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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153989
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】湯水混合水栓
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/052 20060101AFI20241023BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F16K11/052 B
E03C1/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067546
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川島 拓麻
(72)【発明者】
【氏名】根岸 功
(72)【発明者】
【氏名】丸山 善太
【テーマコード(参考)】
2D060
3H067
【Fターム(参考)】
2D060BB01
2D060BC30
2D060BE15
3H067AA12
3H067CC02
3H067DD02
3H067DD12
3H067DD23
3H067EA24
3H067EB24
3H067EC13
3H067FF02
3H067GG13
(57)【要約】
【課題】適切なシール構造を容易に形成することができる湯水混合水栓を提供する。
【解決手段】湯水混合水栓1は、筒体2と、給湯口21と、給水口22と、混合部3と、第1吐出口23と、第2吐出口24と、切換弁4とを備える。切換弁4は、切換外筒41と、切換内42筒と、を備え、筒体2と切換外筒41との間には、給水口22から導かれた水を混合部3に導く案内路41cが設けられている。切換外筒41は、第1連通孔41aと、第2連通孔41bとを備え、切換内筒42は第1選択孔42a、第2選択孔42bを備え、筒体2と切換外筒41との間に設けられた第1環状シール51と第2環状シール52とが、筒体2内への切換弁4の挿入方向に対して、次第に筒体2の中心軸線に近づくように傾斜して配置されるように、筒体2の内周面と切換外筒41の外周面とが傾斜して構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水混合水栓であって、
筒体と、
前記筒体の外周面から内周面に貫通し、前記筒体の中に湯を導く給湯口と、
前記筒体の外周面から内周面に貫通し、前記筒体の中に水を導く給水口と、
前記筒体の中に配置され、湯水を温度調節可能に混合する混合部と、
前記筒体の内周面から外周面に貫通し、前記混合部から吐出した湯水を吐出可能な第1吐出口と、
前記筒体の内周面から外周面に貫通し、前記混合部から吐出した湯水を吐出可能な第2吐出口と、
前記筒体に挿入され、前記第1吐出口と前記第2吐出口とを選択自在な切換弁とを備え、
前記切換弁は、切換外筒と、前記切換外筒内に回転自在に配置される切換内筒と、を備え、
前記筒体と前記切換外筒との間には、前記給水口から導かれた水を前記混合部に導く案内路が設けられ、
前記切換外筒は、前記第1吐出口と連通する第1連通孔と、前記第2吐出口に連通する第2連通孔とを備え、
前記切換内筒は、前記切換外筒に対して回転自在に配置され、且つ前記切換内筒を回転させることにより前記第1連通孔と前記第2連通孔との何れかを選択自在な選択孔を備え、
前記筒体と前記切換外筒との間には、前記第1連通孔と前記第1吐出口との間を流れる湯水が前記案内路に漏れないように液密に閉塞する第1環状シールと、前記第2連通孔と前記第2吐出口との間を流れる湯水が前記案内路に漏れないように液密に閉塞する第2環状シールと、が設けられ、
前記切換外筒の外周面には、前記第1環状シールを両側面で挟み込んで保持する第1シール溝、及び前記第2環状シールを両側面で挟み込んで保持する第2シール溝、とが設けられ、
前記第1シール溝と前記第2シール溝の少なくとも一方には、前記両側面の間の距離が狭まる狭窄部が設けられていることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
請求項1に記載の湯水混合水栓であって、
前記第1環状シールと前記第2環状シールとは一体に形成された8字形状に構成されており、
前記第1シール溝と前記第2シール溝とは一体に形成された8字形状に構成されていることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項3】
請求項2に記載の湯水混合水栓であって、
