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特開2024-153927エポキシ樹脂、その原料組成物及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153927
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂、その原料組成物及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/28 20060101AFI20241022BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
C08G59/28
C08G59/40
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024133393
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2022559421の分割
【原出願日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】16/893,614
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522271937
【氏名又は名称】詮達化学股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANDA CHEMICAL CORP.
【住所又は居所原語表記】7F, No. 288, Ming Sheng W. Rd. Taipei, Taiwan 103
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】呉建欣
(72)【発明者】
【氏名】黄英治
(72)【発明者】
【氏名】陳冠廷
(72)【発明者】
【氏名】林佳萱
(72)【発明者】
【氏名】戴憲弘
(72)【発明者】
【氏名】鄭如忠
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械的特性が向上したエポキシ樹脂を提供する。
【解決手段】式(1)で表される構造を有することを特徴とする、エポキシ樹脂である。

(式(1)中、Rは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、Epは、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル誘導体、ポリエーテルのポリグリシジルエーテル誘導体又はフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル誘導体に由来する構造であり、mは、1~5の整数であり、Xは、1~25の整数である。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構造を有することを特徴とする、エポキシ樹脂。
【化1】
(式(1)中、Rは、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、Epは、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル誘導体、ポリエーテルのポリグリシジルエーテル誘導体又はフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル誘導体に由来する構造であり、mは、1~5の整数であり、Xは、1~25の整数である。)
【請求項2】
前記脂肪族ジアミンは、炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミン又は炭素数3~40の分枝脂肪族ジアミンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
前記芳香族ジアミンは、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂ことを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項4】
前記シロキサンジアミンの分子量は150~10,000Daであることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項5】
前記ポリエーテルジアミンの重量平均分子量は100~5,000Daであることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂。
【請求項6】
構造が式(9)で表される硬化剤及びエポキシ化合物を含み、前記構造如式(9)で表される硬化剤と前記エポキシ化合物との重量比は0.5~20であることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂のエポキシ樹脂組成物。
【化4】
(式中、R1は、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、mは1~5から選択される整数である。)
【請求項7】
添加剤をさらに含み、前記添加剤は、第4級ホスホニウムハライド触媒、有機リン触媒、カルボン酸第4級ホスホニウム塩、リン酸エステル、第3級アミン、カルボン酸スズ化物、有機リチウム塩、イミダゾール又はベンゾイミダゾールを含むことを特徴とする、請求項6に記載の1液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記脂肪族ジアミンは、炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミン又は炭素数3~40の分枝脂肪族ジアミンを含むことを特徴とする、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記芳香族ジアミンは、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記シロキサンジアミンの分子量は150~10,000Daであることを特徴とする、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリエーテルジアミンの重量平均分子量は100~5,000Daであることを特徴とする、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ化合物は、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル誘導体、ポリエーテルのポリグリシジルエーテル誘導体又はフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル誘導体を含むことを特徴とする、請求項6に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
