(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153991
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】排泄物検出システム及び排泄物検出方法
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20241023BHJP
A61G 9/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
A61F5/44 S
A61G9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067555
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】519277520
【氏名又は名称】株式会社リビングロボット
(74)【代理人】
【識別番号】100186510
【弁理士】
【氏名又は名称】豊村 祐士
(72)【発明者】
【氏名】川内 康裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅愉
(72)【発明者】
【氏名】内山 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】丸本 智彦
(72)【発明者】
【氏名】遠山 理
【テーマコード(参考)】
4C098
4C341
【Fターム(参考)】
4C098AA09
4C098CC02
4C098CD08
4C098CD09
4C098CE06
4C341JJ10
4C341JL10
(57)【要約】
【課題】排便検出に用いられる電力を実質的に低減することが可能な排泄物検出システム及び排泄物検出方法を提供する。
【解決手段】
要介護者の利用する寝具の近傍に配置され、前記要介護者の排便の状況を検出する排便検出部5と、前記要介護者の状況を検出する状況検出部20と、制御部(サーバ制御部52b)と、を備え、前記制御部は、前記状況検出部20の出力に基づいて、前記要介護者が前記寝具を離れたと判断した場合、前記排便検出部5の動作を停止させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要介護者の利用する寝具の近傍に配置され、前記要介護者の排便の状況を検出する排便検出部と、
前記要介護者の状況を検出する状況検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記状況検出部の出力に基づいて、前記要介護者が前記寝具を離れたと判断した場合、前記排便検出部の動作を停止させることを特徴とする排泄物検出システム。
【請求項2】
要介護者の利用する寝具の近傍あるいは前記要介護者が着用する排泄物受容具に配置され、前記要介護者の排便の状況を検出する排便検出部と、
前記要介護者の状況を検出する状況検出部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記状況検出部の出力に基づいて、前記要介護者が睡眠中であると判断した場合、前記排便検出部の動作を停止させることを特徴とする排泄物検出システム。
【請求項3】
前記要介護者の排尿の状況を検出する排尿検出部を更に備え、
前記制御部は、
前記状況検出部の出力に基づいて、前記要介護者が睡眠中であると判断した場合、前記排尿検出部の動作を停止させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排泄物検出システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記状況検出部の出力に基づいて、前記要介護者が覚醒していると判断した場合、前記排尿検出部によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、前記排尿検出部によって検出された排尿の状況が排尿有りとなった場合に、前記排便検出部によって排便の状況を検出することを特徴とする請求項3に記載の排泄物検出システム。
【請求項5】
前記状況検出部は、少なくとも圧力分布センサ、撮像手段、測距手段の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排泄物検出システム。
【請求項6】
要介護者の利用する寝具の近傍において、前記要介護者の排便の状況を検出し、
前記要介護者が前記寝具から離れているか否かの状況を検出し、
前記要介護者が、前記寝具から離れていると判断した場合、排便の状況の検出を停止させることを特徴とする排泄物検出方法。
【請求項7】
要介護者の利用する寝具の近傍あるいは前記要介護者が着用する排泄物受容具において前記要介護者の排便の状況を検出し、
前記要介護者が睡眠中であると判断した場合、排便の状況の検出を停止させることを特徴とする排泄物検出方法。
【請求項8】
前記要介護者が睡眠中であると判断した場合、更に排尿の状況の検出を停止させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の排泄物検出方法。
【請求項9】
前記要介護者が覚醒していると判断した場合、排尿の状況の検出を時系列に繰り返し、検出された排尿の状況が排尿有りとなった場合に、排便の状況を検出することを特徴とする請求項8に記載の排泄物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が着用するおむつ等の排泄物受容具に排泄された排泄物を検出する排泄物検出システム及び排泄物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成25年9月12に内閣府が公表した「介護ロボットに関する特別世論調査の概要」によると、要介護者を介護する者が苦労したことの上位3項目は、「排泄(排泄時の付き添いやおむつの交換)」(62.5%)、「入浴(入浴時の付き添いや身体の洗浄)」(58.3%)、「食事(食事の準備,食事の介助)」(49.1%)となっており、「排泄」の問題は最上位に位置している。
【0003】
トイレに行けない、トイレが使えない、トイレで排泄できない、という排泄障害の状態となるのは、要介護度の5段階のうち要介護「3」以上の重度者とされている。重度者は自立して上衣やズボンの着脱ができず、第三者からの介護を必要とする。厚生労働省「介護保険事業状況報告 月報(暫定版)」令和3年2月分によれば、要介護「3」以上の重度者は、要介護「3」:88.2万人、要介護「4」:82.7万人、要介護「5」:56.9万人(合計227.8万人)とされており、自立して排泄できないという点はおむつを着用する乳児等と同じであるが、この人数は当時の0歳児(出生数:81.2万人。厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」参照)よりも遥かに多い。
【0004】
特に介護施設や病院では夜間のおむつ交換における排泄の有無は、介護をする者が一度おむつを開いて確認することになるため、要介護者が覚醒して徘徊の原因となり、更におむつの定期的な点検(定時点検)が必要となる。この定時点検は介護者等に対して排泄処置の過大な負担を与え、介護施設等における雇用逼迫の一因ともなっている。
【0005】
排尿については、複数回の排尿にわたって小便を吸収する吸収体を備え、かつ漏出を阻止する高機能・高性能のおむつが提供されている。おむつのうち肌に直接触れる面は、吸水性、吸汗性が高く、水分が当該面に逆戻りしにくい構造とされていることから、排尿量が少ないうちは皮膚への影響は小さいとされる。しかしながら複数回の排尿によって総排尿量が多くなった場合、濡れたおむつを長時間当てると皮膚がふやけて抵抗力が低下し、僅かに擦られただけでも傷つきやすくなり、かぶれを起こしやすくなる。
【0006】
排便については、放置すると要介護者がおむつかぶれや褥瘡等の皮膚疾患を引き起こし、更におむつ交換を長時間待つ間の要介護者の不快感の軽減を図るためにも、早期の交換が必要である。しかしながら要介護者の羞恥心や告知能力の低下等もあり、排尿/排便していることが介護者等に速やかに伝達されないことも多い。
【0007】
排便の状況を検出する技術に関しては、例えばモバイル装置の動き検知装置により製品着用者の動きを登録し、登録された動きが製品着用者による排尿および/または排便を示すか否かを評価し、覚醒信号fが一定の閾値Trを超えて上昇したときに排泄が行われたと想定し、当該覚醒信号が当該閾値を超えた回数を数えることによって、想定された尿および/または便の回数を追跡し続けるように構成された、利用者の排泄行動に関連する情報を取得するためのモバイル・アプリケーションが知られている。(特許文献1)
【0008】
特許文献1によれば、おむつ等の製品着用者による将来の排泄、即ち、尿および/または便による将来の排泄行為を、1つまたは複数の過去に登録した利用者の動きに基づいて予測し、当該予測に基づいて製品関連情報を製品着用者または着用者の介護者に提供できるとしている。
【0009】
また、心拍数データおよび運動データを使用して、使用者が眠っている間の浅い睡眠状態および深い睡眠状態を分類し、排尿事象がいつ起こり得るかの指標とする排尿の予測及びモニタリングシステムが知られている。(特許文献2)
【0010】
特許文献2によれば、睡眠データを用いた排尿モデルによって、切迫した排尿事象がいつ起こる可能性があるかを感知できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6101802号公報
【特許文献2】特許第7000342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
排便検出に用いられるセンサとして、例えば振動子に設けられた感応膜に匂い物質が吸着した際の、振動子の共振周波数の変化に基づいて、特定の匂いを検出する振動子式の匂いセンサや、半導体表面に匂い物質が吸着した際に、半導体の抵抗値が変化することを利用した半導体式の匂いセンサが知られている。前者は振動子を機械的に振動させる必要があり、また後者は半導体である金属酸化物を高温に維持する必要があり、消費電力は決して小さなものではない。特に常時匂い検出を行う場合は消費電力が問題となる。
