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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153926
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】光測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20241022BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20241022BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20241022BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/10
G01S17/931
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024133338
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2021199403の分割
【原出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 貴祥
(72)【発明者】
【氏名】立野 善英
(57)【要約】
【課題】トータルの測距時間を短縮しつつ、干渉が発生しているかどうかを判断できる光測距装置を提供する。
【解決手段】レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置10であって、レーザ光を走査しつつ投光する投光部20と、レーザ光を受光する受光部30と、投光部20が投光したレーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための受光期間に、受光部30が受光したレーザ光である受光波が複数ある場合、複数の受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部43を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置であって、
前記レーザ光を走査しつつ投光する投光部(20)と、
前記レーザ光を受光する受光部(30)と、
前記投光部が投光した前記レーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための1回の受光期間に前記受光部が受光した受光信号、または、複数回の投光に対応した複数回の前記受光期間に前記受光部が受光した前記受光信号を積算した信号のいずれかである判断対象受光信号に、前記受光部が受光した前記レーザ光である受光波が複数ある場合、複数の前記受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部(43)を備え、
前記波形特徴が前記受光波の周期であり、
前記干渉判断部は、前記受光波に周期性がある場合、干渉が発生していると判断し、
前記干渉判断部は、1つ前の波形の検出時刻から前記受光波の検出時刻までの時間差(T)を、複数の前記受光波についてそれぞれ算出し、互いに隣り合う前記受光波の前記時間差が近似していると判断できる場合、前記受光波に周期性があると判断し、
前記干渉判断部は、互いに隣り合う前記受光波の前記時間差が近似していると判断できる場合、前記時間差を干渉周期に決定し、
前記判断対象受光信号に複数の前記受光波がある場合、複数の前記受光波のうち、周期性がない前記受光波に基づいて距離を算出する距離算出部(42)を備え、
前記干渉判断部は、2番目の前記受光波の前記時間差と3番目の前記受光波の前記時間差の和が前記干渉周期の自然数倍と近似しない場合、1番目の前記受光波を周期性がない前記受光波であるとする、光測距装置。
【請求項2】
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置であって、
前記レーザ光を走査しつつ投光する投光部(20)と、
前記レーザ光を受光する受光部(30)と、
前記投光部が投光した前記レーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための1回の受光期間に前記受光部が受光した受光信号、または、複数回の投光に対応した複数回の前記受光期間に前記受光部が受光した前記受光信号を積算した信号のいずれかである判断対象受光信号に、前記受光部が受光した前記レーザ光である受光波が複数ある場合、複数の前記受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部(43)を備え、
前記波形特徴が、それぞれの前記受光波の形状を特定する1種類以上の形状特徴値であり、
前記干渉判断部は、前記判断対象受光信号に複数の前記受光波がある場合、複数の前記受光波の前記形状特徴値を大きさの順に並べ、隣り合う前記形状特徴値が近似している場合に、干渉が発生していると判断する、光測距装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光測距装置であって、
前記形状特徴値に前記受光波のピーク強度が含まれる、光測距装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光測距装置であって、
前記形状特徴値に前記受光波の幅が含まれる、光測距装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の光測距装置であって、
前記形状特徴値に前記受光波のエネルギーが含まれる、光測距装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の光測距装置であって、
隣り合う前記形状特徴値と近似している前記形状特徴値を干渉基準値とし、
前記判断対象受光信号に複数の前記受光波がある場合、複数の前記受光波のうち、前記形状特徴値が前記干渉基準値と近似していない前記受光波に基づいて距離を算出する距離算出部(42)を備える、光測距装置。
【請求項7】
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置であって、
前記レーザ光を走査しつつ投光する投光部(20)と、
前記レーザ光を受光する受光部(30)と、
前記投光部が投光した前記レーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための1回の受光期間に前記受光部が受光した受光信号、または、複数回の投光に対応した複数回の前記受光期間に前記受光部が受光した前記受光信号を積算した信号のいずれかである判断対象受光信号に、前記受光部が受光した前記レーザ光である受光波が複数ある場合、複数の前記受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部(43)を備え、
