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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154031
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】推定装置および推定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241023BHJP
   H04W 60/00 20090101ALI20241023BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20241023BHJP
【FI】
G08G1/00 A
H04W60/00
H04W4/44
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067617
(22)【出願日】2023-04-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【テーマコード(参考)】
5H181
5K067
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB20
5H181DD02
5H181MC12
5H181MC27
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ61
(57)【要約】
【課題】より簡易な構成により、車両から送信される位置登録信号を利用した車両の進行方向の推定を行うことを目的とする。
【解決手段】
複数の通信エリアA1~Anにわたって存在する道路を走行する車両の進行方向を推定する推定装置1であって、道路を構成する各区間をカバーする各通信エリアA1~Anの各基地局BS1~BSnで受信された、車両からの位置登録信号に関連付けられている、車両が各通信エリアA1~Anを跨いだ際の車両の3次元位置情報を収集する第1収集部10と、各基地局BS1~BSnで受信された位置登録信号に関連付けられている車両の3次元位置情報を未知の入力として学習済みの分類器に与え、学習済みの分類器の演算を行って、車両の進行方向に関する分類クラスを出力する分類部14と、分類部14が出力した分類クラスに基づいて、車両の進行方向を提示する提示部17とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信エリアにわたって存在する道路を走行する車両の進行方向を推定する推定装置であって、
前記道路を構成する各区間をカバーする各通信エリアの各基地局で受信された前記車両からの位置登録信号に関連付けられている、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の3次元位置情報を収集するように構成された第1収集部と、
前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられている前記車両の前記3次元位置情報を未知の入力として学習済みの分類器に与え、前記学習済みの分類器の演算を行って、前記車両の進行方向に関する分類クラスを出力するように構成された分類部と、
前記分類部が出力した前記分類クラスに基づいて、前記車両の進行方向を提示するように構成された提示部と
を備える推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の推定装置において、
さらに、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の前記3次元位置情報に対して、予め設定された前記車両の進行方向に関する情報をラベル付けした教師データを用いて、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の前記3次元位置情報と、前記車両の進行方向との関係を学習し、前記学習済みの分類器を構築するように構成された学習部
を備える推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の推定装置において、
さらに、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された日時を示す情報を収集するように構成された第2収集部と、
前記分類部によって出力された前記分類クラスに基づく前記車両の進行方向、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報、および、前記各通信エリアの直径に基づいて、前記車両の速度を求めるように構成された第1算出部と、
を備え、
前記提示部は、求められた前記車両の前記速度を提示する
ことを特徴とする推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の推定装置において、
さらに、前記第1算出部によって算出された前記車両の前記速度、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報、および、前記各通信エリアの直径に基づいて、指定された時刻において、前記車両が走行することになる通信エリアを求めるように構成された第2算出部を備え、
前記提示部は、求められた前記車両が走行することになる前記通信エリアに関する情報を提示する
ことを特徴とする推定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の推定装置において、
前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられている前記車両の前記3次元位置情報は、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報とともに、所定の通信規格のコアネットワークに含まれる、加入者情報を管理する統合データリポジトリに記憶され、
