(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154041
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】被膜付基材及び被膜付基材製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 57/00 20060101AFI20241023BHJP
F16L 58/10 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F16L57/00 A
F16L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067636
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】落合 義人
【テーマコード(参考)】
3H024
【Fターム(参考)】
3H024AA04
3H024AB01
3H024EA02
3H024EC07
3H024ED04
3H024EE06
3H024EF02
(57)【要約】
【課題】基材の外周面の被膜が容易に脱落せず、かつ分離可能に形成された被膜付基材、及び被膜付基材製造方法を提供すること。
【解決手段】被膜付基材1は、環状に巻き付け可能な基材2と、基材2の外周面2aに積層され、剥離可能な被膜3を備える。被膜3は、基材2の長手方向に沿って形成される凹部4を有する。基材2と被膜3は、同種の樹脂材料でもよい。また、基材2は管12でもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に巻き付け可能な基材と、
前記基材の外周面に積層され、剥離可能な被膜を備え、
前記被膜は、前記基材の長手方向に沿って形成される凹部を有する被膜付基材。
【請求項2】
前記基材と前記被膜は、同種の樹脂材料によって形成される請求項1に記載の被膜付基材。
【請求項3】
前記基材は管である請求項1に記載の被膜付基材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の被膜付基材の製造方法であって、
前記基材を成形する第一工程と、
前記第一工程によって成形された前記基材を冷却する第二工程と、
前記第二工程によって冷却された前記基材の外周面に前記被膜を形成する第三工程を備える被膜付基材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状に巻き付け可能な基材の外周面が被膜された被膜付基材、及び被膜付基材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺の可撓管等において、その外表面などにホコリや汚れなどの異物が付着しないように、或いは傷がつかない提案がなされている。例えば、特許文献1によれば以下のように記載されている。長尺の可撓管が在庫分としてストックされ、前記在庫分から前記可撓管の所望長さ分を切り売りする可撓管の包装形態であって、変形可能な軟質材料からなる前記可撓管と、前記可撓管の周囲に沿って設けられる筒状の包装体と、を備え、前記包装体は、切断及び変形可能な材料からなり、前記可撓管の屈曲変形に追随して変形可能となるように覆うことを特徴とする。
【0003】
これによれば、在庫分となる可撓管から所望長さ分だけ切り売りする時に、可撓管から包装体を剥がすことなく可撓管の周囲が包装体で覆われた状態で、可撓管とともに包装体を一緒に切断することにより、在庫分の可撓管の外表面が露出しないと同時に、切り売り分となる可撓管の外表面が露出しない状態で分離される。在庫分の可撓管は、その外表面が包装体により覆われた状態でストックされ、切り売り分の可撓管は、その外表面が包装体により覆われた状態で持ち運びが可能となる。
【0004】
