃腸管の癌腫、乳癌、卵管癌、脳癌、尿道癌、尿生殖器癌、子宮内膜症、子宮頸癌、又は
前記癌の転移巣である、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記固形腫瘍が、検出可能なCD38発現を欠いている、請求項1~23のいずれかに
記載の方法。
【請求項25】
前記CD38を特異的に結合する抗体が非アゴニスト抗体である、請求項1~24のい
ずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記非アゴニスト抗体が、統計的に有意でない様式で、in vitroでの末梢血単
核球サンプルの増殖を誘導する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列
番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、請求
項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の少なくとも領
域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEAWVIHG
G(配列番号3)に結合する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び
11の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、HCDR3、軽鎖相補性決定領
域(LCDR)1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、請求項1~28の
いずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含
む、請求項1~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HCD
R3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、請求項1~26のいずれかに記載
の方法。
【請求項32】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、第2の治療薬と併用して投与される、請求項
1~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記第2の治療薬が、化学療法薬、癌標的療法、固形腫瘍の治療用の標準治療薬、又は
免疫チェックポイント阻害薬である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記免疫チェックポイント阻害薬が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L
2抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、又は抗CTLA-4抗体である、請求項34
に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗PD-1抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗PD-1抗体が、
a)配列番号22のVH及び配列番号23のVL、
b)配列番号24のVH及び配列番号25のVL、
c)配列番号32のVH及び配列番号33のVL、又は
d)配列番号34のVH及び配列番号35のVLを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗PD-L1抗体である、請求項35に記載の方法
。
【請求項39】
前記抗PD-L1抗体が、
a)配列番号26のVH及び配列番号27のVL、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は
c)配列番号30のVH及び配列番号31のVLを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗PD-L2抗体である、請求項35に記載の方法
。
【請求項41】
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗LAG3抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗TIM-3抗体である、請求項35に記載の方法
。
【請求項43】
前記抗TIM-3抗体が、
a)配列番号36のVH及び配列番号37のVL、又は
b)配列番号38のVH及び配列番号39のVLを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の治療薬が、同時に、順次、又は別々に投与される、請求項33~43のいず
れかに記載の方法。
【請求項45】
前記CD38を特異的に結合する抗体が静脈内に投与される、請求項1~44のいずれ
かに記載の方法。
【請求項46】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、前記CD38を特異的に結合する抗体と、ヒ
アルロニダーゼと、を含む、医薬組成物中で、皮下に投与される、請求項1~44のいず
れかに記載の方法。
【請求項47】
前記ヒアルロニダーゼが配列番号40のrHuPH20である、請求項46に記載の方
法。
【請求項48】
前記患者が放射線療法で治療されるか、又は既に治療されている、請求項1~47のい
ずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記患者が手術を受けたか、又は後に受ける、請求項1~47のいずれかに記載の方法
。
【請求項50】
免疫サプレッサー細胞の活性を抑制する方法であって、前記免疫抑制細胞を、CD38
を特異的に結合する抗体と接触させることを含む、方法。
【請求項51】
前記免疫サプレッサー細胞がTregである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記Tregが、CD3+CD4+CD25+CD127dim T細胞である、請求
項51に記載の方法。
【請求項53】
前記免疫サプレッサー細胞がMDSCである、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記MDSCが、CD11b+HLADR-CD14-CD33+CD15+細胞であ
る、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記免疫サプレッサー細胞がBregである、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記Bregが、CD19+CD24+CD38+細胞である、請求項55に記載の方
法。
【請求項57】
前記CD38を特異的に結合する抗体が非アゴニスト抗体である、請求項50~56の
いずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記非アゴニスト抗体が、統計的に有意でない様式で、in vitroでの末梢血単
核球サンプルの増殖を誘導する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含
む抗体と、CD38への結合に関して競合する、請求項50~58のいずれかに記載の方
法。
【請求項60】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の少なくとも領
域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEAWVIHG
G(配列番号3)に結合する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び
11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の
アミノ酸配列を含む、請求項50~60のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含
む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HCD
R3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、請求項50~58のいずれかに記
載の方法。
【請求項64】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
患者における免疫応答を増強する方法であって、CD38を特異的に結合する抗体を前
記患者に投与することを含む、方法。
【請求項66】
前記患者が癌又はウイルス感染を有する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記CD38を特異的に結合する抗体が非アゴニスト抗体である、請求項65又は66
に記載の方法。
【請求項68】
前記非アゴニスト抗体が、統計的に有意でない様式で、in vitroでの末梢血単
核球サンプルの増殖を誘導する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含
む抗体と、CD38への結合に関して競合する、請求項65~68のいずれかに記載の方
法。
【請求項70】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の少なくとも領
域SKRNIQFSCIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEAWVIHGG(
配列番号3)に結合する、請求項65~69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び
11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の
アミノ酸配列を含む、請求項65~70のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含
む、請求項65~70のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HCD
R3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、請求項65~68のいずれかに記
載の方法。
【請求項74】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
ウイルス感染を有する患者を治療する方法であって、CD38を特異的に結合する抗体
を、前記ウイルス感染の治療に十分な期間、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項76】
前記CD38を特異的に結合する抗体が非アゴニスト抗体である、請求項75に記載の
方法。
【請求項77】
前記非アゴニスト抗体が、統計的に有意でない様式で、in vitroでの末梢血単
核球サンプルの増殖を誘導する、請求項75又は76に記載の方法。
【請求項78】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含
む抗体と、CD38への結合に関して競合する、請求項75~77のいずれかに記載の方
法。
【請求項79】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の少なくとも領
域SKRNIQFSCIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEAWVIHGG(
配列番号3)に結合する、請求項75~78のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び
11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3の
アミノ酸配列を含む、請求項75~79のいずれかに記載の方法。
【請求項81】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含
む、請求項75~80のいずれかに記載の方法。
【請求項82】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HCD
R3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、請求項75~77のいずれかに記
載の方法。
【請求項83】
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、請求項82に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD38を特異的に結合する抗体による免疫調節及び固形腫瘍の治療方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、共刺激性かつ共抑制性のリガンド及び受容体のネットワークによって厳重に
管理されている。これらの分子は、T細胞活性化に対する二次シグナルを出し、正及び負
のシグナルのバランスが取れているネットワークをもたらして、感染及び腫瘍に対する免
疫応答を最大化する一方で、自己に対する免疫性を制限する(Wang et al.,
(Epub Mar.7,2011)J Exp Med 208(3):577~92
、Lepenies et al.,(2008)Endocr Metab Immu
ne Disord Drug Targets 8:279~288)。
【0003】
固形腫瘍を治療するための免疫チェックポイント療法は、抗腫瘍性免疫応答を促進する
T細胞中の共抑制経路を標的としており、抗CTLA-4及び抗PD-1抗体である、Y
ERVOY(登録商標)(イピリムマブ)、KEYTRUDA(登録商標)(ペンブロリ
ズマブ)及びOPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)の承認によって、癌患者の臨床ケ
アの進歩につながっている。抗PD-1/PD-L1抗体は、複数の固形腫瘍を有する患
者における良好な臨床反応が明らかになっているが、その奏効率は依然として相当低く、
予め治療を受けた患者において約15%~20%である(Swaika et al.,
(2015)Mol Immunol doi:10.1016/j.molimm.2
015.02.009)。
【0004】
ナチュラルキラー細胞(NK)、樹状細胞(DC)及びエフェクターT細胞は、強い抗
腫瘍応答を引き起こすことができるが、腫瘍細胞は免疫抑制性微小環境を備えることが多
く、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性T細胞(Treg)又は制御性B細
胞(Breg)などの免疫細胞の免疫抑制性集団の発生に都合がよいため、腫瘍免疫寛容
と、癌患者及び実験的腫瘍モデルにおける免疫療法レジメンの失敗の一因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、腫瘍に対する適応免疫応答を誘発する、又は、免疫抑制性免疫細胞を標的
とする、新たな癌免疫療法を開発する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、それを必要とする
患者に投与することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、それを必要と
する患者に投与することを含む、制御性T細胞(Treg)介在性疾患を有する患者を治
療する方法も提供する。
【0008】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、それを必要と
する患者に投与することを含む、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)介在性疾患を有
する患者を治療する方法も提供する。
【0009】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、それを必要と
する患者に投与することを含む、制御性B細胞(Breg)介在性疾患を有する患者を治
療する方法も提供する。
【0010】
本発明はまた、制御性T細胞(Treg)をCD38を特異的に結合する抗体と接触さ
せることを含む、Tregの活性を抑制する方法も提供する。
【0011】
本発明はまた、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)をCD38を特異的に結合する
抗体と接触させることを含む、MDSCの活性を抑制する方法も提供する。
【0012】
本発明はまた、制御性B細胞(Breg)をCD38を特異的に結合する抗体と接触さ
せることを含む、Bregの活性を抑制する方法も提供する。
【0013】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を患者に投与することを含む、患者に
おける免疫応答を増強する方法も提供する。
【0014】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を患者に投与することによって、患者
におけるTreg細胞数を低下させることを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法
も提供する。
【0015】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を患者に投与することによって、患者
における骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)数を低下させることを含む、固形腫瘍を
有する患者を治療する方法も提供する。
【0016】
本発明はまた、免疫抑制細胞(immune suppressing cell)をCD38を特異的に結合
する抗体と接触させることを含む、免疫サプレッサー細胞の活性を抑制する方法も提供す
る。
【0017】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を、それを必要とする患者に投与する
ことを含む、ウイルス感染を有する患者を治療する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】リンパ球の中央値が、8mg/kg(上側線)又は16mg/kg(下側線)の用量でのDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療を受けた患者において経時的に増加しており、リンパ球数が治療終了後に基準値に戻ったことを示す。試験名:SIRIUS。X軸は、治療サイクルと各治療サイクル内の投与日で表した(C1D1:1サイクル目、1日目、C1D4:1サイクル目、4日目など)時間を示す。SCR:基準値、EOT:治療終了、WK:週、POST-WK:治療後の示した週、post-PD FU:悪化後の経過観察。灰色の陰でハイライトした領域は、レスポンダーのそれぞれの通院時のデータ点に対する、25~27%四分位範囲(IQR)を示す。
【
図2】個々の患者(明灰色線)について、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者の末梢血中の、CD3
+T細胞の絶対数の基準値に対する変化パーセント(%)を示す。試験名:SIRIUS(MMY2002)。X軸は、治療サイクルと各治療サイクル内の投与日で表した(C1D1:1サイクル目、1日目、C1D4:1サイクル目、4日目など)時間を示す。WK:週、POST-WK:治療後の示した週、POST-PD FU:悪化後の経過観察。黒色線は、全患者の変化%の中央値を示す。
【
図3】個々の患者(明灰色線)について、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者の末梢血中の、CD4
+T細胞の絶対数の基準値に対する変化パーセント(%)を示す。試験名:SIRIUS。X軸は、治療サイクルと各治療サイクル内の投与日で表した(C1D1:1サイクル目、1日目、C1D4:1サイクル目、4日目など)時間を示す。WK:週、POST-TMT:治療後。黒色線は、全患者の変化%の中央値を示す。
【
図4】個々の患者(明灰色線)について、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者の末梢血中の、CD8
+T細胞の絶対数の基準値に対する変化パーセント(%)を示す。試験名:SIRIUS。X軸は、治療サイクルと各治療サイクル内の投与日で表した(C1D1:1サイクル目、1日目、C1D4:1サイクル目、4日目など)時間を示す。WK:週、Pre-PD FU:悪化前の経過観察、Post-PD FU:悪化後の経過観察。黒色線は、全患者の変化%の中央値を示す。
【
図5】骨髄穿刺液中のCD45
+CD3
+細胞数(リンパ球の割合として測定)が、8mg/kg又は16mg/kgの用量でのDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療中に経時的に増加したことを示す。示されるように、このグラフはレスポンダーとノンレスポンダーの両方を含む。試験名:SIRIUS。X軸は、治療サイクルと各治療サイクル内の投与日で表した(C2D22:2サイクル目、22日目など)時間を示す。SCR:基準値、Post-PD FU1:悪化後の経過観察。灰色の陰でハイライトした領域は、それぞれ8mg/kg用量のノンレスポンダー、16mg/kg用量のレスポンダー、又は16mg/kg用量のノンレスポンダーのそれぞれの通院時のデータ点に対する、25~27%四分位範囲(IQR)を示す。NR:ノンレスポンダー、R:レスポンダー。
【
図6】骨髄穿刺液中のCD45
+CD3
+CD8
+細胞数(リンパ球の割合として測定)が、8mg/kg又は16mg/kgの用量でのDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療中に経時的に増加したことを示す。示されるように、このグラフはレスポンダーとノンレスポンダーの両方を含む。試験名:SIRIUS。X軸は、治療サイクルと各治療サイクル内の投与日で表した(C2D22:2サイクル目、22日目など)時間を示す。SCR:基準値、Post-PD FU1:悪化後の経過観察。灰色の陰でハイライトした領域は、それぞれ8mg/kg用量のノンレスポンダー、16mg/kg用量のレスポンダー、又は16mg/kg用量のノンレスポンダーのそれぞれの通院時のデータ点に対する、25~27%四分位範囲(IQR)を示す。NR:ノンレスポンダー、R:レスポンダー。
【
図7A】全治療患者の中央値として表した、末梢血中のCD8
+/Treg及びCD8
+/CD4
+細胞比が、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療中に経時的に増加したことを示す。時点:C1D1:1サイクル目、日目(cycle 1 day);C3D1:3サイクル目、1日目;C4D1:4サイクル目、1日目。試験名:SIRIUS。SCR:基準値。
【
図7B】全治療患者の中央値として表した、骨髄穿刺液中のCD8
+/Treg細胞比が、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療中に経時的に増加したことを示す。時点:C1D1:1サイクル目、日目;C3D1:3サイクル目、1日目;C4D1:4サイクル目、1日目。試験名:SIRIUS。
【
図8A】特定のクローン細胞の存在量変化(CIA)%を用いて測定するとき、ノンレスポンダーと比較すると、レスポンダーのCD8
+T細胞クローン性が増加していたことを示す。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図8B】DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療前と治療後を比較した、個々の患者のCD8
+T細胞クローン性の倍率変化を示す。レスポンダーは星印で示す。クローン性は、特定のクローン細胞の存在量倍率変化(CIA)で測定した。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図8C】ノンレスポンダー(B群)と比較すると、レスポンダー(A群)では、CIA(存在量変化)を用いて測定した、TCRレパートリーの総増殖量が大きかったことを示す。P=0.037。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図8D】それぞれの増殖したT細胞クローンについて、レスポンダー及びノンレスポンダーでの存在量変化(CIA)の絶対値の合計を示す。レスポンダー(A群)とノンレスポンダー(B群)との間のP=0.035。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図8E】レスポンダー(A群)及びノンレスポンダー(B群)における、単一T細胞クローンの最大CIAを示す。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図8F】ノンレスポンダー(B群)と比較すると、レスポンダー(A群)では、最大CIA%を用いて測定した、単一クローンの最大増殖量が大きかったことを示す。P=0.0477。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図9A】基準値、又は治療2週目、4週目若しくは8週目、又は再発後における、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)に対してノンレスポンダー(NR、黒色四角)及び少なくとも最小奏功を示す患者(MR、白色四角)の末梢血中の、CD8
+ナイーブ細胞の割合(%)を示す。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
**p=1.82×10
-4。
【
図9B】基準値、又は治療2週目、4週目若しくは8週目、又は再発後における、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)に対してノンレスポンダー(NR、黒色四角)及び少なくとも最小奏功を示す患者(MR、白色四角)の末梢血中の、CD8
+セントラルメモリー細胞(Tem)の割合を示す。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
*p=4.88×10
-2。
【
図9C】基準値、又は治療1、4若しくは8週目、又は再発後における、末梢血中のHLAクラスIに拘束された
CD8+T細胞の増加割合を示す。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図9D】基準値(bassline)又は治療中では、末梢血中のCD8
+ナイーブT細胞及びCD8
+セントラルメモリー細胞(Tem)において、CD38が低レベルで発現していることを示す。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。MFI:平均蛍光強度。
【
図10A】基準値の多発性骨髄腫患者における、Treg(CD3
+CD3
+CD4
+CD25
+CD127
dimの頻度(上のヒストグラム、P4細胞集団)と、Treg集団内のCD38
+Tregの頻度(下のヒストグラム、P5細胞集団)を示している、FACS解析のヒストグラムを示す。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図10B】DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療後の多発性骨髄腫患者における、Treg(CD3
+CD3
+CD4
+CD25
+CD127
dimの頻度(上のヒストグラム、P4細胞集団)と、Treg集団内のCD38
+Tregの頻度(下のヒストグラム、P5細胞集団)を示している、FACS解析のヒストグラムを示す。DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療により、CD38
+Tregが枯渇した。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図10C】は、基準値、又は1週目、4週目、8週目、再発後、又は6ヶ月目の治療終了時(EOT)における、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者のCD38
highCD3
+CD4
+CD25
+CD127
dim Tregの頻度を示す。CD38
highTregの頻度は、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療によって低下し、EOT時点で基準値まで戻った。Y軸:CD38
highCD3
+CD4
+CD25
+CD127
dim Treg(CD3
+T細胞由来)の%。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図10D】基準値、治療1週目、4週目及び8週目における、レスポンダー及びノンレスポンダーのCD8
+/Treg細胞比を示す。CD8
+/Treg細胞比は、治療8週目において、レスポンダーではノンレスポンダーに対して有意に高かった(p=0.00955)。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図10E】エフェクター細胞の増殖が、CD38
+Tregの存在下において、CD38
-Treg又は陰性対照と比較して、より効果的に阻害されることを示す。エラーバーは、標準誤差を表す。アスタリスクは、有意な変化を示す。サンプルは、複数の健康なドナーから入手した。細胞増殖は、カルボキシフルオセインサクシニミジルエステル(CFSE)の希釈によって評価した。
【
図11】骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)が、多発性骨髄腫患者において存在し(上のグラフ、四角で囲んだ細胞)、その細胞のうち約半分がCD38を発現していた(中央のグラフ、四角で囲んだ細胞)ことを示す。CD38high MDSC集団は、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)を1回点滴治療した患者では枯渇した(下のグラフ、四角で囲んだ細胞)。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図12】CD38high MDSC(CD11b
+HLADR
-CD14
-CD33
+CD15
+)の数が、基準値と比較して、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)による治療1週目、4週目又は8週目の患者では低下しており、治療終了後(EOT)に基準値付近まで戻ったことを示す。再発した患者は、依然としてCD38high MDSCの低下を示していた。黒色四角:ノンレスポンダー;白色四角:DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療に対し少なくとも最小奏功を示した患者。縦線は、各群における中央値を示す。患者2、4、15、16及び17は、CD38high MDSC集団の初期高値を示した。試験名:GEN501、17例の患者のサブセット。
【
図13】最も高いCD38high MDSCを有する患者(患者2、4、15、16及び17)では、無増悪生存期間(PFS)が最も長かったことを示す。これらの患者は、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療に対して、部分奏功(PR)又は最小奏功(MR)のいずれかであった。SD:安定;PD:進行。X軸は、個々の番号の患者に対するPFSを示す。
【
図14】MDSCが、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)誘発性ADCCに対して感受性があることを示す。Daudi細胞を、アッセイにおける標的細胞の陽性対照として使用した。細胞溶解%を測定した。
【
図15A】CD38
