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特開2024-15384パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法
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  • 特開-パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法 図1
  • 特開-パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法 図2
  • 特開-パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法 図3A
  • 特開-パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法 図3B
  • 特開-パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法 図4
  • 特開-パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法 図5
  • 特開-パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015384
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209907
(22)【出願日】2023-12-13
(62)【分割の表示】P 2022517174の分割
【原出願日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】16/573,704
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/741,506
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/877,705
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516193782
【氏名又は名称】ファラパルス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ビスワナサン、ラジュ
(57)【要約】
【課題】ペーシング捕捉の確認又は異所性拍動の検出のためのプロセッサを備えた、アブレーション治療のためのシステム、装置、及び方法を提供する。
【解決手段】装置は、電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出し、抽出されたスライディングウィンドウに関連する周波数のサブレンジにわたるピーク周波数を特定し、周波数のサブレンジにわたるピーク周波数の尺度に少なくとも基づいて異所性活動を検出し、異所性活動を検出したことに応じて、信号発生器がパルス波の発生を停止又はスイッチオフするように、心臓アブレーションのためのパルス波を発生させるように構成された信号発生器に異所性活動の指示を送信するためのプロセッサを備える。装置は、心臓信号データに基づいてペーシングパルスのセットのペーシング捕捉を確認するためのプロセッサを更に備え得る。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス波を発生させて、前記パルス波をペーシングパルスのセットと同期させてアブレーション装置に送達するように構成された第1の制御部と、
第2の制御部であって、
ペーシングパルスの前記セットを発生させて、心臓の心臓刺激のためのペーシング装置にペーシングパルスの前記セットを送達し、
前記心臓の心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データに基づいて前記心臓のペーシング捕捉を確認し、
前記心臓信号データに対応する周波数成分を解析することによって、前記心臓の異所性活動を監視し、
前記確認及び前記監視に基づいて、信号のセットを発生させて前記第1の制御部に送信するように構成された前記第2の制御部と
を備える、システム。
【請求項2】
前記第2の制御部は、
ペーシングパルスの前記セットからの各ペーシングパルスの送達に続いて、前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、
前記スライディングウィンドウの周波数成分を取得するために前記スライディングウィンドウの離散フーリエ変換を実行することと、
前記スライディングウィンドウの前記周波数成分における周波数のサブレンジにわたってピーク周波数を特定することと、
前記ピーク周波数の解析に基づいて異所性活動があるか否かを判定することと
によって異所性活動を監視するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の制御部は、各スライディングウィンドウについて、
前記スライディングウィンドウの前記周波数成分のナイキスト周波数までの周波数の最大振幅に対する該スライディングウィンドウにおける前記ピーク周波数の振幅の比を計算することと、
前記比が閾値よりも大きいか否かを判定することと、
によって異所性活動があるか否かを判定するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2の制御部は、
ペーシングパルスの前記セットからの連続するペーシングパルスのサブセットの送達に続いて、前記心臓信号データの部分を抽出することと、
各抽出部分について、前記抽出部分に対応する関数のモーメントのセットを計算することと、
各抽出部分について計算されたモーメントの前記セットに少なくとも基づいて、ペーシングパルスの前記セットのペーシング捕捉を確認することと、
によってペーシング捕捉を確認するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記心臓信号データの各抽出部分は、連続するペーシングパルスの前記サブセットからのペーシングパルスの立ち上がりに続く所定の時間間隔内の心臓信号データを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記心臓の心臓刺激のための電極の第1のセットと、前記心臓信号データを捕捉するための電極の第2のセットとを含む前記ペーシング装置を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記パルス波を受信したことに応じて心臓組織をアブレーションするためにパルス電界を発生させるための電極のセットを含むアブレーション装置を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
信号の前記セットは、ペーシング捕捉を示す信号を含み、
前記第2の制御部は、ペーシング捕捉を確認したことに応じてペーシング捕捉を示す前記信号を発生させて送信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
信号の前記セットは、異所性活動を示す信号を含み、
前記第2の制御部は、前記監視に基づいて異所性活動を検出したことに応じて異所性活動を示す前記信号を発生させて送信するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと
を備える装置であって、前記プロセッサは、
心臓への連続するペーシングパルスのセットの送達に続いて、心臓信号データの部分を抽出し、
各抽出部分について、各抽出部分に対応する関数のモーメントのセットを計算し、
各抽出部分について計算されたモーメントの前記セットに少なくとも基づいて、前記心臓のペーシング捕捉を確認し、
ペーシング捕捉を確認したことに応じて、ペーシング捕捉を示す信号を発生して、心臓アブレーションのためにパルス波を発生させるように構成された信号発生器に送信して、前記信号発生器が、前記信号を受信したことに応じて前記パルス波を発生させるように作動されるように構成される、
装置。
【請求項11】
前記心臓信号データの各抽出部分は、連続するペーシングパルスのサブセットからのペーシングパルスの立ち上がりに続く所定の時間間隔内の心臓信号データを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記所定の時間間隔は、約5ミリ秒~約50ミリ秒である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて、前記抽出部分について計算された前記モーメントの値を平均することによって、該モーメントの平均値を計算することと、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて、前記モーメントの前記平均値と各抽出部分について計算された前記モーメントの前記値との間の正規化された差を計算することと、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて計算された前記正規化された差に基づいてペーシング捕捉を確認することと、によってペーシング捕捉を確認するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、
モーメントの前記セットのそれぞれの平均値を計算することと、
モーメントの前記セットのそれぞれの前記平均値と、前記抽出部分について計算された前記モーメントの値との間の正規化された差を計算することと、
各正規化された差がそれぞれの所定の閾値未満であるときを判定することと、によってペーシング捕捉を確認するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記心臓の異所性活動を検出するために前記心臓信号データの局所的なピーク周波数を解析し、且つ
異所性活動を検出したことに応じて、異所性活動を示す信号を発生させて前記信号発生器に送信して、前記信号発生器が、異所性活動を示す前記信号を受信したことに応じて、前記パルス波を発生させることを停止するように更に構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、
抽出された前記スライディングウィンドウの離散フーリエ変換を実行して、抽出された前記スライディングウィンドウのフィルタリングされた周波数出力を生成するために、結果として得られた離散フーリエ変換にフィルタリングを施すことと、
フィルタリングされた前記周波数出力における前記局所的なピーク周波数を特定することと、
フィルタリングされた前記周波数出力における前記ピーク周波数の値に少なくとも基づいて、異所性活動を検出することと、
によって異所性活動を検出するために前記心臓信号データの前記局所的なピーク周波数を解析するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと、
を備える装置であって、前記プロセッサは、
心臓の心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出し、
周波数の範囲にわたって前記心臓信号データの周波数成分を取得するために前記スライディングウィンドウの変換を実行し、
前記周波数の範囲のサブレンジにわたるピーク周波数であって、周波数の前記サブレンジにおける残りの周波数の値よりも大きい値を有する前記ピーク周波数を特定し、
前記周波数の範囲にわたる最大値に対する前記ピーク周波数の前記値の相対的な尺度と所定の値との間の比較に基づいて、前記心臓の異所性活動を検出し、
異所性活動を検出したことに応じて、異所性活動を示す信号を発生させて、心臓アブレーションのためにパルス波を発生させるように構成された信号発生器に送信して、前記信号発生器が、前記信号を受信したことに応じて前記パルス波の発生を中断するように構成される、
装置。
【請求項18】
前記変換は離散フーリエ変換である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサは、
前記最大値に対する前記ピーク周波数の値の比を計算することと、
前記比が前記所定の値よりも大きいと判定することと、
によって異所性活動を検出するように構成される、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記所定の値は、約0.01~約0.25である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記所定の値は、約0.01~約0.15である、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記プロセッサは、ユーザインターフェースに動作可能に接続されており、前記所定の値は、前記ユーザインターフェースを介してユーザによって設定される、請求項17に記載の装置。
【請求項23】
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと、
を備える装置であって、前記プロセッサは、
電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出し、
前記抽出されたスライディングウィンドウからのデータを処理し、
前記抽出されたスライディングウィンドウからの前記処理されたデータに関連する周波数のサブレンジにわたるピーク周波数を、
前記抽出されたスライディングウィンドウからの前記処理されたデータの離散フーリエ変換を実行することと、
フィルタリングされたフーリエ変換データを生成するために、前記処理されたデータの前記離散フーリエ変換をフィルタリングすることと、
前記フィルタリングされたフーリエ変換データから、前記フィルタリングされたフーリエ変換データにおいて周波数の前記サブレンジにおける残りの周波数の振幅よりも大きい振幅を有する周波数の前記サブレンジにわたる前記周波数として前記ピーク周波数を特定することと、
によって特定し、
周波数の前記サブレンジにわたって前記ピーク周波数の尺度に少なくとも基づいて異所性活動を検出し、
異所性活動を検出したことに応じて、心臓アブレーションのためのパルス波を発生するように構成された信号発生器に異所性活動の表示を送信するように構成される、
装置。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記信号発生器が前記パルス波を発生させることを停止するようにするべく、前記信号発生器に異所性活動の前記表示を送信するように構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記プロセッサは、前記心臓信号データを
前記心臓信号データを増幅してフィルタリングすることと、