したがって、在庫管理時及び切断時並びに切断後において可撓管の外表面を外気に触れることなく保つことができる。その結果、可撓管の外表面にホコリや汚れなどの異物が付着することや変色などを防止することができて、可撓管の外表面を衛生的に保持できる。可撓管がシリコーンゴムなどのような粘着性を有し且つ電気絶縁性の高い材料で形成されて、静電気などによりホコリや汚れなどの異物が外表面に付着し易いものの場合には、特に有効である、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来例には、以下の課題が想定される。特許文献1によれば、可撓管は包装体によって覆われているのみである。包装体は、可撓管の外径よりも大径な筒状に形成することが好ましく、可撓管の周囲に包装体を、可撓管の外表面と包装体の内表面との間に空間部が形成されるように覆って、可撓管の外表面と包装体の内表面を一定間隔に保つことが可能であると記載されている。この場合、包装体は可撓管の外表面との間の空間部があるため、搬送中等において可撓管から脱落するか、或いはズレが発生する恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、従来の課題を解決するもので、基材の外周面の被膜が容易に脱落せず、かつ分離可能に形成された被膜付基材、及び被膜付基材製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る被膜付基材は、環状に巻き付け可能な基材と、前記基材の外周面に積層され、剥離可能な被膜を備え、前記被膜は、前記基材の長手方向に沿って形成される凹部を有する。
【0009】
これによれば、被膜は基材の外周面に積層されるので容易に脱落しない。よって、基材の外周面を傷、汚れ等から保護することができる。また、凹部は基材の長手方向に沿って形成され、被膜は基材の外周面に対して剥離可能なので、凹部を裂くことで基材から被膜を剥離することができる。
【0010】
また、前記被膜付基材は、前記基材と前記被膜が同種の樹脂材料によって形成されてもよい。この場合、被膜付基材は、基材と被膜が同種の樹脂材料からなるので、廃棄するときの分別が不要となる。よって、材料リサイクルするときに一体的に再利用することができるので、環境負荷を低減することができる。
【0011】
また、前記被膜付基材は、前記基材が管でもよい。この場合、基材は管なのでパイプ等に適用可能であり、また長さの制限が無い。
【0012】
本発明の第二の態様に係る被膜付基材製造方法は、前記被膜付基材の製造方法であって、前記基材を成形する第一工程と、前記第一工程によって成形された前記基材を冷却する第二工程と、前記第二工程によって冷却された前記基材の外周面に前記被膜を形成する第三工程を備える。
【0013】
これによれば、第一工程から第三工程までを一連の製造装置によって連続的に行うことができるので、製造コストを低減できる。また、基材の外周面を安定的に被膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一実施形態の被膜付基材1aを示す平面図である。
【
図2】
図1における断面I-Iの部分拡大図であり、第一凹部4aの断面形状を説明する図である。
【
図3】
図2における別の例であり、第一凹部14aの断面形状を説明する図である。
【
図4】被膜付基材1aを示す斜視図であり、(a)は第一凹部4aにおいて被膜3を剥離する前の状態を示し、(b)は第一凹部4aの一部を分離して被膜3を基材2から剥離する状態を示す。
【
図5】被膜付基材1aを示す斜視図であり、(a)は基材2の端部から長手方向の所定範囲において被膜3を剥離して切断した状態を示し、(b)は(a)に対して継手27を取り付けた状態を示す。
【
図6】被膜付基材1aを示す斜視図であり、(a)は基材2の端部から長手方向の所定範囲において被膜3を剥離して捲った状態を示し、(b)は(a)に対して継手27を取り付けた状態を示し、(c)はさらに(b)から被膜3を継手27に被せた状態を示す。
【
図7】本発明の第二実施形態の被膜付基材1bを示す平面図である。
【
図8】
図7における断面II-IIの部分拡大図であり、第二凹部4bの断面形状を説明する図である。
【
図9】
図8における別の例であり、第二凹部14bの断面形状を説明する図である。
【
