(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154015
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20241023BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20241023BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20241023BHJP
【FI】
F16C33/78 D
F16C19/06
F16J15/3204 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067589
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】倉持 尚史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】迫田 裕成
(72)【発明者】
【氏名】石和田 博
【テーマコード(参考)】
3J006
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE12
3J006AE15
3J006AE34
3J006AE41
3J006CA01
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB48
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB03
3J216CB12
3J216CC01
3J216CC17
3J216CC33
3J216GA10
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA73
3J701EA63
3J701FA13
3J701FA60
(57)【要約】
【課題】軸受内部から軸受外部への発塵を抑制する転がり軸受を提供する。
【解決手段】玉軸受1のシール6は、外周側の端部に設けられ外輪3に固定される固定端部6aと、内周側の端部に設けられ内輪2に接触するリップ7を含む接触端部6bと、有し、リップ7の表面のうち軸受外部1A側に位置する外部側表面7aと、内輪2のシール溝12の内側面12sと、が交差する角度をα1とし、リップ7の表面のうち軸受内部1B側に位置する内部側表面7bと、内側面12sと、が交差する角度をβ1としたとき、α1<β1である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置される転動体と、軸受内部と軸受外部とを仕切るシール部材と、を備え、
前記シール部材は、径方向の一端部に設けられ前記内輪及び前記外輪のうちの一方の軸受輪に固定される固定端部と、径方向の他端部に設けられ前記内輪及び前記外輪のうちの他方の軸受輪に接触するリップを含む接触端部と、有し、
前記リップの表面のうち前記軸受外部側に位置する外部側表面と、前記他方の軸受輪の表面と、が交差する角度をα1とし、
前記リップの表面のうち前記軸受内部側に位置する内部側表面と、前記他方の軸受輪の表面と、が交差する角度をβ1としたとき、
α1<β1である、
転がり軸受。
【請求項2】
前記接触端部は、前記リップとは別に設けられ前記他方の軸受輪に接触する第2リップを更に含み、
前記第2リップの表面のうち前記軸受外部側に位置する外部側表面と、前記他方の軸受輪の表面と、が交差する角度をα2とし、
前記第2リップの表面のうち前記軸受内部側に位置する内部側表面と、前記他方の軸受輪の表面と、が交差する角度をβ2としたとき、
α2>β2である、
請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記第2リップは、前記接触端部のうち最も軸受内部側の位置で前記他方の軸受輪に接触する、請求項2に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1,2に記載の転がり軸受が知られている。これらの軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に配置される玉と、シールと、を備えている。シールの外周側の端部は固定側の軌道輪である外輪に固定されており、シールの内周側の端部に設けられたリップが回転側の軌道輪である内輪に摺接している。このようなシールにより軸受内部と軸受外部とが仕切られ、軸受外部から軸受内部への異物の侵入が抑制され、軸受内部から軸受外部への発塵が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-102580号公報
【特許文献2】特開2022-39848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の転がり軸受では、例えば光学式のエンコーダに使用される場合など、回転時における軸受内部からの発塵(例えばグリース漏れ)によって軸受周辺の部品が汚染されることが特に問題になる場合がある。このような場合には特に転がり軸受の発塵を抑制することが求められる。本発明は、軸受内部から軸受外部への発塵を抑制する転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0006】
