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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001540
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231227BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231227BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02J50/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100256
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】茶位 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】花房 一義
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770DA01
5H770DA11
5H770DA17
5H770DA41
5H770EA23
5H770LB02
(57)【要約】
【課題】半導体スイッチ素子のスイッチング時の効率化を図る送電装置を提供する。
【解決手段】受電装置へワイヤレスにて電力を伝送する送電装置であって、直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、前記交流電圧が供給され交流磁界を発生させる送電コイルと、を備え、前記インバータは、少なくとも2個の半導体スイッチ素子と、前記半導体スイッチ素子をオン、オフさせるための駆動信号を発生する駆動信号発生器と、を備え、前記駆動信号発生器は、所定数のパルスを発生し、前記所定数は、前記受電装置の出力部に接続された磁化コイルに流れる出力電流が所定の電流値に達する数であり、前記駆動信号発生器は、あらかじめ設定された態様で、ZVSを実現する前記パルスを発生する、送電装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置へワイヤレスにて電力を伝送する送電装置であって、
直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記交流電圧が供給され交流磁界を発生させる送電コイルと、を備え、
前記インバータは、少なくとも2個の半導体スイッチ素子と、
前記半導体スイッチ素子をオン、オフさせるための駆動信号を発生する駆動信号発生器と、を備え、
前記駆動信号発生器は、所定数のパルスを発生し、
前記所定数は、前記受電装置の出力部に接続された磁化コイルに流れる出力電流が所定の電流値に達する数であり、
前記駆動信号発生器は、あらかじめ設定された態様で、ZVSを実現する前記パルスを発生する、
送電装置。
【請求項2】
前記パルスのオン時間は、漸増する、
請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記インバータは、フルブリッジ方式であり、
前記パルスのオン時間について、第1パルスのオン時間は、
【数1】
のt1の所定の条件を満たし、
【数2】
であり、
Ltxは前記送電コイルのインダクタンス値であり、Ctxは前記送電コイルに接続された容量であり、Cdsは、前記半導体スイッチ素子に並列な容量である、
請求項1または請求項2に記載の送電装置。
【請求項4】
t1は、前記所定の条件を満たし、
前記パルスのデッドタイムについて、第1パルスのデッドタイムは、
【数3】
のtの条件を満たす、
請求項3に記載の送電装置。
【請求項5】
前記インバータは、ハーフブリッジ方式であり、
前記パルスのオン時間について、第1パルスのオン時間は、
【数4】
のt4の所定の条件を満たし、
【数5】
であり、
Ltxは前記送電コイルのインダクタンス値であり、Ctxは前記送電コイルに接続された容量であり、Cdsは、前記半導体スイッチ素子に並列な容量である、
請求項1または請求項2に記載の送電装置。
【請求項6】
t4は、前記所定の条件を満たし、
前記パルスのデッドタイムについて、第1パルスのデッドタイムは、
【数6】
のtの条件を満たす、
請求項5に記載の送電装置。
【請求項7】
前記受電装置の負荷は、可変磁石モジュールの磁化コイルであり、
一度に前記半導体スイッチ素子に印加する駆動パルス信号は有限の回数のパルスを有する、
請求項1または請求項2に記載の送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体スイッチ素子を有するインバータを有するインバータシステムが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された可変磁束モータドライブシステムでは、固定磁石と可変磁石とを有した可変磁束モータを駆動するインバータを備えた可変磁束ドライブシステムにおいて、当該可変磁束モータのトルクがトルク指令となるように当該インバータを制御する主制御部と、当該可変磁束モータの可変磁石を磁化する磁化巻線と、当該磁化巻線に磁化電流を供給する磁化回路と、を備える(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-125201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インバータシステムにおいて、半導体スイッチ素子のゲート波形の周波数(パルス幅)を固定で動作させると、立ち上がり時はZVS(Zero Voltage Switching)をして、その後、スイッチング損失が大きくなる。
【0006】
