(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024154060
(43)【公開日】2024-10-30
(54)【発明の名称】敷地検索支援システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20241023BHJP
G06Q 50/16 20240101ALI20241023BHJP
G06F 30/13 20200101ALN20241023BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q50/16
G06F30/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023067665
(22)【出願日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】517228559
【氏名又は名称】野原ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521065942
【氏名又は名称】GH Advancers株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】米岡 太志
(72)【発明者】
【氏名】中川 桂佑
(72)【発明者】
【氏名】渡慶次 明
(72)【発明者】
【氏名】有賀 千尋
(72)【発明者】
【氏名】柴田 久子
(72)【発明者】
【氏名】東 政宏
(72)【発明者】
【氏名】安永 寿
(72)【発明者】
【氏名】武藤 佳恭
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DL02
5B146DL08
5L049CC07
5L049CC27
5L050CC07
5L050CC27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】過去に設計が行われた敷地の中から対象敷地の条件に合った敷地を選出することができる敷地検索支援システムを提供する。
【解決手段】対象敷地の敷地形状に基づいて敷地に係る情報を提示する敷地検索支援システム100であって、敷地情報記憶手段と、敷地特性入力手段と、敷地候補選出手段と、敷地候補出力手段と、を備える。敷地情報は、「敷地に関する情報」と「敷地特性」を含んで構成され、敷地特性には、敷地周長と基準円の円周の長さとの比である「コンパクト比」が含まれ、敷地候補選出手段が、対象敷地のコンパクト比と近似するコンパクト比に係る敷地情報を選出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象敷地の敷地形状に基づいて、敷地に係る情報を提示するシステムであって、
複数の敷地情報を記憶する敷地情報記憶手段と、
前記対象敷地に係る敷地特性を入力する敷地特性入力手段と、
前記敷地特性入力手段によって入力された前記敷地特性に基づいて、前記敷地情報記憶手段から1又は2以上の前記敷地情報を選出する敷地候補選出手段と、
前記敷地候補選出手段によって選出された1又は2以上の前記敷地情報を出力する敷地候補出力手段と、を備え、
前記敷地情報は、敷地に関する情報と、前記敷地特性と、を含んで構成され、
前記敷地特性には、敷地の外周の長さである敷地周長と、基準円の円周の長さと、の比である「コンパクト比」が含まれ、
前記基準円は、敷地の面積と同一の面積を有する円形として設定され、
前記敷地候補選出手段は、前記対象敷地の前記コンパクト比と一致又は近似する前記コンパクト比に係る前記敷地情報を選出する、
ことを特徴とする敷地検索支援システム。
【請求項2】
前記敷地特性には、前記敷地周長と、接道延長と、の比である「接道長比」が含まれ、
前記接道延長は、敷地に面する周辺道路の長さであり、
前記敷地候補選出手段は、前記対象敷地の前記接道長比と一致又は近似する前記接道長比に係る前記敷地情報を選出する、
ことを特徴とする請求項1記載の敷地検索支援システム。
【請求項3】
前記敷地特性には、敷地の面積と、接道面積と、の比である「接道面積比」が含まれ、
前記接道面積は、敷地に面する周辺道路の面積であり、
前記敷地候補選出手段は、前記対象敷地の前記接道面積比と一致又は近似する前記接道面積比に係る前記敷地情報を選出する、
ことを特徴とする請求項1記載の敷地検索支援システム。
【請求項4】
前記敷地特性には、敷地に面する周辺道路の範囲を示す「接道方位」が含まれ、
前記接道方位は、敷地と接する前記周辺道路の端部と、敷地の図心と、を結ぶ方向で表され、
前記敷地候補選出手段は、前記対象敷地の前記接道方位と一致又は近似する前記接道方位に係る前記敷地情報を選出する、
ことを特徴とする請求項1記載の敷地検索支援システム。
