IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 電気化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-アクリルゴムの製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153957
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】アクリルゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/22 20060101AFI20241023BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C08F6/22
C08F20/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135549
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】北原 慧二
(72)【発明者】
【氏名】中野 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】宮内 俊明
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL03P
4J100AL03Q
4J100AL36R
4J100BA04R
4J100CA05
4J100FA02
4J100FA20
4J100GC17
4J100GC25
4J100GC35
4J100HF01
4J100HG31
4J100JA28
4J100JA57
(57)【要約】
【課題】アクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみを小さくすることが可能なアクリルゴムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一側面は、アルキルアクリレートを含むモノマーを乳化剤の存在下で乳化重合してアクリルポリマーを得る工程と、アクリルポリマー及び乳化剤を含有するラテックスと、凝固剤を含有する凝固液とを混合して、アクリルポリマーを凝固させる工程と、凝固させたアクリルポリマーを洗浄してアクリルゴムを得る工程と、を備え、ラテックスと凝固液との混合物中のアクリルポリマーの含有量が、混合物全量を基準として20質量%以下である、アクリルゴムの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルアクリレートを含むモノマーを乳化剤の存在下で乳化重合してアクリルポリマーを得る工程と、
前記アクリルポリマー及び前記乳化剤を含有するラテックスと、凝固剤を含有する凝固液とを混合して、前記アクリルポリマーを凝固させる工程と、
前記ラテックスと前記凝固液との混合物中の前記アクリルポリマーの含有量が、前記混合物全量を基準として20質量%以下である、アクリルゴムの製造方法。
【請求項2】
前記ラテックス中の前記アクリルポリマーの含有量が、前記ラテックス全量を基準として30質量%以上であり、
前記混合物中の前記ラテックスの含有量に対する前記凝固液の含有量の質量比が0.6以上である、請求項1に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項3】
前記ラテックス中の前記アクリルポリマーの含有量が、前記ラテックス全量を基準として30質量%未満である、請求項1に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項4】
前記モノマーが架橋席モノマーを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクリルゴムの製造方法。
【請求項5】
前記架橋席モノマーが、カルボキシル基を有する架橋席モノマーである、請求項4に記載のアクリルゴムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴム及びその架橋物は、耐熱性、耐油性、機械的特性等の物性に優れているため、例えば自動車のエンジンルーム内のホースやシール部品等の材料として使用されている。アクリルゴムは、例えば、モノマーを乳化重合してアクリルポリマーを得た後、当該アクリルポリマーを凝固させることで得られる。このようなアクリルゴムの製造方法は、得られるアクリルゴムの種々の物性に影響を与え得るため、所望の物性に応じて適した製造方法が用いられる。
【0003】