カルバメート基を含むエポキシ樹脂であって、
前記カルバメート基を含むエポキシ樹脂は、構造が式(9)で表される硬化剤と、エポキシ化合物とが硬化反応することにより生成したものであり、
【化7】
前記硬化剤と、前記エポキシ化合物との重量比は0.5~20であり、式中、R1は脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、mは1~5から選択される整数であることを特徴とする、カルバメート基を含むエポキシ樹脂。
【請求項14】
前記脂肪族ジアミンは、炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミン又は炭素数3~40の分枝脂肪族ジアミンを含むことを特徴とする、請求項13に記載のカルバメート基を含むエポキシ樹脂。
【請求項15】
前記芳香族ジアミンは、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項13に記載のカルバメート基を含むエポキシ樹脂。
【請求項16】
前記シロキサンジアミンの分子量は150~10,000Daであることを特徴とする、請求項13に記載のカルバメート基を含むエポキシ樹脂。
【請求項17】
前記ポリエーテルジアミンの重量平均分子量は100~5,000Daであることを特徴とする、請求項13に記載のカルバメート基を含むエポキシ樹脂。
【請求項18】
前記エポキシ化合物は、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル誘導体、ポリエーテルのポリグリシジルエーテル誘導体又はフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル誘導体を含むことを特徴とする、請求項13に記載のカルバメート基を含むエポキシ樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂、その製造組成物及び製造方法に関する。特に、このエポキシ樹脂はジカルバメート基を含むビスフェノールグリシジルエーテル(glycidyl ether of diphenolic bis-carbamate)である。この製造組成物は、1液型エポキシ樹脂組成物である。前記エポキシ樹脂は、この1液型エポキシ樹脂組成物を硬化することにより製造される。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、金属塗装、電子部品、塗料業界及び接着業界などの様々な分野に幅広く使用されている。一般には、硬化されていないエポキシ樹脂は、機械的特性、化学的不活性及び耐熱性がいずれも良くない。従来のアミン系硬化剤とエポキシ樹脂の硬化反応は、常温下でも発生する。エポキシ樹脂とアミン系硬化剤が常温下ですぐに発生することを回避するために、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤を別々に添加する必要がある。これは、従来の2液型エポキシ樹脂組成物である。エポキシ樹脂組成物の加工性を最適化し、複雑な包装及び使用プロセスを回避する観点から、1液型エポキシ樹脂組成物は、研究開発が急務となっている分野である。
【0003】
そのため、現在のエポキシ樹脂関連分野では、機械的特性を向上できるエポキシ樹脂及び熱安定性に優れた1液型エポキシ樹脂組成物の開発、並びにその応用例は、解決及び研究開発する必要がある重要な課題となっている。
【発明の概要】
【0004】
上記の事情を鑑み、産業の必要に応じて、本発明の第1目的は、式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂を提供することである。具体的には、このエポキシ樹脂は、ジカルバメート基を含むビスフェノールグリシジルエーテル(glycidyl ether of diphenolic bis-carbamate)であり、良好な熱安定性及び機械的特性を有する。好ましくは、前記エポキシ樹脂は、250%を超える伸び率(strain%)を有する。
【0005】
【化1】
【0006】
Rは脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、Epは式(2)で表される構造を有し、(A)は以下の構造式(3)、構造式(4)、構造式(5)、構造式(6)、構造式(7)及び構造式(8)から選択される1つ又はそれらの組み合わせである。
【化2】
【0007】
R1は、炭素数1~5の環状炭化水素基、炭素数6~10のポリフェノール基、炭素数1~20の直鎖炭化水素基、炭素数1~20のハロ炭化水素基、イミノ基、アミド基、ホスホネート基、ホスフィン基、シラン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、セレニド基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基又はエステル基を含む。
【0008】
R2は、水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素基、水酸基、アミン基、ニトロ基又は炭素数1~5のアルコキシ基を含む。
【0009】
