(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153898
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20241022BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20241022BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20241022BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
G02F1/1368
H01L29/78 618E
H01L29/78 618Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129135
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2023018537の分割
【原出願日】2008-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2007196489
(32)【優先日】2007-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 義元
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長多 剛
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓之
(57)【要約】
【課題】開口率を向上した液晶表示装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【解決手段】絶縁表面を有する基板と、基板上に形成されたトランジスタと、トランジス
タに電気的に接続された画素電極と、を有し、トランジスタは、ゲート電極と、ゲート電
極上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上の微結晶構造を有する半導体層と、微結晶構造を
有する半導体層上のバッファー層と、を有し、トランジスタのチャネル幅Wと、トランジ
スタのチャネル長Lとは、0.1≦W/L≦1.7の関係を満たすことを特徴としている
。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面を有する基板と、前記基板上に形成されたトランジスタと、前記トランジスタに電気的に接続された画素電極と、を有し、
前記トランジスタは、
ゲート電極と、前記ゲート電極上のゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層上の微結晶構造を有する半導体層と、前記微結晶構造を有する半導体層上のバッファー層と、を有し、
前記トランジスタのチャネル幅Wと、前記トランジスタのチャネル長Lとは、0.1≦W/L≦1.7の関係を満たすことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁表面を有する基板上に半導体薄膜を形成し、該半導体薄膜を用いて半導体装
置を作製する技術が広く研究されている。前述の半導体薄膜を用いた半導体装置は様々な
分野に用いることができるが、中でも、画像表示装置のスイッチング素子として用いられ
ることが多い。
【0003】
上記画像表示装置のスイッチング素子としては、非晶質半導体や多結晶半導体が用いら
れる。非晶質半導体を用いる場合には、結晶化等に必要となる工程を排除して工程数を最
小限に抑えることができるため、スイッチング素子を安価に製造することができるという
メリットがある。また、多結晶半導体を用いる場合には、高性能なスイッチング素子を作
製できるというメリットがある。
【0004】
スイッチング素子を用いる画像表示装置の例としては、液晶表示装置やエレクトロルミ
ネッセンス表示装置などが挙げられる。液晶表示装置は、画素電極と対向電極との間に電
位差を与えることにより、液晶分子の配向を変化させて表示を行うものである。なお、表
示に必要な電位差を一定の時間保持するために、一般的に画素には保持容量が設けられる
。エレクトロルミネッセンス表示装置は、電極間に設けられた発光材料に電荷を供給し、
キャリアの発光再結合を誘導することにより表示を行うものである。
【0005】
液晶表示装置において、画素の開口率は表示品質を決定する重要なパラメーターの一つ
である。開口率が向上することにより輝度が向上し、高コントラストの表示が可能となる
。また、開口率が向上することによりバックライトの出力を低減することが可能である。
開口率を向上させる方法としては、例えば、遮光膜を用いて保持容量を形成する方法があ
る(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、半導体材料としては、非晶質半導体や多結晶半導体以外にも、微結晶半導体
が存在する。例えば、微結晶シリコンは非晶質シリコンと並び、古くから知られた材料で
ある。微結晶シリコンを用いた電界効果型トランジスタに関しては1980年代に遡って
みることができる(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、今日に至るまで微結晶シ
リコンを用いたトランジスタは、非晶質シリコンを用いたトランジスタと多結晶シリコン
を用いたトランジスタに埋もれて実用化が遅れ、学会などで報告が散見されるにとどまっ
ていた(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-170961号公報
【特許文献2】米国特許第5,591,987号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】トシアキ・アライ(Toshiaki Arai)他、エス・アイ・ディー 07 ダイジェスト(SID 07 DIGEST)、2007、p.1370-1373
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
液晶表示装置において、画素部のトランジスタ(以下「画素トランジスタ」とも言う)
には高い電流駆動能力と、低いリーク電流特性が求められる。高い電流駆動能力が求めら
れるのは、保持容量の充電及び放電を速やかに行う必要があるためである。低いリーク電
流特性が求められるのは、保持容量に蓄えられた電荷を逃さないようにするためである。
【0010】
画素トランジスタとして非晶質半導体を用いる場合には、上記のように安価に製造でき
るという利点がある。一方で、非晶質半導体ではキャリアの移動度が低いため、これを用
いたトランジスタの電流駆動能力も低いものとなってしまう。トランジスタのチャネル幅
を大きくすることにより電流駆動能力の向上は可能であるが、この場合にはトランジスタ
サイズが大きくなり、画素の開口率が低下するという問題が生じることになる。
【0011】
トランジスタサイズを大きくした場合には他にも弊害が生じる。例えば、トランジスタ
のソース領域又はドレイン領域と、ゲート配線(ゲート電極ともいう)との間に形成され
る容量(以下、結合容量という)が大きくなるという問題である。
図23に示されるよう
に、回路図においては、結合容量2301と保持容量2302とは、ゲート配線2303
と液晶素子2304との間に直列に接続された状態として表現される。つまり、ゲート配
線2303の電位が変動すると、保持容量2302の電位も変動することになる。表示品
質を一定に保つためには、保持容量2302の電位変動が十分に小さいことが必要であり
、結合容量2301に対する保持容量2302の割合を高めなければならないが、保持容
量2302を大きくすると開口率が低下してしまうことになる。また、トランジスタサイ
ズが大きくなった場合には、同時に結合容量2305も大きくなるため、ソース信号のな
まり等も問題となる。
【0012】
以上のように、画素トランジスタとして非晶質半導体を用いる場合には、所望の性能を
保ったまま開口率を向上することは非常に困難である。
【0013】
一方、画素トランジスタとして多結晶半導体を用いる場合には、上述の移動度が低いこ
とに起因する問題は解消される。しかしながら、液晶表示装置の製造に用いられる露光装
置の分解能は数μm程度であり、多結晶半導体の特性を生かし切れているとは到底いえな
い。それどころか、最適なサイズよりチャネル幅が大きくなることに起因して、リーク電
流が大きくなってしまうという問題が生じる。リーク電流が大きい場合には、保持容量を
大きくする必要があるため、開口率の低下につながる。また、リーク電流を低減するため
に、トランジスタを直列に数個接続する等の工夫をする場合があるが、この場合にも開口
率は低下することになる。なお、LSI等の場合と比較して分解能が低いのは、液晶表示
装置に用いられる基板(代表的にはガラス基板)に数十μm程度のたわみがあるためであ
る。このため、大面積を一度に露光する場合には露光装置の焦点深度を深くする必要があ
る。
【0014】
さらに、多結晶半導体を用いる場合には、工程が煩雑になり、生産性が低下するという
問題がある。
【0015】
このような問題点に鑑み、本発明では開口率を向上した液晶表示装置及び電子機器を提
供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、微結晶構造を有する半導体(以下「微結晶半導体」ともいう)と非晶質半
導体の積層構造を用いてトランジスタを作製する。より詳細には、チャネル形成領域とし
て微結晶半導体を用い、微結晶半導体上に非晶質半導体が積層した構造のボトムゲート型
薄膜トランジスタを作製する。これにより、高い電流駆動能力と低いリーク電流特性とを
併せ持ったトランジスタを提供することができる。すなわち、上述のトランジスタをスイ
ッチング素子として用いることにより、開口率を向上した液晶表示装置を提供することが
できる。
【0017】
本発明の液晶表示装置の一は、絶縁表面を有する基板と、基板上に形成されたトランジ
スタと、トランジスタに電気的に接続された画素電極と、を有し、トランジスタは、ゲー
