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▶ 株式会社ドローンセンセーションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153985
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ドローンタワー
(51)【国際特許分類】
   B64U 50/34 20230101AFI20241023BHJP
   B64F 3/02 20060101ALI20241023BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20241023BHJP
   B64U 50/19 20230101ALI20241023BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20241023BHJP
   B64U 101/20 20230101ALN20241023BHJP
   B64U 101/31 20230101ALN20241023BHJP
【FI】
B64U50/34
B64F3/02
B64U10/13
B64U50/19
H01R13/639 A
B64U101:20
B64U101:31
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067542
(22)【出願日】2023-04-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.HDMI
(71)【出願人】
【識別番号】523145398
【氏名又は名称】株式会社ドローンセンセーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 真啓
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FB21
5E021FC31
5E021HC27
5E021HC28
(57)【要約】
【課題】 所望の無人航空機における給電用のペイロード(積載可能重量)の負担を極力小さくでき、しかも、電源供給先から十分に離れた位置で電源供給が可能であるドローンタワーを提供することを目的とする。
【解決手段】 無人航空機に電力を送る電源局と、電力を動力源とする無人航空機で、電力を有線でも受けられる仕組みを有する無人航空機と、電力を有線でも受けられる仕組みと、他の無人航空機に電力を送る仕組みを有する無人航空機と、を取捨選択して連結できることを特徴とするドローンタワーが開示される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機に電力を送る電源局と、
電力を動力源とする無人航空機で、
電力を有線でも受けられる仕組みを有する無人航空機と、
電力を有線でも受けられる仕組みと、
他の無人航空機に電力を送る仕組みを有する無人航空機と、
を取捨選択して連結できることを特徴とするドローンタワー。
【請求項2】
前記電源局は、直列接続によって各無人航空機へ電力を供給することで、連結を重ねても、電力源に近いほど、電流量を多く流すための太くて重い給電ケーブルを必要としないことを特徴とする請求項1に記載のドローンタワー。
【請求項3】
連結の繋ぎの無人航空機は、可能なペイロードを給電ケーブルの重量に割り当てることで、長いケーブルを支えることで高度を高くでき、
連結の末端の無人航空機は、最小限の給電の長さにすることで、最高高度位置では、残りのペイロードでより重い監視や観測や計測や通信等のための目的装置を搭載できることを特徴とする請求項2に記載のドローンタワー。
【請求項4】
前記給電のケーブルに加え、複線を追加できることを特徴とする請求項3に記載のドローンタワー。
【請求項5】
前記給電ケーブルもしくは複線を使い、連結飛行中に前記電源局と無人航空機の間でのリフトを可能にすることを特徴とする請求項4に記載のドローンタワー。
【請求項6】
各無人航空機は、バッテリも搭載でき、有線給電が有るか否かを判断して、
有線給電があると判断した場合は、有線からの電力を使い、有線からの給電が途切れると、搭載しているバッテリの電力に、切れ目なく切替えることができることを特徴とする請求項5に記載のドローンタワー。
【請求項7】
連結される無人航空機の前記給電ケーブルは、電力を受ける側も、電力を送る側も、飛行中でも、前記給電ケーブルを脱着可能な仕組みを持つことを特徴とする請求項6に記載のドローンタワー。
【請求項8】
前記給電ケーブルとの接続点では、電力供給を受けるための成分と、通信を受けるための成分を分離でき、必要に応じて、通信を送るための成分を合成することができる
ことを特徴とする請求項7に記載のドローンタワー。
【請求項9】
前記電源局は、同等の装置構成を複数持つことで、目的の高度の目的の位置にいずれか1つの目的装置を常に設置できることを特徴とする請求項8に記載のドローンタワー。
【請求項10】
前記電源局は、太陽光発電等の再生可能エネルギーによる発電を持ち、一旦蓄電池に蓄えることもでき、他から電力確保ができなくても、稼働し続けることができることを特徴とする請求項9に記載のドローンタワー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドローンタワーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非特許文献1のように、国土交通省により、ドローンに関する用語の整理や法整備が進んでいる。本発明の明細書ではできる限り、これに準じ、説明する。ただし、本明細書での、無人航空機は、非特許文献1の無人航空機において電力を動力源とする無人航空機である。尚、説明をわかりやすくするため、適時、その無人航空機のことをドローンとも表現する。
【0003】
有線給電を行うことができる無人航空機が提案されている(特許文献1~4参照)。特許文献1~3に記載された無人航空機は、飛行中の単体の無人航空機と地上の電源供給先との間がリード(電源ケーブル)によって連結され、電源供給先からリードを介して電源供給を受ける。
【0004】
特許文献4に記載された無人航空機は、複数機で編隊飛行を行うもので、一の無人航空機と地上の電源供給先との間がリード(電源ケーブル)によって連結されると共に、互いの無人航空機同士もリード(電源ケーブル)によってそれぞれ連結される。複数機の無人航空機が電源供給先からリードを介して電源供給を受ける。
【0005】
ところで、各無人航空機には、ペイロード(積載可能重量)が決められており、リード(電源ケーブル)の荷重も加算される。そして、リードの荷重はその長さに依存する。そのため、リードの長さを短くすると、ペイロード(積載可能重量)の負担を小さく抑えられるが、電源供給先の近距離でしか電源供給を受けられない。リードの長さを長くすると、電源供給先の遠距離で電源供給を受けられるが、ペイロード(積載可能重量)の負担が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-40550号公報
【特許文献2】WO2014/203593号公報
【特許文献3】特開2017-13653号公報
【特許文献4】特開2017-52389号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】無人航空機の飛行の安全に関する教則(令和4年11月2日第2版)国土交通省発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に記載された無人航空機では、電源供給先との間に連結されたリードの荷重全てを受けるため、ペイロード(積載可能重量)の制約を大きく受ける。つまり、無人航空機が負担するリード(電源ケーブル)の荷重は、ペイロード(積載可能重量)の範囲内に抑える必要があり、その上、無人航空機が負担するリード(電源ケーブル)の荷重は、その長さに依存するため、電源供給先より離れた位置で電源供給を受けられない。
【0009】
特許文献4に記載された無人航空機では、電源供給先とリード(電源ケーブル)で連結された一の無人航空機は電源供給先に連結されたリード(電源ケーブル)の荷重とともに、他の無人航空機との間で架け渡されたリード(電源ケーブル)の分担荷重をも受けるため、ペイロード(積載可能重量)の制約を受ける。また、隣接する無人航空機の間にリードが通常では撓んだ状態で架け渡されるため、電源供給先より十分に離れた位置で電源供給を受けられないおそれがある。
【0010】
そこで、本開示は、所望の無人航空機における給電用のペイロード(積載可能重量)の負担を極力小さくでき、しかも、電源供給先から十分に離れた位置で電源供給が可能であるドローンタワーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
【0012】
(1)無人航空機に電力を送る電源局(図2)と、
電力を動力源とする無人航空機で、
電力を有線でも受けられる仕組みを有する無人航空機(図4)と
電力を有線でも受けられる仕組みと
他の無人航空機に電力を送る仕組みを有する無人航空機(図3)と
