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特開2024-154049X線発生装置、X線分析装置、X線発生装置の制御方法及びX線発生装置の制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154049
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】X線発生装置、X線分析装置、X線発生装置の制御方法及びX線発生装置の制御システム
(51)【国際特許分類】
   G21K 1/00 20060101AFI20241023BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20241023BHJP
   G21K 1/02 20060101ALI20241023BHJP
   H05G 1/00 20060101ALI20241023BHJP
   G01N 23/20008 20180101ALI20241023BHJP
【FI】
G21K1/00 X
G21K5/02 X
G21K1/02 Z
H05G1/00 G
G01N23/20008
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067650
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】呉 彦霖
(72)【発明者】
【氏名】野口 学
(72)【発明者】
【氏名】野々口 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】味戸 聡志
(72)【発明者】
【氏名】栗林 勝
【テーマコード(参考)】
2G001
4C092
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA14
2G001BA18
2G001CA01
2G001JA01
4C092AA01
4C092AB12
4C092AB27
4C092AC08
4C092BD12
(57)【要約】
【課題】真空領域内にX線観察部を設ける必要がなく、かつ、X線分析測定に使用されるX線の一部を使用する必要がない、窓保持部、X線発生装置、X線分析装置、X線発生装置の制御方法及びX線発生装置の制御システムに関する技術を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、X線発生装置が提供される。このX線発生装置は、X線発生部と、X線透過窓とを備える。X線発生部は、外部から電子線を受けることでX線を発生させるように構成される。X線透過窓は、第1のX線透過窓と、第2のX線透過窓とを含む。第1のX線透過窓は、X線のうち第1の方向に指向する第1のX線を透過させるように構成される。第1のX線は、その光軸上に設けられ且つX線のX線焦点を観察可能なX線観察部に入射する。第2のX線透過窓は、X線のうち第1の方向とは異なる第2の方向に指向する第2のX線を透過させるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生装置であって、
X線発生部と、X線透過窓とを備え、
前記X線発生部は、外部から電子線を受けることでX線を発生させるように構成され、
前記X線透過窓は、第1のX線透過窓と、第2のX線透過窓とを含み、
前記第1のX線透過窓は、前記X線のうち第1の方向に指向する第1のX線を透過させるように構成され、ここで前記第1のX線は、その光軸上に設けられ且つ前記X線のX線焦点を観察可能なX線観察部に入射し、
前記第2のX線透過窓は、前記X線のうち前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向する第2のX線を透過させるように構成される、
X線発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線発生装置において、
X線結像部を更に備え、
前記X線結像部は、
前記第1のX線の入射を受け付け、
前記X線観察部において前記第1のX線の像を結像させるように構成される、
X線発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線発生装置において、
前記X線結像部には、ピンホールが形成される、
X線発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線発生装置において、
前記ピンホールの直径は、20μm以下である、
X線発生装置。
【請求項5】
請求項2に記載のX線発生装置において、
前記X線結像部は、前記X線透過窓と、前記X線発生部との間に設けられる、
X線発生装置。
【請求項6】
請求項2に記載のX線発生装置において、
前記X線結像部と前記X線透過窓とは、同一のユニットに設けられる、
X線発生装置。
【請求項7】
X線分析装置であって、
X線発生装置と、試料台と、X線検出器とを備え、
前記X線発生装置は、請求項1~6の何れか1つに記載のX線発生装置であり、
前記試料台は、前記第2のX線が入射する試料を設置可能に構成され、
前記X線検出器は、前記試料にて回折、反射又は散乱された前記第2のX線を検出可能に構成される、
X線分析装置。
【請求項8】
請求項1~6の何れか1つに記載のX線発生装置の制御方法であって、
次の各ステップを備え、
受付ステップでは、前記X線観察部における前記第1のX線の観察の結果を受け付け、
制御ステップでは、前記観察の結果に基づいて、前記電子線を発生させる電子銃の位置又は姿勢を制御する、
X線発生装置の制御方法。
【請求項9】
X線発生装置の制御システムであって、
