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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154040
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】亜鉛回収装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 17/00 20060101AFI20241023BHJP
   F27B 7/36 20060101ALI20241023BHJP
   C22B 19/04 20060101ALI20241023BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F27D17/00 104G
F27B7/36
C22B19/04
C22B7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067633
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】高原 創
【テーマコード(参考)】
4K001
4K056
4K061
【Fターム(参考)】
4K001AA30
4K001BA14
4K001DA06
4K001EA01
4K001GA07
4K001GA13
4K001GB09
4K001GB12
4K056AA12
4K056BA06
4K056CA20
4K056DB01
4K056DB07
4K056DB26
4K056DC05
4K061AA08
4K061BA12
4K061FA02
4K061FA06
(57)【要約】
【課題】ダストに含まれる亜鉛の回収効率を向上することが可能な亜鉛回収装置を提供する。
【解決手段】ロータリーキルン2における回転するキルン本体2aにて亜鉛を含む原料を加熱処理して生成される酸化亜鉛Daを吸引する吸引部3と、ロータリーキルンでの加熱処理により発生する残渣Dbが排出されるキルン本体の排出口2fを内包する空間を有し、排出口からキルン本体内に空気を供給する空気供給体4と、空気供給体の下に連続して設けられ、キルン本体から落下する残渣を、下方に設けられた残渣収容器6に案内するシュート5と、シュート内を上昇する空気を供給する上昇空気供給部7と、シュートにおける上昇空気供給部よりも上方に設けられ、吸引部と連通する連通部8とを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルンにおける回転するキルン本体にて亜鉛を含む原料を加熱処理して生成される酸化亜鉛を吸引する吸引部と、
上記ロータリーキルンでの加熱処理により発生する残渣が排出される上記キルン本体の排出口を内包する空間を有し、該排出口から該キルン本体内に空気を供給する空気供給体と、
該空気供給体の下に連続して設けられ、上記キルン本体から落下する残渣を、下方に設けられた残渣収容器に案内するシュートと、
該シュート内を上昇する空気を供給する上昇空気供給部と、
上記シュートにおける上記上昇空気供給部よりも上方に設けられ、上記吸引部と連通する連通部とを備えたことを特徴とする亜鉛回収装置。
【請求項2】
前記連通部は、前記シュート内に突出する突出管部を有し、
該突出管部の先端は、下方に向かって開口面積が漸次広くなる広開口部を有していることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛回収装置。
【請求項3】
前記シュートにおける前記連通部よりも上方の圧力に基づいて、前記上昇空気供給部から供給する空気の量を調整する空気量調整部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛回収装置。
【請求項4】
前記シュートにおける前記連通部よりも上方の圧力に基づいて、前記上昇空気供給部から供給する空気の量をインバータ制御することを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛回収装置。
【請求項5】
ロータリーキルンにおける回転するキルン本体にて亜鉛を含む原料を加熱処理して生成される酸化亜鉛を吸引する吸引部と、
