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特開2024-153900弾性波共振子、弾性波フィルタ、分波器、通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153900
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】弾性波共振子、弾性波フィルタ、分波器、通信装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20241022BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20241022BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/64 Z
H03H9/72
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024129640
(22)【出願日】2024-08-06
(62)【分割の表示】P 2022531988の分割
【原出願日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2020110833
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】笠松 直史
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スプリアスの強度を低減する弾性波共振子、弾性波フィルタ、分波器及び通信装置を提供する。
【解決手段】弾性波共振子4は、圧電体6と、前記圧電体6上に位置し、弾性波の伝搬方向TDに配列された複数の電極指14と、を備える。複数の電極指14は、第1電極指群14Aと、該第1電極指群14Aの各電極指の間に形成された第2電極指群14Bと、を含む。第1電極指群14Aの電極指のデューティ比が、第1の変化量に基づいて、伝搬方向TDの何れか一方に向かって次第に変化し、第2電極指群14Bの電極指のデューティ比が、第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と、
前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、
複数の電極指は、第1電極指群と、該第1電極指群の各電極指の間に形成された第2電極指群とを含み、
前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、第1の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、
前記複数の電極指が位置する領域の80%以上における前記弾性波の主共振の共振周波数が同一である弾性波共振子。
【請求項2】
圧電体と、
前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、
複数の電極指は、第1電極指群と、該第1電極指群の各電極指の間に形成された第2電極指群とを含み、
前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、第1の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、
前記第1電極指群の電極指における、デューティ比の最大値が、前記第2電極指群の電極指における、デューティ比の最大値よりも大きく、
前記第1電極指群の電極指における、デューティ比の最小値が、前記第2電極指群の電極指における、デューティ比の最小値よりも小さい弾性波共振子。
【請求項3】
圧電体と、
前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、
複数の電極指は、第1電極指群と、該第1電極指群の各電極指の間に形成された第2電極指群とを含み、
前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、第1の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、
前記圧電体の厚みは、何れかの前記電極指間のピッチ以下の厚みである弾性波共振子。
【請求項4】
圧電体と、
前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、
複数の電極指は、第1電極指群と、該第1電極指群の各電極指の間に形成された第2電極指群とを含み、
前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、第1の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、
前記複数の電極指が位置する領域は、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、前記伝搬方向のうちの一方の方向である第1方向に向かって次第に増加する第1領域と、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に減少する第2領域とを備え、
前記第1領域において、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に減少し、前記第2領域において、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に増加する弾性波共振子。
【請求項5】
前記複数の電極指が位置する領域は、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、前記伝搬方向のうちの一方の方向である第1方向に向かって次第に増加する第1領域と、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に減少する第2領域とを備えた請求項1から3の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項6】
前記第1領域において、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に増加し、前記第2領域において、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に減少する請求項5に記載の弾性波共振子。
【請求項7】
前記第1電極指群の電極指における、デューティ比の最大値と最小値との差と、前記第2電極指群の電極指における、デューティ比の最大値と最小値との差とが異なる請求項1から6の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項8】
