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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153908
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20241022BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H01Q1/38
H05K1/02 C
H05K1/02 J
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130143
(22)【出願日】2024-08-06
(62)【分割の表示】P 2021518337の分割
【原出願日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019087631
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019087676
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 綱一
(72)【発明者】
【氏名】武 誠司
(72)【発明者】
【氏名】松浦 大輔
(57)【要約】      (修正有)
【課題】給電部の付近で配線パターン領域の配線が断線することを抑制する配線基板および配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置され、複数の第1方向配線21を含む配線パターン領域20と、配線パターン領域20の複数の第1方向配線21に電気的に接続された給電部と、を備えている。第1方向配線21は、給電部の近傍に位置する第1領域と、第1領域以外の第2領域と、を有する。第1領域における第1方向配線21の線幅Wは、第2領域における第1方向配線21の線幅Wよりも太い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
基板と、
前記基板上に配置され、複数の配線を含む配線パターン領域と、
前記配線パターン領域の前記複数の配線に電気的に接続された給電部と、を備え、
前記給電部は、複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部を有する、配線基板。
【請求項2】
前記複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部は、前記給電部の面内で複数段かつ複数列に配置されている、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部は、少なくとも1つの方向に互いに均一な間隔を空けて配置されている、請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
各貫通孔又は各非貫通凹部の幅は、50μm以上500μm以下である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部のピッチは、100μm以上500μm以下である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
前記基板上に、前記配線パターン領域及び前記給電部を覆うように保護層が形成されている、請求項1に記載の配線基板。
【請求項7】
前記配線の線幅は、0.1μm以上5.0μm以下の範囲である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項8】
前記配線パターン領域は、アンテナとしての機能をもつ、請求項1に記載の配線基板。
【請求項9】
前記複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部の面積又はピッチは、前記配線パターン領域に近い領域と前記配線パターン領域から遠い領域とで異なる、請求項1に記載の配線基板。
【請求項10】
配線基板の製造方法であって、
基板を準備する工程と、
前記基板上に、複数の配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の配線に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、を備え、
前記給電部は、複数の貫通孔又は非貫通凹部を有する、配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、配線基板および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、タブレット等の携帯端末機器の高機能、小型化、薄型化および軽量化が進んでいる。これら携帯端末機器は、複数の通信帯域を使用するため、通信帯域に応じた複数のアンテナが必要とされる。例えば、携帯端末機器には、電話用アンテナ、WiFi(Wireless Fidelity)用アンテナ、3G(Generation)用アンテナ、4G(Generation)用アンテナ、LTE(Long Term Evolution)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC(Near Field Communication)用アンテナ等の複数のアンテナが搭載されている。しかしながら、携帯端末機器の小型化に伴い、アンテナの搭載スペースは限られており、アンテナ設計の自由度は狭まっている。また、限られたスペース内にアンテナを内蔵していることから、電波感度が必ずしも満足できるものではない。
【0003】
このため、携帯端末機器の表示領域に搭載することができるフィルムアンテナが開発されている。このフィルムアンテナは、透明基材上にアンテナパターンが形成された透明アンテナにおいて、アンテナパターンが、不透明な導電体層の形成部としての導体部と非形成部としての多数の開口部とによるメッシュ状の導電体メッシュ層によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-66610号公報
【特許文献2】特許第5636735号明細書
【特許文献3】特許第5695947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のフィルムアンテナにおいては、導電体メッシュ層のうち給電部の付近の領域は、他の領域と比べて電流密度が高くなりやすい傾向がある。このため、長期間にわたってフィルムアンテナを使用した場合、導電体メッシュ層の他の領域と比べて給電部の付近で配線が断線しやすい。
【0006】
本実施の形態は、給電部の付近で配線パターン領域の配線が断線することを抑制することが可能な、配線基板および配線基板の製造方法を提供する。
【0007】
また、フィルムアンテナにおいては、導電体メッシュ層や給電部を保護するために保護層で覆うことが好ましい。しかしながら、一般に、導電体メッシュ層に電気を供給する給電部は、全面にわたって隙間なく均一な金属の板状部材からなるため、給電部を覆う保護層と給電部とが剥離するおそれがある。
【0008】
本実施の形態は、保護層と給電部とが互いに剥離することを抑制することが可能な、配線基板および配線基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態による配線基板は、配線基板であって、透明性を有する基板と、前記基板上に配置され、複数の第1方向配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の第1方向配線に電気的に接続された給電部と、を備え、前記第1方向配線は、前記給電部の近傍に位置する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第1領域における前記第1方向配線の線幅は、前記第2領域における前記第1方向配線の線幅よりも太い。
【0010】
本実施の形態による配線基板において、前記配線パターン領域は、前記複数の第1方向配線を連結する複数の第2方向配線を含み、前記第1領域は、少なくとも前記給電部に最も近い第2方向配線と前記給電部との間に位置しても良い。
【0011】
本実施の形態による配線基板において、前記第1領域における前記第1方向配線の平面形状は、前記給電部から遠ざかるにつれて徐々に線幅が狭くなる形状であっても良い。
【0012】
本実施の形態による配線基板において、前記配線パターン領域の幅方向中央部近傍に位置する前記第1方向配線の前記第1領域の線幅は、前記配線パターン領域の幅方向縁部近傍に位置する前記第1方向配線の前記第1領域の線幅よりも細くても良い。
【0013】
本実施の形態による配線基板において、前記配線パターン領域の長手方向に沿う前記第1領域の長さは、0.1mm以上0.5mm以下であっても良い。
【0014】
本実施の形態による配線基板において、前記第1領域における前記第1方向配線の線幅は、前記第2領域における前記第1方向配線の線幅の150%以上であっても良い。
【0015】