図10】被膜付基材1bを示す斜視図であり、(a)は第二凹部4bにおいて被膜3を剥離する前の状態を示し、(b)は第二凹部4bの一部を分離して被膜3を基材2から剥離する状態を示し、(c)は基材2の端部から長手方向の所定範囲において被膜3を剥離して切断した状態を示し、(d)は基材2の端部から長手方向の所定範囲において被膜3を剥離して捲った状態を示す。
【
図11】本発明の第三実施形態の被膜付基材1cを示す平面図である。
【
図12】
図11における断面III-IIIの部分拡大図であり、第三凹部4cの断面形状と帯状部3cの断面形状を説明する図である。
【
図13】被膜付基材1cを示す斜視図であり、(a)は第三凹部4cにおいて被膜3を剥離する前の状態を示し、(b)は第三凹部4cの一部を分離して帯状部3cを基材2から剥がし、さらに被膜3を剥離する状態を示す。
【
図14】被膜付基材1cを示す斜視図であり、(c)は基材2の端部から長手方向の所定範囲において被膜3を剥離して切断した状態を示し、(b)は(a)に対して継手27を取り付けた状態を示す。
【
図15】被膜付基材1cを示す斜視図であり、(a)は基材2の端部から長手方向の所定範囲において被膜3を剥離して捲った状態を示し、(b)は(a)に対して継手27を取り付けた状態を示し、(c)はさらに(b)から被膜3を継手27に被せた状態を示す。
【
図16】本発明の製造装置20を示す平面図である。
【
図17】従来のゲートル巻き梱包の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明を具現化した被膜付基材1及び被膜付基材製造方法を説明する。なお、発明を実施するための形態、及び参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。本発明はこれらに限定されるものではない。図面に記載されている構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0016】
<被膜付基材1の各実施形態に共通の構成説明>
図1から
図6までを代表例として、本発明の第一の態様に係る被膜付基材1の各実施形態に共通の構成を説明する。被膜付基材1は、環状に巻き付け可能な基材2と、基材2の外周面2aに積層され、剥離可能な被膜3を備える。被膜3は、基材2の長手方向に沿って形成される凹部4を有する。
【0017】
図2等に示すように、被膜3は、基材2の外周面2aに非接着状態で付着する。凹部4は、基材2の長手方向に沿って形成され、被膜3の外周面3aから基材2の外周面2aに向かって凹む。凹部4が長手方向に沿うとは、基材2が円筒状部材の場合に中心軸線Cに平行の場合の他、中心軸線Cに対して所定角度を有して延びてもよいし、螺線状に延びてもよいし、蛇行した状態で延びてもよい。基材2は環状に巻き付け可能であり、例としてパイプ等が挙げられ、長さに制限が無い。基材2は、種々の形態を適用可能であり、円筒部材、角筒部材、円柱部材、角柱部材、その他でもよい。
【0018】
また、基材2と被膜3は、同種の樹脂材料によって形成されてもよい。さらに、基材2及び被膜3は熱可塑性樹脂で形成されてもよい。例として、基材2及び被膜3は、低密度ポリエチレンである。他には、高密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリブデン、ポリプロピレン、塩化ビニルでもよい。ポリエチレンは、いわゆるパイプグレードを選択することが望ましい。
【0019】
また、基材2は管12でもよい。
図2等に例示するように、管12は、長手方向に対する垂直方向の断面において、外形形状が楕円を含む円筒管でもよい。被膜3の厚みt3は基材2の厚みt2よりも薄く形成される。管12は例として外径が27mmで、基材2の厚みt2が4mmであり、被膜3の厚みt3は0.15~0.25mmの範囲である。管12の外径寸法が変わった場合でも、被膜3の厚みt3は上記の範囲が適切である。被膜3の厚みt3は、厚くするほど材料コストが高くなり、さらに裂け難くなる。さらに、