前記第1電極指群の電極指における、デューティ比の最大値と、前記第2電極指群の電極指における、デューティ比の最大値とが異なる請求項1から7の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項9】
前記第1電極指群の電極指における、デューティ比の最小値と、前記第2電極指群の電
極指における、デューティ比の最小値とが異なる請求項1から8の何れか1項に記載の弾
性波共振子。
【請求項10】
前記圧電体上に、前記複数の電極指の少なくとも一部を含むIDT電極を備えた請求項1から9の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項11】
前記圧電体上に、前記複数の電極指の一部を含むIDT電極と、前記IDT電極に対して前記伝搬方向の両端に位置し、前記複数の電極指の他の一部をそれぞれ含む一対の反射器とを備えた請求項1から9の何れか1項に記載の弾性波共振子。
【請求項12】
前記IDT電極は、第1バスバーと、該第1バスバーと対向する第2バスバーとを備え、
前記第1電極指群の電極指の少なくとも一部は、前記第1バスバーから延び、前記第2電極指群の電極指の少なくとも一部は、前記第2バスバーから延びる請求項10または11に記載の弾性波共振子。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載の弾性波共振子を少なくとも一つ以上備えた弾性波フィルタ。
【請求項14】
アンテナ端子と、
送信信号をフィルタリングして前記アンテナ端子に出力する送信フィルタと、
前記アンテナ端子からの受信信号をフィルタリングする受信フィルタと、
を有しており、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの少なくとも一方が請求項13に記載の弾性
波フィルタを含む分波器。
【請求項15】
アンテナと、
前記アンテナに前記アンテナ端子が接続された請求項14に記載の分波器と、
前記送信フィルタおよび前記受信フィルタに接続されたICと、
を有した通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行文献1には、圧電基板上に、ある特定の共振周波数を有するインターディジタルトランスデューサを複数備えた弾性波フィルタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/050837号
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る弾性波共振子は、圧電体と、前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備える。複数の電極指は、第1電極指群と、該第1電極指群の各電極指の間に形成された第2電極指群とを含む。前記第1電極指群の電極指のデューティ比は、第1の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化する。前記第2電極指群の電極指のデューティ比は、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記複数の電極指が位置する領域の80%以上における前記弾性波の主共振の共振周波数が同一である。
【0005】
本開示の一態様に係る弾性波共振子は、圧電体と、前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、複数の電極指は、第1電極指群と、該第1電極指群の各電極指の間に形成された第2電極指群とを含み、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、第1の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記第1電極指群の電極指における、デューティ比の最大値が、前記第2電極指群の電極指における、デューティ比の最大値よりも大きく、前記第1電極指群の電極指における、デューティ比の最小値が、前記第2電極指群の電極指における、デューティ比の最小値よりも小さい。
【0006】
本開示の一態様に係る弾性波共振子は、圧電体と、前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、複数の電極指は、第1電極指群と、該第1電極指群の各電極指の間に形成された第2電極指群とを含み、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、第1の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記圧電体の厚みは、何れかの前記電極指間のピッチ以下の厚みである。
【0007】
本開示の一態様に係る弾性波共振子は、圧電体と、前記圧電体上に位置し、弾性波の伝搬方向に配列された、複数の電極指とを備え、複数の電極指は、第1電極指群と、該第1電極指群の各電極指の間に形成された第2電極指群とを含み、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、第1の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、前記伝搬方向の何れか一方に向かって次第に変化し、前記複数の電極指が位置する領域は、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、前記伝搬方向のうちの一方の方向である第1方向に向かって次第に増加する第1領域と、前記第1電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に減少する第2領域とを備え、前記第1領域において、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に減少し、前記第2領域において、前記第2電極指群の電極指のデューティ比が、前記第1方向に向かって次第に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態1に係る弾性波共振子の概略平面図である。
図2】本開示の実施形態1に係る弾性波共振子の概略断面図である。
図3】本開示の実施形態1に係る弾性波共振子の電極指のデューティ比の変化を示すグラフである。
図4】本開示の実施形態1および比較形態に係る弾性波共振子について、特性を比較するためのグラフである。
図5】本開示の実施形態2に係る弾性波共振子の反射器付近を拡大して示す概略平面図である。
