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特開2024-154006プーリおよびこれを備えるガスヒートポンプ用エンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154006
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】プーリおよびこれを備えるガスヒートポンプ用エンジン
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/52 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
F16H55/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067576
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 哲夫
【テーマコード(参考)】
3J031
【Fターム(参考)】
3J031AB01
3J031AC10
3J031BA03
3J031BA07
3J031CA02
(57)【要約】
【課題】プーリの外径を可変に設ける場合において、設定されたプーリの外径を保持する。
【解決手段】内側プーリ100は、内部に流体が通流可能な流路70が設けられている。複数の外側プーリ部110は、内側プーリ100に接続され、かつ内側プーリ100に対して回転軸21の径方向に出入可能に設けられ、回転軸21の周方向に並んでいる。流体圧送部60は、流路70内の一方向および該一方向とは反対向きの他方向に選択的に流体を圧送可能である。複数の外側プーリ部110の各々は、外周面部111と、軸部112と、保持部120とを含む。外周面部111には、ベルトが巻き掛けられる。軸部112は、外周面部111に接続された第1端部113から流路70内に位置する第2端部114まで延在する。保持部120は、流路70内の流体からの受圧状態に応じて変位可能に軸部112に設けられ、外周面部111の径方向の位置を保持可能である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が通流可能な流路が設けられており、回転軸を中心に回動可能な内側プーリと、
前記内側プーリに接続されて前記回転軸を中心に回動可能、かつ前記内側プーリに対して前記回転軸の径方向に出入可能に設けられ、前記回転軸の周方向に並ぶ複数の外側プーリ部と、
前記流路内の一方向および該一方向とは反対向きの他方向に選択的に前記流体を圧送可能な流体圧送部とを備え、
前記複数の外側プーリ部の各々は、ベルトが巻き掛けられる外周面部と、該外周面部に接続された第1端部から前記流路内に位置する第2端部まで延在する軸部と、前記流路内の前記流体からの受圧状態に応じて変位可能に前記軸部に設けられ、前記外周面部の前記径方向の位置を保持可能な保持部とを含む、プーリ。
【請求項2】
前記流体圧送部は、前記保持部により前記複数の外側プーリ部の各々の前記径方向の位置を保持するときは前記流体の圧送を停止する、請求項1に記載のプーリ。
【請求項3】
前記保持部は、前記流体からの受圧状態に応じて変位する可動弁部と、該可動弁部の変位に抗するように前記可動弁部を付勢する付勢部とを有し、
前記流路は、前記可動弁部と着脱可能に係合可能な係合部を有し、
前記可動弁部が前記付勢部から付勢されて前記係合部と係合することによって、前記外周面部の前記径方向の位置が保持される、請求項1または請求項2に記載のプーリ。
【請求項4】
前記複数の外側プーリ部の各々は、前記周方向の端部において前記複数の外側プーリ部が互いに係合する凹凸形状を有する、請求項1または請求項2に記載のプーリ。
【請求項5】
前記流体は、油である、請求項1または請求項2に記載のプーリ。
【請求項6】
前記保持部は、前記外周面部の前記径方向の位置を段階的に保持可能である、請求項1または請求項2に記載のプーリ。
【請求項7】
前記ベルトを介してコンプレッサ駆動用プーリに接続される請求項1または請求項2に記載のプーリと、
前記内側プーリに同軸上に接続されたクランクシャフトとを備える、ガスヒートポンプ用エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プーリおよびこれを備えるガスヒートポンプ用エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
径可変プーリを開示した先行技術文献として、実開平05-025061号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された径可変プーリは、固定側プーリと、可動側プーリとを備える。可動側プーリは、外周側に付勢される扇形状マスと、扇形状マスを中心側に付勢する引張りばねとを含む。可動側プーリは、扇形状マスが固定側プーリの半径方向に移動可能に、固定側プーリの円錐面に係合されている。