前記第1収集部は、前記統合データリポジトリから、前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられた前記車両の前記3次元位置情報を収集し、
前記第2収集部は、前記統合データリポジトリから、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報を収集する
ことを特徴とする推定装置。
【請求項6】
複数の通信エリアにわたって存在する道路を走行する車両の進行方向を推定する推定方法であって、
前記道路を構成する各区間をカバーする各通信エリアの各基地局で受信された前記車両からの位置登録信号に関連付けられている、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の3次元位置情報を収集する第1ステップと、
前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられている前記車両の前記3次元位置情報を未知の入力として学習済みの分類器に与え、前記学習済みの分類器の演算を行って、前記車両の進行方向に関する分類クラスを出力する第2ステップと、
前記第2ステップで出力した前記分類クラスに基づいて、前記車両の進行方向を提示する第3ステップと
を備える推定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の推定方法において、
さらに、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の前記3次元位置情報に対して、予め設定された前記車両の進行方向に関する情報をラベル付けした教師データを用いて、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の前記3次元位置情報と、前記車両の進行方向との関係を学習し、前記学習済みの分類器を構築する第4ステップ
を備える推定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の推定方法において、
さらに、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された日時を示す情報を収集する第5ステップと、
前記第2ステップで出力された前記分類クラスに基づく前記車両の進行方向、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報、および、前記各通信エリアの直径に基づいて、前記車両の速度を求める第6ステップと、
を備え、
前記第3ステップは、求められた前記車両の前記速度を提示する
ことを特徴とする推定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の推定方法において、
さらに、前記第6ステップで算出された前記車両の前記速度、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報、および、前記各通信エリアの直径に基づいて、指定された時刻において、前記車両が走行することになる通信エリアを求める第7ステップを備え、
前記第3ステップは、求められた前記車両が走行することになる前記通信エリアに関する情報を提示する
ことを特徴とする推定方法。
【請求項10】
請求項9に記載の推定方法において、
前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられている前記車両の前記3次元位置情報は、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報とともに、所定の通信規格のコアネットワークに含まれる、加入者情報を管理する統合データリポジトリに記憶され、
前記第1ステップは、前記統合データリポジトリから、前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられた前記車両の前記3次元位置情報を収集し、
前記第5ステップは、前記統合データリポジトリから、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報を収集する
ことを特徴とする推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置および推定方法に関し、特に車両の進行方向を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体端末が基地局のエリアを跨ぐ際には、基地局を介してコアネットワークに位置登録信号を送信し、どの通信エリアに在圏するのかを明らかにする。位置登録信号を用いることで、通信エリアを跨いだ通信においてもシームレスなハンドオーバが実現される。
【0003】
このような位置登録信号の性質を利用して、移動体端末の位置を基地局の通信エリア単位で把握する技術が知られている。例えば、特許文献1は、複数の通信エリアを跨いで移動する通信端末からの位置登録信号によって示される通信端末の在圏情報を時系列で取得して、通信端末の移動状況を解析する技術を開示している。
【0004】
また、特許文献2は、車両に搭載された通信端末を利用して、通信端末からの位置登録信号が示す位置情報を、車両の位置情報として用いる技術を開示している。さらに、特許文献2では、車両に搭載された通信端末の位置登録情報によって、車両が走行する路線を推定し、推定された路線の駅に設置されている基地局の情報などのメタデータと位置登録情報とを照合して、車両の進行方向を推定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002-041205号公報
