IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社GSユアサの特許一覧

<>
  • 特開-DC/DCコンバータ 図1
  • 特開-DC/DCコンバータ 図2
  • 特開-DC/DCコンバータ 図3
  • 特開-DC/DCコンバータ 図4
  • 特開-DC/DCコンバータ 図5
  • 特開-DC/DCコンバータ 図6
  • 特開-DC/DCコンバータ 図7
  • 特開-DC/DCコンバータ 図8
  • 特開-DC/DCコンバータ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154025
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 Q
H02M3/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067603
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】高木 一斗
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB27
5H730BB57
5H730BB61
5H730BB82
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE07
5H730EE12
5H730EE72
5H730FG01
5H730FG10
5H730FG22
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】インダクタの漏れ磁束インダクタンスの調整に依らずに二種類の回路動作用インダクタンス値を設定可能なDC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】絶縁トランスT1、T2を介して接続された一次側回路10と二次側回路20とのそれぞれにフルブリッジ回路11、21を備える。DC/DCコンバータ1は、LLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作とを切り替え可能である。DC/DCコンバータ1は、絶縁トランスT1、T2と一次側回路10との間に接続された複数のインダクタLr1~Lr4を備える。複数のインダクタLr1~Lr4は、LLC共振コンバータ動作の電流経路では、発生する磁束が打ち消されて小さいインダクタンス値に設定される。複数のインダクタLr1~Lr4は、DABコンバータ動作の電流経路では、発生する磁束が打ち消されることなく大きいインダクタンス値に設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁トランスを介して接続された一次側回路と二次側回路とのそれぞれにフルブリッジ回路を備え、LLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作とを切り替え可能なDC/DCコンバータであって、
前記絶縁トランスと前記一次側回路との間に接続された複数のインダクタを備え、
複数の前記インダクタは、前記LLC共振コンバータ動作の電流経路では、発生する磁束が打ち消されて小さいインダクタンス値に設定され、前記DABコンバータ動作の電流経路では、発生する磁束が打ち消されることなく大きいインダクタンス値に設定されるDC/DCコンバータ。
【請求項2】
複数の前記インダクタは、
前記LLC共振コンバータ動作及び前記DABコンバータ動作の共通の電流経路に接続された第1インダクタと、
前記LLC共振コンバータ動作のみの電流経路に接続され、前記第1インダクタと磁気的に結合された第2インダクタと、を備える請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
絶縁トランスを介して接続された一次側回路と二次側回路とのそれぞれにフルブリッジ回路を備え、LLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作とを切り替え可能なDC/DCコンバータであって、
前記絶縁トランスは、ハイサイド側一次巻線とローサイド側一次巻線とを備え、