を取捨選択して連結できること(図1)を特徴とする。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、各無人航空機のペイロード(積載可能重量)に制約されない距離(高度)での利用を提供することにある。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、(電源局から)無人航空機を連結できることを特徴とする。本発明の無人航空機の連結によれば、無人航空機のペイロード(積載可能重量)に制約されない距離(高度)での利用を提供することができる。なお、電源局は、地上の基地局でも、地上/海上の移動可能な車両でも、地上/海上または空中の無人航空機でも良い。さらに上空の衛星でも良い。また、バッテリ交換が可能な、既にある無人航空機を使い、そのバッテリに合わせて、これらの機能を搭載した連結用バッテリを使い同等のことを実現してもよい。
【0014】
(2)上記1の構成において、電源局は、直列接続によって各無人航空機へ電力を供給することで連結を重ねても、電力源に近いほど、電流量を多く流すための太くて重い給電ケーブルを必要としないことを特徴とする。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、電源局から各無人航空機が電力を受ける方法として単に電気的に1本の長いケーブルから各無人航空機がケーブルを引き込み電力を得る方法(図5)が容易だが、電源局に近いほど大きな電流を流すことのできるより太い、つまり重い給電ケーブルが必要となり、ケーブルの長さ、つまり1機あたりの高さが得られにくいという課題である。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、前記課題は、電気的には、電源局からの電力を、各無人航空機は、給電ケーブルと並列接続して得ているが、これを電気的に直列接続にする(図6)ことを特徴とする。本発明の電源局と各無人航空機の直列接続での連結によれば、連結を重ねても、電力源に近いほど、電流量を多く流すための太くて重い給電ケーブルを必要としない。つまり1機あたりのケーブルの長さ、すなわち高さが得られる利用を提供することができる。
【0016】
(3)上記2の構成において、連結の繋ぎの無人航空機は、可能なペイロードを給電ケーブルの重量に割り当てることで、長いケーブルを支えることで高度を高くでき、連結の末端(最上空)の無人航空機は、最小限の給電の長さにすることで、最高高度位置では、残りのペイロードでより重い監視や観測や計測や通信等のための目的装置を搭載できる
ことを特徴とする。
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、そもそも無人航空機を飛行させるのは、何らかの目的装置を搭載して撮影や観測や計測や通信等をすることが目的であり、より重い目的装置を搭載したいが、有線給電のケーブルも、搭載重量に含まれるため、より高い飛行で運用しようとすると搭載できる目的装置の重量は、ケーブルの重さ分だけ小さくなる課題の解決を提供することにある。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、電源局から複数の無人航空機を直列接続で連結して有線給電し、途中の中継の無人航空機は、その積載能力の全てを給電ケーブルの重量を支えるために可能な最大限のケーブルの長さ、つまり高さを得るために使いつつも、最後の終端の最高高度の無人航空機は、無人機同士が干渉しない最小限の給電ケーブルの長さで連結して、ケーブルの重さを最小限とする連結方法(図7)を特徴とする。本発明の方法によれば、同じ能力の無人航空機でも、有線給電しない場合の積載重量に比べ最上空の有線給電無人航空機の積載重量が小さくなるのを最小限にする利用を提供することができる。
【0018】
(4)上記3の構成において、給電のケーブルに加え、複線を追加できることを特徴とする。
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、給電ケーブルは、電力を伝達するために最適化されるため、目的装置のために最適なケーブルを提供することにある。本発明の無人航空機の連結によれば、目的装置のために最適な2番目のケーブルの利用を提供することができる。
【0020】
(5)上記4の構成において、給電ケーブルもしくは複線を使い、連結飛行中に電源局と無人航空機の間でのリフト(物理的移動)を可能にすることを特徴とする。
【0021】
無人航空機の連結は、言わば無人航空機を使ったタワーの設置と言える。タワー頂上の目的装置によって情報や通信を得ることは同等の機能となる。しかしタワーの場合の利用方法として、地上等の電源局と頂上間でのリフト(物理的移動)も可能である。またリフトができれば、飛行中に複線の交換も可能となる。本発明が解決しようとする課題は、このリフトを提供することにある。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、無人航空機の連結において、給電の目的でつながっているケーブルもしくは複線を、物理的なガイド線として利用することを特徴とする。本発明によれば、連結された、地上等の電源局と末端(最上位)の無人航空機との間でのリフトの利用を提供することができる。
【0022】
(6)上記5の構成において、各無人航空機は、バッテリも搭載でき、有線給電が有るか無いかを判断して、有線給電がされる場合は、有線からの電力を使い、有線からの給電が途切れると、搭載しているバッテリの電力に、切れ目なく切替えることができることを特徴とする。
【0023】
本発明が解決しようとする課題は、無人航空機が有線による給電のみで電力を得ている場合は、電源局での給電が止まってしまった場合や給電ケーブルの途中に一カ所でも断線などが起こった場合には連結する全ての無人航空機が失速・墜落する課題の解決を提供することにある。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、連結する各無人航空機に、バッテリも搭載でき、有線給電が有るか無いかを判断して、有線給電がされる場合は、有線からの電力を使い、有線からの給電が途切れると、搭載しているバッテリの電力に、切れ目なく切替えることができることを特徴とする。本発明の無人航空機の連結によれば、電源局での給電が止まってしまった場合や給電ケーブルの途中に一カ所でも断線などが起こった場合には、動力の電力を瞬時にバッテリに切り替えることで、連結する全ての無人航空機が失速・墜落するのを防ぎ、そのまま有線による給電が再開されるのを飛行しながら待ったり、必要とあれば各無人航空機が内蔵搭載するバッテリで着陸、帰還して、墜落を防ぐことを提供することができる。
【0024】
(7)上記6の構成において、連結される無人航空機の給電ケーブルは、電力を受ける側も、電力を送る側も、飛行中でも、給電ケーブルを脱着可能な仕組みを持つことを特徴とする。
【0025】
本発明が解決しようとする課題は、連結している無人航空機で、連結される中の、たとえ1機でも飛行トラブルが発生し飛行不能や飛行制御不能となった場合に、有線ケーブルと固定的に接続されていた場合には、接続する全ての無人航空機を巻き込んだトラブルに発展してしまうという課題の解決を提供することにある。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、連結される無人航空機の給電ケーブルは、受ける側も、送る側も、飛行中でも、給電ケーブルを脱着可能な仕組みを持つことを特徴とする。本発明によれば、連結している無人航空機で、連結される中の、たとえ1機でも飛行トラブルが発生し飛行不能や飛行制御不能となった場合に連結される無人航空機の給電ケーブルを、受ける側も、送る側も、飛行中でも、給電ケーブルとの連結を外し、内蔵搭載のバッテリの電力を使い墜落せず安全に着陸、回収する利用を提供することができる。
【0026】
(8)上記7の構成において、給電ケーブルとの接続点では、電力供給を受けるための成分と通信を受けるための成分(信号)を分離でき、必要に応じて、通信を送るための成分(信号)を合成することができることを特徴とする。
【0027】
本発明が解決しようとする課題は、連結のため使う給電ケーブルには主に電力を供給するために使われるが、各無人航空機は電力以外にも操作のための情報を受けたり、目的装置の情報を送ったりする必要があり多くは無線信号によってこれらの情報信号の送受信を行うが、複数台同時の無線での通信は利用可能な周波数帯が重なるため干渉や混線などの問題が発生する。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、同じケーブルを使い、電力供給には直流または低周波(120Hz以下)交流を使い、制御や目的装置の情報は高周波(1MHz以上)を使い、これらの信号と電力をミックスして1本のケーブルに流し、電源局側では、フィルターにより分離することを特徴とする。本発明の無人航空機の連結によれば、無人航空機の連結においては、無線電波を使わず、給電ケーブルをとおしての高周波情報で制御と目的装置の情報を1本のケーブルで利用でき、無線による各無人航空機の操作の干渉や情報の混線をなくす利用を提供することができる。
【0028】
(9)上記8の構成において、電源局は、同等の装置構成を複数持つことで、目的の高度の目的の位置にいずれか1つの目的装置を常に設置できることを特徴とする。
【0029】
