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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024153999
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H01L23/48 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067564
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠司
(57)【要約】
【課題】半導体装置において、構造を簡素化するとともに、インダクタンス低減を図る。
【解決手段】半導体装置1は、基板11に対して、基板11における半導体素子12の搭載面に平行な第1方向D1の一方側に位置する第1主端子(P端子40)及び第2主端子(N端子50)を備える。第1主端子の第1幅狭部分42は、搭載面に平行で第1方向D1に直交する第2方向D2の幅W12が第1外部接続部分41(幅W11)よりも狭い。第2主端子の第2幅狭部分52は、第2方向D2の幅W22が第2外部接続部分51(幅W21)よりも狭い。第1幅狭部分42の第2方向D2における中心C12は、第1外部接続部分41の第2方向D2における中心C11よりも第2主端子側に寄って位置する。第2幅狭部分52の第2方向D2における中心C22は、第2外部接続部分51の第2方向D2における中心C21よりも第1主端子側に寄って位置する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を有する基板と、
前記基板に対して、当該基板における前記半導体素子の搭載面に平行な第1方向の一方側に位置する第1主端子及び第2主端子とを備え、
前記第1主端子は、外部導体に接続される第1外部接続部分と、前記搭載面に平行で前記第1方向に直交する第2方向の幅が前記第1外部接続部分よりも狭く、前記基板に接続される第1幅狭部分とを有し、
前記第2主端子は、外部導体に接続される第2外部接続部分と、前記第2方向の幅が前記第2外部接続部分よりも狭く、前記基板に接続される第2幅狭部分とを有し、
前記第1幅狭部分の前記第2方向における中心は、前記第1外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第2主端子側に寄って位置し、
前記第2幅狭部分の前記第2方向における中心は、前記第2外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第1主端子側に寄って位置する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1主端子の前記第1幅狭部分は、前記第1主端子の前記第2主端子側の端部に位置し、
前記第2主端子の前記第2幅狭部分は、前記第2主端子の前記第1主端子側の端部に位置する
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1主端子と前記第2主端子との互いに対向する対向面のそれぞれは、前記第1方向の全体に亘って同一平面上に位置する
ことを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1主端子と前記第2主端子とは、前記第1方向に対して線対称の形状を呈する
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1幅狭部分の前記第2方向における幅は、前記第1外部接続部分の前記第2方向における幅の半分以下であり、
前記第2幅狭部分の前記第2方向における幅は、前記第2外部接続部分の前記第2方向における幅の半分以下である
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1幅狭部分の全体が、前記第1外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第2主端子側に寄って位置し、
前記第2幅狭部分の全体が、前記第2外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第1主端子側に寄って位置する
ことを特徴とする請求項5記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板に対して、前記第1方向の前記第1主端子及び前記第2主端子とは反対側に位置する第3主端子を更に備え、
前記第3主端子は、外部導体に接続される第3外部接続部分と、前記第2方向の幅が前記第3外部接続部分よりも狭く、前記基板に接続される第3幅狭部分とを有し、