上記キルン本体から排出されて落下する残渣を、下方に設けられた残渣収容器に案内するシュートと、
該シュート内を上昇し上記キルン本体に空気を供給する上昇空気供給部とを備えたことを特徴とする亜鉛回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダストに含まれる亜鉛を効率よく回収することが可能な亜鉛回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルンを用いた熱処理設備として、特許文献1及び2が知られている。特許文献1の「廃石こうボードのリサイクル方法」は、廃石こうボードは投入コンベヤによって破砕・分離機に投入され、ここで粉砕され、粉砕物が紙分と石こう粉末に分離され、紙分は焼却処理され、石こう粉末はそのまま回収され、再利用される。破砕・分離機としては、ハンマーミル、レファイナー、ロールミルまたはこれらの2以上の組合わせが用いられる。紙分は、破砕・分離機からロータリーキルンのホッパーに投入され、ロータリーキルン内で回転されながら焼却される。焼却残は二次燃焼室へ送られ、送風機からの給気によって完全燃焼される。二次燃焼室の廃ガスは冷却塔、集塵機および吸引ブロワを経て系外へ排出される。二次燃焼室および集塵機で生じた石こう粉は、回収槽へ取り出されるようになっている。
【0003】
特許文献2の「亜鉛回収方法」は、間接加熱式のロータリーキルンにおける回転する円筒状のキルン基体内に、亜鉛と鉄とを含むダストを装入させてキルン基体内において加熱処理し、ダストに含まれる亜鉛を揮発させ、揮発された亜鉛をロータリーキルンの排出部に設けられた排気管を通して処理装置に導いて回収すると共に、キルン基体内において処理した後の残渣を、ロータリーキルンの排出部に設けられた残渣取出し口からバーナー装置に導き、バーナー装置により残渣を燃焼加熱するようにしている。
【0004】
特許文献1は、ロータリーキルンを用いて、原料を熱焼却処理して発生する石こう粉を回収する方法であり、特許文献2は、電気炉から排出される亜鉛と鉄とを含むダストを、ロータリーキルンを用いて加熱処理し、ダストに含まれる亜鉛を揮発させてロータリーキルンの排気管を通して処理装置に回収する亜鉛回収方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-253920号公報
【特許文献2】特開2022-123246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような亜鉛回収方法では、ロータリーキルンの終端から排出され、加熱処理したダストの残渣の中に、揮発されない粉状の亜鉛(酸化亜鉛)が残存しており、ダスト内に含まれる亜鉛が十分に回収できておらず、亜鉛の回収効率が悪いという課題があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、ダストに含まれる亜鉛を効率よく回収することが可能な亜鉛回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる亜鉛回収装置は、ロータリーキルンにおける回転するキルン本体にて亜鉛を含む原料を加熱処理して生成される酸化亜鉛を吸引する吸引部と、上記ロータリーキルンでの加熱処理により発生する残渣が排出される上記キルン本体の排出口を内包する空間を有し、該排出口から該キルン本体内に空気を供給する空気供給体と、該空気供給体の下に連続して設けられ、上記キルン本体から落下する残渣を、下方に設けられた残渣収容器に案内するシュートと、該シュート内を上昇する空気を供給する上昇空気供給部と、上記シュートにおける上記上昇空気供給部よりも上方に設けられ、上記吸引部と連通する連通部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記連通部は、前記シュート内に突出する突出管部を有し、該突出管部の先端は、下方に向かって開口面積が漸次広くなる広開口部を有していることを特徴とする。
【0010】
前記シュートにおける前記連通部よりも上方の圧力に基づいて、前記上昇空気供給部から供給する空気の量を調整する空気量調整部を有することを特徴とする。