本発明が解決しようとする課題は、無人航空機の連結によってタワーと同じ役割を実現するが、物理的なタワーでは、安定した定点での目的装置の稼働が可能であるが、無人航空機によるタワー機能では、無人航空機の飛行のトラブルやモータ駆動の疲労、連結しているケーブルの破損などのトラブルで、必ずしもタワーとして飛行し続けることができない課題の解決を提供することにある。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、電源局は、同等の装置構成を複数持つ(連結によるタワーを複数持つ)ことで、1つの連結構成(タワー)の停止回収が必要になっても、目的の高度の目的の位置に、いずれか1つの目的装置を常に設置できることを特徴とする。本発明の無人航空機の連結によれば、目的の高度の目的の位置にいずれか1つの目的装置を常に設置する利用を提供することができる。なお、他の装置を回収停止させ順次メインテナンスすることで半永久的にその位置での監視や観測や計測を続けることも可能である。
【0030】
(10)上記9の構成において、電源局は、太陽光パネル発電等の再生可能エネルギーによる発電を持ち、一旦蓄電池に蓄えることもでき、他から電力確保ができなくても、装置を稼働し続けることができることを特徴とする。
【0031】
本発明が解決しようとする課題は、無人航空機の連結による運営には電源局が電力を確保する必要があり、外部電源が確保できる基地局ではよいが、森林や砂漠などの外部電源の無い地点での運用ができない問題の解決を提供することにある。本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、太陽光パネル発電等の再生可能エネルギーによる発電を持ち、一旦蓄電池に蓄えることもできることを特徴とする。本発明によれば、他から電力確保ができない森林や山中や砂漠でも自然再生エネルギーがあれば、装置を自立的に永久稼働し続けることができることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、複数の無人航空機がリードを介して直列に連結されるので、N番目の無人航空機に連結されるリードの長さを短くしても、N番目の無人航空機が全てのリードのトータル長さ分だけ電源供給先より離間した位置で電源供給を受けることが可能となる。従って、N番目の無人航空機における給電用のペイロード(積載可能重量)の負担を極力小さくでき、しかも、電源供給先から十分に離れた位置で電源供給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】無人航空機の連結という方法によるドローンタワーの概念図である。
図2】電源局の概略図である。
図3】中継型の無人航空機の正面図である。
図4】終端型の無人航空機の正面図である。
図5】複数の無人航空機の負荷抵抗(駆動するモーター)を並列接続した概念図である。
図6】複数の無人航空機の負荷抵抗(駆動するモーター)を直列接続の概念図である。
図7】(a)は無人航空機の正面図、(b)は電源局に1台の中継の無人航空機を連結した正面図、(c)電源局に5台の中継の無人航空機及び1台の終端の無人航空機に連結した正面図である。
図8】(a)は複線を追加しない場合の無人航空機の正面図、(b)は複線を追加しない場合の、電源局に1台の中継型の無人航空機を連結した正面図である。
図9】(a)は複線を追加した無人航空機の1台の連結の正面図、(b)は複線を追加した場合の、電源局に5台の中継型の無人航空機及び1台の終端型の無人航空機を連結した正面図である。
図10】複線として光ファイバを用いて無人航空機間を連結した正面図である。
図11】複線として空洞パイプを用いて無人航空機間を連結した正面図である。
図12A】複線としてリフト用ワイヤを使いワイヤを昇降ロボットが昇降する横からの概略図である。
図12B】複線としてリフト用ワイヤを使いワイヤを昇降ロボットが昇降する横からの詳細図である。
図12C】複線としてリフト用ワイヤを使った場合の上部からの詳細図である。
図12D】昇降ロボットの概略図である。
図12E】給電線を無くし複線を2本一対の電源線を使った場合の概略図である。
図12F】複線が平面ケーブルである場合の構成図である。
図12G】複線が同軸ケーブルである場合の構成図である。
図13】電源局と中継の無人航空機が連結された場合の概略回路構成図である。
図14】無人航空機の連結装置の回路ブロック図である。
図15】電源局の連結装置の回路ブロック図である。
図16A】連結着脱部の全体概念図である。
図16B】連結着脱部の概略図である。
図16C】連結着脱部の原理を説明する説明図である。
図16D】連結着脱部の装着と離脱を説明する断面図である。
図17】一本の給電線で電力と通信信号を送受信する場合の回路ブロック図である。
図18】複数組のドローンタワーを有するシステムの構成図である。
図19図18の構成に加えて再生可能エネルギーを利用したシステムの構成図である。
図20A】衛星を終端の無人航空機、飛行船及びドローンを中継の無人航空機とした図である。
図20B】地上電源局から中継のドローンと中継の飛行船を組み合わせ衛星までを周期的に連結する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら実施の形態について詳細に説明する。
【0035】
図1に示すように、無人航空機用システムAは、複数の無人航空機1,2と、電源装置である電源局3と、これらの間を連結する複数の有線連結用のリード4とを備え、各無人航空機1,2間がリード(給電ケーブル)4を介して直列に連結された連結状態を形成している。
【0036】
複数の無人航空機1,2は、1台以上の中継型の無人航空機1と、1台の終端型の無人航空機2とから構成される。各無人航空機1,2は、電力を動力源とし、この実施形態では、回転翼航空機であり、詳しくは4枚の羽根のクワッドコプターである。電源局3は、電力を出力するもので、例えば地上に固定されている。尚、図1には、中継型の無人航空機2は、1台のみであるが、2以上であっても良い。
【0037】
図1図2に示すように、電源局3の上端には、有線電源出力部11が設けられている。図1図3に示すように、中継型の無人航空機1の航空機本体1aには、底面に有線電源入力部12が、上面に有線電源出力部11が設けられている。図1図4に示すように、終端型の無人航空機2の航空機本体2aには、底面に有線電源入力部12が設けられていると共に、目的装置15が搭載されている。目的装置15は、終端型の無人航空機2を飛行させる目的を果たすための装置であり、カメラ81(図14に図示)、センサ(図14に図示)などの観測機器、通信装置などである。
【0038】
連結用のリード4は、電線及び通信線のうちの少なくともいずれか一方を含み、その両端にリード側コネクタ4aがそれぞれ設けられている。電源局3の有線電源出力部11と最下段の無人航空機1の有線電源入力部12がリード側コネクタ4aを介して連結される。また、下段の無人航空機1の有線電源出力部11とその直ぐ上段の無人航空機2の有線電源入力部12がリード側コネクタ4aを介して連結される。全てリード側コネクタ4aとの連結箇所は、着脱可能に構成されている。着脱可能の構成については、下記に詳述する。
【0039】
つまり、無人航空機システムAは、Nを2以上の自然数としたとき、N個の無人航空機1,2を備え、N個の無人航空機1,2は、1番目から昇順にN番目まで直列に、各無人航空機1,2間が有線連結用のリード4を介して接続された連結状態を形成している。以下、このような連結状態を、ドローンタワーを形成しているとして説明する。
【0040】
連結状態において、N番目の無人航空機2には、1番目の無人航空機1に電気的に連結される電源局3から、複数のリード4を介して給電可能に構成されている。
【0041】
複数の無人航空機1,2は、電源局3の上方空間上にホバリングを行うことでリード4を介して電源局3に連結され、最下段の無人航空機1の上方空間上に次の無人航空機1(又は2)がホバリングを行うことでリード4を介して最下段の無人航空機1に連結され、これを順次繰り返すことによってドローンタワーが形成される。従って、Mは2以上かつN以下の自然数としたとき、N個の無人航空機1,2は、連結状態において、M番目の無人航空機1(又は2)が、M-1番目の無人航空機1よりも、M番目の無人航空機1(又は2)とM-1番目の無人航空機1の間のリード4の長さに応じた高度差だけ、高く飛行可能に設定されている。
【0042】
また、連結状態において、M番目の無人航空機1(又は2)とM-1番目の無人航空機1の間のリード4は、M番目の無人航空機1(又は2)とM-1番目の無人航空機1の間のリード4の張力が0となるように飛行することができる。
【0043】
このような接続によって連結された無人航空機システムAは、電源局3を電源、中継の無人航空機1と終端の無人航空機2をそれぞれ負荷抵抗と考えると、各負荷抵抗を電源に対して並列に接続する並列接続(図5)と、各負荷抵抗を電源に対して直列に接続する直列接続(図6)とのいずれかに連結可能である。つまり、並列接続は、中継の無人航空機2の駆動するモータと終端の無人航空機2の駆動するモータを電源局3に対して並列に接続する。直列接続は、中継の無人航空機1の駆動するモータと終端の無人航空機2の駆動するモータを電源局3に対して直列に接続する。
【0044】
並列連結では、電源局3に近い有線連結用のリード4ほど大きな電流を流す必要があるため、太い、つまり、単位当たり重い電線を使用する必要がある。これに対し、直列連結では、電源局3に近い有線連結用のリード4でも、電源局3から遠い有線連結用のリード4でも同じ電流量、つまり、同じ単位当たりの重さの電線を使用できる。これにより、中継型の無人航空機1の連結数を増やしても、全ての中継型の無人航空機1において、有線連結用のリード4の長さを同じに設定でき、連結時における終端型の無人航空機2の高度を高くできるという利点がある。以下の実施形態の説明では、電源局3に直列連結されたものとして説明する。