図2等に示す凹部4の薄肉部の厚みt4は、例として0.05mmである。凹部4の薄肉部の厚みt4は、所定の引張強さを有しながら可能な限り薄い方が望ましい。なお、管12は円筒管に限定されず、角筒管でもよい。
【0020】
また、
図2等に示すように、被膜3は、基材2の外周面2aに対して周方向の全周に渡って連続し、基材2の外周面2aに密着した状態でもよい。
【0021】
<被膜付基材1の各実施形態に共通の構成による効果>
以上説明した、被膜付基材1の各実施形態に共通の構成によれば、以下の効果を奏する。被膜3は、基材2の外周面2aに積層されるので容易に脱落しない。よって、基材2の外周面2aを傷、汚れ等から保護することができる。また、凹部4は基材2の長手方向に沿って形成され、被膜3と基材2の外周面2aとの間は剥離可能なので、凹部4を裂くことで基材2から被膜3を剥離することができる。
【0022】
図17に示すように、従来は、例えば長尺のパイプ製品32が所定長さ連続して製造され、一定の径で巻き取られて束ねられる。パイプ製品32の周りは、梱包フィルム30がいわゆるゲートル巻きされ、連続的に螺線状に巻かれた状態で出荷される。パイプ製品32を使用する現場では、必要な長さにパイプ製品32を切断して使用されるが、その際に梱包フィルム30は全てが剥がされる。その際に、残りのパイプ製品32は、梱包フィルム30が剥がされた状態で移動、或いは保管されることになる。すると、残りのパイプ製品32は、外周面に埃が付着する、或いは傷が着くという問題が生じる。さらに、梱包フィルム30は全てが剥がされるので、作業現場で多量のごみが発生する。
【0023】
これに対し、本発明の被膜付基材1はこの課題を解決するものである。被膜3は、基材2の梱包材としての機能も果たす。被膜3は全てを剥離することも可能であるが、
図5(a)等に示すように、基材2の端部から一定の範囲のみを剥離して切断し、残りの部分は被膜3を残した状態にすることも可能である。すなわち、作業現場では、基材2の端部から一定の範囲のみを剥がされた被膜3がごみになるのみである。被膜3を切断するときは、凹部4から周方向へ裂くようにして切り裂いてもよいし、切り裂くことが困難な場合は切断工具を用いてもよい。
【0024】
或いは、
図6(a)等に示すように、基材2の端部から一定の範囲のみを剥離し、剥離した部分を残してもよい。被膜付基材1に継手27を接続するとき、
図6(b)等に示すように、被膜3を捲った状態で接続してもよい。或いは、
図6(c)等に示すように、剥離した部分を継手27側に被せるようにすることも可能である。この場合、剥離した部分は切断せずに残されるので、破棄物をゼロにすることができる。被膜付基材1は、地中に埋めて使用するパイプ等の場合、被膜3を切断せずに残した状態でもよい。また、被膜付基材1が目視可能な地上で使用される場合、見栄えを良くするために被膜3を切断してもよい。
【0025】
被膜付基材1に残された被膜3は、引き続き梱包材として基材2の外周面2aを埃或いは傷から保護することができる。被膜3は、被膜付基材1の保管時のみならず、現場での施工或いは移動時の引きずりによって生じうる埃或いは傷に対しても、一定の保護効果が期待できる。よって、被膜付基材1は、複数の作業現場で必要長さに切断して使用することができ、残りを移動、或いは保管することができる。
【0026】
また、被膜付基材1は、基材2と被膜3が同種の樹脂材料によって形成されれば、廃棄するときの分別が不要となる。よって、材料リサイクルするときに一体的に再利用することができるので、環境負荷を低減することができる。
【0027】
また、基材2及び被膜3は熱可塑性樹脂で形成されれば、一連の製造工程で製造することができる。よって、生産コストを低減することができる。
【0028】
また、
図2等に示すように、基材2が管12の場合、パイプ等に適用可能であり、長さに制限が無い。例として基材2である管12は、被膜3の厚みt3が基材2の厚みt2よりも薄く形成されれば、被膜3の材料コストを低減させることができる。また、被膜3を剥がして廃棄される量が低減されるので、環境負荷を抑えることができる。
【0029】