前記一次側回路において、前記フルブリッジ回路の第1スイッチングレグ及び第2スイッチングレグのそれぞれ中点の間には、第1インダクタと、前記ハイサイド側一次巻線と、前記ローサイド側一次巻線と、第3インダクタと、が直列に接続されると共に、前記ハイサイド側一次巻線と前記ローサイド側一次巻線との接続点と、一端が高電位側入出力端子もしくは低電位側入出力端子に接続されたキャパシタの他端との間には、前記第1インダクタと磁気的に結合された第2インダクタと、前記第3インダクタと磁気的に結合され第4インダクタと、が直列に接続されるDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記第2インダクタ及び前記第4インダクタは、前記LLC共振コンバータ動作の電流経路で電流が流れるとき、前記第1インダクタ前記第3インダクタでそれぞれ発生する磁束を打ち消す向きにそれぞれ巻かれている請求項3に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1インダクタと前記第2インダクタとは、四脚コアの第1の中脚に、前記第3インダクタと前記第4インダクタとは、前記四脚コアの第2の中脚にそれぞれ巻かれている請求項3又は4に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
請求項1に記載のDC/DCコンバータの一次側高電位側入出力端子と一次側低電位側入出力端子との間に蓄電池装置が接続され、
前記一次側高電位側入出力端子と、二次側高電位側入出力端子とが接続され、前記一次側低電位側入出力端子と、二次側低電位側入出力端子との間に直流電源が接続された部分電力変換装置。
【請求項7】
請求項1に記載のDC/DCコンバータN台(Nは2以上の整数)を、一次側入出力と二次側入出力をそれぞれ並列に接続し、360°/Nの位相差で動作させるN相のマルチフェーズコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LLC共振コンバータの動作とDAB(Dual Active Bridge)コンバータの動作とを切り替え可能なDC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DCコンバータの一種として、LLC共振コンバータの動作とDABコンバータの動作とを切り替えることが可能な絶縁形DC/DCコンバータが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1のDC/DCコンバータは、一次側回路と、二次側回路と、それを結合するトランスを備える。一次側回路及び二次側回路は、二つのスイッチングレグを有するフルブリッジ回路を備える。一次側回路の二つのスイッチングレグとトランスとの間には、磁気的に疎結合された二つのインダクタがそれぞれ接続されている。
【0003】
非特許文献1のDC/DCコンバータは、一次側回路の上二つ下二つのスイッチをそれぞれ組として同時にスイッチングし、二次側回路を同期整流またはダイオード整流とした場合、LLC共振コンバータの動作となる。非特許文献1のDC/DCコンバータは、一次側回路と二次側回路とで位相差を設けて対角のスイッチを組として同時にスイッチングした場合、DABコンバータの動作となる。インダクタの疎結合により、LLC共振コンバータ動作時とDABコンバータ動作時とで、別々のインダクタンス値を設定できる。LLC共振コンバータ動作時はインダクタンスが小さく、DABコンバータ動作時は大きく現れる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】X. Chen, G. Xu, H. Han, Y. Sun and M. Su, “Dual-mode bidirectional LLC-DAB converter based on modulated coupled inductor,” IEEE Trans. Power Electron.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、疎結合インダクタ、つまり漏れインダクタンスの形成は、製造上の困難を伴う。例えば、分割ボビンを用いて漏れインダクタンスを形成する場合は、巻線間で大きな漏れ磁束が発生し損失が増加する。パスコアと呼ばれる追加のコアで漏れインダクタンスを形成する場合は、パスコアの微細な調整が必要になり、製造が難しい。
【0006】
