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特開2024-153951還元型酸素運搬体および一酸化炭素ヘモグロビン血症の処置のためのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153951
(43)【公開日】2024-10-29
(54)【発明の名称】還元型酸素運搬体および一酸化炭素ヘモグロビン血症の処置のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20241022BHJP
   A61K 38/42 20060101ALI20241022BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K38/42
A61P39/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024137636
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2023029567の分割
【原出願日】2017-05-19
(31)【優先権主張番号】62/338,870
(32)【優先日】2016-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】504279968
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ピッツバーグ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ジョセフ ローズ
(72)【発明者】
【氏名】チンジ シュー
(72)【発明者】
【氏名】マーク ティー. グラッドウィン
(72)【発明者】
【氏名】ヘスス テヘロ ブラヴォ
(57)【要約】
【課題】血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するin vitroおよびin vivo方法を提供すること。
【解決手段】対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症(一酸化炭素中毒)を処置する方法も記載されている。本方法は、その還元型である天然または人工酸素運搬体を投与するステップを含む。還元された酸素運搬体を産生する方法がさらに記載されている。酸素運搬体によりシアン化物中毒または硫化水素中毒を処置する方法も記載されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年5月19日に出願された米国仮出願番号第62/338,870号に基づく利益を主張しており、この仮出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は、その還元型の天然または人工酸素運搬体を使用して、一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法に関する。本開示は、酸素運搬体としての使用のための還元グロビンタンパク質を産生するためのプロセスにさらに関する。酸素運搬体を使用して、シアン化物中毒および硫化水素中毒を処置する方法も記載されている。
【0003】
政府支援の承認
本発明は、国立衛生研究所によって授与された認可番号HL125886、HL110849、HL007563およびHL103455の下、政府支援でなされた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
分野
一酸化炭素への吸入曝露は、環境的中毒の主原因を表す。個体は、住宅火災、屋内で使用される発電機もしくは屋外用バーベキューグリル、または閉鎖空間内での自殺企図の際等、種々の異なる状況下で、空気中の一酸化炭素に曝露され得る。一酸化炭素は、細胞におけるヘモグロビンおよび血液タンパク質(hemoprotein)、特に、呼吸伝達系の酵素に
結合する。ヘモグロビンおよび他の血液タンパク質に結合した一酸化炭素の蓄積は、酸化的リン酸化のための酸素送達および酸素利用を損なう。これは最終的に、脳および心臓等の重要臓器に重度の低酸素および虚血性傷害をもたらす。その血液中に10%を超える炭素カルボキシヘモグロビンを蓄積する個体は、脳傷害および神経認知機能障害のリスクがある。非常に高いカルボキシヘモグロビンレベルを有する患者は典型的に、不可逆的な脳傷害、呼吸不全および/または心血管虚脱を患う。
【0005】
標準動脈および静脈血液ガス解析ならびにCO-オキシメトリにより一酸化炭素中毒を迅速に診断する方法の利用可能性にもかかわらず、また、一酸化炭素中毒のリスク因子の認知にもかかわらず、現在、この有毒な曝露に利用できる解毒薬は存在しない。現在の治療法は、フェイスマスクによって100%酸素を与えることであり、可能であれば、患者を高圧酸素に曝露することである。高圧酸素療法の背景にある機構は、酸素が、ヘモグロビンおよび組織からの一酸化炭素の放出速度を増加させ、天然の一酸化炭素クリアランスを加速させるということである。しかし、この治療法は、一酸化炭素クリアランス速度に僅かな効果しかなく、高圧酸素設備の複雑さに基づき、この治療法は、本分野では利用できず、多くの場合、著しい処置遅延および運送費を伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
一酸化炭素ヘモグロビン血症(一酸化炭素中毒としても公知)、シアン化物中毒および硫化水素中毒を処置するための、有効、迅速かつ容易に利用できる治療法の必要がある。
【0007】
対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法であって、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップと、対象に天然または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与するステップとを含み、酸素運搬体はその還元型である、方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、組成物は、無毒な濃度で、弱い還元剤等の還元剤をさらに含む。
【0008】
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法も提供される。本方法は、血液または動物組織を、天然または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップを含み、酸素運搬体はその還元型である。一部の実施形態では、本方法は、in vitro方法である。他の実施形態では、本方法は、in vivo方法である。
【0009】
還元された酸素運搬体を調製する方法がさらに提供される。一部の実施形態では、本方法は、酸素運搬体-還元剤組成物を産生するために、酸素運搬体を第1の還元剤と接触させるステップと、還元された酸素運搬体組成物を形成するために、酸素運搬体-還元剤組成物を脱塩カラムに通すステップとを含む。還元された酸素運搬体の調製は、嫌気性環境で行われる。
【0010】
シアン化物中毒を有する対象を選択すること、および対象に天然または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与することにより、対象におけるシアン化物中毒を処置する方法であって、酸素運搬体がその酸化型である、方法も提供される。
【0011】
S中毒を有する対象を選択すること、および対象に天然または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与することにより、硫化水素(HS)中毒を処置する方法であって、酸素運搬体はその還元型である、方法が、さらに提供される。
【0012】
本発明の前述および他の目的、特色および利点は、添付の図面を参照しつつ進行する次の詳細な説明から、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、中等度CO中毒のマウスモデルにおける、組換えニューログロビンによるヘモグロビン由来のCOのin vivo結合を示すグラフである。
【0014】
図2図2は、還元された酸素運搬体の調製のための本明細書に開示されている方法のステップの流れ図である。
【0015】
図3図3は、一酸化炭素中毒を処置するために酸素運搬体および人工酸素運搬体を使用する方法の流れ図である。
【0016】
図4AB図4A~4Cは、野生型ウマミオグロビンによるヘモグロビン由来のCOのin vitro結合を示すグラフである。5mM亜ジチオン酸ナトリウムの存在下、37℃で、カルボキシル化された赤血球細胞を含有する溶液に、PBSまたはミオグロビン(100μL)を注入した。いくつかの時点において反応混合物から試料を採取し、遠心分離によって上清(Mbを含有)からRBCを分離した。各画分におけるHbCO/MbCOの量をUV-vis分光法によって決定した。(図4A)カルボキシル化RBCをPBSと混合した。(図4Bおよび図4C)異なる量のカルボキシル化RBCがMbと混合された2種の試料の実験。黒色および赤色の点は、それぞれカルボキシル化HbおよびMbの濃度を示す。
図4C】同上。
【0017】
図5図5は、重度のCO中毒のマウスモデルにおける、野生型ウマミオグロビンによるヘモグロビン由来のCOのin vivo結合を示すグラフである。
【0018】
図6図6は、心拍数(HR;上)および平均動脈圧(MAP;下)に対する重度のCO中毒の効果を示す一対のグラフであり、この効果は、ミオグロビンの添加により反転される。
【0019】
図7図7は、血圧および心拍数に対する重度のCO中毒の効果を示すグラフであり、この効果は、ミオグロビンの添加により反転される。2種の異なる用量のミオグロビンを示す。
【0020】
図8図8は、血圧および心拍数に対する重度のCO中毒の効果を示すグラフであり、この効果は、ヘモグロビンの添加により反転される。複数の異なる用量のヘモグロビンを示す。
【0021】
図9図9は、本明細書に開示されているミトコンドリア呼吸試験の設定の流れ図である。
【0022】
図10図10A~10Bは、ミトコンドリアおよび心臓組織呼吸に対するCOの効果を示す一対のグラフである。(図10A)COは、CO曝露前(空気)と比較して、3回の再酸素化(CO1、CO2、CO3)にわたり持続的に、単離された肝臓ミトコンドリアの呼吸を阻害する。(図10B)COは、CO曝露前(空気)と比較して、3回の再酸素化(CO、CO2、CO3)にわたり心臓呼吸を阻害する。
【0023】
図11図11は、ミトコンドリア呼吸が、COによって阻害され、この阻害が、デオキシヘモグロビンの添加により反転されることを示すグラフである。COは、CO曝露前(室内空気)と比較して、単離された肝臓ミトコンドリアの呼吸を60.5%低下させた(COガス)。0.5モル濃度のデオキシヘモグロビンの添加は、CO阻害された量(COガス)から、呼吸を95%増加させた(ヘモグロビン)(*=統計的に有意)。
【0024】
図12図12は、心臓組織呼吸が、COによって阻害され、デオキシミオグロビンの添加により反転されることを示すグラフである。COは、CO曝露前(空気)と比較して、LVホモジネートの呼吸を75.6%低下させた(COガス)。0.5モル濃度のデオキシミオグロビンの添加は、CO阻害された量(COガス)から、呼吸を199%増加させた(処置)。処置なしでは、呼吸量は、再酸素化後であってもCO曝露呼吸(COガス)と同等の低さを維持した(無処置)。
【0025】
図13図13は、30,000ppm(3%)COガスに曝露され、その後、ペグ化ヘモグロビン(PEG-Hb)で処置されたマウスにおけるHbCOレベルの時間経過を示すグラフである。
【0026】
図14図14は、30,000ppm(3%)COガスに曝露され、その後、PEG-Hbで処置されたマウスの、経時的な平均動脈圧(MAP)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
I.略語
CO 一酸化炭素
CO-Hb カルボキシヘモグロビン
S 硫化水素
Hb ヘモグロビン
HbCO カルボキシヘモグロビン
Hgb ヘモグロビン
IV 静脈内
LD50 50%致死量
LV 左心室
Mb ミオグロビン
Mgb ミオグロビン
Ngb ニューログロビン
PEG-Hb ペグ化ヘモグロビン
RBC 赤血球細胞
rNgb 組換えニューログロビン
ROS 活性酸素種
II.用語および方法
【0028】
特に断りのない限り、技術用語は、従来の用法に従って使用されている。分子生物学における一般用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes V、Oxford University Pressから出版、1994年(ISBN0-19-854287-9);Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.から出版、1994年(ISBN0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.から出版、1995年(ISBN1-56081-569-8)に見出すことができる。
【0029】
