(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153946
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】心臓ポンプ、および心臓ポンプのベアリング装置において、フラッシング流体流を案内するための中間空間を流体でフラッシングする方法
(51)【国際特許分類】
A61M 60/82 20210101AFI20241022BHJP
A61M 60/17 20210101ALI20241022BHJP
A61M 60/216 20210101ALI20241022BHJP
A61M 60/31 20210101ALI20241022BHJP
【FI】
A61M60/82
A61M60/17
A61M60/216
A61M60/31
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135840
(22)【出願日】2024-08-16
(62)【分割の表示】P 2021506417の分割
【原出願日】2019-08-07
(31)【優先権主張番号】102018213150.3
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】520469457
【氏名又は名称】カルディオン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KARDION GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ストッツ, インゴ
(72)【発明者】
【氏名】アイベルガー, ファビアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、心臓補助システム用ベアリング装置に関する。
【解決手段】ベアリング装置は、スタンドユニットおよびインペラを含む。スタンドユニットは、回転し得るようにインペラを支持するよう設計される。インペラは、ポンプ流体流を運搬するために、心臓補助システムの動作中に回転するように設計される。インペラは、ベアリング装置の組み立てられた状態において、スタンドユニットの少なくとも一つのサブセクションを取り囲むように設計され、フラッシング流体流を案内するための中間空間がサブセクションとインペラとの間に提供される。少なくとも一つのフラッシング排出口は、インペラ内に形成される。フラッシング排出口は、心臓補助システムが動作している時に、遠心力によってフラッシング流体流を中間空間から排出するように設計される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンドユニット(105)、インペラ(110)、および流体のフラッシング流体流
(130)を案内するための前記インペラ(110)と前記スタンドユニット(105)
との間に形成された中間空間(125)を含む心臓補助システム(200)用ベアリング
装置(100)であって、
前記スタンドユニット(105)が、前記インペラ(110)内に突出し、かつ回転軸
(112)の周りを回転し得るように前記インペラ(110)を支持するように構成され
たサブセクション(120)を含み、
前記インペラ(110)が、前記心臓補助システム(200)が動作中に、前記回転軸
(112)と整列した長手方向軸(114)の周りを回転して、前記流体のポンプ流体流
(115)を流れ方向に運搬するように構成され、
前記インペラ(110)が、前記フラッシング流体流(130)を前記中間空間(12
5)から排出するための少なくとも一つのフラッシング排出口(135)を含み、
前記インペラ(110)内の前記少なくとも一つのフラッシング排出口(135)が、
前記少なくとも一つのフラッシング排出口(135)内の前記流体に作用する遠心力のた
めに、前記心臓補助システムの動作中の、前記回転軸(112)の周りの前記インペラの
回転により、前記流体が前記中間空間(125)から前記フラッシング排出口(135)
を通って、少なくとも一つの排出開口部(140)に排出され、それによって前記フラッ
シング流体流が前記中間空間(125)から排出されることを特徴とする、ベアリング装
置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンドユニット、インペラ、およびインペラとスタンドユニットとの間に形成された、流体のフラッシング流体流を案内するための中間空間を含む心臓補助システムのためのベアリング装置に関し、スタンドユニットは、インペラ内に突出し、かつ回転軸の周りで回転し得るようにインペラを支持するように構成されたサブセクションを含み、インペラは、心臓補助システムが動作中に回転軸と整列した長手方向軸の周りを回転して、流体のポンプ流体流を流れ方向に搬送するように構成され、インペラは、フラッシング流体流を中間空間内に導入するための少なくとも一つのフラッシング入口、およびフラッシング流体流を中間空間から排出するための少なくとも一つのフラッシング排出口を含む。
【0002】
本発明はさらに、ベアリング装置を有する心臓補助システム、および心臓補助システム用ベアリング装置内の流体と共にフラッシング流体流を案内するための中間空間をフラッシングするための方法、および心臓補助システム用ベアリング装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心不全を有する患者の心血管補助、心臓ポンプ機能の一部または全部を引き継ぐシステムに使用される、これらのシステムは、略して心臓補助システムまたはVAD(補助人工心臓)とも称され、患者における短期的な心臓補助のための一時的なシステムおよび長期的な使用のための永久的システムに分類され得る。このようなシステムの一つの構成要素は、通常、血液ポンプ、典型的には遠心ポンプ(ターボポンプ)であり、これは、内蔵された電気モーターによって駆動され、ローターによって必要な血流を産生する。ポンプは、異なる位置に移植され得る。ポンプは、例えば、侵襲性胸骨切開術によって外側から心臓に縫合され得、またはカテーテルによって低侵襲的様式で大動脈または心室内に配置され得る。後者の場合、ポンプの最大許容外径は、一般に10mmに制限され、そのため、軸方向に流れを受容するローターを有する軸流ポンプの使用が望ましい。プロセスにおいて、輸送される血液は、大動脈に戻るために、円筒形ポンプハウジングの外周に配置された排出開口部を通して排出される。
【0004】
欧州特許出願公開第03127562号明細書は、心臓補助システム用の血液ポンプを開示しており、この血液ポンプは、固定支持面を有するスライドベアリング内のポンプハウジング内に回転可能に取り付けられるインペラを有するポンプハウジングを含み、その支持面はインペラのブレード上に当接するように構成される。支持面がその上に形成されるインペラのブレードの複雑な構造は、血液が血液ポンプ内に送り込まれるときに、スライドベアリングがフラッシュされ、熱が除去される効果を有する。