ト電極と、ゲート電極上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上の微結晶構造を有する半導体
層と、微結晶構造を有する半導体層上のバッファー層と、を有し、トランジスタのチャネ
ル幅Wと、トランジスタのチャネル長Lとは、0.1≦W/L≦1.7の関係を満たすこ
とを特徴としている。
【0018】
本発明の液晶表示装置の他の一は、絶縁表面を有する基板と、基板上に形成されたトラ
ンジスタと、トランジスタに電気的に接続された画素電極と、を有し、トランジスタは、
ゲート電極と、ゲート電極上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上の微結晶構造を有する半
導体層と、微結晶構造を有する半導体層上のバッファー層と、を有し、トランジスタのチ
ャネル幅Wは、1μm以上10μm以下、(好ましくは1μm以上5μm以下)であるこ
とを特徴としている。
【0019】
また、本発明の液晶表示装置の他の一は、絶縁表面を有する基板と、基板上に形成され
たトランジスタと、トランジスタに電気的に接続された画素電極と、を有し、トランジス
タは、ゲート電極と、ゲート電極上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上の微結晶構造を有
する半導体層と、微結晶構造を有する半導体層上のバッファー層と、を有し、トランジス
タのチャネル幅Wは、トランジスタの最小加工寸法d、及び、非晶質半導体を用いて電流
駆動能力を等しく作製したトランジスタのチャネル幅Waに対して、d≦W≦Waの関係
を満たすことを特徴としている。なお、上記において、チャネル幅(Wa)以外のパラメ
ーターは、本発明のトランジスタと等しい。
【0020】
また、本発明の液晶表示装置の他の一は、絶縁表面を有する基板と、基板上に形成され
たトランジスタと、トランジスタに電気的に接続された画素電極と、を有し、トランジス
タは、ゲート電極と、ゲート電極上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上の微結晶構造を有
する半導体層と、微結晶構造を有する半導体層上のバッファー層と、を有し、トランジス
タのチャネル幅Wと、トランジスタのチャネル長Lとは、0.1≦W/L≦1.7の関係
を満たし、少なくともトランジスタのチャネル形成領域となる微結晶構造を有する半導体
層上には、バッファー層が残存していることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の液晶表示装置の他の一は、絶縁表面を有する基板と、基板上に形成され
たトランジスタと、トランジスタに電気的に接続された画素電極と、を有し、トランジス
タは、ゲート電極と、ゲート電極上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上の微結晶構造を有
する半導体層と、微結晶構造を有する半導体層上のバッファー層と、を有し、トランジス
タのチャネル幅Wは、1μm以上10μm以下、(好ましくは1μm以上5μm以下)で
あり、少なくともトランジスタのチャネル形成領域となる微結晶構造を有する半導体層上
には、バッファー層が残存していることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の液晶表示装置の他の一は、絶縁表面を有する基板と、基板上に形成され
たトランジスタと、トランジスタに電気的に接続された画素電極と、を有し、トランジス
タは、ゲート電極と、ゲート電極上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上の微結晶構造を有
する半導体層と、微結晶構造を有する半導体層上のバッファー層と、を有し、トランジス
タのチャネル幅Wは、トランジスタの最小加工寸法d、及び、非晶質半導体を用いて電流
駆動能力を等しく作製したトランジスタのチャネル幅Waに対して、d≦W≦Waの関係
を満たし、少なくともトランジスタのチャネル形成領域となる微結晶構造を有する半導体
層上には、バッファー層が残存していることを特徴としている。なお、上記において、チ
ャネル幅(Wa)以外のパラメーターは、本発明のトランジスタと等しい。
【0023】
また、上記の構成において、バッファー層は、非晶質半導体を用いて形成されたことを
特徴としている。また、トランジスタのチャネル形成領域となる微結晶構造を有する半導
体層上において、バッファー層には溝が形成されていることを特徴としている。
【0024】
また、上記の液晶表示装置を用いて様々な電子機器を提供することができる。
【0025】
なお、本明細書中、特に断りがない限りにおいて、微結晶半導体とは微結晶構造を有す
る半導体をいうものとする。つまり、微結晶半導体の構成要素として微結晶構造以外を含
んでいても良い。例えば、成膜条件等によっては、非晶質構造を含む場合がある。
【0026】
なお、本明細書において、「接続」には「電気的な接続」が含まれるものとする。
【0027】
また、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス等の表示デバイス、照明装
置等の光源、などを含むものとする。また、FPC(Flexible printed
circuit)やTAB(Tape Automated Bonding)テープ
、TCP(Tape Carrier Package)等のコネクターが取り付けられ
たモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、表
示素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が実装され
たモジュール等も全て表示装置に含まれるものとする。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、開口率を向上した液晶表示装置を提供することができる。また、これを
用いて、高品質な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の表示装置の作製工程を示す図である。
【
図2】本発明の表示装置の作製工程を示す図である。
【
図3】本発明の表示装置の作製工程を示す図である。
【
図7】本発明の表示装置の作成工程を示す図である。
【
図22】本発明の表示装置を用いた電子機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説
明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様
々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実
施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の
構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いることとする。
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の液晶表示装置の作製工程、特に、薄膜トランジスタの作製
工程について、
図1乃至6を用いて説明する。
図1乃至3は、作製工程における断面図で
あり、
図4、5は一画素における薄膜トランジスタ及び画素電極の接続領域の平面図であ
る。
図6は、完成した液晶表示装置の断面図及び平面図である。
【0032】
なお、平面図の構成としては様々なものが考えられるが、本実施の形態では代表的に、
チャネル形成領域、ソース領域、ドレイン領域が直線状に配置した構造の場合(
図4参照
)、及びチャネル形成領域やソース領域又はドレイン領域の一方がU字型の構造の場合(
図5参照)を示している。もちろん本発明はこれらに限られるものではない。
図5の如き
構成とすることにより、開口率の低下を伴わずに一定のチャネル幅を確保することができ
るため好ましい。また、本発明では、チャネル幅を十分に小さくすることができるため、
図4の如き直線状の構造を用いて非常に開口率の高い液晶表示装置を作成することができ
る。なお、
図1乃至
図3の断面図は、
図4、5における線分ABに対応している。
【0033】
微結晶半導体を用いた薄膜トランジスタでは、pチャネル型よりnチャネル型の電流駆
動能力が高い。このため、画素部のトランジスタとしてはnチャネル型が適しているが、
本発明はこれに限られない。本実施の形態では、nチャネル型の薄膜トランジスタを用い
て説明する。
【0034】
はじめに、基板100上にゲート電極102を形成する(
図1(A)及び
図4(A)、
図5(A)参照)。基板100は、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラ
ス、アルミノシリケートガラスなどの無アルカリガラス基板、セラミック基板等を用いる
ことができる。耐熱性が許せば、プラスチック基板等を用いてもよい。また、ステンレス
合金などの金属基板の表面に絶縁層を設けた基板を用いても良い。基板100の大きさに
ついては特に限定されず、320mm×400mm、370mm×470mm、550m
m×650mm、600mm×720mm、680mm×880mm、730mm×92
0mm、1000mm×1200mm、1100mm×1250mm、1150mm×1
300mm、1500mm×1800mm、1900mm×2200mm、2160mm
×2460mm、2400mm×2800mm、2850mm×3050mm等の基板を
適宜用いることができる。
【0035】
ゲート電極102は、チタン、モリブデン、クロム、タンタル、タングステン、アルミ
ニウムなどの金属材料またはその合金材料を用いて形成する。ゲート電極102は、スパ
ッタリング法や真空蒸着法で形成した導電層を、マスクを用いてエッチングすることによ
り形成することができる。また、金、銀、銅などの導電性ナノペーストを、インクジェッ
ト法により吐出し、焼成することによって形成することもできる。なお、上記金属材料の
窒化物層を、基板100及びゲート電極102の間に設けてもよい。これにより、ゲート
電極102の密着性を向上させることができる。また、半導体層への該金属材料の拡散を
防ぐこともできる。
【0036】