+Bregが、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)によって治療された患者において、治療1週目、4週目及び8週目に枯渇したことを示す。
【
図15B】CD38
+Bregが、刺激によってIL-10を分泌することを示す。
【
図16A】治療中、基準値及び示した時点においてVGPRであった、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者由来のPBMC中の、CMV、EBV及びインフルエンザウイルス特異的(CEF)IFN-γ産生によって測定される、抗ウイルス応答を示す。OD:光学密度。白色バー:陰性対照;黒色バー:CEF添加;網掛けバー:同種PBMCのみ。アスタリスク(Asterix)は、統計的に有意な変化を示す。Pre 4、8、10=治療4週目、8週目、又は10週目。
【
図16B】治療中、基準値及び示した時点においてCRであった、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者由来のPBMC中の、CMV、EBV及びインフルエンザウイルス特異的(CEF)IFN-γ産生によって測定される、抗ウイルス応答を示す。OD:光学密度。白色バー:陰性対照;黒色バー:CEF添加;網掛けバー:同種PBMCのみ。アスタリスクは、統計的に有意な変化を示す。Pre 4、8、10=治療4週目、8週目、又は10週目。
【
図16C】治療中、基準値及び示した時点においてPDであった、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者由来のPBMC中の、CMV、EBV及びインフルエンザウイルス特異的(CEF)IFN-γ産生によって測定される、抗ウイルス応答を示す。OD:光学密度。白色バー:陰性対照;黒色バー:CEF添加;網掛けバー:同種PBMCのみ。Ns:有意差なし。Pre 4、8=治療4週目、又は8週目。
【
図16D】治療中、基準値及び示した時点においてMRであった、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者由来のPBMC中の、CMV、EBV及びインフルエンザウイルス特異的(CEF)IFN-γ産生によって測定される、抗ウイルス応答を示す。OD:光学密度。白色バー:陰性対照;黒色バー:CEF添加;網掛けバー:同種PBMCのみ。Ns:有意差なし。Pre 4、8=治療4週目、又は8週目。
【
図16E】治療中、基準値及び示した時点においてVGPRであった、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者由来のPBMC中の、増殖性ウイルス反応性T細胞の割合(%)を示す。白色バー:陰性対照;黒色バー:CEF添加。アスタリスクは、統計的に有意な変化を示す。Pre 4、8、10=治療4週目、8週目、又は10週目。
【
図16F】治療中、基準値及び示した時点においてCRであった、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者由来のPBMC中の、増殖性ウイルス反応性T細胞の割合(%)を示す。白色バー:陰性対照;黒色バー:CEF添加。アスタリスクは、統計的に有意な変化を示す。Pre 4、8、10=治療4週目、8週目、又は10週目。
【
図17A】健康なドナー由来のナチュラルキラー細胞(NK)、単球、B細胞及びT細胞における、CD38の発現レベルを示すFACS解析のヒストグラムを示す。
【
図17B】多発性骨髄腫患者由来の形質細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、単球、B細胞及びT細胞における、CD38の発現レベルを示すFACS解析のヒストグラムを示す。
【
図17C】再発及び治療抵抗性多発性骨髄腫患者由来のCD38+Treg、Breg、NK、B細胞及びT細胞における、CD38の平均蛍光強度(MFI)の比較を示す。CD38は、CD38+Treg、Breg及びNK細胞と比較すると、B細胞及びT細胞において低レベルで発現した。
【
図18】経時的に、PD-L1タンパク質がレスポンダー(R)由来のPBMCサンプルにおいて下方制御され、ノンレスポンダー(NR)において上方制御されることを示す。SD:安定。C1D1:1サイクル目、1日目;C3D1、3サイクル目、1日目。Y軸は、log2タンパク質濃度値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、単数形「a」、「a
n」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象
を包含する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ以上の細胞
の組み合わせ、及びこれに類するものなどを含む。
【0020】
「CD38」は、ヒトCD38タンパク質(同義語:ADPリボシルシクラーゼ1、c
ADPrヒドロラーゼ1、環状ADPリボースヒドロラーゼ1)を指す。ヒトCD38は
、GenBank受入れ番号NP 001766に、及び配列番号1に示されているアミ
ノ酸配列を有する。CD38が、細胞質ドメインを表すアミノ酸配列1~21と、膜貫通
ドメインを表すアミノ酸配列22~42と、CD38の細胞外ドメインを表す残基43~
300と、を有する単一パスタイプII膜タンパク質であることは周知である。
【0021】
配列番号1
MANCEFSPVSGDKPCCRLSRRAQLCLGVSILVLILVVVL
AVVVPRWRQQWSGPGTTKRFPETVLARCVKYTEIHPEMRH
VDCQSVWDAFKGAFISKHPCNITEEDYQPLMKLGTQTVPC
NKILLWSRIKDLAHQFTQVQRDMFTLEDTLLGYLADDLTW
CGEFNTSKINYQSCPDWRKDCSNNPVSVFWKTVSRRFAEA
ACDVVHVMLNGSRSKIFDKNSTFGSVEVHNLQPEKVQTLE
AWVIHGGREDSRDLCQDPTIKELESIISKRNIQFSCKNIY
RPDKFLQCVKNPEDSSCTSEI
【0022】
本明細書で使用されるとき、「抗体」は、広義が意図され、マウス、ヒト、ヒト化、及
びキメラ単クローン性抗体を含む単クローン性抗体、抗体断片、二重特異性抗体又は多重
特異性抗体、二量体、四量体、若しくは多量体の抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、及び
必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子のいずれの他の修飾された
構成も含む、免疫グロブリン分子を含む。
【0023】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、す
なわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びI
gGは、アイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG
4に更に下位分類される。いずれの脊椎動物種の抗体軽鎖も、それらの定常ドメインのア
ミノ酸配列に基づいて2つの明確に異なるタイプ、すなわちカッパ(κ)及びラムダ(λ
)のうちの一方に分類することができる。
【0024】
「抗体断片」とは、重鎖及び/又は軽鎖抗原結合部位、例えば、重鎖相補性決定領域(
HCDR)1、2、及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2、及び3、重鎖可変
領域(VH)、又は軽鎖可変領域(VL)を保持する免疫グロブリン分子の一部を指す。
抗体断片は、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断
片と、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価の
断片であるF(ab)2断片と、VH及びCH1ドメインからなるFd断片と、抗体の一
本のアームのVL及びVHドメインからなるFv断片と、VHドメインからなる、ドメイ
ン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544~6,
1989)と、を含む。VHドメイン及びVLドメインは、操作され、合成リンカーを介
して一緒に連結して様々な種類の一本鎖抗体設計を形成することができ、ここでVH/V
Lドメインは、分子内で対合するか、又はVHドメイン及びVLドメインが別々の一本鎖
抗体構築物によって発現される場合には分子間で対合して、一本鎖Fv(scFv)又は
ダイアボディなどの一価の抗原結合部位を形成する。これらは、例えば、国際公開第19
98/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び
同第1992/01047号に記載されている。これらの抗体断片は、当業者に周知の技
術を使用して得られ、これらの断片は全長抗体の場合と同一の方法で、有用性に関してス
クリーニングされる。
【0025】
「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体又は抗体
断片を指す(例えば、CD38に特異的に結合する単離された抗体は、ヒトCD38以外
の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒトCD38を特異的に
結合する単離抗体は、Macaca fascicularis(カニクイザル)CD3
8など、ヒトCD38のオルソログなどの他の抗原に対して交差反応性を有する可能性が
ある。二重特異性抗体の場合、二重特異性抗体は、2種類の目的の抗原に特異的に結合し
、この2種類の目的の抗原以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。更に
、単離抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合もある。「単離
抗体」は、高純度で単離された抗体、例えば純度80%、81%、82%、83%、84
%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%である抗体を包含する。
【0026】
「特異的結合」又は「特異的に結合する」又は「結合する」とは、他の抗原よりも高い
親和性で抗原又は抗原内のエピトープに結合する抗体を指す。典型的には、抗体は、平衡
解離定数(KD)が約1×10-8M以下、例えば約1×10-9M以下、約1×10-
10M以下、約1×10-11M以下、又は約1×10-12M以下で抗原又は抗原内の
エピトープに結合すし、典型的にはこのKDは、非特異性抗原(例えば、BSA、カゼイ
ン)への結合に対するKDよりも少なくとも100倍小さい。解離定数は標準的手法を用
いて測定することができる。しかし、抗原又は抗原内のエピトープに特異的に結合する抗
体は、例えばヒト又はサル、例えばMacaca fascicularis(カニクイ
ザル、cyno)、Pan troglodytes(チンパンジー、chimp)又は
Callithrix jacchus(コモンマーモセット、marmoset)など
の他種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有する場合がある。単特異性抗
体は、1種類の抗原又は1種類のエピトープに特異的に結合するが、二重特異性抗体は、
2種類の異なる抗原又は2種類の異なるエピトープに特異的に結合する。
【0027】
抗体可変領域は、3つの「抗原結合部位」で隔てられた「フレームワーク」領域からな
る。抗原結合部位は、様々な用語を用いて定義される:VH内に3つ(HCDR1、HC
DR2、HCDR3)及びVL内に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)ある相
補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づく(Wu and Kabat(1970
)J Exp Med 132:211~50;Kabatet al Sequenc
es of Proteins of Immunological Interest
,5th Ed、Public Health Service,National I
nstitutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、V
H内に3つ(H1、H2、H3)及びVL内に3つ(L1、L2、L3)ある、「超可変
領域」、「HVR」、又は「HV」は、Chothia and Lesk(Choth
ia and Lesk(1987)MolBiol 196:901~17)によって
定義されたような構造的に超可変である抗体可変ドメインの領域を指す。他の用語として
、「IMGT-CDR」(Lefranc et al.,(2003)Dev Com
parat Immunol 27:55~77)及び「特異性決定残基使用」(SDR
U)(Almagro(2004)Mol Recognit 17:132~43)が
挙げられる。International ImMunoGeneTics(IMGT)
データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準化番
号付け及び定義を提供する。CDR、HV、及びIMGTの表記間の対応関係については
、Lefrancet al.,(2003)Dev Comparat Immuno
l 27:55~77に記載されている。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「Chotia残基」は、Al-Lazikani(Al
-Lazikani et al.,(1997)J MolBiol 273:927
~48)に準じて番号付けされた抗体VL残基及びVH残基である。
【0029】
「フレームワーク」又は「フレームワーク配列」は、抗原結合部位として定義されたも
のを除く、可変領域の残りの配列である。抗原結合部位は上記のような様々な用語によっ
て定義され得るため、フレームワークの正確なアミノ酸配列は抗原結合部位がどのように
定義されるかによって決まる。
【0030】
「ヒト化抗体」とは、抗原結合部位がヒト以外の種に由来し、可変領域フレームワーク
がヒト免疫グロブリン配列に由来する、抗体を指す。ヒト化抗体はフレームワーク領域内
に置換を含む可能性があることから、当該フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリ
ン又は生殖細胞系列遺伝子配列の完全な複製物でなくてもよい。
【0031】
「ヒト抗体」とは、フレームワーク及び抗原結合部位の両方がヒト起源の配列に由来す
る重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。抗体が定常領域を含む場合、定常
領域もヒト起源の配列に由来する。
【0032】
ヒト抗体は、抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロ
ブリン遺伝子を使用する系から得られた場合のヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領
域又は軽鎖可変領域を含む。そのような系は、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリ
ン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するマウスなどのトランス
ジェニック非ヒト動物を含む。「ヒト抗体」は、例えば天然に存在する体細胞突然変異、
又はフレームワーク若しくは抗原結合部位における意図した置換の導入、又はその両方に
より、ヒト生殖系免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子と比較したとき
、アミノ酸の相違を含み得る。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系免疫グロブリン
又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸
配列において少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、
87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、
97%、98%、99%又は100%同一である。一部の場合では、「ヒト抗体」は、例
えばKnappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57
~86に記載されるヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワー
ク配列、又は例えばShi et al.,(2010)J MolBiol 397:
385~96及び国際公開第2009/085462号に記載される、ファージ上に提示
されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有し得る
。
【0033】
ヒト免疫グロブリン配列に由来するヒト抗体は、ファージ提示組み込み合成CDR及び
/若しくは合成フレームワークなどの系を用いて生成され得るか、又は抗体特性を改善す
るためにin vitro突然変異誘発を受けることができ、in vivoのヒト抗体
生殖系レパートリー内に天然に存在しない抗体をもたらす。
【0034】
抗原結合部位がヒト以外の種に由来する抗体は、ヒト抗体の定義には含まれない。
【0035】
「組換え抗体」は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニック若しくは染色体導
入動物(例えば、マウス若しくはラット)又はそれから調製されたハイブリドーマ(以下
に詳述)から単離された抗体、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離さ
れた抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、並びにヒト免疫
グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライスすることを伴う任意の他の手段によ
り調製、発現、作製、又は単離された抗体、あるいはFabアーム交換を用いてin v
itroで生成される抗体、例えば二重特性抗体などの組換え手段により調製、発現、作
製、又は単離される全ての抗体を含む。
【0036】
「単クローン性抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。単クロ
ーン性抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示し、又
は二重特異性単クローン性抗体の場合には、2つの別個のエピトープに対する二重結合特
異性を示す。したがって、「単クローン性抗体」は、抗体重鎖からのC末端リシンの除去
など、潜在的な周知の代替物を除き、それぞれの重鎖及びそれぞれの軽鎖において単一の
アミノ酸組成物を伴う抗体集団を指す。単クローン性抗体は、抗体集団内に異種グリコシ
ル化を有し得る。単クローン性抗体は、単特異性若しくは多重特異性、又は一価、二価、
若しくは多価であり得る。二価抗体は、単クローン性抗体という用語に含まれる。
【0037】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原の一部を意味する。エピトープは通常
、アミノ酸又は多糖類側鎖のような部位の化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性など
)表面基からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有し得る。エピトープは
、立体配座空間単位を形成する隣接した及び/又は隣接していないアミノ酸からなり得る
。隣接していないエピトープについて、抗原の直鎖配列の異なる部分からのアミノ酸は、
タンパク質分子の折り畳みを通じて、三次元空間において近接する。
【0038】
「変種」は、1つ又は2つ以上の修飾、例えば、置換、挿入、又は欠失によって、基準
ポリペプチド又は基準ポリヌクレオチドとは異なる、ポリペプチド又はポリヌクレオチド
を指す。
【0039】
「~と併用して」は、2つ又は3つ以上の治療薬が、対象に混合物の状態で一緒に、そ
れぞれ単独の薬剤として同時に、又はそれぞれ単独の薬剤として任意の順番で順次に投与
することを意味する。一般に、各薬剤は、その薬剤に対して定められた用量及び/又は予
定で投与される。
【0040】
「治療する」又は「治療」は、その目的が、望ましくない生理学的変化又は疾患の進行
を遅らせる(減らす)、例えば、腫瘍又は腫瘍細胞が発生し、又は伝播するのを遅らせる
ことであったり、あるいは、治療の間に有益な又は望ましい臨床的結果を提供することで
あったりする、治療的処置を指す。有益な若しくは所望の臨床結果としては、検出可能で
あろうと又は検出不可能であろうと、症状の緩和、疾患の程度の軽減、安定した(すなわ
ち、悪化しない)疾患状態、疾患の進行の遅延又は鈍化、転移の欠落、疾患状態の改善又
は緩和、及び寛解(部分的であろうと又は全体的であろうと)が挙げられる。「治療」は
また、対象が治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長
させることを意味し得る。治療を必要とする対象としては、望まれない生理的変化又は疾
患を既に有している対象、並びに生理的変化又は疾患を有しやすい傾向がある対象が含ま
れる。
【0041】
「治療的に有効な量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な用量及び期間で、
有効な量を指す。治療的に有効な量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの要因、
並びに個体において所望の応答を引き出す治療薬又は治療薬の組み合わせの能力によって
種々であってよい。有効な治療薬又は治療薬の組み合わせを示す指標の例としては、例え
ば、患者の健康状態の改善、腫瘍量の減少、腫瘍の増殖の停止若しくは鈍化、及び/又は
体内の他の場所への癌細胞の転移の不在が挙げられる。
【0042】
「増殖を阻害する」(例えば、腫瘍細胞に関して)は、治療又は治療薬の組み合わせが
ない場合の同じ腫瘍細胞又は腫瘍組織の増殖の低下又は遅延と比較して、治療又は治療若
しくは治療薬の組み合わせと接触されるときのin vitro又はin vivoでの
腫瘍細胞又は腫瘍組織の増殖の測定可能な低下又は遅延を指す。in vitro又はi
n vivoでの腫瘍細胞又は腫瘍組織の増殖の阻害は、少なくとも約10%、20%、
30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、又は100%であ
り得る。
【0043】
「制御性T細胞」又は「Treg」は、他のT細胞及び/又は他の免疫細胞の活性を、
通常はその活性を抑制することによって制御するTリンパ球を指す。Tregは、CD3
+CD4+CD25+CD127dimT細胞であり得る。Tregはこの表現型に完全
に限定されなくてもよく、Foxp3を発現し得ると認識されている。
【0044】
「エフェクターT細胞」又は「Teff」は、腫瘍細胞の殺傷(killing)及び/又は
腫瘍細胞の体内からの排除につながり得る抗腫瘍免疫応答の活性化など、免疫応答の機能
を果たすTリンパ球を指す。Teffは、CD3+にCD4+又はCD8+を伴い得る。
Teffは、IFN-γ、グランザイムB及びICOSなどのマーカーを分泌、含有、又
は発現し得る。Teffはこれらの表現型に完全に限定されなくてもよいと認識されてい
る。
【0045】
「Tregの機能」又は「Treg機能」は、宿主免疫応答の調節及び/又は自己免疫
の予防に関するTregの抑制機能を指す。Tregの機能は、CD8+T細胞、ナチュ
ラルキラー(NK)細胞、
【0046】
【数1】
B細胞、若しくは樹状細胞(DC)によって誘発される抗腫瘍応答の抑制、又は、エフ
ェクターT細胞の増殖の抑制であり得る。
【0047】
「Tregの機能の阻害」又は「Treg機能の阻害」は、動物又はヒト対象のin
vitro又はin vivoにおいて、当該技術分野において既知の従来手法で測定さ
れ得るTregの機能のレベルが減少していることを指す。Tregの機能のレベルは、
例えば、少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、
70%、80%、90%、95%、99%又は100%減少し得る。「Tregの機能の
阻害」には、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)などの抗体エフェクター機能を介し
てTregを殺傷することによって、Treg数を減らすことが含まれる。
【0048】
「骨髄由来サプレッサー細胞」又は「MDSC」は、造血系であり、マクロファージ/
単球のマーカーであるCD11b、及び顆粒球のマーカーであるGr-1/Ly-6Gを
発現する、特殊化した細胞集団を指す。MDSCの表現型は、例えばCD11b+HLA
-DR-CD14-CD33+CD15+であり得る。MDSCは、成熟抗原提示細胞の
マーカーである、MHCクラスII及びF480の発現が低いか、検出不可能である。M
DSCは、骨髄系の未熟細胞であり、マクロファージ、好中球、樹状細胞、単球又は顆粒
球などのいくつかの細胞型に更に分化できる。MDSCは、成人及び成獣の正常な骨髄、
又は脾臓などの正常な造血部位に自然に見られ得る。
【0049】
「MDSCの機能の阻害」又は「MDSC機能の阻害」は、動物又はヒト対象のin
vitro又はin vivoにおいて、当該技術分野において既知の従来手法で測定さ
れ得るMDSCの機能のレベルが減少していることを指す。MDSCの機能のレベルは、
例えば、少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、
70%、80%、90%、95%、99%又は100%減少し得る。「MDSCの機能の
阻害」には、例えばADCCなどの抗体エフェクター機能を介してMDSCを殺傷するこ
とによって、MDSC数を減らすことが含まれる。MDSCは、活性酸素種、ペルオキシ
ナイトライトの発生、高レベルのアルギナーゼによるアルギナーゼ代謝の向上、及び、一
酸化窒素合成酵素の増加などの様々なメカニズムによって、増殖、クローン増殖又はサイ
トカイン産生などのT細胞応答を抑制し得る。MDSCは、IFN-γ、並びにIL-4
及びIL-13といったいくつかのサイトカインに応答し得る。IFN-γは、一酸化窒
素合成酵素2(NOS2)の活性を誘導するMDSCを活性化し得る。交互に、インター
ロイキン-4(IL-4)及びIL-13などのTh2サイトカインは、アルギナーゼ-
1(ARG1)活性の誘導を引き起こし得るMDSCを活性化し得る。NOS2又はAR
G1のいずれかによるL-アルギニンの代謝は、T細胞増殖の阻害を引き起こす場合があ
り、これら両酵素の活性は共に、反応性窒素酸化物種の産生によるT細胞のアポトーシス
を引き起こし得る。
【0050】
「Treg関連疾患」は、T制御性細胞(Treg)と関連する疾患又は障害を指す。
Treg関連疾患は、Treg機能、例えば、抗腫瘍応答の抑制、又は、エフェクターT
細胞増殖の抑制に起因し得る。Treg介在性疾患は癌であり得る。「Treg関連疾患
」及び「Treg介在性疾患」は、本明細書では互換的に使用される。
【0051】
「エフェクターT細胞の応答の増強」又は「T細胞応答の増強」は、動物又はヒト対象
のin vitro又はin vivoにおいて、生体機能を維持若しくは増幅させる、
又は、消耗した若しくは不活性のT細胞を再生若しくは再活性化させるためのエフェクタ
ーT細胞の増強又は刺激を指す。代表的なT細胞応答は、増殖、γ-インターフェロンの
CD8+T細胞からの分泌、抗原応答性、又はクローン増殖である。この増強を測定する
方法は、当業者には既知である。
【0052】
「MDSC関連疾患」は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)と関連する疾患又は
障害を指す。MDSC関連疾患は、MDSC機能、例えば、抗腫瘍応答又はエフェクター
T細胞増殖の抑制に起因し得る。MDSC介在性疾患は癌であり得る。「MDSC関連疾
患」及び「MDSC介在性疾患」は、本明細書では互換的に使用される。
【0053】
「制御性B細胞」又は「Breg」は、免疫応答を抑制するBリンパ球を指す。Bre
gは、CD19+CD24+CD38+細胞であり得、Bregによって分泌されるIL
-10が介在するT細胞増殖を阻害することによって、免疫応答を抑制し得る。別のBr
egサブセットが存在し、例えばDing et al.,(2015)Human I
mmunology 76:615~621に記載されていると認識されている。
【0054】
「Breg関連疾患」は、制御性B細胞と関連する疾患又は障害を指す。Breg関連
疾患は、例えば、抗腫瘍応答又はエフェクターT細胞増殖のBreg介在性抑制に起因し
得る。Breg介在性疾患は癌であり得る。「Breg関連疾患」及び「Breg介在性
疾患」は、本明細書では互換的に使用される。
【0055】
「患者」は、あらゆるヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物
、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類
などの哺乳類及び非哺乳類を含む。「患者」及び「対象」は、本明細書では互換的に使用
される。
【0056】
本発明は、腫瘍細胞によるCD38発現の有無にかかわらず、CD38を特異的に結合
する抗体を用いて、固形腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。本発明は更に、制
御性T細胞(Treg)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)又は制御性B細胞(B
reg)介在性疾患を有する患者を治療する方法を提供する。本発明は更に、Treg、
MDSC又はBreg活性を調節し、CD38陽性及び/又は高レベルのこれら免疫抑制
性細胞と関連する固形腫瘍の治療する方法を提供する。
【0057】
本発明は、少なくとも一部は、抗CD38抗体であるDARZALEX(商標)(ダラ
ツムマブ)が患者において免疫調節性活性を有しており、免疫抑制性Treg、MDSC
及びBreg数を減らし、CD8+T細胞数とCD8+のTregに対する割合を増加さ
せ、CD8+セントラルメモリー細胞形成を促進して、T細胞クローン性を増加するとい
う発見に基づいている。
【0058】
DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)及び他の抗CD38抗体は、ADCC、C
DC、ACDP及びアポトーシスなどの抗体エフェクター機能による抗体のCD38陽性
細胞排除能によって、多発性骨髄腫などの血液悪性疾患及び形質細胞障害の治療に対する
有効性が臨床で評価されているが、適応免疫応答の促進における免疫調節性活性について
は認められていない。他の免疫調節性抗体(抗PD1、抗CTLA4)は、抗腫瘍応答を
抑制する免疫系の構成要素を標的とすることによって機能する。例えば、抗PD1抗体は
、T細胞増殖を増加し、抗原特異的メモリー応答を刺激し、in vitroにおいて、
エフェクターT細胞のTreg介在性抑制を部分的に開放することが証明されている(例
えば、米国特許第8,779,105号参照)。黒色腫の治療に対して、2種類の抗PD
-1抗体、OPDIVO(登録商標)(ニボルマブ)及びKEYTRUDA(登録商標)
(ペンブロリズマブ)が現在承認されており、これらの抗体は、様々な固形腫瘍、例えば
肺非小細胞癌、前立腺、頭頸部、胃腸、胃、前立腺、卵管、卵巣、膵臓、乳房及び脳癌、
腎臓、膀胱、尿道、食道及び結腸直腸癌に対して臨床開発中である。抗CTLA-4抗体
であるYERVOY(登録商標)(イピリムマブ)は、黒色腫の治療に対して承認されて
いる。YERVOY(登録商標)(イピリムマブ)及び別の抗CTLA-4抗体であるト
レメリムマブも、前立腺、非小細胞肺癌、卵巣、胃腸、胃、結腸直腸、腎臓、食道、及び