図6】本開示の各実施形態に係る通信装置を説明する概略図である。
図7】本開示の各実施形態に係る分波器を説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において用いられる図は模式図であり、図面上の各部材の寸法比率を厳密に示すものではない。
【0010】
<共振子の構成>
本実施形態に係る弾性波フィルタは、少なくとも一つの弾性波共振子を備える。例えば、弾性波フィルタは、複数の弾性波共振子がラダー型に接続されることにより、ラダー型フィルタを構成する。本実施形態に係る弾性波フィルタは、複数の弾性波共振子を、各弾性波共振子における弾性波の伝搬方向と直交する方向に、並列して備えていてもよい。
【0011】
以下、図1および図2を参照して、本実施形態に係る弾性波共振子4について、より詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る弾性波共振子4の概略平面図であり、図2の領域Aについての拡大平面図である。図2は、本実施形態に係る弾性波共振子4の概略断面図であり、図1のB-B線矢視断面図である。なお、本明細書において、弾性波共振子4における弾性波の伝搬方向TDを、図1を含む弾性波共振子4の平面図においては、紙面に向かって上下方向、図2を含む弾性波共振子4の断面図においては、紙面に向かって左右方向とする。また、本明細書において、図2を含む弾性波共振子4の断面図においては、図示の簡単のため、断面における部材のみを示し、当該断面よりも奥側の部材の図示を省略する。
【0012】
本実施形態に係る弾性波共振子4は、図1および図2に示すように、少なくとも、圧電体6と、当該圧電体6上のIDT電極8とを備える。なお、本明細書の図2を含む弾性波共振子4の断面図においては、圧電体6に対し、IDT電極8が、紙面に向かって上側に位置するように示す。
【0013】
圧電体6は、圧電性の材料をからなり、例えば、タンタル酸リチウム(以下、LTとも記載する)の単結晶、ニオブ酸リチウム等を用いてもよい。弾性波共振子4において、後述するIDT電極8を含む導電層に電圧が印加されることにより、圧電体6を伝搬方向TDに伝搬する弾性波が励振される。本実施形態において、圧電体6は、図2に示すように、一定の厚みD6を有していてもよい。なお、本明細書において、「厚みが一定」とは、必ずしも、厚みが厳密に一定であることを指さず、圧電体6を伝搬する弾性波の特性に、著しい影響を及ぼさない範囲において、多少の変動を許容する。
【0014】
<IDT電極および反射器の詳細>
IDT電極8は、一対の櫛歯電極10を含む。特に、本実施形態において、櫛歯電極10は、図1に示すように、第1櫛歯電極10Aと第2櫛歯電極10Bとを、一対の櫛歯電極として含む。なお、本明細書において、図1を含む弾性波共振子4の平面図においては、視認性の改善のために、第1櫛歯電極10Aにハッチングを施している。櫛歯電極10は、例えば、バスバー12と、該バスバー12から互いに延びる複数の電極指14と、複数の電極指14のそれぞれの間において、バスバー12から突出する、複数のダミー電極16を含む。一対の櫛歯電極10は、複数の電極指14が、互いに噛み合うように配置されている。
【0015】
バスバー12は、概ね一定の幅を有し、伝搬方向TDに概ね沿って形成されている。また、一対のバスバー12は、伝搬方向TDと概ね直交する方向において、互いに対向している。特に、バスバー12は、第1櫛歯電極10Aのバスバーとして形成された第1バスバー12Aと、該第1バスバー12Aに対向し、第2櫛歯電極10Bのバスバーとして形成された第2バスバー12Bとを含む。なお、圧電体6を伝搬する弾性波に著しい影響を及ぼさない程度において、バスバー12は、幅が変化してもよく、あるいは、伝搬方向TDから傾斜して形成されていてもよい。
【0016】
各電極指14は、概ねバスバー12の幅方向に沿って長尺状に形成される。各櫛歯電極10において、各電極指14は、伝搬方向TDに配列されている。また、一方のバスバー12から延びる電極指14と、他方のバスバー12から延びる電極指14は、伝搬方向TDにおいて、交互に配置されている。
【0017】
各電極指14の本数は、図1に示す本数に限られず、弾性波共振子4に求められる特性に応じて、適切に設計されてよい。また、各電極指14の長さは、図1に示すように、略一定であってもよく、あるいは、伝搬方向TDにおける位置によって、互いに長さがことなる、いわゆるアポタイズが施されていてもよい。なお、IDT電極8の一部において、電極指14の一部が「間引き」されていてもよい。換言すれば、IDT電極8は、その一部において、電極指14の一部が形成されていない領域を含んでいてもよい。
【0018】
各ダミー電極16は、概ねバスバー12の幅方向に沿って突出する。また、一方のバスバー12から突出するダミー電極16は、他方のバスバー12から延びる電極指14の先端と、伝搬方向TDと直交する方向において、ギャップを介し互いに対向する。なお、本実施形態に係る弾性波共振子4は、ダミー電極16を備えていなくともよい。
【0019】
弾性波共振子4は、さらに、圧電体6上の、電極指14に対して伝搬方向TDの両端に位置する一対の反射器18を備える。反射器18は、互いに対向する一対のバスバー20から延びる複数のストリップ電極22を含む。反射器18は、電気的に浮遊状態であってもよく、あるいは、反射器18には、基準電位が与えられていてもよい。なお、IDT電極8と反射器18とは、同層であってもよく、導電層に含まれていてもよい。IDT電極8と反射器18とは、金属材料からなり、例えば、Alを主成分とする合金からなっていてもよい。また、反射器18の各ストリップ電極22の本数、形状等は、図1に示す構成に限られず、電極指14と同じく、弾性波共振子4に求められる特性に応じて、適切に設計されてよい。
【0020】
なお、本明細書において、「電極指」とは、IDT電極8の複数の電極指14と、弾性波共振子4が反射器18を備える場合には、反射器18の複数のストリップ電極22とを含む。
【0021】
本実施形態に係る弾性波共振子4において、図1および図2に示すように、IDT電極8の複数の電極指14は、平面視において、電極指配置領域24内に位置する。また、本実施形態において、電極指配置領域24は、第1領域24Aと、第2領域24Bとを、少なくとも一つずつ含む。
【0022】
ここで、図1に示すように、伝搬方向TDのうちの一方の方向を第1方向T1とする。なお、図1においては、第1方向T1を、伝搬方向TDのうち、図1の紙面に向かって上から下に向かう方向とする。なお、図1に示すように、本実施形態において、電極指配置領域24は、第2領域24Bを、第1領域24Aよりも第1方向T1側に備えている。例えば、図1に示すように、電極指14は、半数が第1領域24Aに、残りの半数が第2領域24Bに形成されていてもよい。