【0013】
匂いは空気(気流)を介在して検出されるため、匂いセンサを含む排便検出部と要介護者との位置関係は排便検出の精度に大きく影響を与える。より高い検出精度を得るため、排便検出部を配置する位置は環境に応じて修正されうる。従って、排便検出部は配置における自由度が高いこと、即ちポータビリティ(可搬性)を備えることが好ましい。また、排便検出部は要介護者に装着される態様も考えられる。従って、排便検出部はバッテリ駆動とされることが望ましい。更にポータビリティの付与や要介護者への装着を前提とすると、排便検出部は小型化・軽量化されることが望ましく、バッテリの容量は制限を受けることとなる。バッテリ容量が小さくなると、匂いセンサを駆動可能な期間が短くなって、長期にわたって継続的に排便を検出することが難しくなる。
【0014】
もちろん排尿検出においても電力が使用されるが、例えばおむつ中の水分量に基づいておむつ全体の電気的特性の変化を検出するような構成では、電力量を小さくできる。このため、排尿及び排便のいずれをも検出する構成においては、排便検出に用いられる電力が支配的となる。もっとも排便検出と併せて排尿検出に使用される電力を低減することが理想的である。
【0015】
ここで特許文献1、特許文献2で開示された技術は、睡眠と排泄との関係について言及するとともに、排尿や排便を予測する構成を備えている。しかしながら、睡眠と排泄との関係に基づいて、排便検出(及び排尿検出)に用いられる消費電力を抑える構成については何ら示唆されていない。本発明は、このような従来技術の課題を解決するべく案出されたものであり、排便(排尿)検出に用いられる電力を低減することが可能な排泄物検出システム及び排泄物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するためになされた本発明は、要介護者の利用する寝具の近傍に配置され、前記要介護者の排便の状況を検出する排便検出部と、前記要介護者の状況を検出する状況検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記状況検出部の出力に基づいて、前記要介護者が前記寝具を離れたと判断した場合、前記排便検出部の動作を停止させる排泄物検出システムである。これによって、排便検出部で消費される電力を抑制することが可能となる。
【0017】
また、本発明は、要介護者の利用する寝具の近傍あるいは前記要介護者が着用する排泄物受容具に配置され、前記要介護者の排便の状況を検出する排便検出部と、前記要介護者の状況を検出する状況検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記状況検出部の出力に基づいて、前記要介護者が睡眠中であると判断した場合、前記排便検出部の動作を停止させる排泄物検出システムである。これによって、排便検出部で消費される電力を抑制することが可能となる。
【0018】
また、本発明は、前記要介護者の排尿の状況を検出する排尿検出部を更に備え、前記制御部は、前記状況検出部の出力に基づいて、前記要介護者が睡眠中であると判断した場合、前記排尿検出部の動作を停止させるものである。これによって、排尿検出部で消費される電力を抑制することが可能となる。
【0019】
また、本発明は、前記制御部は、前記状況検出部の出力に基づいて、前記要介護者が覚醒していると判断した場合、前記排尿検出部によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、前記排尿検出部によって検出された排尿の状況が排尿有りとなった場合に、前記排便検出部によって排便の状況を検出するものである。
【0020】
これによって、排尿検出部において「排尿有り」が検出されたことをトリガーとして排便検出部で排便の状況を検出することで、排便検出部で使用される電力を大幅に低減することが可能となる。また排尿と排尿の間に放屁等があったとしても、その間に排便検出部は作動しないことから、放屁を排便と誤検出するような事態を防止し、排便の検出精度を向上することが可能となる。
【0021】
また、本発明は、前記状況検出部は、少なくとも圧力分布センサ、撮像手段、測距手段の少なくとも一つを含むようにしたものである。これによって、要介護者の在床/離床、睡眠中/覚醒の状態を検出することが可能となる。
【0022】
また、本発明は、要介護者の利用する寝具の近傍において、前記要介護者の排便の状況を検出し、前記要介護者が前記寝具から離れているか否かの状況を検出し、前記要介護者が、前記寝具から離れていると判断した場合、排便の状況の検出を停止させる排泄物検出方法である。これによって、排便の状況の検出に要する電力を抑制することが可能となる。
【0023】
また、本発明は、要介護者の利用する寝具の近傍あるいは前記要介護者が着用する排泄物受容具において前記要介護者の排便の状況を検出し、前記要介護者が睡眠中であると判断した場合、排便の状況の検出を停止させる排泄物検出方法である。これによって、排便の状況の検出に要する電力を抑制することが可能となる。
【0024】
また、本発明は、前記要介護者が睡眠中であると判断した場合、更に排尿の状況の検出を停止させるものである。これによって、排尿の状況の検出に要する電力を抑制することが可能となる。
【0025】
また、本発明は、前記要介護者が覚醒していると判断した場合、排尿の状況の検出を時系列に繰り返し、検出された排尿の状況が排尿有りとなった場合に、排便の状況を検出するものである。これによって、排便の状況の検出に要する電力を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明によれば、要介護者が離床している場合に排便検出部の動作を停止させ、更に要介護者が睡眠中である場合に、排便検出部及び排尿検出部の動作を停止させることで、排泄物検出システムの消費電力を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る排泄物検出システムS1の概要を示す説明図
【
図2】(a)は、本発明の第1実施形態に係るおむつ本体1の全体構成を示す説明図、(b)は、おむつ本体1に排尿検出部6が装着された状態を示す説明図
【
図3】おむつ本体1に排尿検出部6が装着された状態における、おむつ本体1のIIa-IIa断面図
【
図4】(a)は、排尿検出部6の正面図、(b)は、同側面図
【
図5】排尿検出部6の機能ブロックを示すブロック構成図
【
図6】(a)は、排便検出部5の機能ブロックを示すブロック構成図、同(b)は、状況検出部20の機能ブロックを示すブロック構成図
【
図7】本発明の第1実施形態に係る排泄物検出システムS1の機能ブロックを示すブロック構成図
【
図9】排泄物検出システムS1の初期動作を示す第1フローチャート
【
図10】排泄物検出システムS1の動作を示す第2フローチャート
【
図11】本発明の第2実施形態に係る排泄物検出システムS1の機能ブロックを示すブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る排泄物検出システムS1の概要を示す説明図である。排泄物検出システムS1は、おむつ本体1と排便検出部5と排尿検出部6と状況検出部20とサーバ52と情報端末50とを含む。
【0029】
排便検出部5は、匂いセンサ5b(
図6(a)等を参照)を備え、要介護者が着用したおむつ本体1に排泄された大便から発生する匂い(匂い物質)を検出する。排尿検出部6は、おむつ本体1に排泄された小便(水分)を検出する。おむつ本体1に排尿に伴う水分が含まれることで、おむつ本体1はコンデンサとして機能する。当該コンデンサの容量変化を、微分回路9dを用いて検出することで、排尿の事象が発生したこと及び排尿量が検出される。なお、排便検出部5と排尿検出部6とは相互に通信を行う(詳細は後述する。)。
【0030】
状況検出部20は、要介護者の状況を検出する。状況検出部20には状況検出センサ20a(
図6(b)等を参照)が含まれる。状況検出センサ20aは、要介護者が利用するベッド等の寝具に要介護者が在床しているか離床しているか、並びに在床している場合において、要介護者が睡眠中か覚醒しているかを判断する。なお、「在床」には要介護者が寝具に臥床している(寝ている)状態のみならず、座っているような状態が含まれてもよい。なお、要介護者が在床していない場合、即ち寝具から離れている場合は覚醒していると判断される。
【0031】
情報端末50は、例えばスマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末、PC(Personal Computer)である。情報端末50にはタッチパネル等で構成された入力部、LCD(Liquid Crystal Display)やOLED(Organic Light Emitting Diode)で構成された表示部(いずれも図示せず)が設けられている。
【0032】
サーバ52は、公知のコンピュータシステムであり、第1実施形態においては後述のサーバ制御部52bが制御部として機能する。またサーバ52は、ネットワーク51を介して排便検出部5、排尿検出部6、状況検出部20、情報端末50とコマンドやデータをやりとりし、排泄に関連する情報を蓄積する。ここでネットワーク51は、例えばインターネットを用いることができるが、病院や介護施設等に構築された、いわゆるWAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)であってもよい。
【0033】
図2(a)は、本発明の第1実施形態に係るおむつ本体1の全体構成を示す説明図である。
図2(a)において、1は排泄物受容具としてのおむつ本体である。以降の説明において、おむつ本体1を人が着用したとき、人の腹部の方向を「前(前方)」、背中の方向を「後(後方)」、人の右手方向を「右」、左手方向を「左」、頭の方向を「上(上方)」、足の延伸方向を「下(下方)」と称することがある。また、おむつ本体1のうち要介護者の肌に触れる側を「内面」、要介護者がおむつ本体1を着用した際に外部から目視される側を「外面」、表面材7と防水材4との間の空間を「おむつ内部」と称することがある。