本実施の形態による配線基板において、前記第2領域における前記第1方向配線の線幅は、0.1μm以上5.0μm以下の範囲であっても良い。
【0016】
本実施の形態による配線基板は、配線基板であって、透明性を有する基板と、前記基板上に配置され、複数の第1方向配線および複数の第2方向配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の第1方向配線および前記複数の第2方向配線に電気的に接続された給電部と、を備え、前記給電部と前記第1方向配線と前記第2方向配線とによって取り囲まれる領域は、非開口部となっている。
【0017】
本実施の形態による配線基板の製造方法は、配線基板の製造方法であって、透明性を有する基板を準備する工程と、前記基板上に、複数の第1方向配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の第1方向配線に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、を備え、前記第1方向配線は、前記給電部の近傍に位置する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第1領域における前記第1方向配線の線幅は、前記第2領域における前記第1方向配線の線幅よりも太い。
【0018】
本開示の実施の形態によると、給電部の付近で配線パターン領域の配線が断線することを抑制することができる。
【0019】
本実施の形態による配線基板は、配線基板であって、配線基板であって、透明性を有する基板と、前記基板上に配置され、複数の配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の配線に電気的に接続された給電部と、を備え、前記給電部は、複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部を有する。
【0020】
本実施の形態による配線基板において、前記複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部は、前記給電部の面内で複数段かつ複数列に配置されていても良い。
【0021】
本実施の形態による配線基板において、前記複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部は、少なくとも1つの方向に互いに均一な間隔を空けて配置されていても良い。
【0022】
本実施の形態による配線基板において、各貫通孔又は各非貫通凹部の幅は、50μm以上500μm以下であっても良い。
【0023】
本実施の形態による配線基板において、前記複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部のピッチは、100μm以上500μm以下であっても良い。
【0024】
本実施の形態による配線基板において、前記基板上に、前記配線パターン領域及び前記給電部を覆うように保護層が形成されていても良い。
【0025】
本実施の形態による配線基板において、前記配線の線幅は、0.1μm以上5.0μm以下の範囲であっても良い。
【0026】
本実施の形態による配線基板において、前記配線パターン領域は、アンテナとしての機能をもっても良い。
【0027】
本実施の形態による配線基板において、前記複数の貫通孔又は複数の非貫通凹部の面積又はピッチは、前記配線パターン領域に近い領域と前記配線パターン領域から遠い領域とで異なっても良い。
【0028】
本実施の形態による配線基板の製造方法は、配線基板の製造方法であって、透明性を有する基板を準備する工程と、前記基板上に、複数の配線を含む配線パターン領域と、前記配線パターン領域の前記複数の配線に電気的に接続された給電部とを形成する工程と、を備え、前記給電部は、複数の貫通孔又は非貫通凹部を有する。
【発明の効果】
【0029】
本開示の実施の形態によると、保護層と給電部とが互いに剥離することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、第1の実施の形態による配線基板を示す平面図。
図2図2は、第1の実施の形態による配線基板を示す拡大平面図(図1のII部拡大図)。
図3図3は、第1の実施の形態による配線基板を示す断面図(図2のIII-III線断面図)。
図4図4は、第1の実施の形態による配線基板を示す断面図(図2のIV-IV線断面図)。
図5図5は、第1の実施の形態による配線基板を示す拡大平面図(図1のV部拡大図)。
図6図6(a)-(i)は、第1の実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図。
図7図7は、第1の実施の形態による画像表示装置を示す平面図。
図8図8は、第1の実施の形態の変形例による画像表示装置を示す部分拡大平面図。
図9図9は、第1の実施の形態の変形例1による配線基板を示す拡大平面図。
図10図10は、第1の実施の形態の変形例2による配線基板を示す拡大平面図。
図11図11は、第1の実施の形態の変形例3による配線基板を示す拡大平面図。
図12図12は、第1の実施の形態の変形例4による配線基板を示す拡大平面図。
図13図13は、第1の実施の形態の変形例5による配線基板を示す拡大平面図。
図14図14は、第1の実施の形態の変形例6による配線基板を示す拡大平面図。
図15図15は、第2の実施の形態による配線基板を示す平面図。
図16図16は、第2の実施の形態による配線基板を示す拡大平面図(図15のXVI部拡大図)。
図17図17は、第2の実施の形態による配線基板の給電部を示す断面図(図16のXVII-XVII線断面図)。
図18図18は、第2の実施の形態による画像表示装置を示す平面図。
図19図19(a)-(c)は、第2の実施の形態の変形例1による配線基板を示す拡大平面図。
図20図20(a)-(b)は、第2の実施の形態の変形例2による配線基板を示す拡大平面図。
図21図21は、第2の実施の形態の変形例3による配線基板を示す拡大平面図。
図22図22は、第2の実施の形態の変形例4による配線基板の給電部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値および材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0032】
また、以下の実施の形態において、「X方向」とは、基板の1つの辺に対して平行な方向である。「Y方向」とは、X方向に垂直かつ基板の他の辺に対して平行な方向である。「Z方向」とは、X方向およびY方向の両方に垂直かつ配線基板の厚み方向に平行な方向である。また、「表面」とは、Z方向プラス側の面であって、基板に対して配線が設けられた面をいう。「裏面」とは、Z方向マイナス側の面であって、基板に対して配線が設けられた面と反対側の面をいう。
【0033】
(第1の実施の形態)
図1乃至図15により、第1の実施の形態について説明する。図1乃至図15は第1の実施の形態を示す図である。
【0034】
[配線基板の構成]
図1乃至図5を参照して、本実施の形態による配線基板の構成について説明する。図1乃至図5は、本実施の形態による配線基板を示す図である。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態による配線基板10は、例えば画像表示装置のディスプレイ上に配置されるものである。このような配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置された配線パターン領域20と、を備えている。また、配線パターン領域20には、給電部40が電気的に接続されている。
【0036】
このうち基板11は、平面視で略長方形状であり、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向がX方向に平行となっている。基板11は、透明性を有するとともに略平板状であり、その厚みは全体として略均一となっている。基板11の長手方向(Y方向)の長さLは、例えば100mm以上200mm以下の範囲で選択することができ、基板11の短手方向(X方向)の長さLは、例えば50mm以上100mm以下の範囲で選択することができる。なお基板11は、その角部がそれぞれ丸みを帯びていても良い。
【0037】
基板11の材料は、可視光線領域での透明性および電気絶縁性を有する材料であればよい。本実施の形態において基板11の材料はポリエチレンテレフタレートであるが、これに限定されない。基板11の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂材料等の有機絶縁性材料を用いることが好ましい。また、基板11の材料としては、用途に応じてガラス、セラミックス等を適宜選択することもできる。なお、基板11は、単一の層によって構成された例を図示したが、これに限定されず、複数の基材又は層が積層された構造であってもよい。また、基板11はフィルム状であっても、板状であってもよい。このため、基板11の厚さは特に制限はなく、用途に応じて適宜選択できるが、一例として、基板11の厚み(Z方向)T図3参照)は、例えば10μm以上200μm以下の範囲とすることができる。