【0003】
ベルト式無段変速機を開示した先行技術文献として、特開2014-167306号公報(特許文献2)がある。特許文献2に記載されたベルト式無段変速機は、主動プーリを備える。主動プーリは、主動軸に設けられ、周方向に配置された多数の主動単位プーリで構成されている。各主動単位プーリの回転半径を調整する主動単位アクチュエータが各主動単位プーリに対応して設けられている。主動単位プーリの駆動手段として油圧が使用されている。
【0004】
また、特許文献1または特許文献2に類似する先行技術文献として、特開昭63-67466号公報(特許文献3)、実開平02-034856号公報(特許文献4)、特開平07-305750号公報(特許文献5)および特開2017-053454号公報(特許文献6)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平05-025061号公報
【特許文献2】特開2014-167306号公報
【特許文献3】特開昭63-067466号公報
【特許文献4】実開平02-034856号公報
【特許文献5】特開平07-305750号公報
【特許文献6】特開2017-053454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1における径可変プーリにおいては、可動側プーリが遠心力および引張りばねの張力などによって変動するため、プーリの外径を保持することが難しい。また、特許文献2においては、主動単位プーリの回転半径を調整するために、主動単位プーリの駆動手段として油圧が使用されている。しかし、主動単位プーリに対して駆動ベルトの張力が強くかかった場合、プーリの外径が変動する可能性がある。このため、特許文献2においても、プーリの外径を可変に設ける場合において、設定されたプーリの外径を保持することが難しい。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、プーリの外径を可変に設ける場合において、設定されたプーリの外径を保持することができる、プーリおよびこれを備えるガスヒートポンプ用エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に基づくプーリは、内側プーリと、複数の外側プーリ部と、流体圧送部とを備える。内側プーリは、内部に流体が通流可能な流路が設けられており、回転軸を中心に回動可能である。複数の外側プーリ部は、内側プーリに接続されて回転軸を中心に回動可能、かつ内側プーリに対して回転軸の径方向に出入可能に設けられ、回転軸の周方向に並んでいる。流体圧送部は、流路内の一方向および該一方向とは反対向きの他方向に選択的に流体を圧送可能である。複数の外側プーリ部の各々は、外周面部と、軸部と、保持部とを含む。外周面部には、ベルトが巻き掛けられる。軸部は、外周面部に接続された第1端部から流路内に位置する第2端部まで延在する。保持部は、流路内の流体からの受圧状態に応じて変位可能に軸部に設けられ、外周面部の径方向の位置を保持可能である。
【0009】
本発明の一形態においては、流体圧送部は、保持部により複数の外側プーリ部の各々の径方向の位置を保持するときは流体の圧送を停止する。
【0010】
本発明の一形態においては、保持部は、可動弁部と、付勢部とを有する。可動弁部は、流体からの受圧状態に応じて変位する。付勢部は、可動弁部の変位に抗するように可動弁部を付勢する。流路は、可動弁部と着脱可能に係合可能な係合部を有する。可動弁部が付勢部から付勢されて係合部と係合することによって、外周面部の径方向の位置が保持される。
【0011】
本発明の一形態においては、複数の外側プーリ部の各々は、周方向の端部において複数の外側プーリ部が互いに係合する凹凸形状を有する。
【0012】
本発明の一形態においては、流体は、油である。
【0013】
本発明の一形態においては、保持部は、外周面部の径方向の位置を段階的に保持可能である。
【0014】
本発明に基づくガスヒートポンプ用エンジンは、上記プーリと、クランクシャフトとを備える。プーリは、ベルトを介してコンプレッサ駆動用プーリに接続される。クランクシャフトは、内側プーリに同軸上に接続されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プーリの外径を可変に設ける場合において、設定されたプーリの外径を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプエアコンの構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプ用エンジンが備えるプーリの外径が最小のときの構成を示す正面図である。