前記第3幅狭部分の前記第2方向における位置は、前記第1主端子と前記第2主端子との隙間の前記第2方向における位置と同一である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を有する基板と複数の主端子とを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子を有する基板を備える。この種の半導体装置は、基板の一方側に、外部導体に接続される正極端子、負極端子などの主端子が配置される(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-120975号公報
【特許文献2】国際公開第2021/033565号
【特許文献3】国際公開第2013/128787号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体装置においては、主回路インダクタンスが増加すると、サージ電圧の発生などの問題が生じる。これに伴い、高電圧や耐熱を確保可能な半導体素子の構造が必要になるなどの問題も生じる。
【0005】
また、上記の正極端子、負極端子などの主端子は、基板に接続されるため、主端子の幅が広いほど、基板上の回路層が拡大し、ひいては半導体装置が大型化する。
【0006】
本発明の目的は、構造を簡素化することができるとともに、インダクタンス低減を図ることができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、半導体装置は、半導体素子を有する基板と、前記基板に対して、当該基板における前記半導体素子の搭載面に平行な第1方向の一方側に位置する第1主端子及び第2主端子とを備え、前記第1主端子は、外部導体に接続される第1外部接続部分と、前記搭載面に平行で前記第1方向に直交する第2方向の幅が前記第1外部接続部分よりも狭く、前記基板に接続される第1幅狭部分とを有し、前記第2主端子は、外部導体に接続される第2外部接続部分と、前記第2方向の幅が前記第2外部接続部分よりも狭く、前記基板に接続される第2幅狭部分とを有し、前記第1幅狭部分の前記第2方向における中心は、前記第1外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第2主端子側に寄って位置し、前記第2幅狭部分の前記第2方向における中心は、前記第2外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第1主端子側に寄って位置する。
【発明の効果】
【0008】
前記態様によれば、構造を簡素化することができるとともに、インダクタンス低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施の形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図2】一実施の形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
図3】一実施の形態における主端子及単位モジュールを示す平面図である。
図4】一実施の形態における主端子の各部の寸法を示す平面図である。
図5】一実施の形態の変形例における主端子(P端子及びN端子)を示す正面図である。
図6】一実施の形態及び比較例における端子間距離とインダクタンスとの関係を示す図である。
図7】一実施の形態における端子幅とインダクタンスとの関係を示す図である。
図8】一実施の形態における端子厚みとインダクタンスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができる。
【0011】
図1及び図2は、一実施の形態に係る半導体装置1の概略構成を示す平面図及び断面図である。
【0012】
なお、図1及び図2並びに後述する図3図5に示すX方向、Y方向、及びZ方向について、半導体装置1の上下方向(基板11の厚み方向)をZ方向、このZ方向に直交するX方向及びY方向のうち、半導体装置1の長手方向をX方向、半導体装置1の短手方向をY方向と定義することにする。また、場合によっては、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向と呼ぶことがある。これらの方向は、説明の便宜上用いる文言であり、半導体装置1の取付姿勢によって、XYZ方向のそれぞれの対応関係が変わることになる。
【0013】
本実施の形態に係る半導体装置1は、例えば、パワーコントロールユニット等の電力変換装置に適用されるものであり、インバータ回路を構成するパワー半導体モジュールである。半導体装置1は、例えば、電動車向けトラクションインバータに使用される。
【0014】
図1及び図2に示す半導体装置1は、3つの単位モジュール10と、これらの単位モジュール10を冷却する冷却器20(図2参照)と、3つの単位モジュール10を収容するケース部材30と、このケース部材30内に注入される図示しない封止樹脂とを備える。