また、被膜3は基材2の外周面2aに対して周方向の全周に渡って連続するので、基材2の外周面2aをより保護することができる。また、被膜3が基材2の外周面2aに密着した状態であれば、基材2からより脱落しにくくズレにくい。
【0030】
<第一実施形態の被膜付基材1aの構成説明>
次に、
図1から
図6までを参照して、本発明の第一の態様に係る第一実施形態の被膜付基材1aを説明する。被膜付基材1aは、凹部4である第一凹部4aが被膜3の外周面3aと基材2の外周面2aとの間にまで凹み、基材2の長手方向に沿って連続して形成される。凹部4の断面形状は限定されない。例えば
図2に示す第一凹部4aのように、凹部4の断面形状は、周方向の幅w1の間において厚みt4の薄肉部を有し、被膜3の外周面3aから基材2の外周面2aに向かって台形状に凹んでもよい。また、例えば
図3に示す第一凹部14aのように、被膜3の外周面3aから基材2の外周面2aに向かってV字状に凹んでもよい。
図2における第一凹部4a及び
図3における第一凹部14aの薄肉部の厚みt4は、例として0.05mmである。また、第一凹部4aの周方向における幅w1は、例として1.5mmである。
【0031】
次に、
図4を参照して、第一凹部4aを裂いて被膜3を剥離する方法を説明する。
図4(a)の状態から
図4(b)に示すように、作業者は第一凹部4aの薄肉部を手で引き裂いて被膜3を剥がす。
図4(b)の状態の後、被膜3は複数の処理方法を選択可能である。第一に、
図5(a)に示すように、基材2から剥離した被膜3を周方向に沿って切断する方法である。第二に、
図6(a)に示すように、基材2から剥がした被膜3を切断せずに捲った状態にする方法である。なお、被膜3をより捲りやすくするために、第一凹部4aを複数列形成してもよい。後述する第二実施形態の被膜付基材1bも、同様に第二凹部4bを複数列形成してもよい。
【0032】
被膜付基材1aは、継手27を接続する場合がある。
図5(a)に示す状態の被膜付基材1aに対して継手27を接続する場合、
図5(b)に示すように、被膜3を剥離して切断することで露出した部分の基材2を継手27に挿入する。
【0033】
また、
図6(a)に示す状態の被膜付基材1aに対して継手27を接続する場合、二通りの方法がある。
図6(b)に示すように、基材2から剥離して被膜3を捲ることで露出した基材2を継手27に挿入する方法である。
図6(b)の状態でもよいが、さらに
図6(c)に示すように、被膜3は、継手27に基材2を挿入後、捲っておいた部分を継手27に被せてもよい。
【0034】
<第一実施形態の被膜付基材1aの効果>
以上説明した被膜付基材1aの構成によれば、以下の効果を奏する。被膜付基材1aは、凹部4である第一凹部4aが被膜3の外周面3aと基材2の外周面2aとの間にまで凹み、基材2の長手方向に沿って連続して形成される。よって、被膜3は薄肉部が連続して形成されるので、長手方向の任意の位置まで第一凹部4a或いは第一凹部14aを裂くことで基材2から被膜3を剥離することができる。被膜3は、基材2の端部から長手方向の任意の長さまで剥離することができる。
【0035】
図5(a)に示すように、基材2から剥離した被膜3は切断してもよい。例として、被膜3は継手27に接続されるときに剥離するが、切断して廃棄されるのは一部であり、廃棄物を少量に抑えることができる。
【0036】
また、
図6(a)に示すように、基材2から剥離した被膜3は、切断せずに捲った状態でもよい。この場合、被膜3は切断されないので廃棄物が発生しない。さらに、作業者は、施工現場で鋏或いはカッターナイフ等の切断工具を使用する必要が無い。また、
図6(c)に示すように、継手27を接続した後に、被膜3を継手27に被せてもよい。
【0037】
<第二実施形態の被膜付基材1bの構成説明>
次に、
図7から
図10までを参照して、本発明の第一の態様に係る第二実施形態の被膜付基材1bを説明する。被膜付基材1bは、凹部4である第二凹部4bが基材2の長手方向に沿って間欠的に形成される。
図8に示す例は、第二凹部4bが被膜3の外周面3aから基材2の外周面2aにまで貫通する。第二凹部4bは、円柱状に貫通してもよいし、円錐状、角柱状、或いは角錐状に貫通してもよい。