本発明の一態様は、インダクタの漏れインダクタンスを考慮することなく、インダクタのインダクタンスをLLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作とで変更できるDC/DCコンバータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るDC/DCコンバータは、絶縁トランスを介して接続された一次側回路と二次側回路とのそれぞれにフルブリッジ回路を備える。DC/DCコンバータは、LLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作とを切り替え可能である。DC/DCコンバータは、前記絶縁トランスと前記一次側回路との間に接続された複数のインダクタを備える。複数の前記インダクタは、前記LLC共振コンバータ動作の電流経路では、発生する磁束が打ち消されて小さいインダクタンス値に設定される。複数の前記インダクタは、前記DABコンバータ動作の電流経路では、発生する磁束が打ち消されることなく大きいインダクタンス値に設定される。
本発明の一態様に係るDC/DCコンバータは、絶縁トランスを介して接続された一次側回路と二次側回路とのそれぞれにフルブリッジ回路を備える。DC/DCコンバータは、LLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作とを切り替え可能である。前記絶縁トランスは、ハイサイド側一次巻線とローサイド側一次巻線とを備える。前記一次側回路において、前記フルブリッジ回路の第1スイッチングレグ及び第2スイッチングレグのそれぞれ中点の間には、第1インダクタと、前記ハイサイド側一次巻線と、前記ローサイド側一次巻線と、第3インダクタと、が直列に接続される。前記ハイサイド側一次巻線と前記ローサイド側一次巻線との接続点と、一端が高電位側入出力端子もしくは低電位側入出力端子に接続されたキャパシタの他端との間には、前記第1インダクタと磁気的に結合された第2インダクタと、前記第3インダクタと磁気的に密結合され第4インダクタと、が直列に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、インダクタの漏れインダクタンスの困難な調整を伴わずに、LLC共振コンバータ動作のための小さなインダクタンスとDABコンバータ動作のための大きなインダクタンスの二つを別々に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】DC/DCコンバータの実施の形態の回路構成を示す図である。
図2図1に示す結合インダクタの構成を示す図である。
図3図1に示すDC/DCコンバータのLLC共振コンバータ動作を示す図である。
図4図1に示すDABコンバータのLLC共振コンバータ動作を示す図である。
図5】巻数比とインダクタンス比との関係を示すグラフある。
図6図1に示すDC/DCコンバータの変形例を示す図である。
図7図1に示す結合インダクタの変形例を示す図である。
図8図1に示すDC/DCコンバータを用いた部分電力変換装置の構成を示す図である。
図9図1に示すDC/DCコンバータを用いた三相のマルチフェーズコンバータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の実施の形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0011】
本実施の形態のDC/DCコンバータ1は、図1を参照すると、絶縁トランスT1、T2で結合された一次側回路10及び二次側回路20と、制御回路30と、を備える。絶縁トランスT1は、ハイサイド側に配置された一次巻線T11及び二次巻線T12を備える。絶縁トランスT2は、ローサイド側に配置された一次巻線T21及び二次巻線T22を備える。
【0012】
一次側回路10は、一次側フルブリッジ回路11と、第1のキャパシタC1と、第2のキャパシタC2と、第1のインダクタLr1と、第2のインダクタLr2と、第3のインダクタLr3と、第4のインダクタLr4と、を備える。
【0013】
一次側フルブリッジ回路11は、第1のスイッチ素子S1と、第2のスイッチ素子S2と、第3のスイッチ素子S3と、第4のスイッチ素子S4と、を備えたフルブリッジ回路である。スイッチ素子S1~S4は、例えば、還流ダイオードを備えたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成される。スイッチ素子S1~S4は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他のスイッチ素子でもよい。