【0034】
おむつ本体1は、ポリオレフィン・ポリエステル不織布等で構成された表面材7、表面材7で覆われて尿や汗等の水分を吸収する吸水材2、おむつ本体1の前方から後方に延設されて排尿や排便に伴う尿や便が外部に漏れるのを防止する左右一対の立体ギャザー3、ポリエチレン等で構成され、おむつ本体1の外面に設けられて排泄物等が外部に漏れるのを防止する防水材4、防水材4の外面に形成された2つの検出電極8、検出電極8に要介護者(介護を受ける者をいう。)や介護者等(要介護者を介護する者で、介護施設の従業者や要介護者の家族をいう。)が直接的に触れないよう検出電極8を被覆する不織布8cで構成されている。
【0035】
ここで検出電極8は、おむつ本体1が要介護者に着用された状態において、身体とは接触しない面の前方から身体の股部分を経由して後方に向け、並行して延伸された送信電極8a及び受信電極8bとで構成されている。なお検出電極8は、防水材4の表面に例えば導電性インクを塗布して形成される。ここで導電性インクは例えば導電性カーボン等のフィラーをビヒクル中に分散してペースト状に加工したものであり、一般的に目視上高い濃度を呈する。白色の不織布8cの厚みや繊維密度を適宜調整することで、照明下の明るい環境にあっては不織布8cの上から検出電極8の位置を目視できる。また、不織布8cに蛍光塗料を含侵、あるいは不織布8cに蛍光塗料を用いたマーカを印刷してもよく、これによって夜間等の暗い環境にあっても、検出電極8が配置されている位置を目視することができる。
【0036】
図2(b)は、おむつ本体1に排尿検出部6が装着された状態を示す説明図である。排尿検出部6は、おむつ本体1において排尿があったこと(事象・イベント)を検出する。介護者等は、要介護者におむつ本体1を着用させた後、おむつ本体1に設けられた検出電極8(上述したように、不織布8cを透過して位置が把握される)と排尿検出部本体6aに凸部として設けられた位置合わせ用マーカ6mとの位置を一致させる。そしておむつ本体1の外面と内面とを挟むようにして、排尿検出部6をおむつ本体1の前方かつ最上方(縁部)に取り付ける。
【0037】
図3は、おむつ本体1に排尿検出部6が装着された状態における、おむつ本体1のIIa-IIa断面図である。なお
図3は、おむつ本体1の前後に延伸される送信電極8aが現れる断面を示している。ここで、おむつ本体1の表面材7と防水材4との間に設けられた吸水材2は、尿等の水分を拡散させる吸水紙10、水分を吸収する綿状パルプ11及び綿状パルプ11で上下を挟まれた(あるいは綿状パルプ11に分散された)高分子吸水部12で構成されている。この吸水材2に尿が吸収される。以降、
図3に
図2(b)を併用して、排尿検出部本体6aと検出電極8との間における電気的接続の態様について説明する。
【0038】
排尿検出部本体6aのうち、不織布8c(送信電極8a)と向き合う面には、金属等の導電性材料で構成された電気接点6dが突出するように設けられ、更に電気接点6dには複数の針状突起(図示せず)が設けられている。上述したように、送信電極8aは不織布8cで被覆されているが、おむつ本体1に排尿検出部6が取り付けられた際、電気接点6dに設けられた針状突起が不織布8cを貫通し、電気接点6dと送信電極8aとの間で電気的なコンタクトが図られる。受信電極8bについても、同様に受信電極8bに対応する電気接点6dとの間で電気的なコンタクトが図られる。
【0039】
図4(a)は、排尿検出部6の正面図、(b)は、同側面図である。以降、排尿検出部6について詳細に説明する。排尿検出部6は、排尿検出部本体6a、レバー部6bで構成されている。レバー部6bは、排尿検出部本体6aの上方の後方において支持部6eに軸支されており、方向D1及び方向D2に回動可能とされている。そしてレバー部6bは図示しない板バネ等の付勢部材によって方向D2に付勢されている。介護者等は、レバー部6bの上部を排尿検出部本体6aの側に変位させてレバー部6bを方向D1に回動させ、排尿検出部本体6aの電気接点6dとレバー部6bの押圧パッド6cとを離間させる。そして排尿検出部本体6aとレバー部6bとの間におむつ本体1の上方縁部を挟んだ状態で、レバー部6bをリリースする。これによってレバー部6bは方向D2に回動し、排尿検出部本体6aがおむつ本体1の上方縁部に固定される。
【0040】
このとき、おむつ本体1の防水材4に印刷された検出電極8と位置合わせ用マーカ6mの位置を合わせることで、検出電極8が電気接点6dと押圧パッド6cとの間に確実に挟持され、検出電極8と電気接点6dとの間で電気的接続が確保される。なお、上述したように位置合わせ用マーカ6mは凸部を形成しているが、これを凹部で構成してもよい。いずれにせよ、介護者等が位置合わせ用マーカ6mの位置を指先の触感に基づき認識できるように構成されていればよい。
【0041】
図5は、排尿検出部6の機能ブロックを示すブロック構成図である。排尿検出部6は、第1制御部6s、第1記憶部6t、第1通信部6u、温湿度センサ6w、パルス発生部9a、増幅部9bで構成される。排尿検出部6には図示しない電源(バッテリ)が搭載されており、排尿検出部6の各構成要素は、当該電源が供給する電力に基づき動作する。また、これらの構成要素は図示しないバス等で結合されており、第1制御部6sはバス等を介して他の構成要素を制御するとともに、他の構成要素との間でデータの送受信を行う。
【0042】
第1制御部6sはCPU(Central Processing Unit)等で構成され、第1記憶部6tを構成するROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)等に記憶された制御プログラムに従って動作する。第1記憶部6tには制御プログラムや制御に用いられるデータ(以降、「制御プログラム等」と称するこことがある。)の他に、要介護者が利用するそれぞれの排泄物検出システムS1を識別するための固有の識別情報(以降、「システムID情報」と称することがある。)、及び情報の送信元(ここでは、排尿検出部6)を示す識別子(以降、「ユニット識別子」と称することがある。)が予め記憶されている。なお、第1制御部6sは増幅部9bや温湿度センサ6wから出力されるアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を含んでいてもよい。もちろんA/D変換器は第1制御部6sとは別体に設けられていてもよい。
【0043】
排尿検出部6は、上述したように、おむつ本体1に印刷された送信電極8a、受信電極8bとそれぞれ電気的に接続された電気接点6d、電気接点6dを介して送信電極8aと接続されたパルス発生部9a、電気接点6dを介して受信電極8bと接続された増幅部9b、電気接点6dと増幅部9bとの間に一端が接続され、他端が接地された抵抗成分9rを含む。第1制御部6sは増幅部9bの出力に基づいて、おむつ本体1における排尿の状況を検出し、更に排尿量の総和である総排尿量を決定する。
【0044】
ここで、おむつ内部に排尿されると、塩化ナトリウム等の塩を含む尿(水分)が電解質となり、絶縁体である防水材4に印刷された送信電極8a及び受信電極8bとの間には実質的に容量成分9cが形成される。即ち、送信電極8a、容量成分9c及び受信電極8bはコンデンサを形成する。受信電極8bと増幅部9bとの間には抵抗成分9rが接続され、その他端は接地されていることから、送信電極8a、容量成分9c、受信電極8b、抵抗成分9rは全体として微分回路9dを構成する。
【0045】
もちろん、微分回路9dは他の要素を含んでいてもよく、例えばパルス発生部9aと送信電極8aとの間に、プルアップ/プルダウン抵抗を加えてもよく、受信電極8bと増幅部9bとの間に電流制限用の抵抗を加えてもよい。即ち、パルス発生部9aと増幅部9bとの間に実質的な微分回路9dが形成されていればよく、軽微な変更が施されていても構わない。
【0046】
このように、第1実施形態においては、排尿検出部6は、おむつ本体1に含有された水分を計測し、この計測結果に基づいて排尿の状況を検出する。これによって、水分という直接的な要因に基づき排尿を検出することとなり、高い検出精度を得ることが可能となる。更に、排尿検出部6の一部を微分回路9dで構成することで、極めて簡単な構成でおむつ内部における排尿の状況を検出することが可能となる。
【0047】
第1制御部6sが指定した駆動条件(例えば周期、デューティ比)に基づき、パルス発生部9aはパルス信号を生成し、生成されたパルス信号は送信電極8aに印加される。パルス発生部9aは、例えば500μs幅のパルス信号を1秒周期(以降、「計測周期TS」と称することがある。)で生成する。受信電極8bの出力は増幅部9bによって増幅され、図示しないA/D変換器でディジタルデータに変換される。第1制御部6sは、送信電極8aに入力されたパルス信号に対する、受信電極8bの応答をディジタルデータとして受け取る。
【0048】
第1制御部6sは受信したディジタルデータに基づき、以下を判定する。
<case1>
排尿検出部6がおむつ本体1から外れている、あるいは排尿検出部6がおむつ本体1に正しく装着されていない。(装着エラー)
<case2>
おむつ本体1の防水材4(
図1参照)が濡れている、あるいは2つの検出電極8の間に導電性の異物が存在する。(装着エラー)
<case3>
おむつ内部において水分(尿)が検出されている。
<case4>
おむつ内部に水分が存在しない(排尿されておらずドライの状態)。
【0049】
そして第1制御部6sは、<case3>の場合は、新たに排尿のイベントが生じたこと(排尿有り)、総排尿量、総排尿量がおむつに蓄積される水分量を超過したこと(排尿量過多)を判定する。
【0050】
温湿度センサ6wは、温度センサまたは湿度センサの少なくとも一方で構成される。ここで温度センサとしては、例えば熱電対、サーミスタ(Thermistor)、測温抵抗体を用いることができる。また湿度センサとしては、感湿材料の吸湿/脱湿によって変化する抵抗値を計測する抵抗式センサ、あるいは静電容量を計測する容量式センサを用いることができる。第1実施形態では、温湿度センサ6wの出力に基づいて、要介護者がおむつ本体1を着用した後において、おむつ本体1に排尿検出部6が装着されたか否かを判定している。