【請求項5】
前記敷地特性には、敷地に面する周辺道路の形式を示す「接道パターン」が含まれ、
前記接道パターンは、前記周辺道路の「開放」と「閉鎖」に応じてあらかじめ2以上に分類された識別情報であり、
前記敷地候補選出手段は、前記対象敷地の前記接道パターンと一致する前記接道パターンに係る前記敷地情報を選出する、
ことを特徴とする請求項1記載の敷地検索支援システム。
【請求項6】
前記敷地候補選出手段は、前記対象敷地に係る2以上の前記敷地特性と、前記敷地情報記憶手段に記憶された前記敷地情報に係る2以上の前記敷地特性と、に基づいてコサイン類似度を算出し、
また前記敷地候補選出手段は、前記コサイン類似度に基づいて前記敷地情報を選出する、
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の敷地検索支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、戸建て住宅などの建物を設計するため過去の設計情報を検索する技術に関するものであり、より具体的には、設計対象とする敷地(以下、単に「対象敷地」という。)の形状や周辺道路の状況に基づいて、同様の敷地を選出するとともにその敷地に係る設計情報を提示する敷地検索支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅といった建物は、「都市計画法」や「建築基準法」に準拠したうえで構築される。したがって建物を設計する際は、当然ながら都市計画法や建築基準法を遵守したうえで実施される。
【0003】
住宅などの設計は、大きく「基本設計(基本計画)」と「実施設計(詳細設計)」に分けて実施される。このうち基本計画では、企画ボリュームを作成してボリュームチェックが行われることがある。このボリュームチェックとは、対象敷地にどの程度の大きさ(ボリューム)の住宅等を構築することができるか、といったことを事前に確認する作業である。
【0004】
上記したとおり住宅等は、都市計画法や建築基準法によるいわば制限が設けられているため、通常は対象敷地やその上空を最大限に活用して構築することができない。例えば建築基準法では、建蔽率や容積率、日影による制限、北側斜線制限、高さ制限、道路による制限(道路斜線制限)、隣地による制限(隣地斜線制限)、用途地域、防火・準防火地域といった様々な制限があるため、これらの制限を考慮すると対象敷地を最大限に活用することができないわけである。
【0005】
住宅等の基本計画を実施するにあたっては、過去に実施した設計記録(以下、「設計実績」という。)を参考にすることが多い。対象敷地と条件が似ている敷地で実施された設計実績を参考にすることによって、余分な作業を省くことができるうえ、看過されそうな問題点も把握することができ、効率的かつ高品質の基本計画を実施することができる。
【0006】
ところが、対象敷地の基本計画にとって参考となる設計実績を適切に選出することは、それほど容易なことではない。数多く蓄積された設計実績の中から今回の基本設計にとって有効なものを見出すためには、設計者による高度かつ複眼的な思考が必要とされる。例えば、設計実績を選出する際に参考にされる配置図は、物件によって体裁や描き方、図面の縮尺がそれぞれ異なることから容易に比較することが難しく、その結果、設計者によっては計画敷地と類似する敷地を絞り込む作業に時間がかかる。換言すれば、設計実績を選出する設計者の経験や知識などに依存するため、設計者によってその結果や選出時間が著しく相違することとなる。
【0007】
そこで、作業者の知識等に依存することなく、いわば客観的に設計実績を選出する種々の技術がこれまでにも提案されている。例えば特許文献1では、「敷地の接道条件」と「駐車場の有無及びその方式」、「建物の出入口の位置」を条件として、各階で共通位置にある固定的なコア部分(例えば、階段やエレベータ・ホール、エレベータ、水回り等)に関する過去の記録のうち適切なものをデータベースから検出する技術について提案している。あるいは特許文献2では、「間取り条件(階数や延床面積、部屋数など)」や「敷地の形状」、「敷地に隣接する道路の位置(方位)」を条件として、過去の間取り記録のうち適切なものをデータベースから検出する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平07-296036号公報
