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  • 特開-上下装置及び水中探知装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153981
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】上下装置及び水中探知装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/20 20060101AFI20241023BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20241023BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F16H25/20 H
F16H25/22 Z
F16D41/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067536
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】小森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岡村 公嗣
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA35
3J062CD04
3J062CD45
3J062CD79
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でシャフトの自然下降を抑制することが可能な上下装置を提供する。
【解決手段】上下装置は、上下方向に延びたねじ軸と、ねじ軸に取り付けられたナットと、ねじ軸を回転させる電動モータと、上下方向に延び、下端に送受波器を保持し、ナットに連結され、ねじ軸の回転に応じて上下動するシャフトと、ねじ軸に取り付けられたロータリーダンパーと、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びたねじ軸と、
前記ねじ軸に取り付けられたナットと、
前記ねじ軸を回転させる電動モータと、
上下方向に延び、下端に送受波器を保持し、前記ナットに連結され、前記ねじ軸の回転に応じて上下動するシャフトと、
前記ねじ軸に取り付けられたロータリーダンパーと、
を備える、上下装置。
【請求項2】
前記ねじ軸は、リード角が15度以上である、
請求項1に記載の上下装置。
【請求項3】
前記ねじ軸は、多条ねじである、
請求項1に記載の上下装置。
【請求項4】
前記ねじ軸と前記ナットは、ボールねじである、
請求項1に記載の上下装置。
【請求項5】
前記電動モータの出力軸に設けられた駆動ギアと、前記ねじ軸に設けられた、前記駆動ギアと噛み合う従動ギアと、をさらに備え、
前記駆動ギアに対する前記従動ギアのギア比が1未満である、
請求項1に記載の上下装置。
【請求項6】
前記シャフトの下降時に前記ねじ軸の動力を前記ロータリーダンパーに伝達し、前記シャフトの上昇時に前記ねじ軸の動力を前記ロータリーダンパーに伝達しないワンウェイクラッチをさらに備える、
請求項1に記載の上下装置。
【請求項7】
請求項1に記載の上下装置を備える水中探知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下装置及び水中探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転がり軸受けに対してスラスト方向に予圧を付与することで、転がり軸受けに回転抵抗を持たせて送受波器に接続されるシャフトに制動力を付与する水中探知装置か開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6837819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャフトは非使用時に自然下降するおそれがあるため、シャフトの自然下降を抑制する構成が求められる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、簡易な構成でシャフトの自然下降を抑制することが可能な上下装置及び水中探知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の上下装置は、上下方向に延びたねじ軸と、前記ねじ軸に取り付けられたナットと、前記ねじ軸を回転させる電動モータと、上下方向に延び、下端に送受波器を保持し、前記ナットに連結され、前記ねじ軸の回転に応じて上下動するシャフトと、前記ねじ軸に取り付けられたロータリーダンパーと、を備える。これによれば、簡易な構成でシャフトの自然下降を抑制することが可能となる。
【0007】
上記態様において、前記ねじ軸は、リード角が15度以上であってもよい。これによれば、ロータリーダンパーの制動力の増大を避けるためにねじ軸の回転速度を抑えても、シャフトの移動量を確保することが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記ねじ軸は、多条ねじであってもよい。これによれば、ロータリーダンパーの制動力の増大を避けるためにねじ軸の回転速度を抑えても、シャフトの移動量を確保することが可能となる。また、高い負荷を受けることができる。