例えば特許文献1には、架橋した時の耐水性及び耐圧縮永久歪み性に優れるアクリルゴムの製造方法として、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体を乳化剤の存在下に重合触媒を用いて乳化重合し乳化重合液を得る乳化重合工程と、乳化重合液をポリエチレングリコールの存在下で凝固し含水クラムを得る凝固工程と、含水クラムに対して洗浄する洗浄工程と、洗浄した含水クラムを乾燥する乾燥工程と、を備えるアクリルゴムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-189835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、アクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみを小さくするためには、アクリルゴムの製造方法において更なる改善の余地がある。本発明の目的は、アクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみを小さくすることが可能なアクリルゴムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アクリルゴムの製造方法において、乳化重合により得られたアクリルポリマーを凝固剤により凝固させる際のアクリルポリマーの濃度を変更すると、アクリルポリマーを構成するモノマーの組成が同じであっても、得られるアクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみに違いが生じること、更には、アクリルポリマーの濃度が所定の範囲であると当該圧縮永久ひずみが小さくなることを見出した。
【0007】
本発明の一側面は、アルキルアクリレートを含むモノマーを乳化剤の存在下で乳化重合してアクリルポリマーを得る工程と、アクリルポリマー及び乳化剤を含有するラテックスと、凝固剤を含有する凝固液とを混合して、アクリルポリマーを凝固させる工程と、凝固させたアクリルポリマーを洗浄してアクリルゴムを得る工程と、を備え、ラテックスと凝固液との混合物中のアクリルポリマーの含有量が、混合物全量を基準として20質量%以下である、アクリルゴムの製造方法である。
【0008】
ラテックス中のアクリルポリマーの含有量が、ラテックス全量を基準として30質量%以上であり、混合物中のラテックスの含有量に対する凝固液の含有量の質量比が0.6以上であってよい。
【0009】
ラテックス中のアクリルポリマーの含有量は、ラテックス全量を基準として30質量%未満であってよい。
【0010】
モノマーは、架橋席モノマーを更に含んでよい。架橋席モノマーは、カルボキシル基を有する架橋席モノマーであってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみを小さくすることが可能なアクリルゴムの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態における凝固工程及びそれ以降の工程を実施するための押出機の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、アルキルアクリレートを含むモノマーを乳化剤の存在下で乳化重合してアクリルポリマーを得る工程(重合工程)と、アクリルポリマー及び乳化剤を含有するラテックスと、凝固剤を含有する凝固液とを混合して、アクリルポリマーを凝固させる工程(凝固工程)と、を備えるアクリルゴムの製造方法である。
【0014】
重合工程では、公知の乳化重合法により、乳化剤の存在下でモノマーを乳化重合する。具体的には、例えば、モノマー(2種以上のモノマーが用いられる場合はモノマー混合物)と乳化剤の水溶液とを反応容器内で混合して懸濁液を作製する。続いて、反応容器中を窒素ガスで置換した後、懸濁液を撹拌しながら、重合開始剤を懸濁液に加えて重合を開始させ、例えば40~100℃で1~24時間で重合を進行させる。
【0015】
モノマーに含まれるアルキルアクリレートは、アクリルゴムの骨格となるものである。アルキルアクリレートは、例えば、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルアクリレートの1種又は2種以上を含む。当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0016】
アルキルアクリレートの含有量は、モノマー全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよく、99質量%以下、98質量%以下、又は97質量%以下であってよい。
【0017】
アルキルアクリレートは、例えば、炭素数1~3のアルキル基を有するアルキルアクリレート(以下「C1-C3アルキルアクリレート」ともいう)を含んでよく、炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(以下「C4-C8アルキルアクリレート」ともいう)を含んでもよい。
【0018】
C1-C3アルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びn-プロピルアクリレートが挙げられる。C1-C3アルキルアクリレートは、アクリルゴムの引張強度を向上させる観点から、好ましくは、メチルアクリレート及びエチルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくはエチルアクリレートを含む。
【0019】
C1-C3アルキルアクリレートの含有量は、モノマー全量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0020】
