(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153923
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】電気光学デバイスのマイクロセルをシールするためのシール層
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1681 20190101AFI20241022BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20241022BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241022BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20241022BHJP
C09J 201/00 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
G02F1/1681
G02F1/167
C09J7/38
C09J7/35
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024132036
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2023545275の分割
【原出願日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】63/145,557
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アリ サーヴィ
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム ベルハネ
(72)【発明者】
【氏名】マラル アザガン アザガルサミー
(72)【発明者】
【氏名】メアリー イー. ペアレント
(57)【要約】
【課題】電気光学デバイスのマイクロセルをシールするためのシール層を提供すること。
【解決手段】本発明は、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンを含んでいるシール層を対象とする。シール層は、非極性流体に対する良好なバリア特性および低い吸湿を示す。シール層は、電気光学デバイスのマイクロセルをシールするために使用することができる。本発明は、電気光学デバイスのマイクロセルをシールするための水性シール組成物およびシール層に関する。水性シール組成物および対応するシール層は、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せを含んでいる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年2月4日出願の米国仮特許出願第63/145,557号に基づく優先権を主張する。本明細書において参照される特許、公開出願または他の公開文献はいずれも、その内容全体が参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、電気光学デバイスのマイクロセルをシールするための水性シール組成物およびシール層に関する。水性シール組成物および対応するシール層は、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せを含んでいる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
「電気光学」という用語は、材料またはディスプレイに適用される場合、本明細書では、少なくとも1つの光学特性が異なっている第1および第2のディスプレイ状態を有している材料であって、その材料への電界の印加によってその第1のディスプレイ状態からその第2のディスプレイ状態に変化する材料を指すために、イメージング分野におけるその従来の意味で使用される。光学特性は、典型的にヒトの目に知覚できる色であるが、別の光学特性、例えば、光伝送、反射率、発光、または、機械での読取りを意図されているディスプレイの場合には、可視域外の電磁波長の反射率の変化の意味での疑似カラーであってもよい。
【0004】
「双安定」および「双安定性」という用語は、本明細書では、当技術分野におけるそれらの従来の意味で使用され、少なくとも1つの光学特性が異なっている第1および第2のディスプレイ状態を有しているディスプレイ素子を含んでいるディスプレイであって、任意の所与の素子が駆動された後、有限持続期間のアドレス指定パルスを用いてその第1または第2のディスプレイ状態のいずれかを呈し、アドレス指定パルスが終了した後、その状態が、ディスプレイ素子の状態を変化させるのに必要なアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば少なくとも4倍持続するようなディスプレイを指す。米国特許第7,170,670号では、グレースケールが可能な一部の粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極限の黒状態および白状態においてだけでなく、それらの中間のグレー状態においても安定であり、同じことが一部の他のタイプの電気光学デバイスにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切には、双安定ではなく「多安定」と呼ばれるが、便宜上、「双安定」という用語は、本明細書では双安定ディスプレイおよび多安定ディスプレイの両方を網羅するために使用され得る。
【0005】
長年にわたる精力的な研究および開発の対象となってきた電気光学デバイスの1つのタイプが、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、この粒子ベースの電気泳動ディスプレイでは、複数の荷電された粒子が、電界の影響下で流体中を移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較した場合、良好な明るさおよびコントラスト、広視野角、状態の双安定性、ならびに低電力消費の属性を有することができる。
【0006】
マサチューセッツ工科大学(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LLCおよび関連会社に譲渡されたかまたはそれらの名義となっている多数の特許および出願が、カプセル化電気泳動媒体およびマイクロセル電気泳動媒体、ならびに他の電気光学媒体において使用される様々な技術を記載している。カ
プセル化電気泳動媒体は、多数の小型カプセルを含んでおり、これらの小型カプセルはそれぞれ、それら自体が、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含有している内相と、その内相を取り囲むカプセル壁とを含んでいる。典型的に、カプセルは、それら自体がポリマーバインダー内に保持されて、2つの電極の間に位置されたコヒーレント層を形成する。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電された粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されておらず、その代わりに、担体媒体、典型的にポリマーフィルム内に形成された複数の空洞内に保持される。
【0007】
これらの特許および出願に記載されている技術には、以下が含まれる。
【0008】
(a)電気泳動粒子、流体および流体添加剤、例えば米国特許第7,002,728号および同第7,679,814号を参照されたい。
【0009】
(b)カプセル、バインダーおよびカプセル化プロセス、例えば米国特許第6,922,276号および同第7,411,719号を参照されたい。
【0010】
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法、例えば米国特許第7,072,095号および同第9,279,906号を参照されたい。
【0011】
(d)マイクロセルを充填し、シールするための方法、例えば米国特許第7,144,942号、同第7,005.468号および同第7,715,088号、ならびに米国特許出願公開第2004-0120024号および同第2004-0219306号を参照されたい。
【0012】
(e)電気光学材料を含有しているフィルムおよびサブアセンブリ、例えば米国特許第6,982,178号および同第7,839,564号を参照されたい。
【0013】
(f)バックプレーン、接着層および他の補助層、ならびにディスプレイにおいて使用される方法、例えば米国特許第7,116,318号および同第7,535,624号を参照されたい。
【0014】
(g)色形成および色調整、例えば米国特許第7,075,502号および同第7,839,564号を参照されたい。
【0015】
(h)ディスプレイを駆動するための方法、例えば米国特許第7,012,600号および同第7,453,445号を参照されたい。
【0016】
(i)ディスプレイの適用、例えば米国特許第7,312,784号および同第8,009,348号を参照されたい。
【0017】
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に記載されている、非電気泳動ディスプレイ、ならびにディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の適用、例えば米国特許第7,615,325号、ならびに米国特許出願公開第2015/0005720号および同第2016/0012710号を参照されたい。
【0018】
前述の参考文献のすべての内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
非極性流体中に荷電された色素粒子の分散物を収容している複数のシールされたマイクロセルを有する構造は、電気光学デバイスにおいて商業的に使用されている。マイクロセ
ルは、文献ではマイクロキャビティまたはマイクロカップとしても公知である。電気光学デバイスのためのシールされたマイクロセル構造を作製する典型的な方法は、(a)マイクロエンボス加工により、各マイクロキャビティが開口部を有している複数のマイクロキャビティを有するポリマーシートを製作するステップと、(b)マイクロキャビティを、非極性流体中に荷電された色素粒子を含んでいる分散物である電気泳動媒体で充填するステップと、(c)マイクロキャビティをシール組成物でシールして、シール層を形成するステップとを含む。電気泳動媒体を収容している、シールされたマイクロキャビティは、デバイスの電気光学材料層を形成する。電気光学材料層は、正面電極と背面電極の間に配置されている。これらの電極による、電気泳動媒体にわたる電界の印加により、色素粒子が電気泳動媒体中を遊走して、画像を生じる。シール層は、デバイスの機能および性能のために重要な役割を果たす。
【0020】
まず、シール層は、電気泳動媒体と接触し、電気泳動媒体をマイクロキャビティ内側にシールするので、(1)シール層は、電気泳動媒体の非極性流体に実際に不溶性でなければならず、(2)シール層は、非極性流体がデバイス寿命中にマイクロセルから出て拡散しないように、非極性流体に対する良好なバリアでなければならない。
【0021】
第2に、シール層は、環境から著しい量の湿気を吸収してはならない。すなわち、環境の湿気がデバイスの電気泳動媒体に入らないようにしなければならない。このような湿気は、デバイスの電気光学性能にマイナスの影響を及ぼすおそれがある。
最後に、シール層は、デバイスの有用な寿命の間に機械的に弾性力があり、実際に経時的に一定に維持される最適な体積抵抗率を有していなければならない。
【0022】
非極性流体に対するシール層のバリア特性が劣っていると、電気泳動媒体からの流体の低減およびシール層のたるみが生じる。これらの特色を有しているシール層を形成するシール組成物を提供する上での技術的問題は、様々な目的に様々な配合戦略が必要とされ得るため、難しいものとなる。例えば、非極性流体に対するバリア特性は、典型的に、より高い親水性の成分を必要とする一方、このような成分は、環境からより多くの湿気を吸収する。したがって、非極性流体に対する改善されたバリア、低減された吸湿、および特に低温での改善された電気光学性能のために最適化されたシール層を形成するシール組成物が必要である。本発明者らは、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せを含んでいる水性シール組成物によって形成されているシール層が、非極性流体に対する良好なバリア特性、少ないたるみ、少ない吸湿、および低温での良好な電気光学性能を有していることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第7,170,670号明細書
【特許文献2】米国特許第7,002,728号明細書
【特許文献3】米国特許第7,679,814号明細書
【特許文献4】米国特許第6,922,276号明細書
【特許文献5】米国特許第7,411,719号明細書
【特許文献6】米国特許第7,072,095号明細書
【特許文献7】米国特許第9,279,906号明細書
【特許文献8】米国特許第7,144,942号明細書
【特許文献9】米国特許第7,005.468号明細書
【特許文献10】米国特許第7,715,088号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0120024号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0219306号明細書
【特許文献13】米国特許第6,982,178号明細書
【特許文献14】米国特許第7,839,564号明細書
【特許文献15】米国特許第7,116,318号明細書
【特許文献16】米国特許第7,535,624号明細書
【特許文献17】米国特許第7,075,502号明細書
【特許文献18】米国特許第7,012,600号明細書
【特許文献19】米国特許第7,453,445号明細書
【特許文献20】米国特許第7,312,784号明細書
【特許文献21】米国特許第8,009,348号明細書
【特許文献22】米国特許第6,241,921号明細書
【特許文献23】米国特許出願公開第2015/0277160号明細書
【特許文献24】米国特許第7,615,325号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2015/0005720号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2016/0012710号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明の要旨
一態様では、本発明は、(i)溶媒を除くシール層の重量に対し30~70重量%の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90~99.5%の加水分解度を有しており、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90~99.5%の加水分解度および10%またはそれ未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、(ii)溶媒を除くシール層の重量に対し7~29重量%のポリウレタンを含んでいるシール層を対象とする。ポリウレタンは、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとの界面張力を有している。水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力は、2mN/m未満である。ポリウレタンは、全表面エネルギー、表面エネルギーの極性成分、および表面エネルギーの分散成分を有している。ポリウレタンの表面エネルギーの極性成分は、10~20mN/mであり得る。シール層のポリウレタンは、ポリイソシアネート、多官能性ポリカルボジイミド、多官能性アジリジン、シランカップリング剤、ホウ素/チタン/ジルコニウムベースの架橋剤、またはメラミンホルムアルデヒド架橋剤を使用して架橋され得る。シール層は、湿潤剤をさらに含み得、湿潤剤は、有機シリコーン表面張力低下剤である。シール層は、5×107~1010オーム.cmの体積抵抗率を有することができる。
【0025】
