(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153944
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】振動信号生成装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20241022BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
H04R1/00 310G
H04R3/00 310
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135618
(22)【出願日】2024-08-15
(62)【分割の表示】P 2022518545の分割
【原出願日】2020-04-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 賢太
(72)【発明者】
【氏名】森重 隆司
(57)【要約】
【課題】リラックス効果も覚醒効果もほとんどない楽曲であっても、その楽曲に基づいた振動により楽曲の聴者の心身の状態に所望の効果を与えることを可能にする。
【解決手段】楽曲の再生中に振動発生装置を振動させるための振動信号として、楽曲の音声信号のうちの、モードに応じた帯域の音声信号を抽出し、この抽出された音声信号に基づいた振動信号を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲の再生中に振動発生装置を振動させるための振動信号を生成する振動信号生成装置であって、
複数のモードから1つのモードを決定するモード決定部と、
前記楽曲の音声信号のうちの、前記モード決定部により決定されたモードに応じた帯域の音声信号を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された音声信号に基づいた振動信号を生成する生成部と、を有する振動信号生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動信号生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
楽曲を再生するとともに、その楽曲に基づいた振動を楽曲の聴者に与える技術が開発されている。例えば、特許文献1には、四輪自家用自動車のカーオーディオで掛けられている楽曲の音声信号から信号処理により変換された低周波音の信号を腰当クッションに内蔵されたトランデューサに伝達し、トランデューサにより低周波音を発振する技術が開示されている。そして、特許文献1には、リラックス効果を得るために、リラックスする楽曲や、リラックスする振動パターンを用いるや、覚醒効果が得るために、覚醒に有効な楽曲や、覚醒に有効な振動パターンを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、リラックス、覚醒のどちらにも有効でない楽曲を用いて、リラックス効果や覚醒効果を得る方法は開示されていない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、リラックス効果も覚醒効果もほとんどない楽曲であっても、その楽曲に基づいた振動により楽曲の聴者の心身の状態に所望の効果を与えることを可能にすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、楽曲の再生中に振動発生装置を振動させるための振動信号を生成する振動信号生成装置であって、複数のモードから1つのモードを決定するモード決定部と、前記楽曲の音声信号のうちの、前記モード決定部により決定されたモードに応じた帯域の音声信号を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された音声信号に基づいた振動信号を生成する。
【0007】
請求項11に記載の発明は、楽曲の再生中に振動発生装置を振動させるための振動信号を生成するために、コンピュータにより実行される振動信号生成方法であって、複数のモードから1つのモードを決定するモード決定工程と、前記楽曲の音声信号のうちの、前記モード決定部により決定されたモードに応じた帯域の音声信号を抽出する抽出工程と、前記抽出部により抽出された音声信号に基づいた振動信号を生成する生成工程と、を有する。
【0008】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の振動信号生成方法を、コンピュータにより実行させる。