前記波形特徴が前記受光波の幅であり、
前記干渉判断部は、前記投光部が投光する前記レーザ光の幅よりは大きく、かつ、iTOF型の測距装置が送信するレーザ光のパルス幅よりも小さい値に設定された幅閾値よりも、前記受光波の幅が大きい前記受光波が前記判断対象受光信号にある場合、干渉が発生していると判断する、光測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光測距装置に関し、特に、干渉を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置が知られている。光測距装置の周囲にレーザ光を投光する別の装置があり、その別の装置が投光するレーザ光を自装置が受光してしまうことがある。精度よく物体までの距離を測定するためには、別の装置が投光するレーザ光(以下、干渉光)を除去して距離を算出する必要がある。特許文献1では、レーザ光を投光する前の直前期間に干渉監視時間を設ける。干渉監視時間に受光があった場合、干渉が発生していると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-72078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は干渉監視時間を設ける必要がある。そのため、測距のためにレーザ光の投光と受光をする期間を含むトータルの測距時間が長くなってしまう。
【0005】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、トータルの測距時間を短縮しつつ、干渉が発生しているかどうかを判断できる光測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的態様との対応関係を示すものであって、開示した技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するための1つの開示は、
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置であって、
レーザ光を走査しつつ投光する投光部(20)と、
レーザ光を受光する受光部(30)と、
投光部が投光したレーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための1回の受光期間に受光部が受光した受光信号、または、複数回の投光に対応した複数回の受光期間に受光部が受光した受光信号を積算した信号のいずれかである判断対象受光信号に、受光部が受光したレーザ光である受光波が複数ある場合、複数の受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部(43)を備え、
波形特徴が受光波の周期であり、
干渉判断部は、受光波に周期性がある場合、干渉が発生していると判断し、
干渉判断部は、1つ前の波形の検出時刻から受光波の検出時刻までの時間差(T)を、複数の受光波についてそれぞれ算出し、互いに隣り合う受光波の時間差が近似していると判断できる場合、受光波に周期性があると判断し、
干渉判断部は、互いに隣り合う受光波の時間差が近似していると判断できる場合、時間差を干渉周期に決定し、
判断対象受光信号に複数の受光波がある場合、複数の受光波のうち、周期性がない受光波に基づいて距離を算出する距離算出部(42)を備え、
干渉判断部は、2番目の受光波の時間差と3番目の受光波の時間差の和が干渉周期の自然数倍と近似しない場合、1番目の受光波を周期性がない受光波であるとする、光測距装置である。
上記目的を達成するための1つの開示は、
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置であって、
レーザ光を走査しつつ投光する投光部(20)と、
レーザ光を受光する受光部(30)と、
投光部が投光したレーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための1回の受光期間に受光部が受光した受光信号、または、複数回の投光に対応した複数回の受光期間に受光部が受光した受光信号を積算した信号のいずれかである判断対象受光信号に、受光部が受光したレーザ光である受光波が複数ある場合、複数の受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部(43)を備え、
波形特徴が、それぞれの受光波の形状を特定する1種類以上の形状特徴値であり、
干渉判断部は、判断対象受光信号に複数の受光波がある場合、複数の受光波の形状特徴値を大きさの順に並べ、隣り合う形状特徴値が近似している場合に、干渉が発生していると判断する、光測距装置である。
上記目的を達成するための1つの開示は、
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置であって、
レーザ光を走査しつつ投光する投光部(20)と、
レーザ光を受光する受光部(30)と、
投光部が投光したレーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための1回の受光期間に受光部が受光した受光信号、または、複数回の投光に対応した複数回の受光期間に受光部が受光した受光信号を積算した信号のいずれかである判断対象受光信号に、受光部が受光したレーザ光である受光波が複数ある場合、複数の受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部(43)を備え、
波形特徴が受光波の幅であり、
干渉判断部は、投光部が投光するレーザ光の幅よりは大きく、かつ、iTOF型の測距装置が送信するレーザ光のパルス幅よりも小さい値に設定された幅閾値よりも、受光波の幅が大きい受光波が判断対象受光信号にある場合、干渉が発生していると判断する、光測距装置である。
【0008】
この光測距装置は、干渉が発生しているか否かを、反射レーザ光を受光するための受光期間に受光部が受光した受光信号から決定される判断対象受光信号に含まれる受光波の波形特徴に基づいて判断する。したがって、干渉が発生しているかどうかを判断するために直前期間を設ける必要がないので、トータルの測距時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の光測距装置の構成を示す図。
図2】干渉が生じる状況例を示す図。
図3】光測距装置が投受光するレーザ光の時刻と強度の関係を示す図。
図4】光測距装置が投受光するレーザ光の時刻と強度の関係を示す図。
図5】干渉が生じている状態で光測距装置が投受光する光の強度を示す図。
図6】干渉が生じている状態で光測距装置が投受光する光の強度を示す図。