【0045】
図7を参照に、中継型の無人航空機1のペイロード(積載可能重量)を全てリード4の荷重として利用して終端型の無人航空機2の高さを高く設定する場合について説明する。図7(a)に示すように、リード4を付けない場合(長さがゼロ)において、中継型の無人航空機1及び終端側の無人航空機2のペイロード(積載可能重量)が500g、有線連結用のリード4の重量が5g/mとすると、図7(b)に示すように、リード4の長さを100mとすることができる。従って、図7(c)に示すように、5台の中継型の無人航空機1を垂直に直列に連結することによって、5本のリード4によって500mの高さを稼ぐことができる。終端型の無人航空機2は、そのリード4の長さを直ぐ下の中継型の無人航空機1に干渉しない最小限の長さに設定すれば、目的装置15に対して最大限の積載重量を確保できる。例えばリード4の長さを1mとすれば、目的装置15に495gの積載重量を確保できる。
【0046】
次に、図9を用いて、中継型の無人航空機1及び終端型の無人航空機2がリード4の他に通信線としても利用できる複線5を有する場合を説明する。複線5は、中継型の無人航空機1及び終端側の無人航空機2に対して飛行の支障にならない間隔を開けて垂直、つまり、リード4に平行に配置されている。複線5は、例えば、終端型の無人航空機2の目的装置15用の通信線として利用される。
【0047】
中継型の無人航空機1のペイロード(積載可能重量)を全てリード4及び複線5の荷重として利用して終端型の無人航空機2の高さを高く設定する場合について説明する。上記でも説明したように、図8(a)に示すように、リード4及び複線5を付けない場合(長さがゼロ)において、中継型の無人航空機1及び終端型の無人航空機2のペイロード(積載可能重量)が500g、連結用のリード4の重量が5g/mとすると、図8(b)に示すように、リード4の長さを100mとすることができる。
【0048】
一方、中継型の無人航空機1及び終端型の無人航空機2のペイロード(積載可能重量)が500g、有線連結用のリード4の重量及び複線5の重量が共に5g/mとすると、図9(a)に示すように、リード4及び複線5の長さを50mとすることができる。従って、図9(b)に示すように、5台の中継型の無人航空機1を垂直に直列に連結することによって、5本のリード4及び複線5によって250mの高さを稼ぐことができる。終端型の無人航空機2は、そのリード4の長さを直ぐ下の中継型の無人航空機1に干渉しない最小限の長さに設定すれば、目的装置15に対して最大限の積載重量を確保できる。例えばリード4の長さを1mとすれば、目的装置15に490gの積載重量を確保できる。
【0049】
図10は、複線5として光ファイバ16を使用した例である。光ファイバ16を通信に使用すれば、電気的なケーブルでは不可能な大容量の情報通信が可能となる。
【0050】
図11は、複線5として空洞パイプ17を使用した例である。空洞パイプ17に色々な線を通せるので、複数の内容を空洞パイプ17を使って自在に変更する使い方がある。家庭の配管パイプのようなもので、これをガイドに、電話線を通したり、LANケーブル通したりする原理である。尚パイプを使えば、上部に、気体や液体を送ったり、上部から気体や液体を受取ったりもできる。
【0051】
図12A図12Dは、ロボットアームオプション取り付け部21を使い、取り外しが可能なロボットアームを取り付けて複線5としてリフト用ワイヤ18を使用した例である。リフト用ワイヤ18は、中継型の無人航空機1及び終端側の無人航空機2に対して飛行の支障にならない間隔を開けて垂直、つまり、リード4に平行に配置されている。そして、リフト用ワイヤ18は、中継型の無人航空機1、終端型の無人航空機2のそれぞれにロボットハンド20を介して連結されている。ロボットハンド20は、図12B図12Dに詳しく示すように、一端側に接合部21を、他端側の上下離間した位置に1対の把持アーム22をそれぞれ有する。ロボットハンド20は、接合部21によって無人航空機1,2の航空機本体1a,2aに接合されている。ロボットハンド20は、2箇所の1対のロボットハンド20の把持アーム22によってリフト用ワイヤ18を把持する。2箇所の1対のロボットハンド20の把持アーム22は、上ロボットハンドアーム開閉制御部85(図14に図示)及び下ロボットハンドアーム開閉制御部86(図14に図示)によって、それぞれ互いの間隔を開閉可能に構成されている。又、2箇所の1対のロボットハンド20の把持アーム22の位置は、ロボットハンドアームセンサー87(図14に図示)によって検知する。
【0052】
ワイヤ昇降ロボット25は、図12A図12Dに示すように、内蔵する駆動源26と、この駆動源26の駆動力によって回転する3個のローラ27とを有する。3個のローラ27は、並列配置されており、この3個のローラ27にリフト用ワイヤ18が交互に掛け渡されている。ワイヤ昇降ロボット25は、3個のローラ27が回転駆動によってリフト用ワイヤ18を自走で昇降する。つまり、リフト用ワイヤ18を利用して昇降可能に構成されている。
【0053】
ワイヤ昇降ロボット25は、リフト用ワイヤ18を上方移動し、ロボットハンド20の近傍に来ると、ロボットハンド20の下位置の把持アーム22が開き、上位置の把持アーム22のみでワイヤ昇降ロボット25がリフト用ワイヤ18に支持されつつ下位置の把持アーム22の箇所を通過する。ワイヤ昇降ロボット25が下位置の把持アーム22の位置を通過すると、下位置の把持アーム22が閉じ、次に上位置の把持アーム22が開き、下位置の把持アーム22のみでワイヤ昇降ロボット25がリフト用ワイヤ18に支持されつつ上位置の把持アーム22の箇所を通過する。この動作を繰り返すことで、ワイヤ昇降ロボット25が電源局3から終端型の無人航空機2までリフト用ワイヤ18を上昇し、中継型の無人航空機1のみならず終端型の無人航空機2に物資等を運ぶことができる。ワイヤ昇降ロボット25の降下は、上記の逆動作で行うことができる。
【0054】
図12Eは、給電線5を無くし複線を2本一対の電源線30とすれば、複線のみの構成で、しかも電気的直列接続が容易になり、しかも無人航空機1,2と接触していない片側の線を使って、(外側線は途中遮るものがないので)ワイヤ複線同等の役割が可能で2点支えで開閉可能なロボットアームのような構成が無くても、この外側を昇降するロボットの設計も可能なので、最もシンプル給電及び複線の方法である。
【0055】
図12Fは、ワイヤ30が平面ケーブルである例を示している。平面ケーブルを使用した場合は、ロボットハンド20(図12A~D参照での把持が容易になる。また、平面ケーブルは、表面積が増えるため、大きな電流を流すことができる。例えば、平面ケーブルの表面にプラス、裏面にマイナスの電流を流し、ロボットハンド20にパンタグラフの機能をもたせて、掴むことで、掴んだ接点を使って給電できるようにすれば、1本の平面ケーブルで、給電線と複線5の両方の役割をさせることもできる。
【0056】
図12Gは、ワイヤ30が同軸ケーブルである例を示している。無人航空機1,2からは、ロボットハンド33が突出されている。ロボットハンド33は、1対の把持アーム34を有し、この各把持アーム34の内面には、ワイヤ30である同軸ケーブルに食い込むことができる接点端子35がそれぞれ突設されている。ロボットハンド33の1対の把持アーム34でワイヤ30である同軸ケーブルを把持することによって、各接点端子35が同軸ケーブルと導通する。
【0057】
図13には、電源局3、中継型の無人航空機1が有線連結用のリード4によって連結された場合の概略回路構成図が示されている。電源局3と最下段の中継の無人航空機1の間を連結するリード4は、電源局3の電源局連結装置40の第1接点t1と、最下段の中継の無人航空機1の航空機側連結装置60の第1接点t1とを連結する。無人航空機1とその直ぐ上段の無人航空機1(又は2)の間を連結するリード4は、無人航空機1の航空機側連結装置60の第2接点t2と直ぐ上段の無人航空機1(又は2)の航空機側連結装置60の第1接点t1とを連結する。同様の連結が終端型の無人航空機2まで繰り返されている。
【0058】
図13の航空機側連結装置60と電源局連結装置40のブロック内の詳細は、図14図15に示されている。ブロック図が記載されているのは、電源局と中継型無人航空機のみで、ブロック図はより要素が多い中継型のみを記載してそれを補う。
【0059】
図14の、クワッドコプターのドローンを実施例とした、無人航空機構成図を説明する。中継の有線給電無人航空機では、構成図のドローン・ブロックの目的装置部は無くても良く、終端の有線給電無人航空機では、構成図の電源ユニット・ブロックの有線給電出力部は、電力信号合成部を除き無くても良く、どちらの場合でも、バッテリを搭載しなくても、ドローンタワーとしては機能させることができる。無人航空機1の航空機側連結装置60は、電源ユニット・ブロック61とドローン・ブロック62を有する。電源ユニット・ブロック61は、第1接点~第7接点t1~t7まで有し、電力は第1接点t1を介して有線電源入力マグネット端子63に入り、電力/信号分離部64に入力される。電力/信号分離部64では、電力供給を担当し、直流を(交流電源の場合は低周波成分)と制御・通信等の信号をになう、交流(交流電源の場合は高周波成分)に分離される。信号成分は、通信部65に送られて解読され、解読された制御・通信データが電源ユニット制御部66に送られる。
【0060】