前記心臓信号データをデジタル化することと、
によって処理し、且つ
前記メモリに、処理された前記心臓信号データをバッファリングする
ように更に構成されており、
前記プロセッサは、バッファリングされた前記心臓信号データから前記スライディングウィンドウを抽出するように構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記プロセッサは、
前記周波数出力のナイキスト周波数までの周波数の最大振幅に対する周波数の前記サブレンジにわたる前記ピーク周波数の前記振幅の比を計算することと、
前記比が閾値よりも大きいか否かを判定することと、
前記比が前記閾値よりも大きいと判定したことに基づいて前記異所性活動を検出することと、
によって異所性活動を検出するように構成される、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記閾値が、約0.01~約0.25である、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記閾値が、約0.01~約0.25である、請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記閾値が、約0.01~約0.15である、請求項26に記載の装置。
【請求項30】
前記プロセッサは、ユーザインターフェースに動作可能に接続されており、前記閾値は、前記ユーザインターフェースを介してユーザによって設定される、請求項26に記載の装置。
【請求項31】
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと、
を備える装置であって、前記プロセッサは、
電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データを、
前記心臓信号データを増幅してフィルタリングすることと、
前記心臓信号データをデジタル化することと
によって処理し、
前記メモリに、処理された前記心臓信号データをバッファリングし、
心臓組織へのペーシングパルスのセットの送達の指示を受信し、
ペーシングパルスの前記セットからの連続するペーシングパルスのサブセットの送達に続いて、バッファリングされた前記心臓信号データから前記心臓信号データの部分を抽出し、前記心臓信号データの各抽出部分は、連続するペーシングパルスの前記サブセットからのペーシングパルスの立ち上がりに続く所定の時間間隔内の心臓信号データを含んでおり、
各抽出部分について、前記抽出部分に対応する関数のモーメントのセットを計算し、
各抽出部分について計算されたモーメントの前記セットに少なくとも基づいてペーシングパルスの、前記セットのペーシング捕捉を確認し、
ペーシング捕捉を確認したことに応じて、心臓アブレーションのためにパルス波を発生させるように構成された信号発生器にペーシング捕捉の指示を送信して、前記信号発生器が前記パルス波を発生するように作動させるように構成される、
装置。
【請求項32】
前記所定の時間間隔は、約5ミリ秒~約50ミリ秒である、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記プロセッサは、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて、前記抽出部分について計算された前記モーメントの値を平均することによって、該モーメントの平均値を計算することと、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて、前記モーメントの前記平均値と各抽出部分について計算された前記モーメントの前記値との間の正規化された差を計算することと、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて計算された前記正規化された差に基づいてペーシング捕捉を確認することと、
によってペーシング捕捉を確認するように構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記プロセッサが、
モーメントの前記セットのそれぞれの平均値を計算することと、
モーメントの前記セットのそれぞれの前記平均値と、前記抽出部分について計算された前記モーメントの前記値との正規化された差を計算することと、
各正規化された差がそれぞれの所定の閾値未満であるときを判定することと
によってペーシング捕捉を確認するように構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
前記プロセッサが、
異所性活動を検出するために前記心臓信号データの局所的なピーク周波数を解析し、
異所性活動を検出したことに応じて、前記信号発生器に異所性活動の表示を送信して、前記信号発生器が前記パルス波を発生させることを停止されるように更に構成される、請求項31に記載の装置。
【請求項36】
前記プロセッサが、
前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、
抽出された前記スライディングウィンドウの離散フーリエ変換を実行し、且つ抽出された前記スライディングウィンドウのフィルタリングされた周波数出力を生成するために、結果として得られた離散フーリエ変換にフィルタリングを施すことと、
フィルタリングされた前記周波数出力における前記局所的なピーク周波数を特定することと、
フィルタリングされた前記周波数出力における前記ピーク周波数の振幅に少なくとも基づいて、異所性活動を検出することと
によって前記心臓信号データの前記局所的なピーク周波数を解析して異所性活動を検出するように構成される、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
パルス波を発生させて、前記パルス波をペーシングパルスのセットと同期させてアブレーション装置に送達するように構成された第1の制御部と、
前記第1の制御部に動作可能に接続された第2の制御部であって、
ペーシングパルスの前記セットを発生させて、ペーシング装置にペーシングパルスの前記セットを送達し、
電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データに基づいてペーシングパルスの前記セットのペーシング捕捉を確認し、
ペーシング捕捉を確認したことに応じて、前記パルス波の発生を作動させるために前記第1の制御部にペーシング捕捉の指示を送信するように構成された、前記第2の制御部と、
を備える、システム。
【請求項38】
前記ペーシング装置が、心臓腔をペーシングするための一対の電極と、前記心臓信号データを捕捉するための前記電極のセットとを備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記第1の制御部がペーシングパルスの前記セットに同期させて前記パルス波を送信し得るように、前記第2の制御部が、前記第1の制御部にペーシングパルスの前記セットの指示を送信するように更に構成される、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記第2の制御部が、
ペーシングパルスの前記セットからの連続するペーシングパルスのサブセットの送達に続いて、前記心臓信号データの部分を抽出することと、
各抽出部分について、前記抽出部分に関連する関数のモーメントのセットを計算することと、
各抽出部分について計算されたモーメントの前記セットに少なくとも基づいて、ペーシングパルスの前記セットのペーシング捕捉を確認することと
によってペーシング捕捉を確認するように構成される、請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
前記心臓信号データの各抽出部分が、連続するペーシングパルスの前記サブセットからのペーシングパルスの立ち上がりに続く所定の時間間隔内の心臓信号データを含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記第2の制御部が、
異所性活動について前記心臓信号データを監視し、
異所性活動が存在する場合、前記パルス波の発生を停止させるために前記第1の制御部に異所性活動の表示を送信するように更に構成される、請求項37に記載のシステム。
【請求項43】
前記第2の制御部が、
ペーシングパルスの前記セットからの各ペーシングパルスの送達に続いて、前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、
抽出された前記スライディングウィンドウの離散フーリエ変換を実行し、且つ抽出された前記スライディングウィンドウのフィルタリングされた周波数出力を生成するために、結果として得られた離散フーリエ変換にフィルタリングを施すことと、
フィルタリングされた前記周波数出力における周波数のサブレンジにわたるピーク周波数を解析することと、によって異所性活動について監視するように構成される、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記第2の制御部は、ユーザインターフェースに動作可能に接続されており、前記第2の制御部は、異所性活動が存在する場合、異所性活動が存在することを示すアラートを前記ユーザインターフェースに表示させるように更に構成されている、請求項42に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス電界アブレーション中の異所性心電図信号を検出するためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織に対して高電圧の超短パルスを短時間印加することにより、組織に強い電界を発生させて、不可逆電気穿孔法の生物物理学的メカニズムによって局所的に組織が切除された領域を発生させることができる。
【0003】
しかしながら、心臓活動の特定の期間中に高電圧パルスが心臓に送達されると、不整脈(例えば、心室細動)の誘発などの合併症を引き起こすことがある。したがって、このような合併症のリスクを回避するために、パルス電界アブレーションの高電圧パルスを心周期と同期させて送達することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、パルス電界アブレーションなど、組織へのアブレーションエネルギーの送達に関連する異所性心臓活動を検出するためのシステム、装置、及び方法が説明されている。パルス電界アブレーションは、高電圧の超短パルスを用いて、所望の関心領域において強い電界を発生させて、不可逆電気穿孔法により局所的に組織が切除された領域を発生させる。心臓への用途を含む特定の用途においては、パルス電界アブレーションのパルスを心周期と同期させて発生させることが望ましい場合がある。アブレーションエネルギーを心周期と同期させて送達することにより、心房細動及び/又は心室細動などの不整脈を誘発するリスクを低減させ得る。パルスの心周期と送達を同期させる1つ方法は、所定の時間周期を有する周期的ペーシング信号により1つ以上の心腔をペーシング又は刺激することである。例えば、心臓刺激装置を使用して1つ以上の心腔にペーシングパルスを送達して、患者の心律動がペーシングパルスと同期するようにすることができる。いくつかの実施形態では、心腔に適切に配置された心臓カテーテルを介して、ペーシングパルスが心腔に送達される。心臓カテーテルは、ペーシング信号を心臓に伝導するために使用される1つ以上の電極を備え得る。例えば、カテーテルは、ペーシング信号を送達するためのバイポーラ対として使用される1対の電極(例えば、最も遠位側にある電極と、この電極の近位側に設けられた電極と)を有することができ、2つの電極は、ペーシング信号の電流のフォワードパス及びリターンパスを提供する。ペーシングパルスによって、心腔が心電図(ECG)パルスをペーシングパルスと同期させて発生することにより、心周期のタイミングを制御することができる。
【0005】
心周期の周期性が確立され、(例えば、医師によって)確認されると、高電圧アブレーションパルスの送達は、ペーシング信号と同期して開始するようにタイミングが計られる。例えば、アブレーションパルスは、アブレーションパルスの送達が、心周期のQRS波形に続く不応期ウィンドウの範囲内に入るように、ペーシング信号から所定のオフセットを伴って送達される。いくつかの実施形態では、アブレーションパルスは、パルス電界アブレーションのために構成されたアブレーションカテーテルを使用して心腔に送達され得る。
【0006】
しかしながら、心腔がペーシングされている間、局所的な電気的活動(例えば、心室期外収縮(PVC:pre-ventricular contraction))が、次のペーシングパルスに重なり得る追加の局所的T波(例えば、異所性拍動)を発生させる異所性心臓活動を誘発し得る。これらの局所的なT波の間に送達されたアブレーションエネルギーは、細動を誘発するリスクが高いことがある。
【0007】
したがって、アブレーションがそれらの時間の間に送達されないことをアブレーションシステムが確保し得るように、アブレーション中に連続するペーシングパルスの間で起こり得るそのような局所的又は異所性ECG活動を検出することが望ましい。例えば、アブレーション装置が、異所性活動が検出された場合には信号発生器から切り離されるように構成され得る。(例えば、適切なリレーを使用して)アブレーション装置を遮断、又はスイッチオフにすることにより、細動イベントを誘発するリスクを低減することができる。
【0008】
本明細書で説明するシステム、装置、及び方法は、異所性信号を検出し、そのような検出に基づいてアブレーション装置の動作を制御するように構成される。例えば、本明細書で説明されるシステムは、心臓を電気的にペーシングし、心周期の周期性及び予測可能性を確立するためにペーシング捕捉を確保するために使用される心臓刺激装置及びペーシング装置を備え得る。ペーシング装置は、ペーシング捕捉の確認及び/又は異所性心臓活動の検出に用いられる電気的心臓活動(例えば、心電図(ECG)信号)を測定するように構成され得る。例えば、ECG信号の所定の部分が、異所性拍動、及びペーシングパルスと心周期との間の同期について解析される。心臓活動ステータスが、ペーシング捕捉及び/又は異所性心臓活動のステータスを示すために出力され、組織へのアブレーションエネルギーの送達を制御するために使用される。
【0009】
本システムは、信号発生器と、アブレーション装置の電極の選択されたセットに1つ以上の電圧パルス波形を印加して、関心領域にエネルギー(例えば、肺静脈口の組織のセットに対するアブレーションエネルギー)を送達するように構成されたプロセッサとを更に備え得る。本明細書に開示されるパルス波形は、様々な心臓不整脈(例えば、心房細動)の治療的処置に役立つ。
【0010】