【0015】
単位モジュール10は、基板11と、この基板11上に配置された半導体素子12とを含む。本実施の形態では、3つの単位モジュール10がX方向に並んで配置されている。3つの単位モジュール10は、例えば、U相、V相、W相を構成し、全体として三相インバータ回路を形成する。なお、単位モジュール10は、パワーセルあるいは半導体ユニットと呼ばれてもよい。単位モジュール10は、1つ以上の任意の数で配置されればよい。
【0016】
図2に示す基板11は、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板やAMB(Active Metal Brazing)基板、あるいは金属ベース基板などによって構成される。例えば、基板11は、絶縁板11aと、この絶縁板11aの下面に配置された放熱板11bと、絶縁板11aの上面に配置された複数の回路板11cとを有する。基板11は、例えば平面視矩形状に形成される。
【0017】
絶縁板11aは、例えば、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si)等のセラミックス材料、エポキシ等の樹脂材料、又はセラミックス材料をフィラーとして用いたエポキシ樹脂材料等の絶縁材料によって形成される。なお、絶縁板11aは、絶縁層又は絶縁フィルムと呼ばれてもよい。
【0018】
放熱板11bは、Z方向に所定の厚みを有し、絶縁板11aの下面に形成される。放熱板11bは、例えば銅やアルミニウム等の熱伝導性の良好な金属板によって形成される。放熱板11bは、半田S等の接合材によって、冷却器20(天板22)の上面に接合される。
【0019】
絶縁板11aの上面には、3つの回路板11cが形成される。絶縁板11aの上面に形成される回路板11cの数は、1つ以上の任意の数であってよい。回路板11cは、銅箔等の金属層であり、絶縁板11a上に電気的に互いに絶縁された状態で島状に形成される。なお、回路板11cは、回路層と呼ばれてもよい。
【0020】
図2に示すように、基板11(回路板11c)の上面である搭載面には、半田Sを介して半導体素子12(エミッタ電極)が配置されている。図1では、1つの基板11につき2つの半導体素子12を示すが、半導体素子12の数は任意である。半導体素子12は、例えばシリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及びダイヤモンド等の半導体基板によって平面視方形状又は矩形状に形成される。
【0021】
なお、半導体素子12としては、IGBT、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子、FWD(Free Wheeling Diode)等のダイオードが用いられる。スイッチング素子とダイオードは逆並列接続されてよい。また、半導体素子12として、IGBTとFWDとを一体化したRC(Reverse Conducting)-IGBT素子、又はパワーMOSFET素子、逆バイアスに対して十分な耐圧を有するRB(Reverse Blocking)-IGBT等が用いられてもよい。特に、RC-IGBT素子は、双方向の通電によって内部回路の小型化を図ることができるため、後述するように半導体装置1(基板11)の小型化を図ることができる本実施の形態に組み合わせると、更なる小型化を期待できる。
【0022】
半導体素子12のエミッタ電極は、金属配線板13を介して所定の回路板11cに導電接続される。金属配線板13は、例えば、銅素材、銅合金系素材、アルミニウム合金系素材、鉄合金系素材等の金属素材を用いて、プレス加工等によって折り曲げて形成される。例えば、半導体素子12と金属配線板13とは、半田等の接合材によって接合される。これらの金属配線板13は、リードフレームと呼ばれてもよい。なお、金属配線板13に代えて導体ワイヤ等の他の接続部材が配置されてもよい。
【0023】
ケース部材30は、中央に開口部31を有する矩形枠状に形成されている。矩形状の開口部31には、上述の3つの単位モジュール10が収容される。すなわち、3つの単位モジュール10は、枠状のケース部材30によって画定される空間に収容される。なお、一例ではあるが、ケース部材30の開口部31を取り囲むように壁部32が設けられている。この壁部32は、所定の高さで立ち上がっている。
【0024】
図1に示すように、ケース部材30には、外部導体201,202,203(図2の2点鎖線参照)との接続用の外部接続端子として機能する主端子(P端子40、N端子50、及びM端子60)と、図示しない制御用の制御端子とが設けられている。P端子40、N端子50、及びM端子60は、1つの単位モジュール10につき1つずつ配置されている。P端子40は、第1主端子の一例であり、N端子50は第2主端子の一例であり、M端子60は、第3主端子の一例である。
【0025】