尿生殖器癌に対して開発中である。
【0059】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本明細書で記載されるDARZA
LEX(商標)(ダラツムマブ)によって観察される免疫調節性効果に基づいて、DAR
ZALEX(商標)(ダラツムマブ)及び他の抗CD38抗体は、固形腫瘍の治療に効果
がある可能性がある。DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療された患者で見
られる免疫応答の一般的な活性化によって、CD38陰性固形腫瘍を有する患者は、抗C
D38抗体療法にも同様に応答できる。
【0060】
本発明は、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に
十分な期間、それを必要とする患者に投与することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療
する方法を提供する。
【0061】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、制御性T細胞
(Treg)介在性疾患の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与することを含
む、Treg介在性疾患を有する患者を治療する方法も提供する。
【0062】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、骨髄由来サプ
レッサー細胞(MDSC)介在性疾患の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与
することを含む、MDSC介在性疾患を有する患者を治療する方法も提供する。
【0063】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、制御性B細胞
(Breg)介在性疾患の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与することを含
む、Breg介在性疾患を有する患者を治療する方法も提供する。
【0064】
本発明はまた、制御性T細胞(Treg)をCD38を特異的に結合する抗体と接触さ
せることを含む、制御性T細胞の活性を抑制する方法も提供する。
【0065】
本発明はまた、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)をCD38を特異的に結合する
抗体と接触させることを含む、MDSCの活性を抑制する方法も提供する。
【0066】
本発明はまた、制御性B細胞(Breg)をCD38を特異的に結合する抗体と接触さ
せることを含む、Bregの活性を抑制する方法も提供する。
【0067】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を患者に投与することによって、患者
における制御性T細胞(Treg)数を低下させることを含む、固形腫瘍を有する患者を
治療する方法も提供する。
【0068】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を患者に投与することによって、患者
における骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)数を低下させることを含む、固形腫瘍を
有する患者を治療する方法も提供する。
【0069】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を患者に投与することによって、患者
における制御性B細胞(Breg)数を低下させることを含む、固形腫瘍を有する患者を
治療する方法も提供する。
【0070】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を、免疫応答の増強に十分な期間、そ
れを必要とする患者に投与することを含む、患者の免疫応答を増強する方法も提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、患者はウイルス感染を有する。
【0072】
本発明はまた、CD38を特異的に結合する抗体を、ウイルス感染の治療に十分な期間
、それを必要とする患者に投与することを含む、患者のウイルス感染を治療する方法も提
供する。
【0073】
いくつかの実施形態では、免疫応答は、エフェクターT細胞(Teff)応答である。
【0074】
いくつかの実施形態では、Teff応答は、CD4+T細胞又はCD8+T細胞によっ
て媒介される。
【0075】
いくつかの実施形態では、Teff応答は、CD4+T細胞によって媒介される。
【0076】
いくつかの実施形態では、Teff応答は、CD8+T細胞によって媒介される。
【0077】
いくつかの実施形態では、Teff応答は、CD8+T細胞数の増加、CD8+T細胞
増殖の増加、T細胞クローン増殖の増加、CD8+メモリー細胞形成の増加、抗原依存性
抗体産生の増加、又は、サイトカイン、ケモカイン若しくはインターロイキン産生の増加
である。
【0078】
T細胞の増殖は、例えば、トリチウム標識したチミジンを用いるDNA合成速度の測定
、又は、インターフェロン-γ(IFN-γ)のin vitro産生の測定、又は、既
知の方法を用いる患者サンプル由来細胞集団中のT細胞の絶対数若しくは割合の測定によ
って評価できる。
【0079】
クローン増殖は、例えば、既知の方法を用いるT細胞プール由来TCRの配列決定によ
って評価できる。
【0080】
メモリー細胞形成は、例えばFACSを用いる、ナイーブT細胞(CD45RO-/C
D62L+)のメモリーT細胞(CD45RO+/CD62Lhigh)に対する割合を
測定することによって評価できる。
【0081】
サイトカイン、ケモカイン又はインターロイキン産生、例えば、インターフェロン-γ
(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、IL-1、IL-2、IL-3、I
L-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-16、IL
-18及びIL-23、MIP-1α、MIP-1β、ランテス、CCL4の産生は、E
LISA又はELLISPOTアッセイなどの標準法を用いて評価できる。
【0082】
抗原特異的抗体産生は、患者由来のサンプルから、ELISA又はラジオイムノアッセ
イ(RIA)などの標準法を用いて評価できる。
【0083】
様々なTeff応答が「増加」又は「増加する」の意味は、容易に理解される。増加は
、試験サンプル又は対象において、対照と比較したとき、例えば、抗CD38抗体で治療
した患者において、治療前の同一患者と比較したとき、又は、抗CD38抗体治療反応性
の患者若しくは患者群において、同一治療に非反応性の患者若しくは患者群と比較したと
きに、少なくとも約5%、少なくとも約10%、25%、50%、51%、52%、53
%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63
%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73
%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83
%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93
%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、110%、120%
、130%、140%、150%、200%、250%、300%、350%、400%
又はそれ以上の増加であってよい。典型的には、この増加は統計的に有意である。
【0084】
同様に、Treg、MDSC及び/又はBregの数が「減少」若しくは「減少する」
又は「低下」若しくは「低下する」の意味は、容易に理解される。低下は、試験サンプル
又は対象において、対照と比較したとき、例えば、抗CD38抗体で治療した患者におい
て、治療前の同一患者と比較したとき、又は、抗CD38抗体治療反応性の患者若しくは
患者群において、同一治療に非反応性の患者若しくは患者群と比較したときに、少なくと
も約10%、25%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57
%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67
%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77
%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87
%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97
%、98%、99%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、
200%、250%、300%、350%、400%又はそれ以上の低下であってよい。
典型的には、この低下は統計的に有意である。
【0085】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、免疫サプレッサー細胞
の機能を阻害する。
【0086】
いくつかの実施形態では、免疫サプレッサー細胞は、制御性T細胞(Treg)、骨髄
由来サプレッサー細胞(MDSC)又は制御性B細胞(Breg)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、Tregは、CD3+CD4+CD25+CD127dim
T細胞である。
【0088】
いくつかの実施形態では、CD3+CD4+CD25+CD127dim細胞は、Fo
xp3を発現する。
【0089】
いくつかの実施形態では、CD3+CD4+CD25+CD127dim T細胞は、
CD38を発現する。
【0090】
Treg機能、例えばTeff細胞の抑制能は、例えば、Tregの、混合リンパ球反
応(MLR)におけるTeff増殖抑制能を評価する既知の方法を用いて評価できる。
【0091】
Treg機能は、例えば、Teffと比較したTregの相対数(例えば、CD8+/
Treg細胞比の増加)を、Treg又はTregの亜集団、例えばCD38+Treg
の直接殺傷により減少させることによって、阻害できる。
【0092】
いくつかの実施形態では、Treg機能は、Treg細胞の殺傷によって阻害される。
【0093】
いくつかの実施形態では、Tregの殺傷は、CD38を特異的に結合している抗体に
より誘導される、抗体誘導性の抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作
用(ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)又はアポトーシスによって媒介される。
【0094】
いくつかの実施形態では、Tregの殺傷は、ADCCによって媒介される。
【0095】
いくつかの実施形態では、CD38+Tregが殺傷される。
【0096】
いくつかの実施形態では、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、
10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、
20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、
30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、
40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、
50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%又は60%
のTregが殺傷される。
【0097】
CD38は、Treg及びMDSCの一部においてのみ発現されるため、固形腫瘍患者
の治療によってTreg及びMDSCの全身的枯渇をもたらさず、安全性の向上可能性が
期待される。
【0098】
いくつかの実施形態では、MDSCは、CD11b+HLA-DR-CD14-CD3
3+CD15+細胞である。
【0099】
いくつかの実施形態では、CD11b+HLA-DR-CD14-CD33+CD15
+MDSCは、CD38を発現する。
【0100】
MDSC機能は、例えば、細胞の直接殺傷によってMDSC数を低下させることによっ
て、阻害され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、MDSC機能は、CD38+MDSCの殺傷によって阻害さ
れる。
【0102】
いくつかの実施形態では、MDSCの殺傷は、CD38を特異的に結合する抗体により
誘導される、抗体誘導性の抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(
ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)又はアポトーシスによって媒介される。
【0103】
いくつかの実施形態では、MDSCの殺傷は、ADCCによって媒介される。
【0104】
いくつかの実施形態では、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、
10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、
20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、
30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、
40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、
50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%又は60%
のMDSCが殺傷される。
【0105】
いくつかの実施形態では、Bregは、CD19+CD24+CD38+細胞である。
【0106】
Breg機能は、例えば、Bregの直接殺傷によってBreg数を低下させることに
よって、阻害され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、Breg機能は、CD38+Bregの殺傷によって阻害さ
れる。
【0108】
いくつかの実施形態では、Bregの殺傷は、CD38を特異的に結合する抗体により
誘導される、抗体誘導性の抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(
ADCP)、補体依存性細胞傷害(CDC)又はアポトーシスによって媒介される。
【0109】
いくつかの実施形態では、Bregの殺傷は、ADCCによって媒介される。
【0110】
いくつかの実施形態では、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、
10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、
20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、
30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、
40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、
50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%又は60%
のBregが殺傷される。
【0111】
Tregは、末梢性自己寛容の維持において重要な役割を果たす。自然に存在するCD
4+CD25hi Tregは、胸腺で産生され、Treg系の同一性と抑制性機能の確
立及び維持に必要な転写因子である、Foxp3を発現する。Tregは、疾患部位(例
えば、腫瘍内)に蓄積でき、そこで腫瘍抗原特異的T細胞のエフェクター機能を抑制する
ことによって、抗腫瘍応答を不十分にする。腫瘍に浸潤しているFoxp3+Tregの
密度増加は、膵臓、卵巣、及び肝細胞癌などの様々な固形腫瘍における予後不良と関連し
ている。マウスモデルにおいて、Tregの枯渇により抗腫瘍免疫及び腫瘍拒絶の向上が
得られるが、自己免疫疾患の進行にもつながり得る。
【0112】
骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)は、分化の様々な段階にある、初期骨髄系前駆
細胞、未熟顆粒球、マクロファージ、及び樹状細胞の不均一集団である。これらは、癌患
者で多く蓄積され、強い免疫抑制性機能を有して、ナチュラルキラー細胞(NK)及びナ
チュラルキラーT細胞(NKT)の細胞傷害活性、並びに、CD8+T細胞によって媒介
される適応免疫応答の両方を阻害する。NK細胞の阻害メカニズムは現在よくわかってい
ないが、アルギナーゼ1/ARG1の産生、及び一酸化窒素合成酵素2(NOS2)の上
方制御などの複数の経路が、MDSC介在性T細胞抑制の原因となっている。ARG1及
びNOS2は、L-アルギニンを代謝し、共に又は別々に、T細胞CD3ζ鎖の翻訳を阻
止し、T細胞増殖を阻害し、T細胞のアポトーシスを促進する。加えて、MDSCは、免
疫抑制性サイトカインを分泌し、制御性T細胞の成長を誘導する。
【0113】
MDSCは、炎症性サイトカインによって誘導され、感染性及び炎症性病態において数
が増えて発見される。これらは、担癌マウスの血液、骨髄、及び二次リンパ器官内に蓄積
し、腫瘍微小環境中にこれらが存在すると、腫瘍関連免疫抑制の促進の原因となる役割を
果たすと言われている。
【0114】
MDSCは、結腸癌、黒色腫、肝細胞癌、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌
、膵臓腺癌及び乳癌の患者において説明されている(Mandruzzato et a
l.,(2009)J Immunol 182:6562~6568;Liu et
al.,(2009)J Cancer Res Clin Oncol 136:35
~45;Ko et al.,(2009)Clin Cancer Res 15:2
148~2157;Morse et al.,(2009)Expert OpinB
iol Ther 9:331~339;Diaz-Montero et al.,(
2009)Cancer Immunol Immunother 58:49~59;
Corzo et al.,(2009)J Immunol 182:5693~57
01)。癌患者において、Diazら(Diaz-Montero et al.,(2
009)Cancer Immunol Immunother 58:49~59)は
、MDSCの蓄積が、疾患の更なる進行と予後不良と相関すると提唱している。
【0115】
腫瘍浸潤性Bregは、固形腫瘍中に確認されており、Bregは、様々なメカニズム
、例えば、CD8+T細胞及びNK細胞の抗腫瘍活性を抑制することによって、腫瘍の増
殖及び転移を促進し得る(例えば、Ding et al.,(2015)Human
Immunology 76:615~62に記載)。
【0116】
「抗体依存性細胞傷害」、「抗体依存性細胞媒介細胞傷害」、又は「ADCC」は、エ
フェクター細胞で発現されるFcガンマ受容体(FcγR)を介しての、抗体被覆標的細
胞の、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージ、及び好中球などの溶解活性を有す
るエフェクター細胞との相互作用に依存する、細胞死を誘発するための機構である。例え
ば、NK細胞はFcγRIIIaを発現し、一方単球はFcγRI、FcγRII、及び
FcγRIIIaを発現する。CD38発現細胞などの抗体被覆標的細胞の死滅は、膜孔
形成タンパク質及びプロテアーゼの分泌を通してのエフェクター細胞活性の結果として生
じる。CD38を特異的に結合する抗体のADCC活性を評価するために、抗体は、免疫
エフェクター細胞と組み合わせて、CD38発現細胞に添加され得るが、これらが抗原抗
体複合体によって活性化されると、標的細胞の細胞溶解をもたらし得る。細胞溶解は、通
常、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料、又は天然細胞内タンパク
質)の放出によって検出される。そのようなアッセイ用のエフェクター細胞としては、末
梢血単核球(PBMC)及びNK細胞が挙げられる。代表的な標的細胞として、CD38
を発現するTreg又はMDSCが挙げられる。例示的なアッセイにおいて、標的細胞は
、20μキュリーの51Crによって2時間にわたり標識化され、広範囲で洗浄される。
標的細胞の細胞濃度は、1×106細胞/mLに調整され得るが、抗CD38抗体は様々
な濃度で添加される。アッセイは、40:1のエフェクター:標的細胞で標的細胞を添加
することにより開始される。37℃で3時間インキュベーションした後、アッセイを遠心
分離によって停止し、溶解した細胞からの51Crの放出を、シンチレーション計数管内
で測定する。細胞傷害性のパーセンテージは、3%の過塩素酸を標的細胞に添加すること
により誘発され得る最大溶解パーセントとして計算され得る。
【0117】
「抗体依存性細胞貪食作用」(「ADCP」)とは、例えばマクロファージ又は樹状細
胞のような貪食細胞による細胞内移行を通じた抗体被覆標的細胞の殺減のメカニズムを指
す。ADCPは、GFP又はその他標識された分子を発現するように遺伝子操作を受けた
標的細胞として、CD38を発現するTreg又はMDSCを用いることによって評価で
きる。エフェクター対標的細胞の比は、例えば4:1であり得る。エフェクター細胞は、
標的細胞とともに4時間にわたり、抗CD38抗体とともに又はそれなしでインキュベー
トされ得る。インキュベーション後、細胞は、Accutaseを用いて剥離され得る。
マクロファージは、蛍光標識に結合した抗CD11b抗体及び抗CD14抗体により識別
され得るが、パーセント貪食作用は、標準的な方法を用いて、CD11+及びCD14+
マクロファージ中のパーセントGFP蛍光に基づいて決定され得る。
【0118】
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」は、標的結合抗体のFcエフェクタードメイン
が補体成分C1qに結合してこれを活性化し、補体成分C1qが次に補体カスケードを活
性化して、標的細胞の死滅をもたらす、細胞死を誘発するためのメカニズムを指す。補体
の活性化はまた、標的細胞表面上の補体成分の沈着をもたらすことができ、これが白血球
への補体受容体(例えば、CR3)の結合によって、ADCCを容易にする。
【0119】
ADCCを誘発するために単クローン性抗体が有する能力は、それらのオリゴ糖成分を
遺伝子操作することによって増強させることができる。ヒトIgG1又はIgG3は、A
sn297において、N-グリコシル化される。ここで、グリカンの大部分は、周知の二
分岐G0、G0F、G1、G1F、G2、又はG2Fの形態にある。遺伝子操作されてい
ないCHO細胞により生成される抗体は、典型的には、少なくとも約85%のグリカンフ
コース含量を有する。Fc領域に結合した二分岐の複合体型オリゴ糖からのコアフコース
の除去は、抗原結合又はCDC活性を変更することなく、改善されたFcγRIIIa結
合を介して抗体のADCCを増強する。このようなmAbは、培地のオスモル濃度の制御
(Konno et al.,(2012)Cytotechnology 64:24
9~65)、変異体CHO系Lec13の宿主細胞系としての適用(Shields e
t al.,(2002)J Biol Chem 277:26733~26740)
、変異体CHO系EB66の宿主細胞系としての適用(Olivier et al.,
(2010)MAbs 2(4),Epub ahead of print;PMID
:20562582)、ラットハイブリドーマ細胞系YB2/0の宿主細胞系としての適
用(Shinkawa et al.,(2003)J Biol Chem 278:
3466~3473)、α1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対
して特異的な低分子干渉RNAの導入(Mori et al.,(2004)Biot
echnol Bioeng 88:901~908)、又は、β-1,4-N-アセチ
ルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼII若しくは
強力なα-マンノシダーゼI阻害物質であるキフネンシンの共発現(Ferrara e
t al.,(2006)J Biol Chem 281:5032~5036;Fe
rrara et al.,(2006)Biotechnol Bioeng 93:
851~861;Xhou et al.,(2008)Biotechnol Bio
eng 99:652~65)などのFcオリゴ糖の二分岐の複合型を保有する脱フコシ
ル化抗体の比較的高い発現をもたらすことが報告されている、様々な方法を用いて達成さ
れてもよい。本発明の方法において、及び以下に列挙される番号付きの実施形態のうちの
1つ1つのいくつかの実施形態において用いられる抗CD38抗体によって誘発されるA
DCCはまた、抗体Fcにおけるある特定の置換によって増強されてもよい。例示的な置
換は、例えば、米国特許第6,737,056号に記載されたように、アミノ酸位置25
6、290、298、312、356、330、333、334、360、378、又は
430(EUインデックスに従った残基ナンバリング)における置換である。
【0120】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、抗体Fcにおける置換
を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、抗体Fc中の256、
290、298、312、356、330、333、334、360、378又は430
番目のアミノ酸における置換を含む(残基の番号付けは、EUインデックスに準じる)。
【0122】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、フコース含量が約0%
~約15%、例えば15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7
%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%である、二分枝グリカン構造を有する
。
【0123】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、フコース含量が約50
%、40%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、14%、13
%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%
又は0%である、二分枝グリカン構造を有する。
【0124】
Fc中の置換及び減少したフコース含量は、CD38を特異的に結合する抗体のADC
C活性を増強することができる。
【0125】
「フコース含量」とは、Asn297における糖鎖内のフコース単糖類の量を意味する
。フコースの相対量は、全糖構造に対するフコース含有構造の割合である。これらの糖構
造は、複数の方法、例えば、1)国際公開第2008/077546号に記載されるよう
に、N-グリコシダーゼF処理試料のMALDI-TOF(例えば、複合体、ハイブリッ
ド、及びオリゴ-並びに高マンノース構造)の使用、2)Asn297グリカンの酵素放
出、その後の誘導体化及び蛍光検出を備えたHPLC(UPLC)及び/又はHPLC-
MS(UPLC-MS)による検出/定量、3)第1及び第2のGlcNAc単糖類間を
切断し、フコースを第1のGlcNAcに結合させる、Endo S又は他の酵素による
Asn297のグリカンの処理を伴うか又はこの処理なしでの、天然又は還元mAbのイ
ンタクトプロテイン分析、4)酵素を用いた消化(例えば、トリプシン又はエンドペプチ
ダーゼLys-C)による、mAbの成分ペプチドへの消化後、HPLC-MS(UPL
C-MC)による分離、検出、及び定量化、又は5)Asn297で、PNGase F
を用いた酵素による特異的脱グリコシル化を通じた、mAbオリゴ糖のmAbタンパク質
からの分離、により特徴付けられ、定量化され得る。放出されるオリゴ糖は、フルオロフ
ォアで標識化され、グリカン構造の細かな特性評価を可能にする様々な補足的技術によっ
て分離かつ特定することが可能であり、これらは、実験的質量の理論的質量との比較によ
るマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)質量分析、イオン交換HPLC(
GlycoSep C)によるシアル化の程度の決定、順相HPLC(GlycoSep
N)による親水性の基準に準拠するオリゴ糖型の分離及び定量、並びに高性能キャピラ
リー電気泳動-レーザ誘起蛍光(HPCE-LIF)によるオリゴ糖の分離及び定量によ
る。
【0126】
本明細書で使用されるとき、「低フコース」又は「低フコース含量」は、抗体が約0%
~15%のフコース含量を有することを指す。
【0127】
本明細書で使用されるとき、「正常なフコース」又は「正常なフコース含有量」とは、
抗体が約50%を超える、通常約60%、70%、80%を超える、又は85%を超える
フコース含有量を有することを指す。
【0128】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、アポトーシスによって
、Treg、MDSC及び/又はBregの殺傷を誘導できる。アポトーシスを評価する
ための方法は周知であり、例えば、標準的な方法を用いたアネキシンIVによる染色が挙
げられる。本発明の方法で使用される抗CD38抗体は、細胞の約20%、25%、30
%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80
%、85%、90%、95%、又は100%にアポトーシスを誘導できる。
【0129】
いくつかの実施形態では、Teff又は免疫サプレッサー細胞は、骨髄又は末梢血中に
存在する。
【0130】
いくつかの実施形態では、Teff又は免疫サプレッサー細胞は、骨髄中に存在する。
【0131】
いくつかの実施形態では、Teff又は免疫サプレッサー細胞は、末梢血中に存在する
。
【0132】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、CD8+T細胞のTr
egに対する比を増加する。
【0133】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、CD8+セントラルメ
モリー細胞のCD8+ナイーブ細胞に対する比を増加する。CD8+セントラルメモリー
細胞は、CD45RO+/CD62L+high細胞として同定できる。CD8+ナイー
ブ細胞は、CD45RO-/CD62L+細胞として同定できる。
【0134】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、非アゴニスト抗体であ
る。
【0135】
CD38を特異的に結合する非アゴニスト抗体は、CD38に結合するとき、in v
itroでの末梢血単核球のサンプルの増殖が、アイソタイプ対照抗体又は培地のみによ
って誘導される増殖と比較して顕著に誘導されない抗体を指す。
【0136】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する非アゴニスト抗体は、統計的に
有意でない様式で、末梢血単核球(PBMC)の増殖を誘導する。PBMC増殖は、健康
なドナーからPBMCを単離し、200μLのRPMI中、試験抗体の存在下又は非存在
下において、平底96ウェルプレート中1×105細胞/ウェルで培養することによって
評価できる。37℃で4日間インキュベートした後、30μLの3H-チミジン(16.