C4-C8アルキルアクリレートとしては、例えば、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。アルキルアクリレートは、アクリルゴムの耐寒性を向上させる観点から、好ましくはブチルアクリレート、更に好ましくはn-ブチルアクリレートを含む。
【0021】
C4-C8アルキルアクリレートの含有量は、モノマー全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0022】
アルキルアクリレートは、好ましくは、C1-C3アルキルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種と、C4-C8アルキルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種とを含み、より好ましくは、メチルアクリレート又はエチルアクリレートと、n-ブチルアクリレートとを含み、更に好ましくは、エチルアクリレートとn-ブチルアクリレートとを含む。
【0023】
モノマーは、アルキルアクリレートと共重合可能なその他のモノマーを更に含んでもよい。その他のモノマーは、例えばアルキルメタクリレートであってよい。アルキルメタクリレートは、例えば、炭素数1~12のアルキル基を有するアルキルメタクリレートの1種又は2種以上を含む。当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキルメタクリレートは、好ましくは炭素数1~8のアルキル基、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを含む。
【0024】
アルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-ペンチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、及びn-ドデシルメタクリレートが挙げられる。
【0025】
アルキルメタクリレートは、好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-デシルメタクリレート、及びn-ドデシルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、より好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びn-ブチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、更に好ましくはn-ブチルメタクリレートを含む。
【0026】
アルキルメタクリレートの含有量は、モノマー全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0027】
その他のモノマーは、例えば酢酸ビニルであってよい。酢酸ビニルの含有量は、モノマー全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0028】
その他のモノマーは、例えば架橋席モノマーであってよい。架橋席モノマーは、アルキルアクリレートと共重合可能であり、かつ架橋席(架橋点ともいう)を形成する官能基を有するモノマーである。架橋席モノマーは、重合性の炭素-炭素二重結合を有しており、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、メタアリル基、ビニル基、又はアルケニレン基を有している。
【0029】
上記官能基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基及び活性塩素基が挙げられる。架橋席モノマーは、これらの官能基の1種又は2種以上を有していてよい。架橋席モノマーは、凝固工程における混合物中のアクリルポリマーの含有量を所定の範囲とすることによる、アクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみの低減効果(詳細は後述する)が特に好適に得られる観点から、好ましくはカルボキシル基を有する架橋席モノマーである。
【0030】
エポキシ基を有する架橋席モノマーは、好ましくはグリシジル基を有している。エポキシ基を有する架橋席モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、及びメタアリルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0031】
カルボキシル基を有する架橋席モノマー中のカルボキシル基の数は、1つであってよく、2つであってよく、3つ以上であってもよい。カルボキシル基を有する架橋席モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びマレイン酸モノアルキルエステルが挙げられる。
【0032】
活性塩素基を有する架橋席モノマーとしては、例えば、2-クロロエチルビニルエーテル、2-クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、クロロ酢酸ビニル、及びクロロ酢酸アリルが挙げられる。
【0033】
