(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154023
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20241023BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067601
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507064226
【氏名又は名称】フナテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】翠弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中尾 和彦
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AA03
4D037AA05
4D037AA11
4D037AB03
4D037BA18
(57)【要約】
【課題】
大腸菌等よりも紫外線への耐性が高い一般細菌の不活化を可能とするとともに、大量の被処理液を効率よく処理可能とする紫外線LED光源を備えた紫外線殺菌装置を得る。
【解決手段】
一端を被処理水の導入口15とするとともに他端を当該被処理水の導出口16とする筒状のリアクター1と、当該リアクター1を流通する被処理水に向けて紫外線14を照射可能とする紫外線LED光源11と、当該紫外線LED光源11及び上記リアクター1を収納するケーシング2とを備えた紫外線殺菌装置において、上記リアクター1は、少なくとも長さ方向中央部の断面形状を扁平形状とし、この中央部の対向位置に上記紫外線LED光源11を配置し、当該紫外線LED光源11から上記中央部内に流通する上記被処理水に向けて、紫外線14を照射可能とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を被処理水の導入口とするとともに他端を当該被処理水の導出口とする筒状のリアクターと、当該リアクターを流通する被処理水に向けて紫外線を照射可能とする紫外線LED光源と、当該紫外線LED光源及び上記リアクターを収納するケーシングとを備えた紫外線殺菌装置において、上記リアクターは、少なくとも長さ方向中央部の断面形状を扁平形状とし、この中央部の対向位置に上記紫外線LED光源を配置し、当該紫外線LED光源から上記中央部内に流通する上記被処理水に向けて、紫外線を照射可能としたことを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
上記紫外線LED光源は、上記リアクターの中央部の一側面側に配置するとともに、この一側面とは反対側の他側面側には、反射板を上記中央部の対向位置に設けたことを特徴とする請求項1の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
上記紫外線LED光源は、上記リアクターの中央部の両側に対向させて配置したことを特徴とする請求項1の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
上記リアクターは、長さ方向の一側を凹設して凹部を形成することにより上記中央部の断面形状を扁平形状とするとともに、当該凹部の対向位置に上記紫外線LED光源を配置したことを特徴とする請求項2の紫外線殺菌装置。
【請求項5】
上記リアクターは、長さ方向の両側を各々凹設して凹部を形成することにより上記中央部の断面形状を扁平形状とするとともに、当該一対の凹部の対向位置に上記紫外線LED光源を各々配置したことを特徴とする請求項3の紫外線殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、河川水、工業用水、井戸水、上水、純水から工場廃水や生活廃水、シロップ等の各種液体等に紫外線を照射して殺菌するためのLED光源を用いた紫外線殺菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理液に紫外線を照射して殺菌する装置は従来より一般的に知られており、特に紫外線ランプを収納した石英管をリアクター内に配置し、このリアクター内に被処理液を流通させた状態で、当該被処理液に上記紫外線ランプが発する紫外線を照射することにより、当該被処理液の殺菌を行う紫外線殺菌装置が既に広く使用されている。しかしながらこのように紫外線ランプを用いた装置は、経時劣化により紫外線の照射量が低下するため、紫外線照射量の低下がみられた場合には当該紫外線ランプを交換する必要があった。