【0023】
<電極指のデューティ比>
本実施形態に係る弾性波共振子4において、図1および図2に示すように、IDT電極8の複数の電極指14は、第1電極指群14Aと、第2電極指群14Bとを含む。第1電極指群14Aは、第1バスバー12Aから延び、第2電極指群14Bは、第2バスバー12Bから延びる。したがって、図1および図2に示すように、第2電極指群14Bは、第1電極指群14Aの各電極指の間に形成されている。
【0024】
本実施形態に係る弾性波共振子4は、各電極指14のデューティ比に特徴を有する。電極指14のデューティ比は、ある電極指14の幅Wを、当該電極指14と隣接する電極指14との間のピッチによって割った値である。
【0025】
本実施形態において、少なくとも一部の電極指14のデューティ比は、伝搬方向TDの何れか一方に向かって次第に変化する。特に、本実施形態において、電極指14のうち、第1電極指群14Aの少なくとも一部の電極指14のデューティ比は、第1の変化量に基づいて、伝搬方向TDの何れか一方に向かって次第に変化する。対して、電極指14のうち、第2電極指群14Bの少なくとも一部の電極指14のデューティ比は、第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、伝搬方向TDの何れか一方に向かって次第に変化する。
【0026】
ここで、一般に、圧電体6を伝搬する弾性波のうち、弾性波共振子4によって励振される弾性波が有する共振周波数は、電極指14のデューティ比によって変化し、例えば、電極指14のデューティ比が小さくなることにより高くなる。このため、弾性波共振子4において、電極指14のデューティ比を除く、上記共振周波数に寄与するパラメータが、弾性波共振子4の位置によって略一定である場合には、弾性波共振子4の位置によって共振周波数に差異が生じる。
【0027】
なお、本明細書において、「共振周波数」とは、弾性波共振子4によって励振される弾性波のうち、主共振のモードによって励振される弾性波が有する共振周波数を指し、副共振あるいはスプリアスのモードによって励振される弾性波の周波数を指さない。
【0028】
<電極指のデューティ比の例>
本実施形態における、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとの、それぞれの電極指14のデューティ比の変化の例について、図3を参照し、より詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る弾性波共振子4の電極指14について、伝搬方向TDにおける弾性波共振子4上の位置と、電極指14のデューティ比との関係を示すグラフである。図3のグラフにおいて、横軸は、電極指14が形成される、伝搬方向TDにおける弾性波共振子4上の位置を示し、縦軸は、当該位置における電極指14のデューティ比を示す。横軸に示す、24A、24Bは、それぞれ、第1領域24A、第2領域24Bが形成される位置に対応する。
【0029】
また、図3のグラフにおいては、横軸の正方向が第1方向T1と対応する。さらに、図3のグラフにおいては、実線にて第1電極指群14Aの電極指14のデューティ比を、破線にて第2電極指群14Bの電極指14のデューティ比を示す。
【0030】
なお、電極指のデューティ比は、当該電極指ごとに決定されるため、本来図3に示すグラフは、離散的にデューティ比の値がプロットされる。しかしながら、本明細書において、電極指14のデューティ比の変化をグラフにて示す場合には、図示の簡単のために、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとのそれぞれの電極指14のデューティ比が、連続的に変化しているとみなし、図示を行っている。
【0031】
本実施形態に係る弾性波共振子4において、第1領域24Aに位置する第1電極指群14Aの電極指14のデューティ比は、例えば、図3のグラフ301に示すように、第1方向T1に向かって、0.3から0.6まで次第に増加する。対して、当該弾性波共振子4において、第1領域24Aに位置する第2電極指群14Bの電極指14のデューティ比は、第1方向T1に向かって、0.4から0.5まで次第に増加する。
【0032】
一方、本実施形態に係る弾性波共振子4において、第2領域24Bに位置する第1電極指群14Aの電極指14のデューティ比は、例えば、図3に示すように、第1方向T1に向かって、0.6から0.3まで次第に減少する。対して、当該弾性波共振子4において、第2領域24Bに位置する第2電極指群14Bの電極指14のデューティ比は、第1方向T1に向かって、0.5から0.4まで次第に減少する。
【0033】
このため、上記弾性波共振子4の第1領域24Aにおいては、第1方向T1に向かって、第1電極指群14Aの電極指14のデューティ比が、第2電極指群14Bの電極指14のデューティ比と比べて大きい変化量に基づいて、次第に増加している。また、上記弾性波共振子4の第2領域24Bにおいては、第1方向T1に向かって、第1電極指群14Aの電極指14のデューティ比が、第2電極指群14Bの電極指14のデューティ比と比べて大きい変化量に基づいて、次第に減少している。
【0034】
なお、本実施形態に係る弾性波共振子4の各電極指14のデューティ比の変化は、図3のグラフ301に示す例に限られない。例えば、本実施形態に係る弾性波共振子4において、第1領域24Aに位置する第2電極指群14Bの電極指14のデューティ比は、図3のグラフ302に示すように、第1方向T1に向かって、0.5から0.4まで次第に減少していてもよい。この場合、第2領域24Bに位置する第2電極指群14Bの電極指14のデューティ比は、図3のグラフ302に示すように、第1方向T1に向かって、0.4から0.5まで次第に減少していてもよい。なお、図3のグラフ301とグラフ302とにそれぞれ対応する弾性波共振子4において、第1電極指群14Aの電極指14のデューティ比の変化は同一であってもよい。
【0035】
上記より、本実施形態に係る弾性波共振子4においては、第1領域24Aと第2領域24Bとのそれぞれにおいて、伝搬方向TDの何れか一方に対する、電極指14のデューティ比の変化が、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとにおいて異なっている。
【0036】
<電極指のピッチ>
複数の電極指14のそれぞれは、互いにあるピッチPを介して配置されている。また、弾性波共振子4によって励振される弾性波が有する共振周波数は、電極指14のピッチPに依存する。一般に、弾性波共振子4によって励振される弾性波が有する共振周波数は、電極指14のピッチPが狭くなることにより高くなる。