図3図2のプーリ周辺の構成をIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4図3における外側プーリ部周辺の構成を拡大して示す断面図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプ用エンジンが備えるプーリの外径が最大のときの構成を示す正面図である。
図6図5のプーリ周辺の構成をVI-VI線矢印方向から見た断面図である。
図7図6における外側プーリ部周辺の構成を拡大して示す断面図である。
図8】本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプ用エンジンが備えるプーリの外径が中間位置にあるときの構成を示す断面図である。
図9図2の外側プーリ部の構成をIX線矢印方向から見た側面図である。
図10図5の外側プーリ部の構成をX線矢印方向から見た側面図である。
図11】本発明の実施の形態2に係るガスヒートポンプ用エンジンが備えるプーリの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。以下の実施の形態の説明においては、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0018】
なお、図面においては、内側プーリに対して外側プーリ部が出入する一方向をX方向、内側プーリに対して外側プーリ部が出入し、X方向に直交する方向をY方向、プーリの回転軸方向をZ方向とする。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプエアコンの構成を示す概略図である。
【0020】
本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプエアコン1は、内燃機関としてのガスエンジンを駆動源として空気調和を行なうガスヒートポンプ(GHP)方式のエアコンである。なお、内燃機関は、ガスエンジンに限定されず、ガソリンエンジン、LNGエンジンまたはエタノールエンジンなどであってもよい。
【0021】
図1に示すように、ガスヒートポンプエアコン1は、ガスヒートポンプ用エンジン2と、コンプレッサ3と、ベルト5と、オートテンショナ6とを備える。
【0022】
ガスヒートポンプ用エンジン2は、コンプレッサ3を駆動させる。コンプレッサ3は、図示しない冷媒を圧縮し、冷凍サイクルによって冷暖房を行なう。コンプレッサ3は、コンプレッサ駆動用プーリ4を含む。
【0023】
後述するガスヒートポンプ用エンジン2のプーリ10は、ベルト5を介してコンプレッサ駆動用プーリ4に接続されている。プーリ10とコンプレッサ駆動用プーリ4とがベルト5に掛け回され、プーリ10が回転することによって、コンプレッサ駆動用プーリ4を回転させる。オートテンショナ6は、ベルト5の張力が変動した場合に、当該張力を調整するために設けられている。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプ用エンジンが備えるプーリの外径が最小のときの構成を示す正面図である。図3は、図2のプーリ周辺の構成をIII-III線矢印方向から見た断面図である。なお、図2においては、プーリ以外の構成の図示を省略している。
【0025】
図2および図3に示すように、本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプ用エンジン2は、プーリ10と、クランクシャフト20と、ボルト部材30と、カバー部材40と、シール部材50と、流体圧送部60とを含む。
【0026】
プーリ10は、ガスヒートポンプ用エンジン2の駆動によって回転可能に設けられている。プーリ10は、クランクシャフト20の先端にボルト部材30により接続されている。プーリ10は、アルミ合金または鋼などによって構成されている。
【0027】
カバー部材40は、クランクシャフト20などの内燃機関の駆動機構を収容する部材である。カバー部材40は、プーリ10が回転可能な状態でシール部材50を介してプーリ10と接続されている。シール部材50は、たとえばシールリング機構によって構成されている。
【0028】
流体圧送部60は、カバー部材40に接続されている。流体圧送部60は、プーリ10およびカバー部材40に設けられた後述する流路70を通じて、流路70内の一方向および一方向とは反対向きの他方向に選択的に流体を圧送可能である。本実施の形態における流体は、油である。このため、流体圧送部60は、流路70内に油圧をかけることが可能である。なお、流体は、油に限定されず、空気などであってもよい。
【0029】
プーリ10は、内側プーリ100と、外側プーリ部110とを有する。
【0030】
