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特開2024-153824ヘキソサミニダーゼA、酸スフィンゴミエリナーゼおよびパルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1のCNSにおける活性を増加させるための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153824
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】ヘキソサミニダーゼA、酸スフィンゴミエリナーゼおよびパルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1のCNSにおける活性を増加させるための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20241022BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20241022BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20241022BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/40
C07K16/28
C07K16/46 ZNA
A61P43/00 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024124266
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2021506506の分割
【原出願日】2019-08-07
(31)【優先権主張番号】62/715,693
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/715,696
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/715,697
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】508105751
【氏名又は名称】アーマジェン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARMAGEN, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エム・パードリッジ
(72)【発明者】
【氏名】ルーベン・ジェイ・ボアド
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中枢神経系(CNS)における酵素欠損を有する対象を処置するための、二機能性融合抗体を提供する。
【解決手段】(a)ヘキソサミニダーゼA(HEXA)および(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含む融合抗体であって、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、融合抗体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるヘキソサミニダーゼA(HEXA)欠損を処置する方法であって、HEXA活性を有する融合抗体を該対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)HEXAおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含み、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項2】
HEXAのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
融合抗体がGM2ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
HEXAおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのHEXA酵素が脳に送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
治療有効用量が少なくとも約100ミリ単位/Kg体重を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
融合抗体のHEXA比活性が少なくとも100ミリ単位/mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびインシュリン様増殖因子(IGF)受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
中枢神経系におけるHEXA欠損がテイ・サックス病である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項21】
融合抗体がGM2ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのHEXA酵素が脳に送達される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
治療有効用量が少なくとも約100ミリ単位のHEXA活性/Kg体重を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
融合抗体のHEXA比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
HEXAおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
中枢神経系におけるHEXA欠損がテイ・サックス病である、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン重鎖およびHEXAのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項37】
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
融合抗体がGM2ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのHEXA酵素が脳に送達される、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
治療有効用量が少なくとも約100ミリ単位のHEXA活性/Kg体重を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
融合抗体のHEXA比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
HEXAおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
融合抗体がインスリン受容体を介してBBBを通過する、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
中枢神経系におけるHEXA欠損がテイ・サックス病である、請求項36に記載の方法。
【請求項54】
HEXAが配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項55】
(a)HEXAおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含む融合抗体であって、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものであるである、融合抗体。
【請求項56】
HEXAのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項57】
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項58】
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項59】
該融合抗体がGM2ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項60】
該融合タンパク質がHEXAのアミノ酸配列と免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項61】
リンカーが配列番号10のアミノ酸235~265と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項62】
融合抗体のHEXA比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項63】
HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項64】
HEXAおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項65】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項66】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項67】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項68】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項69】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項70】
該融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項71】
該融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項72】
該融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項55に記載の融合抗体。
【請求項73】
治療有効量の請求項55に記載の融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
【請求項74】
請求項55に記載の融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項75】
単離ポリヌクレオチドが配列番号14の核酸配列を含む、請求項74に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項76】
請求項74に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項77】
配列番号14の核酸配列を含む、請求項76に記載のベクター。
【請求項78】
請求項76に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項79】
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項78に記載の宿主細胞。
【請求項80】
配列番号10と80%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項81】
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも85%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
【請求項82】
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも90%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
【請求項83】
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも95%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
【請求項84】
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも96%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
【請求項85】
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも97%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
【請求項86】
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも98%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
【請求項87】
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも99%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
【請求項88】
アミノ酸配列が80を含む、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
【請求項89】
配列番号10のアミノ酸235~265を含む、単離ポリペプチド。
【請求項90】
処置を必要とする対象の中枢神経系における酸スフィンゴミエリナーゼ(ASM)欠損を処置する方法であって、ASM活性を有する融合抗体を該対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)ASMおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含み、ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項91】
ASMのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合している、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
融合抗体がスフィンゴミエリンのセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する、請求項90に記載の方法。
【請求項95】
ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
ASMおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項90に記載の方法。
【請求項97】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのASM酵素が脳に送達される、請求項90に記載の方法。
【請求項98】
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項99】
融合抗体のASM比活性が少なくとも100ミリ単位/mgである、請求項90に記載の方法。
【請求項100】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項90に記載の方法。
【請求項101】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項90に記載の方法。
【請求項102】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項103】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項90に記載の方法。
【請求項104】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項105】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびインシュリン様増殖因子(IGF)受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項90に記載の方法。
【請求項106】
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項90に記載の方法。
【請求項107】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項90に記載の方法。
【請求項108】
中枢神経系におけるASM欠損がニーマン・ピック病である、請求項90に記載の方法。
【請求項109】
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるASM欠損症を処置する方法であって、該対象にASM活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号18と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項110】
融合抗体がスフィンゴミエリンからセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのASM酵素が脳に送達される、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、請求項109に記載の方法。
【請求項113】
融合抗体のASM比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項109に記載の方法。
【請求項114】
ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項109に記載の方法。
【請求項115】
ASMおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項109に記載の方法。
【請求項116】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項109に記載の方法。
【請求項117】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項109に記載の方法。
【請求項118】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項109に記載の方法。
【請求項119】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項109に記載の方法。
【請求項120】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項109に記載の方法。
【請求項121】
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項109に記載の方法。
【請求項122】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項109に記載の方法。
【請求項123】
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項109に記載の方法。
【請求項124】
中枢神経系におけるASM欠損がニーマン・ピック病である、請求項109に記載の方法。
【請求項125】
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるASM欠損症を処置する方法であって、該対象にASM活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン重鎖およびASMのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項126】
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
融合抗体がスフィンゴミエリンからセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する、請求項125に記載の方法。
【請求項128】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのASM酵素が脳に送達される、請求項125に記載の方法。
【請求項129】
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、請求項125に記載の方法。
【請求項130】
融合抗体のASM比活性が約100ミリ単位/mgである、請求項125に記載の方法。
【請求項131】
ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項125に記載の方法。
【請求項132】
ASMおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項125に記載の方法。
【請求項133】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項125に記載の方法。
【請求項134】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項125に記載の方法。
【請求項135】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項125に記載の方法。
【請求項136】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項125に記載の方法。
【請求項137】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項125に記載の方法。
【請求項138】
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項125に記載の方法。
【請求項139】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項125に記載の方法。
【請求項140】
融合抗体がインスリン受容体を介してBBBを通過する、請求項125に記載の方法。
【請求項141】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項125に記載の方法。
【請求項142】
中枢神経系におけるASM欠損がニーマン・ピック病である、請求項125に記載の方法。
【請求項143】
ASMが配列番号17のアミノ酸配列を含む、請求項125に記載の方法。
【請求項144】
(a)ASMおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含む融合抗体であって、ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものであるである、融合抗体。
【請求項145】
ASMのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項146】
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項147】
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項148】
該融合抗体がスフィンゴミエリンからセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項149】
該融合タンパク質がASMのアミノ酸配列と免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項150】
リンカーが配列番号18のアミノ酸235~265と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項151】
融合抗体のASM比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項152】
ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項153】
ASMおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項154】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項155】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項156】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項157】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項158】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項159】
該融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項160】
該融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項161】
該融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項144に記載の融合抗体。
【請求項162】
治療有効量の請求項144に記載の融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
【請求項163】
請求項144に記載の融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項164】
単離ポリヌクレオチドが配列番号20の核酸配列を含む、請求項163に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項165】
請求項163に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項166】
配列番号20の核酸配列を含む、請求項165に記載のベクター。
【請求項167】
請求項164に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項168】
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項167に記載の宿主細胞。
【請求項169】
配列番号18と80%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項170】
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも85%同一である、請求項169に記載の単離ポリペプチド。
【請求項171】
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも90%同一である、請求項169に記載の単離ポリペプチド。
【請求項172】
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも95%同一である、請求項169に記載の単離ポリペプチド。
【請求項173】
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも96%同一である、請求項169に記載の単離ポリペプチド。
【請求項174】
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも97%同一である、請求項169に記載の単離ポリペプチド。
【請求項175】
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも98%同一である、請求項169に記載の単離ポリペプチド。
【請求項176】
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも99%同一である、請求項169に記載の単離ポリペプチド。
【請求項177】
アミノ酸配列が169を含む、請求項169に記載の単離ポリペプチド。
【請求項178】
配列番号18のアミノ酸235~265を含む、単離ポリペプチド。
【請求項179】
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるパルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1型(PPT1)欠損を処置する方法であって、PPT1活性を有する融合抗体を該対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)PPT1および(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含み、PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項180】
PPT1のアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項179に記載の方法。
【請求項181】
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合している、請求項179に記載の方法。
【請求項182】
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項179に記載の方法。
【請求項183】
融合抗体が脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートのチオエステル結合の加水分解を触媒する、請求項179に記載の方法。
【請求項184】
PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項179に記載の方法。
【請求項185】
PPT1および免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項179に記載の方法。
【請求項186】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのPPT1酵素が脳に送達される、請求項179に記載の方法。
【請求項187】
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、請求項179に記載の方法。
【請求項188】
融合抗体のPPT1比活性が少なくとも100ミリ単位/mgである、請求項179に記載の方法。
【請求項189】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項179に記載の方法。
【請求項190】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項179に記載の方法。
【請求項191】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項179に記載の方法。
【請求項192】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項179に記載の方法。
【請求項193】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項179に記載の方法。
【請求項194】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびインシュリン様増殖因子(IGF)受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項179に記載の方法。
【請求項195】
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項179に記載の方法。
【請求項196】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項179に記載の方法。
【請求項197】
中枢神経系におけるPPT1欠損がNCL1バッテン病である、請求項179に記載の方法。
【請求項198】
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号23と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含み;ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項199】
融合抗体が脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートのチオエステル結合の加水分解を触媒する、請求項198に記載の方法。
【請求項200】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約1.5μgのPPT1酵素が脳に送達される、請求項198に記載の方法。
【請求項201】
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、請求項198に記載の方法。
【請求項202】
融合抗体のPPT1比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項198に記載の方法。
【請求項203】
PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項198に記載の方法。
【請求項204】
PPT1および免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項198に記載の方法。
【請求項205】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項198に記載の方法。
【請求項206】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項198に記載の方法。
【請求項207】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項198に記載の方法。
【請求項208】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項198に記載の方法。
【請求項209】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項198に記載の方法。
【請求項210】
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項198に記載の方法。
【請求項211】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項198に記載の方法。
【請求項212】
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項198に記載の方法。
【請求項213】
中枢神経系におけるPPT1欠損がNCL1バッテン病である、請求項198に記載の方法。
【請求項214】
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン軽鎖およびPPT1のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含み;ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
【請求項215】
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項214に記載の方法。
【請求項216】
融合抗体が脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートのチオエステル結合の加水分解を触媒する、請求項214に記載の方法。
【請求項217】
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約50μgのPPT1酵素が脳に送達される、請求項214に記載の方法。
【請求項218】
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、請求項214に記載の方法。
【請求項219】
融合抗体のPPT1比活性が約100ミリ単位/mgである、請求項214に記載の方法。
【請求項220】
PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項214に記載の方法。
【請求項221】
PPT1および免疫グロブリンの各々が分離立した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項214に記載の方法。
【請求項222】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項214に記載の方法。
【請求項223】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項214に記載の方法。
【請求項224】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項214に記載の方法。
【請求項225】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項214に記載の方法。
【請求項226】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項214に記載の方法。
【請求項227】
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項214に記載の方法。
【請求項228】
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項214に記載の方法。
【請求項229】
融合抗体がインスリン受容体を介してBBBを通過する、請求項214に記載の方法。
【請求項230】
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項214に記載の方法。
【請求項231】
中枢神経系におけるPPT1欠損がニーマン・ピック病である、請求項214に記載の方法。
【請求項232】
PPT1が配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項214に記載の方法。
【請求項233】
(a)PPT1および(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含む融合抗体であって、PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものであるである、融合抗体。
【請求項234】
PPT1のアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項235】
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項236】
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項237】
該融合抗体が脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートのチオエステル結合の加水分解を触媒する、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項238】
該融合タンパク質がPPT1のアミノ酸配列と免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項239】
リンカーが配列番号23のアミノ酸462~492と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項240】
融合抗体のPPT1比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項241】
PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項242】
PPT1および免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項243】
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項244】
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項245】
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項246】
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項247】
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項248】
該融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項249】
該融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項250】
該融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項233に記載の融合抗体。
【請求項251】
治療有効量の請求項233に記載の融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
【請求項252】
請求項233に記載の融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項253】
単離ポリヌクレオチドが配列番号25の核酸配列を含む、請求項252に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項254】
請求項252に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項255】
配列番号25の核酸配列を含む、請求項254に記載のベクター。
【請求項256】
請求項254に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項257】
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項256に記載の宿主細胞。
【請求項258】
配列番号23と80%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項259】
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも85%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
【請求項260】
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも90%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
【請求項261】
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも95%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
【請求項262】
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも96%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
【請求項263】
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも97%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
【請求項264】
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも98%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
【請求項265】
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも99%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
【請求項266】
アミノ酸配列が配列番号23を含む、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
【請求項267】
配列番号23のアミノ酸462~492を含む、単離ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月7日出願の米国仮特許出願62/715,693、2018年8月7日出願の米国仮特許出願62/715,696および2018年8月7日出願の米国仮特許出願62/715,697の利益を請求する。35 U.S.C. § 119に従い、優先権を主張する。上記特許出願は、本明細書に全文が示されているように、引用により本明細書に包含させる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出した配列表を含み、引用により全体として本明細書に包含させる。該ASCIIコピーは2019年8月3日に作成し、「28570_717601_Sequence_Listing.txt」なる名称であり、サイズは22,989バイトである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
リソソーム蓄積症は、リソソーム酵素をコードする遺伝子の変異により引き起こされる。脳を含む臓器における酵素活性の喪失が、細胞における封入体の蓄積をもたらし、これにより細胞機能不全に至り、脳において、このような細胞機能不全は精神遅滞、痙攣発作、盲目および運動障害に至る壊滅的影響を有し得る。テイ・サックス病は、TSDとも称され、中枢神経系(CNS)に主に影響する遺伝性代謝疾患である。TSDは、リソソーム酵素であるヘキソサミニダーゼAまたはHEXAをコードする遺伝子の変異が原因である。HEXAは、GM2ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニド部分における末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基を加水分解する。HEXA酵素は、唯一、GM2ガングリオシドからN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基を除去することにより、GM2ガングリオシドをGM3ガングリオシドに加水分解できる。不十分なHEXA酵素レベルは、例えば、末梢組織およびCNSにおける、GM2ガングリオシドの病的増大を引き起こす。テイ・サックスは脳変性および盲目を引き起こす。患者はまた四肢の弛緩および痙攣発作も経験する。これらの神経障害のため、テイ・サックスを有して生まれた小児は、通常嚥下性肺炎により2~4歳で死亡する。現時点で、テイ・サックス病の治癒または有効な処置はない。ニーマン・ピック病は、NPDとも称され、中枢神経系(CNS)に主に影響する遺伝性代謝疾患である。NPD A型(NPA)およびNPD B型(NPB)は、リソソーム酵素である酸スフィンゴミエリナーゼまたはASMをコードする遺伝子の変異が原因である。ASMは、スフィンゴミエリン(SPM)を加水分解して、セラミドおよびホスホコリンを産生する。不十分なレベルのASM酵素は、例えば、末梢組織およびCNSにおける、SPMの病的増大を引き起こす。NPAは、本疾患のより重度なタイプであり、患者は重度CNS合併症を有し、約3歳で死亡する。NPBのCNS疾患は少なく、死亡は青年期または成人早期に起こる。現時点で、NPA/NPBの治癒または有効な処置はない。小児バッテン病は、神経セロイドリポフスチン沈着症1型(NCL1)またはセロイドリポフスチン沈着症、神経1型(CLN1)とも称され、中枢神経系(CNS)および体性臓器に主に影響する遺伝性代謝疾患である。小児バッテン病は、リソソーム酵素であるパルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1型またはPPT1をコードするCLN1遺伝子の変異が原因である。PPT1は、細胞タンパク質の長鎖脂肪酸アシルコンジュゲートのチオエステル結合を加水分解して、細胞タンパク質のシステイン残基のチオール部分から脂肪酸を遊離させる。バッテン病群は最も一般的な小児遺伝性疾患であり、小児バッテン病は6~24か月で現れる。乳児のこの神経変性疾患は、進行性運動喪失、盲目、痙攣発作および精神遅滞と関連する。不十分なレベルのPPT1酵素は、リポフスチンと称される自己蛍光顆粒の病的蓄積に至り、これは、大部分の神経細胞の細胞質における脂質溶媒に耐性である。NCL1を有する小児は、一般に9~13歳で死亡する。現時点で、NCL1の治癒または有効な処置はない。一般に、TSD、NPDまたはNCL1などのリソソーム蓄積障害の処置は、一般に患者の欠損酵素を置き換えるまたは代理となる組み換え酵素の導入を含む、静脈内酵素置換療法またはERTを含むであろう。しかしながら、全身的に投与された組み換え酵素は血液脳関門(BBB)を通過せず、それ故にCNSにおけるTSD、NPDまたはNCL1にほとんど影響を与えない。この理由のため、TSD、NPDまたはNCL1などの疾患にERTは承認されていない。