【0009】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の振動信号生成プログラムを記憶している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100における処理動作の一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る振動信号生成部130を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る振動信号生成部130における処理動作の一例を示す図である。
【
図5】リラックス効果を与えることが可能な振動の周波数帯域の一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例に係る振動信号出力部140を示す図である。
【
図7】本発明の一実施例に係る振動信号出力部140における処理動作の一例を示す図である。
【
図8】リラックス効果を与えることが可能な振動の音声に対する遅延時間の一例を示す図である。
【
図9】予め設定された第2の時間の再設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る振動信号生成装置は、楽曲の再生中に振動発生装置を振動させるための振動信号を生成する振動信号生成装置であって、複数のモードから1つのモードを決定するモード決定部と、前記楽曲の音声信号のうちの、前記モード決定部により決定されたモードに応じた帯域の音声信号を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された音声信号に基づいた振動信号を生成する生成部と、を有する。このため、本実施形態では、所望する効果に応じた帯域の振動を楽曲の聴者に与えることが可能である。結果、本実施形態では、リラックス効果も覚醒効果もほとんどない楽曲であっても、その楽曲に基づいた振動により楽曲の聴者の心身の状態に所望の効果を与えることが可能である。
【0012】
前記複数のモードは、リラックス効果を目的とする第1のモードを含み、前記抽出部は、前記決定されたモードが第1のモードであるならば、前記楽曲の音声信号のうちの、第1の帯域の音声信号を抽出し、前記第1の帯域の少なくとも一部は、他のモードに対する帯域よりも低い周波数であるようにしても良い。また、前記複数のモードは、覚醒効果を目的とする第2のモードをさらに含み、前記抽出部は、前記決定されたモードが第2のモードであるならば、前記楽曲の音声信号のうちの、第2の帯域の音声信号を抽出し、前記第2の帯域の少なくとも一部は、他のモードに対する帯域よりも高い周波数であるようにしても良い。また、前記第2の帯域の少なくとも一部は、前記第1の帯域よりも高い周波数であるようにしても良い。このようにすることで、所望する効果に応じた帯域の振動をユーザに与えることが可能になる。結果、本実施形態では、リラックス効果も覚醒効果もほとんどない楽曲であっても、その楽曲に基づいた振動により楽曲の聴者の心身の状態に所望の効果を与えることが可能である。
【0013】
前記振動発生装置は、ユーザが着座可能な座席に埋設されるようにしても良い。このようにすることで、ユーザが着座した状態で、ユーザの心身の状態に所望の効果を与えることが可能になる。
【0014】
また、前記振動発生装置は、前記座席に着座した前記ユーザの背中に対面する部分に埋設された第1の振動発生装置と、前記座席に着座した前記ユーザの腰に対面する部分に埋設された第2の振動発生装置と、を含み、前記振動信号は、前記第1の振動発生装置を振動させるための第1の振動信号と、前記第2の振動発生装置を振動させるための第2の振動信号と、を含み、前記第2の振動信号に対する前記第1の帯域は、前記第1の振動信号に対する前記第1の帯域よりも狭くしても良い。このようにすることで、身体の部位のそれぞれに適した振動を生成することが可能になり、より効果的に、ユーザにリラックス効果を与えることが可能になる。
【0015】
前記振動信号生成部は、前記決定されたモードが第1のモードであるならば、前記第1の振動発生装置が発生する振動の強度が前記第2の振動発生装置が発生する振動の強度よりも大きくなるように、前記第1の振動信号と前記第2の振動信号を生成するようしても良い。また、前記振動信号生成部は、前記決定されたモードが第2のモードであるならば、前記第2の振動発生装置が発生する振動の強度が前記第1の振動発生装置が発生する振動の強度よりも大きくなるように、前記第1の振動信号と前記第2の振動信号を生成するようにしても良い。このようにすることで、より効果的に、ユーザにリラックス効果や覚醒効果を与えることが可能になる。
