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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015401
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】セッティング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
H02K15/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210840
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2022206832の分割
【原出願日】2019-03-12
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/037977
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 友章
(72)【発明者】
【氏名】福山 修
(72)【発明者】
【氏名】池田 正信
(57)【要約】
【課題】ロータコア保持治具の使用において、連結ロッドのセッティングを自動化し、磁石埋込み型コアの生産効率を高めること。
【解決手段】ロータコア保持治具10を載置される基台42と、基台42に結合されて基台42に対向する対向台46と、対向台46に設けられ、基台42上のロータコア保持治具10の上プレート14を下プレート12に向けて加圧する加圧装置48と、基台42に設けられ、各連結ロッド30を着脱可能に把持し、連結ロッド30が係合溝32、34から離間した離間位置と連結ロッド30が係合溝32、34に係合する係合位置との移動可能なチャック装置126と、基台42に設けられ、各チャック装置126を離間位置と係合位置との間に駆動する流体圧シリンダ装置120とを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1プレート及び第2プレートと、前記第1プレート及び前記第2プレートの周縁に開口した切欠状の係合溝に係合して両端のフランジ部が前記第1プレート及び前記第2プレートの各々に当接することにより、前記第1プレート及び前記第2プレートとを互いに連結する連結ロッドとを有し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間にロータコアが配置されるロータコア保持治具のためのセッティング装置であって、
前記連結ロッドを把持し、前記連結ロッドが前記係合溝から離間した離間位置と前記連結ロッドが前記係合溝に係合する係合位置との移動可能なチャック装置と、
前記チャック装置を前記離間位置と前記係合位置との間に駆動する駆動装置とを有するセッティング装置。
【請求項2】
前記ロータコアは軸線方向の両端面に開口を有する磁石挿入孔を含み、
前記第1プレートは前記磁石挿入孔の一方の開口に連通するゲートを含む請求項1に記載のセッティング装置。
【請求項3】
前記第1プレート及び前記第2プレートは、各々矩形で、少なくとも互いに平行な2辺に対応して前記係合溝を有する請求項1又は2に記載のセッティング装置。
【請求項4】
上側に位置する前記第2プレートは下側に位置する前記第1プレートより大きい外郭を有し、
前記連結ロッドは前記チャック装置によって把持されていない状態において、前記第2プレートの前記係合溝のみに係合して前記第2プレートに吊り下げ状態で支持される請求項1から3の何れか一項に記載のセッティング装置。
【請求項5】
互いに対向する第1プレート及び第2プレートと、前記第1プレート及び前記第2プレートに係合して前記第1プレート及び前記第2プレートとを互いに連結する連結ロッドとを有し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間にロータコアが配置されるロータコア保持治具のためのセッティング装置であって、
前記第2プレートを前記第1プレートに向けて加圧する加圧装置と、
前記連結ロッドを把持し、前記連結ロッドが前記第1プレート及び前記第2プレートから離間した離間位置と前記連結ロッドが前記第1プレート及び前記第2プレートに係合する係合位置との間を移動可能なチャック装置と、