内側プーリ100は、Z方向から見て、プーリ10のうちの内側に位置している。内側プーリ100には、回転軸21と同軸上に孔軸を有し、Z方向に貫通する貫通孔101が設けられている。貫通孔101にボルト部材30が挿通され、ボルト部材30とクランクシャフト20の先端とが接続されることによって、内側プーリ100の同軸上にクランクシャフト20が接続される。これにより、内側プーリ100は、回転軸21を中心に回動可能である。
【0031】
内側プーリ100は、その内部に流体が通流可能な流路70が設けられている。本実施の形態における流路70は、流体圧送部60から圧送される油が流れる油圧経路を構成している。
【0032】
流路70は、第1流路71と、第2流路72と、第3流路73とを有する。第1流路71は、流体圧送部60から流れる流体の一方側の経路である。第2流路72は、流体圧送部60から流れる流体の他方側の経路である。第3流路73は、流路70における外側プーリ部110が動作する範囲を構成する経路である。
【0033】
外側プーリを構成する複数の外側プーリ部110は、ベルト5が掛け回される部分である。複数の外側プーリ部110は、Z方向から見て、プーリ10のうちの外側に位置している。
【0034】
複数の外側プーリ部110の各々は、回転軸21の周方向に並んでいる。本実施の形態における複数の外側プーリ部110は、6つの外側プーリ部110により構成されている。なお、複数の外側プーリ部110の数量は、6つに限定されない。複数の外側プーリ部110の数量は、できるだけ多い方が好ましい。複数の外側プーリ部110の数量が多いと、複数の外側プーリ部110の外径が大きくなった場合に最外周部分が真円に近づき、ベルト5に密着して、ベルト5を回転させやすい。
【0035】
複数の外側プーリ部110は、内側プーリ100に接続されて回転軸21を中心に回動可能である。また、複数の外側プーリ部110は、内側プーリ100に対して回転軸21の径方向(図3においてはY方向)に出入可能に設けられている。
【0036】
外側プーリ部110は、外周面部111と、軸部112と、保持部120とを有する。
【0037】
外周面部111には、ベルト5が巻き掛けられる。外周面部111の最外周部分は、ベルト5がプーリ10に追従しやすいように山部および谷部が形成されている。
【0038】
軸部112は、外周面部111を支持する部分である。軸部112は、径方向(図3においてはY方向)に延在している。軸部112は、外周面部111に接続された第1端部113から流路内に位置する第2端部114まで延在している。
【0039】
保持部120は、流路70内の流体からの受圧状態に応じて変位可能に軸部112に設けられている。本実施の形態における保持部120は、軸部112の第2端部114に設けられている。
【0040】
保持部120は、外周面部111の径方向(図3においてはY方向)の位置を保持可能である。本実施の形態における保持部120は、プーリ10の外径が最大または最小のときの外周面部111の径方向の位置を保持可能である。
【0041】
保持部120は、可動弁部121と、付勢部122とを有する。
【0042】
可動弁部121は、流路70を途中で仕切るように位置している。可動弁部121は、流体からの受圧状態に応じて変位する。本実施の形態における可動弁部121は、第3流路73内において径方向(図3においてはY方向)の位置が変位する。
【0043】
付勢部122は、可動弁部121の変位に抗するように可動弁部121を付勢する。本実施の形態における付勢部122は、可動弁部121の径方向(図3においてはY方向)における変位に抗するように、Z方向において可動弁部121を付勢する。
【0044】
本実施の形態における付勢部122は、たとえば、ばねである。なお、付勢部122は、ばねに限定されず、可動弁部121の径方向の位置を変位可能に構成できれば、硬質ゴムなど他の付勢部材であってもよい。
【0045】
流路70は、可動弁部121と着脱可能に係合可能な係合部130を有する。本実施の形態においては、係合部130は第3流路73に位置している。第3流路73中の係合部130に可動弁部121が係合することによって、保持部120の位置が保持される。これにより、可動弁部121に接続された外側プーリ部110の外周面部111の径方向の位置が保持される。
【0046】
本実施の形態における係合部130は、第1係合部131と、第2係合部132とを有する。第1係合部131は、プーリ10の外径が最小となるときの第3流路73と保持部120との係合位置である。第2係合部132は、プーリ10の外径が最大となるときの第3流路73と保持部120との係合位置である。
【0047】
図4は、図3における外側プーリ部周辺の構成を拡大して示す断面図である。図4に示すように、外側プーリ部110の外径が最小となるとき、保持部120は第1係合部131に係合している。
【0048】
可動弁部121は、第1面部123と、第2面部124と、第3面部125とを有する。第1面部123は、付勢部122の付勢方向(Z方向)に鉛直な面である。第2面部124は、付勢部122の付勢方向(Z方向)に並行かつプーリ10の内径側に位置する面である。第3面部125は、付勢部122の付勢方向(Z方向)に並行かつプーリ10の外径側に位置する面である。