P端子40及びN端子50は、基板11に対して、Y方向負側に位置する。換言すると、P端子40及びN端子50は、基板11に対して、基板11における半導体素子12の搭載面(回路板11cの上面であるXY平面)に平行な第1方向D1(Y方向)の一方側に位置する。
【0026】
一方、M端子60は、基板11に対して、Y方向正側に位置する。換言すると、M端子60は、基板11に対して、第1方向D1のP端子40及びN端子50とは反対側に位置する。
【0027】
P端子40、N端子50、及びM端子60は、例えば、銅素材、銅合金系素材、アルミニウム合金系素材、鉄合金系素材等の金属素材を用いて、プレス加工等によって折り曲げて形成されるとよい。
【0028】
P端子40は、外部導体201に接続される第1外部接続部分41と、この第1外部接続部分41よりも幅が狭く、基板11に接続される第1幅狭部分42とを有する。ここで、各部の幅については後述するが、各部の幅は、基板11における半導体素子12の搭載面(回路板11cの上面であるXY平面)に平行で第1方向D1に直交する第2方向D2(X方向)の幅である。
【0029】
N端子50は、外部導体202に接続される第2外部接続部分51と、この第2外部接続部分51よりも幅が狭く、基板11に接続される第2幅狭部分52とを有する。
【0030】
M端子60は、外部導体203に接続される第3外部接続部分61と、この第3外部接続部分61よりも幅が狭く、基板11に接続される第3幅狭部分62とを有する。なお、M端子60の第3幅狭部分62では、基板11に接続される先端部分62aの幅が、この先端部分62aと第3外部接続部分61との間に位置する中間部分62bの幅よりも更に狭くなっている。
【0031】
P端子40、N端子50、及びM端子60のそれぞれは、各幅狭部分42,52,62において、例えば、超音波接合によって回路板11c上に接続されるとよい。なお、P端子40、N端子50、及びM端子60のそれぞれは、レーザ溶接や半田などの他の接合手段(接続手段)によって回路板11c上に接続されてもよい。
【0032】
P端子40は正極端子(入力端子)、N端子50は負極端子(出力端子)、M端子60は中間端子(出力端子)と呼ばれてもよい。P端子40、N端子50、及びM端子60の各外部接続部分41,51,61は、例えば、ネジ孔41a,51a,61aにおける締結によって、図2に示す外部導体201,202,203に接続される。
【0033】
一例ではあるが、図1及び図2に示すように、P端子40及びN端子50は、第1外部接続部分41及び第2外部接続部分51のネジ孔41a,51aよりも第1幅狭部分42及び第2幅狭部分52側において、水平から鉛直下方に屈曲し、再び水平に屈曲して壁部32を貫通する。また、P端子40及びN端子50は、第1幅狭部分42及び第2幅狭部分52において、水平から鉛直下方に屈曲し、再び水平に屈曲して回路板11cに接続される。また、M端子60は、第3外部接続部分61のネジ孔61aよりも第3幅狭部分62側において水平から鉛直下方に屈曲し、再び水平に屈曲して壁部32を貫通する。また、M端子60は、基板11上で第3幅狭部分62において鉛直下方に屈曲し、再びに水平に屈曲して回路板11cに接続される。
【0034】
ケース部材30には、外周縁に沿って複数の貫通孔33が形成されている。貫通孔33は、例えば、半導体装置1と、図示しないインバータ装置などの外部装置とを固定するネジを挿通するための孔である。
【0035】
なお、ケース部材30用の樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)の他、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチルアクリレート(PBA)、ポリアミド(PA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ウレタンやシリコン等の絶縁性樹脂から選択され得る。また、選択される樹脂は、2種以上の樹脂の混合物でもよい。樹脂には、強度又は機能性を向上させるためのフィラー(例えばガラスフィラー)が含まれてもよい。
【0036】
また、枠状のケース部材30により規定される内部空間に注入される図示しない封止樹脂は、基板11と、この基板11に実装された半導体素子12とを上記の空間内に封止する。封止樹脂は、熱硬化性の樹脂により構成される。封止樹脂は、エポキシ、シリコーン、ウレタン、ポリイミド、ポリアミド、及びポリアミドイミドのいずれかを少なくとも含むことが好ましい。封止樹脂には、例えば、フィラーを混入したエポキシ樹脂が、絶縁性、耐熱性及び放熱性の点から好適である。また、上記の内部空間への封入は、シリコーンゲルのようなゲル封止でも良い。
【0037】
