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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153998
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】全樹脂熱利用発電素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20241023BHJP
   H10N 10/852 20230101ALI20241023BHJP
   H10N 10/851 20230101ALI20241023BHJP
   H10N 10/853 20230101ALI20241023BHJP
   H10N 10/854 20230101ALI20241023BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H10N10/17 Z
H10N10/852
H10N10/851
H10N10/853
H10N10/854
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067563
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】梅 ▲ヒョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】王 曄
(72)【発明者】
【氏名】村上 優花
(57)【要約】      (修正有)
【課題】重量を軽くすることができ、柔軟性が高く、屈曲が必要な場所に適用することができ、また小型化することもでき、自立させることができ、界面抵抗を低減でき、原材料のコストダウンが可能であり、製造工程が簡略化され、短時間で製造することができ、金属膜が割れることによる内部ショットリスクを防止できる全樹脂熱利用発電素子を提供する。
【解決手段】全熱励起電子及び正孔を生成する半導体膜、電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む電解質膜及び電子輸送材料を含む導電膜からなる全樹脂熱利用発電素子であって、半導体膜及び導電膜のそれぞれの外側に金属層を含まない。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱励起電子及び正孔を生成する半導体層、
電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む電解質層、及び
電子輸送材料を含む導電ポリマー層、
を含む全樹脂熱利用発電素子であって、
半導体層及び導電ポリマー層のそれぞれの外側に金属層を含まない全樹脂熱利用発電素子。
【請求項2】
請求項1に記載の全樹脂熱利用発電素子が、2つ以上積層された、積層全樹脂熱利用発電素子。
【請求項3】
積層全樹脂熱利用発電素子の一方の半導体層の外側、及び他方の導電ポリマー層の外側に金属層を有する、請求項2に記載の積層全樹脂熱利用発電素子。
【請求項4】
請求項1に記載の熱利用発電素子を、前記半導体層内の熱励起電子及び正孔を生成する半導体の熱励起電子密度が1015/mとなる温度以上の環境下に置いて発電する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の熱利用発電素子を含む熱電発電装置。
【請求項6】
請求項1に記載の熱電発電素子を含むサーモ電池。
【請求項7】
請求項1に記載の熱電発電素子を含む熱電発電モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の熱電発電モジュールを熱発生場所に設置する工程、及び
熱により前記熱電発電モジュールを加熱し、電力を発生させる工程、
を含む、熱電発電方法。
【請求項9】
前記熱が、地熱又は排熱である、請求項8に記載の熱電発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全樹脂熱利用発電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地熱又は工場の排熱などを利用した熱利用発電として、ゼーベック効果を利用した熱電発電が知られており(特許文献1及び2、並びに非特許文献1)熱エネルギーを効率的に利用するために、実用化が期待されている。ゼーベック効果による熱電発電は、金属または半導体に温度勾配を設けると電圧が発生することを利用した発電原理である。具体的には、p型半導体及びn型半導体を結合した熱電変換素子に、温度勾配を付与することによって、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電発電システムである。
【0003】
しかしながら、従来の温度勾配を利用した熱電変換素子は、熱電変換素子を構成する半導体の価格が高いこと、使用温度範囲が高いこと、及び変換効率が低いことなどの問題がある。更に、結合部の物理的耐久性が弱く振動などが加わる場所に設置できないなどの問題がある。更に、発電に温度勾配を必要とするため、設置場所に制限があり、場合によっては、温度勾配のための冷却装置を用いる必要がある。特に、熱電変換モジュールのうち一次元は温度勾配に使われるため、熱源に対し二次元的な利用となり、周囲すべての熱を三次元的に使えず、熱の利用効率が低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-147236号公報