本開示は、このような事情を考慮してなされたもので、半導体スイッチ素子のスイッチング時の効率化を図ることができる送電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、受電装置へワイヤレスにて電力を伝送する送電装置であって、直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、前記交流電圧が供給され交流磁界を発生させる送電コイルと、を備え、前記インバータは、少なくとも2個の半導体スイッチ素子と、前記半導体スイッチ素子をオン、オフさせるための駆動信号を発生する駆動信号発生器と、を備え、前記駆動信号発生器は、所定数のパルスを発生し、前記所定数は、前記受電装置の出力部に接続された磁化コイルに流れる出力電流が所定の電流値に達する数であり、前記駆動信号発生器は、あらかじめ設定された態様で、ZVSを実現する前記パルスを発生する、送電装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る送電装置によれば、半導体スイッチ素子のスイッチング時の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るインバータシステムの構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る駆動信号の例を示す図である。
図3】ZVS不成立の波形の一例を示す図である。
図4】短い期間のZVS成立の波形の一例を示す図である。
図5】長い期間のZVS成立の波形の一例を示す図である。
図6】実施形態に係るインバータシステムの構成の他の一例を示す図である。
図7】フルブリッジ回路のインバータが用いられる場合における可変磁石の磁化コイルに電力供給するWPTの回路の一例を示す図である。
図8】フルブリッジ回路のインバータが用いられる場合におけるインバータ回路の駆動波形の一例を示す図である。
図9】フルブリッジ回路のインバータが用いられる場合におけるインバータが動作開始する際の等価回路を示す図である。
図10】フルブリッジ回路のインバータが用いられる場合におけるインバータが動作開始する際の等価回路をさらに単純化した等価回路を示す図である。
図11】フルブリッジ回路のインバータが用いられる場合における時間t1での等価回路の一例を示す図である。
図12】フルブリッジ回路のインバータが用いられる場合における期間t3における等価回路を示す図である。
図13】ハーフブリッジ回路のインバータが用いられる場合における可変磁石の磁化コイルに電力供給するWPTの回路の一例を示す図である。
図14】ハーフブリッジ回路のインバータが用いられる場合におけるインバータ回路の駆動波形の一例を示す図である。
図15】ハーフブリッジ回路のインバータが用いられる場合における時間t1での等価回路の一例を示す図である。
図16】ハーフブリッジ回路のインバータが用いられる場合における期間t3における等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本開示の実施形態について説明する。
【0011】
[インバータシステム]
図1は、実施形態に係るインバータシステム1の構成の一例を示す図である。
インバータシステム1は、送電装置A1と、受電装置A2と、を備える。
本実施形態では、送電装置A1は、フルブリッジのインバータを備える。
【0012】
送電装置A1は、4個のスイッチ素子(第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14)と、4個のコンデンサ(第1コンデンサ21~第4コンデンサ24)と、電圧源31と、コンデンサ32と、送電コイル33と、駆動信号発生器51と、を備える。
【0013】
第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14は、それぞれ、FET(Field Effect Transistor)である。
第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14は、それぞれ、ボディダイオード(図1の例におけるボディダイオードD1~D4のそれぞれ)を有している。このようなダイオードとしては、それぞれのスイッチ素子(第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14)に並列にダイオード素子を接続する構成が用いられる場合もある。
本実施形態では、スイッチ素子としてFETを例として説明するが、スイッチ素子(第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14)は、半導体スイッチであればいずれでもよく、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0014】
受電装置A2は、受電コイル111と、コンデンサ112と、整流機能を有する全波整流回路(ダイオード113-1~113-4)と、出力端子(第1出力端子P1、第2出力端子P2)と、負荷である磁化コイル121と、を備える。
磁化コイル121は、インダクタ(成分)131と、抵抗(成分)132と、を備える。
【0015】
本実施形態では、1次側コイルは送電コイル33であり、2次側コイルは受電コイル111である。
送電コイル33は、共振回路を有する。図1の例では、当該共振回路は、コンデンサ32を含み、さらに、抵抗(図示せず)を含んでもよい。
送電コイル33に、インバータが接続されている。
【0016】
送電装置A1について説明する。
電圧源31に、第1スイッチ素子11と第2スイッチ素子12との第1直列回路と、第3スイッチ素子13と第4スイッチ素子14との第2直列回路と、が並列に接続されている。
図1の例では、電圧源31の正側に第1スイッチ素子11のドレイン(D)および第3スイッチ素子13のドレイン(D)が接続されており、電圧源31の負側に第2スイッチ素子12のソース(S)および第4スイッチ素子14のソース(S)が接続されている。
第1スイッチ素子11のソース(S)と第2スイッチ素子12のドレイン(D)との間の点と、第3スイッチ素子13のソース(S)と第4スイッチ素子14のドレイン(D)との間の点と、の間に、コンデンサ32および送電コイル33が直列に接続されている。
【0017】
第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14のそれぞれに並列に、第1コンデンサ21~第4コンデンサ24のそれぞれが接続されている。