これは、電源局3から送られた無人航空機1,2を操縦するための信号なので、電源ユニット制御部66から第4接点t4を介してドローン・ブロック62のメインコントロール部であるフライトコントローラ67に送られる。
【0061】
電源ユニット制御部66は、電源ユニット・ブロック61の全体を制御するメインコントロールの役割を持つ。これ以外に、電源ユニット・ブロック部61には、リード4からの有線給電が無い場合のために、電源ユニット・ブロック61のアンテナ68から無線による信号も受信でき、受信部69を通して信号が通信部65に送られ、制御・通信データとなって電源ユニット制御部66に送られる。
【0062】
電源ユニット制御部66は、リード4から送られた制御・通信データを使うか、無線で送られた制御・通信データを使うかは選択できるが、実施形態の構成では、有線>無線>自立プログラムの優先順位となる。そして、電力/信号分離部64で分離された電力成分は、電力入出力処理部70に送られる。実施形態では、ここで350V・0.5Aは、15.2V・11.5Aに変換されて、電力調整切替部71へ送られる。
【0063】
電源ユニット制御部66は、端子連結センサS1や電力入出力処理部70の処理情報を得て、有線からの給電が有れば、電力調整切替部71に指示信号を送り有線給電で得られた電力を第3接点t3を通して、ドローン・ブロック62のPDB(パワーディストリビューションブロック)72に供給する。
【0064】
この際、ドローン・ブロック62で必要とされている電力に対して、リード4からの有線給電による電力に余剰があれば、電力調整切替部71から余剰分が、バッテリ管理部73に送られ、内蔵のバッテリ74を充電する。
【0065】
逆に、ドローン・ブロック62で必要とされる電力に対して、有線給電による電力が一時的に不足する場合は電力調整切替部71は、バッテリ管理部73に指示して、バッテリ74の電力を得て合成し、合成された電力が第3接点t3を通して、ドローン・ブロック62のPDB72に供給される。
【0066】
さらに、第2接点t2を通して、端子連結センサS1で、有線電源出力マグネット端子75に有線送電のためのリード4が連結されていて、直ぐ上段の無人航空機1(又は2)が連結されていることを検出した場合は、電源ユニット制御部66は、直ちにリード4の連結を維持するためにフック開閉制御部76に指示し、フック92(図16A図16B参照)をリード側コネクタ4aが抜けないように閉じでロックし、同時に電磁石着脱制御部77を電磁気による作用の無い状態から、吸着できる極性の電磁石として稼働する。この構成は、下記に詳述する。
【0067】
そして、電源ユニット制御部66は、次の有線給電の送電の必要の知らせを、通信部65を使って信号化する。この信号を電力/信号合成部78を使って交流成分(高周波成分)にした信号に合成して、リード4を通して電源局3に伝える。この実施形態では、連結の電気的な接続は、直列接続で実現されている。従って、指令を受けた電源局3は、直列連結用に、送り出す電圧を上げる。
【0068】
実施形態では、350Vだった供給電圧を、無人航空機1機追加分の350V加算して700V・0.5Aが有線給電入力側(有線電源入力マグネット端子63側)から入り、電力入出力処理部70を通して有線電源出力側(有線電源出力マグネット端子75側)にそのまま直列に連結しているので自身の電力調整切替部71には半分の350V・0.5Aが供給される。又、有線電源出力側(有線電源出力マグネット端子75側)に350V・0.5Aが送られる。
【0069】
電源ユニット・ブロック61とドローン・ブロック62は、別の物理的な空間に有り、既存のドローンをドローン・ブロック62としてそのまま使い、既存のドローンの交換可能なバッテリパックのサイズと本体との接続部を生かして電源ユニット・ブロック61の機能を実現すれば、既存のドローンをそのまま使い、リード4と電源ユニット・ブロック61のみで電源局3と連結してドローンタワーを実現できる。
【0070】
ドローン・ブロック62は、市販のクワッドドローンで代用でき、ドローンの構成や機能はここでは説明しない。ただし実施形態としては、広く世界で利用されていた、phantomに準じたパーツで構成されている。
【0071】
図15に示すように、電源局3の電源局連結装置40は、電源ユニット・ブロック41とプロセッサ・ブロック42を有する。電源ユニット・ブロック41は、第1接点t1から第6接点t1~t6、第15接点t15等を有する。この接点の主なものについては、下記に詳述する。
【0072】
プロセッサ・ブロック42には、汎用のインターフェイスを持ち、画像処理や画像認識やAI処理も可能な高速プロセッサを搭載し、無人航空機2の目的装置15(図1等に図示)、例えば4Kカメラ映像などをデコードして解析することができる。また、連結する各無人航空機1,2のフライトプランを司っている。
【0073】
プロセッサ・ブロック42は、外部入出力として、無線インターフェイス(WiFi/Bluetooth:登録商標)、ディスプレイ出力インターフェイス(HDMI)を第9接点t9、インターネットインターフェイス、(イーサネット)を第10接点t10、PC用通信インターフェイス(USB3.0)を第11接点t11、プロポ用インターフェイス(汎用I/O)を第12接点t12、キーボード用インターフェイス(USB)を第13接点t13、マウス用インターフェイス(USB)を第14接点t14、記録用SD(microSD)を持ち、これら外部への入出力や記録メディアで、無人航空機1,2から取得した情報を記録したり、外部に転送したり、より多くの演算処理を外部に依頼することができる。
【0074】
プロセッサ・ブロック42は、内部入出力として、高速通信用インターフェイス(USB3.0)を第8接点t8、汎用インターフェイス(UART、SPI、I2C、PIO等)をペリフェラル用内部接点t7を有する。これらは、電源ユニット・ブロック41の電源ユニット制御部43に接続され、電源ユニット制御部43に指示を出したり、電源ユニット制御部43を通して無人航空機1,2からの各種情報を取り込むことに使用される。
【0075】
実施形態では、プロセッサ・ブロック42は現在広く使われているラズベリーパイ4をベースにしているが、ペリフェラルを第7接点t7、USB3,0を第8接点t8を持つ他のさらに性能の高いプロセッサ・ブロックに交換できる構造となっている。
【0076】
電源ユニット制御部43は、電源ユニット・ブロック41全体の制御をするメイン処理プロセッサ部分である。
【0077】
各無人航空機1,2を人が直接操縦するためには、広く無人航空機1,2の飛行の遠隔操縦のために使われているプロポの信号が必要である。実施形態では、このプロポの信号を、メインコントロール部44が有線の汎用I/Oまたは2.4G/5GHzWiFi・Bluetoothの無線で受け、プロセッサ・ブロック42から、ペリフェラル端子接点t7を通して、電源ユニット・ブロック41の電源ユニット制御部43に伝える。
【0078】
電源ユニット制御部43は、この飛行操縦指示情報を通信部45に送り、ここで交流(高周波)信号に変換され、電力/信号合成分離部46で送り出される電力の交流(高周波)成分として合成され、有線電源出力マグネット端子t1からリード4へ送られる。
【0079】
ドローンタワーとして、連結される、各無人航空機1,2の飛行をプロポで直接遠隔制御するには、このリード4に電力の一部の交流(高周波)成分として送り出された操縦情報を各無人航空機1,2の電源ユニット・ブロック61が信号として受取り、ドローン・ブロック62のフライトコントローラ67に出力される。
【0080】
また、リード4が連結されていない状態の時、または、途中断線や有線給電のトラブルにより、有線での操作情報の伝達ができない場合のために電源ユニット・ブロック41には、通信部45からは無線通信のための送信部48が選択でき、無線信号を送信し、無人航空機1,2の電源ユニット・ブロック61の無線用の受信部69に受信され、通信部65から電源ユニット制御部66を通してフライトコントローラ67に伝えることができる。
【0081】
さらに、無人航空機1,2のドローン・ブロック62には、電源ユニット・ブロック61が無い場合、または、何らかの理由で電源ユニット・ブロック61が機能しない場合のためにドローン・ブロック62が、直接にプロポからの遠隔飛行操縦を受けられるための無線用のアンテナ68と受信部69と送信部48が、フライトコントローラ67に接続されている。
【0082】
しかし、実施形態では、ドローンタワーとしての各無人航空機1,2への飛行のための遠隔操縦指示は、電源ユニット制御部43が各無人航空機1,2をプログラムで操縦できるようになっている。予めプログラムによる飛行プランで各無人航空機1,2が、所定の高度の所定の位置に移動しホバリングする。
【0083】
本実施形態では、各無人航空機1,2は、ドローン・ブロック62のGPS位置の観測情報を基に、センサ処理部79が機体の正確な高度と位置を検出できる。
【0084】
電源局3の電源ユニット制御部43は、各無人航空機1,2に、次のGPS位置を指示して、飛行をはじめ最終的には目的装置15を搭載した無人航空機2が、目的の高度と位置を維持できるように、それ以外の無人航空機2のGPS位置をプログラムで指示する。
【0085】