図7】第1実施形態で干渉判断部が実行する処理を示す図。
図8図7に続く処理を示す図。
図9】S31からS33の処理を行う理由を説明する図。
図10】第2実施形態において図7に代えて実行する処理を示す図。
図11図10に続いて実行する処理を示す図。
図12】第3実施形態において図7に代えて実行する処理を示す図。
図13図12に続いて実行する処理を示す図。
図14】受光波Eのパルス幅W、エネルギーJを説明する図。
図15】受光波Eのパルス幅W、エネルギーJを説明する図。
図16】第4実施形態において図7に代えて実行する処理を示す図。
図17図16に続いて実行する処理を示す図。
図18】第5実施形態において図7に代えて実行する処理を示す図。
図19図18に続いて実行する処理を示す図。
図20】第6実施形態において図7に代えて実行する処理を示す図。
図21図20に続いて実行する処理を示す図。
図22】第7実施形態において図7に代えて実行する処理を示す図。
図23図22に続いて実行する処理を示す図。
図24】第8実施形態において図7に代えて実行する処理を示す図。
図25図24に続いて実行する処理を示す図。
図26】変形例3の判断対象受光信号を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態の光測距装置10の構成を示す図である。光測距装置10は、投光部20と、受光部30と、制御部40とを備えている。
【0011】
投光部20は、レーザ光を走査しつつ装置外部に投光する。このような作動を実現する投光部20は、たとえば、光源とスキャンミラーを備えた構成である。
【0012】
受光部30は、投光部20が投光したレーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光する。受光部30は、たとえば、受光素子と増幅器とを備えた構成である。
【0013】
制御部40は、少なくとも1つのプロセッサを備えた構成により実現できる。たとえば、制御部40は、プロセッサ、不揮発性メモリ、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスラインなどを備えたコンピュータにより実現できる。不揮発性メモリには、汎用的なコンピュータを制御部40として作動させるためのプログラムが格納されている。プロセッサが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することで、制御部40は、投受光制御部41、距離算出部42、干渉判断部43として作動する。これらの作動が実行されることは、プログラムに対応する方法が実行されることを意味する。
【0014】
投受光制御部41は、投光部20が、所定の走査範囲内でレーザ光を走査するように、投光部20を制御する。また、投受光制御部41は、受光部30を制御して、受光部30に反射レーザ光を検出させ、受光部30から反射レーザ光の受光強度を示す受光信号を逐次取得する。
【0015】
距離算出部42は、投光部20がレーザ光を投光してから、受光部30が反射レーザ光を受光するまでの時間(以下、飛行時間TOF)に基づいて、反射レーザ光が生じた物体までの距離を演算する。このようにして物体までの距離を算出するので、この光測距装置10は、dTOF型の光測距装置である。
【0016】
干渉判断部43は、投受光制御部41が取得した受光信号をもとに、干渉が発生しているかを判断する。干渉判断部43が判断する干渉は、iTOF型の光測距装置50(図2参照)が投光するレーザ光による干渉を少なくとも含む。干渉判断部43は、干渉が発生していることに加え、受光波Eが干渉光であるか信号光であるかも判断する。干渉判断部43が干渉を判断する処理は後述する。
【0017】
距離算出部42は、干渉判断部43が干渉光であると判断した受光波Eは距離の演算に用いない。換言すれば、距離算出部42は、干渉光ではないと判断した受光波Eに基づいて距離を算出する。第1実施形態では、後述するように、干渉判断部43は、干渉光であるかどうかを受光波Eの周期性により判断する。したがって、距離算出部42は、周期性がある受光波Eを除外し、周期性がない受光波Eを用いて距離を算出する。
【0018】
〔干渉が生じる状況例〕
図2に、干渉が生じる状況例を示す。光測距装置10は車両に搭載されている。光測距装置10が搭載されている車両を自車両1とする。光測距装置10から延びている狭い扇形は、1つの走査方位に投光しているレーザ光を示している。
【0019】
図2には自車両1に対向して走行する他車両2も示されている。他車両2は、iTOF型の光測距装置50を搭載している。光測距装置50を中心とする扇形は、光測距装置50が投光するレーザ光を概念的に示している。光測距装置50が投光するレーザ光は拡散光である。図2に示すように、光測距装置50が投光するレーザ光は、光測距装置10に受光されることがある。
【0020】
図3は、光測距装置10が測定方位ごとに投受光するレーザ光の時刻と強度の関係を示す図である。図3に示すグラフは横軸が時刻t、縦軸が信号強度Iである。光測距装置10は、時刻t0においてレーザ光を投光する。レーザ光が外部の物体で反射されると反射レーザ光が生じる。図3では、光測距装置10は、時刻t1に反射レーザ光を受光している。時刻t0から時刻t1までの飛行時間TOFが物体までの距離に比例するので、飛行時間TOFに基づいて物体までの距離が算出できる。
【0021】
図4は、光測距装置50が投受光するレーザ光の時刻と強度の関係を示す図である。図4も、横軸が時刻t、縦軸が信号強度Iである。図4に示すように、iTOF型である光測距装置50は、周期的にレーザ光を投光する。投光している期間と投光してない期間のDUTY比は50%である。図4では、最初のレーザ光を時刻t10から投光開始している。そして、そのレーザ光により生じた反射レーザ光を時刻t11から受光開始している。iTOF型では、投光したレーザ光と受光した反射レーザ光の位相差をもとに物体までの距離を算出する。
【0022】
図3図4は、いずれも干渉が生じていない状態での投光と受光の信号強度Iを示していた。図5図6には、図2に示す状態のように、干渉が生じている状態で光測距装置10が投受光する光の強度を示している。以下の説明では、光測距装置10が投受光するレーザ光と、光測距装置50が投光するレーザ光を区別するために、光測距装置10が投受光するレーザ光を信号光、光測距装置50が投光するレーザ光を干渉光と記載することがある。
【0023】
図5図6では、信号光は実線で示し、干渉光は破線で示している。図5は、信号光と干渉光が分離している。図6では、信号光と干渉光が融合している。これらの図は概念図であり、実際には、受光波Eが信号光であるか干渉光であるかを、明確に区別できる訳ではない。図5図6のいずれでも、正しく飛行時間TOFを決定するためには、干渉光を示す信号と信号光を示す信号とが含まれている受光信号から、信号光を示す受光信号を決定する必要がある。