7μCi/mL)を加え、培養を一晩継続してよい。3H-チミジンの取り込みは、Pa
ckard Cobraガンマカウンター(Packard Instruments(
Meriden,DT,USA))を取扱説明書に沿って用いて評価できる。データは、
数人のドナーから得られたPBMCの平均cpm(±SEM)として計算できる。試験抗
体の存在下又は比存在下で培養されたサンプル間の統計的有意性又は非有意性は、標準的
方法を用いて計算する。
【0137】
本発明の方法で使用できる代表的な抗CD38抗体は、DARZALEX(商標)(ダ
ラツムマブ)である。DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)は、それぞれ配列番号
4及び5に示される重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列、そ
れぞれ配列番号6、7及び8の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2及びH
CDR3、並びにそれぞれ配列番号9、10及び11の軽鎖相補性決定領域1(LCDR
1)、LCDR2及びLCDR3を含み、ダラツムマブはIgG1/κサブタイプのもの
であり、米国特許第7,829,693号に記載されている。DARZALEX(商標)
(ダラツムマブ)重鎖のアミノ酸配列は、配列番号12に示され、軽鎖のアミノ酸最列は
、配列番号13に示されている。
【0138】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、配列番号4の重鎖可変
領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と、CD38への結合に
関して競合する。
【0139】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、ヒトCD38(配列番
号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEA
WVIHGG(配列番号3)に少なくとも結合する。
【0140】
配列番号1
MANCEFSPVSGDKPCCRLSRRAQLCLGVSILVLILVVVL
AVVVPRWRQQWSGPGTTKRFPETVLARCVKYTEIHPEMRH
VDCQSVWDAFKGAFISKHPCNITEEDYQPLMKLGTQTVPC
NKILLWSRIKDLAHQFTQVQRDMFTLEDTLLGYLADDLTW
CGEFNTSKINYQSCPDWRKDCSNNPVSVFWKTVSRRFAEA
ACDVVHVMLNGSRSKIFDKNSTFGSVEVHNLQPEKVQTLE
AWVIHGGREDSRDLCQDPTIKELESIISKRNIQFSCKNIY
RPDKFLQCVKNPEDSSCTSEI
【0141】
配列番号2
SKRNIQFSCKNIYR
【0142】
配列番号3
EKVQTLEAWVIHGG
【0143】
配列番号4
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQ
APGKGLEWVSAISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTL
YLQMNSLRAEDTAVYFCAKDKILWFGEPVFDYWGQGTLVT
VSS
【0144】
配列番号5
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQK
PGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLE
PEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK
【0145】
配列番号6
SFAMS
【0146】
配列番号7
AISGSGGGTYYADSVKG
【0147】
配列番号8
DKILWFGEPVFDY
【0148】
配列番号9
RASQSVSSYLA
【0149】
配列番号10
DASNRAT
【0150】
配列番号11
QQRSNWPPTF
【0151】
配列番号12
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAVSGFTFNSFAMSWVRQ
APGKGLEWVSAISGSGGGTYYADSVKGRFTISRDNSKNTL
YLQMNSLRAEDTAVYFCAKDKILWFGEPVFDYWGQGTLVT
VSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPV
TVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLG
TQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPEL
LGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVK
FNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWL
NGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPS
REEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTT
PPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHN
HYTQKSLSLSPGK
【0152】
配列番号13
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQK
PGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLE
PEDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFP
PSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNS
QESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQ
GLSSPVTKSFNRGEC
【0153】
抗体は、周知のin vitro法を用いて、CD38への結合に関して、配列番号4
のVH及び配列番号5のVLを有するDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)などの
参照抗体との競合について評価され得る。代表的な方法では、CD38を組換え的に発現
するCHO細胞を、非標識参照抗体と4℃で15分間インキュベートし、その後、過剰の
蛍光標識された試験抗体と、4℃で45分間インキュベートしてよい。PBS/BSA中
での洗浄後に、標準的な方法を用いて、フローサイトメトリーによって、蛍光を測定し得
る。別の代表的な方法では、ヒトCD38の細胞外部分が、ELISAプレートの表面に
被覆され得る。過剰の非標識参照抗体を、約15分間添加することができ、その後ビオチ
ン化試験抗体を添加することができる。PBS/Tween中で洗浄後、試験ビオチン化
抗体の結合を、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)結合ストレプトアビジンと、標準
的な方法を用いて検出されたシグナルとを用いて検出し得る。競合アッセイにおいて、参
照抗体が標識され、試験抗体が標識されない場合があるということは、容易に明らかであ
る。参照抗体が試験抗体の結合を阻害する、又は試験抗体が、CD38への参照抗体の結
合を少なくとも80%、例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、8
7%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、9
7%、98%、99%、又は100%、阻害するときに、試験抗体は参照抗体と競合する
。試験抗体のエピトープは、例えば、ペプチドマッピングにより、又は既知の方法を用い
る水素/重水素保護アッセイにより、又は結晶構造判定により、更に定義され得る。
【0154】
ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)及び
領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する抗体は、例えば、標準法及
び本明細書に記載されるものを用いて、マウスを、配列番号2及び3に示したアミノ酸配
列を有するペプチドで免疫化し、例えば、ELISA又は突然変異誘発研究を用いてペプ
チドに結合するために得た抗体を特徴付けることによって、生成することができる。
【0155】
本発明はまた、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配
列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する抗CD38
抗体を、それを必要とする患者に投与することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する
方法も提供する。本発明の方法で使用される抗体のエピトープは、配列番号2又は配列番
号3に示される配列を有する残基の一部又は全部を含む。いくつかの実施形態では、抗体
エピトープは、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列
番号2)における少なくとも1つのアミノ酸と、領域EKVQTLEAWVIHGG(配
列番号3)における少なくとも1つのアミノ酸とを含む。いくつかの実施形態では、抗体
エピトープは、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列
番号2)における少なくとも2つのアミノ酸と、領域EKVQTLEAWVIHGG(配
列番号3)における少なくとも2つのアミノ酸とを含む。いくつかの実施形態では、抗体
エピトープは、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCKNIYR(配列
番号2)における少なくとも3つのアミノ酸と、領域EKVQTLEAWVIHGG(配
列番号3)における少なくとも3つのアミノ酸とを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号6、
7及び8のHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号9、
10及び11のLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号6、
7、8、9、10及び11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCD
R2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、配列番号4と95%、
96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVH、及び、配列番号5と95
%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるVLを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、配列番号4のVH及び
配列番号5のVLを含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、配列番号12の重鎖及
び配列番号13の軽鎖を含む。
【0162】
本発明の任意の実施形態で使用できるその他例示的な抗CD38抗体は次のものである
。
【0163】
米国特許第7,829,693号に記載される、それぞれ配列番号14及び15のVH
配列及びVL配列を含むmAb003。mAb003のVH及びVLは、IgG1/κと
して表現され得る。
【0164】
配列番号14
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAFSWVRQ
APGQGLEWMGRVIPFLGIANSAQKFQGRVTITADKSTSTA
YMDLSSLRSEDTAVYYCARDDIAALGPFDYWGQGTLVTVS
SAS
【0165】
配列番号15
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQK
PEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQ
PEDFATYYCQQYNSYPRTFGQGTKVEIK
【0166】
米国特許第7,829,693号に記載される、それぞれ配列番号16及び17のVH
配列及びVL配列を含むmAb024。mAb024のVH及びVLは、IgG1/κと
して表現され得る。
【0167】
配列番号16
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFSNYWIGWVRQ
MPGKGLEWMGIIYPHDSDARYSPSFQGQVTFSADKSISTA
YLQWSSLKASDTAMYYCARHVGWGSRYWYFDLWGRGTLVT
VSS
【0168】
配列番号17
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQK
PGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLE
P
EDFAVYYCQQRSNWPPTFGQGTKVEIK;
【0169】
米国特許第8,088,896号に記載される、それぞれ配列番号18及び19のVH
配列及びVL配列を含むMOR-202(MOR-03087)。MOR-202のVH
及びVLは、IgG1/κとして表現され得る。
【0170】
配列番号18
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYYMNWVRQ
APGKGLEWVSGISGDPSNTYYADSVKGRFTISRDNSKNTL
YLQMNSLRAEDTAVYYCARDLPLVYTGFAYWGQGTLVTVS
S
【0171】
配列番号19
DIELTQPPSVSVAPGQTARISCSGDNLRHYYVYWYQQKP
GQAPVLVIYGDSKRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQA
EDEADYYCQTYTGGASLVFGGGTKLTVLGQ
【0172】
米国特許第8,153,765号に記載される、それぞれ配列番号20及び21のVH
配列及びVL配列を含むイサツキシマブ。イサツキシマブのVH及びVLは、IgG1/
κとして表現され得る。
【0173】
配列番号20:
QVQLVQSGAEVAKPGTSVKLSCKASGYTFTDYWMQWVKQ
RPGQGLEWIGTIYPGDGDTGYAQKFQGKATLTADKSSKTV
YMHLSSLASEDSAVYYCARGDYYGSNSLDYWGQGTSVTVS
S
【0174】
配列番号21
DIVMTQSHLSMSTSLGDPVSITCKASQDVSTVVAWYQQK
PGQSPRRLIYSASYRYIGVPDRFTGSGAGTDFTFTISSVQ
AEDLAVYYCQQHYSPPYTFGGGTKLEIK
【0175】
本発明の方法において使用することができる他の例示的な抗CD38抗体例としては、
国際公開第05/103083号、同第06/125640号、同第07/042309
号、同第08/047242号、又は同第14/178820号に記載されているものが
挙げられる。
【0176】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に
投与することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0177】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号14のVH及び配列番号15のVLを含む
CD38を特異的に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患
者に投与することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0178】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号16のVH及び配列番号17のVLを含む
CD38を特異的に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患
者に投与することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0179】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号18のVH及び配列番号19のVLを含む
CD38を特異的に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患
者に投与することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0180】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む
CD38を特異的に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患
者に投与することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0181】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は黒色腫である。
【0182】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は肺癌である。
【0183】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0184】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は非扁平上皮NSCLCである。
【0185】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は肺腺癌である。
【0186】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、腎細胞癌(RCC)(例えば、腎明細胞癌又は
腎乳頭状細胞癌)、又はその転移巣である。
【0187】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は中皮腫である。
【0188】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は上咽頭癌(NPC)である。
【0189】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は結腸直腸癌である。
【0190】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、前立腺癌又は去勢抵抗性前立腺癌である。
【0191】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胃癌(stomach cancer)である。
【0192】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は卵巣癌である。
【0193】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は胃癌(gastric cancer)である。
【0194】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は肝癌である。
【0195】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は膵臓癌である。
【0196】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は甲状腺癌である。
【0197】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は頭頸部の扁平上皮癌である。
【0198】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は食道又は胃腸管の癌腫である。
【0199】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は乳癌である。
【0200】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は卵管癌である。
【0201】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は脳癌である。
【0202】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は尿道癌である。
【0203】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は尿生殖器癌である。
【0204】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は子宮内膜症である。
【0205】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は子宮頸癌である。
【0206】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は癌の転移巣である。
【0207】
いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、検出可能なCD38発現を欠いている。
【0208】
周知の方法を用いる、対照と比較、例えば、抗CD38抗体で検出される発現対アイソ
タイプの対照抗体で検出される発現を比較して、固形腫瘍組織中又は固形腫瘍から単離さ
れた細胞上でのCD38発現が統計的に有意でないとき、固形腫瘍は、検出可能なCD3
8発現を欠いている。
【0209】
本発明の方法で使用される抗CD38抗体は、例えば、ファージ提示ライブラリから新
たに選択されてもよく、このファージは、ヒト免疫グロブリン又はその一部(例えば、F
ab、一本鎖抗体(scFv)、又は対をなさない若しくは対をなす抗体可変領域)を発
現するよう遺伝子操作を受けている(Knappik et al.,(2000)J
Mol Biol 296:57~86;Krebs et al.,(2001)J
Immunol Meth 254:67~84;Vaughan et al.,(1
996)Nature Biotechnology 14:309~314;Shee
ts et al.,(1998)PITAS(USA)95:6157~6162;H
oogenboom and Winter,(1991)J Mol Biol 22
7:381;Marks et al.,(1991)J Mol Biol 222:
581)。CD38結合可変ドメインは、例えば、Shi et al.,(2010)
J Mol Biol 397:385~96及び国際公開第09/085462号に記
載される、バクテリオファージpIX被覆タンパク質との融合タンパク質として抗体の重
鎖及び軽鎖可変領域を発現するファージ提示ライブラリから単離され得る。抗体ライブラ
リをヒトCD38細胞外ドメインへの結合についてスクリーニングして、得られた陽性ク
ローンの特徴付けを更に行い、Fabはクローンライセートから単離され、その後全長抗
体としてクローンされる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージ提示法は、当技
術分野にて確立されている。例えば、米国特許第5,223,409号、同第5,403
,484号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,580,
717号、同第5,969,108号、同第6,172,197号、同第5,885,7
93号、同第6,521,404号、同第6,544,731号、同第6,555,31
3号、同第6,582,915号、及び同第6,593,081号を参照されたい。
【0210】
いくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はI
gG4アイソタイプである。
【0211】
抗体のFc部分は、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作
用(ADCP)、又は補体依存性細胞傷害(CDC)などの抗体のエフェクター機能を媒
介することができる。このような機能は、FCエフェクタードメイン(複数可)の貪食活
性若しくは溶解活性を有する免疫細胞上のFc受容体への結合によって又はFcエフェク
タードメイン(複数可)の補体系の成分への結合によって、媒介され得る。通常、Fc結
合細胞又は補体成分によって媒介される作用(複数可)は、標的細胞、例えばCD38発
現細胞の阻害及び/又は枯渇をもたらす。ヒトIgGアイソタイプである、IgG1、I
gG2、IgG3、及びIgG4は、エフェクター機能に関して特異的な能力を呈する。
ADCCは、IgG1及びIgG3によって媒介され、ADCPは、IgG1、IgG2
、IgG3、及びIgG4によって媒介され、CDCは、IgG1及びIgG3によって
媒介され得る。
【0212】
配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む抗体と実質的に同一である抗体は、本発
明の方法において用いられ得る。本明細書で使用されるとき、用語「実質的に同一」は、
比較される2つの抗体VH又はVLのアミノ酸配列が同一であるか又は「ごくわずかな相
違」を有することを意味する。ごくわずかな相違とは、抗体の特性に悪影響を及ぼさない
抗体重鎖又は軽鎖における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、1
3、14、又は15個のアミノ酸の置換である。同一性パーセントは、例えば、Vect
or NTI v.9.0.0(Invitrogen、Carlsbad、CA)のA
lignXモジュールの初期設定を使用するペアワイズアライメントによって決定するこ
とができる。本発明のタンパク質配列を問い合わせ配列として用いて、公共又は特許デー
タベースに対する検索を実行して、例えば、関連配列を特定してもよい。そのような検索
を実行するために使用される例示的なプログラムは、初期設定を使用する、XBLAST
若しくはBLASTPプログラム(http_//www_ncbi_nlm/nih_
gov)、又はGenomeQuest(商標)(GenomeQuest、Westb
orough、MA)スイートである。CD38を特異的に結合する抗体に対して行われ
得る例示的な置換は、例えば、同様の電荷、疎水性、立体化学特性を有するアミノ酸を用
いる保存的置換である。保存的置換はまた、例えば安定性又は親和性といった抗体の特性
を向上させるために、又は抗体エフェクターの機能を改善するためにも行われ得る。1、
2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のアミノ
酸置換が、例えば、抗CD38抗体の重鎖又は軽鎖に対して行われ得る。更に、アラニン
・スキャニング変異導入法についてこれまでに述べられているように(MacLenna
n et al.,Acta Physiol.Scand.Suppl.643:55
~67,1998;Sasaki et al.,Adv.Biophys.35:1~
24,1998)、VH又はVL内の任意の天然残基をアラニンで置換することもできる
。所望のアミノ酸置換は、そのような置換が望まれる時点で当業者が決定し得る。アミノ
酸置換は、例えば、PCR突然変異誘発(米国特許第4,683,195号)によって行
うことができる。変異体のライブラリは、周知の方法を用いて、例えば、ランダムコドン
(NNK)又は非ランダムコドン、例えば11個のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、
Glu、Gly、Lys、Asn、Arg、Ser、Tyr、Trp)をコードするDV
Kコドンを用い、そして所望の特性を有する変異体を求めてのライブラリをスクリーニン
グすることで生成されてもよい。生成された変異体は、インビトロでのCD38へのそれ
らの結合、ADCC、ADCP、若しくはアポトーシスを誘発する又はCD38酵素活性
を調節するそれらの能力に関して、本明細書に記載される方法を用いて試験することがで
きる。
【0213】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は、幅広い親和性(KD)
でヒトCD38を結合できる。本発明による一実施形態、及び以下に列挙される番号付け
されたありとあらゆる実施形態のうちのいくつかの実施形態において、当業者により実施
される表面プラズモン共鳴又はKinexa法によって決定されるように、CD38を特
異的に結合する抗体は、高い親和性で、例えば、KDが約10-7M以下、例えばこれら
に限定されないが、1~9.9(つまり、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9など
の任意の範囲又はその範囲内の値)×10-8M、10-9M、10-10M、10-1
1M、10-12M、10-13M、10-14M、10-15M、又は任意の範囲若し
くはその範囲内の値でCD38に結合する。親和性の1つの例は、1×10-8M以下で
ある。親和性の別の1つの例は、1×10-9M以下である。
【0214】
いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体は二重特異性抗体である。
既存の抗CD38抗体のVL及び/若しくはVH領域、又は、本明細書で記載されるよう
に新たに特定されたVL及びVH領域は、遺伝子操作を受けて二重特異性の全長抗体にさ
れてもよい。このような二重特異性抗体は、米国特許第7,695,936号、国際公開
第04/111233号、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出
願公開第2007/0287170号、国際公開第2008/119353号、米国特許
出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/0286374
号、米国特許出願公開第2011/0123532号、国際公開第2011/13174
6号、国際公開第2011/143545号、又は、米国特許出願公開第2012/01
49876号に記載されるような技術を用いて、二重特異性抗体を形成するように、単特
異性抗体重鎖間のCH3相互作用を調節することによって製造され得る。本発明の抗体の
VL及び/又はVH領域が組み込まれ得る付加的な二重特異性構造は、例えば、二重可変
ドメイン免疫グロブリン(国際公開第2009/134776号)であるか、又はロイシ
ンジッパー若しくはコラーゲン二量化ドメインなど、特異性を有する2つの抗体アームを
結合するために様々な二量化ドメインを含む構造(国際公開第2012/022811号
、米国特許第5,932,448号、米国特許第6,833,441号)である。
【0215】
例えば、二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載の方法に従っ
て、セルフリー環境でのin vitroにおいて、2つの単特異性ホモ二量体抗体のC
H3領域中に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下におい
て、2つの親単特異性ホモ二量体抗体から二重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することに
より生成されてもよい。この方法においては、第1の単特異性二価抗体(例えば、抗CD
38抗体)及び第2の単特異性二価抗体は、ヘテロ二量体の安定性を促進するCH3ドメ
インにおける特定の置換を有するように遺伝子操作されるが、これらの抗体は、ヒンジ領
域におけるシステインがジスルフィド結合異性化を受けるのに十分な還元条件下において
共にインキュベートされ、これにより、Fabアーム交換による二重特異性抗体が生成さ
れる。インキュベーション条件は、最適には、非還元条件に戻されてもよい。使用され得
る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール
(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシ
エチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、及びベータ-メルカプトエタノール
、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カ
ルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくと
も20℃の温度において、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.
5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えば、pH7.0又はpH7.
4において、少なくとも90分のインキュベーションが使用されてもよい。
【0216】
二重特異性抗体の第1の重鎖及び第2の重鎖に使用され得る例示的なCH3の変異は、
K409R及び/又はF405Lである。
【0217】
本発明の方法を用いて、任意の分類に属する動物被験体を治療することができる。この
ような動物の例としては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜などの哺乳動物が挙げら
れる。
【0218】
投与/医薬組成物
本発明の方法において、CD38を特異的に結合する抗体は、CD38を特異的に結合
する抗体と、医薬的に許容される担体と、を含む、好適な医薬組成物中で提供されてよい
。担体は、CD38を特異的に結合する抗体と一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤
、又はビヒクルであってよい。そのようなビヒクルは、落花生油、大豆油、鉱物油、ゴマ
油などの、石油、動物、植物、又は合成物起源のものを含む、水及び油などの液体であっ
てよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いてもよい。これらの溶
液は滅菌され、一般には粒子状物質を含まない。これらは、通常の周知の滅菌技術(例え
ば、濾過)によって滅菌することができる。この組成物は、生理学的条件に近づけるため
に必要とされる医薬的に許容される補助物質、例えばpH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、
増粘剤、潤滑剤及び着色剤などを含有することができる。そのような製剤処方中のCD3
8を特異的に結合する抗体の濃度は、幅広く異なってもよく、すなわち、約0.5重量%
未満から、通常は少なくとも約1重量%まで、最大で15又は20重量%、25重量%、
30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、又は50重量%までであってよく、
また、選択される特定の投与方法に従って、必要とされる用量、流体体積、粘度などに主
に基づいて選択される。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えばヒト血清
アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and
Practice of Pharmacy,21st Edition,Troy,
D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,P
hiladelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutica
l Manufacturing pp 691~1092に記載され、特にpp.95
8~989を参照されたい。
【0219】
本発明の方法におけるCD38を特異的に結合する抗体の投与方法は、当該技術分野に
おいて周知であるように、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内又は皮下
、肺内、経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸)若しくは当業者に理解される他の手段など
の任意の好適な経路であり得る。CD38を特異的に結合する抗体は、既知の方法を用い
て、腫瘍内に局所送達するためリンパ節ドレーン部位に対して腫瘍内投与してもよい。
【0220】
CD38を特異的に結合する抗体は、例えば、静脈内(i.v.)注入又はボーラス注
射によって非経口的に、筋肉内又は皮下又は腹腔内など任意の好適な経路によって患者に
投与することができる。静脈内注入は、例えば、15、30、60、90、120、18
0、若しくは240分にわたって、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
1、若しくは12時間にわたって実施されてもよい。
【0221】
患者に投与される用量は、治療される疾患を緩和するか又は少なくとも部分的に停止す
るのに十分(「治療的に有効な量」)であり、時には、0.005mg~約100mg/
kg、例えば、約0.05mg~約30mg/kg、又は約5mg~約25mg/kg、
又は約4mg/kg、約8mg/kg、約16mg/kg若しくは約24mg/kg、又
は例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10mg/kgであってもよい
が、更により高い量、例えば約15、16、17、18、19、20、21、22、23
、24、25、30、40、50、60、70、80、90若しくは100mg/kgで
あってもよい。
【0222】
例えば、50、100、200、500、又は1000mgの固定単位用量が与えられ
るか、又は患者の表面積に基づいて例えば、500、400、300、250、200、
若しくは100mg/m2の用量で与えられてもよい。通常、1~8の用量(例えば、1
、2、3、4、5、6、7、又は8)が投与され得るが、9、10、11、12、13、
14、15、16、17、18、19、20、又はそれよりも高い用量を投与することが
可能である。
【0223】
本発明の方法におけるCD38を特異的に結合する抗体の投与は、1日、2日、3日、
4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月
、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上後に繰り返すことができる。治療過程を繰り返す
ことも可能であり、長期にわたる投与も同様に可能である。繰り返し投与は、同一用量で
あるか、又は異なる用量であってよい。例えば、本発明の方法におけるCD38を特異的
に結合する抗体は、静脈内注入によって、8mg/kg又は16mg/kgで1週間間隔
で8週間にわたり投与され、8mg/kg又は16mg/kgで2週間毎に更に16週間
の投与が続き、その後、8mg/kg又は16mg/kgで4週間毎による投与を続けて
行うことができる。
【0224】
本発明の方法において、CD38を特異的に結合する抗体は、例えば、週1回を6ヶ月
以上など、維持療法によって投与してもよい。
【0225】
例えば、本発明の方法におけるCD38を特異的に結合する抗体は、24、12、8、
6、4、又は2時間毎の単回投与又は分割投与を用いて、若しくはこれらの併用を用いて
、約0.1~100mg/kgの量の1日用量として、例えば、1日当たり0.5、0.
9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、1
3、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26
、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90又は100mg
/kgで、治療開始後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、
27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又
は40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは、1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20週目のうち
の少なくとも1週に、あるいはこれらの組み合わせで提供されてもよい。
【0226】
本発明の方法におけるCD38を特異的に結合する抗体はまた、癌の進行リスクを低下
させ、癌の進行におけるイベントの発生の開始を遅延させ、かつ/又は癌が緩解した際の
再発リスクを低下させるために、予防的に投与されてもよい。これは、他の生物学的要因
のために、存在することが知られている腫瘍の位置を特定することが難しい患者において
特に有用であり得る。
【0227】
本発明の方法におけるCD38を特異的に結合する抗体を、保存用に凍結乾燥し、使用
前に好適な担体中で再溶解することができる。この技術は、通常のタンパク調製物に関し
て有効であることが示されており、周知の凍結乾燥法及び再構成技術を用いることができ
る。
【0228】
本発明の方法におけるCD38を特異的に結合する抗体は、第2の治療薬と併用して投
与されてよい。
【0229】
本発明の方法では、CD38を特異的に結合する抗体は、当業者には既知の化学療法薬
又は他の抗癌治療法のうち、任意の1つ以上とともに投与されてよい。化学療法薬は、癌
の治療に有用な化合物で、増殖阻害薬又は他の細胞傷害性薬が含まれ、アルキル化薬、代
謝拮抗薬、抗微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害薬、受容体型チロシンキナーゼ阻害薬
、血管新生抑制薬などが挙げられる。化学療法薬の例として、チオテパ及びシクロホスフ
ァミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN(登録商標))などのアルキル化薬;ブ
スルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾ
デパ(benzodopa)、カルボコン、メツレデパ(meturedopa)、及びウレデパ(uredopa)
などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド
(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophos
phaoramide)及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミ
ン及びメチロールメラミン(methylamelamines);クロラムブシル、クロルナファジン、
クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロ
レタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステ
リン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェン
マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、
ラニムスチンなどのニトロソウレア;アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノ
マイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノ
マイシン、カリチアマイシン、カルビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノ
フィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジ
アゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、
イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン
、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマ
イシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベ
ルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサート
及び5-FUなどの代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、ト
リメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプ
リン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリ
ジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビ
ン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモス
タノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;
アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎系;フォリン酸(frolinic a
cid)などの葉酸補充薬;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリ
ン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトレキサート(edatraxate
);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エフロルニチン(el
fornithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レ
ンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン
;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジ
ド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニ
ウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウ
レタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトー
ル;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シク
ロホスファミド;チオテパ;パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、ドセタキセル
(TAXOTERE(登録商標))及びこれらのアナログなどのタキソイド又はタキサン
ファミリーのもの;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリ
ン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラ
スチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキ
サントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;
ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソ
メラーゼ阻害薬RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイ
ン酸;エスペラミシン;カペシタビン;NEXAVAR(登録商標)(ソラフェニブ)、
SUTENT(登録商標)(スニチニブ)、VOTRIENT(商標)(パゾパニブ)、
PALLADIA(商標)(トセラニブ)、ZACTIMA(商標)(バンデタニブ)、
RECENTIN(登録商標)(セジラニブ)、レゴラフェニブ(BAY 73-450
6)、アキシチニブ(AG013736)、レスタウルチニブ(CEP-701)、TA
RCEVA(登録商標)(エルロチニブ)、IRESSA(商標)(ゲフィチニブ)、G
ilotrif(登録商標)(アファチニブ)、TYKERB(登録商標)(ラパチニブ
)、ネラチニブを含む受容体型チロシンキナーゼ及び/又は血管新生の阻害薬など、並び
に医薬的に許容される塩、酸、又は上記のうち任意のものの誘導体が挙げられる。この定
義に更に含まれるものは、腫瘍においてホルモンの作用を調節又は阻害するように働く抗
ホルモン薬、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを阻害する4(5
)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン
、LY 117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(トレミフ
ェン)などの抗エストロゲン薬;並びに、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュ
ープロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン薬;並びに、医薬的に許容される塩、
酸、又は上記のうち任意のものの誘導体である。Wiemann et al.,198
5,Medical Oncology(Calabresi et aL,eds.)