【0005】
本発明の目的は、流体によってフラッシングするために追加のフラッシングポンプを備えた複雑なブレード構造および/またはホースを必要としない心臓補助システム用ベアリング装置を提供すること、および心臓補助システムの動作中に十分な熱がベアリング装置から放散され得ることを保証する心臓補助システム用ベアリング装置をフラッシングする方法を明示することである。
【0006】
この目的は、請求項1および請求項2に明示されたベアリング装置、および請求項20に明示された方法によって達成される。本発明の有利な実施形態は、特許請求の範囲の従属項に記載される。
【発明の概要】
【0007】
心臓補助システムのための本発明によるベアリング装置は、スタンドユニットおよびインペラを含み、流体のフラッシング流体流を案内するためのインペラとスタンドユニットとの間に形成された中間空間を含む。スタンドユニットは、インペラ内に突出し、回転軸の周りを回転し得るようにインペラを支持するよう構成されたサブセクションを含む。インペラは、心臓補助システムが動作中に回転軸と整列した長手方向軸を中心に回転して、流体のポンプ流体流を流れ方向に搬送するように構成され、インペラは、中間空間からフラッシング流体流を排出するための少なくとも一つのフラッシング排出口を備える。インペラの少なくとも一つのフラッシング排出口は、少なくとも一つのフラッシング排出口内の流体に作用する遠心力のために、心臓補助システムの動作中の回転軸の周りのインペラの回転により、流体がフラッシング排出口を通して中間空間から少なくとも一つの排出開口部に排出され、それによってフラッシング流体流が中間空間から排出されるように構成される。この目的のために、インペラ内の少なくとも一つのフラッシング排出口は、フラッシング流体流を排出するための排出開口部を含み得、これは開口部断面を有し、この断面では、少なくとも一つの位置において、開口部断面法線ベクトルが、回転軸から反対を向いた、回転軸に対して放射状である方向成分を有する。インペラの少なくとも一つのフラッシング排出口は、少なくとも一つのフラッシング排出口内の流体に作用する遠心力のために、心臓補助システムの動作中の回転軸の周りのインペラの回転により、流体がフラッシング排出口を通して中間空間から少なくとも一つの排出開口部に排出され、それによってフラッシング流体流が中間空間から排出されるように構成される。
【0008】
複数のフラッシング排出口を、インペラ内に形成し得る。少なくとも一つのフラッシング排出口は、好ましくは、インペラの長手方向軸と交差する軸に沿って延在するか、または当該長手方向軸に対してある角度で配置される。少なくとも一つのフラッシング排出口は、特に管として構成され得る。フラッシング排出口の少なくとも一つの排出開口部は、例えば、インペラ内に突出するスタンドユニットのサブセクションを囲む、インペラのジャケットセクション内に配置され得る。フラッシング排出口の少なくとも一つの排出開口部は、特に、インペラのプロペラ領域と、インペラ内に突出するスタンドユニットのサブセクションを囲む、インペラのジャケットセクションとの間の移行セクションに配置され得る。
【0009】
また、インペラは複数のフラッシング排出口を含むことも可能であり、フラッシング排出口の少なくとも一つの排出開口部は、インペラのプロペラ領域と、インペラ内に突出するスタンドユニットのサブセクションを囲む、インペラのジャケットセクションとの間の移行セクションに少なくとも部分的に配置され得る。
【0010】
インペラ内のフラッシング排出口の数は、インペラのブレード数の倍数に対応し得ることに留意されたい。また、ベアリング装置は、スライドベアリング装置の組み立てられた状態で、中間空間内に開口するフラッシング入口を有し得ることも留意されたい。フラッシング入口は、例えば、スタンドユニットの基部と、インペラ内に突出するスタンドユニットのサブセクションを囲む、インペラのジャケットセクションとの間の間隙として構成され得る。
【0011】
フラッシング入口はまた、インペラの長手方向軸と交差する方向に延在するか、または当該長手方向軸に対してある角度で延在する少なくとも一つの入口チャネルとして構成され得ることに留意されたい。ベアリング装置はまた、複数の入口チャネルを有するフラッシング入口を含み得る。
【0012】
フラッシング入口は、特に、ポンプ流体流の流れ方向にフラッシング排出口に対して下流に配置され得る。
【0013】
インペラは、流体を供給するための入口ホースが接続されているハウジングセクションを含むハウジング内に配置され得る。
【0014】
ベアリング装置のハウジングセクションは、ポンプ流体流を排出するための少なくとも一つの排出開口部を有することが好ましい。ハウジングセクションは、入口ホースを接続するための接続セクションに接続するための架橋を備え得、架橋は、ハウジングセクションの少なくとも一つの排出開口部を区切る。
【0015】
本発明によるベアリング装置は、回転構成要素を支持するためのスライドベアリングを備えるスライドベアリング装置として、または回転構成要素が磁気的に支持される磁気ベアリング装置として構成され得る。
【0016】
本発明によるスライドベアリング装置は、スタンドユニットおよびインペラを含む。スタンドユニットは、インペラが回転できるようにそれを支持するように設計される。インペラは、ポンプ流体流を運搬するために、心臓補助システムの動作中に回転するように設計される。インペラは、スライドベアリング装置の組み立てられた状態において、スタンドユニットの少なくとも一つのサブセクションを囲むように構成される。フラッシング流体流を案内するための中間空間が、サブセクションとインペラとの間に提供される。少なくとも一つのフラッシング排出口は、心臓補助システムが動作している時に、遠心力によってフラッシング流体流を中間空間から排出するように、インペラ内に構成される。
【0017】
心臓補助システムのための本発明によるスライドベアリング装置は、特に、遠心力を利用することによってスライドベアリング装置をフラッシュすることを可能にする。この目的のために、スライドベアリング装置のインペラは、回転フラッシング排出口にて遠心力を、スライドベアリング装置をフラッシングするための駆動力として使用するために、インペラと共に回転するフラッシング排出口を含み得る。スライドベアリング装置をフラッシングすることは、心臓補助システムの動作中、熱を放散させ、血栓形成を防ぐのに有益である。
【0018】
遠心力を利用するフラッシングは、その結果、フラッシング速度が心臓補助システムの回転速度のみに実質的に依存し、フラッシング入口とフラッシング排出口との間の静圧差には依存しないため、フラッシング速度が血流中の圧力の喪失による影響を著しく受けにくく、より頑強に設定し得るため、有利には、血栓形成のリスクを低減する。また、外部圧力差を、フラッシングシステムを介して課す必要もない。
【0019】
インペラのフラッシング排出口を介した遠心力の利用はさらに、スライドベアリング装置のコンパクト設計を可能にし、それは特に心臓補助システムとのスライドベアリング装置の併用に有利である。