前記狭窄部は複数個所に設けられており、
前記狭窄部が設けられた前記第1シール溝と前記第2シール溝の少なくとも一方は、直線部と屈曲部とを備えており、
隣接する前記狭窄部の間隔は、前記直線部よりも前記屈曲部の方が狭くなるように設定されていることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の湯水混合水栓であって、
前記狭窄部は、前記両側面の両方から突出した一対の凸部で構成されていることを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項5】
請求項1に記載の湯水混合水栓であって、
前記狭窄部は複数個所に設けられており、
前記狭窄部が設けられた前記第1シール溝と前記第2シール溝の少なくとも一方は、直線部と屈曲部とを備えており、
隣接する前記狭窄部の間隔は、前記直線部よりも前記屈曲部の方が狭くなるように設定されていることを特徴とする湯水混合水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湯水の混合比を調整して吐出可能な湯水混合水栓が知られている(例えば、特許文献1参照)。湯水混合水栓は、一般家庭の台所やバスルーム、ホテルのバスルームやデパート,空港等におけるトイレ等に設置されている。
【0003】
湯水混合水栓の形状自体は勿論、その多種多様な設置場所の雰囲気を高めるために、高級感を持たせることが求められる場合がある。また、ケーシングとしての筒体を鋳型成形することにより、ウォーターハンマ発生時等に生じる過度の水圧に対する強度への要求や、冷水と熱水とによる急激な温度変化に対する耐久性への要求も十分に満たしている。
【0004】
また、特許文献1のものでは、複雑な製造工程を必要とせず、軽量で断熱性が鋳型よりも高めるべく樹脂製のケーシングとしての筒体を備えている。また、特許文献2のものでは、特許文献1のようなシール構造による組付の困難性を解消すべく、切換え弁を切換外筒と切換内筒とで構成し、筒体と切換外筒との間をシールする環状シールが切換外筒の外周面に設けられたシール溝に嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-294475号公報
【特許文献2】特開2021―127800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のものでは、環状シールを切換外筒の筒状の外周面に沿って湾曲させるように配置するため、環状シールの端部が浮き上がるようにしてシール溝から脱落し易く、筒体への切換外筒の挿入が難しいという新たな問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、環状シールが切換外筒のシール溝から脱落し難い湯水混合水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
湯水混合水栓(例えば、実施形態の湯水混合水栓1。以下同一。)であって、
筒体(例えば、実施形態の筒体2。以下同一。)と、
前記筒体の外周面から内周面に貫通し、前記筒体の中に湯を導く給湯口(例えば、実施形態の給湯口21。以下同一。)と、
前記筒体の外周面から内周面に貫通し、前記筒体の中に水を導く給水口(例えば、実施形態の給水口22。以下同一。)と、
前記筒体の中に配置され、湯水を温度調節可能に混合する混合部(例えば、実施形態の混合部3。以下同一。)と、
前記筒体の内周面から外周面に貫通し、前記混合部から吐出した湯水を吐出可能な第1吐出口(例えば、実施形態の第1吐出口23。以下同一。)と、
前記筒体の内周面から外周面に貫通し、前記混合部から吐出した湯水を吐出可能な第2吐出口(例えば、実施形態の第2吐出口24。以下同一。)と、
前記筒体に挿入され、前記第1吐出口と前記第2吐出口とを選択自在な切換弁(例えば、実施形態の切換弁4。以下同一。)とを備え、
前記切換弁は、切換外筒(例えば、実施形態の切換外筒41。以下同一。)と、前記切換外筒内に回転自在に配置される切換内筒(例えば、実施形態の切換内筒42。以下同一。)と、を備え、
前記筒体と前記切換外筒との間には、前記給水口から導かれた水を前記混合部に導く案内路(例えば、実施形態の案内路41c。以下同一。)が設けられ、
前記切換外筒は、前記第1吐出口と連通する第1連通孔(例えば、実施形態の第1連通孔41a。以下同一。)と、前記第2吐出口に連通する第2連通孔(例えば、実施形態の第2連通孔41b。以下同一。)とを備え、