【0037】
本実施形態において、ピッチPは、電極指配置領域24において、電極指14のデューティ比の差異によってもたらされる共振周波数の差異への作用を打ち消すように変化する。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4は、ピッチPがいずれの位置においても略一定である場合と比較して、電極指配置領域24の各位置において発振する共振周波数の差が小さい。
【0038】
これにより、圧電体6の各位置において励振される弾性波の周波数が均一化し、弾性波共振子4の特性が改善する。なお、各電極指14間におけるピッチPは、各電極指14のデューティ比の差異から、シミュレーションにより、容易に決定することができる。
【0039】
本実施形態において、電極指配置領域24の少なくとも一部において発振する共振周波数は、同一であってもよい。また、電極指配置領域24の80%以上において発振する共振周波数は、同一であってもよい。これにより、圧電体6の各位置において励振される弾性波の周波数がより均一化し、弾性波共振子4の特性が改善する。
【0040】
なお、本明細書において、「周波数が同一」とは、必ずしも、周波数が厳密に同一であることを指さない。例えば、電極指配置領域24において圧電体6を伝搬する弾性波の主共振の共振周波数は、弾性波共振子4の特性に著しい影響を及ぼさない範囲において、多少の差異を許容する。
【0041】
具体的には、「ある領域における共振周波数が同一」と判断するための数値に、当該領域における共振周波数の差を、所望の共振周波数で割った値に100を乗じた値(dfr)を用いてもよい。例えば、dfrが、-0.856以上0.856以下の場合に、「当該領域における共振周波数が同一」としてもよい。
【0042】
dfrの値が、上記範囲を満たす場合には、弾性波共振子4として周波数特性において、各位置において共振周波数に差異があることに起因するスプリアスの発生を抑制することができる。また、本実施形態において、上記範囲を満たす場合、当該領域における共振周波数の差の絶対値は、50MHz以下である。
【0043】
なお、dfrが、-1.028、または、1.028である場合においては、スプリアスの発生が確認されている。この場合、本実施形態において、当該領域における共振周波数の差の絶対値は、60MHzに相当する。
【0044】
ここで、ピッチPの値は、例えば、0.70nmから0.75nm程度であってもよい。また、圧電体6の厚みD6は、何れかの電極指14間におけるピッチP以下の厚みであってもよい。これにより、比較的広いピッチを有する電極指14を備えた弾性波共振子4によって、共振周波数をより高くすることが可能となる。
【0045】
また、圧電体6の厚みD6は、特に限定されないが、本実施形態においては、例えば、第1ピッチPAと第2ピッチPBとの何れかの、0.4倍から1.2倍程度である。例えば、圧電体6の厚みD6は、0.28μmから0.9μm程度である。
【0046】
なお、本実施形態において、各電極指14の厚みD14は、電極指配置領域24内において同一であってもよい。電極指14の厚みD14は、例えば、何れかの電極指14間におけるピッチPの、0.16倍程度である。また、反射器18のストリップ電極22の厚みは、電極指14の厚みと同一であってもよい。
【0047】
<固着基板>
弾性波共振子4の各構成の説明に戻ると、図2に示すように、弾性波共振子4は、さらに、圧電体6よりも、IDT電極8と反対の側に支持基板26を備える。本実施形態において、支持基板26が、圧電体6を伝搬する弾性波の特性に与える影響は、十分に小さい。このため、支持基板26の材料および寸法は適宜設計されてもよい。例えば、支持基板26は、絶縁材料を含み、樹脂またはセラミックを含んでいてもよい。支持基板26の厚みは、例えば、圧電体6の厚みD6よりも厚い。温度変化に伴う、弾性波の特性に与える影響をより低減するために、支持基板26は、圧電体6の線膨張係数よりも線膨張係数が低い材料からなっていてもよい。
【0048】
加えて、弾性波共振子4は、圧電体6と支持基板26との間に、反射多層膜30を備えている。弾性波共振子4は、反射多層膜30と支持基板26との間に、密着層28を含んでいてもよい。なお、圧電体6、支持基板26、密着層28、および反射多層膜30を含む積層体を、固着基板36と称することがある。
【0049】
密着層28は、支持基板26と反射多層膜30との密着性を向上させるために挿入される層であり、圧電体6を伝搬する弾性波の特性に与える影響は十分に小さい。
【0050】
反射多層膜30は、第1層32と第2層34とを、それぞれ交互に積層して含む。第1層32の剤料は、第2層34の材料と比較して、音響インピーダンスが低い。これにより、第1層32と第2層34との界面においては、弾性波の反射率が高くなるため、弾性波フィルタの外部への、圧電体6を伝搬する弾性波漏れだしを低減する。
【0051】
例えば、第1層32は、二酸化ケイ素(SiO)からなる。また、例えば、第2層34は、酸化ハフニウム(HfO)からなる。他にも、第2層34は、五酸化タンタル(Ta)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、および酸化マグネシウム(MgO)の何れかからなっていてもよい。
【0052】
反射多層膜30は、第1層32と第2層34とを、それぞれ、少なくとも一層含んでいればよく、層数は特に問われない。また、第1層32と第2層34との層数の合計値は、奇数であってもよく、偶数であってもよい。ここで、反射多層膜30の層のうち、圧電体6と接する層は、第1層32であるが、密着層28と接する層は、第1層32と第2層34とのどちらであってもよい。
【0053】
例えば、反射多層膜30は、第1層32と第2層34とを、合計して、3層以上12層以下含んでいてもよい。ただし、反射多層膜30は、第1層32と第2層34とを、それぞれ一層ずつのみ含んでいてもよい。また、第1層32と第2層34とのそれぞれの間においても、反射多層膜30の各層の密着性の向上、および、反射多層膜30における弾性波の拡散防止の観点から、密着層28が形成されていてもよい。
【0054】
なお、図2に示すように、第1層32は、それぞれ、一定の厚みD32を有していてもよく、第2層34は、それぞれ、一定の厚みD34を有していてもよい。厚みD32と厚みD34とは、例えば、何れかの電極指14間におけるピッチPの、0.25倍から2倍程度であってもよい。
【0055】
<ピッチおよびデューティ比の差異による特性変化>