シール層のポリウレタンは、エステルポリウレタンもしくはポリカーボネートポリウレタンまたはそれらの組合せであり得る。ポリウレタンは、1,000~2,000,000ダルトンの数平均分子量を有することができる。
【0026】
シール層のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、1,000~1,000,000ダルトンの数平均分子量を有することができる。ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、92~99%の加水分解度を有することができる。シール層のポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、9%未満のエチレン含量を有することができる。
【0027】
シール層は、水性シール組成物によって形成され得る。水性シール組成物は、(i)溶
媒を除く水性シール組成物の重量に対し30~70重量%の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90~99.5%の加水分解度を有しており、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90~99.5%の加水分解度および10%またはそれ未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、(ii)溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し7~29重量%の水ベースのポリウレタン、ならびに(iii)水性担体を含み得る。水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力は、2mN/m未満であり得る。水性シール組成物はまた、ポリウレタンを架橋する架橋剤を含み得る。架橋剤は、ポリイソシアネート、多官能性ポリカルボジイミド、多官能性アジリジン、シランカップリング剤、ホウ素/チタン/ジルコニウムベースの架橋剤、またはメラミンホルムアルデヒドであり得る。水性シール組成物は、せん断減粘性であり得る。水性シール組成物のレオロジープロファイルは、10-41/秒のせん断速度における粘度と1021/秒のせん断速度における粘度との間で、5分の1~10,000分の1への粘度低下を示し得る。
【0028】
別の態様では、本発明は、(i)溶媒を除くシール層の重量に対し30~70重量%の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90~99.5%の加水分解度を有しており、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90~99.5%の加水分解度および10%またはそれ未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、(ii)溶媒を除くシール層の重量に対し7~29重量%のポリウレタンを含んでいるシール層を対象とする。ポリウレタンの表面エネルギーの極性成分は、10~20mN/mであり得る。シール層は、(i)、(ii)および水性担体を含んでいる水性シール組成物によって形成され得る。水性シール組成物は、溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し0.5~10重量%の架橋剤をさらに含み得る。
【0029】
シール層は、溶媒を除くシール層の重量に対し5~50重量%のフィラーをさらに含み得る。フィラーは、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、およびカーボンナノチューブからなる群から選択され得る。フィラーは、カーボンブラックであり得、カーボンブラックは、カーボンブラック100mg当たり100mL未満の吸油量を有している。カーボンブラックは、20nmよりも大きい平均粒径を有することができる。カーボンブラックは、窒素吸着法を使用して測定して、90m2/g未満の比表面積を有することができる。カーボンブラックは、窒素吸着法を使用して測定して、200m2/g未満の比表面積、およびDIN53552に従う方法を使用して測定して、5%よりも高い揮発物含量を有することができる。
【0030】
シール層は、電気泳動ディスプレイのマイクロセルをシールするために使用され得る。電気泳動ディスプレイは、第1の光透過性電極層、電気光学材料層、および第2の電極層を含み得る。電気光学材料層は、第1の光透過性電極層と第2の電極層との間に配置されている。電気光学材料層は、複数のマイクロセルおよびシール層を含んでいる。シール層は、水性シール組成物から形成され得る。複数のマイクロセルのそれぞれは、底部、壁部および開口部を含んでおり、電気泳動媒体を収容しており、前記電気泳動媒体は、非極性流体に分散した少なくとも1つのタイプの荷電された色素粒子を含んでいる。シール層は、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。
【0031】
シール層はまた、フロントプレーン積層物のマイクロセルをシールするために使用され得る。フロントプレーン積層物は、第1の光透過性電極層、電気光学材料層、接着層、お
よびリリースシートを含み得る。電気泳動ディスプレイは、第1の光透過性電極層、電気光学材料層、および第2の電極層を含み得る。電気光学材料層は、第1の光透過性電極層と第2の電極層との間に配置されている。電気光学材料層は、複数のマイクロセルおよびシール層を含んでいる。シール層は、水性シール組成物によって形成され得る。複数のマイクロセルのそれぞれは、底部、壁部および開口部を含んでおり、電気泳動媒体を収容しており、前記電気泳動媒体は、非極性流体に分散した少なくとも1つのタイプの荷電された色素粒子を含んでいる。シール層は、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。
【0032】
水性シール組成物はまた、二重リリースシートのマイクロセルをシールするために使用され得る。二重リリースシートは、第1のリリースシート、第1の接着層、電気光学材料層、第2の接着層、および第2のリリースシートを含み得る。電気光学材料層は、複数のマイクロセルおよびシール層を含み得る。シール層は、水性シール組成物から形成され得る。複数のマイクロセルのそれぞれは、底部、壁部および開口部を含んでおり、電気泳動媒体を収容しており、前記電気泳動媒体は、非極性流体に分散した少なくとも1つのタイプの荷電された色素粒子を含んでいる。シール層は、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、充填およびシールされる前の複数のマイクロセルの構造を示す。
【0034】
【
図2】
図2は、マイクロセル構造を含む電気光学デバイスの例を示す。
【0035】
【
図3】
図3は、マイクロセル構造を含む電気光学デバイスを形成するために使用することができる、フロントプレーン積層物アセンブリの例を示す。
【0036】
【
図4】
図4は、マイクロセル構造を含む電気光学デバイスを形成するために使用することができる、二重リリースシートの例を示す。
【0037】
【
図5】
図5は、ロールツーロールプロセスを使用してマイクロセルを作製するための方法を示す。
【0038】
【
図6-1】
図6Aおよび6Bは、熱硬化性物質前駆体でコーティングされた導体フィルムのフォトマスクを介する、フォトリソグラフィ露光を使用したマイクロセルの生成を詳述する。
【0039】
【
図6-2】
図6Cおよび6Dは、フォトリソグラフィを使用して製作される代替実施形態を詳述する。
図6Cおよび6Dでは、上部および底部の露光の組合せを使用して、一横方向の壁部を、上部フォトマスクの露光によって硬化させ、別の横方向の壁部を、不透明なベース導体フィルムを介する底部の露光によって硬化させることを可能にする。
【0040】
【
図7A】
図7A~7Dは、マイクロセルのアレイを充填し、シールするステップを示す。
【
図7B】
図7A~7Dは、マイクロセルのアレイを充填し、シールするステップを示す。
【
図7C】
図7A~7Dは、マイクロセルのアレイを充填し、シールするステップを示す。
【
図7D】
図7A~7Dは、マイクロセルのアレイを充填し、シールするステップを示す。
【0041】
【
図8】
図8Aおよび8Bは、水性シール組成物の例および対応するシール層を、バリア特性および電気光学性能についてそれぞれ評価するために使用した、電気光学デバイスの構造を示す。
【0042】
【
図9A】
図9A~9Fは、実施例のデバイスの電気光学性能を評価するために使用した波形を示す。
【
図9B】
図9A~9Fは、実施例のデバイスの電気光学性能を評価するために使用した波形を示す。
【
図9C】
図9A~9Fは、実施例のデバイスの電気光学性能を評価するために使用した波形を示す。
【
図9D】
図9A~9Fは、実施例のデバイスの電気光学性能を評価するために使用した波形を示す。
【
図9E】
図9A~9Fは、実施例のデバイスの電気光学性能を評価するために使用した波形を示す。
【
図9F】
図9A~9Fは、実施例のデバイスの電気光学性能を評価するために使用した波形を示す。
【0043】
【
図10A】
図10A~10Dは、バリア特性について評価したマイクロセルの顕微鏡画像を示す。
【
図10B】
図10A~10Dは、バリア特性について評価したマイクロセルの顕微鏡画像を示す。
【
図10C】
図10A~10Dは、バリア特性について評価したマイクロセルの顕微鏡画像を示す。
【
図10D】
図10A~10Dは、バリア特性について評価したマイクロセルの顕微鏡画像を示す。
【0044】
【
図11】
図11は、様々なせん断速度での水性シール組成物の粘度プロファイルを示す。
【0045】
【
図12】
図12は、様々な界面張力を有するポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せを含んでいるポリマーフィルムの顕微鏡画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
本発明のシール層の重量または水性シール組成物の重量に言及する際の「溶媒を除く」という用語は、言及されているシール層の重量または言及されている水性シール組成物の重量が、シール層または水性シール組成物中に存在し得る水および他の溶媒を含まないことを意味する。
【0047】
「分子量」または「MW」という用語は、本明細書で使用される場合、別段記述されない限り、数平均分子量を指す。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0048】
A.マイクロセルの構造
【0049】
図1は、充填され、シールされる前の複数のマイクロセル100の構造を示している。各マイクロセルは、底部101、壁部102、および開口部103を含んでいる。
【0050】
B.マイクロセル構造を含む電気光学デバイスの構造
【0051】
図2は、マイクロセル構造220を含んでいる電気光学デバイス200の例を示している。この電気光学デバイス200の例は、第1の光透過性電極層210、マイクロセル層220、シール層230、接着層240、および第2の電極層250を含んでいる。マイクロセル層は、底部221および壁部222によって画定されている複数のマイクロセルを含んでいる。複数のマイクロセルのそれぞれは、電気泳動媒体225を収容しており、この媒体は、非極性流体中に荷電された粒子を含んでいる。マイクロセルは、シール層230でシールされており、このシール層は、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。第2の電極層250は、接着層240を用いてシール層230に接続されている。複数のマイクロセルおよびシール層は、電気光学デバイス200の電気光学材料層を構成している。電界の供給源(図示せず)は、第1の光透過性電極層210を第2の電極層250と接続し得る。電気泳動材料層にわたる電界の印加により、電荷粒子が電気泳動媒体中を移動して画像を作り出し、この画像は、電気光学デバイス200の観察側210から見る観察者によって観察することができる。必要に応じたプライマー層(
図2には示されず)は、第1の光透過性電極層210と複数のマイクロセル230との間に配置され得る。
【0052】
図2に示されている電気光学デバイスの例は、
図3に示されているフロントプレーン積層物300によって構築され得る。フロントプレーン積層物300は、第1の光透過性電極層310、複数のマイクロセル320、シール層330、接着層340、およびリリースシート360を含んでいる。複数のマイクロセルのそれぞれは、電気泳動媒体325を収容しており、この媒体は、非極性流体中に荷電された粒子を含んでいる。マイクロセルは、シール層330でシールされており、このシール層は、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。リリースシート360は、接着層340を用いてシール層330に接続されている。リリースシート360の除去により、接着層340の表面が露出し、この接着層は、第2の電極層上に接続されて、電気光学デバイスを形成し得る。必要に応じたプライマー層(
図3には示されず)は、第1の光透過性電極層310と複数のマイクロセル330との間に配置され得る。
【0053】
図2に示されている電気光学デバイスの例は、
図4に示されている二重リリースシート400によっても構築され得る。二重リリースシート400は、第1のリリースシート480、第1の接着層470、複数のマイクロセル420、シール層430、第2の接着層440、および第2のリリースシート460を含んでいる。複数のマイクロセルのそれぞれは、電気泳動媒体425を収容しており、この媒体は、非極性流体中に荷電された粒子を含んでいる。マイクロセルは、シール層430でシールされており、このシール層は、複数のマイクロセルの開口部にわたっている。第1のリリースシート480は、第1の接着層470を用いて複数のマイクロセル420に接続されている。第2のリリースシートは、第2の接着層440を用いてシール層430に接続されている。第1のリリースシート460の除去により、第1の接着層470の表面が露出し、この接着層は、第1の光透過性電極層上に接続され得る。第2のリリースシート460の除去により、第2の接着層440の表面が露出し、この接着層は、第2の電極層上に接続されて、電気光学デバイスを形成し得る。必要に応じたプライマー層(
図4には図示せず)は、第1の接着層470と複数のマイクロセル430との間に配置され得る。
【0054】
C.マイクロセル構造の形成
【0055】
マイクロセルを構築するための技術。マイクロセルは、バッチ式プロセスまたは米国特許第6,933,098号に開示されている連続的なロールツーロールプロセスのいずれかで形成され得る。後者は、利益をもたらす作用物質の送達および電気泳動ディスプレイを含めた様々な用途における使用のためのコンパートメントを生成するための、連続的な低コストのハイスループット製造技術を提供する。本発明との併用に適したマイクロセルアレイは、
図5に示されている通り、マイクロエンボス加工を用いて作り出すことができ
る。雄型(500)は、ウェブ504の上またはウェブ504の下(図示せず)のいずれかに置かれ得る。しかし、代替の配置が可能である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,715,088号を参照されたい。導電性基材は、デバイスのためのバッキング層になるポリマー基材上に導体フィルム501を形成することによって、構築され得る。次に、熱可塑性物質、熱硬化性物質、またはそれらの前駆体を含んでいる組成物502が、導体フィルム上にコーティングされる。熱可塑性物質または熱硬化性物質の前駆体層は、熱可塑性物質または熱硬化性物質の前駆体層のガラス転移温度よりも高い温度で、ローラー、プレートまたはベルトの形態の雄型によってエンボス加工される。
【0056】
マイクロセルの調製のための熱可塑性物質または熱硬化性物質の前駆体は、多官能性アクリレートまたはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシド、およびそれらのオリゴマーまたはポリマーなどであり得る。多官能性エポキシドと多官能性アクリレートとの組合せは、望ましい物理的機械的特性を達成するのにも非常に有用である。可撓性を付与する架橋可能なオリゴマー、例えばウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレートは、エンボス加工されたマイクロセルの曲げ耐性を改善するために添加され得る。組成物は、ポリマー、オリゴマー、モノマーおよび添加剤を含有し得るか、またはオリゴマーだけ、モノマーだけおよび添加剤だけを含有してもよい。このクラスの材料のガラス転移温度(すなわちTg)は、通常、約-70℃~約150℃、または約-20℃~約50℃の範囲である。マイクロエンボス加工プロセスは、典型的に、Tgよりも高い温度で行われる。加熱された雄型、またはその型が圧力をかける加熱されたハウジング基材は、マイクロエンボス加工の温度および圧力を制御するために使用され得る。