本開示の様々な実施形態の総括を容易にするために、特定の用語に関する次の説明を示す:
【0030】
投与:いずれか有効な経路によって治療剤(例えば、酸素運搬体)等の薬剤を対象に提供することまたは与えること。例示的な投与経路として、注射または注入(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、くも膜下腔内、静脈内、脳室内、線条体内、頭蓋内および脊髄中等)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、腟および吸入経路が挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
解毒薬:毒の効果を中和または相殺する薬剤。
【0032】
一酸化炭素(CO):十分に高濃度で遭遇したときにヒトおよび動物にとって有毒な、無色、無臭および無味のガス。COは、正常な動物代謝においても低レベルで産生される。
【0033】
カルボキシヘモグロビン(HbCOまたはCO-Hb):COが吸入または正常代謝において産生されたときに赤血球細胞において形成する、一酸化炭素(CO)およびヘモグロビン(Hb)の安定複合体。
【0034】
一酸化炭素ヘモグロビン血症または一酸化炭素中毒:血液中の過剰量の一酸化炭素の存在に起因する状態。典型的には、100百万分率(ppm)またはそれを超えるCOへの曝露は、一酸化炭素ヘモグロビン血症を引き起こすのに十分である。軽度急性CO中毒の症状は、意識朦朧、錯乱、頭痛、回転性めまいおよびインフルエンザ様効果を含む;より大規模な曝露は、中枢神経系および心臓の著しい毒性、さらには死亡をもたらし得る。急性中毒後に、長期続発症が起こることが多い。一酸化炭素は、妊婦の胎児に深刻な影響を及ぼす場合もある。低レベルの一酸化炭素への慢性曝露は、抑うつ状態、錯乱および記憶喪失をもたらし得る。一酸化炭素は主に、ヘモグロビンと結び付いて血液中にカルボキシヘモグロビン(HbCO)を形成することにより、ヒトにおける有害効果を引き起こす。これは、ヘモグロビンへの酸素結合を防止し、血液の酸素運搬能力を低下させ、低酸素症をもたらす。その上、ミオグロビンおよびミトコンドリアチトクロムcオキシダーゼは、有害に影響されると考えられる。カルボキシヘモグロビンは、ヘモグロビンに復帰することができるが、HbCO複合体は相当に安定であるため、回復には時間がかかる。CO中毒の現在の処置方法は、100%酸素の投与または高圧酸素療法の提供を含む。
【0035】
接触:直接的に物理的会合した配置;固体および液体形態の両方を含む。in vivo方法の文脈で使用される場合、「接触」は、投与も含む。
【0036】
シアン化物中毒:シアン化水素ガスおよびシアン化物塩等、いくつかの形態のシアン化物への曝露に起因する中毒の1種。シアン化物中毒は、住宅火災による煙の吸入、金属研磨剤、特定の殺虫剤およびある特定の種子(リンゴ種子等)への曝露により起こり得る。シアン化物中毒の初期症状は、頭痛、眩暈、速い心拍数、息切れおよび嘔吐を含む。より後期の症状は、発作、遅い心拍数、低血圧、意識喪失および心停止を含む。
【0037】
サイトグロビン:全ての組織において遍在性に発現されるグロビン分子。サイトグロビンは、組織を通した酸素の拡散を容易にし、亜硝酸塩を一酸化窒素に還元し、低酸素条件および酸化ストレス下で細胞保護的役割を果たすことが報告された6配位型のヘモグロビンである。
【0038】
グロビン:酸素の結合および/または輸送に関与するヘム含有タンパク質。グロビンは、例えば、ヘモグロビン、ミオグロビン、ニューログロビンおよびサイトグロビンを含む。
【0039】
ヘモシアニン:いくつかの無脊椎動物の全身に酸素を輸送するタンパク質の1種。ヘモシアニンは、単一の酸素分子に可逆的に結合する2個の銅原子を含有する金属タンパク質である。ヘモシアニンは、Mollusca門およびArthropoda門のみに見出される。
【0040】
ヘモグロビン(Hb):脊椎動物および他の動物における血液の赤血球細胞における鉄含有酸素輸送金属タンパク質。ヒトでは、ヘモグロビン分子は、4個の球状タンパク質サブユニットの集合体である。各サブユニットは、非タンパク質ヘム基と緊密に会合したタンパク質鎖で構成されている。各タンパク質鎖は、グロビンフォールド配置(この配置が、他のヘム/グロビンタンパク質において使用される同じフォールディングモチーフであることからそのように呼ばれる)で一体に接続されたアルファ-ヘリックス構造セグメントのセットへと配置する。このフォールディングパターンは、ヘム基に強く結合するポケットを含有する。
【0041】
ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC):酸素運搬体として機能する、精製、組換えおよび/または修飾ヘモグロビンの輸液可能な流体。いくつかのHBOCが公知である、および/または臨床開発中である。HBOCの例として、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化(pyridoxylated)Hb POE-コンジュゲート(PHP)+カタラーゼ
&SOD(Apex Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-ヘモグロビン(Enzon)、OXYVITA(商標)およびHBOC-201が挙げられるがこれらに限定されない(GreenburgおよびKim、Crit Care 8巻(追補2号):S61~S64頁、2004年;te Lintel Hekkertら、Am J Physiol Heart Circ Physiol 29
8巻:H1103~H1113頁、2010年;Eisenach、Anesthesiology 111巻:946~963頁、2009年)。
【0042】
異種:異種タンパク質またはポリペプチドは、異なる供給源または種に由来するタンパク質またはポリペプチドを指す。
【0043】
硫化水素中毒:硫化水素(HS)への過剰曝露に起因する中毒の1種。HSは、ミトコンドリアチトクロム酵素における鉄に結合し、細胞呼吸を防止する。より低濃度のHSへの曝露は、眼刺激、咽頭炎、咳嗽、悪心、息切れ、肺水腫、疲労、食欲不振、頭痛、易刺激性、記憶力貧困および眩暈を引き起こし得る。より高レベルの曝露は、即時虚脱、呼吸不能および死亡を引き起こし得る。
【0044】
単離された:「単離された」生物学的構成成分(核酸分子、タンパク質または細胞等)は、他の染色体および染色体外DNAならびにRNA、タンパク質および細胞等、該構成成分が天然に生じる生物の細胞、血液もしくは組織、または生物それ自体における他の生物学的構成成分から実質的に分離または精製されている。「単離」された核酸分子およびタンパク質は、標準精製方法によって精製されたこれらを含む。この用語は、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸分子およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸分子およびタンパク質も包含する。
【0045】
メトヘモグロビン:ヘム構成成分における鉄が二価鉄(+2)から三価鉄(+3)状態へと酸化された、酸化型のヘモグロビン。これは、ヘモグロビン分子を、組織へと酸素を有効に輸送および放出できなくする。通常、総ヘモグロビンの約1%が、メトヘモグロビン形態で存在する。
【0046】
ミオグロビン(Mb):タンパク質のグロビンファミリーのメンバー。ミオグロビンは、全ての脊椎動物およびほぼ全ての哺乳動物の筋肉組織に見出される鉄および酸素結合タンパク質である。ヒトでは、ミオグロビンは、筋肉傷害後の血流中にのみ見出される。ヘモグロビンとは異なり、ミオグロビンは、酸素に対する結合部位を1個のみ含有するが(タンパク質の1個のヘム基における)、酸素に対するその親和性は、酸素に対するヘモグロビンの親和性よりも大きい。
【0047】
ニューログロビン(Ngb):タンパク質のグロビンファミリーのメンバー。ニューログロビンの生理的機能は、現在不明であるが、低酸素または虚血性条件下での保護を提供すると考えられる。ニューログロビンは、中枢および末梢神経系、脳脊髄液、網膜および内分泌組織において発現される。
【0048】
酸化剤:別の物質から電子を受容する(物質を「酸化する」とも称される)ことができる物質。酸化剤は、化学反応において電子を獲得し、還元される。酸化剤は、「電子受容体」としても公知である。
【0049】
酸素運搬体:身体内の酸素を結合、輸送および放出することができる分子または化合物。酸素運搬体は、ヘモグロビン、ミオグロビンおよびヘモシアニン等、天然タンパク質、ならびにヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)、パーフルオロカーボン(PFC)、リポソーム被包ヘモグロビンおよびポルフィリン金属錯体を含む人工酸素運搬体を含む。
【0050】
ペプチドまたはポリペプチド:その単量体が、アミド結合により一体に連接されたアミノ酸残基である、ポリマー。アミノ酸がアルファ-アミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のどちらが使用されてもよいが、L-異性体が好ましい。本明細書において使用される用語「ペプチド」、「ポリペプチド」または「タンパク質」は、いずれかのアミノ酸配列を包含し、修飾されたグロビンタンパク質を含む修飾された配列を含むことが意図される。用語「ペプチド」および「ポリペプチド」は、天然起源のタンパク質、および組換えまたは合成により産生されるものを網羅することが特に意図される。
【0051】
保存的アミノ酸置換は、それが為されたときに、本来のタンパク質の特性への干渉が最小となる置換である、すなわち、斯かる置換によってタンパク質の構造、特に機能が保存され、有意に変化されない。保存的置換の例を下に示す。
【表A】
【0052】
保存的置換は一般に、(a)例えば、シートまたはヘリックス高次構造としての、置換の区域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の容積を維持する。
【0053】
タンパク質特性に最大の変化を生じさせることが一般に予想される置換は、非保存的、例えば、(a)親水性残基、例えば、セリンもしくはスレオニンが、疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリンもしくはアラニンに代えて(またはそれにより)置換される;(b)システインもしくはプロリンが、他のいずれかの残基に代えて(またはそれにより)置換される;(c)電気陽性側鎖を有する残基、例えば、リシン、アルギニンもしくはヒスチジンが、電気陰性残基、例えば、グルタミンもしくはアスパラギン酸に代えて(またはそれにより)置換される;または(d)かさ高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、側鎖を持たない残基、例えば、グリシンに代えて(またはそれにより)置換される変化となる。
【0054】
薬学的に許容される担体:実用的な薬学的に許容される担体が、慣例的である。Remington's Pharmaceutical Sciences、E.W. Martin著、Mack Publishing Co.、Easton,
PA、第15版、1975年は、本明細書に開示されている組成物の医薬送達に適した組成物および製剤について記載する。
【0055】
一般に、担体の性質は、用いられている特定の投与機序に依存する。生物学的に中性の担体に加えて、投与されるべき医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存料およびpH緩衝剤その他、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンラウリン酸モノエステル等、微量の無毒補助的物質を含有することができる。
【0056】
ポルフィリン:ヘモグロビン、クロロフィルおよびある特定の酵素における金属結合補助因子として機能する、4個のピロール環を含有する有機化合物。
【0057】
組換え:組換え核酸またはタンパク質は、天然起源ではない配列を有する、または2個の天然状態では分離されている配列セグメントの人工的組合せによって作製された配列を有する核酸またはタンパク質である。この人工的組合せは、多くの場合、化学合成によって、または単離された核酸セグメントの人工操作、例えば、遺伝子工学技法によって達成される。組換えという用語は、天然核酸分子またはタンパク質の部分の付加、置換または欠失によって変更された核酸およびタンパク質を含む。
【0058】
還元剤:レドックス化学反応において別の化学種へと電子を失う(または「供与する」)元素または化合物。還元剤は典型的に、そのより低い可能な酸化状態の1つにあり、電子供与体として公知である。レドックス反応において電子を失うため、還元剤は酸化される。例示的な還元剤として、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジン、土類金属、ギ酸および亜硫酸塩化合物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0059】
