(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153843
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/08 20060101AFI20241022BHJP
B43K 7/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B43K24/08 110
B43K7/00 100
B43K24/08 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124818
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2022185170の分割
【原出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 義春
(72)【発明者】
【氏名】田村 誠
(57)【要約】
【課題】組立及び分解が容易な筆記具を提供する。
【解決手段】後軸20と、径方向において外方及び内方に弾性変形可能な弾性変形部37を側面に備えた内筒30と、回転子40と、を具備し、弾性変形部の外面に第1凸部38を有し、弾性変形部の内面に第2凸部39を有し、第1凸部38は、内筒が後軸の内部に挿入されると弾性変形部を径方向内方に変形させるように構成され、第2凸部39は、内筒が後軸の内部に挿入される前の状態において、回転子が内筒の内部に挿入されると弾性変形部を径方向外方に変形させ、変形した弾性変形部は回転子の挿入後に復元するように構成されている。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
リフィルの交換時等に筆記具を分解したとき、回転子が軸筒又は内筒から外れないように構成された筆記具が公知である(特許文献1)。すなわち、特許文献1に記載の筆記具では、内筒には、組立状態における回転子よりも前側の位置に、軸筒内に配置された際に内方に向かって、回転子の外径よりも内方まで突出する弾性変形部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、材料の再利用又は有効利用の観点等から、組立及び分解が容易な部品設計が求められている。筆記具は、特許文献1に記載の内筒及び回転子の関係のように、2つの筒状部材の係合関係から成ることが多く、その組立容易性及び分解容易性が重要である。
【0005】
具体的には、特許文献1に記載の筆記具を組み立てるとき、回転子は、後軸に対して取り付けられた内筒の弾性変形部が内方に変形して突出した状態で、内筒内に挿入される。回転子を所定の位置に配置するため、回転子は、内方へ突出した弾性変形部との摩擦抵抗に抗して弾性変形部を乗り越える必要がある。弾性変形部による摩擦抵抗を低減するため、内方への突出量を小さくすると、リフィルの交換の際に回転子が内筒から意図せず脱落する虞がある。他方、後軸に対して内筒を取り付ける前に回転子を内筒の中に挿入すると、弾性変形部は内側に変形していないことから、内筒と後軸に取り付けるときに重力によって回転子が内筒から脱落する虞がある。さらに、内筒は後軸に対して嵌合によって取り付けられていることから、筆記圧が特に強い使用者の場合に、リフィル及び回転子を介して内筒に対して力が伝達され、内筒が後軸から外れる虞もある。
【0006】
本発明は、組立及び分解が容易な筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、円筒状の第1筒状部材と、前記第1筒状部材の一方の端部から内部に挿入される円筒状の第2筒状部材であって、径方向において外方及び内方に弾性変形可能な弾性変形部を側面に備えた第2筒状部材と、前記第2筒状部材の一方の端部から内部に挿入される円筒状又は円柱状の内部部材と、を具備し、前記弾性変形部の外面又は前記第1筒状部材の内面に第1係合部を有し、前記弾性変形部の内面に第2係合部を有し、前記第1係合部は、前記第2筒状部材が前記第1筒状部材の内部に挿入されると前記弾性変形部を径方向内方に変形させるように構成され、前記第2係合部は、前記第2筒状部材が前記第1筒状部材の内部に挿入される前の状態において、前記内部部材が前記第2筒状部材の内部に挿入されると前記弾性変形部を径方向外方に変形させ、変形した前記弾性変形部は前記内部部材の挿入後に復元するように構成されていることを特徴とする筆記具が提供される。
【0008】
前記第1筒状部材が軸筒であり、前記第2筒状部材が前記軸筒の後端部から挿入される内筒であり、前記内部部材が前記内筒の前端部から挿入される回転子又は操作部材であってもよい。前軸をさらに具備し、前記第1筒状部材が後軸であり、前記第2筒状部材が前記後軸の後端部から挿入される内筒であり、前記前軸と前記内筒とが螺合しており、前記内部部材が前記内筒の前端部から挿入される回転子又は操作部材であってもよい。前記弾性変形部は、後方に向かって延びる片持ち梁形状であってもよい。前記第1係合部又は前記第2係合部が突起であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、組立及び分解が容易な筆記具を提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1のノック式筆記具の非筆記状態における側面図である。
【
図3】
図3は、
図1のノック式筆記具の筆記状態における縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のノック式筆記具の筆記状態からリフィルがさらに前進した状態の縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図1のノック式筆記具の前軸の部分断面図である。
【
図6】
図6は、
図1のノック式筆記具の後軸の縦断面図である。
【
図19】
図19は、第2のノック式筆記具の非筆記状態における縦断面図である。
【
図23】
図23は、第3のノック式筆記具の非筆記状態における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に亘り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
【0012】
図1は、第1のノック式筆記具1の非筆記状態における側面図であり、
図2は、
図1のノック式筆記具1の縦断面図であり、
図3は、