【0016】
前記振動信号生成装置は、前記座席に着座するユーザの生体情報を取得する生体信号取得部をさらに有し、前記モード決定部は、前記取得された生体情報に基づいて前記モードを決定するようにしても良い。このようにすることで、ユーザの心身の状態に応じた効果をユーザに与えることが可能になる。
【0017】
また、本発明の一実施形態に係る振動信号生成方法は、楽曲の再生中に振動発生装置を振動させるための振動信号を生成するために、コンピュータにより実行される振動信号生成方法であって、複数のモードから1つのモードを決定するモード決定工程と、前記楽曲の音声信号のうちの、前記モード決定部により決定されたモードに応じた帯域の音声信号を抽出する抽出工程と、前記抽出部により抽出された音声信号に基づいた振動信号を生成する生成工程と、を有する。このため、本実施形態では、所望する効果に応じた帯域の振動を楽曲の聴者に与えることが可能である。結果、本実施形態では、リラックス効果も覚醒効果もほとんどない楽曲であっても、その楽曲に基づいた振動により楽曲の聴者の心身の状態に所望の効果を与えることが可能である。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る振動信号生成プログラムは、上記の振動信号生成方法を、コンピュータに実行させる。このため、本実施形態では、コンピュータにより、リラックス効果も覚醒効果もほとんどない楽曲であっても、その楽曲に基づいた振動により楽曲の聴者の心身の状態に所望の効果を与えることが可能である。
【0019】
また、本発明の一実施形態に係るコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、上記の振動信号生成プログラムを記憶している。このため、本実施形態では、上記の振動信号生成プログラムを、機器に組み込む以外にも単体で流通することが可能になり、バージョンアップ等を容易に行うことが可能になる。
【実施例0020】
<音声信号・振動信号出力装置100>
図1は、本発明の一実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100を示す図である。本実施例に係る音声・振動信号出力装置100は、楽曲の音声信号をスピーカ200に出力するのに加え、楽曲の音声信号に基づいて生成された振動信号を振動発生装置300に出力をし、楽曲の聴者(ユーザ)に振動も与えることで、ユーザの心身の状態を所望の効果を与える。
【0021】
本実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100は、楽曲の音声信号を出力する音声信号出力部110と、心身の状態変化に関する複数のモードから1つのモードを決定するモード決定部120と、楽曲の音声信号から振動信号を生成する振動信号生成部130と、振動信号を出力する振動信号出力部140と、を有する。
【0022】
音声信号出力部110は、記憶装置や、CD(Compct Disc)などの記憶媒体、クラウドなどに記憶された楽曲のデータを取得し、この取得したデータから楽曲の音声信号を生成し、生成された音声信号を振動信号生成部130、スピーカ200に出力する。
【0023】
モード決定部120は、心身の状態変化に関する複数のモードから1つのモードを決定する。モード決定部120は、例えば、ユーザの入力に基づいてモードの決定をするようにすると良い。このとき、例えば、音声信号・振動信号出力装置100は、ユーザからの入力を受ける手段を有するようにすると良い。また、音声信号・振動信号出力装置100が楽曲の特徴を取得する手段を有し、モード決定部120は、この楽曲の特徴に基づいてモードの決定をするようにしても良い。また、音声信号・振動信号出力装置100が機械学習によりユーザがどのような効果を求めて楽曲の再生を行うのかを学習する手段をさらに有し、モード決定部120は、この学習結果に基づいて、モードの決定をするようにしても良い。
【0024】