【0051】
第1通信部6uは、例えばLPWA(Low Power Wide Area)、LTE(Long Term Evolution)、4G(あるいは5G)といった通信規格に準拠した通信モジュール、あるいは例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)といった距離無線通信規格に準拠した通信モジュールのうち少なくとも一方を含む。第1通信部6uは、要介護者に排尿に関連するイベント(事象)が生じた場合、ネットワーク51を介してサーバ52と通信を行う。
【0052】
具体的には、第1制御部6sは第1通信部6uを制御し、システムID情報、ユニット識別子、イベントコード(後述する。)、総排尿量(以降、これらをまとめて「排尿イベント情報」と称することがある。)を、ネットワーク51を介してサーバ52に送信する。主に衛生上の観点から、一般的には一つの排尿検出部6を複数の要介護者が使い回すことはない。要介護者と排尿検出部6とは1対1に紐づくことから、システムID情報は実質的に要介護者を識別する識別子として機能する。なお、以下に示すイベントコードが総排尿量決定である場合を除き、総排尿量としてNULLが送信される。
【0053】
ここで、排尿イベント情報におけるイベントコードは、例えば2バイトで構成され、例えば次のように定められている。
排尿有り:01H
総排尿量決定:04H
おむつ交換の実施:20H
通信エラー:FEH
装着エラー:FFH
【0054】
ここで、「排尿有り」とは、要介護者に排尿が生じた旨のイベントを指す。「総排尿量決定」とは、「排尿有り」のイベントとは別に、おむつ本体1に保持される尿の総量を決定した旨のイベントを指す。「おむつ交換の実施」とは、要介護者に新たなおむつ本体1が着用された旨のイベントを指す。「通信エラー」とは、排便検出部5(状況検出部20を含んでいてもよい)との通信が成立しない旨のイベント(後述する)を指す。「装着エラー」とは、上述した<case1>、<case2>に該当している旨のイベントを指す。
【0055】
図6(a)は、排便検出部5の機能ブロックを示すブロック構成図である。排便検出部5は、第2制御部5s、第2記憶部5t、第2通信部5u、匂いセンサ5b、センサ駆動部5d、ポンプ5c、RTC5vで構成される。第2制御部5sはCPU等で構成され、第2記憶部5tを構成するROM、RAM等に記憶された制御プログラム等に従って動作する。第2記憶部5tには制御プログラム等の他に、上述したシステムID情報及び情報の送信元(ここでは、排便検出部5)を示すユニット識別子が予め記憶されている。なお、第2制御部5sはA/D変換器を含んでいてもよい。特に匂いに関するデータ処理用のA/D変換器は匂いセンサ5bに内蔵されていてもよい。
【0056】
排便検出部5は、匂いセンサ5bを含み、おむつ本体1における排便の状況を検出し、排便の有無を判定する。即ち排便検出部5は、匂いセンサ5bの出力に基づいて排便の状況を検出する。これによって、極めて簡易な構成で排便の状況を検出することが可能となる。なお、排便検出部5には図示しない電源(バッテリ)が搭載されており、排便検出部5の各構成要素は、当該電源が供給する電力に基づき動作する。また、これらの構成要素は図示しないバス等で結合されており、第2制御部5sはバス等を介して他の構成要素を制御するとともに、他の構成要素との間でデータの送受信を行う。
【0057】
ここで排便検出部5は独立したユニットを構成し、例えば要介護者のベッド脇・ベッド下や、寝具の隙間(掛け布団・毛布・タオルケット等とマットレスとの間)等、要介護者が利用する寝具の近傍に配置される。換言すれば、排便検出部5は、おむつ本体1を着用した要介護者が存する空間において、要介護者に装着されない(非装着の)態様で配置される。これによって、排便検出部5を配置する際の自由度が大幅に向上し、排便検出部5を配置する際の制約を大幅に減らすことが可能となる。
【0058】
以降、排便検出部5を構成する各構成要素について説明する。匂いセンサ5bは、化学センサデバイスの一種であって、互いに異なる匂い物質に対する脱吸着特性を有する感応膜が設けられた振動子を備える複数(N個)のセンサモジュールで構成される。例えば匂いセンサ5bはN=180個のセンサモジュールを備えている。
【0059】
そして各々のセンサモジュールの感応膜に特定の匂い物質が吸着または脱離した際の、振動子の共振周波数の変化に基づいて匂い物質が検出される。なお、匂い物質が吸着したのち一定時間が経過すると、吸着した匂い物質は感応膜から離脱し、振動子は再利用が可能となっている。このように第1実施形態では、振動子式の匂いセンサ5bを採用しているが、これに代えて、半導体表面における匂い物質の吸着と表面反応によって半導体の抵抗値が変化することを利用した半導体式のものを用いてもよい。
【0060】
センサ駆動部5dは、第2制御部5sの指示に基づいて、匂いセンサ5bの振動子を振動させる圧電素子に対して駆動信号を出力する。ここで駆動信号としては、例えば所定の周波数の範囲で掃引(スイープ)する正弦波(交流電圧)が用いられる。なお、駆動信号をスイープする際、その周波数(駆動周波数)は順次第2制御部5sで決定され、駆動周波数に対応した所定のコマンドがセンサ駆動部5dに出力される。そしてセンサ駆動部5dは当該コマンドに対応した周波数の駆動信号を圧電素子に供給する。
【0061】
匂いセンサ5bを構成する複数のセンサモジュールには、それぞれ振動子が振動する際の振幅を計測する圧電素子(ピエゾ素子)が設けられている。圧電素子の出力(通常は正弦波)は、図示しないハードウェア等によって全波(あるいは半波)整流ののち平滑化される。そしてこの平滑化データは、図示しないA/D変換器によってディジタル信号に変換される。
【0062】
更に第2制御部5sは、駆動周波数を順次更新(即ち、スイープ)して振動子の振幅計測を繰り返す。そしてディジタル化された平滑化データを参照して、各センサモジュールの振動子の振幅が最大となる共振周波数を計測する。感応膜に特定の匂い物質が付着して、振動子の共振周波数が変化することに基づき、第2制御部5sは空気中に特定の匂い物質が含まれていることを検出する。
【0063】
ここで、便臭に含まれる匂い物質としては、腸内のいわゆる腐敗菌によって生成される例えばアンモニア、インドール、スカトールといった物質が知られている。これらの匂い成分を脱吸着する感応膜を備えるセンサモジュールを用いることで、匂いセンサ5bによって排便臭を検出することが可能となる。
【0064】
ポンプ5cは、排便臭の原因となる匂い物質を含む空気を吸引し、匂いセンサ5bに供給する。ポンプ5cとしては、モータ、ボイスコイルモータ、圧電素子(ピエゾ素子)等の駆動源を備えるものが利用できる。これらはいずれも吸入/吐出を切り替える弁を備え、駆動源によってダイヤフラムを振動させて空気の吸入/吐出を行う。特に圧電素子を備えるダイヤフラムポンプは、小型化、薄型化、低消費電力化に有利だとされているが、消費電力は100mW程度であり、特に装置の小型化を図るためバッテリ駆動を前提とする場合は、連続運転が制限される。
【0065】
第2通信部5uは、上述した排尿検出部6の第1通信部6uと同様に、所定の通信規格に準拠した通信モジュールあるいは近距離無線通信規格に準拠した通信モジュールの少なくとも一方を含む。第2通信部5uは、要介護者に排便に関連するイベント(排便有り)が生じた場合、ネットワーク51を介してサーバ52と通信を行う。具体的には、第2制御部5sは第2通信部5uを制御し、上述したシステムID情報、ユニット識別子、イベントコード(以降、「排便イベント情報」と称することがある。)をサーバ52に送信する。要介護者が使用する排便検出部5の第2記憶部5tに予めシステムID情報を格納しておくことで、要介護者と排便検出部5とは1対1に紐づく。
【0066】
ここで、排便イベント情報におけるイベントコードは、例えば次のように定められている。
排便有り:02H
通信エラー:FEH
ここで、「排便有り」とは、要介護者に排便が生じた旨のイベントを指し、「通信エラー」とは、排尿検出部6(状況検出部20を含んでいてもよい)との通信が成立しない旨のイベント(後述する)を指す。
【0067】
図6(b)は、状況検出部20の機能ブロックを示すブロック構成図である。状況検出部20は、状況検出センサ20a、第3制御部20s、第3記憶部20t、第3通信部20uで構成される。これらの構成要素は図示しないバス等で結合されており、第3制御部20sはバス等を介して他の構成要素を制御するとともに、他の構成要素との間でデータの送受信を行う。なお、状況検出部20は図示しないACアダプター等を介して電力の供給を受けて動作する。もちろん状況検出部20に電源ユニットを内蔵して、コンセント等を介して電力が供給されてもよい。
【0068】
状況検出センサ20aは、例えば圧力分布センサ(圧力マッピングマット)で構成されている。圧力分布センサは、複数の圧力センサ(Force Sensing Resistor:FSR)を所定の間隔(例えば5~10cm)で配置した高分子厚膜フィルムデバイスであり、加えられた力の増加に伴って電気抵抗値が減少する。これによって、個々のFSRで圧力の計測を行うとともに、マット全体の圧力分布を計測することが可能である。圧力分布センサは、ベッド等の寝具上に載置された敷布団やマットレスの上に重ねて配置される。圧力分布センサによって、要介護者が、寝具に居るか、または居ないか(即ち、在床/離床)が検出される。
【0069】
更に、検出された圧力分布に基づいて、要介護者の姿勢、体動が検出される。また、要介護者の心拍あるいは呼吸に基づく圧力(あるいは圧力分布)の変化を検出し、単位時間当たりの心拍数、単位時間当たりの呼吸数の少なくとも一方を検出することが可能である。そして、検出された要介護者の姿勢、体動、振動、心拍数、呼吸数に基づいて、要介護者が睡眠中であるか、覚醒しているかが判定される。このように圧力分布センサによって、要介護者の存床/離床、睡眠中/覚醒を判定することができる。
【0070】