【0014】
スイッチ素子S1とスイッチ素子S2とは、一次側の高電位側入出力端子A11と低電位側入出力端子A12との間に直列に接続され、第1のスイッチングレグB11を構成する。スイッチ素子S1は、ハイサイドスイッチであり、ドレインが高電位側入出力端子A11に、ソースがスイッチングレグB11の中点X11にそれぞれ接続される。スイッチ素子S2は、スイッチ素子S2のローサイドスイッチであり、ドレインがスイッチングレグB11の中点X11に、ソースが低電位側入出力端子A12にそれぞれ接続される。
【0015】
スイッチ素子S3とスイッチ素子S4とは、一次側の高電位側入出力端子A11と低電位側入出力端子A12との間に直列に接続され、第2のスイッチングレグB12を構成する。スイッチ素子S3は、ハイサイドスイッチであり、ドレインが高電位側入出力端子A11に、ソースがスイッチングレグB12の中点X12にそれぞれ接続される。スイッチ素子S4は、ローサイドスイッチであり、ドレインがスイッチングレグB12の中点X12に、ソースが低電位側入出力端子A12にそれぞれ接続される。
【0016】
中点X11と中点X12との間には、インダクタLr1と、絶縁トランスT1の一次巻線T11と、絶縁トランスT2の一次巻線T21と、インダクタLr3と、が直列に接続される。
【0017】
キャパシタC1とキャパシタC2とは、一次側の高電位側入出力端子A11と低電位側入出力端子A12との間に直列に接続されている。キャパシタC1とキャパシタC2との接続点Y1は、インダクタLr4と、インダクタLr2と、を介して絶縁トランスT1の一次巻線T11と絶縁トランスT2の一次巻線T21との接続点Z1に接続される。
【0018】
インダクタLr1及びインダクタLr2と、インダクタLr3及びインダクタLr4とは、それぞれ磁気的に密結合された結合インダクタL11、L12として構成されている。
【0019】
図2を参照すると、結合インダクタL11は、三脚コアCRのギャップが形成された中脚に、インダクタLr1が巻数Nで、インダクタLr2が巻数Nでそれぞれ巻かれている。結合インダクタL12は、三脚コアCRのギャップが形成された中脚に、インダクタLr3がインダクタLr1と同じ巻数Nで、インダクタLr4がインダクタLr2と同じ巻数Nでそれぞれ巻かれている。図2は、便宜上、ギャップの上下に巻線(Lr1及びLr2、Lr3及びLr4)を分割して示しているが、実際にはギャップを覆って重ね巻きされる。
【0020】
インダクタLr1と、インダクタLr2とは、図2に示す矢印A(端子aからb、端子cからd)、もしくは矢印B(端子dからc、端子bからa)の向きに電流が流れるとき、磁束を打ち消すように巻かれている。同様に、インダクタLr3と、インダクタLr4とは、図2に示す矢印A(端子eからf、端子gからh)もしくは矢印B(端子hからg、端子fからe)の向きに電流が流れるとき、磁束を打ち消すように巻かれている。
【0021】
三脚コアCRの磁気特性(磁化曲線)は、使用範囲(使用時に三脚コアCRに生じることが想定される磁界、磁束密度)の全体に亘ってほぼ線形関係にある。
【0022】
本発明は、インダクタLr1、Lr2(Lr3、Lr4)でそれぞれ発生した磁束が相互に貫く現象を利用している。結合インダクタL11、L12は、漏れインダクタンスの形成を前提として製造する必要がないことが重要で、厳密な密結合(漏れ磁束ゼロ、結合度K=1)である必要はない。結合インダクタL11、L12は、漏れ磁束がゼロに近く、結合度K=1に近い値であればよい。
【0023】
二次側回路20は、二次側フルブリッジ回路21と、第3のキャパシタC3と、第4のキャパシタC4と、を備える。
【0024】
二次側フルブリッジ回路21は、第5のスイッチ素子S5と、第6のスイッチ素子S6と、第7のスイッチ素子S7と、第8のスイッチ素子S8と、を備えたフルブリッジ回路である。スイッチ素子S5~S8は、例えば、還流ダイオードを備えたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成される。スイッチ素子S5~S8は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他のスイッチ素子でもよい。
【0025】