【特許文献2】特開2022-174544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の技術では、位置登録信号を利用して車両の進行方向を推定する場合には、道路情報などの膨大なメタデータが必要となり、データベースのデータ量が増大する問題があった。このように、従来の技術では、より簡易な構成により、車両から送信される位置登録信号を利用した車両の進行方向の推定を行うことができなかった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、より簡易な構成により、車両から送信される位置登録信号を利用した車両の進行方向の推定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る推定装置は、複数の通信エリアにわたって存在する道路を走行する車両の進行方向を推定する推定装置であって、前記道路を構成する各区間をカバーする各通信エリアの各基地局で受信された前記車両からの位置登録信号に関連付けられている、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の3次元位置情報を収集するように構成された第1収集部と、前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられている前記車両の前記3次元位置情報を未知の入力として学習済みの分類器に与え、前記学習済みの分類器の演算を行って、前記車両の進行方向に関する分類クラスを出力するように構成された分類部と、前記分類部が出力した前記分類クラスに基づいて、前記車両の進行方向を提示するように構成された提示部とを備える。
【0009】
また、本発明に係る推定装置において、さらに、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の前記3次元位置情報に対して、予め設定された前記車両の進行方向に関する情報をラベル付けした教師データを用いて、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の前記3次元位置情報と、前記車両の進行方向との関係を学習し、前記学習済みの分類器を構築するように構成された学習部を備えていてもよい。
【0010】
また、本発明に係る推定装置において、さらに、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された日時を示す情報を収集するように構成された第2収集部と、前記分類部によって出力された前記分類クラスに基づく前記車両の進行方向、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報、および、前記各通信エリアの直径に基づいて、前記車両の速度を求めるように構成された第1算出部と、を備え、前記提示部は、求められた前記車両の前記速度を提示してもよい。
【0011】
また、本発明に係る推定装置において、さらに、前記第1算出部によって算出された前記車両の前記速度、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報、および、前記各通信エリアの直径に基づいて、指定された時刻において、前記車両が走行することになる通信エリアを求めるように構成された第2算出部を備え、前記提示部は、求められた前記車両が走行することになる前記通信エリアに関する情報を提示してもよい。
【0012】
また、本発明に係る推定装置において、前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられている前記車両の前記3次元位置情報は、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報とともに、所定の通信規格のコアネットワークに含まれる、加入者情報を管理する統合データリポジトリに記憶され、前記第1収集部は、前記統合データリポジトリから、前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられた前記車両の前記3次元位置情報を収集し、前記第2収集部は、前記統合データリポジトリから、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報を収集してもよい。
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明に係る推定方法は、複数の通信エリアにわたって存在する道路を走行する車両の進行方向を推定する推定方法であって、前記道路を構成する各区間をカバーする各通信エリアの各基地局で受信された前記車両からの位置登録信号に関連付けられている、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の3次元位置情報を収集する第1ステップと、前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられている前記車両の前記3次元位置情報を未知の入力として学習済みの分類器に与え、前記学習済みの分類器の演算を行って、前記車両の進行方向に関する分類クラスを出力する第2ステップと、前記第2ステップで出力した前記分類クラスに基づいて、前記車両の進行方向を提示する第3ステップとを備える。
【0014】
また、本発明に係る推定方法において、さらに、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の前記3次元位置情報に対して、予め設定された前記車両の進行方向に関する情報をラベル付けした教師データを用いて、前記車両が前記各通信エリアを跨いだ際の前記車両の前記3次元位置情報と、前記車両の進行方向との関係を学習し、前記学習済みの分類器を構築する第4ステップを備えていてもよい。