【発明の概要】
【0004】
発明の要約
ここに記載されるのは、ヘキソサミニダーゼA(「HEXA」)、酸スフィンゴミエリナーゼ(「ASM」)またはパルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(「PPT1」)の欠損を有する対象を処置するための方法および組成物である。ある実施態様において、ここに提供する方法は、治療有効量の二機能性融合抗体またはタンパク質の全身的投与による、CNSへのHEXA、ASMまたはPPT1の送達を含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、内在性血液脳関門(BBB)受容体およびHEXA、ASMまたはPPT1に対する抗体のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、酵素に遺伝子的に融合したヒトインスリン抗体(HIR Ab)(「HIR Ab-HEXA融合抗体」または「HIR Ab-ASM融合抗体」または「HIR Ab-PPT1融合抗体」)である。ある実施態様において、HIR Ab-HEXA融合抗体、HIR Ab-ASM融合抗体またはHIR Ab-PPT1融合抗体は、図1に記載するとおり、インスリン受容体の細胞外ドメインに結合し、HEXA、ASMまたはPPT1酵素活性を維持しながら、血液脳関門(「BBB」)を通ってCNSに輸送される。ある実施態様において、HIR Abは、BBB上の内在性インスリン受容体に結合し、分子トロイの木馬として作用して、HEXA、ASMまたはPPT1を脳に運ぶ。ある実施態様において、全身投与のためのHIR Ab-HEXA融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。ある実施態様において、全身投与のためのHIR Ab-ASM融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。ある実施態様において、全身投与のためのHIR Ab-PPT1融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。
【0005】
一つの態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA、ASMまたはPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA、ASMまたはPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列、HEXA、ASMまたはPPT1のアミノ酸配列および免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体(例えば、ヒトインスリン受容体)の細胞外ドメインに結合し、GM2ガングリオシド、スフィンゴミエリンまたはタンパク質脂肪酸アシルコンジュゲートの分解を触媒する。ある実施態様において、HEXA、ASMまたはPPT1のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、HEXA、ASMまたはPPT1酵素は、各シグナルペプチドを伴わず、配列番号9、配列番号17または配列番号21のアミノ酸配列を含む。これらのアミノ酸配列をコードする対応するヌクレオチド配列は、それぞれHEXA、ASMおよびPPT1について、配列番号11、配列番号19および配列番号24に示す。
【0006】
ある実施態様において、HEXA、PPT1またはASMは、分離した存在としてのその活性と比較して、その活性の少なくとも20%を保持する。ある実施態様において、HEXA、PPT1またはASMおよび免疫グロブリンは、各々、分離した存在としてのその活性と比較して、その活性の少なくとも20%を保持する。
【0007】
ある実施態様において、少なくとも約600μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約900μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約1200μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約2000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約3000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約4000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約5000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約8000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約10,000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約300μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約100μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約30μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約10μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約3μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約1μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。
【0008】
ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約1500μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2250μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約3000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約5000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約7500μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約10,000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約15,000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約20,000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約25,000μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約750μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約250μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約75μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約25μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約7.5μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのHEXA、ASMまたはPPT1酵素が脳に送達される。
【0009】
ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.5mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.6mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.7mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.8mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.9mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約1mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約3mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約6mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約10mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約50mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.4mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.3mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.2mg/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.1mg/Kg体重を含む。
【0010】
ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約6単位/Kg体重を含み、ここで、1単位のHEXA酵素活性は、蛍光定量的酵素アッセイで1分あたり1μmolの4-メチルウンベリフェロン(MU)を形成する(図13~14);または1単位のASM酵素活性は、蛍光定量的酵素アッセイで1分あたり1μmolの6-ヘキサデカノイルアミノ-4-メチルウンベリフェロン(HMU)を形成する(図23)または1単位のPPT1酵素活性は、蛍光定量的酵素アッセイで1分あたり1μmolの4-メチルウンベリフェリル6-チオ-パルミテート-β-D-グルコピラノシド(Mu-6S-Palm-ベータ-Glc)を形成する(図33)。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約7単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約8単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約9単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約10単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約30単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約100単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約150単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約300単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約1000単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約5単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約4単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約3単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約1単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.3単位/Kg体重を含む。ある実施態様において、融合抗体の治療有効用量は、少なくとも約0.1単位/Kg体重を含む。
【0011】
ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも0.1単位/mgタンパク質である。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも0.3単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも0.6単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも1単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも2.5単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも5単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも7.5単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも10単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも30単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1比活性は、少なくとも50単位/mgである。
【0012】
ある実施態様において、全身投与は非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である。
【0013】
ある実施態様において、融合抗体はキメラ抗体である。ある実施態様において、融合抗体はヒト化抗体である。
【0014】
ある実施態様において、免疫グロブリン重鎖は、IgGの免疫グロブリン重鎖である。ある実施態様において、免疫グロブリン重鎖は、IgG1の免疫グロブリン重鎖である。
【0015】
ある実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖は、4つまでの単一アミノ酸変異を有する配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、6つまでの単一アミノ酸変異を有する配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または3つまでの単一アミノ酸変異を有する配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含み、ここで、単一アミノ酸変異は置換、欠失または挿入である。
【0016】
他の実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖(図5、配列番号7)は、1つの単一アミノ酸変異を有する配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、1つの単一アミノ酸変異を有する配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2および1つの単一アミノ酸変異を有する配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含み、ここで、CDR配列は図7に示される。
【0017】
他の実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖は、配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含み、ここで、CDR配列は図7に示される。
【0018】
ある実施態様において、免疫グロブリン軽鎖は、カッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である。
【0019】
ある実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン軽鎖(図6、配列番号8)は3つまでの単一アミノ酸変異を有する配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、5つまでの単一アミノ酸変異を有する配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または5つまでの単一アミノ酸変異を有する配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含み、ここで、単一アミノ酸変異は置換、欠失または挿入である。
【0020】
他の実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン軽鎖は、1つの単一アミノ酸変異を有する配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、1つの単一アミノ酸変異を有する配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2および1つの単一アミノ酸変異を有する配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む。
【0021】
他の実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン軽鎖は、配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む。
【0022】
ある実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖は、配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2および配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含み、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2および配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む。
【0023】
ある実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖は配列番号7と少なくとも90%同一であり、軽鎖免疫グロブリンのアミノ酸配列は配列番号8と少なくとも90%同一である。
【0024】
ある実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖は配列番号7と少なくとも95%同一であり、軽鎖免疫グロブリンのアミノ酸配列は配列番号8と少なくとも95%同一である。
【0025】
ある実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖は配列番号7を含み、軽鎖免疫グロブリンのアミノ酸配列は配列番号8を含む。
【0026】
ある実施態様において、HEXAは配列番号9のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、HEXAは、配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、HEXAは、配列番号9と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ASMは、配列番号17のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ASMは、配列番号17と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ASMは、配列番号17と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、PPT1は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、PPT1は、配列番号21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、PPT1は、配列番号21と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0027】
他の実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列は、配列番号7と少なくとも90%同一であり;軽鎖免疫グロブリンのアミノ酸配列は、配列番号8と少なくとも90%同一であり;HEXAのアミノ酸配列は、配列番号9と少なくとも95%同一であるかまたは配列番号9を含み、ASMのアミノ酸配列は、配列番号17と少なくとも95%同一であるかまたは配列番号17を含み、PPT1のアミノ酸配列は、配列番号21と少なくとも95%同一であるかまたは配列番号21を含む。
【0028】
他の実施態様において、融合抗体の免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列は配列番号7を含み、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列は配列番号8を含み、そしてHEXAのアミノ酸配列は配列番号9を含むかまたはASMのアミノ酸配列は配列番号17を含むかまたはPPT1のアミノ酸配列は配列番号21を含む。
【0029】
ある実施態様において、ここに提供する融合抗体は、内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより、BBBを通過する。ある実施態様において、融合抗体は、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびインシュリン様増殖因子(IGF)受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する。ある実施態様において、融合抗体は、インスリン受容体に結合することにより、BBBを通過する。
【0030】
ある実施態様において、中枢神経系におけるHEXA欠損は、テイ・サックス病またはTSDである。ある実施態様において、中枢神経系におけるASM欠損は、ニーマン・ピック病またはNPDである。ある実施態様において、中枢神経系におけるPPT1欠損は、神経セロイドリポフスチン沈着症1型疾患またはNCL1である。
【0031】
ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA、ASMまたはPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA、ASMまたはPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン軽鎖およびHEXA、ASMまたはPPT1のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含み、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過する、方法である。ある実施態様において、HEXA、ASMまたはPPT1のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。
【0032】
ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるASM欠損症を処置する方法であって、該対象にASM活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号18と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンの加水分解を触媒して、セラミドおよびホスホコリンを形成する。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号22または配列番号23と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、脂肪酸アシルタンパク質チオエステルコンジュゲートの加水分解を触媒する。
【0033】
ある態様において、ここに提供されるのは、(a)配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、HEXA活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号10と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。ある態様において、ここに提供されるのは、(a)配列番号18と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、ASM活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンの加水分解を触媒してセラミドおよびホスホコリンを形成する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号18と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。ある態様において、ここに提供されるのは、(a)配列番号22または配列番号23と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、PPT1活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、脂肪酸アシルタンパク質チオエステルコンジュゲートの加水分解を触媒する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号22または配列番号23と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号22または配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0034】
ある態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン軽鎖およびHEXAのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、HEXA活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、HEXAのアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン重鎖およびHEXAのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、HEXA活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、HEXAのアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン軽鎖およびASMのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、ASM活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、ASMのアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン重鎖およびASMのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、ASM活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、ASMのアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンの加水分解を触媒してセラミドおよびホスホコリンを形成する。ある態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン軽鎖およびPPT1のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、PPT1活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、PPT1のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン重鎖およびPPT1のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、PPT1活性を有する融合抗体である。ある実施態様において、PPT1のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、脂肪酸アシルタンパク質チオエステルコンジュゲートの加水分解を触媒する。
【0035】
ある実施態様において、ここに提供される融合タンパク質は、HEXAのアミノ酸配列と免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む。ある実施態様において、リンカーは、配列番号10のアミノ酸235~265と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。ある実施態様において、ここに提供される融合タンパク質は、ASMのアミノ酸配列と免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む。ある実施態様において、リンカーは、配列番号18のアミノ酸235~265と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。ある実施態様において、ここに提供される融合タンパク質は、PPT1のアミノ酸配列と免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む。ある実施態様において、リンカーは、配列番号23のアミノ酸462~492または配列番号22のアミノ酸462~465と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。
【0036】
ある実施態様において、ここに提供されるのは、治療有効量のここに記載する融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物である。
【0037】
ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに記載するHEXA融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチドである。ある実施態様において、単離ポリヌクレオチドは、配列番号14の核酸配列を含む。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに提供される単離ポリヌクレオチドを含む、ベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、配列番号14の核酸配列を含むベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに記載するベクターを含む、宿主細胞である。ある実施態様において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン軽鎖およびHEXAのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、方法である。ある実施態様において、HEXAのアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン重鎖およびHEXAのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、方法である。ある実施態様において、HEXAのアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに記載するASM融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチドである。ある実施態様において、単離ポリヌクレオチドは、配列番号20の核酸配列を含む。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに提供される単離ポリヌクレオチドを含む、ベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、配列番号20の核酸配列を含む、ベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに記載するベクターを含む、宿主細胞である。ある実施態様において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるASM欠損症を処置する方法であって、該対象にASM活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン軽鎖およびASMのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、方法である。ある実施態様において、ASMのアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるASM欠損症を処置する方法であって、該対象にASM活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン重鎖およびASMのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、方法である。ある実施態様において、ASMのアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンの加水分解を触媒して、セラミドおよびホスホコリンを形成する。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに記載するPPT1融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチドである。ある実施態様において、単離ポリヌクレオチドは、配列番号25の核酸配列を含む。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに提供される単離ポリヌクレオチドを含む、ベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、配列番号25の核酸配列を含む、ベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに記載するベクターを含む、宿主細胞である。ある実施態様において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン重鎖およびPPT1のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、方法である。ある実施態様において、PPT1のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系におけるPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン軽鎖およびPPT1のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、方法である。ある実施態様において、PPT1のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートの加水分解を触媒する。
【0038】
ある実施態様において、ここに提供されるのは、CNSにおける酵素欠損を有する対象を処置するための方法および組成物である。ある実施態様において、ここに提供する方法は、治療有効量の二機能性融合抗体またはタンパク質を全身的に投与することにより、テイ・サックス病(TSD)で欠損している酵素をCNSに送達することを含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、内在性血液脳関門(BBB)受容体に対する抗体およびTSDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、酵素に遺伝子的に融合したヒトインスリン抗体(HIR Ab)である。ある実施態様において、融合抗体は、酵素活性を維持しながら、インスリン受容体の細胞外ドメインに結合し、BBBを通って輸送される。ある実施態様において、融合抗体はBBB上の内在性インスリン受容体に結合し、酵素を脳に運ぶための分子トロイの木馬として作用する。ある実施態様において、全身投与のための融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。ある実施態様において、ここに提供する方法は、治療有効量の二機能性融合抗体またはタンパク質を全身的に投与することにより、ニーマン・ピック病(NPD)で欠損している酵素をCNSに送達することを含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、内在性血液脳関門(BBB)受容体に対する抗体およびNPDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、酵素に遺伝子的に融合したヒトインスリン抗体(HIR Ab)である。ある実施態様において、融合抗体は、酵素活性を維持しながら、インスリン受容体の細胞外ドメインに結合し、BBBを通って輸送される。ある実施態様において、融合抗体はBBB上の内在性インスリン受容体に結合し、酵素を脳に運ぶための分子トロイの木馬として作用する。ある実施態様において、全身投与のための融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。ある実施態様において、ここに提供する方法は、治療有効量の二機能性融合抗体またはタンパク質を全身的に投与することにより、神経セロイドリポフスチン沈着症1(NCL1)で欠損している酵素をCNSに送達することを含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、内在性血液脳関門(BBB)受容体に対する抗体およびNCL1で欠損している酵素のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、酵素に遺伝子的に融合したヒトインスリン抗体(HIR Ab)である。ある実施態様において、融合抗体は、酵素活性を維持しながら、インスリン受容体の細胞外ドメインに結合し、BBBを通って輸送される。ある実施態様において、融合抗体はBBB上の内在性インスリン受容体に結合し、酵素を脳に運ぶための分子トロイの木馬として作用する。ある実施態様において、全身投与のための融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。
【0039】
ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、対象に、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列、TSDまたはNPDにおける酵素治療剤のアミノ酸配列および免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列を含む融合抗体の治療有効用量を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体(例えば、ヒトインスリン受容体)の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、対象に、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列、NCL1における酵素治療剤のアミノ酸配列および免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列を含む融合抗体の治療有効用量を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体(例えば、ヒトインスリン受容体)の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される
【0040】
ある実施態様において、TSD、NPDまたはNCL1における酵素治療剤はリソソーム酵素である。
【0041】
ある実施態様において、TSDにおける酵素治療剤はヘキソサミニダーゼA(HEXA)であり、NPDにおける酵素治療剤は酸スフィンゴミエリナーゼ(ASM)であり、NCL1における酵素治療剤はパルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1型(PPT1)である。
【0042】
ある実施態様において、融合抗体は、GM2ガングリオシドにおけるN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドの末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンのセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する。ある実施態様において、融合抗体は、脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートの加水分解を触媒する。
【0043】
ある実施態様において、酵素は、分離した存在としてのその活性と比較して、その活性の少なくとも20%を保持する。ある実施態様において、酵素および免疫グロブリンは、各々、分離した存在としてのその活性と比較して、その活性の少なくとも20%を保持する。
【0044】
ある実施態様において、少なくとも約600μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約900μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約300μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約1200μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約2000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約3000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約4000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約3000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約5000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約8000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約10000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約300μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約100μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約30μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約10μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約3μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、少なくとも約1μgの酵素が脳に送達される。
【0045】
ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約1500μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2250μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約3000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約5000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約7500μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約10000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約15000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約20000μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約750μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約250μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約75μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約25μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約7.5μgの酵素が脳に送達される。ある実施態様において、50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgの酵素が脳に送達される。
【0046】
ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも0.1単位/mgタンパク質である。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも0.3単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも0.6単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも1単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも2.5単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも5単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも7.5単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも10単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも30単位/mgである。ある実施態様において、融合抗体の酵素比活性は少なくとも50単位/mgである。
【0047】
ある実施態様において、中枢神経系における酵素欠損症はTSDである。ある実施態様において、中枢神経系における酵素欠損症はNPDである。ある実施態様において、中枢神経系における酵素欠損症はPPT1である。
【0048】
ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、(a)免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列およびTSDで欠損している酵素を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む融合抗体の治療有効用量を対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過する、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、(a)免疫グロブリン軽鎖およびNPDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む融合抗体の治療有効用量を対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過する、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、(a)免疫グロブリン重鎖およびNCL1で欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む融合抗体の治療有効用量を対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過する、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。
【0049】
ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、(a)配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質;および(b)免疫グロブリン重鎖を含む融合抗体の治療有効用量を対象に全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号10と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は配列番号10のアミノ酸配列を含む。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、(a)配列番号18と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質;および(b)免疫グロブリン重鎖を含む融合抗体の治療有効用量を対象に全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンの加水分解を触媒して、セラミドおよびホスホコリンを形成する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号18と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、(a)配列番号22または配列番号23と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質;および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む融合抗体の治療有効用量を対象に全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートの加水分解を触媒する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号22または配列番号23と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号22または配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0050】
ある態様において、ここに提供されるのは、(a)配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号10と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は配列番号10のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ここに記載されるのは、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドである。ある実施態様において、ここに記載されるのは、配列番号10のアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドである。ある態様において、ここに提供されるのは、(a)配列番号18と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンの加水分解を触媒してセラミドおよびホスホコリンを形成する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号18と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ここに記載されるのは、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドである。ある実施態様において、ここに記載されるのは、配列番号18のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドである。ある態様において、ここに提供されるのは、(a)配列番号22または配列番号23と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、融合抗体は内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートの加水分解を触媒する。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号22または配列番号23と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、融合タンパク質は、配列番号22または配列番号23のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、ここに記載されるのは、配列番号22または配列番号23と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドである。ある実施態様において、ここに記載されるのは、配列番号22または配列番号23のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチドである。ある実施態様において、ここに記載されるのは、配列番号10もしくは配列番号18のアミノ酸235~265または配列番号23のアミノ酸462~492を含む、単離ポリペプチドである。
【0051】
ある態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン軽鎖およびTSDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン重鎖およびTSDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン軽鎖およびNPDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン重鎖およびNPDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンの加水分解を触媒してセラミドおよびホスホコリンを形成する。ある態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン重鎖およびNCL1で欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、(a)免疫グロブリン軽鎖およびNCL1で欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む、融合抗体である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートの加水分解を触媒する。
【0052】
ある実施態様において、ここに提供される融合タンパク質は、酵素のアミノ酸配列と免疫グロブリン軽鎖または重鎖何れかのアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む。
【0053】
ある実施態様において、ここに提供されるのは、治療有効量のここに記載する融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物である。
【0054】
ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに記載する融合抗体をコードする単離ポリヌクレオチドである。ある実施態様において、単離ポリヌクレオチドは、配列番号14の核酸配列を含む。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに提供される単離ポリヌクレオチドを含む、ベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、配列番号14の核酸配列を含むベクターである。ある実施態様において、単離ポリヌクレオチドは、配列番号20の核酸配列を含む。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに提供される単離ポリヌクレオチドを含む、ベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、配列番号20の核酸配列を含むベクターである。ある実施態様において、単離ポリヌクレオチドは、配列番号25の核酸配列を含む。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに提供される単離ポリヌクレオチドを含む、ベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、配列番号25の核酸配列を含むベクターである。ある実施態様において、ここに提供されるのは、ここに記載するベクターを含む、宿主細胞である。ある実施態様において、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0055】
ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、該対象に(a)免疫グロブリン軽鎖およびTSDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、該対象に(a)免疫グロブリン軽鎖およびTSDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、該対象に(a)免疫グロブリン軽鎖およびNPDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む融合抗体の治療有効用量を投与することを含む、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、該対象に(a)免疫グロブリン軽鎖およびNPDで欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含む融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、スフィンゴミエリンの加水分解を触媒してセラミドおよびホスホコリンを形成する。ある態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、該対象に(a)免疫グロブリン重鎖およびNCL1で欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象の中枢神経系における酵素欠損症を処置する方法であって、(a)免疫グロブリン重鎖およびNCL1で欠損している酵素のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含む融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含む、方法である。ある実施態様において、酵素のアミノ酸配列は、免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体の細胞外ドメインに結合する。ある実施態様において、内在性BBB受容体はヒトインスリン受容体である。ある実施態様において、融合抗体は、内在性BBB受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は、ヒトインスリン受容体受容体に結合する抗体である。ある実施態様において、融合抗体は脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートの加水分解を触媒する。
【0056】
引用による取り込み
本明細書に記載するすべての刊行物、特許および特許出願を、各個々の刊行物、特許または特許出願が具体的かつ個々に引用により本明細書に包含させると示したのと同程度に引用により全体として本明細書に包含させる。
【0057】
図面の簡単な説明
本実施態様の新規特徴を添付する特許請求の範囲に具体的に示す。本実施態様の特徴および利点のよりよい理解は、本実施態様の原則が利用される説明的実施態様を示す次の詳細な記載および次のとおりの添付する図面を参酌して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】融合抗体が分子トロイの木馬(TH)として作用する内在性BBB受容体(R)の細胞外ドメインに対する抗体およびHEXA、ASMまたはPPT1、リソソーム酵素(E)を含む、「分子トロイの木馬」戦略の略図を示す。脳細胞に入ると、BBBの後ろで、脳細胞で、融合抗体のHEXA、ASMまたはPPT1部分が、酵素特異的リソソーム蓄積基質(S)を代謝可能産物(P)に分解する。
【0059】
図2】例示的HIR Ab-HEXA融合抗体が成熟HEXAのアミノ末端とHIR Abの軽鎖のカルボキシル末端の、軽鎖の定常ドメイン(CL)とHEXA酵素の間のアミノ酸リンカーを用いる融合により形成される。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の可変領域が示される。重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメインが示される。
【0060】
図3】EcoRI、PmeIおよびPvuIで消化したpUC57-HIR Ab LC-HEXAのアガロースゲル電気泳動。HIR Ab LC-HEXA合成遺伝子(配列番号10)は商業ベンダーにより合成され、pUC57クローニングベクターに入れられた。約2.3kb HIR Ab LC-HEXA改変cDNAが放出され、EcoRI-PmeIによりpUC57プラスミド骨格から分離され(レーン2、3複製)、アガロースゲル電気泳動により単離された。融合タンパク質cDNAの単離を促すため、pUC57骨格ベクターをPvuIで消化させ、それはそれぞれ約1.7および1.3kbまでサイズを減少させた。レーン1はDNA標品である。
【0061】
図4】HIR Ab LC-HEXA発現ベクターの遺伝子操作。HIR Ab-HEXA軽鎖(LC)融合タンパク質発現ベクター、クローンpHIR Ab LC-HEXAを、HIR Ab LC-HEXA cDNAの発現ベクターの同じエンドヌクレアーゼ部位に挿入することにより操作した。HIR Ab LC-HEXA cDNAは、31アミノ酸リンカーを介して、シグナルペプチドのない507アミノ酸の成熟HEXA(配列番号9)のアミノ末端に融合した234アミノ酸のHIR Ab LC(配列番号8)からなる融合タンパク質をコードする。CMV=サイトメガロウイルス;BGH=ウシ成長ホルモン;SV=サルウイルス;amp=アンピシリン耐性;neo=ネオマイシン;複製起点;DHFR=ジヒドロ葉酸レダクターゼ;LC=軽鎖;HEXA=ヘキソサミニダーゼA
【0062】
図5】ヒトインスリン受容体の細胞外ドメインに対する例示的ヒトインスリン受容体抗体からの免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列可変領域。下線を引いた配列はそれぞれシグナルペプチド、CDR1、CDR2およびCDR3である。ヒトIgG1由来重鎖定常領域は斜体で示す。
【0063】
図6】ヒトインスリン受容体の細胞外ドメインに対する例示的ヒトインスリン受容体抗体からの免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列可変領域。下線を引いた配列はそれぞれシグナルペプチド、CDR1、CDR2およびCDR3である。ヒトカッパ軽鎖由来定常領域は斜体で示す。
【0064】
図7】ヒトインスリン受容体の細胞外ドメインに対する例示的ヒトインスリン受容体抗体の重鎖および軽鎖からのCDR1、CDR2およびCDR3アミノ酸配列を示す表。
【0065】
図8】22アミノ酸酵素シグナルペプチドを含まないHEXAのアミノ酸配列(NP_000511)(成熟HEXA)。
【0066】
図9】例示的ヒトインスリン受容体抗体軽鎖の成熟ヒトHEXAへの融合体のアミノ酸配列。下線を引いた配列は、順に、IgGシグナルペプチド、CDR1、CDR2、CDR3および軽鎖のカルボキシ末端を成熟HEXAのアミノ末端に結合する31アミノ酸配列である。斜体の配列はヒトカッパ由来軽鎖定常領域に対応する。太字の配列はヒトHEXAに対応する。
【0067】
図10】分子量標品(左側レーン)、HIRMAbとして示す精製HIR AbおよびHIRMAb-HEXAとして示す精製HIR Ab-HEXA融合タンパク質の還元SDS-PAGE。HIRMAbは55kDa重鎖および28kDa軽鎖により形成される。HIRMAb-HEXA融合タンパク質は55kDa HIR Ab重鎖(HC)および軽鎖とHEXAの95kDa融合体(LC-HEXA)から形成される。
【0068】
図11】抗ヒトIgG一次抗体(左パネル)または抗ヒトHEXA一次抗血清(右パネル)のウェスタンブロット。HIR Ab-HEXA融合タンパク質の免疫反応性をキメラHIR Ab(右パネル)と比較し、これらはそれぞれHIRMAbおよびHIRMAb-HEXAと示される。HIRMAb-HEXA融合タンパク質およびHIRMAbは、抗IgGウェスタンで同一重鎖を有する。HIRMAb-HEXA融合タンパク質の融合軽鎖は抗IgGおよび抗ヒトHEXA抗体両者と反応し、一方HIRMAb重鎖および軽鎖は抗IgG抗体とのみ反応する。分子量(MW)標品ならびに免疫反応性重鎖および軽鎖の移動に基づき、HIRMAb-HEXA融合タンパク質の重鎖および軽鎖の推定MWはそれぞれ59kDaおよび99kDaであり、これは、図2に示すヘテロ四量体融合タンパク質の316kDaのMWに対応する。
【0069】
図12】キメラHIR Ab(HIRMAbと記載)またはHIR Ab-HEXA(HIRMAb-HEXAと記載)融合タンパク質のHIR細胞外ドメイン(ECD)への結合は飽和性である。HIR ECDへのHIRMAb-HEXA結合のED50は112±18ng/mLであり、これは、316kDaのMWに基づき、0.35±0.06nMである。これは、150kDaのMWに基づき0.23±0.02nMである34±3ng/mLであるキメラHIRMAbの結合のED50と同等である。
【0070】
図13】(A)HEXA蛍光定量的酵素アッセイの中性基質4-メチルウンベリフェリル-N-アセチル-β-D-グルコサミニド(4MUG)の構造をパネルAに示す。HEXAによる分子の開裂後、基質は蛍光生成物、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)に変換される。(B)20分間の固定インキュベーション時間でのHIR Ab-HEXA融合タンパク質の質量に関する4-MU生成物の直線的形成。
【0071】
図14】(A)HEXA蛍光定量的酵素アッセイのアニオン性基質、4-メチルウンベリフェリル-7-(6-スルホ-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(4MUGS)の構造をパネルAに示す。HEXAによる分子の開裂後、基質は蛍光生成物、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)に変換される。(B)20分間の固定インキュベーション時間でのHIR Ab-HEXA融合タンパク質の質量に関する4-MU生成物の直線的形成。
【0072】
図15】例示的HIR Ab-ASM融合抗体が成熟ASMのアミノ末端とHIR Abの軽鎖のカルボキシル末端の、軽鎖の定常ドメイン(CL)とASM酵素の間のアミノ酸リンカーを用いる融合により形成される。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の可変領域が示される。重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメインが示される。
【0073】
図16】EcoRI、PmeIおよびPvuIで消化したpUC57-HIR Ab LC-ASMのアガロースゲル電気泳動。HIR Ab LC-ASM合成遺伝子(配列番号20)は商業ベンダーにより合成され、pUC57クローニングベクターに入れられた。~2.5kb HIR Ab LC-ASM改変cDNAが放出され、EcoRI-PmeIによりpUC57プラスミド骨格から分離され(レーン2~4複製)およびアガロースゲル電気泳動により単離された。融合タンパク質cDNAの単離を促すため、pUC57骨格ベクターをPvuIで消化させ、それはそれぞれ約1.7および1.3kbまでサイズを減少させた。レーン1はDNA標品である。
【0074】
図17】HIR Ab LC-ASM発現ベクターの遺伝子操作。HIR Ab-ASM軽鎖(LC)融合タンパク質発現ベクター、クローンpHIR Ab LC-ASMを、HIR Ab LC-ASM cDNAの発現ベクターの同じエンドヌクレアーゼ部位に挿入することにより操作した。HIR Ab LC-ASM cDNAは、31アミノ酸リンカーを介して、シグナルペプチドのない567アミノ酸の成熟ASM(配列番号17)のアミノ末端に融合した234アミノ酸のHIR Ab LC(配列番号8)からなる融合タンパク質をコードする。CMV=サイトメガロウイルス;BGH=ウシ成長ホルモン;SV=サルウイルス;amp=アンピシリン耐性;neo=ネオマイシン;複製起点;DHFR=ジヒドロ葉酸レダクターゼ;LC=軽鎖;HC=重鎖;ASM=酸スフィンゴミエリナーゼ。
【0075】
図18】46アミノ酸酵素シグナルペプチドおよび15アミノ酸プロペプチドを含まないASMのアミノ酸配列(NP_000534)(成熟ASM)。
【0076】
図19】例示的ヒトインスリン受容体抗体軽鎖の成熟ヒトASMへの融合体のアミノ酸配列。下線を引いた配列は、順に、IgGシグナルペプチド、CDR1、CDR2、CDR3および軽鎖のカルボキシ末端を成熟ASMのアミノ末端に結合する31アミノ酸配列である。斜体の配列はヒトカッパ由来軽鎖定常領域に対応する。太字の配列は、46アミノ酸シグナルペプチドおよび15アミノ酸プロペプチドがないヒトASMに対応する。
【0077】
図20】分子量(MW)標品(レーン1、5および6)、精製HIR Ab(レーン2)および精製HIR Ab-ASM融合タンパク質(レーン3)およびウシ血清アルブミン(BSA)標品(レーン4)の還元SDS-PAGE。HIR Abは55kDa重鎖(HC)および28kDa軽鎖(LC)により形成される。HIR Ab-ASM融合タンパク質は55kDa HIR Ab重鎖(HC)およびHIR Ab軽鎖とASM105kDa融合体(LC-ASM)により形成される。kDa=キロダルトン;LMW=低MW;HMW=高MW。
【0078】
図21】抗ヒトIgG一次抗体(A)または抗ヒトASM一次抗血清(B)のウェスタンブロット。HIRMAb-ASM融合タンパク質(レーン3)の免疫反応性を、HIR Ab(レーン2)の免疫反応性と比較する。HIR Ab-ASM融合タンパク質およびHIR Ab両者は、抗IgGウェスタンで同一重鎖を有する。軽鎖とASMの融合タンパク質は抗IgGおよび抗ヒトASM抗体両者と反応し、一方HIR Ab重鎖および軽鎖は抗IgG抗体とのみ反応する。分子量(MW)標品ならびに免疫反応性重鎖および軽鎖の移動に基づき、HIRMAb-ASM融合タンパク質の重鎖および融合軽鎖の推定MWはそれぞれ55kDaおよび105kDaであり、これは図15に示すヘテロ四量体融合タンパク質の320kDaのMWに対応する。
【0079】
図22】キメラHIR AbまたはHIR Ab-ASM融合タンパク質のHIR細胞外ドメイン(ECD)への結合は飽和性である。HIR ECDへのHIR Ab-ASM結合のED50は299±40ng/mLであり、これは、320kDaのMWに基づき0.93±0.12nMである。これは、150kDaのMWに基づき0.32±0.01nMである47±2ng/mLであるキメラHIR Abの結合のED50と同等である。
【0080】
図23】(A)ASM蛍光定量的酵素アッセイの基質、6-ヘキサデカノイルアミノ-4-メチルウンベリフェリルホスホリルコリン(HMU-PC)の構造をパネルAに示す。ASMによる分子の開裂後、基質は蛍光生成物、6-ヘキサデカノイルアミノ-4-メチルウンベリフェロン(HMU)に変換される。(B)60分間の固定インキュベーション時間でのHIR Ab-ASM融合タンパク質(ng)の質量に関するHMU生成物の直線的形成(インキュベーション1分間あたりに形成されるHMUのnmolとして表す)。
【0081】
図24】例示的HIR Ab-PPT1融合抗体が成熟PPT1のアミノ末端とHIR Abの重鎖のカルボキシル末端の重鎖の定常ドメイン(CL)とPPT1酵素の間のアミノ酸リンカーを用いる融合により形成される。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の可変領域が示される。重鎖のCH1、CH2およびCH3定常ドメインおよび軽鎖の定常ドメイン(CL)が示される。
【0082】
図25】StuIおよびHindIIIで消化したpUC57-ヒトPPT1(シグナルペプチドがない)のアガロースゲル電気泳動。ヒトPPT1合成遺伝子(配列番号24)は商業ベンダーにより合成され、pUC57クローニングベクターに入れられた。ヒトPPT1 cDNAはそれぞれStuIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼ部位が隣接する。約0.9kb ヒトPPT1改変cDNAが放出され、約3.0kb pUC57プラスミド骨格からStuI-HindIII消化(レーン2~4は複製)から分離され、アガロースゲル電気泳動により単離された。レーン1はDNA標品である。
【0083】
図26】HIR Ab HC-PPT1発現ベクターの遺伝子操作。HIR Ab-PPT1重鎖(HC)融合タンパク質発現ベクター、クローンpHIR Ab-HC-PPT1を、pUC57-ヒトPPT1をStuIおよびHindIIIで消化し、アガロースゲル電気泳動により単離して得たヒトPPT1(シグナルペプチドがない)cDNA(図25)を、名称pHIR Ab-HCの発現ベクターのHpaI-HindIII制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入することにより操作した。後者は4アミノ酸リンカー、Ser-Ser-Ser-Serまたは31アミノ酸リンカー(SSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSS)、続いてHpaI部位を含む。HIR Ab HC-PPT1 cDNAは、4アミノ酸または31アミノ酸リンカーを介して、シグナルペプチド(配列番号21)がない279アミノ酸の成熟PPT1のアミノ末端に融合したHIR Ab HCの1~461アミノ酸(配列番号7)からなる融合タンパク質をコードする。CMV=サイトメガロウイルス;BGH=ウシ成長ホルモン;SV=サルウイルス;amp=アンピシリン耐性;neo=ネオマイシン;複製起点;DHFR=ジヒドロ葉酸レダクターゼ;LC=軽鎖;HC=重鎖;PPT1=パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ。
【0084】
図27】27アミノ酸酵素シグナルペプチドを含まないPPT1のアミノ酸配列(NP_000301)。
【0085】
図28】例示的ヒトインスリン受容体抗体重鎖の成熟ヒトPPT1への融合体のアミノ酸配列。下線を引いた配列は、順に、IgGシグナルペプチド、CDR1、CDR2、CDR3および重鎖のカルボキシ末端を成熟PPT1のアミノ末端に結合する4アミノ酸配列である。斜体の配列はヒトIgG1由来重鎖定常領域に対応する。太字の配列は、酵素の27アミノ酸シグナルペプチドがないヒトPPT1に対応する。
【0086】
図29】例示的ヒトインスリン受容体抗体重鎖の成熟ヒトPPT1への融合体のアミノ酸配列。下線を引いた配列は、順に、IgGシグナルペプチド、CDR1、CDR2、CDR3および重鎖のカルボキシ末端を成熟PPT1のアミノ末端に結合する31アミノ酸配列である。斜体の配列はヒトIgG1由来重鎖定常領域に対応する。太字の配列は、酵素の27アミノ酸シグナルペプチドがないヒトPPT1に対応する。
【0087】
図30】分子量(MW)標品、精製HIR Ab(レーン1)および精製HIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質(レーン2)の還元SDS-PAGE。
【0088】
図31】抗ヒトIgG一次抗体(A)または抗ヒトPPT1一次抗体(B)のウェスタンブロット。パネルAにおいて、抗ヒトIgG一次抗体に対する免疫反応性をHIR Ab(レーン1)およびHIR Ab-PPT1融合タンパク質(レーン2)で比較する。パネルBにおいて、抗ヒトPPT1一次抗体に対する免疫反応性をHIR Ab-PPT1融合タンパク質(レーン1)について示す。パネルAは、HIR Ab-PPT1融合タンパク質およびHIR Abが抗IgGウェスタンで同一軽鎖を有することを示す。HIR Ab-PPT1融合タンパク質の融合重鎖は抗IgG(レーン2、パネルA)および抗ヒトPPT1抗体(レーン1、パネルB)両者と反応する。分子量(MW)標品の相対的移動に基づき、HIR Abは54kDa重鎖(HC)および24kDa軽鎖(LC)により形成される。HIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質は24kDa HIR Ab軽鎖(HC)および HIR Ab重鎖、成熟PPT1およびPPT1をHIR Ab重鎖のC末端に結合する31アミノ酸リンカーの99kDa融合タンパク質からなる。
【0089】
図32】キメラHIR AbまたはHIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質のHIR細胞外ドメイン(ECD)への結合は飽和性である。HIR ECDへのHIR Ab-LL-PPT1結合のED50は94±28ng/mLであり、これは、246kDaのMWに基づき0.38±0.11nMである。これは、150kDaのMWに基づき0.26±0.04nMである39±6ng/mLのキメラHIR Abの結合のED50と同等である。HIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質は、HIR Ab重鎖のC末端と成熟PPT1のN末端の間に31アミノ酸リンカーを含む。
【0090】
図33】(A)PPT1蛍光定量的酵素アッセイの基質、4-メチルウンベリフェリル6-チオ-パルミテート-β-D-グルコピラノシド(Mu-6S-Palm-ベータ-Glc)の構造をパネルAに示す。PPT1による分子の開裂後、基質は蛍光生成物、4-メチルウンベリフェロン(MU)に変換される。(B)60分間の固定インキュベーション時間でのHIR Ab-PPT1融合タンパク質の質量に関するMU生成物の直線的形成。4アミノ酸または31アミノ酸リンカーを有するHIR Ab-PPT1のPPT1酵素活性は同等である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
発明の詳細な記載
血液脳関門(BBB)は、中枢神経系に全身的に投与されたリソソーム酵素(例えば、組み換えHEXA、ASMまたはPPT1)を送達する際の厄介な障壁である。ここに記載する方法および組成物は、HEXAなどのTSDで欠損している酵素またはASMなどのNPDで欠損している酵素またはPPT1などのNCL1で欠損している酵素を、治療に意義のあるレベルでBBBを通過してCNSに送達するために重要な因子を検討する:1)内在性BBBトランスポーター上での輸送を経てBBBを通過させるためのTSD、NPDまたはNCL1で欠損している酵素の修飾;2)BBB輸送を生じさせるのに必要な修飾後の酵素活性の保持に基づく、全身的に投与された修飾酵素のCNSへの取り込み量および速度。ここに記載する方法および組成物の種々の態様は、(1)介在配列を伴いまたは伴わずに内在性BBB受容体の細胞外ドメインに対する免疫グロブリン(重鎖または軽鎖)に融合した酵素(例えば、HEXA、ASMまたはPPT1活性を有するタンパク質)を含む融合抗体を提供し;そして(2)CNSにおける取り込みおよび比活性に基づき融合抗体の治療有効全身用量を確立することにより、これらの因子を検討する。ある実施態様において、内在性BBB受容体に対する抗体は、ヒトインスリン受容体に対する抗体(HIR Ab)である。
【0092】
したがって、ここに提供されるのは、処置を必要とする対象に酵素活性を有し、ヒトインスリン受容体などの内在性BBB受容体トランスポーターの細胞外ドメインに選択的に結合する二機能性BBB受容体Ab-酵素融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することによる、中枢神経系における酵素(例えば、HEXA、ASMまたはPPT1)欠損を処置するための組成物および方法である。
【0093】
一部定義
ここで使用する「処置」または「処置する」は、治療的利益および/または予防的利益の達成を含む。治療的利益は、処置される根底の障害または状態の根絶または改善を意味する。例えば、TSD、NPDまたはNCL1を有する個体において、治療的は、障害の進行の部分的または完全な停止または障害の部分的または完全な回復を意味する。また、治療的利益は、患者で改善が観察されるように、根底の状態と関連する1以上の生理学的または心理学的症状の根絶または改善により、患者がなお該状態に罹患し得る事実とは関係なく、達成される。処置の予防的利益は、状態の阻止、状態の進行遅延(例えば、リソソーム蓄積障害の進行の減速)または状態が発症する可能性の減少を含む。ここで使用する「処置する」または「処置」は予防を含む。
【0094】
ここで使用する用語「有効量」は、全身的に投与したとき、有益なまたは所望の臨床的結果または認知、記憶および気分の改善または他の所望のCNS結果などの有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分である量であり得る。有効量はまた予防効果を生じる量、例えば、病的なまたは望まない状態の出現を遅延、低減または排除する量でもある。このような状態は、精神遅滞、聴力損失および神経変性を含むが、これらに限定されない。有効量は1以上の投与で達成され得る。処置に関して、ここに提供される組成物の「有効量」は、障害、例えば、神経学障害の進行を軽減、寛解、安定化、逆転または減速させるのに十分な量である。「有効量」は、単独でまたは疾患または障害の処置に使用される1以上の薬剤と組み合わせて使用されるここに提供する組成物の何れかによるものであり得る。本実施態様の範囲内の治療剤の「有効量」は、患者の処置医または獣医師により決定される。このような量は当業者により容易に確認され、本実施態様により投与したときの治療効果である。治療有効量であるかに影響する因子は、投与した融合抗体の酵素比活性、その吸収プロファイル(例えば、その脳への取り込み速度)、障害が始まってからの経過時間ならびに処置される個体の年齢、身体状態、他の疾患状態の存在および栄養状態を含む。さらに、患者が受けるかもしれない他の投薬は、投与する治療剤の治療有効量の決定に影響する。
【0095】
ここで使用する「約」ある値は、該ある値の±10%と定義される。例えば、用語「約-20℃」は-22℃~-18℃の範囲を意味する。他の例として、「約1時間」は54分間~66分間の範囲を意味する。
【0096】
ここで使用する不定冠詞「ある」は、特に断らない限り「少なくとも1つ」を意味する。同様に、定冠詞「該」は、特に断らない限り、文脈がオープンエンドであることを可能とするか必要とするとき、「少なくとも該」を意味する。ここで使用する用語「または」は、非排他的であることをいうために使用するかまたは、例えば「AまたはB」は、特に断らない限り「Aを含むがBは含まない」、「Bを含むがAを含まない」および「AおよびBを含む」。ここで使用する単数表現は、明示的にかつ明白に一つのものに限定されない限り、複数を含む。ここで使用する用語「または」は、特に断らない限り「および/または」を意味する。ここで使用する用語「実質的に」は、特に断らない限り、該用語により修飾される値の30%を超えないまたは下回らない値をいう。例えば、用語「実質的に-20℃」は-26℃~-14℃の範囲を意味する。
【0097】
ここで使用する「対象」または「個体」は動物、例えば、哺乳動物である。ある実施態様において、「対象」または「個体」はヒトである。ある実施態様において、対象はTSD、NPDまたはNCL1を有する。
【0098】
ある実施態様において、融合抗体を含む薬理学的組成物は、「末梢性に投与される」または「末梢投与される」。ここで使用するこれらの用語は、CNSへの直接投与ではない、例えば、薬剤を血液-脳関門の非脳側と接触させる、薬剤、例えば、治療剤の個体への投与の何らかの形態をいう。ここで使用する「末梢投与」は、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、経皮、吸入、経頬、鼻腔内、直腸、経口、非経腸、舌下または経鼻を含む。
【0099】
ここでの「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される添加物」は、それ自体、組成物を受ける個体に有害な抗体の産生を誘発しない、あらゆる担体をいう。このような担体は当業者に周知である。薬学的に許容される担体/添加物の徹底的な記載は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Gennaro, AR, ed., 20th edition, 2000: Williams and Wilkins PA, USAに見ることができる。薬学的に許容される担体の例は、塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を含む。例えば、ここに記載する組成物は液体形態で提供でき、0.01~1%でのポリソルベート-80などの界面活性剤またはマンニトール、ソルビトールもしくはトレハロースなどの炭水化物添加物を伴うまたは伴わない、種々のpH(5~8)の食塩水ベースの水溶液に製剤される。一般に使用される緩衝液はヒスチジン、酢酸、リン酸またはクエン酸を含む。点滴溶液は0~10%デキストロースを含み得る。
【0100】
「組み換え宿主細胞」または「宿主細胞」は、挿入に使用した方法、例えば、直接取り込み、形質導入、f-matingまたは組み換え宿主細胞を作るために当分野で知られる他の方法の如何にかかわらず、外因性ポリヌクレオチドを含む細胞をいう。外因性ポリヌクレオチドは、統合されていないベクター、例えば、プラスミドとして維持されるかまたはそれらとは異なって、宿主ゲノムに統合され得る。
【0101】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうためにここで相互交換可能に使用される。すなわち、ポリペプチドの記載はペプチドの記載およびタンパク質の記載に等しく適用され、その逆もまた同じである。本用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび1以上のアミノ酸残基が天然に存在しないアミノ酸であるアミノ酸ポリマー、例えば、アミノ酸アナログに適用される。ここで使用する用語は、アミノ酸残基が共有ペプチド結合により結合している、完全長タンパク質(例えば、抗原)を含むあらゆる長さのアミノ酸鎖に適用される。
【0102】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸に類似する方法で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣体をいう。天然にコードされるアミノ酸は、20の通常のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン)およびピロリシンおよびセレノシステインである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸に類似する基本化学構造を有する化合物をいい、すなわち、このようなアミノ酸アナログの基本化学構造は、一般に水素、カルボキシル基、アミノ基および、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどのR基に結合したα炭素を含む。このようなアナログは、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有し得るが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。
【0103】
アミノ酸は、本明細書では一般に知られる3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号で記載し得る。ヌクレオチドは、同様に、その一般に受け入れられている一文字コードで記載し得る。
【0104】
用語「核酸」は、一本鎖または二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーをいう。特に限定しない限り、本用語は、対照核酸に類似する結合性質を有し、天然に存在するヌクレオチドに類似する方法で代謝される、天然ヌクレオチドの既知アナログを含む核酸を包含する。他に限定されない限り、本用語はまたPNA(ペプチド核酸)、アンチセンステクノロジーで使用されるDNAのアナログ(ホスホロチオエート、ホスホロアミデートなど)を含む、オリゴヌクレオチドアナログもいう。特に断らない限り、特定の核酸配列はまた暗示的にその保存的修飾されたバリアント(縮重コドン置換を含むが、これに限定されない)および相補的配列ならびに明示的に示される配列を含む。具体的に、縮重コドン置換は、1以上の選択(または全)コドンの第三位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列の産生により達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);およびCassol et al. (1992); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0105】
用語「単離」および「精製」は、その天然環境から実質的にまたは本質的に取り出されたまたは濃縮された物質をいう。例えば、単離核酸は、通常隣接する核酸またはサンプルにおける他の核酸もしくは成分(タンパク質、脂質など)から離されたものであり得る。他の例では、ポリペプチドは、その天然環境から実質的に取り出されてまたは濃縮されているならば、精製されている。核酸およびタンパク質を精製および単離する方法は当分野で周知である。
【0106】
血液脳関門
ある態様において、ここに提供されるのは、内在性BBB受容体/トランスポーター上での受容体介在輸送を介して血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンに融合したTSD(例えば、HEXA)、NPD(例えば、ASM)またはNCL1(例えば、PPT1)で欠損している酵素を利用する、組成物および方法である。ターゲティングのための例示的内在性トランスポーターは、BBB上のインスリン受容体である。BBBインスリン受容体は、循環インスリンおよびある種のHIRMAbなどのペプチド模倣モノクローナル抗体(MAb)の脳への輸送に介在する。内在性リガンドまたはペプチド模倣MAbで標的化される他の内在性トランスポーターは、BBBトランスフェリン受容体、BBBインシュリン様増殖因子(IGF)受容体、BBBレプチン受容体またはBBB低密度リポタンパク質(LDL)受容体を含む。組成物および方法は、末梢血から、血液脳関門を通過してCNSにHEXA、ASMまたはPPT1を輸送するのに有用である。ここで使用する「血液-脳関門」は、脳毛細血管内皮原形質膜内の密着結合により形成され、脳内への分子の輸送を制限する極めて堅固な関門を形成する、末梢循環と脳および脊髄の間の関門であり、BBBは、分子量60Da程度の尿素のよう小な分子でさえ、制限できるほど緻密な関門である。脳内の血液-脳関門、脊髄内の血液-脊髄関門および網膜内の血液-網膜関門は、中枢神経系(CNS)内の連続的毛細血管関門であり、集合的に血液-脳関門またはBBBと称される。
【0107】
BBBは、脳およびCNSに対する新規神経治療剤、診断剤および研究ツールの開発を制限する。組み換えタンパク質、アンチセンス薬物、遺伝子医薬、精製抗体またはRNA干渉(RNAi)ベースの薬物などの大部分の高分子治療剤は、薬理学的に意義のある量でBBBを通過しない。一般に小分子薬物はBBBを通過できると考えられているが、実際、BBBを通過する輸送がないため全小分子薬物の<2%しか脳で活性ではない。薬理学的に意義のある量でBBBを通過するために、分子は脂質可溶性であり、400ダルトン(Da)未満の分子量を有しなければならず、小分子の圧倒的多数は、これら二重の分子特徴を有しない。それ故に、大部分の潜在的治療剤、診断剤または研究分子は、薬理学的に活性な量でBBBを通過しない。BBBを迂回するために、脳室内(ICV)注入、脳内(IC)投与および対流増強拡散(CED)などの侵襲的経頭蓋薬物送達戦略が使用される。脳への経頭蓋薬物送達は高価であり、侵襲的であり、かつ大部分無効である。ICV経路は、髄腔内(IT)経路とも称され、ICV経路により与えられる薬物では典型的な脳実質にではなく、脳の脳室上皮または髄膜表面にしかHEXA、ASMまたはPPT1を送達しない。HEXA、ASMまたはPPT1などの酵素のIC投与は、脳内でのタンパク質拡散効率が極めて低いため、局所送達しか提供しない。同様に、CED経路は、拡散による薬物浸透が限定されているため、脳のカテーテル先端近辺の局所送達しか提供しない。
【0108】
ここに記載する方法は、BBBを迂回するためのこれらの高度に侵襲的かつ一般に不満足な方法の代替を提供し、機能的HEXA、ASMまたはPPT1が、ここに記載する、それぞれHIRMAb-HEXA融合抗体、HIRMAb-ASM融合抗体またはHIRMAb-PPT1融合抗体組成物の全身投与後に末梢血からBBBを通過してCNSに入ることを可能とする。ここに記載する方法は、所望の二機能性HIRMAb-酵素融合抗体を末梢血からCNSに到達させるために、BBB上のインスリン受容体(例えば、ヒトインスリン受容体)の発現を利用する。
【0109】
内在性受容体
グルコースまたはアミノ酸などの血中のある内在性小分子は水可溶性であるが、あるBBB担体系上の担体介在輸送(CMT)のため、それでもBBBを貫通できる。例えば、グルコースは、GLUT1グルコーストランスポーター上でのCMTを介してBBBを貫通する。L-DOPAなどの治療アミノ酸を含むアミノ酸は、LAT1大型中性アミノ酸トランスポーター上でのCMTを介してBBBを通過する。同様に、インスリン、トランスフェリン、インシュリン様増殖因子、レプチンまたは低密度リポタンパク質などの血中のある種の内在性大型分子は、あるBBB受容体系上の受容体介在経細胞輸送(RMT)により、BBBを通過できる。例えば、インスリンは、インスリン受容体上でのRMTを介してBBBを通過する。トランスフェリンは、トランスフェリン受容体上でのRMTを介してBBBを通過する。インシュリン様増殖因子は、インシュリン様増殖因子受容体上でのRMTを介してBBBを通過し得る。レプチンは、レプチン受容体上でのRMTを介してBBBを通過し得る。低密度リポタンパク質は、低密度リポタンパク質受容体上での輸送を介してBBBを通過し得る。
【0110】