図1のノック式筆記具1の筆記状態における縦断面図である。なお、
図4は、
図1のノック式筆記具1の筆記状態からリフィル4がさらに前進した状態の縦断面図であり、後述する制動部材60について説明する図である。
【0013】
ノック式筆記具1は、前軸10と前軸10の後方に配置された後軸20と後軸20の後端部に嵌合する内筒30とを備えた軸筒2と、軸筒2の前端部に嵌合する口先部材3と、軸筒2内に配置され且つ一端に筆記部4aを備えた筆記体であるリフィル4と、を有している。以下の実施形態では、リフィル4はボールペンのリフィルである。本明細書では、ノック式筆記具1の軸線方向において、筆記部4a側を「前」側と規定し、筆記部4aとは反対側を「後」側と規定する。
【0014】
軸筒2の側面には、金属線材からなるクリップ部材5が取り付けられている。軸筒2内には、リフィル4を後方へ付勢する弾性部材であるスプリング6と、リフィル4の後方に配置された回転子40と、回転子40の後方に配置された操作部材50が配置されている。ノック式筆記具1は周知のノック機構を有している。スプリング6の付勢力に抗して操作部材50を前方に押圧するノック操作を行うことによって、リフィル4の筆記部4aが軸筒2の前端から突出した筆記状態(
図3)と筆記部4aが軸筒2内に没入した非筆記状態(
図1及び
図2)とが切り替えられる。
【0015】
リフィル4は、上述した筆記部4aと、インクを収容可能な管状のリフィル本体4bと、筆記部4a及び管状のリフィル本体4bを接続する継手部材4cと、を有している。リフィル4の前端部の外面には、制動部として、筒状部材である制動部材60が一体的に配置されている。
【0016】
図5は、
図1のノック式筆記具1の前軸10の部分断面図である。前軸10は、筒状部材である。前軸10の後端部の外面には、後軸20の前端部の内面に形成された雌ねじ部21と螺合する雄ねじ部11が形成されている。前軸10の前端部の内面には、軸線方向に亘って同一内径に形成された円筒面12が形成されている。円筒面12の後端部には、周方向に沿って等間隔に配置された複数の突起13が形成されている。口先部材3は、円筒面12及び複数の突起13と嵌合し、軸筒2、すなわち前軸10に対して取り付けられている。円筒面12の後方の前軸10の内面には、円筒面12よりも大径ではあるが前方に向かって徐々に内径が小さくなるテーパー面14が形成されている。テーパー面14の後方には、環状突起15が形成されている。
【0017】
図6は、
図1のノック式筆記具1の後軸20の縦断面図であり、
図7は、
図6の後軸20の正面図である。後軸20は、筒状部材である。後軸20の前端部の内面には、前軸10の雄ねじ部11と螺合する雌ねじ部21が形成されている。雌ねじ部21の後方には、径方向内方に向かって突出する2つの矩形の縮径部22が形成されている。縮径部22は、後軸20の内面から均一の高さで突出する突起である。2つの縮径部22は、後軸20の中心軸線を挟んで対向する位置に配置されている。縮径部22の後端部には傾斜面23が設けられている。後軸20の後端部には、後端開口から前方に向かって延びる矩形の切り欠き部24が形成されている。切り欠き部24の前方には、第1クリップ保持部25が形成されている。第1クリップ保持部25と2つの縮径部22の各々とは、中心軸線回りの回転方向において、90度だけずれた位置に配置されている。
【0018】
図8は、
図1のノック式筆記具1の内筒30の斜視図であり、
図9は、
図8の内筒30の縦断面図である。内筒30は、筒状部材である。内筒30の後端部の外面には、フランジ部31が形成されている。フランジ部31の前方には嵌合面32が形成されている。嵌合面32は、前方の外面よりも僅かばかり大径に形成されている。嵌合面32の外面には、フランジ部31の一部と接続する第2クリップ保持部33が形成されている。内筒30の後端部の内面には、前後方向に延在する複数の突起部からなる外カム34が形成されている。
【0019】
内筒30の前方の外面には、2つの矩形の凹部35が形成されている。凹部35は、内筒30の外面から均一の深さの凹部である。2つの凹部35は、内筒30の中心軸線を挟んで対向する位置に配置されている。第2クリップ保持部33と2つの凹部35の各々とは、中心軸線回りの回転方向において、90度だけずれた位置に配置されている。矩形の凹部35には、後方の縁に沿った貫通孔と貫通孔の両端部の各々から前方に延びる2つの貫通孔とからなる略U字状のU字孔36が形成されている。U字孔36によって、凹部35の内部には、弾性変形部37が画成されている。
【0020】
弾性変形部37は、凹部35内において後方に延びる片持ち梁状である。弾性変形部37の外面には、径方向外方に突出する第1凸部38が形成されている。弾性変形部37の内面には、径方向内方に突出する第2凸部39が形成されている。第1凸部38及び第2凸部39は、球面状の突起である。2つの第1凸部38の外接円は、後軸20の2つの縮径部22の内接円の径よりも僅かばかり大きくなるように形成されている。また、2つの第1凸部38の外接円は、内筒30の外径よりも僅かばかり小さくなるように形成されている。2つの第2凸部39の内接円は、回転子40の前端部の外径、具体的には回転子40のカム部材41の外径よりも僅かばかり小さく形成されている。
【0021】
図10は、
図1のノック式筆記具1の回転子40の斜視図であり、
図11は、
図10の回転子40の分解斜視図である。回転子40は、2つの別体の筒状部材である、カム部材41及び受容部材42を組み合わせてなる筒状部材である。
【0022】
カム部材41は、前軸10及び後軸20等と同じポリプロピレンやポリアセタール等の樹脂材料を射出成形等することによって作製される。カム部材41の外面には、前後方向に延在する複数の突起部からなる内カム43が周方向に沿って等間隔に設けられている。内カム43は、内筒30に形成された外カム34間に配置可能であり、外カム34と協働する。カム部材41の後端面には、操作部材50のカム面51(
図2)と協働するように構成されたカム受け面44が形成されている。カム部材41の外径は、内筒30の内径よりも僅かばかり小さくなるように形成されている。
【0023】