Z及びnは、それぞれ独立して1~5の整数であり、mは0~5の整数であり、Xは1~25の整数である。
【0010】
本発明の第2目的は、1液型エポキシ樹脂組成物を提供することである。この1液型エポキシ樹脂組成物は、第1目的に記載のエポキシ樹脂を製造するための反応処方であり、構造が式(9)で表される硬化剤及びエポキシ化合物を含む。構造が式(9)で表される硬化剤と、エポキシ化合物との重量比は0.5~20である。R1は、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、mは0~5から選択される整数である。
【0011】
【化3】
【0012】
具体的には、前記1液型エポキシ樹脂組成物は、添加剤をさらに含む。この添加剤は、改質剤、促進剤、活性化剤、触媒又はそれらの組み合わせを含む。この添加剤の機能は、硬化反応を触媒することであり、或いは硬化後に生成したエポキシ樹脂が架橋網状構造を有するようにすることである。
【0013】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物の内容物、例えば、硬化剤及びエポキシ化合物は、良好な相溶性を有するため、相分離又は内容物沈殿のような減少が発生することがなく、優れた保存安定性を有する。
【0014】
本発明の第3目的は、カルバメート(carbamate)基を含むエポキシ樹脂の製造方法を提供することである。この製造方法は、以下のステップを含む。
【0015】
ステップ1:構造が式(9)で示される硬化剤及びエポキシ化合物を提供する。硬化剤と、エポキシ化合物との重量比は0.5~20である。R1は脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、mは1~5から選択される整数である。
【0016】
【化4】
【0017】
ステップ2:硬化剤と、エポキシ化合物とを溶媒中で反応させてエポキシ樹脂プレポリマーを形成する。
【0018】
ステップ3:硬化反応によりエポキシ樹脂プレポリマーから前記カルバメート基を含むエポキシ樹脂を形成する。
【0019】
前記カルバメート(carbamate)基を含むエポキシ樹脂の製造方法において、硬化剤は、破棄高分子(例えば、廃棄ポリカーボネート)を原料とすることができため、このエポキシ樹脂の製造方法により廃棄高分子による環境汚染の問題を解決し、循環経済の目的を実現できるとともに、製造過程において二酸化炭素を排出しないため、二酸化炭素の炭素循環が効果的に延長される。
【0020】
具体的には、前記硬化反応の反応温度は150~350℃である。
【0021】
以上より、本発明の技術は、従来技術に比べ、少なくとも以下の技術的特徴及び利点を有する。
(1)良好な熱安定性及び機械的特性を有するエポキシ樹脂を提供する。
(2)良好な内容物相溶性及び保存安定性を有する1液型エポキシ樹脂組成物(処方)を提供する。
(3)環境に優しいカルバメート(carbamate)基を含むエポキシ樹脂の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】1液型エポキシ樹脂組成物E1DP1で製造されたエポキシ樹脂の1H-NMRスペクトルである。
図2】1液型エポキシ樹脂組成物E1DP1で製造されたエポキシ樹脂のフーリエ変換赤外スペクトルである。
図3】1液型エポキシ樹脂組成物E1DP2で製造されたエポキシ樹脂のフーリエ変換赤外スペクトルである。
図4】1液型エポキシ樹脂組成物E1DP3で製造されたエポキシ樹脂のフーリエ変換赤外スペクトルである。
図5】1液型エポキシ樹脂組成物E1BPAの示差走査熱量曲線である。
図6】1液型エポキシ樹脂組成物E1DP1の示差走査熱量曲線である。
図7】1液型エポキシ樹脂組成物E1DP2の示差走査熱量曲線である。
図8】1液型エポキシ樹脂組成物E1DP3の示差走査熱量曲線である。
図9】1液型エポキシ樹脂組成物E2DP1の示差走査熱量曲線である。
図10】1液型エポキシ樹脂組成物E2DP2の示差走査熱量曲線である。
図11】1液型エポキシ樹脂組成物E2DP3の示差走査熱量曲線である。
図12】1液型エポキシ樹脂組成物E2DP3で製造されたエポキシ樹脂の示差走査熱量曲線である。
図13】1液型エポキシ樹脂組成物E1DP2で製造されたエポキシ樹脂の示差走査熱量曲線である。
図14】1液型エポキシ樹脂組成物E2DP2で製造されたエポキシ樹脂の示差走査熱量曲線である。
図15】1液型エポキシ樹脂組成物E2S430、E1DP3及びE2DP3のそれぞれで製造されたエポキシ樹脂の引張強さ及び伸び率の曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1実施例は、式(1)で表される構造を含むエポキシ樹脂を提供する。具体的には、このエポキシ樹脂は、ジカルバメート基を含むビスフェノールグリシジルエーテル(glycidyl ether of diphenolicbis-carbamate)であり、良好な熱安定性及び機械的特性を有する。
【0024】
【化5】
【0025】
一実施例において、Rは脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、mは0~5の整数であり、Xは1~25の整数である。
【0026】
一実施例において、Epは式(2)で表される構造を有し、(A)は以下の構造式(3)、構造式(4)、構造式(5)、構造式(6)、構造式(7)及び構造式(8)から選択される1つ又はそれらの組み合わせである。
【0027】
【化6】
【0028】
一実施例において、R1は炭素数1~5の環状炭化水素基、炭素数6~10のポリフェノール基、炭素数1~20の直鎖炭化水素基、炭素数1~20のハロ炭化水素基、イミノ基、アミド基、ホスホネート基、ホスフィン基、シラン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、セレニド基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基又はエステル基を含む。
【0029】