【0020】
心臓補助システムは、例えば、左心室補助システム、右心室補助システム、または両室補助システムなどの心臓ポンプであり得る。スタンドユニットは、スライドベアリング装置の非回転構成要素であると理解され得る。インペラは、ローターなどの回転構成要素であり得る。スライドベアリング装置の組み立てられた状態において、インペラは、スタンドユニットの少なくとも一つのサブセクションを囲むことができ、それによって、スライドベアリング装置は、例えば、円筒形スライドベアリングとして構成され得る。心臓補助システムの移植状態において、インペラを血液中に位置付け得る。搬送されるポンプ流体流は、例えば、心臓補助システムによって送り出され、心臓補助システムによって生成された血流であり得る。組み立てられた状態において、間隙の形態の中間空間が、インペラとスタンドユニットのサブセクションとの間に出現し得る。フラッシング排出口は、ボアまたはインペラ内の別のタイプの貫通開口部として実現され得る。フラッシング排出口は、中間空間からインペラの一部分を通してフラッシング流体流を伝導し、フラッシング流体流を中間空間から排出するように構成され得る。また、インペラ内に二つ以上のフラッシング排出口を構成し得る。
【0021】
一実施形態によれば、フラッシング排出口は、特にインペラの回転軸に対応する、インペラの長手方向軸に対して傾斜し得る。これは、遠心力を利用してスライドベアリング装置のフラッシングを実施するのに有利である。フラッシング排出口は、インペラの長手方向軸に対して傾斜している長手方向延長軸を有し得る。フラッシング排出口の長手方向延長軸はまた、インペラの長手方向軸に対して直角に傾斜し得る。
【0022】
一実施形態によれば、フラッシング排出口は、排出開口部を有する管として構成され得る。したがって、フラッシング排出口は、有利なことに、例えば、インペラ内のボアとして、省コスト様式で実現され得、これはまた、スライドベアリング装置のコンパクト設計をも可能とする。
【0023】
一実施形態によれば、排出開口部は、スタンドユニットのサブセクションを囲むインペラのジャケットセクション、またはインペラのプロペラ領域と前述のサブセクションとの間の移行セクションに配置され得る。移行セクションは、例えば、プロペラの方向にジャケットセクションを狭めるように構成し得る。排出開口部はまた、代替的にプロペラ領域内に配置され得る。それによって有利にはスライドベアリング装置をフラッシングするためのフラッシング効果を設定し得る潜在的な遠心力は、排出開口部の位置付けを介して設定され得る。
【0024】
一実施形態によれば、インペラはまた、複数のフラッシング排出口を含み得る。フラッシング排出口の排出開口部は、移行セクションに少なくとも部分的に配置され得る。スライドベアリング装置の組み立てられた状態において、フラッシング排出口は、例えば、スタンドユニットに対して径方向外側に延在し得る。排出開口部は、移行セクションの周辺の周りに均等に離間して配置され得る。フラッシング排出口および排出開口部のこの位置付けは、中間空間の均一なフラッシングの点において、およびフラッシング排出口の可能な限り最大の断面を提供する点において有利である。
【0025】
一実施形態によれば、少なくとも一対のフラッシング排出口をインペラ内に構成し得る。少なくとも一対のフラッシング排出口は、インペラの長手方向軸に対して互いに対向して配置され得る。対向して配置される一対のフラッシング排出口の構成は、回転プロペラの不均衡を防止するために有利である。
【0026】
インペラ内のフラッシング排出口の数は、インペラのブレード数の倍数に対応し得る。フラッシングボアの形態のフラッシング排出口は、例えば、インペラのブレードとちょうど同じ周期で配置される。これにより、不均衡を防ぐことが可能となる。この場合、例えば、二つのブレードは、フラッシング排出口の数として2の倍数をもたらす。
【0027】
一実施形態によれば、スライドベアリング装置はまた、フラッシング流体流を導入するためのフラッシング入口を含み得る。スライドベアリング装置の組み立てられた状態において、フラッシング入口は中間空間内に開口し得る。作用する遠心力を使用して、フラッシング流体流は、フラッシング入口とフラッシング排出口との間の静圧差がなくても、中間空間、ひいてはスライドベアリング装置のベアリングをフラッシングし得る。
【0028】
一実施形態によれば、フラッシング入口はまた、スタンドユニットの基部と、スタンドユニットのサブセクションを囲むインペラのジャケットセクションとの間の間隙として構成され得る。追加的または代替的に、フラッシング入口は、インペラの入口チャネルとして構成され得る。入口チャネルは、インペラの回転軸に対して傾斜し得る。フラッシング排出口はさらに、少なくとも一つの傾斜入口チャネルを有する複数の入口チャネルによってインペラ内に形成され得る。したがって、フラッシング入口の少なくとも一つの面は静止し、かつ一つの面が回転し得るように構成され得る。フラッシング流体流は、フラッシング入口の静止面、例えば、スタンドユニットの壁上に引き込まれ得る。フラッシング入口がインペラの入口チャネルとして構成される場合、フラッシング入口は、インペラの回転体内に少なくとも部分的に構成され得る。中間空間に部分的に囲まれたフラッシング流体流の一部は、フラッシング入口を通して導入され、フラッシング排出口を通して再び排出され、例えば、スタンドユニットから熱を吸収および放散し得る。遠心圧は、フラッシング入口が回転体、つまりインペラに位置しない、または部分的にのみ位置する場合、有利に増大する。
【0029】
フラッシング入口はさらに、ポンプ流体流の流方向に、フラッシング排出口に対して下流に配置され得る。スタンドユニットに沿って、インペラに沿ってフラッシング流体流を導入することによって、フラッシング入口とフラッシング排出口の圧力レベルが同じであっても、フラッシング排出口でのフラッシング流体流の回転のおかげで、有利には、スライド装置の一定のフラッシングを設定し得る。
【0030】
本発明はさらに、前述のスライドベアリング装置の一実施形態を有する心臓補助システムを提示する。心臓補助システムは、例えば、左心室心臓補助ポンプとし得る。低侵襲的な経大腿または経大動脈挿入のために、例えば、心臓補助システムはさらに、細長い円筒形状を有し得る。
【0031】
スライドベアリング装置として、または磁気ベアリング装置として構成された心臓補助システム用ベアリング装置を製造する方法も提示される。方法は、
インペラが回転し得るようにこれを支持するように設計されたスタンドユニット、および心臓補助システムの動作中に回転してポンプ流体流を運搬するように構成されたインペラを提供する工程と、
インペラ内に少なくとも一つのフラッシング排出口を形成する工程であって、フラッシング排出口が、心臓補助システムが動作している時に、遠心力によってベアリング装置からフラッシング流体流を排出するように設計する、形成する工程と、