【特許文献2】特開2003-345860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、住宅等の基本計画では、対象敷地の形状や、周辺環境(特に、周辺道路)が重要な設計条件とされる。つまり、参考にすべき設計実績は、対象敷地の形状や周辺環境が似ている敷地で実施された設計実績であり、そのような設計実績を選出する必要がある。従来、特許文献1のように建物のうち部分的な設計記録を検出したり、あるいは建売戸建て住宅が敷地に当てはまる否かを自動判定したり、不動産取引を円滑に進めるために敷地情報の一部を絞り込むような技術は提案されてきたものの、対象敷地の形状や周辺環境を手掛かりとして適切な設計実績を選出する技術については提案されることがなかった。この点、特許文献2では「敷地の形状」や「敷地に隣接する道路の位置(方位)」を条件として、過去の間取り記録のうち適切なものを検出する技術について提案しているが、あらかじめ設定した複数のタイプに分類するに過ぎず、それだけで膨大な設計実績の中から適切な設計実績を選出することはできない。
【0010】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、過去に設計が行われた敷地の中から対象敷地の条件に合った敷地を選出することができる敷地検索支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、対象敷地の形状や周辺環境(特に、周辺道路)に目視し、これらの条件と近似する(あるいは、一致する)敷地を選出するとともに、その敷地に係る設計実績を参考にする、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0012】
本願発明の敷地検索支援システムは、対象敷地の敷地形状に基づいて敷地に係る情報を提示するシステムであって、敷地情報記憶手段と敷地特性入力手段、敷地候補選出手段、敷地候補出力手段を備えたものである。このうち敷地情報記憶手段は、複数の敷地情報を記憶する手段であり、敷地特性入力手段は、対象敷地に係る敷地特性を入力する手段である。また敷地候補選出手段は、敷地特性入力手段によって入力された敷地特性に基づいて敷地情報記憶手段から1又は2以上の敷地情報を選出する手段であり、敷地候補出力手段は、敷地候補選出手段によって選出された1又は2以上の敷地情報を出力する手段である。なお敷地情報は、「敷地に関する情報」と「敷地特性」を含んで構成され、敷地特性には、敷地周長(敷地の外周の長さ)と基準円(敷地の面積と同一の面積を有する円形)の円周の長さとの比である「コンパクト比」が含まれる。そして敷地候補選出手段は、対象敷地のコンパクト比と近似(あるいは一致)するコンパクト比に係る敷地情報を選出する。
【0013】
本願発明の敷地検索支援システムは、敷地特性に「接道長比」が含まれたものとすることもできる。この接道長比は、敷地周長と接道延長(敷地に面する周辺道路の長さ)との比である。この場合、敷地候補選出手段は、対象敷地の接道長比と近似(あるいは一致)する接道長比に係る敷地情報を選出する。
【0014】
本願発明の敷地検索支援システムは、敷地特性に「接道面積比」が含まれたものとすることもできる。この接道面積比は、敷地周長と接道面積(敷地に面する周辺道路の面積)との比である。この場合、敷地候補選出手段は、対象敷地の接道面積比と近似(あるいは一致)する接道面積比に係る敷地情報を選出する。
【0015】
本願発明の敷地検索支援システムは、敷地特性に「接道方位」が含まれたものとすることもできる。この接道パターンは、敷地に面する周辺道路の範囲を示す値であって、敷地と接する周辺道路の端部と敷地の図心とを結ぶ方向で表される。この場合、敷地候補選出手段は、対象敷地の接道方位と近似(あるいは一致)する接道方位に係る敷地情報を選出する。
【0016】
本願発明の敷地検索支援システムは、敷地特性に「接道パターン」が含まれたものとすることもできる。この接道パターンは、敷地に面する周辺道路の形式を示すものであり、周辺道路の「開放」と「閉鎖」に応じてあらかじめ2以上に分類された識別情報である。この場合、敷地候補選出手段は、対象敷地の接道パターンと一致する接道パターンに係る敷地情報を選出する。
【0017】
本願発明の敷地検索支援システムは、コサイン類似度に基づいて敷地情報を選出することもできる。この場合、敷地候補選出手段は、対象敷地に係る2以上の敷地特性と、敷地情報記憶手段に記憶された敷地情報に係る2以上の敷地特性に基づいて、コサイン類似度を算出する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の敷地検索支援システムには、次のような効果がある。
(1)設計者など設計実績を選出する者の知識等に依存することなく、蓄積された数多くの設計実績の中から、対象敷地に適した設計実績を客観的かつ速やかに選出することができる。
(2)住宅等の基本計画にとって重要な設計条件である「対象敷地の形状」や「周辺環境(特に、周辺道路)」を条件として選出することから、より対象敷地にとってより適した設計実績を客観的かつ速やかに選出することができる。