BBBは、数種の巨大分子の血液から脳への輸送を可能とする、インスリン受容体を含む特異的受容体を有することが示されている。特に、インスリン受容体は、ここに記載するHIR Ab-酵素融合抗体のトランスポーターとして適する。ここに記載するHIRMAb-HEXA融合抗体、HIRMAb-ASM融合抗体またはHIRMAb-PPT1融合抗体は、ヒトインスリン受容体の細胞外ドメイン(ECD)に結合する。
【0111】
インスリン受容体およびその細胞外、インスリン結合ドメイン(ECD)は、構造的および機能的両者で、文献において広範に特徴づけされている。例えば、Yip et al (2003), J Biol. Chem, 278(30):27329-27332;およびWhittaker et al. (2005), J Biol Chem, 280(22):20932-20936参照。ヒトインスリン受容体のアミノ酸およびヌクレオチド配列は、GenBank accession No. NM_000208の下に見られ得る。
【0112】
インスリン受容体介在輸送系に結合する抗体
TSD(例えば、HEXA)、NPD(例えば、ASM)またはNCL1(例えば、PPT1)で欠損している酵素のCNSへの送達のための一つの非侵襲的アプローチは、酵素(HEXA、ASMまたはPPT1)の、インスリン受容体のECDに選択的に結合する抗体への融合である。BBBで発現されるインスリン受容体は、それにより、BBBを通過する酵素の輸送のためのベクターとして働き得る。あるECD特異的抗体は内在性リガンドを模倣し、それにより、特異的受容体系上の輸送を介して原形質膜関門を横断し得る。このようなインスリン受容体抗体は、図1に模式的に記載するとおり、分子「トロイの木馬」または「TH」として働き得る。酵素は、それ自体では、通常血液-脳関門(BBB)を通過しない。しかしながら、酵素のTHへの融合後、酵素は、脳においてBBBおよび脳細胞膜両者で発現されるIRなどの内在性BBB受容体上での輸送により、BBBおよび脳細胞膜を通過できる(図1)。
【0113】
故に、抗体および他の巨大分子は通常脳から排除されるとの事実にかかわらず、BBB上に発現される受容体、例えば、インスリン受容体の細胞外ドメインに特異性を有するならば、脳実質に分子を送達するための有効な媒体であり得る。ある実施態様において、HIR Ab-酵素融合抗体は、ヒトBBB HIR上の細胞外表面エピトープであり、この結合は、ヒトBBBインスリン受容体が介在する輸送反応を介して、融合抗体がBBBを横断することを可能とする。
【0114】
用語「抗体」は、天然であれ、一部または完全に合成により産生されたものであれ、免疫グロブリンをいう。本用語はまた抗原結合ドメインであるまたはそれと相同である結合ドメインを有するあらゆるポリペプチドまたはタンパク質を包含する。CDR移植抗体も本用語により意図される。
【0115】
「天然抗体」および「天然免疫グロブリン」は、通常、2つの同一軽(L)鎖および2つの同一重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、一般に一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合し、一方ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖で変わる。各重鎖および軽鎖はまた一定間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(「VH」)、続いていくつかの定常ドメイン(「CH」)を有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(「VL」)および他端に定常ドメイン(「CL」)を有し、軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメイン間に境界を形成すると考えられる。
【0116】
用語「可変ドメイン」は、種々のアイソフォームまたは異なる種間におけるようなファミリーメンバーの配列で広く異なるタンパク質ドメインをいう。抗体に関して、用語「可変ドメイン」は、各特定の抗体のその特定の抗原への結合および特異性に使用される抗体の可変ドメインをいう。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインをとおして均一に分布はしていない。軽鎖および重鎖可変ドメイン両者の超可変領域と称されるセグメントに集約される。可変ドメインのより高度に保存された部分は、「フレームワーク領域」または「FR」と称される。非修飾重鎖および軽鎖の各々は、大部分β-シート配置を採用し、3つの超可変領域(これは、β-シート構造を連結し、ある場合それを形成するループを形成する)に結合される可変ドメイン4つのFR(それぞれFR1、FR2、FR3およびFR4)からなる。各鎖の超可変領域はFRにより近位で保持され、他の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与するKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991), pages 647-669参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与などの種々のエフェクター機能を発揮する。
【0117】
ここで使用するとき、用語「超可変領域」は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基をいう。超可変領域は、相補的方法で抗原に直接結合し、それぞれCDR1、CDR2およびCDR3として知られる3つの「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基を含む。
【0118】
軽鎖可変ドメインにおいて、CDRは、一般に残基約24~34(CDRL1)、50~56(CDRL2)および89~97(CDRL3)に対応し、重鎖可変ドメインにおいて、CDRは、一般に残基約31~35(CDRH1)、50~65(CDRH2)および95~102(CDRH3)(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))に対応するおよび/または「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)および重鎖可変ドメインにおける残基26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901 917 (1987))に対応する。
【0119】
ここで使用する「可変フレームワーク領域」または「VFR」は、抗原結合ポケットまたは溝の一部を形成するおよび/または抗原と接触し得るフレームワーク残基をいう。ある実施態様において、フレームワーク残基は、抗原結合ポケットまたは溝の一部であるループを形成する。ループにおけるアミノ酸残基は抗原と接触してもしなくてもよい。ある実施態様において、VFRのループアミノ酸は、抗体、抗体重鎖または抗体軽鎖の三次元構造の検査により決定される。三次元構造は、溶媒接触アミノ酸位置がループを形成するおよび/または抗体可変ドメインで接触する抗原を提供する可能性が高いため、そのような位置を分析し得る。溶媒接触位置の一部は、アミノ酸配列多様性を許容でき、その他(例えば構造的位置)の多様化は低くてよい。抗体可変ドメインの三次元構造は、結晶構造またはタンパク質モデリングに由来し得る。ある実施態様において、VFRは、重鎖可変ドメインのアミノ酸71~78位に対応するアミノ酸位置を含む、本質的にそれからなるまたはそれからなり、位置はKabat et al., 1991に従い規定される。ある実施態様において、VFRは、CDRH2とCDRH3の間に位置するフレームワーク領域3の部分を形成する。VFRは、標的抗原と接触するまたは抗原結合ポケットの一部を形成するように十分に配置されたループを形成し得る。
【0120】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列によって、免疫グロブリンは種々のクラスに割り当てられ得る。IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかはサブラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2にさらに細分され得る。免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメイン(Fc)は、それぞれα、δ、ε、γおよびμと称される。免疫グロブリンの種々のクラスのサブユニット構造および三次元配置は周知である。
【0121】
あらゆる脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパまたは(「κ」)およびラムダまたは(「λ」)と称される2つの明確に異なるタイプの一方に割り当てられ得る。
【0122】
ここに記載する抗体または融合抗体に関して、用語「選択的に結合する」、「選択的結合」、「特異的に結合する」または「特異的結合」は、解離定数(Kd)が約10-6M以下、例えば、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11Mまたは10-12Mである、抗体または融合抗体のその標的抗原への結合をいう。
【0123】
ここで使用する用語抗体は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントを意味することも理解される(一般に、Holliger et al., Nature Biotech. 23 (9) 1126-1129 (2005)参照)。このような抗体の非限定的例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544 546);および(vi)単離相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは別の遺伝子によりコードされるが、VLおよびVH領域が一価分子を形成するよう対合する単一タンパク質鎖として製造させる合成または天然リンカーにより、組み換え方法を使用して連結され得る(一本鎖FvまたはscFvまたは一本鎖FabまたはscFabとして知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423 426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879 5883;およびOsbourn et al. (1998) Nat. Biotechnol. 16:778参照)。このような一本鎖抗体も、用語抗体に含まれることが意図される。特異的一本鎖抗体のあらゆるVHおよびVL配列を、意図するIgG分子または他のアイソタイプをコードする発現ベクターを作製するために、ヒト免疫グロブリン定常領域cDNAまたはゲノム配列と結合させ得る。VHおよびVLは、タンパク質化学または組み換えDNAテクノロジーを使用する、免疫グロブリンのFab、Fvまたは他のフラグメントの作製にも使用され得る。二重特異性抗体または単一単量体可変ドメインのみからなる抗体などの他の形態の一本鎖抗体も包含される。
【0124】
「F(ab’)2」および「Fab’」部分は、免疫グロブリン(モノクローナル抗体)をペプシンおよびパパインなどのプロテアーゼで処理することにより製造でき、2つのH鎖の各々におけるヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合近くで免疫グロブリンを消化することにより産生した抗体フラグメントを含む。例えば、パパインは、2つのH鎖の各々におけるヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の上流でIgGを開裂し、VL(L鎖可変領域)およびCL(L鎖定常領域)からなるL鎖およびVH(H鎖可変領域)およびCHγ1(H鎖の定常領域におけるγ1領域)からなるH鎖フラグメントがジスルフィド結合によりそのC末端領域で結合された、2つの相同抗体フラグメントを産生する。これら2つの相同抗体フラグメントの各々はFab’と称される。ペプシンはまた2つのH鎖の各々におけるヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合の下流でIgGを開裂し、2つの上記Fab’がヒンジ領域で結合したフラグメントよりわずかに大きな抗体フラグメントを産生する。この抗体フラグメントはF(ab’)2と称される。
【0125】
Fabフラグメントは軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一定常ドメイン(CH1)も含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域の1以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端での数残基の付加により、Fabフラグメントと異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’についてここでの命名である。F(ab’)2抗体フラグメントは、元々、間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生された。抗体フラグメントの他の化学カップリングも知られる。
【0126】
「Fv」は、完全抗原認識および抗原結合部位を含む最小抗体フラグメントである。この領域は、緻密な、非共有結合的に会合された1つの重鎖と1つの軽鎖可変ドメインの二量体である。この配置で、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用して、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を規定する。集合的に、6つの超可変領域が抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの超可変領域しか含まないFvの半分)でさえ、抗原を認識し、結合する能力を有するが、結合部位全体より親和性は低い。
【0127】
「一本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVH、VLまたはVHとVL両者のドメインを含み、ここで、両ドメインは単一ポリペプチド鎖に存在する。ある実施態様において、Fvポリペプチドは、さらに、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーを含み、これにより、sFvが抗原結合に対する所望の構造を形成することが可能となる。sFvのレビューのために、例えば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269 315 (1994)参照。
【0128】
「キメラ」抗体は、異なる哺乳動物の組み合わせに由来する抗体である。哺乳動物は、例えば、ウサギ、マウス、ラット、ヤギまたはヒトであり得る。異なる哺乳動物の組み合わせは、ヒトおよびマウス源からのフラグメントの組み合わせを含む。
【0129】
ある実施態様において、ここに提供される抗体は、一般にマウスモノクローナル抗体のヒト化に由来するキメラヒト-マウス抗体であるモノクローナル抗体(MAb)である。このような抗体は、例えば、抗原攻撃に応答して特異的ヒト抗体を産生するように「操作」されている、遺伝子導入マウスから得る。この技術において、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座の要素を、内在性重鎖および軽鎖遺伝子座の標的破壊を含む胚幹細胞株に由来するマウス系統に導入する。遺伝子導入マウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成でき、該マウスをヒト抗体分泌ハイブリドーマの産生に使用できる。
【0130】
ヒトでの使用について、ヒトに投与したとき顕著な免疫原性を有しないのに十分であるヒト配列、例えば、約80%ヒトおよび約20%マウスまたは約85%ヒトおよび約15%マウスまたは約90%ヒトおよび約10%マウスまたは約95%ヒトおよび5%マウスまたは約95%を超えるヒトおよび約5%未満のマウスまたは100%ヒトを含む、HIR Abが好ましい。HIR MAbのより高度なヒト化形態も操作され得て、ヒト化HIR Abは、マウスHIR Abと同等な活性を有し、ここに提供される実施態様において使用され得る。例えば、2002年11月27日出願の米国特許出願公開20040101904および2005年2月17日出願の米国特許出願公開20050142141参照。本実施態様において使用するのに十分なヒト配列を有するヒトBBBインスリン受容体に対するヒト化抗体は、例えば、Boado et al. (2007), Biotechnol Bioeng, 96(2):381-391に記載される。
【0131】
例示的実施態様において、HIR抗体またはそれ由来の融合抗体(例えば、HIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1)は、図7(配列番号1~3)に挙げられたHC CDRの少なくとも一つの配列またはそのバリアントに対応するCDRを含む免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、最大1個、2個、3個、4個、5個または6個の単一アミノ酸変異を有する配列番号1のアミノ酸配列に対応するHC CDR1、最大1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の単一アミノ酸変異を有する配列番号2のアミノ酸配列に対応するHC CDR2または最大1個または2個の単一アミノ酸変異を有する配列番号3のアミノ酸配列に対応するHC CDR3、ここで、単一アミノ酸変異は置換、欠失または挿入である。
【0132】
他の実施態様において、HIR抗体または融合抗体(例えば、HIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1)は、アミノ酸配列が配列番号7(図5に示す)に少なくとも50%同一(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%までの何らかの他のパーセント同一)である、免疫グロブリンHCを含む。
【0133】
ある実施態様において、HIR Abまたは融合Ab(例えば、HIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1)は、図7(配列番号4~6)に挙げられたLC CDRの少なくとも一つの配列またはそのバリアントに対応するCDRを含む免疫グロブリン軽鎖を含む。例えば、最大1個、2個、3個、4個または5個の単一アミノ酸変異を有する配列番号4のアミノ酸配列に対応するLC CDR1、最大1個、2個、3個または4個の単一アミノ酸変異を有する配列番号5のアミノ酸配列に対応するLC CDR2または最大1個、2個、3個、4個または5個の単一アミノ酸変異を有する配列番号6のアミノ酸配列に対応するLC CDR3。
【0134】
他の実施態様において、HIR Abまたは融合Ab(例えば、HIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1)は、アミノ酸配列が配列番号8(図6に示す)に少なくとも50%同一(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%までの何らかの他のパーセント同一)である、免疫グロブリンLCを含む。
【0135】
さらに他の実施態様において、HIR Abまたは融合Ab(例えば、HIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1)は、上記HIR重鎖およびHIR軽鎖の何れかに対応する重鎖および軽鎖両方を含む。
【0136】
ここに提供されるHIR抗体は、グリコシル化されていてもグリコシル化されていなくてもよい。抗体がグリコシル化されるならば、抗体の機能に顕著に影響しないあらゆるパターンのグリコシル化が使用され得る。グリコシル化は、抗体が産生される細胞に典型的なパターンで生じ得て、細胞型毎に異なり得る。例えば、マウス骨髄腫細胞により産生されるモノクローナル抗体のグリコシル化パターンは、トランスフェクトチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により産生されるモノクローナル抗体のグリコシル化パターンと異なり得る。ある実施態様において、抗体は、トランスフェクトチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により産生されるパターンでグリコシル化される。
【0137】
当業者は、現在のテクノロジーで、候補HIR Abまたは既知HIR Abの膨大な数の配列バリアントが容易に産生でき(例えば、インビトロ)、ヒトインスリン受容体のECDまたはその単離エピトープなどの標的抗原への結合についてスクリーニングできることを認識する。例えば、抗体配列バリアントの超ハイスループットスクリーニングの例についてFukuda et al. (2006) “In vitro evolution of single-chain antibodies using mRNA display,” Nuc. Acid Res., 34(19)(オンライン出版)参照。また、Chen et al. (1999), “In vitro scanning saturation mutagenesis of all the specificity determining residues in an antibody binding site,” Prot Eng, 12(4): 349-356も参照。インスリン受容体ECDは、例えば、Coloma et al. (2000) Pharm Res, 17:266-274に記載のとおり精製し、HIR Abおよび既知HIR AbのHIR Ab配列バリアントについてスクリーニングに使用できる。
【0138】
したがって、ある実施態様において、所望のレベルのヒト配列で遺伝子操作したHIR Abを、TSDで欠損している酵素(例えば、HEXA)と融合して、二機能的分子である組み換え融合抗体を産生する。例えば、HIR Ab-HEXA融合抗体は、末梢投与後、(i)ヒトインスリン受容体の細胞外ドメインに結合し;(ii)N-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基を加水分解し;そして(iii)BBB HIR上での輸送を介してBBBを通過し、HEXA活性を保持して脳内に入ることができる。ある実施態様において、所望のレベルのヒト配列で遺伝子操作したHIR Abを、NPDで欠損している酵素(例えば、ASM)と融合させて、二機能的分子である組み換え融合抗体を産生する。例えば、HIR Ab-ASM融合抗体は、末梢投与後、(i)ヒトインスリン受容体の細胞外ドメインに結合し;(ii)スフィンゴミエリンを加水分解してセラミドおよびホスホコリンを形成し;そして(iii)BBB HIR上での輸送を介してBBBを通過し、ASM活性を保持して脳内に入ることができる。ある実施態様において、所望のレベルのヒト配列で遺伝子操作したHIR Abを、NCL1で欠損している酵素(例えば、PPT1)と融合させて、二機能的分子である組み換え融合抗体を産生する。例えば、HIR Ab-PPT1融合抗体は、末梢投与後、(i)ヒトインスリン受容体の細胞外ドメインに結合し;(ii) 脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートを加水分解し;そして(iii)BBB HIR上での輸送を介してBBBを通過し、PPT1活性を保持して脳内に入ることができる。
【0139】
リソソーム酵素
組み換えHEXA、ASMまたはPPT1の全身投与(例えば、静脈内注射による)は、それぞれTSD、NPDまたはNCL1を有する患者のCNSにおけるHEXA、ASMまたはPPT1の欠損を救済するとは期待されない。HEXA、ASMまたはPPT1はBBBを通過せず、BBBを通過して酵素が輸送されないため、末梢投与後CNSにおける意義のある治療効果を有することが妨げられる。しかしながら、本発明者らは、HEXA、ASMまたはPPT1を、HIR AbなどのBBBを通過する抗体に融合させたとき(例えば、共有リンカーにより)、この酵素は、それから静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内などのまたは経口投与などの非侵襲的末梢経路での投与後、血液からCNSに入ることができるようになることを発見した。HIR Ab-酵素融合抗体の投与は、末梢血から脳へのリソソーム酵素活性の送達を可能とする。ここに記載されるのは、それぞれCNSにおけるHEXA、ASMまたはPPT1欠損の処置のために治療的に有効であるHIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1融合抗体の全身用量の決定である。ここに記載するとおり、HIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1融合抗体の適切な全身用量は、HIR Ab-酵素融合抗体のCNS取り込み特性および酵素活性の定量的決定に基づき、確立される。
【0140】
M2ガングリオシドは中枢神経系で合成される。ここで使用するHEXA(例えば、GenBank Accession No. NP_000511下に挙げられるヒトHEXA配列)は、GM2ガングリオシドにおけるN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドの末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒できる、あらゆる天然に存在するまたは人工的な酵素をいう。スフィンゴミエリンは中枢神経系で合成される。ここで使用するASM(例えば、GenBank Accession No. NP_000534下に挙げられるヒトASM配列)は、セラミドおよびホスホコリンを形成するスフィンゴミエリンの加水分解を触媒できる、あらゆる天然に存在するまたは人工的な酵素をいう。脂肪酸アシルコンジュゲートは中枢神経系で合成される。ここで使用するPPT1(例えば、GenBank Accession No. NP_000301)下に挙げられるヒトPPT1配列)は、脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートの加水分解を触媒できるあらゆる天然に存在するまたは人工的な酵素をいう。
【0141】
ある実施態様において、HEXAは、Genbank NP_000511下に挙げられる529アミノ酸タンパク質のヒトHEXAのアミノ酸配列とまたは22アミノ酸シグナルペプチドを欠き、配列番号9に対応するその507アミノ酸部分配列と少なくとも50%同一(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%までの何らかの他のパーセント同一)であるアミノ酸配列を有する(図8)。ヒトHEXAのクローニングおよび発現は、Myerowitz et al (1985), “Human β-hexosaminidase α chain: coding sequence and homology with the β chain,” Proc Natl Acad Sci, 82: 7830-7834に記載されている。ある実施態様において、ASMは、Genbank NP_000534下に挙げられる631アミノ酸タンパク質のヒトASMのアミノ酸配列とまたは46アミノ酸シグナルペプチド、15アミノ酸プロペプチドおよび3アミノ酸カルボキシル末端ペプチドを欠き、配列番号17に対応するその567アミノ酸部分配列と少なくとも50%同一(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%までの何らかの他のパーセント同一)であるアミノ酸配列を有する(図18)。ヒトASMのクローニングおよび発現は、Schuchman et al (1991), “Human acid sphingomyleinase,” J Biol Chem 266: 8531-8539に記載されている。ある実施態様において、PPT1は、Genbank NP_000301下に挙げられる306アミノ酸タンパク質のヒトPPT1のアミノ酸配列とまたは27アミノ酸シグナルペプチドを欠き、配列番号21に対応するその279アミノ酸部分配列と少なくとも50%同一(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%までの何らかの他のパーセント同一)であるアミノ酸配列を有する(図27)。ヒトPPT1のクローニングおよび発現は、Camp et al (1994), “Molecular cloning and expression of palmityoy-protein thioesterase,” J Biol Chem 269: 23212-23219に記載されている。
【0142】
ある実施態様において、HEXAは、配列番号9と少なくとも50%同一(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%までの何れかの他のパーセント同一)であるアミノ酸配列を有する(図8に示す)。ある実施態様において、ASMは、配列番号17と少なくとも50%同一(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%までの何らかの他のパーセント同一)であるアミノ酸配列を示す(図18に示す)。ある実施態様において、PPT1は、配列番号21と少なくとも50%同一(例えば、少なくとも、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%までの何らかの他のパーセント同一)であるアミノ酸配列を有する(図27に示す)。配列番号9、配列番号17または配列番号21などの規範的HEXA、ASMまたはPPT1配列の配列バリアントは、例えば、配列全体または特定のドメインに対応する特異的配列の無作為変異誘発により産生され得る。あるいは、上記のもののような酵素機能に重要であることが知られる残基の変異を回避しながら、部位特異的変異誘発を反復して実施し得る。さらに、酵素配列の複数バリアントの産生において、変異耐容性予測プログラムを使用して、厳密に無作為の変異誘発により産生されるであろう非機能的配列バリアントの数を大きく減らし得る。タンパク質機能に対するタンパク質配列のアミノ酸置換の影響を予測する種々のプログラム(例えば、SIFT、PolyPhen、PANTHER PSEC、PMUTおよびTopoSNP)が、例えば、Henikoff et al. (2006), “Predicting the Effects of Amino Acid Substitutions on Protein Function,” Annu. Rev. Genomics Hum. Genet., 7:61-80に記載される。HEXA配列バリアントを、HEXA活性/HEXA活性の保持について、図13で使用される、基質として4-メチルウンベリフェリルN-アセチル-β-D-グルコサミニド(4-MUG)としても知られる4-メチルウンベリフェリル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシドを使用して、文献、Dewji (1986): Purification and characterization of β-N-acetylhexosaminidase I2 from human liver, Biochem J., 234: 157-162において知られる蛍光定量的酵素アッセイによりスクリーニングできる。ASM配列バリアントを、ASM活性/ASM活性の保持について、図23で使用される、基質として6-ヘキサデカノイルアミノ-4-メチルウンベリフェリルホスホコリン(HMU-PC)を使用する、文献、van Diggelen et al (2005): A new fluorometric enzyme assay for the diagnosis of Niemann Pick A/B, with specificity of natural sphingomyelinase substrate J Inherit. Metab. Dis., 28: 733-741において知られる蛍光定量的酵素アッセイによりスクリーニングできる。PPT1配列バリアントを、PPT1活性/PPT1活性の保持について、図33で使用される、基質として4-メチルウンベリフェリル6-チオ-パルミテート-β-D-グルコピラノシド(Mu-6S-Palm-ベータ-Glc)を使用する、文献、van Diggelen et al (1999): A rapid fluorogenic palmitoyl-protein thioesterase assay: Pre- and postnatal diagnosis of INCL Molec Genet Metab, 66: 240-244において知られる蛍光定量的酵素アッセイによりスクリーニングできる。したがって、当業者は、非常に多数の操作可能なHEXA、ASMまたはPPT1配列バリアントが、上記のとおり、当分野で日常的な方法により、酵素配列バリアンの極めて多様な「ライブラリー」の産生およびスクリーニングにより得ることができることを認識する。
【0143】
パーセント配列同一性は、慣用法により決定される。例えば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48:603 (1986)およびHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1992)参照。簡潔には、2つのアミノ酸配列を、Henikoff and Henikoff (ibid.)のギャップ・オープニング・ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ1および「BLOSUM62」スコアマトリクスを使用する整列スコアが最適化するように整列させる。次いで、パーセント同一性を、([同一マッチ総数]/[長い配列の長さ+2つの配列の整列のために長い配列に導入したギャップの数])(100)として計算する。
【0144】
当業者は、2つのアミノ酸配列の整列に利用可能な多くの確立されたアルゴリズムがあることを認識する。Pearson and Lipmanの「FASTA」類似性探索アルゴリズムは、ここに開示するアミノ酸配列と他のペプチドのアミノ酸配列が共有する同一性レベルの試験に適当なタンパク質整列方法である。FASTAアルゴリズムはPearson and Lipman, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)およびPearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)に記載される。簡潔には、FASTAは、保存的アミノ酸置換、挿入または欠失を考慮することなく、最高密度の同一性(ktup変数が1であるならば)または同一性対(ktup=2であるならば)を有するクエリー配列(例えば、配列番号9)および試験配列により共有される領域を同定することにより、まず配列を特徴づけする。次いで、最高密度の同一性を有する10領域を、アミノ酸置換マトリクスを使用して全対合アミノ酸の類似性を比較することにより再スコア化し、最高スコアに貢献する残基のみを含むよう、領域の終点を「トリム」する。「カットオフ」値(配列の長さおよびktup値に基づき、予定された式により計算)より大きなスコアを有する領域が数個あるならば、トリムした初期領域を試験して、該領域をギャップを用いて近似整列を形成するように連結できるか決定する。最後に、2つのアミノ酸配列の最高スコアリング領域を、アミノ酸挿入および欠失を可能とするNeedleman-Wunsch-Sellersアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:444 (1970); Sellers, SIAM J. Appl. Math. 26:787 (1974))の就職を使用して整列させる。FASTA分析の例示的パラメータはktup=1、ギャップ・オープニング・ペナルティ=10、ギャップ伸長ペナルティ=1および置換マトリクス=BLOSUM62である。これらのパラメータをPearson, Meth. Enzymol. 183:63 (1990)のAppendix 2に説明されるとおり、スコアマトリクスファイル(「SMATRIX」)の修飾によりFASTAプログラムに導入できる。
【0145】
本実施態様はまた、ここに開示するアミノ酸配列と比較して、保存的アミノ酸変化を有するタンパク質にも関する。一般的アミノ酸の中で、例えば、「保存的アミノ酸置換」は、下記群の各々の中でのアミノ酸の置換により説明される。(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン、(3)セリンおよびスレオニン、(4)アスパラギン酸およびグルタミン酸、(5)グルタミンおよびアスパラギンおよび(6)リシン、アルギニンおよびヒスチジンのように分けられる。BLOSUM62表は、関連タンパク質の500を超える群の高度に保存された領域を表す、タンパク質配列セグメントの約2,000の局所多重整列由来のアミノ酸置換マトリクスである(Henikoff and Henikoff, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:10915 (1992))。したがって、BLOSUM62置換頻度を使用して、本実施態様のアミノ酸配列に導入し得る保存的アミノ酸置換を定義できる。化学性質(上記のとおり)にのみ基づきアミノ酸置換を操作することは可能であるが、用語「保存的アミノ酸置換」は、好ましくは-1を超えるBLOSUM62値によりあらわされる置換をいう。例えば、置換が0、1、2または3のBLOSUM62値により特徴づけられるならば、該アミノ酸置換は保存的である。このシステムによると、好ましい保存的アミノ酸置換は少なくとも1(例えば、1、2または3)のBLOSUM62値により特徴づけられ、より好ましい保存的アミノ酸置換は、少なくとも2(例えば、2または3)のBLOSUM62値により特徴づけられる。
【0146】
アミノ酸配列は、付加的N末端またはC末端アミノ酸などの付加的残基を含んでよく、配列が本実施態様の組成物および方法において機能的であるのに十分な生物学的タンパク質活性を保持する限り、なお、本質的にここに開示する配列の一つに示すとおりであることも理解される。
【0147】
組成物
ここに記載する二機能性融合抗体が、別個の構成要素タンパク質の活性、例えば、BBBを通過できる抗体(例えば、HIR Ab)のBBB上の内在性受容体の細胞外ドメイン(例えば、IR ECD)への結合とTSD(例えば、HEXA)、NPD(例えば、ASM)またはNCL1(例えば、PPT1)で欠損している酵素の酵素活性を高い割合で保持することが判明した。ここに記載するタンパク質の何れかをコードするcDNAおよび発現ベクターの構築ならびにその発現および精製は、十分に当分野の通常技術の範囲内であり、ここに、例えば、実施例1~3に、そしてBoado et al (2007), Biotechnol Bioeng 96:381-391、米国特許出願11/061,956および米国特許出願11/245,710に詳述される。
【0148】
ここに記載されるのは、ここに記載するとおり、HEXA、ASMまたはPPT1に融合するBBBを通過できる内在性BBB受容体に対する抗体(例えば、HIR Ab)を含む二機能性融合抗体であり、ここで、内在性BBB受容体に対する抗体は血液脳関門を通過でき、HEXA、ASMまたはPPT1は、分離された存在(separate entities)としての活性と比較して、各々、平均で少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の活性を保持する。ある実施態様において、ここに提供されるのは、HIR Ab-酵素融合抗体であり、ここで、HIR Abおよび酵素は、分離された存在としての活性と比較して、各々平均で少なくとも約50%の活性を保持する。ある実施態様において、ここに提供されるのは、HIR Ab-酵素融合抗体であり、ここで、HIR Abおよび酵素は、分離された存在としての活性と比較して、各々平均で少なくとも約60%の活性を保持する。ある実施態様において、ここに提供されるのは、HIR Ab-酵素融合抗体であり、ここで、HIR Abおよび酵素は、分離された存在としての活性と比較して、各々平均で少なくとも約70%の活性を保持する。ある実施態様において、ここに提供されるのは、HIR Ab-酵素融合抗体であり、ここで、HIR Abおよび酵素は、分離された存在としての活性と比較して、各々平均で少なくとも約80%の活性を保持する。ある実施態様において、ここに提供されるのは、融合HIR Ab-酵素融合抗体であり、ここで、HIR Abおよび酵素は、分離された存在としての活性と比較して、各々平均で少なくとも約90%の活性を保持する。ある実施態様において、HIR Abは、分離した存在としての活性と比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の活性を保持し、酵素は、分離された存在としての活性と比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の活性を保持する。ある実施態様において、HIR Abは、分離された存在としての活性と比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の活性を保持する。ある実施態様において、酵素は、分離された存在としての活性と比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の活性を保持する。したがって、ここに記載されるのは、BBBを通過できる二機能性HIR Ab-酵素融合抗体を含む組成物であり、ここで、構成要素HIR Abおよび酵素は、各々、融合抗体の一部として、別のタンパク質としての活性と比較して、それぞれ、平均で少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%の活性、例えば、HIR結合および酵素活性を保持する。HIR Ab酵素融合抗体は、ここに記載するHIR抗体および酵素の何れかを含む融合タンパク質をいう。
【0149】
ここに提供される実施態様の何れかにおいて、HIR Abは、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体またはインシュリン様増殖因子(IGF)受容体または他の類似内在性BBB受容体介在輸送系に対する抗体などのここに記載する内在性BBB受容体に対する抗体により置き換えられ得る。
【0150】
ある場合、ここに記載する融合抗体において、抗体と酵素間の共有結合は、抗体重鎖または軽鎖のカルボキシ末端またはアミノ末端にであり得る。ある場合、抗体と酵素間の共有結合は、酵素のアミノ末端またはカルボキシ末端にである。一般に、ここに提供する結合は、融合抗体がIRのECDに結合し、血液脳関門を通過することを可能とし、酵素がその活性の治療的に有用な部分を保持することを可能とする。ある実施態様において、共有結合は、抗体のHCと酵素間または抗体のLCと酵素間または酵素と一本鎖抗体間である。あらゆる適当な結合、例えば、軽鎖のカルボキシ末端と酵素のアミノ末端、重鎖のカルボキシ末端と酵素のアミノ末端、軽鎖のアミノ末端と酵素のカルボキシ末端、重鎖のアミノ末端と酵素のカルボキシ末端、酵素のアミノ末端と一本鎖抗体のカルボキシ末端または酵素のカルボキシ末端と一本鎖抗体のアミノ末端が使用され得る。ある実施態様において、結合は、LCのカルボキシ末端と酵素のアミノ末端である。
【0151】
酵素は、リンカーを介して、ターゲティング抗体(例えば、MAb、HIR-MAb)に融合または共有結合し得る。末端アミノ酸間の結合は、融合アミノ酸配列の一部を形成する介在ペプチドリンカー配列により達成され得る。ペプチド配列リンカーは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20または20を超えるアミノ酸長であってよくまたはペプチド配列リンカーは0~20アミノ酸の範囲の任意の数のアミノ酸であり得る。ある好ましい実施態様を含むある実施態様において、ペプチドリンカーは、30、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸長より短い。ある好ましい実施態様を含むある実施態様において、ペプチドリンカーは少なくとも20~25アミノ酸長である。ある実施態様において、ペプチドリンカーは31アミノ酸長である。ある実施態様において、リンカーは、配列番号10のアミノ酸235~265または配列番号18の235~265または配列番号23の462~492を含む。ある実施態様において、酵素はターゲティング抗体に直接結合され、それ故に0アミノ酸長である。
【0152】
ある実施態様において、リンカーは、あらゆる組み合わせまたは順番でグリシン、セリンおよび/またはアラニン残基を含む。ある場合、リンカーにおけるグリシン、セリンおよびアラニン残基の組み合わされたパーセンテージは、リンカーにおける総残基数の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%である。ある好ましい実施態様において、リンカーにおけるグリシン、セリンおよびアラニン残基の組み合わされたパーセンテージは、リンカーの総残基数の少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%である。ある実施態様において、アミノ酸(天然または合成アミノ酸を含む)のあらゆる数の組み合わせをリンカーに使用できる。ある実施態様において、4アミノ酸リンカーが使用される。ある実施態様において、リンカーは、配列番号22のアミノ酸462~265における配列Ser-Ser-Ser-Serを有する。ある実施態様において、2アミノ酸リンカーは、あらゆる組み合わせまたは順番でグリシン、セリンおよび/またはアラニン残基(例えば、Gly-Gly、Ser-Gly、Gly-Ser、Ser-Ser。Ala-Ala、Ser-AlaまたはAla-Serリンカー)からなる。ある実施態様において、2アミノ酸リンカーは、他のアミノ酸と共に1個のグリシン、セリンおよび/またはアラニン残基を含む(例えば、Ser-X、ここで、Xは何らかの既知アミノ酸である)。さらに他の実施態様において、2アミノ酸リンカーは、gly、serまたはala以外の任意の2アミノ酸(例えば、X-X)からなる。
【0153】
ある実施態様において、リンカーは、62アミノ酸からなるヒトIgG3からのヒンジ領域などの内在性ヒトタンパク質の配列に由来する。ある実施態様において、リンカーは、ヒトIgG3ヒンジ領域の切断バージョンに由来する。ある実施態様において、ヒトIgG3ヒンジ領域のシステイン残基は、鎖間のジスルフィド結合を排除するために、セリン残基に変異される。ある実施態様において、セリン-セリン-セリンスペーサーは、ヒンジ配列のアミノ末端側およびカルボキシル末端側両者に配置される。31 AAリンカーは、ヒトIgG3ヒンジ領域からの25 AAを含み、これは、上部ヒンジ領域の12アミノ酸、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来し、アミノ末端はSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端はSer-Ser-Ser配列が隣接する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。下部ヒンジの第一Leuは、補体結合を排除するためにPheに変異される。これらの実施態様は、配列番号10のアミノ酸235~265(図9)に対応する図9に示すリンカー(下線を引いた)を含む。
【0154】
ここに記載するとおり、ある実施態様において、リンカーは2アミノ酸長を超える長さである。このようなリンカーは、さらにここに記載するとおり、グリシン、セリンおよび/またはアラニン残基をあらゆる組み合わせまたは順番で含み得る。ある実施態様において、リンカーは、他のアミノ酸と共に1個のグリシン、セリンおよび/またはアラニン残基からなる(例えば、Ser-nX、ここで、Xは何らかの既知アミノ酸であり、nはアミノ酸数である)。さらに他の実施態様において、リンカーは任意の2アミノ酸(例えば、X-X)からなる。ある実施態様において、該任意の2アミノ酸は、あらゆる組み合わせまたは順番でGly、SerまたはAlaであり、それらの間に種々の数のアミノ酸が介在する。ある実施態様の一例において、リンカーは少なくとも1個のGlyからなる。ある実施態様の一例において、リンカーは少なくとも1個のSerからなる。ある実施態様の一例において、リンカーは少なくとも1個のAlaからなる。ある実施態様において、リンカーは少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のGly、Serおよび/またはAla残基からなる。好ましい実施態様において、リンカーは、(GlySer)または他の異形などの任意の組み合わせまたは数でGlyおよびSerを反復配列で含む。
