(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153982
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】サンゴ植付用ホルダー、サンゴ移植基盤及びサンゴ移植方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/73 20170101AFI20241023BHJP
【FI】
A01K61/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067538
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】521293844
【氏名又は名称】サンクスラボ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519458831
【氏名又は名称】株式会社ジイケイ設計
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 完治
(72)【発明者】
【氏名】淺田 英紀
(72)【発明者】
【氏名】河内 文孝
【テーマコード(参考)】
2B003
【Fターム(参考)】
2B003AA01
2B003BB07
2B003DD02
2B003DD03
2B003EE00
(57)【要約】
【課題】海底にサンゴを移植する環境を手間をかけずに構築することが可能であり、自然との共生・調和のとれた人工岩礁を形成することができるようにする。
【解決手段】海底に中空殻状の基盤本体2を設置する一方、地上でサンゴ植付用ホルダー3にサンゴ片を取り付け、このサンゴ植付用ホルダー3をサンゴ移植場所に移送し、海中で基盤本体2に固定して、サンゴ移植基盤1上でサンゴの移植を行う。基盤本体2は、その外形を多面状に設けて人工的な造形を直感させる平面が目立たない形態とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造礁サンゴの種苗が活着されたサンゴ植付用フラグの取り付け部を表面に複数有するサンゴ植付用ホルダー。
【請求項2】
請求項1に記載のサンゴ植付用ホルダーと、表面に複数の開口部を有する中空殻状の多面体であって前記サンゴ植付用ホルダーの固定部を表面に複数備えた、海中に設置される基盤本体とからなるサンゴ移植基盤。
【請求項3】
サンゴ植付用ホルダーが基盤本体に着脱自在である請求項2に記載のサンゴ移植基盤。
【請求項4】
基盤本体が中空なボール形に形成され、この基盤本体を海中に設置した状態でその上部半面側に配置される固定部にサンゴ植付用ホルダーが固定される請求項2又は3に記載のサンゴ移植基盤。
【請求項5】
地上のサンゴ育成施設で造礁サンゴの種苗をサンゴ植付用フラグに活着させ、移植用断片に育成した後、このサンゴ植付用フラグをサンゴ植付用ホルダーの表面に取り付け、
表面に複数の開口部を有する中空殻状の多面体であって前記サンゴ植付用ホルダーの固定部を表面に複数備えた基盤本体を海底に固定し、
海中で前記サンゴ植付用フラグが固定された前記サンゴ植付用ホルダーを前記基盤本体の固定部に固定して、当該基盤本体の表面でサンゴを移植するサンゴ移植方法。
【請求項6】
請求項2に記載のサンゴ移植基盤を用いてサンゴを移植するサンゴ移植方法であって、
複数の基盤本体を海底に並べて固定し、隣接配置された基盤本体同士を連結して基盤本体列群を海底に構成し、各基盤本体に前記サンゴ植付用ホルダーを固定してサンゴ群礁の保全・再生を促進するサンゴ移植方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンゴの移植に用いるサンゴ植付用ホルダーと海中に設置されるサンゴの移植基盤、及びこれらを用いたサンゴの移植方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な目的や規模のサンゴの移植や増殖のための活動が行われている。
サンゴを移植する方法の一つとして、海底に鉄筋やパイプを立て、サンゴの断片を固定するフラグ(着床具)を固定して移植する、いわゆる「ひび建て方式」が知られている。