、Chapter 10,McMillan Publishingに開示されるものな
どのその他従来の細胞傷害性化合物も、本発明の方法に応用可能である。
【0230】
本発明の方法においてCD38を特異的に結合する抗体と併用して使用できる代表的な
薬剤として、チロシンキナーゼ阻害薬、並びにIRESSA(商標)(ゲフィチニブ)及
びTarceva(登録商標)(エルロチニブ)などの癌標的療法、並びにその他HER
2、HER3、HER4又はVEGFのアンタゴニストが挙げられる。代表的なHER2
アンタゴニストとして、CP-724-714、HERCEPTIN(商標)(トラスツ
ズマブ)、OMNITARG(商標)(ペルツズマブ)、TAK-165、TYKERB
(登録商標)(ラパチニブ)(EGFR及びHER2阻害薬)、並びにGW-28297
4が挙げられる。代表的なHER3アンタゴニストとして、抗Her3抗体(例えば、米
国特許出願公開第2004/0197332号参照)が挙げられる。代表的なHER4ア
ンタゴニストとして、抗HER4 siRNA(例えば、Maatta et al.,
Mol Biol Cell 17:67~79,2006参照)が挙げられる。代表的
なVEGFアンタゴニストは(Avastin(商標)(ベバシズマブ)である。
【0231】
本発明の方法においてCD38を特異的に結合する抗体と併用して使用できる代表的な
薬剤として、固形腫瘍の標準治療薬、又は免疫チェックポイント阻害薬が挙げられる。
【0232】
本発明の方法における第2の治療薬は、免疫チェックポイント阻害薬であってよい。
【0233】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、抗PD-1抗体、抗PD-
L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、又は抗CTLA-4抗
体である。
【0234】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、アンタゴニスト抗PD-1
抗体、アンタゴニスト抗PD-L1抗体、アンタゴニスト抗PD-L2抗体、アンタゴニ
スト抗LAG3抗体、又はアンタゴニスト抗TIM3抗体である。
【0235】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は抗PD-1抗体である。
【0236】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は抗PD-L1抗体である。
【0237】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は抗PD-L2抗体である。
【0238】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は抗LAG3抗体である。
【0239】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は抗TIM3抗体である。
【0240】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は抗CTLA-4抗体である。
【0241】
任意のアンタゴニスト抗PD-1抗体を、本発明の方法で使用してよい。使用できる代
表的な抗PD-1抗体は、OPVIDO(登録商標)(ニボルマブ)及びKEYTRUD
A(登録商標)(ペンブロリズマブ)である。OPVIDO(登録商標)(ニボルマブ)
は、例えば米国特許第8,008,449号(抗体5C4)に記載されており、配列番号
24のVH及び配列番号25のVLを含む。KEYTRUDA(登録商標)(ペンブロリ
ズマブ)は、例えば米国特許第8,354,509号に記載されており、配列番号22の
VH及び配列番号23のVLを含む。ニボルマブ及びペンブロリズマブのアミノ酸配列も
、CAS登録によって入手可能である。使用できる追加のPD-1抗体は、米国特許第7
,332,582号、米国特許出願公開第2014/0044738号、国際公開第20
14/17966号及び米国特許出願公開第2014/0356363号に記載されてい
る。
【0242】
「アンタゴニスト」は、細胞タンパク質に結合すると、そのタンパク質の天然リガンド
によって誘導される少なくとも1つの反応又は活性を抑制する分子を指す。少なくとも1
つの反応若しくは活性が、アンタゴニスト非存在下(例えば、陰性対照)で抑制される少
なくとも1つの反応若しくは活性よりも、少なくとも約30%、40%、45%、50%
、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しく
は100%阻害されるとき、又は、アンタゴニスト非存在下での抑制と比較してその抑制
が統計的に有意であるとき、分子はアンタゴニストである。アンタゴニストは、抗体、可
溶性リガンド、低分子、DNA又は、siRNAなどのRNAであってよい。例えばPD
-1によって誘導される典型的な反応又は活性は、その受容体であるPD-L1又はPD
-L2への結合により、抗原特異的CD4+若しくはCD8+細胞増殖が減少し得る、又
は、T細胞によるインターフェロン-γ(IFN-γ)産生が減少し得ることであり、例
えば腫瘍に対する免疫応答の抑制をもたらす。TIM-3によって誘導される典型的な反
応又は活性は、その受容体、例えばガレクチン-9への結合により、抗原特異的CD4+
若しくはCD8+細胞増殖が減少し得る、T細胞によるIFN-γ産生が減少し得る、又
は、CD137の表面発現(CD4+若しくはCD8+細胞上の)が減少し得ることであ
り、例えば腫瘍に対する免疫応答の抑制をもたらす。したがって、PD-1に特異的に結
合するアンタゴニストPD-1抗体、アンタゴニストPD-L2、TIM-3に特異的に
結合するアンタゴニスト抗体は、抑制経路を阻害することによって免疫応答を誘導する。
【0243】
配列番号22
QVQLVQSGVEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYYMYWVRQ
APGQGLEWMGGINPSNGGTNFNEKFKNRVTLTTDSSTTTA
YMELKSLQFDDTAVYYCARRDYRFDMGFDYWGQGTTVTVS
S
【0244】
配列番号23
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASKGVSTSGYSYLHW
YQQKPGQAPRLLIYLASYLESGVPARFSGSGSGTDFTLTI
SSLEPEDFAVYYCQHSRDLPLTFGGGTKVEIK
【0245】
配列番号24
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQ
APGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTL
FLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSS
【0246】
配列番号25
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQK
PGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLE
PEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIK
【0247】
免疫応答を増強する抗PD-L1抗体を、本発明の方法で使用してよい(例えば、アン
タゴニスト抗PD-L1抗体)。使用できる代表的な抗PD-L1抗体は、デュルバルマ
ブ、アテゾリズマブ及びアベルマブ、並びに、例えば、米国特許出願公開第2009/0
055944号、米国特許第8,552,154号、同第8,217,149号、及び同
第8,779,108号に記載されるものである。
【0248】
デュルバルマブは、配列番号26のVH及び配列番号27のVLを含む。
【0249】
アテゾリズマブは、配列番号28のVH及び配列番号29のVLを含む。
【0250】
アベルマブは、配列番号30のVH及び配列番号31のVLを含む。
【0251】
配列番号26
EVQLVESGGG LVQPGGSLRLSCAASGFTFSRYWMSWVR
QAPGKGLEWVAN IKQDGSEKYYVDSVKGRFTISRDNAKN
SLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREG GWFGELAFDYWGQGTL
VTVSS
【0252】
配列番号27
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQRVSSSYLAWYQQ
K PGQAPRLLIYDASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISR
LEPEDFAVYYCQQYGSLPWTFGQGTKVEIK
【0253】
配列番号28
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQ
APGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTA
YLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS
【0254】
配列番号29
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQK
PGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQ
PEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIK
【0255】
配列番号30
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYIMMWVRQ
APGKGLEWVSSIYPSGGITFYADTVKGRFTISRDNSKNTL
YLQMNSLRAEDTAVYYCARIKLGTVTTVDYWGQGTLVTVS
S
【0256】
配列番号31
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQ
QHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISG
LQAEDEADYYCSSYTSSSTRVFGTGTKVTVL
【0257】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号24のVH及び配列番号25のVLを含む抗P
D-1抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与する
ことを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0258】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号22のVH及び配列番号23のVLを含む抗P
D-1抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与する
ことを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0259】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号26のVH及び配列番号27のVLを含む抗P
D-L1抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与す
ることを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0260】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号28のVH及び配列番号29のVLを含む抗P
D-L1抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与す
ることを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0261】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号30のVH及び配列番号31のVLを含む抗P
D-L1抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与す
ることを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0262】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号24のVH及び配列番号25のVLを含む抗P
D-1抗体と併用して、免疫応答の増強に十分な期間、それを必要とする患者に投与する
ことを含む、患者の免疫応答を増強する方法も提供する。
【0263】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号22のVH及び配列番号23のVLを含む抗P
D-1抗体と併用して、免疫応答の増強に十分な期間、それを必要とする患者に投与する
ことを含む、患者の免疫応答を増強する方法も提供する。
【0264】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号26のVH及び配列番号27のVLを含む抗P
D-L1抗体と併用して、免疫応答の増強に十分な期間、それを必要とする患者に投与す
ることを含む、患者の免疫応答を増強する方法も提供する。
【0265】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号28のVH及び配列番号29のVLを含む抗P
D-L1抗体と併用して、免疫応答の増強に十分な期間、それを必要とする患者に投与す
ることを含む、患者の免疫応答を増強する方法も提供する。
【0266】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号30のVH及び配列番号31のVLを含む抗P
D-L1抗体と併用して、免疫応答の増強に十分な期間、それを必要とする患者に投与す
ることを含む、患者の免疫応答を増強する方法も提供する。
【0267】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-1抗体と併用して、結腸直腸癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者に
投与することを含む、結腸直腸癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0268】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-L1抗体と併用して、結腸直腸癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者
に投与することを含む、結腸直腸癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0269】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-L2抗体と併用して、結腸直腸癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者
に投与することを含む、結腸直腸癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0270】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-1抗体と併用して、肺癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与す
ることを含む、肺癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0271】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-L1抗体と併用して、肺癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与
することを含む、肺癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0272】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-L2抗体と併用して、肺癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与
することを含む、肺癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0273】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-1抗体と併用して、前立腺癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投
与することを含む、前立腺癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0274】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-L1抗体と併用して、前立腺癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者に
投与することを含む、前立腺癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0275】
本発明はまた、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、アンタゴニス
ト抗PD-L2抗体と併用して、前立腺癌の治療に十分な期間、それを必要とする患者に
投与することを含む、前立腺癌を有する患者を治療する方法も提供する。
【0276】
免疫応答を増強する抗LAG-3抗体を、本発明の方法で使用してよい。使用できる代
表的な抗LAG-3抗体は、例えば、国際公開第2010/019570号に記載される
ものである。
【0277】
免疫応答を増強する抗CTLA-4抗体を、本発明の方法で使用してよい。使用できる
代表的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブである。
【0278】
本発明の方法で使用できる抗PD-1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗LAG3、抗
TIM3及び抗CTLA-4抗体は、本明細書に記載される方法を用いて新たに生成され
てもよい。
【0279】
いくつかの実施形態では、配列番号32のVH及び配列番号33のVLを含む抗PD1
抗体を使用してよい。
【0280】
いくつかの実施形態では、配列番号34のVH及び配列番号35のVLを含む抗PD1
抗体を使用してよい。
【0281】
いくつかの実施形態では、配列番号36のVH及び配列番号37のVLを含む抗TIM
-3抗体を使用してよい。
【0282】
いくつかの実施形態では、配列番号38のVH及び配列番号39のVLを含む抗TIM
-3抗体を使用してよい。
【0283】
配列番号32
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQ
APGQGLEWMGGIIPIFDTANYAQKFQGRVTITADESTSTA
YMELSSLRSEDTAVYYCARPGLAAAYDTGSLDYWGQGTLV
TVSS
【0284】
配列番号33
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVRSYLAWYQQK
PGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLE
PEDFAVYYCQQRNYWPLTFGQGTKVEIK
【0285】
配列番号34
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFAFSRYDMSWVRQ
APGKGLESVAYISGGGANTYYLDNVKGRFTISRDNAKNSL
YLQMNSLRAEDTAVYYCASPYLSYFDVWGQGTLVTVSS
【0286】
配列番号35
EIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSLSDYLHWYQQK
PGQAPRLLIKSASQSISGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQ
SEDFAVYYCQNGHSFPYTFGQGTKLEIK
【0287】
配列番号36
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQ
APGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTL
YLQMNSLRAEDTAVYYCAKSPYAPLDYWGQGTLVTVSS
【0288】
配列番号37
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVNDYLAWYQQK
PGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLE
PEDFAVYYCQQGGHAPITFGQGTKVEIK
【0289】
配列番号38
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYSFTSYWMQWVRQ
MPGKGLEWMGAIYPGDGDIRYTQNFKGQVTISADKSISTA
YLQWSSLKASDTAMYYCARWEKSTTVVQRNYFDYWGQGTT
VTVSS
【0290】
配列番号39
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASENVGTFVSWYQQK
PGKAPKLLIYGASNRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQ
PEDFATYYCGQSYSYPTFGQGTKLEIK
【0291】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号32のVH及び配列番号33のVLを含む抗P
D-1抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与する
ことを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0292】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号34のVH及び配列番号35のVLを含む抗P
D-1抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与する
ことを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0293】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号36のVH及び配列番号37のVLを含む抗T
IM-31抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与
することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0294】
本発明はまた、治療的に有効な量の配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含むCD
38を特異的に結合する抗体を、配列番号38のVH及び配列番号39のVLを含む抗T
IM-31抗体と併用して、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与
することを含む、固形腫瘍を有する患者を治療する方法も提供する。
【0295】
本発明の方法では、CD38を特異的に結合する抗体及び第2の治療薬の併用は、任意
の都合のよい時間枠で投与されてよい。例えば、CD38を特異的に結合する抗体及び第
2の治療薬は、同日に、更に同じ静脈内注入で患者に投与されてよい。ただし、CD38
を特異的に結合する抗体及び第2の治療薬はまた、隔日又は隔週又は隔月などで投与され
てもよい。いくつかの実施形態では、CD38を特異的に結合する抗体及び第2の治療薬
は、それらが、治療される患者内に検出可能な濃度で同時に(例えば、血清中に)存在す
る時間内に十分近接して投与されてよい。いくつかの方法では、ある期間にわたる多数の
投与回数からなるCD38を特異的に結合する抗体による一連の治療全体は、多数の投与
回数からなる第2の治療薬による一連の治療がその後に続くか、又はそれに先立って行わ
れる。1日、2日、若しくは数日、又は数週間の回復期間が、CD38を特異的に結合す
る抗体の投与と第2の治療薬の投与との間に用いられてよい。
【0296】
CD38を特異的に結合する抗体又はCD38を特異的に結合する抗体と第2の治療薬
との併用は、任意の形態の放射線療法(体外照射療法、強度変調放射線療法(IMRT)
、集束放射療法など)、及び任意の形態の放射線手術(ガンマナイフ、サイバーナイフ、
Linac、及び組織内放射線照射(例えば、放射性シードの埋め込み、Glia Si
teバルーン)など)、及び/又は外科手術とともに投与され得る。
【0297】
用いられ得る合焦放射線照射法には、定位放射線手術、分割定位放射線手術、及び強度
変調放射線療法(IMRT)が挙げられる。定位放射線手術が、例えば、脳腫瘍のような
場合、周囲の腫瘍のない正常な組織を避けつつ腫瘍のある組織に放射線を精密に送達する
ことを伴うことは明らかである。定位放射線手術により適用される放射線の線量は異なり
得るが、典型的には、1Gy~約30Gyであり、例えば1~5、10、15、20、2
5、最大30Gyを含む、線量における中間的な範囲を含み得る。非侵襲的な固定デバイ
スのおかげで、定位放射線は、1回の治療で送達される必要はない。治療計画は、日々、
確実に複製され得、それにより、複数回用に分割した放射線量を送達するのを可能にする
。放射線手術が、腫瘍を時間をかけて治療するために用いられた場合、そのような放射線
治療法は、「分割定位放射線手術」又はFSRと呼ばれる。対照的に、定位放射線手術と
は、1回のセッションでの処置を指す。分割定位放射線手術は、高い治療率、すなわち、
腫瘍細胞を高い比率で殺傷すること、及び正常な組織への低い影響を結果としてもたらし
得る。腫瘍及び正常な組織は、高い放射線量を一度に照射するのと、低い放射線量を複数
回照射するのに対して、それぞれ異なる反応を見せる。一度に高い放射線量を照射すると
、低い放射線量を複数回照射した場合よりも、多くの正常な組織を殺傷する可能性がある
。したがって、低い放射線量を複数回照射することで、正常な組織を温存しつつ、より多
くの腫瘍細胞を殺傷することができる。分割定位放射線手術により適用される放射線の線
量は、1Gy~約50Gyの範囲で変化し得、例えば、1~5、10、15、20、25
、30、40、及び最大50Gyを含む、少分割の線量における中間的な範囲含み得る。
強度変調放射線療法(IMRT)もまた使用され得る。IMRTは、高精度三次元原体照
射療法(3DCRT)のアドバンスモードであり、コンピュータ制御直線加速器を用いて
、正確な放射線量を、悪性腫瘍、又は腫瘍内の特定のエリアに送達するものである。3D
CRTにおいては、それぞれの放射線ビームのプロファイルは、マルチリーフコリメータ
(MLC)を用いてビーム方向像(BEV)から標的のプロファイルにフィットするよう
に成形され、それにより、多くのビームを生成する。IMRTは、放射線ビームの強度を
、複数の小さな量に変調することにより、放射線量が腫瘍の三次元(3D)形状により精
密に沿うものとなるのを可能にする。したがってIMRTは、周辺の正常で重要な構造へ
の線量を最小化しつつ、より高い放射線量を腫瘍内の領域に集中させることを可能にする
。IMRTは、例えば、腫瘍が、例えば、脊髄、主要臓器、又は血管のような脆弱な構造
体を包み込んでいる場合、治療容積を、窪んだ腫瘍形状に合わせる能力を改善する。
【0298】
CD38を特異的に結合する抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物の皮下投与
CD38を特異的に結合する抗体は、CD38を特異的に結合する抗体と、ヒアルロニ
ダーゼと、を含む医薬組成物として皮下に投与され得る。
【0299】
皮下投与される医薬組成物中のCD38を特異的に結合する抗体の濃度は、約20mg
/mLであってよい。
【0300】
皮下投与される医薬組成物は、約1,200mg~1,800mgのCD38を特異的
に結合する抗体を含んでよい。
【0301】
皮下投与される医薬組成物は、約1,200mgのCD38を特異的に結合する抗体を
含んでよい。
【0302】
皮下投与される医薬組成物は、約1,600mgのCD38を特異的に結合する抗体を
含んでよい。
【0303】
皮下投与される医薬組成物は、約1,800mgのCD38を特異的に結合する抗体を
含んでよい。
【0304】
皮下に投与される医薬組成物は、約30,000U~45,000Uのヒアルロニダー
ゼを含んでよい。
【0305】
皮下投与される医薬組成物は、約1,200mgのCD38を特異的に結合する抗体と
、約30,000Uのヒアルロニダーゼと、を含んでよい。
【0306】
皮下投与される医薬組成物は、約1,800mgのCD38を特異的に結合する抗体と
、約45,000Uのヒアルロニダーゼと、を含んでよい。
【0307】
皮下投与される医薬組成物は、約1,600mgのCD38を特異的に結合する抗体と
、約30,000Uのヒアルロニダーゼと、を含んでよい。
【0308】
皮下投与される医薬組成物は、約1,600mgのCD38を特異的に結合する抗体と
、約45,000Uのヒアルロニダーゼと、を含んでよい。
【0309】
皮下に投与される医薬組成物は、配列番号40のアミノ酸配列を有するヒアルロニダー
ゼrHuPH20を含んでよい。
【0310】
rHuPH20は、組換えヒアルロニダーゼ(HYLENEX(登録商標)組換え)で
あり、国際特許公開第2004/078140号に記載されている。
【0311】
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸(EC 3.2.1.35)を分解し、細胞外基質
内のヒアルロナンの粘度を低下させ、それによって組織の透過性を高める。
【0312】
配列番号40
MGVLKFKHIFFRSFVKSSGVSQIVFTFLLIPCCLTLNFR
APPVIPNVPFLWAWNAPSEFCLGKFDEPLDMSLFSFIGSP
RINATGQGVTIFYVDRLGYYPYIDSITGVTVNGGIPQKIS
LQDHLDKAKKDITFYMPVDNLGMAVIDWEEWRPTWARNWK
PKDVYKNRSIELVQQQNVQLSLTEATEKAKQEFEKAGKDF
LVETIKLGKLLRPNHLWGYYLFPDCYNHHYKKPGYNGSCF
NVEIKRNDDLSWLWNESTALYPSIYLNTQQSPVAATLYVR
NRVREAIRVSKIPDAKSPLPVFAYTRIVFTDQVLKFLSQD
ELVYTFGETVALGASGIVIWGTLSIMRSMKSCLLLDNYME
TILNPYIINVTLAAKMCSQVLCQEQGVCIRKNWNSSDYLH
LNPDNFAIQLEKGGKFTVRGKPTLEDLEQFSEKFYCSCYS
TLSCKEKADVKDTDAVDVCIADGVCIDAFLKPPMETEEPQ
IFYNASPSTLSATMFIVSILFLIISSVASL
【0313】
CD38を特異的に結合する抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物の投与は、1
日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間
、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上後に繰り返すことができる。治
療過程を繰り返すことも可能であり、長期にわたる投与も同様に可能である。繰り返し投
与は、同一用量であるか、又は異なる用量であってよい。例えば、CD38を特異的に結
合する抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物を、週1回を8週間、続けて2週間に
1回を16週間、続けて4週間に1回投与してよい。投与される医薬組成物は、約1,2
00mgのCD38を特異的に結合する抗体と、約30,000Uのヒアルロニダーゼと
、を含んでよく、医薬組成物中のCD38を特異的に結合する抗体の濃度は、約20mg
/mLである。投与される医薬組成物は、約1,800mgのCD38を特異的に結合す
る抗体と、約45,000Uのヒアルロニダーゼと、を含んでよい。投与される医薬組成
物は、約1,600mgのCD38を特異的に結合する抗体と、約30,000Uのヒア
ルロニダーゼと、を含んでよい。投与される医薬組成物は、約1,600mgのCD38
を特異的に結合する抗体と、約45,000Uのヒアルロニダーゼと、を含んでよい。
【0314】
CD38を特異的に結合する抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物は、腹部に皮
下投与されてよい。
【0315】
CD38を特異的に結合する抗体及びヒアルロニダーゼを含む医薬組成物は、合計量約
80mL、90mL、100mL、110mL、又は120mLで投与されてよい。
【0316】
投与には、対象への混合物の投与に先立って、25mM酢酸ナトリウム、60mM塩化
ナトリウム、140mM D-マンニトール、0.04%ポリソルベート20、pH5.