この様に、各無人航空機1,2の複雑な飛行手順は、電源ユニット制御部43にあらかじめプログラムとして書かれており、電源局3の操作者は、単にドローンタワーの最終高度の高度と位置を入力するだけの単純な操作でドローンタワーを制御でき、各無人航空機1,2の個別各機の立体操作を直接考えることなく、安全に、簡単に、ドローンタワーを起動したり、順次離陸させ伸ばしたり、最高高度(または目的高度)でドローンタワーとして常駐させたり、縮めたり、順次着陸させて、機体を回収して、終了することができる。
【0086】
尚、GPS情報以外にも、各無人航空機1,2のドローン・ブロック62のセンサ処理部79には、電源局3の電源ユニット・ブロック41の送信部48から送られる信号を検知するための電源局位置信号センサ80がありGPSより正確な位置を検出するため利用する。
【0087】
電源局3が発する位置信号は、レザーを発生したり、音波を発生したり、電波を発生することでこれを無人航空機1,2がドローン・ブロック62の電源局位置信号センサ80で検知することで、GPSに代わるより正確な高度と位置を検出して位置制御を行うことができる。
【0088】
また、電源局3の電源ユニット・ブロック41は、飛行操縦情報などの情報をリード4を使って各無人航空機1,2に送るだけでなく、各無人航空機1,2のフライト用のセンサ情報や、目的装置15から送られる映像などの目的装置15の情報を受信することができる。
【0089】
電力を供給しているリード4には、無人航空機1,2側からの情報が各無人航空機1,2の電力/信号合成部78によって交流(高周波)信号として合成され、リード4を通し受信され、電源ユニット・ブロック41の電力/信号合成分離部46に入り、電力信号合成分離部46は、交流(高周波)成分をフィルターで分離して信号を得ることができる。
【0090】
実施形態では、目的装置15は、環境情報を取得する環境情報取得手段である撮像装置のカメラ81であり、カメラ81から映像を取り込む。取り込んだ映像信号を目的装置処理部82で圧縮処理し、フライトコントローラ(メインコントロール部)67を経由して、第4接点t4より電源ユニット・ブロック61の電源ユニット制御部66を介して通信部65へ送られる。次に、通信部65で交流(高周波)信号に変換され、電力/信号合成部78に送られ、有線電源出力マグネット端子75からリード4を介して電源局3に送られる。電源局3に送られた交流(高周波)信号は、電力/信号合成分離部46で分離され、通信部45でデジタル信号化されて映像情報とされる。この映像情報信号は、電源ユニット制御部43に送られ、高速通信用の第8接点t8のUSB3.0の信号としてプロセッサ・ブロックのメインコントロール部44に入力される。そして、メインプロセッサにより映像データが伸長され、デコードされて、ディスプレイ出力用のHDMI端子の第9接点t9からモニタ100(図17に図示)に映し出される。
【0091】
この実施形態では、Nを2以上の自然数としたとき、N個の無人航空機1,2を備え、N個の無人航空機1,2のうちの、少なくともN番目の無人航空機2は、環境情報を取得する環境情報取得手段(カメラ81等)を備え、電源局連結装置は、連結状態において、N番目の無人航空機2から環境情報を取得するよう構成されている。
【0092】
終端の無人航空機2のみならず、全ての中継の無人航空機1において、N個の無人航空機1,2のうちの少なくともN番目の無人航空機2が、環境情報を取得する環境情報取得手段(例えばカメラ81等)を備え、電源局連結装置は、連結状態において、N番目の無人航空機2から環境情報を取得するよう構成しても良い。
【0093】
電源ユニット・ブロック41の主な機能は、リード4で接続して連結された無人航空機1,2に必要とされる電圧を作り出して、必要な電力を送ることである。
【0094】
実施形態では、リード4の同軸は0.5Aまでの電流しか流せないので、各無人航空機1,2が必要とする175Wの電力を供給するためには、接続されて連結した各機に、350Vの電圧が加わるように、出力電圧制御を行う。
【0095】
高圧N倍生成電力出力部50は、電源ユニット制御部43からリード4を通して検出した連結数を知り、実施形態では350Vを1単位として、N台が連結されていれば350VxNの電圧を高圧N倍生成電力出力部50が発生し、直流電力として電力/信号合成分離部46に送り、先ほどのプロポからの操縦信号の交流(高周波)とを合成した1つの電力信号合成出力を有線電源出力マグネット端子t1からリード4の同軸ケーブルに送り出す。
【0096】
実施形態では、電源ユニット・ブロック41には、メイン出力としての第1接点t1、バックアップ1出力として第2接点t2、バックアップ2出力として第3接点t3、の合計3系統の出力を持っている。通常はメイン出力を使う。
【0097】
尚、バックアップ1出力としての第2接点t2、バックアップ2出力としての第3接点t3に関わる回路ブロックの構成は、メイン出力としての第1接点t1に関わる回路ブロックの構成と同じであるため、図15の同一構成ブロックに同一符号を付して重複説明を省略する。
【0098】
また、実施形態の電源局3は、独自に内蔵のバッテリ51を搭載している。内蔵のバッテリ51は、バッテリ電源入力充電管理部52に接続されていて外部からの電力供給が無い場合は、電源入力処理部直流/交流変換部53のDC-ACで交流電流の350Vに変換されて高圧N倍生成電力出力部50に入力される。これにより、短い時間であれば外部からの電力供給が無くてもドローンタワーを駆動できる。
【0099】
内蔵のバッテリ51の容量を補うため、外部バッテリ電源入力/充電用に第4接点t4が設けられている。
【0100】
また、さらに、ドローンタワーを、再生可能エネルギーで稼働できるようにするために、実施形態では、その1つの太陽光パネル発電による電力を外部からの電力として選択できるために、第5接点t5が設けられている。第5接点t5は、太陽光パネル電源入力部54に接続され、そこから電力入力処理部直流/交流変換部53で交流電力となって高圧N倍生成電力出力部50に入力される。
【0101】
例えば、大容量の外部バッテリは、夜間の稼働が可能な十分な容量を持たせることで、昼の太陽光が有る時は、太陽光パネル電源入力部54に接続された太陽パネル発電の電力によりドローンタワー稼働し、同時に、内部のバッテリ51や大容量の外部のバッテリに夜間分の電力量を充電する。
【0102】
そして、太陽光の無い夜間は、充電したバッテリ51で稼働することで、砂漠や海上や森林(ジャングル)など、外部電源からの電力供給ができない地点でもドローンタワーを永続的に稼働し続けることができる。この内容については、下記に詳述する。
【0103】
実施形態の電源局3は、普段は、家庭用の交流電源を外部電源として稼働し、第6接点t6から交流電力を交流電力入力部を通して取込み、ドローンタワーを駆動し、同時に、並行して、バッテリ電源入力充電管理部52を通して内部のバッテリ51の充電も行う。大容量の外部バッテリが繋がっていれば、この充電も同時に行う。
【0104】
尚、電源ユニット・ブロック41には、連結している無人航空機1,2への操縦などの通信を無線で行うためのアンテナ55と送信部48と受信部56を有する。有線による通信をしない場合、有線が繋がっていない場合や、有線が不調の場合、そもそも有線経由での通信ができない既存のドローンでドローン・ブロック62を構成している場合などには、一般的な無線による送受信を電源ユニット制御部43が通信部45を利用することで行うことができる。
【0105】
電源ユニット制御部43には、端子連結センサ59からの検知信号が入力されている。端子連結センサ59は、リード4のリード側コネクタ4aの連結状態を検知する。この検知情報に基づいて、電源ユニット制御部43は、電磁石着脱制御部58とフック開閉制御部57の駆動を制御する。この制御内容は、上記した図14の電源ユニット・ブロック61のフック開閉制御部76と電磁石着脱制御部77と同じである。この動作の説明は、上記したように下記に詳述する。
【0106】
尚、実施形態では、高圧N倍生成電力出力部50は、交流電力の入力を利用しているが、直流電力を入力としての構成は可能である。
【0107】
また、実施形態では、各無人航空機1,2への電力は、直流電力を供給しているが、交流電力とした場合でも、交流電力は、低周波で有り、操縦情報や目的装置15のカメラ81等の情報は、信号化される場合は、高周波とするため、周波数での分離、合成が可能なため、実施形態をもって、電力と信号の種類を限定するものではない。
【0108】
図16A図16Dには、有線電源入力部12,14及び有線電源出力部11,13とリード4のリード側コネクタ4aとの接続構造が示されている。図16A図16Dに示すように、有線電源入力部12,14及び有線電源出力部11,13は、接点台90上に設けられた接点91と、接点台90の側部に回転自在に支持された複数のフック92と、接点台90に内蔵され、極性反転可能な電磁石93とを有する。複数のフック92の開閉は、フック開閉制御部57(図14図15に図示)によって制御される。電磁石93への通電は、電磁石着脱制御部58(図14図15に図示)によって制御される。リード4のリード側コネクタ4aは、接点台94上に設けられた接点95と、接点台94の側部に形成された係止溝96と、接点台94に内蔵された永久磁石97とを有する。
【0109】
有線電源入力部12,14及び有線電源出力部11.13とリード側コネクタ4aを連結するには、電磁石93に永久磁石97に吸着する方向に通電し、双方の接点台90,94が突き合わされて接点91,95間が接触すると、フック92を開位置から閉位置側に変位するよう通電する。すると、接点台90のフック92が接点台94の係止溝96に係止する。これで、連結が完了する(図16Dの右側状態)。つまり、有線電源入力部12,14及び有線電源出力部11,13とリード側コネクタ4aの接続は、磁力による結合と機械的な係合の双方での接続であるが、いずれか一方の接続でも良い。