また、他の方法として、周囲六面が開口した中空立方体形のコンクリート製の人工漁礁や鋼製の支柱を箱型に組み付けて形成された人工漁礁の内部や周辺開口部内に、金属や合成樹脂製のワイヤーを編んで形成された複数の網を当該人工漁礁の内部や開口部の空間を仕切るように面状に張って取り付け、この人工漁礁を海中に設置し、前記各網に造礁性サンゴ群体を針金で固定してサンゴの移植を行う方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のサンゴ移植方法のうち、前者の「ひび建て方式」は、フラグとして用いる一本の鉄筋やパイプに各々一つのサンゴ片を取り付けて養殖を行うものであるが、海底で鉄筋やパイプの固定し且つ各々にサンゴ片を取り付ける作業は著しく手間がかかり、また、サンゴの育成環境を適正に保つためサンゴ片を交換するなどの保守にも手間がかかるという課題があった。
【0005】
後者の移植方法に用いる人工漁礁は、その中空な内部や周辺の開口部内に網を取り付けて構成され、これを海底に設置した状態で、海中で造礁性サンゴ群体の取り付けが行われるが、網は柔軟性に富んで保形性がないため、数センチの大きさのサンゴ群体の取り付け作業がしにくく、海中での作業と相俟って取り付けに手間を要するものであった。また、柔軟性に富む網は海中で波浪や海流によって揺れ動くため、岩礁などの動かない場所で繁殖するサンゴの生育に必ずしも適したものとはいえない。
また、前記の人工漁礁は、コンクリートや支柱で中空な箱型に形成された構造物であり、これが設置された海底の情景は、人の手が加えられた不自然さが際立ち、自然な美観を感じさせるものではない。立法体や箱型の岩礁は海底にはなく、このような形の人工構造物を海底に構築することがサンゴを移植する目的ではない。人工的にサンゴの増殖ができたとしても、自然との共生・調和のとれた景観を海底に現出できるようにすることが肝要である。
何よりも、前記の人工岩礁におけるサンゴ移植の目的は、サンゴが果たす生態的な働きに注目して、サンゴ礁海域の魚類の増産を図るものである。人工漁礁は、サンゴを稚魚の隠れ家としてだけでなく、サンゴ食魚である親魚のブダイ等の餌となることも意図しており、専らサンゴ保全のための養殖に用いるものではない。この人工漁礁ではサンゴの増殖は期待できない。
【0006】
本発明は従来の技術が有するこのような問題点に鑑み、海底にサンゴを移植する環境を手間をかけずに構築することが可能であり、自然との共生・調和のとれた人工岩礁を形成することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、海底に中空殻状の基盤を設置し、この基盤に活着させた移植用のサンゴを保持させてサンゴの移植を行うが、基盤に対してサンゴを保持する部材を着脱自在に構成し、地上の移植用のサンゴ育成施設で上記保持する部材にサンゴの取り付けを行い、一方、前記基盤を海中に設置しておき、前記サンゴが取り付けられた保持部材を海中で前記基盤に固定するように構成した。
また、基盤はその外形を多面状に設けて、人工的な造形を直感させる平面同士が直交した部分が目立たない形態とし、海底に設置した状態で自然な岩礁と違和感のない情景が得られるように構成した。
【0008】
すなわち、本発明は、造礁サンゴの種苗が活着されたサンゴ植付用フラグの取り付け部を表面に複数有するサンゴ植付用ホルダーである。
ここで、「造礁サンゴの種苗」とは移植用のサンゴをいい、移植のために育成されたサンゴ片が含まれる。また、「サンゴ植付用フラグ」とは移植のための植付用のサンゴ片を一体に支持する着床具をいう。サンゴ植付用フラグは、例えば板状に形成され、後述するように、一つのサンゴ片を一つのサンゴ植付用フラグに宛がって支持させ、周囲にコイルや針金を巻き付けるなどすることにより、前記フラグの表面にサンゴ片が一体に支持される。
また、「サンゴ植付用ホルダー」とは、その表面に前記サンゴ植付用フラグが複数一体に取り付けられて、これらのフラグを保持する部材をいう。後述するように、サンゴ植付用ホルダーはサンゴ移植基盤の基盤本体に着脱自在となっている。
【0009】
また、本発明は、前記構成のサンゴ植付用ホルダーと、表面に複数の開口部を有する中空殻状の多面体であって前記サンゴ植付用ホルダーの固定部を表面に複数備えた、海中に設置される基盤本体とからなるサンゴ移植基盤である。