請求項8に記載の制御方法の各ステップを実行する、少なくとも1つのプロセッサを備える、
X線発生装置の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置、X線分析装置、X線発生装置の制御方法及びX線発生装置の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X線標的を作り出すように動作可能なX線源と一緒に実施されたとき、電子ビームが標的と交差するポイントで電子ビームの幅を決定し、制御するための技法が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-503960号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Benedikt Gunther et al. "Device for source position stabilization and beam parameter monitoring at inverse Compton X-ray sources" Journal of Synchrotron Radiation, September 2019
【非特許文献2】jae Yeon Park et al. "X-ray beam-position feedback system with easy-to-use beam-position monitor" Journal of Synchrotron Radiation, May 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、電子ビームスポットの存在を検知するためのセンサが、真空領域であるハウジングの内側に設置されており、電子ビームの検知のためのシステムの構築が容易ではない。加えて、特許文献1では、液体金属ジェットといった液体のターゲットが想定されるものであり、静止ターゲットやローターターゲット等といった固体のターゲットに適用の範囲を拡大することも容易ではない。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、真空領域内にX線観察部を設ける必要がなく、かつ、X線分析測定に使用されるX線の一部を使用する必要がない、窓保持部、X線発生装置、X線分析装置、X線発生装置の制御方法及びX線発生装置の制御システムに関する技術を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、X線発生装置が提供される。このX線発生装置は、X線発生部と、X線透過窓とを備える。X線発生部は、外部から電子線を受けることでX線を発生させるように構成される。X線透過窓は、第1のX線透過窓と、第2のX線透過窓とを含む。第1のX線透過窓は、X線のうち第1の方向に指向する第1のX線を透過させるように構成される。第1のX線は、その光軸上に設けられ且つX線のX線焦点を観察可能なX線観察部に入射する。第2のX線透過窓は、X線のうち第1の方向とは異なる第2の方向に指向する第2のX線を透過させるように構成される。
【0008】
本開示によれば、真空領域内にX線観察部を設ける必要がなく、かつ、X線分析測定に使用されるX線の一部を使用する必要がない技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態におけるX線分析システム1のシステム構成の一例を示す図である。
図2】実施形態におけるX線分析装置2の一例を説明する図である。
図3】実施形態における第1の窓保持部204の断面図の一例である。
図4】実施形態における第2の窓保持部205の断面図の一例である。
図5】X線発生部203aとX線結像部204bとX線観察部21との位置関係を説明する図である。
図6】実施形態における情報処理装置3のハードウェア構成の一例を示す図である。
図7】実施形態における情報処理の一例を説明する図である。
図8】X線観察部21により取得されるX線焦点の一例を示す図であり、X線の形状に関するデータの一例を示す図である。
図9】変形例における第1の窓保持部404の断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0011】
1.X線分析システム1のシステム構成
まず、図1を参照しながら本実施形態のX線分析システム1のシステム構成について説明する。図1は、実施形態におけるX線分析システム1のシステム構成の一例を示す図である。図1が示すように、X線分析システム1は、X線分析装置2と、情報処理装置3と、を含む。X線分析システム1は、X線による試料の分析を可能にするシステムである。X線分析装置2及び情報処理装置3は、通信ケーブル又はネットワークを介して、相互に通信可能に構成される。これにより、X線分析装置2及び情報処理装置3は、相互に様々な情報を送信又は受信することができる。なお、本実施形態において、情報処理装置3は、PC(Personal Computer)である。情報処理装置3は、PCの代わりにタブレット型コンピュータ、スマートフォン等であってもよい。ここで、X線分析システム1に例示されるシステムとは、1つ又はそれ以上の装置又は構成要素からなるものである。したがって、X線分析装置2単体又は情報処理装置3単体であってもX線分析システム1に例示されるシステムに含まれる。X線分析装置2及び情報処理装置3は、測定者であるユーザにより操作される。
【0012】
2.X線分析装置2の構成
次に、図2を参照しながら本実施形態のX線分析装置2の構成を説明する。図2は、実施形態におけるX線分析装置2の一例を説明する図である。なお、図2を含む本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0013】