【0155】
本実施態様において使用されるリンカーは、当分野で知られる任意の方法を使用して設計され得る。例えば、融合タンパク質の作製において最適アミノ酸リンカーの決定に利用可能な多くの公開されたプログラムがある。ユーザーのタンパク質の配列および所望のリンカー長の入力に基づき、最適リンカーのアミノ酸配列を自動的に作成する公開された利用可能なコンピュータープログラム(例えばLINKERプログラム)を本方法および組成物に使用し得る。しばしば、このようなプログラムは、タンパク質の操作に使用する最適タンパク質リンカーを予測するために、タンパク質サブドメインを連結する天然に存在するリンカーの観察される傾向を使用し得る。ある場合、このようなプログラムは、最適リンカー予測の他の方法を使用する。本実施態様のリンカーの予測に適する一部プログラムの例は文献に記載され、例えば、Xue et al. (2004) Nucleic Acids Res. 32, W562-W565 (Web Server issue providing internet link to LINKER program to assist the design of linker sequences for constructing functional fusion proteins); George and Heringa, (2003), Protein Engineering, 15(11):871-879 (providing an internet link to a linker program and describing the rational design of protein linkers); Argos, (1990), J. Mol. Biol. 211:943-958; Arai et al. (2001) Protein Engineering, 14(8):529-532; Crasto and Feng, (2000) Protein Engineering 13(5):309-312を参照のこと。
【0156】
ペプチドリンカー配列はプロテアーゼ開裂部位を含んでよいが、これは酵素の活性に必要ではない;事実、これら実施態様の利点は、二機能性HIR Ab-酵素融合抗体が、開裂せずに、輸送およびBBBを通過した後の活性両者について部分的にまたは完全に活性であることである。図9は、LCが、カルボキシ末端で、31アミノ酸リンカーを介してHEXAのアミノ末端に融合している、HIR Ab-HEXA融合抗体(配列番号10)のアミノ酸配列の例示的実施態様を示す。ある実施態様において、融合HEXA配列は、図8に示すとおり、その22アミノ酸シグナルペプチドがない。
【0157】
ある実施態様において、ここに提供するHIR Ab-酵素融合抗体はHCおよびLC両者を含む。ある実施態様において、HIR Ab-酵素融合抗体は一価抗体である。他の実施態様において、HIR Ab-酵素融合抗体は、本明細書の実施例部分に記載するとおり、二価抗体である。
【0158】
ある実施態様において、HIR Ab-酵素融合抗体の一部として使用されるHIR Abはグリコシル化されていてもグリコシル化されていなくてもよい;ある実施態様において、抗体は、例えば、CHO細胞における合成により産生されるグリコシル化パターンで、グリコシル化される。
【0159】
ここで使用する「活性」は、生理学的活性(例えば、BBBを通過する能力および/または治療活性)、IR ECDに対するHIR Abの結合親和性または酵素の酵素活性を含む。
【0160】
HIR Ab-酵素融合抗体のBBBを通過する輸送は、標準法によるHIR Ab単独のBBBを通過する輸送と同等であり得る。例えば、モデル動物、例えば、霊長類などの哺乳動物によるHIR Ab-酵素融合抗体の薬物動態および脳取り込みが使用され得る。同様に、酵素活性決定のための標準モデルを使用して、酵素単独およびHIR Ab-酵素融合抗体の一部としての機能も比較し得る。例えば、HIR Abへの遺伝子融合後のHEXA、ASM、PPT1の酵素活性の保持を示す実施例6、11および16参照。IR ECDに対する結合親和性を、HIR Ab-酵素融合抗体とHIR Ab単独で比較し得る。例えば、ここでの実施例6、11および16参照。
【0161】
またここに包含されるのは、1以上のここに記載するHIR Ab-酵素融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物である。薬学的に許容される担体/添加物の包括的な記載は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Gennaro, AR, ed., 20th edition, 2000: Williams and Wilkins PA, USAに見ることができる。本実施態様の医薬組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内注射;経口、直腸、経頬、肺、経皮、鼻腔内または何れかの他の適当な末梢投与経路を含む、何らかの末梢経路を介して投与するのに適する組成物を含む。
【0162】
ここに提供される組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内または腹腔内投与用医薬組成物として、注射に特に適する。ここに提供される水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散され得る、本実施態様の有効量の組成物を含む。用語「薬学的にまたは薬理学的に許容される」は、適切である限り、動物、例えば、ヒトに投与したとき、有害な、アレルギー性または他の望まない反応を起こさない分子自体および組成物をいう。ここで使用する「薬学的に許容される担体」は、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当分野で周知である。慣用の媒体または薬剤が活性成分と不適合でない限り、治療組成物におけるその使用は意図される。補助的活性成分も組成物に加えてよい。
【0163】
注射用組成物のための薬学的に許容される担体の例は、塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を含み得る。例えば、ここに提供する組成物は、液体形態で提供でき、種々のpH(5~8)の水溶液に基づき、0~10%のデキストロースを添加してまたは添加せず、0.01~1%でポリソルベート-80などの界面活性剤を添加してまたは添加せずまたはマンニトール、ソルビトールまたはトレハロースなどの炭水化物添加物を添加してまたは添加せず、食塩水中に製剤される。一般に使用される緩衝液は、ヒスチジン、酢酸、リン酸またはクエン酸を含む。通常の保存および使用条件下、これらの製剤は、微生物の増殖を阻止するための防腐剤を含み得る。微生物の活動の阻止は、種々の抗細菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール;フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを入れることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物に吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによりもたらされ得る。
【0164】
ヒト投与のために、製剤は、FDAおよび他の規制当局標準により要求される無菌性、発熱性、一般的安全性および純度標準を満たす。活性化合物は一般に非経腸投与用に製剤され、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、病巣内または腹腔内経路を経る注射用に製剤される。活性要素または成分を含む水性組成物の製剤は、本開示に照らして、当業者には明らかである。一般に、このような組成物は、注射用として、液体溶液または懸濁液として製剤でき、注射前に液体の添加により溶液または懸濁液の調製に使用するのに適する固形も製造でき;そして製剤は乳化され得る。
【0165】
無菌注射用溶液を、必要量の活性化合物を、必要に応じて、上に挙げた多様な他の成分と共に、適切な溶媒に取り込み、続いて濾過滅菌することにより製造する。一般に、分散剤は、種々の滅菌活性成分を、基本的分散媒体および上に挙げたものからの必要な他の成分を含む無菌媒体に取り込むことにより製造する。無菌注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、製造方法は、予め滅菌濾過した溶液からの活性成分と何らかの付加的な所望の成分の粉末を生じる、真空乾燥および凍結乾燥技術を含む。
【0166】
製剤されたら、溶液は、投与製剤に適合する方法で、ここに記載する基準に基づき治療的に有効である量で、全身的に投与される。製剤は多様な投与形態で容易に投与でき、上記注射用溶液のタイプだけでなく、薬物放出カプセルなども用いられ得る。
【0167】
投与する医薬組成物の適切な量、処置回数および単位用量は、ここに記載するHIR Ab-酵素融合抗体のCNS取り込み特性によりおよび処置する対象、対象の状態および望む効果により変わる。投与を担う者は、何れの事象においても、個々の対象に適切な用量を決定する。
【0168】
静脈内または筋肉内注射などの非経腸投与に製剤される化合物に加えて、本実施態様の投与の他の別の方法を使用でき、皮内投与(米国特許5,997,501;5,848,991;および5,527,288参照)、肺投与(米国特許6,361,760;6,060,069;および6,041,775参照)、バッカル投与(米国特許6,375,975;および6,284,262参照)、経皮投与(米国特許6,348,210;および6,322,808参照)および経粘膜投与(米国特許5,656,284参照)を含むが、これらに限定されない。このような投与方法は当分野で周知である。点鼻液剤またはスプレー剤、エアロゾル剤または吸入剤を用いる本実施態様の鼻腔内投与も使用し得る。点鼻液は、通常液滴またはスプレーを鼻孔に投与するように設計された水溶液である。点鼻液は、鼻汁に多くの点で類似するよう、調製される。故に、水性点鼻液は、通常等張であり、5.5~6.5のpHを維持するようわずかに緩衝化される。さらに、眼製剤に使用するのに類似する抗微生物防腐剤および適切な薬物安定化剤が、必要であれば、製剤に包含され得る。種々の市販点鼻剤が知られ、例えば、抗生物質および抗ヒスタミン剤が知られ、喘息予防に使用される。
【0169】
他の投与方法に適するさらなる製剤は、坐薬およびペッサリーを含む。直腸ペッサリーまたは坐薬も使用され得る。坐薬は、種々の重量および形態の固形投与形態であり、通常直腸または尿道への挿入のために当役される。挿入後、坐薬は、しばしば、体腔液に融解または溶解する。坐薬について、伝統的結合剤および担体は、一般に、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含み、このような坐薬は、任意の適当な範囲、例えば、0.5%~10%、好ましくは1%~2%範囲で活性成分を含む混合物から形成され得る。
【0170】
経口製剤は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、通常用いられる添加物を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤または粉末の形をとる。ある規定された実施態様において、経口医薬組成物は、不活性希釈剤または同化可能可食担体を含むかまたは硬もしくは軟殻ゼラチンカプセルに封入されてよくまたは錠剤に圧縮されてよくまたは食餌の食べ物に直接取り込まれてよい。経口治療投与のために、活性化合物は添加物と共に取り込まれ、摂取可能錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、ウェーハ剤などの形で使用される。このような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含む。組成物および製剤のパーセンテージは、当然、変わり、簡便には単位重量の約2~約75%または約25~60%でありうる。このような治療に有用な組成物における活性化合物の量は、適当な投与量が得られるものである。
【0171】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、次のトラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの添加物;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびスクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤またはペパーミント、冬緑油またはサクランボフレーバーなどの矯味剤を添加してよい。投与量単位形態がカプセルであるとき、上記タイプの物質に加えて、液体担体を含み得る。種々の他の物質はコーティングとしてまたは投与量単位の物理的形態を他に修飾するように存在し得る。例えば、錠剤、丸剤またはカプセル剤を、シェラック、糖または両者でコーティングし得る。エリキシル剤のシロップは、活性化合物、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチレンおよびプロピルパラベン、色素およびサクランボまたはオレンジフレーバーなどのフレーバーを含み得る。ある実施態様において、経口医薬組成物を、胃の環境から活性成分を保護するために、腸溶性にコーティングしてよく、腸溶性コーティング方法および製剤は当分野で周知である。
【0172】
方法
ここに記載されるのは、ここに記載するとおり、治療有効量の融合抗体を全身的に投与することにより、有効用量のTSD、NPDまたはNCL1で欠損している酵素(例えば、それぞれHEXA、ASMまたはPPT1)をBBBを超えてCNSに送達する方法である。ある実施態様において、ここに提供する融合抗体はHIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1である。HIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1融合抗体の送達のための適当な全身用量は、ここに記載するとおりそのCNS取り込み特性および酵素比活性に基づく。HEXA、ASMまたはPPT1欠損を有する対象へのHIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1融合抗体の全身投与は、それぞれCNSへのHEXA、ASMまたはPPT1の非侵襲的送達のための有効なアプローチである。
【0173】
融合抗体の治療的有効全身用量である融合抗体の量は、一部、ここに記載するとおり、投与する融合抗体のCNS取り込み特性、例えば、全身的に投与された用量のCNSに取り込まれるパーセンテージによる。
【0174】
ある実施態様において、全身的に投与されたHIR Ab-酵素融合抗体の約1%が、末梢血からBBBを通過する取り込みの結果として脳に送達される。ある実施態様において、全身的に投与されたHIR Ab-酵素融合抗体の約0.3%~約3%(例えば、約0.3%、0.4%、0.48%、0.6%、0.74%、0.8%、0.9%、1.05、1.1、1.2、1.3%、1.5%、2%、2.5%、3%または約0.3%~約3%の何れかの%)が、末梢血からBBBを通過する取り込みの結果として脳に送達される。ある実施態様において、全身的に投与されたHIR Ab-酵素融合抗体の少なくとも0.5%が、末梢血からBBBを通過する取り込みの結果として脳に送達される。ある実施態様において、全身的に投与されたHIR Ab-酵素融合抗体の用量の約0.3%~約3%(例えば、約0.3%、0.4%、0.48%、0.6%、0.74%、0.8%、0.9%、1.05、1.1、1.2、1.3%、1.5%、2%、2.5%、3%または約0.3%~約3%の何れかの%)が、全身投与後2時間以内、例えば、1.8時間、1.7時間、1.5時間、1.4時間、1.3時間、1.2時間、1.1時間、0.9時間、0.8時間、0.6時間、0.5時間または約0.5~2時間までの任意の他の時間に脳に送達される。ある実施態様において、HIR Ab-酵素融合抗体の全身的に投与された用量が2時間以内に脳に送達される。
【0175】
したがって、ある実施態様において、ここに提供されるのは、BBBを通過する融合抗体の量が、対象の脳に少なくとも0.01ngのHEXA、ASMまたはPPT1タンパク質/mgタンパク質を提供する、例えば、対象の脳に0.03ng、0.1ng、0.3ng、1ng、3ng、10ng、30ng、100ngまたは300ngまたは0.01~300ngの何れかの他の値のHEXA、ASMまたはPPT1タンパク質/mgタンパク質を提供するように、5~50kgヒトに治療有効量のここに記載する融合抗体を全身的に投与する方法である。
【0176】
ある実施態様において、対象の脳に送達される酵素(例えば、HEXA、ASMまたはPPT1)活性の総単位数は、少なくとも、脳1グラムあたり0.001ミリ単位/グラム脳であり、例えば、少なくとも、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100または300または約0.001~300ミリ単位/グラム脳のHEXA、ASMまたはPPT1活性の他の何れかの総単位数のHEXA、ASMまたはPPT1が送達される。
【0177】
ある実施態様において、治療的有効全身用量は、少なくとも0.1単位、0.3単位、1単位、3単位、10単位、30単位、100単位、300単位、1000単位、3000単位、10000単位または30000単位または約0.1~30,000単位の何れかの他の全身用量の酵素(例えば、HEXA、ASMまたはPPT1)活性を含む。
【0178】
他の実施態様において、治療的有効全身用量は、少なくとも約0.1単位の酵素(例えば、HEXA、ASMまたはPPT1)活性/kg体重、少なくとも約0.3単位、1単位、3単位、10単位、30単位、100単位、300単位または1000単位または約0.1~1000単位の何れかの他の酵素活性単位/kg体重である。
【0179】
当業者は、ここに提供する融合抗体の治療的有効全身用量の質量は、一部、その酵素(例えば、HEXA、ASMまたはPPT1)比活性によることを認識する。ある実施態様において、融合抗体の比活性は、少なくとも0.1U/mgタンパク質、少なくとも約0.25単位/mg、0.5単位/mg、1単位/mg、2.5単位/mg、5単位/mg、10単位/mg、30単位/mgまたは50単位/mgまたは約0.1単位/mg~約50単位/mgの何れかの他の比活性値である。
【0180】
故に、ここに提供する融合抗体の比活性および処置する対象の体重を十分考察して、融合抗体の全身用量は、少なくとも0.1mg、例えば、0.3mg、1mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、100mg、500mgまたは約0.1mg~約500mgの任意の他の値の融合抗体(例えば、HIR Ab-HEXA、HIR Ab-ASMまたはHIR Ab-PPT1)である。
【0181】
ここで使用する用語「全身投与」または「末梢投与」は、CNSへの直接投与ではない、例えば、BBBの物理的浸透または破壊を伴わないあらゆる投与方法を含む。「全身投与」は、静脈内、動脈内筋肉内、皮下、腹腔内、鼻腔内、経頬、経皮、直腸、経肺胞(吸入)または経口投与を含むが、これらに限定されない。ここに記載されるあらゆる適当な融合抗体が使用され得る。
【0182】
ここでいうHEXA欠損は、テイ・サックス病またはTSDとして知られる1以上の状態を含む。HEXA欠損は、脳および他の臓器で起こるGM2ガングリオシドの増大により特徴づけられる。ここでいうASM欠損は、ニーマン・ピック病またはNPDとして知られる1以上の状態を含む。ASM欠損は、脳および他の臓器で起こるスフィンゴミエリンの増大により特徴づけられる。ここでいうPPT1欠損は、小児バッテン病またはNCL1として知られる1以上の状態を含む。PPT1欠損は、脳および他の臓器で起こるスフィンゴミエリンの増大により特徴づけられる。
【0183】
ここに提供する組成物、例えば、HIR Ab-酵素融合抗体を、組み合わせ治療の一部として投与し得る。組み合わせ治療は、酵素欠損を有する患者で一般にみられる症状の処置または軽減のための他の治療と組み合わせた、本実施態様の組成物の投与を含む。他のCNS障害方法または組成物と組み合わせて使用される本実施態様の組成物において、本実施態様の組成物と付加的方法または組成物のあらゆる組み合わせが使用され得る。故に、例えば、本実施態様の組成物の使用が、他のCNS障害処置剤との組み合わせであるならば、2剤を同時に、連続的、重複する期間、類似する、同じまたは異なる頻度などで投与し得る。ある場合、1以上の他のCNS障害処置剤と組み合わせて本実施態様の組成物を含む組成物が使用される。
【0184】
ある実施態様において、組成物、例えば、HIR Ab-酵素融合抗体を、同じ製剤内または別の組成物の、他の投薬と共に患者に共投与する。例えば、ここに提供する融合抗体を、HEXA、ASMまたはPPT1以外の、同様にヒト血液-脳関門を通過するよう操作された組み換えタンパク質である他の融合タンパク質と製剤し得る。さらに、融合抗体を、他の大型分子または小分子と組み合わせて製剤し得る。
【実施例0185】
次の具体的実施例は、単に説明として解釈されるものであり、本開示の残りを、どうであれ限定しない。実施例1、2および3は、両方のIgGドメインの高親和性結合が保持され、同時に高酵素活性が保持されるように、融合タンパク質の二機能性が保持された、IgG-酵素融合タンパク質の操作の分野における予測不可能性を示す。さらに詳述せずとも、当業者は、本明細書の記載に基づき、本実施態様をその全範囲まで使用できると考える。ここに引用するすべての刊行物は、引用によりその全体として本明細書に包含させる。URLまたは他のそのような識別子またはアドレスが記載されているとき、そのような識別子は変わることがあり、インターネット上の特定の情報は移り変わるが、等価な情報をインターネットのサーチにより見つけることができると理解される。それらの引用は、このような情報の利用可能性および大衆への流布の証拠である。
【0186】
実施例1. HIR Ab-GUSB融合タンパク質の発現および機能的分析
スライ症候群とも称される、MPS-VIIで変異したリソソーム酵素はβ-グルクロニダーゼ(GUSB)である。MPS-VIIは、脳におけるグリコサミノグリカンの蓄積をもたらし、これはリソソーム封入体を形成する。MPS-VIIの酵素置換療法(ERT)は、GUSB酵素がBBBを通過しないため、脳における処置として有効ではない可能性がある。BBBを通過させるためにヒトGUSBを再操作する試みにおいて、HIR Ab-GUSB融合タンパク質プロジェクトが開始された。
【0187】
22アミノ酸シグナルペプチドおよび18アミノ酸カルボキシル末端プロペプチドを含む、ヒトGUSBタンパク質(NP_000172)のアミノ酸Met-Thr651に対応するヒトGUSB cDNAを、逆転写(RT)ポリメラーゼ鎖反応(PCR)およびカスタムオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)によりクローン化した。PCR産物を1%アガロースゲル電気泳動で分解し、ヒトGUSB cDNAに対応する約2.0kbの予測された主要な単一バンドを単離した。クローン化ヒトGUSBを真核生物発現プラスミドに挿入し、このGUSB発現プラスミドをpCD-GUSBと名付けた。プラスミドの発現カセット全体を双方向性DNAシーケンシングにより確認した。COS細胞の6ウェル形式でpCD-GSUBでのトランスフェクションは、7日目に条件培地で高GUSB酵素活性をもたらし(表1、実験A)、これは、機能的ヒトGUSB cDNAの操作の成功を確認した。GUSB酵素活性を、市販の4-メチルウンベリフェリルベータ-L-グルクロニド(MUGlcU)を使用する蛍光定量的アッセイで決定した。この基質はGUSBにより4-メチルウンベリフェロン(4-MU)に加水分解され、4-MUは、発光波長450nmおよび励起波長365nmを使用して蛍光光度計で蛍光定量的に検出される。既知量の4-MUで標準曲線を構築した。アッセイを、37℃で、pH=4.8で60分間インキュベーションにより実施し、グリシン-炭酸緩衝液(pH=10.5)添加により停止させた。
【0188】
HIR Abの重鎖(HC)のカルボキシル末端がヒトGUSBのアミノ末端に融合され、22アミノ酸GUSBシグナルペプチドを欠き、18アミノ酸カルボキシル末端GUSBプロペプチドを欠く該融合タンパク質を発現する新規pCD-HC-GUSBプラスミド発現プラスミドが操作された。GUSB cDNAを、鋳型としてpCD-GUSBを使用するPCRによりクローン化した。順方向PCRプライマーは、オープンリーディングフレームを維持し、HIR Ab HCのCH3領域のカルボキシル末端と酵素の22アミノ酸シグナルペプチドを欠くGUSBのアミノ末端の間にSer-Serリンカーを導入するため、「CA」ヌクレオチドを導入する。GUSB逆PCRプライマーは、成熟ヒトGUSBタンパク質の末端Thr直後に停止コドン、「TGA」を導入する。pCD-HC-GUSBの発現カセットのDNAシーケンシングは、714ヌクレオチド(nt) サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、9nt コザック部位(GCCGCCACC)、3,228nt HC-GUSB融合タンパク質オープンリーディングフレームおよび370nt ウシ成長ホルモン(BGH)転写終止配列を含む、4,321ntを含んだ。プラスミドは、19アミノ酸IgGシグナルペプチド、443アミノ酸HIRMAb HC、2アミノ酸リンカー(Ser-Ser)および酵素シグナルペプチドおよびカルボキシル末端プロペプチドを欠く611アミノ酸ヒトGUSBからなる1,075アミノ酸タンパク質をコードした。GUSB配列は、ヒトGUSB(NP_000172)のLeu23-Thr633と100%同一であった。グリコシル化がない重鎖融合タンパク質の予測分子量は119,306Daであり、7.83の予測等電点(pI)であった。
【0189】
COS細胞を6ウェル培養皿に播種し、キメラHIR Abの軽鎖(LC)をコードする発現プラスミドであるpCD-LCおよびpCD-HC-GUSBで二重トランスフェクトした。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。しかしながら、pCD-HC-GUSBおよびpCD-LC発現プラスミドでCOS細胞の二重トランスフェクション後、GUSB酵素活性の特異的増加はなかった(表1、実験B)。しかしながら、培地中の低GUSB活性は、ヒトIgG特異的ELISAにより決定して、培地IgGがわずか23±2ng/mLであったため、HIRMAb-GUSB融合タンパク質の低い分泌に起因した可能性がある。それ故に、COS細胞トランスフェクションを10×T500プレートにスケールアップし、HIRMAb-GUSB融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。IgGウェスタンブロッティングは、融合タンパク質重鎖のサイズの予測された増加を示した。しかしながら、HIRMAb-GUSB融合タンパク質のGUSB酵素活性は、6.1±0.1nmol/時間/タンパク質μgで低かった。対照的に、ヒト組み換えGUSBの比活性は2,000nmol/時間/タンパク質μgである[Sands et al (1994) Enzyme replacement therapy for murine mucopolysaccharidosis type VII. J Clin Invest 93, 2324-2331]。これらの結果は、HIR Ab-GUSB融合タンパク質のGUSB酵素活性が、GUSBのHIR AbのHCのカルボキシル末端への融合後、>95%喪失したことを示した。HIRの細胞外ドメイン(ECD)へのHIR Ab-GUSB融合タンパク質結合の親和性をELISAで試験した。HIR ECDで永久にトランスフェクトしたCHO細胞を無血清培地(SFM)で増殖させ、HIR ECDを小麦胚芽凝集素親和性カラムで精製した。HIR ECDを96ウェル皿に播種し、HIR AbおよびHIR Ab-GUSB融合タンパク質のHIR ECDへの結合をビオチニル化ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体、続いてアビジンおよびビオチニル化ペルオキシダーゼで検出した。50%最大結合をもたらすタンパク質濃度、ED50を、非線形回帰分析により決定した。HIR受容体アッセイは、611アミノ酸GUSBのHIRMAb重鎖のカルボキシル末端への融合後、HIRに対する親和性の減少がなかったことを示した。HIR ECDへのHIR Ab結合のED50は0.77±0.10nMであり、HIR Ab-GUSB融合タンパク質の結合のED50は0.81±0.04nMであった。
【0190】
要約すると、GUSBのHIR Ab HCのカルボキシル末端への融合は、該融合タンパク質のHIRへの結合の親和性を失わせなかった。しかしながら、融合タンパク質のGUSB酵素活性は>95%減少した。
【0191】
HIR AbとGUSBの融合タンパク質の製造を成功させる努力において、GUSBシグナルペプチドを含む成熟ヒトGUSBのカルボキシル末端を、HIR AbのHCのアミノ末端に融合させる、新規アプローチが行われた。この融合タンパク質をGUSB-HIR Abと名付けた。第一段階は、この新規融合タンパク質をコードする新規発現プラスミドの操作であり、このプラスミドをpCD-GUSB-HCと名付けた。pCD-GUSB-HCプラスミドは、19アミノ酸シグナルペプチドを欠くHIRMAbの重鎖(HC)のアミノ末端が22アミノ酸GUSBシグナルペプチドを含むが、18アミノ酸カルボキシル末端GUSBプロペプチドを欠くヒトGUSBのカルボキシル末端に融合された、融合タンパク質を発現する。pCD-GUSBベクターを、22アミノ酸GUSBシグナルペプチドを含むが、GUSBカルボキシル末端で18アミノ酸プロペプチドを欠くGUSBタンパク質を発現する、GUSB cDNAのPCR増幅のための鋳型として使用した。pCD-GUSBのGUSB 18アミノ酸カルボキシル末端プロペプチドを部位特異的変異誘発(SDM)により欠失させた。後者は、GUSBのThr633残基の3’フランキング領域にAfeI部位を作り、pCD-GUSB-AfeIと名付けた。次いで、カルボキシル末端プロペプチドをAfeIおよびHindIII(GUSBの3’非コード領域に位置)で欠失させた。19アミノ酸IgGシグナルペプチドを欠き、HIRMAb HC停止コドンを含むHIRMAb HCオープンリーディングフレームを、PCRによりHIRMAb HC cDNAを鋳型として作製した。PCRで作製したHIRMAb HC cDNAを、pCD-GUSB-AfeIのAfeI-HindIII部位に挿入して、pCD-GUSB-HCを形成させた。GUSBのカルボキシル末端とHIRMAb HCのアミノ末端の間のSer-Serリンカーを、HIRMAb HC cDNAのクローニングに使用したPCRプライマーにより、AfeI部位内に導入した。pCD-GUSB-HC発現カセットのDNAシーケンシングは、プラスミドが22アミノ酸GUSBシグナルペプチド、611アミノ酸GUSB、2アミノ酸リンカー(Ser-Ser)および443アミノ酸HIRMAb HCからなる1,078アミノ酸タンパク質を発現することを示した。GUSB配列はヒトGUSB(NP_000172)のMet-Thr633と100%同一であった。
【0192】
6ウェル形式でのCOS細胞のpCD-LCおよびpCD-GUSB-HC発現プラスミドでの二重トランスフェクションは、pCD-LCおよびpCD-HC-GUSBプラスミドでの二重トランスフェクションと比較して、7日目に条件培地で高いGUSB酵素活性をもたらした(表1、実験C)。しかしながら、ELISAにより決定して、7日条件培地における培地ヒトIgG濃度がわずか13±2ng/mLであったため、GUSB-HIRMAb融合タンパク質もほとんどCOS細胞から分泌されなかった。COS細胞トランスフェクションを10×T500プレートにスケールアップし、GUSB-HIRMAb融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。SDS-PAGEは、融合タンパク質重鎖のサイズの予測された増加を示した。精製GUSB-HIRMAb融合タンパク質のGUSB酵素活性は226±8nmol/時間/タンパク質μgと高く、これは、HIRMAb-GUSB融合タンパク質の特異的GUSB酵素活性より37倍高かった。しかしながら、HIR受容体アッセイは、GUSBのHIRMAb重鎖のアミノ末端への融合後にHIRに対する親和性が顕著に減少することを示し、これは、受容体結合親和性の95%減少をもたらした。HIR ECDへのHIR Ab結合のED50は0.25±0.03nMであり、HIR Ab-GUSB融合タンパク質の結合のED50は4.8±0.4nMであった。
【0193】
要約すると、GUSBのHIR Ab HCのアミノ末端への融合は、融合タンパク質のGUSB酵素活性を保持させたが、GUSB-HIR Ab融合タンパク質のHIRへの結合を95%減少させた。対照的に、GUSBのHIR Ab HCのカルボキシル末端への融合は、HIR Ab-GUSB融合タンパク質へのHIRの結合の親和性を減少させなかった。しかしながら、この融合タンパク質のGUSB酵素活性は、>95%減少した。これらの発見は、IgG-酵素融合タンパク質の二機能性、例えば、IgG部分の同族抗原への高親和性結合および高酵素活性が保持されるような方法で、リソソーム酵素のIgG分子へ融合する分野における予測不可能な性質を説明し得る。
【表1】
【0194】
実施例2. HIR Ab-GCR融合タンパク質の発現および機能的分析
ゴーシェ病(GD)で変異しているリソソーム酵素はβ-グルコセレブロシダーゼ(GCR)である。
神経障害性形態のGDはCNSに影響し、これは脳におけるGCR酵素活性の欠如により、脳細胞におけるリソソーム封入体の蓄積をもたらす。GDの酵素置換療法(ERT)は、GCR酵素がBBBを通過しないため、脳の処置に有効ではない。BBBを通過させるためにヒトGCRを再操作する試みにおいて、HIR Ab-GCR融合タンパク質プロジェクトが操作され、発現され、酵素活性について試験された。39アミノ酸シグナルペプチドを欠くヒトGCRタンパク質(NP_000148)のアミノ酸Ala40-Gln536に対応するヒトGCR cDNAは、商業的DNA製造業者によりカスタム合成された。GCR cDNAは、TG停止コドンまでシグナルペプチドを欠くGCRオープンリーディングフレームを含む、1522ヌクレオチド(nt)からなった。5’末端で、StuI制限エンドヌクレアーゼ(RE)配列を加え、3’末端で、GCR mRNAの3’非翻訳領域からの14ntフラグメントにHindIII RE部位を続けた。GCR遺伝子内の内部HindIIIおよびStuI部位を、アミノ酸配列を変えることなく変異させた。GCR遺伝子は、StuIおよびHindIIIを用いてベンダーから提供されたpUCプラスミドから遊離され、HIR Ab重鎖をコードする真核生物発現プラスミドのHpaIおよびHindIII部位に挿入され、この発現プラスミドは、pCD-HC-GCRと名付けられた。この発現プラスミドは、HIR Abの重鎖(HC)のカルボキシル末端が、39アミノ酸GCRシグナルペプチドを欠くヒトGCRのアミノ末端に融合され、HIR Ab HCとGCRの間に3アミノ酸リンカー(Ser-Ser-Ser)を有する融合タンパク質を発現する。DNAシーケンシングで、pCD-HC-GCR発現カセットの配列構造(identity)を確認した。発現カセットは、2134nt CMVプロモーター配列、2,889nt発現カセットおよび367 BGHポリA配列を含む5,390ntからなった。プラスミドは963アミノ酸タンパク質をコードし、これは、19アミノ酸IgGシグナルペプチド、443アミノ酸HIRMAb HC、3アミノ酸リンカー(Ser-Ser-Ser)および酵素シグナルペプチドを欠く497アミノ酸ヒトGCRからなった。GCR配列は、ヒトGCR(NP_000148)のAls40-Gln536と100%同一であった。グリコシル化がない重鎖融合タンパク質の予測分子量は104,440Daであり、8.42の予測等電点(pI)である。HIR Ab-GCR融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を6ウェル培養皿に播種し、キメラHIR Abの軽鎖(LC)をコードする発現プラスミドであるpCD-LCおよびpCD-HC-GCRで二重トランスフェクトした。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地をデプス濾過により浄化し、HIR Ab-GCR融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。融合タンパク質の純度を還元SDS-PAGEにより確認し、融合タンパク質を、ヒトIgGまたはヒトGCRに対する一次抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。IgGおよびGCR抗体何れもHIR Ab-GCR融合タンパク質の130kDa重鎖と反応した。融合タンパク質のGCR酵素活性を、組み換えGCRの酵素アッセイについて先に記載されたとおり(J.B. Novo, et al, Generation of a Chinese hamster ovary cell line producing recombinant human glucocerebrosidase, J. Biomed. Biotechnol., Article ID 875383, 1-10, 2012)、酵素基質として4-メチルウンベリフェリルベータ-D-グルコピラノシド(4-MUG)を使用する蛍光定量的酵素アッセイで測定した。GCR酵素アッセイを、0.25%Triton X-100および0.25%タウロコール酸ナトリウム含有クエン酸/リン酸緩衝液/pH=5.5中、5mMの最終4-MUG濃度で実施し、37℃で60分間インキュベーションを実施した。0.1Mグリシン/0.1M NaOHを加えて、酵素活性を停止させた。GCR酵素は、4-MUG基質を産物、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)に変換する。アッセイ標準曲線を4-MU(0.03~3nmol/チューブ)で作成した。酵素活性を単位/mgタンパク質として報告しており、ここで、1単位=1μmol/分である。組み換えヒトGCRの酵素活性は40単位/mgである(Novo et al, 2012)。しかしながら、HIR Ab-GCR融合タンパク質のGCR酵素活性はわずか0.07単位/mgであり、これは、組み換えGCRの比活性と比較して99%減少している。この研究は、短い3アミノ酸リンカーを用いるGCRのHIR Abの重鎖のC末端への融合が、GCR酵素活性のほぼ完全な喪失をもたらすことを示した。
【0195】
HIR Ab-GCR融合タンパク質におけるGCR酵素活性をレスキューする可能性を、HIR Ab HCのCH3ドメインとGCRの間に3つの異なって伸びるリンカーを挿入してさらに探索した。3つの伸長リンカーは23アミノ酸長、31アミノ酸長または58アミノ酸長からなり、これら発現プラスミドをそれぞれpCD-HC-GCR-L、pCD-HC-GCR-LLおよびpCD-HC-GCR-L4と名付けた。pCD-HC-GCR-Lにおいて、リンカーは、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸に由来し、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する、ヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含む23アミノ酸に対応する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。23アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPSSSである。pCD-HC-GCR-LLにおいて、31アミノ酸リンカーは、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来する、ヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含む25アミノ酸に対応し、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。31アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSである。pCD-HC-GCR-L4において、58アミノ酸リンカーは、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来する、ヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含む25アミノ酸の2反復に対応し、Ser-Ser残基で離され、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する。反復の何れかのコアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。58アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSである。GCR cDNAの5’末端は、23アミノ酸、31アミノ酸または58アミノ酸リンカーを介してHIR AbのHCをコードするcDNAに連結された。これらの発現プラスミドは、HIR Abの重鎖(HC)のカルボキシル末端が、39アミノ酸GCRシグナルペプチドを欠くヒトGCRのアミノ末端に、HIR Ab HCのC末端と成熟GCRのN末端の間のそれぞれ23アミノ酸、31アミノ酸または58アミノ酸リンカーにより融合されている、融合タンパク質を発現する。DNAシーケンシングで、3つのpCD-HC-GCR発現カセットの配列構造を確認した。プラスミドは、19アミノ酸IgGシグナルペプチド、443アミノ酸HIRMAb HC、23アミノ酸、31アミノ酸または58アミノ酸リンカーおよび酵素シグナルペプチドを欠く497アミノ酸ヒトGCRからなる、983アミノ酸、991アミノ酸および1,018アミノ酸のタンパク質をそれぞれコードした。GCR配列は、ヒトGCR(NP_000148)のAls40-Gln536と100%同一であった。伸長リンカーを有するHIR Ab-GCR融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を、キメラHIR Abの軽鎖(LC)をコードする発現プラスミドであるpCD-LCおよびpCD-HC-GCR-L、pCD-HC-GCR-LLまたはpCD-HC-GCR-L4で二重トランスフェクトした。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地をデプス濾過により浄化し、HIR Ab-GCR融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。融合タンパク質の純度を還元SDS-PAGEにより確認し、融合タンパク質を、ヒトIgGまたはヒトGCRに対する一次抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。伸長リンカーを有する融合タンパク質のGCR酵素活性を、上記のおよび組み換えGCRの酵素アッセイについて先に記載されたとおり(J.B. Novo, et al, Generation of a Chinese hamster ovary cell line producing recombinant human glucocerebrosidase, J. Biomed. Biotechnol., Article ID 875383, 1-10, 2012)、酵素基質として4-メチルウンベリフェリルベータ-D-グルコピラノシド(4-MUG)を使用する蛍光定量的酵素アッセイで測定した。GCR酵素アッセイを、0.25%Triton X-100および0.25%タウロコール酸ナトリウム含有クエン酸/リン酸緩衝液/pH=5.5中、5mMの最終4-MUG濃度で実施し、37℃で60分間インキュベーションを実施した。0.1Mグリシン/0.1M NaOHを加えて、酵素活性を停止させた。GCR酵素は、4-MUG基質を産物、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)に変換する。アッセイ標準曲線を4-MU(0.03~3nmol/チューブ)で作成した。酵素活性を単位/mgタンパク質として報告しており、ここで、1単位=1μmol/分である。HIR Ab-GCR-L、-LLまたは-L4融合タンパク質のGCR酵素活性は、組み換えGCRの比活性のわずか<5%であった。これらの結果は、GCRの重鎖(HC)IgGのC末端への融合は、23~58アミノ酸長の長いリンカーでも、GCR酵素活性のほぼ完全な喪失をもたらすことを示す。
【0196】
HIR Ab-GCR融合タンパク質におけるGCR酵素活性をレスキューするさらなる試みにおいて、ヒトGCR cDNAが、31アミノ酸リンカーを介してHIR Abの軽鎖(LC)のC末端に融合している他の構築物を操作した。39アミノ酸シグナルペプチドを欠くヒトGCRタンパク質(NP_000148)は、商業的DNA製造業者によりカスタム合成された。GCR cDNAは、TG停止コドンまでシグナルペプチドを欠く、GCRオープンリーディングフレームを含む1522ヌクレオチド(nt)からなった。GCR cDNAの5’末端を、31アミノ酸リンカーを介して、HIR Abの軽鎖(LC)をコードする702nt cDNAに結合した。このリンカーは、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来する、ヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含む25アミノ酸に対応し、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。31アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSである。発現ベクターの3’非翻訳領域からの18ntフラグメントを3’末端に付加し、PmeI RE部位が続いた。融合タンパク質cDNAの5’末端はEcoRI部位、続いて発現ベクターの5’非翻訳領域の5nt、続いて完全コザック部位(GCCGCCACC)を含む。HIR Ab-LC-GCRをコードする人工遺伝子は2,335塩基対からなり、それは、商業的DNA製造業者によりカスタム合成された。HIR Ab LC-GCR遺伝子を、EcoRIおよびPmeIを用いてベンダーから提供されたpUCプラスミドから遊離され、それぞれCMVプロモーターおよびBGHポリA領域が隣接する真核生物発現ベクターの同じRE部位に挿入し、pHIR Ab LC-GCRと名付けた発現プラスミドを形成させた。この発現プラスミドは、HIR AbのLCのカルボキシル末端が39アミノ酸GCRシグナルペプチドを欠くヒトGCRのアミノ末端に、HIR Ab LCとGCRの間の31アミノ酸リンカー(SSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSS)で融合している融合タンパク質を発現する。DNAシーケンシングで、pHIR-LC-GCR発現カセットの配列構造を確認した。発現カセットは、1,855nt CMVプロモーター配列、9コザック部位、2,289nt融合タンパク質cDNAおよび291 BGHポリA配列を含む4,444ntからなった。プラスミドは、20アミノ酸IgGシグナルペプチド、214アミノ酸HIR Ab LC、31アミノ酸リンカーおよび酵素シグナルペプチドを欠く497アミノ酸ヒトGCRを含む762アミノ酸からなるLC-GCR融合タンパク質をコードした。GCR配列は、ヒトGCR(NP_000148)のAls40-Gln536と100%同一であった。HIR Ab LC-GCR融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を播種し、HIR Ab LC-GCRおよびキメラHIR Abの重鎖(HC)であるHIR Ab HCをコードする発現プラスミドで二重トランスフェクトした(図2)。pHIR Ab-HCはHIR Ab-HCタンパク質の443アミノ酸配列をコードする。HIR Ab-HCをコードする2,328nt配列は、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする2,316nt配列、続いてTA停止コドンからなる。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地を限外濾過により浄化し、HIR Ab-GCR融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。融合タンパク質の純度を還元SDS-PAGEにより確認した。HIR Ab-GCR融合タンパク質を、ヒトIgGおよびヒトGCRに対する抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。HIR Ab-LC-GCR融合タンパク質のGCR酵素活性を、上記のとおり4-メチルウンベリフェリルベータ-D-グルコピラノシド(4-MUG)を使用する蛍光定量的酵素アッセイにより測定した。HIR Ab-LC-GCR融合タンパク質のGCR酵素活性は、組み換えGCRの比活性のわずか<5%であった。これらの組み合わせた結果は、リソソーム酵素、GCRの種々の長さのリンカーを用いるIgGのHCまたはLCのC末端への融合が、酵素活性をほぼ欠くIgG-酵素融合タンパク質をもたらすことを示す。