本実施形態に係る弾性波共振子4の特性を評価するために、比較形態に係る弾性波共振子と特性を比較して説明する。比較形態に係る弾性波共振子は、全ての電極指14のデューティ比が、0.55にて一定であり、かつ、全ての電極指14間のピッチPが一定である。上記点を除き、比較形態に係る弾性波共振子は、本実施形態に係る弾性波共振子4と同一の構成を備える。
【0056】
図4は、比較形態および本実施形態のそれぞれに係る弾性波共振子において、励振する弾性波の特性を示すグラフであり、弾性波共振子におけるインピーダンスの位相を、周波数毎に示すグラフである。換言すれば、図4のグラフは、各弾性波共振子において発振する弾性波の強度を、周波数毎に示すグラフである。図4のグラフにおいて、縦軸を位相(単位:deg)、横軸を周波数(単位:MHz)とした。
【0057】
図4のグラフ401は、比較形態に係る弾性波共振子における、シミュレーションによる計算結果を示す。また、図4のグラフ402は、図3のグラフ301に、電極指14のデューティ比の変化を示した、本実施形態に係る弾性波共振子4におけるシミュレーションによる計算結果を示す。なお、図4のグラフ402に特性を示す弾性波共振子4の電極指14のピッチPは、図4のグラフ401に特性を示す弾性波共振子と比較して、共振周波数が同一となるように決定されている。このため、図4のそれぞれのグラフに示すように、比較形態および本実施形態のそれぞれに係る弾性波共振子は、4700MHz付近に主共振の周波数を有する。
【0058】
ここで、図4に示すグラフ401から明らかであるように、比較形態に係る弾性波共振子においては、主共振の周波数の他、6000MHz付近および6750MHz付近の周波数において励振するスプリアスが生じる。一方、図4に示すグラフ402から明らかであるように、本実施形態に係る弾性波共振子においては、比較形態に係る弾性波共振子と比較して、スプリアスの強度が低減している。
【0059】
一般に、弾性波共振子において、電極指のデューティ比およびピッチの変化に対し、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数は、主共振および反共振のモードにおいて励振する、弾性波の周波数とは、異なる依存性を有する。このため、弾性波共振子において、主共振の周波数を一定としつつ、電極指のピッチとデューティ比との双方を変化させた場合、スプリアスのモードにおいて励振する弾性波の周波数が変化する。
【0060】
ここで、本実施形態に係る弾性波共振子4は、電極指配置領域24内において、電極指14のデューティ比が変化している。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4において、共振するスプリアスの周波数は、電極指配置領域24内の位置によって異なっている。このため、デューティ比が一定である電極指を備えた弾性波共振子と比較して、本実施形態に係る弾性波共振子4は、共振するスプリアスの周波数を一定値に集中させることを抑制し、全体として、スプリアスの強度を低減することができる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る弾性波共振子4は、電極指配置領域24内において、電極指14のデューティ比が変化する上、主共振の周波数の差異が低減している。したがって、図4のグラフ402に示すように、主共振の周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度を低減することができ、特性を改善することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る弾性波共振子4において、第1電極指群14Aと第2電極指群14Bとの間において、第1方向T1に対する電極指14のデューティ比の変化量に差異がある。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4の、伝搬方向TDにおいて互いに隣り合う電極指14について、デューティ比の変化の法則に差異がある。
【0063】
これにより、本実施形態に係る弾性波共振子4は、伝搬方向TDにおいて互いに隣り合う電極指14について、デューティ比の差異をより効率的に異ならせることができる。また、本実施形態に係る弾性波共振子4は、電極指14のデューティ比の変化による、共振周波数の変化を、電極指14間のピッチPの設計により、比較的容易に均一化することが可能である。
【0064】
また、本実施形態において、図3に示すように、第1電極指群14Aの電極指14における、デューティ比の最大値は、第2電極指群14Bの電極指14における、デューティ比の最大値と異なっていてもよい。特に、本実施形態において、図3に示すように、第1電極指群14Aの電極指14における、デューティ比の最大値が、第2電極指群14Bの電極指14における、デューティ比の最大値よりも大きくともよい。
【0065】
さらに、本実施形態において、図3に示すように、第1電極指群14Aの電極指14における、デューティ比の最小値は、第2電極指群14Bの電極指14における、デューティ比の最小値と異なっていてもよい。特に、本実施形態において、図3に示すように、第1電極指群14Aの電極指14における、デューティ比の最小値が、第2電極指群14Bの電極指14における、デューティ比の最小値よりも小さくともよい。
【0066】
加えて、本実施形態において、図3に示すように、第1電極指群14Aの電極指14における、デューティ比の最大値と最小値との差は、第2電極指群14Bの電極指14における、デューティ比の最大値と最小値との差と異なっていてもよい。
【0067】
上記構成により、本実施形態に係る弾性波共振子4は、伝搬方向TDにおいて互いに隣り合う電極指14について、デューティ比の差異をより効率的に異ならせることができる
【0068】
〔実施形態2〕
<反射器のストリップ電極のデューティ比>
図5は、本実施形態に係る弾性波共振子4Aの、反射器18の周辺について拡大して示す概略平面図である。本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、例えば、反射器18の構成を除いて、前実施形態に係る弾性波共振子4と、同一の構成を備えていてもよい。なお、図5に示す反射器18は、図1等に示す反射器18と、ストリップ電極22の本数が異なる。しかしながら、前実施形態に係る弾性波共振子4についても、図5に示す反射器18と同じ本数のストリップ電極22を備えた反射器18を備えていてもよい。
【0069】
本実施形態に係る弾性波共振子4Aにおいて、図5に示すように、複数のストリップ電極22は、平面視において、電極指配置領域24内に位置する。また、本実施形態において、電極指配置領域24は、第1領域24Cと、第2領域24Dとを、少なくとも一つずつ含む。
【0070】