【0018】
駆動信号発生器51は、第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14のそれぞれについて、ゲート(G)とソース(S)との間の電圧を制御する。つまり、駆動信号発生器51は、第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14のそれぞれについて、駆動信号(駆動パルス信号)を発生して、ゲート電圧として供給する。
本実施形態では、駆動信号発生器51は、あらかじめ定められた情報に基づいて、第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14のそれぞれに供給する駆動信号を制御する。
【0019】
ここで、送電装置A1において、インバータは、4個のスイッチ素子(第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14)を含む。
また、当該インバータは、駆動信号発生器51を含んでもよい。
また、当該インバータは、4個のコンデンサ(第1コンデンサ21~第4コンデンサ24)を含んでもよい。
【0020】
受電装置A2について説明する。
受電コイル111と、コンデンサ112に、全波整流回路が接続されている。
全波整流回路は、4個のダイオード113-1~113-4を用いて構成されている。
受電コイル111の一端とコンデンサ112の一端とが接続されている。
受電コイル111の他端と、ダイオード113-3のアノードと、ダイオード113-4のカソードと、が接続されている。
コンデンサ112の他端と、ダイオード113-1のアノードと、ダイオード113-2のカソードと、が接続されている。
ダイオード113-1のカソードと、ダイオード113-3のカソードと、第1出力端子P1と、が接続されている。
ダイオード113-2のアノードと、ダイオード113-4のアノードと、第2出力端子P2と、が接続されている。
【0021】
第1出力端子P1と第2出力端子P2との間に、磁化コイル121が接続されている。
磁化コイル121は、可変磁石および固定磁石を有しており、これらから可変磁石モジュールが構成されている。当該可変磁石モジュールでは、磁化コイル121に流れる電流により磁石の磁力(磁界)を変更することが可能である。負荷は、可変磁石を磁化させるコイルであり、インダクタンス負荷である。動作時間は、例えば、1ms以下である。
また、可変磁石モジュールは、モータに備えられている。当該モータは、例えば、ケース、ステータ、ロータ、シャフト、受電コイル、受電コイルに接続されたコンデンサおよび整流器を備える。
【0022】
なお、本実施形態では、磁化コイル121が可変磁石および固定磁石を有する場合を示すが、他の例として、磁化コイル121が、可変磁石を有して、固定磁石を有していない構成が用いられてもよい。
【0023】
本実施形態では、インバータを駆動させる駆動パルスとして、所定の回数(有限の回数)のパルスを有する駆動パルスが用いられる。
当該所定の回数は、m回以上でn回以下の回数である。ここで、mおよびnはそれぞれ2以上の整数であり、nはm以上の整数である。
つまり、本実施形態では、一度の駆動パルスでは、可変磁石モジュールの磁化の状態を変化させるための電流を、所定の回数のパルスで、磁化コイル121に流す。
なお、本実施形態では、磁化コイル121に所定値以上の電流が流されればよいため、電流の平滑化(電圧の平滑化)は行われなくてもよく、つまり、直流でなくてもよい。
【0024】
送電装置A1では、インバータにより送電コイル33に流れる電流を制御することで、送電コイル33からワイヤレスで電力を送電する。
受電装置A2では、送電コイル33からワイヤレスで送電される電力を受電コイル111により受電し、受電した電力を出力端子(第1出力端子P1および第2出力端子P2)から磁化コイル121に供給する。
このように、送電コイル33と受電コイル111との間で、ワイヤレス電力伝送が行われる。
【0025】
<パラメーターの説明>
電圧源31の電圧をVinで表す。
第1スイッチ素子11に並列な第1コンデンサ21の容量をCds1で表し、第2スイッチ素子12に並列な第2コンデンサ22の容量をCds2で表し、第3スイッチ素子13に並列な第3コンデンサ23の容量をCds3で表し、第4スイッチ素子14に並列な第4コンデンサ24の容量をCds4で表す。
なお、本実施形態では、Cds1~Cds4は同じ値(Cds)であるとする。
コンデンサ32の容量をCtxで表す。
送電コイル33のインダクタンスをLtxで表す。
なお、容量は、外付けの容量であってもよく、または、寄生容量(例えば、スイッチ素子の寄生容量)であってもよく、あるいは、これら両方を含んでもよい。
ω1は、共振の角周波数を表す。ω1は、式(1)により表される。
【0026】
【数1】
【0027】
受電コイル111のインダクタンスをLrxで表す。
コンデンサ112の容量をCrxで表す。
磁化コイル121において、インダクタ(成分)131のインダクタンスをLLoadで表す。
磁化コイル121において、抵抗(成分)132の抵抗値をRLoadで表す。
【0028】
[駆動信号の例]
図2は、実施形態に係る駆動信号の例を示す図である。
図2には、第1スイッチ素子11(Q1)に供給される第1駆動信号2011と、第2スイッチ素子12(Q2)に供給される第2駆動信号2012と、第3スイッチ素子13(Q3)に供給される第3駆動信号2013と、第4スイッチ素子14(Q4)に供給される第4駆動信号2014と、を示してある。
【0029】
それぞれの駆動信号(第1駆動信号2011~第4駆動信号2014)について、横軸は時間を表しており、縦軸は信号のレベル(例えば、電圧のレベル)を表している。
それぞれの駆動信号(第1駆動信号2011~第4駆動信号2014)のレベルとしては、ハイ(High)状態であるオン(on)のレベルと、ロウ(Low)状態であるオフ(off)のレベルがある。
【0030】