【0197】
HIR Ab-GCR融合タンパク質におけるGCR酵素活性を保持する努力を続ける中で、シグナルペプチドを含むヒトGCRを、HIR Abの重鎖(HC)のN末端に、GCRのC末端と抗体HCのN末端の間の56アミノ酸リンカーを介して、融合させた他の構築物を再操作した。NP_000148に提供されるGCRの39アミノ酸シグナルペプチドを含むヒトGCRタンパク質の配列、続いて下記56アミノ酸リンカー、続いて重鎖シグナルペプチドを伴う443アミノ酸HIR Ab重鎖をコードする、カスタム遺伝子を合成した。この遺伝子は、プロモーター領域のEcoRI部位部分および完全長コザック部位を含む20ntの5’フランキング領域を含む。3’フランキング領域で、遺伝子は、BGHポリA部位に対応する291nt、続いてNheI部位を含む30ntの非翻訳領域を含む。3,449nt遺伝子は、商業的ベンダーによりカスタム合成された。56アミノ酸リンカーは、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来するヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含む25アミノ酸の2反復に対応し、Ser-Ser残基により離され、アミノ末端はSer残基およびカルボキシル末端はSer-Ser-Ser配列が隣接する。何れかの反復のコアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。56アミノ酸リンカーの配列はSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSである。GCR-HIR Ab HC遺伝子は、EcoRIおよびNheIを用いてベンダーから提供されたpUCプラスミドから遊離され、CMVプロモーターが隣接する真核生物発現ベクターの同じRE部位に挿入され、pGCR-HIR-Ab-HCと名付けられた発現プラスミドが形成された。DNAシーケンシングで、pGCR-HIR-Ab-HC発現カセットの配列構造を確認した。発現カセットは、1,855nt CMVプロモーター配列、9nt コザック部位、3,108nt融合タンパク質cDNAおよび291 BGHポリA配列を含む5,263ntからなった。プラスミドは、39アミノ酸GCRシグナルペプチド、497アミノ酸GCR、56アミノ酸リンカーおよびIgGシグナルペプチドを欠く443アミノ酸HIR Ab HCからなる1,035アミノ酸GCR-HIR Ab HC融合タンパク質をコードした。GCR配列は、ヒトGCR(NP_000148)のMet-Gln536と100%同一であった。GCR-HIR Ab HC融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を播種し、GCR-HIR Ab HCおよびキメラHIR Abの軽鎖(LC)であるHIR Ab LCをコードする発現プラスミドで二重トランスフェクトした(図2)。pHIR Ab-LCは、HIR Ab-LCタンパク質の234アミノ酸配列をコードする。HIR Ab-LCをコードする714nt配列は、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする705nt配列、続いてTAG停止コドンからなる。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地を限外濾過により浄化し、HIR Ab-GCR融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。融合タンパク質の純度を還元SDS-PAGEにより確認した。HIR Ab-GCR融合タンパク質を、ヒトIgGおよびヒトGCRに対する抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。HIR Ab-LC-GCR融合タンパク質のGCR酵素活性を、上記のとおり4-メチルウンベリフェリルベータ-D-グルコピラノシド(4-MUG)を使用する蛍光定量的酵素アッセイにより測定した。HIR Ab-LC-GCR融合タンパク質のGCR酵素活性は、組み換えGCRの比活性のわずか<7%であった。酵素活性IgG-GCR融合タンパク質の操作におけるこれらの組み合わせた結果は、GCRが3アミノ酸、23アミノ酸、31アミノ酸、56アミノ酸または58アミノ酸の範囲の種々のリンカーでIgGのHCまたはLCのC末端またはN末端に融合された、5つの異なる構築物の操作を記載する。全例で、IgG-酵素融合タンパク質は酵素活性をほぼ欠如した。
【0198】
実施例3. HIR Ab-GALC融合タンパク質の発現および機能的分析
クラッベ病(KD)で変異するリソソーム酵素はガラクトセレブロシダーゼ(GALC)である。KDは、スフィンゴ脂質の代謝異常を含む神経系の髄鞘に影響する、稀な神経変性障害である。KDの酵素置換療法(ERT)は、GALC酵素がBBBを通過しないため、脳の有効な処置ではない。BBBを通過させるためにヒトGALCを再操作する試みにおいて、HIR Ab-GALC融合タンパク質プロジェクトが操作され、発現され、酵素活性について試験された。ヒトGALC cDNAは、42アミノ酸シグナルペプチドを欠くヒトGALCタンパク質(NM_000153)のアミノ酸Tyr43-Arg685に対応する。GALC cDNAは、TG停止コドンまでシグナルペプチドを欠くGALCオープンリーディングフレームを含む1,932ヌクレオチド(nt)からなった。GALC cDNAの5’末端は、31アミノ酸リンカーを介して、HIR Abの軽鎖(LC)をコードする702nt cDNAに結合された。このリンカーは、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来する、ヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含む25アミノ酸に対応し、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。31アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSである。発現ベクターの3’非翻訳領域からの18ntフラグメントを3’末端に付加し、PmeI RE部位が続いた。融合タンパク質cDNAの5’末端はEcoRI部位、続いて発現ベクターの5’非翻訳領域の5nt続いて完全コザック部位(GCCGCCACC)を含む。HIR Ab-LC-GALCをコードする人工遺伝子は2,776塩基対からなり、それは、商業的DNA製造業者によりカスタム合成された。HIR Ab LC-GALC遺伝子を、EcoRIおよびPmeIを用いてベンダーから提供されたpUCプラスミドから遊離され、それぞれCMVプロモーターおよびBGHポリA領域が隣接する真核生物発現ベクターの同じRE部位に挿入し、pHIR Ab LC-GALCと名付ける発現プラスミドを形成させた。この発現プラスミドは、HIR AbのLCのカルボキシル末端が、42アミノ酸GALCシグナルペプチドを欠くヒトGALCのアミノ末端に、HIR Ab LCとGALCの間の31アミノ酸リンカー(SSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSS)で融合された、融合タンパク質を発現する。DNAシーケンシングで、pHIR-LC-GALC発現カセットの配列構造を確認した。発現カセットは、1,855nt CMVプロモーター配列、2,736nt融合タンパク質cDNAおよび294 BGHポリA配列を含む4,885ntからなった。プラスミドは、20アミノ酸IgGシグナルペプチド、214アミノ酸HIR Ab LC、31アミノ酸リンカーおよび酵素シグナルペプチドを欠く643アミノ酸ヒトGALCからなる908アミノ酸LC-GALC融合タンパク質をコードした。GALC配列は、ヒトGALCタンパク質(NM_000153)のTyr43-Arg685と100%同一であった。グリコシル化されていない軽鎖融合タンパク質の予測分子量は99,363Daであり、5.8の予測等電点(pI)である。HIR Ab-GALC融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を播種し、HIR Ab LC-GALCおよびキメラHIR Abの重鎖(HC)であるpHIR Ab HCをコードする発現プラスミドで二重トランスフェクトした(図2)。pHIR Ab-HCは、HIR Ab-HCタンパク質の443アミノ酸配列をコードする。HIR Ab-HCをコードする2,328nt配列は、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする2,316nt配列、続いてTA停止コドンからなる。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地を限外濾過により浄化し、HIR Ab-GALC融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。融合タンパク質の純度を還元SDS-PAGEにより確認し、これは、それぞれ115kDaおよび55kDaの分子量で移動する、予測した軽鎖-GALC融合および融合タンパク質の重鎖を示した。HIR Ab-GALC融合タンパク質を、ヒトIgGおよびヒトGALCに対する抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。融合タンパク質のGALC酵素活性を、組み換えGALCの酵素アッセイについて先に記載されたとおり(Meng et al., Proc Natl Acad Sci, 107:7886-91, 2010)、4-メチルウンベリフェリル-ベータ-D-ガラクトピラノシド(MUGP)を使用する蛍光定量的酵素アッセイで測定した。GALC酵素アッセイを、0.25%Triton X-100含有クエン酸/塩化ナトリウム緩衝液/pH=4.5で最終0.5mM濃度のMUGPで実施し、37℃で20分間インキュベーションを実施した。0.25 Mグリシン/0.15 M NaOHを加えて、酵素活性を停止させた。GALC酵素は、MUGP基質を産物、4-メチルウンベリフェロン(4-MU)に変換する。アッセイ標準曲線を、4-MU(0.01~3nmol/チューブ)で作成した。酵素活性を単位/mgタンパク質として報告し、ここで、1単位=1nmol/分である。HIR Ab-GALC融合タンパク質の酵素活性を、市販の組み換えヒトGALCと同じ酵素アッセイで比較した。ヒト組み換えGALCは、1845単位/mgの高酵素活性を有した。しかしながら、GALCHIR Ab-GALC融合タンパク質の酵素活性はわずか13.3単位/mgであり、これは、組み換えGALCの比活性と比較して、99%減少である。
【0199】
HIR Ab-GALC融合タンパク質におけるGALC酵素活性をレスキューする試みにおいて、シグナルペプチドを含むヒトGALC cDNAを、31アミノ酸リンカーを介してHIR Abの軽鎖(LC)のN末端に融合させた他の構築物を再操作した。cDNAは、酵素(NM_000153)の42アミノ酸シグナルペプチドを含むヒトGALCタンパク質、続いて31アミノ酸リンカー、続いてLCシグナルペプチドがないHIR-Ab LCの214アミノ酸配列をコードした。この遺伝子は、プロモーター領域のEcoRI部位部分および完全長コザック部位を含む20ntの5’フランキング領域を含む。3’フランキング領域で、遺伝子は、BGHポリA部位の部分に対応する29nt、続いてPmeI部位を含む30ntの非翻訳領域を含む。2,842nt遺伝子は、商業的ベンダーによりカスタム合成された。31アミノ酸リンカーは、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来する、ヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含む25アミノ酸に対応し、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。31アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSである。GALC-HIR Ab LC遺伝子を、EcoRIおよびPmeIを用いてベンダーから提供されたpUCプラスミドから遊離され、CMVプロモーターが隣接する真核生物発現ベクターの同じRE部位に挿入され、pGALC-HIR-Ab-LCと名付けられた発現プラスミドを形成する。この発現プラスミドは、GALCのカルボキシル末端が、20アミノ酸HIR Ab LCシグナルペプチドを欠くHIR Ab LCのアミノ末端に、GALCとHIR Ab LCの間の31アミノ酸リンカーで融合された、融合タンパク質を発現する。DNAシーケンシングは、pGALC-HIR-Ab-LC発現カセットの配列構造を確認した。発現カセットは、1,855nt CMVプロモーター配列、9nt コザック部位、27,93nt融合タンパク質cDNAおよび294 BGHポリA配列を含む4,951ntからなった。プラスミドは、42アミノ酸GALCシグナルペプチド、643アミノ酸GALC、31アミノ酸リンカーおよびIgGシグナルペプチドを欠く214アミノ酸HIR Ab LCからなる、930アミノ酸GALC-HIR Ab LC融合タンパク質をコードした。GALC配列は、ヒトGALC(NM_000153)のMet-Arg685と100%同一であった。GALC-HIR Ab LC融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を播種し、GALC-HIR Ab LCおよびキメラHIR Abの重鎖(HC)であるHIR Ab HCをコードする発現プラスミドで二重トランスフェクトした(図2)。pHIR Ab-HCは、HIR Ab-HCタンパク質の443アミノ酸配列をコードする。HIR Ab-HCをコードする2,328nt配列は、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする2,316nt配列、続いてTA停止コドンからなる。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地を限外濾過により浄化し、GALC-HIR Ab-LC融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。融合タンパク質の純度を還元SDS-PAGEにより確認した。GALC-HIR Ab-LC融合タンパク質を、ヒトIgGおよびヒトGALCに対する抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。GALC-HIR Ab-LC融合タンパク質のGALC酵素活性を、上記のとおり4-メチルウンベリフェリル-ベータ-D-ガラクトピラノシド(MUGP)を使用する蛍光定量的酵素アッセイで測定した。GALC-HIR Ab-LC融合タンパク質のGALC酵素活性は、組み換えGALCの比活性のわずか<5%であった。これらの組み合わせた結果は、IgGのLCのC末端またはN末端へのリソソーム酵素、GALCの融合は、酵素活性をほとんど欠くIgG-酵素融合タンパク質をもたらすことを示した。
【0200】
実施例1、2および3は、IgG-リソソーム酵素融合タンパク質操作の分野での予測可能性の欠如を示す。GUSBの場合、酵素活性は、HIR Abの重鎖(HC)のC末端(CT)への融合後失われた。逆に、酵素活性は、GUSBのHIR AbのHCのアミノ末端(NT)への融合後保持されたが、この場合、ヒトインスリン受容体(HIR)に対する抗体の結合活性の>95%が失われた。HIRへの結合喪失は、標的抗原に結合するCDR領域が、HCまたは軽鎖(LC)のNT付近に位置するためであろう可能性がある。3アミノ酸から58アミノ酸範囲の種々の長さのリンカーを用いるHIR AbのHCまたはLCのNTまたはCTへのGCRの融合の場合、GCR酵素活性の>95%の喪失があった。GALCの場合、酵素を、31アミノ酸長リンカーで抗体のLCのCTまたはNTに融合させたが、これは何れの構築物でも酵素活性のほぼ完全な喪失をもたらした。本発明において、各酵素のHIR Ab重鎖または軽鎖のカルボキシル末端への融合後、HEXA、ASMまたはPPT1活性が保持されるとの予測されない観察がなされた(図2、15、24)。
【0201】
実施例4. HIR Ab軽鎖-HEXA融合タンパク質発現プラスミドDNAの遺伝子操作
TSDで変異しているリソソーム酵素はHEXAである。HEXAの喪失は、脳におけるGM2ガングリオシドの蓄積をもたらす。TSDの酵素置換療法は、Desnick RJ and Kaback MM (Advances in genetics: Tay-Sachs disease. Advances in Genetics Series. Vol 44. San Diego, CA: Academic Press; 2001)に記載のとおり、HEXA酵素がBBBを通過できないため、脳の処置に有効ではない。HEXAを、BBBの通過と酵素活性発揮両方が可能な二機能性分子を開発するために、HIR Abと融合させた。ある実施態様において、成熟HEXAのアミノ末端を、HIR Abの各軽鎖のカルボキシル末端と融合させる(図2)。
【0202】
HEXAの酵素活性が、HIR Abに融合されたとき保持されるか、不明であった。実施例1、2および3に記載したIgG-GUSB、IgG-GCRおよびIgG-GALC融合タンパク質での経験は、本技術の予測不可能な性質およびIgG部分またはリソソーム酵素部分が、IgG-酵素融合タンパク質の構築後、生物学的活性を喪失する可能性を説明し得る。ヒトHEXA cDNAは、22アミノ酸シグナルペプチドを欠くヒトHEXAタンパク質(accession # NP_000511)のアミノ酸Leu-23~Thr-529に対応する。HEXA cDNAは、TG停止コドンまでシグナルペプチドを欠くHEXAオープンリーディングフレームを含む、1,524ヌクレオチド(nt)からなった(配列番号11)。HEXA cDNAの5’末端を、31アミノ酸リンカーを介してHIR Abの軽鎖(LC)をコードする702nt cDNAに結合した。このリンカーは、ヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含み、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来する25アミノ酸に対応し、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。31アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSであり、配列番号10のアミノ酸235~265に対応する。発現ベクターの3’非翻訳領域からの18ntフラグメントを3’末端に付加し、PmeI RE部位が続いた。融合タンパク質cDNAの5’末端は、EcoRI部位、続いて発現ベクターの5’非翻訳領域の5nt続いて完全コザック部位(GCCGCCACC)を含む。HIR Ab-LC-HEXAをコードする人工遺伝子は2,365塩基対からなり、それは商業的DNA製造業者によりカスタム合成された。HIR Ab LC-HEXA遺伝子は、アガロースゲル電気泳動により示されるとおり、EcoRIおよびPmeIを用いてベンダーから提供されたpUCプラスミドから遊離され(図3)、それぞれ、CMVプロモーターおよびBGHポリA領域が隣接する真核生物発現ベクターの同じRE部位に挿入された(図4)。この発現プラスミドはpHIR Ab LC-HEXAと名付けられた。この発現プラスミドは、HIR AbのLCのカルボキシル末端が、22アミノ酸HEXAシグナルペプチドを欠くヒトHEXAのアミノ末端に、HIR Ab LCとHEXAの間の31アミノ酸リンカーで融合された融合タンパク質を発現する。DNAシーケンシングで、pHIR Ab LC-HEXA発現カセットの配列構造を確認した。発現カセットは、1,855nt CMVプロモーター配列、2,328nt発現カセットおよび291 BGHポリA配列を含む6,241ntからなった。プラスミドは、20アミノ酸IgGシグナルペプチド、214アミノ酸HIR Ab LC、31アミノ酸リンカーおよび酵素シグナルペプチドを欠く507アミノ酸ヒトHEXAからなる772アミノ酸タンパク質をコードした。HEXA配列は、ヒトHEXAタンパク質(accession # NP_000511)のLeu23-Thr529と100%同一であった。グリコシル化がないLC融合タンパク質の予測分子量は84,870Daであり、予測等電点(pI)は5.06である。pHIR Ab-HEXAの発現ベクターは、タンデムでジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損CHO細胞での安定なトランスフェクタントの産生に使用されるDHFRの発現カセットも含む(図4)。DHFR選択タンパク質の187アミノ酸配列を配列番号16に示す。DHFRをコードする573nt配列を配列番号15に示し、これは、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする561nt配列、続いてTA停止コドンからなる。
【0203】
HIR Ab-HEXA融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を播種し、pHIR Ab LC-HEXAおよびキメラHIR Abの重鎖(HC)をコードする発現プラスミドであるpHIR Ab HCで二重トランスフェクトした(図4)。pHIR Ab-HCは、シグナルペプチドを含むHIR Ab-HCタンパク質の462アミノ酸配列をコードし、配列番号7のアミノ酸配列に対応する。HIR Ab-HCをコードする1,398nt配列を配列番号12に示し、これは、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする1,386nt配列、続いてTA停止コドンからなる。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地を限外濾過により浄化し、HIR Ab-HEXA融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。
【0204】
実施例5. HIRMAb-HEXA融合タンパク質の重鎖および軽鎖両方をコードする発現ベクターでのチャイニーズハムスター卵巣細胞の安定なトランスフェクション
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞1×HTサプリメント(ヒポキサンチンおよびチミジン)含有無血清CHOユーティリティ培地で増殖させた。CHO細胞(5×10 生存可能細胞)を、2.5μg PvuI直線化pHIR Ab LC-HEXAおよび2.5μg PvuI直線化pHIR Ab-HCプラスミドDNAで共電気穿孔した(図4)。細胞-DNA懸濁液を、氷上で10分間インキュベートした。細胞を、25msecおよび160ボルトのパルスで矩形波エレクトロポレーションした。エレクトロポレーション(EP)後、細胞を氷上で10分間インキュベートした。細胞懸濁液を50ml培養培地に移し、4×96ウェルプレートのウェルあたり125μl(10,000細胞/ウェル)で播種した。EP後、CHO細胞を37℃および8%COのインキュベーターに入れた。発現ベクターにおけるネオマイシン耐性(neo)遺伝子の存在により(図4)、トランスフェクト細胞株をまずG418で選択した。pHIR Ab LC-HEXAはDHFRの遺伝子も発現し(図4)、よって、トランスフェクト細胞を20nM メトトレキサート(MTX)およびHT欠損培地でも選択した。EP約21日後可視コロニーが検出されたら、条件培地をELISAによるヒトIgGのためにサンプリングした。ELISAで高ヒトIgGシグナルのウェルを、96ウェルプレートから1mLのCHOユーティリティ無血清培地を含む24ウェルプレートに移した。24ウェルプレートを、37℃および8%COのインキュベーターに戻した。翌週IgG ELISAを24ウェルプレートのクローンで実施した。これを、6ウェルプレートからT75フラスコを経て、最後に60mLおよび125mLスクエアプラスチックボトルでオービタルシェーカー上で繰り返した。この段階で、最終MTX濃度は80nMであり、培地中のHIR Ab-HEXA融合タンパク質の指標であった培地IgG濃度は、10/mLの細胞密度で>10mg/Lである。希釈クローニング(DC)のために選択したクローンをインキュベーターのオービタルシェーカーから除き、無菌フードに移した。細胞を、5%透析ウシ胎児血清(d-FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンを含むF-12K培地で500mLに希釈し、最終希釈は8細胞/mLであり、よって、40×96ウェルプレートの4,000ウェルに、1細胞/ウェル(CPW)の細胞密度で播種できた。細胞懸濁液が調製されたら、無菌フード内で、125μLアリコートを、8チャネルピペッターまたは精密ピペッター系を使用して96ウェルプレートの各ウェルに分配した。プレートを、37℃および8%COのインキュベーターに戻した。1細胞/ウェルまで希釈した細胞は、血清なしでは生存できない。6日または7日目、DCプレートをインキュベーターから出し、無菌フードに移し、そこで、各ウェルに5%透析ウシ胎児血清(d-FBS)を含む125μlのF-12K培地を加えた。この選択培地は、その段階で5%d-FBS、30nM MTXおよび0.25mg/mL ジェネテシンを含んだ。初期1CPWプレーティング後21日目、4,000ウェルの各々からのアリコートを、ロボット装置を使用してヒトIgG ELISAのために採った。DCプレートをインキュベーターから出し、無菌フードに移し、そこで、8チャネルピペッターまたは精密ピペッター系を使用して、96ウェルプレートのウェルあたり100μlの培地を採り、新しい無菌サンプル96ウェルプレートに移した。初期1CPWプレーティング後20日目、40×96ウェル免疫アッセイプレートに、0.1M NaHCO中一次抗体であるマウス抗ヒトIgGの1μg/mL溶液100μLを播種した。プレートを、4℃冷蔵庫で一夜インキュベートした。翌日、ELISAプレートを1×TBSTで5回洗浄し、100μLの二次抗体の1μg/mL溶液および遮断緩衝液を加えた。プレートを1×TBSTで5回洗浄する。0.1Mグリシン緩衝液中の100μLの1mg/mLの4-ニトロフェニルリン酸ジ(2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール)塩を96ウェル免疫アッセイプレートに加える。プレートをマイクロプレートリーダーで読んだ。アッセイは、4,000ウェル/実験についてIgGアウトプットデータを作成した。産生が最高であった24~48ウェルをさらなる伝播に使用した。1CPW DCからの産生が最高であった24ウェルプレートを無菌フードに移し、6ウェル皿を経て、T75フラスコおよび125mLスクエアプラスチックボトルでオービタルシェーカー上で二重サブクローン化した。この工程中、細胞の血清を遠心分離の最終段階で0まで減らし、無血清培地(SFM)に再懸濁した。上記工程を、0.5~1細胞/ウェル(CPW)で第二ラウンドの希釈クローニングで繰り返した。この段階で、ウェルの約40%が何らかの細胞増殖を示し、増殖を示す全ウェルがヒトIgGも分泌した。これらの結果は、これらの方法で平均してウェルあたり1細胞のみが播種され、CHO細胞株が単一細胞に由来することを確認した。希釈クローニング(DC)方法を、第二ラウンドのDCについて上記のとおり繰り返した。この第二ラウンドDCから産生された細胞株を、マスター細胞銀行の産生のために後に使用する、目録細胞銀行の製造に使用した。
【0205】
実施例6. 二機能的IgG-HEXA融合タンパク質のHIR結合およびHEXA活性の分析
COS由来HIR Ab-HEXA融合タンパク質(HIRMAb-HEXAとも称する)を、図10に示すとおり、プロテインA親和性クロマトグラフィーでの精製後、還元ドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により純度を評価した。HCおよびLCタンパク質のみがHIRMAb単独またはHIRMAb-HEXA融合タンパク質で検出される。HIRMAb単独について、高分子量(MW)バンドがHCであり、低MWバンドがLCである。HIRMAb-HEXA融合タンパク質について、高MWバンドはLC-HEXA融合タンパク質であり、低MWバンドはHCである。融合タンパク質を、ヒトIgG(図11、左パネル)またはヒトHEXA(図11、右パネル)に対する一次抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。HIRMAb-HEXA重鎖および軽鎖の分子量(MW)を、MW標準の移動に基づく線形回帰により推定する。HIRMAb-HEXA融合軽鎖のサイズ102kDaは、HEXAのHIRMAb軽鎖への融合により、HIRMAb単独の軽鎖のサイズ26kDaより大きい。重鎖のサイズ57kDaは、HIRMAb-HEXA融合タンパク質およびHIRMAb単独両者で、両タンパク質が同じ重鎖を使用するため、同一である。図2に示すヘテロ四量体HIRMAb-HEXA融合タンパク質の推定MWは、ウェスタンブロットのSDS-PAGEの移動に基づき、318kDaである。HIR細胞外ドメイン(ECD)に対する融合タンパク質の親和性をELISAで決定した。Coloma et al. (2000) Pharm Res, 17:266-274に先に記載のとおり、HIR ECDで永久にトランスフェクトしたCHO細胞を無血清培地(SFM)で増殖させ、HIR ECDを小麦胚芽凝集素親和性カラムで精製した。HIR ECDをNunc-Maxisorb 96ウェル皿に播種し、HIR AbまたはHIR Ab-HEXA融合タンパク質のHIR ECDへの結合を、二次抗体、続いてアルカリホスファターゼ検出剤との結合により検出した。50%最大結合をもたらすHIR AbまたはHIR Ab-HEXA融合タンパク質の濃度、ED50を非線形回帰分析により決定した。HIRへのHIRMAb結合のED50は34±3ng/mLであり、HIRへのAb-HEXA融合タンパク質結合のED50は112±18ng/mLであり(図12)。HIR AbのMWは150kDaであり、HIR Ab-融合タンパク質のMWは318kDaである。それ故に、MW差異で正規化後、キメラHIR AbまたはHIR Ab-融合タンパク質のHIR ECDに対する結合は同等であり、それぞれ0.23±0.02nMおよび0.35±0.06nMのED50であった(図12)。これらの発見は、HIR Ab融合タンパク質結合に対する親和性は、IgGの両軽鎖のカルボキシル末端へのHEXA分子の融合にかかわらず、HIRへのHIR Ab融合タンパク質結合の親和性が保持されることを示す(図2)。
【0206】
HIR Ab-HEXA融合タンパク質を産生するCHO系統を、上記のとおり2ラウンドのDC後CHO細胞から産生した。目録細胞株を、オービタルシェーカー上、2L振盪フラスコ中SFMで増殖させ、CHO由来融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。CHO由来融合タンパク質の純度および構成をそれぞれSDS-PAGEおよびヒトIgG/ヒトHEXAウェスタンブロッティングにより評価し、結果はそれぞれ図10および図11に示すものと同等である。CHO由来融合タンパク質の効力を、上記のとおりHIR ECD結合ELISAで評価した。HIR ECDへのCHO由来融合タンパク質の飽和性結合のED50は122±15ng/mLであり、これは、上記のとおり、318kDaの融合タンパク質のMWを仮定して、0.38±0.05のEC50に等しい。
【0207】
HEXA酵素活性を、Dewji (1986): Purification and characterization of β-N-acetylhexosaminidase I2 from human liver, Biochem J., 234: 157-162により開発された蛍光定量的アッセイで決定した。このアッセイは、4-メチルウンベリフェリルN-アセチル-β-D-グルコサミニド(4-MUG)としても知られる4-メチルウンベリフェリル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシドを基質として使用する。この基質は商業的に入手可能であり、基質の構造を図13Aに概説する。この基質はHEXAにより4-メチルウンベリフェロン(4-MU)を加水分解し、アッセイにおける産物の産生が蛍光定量的に決定される。アッセイを、HIRMAb-HEXA融合タンパク質(10~100ng/チューブ)および4MUG基質を、100mM クエン酸ナトリウム/0.25M NaCl緩衝液/pH=4.5で37℃で20分間インキュベートすることにより実施した。0.5Mグリシン/NaOH/pH=10.7を加えて、反応停止させた。蛍光を、365nm励起フィルターおよび450nm吸収フィルターを備えた蛍光光度計で測定した。標準曲線を、0.001~1.0nmol/チューブの4-MU産物で作成し、これは、蛍光単位のnmol/チューブへの変換を可能とした(図13B)。酵素活性を、HIRMAb-HEXA融合タンパク質の単位/mgタンパク質として測定し、ここで、1ミリ単位=インキュベーション1分あたり形成される4-MU産物の1nmolである。アッセイは、融合タンパク質の質量に関して直線的であった(図13B)。HIRMAb-HEXA融合タンパク質のHEXA酵素活性は、市販組み換えヒトHEXAの活性と同等であった(表2)。
【表2】

実験1および2両方で、融合タンパク質のHEXA酵素活性は組み換えHEXAの酵素活性と等しかった。プロテインA精製CHO由来HIR Ab-HEXA融合タンパク質のHEXA酵素活性は、MUGS基質を使用して、COS由来融合タンパク質の活性より高く(表2)、1,931±323nmol/分/mgタンパク質であった。
【0208】
HEXAは、ヘキソサミニダーゼのアルファサブユニットであり、ベータサブユニット、HEXBとヘテロ-二量体を形成する。HEXAサブユニットのみがアニオン性GM2ガングリオシド基質が結合するカチオン性溝を有し、HEXAサブユニットのみが4-メチルウンベリフェリル-7-(6-スルホ-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(4-MUGSである)アニオン性4-MUGアナログ基質と結合し、このアニオン性基質の構造を図14Aに示す。酵素アッセイは、4-MUGS基質を使用したとき、融合タンパク質の質量に関して直線的であった(図14B)。2つの実験で、4-MUGS基質に対するHIRMAb-HEXA融合タンパク質の酵素活性は、組み換えHEXAと比較して高かった(表2)。それ故に、HEXAのHIR AbのLCのカルボキシル末端への融合は、IgG-GUSB、IgG-GCRおよびIgG-GALC融合タンパク質(実施例1、2および3)で見られた結果と対照的に、HEXA酵素の酵素活性に最小の影響を有した。
【0209】
実施例7. HEXAとターゲティング抗体を結合するアミノ酸リンカー
成熟ヒトHEXAを、ターゲティング抗体のLCのカルボキシル末端に31アミノ酸リンカーで融合させる(図9で下線)。このリンカー配列は、配列番号10のアミノ酸235~265に対応する(図9)。あらゆる数のバリエーションのリンカーを、アミノ酸配列およびアミノ酸長両方の観点で、本リンカーの代替として使用し得る。このようなリンカーは、融合タンパク質の操作における最適アミノ酸リンカーの決定のための複数の公開された利用可能なプログラムが存在することから、当分野で周知である。頻繁に利用されるリンカーは、(GlySer)または他の異形など反復配列中に種々の組み合わせでGlyおよびSerを含む。このようなリンカーを、HEXAをターゲティング抗体のLCのアミノ末端に融合するときまたはHEXAをターゲティング抗体のHCのカルボキシ末端に融合するときまたはHEXAをターゲティング抗体のHCのアミノ末端に融合するときまたはHEXAを一本鎖ターゲティング抗体のアミノ末端またはカルボキシ末端に融合するときにも使用し得る。
【0210】
実施例8. ヒト脳へのHEXAの受容体介在送達
テイ・サックス病(TSD)は、早逝の原因となる極めて重篤な神経変性遺伝性疾患である。多くのこのようなリソソーム蓄積症は、組み換え酵素発現後、酵素置換療法(ERT)で処置される。ヒトHEXA酵素の配列が知られてから、30年を超える[Myerowitz et al (1975): Human beta-hexosaminidase alpha chain: coding sequence and homology with the beta chain, Proc. Natl. Acad. Sci., 82: 7830-7834]。しかしながら、他のリソソーム酵素と同様HEXA酵素はBBBを通過しないため、ERTは利用可能となっていない。BBBを通過させる試みにおいて、組み換え酵素は、脳の脳脊髄液(CSF)区画への直接注射を経る髄腔内(IT)送達により与えられる。一般に、酵素は、腰部CSF腔に注射される。IT送達経路は、酵素が血液プールに急速にさらされるため、有効であるとは予測されない。ヒトにおいてCSF体積全体が1日4~5回ターンオーバーすることが周知である。CSF内に注射された薬物は遅い静脈内注射と等しく、薬物は、脳の脳室上皮表面にのみ分配される。初期の研究は、HEXAのIT注射でTSDを処置する試みが無駄であることを示した(von Sprecht et al, Enzyme replacement in Tay-Sachs disease, Neurology, 29: 848-854, 1979)。TSDを有する患者を、腰部CSFへのHEXAのIT注射で処置した。しかしながら、酵素はCSFから急速に消えて血液に入り、T1/2はわずか30分であった。IT注射後脳のGM2ガングリオシド封入体は減少しなかった。HEXAを静脈内(IV)注射したとき、血中GM2ガングリオシドは減少し、酵素の生物学的活性は示された。IT HEXAでの脳の処置の失敗は、活性酵素ではなく、送達問題によるものであった。TSD患者の脳へのHEXAの送達の好ましいアプローチは、受容体介在輸送(RMT)を介してBBBを送達するよう再操作された形態のHEXAの静脈内(IV)点滴である。HIRMAb-HEXA融合タンパク質は、ヒトインスリン受容体に対する高親和性結合を保持し、これによりHEXAがBBBを浸透し、内在性BBBインスリン受容体上のRMTを介して血液から脳に入ることを可能とする。HIR Ab-リソソーム酵素融合タンパク質の脳取り込みは、脳あたり注射用量(ID)の1%である[Boado et al (2013) Blood-brain barrier molecular Trojan horse enables brain imaging of radioiodinated recombinant protein in the Rhesus monkey. Bioconj. Chem., 24:1741-1749]。HIR Ab-HEXA融合タンパク質の治療用量が3mg/kgであり、体重が50kgであり、酵素比活性が2,500ミリ単位/mg(表2)であるならば、融合タンパク質の点滴用量(ID)は375,000ミリ単位である。IDの1%の融合タンパク質の脳取り込みを仮定して、脳HEXA酵素活性は、HIR Ab-HEXA融合タンパク質のIV点滴後、1000グラムヒト脳あたり3,750ミリ単位または3.7ミリ単位/グラムである。4-MUGSアッセイで決定して(図14)、正常脳における内在性HEXA酵素活性は10.8nmol/時間/mgタンパク質である[Bradbury et al, Neurodegenerative lysosomal storage disease in European Burmese cats with hexosaminidase β-subunit deficiency, Molec Genet Metab, 97: 53-59]。このレベルの脳HEXA酵素活性は、18ミリ単位/100mg 脳タンパク質に等しく、ここで、1ミリ単位=1nmol/分である。脳1グラムあたり100mgタンパク質と仮定して、脳HEXA酵素活性は18ミリ単位/グラムである。それ故に、3mg/kgのHIR Ab-HEXA融合タンパク質のIV点滴後に産生されるHEXA酵素活性、3.7ミリ単位/グラムは、脳における正常HEXA酵素活性、18ミリ単位/グラムの21%である。HEXAのこのレベルの脳酵素置換は、治療的応答に必要な酵素活性の10倍高い。TSDを有する患者における正常のわずか1~2%の細胞酵素活性を生じる酵素置換療法が、TSDの疾患の影響の排除に十分である(J. Muenzer and A. Fisher, Advances in the treatment of mucopolysaccharidosis type I, N. Engl J Med, 350: 1932-1934, 2004;またはJeyakumar et al, Neural stem cell transplantation benefits a monogenic neurometabolic disorder during the symptomatic phase of disease. Stem Cells, 27: 2362-2370 2009)。これらの考察は、ヒト脳における臨床的に意義のあるHEXA酵素置換が、約3mg/kgの全身用量でのHIRMAb-HEXA融合タンパク質の静脈内点滴後可能であることを示す。
【0211】
実施例9. HIR Ab軽鎖-ASM融合タンパク質発現プラスミドのDNA遺伝子操作
NPDで変異しているリソソーム酵素はASMである。ASMの喪失は、脳および末梢臓器におけるスフィンゴミエリンの蓄積をもたらす。NPDの酵素置換療法は、Miranda et al (2000): Infusion of recombinant human acid sphingomyelinase into Niemann-Pick disease mice leads to visceral, but not neurological, correction of the pathophysiology, FASEB J., 14: 1988-1995に記載のとおり、ASM酵素がBBBを通過しないため、脳の処置に有効ではない。ASMを、BBBの通過および酵素活性発揮の両者が可能な二機能性分子の開発のために、HIR Abと融合させた。ある実施態様において、成熟ASMのアミノ末端を、HIR Abの各軽鎖のカルボキシル末端に融合させる(図15)。
【0212】
HIR Abと融合させたとき、ASMの酵素活性が保持されるか否かは不明確であった。実施例1、2および3に記載したIgG-GUSB、IgG-GCRおよびIgG-GALC融合タンパク質での経験は、本技術の予測不可能な性質およびIgG部分またはリソソーム酵素部分が、IgG-酵素融合タンパク質の構築後、生物学的活性を喪失する可能性を説明し得る。ヒトASM cDNAは、46アミノ酸シグナルペプチドおよび15アミノ酸プロペプチドおよび3アミノ酸カルボキシル末端ペプチドを欠く、ヒトASMタンパク質(accession # NP_000534)のアミノ酸His-62からPro-628に対応する。ASM cDNAは、TG停止コドンまでシグナルペプチドを欠く(配列番号19)、ASMオープンリーディングフレームを含む1,704ヌクレオチド(nt)からなった。ASM cDNAの5’末端を、31アミノ酸リンカーを介してHIR Abの軽鎖(LC)をコードする702nt cDNAに結合させた。このリンカーは、ヒトIgG3ヒンジ領域の配列を含み、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来する25アミノ酸に対応し、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。31アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSであり、配列番号18のアミノ酸235~265に対応する。発現ベクターの3’非翻訳領域からの26ntフラグメントを3’末端に付加し、PmeI RE部位が続いた。融合タンパク質cDNAの5’末端はEcoRI部位、続いて発現ベクターの5’非翻訳領域の5nt続いて完全コザック部位(GCCGCCACC)を含む。HIR Ab-LC-ASMをコードする人工遺伝子は2,545塩基対からなり、それは商業的DNA製造業者によりカスタム合成された。HIR Ab LC-ASM遺伝子は、アガロースゲル電気泳動により示されるとおり、EcoRIおよびPmeIを用いてベンダーから提供されたpUCプラスミドから遊離され(図16)、それぞれ、CMVプロモーターおよびBGHポリA領域が隣接する真核生物発現ベクターの同じRE部位に挿入された(図17)。この発現プラスミドはpHIR Ab LC-ASMと名付けた。この発現プラスミドは、HIR AbのLCのカルボキシル末端が、ASMシグナルペプチドおよびプロペプチドを欠くヒトASMのアミノ末端に、HIR Ab LCとASMの間の31アミノ酸リンカーで融合された融合タンパク質を発現する。DNAシーケンシングは、pHIR Ab LC-ASM発現カセットの配列構造を確認した。発現カセットは、1,855nt CMVプロモーター配列、9nt コザック部位、2,499nt発現カセットおよび291 BGHポリA配列を含む6,241ntからなった。プラスミドは、20アミノ酸IgGシグナルペプチド、214アミノ酸HIR Ab LC、31アミノ酸リンカーならびに酵素シグナルペプチド、プロペプチドおよびカルボキシル末端トリペプチドを欠く567アミノ酸ヒトASMからなる832アミノ酸タンパク質をコードした。ASM配列は、ヒトASMタンパク質(accession # NP_000534)のHis62-Pro628と100%同一であった。グリコシル化がないLC融合タンパク質の予測分子量は92,042Daであり、予測等電点(pI)は6.30である。pHIR Ab-LC-ASMの発現ベクターは、タンデムで、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損CHO細胞での安定なトランスフェクタントの産生に使用されるDHFR発現カセットも含む(図17)。DHFR選択タンパク質の187アミノ酸配列を配列番号16に示す。DHFRをコードする573nt配列を配列番号15に示し、これは、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする561nt配列、続いてTA停止コドンからなる。
【0213】
HIR Ab-ASM融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を播種し、pHIR Ab LC-ASMおよびキメラHIR Abの重鎖(HC)をコードする発現プラスミドであるpHIR Ab HCで二重トランスフェクトした(図17)。pHIR Ab-HCは、19アミノ酸シグナルペプチドを含み、配列番号7のアミノ酸配列に対応するHIR Ab-HCタンパク質の462アミノ酸配列をコードする。HIR Ab-HCをコードする1,398nt配列を配列番号12に示し、これは、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする1,386nt配列、続いてTA停止コドンからなる。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地を限外濾過により浄化し、HIR Ab-ASM融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。