【0057】
図5に示される通り、型は、前駆体層が硬化されている間またはその後に離型されて、マイクロセル503のアレイを現す。前駆体層の硬化は、冷却、溶媒蒸発、放射線、熱または湿気による架橋によって達成され得る。熱硬化性物質の前駆体の硬化が、UV放射線によって達成される場合、UVは、2つの図に示されている通り、ウェブの底部または上部から透明導体フィルム上に放射され得る。代替として、UVランプは、型の内側に置かれ得る。この場合、UV光を、予めパターン化された雄型を通して熱硬化性物質の前駆体層上に放射させるために、型は透明でなければならない。雄型は、任意の適切な方法、例えばダイヤモンド旋盤プロセスまたはフォトレジストプロセスに続いて、エッチングまたは電気めっきのいずれかによって調製され得る。雄型のためのマスターテンプレートは、任意の適切な方法、例えば電気めっきによって製造され得る。電気めっきでは、ガラスベースに、クロムインコネルなどの種金属(seed metal)の薄層がスパッタリングされる
(典型的に3000Å)。次に、型がフォトレジストの層でコーティングされ、UVに露光される。マスクが、UVとフォトレジストの層との間に置かれる。フォトレジストの露光領域が硬化される。次に、非露光領域が、適切な溶媒を用いて洗浄することによって除去される。残った硬化したフォトレジストが乾燥させられ、種金属の薄層が再びスパッタリングされる。これにより、マスターが電鋳のために準備ができる。電鋳のために使用される典型的な材料は、ニッケルコバルトである。代替として、マスターは、電鋳または無電解ニッケル堆積によって、ニッケルから作製することができる。型の床面は、典型的に約50~400ミクロンの間である。マスターは、”Replication techniques for micro-optics”, SPIE Proc. Vol. 3099, pp. 76-82 (1997)に記載されている通り
、eビーム書き込み、乾燥エッチング、化学エッチング、レーザー書き込みまたはレーザー干渉を含めた他のマイクロエンジニアリング技術を使用して作製することもできる。代替として、型は、フォトマシニングによって、プラスチック、セラミックまたは金属を使用して作製することができる。
【0058】
UV硬化性樹脂組成物を適用する前に、型は、脱型プロセスを助ける離型剤を用いて処理され得る。UV硬化性樹脂は、分注前に脱気され得、必要に応じて溶媒を含有し得る。
溶媒は、存在する場合、容易に蒸発する。UV硬化性樹脂は、雄型を覆うように、コーティング、浸漬、注入などの任意の適切な方法によって分注される。分注装置は、移動していても固定されていてもよい。導体フィルムは、UV硬化性樹脂に重ね合わされる。必要ならば、樹脂とプラスチックとの間に適切な結合を確保し、マイクロセルの床部の厚さを制御するために、圧力が適用され得る。圧力は、積層ローラー、真空成形、圧縮デバイスまたは任意の他の同様の手段を使用して適用され得る。雄型が金属製であり、不透明である場合、プラスチック基材は、典型的に、樹脂を硬化させるために使用される化学線を透過させる。それとは逆に、雄型が透明であってもよく、プラスチック基材は、化学線を透過させなくてもよい。成型されたフィーチャーを、転写シート上に良好に転写させるために、導体フィルムは、UV硬化性樹脂に対して良好な接着を有している必要があり、この樹脂は、型表面に対して良好な離型特性を有しているべきである。
【0059】
本発明のためのマイクロセルアレイは、典型的に、予め形成された導体フィルム、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)導体ラインを含むが、他の導電性材料、例えば銀またはアルミニウムを使用してもよい。導電層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアラミド、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ポリスルホン、エポキシおよびそれらの複合物などの基材によって裏打ちされ得るか、または基材に統合され得る。導体フィルムは、放射線硬化性ポリマー前駆体層でコーティングされ得る。次に、フィルムおよび前駆体層は、放射線に像様に露光されて、マイクロセル壁部構造を形成する。露光後に、前駆体材料は、非露光領域から除去されて、導体フィルム/支持ウェブに結合した、硬化したマイクロセル壁部を残す。像様露光は、導体フィルム上にコーティングされた放射線硬化性材料の露光画像または所定の露光パターンを生成するためのフォトマスクに、UVまたは他の形態の放射線が通過することによって達成され得る。一般には必要ないが、マスクは、透明なマスク部分がITOラインの間の空間と整列し、不透明なマスク部分がITO材料(マイクロセルのセル床部領域を意図されている)と整列するように、導体フィルム、すなわちITOラインに対して位置し、整列させられ得る。
【0060】
フォトリソグラフィ。マイクロセルは、フォトリソグラフィを使用して生成することもできる。マイクロセルアレイを製作するためのフォトリソグラフィプロセスは、
図6Aおよび5Bに示されている。
図6Aおよび6Bに示されている通り、マイクロセルアレイ600は、公知の方法によって導体電極フィルム602上にコーティングされた放射線硬化性材料601aを、マスク606を通してUV光(または代替として他の形態の放射線、電子線など)に露光して、マスク606を通して映し出された画像に対応する壁部601bを形成することによって、調製され得る。ベース導体フィルム602は、好ましくは、支持基材ベースウェブ(603)上にマウントされ、このウェブは、プラスチック材料を含み得る。
【0061】
図6Aのフォトマスク606において、暗色正方形604は、不透明領域を表しており、暗色正方形の間の空間は、マスク606の透明領域605を表している。UVは、透明領域605を通して、放射線硬化性材料601a上に放射される。露光は、好ましくは、放射線硬化性材料601a上に直接実施され、すなわち、UVは、基材603へもベース導体602へも通過しない(上部露光)。この理由のために、基材603も導体602も、用いられるUVまたは他の波長の放射線を透過させる必要がない。
【0062】
図6Bに示されている通り、露光された領域601bは硬化する。次に、露光されていない領域(マスク606の不透明領域604によって保護されている)は、適切な溶媒または現像剤によって除去されて、マイクロセル607を形成する。溶媒または現像剤は、放射線硬化性材料を溶解するか、またはその粘度を低減するために一般に使用されているもの、例えばメチルエチルケトン(MEK)、トルエン、アセトン、イソプロパノールなどから選択される。マイクロセルの調製は、導体フィルム/基材支持ウェブの下にフォト
マスクを置くことによっても同様に達成され得、この場合、UV光は、フォトマスクを通して底部から放射され、この基材は、放射線を透過させる必要がある。
【0063】
像様露光。像様露光による本発明のマイクロセルアレイの調製のためのさらに別の代替方法は、
図6Cおよび6Dに示されている。不透明な導体ラインが使用される場合、底部からの露光のためのフォトマスクとして、導体ラインを使用することができる。耐久性のあるマイクロセル壁部は、上部から、導体ラインに対して垂直な不透明ラインを有している第2のフォトマスクを通してさらに露光することによって形成される。
図6Cは、本発明のマイクロセルアレイ610を生成するために、上部および底部の両方からの露光原理を使用することを示している。ベース導体フィルム612は、不透明であり、ラインをパターン化されている。ベース導体612および基材613上にコーティングされている放射線硬化性材料611aは、底部から、導体ラインパターン612を通して露光され、この導体ラインパターン612は、第1のフォトマスクとして働く。第2の露光は、「上部」側から、導体ライン612に対して垂直なラインパターンを有している第2のフォトマスク616を通して実施される。ライン614の間の空間615は、UV光を実質的に透過させる。このプロセスにおいて、壁部材料611bは、底部から上方に向かって一方の側面方向に硬化し、上部から下方に向かって垂直方向に硬化して、一緒になって完全なマイクロセル617を形成する。次に、
図6Dに示されている通り、露光されていない領域は、前述の通り溶媒または現像剤によって除去されて、マイクロセル617を現す。
【0064】
マイクロセルは、マイクロセルと良好な適合性を有しており、媒体と相互作用しない熱可塑性エラストマーから構築され得る。有用な熱可塑性エラストマーの例として、ABA、および(AB)nタイプのジブロック、トリブロック、およびマルチブロックコポリマーが挙げられ、ここでAは、スチレン、α-メチルスチレン、エチレン、プロピレンまたはノルボルネンであり、Bは、ブタジエン、イソプレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ジメチルシロキサンまたはプロピレンスルフィドであり、AおよびBは、式において同じであってはならない。数nは、≧1、好ましくは1~10である。特に有用なのは、スチレンまたはox-メチルスチレンのジブロックまたはトリブロックコポリマー、例えばSB(ポリ(スチレン-b-ブタジエン))、SBS(ポリ(スチレン-b-ブタジエン-b-スチレン))、SIS(ポリ(スチレン-b-イソプレン-b-スチレン))、SEBS(ポリ(スチレン-b-エチレン/ブチレン-b-スチレン(stylene)))ポ
リ(スチレン-b-ジメチルシロキサン-b-スチレン)、ポリ((α-メチルスチレン-b-イソプレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-イソプレン-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-プロピレンスルフィド-b-α-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン-b-ジメチルシロキサン-b-α-メチルスチレン)である。商業的に入手可能なスチレンブロックコポリマー、例えばKraton DおよびGシリーズ(Kraton Polymer、Houston、Tex.製)が、特に有用である。結晶性ゴム、例えばポリ(エチレン-co-プロピレン-co-5-メチレン-2-ノルボルネン)(poly(ethylene-co-propylene-co-5-methylene-2-norbomene))またはEPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)ゴム、例えばVistalon 6505(Exxon Mobil、Houston、Tex.製)およびそれらのグラフト化コポリマーも、非常に有用であることが見出された。
【0065】
熱可塑性エラストマーは、溶媒または溶媒混合物に溶解させられ得、この溶媒または溶媒混合物は、マイクロセルにおける担体と不混和性であり、担体の比重よりも低い比重を示す。低表面張力の溶媒は、マイクロセル壁部およびその流体よりも濡れ特性が良好なので、オーバーコーティング組成物には、低表面張力の溶媒が好ましい。35ダイン/cmよりも低い表面張力を有している溶媒または溶媒混合物が、好ましい。30ダイン/cmよりも低い表面張力が、より好ましい。適切な溶媒には、アルカン(好ましくはC6~12アルカン、例えばヘプタン、オクタンまたはExxon Chemical Comp
any製のIsopar溶媒、ノナン、デカンおよびそれらの異性体)、シクロアルカン(好ましくはC6~12シクロアルカン、例えばシクロヘキサンおよびデカリンなど)、アルキルベンゼン(alkylbezenes)(好ましくはモノ-またはジ-C1~6アルキルベンゼン、例えばトルエン、キシレンなど)、アルキルエステル(好ましくはC2~5アルキルエステル、例えば酢酸エチル、酢酸イソブチルなど)およびC3~5アルキルアルコール(例えば、イソプロパノールなどおよびそれらの異性体)が含まれる。アルキルベンゼンおよびアルカンの混合物が、特に有用である。
【0066】
ポリマー混合物は、ポリマー添加剤に加えて、湿潤剤(界面活性剤)を含み得る。また、マイクロセルへのシーラントの接着を改善し、より柔軟なコーティングプロセスを提供するために、湿潤剤(例えば、3M Company製のFC界面活性剤、DuPont製のZonylフッ素系界面活性剤、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレート、フルオロで置換されている長鎖アルコール、ペルフルオロ置換されている長鎖カルボン酸およびそれらの誘導体、ならびにOSi、Greenwich、Conn.製のSilwetシリコーン界面活性剤)が組成物に含まれ得る。オーバーコーティングプロセス中またはその後に、架橋または重合反応によってシール層の物理的機械的特性を増強するために、架橋剤(例えば、ビスアジド、例えば4,4’-ジアジドジフェニルメタンおよび2,6-ジ-(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン)、加硫剤(例えば、2-ベンゾチアゾリルジスルフィドおよびテトラメチルチウラムジスルフィド)、多官能性モノマーまたはオリゴマー(例えば、ヘキサンジオール、ジアクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレン(diallylphthalene))、熱開始剤(例えば、過酸化ジラウロイル(dilauroryl)、過酸化ベンゾイル)および光開始剤(例えば、イソプロピルチオキサントン(ITX)、Ciba-Geigy製のIrgacure 651およびIrgacure 369)を含めた他の成分も非常に有用である。
【0067】
マイクロセルアレイ700は、前述の方法のいずれかによって調製され得る。
図7A~7Dの断面図に示されている通り、マイクロセル壁部702は、バッキング層701および導電層710から上方に延びて、開いたマイクロセルを形成する。一実施形態では、導電層710は、バッキング層701上またはバッキング層701に形成される。
図7A~7Dは、導電層710がバッキング層701上に連続して延びていることを示しているが、導電層710は、バッキング層701の下もしくはバッキング層701内に連続して延びているか、またはマイクロセル壁部702によって中断されていることも可能である。マイクロセルアレイ700は、利益をもたらす作用物質が使用前に損なわれないようにするために、充填前に清浄にされ、滅菌され得る。
【0068】
次に、マイクロセルは、非極性流体中に荷電された粒子を含んでいる電気泳動媒体725で充填されて、複数の充填されたマイクロセル770を形成する。マイクロセルは、様々な技術を使用して充填され得る。一部の実施形態では、マイクロセル壁部702の深さまでマイクロセルを充填するために、ブレードコーティングが使用され得る。他の実施形態では、マイクロセルを充填するために、インクジェットタイプのマイクロ注入を使用することができる。さらなる他の実施形態では、マイクロセルのアレイを電気泳動媒体725で充填するために、マイクロニードルアレイが使用され得る。
【0069】
図7Cに示されている通り、充填後、マイクロセルは、水性シール組成物を適用することによってシールされて、シール層730を含んでいるシールされたマイクロセル780を形成する。一部の実施形態では、シールプロセスは、熱、乾燥熱風、またはUV放射線への曝露を含み得る。シール層は、電気泳動媒体725の非極性流体に対する良好なバリア特性を有していなければならない。
【0070】
代替実施形態において、様々な個々のマイクロセルには、反復フォトリソグラフィを使用することによって、所望の混合物が充填され得る。このプロセスは、典型的に、空のマイクロセルのアレイを、ポジ型として働くフォトレジストの層でコーティングし、ポジ型フォトレジストを像様露光することによってある一定数のマイクロセルを選択的に開口させ、続いてフォトレジストを現像させ、開口しているマイクロセルを所望の混合物で充填し、充填されたマイクロセルをシールプロセスによってシールすることを含む。これらのステップは、他の混合物で充填された、シールされたマイクロセルを作り出すために反復され得る。この手順は、所望の比率の混合物または濃度を有しているマイクロセルの大型シートの形成を可能にする。