架橋席モノマーの含有量は、架橋席モノマー以外のモノマー全量100質量部に対して、0.5質量部以上、0.8質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、又は3質量部以上であってよく、10質量部以下、7質量部以下、又は5質量部以下であってよい。
【0034】
その他のモノマーは、例えば、エチレン、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、アルキルビニルケトン、ビニルエーテル、アリルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルニトリル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン等であってもよい。これらのその他のモノマーの含有量は、モノマー全量を基準として、1質量%以上であってよく、10質量%以下であってよい。
【0035】
乳化剤は、上記の乳化重合に用いられる公知の乳化剤であってよい。乳化剤は、例えばノニオン系乳化剤であってよい。ノニオン系乳化剤は、エーテル型ノニオン系乳化剤、エステル型ノニオン系乳化剤、エーテルエステル型ノニオン系乳化剤、含窒素型ノニオン系乳化剤、及びポリビニルアルコール系乳化剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0036】
エーテル型ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンラウリルグリコール、及びポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。
【0037】
エステル型ノニオン系乳化剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルは、例えばモノエステルであってよい。グリセリン脂肪酸エステルは、例えば、モノエステルであってよく、ジエステルであってもよい。
【0038】
エーテルエステル型ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルは、例えば、モノエステルであってよく、ジエステルであってもよい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、例えば、モノエステルであってよい。
【0039】
含窒素型ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアミド、及び脂肪酸ジエタノールアミドが挙げられる。
【0040】
ポリビニルアルコール系乳化剤は、完全けん化ポリビニルアルコールであってよく、部分けん化ポリビニルアルコールであってもよく、好ましくは部分けん化ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールのけん化度は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K6726「3.5 けん化度」に従って測定される値を意味する。
【0041】
乳化剤の添加量は、モノマー全量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0042】
重合開始剤は、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、又は、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物であってよく、好ましくはtert-ブチルヒドロペルオキシドである。重合開始剤の添加量は、モノマー全量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であってよく、2質量部以下であってよい。
【0043】
懸濁液には、pH調整剤を更に添加してもよい。pH調整剤は、例えば、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩であってよく、好ましくは酢酸ナトリウムである。pH調整剤の添加量は、モノマー全量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、5質量部以下であってよい。
【0044】
重合工程に続く凝固工程及びそれ以降の工程は、例えば押出機を用いて実施される。図1は、当該押出機の一例を示す模式図である。一実施形態において、押出機1は、凝固ゾーン2と、第一の排水ゾーン3と、第一の洗浄ゾーン4と、第二の排水ゾーン5と、第二の洗浄ゾーン6と、第三の排水ゾーン7と、乾燥ゾーン8とをこの順に備えている。
【0045】
凝固工程では、凝固ゾーン2に、アクリルポリマー及び乳化剤を含有するラテックスLと、凝固剤を含有する凝固液Cとをそれぞれ供給し、ラテックスL及び凝固液Cを混合することにより、アクリルポリマーを凝固させる。
【0046】