5中、20mg/mLのCD38を特異的に結合する抗体を、10mM L-ヒスチジン
、130mM NaCl、10mM L-メチオニン、0.02%ポリソルベート80、
pH6.5中、1.0mg/mL(75~150kU/mL)のrHuPH20と混合し
てよい。
【0317】
本発明は一般論として記述されてきているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲を
限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【0318】
本発明の更なる実施形態
以下に、本明細書の他の箇所の開示に従う、本発明の更なる実施形態を列挙する。本明
細書に開示される本発明に関連するものとして上述された本発明の実施形態の特徴は、こ
れらの番号付けされた更なる実施形態のうちの1つ1つにもまた関係する。
1.固形腫瘍を有する患者の治療に用いるためのCD38を特異的に結合する抗体。
2.制御性T細胞(Treg)介在性疾患を有する患者の治療に用いるためのCD38
を特異的に結合する抗体。
3.治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を対象に投与することを含む
、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)介在性疾患を有する患者の治療に用いるための
CD38を特異的に結合する抗体。
4.制御性T細胞(Treg)を、CD38を特異的に結合する抗体と接触させること
を含む、制御性T細胞の活性の抑制に用いるためのCD38を特異的に結合する抗体。
5.骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を、CD38を特異的に結合する抗体と接
触させることを含む、MDSCの活性の抑制に用いるためのCD38を特異的に結合する
抗体。
6.CD38を特異的に結合する抗体を患者に投与することによって、患者における制
御性T細胞数を低下させることを含む、固形腫瘍を有する患者の治療に用いるためのCD
38を特異的に結合する抗体。
7.CD38を特異的に結合する抗体を患者に投与することによって、患者における骨
髄由来サプレッサー細胞(MDSC)細胞を低下させることを含む、固形腫瘍を有する患
者の治療に用いるためのCD38を特異的に結合する抗体。
8.抗体が患者における免疫応答を誘発する、実施形態1~7のいずれかに従って使用
するためのCD38を特異的に結合する抗体。
9.免疫応答がエフェクターT細胞(Teff)応答である、実施形態1~8のいずれ
かに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
10.Teff応答がCD4+T細胞又はCD8+T細胞によって媒介される、実施形
態1~9のいずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
11.Teff応答がCD8+T細胞によって媒介される、実施形態9又は10に従っ
て使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
12.Teff応答が、CD8+T細胞数の増加、CD8+T細胞増殖の増加、T細胞
クローン増殖の増加、CD8+メモリー細胞形成の増加、抗原依存性抗体産生の増加、又
は、サイトカイン、ケモカイン若しくはインターロイキン産生の増加である、実施形態1
~11のいずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
13.抗体が免疫サプレッサー細胞の機能を阻害する、実施形態1~13のいずれかに
従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
14.免疫サプレッサー細胞が、制御性T細胞(Treg)又は骨髄由来サプレッサー
細胞(MDSC)である、実施形態1~14のいずれかに従って使用するためのCD38
を特異的に結合する抗体。
15.Tregが、CD3+CD4+CD25+CD127dimT細胞である、実施
形態15に従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
16.TregがCD38を発現する、実施形態14又は15に従って使用するための
CD38を特異的に結合する抗体。
17.Tregの機能がTregの殺傷によって阻害される、実施形態13~16のい
ずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
18.Tregの殺傷が、CD38を特異的に結合している抗体により誘導される、抗
体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、細胞依存性細胞
傷害(CDC)又はアポトーシスによって媒介される、実施形態17に従って使用するた
めのCD38を特異的に結合する抗体。
19.Tregの殺傷がADCCによって媒介される、実施形態17又は18に従って
使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
20.約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、
12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、
22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、
32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、
42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、
52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%又は60%のTregが殺傷
される、請求項17~19に記載の方法。
21.MDSCが、CD11b+HLA-DR-CD14-CD33+CD15+細胞
である、実施形態14に従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
22.CD11b+HLA-DR-CD14-CD33+CD15+細胞がCD38を
発現する、実施形態21に従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
23.MDSCの機能がMDSCの殺傷によって阻害される、実施形態21又は22に
従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
24.MDSCの殺傷が、CD38を特異的に結合している抗体により誘導される、抗
体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、補体依存性細胞
傷害(CDC)又はアポトーシスによって媒介される、実施形態23に従って使用するた
めのCD38を特異的に結合する抗体。
25.MDSCの殺傷がADCCによって媒介される、実施形態23又は24に従って
使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
26.約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、
12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、
22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、
32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、
42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、
52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%又は60%のMDSCが殺傷
される、実施形態23~25のいずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合
する抗体。
27.Teff又は免疫サプレッサー細胞が骨髄又は末梢血中に存在する、実施形態1
4~26のいずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
28.固形腫瘍が、黒色腫、肺癌、扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、非扁平上皮
NSCLC、結腸直腸癌、前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、胃癌(stomach cancer)、卵
巣癌、胃癌(gastric cancer)、肝癌、膵臓癌、甲状腺癌、頭頸部の扁平上皮癌、食道又
は胃腸管の癌腫、乳癌、卵管癌、脳癌、尿道癌、尿生殖器癌、子宮内膜症、子宮頸癌、又
は癌の転移巣である、実施形態14~27のいずれかに従って使用するためのCD38を
特異的に結合する抗体。
29.固形腫瘍がCD38発現を欠いている、実施形態1~28のいずれかに従って使
用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
30.抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(V
L)を含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、実施形態1~29のいずれかに
従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
31.抗体が、少なくとも、ヒトCD38(配列番号1)の領域SKRNIQFSCK
NIYR(配列番号2)及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合す
る、実施形態1~30のいずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗
体。
32.抗体が、それぞれ配列番号6、7、及び8の重鎖相補性決定領域(HCDR)1
(HCDR1)、2(HCDR2)及び3(HCDR3)配列を含む、実施形態1~31
のいずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
33.抗体が、それぞれ配列番号9、10及び11の軽鎖相補性決定領域(LCDR)
1(LCDR1)、2(LCDR2)及び3(LCDR3)配列を含む、実施形態1~3
2のいずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
34.抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び11のHCDR1、HCD
R2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む、実施形態1~
33のいずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
35.抗体が、配列番号4と95%、96%、97%、98%、99%又は100%同
一であるVH、及び、配列番号5と95%、96%、97%、98%、99%又は100
%同一であるVLを含む、実施形態1~34のいずれかに従って使用するためのCD38
を特異的に結合する抗体。
36.抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む、実施形態1~31のい
ずれかに従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
37.抗体が、
a.配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b.配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c.配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d.配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HC
DR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、実施形態1~29のいずれかに
従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
38.抗CD38抗体が、
a.配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b.配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c.配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d.配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、実施形態37に従って使用
するためのCD38を特異的に結合する抗体。
39.抗体が、第2の治療薬と併用して投与される、実施形態1~38のいずれかに従
って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
40.第2の治療薬が、化学療法薬、癌標的療法(targeted anti-cancer therapy)、
固形腫瘍の治療用の標準治療薬、又は免疫チェックポイント阻害薬である、実施形態39
に従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
41.免疫チェックポイント阻害薬が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-
L2抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、又は抗CTLA-4抗体である、実施形態
40に従って使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
42.第2の治療薬が、同時に、順次、又は別々に投与される、実施形態39に従って
使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
43.患者が放射線療法によって治療される、実施形態39~42のいずれかに従って
使用するためのCD38を特異的に結合する抗体。
44.固形腫瘍を有する患者の治療に使用するための配列番号4のVH及び配列番号5
のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
45.抗体が、配列番号22のVH及び配列番号23のVLを含む抗PD-1抗体と併
用して投与される、固形腫瘍を有する患者の治療に使用するための配列番号4のVH及び
配列番号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
46.抗体が、配列番号24のVH及び配列番号25のVLを含む抗PD-1抗体と併
用して投与される、固形腫瘍を有する患者の治療に使用するための配列番号4のVH及び
配列番号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
47.患者の免疫応答の増強に使用するための配列番号4のVH及び配列番号5のVL
を含むCD38を特異的に結合する抗体。
48.抗体が、配列番号22のVH及び配列番号23のVLを含む抗PD-1抗体と併
用して投与される、患者の免疫応答の増強に使用するための配列番号4のVH及び配列番
号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
49.抗体が、配列番号24のVH及び配列番号25のVLを含む抗PD-1抗体と併
用して投与される、患者の免疫応答の増強に使用するための配列番号4のVH及び配列番
号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
50.抗体が、配列番号26のVH及び配列番号27のVLを含む抗PD-L1抗体と
併用して投与される、固形腫瘍を有する患者の治療に使用するための配列番号4のVH及
び配列番号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
51.抗体が、配列番号28のVH及び配列番号29のVLを含む抗PD-L1抗体と
併用して投与される、固形腫瘍を有する患者の治療に使用するための配列番号4のVH及
び配列番号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
52.抗体が、配列番号30のVH及び配列番号31のVLを含む抗PD-L1抗体と
併用して投与される、固形腫瘍を有する患者の治療に使用するための配列番号4のVH及
び配列番号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
53.抗体が、配列番号26のVH及び配列番号27のVLを含む抗PD-L1抗体と
併用して投与される、患者の免疫応答の増強に使用するための配列番号4のVH及び配列
番号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
54.抗体が、配列番号28のVH及び配列番号29のVLを含む抗PD-L1抗体と
併用して投与される、患者の免疫応答の増強に使用するための配列番号4のVH及び配列
番号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
55.抗体が、配列番号30のVH及び配列番号31のVLを含む抗PD-L1抗体と
併用して投与される、患者の免疫応答の増強に使用するための配列番号4のVH及び配列
番号5のVLを含むCD38を特異的に結合する抗体。
【実施例0319】
実施例1.全般的な材料及び方法
サンプルの採取及び処理
末梢血及び骨髄穿刺液を、初回注入直前の基準値において、及び治療中の特定の時点で
ヘパリン添加管に採取した。採取24~48時間後に中央検査室に到着すると、サンプル
の大部分をリアルタイムフローサイトメトリーを用いて評価した。末梢血単核球(PBM
C)を全血から得て、密度勾配遠心分離によって単離し、分析まで凍結して保存した。T
細胞活性化、クローン性、及びCD38+Treg抑制アッセイには、凍結PBMCサン
プルを用いて、治療前及び後のサンプルを同時に分析した。
【0320】
NK、T、B、骨髄腫細胞(CD138+)及びCD38発現の評価について、予め検
証された免疫表現型アッセイを用いて、BARC global central la
boratoryにてサンプルのフローサイトメトリー解析を行った。簡潔に言うと、血
液サンプル及び骨髄サンプルを次の多蛍光色素抗体パネル、すなわち、細胞系パネル:P
erCPCy5.5α-CD19(cloneHIB19;Becton Dickin
son[BD])、APCα-CD24(SN3;eBioscience)、PC7α
-CD3(UCHT-1;Beckman Coulter)、V500α-CD16(
3G8;BD)、及びPEα-CD56(MY;BD);制御性T細胞(Treg)パネ
ル:APCα-CD25(2A3;BD)、PEα-CD127(HIL-7R-M21
;BD)、APC-H7α-HLA-DR(G46-6;BD)、及びPerCPα-C
D4(L200;BD);ナイーブ/メモリーT細胞パネル:APC-H7α-CD4(
RPA-T4;BD)、PerCP-Cy5.5α-CD8(RPA-T4BD)、PE
α-CD62L(SK11;BD)、及びAPCα-CD45RA(HI100;BD)
で染色した。CD38発現は、配列番号14及び配列番号15のVH及びVL配列を有す
る、米国特許第7,829,693号に記載のAlexa 647標識抗体mAb 00
3を用いて評価した。血液サンプルを、様々なLyse-wash法を用いて調製した。
骨髄穿刺液サンプルについて、膜又は細胞内染色のいずれかを様々な抗体を用いて実施し
た。末梢血サンプル中の赤血球の溶解にはBecton Dickinson FACS
Lysing溶液を用い、骨髄穿刺液サンプルの細胞内染色にはInvitrogenの
Fix and Perm cell permeabilization試薬を用いた
。FACS Canto IIフローサイトメーターで染色したサンプルを得て、Fac
sDivaソフトウェアを用いてデータを解析した。血液サンプル中の免疫細胞集団の絶
対数と骨髄サンプル中のリンパ球の割合を、検査した全ての時点で判定した。
【0321】
T細胞受容体(TCR)の配列決定
T細胞の多様性を、TCR再編成のディープシークエンシングによって解析し、PBM
Cサンプル由来のゲノムDNAを用いてCD8+T細胞のクローン性について評価した。
TCRの配列決定は、Adaptive Biotechnologiesが市販してい
るImmunoseq(商標)アッセイを用いて実施し、解析を、予め合格したマルチプ
レックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイ(TR2015CRO-V-019)
(可変(V)遺伝子(フォワードプライマー)及び結合(J)遺伝子(リバースプライマ
ー)のファミリーを直接的に標的化する、フォワード及びリバースプライマーからなる)
を用いて実施した。各V及びJ遺伝子プライマーは、体細胞性に組換えられたTCRを増
幅するためのプライミング対として作用し、各プライマーは、特異的な普遍的DNA配列
を含んでいた。初回PCR増幅後、各増幅産物について、IlluminaによるDNA
配列決定に必要な普遍的配列及びアダプター配列を含む、フォワード及びリバースプライ
マーを用いて2回目の増幅を行った。
【0322】
ウイルス抗原及び同種抗原に対するT細胞応答
患者のPBMCを96ウェルプレートに播き(2×105細胞/ウェル)、ヒトサイト
メガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、及びインフルエン
ザウイルス由来の23種類の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIに拘束された
ウイルスペプチドカクテル(2μg/mL;CEFペプチドプール;PANATecs(
登録商標))、又は、同じ数の25Gyで照射した健康なドナー由来の同種PBMCで5
日間刺激した。未刺激のPBMC、及び、抗CD3/CD28をコーティングしたビーズ
で刺激したPBMCを、それぞれ陰性及び陽性対照として使用した。5日目、細胞を含ま
ない上清のインターフェロンγ(IFN-γ)を、サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法
(ELISA;ヒトIFNγELISA Ready-SET-Go;eBioscie
nce)によって測定し、T細胞活性化の代替マーカーとして使用した。
【0323】
エフェクター細胞機能の制御性T細胞(Treg)抑制:カルボキシフルオレセインサ
クシニミジル(CFSE)希釈アッセイ
健康なドナー由来のPBMCを、PerCP-Cy5.5α-CD3(SK7;BD)
、KOα-CD45(J33;Beckman Coulter)、V450α-CD4
(SK3;BD)、PEα-CD25(M-A251、BD)、PECy7α-CD12
7(HIL-7R-M21;BD)、及びAPCα-CD38(HB-7;BD)で標識
し、FACS Aria(BD)でソーティングした。ソーティングしたエフェクター細
胞をカルボキシフルオセインサクシニミジルエステル(CFSE;eBioscienc
e)で標識し、RPMI+10%ウシ胎児血清中、CD38+Treg又はCD38-T
reg(Treg対エフェクター細胞比1:1)の存在下又は非存在下で、抗CD3/C
D28をコーティングしたビーズを用いて刺激した。72時間後、フローサイトメトリー
を行い、CFSEの希釈割合をT細胞増殖の代替として使用した。
【0324】
骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の表現型決定及びDARZALEX(商標)(
ダラツムマブ)介在性ADCC
3人の正常で健康なドナー由来のPBMCを、骨髄腫腫瘍細胞系(RPMI8226、
U266、H929)と6日間共培養し、顆粒球性MDSC(G-MDSC)(CD11
b+CD14-HLA-DR-CD15+CD33+)の産生について評価した(Gor
gun et al.,Blood 121:2975~87,2013に記載)。G-
MDSCは、正常で健康なPBMC中に存在しなかったが、3種類の骨髄腫細胞系全てと
の共培養後、G-MDSCは、総PBMC集団の5~25%として存在した(データ示さ
ず)。G-MDSCのフローサイトメトリーによる評価に対するゲーティング戦略は、第
1ゲートっとしてCD11b+を含み、続いて、CD14-及びHLA-DR-のゲーテ
ィング、その後、CD15+及びCD33+のゲーティングが続くものであった。G-M
DSCは、CD38発現レベルとDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)介在性AD
CCに対する感受性について、ソーティングされ、評価された細胞とした。MDSCのA
DCC/CDCに対するDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の影響を評価するた
め、補体又はアイソタイプ対照を含む血清を、ADCCアッセイに加えた。
【0325】
ナイーブ及びメモリーT細胞分析
DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の各注入前に、ヘパリン添加末梢血サンプ
ルを患者から得た。末梢血単核球(PBMC)を、フィコール・ハイパック密度勾配遠心
分離によって単離し、液体窒素内の冷凍保存用培地(10%ヒト血清及び10%ジメチル
スルホキシドを添加したRPMI)中で保存した。FACS分析では、PBMCを解凍し
、2×106細胞/パネルを、0.05%アジド及び0.1%HASを含むリン酸緩衝生
理食塩水(PBS)中に再懸濁した。
【0326】
データ解析
全てのデータ分析及び関連グラフの作成は、Rソフトウェア(R:A Languag
e and Environment for Statistical Comput
ing,R Development Core Team,R Foundation
for Statistical Computing,Vienna,Austri
a,2011,ISBN 3-900051-07-0 http_//_www_R-
project_org/)を独占的に使用して実行した。評価可能な応答を有する全て
の治療された対象を、データ分析に含めた。一貫して、レスポンダーは、IRCによる最
良効果が、sCR、VGPR及びPRである対象として定義され、ノンレスポンダーは、
IRCによる最良効果が、MR、SD及びPDである対象として定義される。
【0327】
様々な統計比較として、(i)レスポンダーとノンレスポンダーとの間の基準値レベル
、(ii)レスポンダー及びノンレスポンダーについて、基準値対治療中、(iii)レ
スポンダーとノンレスポンダーとの間の変化割合、(iv)基準値対治療中の変化率を含
めた。各比較として、まずは、Shapiro-Wilk検定(Royston(199
5)Remark AS R94:A remark on Algorithm AS
181:The W test for normality.Applied St
atistics,44,547~551)を用いる正規性検定が挙げられた。ほぼ例外
なく、データが正規分布を有していないことがわかった。差のレベルの検定として、ノン
パラメトリックなウィルコクソンの順位和検定(Hollander and Wolf
e(1973),Nonparametric Statistical Method
s.New York:John Wiley & Sons.Pages 27~33
(one-sample),68~75(two-sample)及びBox-Cox変
換後のt検定(Weisberg,S.(2014)Applied Linear R
egression,Fourth Edition,Wiley Wiley,Cha
pter 7)の両方を実施することが挙げられた。Box-Cox変換では、ゼロに等
しい値に少数(1e-07)を加えた。全ての場合において、2回の検定が一致した。ウ
ィルコクソンの順位和検定のp値は、別途記載のない限り、明細書全体にわたって表中に
示される。レスポンダー及びノンレスポンダーについて、基準値対治療中の差について検
定するとき、対象について2群の対応のある検定が行われ、他の全ての場合では、2群の
独立検定が実施された。
【0328】
様々なリンパ球集団を分析するためのサンプルが、異なる投与スケジュールのために同
一時点で採取されなかったため、集団モデリングを実施した。通院の順位について、モデ
ル当てはめを実施した。総及び活性化NK細胞に対する集団モデリングには、折れ棒モデ
ルへの当てはめも含めた(Lutz et al.,「Statistical mod
el to estimate a threshold dose and its
confidence limits for the analysis of su
blinear dose-response relationships,exem
plified for mutagenicity data.」Mutation
Research/Genetic Toxicology and Environm
ental Mutagenesis 678.2(2009):118~122)。変
量切片及び傾きを用いる線形混合効果モデルを、B細胞、T細胞亜集団、並びに、白血球
、単球、好中球、及びリンパ球患者集団データに対して当てはめた(Bates et
al.,(2014).「lme4:Linear mixed-effects mo
dels using Eigen and S4.」ArXiv e-print;J
ournal of Statistical Softwareに投稿、http:_
//_arxiv_org/abs/_1406.5823)。治療開始後相対日数(A
DY)において、この線形混合モデリングを行った。対数変換した応答変数に対して、線
形混合モデルの当てはめを行った。応答変数値がゼロと等しい場合は、対数尺度でのモデ
リングが可能になるように、全ての応答変数値に0.1を加えた。
【0329】
実施例2.試験54767414MMY2002のデザイン(SIRIUS)
試験54767414MMY2002(SIRIUS)での標的集団は、プロテアソー
ム阻害薬(PI)及び免疫調節薬(IMiD)を含む少なくとも3種類の治療歴を有する
、又はPI及びIMiDに対して二重治療抵抗性を有する進行多発性骨髄腫患者である。
主要評価項目/最終解析の治療効果判定は、2011年版IMWGガイドラインを用いた
、独立審査委員会(IRC)の評価及びコンピュータ化アルゴリズムに基づくものとした
(治験総括報告書:少なくとも3種類の治療歴(プロテアソーム阻害薬及びIMiDを含
む)がある、又はプロテアソーム阻害薬及びIMiDに対して二重治療抵抗性である多発
性骨髄腫を有する対象における、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の有効性及
び安全性を調べる非盲検多施設第2相試験(EDMS-ERI-92399922;de
Weers et al.,(2011)J Immunol 186(3):184
0~1848)。
【0330】
これらの評価には、全奏功率(ORR)、奏功期間、奏功及び最良効果までの期間、臨
床的有用性、無増悪期間(TTP)、無増悪生存期間(PFS)、及び全生存期間(OS
)を含めた。
【0331】
この試験では、合計124例の対象を、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で
治療した(de Weers et al.,(2011)J Immunol 186
(3):1840~1848)。18例の対象を8mg/kgで治療し、106例の対象
を16mg/kgで治療した。投与スケジュールは次の通りとした。
【0332】
A群:DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)16mg/kg:1及び2サイクル
目、1、8、15、及び22日目(毎週)、3~6サイクル目、1及び15日目(隔週)
、7サイクル目以降、1日目(4週毎)。それぞれのサイクルは4週間とした。
【0333】
B群:DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)8mg/kg:1サイクル目以降、
1日目(4週毎)。
【0334】
この試験の主目的は、PI及びIMiDを含む少なくとも3種類の治療歴がある、又は
その疾患がPI及びIMiDの両方に対して二重治療抵抗性である多発性骨髄腫を有する
対象において、ORR(CR+PR)で測定するときのDARZALEX(商標)(ダラ
ツムマブ)の2種類の治療レジメンの有効性を判定することであった(治験総括報告書:
少なくとも3種類の治療歴(プロテアソーム阻害薬及びIMiDを含む)がある、又はプ
ロテアソーム阻害薬及びIMiDに対して二重治療抵抗性である多発性骨髄腫を有する対
象における、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の有効性及び安全性を調べる非
盲検多施設第2相試験。EDMS-ERI-92399922)。
【0335】
この試験の副次的目的は、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の安全性及び忍
容性の評価、薬物動態、免疫原性、薬力学の評価を伴う、追加の有効性評価(例えば、臨
床的有用性、TTP、PFS、及びOS)の実証、並びに、DARZALEX(商標)(
ダラツムマブ)に対する応答を予測するバイオマーカーを探索することが挙げられた。試
験に関連する更なる情報は、治験実施計画書(治験総括報告書:少なくとも3種類の治療
歴(プロテアソーム阻害薬及びIMiDを含む)がある、又はプロテアソーム阻害薬及び
IMiDに対して二重治療抵抗性である多発性骨髄腫を有する対象における、DARZA
LEX(商標)(ダラツムマブ)の有効性及び安全性を調べる非盲検多施設第2相試験。
EDMS-ERI-92399922)から確認できる。
【0336】
パート1のステージ1では、8mg/kg群で1例の対象(6%)が応答し、16mg
/kg群で5例の対象(31%)が応答した。したがって、16mg/kg群のみをパー
ト1のステージ2、及びパート2に展開した。
【0337】
16mg/kg群では、31例の対象でIRC評価に基づくPR以上の応答を達成し、
ORRは29%であった(95%CI:21%、39%)。3例の対象(3%)がsCR
を達成し、13例の対象(12%)がVGPR以上を達成した。
【0338】
実施例3.54767414MMY2002試験(SIRIUS)に組み入れられた患
者における、T細胞の増殖及び活性に対するDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)
の効果
CD38は、様々な免疫細胞及び造血細胞で発現している。フローサイトメトリーによ
って幅広い免疫プロファイリングを行い、免疫細胞サブセットに対するDARZALEX
(商標)(ダラツムマブ)の効果と、これらの細胞の基準値レベルの臨床反応との関連性
を調べた。T細胞(CD3+、CD4+、CD8+及び制御性T細胞(Treg))、B
細胞(CD19+)、NK細胞、単球(CD14+)、白血球、及び好中球などの様々な
細胞集団を、基準値及びDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療後における末梢
血及び骨髄穿刺液のフローサイトメトリーによって評価し、レスポンダー及びノンレスポ
ンダーにおけるこれらの細胞集団の変化についてモニタリングした。
【0339】
リンパ球、白血球、単球及び好中球
白血球、リンパ球、単球、及び好中球数を、レスポンダー及びノンレスポンダーの末梢
血中で調べた。レスポンダーにおいて、8mg/kg及び16mg/kg用量の両方のD
ARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療によって総リンパ球が上昇したことがわか
った(
図1)。線形混合効果モデリングにより、100日間当たり対数尺度において0.