本実施形態では、駆動信号発生器51は、1単位の制御態様として、所定数n(nは1以上の整数)の回数、それぞれの駆動信号(第1駆動信号2011~第4駆動信号2014)について、オンまたはオフの状態に制御する。
本実施形態では、第1駆動信号2011と第4駆動信号2014とは、初期状態と駆動停止状態の部分を除いて、同じ信号波形である。
また、本実施形態では、第2駆動信号2012と第3駆動信号2013とは、初期状態と駆動停止状態の部分を除いて、同じ信号波形である。
【0031】
図2の例では、横軸に、初期状態、i(iは1~nの整数)回目のパルス波形、それぞれのパルス波形の前後のデッドタイム(すべてのスイッチ素子がオフである時間)、駆動停止状態を示してある。
【0032】
第1駆動信号2011(および第4駆動信号2014も同様)は、iが奇数回であるときには、オン状態の信号部(例えば、信号部2111、信号部2113、信号部2114)を有し、また、iが偶数回であるときには、オフ状態の信号部(例えば、信号部2112)を有する。
第2駆動信号2012(および第3駆動信号2013も同様)は、iが奇数回であるときには、オフ状態の信号部(例えば、信号部2211、信号部2213、信号部2214)を有し、また、iが偶数回であるときには、オン状態の信号部(例えば、信号部2212)を有する。
ここで、図2の例では、nが奇数である場合を示しているが、nは偶数であってもよい。
【0033】
図2の例では、それぞれの駆動信号(第1駆動信号2011~第4駆動信号2014)において、回数iが増えるごとに、オン状態の信号部の長さ(オン状態の長さ)が大きくなっている。
具体例として、第1駆動信号2011では、1回目の信号部2111のオン状態の長さが最も小さく、3回目の信号部2113のオン状態の長さの方が大きく、以降も同様であり、n回目の信号部2114のオン状態の長さが最も大きい。
第2駆動信号2012のオン状態の長さの変化についても、第1駆動信号2011の場合と同様である。
【0034】
[ZVSの条件]
図3は、送電コイル33のZVS不成立の波形の一例を示す図である。
図3(A)は、共振電流の波形の一例を示してある。
図3(B)は、スイッチ素子のドレイン-ソース間電圧(Vds)の波形の一例を示す図である。
ここで、スイッチ素子としては、第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14のうちのいずれか1個のスイッチ素子である。
本例では、図3(A)には送電コイル33に流れる共振電流を示してあり、図3(B)には第2スイッチ素子12のドレイン-ソース間電圧(Vds)を示してある。
【0035】
図3(A)に示されるグラフにおいて、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は電流のレベル(Itx)を表している。
図3(B)に示されるグラフにおいて、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は電圧のレベル(Vc2)を表している。
なお、図3(A)と図3(B)とで、横軸は共通となっている。
【0036】
図3(A)には、期間T1における電流Itx1(t)と、期間T1の後の期間T2における電流Itx2(t)を示してある。
期間T1における電流Itx1(t)は、上に凸の2次曲線状に上昇していき、最大値を超えた後に下降していく。
期間T2における電流Itx2(t)は、期間T1における電流Itx1(t)が下降している途中の続きであり、下降の程度が大きくなっている。
【0037】
ここで、本実施形態では、説明の便宜上、Itx1(t)についてのtは、横軸の原点の時間を0とみなしてそこからの経過時間を表す。t1およびT1は、このような時間を使用した場合の期間を表し、本実施形態では、スイッチ素子のオン時間を表す。本実施形態では、時間t1(または、時間T1)の時点と、期間t1の経過時点(または、期間T1の経過時点)とが一致する。
同様に、本実施形態では、itx2(t)についてのtは、横軸の期間T1の経過時点の時間を0とみなしてそこからの経過時間を表す。t2およびT2は、このような時間を使用した場合の期間を表し、本実施形態では、当該期間の経過時に、Vc2が最小値(図4および図5の例では、0)となる。
同様に、本実施形態では、Itx3(t)についてのtは、横軸の期間T2の経過時点の時間を0とみなしてそこからの経過時間を表す。t3およびT3は、このような時間を使用した場合の期間を表し、本実施形態では、図5の例において、Itxが0になる時間を表しており、当該期間に、オフにしたスイッチ素子の代わりにオンオフの切り替えタイミングが反対側となるスイッチ素子をオンにする。
【0038】
図3(B)には、期間T1および期間T2における電圧3011を示してある。
期間T1では、電圧3011が一定である。
期間T2では、下に凸の2次曲線状に下降していく。
図3(B)の例では、電圧Vc2は0[V]に達しておらず、ZVSは不成立である。
【0039】
図3の例では、オン時間T1が長く、電流値が小さいときにゲートをオフする場合の例であり、ZVS不成立であり、ノイズが発生する。
オン時間T1の取る範囲は、例えば、式(2)に示されるt1の取る範囲で表される。
acos関数は、アークコサイン関数を表す。
【0040】
【数2】
【0041】
図4は、短い期間のZVS成立の波形の一例を示す図である。
図4(A)は、送電コイル33の共振電流の波形の一例を示してある。
図4(B)は、スイッチ素子のドレイン-ソース間電圧(Vds)の波形の一例を示す図である。
ここで、スイッチ素子としては、第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14のうちのいずれか1個のスイッチ素子である。
本例では、図4(A)には送電コイル33に流れる共振電流を示してあり、図4(B)には第2スイッチ素子12のドレイン-ソース間電圧(Vds)を示してある。
【0042】
図4(A)に示されるグラフにおいて、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は電流のレベル(Itx)を表している。