凝固液Cは、例えば、凝固剤を含有する水溶液であってよく、凝固剤及び水のみからなる水溶液であってよい。凝固液C中の凝固剤の含有量は、アクリルポリマーの量に応じて適切な量の凝固剤が添加されるように設定される。例えば、凝固液の添加量は、アクリルポリマー100質量部に対して、1質量部以上、3質量部以上、又は5質量部以上であってよく、50質量部以下、40質量部以下、又は30質量部以下であってよい。凝固液C中の凝固剤の含有量は、このような添加量となるように設定されればよく、例えば、凝固液C全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、又は5質量%以上であってよく、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0047】
凝固剤としては、例えば、アンモニウム塩、1~3価の金属塩、無機酸、及び有機酸が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、ホウ酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、及び塩化アンモニウムが挙げられる。1~3価の金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、及び亜鉛塩が挙げられる。ナトリウム塩としては、例えば、ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムが挙げられる。マグネシウム塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、及び硝酸マグネシウムが挙げられる。カルシウム塩としては、例えば、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、及び硝酸カルシウムが挙げられる。アルミニウム塩としては、例えば、硫酸アルミニウム及び塩化アルミニウムが挙げられる。亜鉛塩としては、例えば、塩化亜鉛及び酢酸亜鉛が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、及び硝酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸及び酢酸が挙げられる。
【0048】
凝固工程では、ラテックスLと凝固液Cとの混合物中のアクリルポリマーの含有量が、混合物全量を基準として20質量%以下となるように、ラテックスL及び凝固液Cを凝固ゾーン2に供給する。これにより、得られるアクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみを小さくすることができる。このような効果が得られる理由は、アクリルポリマーの含有量が少ないことにより、アクリルポリマーと共存する乳化剤を後述する洗浄工程において除去しやすくなるためであると推測される。当該アクリルポリマーの含有量は、アクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみを更に小さくすることができる観点から、混合物全量を基準として、好ましくは、19質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0049】
混合物中のアクリルポリマーの含有量は、ラテックスL中のアクリルポリマーの含有量と、混合物中のラテックスL及び凝固液Cの混合比(言い換えれば、ラテックスL及び凝固液Cの供給量)とを調整することにより、上記の範囲内にすることができる。
【0050】
ラテックスLは、重合工程で得られた反応物(アクリルポリマーと乳化剤とを含有する)をそのまま用いてもよく、当該反応物を例えば水で希釈してラテックスL中のアクリルポリマーの含有量を調整した上で用いてもよい。
【0051】
ラテックスL中のアクリルポリマーの含有量は、一実施形態において、ラテックスL全量を基準として、30質量%以上、31質量%以上、32質量%以上、33質量%以上、34質量%以上、又は35質量%以上であってよく、50質量%以下であってよい。この場合、混合物中のアクリルポリマーの含有量を上記の範囲とするために、混合物中のラテックスLの含有量に対する凝固液Cの含有量の質量比(凝固液Cの供給量/ラテックスLの供給量)は、好ましくは、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1以上、1.5以上、1.8以上、2以上、又は2.2以上であり、例えば4以下であってよい。この場合、アクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみを小さくできることに加えて、アクリルゴムの収率を高くできる。
【0052】
ラテックスL中のアクリルポリマーの含有量は、他の一実施形態において、ラテックスL全量を基準として、30質量%未満、25質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、又は15質量%以下であってよく、例えば10質量%以上であってよい。この場合、ラテックスL中のアクリルポリマーの含有量が比較的少ないため、混合物中のアクリルポリマーの含有量を上記の範囲に調整しやすい。混合物中のラテックスLの含有量に対する凝固液Cの含有量の質量比(凝固液Cの供給量/ラテックスLの供給量)は、例えば、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、又は0.5以上であってよく、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、又は0.5以下であってよい。この実施形態では、アクリルゴムの架橋物の圧縮永久ひずみを更に小さくすることができる。