本実施形態のX線分析装置2は、X線分析測定を行うための装置である。X線分析装置2は、X線発生装置20と、X線観察部21と、試料台22と、X線検出器23とを備える。X線分析装置2は、X線発生装置20から発生したX線をX線観察部21にて直接観察するために使用される。また、本実施形態のX線分析装置2は、X線発生装置20から発生したX線を試料台22上の試料に照射し、試料にて、反射、回折又は散乱されたX線をX線検出器23により検出するために使用される。
【0014】
X線発生装置20は、真空状態の空間を含み、当該空間内のターゲットからX線を発生させ、当該X線を真空の外部に取り出すことが可能な装置である。X線発生装置20は、収容部200と、絶縁部201と、カソード部202と、アノード部203と、第1の窓保持部204と、第2の窓保持部205と、筐体部206と、ベローズ207とを備える。
【0015】
収容部200は、その中に真空状態の空間を形成する。収容部200は、X線発生装置20を構成する要素のうち、絶縁部201と、カソード部202と、アノード部203と、第1の窓保持部204と、第2の窓保持部205とを収容する。なお、真空状態とは、完全な真空状態に限られず、電子線等の粒子ビームが伝搬可能な程度に減圧された状態、例えば低真空の状態、も含み得る。
【0016】
絶縁部201は、碍子等の電気を絶縁する性質を有する材料により形成される。絶縁部201は、カソード部202の支持台として機能する。
【0017】
カソード部202は、電子線を放出可能に構成される陰極である。カソード部202は、高電圧を印加可能に、電気ケーブルを介してアノード部203と電気的に接続される。カソード部202は、電子線をアノード部203に向けて照射可能な態様で絶縁部201上に設置されており、これにより後述されるベローズ207と絶縁されている。
【0018】
アノード部203は、陰極としてのカソード部202と対になる陽極である。アノード部203は、カソード部202で放出された電子線を加速させる。アノード部203は、カソード部202と対向する位置にターゲットとしてのX線発生部203aを有する。
【0019】
X線発生部203aは、任意の金属により構成される。例えば、X線発生部203aは、カーボン、アルミニウム、クロム、鉄、コバルト、銅、モリブデン、ロジウム、銀、金等の金属単体により構成される。また、X線発生部203aは、上記した金属単体を複数含み、ユーザの選択に応じてX線を発生させる金属を切り替え可能に構成されてもよい。このような金属の切り替えは、ローターターゲット等のターゲットが動くことにより行われてもよい。また、このような金属の切り替えは、電子線の軌道の変化により行われてもよいし、カソード部202の位置の移動により行われてもよい。更に、X線発生部203aは、ローターターゲット又は静止ターゲット等の固体のターゲットだけではなく、液体金属ジェット等の液体のターゲットであってもよい。液体金属ジェットは、X線発生部203aとして固体の金属の代わりに液体の金属が使用される。液体の金属としては、例えば、銅、ガリウム、インジウム、スズ等を含む合金が使用される。
【0020】
X線発生部203aは、カソード部202から発生した電子線を受けることで様々な方向にX線を発生させるように構成される。このとき発生するX線は、X線発生部203aの金属に対応する特性X線を含む。様々な方向に発生するX線は、第1のX線L1と第2のX線L2とを含む。
【0021】
第1のX線L1は、X線発生部203aにおけるX線焦点を直接観察するために使用される。すなわち、第1のX線L1は、第1の方向D1に指向し、第1の窓保持部204の第1のX線透過窓204aを介してX線発生装置20の外部に取り出され、その光軸上に設けられ且つX線のX線焦点を観察可能なX線観察部21に入射する。このとき、第1のX線L1は、X線発生部203aから試料を介すことなくX線観察部21に入射する。すなわち、本実施形態では、X線発生部203aとX線観察部21との間に試料が設けられる態様は、除かれる。第1の窓保持部204については、図3を用いて後述する。これにより、複数あるX線透過窓のうちの一つのX線透過窓を使用して、X線を直接観察することが可能となる。また、これにより、X線発生部203aから発生するX線を制御することが可能となる。
【0022】
第2の窓保持部205は、第2のX線透過窓205aを有する。第2のX線透過窓205aは、X線のうち第1の方向D1とは異なる第2の方向D2に指向する第2のX線L2を透過させるように構成される。第2の窓保持部205については、図4を用いて後述する。
【0023】
筐体部206は、カソード部202を平行移動させるための複数のステージを包含する。例えば、複数のステージは、X軸方向に移動可能なステージと、Y軸方向に移動可能なステージと、Z軸方向に移動可能なステージとを有する。複数のステージのそれぞれは、移動の指示を受け付けることに応じて、それぞれの軸方向に沿って移動する。複数のステージのそれぞれの移動に応じて、筐体部206、絶縁部201及び絶縁部201に支持されるカソード部202も、同様に移動する。なお、互いに直交する3つの空間軸をX軸、Y軸及びZ軸としたとき、X軸、Y軸及びZ軸に沿った方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とする。なお、筐体部206は、真空の外に設けられる。筐体部206は、ベローズ207を介して、絶縁部201と接続されている。また、変形例で後述するように、筐体部206は、カソード部202の姿勢を変更するように構成されてもよい。更に、変形例で後述するように、筐体部206に変えてアクチュエータが使用されてもよい。
【0024】