【0011】
前記シュートにおける前記連通部よりも上方の圧力に基づいて、前記上昇空気供給部から供給する空気の量をインバータ制御することを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる亜鉛回収装置は、ロータリーキルンにおける回転するキルン本体にて亜鉛を含む原料を加熱処理して生成される酸化亜鉛を吸引する吸引部と、上記キルン本体から排出されて落下する残渣を、下方に設けられた残渣収容器に案内するシュートと、該シュート内を上昇し上記キルン本体に空気を供給する上昇空気供給部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る亜鉛回収装置にあっては、従来は残渣として廃棄されていた酸化亜鉛も回収でき、ダストに含まれる亜鉛の回収率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る亜鉛回収装置の第1実施形態を説明する構成図である。
図2図1に示した亜鉛回収装置に設けられる連通部の変形例を示す図である。
図3】本発明に係る亜鉛回収装置の第2実施形態を説明する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る亜鉛回収装置の第1実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
第1実施形態に係る亜鉛回収装置1は、図1に示すように、ロータリーキルン2を用い、酸化鉄、酸化亜鉛Da、カーボン等を含む電気炉ダスト(以下、ダストという)Dを原料とし、ロータリーキルン2の回転される円筒状のキルン本体2a内でダストDを移動させつつ加熱処理し、ダストDから酸化亜鉛Daをガス化して分離し回収する装置である。
【0017】
亜鉛回収装置1は、外周に電気ヒータ等の加熱装置Hを備えたロータリーキルン2と、キルン本体2a内にて生成された酸化亜鉛Daを吸引する吸引部3と、キルン本体2aに空気を供給するための空気供給体4と、空気供給体4の下に連続して設けられ、残渣Dbが落下するシュート5と、シュート5の下に設けられた残渣収容器6と、シュート5の下端部側に設けられ、シュート5内に空気を供給する上昇空気供給部7と、シュート5の上端部側と吸引部3とを連通する連通部8とを備える。
【0018】
ロータリーキルン2は、キルン本体2aに、原料となるダストDを搬送するダストフィーダ2bと、キルン本体2aの上流側の開口2cから酸化亜鉛Daの還元反応用の窒素を供給する窒素供給部2dとを備える。窒素供給部2dとダストフィーダ2bの外周面との境界は封止されている。
【0019】
キルン本体2aと窒素供給部2d及び空気供給体4との間には、摺動シール機構Sが設けられ、内部の気体が外部に漏洩しないようにしながら、キルン本体2aの回転を可能にしている。
【0020】
キルン本体2aは、ダストDが移動する方向における先方側に向かって次第に低くなるように傾斜しており、高さが高い側(上流側)の開口2cにダストフィーダ2bの先端部が挿入され、高さが低い側(下流側)に、熱処理により発生する残渣Dbを排出する排出口2fが設けられる。
【0021】
ダストフィーダ2bは、後端部側にダストDの投入口を有する筒状口を備えており、内部に設けられたスパイラル状の羽を備えたシャフト2eが回転されることにより、投入されたダストDが先方側に搬送されてキルン本体2a内に供給される。
【0022】
窒素供給部2dは、キルン本体2aの上流側の開口2c側とダストフィーダ2bの先端側とを内包して閉塞された空間を形成し、内部に窒素が供給される。
【0023】
窒素供給部2d内の窒素は、キルン本体2aの上流側の開口2cからキルン本体2a内に供給される。
【0024】
吸引部3は、キルン本体2aの排出口2fに挿入される吸引管3aと、吸引されるガスに含まれる酸化亜鉛Daを分離して回収する回収空間を備える回収ユニット3bと、回収ユニット3bの下端に設けられ、回収ユニット3b内にて分離された酸化亜鉛Daを収容する酸化亜鉛収容器3cと、吸引管3aと回収ユニット3bとを連通し、吸引されたガスが流通する流通管3dと、回収ユニット3bから空気を排出するための排気管3eと、排気管3eに設けられた排気ファン3fとを備える。