【0038】
本実施の形態において、配線パターン領域20は、アンテナとしての機能をもつアンテナパターン領域からなっている。図1において、配線パターン領域20は、基板11上に複数(3つ)形成されており、それぞれ異なる周波数帯に対応している。すなわち、複数の配線パターン領域20は、その長さ(Y方向の長さ)Lが互いに異なっており、それぞれ特定の周波数帯に対応した長さを有している。なお、対応する周波数帯が低周波であるほど配線パターン領域20の長さLが長くなっている。配線基板10が例えば画像表示装置90のディスプレイ91(後述する図7参照)上に配置される場合、各配線パターン領域20は、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかに対応していても良い。
【0039】
各配線パターン領域20は、それぞれ平面視で略長方形状である。各配線パターン領域20は、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向(幅方向)がX方向に平行となっている。各配線パターン領域20の長手方向(Y方向)の長さLは、例えば3mm以上100mm以下の範囲で選択することができ、各配線パターン領域20の短手方向(幅方向)の幅Wは、例えば1mm以上10mm以下の範囲で選択することができる。
【0040】
配線パターン領域20は、それぞれ金属線が格子形状または網目形状に形成され、X方向およびY方向に繰り返しパターンを有している。すなわち配線パターン領域20は、X方向に延びる部分(第2方向配線22)とY方向に延びる部分(第1方向配線21)とから構成されるパターン形状を有している。
【0041】
図2に示すように、各配線パターン領域20は、アンテナとしての機能をもつ複数の第1方向配線(アンテナ配線)21と、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線(アンテナ連結配線)22とを含んでいる。具体的には、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とは、全体として一体となって、格子形状または網目形状を形成している。各第1方向配線21は、アンテナの周波数帯に対応する方向(長手方向、Y方向)に延びており、各第2方向配線22は、第1方向配線21に直交する方向(幅方向、X方向)に延びている。第1方向配線21は、所定の周波数帯に対応する長さL(上述した配線パターン領域20の長さ、図1参照)を有することにより、主としてアンテナとしての機能を発揮する。一方、第2方向配線22は、これらの第1方向配線21同士を連結することにより、第1方向配線21が断線したり、第1方向配線21と給電部40とが電気的に接続しなくなったりする不具合を抑える役割を果たす。
【0042】
各配線パターン領域20においては、互いに隣接する第1方向配線21と、互いに隣接する第2方向配線22とに取り囲まれることにより、複数の開口部23が形成されている。各開口部23は、それぞれ平面視略長方形形状または略正方形形状となっている。開口部23の面積は、少なくとも後述する第2領域27内において均一となっている。また、各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。このため、配線パターン領域20の単位面積あたりの開口部23の合計面積を広くすることにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。
【0043】
図2に示すように、複数の第1方向配線21は、配線パターン領域20の幅方向(X方向)に互いに間隔(ピッチP)を空けて配置されている。この場合、複数の第1方向配線21は、配線パターン領域20の幅方向(X方向)に沿って、互いに均一な間隔で配置されている。また、第1方向配線21と第2方向配線22とは互いに等間隔に配置されている。すなわち複数の第1方向配線21は、互いに等間隔に配置され、そのピッチPは、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。また、複数の第2方向配線22は、互いに等間隔に配置され、そのピッチPは、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。このように、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とがそれぞれ等間隔に配置されていることにより、少なくとも後述する第2領域27内で開口部23の大きさにばらつきがなくなり、配線パターン領域20を肉眼で視認しにくくすることができる。また、少なくとも後述する第2領域27内で、第1方向配線21のピッチPは、第2方向配線22のピッチPと等しい。このため、第2領域27内で各開口部23は、それぞれ平面視略正方形状となっており、各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。このように、各開口部23の面積を広くすることにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。なお、各開口部23の一辺の長さLは、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲とすることができる。なお、各第1方向配線21と各第2方向配線22とは、互いに直交しているが、これに限らず、互いに鋭角または鈍角に交差していてもよい。また、開口部23の形状は、少なくとも後述する第2領域27内で同一形状同一サイズとするのが好ましいが、場所によって変えるなど全面で均一としなくても良い。
【0044】
図3に示すように、各第1方向配線21は、その長手方向に垂直な断面(X方向断面)が略長方形形状又は略正方形形状となっている。第1方向配線21の断面形状は、後述する第1領域26と第2領域27との間で互いに異なっている。第1領域26内又は第2領域27内においては、第1方向配線21の断面形状は、それぞれ第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。
【0045】
また、図4に示すように、各第2方向配線22の長手方向に垂直な断面(Y方向断面)の形状は、略長方形形状又は略正方形形状であり、上述した第2領域27内での第1方向配線21の断面(X方向断面)形状と略同一である。この場合、第2方向配線22の断面形状は、第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。第1方向配線21と第2方向配線22の断面形状は、必ずしも略長方形形状又は略正方形形状でなくても良く、例えば表面側(Z方向プラス側)が裏面側(Z方向マイナス側)よりも狭い略台形形状、あるいは、長手方向両側に位置する側面が湾曲した形状であっても良い。
【0046】
本実施の形態において、後述する第2領域27における第1方向配線21の線幅W(X方向の長さ、図3参照)および第2方向配線22の線幅W(Y方向の長さ、図4参照)は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。例えば、第1方向配線21の線幅Wは0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができ、第2方向配線22の線幅Wは、0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。また、第1方向配線21の高さH(Z方向の長さ、図3参照)および第2方向配線22の高さH(Z方向の長さ、図4参照)は特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。
【0047】
図5に示すように、複数の第1方向配線21は、Y方向マイナス側においてそれぞれ給電部40に電気的に接続されている。複数の第1方向配線21はそれぞれ、給電部40の近傍に位置する第1領域26と、第1領域26以外の第2領域27とを有している。第1領域26は、第1方向配線21のうちY方向マイナス側に位置する領域であり、給電部40との接続部を含む領域である。また第2領域27は、第1方向配線21のうちY方向プラス側に位置する領域であり、第1領域26よりも給電部40から遠い位置にある領域である。なお、配線パターン領域20の長手方向(Y方向)において、第2領域27の長さは、第1領域26よりも長い。
【0048】
第1領域26における第1方向配線21の線幅Wは、第2領域27における第1方向配線21の線幅Wよりも太くなっている。すなわち、第1方向配線21の線幅は、給電部40との接続部近傍に位置する第1領域26で太くなっており、給電部40から離れた第2領域27で細くなっている。これにより、他の部分より電流密度が高い領域である給電部40との接続部(第1領域26)で第1方向配線21の線幅Wを太くし、第1方向配線21の断線を抑えることができる。
【0049】