ここで、図5に示すように、伝搬方向TDのうちの一方の方向を第1方向T1とする。なお、図5においても、第1方向T1を、伝搬方向TDのうち、図5の紙面に向かって上から下に向かう方向とする。なお、図5に示すように、本実施形態において、電極指配置領域24は、第2領域24Dを、第1領域24Cよりも第1方向T1側に備えている。例えば、図5に示すように、ストリップ電極22は、半数が第1領域24Cに、残りの半数が第2領域24Dに形成されていてもよい。
【0071】
本実施形態に係る弾性波共振子4Aのストリップ電極22は、図5に示すように、第1ストリップ電極群22Aと、第2ストリップ電極群22Bとを含む。なお、図5においては、視認性の改善のために、第1ストリップ電極群22Aのストリップ電極22にハッチングを施している。
【0072】
ここで、図5に示すように、第1ストリップ電極群22Aのストリップ電極22と、第2ストリップ電極群22Bのストリップ電極22とは、伝搬方向TDにおいて、交互に形成されている。換言すれば、第2ストリップ電極群22Bのストリップ電極22は、第1ストリップ電極群22Aのストリップ電極22の間に形成されている。
【0073】
本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、各ストリップ電極22のデューティ比に特徴を有する。ストリップ電極22のデューティ比は、あるストリップ電極22の幅Wを、当該ストリップ電極22と隣接するストリップ電極22との間のピッチによって割った値である。
【0074】
本実施形態において、少なくとも一部のストリップ電極22のデューティ比は、伝搬方向TDの何れか一方に向かって次第に変化する。特に、本実施形態において、ストリップ電極22のうち、第1ストリップ電極群22Aの少なくとも一部のストリップ電極22のデューティ比は、第1の変化量に基づいて、伝搬方向TDの何れか一方に向かって次第に変化する。対して、ストリップ電極22のうち、第2ストリップ電極群22Bの少なくとも一部のストリップ電極22のデューティ比は、第1の変化量と異なる第2の変化量に基づいて、伝搬方向TDの何れか一方に向かって次第に変化する。
【0075】
ここで、一般に、圧電体6を伝搬する弾性波のうち、弾性波共振子4Aによって励振される弾性波が有する共振周波数は、ストリップ電極22のデューティ比によっても変化する。このため、弾性波共振子4Aにおいて、ストリップ電極22のデューティ比を除く、上記共振周波数に寄与するパラメータが、弾性波共振子4Aの位置によって略一定である場合には、弾性波共振子4Aの位置によって共振周波数に差異が生じる。
【0076】
本実施形態における、ストリップ電極22のデューティ比の変化は、例えば、図3の何れかのグラフに示す、電極指14のデューティ比の変化を、ストリップ電極22のデューティ比の変化に置き換えたものであってもよい。
【0077】
複数のストリップ電極22のそれぞれは、互いにあるピッチPを介して配置されている。また、弾性波共振子4Aによって励振される弾性波が有する共振周波数は、ストリップ電極22のピッチPにも依存する。
【0078】
本実施形態において、ピッチPは、電極指配置領域24において、ストリップ電極22のデューティ比の差異によってもたらされる共振周波数の差異への作用を打ち消すように変化する。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、ピッチPがいずれの位置においても略一定である場合と比較して、電極指配置領域24の各位置において発振する共振周波数の差が小さい。
【0079】
これにより、圧電体6の各位置において励振される弾性波の周波数が均一化し、弾性波共振子4Aの特性が改善する。なお、各ストリップ電極22間におけるピッチPは、各ストリップ電極22のデューティ比の差異から、シミュレーションにより、容易に決定することができる。なお、各ストリップ電極22の幅および厚みは、IDT電極8の電極指1
4の幅および厚みと同程度であってもよい。
【0080】
ここで、本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、電極指配置領域24内において、ストリップ電極22のデューティ比が変化している。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4Aにおいて、共振するスプリアスの周波数は、電極指配置領域24内の位置によって異なっている。このため、デューティ比が一定であるストリップ電極を含む反射器を備えた弾性波共振子と比較して、本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、共振するスプリアスの周波数を一定値に集中させることを抑制し、全体として、スプリアスの強度を低減することができる。
【0081】
さらに、本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、電極指配置領域24内において、ストリップ電極22のデューティ比が変化する上、主共振の周波数の差異が低減している。したがって、主共振の周波数の均一性を維持しつつ、スプリアスの強度を低減することができ、特性を改善することができる。
【0082】
また、本実施形態に係る弾性波共振子4Aにおいて、第1ストリップ電極群22Aと第2ストリップ電極群22Bとの間において、第1方向T1に対するストリップ電極22のデューティ比の変化量に差異がある。換言すれば、本実施形態に係る弾性波共振子4Aの、伝搬方向TDにおいて互いに隣り合うストリップ電極22について、デューティ比の変化の法則性に差異がある。
【0083】
これにより、本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、伝搬方向TDにおいて互いに隣り合うストリップ電極22について、デューティ比の差異をより効率的に異ならせることができる。また、本実施形態に係る弾性波共振子4Aは、ストリップ電極22のデューティ比の変化による、共振周波数の変化を、ストリップ電極22間のピッチPの設計により、比較的容易に均一化することが可能である。
【0084】
<その他の変形例>
各実施形態においては、弾性波共振子4、4Aが、反射多層膜30を備える例について説明した。しかしながら、本開示においてはこの限りではなく、弾性波共振子4、4Aの固着基板36は、Siの支持基板26上に直接圧電体6が形成されたものとしてもよく、あるいは、反射多層膜30に代えて、SiO等からなる絶縁層を備えるものとしてもよい。
【0085】
加えて、各実施形態に係る弾性波共振子4、4Aにおいては、圧電体6のうち、IDT電極8が形成された領域の裏面側と支持基板26との間に、空隙が位置するようにしてもよい。この場合、各実施形態に係る弾性波共振子4、4Aは、例えば、凹部を備える支持基板26上に圧電体6を配置した、いわゆる、メンブレン形状のものとしてもよい。