図4(B)に示されるグラフにおいて、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は電圧のレベル(Vc2)を表している。
なお、図4(A)と図4(B)とで、横軸は共通となっている。
【0043】
図4(A)には、期間T1における電流Itx1(t)と、期間T1の後の期間T2における電流Itx2(t)を示してある。
期間T1における電流Itx1(t)は、上に凸の2次曲線状に上昇していき、最大値を超えた後に下降していく。
期間T2における電流Itx2(t)は、期間T1における電流Itx1(t)が下降している途中の続きであり、下降の程度が大きくなっている。
【0044】
図4(B)には、期間T1および期間T2における電圧3111を示してある。
期間T1では、電圧3111が一定である。
期間T2では、下に凸の2次曲線状に下降していく。
図4(B)の例では、電圧Vc2は一点で0[V]に達しており、短い期間ZVSが成立する。
【0045】
図4の例では、オン時間T1がZVS成立ポイントであり、ノイズは発生しない。ただし、ZVS成立期間が短い。
オン時間T1の取る範囲は、例えば、式(3)に示されるt1の取る範囲で表される。
【0046】
【数3】
【0047】
図5は、長い期間のZVS成立の波形の一例を示す図である。
図5(A)は、送電コイル33の共振電流の波形の一例を示してある。
図5(B)は、スイッチ素子のドレイン-ソース間電圧(Vds)の波形の一例を示す図である。
ここで、スイッチ素子としては、第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14のうちのいずれか1個のスイッチ素子である。
本例では、図5(A)には送電コイル33に流れる共振電流を示してあり、図5(B)には第2スイッチ素子12のドレイン-ソース間電圧(Vds)を示してある。
【0048】
図5(A)に示されるグラフにおいて、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は電流のレベル(Itx)を表している。
図5(B)に示されるグラフにおいて、横軸は時間(t)を表しており、縦軸は電圧のレベル(Vc2)を表している。
なお、図5(A)と図5(B)とで、横軸は共通となっている。
【0049】
図5(A)には、期間T1における電流Itx1(t)と、期間T1の後の期間T2における電流Itx2(t)と、期間T2の後の期間T3における電流Itx3(t)を示してある。
期間T1における電流Itx1(t)は、上に凸の2次曲線状に上昇していき、最大値を超えた後に下降していく。
期間T2における電流Itx2(t)は、期間T1における電流Itx1(t)が下降している途中の続きであり、下降の程度が大きくなっている。
期間T3における電流Itx3(t)は、期間T2における電流Itx2(t)が下降している途中の続きである。
【0050】
図5(B)には、期間T1、期間T2および期間T3における電圧3211aと、期間T3以降の電圧3211b(電圧3211aの続き)を示してある。
期間T1では、電圧3211aが一定である。
期間T2では、下に直線状に下降していく。
期間T3では、電圧3211aは0[V]である。
期間T3以降では、電圧3211bは、上に凸の曲線状に上昇していく。
図5(B)の例では、電圧Vc2は期間T3で0[V]で一定であり、長い期間ZVSが成立する。
【0051】
図5の例では、オン時間T1がZVS成立ポイントよりも少し短く、ノイズは発生しない。ただし、ZVS成立期間が、図4の例と比べて、長い。
オン時間T1の取る範囲は、例えば、式(4)に示されるt1の取る範囲で表される。
【0052】
【数4】
【0053】
図4および図5の例では、期間T1において電流Itx1(t)が山の頂点に向かって上昇するとき(立ち上がりのとき)には、マスク時間として、スイッチ素子のゲート電圧をオフにしない。その後、期間T1以降に、電流が下降していくときに(立ち下がりのとき)、スイッチ素子のゲート電圧をオフにする。
図4の例では、期間T2が終了する点でZVSが成立するため、もう一方のスイッチ素子(第2スイッチ素子12)のゲート電圧をオンにする。
図5の例では、期間T3においてZVSが成立するため、もう一方のスイッチ素子(第2スイッチ素子12)のゲート電圧をオンにする。
【0054】
このように、本実施形態では、インバータシステム1において、例えば、それぞれの半導体スイッチ素子(第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14)の制御において、時系列の複数のパルスについて、徐々にオン時間を長くしていき、ZVSを満足しながら、かつ、できるだけオフ時の電流を小さくすることが行われる。
【0055】
なお、図3図5に示される波形は理想的なものであり、実用上で支障のない程度で、理想的な値からずれてもよい。
【0056】
<ハーフブリッジ回路>
ここで、本実施形態では、フルブリッジ回路のインバータが用いられる場合を示したが、他の構成例として、ハーフブリッジ回路のインバータが用いられてもよい。
ハーフブリッジ回路のインバータが用いられる場合、概略的には、図1に示される構成において、第3スイッチ素子13および第4スイッチ素子14が備えられない構成となる。
【0057】
図6は、実施形態に係るインバータシステム2の構成の他の一例を示す図である。
インバータシステム2では、ハーフブリッジ回路のインバータを備えた構成となっている。
インバータシステム2では、図1に示されるフルブリッジ回路のインバータを有する送電装置A1の代わりに、ハーフブリッジ回路のインバータを有する送電装置A11が備えられている。
【0058】
本実施形態に係るインバータシステム1では、受電装置A2へワイヤレスにて電力を伝送する送電装置A1であって、次のような構成とした。
送電装置A1は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、交流電圧が供給されて交流磁界を発生させる送電コイル33と、を備える。