【0214】
実施例10. HIR Ab-ASM融合タンパク質の重鎖および軽鎖両方をコードする発現ベクターでのチャイニーズハムスター卵巣細胞の安定なトランスフェクション
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞1×HTサプリメント(ヒポキサンチンおよびチミジン)含有無血清CHOユーティリティ培地で増殖させた。CHO細胞(5×10 生存可能細胞)を2.5μg PvuI直線化pHIR Ab LC-ASMおよび2.5μg PvuI直線化pHIR Ab-HCプラスミドDNAで共電気穿孔した(図4)。細胞-DNA懸濁液を、氷上で10分間インキュベートした。細胞を、25msecおよび160ボルトのパルスで矩形波エレクトロポレーションした。エレクトロポレーション(EP)後、細胞を氷上で10分間インキュベートした。細胞懸濁液を50ml培養培地に移し、4×96ウェルプレートのウェルあたり125μl(10,000細胞/ウェル)で播種した。EP後、CHO細胞を37℃および8%COのインキュベーターに入れた。発現ベクターにおけるネオマイシン耐性(neo)遺伝子の存在により(図17)、トランスフェクト細胞株をまずG418で選択した。pHIR Ab LC-ASM はDHFRの遺伝子も発現し(図17)、よって、トランスフェクト細胞を20nM メトトレキサート(MTX)およびHT欠損培地でも選択した。EP約21日後可視コロニーが検出されたら、条件培地をELISAによるヒトIgGのためにサンプリングした。ELISAで高ヒトIgGシグナルのウェルを、96ウェルプレートから1mLのCHOユーティリティ無血清培地を含む24ウェルプレートに移した。24ウェルプレートを、37℃および8%COのインキュベーターに戻した。翌週IgG ELISAを24ウェルプレートのクローンで実施した。これを、6ウェルプレートからT75フラスコを経て、最後に60mLおよび125mLスクエアプラスチックボトルでオービタルシェーカー上で繰り返した。この段階で、最終MTX濃度は80nMであり、培地におけるHIR Ab-ASM融合タンパク質の指標であった培地IgG濃度は、10/mLの細胞密度で>10mg/Lである。希釈クローニング(DC)のために選択したクローンをインキュベーターのオービタルシェーカーから除き、無菌フードに移した。細胞を、5%透析ウシ胎児血清(d-FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンを含むF-12K培地で500mLに希釈し、最終希釈は8細胞/mLであり、よって、40×96ウェルプレートの4,000ウェルに、1細胞/ウェル(CPW)の細胞密度で播種できた。細胞懸濁液が調製されたら、無菌フード内で、125μLアリコートを、8チャネルピペッターまたは精密ピペッター系を使用して96ウェルプレートの各ウェルに分配した。プレートを、37℃および8%COのインキュベーターに戻した。1細胞/ウェルまで希釈した細胞は、血清なしでは生存できない。6日または7日目、DCプレートをインキュベーターから出し、無菌フードに移し、そこで、各ウェルに5%透析ウシ胎児血清(d-FBS)を含む125μlのF-12K培地を加えた。この選択培地は、その段階で5%d-FBS、30nM MTXおよび0.25mg/mL ジェネテシンを含んだ。初期1CPWプレーティング後21日目、4,000ウェルの各々からのアリコートを、ロボット装置を使用してヒトIgG ELISAのために採った。DCプレートをインキュベーターから出し、無菌フードに移し、そこで、8チャネルピペッターまたは精密ピペッター系を使用して、96ウェルプレートのウェルあたり100μlの培地を採り、新しい無菌サンプル96ウェルプレートに移した。初期1CPWプレーティング後20日目、40×96ウェル免疫アッセイプレートに、0.1M NaHCO中一次抗体であるマウス抗ヒトIgGの1μg/mL溶液100μLを播種した。プレートを、4℃冷蔵庫で一夜インキュベートした。翌日、ELISAプレートを1×TBSTで5回洗浄し、100μLの二次抗体の1μg/mL溶液および遮断緩衝液を加えた。プレートを1×TBSTで5回洗浄する。0.1Mグリシン緩衝液中の100μLの1mg/mLの4-ニトロフェニルリン酸ジ(2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール)塩を96ウェル免疫アッセイプレートに加える。プレートをマイクロプレートリーダーで読んだ。アッセイは、4,000ウェル/実験についてIgGアウトプットデータを作成した。産生が最高であった24~48ウェルをさらなる伝播に使用した。1CPW DCからの産生が最高であった24ウェルプレートを無菌フードに移し、6ウェル皿を経て、T75フラスコおよび125mLスクエアプラスチックボトルでオービタルシェーカー上で二重サブクローン化した。この工程中、細胞の血清を遠心分離の最終段階で0まで減らし、無血清培地(SFM)に再懸濁した。上記工程を、0.5~1細胞/ウェル(CPW)で第二ラウンドの希釈クローニングで繰り返した。この段階で、ウェルの約40%が何らかの細胞増殖を示し、増殖を示す全ウェルがヒトIgGも分泌した。これらの結果は、これらの方法で平均してウェルあたり1細胞のみが播種され、CHO細胞株が単一細胞に由来することを確認した。希釈クローニング(DC)方法を、第二ラウンドのDCについて上記のとおり繰り返した。この第二ラウンドDCから産生された細胞株を、マスター細胞銀行の産生のために後に使用する、目録細胞銀行の製造に使用した。HIR Ab-ASM融合タンパク質を産生するCHO系統を、上記のとおり2ラウンドのDC後CHO細胞から産生した。目録細胞株を、オービタルシェーカー上、2L振盪フラスコ中SFMで増殖させ、CHO由来融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。
【0215】
実施例11. 二機能的IgG-ASM融合タンパク質のHIR結合およびASM活性の分析
COS由来またはCHO由来HIR Ab-ASM融合タンパク質を、図20に示すとおり、プロテインA親和性クロマトグラフィーでの精製後、還元ドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により純度を評価した。HCおよびLCタンパク質のみがHIRMAb単独またはHIRMAb-ASM融合タンパク質で検出される。HIR Ab単独について、高分子量(MW)バンドはHCであり、低MWバンドはLCである。HIR Ab-ASM融合タンパク質について、高MWバンドはLC-ASM融合タンパク質であり、低MWバンドはHCである。融合タンパク質を、ヒトIgG(図21A)またはヒトASM(図21B)に対する一次抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。HIR Ab-ASM重鎖および軽鎖の分子量(MW)を、MW標準の移動に基づく線形回帰により推定する。HIR Ab-ASM融合軽鎖のサイズ105kDaは、ASMのHIR Ab軽鎖への融合により、HIR Ab軽鎖単独のサイズ26kDaより大きい。重鎖のサイズ54kDaは、両タンパク質が同じ重鎖を使用するため、HIR Ab-ASM融合タンパク質およびHIR Ab単独両者で同一である。図2に示すヘテロ四量体HIR Ab-ASM融合タンパク質の推定MWは、ウェスタンブロットのSDS-PAGEの移動に基づき、320kDaである。
【0216】
HIR細胞外ドメイン(ECD)に対する融合タンパク質の親和性をELISAで決定した。組み換えHIR ECDをNunc-Maxisorb 96ウェル皿に播種し、HIR ECDに対するHIR AbまたはHIR Ab-ASM融合タンパク質の結合を、二次抗体、続いてアルカリホスファターゼ検出剤との結合により検出した。50%最大結合をもたらすCHO由来HIR AbまたはCHO由来HIR Ab-ASM融合タンパク質の濃度、ED50を非線形回帰分析により決定した。HIRへのHIR Ab結合のED50は47±2ng/mLであり、HIRへのAb-ASM融合タンパク質結合のED50は299±40ng/mLである(図22)。HIR AbのMWは150kDaであり、HIR Ab-融合タンパク質のMWは320kDaである。それ故に、MW差異で正規化後、キメラHIR AbまたはHIR Ab-融合タンパク質のHIR ECDに対する結合は同等であり、それぞれ0.32±0.01nMおよび0.93±0.12nMのED50である(図22)。これらの発見は、HIRへのHIR Ab融合タンパク質結合の親和性が、IgGの両軽鎖のカルボキシル末端へのASM分子の融合にかかわらず維持されることを示す(図15)。
【0217】
ASM酵素活性を、van Diggelen et al (2005): A new fluorometric enzyme assay for the diagnosis of Niemann Pick A/B, with specificity of natural sphingomyelinase substrate J Inherit. Metab. Dis., 28: 733-741により開発された蛍光定量的アッセイで、基質として6-ヘキサデカノイルアミノ-4-メチルウンベリフェリルホスホコリン(HMU-PC)を使用して決定した。この基質は商業的に入手可能であり、基質の構造は図23Aに示す。この基質はASMにより6-ヘキサデカノイルアミノ-4-メチルウンベリフェロン(HMU)に加水分解され、アッセイにおける産物の産生が蛍光定量的に決定される。アッセイを、100mM 酢酸ナトリウム/0.2%タウロコール酸ナトリウム/pH=5.2中、HIR Ab-ASM融合タンパク質(3.75~37.5ng/チューブ)およびHMU-PC基質を37℃で60分間インキュベーションすることにより実施した。0.5Mグリシン/NaOH/pH=10.7を加えて、反応停止させた。蛍光を、365nm励起フィルターおよび450nm吸収フィルターを備えた蛍光光度計で測定した。標準曲線を、10~3000pmol/チューブの4-メチルウンベリフェロン(4MU)産物で作成し、これは、蛍光単位のpmol/分への変換を可能とした(図23B)。酵素活性を、HIR Ab-ASM融合タンパク質の単位/mgタンパク質として測定し、ここで、1ミリ単位=インキュベーション1分あたりに形成される1nmolのHMU産物である。アッセイは、融合タンパク質の質量に関して直線的であった(図23B)。CHO由来HIR Ab-ASM融合タンパク質のASM酵素活性は902±41nmol/分/mgタンパク質または902±41ミリ単位/mgタンパク質または0.90±0.04単位/mgタンパク質であった。
【0218】
実施例12. ASMとターゲティング抗体を結合するアミノ酸リンカー
成熟ヒトASMを、31アミノ酸リンカー(図19で下線)でターゲティング抗体のLCのカルボキシル末端に融合させる。このリンカー配列は、配列番号18のアミノ酸235~265に対応する(図19)。あらゆる数のバリエーションのリンカーを、アミノ酸配列およびアミノ酸長両方の観点で、本リンカーの代替として使用し得る。このようなリンカーは、融合タンパク質の操作における最適アミノ酸リンカーの決定のための複数の公開された利用可能なプログラムが存在することから、当分野で周知である。頻繁に利用されるリンカーは、(GlySer)または他の異形など反復配列中に種々の組み合わせでGlyおよびSerを含む。このようなリンカーを、ASMをターゲティング抗体のLCのアミノ末端に融合するときまたはASMをターゲティング抗体のHCのカルボキシ末端に融合するときまたはASMをターゲティング抗体のHCのアミノ末端に融合するときまたはASMwp一本鎖ターゲティング抗体のアミノ末端またはカルボキシ末端に融合するときにも使用し得る。
【0219】
実施例13. ヒト脳へのASMの受容体介在送達
ニーマン・ピック病(NPD)A型またはB型は、ASM酵素活性の減少をもたらすスフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1(SMPD1)遺伝子の変異により引き起こされ、早逝の原因である極めて重篤な神経変性遺伝性疾患である。多くのこのようなリソソーム蓄積症は、組み換え酵素発現後、酵素置換療法(ERT)で処置される。ヒトASM酵素の配列が知られて25年を超える[Schuchman et al (1991), “Human acid sphingomyleinase,” J Biol Chem 266: 8531-8539]。しかしながら、ASM酵素は、他のリソソーム酵素と同様、BBBを通過しないため、NPDにおける脳の処置について現在FDAで承認されたERTはない。BBBを通過させる試みにおいて、組み換え酵素は、脳の脳脊髄液(CSF)区画への直接注射を経る髄腔内(IT)送達により与えられる。一般に、酵素は腰部または脳室CSF腔に注射される。IT送達経路は、酵素が血液プールに急速にさらされるため、CSFへの注射後有効であるとは予測されない。ヒトにおいてCSF体積全体が1日4~5回ターンオーバーすることが周知であり、脈絡叢由来の体液の搬出と血液側への逆戻りがある。CSF内に注射された薬物は遅い静脈内注射と等しく、CSFに注射された薬物は、脳の脳室上皮表面にのみ分配され、酵素が脂質保存障害の矯正のために必要である脳の実質組織深層にいかない。NPD患者の脳へのASM送達の好ましいアプローチは、受容体介在輸送(RMT)を介してBBBを送達するよう再操作された形態のASMの静脈内(IV)点滴後の脳への経血管経路である。HIR Ab-ASM融合タンパク質はヒトインスリン受容体への高親和性結合を保持し、これによりASMが、内在性BBBインスリン受容体上のRMTを介して血液からBBBを浸透し、脳に入ることが可能となる。HIR Ab-リソソーム酵素融合タンパク質は、成熟霊長類で脳に取り込まれ、脳あたり注射用量(ID)の1%の濃度がもたらされ、肝臓、脾臓および腎臓などの内臓における取り込みはさらに高いレベルである[Boado et al (2013) Blood-brain barrier molecular Trojan horse enables brain imaging of radioiodinated recombinant protein in the Rhesus monkey. Bioconj. Chem., 24:1741-1749]。HIR Ab-ASM融合タンパク質の治療用量が3mg/kgであり、体重が50kgであるならば、融合タンパク質の点滴用量(ID)は150mgである。IDの1%の融合タンパク質の脳取り込みを仮定して、融合タンパク質の脳濃度は1500μg/脳である。これは、ヒト脳重量が約1,000グラムであるため、ヒトにおける1.5μg/脳グラムに等しい。1.9μg/グラムのヒトASMの脳における濃度が、ASMノックアウトマウスにおける1010ベクターゲノムのASMコード化アデノ随伴ウイルス(AAV)の脳内注射で達成され、このレベルの脳ASMが脳における脳スフィンゴミエリンレベルの顕著な減少に十分であった;低用量のAAVは、0.1~0.4μg/グラムのASMの脳レベルをもたらし、脳におけるこれらのASMレベルは、ASMノックアウトマウスの寿命を有意に延長させた[Bu et al (2012): Merits of combination of cortical, subcortical, and cerebellar injections for the treatment of Niemann-Pick disease type A, Mol. Ther., 20: 1892-1901]。ASMノックアウトマウスにおけるASMコード化AAVの静脈内注射は、内臓(肝臓、脾臓、腎臓)における0.1~1μg/グラムのASM濃度をもたらし、内臓におけるASMのこれらの濃度は、臓器スフィンゴミエリン濃度の減少に十分であった[Barbon et al (2005): AAV8-mediated hepatic expression of acid sphingomyelinase corrects the metabolic defect in the visceral organs of a mouse model of Niemann-Pick disease, Mol. Ther., 12:431-440]。これらの考察は、ヒト脳および内臓の臨床的に意義のあるASM酵素置換が、約3mg/kgの全身用量でのHIR Ab-ASM融合タンパク質の静脈内点滴後に可能であることを示す。
【0220】
実施例14. HIR Ab重鎖-PPT1融合タンパク質発現プラスミドDNAの遺伝子操作
NCL1で変異しているリソソーム酵素はPPT1である。PPT1喪失は、脳および末梢臓器におけるスフィンゴミエリン蓄積をもたらす。NCL1の静脈内酵素置換療法は、Hu et al (2012): Intravenous high-dose enzyme replacement therapy with recombinant palmitoyl-protein thioesterase reduces visceral lysosomal storage and modestly prolongs survival in a preclinical mouse model of infantile neuronal ceroid lipofuscinosis, Mol Genet. Metab., 107: 213-221に記載のとおり、PPT1酵素がBBBを通過しないため、脳の処置に有効ではない。酵素をBBB輸送させるため、PPT1がHIR Abと融合したIgG-PPT1融合タンパク質として、PPT1を操作した。目的は、BBB通過および高PPT1酵素活性発揮の両者が可能である二機能性分子の開発である。ある実施態様において、成熟PPT1のアミノ末端を、HIR Abの各重鎖のカルボキシル末端に融合させる(図24)。
【0221】
HIR Abと融合させたとき、PPT1の酵素活性が保持されるか否かは不確実であった。実施例1、2および3に記載したIgG-GUSB、IgG-GCRおよびIgG-GALC融合タンパク質での経験は、本技術の予測不可能な性質およびIgG部分またはリソソーム酵素部分が、IgG-酵素融合タンパク質の構築後、生物学的活性を喪失する可能性を説明し得る。ヒトPPT1 cDNAは、27アミノ酸シグナルペプチドを欠く、ヒトPPT1タンパク質(accession # NP_000301)のアミノ酸Asp-28からGly-306に対応する(図27)。まず、酵素シグナルペプチドを欠くPPT1を、4アミノ酸の短リンカー(SL)でHIR Abの重鎖(HC)のC末端に融合させた、HIR Ab-PPT1融合タンパク質を操作した。しかしながら、下記のとおり、この融合タンパク質は、極めて低いPPT1酵素活性を有した。それ故に、HCのC末端とPPT1のN末端の間の4アミノ酸リンカーを31アミノ酸の長リンカー(LL)に置き換えた、HIR Ab-PPT1融合タンパク質を再操作した。短4アミノ酸リンカーを有するPPT1融合タンパク質をHIR Ab-SL-PPT1と名付ける。長31アミノ酸リンカーを有するPPT1融合タンパク質をHIR Ab-LL-PPT1と名付ける。HIR Ab-SL-PPT1融合タンパク質において、リンカーは、配列番号22のアミノ酸462~465のSer-Ser-Ser-Ser配列に対応する(図28)。HIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質において、31アミノ酸リンカーは配列番号23のアミノ酸462~492に対応する(図29)。この31アミノ酸リンカーはヒトIgG3ヒンジ領域からなり、12アミノ酸の上部ヒンジ領域、続いてコアヒンジ領域の第一部分の5アミノ酸、続いて8アミノ酸の下部ヒンジ領域に由来する25アミノ酸に対応し、アミノ末端がSer-Ser-Ser配列およびカルボキシル末端がSer-Ser-Ser配列が隣接する。コアヒンジ領域の第一部分の2システイン残基は、ジスルフィド結合を排除するためにセリン残基に変異される。31アミノ酸リンカーの配列はSSSELKTPLGDTTHTSPRSPAPEFLGGPSSSである。27アミノ酸シグナルペプチドを欠く、ヒトPPT1タンパク質(accession # NP_000301)のアミノ酸Asp28~Gly306に対応するヒトPPT1 cDNAは、商業的DNA製造業者によりカスタム合成された。PPT1 cDNAは、TG停止コドンまでシグナルペプチドを欠く、PPT1オープンリーディングフレームを含む840ヌクレオチド(nt)からなった。CH3を有するオープンリーディングフレームおよび融合タンパク質のリンカー領域を維持するため、5’末端で、StuI制限エンドヌクレアーゼ(RE)配列、続いてCAntを付加した。3’末端で、HindIII RE部位を含む発現ベクターの3’非翻訳領域に対応して、23ntフラグメントを付加した。PPT1遺伝子は、アガロースゲル電気泳動により示されるとおり、StuIおよびHindIIIを用いてベンダーから提供されたpUCプラスミドから遊離され(図25)、HIR Ab重鎖をコードする真核生物発現プラスミドのHpaIおよびHindIII部位に挿入され、この発現プラスミドはpHIR Ab-HC-PPT1と名付けられた(図26)。PPT1 cDNAの5’末端を、4アミノ酸または31アミノ酸リンカーを介してHIR AbのHCをコードするcDNAに結合させた。HIR Ab HCの462位の末端リシン残基(配列番号7)を、プロテアーゼ部位の可能性があるため、融合タンパク質から欠失させた。これらの発現プラスミドは、HIR Abの重鎖(HC)のカルボキシル末端が、27アミノ酸PPT1シグナルペプチドを欠く、ヒトPPT1のアミノ末端に、それぞれHIR Ab HCのC末端と成熟PPT1のN末端の間の4アミノ酸または31アミノ酸リンカーにより融合した融合タンパク質を発現する。DNAシーケンシングで、それぞれHIR Ab-SL-PPT1およびHIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質に対応するpHIR Ab-HC-PPT1発現カセットの配列構造を確認した。発現カセットは、HIR Ab-SL-PPT1(図28、配列番号22)およびHIR Ab-LL-PPT1(図29、配列番号23)融合タンパク質それぞれで4739ntまたは4820ntからなり、これは、2,125nt CMVプロモーター、9nt コザック部位、2,235または2,316ntオープンリーディングフレームおよび370nt BGHポリA配列を含んだ。プラスミドは、19アミノ酸IgGシグナルペプチド、442アミノ酸HIRMAb HC、4アミノ酸または31アミノ酸リンカーおよび酵素シグナルペプチドを欠く279アミノ酸ヒトPPT1からなる、それぞれ744アミノ酸および771アミノ酸のタンパク質をコードした。PPT1配列は、ヒトPPT1タンパク質(accession # NP_000301)のアミノ酸Asp28~Gly306と100%同一であった。HIR AbのHC-SL-PPT1およびHIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質、それぞれの予測分子量は、グリコシル化がなく、それぞれ80,096Daおよび82,858Daであり、予測等電点(pI)は、それぞれ7.82および7.59である。pHIR Ab-LCの発現ベクターは、タンデムで、CHO細胞における安定なトランスフェクタントの産生に使用されるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の発現カセット(図26)を含む。DHFR選択タンパク質の187アミノ酸配列を配列番号16に示す。DHFRをコードする573nt配列を配列番号15に示し、これは、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする561nt配列、続いてTA停止コドンからなる。
【0222】
HIR Ab-SL-PPT1およびHIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質を、一過性にトランスフェクトしたCOS細胞で発現させた。COS細胞を、キメラHIR Abの軽鎖(LC)をコードする発現プラスミドであるpCD-LCおよびHIR Ab-SL-PPT1またはHIR Ab-LL-PPT1のための発現プラスミドで二重トランスフェクトした(図26)。pHIR Ab-LCは、HIR Ab-HCタンパク質の234アミノ酸配列をコードし、配列番号8のアミノ酸配列に対応する。HIR Ab-LCをコードする714nt配列を配列番号13に示し、これは、9nt コザック配列(GCCGCCACC)、続いてオープンリーディングフレームをコードする702nt配列、続いてTA停止コドンからなる。トランスフェクションを、リポフェクタミン2000を使用して1:2.5のDNAμg:リポフェクタミン2000μLの比で行い、条件無血清培地を3日目および7日目に集めた。無血清培地(SFM)への融合タンパク質分泌をヒトIgG ELISAによりモニターした。条件培地を限外濾過により浄化し、HIR Ab-PPT1融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。
【0223】
実施例15. HIRMAb-PPT1融合タンパク質の重鎖および軽鎖両方をコードする発現ベクターでのチャイニーズハムスター卵巣細胞の安定なトランスフェクション
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞1×HTサプリメント(ヒポキサンチンおよびチミジン)含有無血清CHOユーティリティ培地で増殖させた。CHO細胞(5×10 生存可能細胞)を、HIR Ab-LL-PPT1発現のために2.5μg PvuI直線化pHIR Ab HC-PPT1および2.5μg PvuI直線化pHIR Ab-LCプラスミドDNAで共電気穿孔した(図26)。細胞-DNA懸濁液を、氷上で10分間インキュベートした。細胞を、25msecおよび160ボルトのパルスで矩形波エレクトロポレーションした。エレクトロポレーション(EP)後、細胞を氷上で10分間インキュベートした。細胞懸濁液を50ml培養培地に移し、4×96ウェルプレートのウェルあたり125μl(10,000細胞/ウェル)で播種した。EP後、CHO細胞を37℃および8%COのインキュベーターに入れた。発現ベクターにおけるネオマイシン耐性(neo)遺伝子の存在により(図26)、トランスフェクト細胞株をまずG418で選択した。pHIR Ab LC はDHFRの遺伝子も発現し(図26)、よって、トランスフェクト細胞を20nM メトトレキサート(MTX)およびHT欠損培地でも選択した。EP約21日後可視コロニーが検出されたら、条件培地をELISAによるヒトIgGのためにサンプリングした。ELISAで高ヒトIgGシグナルのウェルを、96ウェルプレートから1mLのCHOユーティリティ無血清培地を含む24ウェルプレートに移した。24ウェルプレートを、37℃および8%COのインキュベーターに戻した。翌週IgG ELISAを24ウェルプレートのクローンで実施した。これを、6ウェルプレートからT75フラスコを経て、最後に60mLおよび125mLスクエアプラスチックボトルでオービタルシェーカー上で繰り返した。この段階で、最終MTX濃度は80nMであり、培地におけるHIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質の指標である培地IgG濃度は、10/mLの細胞密度で>10mg/Lである。希釈クローニング(DC)のために選択したクローンをインキュベーターのオービタルシェーカーから除き、無菌フードに移した。細胞を、5%透析ウシ胎児血清(d-FBS)およびペニシリン/ストレプトマイシンを含むF-12K培地で500mLに希釈し、最終希釈は8細胞/mLであり、よって、40×96ウェルプレートの4,000ウェルに、1細胞/ウェル(CPW)の細胞密度で播種できた。細胞懸濁液が調製されたら、無菌フード内で、125μLアリコートを、8チャネルピペッターまたは精密ピペッター系を使用して96ウェルプレートの各ウェルに分配した。プレートを、37℃および8%COのインキュベーターに戻した。1細胞/ウェルまで希釈した細胞は、血清なしでは生存できない。6日または7日目、DCプレートをインキュベーターから出し、無菌フードに移し、そこで、各ウェルに5%透析ウシ胎児血清(d-FBS)を含む125μlのF-12K培地を加えた。この選択培地は、その段階で5%d-FBS、30nM MTXおよび0.25mg/mL ジェネテシンを含んだ。初期1CPWプレーティング後21日目、4,000ウェルの各々からのアリコートを、ロボット装置を使用してヒトIgG ELISAのために採った。DCプレートをインキュベーターから出し、無菌フードに移し、そこで、8チャネルピペッターまたは精密ピペッター系を使用して、96ウェルプレートのウェルあたり100μlの培地を採り、新しい無菌サンプル96ウェルプレートに移した。初期1CPWプレーティング後20日目、40×96ウェル免疫アッセイプレートに、0.1M NaHCO中一次抗体であるマウス抗ヒトIgGの1μg/mL溶液100μLを播種した。プレートを、4℃冷蔵庫で一夜インキュベートした。翌日、ELISAプレートを1×TBSTで5回洗浄し、100μLの二次抗体の1μg/mL溶液および遮断緩衝液を加えた。プレートを1×TBSTで5回洗浄する。0.1Mグリシン緩衝液中の100μLの1mg/mLの4-ニトロフェニルリン酸ジ(2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール)塩を96ウェル免疫アッセイプレートに加える。プレートをマイクロプレートリーダーで読んだ。アッセイは、4,000ウェル/実験についてIgGアウトプットデータを作成した。産生が最高であった24~48ウェルをさらなる伝播に使用した。1CPW DCからの産生が最高であった24ウェルプレートを無菌フードに移し、6ウェル皿を経て、T75フラスコおよび125mLスクエアプラスチックボトルでオービタルシェーカー上で二重サブクローン化した。この工程中、細胞の血清を遠心分離の最終段階で0まで減らし、無血清培地(SFM)に再懸濁した。上記工程を、0.5~1細胞/ウェル(CPW)で第二ラウンドの希釈クローニングで繰り返した。この段階で、ウェルの約40%が何らかの細胞増殖を示し、増殖を示す全ウェルがヒトIgGも分泌した。これらの結果は、これらの方法で平均してウェルあたり1細胞のみが播種され、CHO細胞株が単一細胞に由来することを確認した。希釈クローニング(DC)方法を、第二ラウンドのDCについて上記のとおり繰り返した。この第二ラウンドDCから産生された細胞株を、マスター細胞銀行の産生のために後に使用する、目録細胞銀行の製造に使用した。HIR Ab-PPT1融合タンパク質を産生するCHO系統を、上記のとおり2ラウンドのDC後CHO細胞から産生した。目録細胞株を、オービタルシェーカー上、2L振盪フラスコ中SFMで増殖させ、CHO由来融合タンパク質をプロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製した。
【0224】
実施例6. 二機能的IgG-PPT1融合タンパク質のHIR結合およびPPT1活性の分析
HIR Ab-PPT1融合タンパク質を、図30に示すとおり、プロテインA親和性クロマトグラフィーでの精製後、還元ドデシル硫酸ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により純度を評価した。HCおよびLCタンパク質のみがHIR Ab単独またはHIR Ab-PPT1融合タンパク質で検出される。HIR Ab単独について、高分子量(MW)バンドはHCであり、低MWバンドはLCである。HIR Ab-PPT1融合タンパク質について、高MWバンドはHC-PPT1融合タンパク質であり、低MWバンドはLCである。融合タンパク質を、ヒトIgG(図32A)またはヒトPPT1(図32B)に対する一次抗体を使用するウェスタンブロッティングにより確認した。HIR Ab-PPT1重鎖および軽鎖の分子量(MW)を、MW標準の移動に基づく線形回帰により推定する。HIR Ab-PPT1融合重鎖のサイズ99kDaは、PPT1のHIR Ab重鎖への融合により、HIR Ab単独の重鎖のサイズ54kDaより大きい。軽鎖のサイズ24kDaは、両タンパク質が同じ軽鎖を使用するため、HIR Ab-PPT1融合タンパク質およびHIR Ab単独両者で同一である。図2に示すヘテロ四量体HIR Ab-PPT1融合タンパク質の推定MWは、ウェスタンブロットのSDS-PAGEの移動に基づき、246kDaである。
【0225】
CHO由来融合タンパク質の効力を、HIR ECD結合ELISAで評価した。HIR細胞外ドメイン(ECD)に対する融合タンパク質の親和性をELISAで決定した。組み換えHIR ECDをNunc-Maxisorb 96ウェル皿に播種し、HIR ECDへのHIR AbまたはHIR Ab-PPT1融合タンパク質の結合を、二次抗体、続いてアルカリホスファターゼ検出剤との結合により検出した。50%最大結合をもたらすHIR AbまたはHIR Ab-PPT1融合タンパク質の濃度、ED50を非線形回帰分析により決定した。HIRへのHIR Ab結合のED50は39±6ng/mLであり、HIRへのAb-PPT1融合タンパク質結合のED50は94±28ng/mLである(図32)。HIR AbのMWは150kDaであり、HIR Ab-融合タンパク質のMWは246kDaである。それ故に、MW差異で正規化後、HIR ECDに対して、キメラHIR AbまたはHIR Ab-PPT1融合タンパク質は、それぞれ0.26±0.04nMおよび0.38±0.11nMのED50で同等に結合した(図32)。これらの発見は、PPT1分子のIgGの両軽鎖のカルボキシル末端への融合にかかわらず、HIR Ab融合タンパク質結合の親和性を示す(図24)。
【0226】
PPT1酵素活性を、van Diggelen et al (1999): A rapid fluorogenic palmitoyl-protein thioesterase assay: Pre- and postnatal diagnosis of INCL Molec Genet Metab, 66: 240-244により開発された蛍光定量的アッセイで、基質として4-メチルウンベリフェリル6-チオ-パルミテート-β-D-グルコピラノシド(Mu-6S-Palm-ベータ-Glc)を使用して決定した。この基質は商業的に入手可能であり、基質の構造を図33Aに示す。この基質はPPT1およびベータ-グルコシダーゼを4-メチルウンベリフェロン(MU)に加水分解し、アッセイにおけるMU形成が蛍光定量的に決定される。アッセイを、マッキルベインリン酸/クエン酸緩衝液/pH=4.0/15mM ジチオスレイトール/0.375%Triton X-100中、HIR Ab-SL-PPT1またはHIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質(3~30ng/チューブ)およびMu-6S-Palm-ベータ-Glc基質(0.64mM)を37℃で60分間インキュベーションすることにより実施した。0.5M炭酸ナトリウム/pH=10.7を加えて、反応停止させた。PPT1活性は、Mu-6S-Palm-ベータ-Glc基質のチオエステル結合を加水分解し、アッセイ緩衝液に加えたベータ-グルコシダーゼが、基質の残存グリコシド結合を加水分解して、MU産物を産生する。蛍光を、365nm励起フィルターおよび450nm吸収フィルターを備えた蛍光光度計で測定した。標準曲線を、10~3000pmol/チューブの4-メチルウンベリフェロン(4MU)産物で作成し、これは、蛍光単位のpmol/分への変換を可能とした(図33B)。酵素活性を、HIR Ab-SL-PPT1またはHIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質の単位/mgタンパク質として測定し、ここで、1単位=インキュベーション1分あたりに形成される1μmolのMU産物である。アッセイは、HIR Ab-SL-PPT1融合タンパク質またはHIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質について融合タンパク質の質量に関して直線的であった(図33B)。HIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質のPPT1酵素活性は1.7±0.01単位/mgタンパク質または1742±75pmol/分/μgタンパク質であった。逆に、短リンカー融合タンパク質、HIR Ab-SL-PPT1のPPT1比活性はわずか53±15pmol/分/μgタンパク質または超31アミノ酸リンカーを有する融合タンパク質、HIR Ab-LL-PPT1のPPT1活性と比較して、30倍を超える減少であった。CHO細胞に由来し、同じ蛍光定量的アッセイおよび基質で決定した組み換えヒトPPT1の比活性は、15単位/mgである[Hu et al (2012): Intravenous high-dose enzyme replacement therapy with recombinant palmitoyl-protein thioesterase reduces visceral lysosomal storage and modestly prolongs survival in a preclinical mouse model of infantile neuronal ceroid lipofuscinosis. M]。HIR Ab-LL-PPT1融合タンパク質のMWは上記音とおり246kDaであり、一方組み換えPPT1のMWは34kDaである[Lu et al (2010): Human recombinant palmitoyl protein thioesterase-1 (PPT1) for preclinical evaluation of enzyme replacement therapy for infantile neuronal ceroid lipofuscinosis. Mol. Genet. Metab., 99:374-378]。融合タンパク質四量体あたりPPT1が2分子存在するため(図2)、IgG-PPT1の有効MWは半分の246kDaまたは123kDaであり、これは、組み換えPPT1のMWより3.6倍大きい。それ故に、モルベースで、HIR Ab-PPT1融合タンパク質のPPT1比活性は、組み換えPPT1の活性の42%である。
【0227】
実施例7. PPT1とターゲティング抗体を結合するアミノ酸リンカー
成熟ヒトPPT1を、31アミノ酸リンカー(図29で下線)でターゲティング抗体のHCのカルボキシル末端に融合させる。このリンカー配列は、配列番号23のアミノ酸462~492に対応する(図29)。酵素活性の減少を伴った短4アミノ酸リンカーは、配列番号22のアミノ酸462~465に対応する(図28)。あらゆる数のバリエーションのリンカーを、アミノ酸配列およびアミノ酸長両方の観点で、本リンカーの代替として使用し得る。このようなリンカーは、融合タンパク質の操作における最適アミノ酸リンカーの決定のための複数の公開された利用可能なプログラムが存在することから、当分野で周知である。頻繁に利用されるリンカーは、(GlySer)または他の異形など反復配列中に種々の組み合わせでGlyおよびSerを含む。このようなリンカーを、PPT1をターゲティング抗体のLCのアミノ末端に融合するときまたはPPT1をターゲティング抗体のHCのカルボキシ末端に融合するときまたはPPT1をターゲティング抗体のHCのアミノ末端に融合するときまたはPPT1を一本鎖ターゲティング抗体のアミノ末端またはカルボキシ末端に融合するときにも使用し得る。
【0228】
実施例8. ヒト脳へのPPT1の受容体介在送達
神経セロイドリポフスチン症1型(NCL1)はバッテン病の小児形態であり、リソソーム酵素パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1型(PPT1)をコードするCLN1遺伝子の変異が原因である。脳および内臓におけるPPT1欠損は、自己蛍光脂質沈着物の蓄積に至る。脳におけるこのような沈着物は、進行性運動喪失、盲目、痙攣発作および精神遅滞により特徴づけられる重度神経変性遺伝性疾患を引き起こす。小児NCL1は、約9~13歳での死亡に至る。多くのこのようなリソソーム蓄積症は、組み換え酵素発現後、酵素置換療法(ERT)で処置される。ヒトPPT1酵素の配列が知られて、25年を超える[Camp et al (1994), “Molecular cloning and expression of palmityoy-protein thioesterase,” J Biol Chem 269: 23212-23219]。PPT1酵素は、他のリソソーム酵素と同様、BBBを通過しないため、NCL1における脳の処置について現在FDAで承認されたERTはない。BBBを通過させる試みにおいて、組み換え酵素は、脳の脳脊髄液(CSF)区画への直接注射を経る髄腔内(IT)送達により与えられる。一般に、酵素は腰部または脳室CSF腔に注射される。IT送達経路は、酵素が血液プールに急速にさらされるため、CSFへの注射後有効であるとは予測されない。ヒトにおいてCSF体積全体が1日4~5回ターンオーバーすることが周知であり、脈絡叢由来の体液の搬出と血液側への逆戻りがある。CSF内に注射された薬物は遅い静脈内注射と等しく、CSFに注射された薬物は、脳の脳室上皮表面にのみ分配され、酵素が脂質保存障害の矯正のために必要である脳の実質組織深層にいかない。NCL1患者の脳へのPPT1送達の好ましいアプローチは、受容体介在輸送(RMT)を介してBBBを送達するよう再操作された形態のPPT1の静脈内(IV)点滴後の脳への経血管経路である。HIR Ab-PPT1融合タンパク質はヒトインスリン受容体への高親和性結合を保持し、これによりPPT1が、内在性BBBインスリン受容体上のRMTを介して血液からBBBを浸透し、脳に入ることが可能となる。HIR Ab-リソソーム酵素融合タンパク質は、成熟霊長類で脳に取り込まれ、脳あたり注射用量(ID)の1%の濃度がもたらされ、肝臓、脾臓および腎臓などの内臓における取り込みはさらに高いレベルである[Boado et al (2013) Blood-brain barrier molecular Trojan horse enables brain imaging of radioiodinated recombinant protein in the Rhesus monkey. Bioconj. Chem., 24:1741-1749]。HIR Ab-PPT1融合タンパク質の治療用量が3mg/kgであり、体重が50kgであるならば、融合タンパク質の点滴用量(ID)は150mgである。IDの1%の融合タンパク質の脳取り込みを仮定して、融合タンパク質の脳濃度は1500μg/脳である。これは、ヒト脳重量が約1,000グラムであるため、ヒトにおける1.5μg/脳グラムに等しい。上記のとおり、HIR Ab-PPT1融合タンパク質のPPT1酵素比活性は1.7U/mgまたは1.7ミリ単位/μgであるため、HIR Ab-PPT1融合タンパク質の1.5μg/グラムの脳濃度は2.6ミリ単位/グラムに等しい。脳における内在性PPT1酵素活性は70nmol/mgタンパク質/時間であり[Dearborn et al (2016): Histochemical localization of palmitoyl protein thioesterase-1 activity, Mol Genet Metab., 117:210-216]、これは1.16nmol/mgタンパク質/分または1.16ミリ単位/mgタンパク質に等しい。脳1グラムあたり約100mgタンパク質があるため、正常脳における内在性PPT1酵素活性は116ミリ単位/グラムまたは116mU/グラムである。それ故に、3mg/kgのHIR Ab-PPT1融合タンパク質のIV用量は、116mU/グラムまたは2.2%の内在性活性で除して、2.6mU/gを置き換えると予測される。Hobert and Dawson [Neuronal ceroid lipofucsinosis therapeutic strategies: past, present, and future, Biochim. Biophys. Acta, 1762:945-953, 2006]は、NCL1における「残存酵素活性のわずかな増加が、疾患進行を顕著に変えることができることは広く認められる(it is widely accepted that small increases in residual enzyme activity can significantly alter disease progression)」と記載し、内在性PPT1酵素活性のわずか0.5%の回復が、治療効果をもたらすのに十分であるとの証拠を提供するSleat et al [Aminoglycoside-mediated suppression of nonsense mutations in late infantile neuronal ceroid lipofuscinosis, Eur. J. Ped. Neurol., 5(Suppl): 57-62の研究を引用する。これらの発見は、内在性リソソーム酵素活性のわずか1~2%の回復が、治療的であると認識される他のリソソーム蓄積症からの結果に一致する(J. Muenzer and A. Fisher, Advances in the treatment of mucopolysaccharidosis type I, N. Engl J Med, 350: 1932-1934, 2004)。これらの考察は、ヒト脳および内臓の臨床的に意義のあるPPT1酵素置換が、約3mg/kgの全身用量でのHIR Ab-PPT1融合タンパク質の静脈内点滴後可能であることを示す。
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【配列表】
2024153824000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)HEXAおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含む融合抗体であって、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものであるである、融合抗体。
【請求項2】
HEXAのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項1に記載の融合抗体。
【請求項3】
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項1に記載の融合抗体。
【請求項4】
該融合タンパク質がHEXAのアミノ酸配列と免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む、請求項1に記載の融合抗体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
発明の要約
ここに記載されるのは、ヘキソサミニダーゼA(「HEXA」)、酸スフィンゴミエリナーゼ(「ASM」)またはパルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1(「PPT1」)の欠損を有する対象を処置するための方法および組成物である。ある実施態様において、ここに提供する方法は、治療有効量の二機能性融合抗体またはタンパク質の全身的投与による、CNSへのHEXA、ASMまたはPPT1の送達を含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、内在性血液脳関門(BBB)受容体およびHEXA、ASMまたはPPT1に対する抗体のアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、二機能性融合抗体は、酵素に遺伝子的に融合したヒトインスリン抗体(HIR Ab)(「HIR Ab-HEXA融合抗体」または「HIR Ab-ASM融合抗体」または「HIR Ab-PPT1融合抗体」)である。ある実施態様において、HIR Ab-HEXA融合抗体、HIR Ab-ASM融合抗体またはHIR Ab-PPT1融合抗体は、図1に記載するとおり、インスリン受容体の細胞外ドメインに結合し、HEXA、ASMまたはPPT1酵素活性を維持しながら、血液脳関門(「BBB」)を通ってCNSに輸送される。ある実施態様において、HIR Abは、BBB上の内在性インスリン受容体に結合し、分子トロイの木馬として作用して、HEXA、ASMまたはPPT1を脳に運ぶ。ある実施態様において、全身投与のためのHIR Ab-HEXA融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。ある実施態様において、全身投与のためのHIR Ab-ASM融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。ある実施態様において、全身投与のためのHIR Ab-PPT1融合抗体の治療有効全身用量は、一部、ここに記載するとおり末梢血からの融合抗体の特定のCNS取り込み特性に基づく。