(3)対象敷地にとってより適した設計実績が得られることから、いくつかの検討や計算を省くことができる。また見出しにくい問題点も検出されることもあり、すなわち潜在的な問題も未然に解決手段を検討することができるため、より高品質の設計を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本願発明の敷地検索支援システムの主な構成を示すブロック図。
【
図2】敷地特性としての「コンパクト比」を説明するモデル図。
【
図3】敷地特性としての「接道長比」を説明するモデル図。
【
図4】敷地特性としての「接道面積比」を説明するモデル図。
【
図5】敷地特性としての「接道方位」を説明するモデル図。
【
図6】敷地特性としての「接道パターン」を説明するモデル図。
【
図7】10種類の敷地特性ごとに近似度を表したレーダーチャートを示すモデル図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明の敷地検索支援システムの実施の例を図に基づいて説明する。本願発明の敷地検索支援システムは、対象敷地(基本計画などの対象となる敷地)の「敷地特性」を入力すると、その敷地特性を手掛かりとして「敷地情報」を提示するものである。ここで「敷地特性」とは、その敷地の形状や周辺環境を表す情報であり、例えば敷地面積や敷地形状、用地用途、日影規制、法定建蔽率、法定容積率、コンパクト比、接道長比、接道面積比、接道方位、接道パターンなどを挙げることができる。また「敷地情報」とは、敷地に関する情報であって1又は2以上の敷地特性を含み、さらに設計実績(過去の基本計画書や実施設計書)、住所、所有者、売買記録などを含むこともできる。
【0021】
本願発明の敷地検索支援システムでは、数多くの敷地に関する敷地情報の中から、入力された敷地特性にとって適した敷地情報を提示することを一つの技術的特徴としている。上記したとおり敷地情報は敷地特性を含むため、実績としての敷地特性と、入力された敷地特性を取り扱うこととなる。そこで便宜上ここでは、敷地検索支援システムに記憶されている「実績としての敷地特性」のことを特に「実績敷地特性」と、「入力される(つまり、対象敷地の)敷地特性」のことを特に「対象敷地特性」ということとする。また、敷地検索支援システムによって「提示される敷地情報」のことを特に「候補敷地情報」ということとする。
【0022】
図1は、本願発明の敷地検索支援システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の敷地検索支援システム100は、敷地特性入力手段110と敷地候補選出手段120、敷地候補出力手段130、敷地情報記憶手段140を含んで構成される。
【0023】
敷地検索支援システム100を構成する主な要素のうち、敷地特性入力手段110と敷地候補選出手段120、敷地候補出力手段130は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。すなわち、所定のプログラムによってコンピュータ装置に演算処理を実行させることで、それぞれ手段特有の処理を行うわけである。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、マウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを具備するものであって所定のプログラムによって演算処理を実行するものであり、パーソナルコンピュータ(PC)やサーバー、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。
【0024】
以下、本願発明の敷地検索支援システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0025】
1.敷地情報記憶手段
敷地情報記憶手段140は、複数の敷地に関する「敷地情報」を記憶する手段であり、コンピュータ装置(例えば、パーソナルコンピュータ)の記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0026】
敷地情報記憶手段140は、複数の敷地情報を敷地ごとのレコード(以下、「敷地情報レコード」という。)として記憶するとよい。この場合、それぞれの敷地情報レコードは、識別子(ID:IDentification)と、敷地面積や敷地形状などの「敷地特性(実績敷地特性)」、設計実績や住所といった情報で構成することができる。
【0027】
2.敷地特性入力手段
敷地特性入力手段110は、対象敷地に係る「対象敷地特性」を入力する手段であり、例えばオペレータがポインティングデバイス(マウスやタッチパネル、ペンタブレット、タッチパッド、トラックパッド、トラックボールなど)やキーボード等を操作することによって対象敷地特性を取り込む仕様にすることができる。