ベローズ207は、筐体部206の移動に応じて変形するように構成される。ベローズ207を用いることにより、カソード部202を支持している絶縁部201をX線発生装置20の真空状態を維持した状態で、X軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に滑らかに平行移動させることができる。これにより、カソード部202から放出される電子線の位置を微調整することができる。
【0025】
X線観察部21は、X線発生部203aから発生するX線の様子を観察可能に構成される。X線観察部21は、任意の構成を有する。例えば、X線観察部21は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等のフォトダイオードを用いてX線を検出するX線カメラにより構成されてもよい。また、X線観察部21は、第1のX線L1を受けて発光したシンチレータからの可視光をレンズによって、集光又は倍率変更をし、当該可視光をフォトダイオードで検出するように構成されてもよい。当該シンチレータを形成する物質には、LuAG、GAGG等の結晶の物質、又はP43等の粉末の物質が使用されてもよい。
【0026】
本実施形態では、X線焦点は、X線観察部21にて直接観察される。この「直接観察」とは、X線観察部21に、X線焦点の像を結像させ、その像を観察することを示す概念である。例えば、「直接観察」は、ピンホールカメラを用いて、PSF(Point Spread Function)の手法により、X線焦点のプロファイルを評価するものを含む。また、「直接観察」は、ピンホールカメラを用いる方法の他に、後述する4象限スリットや光学レンズを用いる方法が含まれる。一方で、「直接観察」には、スリット、テストチャート(例えば、スターパターン)等をX線の光路上に設けて、その透過像からLSF(Line Spread Function)、MTF(modulation transfer function)等の手法により、エッジ像からX線焦点サイズを推測することは含まれない。
【0027】
第2のX線L2は、X線を用いた試料の分析に使用される。すなわち、第2のX線L2は、試料に照射される。より具体的には例えば、第2のX線L2は、第1の方向D1と異なる第2の方向D2に指向し、第2のX線透過窓205aを介してX線発生装置20の外部に取り出され、試料台22上の試料に入射する。
【0028】
試料台22は、第2のX線L2が入射する試料を設置可能に構成される。試料に入射した第2のX線L2は、当該試料にて回折、反射、又は散乱される。試料台22は、プロセッサ31によって生成された動作指示に基づいて、試料台22を任意の方向に、移動可能又は傾斜可能に構成されてもよい。この動作指示は、試料台22を移動又は傾斜させるための指示である。
【0029】
X線検出器23は、試料台22に設置される試料にて回折、反射又は散乱された第2のX線L2を検出可能に構成される。検出されたX線は、情報処理装置3によって解析される。X線検出器23は、計数管等を用いる0次元検出器であってもよいし、線状CCD等を用いる1次元検出器であってもよいし、CCDやイメージングプレート等を用いる2次元検出器であってもよい。これにより、X線発生部から発生するX線の観察結果に基づいて、X線分析測定に使用するX線を制御することができるX線分析装置を提供することが可能となる。
【0030】
続いて、図3を参照しながら、第1の窓保持部204について説明をする。図3は、実施形態における第1の窓保持部204の断面図の一例である。この断面図は、第1のX線L1の直進方向に水平な面から第1の窓保持部204の断面を観察した図である。第1の窓保持部204は、第1のX線透過窓204aと、X線結像部204bと、空気孔204cとを含む。本実施形態では、第1の窓保持部204は、第1のX線透過窓204a及びX線結像部204bのそれぞれを嵌合可能に構成される。すなわち、第1のX線透過窓204aと、X線結像部204bとは、同一のユニットに設けられてもよい。これにより、X線結像部204bをX線透過窓と同一のユニットにして構成することができるため、既存のシステムに組み込むことが容易となる。
【0031】
第1の窓保持部204の位置は、X線発生装置20内において、第1の窓保持部204が第2のX線L2を機械的に干渉しない位置であればよい。第1の窓保持部204の位置は、X線発生部203aの位置を基準として第2の窓保持部205と異なる設置の関係となるように設置されてもよいし、同じ設置の関係となるように設置されてもよい。
【0032】
第1のX線透過窓204aは、X線のうち第1の方向D1に指向する第1のX線L1を透過させるように構成される。第1のX線透過窓204aの形状は、任意であり、例えば、平板状に形成される。第1のX線透過窓204aを形成する物質は、X線を透過可能な物質であればよく、例えば、ベリリウム、カーボン、ダイアモンド、SUS等によって構成される。
【0033】
X線結像部204bは、第1のX線L1の入射を受け付ける。X線結像部204bは、X線観察部21において第1のX線L1の像を結像可能に構成される。本実施形態において、X線結像部204bには、ピンホール204b2が形成される。X線発生部203aから発生するX線のうち、X線結像部204bのピンホール204b2を透過したX線は、直進し、X線観察部21にて上下左右が反対のX線発生部203aの像を結ぶ。ピンホール204b2を用いることにより、X線観察部21にてX線発生部203aの像を結像することが可能となる。また、X線観察部21にて、X線発生部203aの像が結像されるため、X線発生部203aの様子を観察することが可能となる。
【0034】