第1領域26における第1方向配線21の線幅Wは、第2領域27における第1方向配線21の線幅Wの150%以上(1.5W≦W)とすることが好ましい。具体的には、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wは、0.15μm以上の範囲で選択することができる。なお、本実施の形態において、複数の第1方向配線21の線幅Wは全て同一となっている。
【0050】
図5において、第1領域26の平面形状は、Y方向に細長い長方形形状である。第1領域26の線幅Wは、第1領域26内で第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。また第2領域27の平面形状は、Y方向に細長い長方形形状である。第2領域27の線幅Wは、第2領域27内で第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。なお、第1方向配線21の高さH(Z方向の長さ、図3参照)は、第1領域26と第2領域27との間で互いに均一となっている。一方、第2方向配線22の線幅Wは、給電部40の近傍に位置する第2方向配線22と、給電部40から離れた位置にある第2方向配線22との間で全て同一となっている。
【0051】
第1領域26は、少なくとも給電部40に最も近い(最もY方向マイナス側に位置する)第2方向配線22と、給電部40との間に位置していることが好ましい。図5においては、給電部40から2番目に近い(給電部40から見て2番目にY方向プラス側に位置する)第2方向配線22と、給電部40との間に位置している。しかしながら、これに限らず、給電部40からN番目に近い(Nは3以上)第2方向配線22と、給電部40との間に位置していても良い。
【0052】
具体的には、第1領域26のY方向の長さLは、0.1mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。第1領域26のY方向の長さLを0.1mm以上とすることにより、他の部分より電流密度が高い給電部40との接続部の近傍領域で第1方向配線21の線幅Wを太くし、第1方向配線21の断線を抑えることができる。また、第1領域26のY方向の長さLを0.5mm以下とすることにより、第1方向配線21の線幅Wが太い領域が過度に長くなることがない。これにより、配線基板10の全体としての透明性を損なうおそれがない。
【0053】
第1方向配線21および第2方向配線22の材料は、導電性を有する金属材料であればよい。本実施の形態において第1方向配線21および第2方向配線22の材料は銅であるが、これに限定されない。第1方向配線21および第2方向配線22の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。
【0054】
本実施の形態において、配線パターン領域20の全体の開口率Atは、例えば87%以上100%未満の範囲とすることができる。配線基板10の全体の開口率Atをこの範囲とすることにより、配線基板10の導電性と透明性を確保することができる。なお、開口率とは、所定の領域(例えば配線パターン領域20の一部)の単位面積に占める、開口領域(第1方向配線21、第2方向配線22等の金属部分が存在せず、基板11が露出する領域)の面積の割合(%)をいう。
【0055】
再度図1を参照すると、給電部40は、配線パターン領域20に電気的に接続されている。この給電部40は、略長方形状の導電性の薄板状部材からなる。給電部40の長手方向はX方向に平行であり、給電部40の短手方向はY方向に平行である。また、給電部40は、基板11の長手方向端部(Y方向マイナス側端部)に配置されている。給電部40の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。この給電部40は、配線基板10が画像表示装置90(図7参照)に組み込まれた際、画像表示装置90の無線通信用回路92と電気的に接続される。なお、給電部40は、基板11の表面に設けられているが、これに限らず、給電部40の一部又は全部が基板11の周縁よりも外側に位置していても良い。
【0056】
さらに、図3及び図4に示すように、基板11の表面上には、配線パターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17が形成されている。保護層17は、配線パターン領域20及び給電部40を保護するものであり、基板11の表面の略全域に形成されている。保護層17の材料としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂とそれらの変性樹脂と共重合体、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニル樹脂とそれらの共重合体、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリオレフィン等の無色透明の絶縁性樹脂を用いることができる。また、保護層17の厚みTは、0.3μm以上100μm以下の範囲で選択することができる。なお、保護層17は、基板11のうち少なくとも配線パターン領域20を覆うように形成されていれば良い。
【0057】
[配線基板の製造方法]
次に、図6(a)-(i)を参照して、本実施の形態による配線基板の製造方法について説明する。図6(a)-(i)は、本実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【0058】
まず、図6(a)に示すように、基板11を準備し、この基板11の表面の略全域に導電層51を形成する。本実施の形態において導電層51の厚さは、200nmである。しかしながらこれに限定されず、導電層51の厚さは10nm以上1000nm以下の範囲で適宜選択することができる。本実施の形態において導電層51は、銅を用いてスパッタリング法によって形成する。導電層51を形成する方法としては、プラズマCVD法を用いても良い。
【0059】
次に、図6(b)に示すように、基板11の表面の略全域に光硬化性絶縁レジスト52を供給する。この光硬化性絶縁レジスト52としては、例えばエポキシ系樹脂等の有機樹脂を挙げることができる。
【0060】
続いて、凸部53aを有する透明なインプリント用のモールド53を準備し(図6(c))、このモールド53と基板11とを近接させて、モールド53と基板11との間に光硬化性絶縁レジスト52を展開する。次いで、モールド53側から光照射を行い、光硬化性絶縁レジスト52を硬化させることにより、絶縁層54を形成する。これにより、絶縁層54の表面に、凸部53aが転写された形状をもつトレンチ54aが形成される。トレンチ54aは、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する平面形状パターンを有する。
【0061】
その後、モールド53を絶縁層54から剥離することにより、図6(d)に示す断面構造の絶縁層54を得る。モールド53を絶縁層54から剥離する方向は、より長い第1方向配線21が延長するY方向とすることが好ましい。
【0062】
このように、絶縁層54の表面に、インプリント法によってトレンチ54aを形成することにより、トレンチ54aの形状を微細なものとすることができる。なお、これに限らず、絶縁層54をフォトリソグラフィ法により形成しても良い。この場合、フォトリソグラフィ法により、第1方向配線21および第2方向配線22に対応する導電層51を露出するようにレジストパターンを形成する。
【0063】
図6(d)に示すように、絶縁層54のトレンチ54aの底部には、絶縁材料の残渣が残ることがある。このため過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドンを用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、絶縁材料の残渣を除去する。このように、絶縁材料の残渣を除去することによって、図6(e)に示すように導電層51を露出したトレンチ54aを形成することができる。
【0064】
次に、図6(f)に示すように、絶縁層54のトレンチ54aを、導電体55で充填する。本実施の形態において、導電層51をシード層として、電解メッキ法を用いて絶縁層54のトレンチ54aを銅で充填する。
【0065】
続いて、図6(g)に示すように、絶縁層54を除去する。この場合、過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドンを用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、基板11上の絶縁層54を除去する。
【0066】
次いで、図6(h)に示すように、基板11の表面上の導電層51を除去する。この際、過酸化水素水を用いたウェット処理を行うことによって、基板11の表面が露出するように導電層51をエッチングする。このようにして、基板11と、基板11上に配置された配線パターン領域20と、を有する配線基板10が得られる。この場合、配線パターン領域20は、第1方向配線21および第2方向配線22を含む。上述した導電体55は、第1方向配線21と、第2方向配線22とを含んでいる。このとき、導電体55の一部によって、給電部40が形成されても良い。あるいは、平板状の給電部40を別途準備し、この給電部40を配線パターン領域20に電気的に接続しても良い。