【0071】
充填されたマイクロセルのシールは、いくつかのやり方で達成され得る。ある手法は、水性シール組成物を電気泳動媒体組成物と混合することを含む。水性シール組成物は、電気泳動組成物とは不混和性であり得、好ましくは電気泳動媒体組成物の比重よりも低い比重を有し得る。水性シール組成物および電気泳動媒体組成物の2種の組成物は、十分に混合され、正確なコーティング機序、例えばメイヤーバー、グラビア、ドクターブレード、スロットコーティングまたはスリットコーティングを用いて複数のマイクロセル上にすぐにコーティングされる。過剰の流体は、ワイパーブレードまたは類似のデバイスによってかき落される。マイクロセルの仕切り壁の上部表面上に残った流体をきれいにするために、少量の弱溶媒または溶媒混合物、例えばイソプロパノール、メタノールまたはその水溶液が使用され得る。その後、水性シール組成物は、電気泳動媒体組成物から分離され、電気泳動媒体の液体組成物の上部に浮かぶ。代替として、電気泳動媒体組成物および水性シール組成物の混合物がマイクロセルに充填された後、組成物の混合物の計量を制御し、電気泳動媒体組成物からの水性シール組成物の相分離を促進して均一なシール層を形成するために、基材が上部に積層され得る。使用される基材は、最終構造における機能的基材であってもよく、または後で除去することができる捨て基材(sacrifice substrate)、例えばリリース基材であってもよい。次に、水性シール組成物をin situで(すなわち、電気泳動媒体組成物と接触しているときに)硬化させることによって、シール層が形成される。水性シール組成物の硬化は、UVまたは他の形態の放射線、例えば可視光線、IRもしくは電子線によって達成され得る。代替として、熱または湿気硬化性水性シール組成物が使用される場合には、水性シール組成物を硬化させるために、熱または湿気も用いられ得る。
【0072】
第2の手法では、最初に、電気泳動媒体組成物がマイクロセルに充填され得、その後、充填されたマイクロセル上に、水性シール組成物がオーバーコーティングされる。オーバーコーティングは、従来のコーティングおよびプリンティングプロセス、例えばブランケットコーティング、インクジェットプリンティングまたは他のプリンティングプロセスによって達成され得る。この手法では、水性シール組成物を溶媒蒸発、放射線、熱、湿気、または界面反応により硬化させることによって、シール層がin situで形成される。界面重合に続いてUV硬化することが、シールプロセスに有益である。電気泳動媒体組成物と、シール用オーバーコートとの混合は、界面重合によって界面に薄いバリア層が形成されることによって、著しく抑制される。次に、例えばUV放射線による後硬化ステップによって、シールが完了する。混合度は、電気泳動媒体組成物の比重よりも低い比重を有している水性シール組成物を使用することによって、さらに低減され得る。シール用オーバーコートの粘度および厚さを調整するために、揮発性有機溶媒が使用され得る。水性シール組成物のレオロジーは、最適なシール適性(sealability)およびコーティング適
性(coatability)に合わせて調整され得る。揮発性溶媒がオーバーコートにおいて使用
される場合、揮発性溶媒は、電気泳動媒体組成物における溶媒と不混和性であることが好ましい。
【0073】
マイクロセルが充填され、シールされた後、シールされたアレイには、複数の電極を含
んでいる第2の電極層750が積層され得る。第2の電極層750は、
図7Dに示されている通り、シール層730上に結合して、電気光学デバイス790を形成する。第2の電極層750をシール層730上に結合させるために、接着剤が使用され得る(接着層は、
図7Dでは示されていない)。接着剤は、導電性であり得る。接着層の接着剤は、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、または熱、湿気もしくは放射線硬化性接着剤であり得る。積層用接着剤は、上部導電層が放射線を透過させる場合には、上部導電層を通る放射線、例えばUVによって後硬化され得る。他の実施形態では、複数の電極が、マイクロセルのシールされたアレイに直接結合され得る。
【0074】
一般に、マイクロセルは、いかなる形状であってもよく、それらのサイズおよび形状は変わり得る。マイクロセルは、ある系では実質的に均一なサイズおよび形状であり得る。しかし、複数の形状およびサイズが混ざったマイクロセルを有することが可能である。マイクロセルの開口部は、円形、正方形、矩形、六角形または任意の他の形状であり得る。開口部の間の仕切り領域のサイズも変わり得る。個々の各マイクロセルの寸法は、約1×101~約1×106μm2、または約1×102~約1×106μm2、または約1×103~約1×105μm2の範囲であり得る。
【0075】
マイクロセルの深さは、約5~約200μm、または約10~約100μmの範囲であり得る。全面積に対する開口部の比は、約0.05~約0.95、または約0.4~約0.9の範囲である。
【0076】
電気泳動ディスプレイは、普通、電気泳動材料の層、およびその電気泳動材料の両側に配置されている少なくとも2つの他の層を含んでおり、これらの2層のうちの一方は、電極層である。ほとんどのこのようなディスプレイでは、両方の層が電極層であり、ディスプレイの画素を画定するためにこれらの電極層のうちの一方または両方がパターン化されている。例えば、一方の電極層は、細長い行電極にパターン化され得、他方は、行電極に対して直角に延びる細長い列電極にパターン化され得、画素は、行電極および列電極の交差部によって画定される。代替として、より一般的には、一方の電極層は、単一の連続式電極の形態を有しており、他方の電極層は、画素電極のマトリックスにパターン化され、それらはそれぞれ、ディスプレイの1つの画素を画定している。ディスプレイと分離されているスタイラス、プリントヘッドまたは類似の可動電極と併用することが意図されている、別のタイプの電気泳動ディスプレイでは、電気光学材料層に隣接している層の一方だけが電極を含んでおり、電気光学材料層の反対側の層は、典型的に、可動電極が電気光学材料層に損傷を与えないようにすることを意図された保護層である。
【0077】
三層電気泳動ディスプレイの製造は、普通、少なくとも1つの積層操作を含む。例えば、前述のMITおよびE Inkの特許および出願のいくつかには、カプセル化された電気泳動ディスプレイを製造するための方法が記載されており、そのディスプレイにおける、バインダー中にカプセルを含んでいるカプセル化された電気泳動媒体は、インジウムスズ酸化物(ITO)を含んでいる可撓性基材上、またはプラスチックフィルム上にコーティングされた類似の導電性コーティング上にコーティングされる。これとは別に、画素電極のアレイおよびその画素電極を接続して回路を駆動するのに適した配置の導体を含んでいる、バックプレーンが調製される。最終ディスプレイを形成するために、電気光学材料層を有している基材は、積層用接着剤を使用してバックプレーンに積層される。
【0078】
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産に良く適合している固体電気光学ディスプレイをアセンブリする方法を記載している。本質的に、この特許は、いわゆる「フロントプレーン積層物」(「FPL」)を記載しており、これは順に、光透過性電極層、光透過性電極層と電気的に接触している電気光学材料層、接着層、およびリリースシートを含んでいる。典型的に、光透過性電極層は、光透過性基材上に担持され、この光透過
性基材は、永久的な変形を受けずに直径10インチ(254mm)のドラム(例えば)の周りに手作業で巻き付けることができるという意味で、好ましくは可撓性である。「光透過性」という用語は、本特許および本明細書においては、そのように指定された層を通して見ている観察者が、電気泳動媒体のディスプレイ状態の変化を観察することを可能にするのに十分な光を、そのように指定された層が透過することを意味するために使用され、この変化は、普通は光透過性電極層および隣接する基材(存在する場合)を通して見られる。電気泳動媒体が非可視波長の反射性の変化を示す場合、「光透過性」という用語は、当然のことながら、関連する非可視波長の透過を指していると解釈されるべきである。基材は、典型的にポリマーフィルムであり、普通、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは約2~約10ミル(51~254μm)の範囲の厚さを有する。光透過性電極層は、好都合には、例えば、アルミニウムもしくはITOの薄い金属もしくは金属酸化物層であるか、または導電性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えばE.I.du
Pont de Nemours&Company、Wilmington、DE製の「アルミめっき処理されたMylar」(「Mylar」は、登録商標である)として商業的に入手可能であり、このような市販材料は、フロントプレーン積層物において良好な結果を得て使用され得る。このようなフロントプレーン積層物を使用する電気泳動ディスプレイのアセンブリは、フロントプレーン積層物からリリースシートを除去し、接着層をバックプレーンに接着させるのに有効な条件下で、接着層をバックプレーンと接触させ、それによってバックプレーンに接着層、電気光学材料層、および光透過性電極層を固定することによって行われ得る。このプロセスは、フロントプレーン積層物が、典型的にロールツーロールコーティング技術を使用して大量生産され、次に特定のバックプレーンとの併用に必要な任意のサイズの小片に切断され得るので、大量生産に良く適合している。
【0079】
米国特許第7,561,324号は、いわゆる「二重リリースシート」を記載しており、これは本質的に、前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーン積層物を簡素化したものである。ある形態の二重リリースシートは、2つの接着層の間に挟まれた電気光学材料層を含んでおり、接着層の一方または両方がリリースシートによって被覆されている。別の形態の二重リリースシートは、2つのリリースシートの間に挟まれた固体電気光学材料の層を含んでいる。両方の形態の二重リリースフィルムは、既に記載されているフロントプレーン積層物から電気泳動ディスプレイをアセンブリするためのプロセスにほぼ類似しているが、2つの別個の積層物を含んでいるプロセスにおける使用を意図されている。典型的に、第1の積層物では、二重リリースシートが正面の電極に積層されて、正面のサブアセンブリが形成され、次に第2の積層物では、正面のサブアセンブリがバックプレーンに積層されて、最終ディスプレイが形成されるが、これらの2つの積層順は、所望に応じて逆にすることができる。
【0080】
米国特許第7,839,564号は、いわゆる「逆フロントプレーン積層物」を記載しており、これは前述の米国特許第6,982,178号に記載されているフロントプレーン積層物の変形である。この逆フロントプレーン積層物は、順に、光透過性保護層および光透過性電極層の少なくとも一方、接着層、電気光学材料層、ならびにリリースシートを含み得る。この逆フロントプレーン積層物を使用して、電気光学材料層と光透過性電極層との間に積層用接着剤の層を有している電気光学デバイスが形成されるが、電気光学材料層とバックプレーンとの間に、典型的に薄い第2の接着層が存在しても存在していなくてもよい。このような電気光学ディスプレイは、良好な解像度と良好な低温性能を組み合わせることができる。
【0081】
電気泳動媒体。
【0082】
電気泳動媒体は、本発明の文脈では、マイクロセルにおける組成物を指す。マイクロセ
ルには、ディスプレイ用途のために、非極性流体中の少なくとも1つのタイプの荷電された色素粒子が充填され得る。電気泳動媒体は、1つのタイプの荷電されたタイプの粒子、または異なる色、電荷および電荷極性を有している1つまたはそれより多くのタイプの粒子を含み得る。荷電された粒子は、電気光学材料層にわたって印加された電界の影響の下で、電気泳動媒体中を移動する。荷電された粒子は、それらの安定性を改善するために、ポリマー表面処理を有している無機または有機色素であり得る。電気泳動媒体は、白、黒、シアン、マゼンタ、イエロー、青、緑 赤、および他の色を有している色素を含み得る。電気泳動媒体はまた、電荷制御剤 電荷補助剤(charge adjuvant)、レオロジー調整剤、および他の添加剤を含み得る。非極性流体の例として、炭化水素、例えばIsopar、デカヒドロナフタレン(デカリン)、5-エチリデン-2-ノルボルネン、脂肪油、パラフィン油、シリコン(silicon)液、芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、
フェニルキシリルエタン、ドデシルベンゼンまたはアルキルナフタレン、ハロゲン化溶媒、例えばペルフルオロデカリン、ペルフルオロトルエン、ペルフルオロキシレン、ジクロロベンゾトリフルオリド、3,4,5-トリクロロベンゾトリフルオリド、クロロペンタフルオロ-ベンゼン、ジクロロノナンまたはペンタクロロベンゼン、および全フッ素置換溶媒、例えば3M Company、St.Paul MN製のFC-43、FC-70またはFC-5060、低分子量ハロゲン含有ポリマー、例えばTCI America、Portland、Oregon製のポリ(ペルフルオロプロピレンオキシド)、ポリ(クロロトリフルオロ-エチレン)、例えばHalocarbon Product Corp.、River Edge、NJ製のハロカーボン油、ペルフルオロポリアルキルエーテル、例えばAusimont製のGalden、またはDuPont、Delaware製のKrytox油およびGreases K-Fluidシリーズ、Dow-corning製のポリジメチルシロキサンベースのシリコーン油(DC-200)が挙げられる。
【0083】
電気泳動媒体は、2つまたはそれよりも多いタイプの荷電された粒子を含み得る。電気泳動媒体は、4つのタイプの荷電された粒子、すなわち、第1のタイプ、第2のタイプ、第3のタイプおよび第4のタイプの荷電された粒子を含み得る。第1、第2、第3および第4のタイプの荷電された粒子は、それぞれ第1、第2、第3および第4の色を有する第1、第2、第3および第4のタイプの色素を含み得る。第1、第2、第3および第4の色は、互いに異なっていてもよい。第1のタイプの粒子は、無機色素を含み得、第1の電荷極性を有している。第2および第3のタイプの粒子は、第2の電荷極性とは反対の第2の電荷極性を有することができる。第4のタイプの粒子は、第1の電荷極性または第2の電荷極性を有することができる。第1のタイプの粒子は、白であってもよい。第2、第3および第4の荷電された粒子は、シアン、マゼンタおよびイエローからなる群から選択される色を有することができる。
【0084】
シール層
【0085】
シール層は、非極性流体が複数のマイクロセルから除去されないように、電気泳動媒体にバリアを提供しなければならない。さらに、シール層は、デバイスの電気光学性能にマイナスの影響を及ぼしてはならない。
【0086】
シール層の重要な特性の1つは、その電気体積抵抗率である。シール層の抵抗率が高過ぎると、シール層内にかなりの電圧低下が生じ、デバイスを操作するために電極にわたって電圧上昇が必要になる。この方式で電極にわたって電圧を上昇することは、ディスプレイの電力消費量を増大し、上昇した電圧を取り扱うためにより複雑で高価な制御回路の使用が必要になり得るので、望ましくない。他方では、シールが少なすぎると、隣接する画素電極の間に望ましくないクロストークが観察され、画質が低下する。加えて、体積抵抗率は、典型的に温度の低下と共に急速に上昇するので、シール層の高過ぎる体積抵抗率は
、ディスプレイの低温での電気光学性能にマイナスの影響を及ぼす。シール層は、4×107オーム.cmまたはそれよりも高い体積抵抗率を有することができる。シール層は、5×107オーム.cmまたはそれよりも高い体積抵抗率を有することができる。シール層は、108オーム.cmまたはそれよりも高い体積抵抗率を有することができる。シール層は、5×107~1012オーム.cm、または108~1010オーム.cmの体積抵抗率を有することができる。シール層は、1010またはそれ未満の体積抵抗率を有することができる。
【0087】