【0024】
そこで、光測距装置10は、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部43を備える。距離算出部42は、干渉判断部43が干渉が発生していると判断した場合、受光信号から干渉光を除外した後に距離を演算する。
【0025】
〔干渉判断部43が実行する処理〕
図7図8に、第1実施形態で干渉判断部43が実行する処理を示す。図7図8に示す処理は、物体検出方位ごとに受光期間の間、受光信号を取得した後に実行する。したがって、第1実施形態では、1回の受光期間に検出された受光信号が判断対象受光信号である。受光期間は、投光部20がレーザ光を投光した時点に基づいて定まる期間である。受光期間の開始時刻は、投光部20がレーザ光を投光した時刻とすることができる。あるいは、受光期間の開始時刻は、投光部20がレーザ光を投光した時刻の後、装置ハウジングなどからの反射レーザ光を除外する程度の時間経過後としてもよい。受光期間の長さは、光測距装置10が検出すべき物体の最大距離により定まる。受光期間の長さは、最大検出距離/光速よりも長く、投光周期よりも短ければよい。
【0026】
S1では、N=1、i=0、周期干渉フラグ=Falseに設定する。続くS2では、周期干渉フラグの内容を判断する。初回のS2の実行時点では、周期干渉フラグはFalseである。周期干渉フラグがFalseであればS3に進む。
【0027】
S3では、全部の受光波数FULLが2以下であるか否かを判断する。図5図6の例ではFULL=5である。なお、受光波Eはエコーと呼ばれることもある。S3の判断結果がYESであればS4に進む。
【0028】
S4では、N番目の受光波E(N)を真値すなわち信号光の波形であるとする。S4に進む場合、周期干渉があることを判断可能なほど受光波数がない。そこで、受光波E(N)を真値とするのである。
【0029】
S4を実行後はS5に進む。S5ではNを1増加させる。続くS6では、NがFULLよりも大きいか否かを判断する。FULLが1であれば、一度目のS6の実行において、S6の判断結果がYESになる。FULLが2以上であれば、一度目のS6の判断結果はNOになる。S6の判断結果がNOであればS2に戻る。
【0030】
FULLが3以上であればS3の判断結果がNOになる。S3の判断結果がNOである場合、S7に進む。S7では、Nが1であるか、つまり、初回の実行であるか否かを判断する。S7の判断結果がYESであればS8に進む。S8ではiを1増加させる。S8を実行後はS5に進む。
【0031】
S7の判断結果がNOであればS9に進む。S9へは、Nが2以上、かつ、FULLが3以上の場合に進むことになる。S9では、時間差T(N)と時間差T(N+1)が近似しているか否かを判断する。
【0032】
時間差Tは図5図6に示している。時間差T(N)は、1つ前の波形の検出時刻からN番目の受光波Eの検出時刻までの時間である。1番目の受光波E1の場合、1つ前の波形は投光したレーザ光である。投光したレーザ光の検出時刻は、投光部20がレーザ光を投光した時刻である。図5図6では、波形の検出時刻は受光波形の時間中心となる時刻としている。ただし、波形の検出時刻は、受光波Eの立ち上がり時刻とすることもできる。近似しているかどうかは、一方に対して他方が±α%以内かどうかにより判断する。α%は、たとえば10%である。
【0033】
S9の判断結果がNOであればS10に進む。S10ではU(i)にNを格納し、かつ、UT(i)に時間差T(N)を格納する。S10の処理を実行する状態では、周期干渉フラグはFalseであるが、N番目の波形は干渉光である可能性がある。そこで、後の処理でN番目の波形が干渉光であるかどうかを判断するために、時間差T(N)をUT(i)に格納する。S10を実行後はS11に進む。S11ではiを1増加させる。S11を実行後はS5へ進む。
【0034】
S9の判断結果がYESであればS12へ進む。S12へ進む場合、複数の受光波Eに周期性があることになる。そこでS12では、周期干渉フラグをTrueにし、干渉周期をT(N)に決定する。このように、第1実施形態では、受光波Eの周期を波形特徴とし、受光波形に周期性がある場合に干渉が発生していると判断している。受光波Eの周期は、1つの受光波Eの波形が検出されてから、次の受光波Eの波形が検出されるまでの時間であるので、受光波Eの波形の特徴の1つを示している。S13では、N番目の受光波E(N)は干渉光であるとする。S13を実行後はS5へ進む。
【0035】
S12の処理により周期干渉フラグがTrueになると、S2の判断の後、S14に進む。S14では、時間差T(N)が干渉周期と近似するか否かを判断する。たとえば、時間差T(N)が干渉周期の±β%以内であれば、時間差T(N)は干渉周期と近似すると判断する。β%はたとえば10%である。S14の判断結果がNOであればS15に進み、N番目の受光波E(N)は真値であるとする。S14の判断結果がYESであればS16に進み、受光波E(N)は干渉光であるとする。S15またはS16を実行後はS5、S6へ進む。
【0036】
S5でのNの増加によりS6の判断結果がYESになった場合、図8に進む。図8に示す処理に進む時点では、干渉が発生しているか否かの判断は終了している。図8では、S10において格納したi番目の受光波Eが真値であるかどうかを判断する。
【0037】
図8において、S21では、iが0よりも大きいか否かを判断する。S21の判断結果がNOであれば図8の処理を終了する。S21の判断結果がYESであればS22へ進む。
【0038】
S22では、周期干渉フラグの内容を判断する。周期干渉フラグがFalseであればS23へ進む。S23では、U(i)番目の受光波E(U(i))を真値とする。S24では、iを1減少させる。S25では、iが0になったか否かを判断する。S25の判断結果がNO、すなわちiが0になっていなければS23に戻る。S23からS25の繰り返しにより、S10において番号をU(i)に格納した受光波Eを、全部、真値にする。周期干渉フラグがFalseつまり周期干渉がない状態であるので、全部の受光波Eを真値にするのである。S25の判断結果がYESであれば、図8の処理を終了する。
【0039】
S22の判断において、周期干渉フラグがTrueであればS26に進む。S26では、UT(i)が干渉周期と近似しているか否かを判断する。両者が近似しているか否かは、S14と同様にして判断する。
【0040】
S26の判断結果がNOであればS27に進み、U(i)番目の受光波E(U(i))は真値であるとする。S26の判断結果がYESであればS28に進み、受光波E(U(i))は干渉光であるとする。S27またはS28を実行後はS29へ進む。
【0041】
S29では、iを1減少させる。S30では、iが1よりも大きいか否かを判断する。S30の判断結果がYESであればS26に戻る。S26からS30の繰り返しにより、真値かどうかが決定されていない受光波Eが、番号の大きい方から順にi=2まで、真値かどうかが決定される。