前記切換内筒は、前記切換外筒に対して回転自在に配置され、且つ前記切換内筒を回転させることにより前記第1連通孔と前記第2連通孔との何れかを選択自在な選択孔(例えば、実施形態の第1選択孔42a、第2選択孔42b。以下同一。)を備え、
前記筒体と前記切換外筒との間には、前記第1連通孔と前記第1吐出口との間を流れる湯水が前記案内路に漏れないように液密に閉塞する第1環状シール(例えば、実施形態の第1環状シール51。以下同一。)と、前記第2連通孔と前記第2吐出口との間を流れる湯水が前記案内路に漏れないように液密に閉塞する第2環状シール(例えば、実施形態の第2環状シール52。以下同一。)と、が設けられ、
前記切換外筒の外周面には、前記第1環状シールを両側面(例えば、実施形態の外側面82、内側面83。以下同一。)で挟み込んで保持する第1シール溝(例えば、実施形態の第1シール溝41d。以下同一。)、及び前記第2環状シールを両側面で挟み込んで保持する第2シール溝(例えば、実施形態の第2シール溝41e。以下同一。)、とが設けられ、
前記第1シール溝と前記第2シール溝の少なくとも一方には、前記両側面の間の距離が狭まる狭窄部(例えば、実施形態の狭窄部84。以下同一。)が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、切換外筒の筒状の外周面に設けられた第1シール溝又は第2シール溝に保持される第1環状シール又は第2環状シールは、狭窄部によって第1シール溝又は第2シール溝にしっかりと保持されるため、切換外筒の筒状の外周面から浮き上がるように第1シール溝又は第2シール溝から第1環状シール又は第2環状シールが脱落することを防止することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記第1環状シールと前記第2環状シールとは一体に形成された8字形状に構成されてもよく、前記第1シール溝と前記第2シール溝とは一体に形成された8字形状に構成されていてもよい。このようにすると、特に大きな効果を得られる。このことについて以下に詳しく説明する。
【0011】
まず、第1環状シールと第2環状シールとを8字形状の一体部品とすることで、部品点数を少なくして、第1環状シールと第2環状シールとの切換外筒への組み付け作業を容易とすることができる。ところが、第1環状シールと第2環状シールとを一体部品とすることで、一部品で切換外筒の外周面を囲う領域が広がり、第1環状シール及び第2環状シールを大きく湾曲させるようにして、切換外筒の外周面に組み付けることとなる。その結果、本発明の狭窄部が設けられていないものにおいては、別部品で構成した場合と比較して、一部品で構成された第1環状シール及び第2環状シールがその端部が浮き上がるようにして第1シール溝及び第2シール溝から脱落し易くなってしまう。
【0012】
しかしながら、本発明においては、第1環状シール及び第2環状シールは、狭窄部によって第1シール溝及び第2シール溝にしっかりと保持されるため、第1環状シール及び第2環状シールを一体部品とした場合であっても、第1シール溝及び第2シール溝からの浮き上がるような脱落を防止することができる。
【0013】
また、本発明においては、
前記狭窄部は複数個所に設けられており、
前記狭窄部が設けられた前記第1シール溝と前記第2シール溝の少なくとも一方は、直線部(例えば、実施形態の直線部71。以下同一。)と屈曲部(例えば、実施形態の屈曲部72。以下同一。)とを備えており、
隣接する前記狭窄部同士の間の間隔は、前記直線部よりも前記屈曲部の方が狭くなるように設定されていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、直線部よりも屈曲部の方が隣接する狭窄部同士の間の間隔が狭くなるように、狭窄部が配置されているため、第1環状シール又は第2環状シールが脱落し易い屈曲部に狭窄部が多く配置されることとなり、第1環状シール又は第2環状シールの脱落防止効果を更に高めることができる。
【0015】
また、本発明においては、前記狭窄部は、前記両側面の両方から突出した一対の凸部で構成されていてもよい。このように構成した場合、第1環状シール又は第2環状シールを第1シール溝又は第2シール溝の中央部分に配置しつつ、脱落防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の湯水混合水栓を模式的に示す説明図。
図2】一実施形態の切換弁を模式的に示す断面図。
図3】一実施形態の切換外筒を示す正面図。
図4】一実施形態の切換外筒を示す底面図。
図5】一実施形態の切換外筒を示す平面図。
図6】一実施形態のシール溝を示す展開図。
図7】一実施形態の環状シールを示す正面図。