【0086】
<通信装置および分波器の構成の概要>
図6は、本開示の実施形態に係る通信装置40の要部を示すブロック図である。通信装置40は、電波を利用した無線通信を行なうものである。分波器42は、通信装置40において送信周波数の信号と受信周波数の信号とを分波する機能を有している。
【0087】
通信装置40において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF-IC44によって変調および周波数の引上げ(搬送波周波数の高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ46によって送信用の通過帯域以外の不要成分が除去され、増幅器48によって増幅されて分波器42に入力される。分波器42は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯域以外の不要成分を除去してアンテナ50に出力する。アンテナ50は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号に変換して送信する。
【0088】
通信装置40において、アンテナ50によって受信された無線信号は、アンテナ50によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器42に入力される。分波器42は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯域以外の不要成分を除去して増幅器52に出力する。出力された受信信号RSは、増幅器52によって増幅され、バンドパスフィルタ54によって受信用の通過帯域以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、 RF-IC44によって周波数の引下げおよび復調がなされて受信情報信号RISとされる。
【0089】
なお、送信情報信号TISおよび受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えばアナログの音声信号もしくはデジタル化された音声信号である。無線信号の通過帯域は、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)等の各種の規格に従ったものでよい。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組合せのいずれであってもよい。
【0090】
図7は、本開示の一実施形態に係る分波器42の構成を示す回路図である。分波器42は、図6において通信装置40に使用されている分波器42である。
【0091】
送信フィルタ56は、図7に示すように、直列共振子S1~S3および並列共振子P1~P3を有する。分波器42は、アンテナ端子58と、送信端子60と、受信端子62と、アンテナ端子58と送信端子60との間に配置された送信フィルタ56と、アンテナ端子58と受信端子62との間に配置された受信フィルタ64とから主に構成されている。送信端子60には増幅器48からの送信信号TSが入力され、送信端子60に入力された送信信号TSは、送信フィルタ56において送信用の通過帯域以外の不要成分が除去されてアンテナ端子58に出力される。また、アンテナ端子58にはアンテナ50から受信信号RSが入力され、受信フィルタ64において受信用の通過帯域以外の不要成分が除去されて受信端子62に出力される。
【0092】
送信フィルタ56は、例えばラダー型弾性波フィルタによって構成されている。具体的に送信フィルタ56は、その入力側と出力側との間において直列に接続された3個の直列共振子S1、S2、S3と、直列共振子同士を接続するための配線である直列腕と基準電位部Gとの間に設けられた3個の並列共振子P1、P2、P3とを有する。すなわち、送信フィルタ56は3段構成のラダー型フィルタである。ただし、送信フィルタ56においてラダー型フィルタの段数は任意である。
【0093】
並列共振子P1~P3と基準電位部Gとの間には、インダクタLが設けられている。このインダクタLのインダクタンスを所定の大きさに設定することによって、送信信号の通過帯域外に減衰極を形成して帯域外減衰を大きくしている。複数の直列共振子S1~S3および複数の並列共振子P1~P3は、それぞれ弾性波共振子からなる。
【0094】
受信フィルタ64は、例えば、多重モード型弾性波フィルタ66と、その入力側に直列に接続された補助共振子68とを有している。なお、本実施形態において、多重モードは2重モードを含むものである。多重モード型弾性波フィルタ66は平衡-不平衡変換機能を有しており、受信フィルタ64は平衡信号が出力される2つの受信端子62に接続されている。受信フィルタ64は多重モード型弾性波フィルタ66によって構成されるものに限られず、ラダー型フィルタによって構成してもよいし、平衡-不平衡変換機能を有していないフィルタであってもよい。
【0095】
送信フィルタ56、受信フィルタ64およびアンテナ端子58の接続点とグランド電位部Gとの間には、インダクタ等からなるインピーダンスマッチング用の回路を挿入してもよい。
【0096】
上述した各実施形態に係る弾性波フィルタは、例えば図6に示した分波器42における送信フィルタ56、あるいは、受信フィルタ64の、少なくとも一方のラダー型フィルタ回路を構成する弾性波素子である。送信フィルタ56、あるいは、受信フィルタ64の何れかが、上述した各実施形態に係る弾性波フィルタである場合、当該フィルタの備える弾性波共振子の全て、または、少なくとも一部は、上述した各実施形態に係る弾性波共振子
4、4A~4Gである。
【0097】
このような送信フィルタ56、あるいは、受信フィルタ64を備える分波器42を採用することにより、通信装置40のフィルタ特性を向上させることができる。
【0098】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
2…弾性波フィルタ、4・4A~4G…弾性波共振子、6…圧電体、8…IDT電極、14…電極指、14A…第1電極指群、14B…第2電極指群、14C…中間電極指群、18…反射器、24…電極指配置領域、24A…第1領域、24B…第2領域、24C…中間領域、26…支持基板、30…反射多層膜、38…保護膜、40…通信装置、42…分波器、44…RF-IC、50…アンテナ、56…送信フィルタ、58…アンテナ端子、64…受信フィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7