【特許文献2】特開2003-219669号公報
【特許文献3】国際公開2017/038988号公報
【特許文献4】国際公開2020/031992号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「リニューワブル・アンド・サスティナブル・エナジー・レビューズ(Renewable and Sustainable Energy Reviews)」(オランダ)2014年、第33巻、p.371
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱励起電子及び正孔を生成する熱電変換材料と電解質とを組み合わせることにより、熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる熱利用発電池が開発された(特許文献3)。本発明者らは、更に安定な熱利用発電池を開発した(特許文献4)。しかしながら、更に様々な場所及び用途に使用できる熱利用発電池が期待されていた。
従って、本発明の目的は、様々な場所及び用途に使用できる熱利用発電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、様々な場所及び用途に使用できる熱利用発電池について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、金属箔を有しない全樹脂熱利用発電素子によって様々なアプリケーションに利用できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]熱励起電子及び正孔を生成する半導体層、電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む電解質層、及び電子輸送材料を含む導電ポリマー層、を含む全樹脂熱利用発電素子であって、半導体層及び導電ポリマー層のそれぞれの外側に金属層を含まない全樹脂熱利用発電素子、
[2][1]に記載の全樹脂熱利用発電素子が、2つ以上積層された、積層全樹脂熱利用発電素子、
[3]積層全樹脂熱利用発電素子の一方の半導体層の外側、及び他方の導電ポリマー層の外側に金属層を有する、[2]に記載の積層全樹脂熱利用発電素子、
[4][1]~[3]のいずれかに記載の熱利用発電素子を、前記半導体層内の熱励起電子及び正孔を生成する半導体の熱励起電子密度が1015/mとなる温度以上の環境下に置いて発電する方法、
[5][1]~[3]のいずれかに記載の熱利用発電素子を含む熱電発電装置、
[6][1]~[3]のいずれかに記載の熱電発電素子を含むサーモ電池、
[7][1]~[3]のいずれかに記載の熱電発電素子を含む熱電発電モジュール、
[8][7]に記載の熱電発電モジュールを熱発生場所に設置する工程、及び熱により前記熱電発電モジュールを加熱し、電力を発生させる工程、を含む、熱電発電方法、及び
[9]前記熱が、地熱又は排熱である、[8]に記載の熱電発電方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の全樹脂熱利用発電素子によれば、金属箔を有さないため重量を軽くすることができる。本発明の全樹脂熱利用発電素子によれば、金属箔を有さないため柔軟性が高く、屈曲が必要な場所に適用することができ、また小型化することもできる。本発明の全樹脂熱利用発電素子によれば、金属箔を有さないが、自立させることができる。本発明の全樹脂熱利用発電素子によれば、金属箔を有さないため界面抵抗を低減できる。本発明の全樹脂熱利用発電素子によれば、金属箔を有さないため、原材料のコストダウンが可能であり、製造工程が簡略化され、短時間で製造することができる。本発明の全樹脂熱利用発電素子によれば、金属膜が割れることによる内部ショットリスクを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来の熱利用発電素子を示した図である。
図2】本発明の全樹脂熱利用発電素子を示した図である。
図3】金属層を熱利用発電素子の間に有する従来の積層熱利用発電素子(A)、金属層を全樹脂熱利用発電素子の間に有さない本発明の積層全樹脂熱利用発電素子(B又はC)を示した図である。(B)は、積層全樹脂熱利用発電素子の一方の半導体層の外側、及び他方の導電ポリマー層の外側に金属層を有している。
図4】従来の方法で製造した半導体層と金属箔との間の接着を示した図(A)及び本発明の方法で製造した半導体層と金属箔との間の接着を示した図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔1〕全樹脂熱電発電素子
本発明の全樹脂熱電発電素子は、熱励起電子及び正孔を生成する半導体層、電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む電解質層、及び電子輸送材料を含む導電ポリマー層、を含む。本発明の全樹脂熱電発電素子は、半導体層及び導電ポリマー層のそれぞれの外側に金属層を含まない。
本明細書において「全樹脂」とは、内部有効セル構造が金属層を含まず、半導体層、電解質層、及び導電ポリマー層は樹脂を含んでいることを意味する。積層構造中では金属を使用しないが、正極と負極には金属集電体を使用してよい。また、金属層に代えて、金属線、カーボンシート、グラフェン、又は導電線維を集電体として使用することができる。