状況検出センサ20aとして、圧力分布センサに替えて撮像手段を用いてもよい。ここで撮像手段としては例えば赤外線カメラと可視光カメラとを組み合わせたものが使用できる。人が呼吸する際、鼻部の温度は吸気によって低下し、呼気によって上昇する。この変化を赤外線カメラで検出することで、単位時間あたりの呼吸数を計測することができる。
【0071】
他方、可視光カメラによって、要介護者の存床と離床とを判定できる。また、人の血中ヘモグロビンは波長帯域520~600nmの光(緑色)を吸収する。他方、可視光カメラのG(緑色)フィルタは、波長帯域500~570nmの感度が高い。これらの波長帯域が重なっていることから、血中ヘモグロビンの相対量が増加すると緑の輝度値が低下する。即ち、可視光カメラのG(Green)チャネルの出力に基づき脈波情報(単位時間当たりの心拍数)を取得することができる。撮像手段で得られた要介護者の姿勢、体動及び単位時間の呼吸数、心拍数に基づき要介護者が睡眠中であるか、覚醒しているかを判定することが可能である。このように撮像手段によっても、要介護者の存床/離床、睡眠中/覚醒を判定することができる。
【0072】
また、状況検出センサ20aとして、測距手段を用いてもよい。ここで測距手段しては、例えばToF(Time of Flight)を使用できる。呼吸に伴い胸郭変動が生じることから、ToFカメラで胸部の変位を測定して単位時間あたりの呼吸数を計測することが可能である。また、ToFとMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等で構成された3Dスキャナとを組み合わせたLiDAR(Light Detection And Ranging)は、対象物(要介護者)までの距離、対象物の形状、動き等を計測することが可能である。
【0073】
なお、測距手段として、UWB(Ultra Wide Band)電波を使った検知方式を採用してもよい。UWBは対象物(要介護者)からの反射電波を解析することにより、対象物の位置、姿勢、呼吸、動きの強さを検知する。UWB電波は、障害物による影響が少ないことが特徴であり、約40m2の範囲で計測が可能とされている。このように測距手段によっても、要介護者の在床/離床、睡眠中/覚醒を判定することが可能である。
【0074】
もちろん状況検出センサ20aを、上述した圧力分布センサ、撮像手段、測距手段を組み合わせて構成してもよい。具体的には、例えば臥床した要介護者の胸部と対応する範囲に圧力分布センサを配置して、睡眠中/覚醒を判定するとともに、要介護者の動き等を撮像手段や測距手段によって判定する構成を採用することができる。これによって圧力分布センサの面積を小さくして排泄物検出システムS1の全体コストを低減することが可能となる。このように排泄物検出システムS1の状況検出部20は、状況検出センサ20aとして圧力分布センサ、撮像手段、測距手段の少なくとも一つを含む。
【0075】
第3制御部20sはCPU等で構成され、第3記憶部20tを構成するROM、RAM等に記憶された制御プログラムに従って動作する。第3記憶部20tには制御プログラム等の他に、上述したシステムID情報及び情報の送信元(ここでは、状況検出部20)を示すユニット識別子が予め記憶されている。
【0076】
第3通信部20uは、上述した排尿検出部6の第1通信部6uと同様に、所定の通信規格に準拠した通信モジュールあるいは近距離無線通信規格に準拠した通信モジュールの少なくとも一方を含む。第3通信部20uは、要介護者の状態(即ち、在床/離床、睡眠中/覚醒)を周期的(例えば1秒周期)にサーバ52に送信する。具体的には、第3制御部20sは第3通信部20uを制御し、上述したシステムID情報、ユニット識別子、イベントコード(以降、「状況イベント情報」と称することがある。また、状況イベント情報、排便イベント情報、排尿イベント情報をまとめて「イベント情報」と称することがある。)をサーバ52に送信する。要介護者が使用する状況検出部20の第3記憶部20tに予めシステムID情報を格納しておくことで、要介護者と状況検出部20とは1対1に紐づく。
【0077】
ここで、状況イベント情報におけるイベントコードは、例えば次のように定められている。
要介護者が在床している:40H
要介護者が離床している:41H
要介護者が睡眠中である:42H
要介護者が覚醒している:43H
【0078】
図7は、本発明の第1実施形態に係る排泄物検出システムS1の機能ブロックを示すブロック構成図である。
図7において、おむつ本体1、排尿検出部6、排便検出部5、状況検出部20、情報端末50については上述したので説明を省略する。サーバ52は、サーバ制御部52bとサーバ記憶部52aとで構成される。サーバ制御部52bはCPU等の演算装置を備え、図示しないROM、RAM等に格納された制御プログラム等に従って他の構成要素を制御する。またサーバ52には図示しないサーバ通信部が設けられ、ネットワーク51に接続された情報端末50、排尿検出部6、排便検出部5、状況検出部20、情報端末50との間で情報を送受信する。更にサーバ52はNTPサーバ53から時刻情報を取得することで、サーバ52の内部時計の正確性を維持している。
【0079】
第1実施形態では、サーバ制御部52bは、排泄物検出システムS1の構成要素を制御する制御部として機能する。具体的には、サーバ制御部52bは、状況検出部20から受信した状況イベント情報に基づき、排便検出部5あるいは排尿検出部6に所定のコマンドを送信して、排便検出動作の起動/停止及び排尿検出動作の起動/停止を制御する。またサーバ制御部52bは排便検出部5あるいは排尿検出部6からイベント情報(排便イベント情報、排尿イベント情報)を受信して、必要に応じて情報端末50を介して介護者等に通知を行う。なおサーバ制御部52bは、排便検出部5あるいは排尿検出部6に所定のコマンドを送信して、任意の時点でイベント情報を取得することが可能とされている。
【0080】
さて、上述したように、排尿検出部6と排便検出部5とは近距離無線通信規格に基づいて相互に通信している。具体的には排尿検出部6は自己のユニット識別子を排便検出部5に送信し、排便検出部5はこれに応答して自己のユニット識別子を排便検出部5に送信する。排尿検出部6は、排便検出部5から応答がない場合、排便検出部5に異常がある(正常に動作していない)、あるいは排便検出部5が排尿検出部6の近傍に存しないと判断し、サーバ52に「通信エラー」のイベントコードを含むイベント情報を送信する。他方、排便検出部5は、排尿検出部6からユニット識別子が送信されない場合、サーバ52に「通信エラー」のイベントコードを含むイベント情報を送信する。
【0081】
第1実施形態では、排尿検出部6は要介護者が着用するおむつ本体1に装着され、排便検出部5は寝具の近傍に配置される。「通信エラー」が生じている場合、サーバ52のサーバ制御部52bは、排泄物検出システムS1の通信機能に異常がある、あるいは排尿検出部6と排便検出部5とが、電波が届く範囲を超えて離間している(即ち、要介護者が離床している)と判定することができる。
【0082】
サーバ記憶部52aは、更にRAID(Redundant Arrays of Independent Disks)等で構成された記憶手段を備え、サーバ記憶部52aには排泄状況管理データベース(以降、「排泄状況管理DB」と称することがある。)が構築されている。
【0083】
図8は、排泄状況管理DBのデータ構造を示す説明図である。図示するように、排泄状況管理DBには、要介護者が利用する排泄物検出システムS1のそれぞれに対応する第1レコード52fが設けられている。即ち、排泄物検出システムS1は形式的に要介護者の数だけ存在し、第1レコード52fは管理対象である要介護者が増える毎に追加される。
【0084】
各第1レコード52fは、以下に示す第1フィールド~第4フィールドで構成されている。各フィールドのデータサイズは固定長とされている。
第1フィールド:ID情報
第2フィールド:要介護者の個人情報
第3フィールド:通知先に関する情報
第4フィールド:記憶領域Mpを示すポインタ
【0085】
第1フィールドの「ID情報」には、個々の排泄物検出システムS1に対応するシステムID情報(ID0001,ID0002..)が格納されている。第2フィールドの「要介護者の個人情報」には、要介護者の性別、氏名、年齢等といった個人情報が格納されている。第3フィールドの「通知先に関する情報」には、排便等が検出された際におむつ交換を担当する介護者等の連絡先(メールアドレス等)が格納されている。第4フィールドの「記憶領域Mpを示すポインタ」には、イベント情報の履歴を格納する記憶領域の先頭アドレスが格納されている。ここで記憶領域Mpは第1レコード52fのそれぞれに対応して確保されたメモリリソースであり、"p"は、ID情報に対応する番号(p=1,2,3...)を意味する。即ち、記憶領域Mpは第1レコード52fの数だけ確保される。
【0086】
第4フィールド「記憶領域Mpを示すポインタ」によって指し示される記憶領域Mpには、第2レコード52gが生成される。第2レコード52gは以下に示すデータ領域d1~データ領域d4で構成されている。
【0087】
データ領域dxには、以下の情報が格納される。なおデータ領域dxのデータサイズはいずれも固定長とされている。
データ領域d1:イベントコード
データ領域d2:イベントが発生した年月日及び時刻
データ領域d3:総排尿量
データ領域d4:次の記憶領域Mp-qの先頭を示すポインタ
ここで記憶領域Mp-qにおける"q"は、記憶領域Mpに生成される第2レコード52gの番号(q=1,2,3,...)を意味する。記憶領域Mp-qはイベントが発生する度に新たに確保され、ここに第2レコード52gが追加生成される。
【0088】
以下、
図7を併用して、第1レコード52fの第1フィールドに格納されたシステムID情報「ID0001」に紐づく要介護者にイベントが生じた場合を例にとり、サーバ制御部52bの処理について説明する。サーバ制御部52bは、排尿検出部6あるいは排便検出部5から上述したイベント情報を受信すると、イベント情報に含まれるシステムID情報をキーとして排泄状況管理DBを検索する。そして第1レコード52f(ここではID0001が格納された第1レコード52f)を抽出する。更に第1レコード52fの第4フィールドから記憶領域M1を示すポインタを取り出し、記憶領域M1の先頭(即ち、記憶領域M1-1)にアクセスし、第2レコード52gのデータ領域d4に格納された記憶領域M1-2の先頭を示すポインタを取得する。