前記チャック装置を前記離間位置と前記係合位置との間に駆動する駆動装置とを有するセッティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータコア保持治具のためのセッティング装置及びセッティング方法に関し、更に詳細には、磁石埋込み型コアの製造に用いられるロータコア保持治具のためのセッティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機等の回転電機に用いられる磁石埋込み型コアとして、軸線方向の両端面に開口を有する磁石挿入孔を備えたロータコアと、磁石挿入孔に配置された磁石片と、磁石片をロータコアに固定すべく磁石挿入孔に充填された樹脂とを含む樹脂封止型のものが知られている。
【0003】
この種の磁石埋込み型コアの製造装置として、互いに対向する固定型及び可動型を有し、固定型と可動型とによってロータコアを軸線方向に加圧し、固定型或いは可動型に設けられた樹脂ポットから溶融状態の樹脂を磁石挿入孔に充填する樹脂モールド装置が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-79056号公報
【特許文献2】特開2017-7353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の樹脂モールド装置による磁石埋込み型コアの製造において、互いに対向する第1プレート及び第2プレートと、第1プレート及び第2プレートの周縁に向けて開口した切欠状の係合溝に係合して両端のフランジ部が第1プレート及び第2プレートの各々に当接することにより、第1プレート及び第2プレートとを互いに連結する連結ロッドとを有し、第1プレートと第2プレートとの間に配置されるロータコアをプレクランプするロータコア保持治具を用いることが本願出願人と同一の出願人によって考えられている(PCT/JP2018/037977)。
【0006】
本発明は、上述のロータコア保持治具の使用において、連結ロッドのセッティングを自動化し、磁石埋込み型コアの生産効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの実施形態によるセッティング装置は、互いに対向する第1プレート及び第2プレートと、前記第1プレート及び前記第2プレートの周縁に開口した切欠状の係合溝に係合して両端のフランジ部が前記第1プレート及び前記第2プレートの各々に当接することにより、前記第1プレート及び前記第2プレートとを互いに連結する連結ロッドとを有し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間にロータコアが配置されるロータコア保持治具のためのセッティング装置であって、前記ロータコア保持治具が載置される基台と、前記基台に結合されて前記基台に対向する対向台と、前記対向台に取り付けられ、前記基台上の前記ロータコア保持治具の前記第2プレートを前記第1プレートに向けて加圧する加圧装置と、前記基台に取り付けられ、各連結ロッドを把持し、前記連結ロッドが前記係合溝から離間した離間位置と前記連結ロッドが前記係合溝に係合する係合位置との移動可能なチャック装置と、前記基台に設けられ、各チャック装置を前記離間位置と前記係合位置との間に駆動する駆動装置とを有する。
【0008】
この構成によれば、連結ロッドのセッティングが自動化され、磁石埋込み型コアの生産効率が向上する。
【0009】
上述の実施形態によるセッティング装置において、好ましくは、前記ロータコアは軸線方向の両端面に開口を有する磁石挿入孔を含み、前記第1プレートは前記磁石挿入孔の一方の開口に連通するゲートを含み、前記ロータコア保持治具は、更に、前記第2プレートに圧縮ばね部材を介して連結され、前記ロータコアの前記両端面のうちの一方の端面に当接して前記磁石挿入孔の他方の開口を閉塞する閉塞部材を有し、前記連結ロッドは、前記閉塞部材が前記開口を閉塞した状態において前記圧縮ばね部材のばね力が所定値となるように、前記第1プレートと前記第2プレートとを互いに連結する軸長を有する。
【0010】
この構成によれば、ロータコアに作用する軸線方向の圧縮力が不必要に大きくなることがなく、閉塞部材が磁石挿入孔の開口を閉塞することは圧縮ばね部材のばね力によって適切に行われる。
【0011】
上述の実施形態によるセッティング装置において、好ましくは、前記第1プレート及び前記第2プレートは、各々矩形で、少なくとも互いに平行な2辺に対応して前記係合溝を有し、前記チャック装置は、前記基台に載置された前記ロータコア保持治具の前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも前記2辺の各々に対応して設けられている。
【0012】