8×10
6細胞/μLの増加が明らかとなった(CI=0.06、0.11)。単球及び
白血球では、それぞれ各100日間につき、対数尺度において0.03×10
6細胞/μ
L(CI=0.01、0.04)、及び、0.03×10
6細胞/μL(CI=0.01
、0.05)の有意な増加を伴って、わずかな増加が確認された。好中球数の中央値は基
準値と一致しており、顕著に変動しなかったが、一部の患者で好中球減少症が確認された
。
【0340】
これらの細胞集団のそれぞれの基準値レベルを、応答群間で比較した。ウィルコクソン
の符号順位検定を用い、基準値レベルでは、応答群間における任意の細胞種の違いは見ら
れなかった(表1)。
【0341】
【0342】
NK細胞
総NK細胞(CD16+CD56+)及び活性化NK細胞(CD16+CD56dim
)は、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療によって経時的に減少した(デー
タ示さず)。
【0343】
B細胞
末梢血又は骨髄穿刺液中のB細胞(CD45+CD3-CD19+)の絶対数を、レス
ポンダー及びノンレスポンダーにおいて、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治
療中、経時的に測定した。B細胞は全血中で若干増加し、骨髄穿刺液中で維持されていた
。末梢血中B細胞の線形混合モデリングによって、各100日間につき、対数尺度におい
て最低限の上昇である0.1×106細胞/μLの増加が明らかとなった[CI=0.0
4、0.16](DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療の間)。レスポンダー
又はノンレスポンダーのいずれも、ダラツムマブ治療中、骨髄穿刺液中のB細胞(CD4
5+CD3-CD19+/リンパ球)の割合は変化しなかった(それぞれ、p=0.1及
び0.4)。更に、レスポンダーとノンレスポンダー間で、基準値におけるB細胞数の違
いは見られなかった(p=0.5)。
【0344】
T細胞
B細胞は最低限の増加を示しただけであるものの(上記参照)、DARZALEX(商
標)(ダラツムマブ)治療(
図1)によってリンパ球の増加が確認された。更に調査する
ため、末梢血及び骨髄の両方において、様々なT細胞集団を調べた(CD3
+、CD4
+
、CD8
+T細胞、制御性T細胞)。
【0345】
CD3
+、CD4
+及びCD8
+T細胞は、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ
)治療後、末梢血(絶対数/μL及びリンパ球の割合の両方)において増加した。
図2は
、全ての患者における、末梢血中CD3
+T細胞(CD45
+CD3
+)の絶対数の、基
準値からの経時的変化割合を示す。図中の黒色線は、全患者における絶対数×10
6細胞
/μLの中央値を示す。3回以上の観察結果を有する通院のみを図に含めた。
図3は、全
ての患者における、末梢血中CD4
+T細胞(CD45
+CD3
+CD4
+)の絶対数の
、基準値からの経時的変化%を示す。図中の黒色線は、全患者における中央値を示す。3
回以上の観察結果を有する通院のみを図に含めた。
図4は、全ての患者における、末梢血
中CD8
+T細胞(CD45
+CD3
+CD8
+)の絶対数の、基準値からの経時的変化
%を示す。図中の黒色線は、全患者における中央値を示す。3回以上の観察結果を有する
通院のみを図に含めた。末梢血中絶対数に対する線形混合モデリングにより、平均総T細
胞(CD45
+CD3
+)の、各100日間につき、対数尺度において0.13×10
6
細胞/μLの増加(CI=0.1、0.15)が明らかとなった(DARZALEX(商
標)(ダラツムマブ)治療後)。CD8
+T細胞は、各100日間につき、対数尺度にお
いて0.16×10
6細胞/μLの有意な増加が確認された(CI=0.13、0.19
)。CD4
+細胞は、各100日間につき、対数尺度において0.11×10
6細胞/μ
Lの中程度の増加が確認された(CI=0.09、0.13)。
【0346】
T細胞亜集団それぞれについて、レスポンダーはノンレスポンダーよりも、高い基準値
に対する絶対数の最大変化割合を示した(CD3+p=3.2993e-05;CD4+
p=3.486e-05;CD8+p=2.7172e-05;制御性T細胞p=0.0
02)。表2は、基準値に対する絶対数の変化割合について、レスポンダーとノンレスポ
ンダーとの間の末梢血中各T細胞亜集団の比較のウィルコクソンの符号順位検定の結果を
示す。
【0347】
【0348】
骨髄中でも同様に、総T細胞(CD45
+CD3
+、リンパ球の割合として)及びCD
8
+T細胞(CD45
+CD3
+CD8
+、リンパ球の割合として)は、レスポンダー及
びノンレスポンダーの両方において、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療中
に有意に増加したことがわかった(CD3
+レスポンダーp=3.8147e-06、ノ
ンレスポンダーp=9.8225e-05;CD8
+レスポンダーp=3.8147e-
06、ノンレスポンダーp=0.0003)。骨髄中いずれの臨床反応群において、CD
4
+T細胞の中央値は変化しなかった。表3は、骨髄中%リンパ球としての様々なT細胞
に対する、ウィルコクソンの符号順位検定の結果を示す。
図5は、DARZALEX(商
標)(ダラツムマブ)治療中の経時的なCD45
+CD3
+細胞の割合(%)を示す(レ
スポンダー及びノンレスポンダーの両方をグラフに含めた)。
図6は、DARZALEX
(商標)(ダラツムマブ)治療中の経時的なCD45
+CD3
+CD8
+細胞の%を示す
(レスポンダー及びノンレスポンダーの両方をグラフに含めた)。
【0349】
【0350】
レスポンダー及びノンレスポンダーの両群は、末梢血及び骨髄中のT細胞増加を示した
が、レスポンダーは、基準値からの変化割合が最も大きかった。レスポンダー又はノンレ
スポンダーにおいて、CD3+、CD4+及びCD8+T細胞レベルに差があるかを識別
するため、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療に先立ち、各亜群の末梢血中
基準測定値を比較した。
【0351】
末梢血中基準値における絶対T細胞数(表4)又は骨髄中総リンパ球からのT細胞割合
(表5)において、レスポンダーとノンレスポンダーとの間に統計的に有意な差はなかっ
た(ウィルコクソンの符号順位検定)。
【0352】
【0353】
【0354】
T制御性細胞
Treg細胞は、サンプル中のCD3
+CD4
+CD25
+CD127
dim細胞集団
として同定された。CD8
+T細胞のTregに対する比率は、DARZALEX(商標
)(ダラツムマブ)で経時的に治療された患者の末梢血及び骨髄中で評価した。比率は、
末梢及び骨髄の両方において増加した。
図7Aは、末梢血中、その時点での全ての患者の
CD8
+/Treg及びCD8
+/CD4
+細胞比の中央値を示す。
図7Bは、骨髄中、
その時点での全ての患者のCD8
+/Treg及びCD8
+/CD4
+T細胞比の中央値
を示す。CD8
+Treg及びCD8
+/CD4
+の絶対数比の変化は、治療中経時的に
末梢血(表6)及び骨髄(表7)において有意であった(ウィルコクソンの符号順位検定
)。
【0355】
SIRIUS及びGEN501試験(実施例6)の総合的データ解析では、末梢血中、
CD8+/CD4+及びCD8+/Treg細胞の比率の中央値は、8週目(p=5.1
×10-5(CD8+/CD4+)及びp=1.8×10-7(CD8+/Treg)、
並びに、16週目(p=0.00017(CD8+/CD4+)及びp=4.1×10-
7(CD8+/Treg))で増加した。同様に、骨髄中では、CD8+/CD4+及び
CD8+/Treg細胞の比率の中央値は、基準値と比較して、治療中(12週目±1サ
イクル)に増加した(p=0.00016(CD8+/CD4+及びp=2.8×10-
7(CD8+/Treg))。レスポンダーとノンレスポンダーとの間に有意差は見られ
なかった。
【0356】
【0357】
【0358】
実施例4.試験デザイン(GEN501)
試験GEN501(NCT00572488)は、二重治療抵抗性MM患者において、
DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)を単剤療法として評価した。サンプル単離、
処理及び統計解析は、実施例1及び実施例2に記載されるものとした。この試験は、Lo
khorst et al.,N Eng J Med 373:1207~19,20
05に記載されている。
【0359】
簡潔に言うと、試験GEN501は、MMを有する対象における、DARZALEX(
商標)(ダラツムマブ)のファーストインヒューマン臨床試験であった。これは、2つの
パートに分かれた第1/2相用量漸増安全性試験である。パート1は、非盲検用量漸増試
験であり、パート2は、パート1で確立した用量レベルを基準とする、複数のコホートを
含む非盲検単一群試験である。
【0360】
パート1では、0.005、0.05、0.10、0.50、1、2、4、8、16、
及び24mg/kgの10の用量レベルのDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)評
価した。一番低い2用量のコホートには、それぞれ1(+3)例の対象を割り当て、標準
的な3(+3)例の対象の割り当てを、残りの8用量のコホートに適用した。パート2は
、2用量レベル、8mg/kg及び16mg/kgを含む、非盲検単一試験であった。パ
ート1は32例の対象を含め、パート2は72例の対象を含めた。
【0361】
実施例5.DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療は、患者においてT細胞ク
ローン性を誘導する
MY2002試験において、末梢及び骨髄の両方でCD8+T細胞の増殖が確認された
ことを考慮し、Immunoseq(商標)アッセイを用いてT細胞受容体(TCR)の
ハイスループット次世代配列決定を行い、CD8+T細胞の増加が、適応免疫応答を示す
事実上クローン性であるか否かを判定した。GEN501試験に組み入れられた対象のう
ち、合計17例の患者サンプルを評価した(n=6がレスポンダー、すなわち、≧PR;
n=11がノンレスポンダー、すなわち、MR、SD、PD)。
【0362】
TCRの配列決定により、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療により、患
者全体にわたってクローン性を有意に増加させることが明らかとなった。
図8Aは、DA
RZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療前対後のT細胞クローン性間の相関関係を示
す(p=0.0056)。
図8Bは、個々の患者におけるクローン性の倍率変化を示す。
レスポンダーは星印を付けている。このデータは、DARZALEX(商標)(ダラツム
マブ)治療によって確認されたT細胞増殖が事実上クローン性であり得ることを示唆して
いる。
【0363】
ノンレスポンダーと比較すると、レスポンダーでは、TCRレパートリー(存在量変化
;CIAとして測定)の総増殖量が大きかった。
図8Cは、個々の患者のCIA%を示す
。A群:レスポンダー、B群:ノンレスポンダー。レスポンダーとノンレスポンダーとの
間に統計的有意差が見られた(p=0.037)。
図8Dは、それぞれの増殖したT細胞
クローンについて、レスポンダー及びノンレスポンダーでの存在量変化(CIA)の絶対
値の合計を示す。
図8Eは、個々の患者の最大CIA%を示す。A群:レスポンダー、B
群:ノンレスポンダー。レスポンダーとノンレスポンダーとの間に統計的有意差が見られ
た(p=0.048)。
図8Fは、レスポンダー(A群)及びノンレスポンダー(B群)
における、単一T細胞クローンの最大CIAを示す。
【0364】
フィッシャーの正確確率検定(DeWitt et al.J.Virol.2015
)を用い、それぞれの増殖したクローンについて存在量変化の絶対値を合計して、2つの
サンプル間のクローン存在量における有意差を同定することによってCIAを得た。
【0365】
実施例6.GEN501試験に組み入れられた患者におけるDARZALEX(商標)
(ダラツムマブ)の免疫調節性効果
GEN501に組み入れられたレスポンダー及びノンレスポンダーにおいて、様々なT
及びB細胞集団を評価した。
【0366】
リンパ球
SIRIUS(MMY2002)試験と同様に、リンパ球は、DARZALEX(商標
)(ダラツムマブ)治療中、末梢血及び骨髄の両方において増加した。この増加は、CD
4+及びCD8+細胞の両方の数が増加したことに起因していた。
【0367】
CD8+セントラルメモリー細胞
GEN501試験に組み入れられた17例の患者サブセットにおいて、CD8+T細胞
表現型を、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療された患者で経時的に検討
した。標準的手法を用いて、患者由来のCD8+細胞を、ナイーブ(CD45RO-/C
D62L+)(TN)又はセントラルメモリー(TCM)(CD45RO+/CD62L
+high)細胞として同定した。
【0368】
図9Aは、CD8
+ナイーブ細胞%(CD8
+細胞%)を示し、
図9Bは、CD8
+セ
ントラルメモリー細胞%を示す。DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療により
、ナイーブCD8
+T細胞の量が有意に減少し(p=1.82×10
-4、8週目時点)
、CD8
+メモリーT細胞の量が有意に増加した(p=4.88×10
-2、8週目時点
)。これは、ナイーブな細胞傷害性T細胞から、特異的抗原に対して活性化され得るメモ
リーT細胞への変換を示唆している。白色四角は、少なくとも最小奏功(≧MR)を達成
した患者を示し、黒色四角は、安定又は進行であった患者を示す。CD8
+ナイーブT細
胞の有意に大幅な減少は、治療に応答した患者において明らかであった(データ示さず)
。
図9Cは、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療により、ウイルス特異的か
つアロ反応性T細胞応答を部分的に促進する、HLAクラスIに拘束されたT細胞の割合
が増加したことを示す。
図9Dは、低レベルのCD38を発現していたエフェクターメモ
リーT細胞が増殖していることを示す。これらのT細胞が、ウイルスペプチド及び同種抗
原に対し、通常及び更には増加した機能活性を呈することへの留意が重要である(実施例
8参照)。これらの機能的結果から、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療中
に、ウイルス及び同種抗原に対して抗原を経験したT細胞の増加、又は活性の増強がある
と結論付けた。これらのデータは、制御性細胞サブセットとは異なり、エフェクターT細
胞は、適切に機能し、増殖するためにCD38の発現を必要としないことを示唆している
。
【0369】
CD38陽性制御性T細胞
いくつかの免疫抑制性細胞サブセットがCD38を発現していることを示す最近の文献
と合わせて、細胞傷害性T細胞の安定した増殖と活性増強が見られたことによって、制御
性細胞集団である制御性T細胞(Treg)、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)及
び制御性B細胞(Breg)に対するDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の効果
の検討が促された。
【0370】
制御性T細胞(Treg)(CD3+CD4+CD25+CD127dim)を、標準
的手法を用いて単離した。Tregの頻度を、フローサイトメトリーを用いて解析した。
【0371】
末梢性Tregの亜集団(10%±10%)は、Treg活性化前に高レベルのCD3
8を発現していた。
図10Aの上部パネルは、基準値における、CD3
+CD4
+細胞集
団(P4細胞集団)中のTregの頻度を示す。
図10Aの下部パネルは、高CD38を
発現しているTregのサブセットを示す(P5細胞集団)。これらのCD38
+Tre
gは、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療に対する反応性が高く、DARZ
ALEX(商標)(ダラツムマブ)の初回用量後、有意かつほぼ速やかな減少を示した(
n=17例の患者;P=8.88×10
-16、基準値に対する1週目時点)。DARZ
ALEX(商標)(ダラツムマブ)治療後のTregの頻度を、
図10Bの上部パネルに
示す(P4細胞集団)。
図10Bの下部パネルは、CD38
high Treg(P5細
胞)が、初回のDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)注入後、最も有意に枯渇した
Treg集団であったことを示す。これらのCD38
+Tregは、DARZALEX(
商標)(ダラツムマブ)治療中枯渇したままであった(p=8.88×10
-16、1.
11×10
-15、及び1.50×10
-11、基準値に対するそれぞれ1、4、及び8
週目時点)。
図10Cは、基準値、1週目、4週目、8週目、再発、及び治療終了(EO
T)後の6ヶ月目における、CD38
high Treg%(総CD3
+細胞より)を示
す。CD38
highTregは、その時点では基準値まで回復していた。CD38
+T
regの変化は、治療に応答した患者と応答しなかった患者との間で類似していたが、C
D8
+T細胞:Tregの比率は、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)への応答
を示した患者の8週目において、有意に高かった(P=0.00955;
図10D)。
【0372】
CD38
+Tregの枯渇とDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療との考え
られる生物学的関連性を評価するため、CD38
+Treg対CD38
-Tregで、自
家CD3
+T細胞に対する抑制能を評価した。複数の健康ドナー由来のサンプルを用いて
行った一連の実験において、CD38
+Tregは、CD38
-Treg(観察された細
胞増殖の53.2%)又は陰性対照(観察された細胞増殖の74.9%)よりも強くT細
胞増殖を抑制した(観察された細胞増殖の9.9%)(
図10E)。
【0373】
MDSCは、凍結PBMCサンプル中で容易に検出可能ではなかったため、CD38
+
顆粒球性MDSC(CD11b
+CD14
-HLA-DR
-CD15
+CD33
+)を、
基準値での患者、及びDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)注入を1回受けた患者
から単離したPBMCより、in vitroで産生させた。
図11は、同定されたMD
SCのフローサイトメトリーヒストグラムを示す(
図11、上のヒストグラム、四角で囲
んだ細胞集団)。MDSCの約半分がCD38を発現していた(
図11、中央のグラフ;
円で囲んだP7細胞集団)。CD38
highMDSCは、DARZALEX(商標)(
ダラツムマブ)で治療された患者ではほぼ枯渇した(
図11、下のグラフ;円で囲んだP
7細胞集団)。
【0374】
CD38
high系非特異的MDSCは、ノンレスポンダー及び治療に対して少なくと
も最小奏功(Minimal Repose)であった患者の両方において、DARZALEX(商標)
(ダラツムマブ)治療により経時的に枯渇した。
図12は、CD38
high MDSC
の割合が、治療1週目、4週目又は8週目の患者において、ほぼ0%まで減少したことを
示す。CD38
high系非特異的MDSCは、治療終了後に基準値まで回復した。
【0375】
系非特異的MDSC内で最も多くCD38
+集団を有する患者は、DARZALEX(
商標)(ダラツムマブ)治療に対して最も良好で、最も持続した応答を示した。
図13は
、最も高いCD38
highMDSCの割合(
図11に示す)を有しており、PR又はM
R患者として分類された患者2、4、15、16及び17が、少なくとも8ヶ月の無増悪
生存期間(PFS)を有していたことを示す。
【0376】
また、CD38
high系非特異的MDSCは、DARZALEX(商標)(ダラツム
マブ)誘発性ADCCに対してもin vitroで感受性があった。ADCCアッセイ
は、2人のドナー由来のCD38
high MDSC、及び対照標的細胞としてのDau
di細胞を、エフェクター:標的細胞比を50:1で用いて実施した。
図14は、1人の
ドナーの実験結果を示す。DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)は、MDSC細胞
の溶解を誘発した。
【0377】
CD38
+Bregを、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者(
n=16)において測定したところ、CD38
+Tregと同様に、DARZALEX(
商標)(ダラツムマブ)の初回用量後に枯渇し(p=0.0018、基準値と比較した1
週目時点;対応のあるウィルコクソンの順位検定)、患者が治療されている間低いままで
あった(
図15A)。FACSでソーティングしたBregは、刺激すると、IL-10
を産生した(
図15B)。
【0378】
総じて、これらの観察結果は、免疫抑制性CD38+MDSC、Breg、及びTre
gの枯渇は、T細胞集団及びクローン性におけるDARZALEX(商標)(ダラツムマ
ブ)誘発性変化を顕著に引き起こすメカニズムであることを示唆している。
【0379】
実施例7.CD38+MDSC細胞は癌患者に存在する
MDSC(Lin-CD14-HLADRlow/-)の割合及びそれらのCD38発
現について、NSCLC又は前立腺癌患者の末梢血を、フローサイトメトリーを用いて検
討した。
【0380】
MDSCの割合は、NSCLC及び前立腺癌患者の分析サンプルにおいて、それぞれP
BMCの約10%~37%、約10%~27%であった。CD38発現は、NSCLC患
者のPBMC由来のLin-CD14+HLADR-/low MDSCの80~100
%、及び、前立腺癌患者のPBMC由来のMDSCの70~100%で同定された。
【0381】
実施例8.DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)は、抗ウイルスT細胞応答を増
強する
T細胞活性化及び機能性に対するDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の効果を
更に評価するため、ウイルス及び同種抗原に応答した末梢性T細胞からのIFN-γ産生
を、様々な臨床成績を有するDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)で治療した患者
(n=7)において測定した。PR以上の患者は、DARZALEX(商標)(ダラツム
マブ)治療後、基準値と比較して治療中の少なくとも1つの時点において、ウイルス及び
同種抗原に応答したIFN-γ分泌の有意な増加を示し、T細胞機能が、CD38の低発
現によって損なわれなかったことを示唆している(実施例6、
図9C参照)。TCRクロ
ーン性データと同様に、この増加は、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)に応答
した患者において、応答しなかった患者よりも顕著であった。
図16Aは、1人の代表的
なVGPR患者の抗ウイルス応答を示す。
図16Bは、1人の代表的なCR患者の抗ウイ
ルス応答を示す。
図16Cは、1人の代表的なPD患者の抗ウイルス応答を示す。
図16
Dは、1人の代表的なMR患者の抗ウイルス応答を示す。図において、エラーバーは2回
繰り返した培養の平均値の標準誤差を示す。アスタリスクは、示された比較間の統計的に
有意な変化を意味する。独立審査委員会による最良効果を示す。これらの結果と一致して
、VGPR(
図16E)又はCR(
図16F)の患者におけるウイルス反応性T細胞は、
DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)治療中の増殖能の増加を示した。
【0382】
実施例9.CD38発現免疫細胞サブタイプのDARZALEX(商標)(ダラツムマ
ブ)に対する感受性メカニズム
GEN501及びSIRIUS両試験のデータから、DARZALEX(商標)(ダラ
ツムマブ)療法により、CD38を発現する一部の免疫細胞が枯渇し(NK細胞、制御性
T細胞(Treg)、制御性B細胞(Breg)、及び骨髄由来サプレッサー細胞(MD
SC))、一方で、CD38を発現する別の細胞数が増加する(細胞傷害性及びヘルパー
T細胞)ことが示された。
【0383】
感受性メカニズムに取り組むため、健康なドナー及びGEN501又はSIRIUS試
験に組み入れられた多発性骨髄腫患者において、様々な免疫細胞亜集団のCD38の発現
レベルを評価した。
図17Aは、健康なドナー由来の免疫細胞における、CD38発現の
ヒストグラムを示し、
図17Bは、多発性骨髄腫患者由来の免疫細胞における、CD38
発現のヒストグラムを示す。健康なドナーでは、CD38発現はNK細胞で最も高く、続
いて単球、B及びT細胞であった。多発性骨髄腫患者では、CD38発現は形質細胞で最
も高く、続いてB細胞、NK細胞、単球、B細胞及びT細胞のサブセットであった。
図1
7Cは、再発及び治療抵抗性骨髄腫患者由来のNK細胞、Treg、Breg、B及びT
細胞でのCD38の平均蛍光強度(MFI)の比較を示し、形質細胞の後、NK細胞が最
も高いレベルでCD38を発現し、続いて制御性T細胞(Treg)及び制御性B細胞(
Breg)であったことを示している。
【0384】
CD38発現に加え、補体阻害性タンパク質(CIP;CD46、CD55、CD59
)などの他の細胞表面タンパク質が、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)に対す
る感受性又は耐性に寄与している場合がある。免疫細胞亜集団に対するCIPのin v
itro評価により、NK細胞が非常に低レベルのCD59及びCD55を発現している
一方で、他のT及びB細胞集団ははるかに高レベルで発現していることがわかった。この
ことも、免疫細胞サブタイプに対する多様なDARZALEX(商標)(ダラツムマブ)
感受性に寄与している可能性がある(データ示さず)。
【0385】
考察
この試験は、これまで知られていなかった、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ
)の、CD38+免疫抑制性細胞集団の減少と、それに付随するウイルスペプチドに応答
するヘルパー及び細胞傷害性T細胞増殖、IFN-γ産生の誘導、及び、改善された適応
免疫応答を示すTCRクローン性増加による免疫調節性効果を説明している。
【0386】
この試験は、MDSC及びBregがCD38を発現しており、DARZALEX(商
標)(ダラツムマブ)治療に感受性であったことを示した。これらの細胞は、腫瘍微小環
境に存在し、腫瘍増殖、免疫回避、血管新生、転移、及び抑制性サイトカインの産生に寄
与していることが知られている。これらのCD38+抑制性細胞サブセットに加えて、こ
ちらも高レベルのCD38を発現し、優れた自家T細胞抑制能を呈していた、新規亜集団
である制御性T細胞(CD4+CD25+CD127dim)が同定された。これらの細
胞も、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)感受性であり、治療を受けた患者で有
意に減少した。これらのCD38+免疫制御性細胞のDARZALEX(商標)(ダラツ
ムマブ)介在性殺滅は、骨髄腫微小環境内の局所的免疫抑制を低下させ、陽性免疫エフェ
クター細胞の増殖と、抗腫瘍応答への寄与を可能にできる。
【0387】
実際には、末梢血及び骨髄(すなわち、腫瘍)の両方において、CD4+及びCD8+
の両方を含む幅広いT細胞集団の有意な増加が観察された。特異的CD8+亜集団は、D
ARZALEX(商標)(ダラツムマブ)療法によって変化し、これにはナイーブT細胞
の有意な減少と、それに付随するエフェクターメモリーCD8+T細胞の有意な増加が含
まれており、抗原を経験した表現型(免疫記憶を保持し、腫瘍抗原に対して反応し得る)
へのエフェクターT細胞の移行を示している。CD8+:CD4+及びCD8+:Tre
gの比率も、治療によって有意に増加し、陰性免疫調節因子に対する陽性への移行を示し
ている。
【0388】
増殖したCD4+及びCD8+T細胞が事実上クローン性であったかどうかを評価する
ため、T細胞レパートリーを患者サブセットにおいて調べた。T細胞クローン性は、最良
効果がSD、又は進行した患者であっても、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)
治療で有意に増加した。したがって、T細胞クローン性の増加は、単純に腫瘍量の減少に
起因し得ない。しかしながら、T細胞クローン性の歪みは良好な臨床反応の患者で大きく
、CD8+T細胞の増加と相関していたことから、観察されたDARZALEX(商標)
(ダラツムマブ)治療によるT細胞増殖が抗原によるものであったことが示唆される。こ
のことは、たくさんの予備治療(治療歴の中央値、5回)を受けた患者集団で顕著であり
、強い抗腫瘍免疫応答を開始できることは期待できない。TCRクローン性の増加に加え
、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)に応答した患者が、予め存在しているウイ
ルス及び同種抗原に対するT細胞応答の増加を示したことから、免疫系が免疫抑制状態か
ら回復したことが示唆された。
【0389】
DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)による治療は、免疫抑制性MDSC、並び