受容部材42は、金属製の板材を曲げ加工等して板金加工することによって作製される。具体的には、矩形の金属板材を用意し、ノック式筆記具1に配置されたとき後方側に位置する縁部を一方に90度だけ折り曲げ、後端縁部45を形成する。また、前方側に位置する縁部を他方に90度だけ折り曲げ、前端縁部46を形成する。次いで、金属板材を円筒状に曲げ、筒状の受容部材42を得る。受容部材42において、後端縁部45は径方向内方に略環状に突出し、前端縁部46は径方向外方に略環状に突出している。前端縁部46の外径は、カム部材41の外径よりも小さく形成されている。受容部材42の軸線方向長さは、カム部材41の軸線方向長さよりも長い。したがって、組み立てられた状態では、カム部材41の後端から受容部材42が後方に突出している。円筒状に折り曲げた後の周方向における両端面は、
図11に示されるように離間していてもよく、互いに当接するようにしてもよい。
【0024】
後端縁部45には、径方向内方にさらに突出する半円状の3つの係止部47が形成されている。3つの係止部47は、周方向に沿って等間隔に設けられている。前端縁部46には、後方に向かって延びる3つの切込部48が形成されている。3つの切込部48は、周方向に沿って等間隔に設けられている。切込部48が形成されていることによって、受容部材42の作製の際に金属板材を円筒状に折り曲げるとき、前端縁部46をスムーズに折り曲げることができる。受容部材42の外面には、凸状の保持突起49が形成されている。
【0025】
回転子40は、カム部材41の前端開口から受容部材42を挿入することによって組み立てられる。すなわち、カム部材41に挿入された受容部材42は、前端縁部46がカム部材41の前端面に当接するまで挿入される。折り曲げられた前端縁部46の後端面がカム部材41の前端面に当接することによって、受容部材42の後方への移動、すなわち抜けが防止される。カム部材41の内径は、受容部材42の外径と同一か又は僅かばかり大きく形成されている。カム部材41と受容部材42とは、受容部材42の保持突起49がカム部材41の内面に係止することによって固定される。受容部材42は、操作部材50の内部に受容されるように構成されている。受容部材42の外径は、操作部材50の内径よりも僅かばかり小さく形成されている。それによって、操作部材50は、受容部材42に対して、ひいては回転子40に対して、軸線方向に移動可能となっている。
【0026】
回転子40において、カム部材41は、従来のノック機構に用いられる回転子の機能を備えている。すなわち、非筆記状態のノック式筆記具1において、スプリング6の付勢力に抗して操作部材50を前方に押圧するノック操作を行うと、操作部材50と共に回転子40、ひいてはリフィル4が前進する。内筒30の外カム34間に配置された回転子40の内カム43が、軸線方向において外カム34を越えると、操作部材50のカム面51と回転子40のカム受け面44とが協働し、回転子40を中心軸線回りに回転させる。次いで、操作部材50に対する押圧を解除すると、スプリング6の付勢力によって回転子40が後退して、内カム43の後端面と外カム34の前端面とが係止し、ノック式筆記具1は筆記状態となる。この状態で再びノック操作を行うと、操作部材50と共に回転子40が前進し、内カム43と外カム34との係止が解除される。それによって、操作部材50のカム面51と回転子40のカム受け面44とが協働し、回転子40を中心軸線回りに回転させる。次いで、操作部材50に対する押圧を解除すると、スプリング6の付勢力によって回転子40がリフィル4と共に後退し、再び内カム43が外カム34間に配置されると共に、ノック式筆記具1は非筆記状態となる。
【0027】
受容部材42は、受容部材42の全長に亘り、内部にリフィル4を受容するように構成されている。それによって、ノック式筆記具1をより短く且つ細くすることができる。すなわち、一般にノック式筆記具は、リフィルが回転子と一体となって前後動することによって、ノック式筆記具が筆記状態又は非筆記状態となる。したがって、一体となった状態のリフィル及び回転子の全体の長さよりもノック式筆記具の全長を短くすることができない。そこで、ノック式筆記具1では、受容部材42、ひいては回転子40の全長に亘ってリフィル4を受容するように構成されていることによって、同一長さのリフィル4を有する他のノック式筆記具に比べて、全長をより短くすることができる。
【0028】
さらに、受容部材42は、金属板材から作製される。そのため、同様の筒状部材を樹脂から作製する場合に比べて、肉厚を薄く、すなわち径方向の長さを板厚にまで短くすることができる。詳細には、一般に回転子は、上述した回転子40におけるカム部材41に相当し且つ操作部材と協働するカム部と、受容部材42に相当し且つ操作部材に受容される受容部とが一体成型されている。カム部は、受容部よりも大径に形成されている。ノック式筆記具をより細くするため、後述する第3のノック式筆記具200のように、リフィルの後端部を回転子の内部に受容する代わりにリフィルの後端面が回転子の前端面に当接するようにすると、その分だけノック式筆記具の全長が長くなる。他方、ノック式筆記具の全長をより短くするため、リフィルの後端部を回転子の全長に亘りその内部に受容させるようにすると、受容部の部分の外径が大きくなる。そうすると、操作部材と協働するカム受け面を設けるためカム部の外径も大きくする必要があり、結果として、ノック式筆記具がより太くなってしまう。リフィルの後端部を回転子のカム部の部分の内部にのみ受容させるようにすると、ノック式筆記具を細くできる代わりに、受容部の長さ分だけノック式筆記具が長くなる。
【0029】
ノック式筆記具1では、回転子40をカム部材41及び受容部材42の2つの部品から構成し、受容部材42を金属板材とすることによって、製造コストを抑えつつノック式筆記具1をより短く且つ細くすることができる。
【0030】
前端縁部46は、カム部材41と係止して受容部材42の抜けを防止できる限りにおいて任意に構成してもよい。例えば、周方向において前端縁部46が形成されている割合を半分以下にしてもよく、この場合、切込部48が形成されていなくてもよい。また、前端縁部46に代えて、後端縁部45に設けられた係止部47のように、径方向外方に突出する半円状又は矩形状等の1つ又は複数の係止部が形成されていてもよい。
【0031】
受容部材42に挿入されたリフィル4は、径方向内方に折り曲げられた後端縁部45によって、後方への移動、すなわち抜けが防止される。なお、後端縁部45の径方向の長さ、言い換えると折り曲げられた部分の長さは、短い方が円筒状に曲げ易い一方で、短すぎると、例えば細いリフィルを受容部材42に挿入しようとした場合に、後方へ抜けてしまう場合がある。受容部材42では、係止部47が設けられていることによって、後端縁部45と係止しないようなより細いリフィル4と係止して抜けを防止しつつ、加工性を向上することができる。受容部材42は、リフィル4の後方への抜けが防止できる限りにおいて、後端縁部45を有する代わりに、径方向内方に突出する少なくとも1つの係止部47を有するようにしてもよい。係止部47は、2つ以上設けられていることが好ましく、2つ以上の係止部47は、周方向に沿って等間隔に配置されていることが好ましい。係止部47は、半円状でなくてもよく、矩形状であってもよい。