配列同一性/類似性:2種もしくはそれよりも多い核酸配列または2種もしくはそれよりも多いアミノ酸配列の間の同一性は、配列間の同一性または類似性の観点から表現される。配列同一性は、パーセンテージ同一性の観点から測定することができる;パーセンテージが高いほど、配列はより同一である。配列類似性は、パーセンテージ類似性の観点から測定することができる(これは、保存的アミノ酸置換を考慮に入れる);パーセンテージが高いほど、配列はより類似する。核酸またはアミノ酸配列のホモログまたはオルソログは、標準方法を使用して整列された場合に、相対的に高い程度の配列同一性/類似性を保有する。オルソロガスタンパク質またはcDNAが、より遠縁の種と比較して(ヒトとC.elegans配列等)、より近縁の種に由来する場合に(ヒトとマウス配列等)、この相同性は、より有意である。
【0060】
比較のための配列の整列方法は、本技術分野で周知である。様々なプログラムおよび整列アルゴリズムは、SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math.2巻:482頁、198
1年;NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol.48巻:443頁、1970年;PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁、1988年;HigginsおよびSharp、Gene、73巻:237~44頁、1988年;HigginsおよびSharp
、CABIOS 5巻:151~3頁、1989年;Corpetら、Nuc. Acids Res.16巻:1
0881~90頁、1988年;Huangら、Computer Appls. in the Biosciences
8巻、155~65頁、1992年;およびPearsonら、Meth. Mol. Bio.24巻:307~31頁、1994年に記載されている。Altschulら、J. Mol. Biol.215巻:4
03~10頁、1990年は、配列整列方法および相同性計算に関する詳細な考察を発表する。
【0061】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J. Mol. Biol.215巻:403~10頁、1990年)
は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxに関連した使用のために、National Center for
Biological Information(NCBI)およびインターネット上を含むいくつかの供給源から利用することができる。追加情報は、NCBIウェブサイトに見出すことができる。
【0062】
対象:ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方を含むカテゴリーである、脊椎動物の生物を含む、生きている多細胞生物。
【0063】
合成:研究室において人工的手段により産生されること、例えば、合成ポリペプチドは、研究室において化学合成することができる。
【0064】
治療有効量:処置されている対象における所望の効果の達成に十分な、化合物または組成物、例えば、酸素運搬体の量。例えば、これは、血液もしくは組織における一酸化炭素の除去、血液におけるHbCOのレベルの低下、および/または一酸化炭素中毒に伴う1種もしくは複数の徴候もしくは症状の低下に必要な量であり得る。
【0065】
他に説明がなければ、本明細書で使用されている全ての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。単数形の用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそれ以外を明らかに示さない限り、複数形の指示対象を含む。「AまたはBを含む」は、A、もしくはB、またはAおよびBを含むことを意味する。全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および核酸またはポリペプチドに与えられる全ての分子量または分子質量の値が近似値であり、説明のために提示されていることをさらに理解されたい。本開示の実施または検査において、本明細書に記載されているものに類似のまたは均等な方法および材料を使用することができるが、適した方法および材料を下に記載する。本明細書に言及されている全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体を参照により本明細書に組み込む。矛盾が生じる場合、用語の説明を含む本明細書が優先される。加えて、材料、方法および実施例は、単なる説明であり、限定を意図しない。
III.序文
【0066】
酸素運搬体は、天然酸素運搬体および人工酸素運搬体の両方を含む。天然酸素運搬体の例として、ヒト、ウシまたは他の生体由来のヘモグロビン等、ヘモグロビン;ヒト、ウシまたは他の生体由来の濃縮赤血球細胞またはミオグロビン;および例えば、Arthropodaまたは他の生体に起源をもつヘモシアニンが挙げられる。人工酸素運搬体の例として、修飾ヘモグロビンおよびリポソーム被包ヘモグロビン等、天然酸素運搬体に由来する高度に機能的な酸素運搬体;アルブミン、アルブミン二量体およびアルブミンポリマーにポルフィリン金属錯体が取り込まれた化合物ならびにパーフルオロカーボン等、完全に合成された酸素運搬体;ならびに組換え/修飾ヘモグロビン等、組換え酸素運搬体が挙げられる。これらの酸素運搬体は、ヒトおよび他の動物の赤血球細胞に置き換わることができる。
【0067】
これらの酸素運搬体は、臓器保存灌流液を提供するためまたは体外循環液として、大出血した患者等の患者への輸血のために、虚血性部位または腫瘍組織への酸素の供給に使用される(米国特許出願公開第2004/0258745号および同第2006/0003923号)。ポルフィリン金属錯体の例は、2-[8-(2メチル-1-イミダゾリル)オクタノイルオキシメチル]-5,10,15,20-テトラキス[α,α,α,α,-o-(1-メチルシクロヘキサノイルアミノ)フェニル]ポルフィナト錯体である(米国特許出願公開第2006/0003923号)。
【0068】
リポソーム被包ヘモグロビンは、脂質二重層から形成されるリポソームの内層に被包されたヘモグロビンを含み、その様々な調製方法および研究について記載されている(米国特許出願公開第2004/0258745号)。
【0069】
ミオグロビンおよびヘモグロビンは、ヘムに永続的に結合された1個のみのヒスチジンを有する5配位したヘムタンパク質である。ミオグロビンは、Oの60倍のCOに対する親和性を有する(Nelsonら、「Carbon Monoxide」、Goldfrank's Toxicologic Emergencies(第9版)、New York:McGraw-Hill、1658~1670頁、2011年)。
ヘム基由来の鉄原子の反応は、次の通りに描写されている:
【数1】



(式中、konおよびkoffは、それぞれCO結合および解離の速度である)。
【表1】
【0070】
ミオグロビンは、酸素よりもCOに対し60倍高い親和性を有するため、組織におけるCOに優先的に結合する。COの存在下での還元Hbは、CO結合のためのリザーバーとして作用するため、非CO結合Hbは、COの追加的な標的として作用することができる。修飾ヘモグロビンまたはミオグロビン(人工酸素運搬体)は、天然起源の化合物と類似の様式で作用する。その上、これらの薬剤は、酸素と既に結合した状態で与えることができ、COに結合したままで、組織への酸素運搬を増加させる。
IV.一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法
【0071】
対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法が、本明細書に提供される。本方法は、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップと、対象にその還元型の天然酸素運搬体または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与するステップとを含む。
【0072】
酸素運搬体が還元型であるとみなされるために、組成物に含まれる天然または人工酸素運搬体の100%が還元される必要はない。一部の実施形態では、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%等、酸素運搬体の少なくとも70%が還元される。特定の実施形態では、酸素運搬体の75~100%、80~100%、85~100%、90~100%または95~100%が還元される。
【0073】
一部の実施形態では、組成物は、還元剤をさらに含む。還元剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与され得るいずれかの還元剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む。一部の実施形態では、本方法は、第2の還元剤を還元された酸素運搬体組成物に添加するステップをさらに含む。大部分の事例では、第2の還元剤は、ヒトによる等、生理的に安全に耐容性を示す最低有効濃度(酸素運搬体をその還元型で維持するための)である濃度で、組成物に添加される。一部の例では、組成物における還元剤の濃度は、約50μM~約50mM、約100μM~約25mM、約250μM~約10mM、約500μM~約5mMまたは約750μM~約1mM等、約10μM~約100mMである。特定の例では、組成物における還元剤の濃度は、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下である。
【0074】
一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、グロビンタンパク質を含む。一部の例では、グロビンタンパク質は、ヘモグロビンを含む。他の例では、グロビンタンパク質は、ミオグロビンを含む。さらに他の例では、グロビンタンパク質は、ニューログロビンまたはサイトグロビンを含む。特定の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物由来である。
【0075】
一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、軟体動物ヘモシアニンまたは節足動物ヘモシアニン等、ヘモシアニンを含む。
【0076】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む。いくつかのHBOCが、本技術分野で公知である。適切なHBOCが、開示されている方法における使用のために選択および還元され得る。一部の例では、HBOCは、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化Hb POE-コンジュゲート(PHP)(Apex Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-ヘモグロビン(Enzon)、OXYVITA(商標)およびHBOC-201である(GreenburgおよびKim、Crit Care 8巻(追補2号):S61~S64頁、2004年;te Lintel Hekkertら、Am
J Physiol Heart Circ Physiol 298巻:H1103~H1113頁、2010年;Eisenach、Anesthesiology 111巻:946~963頁、2009年)。
【0077】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、リポソーム被包ヘモグロビンまたはリポソーム被包ミオグロビン等、リポソーム被包グロビンタンパク質を含む。他の実施形態では、人工酸素運搬体は、修飾ヘモグロビン、修飾ミオグロビン、修飾ニューログロビンまたは修飾サイトグロビン等、修飾グロビンタンパク質である。
【0078】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ポルフィリン金属錯体を含む。例えば、人工酸素運搬体は、運搬体タンパク質(例えば、アルブミン、セルロプラスミン、ヘモペキシン)または有機化合物(例えば、パーフルオロカーボン)の添加によって可溶化されたポルフィリン金属錯体誘導体を含むことができる。
【0079】
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法も本明細書に提供される。本方法は、血液または動物組織を、その還元型の天然酸素運搬体または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップを含む。
【0080】
一部の実施形態では、本方法は、in vivo方法であり、血液または動物組織を、天然または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップは、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む。一部の例では、本方法は、天然または人工酸素運搬体を含む組成物を対象に投与することの前に、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップをさらに含む。一部の例では、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する選択された対象は、その血液中に少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%カルボキシヘモグロビンを有する。