【0011】
《半導体層》
本発明の熱電発電素子を構成する半導体層は、半導体を含む。
本明細書において「半導体」は、熱により熱励起電子及び正孔を生成することのできる材料を意味する。具体的には、金属半導体、テルル化合物半導体、シリコンゲルマニウム(Si-Ge)化合物半導体、シリサイド化合物半導体、スクッテルダイト化合物半導体、クラスレート化合物半導体、ホイスラー化合物半導体、ハーフホイスラー化合物半導体、金属酸化物半導体、有機半導体及びその他の半導体を挙げることができる。本発明に用いる半導体は熱電変換材料として機能するものである。
【0012】
金属半導体としては、Si半導体、Ge半導体を挙げることができる。
テルル化合物半導体としては、Bi-Te化合物(例えば、BiTe、SbTe、CsBiTe、BiSe、Bi0.4Sb1.6Te、Bi(Se,Te)、(Bi,Sb)(Te,Se)、(Bi,Sb)Te、又はBiTe2.95Se0.05)、Pb-Te化合物(例えば、PbTe、又はPb1-xSnTe)、SnTe、Ge-Te、AgSbTe、Ag-Sb-Ge-Te化合物(例えば、GeTe-AgSbTe(TAGS))、GaTe、(Ga1-xInTe、TlTe-AgTe、TlTe-CuTe、TlTe-SbTe、TlTe-BiTe、TiTe-GeTe、AgTlTe、AgTlTe、TlBiTe、TlSbTe、TlCuTe、TlSnTe、TlPbTe、又はTl0.02Pb0.98Teを挙げることができる。
【0013】
シリコンゲルマニウム(Si-Ge)化合物半導体としては、SiGe1-x、又はSiGe-GaPを挙げることができる。
【0014】
シリサイド化合物半導体としては、β-FeSi化合物(例えば、β-FeSi、Fe1-xMnSi、Fe0.95Mn0.05Si(2-y)Al、FeSi(2-y)Al、Fe1-yCoSi)、MgSi、MnSi1.75-x、BaSi46、BaGa16Si30、又はCrSiを挙げることができる。
【0015】
スクッテルダイト化合物半導体としては、式TX(式中、TはCo、Fe、Ru、Os、Rh、及びIrからなる群から選択される遷移金属であり、XはP、As、及びSbからなる群から選択されるプニクトゲンである)で表される化合物、前記化合物の派生物である式RM12(式中、RはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される希土類であり、MはFe、Ru、Os、及びCoからなる群から選択され、XはP、As、及びSbからなる群から選択される)で表される化合物、YbFe4-xCoSb12、(CeFeCoSb121-x(MoO又は(CeFeCoSb121-x(WOを挙げることができる。
【0016】
クラスレート化合物半導体としては、式M46(Mは、Ca、Sr、Ba、及びEuからなる群から選択され、XはSi、Ge、及びSnからなる群から選択される)で表される化合物、前記化合物の派生物である式(II)(III)16(IV)30(式中、IIはII族元素であり、IIIはIII族元素であり、IVはIV属元素である)で表される化合物を挙げることができる。前記式(II)(III)16(IV)30の化合物としては、例えばBaGaGe46-x、Ba8-x(Sr,Eu)AuGe40、又はBa8-xEuCuSi40)を挙げることができる。
【0017】
ホイスラー化合物半導体としては、FeVAl、(Fe1-xReVAl、又はFe(V1-x-yTiTa)Alを挙げることができる。
【0018】
ハーフホイスラー化合物半導体としては、式MSiSn(式中、MはTi、Zr、及びHfからなる群から選択される)で表される化合物、式MNiSn(式中、MはTi又はZrである)で表される化合物、式MCoSb(式中、MはTi、Zr、及びHfからなる群から選択される)で表される化合物、又は式LnPdX(式中、LnはLa、Gd、及びErからなる群から選択され、XはBi又はSbである)で表される化合物を挙げることができる。
【0019】
金属酸化物半導体としては、In-SnO、(CaBi)MnO、Ca(Mn、In)O、Na、V、ZnMnGaOおよびその派生物、LaRhO、LaNiO、SrTiO、SrTiO:Nb、BiSrCo、NaCoO、NaCo、CaPd、式Ca Co Ag(式中、MはNa、K、Li、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Pb、Sr、Ba、Al、Bi、Yおよび希土類から成る群から選択される一種または二種以上の元素であり、Mは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Mo、W、Nb、TaおよびBiから成る群から選択される一種または二種の元素であり、2.2≦a≦3.6、0≦b≦0.8、2≦c≦4.5、0≦d≦2、0≦e≦0.8、8≦f≦10である)で表される化合物、ZnO、Na(Co,Cu)、ZnAlO、Zn1-xAlO、又はLa1.98Sr0.02CuOを挙げることができる。
【0020】
有機半導体としては、有機ペロブスカイト、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、又はポリピロールを挙げることができる。
【0021】