【0003】
そこでこのような欠点を解消するために、従来の紫外線ランプに変わって特許文献1に示す如く上記紫外線ランプよりも比較的長期間にわたって紫外線の照射量を良好に維持可能な紫外線LED光源を用いた紫外線殺菌装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら産業用等に使用されている流水式の紫外線殺菌装置では、依然として光源に低圧又は高圧紫外線ランプを使用することが一般的である。その主な理由としては、紫外線ランプは大流量の被処理液を処理することが可能であるとともに、大腸菌などよりも紫外線への耐性が高い一般細菌を3log以上不活化させる能力を備えていることにある。これに対し、すでに公知となっている紫外線LED光源を用いた紫外線殺菌装置は、上記紫外線ランプを用いたものと比較して紫外線の照射効率が劣るため、紫外線への耐性が弱い大腸菌等を対象とするのみであり、大腸菌よりも紫外線への耐性が比較的強い一般細菌を対象とすることが困難であった。但し、流速を遅くすることにより照射線量を増やすことができるため一般細菌を不活化することは可能であるが、流量が少なすぎるため実用的ではない。
【0006】
また従来の紫外線LED殺菌装置に断面正円形のリアクターを用いた場合には、当該リアクターを流通する被処理液の殺菌を行った際に、場合によっては当該リアクターの軸心部分にまで紫外線が届かない、あるいは強度が弱いため、大流量の被処理液を処理することが困難であった。よってこのような問題を解消するためには、特許文献1に示す如く多数の紫外線LED光源を装置内に配置しなければならず、コストが高くつくとともに発熱による問題が生じるおそれがあった。
【0007】
そこで本願では上述の如き課題を解決しようとするものであって、大腸菌等よりも紫外線への耐性が高い一般細菌の不活化を可能とするとともに、大量の被処理液を効率よく処理可能とする紫外線LED光源を備えた紫外線殺菌装置を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の如き課題を解決するため、本願発明は、一端を被処理水の導入口とするとともに他端を当該被処理水の導出口とする筒状のリアクターと、当該リアクターを流通する被処理水に向けて紫外線を照射可能とする紫外線LED光源と、当該紫外線LED光源及び上記リアクターを収納するケーシングとを備えた紫外線殺菌装置において、上記リアクターは、少なくとも長さ方向中央部の断面形状を扁平形状とし、この中央部の対向位置に上記紫外線LED光源を配置し、当該紫外線LED光源から上記中央部内に流通する上記被処理水に向けて、紫外線を照射可能としたものである。
【0009】
尚、本発明の紫外線LED光源としては深紫外LED光源を使用することができる。また当該深紫外LED光源のピーク波長は260nm~285nmの範囲のものが好ましく、更には260nm~265nmの範囲のものがより好ましい。また本発明の紫外線LED光源は、リアクターへの照射が途切れることのないよう照射方向を円錐状に広がるよう形状を加工したり、発熱等が生じないようヒートシンクを組付けたり配置バランスを考慮する等、装置の構造を工夫した上で使用することが好ましい。
【0010】
また、上記紫外線LED光源は、上記リアクターの中央部の一側面側に配置するとともに、この一側面とは反対側の他側面側には、反射板を上記中央部の対向位置に設けたものであっても良い。このように反射板を設けることにより、一側面側に配置した紫外線LED光源から発光した光線が反射板に突き当たって反射し、再度リアクターに向けて照射されるものとなるため、紫外線の照射強度を更に高めることが可能となる。
【0011】
また上記紫外線LED光源は、上記リアクターの中央部の両側に対向させて配置したものであっても良い。上記の如く紫外線LED光源をリアクター中央部の両側に対応させて配置することにより、リアクターを流通する被処理液にリアクターの両側から紫外線を照射することが可能となるため、当該リアクターを流れる被処理液に対して確実に紫外線の照射を行うことが可能となる。
【0012】