【0081】
他の実施形態では、血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法は、in vitro方法である。
【0082】
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するための方法の一部の実施形態では、組成物は、還元剤をさらに含む。還元剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与され得るいずれかの還元剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む。
【0083】
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するための方法の一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、グロビンタンパク質を含む。一部の例では、グロビンタンパク質は、ヘモグロビンを含む。他の例では、グロビンタンパク質は、ミオグロビンを含む。さらに他の例では、グロビンタンパク質は、ニューログロビンまたはサイトグロビンを含む。特定の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物由来である。
【0084】
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するための方法の一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、軟体動物ヘモシアニンまたは節足動物ヘモシアニン等、ヘモシアニンを含む。
【0085】
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するための方法の一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む。いくつかのHBOCが、本技術分野で公知である。適切なHBOCが、開示されている方法における使用のために選択および還元され得る。一部の例では、HBOCは、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化Hb POE-コンジュゲート(PHP)(Apex
Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-ヘモグロビン(Enzon)、OXYVITA(商標)およびHBOC-201である(GreenburgおよびKim、Crit Care 8巻(追補2号):S61~S64頁、2004年;te Lintel Hekkertら、Am J Physiol Heart Circ Physiol 298巻:H1103~H1113頁、2010年;Eisenach、Anesthesiology 111巻:946~963頁、2009年)。
【0086】
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するための方法の一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、リポソーム被包ヘモグロビンまたはリポソーム被包ミオグロビン等、リポソーム被包グロビンタンパク質を含む。他の実施形態では、人工酸素運搬体は、修飾ヘモグロビン、修飾ミオグロビン、修飾ニューログロビンまたは修飾サイトグロビン等、修飾グロビンタンパク質である。
【0087】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ポルフィリン金属錯体を含む。例えば、人工酸素運搬体は、運搬体タンパク質(例えば、アルブミン、セルロプラスミン、ヘモペキシン)または有機化合物(例えば、パーフルオロカーボン)の添加によって可溶化されたポルフィリン金属錯体誘導体を含むことができる。
V.シアン化物中毒を処置する方法
【0088】
シアン化物は、チトクロムcオキシダーゼにおけるヘムa3中心に結合することにより、ミトコンドリア呼吸のCO媒介性阻害と類似の様式で、ミトコンドリア呼吸を阻害することが公知である。これは、還元型に部分的に結合するが、シアン化物は、酸化状態のチトクロムcオキシダーゼ(電子伝達系の複合体IV)に最も強く結合する(Leavesleyら
、Toxicol Sci 101巻(1号):101~111頁、2008年)。還元状態でCOを除去する酸素運搬体の能力に類似して、酸化剤により媒介された酸化状態の酸素運搬体は、シアン化物を除去することができる。よって、赤血球細胞の内側に位置するシアノ-ヘモグロビンおよび身体内の他のヘム含有タンパク質(チトクロムcオキシダーゼ等)からシアン化物を除去するための天然および人工酸素運搬体の使用が、本明細書に企図されている。
【0089】
対象におけるシアン化物中毒を処置する方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、本方法は、シアン化物中毒を有する対象を選択するステップと、対象に天然または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与するステップとを含み、酸素運搬体は、その酸化型である。
【0090】
酸素運搬体が酸化型であるとみなされるために、組成物に含まれる天然または人工酸素運搬体の100%が酸化される必要はない。一部の実施形態では、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%等、酸素運搬体の少なくとも70%が酸化される。特定の実施形態では、酸素運搬体の75~100%、80~100%、85~100%、90~100%または95~100%が酸化される。
【0091】
一部の実施形態では、組成物は、酸化剤をさらに含む。酸化剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与され得るいずれかの酸化剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、酸化剤は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩(フェリシアン化カリウム等)またはこれらのいずれかの組合せを含む。一部の実施形態では、本方法は、第2の酸化剤を酸化された酸素運搬体組成物に添加するステップをさらに含む。大部分の事例では、第2の酸化剤は、ヒトによる等、生理的に安全に耐容性を示す最低有効濃度(酸素運搬体をその酸化型で維持するための)である濃度で、組成物に添加される。一部の例では、組成物における酸化剤の濃度は、約50μM~約50mM、約100μM~約25mM、約250μM~約10mM、約500μM~約5mMまたは約750μM~約1mM等、約10μM~約100mMである。特定の例では、組成物における酸化剤の濃度は、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下である。
【0092】
一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、グロビンタンパク質を含む。一部の例では、グロビンタンパク質は、ヘモグロビンを含む。他の例では、グロビンタンパク質は、ミオグロビンを含む。さらに他の例では、グロビンタンパク質は、ニューログロビンまたはサイトグロビンを含む。特定の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物由来である。
【0093】
一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、軟体動物ヘモシアニンまたは節足動物ヘモシアニン等、ヘモシアニンを含む。
【0094】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む。いくつかのHBOCが、本技術分野で公知である。適切なHBOCが、開示されている方法における使用のために選択および還元され得る。一部の例では、HBOCは、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化Hb POE-コンジュゲート(PHP)(Apex Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-ヘモグロビン(Enzon)、OXYVITA(商標)およびHBOC-201である(GreenburgおよびKim、Crit Care 8巻(追補2号):S61~S64頁、2004年;te Lintel Hekkertら、Am
J Physiol Heart Circ Physiol 298巻:H1103~H1113頁、2010年;Eisenach、Anesthesiology 111巻:946~963頁、2009年)。
【0095】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、リポソーム被包ヘモグロビンまたはリポソーム被包ミオグロビン等、リポソーム被包グロビンタンパク質を含む。他の実施形態では、人工酸素運搬体は、修飾ヘモグロビン、修飾ミオグロビン、修飾ニューログロビンまたは修飾サイトグロビン等、修飾グロビンタンパク質である。
【0096】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ポルフィリン金属錯体を含む。例えば、人工酸素運搬体は、運搬体タンパク質(例えば、アルブミン、セルロプラスミン、ヘモペキシン)または有機化合物(例えば、パーフルオロカーボン)の添加によって可溶化されたポルフィリン金属錯体誘導体を含むことができる。
【0097】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去する方法も本明細書に提供される。本方法は、血液または動物組織を、その酸化型の天然酸素運搬体または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、ヘム含有タンパク質は、ヘモグロビンまたはチトクロムcオキシダーゼである。
【0098】
一部の実施形態では、本方法は、in vivo方法であり、血液または動物組織を、天然または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップは、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む。一部の例では、本方法は、天然または人工酸素運搬体を含む組成物を対象に投与する前に、シアン化物中毒を有する対象を選択するステップをさらに含む。
【0099】
他の実施形態では、血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去する方法は、in vitro方法である。
【0100】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去するための方法の一部の実施形態では、組成物は、酸化剤をさらに含む。酸化剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与され得るいずれかの酸化剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、酸化剤は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩(フェリシアン化カリウム等)またはこれらのいずれかの組合せを含む。
【0101】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去するための方法の一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、グロビンタンパク質を含む。一部の例では、グロビンタンパク質は、ヘモグロビンを含む。他の例では、グロビンタンパク質は、ミオグロビンを含む。さらに他の例では、グロビンタンパク質は、ニューログロビンまたはサイトグロビンを含む。特定の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物由来である。
【0102】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去するための方法の一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、軟体動物ヘモシアニンまたは節足動物ヘモシアニン等、ヘモシアニンを含む。