【0028】
3.敷地候補選出手段
敷地候補選出手段120は、敷地特性入力手段110によって入力された「対象敷地特性」に基づいて、敷地情報記憶手段140から1又は2以上の「候補敷地情報」を選出する手段である。より詳しくは、対象敷地特性を敷地情報記憶手段140に照会し、敷地情報記憶手段140が記憶する「実績敷地特性」のうち対象敷地特性と近似する(あるいは、一致する)実績敷地特性を選出するとともに、その選出された実績敷地特性に係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。このとき、最も近似する(あるいは、一致する)候補敷地情報を一つだけ選出する仕様とすることもできるし、近似する2以上の候補敷地情報を選出する仕様とすることもできる。
【0029】
既述したとおり敷地特性として、敷地面積や敷地形状、用地用途、日影規制、法定建蔽率、法定容積率など種々の情報を挙げることができ、敷地検索支援システム100はいずれの敷地特性を利用することができる。すなわち敷地候補出力手段130は、敷地情報記憶手段140が記憶する種々の実績敷地特性と、敷地特性入力手段110によって入力された種々の対象敷地特性に基づいて、候補敷地情報を選出することができる。以下、敷地候補出力手段130が候補敷地情報を選出する手順について、主な敷地特性ごとに説明する。
【0030】
(コンパクト比)
図2は、敷地特性としての「コンパクト比」を説明するモデル図である。この図に示すようにコンパクト比は、「敷地の周長(以下、単に「敷地周長」という。)」と「基準円の周長」との比である。ここで基準円は、敷地面積と同じ面積を有する円形として設定される。例えば
図2のケースでは、敷地面積がXm
2であるため、面積がXm
2となる円形を基準円として設定する。なおこの図では、敷地周長を分子、基準円の周長を分母としてコンパクト比を求める例を示しているが、基準円の周長を分子、敷地周長を分母としてコンパクト比の逆数を求めることもできる。このコンパクト比が1に近い値を示すほどその敷地は凹凸の少ない単純な形状であり、逆にコンパクト比が1から離れるほどその敷地は凹凸が多い複雑な形状であることが分かる。
【0031】
この場合、敷地情報(敷地情報レコード)にはコンパクト比が含まれる。また敷地候補出力手段130は、対象敷地特性としてのコンパクト比(以下、「対象コンパクト比」という。)が入力されると、その対象コンパクト比を敷地情報記憶手段140に照会し、敷地情報記憶手段140が記憶する実績敷地特性としてのコンパクト比(以下、「実績コンパクト比」という。)のうち対象コンパクト比と近似する(あるいは、一致する)実績コンパクト比を選出するとともに、その選出された実績コンパクト比に係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。
【0032】
(接道長比)
図3は、敷地特性としての「接道長比」を説明するモデル図である。この図に示すように接道長比は、「敷地周長」と「接道延長」との比である。ここで接道延長とは、敷地に面する道路(以下、「接道」という。)の長さのことである。例えば
図3のケースでは、接道R1と接道R2が敷地に面しており、それぞれ敷地に面した長さの和(つまり、接道長L1+接道長L2)が接道延長となる。この接道長比が大きいほどその敷地は開放感があり、逆に接道長比が小さいほどその敷地は閉塞感が生ずることとなる。
【0033】
この場合、敷地情報(敷地情報レコード)には接道長比が含まれる。また敷地候補出力手段130は、対象敷地特性として接道長比(以下、「対象接道長比」という。)が入力されると、その対象接道長比を敷地情報記憶手段140に照会し、敷地情報記憶手段140が記憶する実績敷地特性としての接道長比(以下、「実績接道長比」という。)のうち対象接道長比と近似する(あるいは、一致する)実績接道長比を選出するとともに、その選出された実績接道長比に係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。また、対象コンパクト比と対象接道長比が入力されるときは、実績コンパクト比が対象コンパクト比と近似し、しかも実績接道長比が対象接道長比と近似するような敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。
【0034】
(接道面積比)
図4は、敷地特性としての「接道面積比」を説明するモデル図である。この図に示すように接道面積比は、「敷地面積」と「接道面積」との比である。ここで接道面積とは、敷地に係る接道の面積のことである。例えば
図4のケースでは、接道R1と接道R2が敷地に面しており、それぞれ敷地に面した面積の和(つまり、接道長L1×接道幅B1+接道長L2×接道幅B2)が接道面積となる。この接道面積比が大きいほどその敷地は開放感があり、逆に接道面積比が小さいほどその敷地は閉塞感が生ずることとなる。