【0015】
また、本発明に係る推定方法において、さらに、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された日時を示す情報を収集する第5ステップと、前記第2ステップで出力された前記分類クラスに基づく前記車両の進行方向、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報、および、前記各通信エリアの直径に基づいて、前記車両の速度を求める第6ステップと、を備え、前記第3ステップは、求められた前記車両の前記速度を提示してもよい。
【0016】
また、本発明に係る推定方法において、さらに、前記第6ステップで算出された前記車両の前記速度、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報、および、前記各通信エリアの直径に基づいて、指定された時刻において、前記車両が走行することになる通信エリアを求める第7ステップを備え、前記第3ステップは、求められた前記車両が走行することになる前記通信エリアに関する情報を提示してもよい。
【0017】
また、本発明に係る推定方法において、前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられている前記車両の前記3次元位置情報は、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報とともに、所定の通信規格のコアネットワークに含まれる、加入者情報を管理する統合データリポジトリに記憶され、前記第1ステップは、前記統合データリポジトリから、前記各基地局で受信された前記位置登録信号に関連付けられた前記車両の前記3次元位置情報を収集し、前記第5ステップは、前記統合データリポジトリから、前記各基地局で前記位置登録信号が受信された前記日時を示す情報を収集してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、道路を構成する各区間をカバーする各通信エリアの各基地局で受信された車両からの位置登録信号に関連付けられている、車両が各通信エリアを跨いだ際の車両の3次元位置情報を収集し、各基地局で受信された位置登録信号に関連付けられている車両の3次元位置情報を未知の入力として学習済みの分類器に与え、学習済みの分類器の演算を行って、車両の進行方向に関する分類クラスを出力する。そのため、より簡易な構成により、車両から送信される位置登録信号を利用した車両の進行方向の推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る推定装置を含む推定システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態に係る推定装置の概要を説明するための図である。
図3図3は、本実施の形態に係る推定装置の概要を説明するための図である。
図4図4は、本実施の形態に係る推定装置の概要を説明するための図である。
図5図5は、本実施の形態に係る推定装置で用いる分類器を説明するための図である。
図6図6は、本実施の形態に係る推定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7図7は、本実施の形態に係る推定装置の動作を示すフローチャートである。
図8図8は、本実施の形態に係る推定装置の動作を示すフローチャートである。
図9図9は、本実施の形態に係る推定装置の動作を示すフローチャートである。
図10図10は、本実施の形態に係る推定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図10を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、推定装置1が、5G通信規格の移動通信システムを利用する場合を例に挙げるが、推定装置1は4G通信規格の移動通信システムを利用する構成であってもよい。
【0021】
[推定システムの構成]
まず、本発明の実施の形態に係る推定装置1を備える推定システムの概要について説明する。図1に示すように、推定システムは、高速道路などの幹線道路(道路)を、例えば、上り、下りというように異なる進行方向で走行することができる車両の進行方向を推定する。推定を行う幹線道路は、5G移動通信システムを構築する基地局BS1,BS2,BS3,・・・,BSnの各々の通信エリアA1,A2,A3,・・・,Anによって規定される。
【0022】
図1に示すように、各基地局BS1~BSnの通信エリアA1~Anは、幹線道路を構成する各区間をカバーするように配置されている。なお、以下の説明では、「通信エリアA1~An」といった場合に、通信エリアA1~Anがそれぞれカバーする幹線道路の区間と同義として用いる場合がある。
【0023】
また、図1では、一例として、複数の通信エリアA1~Anが、一つの幹線道路をカバーし、この幹線道路においての車両の進行方向が、上りであるか下りであるかを推定する場合を示している。しかし、複数の通信エリアA1~Anがカバーする幹線道路は、複数の幹線道路が含まれ、さらに、それぞれの幹線道路が交差、合流、あるいは分流等する場合が含まれる。
【0024】
図2に示す幹線道路の構造例では、上りの車線と、下りの車線とが、平面的に配置されている。一方、図3の例では、上りの車線が上段に配置され、下りの車線が下段に配置された3次元構造を有する。このように本実施の形態において、車両が走行する幹線道路には、複数の幹線道路が立体または平面交差、合流、分流する様々な構造が含まれる。
【0025】