図8】一実施形態の環状シールを示す左側面図。
図9】一実施形態の環状シールを示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図を参照して、発明の実施形態の湯水混合水栓を説明する。また、本実施形態の説明においては、特に説明がない限り、湯水混合水栓が設置された浴室の壁側(図1の上方)を後方、洗い場側(図1の下方)を前方、図1の右側を右方、図1の左側を左方、として説明する。図1は、本実施形態の湯水混合水栓1を模式的に示したものである。本実施形態の湯水混合水栓1は、樹脂製の円筒形状の筒体2と、筒体2の中に配置され、温度に依存してバネ定数が変わる感温バネ(図示省略)の圧縮量(イニシャル荷重、初期撓み)を摘み部3aで調節することで湯水の混合比を変えて温度調整可能にする混合部3と、筒体2の中に挿入された切換弁4と、を備える。混合部3は、外周から湯、水が内側に個別に入って、混合部3の内側で湯、水が混ざる。混合部3で混合された混合水が切換弁4(後述する切換内筒)の内側へ供給される。なお、混合部3において、感温用に感温バネに代えてワックスを利用したサーモエレメントを利用してもよく、混合部3の構成は、湯水の混合比を変更して吐出温度が適温になるように調節できればよい。
【0018】
筒体2には、筒体2の外周面から内周面に貫通した給湯口21と、給湯口21から筒体2の中心軸線L0の延在方向に間隔を存して筒体2の外周面から内周面に貫通した給水口22と、給湯口21と給水口22との中心軸線L0方向の間に配置され、筒体2の内周面から外周面へ下方に向かって貫通する第1吐出口23と、第1吐出口23に対して周方向に位置をずらして筒体2の内周面から外周面へ後方側に向かって貫通する第2吐出口24と、を備えている。
【0019】
給湯口21には、給湯器(図示省略)から湯が供給される。給水口22には、水道管(図示省略)から水が供給される。第1吐出口23と第2吐出口24からは、混合部3から吐出した湯水が吐出される。第1吐出口23にはカラン(図示省略)が接続され、第2吐出口24にはシャワー(図示省略)が接続されている。
【0020】
図2の模式図を参照して、切換弁4は、筒体2内に回り止めして配置される樹脂製の切換外筒41と、切換外筒41内に回転自在に配置される金属製又は樹脂製の切換内筒42と、を備えている。切換外筒41には、内周面から外周面へ貫通する第1連通孔41a(図3)と、第1連通孔41aから筒体2の中心軸線L0方向に間隔を存し且つ筒体2の周方向にも間隔を存する様に、内周面から外周面へ貫通する第2連通孔41bとが設けられている。
【0021】
ここで、筒体2や切換外筒41の材料とされる樹脂として、耐熱、耐じん、耐薬品、耐難燃等を考慮して適宜プラスチック等を用いることができる。
【0022】
切換内筒42には、内周面から外周面へ貫通する第1選択孔42aと、第1選択孔42aから中心軸線L0方向に間隔を存し且つ切換内筒42の周方向にも間隔を存する様に、内周面から外周面に貫通する第2選択孔42bとが設けられている。切換内筒42の混合部3とは反対側の端部には、摘み部42cが設けられており、摘み部42cを回転させることにより、切換内筒42を切換外筒41に対して回転させることができる。
【0023】
切換内筒42は、第1選択孔42aが第1連通孔41aと連通し、第2選択孔42bと第2連通孔41bとの連通が阻止された第1連通位置と、第1選択孔42aと第1連通孔41aとの連通が阻止され、且つ第2選択孔42bと第2連通孔41bとの連通も阻止された止水位置と、第1選択孔42aと第1連通孔41aとの連通が阻止され、第2選択孔42bと第2連通孔41bとが連通した第2連通位置と、の3つの位置に切換自在となっている。
【0024】
後述するように、第1連通孔41aと第1吐出口23とは連通しており、第2連通孔41bと第2吐出口24とは連通しているため、切換弁4は、切換内筒42を切換外筒41に対して回転させることで、第1吐出口23と第2吐出口24とを選択自在となっている。
【0025】
切換外筒41と切換内筒42との間には、案内路41cから入り込んだ水が第1選択孔42a又は第2選択孔42bから吐出した混合水と混ざることを防止する複数のOリング43が設けられている。なお、Oリング43によるシール構造は図2のものに限らず、適宜変更することができる。
【0026】
図3図5は、本実施形態の切換外筒41の正面、底面、平面をそれぞれ示している。図3から図5を参照して、切換外筒41の外周面には、給水口22から筒体2内に流入した水を混合部3へと導くように窪みながら混合部3側へと延びて形成された案内路41cが設けられている。
【0027】