この構成によれば、各係合溝に係合する連結ロッドによって第1プレートと第2プレートとの連結が確実に行われると共に各連結ロッドのセッティングが自動化される。
【0013】
上述の実施形態によるセッティング装置において、好ましくは、前記チャック装置は、前記基台と前記対向台との間に対応する位置にあって前記離間位置と前記係合位置との間を移動可能な稼働位置と、前記基台に対して搬入及び搬出される前記ロータコア保持治具と干渉しない退避位置に移動可能である。
【0014】
この構成によれば、基台に対するロータコア保持治具の搬入及び搬出がチャック装置と干渉することなく効率よく行われる。
【0015】
上述の実施形態によるセッティング装置において、好ましくは、前記基台と前記対向台とは上下方向に離隔して対向し、上側に位置する前記第2プレートは下側に位置する前記第1プレートより大きい外郭を有し、前記連結ロッドは、前記チャック装置によって把持されていない状態において、前記第2プレートの前記係合溝のみに係合して前記第2プレートに吊り下げ状態で支持される。
【0016】
この構成によれば、第1プレート及び第2プレートに対する連結ロッドのハンドリング工程が不要になり、作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0017】
このように本実施形態によれば、ロータコア保持治具の使用において、連結ロッドのセッティングを自動化することができ、磁石埋込み型コアの生産効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一つの実施形態に係るロータコア保持治具のためのセッティング装置が適用される磁石埋込み型コアの一例を示す斜視図
図2】同磁石埋込み型コアの縦断面図
図3】本実施形態に用いられるロータコア保持治具の縦断面図(図4の線III-IIIに沿った断面図)
図4】本実施形態に用いられるロータコア保持治具の平面図
図5】本実施形態によるロータコア保持治具のセッティング装置の退避状態を示す正面図
図6】同セッティング装置のチャック離間状態を示す正面図
図7】同セッティング装置のチャック係合状態を示す正面図
図8】同セッティング装置のチャック装置の平面図
図9】他の実施形態によるロータコア保持治具のセッティング装置の正面図
図10】同磁石埋込み型コア用の樹脂モールド装置の下部可動部材が降下した状態を示す縦断面図
図11】同樹脂モールド製造装置の下部可動部材が上昇した状態を示す縦断面図
図12】同樹脂モールド製造装置の樹脂加圧状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る好適な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【0020】
先ず、図1及び図2を参照して本発明の実施形態に係るロータコア保持治具のためのセッティング装置を用いて製造される磁石埋込み型コア1について説明する。
【0021】
磁石埋込み型コア1は、モータ等の回転電機の構成部品であり、ロータコア2を含む。ロータコア2は、複数枚の電磁鋼板が公知の結合方法(かしめ結合、溶接、接着等)により互いに結合された状態で積層された積層鉄心であり、平面視において略円環状をなし、中央に軸線方向に貫通した軸孔3を有する。
【0022】
ロータコア2には複数の磁石挿入孔4が形成されている。各磁石挿入孔4は、略直方体状の空間をなし、ロータコア2を軸線方向に貫通してロータコア2の両端面をなす下端面2A及び上端面2Bに開口している。つまり、各磁石挿入孔4はロータコア2の軸線方向の両端面に開口を有する貫通孔である。図示例では、磁石挿入孔4がロータコア2の周方向の4箇所に等間隔に配置された例を示しているが、磁石挿入孔4の形状、数、及び配置等については、これに限られることはなく、種々の変更が可能である。
【0023】
各磁石挿入孔4には略直方体状の磁石片5が収容されている。磁石片5は、例えば、フェライト系の焼結磁石片や、ネオジム磁石片等の永久磁石(着磁前のものを含む)によって構成することができる。磁石片5の各部の寸法は、磁石挿入孔4の各部の寸法よりも小さく設定されている。これにより、磁石挿入孔4内において、ロータコア2と磁石片5との間に隙間ができる。この隙間には樹脂6が充填される。各磁石片5は隙間に充填された樹脂6によってロータコア2に対して固定される。樹脂6としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0024】