インバータは、少なくとも2個以上の半導体スイッチ素子(第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14)と、半導体スイッチ素子(第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14)をオン、オフさせるための駆動信号を発生する駆動信号発生器51と、を備える。
本実施形態では、駆動信号発生器51は、あらかじめ設定された態様で、ZVSを実現するパルスを発生する。本実施形態では、説明の便宜上、本条件を条件CO1と呼ぶ。
例えば、当該パルスのオン時間は、漸増する。
【0059】
本実施形態では、駆動信号発生器51は、所定のパルス数のパルスを発生する。
当該所定のパルス数は、受電装置A2の出力部に接続された磁化コイル121に流れる出力電流が所定の電流値に達するパルス数である。
【0060】
本実施形態では、送電装置A1は、フルブリッジ方式のインバータを有する。
そして、パルスのオン時間に関し、第1パルスのオン時間は、式(4)におけるt1の条件を満足する。
【0061】
本実施形態では、送電装置A1は、フルブリッジ方式のインバータを有する。
そして、パルスのデッドタイムに関し、第1パルスのデッドタイムは式(5)のtの条件を満足する。
式(5)において、t1は、上記した条件CO1を満たす任意の数である。
atan関数は、アークタンジェント関数を表す。
【0062】
【数5】
【0063】
本実施形態では、送電装置A11は、ハーフブリッジ方式のインバータを有する。
そして、パルスのオン時間に関し、第1パルスのオン時間は、式(6)におけるt4の所定の条件を満足する。
【0064】
【数6】
【0065】
本実施形態では、送電装置A11は、ハーフブリッジ方式のインバータを有する。
そして、パルスのデッドタイムに関し、第1パルスのデッドタイムは式(7)のtの条件を満足する。
式(7)において、t4は、上記した条件CO1を満たす任意の数である。
インバータシステム2においても、インバータシステム1と同様な効果を得ることができる。
【0066】
なお、式(6)および式(7)におけるt4、t5、t6は、それぞれ、式(6)におけるt1、t2、t3と対応しており、本実施形態では、説明の便宜上、符号を異ならせている。
【0067】
【数7】
【0068】
以上のように、本実施形態に係るインバータシステム1(および、インバータシステム2)では、送電装置A1(および、送電装置A11)において、インバータの半導体スイッチ素子(本実施形態では、第1スイッチ素子11~第4スイッチ素子14)のゲート波形について、パルス幅を調整することで、ハードスイッチングを抑制することができる。
これにより、本実施形態に係るインバータシステム1(および、インバータシステム2)では、送電装置A1(および、送電装置A11)において、半導体スイッチ素子のスイッチング時の効率化を図ることができる。
【0069】
なお、FETの印加電圧によって当該FETに並列な寄生容量が変化するため、ノイズの低減に関し、印加電圧の最大値の容量に基づいて計算する例を示したが、回路方式ごとに、共振方式ごとに、計算式が異なってもよい。
【0070】
また、本実施形態では、半導体スイッチ素子の駆動パルスのオン時間を制御する場合を示したが、他の構成例として、半導体スイッチ素子の駆動パルスの周波数を制御する構成が用いられてもよい。
【0071】
ここで、本実施形態では、駆動パルスが有する時系列の複数のパルスについて、パルス幅が次第に長くなっていく例を示したが、これに限られない。
例えば、複数のパルスのそれぞれについてZVSの条件が満たされれば、時系列の途中で、パルス幅が1つ前のパルスよりも短くなるところ、あるいは、パルス幅が1つ前のパルスと同じになるところがあってもよい。
【0072】
なお、以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、オペレーティングシステムあるいは周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーあるいはクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。当該揮発性メモリーは、例えば、RAM(Random Access Memory)であってもよい。記録媒体は、例えば、非一時的記録媒体であってもよい。
【0073】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイルであってもよい。差分ファイルは、差分プログラムと呼ばれてもよい。
【0074】
また、以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能は、プロセッサーにより実現されてもよい。例えば、実施形態における各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するコンピューター読み取り可能な記録媒体により実現されてもよい。ここで、プロセッサーは、例えば、各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよく、あるいは、各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、当該ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路およびアナログ信号を処理する回路のうちの少なくとも一方を含んでもよい。例えば、プロセッサーは、回路基板に実装された1または複数の回路装置、あるいは、1または複数の回路素子のうちの一方または両方を用いて、構成されてもよい。回路装置としてはIC(Integrated Circuit)などが用いられてもよく、回路素子としては抵抗あるいはキャパシターなどが用いられてもよい。
【0075】