【0042】
iが1まで減少するとS30の判断結果がNOになる。S30の判断結果がNOになるとS31に進む。S31では、時間差T2と時間差T3の和が、干渉周期のD倍と近似しているか否かを判断する。Dはユーザが定義する1以上の整数(すなわち自然数)である。Dは、1と2など、複数種類であることが好ましい。
【0043】
T2+T3が干渉周期のD倍と近似しているか否かの判断方法は、S14と同じである。S31の判断結果がYES、すなわち、時間差T2と時間差T3との和が、干渉周期のD倍に近似する場合、S32に進む。S32では、1番目の受光波E1は干渉光であるとする。一方、S31の判断結果がNOである場合にはS33に進み、1番目の受光波E1は真値であるとする。
【0044】
S31からS33の処理を行う理由を、図9を使って説明する。時間差T1は、図9に示すように、投光したレーザ光の検出時刻から受光波E1の検出時刻までの時間である。図9に示すように、受光波E1が干渉光であるにも関わらず、時間差T1と時間差T2は相違する。したがって、受光波E1は、2番目以降の受光波Eと同じ基準により干渉光であるかどうかを判断することはできない。そこで、S31からS33により、受光波E1が干渉光であるかどうかを判断するのである。図9に示す状態であれば、T2+T3は、干渉周期であるT4やT5とほぼ等しい。したがって、S31からS33により受光波E1を干渉光であると決定できる。
【0045】
なお、Dを2とすれば、図6に示すように、2番目の受光波E2が、信号光と干渉光が重なった波形である場合にも、受光波E1を干渉光であると決定できる。T2+T3が2×干渉周期に近似するからである。
【0046】
〔第1実施形態のまとめ〕
以上、説明した第1実施形態では、干渉判断部43は、干渉が発生しているか否かを、受光期間に受光された受光波Eに周期性があるかどうかにより判断している(S9)。したがって、干渉が発生しているかどうかを判断するために直前期間を設ける必要がないので、トータルの測距時間を短縮できる。
【0047】
干渉判断部43は、検出順において連続する受光波E、すなわち、検出順において互いに隣り合う受光波Eに対する時間差T(N)、T(N+1)が近似していると判断できる場合(S9:YES)、受光波Eに周期性があると判断する(S12)。このようにして周期性を判断することで、容易に周期性を判断できる。
【0048】
干渉判断部43は、周期性がある受光波Eを干渉光とする(S13、S16)。距離算出部42は、干渉光は距離の算出に用いない。図5の例では、S13において、受光波E2を干渉光とし、S16において受光波E3、E4を干渉光に決定できる。図6の例では、S13において受光波E4を干渉光とし、S16において受光波E5を干渉光に決定できる。
【0049】
また、干渉判断部43は、2番目の受光波E2の時間差T2と3番目の受光波E3の時間差T3の和が干渉周期のD倍に近似する場合、1番目の受光波E1は干渉光であるとする(S32)。換言すれば、干渉判断部43は、T2+T3が干渉周期のD倍に近似しない場合、1番目の受光波E1は真値、すなわち周期性がない受光波Eであるとする(S33)。このようにすることで、1番目の受光波E1についても周期性を判断できる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0051】
図10図11は、図7、8に代えて干渉判断部43が実行する処理である。図10のS41では、周期干渉フラグをFalseに設定する。
【0052】
S42では、受光期間の受光信号を周波数解析する。S43では、周波数解析スペクトルにおいて、iTOF型の光測距装置50が送信するレーザ光の周期に相当する周波数(以下、iTOF周波数)にピークが存在するかどうかを判断する。光測距装置50が送信するレーザ光の周期は、信号光の波形が持つ周波数とは全く異なる周波数であり、かつ、ピーク強度も大きいはずである。よって、周波数解析スペクトルにおいてiTOF周波数にピークが存在するかどうかは容易に判断できる。
【0053】
S43の判断結果がNOであればS44、S45を実行することなく、図11のS50へ進む。S43の判断結果がYESであればS44に進む。S44では、周期干渉フラグをTrueにする。S45では、iTOF周波数の逆数を干渉周期とする。その後、図11のS50へ進む。
【0054】
図11のS50ではN=1にする。続くS51では、周期干渉フラグの内容を判断する。周期干渉フラグがFalseであればS52に進む。S52では、受光波E(N)を真値とする。S52を実行後はS60に進む。S60ではNを1増加させる。続くS61では、Nが全部の受光波数FULLを超えたか否かを判断する。S61の判断結果がNOであればS51へ戻る。
【0055】
S51の判断において、周期干渉フラグがTrueであればS53に進む。S53では、N=1であるか否かを判断する。初回の図11の実行時はS53の判断結果がYESになる。S53の判断結果がYESであればS54に進む。S54、S55、S56は、それぞれ図8のS31、S32、S33と同じである。S54、S55、S56により、1番目の受光波E1が真値であるか干渉光であるかを決定する。S55またはS56を実行後はS60、S61へ進む。
【0056】
2回目以降のS53の実行時は、S53の判断結果がNOになりS57に進む。S57、S58、S59は、それぞれ図7のS14、S15、S16と同じである。S57、S58、S59により、N番目の受光波E(N)が真値であるか干渉光であるかを決定する。全部の受光波E(N)について真値であるか干渉光であるかを決定し終えると、S61の判断結果がYESになり、図11の処理が終了する。
【0057】
〔第2実施形態のまとめ〕
この第2実施形態では、干渉判断部43は、受光期間の受光信号を周波数解析して得られるスペクトルの強度に基づいて、受光波Eに周期性があるか否かを判断する(S43、S44)。このようにしても、直前期間を設けることなく干渉が発生しているかどうかを判断できる。
【0058】
<第3実施形態>
図12図13は、図7、8に代えて干渉判断部43が実行する処理である。図12のS71では、受光期間に受光した受光波Eをピークの信号強度Iが大きい順に並び替える。図14図15には、受光波Eに、ピークの信号強度Iの順番となる数字を付して示している。受光波Eのピークの信号強度Iは、受光波形の形状を特定する形状特徴値の1つである。
【0059】
S72では、周期干渉フラグをFalseにする。S73では、変数であるCntを0にし、Nを1にする。
【0060】
S74では周期干渉フラグの内容を判断する。周期干渉フラグがTrueであれば、図13のS81に進む。しかし、当初は周期干渉フラグはFalseである。周期干渉フラグがFalseであればS75に進む。