各磁石片5は、例えば、図1に示されているように、磁石挿入孔4において内側(ロータコア2の中心側)に偏倚して配置されており、ロータコア2の中心側に向いた外面は当該外面に対向する磁石挿入孔4の内面に当接している。これにより、各磁石片5のロータコア2の径方向の配置位置が一様に決まり、磁石挿入孔4がロータコア2の周方向に等間隔に設けられることと相まって、磁石片5がロータコア2の回転方向のアンバランス要因になることがない。尚、各磁石片5は、図1に示されている位置と反対側(ロータコア2の外周側)に偏倚して配置してもよい。
【0025】
次に、図3及び図4を参照して磁石埋込み型コアの製造に用いられるロータコア保持治具10について説明する。
【0026】
ロータコア保持治具10は互いに対向する下プレート(第1プレート)12及び上プレート(第2プレート)14を有する。
【0027】
下プレート12は、矩形の平板によるものであり、平らな上面12Aに平らな下端面2Aが接触するように、ロータコア2が載置される。下プレート12は各磁石挿入孔4の下側の開口(一方の開口)4Aに個別に連通するゲート20及び各ゲート20と後述する樹脂モールド装置60の各樹脂ポット80とに連通するカル開口22を含む。
【0028】
上プレート14は、矩形の平板によるものであり、ロータコア2の上端面2Bに対向している。上プレート14は、磁石挿入孔4毎に、ボルト24によって閉塞部材26を上下方向に移動可能に吊り下げ式に支持している。各閉塞部材26は、磁石挿入孔4の上側の開口(他方の開口)4Bより大きい面積を有してロータコア2の平らな上端面2Bに当接可能な平らな下面26Aを含む。各閉塞部材26は、ボルト24の頭部24Aが上プレート14に形成されているボルト通し孔14Aの肩状の底部に当接することにより下限位置を決められる。
【0029】
上プレート14と各閉塞部材26との間には圧縮コイルばね28が取り付けられている。圧縮コイルばね28は、閉塞部材26毎に個別に設けられ、各々、閉塞部材26を下プレート12に向けて付勢している。尚、図示の実施形態では、閉塞部材26及び圧縮コイルばね28は磁石挿入孔4毎に個別に設けられているが、これらは、互いに隣接する複数の磁石挿入孔4毎に設けられていてもよい。
【0030】
上プレート14は、下プレート12より大きい外郭を有し、平面視で、下プレート12の外縁より外方に張り出した四角枠状の張出部分15を含む。
【0031】
下プレート12と上プレート14とは、下プレート12と閉塞部材26との間にロータコア2を挟み込んだ状態で、前後左右の4箇所の各々において垂直に延在する連結ロッド30によって互いに連結されている。
【0032】
連結ロッド30による下プレート12と上プレート14との連結構造の詳細を説明する。各連結ロッド30は、棒状部30A及び棒状部30Aの上下両端に設けられたフランジ部30B、30Cを含む。
【0033】
下プレート12及び上プレート14の各々には左右方向に直線状に延在してこれらプレート12、14の互いに平行な左右の外縁(周縁)に開口した切欠状の係合溝32、34が形成されている。係合溝32、34は、下プレート12及び上プレート14の互いに平行な2辺(左辺及び右辺)の各々に対応し、且つ上下に整合するように設けられており、図3中の部分拡大斜視図(A)、(B)に示されているように、各々、連結ロッド30のフランジ部30B、30Cが係合可能な凹溝32A及び凹溝34Aの底部に設けられて棒状部30Aが貫通可能なスリット状の開口32B、34Bを含み、開口32B、34Bの両側に残された凹溝32A、凹溝34Aの底部がなす肩部32C、34Cにフランジ部30B、30Cが当接する。
【0034】
このように、各連結ロッド30が下プレート12及び上プレート14に係合することにより、各連結ロッド30は、各圧縮コイルばね28のばね力が所定値となるように、下プレート12と上プレート14とを互いに連結する。この連結状態において生じる圧縮コイルばね28のばね力(圧縮コイルばね28の撓み量)は、棒状部30Aの軸長によって適正値に設定される。
【0035】
これにより、各閉塞部材26は、圧縮コイルばね28のばね力によりロータコア2の上端面2Bに押し付けられ、対応する磁石挿入孔4の上側の開口4Bを閉塞する。
【0036】
フランジ部30B、30Cは、全体が凹溝32A、凹溝34Aに収容され、下プレート12の下方や上プレート14の上方に突出することがない。尚、この構成は、必須でなく、プレート構成の如何によっては、凹溝32A、凹溝34Aが省略され、フランジ部30B、30Cが下プレート12の下方や上プレート14の上方に突出していてもよい。
【0037】