【0103】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去するための方法の一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む。いくつかのHBOCが、本技術分野で公知である。適切なHBOCが、開示されている方法における使用のために選択および還元され得る。一部の例では、HBOCは、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化Hb POE-コンジュゲート(PHP)(Apex Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-ヘモグロビン(Enzon)、OXYVITA(商標)およびHBOC-201である(GreenburgおよびKim、Crit Care 8巻(追補2号):S61~S64頁、2004年;te Lintel Hekkertら、Am
J Physiol Heart Circ Physiol 298巻:H1103~H1113頁、2010年;Eisenach、Anesthesiology 111巻:946~963頁、2009年)。
【0104】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からシアン化物を除去するための方法の一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、リポソーム被包ヘモグロビンまたはリポソーム被包ミオグロビン等、リポソーム被包グロビンタンパク質を含む。他の実施形態では、人工酸素運搬体は、修飾ヘモグロビン、修飾ミオグロビン、修飾ニューログロビンまたは修飾サイトグロビン等、修飾グロビンタンパク質である。
【0105】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ポルフィリン金属錯体を含む。例えば、人工酸素運搬体は、運搬体タンパク質(例えば、アルブミン、セルロプラスミン、ヘモペキシン)または有機化合物(例えば、パーフルオロカーボン)の添加によって可溶化されたポルフィリン金属錯体誘導体を含むことができる。
VI.硫化水素(HS)中毒を処置する方法
【0106】
硫化水素は、ミトコンドリア呼吸のCO媒介性阻害と類似の様式で、ミトコンドリア呼吸を阻害することが公知である。HSは、還元型のチトクロムcオキシダーゼ(電子伝達系の複合体IV)に最も強く結合する(Nichollsら、Biochem Soc Trans 41巻(
5号):1312~1316頁、2013年)。還元状態でCOを除去する酸素運搬体の能力と類似して、還元剤により媒介される還元状態の酸素運搬体は、HSを除去することができる。よって、赤血球細胞の内側に位置するヘモグロビンおよび身体内の他のヘム含有タンパク質(チトクロムcオキシダーゼ等)からHSを除去するための天然および人工酸素運搬体の使用が、本明細書に企図されている。
【0107】
対象における硫化水素(HS)中毒を処置する方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、本方法は、HS中毒を有する対象を選択するステップと、対象に天然または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与するステップとを含み、酸素運搬体はその還元型である。
【0108】
酸素運搬体が還元型であるとみなされるために、組成物に含まれる天然または人工酸素運搬体の100%が還元される必要はない。一部の実施形態では、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%等、酸素運搬体の少なくとも70%が還元される。特定の実施形態では、酸素運搬体の75~100%、80~100%、85~100%、90~100%または95~100%が還元される。
【0109】
一部の実施形態では、組成物は、還元剤をさらに含む。還元剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与され得るいずれかの還元剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む。一部の実施形態では、本方法は、第2の還元剤を還元された酸素運搬体組成物に添加するステップをさらに含む。大部分の事例では、第2の還元剤は、ヒトによる等、生理的に安全に耐容性を示す最低有効濃度(酸素運搬体をその還元型で維持するための)である濃度で、組成物に添加される。一部の例では、組成物における還元剤の濃度は、約50μM~約50mM、約100μM~約25mM、約250μM~約10mM、約500μM~約5mMまたは約750μM~約1mM等、約10μM~約100mMである。特定の例では、組成物における還元剤の濃度は、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下である。
【0110】
一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、グロビンタンパク質を含む。一部の例では、グロビンタンパク質は、ヘモグロビンを含む。他の例では、グロビンタンパク質は、ミオグロビンを含む。さらに他の例では、グロビンタンパク質は、ニューログロビンまたはサイトグロビンを含む。特定の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物由来である。
【0111】
一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、軟体動物ヘモシアニンまたは節足動物ヘモシアニン等、ヘモシアニンを含む。
【0112】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む。いくつかのHBOCが、本技術分野で公知である。適切なHBOCが、開示されている方法における使用のために選択および還元され得る。一部の例では、HBOCは、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化Hb POE-コンジュゲート(PHP)(Apex Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-ヘモグロビン(Enzon)、OXYVITA(商標)およびHBOC-201である(GreenburgおよびKim、Crit Care 8巻(追補2号):S61~S64頁、2004年;te Lintel Hekkertら、Am
J Physiol Heart Circ Physiol 298巻:H1103~H1113頁、2010年;Eisenach、Anesthesiology 111巻:946~963頁、2009年)。
【0113】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、リポソーム被包ヘモグロビンまたはリポソーム被包ミオグロビン等、リポソーム被包グロビンタンパク質を含む。他の実施形態では、人工酸素運搬体は、修飾ヘモグロビン、修飾ミオグロビン、修飾ニューログロビンまたは修飾サイトグロビン等、修飾グロビンタンパク質である。
【0114】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ポルフィリン金属錯体を含む。例えば、人工酸素運搬体は、運搬体タンパク質(例えば、アルブミン、セルロプラスミン、ヘモペキシン)または有機化合物(例えば、パーフルオロカーボン)の添加によって可溶化されたポルフィリン金属錯体誘導体を含むことができる。
【0115】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去する方法も本明細書に提供される。本方法は、血液または動物組織を、その還元型の天然酸素運搬体または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、ヘム含有タンパク質は、ヘモグロビンまたはチトクロムcオキシダーゼである。
【0116】
一部の実施形態では、本方法は、in vivo方法であり、血液または動物組織を、天然または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップは、治療有効量の組成物を対象に投与することを含む。一部の例では、本方法は、天然または人工酸素運搬体を含む組成物を対象に投与する前に、HS中毒を有する対象を選択するステップをさらに含む。
【0117】
他の実施形態では、血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去する方法は、in vitro方法である。
【0118】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去するための方法の一部の実施形態では、組成物は、還元剤をさらに含む。還元剤は、ヒト対象等の対象に安全に投与され得るいずれかの還元剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の例では、還元剤は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む。
【0119】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去するための方法の一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、グロビンタンパク質を含む。一部の例では、グロビンタンパク質は、ヘモグロビンを含む。他の例では、グロビンタンパク質は、ミオグロビンを含む。さらに他の例では、グロビンタンパク質は、ニューログロビンまたはサイトグロビンを含む。特定の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ヒトヘモグロビン、ヒトミオグロビン、ヒトニューログロビンまたはヒトサイトグロビン等、ヒトグロビンタンパク質である。他の非限定的な例では、グロビンタンパク質は、ウシグロビンタンパク質またはウマグロビンタンパク質等、非ヒト動物由来である。
【0120】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去するための方法の一部の実施形態では、天然酸素運搬体は、軟体動物ヘモシアニンまたは節足動物ヘモシアニン等、ヘモシアニンを含む。
【0121】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去するための方法の一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む。いくつかのHBOCが、本技術分野で公知である。適切なHBOCが、開示されている方法における使用のために選択および還元され得る。一部の例では、HBOCは、DCLHb(HEMASSIST(商標);Baxter)、MP4(HEMOSPAN(商標);Sangart)、ピリドキシル化Hb POE-コンジュゲート(PHP)(Apex Biosciences)、O-R-PolyHbA(HEMOLINK(商標);Hemosol)、PolyBvHb(HEMOPURE(商標);Biopure)、PolyHb(POLYHEME(商標);Northfield)、rHb1.1(OPTRO(商標);Somatogen)、PEG-ヘモグロビン(Enzon)、OXYVITA(商標)およびHBOC-201である(GreenburgおよびKim、Crit Care
8巻(追補2号):S61~S64頁、2004年;te Lintel Hekkertら、Am J Physiol Heart Circ Physiol 298巻:H1103~H1113頁、2010年;Eisenach、Anesthesiology 111巻:946~963頁、2009年)。
【0122】
血液または動物組織におけるヘム含有タンパク質からHSを除去するための方法の一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、リポソーム被包ヘモグロビンまたはリポソーム被包ミオグロビン等、リポソーム被包グロビンタンパク質を含む。他の実施形態では、人工酸素運搬体は、修飾ヘモグロビン、修飾ミオグロビン、修飾ニューログロビンまたは修飾サイトグロビン等、修飾グロビンタンパク質である。
【0123】
一部の実施形態では、人工酸素運搬体は、ポルフィリン金属錯体を含む。例えば、人工酸素運搬体は、運搬体タンパク質(例えば、アルブミン、セルロプラスミン、ヘモペキシン)または有機化合物(例えば、パーフルオロカーボン)の添加によって可溶化されたポルフィリン金属の錯体誘導体を含むことができる。
VII.還元された酸素運搬体を調製する方法
【0124】
還元された酸素運搬体を調製する方法が本明細書にさらに提供される。本方法は、酸素運搬体-還元剤組成物を産生するだめに、酸素運搬体を第1の還元剤と接触させるステップと、還元された酸素運搬体組成物を形成するために、酸素運搬体-還元剤組成物を脱塩カラムに通すステップとを含む。還元された酸素運搬体の調製は、嫌気性環境で行われる。
【0125】