【0049】
第3流路73は、第1当接面135と、摺動壁部136とを有する。第1当接面135は、可動弁部121の第2面部124が当接する面である。摺動壁部136は、可動弁部121が径方向に変位するときに第3流路73内において第1面部123が摺動する部分である。
【0050】
第1面部123が第3流路73の摺動壁部136より第1流路71側に位置することによって、可動弁部121が第1係合部131に係合する。これにより、保持部120の径方向の位置が固定される。
【0051】
第1係合部131において、第3流路73と第2面部124との間には第1隙間G1が設けられている。これにより、第2面部124に対して第1流路71に圧送された油によって油圧をかけることができる。
【0052】
図5は、本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプ用エンジンが備えるプーリの外径が最大のときの構成を示す正面図である。図6は、図5のプーリ周辺の構成をVI-VI線矢印方向から見た断面図である。図7は、図6における外側プーリ部周辺の構成を拡大して示す断面図である。なお、図5においては、プーリ以外の構成の図示を省略している。
【0053】
図5図7に示すように、外側プーリ部110は、XY平面上において内側プーリ100の内部から径方向に突出する。これにより、プーリ10の外径が大きくなる。外側プーリ部110の外径が最大となるとき、保持部120は第2係合部132に係合している。
【0054】
第3流路73は、第2当接面137をさらに有する。第2当接面137は、可動弁部121の第3面部125が当接する部分である。第1面部123が第3流路73の摺動壁部136より第2流路72側に位置することによって、可動弁部121が第2係合部132に係合する。これにより、保持部120の径方向の位置が固定される。
【0055】
第2係合部132において、第3流路73と第3面部125との間には第2隙間G2が設けられている。これにより、第3面部125に対して第2流路72に圧送された油によって油圧をかけることができる。
【0056】
以下、プーリ10の外径が変動する際の外側プーリ部110および流体圧送部60の動作について説明する。
【0057】
図8は、本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプ用エンジンが備えるプーリの外径が中間位置にあるときの構成を示す断面図である。図8においては、流体圧送部60から第2流路72に対して図中の矢印方向に油圧をかけた場合を例示している。
【0058】
まず、図7に示すように、保持部120が第2係合部132に係合している状態で第2流路72に油圧がかかった場合、可動弁部121の第1面部123および第3面部125に油圧がかかる。これにより、付勢部122がZ方向において圧縮される方向に弾性変形する。これにより、保持部120が第2係合部132から外れる。
【0059】
次に、図8に示すように、第3面部125には、油圧が継続的にかかる。これにより、保持部120は、第1面部123が第3流路73の摺動壁部136上を摺動しながら径方向の内側に向かって移動する。
【0060】
次に、図4に示すように、第2面部124が第1当接面135に当接するまで移動した後、付勢部122がZ方向において伸びる方向に弾性変形することによって、可動弁部121が第1係合部131に係合する。外周面部111は、軸部112を介して保持部120に接続されているため、保持部120の位置の変位に併せて外周面部111も変位する。
【0061】
上述のとおり、可動弁部121が付勢部122から付勢されて係合部130と係合することによって、外周面部111の径方向の位置が保持される。このため、保持部120の位置が流路70内の係合部130に係合することによって、外側プーリ部110の外径が保持される。これにより、外側プーリ部110に対してベルト5の張力が強くかかった場合、プーリ10の外径の変動を抑制することができる。その結果、保持部120を設けない場合と比較して、設定された外側プーリ部110の外径のばらつきを抑制することができる。
【0062】
流体圧送部60は、保持部120により複数の外側プーリ部110の各々の径方向の位置を保持するときは流体の圧送を停止する。保持部120が係合部130に係合することによって、外側プーリ部110の径方向の位置が保持されるため、外側プーリ部110の径方向の位置が保持されているときは流体圧送部60による流路70への継続的な流体の圧送を停止することができる。これにより、省エネルギでプーリ10を駆動させることができる。
【0063】