【0067】
その後、図6(i)に示すように、基板11上の配線パターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17を形成する。保護層17を形成する方法としては、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、スロットダイコート、ダイコート、ナイフコート、インクジェットコート、ディスペンサーコート、キスコート、スプレーコート、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷を用いても良い。
【0068】
[本実施の形態の作用]
次に、このような構成からなる配線基板の作用について述べる。
【0069】
図7に示すように、配線基板10は、ディスプレイ91を有する画像表示装置90に組み込まれる。配線基板10は、ディスプレイ91上に配置される。このような画像表示装置90としては、例えばスマートフォン、タブレット等の携帯端末機器を挙げることができる。配線基板10の配線パターン領域20は、給電部40を介して画像表示装置90の無線通信用回路92に電気的に接続される。このようにして、配線パターン領域20を介して、所定の周波数の電波を送受信することができ、画像表示装置90を用いて通信を行うことができる。
【0070】
ところで、一般に、配線パターン領域20を用いて電波を送受信している間、配線パターン領域20のうち、給電部40付近において電流密度が高くなる傾向がある。このため、給電部40付近の第1方向配線21においては、とりわけ長期間にわたって配線基板10を使用した場合、第1方向配線21の他の部分と比べて断線が生じやすい。これに対して本実施の形態においては、給電部40の近傍に位置する第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを、第1領域26以外の第2領域27における第1方向配線21の線幅Wよりも太くしている。これにより、電流密度が高くなりやすく、長期間使用した際に断線が生じやすい給電部40の近傍(第1領域26)における第1方向配線21の強度を高め、第1方向配線21の断線を抑制することができる。また、配線基板10を作製する工程においても、給電部40付近の第1方向配線21は、他の部分に比べて断線が生じやすい。このため、給電部40の近傍(第1領域26)における第1方向配線21の強度を高め、配線基板10の製造時に第1方向配線21が断線することを抑制することができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置され、複数の第1方向配線21を含む配線パターン領域20とを有するので、配線基板10の透明性が確保されている。これにより、配線基板10がディスプレイ91上に配置されたとき、配線パターン領域20の開口部23からディスプレイ91を視認することができ、ディスプレイ91の視認性が妨げられることがない。
【0072】
また、本実施の形態によれば、配線パターン領域20は、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22を含む。これにより、第1方向配線21を断線しにくくすることができ、第1方向配線21の機能が低下することを抑制することができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、配線パターン領域20の第1領域26は、少なくとも給電部40に最も近い第2方向配線22と、給電部40との間に位置する。これにより、給電部40との接続部の近傍で第1方向配線21の線幅Wの線幅を太くし、第1方向配線21の強度を高めて断線を抑えることができる。また、第1方向配線21の線幅Wが太い領域が過度に長くなることがないので、配線基板10の全体としての透明性を損なうおそれがない。
【0074】
また、本実施の形態によれば、配線パターン領域20の長手方向(Y方向)に沿う第1領域26の長さLは、0.1mm以上0.5mm以下である。これにより、給電部40との接続部の近傍で第1方向配線21の線幅を太くし、第1方向配線21の強度を高めて断線を抑えることができる。また、第1方向配線21の線幅Wが太い領域が過度に長くなることがないので、配線基板10の全体としての透明性を損なうおそれがない。
【0075】
また、本実施の形態によれば、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wは、第2領域27における第1方向配線21の線幅Wの150%以上である。これにより、給電部40との接続部の近傍で第1方向配線21の線幅を太くし、第1方向配線21の強度を高めて断線を抑えることができる。また、第1方向配線21の線幅Wが太い領域が過度に長くなることがないので、配線基板10の全体としての透明性を損なうおそれがない。
【0076】
また本実施の形態によれば、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを太くしたことにより、第1領域26に存在する第1方向配線21が低抵抗となる。この第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを調整することによりにより、抵抗値(インピーダンス)を制御することが可能となる。これにより、とりわけミリ波やマイクロ波等の周波数領域において重要となるインピーダンスマッチングを行いやすくすることができる。すなわち、第1方向配線21の接続部分において、第1方向配線21と給電部40側とのインピーダンスが略同様の値でないと反射を生じてしまい、電磁波が伝達しにくくなるおそれがある。本実施の形態においては、第1方向配線21と給電部40との接続部において、第1方向配線21の線幅Wを広げることで、第1方向配線21と給電部40とのインピーダンスの差を低減することが可能となる。
【0077】
また本実施の形態によれば、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを太くしたことにより、第1方向配線21の折り曲げ耐性を向上することができる。例えば図8に示すように、給電部40がディスプレイ91の周縁部に配置され、第1領域26に存在する第1方向配線21が折り曲がることが考えられる。これに対して本実施の形態によれば、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを太くすることにより、第1方向配線21が折り曲げられた際に断線してしまうことを回避することができる。
【0078】
また図8に示すように、配線パターン領域20はディスプレイ91上に配置される。また給電部40は、ディスプレイ91の周囲のベゼル(枠)93に配置され、もしくはベゼル93上で折り曲げて配置される。また配線パターン領域20の開口率は例えば87%以上100%未満の範囲であるのに対し、給電部40の開口率は0%である。本実施の形態によれば、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを太くすることにより、配線パターン領域20の開口率と給電部40の開口率とが急激に変化することが抑えられ、配線パターン領域20を視認しにくくすることができる。
【0079】
(第1の実施の形態の変形例)
次に、図9乃至図14を参照して、本実施の形態による配線基板の各種変形例について説明する。図9乃至図14は、配線基板の各種変形例を示す図である。図9乃至図14に示す変形例は、配線パターン領域20の構成が異なるものであり、他の構成は上述した図1乃至図7に示す実施の形態と略同一である。図9乃至図14において、図1乃至図7に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0080】
(第1の実施の形態の変形例1)
図9は、本実施の形態の変形例1による配線基板10Aを示している。図9において、第1方向配線21の第1領域26は、給電部40に最も近い(最もY方向マイナス側に位置する)第2方向配線22と、給電部40との間のみに位置している。この場合、第1方向配線21の断線を抑えつつ、配線基板10の全体としての透明性の低下を最小限に抑えることができる。
【0081】
(第1の実施の形態の変形例2)