【0053】
アクリルゴムの製造方法は、凝固工程に続いて、第一の排水工程と、第一の洗浄工程と、第二の排水工程と、第二の洗浄工程と、第三の排水工程と、乾燥工程とをこの順に更に備えていてもよい。これらの各工程は、押出機1のスクリューを回転させることによって、凝固ゾーン2で凝固させたアクリルポリマーを押し出しながら実施される。押出機1のスクリューの回転数は、例えば、40rpm以上であってよく、200rpm以下であってよい。
【0054】
第一の排水工程では、第一の排水ゾーン3において、押出機1のスクリューの回転によってアクリルポリマーの脱水を行うと共に、排水スリットから排水D1を行う。
【0055】
第一の洗浄工程では、第一の洗浄ゾーン4において、洗浄液W1を供給しながら押出機1のスクリューを回転させることによってアクリルポリマーを洗浄し、アクリルポリマー中の不純物(乳化剤、凝固剤、未反応物など)を除去する。洗浄液W1は、例えば水であってよい。
【0056】
第二の排水工程では、第二の排水ゾーン5において、押出機1のスクリューの回転によってアクリルポリマーの脱水を行うと共に、排水スリットから排水D2を行う。
【0057】
第二の洗浄工程では、第二の洗浄ゾーン6において、洗浄液W2を供給しながら押出機1のスクリューを回転させることによってアクリルポリマーを更に洗浄し、アクリルポリマー中の不純物(乳化剤、凝固剤、未反応物など)を更に除去する。洗浄液W2は、例えば水であってよい。
【0058】
第三の排水工程では、第三の排水ゾーン7において、押出機1のスクリューの回転によってアクリルポリマーの脱水を行うと共に、排水スリットから排水D3を行う。
【0059】
第一の洗浄工程及び第二の洗浄工程で供給される洗浄液W1,W2の合計量は、アクリルポリマー100質量部に対して、例えば、250質量部以上であってよく、800質量部以下であってよい。
【0060】
乾燥工程では、乾燥ゾーン8において、例えば減圧条件下で加熱することでアクリルポリマーを乾燥させる。減圧条件の圧力は、例えば、90kPa以下であってよく、50kPa以上であってよい。加熱は、例えば、乾燥ゾーン8の温度を高くすると共に、押出機1のヘッドを高くすることにより行われる。乾燥ゾーン8の温度は、例えば、105℃以上であってよく、200℃以下であってよい。押出機1のヘッドの温度は、例えば、130℃以上であってよく、200℃以下であってよい。
【0061】
以上の工程を経て、押出機1からアクリルゴムRが押し出され、アクリルゴムRが得られる。このようにして得られるアクリルゴムは、必要に応じて添加剤と混合してゴム組成物として用いられてよい。本発明の他の一実施形態は、上記のアクリルゴムの製造方法によりアクリルゴムを得る工程と、当該アクリルゴムと添加剤とを混合してゴム組成物を得る工程と、を備えるゴム組成物の製造方法である。
【0062】
アクリルゴムの含有量は、ゴム組成物の全量を基準として、例えば、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上であってよく、90質量%以下であってよい。
【0063】
添加剤としては、例えば、充填剤、滑剤、老化防止剤、界面活性剤、架橋剤、及び架橋促進剤が挙げられる。
【0064】
充填剤としては、例えばカーボンブラック、シリカ、タルク及び炭酸カルシウムが挙げられる。充填剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以上であってよく、100質量部以下であってよい。
【0065】
滑剤としては、例えば、流動パラフィン、ステアリン酸、ステアリルアミン、脂肪酸亜鉛、脂肪酸エステル、及びオルガノシリコーンが挙げられる。滑剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0066】
老化防止剤としては、例えば芳香族アミン化合物及びフェノール化合物が挙げられる。老化防止剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0067】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。界面活性剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0068】
架橋剤としては、例えば、イミダゾール化合物及びジアミン化合物が挙げられる。架橋剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0069】
架橋促進剤は、ゴム組成物が架橋剤を含有する場合に、好ましく用いられる。架橋促進剤としては、例えば、トリメチルチオ尿素化合物、フェノチアジン化合物、脂肪族1価2級アミン化合物、脂肪族1価3級アミン化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩、ジアザビシクロアルケン化合物及びグアニジン化合物が挙げられる。架橋促進剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0070】