心臓刺激装置は、意図しない組織損傷を低減するために、ペーシングされた心拍にパルス波形の発生を同期させ得る。例えば、周期的な心周期の不応期内の時間ウィンドウが電圧パルス波形送達のために選択され得る。よって、電圧パルス波形は、心臓の洞調律を乱すことを回避するために心周期の不応期において送達され得る。パルス波形は、異所性拍動がないこと及びペーシング捕捉の確認を示す心臓活動ステータスに基づいて発生され得る。例えば、パルス波形は、心臓の洞調律が乱れることを回避するために、心臓のペーシング信号と同期されて発生され、検出された異所性活動の期間の以外で送達され得る。パルス波形は、心臓の周囲に心外膜又は心内膜に配置された1つ以上のカテーテルの1つ以上の電極に送達されて、それらの電極が組織をアブレーションするパルス電界を発生させるようにし得る。いくつかの実施形態では、パルス波形は、組織アブレーションを支援し、健康な組織への損傷を低減するために、階層波形を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、装置は、メモリと、メモリに動作可能に接続されたプロセッサとを備える。プロセッサは、電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出し、抽出されたスライディングウィンドウに対応する周波数のサブレンジにわたるピーク周波数を特定し、周波数のサブレンジにわたるピーク周波数の尺度に少なくとも基づいて異所性活動を検出し、異所性活動を検出したことに応じて、信号発生器がパルス波の発生を停止又はスイッチオフするように、心臓アブレーションのパルス波を発生させるように構成された信号発生器に異所性活動の表示を送信するように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、装置は、メモリと、メモリに動作可能に接続されたプロセッサとを備える。プロセッサは、電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、心臓組織へのペーシングパルスのセットの送達の指示を受信し、ペーシングパルスのセットからの連続するペーシングパルスのサブセットの送達に続いて心臓信号データの部分を抽出し、各抽出部分について、その抽出部分に関連する関数のモーメントのセットを計算し、各抽出部分について計算されたモーメントのセットに少なくとも基づいて、ペーシングパルスのセットのペーシング捕捉を確認し、ペーシング捕捉を確認したことに応じて、信号発生器がパルス波を発生させるために作動されるように、心臓アブレーションのパルス波を発生させるように構成された信号発生器にペーシング捕捉の指示を送信するように構成され得る。いくつかの実施形態では、プロセッサは、異所性活動を検出するために心臓信号データの局所的なピーク周波数を解析し、異所性活動を検出したことに応じて、信号発生器がパルス波を発生させることからスイッチオフされるように、信号発生器に異所性活動の表示を送信するように更に構成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、システムは、パルス波を発生させ、パルス波の波形をペーシングパルスのセットと同期させてアブレーション装置に送達するように構成された第1の制御部と、第1の制御部に動作可能に接続された第2の制御部であって、第2の制御部が、ペーシングパルスのセットを発生させ、ペーシング装置にペーシングパルスのセットを送達し、電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、心臓信号データに基づいてペーシングパルスのセットのペーシング捕捉を確認し、ペーシング捕捉を確認したことに応じて、パルス波の発生を作動させるために第1の制御部にペーシング捕捉の指示を送信するように構成される、第2の制御部とを備える。いくつかの実施形態では、第2の制御部は、異所性活動について心臓信号データを監視し、異所性活動が存在する場合、パルス波の発生をスイッチオフにするために第1の制御部に異所性活動の表示を送信するように更に構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法が、心臓組織付近に配置された電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信することと、心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、抽出されたスライディングウィンドウに対応する周波数のサブレンジにわたるピーク周波数を特定することと、周波数のサブレンジにわたるピーク周波数の尺度に少なくとも基づいて異所性活動を検出することと、異所性活動を検出したことに応じて、信号発生器がパルス波の発生をスイッチオフするように、心臓アブレーションのパルス波を発生させるように構成された信号発生器に異所性活動の表示を送信することとを含む。本方法は、心臓信号データに基づいてペーシングパルスのセットのペーシング捕捉を確認することを更に含み得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、「電気穿孔法」という用語は、細胞外環境に対する細胞膜の透過性を変化させるように細胞膜に電界を印加することをいう。本明細書で使用される場合、「可逆電気穿孔法」という用語は、細胞外環境に対する細胞膜の透過性を一時的に変化させるように細胞膜に電界を印加することをいう。例えば、可逆電気穿孔法を受けている細胞では、その細胞膜において、電界が除去されると閉じる1つ以上の孔の一時的及び/又は断続的な形成が見られる。本明細書で使用される場合、「不可逆電気穿孔法」という用語は、細胞外環境に対する細胞膜の透過性を永続的に変化させるために細胞膜に電界を印加することをいう。例えば、不可逆電気穿孔法を受けている細胞では、その細胞膜において、電界が除去されても存続する1つ以上の孔の形成が見られる。
【0016】
本明細書に開示される電気穿孔法エネルギー送達のためのパルス波形は、不可逆電気穿孔法に関連する電界閾値を低減することによって組織へのエネルギー送達の安全性、効率、及び有効性を高め、これにより、送達される総エネルギーを低減しながらより有効なアブレーションによる傷をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される電圧パルス波形は、階層的であり、入れ子構造を有し得る。例えば、パルス波形は、関連するタイムスケールを有するパルスの階層的なグループ化を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法、システム、及び装置は、2019年1月18日に出願され、国際公開第2019/143960号として2019年7月25日に国際公開された、「フォーカルアブレーションのためのシステム、装置、及び方法(SYSTEMS,DEVICES AND METHODS FOR FOCAL ABLATION)」と題する、国際出願第PCT/US2019/014226号明細書に記載された方法、システム、及び装置のうちの1つ以上を備えることができ、同国際出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態にかかる、システムを示すブロック図。
図2】実施形態にかかる、心臓に配置されたアブレーションカテーテル及びペーシングカテーテルを示す概略断面図。
図3A】実施形態にかかる、心電図及び心臓ペーシング信号の時系列を示す概略図。
図3B】実施形態にかかる、心電図及び心臓ペーシング信号の時系列を示す概略図。
図4】実施形態にかかる、パルス電界アブレーションを発生させるための装置の概略図。
図5】実施形態にかかる、心臓活動を検出するための装置の構成要素を示す図。
図6】実施形態にかかる、組織アブレーションのための方法を示す図。
図7】実施形態にかかる、異所性心臓活動を検出するための方法を示す図。
図8】実施形態にかかる、組織アブレーションのための方法を示す図。
図9】実施形態にかかる、異所性心臓活動を検出するための方法を示す図。
図10】実施形態にかかる、異所性心臓活動を検出し、ペーシング捕捉を確認するための方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
システム
本明細書では、不可逆電気穿孔法をもたらす電圧パルス波形の選択的且つ高速な印加による組織アブレーションに関連する異所性心臓活動を監視するために構成されたシステム及び装置が開示されている。一般に、ここで説明される組織をアブレーションするシステムは、ペーシング装置によって心臓に送達されるペーシング信号を発生させるための心臓刺激装置を備える。本システムは、異所性拍動の特定したり、心臓のペーシング捕捉を確認したりするために、電気的心臓活動を更に測定する。検出されたペーシング信号及び/又は検出された心臓活動は、1つ以上の電極を有するアブレーション装置に対して、信号発生器によって発生されたパルス波形を送達することを制御するために使用され得る。本明細書で説明されるように、本システム及び装置は、例えば心房細動などの心臓の病気を治療するために心外膜及び/又は心内膜に配備される。アノード及びカソードの電極の選択において独立にサブセットを選択できる状態で、電圧が電極の選択されたサブセットに印加される。
【0019】
一般に、本明細書で説明されるシステム及び装置は、心臓の左心房腔の組織をアブレーションするように構成された1つ以上の装置(例えば、カテーテル)を備える。図1は、電圧パルス波形を送達するように構成されたシステム(100)を示す。システム(100)は、1つ以上のプロセッサ、すなわち制御部(124)と、メモリ(126)とを備える装置(120)を備える。プロセッサ(124)は、信号発生器(122)及び/又は心臓刺激装置(128)として機能したり、これに統合されたり、これを制御したりする。
【0020】
1つ以上のプロセッサ(124)はそれぞれ、命令又はコードのセットを実行するように構成された任意の適切な処理装置であり得る。プロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又はデジタルシグナルプロセッサ(DSP)などであり得る。プロセッサは、システム及び/又はシステムに関連するネットワーク(図示せず)に関連するアプリケーションプロセス、並びに/又は他のモジュール、プロセス、及び/又は機能を実行するように構成され得る。装置の基礎となる技術は、例えば、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)などの金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)技術、エミッタ結合ロジック(ECL)などのバイポーラ技術、ポリマー技術(例えば、シリコン共役ポリマー及び金属共役ポリマー金属構造)、アナログ及びデジタル混合などの様々なコンポーネントタイプで提供され得る。
【0021】
メモリ(126)は、データベース(図示せず)を含んでもよく、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、メモリバッファ、ハードドライブ、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリなどであり得る。メモリ(126)は、パルス波形発生及び/又は心臓ペーシングなどのシステム(100)に関連するモジュール、プロセス、及び/又は機能をプロセッサ(124)に実行させるための命令を記憶し得る。
【0022】
装置(120)は、アブレーション装置(110)及び/又はペーシング装置(130)に接続される。アブレーション装置(110)及びペーシング装置(130)に接続された場合、装置(120)の1つ以上の構成要素(例えば、信号発生器(122)及び/又は心臓刺激装置(128)として機能するプロセッサ(124))が、アブレーション装置(110)及びペーシング装置(130)を介してペーシング信号、アブレーション信号などの送達を制御したり、アブレーション装置(110)及びペーシング装置(130)からデータ(例えば、検知された信号)を受信したりするために、アブレーション装置(110)及び/又はペーシング装置(130)に対して電気的に接続される。装置(120)が複数のプロセッサ(124)を備える場合、プロセッサ(124)のうちの1つ以上が、ペーシング及び/又はアブレーションを制御するために互いに通信し得る。装置(120)はまた、装置(120)が他の装置(例えば、アブレーション装置(110)及び/又はペーシング装置(130))及び/又はユーザとインターフェースすることを可能にする入出力装置(127)を備える。例えば、装置(120)は、ユーザへの出力の提示及び/又はユーザからの入力の受け付けを可能にするユーザインターフェース(例えばディスプレイ、音声装置など)を備え得る。
【0023】
信号発生器(122)は、例えば肺静脈口などの組織の不可逆電気穿孔のためのアブレーションパルス波を発生させるように構成され得る。例えば、信号発生器(122)は電圧パルス波形発生器であり、アブレーション装置(110)にパルス波形を送達し得る。プロセッサ(124)は、信号発生器(122)によって発生されるパルス波形のパラメータ(例えば、タイミング、振幅、幅、デューティサイクルなど)を決定するために、メモリ(126)、心臓刺激装置(128)、及びペーシング装置(130)から受信したデータを組み込み得る。メモリ(126)は、異所性心臓活動検出、パルス波形発生、及び/又は心臓ペーシング同期などのシステム(100)に関連するモジュール、プロセス、及び/又は機能を信号発生器(122)に実行させるための命令を更に記憶し得る。例えば、メモリ(126)は、心臓活動データ、パルス波形、及び心臓ペーシングデータのうちの1つ以上を記憶するように構成され得る。
【0024】
患者に配置されたペーシング装置(130)は、心臓刺激のために装置(120)の心臓刺激装置(128)によって発生された心臓ペーシング信号を受信するように構成され得る。ペーシング信号の指示が、心臓刺激装置(128)によって信号発生器(122)に送信され得る。ペーシング信号に基づいて、電圧パルス波形の指示がプロセッサ(124)によって選択、計算、及び/又は他の方法で特定され、信号発生器(122)によって発生され得る。いくつかの実施形態では、信号発生器(122)は、パルス波形が(例えば、共通の不応期ウィンドウ内で)ペーシング信号の指示と同期している心臓活動ステータスに基づいてパルス波形を発生させるように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、共通の不応期ウィンドウは、心室ペーシング信号の実質的に直後に(又は極めてわずかな遅延の後に)開始し、その後約250ミリ秒(ms)以下の持続時間だけ続く。このような実施形態では、パルス波形全体がこの持続時間内に送達される。