【0032】
図12は、
図1のノック式筆記具1の制動部材60の斜視図であり、
図13は、
図12の制動部材60の縦断面図である。制動部材60は、筒状部材である。制動部材60は、
図12及び
図13において、下方がノック式筆記具1の前側で且つ上方がノック式筆記具1の後側となるように、リフィル4に対して取り付けられる。
【0033】
制動部材60の後端部の外面には、周方向に沿って等間隔に配置された4つの突起61が形成されている。制動部材60の前半分の外面には、前方に向かって徐々に内径が僅かばかり小さくなるテーパー部62が形成されている。制動部材60の前端面の周縁近傍には、前方に向かって突出し、周方向に沿って等間隔に配置された4つの制動突起63が形成されている。制動部材60の軸線方向に直交する断面、すなわち横断面について、制動突起63の各々の横断面は、制動部材60の中心軸線を中心とする円弧状である。4つの制動突起63の後端における外接円の径は、テーパー部62の前端における外径よりも僅かばかり小さい。
【0034】
制動突起63の各々の外面、すなわち径方向外方に面する面には、4つの制動突起63の外接円の径が前方に向かって徐々に小さくなるような制動テーパー面64が形成されている。制動テーパー面64は、軸筒2側に設けられたテーパー面14の一部と相補的に形成されている。他方、制動突起63の各々の内面において、すなわち径方向内方に面する面において、4つの制動突起63の内接円の径は同一となるように形成されている。したがって、制動突起63の各々は、前方に向かって徐々に肉薄となるように形成されている。制動突起63は、片持ち梁状であることから、径方向の力に対して径方向内方及び径方向外方の可撓性を有している。特に、制動突起63は、前方に向かって徐々に肉薄となっていることから、制動突起63の前方の部分の方が後方の部分よりも可撓性を有している。
【0035】
制動部材60の前端面には、リフィル4が挿通される貫通孔65が形成されている。制動部材60の前端面における貫通孔65の周囲には、前方に突出する筒状突起66が形成されている。制動部材60の前端面に対し、筒状突起66の突出量は、制動突起63の突出量よりも少なく、約半分である。貫通孔65の周囲には、貫通孔65及び筒状突起66によって画成された環状のスプリング支持面67が形成されている。筒状突起66の内面には、周方向に沿って等間隔に配置された3つのスプリング保持突起68が形成されている。制動部材60の前端部の内面には、環状の当接面69が形成されている。
【0036】
ノック式筆記具1の組み立てについて、主に
図2、さらには
図14を参照しながら、以下説明する。
図14は、
図3のノック式筆記具1の弾性変形部37近傍の拡大図である。
【0037】
まず、受容部材42が操作部材50に受容された状態の一体的な回転子40及び操作部材50を、例えば前端開口を鉛直上方に向けた状態の内筒30の前端開口から内部に押圧しながら挿入する。このとき、上述したように、内筒30の2つの第2凸部39の内接円は、回転子40のカム部材41の外径よりも僅かばかり小さく形成されている。一方で、第2凸部39が設けられた弾性変形部37は、後方に延びる片持ち梁状であることから、径方向内方及び径方向外方に弾性変形可能である。したがって、回転子40及び操作部材50は、第2凸部39を押圧して弾性変形部37を径方向外方に変形させながら、内筒30の奥まで挿入される。変形した弾性変形部37は、回転子40及び操作部材50が第2凸部39を通過した瞬間、元の状態に復元する。なお、最初に操作部材50を内筒30の内部に挿入し、次いで回転子40を内筒30の内部に押圧しながら挿入してもよい。
【0038】
この状態で、内筒30の前端開口を鉛直下方に向けると、重力によって回転子40及び操作部材50が下方に移動する。回転子40及び操作部材50の移動は、回転子40が第2凸部39と係止することによって停止する。このとき、回転子40及び操作部材50の自重によって第2凸部39が押圧されるが、弾性変形部37は径方向外方に変形することはない。言い換えると、回転子40及び操作部材50の自重に起因する径方向外方の力によって弾性変形部37が変形しないように弾性変形部37の剛性が設定される。弾性変形部37の剛性は、弾性変形部37の肉厚及び形状又は寸法を調整することによって適宜に設定される。
【0039】
したがって、内筒30の前端開口を鉛直下方に向けたとしても、回転子40及び操作部材50が内筒30から脱落することはない。要するに、内筒30が弾性変形部37及び第2凸部39を有することによって、例えば内筒30に対して回転子40及び操作部材50を組み付けた状態で、次の組立工程に移る前に誤って内筒30の前端開口を鉛直下方に向けたとしても、回転子40及び操作部材50が脱落してしまうことを防止することができる。他方、組立作業のときには、組立装置又は作業者によって回転子40及び操作部材50が押圧されることから、弾性変形部37を変形させ、内筒30の奥まで回転子40及び操作部材50を容易に挿入することができる。
【0040】
次いで、回転子40及び操作部材50が組み付けられた状態の内筒30を、後軸20の後端開口から内部に押圧しながら挿入する。内筒30の前端部の外径は、後軸20の縮径部22の内接円の径よりも僅かばかり大きい。しかしながら、後軸20の縮径部22の後端部には傾斜面23が形成されているため、内筒30の前端縁が縮径部22を乗り越えて内筒30を奥まで挿入することができる。後軸20に対する内筒30の挿入は、後軸20の第1クリップ保持部25と内筒30の第2クリップ保持部33とが、軸線方向において整列するようにして行われる。それによって、内筒30の第2クリップ保持部33が切り欠き部24内に受容され、且つ、第2クリップ保持部33が第1クリップ保持部25と嵌合する。このとき、内筒30のフランジ部31の前端面は、後軸20の後端面に当接すると共に、嵌合面32が後軸20の後端部の内面に嵌合する。こうして、後軸20に対する内筒30の嵌合が完了する。なお、クリップ部材5は、第1クリップ保持部25及び第2クリップ保持部33によって軸筒2に対して取り付けられる。