【0089】
更に、サーバ制御部52bは、取得したポインタの値に基づき記憶領域M1-2に生成された第2レコード52gにアクセスし、そのデータ領域d4に格納された記憶領域M1-3の先頭を示すポインタを取得する。この処理を繰り返して、データ領域d4にNULLが格納されている第2レコード52gに辿り着くと、新たに記憶領域を確保(ここでは、図示しない記憶領域M1-4)して、イベント情報に含まれるイベントコードをデータ領域d1に書き込む。そして当該イベントコードが「総排尿量決定」である場合は、総排尿量をデータ領域d3に書き込み、NULLをデータ領域d4に書き込む。これによって新たな第2レコード52gが生成される。
【0090】
更に、サーバ制御部52bは内部時計から日時及び時刻情報(以降、「時刻等情報」と称することがある。)を取得して、時刻等情報を新たな第2レコード52gのデータ領域d2に書き込む。その後、もともとNULLが格納されていた記憶領域M1-3のデータ領域d4に、新たに生成した第2レコード52gの先頭アドレスを書き込む。このように、サーバ制御部52bは時系列に発生するイベント情報を受信する毎に、新たな記憶領域を確保して第2レコード52gを生成していく。これによって、要介護者毎(排泄物検出システムS1毎)にイベント情報が蓄積され、排泄に関する履歴(以降、「排泄履歴」と称することがある。)が生成、更新される。
【0091】
なお、イベント情報に含まれるユニット識別子が状況検出部20を示すとき(即ち、受信したイベント情報が状況検出部20から送信されたものであるとき)、あるいはイベント情報に含まれるイベントコードがエラーに基づくもの(通信エラー、装着エラー)であるとき、排泄履歴は生成・更新されない。
【0092】
排泄履歴が生成、更新された場合、サーバ制御部52bは、イベント情報に含まれるシステムID情報に基づき第1レコード52fを抽出する。そしてその第2フィールドに格納された「要介護者の個人情報」、第3フィールドに格納された「通知先に関する情報」を参照して、通知先として登録された情報端末50に通知を行う。この際、送信される情報には「要介護者の個人情報」とともに、イベント情報、時刻等情報が含まれる。以降、この通知を「登録先へのイベント通知」と称することがある。なお、介護者等は、情報端末50の操作部を操作してサーバ52にアクセスが可能とされ、介護者等がシステムID情報を指定することで、これまで排泄状況管理DBに蓄積された要介護者の排泄履歴を参照することができる。
【0093】
さて、サーバ制御部52bは、排泄状況管理DBを参照することで、要介護者毎の排泄履歴に基づいて様々な解析や推定を実行することが可能である。この解析によって、例えば以下の情報が生成される。
(i)排尿の周期・頻度、一日あたりの排尿回数、1回の排尿あたりの排尿量の平均値
(ii)排便の周期・頻度、一日あたりの排便回数
(iii)おむつ交換が実施された際の総排尿量
(iv)「排便有り」や「総排尿量過多」が通知されてから、おむつ交換が実施されたまでに要した時間
(v)おむつ交換の頻度
(vi)これらを可視化したグラフ等
【0094】
(i)の情報から、熱中症、脱水症、膀胱炎、前立腺肥大症、頻尿症、急性腎不全、急性胃軸捻転、尿閉、前立腺癌、過活動膀胱、膀胱炎、尿路感染、前立腺炎等の予兆を捉えることが可能となる。また、(ii)の情報から、便秘症等、感染性胃腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、虫垂炎、大腸がん、過敏性腸症候群等の予兆を捉えることが可能となる。即ち、排泄履歴によって要介護者の健康管理を図ることが可能である。更に、(iii),(iv),(v)の情報から、介護施設等における従業者の負担の把握、サービスの提供状況の把握等、例えば介護施設を運用する者にとっての有用な知見を得ることが可能となる。更に(vi)によって、これらの情報の傾向を把握することが可能となる。
【0095】
これらの解析結果についても、介護者等は情報端末50で参照することが可能とされている。更に、例えば排泄履歴と他の履歴(食事に関する履歴(摂食時刻、カロリー等)、運動履歴(体操を開始した時刻や運動した時間等)、睡眠に関する履歴(消灯時刻や睡眠時間等))とを関連付けて統計的な処理を行なうことで、要介護者の生活習慣と排泄との間の相関を算出する等、健康管理に有用なデータを生成することも可能となる。当該解析結果や統計処理の結果は、介護者等のみならず医師や看護師等にとっても有用であることは言うまでもない。
【0096】
図9は、排泄物検出システムS1の初期動作を示す第1フローチャートである。以下、
図9に
図7を併用して排泄物検出システムS1の初期動作について説明する。まずサーバ制御部52bは、排泄物検出システムS1における通信機能が正常か否かを判定する(ST101)。具体的には、サーバ制御部52bは、上述した排尿検出部6あるいは排便検出部5が送信した「通信エラー」を示すイベントコード(FEH)を受信しているか否かを判定する。
【0097】
通信機能が異常である場合、即ち「通信エラー」を示すイベントコードを受信している場合(ST101で.No)、サーバ制御部52bは、情報端末50に排泄物検出システムS1に通信エラーが生じている旨を送信する(ST102)。そして情報端末50ではエラー表示がなされる。他方、上述した「通信エラー」を示すイベントコードを受信していない場合(ST101でYes)、サーバ制御部52bは、要介護者に排尿検出部6が装着されたか否かを判定する(ST103)。
【0098】
上述のように、排尿検出部6において温湿度センサ6wは要介護者の身体のごく近傍に配置される。第1制御部6sは、温湿度センサ6wの出力を参照して体温に基づく温度上昇や発汗による湿度上昇を検出し、要介護者(おむつ本体1)に排尿検出部6が装着されているか否かを判定する。そして第1制御部6sは、要介護者に排尿検出部6が装着されたと判断した場合、要介護者におむつ本体1が着用されたとみなして、サーバ52にイベントコード「おむつ交換の実施:20H」を含むイベント情報を送信する。
【0099】
サーバ制御部52bは、受信したイベント情報に「おむつ交換の実施:20H」を示すイベントコードが含まれることで、要介護者に排尿検出部6が装着されたと判断した場合(ST103でYes)、処理をST104に移す。他方、「おむつ交換の実施:20H」を示すイベントコードを受信していない場合は、要介護者に排尿検出部6が装着されていないと判断し、処理をST103に移して要介護者に排尿検出部6が装着されるのを待つ。なおこのとき、情報端末50に対して、排尿検出部6の装着を促すメッセージ等を送信してもよい。
【0100】
次にサーバ制御部52bは、排尿検出部6で排尿の状況の検出が可能か否かを判定する(ST104)。サーバ制御部52bは、排尿検出部6から「装着エラー」を示すイベントコード(FFH)を受信していない場合は、排尿の状況の検出が可能と判断し(ST104でYes)、処理をST105に移す。他方、排尿検出部6から「装着エラー」を示すイベントコードを受信している場合は、要介護者に排尿検出部6が適切に装着されていない(あるいは、送信電極8a等と排尿検出部6との間に導電性の異物等が存在する等)と判断し(ST104でNo)、処理をST104に移して、要介護者に排尿検出部6が適正に装着されるのを待つ。なおこのとき、情報端末50に対して、排尿検出部6を適切に装着するよう促すメッセージ等を送信してもよい。
【0101】
なお、ST104がYesと判断された段階で、排尿検出部6を起動して、例えば上述した<case4>の条件を満たし、おむつ本体1がドライの状態を検出したときに、情報端末50に対して、メッセージ等を送信することで、介護者等はおむつ本体1に排尿検出部6が正常に装着されたことを確認できる。
【0102】
次にサーバ制御部52bは、排便検出部5にコマンドを送信し、匂いセンサ5bの初期化(キャリブレーション,校正)を実行する(ST105)。匂いセンサ5bの初期化においては、第2制御部5sはポンプ5cを駆動し、匂いセンサ5bに寝具等の近傍の空気を供給し、更にセンサ駆動部5dに所定のコマンドを発行して匂いセンサ5bを駆動する。初期化によって、匂いセンサ5bを構成する各センサモジュールでは、おむつ内部に排泄物がない状態における、振動子の共振周波数が計測される。そしてこの際の共振周波数を基準として、その後の共振周波数の変化に基づき排便臭が検出される。人体の近傍や居室等の生活空間には微量の匂い成分が存在しているため、排尿検出部6を装着した時点(実質的におむつ交換が行われた時点)の匂いを基準とすることで、排便臭は基準との差分(相対値)として検出され、検出精度が向上する。
【0103】
次にサーバ制御部52bは、状況検出部20にコマンドを送信し、状況検出部20を起動する(ST106)。そしてサーバ制御部52bは、排尿・排便検出を開始する(ST107)。これによって排泄物検出システムS1の初期動作は終了する。以降、
図10のスタートから処理が開始される。
【0104】
図10は、排泄物検出システムS1の動作を示す第2フローチャートである。以下、
図10に
図7を併用して排泄物検出システムS1の動作について説明する。まず、サーバ制御部52bは排尿検出部6の動作を開始する(ST201)。サーバ制御部52bは、排尿検出部6に所定のコマンドを送信する。排尿検出部6は当該コマンドを受信すると、排尿の状況の検出を開始する。排尿検出部6の第1制御部6sは、パルス発生部9aを制御して、送信電極8aに対して計測周期TSでパルス信号を供給する。そして受信電極8bの出力に基づき排尿量[n](n:自然数)を取得する。
【0105】