インペラおよびスタンドユニットを組み立て、ベアリング装置を作製する工程であって、スタンドユニットの少なくとも一つのサブセクションを、インペラによって囲まれ、フラッシング流体流を案内するための中間空間がサブセクションとインペラとの間に配置する、組み立てる工程とを含む。
【0032】
前述のベアリング装置の実施形態は有利なことに、本方法を実行することによって作製され得る。
【0033】
遠心力の作用によってフラッシングが機能する条件を以下に示す。
【0034】
フラッシングは、静圧差とは無関係である。遠心力は、スライドベアリング装置をフラッシングするために使用され、静圧差を生成するための外部ポンプまたは追加の形状または構造は必要ではない。これは、出口における、フラッシング排出口の排出開口部における動力学的回転エネルギーによる機械的エネルギーバランスが正であること、すなわち、出口における流れの機械的エネルギーが、入口における、フラッシング入口におけるものよりも大きいことが必要となる。これは、ベルヌーイの原理に従った公式を使用して、以下に例証される。
【数1】
vが回転速度であり、フラッシング入口が回転の影響を受けない場合、
【数2】
再構成すると、
【数3】
回転速度v=2πRn、かつ、nが毎秒回転数の速度であり、
【数4】
したがって、
静圧差<<2(πRn)2*密度
となる。
【0035】
水の場合、「遠心圧力」は、半径1cm、速度30,000回転/分の速度で約5バールの圧力差に相当する。したがって、記述されたアプローチは、静圧差がわずか約500mbar(10倍よりも「はるかに小さい」と解釈される)である場合、この数値的な例に対して効果的である。
【0036】
遠心力によるスライドベアリング装置のフラッシングは、回転軸に垂直な方向に外側を向いたシステム境界「入口」と「出口」を備える回転システムが必要である。フラッシング流体流のフラッシング経路は、回転体、インペラのジャケットセクション、およびそれに対して静止している本体、つまりスタンドユニットの間に延在する。ここに示す設計例によると、フラッシング流体流は、経路に沿って、すなわち、中間空間に沿ってフラッシング排出口まで移動する。フラッシング排出口の出口で、フラッシング流体流はフラッシング経路から流出する。断面全体にわたって遠心力を課すために、フラッシング排出口の出口境界は、回転体の内側、ジャケットセクションの内側に位置する。例えば、円筒形スライドベアリング装置の端面には当てはまらないが、例えば、半径方向、すなわち、ジャケットセクションがドリル穿孔される場合など、断面法線ベクトルは、半径方向に構成要素を有するべきである。
【0037】
本発明はまた、上述したようなベアリング装置がある心臓補助システムにも及ぶ。
【0038】
心臓補助システム用ベアリング装置内の流体によって、フラッシュ流体流を案内するための中間空間をフラッシングするための本発明による方法において、中間空間は、フラッシング流体流を導入するための少なくとも一つのフラッシング入口およびフラッシング流体流を排出するための少なくとも一つのフラッシング排出口を含み、中間空間を、ポンプ流体流を運搬するための回転軸の周りで回転し得るインペラと、インペラを回転可能に支持するスタンドユニットとの間に構成し、その中で、流体を少なくとも一つのフラッシング入口を通して中間空間内に導入し、流体を、回転軸に対して少なくとも一つのフラッシング出口内の前述の流体に作用する遠心力によって、中間空間からフラッシング出口を通って少なくとも一つの排出開口部へと排出する。
【0039】
本発明の有利な設計例は、概略図を参照して、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、インペラを備え、セクションとしてスタンドユニットを備える心臓補助システムのための第一のスライドベアリング装置である。
【
図2】
図2は、第一のスライドベアリング装置を含む心臓補助システムの一部分である。
【
図3】
図3は、第一のスライドベアリング装置の側面図である。
【
図4】
図4は、
図3の矢印IVの方向のインペラの背面図である。
【
図5】
図5は、心臓補助システムのためのスライドベアリング装置におけるインペラの別の可能な設計を示す。
【
図6】
図6は、フラッシング排出口の異なる構成を有する心臓補助システム用の異なるスライドベアリング装置における、様々なフラッシング流体体積を有する中間空間である。
【
図7】
図7は、インペラを備え、スタンドユニットを備える、さらなるスライドベアリング装置である。
【
図8】
図8は、インペラを備え、セクションとしてスタンドユニットを備える、さらなるスライドベアリング装置である。
【
図9】
図9は、断面図における心臓補助システムのための、さらなるスライドベアリング装置の詳細を示す。
【
図10】
図10は、平面図における
図9の心臓補助システムのための、さらなるスライドベアリング装置の詳細を示す。
【
図11】
図11は、断面図における心臓補助システムのための、さらなるスライドベアリング装置の詳細である。
【
図12】
図12は、スライドベアリング装置を製造するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の好ましい設計例の以下の説明では、同一の参照符号が、様々な図に示される要素に対して使用されるが、これは同様かまたは類似の効果を有し、それによってこれらの要素の繰り返しの記載は省略される。
【0042】
図1は、一設計例による、スライドベアリング装置として構成された心臓補助システム用ベアリング装置100の概略図を示す。ベアリング装置100は、スタンドユニット105およびインペラ110を含む。スタンドユニット105は、インペラ110の長手方向軸114と同軸の回転軸112の周りを回転し得るように、インペラ110を支持するように構成される。インペラ110は、心臓補助システムがポンプ流体流115を搬送するために動作している時、回転軸112を中心に回転するように設計される。ここに示すスライドベアリング装置の組み立て状態において、インペラ110は、スタンドユニット105の少なくとも一つのサブセクション120を囲む。フラッシング流体流130を案内するための中間空間125が、サブセクション120とインペラ110との間に提供される。少なくとも一つのフラッシング排出口135は、インペラ110内に形成される。フラッシング排出口135は、心臓補助システムが動作している時に、遠心力によってフラッシング流体流130を中間空間125から排出するように設計される。
【0043】
フラッシング排出口135は、フラッシング流体流130を排出するための排出開口部140を含み、この排出開口部は開口部断面132を有し、この断面の少なくとも一つの位置において、開口部断面法線ベクトル134は、回転軸112から反対側を向いた、かつ回転軸112に対して放射状である方向成分136を有する。
【0044】