【0041】
図14を参照すると、後軸20に内筒30が取り付けられた状態では、内筒30の凹部35内に後軸20の縮径部22が収容されている。それによって、内筒30に対して後軸20から引き抜くような力が作用したとしても、後軸20の縮径部22の前端縁が内筒30の凹部35の前方の段部と係止し、内筒30が後軸20から外れることが防止される。さらに、弾性変形部37の第1凸部38が後軸20の縮径部22に当接し、弾性変形部37を、径方向内方に湾曲するように弾性変形させている。その結果、弾性変形部37の内面の後端縁37aは、回転子40のカム部材41の円筒状の外面よりも径方向内方まで突出する。
【0042】
この状態で、後軸20の前端開口を鉛直下方に向けると、重力によって回転子40及び操作部材50が下方に移動する。回転子40及び操作部材50の移動は、回転子40の前端縁又は前端面が弾性変形部37の後端縁37a又は後端面と係止することによって停止する。したがって、リフィルの交換等の際に、後軸20の前端開口を鉛直下方に向けたとしても回転子40が後軸20及び内筒30から意図せず脱落することはない。また、後軸20に取り付ける前の内筒30に比べて、弾性変形部37がさらに径方向内方に弾性変形していることによって、より確実に回転子40及び操作部材50の脱落を防止することができる。
【0043】
なお、後軸20に対して内筒30を取り付けた後に、回転子40及び操作部材50を後軸20及び内筒30の内部に挿入してもよい。すなわち、弾性変形部37は、凹部35内において後方に延びる片持ち梁状であることから、径方向内方に湾曲していたとしても、弾性変形を伴いながら、回転子40及び操作部材50を湾曲に沿って挿入することができる。
【0044】
組立作業として、制動部材60の後端開口からリフィル4が挿入される。リフィル4の継手部材4cの前端面を制動部材60の内部の当接面69に対して当接させ、リフィル4の外面及び制動部材60の内面で以て互いに嵌合する。次いで、スプリング6を、口先部材3が嵌合した前軸10の後端開口から内部に挿入する。次いで、制動部材60が取り付けられたリフィル4を、前軸10の後端開口から内部に挿入し、リフィル4の前端部、すなわち筆記部4aをスプリング6の内部に配置する。制動部材60は、リフィル4の前軸10への挿入時のガイドとしての役割も果たす。
【0045】
スプリング6の前端部は、口先部材3の内部の段差に配置され、スプリング6の後端部は、スプリング支持面67に配置される。そのため、組立状態において、スプリング6の付勢力は、制動部材60、さらにはリフィル4を介して回転子40に伝達される。スプリング6の径方向の移動は、スプリング保持突起68によって規制されている。次いで、前軸10に対して内筒30が取り付けられた後軸20を螺合することによってノック式筆記具1の組立が完了する。制動部材60は、軸筒2内においてリフィル4と一体的に移動するように配置されていればよい。したがって、上述したように互いに一体的に嵌合する以外に、制動部材60がリフィル4に対して緩く挿入された状態で、スプリング6の付勢力によって、リフィル4の継手部材4cの前端面と制動部材60の内部の当接面69とが常に当接するようにしてもよい。
【0046】
ノック式筆記具1によれば、組立及び分解が容易な筆記具を提供することができる。具体的には、内筒30単体に対して回転子40及び操作部材50を挿入するが、上述したように、回転子40及び操作部材50の挿入後に内筒30を逆さにしたとしても、回転子40及び操作部材50が脱落することがない。したがって、内筒30の姿勢を気にすることなく、内筒30を後軸20に対して取り付けることができる。他方、内筒30に挿入する回転子40等を間違えてしまった場合、例えば部品の色を間違えてしまった場合には、内筒30の後方から操作部材50を前方に押圧する。それによって、組立時と同様に、回転子40及び操作部材50は、第2凸部39を押圧して弾性変形部37を径方向外方に変形させ、第2凸部39を通過することができ、回転子40及び操作部材50を内筒30の前端開口から取り出すことができる。したがって、ノック式筆記具1は、組立が容易でありながら、容易に分解できる。また、分解された部品を用いて再組立を容易に行うことができる。
【0047】
なお、上述した弾性変形部37の脱落防止の機能について、第1筒状部材である後軸20、第2筒状部材である内筒30及び内部部材である回転子40の関係のみならず、その他の2つの筒状部材及び内部部材においても同様に適用可能である。例えば、第1筒状部材が前軸であり、第2筒状部材が後軸であり、内部部材が操作部材であってもよい。この場合、後軸に弾性変形部が形成される。また、ノック式筆記具以外にも、キャップ式筆記具等の一般的な筆記具に対しても適用可能である。
【0048】
弾性変形部37は、後方に延びる片持ち梁状であるが、前方に延びる片持ち梁状であってもよく、周方向に延びる片持ち梁状であってもよい。その他、弾性変形部は、径方向に弾性変形する限りにおいて任意に構成してもよい。第1係止部である第1凸部38及び第2係止部である第2凸部39は、球面状の突起であるが、後軸20及び回転子40と協働して弾性変形部37を弾性変形させる限りにおいて、その他の形状の突起であってもよい。要するに、第1係止部は、弾性変形部を径方向内方に弾性変形させ、第2係止部は、弾性変形部を径方向外方に弾性変形させる限りにおいて、任意に構成してもよい。したがって、例えば、第1係止部は、後軸側に設けられていてもよい。具体的には、縮径部22の方にのみ凸部を設けてもよく、縮径部22を径方向内方により突出するようにしてもよい。縮径部22も同様に、弾性変形部を径方向内方に弾性変形させる限りにおいて、任意に構成してもよい。後述する第2のノック式筆記具100のように、縮径部を省略し、第1凸部をより突出させるようにしてもよい。縮径部22及び第1凸部38を併せて第1係止部としてもよい。
【0049】
要するに、筆記具が、円筒状の第1筒状部材と、第1筒状部材の一方の端部から内部に挿入される円筒状の第2筒状部材であって、径方向において外方及び内方に弾性変形可能な弾性変形部を側面に備えた第2筒状部材と、第2筒状部材の一方の端部から内部に挿入される円筒状又は円柱状の内部部材と、を具備し、弾性変形部の外面又は第1筒状部材の内面に第1係合部を有し、弾性変形部の内面に第2係合部を有し、第1係合部は、第2筒状部材が第1筒状部材の内部に挿入されると弾性変形部を径方向内方に変形させるように構成され、第2係合部は、第2筒状部材が第1筒状部材の内部に挿入される前の状態において、内部部材が第2筒状部材の内部に挿入されると弾性変形部を径方向外方に変形させ、変形した弾性変形部は内部部材の挿入後に復元するように構成されている限りにおいて、任意に構成してもよい。