X線結像部204bの形状は、任意であり、例えば、平板状に形成される。X線結像部204bにピンホール204b2が形成される場合、ピンホール204b2の形状は、任意であり、例えば、円柱状、多角柱(三角柱、四角柱等)状に形成されてもよい。
【0035】
X線結像部204bにピンホール204b2が形成される場合、X線結像部204bを形成する物質は、X線を遮蔽可能な物質であればよく、例えば、モリブデン、タングステン、白金、金等によって構成される。また、X線結像部204b真空中に設けられる場合、X線結像部204bを形成する材質は、収容部200内の真空中で発生するオゾンに対して耐性がある物質が使用されてもよい。
【0036】
本実施形態におけるX線焦点の大きさは40μm以下である。ピンホール204b2の直径は、X線焦点の大きさよりも小さいことが望ましい。好ましくは、ピンホール204b2の直径は、20μm以下が望ましい。より好ましくは、ピンホール204b2の直径は、5μm以下である。また、ピンホール204b2の直径は、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、ピンホール204b2の直径は、X線結像部204bを形成する物質、特性X線の波長等に応じて選択されてもよい。適切な直径のピンホール204b2を用いることにより、X線観察部21にてより鮮明なX線発生部203aの像を結像することが可能となる。
【0037】
X線結像部204bにピンホール204b2が形成される場合、ピンホール204b2の深さは、任意の値をとることができる。ピンホール204b2の深さは、深いほどよい。好ましくは、ピンホール204b2の深さは、50μm以上である。なお、ピンホール204b2の深さは、X線結像部204bを形成する物質、特性X線の波長等に応じて選択されてもよい。適切な深さのピンホール204b2を用いることにより、X線観察部21にてより鮮明なX線発生部203aの像を結像することが可能となる。
【0038】
本実施形態において、X線結像部204bは、第1のX線透過窓204aと、X線発生部203aとの間の真空中に設けられてもよい。X線発生部203aとX線結像部204bとX線観察部21との位置関係については、図5を参照しながら後述する。これにより、X線結像部204bを第1のX線透過窓204aよりもX線発生部203aに近い位置に設けることができるため、大掛かりな装置としなくても、X線観察部21にて十分な大きさの像を結像することが可能となる。
【0039】
空気孔204cは、第1の窓保持部204内であって第1のX線透過窓204aとX線結像部204bとの間により規定される空間と、第1の窓保持部204外の空間と、の間で気体を通過可能にする孔である。
【0040】
第1の方向D1は、図3における右方向の矢印が示す方向である。第1のX線L1は、第1の方向D1に沿って、つまり、X線結像部204bから第1のX線透過窓204aに向かう方向に沿って直進する。
【0041】
続いて、図4を参照しながら、第2の窓保持部205について説明をする。図4は、実施形態における第2の窓保持部205の断面図の一例である。この断面図は、第2のX線L2の直進方向に水平な面から第2の窓保持部205の断面を観察した図である。第2の窓保持部205は、第2のX線透過窓205aを含む。第2の窓保持部205は、第2のX線透過窓205aを嵌合可能に構成される。第2のX線透過窓205aの形状及び第2のX線透過窓205aを形成する物質については、第1のX線透過窓204aを参照されたい。第2の方向D2は、図4における右方向の矢印が示す方向である。第2のX線L2は、第2の方向D2に沿って、X線発生部203aから第1のX線透過窓204aを透過して試料台22の試料に向かって直進する。
【0042】
このように、X線を観察するための第1の窓保持部204を用いることにより、非特許文献1や非特許文献2のように、X線分析測定に使用されるX線の一部を、X線の評価に使用していないため、X線分析測定による試料の分析に対する影響が発生しにくい。
【0043】
続いて、図5を参照しながら、X線発生部203aとX線結像部204bとX線観察部21との位置関係について説明をする。図5は、X線発生部203aとX線結像部204bとX線観察部21との位置関係を説明する図である。X線観察部21に結像されるX線焦点の像の倍率は、X線結像部204bからX線観察部21までの距離Bを、X線発生部203aからX線結像部204bまでの距離Aで割った大きさである。これを利用して、X線結像部204bをX線発生部203aにより近い位置に設けることができれば、大掛かりな装置としなくても、X線観察部21にて十分な大きさの像を結像することが可能となる。
【0044】
3.情報処理装置3の構成
情報処理装置3は、X線分析装置2に指示を送信するための装置である。例えば、情報処理装置3は、後述するX線発生装置20の制御指示と、X線観察部21への指示と、前述した試料台22の動作指示と、X線検出器23への指示と、ゴニオメータのアームを操作する指示とのうち少なくとも1つを送信可能に構成される。また、情報処理装置3は、X線検出器23により検出した結果に基づいてプロファイルを取得し、薄膜、単結晶等の試料を分析することができる装置である。
【0045】
次に、図6を参照しながら、情報処理装置3のハードウェア構成について説明をする。図6は、実施形態における情報処理装置3のハードウェア構成の一例を示す図である。図6に示されるように、情報処理装置3は、プロセッサ31と、記憶部32と、通信部33と、入力部34と、出力部35とを備え、これらの構成要素が情報処理装置3の内部において通信バス30を介して電気的に接続されている。情報処理装置3は、実施形態に係る処理を実行する。
【0046】