また上記リアクターは、長さ方向の一側を凹設して凹部を形成することにより上記中央部の断面形状を扁平形状とするとともに、当該凹部の対向位置に上記紫外線LED光源を配置したり、長さ方向の両側を各々凹設して凹部を形成することにより上記中央部の断面形状を扁平形状とするとともに、当該一対の凹部の対向位置に上記紫外線LED光源を各々配置したりするものであっても良い。
【0013】
上記の如くリアクターの凹部位置に紫外線LED光源を配置することにより、ケーシング内におけるリアクターと紫外線LED光源との間に無駄なスペースが生じることなく効率の良い配置を行うことができるため、レイアウト性を高めて装置の小型化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は上記の如く、光源として紫外線LED光源を使用するものであるから、従来の紫外線ランプの装置と比較して、瞬時の点灯を行うことができるとともに省エネルギーの装置を得ることができるという利点を有する。また上記の如く、リアクター中央部の断面形状を扁平形状としたものであるから、当該リアクターを流れる被処理液の液層を薄くすることが可能となる。
【0015】
そのため、この薄い液層に向かって紫外線を照射することにより、当該リアクターを流れる被処理液全体に紫外線を確実に照射することが可能となり、殺菌作業を効率よく行うことができる。またこのような薄い液層に紫外線を照射することにより、当該液層に届く紫外線の強度が高いものとなる。よって、必要最低限の個数の紫外線LED光源により殺菌効果を高めることが可能となることから、大腸菌等のみならず紫外線への耐性が比較的強い一般細菌をも不活化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図6】実施例1の紫外線LED光源からの光線及びリアクターとの位置関係を示す概念図。
【実施例0017】
本願発明の実施例1について説明すると、
図1に示す如く(1)はリアクターであって、長尺な直方体形状のケーシング(2)内に収納されている。このリアクター(1)は、断面形状が円形の石英管の両端を除く中央部の一側に、
図2に示す如く当該石英管の長さ方向に長尺な凹部(3)を設けることにより、当該凹部(3)の断面形状を
図3に示す如く扁平形状としている。そしてこのリアクター(1)の一端開口部を、被処理液を外方から当該リアクター(1)内に導入するための導入口(15)とするとともに、他端開口部を上記導入口(15)から流入した被処理液を外方に排出するための導出口(16)としている。尚、本実施例のリアクター(1)は上記の如く石英管にて形成しているが、他の異なる実施例ではこれに限らず、紫外線透過ガラス管やフッ素樹脂管等により形成したものであっても良い。
【0018】
また
図1に示す如く、上記ケーシング(2)の長さ方向両端の側壁(4)にはそれぞれ側壁開口(5)を備えており、当該ケーシング(2)内に上記リアクター(1)を水平方向に配置するとともに、当該リアクター(1)の両端を上記一対の側壁開口(5)から外方に突出させた状態で貫通配置している。また上記リアクター(1)は、上記ケーシング(2)内において凹部(3)が
図1における上方に位置するとともに、当該リアクター(1)の凹部(3)の上面(6)が水平方向に配置されるよう上記ケーシング(2)に組付けられている。
【0019】
また上記ケーシング(2)の両側壁(4)には、上記リアクター(1)の両端に連続する開口突部(7)をそれぞれ突出配置している。また
図1に示す如く、上記リアクター(1)に設けた凹部(3)の対向位置には、一定間隔を介して紫外線LEDモジュール(8)を配置している。この紫外線LEDモジュール(8)は、
図4に示す如く基板(10)の表面に8個の紫外線LED光源(11)となる紫外線LED素子を組付けて成るものである。
【0020】
またこの紫外線LEDモジュール(8)は
図1に示す如く、上記凹部(3)内に位置することができるよう当該凹部(3)の形成長さよりやや短い長さとしている。そしてこの紫外線LEDモジュール(8)の紫外線LED光源(11)配置側を、
図1、5に示す如く上記リアクター(1)の凹部(3)とは一定間隔を介した対向位置に配置した状態で、当該紫外線LEDモジュール(8)を上記ケーシング(2)内に組み付けている。
【0021】
また