【0110】
有線電源入力部12,14及び有線電源出力部11,13とリード側コネクタ4aの接続を解除するには、フック92を閉位置から開位置側に変位するよう通電し、電磁石93に永久磁石97が反発する方向に通電する。すると、接点台90のフック92が接点台94の係止溝96から離間すると共に、電磁石93と永久磁石97間に反力が発生して双方の接点台90,94が離間する方向に変位し、接点91,95間が離間する。これで、離間が完了する(図16Dの左側状態)。
【0111】
このような構成であるため、給電前と給電後に行う際のリード4と電源局3との連結と離脱作業、リード4と各無人航空機1,2との連結の離脱作業を確実、且つ、スムーズに行うことができる。また、無人航空機1,2は、給電中、給電前、及び給電後に関わらず飛行中にあって、飛行トラブルが発生して飛行不能や飛行制御不能となった場合、当該無人航空機1,2が単独でリード4の連結を解除し、自身のバッテリ74(図14に図示)で着陸して回収が可能である。
【0112】
ドローンタワーへの給電トラブルなどが発生した場合に、リード4による連結を解除して、個別に緊急着陸し、連鎖による被害を最小限にすることができる。
【0113】
また、ドローンタワーの連結する1台の無人航空機1(又は2)が不調になった場合に、ドローンタワー全体を回収するのではなく、故障機のみを、上下のリード4(終端型の無人航空機1の場合には、下方に垂下されたリード4のみ)の連結を解除してリード4を切り離し、単独回収し、同時に、代わりの新たな無人航空機1(又は2)をその位置に向かわせて、空中でリード4の連結を行って上下の無人航空機1,2との連結を行うことにより、ドローンタワーとしての機能を復活させる修理もできる。
【0114】
また、故障はしなくても目的装置15を替えたい場合などは、ドローンタワー全体を一旦回収する必要はなく、最終端の無人航空機2、つまり、目的装置15付き無人航空機2のみを切り離して着陸させ、新たな別の目的装置15を搭載した最終端の無人航空機2を最上段に連結できる。
【0115】
この実施形態では、無人航空機1,2とその上方及び下方に垂下されるリード4との両方の連結を切り離し可能に構成したが、上記したような故障対応などを配慮する必要がない場合には、無人航空機1,2とその下方より垂下されるリード4の連結を切り離しできないように固定としても良い。
【0116】
図17に示すように、電源局3の電源局連結装置40と各無人航空機1,2の航空機側連結装置60の間は、各リード4を介して電力と共に操作のための情報、目的装置15の情報を載せた通信信号を送受信できるように構成されている。
【0117】
複数台同時の無線での通信は、利用可能な周波数が重なるため、干渉や混戦などの問題が生じるが、リード4での送受信ではこれらの不具合を回避できる。
【0118】
具体的には、電力供給では直流又は低周波(120Hz以下)交流を使用し、制御や目的装置15の情報では高周波(1MHz以上)交流を使用し、これらの信号とミックスして送信する。電源局3では、有線電源出力マグネット端子47より入力した信号について、電力と信号の分離を電力/信号合成分離部46で行って通信部45に送る。また、電源局3では、電力と信号の合成を電力/信号合成分離部46で行い、有線電源出力マグネット端子47より出力する。
【0119】
各無人航空機1,2では、有線電源入力マグネット端子63より入力した信号について、電力と信号の分離を電力/信号分離部64で行って通信部65に送る。各無人航空機1,2では、電力と信号の合成を電力/信号合成部78で行い、有線電源出力マグネット端子75より出力する。
【0120】
つまり、電源局3は、1番目の無人航空機1に通信可能に連結される電源局連結装置40を備え、電源局連結装置40は、リード4での連結状態において、N番目の無人航空機2に対してリード4を介して通信可能に成される。
【0121】
図9図12で説明した複線5を通信線として使用することができる。この場合には、リード4からの信号ではなく複線5である通信線からの送受信信号が、図17の回路構成の電力/信号合成分離部46、電力/信号分離部64、信号合成部78に入出力されるよう構成される。
【0122】
つまり、電源局3は、1番目の無人航空機1に通信可能に連結される電源局連結装置40を備え、N個の無人航空機1,2は、連結状態において、複線5である通信線を支持可能であり、電源局連結装置40は、連結状態において、N番目の無人航空機2に対して、複線5である通信線を介して通信可能に構成される。
【0123】
以上説明したように、この実施形態の無人航空機用システムAは、複数の無人航空機1,2と、電源装置である電源局3と、これらの間を連結する複数の有線給電用のリード4とを備え、各無人航空機1,2間がリード4を介して直列に接続された連結状態を形成している。従って、複数の無人航空機1,2がリード4を介して直列に連結されるので、最先端(終端)の無人航空機2に連結されるリード4の長さを短くしても、最先端(終端)の無人航空機2が全てのリード4のトータル長さ分だけ電源供給先である電源局3より離間した高さ位置で電源供給を受けることが可能となる。従って、最先端(終端)の無人航空機2における給電用のペイロード(積載可能重量)の負担を極力小さくでき、しかも、電源供給先から十分に離れた高さ位置で電源供給が可能である。従来に比べて高高度での長時間飛行が可能である。
【0124】
また、電源局3から最先端(終端型)の無人航空機2までの中間区間には、動力を有し、且つ、飛行姿勢を自ら調整できる中継型の無人航空機1が配置されるので、風等の外的要因でリード4が流されても個別に位置調整できるため、ドローンタワーとしてほぼ垂直に維持することが容易である。
【0125】
次に、無人航空機用システムAの応用例、変形例を説明する。
【0126】
図18に示すように、電源局3には、Nを2以上の自然数とすると、N個(この実施形態では6個)の無人航空機1,2からなる組み合わせの態様が3組配置されている。無人航空機1,2は数が同じであるため、3組はドローンタワーを形成した場合に終端型の無人航空機2をそれぞれ同じ目的の高度で、且つ、同じ位置で監視、観測、計測等を行うことができる。従って、3組が交代で稼動することにより、常時、同じ目的の高度で、且つ、同じ位置で監視、観測、計測等を行うことができる。図18は、中央に位置する1組がドローンタワーを形成して、監視、観測、計測等を行っており、両側に位置する2組が待機中である状態を示している。
【0127】
または、N個の数が異なる無人航空機1,2の組み合わせを、複数組配置される構成としても良い。
【0128】
つまり、Nを2以上の自然数とすると、N個の無人航空機1,2は、Nが同じ又は異なる態様で、複数組配置される構成とする。
【0129】
図19は、図18の構成に加えて、システムとして太陽光発電装置102と、太陽光発電装置102で発電した電気を蓄積する蓄電装置103とを有し、蓄電装置103から電気が電源局3に供給される構成とされている。太陽光発電装置102以外の再生可能エネルギーによる発電装置でも良い。
【0130】
砂漠、海上、ジャングルや森林などの外部電力を確保できない場所において、ドローンタワーによる監視、観測、計測等を行うことができる。再生可能エネルギーを利用するため、半永久的な稼動が可能である。太陽光のない夜間は、蓄電装置103から電気の供給を受けることができるため、夜間でもドローンタワーによる監視、観測、計測等を行うことができる。
【0131】
図20Aでは、図19の構成に加え、Nを2以上の自然数とすると、N番目の無人航空機(終端型の無人航空機)2が衛星104又は飛行船105又はドローン106より構成されている。描かれている図は、衛星を終端の無人航空機、中継の無人航空機としてより高度を得やすい飛行船とクワッドコプターを使った場合である。
【0132】
例えばドローン106より高度を得るには、無人航空機2として飛行船105を利用する。現時点で、JAXAが気球により3kgの機材を搭載し高度53.7kmでの水平飛行に成功している。
【0133】
飛行船105と気球は、高度を得る原理は同じであり、推進力がある気球を飛行船105として、連結可能な無人航空機2とし、この飛行船105を十分な数で連結させれば、地上基地局を電源局3にする高度50kmのドローンタワーができる。るまり、飛行船105を終端型の無人航空機2のほかに、中継型の無人航空機1として使用する。本発明では、飛行船105には気球を含む。
【0134】
さらに、超低空の衛星104として、世界超低高度地球観測衛星であるJAXA「つばめ」の高度167.4kmの記録が知られている。従って、高度170kmの軌道をまわる衛星104は十分できる。
【0135】
このように高度170kmの衛星104から、本実施形態と同じ重さのリード4を下ろす場合は、850kg(170x1000x5))の重さのリード4を搭載した衛星104を打ち上げればよく、1t以下の重量なので、商用ロケットで実用的に打ち上げができる。
【0136】
ただし、衛星104は高速で移動しているので、リード4が1mで5gの非常に細い同軸ケーブルでは、空気の抵抗が強い場合には、リード4が流されるだけでなくリード4と空気の摩擦による発熱、人工衛星への負荷の問題が生じる。
【0137】