幹線道路を走行する車両には、通信端末5が搭載されている。車両には、自動車、原動機付自動車、自動二輪車などが含まれる。通信端末5は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、通信インターフェース等を備え、車両に搭載されている通信端末装置、あるいは車両を利用するユーザのスマートフォンなどの携帯通信端末、タブレット型コンピュータなどとして実現される。
【0026】
具体的には、通信端末5は、SIM50、および3次元位置情報取得部51を備える。各車両は、通信端末5が備えるSIM50のIMSI(International Mobile Subscriber Identity)によって一意に識別される。
【0027】
3次元位置情報取得部51は、通信端末5のGPS位置情報に基づいて、通信端末5の3次元直交座標(3次元位置情報)を取得する。3次元位置情報取得部51は、例えば、世界測地系1984(WGS84)等の地球の重心を原点においた3次元直交座標(x,y,z)系を周期的に外部から取得することができる。本実施の形態では、3次元位置情報取得部51が取得した3次元直交座標を、車両の3次元直交座標として扱う。
【0028】
通信端末5のプロセッサは、3次元位置情報取得部51により取得された3次元直交座標を位置登録信号に関連付けて、通信エリアA1~Anを跨ぐ際に、新たな通信エリアA1~Anの基地局BS1~BSnに対して送信する。例えば、通信端末5のプロセッサは、位置登録信号中に3次元直交座標を付加して基地局BS1~BSnに送信することができる。位置登録信号に関連付けられた車両の3次元直交座標により、通信エリアA1~Anを跨ぐ際の車両の3次元直交座標が得られる。
【0029】
本実施の形態に係る推定システムは、推定装置1、車両に搭載される通信端末5、基地局BS1~BSn、5Gコアネットワークを構成するAMF(Access and Mobility Management Function)サーバ2、UDM(Unified Data Management)サーバ3、およびUDR(統合データリポジトリ:Unified Data Repository)サーバ4を備える。推定装置1は、UDRサーバ4とWAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークNWを介して接続されている。
【0030】
基地局BS1~BSnは、コアネットワークと接続して通信エリアA1~Anに在圏する通信端末5からのユーザパケットを転送する。AMFサーバ2は、パケット通信用のセッションの設定、開放やハンドオーバの制御など移動管理やベアラ制御を行う移動管理制御装置である。UDMサーバ3は、加入者プロファイル情報などが格納される加入者情報管理装置である。UDRサーバ4は、通信端末5の加入者情報および加入者の通信端末5の状態などの情報を格納する統合データリポジトリである。
【0031】
本実施の形態では、図1に示すように、例えば、下り方向に走行する車両が幹線道路を走行するにしたがって、幹線道路の第1番目の区間をカバーする基地局BS1の通信エリアA1から、第2番目の区間をカバーする基地局B2の通信エリアA2、第3番目の区間をカバーする基地局BS3の通信エリアA3へと順番に移動する。
【0032】
例えば、車両が基地局BS1の通信エリアA1から基地局BS2の通信エリアA2を跨った際に、通信端末5は、基地局BS2およびAMFサーバ2を介してUDMサーバ3に位置登録要求を行うために位置登録信号を送信する。本実施の形態においては、通信端末5は、位置登録信号および端末識別情報に加えて、通信エリアA2を跨った際の車両の3次元直交座標をAMFサーバ2に送信する。
【0033】
AMFサーバ2は、受信した信号をUDMサーバ3に対して送信し、UDMサーバ3は、通信端末5の端末識別情報により位置登録を行う。さらに、通信端末5が送信した位置登録信号、端末識別情報、および車両の3次元直交座標は、UDRサーバ4において、在圏する基地局BS1~BSnおよび通信エリアA1~Anに関する識別情報、ならびに位置登録信号の送信タイムスタンプ(日時を示す情報)とともに記憶される。
【0034】
本実施の形態に係る推定装置1は、ネットワークNWを介して、UDRサーバ4に記憶されている各基地局BS1~BSnで受信された位置登録信号に関連付けられている車両の3次元直交座標を収集し、収集された情報に基づいて車両の進行方向を推定する。
【0035】
図4は、本実施の形態に係る推定装置1を備える推定システムの概要を示す模式図である。車両が走行する幹線道路の一区間の距離は、各基地局BS1~BSnがカバーする各通信エリアA1~Anの直径D[km]に対応し、各基地局BS1~BSnの通信エリアA1~Anの直径は同じであるとする。
【0036】
図4に示す幹線道路において、図中右方向を「上り」、左方向を「下り」と定める。この場合において、上り方向を走行する車両が、通信エリアA3から通信エリアA2に入る。通信エリアA2を跨いだ際に、車両は、位置登録信号、および通信エリアA2を跨いだ際の車両の3次元直交座標を基地局BS2に送信する(図4の矢印)。同様に、下り方向を走行する車両が、通信エリアA1から通信エリアA2に入る場合、車両は、位置登録信号、および通信エリアA2を跨いだ際の車両の3次元直交座標を基地局BS2に送信する(図4の矢印)。このように、車両の移動に伴って、通信エリアA1~Anを跨ぐ毎に、位置登録信号、および車両の3次元直交座標が、在圏する通信エリアA1~Anの基地局BS1~BSnに送信される。
【0037】
例えば、通信エリアA2を跨ぐ際の車両の3次元直交座標は、上り方向を走行する車両と、下り方向を走行する車両とでは、異なる座標の値となり得る。しかし、上述したように、複数の幹線道路が交差、合流、あるいは分流するような場合に車両の進行方向を推定するためには、従来の技術では、車両の3次元直交座標および車両が走行する通信エリアA1~Anの情報に幹線道路の情報などのメタデータを付し、膨大な量のデータを解析しなければならなかった。