図2に示すように、冷却器20は、ケース部21及び天板22を有する。ケース部21は、天板22の下部に配置され、上面が開口し、周囲にフランジ部分を有する直方体形状を呈し、内部に空洞23を有する。この空洞23は、水等の冷媒が流通する冷媒流通部として機能する。ケース部21は、周囲のフランジ部分において、天板22及びケース部材30に固定されるとよい。天板22は、水平に配置された矩形板状を呈する。ケース部21及び天板22は、例えばアルミニウムを含む金属で形成されている。
【0038】
空洞23の内部には、冷却フィン24が配置されている。この冷却フィン24は、天板22の下面に固定されている。冷却フィン24は、主に半導体素子12が発生させる熱を上述の冷媒に伝える。なお、冷却器20は、冷却フィン24を通る冷媒の流路を有するジャケット一体型の冷却器であるが、冷却フィンが外部に露出したオープンフィン型の冷却器、フラットベース型の冷却器などであってもよく、特に制限されない。
【0039】
次に、図3及び図4を参照しながら、P端子40、N端子50、及びM端子60について、より詳細に説明する。
【0040】
図3に示すように、P端子40の第1幅狭部分42は、P端子40のN端子50側の端部に位置する。また、N端子50の第2幅狭部分52は、N端子50のP端子40側の端部に位置する。P端子40とN端子50とは、第1方向D1に対して線対称の形状を呈することが望ましい。
【0041】
そして、図4に示すように、P端子40の第1幅狭部分42の第2方向D2の幅W12は、第1外部接続部分41の第2方向D2の幅W11よりも狭く、例えば半分以下である。また、N端子50の第2幅狭部分52の第2方向D2の幅W22は、第2外部接続部分51の第2方向D2の幅W21よりも狭く、例えば半分以下である。
【0042】
図3に示すように、P端子40の第1幅狭部分42の第2方向D2における中心C12は、第1外部接続部分41の第2方向D2における中心C11よりもN端子50側に寄って位置する。また、N端子50の第2幅狭部分52の第2方向D2における中心C22は、第2外部接続部分51の第2方向D2における中心C21よりもP端子40側に寄って位置する。なお、第1幅狭部分42の中心C12が第1外部接続部分41の中心C11よりもN端子50側に寄って位置し、第2幅狭部分52の中心C22が第2外部接続部分51の中心C21よりもP端子40側に寄って位置すれば、第1幅狭部分42は、P端子40のN端子50側の端部に位置していなくともよいし、第2幅狭部分52は、N端子50のP端子40側の端部に位置していなくともよい。
【0043】
上述のように、第1幅狭部分42の第2方向D2の幅W12が、第1外部接続部分41の第2方向D2の幅W11の半分以下であり、第2幅狭部分52の第2方向D2の幅W22が、第2外部接続部分51の第2方向D2の幅W21の半分以下である場合、第1幅狭部分42の全体が、第1外部接続部分41の第2方向D2における中心C11よりもN端子50側に寄って位置し、第2幅狭部分52の全体が、第2外部接続部分51の第2方向D2における中心C21よりもP端子40側に寄って位置することが可能となる。
【0044】
P端子40とN端子50との互いに対向する対向面F1,F2、すなわち、第1方向D1(Y方向)と厚み方向(Z方向)とに拡がる面は、それぞれ第1方向D1の全体に亘って同一平面上に位置する。これらの対向面F1,F2の間隔は、図4に示す隙間Gである。なお、P端子40及びN端子50のうち、第1幅狭部分42と第2幅狭部分52との互いに対向する面のそれぞれだけが第1方向D1に亘って同一平面上に位置したり、第1外部接続部分41と第2外部接続部分51との互いに対向する面のそれぞれだけが第1方向D1に亘って同一平面上に位置したりしてもよい。
【0045】
図5(変形例)に示すように、P端子40及びN端子50は、対向面F1,F2において、下方(又は上方)に折り曲げられた折り曲げ部分44,54を有してもよい。この場合、P端子40及びN端子50の折り曲げ部分44,54は、上述の対向面F1,F2を形成する。なお、P端子40及びN端子50の折り曲げ部分44,54は、互いに対向することが望ましいため、第1外部接続部分41と第2外部接続部分51とに設けられるか、第1幅狭部分42と第2幅狭部分52とに設けられるか、或いは、P端子40及びN端子50のそれぞれの第1方向D1の全体に設けられるとよい。
【0046】
図4に示すように、M端子60の第3幅狭部分62の第2方向D2の幅は、中間部分62bが幅W32で、先端部分62aが更に狭い幅W33である。そして、これらの幅W32,W33は、第3外部接続部分61の幅W31よりも狭い。
【0047】
第3幅狭部分62の第2方向D2における位置は、上述のP端子40(対向面F1)とN端子50(対向面F2)との隙間Gの第2方向D2における位置と同一であることが望ましい。なお、図4の例では、第3幅狭部分62の先端部分62a及び中間部分62bの両方の第2方向D2における位置も、隙間Gの第2方向D2における位置と同一である。ここで、第3幅狭部分62の第2方向D2における少なくとも一部が、隙間Gの少なくとも一部の第2方向D2における位置と重複していれば、第3幅狭部分62の第2方向D2における位置が隙間Gの第2方向D2における位置と同一といえる。