コンプレッサ3を低負荷となる低回転状態で運転する場合、プーリ10の回転数を低くする必要がある。しかし、プーリ10を低回転で運転する場合、ガスヒートポンプ用エンジン2の摺動部における潤滑油不足による焼き付きなどが問題となる。そこで本実施の形態に係るプーリ10により、プーリ10の外径を可変させ、プーリ10の外径を小さくすることによって、プーリ10の回転数を低回転にし過ぎることを抑制して、コンプレッサ3を低回転状態で運転することができる。また、プーリ10の外径を調整することができるため、コンプレッサ3の回転数の制御幅を増加させることができる。
【0064】
なお、流路70は、内側プーリ100に複数設けられ、複数の外側プーリ部110の各々を個別に出入させてもよい。また、流路70は、内側プーリ100に1つ設けられ、複数の外側プーリ部110のすべてを一括で出入させてもよい。
【0065】
図9は、図2の外側プーリ部の構成をIX線矢印方向から見た側面図である。図10は、図5の外側プーリ部の構成をX線矢印方向から見た側面図である。
【0066】
図9および図10に示すように、外側プーリ部110は、外周面部111の最外面において山部115と、谷部116とを有する。山部115および谷部116は、Z方向において交互に配置されている。
【0067】
複数の外側プーリ部110の各々は、回転軸21の周方向の端部において複数の外側プーリ部110が互いに係合する凹凸形状を有している。隣り合う外側プーリ部110同士の凹凸117が係合している。凹凸117は、外側プーリ部110の外径が最小の場合および最大の場合のどちらにおいても係合した状態である。隣り合う外側プーリ部110同士の凹凸117が係合することによって、プーリ10の回転軸方向(Z方向)において複数の外側プーリ部110の各々の位置関係がずれることを抑制することができる。
【0068】
本発明の実施の形態1に係るプーリ10においては、複数の外側プーリ部110の各々を内側プーリ100に対して径方向に出入可能に設けることによって、プーリの外径を可変に設けることができる。また、保持部120が流路70内に設けた係合部130に係合して径方向の位置が保持されることによって、プーリ10の外径を可変に設ける場合において、設定された複数の外側プーリ部110の各々の外径を保持することができる。
【0069】
本発明の実施の形態1に係るプーリ10においては、複数の外側プーリ部110の各々の径方向の位置が保持されたときに、流体圧送部60からの流体の圧送を停止することによって、流体圧送部60による流路70への継続的な流体の圧送を停止することができる。これにより、省エネルギでプーリ10を駆動させることができる。
【0070】
本発明の実施の形態1に係るプーリ10においては、付勢部122の付勢によって可動弁部121を流路70上の係合部130に係合させることによって、保持部120を簡素な構成にすることができる。
【0071】
本発明の実施の形態1に係るプーリ10においては、複数の外側プーリ部110の各々が周方向において互いに凹凸117において係合することによって、回転軸21の軸方向(Z方向)において複数の外側プーリ部110の各々の位置ずれを抑制することができる。その結果、効率良く外側プーリ部110を回転させることができる。
【0072】
本発明の実施の形態1に係るプーリ10においては、流体圧送部60を通流する流体が油であることによって、流体が空気である場合と比較して流体圧力を強くすることができる。これにより、複数の外側プーリ部110の設定された外径を確実に保持することができるため、設定されたプーリ10の外径のばらつきを抑制することができる。
【0073】
本発明の実施の形態1に係るガスヒートポンプ用エンジン2においては、プーリ10の外径を可変させ、プーリ10の外径を小さくすることによって、プーリ10の回転数を低回転にし過ぎることを抑制してコンプレッサ3を低回転状態で運転することができる。これにより、ガスヒートポンプ用エンジン2の回転数を低回転にし過ぎることが抑制されるため、ガスヒートポンプ用エンジン2の焼き付きを抑制することができる。
【0074】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係るプーリについて説明する。本発明の実施の形態2に係るプーリは、内側プーリおよび外側プーリ部の構成が本発明の実施の形態1に係るプーリ10と異なるため、本発明の実施の形態1に係るプーリ10と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0075】
図11は、本発明の実施の形態2に係るガスヒートポンプ用エンジンが備えるプーリの構成を示す断面図である。
【0076】
図11に示すように、実施の形態2に係るプーリ10Aは、内側プーリ100Aと、外側プーリ部110Aとを備える。
【0077】
内側プーリ100Aには、第1流路71と、第2流路72と、第3流路73Aとが設けられている。第3流路73Aは、摺動壁部136Aを有している。摺動壁部136Aには、複数の凹部138Aが設けられている。複数の凹部138Aは、径方向(図11においてはY方向)に沿って並んでいる。