なお、ゲート電極102は、その端部がテーパー形状となるように加工することが好ま
しい。これにより、ゲート電極102上に半導体層や配線等を形成する際の段切れを防止
することができる。また、ゲート電極102の形成と同じ工程にて、その他の配線を形成
することもできる。なお、本実施の形態においては、ゲート電極102を単層構造とした
が、2層以上の積層構造としても良い。例えば、アルミニウムとモリブデンとの積層構造
としても良いし、銅とモリブデンとの積層構造としても良い。また、モリブデンに代えて
、窒化チタンや窒化タンタルを用いても良い。積層構造とする場合には、上記のように低
抵抗材料をバリアメタルにて覆う構成とすることにより、半導体層中に汚染源となる金属
元素が拡散することを防止できる。
【0037】
次に、ゲート電極102上に、ゲート絶縁層104a、ゲート絶縁層104bを形成す
る(
図1(B)参照)。ゲート絶縁層104a、ゲート絶縁層104bとしては、CVD
法やスパッタリング法等を用いて形成された、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸化窒化珪素膜
、窒化酸化珪素膜等を用いればよい。本実施の形態においては、ゲート絶縁層104aと
して窒化珪素または窒化酸化珪素を、ゲート絶縁層104bとして酸化珪素または酸化窒
化珪素を用いた構造を示す。なお、ゲート絶縁層を2層構造としているが、本発明はこれ
に限られない。単層としても良いし、3層以上の積層構造としても構わない。
【0038】
ここで、酸化窒化珪素とは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量(原子数)が
多いものを示し、例えば、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以
上15原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10
原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化珪素とは、その組成において、
酸素よりも窒素の含有量(原子数)が多いものを示し、例えば、酸素が5原子%以上30
原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以
下、水素が10原子%以上25原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲
は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscatter
ing Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen
Forward Scattering)を用いて測定した場合のものである。また、構
成元素の含有比率は、その合計が100原子%を超えない値をとる。
【0039】
なお、ゲート絶縁層104bの形成の際に水素プラズマ処理を行っても良い。ゲート絶
縁層に水素プラズマ処理を行うことにより微結晶半導体層の結晶成長を促進することがで
きる。これは、水素プラズマ処理によって、ゲート絶縁層に存在するダングリングボンド
を終端することができるためである。このように、ゲート絶縁層104bの形成の際にプ
ラズマ処理を行うことにより、得られる微結晶半導体層の特性を向上することができる。
【0040】
その後、ゲート絶縁層104b上に、微結晶半導体層106、バッファー層108、一
導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層110を順に形成する(
図1(C)参
照)。
【0041】
微結晶半導体層106は、非晶質と結晶(単結晶、多結晶を含む)との中間的な構造の
半導体を含む層であり、その結晶粒径は、おおよそ2nm以上100nm以下である。微
結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルのピークが単結晶シ
リコンを示す521cm-1よりも低波数側にシフトしている。即ち、単結晶シリコンを
示す521cm-1とアモルファスシリコンを示す480cm-1との間に微結晶シリコ
ンのラマンスペクトルのピークがある。また、ダングリングボンドを終端するために、水
素またはハロゲンが1原子%またはそれ以上含まれていても良い。さらに、ヘリウム、ア
ルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みを助長させることによ
り、安定性が向上した良好な微結晶半導体を得ることができる。
【0042】
上記の微結晶半導体層106は、例えば、周波数が数十MHz乃至数百MHzの高周波
プラズマCVD、周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVDを用いて形成するこ
とができる。原料ガスとしては、SiH4、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3
、SiCl4、SiF4などに代表される珪素化合物を水素で希釈したものを用いること
ができる。前述の珪素化合物や水素に、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選
ばれた一種または複数種の希ガス元素を添加しても良い。なお、微結晶半導体層106の
厚さは、2nm以上50nm以下、好ましくは、10nm以上30nm以下とする。
【0043】
なお、微結晶半導体層106は、不純物元素を意図的に添加しない場合には弱いn型の
導電性を示す。このため、p型を付与する不純物元素を添加して、しきい値を制御しても
良い。p型を付与する不純物元素としてボロンを用いる場合には、例えばボロンの濃度が
1×1014atoms/cm3以上6×1016atoms/cm3以下となるように
添加すればよい。
【0044】
バッファー層108は非晶質半導体を含む層であり、SiH4、Si2H6、SiH2
Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4などの珪素化合物の気体を用いて、プラズ
マCVD法により形成することができる。また、上記珪素化合物の気体を、ヘリウム、ア
ルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して用い
ても良い。さらに、水素を添加して、水素を含む非晶質半導体層を形成しても良いし、窒
素やアンモニアを添加して、窒素を含む非晶質半導体層を形成しても良いし、フッ素、塩
素、臭素、またはヨウ素を含む気体(F2、Cl2、Br2、I2、HF、HCl、HB
r、HI等)を用いて、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を含む非晶質半導体層を形成
しても良い。
【0045】
また、バッファー層108は、ターゲットに非晶質半導体を用いたスパッタリング法に
より形成することもできる。スパッタリングの雰囲気としては、水素雰囲気、または希ガ
ス雰囲気が好ましいが、これに限られない。さらに、アンモニア、窒素、またはN2Oを
添加することにより、窒素を含む非晶質半導体層を形成することもできる。また、フッ素
、塩素、臭素、またはヨウ素を含む気体(F2、Cl2、Br2、I2、HF、HCl、
HBr、HI等)を添加することにより、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を含む非晶
質半導体層を形成することもできる。
【0046】
バッファー層108として微結晶半導体層106の表面に非晶質半導体層を形成した後
、該非晶質半導体層の表面を水素プラズマ、窒素プラズマ、またはハロゲンプラズマ等で
処理して、非晶質半導体層の表面を水素化、窒化、またはハロゲン化してもよい。
【0047】
バッファー層108の厚さは、100nm以上500nm以下、好ましくは、150n
m以上400nm以下、より好ましくは200nm以上300nm以下とする。バッファ
ー層108を厚めに形成するのは、後のソース領域及びドレイン領域の形成プロセス(エ
ッチング)において、その一部を残存させるためである。バッファー層108を残存させ
ることにより、薄膜トランジスタのリーク電流(「オフ電流」とも言う)を低減すること
ができる。また、バッファー層が微結晶半導体層上に存在することで、その一部がチャネ
ル形成領域として機能する微結晶半導体層106の酸化を防止し、良好な特性を得ること
が可能である。なお、微結晶半導体層と、ソース領域又はドレイン領域と重なる領域のバ
ッファー層は、前述の膜厚(100nm以上500nm以下、好ましくは、150nm以
上400nm以下、より好ましくは200nm以上300nm以下)を有し、絶縁耐圧の
向上に寄与する。
【0048】
なお、オフ電流低減の効果を十分に得るためには、バッファー層108中にリン等のn
型を付与する不純物元素とボロン等のp型を付与する不純物元素とが同時に存在しない領
域を形成する必要がある。これらの不純物元素が同時に存在する場合には、再結合中心が
形成され、リーク電流が生じてしまうためである。特に、nチャネル型の薄膜トランジス
タを形成する場合には、バッファー層108上には、n型を付与する不純物元素が添加さ
れた半導体層110が形成され、微結晶半導体層106には、しきい値電圧を制御するた
めにp型を付与する不純物元素が添加されている場合があるため、意図的に不純物元素が
存在しない領域を形成する等の注意が必要である。
【0049】
nチャネル型の薄膜トランジスタを形成する場合には、一導電型を付与する不純物元素
が添加された半導体層110に添加する不純物元素として、例えば、リンを用いることが
できる。また、pチャネル型の薄膜トランジスタを形成する場合には、不純物元素として
、例えば、ボロンを用いることができる。一導電型を付与する不純物元素が添加された半
導体層110は2nm以上50nm以下(好ましくは10nm以上30nm以下)程度の
膜厚となるように形成すればよい。作製方法としては、原料ガスに不純物元素を含有する
ガス(例えば、PH3やB2H6)を添加したプラズマCVD法等を用いることができる
。
【0050】