【0048】
図6に示すように、上述のP端子40(対向面F1)とN端子50(対向面F2)との隙間Gである端子間距離[mm]は、実線で示すように、10[mm]から2[mm]にかけて、短いほど主回路インダクタンス(PN一巡インダクタンス)が低減する。特に6[mm]以下で主回路インダクタンスが大きく低減するため、隙間Gである端子間距離[mm]は、2[mm]以上で且つ6[mm]以下であることが望ましいといえる。
【0049】
なお、図6に破線で示す比較例は、P端子40とN端子50とが第1方向D1に対して線対称の形状ではなく、P端子40とN端子50とが平面視において同一形状である場合、例えば、P端子40の第1外部接続部分41の中心C11と第1幅狭部分42の中心C12とが同一であり、N端子50の第2外部接続部分51の中心C21と第2幅狭部分52の中心C22とが同一の場合の比較例である。この場合も、端子間距離[mm]が短いほど主回路インダクタンスが低減するが、本実施の形態とは異なり、第1幅狭部分42と第2幅狭部分52とが互いに接近していないため、主回路インダクタンスが本実施の形態よりも大きくなっている。
【0050】
図7に示す端子幅[mm]は、本実施の形態のP端子40の第1幅狭部分42の第2方向D2の幅W12、及びN端子50の第2幅狭部分52の第2方向D2の幅W22である。この端子幅[mm]は、2[mm]から12[mm]にかけて、広いほど主回路インダクタンスが低減する。特に、端子幅[mm]が2[mm]から10[mm]にかけて主回路インダクタンスが低減する。一方で、端子幅が広いと、第1幅狭部分42及び第2幅狭部分52が接続される回路板11cの面積が増加するため、端子幅[mm]は、2[mm]以上で且つ10[mm]以下であることが望ましいといえる。
【0051】
図8に示す端子厚みt[mm]は、本実施の形態のP端子40及びN端子50のZ方向の厚みt(図5参照)である。なお、P端子40及びN端子50のそれぞれの厚みtは、全体に亘って一定であり、且つ互いに同一である。端子厚みt[mm]は、1[mm](0.5[mm])から3[mm]にかけて、厚いほど主回路インダクタンスが低減する。そのため、端子厚みt[mm]は、0.5[mm]以上で且つ3[mm]以下であることが望ましいといえる。一方で、端子厚みtが厚いほど、端子材料が多く必要となったり半導体装置1の薄型化に反したりするため、端子厚みtを薄くし且つ主回路インダクタンスの低減を図る観点では、端子厚みt[mm]は、0.5[mm]以上で且つ1.5[mm]以下程度であると更によい。
【0052】
以上説明した本実施の形態では、半導体装置1は、半導体素子12を有する基板11と、この基板11に対して、基板11における半導体素子12の搭載面(XY平面)に平行な第1方向D1の一方側(Y方向負側)に位置するP端子40(第1主端子の一例)及びN端子50(第2主端子の一例)とを備える。P端子40は、外部導体201に接続される第1外部接続部分41と、上記搭載面に平行で第1方向D1に直交する第2方向D2(X方向)の幅W12が第1外部接続部分41(幅W11)よりも狭い第1幅狭部分42とを有する。この第1幅狭部分42は、基板11に接続される。N端子50は、外部導体202に接続される第2外部接続部分51と、第2方向D2の幅W22が第2外部接続部分51(幅W21)よりも狭い第2幅狭部分52とを有する。この第2幅狭部分52は、基板11に接続される。第1幅狭部分42の第2方向D2における中心C12は、第1外部接続部分41の第2方向D2における中心C11よりもN端子50側に寄って位置する。第2幅狭部分52の第2方向D2における中心C22は、第2外部接続部分51の第2方向D2における中心C21よりもP端子40側に寄って位置する。
【0053】
このように、P端子40の第1幅狭部分42がN端子50側に寄って位置し、N端子50の第2幅狭部分52がP端子40側に寄って位置することによって、磁界打ち消し効果が大きくなり、相互インダクタンス効果により、主回路インダクタンスが低減する。この主回路インダクタンスの低減は、半導体装置1のスイッチング周波数(一例としては、1.0kHz~10.0kHz)が大きいほど大きな効果が得られる。そのため、半導体素子12としてSiC-MOSFETが用いられる場合など、周波数が特に大きくなりやすい場合に特に有効である。また、本実施の形態では、第1幅狭部分42及び第2幅狭部分52が互いに近づくことで、回路板11cにおいて、第1幅狭部分42のN端子50とは反対側、第2幅狭部分52のP端子40とは反対側のスペースを確保することができる。そのため、基板11ひいては半導体装置1を小型化することができる。よって、本実施の形態によれば、構造を簡素化することができるとともに、インダクタンス低減を図ることができる。更には、第1幅狭部分42及び第2幅狭部分52を互いに近づけることで、第1幅狭部分42及び第2幅狭部分52の回路板11cとの接続部分も互いに近づけることができる。そのため、この接続のためのツール(例えば超音波接合ユニット)の稼働幅を狭めて半導体装置1の組立てを短時間で行ったり、接続部分の位置検出を短時間で行ったりすることもできる。