振動信号生成部130は、音声信号出力部110から出力された音声信号を取得し、この音声信号から振動信号を生成する。振動信号生成部130は、例えば、音声信号のうちの低音域(例えば、20Hzから100Hz)の部分を抽出し、この抽出された部分に基づいて振動信号を生成する。このとき、振動信号は、音声信号のうちの低音域の周波数成分からなる信号である。振動信号生成部130は、例えば、音声信号のうちの一部を抽出するバンドパスフィルタやローパスフィルタを含むようにすると良い。また、振動信号生成部130は、下記で詳述するように、モード決定部120により決定されたモードに応じて、音声信号から振動信号を生成するようにしても良い。
【0025】
振動信号出力部140は、振動信号生成部130により生成された振動信号を、振動発生装置300に出力する。振動発生装置300は、入力された振動信号に基づいた振動を発生する装置であり、例えば、ユーザが着座可能な座席に埋設される。振動信号出力部130は、音声信号出力部110から出力される音声信号と同期するように、振動信号を出力するようにしても良いし、下記で詳述するように、モード決定部120により決定されたモードに応じた時間だけ、音声信号出力部110から出力される音声信号と同期した時間からずらして、振動信号を出力しても良い。
【0026】
このように、本実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100は、楽曲の音をスピーカ200から出力するとともに、楽曲の音声信号に基づいた振動を振動発生装置300により発生することを可能にする。結果、本実施例では、楽曲の聴者(ユーザ)に、楽曲に基づいた振動を与えることが可能である。
【0027】
図2は、本実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100における処理動作の一例を示す図である。音声信号出力部110が、楽曲の音声信号を、振動信号生成部130、スピーカ200に出力する(ステップS201)。振動信号生成部130が、音声信号から振動信号を生成し(ステップS202)、振動信号出力部140が、振動信号生成部130により生成された振動信号を、振動発生装置300に出力する(ステップS203)。
【0028】
<振動信号の周波数帯域と心身の状態変化>
図3は、本発明の一実施例に係る振動信号生成部130を示す図である。本実施例に係る振動信号生成部130は、抽出部131と、生成部132と、を有する。抽出部131は、モード決定部120により決定されたモードに応じた帯域の音声信号を抽出し、生成部132は、抽出部131により抽出された音声信号に基づいた振動信号を生成する。
【0029】
発明者は、リラックス効果がある楽曲をユーザに聴かせるとともに、この楽曲の低音域うちの周波数が低い方の帯域の振動をユーザに与えたときに、ユーザの副交感神経の働きがより活発になること、つまり、ユーザがよりリラックスすることを見いだした。また、発明者は、覚醒効果がある楽曲をユーザに聴かせるとともに、この楽曲の低音域のうちの周波数が高い方の帯域の振動をユーザに与えたときに、ユーザの交感神経の働きがより活発になること、つまり、ユーザがより覚醒することを見いだした。
【0030】
さらに、発明者は、リラックス効果も覚醒効果もほとんどない楽曲(中間楽曲)であっても、この楽曲をユーザに聴かせるとともに、この楽曲の低音域のうちの周波数が低い方の帯域の振動をユーザに与えたときに、ユーザの副交感神経の働きが活発になること、つまり、ユーザがリラックスすることを見いだした。また、発明者は、中間楽曲をユーザに聴かせるとともに、この楽曲の低音域のうちの周波数が高い方の帯域の振動をユーザに与えたときに、ユーザの交感神経の働きが活発になること、つまり、ユーザが覚醒することを見いだした。
【0031】
そこで、本実施例では、複数のモードは、ユーザをリラックスさせることを目的とする癒しモード(第1のモード)と、ユーザを覚醒させることを目的とする覚醒モード(第2のモード)と、を含む。
【0032】
そして、抽出部131は、モード決定部120により決定されたモードが癒しモードであるならば、楽曲の音声信号のうちの、第1の帯域の音声信号を抽出し、モード決定部120により決定されたモードが覚醒モードであるならば、楽曲の音声信号のうちの、第2の帯域の音声信号を抽出する。このとき、第1の帯域の少なくとも一部は、他のモードに対する帯域よりも低い周波数であり、第2の帯域の少なくとも一部は、他のモードに対する帯域よりも高い周波数である。特に、第1の帯域は、第2の帯域よりも低い周波数を含む帯域である。このとき、第1の帯域と第2の帯域は、重なる部分があっても良いし、重なる部分がなくても良い。
【0033】