図10は、本実施の形態の変形例2による配線基板10Bを示している。図10において、第1領域26の線幅Wは、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って不均一となっている。すなわち、第1領域26の線幅Wは、給電部40近傍で最も広く、第2領域27近傍で最も狭い。この場合、第1領域26における第1方向配線21の平面形状は、給電部40から遠ざかるにつれて徐々に線幅Wが狭くなる形状となっている。図10において、第1領域26の平面形状は、台形又は三角形となっており、第1領域26の両側辺は直線状である。しかしながら、これに限らず、第1領域26の両側辺は、曲線状であっても良い。図10に示す構成とすることにより、第1領域26のうち、より電流密度の高い給電部40との接続部における強度を高め、給電部40との接続部における第1方向配線21の断線を抑えつつ、配線基板10の全体としての透明性の低下を抑えることができる。また、第1方向配線21と給電部40との接続部において、第1方向配線21の線幅Wを徐々に広げることにより、上述したように第1方向配線21と給電部40とのインピーダンスマッチングを行いやすくすることができる。
【0082】
(第1の実施の形態の変形例3)
図11は、本実施の形態の変形例3による配線基板10Cを示している。図11において、第1領域26の線幅Wは、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って不均一となっている。すなわち、第1領域26の線幅Wは、給電部40近傍が最も広く、第2領域27近傍が最も狭い。この場合、第1領域26の線幅Wは、給電部40近傍から第2領域27近傍まで段階的に細くなっている。すなわち、給電部40と、給電部40に最も近い第2方向配線22との間の線幅Wが最も太い。また、給電部40に最も近い第2方向配線22と、給電部40に2番目に近い第2方向配線22との間の線幅Wが2番目に太い。さらに、給電部40に2番目に近い第2方向配線22と、給電部40に3番目に近い第2方向配線22との間の線幅Wが3番目に太い。なお、これに限らず、第1領域26の線幅Wは、給電部40近傍から第2領域27近傍まで2段階又は4段階以上にわたって細くなっていても良い。図11に示す構成とすることにより、第1領域26のうち、より電流密度の高い給電部40との接続部における強度を高め、給電部40との接続部における第1方向配線21の断線を抑えつつ、配線基板10の全体としての透明性の低下を抑えることができる。
【0083】
(第1の実施の形態の変形例4)
図12は、本実施の形態の変形例4による配線基板10Dを示している。図12において、配線パターン領域20の幅方向(X方向)中央部近傍に位置する第1方向配線21の第1領域26の線幅W3Aは、配線パターン領域20の幅方向(X方向)縁部近傍に位置する第1方向配線21の第1領域26の線幅W3Bよりも細くなっている。また、第1領域26の線幅は、幅方向中央部近傍に位置する第1方向配線21から幅方向縁部近傍に位置する第1方向配線21に向けて徐々に太くなっている。
【0084】
一般に、配線パターン領域20を用いて電波を送受信している間、配線パターン領域20を流れる電流値は幅方向(X方向)に均一にならない。具体的には、配線パターン領域20の幅方向縁部を流れる電流値は、配線パターン領域20の幅方向中央部を流れる電流値よりも大きくなる。これに対して図12に示す構成によれば、配線パターン領域20の幅方向中央部における線幅W3Aを、配線パターン領域20の幅方向縁部における線幅W3Bよりも細くしている(W3A<W3B)。すなわち、電流値が高い幅方向縁部における第1方向配線21の密度を、電流値が低い幅方向中央部における第1方向配線21の密度よりも高くしている。これにより、配線パターン領域20のメッシュが均一である場合と比較して、配線パターン領域20の幅方向中央部と幅方向縁部とで電流分布が均一化されるため、配線パターン領域20の特性(アンテナ特性等)をより向上させることができる。
【0085】
(第1の実施の形態の変形例5)
図13は、本実施の形態の変形例5による配線基板10Eを示している。図13において、第1領域26の線幅Wは、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って不均一となっている。すなわち、第1領域26の線幅Wは、給電部40近傍で最も広く、第2領域27近傍で最も狭い。この場合、第1領域26における第1方向配線21の平面形状は、給電部40から遠ざかるにつれて徐々に線幅Wが狭くなる形状となっている。図13において、第1領域26における第1方向配線21の平面形状は、台形又は三角形となっている。当該台形又は三角形は、X方向に隣接する第1方向配線21を構成する台形又は三角形と一体化されている。これにより、第1方向配線21と給電部40との接続がスムーズになり、上述したように第1方向配線21と給電部40とのインピーダンスマッチングを行いやすくすることができる。また配線パターン領域20の開口率と給電部40の開口率とが急激に変化することが抑えられ、配線パターン領域20を視認しにくくすることができる。
【0086】
(第1の実施の形態の変形例6)
図14は、本実施の形態の変形例6による配線基板10Fを示す拡大平面図である。図14において、第1方向配線21と第2方向配線22とは、斜めに交わっており、各開口部23は、平面視で菱形状に形成されている。第1方向配線21および第2方向配線22は、それぞれX方向及びY方向のいずれに対しても非平行となっている。給電部40に隣接する位置において、給電部40と第1方向配線21と第2方向配線22とによって取り囲まれる領域28は、非開口部となっている。この領域28は、平面視で三角形となっている。すなわち領域28には、第1方向配線21、第2方向配線22および給電部40を構成する金属が充填されており、基板11が露出していない。これにより、電流密度が高くなりやすく長期間使用した際に断線が生じやすい給電部40の近傍(第1領域26)における第1方向配線21および第2方向配線22の強度を高め、第1方向配線21及び第2方向配線22の断線を抑制することができる。
【0087】
なお、給電部40と第1方向配線21と第2方向配線22とによって取り囲まれる複数の領域28の全てが非開口部となっていても良く、複数の領域28の一部のみが非開口部となっていても良い。後者の場合、例えば配線パターン領域20の幅方向(X方向)中央部近傍に位置する複数の領域28を開口部とし、配線パターン領域20の幅方向(X方向)縁部近傍に位置する複数の領域28を非開口部としても良い。この場合、上述したように、電流値が高い配線パターン領域20の幅方向縁部における金属部の密度を、電流値が低い配線パターン領域20の幅方向中央部における金属部の密度よりも高くすることができる。これにより、配線パターン領域20の幅方向中央部と幅方向縁部とで電流分布が均一化されるため、配線パターン領域20の特性(アンテナ特性等)をより向上させることができる。
【0088】
なお、図1乃至図14において、配線パターン領域20がアンテナとしての機能をもつ場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。配線パターン領域20は、例えばホバリング(使用者がディスプレイに直接触れなくても操作可能となる機能)、指紋認証、ヒーター、ノイズカット(シールド)等の機能を有しても良い。この場合においても、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを、第2領域27における第1方向配線21の線幅Wよりも太くすることにより、配線基板10の透明性を損なうことなく、第1方向配線21の断線を抑えることができる。
【0089】
(第2の実施の形態)
次に、図15乃至図18により、第2の実施の形態について説明する。図15乃至図18は第2の実施の形態を示す図である。図15乃至図18に示す第2の実施の形態は、主として給電部40の構成が異なるものであり、他の構成は図1乃至図14に示す第1の実施の形態と略同様である。図15乃至図18において、図1乃至図14に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なお、以下においては、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0090】
[配線基板の構成]
図15乃至図17を参照して、本実施の形態による配線基板の構成について説明する。図15乃至図17は、本実施の形態による配線基板を示す図である。
【0091】
図15に示すように、本実施の形態による配線基板10は、例えば画像表示装置のディスプレイ上に配置されるものである。このような配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置された配線パターン領域20と、を備えている。また、各配線パターン領域20には、それぞれ給電部40が電気的に接続されている。
【0092】
本実施の形態において、第1の実施の形態と異なり、第1方向配線21は全体として均一な幅を持っていても良い。開口部23の面積は、配線パターン領域20内において均一となっていても良い。この場合、配線パターン領域20内で開口部23の大きさにばらつきがなくなり、配線パターン領域20を肉眼で視認しにくくすることができる。開口部23の形状は、配線パターン領域20内で同一形状同一サイズとするのが好ましいが、場所によって変えるなど全面で均一としなくても良い。
【0093】