その他の半導体としては、Co及びSbを含む合金(例えば、CoSb、CeFeCoSb12、CeFeCoSb12、又はYbCoSb12)、Zn及びSbを含む合金(例えば、ZnSb、ZnSb、又はZnSb)、Bi及びSbを含む合金(例えば、Bi88Sb12)、CeInCu、(Cu,Ag)Se、GdSe、CeRhAs、又はCeFeSb12、Li7.9105、BaB、SrB、CaB、AlPdRe化合物(例えば、Al71Pd20(Re1-xFe)、AlCuFe準結晶、Al82.6-xRe17.4Si1/1-立法近似結晶、YbAl、YbMnAl、β-CuAgSe、BC/BaC、(Ce1-xLa)Ni、又は(Ce1-xLa)Inを挙げることができる。
【0022】
半導体層は、半導体が適当な温度を付与されることにより発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成できる限りにおいて、半導体以外の成分を含むことができる。前記成分としては、限定されるものではないが、熱電変換材料を結合させるバインダー(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、寒天など)、熱電変換材料の成形を助ける焼結助剤(酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウムなど)などを挙げることができる。また、製造工程で用いる溶媒が残存していてもよい。本発明に用いる第1層は実質的に熱電変換層として機能するものである。
本発明の半導体層は樹脂を含む。樹脂としては、限定されるものではないが、前記バインダーが挙げられる。
【0023】
《電解質層》
電解質層は、電荷輸送イオン対が移動できる固体電解質または電解質溶液を含む。本明細書において「電荷輸送イオン対」は、価数が異なる安定な2つのイオンであり、一方のイオンが酸化または還元されて他方のイオンとなり、電子および正孔を運ぶことができるイオン対を意味する。価数が異なる同じ元素のイオンであってもよい。
本発明の固体電解質に含まれるイオン源は、金属イオンである限りにおいて特に限定されるものではなく、例えば銅イオン、鉄イオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンカルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、パラジウム、チタンイオン、アルカリ金属イオン、レアアース金属イオンが挙げられる。例えば銅イオン又は鉄イオンとしては、一価銅イオン、二価銅イオン、二価鉄イオン、又は三価鉄イオンが挙げられる。しかしながら、銅イオン又は鉄イオンは価数が異なる安定な2種のイオンが好ましい。一方のイオンが酸化または還元されて他方のイオンとなり、電子と正孔を運ぶことができるからである。
従って、銅イオンの場合、一価銅イオン及び二価銅イオンが好ましく、鉄イオンの場合、二価鉄イオン及び三価鉄イオンが好ましい。一価銅イオンとして、例えばCuCl、CuBr、酢酸銅(I)、ヨウ化銅(I)又は硫酸銅(I)を用いることができる。二価銅イオンとして、CuCl、CuTSFI、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)又は銅(II)アセチルアセトナートを用いることができる。二価鉄イオンとして、Fe(C(フェロセン)、K[Fe(CN)]、鉄(II)アセチルアセトナート、塩化鉄(II)硫酸鉄(II)又は酢酸鉄(II)を用いることができる。三価鉄イオンとして、FeCl、K[Fe(CN)]、鉄(III)アセチルアセトナート又は硫酸鉄(III)を用いることができる。
【0024】
イオン源の濃度は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば前記ポリマー等に対して、0.01~98モル%となるように添加することが好ましい。前記範囲であることにより、イオン源が効率良く電子と正孔を運ぶことができる。
【0025】
(電解質)
電解質としては、固体電解質又は電解質溶液を含む。電解質は、電荷輸送イオン対の2つのイオンを輸送できる限りにおいて限定されるものではない。
すなわち、電解質層に用いる電解質は、熱電発電素子に使用される熱電変換材料の価電子帯電位に対して、酸化還元電位が適当な位置にあり、電荷輸送イオン対が電解質内を行き来できる限りにおいて、特に限定されるものではない。なお、電解質は、熱電変換材料が発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する温度において、物理的及び化学的に安定であるものが好ましい。
【0026】
電解質としては、その態様の違いにより、固体電解質、又は電解質溶液(液体電解質)であってよい。ここで、電解質は温度の違いにより、電解質溶液(液体電解質)の態様であったり、固体電解質の態様であったりする。すなわち、電解質溶液(液体電解質)に含まれる化合物と固体電解質に含まれる化合物とは、重複するものである。また、電解質は、溶融塩、イオン液体、又は深共晶溶媒などを含む。溶融塩とは、陽イオンと陰イオンからなる塩で、溶融状態にあるものを意味するが、溶融塩の中でも比較的融点の低いもの(例えば、100℃以下のもの、又は150℃以下のもの)をイオン液体と称するが、本明細書では、溶融塩も固体の状態のものは固体電解質とし、溶液状のものは電解質溶液(液体電解質)とする。以下に電解質溶液(液体電解質)、固体電解質、及び溶融塩について、具体的に例示するが、これらは重複することがある。