【0061】
S75では、N番目の受光波Eのピークの信号強度I(N)と、N+1番目の受光波Eのピークの信号強度I(N+1)が近似しているかを判断する。近似しているかどうかは、たとえば、一方に対して他方が±α%以内かどうかにより判断する。S75の判断結果がNOであればS79に進み、YESであればS76に進む。
【0062】
S76では、Cntを1増加させる。S77では、Cntがγ以上であるか否かを判断する。γはユーザが定義する数である。
【0063】
S77の判断結果がYESであればS78に進む。S78では、周期干渉フラグをTrueにし、かつ、干渉ピーク強度をI(N)にする。干渉ピーク強度は図13において、それぞれの受光波Eのピークの信号強度Iと比較する干渉基準値である。
【0064】
S79ではNを1増加させる。S80では、Nが受光波数FULLよりも大きいか否かを判断する。S80の判断結果がNOであればS74以下を再び実行する。S80の判断結果がYESであれば図13のS81へ進む。
【0065】
Cntは、S75の判断結果がYESになる数を意味している。S77の判断がYESになると周期干渉フラグをTrueにすることになる。したがって、γは、S77の判断が、何回YESになることで周期干渉と判断するかをユーザが決めて設定する数である。γは1以上の整数である。γが大きいほど、周期干渉が生じていないのに周期干渉であると決定してしまう可能性が少なくなる利点がある。反面、γが大きいほど、周期干渉が生じているのに周期干渉が生じていると決定できない可能性も高くなる決定がある。ユーザは、この利点と欠点とを考慮して、γを決定する。γは2またはそれ以上であることが好ましい。
【0066】
図14では、受光波E2、E3、E4、E5のピークの信号強度Iは近似している。したがって、N=2、3、4のときにS75の判断結果がYESになる。つまり、3回、S75の判断結果がYESになる。したがって、γ=1、2、3のいずれかであれば、周期干渉フラグがTrueになる。また、γ=1、2、3の場合、それぞれ、受光波E2、E3、E4のピークの信号強度I2、I3、I4が干渉ピーク強度になる。
【0067】
図15では、受光波E2、E3、E4のピークの信号強度Iは近似している。したがって、N=2、3のときにS75の判断結果がYESになる。したがって、γ=1、2のいずれかであれば、周期干渉フラグがTrueになる。
【0068】
続いて図13を説明する。S81ではNを1にする。S82では、周期干渉フラグの内容を判断する。周期干渉フラグがFalseであればS83に進む。S83では、受光波E(N)を真値とする。
【0069】
S82の判断において、周期干渉フラグがTrueであればS84に進む。S84では、ピークの信号強度I(N)が干渉ピーク強度と近似しているかを判断する。近似しているか否かを判断する手法はこれまでと同じである。S84の判断結果がNOであればS85に進む。この受光波E(N)はピークの信号強度Iが干渉ピーク強度と近似していない受光波E(N)である。S85では、この受光波E(N)は真値であるとする。S84の判断結果がYESであればS86に進み、受光波E(N)は干渉光であるとする。
【0070】
S87ではNを1増加させる。S88では、Nが受光波数FULLよりも大きいか否かを判断する。S88の判断結果がNOであればS82以下を再び実行する。S88の判断結果がYESであれば図13の処理を終了する。
【0071】
図13の処理により、図14の例では、受光波E1を真値に決定でき、受光波E2、E3、E4、E5を干渉光に決定できる。図15の例では、受光波E1を真値に決定でき、受光波E2、E3、E4を干渉光に決定できる。距離算出部42は、干渉光に決定された受光波Eは除外し、真値に決定された受光波Eを用いて距離を算出する。
【0072】
以上、説明したように、受光波Eのピークの信号強度Iを大きさの順に並べ(S71)、この順番において隣り合うピークの信号強度Iが近似しているかどうかを判断することにより、干渉が生じているかどうかを判断できる(S75~S80)。
【0073】
また、隣り合うピークの信号強度Iが近似しているピークの信号強度Iを干渉ピーク強度とし(S78)、この干渉ピーク強度と近似していない受光波E(N)を真値とする(S85)。距離算出部42は、真値とされた受光波E(N)のみを用いて距離を算出する。このようにすることで、干渉光を除外して距離を算出できる。
【0074】
<第4実施形態>
第4実施形態は、第3実施形態に類似する。第4実施形態では、図12図13に代えて、図16図17を実行する。図16は、図12のS71、S75、S78に代えてS71-1、S75-1、S78-1を実行する。
【0075】
S71-1では、受光期間に受光した受光波Eを、受光波Eの幅であるパルス幅Wの順に並び替える。第4実施形態では、パルス幅Wが形状特徴値である。パルス幅Wは、図14図15の受光波E2に示している。パルス幅Wには、受光波Eの半値幅を採用できる。ただし、受光波Eの形状を相対的に比較できればよいので、パルス幅Wを他の基準により決定してもよい。たとえば、所定の信号強度Iにおける波形幅をパルス幅Wとしてもよい。
【0076】
パルス幅Wが狭い順に受光波Eを並べる場合、ピークの信号強度Iと同様、図14に示す受光波Eの番号順に並ぶことになる。なお、パルス幅Wを広い順に並べてもよい。
【0077】
S75-1では、N番目の受光波Eのパルス幅W(N)と、N+1番目の受光波Eのパルス幅W(N+1)が近似しているかを判断する。
【0078】
S78-1では、周期干渉フラグをTrueにし、かつ、干渉パルス幅をW(N)にする。干渉パルス幅は図17において、それぞれの受光波Eのパルス幅Wと比較する干渉基準値である。図14図15の例では、受光波E2のパルス幅W2が干渉パルス幅になる。
【0079】
次に、図17を説明する。図17は、図13のS84に代えてS84-1を実行する。S84-1では、パルス幅W(N)が干渉パルス幅と近似しているかを判断する。S84-1の判断結果がNOであればS85に進み、受光波E(N)は真値であるとする。S84-1の判断結果がYESであればS86に進み、受光波E(N)は干渉光であるとする。図17の処理により、図14の例では、受光波E2、E3、E4、E5が干渉光となり、図15の例では、受光波E2、E3、E4が干渉光となる。一方、受光波E1が真値となる。
【0080】
この第4実施形態のように、パルス幅Wが近似しているかを判断することでも、干渉を判断でき、かつ、干渉光と真値(すなわち信号光)とを区別できる。
【0081】
<第5実施形態>
第5実施形態では、パルス幅W(N)を波形特徴として用いて干渉の有無を判断する。第5実施形態は、第4実施形態に類似する。第5実施形態では、図16図17に代えて、図18図19を実行する。図18は、図15のS75-1、S78-1に代えてS75-2、S78-2を実行する。