ここで、プロセッサーは、例えば、CPUであってもよい。ただし、プロセッサーは、CPUに限定されるものではなく、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)等のような、各種のプロセッサーが用いられてもよい。また、プロセッサーは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によるハードウェア回路であってもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUにより構成されていてもよく、あるいは、複数のASICによるハードウェア回路により構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUと、複数のASICによるハードウェア回路と、の組み合わせにより構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、アナログ信号を処理するアンプ回路あるいはフィルター回路等のうちの1以上を含んでもよい。
【0076】
以上、この開示の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0077】
[数式の概略の説明]
フルブリッジ回路とハーフブリッジ回路のそれぞれについて、概略的に、数式の説明をする。
なお、以下の説明では、図3図5の例におけるT1、T2、T3は、それぞれ、以下のt1、t2、t3に対応する。
【0078】
フルブリッジ回路について、数式の説明をする。
本例では、ワイヤレス給電(WPT)における、送電側インバータ回路のスイッチ素子のZVSについて、ZVSとなる条件を考察する。
特に、可変磁石の磁力を変化させるための磁化コイルにWPTで電力伝送する場合について、WPT起動時におけるZVSの条件を考察する。
【0079】
図7は、可変磁石の磁化コイルに電力供給するWPTの回路の一例を示す図である。
図8は、インバータ回路の駆動波形の一例を示す図である。
なお、図7に示されるrtxは、送電コイルに接続される共振回路の抵抗であるが、図1図6の例では、当該抵抗の抵抗値が小さいとみなして、説明を省略した。
また、図7に示されるrrxは、受電コイルに接続される共振回路の抵抗であるが、図1図6の例では、当該抵抗の抵抗値が小さいとみなして、説明を省略した。
【0080】
本例では、インバータが動作する前は、FET(Q2)とFET(Q4)がオン(ON)の状態で、FET(Q1)とFET(Q3)がオフ(OFF)の状態である。
インバータ駆動開始直前にFET(Q2)がオフし、その後、FET(Q1)がオンして、インバータ駆動が開始される。
その後、オン時間が経過した後にFET(Q1)とFET(Q4)がオフし、FET(Q2)とFET(Q3)がオンし、オン時間が経過した後にオフし、再びFET(Q1)とFET(Q4)がオンする。
これら動作を繰り返すことにより、負荷である磁化コイルの電流値が時間とともに上昇し、目標の電流値に達したら、インバータ動作を停止する構成となっている。
本例では、FET(Q1)がオンしてインバータ動作が開始し、オン時間が経過した後にFET(Q1)とFET(Q4)がオフし、FET(Q2)とFET(Q3)がオンする際について、ZVSが成立する条件を考察する。
【0081】
ここで、負荷である磁化コイルの電流値が時間とともに上昇し、目標の電流値に達したら、インバータ動作を停止する構成に関し、目標の電流値としては、必ずしも、磁化コイルが所望の磁化状態となるために当該磁化コイルに流れることが必要な電流値と一致しなくてもよい。つまり、目標の電流値(インバータ停止時の電流値)としては、最終的に磁化コイルを所望の磁化状態とすることができる電流値であればよく、例えば、共振回路はインバータ停止後も共振が維持されることを考慮する場合には、インバータ停止後も少しの間負荷電流が増加するため、目標の電流値(インバータ停止時の電流値)としては、磁化コイルが所望の磁化状態となるために当該磁化コイルに流れることが必要な電流値よりも低い電流値であってもよい。この場合、インバータ停止時に磁化コイルに流れる電流値が必要な電流値に達していなくても、インバータ停止後も少しの間負荷電流が流れることにより、最終的に磁化コイルに流れる電流値が必要な電流値に達する。
なお、このような目標の電流値は、例えば、あらかじめ、理論または実験に基づいて設定されてもよい。
【0082】
図9は、インバータが動作開始する際の等価回路を示す図である。
磁化コイルのインダクタンス値(LLoad)は、相互インダクタンス値(M)よりはるかに大きな数値となっており、かつインバータ駆動前には電流が流れていない。
したがって、図9に示される回路は、さらに図10に示すように単純化することが可能である。
【0083】
図10は、インバータが動作開始する際の等価回路をさらに単純化した等価回路を示す図である。
図10に示される等価回路により、式(8)が成り立つ。
【0084】
【数8】
【0085】
式(8)について、ラプラス変換および逆ラプラス変換を行い、インバータ動作開始時の条件を考慮し、rtxの値が小さいとしてrtxの2乗を含む項をゼロ(0)とみなすと、式(9)が導かれる。
【0086】
【数9】
【0087】
次に、FET(Q1)とFET(Q4)が時間t1でオフしたとき、時間t1以降のコイル電流itx2(t)について検討する。
時間t1では、すべてのFETがオフしていることになり、等価回路は図11に示されるようになる。
なお、本例では、Cds1=Cds2=Cds3=Cds4=Cdsであるとする。
【0088】
図11は、時間t1での等価回路の一例を示す図である。
当該等価回路に基づいて、ラプラス変換および逆ラプラス変換を用いることで、式(10)が得られる。
【0089】
【数10】
【0090】
ここで、Cds2の電圧がVinからゼロ(0)になる放電時間を求める。
ここでは、t1=0とみなしたときからの時間をtとする。
Vds2がゼロ(0)となる時間tは、式(11)により表される。
atan関数は、アークタンジェント関数である。
【0091】
【数11】
【0092】
式(11)の実数解が存在する条件は、式(12)により表される。
【0093】
【数12】
【0094】
ZVSを行う条件として、時間t1は、式(12)を満たす必要がある。
これにより、図3(A)および図3(B)、図4(A)および図4(B)、図5(A)および図5(B)が導かれる。