一部の実施形態では、第1の還元剤を、1:100~5:1(還元剤対酸素運搬体)の比で酸素運搬体と接触させる。特定の実施形態では、還元剤対酸素運搬体の比は、1:50~4:1、1:25~3:1、1:10~2:1または1:5~1:1である。一部の例では、還元剤対酸素運搬体の比は、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:5、約1:10、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90または約1:100である。
【0126】
一部の実施形態では、本方法は、第2の還元剤を還元された酸素運搬体組成物に添加するステップをさらに含む。大部分の事例では、第2の還元剤は、ヒトによる等、生理的に安全に耐容性を示す最低有効濃度(酸素運搬体をその還元型で維持するための)である濃度で添加される。一部の例では、第2の還元剤は、約50μM~約50mM、約100μM~約25mM、約250μM~約10mM、約500μM~約5mMまたは約750μM~約1mM等、約10μM~約100mMの濃度で添加される。特定の例では、第2の還元剤は、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下の濃度で添加される。
【0127】
還元剤は、ヒトまたは他の哺乳動物対象等の対象に安全に投与され得るいずれかの還元剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の実施形態では、第1の還元剤、第2の還元剤またはその両方は、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、ヒドララジンおよびチトクロムb5/b5-レダクターゼまたはこれらのいずれかの組合せから選択される。
【0128】
一部の実施形態では、本方法は、還元された酸素運搬体組成物を凍結して、凍結された還元された酸素運搬体組成物を産生するステップをさらに含む。
【0129】
一部の実施形態では、本方法は、凍結された還元された酸素運搬体組成物を解凍するステップをさらに含む。
【0130】
一部の実施形態では、本方法は、還元された酸素運搬体を、一酸化炭素ヘモグロビン血症(一酸化炭素中毒)または硫化水素中毒を有する対象等、それを必要とする対象に投与するステップをさらに含む。一部の例では、対象は、その血液中に少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%カルボキシヘモグロビンを有する。
VIII.酸化された酸素運搬体を調製する方法
【0131】
酸化された酸素運搬体を調製する方法が本明細書にさらに提供される。本方法は、酸素運搬体-酸化剤組成物を産生するために、酸素運搬体を第1の酸化剤と接触させるステップと、酸化された酸素運搬体組成物を形成するために、酸素運搬体-酸化剤組成物を脱塩カラムに通すステップとを含む。酸化された酸素運搬体の調製は、嫌気性環境で行われる。
【0132】
一部の実施形態では、第1の酸化剤を、1:100~5:1(酸化剤対酸素運搬体)の比で酸素運搬体と接触させる。特定の実施形態では、酸化剤対酸素運搬体の比は、1:50~4:1、1:25~3:1、1:10~2:1または1:5~1:1である。一部の例では、酸化剤対酸素運搬体の比は、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:5、約1:10、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90または約1:100である。
【0133】
一部の実施形態では、第1の酸化剤は、脱塩またはゲルクロマトグラフィー等の方法により酸素運搬体から物理的または化学的に除去される(例:フェリシアン化物)。
【0134】
一部の実施形態では、本方法は、第2の酸化剤を酸化された酸素運搬体組成物に添加するステップをさらに含む。大部分の事例では、第2の酸化剤は、ヒトによる等、生理的に安全に耐容性を示す最低有効濃度(酸素運搬体をその酸化型で維持するための)である濃度で添加される。一部の例では、第2の酸化剤は、約50μM~約50mM、約100μM~約25mM、約250μM~約10mM、約500μM~約5mMまたは約750μM~約1mM等、約10μM~約100mMの濃度で添加される。特定の例では、第2の酸化剤は、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下の濃度で添加される。
【0135】
酸化剤は、ヒトまたは他の哺乳動物対象等の対象に安全に投与され得るいずれかの酸化剤(例えば、最小のおよび/または耐容できる毒性を有する薬剤)であり得る。一部の実施形態では、第1の酸化剤、第2の酸化剤またはその両方は、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩(フェリシアン化カリウム等)またはこれらのいずれかの組合せから選択される。
【0136】
一部の実施形態では、本方法は、凍結された酸化された酸素運搬体組成物を産生するために、酸化された酸素運搬体組成物を凍結するステップをさらに含む。
【0137】
一部の実施形態では、本方法は、凍結された酸化された酸素運搬体組成物を解凍するステップをさらに含む。
【0138】
一部の実施形態では、本方法は、酸化された酸素運搬体を、シアン化物中毒を有する対象等、それを必要とする対象に投与するステップをさらに含む。
【0139】
次の実施例は、ある一定の特定の特色および/または実施形態を説明するために示されている。これらの実施例は、本開示を記載されている特定の特色または実施形態に限定するものと解釈するべきではない。
【実施例0140】
(実施例1)
一酸化炭素(CO)除去は、in vivoでCO中毒マウスにおけるカルボキシヘモグロビン(HbCO)を迅速に取り除く
1500ppm COガスを有する空気へのマウスの平均50分間の曝露が、HbCOレベルを64%+/-1%まで増加させたことが以前に示された(PCT公開番号WO2014/150413)。曝露に先立ち、マウスに、血圧モニタリング、血液サンプリング、および別の種類のCO除去グロビンタンパク質である組換えニューログロビン(rNgb)または対照としてのPBSのいずれかの注入のために、大腿動脈および静脈カテーテルの配置を外科的に装着した。Harvard注入ポンプを使用して、マウスに、4分以内に250μLの8~12mM rNgbまたはPBSを注入した。注入直後および5分毎に、HbCOの測定のため、5μLの血液を収集した。図1に示す通り、rNgb注入は、PBS対照と比較して、HbCOレベルを迅速に低下させた。特に、正常空気に5分間戻した後に、HbCOレベルは、PBSを受けた群における13.3%に対して、rNgbを受けた群において平均32.8%降下した(図1)。60分後に、マウスを屠殺し、膀胱は、ミリモル濃度のrNgbを含有することが判明した。本試験は、rNgbが、in vivoでCOキレート剤として作用し、HbCOレベルを急速に低下させ、腎臓を通して濾過されることを実証した。
(実施例2)
材料と方法
【0141】
本実施例は、実施例3~8に記載されている試験のための方法および実験手順について記載する。
ミオグロビンと混合されたカルボキシル化RBCの動態学
【0142】
50~100μLの血液をPBSで5~7回洗浄し、1000×gで5~10分間遠心分離することにより、赤血球細胞を得た。洗浄したRBCを1~2mlのPBSに希釈した。次いで、最大1時間アルゴンガスの流れを通すことにより、ゆっくり撹拌しつつRBCを氷上で脱酸素化した。嫌気性実験のため、アルゴンを短時間通し、Hbに対し過剰な亜ジチオン酸ナトリウムを、RBCに添加した。少なくとも4:1の比で脱酸素化された赤血球細胞溶液を希釈することにより、カルボキシル化された赤血球被包Hbを得た。RBCを脱気PBS(嫌気性実験のために5~10mM亜ジチオン酸塩を含有)で2回洗浄し、脱気された隔壁キャップ付き15mL遠心管において5分間1000×gで遠心分離することにより、過剰COを除去した。洗浄後に、嫌気性実験のための過剰の亜ジチオン酸ナトリウムと共に、最終濃度100~200μMとなるようにRBCを再懸濁した。
【0143】
純粋なHbによる実験について記載されているものと同じ手順に従って、酸素化または脱酸素化されたミオグロビン(Mb)を調製した。一部の実験では、反応開始後に、Mbから赤血球を分離して、吸光度スペクトルを測定した。この場合、Isotemp撹拌ホットプレートおよびウォーターバスの組合せ(Fisher Scientific)により反応温度を調節した。赤血球被包カルボキシヘモグロビン(HbCO)および酸素化または脱酸素化されたMbを、別々のガラスバイアルにおいて25または37℃に平衡化した。最終濃度40μMの両方のタンパク質のためRBC溶液にMbを注入することにより、反応を開始した。等容量のPBS(亜ジチオン酸塩含有または非含有)をカルボキシル化RBCの対照試料に注入した。定期的に、0.5mlの反応および対照試料を採取し、1.5mL微量遠心管において30~60秒間、5000×gで遠心分離した。Mbを含有する上清を取り出し(好気性実験において5mM亜ジチオン酸ナトリウムを添加して、タンパク質の自動酸化を防止した)、氷上で貯蔵した。PBS中の0.5%NP40溶液(嫌気性実験のために5mM亜ジチオン酸ナトリウムを常に含有し、好気性のためには時には含有する)を赤血球ペレットに添加して、細胞を溶解した。1cm経路長キュベットにおいて、Cary 50分光光度計により、溶解したRBC溶液におけるHb吸光度を測定した。このサイクルを6回、各回1.5~5分間で反復し、Hbの6種の吸光度測定値を得た。対照および反応試料を連続的に撹拌した。反応においてヘモグロビンの吸光度を測定した時間を、遠心分離開始15または30秒後(それぞれ30または60秒間の遠心分離持続時間に対し)までの、Mbの注入後に経過した時間であると仮定した。最後の(6番目の)時点を測定した後に、反応および対照混合物の貯蔵した上清試料の吸光度を記録した。
【0144】
一部の実験では、RBCをMbから分離しなかった。その代わりに、Cary 100分光光度計のIntegrating Sphereアタッチメントにより、全体的混合物の吸光度を記録した。この装置は、RBCによって散乱された光を収集し、これにより、スペクトルデコンボリューションに十分に正確な吸光度スペクトルを提供する。これらの実験のための手順は、カルボキシル化赤血球の調製後に、Cary 50においてMbを純粋HbCOと混合するための手順と同じであった。
最小二乗デコンボリューション
【0145】
酸化型(met)、脱酸素化型(デオキシ)、酸素化型(O)およびカルボキシル化型(CO)のヘモグロビン(Hb)およびミオグロビン(Mb)の標準参照スペクトルを得た。タンパク質を氷上で解凍した後に、過剰のフェリシアン化カリウムと混合し、Econo-Pac 10DG脱塩カラム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)に通すことにより、酸化型のスペクトルを得た。酸化型に過剰の亜ジチオン酸ナトリウムを添加した後に、脱酸素化種のスペクトルを記録した。好気性条件下で脱酸素化種を脱塩カラムに通した直後に、酸素化型のスペクトルを記録した。脱酸素化種をCO飽和バッファーと1:4の比で混合した後に、カルボキシル化型のスペクトルを測定した。Cary 50分光光度計において20℃、25℃および37℃で全ての標準スペクトルを収集した。実験スペクトルのデコンボリューションを、Microsoft Excelでの最小二乗法によるフィッティングルーチンにより行った。動態学実験の吸光度の変化は相対的に小さいため、デコンボリューションの精度を確認するために、HbおよびMb濃度が互いに等しくなる制約ありおよびなしで、450と700nm、490と650nmおよび510と600nmの間で、HbおよびMbの両方で構成された全てのスペクトルは常に適合された。同じ目的で、一部の実例では、波長軸に沿って水平にスペクトルをシフトし得るパラメータも適合に含まれた。HbおよびMbのカルボキシル化および脱酸素化標準を使用して、嫌気性実験由来の吸光度スペクトルをデコンボリューションした。酸化型、カルボキシル化型および酸素化型のHbおよびMbの標準を使用して、好気性実験由来の吸光度スペクトルをデコンボリューションした。MbからHbが分離され、好気性実験ではRBCにまたは嫌気性実験では上清に、亜ジチオン酸塩が後に添加されたRBC実験のため、酸素化型および酸化型の代わりにデコンボリューションにおいて脱酸素化標準を使用した。ストップトフロー分光計により、および時には、HP8453により収集されたスペクトルのデコンボリューションの前に、区分的キュービックエルミートの補間法を用いて、Matlabのinterp1機能を使用して、Cary 50分光光度計によって使用されたものと同じ波長に、吸光度値を再度マッピングした。
酸素運搬体の還元
【0146】
酸素運搬体をCOに容易に結合させるために、酸素運搬体は、酸化したFe3+型ではなくFe2+型(還元型)でなければならない。酸化型は、COと相互作用せず、無効となる。酸素運搬体の還元状態を達成するために、強い還元剤を添加し、次いで投与に先立ち除去した。タンパク質を還元型で維持するために、ヒトにおいて安全かつ定期的に投与される、より弱い還元剤であるアスコルビン酸および/またはN-アセチルシステインを添加することができる。
【0147】