【0010】
前記構成のサンゴ移植基盤において、サンゴ植付用ホルダーを基盤本体に着脱自在に設けることができる。
また、前記構成のサンゴ移植基盤において、基盤本体が中空なボール形に形成され、この基盤本体を海中に設置した状態でその上部半面側に配置される固定部にサンゴ植付用ホルダーが固定されるように設けることができる。
【0011】
また、本発明のサンゴ移植方法は、前記構成の基盤を用いたものであり、地上の育成施設でサンゴ片をサンゴ植付用フラグに活着させ、移植用断片に育成した後、このサンゴ植付用フラグをサンゴ植付用ホルダーの表面に取り付ける工程と、
表面に複数の開口部を有する中空殻状の多面体であって前記サンゴ植付用ホルダーの固定部を表面に複数備えた基盤本体を海底に固定する工程と、
海中で前記サンゴ植付用フラグが固定された前記サンゴ植付用ホルダーを前記基盤本体の固定部に固定して、当該基盤本体の表面でサンゴの移植が行われることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のサンゴの移植方法は、前記構成のサンゴ移植基盤を用いてサンゴを移植する方法であり、
複数の基盤本体を海底に並べて固定し、隣接配置された基盤本体同士を連結して基盤本体列群を海底に構成し、各基盤本体に前記サンゴ植付用ホルダーを固定してサンゴ群礁の保全・再生を促進することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、サンゴ移植基盤が基盤本体とサンゴ植付用ホルダーからなり、地上の育成施設でサンゴ植付用ホルダーにサンゴ片を取り付け、海底に基盤本体を設置した状態で、前記サンゴ植付用ホルダーを基盤本体に取り付けることにより、植付用サンゴの基盤への固定が行われる。
海中でダイビング作業者が数センチのサンゴ片を保持して基盤に固定する作業は不要であり、サンゴ植付用ホルダーを基盤本体に取り付けることで、サンゴ片を複数一括して基盤に固定することが可能である。植付用サンゴが固定されるサンゴ植付用ホルダーは、剛性を有する板状の部材であり、網のように海中で揺れたり伸縮したりするようなことはなく、同ボード上でサンゴを適正に育成して移植することがでる。
また、サンゴ移植基盤の基盤本体を中空なボール形に形成し、この基盤本体を海中に設置した状態でその上部半面側に配置される固定部にサンゴ植付用ホルダーが固定されるように設ければ、基盤本体の上部半面側で育成されるサンゴに、オニヒトデが到達しににくく、基盤本体上でサンゴが捕食される被害を抑えることができて有用である。
【0014】
また、本発明のサンゴ移植基盤は、表面に複数の開口部を有する中空殻状の多面体形状、一例として中空なボール状に形成されているので、外側から見たときに、人工的な造形を直感させる平面同士が直交した部分が目立たず、海底に設置した状態で恰も自然な岩礁があるが如き、違和感のない情景を海底に作り出すことが可能である。
本発明のサンゴ移植基盤を海底に複数個を数珠繋がりのように、或いは複数列並べて設置することで海底に融合し自然と調和した人工岩礁を形成することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、海底にサンゴの育成環境を、効率的に構築することが可能であり、自然との共生・調和のとれた人工岩礁を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態のサンゴ移植基盤の使用状態の外観を示した図である。
【
図2】
図1のサンゴ移植基盤を構成する基盤本体の外観図である。
【
図3】
図1のサンゴ移植基盤を構成するサンゴ植付用ホルダーにサンゴ植付用フラグを取り付けた状態の外観図である。
【
図4】基盤本体にサンゴ植付用フラグが取り付けられたサンゴ植付用ホルダーを取り付けた状態の外観図である。
【
図5】本発明のサンゴ移植基盤を構成する基盤本体の他の形態の外観図である。
【
図6】基盤本体を海底に設置固定する態様を説明するための図である。
【
図7】本発明のサンゴの移植方法により海底にサンゴ移植基盤列群を設置してサンゴ群礁を形成するときに得られる海底の景観を示した図である。
【