【0027】
電解質溶液は、半導体層内の半導体が発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する温度において、溶液(液体)の状態のものを使用する。具体的には、電解質溶液として、限定されるものではないが、メトキシドイオン、水素イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、亜鉛イオン、コバルトイオン、フッ素イオン、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、リン酸イオン、炭酸水素イオン、臭素イオンを挙げることができる。
【0028】
固体電解質は、半導体層内の半導体が発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する温度において、電荷輸送イオン対が内部を移動できる固体状態のものを使用する。高温固体電解質を用いることにより、高温で熱励起電子及び正孔を生成する熱電発電素子体を用いる熱電発電素子に用いることができる。具体的には、固体電解質としては、限定されるものではないが、ナトリウムイオン伝導体、銅イオン伝導体、リチウムイオン伝導体、銀イオン伝導体、水素イオン伝導体、ストロンチウムイオン伝導体、アルミニウムイオン伝導体、フッ素イオン伝導体、塩素イオン伝導体、又は酸化物イオン伝導体などを挙げることができる。具体的な固体電解質としては、例えばRbAg、LiN、NaO・11Al、Sr-βアルミナ、Al(WO、PbF、PbCl、(ZrO0.9(Y0.1、(Bi0.75(Y0.25、CuZr(PO、CuTi(PO、CuNb1-xTi1+x(PO、H0.5Cu0.5Zr(PO、Cu1+xCrTi2-x(PO、Cu0.5TiZr(PO、CuCrZr(PO、CuScZr(PO、CuSn(PO、CuHf(PO、LiLaZr12、LiLaZr2-xNb12、LiLaZr2-xTaxO12、LiLaTa12、Li0.33La0.55TiO、Li1.5Al0.5Ge1.512、Li1.3Al0.3Ti1.712、LiPO(LiPON)、LiSiO-LiPO、LiSiO、又はLiBOなどを挙げることができる。
また、固体電解質又は電解質溶液として、溶融塩を用いることができる。比較的低温で用いる熱電発電素子の場合、イオン液体を用いることも可能である。イオン液体として、深共晶溶媒(Deep Eutectic Solvents:DES)を用いることができる。
【0029】
溶融塩としては、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、モルフォリニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びアンモニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1つのカチオン、及びカルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、ハロゲンアニオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びビス(フルオロスルホニル)イミドからなる群から選択される少なくとも1つのアニオンを含むものを挙げることができる。本発明における電解質は、正孔伝達性材料として機能するものである。
【0030】
電解質層は、熱電変換材料で生成された正孔を輸送できる限りにおいて、限定されるものではなく、固体電解質または電解質溶液以外の成分を含むことができる。前記成分としては、限定されるものではないが、例えば第2層を作製する場合に電解質を溶解又は分散する溶媒(水、メタノール、トルエン、テトラヒドロフランなど)、電解質を結合させるバインダー(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、寒天など)、正孔伝達性材料の成形を助ける焼結助剤(酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウムなど)などを挙げることができる。本発明に用いる第2層は実質的に正孔輸送層として機能するものである。
電解質層は、樹脂を含む。樹脂としては、限定されるものではないが、前記バインダー又は金属塩(イオン源)、セパレーター(樹脂製)または絶縁セラミック等が挙げられる。
【0031】
電解質層は、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、真空蒸着法、ゾルゲル法、又はスピンコート法によって作製することができる。例えば、後述のCuZr(POはゾルゲル法によって作製し、得られたゾルをスキージ法を用いて、層状の電解質層を調製した。
また、電解質が電解質溶液(液体電解質)の場合、第2層は液相となる。第2層が液相の場合、熱電発電素子における第2層は、熱電発電装置やサーモ電池、又は熱電発電モジュールの作製時に調製することが好ましい。すなわち、電解質溶液(液体電解質)を保持するための槽を設けることによって、第2層を作製することができる。
【0032】
《導電ポリマー層》
導電ポリマー層は、電子輸送材料を含む。電子輸送材料としては、ポリチオフェン系導電ポリマー、ポリアセチレン系導電ポリマー、ポリアニリン系導電ポリマー、ポリピロール系導電ポリマーが挙げられる。具体的な電子輸送材料としては、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリアニリン等が挙げられる。