次に、一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層110上にマスク112を
形成する(
図1(D)参照)。なお、ゲート絶縁層104a、ゲート絶縁層104b、微
結晶半導体層106、及びバッファー層108を連続的に形成してもよいし、ゲート絶縁
層104a、ゲート絶縁層104b、微結晶半導体層106、バッファー層108、及び
一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層110を連続的に形成してもよい。
少なくとも、ゲート絶縁層104a、ゲート絶縁層104b、微結晶半導体層106、及
びバッファー層108を大気に触れさせることなく連続的に形成することで、各界面を清
浄な状態に保つことができる。なお、マスク112は、フォトリソグラフィ法やインクジ
ェット法を用いて形成することができる。
【0051】
次に、マスク112を用いて、微結晶半導体層106、バッファー層108、一導電型
を付与する不純物元素が添加された半導体層110をエッチングして、微結晶半導体層1
14、バッファー層116、一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層118
を形成する(
図1(E)参照)。なお、
図1(B)は、
図4(B)又は
図5(B)の線分
ABの断面図に相当している。
【0052】
ここで、微結晶半導体層114、バッファー層116、及び一導電型を付与する不純物
元素が添加された半導体層118の端部を、テーパー形状にエッチングすることで、一導
電型を付与する不純物元素が添加された半導体層118と微結晶半導体層114との接触
を防止できる。本発明において、一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層1
18と微結晶半導体層114とが接触した場合、バッファー層116の持つ意味が希薄に
なってしまう。したがって、上記のような対策は非常に有効である。なお、上記テーパー
形状のテーパー角は30°以上90°以下、好ましくは45°以上80°以下とする。
【0053】
次に、一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層118及びゲート絶縁層1
04b上に導電層120a、導電層120b、導電層120cを順に積層して形成する(
図2(A)参照)。なお、本実施の形態においては3層構造の導電層を形成したが、本発
明はこれに限られない。単層、又は2層構造としても良いし、4層以上の積層構造として
も良い。
【0054】
導電層120a、導電層120b、導電層120cに用いることができる材料としては
、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アル
ミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ネオジム(
Nd)から選ばれた元素、又は前記の元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料等
が挙げられる。リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体
材料や、AgPdCu合金などを用いてもよい。作製方法としては、スパッタリング法や
真空蒸着法、プラズマCVD法等が挙げられる。本実施の形態においては、導電層120
a、導電層120cにモリブデン、導電層120bにアルミニウムを用いた場合を示すが
、他の構成を用いても良い。例えば、導電層120a、導電層120cにチタン、導電層
120bにアルミニウムを用いる構成としても良い。
【0055】
なお、導電層120a、導電層120b、導電層120cは、導電性ナノペーストを用
いたスクリーン印刷法や、インクジェット法などを用いて形成することも可能である。
【0056】
その後、導電層120a、導電層120b、導電層120c上にマスク122を形成す
る。マスク122は、マスク112と同様に形成することができる。
【0057】
次に、マスク122を用いて導電層120a、導電層120b、導電層120cをエッ
チングして、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層124a、導電層124
b、導電層124c及び、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層126a、
導電層126b、導電層126cを形成する(
図2(B)参照)。本実施の形態ではウエ
ットエッチングにより導電層124a、導電層124b、導電層124c、導電層126
a、導電層126b、導電層126cを形成するが、ウエットエッチングはドライエッチ
ングと比較して等方的なエッチングであり、マスク122の端部128aと、導電層12
4a、導電層124b、導電層124cの端部128bは一致せず、また、マスク122
の端部130aと導電層126a、導電層126b、導電層126cの端部130bとは
一致しない。
【0058】
次に、マスク122を用いて一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層11
8及びバッファー層116をエッチングして、ソース領域又はドレイン領域132、ソー
ス領域又はドレイン領域134、バッファー層136を形成する(
図2(C)参照)。そ
して、その後、マスク122を除去する。なお、バッファー層136はバッファー層11
6の一部がエッチングされたものであり、微結晶半導体層114の表面を覆っている。
【0059】
エッチングにより形成されたバッファー層136は溝を有しており、溝の端部は、ソー
ス領域又はドレイン領域132の端部とほぼ連続した面を形成している。また、前述の溝
は、マスク122の開口部と概略一致した領域に形成されている。
【0060】
バッファー層136を有することにより、上でも述べた通り、薄膜トランジスタのリー
ク電流(「オフ電流」とも言う)を低減することができる。これは、オフ時には、キャリ
アのパスの主要な部分がバッファー層136中に形成されるためである。ただし、オン時
には微結晶半導体層のみがチャネルとして機能し、バッファー層136中にキャリアのパ
スは形成されない。なお、バッファー層136に溝を設けることにより、溝を設けない場
合と比較してリーク電流を低減することができる。これは、溝を形成する分だけリークパ
スが長くなるためである。また、一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層1
18を完全に除去することにより、残渣に含まれる不純物元素等によるリーク電流を低減
することができる。また、バッファー層の溝部分に存在する水素、フッ素等により、酸素
等の不純物元素が微結晶半導体層に侵入することを防ぐことができる。また、バッファー
層136が微結晶半導体層114上に存在することで、チャネル形成領域として機能する
微結晶半導体層114の酸化を防止し、良好な特性を得ることが可能である。
【0061】
バッファー層136には寄生チャネル防止の効果もある。また、バッファー層136は
、一導電型を付与する不純物元素が添加された半導体層118をエッチングする際のスト
ッパーとしても機能する。なお、バッファー層136を設けない場合には、エッチング時
のラジカル反応により微結晶半導体層114が酸化して、移動度の低下、サブスレッショ
ルド値(S値)の増大等の結果を招いてしまう。酸化防止対策としてバッファー層136
を用いる場合には、水素化された非晶質半導体材料、特にa-Si:H(水素化非晶質シ
リコン)を用いるのが好適である。これは、表面が水素で終端されていることにより、酸
化を抑制することができるためである。
【0062】
また、ソース領域又はドレイン領域132の端部138と、導電層124a、導電層1
24b、導電層124cの端部128bは一致せず、ソース領域又はドレイン領域134
の端部140と、導電層126a、導電層126b、導電層126cの端部130bとは
一致しない。端部128b及び端部130bの内側に、端部138及び端部140が存在
する形となる。
【0063】
なお、
図2(C)は、
図4(C)又は
図5(C)の線分ABの断面図に相当している。
図4(C)や
図5(C)からも、端部128b及び端部130bが、端部138及び端部
140の外側に位置することが分かる。また、ソース電極又はドレイン電極の一方は、ソ
ース配線又はドレイン配線としても機能する。
【0064】
以上の工程により、チャネル形成領域として微結晶半導体層114を有し、該微結晶半
導体層114上にバッファー層136を有する薄膜トランジスタ142を形成することが
できる。
【0065】
次に、薄膜トランジスタ142を覆うように絶縁層144を形成する(
図3(A)参照
)。絶縁層144は、ゲート絶縁層104aやゲート絶縁層104bと同様に形成するこ
とができる。なお、絶縁層144は、大気中に浮遊する有機物や金属、水等の不純物の侵
入を防ぐためのものであるから、緻密な膜とすることが好ましい。
【0066】
次に、絶縁層144にコンタクトホールを形成し、該コンタクトホールにおいて導電層
124cに接する画素電極146を形成する(
図3(B)参照)。なお、
図3(B)は、
図4(D)又は
図5(D)の線分ABの断面図に相当する。
【0067】
画素電極146は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含
むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジ
ウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下「ITO」とも言う)、インジウム亜鉛酸化物
、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いるこ
とができる。
【0068】
また、画素電極146として、導電性高分子(「導電性ポリマー」とも言う)を含む導
電性組成物を用いることもできる。導電性組成物は、薄膜におけるシート抵抗が1000