〔1〕内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置される転動体と、軸受内部と軸受外部とを仕切るシール部材と、を備え、前記シール部材は、径方向の一端部に設けられ前記内輪及び前記外輪のうちの一方の軸受輪に固定される固定端部と、径方向の他端部に設けられ前記内輪及び前記外輪のうちの他方の軸受輪に接触するリップを含む接触端部と、有し、前記リップの表面のうち前記軸受外部側に位置する外部側表面と、前記他方の軸受輪の表面と、が交差する角度をα1とし、前記リップの表面のうち前記軸受内部側に位置する内部側表面と、前記他方の軸受輪の表面と、が交差する角度をβ1としたとき、α1<β1である、転がり軸受。
【0007】
この転がり軸受によれば、シール部材のリップの表面は軸受輪に対し、軸受外部側では小さい角度(α1)で交差し、軸受内部側では大きい角度(β1)で交差する。従って、リップと軸受輪との接触面においては、軸受外部側から軸受内部側に向かう流体の流れが発生する。従って、軸受内部から軸受外部への発塵が抑制される。
【0008】
〔2〕前記接触端部は、前記リップとは別に設けられ前記他方の軸受輪に接触する第2リップを更に含み、前記第2リップの表面のうち前記軸受外部側に位置する外部側表面と、前記他方の軸受輪の表面と、が交差する角度をα2とし、前記第2リップの表面のうち前記軸受内部側に位置する内部側表面と、前記他方の軸受輪の表面と、が交差する角度をβ2としたとき、α2>β2である、〔1〕に記載の転がり軸受。
【0009】
この場合、リップによって軸受内部から軸受外部への発塵が抑制され、第2リップによって、軸受外部から軸受内部への異物の侵入が抑制される。
【0010】
〔3〕前記第2リップは、前記接触端部のうち最も軸受内部側の位置で前記他方の軸受輪に接触する、〔2〕に記載の転がり軸受。
【0011】
この場合、軸受内部に存在する潤滑剤が第2リップと軸受輪と接触面に僅かに侵入するので、当該接触面の潤滑性が維持され、第2リップと内側面との摩擦が低減され、軸受の低トルク化が図られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸受内部から軸受外部への発塵を抑制する転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の玉軸受を一部破断して示す斜視図である。
【
図2】玉軸受の回転軸線を含む断面を拡大して模式的に示す断面図である。
【
図3】シール溝の内側面とシールのリップとの接触部分(
図2におけるIII部分)を拡大して示す断面図である。
【
図4】シールが玉軸受に組み込まれる前後の変形を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態の玉軸受におけるシール溝の内側面とシールのリップとの接触部分を拡大して示す断面図である。
【
図6】第3実施形態の玉軸受におけるシール溝の内側面とシールのリップとの接触部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の転がり軸受の第1実施形態である玉軸受1を一部破断して示す斜視図である。
図2は、玉軸受1の回転軸線を含む断面を拡大して模式的に示す断面図である。玉軸受1は、例えば深溝玉軸受である。または、玉軸受1は4点接触玉軸受であってもよい。以下の説明において、断りなく「軸方向」、「径方向」、「周方向」というときには、それぞれ、玉軸受1の回転軸線方向、回転径方向、回転周方向を意味するものとする。また、各図中において、軸方向を矢印Aで、径方向を矢印Rで、周方向を矢印Cで示す場合がある。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、玉軸受1は、内輪2、外輪3、複数の玉4、保持器5、及び一対のシール6を備えている。なお、
図1においてはシール6の図示が省略されている。内輪2は円環状の部材であり、内輪2の外周面には、周方向に延びる内輪軌道面2aが形成されている。外輪3は、内輪2と同心の円環状の部材であり、外輪3の内周面には、周方向に延びる外輪軌道面3aが設けられている。
【0016】
玉4は、球形状をなし、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間に挟み込まれ、周方向に1列に並ぶように配置されている。保持器5は、内輪2と外輪3との間に配置され内輪2及び外輪3と同心の環状をなしている。保持器5は、複数の玉4をそれぞれ転動自在に保持するとともに玉4同士の周方向間隔を規制する。保持器5に保持された各玉4は、例えば周方向に等ピッチで並んでいる。内輪2、外輪3、及び玉4の各材料としては、軸受鋼、特殊熱処理がされた鋼材、ステンレス、などの、軸受に使用可能な鋼材全般が採用され得る。内輪軌道面2a、外輪軌道面3a、玉4及び保持器5が存在する軸受内部1Bには潤滑剤が収容されている。潤滑剤は、例えばグリースであり、玉4と外輪軌道面3a、玉4と内輪軌道面2a、玉4と保持器5、といったような相互に接触する部分に入り込んで摩擦及び摩耗を低減する。