【0009】
上記態様において、前記ねじ軸と前記ナットは、ボールねじであってもよい。これによれば、摩擦力が小さいボールねじを採用しても、シャフトの自然下降を抑制することが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記電動モータの出力軸に設けられた駆動ギアと、前記ねじ軸に設けられた、前記駆動ギアと噛み合う従動ギアと、をさらに備え、前記駆動ギアに対する前記従動ギアのギア比が1未満であってもよい。これによれば、ねじ軸の回転速度を抑えることが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記シャフトの下降時に前記ねじ軸の動力を前記ロータリーダンパーに伝達し、前記シャフトの上昇時に前記ねじ軸の動力を前記ロータリーダンパーに伝達しないワンウェイクラッチをさらに備えてもよい。これによれば、シャフトの自然下降を抑制しつつ、シャフトの上昇時にロータリーダンパーの制動力を作用させないことが可能となる。
【0012】
また、本発明の他の態様の水中探知装置は、上記上下装置を備える。これによれば、簡易な構成でシャフトの自然下降を抑制した上下装置を備えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】水中探知装置の構成例を示す図である。
図2】上下装置の構成例を示す斜視図である。
図3】上下装置の構成例を示す平面図である。
図4図3のIV-IV線で切断したときの断面図である。
図5図3のV-V線で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、水中探知装置100の構成例を示す図である。水中探知装置100は、超音波を利用して水中の物体を探知するソナーである。水中探知装置100は、制御部101、送受信装置102、送受波器103、表示部104、操作部105、及び上下装置1を備えている。
【0016】
制御部101は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ、及び入出力インターフェース等を含むコンピュータである。
【0017】
送受信装置102は、送信回路及び受信回路を備えている。送信回路は、送信信号を生成して送受波器103に出力する。受信回路は、送受波器103からのエコー信号を増幅及びA/D変換して制御部101に出力する。
【0018】
送受波器103は、振動子を備えており、送受信装置102からの送信信号に基づく超音波を水中に発射するとともに、その反射波に基づくエコー信号を送受信装置102へ出力する。
【0019】
水中探知装置100は、送受波器103から一部又は全部の方位に超音波を一斉に発射するスキャニングソナーであってもよいし、送受波器103から超音波を発射する方向を順次変化させるサーチライトソナーであってもよい。
【0020】
上下装置1は、送受波器103を上下動させる。上下装置1は、水中探知装置100の使用時に送受波器103を船底から下方に突出させ、水中探知装置100の非使用時には送受波器103を船底よりも上方に格納する。
【0021】
図2及び図3は、上下装置1の構成例を示す斜視図及び平面図である。図2では、送受波器103を囲むタンク90(図1参照)の図示を省略している。図4は、図3のIV-IV線で切断したときの断面図である。図5は、図3のV-V線で切断したときの断面図である。図中の矢印Uは上方向を表し、矢印Dは下方向を表す。
【0022】
上下装置1は、上下方向に延びたシャフト2を備えている。シャフト2は、上下動可能に構成されている。シャフト2の下端には、送受波器103が保持される。シャフト2は、フランジ92を貫通しており、フランジ92に対して上下動する。
【0023】
シャフト2は、送受波器103を送受信装置102(図1参照)と電気的に接続するためのケーブル28を収容している。ケーブル28は、シャフト2の上端から外部に延出している。
【0024】
フランジ92上には、上下方向に延びた箱型のフレーム40が配置されている。また、フレーム40の側方にはモータカバー50が配置されており、フレーム40とモータカバー50の上方にはギアカバー60が配置されている。
【0025】
フレーム40には、上下方向に延びたねじ軸3が収容されている。ねじ軸3は、軸受94によって回転可能に支持されている。ねじ軸3の上端部は、ギアカバー60の内側に進入している。ねじ軸3にはナット4が取り付けられている。
【0026】
シャフト2とナット4は、連結部材21によって互いに連結されている。フレーム40には、連結部材21を通すためのスリット4aが形成されている。シャフト2は、ねじ軸3の回転に応じてナット4とともに上下動する。
【0027】
本実施形態では、ねじ軸3は、大リードのねじ軸である。ねじ軸3のリード角は、例えば15度以上、さらには30度以上であることが好ましい。ねじ軸3のリードは、ねじ軸3の直径より大きくてもよい。ねじ軸3のリード角β、リードL、直径Dの関係は、tanβ=L/πDで表される。
【0028】