【0025】
吸引管3aは、キルン本体2aとほぼ同軸に配置され、キルン本体2aの直径よりも小さな直径の筒状をなしている。
【0026】
このため、キルン本体2aと吸引管3aとは、二重管構造をなし、加熱によりガス化された酸化亜鉛Daは、吸引管3aに吸引され、質量の大きな残渣Dbは、キルン本体2aと吸引管3aとの間を通ってキルン本体2aの排出口2fから落下して排出される。
【0027】
回収ユニット3bは、回収空間を上下に分けるバグフィルタ3gを有しており、吸引管3aとつながる流通管3dは、バグフィルタ3gの下側の空間と連通している。
【0028】
回収空間の上側の空間には、排気ファン3fが設けられた排気管3eが設けられ、外部と連通している。
【0029】
このため、排気ファン3fにより吸引管3aに吸引されたガスは、流通管3dを通って回収ユニット3bに流入し、流入したガスに含まれる酸化亜鉛Daは、バグフィルタ3gで分離されて、回収ユニット3b内に堆積し、排出されるガスは、バグフィルタ3gを通って排気管3eから外部に排出される。バグフィルタ3gは、通過するガスを濾過して、ダイオキシンの排出を抑制する。
【0030】
回収ユニット3bの下端には、排出バルブ3hが設けられており、排出バルブ3hを開くことにより、堆積した酸化亜鉛Daが酸化亜鉛収容器3cに収容される。
【0031】
回収ユニット3bの上流側には、冷媒として水が供給されるウォータージャケット3iが設けられており、流通管3dは、ウォータージャケット3i内を貫通して回収ユニット3bに接続される。
【0032】
このため、流通管3d内を流通するガスは、ウォータージャケット(クーラー)3iによりバグフィルタ3gの耐熱温度以下に冷却され、そしてガス化した酸化亜鉛Daが粉体に戻されて、これによりダイオキシンの生成も抑制される。
【0033】
空気供給体4は、上下方向に沿う筒状をなしており、キルン本体2aの排出口2f側の部位と、吸引管3aの上流側の部位とを、その内部空間に内包している。
【0034】
このため、キルン本体2aにて加熱処理により発生した残渣Dbは、キルン本体2aの排出口2fから空気供給体4内に落下するように構成されている。
【0035】
また、空気供給体4と吸引管3aの外周面との境界は封止され、上方から内部に空気が供給されるように構成されている。
【0036】
空気供給体4内に供給された空気は、キルン本体2aの排出口2fからキルン本体2a内に供給され、供給された空気中の酸素は、キルン本体2a内での還元反応後の酸化反応に利用される。
【0037】
空気供給体4の下端は、下方に向かって次第に直径が小さくなる形状で形成されており、下端部にシュート5が連結されている。すなわち、シュート5の直径は、空気供給体4の直径よりも小さい。
【0038】
シュート5の上部側には、シュート5内と流通管3d内とを連通する配管でなる連通部8が設けられる。
【0039】
このため、シュート5内のガスも、排気ファン3fにより、連通部8を通じて流通管3d及び回収ユニット3bへとに吸引される。
【0040】
連通部8は、ウォータージャケット3iよりも上流側にて、流通管3dと連結されている。
【0041】
また、シュート5において連通部8よりも上側に、シュート5内の圧力を計測する圧力計9が設けられる。
【0042】
シュート5の下端には、キルン本体2aから残渣Dbが落下してくる位置に残渣排出バルブ5bが設けられる。
【0043】
残渣Dbは、残渣排出バルブ5bを開くことにより、その下に設けられている残渣収容器6に収容される。
【0044】
シュート5の下端部には、シュート5内に空気を供給する上昇空気供給部7が設けられる。
【0045】
上昇空気供給部7は、給気ファン7aと、給気ファン7aとシュート5とをつなぐ空気供給管7bと、空気供給管7bに設けられた開度調整ダンパ7cとを備える。
【0046】
第1実施形態の亜鉛回収装置1は、ダストフィーダ2bから供給されたダストDと、窒素供給部2dから供給された窒素とが、キルン本体2aの上流側での加熱処理で生じる還元反応により、ダストDに含まれる亜鉛が揮発されてガス化される。
【0047】
このとき、還元反応が促進されるように、ダストDにカーボンを加えてキルン本体2aに供給してもよい。