ここに示す設計例によると、フラッシング排出口135は、回転軸112と同軸であるインペラ110の長手方向軸114に対して傾斜している。フラッシング排出口135は、軸137を備え、それに沿って、前述のフラッシング排出口135が延在し、したがって、これはフラッシング排出口135の長手方向延長軸であり、これは、インペラ110の長手方向軸114に対して傾斜し、それと共に鋭角αを形成する。この軸137はまた、インペラ110の長手方向軸114に対して傾斜し得ることに留意されたい。
【0045】
さらに、ここに示す設計例によれば、フラッシング排出口135は、排出開口部140を有する管として構成される。排出開口部140は、中間空間125から反対を向いた管の端に配置される。
【0046】
ここに示す設計例によれば、スライドベアリング装置100はまた、フラッシング流体流130を導入するためのフラッシング入口145も含む。ここに示すベアリング装置100の組み立てられた状態において、フラッシング入口145は中間空間125内に開口する。
【0047】
ここに示す設計例によると、フラッシング入口145は、スタンドユニット105の基部107とスタンドユニット105のサブセクション120を囲むインペラ110のジャケットセクション150との間の間隙として構成される。フラッシング入口はまた、原則として、インペラ110の入口チャネルとして構成され得ることに留意されたい。
【0048】
図1に示すスライドベアリング装置において、フラッシング入口145は、ここに示す設計例のように、ポンプ流体流115の流れ方向に、フラッシング排出口135に対して下流に配置される。
図1は、フラッシング入口145から中間空間125を通って排出開口部140を有するフラッシング排出口135まで延在する、ベアリング装置100をフラッシングするためのフラッシング経路を有するフラッシング流体流130を示す。
【0049】
図2は、左心室心臓補助ポンプ(LVAD心臓ポンプ)の形態のスライドベアリング装置100を備えた心臓補助システム200の一部分の斜視図を示す。
図3は、ベアリング装置100の側面図である。
【0050】
心臓補助システムにおけるベアリング装置100およびその機能は、以下により詳細に説明される。
【0051】
インペラ110は、磁気的に、または回転構成要素が流体上に位置付けられて熱を放散するか、または摩擦を低減するスライドベアリングによって支持された、心臓補助システム200のベアリング装置100内に回転構成要素を形成するローターである。インペラ110が心臓補助システムの動作中に血液中に直接位置付けられる場合、例えば、心臓補助システムの移植された状態における
図2に示す左心室心臓補助ポンプ(LVAD心臓ポンプ)の場合と同様に、ベアリング装置100をフラッシュして熱を放散し、血栓の形成(血液凝固)を防止することが有益である。スライドベアリング装置100の強力なフラッシングを可能にするために、一定の流れが必要である。スライドベアリング装置100をフラッシングすることにより、血栓形成を防止する。機械的エネルギーを流体力学的エネルギーに変換するポンプ設計(バッフルなど)を、この目的に使用し得る。
図1および
図2に示すスライドベアリング装置100では、フラッシング排出口135の形態のボアのみを使用して、インペラ110と共に回転するフラッシング排出口135上の遠心力を利用し得る。遠心力は、フラッシングの駆動力を表す。このような構造は、生産が安価である。
【0052】
複数のフラッシング排出口135はまた、以下の図に示すように、インペラ110上の異なる場所に代替的に提供され、遠心力を利用し得る。
【0053】
ここに示すベアリング装置100の設計例を使用して、フラッシング排出口135での遠心力の助けを借りてフラッシング流体流130を吸引することによって、導入を実現し得る。構造的に、これは、例えば、フラッシング排出口135としてボアを有することにより、フラッシング排出口135が回転構成要素、インペラ110によって囲まれるように、フラッシング排出口135を構成することによって達成され、一方でフラッシング入口145の形態の入口側は、例えば、一方の側のみが回転に供される。これは、壁セクションとしてスタンドユニット105の少なくとも一つのセクションとともに、フラッシング入口145を構成することによって達成される。この場合、統計的圧力差は、実質的にフラッシング流体流130のフラッシングの流れに影響を与えず、ベアリング装置100のフラッシング効果は、心臓補助システムのポンプの遠心力および回転速度によって実質的に決定される。ゆえに、ベアリング装置100のフラッシング効果は、マスフローの大きさまたは心臓補助システムを通るかその上の圧力蓄積のレベルなど、他の潜在的な影響変数から大部分で独立している。結果として、ベアリング装置100をフラッシュするための静圧差の必要はない。したがって、インペラ110の長手方向延長軸114に対して大きく変化する直径を有するラッパ形状のインペラ110におけるフラッシング排出口135の位置付けは、異なる方法で実現され得、それによって、インペラ110の長手方向延長のはるか上流のフラッシング排出口135の位置付けは省略され得る。ポンプホイールなどの複雑な構造、またはスライドベアリング装置100内またはその周りの圧力差の適用は、スライドベアリング装置100のフラッシングにも必要ない。ポンプ流からの独立性のため、ここに示すポンプ流体流115のポンプ流は、インペラ110が回転している限り、フラッシングを伴わずにベアリング装置100のフラッシングが可能である。
【0054】
ここで論じる設計例において、ベアリング装置100は、固定部品としてのスタンドユニット105とともに円筒形スライドベアリングを形成する、回転部品としてのインペラ110を備える。ベアリング装置100のフラッシング効果は、フラッシング排出口135での回転から生じる遠心力に基づく。これの前提条件は、ここに示すように、フラッシング入口145の少なくとも一つの面が静止していることであり、この場合、スタンドユニット105の形態の内面である。結果として、フラッシング入口145およびフラッシング排出口135の圧力レベルが同等または同一であっても、回転インペラ110またはフラッシング排出口135の流体体積に形成されたフラッシング排出口135の両側の回転によって、スライドベアリング装置100の一定のフラッシングが設定され得る。ここに示すベアリング装置100の設計例はまた、例えば、回転と静止面を組み合わせることにより、スタンドユニット105の固定されたベアリングの周りに配置された、ブロック155においてここに示された、部分的に囲まれた体積をフラッシングすることを可能にする。この理由は、フラッシング流体流130が、分子接着条件の結果として、インペラの回転面上で加速されるからである。フラッシング流体流130は、遠心力により、中間空間125の壁に沿ってより大きな直径に向かって加速され、その結果、フラッシング流体流130は、スタンドユニット105の壁の形態で中間空間125の静止面に引き込まれる。これにより、フラッシング流体流130の部分的に囲まれた流体がフラッシングされ、これにより、例えば、スタンドユニット105の固定されたベアリングでの熱が吸収および放散される。
