(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154024
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】アスファルト混合物
(51)【国際特許分類】
C08L 95/00 20060101AFI20241023BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241023BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241023BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C08L95/00
C08K3/04
C08K3/013
E01C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067602
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000232508
【氏名又は名称】日本道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】工藤 朗
(72)【発明者】
【氏名】美馬 孝之
(72)【発明者】
【氏名】廣郡 俊彦
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AA05
2D051AF01
2D051AG01
2D051AG05
4J002AG001
4J002DA017
4J002DE086
4J002DE146
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DM006
4J002FD016
4J002FD207
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】カーボンニュートラル又はカーボンネガティブに寄与し得るアスファルト混合物を提供する。
【解決手段】アスファルトと、骨材と、フィラーと、バイオ炭とを少なくとも含む、アスファルト混合物である。バイオ炭としては、粉粒状であり、特定のアスファルト混合物の標準配合で定められる成分組成中における骨材の一部が置き換えられて存在してもよいし、特定のアスファルト混合物の標準配合で定められる成分組成に対してさらに追加添加されていてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトと、骨材と、フィラーと、バイオ炭とを少なくとも含む、アスファルト混合物。
【請求項2】
前記バイオ炭が粉粒状である、請求項1に記載のアスファルト混合物。
【請求項3】
前記バイオ炭を、0質量%超10質量%以下含む、請求項1又は2に記載のアスファルト混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物は、主に道路のアスファルト舗装に使用される複合材料であり、石や砂、石粉のような鉱物からなる骨材とアスファルト(化石燃料の残渣物)とを混合して得られる。また、混合時には骨材を200℃程度に専用のバーナーで加熱するとともにアスファルトも160℃~180℃程度に電気で加熱することでアスファルトを軟化させ骨材とアスファルトとを混ぜ合わせる。
【0003】
アスファルト混合物は、上記の通り、使用材料が骨材(鉱物)及びアスファルトであり、材料運搬時において温室効果ガスである二酸化炭素を排出するとともに、製造時も加熱により二酸化炭素を排出する。そのため、カーボンニュートラルの時代にはそぐわない建設資材と言え、対応策が必要となっている。特許文献1においては、アスファルト混合物を製造する際に発生する二酸化炭素の排出を削減することが可能なアスファルト混合物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のアスファルト混合物の製造方法は、骨材の乾燥時に発生する二酸化炭素を分離して回収し、回収した二酸化炭素を骨材に固定する工程を有するものであり、大掛かりな設備が必要であり、コストの増加を招く。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、カーボンニュートラル又はカーボンネガティブに寄与し得るアスファルト混合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)アスファルトと、骨材と、フィラーと、バイオ炭とを少なくとも含む、アスファルト混合物。
【0008】
(2)前記バイオ炭が粉粒状である、前記(1)に記載のアスファルト混合物。
【0009】
(3)前記バイオ炭を、0質量%超10質量%以下含む、前記(1)又は(2)に記載のアスファルト混合物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カーボンニュートラル又はカーボンネガティブに寄与し得るアスファルト混合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態のアスファルト混合物は、アスファルトと、骨材と、フィラーと、バイオ炭とを少なくとも含む。
本実施形態のアスファルト混合物においては、石や砂等の骨材等の成分の一部又は骨材等の成分に加えて、炭素を固定化したバイオ炭に置き換えることでカーボンニュートラル又はカーボンネガティブに寄与し得る。ここで、バイオ炭とは、木炭や竹炭などが該当し、「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」と定義される。バイオ炭の原料となる木材や竹等に含まれる炭素は、そのままにしておくと微生物の活動等により分解され、二酸化炭素として大気中に放出される。しかし、木材や竹などを炭化し、バイオ炭として炭素を固定化すれば、二酸化炭素として排出することを抑制することができる。そして、本実施形態においては、アスファルト混合物中において、そのようなバイオ炭を、骨材等の成分に置き換えて、又は骨材等の成分に追加して添加することで、カーボンニュートラル又はカーボンネガティブに寄与し得る。
以下、本実施形態のアスファルト混合物について説明する。
【0012】
[アスファルト]
アスファルトは、石油から製造される高分子材料で、高温下では液体状であるが、温度が下がると粘性が上昇する性質を有する。アスファルトとしては、種々のアスファルトが使用可能である。例えば、舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等のポリマー(高分子材料)で改質したアスファルト等が挙げられる。ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等にかけて得られる残留瀝青物質のことである。また、ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトを加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。
【0013】
[骨材]