第1方向配線21の断面形状は、第1方向配線21の長手方向(Y方向)の全体にわたり略均一となっている。また、第2方向配線22の断面形状は、第2方向配線22の長手方向(X方向)の全体にわたり略均一となっている。しかしながら、これに限らず、本実施の形態においても、第1の実施の形態の場合と同様に、給電部40の近傍に位置する第1領域26における第1方向配線21の線幅を、第2領域27における第1方向配線21の線幅よりも太くしても良い。このほか、配線パターン領域20の構成は、第1の実施の形態の場合と同様としても良い。
【0094】
図15を参照すると、給電部40は、各配線パターン領域20にそれぞれ電気的に接続されている。この給電部40は、略長方形状の導電性の薄板状部材からなる。給電部40の長手方向はX方向に平行であり、給電部40の短手方向はY方向に平行である。また、給電部40は、基板11の長手方向端部(Y方向マイナス側端部)に配置されている。給電部40の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属材料(含む合金)を用いることができる。この給電部40は、配線基板10が画像表示装置90(図18参照)に組み込まれた際、給電線95を介して画像表示装置90の無線通信用回路92と電気的に接続される。なお、給電部40は、基板11の表面に設けられているが、これに限らず、給電部40の一部又は全部が基板11の周縁よりも外側に位置していても良い。また、図15において、各配線パターン領域20にそれぞれ対応する給電部40が接続されているが、これに限らず、1つの給電部40が複数の配線パターン領域20に電気的に接続されていても良い。
【0095】
図16に示すように、複数の第1方向配線21は、Y方向マイナス側においてそれぞれ給電部40に電気的に接続されている。この場合、給電部40は、配線パターン領域20と一体に形成されている。給電部40のうち、配線パターン領域20の反対側(Y方向マイナス側)には、後述する給電線95と電気的に接続される接続領域46が形成されている。給電部40の長手方向(X方向)の長さLは、1mm以上10mm以下としても良く、給電部40の短手方向(Y方向)の長さLは、0.5mm以上3mm以下としても良い。また、給電部40の厚みT図17参照)は、第1方向配線21の高さH図3参照)および第2方向配線22の高さH図4参照)と同一とすることができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択することができる。
【0096】
本実施の形態において、給電部40は、複数の貫通孔45を有している。貫通孔45は、給電部40内で平面視で格子点状に配置されている。すなわち貫通孔45は、給電部40の面内で複数段かつ複数列に配置されており、X方向及びY方向にそれぞれ複数個ずつ配置されている。貫通孔45は、給電部40を厚み方向(Z方向)に貫通しており、各貫通孔45からは、透明性を有する基板11が露出している。この場合、貫通孔45は、給電部40の面内の略全域に配置されているが、これに限られるものではない。貫通孔45は、少なくとも保護層17に覆われる領域内と、接続領域46内に配置されることが好ましい。これにより、保護層17と給電部40との密着性や、給電線95を接続する半田と給電部40との密着性を高めることができる。
【0097】
各貫通孔45は、平面視で正方形形状を有している。各貫通孔45の幅(一辺の長さ)Wは、50μm以上500μm以下としても良い。なお、これに限らず、貫通孔45の平面形状は、円形状、楕円形状、長方形形状等の多角形形状等としても良い。また、複数の貫通孔45は、X方向及びY方向にそれぞれ互いに均一な間隔を空けて配置されている。具体的には、複数の貫通孔45のX方向のピッチPは、例えば100μm以上500μm以下とすることができ、複数の貫通孔45のY方向のピッチPは、例えば100μm以上500μm以下とすることができる。なお、これに限らず、複数の貫通孔45は、X方向及びY方向のうちいずれか一方向のみに沿って均一な間隔を空けて配置されていてもよい。また、本実施の形態において、複数の貫通孔45のX方向のピッチPは、複数の貫通孔45のY方向のピッチPと等しいが(P=P)、これに限らず、ピッチPとピッチPとが互いに異なっていても良い。
【0098】
さらに、図17に示すように、基板11の表面上には、配線パターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17が形成されている。保護層17は、配線パターン領域20及び給電部40を保護するものであり、基板11の表面の略全域に形成されていても良い。このほか保護層17の構成は、第1の実施の形態の場合と同様としても良い。
【0099】
図17に示すように、保護層17は、基板11側に向けて突出する複数の突起部17aを有している。突起部17aは、給電部40の貫通孔45を転写した形状を有する。突起部17aの先端(Z方向マイナス側端部)は、基板11の表面に接触する。この保護層17の突起部17aが給電部40の各貫通孔45内に進入して硬化することにより、突起部17aがアンカーとしての役割を果たす。これにより、保護層17が給電部40に強く密着し、保護層17が給電部40から剥離しないようにすることができる。なお、給電線95を給電部40に接続しやすくするため、保護層17は、給電部40の接続領域46を覆わないようにしても良い。
【0100】
[配線基板の製造方法]
本実施の形態による配線基板は、第1の実施の形態の場合(図6(a)-(i))と略同様にして製造することができる。なお、本実施の形態において、複数の貫通孔45を有する給電部40は、基板11の表面上の導電層51を除去した際(図6(h)参照)、導電体55の一部によって形成されても良い。あるいは、複数の貫通孔45を有する平板状の給電部40を別途準備し、この給電部40を配線パターン領域20に電気的に接続しても良い。その後、基板11上の配線パターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17を形成した際(図6(i)参照)、保護層17の一部が複数の貫通孔45内に進入して硬化することにより、突起部17aとなって給電部40と強固に結合する(図17参照)。
【0101】
[本実施の形態の作用]
次に、このような構成からなる配線基板の作用について述べる。
【0102】
図18に示すように、配線基板10は、ディスプレイ91を有する画像表示装置90に組み込まれる。配線基板10は、ディスプレイ91上に配置される。このような画像表示装置90としては、例えばスマートフォン、タブレット等の携帯端末機器を挙げることができる。配線基板10の配線パターン領域20は、給電部40及び給電線95を介して画像表示装置90の無線通信用回路92に電気的に接続される。このようにして、配線パターン領域20を介して、所定の周波数の電波を送受信することができ、画像表示装置90を用いて通信を行うことができる。
【0103】
ところで一般に、給電部40は、第1方向配線21及び第2方向配線22と比較して、保護層17に対して広い面積で接触する。一方、金属製の給電部40と樹脂製の保護層17とは、材料が異なるため、その密着力は必ずしも強固ではない。このため、画像表示装置90を使用している間、配線基板10に対して曲げる方向に力が加わった場合等、保護層17が給電部40から剥離し、これを起点として保護層17が基板11の全面から剥離してしまうことも考えられる。
【0104】
これに対して本実施の形態によれば、給電部40は、面内に複数の貫通孔45を有しているので、貫通孔45内に進入した保護層17の一部(突起部17a)がアンカーとなって給電部40と強固に結合する。これにより、保護層17が給電部40から剥離することを抑制することができる。
【0105】
また、本実施の形態によれば、給電線95を給電部40に接続するための半田を、給電部40の複数の貫通孔45内に進入させることができる。これにより、貫通孔45内に進入した半田の一部がアンカーとなって給電部40と結合する。これにより、給電線95を給電部40に強固に接続することができる。また給電部40に複数の貫通孔45が設けられていることにより、半田が必要以上に濡れ広がらないように半田の流動を堰き止めることができる。
【0106】
また、本実施の形態によれば、配線基板10は、透明性を有する基板11と、基板11上に配置され、複数の第1方向配線21を含む配線パターン領域20とを有するので、配線基板10の透明性が確保されている。これにより、配線基板10がディスプレイ91上に配置されたとき、配線パターン領域20の開口部23からディスプレイ91を視認することができ、ディスプレイ91の視認性が妨げられることがない。
【0107】
また、本実施の形態によれば、配線パターン領域20は、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22を含む。これにより、第1方向配線21を断線しにくくすることができ、第1方向配線21の機能が低下することを抑制することができる。
【0108】