【0078】
外側プーリ部110Aは、保持部120Aを含む。保持部120Aは、可動弁部121Aと、付勢部122Aとを有する。本実施の形態における可動弁部121Aは、先端が丸みを帯びた円弧形状を有している。
【0079】
可動弁部121Aは、複数の凹部138Aのいずれかに係合可能である。これにより、保持部120Aは、外周面部111の径方向の位置を段階的に保持可能である。流体圧送部における油圧を調整することによって、可動弁部121Aを係合部130または複数の凹部138Aの任意の位置に係合させることができる。可動弁部121Aが、複数の凹部138Aのいずれかに係合することによって、外側プーリ部110Aは、最大径と最小径との間の中間位置において外径を保持することができる。
【0080】
本発明の実施の形態2に係るプーリ10Aにおいては、保持部120Aが複数の凹部138Aのいずれかに係合可能であることによって、外周面部111の径方向の位置を段階的に保持可能に構成することができるため、プーリ10Aの外径を段階的に設定することができる。
【0081】
[付記]
本実施の形態は以下のような開示を含む。
【0082】
[構成1]
内部に流体が通流可能な流路が設けられており、回転軸を中心に回動可能な内側プーリと、
前記内側プーリに接続されて前記回転軸を中心に回動可能、かつ前記内側プーリに対して前記回転軸の径方向に出入可能に設けられ、前記回転軸の周方向に並ぶ複数の外側プーリ部と、
前記流路内の一方向および該一方向とは反対向きの他方向に選択的に前記流体を圧送可能な流体圧送部とを備え、
前記複数の外側プーリ部の各々は、ベルトが巻き掛けられる外周面部と、該外周面部に接続された第1端部から前記流路内に位置する第2端部まで延在する軸部と、前記流路内の前記流体からの受圧状態に応じて変位可能に前記軸部に設けられ、前記外周面部の前記径方向の位置を保持可能な保持部とを含む、プーリ。
【0083】
[構成2]
前記流体圧送部は、前記保持部により前記複数の外側プーリ部の各々の前記径方向の位置を保持するときは前記流体の圧送を停止する、構成1に記載のプーリ。
【0084】
[構成3]
前記保持部は、前記流体からの受圧状態に応じて変位する可動弁部と、該可動弁部の変位に抗するように前記可動弁部を付勢する付勢部とを有し、
前記流路は、前記可動弁部と着脱可能に係合可能な係合部を有し、
前記可動弁部が前記付勢部から付勢されて前記係合部と係合することによって、前記外周面部の前記径方向の位置が保持される、構成1または構成2に記載のプーリ。
【0085】
[構成4]
前記複数の外側プーリ部の各々は、前記周方向の端部において前記複数の外側プーリ部が互いに係合する凹凸形状を有する、構成1から構成3のいずれか1つに記載のプーリ。
【0086】
[構成5]
前記流体は、油である、構成1から構成4のいずれか1つに記載のプーリ。
【0087】
[構成6]
前記保持部は、前記外周面部の前記径方向の位置を段階的に保持可能である、構成1から構成5のいずれか1つに記載のプーリ。
【0088】
[構成7]
前記ベルトを介してコンプレッサ駆動用プーリに接続される構成1から構成6のいずれか1つに記載のプーリと、
前記内側プーリに同軸上に接続されたクランクシャフトとを備える、ガスヒートポンプ用エンジン。
【0089】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではない。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。上述した実施の形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 ガスヒートポンプエアコン、2 ガスヒートポンプ用エンジン、3 コンプレッサ、4 コンプレッサ駆動用プーリ、5 ベルト、6 オートテンショナ、10,10A プーリ、20 クランクシャフト、21 回転軸、30 ボルト部材、40 カバー部材、50 シール部材、60 流体圧送部、70 流路、71 第1流路、72 第2流路、73,73A 第3流路、100,100A 内側プーリ、101 貫通孔、110,110A 外側プーリ部、111 外周面部、112 軸部、113 第1端部、114 第2端部、115 山部、116 谷部、117 凹凸、120,120A 保持部、121,121A 可動弁部、122,122A 付勢部、123 第1面部、124 第2面部、125 第3面部、130 係合部、131 第1係合部、132 第2係合部、135 第1当接面、136,136A 摺動壁部、137 第2当接面、138A 複数の凹部、G1 第1隙間、G2 第2隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11