【0055】
図2に示す心臓補助システム200は、ハウジングセクション205を備える。ベアリング装置100のインペラ110は、心臓補助システム200のハウジングセクション205内に位置する。心臓補助システム200において、インペラ110は、流体を供給する入口ホース210がその上に提供されるハウジングセクション205内に配置される。心臓補助システムのハウジングのハウジングセクション205には、ポンプ流体流115を排出するための排出開口部215がある。入口ホース210を接続するために、心臓補助システム200は、ハウジングセクション205から心臓補助システム200内のインペラ110の回転によって搬送される流体を排出するために二つの排出開口部215を区切る、ハウジングセクション205の架橋225に接続された接続セクション220を含む。
【0056】
心臓補助システム200のハウジングセクション205は、カテーテルによって大動脈などの血管に容易に配置するために、実質的に一定の外径を有する円筒形の細長い構造を有する。本明細書に示す細長い軸設計により、心臓補助システム200の経大腿移植が可能となる。したがって、スライドベアリング装置100は、心臓補助システム200の移植状態において回転ローター構成要素であるインペラ110が血液内に位置付けられるように、ハウジングセクション205の窓開口部に配置される。心臓補助システム200の軸設計により、インペラ110によって受容される流れは、インペラ110の長手方向軸114に対して軸方向であり、これは心臓補助システム200の長手方向軸に対応する。インペラ110のフラッシング排出口135は、インペラ110のプロペラ領域111に配置され、それによって、フラッシング排出口135は、インペラ110のドリル穴または貫通ボアまたは別のタイプの貫通孔によって実現される。
【0057】
図3は、スタンドユニット105およびインペラ110が組み立てられた状態にあるスライドベアリング装置100を示し、それによってスタンドユニット105は回転インペラ110と非回転の対照物を形成する。スタンドユニット105は、インペラ110の方向に狭まるセクションを有する。スタンドユニット105の狭まったセクションは、主にインペラ110によって囲まれる。スタンドユニット105は、インペラ110に接続し、回転できるようにインペラ110を支持する。排出開口部140を有するフラッシング排出口135は、インペラ105内に構成される。一例として、ここでのフラッシング排出口の排出開口部140は、インペラ110のプロペラの領域内に配置される。
【0058】
図4は、
図3の矢印IVの方向のインペラの背面斜視図である。ベアリング装置のスタンドユニット105に結合され得るインペラ110のプロペラから反対を向いたインペラ110の面は、インペラ110の後面として示される。インペラ110をスタンドユニット105に接続するために、インペラ110はここで、インペラ110を支持するためのボールベアリング405を備える。インペラ110のフラッシング排出口135は、一例として、ここで排出ボアとして構成され、
図1に示す中間空間125と連通するのも見ることができる。
【0059】
ここに示す設計例によると、フラッシング排出口135の少なくとも一対は、インペラ110内に構成される。少なくとも一対のフラッシング排出口135は、インペラ110の長手方向軸114に対して互いに対向して配置される。一例として、対のフラッシング排出口135は、インペラ110の回転軸112に対して均等に離間し、すなわち、それらは、回転軸112と同軸のインペラ110の長手方向軸114に対して対称に延在する。
【0060】
図5は、スライドベアリング装置として、または磁気ベアリング装置として構成され得る、心臓補助システム用ベアリング装置におけるインペラ110のさらなる可能な設計を示す。図は、インペラ110の斜視図を示し、インペラ110内のフラッシュ排出口135の排出開口部140、ならびにそれぞれのインペラ110の開口部断面法線ベクトル134および長手方向軸114の異なる例示的な位置付けが特定される。
【0061】
一設計例によれば、フラッシング排出口135の排出開口部140は、スタンドユニットのサブセクションを囲むインペラ110のジャケットセクション150に配置される。代替的に、フラッシング排出口の排出開口部は、インペラ110のプロペラ領域515の領域とジャケットセクション505との間の移行セクション510内に配置される。
【0062】
この図は、最も強力な吸引力が発生する、したがって、フラッシング排出口およびフラッシング排出口の排出開口部を位置付けるのに適した位置の、設計例のための潜在的な推定値を示す。インペラ110内のフラッシング排出口の排出開口部を配置するための三つの領域520、525および530が、例として示される。領域520は、プロペラ領域515に位置する。領域525は、例えば、移行セクション510のフラッシング排出口135の排出開口部の位置を特定する。領域530は、例えば、ジャケットセクション150内のフラッシング排出口の排出開口部の位置付けを特定する。ここに示す潜在的推定によると、フラッシング排出口135および排出開口部140が領域530内に位置付けられるとき、フラッシング入口とフラッシング排出口との間の遠心力はフラッシングを駆動するのに十分であるため、有益なフラッシング効果が、こうしたインペラ110およびスタンドユニット105を有するベアリング装置において達成される。
【0063】
図6は、スライドベアリング装置として、またはフラッシング排出口の異なる構成を有する磁気ベアリング装置として設計された心臓補助システム用の異なるベアリング装置における異なるフラッシング流体体積を有する中間空間125を示し、フラッシング排出口135は異なる構成である。フラッシング流体流が通過するフラッシング排出口135は、異なる構成605、610、615、620、625をここでは有する。フラッシング排出口135の少なくとも一対は、これらのスライドベアリング装置のインペラ内に構成され、それによって、ベアリング装置内の少なくとも一対のフラッシング排出口135は、回転軸112と整列したインペラ110の長手方向軸114に対して互いに対向して配置される。ここで示されるフラッシング排出口のそれぞれの構成605、610、615、620、625は、一対のフラッシング排出口の例を示す。第一の構成605において、フラッシング排出口の対は、インペラの前述の長手方向軸114に対して鈍角αで傾斜したインペラの長手方向軸114から放射状に延在し、それによって、フラッシング排出口135の開始点が長手方向軸114に近接して形成される。第二の構成610において、フラッシング排出口135の対は、インペラの長手方向軸114に対して鋭角αで傾斜して延在し、フラッシング排出口135の対は、それに応じて、互いに向かって傾斜する。第三の構成615において、第一の構成605のフラッシング排出口の開始点よりもさらに離れて配置される、フラッシング排出口135の開始点を除いて、第一の構成605に対応する。第四の構成620において、フラッシング排出口135の対は、インペラの長手方向軸114に対して直角βで延在する。第五の構成625は、インペラの長手方向軸114に対して互いに対向して配置され、互いに均等に離間して配置される、二対のフラッシング排出口135の例を示す。第四の構成620に示される対のように、二対のフラッシング排出口135は、インペラの長手方向軸114に対して直角βで延在する。