図8】サンゴ移植基盤(基盤本体)の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明の技術的思想は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態のサンゴ移植基盤を海底に設置してサンゴの移植を実施している状態の外観を示している。
本発明のサンゴ移植基盤(以下、単に「移植基盤」ともいう。)1は海中に設置されるサンゴ人工基盤であり、サンゴの移植ととともに漁礁としての機能が奏されるように構成したものである。
【0019】
詳しくは、移植基盤1は、表面に複数の開口部を有する中空殻状の基盤本体2と、基盤本体2の表面に複数個所取り付けられたサンゴ植付用ホルダー3とにより構成されている。
【0020】
基盤本体2は、
図2に示されるように、金属材を用いて形成された中空殻状の多面体であって、直径が800mm程度のボール状に形成してある。各面は、それぞれ正方形の開口部21a、大径丸形の開口部21b又は小径丸形の開口部21cを形成してある。
前記開口部のうち、正方形の開口部21aが設けられた部分には、その表面外周辺に沿って
図3中に示される枠部22が一体に取り付けられており、この枠部22に、後述するサンゴ植付用ホルダー3を固定することができるように設けてある。
【0021】
サンゴ植付用ホルダー3は、造礁サンゴが活着されたサンゴ植付用フラグ4を保持・固定する部材であり、
図3に示されるように、前記基盤本体2と同じ金属材や合成樹脂材、鉱材などを用いて平面視正方形に形成されていて、その表面には前記サンゴ植付用フラグ4の取り付け部である、内周面にネジ溝が形成された孔部31を複数設けてある。
【0022】
サンゴ植付用フラグ4は下面に軸部5aが固着された支持板5の上面に針金で巻き付けるなどして固定され、このサンゴ植付用フラグ4が固定された支持板5をその軸部5aをサンゴ植付用ホルダー3の孔部31にねじ入れて当該支持板5を孔部31に連結することにより、サンゴ植付用フラグ4をサンゴ植付用ホルダー3の表面に固定することができるようになっている。
【0023】
また、サンゴ植付用ホルダー3の四隅角部には、ボルトなどの固着具6が貫通する通孔32がそれぞれ設けられており、
図3に示されるように、前記基盤本体2の開口部21aに外側からサンゴ植付用ホルダー3を重ねた状態で、前記通孔32と枠部22の四隅角部に形成された孔部22aに固着具6であるボルトを通し、その軸部に同じく固着具6であるナットを螺合して締結することで、前記基盤本体2の開口部21a上にサンゴ植付用ホルダー3が固定されるようになっている。
【0024】
図4は、
図2に示した基盤本体2の開口部21aに、造礁サンゴの種苗であるサンゴ片が活着された複数のサンゴ植付用フラグ4が表面に固定されたサンゴ植付用ホルダー3を取り付けた移植基盤1を示している。
また、
図5は、本発明の移植基盤1の他の形態を示している。
【0025】
上記構成の移植基盤1を用いたサンゴの移植は以下のようにして行うことができる。
先ず、地上のサンゴ育成施設で造礁サンゴの種苗となるサンゴ片を育成する。
図3に示されるように、サンゴ片nは、サンゴ植付用フラグ4の上面に針金を巻き付けて固定するなどして活着させ、このサンゴ植付用フラグ4を前記支持板5に、同じく周囲に針金を巻き付けるなどして固定し、支持板5をサンゴ植付用ホルダー3の表面に取り付けて、サンゴ片nをサンゴ植付用ホルダー3の表面に固定する。表面にサンゴ片nが固定されたサンゴ植付用ホルダー3は全体が海水に浸された状態でサンゴの育成に供される。
【0026】
一方、海中のサンゴの移設場所において、基盤本体2を海底に設置する。基盤本体2の設置は、例えば
図6に示されるように、海底7に固定ロッド8.8を打ち込むとともに、両ロッド8,8に通した金属製のロープ9を基盤本体2に括り付けて、基盤本体2が海底で移動しないように固定することにより行うことができる。
【0027】
そして、前記サンゴの植付用サンゴが固定されたサンゴ植付用ホルダー3をサンゴの移植場所に移送し、このサンゴ植付用ホルダー3を前記海底に固定された基盤本体2の開口部21a上に取り付けて固定することにより、移植基盤1の表面でサンゴの移植が行われる。
【0028】