0Ω/sq.以下であることが好ましい。また、光透過性を有する画素電極層として薄膜
を形成する場合には、波長550nmにおける光の透過率が70%以上であることが好ま
しい。また、含まれる導電性高分子の抵抗率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい
。
【0069】
上記の導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができ
る。例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェ
ン及びその誘導体、又は、これらの共重合体等があげられる。
【0070】
本実施の形態においては、端部128bと端部138、及び、端部130bと端部14
0が一致しない構成のトランジスタを作製したが、これらが一致する構成としても良い。
図3(C)に、これらの端部が一致する形状の薄膜トランジスタの断面を示す。
図3(C
)のように端部の形状を一致させるためには、異方性の強いドライエッチングを用いれば
よい。ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層124a、導電層124b、導
電層124c及び、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層126a、導電層
126b、導電層126cをマスクとして用いて、一導電型を付与する不純物元素が添加
された半導体層をエッチングすることでも、端部が一致した形状とすることができる。
【0071】
その後、配向膜等を設けた後、対向基板の貼り合わせや、液晶の封入、各種駆動回路の
実装等を行うことにより液晶表示装置が完成する(
図6参照)。
図6(A)は液晶表示装
置の平面図であり、
図6(B)は
図6(A)の線分CDにおける断面図である。なお、図
6では簡単のため、トランジスタの積層構造等を一部省略している。
【0072】
図6に示す液晶表示装置では、基板600上の画素部602と、走査線駆動回路604
を囲むようにして、シール材606が設けられている。また、画素部602と、走査線駆
動回路604の上には対向基板608が設けられている。つまり、画素部602と、走査
線駆動回路604と、液晶610は、基板600とシール材606と対向基板608とに
よって封止されている。また、基板600上のシール材606によって囲まれた領域とは
異なる領域に、別途用意された単結晶半導体又は多結晶半導体で形成された信号線駆動回
路612が実装されている。
図6(B)では、信号線駆動回路612に含まれるトランジ
スタ614を例示している。
【0073】
基板600上の画素部602と、走査線駆動回路604は、薄膜トランジスタを複数有
している。
図6(B)では、画素部602に含まれる薄膜トランジスタ616を例示して
いる。薄膜トランジスタ616は微結晶半導体を用いた薄膜トランジスタに相当し、上述
の工程で作製することができる。
【0074】
また、画素電極618と対向電極620との間隔(セルギャップ)を制御するために、
球状のスペーサー622が設けられている。球状のスペーサーに代えて、絶縁層を選択的
にエッチングすることで得られるスペーサーを用いていても良い。
【0075】
走査線駆動回路604と信号線駆動回路612に与えられる各種信号は、引き回し配線
624、引き回し配線626を介して、FPC628から供給されている。また、引き回
し配線626には接続端子630が形成されており、FPC628と接続端子630とは
異方性導電材料632を介して電気的に接続されている。なお、本実施の形態において、
接続端子630は画素電極618と同じ導電層から形成されており、また、引き回し配線
624、引き回し配線626は、配線634と同じ導電層で形成されているが、本発明は
これに限られない。
【0076】
なお、
図6には示していないが、本発明の液晶表示装置は、配向膜、偏光板を有し、更
にカラーフィルター(以下、着色膜ともいう)や遮光膜等を有していても良い。
【0077】
なお、
図6では信号線駆動回路612を別途形成し、基板600に実装した例を示して
いるが、本発明はこれに限られない。トランジスタの特性次第では信号線駆動回路を一体
形成しても良い。もちろん、走査線駆動回路を別途形成する構成としても良い。また、信
号線駆動回路の一部や走査線駆動回路の一部を別途形成して実装する構成としても良い。
【0078】
以上のように、本発明により、微結晶半導体を画素トランジスタのチャネル形成領域と
して用いた液晶表示装置が提供される。なお、上記トランジスタ、液晶表示装置の構成は
あくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
なお、本発明の液晶表示装置に用いるトランジスタは、そのチャネル幅(W)が、最小
加工寸法(d)以上となる。ここで、最小加工寸法(d)とは、トランジスタにおけるコ
ンタクト部分の幅や、チャネル長、配線幅等のうちで最小のものをいう。つまり、本発明
の液晶表示装置に用いるトランジスタは、d≦Wの関係を満たすように形成される。これ
は、微結晶半導体を用いたトランジスタのチャネル幅が、露光装置の分解能による制限を
受けないことによる。
【0080】
また、チャネル幅(W)の上限は、非晶質半導体を用いて形成された等しい電流駆動能
力のトランジスタにおけるチャネル幅(Wa)を参照することができる。すなわち、チャ
ネル幅(W)は、チャネル幅(Wa)を用いて、W≦Waと規定される。これは、非晶質
半導体におけるキャリアの移動度より微結晶半導体におけるキャリアの移動度が高く、電
流駆動能力を等しく作製した場合には、非晶質半導体を用いた場合よりチャネル幅が小さ
くなるためである。ここで、比較対象である非晶質半導体を用いたトランジスタのチャネ
ル幅(Wa)以外のパラメーターについては、本発明のトランジスタと等しく設定する点
に留意が必要である。
【0081】
また、本発明の液晶表示装置に用いるトランジスタにおいて、チャネル幅(W)とチャ
ネル長(L)は、0.1≦W/L≦2.0(又は0.1≦W/L<2.0)、好ましくは
0.1≦W/L≦1.5、より好ましくは0.1≦W/L≦1.0の関係を満たす。ここ
で、非晶質半導体を用いたトランジスタを液晶表示装置の画素に用いる場合には、チャネ
ル幅(Wa)及びチャネル長(La)は、20≦Wa≦100、3≦La≦10(単位は
いずれもμm)程度となる。つまり、2.0≦Wa/La≦33.3程度である。一方で
、本発明の微結晶半導体を用いたトランジスタを液晶表示装置の画素に用いる場合であれ
ば、1≦W≦5、3≦L≦10(単位はいずれもμm)程度である。すなわち、0.1≦
W/L≦1.7程度である。
【0082】
なお、多結晶半導体を用いたトランジスタを液晶表示装置の画素に用いる場合には、露
光装置の分解能により、チャネル幅(Wp)が大幅に制限を受けてしまう。すなわち、多
結晶半導体の性能を十分に生かした画素トランジスタを作製することは困難である。移動
度等を考慮した場合、多結晶半導体を用いたトランジスタのチャネル長(Lp)と非晶質
半導体を用いたトランジスタのチャネル長が同等(3≦Lp≦10)の条件の下において
は、Wp≦0.5が適当な条件であり、Wp/Lp≦0.6となるが、このようにして求
めたWp/Lpの値は現実的なものではなく、大きな意味を持たない。
【0083】
なお、本発明の液晶表示装置に用いるトランジスタにおいて、チャネル幅(W)をより
具体的に規定するのであれば、1μm以上10μm以下(より好ましくは1μm5μm以
下)とすれば良い。露光装置の分解能の限界を下限とし、「露光装置の分解能の限界+5
μm」程度を上限としてチャネル幅を規定することもできる。
【0084】
通常、非晶質半導体を用いたトランジスタを液晶表示装置に採用する場合には、そのチ
ャネル幅が20μm以上100μm以下となるように作製される。このようにチャネル幅
を大きくとるのは、非晶質半導体のキャリアの移動度が低いためである。しかしながら、
大きなチャネル幅を採用する場合にはトランジスタのサイズも大きくなり、また、結合容
量も大きくなるため、前述のように開口率が低下するという問題が生じる。この点、本発
明では、非晶質半導体と比較してキャリアの移動度が高い微結晶半導体を用いてトランジ
スタを作製するため、非晶質半導体を用いる場合と比較してチャネル幅を十分に小さくす
ることができる。つまり、結合容量の問題を解消し、開口率を向上させることができる。
【0085】
また、多結晶半導体を用いたトランジスタでは、微結晶半導体を用いたトランジスタと
比較してキャリアの移動度が高いため、理論的には微結晶半導体よりチャネル幅を小さく
することが可能である。しかしながら、液晶表示装置を作製する際に用いられる露光装置
の分解能は数μm程度(例えば3μm)であり、現実問題として分解能より小さいチャネ
ル幅を採用することはできない。したがって、多結晶半導体を液晶表示装置の画素トラン
ジスタに採用するメリットは小さい。それどころか、多結晶半導体は電気伝導度が高く、
このため多結晶半導体を用いたトランジスタはオフ時のリーク電流が大きいから、表示に
必要な電荷を所定の時間保持するためには、保持容量を大きくしなければならない。つま
り、多結晶半導体を用いる場合にも、開口率は低下してしまうことになる。また、リーク
電流を低減するためにトランジスタを直列に接続する場合にも、開口率は低下する。
【0086】
この点、微結晶半導体を用いたトランジスタでは、求められる電流とチャネル幅との関
係が液晶表示装置にとって最適であり、最大の開口率を有する液晶表示装置を提供するこ
とができるのである。
【0087】
なお、本発明の微結晶半導体を用いたトランジスタは、チャネル形成領域の微結晶半導
体層上にバッファー層(非晶質半導体層)を積層している。これにより、主要なリークパ
スが電気伝導度の低いバッファー層(非晶質半導体層)側に形成されるため、さらにリー
ク電流を低減することができる。すなわち、保持容量をさらに小さくすることができるた
め、開口率の向上につながる。
【0088】
バッファー層には他にも複数の効果がある。一例としては、チャネル形成領域の微結晶
半導体の酸化を防ぐ効果が挙げられる。別の一例としては、微結晶半導体中への不純物元