【0025】
いくつかの実施形態では、例えばペーシング装置(130)及び/又はアブレーション装置(110)の1つ以上の心臓電極が、心臓内の信号を検知し、プロセッサ124のうちの1つ以上にそれらの信号を送達するように構成される。1つ以上のプロセッサ124は、更に後述するように、異所性活動について検知された信号を解析し、そのような解析に基づいて信号発生器(122)の動作を制御し得る。
【0026】
システム(100)は、例えば1以上のネットワークを介して、他の装置(図示せず)と通信し得る。1つ以上のネットワークのそれぞれが、任意のタイプのネットワークであり得る。無線ネットワークは、いかなる種類のケーブルによっても接続されていない任意のタイプのデジタルネットワークを意味し得る。しかしながら、無線ネットワークは、インターネット、他の音声及びデータのキャリアネットワーク、ビジネスネットワーク、及び個人ネットワークとインターフェースするために、有線ネットワークに接続し得る。有線ネットワークは、典型的には、銅製ツイストペア、同軸ケーブル、又は光ファイバーケーブルで搬送される。有線ネットワークには、広域ネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、キャンパスエリアネットワーク(CAN)、インターネットなどのグローバルエリアネットワーク(GAN)、仮想プライベートネットワーク(VPN)を含む、様々なタイプの有線ネットワークがある。以下、ネットワークとは、統合されたネットワーキング及び情報アクセスソリューションを提供するために、典型的にはインターネットを介して相互接続される、組み合わされた無線、有線、公衆、及びプライベートのデータネットワークの任意の組み合わせをいう。システム(100)は、ディスプレイ、オーディオ装置、タッチスクリーン、それらの組み合わせなどの1つ以上の出力装置を更に備え得る。
【0027】
図2は、本明細書で説明される実施形態にかかる、内部に配置されたアブレーション装置(220)及びペーシング装置(210)を含む、例えば前側(例えば、被験者の正面)から見た、心臓(200)の概略図である。ペーシング装置(210)は、心臓活動を測定したり、心臓(200)にペーシング信号を送達したりするように構成され得、アブレーション装置(220)は、パルス波形を受信したり、パルス波形を心臓組織に送達したりするように構成され得る。図示のように、図2に示す心臓(200)の前方断面において、点線(201)は、右心室RV(202)及び左心房LA(204)を含む4つの心臓腔の境界を概略的に近似的に示している。ペーシング装置(210)は、右心室(202)に導入され、右心室(202)を刺激してペーシング捕捉を得ることができるように配置され得る。ペーシング装置(210)は、第1の電極(212)と、第2の電極(214)と、第3の電極(216)と、第4の電極(218)とを備える。第1の電極(212)及び第2の電極(214)は、右心室(202)をペーシングするためにペーシング電極のバイポーラ対として構成され得る。ペーシング電極(212、214)は、心臓刺激装置(例えば、心臓刺激装置(128))につながれ得る。第3の電極(216)及び第4の電極(218)は、心臓(200)の心臓活動(例えば、ECG信号)を測定するセンサ要素として構成され得る。ペーシング装置(210)は右心室(202)に配置されるものとして説明されているが、ペーシング装置(210)は他の適切な部位に配置され得ることが理解されよう。例えば、ペーシング装置(210)は、冠状静脈洞に配置され得、適切な電極対(例えば、電極(212、214))が心室のペーシングに使用され得る。
【0028】
アブレーション装置(220)は、経中隔穿刺により心房中隔を介して左心房(204)の心内膜腔の中に導入され得る。アブレーション装置(220)の先端部分は、アブレーションエネルギー(例えば、パルス電界エネルギー)を組織に送達するように構成された電極(222、224)のセットを備える。いくつかの実施形態では、アブレーション装置(220)の電極(222、224)は、独立して指定可能な電極のセットであり得る。各電極は、対応する絶縁体の絶縁破壊させることなしに少なくとも約700Vの電位に耐えるように構成された絶縁導線を備え得る。いくつかの実施形態では、導線のそれぞれの絶縁体は、絶縁破壊することなく、その厚さにかかる約200V~約2,500Vの電位差に耐え得る。いくつかの実施形態では、電極のセットは、複数の電極を含み得る。複数の電極は、例えば、1つのアノードと1つのカソードとを含むサブセット、2つのアノードと2つのカソードとを含むサブセット、2つのアノードと1つのカソードとを含むサブセット、1つのアノードと2つのカソードとを含むサブセット、3つのアノードと1つのカソードとを含むサブセット、及び/又は3つのアノードと2つのカソードとを含むサブセットなど、1つ以上のアノード-カソードサブセットにグループ化され得る。2つの電極(222、224)が示されているが、アブレーション装置(220)は、1つ以上の追加の電極を備えることができ、電極の1つ以上のセットは、組織をアブレーションするためのパルス電界を送達するために反対の極性で構成され得ることが理解されよう。
【0029】
ペーシング信号及び/又は異所性活動の検出のためのシステム及び装置の動作は、図3A及び図3Bを参照することにより理解され得る。図3A及び図3Bは、本明細書で説明される実施形態による、心臓活動と共に周期的なペーシングパルスの時系列を概略的に示している。
【0030】
図3Aは、心電図(300)及び心臓ペーシング信号(310)の時系列の概略図である。ペーシング信号(310)は、周期的なペーシングパルス(312)のセットを含む。例えば、ペーシングパルス(312)は、約1ms~約5msの幅を有する矩形パルスを含む。いくつかの実施形態では、ペーシングパルス(312)は、本明細書で説明されるペーシング装置(例えば、ペーシング装置(130、210))のいずれかを使用して送達される。例えば、ペーシングパルス(312)は、ペーシングカテーテル(210)のペーシング電極(212、214)を介して送達され得る。ペーシングパルス(312)に応じて、心臓の心周期は、ペーシングパルス(312)に同期し得る。例えば、図3AのQRS波形(302)は、それぞれのペーシングパルス(312)と同期され得る。QRS波形(302)に続くT波(304)は、心筋細胞で発生する再分極の開始に対応する。そのため、T波の開始後にアブレーションパルス波形を送達することは、合併症(例えば、心房細動及び/又は心室細動)を引き起こす可能性があるため、回避され得る。ペーシングパルス(312)の立ち上がりから開始し、T波(304)の前に終了する時間周期(330)は、アブレーションパルス電界を心臓に送達することができる安全な時間ウィンドウを表している。いくつかの実施形態では、アブレーションパルス波形は、ペーシングパルス(312)に続く心周期の不応期(320)内に送達される。いくつかの実施形態では、複数の心腔に対して共通の不応期を確立するために、複数の心腔がペーシング(例えば、心房と心室とが同時にペーシング)され得る。このような実施形態では、ペーシングパルス(312)は、各心腔に関連する共通の不応期の間に、又は不応期に重なるように送達され得る。
【0031】
図3Bは、心電図(340)及び心臓ペーシング信号(350)の時系列の概略図である。図3Aに示す周期的なペーシングパルス(312)と同様に、各ペーシングパルス(352)は、約1ms~約5msの幅を有する矩形パルスを含み得、本明細書で説明されるペーシング装置(例えば、ペーシング装置(130、210))のいずれかを使用して送達され得る。例えば、ペーシングパルス(352)は、ペーシングカテーテル(210)のペーシング電極(212、214)を介して送達され得る。ペーシングパルス(352)に応じて、心臓の自然なペーシング機能は、QRS波形(342)に同期し得る。QRS波形(342)に続くT波(344)は、心筋細胞の再分極の開始に対応する。異所性活動がない場合、ペーシングパルス(352)の立ち上がりから開始し、T波(344)の前に終了する時間周期(370)は、アブレーションパルス電界を心臓に送達することができる安全な時間ウィンドウを表している。心電図(340)は、アブレーションを送達することができる不応期(360)を含む。例えば心電図(340)の異所性パルス(380)によって表されるように、異所性活動がある場合、時間周期(370)の間にパルス電界アブレーションを送達することにより細動が誘発され得る。図3Bに示すように、異所性パルス又は群(380)は、ペーシングパルス(352)と同期したQRS波形(342)に先行し得る。異所性パルス(380)は、QRS波形(342)のT波(344)に先行する異所性T波(382)を発生させ得る。異所性パルス(380)に続く期間(328)の間にパルス波形が送達される場合、パルス波形は、異所性T波(382)に重なり、それにより、例えば細動を誘発することによって合併症を引き起こし得る。したがって、アブレーション処置中に(例えば、リアルタイムで)異所性パルス(380)などの異所性群の発生を検出して、検出した時にパルス電界アブレーションパルスの送達を中断することが望ましい場合がある。本明細書でより詳細に説明するように、本明細書で説明されるシステム、装置、及び方法は、(例えば、ペーシング及び/又はアブレーション処理中に)リアルタイムで異所性拍動を検出し、この検出結果に応じて組織へのアブレーションエネルギーの送達を制御(例えば、パルス波形パルスの送達を中断)する。例えば、そのようなシステム、装置、及び方法は、異所性拍動が検出された場合、例えば、ユーザが装置を再位置決めするまで、ペーシングパラメーターを調整するまで、又は異所性活動を含まないペーシングパルスと同期したECG波形を得るための他の臨床上の調整を行うまで、その後のアブレーション送達が終了され得るように、異所性ECG活動の自動検出を行う。
【0032】
図4は、組織アブレーションのためのパルス電界エネルギーを発生させるための例示的な装置(903)を概略的に示す。装置(903)は、図1を参照して上述した装置(120)の構成要素と構造的及び/又は機能的に類似する構成要素を備え得る。一実施形態では、装置(903)は、少なくとも2つの制御部又はプロセッサ(907、908)を備える。制御部(907)は、例えばアブレーションカテーテル(例えば、アブレーション装置(110))などのエネルギー送達装置に接続するアブレーション出力(911)を介してパルス電界アブレーションの波形を発生させるように構成され得る。
【0033】
制御部(908)は、ペーシング刺激を発生させ、ペーシング出力(920)を介して心臓ペーシングカテーテル又は同様の医療装置(例えば、ペーシング装置(130))にそのペーシング刺激を送信するように構成され得る。制御部(908)は、パルス電界エネルギーの送達が心臓ペーシングと同期され得るように、制御部(907)にペーシング刺激の指示(915)を更に送信し得る。制御部(907、908)は、例えば通信バス(917)によって、互いに動作可能に接続され得る。ペーシング刺激にパルス電界アブレーションエネルギーの送達を同期させることにより、装置(903)は、上述のように、パルス電界エネルギーが敏感な生体構造(例えば、心腔)に不応期の間に送達され、それにより細動イベントなどの不整脈を誘発するリスクを回避し得る。
【0034】
場合によっては、異所性拍動は、心腔からの自律的発生によって生じ得る。上述のように、異所性活動の期間中に送達されたパルス電界アブレーションは、不整脈を誘発するリスクを高め得る。したがって、このような異所性活動を検出することが望ましい。このような活動を検出するために、心臓内電極対からの心臓信号(例えば、ECG記録値)が、検知信号(922)として制御部(908)に送信され得る。制御部(908)は、異所性拍動について心臓信号を解析するように構成され得る。制御部(908)が異所性拍動を検出すると、制御部(908)は、例えば通信バス(917)を介して、パルス電界エネルギーの送達を停止するために、アブレーション波形の発生を担当する制御部(907)と通信するように構成され得る。例えば、制御部(908)は、異所性活動を検出すると、アブレーションを停止又は中断させる信号を制御部(907)に送信し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、装置(903)は、パルス電界エネルギーの送達の前にペーシング捕捉を確認するように構成され得る。例えば、装置(903)は、制御部(908)を介して、検知された心臓信号(922)を解析して、ペーシング捕捉を確認するとアブレーションを送達するように制御部(907)と通信し得る。いくつかの実施形態では、装置(903)は、例えばユーザによる手動入力(927)を介してペーシング捕捉を確認するためのユーザインターフェースを設けられる。例えば、装置(903)は、ユーザがペーシング捕捉を確認し、そのような確認を装置(903)に(例えば、ユーザインターフェースのボタンを押すことによって)示すことができるように、ペーシング信号及び心臓信号を表示するディスプレイを備え得る。いくつかの実施形態では、装置(903)は、検知された心臓活動を解析し、そのような検知された心臓活動がペーシング刺激と同期していないことが判明した場合、アブレーション送達を実行しなかったり、ペーシング捕捉がないことを(例えば、ユーザインターフェース又はメッセージを介して)ユーザに通知したりし得る。次いで、ユーザ及び/又は装置(903)は、ペーシング条件を修正したり、例えば異なる速度でペーシング捕捉を試みたり、又は生体構造の係合がより良好な場所又は位置にペーシングカテーテルを移動させたりし得る。
【0036】
図5は、例えば図4に示した制御部(908)などの制御部の1つ以上の構成要素を介した信号(例えば、ECG信号)の例示的な流れをより詳細に概略的に示す。図示のように、入力される信号(1003)(例えば、心臓電極を使用して捕捉された生のアナログ心臓活動信号)は、増幅器(1007)において受信され得る。増幅器(1007)は、アナログ・デジタル変換器(ADC)(1009)によるデジタル化のために信号(1003)を増幅するように構成され得る。ADC(1009)は、デジタル化されたデータの流れとして、処理された心臓データを出力し得る。デジタル化されたデータは、心臓活動データとしてメモリ(1011)に記憶又はバッファリングされ得る。プロセッサ(1013)は、異所性心臓活動について、所定のサイズのセグメントでバッファリングされた心臓データ(例えば、ウィンドウを通したデータ)を解析及び/又は処理し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、解析は、例えば、プロセッサ(1013)に予め設定され、予めプログラムされた、及び/又はユーザインターフェース(例えば、タッチスクリーンモニタ又は他のタイプのモニタなど)へのユーザ入力(1017)を介してユーザによって設けられた1つ以上の閾値に対してデータを比較することに基づく。解析に基づいて、プロセッサ(1013)は、アブレーション波形を発生させるための制御部、すなわちパルス発生器制御部(例えば、信号発生器(122)又は制御部(907))に心臓活動ステータスを出力する。