各連結ロッド30は、図3に仮想線によって示されているように、上プレート14の張出部分15に位置することにより、後述のチャック装置126によって把持されていない状態において、下プレート12の係合溝32に係合せず、上プレート14の係合溝34のみに係合して上プレート14に吊り下げ状態で支持された状態を取ることができる。
【0038】
これにより、各連結ロッド30は、常に上プレート14に吊り下げ支持され、左右方向の移動によって下プレート12の係合溝32に選択的に係合するから、下プレート12及び上プレート14に対する連結ロッド30のハンドリング工程が不要になり、作業効率が向上する。
【0039】
下プレート12には左右及び前後に離れた2箇所にプレート押付ロッド36の基部(下端)36Aが固定されている。プレート押付ロッド36は、下プレート12から上方に向けて垂直に延在し、上プレート14に形成されている貫通孔38を遊嵌合状態で貫通し、上プレート14の上方に位置する遊端(上端)36Bを含む。尚、プレート押付ロッド36の配置箇所は、2箇所に限られることなく、それ以上の個数の複数箇所であってもよい。
【0040】
上述のロータコア保持治具10の使用により、ロータコア2に作用する軸線方向の圧縮力が不必要に大きくなることがなく、閉塞部材26が磁石挿入孔4の開口4Bを閉塞することは圧縮コイルばね28のばね力によって適切に行われる。
【0041】
次に、図5図8を参照して、ロータコア保持治具10に対してロータコア2をセッティングするセッティング装置40について説明する。
【0042】
セッティング装置40は、平板状の基台42と、基台42から立設された複数のポスト部材44によって基台42の上方に離隔して対向配置された平板状の対向台46と、対向台46に取り付けられた流体圧式の加圧装置(シリンダ-ピストン装置)48と、加圧装置48のピストンロッド50に取り付けられた平板状の加圧プレート52とを有する。加圧装置48は加圧プレート52によって基台42上に載置されたロータコア保持治具10の上プレート14を下プレート12に向けて加圧するものである。
【0043】
基台42の左右両側には各々ガイドレール110に案内されて上下方向に移動可能な昇降台112が設けられている。各昇降台112は電動モータ114によって駆動される送りねじ116により上下移動する。各昇降台112にはシリンダ取付板118が取り付けられている。各シリンダ取付板118には流体圧シリンダ装置(駆動装置)120が取り付けられている。各流体圧シリンダ装置120は基台42の内方に向けて延出したピストンロッド122を有する。各ピストンロッド122の先端にはチャック取付板124が取り付けられている。
【0044】
各チャック取付板124には、図8に示されているように、各連結ロッド30に対応すべく2個のチャック装置126が取り付けられている。各チャック装置126は、チャック取付板124に固定された固定チャック片128及び電磁アクチュエータ130によって駆動される可動チャック片132を有し、固定チャック片128と可動チャック片132とによって対応する連結ロッド30の棒状部30Aを着脱可能に把持する。
【0045】
各昇降台112は、送りねじ116により、図5に示されているように、チャック装置126及び流体圧シリンダ装置120が基台42の上面より下方に位置する退避位置と、図6及び図7に示されているように、チャック装置126及び流体圧シリンダ装置120が基台42の上面より上方に位置する稼働位置との間を上下移動する。
【0046】
チャック装置126及び流体圧シリンダ装置120は、昇降台112が退避位置にある時には、基台42上に対して左右方向に搬入及び搬出されるロータコア保持治具10と干渉することがない。これにより、セッティング装置40に対するロータコア保持治具10の搬入及び搬出がチャック装置126等と干渉することなく行われる。
【0047】
各チャック装置126は、流体圧シリンダ装置120により、図5に示されているように、昇降台112が上述の退避位置にある状態において基台42と干渉しない最後退位置と、図6に示されているように、昇降台112が上述の稼働位置にある状態において対応する連結ロッド30が係合溝32から離間した離間位置と、図7に示されているように、昇降台112が上述の稼働位置にある状態において対応する連結ロッド30が係合溝34に加えて係合溝32に係合する係合位置との間を左右方向に移動する。
【0048】