【0082】
S75-2では、パルス幅W(N)が、事前に決定された幅閾値Cよりも大きいか否かを判断する。幅閾値Cは、投光部20が投光するレーザ光の幅よりも大きく、かつ、iTOF型の光測距装置50が送信するレーザ光のパルス幅よりも小さい値に設定されている。dTOF型の装置が送信するレーザ光のパルス幅と、iTOF型の装置が送信するレーザ光のパルス幅は大きく異る。したがって、これら2種類のパルス幅の間になるように、幅閾値Cを設定することは容易にできる。
【0083】
S78-2では、周期干渉フラグをTrueにする。S78-1と異なり、干渉パルス幅を設定する必要はない。次に説明する図19のS84-2でも、干渉パルス幅ではなく幅閾値Cを使うからである。
【0084】
図19は、図17のS84-1に代えてS84-2を実行する。S84-2では、パルス幅W(N)が幅閾値Cよりも大きいか否かを判断する。S84-2の判断結果がYESであれば、S86に進み、受光波E(N)は干渉光であるとする。S84-2の判断結果がNOであれば、S85に進み、受光波E(N)は真値であるとする。この第5実施形態のようにしても、干渉光と信号光とを区別できる。
【0085】
<第6実施形態>
図6実施形態は、第4実施形態に類似する。第6実施形態では、図16図17に代えて、図20図21を実行する。図20は、図16のS71-1、S75-1、S78-1に代えてS71-3、S75-3、S78-3を実行する。
【0086】
S71-3では、受光期間に受光した受光波Eを、受光波EのエネルギーJの順に並び替える。受光波EのエネルギーJは、受光波形の積分値により計算できる。第6実施形態では、エネルギーJが形状特徴値である。エネルギーJは、図14図15の受光波E2に示している。
【0087】
S75-3では、N番目の受光波EのエネルギーJ(N)と、N+1番目の受光波EのエネルギーJ(N+1)が近似しているかを判断する。
【0088】
S78-3では、周期干渉フラグをTrueにし、かつ、干渉エネルギーをJ(N)にする。干渉エネルギーは図21において、それぞれの受光波EのエネルギーJと比較する干渉基準値である。図14図15の例では、受光波E2のエネルギーJ2が干渉エネルギーになる。
【0089】
次に、図21を説明する。図21は、図17のS84-1に代えてS84-3を実行する。S84-3では、エネルギーJ(N)が干渉エネルギーと近似しているかを判断する。S84-3の判断結果がNOであればS85に進み、受光波E(N)は真値であるとする。S84-3の判断結果がYESであればS86に進み、受光波E(N)は干渉光であるとする。図21の処理により、図14の例では、受光波E2、E3、E4、E5が干渉光となり、図15の例では、受光波E2、E3、E4が干渉光となる。一方、受光波E1が真値となる。
【0090】
この第6実施形態のように、エネルギーJが近似しているかを判断することでも、干渉を判断でき、かつ、干渉光と真値(すなわち信号光)とを区別できる。
【0091】
<第7実施形態>
第7実施形態は、第3実施形態および第4実施形態に類似する。第7実施形態は、形状特徴値として、第3実施形態で使用したピークの信号強度Iと第4実施形態で使用したパルス幅Wを用いる。
【0092】
第7実施形態では、図12図13に代えて、図22図23を実行する。図22は、図12のS75、S78に代えて、S75-4、S78-4を実行する。
【0093】
S75-4では、N番目の受光波Eのピークの信号強度I(N)と、N+1番目の受光波Eのピークの信号強度I(N+1)が近似し、かつ、N番目の受光波Eのパルス幅W(N)と、N+1番目の受光波Eのパルス幅W(N+1)が近似しているかを判断する。
【0094】
S78-4では、周期干渉フラグをTrueにし、かつ、干渉ピーク強度をI(N)にし、干渉パルス幅をW(N)にする。第6実施形態では、干渉ピーク強度と干渉パルス幅が干渉基準値である。
【0095】
次に、図23を説明する。図23は、図13のS84に代えてS84-4を実行する。S84-4では、ピークの信号強度I(N)が干渉ピーク強度と近似し、かつ、パルス幅W(N)が干渉パルス幅と近似しているかを判断する。S84-4の判断結果がNOであればS85に進み、受光波E(N)は真値であるとする。S84-4の判断結果がYESであればS86に進み、受光波E(N)は干渉光であるとする。
【0096】
この第7実施形態のように2種類の形状特徴値を使って干渉が生じているかを判断することで、より精度よく、干渉が生じているかどうかを判断できる。また、2種類の干渉基準値を使うことで、真値と干渉光を、より精度よく区別できる。
【0097】
<第8実施形態>
図24、25に、第8実施形態で干渉判断部43が実行する処理を示す。第8実施形態では、受光波Eの番号は、第1実施形態と同様、時系列順である。
【0098】
図24から説明する。S91では、N=1、i=0、周期干渉フラグ=Falseに設定する。続くS92は、図7のS3と同じ処理であり、受光波数FULLは2以下であるか否かを判断する。S92の判断結果がYESであれば図25に進む。S92の判断結果がNOであればS93に進む。
【0099】
S93では、周期干渉フラグの内容を判断する。周期干渉フラグがFalseであれば図25に進む。周期干渉フラグがTrueであればS94に進む。
【0100】
S94では、ピークの信号強度I(N)、I(N+1)、I(N+2)の3つが近似しており、かつ、時間差T(N)、T(N+1)が近似しているかを判断する。ピークの信号強度Iおよび時間差Tがともに近似していればS94の判断結果がYESになる。S94の判断結果がYESであればS95に進む。
【0101】
S95では、周期干渉フラグをTrueにする。また、干渉周期をT(N)にし、干渉周期ピーク強度をI(N)にする。S95を実行後はS96に進む。S94の判断結果がNOであった場合もS96に進む。
【0102】
S96ではNを1増加させる。S97ではNが受光波数FULLよりも大きいか否かを判断する。S97の判断結果がNOであればS92以下を再び実行する。S97の判断結果がYESであれば図25に進む。
【0103】
次に図25を説明する。図25図11に類似する。図25では、図11のS54、S57に代えて、S54-1、S57-1を実行する。S54-1は、N=1のときに実行する。S54-1では、T2+T3が干渉周期に近似し、かつ、I(N)が干渉ピーク強度に近似しているか否かを判断する。T2+T3が干渉周期に近似しているか否かは図11のS54で判断している内容である。I(N)が干渉ピーク強度に近似しているかは図13のS84で判断している内容である。
【0104】
S54-1の判断結果がYESであればS55に進み、受光波E1を干渉光であるとする。S54-1の判断結果がNOであればS56に進み、受光波E1を真値とする。
【0105】