次にサーバ制御部52bは、状況検出部20から送信されたイベント情報を参照して要介護者が覚醒しているかを判定する(ST202)。要介護者が覚醒しておらず「睡眠中」(イベントコード:42H)である場合(ST202でNo)、サーバ制御部52bは排便検出部5に所定のコマンドを送信して排便検出部5の動作を停止する(ST203)。当該コマンドを受信した排便検出部5の第2制御部5sは、ポンプ5cの駆動を停止するとともに、匂いセンサ5b、センサ駆動部5dの動作を停止し、排便の状況の検出を停止する。要介護者が睡眠中である場合に排便検出部5の動作を停止させることで、排便検出部5で消費される電力を抑制することが可能となる。
【0106】
次にサーバ制御部52bは、排尿検出部6に所定のコマンドを送信して排尿検出部6の動作を停止する(ST204)。当該コマンドを受信した排尿検出部6の第1制御部6sは、パルス発生部9aによるパルスの発生を停止し、増幅部9bの動作を停止して排尿の状況の検出を停止する。これによって、要介護者が睡眠中である場合に排尿検出部6の動作を停止させることで、排尿検出部6で消費される電力を抑制することが可能となる。その後、処理はST202に移る。
【0107】
このように、第1実施形態の排泄物検出システムS1は、要介護者の利用する寝具の近傍に配置され、要介護者の排便の状況を検出する排便検出部5と、要介護者の状況を検出する状況検出部20と、制御部(サーバ制御部52b)と、を備え、サーバ制御部52bは、状況検出部20の出力に基づいて、要介護者が睡眠中であると判断した場合、排便検出部5の動作を停止させる。
【0108】
また、排泄物検出システムS1は、要介護者の排尿の状況を検出する排尿検出部6を更に備え、制御部(サーバ制御部52b)は、状況検出部20の出力に基づいて、要介護者が睡眠中であると判断した場合、排尿検出部6の動作を停止させる。
【0109】
このように排便検出部5及び排尿検出部6の動作を停止することで、消費電力を低減し、バッテリを電源とする排便検出部5及び排尿検出部6を長期にわたって動作させることが可能となる。また、要介護者が睡眠中であるとき、おむつ本体1を交換することで要介護者が覚醒してしまうことがある。このような覚醒は睡眠の妨げや徘徊等の原因となり得ることから、睡眠中のおむつ交換は避けるのが好ましい。このような観点からも、睡眠中に特に排尿検出部6の動作を停止することは意義がある。
【0110】
ただし、就寝時間帯等において睡眠中の排尿によって総排尿量が予め定められた値を上回ると推定される場合(おむつ本体1の尿の保持量が上限に近い場合)は、ST202からST205に処理を移す(即ち、例外的にST202でYes判定とする)ことが好ましい。これによって、総排尿量過多により要介護者の身体にかぶれ等が発生することが防止される。
【0111】
要介護者が覚醒している場合(ST202でYes)、サーバ制御部52bは、排尿検出部6から送信されるイベントコードに基づいて、「排尿あり」が検出されたかを判定する(ST205)。ここで排尿検出部6の第1制御部6sは、計測周期TSで(時系列に)取得した最新の排尿量[n]と過去の排尿量[n-N](Nは例えば10)とに基づいて、δu(=排尿量[n]-排尿量[n-N])を算出する。そしてδuが予め定められた閾値より大きい場合は「排尿有り」と判断する。即ち、第1制御部6sは排尿量[n]の時間差分を用いて「排尿有り」か否か(即ち、新たに排尿のイベントが生じたか否か)を時系列に判定する。そして、「排尿有り」と判定された場合、サーバ52に「排尿有り」(イベントコード:01H)を含むイベント情報を送信する。サーバ制御部52bは、イベントコード「排尿有り:01H」を受信することで「排尿有り」と判断する。
【0112】
「排尿有り」が検出されなかった場合(ST205でNo)、処理はST205に戻る。ST205に戻ったのち、排尿検出部6では、排尿の状況の検出は計測周期TSで、時系列に繰り返して行われる。他方「排尿有り」が検出された場合(ST205でYes)、サーバ制御部52bは、排泄状況管理DBにアクセスし、上述した排泄履歴を更新する(ST206)。ただし単純に「排尿有り」が検出されたからといって、総排尿量が少ない場合は「登録先へのイベント通知」が行われることはない。
【0113】
次にサーバ制御部52bは、状況検出部20から送信されたイベント情報を参照して要介護者が在床しているかを判定する(ST207)。要介護者が在床しておらず離床している(イベントコード:41H)である場合(ST207でNo)、サーバ制御部52bは排便検出部5に所定のコマンドを送信して、排便検出部5の動作を停止する(ST214)。
【0114】
即ち、第1実施形態の排泄物検出システムS1は、要介護者の利用する寝具の近傍に配置され、要介護者の排便の状況を検出する排便検出部5と、要介護者の状況を検出する状況検出部20と、制御部(サーバ制御部52b)と、を備え、サーバ制御部52bは、状況検出部20の出力に基づいて、要介護者が寝具を離れた(離床)と判断した場合、排便検出部5の動作を停止させる。
【0115】
なお、サーバ制御部52bは、状況検出部20から送信されたイベント情報とともに、上述した「通信エラー」の有無を参照して、要介護者の在床/離床を判断してもよい。これによって、在床/離床を検出する精度が向上する。
【0116】
上述したように、排尿検出部6はおむつ本体1に装着されているが、排便検出部5は例えばベッド等寝具の近傍に配置されている。このため、要介護者が離床して排便検出部5から遠ざかると、排便検出部5によって排便の状況を検出することができない。このように排便の状況を検出できない場合は、排便検出部5の動作を停止させることで、消費電力を低減することが可能となる。
【0117】
他方、要介護者が在床している(イベントコード:40H)場合(ST207でYes)、サーバ制御部52bは排便検出部5に所定のコマンドを送信して排便検出部5の動作を開始する(ST208)。排便検出部5の第2通信部5uは、当該コマンドを受信すると、RTC5vにトリガー信号を送信する。トリガー信号を受けたRTC5vは第2制御部5sを起動(活性化)する。そして、第2制御部5sはポンプ5cを駆動するとともに、センサ駆動部5dに指示を出力して匂いセンサ5bを駆動する。これによって排便の状況の検出が実行される。上述したように、匂いセンサ5bやポンプ5cの消費電力は比較的大きい。他方、RTC5vは一般に消費電力が極めて小さいデバイスである。排便検出部5を構成する第2制御部5s等はコマンドを受信するまで動作を停止していることから、排便検出部5の消費電力が大幅に低減される。
【0118】
更に、第1実施形態においては、サーバ制御部52bからコマンドを受信しない状況においても、RTC5vは内蔵されたタイマに基づいて第2制御部5sにトリガー信号を出力し、所定の時刻等に排便の状況の検出を行うことが可能とされている。上述したようにサーバ制御部52bは、排泄履歴に基づいて要介護者の排尿や排便の周期を分析することが可能である。このような分析結果に基づいて、サーバ制御部52bが予めRTC5vのタイマ設定を行うことで、一日における要介護者の排尿周期が推定可能である場合等は、例えば排尿と排尿の中間のタイミングで排便の状況の検出を行うことができる。この場合、排尿を伴わずに排便のみが行われた場合であっても、早期に「排便有り」を検出しておむつ交換を行うことが可能となる。
【0119】
このように、第1実施形態の排泄物検出システムS1は、排泄物を受容する排泄物受容具(おむつ本体1)における排尿の状況を検出する排尿検出部6と、排泄物受容具における排便の状況を検出する排便検出部5と、を有し、排尿検出部6は排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、排尿検出部6によって検出された排尿の状況が「排尿有り」となった場合に、排便検出部5によって排便の状況を検出する。
【0120】
以下、「排尿有り」となった場合に排便の状況を検出するシーケンスを採用している理由を説明する。排便を調節する肛門括約筋と排尿を調節する尿道括約筋は繋がっており、片方の括約筋だけを動かすことができない。即ち排尿時でも排便時でも両方の括約筋が緩む。ただし排尿の場合は膀胱に尿がたまると副交感神経の刺激によって自然に膀胱が収縮するので、尿道括約筋がゆるめば力まなくても排尿が行われる。一方、肛門括約筋が緩んだとしても排便は力まないと始まらない。そしてこのように力んだ時に膀胱が圧迫されるため、排便と同時に尿も出てしまう。
【0121】
このことは、「排尿有り」が検出されたとき、即ち排尿がイベントとして検出されたときは、それと同時期に排便が行われる確率が高いことを示唆している。本発明では、このような知見を背景として、排尿検出部6において「排尿有り」が検出されたことをトリガーとして排便検出部5で排便の状況を検出するようにしている。これによって、排便検出部5で使用される電力を大幅に低減することが可能となる。また排尿と排尿の間に放屁等があったとしても、その間に排便検出部5は作動しないことから、放屁を排便と誤検出するような事態を防止し、排便の検出精度を向上することが可能となる。
【0122】
排便の状況の検出にあたって、排便検出部5の第2制御部5sは、ポンプ5cを駆動して匂いセンサ5bに寝具等の近傍の空気を供給する。そして、匂いセンサ5bを構成する振動子の共振周波数の変化に基づいて、空気中に排便臭のもととなる特定の匂い物質が含まれるか否かを判定する。そして排便臭が検出されると、第2制御部5sは、サーバ52に「排便あり」(イベントコード:02H)のイベントコードを含むイベント情報を送信する。
【0123】
サーバ制御部52bは、排便検出部5から受信したイベントコードに基づいて、「排便あり」が検出されたかを判定する(ST209)。「排便有り」が検出された場合(ST09でYes)、サーバ制御部52bは、排泄状況管理DBにアクセスし、上述した排泄履歴を更新する(ST210)。更にサーバ制御部52bは、上述した「登録先へのイベント通知」を行って、介護者等に対して要介護者に排便があった旨を通知する(ST211)。
【0124】
上述したように、「登録先へのイベント通知」においては、サーバ制御部52bは、情報端末50に要介護者の個人情報、イベント情報、時刻等情報を送信する。これによって介護者等が所有する情報端末50において「〇年〇月〇日〇時〇分、〇〇さんに排便がありました。至急おむつを交換してください。」のような通知が行われる。そののち、サーバ制御部52bは、排便検出部5に所定のコマンドを送信して排便検出部5の動作を停止する(ST212)。