バリア特性および体積抵抗率以外のシール層の別の重要な特性は、その吸湿である。シール層が環境から著しい量の湿気を経時的に吸収する場合、デバイスの電気光学性能が劣ったものになる。
【0088】
本発明者らは、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せを含んでおり、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力が2mN/m未満であるシール層が、優れた全体的性能を有することができることを見出した。水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力は、1.9mN/m未満、または1.8mN/m未満、または1mN/m未満、または0.8mN/m未満、または0.6mN/m未満、または0.7mN/m未満であり得る。水溶性ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力は、0~2.0mN/m、または0.1~2.0mN/m、または0.2~2.0mN/m、または0.3~2.0mN/m、または0.4~2.0mN/m、または0.5~2.0mN/m、または0.6~2.0mN/m、または0.7~2.0mN/m、または0.8~2.0mN/m、または1.0~2.0mN/m、または1.5~2.0mN/m、または0~1.8mN/m、または0.1~1.8mN/m、または0.2~1.8mN/m、または0.3~1.8mN/m、または0.4~1.8mN/m、または0.5~1.8mN/m、または0.6~1.8mN/m、または0.7~1.8mN/m、または0.8~1.8mN/m、または1.0~1.8mN/m、または0~1.5mN/m、または0.2~1.5mN/m、または0.3~1.5mN/m、または0.4~1.5mN/m、または0.5~1.5mN/m、または0.6~1.5mN/m、または0.7~1.5mN/m、または0.8~1.5mN/m、または1.0~1.5mN/m、または0~1.0mN/m、または0.1~1.0mN/m、または0.2~1.0mN/m、または0.3~1.0mN/m、または0.4~1.0mN/m、または0.5~1.0mN/m、または0.6~1.0mN/m、または0.7~1.0mN/m、または0.8~1.0mN/m、または0~0.8mN/m、または0.1~0.8mN/m、または0.2~0.8mN/m、または0.3~0.8mN/m、または0.4~0.8mN/m、または0.5~0.8mN/m、または0~0.7mN/m、または0.1~0.7mN/mまたは0.2~0.7mN/m、または0.3~0.7mN/m、または0.4~0.7mN/m、または0~0.6mN/m、または0.1~0.6mN/m、または0.2~0.7mN/m、または0.3~0.7mN/m、または0~0.6mN/m、または0.1~0.6mN/m、または0.2~0.6mN/m、または0.3~0.6mN/m、または0.4~0.6mN/m、または0~0.5mN/m、または0.1~0.5mN/m、または0.2~0.5mN/mであり得る。
【0089】
10~20mN/mの表面エネルギーの極性成分を有するポリウレタンを含んでいるシール層について、良好なバリア特性も観察された。ポリウレタンの表面エネルギーの極性成分は、10~25mN/m、または10~20mN/m、または11~20mN/m、または12~20mN/m、または13~20mN/m、または14~20mN/m、ま
たは15~20mN/m、または10~18mN/m、または11~18mN/m、または12~18mN/m、または13~18mN/m、または14~18mN/m、または15~18mN/m、または10~16mN/m、または11~16mN/m、または12~16mN/m、または13~16mN/m、または14~16mN/mであり得る。
【0090】
シール層は、水性シール組成物によって形成され得る。水性シール組成物は、(i)溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し30~70重量%の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、(ii)溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し7~29重量%のポリウレタン、および(iii)水性担体を含み得る。ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90~99.5%の加水分解度を有しており、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している。ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーおよびポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの加水分解度は、92~99%、または93~99%、または92~98%、または92~96%、または95~99%、または92~95%であり得る。ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーのエチレン含量は、9%未満、または8.5%未満、または8%未満であり得る。ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーのエチレン含量は、7~11%、または8~10%、または8~9%、または9~11%、または10~11%であり得る。ポリビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマーの加水分解度は、このようなポリマーの製造者によって慣用的に報告されており、全ビニル単位に対するポリマーにおけるビニルアルコールの単位(モル)による割合を示す。その他の単位は、典型的に酢酸ビニル(エステル)である。ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーのエチレン含量も、製造者によって報告されており、その他の単位に対するポリマーにおけるエチレンの単位(モル)の割合を表す。この場合、その他の単位は、ビニルアルコールである。水性シール組成物の塗布、乾燥または硬化は、(i)溶媒を除くシール層の重量に対し30~70重量%の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、および(ii)溶媒を除くシール層の重量に対し7~29重量%のポリウレタンを有している、シール層を形成する。シール層は、乾燥または硬化後にシール層に残存しているいくらかの残留水および他の溶媒を有していてもよい。
【0091】
シール層は、溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し、30~70重量%、または30~65重量%、または30~60重量%、または30~55重量%、または30~50重量%、または35~70重量%、または35~65重量%、または35~60重量%、または35~55重量%、または35~50重量%、または40~70重量%、または40~65重量%、または40~60重量%、または40~55重量%の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーを含み得る。
【0092】
シール層は、溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し、7~29重量%、または10~29重量%、または15~29重量%、または17~29重量%、または18~29重量%、または20~29重量%、または10~25重量%、または15~25重量%、または17~25重量%、または18~25重量%、または20~25重量%、または10~21重量%、または15~21重量%、または17~21重量%のポリウレタンを含み得る。
【0093】
シール層は、ポリウレタンに対して、4.0~1.2、または3.5~1.2、または3.3~1.2、または3.0~1.2、または2.5~1.2、または4.0~1.5、または3.5~1.5、または3.3~1.5、または3.0~1.5、または2.5~1.5、または4.0~1.8、または3.5~1.8、または3.3~1.8、また
は3.0~1.8または2.5~1.8、または4.0~2.2、または3.5~2.2、または3.3~2.2、または3.0~2.2または2.5~2.2の重量比の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーを含み得る。
【0094】
水性シール組成物のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーおよびポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、1,000~1,000,000ダルトン、または10,000~500,000ダルトン、または20,000~400,000ダルトンの重量平均分子量(MW)を有することができる。
【0095】
ポリウレタンは、典型的に、ジイソシアネートを伴う重付加プロセスにより調製される。ポリウレタンの非限定的な例として、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアネート(例えば、イソシアネート結合を含んでいるポリウレタン)、およびポリカルボジイミド(例えば、カルボジイミド結合を含んでいるポリウレタン)が挙げられる。一般に、ポリウレタンは、ウレタン基を含有している。本明細書に記載されている水性シール組成物およびシール層において利用されるポリウレタンは、当技術分野で公知の方法を使用して調製され得る。好ましくは、本発明の水性シール組成物およびシール層のポリウレタンは、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、およびそれらの混合物である。
【0096】
シール層のポリウレタンは、1,000~2,000,000ダルトン、または10,000~300,000ダルトン、または15,000~200,000ダルトンの重量平均分子量(MW)を有することができる。
【0097】
ポリウレタンは、水溶液もしくは水性分散物もしくは水性エマルション、またはラテックスとして水性シール組成物に添加され得る。
【0098】
水性シール組成物は、シール組成物の重量に対し、40~96重量%、または60~95重量%、または70~92重量%、または80~90重量%の水性担体を含み得る。
【0099】
水性シール組成物は、溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し、0.5~10重量%の架橋剤を含み得る。架橋剤は、水性シール組成物のポリウレタンと、マイクロセルのポリマー分子との間に化学結合を形成して、シール層とマイクロセルとの間の接着を増大する。架橋剤は、好ましくはシール組成物の水性担体に可溶性または分散性である。架橋剤は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーであり得る。架橋剤の例として、ポリイソシアネート、多官能性ポリカルボジイミド、多官能性アジリジン、シランカップリング剤、ホウ素/チタン/ジルコニウムベースの架橋剤、またはメラミンホルムアルデヒドが挙げられる。ポリカルボジイミド架橋剤は、酸性pH条件で反応性である。好ましくは、架橋剤は、スルホスクシネート界面活性剤を含まない。
【0100】
水性シール組成物は、pH調整剤も含み得る。pH調整剤は、水性シール組成物に、そのpHを6.5~8.5の値に調整するために添加される。pH調整剤の一例は、水酸化アンモニウムであるが、様々な酸および塩基を使用することができる。pH調整剤は、水性シール組成物のpHを上昇させ、それによって、使用前に水性シール組成物の架橋速度を低減することができ、レオロジー調整剤が水性シール組成物の粒子と相互作用するのに最適なpH条件を提供して、その有効性を改善する。pH調整剤は、溶媒を除くシール組成物の重量に対し0.2~1重量%の含量で使用され得る。
【0101】
水性シール組成物(および結果として生じたシール層)はまた、溶媒を除く水性シール
組成物(および対応するシール層)の重量に対し、0.05~10重量%、または0.1~5重量%、または0.5~2重量%のレオロジー調整剤を含み得る。レオロジー調整剤は、水性シール組成物の保存中の安定性を増大する。レオロジー調整剤はまた、フィルム形成を促進し、シール安定性を改善し、他の機能を提供する。例として、会合性増粘剤、アルカリ膨潤性アクリルエマルション、および他のポリマー増粘剤が挙げられる。水性シール組成物は、せん断減粘性であり得、すなわち、その粘度がより高いせん断で低減される。例えば、水性シール組成物のレオロジープロファイルは、10-41/秒のせん断速度における粘度と1021/秒のせん断速度における粘度との間で、5分の1~10,000分の1への粘度低下を示し得る。
【0102】
水性シール組成物(および対応するシール層)はまた、界面活性剤とも呼ばれる湿潤剤を含み得る。湿潤剤の例として、3M Company製のFC界面活性剤、DuPont製のZonylフッ素系界面活性剤、フルオロアクリレート、フルオロメタクリレート、フルオロで置換されている長鎖アルコール、ペルフルオロ置換されている長鎖カルボン酸およびそれらの誘導体、ならびにOSi、Greenwich、Conn.製のSilwetシリコーン界面活性剤が挙げられる。湿潤剤は、シール層とマイクロセルとの間の親和性を増大し、それらの間の界面領域を増強し、マイクロセルに対するシール層の接着を改善し、より柔軟なコーティングプロセスを提供し得る。
【0103】
水性シール組成物および対応するシール層はまた、溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し5~50重量%のフィラーを含み得る。フィラーは、導電性フィラーであり得る。水性シール組成物(および対応するシール層)のフィラーは、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、およびカーボンナノチューブからなる群から選択され得る。フィラーは、シール層の体積抵抗率を低下するが、層の他の特性、例えばその表面エネルギーにも影響を及ぼし得る。カーボンブラックは、フィラーとして有用になるには、水性シール組成物への優れた分散性を有していなければならない。水性シール組成物および対応するシール層は、溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し、5~50重量%、または10~45重量%、または15~40重量%、または17~38重量%、または18~36重量%、または15~36重量%、または18~36重量%、または20~36重量%のフィラーを含み得る。
【0104】
本発明者らは、シール層において使用されるカーボンブラックの吸油量(OAN)が、好ましくは、カーボンブラック100mg当たり100mL未満であることを見出した。カーボンブラック100mg当たり100mL未満のOANを有するカーボンブラックフィラーを含むシール層を有している電気光学ディスプレイは、以下の表10に示されている通り、改善された解像度を示す。シール層のカーボンブラックの吸油量は、カーボンブラック100mg当たり95mL未満、またはカーボンブラック100mg当たり90mL未満、またはカーボンブラック100mg当たり85mL未満、またはカーボンブラック100mg当たり80mL未満、またはカーボンブラック100mg当たり70mL未満、またはカーボンブラック100mg当たり60mL未満、またはカーボンブラック100mg当たり50mL未満であり得る。
【0105】
シール層のカーボンブラックの吸油量は、カーボンブラック100mg当たり30mL~100mL、またはカーボンブラック100mg当たり40mL~100mL、またはカーボンブラック100mg当たり45mL~100mL、またはカーボンブラック100mg当たり50mL~100mL、またはカーボンブラック100mg当たり40mL~95mL、またはカーボンブラック100mg当たり45mL~95mL、またはカーボンブラック100mg当たり50mL~95mL、またはカーボンブラック100mg当たり55mL~95mL、またはカーボンブラック100mg当たり40mL~90mL、またはカーボンブラック100mg当たり45mL~90mL、またはカーボンブラ