本開示は、例えば以下を提供する:
[項1]
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるヘキソサミニダーゼA(HEXA)欠損を処置する方法であって、HEXA活性を有する融合抗体を該対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)HEXAおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含み、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項2]
HEXAのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項1に記載の方法。
[項3]
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合している、項1に記載の方法。
[項4]
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、項1に記載の方法。
[項5]
融合抗体がG M2 ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する、項1に記載の方法。
[項6]
HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項1に記載の方法。
[項7]
HEXAおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項1に記載の方法。
[項8]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのHEXA酵素が脳に送達される、項1に記載の方法。
[項9]
治療有効用量が少なくとも約100ミリ単位/Kg体重を含む、項1に記載の方法。
[項10]
融合抗体のHEXA比活性が少なくとも100ミリ単位/mgである、項1に記載の方法。
[項11]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、項1に記載の方法。
[項12]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、項1に記載の方法。
[項13]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項1に記載の方法。
[項14]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、項1に記載の方法。
[項15]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項1に記載の方法。
[項16]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびインシュリン様増殖因子(IGF)受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、項1に記載の方法。
[項17]
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、項1に記載の方法。
[項18]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、項1に記載の方法。
[項19]
中枢神経系におけるHEXA欠損がテイ・サックス病である、項1に記載の方法。
[項20]
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項21]
融合抗体がG M2 ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する、請求項20に記載の方法。
[項22]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのHEXA酵素が脳に送達される、請求項20に記載の方法。
[項23]
治療有効用量が少なくとも約100ミリ単位のHEXA活性/Kg体重を含む、請求項20に記載の方法。
[項24]
融合抗体のHEXA比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項20に記載の方法。
[項25]
HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項20に記載の方法。
[項26]
HEXAおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項20に記載の方法。
[項27]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項20に記載の方法。
[項28]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項20に記載の方法。
[項29]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項20に記載の方法。
[項30]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項20に記載の方法。
[項31]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項20に記載の方法。
[項32]
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項20に記載の方法。
[項33]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項20に記載の方法。
[項34]
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項20に記載の方法。
[項35]
中枢神経系におけるHEXA欠損がテイ・サックス病である、請求項20に記載の方法。
[項36]
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるHEXA欠損症を処置する方法であって、該対象にHEXA活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン重鎖およびHEXAのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項37]
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項36に記載の方法。
[項38]
融合抗体がG M2 ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する、請求項36に記載の方法。
[項39]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのHEXA酵素が脳に送達される、請求項36に記載の方法。
[項40]
治療有効用量が少なくとも約100ミリ単位のHEXA活性/Kg体重を含む、請求項36に記載の方法。
[項41]
融合抗体のHEXA比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項36に記載の方法。
[項42]
HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項36に記載の方法。
[項43]
HEXAおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項36に記載の方法。
[項44]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項36に記載の方法。
[項45]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項36に記載の方法。
[項46]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項36に記載の方法。
[項47]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項36に記載の方法。
[項48]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項36に記載の方法。
[項49]
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項36に記載の方法。
[項50]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項36に記載の方法。
[項51]
融合抗体がインスリン受容体を介してBBBを通過する、請求項36に記載の方法。
[項52]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項36に記載の方法。
[項53]
中枢神経系におけるHEXA欠損がテイ・サックス病である、請求項36に記載の方法。
[項54]
HEXAが配列番号9のアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
[項55]
(a)HEXAおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含む融合抗体であって、HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものであるである、融合抗体。
[項56]
HEXAのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項55に記載の融合抗体。
[項57]
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項55に記載の融合抗体。
[項58]
HEXAのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項55に記載の融合抗体。
[項59]
該融合抗体がG M2 ガングリオシドのN-アセチル-β-D-ヘキソサミニドにおける末端N-アセチル-D-ヘキソサミン残基の加水分解を触媒する、請求項55に記載の融合抗体。
[項60]
該融合タンパク質がHEXAのアミノ酸配列と免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む、請求項55に記載の融合抗体。
[項61]
リンカーが配列番号10のアミノ酸235~265と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、請求項55に記載の融合抗体。
[項62]
融合抗体のHEXA比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項55に記載の融合抗体。
[項63]
HEXAが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項55に記載の融合抗体。
[項64]
HEXAおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項55に記載の融合抗体。
[項65]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項55に記載の融合抗体。
[項66]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項55に記載の融合抗体。
[項67]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項55に記載の融合抗体。
[項68]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項55に記載の融合抗体。
[項69]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項55に記載の融合抗体。
[項70]
該融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項55に記載の融合抗体。
[項71]
該融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項55に記載の融合抗体。
[項72]
該融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項55に記載の融合抗体。
[項73]
治療有効量の請求項55に記載の融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
[項74]
請求項55に記載の融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチド。
[項75]
単離ポリヌクレオチドが配列番号14の核酸配列を含む、請求項74に記載の単離ポリヌクレオチド。
[項76]
請求項74に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[項77]
配列番号14の核酸配列を含む、請求項76に記載のベクター。
[項78]
請求項76に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[項79]
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項78に記載の宿主細胞。
[項80]
配列番号10と80%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
[項81]
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも85%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
[項82]
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも90%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
[項83]
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも95%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
[項84]
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも96%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
[項85]
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも97%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
[項86]
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも98%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
[項87]
アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも99%同一である、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
[項88]
アミノ酸配列が80を含む、請求項80に記載の単離ポリペプチド。
[項89]
配列番号10のアミノ酸235~265を含む、単離ポリペプチド。
[項90]
処置を必要とする対象の中枢神経系における酸スフィンゴミエリナーゼ(ASM)欠損を処置する方法であって、ASM活性を有する融合抗体を該対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)ASMおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含み、ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項91]
ASMのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項90に記載の方法。
[項92]
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合している、請求項90に記載の方法。
[項93]
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項90に記載の方法。
[項94]
融合抗体がスフィンゴミエリンのセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する、請求項90に記載の方法。
[項95]
ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項90に記載の方法。
[項96]
ASMおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項90に記載の方法。
[項97]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのASM酵素が脳に送達される、請求項90に記載の方法。
[項98]
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、請求項90に記載の方法。
[項99]
融合抗体のASM比活性が少なくとも100ミリ単位/mgである、請求項90に記載の方法。
[項100]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項90に記載の方法。
[項101]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項90に記載の方法。
[項102]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項90に記載の方法。
[項103]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項90に記載の方法。
[項104]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項90に記載の方法。
[項105]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびインシュリン様増殖因子(IGF)受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項90に記載の方法。
[項106]
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項90に記載の方法。
[項107]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項90に記載の方法。
[項108]
中枢神経系におけるASM欠損がニーマン・ピック病である、請求項90に記載の方法。
[項109]
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるASM欠損症を処置する方法であって、該対象にASM活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号18と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項110]
融合抗体がスフィンゴミエリンからセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する、項109に記載の方法。
[項111]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのASM酵素が脳に送達される、項109に記載の方法。
[項112]
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、項109に記載の方法。
[項113]
融合抗体のASM比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、項109に記載の方法。
[項114]
ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項109に記載の方法。
[項115]
ASMおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項109に記載の方法。
[項116]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、項109に記載の方法。
[項117]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、項109に記載の方法。
[項118]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、項109に記載の方法。
[項119]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、項109に記載の方法。
[項120]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項109に記載の方法。
[項121]
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、項109に記載の方法。
[項122]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、項109に記載の方法。
[項123]
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、項109に記載の方法。
[項124]
中枢神経系におけるASM欠損がニーマン・ピック病である、項109に記載の方法。
[項125]
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるASM欠損症を処置する方法であって、該対象にASM活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン重鎖およびASMのアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含み、ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項126]
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、項125に記載の方法。
[項127]
融合抗体がスフィンゴミエリンからセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する、項125に記載の方法。
[項128]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのASM酵素が脳に送達される、項125に記載の方法。
[項129]
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、項125に記載の方法。
[項130]
融合抗体のASM比活性が約100ミリ単位/mgである、項125に記載の方法。
[項131]
ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項125に記載の方法。
[項132]
ASMおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項125に記載の方法。
[項133]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、項125に記載の方法。
[項134]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、項125に記載の方法。
[項135]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項125に記載の方法。
[項136]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、項125に記載の方法。
[項137]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項125に記載の方法。
[項138]
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、項125に記載の方法。
[項139]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、項125に記載の方法。
[項140]
融合抗体がインスリン受容体を介してBBBを通過する、項125に記載の方法。
[項141]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、項125に記載の方法。
[項142]
中枢神経系におけるASM欠損がニーマン・ピック病である、項125に記載の方法。
[項143]
ASMが配列番号17のアミノ酸配列を含む、項125に記載の方法。
[項144]
(a)ASMおよび(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含む融合抗体であって、ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものであるである、融合抗体。
[項145]
ASMのアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、項144に記載の融合抗体。
[項146]
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、項144に記載の融合抗体。
[項147]
ASMのアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、項144に記載の融合抗体。
[項148]
該融合抗体がスフィンゴミエリンからセラミドおよびホスホコリンへの加水分解を触媒する、項144に記載の融合抗体。
[項149]
該融合タンパク質がASMのアミノ酸配列と免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む、項144に記載の融合抗体。
[項150]
リンカーが配列番号18のアミノ酸235~265と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、項144に記載の融合抗体。
[項151]
融合抗体のASM比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、項144に記載の融合抗体。
[項152]
ASMが分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項144に記載の融合抗体。
[項153]
ASMおよび免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項144に記載の融合抗体。
[項154]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、項144に記載の融合抗体。
[項155]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、項144に記載の融合抗体。
[項156]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項144に記載の融合抗体。
[項157]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、項144に記載の融合抗体。
[項158]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項144に記載の融合抗体。
[項159]
該融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、項144に記載の融合抗体。
[項160]
該融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、項144に記載の融合抗体。
[項161]
該融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、項144に記載の融合抗体。
[項162]
治療有効量の項144に記載の融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
[項163]
項144に記載の融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチド。
[項164]
単離ポリヌクレオチドが配列番号20の核酸配列を含む、項163に記載の単離ポリヌクレオチド。
[項165]
項163に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[項166]
配列番号20の核酸配列を含む、項165に記載のベクター。
[項167]
項164に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[項168]
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、項167に記載の宿主細胞。
[項169]
配列番号18と80%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
[項170]
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも85%同一である、項169に記載の単離ポリペプチド。
[項171]
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも90%同一である、項169に記載の単離ポリペプチド。
[項172]
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも95%同一である、項169に記載の単離ポリペプチド。
[項173]
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも96%同一である、項169に記載の単離ポリペプチド。
[項174]
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも97%同一である、項169に記載の単離ポリペプチド。
[項175]
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも98%同一である、項169に記載の単離ポリペプチド。
[項176]
アミノ酸配列が配列番号18と少なくとも99%同一である、項169に記載の単離ポリペプチド。
[項177]
アミノ酸配列が169を含む、項169に記載の単離ポリペプチド。
[項178]
配列番号18のアミノ酸235~265を含む、単離ポリペプチド。
[項179]
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるパルミトイル-タンパク質チオエステラーゼ1型(PPT1)欠損を処置する方法であって、PPT1活性を有する融合抗体を該対象に全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)PPT1および(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含み、PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項180]
PPT1のアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、項179に記載の方法。
[項181]
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合している、項179に記載の方法。
[項182]
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、項179に記載の方法。
[項183]
融合抗体が脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートのチオエステル結合の加水分解を触媒する、項179に記載の方法。
[項184]
PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項179に記載の方法。
[項185]
PPT1および免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項179に記載の方法。
[項186]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約2.5μgのPPT1酵素が脳に送達される、項179に記載の方法。
[項187]
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、項179に記載の方法。
[項188]
融合抗体のPPT1比活性が少なくとも100ミリ単位/mgである、項179に記載の方法。
[項189]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、項179に記載の方法。
[項190]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、項179に記載の方法。
[項191]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項179に記載の方法。
[項192]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、項179に記載の方法。
[項193]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項179に記載の方法。
[項194]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびインシュリン様増殖因子(IGF)受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、項179に記載の方法。
[項195]
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、項179に記載の方法。
[項196]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、項179に記載の方法。
[項197]
中枢神経系におけるPPT1欠損がNCL1バッテン病である、項179に記載の方法。
[項198]
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)配列番号23と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン軽鎖を含み;ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項199]
融合抗体が脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートのチオエステル結合の加水分解を触媒する、項198に記載の方法。
[項200]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約1.5μgのPPT1酵素が脳に送達される、項198に記載の方法。
[項201]
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、項198に記載の方法。
[項202]
融合抗体のPPT1比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、項198に記載の方法。
[項203]
PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項198に記載の方法。
[項204]
PPT1および免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、項198に記載の方法。
[項205]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、項198に記載の方法。
[項206]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、項198に記載の方法。
[項207]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、項198に記載の方法。
[項208]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、項198に記載の方法。
[項209]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、項198に記載の方法。
[項210]
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、項198に記載の方法。
[項211]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、項198に記載の方法。
[項212]
融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、項198に記載の方法。
[項213]
中枢神経系におけるPPT1欠損がNCL1バッテン病である、項198に記載の方法。
[項214]
処置を必要とする対象の中枢神経系におけるPPT1欠損症を処置する方法であって、該対象にPPT1活性を有する融合抗体の治療有効用量を全身的に投与することを含み、ここで、該融合抗体が(a)免疫グロブリン軽鎖およびPPT1のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および(b)免疫グロブリン重鎖を含み;ここで、該融合抗体が血液脳関門(BBB)を通過し、PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものである、方法。
[項215]
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項214に記載の方法。
[項216]
融合抗体が脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートのチオエステル結合の加水分解を触媒する、請求項214に記載の方法。
[項217]
50kg体重当たりで正規化して、少なくとも約50μgのPPT1酵素が脳に送達される、請求項214に記載の方法。
[項218]
治療有効用量が少なくとも約0.1mg/kg体重を含む、請求項214に記載の方法。
[項219]
融合抗体のPPT1比活性が約100ミリ単位/mgである、請求項214に記載の方法。
[項220]
PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項214に記載の方法。
[項221]
PPT1および免疫グロブリンの各々が分離立した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項214に記載の方法。
[項222]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項214に記載の方法。
[項223]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項214に記載の方法。
[項224]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項214に記載の方法。
[項225]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項214に記載の方法。
[項226]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項214に記載の方法。
[項227]
融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項214に記載の方法。
[項228]
融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項214に記載の方法。
[項229]
融合抗体がインスリン受容体を介してBBBを通過する、請求項214に記載の方法。
[項230]
全身投与が非経腸、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻、動脈内、経皮または呼吸器である、請求項214に記載の方法。
[項231]
中枢神経系におけるPPT1欠損がニーマン・ピック病である、請求項214に記載の方法。
[項232]
PPT1が配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項214に記載の方法。
[項233]
(a)PPT1および(b)内在性BBB受容体介在輸送系に結合することにより血液脳関門(BBB)を通過できる免疫グロブリンを含む融合抗体であって、PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも10%を保持するものであるである、融合抗体。
[項234]
PPT1のアミノ酸配列が重鎖および軽鎖からなる免疫グロブリンに共有結合している、請求項233に記載の融合抗体。
[項235]
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項233に記載の融合抗体。
[項236]
PPT1のアミノ酸配列が免疫グロブリン重鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端に共有結合される、請求項233に記載の融合抗体。
[項237]
該融合抗体が脂肪酸アシルタンパク質コンジュゲートのチオエステル結合の加水分解を触媒する、請求項233に記載の融合抗体。
[項238]
該融合タンパク質がPPT1のアミノ酸配列と免疫グロブリン重鎖または軽鎖のアミノ酸配列のカルボキシ末端の間にリンカーをさらに含む、請求項233に記載の融合抗体。
[項239]
リンカーが配列番号23のアミノ酸462~492と80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、請求項233に記載の融合抗体。
[項240]
融合抗体のPPT1比活性が少なくとも約100ミリ単位/mgである、請求項233に記載の融合抗体。
[項241]
PPT1が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項233に記載の融合抗体。
[項242]
PPT1および免疫グロブリンの各々が分離した存在としてのその活性と比較してその活性の少なくとも20%を保持する、請求項233に記載の融合抗体。
[項243]
免疫グロブリン重鎖がIgGの免疫グロブリン重鎖である、請求項233に記載の融合抗体。
[項244]
免疫グロブリン重鎖がIgG1クラスの免疫グロブリン重鎖である、請求項233に記載の融合抗体。
[項245]
免疫グロブリン重鎖が配列番号1のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号2のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号3のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項233に記載の融合抗体。
[項246]
免疫グロブリン軽鎖がカッパまたはラムダクラスの免疫グロブリン軽鎖である、請求項233に記載の融合抗体。
[項247]
免疫グロブリン軽鎖が配列番号4のアミノ酸配列に対応するCDR1、配列番号5のアミノ酸配列に対応するCDR2または配列番号6のアミノ酸配列に対応するCDR3を含む、請求項233に記載の融合抗体。
[項248]
該融合抗体が内在性BBB受容体介在輸送系の結合によりBBBを通過する、請求項233に記載の融合抗体。
[項249]
該融合抗体がインスリン受容体、トランスフェリン受容体、レプチン受容体、リポタンパク質受容体およびIGF受容体からなる群から選択される内在性BBB受容体を介してBBBを通過する、請求項233に記載の融合抗体。
[項250]
該融合抗体がインスリン受容体の結合によりBBBを通過する、請求項233に記載の融合抗体。
[項251]
治療有効量の請求項233に記載の融合抗体および薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
[項252]
請求項233に記載の融合抗体をコードする、単離ポリヌクレオチド。
[項253]
単離ポリヌクレオチドが配列番号25の核酸配列を含む、請求項252に記載の単離ポリヌクレオチド。
[項254]
請求項252に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[項255]
配列番号25の核酸配列を含む、請求項254に記載のベクター。
[項256]
請求項254に記載のベクターを含む、宿主細胞。
[項257]
宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項256に記載の宿主細胞。
[項258]
配列番号23と80%同一であるアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
[項259]
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも85%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
[項260]
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも90%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
[項261]
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも95%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
[項262]
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも96%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
[項263]
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも97%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
[項264]
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも98%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
[項265]
アミノ酸配列が配列番号23と少なくとも99%同一である、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
[項266]
アミノ酸配列が配列番号23を含む、請求項258に記載の単離ポリペプチド。
[項267]
配列番号23のアミノ酸462~492を含む、単離ポリペプチド。
【外国語明細書】