セッティング装置40を用いたロータコア保持治具10に対するロータコア2のセッティングは、先ず、各昇降台112が退避位置にある状態で、不図示のロボットアーム等により、図5に示されているように、基台42上に搬入することが行われる。尚、この搬入に先だって、ロータコア2の各磁石挿入孔4に磁石片5を投入することが行われる。
【0049】
次に、各電動モータ114の駆動によって昇降台112が稼働位置に上昇すると共に加圧装置48の駆動によって加圧プレート52が上プレート14に押し付けられる。これにより上プレート14が降下し、各圧縮コイルばね28が圧縮変形する。
【0050】
この状態で、流体圧シリンダ装置120の駆動によって各チャック装置126が、図6に示されているように、離間位置まで前進し、電磁アクチュエータ130の駆動によって各チャック装置126が、上プレート14に吊り下げ支持されている連結ロッド30を把持する。
【0051】
把持完了後に、流体圧シリンダ装置120の駆動により各チャック装置126が係合位置まで前進する。これにより、各連結ロッド30が上プレート14の係合溝34に加えて下プレート12の係合溝32に係合する。
【0052】
この後に、加圧プレート52による上プレート14の押し付けが解除されることにより、下プレート12と上プレート14とは、連結ロッド30によって各圧縮コイルばね28のばね力が所定値になった状態で互いに連結される。
【0053】
これにより、連結ロッド30のセッティングが自動化され、ロータコア2は、図3に示されているように、ロータコア保持治具10と共に、圧縮コイルばね28のばね力による押圧力をもって各磁石挿入孔4の開口4Bが対応する閉塞部材26によって閉塞されたサブアッセンブリとして取り扱われ得るようになる。
【0054】
この後に、各チャック装置126が最後退位置に戻り、各昇降台112が退避位置に降下することが行われ、この状態下でセッティング装置40からロータコア保持治具10を搬出することが行われる。
【0055】
セッティング装置40の他の実施形態を、図9を参照して説明する。なお、図9において、図5図7に対応する部分は、図5図7に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0056】
この実施形態では、基台42の左右両側に取り付けられたブラケット134の各々に枢軸136によって回動台138が回動可能に設けられている。各回動台138にはシリンダ取付板118が取り付けられている。
【0057】
これにより、各チャック装置126等は回動台138の回動によって退避位置に移動する。
【0058】
その他のことは、図5図8に示されている実施形態と実質的に同一である。これにより、この実施形態でも、図5図8に示されている実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
次に、図10図12を参照して樹脂モールド装置60について説明する。
【0060】
樹脂モールド装置60は、上下方向に延在する複数のポスト部材62と、ポスト部材62の上端に固定された固定プラテン64と、ポスト部材62に案内されて上下移動可能な可動プラテン66とを有する。可動プラテン66は、流体圧等による駆動装置(不図示)により上下方向に駆動され、固定プラテン64に対して近接離反可能である。
【0061】
可動プラテン66上には下側基部部材70が取り付けられている。下側基部部材70は、下部部材72と中間部材74と上部部材76が重ねられた組立体によって構成されている。上部部材76上には、図10に示されているように、可動プラテン66が降下した状態下で、ロータコア保持治具10と共にロータコア2のサブアッセンブリが載置される。
【0062】
上部部材76には、ロータコア2の各磁石挿入孔4に対応する複数の樹脂ポット80が形成されている。各樹脂ポット80は、上部部材76の上面に開口し、対応するカル開口22に連通する。中間部材74には各樹脂ポット80に連通するプランジャ室82及びプッシュロッド室84が形成されている。樹脂ポット80からゲート20を介して磁石挿入孔4に溶融樹脂を導入するための樹脂導入装置として、プランジャ室82には、プランジャ86が、各プッシュロッド室84にはプッシュロッド88が各々上下移動可能に設けられている。樹脂ポット80とプランジャ室82とカル開口22とは互いに同一内径のボアであり、プランジャ86はプランジャ室82からカル開口22にまで進入可能になっている。
【0063】
各樹脂ポット80のプランジャ86上にはブロック形状の固形状態の樹脂6が載置される。
【0064】