また、切換外筒41の外周面には、第1連通孔41aから吐出した湯水を案内路41cに漏らすことなく第1吐出口23へと導くように切換外筒41と筒体2との間を環状に閉塞するゴムなどの弾性部材からなる第1環状シール51(図7)が設けられている。第1環状シール51は第1連通孔41aを取り囲むように配置されている。ここで、「環状」とは閉じられた輪の形状であることを意味し、C字状のようなものは含まない。
【0028】
また、切換外筒41の外周面には、第2連通孔41bから吐出した湯水を案内路41cに漏らすことなく第2吐出口24へと導くように切換外筒41と筒体2との間を環状に閉塞するゴムなどの弾性部材からなる第2環状シール52が設けられている。第2環状シール52は第2連通孔41bを取り囲むように配置されている。ここで、「環状」とは閉じられた輪の形状であることを意味し、C字状のようなものは含まない。
【0029】
図7から図9は第1環状シール51及び第2環状シール52の正面、左側面、背面をそれぞれ示している。第1環状シール51と第2環状シール52とは、第1環状シール51と第2環状シール52とが外周で繋がっており、8字形状の一体部品であり、シール50を構成している。換言すれば、シール50は8字形状であり、第1環状シール51と第2環状シール52とで構成されている。第1環状シール51及び第2環状シール52を8字形状の一部品で構成することにより、部品点数を削減して組み付け工数を低減させることができる。
【0030】
なお、第1環状シール51と第2環状シール52とは、第1連通孔41aと第2連通孔41bとを隔てるように2つの輪が形成されていればよいため、例えば、第1環状シール51と第2環状シール52とが別々の部品で構成されていてもよい。また、本実施形態の環状シールは円形以外の異形シールであるが、円形でもよく、形状は適宜変更できる。
【0031】
第1環状シール51及び第2環状シール52は、切換外筒41の外周面に形成された第1シール溝41d、第2シール溝41eにそれぞれ嵌合されている。図6は第1シール溝41d及び第2シール溝41eの展開図である。第1シール溝41d及び第2シール溝41eも第1環状シール51及び第2環状シール52に合わせて8字形状に一体に構成されて、8字形状のシール溝41fを構成している。換言すれば、シール溝41fは8字形状であり、第1シール溝41dと第2シール溝41eとで構成されている。8字形状の第1シール溝41d及び第2シール溝41eは、直線部71と、隣接する直線部71同士を接続する屈曲部72とで構成されている。
【0032】
また、8字形状の第1シール溝41d及び第2シール溝41eは、底面81、外側面82、内側面83、を備えている。8字形状の第1シール溝41d及び第2シール溝41eには、外側面82と内側面83の間の距離が狭まる複数の狭窄部84が設けられている。狭窄部84は、外側面82から内側面83に向かって突出する外側凸部82aと、内側面83から外側凸部82aに向かって突出する内側凸部83aと、で構成されている。
【0033】
8字形状の第1シール溝41d及び第2シール溝41eの中央91に位置する直線部71に配置された狭窄部84については、内側面83同士が向かい合う部分であるため、互いに向かい合う一対の内側凸部83aで構成されている。なお、狭窄部84は、外側凸部82a又は内側凸部83aだけ、換言すれば一方の側面に設けられた一つの凸部だけで構成してもよい。隣接する狭窄部84の間の間隔は、直線部71よりも屈曲部72の方が狭くなるように設定されている。
【0034】
切換外筒41の筒状の外周面に設けられた第1シール溝41d又は第2シール溝41eに保持される第1環状シール51又は第2環状シール52は、狭窄部84によって第1シール溝41d又は第2シール溝41eにしっかりと保持されるため、切換外筒41の筒状の外周面から浮き上がるように第1シール溝41d又は第2シール溝41eから第1環状シール51又は第2環状シール52が脱落することを防止できる。さらには、屈曲部72に多くの狭窄部84が配置されているため、直線部71よりも浮き上がり易い屈曲部72での第1環状シール51及び第2環状シール52をしっかりと狭窄部84で固定することができる。
【0035】
また、狭窄部84は、第1環状シール51と第2環状シール52とが一体に形成された8字形状に構成されおり、第1シール溝41dと第2シール溝41eとが一体に形成された8字形状に構成されているものに適用すると特に大きな効果を得られる。このことについて以下に詳しく説明する。
【0036】