スイッチ素子S5とスイッチ素子S6とは、二次側の高電位側入出力端子A21と低電位側入出力端子A22との間に直列に接続され、第3のスイッチングレグB21を構成する。スイッチ素子S5は、ハイサイドスイッチであり、ドレインが高電位側入出力端子A21に、ソースが中点X21にそれぞれ接続される。スイッチ素子S6は、ローサイドスイッチであり、ドレインが中点X21に、ソースが低電位側入出力端子A22にそれぞれ接続される。
【0026】
スイッチ素子S7とスイッチ素子S8とは、二次側の高電位側入出力端子A21と低電位側入出力端子A22との間に直列に接続され、第4のスイッチングレグB22を構成する。スイッチ素子S7は、ハイサイドスイッチであり、ドレインが高電位側入出力端子A21に、ソースが中点X22にそれぞれ接続される。スイッチ素子S8は、ローサイドスイッチであり、ドレインが中点X22に、ソースが低電位側入出力端子A22にそれぞれ接続される。
【0027】
中点X21と中点X22とは、絶縁トランスT1の二次巻線T12と、絶縁トランスT2の二次巻線T22と、を介して接続される。
【0028】
キャパシタC3とキャパシタC4とは、二次側の高電位側入出力端子A21と低電位側入出力端子A22との間に直列に接続されている。キャパシタC3とキャパシタC4との接続点Y2は、絶縁トランスT1の二次巻線T12と絶縁トランスT2の二次巻線T22との接続点Z2に接続される。
【0029】
制御回路30は、スイッチ素子S1~S8をオンオフ制御するそれぞれのゲート信号(駆動信号)G1~G8を生成して出力する。制御回路30は、ゲート信号G1~G8のパターンを変更することで、LLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作を切り替える。
【0030】
(LLC共振コンバータ動作)
制御回路30は、図3(a)に示すように、一次側回路10の一次側フルブリッジ回路11を駆動するゲート信号G1、G3と、ゲート信号G2、G4と、をデューティ比50%の相補信号として出力する。ゲート信号G1、G3は、同じ信号であり、スイッチングレグB11、B12のハイサイドスイッチ(スイッチ素子S1、S3)を、同時にオンオフする。ゲート信号G2、G4は、同じ信号であり、スイッチングレグB11、B12のローサイドスイッチ(スイッチ素子S2、S4)を、同時にオンオフする。ゲート信号G1、G3と、ゲート信号G2、G4とは、相補信号であるため、ハイサイドスイッチ(スイッチ素子S1、S3)と、ローサイドスイッチ(スイッチ素子S2、S4)とは、相補的にスイッチングされる。ハイサイドスイッチと、ローサイドスイッチとは、デッドタイムを挟んでオンオフ制御されるが、動作に影響しないため、図3(a)においてデッドタイムは省略している。
【0031】
制御回路30は、二次側回路20のスイッチ素子S4~S8を同期整流で動作させるか、スイッチングせずにダイオード整流とする。
【0032】
スイッチングレグB11、B12において、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとを同時に相補的にスイッチングすることで、DC/DCコンバータ1は、二並列のハーフブリッジLLC共振コンバータとして動作する。
【0033】
スイッチ素子S1、S3の組がONで、スイッチ素子S2、S4の組がOFFである期間の大部分では、図3(b)に示すように、結合インダクタL11には、端子abcdの経路で、結合インダクタL12には、端子efghの経路でそれぞれ電流が流れる。スイッチ素子S1、S3の組がOFFで、スイッチ素子S2、S4の組がONである期間の大部分では、図3(c)に示すように、結合インダクタL11には、端子dcbaの経路で、結合インダクタL12には、端子hgfeの経路でそれぞれ電流が流れる。結合インダクタL11のインダクタLr2、結合インダクタL12のインダクタLr4には、二並列のハーフブリッジLLC共振コンバータの二回路分の電流が流れる。
【0034】
LLC共振コンバータ動作の電流経路において、結合インダクタL11及び結合インダクタL12のインダクタンスLLLCは、自己インダクタンスから相互インダクタンスを減じた小さな値となって現れる。
【0035】
(DABコンバータ動作)