【0125】
他方、「排便有り」が検出されなかった、即ち「排便無し」であった場合(ST209でNo)において、所定時間が経過していない場合(ST213でNo)、処理はST209に戻る。これによって、ST209において排便の状況の検出が繰り返される。ここで、所定時間は例えば5分に設定されており、排便の状況の検出は5分間継続して行われる。このように排便の状況の検出を繰り返すのは、「排尿有り」が検出された場合であっても、直ちに排便が行われないことも想定されるためである。
【0126】
他方、所定時間が経過した場合(ST213でYes)、サーバ制御部52bは、排便検出部5に所定のコマンドを送信して排便検出部5の動作を停止する(ST214)。次にサーバ制御部52bは、排尿検出部6に対して所定のコマンドを送信し、これを受信した排尿検出部6の第1制御部6sは、コマンドを受信した時点のイベント情報(イベントコードとして総排尿量決定:04H、及び総排尿量のデータを含む)をサーバ52に送信する。そして総排尿量のデータを受信したサーバ制御部52bは、総排尿量を決定する(ST215)。更にサーバ制御部52bは、排泄状況管理DBにアクセスし、排泄履歴を更新する(ST216)。この際、記憶領域のデータ領域d3(
図8参照)には「総排尿量」が格納される。
【0127】
上述したように、ST213において排便の状況の検出は所定期間継続して行われており、総排尿量の決定は、当該所定期間を経過したのちに行われる。換言すれば、サーバ制御部52bは、排便の状況の検出を開始するタイミングよりも遅いタイミングにおいて総排尿量を決定する。これによって、おむつ本体1における排尿位置等に起因して、排尿直後の総排尿量の検出値が不安定となる現象等を回避し、正確な総排尿量を決定することが可能となる。
【0128】
次にサーバ制御部52bは、「総排尿量」が所定の量を超えているかを判定する(ST217)。「総排尿量」が所定の量を超えている場合(ST217でYes)、サーバ制御部52bは上述した「登録先へのイベント通知」を行って、介護者等に対して総排尿量が過多である(総排尿量がおむつ交換の上限を超えた)旨を通知する(ST218)。これによって介護者等が所有する情報端末50等において「〇年〇月〇日〇時〇分、〇〇さんの総排尿量がおむつの上限を超えました。至急おむつを交換してください。」のような通知が行われる。
【0129】
他方、総排尿量が所定の範囲に収まっている場合(ST217でNo)、処理はST202に移る。処理がST202に移ることで、以降、要介護者が覚醒していることを条件として(ST202でYes)、既におむつ本体1に排尿がなされている状態において、計測周期TSで、排尿の状況の検出が時系列に繰り返して行われる。他方、要介護者が睡眠中である場合(ST202でNo)は、上述のように排便検出部5及び排尿検出部6の動作が停止される(ST203,ST204)。
【0130】
ST212あるいはST218の処理の後、サーバ制御部52bは、排尿検出部6に所定のコマンドを送信して、排尿検出部6の動作を停止する(ST219)。当該処理の内容はST204で説明したものと同様である。これによって、排尿検出部6における消費電力が抑制される。そして第2フローチャートに基づく処理は終了し、処理は、第1フローチャート(
図9参照)のスタートに戻る。
【0131】
このように第1実施形態の排泄物検出システムS1は、制御部(サーバ制御部52b)は、状況検出部20の出力に基づいて、要介護者が覚醒していると判断した場合(ST202でYes)、排尿検出部6によって排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し、排尿検出部6によって検出された排尿の状況が排尿有りとなった場合(ST205でYes)に、排便検出部5によって排便の状況を検出する(ST208)。
【0132】
また、第1実施形態では、排尿量の総和である総排尿量を決定し(ST215)、決定された排便の状況が「排便無し」で(ST209でNo)、かつ総排尿量が所定の量よりも少ない場合(ST217でNo)、排泄物受容具(おむつ本体1)における排尿の状況を検出することを時系列に繰り返し(ST205)、検出された排尿の状況が排尿ありとなる毎に(ST205でYes)、排便の状況を検出する(ST208)。
【0133】
これによって、総排尿量が所定の量以下である場合において、排尿検出部6で「排尿有り」が検出されたことをトリガーとして排便の状況が検出されるため、排便検出部5で使用される電力を大幅に低減することが可能となる。また排尿と排尿の間に放屁等があったとしても、その間に排便検出部5は作動しないことから、放屁を排便と誤検出するような事態を防止し、排便の検出精度を向上することが可能となる。
【0134】
以上、本発明の第1実施形態を詳細に説明した。ここで第1実施形態ではサーバ52に設けられたサーバ制御部52bが制御部として機能し、排尿検出部6、排便検出部5の動作(開始/停止)を制御するようにしているが、例えば排尿検出部6に設けられた第1制御部6sあるいは排便検出部5に設けられた第2制御部5sが制御部として機能してもよい。
(第2実施形態)
【0135】
図11は、本発明の第2実施形態に係る排泄物検出システムS1の機能ブロックを示すブロック構成図である。上述の第1実施形態では、排便検出部5と排尿検出部6とは別体に構成されていたが、第2実施形態においては、これらは一体とされ排泄物検出部60を構成している。排便検出部5と排尿検出部6とを一体化することで排泄物検出部60の構成が簡素化され、排泄物検出システムS1全体としてコストダウンを図ることが可能となる。
【0136】
第2実施形態の排泄物検出システムS1は、排泄物検出部60、おむつ本体1、状況検出部20、サーバ52、情報端末50で構成される。排泄物検出部60は第1実施形態で説明した排尿検出部6と同様に要介護者のおむつ本体1に装着される。なお
図11においては、排泄物検出部60の各構成要素には第1実施形態と同一の符号を付しており、各構成要素の機能は第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0137】
以下、
図11に
図10を援用して説明を続ける。第2実施形態の構成によれば、排尿検出部6のみならず排便検出部5も要介護者に装着される。従って、要介護者が寝具等に在床していなくても排便の状況を検出することが可能である。このことから、第2実施形態における排泄物検出システムS1の動作フローは、
図10に示す第2フローチャートから、ST207(要介護者が在床している?)を除去したものとなる。この場合、排尿検出部6で「排尿有り」が検出された場合(ST205でYes)、排泄履歴が更新され(ST206)、次に排便検出部5の動作が開始される(ST208)。
【0138】
第2実施形態においても、サーバ制御部52bは、状況検出部20から送信されたイベント情報を参照して要介護者が覚醒しているかを判定する(ST202)。要介護者が覚醒しておらず「睡眠中」(イベントコード:42H)である場合(ST202でNo)、サーバ制御部52bは排泄物検出部60に所定のコマンドを送信して排便検出部5及び排尿検出部6の動作を停止する(ST203、ST204)。
【0139】
このように、第2実施形態の排泄物検出システムS1は、要介護者が着用する排泄物受容具(おむつ本体1)に配置され、要介護者の排便の状況を検出する排便検出部5と、要介護者の状況を検出する状況検出部20と、制御部(サーバ制御部52b)と、を備え、サーバ制御部52bは、状況検出部20の出力に基づいて、要介護者が睡眠中であると判断した場合、排便検出部5の動作を停止させ、更に排尿検出部6の動作を停止させる。
【0140】
即ち、第2実施形態においては、要介護者が寝具に在床していない(離床しており、覚醒していると判断される)状況においても、排泄物検出部60とサーバ52(サーバ制御部52b)との間で通信(イベント情報及びコマンドの送受信)が可能であれば、排便の状況の検出及び排尿の状況の検出を行うことができる。換言すれば、第2実施形態の排泄物検出システムS1において、サーバ制御部52bは、状況検出部20の出力に基づいて、要介護者が寝具を離れたと判断した場合であっても、排便検出部5の動作を継続する。
【0141】
ただし排便検出部5は、第1実施形態で説明したのと同様に、排尿検出部6が「排尿あり」を検出した場合に排便の状況の検出を行うため、第2実施形態においても消費電力を低減することが可能である。また、上述のように要介護者が睡眠中である場合は、排便検出部5及び排尿検出部6は動作しないため、この状況においても消費電力が低減される。
【0142】
以上、本発明に係る排泄物検出システムS1、排泄物検出方法について特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、上述の実施形態において、おむつ本体1として、テープ等を用いて要介護者に着用される構成(いわゆる「テープタイプ」)について例示したが、本発明はパンツ形状をなすいわゆる「パンツタイプ」についても適用が可能であることは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明に係る排泄物検出システムS1は、要介護者が離床している場合に排便検出部5の動作を停止させ、更に要介護者が睡眠中である場合に、排便検出部5及び排尿検出部6の動作を停止させることで、消費電力を抑制することが可能となることから、要介護者が生活する介護施設、病院、住居等において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0144】
1 おむつ本体(排泄物受容具)
5 排便検出部
5b 匂いセンサ
5c ポンプ
5d センサ駆動部
6 排尿検出部
6d 電気接点
6w 温湿度センサ
8 検出電極
8a 送信電極
8b 受信電極
9a パルス発生部
9b 増幅部
9d 微分回路
20 状況検出部
20a 状況検出センサ
50 情報端末
51 ネットワーク
52 サーバ
52b サーバ制御部
60 排泄物検出部
S1 排泄物検出システム