に制御性T及びB細胞の減少を引き起こした。これらの減少は、CD4+T-ヘルパー細
胞及びCD8+細胞傷害性T細胞の増殖を伴った。IFN-γ産生によって測定されるT
細胞クローン性及び機能性抗ウイルス応答も、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ
)治療によって増加した。これらの観察結果は、T細胞が、低CD38発現にも関わらず
正しく機能し続けていたことを示し、T細胞応答の増加が、制御性細胞の枯渇に起因し得
ることを示唆している。更に、これらT細胞増殖、活性、及びクローン性の変化は、DA
RZALEX(商標)(ダラツムマブ)に応答しなかった患者と比較して、応答した患者
においてより顕著であった。DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)療法からの再発
は、これらの変化の多くの回復と関連していた。このことは、臨床反応及びその有効性に
寄与し得る免疫調節を介する、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の更なる、こ
れまでに特徴がわかっていない作用機序を示唆している。
【0390】
最近、癌を直接標的化することよりも、抗腫瘍免疫応答を促進する抗体の有効性が様々
な分野で明らかとなっている。CTLA-4及びPD-1を阻害する抗体は、T細胞増殖
を促進し、T細胞活性化を増強することによって、進行固形腫瘍及びホジキンリンパ腫な
どの血液悪性疾患患者において、生存期間の延長と、疾患の再発の遅延をもたらす。抗癌
免疫性を増強することによって、これらの免疫調節性抗体は、臨床反応を誘発できるだけ
ではなく、疾患再発の予防もできる。
【0391】
実施例10.54767414MMY2002(SIRIUS)パート2臨床試験にお
いて、DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)の単剤治療を受けた(traded with)
多発性骨髄腫対象の血清プロテオミクス解析
バイオマーカーサンプルの採取及び処理
末梢血サンプルを標準的な血清分離用管に採取し(2.5mL~5mL)、血清の一部
を、多重分析物血清タンパク質プロファイリングのために凍結した状態でSomaLog
ic,Inc(Boulder,CO)に送付した。
【0392】
血清タンパク質プロファイリングは、SOMAmerという親和性ベースの分子を利用
して1129種類のタンパク質分析物を測定する予め検証されたSOMAscanアッセ
イを用いて、SomaLogicにて実施した。SOMAmer試薬は、一本鎖DNA系
タンパク質親和性試薬である。このアッセイは、少量の注入サンプル(150μLの血漿
)を用いて、タンパク質シグナルを、カスタムDNAマイクロアレイによって定量される
SOMAmerシグナルに変換する。
【0393】
各SOMAmerは、次の4つの機能性部分を含んでいる。
1.固有のタンパク質認識配列
2.捕捉用ビオチン
3.光切断可能なリンカー
4.検出用蛍光分子
【0394】
固有のタンパク質認識配列はDNAを使用し、アミノ酸側鎖を模倣する化学修飾したヌ
クレオチドを組み込んで、標準的なアプタマーの多様性を拡大し、タンパク質-核酸相互
作用の特異性及び親和性を高めている(Gold et al.,PLoS One 5
:e15004,2010)。アプタマーは、SELEXによって選択される。SOMA
mer試薬は、天然高次構造の状態のタンパク質を用いて選択される。このように、SO
MAmer試薬は、未変性のタンパク質三次構造を結合に必要とする。折り畳まれていな
い又は変性された恐らく不活性のタンパク質は、SOMAmer試薬によって検出されな
い。
【0395】
SOMAmer試薬のマスター混合物は、サンプルタイプ及び希釈によってグループ化
される。サンプルのインキュベーションに先立ち、試薬をストレプトアビジンビーズに予
め結合する。サンプル中のタンパク質を、平衡化中に同種のSOMAmerに結合させ、
洗浄し、NHS-ビオチンとインキュベートし、洗浄してから、ビーズをUV光に曝露し
て光切断可能なリンカーを切断する。溶出液は、ビオチン標識したタンパク質に結合した
SOMAmer試薬を含んでいる。ストレプトアビジン捕捉とその後の洗浄により、未結
合のSOMAmer試薬を除去する。最終溶出液中に、変性条件によって同種タンパク質
からSOMAmer分子が放出される。最終溶出液を、カスタムのAgilent DN
Aマイクロアレイと、SOMAmer分子由来のフルオロフォア(相対蛍光単位(RFU
)で定量化)にハイブリダイズさせる。RFUは、サンプル中のタンパク質量に比例する
。
【0396】
MMY2002試験のサンプルは、2つの主要なバッチにおいて検査した。第1バッチ
である180のサンプルには、対応する1サイクル目1日目(C1D1、基準値)及びC
3D1(3サイクル目1日目)の90例の対象由来の血清サンプルを含めた。この180
のサンプルを、3枚の別々のSomaScanプレートで一緒に分析した。第2バッチの
サンプルには、バッチ1との35例の重複サンプルを含む、50例C1D1サンプルが含
まれる。
【0397】
データ解析
入力データセット及び定義
評価可能な応答を有する治療された対象を、データ分析に含めた。この報告全体で一貫
して、レスポンダーは、全最良効果(MMY2002のIRCによる)がsCR、VGP
R、及びPR、安定(SD)である対象、最小奏功(MR)又はSDである対象として定
義され、ノンレスポンダーは、全最良効果(MMY2002のIRCによる)が進行(P
D)である対象として定義される。
【0398】
Somalogicデータの前処理
バッチの整列
MMY2002サンプルのバッチ1及び2を、2種類のバージョンのSOMAscan
プラットフォームで検査した。2つのバージョン間の違いはわずかであり、バージョン間
で変更されている3つのSOMAmer配列を含んでいた(CTSE:3594-6_1
→3594-6_5、FCN1:3613-62_1→3613-62_5、BMPER
:3654-27_1→3654-27_4)。これらを解析から除外した。
【0399】
3枚のバッチ1のプレートの測定は、SomaLogicの標準的なプレート間校正の
流れに従って、マスター混合物特異的包括基準値の7ヶ所のプレート内対照標準物質測定
値の中央値に対する比率を計算することによって、各SOMAmerの全プレート校正倍
率を定めることにより整列させた。各SOMAmer試薬のプレート特異的倍率を、プレ
ート上の各サンプルに同等に適用した。
【0400】
バッチ1及び2の異なるSOMAscanプラットフォームバージョンを考慮して、バ
ッチ間の35のサンプルの繰り返し測定を利用することによって、SomaLogicの
標準的なプレート間校正の流れを改変して実行し、系統的なバッチ間変動性補正を行った
。各SOMAmerについて、バッチ1校正後測定値をバッチ2校正前測定値で割った比
を、35の繰り返しサンプルそれぞれについて計算した(ri,j)。これら35の比の
中央値を用いて、バッチ2のサンプルに対する改変SOMAmer特異的校正倍率を定め
た
【0401】
【数2】
次に、これらの校正倍率を、標準的なSOMAscanの手順と同じように実行した。
【0402】
【0403】
改変校正倍率を計算した後、各分析バッチにつき全ての倍率の分布をプロットし、外れ
値の有無を評価した。極めて大きい又は小さい標準物質(>0.25及び<3)を伴う9
つのSOMAmerは、再現性が乏しいため、解析から除外した。
【0404】
MMY2002についてバッチ整列及びSOMAmerの選別の完了後、MMY200
2の全てのタンパク質濃度値にlog2変換を適用し、データがより正規分布と一致する
ようにし、パラメトリックな統計検定の実施を改善した。
【0405】
交絡変数補正
メタ変数(人口統計学的因子、応答クラス、及びサンプリング時点など)によって説明
されるデータセット変動部分の予測、及び考えられる交絡因子の同定は、センタリング及
びスケーリングしたデータセットの主成分分析によって実施した。単純な線形モデルを当
てはめ、対象とする変数それぞれと有意に関連していた、最も高順位のPCを同定した。
これらの関連性の有意性は、ワルド検定を用いて判定し、このモデルによって説明される
PC変動性の割合を当てはめのR2によって推定した。MMY2002データでは、施設
IDがPC1と相関することがわかり、データセット変動性の最大部分を説明した(≧7
.37%、p値=3.71×10-9)。データ内の、サンプル取得した施設関連効果の
影響を減じるため、ComBat28を利用して施設ID効果を補正した。
【0406】
繰り返しサンプルの統合
MMY2002のバッチ1と2との間で繰り返した35のサンプルのデータを、各タン
パク質の平均値を計算することによって統合した。
【0407】
タンパク質濃度差解析
レスポンダー対ノンレスポンダー
DARZALEX(商標)(ダラツムマブ)レスポンダー対ノンレスポンダーにおける
タンパク質濃度分布の統計比較を、次の2種類の補足法、つまり、(i)個々のSOMA
merに対するウィルコクソンの順位和検定(Hollander and Wolfe
,Ninparametirc Statistical Methods.New Y
ork:John Wiley & Sons.1973.27~33(one-sam
ple),68~75(two-sample)、及び、(ii)全てのSOMAmer
に対するLimma解析(Ritchie,M.E.,et al.,Nucleic
Acids Res.2015;20:43(7):e47)を同時に使用して、基準値
及び治療中の両方において実施した。全てのp値は、複数の仮説補正に対するBenja
mini-Hochberg(BH)法を用いて補正した(Benjamini and
Hochberg,(1995)J.R.Statist.Soc.B.57:289
~300;R:A Language and Environment for St
atistical Computing,R Development Core T
eam,R Foundation for Statistical Computi
ng,Vienna,Austria.2011;ISBN 3-900051-07-
0)。差次的発現がないという帰無仮説は、補正p値が<0.05のときに棄却した。
【0408】
治療中対基準値
基準値対治療中のタンパク質濃度は、3種類の別の統計手法である、(i)二元配置反
復測定分散分析6、(ii)ウィルコクソンの符号順位検定、及び(iii)フリードマ
ン検定(Johnson et al.,(2007)Biostatistics 8
(1):118~127)を用いて比較した。全てのp値は、複数の仮説補正に対するB
H法を用いて、対照のFDRに補正した(Benjamini and Hochber
g,J.R.Statist.Soc.B.57:289~300,1995)。治療の
有意性に加え、二元配置反復測定分散分析(Chambers et al.,Anal
ysis of variance;designed experiments:Ch
apter 5.Statistical Models in S,Editors
J.M Chambers and T.J Hastie.Wadsworth &
Brookes/Cole.1992)を、有意な時点:応答クラスの相互関係が各SO
MAmerについて生じたかどうかを判定するためにも適用した。レスポンダー及びノン
レスポンダーが異なる治療効果を示したかどうかを特異的に判定するため、全ての対象の
治療中及び基準値のタンパク質濃度値間の差を計算し、ウィルコクソンの順位和検定を行
うことによる、改変したウィルコクソンの順位和検定を事後的検定として適用した。有意
値をBH法を用いて補正し、補正p値が<0.05のとき、帰無仮説を棄却した。
【0409】
分類器訓練
MMY2002の基準値タンパク質濃度データを用いて、応答を予測する分類器を作り
上げた。4種類の機械学習器であるサポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレ
スト(RF)、単純ベイズ(NB)、及びj48決定木を用いて、入れ子のループ層別化
10分割交差検証法を30回繰り返した。各学習器において、訓練手順は、10にバラン
スよく分割したデータセットを作ることから始めた(外側ループ)。これらの分割のうち
1つをテストコホートとして保持し、一方、残りの9つを訓練コホートとして内側ループ
に通した。内側ループ内で、訓練コホートを再度バランスよく10分割し、内側訓練及び
内側テストセットを作成した。学習器を、これら内側訓練セットそれぞれについて学習さ
せ、このプロセスを外側ループ内の各コホートについて30回繰り返した。内側テストセ
ットの予測における各内側ループ学習器の精度を用いて、特徴を選択し、モデルパラメー
タを最適化した。各訓練コホートについて30回の内側ループが完了した後、各対応する
テストコホートについて、外側ループの性能(最適化パラメータ及び特徴を用いて)を評
価した。続いて、外側ルーピング全体を30回繰り返して、データセット内の全サンプル
に対する30種類の応答予測が生じさせた。このルーピング手法によって得られたAUC
、感受性、及び特異性の統計値は、完全なオリジナルデータセットで訓練した最終モデル
が、新規試験例についてどの程度うまく実行するかについて近似していた。
【0410】
MMY2002試験からの結果
タンパク質発現の治療誘発性応答依存性変化などの様々な比較を実施した。レスポンダ
ーにおいて経時的な発現減少を示したタンパク質の1つは、PD-L1であり、一方PD
-L1タンパク質の発現は、ノンレスポンダーにおいて経時的に増加した。PD-L1の
T細胞上への結合により、T細胞機能の低下と、Treg発生の増加につながる。
図18
は、レスポンダー、ノンレスポンダー、及び安定である患者における、1サイクル目及び
3サイクル目のPD-L1のタンパク質発現プロファイルを示す。
【0411】
受容体であるPD-1とのPD-L1の結合により、抗腫瘍応答が抑制され、T細胞アネルギーと枯渇が引き起こされる。任意の特定の理論に束縛されるものではないが、CD38治療によるPD-L1の下方制御によっても、固形腫瘍における抗腫瘍免疫応答の改善された増強をもたらし得る。
本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
固形腫瘍を有する患者を治療する方法であって、治療的に有効な量のCD38を特異的に結合する抗体を、固形腫瘍の治療に十分な期間、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
[2]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、前記患者における免疫応答を誘発する、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記免疫応答がエフェクターT細胞(Teff)応答である、上記[2]に記載の方法。
[4]
前記Teff応答が、CD4+T細胞又はCD8+T細胞によって媒介される、上記[3]に記載の方法。
[5]
前記Teff応答が、前記CD8+T細胞によって媒介される、上記[4]に記載の方法。
[6]
前記Teff応答が、前記CD8+T細胞数の増加、CD8+T細胞増殖の増加、T細胞クローン増殖の増加、CD8+メモリー細胞形成の増加、抗原依存性抗体産生の増加、サイトカイン産生の増加、ケモカイン産生の増加、又はインターロイキン産生の増加(細胞による)である、上記[3]に記載の方法。
[7]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、免疫サプレッサー細胞の機能を阻害する、上記[1]に記載の方法。
[8]
前記免疫サプレッサー細胞が制御性T細胞(Treg)である、上記[7]に記載の方法。
[9]
前記Tregが、CD3+CD4+CD25+CD127dim T細胞である、上記[8]に記載の方法。
[10]
前記TregがCD38を発現する、上記[9]に記載の方法。
[11]
前記Tregの機能が前記Tregを殺傷することによって阻害される、上記[10]に記載の方法。
[12]
前記Tregを殺傷することが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって媒介される、上記[11]に記載の方法。
[13]
前記免疫サプレッサー細胞が骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)である、上記[7]に記載の方法。
[14]
前記MDSCが、CD11b+HLADR-CD14-CD33+CD15+細胞である、上記[13]に記載の方法。
[15]
前記CD11b+HLADR-CD14-CD33+CD15+細胞がCD38を発現する、上記[14]に記載の方法。
[16]
前記MDSCの機能が前記MDSCを殺傷することによって阻害される、上記[15]に記載の方法。
[17]
MDSCの殺傷が、ADCCによって媒介される、上記[16]に記載の方法。
[18]
前記免疫サプレッサー細胞が制御性B細胞(Breg)である、上記[7]に記載の方法。
[19]
前記Bregが、CD19+CD24+CD38+細胞である、上記[18]に記載の方法。
[20]
前記Bregの機能が前記Bregを殺傷することによって阻害される、上記[19]に記載の方法。
[21]
前記Bregを殺傷することが、ADCCによって媒介される、上記[20]に記載の方法。
[22]
前記免疫サプレッサー細胞が、骨髄又は末梢血中に存在する、上記[7]に記載の方法。
[23]
前記固形腫瘍が、黒色腫、肺癌、扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、結腸直腸癌、前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌、胃癌(stomach cancer)、卵巣癌、胃癌(gastric cancer)、肝癌、膵臓癌、甲状腺癌、頭頸部の扁平上皮癌、食道又は胃腸管の癌腫、乳癌、卵管癌、脳癌、尿道癌、尿生殖器癌、子宮内膜症、子宮頸癌、又は前記癌の転移巣である、上記[1]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24]
前記固形腫瘍が、検出可能なCD38発現を欠いている、上記[1]~[23]のいずれかに記載の方法。
[25]
前記CD38を特異的に結合する抗体が非アゴニスト抗体である、上記[1]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26]
前記非アゴニスト抗体が、統計的に有意でない様式で、in vitroでの末梢血単核球サンプルの増殖を誘導する、上記[25]に記載の方法。
[27]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4の重鎖可変領域(VH)及び配列番号5の軽鎖可変領域(VL)を含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、上記[1]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の少なくとも領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する、上記[27]に記載の方法。
[29]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び11の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、HCDR3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、上記[1]~[28]のいずれかに記載の方法。
[30]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む、上記[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[31]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、上記[1]~[26]のいずれかに記載の方法。
[32]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、上記[31]に記載の方法。
[33]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、第2の治療薬と併用して投与される、上記[1]~[32]のいずれかに記載の方法。
[34]
前記第2の治療薬が、化学療法薬、癌標的療法、固形腫瘍の治療用の標準治療薬、又は免疫チェックポイント阻害薬である、上記[33]に記載の方法。
[35]
前記免疫チェックポイント阻害薬が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、又は抗CTLA-4抗体である、上記[34]に記載の方法。
[36]
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗PD-1抗体である、上記[35]に記載の方法。
[37]
前記抗PD-1抗体が、
a)配列番号22のVH及び配列番号23のVL、
b)配列番号24のVH及び配列番号25のVL、
c)配列番号32のVH及び配列番号33のVL、又は
d)配列番号34のVH及び配列番号35のVLを含む、上記[36]に記載の方法。
[38]
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗PD-L1抗体である、上記[35]に記載の方法。
[39]
前記抗PD-L1抗体が、
a)配列番号26のVH及び配列番号27のVL、
b)配列番号28のVH及び配列番号29のVL、又は
c)配列番号30のVH及び配列番号31のVLを含む、上記[38]に記載の方法。
[40]
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗PD-L2抗体である、上記[35]に記載の方法。
[41]
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗LAG3抗体である、上記[35]に記載の方法。
[42]
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗TIM-3抗体である、上記[35]に記載の方法。
[43]
前記抗TIM-3抗体が、
a)配列番号36のVH及び配列番号37のVL、又は
b)配列番号38のVH及び配列番号39のVLを含む、上記[42]に記載の方法。
[44]
前記第2の治療薬が、同時に、順次、又は別々に投与される、上記[33]~[43]のいずれかに記載の方法。
[45]
前記CD38を特異的に結合する抗体が静脈内に投与される、上記[1]~[44]のいずれかに記載の方法。
[46]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、前記CD38を特異的に結合する抗体と、ヒアルロニダーゼと、を含む、医薬組成物中で、皮下に投与される、上記[1]~[44]のいずれかに記載の方法。
[47]
前記ヒアルロニダーゼが配列番号40のrHuPH20である、上記[46]に記載の方法。
[48]
前記患者が放射線療法で治療されるか、又は既に治療されている、上記[1]~[47]のいずれかに記載の方法。
[49]
前記患者が手術を受けたか、又は後に受ける、上記[1]~[47]のいずれかに記載の方法。
[50]
免疫サプレッサー細胞の活性を抑制する方法であって、前記免疫抑制細胞を、CD38を特異的に結合する抗体と接触させることを含む、方法。
[51]
前記免疫サプレッサー細胞がTregである、上記[50]に記載の方法。
[52]
前記Tregが、CD3+CD4+CD25+CD127dim T細胞である、上記[51]に記載の方法。
[53]
前記免疫サプレッサー細胞がMDSCである、上記[50]に記載の方法。
[54]
前記MDSCが、CD11b+HLADR-CD14-CD33+CD15+細胞である、上記[53]に記載の方法。
[55]
前記免疫サプレッサー細胞がBregである、上記[50]に記載の方法。
[56]
前記Bregが、CD19+CD24+CD38+細胞である、上記[55]に記載の方法。
[57]
前記CD38を特異的に結合する抗体が非アゴニスト抗体である、上記[50]~[56]のいずれかに記載の方法。
[58]
前記非アゴニスト抗体が、統計的に有意でない様式で、in vitroでの末梢血単核球サンプルの増殖を誘導する、上記[57]に記載の方法。
[59]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、上記[50]~[58]のいずれかに記載の方法。
[60]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の少なくとも領域SKRNIQFSCKNIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する、上記[59]に記載の方法。
[61]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、上記[50]~[60]のいずれかに記載の方法。
[62]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む、上記[61]に記載の方法。
[63]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、上記[50]~[58]のいずれかに記載の方法。
[64]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、上記[63]に記載の方法。
[65]
患者における免疫応答を増強する方法であって、CD38を特異的に結合する抗体を前記患者に投与することを含む、方法。
[66]
前記患者が癌又はウイルス感染を有する、上記[65]に記載の方法。
[67]
前記CD38を特異的に結合する抗体が非アゴニスト抗体である、上記[65]又は[66]に記載の方法。
[68]
前記非アゴニスト抗体が、統計的に有意でない様式で、in vitroでの末梢血単核球サンプルの増殖を誘導する、上記[67]に記載の方法。
[69]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、上記[65]~[68]のいずれかに記載の方法。
[70]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の少なくとも領域SKRNIQFSCIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する、上記[65]~[69]のいずれかに記載の方法。
[71]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、上記[65]~[70]のいずれかに記載の方法。
[72]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む、上記[65]~[70]のいずれかに記載の方法。
[73]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、上記[65]~[68]のいずれかに記載の方法。
[74]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、上記[73]に記載の方法。
[75]
ウイルス感染を有する患者を治療する方法であって、CD38を特異的に結合する抗体を、前記ウイルス感染の治療に十分な期間、前記患者に投与することを含む、方法。
[76]
前記CD38を特異的に結合する抗体が非アゴニスト抗体である、上記[75]に記載の方法。
[77]
前記非アゴニスト抗体が、統計的に有意でない様式で、in vitroでの末梢血単核球サンプルの増殖を誘導する、上記[75]又は[76]に記載の方法。
[78]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む抗体と、CD38への結合に関して競合する、上記[75]~[77]のいずれかに記載の方法。
[79]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、ヒトCD38(配列番号1)の少なくとも領域SKRNIQFSCIYR(配列番号2)、及び領域EKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)に結合する、上記[75]~[78]のいずれかに記載の方法。
[80]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、それぞれ配列番号6、7、8、9、10及び11のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、上記[75]~[79]のいずれかに記載の方法。
[81]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、配列番号4のVH及び配列番号5のVLを含む、上記[75]~[80]のいずれかに記載の方法。
[82]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLの、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、上記[75]~[77]のいずれかに記載の方法。
[83]
前記CD38を特異的に結合する抗体が、
a)配列番号14のVH及び配列番号15のVL、
b)配列番号16のVH及び配列番号17のVL、
c)配列番号18のVH及び配列番号19のVL、又は
d)配列番号20のVH及び配列番号21のVLを含む、上記[82]に記載の方法。