ック100mg当たり50mL~90mL、またはカーボンブラック100mg当たり40mL~80mL、またはカーボンブラック100mg当たり45mL~80mL、またはカーボンブラック100mg当たり50mL~80mL、またはカーボンブラック100mg当たり55mL~80mLであり得る。
【0106】
吸油量は、典型的に、カーボンブラックの製造者によって、ASTM2414に従う方法を使用して測定したOANとして報告される。吸油量は、カーボンブラック粒子の構造および凝集の度合いを表す。すなわち、OANが大きいほど、カーボンブラック粒子の構造度がより高く(互いに結合しており、分岐構造を有している)、かつ/または粒子の凝集度がより高い。より構造度/凝集度が高いカーボンブラックは、一般に、シール層により高い導電率をもたらし得る。
【0107】
本明細書に開示されている実験的研究の別の結論は、シール層のカーボンブラックフィラーが、好ましくは20nmよりも大きい平均粒径を有しているということである。したがって、非常に小さい平均粒径を有しているカーボンブラックは、分散しにくく、劣った特性を有するシール層をもたらす。シール層のカーボンブラックフィラーの平均粒径は、30nmよりも大きく、または40nmよりも大きく、または50nmよりも大きく、または60nmよりも大きく、または80nmよりも大きく、または100nmよりも大きくてもよい。シール層のカーボンブラックフィラーの平均粒径は、31~150nm、または40~150nm、または50~150nm、または60~150nm、または80~150nm、または100~150nm、または31~100nm、または40~100nm、または50~100nmであり得る。平均粒径は、カーボンブラックの製造者によって報告される、カーボンブラックグレードの別の物理的特性である。平均粒径は、典型的に、ASTM方法D3849を使用して透過型電子顕微鏡(TEM)によって決定される粒子の平均直径に対応する。
【0108】
実施例の節の表7から分かる通り、カーボンブラックの分散の質に関して改善された結果が、90m2/g未満の比表面積を有しているカーボンブラックフィラーを使用することによって達成された。シール層のカーボンブラックは、85m2/g未満、または80m2/g未満、または75m2/g未満、または70m2/g未満、または60m2/g未満、または50m2/g未満、または40m2/g未満の比表面積を有することができる。シール層のカーボンブラックは、20~89m2/g、または30~89m2/g、または35~89m2/g、または40~89m2/g、または50~89m2/g、または20~88m2/g、または30~88m2/g、または35~88m2/g、または40~88m2/g、または50~88m2/g、または20~85m2/g、または30~85m2/g、または35~85m2/g、または40~85m2/g、または50~85m2/g、または20~80m2/g、または30~80m2/g、または35~80m2/g、または40~80m2/g、または50~80m2/g、または20~70m2/g、または30~70m2/g、または35~70m2/g、または40~70m2/g、または50~70m2/g、または20~65m2/g、または30~65m2/g、または35~65m2/g、または40~65m2/g、または50~65m2/gの比表面積を有することができる。90m2/gおよびそれよりも大きい比表面積を有しているカーボンブラックは、低い分散の質を示し、それによって、劣った特性を有している劣った水性シール組成物およびシール層がもたらされる。しかし、本発明者らはまた、より高い揮発物含量を有しているカーボンブラック製品が、たとえ高い比表面積を有していようとも、より低い揮発物含量を有しているカーボンブラック製品よりも容易に分散することができることを見出した。関連する結果は、表7に示されている。すなわち、本発明のシール組成物のカーボンブラックは、200m2/g未満の比表面積および4.5%よりも高い揮発物含量を有することができる。本発明のシール組成物のカーボンブラックは、200m2/g未満の比表面積および5%よりも高い揮発物含量を有すること
ができる。本発明のシール組成物のカーボンブラックは、190m2/g未満、または180m2/g未満、または170m2/g未満の比表面積、および5%よりも高い、または7%よりも高い、または8%よりも高い、または9%よりも高い、または10%よりも高い、または12%よりも高い揮発物含量を有することができる。本発明のシール組成物のカーボンブラックは、30~195m2/g、または40~195m2/g、または50~195m2/g、または60~195m2/g、または30~190m2/g、または40~190m2/g、または50~190m2/g、または60~190m2/g、または30~180m2/g、または40~180m2/g、または50~180m2/g、または60~180m2/g、または100~195m2/g、または100~190m2/g、または150~195m2/gの比表面積、および5.1~25%、または5.1~20%、または5.1~15%、または7~25%、または7~10%、または7~15%、または10~25%、または10~20%、または10~15%の揮発物含量を有することができる。比表面積は、カーボンブラックの製造者によって慣用的に報告されている物理的特性である。比表面積は、ASTM D6556に従った窒素吸着法を使用して測定される。比表面積は、重量単位当たり(グラム当たり)のカーボンブラック粒子の表面積を表す。カーボンブラックの揮発物含量は、典型的にカーボンブラックの製造者によって報告される特性である。揮発物含量は、酸素を含有する種、例えば、カルボニル、カルボン酸、ピロン、フェノール、キノン、ラクトール、エーテル、ラクトンなどを含んでいる種における生成物の含量に対応する。これらの種は、カーボンブラック粒子の表面に結合しており、典型的に、一般的な抽出技術によっては除去することができない。これらの種は、カーボンブラック材料の形成中のある特定の条件によって、または酸化的後処理、例えばオゾン処理などによって形成される。カーボンブラックの揮発物含量は、950℃で加熱した後の生成物から除去された材料の重量パーセントとして測定される。標題「カーボンブラックの試験;加熱時に揮発するカーボンブラックの成分の量の決定(Testing of Carbon Black; Determination of the Amount of Components of Carbon Black that are Volatile on Heating)」の方法が、DIN53552に記載されている。揮発物含量は、粒子に存在し得る湿気も溶媒含量も含んでいない。
【0109】
一般に、電気泳動ディスプレイのシール層は、ディスプレイ性能において重要な役割を果たしている。シール層の劣ったバリア特性は、電気光学材料層からの電気泳動媒体の非極性流体の経時的な流出をもたらし、それによって、ディスプレイの電気光学性能の深刻な劣化をもたらす。シール層のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの含量の増大が、そのバリア特性を改善することが観察された。しかし、高含量のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーを有しているシール層は、層の吸湿を増大し、これもまた望ましくない。本発明者らは、驚くべきことに、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せが使用され、ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとポリウレタンとの間の界面張力が2mN/m未満である場合、最適な性能が観察されることを見出した。さらに本発明者らは、驚くべきことに、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよびポリウレタンの組合せが使用され、ポリウレタンの表面エネルギーの極性成分が10~20mN/mである場合にも、最適な性能が観察されることを見出した。
【0110】
特に低温で優れた電気光学性能を可能にする重要な態様が、シール層の表面エネルギーであることが、本発明者らによって観察された。シール層の全表面エネルギーは、55mN/mを上回らなければならない。シール層の全表面エネルギーは、55~80mN/m、または55~70mN/mであり得る。表面エネルギーの分散成分は、40mN/mよりも高くてもよい。シール層の表面エネルギーの分散成分は、41mN/mよりも高いか
、または43mN/mよりも高くてもよい。シール層の表面エネルギーの分散成分は、40~60mN/m、または40~50mN/m、または40~45mN/mであり得る。
【0111】
シール層の高い表面エネルギーは、シール層を形成する水性シール組成物の成分の選択によって達成することができる。例えば、導電性フィラーは、40mN/mよりも高い、または45mN/mよりも高い、または50mN/mよりも高い全表面エネルギーを有することができる。導電性フィラーの分散成分は、15mN/mよりも高いか、または20mN/mよりも高くてもよい。導電性フィラーは、40~80mN/m、または40~70mN/m、または40~65mN/mの全表面エネルギーを有することができる。または40~60mN/m。導電性フィラーの分散成分は、15~40mN/m、または15~30mN/m、または15~25mN/mであり得る。シール層の高い表面エネルギーは、高い表面エネルギーを有しているポリウレタンを選択することによっても達成され得る。例えば、シール層のポリウレタンは、50mN/mよりも高い全表面エネルギーを有することができる。ポリウレタンの分散成分は、40mN/mよりも高くてもよい。ポリウレタンは、45mN/mよりも高い、または50mN/mよりも高い、または55mN/mよりも高い全表面エネルギーを有することができる。ポリウレタンは、45~75mN/m、または45~70mN/m、または45~65mN/m、または50~75mN/m、または50~70mN/m、または50~65mN/mの全表面エネルギーを有することができる。ポリウレタンの分散成分は、40~70mN/m、または40~50mN/mであり得る。
【0112】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の実施例を考慮するとさらに理解され、以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を例示するように意図されているが、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定するように意図されているものではない。
【実施例0113】
水性シール組成物およびシール層の評価方法
【0114】
A.シール層を形成する水性シール組成物の調製の実施例。
【0115】
A1.カーボンブラック分散物の調製の実施例。カーボンブラック粉末を、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの水溶液1.6リットルと混合する。一例では、カーボンブラック162gおよびポリマー105.6gを使用した。分散物を、オーバーヘッドミキサー(Hei-Torque Value 200)で、300rpmで30分間混合した。次に、分散物をGeneration 1 Q1375 Flocell超音波処理器に再循環させ、超音波処理器のジャケットを、10℃の冷水を使用して、100%の振幅で3時間23分冷却する。分散物を、水性シール組成物を調製するために使用するまで、継続的に撹拌した。
【0116】
A2.水性シール組成物の調製の実施例。容器に、水性ポリウレタン分散物を、湿潤剤、およびおよそ20重量%のホモポリマーまたはコポリマーを含んでいる、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの水溶液と合わせた。一例では、35重量%ポリウレタン水性分散物194gおよび20重量%のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー372gを使用した。分散物を、Hei-torque Value 200オーバーヘッドミキサーを使用して90rpmで10分間混合した。次に、適正な量の架橋剤を添加し、分散物を90rpmでさらに60分間混合した。A1で調製された適正な量のカーボンブラック分散物を添加し(一例では1.39L)、混合物を500rpmで60分間混合した。次に、水酸化アンモニウムを使用してpHを6.5~8.5に調整し、分散物をさらに30分間混合した。適正な量のレオロジー調整剤を、分散物
に滴下添加し、さらに60分間混合し続けた。次に、分散物を減圧下で(25mmHg)5日間脱気した。結果として生じた水性シール組成物を、シール組成物を調製してから7日以内に、対応するデバイスのシール層の調製のために使用した。
【0117】
B.ドローダウン方法を使用するシール層の調製の実施例。
【0118】
先のA2で調製された水性シール組成物を、ITO-PETフィルムのインジウムスズ酸化物(ITO)側に、Gradcoドローダウンコーティング機を使用してコーティングした。15ミルのギャップおよび8つのパスのスクエアアプリケーターを使用した。ドローダウン速度を2m/分に設定して、30+/-2μmの乾燥フィルム厚さを目標にした。コーティングを100℃のオーブンで15分間乾燥させた。乾燥させたフィルムを、25℃および55%相対湿度(RH)で24時間コンディショニングした。
【0119】
C.非極性流体に対するシール層のバリア特性の評価。
【0120】
水性分散物を、水100mL中、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマー10グラムまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー10グラムおよびポリウレタン10グラムを混合することによって調製した。その分散物を、水性シール組成物として使用して、
図8Aに示されているデバイス800のシール層を形成した。シール層を、先のBに記載されている方法によって形成した。デバイス800は、順に、基材803、光透過性導電層804、プライマー層805、マイクロセル層806、およびシール層807を含んでいた。マイクロセルは、Isopar E中に白、黒および赤の色素粒子を含む電気泳動媒体を含んでいた。デバイス800を、70℃で少なくとも24時間保存した。この期間の後、電気光学デバイスを、電気泳動媒体の非極性流体の喪失によって引き起こされたシール層のたるみについて、光学顕微鏡を使用して検査した。検査したマイクロキャビティの底部とシール層の底面の最下点との間の距離が、同じマイクロセルにおけるマイクロキャビティの底部とシール層の下面の最上点との間の距離の85%未満である場合、シール層は、そのバリア特性について不合格として分類される。そうでなければ、すなわち検査したマイクロセルの底部とシール層の最下点との間の距離が、マイクロセルの底部と検査したマイクロセルにおけるシール層の底面の最上点との間の距離の85%またはそれより大きい場合、シール層は、そのバリア特性について合格として分類される。例えば、
図10Cに示されている電気光学デバイスのシール層は、h2:h1の比が1である(たるみがない)ので合格として分類され、一方、
図10Dに示されている電気光学デバイスのシール層は、h2:h1の比が35%である(85%超のたるみレベル)ので不合格として分類された。バリア特性の評価も、光学顕微鏡によってデバイスの観察面から見て、調製された電気光学デバイスを観察することによって、質的に実施され得る。ひどくたるんだシール層を含んでいるデバイスは、非極性流体に対して良好なバリア特性を有しているシール層を含んでいるデバイスとは、著しく異なる外観を有している(均一な表面に対して、不均一な表面)。例えば、
図10Bに示されている通り不均一に見える、
図10Dのシール層を有しているマイクロセル(不合格)とは対照的に、
図10Cのシール層を有しているマイクロセル(合格)は、
図10Aに示されている通り均一に見える。(1)ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーおよび(2)ポリウレタンの様々な組合せの評価は、表1に示されている。ポリマー1は、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、ポリマー2は、ポリウレタンである。ポリマー1およびポリマー2の市販材料に関する詳細は、表2に見出すことができる。
【0121】
D.接触角方法を使用するシール層の表面エネルギーの決定。
【0122】