【0038】
信号(1015)は、ペーシング捕捉ステータス(例えば、ペーシングパルスと同期している/していないECG信号)及び異所性心臓活動ステータスのうちの1つ以上を示し得る。例えば、ペーシング捕捉が検出されない場合、プロセッサ(1013)は、ペーシング捕捉の欠如を示す対応するステータス信号(1015)をパルス発生器制御部に送信し得る。次いで、プロセッサ(1013)及び/又はパルス発生器制御部は、ペーシング捕捉が存在せずアブレーションを実行できないことを、例えばユーザインターフェースを介して、ユーザに通知し得る。次いで、ユーザは、例えばアブレーション処置の停止及び/又はシステムの再構成など、適切な行動をとることができる。例えば、ユーザは、アブレーション装置(例えば、アブレーション装置(110))及び/若しくはペーシング装置(例えば、ペーシング装置(130))のうちの1つ以上の位置を変更したり、他のシステムパラメータを調整したりし得る。ペーシング捕捉がプロセッサ(1013)によって確認された場合、アブレーションのための準備を示す別の信号(1015)がパルス発生器制御部に送信されて、そこで、パルス発生器制御部は、ユーザによって要求されたときにアブレーションを開始する。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるシステム及び装置は、アブレーションエネルギー送達の前、間、及び後に心臓活動を測定し得る。
【0039】
追加的又は代替的に、プロセッサ(1013)は、異所性拍動を検出し得る。例えば、ペーシング捕捉が確認されたが異所性拍動が検出された場合、プロセッサ(1013)は、パルス発生器制御部がアブレーションのためのパルス波の波形を発生させないようにパルス発生器制御部に信号(1015)を送信する。プロセッサ(1013)及び/又はパルス発生器制御部は、例えばユーザインターフェースを介して、異所性拍動の存在及びアブレーションが実行できないことをユーザに通知し得る。プロセッサ(1013)はまた、アブレーション中に発生し得る異所性拍動について、検知されたECG信号の監視を継続し得る。そのような異所性拍動が検出された場合、プロセッサ(1013)は、アブレーションが一時停止又は中断されるべきことを示す信号(1015)をパルス発生器制御部に送信し得る。次いで、パルス発生器制御部は、信号(1015)を受信したことに応じて、例えばユーザがシステムを調整するまで且つ/又は異所性拍動活動が検出されなくなるまで、更なるアブレーション送達を停止させ得る。
【0040】
方法
本明細書ではまた、上記のシステム及び装置を使用して心臓腔で実行される組織アブレーションプロセス中に異所性心臓活動を検出するための方法が説明される。心臓腔は、左心房腔であってもよく、その対応する肺静脈を含んでもよい。一般に、ここで説明する方法は、1つ以上の心臓腔に接触してペーシング装置(例えば、ペーシング装置(130)、ペーシング装置(210))を導入し、配置することを含む。ペーシング装置は、心臓活動を測定し、心臓刺激装置又は他のプロセッサ(例えば、心臓刺激装置(128)、制御部(908)、プロセッサ(1013))を使用して心臓にペーシング信号を送達し得る。測定された信号は、例えば本明細書で説明されるプロセッサ及び制御部によって、組織アブレーションを妨げ得るペーシング捕捉及び/又は異所性心臓活動を検出するために処理及び解析され得る。アブレーション装置(例えば、アブレーション装置(110)、アブレーション装置(220))は、1つ以上の肺静脈口又は腔領域と接触して導入され、配置され得る。パルス波形は、組織をアブレーションするためにアブレーション装置の1つ以上の電極(例えば、電極(112)、電極(222、224))によって送達され得る。いくつかの実施形態では、自律的に発生した異所性心臓活動の検出は、アブレーションエネルギー送達を迅速に中断させ、それにより不整脈(例えば、細動)を誘発するリスクを低減し得る。更に、(例えば、ペーシング装置(例えば、ペーシング装置(130)、ペーシング装置(210))によって送達される)心臓ペーシング信号は、送達されたパルス波の波形を心周期に同期させ得る。(例えば、不応期中に)ペーシング刺激に対してアブレーションエネルギーの送達を同期させることにより、細動などの不整脈を誘発するリスクを更に低減させ得る。
【0041】
追加的又は代替的に、パルス波形は、例えば2019年5月7日に出願された、「アブレーションエネルギーの組織への送達のためのシステム、装置、及び方法(SYSTEMS,APPARATUSES AND METHODS FOR DELIVERY OF ABLATIVE ENERGY TO TISSUE)」と題する、国際出願第PCT/US2019/031135号明細書に記載されているように、総エネルギー送達を低減するために複数のレベルの階層を含み得る。同国際出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。このようにして行われた組織アブレーションは、心房細動及び/又は心室細動並びに健康な組織への損傷のリスクを低減するために、異所性心臓活動がないときに、且つペーシングされた心拍に同期して送達され得る。本明細書で説明される任意のアブレーション装置(例えば、アブレーション装置(110)、アブレーション装置(220))を用いて、後述する方法を適宜用いて組織をアブレーションすることを理解されたい。
【0042】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるアブレーション装置(例えば、アブレーション装置(110)、アブレーション装置(220))は、心外膜及び/又は心内膜のアブレーションに使用され得る。適切なアブレーションカテーテルの例は、国際出願第PCT/US2019/014226号明細書において説明されている。
【0043】
図6は、組織アブレーションの例示的な方法(400)である。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される電圧パルス波形は、心臓の洞調律を乱すことを回避するために心周期の不応期中に印加され得る。方法(400)は、工程(402)において、ペーシング装置(例えば、ペーシング装置(130、210))を例えば右心室の心内膜腔の中に導入することを含む。工程(404)において、ペーシング装置は、前進して、心臓組織と接触して配置される。例えば、心臓活動測定(例えば、ECG信号)のために構成されたセンサ電極と、ペーシング信号を送達するために構成されたペーシング電極とが、右心室の内面に接触して配置され得る。工程(406)において、アブレーション装置(例えば、アブレーション装置(110、220))は、例えば左心房の心内膜腔中に導入される。工程(408)において、アブレーション装置は、前進して、肺静脈口に接触して配置される。いくつかの実施形態では、工程(410)において、ペーシング信号は、心臓の心臓刺激のために心臓刺激装置(例えば、心臓刺激装置(128))によって発生される。次いで、工程(412)において、ペーシング信号は、ペーシング装置のペーシング電極を使用して心臓に印加される。例えば、心臓は、心周期の周期性及び予測可能性を確立するためのペーシング捕捉を確保するために、ペーシング信号によって電気的にペーシングされる。心房ペーシング及び心室ペーシングの1つ以上が適用され得る。患者の心臓活動に対する、適用されるペーシング信号の例については、図3A及び図3Bを参照して本明細書でより詳細に説明されている。工程(414)において、ペーシング装置及び/又はアブレーション装置のうちの1つ以上の電極は、心臓の電気的心臓活動に対応する心臓活動(例えば、ECG信号)を更に測定する。いくつかの実施形態では、心臓活動は、心臓刺激及び組織アブレーションの前、間、及び/又は後に測定される。
【0044】
装置(例えば、装置(120、903))は、1つ以上の電極によって検知された心臓信号を処理及び/又は解析し得る。工程(416)において、心臓データの解析に基づいて、ステータス信号が発生される。ステータス信号は、ペーシング捕捉及び/又は異所性心臓活動のうちの1つ以上のステータスを示し得る。例えば、図7図9、及び図10は、異所性心臓活動を検出するより詳細な例を提示する。工程(418)において、ステータス信号は、信号発生器(例えば、信号発生器(122))またはアブレーション装置(110、220)に対応する任意のプロセッサのうちの1つ以上に出力されたり、ユーザインターフェースに出力されたりし得る。工程(420)において、ステータス信号に基づいて、信号発生器は、例えば本明細書で説明されるような所定の基準に基づいて、パルス波形を発生させてもよいし、発生させなくてもよい。例えば、ステータス信号が、心臓データにおいて異所性心臓活動(例えば、異所性拍動)の欠如及びペーシング捕捉の確認(例えば、ペーシング信号と心周期との間の同期)のうちの1つ以上を示す場合、パルス波の波形は、(例えば、不応期中に)ペーシング信号と同期して発生され得る。例えば、ペーシング捕捉が異所性心臓活動なしにいくつかの心拍にわたって観測される場合、信号発生器は、ユーザ(例えば、オペレータ)による作動時にパルス波形を発生させ得る。反対に、信号発生器は、心臓活動ステータスが、心臓データにおける異所性心臓活動(例えば、異所性拍動)及び/又はペーシング捕捉の不在のうちの1つ以上を示す場合、パルス波形の発生を阻止したり、ユーザに警告を出力したりする。
【0045】
いくつかの実施形態では、ペーシング捕捉は、受信された心臓データに基づいて本明細書で説明される装置(例えば、装置(120、903))によって自動的に確認され得る。追加的又は代替的に、ペーシング捕捉は、例えばペーシング信号及び心臓信号データの出力を検討した後、ユーザによって確認され得る。例えば、ユーザは、ディスプレイ上に出力された心臓活動に基づいて、ユーザインターフェース(例えば、タッチスクリーンモニタ又は他のタイプのモニタなどの入出力装置)を使用してペーシング捕捉を確認し得る。信号発生器及び/若しくはプロセッサ、又は表示された心臓出力を検討するユーザが、異所性心臓活動及びペーシング捕捉の欠如のうちの1つ以上が存在すると判定した場合、パルス波形の発生は阻止され得、ユーザは、例えば組織との係合を改善するためにペーシング装置を再配置することによってシステムパラメータを調整したり、ペーシング信号パラメータ(例えばパルス幅、パルス振幅、パルス周波数など)を修正したりするように促され得る。
【0046】
工程(422)において、発生されたパルス波形は、組織に送達される。いくつかの実施形態では、電圧パルス波形が、心房及び心室ペーシング信号に関連する共通の不応期において印加され得る。捕捉された心臓データ及び/又はアブレーション送達に関連する他のパラメータに応じて、パルス波形は、ペーシング信号の指示に対して時間オフセットを伴って発生され得る。例えば、不応期時間周期は、ペーシング信号から所定時間だけオフセットされてもよく、アブレーション装置は、ペーシング信号からオフセットされている不応期時間周期にパルスを送達するように構成され得る。いくつかの実施形態では、電圧パルス波形は、対応する不応期時間周期(例えば、共通の不応期)にわたる一連の心拍にわたって印加され得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、パルス波形は、アブレーション装置(例えば、アブレーション装置(110、220))のスプライン(spline)のセットの1つ以上のスプラインを介して、患者の心臓の肺静脈口に送達され得る。他の実施形態では、本明細書で説明される電圧パルス波形は、肺静脈のアブレーション及び絶縁のために、アノード-カソードサブセットなどの電極サブセットに選択的に送達され得る。例えば、電極のグループの第1の電極はアノードとして構成されてもよく、電極のグループの第2の電極はカソードとして構成されてもよい。これらの工程は、アブレーションされた肺静脈口又は腔領域の所望の数(例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つの口)に対して繰り返されてもよい。アブレーション装置及び方法の適切な例は、国際出願第PCT/US2019/014226号明細書において説明されている。
【0048】
図7は、異所性心臓活動を検出するための例示的な方法(500)である。いくつかの実施形態では、方法(500)の1つ以上の工程は、本明細書で説明される装置(例えば、装置(120、903))のうちのいずれか1つ、又は本明細書で説明される装置及び方法に関連する任意の適切なプロセッサによって実行され得る。方法(500)は、工程(502)において、心臓の電気的心臓活動(例えば、ECG波形)に対応する心臓活動信号を受信することを含む。例えば、心臓活動信号は、心臓腔(例えば、右心室)に接触しているペーシング装置(例えば、ペーシング装置(210))の電極(例えば、電極(216、218))のセットから連続的に受信されるアナログデータを含み得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ(例えば、制御部(908)、プロセッサ(1013))、又はアブレーション装置に関連する他のプロセッサが、心臓活動信号を受信し、異所性心臓活動検出を実行し得る。工程(504)において、生の心臓活動信号が、処理された心臓活動データを発生させるために受信及び処理される。例えば、信号処理は、処理された心臓活動データを発生させるために、信号調整(例えば、フィルタリング)、増幅、及び(例えば、アナログ・デジタル変換器(ADC)を使用する)デジタル化を含み得る。例えば、心臓活動信号は、約1kHzの範囲にある周波数又は約1msのサンプリング時間間隔でサンプリングされ、所定の分解能(例えば、16ビット符号付き整数データの離散時系列)で記憶される。1msのサンプリング時間間隔は、500Hzのナイキスト周波数に相当する。(506)において、処理された心臓活動データは、バッファなどのメモリに記憶される。いくつかの実施形態では、バッファは、受信されたペーシング信号に基づいて、記憶された心臓データをクリアする。例えば、次のペーシングパルスを受信すると、バッファは、先に記憶されていた心臓データを削除する。いくつかの実施形態では、ペーシング信号は、所定のペーシング周波数を含み得る。