【0064】
図7は、心臓補助システムのためのさらなるスライドベアリング装置100を示す。図は、インペラがスタンドユニット105を部分的に取り囲む、組み立てられた状態のスライドベアリング装置100の斜視図を示す。
図8は、このスライドベアリング装置100を断面として示す。本明細書に示すスライドベアリング装置100は、前述の図を参照して記載したスライドベアリング装置と類似する。ここに示す設計例によると、インペラ110は、複数のフラッシング排出口135を含む。フラッシング排出口の排出開口部140は、プロペラ領域515とジャケットセクション505との間の移行セクション510に少なくとも部分的に配置される。一例として、排出開口部140は、移行セクション510の周辺の周りに均等に離間して配置される。
図7は、最も強いと判定された吸引力を有する複数のフラッシング排出口のフラッシング位置の利用を示す。
【0065】
図8は、心臓補助システムのためのさらなるスライドベアリング装置100を示す。図は、スライドベアリング装置100の側面図の断面図を示す。スタンドユニット105は、インペラ110のジャケットセクション150によって部分的に取り囲まれる。フラッシング排出口135の複数の排出開口部140は、インペラ110のプロペラとジャケットセクション150との間の移行領域または移行セクション510内に配置される。図は、ポンプ流体流115の流れ方向およびフラッシング流体流130の流路を示す。フラッシング流体流130は、ここに示す設計例によれば、スタンドユニット105の基部107とスタンドユニット105のサブセクション120を囲むインペラ110のジャケットセクション505との間の間隙905として構成される、フラッシング入口145を通して導入される。次いで、フラッシング流体流130は、中間空間125を通して、複数のフラッシング排出口135の排出開口部140の一つに、遠心力によって、スライドベアリング装置100をフラッシングするために伝導される。
【0066】
図9は、一設計例による心臓補助システム用スライドベアリング装置100の詳細の概略図を示す。図は、インペラのジャケットセクション150によって囲まれたスタンドユニット105のサブセクションを有する、スライドベアリング装置100の一部の断面を示す。ここでのフラッシング排出口135の構成は、フラッシング排出口もまた、非ミラー対称様式で配置され得ることを示すことを意図している。
【0067】
図は、中間空間125を通ってフラッシング排出口135に流れ、フラッシング排出口135の排出開口部から排出されるフラッシング流体流130のフラッシング経路の一部分を示す。フラッシング流体流の流出は、矢印1005で特定される方向から、平面図の助けを借りて以下の
図10に示される。
【0068】
図10は、一設計例による心臓補助システム用スライドベアリング装置100の詳細の概略図を示す。図は、前述の
図9で特定されたスライドベアリング装置100の詳細についての平面図を示す。フラッシング排出口135は、ベアリング装置の回転軸112と整列するジャケットセクション150によって囲まれたスタンドユニット105のサブセクションの長手方向延長軸116に対して、ジャケットセクション150内で放射状に配置される。フラッシング流体流130は、フラッシング排出口の排出開口部140でジャケットセクション150を出る。
【0069】
図11は、一設計例による心臓補助システム用スライドベアリング装置100の詳細の概略図を示す。ここに示す設計例によると、フラッシング入口145は、複数の入口チャネル、すなわちチャネル1105およびチャネル1107によって、中間空間125内で実現される。これはまた、入口方向が、必ずしも、ベアリング装置100の回転軸112と整列したベアリング装置100の長手方向延長軸116の方向に配向される必要があるだけでなく、長手方向延長軸に対して傾斜し得ることを示すことも意図される。例えば、フラッシング入口145の境界が、ジャケットセクション150に部分的に構成される入口チャネル1105としてここに示すフラッシング入口145の設計例にあるように、回転本体内にない、または部分的にしかないように、フラッシング入口145が、作用する遠心力がそこにないように構成されている場合、遠心圧力は有利に増大する。
【0070】
図12は、一設計例による、スライドベアリング装置として、または磁気ベアリング装置として構成された心臓補助システム用ベアリング装置を製造するための方法800の流れ図を示す。方法800は、提供する工程801、形成する工程803、および組み立てる工程805を含む。提供する工程801では、インペラが回転できるようにそれを支持するように構成されたスタンドユニットが提供される。また、工程801では、ポンプ流体流を運搬するために心臓補助システムの動作中に回転するように設計されたインペラが提供される。形成する工程803では、心臓補助システムが動作している時に遠心力によって、スライドベアリング装置からフラッシング流体流を排出するように設計される、少なくとも一つのフラッシング排出口がインペラ内に形成される。組み立てる工程805では、インペラおよびスタンドユニットを組み立て、スライドベアリング装置を作製する。スタンドユニットの少なくとも一つのサブセクションは、インペラによって囲まれる。フラッシング流体流を案内するための中間空間がさらに、前述のサブセクションとインペラとの間に提供される。心臓補助システムの動作中、フラッシング流体流は、中間空間から遠心力によってフラッシング排出口へと伝導され、そこからベアリング装置をフラッシングするためにベアリング装置から排出される。
【0071】
要約すると、下記が特に注目されるべきである。本発明は、心臓補助システム用ベアリング装置100に関する。ベアリング装置100は、スタンドユニット105およびインペラ110を含む。スタンドユニット105は、回転し得るようにインペラ110を支持するよう設計される。インペラ110は、ポンプ流体流115を運搬するために、心臓補助システムが動作しているときに回転するように設計される。インペラ110は、スタンドユニット105の少なくとも一つのサブセクション120を、ベアリング装置100の組み立てられた状態において取り囲むように設計され、フラッシング流体流130を案内するための中間空間125がサブセクション120とインペラ110との間に提供される。少なくとも一つのフラッシング排出口135は、インペラ110内に形成される。フラッシング排出口135は、心臓補助システムが動作している時に、遠心力によってフラッシング流体流130を中間空間125から排出するように設計される。