調製されたシール層(先のBに記載されている通り)の表面エネルギーを、Kruss
GmbHによって供給された液滴形状分析器を使用して測定した。ニードルを備えたシリンジを使用して、2.6μLのサイズの脱イオン水の液滴を、シール層の上部表面上に置き、液体(水)とシール層との間の接触角を測定した。測定を、水滴をジヨードメタン液滴で置き換えることによって反復した。既知の表面エネルギーのこれらの2種の液体を使用して接触測定を実施することによって、フィルムの表面エネルギーを計算した。接触角測定を、液体(水およびジヨードメタン)ごとに3回反復した。液体と、シール層の上部表面との接触角を、液滴を試料フィルム上に置いてから5秒後、30秒後、および55秒後に高解像度カメラを使用して測定した。次に、Owens、Wendt、RabelおよびKaelble(OWRK)の方法を使用して、全表面エネルギー、ならびにその極性成分および分散成分を、データ点ごとに計算した。報告された表面エネルギーは、9つのデータ点(3つの液滴×3回の尺度)の平均であった。
【0123】
E.接触角法を使用するポリウレタンの表面エネルギーの決定。
【0124】
ポリウレタンの表面エネルギーを、まず、基材上にポリマーフィルムを調製することによって決定した。ポリマーフィルムを、Gradcoドローダウンコーティング機を使用して水性ポリウレタン分散物を基材上にコーティングすることによって調製した。15ミルのギャップおよび8つのパスのスクエアアプリケーターを使用した。ドローダウン速度を2m/分に設定して、30+/-2μmの乾燥フィルム厚さを目標にした。コーティングを100℃のオーブンで15分間乾燥させた。乾燥させたフィルムを、25℃および55%相対湿度(RH)で24時間コンディショニングした。次に、先のDに記載されている方法を使用して、2種の異なる液体(水およびジヨードメタン)の接触角を決定し、OWRKモデルを使用してポリマーフィルムの全表面エネルギー、ならびにその極性成分および分散成分を計算した。
【0125】
F.電気光学デバイスの調製。
【0126】
電気光学デバイスを、複数のマイクロセルに、Isopar E中の電気的に荷電された色素粒子(白、黒、および赤)の混合物を充填し、続いて、先のBに記載されている通り水性シール組成物をコーティングすることによって調製した。
図8Bに示されているデバイスを構築した。電気光学デバイス850は、順に、保護フィルム851、光学的に透明な第1の接着層852、基材853、光透過性導電層854、プライマー層855、マイクロセル層856、シール層857、第2の接着層858、ITO電極層859、およびガラス層860を含んでいた。電界の供給源861により、光透過性導電層854をITO電極層859と電気的に接続した。この供給源により波形を印加して、所望の光学的状態を駆動した。第1の光透過層852は、およそ25μmの厚さを有していた。基材853は、およそ100μmの厚さを有していた。プライマー(Primary)層855は、お
よそ0.4μmの厚さを有していた。マイクロセル層856は、複数のマイクロセルを含んでいた。各マイクロセルは、およそ0.4μmの底部厚さおよびおよそ14μmの高さを有していた。シール層857は、およそ10μmの厚さを有しており、第2の接着層は、およそ6μmの厚さを有していた。
【0127】
G.赤色Ra*測定。
【0128】
先のEで調製された試料デバイスの電気光学性能を、色データを収集することによって評価した。色データを、短波形PDおよび長波形PPの2種の異なる波形を印加して、2つの異なる温度で所望の赤の色状態を駆動することによって収集した。さらに、波形を印加して、2つの異なる温度で白状態を駆動した。印加された波形は、
図9A~9Fに示されている。
図9Aは、25℃で赤状態を駆動するPD波形に対応する。
図9Bは、0℃で赤状態を駆動するPD波形に対応する。
図9Cは、25℃で赤状態を駆動するPP波形に
対応する。
図9Dは、0℃で赤状態を駆動するPP波形に対応する。
図9Eは、25℃で白状態を駆動する波形に対応する。
図9Fは、0℃で白状態を駆動する波形に対応する。波形を広範な電圧で印加して、印加された波形の関数として赤色a
*を測定した。x-riteによって供給された分光光度計i1を使用して、デバイス試料上に誘導された画像の色状態を測定し、赤a
*として報告した。色性能を、赤a
*値として評価する。a
*値が高いほど、より良好な赤色(飽和度が高い赤)であることを意味する。
【0129】
H.赤状態の最大a*に必要な電圧の決定。
【0130】
各ディスプレイの色の値に加えて、最大a*を生成するために必要とされる電圧を決定するために、一連の実験を実施した。具体的には、各波形の印加された電圧を変え、電圧値ごとのa*値を、先の方法Fを使用して決定した。最も高いa*値を生成した電圧を、波形ごとに報告した。典型的に、印加される電圧が高いと電力消費量が増大するので、より小さい電圧が望ましい。
【0131】
I.界面張力の決定
【0132】
ポリマーの特定の組合せについて、ポリマー1とポリマー2との間の界面張力を、表面エネルギー値(先のDに記載されている方法により決定される)から計算した。2つの成分の間の界面張力の計算は、各成分の表面エネルギーの値および以下の幾何方程式を使用することによって実施した。
【数1】
式中、σ
ABは、ポリマーAとBとの間の界面張力であり、σ
Aは、ポリマーAの全表面エネルギーであり、σ
Bは、ポリマーBの全表面エネルギーであり、σ
A
Dおよびσ
B
Dは、それぞれポリマーAおよびBの表面エネルギーの分散成分であり、σ
A
Dおよびσ
B
Dは、それぞれのポリマーAおよびBの表面エネルギーの極性成分である。
【0133】
J.カーボンブラック分散性の評価方法
【0134】
様々なカーボンブラック試料を使用するカーボンブラック分散物を、先のA1に記載されている方法を使用して調製した。分散物において使用したポリマーは、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー(クラレによって供給されたExceval(商標)RS-1717)であった。カーボンブラック分散物の調製後、カーボンブラック分散物の液滴を、顕微鏡ガラススライドとカバープレートとの間に置いた。試料を、光顕微鏡の下で20倍の拡大率で調べた。140μm×140μmの領域に対応する画像を、7μmおよびそれよりも大きい直径を有している凝集物の数について、視覚的に分析した。試料が、7μmおよびそれよりも大きい直径を有している、10個またはそれよりも多い凝集粒子を示した場合、その試料を、分散性について不合格と分類した。そうでなければ、分散性について合格と分類した。
【0135】
K.シール層の体積抵抗率の評価方法。
【0136】
先のBに記載されている方法を使用して調製したシール層の体積抵抗率を、Keithleyによって供給されたモデル8009抵抗率フィクスチャおよびモデル6571電位計を使用して決定した。この装置により、使用者は、交流電圧を基材に印加し、出力電流を測定することによって、自立式フィルムの体積抵抗率を決定することができる。電圧および電流から、試料の電気抵抗を計算した。この方法は、シール層の4インチ×4インチ
の正方形部分を切り出し、その部分をITO-PET基材から剥離して、自立式シールフィルムを得ることを含む。厚さを、厚さゲージを用いて測定し、次にフィルムを調整するために、25℃および55%相対湿度(RH)の環境チャンバ内に4日間置いた。次に、フィルムを、抵抗率フィクスチャモデル8009内に置き、15ボルトで15秒の設定で試験した。電位計により、体積抵抗率の値を提供する。
【0137】
L.ディスプレイ画像の解像度の評価方法。
【0138】
先のEに記載されている方法によって調製された電気泳動ディスプレイの解像度を、ディスプレイ上の色の実際のラインの厚さを測定することによって評価したが、このラインは、1ピクセル幅を有しているラインを(50℃で)形成せよという画素制御装置のコマンドの結果である。次に、測定された厚さを、ブルーミングなしの標準的な1ピクセルのラインの厚さと比較した。100%の解像度は、ブルーミングがない最高解像度に対応し、0%の解像度は、標準的なラインの2倍の厚さの実際のラインに対応する。合格評定は、30%またはそれよりも高い解像度に対応する。不合格評定は、30%未満の解像度に対応する。
【0139】
M.水性シール組成物の粘度プロファイルの評価方法。
【0140】
先のA2に記載されている通り調製した水性シール組成物の粘度プロファイルを、40mmの直径および50μmのギャップを有している平行プレートを備えた回転式TA Instrumentsレオメータによって実施した。水性シール組成物の試料を、平行プレートの間に置き、粘度を、10
-31/秒~10
21/秒の値の間の一連のせん断速度において30分間にわたって測定した。本発明の水性シール組成物の実施例の粘度プロファイルは、
図11に示されている。
図11は、評価された水性シール組成物が、せん断減粘性であり、より低いせん断速度における粘度と比較して、より高いせん断速度において粘度の低減を示すことを示している。具体的には、
図11で10
-31/秒のせん断速度において評価した水性シール組成物の粘度は、10
21/秒のせん断速度における粘度の10倍超大きい。
【0141】
N.水性シール組成物の粘度プロファイルの評価方法。
【0142】
先のA2に記載されている通り調製した水性シール組成物の粘度プロファイルを、40mmの直径および50μmのギャップを有している平行プレートを備えた回転式TA Instrumentsレオメータによって実施した。水性シール組成物の試料を、平行プレートの間に置き、粘度を、10
-31/秒~10
21/秒の値の間の一連のせん断速度において30分間にわたって測定した。本発明の水性シール組成物の実施例の粘度プロファイルは、
図11に示されている。
図11は、評価された水性シール組成物が、せん断減粘性であり、より低いせん断速度における粘度と比較して、より高いせん断速度において粘度の低減を示すことを示している。具体的には、
図11で10
-31/秒のせん断速度において評価した水性シール組成物の粘度は、10
21/秒のせん断速度における粘度の10倍超大きい。
【0143】
O.導電性フィラーの全表面エネルギーおよび表面エネルギーの分散成分の評価方法。
【0144】
多孔質ベースのガラス管に、粉末導電性フィラーを充填した。ガラス管を、試験液体としてヘキサンを収容している容器の上部に置いた。ヘキサンは、毛細管作用によりガラス管に引き入れられた。ガラス管を、液体がガラス管を上昇移動し、フィラー表面を湿潤するときの質量変化を経時的に測定する力センサーに取り付けた。この測定の傾斜を取得することおよびヘキサン試験液体の既知の特性によって、最終的には以下の方程式を使用し
て、導電性フィラーの接触角を計算することができる。
【数2】
方程式中、mはフィラーの質量であり、tは時間であり、cは定数であり、ρは試験液体の密度であり、σは試験液体の表面張力であり、θは接触角であり、ηは試験液体の粘度である。試験液体としてヘキサンを使用することにより、その高いぬれ特性に起因してθをゼロにすることが可能になり、機器のソフトウェアに定数cを計算させることが可能になる。次に、既知のさらなる液体を使用して、接触角を測定し、これをソフトウェアが使用して、フィラーの表面エネルギーを計算することができる。表面エネルギーの計算を、Owens、Wendt、RabelおよびKaelble(OWRK)モデルを使用して実施して、フィラーの全表面エネルギー、ならびに極性成分および分散成分を決定した。
【0145】
評価結果
【0146】
別段記述されない限り、開示されている組成物における成分の量は、乾燥ベースである(溶媒を含まない)。担体の含量を表すために、いくつかの組成物においてQ.S.(適量)という用語が使用される。この用語は、組成物におけるこの成分の含量が、組成物の合計100%を達成してこれを超えないのに必要な量であることを意味する。
【0147】
いくつかの水性シール組成物を、先のA1およびA2に記載されている一般法によって調製した。ポリウレタンに対するポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーの重量比は、2.3であり、水性シール組成物における水性担体の量は、80~83重量%であった。溶媒を除く水性シール組成物の重量に対して、架橋剤の含量は、0.90重量%であり、一方、湿潤剤(Silwet
L-7607)の含量は、0.19重量%であった。さらに、水性シール組成物は、溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し0.22重量%のレオロジー調整剤(修飾アルカリ膨潤性アクリルエマルション(Lubrizolによって供給されたSolthix A100))も含有していた。水性シールにおけるカーボンブラックの含量は、108~1010オーム.cmの範囲の体積抵抗率を有しているシール層を達成するように、典型的には溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し3.6~6重量%に調整した。
【0148】
シール層組成物を、表1にまとめる。シール層を、これらの水性シール組成物から、先のBに記載されている方法を使用して調製した。次に、シール層を、先のDに記載されている方法によって、全表面エネルギーおよび表面エネルギーの分散成分について評価した。これとは別に、先のEに記載されている方法を使用して、水性シール組成物において使用される各ポリウレタンから調製された対応する対照フィルムの全表面エネルギーおよび分散成分。これらのポリウレタン対照フィルムは、ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーもポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーもカーボンブラックも、含有しない。最後に、カーボンブラックグレードのうちの2種の全表面エネルギーおよび表面エネルギーの分散成分を、先のOに記載されている方法を使用して測定した。
【0149】
電気泳動ディスプレイを、先のFに記載されている方法を使用して、様々な組成物から構築した。この電気泳動ディスプレイを、先のGに記載されている方法に記載されている通り、2つの異なる波形を使用して0℃で赤状態に駆動した。最後に、波形ごとに赤状態の最高a*値を生成するために必要な電圧を、先のHに記載されている方法を使用して決定した。
【0150】
【0151】
表1の材料についての情報:[1]ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー;クラレによって供給されたExceval(商標)RS-1717、[2]ポリウレタン水性分散物;Hauthawayによって水中35%分散物として供給されたL3838水性分散物、[3]ポリウレタン水性分散物;Hauthawayによって水中35%分散物として供給されたHD2125水性分散物、[4]ポリウレタン水性分散物(ポリエステル);Chemtura Corp.によって供給されたWitcobond(登録商標)386-03、[5]カーボンブラック;Colombiaによって供給されたRaven(登録商標)1060 UP、[6]カーボンブラック;Orion Engineered Carbonsによって供給されたNerox(登録商標)3500、[7]カーボンブラック;Orion Engineered Carbonsによって供給されたNerox(登録商標)2500、[8]カーボンブラック;Cabot
Corporationによって供給されたTPK1227R、[9]カーボンブラック;Colombiaによって供給されたRaven(登録商標)14。
【0152】
表1の評価結果は、比較例6と比較して、本発明の実施例1~実施例5において改善された電気光学性能が観察されたことを示している。本発明の組成物の実施例によって形成された電気光学デバイスの低温(0℃)での赤状態は、PP波形によって駆動されると、分光光度法で測定されたa*値のより高い値によって示され得る通り、比較例の色よりも良好な(飽和度がより高い)色を示す。同じことが、PD波形によって駆動された赤状態についても観察された。本発明のディスプレイの色は、飽和度がより高いだけでなく、最大a*における電圧のより低い値から分かる通り、より低い電圧で達成されている。このことは、本発明のディスプレイが、比較用組成物の実施例を使用したディスプレイよりも少ない電力を消費することを意味している。これは、比較例によって形成されたシール層の53mN/mの全表面エネルギーとは対照的に、本発明の実施例のシール層の全表面エネルギーが、55mN/mよりも高いおよそ66mN/mであるために達成された。同様に、本発明のディスプレイの改善された性能は、本発明のディスプレイのシール層の38mN/mとは対照的に、シール層の高分散表面エネルギーが40mN/mよりも高いために達成されている。組成物の成分の全表面エネルギーは、シール層の表面エネルギーにプラスの影響を及ぼす。特に、50mN/mよりも高い全表面エネルギーを有するフィルムを形成するポリウレタン(例えば、ポリウレタン分散物L3838およびHD2125)は、より低い全表面エネルギーを有するフィルムを形成するポリウレタン(Witcobond(登録商標)386-03)よりも性能が良い。