ゴム組成物は、架橋された状態で(架橋物として)好適に用いられる。本発明の他の一実施形態は、上記のアクリルゴムの製造方法によりアクリルゴムを得る工程と、当該アクリルゴムと添加剤とを混合してゴム組成物を得る工程と、当該ゴム組成物を架橋させて架橋物を得る工程と、を備えるゴム組成物の架橋物の製造方法である。
【0071】
ゴム組成物を架橋させる方法は、公知の方法であってよく、例えば、ゴム組成物を加熱及び加圧する第一の架橋工程と、第一の架橋工程後のゴム組成物を更に加熱する第二の架橋工程とを備えていてよい。
【0072】
第一の架橋工程において、加熱温度は、例えば、150℃以上であってよく、220℃以下であってよい。加圧時の圧力は、例えば、0.4MPa以上であってよく、20MPa以下であってよい。加熱及び加圧を行う時間は、例えば、5分間以上であってよく、2時間以下であってよい。
【0073】
第二の架橋工程において、加熱温度は、例えば、150℃以上であってよく、220℃以下であってよい。加熱時間は、例えば、30分間以上であってよく、24時間以下であってよい。
【0074】
アクリルゴムを構成するモノマーが架橋席モノマーを含む場合、架橋席モノマーの架橋席(架橋点)により、アクリルゴム同士の架橋が形成される。この場合、ゴム組成物が架橋剤を含有していると、架橋剤によりアクリルゴム同士の架橋が更に形成される。あるいは、アクリルゴムを構成するモノマーが架橋席モノマーを含まず、ゴム組成物が架橋剤を含有する場合、架橋剤によりアクリルゴム同士の架橋が形成される。
【0075】
ゴム組成物の架橋物は、特に、ゴムホースや、ガスケット、パッキング等のシール部品として好適に用いられる。ゴムホースとしては、例えば、自動車、建設機械、油圧機器等のトランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、エアダクトホース、ターボホース、ホットエアーホース、ラジエターホース、パワーステアリングホース、燃料系統用ホース、及びドレイン系統用ホース等が挙げられる。上記の製造方法により得られるアクリルゴムを含有するゴム組成物の架橋物は、圧縮永久ひずみの点で優れているため、ターボホース及びシール部品として特に好適である。
【0076】
シール部品としては、例えば、エンジンヘッドカバーガスケット、オイルパンガスケット、オイルシール、リップシールパッキン、O-リング、トランスミッションシールガスケット、クランクシャフト、カムシャフトシールガスケット、バルブステム、パワーステアリングシールベルトカバーシール、等速ジョイント用ブーツ材及びラックアンドピニオンブーツ材が挙げられる。
【実施例0077】
以下、実施例をよって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
<実施例1-1~1-4及び比較例1-1>
(アクリルゴムの製造)
内容積40リットルの耐圧反応容器に、エチルアクリレート70質量部、n-ブチルアクリレート30質量部、及びマレイン酸モノブチル2.66質量部からなるモノマー混合物11kgと、乳化剤として部分けん化ポリビニルアルコールの4質量%水溶液(ポリビニルアルコールのけん化度:88モル%)17kgと、酢酸ナトリウム22gとを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。容器内上部の空気を窒素で置換後、攪拌を続行し、容器内を55℃に保持した後、t-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(0.25質量%)2リットルを加えて、乳化重合を開始させた。容器内温度を55℃に保ち、6時間後に反応を終了させた。
【0079】
反応終了後の反応液に対して、必要に応じて水を添加して、表1に示す量(ラテックス全量を基準とした質量%)のアクリルポリマーを含有する(更には上述した乳化剤等を含有する)ラテックスを得た。また、凝固剤として、ホウ酸ナトリウム1.25質量部、硫酸アンモニウム2.25質量部、及びホウ酸アンモニウム3.75質量部の混合物を用い、この混合物(凝固剤)の含有量が表1に示す量(凝固液全量を基準とした質量%)となるように水に溶解して凝固液を得た。
【0080】
次に、図1に模式的に示すような構成(詳細は前述)を備える二軸混練押出機1(TEM-50、東芝機械社製)において、得られたラテックスL及び凝固液Cをそれぞれ表1に示す供給量で凝固ゾーン2に供給して混合し、アクリルポリマーを凝固させた。続いて、押出機1のスクリューの回転数:120rpmにて、凝固させたアクリルポリマーを押し出しながら、第一の排水ゾーン3において、アクリルポリマーから排水D1を行った。その後、洗浄液W1,W2として水を使用し、第一の洗浄ゾーン4における水洗及び第二の排水ゾーン5における排水D2と、第二の洗浄ゾーン6における水洗及び第三の排水ゾーン7における排水D3とを順次行った。第一の洗浄ゾーン4及び第二の洗浄ゾーン6で使用した水の合計量は、アクリルポリマー100質量部に対して430質量部であった。最後に、乾燥ゾーン8において、減圧(80kPa)下にてアクリルポリマーを加熱(乾燥ゾーン8の温度:150℃、押出機のヘッドの温度:155℃)することにより、アクリルゴムを得た。