素の侵入を防ぐ効果が挙げられる。これらの効果により、トランジスタ毎の特性のばらつ
きを低減することができるため、液晶表示装置を作製する際にトランジスタのばらつきを
考慮する必要性が低下する。すなわち、トランジスタのばらつきの影響を防ぐための余裕
を持たせた設計が不要となる。これを電荷保持という観点で見れば、従来であれば余裕を
持たせて保持容量を確保していた状況においても、その余裕分は不要になるということで
ある。これにより、保持容量を小さくすることができるため、開口率を向上することが可
能である。
【0089】
なお、トランジスタのばらつき低減という意味において、微結晶半導体の有する特性は
非常に好ましい。多結晶半導体は結晶粒毎の大きさがまちまちであり、また、多結晶半導
体を用いて作製したトランジスタのチャネル形成領域は少数の結晶粒にて形成されるため
、トランジスタ毎の特性のばらつきは大きくなりがちである。一方、微結晶半導体は結晶
粒の大きさが整っており、また、トランジスタのチャネル形成領域は多数の結晶粒で形成
されることになるため、トランジスタの特性のばらつきを低減することができる。
【0090】
(実施の形態2)
本実施の形態では、微結晶半導体層にレーザー光を照射して結晶性を改善したトランジ
スタを作製する方法について、
図7を用いて説明する。
【0091】
はじめに実施の形態1と同様にして、基板上にゲート電極を形成する。そして、ゲート
電極を覆うようにゲート絶縁層を形成する(図示しない)。その後、ゲート絶縁層700
上に微結晶半導体層を形成する(
図7(A)参照)。
【0092】
上述のように、ゲート絶縁層700上にプラズマCVD法等を用いて微結晶半導体層を
形成する際に、ゲート絶縁層700と形成した半導体層702との界面付近に、非晶質成
分を多く含む領域(ここでは「界面領域704」と呼ぶことにする)が形成されることが
ある。また、プラズマCVD法等で膜厚10nm以下の極薄い微結晶半導体層を形成しよ
うとする場合、結晶粒が均一な半導体層を得ることは困難である。このような場合、以下
に示すレーザー光を照射する処理は有効である。
【0093】
半導体層702を形成した後、半導体層702が溶融しないエネルギー密度のレーザー
光を半導体層702の上方(界面領域704の反対の面の方向)から照射する(
図7(B
)参照)。該レーザー処理(Laser Process、以下「LP」ともいう)は、
輻射加熱により半導体層702を溶融させないで固相結晶成長を行うものである。すなわ
ち、堆積された半導体層702が液相にならない臨界領域を利用する結晶成長法であり、
その意味において「臨界成長」ということもできる。
【0094】
レーザー光を照射した後の断面を
図7(C)に示す。レーザー光としては、波長400
nm以下のエキシマレーザー光や、YAGレーザーまたはYVO
4レーザーの第2高調波
(波長532nm)乃至第4高調波(波長266nm)を用いることが好ましい。波長が
同程度であれば、その他のレーザー光を用いることも可能であるが、生産性を向上させる
ためには、前述のような高出力のレーザーを用いることが好ましい。これらのレーザー光
を光学系を用いて線状又はスポット状に集光し、半導体層702が溶融しないエネルギー
密度に調節して照射する。レーザー光は半導体層702が溶融しないエネルギー密度(つ
まり低エネルギー密度)に集光するため、レーザー光の照射面積を大きくすることが可能
である。つまり、大面積の基板であっても短時間に処理すること可能である。
【0095】
レーザー光は界面領域704にまで作用させることができる。このため、半導体層70
2の表面付近(図の上方の面)に存在する結晶を種として、該表面から界面領域704に
向けて固相結晶成長が進み、概略柱状の結晶が成長することになる。LP処理による固相
結晶成長は、結晶粒径を拡大させるものではなく、むしろ半導体層の厚さ方向における結
晶性を改善し、結晶粒径を整えるためのものといえる。
【0096】
この際、照射するビームの形状を矩形長尺状(線状)とすることで、例えば730mm
×920mmのガラス基板上の半導体層を一度のスキャンで処理することができる。エキ
シマレーザー等のパルスレーザーを用いる場合には、線状レーザビームを重ね合わせる割
合(オーバーラップ率)を0%以上90%以下(好ましくは0%以上67%以下)として
行う。これにより、基板1枚当たりの処理時間を短縮することができるため、生産性の面
で有利である。ビームの形状は線状に限定されるものではなく、面状としても同様に処理
することができる。また、本実施例のLP処理は上記ガラス基板のサイズに限定されず、
さまざまなサイズに適用することができる。
【0097】
上述の臨界成長においては、従来のレーザー処理を用いた多結晶半導体(いわゆる低温
ポリシリコン)において見られた表面の凹凸(リッジと呼ばれる凸状体)は形成されず、
LP処理前後において、半導体表面の平滑性が変わらず良好であることも特徴である。本
実施の形態の如く成膜後の微結晶半導体層にレーザー光を照射して得られる結晶性半導体
層706は、成膜にて得られる微結晶半導体層とは膜質が異なっている。また、伝導加熱
により改質された微結晶半導体ともその成長メカニズム及び膜質が異なっている。
【0098】
本明細書では、成膜後の微結晶半導体層にLP処理を行って得られる結晶性の半導体の
うち、特にシリコンを用いた場合をLPSAS(Laser Process Semi
Amorphous Silicon)と呼ぶことにする。なお、LPSASは従来の
微結晶シリコンと比較して、さらに良好な特性を有する半導体であるが、微結晶シリコン
の一種であることには変わりがない。したがって、本明細書において「微結晶シリコン」
とは従来の微結晶シリコンとLPSASの両方を表し、特に区別が必要な場合にのみ「従
来の微結晶シリコン」と「LPSAS」とを使い分けるものとする。同様に、「微結晶半
導体」という場合においては従来の微結晶半導体とLP処理を行った結晶性半導体の両方
を含むものとする。
【0099】
次いで、結晶性半導体層706上にバッファー層708を形成する。なお、バッファー
層708としてa-Si:H(水素化アモルファスシリコン)を形成する場合には、水素
が結晶性半導体層706に供給されるため、結晶性半導体層706を結晶化した場合と同
等の効果を得ることができる。すなわち、結晶性半導体層706上にa-Si:H層を形
成することにより、結晶性半導体層706に水素を拡散させてダングリングボンドを終端
させることができる。なお、a-Si:H層は、プラズマCVD法を用いて、300℃以
上400℃以下の温度にて形成すると良い。
【0100】
以降の工程は、実施の形態1と同様であるため、ここでは省略する。
【0101】
本実施の形態にて形成した、LPSAS等のLP処理を行った半導体を用いることによ
りトランジスタの電気的特性をさらに向上させることができる。
【0102】
本実施の形態は、実施の形態1と適宜組み合わせて用いることができる。
【0103】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び2にて示した薄膜トランジスタ(以下「TFT」
ともいう)を有する液晶表示装置の詳細について、
図8乃至21用いて説明する。
図8乃
至21の液晶表示装置に用いられる薄膜トランジスタは、実施の形態1及び2にて示した
薄膜トランジスタと同様に作製することができる。
【0104】
はじめにVA(Vertical Alignment)方式の液晶表示装置について
説明する。VA方式とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である
。VA方式の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときに、液晶分子の長軸がパネル
面に対して垂直となるように配列する方式である。本実施の形態では、特に画素(ピクセ
ル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、電圧が印加された場合に複数の異なる方
向に分子が配列するように工夫されている。これをマルチドメイン化あるいはマルチドメ
イン設計という。以下の説明では、マルチドメイン化されたVA方式の液晶表示装置につ
いて説明する。
【0105】
図8乃至10に、マルチドメイン化されたVA方式の液晶表示装置の一例を示す。
図8
は断面図であり、
図9は画素電極が形成される基板側の平面図であり、また、
図10は対
向電極が形成される基板側の平面図である。なお、
図8は
図9の線分EFの断面に対応し
ている。以下の説明ではこれらの図面を参照して説明する。
【0106】
図8は、TFT828とそれに接続する画素電極824、及び保持容量部830が形成
された基板800と、対向電極840等が形成される対向基板801とが重ね合わせられ
、液晶が注入された状態を示している。
【0107】
対向基板801においてスペーサー842が形成される位置には、遮光膜832、第1
の着色膜834、第2の着色膜836、第3着色膜838、対向電極840が形成されて
いる。この構造により、液晶の配向を制御するための突起844とスペーサー842の高
さを異ならせている。画素電極824上には配向膜848が形成され、同様に対向電極8
40上にも配向膜846が形成されている。この間に液晶層850が形成されている。
【0108】
スペーサー842として、ここでは柱状スペーサーを示しているが、球状のビーズスペ
ーサーを散布してもよい。さらには、スペーサー842を基板800上に形成される画素
電極824上に形成してもよい。
【0109】
基板800上には、TFT828とそれに接続する画素電極824、及び保持容量部8
30が形成されている。画素電極824は、第1の絶縁膜820、第2の絶縁膜822を
それぞれ貫通するコンタクトホール823で、配線818と接続されている。TFT82
8は実施の形態1又は2にて示した薄膜トランジスタを適宜用いることができる。保持容
量部830は、TFT828のゲート配線802と同様に形成した容量配線804と、ゲ
ート絶縁膜806と、配線816、818と同様に形成した容量電極817で構成される
。
【0110】
画素電極824と液晶層850と対向電極840とが重なり合うことで、液晶素子が形