図1、5に示す如く、上記リアクター(1)の凹部(3)を備えた一側面とは反対側の他側面側には、上記リアクター(1)の長さ方向に長尺な反射板(12)を備えている。即ち当該反射板(12)は、その形成長さを上記紫外線LEDモジュール(8)の形成長さよりもやや長いものとしている。そして
図1、5に示す如く、そしてこの反射板(12)を湾曲させた状態で上記リアクター(1)の凹部(3)外周を被覆し、当該反射板(12)の長辺側の両側を上記紫外線LEDモジュール(8)の両側(13)にそれぞれ接続固定している。
【0022】
上記の如く反射板(12)を組み付けることにより、当該反射板(12)は
図1に示す如く、上記リアクター(1)を介して上記紫外線LED光源(11)の対向位置に位置するものとなる。このように反射板(12)を設けることにより、上記紫外線LEDモジュール(8)の紫外線LED光源(11)から発光した紫外線(14)が上記反射板(12)に突き当たって反射し、当該紫外線(14)が再度リアクター(1)に向けて照射されるものとなるため、被処理液中の細菌等の不活化を更に効率的に促進することが可能となる。
【0023】
上記の如く構成した紫外線殺菌装置による被処理液の殺菌方法について以下に説明する。まず、上記紫外線LEDモジュール(8)に組付けた紫外線LED光源(11)を点灯し、当該紫外線LED光源(11)から上記リアクター(1)の凹部(3)に紫外線(14)を照射する。この状態において、上記ケーシング(2)の開口突部(7)を通じて上記リアクター(1)の導入口(15)から導出口に向けて被処理液を連続的に流通させる。これにより、当該被処理液が上記リアクター(1)の凹部(3)を通過する際に、上記紫外線LEDモジュール(8)に固定配置された紫外線LED光源(11)から紫外線(14)が照射され、当該被処理液中の菌が連続的に殺菌される。
【0024】
ここで、上記紫外線LEDモジュール(8)には、上記の如く紫外線LED光源(11)が8個固定されている。そしてこれら8個からの光源から照射される紫外線(14)は、
図6に示す如くリアクター(1)に向けて照射される。この時、各光源からはそれぞれ個別に紫外線(14)が照射されることから、上記紫外線LED光源(11)の配置間隔が広くなりすぎた場合には、当該リアクター(1)において当該紫外線(14)が照射されない箇所が存在してしまうおそれが生じる。
【0025】
そして上記リアクター(1)に紫外線(14)が照射されない箇所が生じた場合には、被処理液を十分に殺菌することができずに殺菌効果が低減するおそれがある。そのため、
図6に示す如く上記紫外線LED光源(11)からの照射が上記リアクター(1)の全ての位置において途切れることなく確実に照射されるよう、当該各紫外線LED光源(11)の個数や配置間隔、当該紫外線LED光源(11)からリアクター(1)までの距離を予め調整している。
【0026】
また本実施例では上記の如く、断面形状を扁平形状としたリアクター(1)の凹部(3)の対向位置に紫外線LED光源(11)を配置していることから、当該リアクター(1)を流れる被処理液の液層が薄いものとなる。そのためこの薄い液層に向かって紫外線(14)を照射することにより、当該リアクター(1)の凹部(3)を流れる被処理液全体に紫外線(14)を確実にまんべんなく照射することが可能となり、殺菌作業を効率よく行うことができる。
【0027】
またこのような薄い液層に紫外線(14)を照射することにより、当該液層に比較的強い強度の紫外線(14)が照射されるものとなるため、必要最小限の個数の紫外線LED光源(11)を用いて殺菌効果を高めることができる。よって、大腸菌等のみならず紫外線に対する耐性の強い一般細菌をも不活化することができるとともに、多数の紫外線LED光源(11)を用いる必要がなく装置自体のコストを低く抑えることが可能となる。
上記の如く、リアクター(31)の両側に凹部(33)を形成するとともに、当該凹部(33)に対応する位置にそれぞれ紫外線LEDモジュール(38)を組付けて上記紫外線LED光源(41)をリアクター(31)中央部の両側に対向させて配置することにより、リアクター(31)を流通する被処理液にリアクター(31)の両側から光線を照射することが可能となる。よって、リアクター(31)の凹部(33)内を流通する被処理液に、当該リアクター(31)の両側から紫外線を照射することができるため、上記被処理液中の菌を確実に不活化することが可能となる。尚、上記の如く構成した紫外線殺菌装置を用いた被処理液の殺菌方法については、上記実施例1と同様である。