各プッシュロッド88は、上端にて対応するプランジャ86に当接し、プランジャ86を上昇移動させる。各プッシュロッド88は下端に受圧フランジ90を有し、各受圧フランジ90には中間部材74に形成されたマニホールド油路92の作動油によって油圧を及ぼされる。下部部材72にはシリンダ室94が形成されている。シリンダ室94にはピストン96が上下移動可能に設けられている。ピストン96は、上側にマニホールド油路92に連通する上部油室98を画定し、下側に下部油室100を画定している。上部油室98及び下部油室100は下部部材72に形成された油路102、104等によって油圧源(不図示)に接続されている。
【0065】
下側基部部材70には下側基部部材70を加熱するためのヒータ106が埋設されている。
【0066】
固定プラテン64の下部には上側対向部材108が取り付けられている。上側対向部材108は、下側基部部材70に対して下側基部部材70上のロータコア保持治具10を介して対向し、可動プラテン66が固定プラテン64に対して近接離反可能であることにより、下側基部部材70に対して相対的に近接離反可能である。
【0067】
各プレート押付ロッド36は、図11に示されているように、可動プラテン66の上昇移動によって上側対向部材108の下面に当接し、上側対向部材108から下プレート12に伝達される加圧力により、下プレート12が下側基部部材70に押し付けられる。
【0068】
これにより、下プレート12を下側基部部材70に押し付ける力が、ロータコア保持治具10において、閉塞部材26を圧縮コイルばね28のばね力によってロータコア2に押し付ける力とは別に、可動プラテン66の上昇力(型締め力)によって決まり、カル開口22と樹脂ポット80との接続が下プレート12を下側基部部材70に押し付ける力のもとに隙間なく行われる。
【0069】
各樹脂ポット80の固形状態の樹脂6はヒータ106等に加熱によって溶融する。この状態下で、図12に示されているように、油圧源(不図示)から下部油室100に油圧が供給され、ピストン96が上昇移動することにより、マニホールド油路92の作動油を圧力媒体として圧力が各受圧フランジ90及び各プッシュロッド88に一様に伝達される。これにより、各プランジャ86が上昇移動し、各樹脂ポット80の溶融状態の樹脂6が対応するカル開口22、ゲート20を通過して各磁石挿入孔4に圧送、充填される。
【0070】
下プレート12を下側基部部材70に押し付ける力は、可動プラテン66の上昇力によって過不足のない適正値に単独で設定することができるから、カル開口22と樹脂ポット80との接続が、下プレート12を下側基部部材70に押し付ける適切な押圧力のもとに行われる。これにより、溶融状態の樹脂6を樹脂ポット80から磁石挿入孔4へ圧送する過程において、溶融状態の樹脂6が下プレート12と下側基部部材70との境界部から外部へ漏洩することが抑制され、当該境界部にばりが発生することが抑制される。
【0071】
閉塞部材26は、可動プラテン66の上昇力とは別に、圧縮コイルばね28のばね力によってロータコア2に押し付けられているから、閉塞部材26をロータコア2に押し付ける力を、下プレート12を下側基部部材70に押し付ける力とは別の過不足のない適正値に単独で設定することができる。これにより、ロータコア2に反り等の変形を招くことなく、磁石挿入孔4の開口4Bの閉塞及び磁石挿入孔4の開口4Aとゲート20との接続が、閉塞部材26をロータコア2に押し付ける力が適切な押圧力のもとに行われる。このことにより、溶融状態の樹脂6を樹脂ポット80から磁石挿入孔4へ圧送する過程において、溶融状態の樹脂6が磁石挿入孔4の開口4Bから外部に漏洩したり、磁石挿入孔4の開口4Aとゲート20との境界部から外部へ漏洩することが抑制され、当該境界部や開口4Bの周りにばりが発生することが抑制される。
【0072】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。
【0073】
例えば、チャック装置126を退避位置に移動させる機構は必須でない。係合溝32及び34は、下プレート12及び上プレート14の左右の外縁に開口したものに加えて、下プレート12及び上プレート14の前後の外縁に開口したものが設けられていてもよい。この場合には、チャック装置126等は、下プレート12及び上プレート14の左右の2辺の加えて前後の2辺の各々に対応して設けられることになり、少なくとも下プレート12及び上プレート14の1辺に対応するチャック装置126は、セッティング装置40に対するロータコア保持治具10の搬入、搬出のために、退避位置に移動できるように構造される。樹脂モールド装置60は上下反転した配置であってもよい。