【0072】
本発明は特に、以下の項目に明記される態様に関する。
【0073】
(項目1)
心臓補助システム(200)用スライドベアリング装置(100)であって、スライドベアリング装置(100)が、
インペラ110が回転し得るようにこれを支持するように設計されたスタンドユニット(105)と、
心臓補助システム(200)の動作中にポンプ流体流(115)を運搬するために回転するように構成されるインペラ(110)であって、スライドベアリング装置(100)の組み立てられた状態において、スタンドユニット(105)の少なくとも一つのサブセクション(120)を取り囲むように設計され、フラッシング流体流(130)を案内するための中間空間(125)が、サブセクション(120)とインペラ(110)との間に提供され、少なくとも一つのフラッシング排出口(135)がインペラ(110)内に形成され、フラッシング排出口(135)が、心臓補助システム(200)が動作している時に遠心力によってフラッシング流体流(130)を中間空間(125)から排出するように設計される、インペラ(110)とを含む、スライドベアリング装置(100)。
【0074】
(項目2)
複数のフラッシング排出口(135)がインペラ(110)内に形成される、項目1に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0075】
(項目3)
少なくとも一つのフラッシング排出口(135)が、インペラ(110)の長手方向軸に対して傾斜している、項目1または2のいずれか一項目に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0076】
(項目4)
フラッシング排出口(135)が、排出開口部(140)を有する管として構成される、項目1~3のいずれか一項目に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0077】
(項目5)
排出開口部(140)が、スタンドユニット(105)のサブセクション(120)を囲むインペラ(110)のジャケットセクション(505)内、またはインペラ(110)のプロペラ領域(515)とジャケットセクション(150)との間の移行セクション(510)内に配置される、項目4に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0078】
(項目6)
インペラ(110)が、複数のフラッシング排出口(135)を含み、フラッシング排出口(135)の排出開口部(140)が、移行セクション(510)内に少なくとも部分的に配置される、項目5に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0079】
(項目7)
インペラ(110)内のフラッシング排出口(135)の数が、インペラ(110)のブレードの数の倍数に対応する、項目1~6のいずれか一項目に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0080】
(項目8)
フラッシング流体流(130)を導入するためのフラッシング入口(145)を含み、スライドベアリング装置(100)の組み立てられた状態において、フラッシング入口(145)が中間空間(125)内に開口する、項目1~7のいずれか一項目に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0081】
(項目9)
フラッシング入口(145)が、スタンドユニット(105)の基部と、スタンドユニット(105)のサブセクション(120)を囲むインペラ(110)のジャケットセクション(150)との間の間隙(905)として形成される、および/またはフラッシング入口(145)が、傾斜入口チャネル(1105)としてインペラ(110)内に、または少なくとも一つの傾斜入口チャネル(1105)を有する複数の入口チャネルによって形成される、項目8に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0082】
(項目10)
フラッシング入口(145)が、フラッシング排出口(135)に対して、ポンプ流体流(115)の流れ方向において下流に配置される、項目8~9のいずれか一項目に記載のスライドベアリング装置(100)。
【0083】
(項目11)
項目1~10のいずれか一項目に記載のスライドベアリング装置(100)を含む心臓補助システム(200)。
【0084】
(項目12)
心臓補助システム(200)用スライドベアリング装置(100)を製造するための方法(800)であって、方法(800)が、
インペラ(110)が回転し得るようにこれを支持するように設計されたスタンドユニット(105)、および心臓補助システム(200)の動作中に回転してポンプ流体流(115)を運搬するように構成されたインペラ(110)を提供する工程(801)と、
インペラ(110)内に少なくとも一つのフラッシング排出口(135)を形成する工程(803)であって、フラッシング排出口(135)を、心臓補助システム(200)が動作している時に、遠心力によってスライドベアリング装置(100)からフラッシング流体流(130)を排出するように設計する、形成する工程と、
インペラ(110)およびスタンドユニット(105)を組み立て、スライドベアリング装置(100)を作製する工程(805)であって、スタンドユニット(105)の少なくとも一つのサブセクション(120)を、インペラ(110)によって囲み、フラッシング流体流(130)を案内するための中間空間(125)をサブセクション(120)とインペラ(110)との間に配置する、組み立てる工程(805)とを含む、方法(800)。
【符号の説明】
【0085】
(参照番号のリスト)
100 スライドベアリング装置
105 スタンドユニット
107 基部
110 インペラ
111 インペラのプロペラ領域
112 回転軸
114 長手方向軸
115 ポンプ流体流
116 長手方向延長軸
120 スタンドユニットのサブセクション
125 中間空間
130 フラッシング流体流
132 開口部断面
134 開口部断面法線ベクトル
135 フラッシング排出口
136 方向成分
137 軸
140 排出開口部
145 フラッシング入口
150 ジャケットセクション
155 ブロック
200 心臓補助システム
205 ハウジングセクション
210 入口ホース
215 排出開口部
220 接続セクション
225 架橋
405 ボールベアリング
505 ジャケットセクション
510 移行セクション
515 プロペラ領域
520、525、530 領域
605、610、615、620、625 構成
800 方法
801 提供する工程
803 形成する工程
805 組み立てる工程
905 間隙
1005 矢印
1105、1107 入口チャネル