【0035】
この場合、敷地情報(敷地情報レコード)には接道面積比が含まれる。また敷地候補出力手段130は、対象敷地特性として接道面積比(以下、「対象接道面積比」という。)が入力されると、その対象接道面積比を敷地情報記憶手段140に照会し、敷地情報記憶手段140が記憶する実績敷地特性としての接道面積比(以下、「実績接道面積比」という。)のうち対象接道面積比と近似する(あるいは、一致する)実績接道面積比を選出するとともに、その選出された実績接道面積比に係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。また、対象コンパクト比と対象接道面積比が入力されるときは、実績コンパクト比が対象コンパクト比と近似し、しかも実績接道面積比が対象接道面積比と近似するような敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。
【0036】
(接道方位)
図5は、敷地特性としての「接道方位」を説明するモデル図である。この図に示すように接道方位は、接道が敷地と接する端部と敷地の図心を結ぶ方向で表される。なお図心とは、1次モーメントが0となる点であって、その敷地の単位面積当たりの重量を均等としたときの「重心」である。通常、接道は区間として敷地に面しており、つまり接道は敷地に対して「起点」と「終点」が生じている。そのため接道方位は、「起点方位~終点方位」のように範囲(方位差)で表される。例えば
図5のケースでは、接道R1が敷地の左上(概ね北西)を起点(あるいは終点)として敷地に面しており、さらに接道R1に連続する接道R2が敷地の右下(概ね東南)を終点(あるいは起点)として敷地に面している。そのため
図5では、「起点方位H1(概ね北西)~終点方位H2(概ね東南)」として接道方位が求められている。この接道方位の範囲(方位差)が大きいほどその敷地は開放感があり、逆に接道方位の範囲が小さいほどその敷地は閉塞感が生ずることとなる。また接道方位は、その敷地が開放されている方位を示すため、日当たりの良さや西日の強さなどを把握することができる指標である。
【0037】
この場合、敷地情報(敷地情報レコード)には接道方位が含まれる。また敷地候補出力手段130は、対象敷地特性として接道方位(以下、「対象接道方位」という。)が入力されると、その対象接道方位を敷地情報記憶手段140に照会し、敷地情報記憶手段140が記憶する実績敷地特性としての接道方位(以下、「実績接道方位」という。)のうち対象接道方位と近似する(あるいは、一致する)実績接道方位を選出するとともに、その選出された実績接道方位に係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。また、対象コンパクト比と対象接道方位が入力されるときは、実績コンパクト比が対象コンパクト比と近似し、しかも実績接道方位が対象接道方位と近似するような敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。
【0038】
(接道パターン)
図6は、敷地特性としての「接道パターン」を説明するモデル図である。この図に示すように接道パターンは、その接道の通行状況に応じてあらかじめ形式的に分類される識別情報である。より詳しくは、敷地(例えば、入り口)に面する接道の端部が「開放(通行可)」であるか、あるいは「閉鎖(通行不可)」であるかに応じて分類される。例えば
図6のケースでは、入り口の接道に着目し、両端(図では左右端)開放されていれば「接道パターン1」に分類されている。同様に、右側端が開放され左側端が閉鎖されていれば「接道パターン2」、左側端が開放され右側端が閉鎖されていれば「接道パターン3」、両端ともに閉鎖されていれば「接道パターン4」に分類されている。もちろん
図6に限らず、接道パターンを設定する要件(いわば設定ルール)は適宜設計することができる。この接道パターンによって、その敷地における道路の利便性を把握することができる。
【0039】
この場合、敷地情報(敷地情報レコード)には接道パターンが含まれる。また敷地候補出力手段130は、対象敷地特性として接道パターン(以下、「対象接道パターン」という。)が入力されると、その対象接道パターンを敷地情報記憶手段140に照会し、敷地情報記憶手段140が記憶する実績敷地特性としての接道パターン(以下、「実績接道パターン」という。)のうち対象接道パターンと一致する実績接道パターンを選出するとともに、その選出された実績接道パターンに係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。また、対象コンパクト比と対象接道パターンが入力されるときは、実績コンパクト比が対象コンパクト比と一致し、しかも実績接道パターンが対象接道パターンと一致するような敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。