また、本実施の形態によれば、配線パターン領域20及び給電部40を覆うように保護層17が形成されている。これにより、配線パターン領域20及び給電部40を外部からの衝撃等から保護することができる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、複数の貫通孔45は、給電部40の面内で複数段かつ複数列に配置されている。これにより、給電部40の広い領域にわたって保護層17と貫通孔45とを連結することができる。
【0110】
また、本実施の形態によれば、複数の貫通孔45は、少なくとも1つの方向に均一な間隔を空けて配置されている。これにより、保護層17と貫通孔45とを面内で略均一な強度で連結することができる。
【0111】
また、給電部40は、例えば、図示しない接合部を用いて画像表示装置90の回路基板と接合される場合がある。この場合、給電部40が複数の貫通孔45を有しているので、給電部40の表面積を増加し、給電部40と接合部の密着性を向上することができる。なお、このような接合部としては、例えば異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)が挙げられる。また回路基板は、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)等のフレキシブルな素材で形成された基板であってもよい。
【0112】
ところで近年、第5世代通信すなわち5G(Generation)用の携帯端末機器の開発が進められている。配線基板10の配線パターン領域20が例えば5G用のアンテナ(特にミリ波用アンテナ)として用いられる場合、配線パターン領域20が送受信する電波(ミリ波)は、例えば4G用のアンテナが送受信する電波と比べて高周波である。
【0113】
一般に、交流電流を配線に流したとき、周波数が高くなるほど、配線の中心部分には電流が流れにくくなり、配線の表面を電流が流れるようになる。このように、配線に交流電流を流したときに表面にのみ電流が流れる現象のことを表皮効果という。また、表皮深さとは、最も電流が流れやすい配線の表面の電流に対して、1/e(約0.37)倍に減衰する、配線の表面からの深さのことをいう。この表皮深さδは、一般に下記の式によって求めることができる。
【0114】
【数1】
【0115】
なお、上記式中、ωは角周波数(=2πf)、μは透磁率(真空中では4π×10-7[H/m])、σは配線を構成する導体の導電率(銅の場合は5.8×10[S/m])を意味する。銅の配線の表皮深さδは、周波数が0.8GHzの場合、δ=約2.3μmであり、周波数が2.4GHzの場合、δ=約1.3μmであり、周波数が4.4GHzの場合、δ=約1.0μmであり、周波数が6GHzの場合、δ=約0.85μmである。また、5G用のアンテナが送受信する電波(ミリ波)は、例えば4G用のアンテナが送受信する電波と比べて高周波(28GHz~39GHz)であり、例えば電流の周波数が28GHz~39GHzである場合、δ=約0.3μm~約0.4μmとなる。
【0116】
このように、電流は配線の表面から表皮深さδに相当する深さで流れる。このため、とりわけ配線パターン領域20が送受信する電波が高周波(例えば28GHz~39GHz)である場合、表皮深さδが小さいため、第1方向配線21および第2方向配線22の表面を平滑にする必要がある。本実施の形態において、配線パターン領域20と給電部40とは同時に作製されるため、配線パターン領域20の表面とともに給電部40の表面も平滑となる。その一方で、給電部40には半田や接合部(ACF)が接続されるので、給電部40と半田や接合部(ACF)との密着力を向上させる必要がある。このため本実施の形態において、給電部40に複数の貫通孔45を形成し、給電部40の表面積を増大させることにより、給電部40と半田や接合部(ACF)との密着力を向上することができる。
【0117】
(第2の実施の形態の変形例)
次に、図19乃至図22を参照して、本実施の形態による配線基板の各種変形例について説明する。図19乃至図22は、配線基板の各種変形例を示す図である。図19乃至図22に示す変形例は、給電部40又は配線パターン領域20の構成が異なるものであり、他の構成は上述した図15乃至図18に示す実施の形態と略同一である。図19乃至図22において、図15乃至図18に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0118】
(第2の実施の形態の変形例1)
図19(a)-(c)は、本実施の形態の変形例1による配線基板10Gを示している。上述した実施の形態において、複数の貫通孔45は、それぞれ平面視で正方形であり、給電部40の面内で格子点状に配置されている場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。図19(a)に示すように、複数の貫通孔45は、それぞれ平面視で正方形であり、給電部40の面内で千鳥状(互い違い)に配置されていても良い。また図19(b)に示すように、複数の貫通孔45は、それぞれ平面視で円形状を有し、給電部40の面内で格子点状に配置されていても良い。また図19(c)に示すように、複数の貫通孔45は、それぞれ平面視で菱形形状を有し、給電部40の面内で格子点状に配置されていても良い。このほか、各貫通孔45は平面視で平行四辺形、台形、三角形、六角形等の多角形、あるいは楕円形等にしても良い。
【0119】
(第2の実施の形態の変形例2)
図20(a)-(b)は、本実施の形態の変形例2による配線基板10Hを示している。図20(a)-(b)に示すように、複数の貫通孔45の面積やピッチは、配線パターン領域20に近い領域と配線パターン領域20から遠い領域とで異なるようにしても良い。例えば、図20(a)に示すように、複数の貫通孔45の面積(貫通孔45の幅W)は、配線パターン領域20に近い領域ほど大きく、配線パターン領域20から遠ざかるほど徐々に小さくなるようにしても良い。また、図20(b)に示すように、複数の貫通孔45は、配線パターン領域20に近い領域ほどピッチPが小さく、配線パターン領域20から遠ざかるほど徐々にピッチPが大きくなるようにしても良い。これにより、給電部40の抵抗値は、配線パターン領域20から遠い領域の方が配線パターン領域20に近い領域よりも低くなる。このように、複数の貫通孔45の面積やピッチを調整することにより抵抗値(インピーダンス)を制御することが可能となる。これにより、とりわけミリ波やマイクロ波等の周波数領域において重要となるインピーダンスマッチングを行いやすくすることができる。本実施の形態においては、配線パターン領域20と給電線95との接続部に位置する給電部40において、配線パターン領域20と給電線95とのインピーダンスの差を低減することが可能となる。
【0120】
(第2の実施の形態の変形例3)
図21は、本実施の形態の変形例3による配線基板10Iを示している。図21に示すように、第1の実施の形態と同様に、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを、第2領域27における第1方向配線21の線幅Wよりも太くしても良い。この場合、第1領域26における第1方向配線21の線幅Wを調整することにより第1方向配線21の抵抗値(インピーダンス)を制御するとともに、複数の貫通孔45の数や形状を調整することにより、給電部40の抵抗値(インピーダンス)を制御することができる。これにより、第1方向配線21と給電部40とのインピーダンスマッチングを行いやすくすることができる。
【0121】
(第2の実施の形態の変形例4)
図22は、本実施の形態の変形例4による配線基板10Jを示している。図22に示すように、給電部40は、貫通孔45に代えて複数の非貫通凹部47を有していても良い。非貫通凹部47は、給電部40内で平面視で格子点状に配置されている。すなわち非貫通凹部47は、給電部40の面内で複数段かつ複数列に配置されており、X方向及びY方向にそれぞれ複数個ずつ配置されている。非貫通凹部47は、給電部40を厚み方向(Z方向)に貫通していない。また非貫通凹部47の深さDは、例えば0.1μm以上3.0μm以下の範囲で選択することができる。非貫通凹部47を作製する場合、基板11の表面上の導電層51を除去する工程(図6(h)参照)において、給電部40をレジスト等で覆い、給電部40内の導電層51を残存させることにより、給電部40に非貫通凹部47が形成される。このほか、非貫通凹部47の平面形状や配置は、上述した貫通孔45の場合と略同様にすることができる。
【0122】
また、図15乃至図22において、配線パターン領域20がアンテナとしての機能をもつ場合を例にとって説明したが、これに限られるものではない。配線パターン領域20は、例えばホバリング(使用者がディスプレイに直接触れなくても操作可能となる機能)、指紋認証、ヒーター、ノイズカット(シールド)等の機能を有しても良い。
【0123】
上記各実施の形態および変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態および変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22