プロセッサ31は、情報処理装置3に関連する全体動作の処理及び制御を行う。プロセッサ31は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。記憶部32に記憶されているプログラムによる情報処理が、ハードウェアの一例であるプロセッサ31によって具体的に実現されることで、プロセッサ31に含まれる各機能部として実行されうる。プロセッサ31に含まれる各機能部により、例えば、後述する図7に示される処理が実現される。なお、プロセッサ31は単一であることに限定されず、機能ごとに複数のプロセッサ31を有するように実施してもよい。また、それらの組合せであってもよい。少なくとも1つのプロセッサ31は、後述する制御方法の各ステップを実行することができる。プロセッサ31は、X線発生装置20の制御システムに含まれる。
【0047】
記憶部32は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、プロセッサ31によって実行される情報処理装置3に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部32は、プロセッサ31によって実行される情報処理装置3に係る種々のプログラム、変数及びプロセッサ31がプログラムに基づき処理を実行する際に用いるデータ等を記憶している。
【0048】
通信部33は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、LTE/3G/4G/5G等のモバイル通信、BLUETOOTH(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、情報処理装置3は、通信部33を介して、外部から種々の情報を通信してもよい。
【0049】
入力部34は、情報処理装置3の筐体に含まれてもよいし、外付けされてもよい。例えば、入力部34は、出力部35と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することが可能である。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、キーボード等を採用してもよい。すなわち、入力部34がユーザによってなされた操作に基づく入力を受け付ける。当該入力が命令信号として、通信バス30を介してプロセッサ31に転送され、プロセッサ31が必要に応じて所定の制御又は演算を実行しうる。
【0050】
出力部35は、情報処理装置3の表示デバイスとして機能することが可能である。出力部35は、例えば、情報処理装置3の筐体に含まれてもよいし、外付けされてもよい。出力部35は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、情報処理装置3の種類に応じて使い分けて実施することが好ましい。
【0051】
本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント装置でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0052】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0053】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0054】
4.情報処理の概要
次に、図7を示しながら、X線分析測定に適したX線をX線発生装置20から安定的に発生させるためのX線分析システム1の制御方法について説明する。図7は、実施形態における情報処理の一例を説明する図である。すなわち、制御方法は、次の各ステップS1~S4を備える。プロセッサ31は、以降の各ステップS1~S4に係る情報処理の様子を、ユーザが視認可能な態様で出力部35に表示させてもよい。
【0055】
ステップS1では、プロセッサ31は、通信部33を介してX線観察部21における第1のX線L1の観察の結果をX線分析装置2から受け付ける。観察の結果は、X線の強度又はX線の形状に関するデータを含む。ここで、X線の強度に関するデータとは、X線観察部21の検出面において検出された単位時間あたりのX線光子の数に関するデータである。X線の形状に関するデータとは、X線観察部21の検出面における位置に関するデータとX線の強度に関するデータとの両方を含むデータである。図8は、X線観察部21により取得されるX線焦点の一例を示す図であり、X線の形状に関するデータの一例を示す図である。図8では、X線焦点のイメージが視覚的に表現される。なお、X線の形状に関するデータには、二値化処理やグレースケール変換等の強度情報を変換したものも含まれる。
【0056】
前述の通り、電子線の軌道の変化又はカソード部202の位置の移動により、X線発生部203aの金属の切り替えが行われる場合がある。その場合、X線の形状は、切り替え後の金属の箇所に集中するように変化する。
【0057】
ステップS2では、プロセッサ31は、参照データを参照し、観察の結果と対比する。参照データは、X線を安定的に発生させるための、X線の強度又はX線の形状の条件のデータである。参照データは、記憶部32に記憶される。プロセッサ31は、特性X線の波長ごとに参照データを切り替えてもよい。プロセッサ31は、観察の結果が参照データの条件を満たす場合、ステップS3に情報処理を進め、観察の結果が参照データの条件を満たさない場合、ステップS4に情報処理を進める。
【0058】