【0048】
キルン本体2aの下流側では、ガス化した亜鉛と、空気供給体4から供給された空気中の酸素による酸化反応により、ガス状の酸化亜鉛Daが生成される。
【0049】
生成されたガス状の酸化亜鉛Daは、キルン本体2a内のガスとともに排気ファン3fにより流通管3dに吸引され、当該流通管3dを流通してウォータージャケット3iで冷却されることで粉体となり、流通管3dから回収ユニット3bに引き込まれる。そして、粉体となった酸化亜鉛Daは、回収ユニット3b内に回収され、ガスは、バグフィルタ3gを透過して外部に排出される。
【0050】
一方、キルン本体2aにて吸引管3aにて吸引されなかった残渣Dbは、キルン本体2aの排出口2fから空気供給体4内に落下し、下方につながるシュート5内に落下する。
【0051】
このとき、残渣Dbには、吸引管3aにより吸引されなかったガス状の酸化亜鉛Daも含まれている。
【0052】
残渣Dbが落下するシュート5内には、給気ファン7aにより供給された常温の空気が上方に向かって流れている。
【0053】
残渣Dbに混入しているガス状の酸化亜鉛Daは、シュート5内を流れる常温の空気によって冷却されて、粉体に戻る。
【0054】
このため、残渣Dbに含まれ、質量が小さい粉状の酸化亜鉛Daは、空気により吹き上げられて上昇し、質量が大きな粉状の酸化鉄などは、シュート5の下部(残渣排出バルブ5b)に堆積する。
【0055】
空気によってシュート5内を上昇した酸化亜鉛Daは、排気ファン3fにより、シュート5の上部に設けられた連通部8から流通管3d側に吸引される。
【0056】
このため、シュート5における空気供給管7bと連通部8との間の長さLは、供給された空気により残渣Dbから酸化亜鉛Daを吹き上げて分離することが可能な長さに設定される。
【0057】
このとき、給気ファン7aの空気供給量は、供給する空気が空気供給体4側に逆流しないように、連通部8の上側の圧力計9の計測値に基づき、開度調整ダンパ7cの開度がコントローラ10により制御される。
【0058】
ここで、圧力計9、開度調整ダンパ7c及びコントローラ10等が空気量調整部に相当する。
【0059】
以上説明した第1実施形態に係る亜鉛回収装置1によれば、キルン本体2aから排出され落下してシュート5に案内される残渣Dbには、酸化鉄、酸化亜鉛Da、カーボン等が含まれており、シュート5には、上昇空気供給部7により上方に向かって流れる空気が供給されるので、質量が小さい粉状の酸化亜鉛Daやカーボンは、上方に吹き上げられ、その他の質量が大きな粉状の酸化鉄などはそのまま落下する。
【0060】
このため、シュート5内に上昇する空気を供給するだけで、残渣Dbの中から、質量が小さな酸化亜鉛Daやカーボンを分離して上方に吹き上げることができる。
【0061】
シュート5の上昇空気供給部7よりも上方には、吸引部3と連通され、シュート5内の空気を吸引する連通部8が設けられていて、吹き上げられた酸化亜鉛Daやカーボンがガスとともに吸引部3により吸引されるので、これまでは廃棄されていたこれら酸化亜鉛Da等を吸引部3側にて回収することができる。
【0062】
シュート5における連通部8よりも上方の圧力に基づいて、上昇空気供給部7から供給される空気の量を調整する圧力計9、開度調整ダンパ7c及びコントローラ10を備えているので、シュート5内において連通部8より上側の圧力が、その下側の圧力より大きくなるように、上昇空気供給部7から供給される空気の量を調整することにより、吹き上げられた酸化亜鉛Da等が連通部8より上方のキルン本体2a側に逆流することを防止することができる。
【0063】
また、連通部8の上側に設けた圧力計9に加えて、連通部8の下側にも追加の圧力計9bを設けるようにし、これら圧力計9,9bで測定される圧力を比較することにより、逆流を確実に防止するようにしてもよい(図2参照)。
【0064】
上記実施形態においては、上昇空気供給部7の空気供給量を開度調整ダンパ7cの開度により調整する例について説明したが、これに限るものではない。
【0065】