【0074】
上記実施形態に示した本発明に係る磁石埋込み型コアの製造方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 :磁石埋込み型コア
2 :ロータコア
2A :下端面
2B :上端面(一方の端面)
3 :軸孔
4 :磁石挿入孔
4A :開口(一方の開口)
4B :開口(他方の開口)
5 :磁石片
10 :ロータコア保持治具
12 :下プレート(第1プレート)
12A :上面
14 :上プレート(第2プレート)
14A :ボルト通し孔
15 :張出部分
20 :ゲート
22 :カル開口
24 :ボルト
24A :頭部
26 :閉塞部材
26A :下面
28 :圧縮コイルばね
30 :連結ロッド
30A :棒状部
30B :フランジ部
30C :フランジ部
32 :係合溝
32A :凹溝
32B :開口
32C :肩部
34 :係合溝
34A :凹溝
34B :開口
34C :肩部
36 :プレート押付ロッド
38 :貫通孔
40 :セッティング装置
42 :基台
44 :ポスト部材
46 :対向台
48 :加圧装置
50 :ピストンロッド
52 :加圧プレート
60 :樹脂モールド装置
62 :ポスト部材
64 :固定プラテン
66 :可動プラテン
70 :下側基部部材
72 :下部部材
74 :中間部材
76 :上部部材
80 :樹脂ポット
82 :プランジャ室
84 :プッシュロッド室
86 :プランジャ
88 :プッシュロッド
90 :受圧フランジ
92 :マニホールド油路
94 :シリンダ室
96 :ピストン
98 :上部油室
100 :下部油室
102 :油路
104 :油路
106 :ヒータ
108 :上側対向部材
110 :ガイドレール
112 :昇降台
114 :電動モータ
116 :送りねじ
118 :シリンダ取付板
120 :流体圧シリンダ装置(駆動装置)
122 :ピストンロッド
124 :チャック取付板
126 :チャック装置
128 :固定チャック片
130 :電磁アクチュエータ
132 :可動チャック片
134 :ブラケット
136 :枢軸
138 :回動台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1プレート及び第2プレートと、前記第1プレート及び前記第2プレートとを互いに連結する連結手段とを有し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間にロータコアが配置されるロータコア保持治具のためのセッティング装置であって、
前記ロータコア保持治具が載置される基台と、
記基台上の前記ロータコア保持治具の前記第2プレートを前記第1プレートに向けて加圧する加圧装置とを有し、
前記ロータコアは軸線方向の両端面に開口を有する磁石挿入孔を含み、
前記ロータコア保持治具は、更に、前記第2プレートに圧縮ばね部材を介して連結され、前記ロータコアの前記両端面のうちの一方の端面に当接して前記磁石挿入孔の他方の開口を閉塞する閉塞部材を有し、
前記連結手段は、前記閉塞部材が前記開口を閉塞した状態において前記圧縮ばね部材のばね力が所定値となるように、前記第1プレートと前記第2プレートとを互いに連結するセッティング装置。
【請求項2】
記第1プレートは前記磁石挿入孔の一方の開口に連通するゲートを含む請求項1に記載のセッティング装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1プレート及び第2プレートと、前記第1プレート及び前記第2プレートとを互いに連結する連結手段とを有し、前記第1プレートと前記第2プレートとの間にロータコアが配置されるロータコア保持治具のためのセッティング装置であって、
前記ロータコア保持治具が載置される基台と、
前記基台上の前記ロータコア保持治具の前記第2プレートを前記第1プレートに向けて加圧する加圧装置とを有し、
前記ロータコアは軸線方向の両端面に開口を有する磁石挿入孔を含み、
前記ロータコア保持治具は、更に、前記第2プレートに圧縮ばね部材を介して連結され、前記ロータコアの前記両端面のうちの一方の端面に当接して前記磁石挿入孔を閉塞する閉塞部材を有し、
前記連結手段は、前記閉塞部材が前記開口を閉塞した状態において前記圧縮ばね部材のばね力が所定値となるように、前記第1プレートと前記第2プレートとを互いに連結するセッティング装置。
【請求項2】
記第1プレートは前記ロータコアの前記両端面のうちの他方の端面に開口する前記磁石挿入孔に連通するゲートを含む請求項1に記載のセッティング装置。