【0153】
導電性フィラーの表面エネルギーの効果は、改善された性能においてもある役割を果たす。40mN/mよりも高い全表面エネルギーを有しているカーボンブラック、例えば、カーボンブラックRaven(登録商標)1060 UPは、40mN/mよりも低い全表面エネルギーを有しているカーボンブラック、例えばRaven(登録商標)14よりも性能が優れている。加えて、15mN/mよりも高い表面エネルギーの分散成分を有しているカーボンブラックは、良好な性能を示している。理論に拘泥するものではないが、高い表面エネルギーを有しているシール層の改善された電気光学性能(特に低温での)により、シール層は、より低い界面抵抗および静電容量で、中間層を通して電荷を移動させることが可能になり得る。シール層/電気泳動媒体の界面におけるより低い抵抗および静電容量は、特に低温で著しく少ない電気光学バイアス(キックバック)をもたらす。また、シール層の表面エネルギーが高いほど、シール層に隣接し得る接着層とのシール界面においてより低い接触抵抗および静電容量をもたらし得る。シール層の高い表面エネルギーは、シール層と接着層との間の接着仕事量を増大し、層の間の接触抵抗を低減し得る。さらに、シール/接着界面における接触抵抗が低いほど、電圧低下がより少なく、電力消費量がより少なく、温度範囲にわたって電気光学性能が改善される。電気泳動ディスプレイにおける電気光学性能に対するシール層の表面エネルギーの効果は、文献には開示されていない。
【0154】
表2は、様々なポリマー1およびポリマー2の種についての表面エネルギーデータを提供している。表2はまた、様々な層のバリア特性および様々なポリマーの組合せの計算された界面の評価を含んでいる。バリア特性を評価するために使用した対応するポリマー層を調製するための方法は、先のCに記載されている。表面エネルギーの決定(先のDに記載されている方法に従う)は、まず、一方のポリマーだけを含んでいる対応する水性シール組成物からシール層を調製し、コンディショニングすることによって実施した。ポリマーの組合せごとの界面張力を、表面エネルギーデータおよび先のIに記載されている計算方法から計算した。
【0155】
【0156】
【0157】
表2のポリマー1およびポリマー2の界面張力のデータは、(a)90~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有しているポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、ならびに(b)水性担体中のポリウレタンを含んでいるシール層であって、2種のポリマー(a)と(b)との間の界面張力が2mN/m未満であるシール層が、非極性流体に対して良好なバリア特性を有しているシール層を形成することを示している。
【0158】
また表2のデータは、(a)90~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有しているポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、ならびに(b)水性担体中のポリウレタンを含み、ポリウ
レタンの表面エネルギーの極性成分が10~25mN/mの間であるシール層が、非極性流体に対して良好なバリア特性を示すことを示している。
【0159】
先のBに記載されている方法によって調製された4種の水性シール組成物によって調製されたポリマーフィルムの顕微鏡的評価は、フィルムの均一性と、2種のポリマーの間の界面張力との間に相関があることを示した。調製されたフィルムにおけるポリマー1:ポリマー2の重量比は、1:1であった。表4および
図12の顕微鏡画像は、界面張力が低いほど、より均一なポリマーフィルムが提供されることを示している。より小さい界面張力を有しているポリマーの組合せによって達成された、改善された適合性は、対応する層の改善されたバリア特性を説明し得る。
【0160】
【0161】
さらなるシール層を、様々な含量のポリマー1およびポリマー2の組合せを含んでいる水性シール組成物から調製した。これらの水性シール組成物は、ポリマーの組合せに加えて、カーボンブラックフィラー、架橋剤、湿潤剤、レオロジー調整剤、およびpH制御剤を含んでいた。水性担体含量を示す水性シール組成物は、表5に提供されている。表6は、表5と同じ組成物に対応しているが、表6の組成物は、溶媒を除く水性シール組成物の重量に対し、成分ごとの重量%を示すように調整されている。水性シール組成物を、先のA1およびA2に記載されている方法を使用して調製した。対応するシール層を、先のBに記載されている方法を使用して調製した。
【0162】
【0163】
【0164】
表5および6の成分に関する情報:[1]クラレによって供給されたExceval(商標)RS-1717、[2]Covestroによって供給されたDispercoll(登録商標)U XP2815;水中35%分散物、[3]Hauthawayによって供給されたHauthane HD-2125;水中35%分散物、[4]Hauth
awayによって供給されたHauthane L3838;水中35%分散物、[5]日清紡(Nisshimbo)ケミカルによって供給されたCARBODILITE(登録商標)
V-02-L2;水中40%溶液、[6]Stahlによって供給されたPicassian(登録商標)XL-701、[7]Momentiveによって供給されたSilwet(登録商標)L-7607コポリマー、[8]Lubrizolによって供給されたSolthix(商標)A-100。
【0165】
一連のカーボンブラック製品を、ポリマー組成物へのそれらの分散性について評価した。良好な分散性を示すカーボンブラックは、良好な分散の質を有している水性シール組成物を可能にする。水性シール組成物の分散の質は、結果として生じたシール層の特性に影響を及ぼす重要なパラメーターである。水性シール組成物の劣った分散の質は、非常に低い体積導電率を有するシール層をもたらし、それによって、デバイスの電気光学性能が低下し、電気効率が低下する。表7は、調査の結果を提供している。カーボンブラック分散物の分散の質を、先のHに記載されている方法によって決定した。
【0166】
【0167】
表7のカーボンブラックの分散性の評価の結果は、85m2/g未満の比表面積を有しているカーボンブラックのグレードが、水性ポリマー分散物への良好な分散性を有していることを示している。85~200m2/gの間の比表面積および5%よりも多い揮発物含量を有しているカーボンブラックも、水性ポリマー分散物への良好な分散性を有している。85よりも高い比表面積および5%よりも少ない揮発物含量を有しているカーボンブラックは、水性ポリマー分散物への良好な分散性を有していない。最後に、200m2/gよりも高い比表面積を有しているカーボンブラックは、水性ポリマー分散物への良好な分散性を示していない。カーボンブラックの揮発物含量は、950℃で加熱した後に生成物から除去される材料の重量パーセントとして測定される。標題「カーボンブラックの試験;加熱時に揮発するカーボンブラックの成分の量の決定」の方法が、DIN53552に記載されている。揮発物含量は、粒子に存在し得る湿気も溶媒含量も含んでいない。
【0168】
平均粒径が、供給社によって透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して報告されている一
連のカーボンブラック製品も、ポリマー組成物へのそれらの分散性について評価した。表8は、調査の結果を提供している。カーボンブラック分散物の分散の質を、先のHに記載されている方法によって決定した。
【0169】
【0170】
表8のカーボンブラックの分散性の評価の結果は、20nm超の平均粒径を有しているカーボンブラック製品が、水性ポリマー分散物への良好な分散性を有していることを示している。カーボンブラック供給社(Orion Engineered Carbon)は、ASTM D3849(カーボンブラックのための標準方法-電子顕微鏡を使用するカーボンブラックの形態学的特徴付け)を使用して生成物の平均粒径を決定した。
【0171】
様々な市販のカーボンブラック製品を含んでいる水性シール組成物によって形成された一連のシール層を、前述の方法を使用して、シール層の体積抵抗率について評価した(I.シール層の体積抵抗率を評価するための方法)。電気光学ディスプレイを、前述の方法を使用して調製した(E.電気光学デバイスの調製)。調製された電気光学ディスプレイを、前述の方法によって解像度について評価した(J.ディスプレイ画像の解像度の評価方法)。表9および10は、この調査のために調製した水性シール組成物を提供している。水性担体内容物の含量を含めた水性シール組成物のすべての成分の含量を示す水性シール組成物は、表9に提供されている。表10は、シール層組成物(潜在的な含水量を除く
)を提供しており、このシール組成物は、表9の水性シール組成物によって調製された。表9の組成物は、水を含む水性シール組成物の重量による、成分ごとの重量%を提供している。様々な水性シール組成物を、先のA1およびA2に記載されている方法によって調製した。対応するシール層を、先のBに記載されている方法によって調製した。
【0172】
【0173】
【0174】
表10のデータは、シール層の体積抵抗率が5×107オーム.cmよりも高い場合に良好な解像度が観察されたことを示しており、これは、ASTM2414に従う吸油法を使用して測定された、カーボンブラック100mg当たり100mL未満の吸油量(OAN)を有しているカーボンブラックを含んでいる組成物で達成された。
【0175】
さらに研究中に、溶媒を除くシール層の重量に対し70重量%超のポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーを含んでいるシール層が、環境から著しい量の湿気を吸収することが観察された。この高い吸湿は、ディスプレイの電気光学性能にマイナスの影響を及ぼす。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
(i)溶媒を除くシール層の重量に対し30~70重量%の水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーであり、前記ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーは、90~99.5%の加水分解度を有しており、前記ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーは、90~99.5%の加水分解度および10%未満のエチレン含量を有している、水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたはポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマー、
(ii)溶媒を除くシール層の重量に対し7~29重量%のポリウレタン
を含んでいるシール層であって、
前記ポリウレタンが、前記水溶性ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたは前記ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーとの界面張力を有しており、前記界面張力が2mN/m未満である、シール層。
(項目2)
前記ポリウレタンの表面エネルギーの極性成分が、10~20mN/mである、項目1に記載のシール層。
(項目3)
前記ポリウレタンが、架橋剤によって架橋されており、前記架橋剤が、ポリイソシアネート、多官能性ポリカルボジイミド、多官能性アジリジン、シランカップリング剤、ホウ素/チタン/ジルコニウムベースの架橋剤、またはメラミンホルムアルデヒドである、項目1に記載のシール層。
(項目4)
溶媒を除く前記シール層の重量に対し5~50重量%のフィラーをさらに含んでおり、前記フィラーが、カーボンブラック、グラフェン、グラファイト、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される、項目1に記載のシール層。
(項目5)
前記フィラーが、ASTM2414に従う吸油量法を使用して測定して、カーボンブラック100mg当たり100mL未満の吸油量を有しているカーボンブラックである、項目4に記載のシール層。
(項目6)
前記フィラーが、ASTM D3849に従う電子顕微鏡法を使用して測定して、20nmよりも大きい平均粒径を有しているカーボンブラックである、項目4に記載のシール層。
(項目7)
前記フィラーが、ASTM D6556に従う窒素吸着法を使用して測定して、90m2/g未満の比表面積を有しているカーボンブラックである、項目4に記載のシール層。
(項目8)
前記フィラーが、ASTM D6556に従う窒素吸着法を使用して測定して、200m2/g未満の比表面積、およびDIN53552に従う方法を使用して測定して、5%よりも高い揮発物含量を有しているカーボンブラックである、項目4に記載のシール層。
(項目9)
前記シール層が、水性シール組成物によって形成されており、前記水性シール組成物が、せん断減粘性である、項目1に記載のシール層。
(項目10)
前記水性シール組成物のレオロジープロファイルが、10-41/秒のせん断速度における粘度と1021/秒のせん断速度における粘度との間で、5分の1~10,000分の1への粘度低下を示す、項目9に記載のシール層。
(項目11)
湿潤剤をさらに含んでおり、前記湿潤剤が、有機シリコーン表面張力低下剤である、項目1に記載のシール層。
(項目12)
前記シール層が、5×107~1010オーム.cmの体積抵抗率を有している、項目1に記載のシール層。
(項目13)
前記ポリウレタンが、エステルポリウレタンもしくはポリカーボネートポリウレタンまたはそれらの組合せである、項目1に記載のシール層。
(項目14)
前記ポリウレタンが、1,000~2,000,000ダルトンの数平均分子量を有している、項目1に記載のシール層。
(項目15)
前記ポリ(ビニルアルコール)ホモポリマーまたは前記ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーが、1,000~1,000,000ダルトンの数平均分子量を有している、項目1に記載のシール層。
(項目16)
前記ポリ(ビニルアルコール)ポリマーまたは前記ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーが、92~99%の加水分解度を有している、項目1に記載のシール層。
(項目17)
前記ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)コポリマーが、9%未満のエチレン含量を有している、項目1に記載のシール層。
(項目18)
第1の光透過性電極層、
項目1に記載のシール層および複数のマイクロセルを含んでいる電気光学材料層であり、前記複数のマイクロセルのそれぞれは、底部、壁部および開口部を含んでおり、電気泳動媒体を収容しており、前記電気泳動媒体は、非極性流体に分散した少なくとも1つのタイプの荷電された色素粒子を含んでおり、前記シール層は、前記複数のマイクロセルの前記開口部にわたっている、電気光学材料層、
第2の電極層
を含んでいる電気泳動ディスプレイであって、
前記電気光学材料層が、前記第1の光透過性電極層と前記第2の電極層との間に配置されている、電気泳動ディスプレイ。
(項目19)
前記電気泳動流体が、2つまたはそれよりも多いタイプの荷電された色素粒子を含んでいる、項目18に記載の電気泳動ディスプレイ。
(項目20)
前記電気泳動媒体が、4つのタイプの荷電された色素粒子を含んでおり、前記4つまたはそれよりも多い色素粒子の色が、白、マゼンタ、イエロー、シアン、青、赤、緑、および黒からなる群から選択される、項目19に記載の電気泳動ディスプレイ。