【0081】
なお、表1に示すラテックスと凝固液との混合物中のアクリルポリマーの含有量(質量%)は、下記式により算出した。
混合物中のアクリルポリマーの含有量=F/(F+F)×100
式中、
:アクリルポリマーの供給量(kg/h)
:ラテックスの供給量(kg/h)
:凝固液の供給量(kg/h)
であり、Fは下記式により算出した。
=F×C/100
式中、
:ラテックス中のアクリルポリマーの含有量(質量%)
である。
【0082】
(ゴム組成物の調製)
続いて、得られた各アクリルゴム100質量部と以下の成分とを8インチオープンロールで混練することにより、ゴム組成物を得た。
充填剤:カーボンブラック(東海カーボン社製 シーストSO)50質量部
滑剤:ステアリン酸(花王社製 ルナックS-90)1質量部、及びステアリルアミン(花王社製 ファーミン80)0.3質量部
老化防止剤:4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(アディバント社製 Naugard#445)1質量部
架橋剤:6-アミノヘキシルカルバミド酸(デュポン社製 Diak#1)0.6質量部
架橋促進剤:1,8-ジアザビシクロ-5,4,0-ウンデカ-7-エン含有物(ランクセス社製 RHENOGRAN XLA-60)0.8質量部
【0083】
(圧縮永久ひずみの評価)
得られたゴム組成物を厚さ2.4mmのシートに分出しした後、プレス加硫機を用いて、170℃、10MPaの条件で、上記シートを6枚重ねた状態で、20分間加熱及び加圧することにより、一次加硫(架橋)を行った。その後、ギヤーオーブンを用いて、170℃で4時間加熱することにより、二次加硫(架橋)を行い、直径29.0±0.5mm、厚さ12.5±0.5mmの円盤状の試験片を得た。当該試験片について、JIS K6262に準拠して、150℃、144時間における圧縮永久ひずみ(%)を測定した。表1には、比較例1-1の圧縮永久ひずみを100としたときの各実施例の圧縮永久ひずみの相対値を示す。
【0084】
【表1】
【0085】
<実施例2-1~2-2及び比較例2-1>
アクリルゴムの製造において、モノマー混合物の組成を、エチルアクリレート80質量部、n-ブチルアクリレート20質量部、及びマレイン酸モノブチル4.00質量部に変更した以外は、実施例1-1等と同様にして、アクリルゴムの製造、ゴム組成物の調製、及び圧縮永久ひずみの評価を行った。アクリルゴムの製造条件及び圧縮永久ひずみの評価結果(比較例2-1の圧縮永久ひずみを100としたときの各実施例の圧縮永久ひずみの相対値)を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
<実施例3-1及び比較例3-1>
アクリルゴムの製造において、モノマー混合物の組成を、エチルアクリレート46質量部、n-ブチルアクリレート26質量部、n-ブチルメタクリレート28質量部、及びマレイン酸モノブチル4.00質量部に変更した以外は、実施例1-1等と同様にして、アクリルゴムの製造、ゴム組成物の調製、及び圧縮永久ひずみの評価を行った。アクリルゴムの製造条件及び圧縮永久ひずみの評価結果(比較例3-1の圧縮永久ひずみを100としたときの実施例の圧縮永久ひずみの相対値)を表3に示す。
【0088】
【表3】
【0089】
<実施例4-1~4-2及び比較例4-1>
アクリルゴムの製造において、モノマー混合物の組成を、酢酸ビニル20.9質量部、メチルアクリレート10.4質量部、n-ブチルアクリレート68.7質量部、及びグリシジルメタクリレート1.55質量部に変更し、凝固剤を、ホウ酸ナトリウム2.5質量部及び硫酸アンモニウム1.5質量部の混合物に変更した以外は、実施例1-1等と同様にして、アクリルゴムを製造した。
【0090】
続いて、得られた各アクリルゴム100質量部と以下の成分とを8インチオープンロールで混練することにより、ゴム組成物を得た。
充填剤:カーボンブラック(東海カーボン社製 シーストSO)50質量部
滑剤:ステアリン酸(花王社製 ルナックS-90)1質量部、及びステアリルアミン(花王社製 ファーミン80)0.3質量部
老化防止剤:4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(アディバント社製 Naugard#445)1質量部
界面活性剤:ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製 エマール0)1質量部
架橋剤:1-(2-シアノエチル)-2-メチルイミダゾール(四国化成工業社製 CN-25)1.4質量部
架橋促進剤:安息香酸アンモニウム(大内新興社製 バルノックAB)0.3質量部
【0091】
得られた各ゴム組成物について、実施例1-1等と同様にして、圧縮永久ひずみの評価を行った。アクリルゴムの製造条件及び圧縮永久ひずみの評価結果(比較例4-1の圧縮永久ひずみを100としたときの各実施例の圧縮永久ひずみの相対値)を表4に示す。
【0092】
【表4】
【符号の説明】
【0093】
1…押出機、2…凝固ゾーン、3…第一の排水ゾーン、4…第一の洗浄ゾーン、5…第二の排水ゾーン、6…第二の洗浄ゾーン、7…第三の排水ゾーン、8…乾燥ゾーン。
図1