【0038】
これに対して、本実施の形態に係る推定装置1では、通信エリアA1~Anを跨いだ際の車両の3次元直交座標と、車両の進行方向との関係を学習し、分類器を構築する。推定装置1は、学習済みの分類器の演算を行うことで、車両の3次元直交座標および通信エリアA1~Anの情報のみに基づいて、車両の進行方向を推定することができる。
【0039】
[推定装置の機能ブロック]
図1に示すように、推定装置1は、第1収集部10、第2収集部11、学習部12、分類器記憶部13、分類部14、第1算出部15、第2算出部16、および提示部17を備え、複数の通信エリアA1~Anにわたって存在する幹線道路を走行する車両の進行方向を推定する。
【0040】
第1収集部10は、幹線道路を構成する各区間をカバーする各通信エリアA1~Anの各基地局BS1~BSnで受信された、車両からの位置登録信号に関連付けられている、車両が各通信エリアA1~Anを跨いだ際の車両の3次元直交座標を収集する。具体的には、第1収集部10は、ネットワークNWを介してUDRサーバ4から、各基地局BS1~BSnで受信された位置登録信号に関連付けられた3次元直交座標を収集する。また、第1収集部10は、車両の3次元直交座標に加えて、車両の一意に特定するための通信端末5の識別情報、および位置登録信号が受信された通信エリアA1~Anの識別情報を収集する。
【0041】
第2収集部11は、各基地局BS1~BSnで位置登録信号が受信された日時を示す情報を収集する。具体的には、第2収集部11は、ネットワークNWを介してUDRサーバ4から、位置登録信号の送信タイムスタンプを収集する。第2収集部11が収集する位置登録信号の送信タイムスタンプは、第1収集部10によって収集された車両の3次元直交座標とともに送信された位置登録信号の送信タイムスタンプである。
【0042】
学習部12は、車両が各通信エリアA1~Anを跨いだ際の、その車両の3次元直交座標に対して、車両の進行方向に関する予め設定された情報をラベル付けした教師データを用いて、車両が各通信エリアA1~Anを跨いだ際の車両の3次元直交座標と、車両の進行方向との関係を学習し、学習済みの分類器を構築する。
【0043】
図5は、本実施の形態における分類器の一例として用いるニューラルネットワークの構造を示す模式図である。また、ニューラルネットワークは、入力層x、隠れ層h、出力層yからなる多層構造を用いることができる。入力層xの各入力ノードには、各基地局BS1~BSnで受信される位置登録信号に関連付けられた車両の3次元直交座標が与えられる。
【0044】
図5に示すニューラルネットワークは、入力層xに与えられた各通信エリアA1~Anを跨いだ際に各基地局BS1~BSnで受信された位置登録信号に関連付けられている車両の3次元直交座標に対して、入力の重み付け総和に活性化関数を適用し、閾値処理により決定された出力を出力層yに渡す。入力ノードの数は、十分な分類精度を得るために必要な数とする。
【0045】
出力層の各出力ノードは、少なくとも2つの分類クラスを示す。また、出力層yは、入力データが車両の進行方向に関する各クラスに属する確率を出力することができる。分類クラスは、車両の進行方向に応じて任意に設定することができ、例えば、図5の例に示すように、「上り」および「下り」の2クラスとして設定することができる。また、上述の図3のように、上段の「上り」「下り」、および下段の「上り」「下り」の4クラスを用いることもできる。
【0046】
学習部12は、各通信エリアA1~Anを跨いだ際に各基地局BS1~BSnで受信される位置登録信号に関連付けられた、車両の3次元直交座標を入力として与えた時の出力が、教師データのラベルに示される進行方向に関する分類クラスの値となるように、ノード間の結線の重みwを調整する。学習部12は、例えば、誤差逆伝搬などを利用して、与えた入力値に対して、得られた出力値を比較し、それぞれの重みwの誤差を調べて逆方向に伝搬していき、最終的に重みwなどのパラメータを決定することができる。このような学習処理を経て、学習部12は、学習済みの分類器を構築する。
【0047】
学習部12によって構築された学習済みの分類器は、分類器記憶部13に記憶される。また、分類器記憶部13は、学習前の分類器についても記憶する。
【0048】
分類部14は、第1収集部10が収集した、各基地局BS1~BSnで受信された位置登録信号に関連付けられている車両の3次元直交座標を未知の入力として学習済みの分類器に与え、学習済みの分類器の演算を行って、車両の進行方向に関する分類クラス「上り」、「下り」を出力する。
【0049】
第1算出部15は、分類部14によって出力された分類クラスに基づく車両の進行方向、各基地局BS1~BSnで位置登録信号が受信された日時を示す情報、および、各通信エリアA1~Anの直径Dに基づいて、車両の速度を求める。
【0050】
具体的には、第1算出部15は、分類部14から出力された車両の進行方向に関する分類クラスを取得し、進行方向における車両の速度[km/h]を次式(1)により求める。なお、次式(1)において、通信エリアAn、An-1のどちらを減数および被減数とするかは、分類結果で得られた車両の進行方向に応じて設定される。
【0051】
[通信エリアAn-1の直径D[km]]/[(車両が通信エリアAnを跨いだ際に位置登録信号が基地局Bnで受信された時刻[日:時:分:秒])-(車両が通信エリアAn-1を跨いだ際に基地局Bn-1で位置登録信号が受信された時刻[日:時:分:秒])] ・・・(1)
【0052】