複数のモードは、癒しモード、覚醒モード以外のモードを含んでいても良い。例えば、複数のモードは、リラックス効果も覚醒効果も目的としない第3のモードを含むようにしても良い。このとき、例えば、抽出部131は、モード決定部120により決定されたモードが第3のモードであるならば、楽曲の音声信号のうちの、第1の帯域よりも高い周波数を含み、第2の帯域よりも低い周波数を含む第3の帯域の音声信号を抽出するようにすると良い。
【0034】
また、音声信号・振動信号出力装置100は、ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部150をさらに有するようにしても良い。そして、モード決定部120は、この生体情報取得部150により取得された生体情報に基づいて、モードを決定するようにしても良い。
【0035】
生体情報取得部150は、例えば、ユーザの心拍に関する情報を、ユーザの生体情報として取得するようにすると良い。ユーザの心拍に関する情報は、ユーザの心拍数や、ユーザの心拍変動に関する情報(例えば、心拍変動のLF(Low Frequency)や、HF(High Frequency)、LFとHFの比であるLF/HF)を含む。心拍数や心拍変動に関する情報から、心身の状態を知ることが可能である。例えば、リラックスをしているときは、心拍数は低く、覚醒しているときは、心拍数は高い。そこで、例えば、モード決定部120は、ユーザがリラックスしていることを生体情報取得部150により取得された生体情報が示しているときは、ユーザを覚醒させることを目的して、モードを覚醒モードに決定するようにし、ユーザが覚醒していることを生体情報取得部150により取得された生体情報が示しているときは、ユーザをリラックスさせることを目的して、モードを癒しモードに決定するようにすると良い。このようにすることで、ユーザの心身の状態に応じた効果をユーザに与えることが可能になる。
【0036】
図4は、本実施例に係る振動信号生成部130における処理動作の一例を示す図である。
図4に示した処理動作は、例えば、
図2に示した処理動作のステップS202で実行される。
図4に示した処理動作は、複数のモードが癒しモードと覚醒モードのみを含んでいる場合の処理動作である。
【0037】
モード決定部120により決定されたモードが癒しモードであるならば(ステップS401、癒しモード)、抽出部131は、第1の帯域の音声信号を抽出し、生成部132は、この抽出された第1の帯域の音声信号に基づいた振動信号を生成する(ステップS402)。モード決定部120により決定されたモードが覚醒モードであるならば(ステップS401、覚醒モード)、抽出部131は、第2の帯域の音声信号を抽出し、生成部132は、この抽出された第2の帯域の音声信号に基づいた振動信号を生成する(ステップS403)。
【0038】
<振動を与える身体の部位ごとの振動信号の生成>
発明者は、身体の部位によって、所望の効果を与えることが可能な振動が異なることを見いだした。特に、ユーザにリラックス効果を与えることが可能な振動の周波数帯域の幅が、背中や尻に振動を与える場合と、腰やふくらはぎに振動を与える場合とでは異なる。
図5は、リラックス効果を与えることが可能な振動の周波数帯域の一例を示す図である。
図5に示すように、腰やふくらはぎの場合の方が、背中や尻の場合に比べ、リラックス効果を与えることが可能な振動の周波数帯域が狭い。
【0039】
そこで、本発明の一実施例において、振動発生装置300は、ユーザの身体のうちの複数の部位に振動を与えるために、複数の振動発生装置を含み、例えば、ユーザが着座可能な座席の複数の部分に埋設されている。そして、本実施例において、振動信号生成部130により生成される振動信号は、複数の振動発生装置を独立して振動させるために、複数の振動信号を含む。
【0040】
例えば、振動発生装置300は、ユーザの背中に振動を与える第1の振動発生装置310と、ユーザの腰に振動を与える第2の振動発生装置320と、ユーザの尻に振動を与える第3の振動発生装置330と、ユーザのふくらはぎに振動を与える第4の振動発生装置340と、を含む。例えば、第1の振動発生装置310は、座席に着座したユーザの背中に対面する部分に埋設され、第2の振動発生装置320は、座席に着座したユーザの腰に対面する部分に埋設され、第3の振動発生装置330は、座席に着座したユーザの尻に対面する部分に埋設され、第4の振動発生装置340は、座席に着座したユーザのふくらはぎに対面する部分に埋設される。
【0041】