【0049】
工程(508)において、処理された心臓活動データは、異所性心臓活動及びペーシング捕捉のうちの1つ以上について解析される。例えば、処理された心臓活動データは、データのスライディングウィンドウを抽出することによって解析され、各スライディングウィンドウは、例えば離散フーリエ変換法を用いて、異所性心臓活動について評価される。このような解析の具体的な実装形態については、図9及び図10を参照して更に説明する。任意選択で、いくつかの実施形態では、工程(512)において、処理された心臓活動データは、ペーシング捕捉を確認するために解析される。
【0050】
いくつかの実施形態では、工程(510)における異所性心臓活動検出は、工程(512)において、ペーシング捕捉検出と並行して実行される。他の実施形態では、工程(512)におけるペーシング捕捉検出は、工程(510)において、異所性心臓活動検出を実行する前に実行される。
【0051】
工程(514)において、検出された異所性心臓活動及び/又はペーシング捕捉の結果に基づいて、ステータス信号が発生される。いくつかの実施形態では、ステータス信号は、例えば、信号若しくはパルス発生器(例えば、信号発生器(122))及び/又は別の計算装置を含むアブレーション装置(例えば、装置(120))の1つ以上の構成要素に出力される。例えば、組織アブレーションシステムのユーザインターフェース(例えば、装置(120)に含まれる、ディスプレイなどのユーザインターフェース)は、ペーシング捕捉を確認する指示(例えば、「ペーシング捕捉確認済み」)を表示するように、またユーザが組織へのアブレーションエネルギーの送達を開始できるように構成された「アブレーション」アイコンを表示するように構成される。いくつかの実施形態では、ペーシング捕捉が確認され、異所性拍動が検出されない場合、心臓活動ステータスはユーザに出力される必要はない。むしろ、ペーシング捕捉が確認できない場合、又は異所性拍動が検出された場合のいずれかの場合に、指示(例えば、音声及び/又は視覚アラーム)が行われ得る。
【0052】
図9及び図10は、異所性心臓活動を検出したり、ペーシング捕捉を確認したりする例示的な方法を示すフローチャートである。本方法の1つ以上の工程は、本明細書で説明される装置(120、903)のうちのいずれか1つ、又は本明細書で説明される装置及び方法に関連する任意の適切なプロセッサによって実行され得る。図9に示すように、異所性心臓活動を検出する方法は、工程(702)において、ECG入力を受信することを含む。ECG入力は、例えば、ペーシング装置の電極のセット(例えば、ペーシング装置(210)の電極(216、218))から受信されたECG信号データであり得る。ECG信号はアナログ信号であり得る。工程(704)において、ECG入力は、例えば信号を調整(例えば、フィルタリング)及び/又は増幅することによって、処理され得る。工程(706)において、ECG信号は、例えばADCを使用して、アナログからデジタルに変換され得る。いくつかの実施形態において、データは、十分な分解能を実現するための周波数、例えば、約1kHzの周波数又は約1msのサンプリング時間間隔でサンプリングされ、ビットベースの整数データ(例えば、16ビット符号付き整数データ、32ビット符号付き整数データなど)として記憶され得る。工程(708)において、デジタル化された又はサンプリングされたデータは、メモリ(例えば、メモリ(126、1011))に記憶され得る。例えば、データは、バッファリングされたデータの各セットが単一の心拍又は心周期に関連付けられるように、各ペーシング信号で開始するようにバッファリングされ得る。工程(737)において、ペーシング信号データは、例えば、ペーシング装置(例えば、ペーシング装置(130、210))及び/又はペーシング装置に対応するプロセッサ(例えば、プロセッサ(124、908、1013))によって提供される。第2のペーシング信号に対応するデータの後のセットが受信されると、既存のバッファがクリアされて、第2のペーシング信号に対応するこの新しいデータがバッファに記憶される。
【0053】
工程(710)において、バッファリングされたデータは、所定の長さのスライディングウィンドウを抽出することによって解析され得る。例えば、ペーシングパルスの前縁からペーシングパルス幅に等しい時間間隔において開始して、バッファリングされたデータは、所定の長さのスライディングウィンドウ(例えば、220データポイントのウィンドウ)で抽出され、これは約4.54Hzの周波数分解能に相当する。スライディングウィンドウは、ペーシングパルスの後(すなわち、パルス幅に等しい時間間隔の後)に開始し、離散的なステップで、例えば10サンプリング時間間隔などのサンプリング時間間隔の事前設定された数に等しいステップサイズで前進し得る。心周期ごとにバッファリングされたデータから抽出されたスライディングウィンドウの数は、例えば、ペーシングパルス間の長さ、ウィンドウ長、及び/又はステップサイズなど、1つ以上のパラメータに依存し、これらのそれぞれが所定のパラメータであり得る。
【0054】
工程(712)において、離散フーリエ変換(例えば、高速フーリエ変換)が各スライディングウィンドウについて実行され得る。工程(714)において、フーリエ変換の結果(例えば、振幅)は、各データ点の周囲の隣接する値のセットにわたる局所平均に対応する関数fを出力するために(例えば、平滑化フィルタによって)フィルタリングされ得る。関数fの局所的なピークが、各スライディングウィンドウのデータのサブレンジにわたって特定され得る。例えば、スライディングウィンドウが220データポイントの長さを有する場合、約12~約100まで(12番目のデータポイントから100番目のデータポイントまで)の範囲のサブレンジが使用され、これは約54Hzから約454Hzまでの周波数帯に相当する。これらの特定のスライディングウィンドウ長及び周波数帯は例として提供されているが、例えば、所望のパラメータ、処理能力などに応じて、他のスライディングウィンドウ長及び周波数帯が使用され得ることが理解されよう。工程(720)において、周波数帯内のピークの解析が、異所性心臓活動が存在するか否かを判定するために用いられ得る。
【0055】
各スライディングウィンドウ内の処理されたECGデータは、異所性心臓活動を検出するために使用され得る。一実施形態では、異所性拍動が、ナイキスト周波数までのfの最大値(amax)に対する所定の間隔(又はサブレンジ又は周波数帯)にわたるfのピーク値(a)の比と、所定の閾値tとの間の比較に基づいて検出され得る。いくつかの実施形態では、比a/amaxがtよりも大きいとき、異所性拍動がスライディングウィンドウ内で検出され得る。異所性拍動はECG信号において特定の周波数の量を増加させるため、サンプリングされた心臓データに通常量よりも多い周波数が存在する場合を特定することにより検出が実現され得る。いくつかの実施形態では、tは、間にあるすべてのサブ値及び範囲を含み、約0.01~約0.25、約0.01~約0.2、約0.01~約0.15であり得る。いくつかの実施形態では、工程(716)において、ユーザは、組織アブレーションシステムのユーザインターフェースにtを入力し得る。閾値tは、システムの感度を表し得る、すなわち、閾値tが低いシステムは、閾値tがより高いシステムよりも高い感度を有する。
【0056】
特定のスライディングウィンドウで異所性拍動が検出されない場合(720:いいえ)、プロセスは、次のスライディングウィンドウに進む。異所性拍動が検出された場合(720:はい)、工程(724)において、例えば、図7の工程(514)を参照して上述したように、計算装置及び/又はユーザに異所性活動を通知するステータス信号が生成される。
【0057】
いくつかの実施形態では、受信されたECGデータは、ペーシング捕捉を確認するために使用され得る。例えば、図10に示すように、異所性拍動を検出し、ペーシング捕捉を確認するための例示的な方法が示されている。図9に示した方法と同様に、工程(802)において、ECG入力が受信され得る。工程(804)において、ECG入力は、例えば信号を調整(例えば、フィルタリング)及び/又は増幅することによって、処理される。工程(806)において、ECG信号は、例えばADCを使用して、アナログからデジタルに変換される。工程(808)において、デジタル化されたデータは、メモリ(例えば、メモリ(126))に記憶される。例えば、デジタル化されたデータは、バッファリングされたデータの各セットが単一の心拍又は心周期に関連付けられるように、各ペーシング信号で開始するようにメモリにバッファリングされる。
【0058】
工程(810)において、バッファリングされたデータは、データのスライディングウィンドウを抽出することによって解析されてもよく、各スライディングウィンドウは所定の長さを有し、バッファリングされたデータを通して離散的なステップで前進し得る。工程(812)における、例えばデータの離散フーリエ変換を介する、異所性拍動の検出、工程(814)における、データのフィルタリング及び解析、並びに工程(820)における、プリセット閾値よりも大きいフーリエ変換データにおけるピークの検出は、図9で説明したものと同様であり得る。いくつかの実施形態では、そのような検出は、ユーザ入力(816)に基づき得る。
【0059】
工程(822)において、ECGデータが利用可能である状態で、ペーシング捕捉も確認される。工程(837)で示すように、ペーシング捕捉を確認するために、サンプリングされたデータのサブセットが、ペーシング信号の開始時にECGデータから抽出される。例えば、ペーシングパルスの立ち上がりから開始して所定の時間間隔T(例えば、ペーシングパルス持続時間)に対応するECGデータが抽出される。例えば、時間周期は、約5ms~約50msの長さを有する。したがって、サンプリングされたデータのサブセットは、例えば、サンプリング周波数及び時間間隔Tに応じて、最初の10~50のデータポイントを含み得る。関数g(t)が、時間間隔Tにわたってサンプリングされたデータのサブセットによって定義され得る。いくつかの実施形態では、g(t)は、時間間隔TにわたるECG信号の最大の大きさに関してスケーリングされたECG信号を表し得る。時間間隔Tにわたるこの関数のモーメント(例えば、M,M,...,M)のセットが計算され、所定の数の連続するペーシング期間(例えば、1、2、3、4、5の連続するペーシング期間)にわたって追跡される。関数のモーメントのセットは、例えば、最初の3つのモーメントを含み、これは、平均値として、又は時間間隔Tにわたるg(t)、tg(t)、及びtg(t)の(例えば、台形公式、シンプソンの公式、又は他の積分手段を使用する)他の適切な積分表現として離散化された形態で計算され得る。
【0060】
計算されたモーメントにより、連続するi個の期間のセットにわたるn番目のモーメントの平均値Aは、A=(M +M +M +...+M )/iによって与えられ得る。したがって、連続する5ペーシング期間にわたる最初の3つのモーメントの平均値は、次式のとおりである。
【0061】
=(M +M +...M )/5
=(M +M +...M )/5
=(M +M +...M )/5
モーメントの平均値Aと所与のモーメントnのi番目の時間周期(例えば、5つの時間周期、i=1,2,...,5)のモーメント値との間の正規化された差が計算される。最初の3つのモーメント(n=1,2,3)について、次の一連の式がこの正規化された差を提供する。
【0062】
=|A-M |/A
=|A-M |/A
=|A-M |/A
ここで、S、T、及びUの値は、A、A、又はAのうち対応する1つがゼロであるときに、ゼロに設定される。
【0063】
、T、及びUの値に基づいて、ペーシング捕捉の確認が検出され得る。例えば、i個の所定の時間周期にわたるペーシング捕捉は、Aの各非ゼロ値について、その対応するS、T、又はUの値が所定の閾値又は閾値のセット未満である場合に確認され得る。例えば、モーメントMのこの閾値は、0~0.1の範囲にあり得る。対応する平均値からのモーメントM の偏差が小さいということは、ECG信号の時間的挙動(時間の関数として見た場合)が連続するペーシング期間にわたって形態的に一貫しており、これによりペーシング捕捉を実証していることを示している。いくつかの実施形態では、この閾値は、例えば(例えば、入出力装置(127)の)ユーザインターフェースによって提供される入力(816)を介して、ユーザによって定義され得る。ペーシング捕捉が確認された場合(822)、このことは、例えば、「ペーシング捕捉確認済み」インジケータを強調表示することによってユーザインターフェース上で示され得る。
【0064】
図7を参照して上述したように、異所性拍動活動が検出されず、ペーシング捕捉が確認された場合、アブレーション装置及びそれに対応するプロセッサ(例えば、パルス発生器制御部(907)及び本明細書で説明される他の装置)は、パルス電界アブレーションを送達するように設定され得る。異所性拍動活動が検出された場合、及び/又はペーシング捕捉が確認されない場合、アブレーション装置及び/又は対応するプロセッサは、例えば、アブレーション装置をアブレーション発生器から切り離す適切なリレーの作動により、パルス電界アブレーションを送達することが停止されたり、設定されないようにしたりし得る。具体的には、異所性拍動活動が検出された場合、パルス電界アブレーションを送達することは細動を引き起こし得るため望ましくない。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される入れ子構造及び時間間隔の階層を有する階層電圧パルス波形が、不可逆電気穿孔に有用であり、異なる組織のタイプで制御及び選択性を提供する。図8は、組織アブレーション工程の一実施形態のフロー図(600)である。方法(600)は、工程(602)において、装置(例えば、アブレーション装置(100、220))を例えば左心房の心内膜腔の中に導入することを含む。工程(604)において、アブレーション装置は、前進して、肺静脈口に配置され得る。装置が第1及び第2の構成(例えば、収縮構成及び拡張構成)を含み得る実施形態では、工程(606)において、装置は、第1の構成で導入され、第2の構成に変形して、肺静脈洞口又は口若しくはそれらの付近で組織に接触してもよく、適切なアブレーション装置の更なる説明は、国際出願第PCT/US2019/014226号明細書に提示されている。工程(608)において、アブレーション装置は、電極を備えてもよく、上で詳細に説明したように、アノード-カソードサブセットで構成されてもよい。例えば、装置の電極のサブセットはアノードとして選択されてもよく、一方で装置の電極の別のサブセットはカソードとして選択されてもよく、電圧パルス波形は、アノードとカソードとの間に印加される。
【0066】