【0050】
次に、
図15及び
図16を参照しながら、制動部材60の機能について説明する。
図15は、
図3のノック式筆記具1の前端部の拡大図であり、
図16は、
図4のノック式筆記具1の前端部の拡大図である。
【0051】
非筆記状態又は筆記状態において、リフィルの前進時にリフィルに衝撃が加わる場合がある。リフィルの前進時の衝撃は、例えば、ノック式筆記具を誤って落下させてしまい、ノック式筆記具が床面等に対して垂直に後端部から衝突したとき等に発生する。このとき、リフィルは勢いよく前方へ移動して通常のノック操作による前進位置を越えた結果、軸筒の内面に衝突し、リフィルが損傷する虞がある。
【0052】
図15に示された筆記状態のノック式筆記具1では、制動部材60、具体的には制動突起63は弾性変形していない。制動突起63、特に制動テーパー面64は、軸筒2の内面、すなわち前軸10の内面と離間している。制動部材60は、スプリング6の付勢力によってリフィル4の継手部材4cに対して押圧されている。また、制動部材60の後端部の外面に形成された4つの突起61のうちの少なくとも1つが、前軸10の内面と当接することによって、リフィル4の中心軸線と軸筒2の中心軸線とが一致するようにリフィル4が位置合わせされている。
【0053】
図15に示された状態のノック式筆記具1は、リフィル4が勢いよく前方へ移動すると、
図16に示された状態となる。すなわち、制動部材60の前進に伴い、制動突起63の制動テーパー面64が前軸10のテーパー面14に摺接し、制動突起63はテーパー面14から径方向内方の力を受けて弾性変形する。制動テーパー面64とテーパー面14との摺接による摩擦抵抗及び制動突起63の弾性変形によって、リフィル4及び制動部材60の運動エネルギーが減少し、最終的にリフィル4が受ける衝撃が緩和される。要するに、制動部材60の制動突起63及びテーパー面14が互いに協働し、リフィル4の損傷が防止される。
【0054】
以上より、ノック式筆記具1では、簡便な機構によって、リフィル4の前進時に加わる衝撃を緩和することができる。なお、衝撃緩和のため弾性変形した制動部材60が前軸10の内面に対して係止した場合、筆記部4aを筆記面に押し当てることによって、元の筆記状態に戻すことができる。また、制動部材60が自動的に元の筆記状態に戻るように、スプリング6のばね定数を設定してもよい。
【0055】
一般に軸筒の前端部の内面にはテーパー面が形成されていることが多いことから、制動部材60を既存のノック式筆記具のリフィルに取り付け可能に構成してもよい。リフィル4と制動部材60とを一体的に形成して制動部としてもよい。
【0056】
ところで、ノック式筆記具の筆記状態においてノック操作を行うと、スプリングの付勢力によってリフィルは勢いよく後方へ移動する。すなわち、筆記状態から非筆記状態への切り替えの際に、リフィルに衝撃が加わる虞がある。
【0057】
ノック式筆記具1では、こうしたリフィル4の後退時に、制動部材60の突起61と軸筒2、具体的には前軸10の環状突起15とが当接し、制動部材60の突起61が軸筒2の環状突起15上を摺動しながら乗り越えるように後方へ移動する。軸筒2の環状突起15に対する制動部材60の突起61の摺動による摩擦抵抗によって、リフィル4及び制動部材60の運動エネルギーが減少して、最終的にリフィル4の後退時にリフィル4に加わる衝撃が緩和される。スプリング6のばね特性及び配置は、上述した摩擦力に抗してリフィル4を付勢し、ノック式筆記具1を筆記状態から非筆記状態に切り替え可能となるように選定される。
【0058】
以上より、ノック式筆記具1では、リフィル4の前進時及びリフィル4の後退時の両方の場合において、リフィル4に加わる衝撃を緩和することができる。なお、制動部材60の突起61を省略し、リフィル4の後退時にリフィル4に加わる衝撃のみを緩和するようにしてもよい。
【0059】
図17は、別の制動部材160の斜視図である。
図1のノック式筆記具1の制動部材60は、4つの制動突起63を有しているが、
図17に示された制動部材160は、3つの制動突起163を有している点においてのみ、制動部材60と異なる。制動突起の数を減らすことによって、制動突起63の制動テーパー面64と比較して、制動テーパー面164の面積が減少する。したがって、制動部材160は、上述した制動部材60と比較して、制動テーパー面164とテーパー面14との摺接による摩擦抵抗及び制動突起163の弾性変形によるリフィル4及び制動部材160の運動エネルギーの減少は小さい。したがって、制動部材160は、制動部材60を用いた場合よりも運動エネルギーを減少させる必要がない場合、例えばリフィル4がより軽い場合やスプリング6のばね定数がより小さい場合等に用いられる。
【0060】
図18は、さらに別の制動部材260の斜視図である。
図18に示された制動部材260は、3つの制動突起263を有しているが、制動突起263の幅がより広く、すなわち周方向長さがより長い点においてのみ、
図17に示された制動部材160と異なる。制動突起の幅をより広くすることによって、制動突起63の制動テーパー面64と比較して、制動テーパー面264の面積が増加する。また、制動突起263は、制動突起63と比較して、径方向内方への弾性変形に対する剛性が高くなる。したがって、制動部材260は、上述した制動部材60と比較して、制動テーパー面264とテーパー面14との摺接による摩擦抵抗及び制動突起263の弾性変形によるリフィル4及び制動部材260の運動エネルギーの減少は大きい。したがって、制動部材260は、制動部材60を用いた場合よりも運動エネルギーを減少させる必要がある場合、例えばリフィル4がより重い場合やスプリング6のばね定数がより大きい場合等に用いられる。
【0061】
制動突起の数、幅及び形状等、制動テーパー面及び対向する前軸10のテーパー面の各々の角度、軸線方向の長さ等を調整することによって、リフィル4及び制動部材の重量、スプリング6のばね定数等に応じた適切な所望の摩擦抵抗、弾性変形に調整することができ、所望の衝撃緩和の性能とすることができる。例えば、制動部材の制動突起の数は、2つ以上であってもよい。2つ以上の制動突起は、周方向に沿って等間隔に配置されていることが好ましい。制動部材の突起の数は、1つ、具体的には環状に一体となった突起であってもよい。要するに、制動部材又は制動部は、リフィル、すなわち筆記体の外面に、筆記体の前進時に、軸筒のテーパー面と協働して筆記体の制動を行うように構成されている限り、任意に構成してもよい。