成されている。
【0111】
図9は、基板800上の構造を示している。画素電極824は実施の形態1にて示した
材料を用いて形成することができる。画素電極824にはスリット825を設ける。スリ
ット825は液晶の配向を制御するためのものである。
【0112】
図9に示すTFT829とそれに接続する画素電極826及び保持容量部831は、そ
れぞれTFT828とそれに接続する画素電極824及び保持容量部830と同様に形成
することができる。TFT828とTFT829は共に配線816と電気的に接続してい
る。該液晶表示装置の画素(ピクセル)は、画素電極824と画素電極826により構成
されている。画素電極824と画素電極826はサブピクセルである。
【0113】
図10に対向基板側の構造を示す。遮光膜832上に対向電極840が形成されている
。対向電極840は、画素電極824と同様の材料を用いて形成することが好ましい。対
向電極840上には液晶の配向を制御する突起844が形成されている。また、遮光膜8
32の位置に合わせてスペーサー842が形成されている。
【0114】
該画素構造の等価回路を
図11に示す。TFT828とTFT829は、共にゲート配
線802、配線816と接続している。この場合、容量配線804と容量配線805の電
位を異ならせることで、液層素子851と液晶素子852の動作を異ならせることができ
る。すなわち、容量配線804と容量配線805の電位を個別に制御することにより液晶
の配向を精密に制御して視野角を広げることができる。
【0115】
スリット825を設けた画素電極824に電圧を印加すると、スリット825の近傍に
は電界の歪み(斜め電界)が発生する。このスリット825と、対向基板801側の突起
844とを交互に咬み合うように配置して、斜め電界を発生させることで、液晶の配向す
る方向を場所ごとに異ならせている。これにより、液晶表示パネルの視野角を広げること
ができる。
【0116】
次に、上記とは異なるVA方式の液晶表示装置について、
図12乃至15を用いて説明
する。
【0117】
図12と
図13は、VA方式の液晶表示装置の一例を示している。
図12は断面図であ
り、
図13は画素電極が形成される基板側の平面図であり、また、
図14は対向電極が形
成される基板側の平面図である。なお、
図12は
図13の線分GHの断面に対応している
。以下の説明ではこの両図を参照して説明する。
【0118】
ここで説明する液晶表示装置は、一つの画素に複数の画素電極が存在し、それぞれの画
素電極にTFTが接続された構造を有している。各TFTは、異なるゲート信号で駆動さ
れるように構成されている。すなわち、マルチドメイン化された画素において、個々の画
素電極に印加する信号を、独立して制御する構成を有している。
【0119】
基板1200上の構成を説明する。画素電極1224はコンタクトホール1223にお
いて、TFT1228の配線1218と接続している。また、画素電極1226はコンタ
クトホール1227において、TFT1229の配線1219と接続している。画素電極
1224、及び、画素電極1226上には配向膜1248が形成されている。TFT12
28のゲート配線1202と、TFT1229のゲート配線1203は、異なるゲート信
号を与えることができるように分離されている。一方、データ線として機能する配線12
16は、TFT1228とTFT1229で共通に用いられている。TFT1228とT
FT1229は実施の形態1又は2で示した薄膜トランジスタを適宜用いることができる
。また、ゲート配線1202及びゲート配線1203と同一層にて容量配線1290が形
成されている。
【0120】
画素電極1224と画素電極1226の形状は異なっており、スリットによって分離さ
れている。V字型に広がる画素電極1224の外側を囲むように画素電極1226が形成
されている。画素電極1224と画素電極1226に印加する電圧のタイミングを、TF
T1228及びTFT1229により異ならせることで、液晶の配向を制御している。
【0121】
この画素構造の等価回路を
図15に示す。TFT1228はゲート配線1202と接続
し、TFT1229はゲート配線1203と接続している。ゲート配線1202とゲート
配線1203に異なるゲート信号を与えることで、TFT1228とTFT1229の動
作タイミングを異ならせることができる。
【0122】
対向基板1201には、遮光膜1232、着色膜1236、対向電極1240、配向膜
1246が形成されている。また、着色膜1236と対向電極1240の間には平坦化膜
1237が形成され、液晶の配向乱れを防いでいる。対向電極1240は異なる画素間で
共通化されている電極であるが、スリット1241が形成されている。画素電極1224
と液晶層1250と対向電極1240が重なり合うことで、液晶素子が形成されている。
また、画素電極1226と液晶層1250と対向電極1240が重なり合うことで、液晶
素子が形成されている。
【0123】
スリット1241と、画素電極1224及び画素電極1226側のスリットとを交互に
咬み合うように配置して、斜め電界を発生させることで、液晶の配向する方向を場所ごと
に異ならせている(
図14参照)。これにより、液晶表示パネルの視野角を広げることが
できる。
【0124】
次に、横電界方式の液晶表示装置について説明する。横電界方式は、液晶分子に対して
水平方向の電界を加えることで液晶を駆動し、階調を表現する方式である。この方式によ
れば、視野角を約180度にまで広げることができる。以下の説明では、横電界方式を採
用する液晶表示装置について説明する。
【0125】
図16は、TFT1628とそれに接続する第2の画素電極1624が形成された基板
1600と、対向基板1601を重ね合わせ、液晶を注入した状態を示している。対向基
板1601には遮光膜1632、着色膜1636、平坦化膜1637、配向膜1660な
どが形成されている。第1の画素電極1607及び第2の画素電極1624は基板160
0側に有るので、対向基板1601側には特に電極を設ける必要はない。第2の画素電極
1624上には配向膜1661が形成されている。基板1600と対向基板1601の間
には液晶層1650が形成されている。
【0126】
基板1600上には、第1の画素電極1607及び第1の画素電極1607に接続する
容量配線1604、並びにTFT1628が形成される。第1の画素電極1607には、
実施の形態1にて示した画素電極と同様の材料を用いることができる。また、第1の画素
電極1607は、概ね画素の形状に適合した形状に形成されている。なお、第1の画素電
極1607及び容量配線1604上にはゲート絶縁膜1606が形成される。
【0127】
TFT1628の配線1616、配線1618がゲート絶縁膜1606上に形成される
。配線1616は液晶表示パネルにおいてビデオ信号を伝達するデータ線であり、配線で
あると同時に、ソース領域1610と接続し、ソース電極又はドレイン電極の一方となる
。配線1618はソース電極又はドレイン電極の他方となり、TFT1628と第2の画
素電極1624とを接続する配線としても機能する。
【0128】
配線1616、配線1618上には絶縁膜1620が形成されている。また、絶縁膜1
620上には、絶縁膜1620に形成されるコンタクトホールにおいて、配線1618に
接続する第2の画素電極1624が形成されている。第2の画素電極1624には、実施
の形態1にて示した画素電極と同様の材料を用いることができる。
【0129】
このようにして、基板1600上にTFT1628とそれに接続する第2の画素電極1
624が形成される。なお、保持容量は第1の画素電極1607と第2の画素電極162
4、ゲート絶縁膜1606、絶縁膜1620にて形成される。
【0130】
図17は、画素電極等の構成を示す平面図である。なお、
図16は
図17の線分IJに
おける断面図である。第2の画素電極1624にはスリット1625が設けられる。スリ
ット1625は液晶の配向を制御するためのものである。この場合、電界は第1の画素電
極1607と第2の画素電極1624との間に発生する。第1の画素電極1607と第2
の画素電極1624の間にはゲート絶縁膜1606等が形成されているが、これらは液晶
層と比較して十分に薄いため、実質的に基板1600と平行な方向(水平方向)に電界が
発生する。この電界を利用して液晶分子を水平に回転させる。この場合、液晶分子は水平
方向に配列するため、見る角度によってコントラストが低減する等の問題は少なく、視野
角が広がることになる。また、第1の画素電極1607と第2の画素電極1624は共に
透光性の電極であるので、開口率を向上させることができる。
【0131】
次に、横電界方式の液晶表示装置の他の一例について示す。
【0132】
図18及び
図19は、横電界方式の液晶表示装置の別の構造である。
図18は断面図で
あり、
図19は平面図である。なお、
図18は
図19のKLの断面に対応している。以下
の説明ではこの両図を参照して説明する。
【0133】
図18は、TFT1828とそれに接続する第2の画素電極1824が形成された基板
1800と、対向基板1801を重ね合わせ、液晶を注入した状態を示している。対向基
板1801には遮光膜1832、着色膜1836、平坦化膜1837、配向膜1860な
どが設けられている。第1の画素電極(共通電位線1809)、及び第2の画素電極18
24は基板1800側にあるので、対向基板1801側には特に電極を設ける必要はない
。第2の画素電極1824上には配向膜1861が形成されている。基板1800と対向
基板1801の間には液晶層1850が形成されている。
【0134】
基板1800上には、共通電位線1809、及び、TFT1828が形成されている。
共通電位線1809はTFT1828のゲート配線1802と同時に形成することができ
る。なお、ここでは、第1の画素電極は共通電位線1809と同義である。このため、共
通電位線1809は画素部において、概ね画素の形状に適合した形状に形成されている。
【0135】
TFT1828の配線1816、配線1818がゲート絶縁膜1806上に形成されて
いる。配線1816は液晶表示装置においてビデオ信号を伝達するデータ線であり、配線
であると同時に、ソース領域又はドレイン領域と接続し、ソース電極又はドレイン電極の