制御回路30は、図4(a)に示すように、一次側回路10の一次側フルブリッジ回路11を駆動するゲート信号G1、G4と、ゲート信号G2、G3と、をデューティ比50%の相補信号として出力する。ゲート信号G1、G4は、同じ信号であり、スイッチングレグB11のハイサイドスイッチ(スイッチ素子S1)とスイッチングレグB12のローサイドスイッチ(スイッチ素子S4)とを、同時にオンオフする。ゲート信号G2、G3は、同じ信号であり、スイッチングレグB11のローサイドスイッチ(スイッチ素子S2)とスイッチングレグB12のハイサイドスイッチ(スイッチ素子S3)とを、同時にオンオフする。ゲート信号G1、G4と、ゲート信号G2、G3とは、相補信号であるため、スイッチ素子S1、S4と、スイッチ素子S2、S3とは、相補的にスイッチングされる。スイッチ素子S1、S4と、スイッチ素子S2、S3とは、デッドタイムを挟んでオンオフ制御されるが、動作に影響しないため、図4(a)においてデッドタイムは省略している。
【0036】
制御回路30は、図4(a)に示すように、二次側回路20の二次側フルブリッジ回路21を駆動するゲート信号G5、G8と、ゲート信号G6、G7と、をデューティ比50%の相補信号として出力する。ゲート信号G5、G8は、同じ信号であり、スイッチングレグB21のハイサイドスイッチ(スイッチ素子S5)とスイッチングレグB22のローサイドスイッチ(スイッチ素子S8)とを、同時にオンオフする。ゲート信号G6、G7は、同じ信号であり、スイッチングレグB21のローサイドスイッチ(スイッチ素子S6)とスイッチングレグB22のハイサイドスイッチ(スイッチ素子S7)とを、同時にオンオフする。ゲート信号G5、G8と、ゲート信号G6、G7とは、相補信号であるため、スイッチ素子S5、S8と、スイッチ素子S6、S7とは、相補的にスイッチングされる。スイッチ素子S5、S8と、スイッチ素子S6、S7とは、デッドタイムを挟んでオンオフ制御されるが、動作に影響しないため、図4(a)においてデッドタイムは省略している。
【0037】
制御回路30は、一次側フルブリッジ回路11を駆動するゲート信号G1、G4及びゲート信号G2、G3と、二次側フルブリッジ回路21を駆動するゲート信号G5、G8及びゲート信号G6、G7と、に位相差を設ける。位相が進んでいる側から遅れている側へ電力が伝送され、DC/DCコンバータ1は、双方向に電力伝送可能なDABコンバータとして動作する。
【0038】
スイッチ素子S1、S4の組がONで、スイッチ素子S2、S3の組がOFFである期間の大部分では、図4(b)に示すように、結合インダクタL11には、端子abの経路のみで、結合インダクタL12には、端子feの経路のみでそれぞれ電流が流れる。スイッチ素子S1、S4の組がOFFで、スイッチ素子S2、S3の組がONである期間の大部分では、図4(c)に示すように、結合インダクタL11には、端子baの経路のみで、結合インダクタL12には、端子efの経路のみでそれぞれ電流が流れる。結合インダクタL11のインダクタLr2、結合インダクタL12のインダクタLr4には、電流は流れない。
【0039】
DABコンバータ動作の電流経路において、結合インダクタL11及び結合インダクタL12のインダクタンスLDABは、自己インダクタンスのみの値となって現れる。
【0040】
図5は、結合インダクタL11、L12の巻数比(N/N)と、インダクタンス比(インダクタンスLDAB/インダクタンスLLLC)との関係を示すグラフである。インダクタンス比は、結合インダクタL11、L12の巻数比を小さくすることで、大きくなる。DABコンバータ動作時の大きなインダクタンス値と、LLCコンバータ動作時の大きなインダクタンス値とは、結合インダクタL11、L12の巻数比によって簡単に設定できる。
【0041】
一次側回路10のキャパシタC1、C2は、図6に示すように、まとめて接続してもよい。図6(a)に示す一次側回路10aは、キャパシタC1、C2の合計容量を有するキャパシタC1aをキャパシタC1に換えて接続し、キャパシタC2を省略している。図6(b)に示す一次側回路10bは、キャパシタC1、C2の合計容量を有するキャパシタC2aをキャパシタC2に換えて接続し、キャパシタC1を省略している。
【0042】
結合インダクタL11、L12は、図7に示すように、四脚コアCRaを用い、二本の中脚にインダクタLr1、Lr2と、インダクタLr3、Lr4をそれぞれ巻いて統合してもよい。四脚コアCRaを用いて統合することで、結合インダクタL11、L12は、コア数・体積を低減できる。図7(a)は、DABコンバータ動作において、外脚を通る磁束が打ち消しあうように巻線が巻かれている。従って、DABコンバータ動作時は、鉄損が低減される。図7(b)は、LLC共振コンバータ動作において、外脚を通る磁束が打ち消しあうように巻線が巻かれている。LLC共振コンバータ動作時は、鉄損が低減される。