まず、第1環状シール51と第2環状シール52とを8字形状の一体部品とすることで、部品点数を少なくして、第1環状シール51と第2環状シール52との切換外筒41への組み付け作業を容易とすることができる。ところが、第1環状シール51と第2環状シール52とを一体部品とすることで、一部品で切換外筒41の外周面を囲う領域が広がり、第1環状シール51及び第2環状シール52を大きく湾曲させるようにして、切換外筒41の外周面に組み付けることとなる。その結果、狭窄部84が設けられていないものにおいては、別部品で構成した場合と比較して、一部品で構成された第1環状シール51及び第2環状シール52がその端部が浮き上がるようにして第1シール溝41d及び第2シール溝41eから脱落し易くなってしまう。
【0037】
しかしながら、本実施形態においては、第1環状シール51及び第2環状シール52は、狭窄部84によって第1シール溝41d及び第2シール溝41eにしっかりと保持されるため、第1環状シール51及び第2環状シール52を一体部品とした場合であっても、第1シール溝41d及び第2シール溝41eからの浮き上がるような脱落を防止することができる。
【0038】
また、直線部71よりも屈曲部72の方が隣接する狭窄部84同士の間の間隔が狭くなるように、狭窄部84が配置されているため、第1環状シール51及び第2環状シール52が脱落し易い屈曲部72に狭窄部84が多く配置されることとなり、第1環状シール51及び第2環状シール52の脱落防止効果を更に高めることができる。
【0039】
第1シール溝41d、第2シール溝41eの底面は、筒体2内へ切換弁4を挿入する挿入方向の先方側に向かうにしたがって、次第に筒体2の中心軸線L0に近づくように傾斜したテーパ形状とされている。なお、以降の説明において、中心軸線L0における、切換弁4挿入方向の先方側を先端側、この先端側と反対側を基端側として適宜説明する場合がある。
【0040】
第1シール溝41d及び第2シール溝41eは、第1シール溝41d及び第2シール溝41eが形成されている切換外筒41の外周テーパ形状の台座部に一定深さで形成されている。これにより、第1シール溝41d及び第2シール溝41eの底面が全体として挿入方向先方側へ向かうにしたがって中心軸線L0に近づくように傾斜する。
【0041】
また、筒体2の内周面も第1シール溝41d、第2シール溝41eの底面(または第1シール溝41d及び第2シール溝41eが形成される切換外筒41の台座部)のテーパ形状と平行となるように、テーパ形状に形成されている。
【0042】
これにより、切換弁4を筒体2内に挿入するときに、挿入開始時には、筒体2と切換外筒41との間での第1環状シール51及び第2環状シール52を介した摩擦力を抑えることができる。
【0043】
一般的に、射出成形で筒状の部材を形成する場合、その筒状部材の内周形状を決める型を抜き易いように、内周に極僅かな勾配(抜き勾配)をつけることがある。本実施の形態において、外周テーパ形状の台座部の勾配は、抜き勾配よりも急である(傾斜角度が大きい)ことが好ましい。
【0044】
具体的には、本実施の形態の筒体2において、内側に混合部3が配置される部分の内周に抜き勾配を設けてもよい。そして、このような場合には、テーパ形状の台座部外周の傾斜角度、及び筒体2において内側に切換弁4が配置される部分内周の傾斜角度は、筒体2において内側に混合部3が配置される部分の内周の傾斜角度より大きく設定することが好ましく、例えば、2度以上に設定することが好ましい。これにより、筒体2内に切換弁4を挿入するときに、第1環状シール51及び第2環状シール52が、筒体2内の内周面の第2吐出口24の開口縁に噛み込むことを確実に防止して、第1環状シール51及び第2環状シール52を装着した切換弁4の組付性の更なる向上を図ることができる。なお、図2では、説明のためにテーパ形状の傾斜角度を誇張している。
【0045】
また、切換弁4の筒体2内への挿入が完了したときには、第1環状シール51及び第2環状シール52を筒体2と切換弁4とでしっかりと圧縮することができる。従って、本実施形態の湯水混合水栓1によれば、筒体2内への切換弁4の挿入時に、第1環状シール51及び第2環状シール52が捲られ難く、適切なシール構造を容易に形成することができ、第1環状シール51及び第2環状シール52を装着した切換弁4の筒体2への組付性の向上を図ることができる。なお、切換弁4において、第1環状シール51及び第2環状シール52が傾斜するよう、第1シール溝41d及び第2シール溝41eが形成される切換外筒41の台座部外周がテーパ形状となっていれば、これ以外の部分の外周形状は、テーパ形状であってもストレート形状(外径一定)であってもよい。
【0046】