【0040】
本願発明の敷地検索支援システム100は、ここまで説明した「コンパクト比」や「接道長比」、「接道面積比」、「接道方位」、「接道パターン」のうち1又は2以上の(例えば全ての)敷地特性を利用して敷地に係る情報を提示する仕様とすることができる。あるいは、さらに敷地面積や敷地形状、用地用途、日影規制、法定建蔽率、法定容積率といった敷地特性を利用して敷地に係る情報を提示する仕様とすることができる。複数種類の敷地特性を利用する場合、敷地候補出力手段130は、利用する全ての敷地特性について近似する(あるいは、一致する)実績敷地特性を選出するとともに、その選出された実績敷地特性に係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出するとよい。また、
図7に示すように、複数種類(図では10種類)の敷地特性ごとに実績敷地特性と対象敷地特性との近似度を表したレーダーチャートを表示することもできる。
【0041】
(コサイン類似度)
敷地候補選出手段120は、対象敷地に係る2種類以上の対象敷地特性と、敷地情報記憶手段140に記憶された2種類以上の実績敷地特性に基づいて、コサイン類似度を算出し、そのコサイン類似度に基づいて候補敷地情報を選出する仕様とすることもできる。もちろん、対象敷地特性の種類と、実績敷地特性の種類は同じものとされ、例えば対象敷地特性としての対象コンパクト比と対象接道長比、対象接道パターンが入力されると、実績敷地特性としての実績コンパクト比と実績接道長比、実績接道パターンが敷地情報記憶手段140から読み出される。
【0042】
敷地候補選出手段120がコサイン類似度を算出するにあたっては、敷地情報記憶手段140から2以上の敷地情報(敷地情報レコード)が読み出され、それぞれの敷地情報(実績敷地特性)についてコサイン類似度を算出する。このとき、全ての敷地情報を読み出してコサイン類似度を算出する仕様とすることもできるし、例えば実績コンパクト比が対象コンパクト比と近似する(較差が閾値以内にある)敷地情報を読み出すなど、所定の要件に合致する敷地情報のみを読み出してコサイン類似度を算出する仕様とすることもできる。
【0043】
敷地候補選出手段120は、2以上の敷地情報が読み出されると、対象敷地特性とそれぞれの敷地情報に係る実績敷地特性を用いてコサイン類似度を算出する。具体的には、2種類以上の対象敷地特性(例えば、対象コンパクト比と対象接道面積比、対象接道方位)に基づいて対象敷地特性に係る「長さ(要素二乗和の平方根)」を算出するとともに、2種類以上の実績敷地特性(例えば、実績コンパクト比と実績接道面積比、実績接道方位)に基づいて実績敷地特性に係る「長さ(要素二乗和の平方根)」を算出し、さらに対象敷地特性と実績敷地特性に基づいて「内積(要素積の和)」を算出したうえで、コサイン類似度(cosθ)を算出する。そして敷地候補選出手段120は、コサイン類似度が最も1に近い実績敷地特性に係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出する。あるいは、コサイン類似度が許容範囲(0.8~1.2など)にある複数の実績敷地特性に係る敷地情報を「候補敷地情報」として選出することもできる。
【0044】
4.敷地候補出力手段
敷地候補出力手段130は、敷地候補選出手段120によって選出された1又は2以上の候補敷地情報を出力する手段である。候補敷地情報を出力するには、ディスプレイやプリンタなど種々の出力装置を利用することができる。また敷地候補出力手段130は、2以上の候補敷地情報を近似する順にリスト表示することもできるし、
図7に示すようにレーダーチャートとして表示することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願発明の敷地検索支援システムは、戸建て住宅のほか、集合住宅やオフィスビル、商業施設、学校など様々な建築物を対象として利用することができる。本願発明によれば、対象敷地にとってより適切な設計実績が得られ、その結果、高品質な設計が実現することとなり、延いては好適な住環境を提供することができることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0046】
100 本願発明の敷地検索支援システム
110 (敷地検索支援システムの)敷地特性入力手段
120 (敷地検索支援システムの)敷地候補選出手段
130 (敷地検索支援システムの)敷地候補出力手段
140 (敷地検索支援システムの)敷地情報記憶手段