【0043】
図8は、DC/DCコンバータ1を用いた部分電力変換装置100の構成例である。部分電力変換装置100は、一次側の高電位側入出力端子A11と低電位側入出力端子A12との間にリチウムイオン電池、鉛蓄電池等の蓄電池Vsbが接続される。蓄電池Vsbは、キャパシタ、フライホイール等の蓄電装置でもよい。
【0044】
部分電力変換装置100は、一次側の高電位側入出力端子A11と、二次側の高電位側入出力端子A21とが接続され、一次側の低電位側入出力端子A12と、二次側の低電位側入出力端子A22との間に別の蓄電池等の直流電源あるいは直流負荷VLが接続される。
【0045】

部分電力変換装置100は、例えば、放電をLLC共振コンバータ動作で、充電をDABコンバータ動作によってそれぞれ行うことで、効率のよい放電を実施できると共に、充電はより幅広い電圧比に対応できる。
【0046】
図9は、3台のDC/DCコンバータ1が並列に接続され、三相のマルチフェーズコンバータ200として構成されている。3台のDC/DCコンバータ1の台数は、2台でも、4台以上でもよい。
【0047】
マルチフェーズコンバータ200は、3台のDC/DCコンバータ1の一次側入出力(A11、A12)と二次側入出力(A21、A22)とがそれぞれ並列に接続される。3台のDC/DCコンバータ1におけるそれぞれの接続点Y1は、キャパシタCaを介して中性点Mに接続されている。キャパシタC1、C2、Caの容量を合計した値は、所望の共振周波数ωを得るために必要な静電容量となるように設定されている。
【0048】
DC/DCコンバータ1は、N台(Nは2以上の整数)を並列に接続し、360°/Nの位相差で動作させることで、複数相のマルチフェーズコンバータ200として構成できる。
【0049】
(まとめ)
(1)本発明の各実施形態にかかるDC/DCコンバータ1は、絶縁トランスT1、T2を介して接続された一次側回路10と二次側回路20とに一次側フルブリッジ回路11と二次側フルブリッジ回路21とをそれぞれ備える。DC/DCコンバータ1は、LLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作とを切り替え可能である。DC/DCコンバータ1は、絶縁トランスT1、T2と一次側回路10との間に接続された複数のインダクタLr1~Lr4を備える。複数のインダクタLr1~Lr4は、LLC共振コンバータ動作の電流経路では、発生する磁束が打ち消されて小さいインダクタンス値に設定される。複数のインダクタLr1~Lr4は、DABコンバータ動作の電流経路では、発生する磁束が打ち消されることなく大きいインダクタンス値に設定される。
換言すれば、複数のインダクタLr1~Lr4は、LLC共振コンバータの動作の電流経路と、DABコンバータ動作の電流経路では、異なるインダクタンス値に設定され、LLC共振コンバータ動作時よりもDABコンバータ動作時のほうが大きいインダクタンス値に設定される。
【0050】
上記(1)に記載のDC/DCコンバータ1によれば、LLC共振コンバータ動作のための小さなインダクタンスとDABコンバータ動作のための大きなインダクタンスとは、漏れインダクタンスの困難な調整を行うことなく、二つを別々の値に設定できる。例えば、DC/DCコンバータ1を蓄電池Vsbの充放電用の電力変換装置として用いた場合、放電は、効率の良いLLC共振コンバータ動作で実施できる。充電は、より幅広い電圧比に対応できるDABコンバータ動作で実施できる。
【0051】
(2)上記(1)に記載のDC/DCコンバータ1は、LLC共振コンバータ動作及びDABコンバータ動作の共通の電流経路に接続された第1インダクタ(インダクタLr1、Lr3)を備えてもよい。DC/DCコンバータ1は、LLC共振コンバータ動作のみの電流経路に接続され、第1インダクタ(インダクタLr1、Lr3)と磁気的に結合された第2インダクタ(インダクタLr2、Lr4)を備えてもよい。
【0052】
上記(2)に記載のDC/DCコンバータ1によれば、インダクタLr1、Lr2とインダクタLr3、Lr4とのそれぞれの結合は、密結合でよいため、漏れインダクタンスの形成に苦慮する必要はない。二つのインダクタンスの値は、インダクタLr1~Lr4の巻数比を設計するだけで設定できる。