一実施例において、R2は水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素基、水酸基、アミン基、ニトロ基又は炭素数1~5のアルコキシ基を含む。
【0030】
一実施例において、Z及びnはそれぞれ独立して1~5の整数であり、mは0~5の整数であり、Xは1~25の整数である。
【0031】
一実施例において、前記脂肪族ジアミンは炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミン又は炭素数2~40の分枝脂肪族ジアミンを含む。好ましくは、この炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン又は1,6-ヘキサンジアミンである。
【0032】
一実施例において、前記芳香族ジアミンはo-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル又はそれらの組み合わせを含む。
【0033】
一実施例において、前記シロキサンジアミンの分子量は150~10,000Daである。
【0034】
前記シロキサンジアミンが有するシロキサン基の構造は、式(10)で表される。
【0035】
【化7】
【0036】
一実施例において、前記ポリエーテルジアミンの重量平均分子量は100~5,000Daである。好ましくは、前記ポリエーテルジアミンはJEFFAMINEポリエーテルジアミンである。
【0037】
本発明の第2実施例は、1液型エポキシ樹脂組成物を提供する。この1液型エポキシ樹脂組成物は、第1実施例に記載のエポキシ樹脂を製造するための反応処方であり、構造が式(9)で表される硬化剤及びエポキシ化合物を含む。構造が式(9)で表される硬化剤と、エポキシ化合物との重量比は0.5~20である。
【0038】
【化8】
【0039】
一実施例において、R1は脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、mは0~5の整数である。
【0040】
前記1液型エポキシ樹脂組成物は、添加剤をさらに含む。この添加剤は、改質剤、促進剤、活性化剤、触媒又はそれらの組み合わせを含む。この添加剤の機能は、硬化反応を触媒すること、或いは硬化後に生成したエポキシ樹脂が架橋網状構造を有するようにすることである。
【0041】
添加剤は、リン系触媒又は窒素系触媒を含む。
【0042】
一実施例において、前記リン系触媒は、第4級ホスホニウムハライド触媒(メチル又はエチルトリフェニルホスホニウムヨージド又はブロマイド)、有機リン触媒(トリフェニルホスフィン或トリブチルホスフィン)、カルボン酸第4級ホスホニウム塩(エチルトリフェニルホスホニウムアセテート)、リン酸エステル(ホルミルメチレントリフェニルホスホラン)又は第4級ホスホニウムハライド前駆体(ホルミルメチルトリフェニルホスホニウムクロリド)を含む。
【0043】
一実施例において、前記窒素系触媒は、第3級アミンを含む。好ましくは、第3級アミンは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノ-メチルフェノール又はその誘導体である。
【0044】
一実施例において、前記添加剤は、第4級ホスホニウムハライド触媒、有機リン触媒、カルボン酸第4級ホスホニウム塩、リン酸エステル、第3級アミン、カルボン酸スズ化物、有機リチウム塩、イミダゾール又はベンゾイミダゾールを含む。
【0045】
一実施例において、前記脂肪族ジアミンは、炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミン又は炭素数2~40の分枝脂肪族ジアミンを含む。好ましくは、炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン又は1,6-ヘキサンジアミンである。
【0046】
一実施例において、前記芳香族ジアミンは、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル又はその組み合わせを含む。
【0047】
一実施例において、前記シロキサンジアミンの分子量は150~10,000Daである。
【0048】
前記シロキサンジアミンが有するシロキサン基の構造は、式(10)で表される。
【0049】
【化9】
【0050】
一実施例において、前記ポリエーテルジアミンの重量平均分子量は100~5,000Daである。好ましくは、前記ポリエーテルジアミンはJEFFAMINEポリエーテルジアミンである。
【0051】
一実施例において、前記エポキシ化合物は、式(2)で表される構造を有する。(A)は以下の構造式(3)、構造式(4)、構造式(5)、構造式(6)、構造式(7)及び構造式(8)から選択される1つ又はそれらの組み合わせである。
【0052】
【化10】
【0053】
一実施例において、R1は炭素数1~5の環状炭化水素基、炭素数6~10のポリフェノール基、炭素数1~20の直鎖炭化水素基、炭素数1~20のハロ炭化水素基、イミノ基、アミド基、ホスホネート基、ホスフィン基、シラン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、セレニド基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基又はエステル基を含む。
【0054】
一実施例において、R2は水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素基、水酸基、アミン基、ニトロ基又は炭素数1~5のアルコキシ基を含む。
【0055】
一実施例において、Z及びnはそれぞれ独立して1~5の整数である。
【0056】
好ましくは、前記エポキシ化合物は、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル誘導体、ポリエーテルのポリグリシジルエーテル誘導体又はフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル誘導体を含む。具体的には、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル誘導体はビスフェノールAジグリシジルエーテル(bisphenol A diglycidyl ether(商標名DER332))であり、ポリエーテルのポリグリシジルエーテル誘導体はポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(diglycidyl ether of poly(propylene glycol)(商標名DER736))である。