【0033】
導電ポリマー層は、熱電変換材料で生成された熱励起電子を輸送できる限りにおいて、電子輸送材料以外の成分を含むことができる。前記成分としては、限定されるものではないが、電子輸送材料を結合させるバインダー(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アクリル樹脂、寒天など)、電子輸送材料の成形を助ける焼結助剤(酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化カルシウムなど)などを挙げることができる。また、製造工程で用いる溶媒が残存していてもよい。本発明に用いる第3層は実質的に電子輸送層として機能するものである。
本発明の熱電発電素子においては、前記電子輸送材料の電子伝導電位が半導体層内の半導体の伝導帯電位と同じであるか、又は正である。従って、電子輸送材料は熱励起電子を輸送することができる。
【0034】
導電ポリマー層は、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、真空蒸着法、単結晶成長法、又はスピンコート法によって作製することができる。スピンコート法を用いる場合、オキサジアゾール誘導体をアセトンなどの極性溶媒に溶解し、その溶液を、基板又は第1層などにスピンコートすることにより、導電ポリマー層を作製することができる。
【0035】
《積層全樹脂熱利用発電素子》
本発明の全樹脂熱利用発電素子は、2つ以上の全樹脂熱利用発電素子を積層させて、積層全樹脂熱利用発電素子として用いることができる。従来の積層熱利用発電素子は、図3Aに示すように、積層された熱利用発電素子と熱利用発電素子との間に金属層を有している。これに対して、本発明の積層全樹脂熱利用発電素子は、図3B又はCに示すように、積層された熱利用発電素子と熱利用発電素子との間に金属層を有さない。なお、図3Bに示すように、積層全樹脂熱利用発電素子の一方の半導体層の外側、及び他方の導電ポリマー層の外側に、集電体として金属層を有してもよい。更に、金属層に代えて、金属線、カーボンシート、グラフェン、又は導電線維を集電体として使用することができる。
【0036】
〔2〕半導体層の製造方法
本発明の全樹脂熱利用発電素子は、金属層を有さない。従って、半導体層の製造方法においては、半導体層と、基板である金属箔とを剥離させる。従来の製造方法は、塗布乾燥方法であり、図4Aに示すように、半導体層と金属箔の接着面積が大きく、半導体膜と金属箔接着力が強くなる。従って、半導体層と金属箔とを剥離させることが困難である。本発明の半導体層の製造方法によれば、図4Bに示すように半導体層と金属箔の接着面積が小さく、半導体膜と金属箔を容易に剥離させることができる。
【0037】
半導体層の製造方法は、(1)半導体材料をバインダー溶液に混合し、半導体バインダー混合物を得る工程、(2)バインダーを溶解できない溶媒を混合しゲル混合物を得る工程、(3)金属箔にゲル混合物を塗布し、更に金属箔で挟みこむ工程、(4)金属箔で挟み込んだゲル混合物に圧力を付与する工程、及び(5)金属箔を剥離する工程、を含む。
【0038】
前記混合工程(1)においては、半導体材料をバインダー溶液に混合する。半導体材料としては、前記「《半導体層》」の項に記載の半導体の材料を限定することなく、用いることができる。
前記バインダーとしては、限定されるものではないが、PVDF、PVA、PEC、PEG、PMMA、PA、PE、PPG、PP、PAI、PU、PI又はPPCが挙げられる。
バインダーを溶解する溶媒としては、限定されるものではないが、NMP溶液、DMSO溶液、DMF溶液、ピリジン溶液、トルエン溶液、アセトン溶液、又はアセトニトリル溶液が挙げられる。
【0039】
前記半固体混合物を得る工程(2)においては、バインダーを溶解できない溶媒を混合して半固体混合物を得る。バインダーを溶解できない溶媒を添加することによって、半固体混合物を得ることができる。
バインダーを溶解できない溶媒としては、アセトン、アルコール(例えば、メタノール、エタノールプロパノール等)、水、エーテル又はTHFが挙げられる。
バインダーを溶解できない溶媒の添加量は、半固体混合物が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、前記半導体バインダー混合物を100容量部とした場合に、例えば1~50容量部、好ましくは5~30容量部、より好ましくは10~15容量部を添加することができる。
【0040】
前記工程(3)においては、金属箔に半固体混合物を塗布し、更に金属箔で挟みこむ。すなわち、2つの金属箔で半固体混合物を挟み込む。
前記金属箔は、特に限定されるものではないが、例えばステンレス箔、銅箔、アルミ箔、チタン箔、金箔、銀箔、白金箔、ニッケル箔、亜鉛箔又は真鍮箔が挙げられる。しかしながら、金属箔を用いずに、半固体混合物を以下の圧力付与工程(4)において、油圧プレス機などに設置し、圧力を付与してもよい。油圧プレス機などが、半固体混合物により汚れることがあるが、十分本発明を実施することができる。
【0041】
前記圧力付与工程(4)においては、半固体混合物に圧力を付与する。