工程(610)において、パルス波の波形は、信号発生器(例えば、信号発生器(122))によって発生されてもよく、階層における複数のレベルを含んでもよい。様々な階層波形が、本明細書に開示される信号発生器により発生され得る。例えば、パルス波形は、パルスの第1のセットを含む、パルス波形の階層の第1のレベルを含んでもよい。各パルスは、パルス持続時間と、連続するパルスを分離する第1の時間間隔とを有する。パルス波形の階層の第2のレベルは、複数のパルスの第1のセットをパルスの第2のセットとして含んでもよい。第2の時間間隔は、連続するパルスの第1のセットを分離してもよい。第2の時間間隔は、第1の時間間隔の持続時間の少なくとも3倍であり得る。パルス波形の階層の第3のレベルは、複数のパルスの第2のセットを第3のパルスのセットとして含んでもよい。第3の時間間隔は、連続するパルスの第2のセットを分離してもよい。第3の時間間隔は、第2のレベルの時間間隔の持続時間の少なくとも30倍であり得る。工程(612)において、信号発生器によって発生されたパルス波形は、アブレーション装置を使用して、組織に送達され得る。本明細書で説明されるように、異所性拍動活動が検出される場合又はペーシング捕捉が確認されない場合、パルス波形活動の送達は、例えば、工程(608)又は工程(610)において中断され得る。本明細書で説明されるアブレーション装置で使用され得るパルス波形の例は、2016年10月19日に出願された、「アブレーションエネルギーの組織への送達のためのシステム、装置、及び方法(Systems,apparatuses and methods for delivery of ablative energy to tissue)」と題する国際出願第PCT/US2016/57664号明細書に提供されており、同国際出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
本明細書の例は別個の単相及び二相性波形を識別するが、波形階層のある部分が単相であり、他の部分が二相である組み合わせ波形も発生され得ることを理解されたい。階層構造を有する電圧パルス波形は、異なるアノード-カソードのサブセット全体に印加されてもよい(任意選択で時間遅延を伴う)。上で説明したように、アノード-カソードのサブセットにわたって印加される波形のうちの1つ以上が、心周期の不応期中に印加されてもよい。パルス波形は、組織に送達されてもよい。特定の図面に記載されるステップは、必要に応じて組み合わせて修正されてもよいことを理解されたい。
【0068】
本開示における例及び図示が例示目的を果たし、スプラインの数、電極の数などの逸脱及び変形が、本発明の範囲から逸脱することなく本開示にしたがって構築され、配備され得ることを理解されたい。本明細書の説明においては、サンプリング周波数、時間間隔などの特定のパラメータは例示目的でのみ与えられたものであるが、本開示において提示された教示に基づく当業者による応用において好都合であるように様々なパラメータの他の値が使用され得ることを理解されたい。
【0069】
本明細書で使用される場合、数値及び/又は範囲と併せて使用するときの「約」及び/又は「およそ」という用語は、一般に、記載した数値及び/又は範囲の近傍の数値及び/又は範囲を指す。場合によっては、「約」及び「およそ」という用語は、記載された値の±10%以内を意味し得る。例えば、場合によっては、「約100[単位]」は、100の±10%以内(例えば、90から110まで)を意味し得る。「約」及び「およそ」という用語は、同義で使用され得る。
【0070】
本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、様々なコンピュータ実施動作を実行するための命令又はコンピュータコードを有する非一時的コンピュータ可読媒体(非一時的プロセッサ可読媒体とも呼ばれ得る)を備えたコンピュータストレージ製品に関する。コンピュータ可読媒体(又はプロセッサ可読媒体)は、それ自体が一時的な伝播信号(例えば、空間やケーブルなどの伝送媒体上で情報を運ぶ伝播電磁波)を含まないという意味で非一時的である。媒体及びコンピュータコード(コード又はアルゴリズムとも呼ばれ得る)は、1つ以上の特定の目的のために設計及び構築されたものであり得る。非一時的コンピュータ可読媒体の例としては、ハードディスク、フロッピーディスク、及び磁気テープなどの磁気ストレージ媒体と、コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD)、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、及びホログラフィック装置などの光学ストレージ媒体と、光ディスクなどの光磁気ストレージ媒体と、搬送波信号処理モジュールと、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジック装置(PLD)、読み取り専用メモリ(ROM)、及びランダムアクセスメモリ(RAM)装置など、プログラムコードを記憶及び実行するように特別に構成されたハードウェア装置とが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で説明される他の実施形態は、例えば本明細書に開示される命令及び/又はコンピュータコードを含み得るコンピュータプログラム製品に関する。
【0071】
本明細書で説明されるシステム、装置、及び/又は方法は、(ハードウェアで実行される)ソフトウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって実行され得る。ハードウェアモジュールは、例えば、汎用プロセッサ(又はマイクロプロセッサ又はマイクロ制御部)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び/又は特定用途向け集積回路(ASIC)を含み得る。(ハードウェア上で実行される)ソフトウェアモジュールは、C、C++、Java(登録商標)、Ruby、Visual Basic(登録商標)、及び/又はその他のオブジェクト指向、プロシージャ型、又は他のプログラミング言語及び開発ツールを含む様々なソフトウェア言語(例えば、コンピュータコード)で表現され得る。コンピュータコードの例としては、マイクロコード又はマイクロ命令、コンパイラによって生成されるような機械命令、Webサービスの生成に使用されるコード、及びインタプリタを用いてコンピュータによって実行される高レベルの命令を含むファイルが挙げられるが、これらに限定されない。コンピュータコードのその他の例としては、制御信号、暗号化コード、及び圧縮コードが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書の特定の例及び説明は、本質的に例示であり、実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で教示する題材に基づいて当業者によって開発され得る。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと、
を備える装置であって、前記プロセッサは、
電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出し、
前記抽出されたスライディングウィンドウからのデータを処理し、
前記抽出されたスライディングウィンドウからの前記処理されたデータに関連する周波数のサブレンジにわたるピーク周波数を、
前記抽出されたスライディングウィンドウからの前記処理されたデータの離散フーリエ変換を実行することと、
フィルタリングされたフーリエ変換データを生成するために、前記処理されたデータの前記離散フーリエ変換をフィルタリングすることと、
前記フィルタリングされたフーリエ変換データから、前記フィルタリングされたフーリエ変換データにおいて周波数の前記サブレンジにおける残りの周波数の振幅よりも大きい振幅を有する周波数の前記サブレンジにわたる前記周波数として前記ピーク周波数を特定することと、
によって特定し、
周波数の前記サブレンジにわたって前記ピーク周波数の尺度に少なくとも基づいて異所性活動を検出し、
異所性活動を検出したことに応じて、心臓アブレーションのためのパルス波を発生するように構成された信号発生器に異所性活動の表示を送信するように構成される、
装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記信号発生器が前記パルス波を発生させることを停止するようにするべく、前記信号発生器に異所性活動の前記表示を送信するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記心臓信号データを
前記心臓信号データを増幅してフィルタリングすることと、
前記心臓信号データをデジタル化することと、
によって処理し、且つ
前記メモリに、処理された前記心臓信号データをバッファリングする
ように更に構成されており、
前記プロセッサは、バッファリングされた前記心臓信号データから前記スライディングウィンドウを抽出するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
波数出力のナイキスト周波数までの周波数の最大振幅に対する周波数の前記サブレンジにわたる前記ピーク周波数の前記振幅の比を計算することと、
前記比が閾値よりも大きいか否かを判定することと、
前記比が前記閾値よりも大きいと判定したことに基づいて前記異所性活動を検出することと、によって異所性活動を検出するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記閾値が、0.01~0.25である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記閾値が、0.01~02である、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記閾値が、0.01~0.15である、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、ユーザインターフェースに動作可能に接続されており、前記閾値は、前記ユーザインターフェースを介してユーザによって設定される、請求項4に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
本明細書の特定の例及び説明は、本質的に例示であり、実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で教示する題材に基づいて当業者によって開発され得る。
本開示に含まれる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
パルス波を発生させて、前記パルス波をペーシングパルスのセットと同期させてアブレーション装置に送達するように構成された第1の制御部と、
第2の制御部であって、
ペーシングパルスの前記セットを発生させて、心臓の心臓刺激のためのペーシング装置にペーシングパルスの前記セットを送達し、
前記心臓の心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データに基づいて前記心臓のペーシング捕捉を確認し、
前記心臓信号データに対応する周波数成分を解析することによって、前記心臓の異所性活動を監視し、
前記確認及び前記監視に基づいて、信号のセットを発生させて前記第1の制御部に送信するように構成された前記第2の制御部と
を備える、システム。
(付記2)
前記第2の制御部は、
ペーシングパルスの前記セットからの各ペーシングパルスの送達に続いて、前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、
前記スライディングウィンドウの周波数成分を取得するために前記スライディングウィンドウの離散フーリエ変換を実行することと、
前記スライディングウィンドウの前記周波数成分における周波数のサブレンジにわたってピーク周波数を特定することと、
前記ピーク周波数の解析に基づいて異所性活動があるか否かを判定することと
によって異所性活動を監視するように構成される、付記1に記載のシステム。
(付記3)
前記第2の制御部は、各スライディングウィンドウについて、
前記スライディングウィンドウの前記周波数成分のナイキスト周波数までの周波数の最大振幅に対する該スライディングウィンドウにおける前記ピーク周波数の振幅の比を計算することと、
前記比が閾値よりも大きいか否かを判定することと、
によって異所性活動があるか否かを判定するように構成される、付記2に記載のシステム。
(付記4)
前記第2の制御部は、
ペーシングパルスの前記セットからの連続するペーシングパルスのサブセットの送達に続いて、前記心臓信号データの部分を抽出することと、
各抽出部分について、前記抽出部分に対応する関数のモーメントのセットを計算することと、
各抽出部分について計算されたモーメントの前記セットに少なくとも基づいて、ペーシングパルスの前記セットのペーシング捕捉を確認することと、
によってペーシング捕捉を確認するように構成される、付記1に記載のシステム。
(付記5)
前記心臓信号データの各抽出部分は、連続するペーシングパルスの前記サブセットからのペーシングパルスの立ち上がりに続く所定の時間間隔内の心臓信号データを含む、付記4に記載のシステム。
(付記6)
前記心臓の心臓刺激のための電極の第1のセットと、前記心臓信号データを捕捉するための電極の第2のセットとを含む前記ペーシング装置を更に備える、付記1に記載のシステム。
(付記7)
前記パルス波を受信したことに応じて心臓組織をアブレーションするためにパルス電界を発生させるための電極のセットを含むアブレーション装置を更に備える、付記1に記載のシステム。
(付記8)
信号の前記セットは、ペーシング捕捉を示す信号を含み、
前記第2の制御部は、ペーシング捕捉を確認したことに応じてペーシング捕捉を示す前記信号を発生させて送信するように構成される、付記1に記載のシステム。
(付記9)
信号の前記セットは、異所性活動を示す信号を含み、
前記第2の制御部は、前記監視に基づいて異所性活動を検出したことに応じて異所性活動を示す前記信号を発生させて送信するように構成される、付記8に記載のシステム。
(付記10)
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと
を備える装置であって、前記プロセッサは、
心臓への連続するペーシングパルスのセットの送達に続いて、心臓信号データの部分を抽出し、
各抽出部分について、各抽出部分に対応する関数のモーメントのセットを計算し、
各抽出部分について計算されたモーメントの前記セットに少なくとも基づいて、前記心臓のペーシング捕捉を確認し、