【0057】
一実施例において、前記1液型エポキシ樹脂組成物の硬化反応温度は、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃又は200℃よりも高い。
【0058】
本発明の第3実施例は、カルバメート(carbamate)基を含むエポキシ樹脂の製造方法を提供する。この方法は、以下のステップを含む。
【0059】
ステップ1:構造が式(9)で表される硬化剤及びエポキシ化合物を提供する。硬化剤と、エポキシ化合物との重量比は0.5~20である。R1は脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、シロキサンジアミン又はポリエーテルジアミンに由来し、mは1~5から選択される整数である。
【0060】
【化11】
【0061】
ステップ2:硬化剤と、エポキシ化合物とを溶媒中で反応させてエポキシ樹脂プレポリマーを形成する。
【0062】
ステップ3:硬化反応によりエポキシ樹脂プレポリマーから前記カルバメート基を含むエポキシ樹脂を形成する。
【0063】
前記カルバメート(carbamate)基を含むエポキシ樹脂の製造方法において、硬化剤は、破棄高分子(例えば、廃棄ポリカーボネート)を原料とすることができため、このエポキシ樹脂の製造方法により廃棄高分子による環境汚染の問題を解決し、循環経済の目的を実現できるとともに、製造過程において二酸化炭素を排出しないため、二酸化炭素の炭素循環が効果的に延長される。
【0064】
好ましくは、前記製造方法では、改質剤、活性化剤、触媒又はそれらの組み合わせを添加剤として使用してもよい。前記添加剤の機能は、硬化反応を触媒すること、或いは硬化後に生成したエポキシ樹脂が架橋網状構造を有するようにすることである。
【0065】
一実施例において、脂肪族ジアミンは炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミン又は炭素数2~40の分枝脂肪族ジアミンを含む。好ましくは、炭素数2~40の直鎖脂肪族ジアミンは1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン又は1,6-ヘキサンジアミンである。
【0066】
一実施例において、芳香族ジアミンはo-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル又はそれらの組み合わせを含む。
【0067】
一実施例において、シロキサンジアミンの分子量は150~10,000Daである。
【0068】
シロキサンジアミンが有するシロキサン基の構造は式(10)で表される。
【0069】
【化12】
【0070】
一実施例において、ポリエーテルジアミンの重量平均分子量は100~5,000Daである。好ましくは、ポリエーテルジアミンはJEFFAMINEポリエーテルジアミンである。
【0071】
一実施例において、前記エポキシ化合物は、式(2)で表される構造を有する。(A)は以下の構造式(3)、構造式(4)、構造式(5)、構造式(6)、構造式(7)及び構造式(8)から選択される1つ又はそれらの組み合わせである。
【0072】
【化13】
【0073】
一実施例において、R1は炭素数1~5の環状炭化水素基、炭素数6~10のポリフェノール基、炭素数1~20の直鎖炭化水素基、炭素数1~20のハロ炭化水素基、イミノ基、アミド基、ホスホネート基、ホスフィン基、シラン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホニル基、セレニド基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基又はエステル基を含む。
【0074】
一実施例において、R2は水素原子、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭化水素基、水酸基、アミン基、ニトロ基又は炭素数1~5のアルコキシ基を含む。
【0075】
一実施例において、Z及びnはそれぞれ独立して1~5の整数である。
【0076】
好ましくは、前記エポキシ化合物は、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル誘導体、ポリエーテルのポリグリシジルエーテル誘導体又はフェノール樹脂のポリグリシジルエーテル誘導体を含む。具体的には、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル誘導体はビスフェノールAジグリシジルエーテル(bisphenol A diglycidyl ether(商標名DER332))であり、ポリエーテルのポリグリシジルエーテル誘導体はポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(diglycidyl ether of poly(propylene glycol)(商標名DER736))である。
【0077】
具体的には、前記硬化反応の反応温度は150~350℃である。
【0078】
以下、本発明の実験例を示す。
【0079】
実験例1:本発明の硬化剤の一般的な製造方法