【0038】
図9に示す例は、第二凹部14bが被膜3の外周面3aと基材2の外周面2aとの間にまで凹む。
図9に示す第二凹部14bの断面形状の例は、被膜3の外周面3aから基材2の外周面2aに向かって円錐台状に凹み、薄肉部は厚みt4であって直径w1に形成される。第二凹部14bは、
図9に示す例の他に円錐状に形成されてもよい。或いは、第二凹部14bは、その他角柱状、円柱状、円錐状、角錐台状でもよい。
【0039】
次に、
図10を参照して、第二凹部4bを裂いて被膜3を剥離する方法を説明する。被膜3を剥離する方法は、被膜付基材1aと同様であり、
図10(a)の状態から
図10(b)に示すように、作業者は第二凹部4bを手で引き裂いて被膜3を剥がす。
図10(b)の状態の後、被膜3は
図10(c)に示すように、基材2から剥離した被膜3を周方向に沿って切断してもよいし、
図10(d)に示すように、基材2から剥がした被膜3を切断せずに捲った状態にしてもよい。被膜付基材1bと継手27とを接続する方法は、被膜付基材1aと同様であり、説明を省略する。
【0040】
<第二実施形態の被膜付基材1bの効果>
以上説明した被膜付基材1bの構成によれば、以下の効果を奏する。被膜付基材1bは、凹部4である第二凹部4b又は第二凹部14bが、基材2の長手方向に沿って間欠的に形成される。よって、第二凹部4b又は第二凹部14b、及び長手方向に隣接して並ぶ第二凹部4b又は第二凹部14bの間を裂くことで、基材2から被膜3を剥離することができる。さらに、被膜3は、基材2の端部から長手方向の任意の長さまで剥離することができる。
【0041】
第二凹部4b又は第二凹部14bは、長手方向に沿って間欠的に形成されるので、連続的に形成される場合に比べて被膜3に周方向の力が加わったときの強度が強くなる。よって、被膜3の凹部4において、輸送時等に外力が加わったときに裂けて剥がれてしまうことを低減することができる。
【0042】
また、凹部4を裂く時に、第二凹部4b又は第二凹部14bが間欠的に形成されているので、凹部4が形成される部分と形成されない部分とで裂くために必要な引裂き力が異なる。すなわち、第二凹部4b又は第二凹部14bが形成されている部分は裂きやすく、形成されていない部分は裂きにくい。よって、基材2の端部から被膜3を引き裂くときに第二凹部4b又は第二凹部14bが形成されるピッチ間隔で引裂き長さを調整しやすい。
【0043】
<第三実施形態の被膜付基材1cの構成説明>
次に、
図11から
図13までを参照して、本発明の第一の態様に係る第三実施形態の被膜付基材1cを説明する。被膜付基材1cは、凹部4である第三凹部4cが基材2の長手方向に沿って複数列形成され、第三凹部4cと第三凹部4cとの間に帯状部3cが形成される。
図11から
図13までに示す例では、二本の第三凹部4cが基材2の長手方向に沿って連続して形成され、第三凹部4cと第三凹部4cとの間に帯状部3cが形成される。この他に、第二実施形態の被膜付基材1bの例のように、第三凹部4cが基材2の長手方向に沿って間欠的に形成されてもよい。周方向における第三凹部4cと第三凹部4cとの間隔は任意に設定可能である。
【0044】
図12に示す例では、帯状部3cは断面形状が台形状で下底の幅がw4であり、周方向において両サイドが第三凹部4cに繋がっている。第三凹部4cは厚みt4であり、第一実施形態の被膜付基材1a及び第二実施形態の被膜付基材1bと同様である。
図12では、帯状部3cにおける径方向の高さは被膜3の外径と同様であるが、被膜3の外径より低くてもよい。また、帯状部3cの断面形状は台形状に限定されず種々の形状を適用可能である。第三凹部4cは周方向がそれぞれ幅w3である。幅w3は第一実施形態の被膜付基材1a及び第二実施形態の被膜付基材1bの幅w1よりも大きくてもよいし小さくてもよい。なお、第三凹部4cの周方向における幅はそれぞれ異なってもよい。
【0045】
次に、
図13を参照して、第三凹部4cを裂いて被膜3を剥離する方法を説明する。帯状部3cは、他の部分の被膜3との境界が薄肉部である。