ステップS3では、プロセッサ31は、観察の結果に基づいて、制御指示を生成し、通信部33を介して当該制御指示をX線分析装置2に送信する。この制御指示は、X線発生部203aから発生するX線を制御するための指示である。また、制御指示は、観察の結果の参照データからのずれに基づいて生成される。制御指示は、電子線を発生させる電子銃としてのカソード部202の位置を制御するための指示、カソード部202のフィラメントの出力を変化させる指示、カソード部202とアノード部203との間の電場の出力を変化させる指示等を含む。制御指示を受け付けたX線分析装置2は、制御指示に対応する動作を実行する。その後、プロセッサ31は、ステップS1に戻る。プロセッサ31は、ステップS1~S3の情報処理をループさせる。また、プロセッサ31は、ステップS1~S3のループを0.1秒未満等の短い間隔で実行することでX線焦点の観察をリアルタイムに実行する。
【0059】
なお、この場合の制御指示に基づく制御の手法は、特に限定されないが、例えば、P制御、PD制御、PID制御等が適宜採用されうる。制御に係る各係数は、必要に応じて好ましい値を設定すればよい。また制御指示の値は電圧で規定されるとよい。
【0060】
ステップS4では、観察の結果が参照データの条件を満たす場合、プロセッサ31は、情報処理を終了する。なお、プロセッサ31は、入力部34を介してユーザからの指示を受け付けることに応じて、ステップS1から情報処理を再開してもよい。
【0061】
このような情報処理によれば、観察結果に基づいてX線発生部から発生するX線を制御することが可能となる。
【0062】
以上、本実施形態によれば、真空領域内にX線観察部を設ける必要がなく、かつ、X線分析測定に使用されるX線の一部を使用する必要がない、窓保持部、X線発生装置、X線分析装置、X線発生装置の制御方法及びX線発生装置の制御システムに関する技術を提供することができる。
【0063】
[その他]
実施形態では、X線結像部204bは、第1のX線透過窓204aと、X線発生部203aとの間に設けられるものとして説明をしたが、変形例では、第1のX線透過窓404aが、X線結像部404bと、X線発生部203aとの間に設けられてもよい。この場合、図9に示すような第1の窓保持部404が設けられてもよい。図9は、変形例における第1の窓保持部404の断面図の一例である。この断面図は、第1のX線L1の直進方向に水平な面から第1の窓保持部204の断面を観察した図である。図9の第1の窓保持部404は、第1のX線透過窓404aと、X線結像部404bと、を含む。すなわち、変形例においても、第1のX線透過窓404aとX線結像部404bとは、同一のユニットに設けられる。また、変形例のX線結像部404bにも、ピンホール404b2が形成される。変形例のX線結像部404b及びピンホール404b2については、実施形態のX線結像部204b及びピンホール204b2を参照されたい。変形例の第1の窓保持部404では、X線結像部が高エネルギーの環境に晒されることがないため、発生するオゾンなどによるX線結像部の劣化が発生しにくい。また、X線結像部が真空内に設置されないため、X線結像部の調整、交換等を容易に実行することが可能となる。
【0064】
また、実施形態では、第1のX線透過窓204aとX線結像部204bとは、同一のユニットに設けられるものとして説明したが、第1のX線透過窓204aとX線結像部204bとは、それぞれ別体に設けられていてもよい。
【0065】
実施形態では、X線結像部204bは、ピンホール204b2であるものとして説明したが、変形例では、X線観察部21にてX線の像を結像できるものであればよく、種々の形態を採用することができる。例えば、変形例におけるX線結像部は、4象限スリットであってもよい。4象限スリットは、ピンホール204b2と同様に、X線が通過可能な空間を絞ることができる。すなわち、X線発生部203aから発生するX線のうち、4象限スリットを透過したX線は、X線観察部21にて結像する。また、変形例におけるX線結像部は、X線観察部21にX線を集光することができる光学レンズであってもよい。この光学レンズには、湾曲結晶、多層膜結晶等が使用される。
【0066】
実施形態では、X線観察部21に結像されるX線焦点の像の倍率は、距離Bを距離Aで割った大きさであるものとして説明した。変形例では、X線観察部21に結像されるX線焦点の像の倍率は、筐体部206が特定の方向に平行に移動した距離と、それに応じて移動するX線観察部21に結像されるX線焦点の移動の距離と、の比によって決定されてもよい。
【0067】
筐体部206は、X軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に沿って平行移動するものとして説明したが、変形例の筐体部206は、任意の構成とすることができる。例えば、筐体部206は、複数のステージにより移動するものとして説明したが、磁場を加えることにより移動するステージを使用してカソード部202を移動させてもよい。また、例えば、変形例の筐体部206は、カソード部202を任意の角度に回転させることで、カソード部202の姿勢を変更可能に構成されてもよい。この場合、カソード部202の姿勢の変更に応じて、カソード部202がX線発生部203aに電子線を照射する方向が変化する。また、この場合、制御指示は、電子線を発生させるカソード部202としての電子銃の姿勢を制御するための指示を含んでもよい。
【0068】
実施形態では、ステージを収容する筐体部206を使用するものとして説明したが、他の機構が用いられてもよい。変形例では、アクチュエータにより、カソード部202を位置又は姿勢の制御が行われてもよい。このアクチュエータは、圧電アクチュエータ、電磁アクチュエータ、リニアモータ(ボイスコイル)、適切なギア装置を有する回転モータ等を含む。
【0069】
実施形態におけるステップS2における参照データは、ニューラルネットワーク等の機械学習のアルゴリズムにより学習させた学習済みモデルを用いて生成されてもよい。学習済みモデルの特徴量には、X線の強度、X線の形状、カソード部202のフィラメントへの出力、カソード部202とアノード部203との間に印加される磁場の大きさ、カソード部202の位置及び姿勢等のデータが使用される。