そして、例えば、振動信号生成部130により生成される振動信号は、第1の振動発生装置310を振動させるための第1の振動信号と、第2の振動発生装置320を振動させるための第2の振動信号と、第3の振動発生装置330を振動させるための第3の振動信号と、第4の振動発生装置340を振動させるための第4の振動信号と、を含む。
【0042】
このとき、例えば、第2の振動信号、第4の振動信号の周波数分布の幅は、第1の振動信号、第3の振動信号の周波数分布の幅より狭くなるようにすると良い。つまり、第2の振動信号、第4の振動信号に対する第1の帯域は、第1の振動信号、第3の振動信号に対する第1の帯域を狭くなるようにすると良い。このようにすることで、身体の部位のそれぞれに適した振動を生成することが可能になり、より効果的に、ユーザにリラックス効果を与えることが可能になる。
【0043】
<振動信号の出力タイミングと心身の状態変化>
図6は、本発明の一実施例に係る振動信号出力部140を示す図である。上述したように、振動信号は、楽曲の音声信号の一部の帯域を抽出した信号である。このため、信号を抽出した後、音声信号にも振動信号にも遅延処理を行わなければ、音声信号と振動信号は同期した状態で出力される。しかしながら、発明者は、リラックス効果がある楽曲をユーザに聴かせるとともに、この楽曲に基づいた振動を楽曲と同期させず、楽曲よりも遅れたタイミングでユーザに与えたときに、ユーザの副交感神経の働きがより活発になること、つまり、ユーザがよりリラックスすることを見いだした。また、発明者は、覚醒効果がある楽曲をユーザに聴かせるとともに、この楽曲に基づいた振動を楽曲と同期させず、楽曲よりも進んだタイミングでユーザに与えたときに、ユーザの交感神経の働きがより活発になること、つまり、ユーザがより覚醒することを見いだした。
【0044】
さらに、発明者は、中間楽曲をユーザに聴かせるとともに、この楽曲に基づいた振動を楽曲と同期させず、楽曲よりも遅れたタイミングでユーザに与えたときに、ユーザの副交感神経の働きが活発になること、つまり、ユーザがリラックスすることを見いだした。また、発明者は、中間楽曲をユーザに聴かせるとともに、この楽曲に基づいた振動を楽曲と同期させず、楽曲よりも進んだタイミングでユーザに与えたときに、ユーザの交感神経の働きが活発になること、つまり、ユーザが覚醒することを見いだした。
【0045】
そこで、本実施例に係る振動信号出力部140は、出力タイミング調整部141を有する。出力タイミング調整部141は、振動信号を、楽曲と同期した時間から、モード決定部120により決定されたモードに応じた所定の時間だけずらす。結果、本実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100は、音声信号と振動信号を所定の時間だけずらして振動発生装置300に出力する。
【0046】
例えば、音声信号・振動信号出力装置100は、モード決定部120により決定されたモードが癒しモードであるならば、振動信号を楽曲の音声信号と同期した時間よりも第1の時間だけ遅れて出力し、モード決定部120により決定されたモードが覚醒モードであるならば、振動信号を楽曲の音声信号と同期した時間よりも第2の時間だけ早くなるように出力する。
【0047】
このとき、例えば、出力タイミング調整部141は、モード決定部120により決定されたモードが癒しモードであるならば、振動信号を楽曲の音声信号より第1の時間だけ遅れるようにずらし、モード決定部120により決定されたモードが覚醒モードであるならば、音声信号を楽曲の振動信号より第2の時間だけ遅れるようにずらすようにすると良い。
【0048】
楽曲のテンポ、つまり、楽曲の拍の長さとの関係で、第1の時間、第2の時間の値が大きいとき、音声信号と振動信号がずれ過ぎとなり、ユーザが不快に感じることがある。そこで、本発明の一実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100は、楽曲の拍の長さや単位時間あたりの拍の数(例えば、BPM(Beat Per Minute))などの楽曲のテンポに関する情報を取得するテンポ情報取得部160をさらに有する。そして、本実施例では、第1の時間、第2の時間は、このテンポに関する情報に基づいた閾値よりも小さくなるように決定される。
【0049】
一般に、テンポが速い楽曲は覚醒効果があり、覚醒効果を得たいときには、ユーザは、テンポが速い曲を聴く。しかしながら、音声信号と振動信号のずれである第2の時間の値が、拍の長さより一桁小さい値くらいまで大きくなると、ユーザが振動を不快に感じる。そこで、閾値としては、例えば、拍の長さより一桁小さい値にすると良い。このとき、閾値は、楽曲のテンポが速くなるにつれ、小さくなるようにすると良い。