第1算出部15は、通信エリアA1~Anまでの各通信エリアA1~Anの車両の速度、あるいは、設定により特定の通信エリアA1~Anにおける車両の速度を求めることができる。
【0053】
第2算出部16は、第1算出部15によって算出された車両の速度、各基地局BS1~BSnで位置登録信号が受信された日時を示す情報、および、各通信エリアA1~Anの直径Dに基づいて、指定された時刻において、車両が走行することになる通信エリアA1~Anを求める。
【0054】
具体的には、第2算出部16は、第1算出部15によって算出された車両の速度を取得し、かつ、外部から入力された指定された将来の時刻、および各通信エリアA1~Anの直径Dに基づいて、次式(2)を用いて、指定された将来の時刻に、基準とする通信エリアA1からいくつ先の通信エリアA2~Anを車両が走行するのかを求める。なお、車両の速度は、複数の通信エリアA1~Anにおける車両の平均速度とする。
【0055】
[(指定された時刻[日:時:分:秒])-(車両が通信エリアA1を跨いだ際に基地局BS1で位置登録信号が受信された時刻[日:時:分:秒])]×(速度[km/h])/(通信エリアA1~Anの直径D[km]) ・・・(2)
【0056】
提示部17は、分類部14が出力した分類クラスに基づいて、車両の進行方向を提示する。また、提示部17は、第1算出部15によって求められた車両の速度を提示する。さらに、提示部17は、第2算出部16によって求められた、指定された時刻において車両が走行することになる通信エリアA1~Anに関する情報を提示する。
【0057】
提示部17は、例えば、外部のサーバなどに対して、車両の進行方向、速度、および指定された時刻において車両が走行することになる通信エリアA1~Anに関する情報を送出することができる。
【0058】
[推定装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する推定装置1を実現するハードウェア構成の一例について、図6を用いて説明する。
【0059】
図6に示すように、推定装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0060】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、図1に示した第1収集部10、第2収集部11、学習部12、分類部14、第1算出部15、第2算出部16など推定装置1の各機能が実現される。
【0061】
通信インターフェース104は、推定装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。
【0062】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0063】
補助記憶装置105は、推定装置1が実行する推定プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。また、補助記憶装置105は、分類器の学習を行うための学習プログラムを格納する領域を有する。補助記憶装置105によって、図1で説明した分類器記憶部13が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0064】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりする入出力装置である。
【0065】
[推定装置の動作]
次に、上述した構成を有する推定装置1の動作を、図7から図10のフローチャートを参照して説明する。図7は、推定装置1による学習処理を示すフローチャートである。図8は、推定装置1による、学習済みの分類器を用いた分類処理を示すフローチャートである。図9は、分類結果に基づく、車両の速度の算出処理を示すフローチャートである。また、図10は、車両の速度に基づいて、指定された時刻において車両が走行することになる通信エリアA1~Anを算出する処理を示すフローチャートである。
【0066】
はじめに、推定装置1による分類器の学習処理について図7を参照して説明する。まず、学習部12は、分類器の学習に用いる教師データを用意する(ステップS1)。より詳細には、学習部12は、車両が各通信エリアA1~Anを跨いだ際における車両の3次元直交座標に対して、車両の進行方向に関する情報をラベル付けした教師データを用意する。
【0067】
学習部12は、例えば、第1収集部10によってUDRサーバ4から収集される車両の3次元直交座標に実際の車両の進行方向「上り」、「下り」をラベル付けして教師データを作成することができる。
【0068】
次に、学習部12は、ステップS1で用意された教師データを用いて、車両が各通信エリアA1~Anを跨いだ際の車両の3次元直交座標と、車両の進行方向との関係を学習し、学習済みの分類器を構築する(ステップS2)。続いて、ステップS2で構築された学習済みの学習器は、分類器記憶部13に記憶される(ステップS3)。以上の処理により、学習済みの分類器が学習される。
【0069】
次に、図8を参照して、推定装置1による分類処理を説明する。まず、分類部14は、分類器記憶部13から学習済みの分類器をロードする(ステップS10)。次に、第1収集部10は、各通信エリアA1~Anの各基地局BS1~BSnで受信された位置登録信号に関連付けられている、車両が各通信エリアA1~Anを跨いだ際の車両の3次元直交座標を収集する(ステップS11)。具体的には、第1収集部10は、UDRサーバ4から、位置登録信号に係る通信エリアA1~Anの識別情報、位置登録信号に付されて送信された車両の3次元直交座標、および通信端末5の識別情報を収集する。
【0070】