図7は、異なるサイズの前記移植基盤1を複数形成し、これらの基盤本体2を海底に並べて各々固定し、隣接配置された基盤本体2同士をロープなどの接続部材で連結して基盤本体2列群を構成し、各基盤本体2に植付用サンゴが取り付けられた前記サンゴ植付用ホルダー3を固定してサンゴの移植を行う態様の海底の情景を示している。符番10は海底の岩礁を示している。
同図に示されるように、複数の移植基盤1を海底に数珠繋がりのように並べて設置することで、海底に融合し自然と調和した人工岩礁を形成することが可能である。
【0029】
本発明では前記構成の移植基盤1を用いてサンゴの移植を行うものである。これによるサンゴの移植は、前述の「ひび建て方式」と比較して、以下の有用な効果が得られることが期待される。
すなわち、「ひび建て方式」、一つのサンゴ片を取り付けた一つのフラグ(サンゴの断片を固定する着床具)毎に、それを海中に固定するための杭(tm程度の鉄筋がよく用いられる)を必要とする。そのため、一つのフラグ毎に一本の杭を海底に打ち込む作業が必要となる。
これに対して本発明では、一つの基盤に数十個の植付用フラグを取り付けること可能である。そのため、複数のサンゴを海底に移植するための設備に関わる作業の省力化と効率化を図ることが可能となる。
また、「ひび建て方式」は、一つのサンゴ片を取り付けた一つのフラグを海底に設置した一本の杭に固定する必要がある。そのため、フラグ毎にサンゴを着脱する必要がある。
これに対して本発明では、一枚のサンゴ植付用ホルダーに複数のサンゴ植付用フラグを取り付けることが可能である。そのため、複数の前記フラグを前記ホルダーに取り付けた状態で、陸上のサンゴ育成用の水槽内で飼育し、海底に設置した基盤に固定する際は、前記ホルダー毎に着脱することが可能である。そのため、複数のサンゴを海底に移植する際のサンゴの育成及び移植に関わる作業の省力化と効率化を図ることが可能となる。
【0030】
また、本発明の移植基盤は、その基盤本体にサンゴ植付用ホルダーが着脱自在となっている。
そのため、サンゴの生育状況や、基盤を設置した場所の日照や潮の流れ等による生育環境の状況に応じて、前記ホルダー毎に脱着して、適切な位置にサンゴ植付用ホルダーの装着位置を変更することができる。
また、本発明の移植基盤の基盤本体は、その内部に親魚が入りにくく、スズメダイ等の小魚が出入りできる程度の開口部が全周に亘って設けられている。また、基盤本体内にはスズメダイなどが寄り付くための瓦漁礁を吊り下げられる構造となっている。そのため、捕食者からの隠れ場所や生息場所としたスズメダイが、巣(テリトリー)に近づくブダイなどを追い払う性質を利用し、サンゴ食魚によるサンゴの食害を抑制することが可能である。
【0031】
さらに、「ひび建て方式」は、杭を砂地の海底に杭を打ち込んで設置する必要がある。
そのため、平坦な砂地では、海底の一定の高さに一定の間隔でサンゴが固定された、均一的で人工的な景観が形成される。
本発明の移植基盤は、海底で自立する多面体構造となっている。そのため、海底の地形や日照や潮の流れに応じて、基盤の方向を設定し、単体もしくは併設、または連結固定して設置することが可能である。
それにより、海底の岩礁の形態に沿った配置や、基盤を群として多様な形態に組合せた配置が可能であり、海中の設置環境に応じた独自の個性的な景観を形成することが可能である。
また、基盤群によって形成されるサンゴ移植場の特徴のある景観は、レジャーでダイビングを楽しむダイバーへのサンゴ保全に対する関心や、サンゴ移植の体験ダイビング等に対する興味を促すシンボル的な存在となることが可能である。
【0032】
以上、説明し図示した移植基盤の構成や構成部材の形態は一例であり、本発明は説明し図示した構成や形態のものに限定されず、他の適宜な構成や形態のものとすることが可能である。
基盤本体は、例えば
図8に示すような、斜方立方八面体や切頂八面体などの多面体形状に構成されていてもよい。また、基盤本体へのサンゴ植付用ホルダーの固定は、ボルトやナットなどの固着具を用いる以外に、他の固定手段や固定部材、嵌合などの固定構造を採用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 サンゴ移植基盤(移植基盤)、2 基盤本体、3 サンゴ植付用ホルダー、4 サンゴ植付用フラグ、5 支持板、6 固着具、7 海底、8 ロッド、9 ロープ(接続部材)、10 岩礁、n 植付用サンゴ(サンゴの苗床)