例えば、シュート5における連通部8よりも上方の圧力(圧力計9による計測値)に基づいて、上昇空気供給部7の給気ファン7aをインバータ制御して、供給される空気の量を調整してもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、連通部8が、シュート5の周面にその開口が設けられる場合について説明したが、これに限るものではない。
【0067】
例えば、図2に示すように、連通部8をシュート5内に突出させた突出管部8aの先端に、下方に向かって開口面積が漸次広くなるロート状の広開口部8bを設ける構成としてもよい。この場合には、吹き上げられた酸化亜鉛Da等をより効率よく回収することができる。
【0068】
次に、本発明に係る亜鉛回収装置の第2実施形態を、図3を参照して説明する。第1実施形態と同一構成については、図中で同符号を付して示し、その説明については省略する。
【0069】
第1実施形態では、空気供給体4を備え、この空気供給体4により、上方からロータリーキルン2の内部に空気が供給されるように構成していたが、第2実施形態の亜鉛回収装置1では、空気供給体4を省略し、上昇空気供給部7からのみ空気が供給されるように構成している。
【0070】
そして、上昇空気供給部7から供給される空気がシュート5を通ってキルン本体2a内に供給されるように、給気ファン7aの空気供給量が設定される。従って、第1実施形態の圧力計9も省略している。 さらに、シュート5と吸引部3とを連通する連通部8も省略している。
【0071】
第2実施形態の亜鉛回収装置1では、キルン本体2aの下流側にて、上昇空気供給部7から供給された空気中の酸素との酸化反応と、常温の空気による冷却作用により、粉状の
酸化亜鉛Daが生成される。
【0072】
生成された粉状の酸化亜鉛Daは質量が小さいので、キルン本体2a内の空気とともに排気ファン3fの吸引作用によって上昇されて回収ユニット3bに引き込まれ、酸化亜鉛Daは、回収ユニット3b内で分離され、空気はバグフィルタ3gを通って外部に排出される。
【0073】
一方、キルン本体2aにて吸引管3aに吸引されなかった残渣Dbは、キルン本体2aの下流側の排出口2fからシュート5内に落下する。
【0074】
このとき、給気ファン7aにより供給され上方に向かって流れる空気により、残渣Dbに含まれる酸化亜鉛Daがキルン本体2a側へ向けて吹き上げられる。
【0075】
吹き上げられた酸化亜鉛Daは、排出口2fからキルン本体2a内に供給され、排気ファン3fにより、キルン本体2aの吸引管3aから回収ユニット3b側へ引き込まれ、回収ユニット3bにて回収することができる。
【0076】
第2実施形態の亜鉛回収装置1によれば、上昇空気供給部7からキルン本体2aに供給する空気が、シュート5内を上方に向かって流れているので、この空気により残渣Dbに含まれる酸化亜鉛Daを上方に吹き上げて回収することができる。
【0077】
このため、空気供給体4や連通部8等を設ける必要がないので、より簡単な構造の亜鉛回収装置1を構成でき、そして効率よく亜鉛を回収することができる。
【0078】
以上、本発明に係るいずれの実施形態であっても、残渣Dbに混入しているガス状の酸化亜鉛Daを、常温の上昇空気によって冷却して粉状に戻し、残渣Dbと粉状の酸化亜鉛Daの質量の違いを利用して、粉状の酸化亜鉛Daを上昇気流で舞い上がらせて回収するようにしていて、これにより、酸化亜鉛Daの回収効率を飛躍的に向上することができる。
【0079】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1 亜鉛回収装置
2 ロータリーキルン
2a キルン本体
2b ダストフィーダ
2c 開口
2d 窒素供給部
2e シャフト
2f 排出口
3 吸引部
3a 吸引管
3b 回収ユニット
3c 酸化亜鉛収容器
3d 流通管
3e 排気管
3f 排気ファン
3g バグフィルタ
3h 排出バルブ
3i ウォータージャケット
4 空気供給体
5 シュート
5b 残渣排出バルブ
6 残渣収容器
7 上昇空気供給部
7a 給気ファン
7b 空気供給管
7c 開度調整ダンパ
8 連通部
8a 突出管部
8b 広開口部
9 圧力計
9b 追加の圧力計
10 コントローラ
D ダスト
Da 酸化亜鉛
Db 残渣
H 加熱装置
L シュートにおける空気供給管と連通部との間の長さ
S シール機構
図1
図2
図3