【0050】
図7は、本実施例に係る振動信号出力部140における処理動作の一例を示す図である。
図7に示した処理動作は、例えば、
図2に示した処理動作のステップS203で実行される。
図7に示した処理動作は、複数のモードが癒しモードと覚醒モードのみを含んでいる場合の処理動作である。
【0051】
モード決定部120により決定されたモードが癒しモードであるならば(ステップS701、癒しモード)、音声信号・振動信号出力装置100は、振動信号を楽曲の音声信号と同期した時間よりも第1の時間だけ遅れて出力する(ステップS702)。モード決定部120により決定されたモードが覚醒モードであるならば(ステップS701、覚醒モード)、音声信号・振動信号出力装置100は、振動信号を楽曲の音声信号と同期した時間よりも第2の時間だけ早く出力する(ステップS703)。
【0052】
<振動を与える身体の部位ごとの振動の出力タイミング>
発明者は、身体の部位によって、所望の効果を与えることが可能な振動が異なることを見いだした。特に、ユーザにリラックス効果を与えることが可能な振動の音声に対する遅延時間(つまり、第1の時間)は、背中に振動を与える場合と、尻に振動を与える場合とでは異なる。
図8は、リラックス効果を与えることが可能な振動の音声に対する遅延時間の一例を示す図である。
図8に示すように、背中の場合の方が、尻の場合に比べ、リラックス効果を与えることが可能な振動の音声に対する遅延時間が短い。
【0053】
そこで、本発明の一実施例に係る音声信号・振動信号出力装置100は、第1の振動信号(ユーザの背中に振動を与える第1の振動信号を振動させるための振動信号)は、第3の振動信号(ユーザの尻に振動を与える第3の振動信号を振動させるための振動信号)よりも遅延させる。つまり、本実施例では、音声信号と振動信号のずれである第1の時間は、第1の振動信号の方が第3の振動信号より短い。このようにすることで、身体の部位のそれぞれに適した振動を生成することが可能になり、より効果的に、ユーザにリラックス効果を与えることが可能になる。
【0054】
同様に、第2の時間も振動信号ごとに変化させるようにしても良い。例えば、音声信号と振動信号のずれである第1の時間、第2の時間を、振動信号ごとに予め設定するようにしても良い。
【0055】
上述したように、楽曲のテンポが速くなると、拍の長さが、音声信号と振動信号とのずれ(第1の時間、第2の時間)に近くになり、ユーザが振動を不快に感じるため、第1の時間、第2の時間は、このテンポに関する情報に基づいた閾値よりも小さくなるように決定されるようにするのが良い。
【0056】
しかしながら、
図9に示すように、楽曲のテンポが速くなるにつれて(
図9では、BPMが大きくなるにつれて)閾値が小さくなる場合、第2の時間が振動信号ごとに予め設定されているならば、楽曲のテンポがある速度以上になると、第2の時間が、閾値より長くなってしまうことがある。このような場合は、第2の時間の値を、閾値よりも小さくなるように再設定すると良い。
【0057】
<振動を与える身体の部位ごとの振動強度>
発明者は、身体の部位によって、振動の効果が異なることを見いだした。特に、背中に与える振動は、リラックス効果をより寄与し、腰に与える振動は、覚醒効果により寄与する。
【0058】
そこで、本発明の一実施例に係る振動信号出力部140は、振動強度調整部142を有する。振動強度調整部142は、モード決定部120により決定されたモードが癒しモードであるならば、第1の振動発生装置(ユーザの背中に振動を与える振動発生装置)が発生する振動の強度が第2の振動発生装置(ユーザの腰に振動を与える振動発生装置)が発生する振動の強度よりも大きくなり、モード決定部120により決定されたモードが覚醒モードであるならば、第2の振動発生装置が発生する振動の強度が第1の振動発生装置が発生する振動の強度よりも大きくなるように、第1の振動信号(第1の振動発生装置を振動させるための振動信号)と第2の振動信号(第2の振動発生装置を振動させるための振動信号)を調整する。このため、本実施例では、第1の振動信号、第2の振動信号が同じ楽曲に基づいた振動信号であったとしても、癒しモードでは、背中に与える振動が腰に与える振動より大きくなり、覚醒モードでは、腰に与える振動が背中に与える振動より大きくなる。結果、本実施例では、より効果的に、ユーザにリラックス効果や覚醒効果を与えることが可能になる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。