【0054】
また、本実施の形態では、P端子40の第1幅狭部分42は、P端子40のN端子50側の端部に位置し、N端子50の第2幅狭部分52は、N端子50のP端子40側の端部に位置する。
【0055】
これにより、第1幅狭部分42と第2幅狭部分52とが接近することで、主回路インダクタンスがより一層低減する。更には、回路板11cにおいて、第1幅狭部分42のN端子50とは反対側、第2幅狭部分52のP端子40とは反対側のスペースをより確保することができるため、半導体装置1をより小型化することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、P端子40とN端子50との互いに対向する対向面F1,F2のそれぞれは、第1方向D1の全体に亘って同一平面上に位置する。
【0057】
これにより、P端子40とN端子50との対向面F1,F2における第1方向D1の全体に亘る相互インダクタンス効果によって主回路インダクタンスがより一層低減する。なお、P端子40及びN端子50の対向面F1,F2のそれぞれが同一平面上に位置しない場合、ケース部材30との関係でP端子40及びN端子50の公差のズレが発生しやすくなるが、P端子40及びN端子50の対向面F1,F2のそれぞれが同一平面上に位置する場合、半導体装置1の組立てを容易にすることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、P端子40とN端子50とは、第1方向D1に対して線対称の形状を呈する。
【0059】
これにより、P端子40及びN端子50の構造ひいては半導体装置1の構造が簡素化するとともに、上述のように第1幅狭部分42と第2幅狭部分52とが接近することで、主回路インダクタンスが低減する。
【0060】
また、本実施の形態では、P端子40の第1幅狭部分42の第2方向D2における幅W12は、第1外部接続部分41の第2方向D2における幅W11の半分以下であり、N端子50の第2幅狭部分52の第2方向D2における幅W22は、第2外部接続部分51の第2方向D2における幅W21の半分以下である。
【0061】
これにより、回路板11cのスペースをより確保することができるため、半導体装置1をより小型化することができる。また、例えば、第1幅狭部分42及び第2幅狭部分52と基板11との接続(例えば、超音波接合やレーザ溶接)時に荷重が分散しにくくなり、接続を容易にすることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、P端子40の第1幅狭部分42の全体が、第1外部接続部分41の第2方向D2における中心C11よりもN端子50側に寄って位置し、N端子50の第2幅狭部分52の全体が、第2外部接続部分51の第2方向D2における中心C21よりもP端子40側に寄って位置する。
【0063】
これにより、第1幅狭部分42と第2幅狭部分52とが接近することで、主回路インダクタンスがより一層低減する。更には、回路板11cにおいて、第1幅狭部分42のN端子50とは反対側、第2幅狭部分52のP端子40とは反対側のスペースをより確保することができるため、半導体装置1をより小型化することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、半導体装置1は、基板11に対して、第1方向D1のP端子40及びN端子50とは反対側に位置するM端子60(第3主端子の一例)を更に備える。このM端子60は、外部導体203に接続される第3外部接続部分61と、第2方向D2の幅W32,W33が第3外部接続部分61(幅W31)よりも狭い第3幅狭部分62とを有する。この第3幅狭部分62は、基板11に接続される。また、第3幅狭部分62の第2方向D2における位置は、P端子40とN端子50との隙間Gの第2方向D2における位置と同一である。
【0065】
これにより、第2方向D2において、第3幅狭部分62をP端子40(第1幅狭部分42)とN端子50(第2幅狭部分52)との隙間Gである中央側に寄せることで、P端子40とM端子60との電流経路の距離と、N端子50とM端子60との電流経路の距離とを近づけ、これらの距離が長くなることによるインダクタンスの増加を回避することができる。また、基板11において、第3幅狭部分62の第2方向D2における両側のスペースを確保することができるため、半導体装置1をより小型化することができる。また、上述のツール(例えば超音波接合ユニット)の稼働幅を狭めて半導体装置1の組立てを短時間で行ったり、接続部分の位置検出を短時間で行ったりすることもできる。また、P端子40、N端子50、及びM端子60の平面視の見た目を良好にすることもできる。