【0053】
(3)本発明の各実施形態にかかるDC/DCコンバータ1は、絶縁トランスT1、T2を介して接続された一次側回路10と二次側回路20とに一次側フルブリッジ回路11と二次側フルブリッジ回路21とをそれぞれ備える。DC/DCコンバータ1は、LLC共振コンバータ動作とDABコンバータ動作とを切り替え可能である。絶縁トランスT1、T2は、ハイサイド側一次巻線である一次巻線T11とローサイド側一次巻線である一次巻線T21とを備える。一次側回路10において、一次側フルブリッジ回路11の第1スイッチングレグ(スイッチングレグB11)及び第2スイッチングレグ(スイッチングレグB12)のそれぞれ中点X11、X12間には、第1インダクタ(インダクタLr1)と、一次巻線T11と、一次巻線T21と、第3インダクタ(インダクタLr3)と、が直列に接続される。接続点Z1と接続点Y1との間には、インダクタLr1と磁気的に結合された第2インダクタ(インダクタLr2)と、インダクタLr3と磁気的に結合され第4インダクタ(インダクタLr4)と、が直列に接続される。
【0054】
上記(3)に記載のDC/DCコンバータ1によれば、LLC共振コンバータ動作のための小さなインダクタンスとDABコンバータ動作のための大きなインダクタンスとは、漏れインダクタンスの調整に依らずに、二つを別々に設定できる。インダクタLr1、Lr2とインダクタLr3、Lr4とのそれぞれの結合は、密結合でよいため、漏れインダクタンスの形成に苦慮する必要はない。
【0055】
(4)上記(2)又は(3)に記載のDC/DCコンバータ1において、インダクタLr2及びインダクタLr4は、LLC共振コンバータ動作の電流経路で電流が流れるとき、インダクタLr1及びインダクタLr3でそれぞれ発生する磁束を打ち消す向きにそれぞれ巻かれている。
【0056】
上記(4)に記載のDC/DCコンバータ1によれば、二つのインダクタンスの値は、インダクタLr1~Lr4の巻数比を設計するだけで設定できる。
【0057】
(5)上記(2)又は(3)に記載のDC/DCコンバータ1において、インダクタLr1とインダクタLr2とは、四脚コアCRaの第1の中脚に、インダクタLr3とインダクタLr4とは、四脚コアCRaの第2の中脚にそれぞれ巻かれている。
【0058】
上記(5)に記載のDC/DCコンバータ1によれば、四脚コアCRaを用いて統合することで、結合インダクタL11、L12は、コア数・体積を低減できる。
【0059】
(6)上記(2)~(5)のいずれかに記載のDC/DCコンバータ1の一次側高電位側入出力端子(高電位側入出力端子A11)と一次側低電位側入出力端子(低電位側入出力端子A12)との間に蓄電池装置(蓄電池Vsb)が接続される。高電位側入出力端子A11と、二次側高電位側入出力端子(高電位側入出力端子A21)とが接続される。低電位側入出力端子A12と、二次側低電位側入出力端子(低電位側入出力端子A22)との間に直流電源又は直流負荷が接続される。
【0060】
上記(6)に記載のDC/DCコンバータ1は、部分電力変換装置100を構成できる。
【0061】
(7)上記(2)~(5)のいずれかに記載のDC/DCコンバータ1の複数台が並列に接続され、一次側入出力(A11、A12)と二次側入出力(A21、A22)とがそれぞれ並列に接続される。
【0062】
上記(7)に記載のDC/DCコンバータ1は、マルチフェーズコンバータ200を構成できる。
【0063】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0064】
1 DC/DCコンバータ
10、10a、10b 一次側回路
11 一次側フルブリッジ回路
20 二次側回路
21 二次側フルブリッジ回路
30 制御回路
100 部分電力変換装置
200 マルチフェーズコンバータ
A11、A21 occnet
A12、A22 低電位側入出力端子
B11、B12、B21、B22 スイッチングレグ
C1、C1a、C2、C2a、C3、C4、Ca キャパシタ
CR 三脚コア
CRa 四脚コア
L11、L12 結合インダクタ
Lr1、Lr2、Lr3、Lr4 インダクタ
T1、T2 絶縁トランス
T11、T21 一次巻線
T12、T22 二次巻線
VL 直流電源または直流負荷
Vsb 蓄電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9