ペーシング捕捉を確認したことに応じて、ペーシング捕捉を示す信号を発生して、心臓アブレーションのためにパルス波を発生させるように構成された信号発生器に送信して、前記信号発生器が、前記信号を受信したことに応じて前記パルス波を発生させるように作動されるように構成される、
装置。
(付記11)
前記心臓信号データの各抽出部分は、連続するペーシングパルスのサブセットからのペーシングパルスの立ち上がりに続く所定の時間間隔内の心臓信号データを含む、付記10に記載の装置。
(付記12)
前記所定の時間間隔は、約5ミリ秒~約50ミリ秒である、付記11に記載の装置。
(付記13)
前記プロセッサは、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて、前記抽出部分について計算された前記モーメントの値を平均することによって、該モーメントの平均値を計算することと、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて、前記モーメントの前記平均値と各抽出部分について計算された前記モーメントの前記値との間の正規化された差を計算することと、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて計算された前記正規化された差に基づいてペーシング捕捉を確認することと、によってペーシング捕捉を確認するように構成される、付記10に記載の装置。
(付記14)
前記プロセッサは、
モーメントの前記セットのそれぞれの平均値を計算することと、
モーメントの前記セットのそれぞれの前記平均値と、前記抽出部分について計算された前記モーメントの値との間の正規化された差を計算することと、
各正規化された差がそれぞれの所定の閾値未満であるときを判定することと、によってペーシング捕捉を確認するように構成される、付記10に記載の装置。
(付記15)
前記プロセッサは、
前記心臓の異所性活動を検出するために前記心臓信号データの局所的なピーク周波数を解析し、且つ
異所性活動を検出したことに応じて、異所性活動を示す信号を発生させて前記信号発生器に送信して、前記信号発生器が、異所性活動を示す前記信号を受信したことに応じて、前記パルス波を発生させることを停止するように更に構成される、付記10に記載の装置。
(付記16)
前記プロセッサは、
前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、
抽出された前記スライディングウィンドウの離散フーリエ変換を実行して、抽出された前記スライディングウィンドウのフィルタリングされた周波数出力を生成するために、結果として得られた離散フーリエ変換にフィルタリングを施すことと、
フィルタリングされた前記周波数出力における前記局所的なピーク周波数を特定することと、
フィルタリングされた前記周波数出力における前記ピーク周波数の値に少なくとも基づいて、異所性活動を検出することと、
によって異所性活動を検出するために前記心臓信号データの前記局所的なピーク周波数を解析するように構成される、付記15に記載の装置。
(付記17)
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと、
を備える装置であって、前記プロセッサは、
心臓の心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出し、
周波数の範囲にわたって前記心臓信号データの周波数成分を取得するために前記スライディングウィンドウの変換を実行し、
前記周波数の範囲のサブレンジにわたるピーク周波数であって、周波数の前記サブレンジにおける残りの周波数の値よりも大きい値を有する前記ピーク周波数を特定し、
前記周波数の範囲にわたる最大値に対する前記ピーク周波数の前記値の相対的な尺度と所定の値との間の比較に基づいて、前記心臓の異所性活動を検出し、
異所性活動を検出したことに応じて、異所性活動を示す信号を発生させて、心臓アブレーションのためにパルス波を発生させるように構成された信号発生器に送信して、前記信号発生器が、前記信号を受信したことに応じて前記パルス波の発生を中断するように構成される、
装置。
(付記18)
前記変換は離散フーリエ変換である、付記17に記載の装置。
(付記19)
前記プロセッサは、
前記最大値に対する前記ピーク周波数の値の比を計算することと、
前記比が前記所定の値よりも大きいと判定することと、
によって異所性活動を検出するように構成される、付記17に記載の装置。
(付記20)
前記所定の値は、約0.01~約0.25である、付記19に記載の装置。
(付記21)
前記所定の値は、約0.01~約0.15である、付記19に記載の装置。
(付記22)
前記プロセッサは、ユーザインターフェースに動作可能に接続されており、前記所定の値は、前記ユーザインターフェースを介してユーザによって設定される、付記17に記載の装置。
(付記23)
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと、
を備える装置であって、前記プロセッサは、
電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出し、
前記抽出されたスライディングウィンドウからのデータを処理し、
前記抽出されたスライディングウィンドウからの前記処理されたデータに関連する周波数のサブレンジにわたるピーク周波数を、
前記抽出されたスライディングウィンドウからの前記処理されたデータの離散フーリエ変換を実行することと、
フィルタリングされたフーリエ変換データを生成するために、前記処理されたデータの前記離散フーリエ変換をフィルタリングすることと、
前記フィルタリングされたフーリエ変換データから、前記フィルタリングされたフーリエ変換データにおいて周波数の前記サブレンジにおける残りの周波数の振幅よりも大きい振幅を有する周波数の前記サブレンジにわたる前記周波数として前記ピーク周波数を特定することと、
によって特定し、
周波数の前記サブレンジにわたって前記ピーク周波数の尺度に少なくとも基づいて異所性活動を検出し、
異所性活動を検出したことに応じて、心臓アブレーションのためのパルス波を発生するように構成された信号発生器に異所性活動の表示を送信するように構成される、
装置。
(付記24)
前記プロセッサは、前記信号発生器が前記パルス波を発生させることを停止するようにするべく、前記信号発生器に異所性活動の前記表示を送信するように構成される、付記23に記載の装置。
(付記25)
前記プロセッサは、前記心臓信号データを
前記心臓信号データを増幅してフィルタリングすることと、
前記心臓信号データをデジタル化することと、
によって処理し、且つ
前記メモリに、処理された前記心臓信号データをバッファリングする
ように更に構成されており、
前記プロセッサは、バッファリングされた前記心臓信号データから前記スライディングウィンドウを抽出するように構成される、付記23に記載の装置。
(付記26)
前記プロセッサは、
前記周波数出力のナイキスト周波数までの周波数の最大振幅に対する周波数の前記サブレンジにわたる前記ピーク周波数の前記振幅の比を計算することと、
前記比が閾値よりも大きいか否かを判定することと、
前記比が前記閾値よりも大きいと判定したことに基づいて前記異所性活動を検出することと、
によって異所性活動を検出するように構成される、付記23に記載の装置。
(付記27)
前記閾値が、約0.01~約0.25である、付記26に記載の装置。
(付記28)
前記閾値が、約0.01~約0.25である、付記26に記載の装置。
(付記29)
前記閾値が、約0.01~約0.15である、付記26に記載の装置。
(付記30)
前記プロセッサは、ユーザインターフェースに動作可能に接続されており、前記閾値は、前記ユーザインターフェースを介してユーザによって設定される、付記26に記載の装置。
(付記31)
メモリと、
前記メモリに動作可能に接続されたプロセッサと、
を備える装置であって、前記プロセッサは、
電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データを、
前記心臓信号データを増幅してフィルタリングすることと、
前記心臓信号データをデジタル化することと
によって処理し、
前記メモリに、処理された前記心臓信号データをバッファリングし、
心臓組織へのペーシングパルスのセットの送達の指示を受信し、
ペーシングパルスの前記セットからの連続するペーシングパルスのサブセットの送達に続いて、バッファリングされた前記心臓信号データから前記心臓信号データの部分を抽出し、前記心臓信号データの各抽出部分は、連続するペーシングパルスの前記サブセットからのペーシングパルスの立ち上がりに続く所定の時間間隔内の心臓信号データを含んでおり、
各抽出部分について、前記抽出部分に対応する関数のモーメントのセットを計算し、
各抽出部分について計算されたモーメントの前記セットに少なくとも基づいてペーシングパルスの、前記セットのペーシング捕捉を確認し、
ペーシング捕捉を確認したことに応じて、心臓アブレーションのためにパルス波を発生させるように構成された信号発生器にペーシング捕捉の指示を送信して、前記信号発生器が前記パルス波を発生するように作動させるように構成される、
装置。
(付記32)
前記所定の時間間隔は、約5ミリ秒~約50ミリ秒である、付記31に記載の装置。
(付記33)
前記プロセッサは、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて、前記抽出部分について計算された前記モーメントの値を平均することによって、該モーメントの平均値を計算することと、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて、前記モーメントの前記平均値と各抽出部分について計算された前記モーメントの前記値との間の正規化された差を計算することと、
モーメントの前記セットからの各モーメントについて計算された前記正規化された差に基づいてペーシング捕捉を確認することと、
によってペーシング捕捉を確認するように構成される、付記31に記載の装置。
(付記34)
前記プロセッサが、
モーメントの前記セットのそれぞれの平均値を計算することと、
モーメントの前記セットのそれぞれの前記平均値と、前記抽出部分について計算された前記モーメントの前記値との正規化された差を計算することと、
各正規化された差がそれぞれの所定の閾値未満であるときを判定することと
によってペーシング捕捉を確認するように構成される、付記31に記載の装置。
(付記35)
前記プロセッサが、
異所性活動を検出するために前記心臓信号データの局所的なピーク周波数を解析し、
異所性活動を検出したことに応じて、前記信号発生器に異所性活動の表示を送信して、前記信号発生器が前記パルス波を発生させることを停止されるように更に構成される、付記31に記載の装置。
(付記36)
前記プロセッサが、
前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、
抽出された前記スライディングウィンドウの離散フーリエ変換を実行し、且つ抽出された前記スライディングウィンドウのフィルタリングされた周波数出力を生成するために、結果として得られた離散フーリエ変換にフィルタリングを施すことと、
フィルタリングされた前記周波数出力における前記局所的なピーク周波数を特定することと、
フィルタリングされた前記周波数出力における前記ピーク周波数の振幅に少なくとも基づいて、異所性活動を検出することと
によって前記心臓信号データの前記局所的なピーク周波数を解析して異所性活動を検出するように構成される、付記35に記載の装置。
(付記37)
パルス波を発生させて、前記パルス波をペーシングパルスのセットと同期させてアブレーション装置に送達するように構成された第1の制御部と、
前記第1の制御部に動作可能に接続された第2の制御部であって、
ペーシングパルスの前記セットを発生させて、ペーシング装置にペーシングパルスの前記セットを送達し、
電極のセットによって捕捉された心臓信号データを受信し、
前記心臓信号データに基づいてペーシングパルスの前記セットのペーシング捕捉を確認し、
ペーシング捕捉を確認したことに応じて、前記パルス波の発生を作動させるために前記第1の制御部にペーシング捕捉の指示を送信するように構成された、前記第2の制御部と、
を備える、システム。
(付記38)
前記ペーシング装置が、心臓腔をペーシングするための一対の電極と、前記心臓信号データを捕捉するための前記電極のセットとを備える、付記37に記載のシステム。
(付記39)
前記第1の制御部がペーシングパルスの前記セットに同期させて前記パルス波を送信し得るように、前記第2の制御部が、前記第1の制御部にペーシングパルスの前記セットの指示を送信するように更に構成される、付記37に記載のシステム。
(付記40)
前記第2の制御部が、
ペーシングパルスの前記セットからの連続するペーシングパルスのサブセットの送達に続いて、前記心臓信号データの部分を抽出することと、
各抽出部分について、前記抽出部分に関連する関数のモーメントのセットを計算することと、
各抽出部分について計算されたモーメントの前記セットに少なくとも基づいて、ペーシングパルスの前記セットのペーシング捕捉を確認することと
によってペーシング捕捉を確認するように構成される、付記37に記載のシステム。
(付記41)
前記心臓信号データの各抽出部分が、連続するペーシングパルスの前記サブセットからのペーシングパルスの立ち上がりに続く所定の時間間隔内の心臓信号データを含む、付記40に記載のシステム。
(付記42)
前記第2の制御部が、
異所性活動について前記心臓信号データを監視し、
異所性活動が存在する場合、前記パルス波の発生を停止させるために前記第1の制御部に異所性活動の表示を送信するように更に構成される、付記37に記載のシステム。
(付記43)
前記第2の制御部が、
ペーシングパルスの前記セットからの各ペーシングパルスの送達に続いて、前記心臓信号データのスライディングウィンドウを抽出することと、
抽出された前記スライディングウィンドウの離散フーリエ変換を実行し、且つ抽出された前記スライディングウィンドウのフィルタリングされた周波数出力を生成するために、結果として得られた離散フーリエ変換にフィルタリングを施すことと、
フィルタリングされた前記周波数出力における周波数のサブレンジにわたるピーク周波数を解析することと、によって異所性活動について監視するように構成される、付記42に記載のシステム。
(付記44)
前記第2の制御部は、ユーザインターフェースに動作可能に接続されており、前記第2の制御部は、異所性活動が存在する場合、異所性活動が存在することを示すアラートを前記ユーザインターフェースに表示させるように更に構成されている、付記42に記載のシステム。