また、ねじ軸3は、リードがピッチよりも大きい。リードは、1回転したときに軸方向に進む距離である。ピッチは、隣り合うねじ山の間隔である。具体的には、ねじ軸3は、多条ねじである。例えば、ねじ軸3は、リードがピッチの2倍である二条ねじである。
【0029】
また、ねじ軸3とナット4は、ボールねじである。すなわち、ねじ軸3とナット4の間に複数のボール(不図示)が配置されており、ねじ軸3、ナット4及びボールが、ボールねじを構成している。
【0030】
モータカバー50には、ねじ軸3を回転させるための電動モータ5が収容されている。電動モータ5は、上方に突出した出力軸54を有している。出力軸54は、ギアカバー60の内側に進入している。
【0031】
ギアカバー60には、電動モータ5の動力をねじ軸3に伝達するための駆動ギア61及び従動ギア62が収容されている。駆動ギア61は、電動モータ5の出力軸54に設けられており、従動ギア62は、ねじ軸3の上端部に設けられている。
【0032】
本実施形態では、駆動ギア61に対する従動ギア62のギア比は1未満である。ギア比は、駆動ギア61が1回転するときに従動ギア62が何回転するかを表す。言い換えると、駆動ギア61の歯数は、従動ギア62の歯数よりも少ない。
【0033】
ギアカバー60には、ねじ軸3の先端軸34に取り付けられたロータリーダンパー7も収容されている。ねじ軸3の先端軸34とロータリーダンパー7の間には、ワンウェイクラッチ8が介在している。
【0034】
ロータリーダンパー7は、オイル内でローターを回転させることで制動力を発揮するダンパーである。ロータリーダンパー7は、ディスクダンパーともいう。
【0035】
ワンウェイクラッチ8は、シャフト2の下降時にねじ軸3の動力をロータリーダンパー7に伝達し、シャフト2の上昇時にはねじ軸3の動力をロータリーダンパー7に伝達しない、すなわち空転させる。
【0036】
言い換えると、ワンウェイクラッチ8は、シャフト2の下降時にはねじ軸3にロータリーダンパー7の制動力を作用させ、シャフト2の上昇時にはねじ軸3にロータリーダンパー7に制動力を作用させない。
【0037】
以上に説明した本実施形態では、ねじ軸3にロータリーダンパー7を設けることで、水中探知装置100の非使用時におけるシャフト2の自然下降を抑制することを可能としている。
【0038】
ロータリーダンパー7の制動力は、水中探知装置100の使用時にもねじ軸3に作用し、ねじ軸3の回転速度が高くなるほど増大する。このような制動力の増大を避けるためには、ねじ軸3の回転速度を抑えることが好ましい。
【0039】
そこで、本実施形態では、ねじ軸3のリードをピッチよりも大きくすること、すなわちねじ軸3を多条ねじとすることで、ねじ軸3の回転速度を抑えてもシャフト2の移動量を確保することを可能としている。
【0040】
また、本実施形態では、駆動ギア61に対する従動ギア62のギア比を1未満とすることで、ねじ軸3の回転速度を抑えることを可能としている。
【0041】
また、本実施形態では、ワンウェイクラッチ8を設けることで、水中探知装置100の非使用時におけるシャフト2の自然下降を抑制しつつ、水中探知装置100の使用時におけるシャフト2の上昇時にロータリーダンパー7の制動力を作用させないことを可能としている。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0043】
以下、本発明の代表的な実施形態を列挙する。
【0044】
(1)
上下方向に延びたねじ軸と、
前記ねじ軸に取り付けられたナットと、
前記ねじ軸を回転させる電動モータと、
上下方向に延び、下端に送受波器を保持し、前記ナットに連結され、前記ねじ軸の回転に応じて上下動するシャフトと、
前記ねじ軸に取り付けられたロータリーダンパーと、
を備える、上下装置。
【0045】
(2)
前記ねじ軸は、リード角が15度以上である、
(1)に記載の上下装置。
【0046】
(3)
前記ねじ軸は、多条ねじである、
(1)または(2)に記載の上下装置。
【0047】
(4)
前記ねじ軸と前記ナットは、ボールねじである、
(1)ないし(3)の何れかに記載の上下装置。
【0048】
(5)
前記電動モータの出力軸に設けられた駆動ギアと、前記ねじ軸に設けられた、前記駆動ギアと噛み合う従動ギアと、をさらに備え、
前記駆動ギアと前記従動ギアのギア比が1未満である、
(1)ないし(4)の何れかに記載の上下装置。
【0049】
(6)
前記シャフトの下降時に前記ねじ軸の動力を前記ロータリーダンパーに伝達し、前記シャフトの上昇時に前記ねじ軸の動力を前記ロータリーダンパーに伝達しないワンウェイクラッチをさらに備える、
(1)ないし(5)の何れかに記載の上下装置。
【0050】
(7)
(1)ないし(6)の何れかに記載の上下装置を備える水中探知装置。
【符号の説明】
【0051】
1 上下装置、2 シャフト、21 連結部材、28 ケーブル、3 ねじ軸、34 先端軸、4 ナット、40 フレーム、4a スリット、5 電動モータ、50 モータカバー、54 出力軸、60 ギアカバー、61 駆動ギア、62 従動ギア、7 ロータリーダンパー、8 ワンウェイクラッチ、90 タンク、92 フランジ、94 軸受、100 水中探知装置、101 制御部、102 送受信装置、103 送受波器、104 表示部、105 操作部

図1
図2
図3
図4
図5