骨材としては、 粒径2.36mm以上の粗骨材及び粒径2.36mm未満の細骨材が挙げられる。粗骨材とは、2.36mmふるいに留まる骨材である。細骨材とは、2.36mmふるいを透過して0.075mmふるいに留まる骨材である
粗骨材としては、例えば、粒径2.36mm以上4.75mm未満の7号砕石、粒径4.75mm以上13.2mm未満の6号砕石、粒径13.2mm以上19mm未満の5号砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm未満の4号砕石が挙げられる。
細骨材は、粒径0.075mm以上2.36mm未満の細骨材である。例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、粗砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂、再生骨材破砕砂等が挙げられる。
【0014】
[フィラー]
本実施形態において、フィラーとしては、石粉、消石灰、セメント、回収ダスト、フライアッシュ等が用いられる。ここで、本実施形態において、フィラーにはバイオ炭は含まない。
【0015】
アスファルト混合物中の骨材とフィラーの含有量は、90~97質量%であることが好ましく、一般地域では93~97質量%であることがより好ましく、積雪寒冷地域では90~95質量%であることがさらに好ましい。
【0016】
[バイオ炭]
本実施形態のアスファルト混合物はバイオ炭を含むが、上記の通り、炭素が固定化されているため、二酸化炭素として排出することを抑制することができ、カーボンニュートラル又はカーボンネガティブに資する。
【0017】
バイオ炭は、骨材の一部と置き換えるか、又は骨材に対して追加添加することが好ましい。そのため、その形状は粉粒状であることが好ましい。下記表1に、バイオ炭、砕砂、及び細砂の累積粒度分布の一例を示す。具体的には、目開きがそれぞれ2.36mm、0.6mm、0.3mm、0.15mm、及び0.075mmの篩を通過するバイオ炭、砕砂、及び細砂のそれぞれの質量百分率を示す。
【0018】
【0019】
バイオ炭としては、中でも、J-クレジットとして認証されているバイオ炭を使用することが好ましい。J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用による二酸化炭素等の排出削減量や、適切な森林管理による二酸化炭素等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度である。
【0020】
本実施形態においては、舗装施工便覧(平成18年発行)等に記載された表-6.3.1「アスファルト混合物の種類と粒度範囲」において規定される特定の混合物における、粒径2.36mm以下の成分の一部がバイオ炭に置き換えられて存在する形態(以下、「第1形態」と呼ぶ。)と、同「アスファルト混合物の種類と粒度範囲」において規定される特定の混合物に対して、さらにバイオ炭が添加されている形態(以下、「第2形態」と呼ぶ。)とがある。
【0021】
第1形態においては、舗装施工便覧(平成18年発行)等に記載された表-6.3.1「アスファルト混合物の種類と粒度範囲」において規定される特定の混合物において、粒径2.36mm以下の成分の一部がバイオ炭に置き換えられて存在する。舗装施工便覧(平成18年発行)に記載された表-6.3.1「アスファルト混合物の種類と粒度範囲」を、下記表2に示す。
【0022】
【0023】
例えば、上記表における「密粒度アスファルト混合物(13)」において、粒径600μmの成分の一部又は全部を、同等の粒径を有する粉粒状のバイオ炭に置き換えることが挙げられる。すなわち、バイオ炭の粒径範囲と含有量は、上記舗装施工便覧で定められた細砂や粗砂の粒径範囲及び含有量となる。一例を下記表1に示す。表1中、標準配合で定められた成分組成は、6号砕石、7号砕石、砕砂、細砂、及び石粉を含む。そして、第1形態においては、標準配合における細砂4.0質量%をバイオ炭4.0質量%に置き換えている。
【0024】
【0025】
一方、第2形態においては、上記「アスファルト混合物の種類と粒度範囲」において規定される特定の混合物に対して、さらにバイオ炭が添加されている。例えば、上記表2において記載されている成分をそのまま有し、さらにバイオ炭を追加したものが挙げられる。
【0026】
バイオ炭は、多量に用いるほどカーボンニュートラル又はカーボンネガティブに寄与し得るが、アスファルト混合物の強度との兼ね合いから、アスファルト混合物全体に対して0質量%超10質量%以下含むことが好ましく、2~10質量%含むことがより好ましく、3~10質量%含むことがさらに好ましい。
【0027】
ここで、バイオ炭を使用した場合における、原料収集から製造時における二酸化炭素排出量を考慮した、実質的な二酸化炭素(CO2)の固定量について示す。バイオ炭による実質的なCO2固定量は、以下の式(1)で表される。
バイオ炭による実質的なCO2固定量(A)=バイオ炭によるCO2固定量(B)-原料収集及び製造時におけるCO2排出量(C)・・・式(1)
上記式中、バイオ炭によるCO2固定量(B)は、炭素含有率×100年後の炭素残存率×CO2の分子量(=44)/炭素の原子量(=12)で表される。また、上記炭素含有率は、固定炭素(0.89)×水分補正(1-0.15)で与えられ、100年後の炭素残存率はJ-クレジットの方法論により0.89とする。従って、
バイオ炭によるCO2固定量(B)=0.89×(1-0.15)×0.89×44/12=2.469kg-CO2/kgとなる。
原料収集及び製造時におけるCO2排出量(C)は、原料収集によるCO2排出量+製造時におけるCO2排出量で表される。そして、奈良炭化工業株式会社による実績値により、原料収集によるCO2排出量は0.057kg-CO2/kg、製造時におけるCO2排出量は0.176kg-CO2/kgであるため、0.233kg-CO2/kgとなる。
よって、バイオ炭による実質的なCO2固定量(A)=2.469kg-CO2/kg-0.233kg-CO2/kg=2.23kg-CO2/kgとなる。すなわち、バイオ炭1kg当たり、2.23gの二酸化炭素を固定化することができる。
【0028】
以上の計算に基づき、バイオ炭を使用したアスファルト混合物と、バイオ炭を使用しない通常のアスファルト混合物とで、二酸化炭素の排出量を試算すると、下記表3に示すようになる。表3におおいて、バイオ炭を使用したアスファルト混合物を「バイオ炭使用」と表記し、バイオ炭を使用しない通常のアスファルト混合物を「通常」と表記した。
【0029】
【0030】
表3より、バイオ炭を使用したアスファルト混合物は、バイオ炭を使用しなお通常のアスファルト混合物と比較して、二酸化炭素を大幅に抑制できることが分かる。すなわち、本実施形態のアスファルト混合物は、カーボンニュートラル又はカーボンネガティブに資する。
【0031】
本実施形態のアスファルト混合物は、通常のアスファルト混合物の製造と同様にして製造することができる。例えば、加熱した骨材と、フィラーと、アスファルトと、バイオ炭とを、定法により混合することで得られる。 混合は、加熱した骨材、フィラー、アスファルト及びバイオ炭を同時に又は順不同で混合することができる。