【0017】
図2及び
図3を参照しながらシール6について説明する。
図3は、
図2におけるIII部分を拡大して示す図である。シール6は、軸受内部1Bの空間を塞ぐ円環状の部材であり、一対のシール6,6は互いに同じ構成をなしている。本実施形態におけるシール6は接触式シールである。シール6は、例えば、鋼板等からなる芯金と、当該芯金に固着されたゴム材等からなる弾性体と、で構成されている。
図2に示されるように、内輪2の外周面には、内輪軌道面2aを軸方向に挟む配置で一対のシール溝12が設けられている。同様に、外輪3の内周面には、外輪軌道面3aを軸方向に挟む配置で一対のシール溝13が設けられている。
【0018】
シール6の外周側の端部は、外輪3のシール溝13に嵌め込まれ固定される固定端部6aとして形成されている。シール6の内周側の端部は、内輪2のシール溝12の内側面12sに接触する接触端部6bとして形成されている。接触端部6bは、内側面12sに接触するリップ7を有している。玉軸受1の回転時には、シール6は固定側の軌道輪である外輪3に対して不動であり、シール6のリップ7は、内輪2が回転するので、相対的に内側面12s上を周方向に摺動する。このようなシール6によって玉軸受1の軸受外部1Aと軸受内部1Bとが仕切られている。リップ7の表面には、微細構造の凹凸が形成されていてもよい。
【0019】
シール6が玉軸受1に組み込まれる際には、シール6は所定のしめしろ分だけ弾性的に変形し、この変形に対する復元力によってリップ7がシール溝12の内側面12sに押し当てられる。そして、弾性体であるリップ7の先端部は僅かに押し潰され内側面12sに対して所定の幅で接触する。この接触状態において、リップ7の表面のうち軸受外部1A側に位置する外部側表面7aと、シール溝12の内側面12sと、が交差する角度をα1とする。また、リップ7の表面のうち軸受内部1B側に位置する内部側表面7bと、シール溝12の内側面12sと、が交差する角度をβ1とする。このとき、玉軸受1においては、
α1<β1 …数式(1)
が成立している。
【0020】
図4中において、玉軸受1に組み込まれる前のシール6のリップ7が二点鎖線で示され、玉軸受1に組み込まれた後のシール6のリップ7が実線で示されている。図に示されるように、シール6は、玉軸受1に組み込まれる際に接触端部6bが軸受内部1B側に向けて押されるように変形し、当該変形に対する復元力によってリップ7が内側面12sに対し軸受外部1A側に向けて押し当てられている。従って、玉軸受1に組み込まれた状態で数式(1)が満足されるためには、上記のようなシール6の変形を勘案した上で、玉軸受1に組み込まれる前のシール6の形状が設計されればよい。
【0021】
例えば、図に示されるように、変形によってリップ7が回転する角度をθとし、変形前のリップ7の外部側表面7aと内側面12sとが交差する角度をα0とし、変形前のリップ7の内部側表面7bと内側面12sとが交差する角度をβ0とする。幾何学的に明らかなように、α1=α0-θ,β1=β0+θであるので、シール6が玉軸受1に組み込まれた状態でα1<β1が満足されるためには、玉軸受1に組み込まれる前の状態において、
α0<β0+2θ
が満足されればよい。また、変形時にシール6が折れる点から変形前のリップ7の先端までの距離をLとし、変形後におけるリップ7と内側面12sとの接触面から変形前のリップ7の先端までの距離をxとすれば、上記のθは、
θ=arctan(L/x)
で表される。
【0022】
このようなシール6を備える玉軸受1による作用効果について説明する。シール6のリップ7の表面は内側面12sに対し、軸受外部1A側では小さい角度(α1)で交差し、軸受内部1B側では大きい角度(β1)で交差する。従って、リップ7と内側面12sとの接触面においては、軸受外部1A側から軸受内部1B側に向かう流体の流れが発生する。従って、軸受内部1Bの潤滑剤はリップ7によって封止され、軸受内部1Bから軸受外部1Aへの発塵が抑制される。
【0023】
なお、上記のように潤滑剤がリップ7によって封止される原理は次のように考えられる。玉軸受1の回転中において、リップ7の内側面12sに対する接触面には、内側面12sとの摺動による摩擦力により歪みが生じ、ねじりせん断力が生じて、くさび状の微細な凹凸構造が形成される。この凹凸構造のパターンがねじポンプの役割をする。そして、上記角度α1,β1の大小関係により、接触面の歪みの最大値は軸受内部1B側に近い側に生じるので、軸受外部1A側から軸受内部1B側へのポンピング作用が、軸受内部1B側から軸受外部1A側へのポンピング作用を上回る。その結果、軸受外部1A側から軸受内部1B側に向かう流体の流れが発生し、潤滑剤は軸受内部1Bに封止される。
【0024】
なお、前述のようにリップ7の表面に微細構造の凹凸がもともと形成されている場合には、上記のようなねじポンプの作用がより発現し易く、その結果、軸受内部1Bから軸受外部1Aへの発塵が更に効率的に抑制される。
【0025】
また、軸受外部1Aから軸受内部1Bまで連通する空気穴(図示せず)がシール6に設けられていてもよい。この場合、玉軸受1の回転時の温度上昇などにより軸受内部1Bの圧力が上昇したときに、この圧力が空気穴を通じて軸受外部1Aに抜ける。従って、上記圧力でシール6が捲れることによる軸受内部1Bからの発塵が抑制される。