次に、分類部14は、各基地局BS1~BSnで受信された位置登録信号に関連付けられている、車両の3次元直交座標を未知の入力として学習済みの分類器に与え、学習済みの分類器の演算を行って、車両の進行方向に関する分類クラスを出力する(ステップS12)。ステップS11で収集された、各通信エリアA1~Anを車両が跨いだ際の車両の3次元直交座標がステップS12において未知の入力として用いられる。
【0071】
その後、提示部17は、ステップS12で分類部14が出力した分類クラスに基づいて、車両の進行方向を提示する(ステップS13)。
【0072】
次に、図9を参照して、推定装置1が分類結果に基づいて車両の速度を算出する処理について説明する。まず、第2収集部11は、各基地局BS1~BSnで位置登録信号が受信された日時を示す情報を収集する(ステップS20)。具体的には、第2収集部11は、UDRサーバ4から、分類対象となった車両が送信した位置登録信号の送信タイムスタンプを収集する。
【0073】
次に、第1算出部15は、分類部14によって出力された分類クラスに基づく車両の進行方向、およびステップS20で収集された位置登録信号の送信タイムスタンプ、および通信エリアA1~Anの直径に基づいて、上式(1)を用いて車両の速度を求める(ステップS21)。
【0074】
続いて、提示部17は、ステップS21で求められた車両の速度を提示する(ステップS22)。以上の処理によって、車両の速度が求められる。
【0075】
次に、図10を参照して、指定された時刻で車両が走行することになる通信エリアA1~Anの算出処理を説明する。まず、第2算出部16は、第1算出部15によって求められた車両の速度を取得する(ステップS30)。
【0076】
次に、第2算出部16は、ステップS30で取得された車両の速度、各基地局A1~Anで位置登録信号が受信された日時を示す情報、および、各通信エリアA1~Anの直径Dに基づいて、指定された時刻において、前記車両が走行することになる通信エリアA1~Anを求める(ステップS31)。具体的には、第2算出部16は、例えば、外部から入力された指定された時刻を用いて、上式(2)により、指定された時刻において、基準となる通信エリアA1からいくつ先の通信エリアA2~Anにおいて車両が走行することになるのかを求める。
【0077】
続いて、提示部17は、ステップS31で求められた、指定された時刻において、車両が走行することになる通信エリアA1~Anに関する情報を提示する(ステップS32)。以上の処理により、車両が、指定された時刻にどの通信エリアA1~Anを走行するのかが特定される。
【0078】
なお、上述した実施の形態では、分類器としてニューラルネットワークを用いる場合について説明した。しかし、分類器は、上述したニューラルネットワークモデルの他、ロジスティック回帰などの識別器を用いることができる。ロジスティック回帰を用いた場合には、分類クラスを予測できる確率値を分類クラス数だけ得ることができる。したがって、各進行方向の分類クラスに対する確率を出力し、最も確率の高い分類クラスが車両の進行方向の推定値として採用される。その他にも、分類器として、SVM、ナイーブベイズ、ランダムフォレスト、決定木等、さらにニューラルネットワークを多層化したディープラーニングを用いてもよい。
【0079】
また、上述した実施の形態では、分類部14による学習済みの分類器の演算により出力された分類クラスに基づいて、車両の進行方向が提示される場合について説明した。しかし、提示部17は、車両の進行方向に基づいて特定される車両の走行経路をさらに提示する構成とすることができる。
【0080】
また、上述した実施の形態では、分類部14は、事前に学習部12が学習し構築した分類器を用いて、分類処理を行う場合について説明した。しかし、分類部14は、事前学習により構築された分類器を用いる場合に限らない。例えば、学習部12は、学習済みの分類器を構築した後に、さらに第1収集部10が収集した実データに基づく新たな教師データにより、学習済みの分類器の再学習を行って、重みなどパラメータの微調整を行うことができる。
【0081】
また、上述した実施の形態では、学習処理を行う学習部12および分類処理を行う分類部14の両方の機能部が推定装置1に搭載される場合について説明した。しかし、学習部12および分類部14は同一のハードウェア構成として設けられている場合の他、複数のサーバ等によって、学習処理と分類処理とをネットワークNW上の別のサーバ等により分散することもできる。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態に係る推定装置1によれば、各基地局BS1~BSnで受信された、車両からの位置登録信号に関連付けられている車両の3次元直交座標を収集する。さらに、各基地局BS1~BSnで受信された位置登録信号に関連付けられた車両の3次元直交座標を未知の入力として学習済みの分類器に与え、学習済みの分類器の演算を行って、車両の進行方向に関する分類クラスを出力する。したがって、道路情報などのメタデータを用いることなく、より簡易な構成により、車両から送信される位置登録信号を利用した車両の進行方向の推定を行うことができる。
【0083】
以上、本発明の推定装置および推定方法における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…推定装置、2…AMFサーバ、3…UDMサーバ、4…UDRサーバ、5…通信端末、50…SIM、51…3次元位置情報取得部、10…第1収集部、11…第2収集部、12…学習部、13…分類器記憶部、14…分類部、15…第1算出部、16…第2算出部、17…提示部、101…バス、102…プロセッサ、103…主記憶装置、104…通信インターフェース、105…補助記憶装置、106…入出力I/O、NW…ネットワーク、BS1~BSn…基地局、A1~An…通信エリア。
図1
図2
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図10