図13(b)に示すように、作業者は、帯状部3cを摘まんで基材2から遠ざける方向へ引き上げると、薄肉部が裂けて剥離する。被膜3は、帯状部3cにつながっていた部分が浮き上がり、基材2から容易に剥離できる。なお、被膜3をより捲りやすくするために、帯状部3cを複数列形成し、併せて第三凹部4cを形成してもよい。
【0046】
剥離した後の被膜3は、被膜付基材1aと同様に複数の処理方法を選択可能である。第一に、
図14(a)に示すように、基材2から剥離した被膜3を周方向に沿って切断する方法である。第二に、
図15(a)に示すように、基材2から剥がした被膜3を切断せずに捲った状態にする方法である。被膜付基材1bと継手27とを接続する方法も、被膜付基材1aと同様であり、
図14(b)に示すように接続する方法と、
図15(b)又は
図15(c)に示すように接続する方法がある。
【0047】
<第三実施形態の被膜付基材1cの効果>
以上説明した被膜付基材1cの構成によれば、以下の効果を奏する。被膜付基材1cは、凹部4である第三凹部4cと第三凹部4cとの間に帯状部3cが形成される。第三凹部4cを裂いて帯状部3cを分離することにより、基材2から被膜3を剥離するための切っ掛けを形成することができる。よって、基材2から被膜3を容易に剥離することができる。さらに、第三凹部4cの形態を第一実施形態の第一凹部4a又は第一凹部14aの形態にすれば、被膜付基材1aの効果を合わせ持つことができる。また、第三凹部4cの形態を第二実施形態の第二凹部4b又は第二凹部14bの形態にすれば、被膜付基材1bの効果を合わせ持つことができる。
【0048】
図14及び
図15を参照して説明した被膜3の処理方法と継手27との接続方法については、被膜付基材1aと同様の効果を奏する。
【0049】
<被膜付基材製造方法の説明>
次に、被膜付基材製造方法を説明する。被膜付基材製造方法は、環状に巻き付け可能な基材2の外周面2aを被膜して被膜付基材1を製造する方法である。被膜付基材製造方法は、基材2を成形する第一工程と、第一工程によって成形された基材2を冷却する第二工程と、第二工程によって冷却された基材2の外周面2aに被膜3を形成する第三工程を備える。第一工程から第三工程までは、一連の製造装置20によって連続的に行われる。さらに、第三工程は、被膜3の外周面3aの一部に凹部4を形成する第四工程を含んでもよい。第一工程と第三工程は、例として樹脂の押出成形が行われる。
【0050】
次に、
図16を参照して製造装置20を説明する。製造装置20は、図の左から右に向かって製造工程が進む装置である。第一工程は、第一押出機21において基材2を押し出し、真空水槽22に通して成形する。次に、第二工程は、真空水槽22によって成形した基材2を第一冷却水槽23で冷却する。次に、第二押出機24において、基材2の外周面2aに被膜材を押し出して被膜3を形成する。第二押出機24より吐出した被膜材である樹脂が、基材2の押出成形速度によって引っ張られる。被膜材は第二押出機24から出た時よりも内外径が小さくなり、基材2の外周面2aに被膜する。その後、被膜材は第二冷却水槽26で冷却されて収縮し、基材2の外周面2aに密着する。
【0051】
基材2は、第一押出機21から連続的に押し出され、引き取り機25が被膜付基材1を引き取ることにより連続的に工程が進む。被膜付基材1は、所定の長さに達すると切断される。被膜付基材1は、被膜3が基材2の梱包材を兼ねるので、さらなる梱包工程を経ること無く製品として出荷される。
【0052】
<被膜付基材製造方法の効果>
以上説明した被膜付基材製造方法によれば、以下の効果を奏する。被膜付基材製造方法は、第一工程から第三工程までを一連の製造装置20によって連続的に行うことができるので、製造コストを低減できる。基材2の外周面2aに対して被膜3を安定的に被膜することができる。また、第三工程である被膜3の形成工程に凹部4の形成工程が含まれる場合、凹部4を安定的に形成することができる。さらに、後加工の手間を省くことができるので、製造コストを低減できる。
【符号の説明】
【0053】
1、1a、1b、1c 被膜付基材
2a 外周面
3 被膜
3a 外周面
4 凹部
12 管
C 中心軸線