一方となる。配線1818はソース電極又はドレイン電極の他方となり、第2の画素電極
1824と接続する配線である。
【0136】
配線1816、配線1818上に絶縁膜1820が形成されている。また、絶縁膜18
20上には、第2の画素電極1824が形成されている。配線1818は絶縁膜1820
に形成されるコンタクトホール1823において、第2の画素電極1824と接続してい
る。第2の画素電極1824には、実施の形態1にて示した画素電極と同様の材料を用い
ることができる。なお、
図19に示すように、第1の画素電極(共通電位線1809)と
第2の画素電極1824との間に横電界が発生するように、第1の画素電極(共通電位線
1809)及び第2の電極が形成される。また、第2の画素電極1824のスリットの部
分が第1の画素電極(共通電位線1809)の電極部分と咬み合うように形成される。
【0137】
第1の画素電極(共通電位線1809)と第2の画素電極1824との間に電位差が生
じると、第1の画素電極(共通電位線1809)と第2の画素電極1824との間に電界
が発生する。この電界を利用して液晶分子を水平に回転させる。この場合、液晶分子は水
平方向に配列するため、見る角度によってコントラストが低減する等の問題は少なく、視
野角が広がることになる。
【0138】
なお、保持容量は第1の画素電極(共通電位線1809)と容量電極1815の間にゲ
ート絶縁膜1806を設けることにより形成されている。容量電極1815と第2の画素
電極1824はコンタクトホール1833を介して接続されている。
【0139】
次に、TN方式の液晶表示装置について説明する。
【0140】
図20と
図21は、TN方式の液晶表示装置の画素構造を示している。
図20は断面図
であり、
図21は平面図である。なお、
図20は
図21の線分MNにおける断面図である
。以下の説明ではこの両図を参照して説明する。
【0141】
画素電極2024はコンタクトホール2023により、配線2018でTFT2028
と接続している。データ線として機能する配線2016は、TFT2028と接続してい
る。TFT2028は実施の形態1又は2に示すTFTを適用することができる。
【0142】
画素電極2024には、実施の形態1にて示した画素電極と同様の材料を用いることが
できる。
【0143】
対向基板2001には、遮光膜2032、着色膜2036、対向電極2040、配向膜
2060などが形成されている。また、着色膜2036と対向電極2040の間には平坦
化膜2037が形成され、液晶の配向乱れを防いでいる。画素電極2024上には配向膜
2061が形成されている。液晶層2050は画素電極2024と対向電極2040の間
に設けられている。
【0144】
また、基板2000又は対向基板2001には、着色膜(カラーフィルター)や、ディ
スクリネーションを防ぐための遮蔽膜(ブラックマトリクス)などが形成されていても良
い。また、基板2000のTFT2028が形成されている面とは逆の面に偏光板を貼り
合わせ、また対向基板2001の対向電極2040が形成されている面とは逆の面に、偏
光板を貼り合わせておく。対向電極2040は、実施の形態1にて示した画素電極と同様
の材料を適宜用いることができる。
【0145】
なお、保持容量はゲート電極2002と同じ層にて形成された容量配線2004とゲー
ト絶縁膜2006、容量電極2015によって形成されている。容量電極2015と画素
電極2024はコンタクトホール2033を介して接続されている。
【0146】
以上により、微結晶半導体を画素トランジスタのチャネル形成領域として用いた様々な
方式の液晶表示装置を提供することができる。
【0147】
本発明の液晶表示装置は、オフ電流が小さく、また、ばらつきの少ない薄膜トランジス
タを用いているため、開口率を向上させることができる。これにより、輝度が向上し、優
れた映像を表示することが可能となる。また、バックライトの輝度を低減することが可能
であるため、バックライトの寿命向上の効果をもたらす。
【0148】
なお、本実施の形態は、実施の形態1又は2と適宜組み合わせて用いることができる。
【0149】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の液晶表示装置を用いた電子機器について、
図22を参照し
て説明する。
【0150】
本発明の半導体装置を用いて作製される電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメ
ラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム
、音響再生装置(カーオーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末
(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備
えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD
)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げ
られる。
【0151】
図22(A)はテレビ受像器又はパーソナルコンピュータのモニタである。筺体220
1、支持台2202、表示部2203、スピーカー部2204、ビデオ入力端子2205
等を含む。表示部2203には、本発明の液晶表示装置が用いられている。本発明により
、開口率を向上し、輝度が向上したテレビ受像器又はパーソナルコンピュータのモニタを
提供することができる。
【0152】
図22(B)はデジタルカメラである。本体2211の正面部分には受像部2213が
設けられており、本体2211の上面部分にはシャッターボタン2216が設けられてい
る。また、本体2211の背面部分には、表示部2212、操作キー2214、及び外部
接続ポート2215が設けられている。表示部2212には、本発明の液晶表示装置が用
いられている。本発明により、開口率を向上し、輝度が向上したデジタルカメラを提供す
ることができる。
【0153】
図22(C)はノート型パーソナルコンピュータである。本体2221には、キーボー
ド2224、外部接続ポート2225、ポインティングデバイス2226が設けられてい
る。また、本体2221には、表示部2223を有する筐体2222が取り付けられてい
る。表示部2223には、本発明の液晶表示装置が用いられている。本発明により、開口
率を向上し、輝度が向上したノート型パーソナルコンピュータを提供することができる。
【0154】
図22(D)はモバイルコンピュータであり、本体2231、表示部2232、スイッ
チ2233、操作キー2234、赤外線ポート2235等を含む。表示部2232にはア
クティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部2232には、本発明の液晶表示
装置が用いられている。本発明により、開口率を向上し、輝度が向上したモバイルコンピ
ュータを提供することができる。
【0155】
図22(E)は画像再生装置である。本体2241には、表示部2244、記録媒体読
み込み部2245及び操作キー2246が設けられている。また、本体2241には、ス
ピーカー部2247及び表示部2243それぞれを有する筐体2242が取り付けられて
いる。表示部2243及び表示部2244それぞれには、本発明の液晶表示装置が用いら
れている。本発明により、開口率を向上し、輝度が向上した画像再生装置を提供すること
ができる。
【0156】
図22(F)は電子書籍である。本体2251には操作キー2253が設けられている
。また、本体2251には複数の表示部2252が取り付けられている。表示部2252
には、本発明の液晶表示装置が用いられている。本発明により、開口率を向上し、輝度が
向上した電子書籍を提供することができる。
【0157】
図22(G)はビデオカメラであり、本体2261には外部接続ポート2264、リモ
コン受信部2265、受像部2266、バッテリー2267、音声入力部2268、操作
キー2269が設けられている、また、本体2261には、表示部2262を有する筐体
2263が取り付けられている。表示部2262には、本発明の液晶表示装置が用いられ
ている。本発明により、開口率を向上し、輝度が向上したビデオカメラを提供することが
できる。
【0158】
図22(H)は携帯電話であり、本体2271、筐体2272、表示部2273、音声
入力部2274、音声出力部2275、操作キー2276、外部接続ポート2277、ア
ンテナ2278等を含む。表示部2273には、本発明の液晶表示装置が用いられている
。本発明により、開口率を向上し、輝度が向上した携帯電話を提供することができる。
【0159】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが
可能である。なお、本実施の形態は、実施の形態1乃至3と適宜組み合わせて用いること
ができる。
【符号の説明】
【0160】
100 基板
102 ゲート電極
104a ゲート絶縁層
104b ゲート絶縁層
106 微結晶半導体層
108 バッファー層
110 不純物元素が添加された半導体層
112 マスク
114 微結晶半導体層
116 バッファー層
118 不純物元素が添加された半導体層
120a 導電層
120b 導電層
120c 導電層
122 マスク
124a 導電層
124b 導電層
124c 導電層
126a 導電層
126b 導電層
126c 導電層
128a 端部
128b 端部
130a 端部
130b 端部
132 ソース領域又はドレイン領域
134 ソース領域又はドレイン領域
136 バッファー層
138 端部
140 端部
142 薄膜トランジスタ
144 絶縁層
146 画素電極
600 基板
602 画素部
604 走査線駆動回路
606 シール材
608 対向基板
610 液晶
612 信号線駆動回路
614 トランジスタ
616 薄膜トランジスタ
618 画素電極
620 対向電極
622 スペーサー
624 配線
626 配線
628 FPC
630 接続端子
632 異方性導電材料
634 配線
640 対向電極