【0062】
図19は、第2のノック式筆記具100の非筆記状態における縦断面図である。第2のノック式筆記具100は、第1のノック式筆記具1と比較して、前軸110、後軸120及び内筒130の形状のみ異なり、その他の部材は第1のノック式筆記具1の部材と同一である。前軸110は、第1のノック式筆記具1の前軸10と比較して、雄ねじ部に代えて、後端部の内面に形成された雌ねじ部を有している点において異なる。
【0063】
図20は、
図19のノック式筆記具100の後軸120の縦断面図である。後軸120は、第1のノック式筆記具1の後軸20と比較して、雌ねじ部及び縮径部を有していない点において異なる。また、切り欠き部24の軸線方向に延び且つ対向する2つの内面には、対応する位置に2つの嵌合凹部126が形成されている。さらに、後軸120の全長は、第1のノック式筆記具1の後軸20と比較してより短く形成されている。
【0064】
図21は、
図19のノック式筆記具100の内筒130の斜視図であり、
図22は、
図21の内筒130の縦断面図である。内筒130は、第1のノック式筆記具1の内筒30と比較して、フランジ部31及び第2クリップ保持部33を接続する部分に、周方向において互いに反対方向に延びる2つの嵌合凸部131aが形成されている。また、第1凸部138は、第1のノック式筆記具1の第1凸部38よりも径方向外方に突出している。具体的には、2つの第1凸部138の外接円は、後軸120の内径よりも僅かばかり大きくなるように形成されている。さらに、弾性変形部137よりも前方の部分は、第1のノック式筆記具1の内筒30よりも長く形成され、その外面には雄ねじ部111が形成されている。
【0065】
第2のノック式筆記具100の組み立ては、基本的に、第1のノック式筆記具1の組み立てと同様である。すなわち、回転子40及び操作部材50を、内筒130の前端開口から内部に押圧しながら挿入する。回転子40及び操作部材50が弾性変形部137を越えて挿入されると、回転子40及び操作部材50は、回転子40が第2凸部39と係止することによって、自重によって脱落することはない。
【0066】
回転子40及び操作部材50が組み付けられた状態の内筒130を、後軸120の後端開口から内部に押圧しながら挿入する。それによって、第2クリップ保持部33が第1クリップ保持部25と嵌合し、嵌合面32が後軸20の後端部の内面に嵌合し、さらに、後軸120の2つの嵌合凹部126に対して、対応する内筒130の嵌合凸部131aが嵌合する。その結果、後軸120と内筒130とが嵌合する。
【0067】
後軸120に内筒130が取り付けられた状態では、弾性変形部137の第1凸部138が後軸120の内面に当接し、弾性変形部137を、径方向内方に湾曲するように弾性変形させている。それによって、第1のノック式筆記具1と同様に、弾性変形部137の内面の後端縁は、回転子40のカム部材41の円筒状の外面よりも径方向内方まで突出する。その結果、回転子40及び操作部材50の移動は、回転子40の前端縁又は前端面が弾性変形部137の後端縁又は後端面と係止することによって停止する。したがって、リフィルの交換等の際に、後軸120の前端開口を鉛直下方に向けたとしても回転子40が後軸120及び内筒130から意図せず脱落することはない。
【0068】
次いで、リフィル4及びスプリング6を内部に収容するように、前軸110に対して、後軸120が取り付けられた内筒130を螺合することによってノック式筆記具100の組立が完了する。すなわち、第1のノック式筆記具1では、前軸10に対して後軸20を螺合させるのに対し、第2のノック式筆記具100では、前軸110に対して内筒130を螺合させる。それによって、後軸120又は内筒130が前軸110から外れてしまうことが防止される。
【0069】
具体的には、第1のノック式筆記具1では、内筒30は、後軸20に対して、後軸20の後端部の内面と内筒30の嵌合面32との摩擦による嵌合で連結している。そのため、筆記圧が特に強い使用者の場合に、リフィル4及び回転子40を介して内筒30の外カム34に対して力が伝達され、内筒30が後軸20から外れる虞もある。他方、第2のノック式筆記具100では、同様に外カム34が形成された内筒130は、前軸110に対して螺合によって連結しているため、筆記圧が特に強い使用者の場合であっても、内筒130が前軸110から外れることがない。要するに、第2のノック式筆記具100によれば、筆記時の内筒130の抜けを防止することができる。なお、後軸120は、内筒130にのみ緩く嵌合していることから後軸120も外れることがない。
【0070】
前軸110と嵌合する内筒130を、後軸と称してもよい。この場合、後軸120は、弾性変形部137を径方向内方に弾性変形させる筒状部材であり、その外面とクリップ部材5との間に物品を挟持するためのスペーサでもある。
【0071】
図23は、第3のノック式筆記具200の非筆記状態における縦断面図である。第3のノック式筆記具200の各部材は、第1のノック式筆記具1及び第2のノック式筆記具100の各部材とは異なる。ただし、第3のノック式筆記具200は、前軸210と内筒230とが螺合によって連結することによって、筆記時の内筒230の抜けを防止する機構を有している点において、第2のノック式筆記具100と共通する。しかしながら、第3のノック式筆記具200の後軸220及び内筒230の連結の態様は、第2のノック式筆記具100の後軸120及び内筒130の連結の態様と異なる。
【0072】
ノック式筆記具200は、前軸210と後軸220と内筒230とを備えた軸筒202と、スプリング6によって後方へ付勢されたリフィル4とを有しており、制動部材は有していない。軸筒202の側面には、後軸220と一体的に形成されたクリップ部205を有している。リフィル4の後端面には、回転子240の前端面が当接している。回転子240の後方には操作部材250が配置されている。操作部材250は、カム面251を有し、回転子240は、操作部材250のカム面251と協働するように構成されたカム受け面244を有している。後軸220の内面には、周方向に沿って環状の第1嵌合突起227が形成されている。
【0073】
図24は、