【0026】
また、シール6の接触端部6bが複数のリップを有していてもよい。この場合、複数のリップのうちの少なくとも1つが数式(1)を満足するものであればよい。
【0027】
(第2実施形態)
本発明の転がり軸受の第2実施形態について説明する。本実施形態の玉軸受は、
図5に示されるように、リップ7とシール溝12の内側面12sとの接触の態様が第1実施形態と相違する。その他の点においては第1実施形態と同様であるので、重複する説明を省略する。本実施形態の玉軸受におけるシール6は、玉軸受1に組み込まれる際に、リップ7が軸受外部1A側に向けて押されるように変形し、当該変形に対する復元力によってリップ7が内側面12sに対し軸受内部1B側に向けて押し当てられている。この態様によれば、軸受外部1Aの圧力が上昇した際に、リップ7が内側面12sに押し付けられて軸受内部1Bの密封性を向上させる効果がある。
【0028】
本実施形態においても、リップ7の外部側表面7aと内側面12sとが交差する角度α1と、内部側表面7bと内側面12sとが交差する角度β1と、の間に前述の数式(1)が成立している。従って、本実施形態の玉軸受においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0029】
(第3実施形態)
本発明の転がり軸受の第3実施形態について説明する。本実施形態の玉軸受では、
図6に示されるように、接触端部6bが複数のリップを有する点において第1実施形態と相違する。その他の点においては第1実施形態と同様であるので、重複する説明を省略する。
図6に示されるように、本実施形態における接触端部6bは、内側面12sに接触する2つのリップ8,9を有している。リップ9は、リップ8よりも軸受内部1B側の位置で内側面12sに接触している。リップ9は、接触端部6bのうち最も軸受内部1B側の位置で内輪2に接触しているとも言える。
【0030】
リップ8の内側面12sに対する接触状態は、第1実施形態におけるリップ7と同様である。すなわち、リップ8の外部側表面8aと内側面12sとが交差する角度α1と、リップ8の内部側表面8bと内側面12sとが交差する角度β1と、の間に前述の数式(1)が成立している。
【0031】
一方、リップ9の内側面12sに対する接触状態は次の通りである。リップ9の表面のうち軸受外部1A側に位置する外部側表面9aと、内側面12sと、が交差する角度をα2とする。また、リップ9の表面のうち軸受内部1B側に位置する内部側表面9bと、内側面12sと、が交差する角度をβ2とする。このとき、
α2>β2 …数式(2)
が成立している。
【0032】
この玉軸受によれば、数式(1)が満たされるリップ8によって、前述のリップ7(
図3)と同様にして、軸受内部1Bから軸受外部1Aへの発塵が抑制される。また、数式(2)が満たされるリップ9によって、リップ9と内側面12sとの接触面には、軸受内部1Bから軸受外部1Aに向かう方向の潤滑剤の流れが生じるので、軸受外部1Aから軸受内部1Bへの異物の侵入が抑制される。また、リップ9と内側面12sとの接触面に侵入する潤滑剤によって当該接触面の潤滑性が維持されるので、リップ9と内側面12sとの摩擦が低減され、玉軸受の低トルク化が図られる。
【0033】
なお、接触端部6bが、少なくとも1つの、数式(1)を満足するリップ8と、少なくとも1つの、数式(2)を満足するリップ9と、を含む3つ以上のリップを有していてもよい。また、数式(2)を満足するリップ9が接触端部6bのうち最も軸受内部1B側の位置に配置され、数式(1)を満足するリップ8が他のいずれかの位置に少なくとも1つ存在すれば、上記と同様の作用効果が得られる。
【0034】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0035】
例えば、第3実施形態において、リップ8とリップ9との内側面12sに対する接触状態を逆にしてもよい。すなわち、軸受外部1A側のリップ8においてα1>β1が満足され、軸受内部1B側のリップ9においてα2<β2が満足されるようにしてもよい。この場合、リップ8によって軸受外部1Aから軸受内部1Bへの異物の侵入が抑制され、リップ9によって軸受内部1Bから軸受外部1Aへの発塵が抑制される。
【0036】
また、各実施形態のシール6は、外輪3に固定され内輪2に接触するものであるがこれには限定されない。本発明は、内輪2に固定され外輪3に接触するシール6を有する軸受にも適用することができる。また、各実施形態は本発明を玉軸受に適用した例であるが、本発明は、ころ軸受などの他の転がり軸受にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…玉軸受(転がり軸受)、1A…軸受外部、1B…軸受内部、2…内輪、3…外輪、4…玉(転動体)、6…シール(シール部材)、6a…固定端部、6b…接触端部、7…リップ、7a…外部側表面、7b…内部側表面、8…リップ、8a…外部側表面、8b…内部側表面、9…リップ(第2リップ)、9a…外部側表面、9b…内部側表面。