S57-1では、T(N)が干渉周期に近似し、かつ、I(N)が干渉ピーク強度であるか否かを判断する。T(N)が干渉周期に近似しているか否かは図11のS57で判断している内容である。I(N)が干渉ピーク強度に近似しているかは図13のS84で判断している内容である。S57-1の判断結果がNOであればS58に進み、E(N)は真値であるとする。S57-1の判断結果がYESであればS59に進み、E(N)は干渉光であるとする。
【0106】
〔第8実施形態のまとめ〕
この第8実施形態のように、周期性の有無と形状特徴値を使って干渉が生じているかを判断することで、より精度よく、干渉が生じているかどうかを判断できる。また、周期性の有無と干渉基準値を使うことで、真値と干渉光を、より精度よく区別できる。
【0107】
以上、実施形態を説明したが、開示した技術は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0108】
<変形例1>
第1実施形態において、干渉周期は一度のみ設定するようになっている。しかし、干渉周期を随時更新するようにしてもよい。他の実施形態でも、干渉周期を随時更新するようにしてもよい。また、受光波Eのピークの信号強度Iなどの干渉基準値も、随時更新するようにしてもよい。
【0109】
<変形例2>
第7実施形態では、ピークの信号強度Iとパルス幅Wの2つの形状特徴値を用いていた。しかし、これら2つの形状特徴値に代えて、受光波EのエネルギーJを用いてもよい。また、3種類の形状特徴値を用いてもよい。また、第8実施形態において、ピークの信号強度Iに代えて、他の形状特徴値を用いてもよい。
【0110】
<変形例3>
実施形態では、1方位につき1回のみ投光し、その投光により定まる1回の受光期間に受光部30が受光した受光信号を判断対象受光信号としていた。しかし、図26に示すように、1方位に対して複数回(図26では3回)、レーザ光を投光し、複数回の投光に対応した複数回の受光期間に受光部30が受光した受光信号の信号強度Iを積算した信号を判断対象受光信号としてもよい。
【0111】
図26に示す例では、上から2段目が受光信号の信号強度Iを示している。投光を3回行う場合、受光期間が3回ある。各受光期間に受光部30が受光した受光信号を積算する場合、各受光期間に受光部30が受光した受光信号を所定のメモリに保存する。そして、各投光のタイミングを一致させて時間に対する受光信号の信号強度Iを時間ごとに積算する。このようにして得られたグラグが図26の下段のグラフである。このようにすることで、1回の受光期間に受光する受光信号の信号強度Iが小さくても判断対象受光信号を大きくすることができる。よって、測距可能範囲を拡大させることができる。
【符号の説明】
【0112】
1:自車両 2:他車両 10:光測距装置 20:投光部 30:受光部 40:制御部 41:投受光制御部 42:距離算出部 43:干渉判断部 50:光測距装置 C:幅閾値 E:受光波 I:信号強度 J:エネルギー T:時間差 TOF:飛行時間 W:パルス幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置であって、
前記レーザ光を走査しつつ投光する投光部(20)と、
前記レーザ光を受光する受光部(30)と、
前記投光部が投光した前記レーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための1回の受光期間に前記受光部が受光した受光信号、または、複数回の投光に対応した複数回の前記受光期間に前記受光部が受光した前記受光信号を積算した信号のいずれかである判断対象受光信号に、前記受光部が受光した前記レーザ光である受光波が複数ある場合、複数の前記受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部(43)を備え、
前記波形特徴が前記受光波の周期、および、それぞれの前記受光波の形状を特定する1種類以上の形状特徴値である、
光測距装置。
【請求項2】
前記干渉判断部は、連続している3つの前記受光波の前記形状特徴値が互いに近似しており、かつ、3つの前記受光波のうち、1つ目の前記受光波の検出時刻から2つ目の前記受光波の検出時刻までの時間差と、2つ目の前記受光波の検出時刻から3つ目の前記受光波の検出時刻までの時間差とが近似していることに基づいて、干渉周期と、前記形状特徴値と比較する干渉基準値を決定する、
請求項1に記載の光測距装置。
【請求項3】
前記干渉判断部は、1つ前の波形の検出時刻から前記受光波の検出時刻までの時間差(T)が前記干渉周期に近似しており、かつ、前記受光波の前記形状特徴値が前記干渉基準値に近似していることに基づいて、前記受光波は干渉が生じていると判断する、
請求項2に記載の光測距装置。
【請求項4】
前記干渉判断部は、1番目の前記受光波の検出時刻から2番目の前記受光波の検出時刻までの時間差と、2番目の前記受光波の検出時刻から3番目の前記受光波の検出時刻までの時間差の和が前記干渉周期の自然数倍と近似しており、かつ、1番目の前記受光波の前記形状特徴値が前記干渉基準値に近似していることに基づいて、1番目の前記受光波は干渉光であると判断する、
請求項2または3に記載の光測距装置。
【請求項5】
前記形状特徴値に前記受光波のピーク強度が含まれる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の光測距装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するための1つの開示は、
レーザ光の投光と受光により物体までの距離を測定する光測距装置であって、
レーザ光を走査しつつ投光する投光部(20)と、
レーザ光を受光する受光部(30)と、
投光部が投光したレーザ光が反射して生じた反射レーザ光を受光するための1回の受光期間に受光部が受光した受光信号、または、複数回の投光に対応した複数回の受光期間に受光部が受光した受光信号を積算した信号のいずれかである判断対象受光信号に、受光部が受光したレーザ光である受光波が複数ある場合、複数の受光波から得られる波形特徴に基づいて、干渉が発生しているか否かを判断する干渉判断部(43)を備え、
波形特徴が受光波の周期、および、それぞれの受光波の形状を特定する1種類以上の形状特徴値である、光測距装置である
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
次に図25を説明する。図25図11に類似する。図25では、図11のS54、S57に代えて、S54-1、S57-1を実行する。S54-1は、N=1のときに実行する。S54-1では、T2+T3が干渉周期のD倍に近似し、かつ、I(N)が干渉ピーク強度に近似しているか否かを判断する。T2+T3が干渉周期のD倍に近似しているか否かは図11のS54で判断している内容である。I(N)が干渉ピーク強度に近似しているかは図13のS84で判断している内容である。