また、本実施形態の湯水混合水栓1においては、切換外筒41の外周面には、案内路41cに位置させて、筒体2の内周面に接触する第1突部61を設けている。
【0047】
第1突部61は、筒体2の中心軸線L0方向に比較的長く形成されており、第1環状シール51及び第2環状シール52の中心軸線L0における挿入方向先端側の周方向の間に形成された案内路41cの周方向略中央に配置されている。
【0048】
ここで、水量を確保すべく案内路41cを切換外筒41の周面に広く形成した場合、筒体2と切換外筒41との接触部分が少なく第1環状シール51及び第2環状シール52の弾性力によって筒体2に対し切換外筒41が第1環状シール51及び第2環状シール52が存在しない側へ偏心し、第1環状シール51及び第2環状シール52が筒体2と切換外筒41との間で適切に圧縮されない虞がある。第1環状シール51及び第2環状シール52が適切に圧縮されていない場合、案内路41cの水が意図せずに第1吐出口23や第2吐出口24から吐出される湯水に混ざり、適切な温度調整ができなくなってしまう。
【0049】
本実施形態の湯水混合水栓1によれば、水量を確保すべく案内路41cを広く形成しても第1突部61を介して筒体2と切換外筒41とがしっかりと接触することができるため、筒体2に対する切換外筒41の偏心を抑えて第1環状シール51及び第2環状シール52を適切に圧縮することができ、案内路41cの水が意図せずに第1吐出口23や第2吐出口24から吐出される湯水に混ざることを防止することができる。
【0050】
また、第1環状シール51及び第2環状シール52は、浴室に設けられる湯水混合水栓1の筒体2と切換外筒41との間に配置されるため、比較的細く形成する必要があり、第1環状シール51及び第2環状シール52自体に凸部を形成することが困難であるが、本実施形態の湯水混合水栓1によれば、比較的細い第1環状シール51及び第2環状シール52であっても、狭窄部84によりしっかりと第1シール溝41d及び第2シール溝41eで保持することができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、切換外筒41の外周面及び筒体2の内周面であって切換外筒41の外周面に対向する部分はテーパ形状の円錐型であるものを説明したが、これに限らず、本発明の湯水混合水栓では、周方向に第1吐出口と第2吐出口が配置され、筒体2の中心軸線方向では同一の位置に第1吐出口と第2吐出口が配置されているもの、あるいは吐出口が給湯口と給水口との間に位置しており、給湯口側に配置された混合部に給水口から水を導く案内路が設けられているもの、において、第1環状シール及び第2環状シールが傾斜して配置されるように傾斜面が設けられていればよい。従って、例えば、筒体2の内周面及び切換外筒41の外周面は角錐形状や楔形状であってもよい。
【0052】
本発明は、
湯水混合水栓1であって、
筒体2と、
筒体2の外周面から内周面に貫通し、筒体2の中に湯を導く給湯口21と、
筒体2の外周面から内周面に貫通し、筒体2の中に水を導く給水口22と、
筒体2の中に配置され、湯水を温度調節可能に混合する混合部3と、
筒体2の内周面から外周面に貫通し、混合部3から吐出した湯水を吐出可能な第1吐出口23と、
筒体2の内周面から外周面に貫通し、混合部3から吐出した湯水を吐出可能な第2吐出口24と、
筒体2に挿入され、第1吐出口23と第2吐出口24とを選択自在な切換弁4とを備え、
切換弁4は、切換外筒41と、切換外筒41内に回転自在に配置される切換内筒42と、を備え、
筒体2と切換外筒41との間には、給水口22から導かれた水を混合部3に導く案内路41cが設けられ、
切換外筒41は、第1吐出口23と連通する第1連通孔41aと、第2吐出口24に連通する第2連通孔41bとを備え、
切換内筒42は、切換外筒41に対して回転自在に配置され、且つ切換内筒42を回転させることにより第1連通孔41aと第2連通孔41bとの何れかを選択自在な選択孔42a、42bを備え、
筒体2と切換外筒41との間には、第1連通孔41aと第1吐出口23との間を流れる湯水が案内路41cに漏れないように液密に閉塞する第1環状シール51と、第2連通孔41bと第2吐出口24との間を流れる湯水が案内路41cに漏れないように液密に閉塞する第2環状シール52と、が設けられ、
切換外筒41の外周面には、第1環状シール51を両側面82,83で挟み込んで保持する第1シール溝41d、及び第2環状シール52を両側面82,83で挟み込んで保持する第2シール溝41e、とが設けられ、
第1シール溝41dと第2シール溝41eの少なくとも一方には、両側面82,83の間の距離が狭まる狭窄部84が設けられていることを特徴とする。
【0053】