半固体混合物に付与する圧力は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されるものではないが、例えば0.01~200MPaの範囲内の圧力にし、好ましい範囲内は0.1MPa~20MPaである。しかし更により好ましい範囲内は1~10MPaである。
圧力を付与する方法は、特に限定されないが、油圧プレス装置、又はハンドプレス装置を用いて、圧力を付与することができる。
【0042】
前記工程(3)において、金属箔を用いた場合、金属箔剥離工程(5)において、金属箔を剥離する。詳細には、上部の金属箔をゆっくり、膜が破れないように剥離し、例えば25℃~80℃、好まししくは50~70℃で真空乾燥する。真空乾燥後に、自立膜が破れないように下部の金属箔をゆっくり剥離する。
【0043】
〔3〕導電ポリマー層の製造方法
金属箔の上に、導電ポリマー分散液を滴下する。必要な厚さに合わせて均一分散させた後、高温中乾燥させる。乾燥したポリマー金属箔を不活性ガスの雰囲気下で放置する。導電ポリマー層を得られる。
前記金属箔は、特に限定されるものではないが、例えばステンレス箔、銅箔、アルミ箔、チタン箔、金箔、銀箔、白金箔、ニッケル箔、亜鉛箔又は真鍮箔が挙げられる。
前記の導電ポリマーとしては、ポリチオフェン系導電ポリマー、ポリアセチレン系導電ポリマー、ポリアニリン系導電ポリマー、ポリピロール系導電ポリマーが挙げられる。具体的な電子輸送材料としては、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリアニリン等が挙げられる。
【0044】
〔4〕発電方法
本発明の発電方法は、前記熱電発電素子を、前記半導体層内の熱励起電子及び正孔を生成する半導体の熱励起電子密度が1015/cmとなる温度以上の環境下に置いて発電する。本発明の発電方法において、熱励起電子密度は好ましくは1015/cm以上であり、より好ましくは1018/cm以上であり、更に好ましくは1020/cm以上であり、最も好ましくは1022/cm以上である。熱励起電子密度が高いほど、高い発電効率を得ることができる。
半導体に付与する温度は、それぞれの半導体において発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する温度を適宜選択することができる。換言すれば、本発明においては、半導体が発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する温度を半導体に付与することにより、熱電発電素子に電圧を発生させることができる。発電に十分な熱励起電子及び正孔の数とは、実際には電子密度で表され、太陽電池に用いられる半導体における光励起電子数と同程度あれば良く、例えば、太陽電池に用いられるアモルファスシリコンでの光励起電子数である1015/cmが挙げられる。すなわち、本発明に用いる熱電変換材料において、熱励起電子密度が1015/cm以上となる温度で、発電に十分な数の熱励起電子及び正孔を生成することが可能であり、その温度以上で発電を行うことができる。
【0045】
〔5〕熱電発電装置、サーモ電池及び熱電発電モジュール
本発明の熱電発電装置は、本発明の熱電発電素子を含み、好ましくは正極電極及び/又は負極電極を含む。また、本発明のサーモ電池は、本発明の熱電発電素子を含み、好ましくは正極電極及び/又は負極電極を含む。更に、本発明の熱電発電モジュールは、本発明の熱電発電素子を含み、好ましくは正極電極及び/又は負極電極を含む。
本明細書において「サーモ電池」とは、本発明の熱電発電素子を含み、熱電発電素子の半導体(熱電変換材料)に、熱励起電子及び正孔を生成できる温度が付与されることにより、発電する電池を意味する。すなわち、サーモ電池とは、「熱源があれば発電する電池」であり、従来の「高温部と低温部により発電する電池」とは異なる。
【0046】
《電極》
正極電極及び負極電極は、電子を輸送できる限りにおいて限定されるものではないが、例えば、チタン、金、白金、銀、銅、錫、タングステン、ニオブ、タンタル、ステンレス、アルミニウム、グラフェン、モリブデン、インジウム、バナジウム、ロジウム、ニオビウム、クロム、ニッケル、カーボン、それらの合金又はそれらの組合せを挙げることができる。なお、正極電極及び負極電極に、同じ材料を用いてもよい。
正極電極及び負極電極は、導線の態様で設けてもよく、また、正極電極層又は負極電極層として、設けてもよい。正極電極層又は負極電極層の場合、真空蒸着法又はスピンコート法などによって、製造することができる。正極電極を熱電発電素子の第3層側に負極電極を設け、第2層側に正極電極を設けることにより、負極から正極に電子が移動し、電気を発生させることができる。
【0047】
〔6〕熱電発電方法
本発明の熱電発電方法は、前記熱電発電モジュールを熱発生場所に設置する工程、及び熱により前記熱電発電モジュールを加熱し、電力を発生させる工程、を含む。
【0048】
《熱電発電モジュール設置工程》
熱電発電モジュール設置工程においては、本発明の熱電発電モジュールを熱発生場所に設置する。
熱発生場所は、熱電変換材料において、発電に十分な数の励起電子及び正孔を生成する温度以上の熱を発生する場所であれば、特に限定されない。しかしながら、効率的に発電できることから、比較的高い温度の場所が好ましく、従って熱発生場所としては、例えば地熱発生場所、又は工場などの排熱発生場所を挙げることができる。
地熱は、土壌中の熱に限るものではなく、地熱によって温められた熱水又は蒸気を含む。更に、地熱には、地熱によって温められた海、湖、又は河川などの熱水又は蒸気を含む。