図2は、酸素運搬体調製プロセスの流れ図を示す。第1のステップは、亜ジチオン酸ナトリウム(一般的な工業用還元体)等、強い還元体により薬剤を還元することである。亜ジチオン酸塩それ自体は、ラットにおいて2500mg/kg体重のLD50を有する。投与される量を最小化するために、G25分離カラムに通して亜ジチオン酸ナトリウム塩を除去した。調製は、約90%除去率(GE)を有する。これは、フード下にて嫌気性条件で嫌気性バッファー(PBS)により調製された。
【0148】
このステップの後に、薬剤を脱酸素状態で還元した。次いで、少ない濃度の還元剤を添加して、薬剤をこの還元状態に維持した。使用した薬剤は、マウスにおける1.25mM亜ジチオン酸塩等、少ない量においてヒト適用に安全である。予測されるヒトLD50は0.5g/kgであり、マウスはおよそ25gの重さであるため、マウスにおけるLD50用量は約62.5mgである;本試験は、総計0.067mgを使用した。亜ジチオン酸塩は、オキシモルフォン塩酸塩IVの製剤(NUMORPHAN(商標))中に0.10%で存在し、これは、溶液100mL当たり約100mgと同等である。このプロセスのために働く他の薬剤は、例えば、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオンおよびチトクロムb5/b5-レダクターゼである。アスコルビン酸およびN-アセチルシステインは、ヒトにおいて治療目的で使用されており、非常に耐容性が良い。最大一日用量は、アスコルビン酸では6g IV、N-アセチルシステインでは300mg/kg(または25g)である。メトヘモグロビン血症の処置のためのメチレンブルー推奨投薬は、1~2mg/kgまたは50mg/mの2回反復IVである。
【0149】
次いで、薬剤を密封し、-80℃で貯蔵した。解凍後に、薬剤は、>95%還元型を維持した。図3は、CO除去剤としての酸素運搬体の調製および投与のための流れ図を示す。
(実施例3)
CO中毒のin vitroモデル
【0150】
酸素運搬体は、CO中毒におけるHbCO複合体からCOを除去する。この除去プロセスのin vitroモデルにおいて、嫌気性条件で溶液中に100%HbCOを入れた。PBSが添加された場合、分光法によって測定されるHbCOの濃度は、変化しなかった。100%デオキシミオグロビンがこの溶液に1:1比で添加された場合、HbCOの半分超が低下され、COがミオグロビンによって結合された。HbCOに対し欠乏した状態で添加された場合(110.8μM HbCO対85.3μM デオキシミオグロビン)、HbCO濃度は3分の1だけ低下した(図4)。
(実施例4)
酸素運搬体は、重度のCO中毒マウスモデルにおいて血行動態虚脱を反転し、生存を改善する
【0151】
齧歯類においてCO中毒のモデルが確立された。これらのモデルを使用して、ミオグロビンおよびヘモグロビンが、1)in vivoヘモグロビンからCOを除去することができ、2)CO中毒によって誘導される血行動態虚脱を反転することができ、3)CO毒性に起因するミトコンドリア呼吸阻害を反転することができる、解毒剤として作用することが実証された。
【0152】
心血管および死亡率エンドポイントのモデルを確立するために、気管挿管し、換気し、麻酔したマウスを、21%酸素および1.5%イソフルランを有する30,000ppm(3%)COガスに4.5分間曝露した。マウスに、頸静脈(薬物注入のため)および頸動脈(血圧および心拍数モニタリングのため)カテーテルの配置を外科的に装着した。本モデルにおいて、曝露後に300μLのPBSを注入した群において88.2%(15/17)の死亡率が見られた一方、11mMミオグロビンの注入を受けた全てのマウスは生存した(0%死亡率;n=5)。ミオグロビンを注入したマウスの生存は、COによって誘導された血行動態虚脱および徐脈における反転によるものであった(図5)。
【0153】
頸静脈カテーテルにより、分光法を使用してHbCOレベルをサンプリングした。4.5分間のCO曝露の直後に、HbCOレベルは、平均して84~88%であった。PBSまたはウマミオグロビンの注入5分後に、HbCOレベルは、それぞれ72.5%および65.04%に低下した。処置10分後に、HbCOレベルは、それぞれ64.2%および52.8%にさらに低下した。COのマウス半減期は、ヒトよりもはるかに速い。ミオグロビンの注入が、流体よりも速くHbCOのレベルを有意に低下させ、曝露を停止したことが実証された。図6に示す通り、換気したマウスに対する4.5分間の3%COガス曝露後に、300μLのPBSの注入は、88.2%の死亡率をもたらした(青色で記録された死亡)。300μLの11.5mM還元型ミオグロビンの注入は、0%死亡率をもたらした(赤色)。還元型ミオグロビンを注入したマウスにおける生存は、心拍数(上)および平均動脈圧(下)の回復に起因した。
【0154】
11mM未満のミオグロビンの濃度は、PBS(7.69%、n=13)および11mMを超えるミオグロビン濃度(100%生存、n=10)と比較して、同じ生存利益(0%生存、n=4)を付与しなかった(図7)。図7に示す通り、11mMを超えるミオグロビンが、重度のCO中毒によって誘導された血行動態虚脱の反転に必要とされた。これは、還元された酸素運搬体によるHbCO複合体からのCOの化学量論的結合によるものである。類似の様式で、met(または酸化)型の酸素運搬体は、この除去に関与しないため、無効である。したがって、この治療法を有効にするためには、還元された酸素運搬体を調製することが必要である。
【0155】
ミオグロビンと同様に、重度のCO中毒モデルにおいてマウスにヘモグロビンを注入した。これもまた、重度のCO中毒によって誘導された血行動態虚脱を反転する著しい能力を示した(図8)。図8に示す通り、ヘモグロビン注入は、重度のCO中毒によって誘導された血行動態虚脱を反転した。4mM未満の濃度は、CO除去プロセスの性質により、これらの効果を反転しなかった。重ねて、COは、化学量論的様式でHbCOから除去されるため、ヘモグロビンの濃度は、相当に濃度依存性であった。血行動態虚脱の反転に要求される濃度は、≧mMの屈曲点に存在した - <4mMを注入したマウスは死んだ一方、≧4mMを注入したマウスは全て生存した。
(実施例5)
健康なマウスにおける酸素運搬体の安全性の測定
【0156】
健康なマウスにおけるヘモグロビンおよびミオグロビン注入は、耐容性が良かった。健康なマウスを、3%イソフルランガスにより麻酔し、後眼窩空間にミオグロビンおよびヘモグロビンを注射した。マウスを48時間観察した。マウスは、麻酔後に僅かに低下した活動性およびその後に続く24時間に体重減少を示したが、正常な活動性を再開し、その後に体重が増加した。48時間目に、動物を屠殺し、その血清を血液化学に関して解析し、全血を全血球計算に関して検査した。血液学プロファイルは、血小板のごく僅かな減少を明らかにしたが、これは対照動物にも見られた。血液化学は、正常な腎臓および肝臓機能を示した。これは、ミオグロビンおよびヘモグロビンが、大量に(8~12mM)注射された場合であっても、マウスにおいて安全かつ耐容性が良いことを示唆する。
(実施例6)
CO誘導性ミトコンドリア阻害を反転するCO除去剤の能力の測定
【0157】
Clark型の酸素電極呼吸測定システムにおいて、COガス曝露の前後でミトコンドリア呼吸を測定した。還元型ヘモグロビンおよびミオグロビンの両方の注入の効果を評価した。正常なラットから新鮮な肝臓を収集し、分画遠心分離によりミトコンドリアを単離した。左心室(LV)組織のため、正常なラットから新鮮なLVを収集し、次いでホモジナイズした。その結果得られるミトコンドリアおよびLV組織を、Clark型電極気密反応チャンバーに置き、次いで基質(コハク酸塩(ミトコンドリア)またはリンゴ酸塩およびピルビン酸塩(LV)ならびにADP)を添加した。ミトコンドリアは、0%酸素に対し呼吸し、次いで室内空気のピペッティング注入によりシステムを再酸素化した。ミトコンドリアは、再び所望のO濃度に下げて呼吸した。この時点で、ガス形態または飽和PBS溶液のいずれかでCOを添加した。次いで、システムを再酸素化し、0%へと下げて呼吸が起きた。これらの呼吸量をCO曝露前と比較した。最初の再酸素化ステップの理由は、その機能を損傷し得る、ある程度の低酸素を経験したミトコンドリアの量をより等しく比較するためであった。これが完了した後に、CO除去剤を添加し、システムを再酸素化し、この最終呼吸量を、CO前およびCO後呼吸の両方と比較した。
【0158】
図9に示す通り、ADP/コハク酸塩の添加後に、ミトコンドリアは、所望のO濃度に対し呼吸し、システムを再酸素化し、ミトコンドリアは、再度所望のレベルのOに対し呼吸した。次いで、COを注入し、システムを再酸素化し、呼吸量を比較した。0%Oに対する呼吸後に、ミオグロビンを注入し、システムを再酸素化し、呼吸量を比較した。
(実施例7)
ミトコンドリアCO毒性を反転するヘモグロビンおよびミオグロビンの能力
【0159】
CO中毒は、患者に長期効果を有し、一理論は、ミトコンドリアの中毒が、電子伝達系の複合体IVの阻害により増加した活性酸素種(ROS)の生成をもたらすということである。CO曝露によって産生される阻害の量を測定し、これを呼吸量により定量化するためのモデルが開発された。Clark電極において、最大呼吸を測定するための基質コハク酸塩およびADPの添加により、ラット肝臓から単離されたミトコンドリアおよび左心室(LV)ホモジネートの酸素呼吸が測定された。COガスが、3回の再酸素化(呼吸測定システムに酸素を戻し注入し、ミトコンドリア呼吸を再度0%酸素にする)にわたり、単離されたミトコンドリア(図10A)およびLV心臓組織(図10B)においてミトコンドリア呼吸の持続性の減少を誘導したことが実証された。この効果は、より低酸素状態においてより強く、チトクロムcオキシダーゼにおけるヘムにおける結合に対するCOおよびOの間の公知の競合と一貫した(低酸素における62%低下対、酸素正常状態におけるほぼ50%)。これは、単離されたミトコンドリアおよび心臓組織において異なる酸素張力におけるCOの結合および阻害濃度をさらに検査するための、酸素正常状態および低酸素下のCO中毒におけるミトコンドリア機能を測定する能力を実証した。
(実施例8)
組織呼吸におけるCO毒性の効果を反転する還元型ヘモグロビンおよび還元型ミオグロビンの能力
【0160】
さらなる試験は、デオキシHbが、ミトコンドリアに対するCO中毒の効果を反転したことを実証した。COガスは、最大呼吸からの60.5%の減少を誘導した(p=2.3×10-7)。0.5等モル溶液におけるデオキシHbの添加は、中毒になった呼吸量を95%増加させた(p=0.0003、独立t検定)(図11)。
【0161】
別の試験は、デオキシミオグロビンが、COへの曝露後にLVホモジネートの呼吸を増加させたことを実証した。図12に示す通り、COガスは、最大呼吸からの75.6%の減少を誘導した(p=0.0004)。0.5等モルデオキシミオグロビンの添加は、呼吸量を199%増加させた(p=0.0096、独立t検定)。CO曝露後に処置なしでは、呼吸における回復はなかった。
(実施例9)
人工酸素運搬体は、重度のCO中毒マウスモデルにおける血行動態虚脱を反転し、生存を改善する
【0162】
実施例4に記載されている通り、齧歯類においてCO中毒のモデルが確立された。これらのモデルを使用して、人工酸素運搬体のペグ化ヘモグロビン(PEG-Hb;ヒトヘモグロビンへのポリエチレングリコールの表面コンジュゲーション)が、1)in vivoヘモグロビンからCOを除去することができ、2)CO中毒によって誘導された血行動態虚脱を反転することができる、解毒剤として作用することが実証された。PEG-Hbは、ヒトにおいてヘモグロビン系酸素運搬体として検査された(Bjorkholmら、Haematologica 90巻(4号):505~515頁、2005年;Olofssonら、Anesthesiology 105巻(6号):1153~1163頁、2006年;Olofssonら、Transfus Med
18巻(1号):28~39頁、2008年)が、CO中毒のモデルにおいては試験されていない。
【0163】
気管挿管し、換気し、麻酔したマウスを、21%酸素および1.5%イソフルランを有する30,000ppm(3%)COガスに4.5分間曝露した。マウスに、頸静脈(薬物注入のため)および頸動脈(血圧および心拍数モニタリングのため)カテーテルの配置を外科的に装着した。本モデルにおいて、PEG-Hbを受けた全てのマウス(n=3)が生存した。注入した濃度は、およそ200~250マイクロリットル容量における10mMであった。
【0164】
頸静脈カテーテルにより、分光法を使用してHbCOレベルをサンプリングした。4.5分間のCO曝露の直後に、HbCOレベルは、平均して84~88%であった。図13に示す通り、PBS、アルブミンまたはPEG-Hbの注入5分後に、HbCOレベルは、それぞれ82%、80%および66%に低下した。処置10分後に、HbCOレベルは、それぞれ76%、75%および62%にさらに低下した。COのマウス半減期は、ヒトよりもはるかに速い。これらの結果は、PEG-Hbの注入が、流体よりも速く、HbCOのレベルを有意に低下させ、曝露を停止したことを実証する。図14に示す通り、換気したマウスへの4.5分間の3%COガス曝露後に、200~250μLの10mM還元型PEG-Hbの注入は、平均動脈圧(MAP)を回復させた。PEG-Hbを投与した全てのマウスは、MAPにおける回復により生存した。