本発明によれば、切換外筒41の筒状の外周面に設けられた第1シール溝41d又は第2シール溝41eに保持される第1環状シール51又は第2環状シール52は、狭窄部84によって第1シール溝41d又は第2シール溝41eにしっかりと保持されるため、切換外筒41の筒状の外周面から浮き上がるように第1シール溝41d又は第2シール溝41eから第1環状シール51又は第2環状シール52が脱落することを防止することができる。
【0054】
また、第1環状シール51及び第2環状シール52は、浴室に設けられる湯水混合水栓1の筒体2と切換外筒41との間に配置されるため、比較的細く形成する必要があり、第1環状シール51及び第2環状シール52自体に凸部を形成することが困難であるが、本発明の湯水混合水栓1によれば、比較的細い第1環状シール51及び第2環状シール52であっても、狭窄部84によりしっかりと第1シール溝41d及び第2シール溝41eで保持することができる。
【0055】
また、本発明においては、第1環状シール51と第2環状シール52とは一体に形成された8字形状に構成されてもよく、第1シール溝41dと第2シール溝41eとは一体に形成された8字形状に構成されていてもよい。このようにすると、特に大きな効果を得られる。このことについて以下に詳しく説明する。
【0056】
まず、第1環状シール51と第2環状シール52とを8字形状の一体部品とすることで、部品点数を少なくして、第1環状シール51と第2環状シール52との切換外筒への組み付け作業を容易とすることができる。ところが、第1環状シール51と第2環状シール52とを一体部品とすることで、一つの部品(シール50)で切換外筒41の外周面を囲う領域が広がり、湾曲したシール50を弧とした扇形状の中心角が大きくなるよう、第1環状シール51及び第2環状シール52を大きく湾曲させるようにして、切換外筒41の外周面に組み付けることとなる。その結果、本発明の狭窄部84が設けられていないものにおいては、別部品で構成した場合と比較して、一部品で構成された第1環状シール51及び第2環状シール52がその端部が浮き上がるようにして第1シール溝41d及び第2シール溝41eから脱落し易くなってしまう。
【0057】
しかしながら、本発明においては、第1環状シール51及び第2環状シール52は、狭窄部によって第1シール溝41d及び第2シール溝41eにしっかりと保持されるため、第1環状シール51及び第2環状シール52を一体部品とした場合であっても、第1シール溝41d及び第2シール溝41eからの浮き上がるような脱落を防止することができる。
【0058】
また、本発明においては、
狭窄部84は複数個所に設けられており、
狭窄部84が設けられた第1シール溝41dと第2シール溝41eの少なくとも一方は、直線部71と屈曲部72とを備えており、
隣接する狭窄部84同士の間の間隔は、直線部71よりも屈曲部72の方が狭くなるように設定されていてもよい。
【0059】
かかる構成によれば、直線部71よりも屈曲部72の方が隣接する狭窄部84同士の間の間隔が狭くなるように、狭窄部84が配置されているため、第1環状シール51又は第2環状シール52が脱落し易い屈曲部72に狭窄部84が多く配置されることとなり、第1環状シール51又は第2環状シール52の脱落防止効果を更に高めることができる。
【0060】
また、本発明においては、狭窄部84は、両側面82,83の両方から突出した一対の凸部82a、83aで構成されていてもよい。このように構成した場合、シール50をシール溝41fの中央部分に配置しつつ、第1環状シール51又は第2環状シール52の脱落防止効果を高めることができる。
【0061】
以上、一実施形態の湯水混合栓について説明したが、本発明は、特許請求の範囲の記載から逸脱しない範囲で適宜変更、変形することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 湯水混合水栓
2 筒体
21 給湯口
22 給水口
23 第1吐出口
24 第2吐出口
3 混合部
3a 摘み部
4 切換弁
41 切換外筒
41a 第1連通孔
41b 第2連通孔
41c 案内路
41d 第1シール溝
41e 第2シール溝
41f シール溝
42 切換内筒
42a 第1選択孔
42b 第2選択孔
42c 摘み部
43 Oリング
50 シール
51 第1環状シール
52 第2環状シール
61 第1突部
71 直線部
72 屈曲部
81 底面
82 外側面
82a 外側凸部
83 内側面
83a 内側凸部
84 狭窄部
91 中央
L0 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9