【0095】
ここで、時間t1の設定値により決定されるZVS期間(期間t3)について考える。
期間t3内におけるitx3(t)では、図12に示されるように、FET(Q2)とFET(Q3)のボディダイオード(または、外部接続ダイオード)に電流が流れる。
【0096】
図12は、期間t3における等価回路を示す図である。
ダイオードの順方向降下電圧Vfの2倍の値は、Vinの値と比べて小さく無視する。
当該等価回路に基づいて、ラプラス変換および逆ラプラス変換を行うことで、itx3(t)がゼロ(0)となる時間t(=t3)は、式(13)のように表される。
【0097】
【数13】
【0098】
FET(Q1)とFET(Q4)がt1時間後にオフしてからFET(Q2)およびFET(Q3)のCds間電圧がゼロ(0)になるまでの時間t(=t2)は、式(14)により表される。
【0099】
【数14】
【0100】
インバータの動作開始時の最初にFET(Q2)およびFET(Q3)がオンするときにZVSを成立させる条件は、FET(Q1)およびFET(Q4)の最初のオン時間t1を、上記の式(12)を満たすようにする条件である。
例えば、大きい電力を早く負荷に伝送することは、t1の値が大きい方が満たされるが、t1の値が大きくなり過ぎると、ZVSが成立する期間(期間t3)が短くなるため、最適なt1を設定して駆動させることが行われてもよい。
【0101】
ハーフブリッジ回路について、数式の説明をする。
ハーフブリッジ回路についても、概略的には、フルブリッジ回路の場合と同様である。
【0102】
図13は、可変磁石の磁化コイルに電力供給するWPTの回路の一例を示す図である。
図14は、インバータ回路の駆動波形の一例を示す図である。
図9に示される等価回路、および、図10に示されるさらに単純化した等価回路については、フルブリッジ回路の場合と同様である。
【0103】
図15は、時間t1での等価回路の一例を示す図である。
図15は、フルブリッジ回路の場合における図11に対応する。
【0104】
ハーフブリッジ回路の場合、フルブリッジ回路の場合における式(12)に対応する式は、式(15)で表される。
【0105】
【数15】
【0106】
図16は、期間t3における等価回路を示す図である。
図16は、フルブリッジ回路の場合における図12に対応する。
【0107】
インバータの動作開始時の最初にFET(Q2)がオンするときにZVSを成立させる条件は、FET(Q1)の最初のオン時間t1を、上記の式(15)を満たすようにする条件である。
例えば、大きい電力を早く負荷に伝送することは、t1の値が大きい方が満たされるが、t1の値が大きくなり過ぎると、ZVSが成立する期間(期間t3)が短くなるため、最適なt1を設定して駆動させることが行われてもよい。
【0108】
[付記]
以下で、構成例を示す。
(構成例1)
受電装置へワイヤレスにて電力を伝送する送電装置であって、
直流電圧を交流電圧に変換するインバータと、
前記交流電圧が供給され交流磁界を発生させる送電コイルと、を備え、
前記インバータは、少なくとも2個の半導体スイッチ素子と、
前記半導体スイッチ素子をオン、オフさせるための駆動信号を発生する駆動信号発生器と、を備え、
前記駆動信号発生器は、所定数のパルスを発生し、
前記所定数は、前記受電装置の出力部に接続された磁化コイルに流れる出力電流が所定の電流値に達する数であり、
前記駆動信号発生器は、あらかじめ設定された態様で、ZVSを実現する前記パルスを発生する、
送電装置。
【0109】
(構成例2)
前記パルスのオン時間は、漸増する、
(構成例1)に記載の送電装置。
【0110】
(構成例3)
前記インバータは、フルブリッジ方式であり、
前記パルスのオン時間について、第1パルスのオン時間は、式(4)のt1の所定の条件を満たし、
式(1)であり、
Ltxは前記送電コイルのインダクタンス値であり、Ctxは前記送電コイルに接続された容量であり、Cdsは、前記半導体スイッチ素子に並列な容量である、
(構成例1)または(構成例2)に記載の送電装置。
【0111】
(構成例4)
t1は、前記所定の条件を満たし、
前記パルスのデッドタイムについて、第1パルスのデッドタイムは、式(5)のtの条件を満たす、
(構成例3)に記載の送電装置。
【0112】
(構成例5)
前記インバータは、ハーフブリッジ方式であり、
前記パルスのオン時間について、第1パルスのオン時間は、式(6)のt4の所定の条件を満たし、
式(1)であり、
Ltxは前記送電コイルのインダクタンス値であり、Ctxは前記送電コイルに接続された容量であり、Cdsは、前記半導体スイッチ素子に並列な容量である、
(構成例1)または(構成例2)に記載の送電装置。
【0113】
(構成例6)
t4は、前記所定の条件を満たし、
前記パルスのデッドタイムについて、第1パルスのデッドタイムは、式(7)のtの条件を満たす、
(構成例5)に記載の送電装置。
【0114】
(構成例7)
前記受電装置の負荷は、可変磁石モジュールの磁化コイルであり、
一度に前記半導体スイッチ素子に印加する駆動パルス信号は有限の回数のパルスを有する、
(構成例1)から(構成例6)のいずれか1つに記載の送電装置。
【符号の説明】
【0115】
1、2…インバータシステム、11…第1スイッチ素子、12…第2スイッチ素子、13…第3スイッチ素子、14…第4スイッチ素子、21…第1コンデンサ、22…第2コンデンサ、23…第3コンデンサ、24…第4コンデンサ、32、112…コンデンサ、31…電圧源、33…送電コイル、51…駆動信号発生器、111…受電コイル、113-1~113-4…ダイオード、121…磁化コイル、131…インダクタ(成分)、132…抵抗(成分)、2011…第1駆動信号、2012…第2駆動信号、2013…第3駆動信号、2014…第4駆動信号、2111~2114、2211~2214…信号部、A1、A11…送電装置、A2…受電装置、P1…第1出力端子、P2…第2出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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