溶剤、ポリカーボネート及びジアミン化合物を含む混合物を提供する。ジアミン化合物は、シロキサン基又はポリシロキサン基を有するジアミン化合物であってもよい。この混合物は、炭酸ジフェニルをさらに含んでもよい。前記溶剤は、イソプロピルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、プロピルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、o-メチルアニソール、m-メチルアニソール、p-メチルアニソール、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、2-メチルテトラヒドロピラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン又はシクロヘキシルベンゼンを含む。その後、50~200℃で混合して反応させて粗生成物が得られ、真空蒸留により溶剤を除去した後、前記硬化剤が得られる。通常、本製造方法の重量収率は95%よりも高い。つまり、1gポリカーボネートと1gジアミン化合物とを反応させて1.9~2gの硬化剤が得られる。具体的な硬化剤反応組成を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
上記の表1に示される硬化剤DP1、DP2及びDP3の構造を1H-NMRスペクトルで分析した結果、いずれも化学シフト約7.61ppmに特徴的なピークを有し、その構造がウレタン(urethane)基を有することを示している。
【0082】
実験例2:本発明のエポキシ樹脂の一般的な製造方法
まず、硬化剤をエポキシ化合物又はエポキシ樹脂、触媒及び溶剤に入れて混合物を形成し、この混合物を50~80℃に加熱することでエポキシ樹脂プレポリマーを形成する。一晩静置した後、エポキシ樹脂プレポリマーをオーブンに入れて硬化反応を行い、硬化反応終了後、前記エポキシ樹脂が得られる。具体的には、前記硬化反応は、少なくとも4段階の加熱ステップを含む。第1段階は、60℃で3時間維持し、第2段階は、80℃で3時間維持し、第3段階では、150℃で3時間維持し、第4段階では、180℃で3時間維持する。
【0083】
本実験例2で使用される硬化剤は、実験例1で製造されたものである。実験例の組成を表2に示す。DER332は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(bisphenol A diglycidyl ether)である。DER736は、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(diglycidyl ether of poly(propylene glycol))である。
【0084】
【表2】
【0085】
本発明のエポキシ樹脂を1H-NMRスペクトル及びフーリエ変換赤外スペクトルにより構造分析した。代表例において、表2の1液型エポキシ樹脂組成物E1DP1、E1DP2及びE1DP3のそれぞれで製造されたエポキシ樹脂のフーリエ変換赤外スペクトルをそれぞれ図2図3及び図4に示す。その特徴的なピークの位置及び官能基を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物の示差走査熱量分析(DSC)
【0088】
1液型エポキシ樹脂組成物E1BPA、E1DP1、E1DP2、E1DP3、E2DP1、E2DP2及びE2DP3の示差走査熱量曲線をそれぞれ図5図6図7図8図9図10及び図11に示す。代表的な1液型エポキシ樹脂組成物の反応温度を表4に示す。示差走査熱量分析の結果から明らかなように、E1DP1及びE2DP1の反応温度は160~280℃であり、E1DP2、E2DP2及びE2DP3は170~290℃であり、E1DP3は240~310℃である。よって、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物の反応温度は150℃、160℃、170℃、180℃、190℃又は200℃よりも高い。
【0089】
【表4】
【0090】
本発明のエポキシ樹脂の特性分析
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物で製造されたエポキシ樹脂の特性分析を表5に示す。ガラス転移温度(Tg)はDSC分析により測定される。製造されたエポキシ樹脂のTgは-10~120℃である。図12に示すように、E2DP3で製造されたエポキシ樹脂は低ガラス転移温度型のエポキシ樹脂である。図13に示すように、E1DP2で製造されたエポキシ樹脂は低ガラス転移温度型のエポキシ樹脂である。図14に示すように、E2DP2で製造されたエポキシ樹脂は高ガラス転移温度型のエポキシ樹脂である。よって、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、組成成分の設計により、異なる反応温度で様々なガラス転移温度型のエポキシ樹脂を製造し、異なる分野に適用することができる。
【0091】
【表5】
【0092】
本発明のエポキシ樹脂の引張試験
E1DP3、E2DP3及びE2S430で製造されたエポキシ樹脂に対して万能引張試験機(メーカーと型式:MTS Landmark 370.02 Test System)により引張強さ及び伸び率試験を行う。試験条件はASTM D638表示に準じてサンプルサイズを作成し、試験サンプルの引張速度は100mm/minである。結果を図15に示す。明らかなように、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物E1DP3及びE2DP3で製造されたエポキシ樹脂は、150%を超える伸び率を有し、良好な靭性を示す。これに対し、本発明の硬化剤を使用していないエポキシ樹脂組成物E2S430で製造されたエポキシ樹脂は、引張試験の過程において断裂する。よって、本発明のシラン基を含む硬化剤を用いて靭性、高伸び率及び高引張強さを有するエポキシ樹脂を製造することができる。
【0093】
以上、特定の実験例で本発明を説明したが、本発明の範囲を制限するわけではない。本発明の思想から逸脱しない限り、当業者が様々な変形又は変更を行うことができる。さらに、要約書及び発明の名称は特許文献の検索を補助するためのものであり、本発明の権利範囲を制限するものではない。
図1
図2
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図4
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図15