【0066】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0067】
<付記1>
半導体素子を有する基板と、
前記基板に対して、当該基板における前記半導体素子の搭載面に平行な第1方向の一方側に位置する第1主端子及び第2主端子とを備え、
前記第1主端子は、外部導体に接続される第1外部接続部分と、前記搭載面に平行で前記第1方向に直交する第2方向の幅が前記第1外部接続部分よりも狭く、前記基板に接続される第1幅狭部分とを有し、
前記第2主端子は、外部導体に接続される第2外部接続部分と、前記第2方向の幅が前記第2外部接続部分よりも狭く、前記基板に接続される第2幅狭部分とを有し、
前記第1幅狭部分の前記第2方向における中心は、前記第1外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第2主端子側に寄って位置し、
前記第2幅狭部分の前記第2方向における中心は、前記第2外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第1主端子側に寄って位置する
ことを特徴とする半導体装置。
【0068】
<付記2>
前記第1主端子の前記第1幅狭部分は、前記第1主端子の前記第2主端子側の端部に位置し、
前記第2主端子の前記第2幅狭部分は、前記第2主端子の前記第1主端子側の端部に位置する
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0069】
<付記3>
前記第1主端子と前記第2主端子との互いに対向する対向面のそれぞれは、前記第1方向の全体に亘って同一平面上に位置する
ことを特徴とする付記2記載の半導体装置。
【0070】
<付記4>
前記第1主端子と前記第2主端子とは、前記第1方向に対して線対称の形状を呈する
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0071】
<付記5>
前記第1幅狭部分の前記第2方向における幅は、前記第1外部接続部分の前記第2方向における幅の半分以下であり、
前記第2幅狭部分の前記第2方向における幅は、前記第2外部接続部分の前記第2方向における幅の半分以下である
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0072】
<付記6>
前記第1幅狭部分の全体が、前記第1外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第2主端子側に寄って位置し、
前記第2幅狭部分の全体が、前記第2外部接続部分の前記第2方向における中心よりも前記第1主端子側に寄って位置する
ことを特徴とする付記5記載の半導体装置。
【0073】
<付記7>
前記基板に対して、前記第1方向の前記第1主端子及び前記第2主端子とは反対側に位置する第3主端子を更に備え、
前記第3主端子は、外部導体に接続される第3外部接続部分と、前記第2方向の幅が前記第3外部接続部分よりも狭く、前記基板に接続される第3幅狭部分とを有し、
前記第3幅狭部分の前記第2方向における位置は、前記第1主端子と前記第2主端子との隙間の前記第2方向における位置と同一である
ことを特徴とする付記1から6のいずれか記載の半導体装置。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明は、半導体装置において、構造を簡素化することができるとともに、インダクタンス低減を図ることができるという効果を奏し、例えば、パワー半導体装置などに有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 半導体装置
10 単位モジュール
11 基板
11a 絶縁板
11b 放熱板
11c 回路板
12 半導体素子
13 金属配線板
20 冷却器
21 ケース部
22 天板
23 空洞
24 冷却フィン
30 ケース部材
31 開口部
32 壁部
33 貫通孔
40 P端子
41 第1外部接続部分
41a ネジ孔
42 第1幅狭部分
44 折り曲げ部分
50 N端子
51 第2外部接続部分
51a ネジ孔
52 第2幅狭部分
54 折り曲げ部分
60 M端子
61 第3外部接続部分
61a ネジ孔
62 第3幅狭部分
62a 先端部分
62b 中間部分
201,202,203 外部導体
C11,C12,C21,C22 中心
D1 第1方向
D2 第2方向
F1,F2 対向面
G 隙間
S 半田
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8