ところで、空気密度が高ければ、回転翼などによる推進力が得やすく、そのクワッドコプターの現在の記録は高度10kmとなる。これ以上に空気密度が低い場合は、回転翼では十分な推進が得られないので飛行船105を使い高度50kmまでが現状の記録から可能となる。
【0138】
これは、逆に、高度50kmでは、十分に、空気の密度が低く、細いリード4と空気との摩擦の問題が十分軽減される高度であることになる。つまり、170kmの高度の超低高度の衛星104から、空気による摩擦等の障害の問題が少ない高度50kmまでならば、ケーブルを下ろしやすい。
【0139】
そのために必要な120kmのリード4は、本実施形態のリード4であれば、重量わずか600kgであるため、商用ロケットで十分余裕をもって打ち上げて軌道に乗せられる。そして、本発明のドローンタワーの連結は、フレキシブルにリードの切り離しや再連結ができる。
【0140】
図20Aとは逆に、電源局3を衛星104又は飛行船105又はドローン106としてシステムを構成しても良い。衛星104、飛行船105、ドローン106が自然再生エネルギーである例えば太陽光パネルを有する構成とすれば、電力の供給源とすることができる。つまり、電源局3を移動体に搭載されるもので構成するシステムである。
【0141】
図20Bは、衛星を終端の無人航空機とみなし衛星の積む観測装置が目的装置となり、大量のデータを有線で地上に秘匿性が高く送ることができる図である。尚、衛星が電力局となり、電源局3が、移動している衛星104としたシステムであれば図20Bは衛星より電力を受けることもできるドローンタワーにもなる。高度170kmの衛星104が、衛星104の軌道が、ドローンタワーに近づくタイミングで、120kmのリード4を下ろしはじめ、十分近づいたところで、高度50kmのドローンタワーと連結し連結中にリード4を介した有線通信により様々な処理をし、衛星104の軌道がドローンタワーとの連結維持範囲を超えたところで連結を分離し、衛星104はリード4を回収する。
【0142】
このように衛星104は、地球周回軌道を回りながら連結、分離を周期的に繰り返すことができる。つまり、地上と衛星104が有線により定期的に連結と分離を繰り返す利用方法が可能になる。
【0143】
さらに、本発明の、複線5を使い高度50kmのドローンタワーを構築し、高度170kmを周回する衛星104から、120kmの複線5を下ろし、連結することで、170kmを周回する衛星104に、ドローンタワーの複線5のワイヤで移動する、ワイヤ昇降運搬ロボット25(図12A~D参照)を使って地上から衛星104を定期的に物資(推進エネルギー等)を補給し続ける新しい衛星104の運行方法が可能になる。
【0144】
つまり、ドローンタワーによる狭義の宇宙エレベータと考えてよく、定期的な補給が可能な超低高度衛星は、今までにはできなかった多くの応用が考えられる。
【0145】
以上、各実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0146】
なお、以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0147】
(付記1)
航空機システムAは、Nを2以上の自然数としたとき、N個の無人航空機1,2を備え、N個の無人航空機1,2は、1番目から昇順にN番目まで直列に、各無人航空機1,2間が有線連結用のリード4を介して連結された連結状態を形成可能であり、N番目の無人航空機2を目的装置15を搭載した無人航空機2としたが、N-1番目の無人航空機2、又は、Nから2以上離間した番号の無人航空機2を目的装置15を搭載した無人航空機として構成しても良い。つまり、複数の高さ位置が観察、偵察位置とする場合に、当該複数の高さ位置を観察、偵察の飛行区間とする複数の無人航空機2を、目的装置15を搭載した無人航空機2としても良い。リードを脱着可能にするメカニズムとして、電磁石を使っているが、バネを使ったりサーボモータを使ったりの機械的な脱着メカニズムも考えられる。
給電ケーブルは、実施例では、主に同軸を想定しているが、製品化ではPoE(パワーオーバーイーサネット)の応用が考えられる。1m級産業用ドローンタワーでは、飛翔に十分な電力を供給できるPoE準拠(改良型)が好ましい。本例では、給電線(リード)としてイーサーケーブルを使う場合も含む。
【0148】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0149】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0150】
(付記1)
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
【0151】
(1)Nを2以上の自然数としたとき、N個の無人航空機を備え、前記N個の無人航空機は、1番目から昇順にN番目まで直列に、各無人航空機間が有線連結用のリードを介して連結された連結状態を形成可能である、無人航空機用システム。
【0152】
(2)上記1の構成において、前記連結状態において、N番目の無人航空機には、1番目の無人航空機に電気的に連結される電源装置から、複数の前記リードを介して給電可能である、ことを特徴とする。
【0153】
(3)上記2の構成において、前記電源装置は、地上に固定された電源局、及び、移動体に搭載される電源局のうちの少なくともいずれか一方を含む、ことを特徴とする。
【0154】
(4)上記2の構成において、複数の前記リードは、前記電源装置とN番目の無人航空機に内蔵のバッテリと、前記N個の無人航空機のうちの他の1つ以上の無人航空機に内蔵のバッテリとを、前記電源装置に対して直列又は並列に電気的に連結する、ことを特徴とする。
【0155】
(5)上記1の構成において、1番目の無人航空機に通信可能に連結される情報処理装置を更に備え、前記情報処理装置は、前記連結状態において、N番目の無人航空機に対して、複数の前記リードを介して、通信可能である、ことを特徴とする。
【0156】
(6)上記1の構成において、1番目の無人航空機に通信可能に連結される情報処理装置を更に備え、前記N個の無人航空機は、前記連結状態において、更に通信線を支持可能であり、前記情報処理装置は、前記連結状態において、N番目の無人航空機に対して、前記通信線を介して、通信可能である、ことを特徴とする。
【0157】
(7)上記1の構成において、前記N個の無人航空機のうちの、少なくとも前記N番目の無人航空機は、環境情報を取得する環境情報取得手段を備え、前記情報処理装置は、前記連結状態において、前記N番目の無人航空機から前記環境情報を取得する、ことを特徴とする。
【0158】
(8)上記7の構成において、前記環境情報取得手段は、撮像装置を含む、ことを特徴とする。
【0159】
(9)上記1から8のうちいずれか1項の構成において、Mは2以上かつN以下の自然数としたとき、前記N個の無人航空機は、前記連結状態において、M番目の無人航空機が、M-1番目の無人航空機よりも、M番目の無人航空機とM-1番目の無人航空機の間の前記リードの長さに応じた高度差だけ、高く飛行可能である、ことを特徴とする。
【0160】
(10)上記9の構成において、前記連結状態において、M番目の無人航空機とM-1番目の無人航空機の間の前記リードは、磁力による結合、及び、機械的な係合のうちの少なくともいずれか一方を介して、M番目の無人航空機又はM-1番目の無人航空機に連結されている、ことを特徴とする。
【0161】
(11)上記9の構成において、前記連結状態において、M番目の無人航空機とM-1番目の無人航空機の間の前記リードは、M番目の無人航空機とM-1番目の無人航空機の間の前記リードの張力が0となるように飛行する、ことを特徴とする。
【0162】
(12)上記9の構成において、前記Nは、可変である、ことを特徴とする。
【0163】
(13)上記1の構成において、前記N個の無人航空機は、Nが同じ又は異なる態様で、複数組配置される、ことを特徴とする。
【0164】
(14)上記1の構成において、前記N個の無人航空機のうちの少なくとも1つは、ドローン又は飛行船の形態である、ことを特徴とする。
【0165】
(15)上記1の構成において、N番目の無人航空機は、ドローン、飛行船、又は衛星の形態である、ことを特徴とする。
【0166】
(16)上記1の構成において、前記N個の無人航空機は、前記連結状態において、更にリフト用ワイヤを支持可能であり、前記連結状態において、N番目の無人航空機には、1番目の無人航空機よりも下方位置から物資を前記リフト用ワイヤを介して供給可能である、ことを特徴とする。
【0167】
(17)航空機本体と、電線及び通信線のうちの少なくともいずれか一方を含むリードとを備え、前記リードは、一端が前記航空機本体に固定され、他端が他の無人航空機に脱着可能である、無人航空機。
【符号の説明】
【0168】
A 無人航空機用システム
1 中継型の無人航空機
1a,2a 航空機本体
2 終端型の無人航空機
3 電源局(電源装置)
4 リード(給電ケーブル)
5 複線(通信線)
15 目的装置
16 光ファイバ(通信線)
17 空洞パイプ(通信線)
30 リフト用ワイヤ
40 電源局連結装置
51,74 バッテリ
60 航空機側連結装置
81 カメラ(環境情報取得手段、撮像装置)
104 衛星(移動体)
105 飛行船(移動体)
106 ドローン(移動体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18
図19
図20A
図20B