【0070】
変形例ではステップS4は、実行されなくてもよい。すなわち、変形例ではプロセッサ31は、ステップS1~S3の情報処理を繰り返し実行する。
【0071】
本実施形態におけるX線焦点の大きさは40μm以下であるものとして説明したが、変形例では、X線焦点の大きさは40μm以上であってもよい。
【0072】
更に、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0073】
(1)X線発生装置であって、X線発生部と、X線透過窓とを備え、前記X線発生部は、外部から電子線を受けることでX線を発生させるように構成され、前記X線透過窓は、第1のX線透過窓と、第2のX線透過窓とを含み、前記第1のX線透過窓は、前記X線のうち第1の方向に指向する第1のX線を透過させるように構成され、ここで前記第1のX線は、その光軸上に設けられ且つ前記X線のX線焦点を観察可能なX線観察部に入射し、前記第2のX線透過窓は、前記X線のうち前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向する第2のX線を透過させるように構成される、X線発生装置。
【0074】
このような態様によれば、これにより、真空領域内にX線観察部を設ける必要がなく、かつ、X線分析測定に使用されるX線の一部を使用する必要がない。
【0075】
(2)上記(1)に記載のX線発生装置において、X線結像部を更に備え、前記X線結像部は、前記第1のX線の入射を受け付け、前記X線観察部において前記第1のX線の像を結像させるように構成される、X線発生装置。
【0076】
このような態様によれば、X線観察部にて、X線発生部の像が結像されるため、X線発生部の様子を観察することが可能となる。
【0077】
(3)上記(2)に記載のX線発生装置において、前記X線結像部には、ピンホールが形成される、X線発生装置。
【0078】
このような態様によれば、ピンホールを用いることにより、X線観察部にてX線発生部の像を結像することが可能となる。
【0079】
(4)上記(3)に記載のX線発生装置において、前記ピンホールの直径は、20μm以下である、X線発生装置。
【0080】
このような態様によれば、適切な直径のピンホールを用いることにより、X線観察部にてより鮮明なX線発生部の像を結像することが可能となる。
【0081】
(5)上記(2)~(4)の何れか1つに記載のX線発生装置において、前記X線結像部は、前記X線透過窓と、前記X線発生部との間に設けられる、X線発生装置。
【0082】
このような態様によれば、X線結像部をX線透過窓よりもX線発生部に近い位置に設けることができるため、大掛かりな装置としなくても、X線観察部にて十分な大きさの像を結像することが可能となる。
【0083】
(6)上記(2)~(5)の何れか1つに記載のX線発生装置において、前記X線結像部と前記X線透過窓とは、同一のユニットに設けられる、X線発生装置。
【0084】
このような態様によれば、X線結像部をX線透過窓と同一のユニットにして構成することができるため、既存のシステムに組み込むことが容易となる。
【0085】
(7)X線分析装置であって、X線発生装置と、試料台と、X線検出器とを備え、前記X線発生装置は、上記(1)~(6)の何れか1つに記載のX線発生装置であり、前記試料台は、前記第2のX線が入射する試料を設置可能に構成され、前記X線検出器は、前記試料にて回折、反射又は散乱された前記第2のX線を検出可能に構成される、X線分析装置。
【0086】
このような態様によれば、X線発生部から発生するX線の観察結果に基づいて、X線分析測定に使用するX線を制御することができるX線分析装置を提供することが可能となる。
【0087】
(8)上記(1)~(6)の何れか1つに記載のX線発生装置の制御方法であって、次の各ステップを備え、受付ステップでは、前記X線観察部における前記第1のX線の観察の結果を受け付け、制御ステップでは、前記観察の結果に基づいて、前記電子線を発生させる電子銃の位置又は姿勢を制御する、X線発生装置の制御方法。
【0088】
このような態様によれば、観察結果に基づいてX線発生部から発生するX線を制御することが可能となる。
【0089】
(9)X線発生装置の制御システムであって、上記(8)に記載の制御方法の各ステップを実行する、少なくとも1つのプロセッサを備える、X線発生装置の制御システム。
【0090】
このような態様によれば、観察結果に基づいてX線発生部から発生するX線を制御することが可能となる。
もちろん、この限りではない。
【0091】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 :X線分析システム
2 :X線分析装置
20 :X線発生装置
200 :収容部
201 :絶縁部
202 :カソード部
203 :アノード部
203a :X線発生部
204 :第1の窓保持部
204a :第1のX線透過窓
204b :X線結像部
204b2:ピンホール
204c :空気孔
205 :第2の窓保持部
205a :第2のX線透過窓
206 :筐体部
207 :ベローズ
21 :X線観察部
22 :試料台
23 :X線検出器
3 :情報処理装置
30 :通信バス
31 :プロセッサ
32 :記憶部
33 :通信部
34 :入力部
35 :出力部
404 :第1の窓保持部
404a :X線透過窓
404b :X線結像部
404b2:ピンホール
D1 :第1の方向
D2 :第2の方向
L1 :第1のX線
L2 :第2のX線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9