図23のノック式筆記具200の内筒230の斜視図であり、
図25は、
図24の内筒230の縦断面図である。内筒230の後端部の外面には、フランジ部231が形成されている。フランジ部31の前方にはクリップ部205が形成されている。内筒230の後端部の内面には、前後方向に延在する複数の突起部からなる外カム234が形成されている。
【0074】
内筒230の外面には、第1のノック式筆記具1のU字孔36と同様に、2つの略U字状のU字孔236が形成されている。2つのU字孔236によって、2つの弾性変形部237が画成されている。なお、内筒230には、第1のノック式筆記具1の内筒30に形成されていた凹部35は形成されていない。弾性変形部237は、後方に延びる片持ち梁状である。弾性変形部237の外面には、径方向外方に突出する第1凸部238が形成されている。弾性変形部237の内面には、径方向内方に突出する第2凸部239が形成されている。第1凸部238及び第2凸部239は、球面状の突起である。
【0075】
第1凸部238は、第1のノック式筆記具1の第1凸部38よりも径方向外方に突出している。具体的には、2つの第1凸部238の外接円は、後軸220の内径よりも僅かばかり大きくなるように形成されている。2つの第2凸部239の内接円は、回転子240の前端部の外径よりも僅かばかり小さく形成されている。弾性変形部237よりも前方の部分には、前軸210の後端部の内面に形成された雌ねじ部と螺合する雄ねじ部111が形成されている。雄ねじ部11の後方には、第1嵌合突起227に対応する環状の第2嵌合突起230aが形成されている。
【0076】
第3のノック式筆記具200の組み立ては、基本的に、第2のノック式筆記具100の組み立てと同様である。すなわち、回転子240及び操作部材250を、内筒230の前端開口から内部に押圧しながら挿入する。回転子240及び操作部材50が弾性変形部37を越えて挿入されると、回転子240及び操作部材250は、回転子240が第2凸部239と係止することによって、自重によって脱落することはない。
【0077】
回転子240及び操作部材250が組み付けられた状態の内筒230を、後軸220の後端開口から内部に押圧しながら挿入する。それによって、内筒230の第2嵌合突起230aが後軸220の第1嵌合突起227を乗り越える。その結果、後軸220と内筒230とが嵌合する。
【0078】
後軸220に内筒230が取り付けられた状態では、弾性変形部237の第1凸部238が後軸220の内面に当接し、弾性変形部237を、径方向内方に湾曲するように弾性変形させている。それによって、第1のノック式筆記具1と同様に、弾性変形部237の内面の後端縁は、回転子240の外径よりも径方向内方まで突出する。その結果、回転子240及び操作部材250の移動は、回転子240の前端縁又は前端面が弾性変形部237の後端縁又は後端面と係止することによって停止する。したがって、リフィルの交換等の際に、後軸220の前端開口を鉛直下方に向けたとしても回転子240が後軸220及び内筒230から意図せず脱落することはない。
【0079】
次いで、リフィル4及びスプリング6を内部に収容するように、前軸210に対して、後軸220が取り付けられた内筒230を螺合することによってノック式筆記具200の組立が完了する。すなわち、第1のノック式筆記具1では、前軸10に対して後軸20を螺合させるのに対し、第3のノック式筆記具200では、第2のノック式筆記具100と同様に、前軸210に対して内筒230を螺合させる。それによって、後軸220又は内筒230が前軸210から外れてしまうことが防止される。
【0080】
したがって、第3のノック式筆記具200では、第2のノック式筆記具100と同様に、内筒230は、前軸210に対して螺合によって連結しているため、筆記圧が特に強い使用者の場合であっても、内筒230が前軸210から外れることがない。要するに、第3のノック式筆記具200によれば、筆記時の内筒230の抜けを防止することができる。なお、後軸220は、内筒230にのみ緩く嵌合していることから後軸220も外れることがない。
【0081】
前軸210と嵌合する内筒230を、後軸と称してもよい。この場合、後軸220は、弾性変形部237を径方向内方に弾性変形させる筒状部材であり、その外面とクリップ部205との間に物品を挟持するためのスペーサでもある。
【0082】
第2のノック式筆記具100及び第3のノック式筆記具200によれば、前軸と、後軸と、外カムを備えた内筒とを有しており、前軸及び内筒が螺合によって連結していることから、筆記時に内筒が外れることがない。一方で、後軸は内筒に対して緩く嵌合していることから、ノック式筆記具100及びノック式筆記具200は、容易に分解することができる。後軸及び内筒の嵌合は、手で容易に解除できる限りにおいて、任意に構成してもよい。前軸及び内筒の連結は、筆記圧が特に強い使用者の場合であっても外れない限りにおいて、螺合に代えて、締まり嵌めであってもよく、任意に構成してもよい。
【0083】
リフィル4は、ボールペン以外にマーキングペン、タッチペン、消しゴム等のその他種類の筆記体であってもよい。また、操作部材50の一部又は全部を、ノック式筆記具による筆跡を消去する消去部としてもよい。リフィル4は、熱変色性色材を含有する熱変色性インクを収容してもよい。この場合、ノック式筆記具はノック式熱変色性筆記具であり、消去部材として摩擦体によって擦過した際に生じる摩擦熱によって、ノック式筆記具の筆跡を熱変色可能である。
【0084】
ここで、熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば-5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いたノック式筆記具では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。したがって、描線が筆記された筆記面等に対して摩擦体によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 ノック式筆記具
2 軸筒
3 口先部材
4 リフィル
6 スプリング
10 前軸
14 テーパー面
20 後軸
22 縮径部
30 内筒
34 外カム
35 凹部
36 U字孔
37 弾性変形部
38 第1凸部
39 第2凸部
40 回転子
41 カム部材
42 受容部材
43 内カム
50 操作部材
60 制動部材
61 突起
63 制動突起
64 制動テーパー面