【0165】
開示されている発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を鑑みて、説明されている実施形態が、本発明の単なる好ましい実施例であり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないことが認識されるべきである。それどころか、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によって定義される。したがって本出願人らは、本出願人らの発明として、これらの特許請求の範囲の範囲および精神内に収まる全てを主張する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象における一酸化炭素ヘモグロビン血症を処置する方法であって、
一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップと、
前記対象に天然または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与するステップと
を含み、前記酸素運搬体がその還元型である、方法。
(項目2)
前記組成物が、薬学的に許容される還元剤をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記酸素運搬体が、グロビンタンパク質を含む天然酸素運搬体である、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記グロビンタンパク質が、ヘモグロビンまたはミオグロビンを含む、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記ヘモグロビンまたはミオグロビンが、ヒトヘモグロビンまたはヒトミオグロビンである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記ヘモグロビンまたはミオグロビンが、非ヒト動物ヘモグロビンまたはミオグロビンである、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記酸素運搬体が、ヘモシアニンを含む天然酸素運搬体である、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記酸素運搬体が、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む人工酸素運搬体である、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記酸素運搬体が、リポソーム被包ヘモグロビン、リポソーム被包ミオグロビン、修飾ヘモグロビンまたは修飾ミオグロビンを含む人工酸素運搬体である、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去する方法であって、前記血液または動物組織を、天然または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップであって、前記酸素運搬体がその還元型である、ステップと、これにより前記血液または動物組織におけるヘモグロビンから一酸化炭素を除去するステップとを含む、方法。
(項目12)
in vivo方法であって、前記血液または動物組織を、天然または人工酸素運搬体を含む組成物と接触させるステップが、天然または人工酸素運搬体を含む前記組成物の治療有効量を対象に投与するステップを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記組成物を前記対象に投与するステップの前に、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する対象を選択するステップを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記対象が、その血液中に少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%カルボキシヘモグロビンを有する、項目12または項目13に記載の方法。
(項目15)
in vitro方法である、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記組成物が、還元剤をさらに含む、項目11~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記酸素運搬体が、グロビンタンパク質を含む天然酸素運搬体である、項目11~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記グロビンタンパク質が、ヘモグロビンまたはミオグロビンを含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記ヘモグロビンまたはミオグロビンが、ヒトヘモグロビンまたはヒトミオグロビンである、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記ヘモグロビンまたはミオグロビンが、非ヒト動物ヘモグロビンまたはミオグロビンである、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記酸素運搬体が、ヘモシアニンを含む天然酸素運搬体である、項目11~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記酸素運搬体が、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む人工酸素運搬体である、項目11~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記酸素運搬体が、リポソーム被包ヘモグロビン、リポソーム被包ミオグロビン、修飾ヘモグロビンまたは修飾ミオグロビンを含む人工酸素運搬体である、項目11~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
還元された酸素運搬体を調製する方法であって、
酸素運搬体-還元剤組成物を産生するために、酸素運搬体を第1の還元剤と接触させるステップと、
還元された酸素運搬体組成物を形成するために、前記酸素運搬体-還元剤組成物を脱塩カラムに通すステップと
を含み、前記還元された酸素運搬体の前記調製が、嫌気性環境で行われる、方法。
(項目26)
第2の還元剤を前記還元された酸素運搬体組成物に添加するステップをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記第2の還元剤が、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下または約2.5mM以下の濃度で添加される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記第1の還元剤、前記第2の還元剤またはその両方が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、ヒドララジンおよびチトクロムb5/b5-レダクターゼから選択される、項目25~27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
凍結された還元された酸素運搬体組成物を産生するために、前記還元された酸素運搬体組成物を凍結するステップをさらに含む、項目25~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記凍結された還元された酸素運搬体組成物を解凍するステップをさらに含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記還元された酸素運搬体を、それを必要とする対象に投与するステップをさらに含む、項目25~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記対象が、一酸化炭素ヘモグロビン血症を有する、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記対象が、その血液中に少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%カルボキシヘモグロビンを有する、項目32に記載の方法。
(項目34)
対象におけるシアン化物中毒を処置する方法であって、
シアン化物中毒を有する対象を選択するステップと、
前記対象に天然または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与するステップと
を含み、前記酸素運搬体がその酸化型である、方法。
(項目35)
前記組成物が、薬学的に許容される酸化剤をさらに含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記酸化剤が、酸素含有ガス混合物、酸素含有液体混合物、フェリシアン化物塩またはこれらのいずれかの組合せを含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記酸素運搬体が、グロビンタンパク質を含む天然酸素運搬体である、項目34~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記グロビンタンパク質が、ヘモグロビンまたはミオグロビンを含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記ヘモグロビンまたはミオグロビンが、ヒトヘモグロビンまたはヒトミオグロビンである、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記ヘモグロビンまたはミオグロビンが、非ヒト動物ヘモグロビンまたはミオグロビンである、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記酸素運搬体が、ヘモシアニンを含む天然酸素運搬体である、項目34~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記酸素運搬体が、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む人工酸素運搬体である、項目34~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記酸素運搬体が、リポソーム被包ヘモグロビン、リポソーム被包ミオグロビン、修飾ヘモグロビンまたは修飾ミオグロビンを含む人工酸素運搬体である、項目34~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
対象における硫化水素(HS)中毒を処置する方法であって、
S中毒を有する対象を選択するステップと、
前記対象に天然または人工酸素運搬体を含む組成物の治療有効量を投与するステップとを含み、前記酸素運搬体がその還元型である、方法。
(項目45)
前記組成物が、薬学的に許容される還元剤をさらに含む、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記還元剤が、亜ジチオン酸ナトリウム、アスコルビン酸、N-アセチルシステイン、メチレンブルー、グルタチオン、チトクロムb5/b5-レダクターゼ、ヒドララジンまたはこれらのいずれかの組合せを含む、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記酸素運搬体が、グロビンタンパク質を含む天然酸素運搬体である、項目44~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記グロビンタンパク質が、ヘモグロビンまたはミオグロビンを含む、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記ヘモグロビンまたはミオグロビンが、ヒトヘモグロビンまたはヒトミオグロビンである、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記ヘモグロビンまたはミオグロビンが、非ヒト動物ヘモグロビンまたはミオグロビンである、項目48に記載の方法。
(項目51)
前記酸素運搬体が、ヘモシアニンを含む天然酸素運搬体である、項目44~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記酸素運搬体が、ヘモグロビン系酸素運搬体(HBOC)を含む人工酸素運搬体である、項目44~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記酸素運搬体が、リポソーム被包ヘモグロビン、リポソーム被包ミオグロビン、修飾ヘモグロビンまたは修飾ミオグロビンを含む人工酸素運搬体である、項目44~46のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4AB
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】