排熱は、特に限定されるものではないが、例えば、鉄鋼炉、ごみ焼却場、変電所、地下鉄、又は自動車などの排熱を挙げることができる。特に、大きなエネルギーを有する鉄鋼炉、またごみ焼却場の排熱は、そのエネルギーを利用することなく放出されており、本発明の熱電発電方法により再利用することが好ましい。
【0049】
《電力発生工程》
電力発生工程においては、本発明の熱電発電モジュールを加熱することにより、電力を発生させる。前記熱発生場所から発生する熱により、熱電発電モジュールの熱電変換材料が、発電に十分な数の励起電子及び正孔を発生する温度以上で加熱されることにより、熱電発電モジュールから電力を発生させることができる。
【実施例0050】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
《実施例1》
(PEDOT:PSSの自立膜作成)
導電ポリマー層を作成した。鏡面銅箔の上にPEDOT/PSS分散液を1mL塗布分散し、120℃で乾燥した。その後、アルゴンガス雰囲気下数時間放置し、PEDOT/PSS自立膜を剥離した。
【0052】
(電解質作成)
電解質層を作成した。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に5%のポリビニリデンフルオライド(PVDF)を60℃で加熱して溶解させた、PVDF(5%)溶液を作成した。この溶媒8gに、塩化リチウム(LiCl)166mgを60℃で加熱して溶かした。塩化銅(I)68mgと(II)94mgをそれぞれ加えて、60℃で加熱して溶かした。得られた電解質液をセパレーターに滴下した。セパレーターが電解質液に浸されたら、60℃で加熱して真空乾燥した。
【0053】
(半導体の自立膜の作成)
半導体層を作成した。乳鉢に200mgのGeを入れてすりつぶした。2.0gのバインダー溶液(PVDFのNMP溶液)を入れて攪拌する。次に、バインダーを溶解できない溶媒であるアセトンを1mL入れることによって、半導体混合材を半固体状にした。ステンレス箔を敷きその上に前記半導体混合材を乗せ、もう一枚のステンレス箔で挟んだ。室温で1時間万力機(万能アングルバイス、パルムグレン社製)に2MPaの圧力で挟んだ。圧力機から取り出し、上部と下部のステンレス箔を剥がし、そのまま60℃で真空乾燥し、半導体自立膜を得た。
【0054】
前記の工程で得られた「導電ポリマー層」、「電解質層」、及び「半導体層」を以下のように積層し、本発明の全樹脂熱利用発電素子を得た。
「導電ポリマー層」(正極)/「電解質層」/「半導体層」(負極)の順番に重なって全樹脂熱利用発電素子の発電ユニットを得られた(図2)。さらに複数の上記のユニットを重ねて全樹脂熱利用発電素子を作製できる。
【0055】
《実施例2》
本実施例では、バインダーとしてPVDFに代えて、PVAを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、本発明の全樹脂熱利用発電素子を得た。
半導体の自立膜の作成において、容易に半導体層からステンレス箔を剥離することができた。
【0056】
《実施例3》
本実施例では、バインダーとしてPVDFに代えて、PECを用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、本発明の全樹脂熱利用発電素子を得た。
半導体の自立膜の作成において、容易に半導体層からステンレス箔を剥離することができた。
【0057】
《比較例1》
本実施例では、従来法に従って、金属層を有する脂熱利用発電素子を作製した。
(PEDOT:PSS膜の作成)
導電ポリマー層を作成した。鏡面銅箔の上にPEDOT/PSS分散液を1mL塗布分散し、120℃で乾燥した。その後、アルゴンガス雰囲気下数時間放置した。鏡面銅箔を有するPEDOT/PSS膜を得た。
【0058】
(電解質作成)
電解質層を作成した。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に5%のポリビニリデンフルオライド(PVDF)を60℃で加熱して溶解させた、PVDF(5%)溶液を作成した。この溶媒8gに、塩化リチウム(LiCl)166mgを60℃で加熱して溶かした。塩化銅(I)68mgと(II)94mgをそれぞれ加えて、60℃で加熱して溶かした。得られた電解質液をセパレーターに滴下した。セパレーターが電解質液に浸されたら、60℃で加熱して真空乾燥した。
【0059】
(金属箔を有する半導体層の作製)
半導体層を作成した。乳鉢に200mgのGeを入れてすりつぶした。2.0gのバインダー溶液(PVDFのNMP溶液)を入れて攪拌する。ステンレス箔に滴下し、アプリケーターを使用して膜を作製する。塗布された金属箔は60℃で真空乾燥させる。金属箔は、半導体層から剥離できなかった。
【0060】
前記の工程で得られた「導電ポリマー層」、「電解質層」、及び「半導体層」を以下のように積層し、従来の熱利用発電素子を得た。「導電ポリマー層」(正極)/「電解質層」/「半導体層」(負極)の順番に重なって従来の熱利用発電素子の発電ユニットを得られた(図1)。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の全樹脂熱利用発電素子は、金属箔を有さないため柔軟性が高く、屈曲が必要な場所に適用することができ、また小型化することもできる。
図1
図2
図3
図4